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2024-542517周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/00 20060101AFI20241108BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20241108BHJP
   G01N 33/543 20060101ALI20241108BHJP
   C07K 14/195 20060101ALI20241108BHJP
   C12Q 1/68 20180101ALN20241108BHJP
【FI】
G01N27/00 Z
G01N33/53 Z
G01N33/543 593
C07K14/195
C12Q1/68 100Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530483
(86)(22)【出願日】2022-11-22
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082822
(87)【国際公開番号】W WO2023094385
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210216.4
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591003013
【氏名又は名称】エフ. ホフマン-ラ ロシュ アーゲー
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN-LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【弁理士】
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【弁理士】
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100196243
【弁理士】
【氏名又は名称】運 敬太
(72)【発明者】
【氏名】レンプト,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】ベルナー,クリスティアン
【テーマコード(参考)】
2G060
4B063
4H045
【Fターム(参考)】
2G060AA15
2G060AA19
2G060AD06
2G060AF03
2G060AF20
2G060AG03
2G060HA02
2G060KA09
4B063QA11
4B063QA20
4B063QQ03
4B063QQ42
4B063QQ52
4B063QS39
4B063QS40
4B063QX05
4H045AA30
4H045AA40
4H045CA11
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法およびその使用、修飾されたナノポア、分析システム、キットおよびその使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
周波数検出によって目的の分析物(3)を決定するための方法であって、
a) ナノポア(1)を設けるステップであって、前記ナノポア(1)は、2次元材料(2)に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有しており、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ステップ、
b) 修飾されたナノポア(4)を設けるステップであって、前記修飾されたナノポア(4)は、前記2次元材料(2)に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有しており、前記AC周波数fACを有する前記AC電流が印加され、
AC>f>fであり、
前記修飾されたナノポア(4)は、前記目的の分析物(3)を含む、ステップ、
c) 前記第1の周波数と前記第2の周波数の周波数シフトΔを検出するステップであって、Δ=|f|-|f|である、ステップ、および
d) 前記周波数シフトΔを用いて、前記目的の分析物を決定するステップ、
を含む方法。
【請求項2】
ステップc)の前に、
e) ステップa)で設けられた前記ナノポア(1)とステップb)で設けられた前記修飾されたナノポア(4)の電圧を時間の関数として検出するステップ、ならびに
f) ステップe)から前記第1の周波数、前記第2の周波数、および/または前記周波数シフトを、フーリエ変換などの移行操作を用いて時間領域から周波数領域へ計算するステップ、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップb)で設けられた前記修飾されたナノポア(4)は、ステップa)で設けられた前記ナノポア(1)を修飾することによって生成される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項4】
前記目的の分析物(3)は、前記修飾されたナノポア(4)の単一分子である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記AC周波数fAC測定は、時間的および空間的に並列化されている、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記AC周波数fACは、500Hzより高い、もしくは650Hzより高い、もしくは650Hzより高い、もしくは700Hzより高い、もしくは750Hzより高い、例えば770Hzであり、かつ/または前記AC周波数fACは、2000Hzより低い、もしくは1700Hzより低い、もしくは1500Hzより低い、もしくは1300Hzより低い、もしくは1000Hzより低い、例えば900Hzである、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の周波数および/または前記第2の周波数は、400Hzから500Hzの間である、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記修飾されたナノポア(4)は、前記ナノポア(1)内に捕捉された構築物を含む分析物によって生成される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記修飾されたナノポア(4)は、前記ナノポア(1)に付着したバインダーによって生成される、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記バインダーは、前記ナノポア(1)に共有結合で付着する、先行する請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記バインダーは、非共有結合で、好ましくはファンデルワールス力で、前記ナノポア(1)に非特異的に付着する、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記目的の分析物(3)を決定するための、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法の使用。
【請求項13】
前記目的の分析物(3)を決定するために、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法において使用する修飾されたナノポア(4)であって、
- タンパク質ナノポアまたは固体ナノポア、
- 任意選択でバインダー、および
- 前記目的の分析物、
を含む修飾されたナノポア(4)。
【請求項14】
分析システムであって、
- ナノポア(1)であって、前記ナノポア(1)は、2次元材料(2)に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有しており、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ナノポア(1)と、
- 修飾されたナノポア(4)であって、前記修飾されたナノポア(4)は、前記2次元材料(2)に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有しており、前記AC周波数fACを有する前記AC電流が印加される、修飾されたナノポア(4)と、
を備え、
AC>f>fであり、
前記修飾されたナノポア(4)は、前記目的の分析物(3)を含み、
前記分析システムは、前記第1の周波数と前記第2の周波数の周波数シフトΔを検出し、前記周波数シフトΔを用いて前記目的の分析物(3)を決定するように構成されている、
分析システム。
【請求項15】
周波数検出によって目的の分析物(3)を決定するための、請求項14に記載の分析システムの使用。
【請求項16】
請求項1から11に記載の方法を実行するのに適したキットであって、
- 前記2次元材料(2)を形成するための1つまたは複数の試薬、
- 前記ナノポア(1)を形成するための1つまたは複数の試薬、
- 前記修飾されたナノポア(4)を形成するための1つまたは複数の試薬、ならびに
- 任意選択で、キャリブレータ、緩衝液、添加剤、消耗品、評価用アルゴリズム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素、
を含むキット。
【請求項17】
周波数検出によって目的の分析物(3)を決定するための、請求項16に記載のキットの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法およびその使用、修飾されたナノポア、分析システム、キットおよびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
小分子、タンパク質、抗原、免疫グロブリン、核酸などの生物学的に活性な成分は、数多くの生物学的プロセスや機能に関与している。したがって、このような成分のレベルが乱れると、病気になったり、病気の進行が早まったりする可能性がある。このため、患者の診断や治療に用いるために、生物学的に活性な成分を迅速に検出し同定する信頼性の高い方法の開発に多くの努力が払われてきた。例えば、血液や尿サンプル中のタンパク質または小分子を検出することで、患者の代謝状態を評価することができる。同様に、血液や尿サンプル中の抗原を検出することで、患者が曝露した病原体を同定し、適切な治療を行うことができる。溶液中の分析物の濃度を決定できることは、さらに有益である。例えば、血液成分や尿成分の濃度を決定することで、その成分を基準値と比較することができ、患者の健康状態のさらなる評価が容易になる。
【0003】
