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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】耐湿性二液型接着剤組成物
(51)【国際特許分類】
   C09J 201/00 20060101AFI20241108BHJP
   C09J 7/30 20180101ALI20241108BHJP
【FI】
C09J201/00
C09J7/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024529971
(86)(22)【出願日】2021-11-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-21
(86)【国際出願番号】 CN2021133451
(87)【国際公開番号】W WO2023092445
(87)【国際公開日】2023-06-01
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】590001418
【氏名又は名称】ダウ シリコーンズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100208225
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 修二郎
(74)【代理人】
【識別番号】100144417
【弁理士】
【氏名又は名称】堂垣 泰雄
(72)【発明者】
【氏名】ファン イェンピン
(72)【発明者】
【氏名】ホアン イェンシア
(72)【発明者】
【氏名】チャン イー
(72)【発明者】
【氏名】チウ チーハン
(72)【発明者】
【氏名】チャン ピン
【テーマコード(参考)】
4J004
4J040
【Fターム(参考)】
4J004AA01
4J004CA01
4J004CA04
4J004CA06
4J004CA08
4J004FA05
4J040BA171
4J040EE001
4J040EF282
4J040JA13
4J040NA19
(57)【要約】
少なくとも1つの疎水性ポリオールを含むポリオール成分と、ポリリン酸、並びに(I)イソシアネート化合物及び(II)ダイマー酸ポリエステルポリオールの反応生成物を含むイソシアネート成分と、の反応生成物を含む二液型接着剤組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)少なくとも1つの疎水性ポリオールを含む、ポリオール成分と、
B)ポリリン酸、並びに(I)イソシアネート化合物及び(II)ダイマー酸ポリエステルポリオールの反応生成物を含むイソシアネート成分と、
の反応生成物を含む二液型接着剤組成物。
【請求項2】
前記疎水性ポリオールが、植物油、植物油由来の疎水性ポリオール、又はこれらの混合物から選択される、請求項1に記載の二液型接着剤組成物。
【請求項3】
前記ダイマー酸ポリエステルポリオールが、
a)ダイマー酸と、
b)少なくとも1つのポリオールと、
を含む反応混合物の反応生成物を含む、請求項1に記載の二液型接着剤組成物。
【請求項4】
前記ダイマー酸ポリエステルポリオールが、
a)ダイマー酸と、
b)少なくとも1つのポリオールと、
c)他のカルボニル含有化合物と、
を含む反応混合物の反応生成物を含む、請求項1に記載の二液型接着剤組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート成分B)が、前記イソシアネート成分B)の総重量に基づいて0.05~5.0重量%の前記ポリリン酸を含む、請求項1に記載の二液型接着剤組成物。
【請求項6】
前記ポリオール成分A)が、前記ポリオール成分A)の総重量に基づいて0.05~5.0重量%のポリリン酸を含む、請求項1に記載の二液型接着剤組成物。
【請求項7】
NCO指数が1.05~1.85である、請求項1に記載の二液型接着剤組成物。
【請求項8】
前記ダイマー酸が、以下の構造(A)、構造(B)、構造(C)、構造(D)、又は構造(E)を有する、請求項3に記載の二液型接着剤組成物:
【化1】
【化2】
【請求項9】
多層構造であって、
第1の基材と、
第2の基材と、
前記第1の基材と前記第2の基材との間にあり、請求項1に記載の二液型接着剤組成物から形成された接着剤層と、
を含む、多層構造体。
【請求項10】
前記第1の基材及び前記第2の基材が、それぞれ、エチレン系ポリマー(PE)、プロピレン系ポリマー(PP)、ポリアミド、ポリエステル、エチレンビニルアルコール(EVOH)コポリマー、ポリエチレンテレフタレート(PET)、エチレンアクリル酸ビニル(EVA)コポリマー、エチレンアクリル酸メチルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸のイオノマー、メタクリル酸のイオノマー、無水マレイン酸グラフト化エチレン系ポリマー、ポリ乳酸(PLA)、ポリスチレン、金属箔、セルロース、セロファン、不織布、及びそれらの組み合わせから選択される成分を含有する層を含むフィルムである、請求項8に記載の多層構造体。
【請求項11】
前記第1の基材が金属箔層である単一層を有する単層フィルムであり、前記第2の基材が金属箔層である単一層を有する単層フィルムである、請求項8に記載の多層構造。
【請求項12】
請求項1に記載の二液型接着剤組成物を形成する方法であって、
i)少なくとも1つの疎水性ポリオールを含むポリオール成分A)を提供することと、
ii)ポリリン酸、並びに(I)イソシアネート化合物及び(II)ダイマー酸ポリエステルポリオールの反応生成物を含むイソシアネート成分B)を提供することと、
iii)次いで、前記イソシアネート成分B)を前記ポリオール成分A)と反応させて二液型接着剤組成物を形成することと、
を含む、方法。
【請求項13】
電池パックにおける請求項1に記載の二液型接着剤組成物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、接着剤組成物に関し、より具体的には耐湿性二液型接着剤組成物に関する。
【0002】
序論
経済的な方法でのバッテリパックの大量生産は、ここ数年の間に革命的な発展を遂げ、世界中で電気自動車(electrical vehicles、EV)の採用を前進させた。低コスト、低揮発性、高い本体強度、及び靱性から、ポリウレタン接着剤は、バッテリセルがポリウレタン接着剤によって冷却プレート上に接合されているバッテリパックアセンブリに対する一般的な解決策となっている。
【0003】
バッテリパックアセンブリのための接合基板は、主にAl合金、PETフィルム、ポリカーボネートなどを含み、Al合金-Al合金の接合が最も重要なものである。しかしながら、表面エネルギーが高く、Al合金表面に有機化学基が存在しないことから、Al合金間の有効な接合は困難である。他方、ポリウレタン成分(ポリオール及びイソシアネート部分を含む)の耐湿性は、別の重要な工業的ニーズである。これは、ポリオール部分及びイソシアネート部分の両方が水分を容易に吸収し得るためである。イソシアネート部分については、吸収された水分は、NCO含量の減少及び成分の上部から始まる固体スキンの形成を引き起こす。その結果、NCO含量の減少により、反応基間の供給比が不正確になり、厚いスキンは、通常、貯蔵タンク及び/又は分配トンネルを塞ぐので、それぞれ製品の欠陥及び生産の中断を引き起こす。ポリオール部分については、吸収された水分は、ポリオール部分をイソシアネート部分と混合及び分配した後に、硬化した接着剤に多数の気泡をもたらす可能性がある。したがって、耐湿性が高いほど、その工業的使用は良好になる。
【0004】
現在の二液型ポリウレタン接着剤がこれらの要件を同時に満たすことは困難である。
【0005】
したがって、基材、特にAl合金-Al合金界面に対して強い接合強度を有し、接着剤塗布中の水分取り込みに対して不活性であるポリウレタン接着剤が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本開示の第1の態様では、本開示は、
A)少なくとも1つの疎水性ポリオールを含む、ポリオール成分と、
B)ポリリン酸、並びに(I)イソシアネート化合物及び(II)ダイマー酸ポリエステルポリオールの反応生成物を含むイソシアネート成分と、
の反応生成物を含む二液型接着剤組成物を提供する。
【0007】
本開示の第2の態様では、本開示は、
第1の基材と、
第2の基材と、
当該第1の基材と当該第2の基材との間の接着層であって、本明細書に記載の二液型接着剤組成物から形成される、接着剤層と、
を含む多層構造体を提供する。
【0008】
本開示の第3の態様では、本開示は、二液型接着剤組成物を形成する方法を提供し、この方法は、
(i)少なくとも1つの疎水性ポリオールを含むポリオール成分A)を提供することと、
(ii)ポリリン酸、並びに(I)イソシアネート化合物及び(II)ダイマー酸ポリエステルポリオールの反応生成物を含むイソシアネート成分B)を提供することと、
(iii)次いで、当該イソシアネート成分B)を当該ポリオール成分A)と反応させて本明細書に記載の二液型接着剤組成物を形成することと、
