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特表2024-542520鼻腔内投与における使用のための新しい医薬デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】鼻腔内投与における使用のための新しい医薬デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61M 15/08 20060101AFI20241108BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 31/137 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 37/08 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61M15/08
A61K47/36
A61K9/14
A61K47/26
A61K31/137
A61P37/08
A61P43/00 111
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024530531
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 GB2022052983
(87)【国際公開番号】W WO2023094816
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2117016.2
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505141945
【氏名又は名称】オレクソ・アクチエボラゲット
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】セヴマルケル,ヨーナス
(72)【発明者】
【氏名】レン,ローベルト
【テーマコード(参考)】
4C076
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076BB25
4C076CC03
4C076DD67
4C076DD68
4C076EE38
4C206AA01
4C206AA02
4C206FA14
4C206KA01
4C206MA02
4C206MA03
4C206MA05
4C206NA10
4C206ZB13
4C206ZC41
(57)【要約】
本発明によれば、固形の非晶質の単粒子粉末組成物をヒト患者の体腔に投与するのに適している無針アプリケーターが提供され、その腔は、粘膜表面を含み、アプリケーターは、(i)当該粉末組成物を含む不透明なリザーバーと、(ii)ユーザーによるデバイスの発動時に力を生成するための任意選択の発動手段と、(iii)分注手段であって、それを介して、当該発動後に、当該粉末組成物が分注され得る、分注手段と、を備え、当該粉末組成物は、薬理学的に許容される担体材料と一緒に非晶質状態でカプセル化された、薬理学的に有効な投薬量のアドレナリン受容体調節剤又はその薬学的に許容される塩を含み、その粉末組成物は、(a)40℃及び75%の相対湿度で少なくとも約3か月、(b)約30℃未満で少なくとも約18か月、かつ/又は(c)約100万ルクスを超えるUV光で、少なくとも約18時間の保管後、約4%未満化学的に分解される。アプリケーターにおける使用のための組成物は、好ましくは噴霧乾燥によって作製され、担体材料は、有効成分と組み合わせて噴霧乾燥され得る、ラクトース又はトレハロースなどの二糖類と、マルトデキストリンと、を含み得る。組成物は、1つ以上のアルキル糖類を更に含み得る。好ましいアルキル糖類としては、ショ糖モノラウレートなどのショ糖エステルが挙げられる。好ましいアドレナリン受容体調節剤としては、エピネフリン(アドレナリン)が挙げられる。したがって、組成物は、アナフィラキシーを含むアレルギー反応の治療において特に有用である。
【選択図】図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固形の非晶質の単粒子粉末組成物をヒト患者の体腔に投与するのに適している無針アプリケーターであって、その腔が、粘膜表面を含み、前記アプリケーターが、
(i)前記粉末組成物を含む不透明なリザーバーと、
(ii)分注手段であって、それを介して、発動後に、前記粉末組成物が分注され得る、分注手段と、を備え、