数多くの検出および同定方法がある。例えば、US202110088511では、ビオチン-ストレプトアビジン相互作用によって捕獲されたタグとナノポア内の大きなタンパク質とによって、単一のナノポア内に捕捉された荷電構築物が得られるという基本コンセプトについて説明されている。それぞれのタグは、ポア(細孔)内の閉塞度合いに応じて、ポアを通るイオン電流が異なるように設計されている。ポア内への挿入は、ポアの上にある周囲のタンパク質および/または化学物質、ならびに、そのそれぞれの挙動および/または周囲の媒体との相互作用に基づいている。
【0004】
AC電流の通常レベルは、シーケンシング実験が行われる場合1Hzの範囲であり、読み出し周波数は1000Hzである。
【0005】
ナノポアを修飾することは、酵素(ポリメラーゼなど)がナノポア自体にタグ付けされたシーケンシング技術(Geniaなど)にも見られる。
【0006】
このシステムでは、ポア挿入後の開いたチャネル、ビオチン-ストレプトアビジン-タグ-タンパク質の構築物の捕捉、およびさらなる修飾事象が、異なる電流レベルによって確認できる。電流レベルは、それぞれのACを通じて生成される。AC(交流、正/負)の切り替えは、ポアの状態、およびそれぞれのイオン流の強さと方向(正に帯電したイオンは負電極へ、およびその逆)を反映する2つの電流レベルを与える。
【0007】
1つの分析物だけを検出する必要がある場合、実験による(AC)値の電流読み出しコンセプトは、非常に有用である。捕捉された構築物の生の信号を解釈するのは難しいことが多いので、使用する緩衝液の組成は、非常に注意深く調整され、最適化され得る。電流コンセプトには、タグの固有性、または構築物のさらなる結合および/もしくは変化事象の検出というコンセプトは組み込まれていないが、これは、多重化が望まれ、活性結合/ポア部位および結合された部位/ポアのデジタルカウントの場合には、実際、非常に興味深いであろう。さらに、ナノポアは、単一分子の性質上、曖昧で解釈が難しい信号を生成する可能性があり、そのため、機能するポアがいくつあるかを望ましい精度で調べることはできない。これは、低濃度および高濃度の分析物が存在する場合にも重要であり、自由な結合部位、バインダー、および覆われた結合部位の数をカウントおよび/または決定できる場合にのみ可能である。
【0008】
分析物の結合または一般に修飾事象は、電流レベルのシフトにのみ現れる。このシフトは誤解を招くことが多く、別の次元の情報によってより明確にされる必要がある。
【0009】
しかしながら、検出および同定方法を改善する必要はまだある。
【0010】
本発明は、周波数検出によって、例えば生体サンプル中の、ステロイド、ペプチド、タンパク質、およびその他のタイプの分析物などの目的の分析物を決定するための方法に関する。本発明はさらに、修飾されたナノポア、分析システムおよびその使用に関する。
【0011】
本発明の目的は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法、その使用、修飾されたナノポア、分析システムおよびその使用を提供することである。
【0012】
この目的は、独立請求項の主題によって解決される。さらなる実施形態は、従属請求項に従う。
【発明の概要】
【0013】
以下において、本発明は、以下の態様に関する:
第1の態様では、本発明は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法であって、
a) ナノポアを設けるステップであって、ナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ステップ、
b) 修飾されたナノポアを設けるステップであって、修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加され、
AC>f>fであり、
修飾されたナノポアは、目的の分析物を含む、ステップ、
c) 第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出するステップ、および
d) 周波数シフトΔを用いて、目的の分析物を決定するステップ、を含む方法に関する。
【0014】
第2の態様では、本発明は、目的の分析物を決定するための本発明の第1の態様の方法の使用に関する。
【0015】
第3の態様では、本発明は、目的の分析物を決定するための本発明の第1の態様の方法において使用する修飾されたナノポアであって、
- タンパク質ナノポアまたは固体ナノポア、
- 任意選択でバインダー、および
- 目的の分析物、を含む修飾されたナノポアに関する。
【0016】
第4の態様では、本発明は、
- ナノポアであって、ナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ナノポアと、
- 修飾されたナノポアであって、修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、修飾されたナノポアと、を備える分析システムに関し、
AC>f>fであり、
修飾されたナノポアは、目的の分析物を含み、
分析システムは、第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出し、周波数シフトΔを用いて目的の分析物を決定するように構成されている。
【0017】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法を実行するのに適したキットであって、
- 2次元材料を形成するための1つまたは複数の試薬、
- ナノポアを形成するための1つまたは複数の試薬、
- 修飾されたナノポアを形成するための1つまたは複数の試薬、ならびに
- 任意選択で、キャリブレータ、緩衝液、添加剤、消耗品、評価用アルゴリズム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素、を含むキットに関する。
【0018】
第7の態様では、本発明は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための本発明の第5の態様のキットの使用に関する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1Aは、修飾されたナノポア(脂質二重層内のビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)の実験された電流/磁気駆動読み出しの一般原理を示しており、時間依存読み出しが示されている。図1Bは、定められた電圧レベルをナノポア内に生成するために使用されるタグを示している。
図2】修飾されたナノポア(脂質二重層内のビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)の実験された電流/磁気駆動読み出しの一般原理を示しており、時間依存読み出しが示されている。
図3】外部場(磁場または電場)の影響を受け、それゆえ歪められ、その結果、電流が変化するナノポアのワークフローによる方法を示している。
図4】修飾されたナノポア(脂質二重層内のビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)の実験された電流/磁気駆動読み出しの一般原理を示しており、時間依存読み出しが示されている。
図5A】修飾されたナノポアのRAW(生の)信号(電流対時間)を示している。
図5B図5Aで説明した生の信号をフーリエ変換した後の、図5Aで説明した領域のそれぞれの信号(振幅対周波数)を示している(FFT信号)。
図6-1】図5と同様の実験のRAW信号(電流対時間)を示している。
図6-2】図5と同様の実験のFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図7A】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図7B】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図8A】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図8B】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図8C】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図8D】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図8E】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
図9A】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。fAC=1Hzにおける周波数依存FFT解析を示している。
図9B】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。fAC=1Hzにおける周波数依存FFT解析を示している。
図9C】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。fAC=1Hzにおける周波数依存FFT解析を示している。
図10A】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。fAC=1000Hzにおける周波数依存FFT解析を示している。
図10B】修飾されたナノポアのRAW信号(電流対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。fAC=1000Hzにおける周波数依存FFT解析を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明を以下に詳細に説明する前に、本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態および実施例に限定されず、これらは変化し得ることを理解されたい。本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的とし、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される本発明の範囲を限定することを意図しないことも理解されるべきである。別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、当業者によって一般的に理解されている意味と同じ意味を有する。
【0021】
いくつかの文献が、本明細書の本文中で引用されている。本明細書に引用されている各文献(全ての特許、特許出願、科学出版物、製造者の仕様書、説明書等を含む)は、上記であろうと下記であろうと、その全体が参照により本明細書に組み込まれている。このように組み込まれた参考文献の定義または教示と、本明細書に記載された定義または教示との間に矛盾がある場合には、本明細書の本文が優先する。