を含む。
【0009】
本開示の第4の態様では、本開示は、電池パックにおける二液型接着剤組成物の使用を提供する。
【0010】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明はいずれも、例示的かつ説明的なものにすぎず、特許請求される本発明を限定するものではないことを理解されたい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
特に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。また、本明細書で言及される全ての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、参照により組み込まれる。
【0012】
定義
本明細書に開示される数値範囲は、下限値から上限値までの全ての値(下限値及び上限値を含む)を含む。明示的な値を含む範囲(例えば1、又は2、又は3~5、又は6、又は7の範囲)の場合、任意の2つの明示的な値の間の任意の部分範囲が含まれる(例えば、上記の範囲1~7は、部分範囲1~2、2~6、5~7、3~7、5~6、などを含む)。
【0013】
相反する記載がない限り、文脈から黙示的でない限り、又は当該技術分野で慣習的でない限り、全ての部及びパーセントは重量に基づき、全ての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0014】
「組成物」という用語は、当該組成物を構成する材料の混合物、並びに当該組成物の材料から形成された反応生成物及び分解生成物を指す。
【0015】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、及びそれらの派生語は、任意の追加の構成成分、工程、又は手順が本明細書において具体的に開示されているか否かにかかわらず、それらの存在を排除することを意図したものではない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、特に反対の記載がないかぎり、ポリマーであるかその他であるかによらず、任意の追加の添加物、アジュバント、又は化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる他の構成成分、工程、又は手順をあらゆる後続の説明の範囲から除外する。「からなる」という用語は、明確に描写又は列挙されていない任意の構成成分、工程、又は手順を除外する。「又は」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に及び任意の組み合わせで指す。単数形の使用には複数形の使用が含まれ、その逆もまた同様である。
【0016】
「ジカルボン酸」は、2つのカルボキシル(-COOH)基を含有する化合物である。
【0017】
「イソシアネート」は、その構造に少なくとも1つのイソシアネート基を含む化学物質である。イソシアネート基は、式:-N=C=Oで表される。1つを超える又は少なくとも2つのイソシアネート基を含有するイソシアネートは「ポリイソシアネート」である。2つのイソシアネート基を有するイソシアネートはジイソシアネートであり、3つのイソシアネート基を有するイソシアネートはトリイソシアネートであり、以下同様である。イソシアネートは芳香族であっても脂肪族であってもよい。
【0018】
「ポリオール」は、複数のヒドロキシル(-OH)基を含む有機化合物である。言い換えれば、ポリオールは少なくとも2つのヒドロキシル基を含む。好適なポリオールの非限定的な例としては、ジオール(2つのヒドロキシル基を含む)、トリオール(3つのヒドロキシル基を含む)、及び多ヒドロキシル含有ポリオールが挙げられる。
【0019】
「ポリエーテル」は、原子の同じ直鎖に2つ以上のエーテル連結基を含む化合物である。
【0020】
「ポリエステル」は、原子の同じ直鎖に2つ以上のエステル連結基を含む化合物である。
【0021】
「ポリエステルポリオール」は、ポリエステルでありかつポリオールである化合物である。
【0022】
「ポリマー」は、同じ種類又は異なる種類のモノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物である。したしたがって、ポリマーという総称は、「ホモポリマー」という用語(微量の不純物がポリマー構造に組み込まれ得るという理解の下で、1種類のモノマーのみから調製されたポリマーを指すために使用される)を包含し、「インターポリマー」という用語(「コポリマー」という用語と同じ意味で使用される)には、バイポリマー(2種類の異なるモノマーから調製されたポリマーを指すために使用される)、ターポリマー(3種類の異なるモノマーから調製されるポリマーを指すために使用される)、及び4種類以上の異なるモノマーから調製されるポリマーが含まれる。微量の不純物、例えば触媒残留物が、ポリマー中及び/又はポリマー内に組み込まれる可能性がある。それはまた、例えば、ランダム、ブロックなど、あらゆる形態のコポリマーを包含する。ポリマーは、1つ以上の特定のモノマーから「作られている」、特定のモノマー又はモノマータイプに「基づいている」、特定のモノマー含有量を「含有している」などと称されることが多いが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合した残存物を指し、未重合の種を指していないと理解されることに留意されたい。一般に、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして言及される。
【0023】
A.ポリオール成分
二液型接着剤組成物は、A)ポリオール成分と、B)イソシアネート成分との反応生成物を含む。ポリオール成分A)は、少なくとも1つの疎水性ポリオールを含む。ポリオール成分A)は、任意選択で、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール、又はそれらの組み合わせから選択される少なくとも1つを含んでいてもよい。ポリオール成分A)は、任意選択で、鎖延長剤を含んでいてもよい。
【0024】
疎水性ポリオール
疎水性ポリオールとは、少なくとも2つのヒドロキシル基を有する疎水性ポリオールを指す。
【0025】
実施形態では、疎水性ポリオールは、植物油、植物油由来の疎水性ポリオール、又はこれらの混合物から選択される。植物油は、ヒマシ油、ダイズ油などであってよい。
【0026】
実施形態では、疎水性ポリオールは、ヒマシ油、ヒマシ油由来の疎水性ポリオール、ダイズ油、ダイズ油由来の疎水性ポリオール、又はそれらの混合物である。
【0027】
植物油由来の疎水性ポリオールは、植物油のアルコキシル化、エステル化、又はポリウレタン反応によって植物油の分子量を増加させることにより得られる疎水性ポリオールを指し、植物油由来の疎水性ポリオールは、2つ以上のヒドロキシル基を有する。
【0028】
植物油由来の疎水性ポリオールは、(i)イソシアネート化合物、(ii)ポリオール、及び(iii)植物油、を含む反応混合物のポリウレタン反応生成物であってよい。
【0029】
「イソシアネート化合物」は、少なくとも2つのイソシアネート基を含有する分子である。イソシアネート化合物は、ポリオールに化学的に結合してプレポリマーを形成することができる。好適なイソシアネート化合物の非限定的な例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート化合物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0030】
「芳香族イソシアネート化合物」は、1つ以上の芳香環を含有するイソシアネート化合物である。好適な芳香族イソシアネート化合物の非限定的な例としては、4,4-MDI、2,4-MDI、及び2,2’-MDIなどのメチレンジフェニルジイソシアネート(methylene diphenyl diisocyanate、MDI)の異性体;カルボジイミド変性MDI又はアロファネート変性MDIなどの変性MDI;2,4-TDI、2,6-TDIなどのトルエン-ジイソシアネート(toluene-diisocyanate、TDI)の異性体;1,5-NDIなどのナフタレンジイソシアネート(naphthalene-diisocyanate、NDI)の異性体;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0031】
「脂肪族イソシアネート化合物」は、イソシアネート部分(-NCO)が芳香環に直接接続していないイソシアネート化合物である。好適な脂肪族イソシアネート化合物の非限定的な例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(hexamethylene diisocyanate、HDI)の異性体、イソホロンジイソシアネート(isophorone diisocyanate、IPDI)の異性体、キシレンジイソシアネート(xylene diisocyanate、XDI)の異性体、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート(水素化MDI)(hydrogenated MDI、HMDI)及びシクロヘキサンジイソシアネートなどの他の脂環式イソシアネート、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