前記粉末組成物が、薬理学的に許容される担体材料と一緒に非晶質状態でカプセル化された、薬理学的に有効な投薬量のアドレナリン受容体調節剤又はその薬学的に許容される塩を含み、
その粉末組成物が、
(a)40℃及び75%の相対湿度で少なくとも約3か月、
(b)約30℃未満で少なくとも約18か月、かつ/又は
(c)約100万ルクスを超えるUV光で、少なくとも約18時間の保管後、約4%未満化学的に分解される、無針アプリケーター。
【請求項2】
前記組成物の前記薬学的に許容される担体材料が、マルトデキストリンを含む、請求項1に記載のアプリケーター。
【請求項3】
前記マルトデキストリンが、マルトデキストリン19DEを含む、請求項2に記載のアプリケーター。
【請求項4】
前記組成物の前記薬学的に許容される担体材料が、マルチトール、トレハロース、スクラロース、ショ糖、イソマルト、マルトース、及びラクトースからなる群から選択される二糖類を含む、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項5】
前記二糖類が、ラクトース及び/又はトレハロースを含む、請求項4に記載のアプリケーター。
【請求項6】
前記組成物の前記担体材料が、トレハロース及びマルトデキストリン19DEの組み合わせを含む、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項7】
前記組成物の総重量に基づく二糖類:マルトデキストリンの重量比が、約10:1~約1:8の範囲にある、請求項4~6のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項8】
前記組成物の最も低い測定可能なガラス転移温度が、最大約35%の相対湿度で測定された場合、少なくとも約35℃である、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項9】
前記組成物が、ショ糖エステルを更に含む、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項10】
前記ショ糖エステルが、ショ糖モノラウレートを含む、請求項9に記載のアプリケーター。
【請求項11】
前記組成物の経鼻送達に適しており、かつ/又は適合されている、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項12】
前記組成物の粒子サイズ分布が、約3μmを超えるD10を含む、請求項11に記載のアプリケーター。
【請求項13】
前記粉末組成物が、約10μm~約100μmの範囲内の体積基準平均直径を含む粒子サイズ分布を有する、請求項11又は12に記載のアプリケーター。
【請求項14】
前記アドレナリン受容体アゴニスト又はその塩の前記薬理学的に有効な投薬量が、約1μg~約100mgである、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項15】
前記アドレナリン受容体調節剤が、エピネフリン(アドレナリン)である、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項16】
エピネフリンの前記薬理学的に有効な投薬量が、約0.1mg~約10mgである、請求項15に記載のアプリケーター。
【請求項17】
前記投薬量が、約0.5mg~約3mgである、請求項16に記載のアプリケーター。
【請求項18】
呼吸発動される、先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項19】
ユーザーによるデバイスの発動時に力を生成するための発動手段を備える、請求項1~17のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項20】
先行請求項のいずれか一項に記載のアプリケーターの製造のためのプロセスであって、前記プロセスが、
i)前記アドレナリン受容体調節剤又はその薬学的に許容される塩と、前記薬学的に許容される担体材料とを一緒に、適切な揮発性溶媒中で混合するステップ、
ii)ステップi)からの混合物を噴霧乾燥するステップ、
iii)ステップii)からの生成物を前記アプリケーターの前記リザーバーに装填するステップ、を含む、プロセス。
【請求項21】
請求項20に記載のプロセスによって得られる、アプリケーター。
【請求項22】
アレルギー障害の治療における使用のための、請求項15~19又は21のいずれか一項に記載のアプリケーター。
【請求項23】