【0022】
以下、本発明の各要素について説明する。これらの要素は特定の実施形態とともに列挙されているが、これらは任意の方法および任意の数で組み合わされて追加の実施形態を作成することができることを理解されたい。種々の説明された実施例および好ましい実施形態は、本発明を明示的に説明された実施形態のみに限定するように解釈されるべきではない。本明細書は、明示的に説明された実施形態を任意の数の開示されたおよび/または好ましい要素と組み合わせた実施形態をサポートし、かつ包含するものと理解されるべきである。さらにまた、本出願に記載されている全ての要素の任意の順列および組み合わせは、文脈が別段の意味を示さない限り、本出願の記載によって開示されているとみなされるべきである。
【0023】
定義
「備える(comprise)」という単語、ならびに「備える(comprises)」および「備えている(comprising)」などの変形は、記載された整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの包含を意味するが、いかなる他の整数もしくはステップまたは整数もしくはステップのグループの除外を意味しないことが理解されよう。「含む(including)」および「備える(comprising)」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0024】
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、および「その(the)」は、内容が明確に別のことを指示しない限り、複数の指示対象を含む。
【0025】
パーセンテージ、濃度、量、およびその他の数値データは、「範囲」形式で本明細書に表現または提示される場合がある。このような範囲形式は、単に便宜上および簡潔にするために使用されているに過ぎず、したがって、その範囲の境界として明示的に記載されている数値を含むだけではなく、各数値および部分範囲があたかも明示的に記載されているかのごとく、その範囲内に包含される個々の数値または部分範囲の全てを含むように、柔軟に解釈されるべきであることを理解されたい。例示として、「4%~20%」の数値範囲は、4%~20%という明示的に記載されている値を含むだけではなく、表示されている範囲内の個々の値および部分範囲を含むように解釈されるべきである。したがって、この数値範囲には、4、5、6、7、8、9、10、...18、19、20%等の個々の値、および4~10%、5~15%、10~20%等の個々の部分範囲が含まれる。この同じ原理が、最小値または最大値を記載する範囲にも適用される。さらに、このような解釈は、その範囲の幅または記載されている特性にかかわらず、適用されるべきである。
【0026】
「約」という用語は、数値に関連して使用される場合、表示された数値よりも5%小さい下限値を有し、且つ表示された数値よりも5%大きい上限値を有する範囲内の数値を包含することを意味する。
【0027】
本開示の文脈において、「分析物」、「分析物分子」、または「目的の分析物」という用語は、交換可能に使用されて、分析される化学種を指す。化学種、すなわち分析物は、生体内に存在する任意の種類の分子であり得、核酸(例えば、DNA、mRNA、miRNA、rRNA等)、アミノ酸、ペプチド、タンパク質(例えば、細胞表面受容体、サイトゾルタンパク質等)、代謝産物もしくはホルモン(例えば、テストステロン、エストロゲン、エストラジオール等)、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド(例えば、ビタミンD)、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子(例えば、タンパク質上の糖部分もしくはホスホリル残基、ゲノムDNA上のメチル残基)、または生体によって内在化された物質(例えば、治療薬、乱用薬物、毒素等)、またはそのような物質の代謝産物が挙げられるが、これらに限定されない。このような分析物は、バイオマーカーとして役立つことがある。本発明の文脈において、「バイオマーカー」という用語は、生物系の生物学的状態の指標として使用される当該生物系内の物質を指す。
【0028】
本明細書で使用される場合、目的の分析物を「決定する」という用語は、目的の分析物の定量化および/または認定を指し、例えば、目的の分析物の存在を決定すること、および/またはサンプル(試料)中の目的の分析物のレベルを測定することを指す。
【0029】
「ナノポア」という用語は、薄い膜もしくは2次元材料(例えば、脂質二重層)の上にあるナノメートルスケールの小さな細孔を意味するか、または固体の2次元平面からナノメートルスケールの小さな細孔として形成されたもの(例えば、ガラスナノポア)を意味することができる。ナノポアとポアは、交換可能に使うことができる。
【0030】
本明細書で使用される場合、「構築物」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常かつ慣習上の意味を与えられるべきであり、特殊なまたは特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、限定されないが、特に、2次元材料に埋め込まれた修飾されたナノポアを指すことができ、修飾は、バインダーによって引き起こされることができ、これが、例えば共有結合または非共有結合により、ナノポアに付着して、修飾されたナノポアを形成する。
【0031】
本明細書で使用される場合、「両親媒性分子」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常かつ慣習上の意味を与えられるべきであり、特殊なまたは特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、限定されないが、特に、同一分子内に溶媒に対する親和性が異なる2つの別個の共有結合成分を含む任意の化合物であって、1つの部分は極性溶媒(水など)に対して高い親和性を有し、別の部分は炭化水素、エーテル、エステルなどの非極性溶媒に対して強い親和性を有する化合物を指すことができる。界面活性剤、高分子の両親媒性物質、および親水性と疎水性の両方の成分を含む一部の脂質分子は、両親媒性分子の典型的な例である。
【0032】
本明細書で使用される場合、「二重層」という用語は、広義の用語であり、当業者にとって通常かつ慣習上の意味を与えられるべきであり、特殊なまたは特別な意味に限定されるべきではない。この用語は、限定されないが、特に、脂質分子、好ましくはリン脂質分子の2つの層で作られた膜を指すことができる。
【0033】
「臨床診断システム」は、体外診断用のサンプルの分析専用の実験室自動化装置である。臨床診断システムは、必要に応じて、かつ/または所望の実験室ワークフローに従って、異なる構成を有してもよい。追加の構成が、複数の装置および/またはモジュールを互いに結合することによって得られる。「モジュール」は、専用機能を有する、臨床診断システム全体よりサイズが典型的には小さい作業セルである。この機能は分析機能であってよいが、分析前機能または分析後機能であってもよく、分析前機能、分析機能、または分析後機能のいずれかの補助機能であってもよい。特に、モジュールは、例えば1つ以上の分析前ステップおよび/または分析ステップおよび/または分析後ステップを実行することによって、サンプル処理ワークフローの専用タスクを実行するための1つ以上の他のモジュールと協働するように構成することができる。特に、臨床診断システムは、特定のタイプの分析(例えば、臨床化学、免疫化学、凝固、血液学、液体クロマトグラフィー分離、質量分析など)に最適化されたそれぞれのワークフローを実行するように設計された1つ以上の分析装置を備えることができる。したがって、臨床診断システムは、1つの分析装置から構成されてもよいし、それぞれのワークフローを備えたこのような分析装置のいずれかの組み合わせから構成されてもよく、ここで、分析前モジュールおよび/または分析後モジュールが、個々の分析装置に連結されてもよいし、複数の分析装置によって共有されてもよい。あるいは、分析前機能および/または分析後機能は、分析装置に組み込まれたユニットによって実行されてもよい。臨床診断システムは、サンプルおよび/または試薬および/またはシステム流体のピペッティングおよび/またはポンピングおよび/または混合のための液体ハンドリングユニットなどの機能ユニットを備えることができ、分類、保管、輸送、同定、分離、検出のための機能ユニットもさらに備えることができる。
【0034】
臨床診断システムは、ナノポアホルダーを備えることができる。ナノポアホルダーは当業者には既知であり、したがって詳細な説明はしないが、例えば、Bhatti et al.,RSC Adv.,2021,11,28996を参照されたい。
【0035】
臨床診断システムは、第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出するための検出器をさらに備えることができる。
【0036】
臨床診断システムは、時間領域から周波数領域へステップe)から第1の周波数、第2の周波数、および/または周波数シフトを計算するための変換器または計算器を、さらに備えることができる。変換器は、フーリエ変換などの移行操作を使用するように構成されている。
【0037】
「サンプル準備ステーション」は、サンプル内の干渉マトリックス成分を除去もしくは少なくとも低減すること、および/またはサンプル内の目的の分析物を濃縮することを目的とした一連のサンプル処理ステップを実行するように設計された、1つ以上の分析装置に結合した分析前モジュールまたは分析装置内のユニットとすることができる。このような処理ステップは、サンプルまたは複数のサンプルに対して、順次に、並行して、または交互に実行される以下の処理操作のうちの任意の1つ以上を含むことができる:流体のピペッティング(吸引および/または分配)、流体のポンピング、試薬との混合、特定の温度でのインキュベーション、加熱または冷却、遠心分離、分離、濾過、ふるい分け、乾燥、洗浄、再懸濁、分注、移送、保管など。
【0038】
「キット」は、少なくとも1つの試薬、例えば疾患の治療のための薬品、または本発明のバイオマーカー遺伝子もしくはタンパク質を特異的に検出するためのプローブを備える、任意の製造物(例えば、パッケージまたは容器)である。キットは、好ましくは、本発明の方法を実行するためのユニットとして、宣伝、配布、または販売されている。通常、キットは、バイアル、チューブなどの1つ以上の容器手段をしっかりと閉じ込めた状態で収容するように区画化されたキャリア手段を、さらに備えることができる。特に、容器手段の各々は、第1の態様の方法で使用される別個の要素のうちの1つを含む。キットは、反応触媒を含むがこれに限定されない1つ以上の他の試薬を、さらに備えてもよい。キットは、緩衝液、希釈剤、フィルタ、ニードル、シリンジ、および使用説明書を含むがこれらに限定されない、さらなる材料を含む1つ以上の他の容器を、さらに備えてもよい。組成物が特定の用途に使用されることを示すために、ラベルが容器に貼付されていてもよく、また、インビボ使用またはインビトロ使用のいずれかのための指示が示されていてもよい。コンピュータプログラムコードが、光記憶媒体(例えば、コンパクトディスク)等のデータ記憶媒体もしくはデバイス上に提供されてもよいし、またはコンピュータもしくはデータ処理デバイス上に直接提供されてもよい。さらに、キットは、較正目的のために、本明細書の別の箇所に記載されているようなバイオマーカーの標準量を含み得る。