実施形態では、イソシアネート化合物は、モノイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる実施形態では、イソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物である。
【0033】
実施形態では、イソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基、又は少なくとも3つのイソシアネート基を有する多官能性イソシアネート化合物である。
【0034】
実施形態では、イソシアネート化合物は、MDI、TDI、HDI、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる実施形態では、イソシアネート化合物は、MDIである。
【0035】
実施形態では、イソシアネート化合物は、カルボジイミド変性MDI、カルボジイミド変性TDI、カルボジイミド変性HDI、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる実施形態では、イソシアネート化合物は、The Dow Chemical Company製のISONATE 143Lなどのカルボジイミド変性MDIである。
【0036】
(i)イソシアネート化合物、(ii)ポリオール、及び(iii)植物油、を含む反応混合物のポリウレタン反応生成物を調製するためのポリオールは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、又はそれらの組み合わせ、好ましくはポリエーテルポリオールであり得る。「ポリエーテルポリオール」は、ポリエーテルでありかつポリオールである化合物である。好適なポリエーテルポリオールの非限定的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシドの重付加生成物、及びそれらの共付加生成物とグラフト生成物、多価アルコールの縮合により得られるポリエーテルポリオール、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
好適なポリエーテルポリオールの非限定的な例としては、ポリプロピレングリコール(polypropylene glycol、PPG)、ポリエチレングリコール(polyethylene glycol、PEG)、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(polytetramethylene ether glycol、PTMEG)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ポリエーテルポリオールは、ポリプロピレングリコール(PPG)である。
【0038】
好適なポリエーテルポリオールの非限定的な例としては、VORANOL(商標)P400、VORANOL(商標)1010 L、PPG、及びVORANOL(商標)CP450、グリセリンプロポキシル化ポリエーテルトリオールが挙げられ、それぞれDowから入手可能である。
【0039】
実施形態では、ポリエーテルポリオールは、50g/mol、又は100g/mol、又は400g/mol、又は450g/mol~1,000g/mol、又は1,500g/mol、又は2,000g/mol、又は4,000g/mol、又は5,000g/molの分子量(Mw)を有する。
【0040】
一実施形態では、ポリエーテルポリオールは、30mg KOH/g、又は50mg KOH/g、又は75mg KOH/g、又は100mg KOH/g~115mg KOH/g、又は125mg KOH/g、又は150mg KOH/g、又は200mg KOH/g、又は300mg KOH/g、又は350mg KOH/g、又は400mg KOH/g、又は450mg KOH/g、又は500mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0041】
実施形態では、ポリエーテルポリオールは、次の特性、すなわち、(i)50g/mol~5,000g/mol、若しくは100g/mol~2,000g/mol、若しくは400g/mol~1,500g/mol、若しくは400g/mol~1,000g/molの分子量、及び/又は(ii)30mg KOH/g~500mg KOH/g、若しくは100mg KOH/g~400mg KOH/g、若しくは100mg KOH/g~150mg KOH/g、若しくは350mg KOH/g~400mg KOH/gのヒドロキシル価の、一方又は両方を有する。
【0042】
ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、20~60重量%、好ましくは25~50重量%、より好ましくは26~45重量%、更により好ましくは28~40重量%の疎水性ポリオール、好ましくはヒマシ油及び/又はヒマシ油由来の疎水性ポリオールを含む。
【0043】
ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、10~50重量%、好ましくは12~40重量%、より好ましくは15~25重量%、更により好ましくは15~20重量%の植物油、好ましくはヒマシ油又はダイズ油を含む。
【0044】
ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、1~30重量%、好ましくは2~25重量%、より好ましくは5~20重量%、更により好ましくは8~15重量%の植物油由来の疎水性ポリオール、好ましくは(i)イソシアネート化合物、(ii)ポリオール、及び(iii)植物油、を含む反応混合物のポリウレタン反応生成物を含む。
【0045】
ポリエーテルポリオール
ポリオール成分A)は、ポリエーテルポリオールを更に含んでもよい。「ポリエーテルポリオール」は、ポリエーテルでありかつポリオールである化合物である。好適なポリエーテルポリオールの非限定的な例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、テトラヒドロフラン、ブチレンオキシドの重付加生成物、及びそれらの共付加生成物とグラフト生成物、多価アルコールの縮合により得られるポリエーテルポリオール、又はそれらの混合物、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0046】
好適なポリエーテルポリオールの非限定的な例としては、ポリプロピレングリコール(PPG)、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリブチレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(PTMEG)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ポリエーテルポリオールは、ポリプロピレングリコール(PPG)である。
【0047】
好適なポリエーテルポリオールの非限定的な例としては、VORANOL(商標)1010 L、PPG、及び、VORANOL(商標)CP450、グリセリンプロポキシル化ポリエーテルトリオールが挙げられ、それぞれDowから入手可能である。
【0048】
実施形態では、ポリエーテルポリオールは、50g/mol、又は100g/mol、又は400g/mol、又は450g/mol~1,000g/mol、又は1,500g/mol、又は2,000g/mol、又は4,000g/mol、又は5,000g/molの分子量を有する。
【0049】
一実施形態では、ポリエーテルポリオールは、30mg KOH/g、又は50mg KOH/g、又は75mg KOH/g、又は100mg KOH/g~115mg KOH/g、又は125mg KOH/g、又は150mg KOH/g、又は200mg KOH/g、又は300mg KOH/g、又は350mg KOH/g、又は400mg KOH/g、又は450mg KOH/g、又は500mg KOH/gのヒドロキシル価を有する。
【0050】
実施形態では、ポリエーテルポリオールは、次の特性、すなわち、(i)50g/mol~5,000g/mol、若しくは100g/mol~2,000g/mol、若しくは400g/mol~1,500g/mol、若しくは400g/mol~1,000g/molの分子量、及び/又は(ii)30mg KOH/g~500mg KOH/g、若しくは100mg KOH/g~400mg KOH/g、若しくは100mg KOH/g~150mg KOH/g、若しくは350mg KOH/g~400mg KOH/gのヒドロキシル価、の一方又は両方を有する。
【0051】