請求項15~19又は21のいずれか一項に記載のアプリケーターを介してアレルギー障害の治療のための薬剤を製造するための、請求項15~19又は21のいずれか一項に記載の組成物の、使用。
【請求項24】
アレルギー障害の治療の方法であって、その方法が、前記状態に罹患しているか、又はそれになりやすい患者への請求項15~19又は21のいずれか一項に記載のアプリケーターからの組成物の投与を含む、方法。
【請求項25】
前記アレルギー障害が、昆虫の刺傷若しくは咬傷、食品、薬物、及び/又は別の化学物質に対するアレルギー反応を含む、請求項22に記載の使用のためのアプリケーター、請求項23に記載の使用、又は請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記反応が、アナフィラキシーを含む、請求項25に記載の使用のためのアプリケーター、使用、又は方法。
【請求項27】
ヒト患者における請求項25又は26に記載のアレルギー障害の治療の方法であって、
(A)アレルギー反応を有しているか、又はそれを有する急性の危険性があるヒト患者を特定することと、
(B)請求項15~19又は21のいずれか一項に記載のアプリケーターを発動させることによって、前記アプリケーターから前記アレルギー反応を治療するのに適している投薬量の請求項15~19又は21のいずれか一項に記載の粉末の形態のアドレナリン又はその薬学的に許容される塩を投与して、前記投薬量のアドレナリン受容体調節剤又はその塩を、粘膜表面を含む前記患者の体腔に分注し、したがって、前記アドレナリン受容体調節剤又はその塩を含む前記粉末を前記粘膜表面に供給して、前記粘膜表面にわたる前記アドレナリン受容体調節剤の吸収を促進し、したがって、前記アレルギー反応を治療又は予防することと、を含む、方法。
【請求項28】
投与ステップが、特定ステップの直後に実施される、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
前記投与ステップが、
(i)前記アプリケーターの前記リザーバー内に収容された前記組成物を検査することと、
(ii)前記アレルギー反応を効果的に治療するために、関連する組成物が前記患者に安全に投与され得るかどうかを確認することと、を行わずに実施される、請求項27又は28に記載の方法。
【請求項30】
前記組成物が、鼻に投与される、請求項22~29(必要に応じて)のいずれか一項に記載の使用のためのアプリケーター、使用、又は方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新しい医薬デバイス及びそれらの製造方法に関する。
【0002】
先行技術及び背景
本明細書における明らかに以前に公開された文書の列挙又は考察は、文書が最新技術又は共通の一般知識の一部であるという承認として必ずしも受け取られるべきではない。
【0003】
急性障害の治療において、多くの場合、経口薬物送達によってもたらされ得るよりも迅速な薬理学的効果の発現が非常に望ましい。薬物は直ちに体循環内で利用可能になるという投与原則は、迅速な作用の発現をもたらす可能性が高くなる。
【0004】
エピネフリンとしても知られるアドレナリンは、主に副腎の髄質によって分泌されるが、少数のニューロンによっても分泌される内因性ホルモンである。体内でのその主な役割は、交感神経系の構成要素の刺激剤としてである。アドレナリンは、典型的にはストレスの多い状況の間で放出され、筋肉への血流、心拍出量、瞳孔拡張、及び血漿グルコースレベルを増加させることによって、闘争又は逃走応答において重要な役割を果たす。アルファ及びベータアドレナリン受容体に結合し、刺激することによって、この効果を発揮する。
【0005】
アドレナリンは、19世紀後半に最初に単離され、現在では、一般的に、例えば、アレルギー反応(アナフィラキシーを含む)及び心停止、並びにクループ及び喘息を治療するための薬物として外因的に使用される。
【0006】
重度のアレルギー反応、アナフィラキシー、及びアナフィラキシーショック(刺傷又は咬傷からの昆虫毒、ある特定の食品又は薬物、及びラテックスのような他の化学物質によって引き起こされる場合がある)を含むアレルギー反応などの重度及び/又は急性の状態の治療、特にその緊急治療のために、アドレナリンは、現在、他の緊急医療介入とともに、例えば、皮下、静脈内、又は筋肉内注射によって非経口投与される。
【0007】
かかる重度のアレルギー反応を受けやすい人は、典型的には、緊急時に自己投与されるアドレナリン自動注射器を持ち歩く。自動注射器は、典型的には、患者による自己投与、又は訓練を受けていない人々又はファーストレスポンダーによる投与を意図した、単回使用、使い捨てのばね仕掛けのシリンジである。