【0039】
この詳細な説明において、「一実施形態」、「実施形態」、または「実施形態では」への言及は、言及されている特徴が、本開示によるその全ての態様に関する本技術の少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。さらに、「一実施形態」、「実施形態」、または「複数の実施形態」への別個の言及は、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。しかしながら、そのような実施形態は、特に明記しない限り、および当業者に容易に明らかになる場合を除いて、相互に排他的でもない。したがって、本開示によるその全ての態様における本技術は、本明細書に記載の実施形態の任意の様々な組み合わせおよび/または統合を包含することができる。
【0040】
実施形態
第1の態様では、本発明は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法であって、
a) ナノポアを設けるステップであって、ナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ステップ、
b) 修飾されたナノポアを設けるステップであって、修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加され、
AC>f>fであり、
修飾されたナノポアは、目的の分析物を含む、ステップ、
c) 第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出するステップ、および
d) 周波数シフトΔを用いて、目的の分析物を決定するステップ、を含む方法に関する。
【0041】
本明細書では、2次元材料、例えば脂質二重層内のナノポア内に捕捉された荷電構築物の周波数変化を検出する原理について述べる。タグ付けされたナノポア構築物(修飾されたナノポア)の検出が可視であり、時間領域から周波数領域へ切り替えた後の非常に安定した信号が示されている。
【0042】
好ましくは、2次元材料-ナノポア-構築物の「固有周波数」または共振周波数(fおよび/またはf)は、脂質二重層は適切に形成されるがポア構築物は確立されないことを意味する、共振による破壊という災害事象のため、駆動AC周波数fACと一致すべきではない。
【0043】
駆動力は、電流駆動とすることができ、あるいは磁気駆動であってもよい。
【0044】
あるいはまた、ナノポア自体にタンパク質または非特異的バインダーを共有結合させることで、捕捉された構築物なしでナノポア自体を使用することも可能である。
【0045】
ステップ(a)により、ナノポアが設けられている。ナノポアは、2次元材料に埋め込まれている。ナノポアは、第1の共振周波数fを有する。AC周波数fACを有するAC電流が、印加される。
【0046】
第1の共振周波数に対して、fとf1という略語が、交換可能に使用され得る。
【0047】
本発明の第1の態様の実施形態では、周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法は、
a) ナノポアを設けるステップであって、ナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ステップ、
b) 修飾されたナノポアを設けるステップであって、修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加され、
AC>f>fであり、
修飾されたナノポアは、目的の分析物を含む、ステップ、
c) 第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出するステップであって、Δ=|f|-|f|である、ステップ、および
d) 周波数シフトΔを用いて、目的の分析物を決定するステップ、を含む。
【0048】
本発明の第1の態様の実施形態では、第1の共振周波数fは、ナノポアの共振周波数である。
【0049】
本発明の第1の態様の実施形態では、第1の共振周波数fは、2次元材料に埋め込まれたナノポアの共振周波数である。
【0050】
好ましくは、1つより多いナノポアが設けられ、例えば、2、3、4、または数百、または数千、または数百万のナノポアが設けられている。ナノポアは、ウェルプレート上に設けられている。ウェルプレートは、半導体チップである。半導体チップは、128k個のセルを有することができる。
【0051】
原則として、ナノポアは当業者にとって既知であるため、あまり詳しく説明しない。ナノポアは、Genia Technologies社から購入できる。ナノポアを通る電流を測定するために、例えば264個の個別にアドレス指定可能な電極を含む相補型金属酸化膜半導体(CMOS)チップを使用することができる。このチップは、Genia Technologies社が開発した。
【0052】
本発明の第1の態様の実施形態では、ナノポアは、1000nm未満のポア径を有するポアを含み、好ましくは2nm~20nmのポア径を有する。
【0053】
本発明の第1の態様の実施形態では、ナノポアは、タンパク質ナノポアまたは固体ナノポアである。
【0054】
本発明の第1の態様の実施形態では、タンパク質ナノポアは、α-ヘモリシンまたはマイコバクテリウム・スメグマティス・ポリンA(Mycobacterium smegmatis porin A)である。
【0055】
本発明の第1の態様の実施形態では、タンパク質ナノポアは、MoS、グラフェン、Si、SiNxおよび/またはSiOを含む合成膜である。
【0056】
ステップ(b)により、修飾されたナノポアが設けられている。修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれている。修飾されたナノポアは、第2の共振周波数fを有する。AC周波数fACを有するAC電流が印加され、fAC>f>fである。修飾されたナノポアは、目的の分析物を含む。詳細には、AC周波数fACを有する同じAC電流が、ナノポアにも修飾されたナノポアにも印加される。
【0057】
本発明の第1の態様の実施形態では、AC周波数fAC測定は、時間的および空間的に並列化され、ならびに/または時間的および空間的に多重化される。
【0058】
本発明の第1の態様の実施形態では、AC周波数fAC測定は、電気的および/または磁気的測定を使用して実行される。
【0059】
AC周波数に対して、fACとfACという略語が、交換可能に使用され得る。第2の共振周波数に対して、fとf2という略語が、交換可能に使用され得る。共振周波数(f1および/またはf2)は、固有周波数とも呼ばれる。
【0060】
本発明の第1の態様の実施形態では、第2の共振周波数fは、修飾されたナノポアの共振周波数である。
【0061】
本発明の第1の態様の実施形態では、第2の共振周波数fは、2次元材料に埋め込まれた修飾されたナノポアの共振周波数である。
【0062】
修飾されたナノポアまたは2次元材料に埋め込まれた修飾されたナノポアは、ここおよび本開示全体において、構築物と呼ぶことができる。
【0063】
好ましくは、1つより多い修飾されたナノポアが設けられ、例えば、2、3、4、または数百、または数千の修飾されたナノポアが設けられている。修飾されたナノポアは、ウェルプレート上に設けられている。
【0064】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたナノポアとナノポアは、修飾によって互いと区別される。修飾は、複合体または構築物であってもよく、これらが、ナノポア内に捕捉され、修飾されたナノポアを形成する。加えて、または代替として、修飾は、バインダーであってもよく、これが、ナノポアに付着して、修飾されたナノポアを形成する。
【0065】
本発明の第1の態様の実施形態では、ステップb)で設けられる修飾されたナノポアは、ステップa)で設けられるナノポアを修飾することによって生成される。
【0066】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたナノポアは、ナノポア内に捕捉された構築物を含む分析物によって生成される。
【0067】
本発明の第1の態様の実施形態では、構築物は、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、例えばFAB、非特異的バインダー、例えばC18および/または芳香族構造と分析物との間のファンデルワールス相互作用、DNA、酵素、例えばポリメラーゼ、イオン相互作用、例えば正電荷と負電荷の対、を含む。
【0068】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたナノポアは、ナノポアに付着したバインダーによって生成される。
【0069】
本発明の第1の態様の実施形態では、バインダーは、ナノポアに共有結合で付着する。
【0070】
本発明の第1の態様の実施形態では、バインダーは、非共有結合で、好ましくはファンデルワールス力で、ナノポアに非特異的に付着する。
【0071】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたナノポアは、1000nm未満のポア径を有するポアを含み、好ましくは2nm~20nmのポア径を有する。
【0072】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたナノポアは、タンパク質ナノポアまたは固体ナノポアである。
【0073】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたタンパク質ナノポアは、α-ヘモリシンまたはマイコバクテリウム・スメグマティス・ポリンAである。
【0074】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたタンパク質ナノポアは、MoS、グラフェン、Si、SiNxおよび/またはSiOを含む合成膜である。
【0075】
本発明の第1の態様の実施形態では、AC周波数は、第1の共振周波数よりも高く、かつ第2の共振周波数よりも高い。第1の共振周波数は、第2の共振周波数よりも高く、AC周波数よりも低い。第2の共振周波数は、第1の共振周波数よりも低く、第1の共振周波数よりも低い。