好ましくは、ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、1~20重量%、好ましくは1.5~15重量%、より好ましくは2~12重量%、更により好ましくは3~6重量%のポリエーテルポリオール、好ましくはグリセリンプロポキシル化ポリエーテルトリオールを含んでいてよい。
【0052】
ポリエステルポリオール
使用に好適なポリエステルポリオールとしては、ジオール、また任意選択でポリオール(例えば、トリオール、テトラオール)、及びジカルボン酸、また任意選択でポリカルボン酸(例えば、トリカルボン酸、テトラカルボン酸)、又はヒドロキシカルボン酸若しくは無水物若しくはラクトンの重縮合物が挙げられるが、それらに限定されない。
【0053】
好ましくは、ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは2~12重量%、更により好ましくは3~6重量%のポリエステルポリオールを含み得る。
【0054】
ポリウレタンポリオール
ポリウレタンポリオールは、鎖延長剤としてイソシアネートを、一方末端基としてヒドロキシル基を使用して合成することができ、これはポリウレタンのバックグラウンドを有する技術者にはよく知られている。ポリウレタンポリオールの合成例は、実施例の項に見出すことができる。
【0055】
好ましくは、ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~20重量%、好ましくは1~15重量%、より好ましくは2~12重量%、更により好ましくは3~6重量%のポリウレタンポリオールを含み得る。
【0056】
鎖延長剤
ポリオール成分A)は、任意選択で鎖延長剤を含んでもよい。好適な鎖延長剤の非限定的な例としては、グリセリン;トリメチロールプロパン;ジエチレングリコール;プロパンジオール;2-メチル1,3-プロパンジオール;1,4-ブタンジオール(BDO);及びそれらの組み合わせが挙げられ、好ましくは1,4-ブタンジオール(BDO)である。
【0057】
ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは1~8重量%、更により好ましくは2~6重量%、又は2~3重量%の鎖延長剤、好ましくは1,4-ブタンジオール(BDO)を含む。
【0058】
ポリオール成分A)は、任意選択で、水分捕捉剤、触媒、難燃剤、レオロジー調整剤、充填剤などを含むことができる。
【0059】
水分捕捉剤は、気泡形成の問題を引き起こすことを避けるために、接着剤中のNCO含有基と反応する前に環境から水分を吸収する。ポリウレタン接着剤でよく使用される水分捕捉剤の例は、モレキュラーシーブである。ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは1~8重量%、更により好ましくは2~6重量%の水分捕捉剤、好ましくは分子ふるいを含む。
【0060】
触媒は、プロセス要件を満たすように反応速度を調整する。より多くの触媒を装填すると、初期の接着強度の増強に役立つが、ポットライフは短くなる。バランスのとれた触媒パッケージは、Zn、Bi、Sn含有触媒を含む有機金属である。ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~3重量%、好ましくは0.2~2.5重量%、より好ましくは0.5~2重量%、更により好ましくは1~1.5重量%の触媒を含む。
【0061】
イソプロピル化リン酸フェノールなどの難燃剤は、電池セルが電気ショートにさらされているときの耐火性を向上させる。ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~20重量%、好ましくは0.5~15重量%、より好ましくは1~10重量%、更により好ましくは2~8重量%、又は3~6重量%の難燃剤を含む。
【0062】
レオロジー調整剤は、多くの場合、接着剤組成物のポリオール成分A)若しくはイソシアネート成分B)のいずれか、又はその両方に含まれ、様々な用途のニーズに合わせてチキソトロピー特性を提供する。ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは1~8重量%、更により好ましくは2~6重量%のレオロジー調整剤を含む。
【0063】
エポキシシラン又はポリリン酸などの従来の接着促進剤を使用することもできる。ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは1~8重量%、更により好ましくは2~6重量%重量%の従来の接着促進剤を含む。例えば、ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0.05~5.0重量%、好ましくは0.08~3.0重量%、より好ましくは0.09~2.5重量%、更により好ましくは0.1~1.0重量%、又は0.1~0.8重量%のポリリン酸を含み得る。接着剤組成物のポリオール成分A)若しくはイソシアネート成分B)のいずれか、又はその両方に充填剤を添加して、機械的強度を向上させ、コストを低減することができる。充填剤は、シリカ、CaCO、カオリン、タルク、Al、窒化ホウ素、又は水酸化アルミニウム等から選択してよい。ポリオール成分A)は、ポリオール成分A)の総重量に基づいて、0~95重量%、好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~80重量%、更により好ましくは40~70重量%、又は50~60重量%の充填剤を含む。
【0064】
B.イソシアネート成分
二液型接着剤組成物は、A)ポリオール成分と、B)イソシアネート成分との反応生成物を含む。イソシアネート化合物B)は、ポリリン酸と、(I)イソシアネート化合物及び(II)NCO末端プレポリマーであるダイマー酸ポリエステルポリオールの反応生成物とを含む。
【0065】
イソシアネートプレポリマーは、モノマーと最終ポリマーの間の中間体である。
【0066】
イソシアネート化合物
イソシアネート成分B)は、(i)イソシアネート化合物と(ii)ダイマー酸ポリエステルポリオールとの反応生成物を含む。
【0067】
「イソシアネート化合物」は、少なくとも2つのイソシアネート基を含有する分子である。イソシアネート化合物は、ポリオールに化学的に結合してプレポリマーを形成することができる。好適なイソシアネート化合物の非限定的な例としては、芳香族イソシアネート、脂肪族イソシアネート、カルボジイミド変性イソシアネート化合物、及びそれらの組み合わせが挙げられる。カルボジイミド変性イソシアネート化合物は、本開示における使用に好ましい。「芳香族イソシアネート化合物」は、1つ以上の芳香環を含有するイソシアネート化合物である。好適な芳香族イソシアネート化合物の非限定的な例としては、4,4-MDI、2,4-MDI、及び2,2’-MDIなどのメチレンジフェニルジイソシアネート(MDI)の異性体;カルボジイミド変性MDI又はアロファネート変性MDIなどの変性MDI;2,4-TDI、2,6-TDIなどのトルエン-ジイソシアネート(TDI)の異性体;1,5-NDIなどのナフタレンジイソシアネート(NDI)の異性体;並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0068】
「脂肪族イソシアネート化合物」は、イソシアネート部分(-NCO)が芳香環に直接接続していないイソシアネート化合物である。好適な脂肪族イソシアネート化合物の非限定的な例としては、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)の異性体、イソホロンジイソシアネート(IPDI)の異性体、キシレンジイソシアネート(XDI)の異性体、メチレンビスシクロヘキシルイソシアネート(水素化MDI)(HMDI)及びシクロヘキサンジイソシアネートなどの他の脂環式イソシアネート、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0069】
実施形態では、イソシアネート化合物は、モノイソシアネート化合物、ジイソシアネート化合物、トリイソシアネート化合物、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる実施形態では、イソシアネート化合物は、ジイソシアネート化合物である。
【0070】
実施形態では、イソシアネート化合物は、少なくとも2つのイソシアネート基又は少なくとも3つのイソシアネート基を有する多官能性イソシアネート化合物である。
【0071】
実施形態では、イソシアネート化合物は、MDI、TDI、HDI、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる実施形態では、イソシアネート化合物は、MDIである。
【0072】
実施形態では、イソシアネート化合物は、カルボジイミド変性MDI、カルボジイミド変性TDI、カルボジイミド変性HDI、及びそれらの組み合わせから選択される。更なる実施形態では、イソシアネート化合物はカルボジイミド変性MDIである。
【0073】