【0008】
最も一般的なアドレナリン自動注射器デバイスは、EpiPen(登録商標)及びEpiPen(登録商標)Jrのブランド名で販売されているが、Adrenaclick(登録商標)及びAuvi-Q(登録商標)などの他のブランド名でも販売されている。
【0009】
注射可能な送達手段は、多くの場合、不便であるとみなされる。患者が針を介して薬物を自己投与することは不可能ではないにせよ、時には非常に困難であり、時にはコンプライアンスを確実にし、望ましくない又は有害ないずれかの影響を回避するために、ファーストレスポンダー及び/又は医師による無駄で時間のかかる介入を必要とする。
【0010】
更に、上記の自動注射器の全ては、化学的に非常に不安定であるアドレナリンの溶液を含む。実際、EpiPen製品ラベルにより、製品を室温(特に20℃~25℃)で元のパッケージに保管し、光及び湿気から遠ざける必要があると指示されている。緊急時にデバイスの性能に損失があるため(細い針を介して液体溶液を注射する必要があるため)(例えば、製品の安定性を向上させる目的で)冷蔵又は冷凍することはできない。
【0011】
規定の保管条件下であっても、EpiPenの貯蔵寿命は最大24か月だけ、Epipen Jrの貯蔵寿命はたった最大19か月である。更に、流通中の保管時間のために、この貯蔵寿命は、多くの場合、エンドユーザーが自身のデバイスを処方されるか、又は入手するときまでに12か月も短縮される。ユーザーは、製品ラベルで、その使用期限前にユニットを交換するように指示されている。
【0012】
全ての自動注射器に共通して、アドレナリン溶液の不安定性のために、EpiPenにはまた、検査窓も含まれており、それを介して、ユーザーは製品ラベルで製品を検査するように指示され、特に微粒子(沈殿物)又は変色について目視でチェックするように指示されている。かかる粒子及び/又は変色がある場合、ユーザーは、これが有効期限前に発生した場合でも、ユニットを交換するように指示されている。
【0013】
これらの因子が重なって生じ、使用されていないのに無駄に廃棄されるアドレナリン自動注射器の数を増加させるが、加えて、アドレナリン溶液は、安定化剤(抗酸化物質)、より具体的には亜硫酸塩を含む傾向があり、多くの患者がそれにアレルギーを有し、それらの使用を更に制限する(例えば、Roth and Shields,Anesthesia&Analgesia,98,1499(2004)を参照されたい)。
【0014】
したがって、前述の理由から、(物理的に、より重要には、化学的に)改善された安定性を有するアドレナリンを含む薬物送達組成物の重要な満たされていない臨床的必要性が存在する。
【0015】
有効成分の経粘膜投与は、実行可能な非経口投与の代替案である。それにより、薬物分子を粘膜(例えば、直腸、舌下、頬、肺、及び鼻腔内)を介して体循環に直接送達する可能性が生じ、患者のコンプライアンスの増加、薬物の生物学的利用能の改善、したがって、より低い用量、より迅速な作用の発現、及び副作用の低減などの利点をもたらす可能性がある。
【0016】
しかしながら、薬物の経粘膜投与は、それ自体の非常に明確な問題がある。比較的大量の体液を含有する大きな器官である胃腸管とは異なり、口腔及び鼻腔などの空間は比較的小さく、はるかに少ない量の唾液及び/又は粘液などの体液を含有する。これは必然的に、単回用量で投与され得る有効成分の量にかなりの制限をもたらす。
【0017】
更に、消化管は動的なシステムであるが、大部分では、いくぶんか「閉じた」システムである。逆に、口腔及び鼻腔の両方において起こる急速なクリアランス機構は、多くの場合、すでにより限られた量の薬物のための粘膜表面を横断する吸収に利用できる時間も限られていることを意味する。
【0018】
この問題を解決するために、例えば、口腔粘膜薬物送達のための頬パッチ(例えば、Shojaei,J.Pharm.Pharmaceutical Sci.,15,19(1998)及びGandhi,Advanced Drug Delivery Reviews,43,67(1994)を参照されたい)、及び鼻腔内薬物送達のためのインサイチュゲル化組成物(例えば、Bertan et al,Eur.J.Pharm.Sci.,27,62(2006)を参照されたい)などの生体接着性製剤化原理を含む、多数の製剤化原理が提唱されてきた。
【0019】