【0076】
本発明の第1の態様の実施形態では、fAC>f>fは、|fAC|>|f|>|f|である。原則として、絶対値は省略できる。何故なら、その一般的な意味は、質量(例えば、ナノポアまたは修飾されたナノポア)が増加すると、その部分全体が重くなるため、共振周波数の低下に直接つながるということだからである。
【0077】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、修飾されたナノポアの単一分子である。好ましくは、分析物の正確に1つの単一分子が、修飾されたナノポアの一部である。したがって、この方法は、単一分子の検出を可能にする。
【0078】
本発明の第1の態様の実施形態では、周波数シフトは、Δ=f-f、好ましくはΔ=|f|-|f|である。特に、両方の用語は、交換可能に使用され得る。
【0079】
本発明の第1の態様の実施形態では、AC周波数fACは、500Hzより高い、または650Hzより高い、または650Hzより高い、または700Hzより高い、または750Hzより高い、例えば770Hzである。
【0080】
本発明の第1の態様の実施形態では、AC周波数fACは、2000Hzより低い、または1700Hzより低い、または1500Hzより低い、または1300Hzより低い、または1000Hzより低い、例えば900Hzである。
【0081】
本発明の第1の態様の実施形態では、第1および/または第2の周波数は、400Hz~500Hzである。原理的には、目的の分析物、ナノポアおよび/または2次元材料の種類に応じて、他の第1および/または第2の周波数が可能である。
【0082】
本発明の第1の態様の実施形態では、2次元材料は、両親媒性分子を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、2次元材料は、二重層、好ましくは脂質二重層である。
【0083】
本発明の第1の態様の実施形態では、2次元材料は、単分子膜であり、好ましくは、2つの親水基または2つの疎水基を有する両親媒性分子を含み、より好ましくは、2つの親水基が疎水基によって互いに分離されているか、または2つの疎水基が親水基によって互いに分離されている。
【0084】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、小分子である。
【0085】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、タンパク質である。
【0086】
本発明の第1の態様の実施形態では、目的の分析物は、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝産物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝産物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0087】
本発明の第1の態様の実施形態では、この方法は、ステップc)の前に、さらなるステップ:
e) ステップa)で設けられたナノポアとステップb)で設けられた修飾されたナノポアの時間の関数としての電圧を検出するステップ、および/または
f) ステップe)から第1の周波数、第2の周波数、および/または周波数シフトを、フーリエ変換などの移行操作を用いて、時間領域から周波数領域へ計算するステップ、を含む。
【0088】
本発明の第1の態様の実施形態では、ステップc)およびステップd)は、ステップa)およびステップb)の後に実行される。好ましくは、ステップa)は、ステップb)の前に実行される。より好ましくは、ステップa)のナノポアが設けられた後、ステップa)で設けられたこのナノポアが修飾されて、ステップb)で設けられる修飾されたナノポアが形成される。
【0089】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、生物学的組織、生物学的材料、食料品、ポリマー、絵画、考古学的遺物、人工骨、皮膚、尿、または血液を含む。
【0090】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、タンパク質、例えばTNTである。
【0091】
本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のケト基を含む分析物分子は、ケトステロイドである。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ケトステロイドは、テストステロン、エピテストステロン、ジヒドロテストステロン(DHT)、デソキシメチルテストステロン(DMT)、テトラヒドロゲストリノン(THG)、アルドステロン、エストロン、4-ヒドロキシエストロン、2-メトキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン、16-ケトエストラジオール、16-アルファ-ヒドロキシエストロン、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル、プレドニゾン、プレドニゾロン、プレグネノロン、プロゲステロン、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)、17-ヒドロキシプレグネノロン、17-ヒドロキシプロゲステロン、アンドロステロン、エピアンドロステロン、Δ4-アンドロステンジオン、11-デオキシコルチゾール、コルチコステロン、21-デオキシコルチゾール、11-デオキシコルチコステロン、アロプレグナノロン、およびアルドステロンからなる群から選択される。
【0092】
本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のカルボキシル基を含む分析物分子は、Δ8-テトラヒドロカンナビノール酸、ベンゾイルエクゴニン、サリチル酸、2-ヒドロキシ安息香酸、ガバペンチン、プレガバリン、バルプロ酸、バンコマイシン、メトトレキサート、ミコフェノール酸、モンテルカスト、レパグリニド、フロセミド、テルミサルタン、ゲムフィブロジル、ジクロフェナク、イブプロフェン、インドメタシン、ゾメピラク、イソキセパック、およびペニシリンからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のカルボキシル基を含む分析物分子は、アルギニン、リジン、アスパラギン酸、グルタミン酸、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン、トリプトファン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、バリン、プロリン、およびグリシンからなる群から選択されるアミノ酸である。
【0093】
本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアルデヒド基を含む分析物分子は、ピリドキサール、N-アセチル-D-グルコサミン、アルカフタジン、ストレプトマイシン、およびジョサマイシンからなる群から選択される。
【0094】
本発明の第1の態様の実施形態では、カルボニル基は、カルボニルエステル基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のエステル基を含む分析物分子は、コカイン、ヘロイン、リタリン、アセクロフェナク、アセチルコリン、アムシノニド、アミロキサート、アミロカイン、アニレリジン、アラニジピン、アルテスネート、およびペチジンからなる群から選択される。
【0095】
本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上の無水物基を含む分析物分子は、カンタリジン、無水コハク酸、無水トリメリット酸、および無水マレイン酸からなる群から選択される。
【0096】
本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジエン基を含む分析物分子は、セコステロイドである。実施形態では、セコステロイドは、コレカルシフェロール(ビタミンD3)、エルゴカルシフェロール(ビタミンD2)、カルシフェジオール、カルシトリオール、タキステロール、ルミステロール、およびタカルシトールからなる群から選択される。特に、セコステロイドは、ビタミンD、特にビタミンD2もしくはD3またはそれらの誘導体である。特定の実施形態では、セコステロイドは、ビタミンD2、ビタミンD3、25-ヒドロキシビタミンD2、25-ヒドロキシビタミンD3(カルシフェジオール)、3-エピ-25-ヒドロキシビタミンD2、3-エピ-25-ヒドロキシビタミンD3、1,25-ジヒドロキシビタミンD2、1,25-ジヒドロキシビタミンD3(カルシトリオール)、24,25-ジヒドロキシビタミンD2、24,25-ジヒドロキシビタミンD3からなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジエン基を含む分析物分子は、ビタミンA、トレチノイン、イソトレチノイン、アリトレチノイン、ナタマイシン、シロリムス、アムホテリシンB、ナイスタチン、エベロリムス、テムシロリムス、およびフィダキソマイシンからなる群から選択される。
【0097】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、単一のヒドロキシル基または2つのヒドロキシル基を含む。1つより多いヒドロキシル基が分析物分子中に存在する実施形態では、2つのヒドロキシル基は、互いに隣接して配置されてもよく(1,2-ジオール)、または1、2、もしくは3個のC原子によって分離されてもよい(それぞれ、1,3-ジオール、1,4-ジオール、1,5-ジオール)。第1の態様の特定の実施形態では、分析物分子は、1,2-ジオール基を含む。1つのヒドロキシル基のみが存在する実施形態では、前記分析物は、第一級アルコール、第二級アルコール、および第三級アルコールからなる群から選択される。1つ以上のヒドロキシル基を分析物分子が含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ベンジルアルコール、メントール、L-カルニチン、ピリドキシン、メトロニダゾール、一硝酸イソソルビド、グアイフェネシン、クラブラン酸、ミグリトール、ザルシタビン、イソプレナリン、アシクロビル、メトカルバモール、トラマドール、ベンラファキシン、アトロピン、クロフェダノール、アルファ-ヒドロキシアルプラゾラム、アルファ-ヒドロキシトリアゾラム、ロラゼパム、オキサゼパム、テマゼパム、エチルグルクロニド、エチルモルヒネ、モルヒネ、モルヒネ-3-グルクロニド、ブプレノルフィン、コデイン、ジヒドロコデイン、p-ヒドロキシプロポキシフェン、O-デスメチルトラマドール、デスメトラマドール、ジヒドロキニジン、およびキニジンからなる群から選択される。1つより多いヒドロキシル基を分析物分子が含む本発明の第1の態様の実施形態では、分析物は、ビタミンC、グルコサミン、マンニトール、テトラヒドロビオプテリン、シタラビン、アザシチジン、リバビリン、フロクスウリジン、ゲムシタビン、ストレプトゾトシン、アデノシン、ビダラビン、クラドリビン、エストリオール、トリフルリジン、クロファラビン、ナドロール、ザナミビル、ラクツロース、アデノシンモノホスフェート、イドクスウリジン、レガデノソン、リンコマイシン、クリンダマイシン、カナグリフロジン、トブラマイシン、ネチルマイシン、カナマイシン、チカグレロル、エピルビシン、ドキソルビシン、アルベカシン、ストレプトマイシン、ウアバイン、アミカシン、ネオマイシン、フラミセチン、パロモマイシン、エリスロマイシン、クラリスロマイシン、アジスロマイシン、ビンデシン、ジギトキシン、ジゴキシン、メトリザミド、アセチルジギトキシン、デスラノシド、フルダラビン、クロファラビン、ゲムシタビン、シタラビン、カペシタビン、ビダラビン、およびプリカマイシンからなる群から選択される。