実施形態では、イソシアネート化合物は、20%以上、好ましくは25%以上、好ましくは28%以上のNCO含量を有する。
【0074】
ダイマー酸ポリエステルポリオール
イソシアネート成分B)は、(i)イソシアネート化合物と(ii)ダイマー酸ポリエステルポリオールとの反応生成物を含む。「ダイマー酸ポリエステルポリオール」(又は「DAPP」又はダイマー酸系ポリエステルポリオール)は、ダイマー酸に由来する単位を含むポリエステルポリオールである。実施形態では、DAPPは、(i)ダイマー酸、(ii)少なくとも1つのポリオール、及び(iii)任意選択で、ジカルボン酸、無水物、又はカプロラクトンなどの他のカルボニル含有化合物、の反応生成物である。
【0075】
i.ダイマー酸
実施形態では、DAPPは、(i)ダイマー酸と、(ii)少なくとも1つのポリオールと、(iii)任意選択で、ジカルボン酸、無水物、又はカプロラクトンなどの他のカルボニル含有化合物と、を含む反応混合物の反応生成物である。
【0076】
「ダイマー酸」とは、2~4個のエチレン性二重結合と14~22個の炭素原子を有する脂肪酸(以下「不飽和脂肪酸A」という)と、1~4個のエチレン性二重結合と14~22個の炭素原子を有する脂肪酸(以下、「不飽和脂肪酸B」という)とを二量体化反応において二重結合上で反応させることによって得られるジカルボン酸化合物である。一実施形態では、不飽和脂肪酸Aは、2つのエチレン性二重結合及び14~22個の炭素原子を有し、不飽和脂肪酸Bは、1つ又は2つのエチレン性二重結合及び14~22個の炭素原子を有する。好適な不飽和脂肪酸Aの非限定的な例としては、テトラデカジエン酸、ヘキサデカジエン酸、オクタデカジエン酸(リノール酸など)、エイコサジエン酸、ドコサジエン酸、オクタデカトリエン酸(リノレン酸など)、エイコサテトラエン酸(アラキドン酸など)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な不飽和脂肪酸Bの非限定的な例としては、上記の例に加えて、テトラデセン酸(ツズ酸、フィセテル酸、ミリストレイン酸)、ヘキサデセン酸(パルミトール酸など)、オクタデセン酸(オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸など)、エイコセン酸(ガドレイン酸など)、及びドコセン酸(エルシン酸、セトレイン酸、及びブラシジン酸など)、並びにそれらの組み合わせが挙げられる。
【0077】
得られるダイマー酸は、二重結合の結合部位又は異性化に応じて構造が異なるダイマー酸の混合物である。好適なダイマー酸構造の非限定的な例は、以下の構造(A)、構造(B)、構造(C)、構造(D)、又は構造(E)である:
【化1】
【0078】
一実施形態では、ダイマー酸はC36ダイマー酸である。更なる実施形態では、C36ダイマー酸は、構造(A)を有する。
【0079】
一実施形態では、得られるダイマー酸は、0重量%~2重量%、若しくは4重量%、若しくは6重量%のモノマー酸、及び/又は、0重量%~2重量%、若しくは4重量%、若しくは6重量%のポリマー酸を含み、三量体酸の重合度以上の重合度を有する。
【0080】
一実施形態では、ダイマー酸は不飽和である。「不飽和ダイマー酸」は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む。構造(A)は不飽和ダイマー酸である。好適なダイマー酸の非限定的な例は、Jiangxi Aturex Co.,Ltd.から入手可能なATUREXTM 1001(CAS 61788-89-4)である。
【0081】
一実施形態では、ダイマー酸は、150mg KOH/g、又は160mg KOH/g、又は170mg KOH/g、又は180mg KOH/g、又は190mg KOH/g、又は194mg KOH/g~200mg KOH/g、又は210mg KOH/g、又は220mg KOH/g、又は230mg KOH/g、又は240mg KOH/g、又は250mg KOH/gの酸価を有する。別の実施形態では、ダイマー酸は、150mg KOH/g~250mg KOH/g、又は180mg KOH/g~220mg KOH/g、又は190mg KOH/g~200mg KOH/gの酸価を有する。
【0082】
一実施形態では、ダイマー酸は構造(A)を有し、150mg KOH/g~250mg KOH/g、又は180mg KOH/g~220mg KOH/g、又は190mg KOH/g~200mg KOH/gの酸価を有する。更なる実施形態では、ダイマー酸は、Jiangxi Aturex Co.,Ltd.から入手可能なATUREXTM 1001(CAS 61788-89-4)である。
【0083】
ダイマー酸は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0084】
ii.ポリオール
実施形態では、DAPPは、(i)ダイマー酸と、(ii)少なくとも1つのポリオールと、(iii)任意選択で、ジカルボン酸、無水物、又はカプロラクトンなどの他のカルボニル含有化合物と、を含む反応混合物の反応生成物である。
【0085】
好適なポリオールの非限定的な例としては、ジオール(2つのヒドロキシル基を含む)、トリオール(3つのヒドロキシル基を含む)、及びそれらの組み合わせが挙げられる。一実施形態では、ポリオールは、ジオール及びトリオールを含む。
【0086】
好適なジオールの非限定的な例としては、3-メチル1,5-ペンタンジオール(MPD)、2-メチル-1,3-プロパンジオール(MPG)、エチレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール(DEG)、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールなどのポリアルキレングリコール、1,2-プロパンジオール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、並びにネオペンチルグリコール(NPG)が挙げられる。
【0087】
好適なトリオールの非限定的な例は、トリメチロールプロパン(TMP)である。
【0088】
一実施形態では、ポリオールはジオールである。更なる実施形態では、ジオールはMPDである。
【0089】
ポリオールは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0090】
iii.任意選択のカルボニル含有化合物、例えばジカルボン酸、無水物、又はカプロラクトン。実施形態では、DAPPは、(i)ダイマー酸と、(ii)少なくとも1つのポリオールと、(iii)任意選択で、ジカルボン酸、無水物、又はカプロラクトンなどの他のカルボニル含有化合物と、を含む反応混合物の反応生成物である。
【0091】
任意選択のカルボニル含有化合物は、例えば、ジカルボン酸、無水物、又はカプロラクトンであってよい。(iii)ジカルボン酸はダイマー酸ではない。言い換えれば、(iii)ジカルボン酸は、反応混合物中の(i)ダイマー酸とは構造上異なる及び/又は組成上異なる。
【0092】
好適なジカルボン酸の非限定的な例としては、脂肪酸、芳香族酸、及びそれらの組み合わせが挙げられる。好適な芳香族ジカルボン酸の非限定的な例としては、フタル酸、イソフタル酸、及びテレフタル酸が挙げられる。好適な脂肪族ジカルボン酸の好適な非限定的な例としては、シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、グルタル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、マロン酸、スベリン酸、2-メチルコハク酸、3,3-ジエチルグルタル酸、2,2-ジメチルコハク酸、及びトリメリット酸が挙げられる。本明細書で使用される場合、「酸」という用語は、当該酸の任意の無水物も含む。飽和脂肪族酸及び/又は芳香族酸、例えば、アジピン酸又はイソフタル酸も好適である。
【0093】
一実施形態では、ジカルボン酸は、4個、又は5個、又は6~7個、又は8個、又は9個、又は10個の炭素原子を有する。別の実施形態では、ジカルボン酸は、4~10個の炭素原子、又は6~8個の炭素原子を有する。更なる実施形態では、ジカルボン酸は、8個の炭素原子を有する。
【0094】
一実施形態では、ジカルボン酸は、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、及びそれらの組み合わせから選択される。
【0095】
ジカルボン酸は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0096】
iv.任意の添加剤
実施形態では、DAPPは、(i)ダイマー酸と、(ii)少なくとも1つのポリオールと、(iii)任意選択で、ジカルボン酸、無水物、又はカプロラクトンなどの他のカルボニル含有化合物と、(iv)任意選択で、添加剤と、を含む反応混合物の反応生成物である。
【0097】
好適な任意の添加剤の非限定的な例としては、接着促進剤、鎖延長剤、触媒、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0098】