固体にある経粘膜薬物送達システムは、製剤中のより高い薬物装填を可能にするというかなりの利点がある可能性がある。しかしながら、直腸、頬、舌下、及び肺粘膜に投与する場合、固形の薬物送達組成物がはるかに一般的であるが、鼻腔内薬物送達システムの大部分は、依然として、液体噴霧、典型的には水溶液の形態で提供される場合のままであり、薬物の溶解度は、吸収できる薬物の量を制限するもう1つの要因を担う。
【0020】
ほとんど至る所にあるのが鼻腔内送達用の液体噴霧であるのは、鼻用粉末の形で固形医薬製剤を製剤化することが容易ではないためである。有効成分の肺への吸入に頻繁に用いられる粉末とは異なり、市販の鼻腔内粉末製剤はほとんどない。
【0021】
乾燥粉末として製剤化される場合、経肺薬物送達組成物は、典型的には、より大きな担体粒子上のAPIの微粉化粒子を含む「凝集」混合物の形態をとる。これらの凝集体は、吸入又はデバイスの発動時に解離/分解し、有効成分の微粒子のみを肺に堆積させることを意図している。
【0022】
しかしながら、かかる薬物送達システムは、鼻腔内薬物送達の場合には有効に働かないことが理解されている。これは、かかる微粒子の存在が、意図した投与部位ではない肺への曝露の重大なリスクをもたらすためである。この問題を回避するために薬物の粒子サイズを増加させた場合、不均一な「相互作用」混合物において適切な相互作用を確保することが困難になる可能性が高く、これは、相互作用を確保するために2つの構成要素のサイズの実質的な違いに依存し、次いで、充填中の分離など潜在的な製造上の問題をもたらす。対応する担体の粒子サイズを増加させることによってこれと相殺しようと試みても、必ずしも問題が解決するとは限らず、すでに有限に制限されている剤形の総質量における不活性な賦形剤の質量が必然的に増加し、有効成分の用量の低減がもたらされる可能性がある。
【0023】
鼻腔内送達用の乾燥粉末を製剤化することの難しさは、米国特許出願第2005/001411A1号において対処されている。この文書において、経鼻投与用の粉末は、ガスの流れによって効率的に運ばれ、鼻に効率的に堆積できるように十分な微細さが必要であり、また、鼻腔内投与に常に必要な適切な粉末デバイスへの粉末の導入を容易にするのに十分な粗さも必要であると述べられている。US2005/001411A1は、有効成分を含む一次粒子のゆるく形成された二次粒子(凝集体)を作ることによって、どうやらこの問題を解決するようである。凝集体が数百ミクロンの寸法を有し、これにより、適切な鼻腔内投与(アプリケーター、ディスペンサー、又は吸入器)デバイスへのより効率的な装填が可能になると言われている。かかるデバイスを発動させ、組成物を投与すると、凝集体は、どうやら有効成分の一次粒子に急速に分解するようである。これらの一次粒子は、わずか数ミクロンのサイズであり、溶解を促進し、その後、有効成分の鼻腔内吸収を促進すると述べられている。
【0024】
上述のように、全身吸収を意図した薬物の経粘膜(例えば、鼻腔内)送達は、必然的に経口投与の構成要素である初回通過代謝を回避する。薬物代謝は、有効成分の化学構造、物理構造、及び/又は生物学的活性を変更することができる酵素との化学反応を介して生じる。
【0025】
ほとんどの薬物は、かかる化学反応を受けることができる官能基を含有する有機分子であるため、体外でそれらの官能基と相互作用できる物質と接触すると、多くの場合、何らかの形態の化学的分解を受けやすくなる。上で論じたように、化学的不安定性の問題は、アドレナリンの場合に特に深刻である。
【0026】
教科書Amorphous Solid Dispersions,Shah et al(Eds.),Springer(2014)の第16章にKou及びZhouによって要約されているように、薬物が結晶の物理的状態とは対照的に非晶質で製剤化される場合、それは、典型的には、より高いエネルギー状態で提供されるため、化学的及び物理的により不安定になる可能性が高く、製薬製造者に課題を示す。
【0027】
したがって、化学的安定性は、多くの場合、塩形成を介して薬物を結晶状態で提供することによって改善される。塩形成の主な目的は、通常、有効成分の親水性を増加させ、水性溶解度及び溶解速度が乏しいという問題に対処することである。しかしながら、塩の作製においては、多くの場合、化学的安定性など、他の物理化学的及び生物学的懸念に同時に対処できる。例えば、塩基性薬物(例えば、少なくとも1つのアミン基を含有する薬物)は、多くの場合、対応する「遊離」アミン塩基より典型的には化学的に安定な塩である酸付加塩の形で提供される。
【0028】