【0098】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のチオール基(アルキルチオール基およびアリールチオール基を含むがこれらに限定されない)を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のチオール基を含む分析物分子は、チオマンデル酸、DL-カプトプリル、DL-チオルファン、N-アセチルシステイン、D-ペニシラミン、グルタチオン、L-システイン、ゾフェノプリラート、チオプロニン、ジメルカプロール、サクシマーからなる群から選択される。
【0099】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のジスルフィド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のジスルフィド基を含む分析物分子は、グルタチオンジスルフィド、ジピリチオン、硫化セレン、ジスルフィラム、リポ酸、L-シスチン、フルスルチアミン、オクトレオチド、デスモプレシン、バプレオチド、テルリプレシン、リナクロチド、およびペギネサチドからなる群から選択される。硫化セレンは、二硫化セレン、SeS、または六硫化セレン、Seであり得る。
【0100】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のエポキシド基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のエポキシド基を含む分析物分子は、カルバマゼピン-10,11-エポキシド、カルフィルゾミブ、フロセミドエポキシド、ホスホマイシン、セベラマー塩酸塩、セルレニン、スコポラミン、チオトロピウム、チオトロピウムブロミド、メチルスコポラミンブロミド、エプレレノン、ムピロシン、ナタマイシン、およびトロレアンドマイシンからなる群から選択される。
【0101】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基として1つ以上のフェノール基を含む。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、1つ以上のフェノール基を含む分析物分子は、ステロイドまたはステロイド様化合物である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のフェノール基を含む分析物分子は、sp混成のA環と、A環の3位にOH基とを有するステロイドまたはステロイド様化合物である。本発明の第1の態様の特定の実施形態では、ステロイドまたはステロイド様分析物分子は、エストロゲン、エストロゲン様化合物、エストロン(E1)、エストラジオール(E2)、17a-エストラジオール、17b-エストラジオール、エストリオール(E3)、16-エピエストリオール、17-エピエストリオール、および16,17-エピエストリオールおよび/またはそれらの代謝産物からなる群から選択される。実施形態では、代謝産物は、エストリオール、16-エピエストリオール(16-epiE3)、17-エピエストリオール(17-epiE3)、16,17-エピエストリオール(16,17-epiE3)、16-ケトエストラジオール(16-ketoE2)、16a-ヒドロキシエストロン(16a-OHEl)、2-メトキシエストロン(2-MeOEl)、4-メトキシエストロン(4-MeOEl)、2-ヒドロキシエストロン-3-メチルエーテル(3-MeOEl)、2-メトキシエストラジオール(2-MeOE2)、4-メトキシエストラジオール(4-MeOE2)、2-ヒドロキシエストロン(2-OHE1)、4-ヒドロキシエストロン(4-OHE1)、2-ヒドロキシエストラジオール(2-OHE2)、エストロン(El)、エストロンサルフェート(Els)、17a-エストラジオール(E2a)、17b-エストラジオール(E2B)、エストラジオールサルフェート(E2S)、エキリン(EQ)、17a-ジヒドロエキリン(EQa)、17b-ジヒドロエキリン(EQb)、エキレニン(EN)、17-ジヒドロエキレニン(ENa)、17α-ジヒドロエキレニン、17β-ジヒドロエキレニン(ENb)、Δ8,9-ジヒドロエストロン(dEl)、Δ8,9-ジヒドロエストロンサルフェート(dEls)、Δ9-テトラヒドロカンナビノール、ミコフェノール酸からなる群から選択される。βまたはbは、交換可能に使用することができる。αおよびaは、交換可能に使用することができる。
【0102】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、官能基としてアミン基を含む。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基は、アルキルアミン基またはアリールアミン基である。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアミン基を含む分析物は、タンパク質およびペプチドからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、アミン基を含む分析物分子は、3,4-メチレンジオキシアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシ-N-エチルアンフェタミン、3,4-メチレンジオキシメタンフェタミン、アンフェタミン、メタンフェタミン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、7-アミノクロナゼパム、7-アミノフルニトラゼパム、3,4-ジメチルメトカチノン、3-フルオロメトカチノン、4-メトキシメトカチノン、4-メチルエトカチノン、4-メチルメトカチノン、アンフェプラモン、ブチロン、エトカチノン、エレフェドロン、メトカチノン、メチロン、メチレンジオキシピロバレロン、ベンゾイルエクゴニン、デヒドロノルケタミン、ケタミン、ノルケタミン、メタドン、ノルメタドン、6-アセチルモルヒネ、ジアセチルモルヒネ、モルヒネ、ノルヒドロコドン、オキシコドン、オキシモルホン、フェンシクリジン、ノルプロポキシフェン、アミトリプチリン、クロミプラミン、ドチエピン、ドキセピン、イミプラミン、ノルトリプチリン、トリミプラミン、フェンタニル、グリシルキシリジド、リドカイン、モノエチルグリシルキシリジド、N-アセチルプロカインアミド、プロカインアミド、プレガバリン、2-メチルアミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、N-メチル-1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、2-アミノ-1-(3,4-メチレンジオキシフェニル)ブタン、1,3-ベンゾジオキソリルブタンアミン、ノルメペリジン、O-デストラマドール、デスメトラマドール、トラマドール、ラモトリギン、テオフィリン、アミカシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、メトトレキサート、ガバペンチンシソマイシン、および5-メチルシトシンからなる群から選択される。
【0103】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、炭水化物または炭水化物部分を有する物質、例えば糖タンパク質またはヌクレオシドである。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、単糖であり、特に、リボース、デソキシリボース、アラビノース、リブロース、グルコース、マンノース、ガラクトース、フコース、フルクトース、N-アセチルグルコサミン、N-アセチルガラクトサミン、ノイラミン酸、N-アセチルニューロミン酸などからなる群から選択される。実施形態では、分析物分子は、オリゴ糖であり、特に、二糖、三糖、四糖、多糖からなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、二糖は、スクロース、マルトース、およびラクトースからなる群から選択される。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、上述の単糖、二糖、三糖、四糖、オリゴ糖、または多糖部分を含む物質である。
【0104】
本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、アルキルまたはアリールアジドからなる群から選択されるアジド基を官能基として含む。本発明の第1の態様の実施形態では、1つ以上のアジド基を含む分析物分子は、ジドブジンおよびアジドシリンからなる群から選択される。
【0105】
このような分析物分子は、体液、例えば血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液など、組織または細胞抽出物などの生体サンプルまたは臨床サンプル中に存在し得る。本発明の第1の態様の実施形態では、分析物分子は、血液、血清、血漿、尿、唾液、髄液、および乾燥血液スポットからなる群から選択される生体サンプルまたは臨床サンプル中に存在する。本発明の第1の態様のいくつかの実施形態では、分析物分子は、精製されたまたは部分的に精製されたサンプル、例えば、精製されたまたは部分的に精製されたタンパク質混合物または抽出物であるサンプル中に存在し得る。
【0106】
驚くべきことに、本発明により、脂質二重層内のナノポア内に捕捉された荷電構築物の周波数変化を検出できることが判明した。AC周波数を変調させることで、脂質二重層/ナノポア構築物の「固有周波数」は、さらに高い周波数になる。タグ付けされたナノポア構築物の検出が可視であり、時間領域から周波数領域に切り替えた後に非常に安定した信号が観測されることが示されている。