好適な接着促進剤の非限定的な例は、アミノシランである。
【0099】
好適な鎖延長剤の非限定的な例としては、グリセリン、トリメチロールプロパン、ジエチレングリコール、プロパンジオール、2-メチル-1,3-プロパンジオール、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0100】
好適な触媒の非限定的な例としては、チタン酸テトラ-n-ブチル、硫酸亜鉛、有機スズ触媒、及びそれらの組み合わせが挙げられる。
【0101】
一実施形態では、反応混合物は鎖延長剤を除外する。
【0102】
任意の添加剤は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0103】
イソシアネート成分B)は、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、5~99.95重量%、好ましくは10~95重量%、より好ましくは20~90重量%、更により好ましくは25~80重量%、又は30~60重量%、又は35~50重量%の(i)イソシアネート化合物と(ii)ダイマー酸ポリエステルポリオールとの反応生成物を含み得る。
【0104】
イソシアネート成分B)は、ポリリン酸も含む。ポリリン酸は、HO[P(OH)(O)O]Hの式を有し、式中、nは繰り返し単位の重合度を表す。
【0105】
イソシアネート成分B)は、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、0.05~5.0重量%、好ましくは0.08~3.0重量%、より好ましくは0.09~2.5重量%、更により好ましくは0.1~1.0重量%又は0.1~0.8重量%のポリリン酸を含む。
【0106】
イソシアネート成分B)は、任意選択で、可塑剤、難燃剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、充填剤などを含むことができる。
【0107】
フタル酸ジイソノニルなどの可塑剤は、イソシアネート成分B)の塗布中に蓄積するスキンニングを減少させるのに役立つ。イソシアネート成分B)は、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~10重量%、更により好ましくは0.3~8重量%、又は0.5~6重量%の可塑剤を含む。
【0108】
イソプロピル化リン酸フェノールなどの難燃剤は、電池セルが電気ショートにさらされているときの耐火性を向上させる。イソシアネート成分B)は、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~10重量%、更により好ましくは0.3~8重量%、又は0.5~6重量%の難燃剤を含む。
【0109】
エポキシシランなどの他の従来の接着促進剤を使用することもできる。イソシアネート成分B)は、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは0.6~8重量%、更により好ましくは0.8~6重量%の他の従来の接着促進剤を含む。
【0110】
ヒュームドシリカなどのレオロジー調整剤は、様々な用途のニーズに合わせてチキソトロピー特性を提供するために接着剤組成物に含まれることがよくある。イソシアネート成分B)では、疎水性表面処理を施したヒュームドシリカ(fume silica)がレオロジー調整剤として使用されることが多い。イソシアネート成分B)は、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは0.6~8重量%、更により好ましくは0.8~6重量%重量%のレオロジー調整剤を含む。
【0111】
機械的強度を向上させ、コストを低減するために、接着剤組成物に充填剤が添加される。充填剤は、シリカ、CaCO、カオリン、タルク、Al、窒化ホウ素、又は水酸化アルミニウム等から選択してよい。イソシアネート成分B)は、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、0~95重量%、好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~80重量%、更により好ましくは40~70重量%の充填剤を含む。
【0112】
(i)イソシアネート化合物と(ii)ダイマー酸ポリエステルポリオール(NCO末端プレポリマーとも呼ばれる)との反応生成物を調製するための混合物は、典型的には、(i)イソシアネート化合物と(ii)ダイマー酸ポリエステルポリオールとの反応生成物を調製するための混合物の総重量に基づいて、60~95重量%、好ましくは65~85重量%、より好ましくは70~80重量%の芳香族イソシアネートと、5~40重量%、好ましくは15~35重量%、より好ましくは20~30重量%のダイマー酸ポリエステルポリオールとを含む。
【0113】
イソシアネート成分B)は、典型的には、イソシアネート成分B)の総重量に基づいて、30~100重量%、好ましくは35~95重量%、より好ましくは38~90重量%、更により好ましくは40~80重量%又は50~75重量%又は60~70重量%の(i)イソシアネート化合物と(ii)ダイマー酸ポリエステルポリオールとの反応生成物と、任意選択で0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~10重量%、更により好ましくは0.3~8重量%、又は0.5~6重量%の可塑剤と、0~20重量%、好ましくは0.1~15重量%、より好ましくは0.2~10重量%、更により好ましくは0.3~8重量%、又は0.5~6重量%の難燃剤と、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは0.6~8重量%、更により好ましくは0.8~6重量%重量%の他の従来の接着促進剤と、0~10重量%、好ましくは0.5~9重量%、より好ましくは0.6~8重量%、更により好ましくは0.8~6重量%重量%のレオロジー調整剤と、0~95重量%、好ましくは5~90重量%、より好ましくは10~80重量%、更により好ましくは40~70重量%の充填剤とを含む。
【0114】
C.二液型接着剤組成物
二液型接着剤組成物は、溶媒を含まないか、又は実質的に含まない。
【0115】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、任意の従来の添加剤を含む。任意の添加剤は、可塑剤、鎖延長剤、難燃剤、接着促進剤、レオロジー調整剤、充填剤、水分捕捉剤、触媒など、本明細書に開示されるいずれかの任意の添加剤であり得る。
【0116】
二液型接着剤組成物は、イソシアネート成分の-NCO基とポリオール成分のヒドロキシル基とを反応させるのに適した条件下で、ポリオール成分A)とイソシアネート成分B)を混合することによって形成される。一実施形態では、ポリオール成分A)及びイソシアネート成分B)は、15℃、又は20℃、又は25℃、又は30℃、又は35℃、又は40℃~45℃、又は50℃又は55℃の温度で、静的混合装置又は動的混合装置(メーターミックスディスペンサーなど)を介して混合される。
【0117】
イソシアネート指数又は(「NCO指数」)は、ポリオール成分中のヒドロキシル基の量に対するイソシアネート成分中のイソシアネート基のモル比である。NCO指数は、以下の式(1)に従って算出される:
【0118】
【数1】
【0119】
実施形態では、二液型接着剤組成物は、1.05、又は1.10、又は1.15~1.85、又は1.80、又は1.70、又は1.60、又は1.50、又は1.40、又は1.30、又は1.25のNCO指数を有する。別の実施形態では、二液型接着剤組成物は、1.05~1.85、又は1.05~1.80、又は1.10~1.60、又は1.15~1.25のNCO指数を有する。
【0120】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、ポリオール成分A)及びイソシアネート成分B)を、イソシアネート成分B):ポリオール成分A)の体積比120:100~80:100、又は115:100~90:100、又は110:100~95:100、又は105:100~98:100で含む。
【0121】
二液型接着剤組成物は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0122】
D.多層構造
本開示は、多層構造を提供する。多層構造は、第1の基材と、第2の基材と、第1の基材と第2の基材との間の接着剤層とを含む。接着剤層は、二液型接着剤組成物から形成される。
【0123】
二液型接着剤組成物は、本明細書に開示される任意の二液型接着剤組成物であり得る。
【0124】
第1の基材及び第2の基材
多層構造は、第1の基材と、第2の基材とを含む。
【0125】
第1の基材及び第2の基材は、同じであっても異なっていてもよい。一実施形態では、第1の基材及び第2の基材は同じであり、したがって、それらは同一の組成及び同一の構造を有する。
【0126】
一実施形態では、第1の基材及び第2の基材は、組成上及び/又は構造上互いに異なる。
【0127】