【0107】
本発明の第1の態様の実施形態では、修飾されたナノポアは、
- タンパク質ナノポアまたは固体ナノポア、
- 任意選択でバインダー、および
- 目的の分析物、を含む。
【0108】
第2の態様では、本発明は、目的の分析物を決定するための本発明の第1の態様の方法の使用に関する。
【0109】
本発明の第1の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第2の態様に適用され、その逆もまた同様である。
【0110】
第3の態様では、本発明は、目的の分析物を決定するための本発明の第1の態様の方法において使用する修飾されたナノポアであって、
- タンパク質ナノポアまたは固体ナノポア、
- 任意選択でバインダー、および
- 目的の分析物、を含む修飾されたナノポアに関する。
【0111】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第3の態様に適用され、その逆もまた同様である。
【0112】
第4の態様では、本発明は、分析システムであって、
- ナノポアであって、ナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ナノポアと、
- 修飾されたナノポアであって、修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、修飾されたナノポアと、を備える分析システムに関し、
AC>f>fであり、
修飾されたナノポアは、目的の分析物を含み、
分析システムは、第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出し、周波数シフトΔを用いて目的の分析物を決定するように構成されている。
【0113】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第4の態様に適用され、その逆もまた同様である。
【0114】
本発明の第4の態様の実施形態では、分析システムは、臨床診断システムである。
【0115】
第5の態様では、本発明は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための分析システムの使用に関する。
【0116】
本発明の第4の態様の実施形態では、AC電流は、実験条件、例えば緩衝液条件、ポアのタイプ、分析物のタイプに合わせて適合または調整される。
【0117】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様および/または本発明の第4の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第5の態様に適用され、その逆もまた同様である。
【0118】
第6の態様では、本発明は、本発明の第1の態様の方法を実行するのに適したキットであって、
- 2次元材料を形成するための1つまたは複数の試薬、
- ナノポアを形成するための1つまたは複数の試薬、
- 修飾されたナノポアを形成するための1つまたは複数の試薬、ならびに
- 任意選択で、キャリブレータ、緩衝液、添加剤、消耗品、評価用アルゴリズム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素、を含むキットに関する。
【0119】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様、本発明の第4の態様および/または本発明の第5の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第6の態様に適用され、その逆もまた同様である。
【0120】
第7の態様では、本発明は、周波数検出によって目的の分析物を決定するための本発明の第5の態様のキットの使用に関する。
【0121】
本発明の第1の態様および/または本発明の第2の態様および/または本発明の第3の態様、本発明の第4の態様、本発明の第5の態様および/または本発明の第6の態様について述べた全ての実施形態は、本発明の第7の態様に適用され、その逆もまた同様である。さらなる実施形態において、本発明は、以下の態様に関する:
1. 周波数検出によって目的の分析物を決定するための方法であって、
a) ナノポアを設けるステップであって、ナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、ステップ、
b) 修飾されたナノポアを設けるステップであって、修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加され、
AC>f>fであり、
修飾されたナノポアは、目的の分析物を含む、ステップ、
c) 第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出するステップ、および
d) 周波数シフトΔを用いて、目的の分析物を決定するステップ、を含む方法。
【0122】
2. ステップc)の前に、さらなるステップ:
e) ステップa)で設けられたナノポアとステップb)で設けられた修飾されたナノポアの電圧を時間の関数として検出するステップ、および
f) ステップe)から第1の周波数、第2の周波数、および/または周波数シフトを、フーリエ変換などの移行操作を用いて、時間領域から周波数領域へ計算するステップ、を含む態様1の方法。
【0123】
3. ステップb)で設けられる修飾されたナノポアは、ステップa)で設けられるナノポアを修飾することによって生成される、先行するいずれかの態様の方法。
【0124】
4. 目的の分析物は、修飾されたナノポアの単一分子である、先行するいずれかの態様の方法。
【0125】
5. 周波数シフトはΔ=f-fであり、かつ/または、AC周波数fAC測定は時間的および空間的に並列化されている、先行するいずれかの態様の方法。
【0126】
6. AC周波数fACは、500Hzより高い、または650Hzより高い、または650Hzより高い、または700Hzより高い、または750Hzより高い、例えば770Hzである、先行するいずれかの態様の方法。
【0127】
7. AC周波数fACは、2000Hzより低い、または1700Hzより低い、または1500Hzより低い、または1300Hzより低い、または1000Hzより低い、例えば900Hzである、先行するいずれかの態様の方法。
【0128】
8. 第1および/または第2の周波数は、400Hz~500Hzである、先行するいずれかの態様の方法。
【0129】
9. 修飾されたナノポアは、ナノポア内に捕捉された構築物を含む分析物によって生成される、先行するいずれかの態様の方法。
【0130】
10. 構築物は、アプタマー、抗体、抗体フラグメント、例えばFAB、非特異的バインダー、例えばC18および/または芳香族構造と分析物との間のファンデルワールス相互作用、DNA、酵素、例えばポリメラーゼ、を含む、先行するいずれかの態様の方法。
【0131】
11. 修飾されたナノポアは、ナノポアに付着したバインダーによって生成される、先行するいずれかの態様の方法。
【0132】
12. バインダーは、ナノポアに共有結合で付着する、先行するいずれかの態様の方法。
【0133】
13. バインダーは、非共有結合で、好ましくはファンデルワールス力で、ナノポアに非特異的に付着する、先行するいずれかの態様の方法。
【0134】
14. ナノポアは、1000nm未満のポア径を有する(好ましくは、2nm~20nmのポア径を有する)ポアを含む、先行するいずれかの態様の方法。
【0135】
15. ナノポアは、タンパク質ナノポアまたは固体ナノポアである、先行するいずれかの態様の方法。
【0136】
16. タンパク質ナノポアは、α-ヘモリシンまたはマイコバクテリウム・スメグマティス・ポリンAである、先行するいずれかの態様の方法。
【0137】
17. タンパク質ナノポアは、MoS、グラフェン、Si、SiNxおよび/またはSiOを含む合成膜である、先行するいずれかの態様の方法。
【0138】
18. 2次元材料は、両親媒性分子を含む、先行するいずれかの態様の方法。
【0139】
19. 2次元材料は、二重層、好ましくは脂質二重層である、先行するいずれかの態様の方法。
【0140】
20. 2次元材料は、単分子膜であり、好ましくは、2つの親水基または2つの疎水基を有する両親媒性分子を含み、より好ましくは、2つの親水基が疎水基によって互いに分離されているか、または2つの疎水基が親水基によって互いに分離されている、単分子膜である、先行するいずれかの態様の方法。
【0141】
21. 目的の分析物は、小分子である、先行するいずれかの態様の方法。
【0142】
22. 目的の分析物は、タンパク質である、先行するいずれかの態様の方法。
【0143】
23. 目的の分析物は、核酸、アミノ酸、ペプチド、タンパク質、代謝産物、ホルモン、脂肪酸、脂質、炭水化物、ステロイド、ケトステロイド、セコステロイド、別の分子の特定の修飾を特徴とする分子、生体によって内在化された物質、そのような物質の代謝産物、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、先行するいずれかの態様の方法。
【0144】
24. 修飾されたナノポアは、
- タンパク質ナノポアまたは固体ナノポア、
- 任意選択でバインダー、および
- 目的の分析物、を含む、先行するいずれかの態様の方法。
【0145】
25. 目的の分析物を決定するための、先行するいずれかの態様の方法の使用。
【0146】
26. 目的の分析物を決定するために、先行するいずれかの態様の方法において使用する修飾されたナノポアであって、
- タンパク質ナノポアまたは固体ナノポア、
- 任意選択でバインダー、および
- 目的の分析物、を含む修飾されたナノポア。
【0147】
27. 分析システムであって、
- ナノポアであって、ナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有し、AC周波数fAC 有するAC電流が印加される、ナノポアと、
- 修飾されたナノポアであって、修飾されたナノポアは、2次元材料に埋め込まれ、第2の共振周波数fを有し、AC周波数fACを有するAC電流が印加される、修飾されたナノポアと、を備え、
AC>f>fであり、
修飾されたナノポアは、目的の分析物を含み、
分析システムは、第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔを検出し、周波数シフトΔを用いて目的の分析物を決定するように構成されている、分析システム。
【0148】
28. 周波数検出によって目的の分析物を決定するための、態様27の分析システムの使用。
【0149】
29. 先行するいずれかの態様の方法を実行するのに適したキットであって、