「基材」に言及する以下の説明は、第1の基材及び第2の基材を個別に及び/又は集合的に指すことが理解される。
【0128】
好適な基材の非限定的な例はフィルムである。フィルムは、単層フィルム又は多層フィルムであってもよい。多層フィルムは、2つの層、又は3つ以上の層を含む。例えば、多層フィルムは、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、又はそれ以上の層を有し得る。一実施形態では、多層フィルムは、2層のみ、又は3層のみを含む。
【0129】
一実施形態では、フィルムは、唯一の層を有する単層フィルムである。
【0130】
一実施形態では、フィルムは、エチレン系ポリマー(ethylene-based polymer、PE)、プロピレン系ポリマー(propylene-based polymer、PP)、ポリアミド(ナイロンなど)、ポリエステル、エチレンビニルアルコール(ethylene vinyl alcohol、EVOH)コポリマー、ポリエチレンテレフタレート(polyethylene terephthalate、PET)、エチレンアクリル酸ビニル(ethylene vinyl acrylate、EVA)コポリマー、エチレンアクリル酸メチルコポリマー、エチレンアクリル酸エチルコポリマー、エチレンアクリル酸ブチルコポリマー、エチレンアクリル酸コポリマー、エチレンメタクリル酸コポリマー、エチレンアクリル酸のイオノマー、メタクリル酸のイオノマー、無水マレイン酸グラフトエチレン系ポリマー、ポリ乳酸(polylactic acid、PLA)、ポリスチレン、金属箔、セルロース、セロファン、不織布、及びそれらの組み合わせから選択される成分を含有する層を含む。好適な金属箔の非限定的な例は、アルミニウム箔である。多層フィルムの各層は、同じ成分から形成されてもよく、又は異なる成分から形成されてもよい。
【0131】
一実施形態では、フィルムは、金属箔を含有する層を含む。
【0132】
一実施形態では、フィルムは、エチレン系ポリマー層である単一層を有する単層フィルムである。更なる実施形態では、フィルムは、ポリエチレン層である単一層を有する単層フィルムである。
【0133】
基材、更にフィルムは、2つの対向する表面を有する連続構造である。
【0134】
一実施形態では、基材は、5μm、又は10μm、又は12μm、又は15μm、又は20μm、又は21μm~23μm、又は24μm、又は25μm、又は30μm、又は35μm、又は40μm、又は45μm、又は50μm、又は100μm、又は150μm、又は200μm、又は250μm、又は300μm、又は350μm、又は400μm、又は450μm、又は500μmの厚さを有する。
【0135】
一実施形態では、基材は、紙や木材などのセルロース系の基材を除外する。
【0136】
一実施形態では、第1の基材は、PE層である単一層を有する単層フィルムであり、第2の基材は、金属箔層である層を有するフィルムである。
【0137】
フィルムは、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0138】
第1の基材は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0139】
第2の基材は、本明細書に開示される2つ以上の実施形態を含み得る。
【0140】
二液型接着剤組成物は、例えば、Nordmeccanica Labo Combi 400ラミネーターを用いて、第1の基材と第2の基材との間に塗布される。一実施形態では、二液型接着剤組成物は、20℃、又は30℃、又は40℃~50℃、又は60℃、又は70℃、又は80℃、又は90℃の温度で、第1の基材と第2の基材との間に塗布される。
【0141】
好適な塗布方法の非限定的な例としては、刷毛塗り、流し込み(pouring)、噴霧、コーティング、ローリング、散布、及び注入(injecting)が挙げられる。
【0142】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、従来のコーティング方法によって第1の基材と第2の基材との間に塗布される。
【0143】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、第1の基材と第2の基材との間に均一に塗布される。「均一な塗布」とは、基材の表面にわたって連続的(断続的ではない)であり、基材の表面にわたって同じ又は実質的に同じ厚さの組成物の層である。言い換えれば、基材に均一に塗布される組成物は基材表面に直接接触し、組成物は基材表面と同一の広がりを有する。
【0144】
二液型接着剤組成物及び第1の基材は、互いに直接接触している。本明細書で使用される場合、「直接接触」という用語は、基材が二液型接着剤組成物又は接着剤層に直接隣接して位置し、基材と二液型接着剤組成物又は接着剤層との間に介在層も介在構造も存在しない層構成である。二液型接着剤組成物は、第1の基材の表面に直接接触する。
【0145】
二液型接着剤組成物及び第2の基材は、互いに直接接触している。二液型接着剤組成物は、第2の基材の表面に直接接触する。
【0146】
第1の基材、第2の基材、及び二液型接着剤組成物を含む構造は、以下の構造(P)を有する:
第1の基材/二液型接着剤組成物/第2の基材構造(P)。
【0147】
構造(P)の接着剤層は、二液型接着剤組成物を硬化させることにより形成される。二液型接着剤組成物は、ポリオール成分A)とイソシアネート成分B)を混合して反応させることによって形成される。
【0148】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、10℃、20℃、又は35℃~40℃、又は45℃、又は50℃の温度でオーブン中で硬化される。
【0149】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、20℃~30℃、好ましくは25℃の温度で、1日~2日、又は4日、又は7日、又は10日間硬化される。
【0150】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、光開始剤が存在しない状態、又は実質的に存在しない状態で硬化される。
【0151】
一実施形態では、二液型接着剤組成物は、水が存在しない状態、又は実質的に存在しない状態で硬化される。
【0152】
一実施形態では、構造(P)を硬化させて、第1の基材と第2の基材との間に接着剤層を形成し、それによって多層構造を形成する。多層構造は、以下の構造(Q)を有する:
第1の基材/接着剤層/第2の基材構造(Q)。
【0153】
多層構造は、接着剤層と直接接触する第1の基材と、接着剤層と直接接触する第2の基材とを含む。
【0154】
多層構造は、交互の基材層と接着剤層を含む。多層構造は、基材層と接着剤層を含む合計少なくとも3つの層を含む。一実施形態では、多層構造は、合計3~4層、又は5層、又は6層、又は7層、又は8層、又は9層、又は10層を含む。
【0155】
実施形態では、第1の基材は、金属箔層である単一層を有する単層フィルムであり、第2の基材は、金属箔層である単一層を有する単層フィルムであり、多層構造は、7MPa、若しくは7.5MPa、若しくは8MPa、若しくは8.5MPa~15MPa、若しくは13MPa、若しくは12MPaの重ねせん断強度を有する、及び/又は12.5MPa、若しくは13.0MPa、若しくは13.5MPa、若しくは14MPa~30MPa、若しくは25MPa、若しくは22MPaの十字引張強度を有する。
【0156】
E.二液型無溶剤接着剤組成物を形成する方法
本開示はまた、二液型接着剤組成物を形成する方法を提供し、この方法は、
i)少なくとも1つの疎水性ポリオールを含むポリオール成分A)を提供することと、
ii)(I)イソシアネート化合物及び(II)ダイマー酸ポリエステルポリオールの反応生成物、並びにポリリン酸を含むイソシアネート成分B)を提供することと、
iii)イソシアネート成分B)をポリオール成分A)と反応させて二液型接着剤組成物を形成することと、を含む。
【0157】
多層構造は、ゼリーロール又は積層体の形態であってよく、好ましくは電池パッケージ内にある。
【0158】
本開示はまた、多層構造を含む物品を提供する。好適な物品の非限定的な例としては、電池パッケージなどのパッケージが挙げられる。
【0159】
限定ではなく例として、ここで、本開示のいくつかの実施形態を、以下の実施例で詳細に説明する。
【実施例
【0160】
実施例で使用した物質を、以下の表1に示す。
【0161】
【表1】
【0162】
ダイマー酸ベースのポリエステルポリオール-1の合成:
100gの1,6-ヘキサンジオール、353gのATUREX-1001を500mLのガラス反応器に投入し、完全に混合した。混合物を100℃に加熱した。原材料が液体になったところで撹拌を開始した。温度を適切な位置に制御し、プロセス全体で監視した。ガラスコンデンサの最高温度が103℃を超えた場合は、反応器をできるだけ速やかに冷却した。反応温度が220℃に上昇し、最高温度が100℃を下回った場合、真空を開始して30分かけてゆっくりと30mm Hgにした。酸価を30分ごとにチェックした。酸価が10未満になるまで、一定量の触媒Tyzor TBTを添加した。触媒を添加し、反応系のOH価が理論値に達するまで、反応系を30mmHgの真空条件で1時間以上維持した。混合物を60~70℃に冷却し、最終生成物をダイマー酸ベースのポリエステルジオール-1として収集した。