- 2次元材料を形成するための1つまたは複数の試薬、
- ナノポアを形成するための1つまたは複数の試薬、
- 修飾されたナノポア(例えば、タグ)を形成するための1つまたは複数の試薬、ならびに
- 任意選択で、キャリブレータ、緩衝液、添加剤、消耗品(例えば、チップ、ピペット)、評価用アルゴリズム、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される構成要素、を含むキット。
【0150】
30. 周波数検出によって目的の分析物を決定するための、態様29のキットの使用。
【0151】
実施例
以下の実施例は、本明細書で特許請求される発明を例示するために提供されるのであって、限定するものではない。
【0152】
図1Aは、本発明の第1の態様による方法を示す。一実施形態による方法を示す。これは、修飾されたナノポア(脂質二重層内のビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)の実験された電流駆動読み出しの一般原理であり、時間依存読み出しが示されている。
【0153】
ナノポア1が設けられ、ナノポア1は2次元材料2(例えば脂質二重層)に埋め込まれ、第1の共振周波数fを有する。AC周波数fACを有するAC電流。修飾されたナノポア4が設けられ、これは、この場合、修飾によって適合されたナノポア1である。修飾されたナノポア4は、第2の共振周波数fを有する。修飾されたナノポアまたは修飾されたナノポア-2次元材料の固有周波数付近の周波数を持つ低ACパルスが、印加される。振動のFID(自由誘導減衰)は、慣性に基づいている。
【0154】
一例として、開いたナノポア1が、脂質二重層2に電気的に挿入される。ナノポアのトランス側では、緩衝液が、ストレプトアビジンを含む。一定時間後、ビオチン7標識を備えた修飾オリゴヌクレオチド5に共有結合で付着したfabフラグメント3などの目的の分析物が、ナノポアのシス側に適用される。Fab-オリゴストレプトアビジン分子がナノポアに入り、ストレプトアビジンに付着し、ナノポアから出ることができなくなる。実験中はずっとAC周波数が印加される。
【0155】
修飾されたナノポア4は、ナノポア1と目的の分析物3を含む。目的の分析物3は、例えばタンパク質または小分子とすることができ、ビオチン5がタグ付けされ得る。fAC>f>fである。
【0156】
次に、第1の周波数と第2の周波数の周波数シフトΔが検出され、周波数シフトΔを用いて目的の分析物が決定される。詳細には、ステップa)で設けられたナノポアとステップb)で設けられた修飾されたナノポアの、時間の関数としての電圧が検出され、ステップe)からの第1の周波数、第2の周波数および/または周波数シフトが、例えばフーリエ変換などの移行操作を用いて、時間領域から周波数領域へ計算される。
【0157】
修飾されたナノポアは、以下のように用意され得る:
図1Bは、定められた電圧レベルをナノポア内に生成するために使用されるタグを示している。これは、C3スペーサーとチミジンを含む、またはそれらからなる。原理的には、他のタグ、例えばDNA、RNA、ペプチドなども可能である。ナノポアは、αヘモリシンまたはその変異体であり得る。原理的には、構築物の「ホスト」となるのに適した他のナノポアも可能である。ポア形成タンパク質の例としては、αヘモリシン、エロリジン、MspAポリンがある。
【0158】
図2は、本発明の第1の態様による方法を示す。図1Aとは異なり、図2は、2次元材料(例えば、脂質二重層)2に電気的に挿入されたナノポア1に磁気標識(例えば、磁性ナノ粒子)10が共有結合で付着している手順を説明する。ヘルムホルツコイル9によって印加される交流磁場からの支援により、磁気標識は、二重層内のナノポアに外部切り替え磁場を印加することができる。
【0159】
図3は、外部場(磁場または電場)の影響を受け、それゆえ歪められ、その結果、電流が変化するナノポアのワークフローによる方法を示している。各外部場切り替え事象後の自由誘導減衰11が、取得される。実験が実行される時間領域(好ましくは秒)は、FFTなどのデータ処理方法を用いて、周波数領域に変えられる。
【0160】
図4は、本発明の第1の態様による方法を示す。これは、修飾されたナノポア(脂質二重層内のビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)の可能な電流駆動読み出しの一般原理であり、時間依存読み出しが示されている。開いたナノポア1が、脂質二重層2に電気的に挿入される。FAB結合部分は、例えばL-LNA支持体13によって、ナノポアに共有結合している。実験中はずっとAC周波数が印加される。「fab」および「FAB」という用語は、交換可能に使用され得る。「ポア」および「ナノポア」という用語は、交換可能に使用され得る。
【0161】
図5Aは、770HzのAC周波数における修飾されたナノポア(脂質二重層内のビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)のRAW信号(電圧対時間)を示している。x軸は、時間信号として表されている(0は実験の開始に対応し、1000は実験の終了を表す)。領域Aは、脂質二重層内の開いたナノポアであり、領域Bは、ビオチン-オリゴヌクレオチド-FABフラグメント分子の添加であり、領域Cは、ストレプトアビジンと結合した領域Bで添加された化学物質の定常状態である。図5Bは、図5Aで説明した生の信号をフーリエ変換した後の、図5Aで説明した領域のそれぞれの信号(振幅対周波数)を示している(FFT信号)。475Hz付近に明確なピークが見られ、領域A(481.8Hz)から領域B(477.1Hz)を経て定常状態の領域C(474.1Hz)へとシフトしている。領域Aと領域Cの区別が見られる。
【0162】
図6は、図5と同様の実験のRAW信号(電圧対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。FFT解析は、FFT解析に使用されるタイムポイントを増やしながら(100秒から890秒まで)行われた。FFT信号は変化していないので、FFTに複数のポイントを使用するか、または得られたFFTスペクトルを乗算することで、スペクトルの品質を向上させることができる。
【0163】
図7Aは、770HzのAC周波数における脂質二重層内の修飾されたナノポア(ビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)のRAW信号(電圧対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。特定の生データポイントからのFFTスペクトルは、472Hzにピークを持つ。
【0164】
図7Bは、770HzのAC周波数における脂質二重層内の修飾されたナノポア(ビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)のRAW信号(電圧対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。同じ実験内の図7Aとは異なるタイムポイントからのFFTスペクトルが、図7Aと全く同じ472Hzのピークを持つ。したがって、ナノポアの定常状態では信号が一定であると仮定できる。
【0165】
図8A図8Eは、770HzのAC周波数における脂質二重層内の修飾されたナノポア(ビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)のRAW信号(電圧対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。
【0166】
図8Aでは、開いたナノポアの領域がFFT解析で処理されて、開いたポアの信号が481Hzで得られる。
【0167】
図8Bでは、ビオチンタグがポア内のストレプトアビジンに捕捉されていない開いた/塞がれたナノポア中間体の領域がFFT解析で処理され、開いたナノポアの信号が475Hzで得られる。
【0168】
図8Cでは、ビオチンタグFAB分子が結合せずにポアを離れた開いたナノポアの領域がFFT解析で処理され、開いたポアの信号が481Hzで得られる。
【0169】
図8Dおよび図8Eでは、ストレプトアビジン/ビオチン結合を伴う定常状態の塞がれたポアの領域がFFT解析で処理され、塞がれたナノポアの信号が、それぞれ474Hzおよび473Hzで得られる。
【0170】
図9A図9Cは、1HzのAC周波数における脂質二重層内の修飾されたナノポア(ビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)のRAW信号(電圧対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。図9A図9CのFFTスペクトルは、異なるタイムポイントで示されており、実験の状態を区別するものではなく、脂質二重層内のナノポアのそれぞれの固有周波数も示していない。したがって、駆動周波数>脂質二重層内のナノポアの固有周波数、であることが必要である。
【0171】
図10A図10Bは、1000HzのAC周波数で駆動される脂質二重層内の修飾されたナノポア(ビオチン-ストレプトアビジン-タンパク質)のRAW信号(電圧対時間)とFFT信号(振幅対周波数)を示している。異なるタイムポイント(FAB-オリゴ-ビオチン分子がポアの上を流れる前と流れた後)における図10A図10BのFFTスペクトルは、実験の状態(FAB-オリゴ-ビオチン分子を流す前と流した後)を区別することができない。これは、それぞれのFAB-オリゴ-ビオチン分子が流れる前と流れた後で、約524Hzの同じ周波数が観測されていることで表現されている。それゆえ、この場合、FAB-オリゴ-ビオチン分子はナノポア内に格納されていないにもかかわらず、脂質二重層内のナノポアは、約524Hzでそれぞれの固有周波数を表している。
【0172】
本特許出願は、欧州特許出願21210216.4号の優先権を主張し、この欧州特許出願の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【符号の説明】
【0173】
1 ナノポア
2 2次元材料
3 目的の分析物または分析物バインダー(例えば、FABフラグメント)
4 修飾されたナノポア
5 ポリマー(例えば、オリゴヌクレオチド)
6 ストレプトアビジン
7 アンカータグ(例えば、ビオチン)
8 電気接点
9 ヘルムホルツコイル
10 磁気タグ(例えば、磁性ナノ粒子)
11 自由誘導減衰
12 ポリマー(例えば、DNAおよび/またはタンパク質)間の共有結合
13 リジッドポリマー(例えば、DNA)
図1
図2
図3
図4
図5A
図5B
図6-1】
図6-2】
図7A
図7B
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
【国際調査報告】