【0163】
ダイマー酸ベースのポリエステルポリオール-2の合成:
100gの2-メチル-1,3-プロパンジオール、467.5gのATUREX-1001を500mLのガラス反応器に投入し、完全に混合した。混合物を100℃に加熱した。原材料が液体になったところで撹拌を開始した。温度を適切な位置に制御し、プロセス全体で監視した。ガラスコンデンサの最高温度が103℃を超えた場合は、反応器をできるだけ速やかに冷却した。反応温度が220℃に上昇し、最高温度が100℃を下回った場合、真空を開始して30分かけてゆっくりと30mm Hgにした。酸価を30分ごとにチェックした。酸価が10未満になるまで、一定量の触媒Tyzor TBTを添加した。触媒を添加し、反応系のOH価が理論値に達するまで、反応系を30mmHgの真空条件で1時間以上維持した。混合物を60~70℃に冷却し、最終生成物をダイマー酸ベースのポリエステルジオール-2として収集した。
【0164】
ポリウレタンポリオール(OH末端ポリウレタンプレポリマー、すなわち、ヒマシ油誘導体)の合成:
通常のポリウレタンプレポリマー調製プロセスとして1,000mLのガラス反応器中でポリウレタンポリオールを合成した。12gのISONATE OP 50を反応器に投入し、窒素保護下において60℃で維持し、次いで、44gのヒマシ油及び44gのVORANOL P 400を反応器に投入してISONATE OP 50と混合した。温度をゆっくりと80℃に上昇させ、2時間保持した。最後に、更なる使用のために、ポリウレタンポリオールを、窒素保護された十分に密封された容器に投入した。
【0165】
NCO末端プレポリマー-1の合成:
75gのISONATE 143Lを1,000mLのガラス反応器に投入し、窒素保護下において60℃で維持し、次いで、25gのPTMEG2000を反応器に投入してISONATE 143Lと混合した。温度をゆっくりと80℃に上昇させ、NCO含量が理論値を満たすまで2~3時間保持した。最後に、更なる適用のために、プレポリマーを、窒素保護された十分に密封された容器に投入した。
【0166】
NCO末端プレポリマー-2の合成:
75gのISONATE 143Lを1,000mLのガラス反応器に投入し、窒素保護下において60℃で維持し、次いで、25gのダイマー酸ベースのポリエステルジオール-1を反応器に投入してISONATE 143Lと混合した。温度をゆっくりと80℃に上昇させ、NCO含量が理論値を満たすまで2~3時間保持した。最後に、更なる適用のために、プレポリマーを、窒素保護された十分に密封された容器に投入した。
【0167】
NCO末端プレポリマー-3の合成:
75gのISONATE 143Lを1,000mLのガラス反応器に投入し、窒素保護下において60℃で維持し、次いで、25gのダイマー酸ベースのポリエステルジオール-2を反応器に投入してISONATE 143Lと混合した。温度をゆっくりと80℃に上昇させ、NCO含量が理論値を満たすまで2~3時間保持した。最後に、更なる適用のために、プレポリマーを、窒素保護された十分に密封された容器に投入した。
【0168】
耐湿性要件を満たすことができるパートBイソシアネート部分を表2に要約する。パートA及びパートBを含む接着剤配合を表3に要約する。
【0169】
E01及びE02では、イソシアネートをそのまま使用した場合、非常に短い不粘着時間が観察された。E03をE07又はE10と比較すると、ダイマー酸ポリエステル由来のプレポリマーをベースとするイソシアネートは、はるかに長い不粘着時間を示した。E04~E10を比較すると、ダイマー酸ベースのプレポリマーを含み、リン酸又はポリリン酸を添加したイソシアネート部分のみが、満足のいく不粘着時間(≧11時間)を示した。この著しく延長された不粘着時間は、プロトンによるNCO基の不活性化効果に起因しているはずである。
【0170】
【表2】
【0171】
接着剤配合を、パートAの詳細及びパートBの対応する実施例と共に表3に要約した。接着剤塗布機は、ほとんどの場合、体積混合比1:1で利用できる。また、接着剤を確実に完全に硬化させるために、2Kポリウレタン接着剤の化学量論比は、通常、1.05~1.85の範囲に設定される。したがって、これらの要件を満たすように配合を設計した。体積混合比及び化学量論比を計算し、表3に列挙した。
【0172】
E01~E03は、リン酸(生成物中に15重量%の水を有し、除去することができない)、トリエチルホスフェート(TEP)、及びトリス(クロロプロピル)ホスフェート(TCPP)の接着促進効果が限定されていることを示す比較例であり、一方、接着促進剤としてポリリン酸を含む本発明の実施例01~05(Inv.01~05)は、はるかに改善された接着強度を示す。漸増量のポリリン酸を含むInv.01~03又はInv.04~05を比較すると、接着促進効果が強化されていた。Inv.01及びInv.04を比較すると、ダイマー酸ポリエステルポリオールの構造を変化させることによって異なる接着強度が達成された。Inv.04~05を比較すると、接着促進効果を達成するためにポリリン酸をポリオール部分に添加してもよい。
【0173】
【表3】
Com.-比較例;Inv.-本発明の実施例。重ねせん断強度≧8.5MPa及び十字引張強度≧12.5MPaが好ましい。
【0174】
以下の手順に従ってパートBのイソシアネートプレポリマーを調製した。
ステップ1 NCO末端プレポリマーを容器に投入し、次いで、他の液体成分(DINP、IPPP、Z-6040等)を添加する。
ステップ2 真空を適用し、中速撹拌で30分間混合する。
ステップ3 アルミナを容器に投入し、粉末を入れた後に真空を適用し、高速撹拌で30分間混合する。
ステップ4 ヒュームドシリカを容器に投入し、粉末を入れた後に真空を適用し、高速撹拌で1時間混合する。
ステップ5 温度浴を80℃に設定し、温度を維持するために、中速~低速の撹拌で30分間混合し続ける。
ステップ6 温度浴を20℃に設定して、40℃未満に冷却する。
【0175】
以下の手順に従って不粘着時間を試験した。
10gのパートBを50mLのプラスチックビーカーに入れ、ビーカーを湿度45%および温度23℃のオーブンに入れる。時間の記録を開始する。定期的にビーカーを取り出し、プラスチック棒でパートBの表面に軽く触れる。部分Bと水分との反応が進むにつれて、表面粘度が増加する。パートBの表面がベタベタしなくなったら、時間の記録を停止する。この期間をパートBの不粘着時間として記録する。
【0176】
以下の手順に従ってパートAのポリオール混合物を調製する。
ステップ1 ヒマシ油、ポリウレタンポリオール、CP450、及びBDOを容器に投入する。
ステップ2 80℃まで加熱し、真空を適用し、中速撹拌で1時間混合して脱気する。
ステップ3 ATHを容器に投入し、粉末を入れた後に真空を適用し、高速撹拌で15分間混合する。
ステップ4 モレキュラーシーブ3Aを容器に投入し、粉末を入れた後に真空を適用し、高速撹拌で15分間混合する。
ステップ5 H-18を容器に投入し、粉末を入れた後に真空を適用し、高速撹拌で1時間混合する。
ステップ6 40℃未満まで冷却する。
【0177】
試験方法:
以下の手順で重ね継手試験クーポンを作製した。
1.寸法25mmX12.5mmの3003アルミニウム合金で基材を作製した。
2.基材表面をエタノールで拭き取ってきれいにする。
3.感圧テープを使用して、25mmX12mmの接着領域をマスクする。
4.接着剤のパートAとパートBを混合し、1000rpmのスピードミキサーに1分間入れて確実に完全に混合する。
5.基材の接着領域に0.5g~1.5gの接着剤を塗布する。直径0.2mmの銅線を2本入れて接着剤の厚さを調整する。
6.長さ方向に沿って、マスクされた別の基材を、同じ接着領域が頭と頭で接触するように積み重ねる。2つのクリッパーを並べて接着面を押して固定する。
7.接着剤を25℃で7日間硬化させる。
【0178】
以下の手順で突き合わせ継手試験クーポンを作製した。
1.高さ60mm、直径15mmの寸法の3003アルミニウム合金で基材を作製した。
2.基材表面をエタノールで拭き取ってきれいにする。
3.接着剤のパートAとパートBを混合し、1000rpmのスピードミキサーに1分間入れて確実に完全に混合する。
4.基材の平らな表面に0.5g~1gの接着剤を塗布する。接着剤の厚さを制御するために、直径0.25mmの銅線を2本入れる。
5.洗浄した別の基材を、平らな表面が互いに接合された状態で積み重ねる。積み重ねた基材を垂直に保ち、接合表面が重力によって常に固定されるようにする。
6.接着剤を25℃で7日間硬化させる。
【0179】
試験クーポンをインストロン試験機(モデル:インストロン5566)の固定具上に組み立て、5mm/分のひずみ速度で重ね継手のせん断強度と突き合わせ継手の引張強度を試験した。
【国際調査報告】