しかしながら、化学的分解を伴わずにより容易に保存でき、投与後の溶解の速度及び/又は程度に関してより効率的な形で有効成分を潜在的に提供する一方で、結晶塩は、概して、対応する有効成分が非晶質及び/又は非統一化された形でそれぞれ提供される場合よりも、溶解速度が遅く、粘膜を横切って吸収される効率が低い。
【0029】
したがって、非晶質固形分散体として製剤化された医薬有効成分は、概して、生物学的利用能が高いという利点があるが、典型的には、物理的及び化学的安定性の低減という形での課題を示し、一方で、結晶及び/又は塩の形態で製剤化された薬物は、概して、より安定しているが、生物学的利用能が低くなる傾向にある。
【0030】
後者の問題は、鼻腔内又は舌下などの経粘膜の薬物送達の場合に特に不利になる可能性があり、上で論じられたように、体循環への吸収が生じるのに必要な関連腔内での薬物の滞留時間が制限される。これは、生理学的pHでの粘膜を横断する透過性が乏しいことと相まって、適切な治療効果を提供するために、許容できないほど低い、かつ/又は遅い経粘膜吸収をもたらす可能性がある。
【0031】
経粘膜薬物送達システムにおける溶解度と透過性との間のバランスをとる作用に対処するために、多くの精巧な製剤化原理が長年にわたって考案されてきた。かかる製剤化原理には、有効成分のイオン化塩形態をより浸透性の非イオン化状態に変換するpH修飾物質の添加が含まれる。
【0032】
しかしながら、それが提供する前述の潜在的な利点の全てを考慮すると、改善された固形(例えば、粉末ベース)の経粘膜、特に鼻腔内薬物送達システムについての必要性が依然として残ったままである。
【0033】
特に、経粘膜薬物送達の分野では、以下の粉末薬物送達組成物についての満たされていない重大な臨床的必要性が残っている:
(i)物理的及び化学的に安定しており、
(ii)
●十分な用量で、かつ/又は
●(比較的に言えば)可能な限り低い用量、及び鼻腔内などの経粘膜状況で利用可能な短い滞留時間で、必要な治療効果(発現速度及び/又は薬物標的へのアクセスなど)を提供するのに十分に浸透する形態で、有効成分を提供する。
【0034】
鼻腔内薬物送達のより具体的な分野では、効率的な以下の両方を可能にする適切なサイズの粒子を含む、かかる薬物送達組成物についての満たされていない重大な臨床的必要性が残っている:
●薬物送達デバイスの充填、及び
●関連する(例えば、鼻)腔内の沈着。
【0035】
鼻腔内乾燥粉末製剤は、とりわけ、国際特許出願第2010/142696号及び同第2019/038756号、米国特許第10,653,690B2号及び米国特許出願第2018/0092839A号から知られている。また、米国特許第7,947,742(B2)号、同第8,415,397(B2)号、及び同第8,747,813(B2)号も参照されたい。
【0036】
Russo et al(J.Pharm.Sci.,95,2253(2006))は、オピオイド鎮痛剤化合物、つまりモルヒネを多数の賦形剤とともに噴霧乾燥することを開示している。噴霧乾燥製剤は、Vengerovich et al.,Bulletin of Experimental Biology and Medicine,163,737(2017)にも開示されており、救急医療用のポリマー担体に基づく徐放性製剤の開発を視野に、有効成分を2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンを含む様々な物質にマイクロカプセル化することが試みられた。
【0037】
今回、以下に開示するように、例えば、担体材料と一緒にその有効成を噴霧乾燥するプロセスによって、非晶質の乾燥粉末組成物の形態でアドレナリンなどのアドレナリン受容体調節剤を製剤化することが可能であることを見出した。EpiPenなどの現在入手可能なデバイスと比較した場合、アプリケーターデバイスに装填された場合に、保管中及び投与前に、それらの有効成分の安定性の驚くべき改善が観測された。かかる組成物は更に、投与後のかかる有効成分の改善された生物学的利用能及び/又は吸収速度を提供し得る。
【発明の概要】
【0038】
本発明の第1の態様によれば、固形の非晶質の単粒子粉末組成物をヒト患者の体腔に投与するのに適している無針アプリケーターが提供され、その腔は、粘膜表面を含み、アプリケーターは、
(i)当該固形の非晶質の単粒子粉末組成物を含む不透明なリザーバーと、
(ii)ユーザーによるデバイスの発動時に力を生成するための任意選択の発動手段と、
(iii)分注手段であって、それを介して、当該発動後に、当該粉末組成物が分注され得る、分注手段と、を備え、
当該固形の非晶質の単粒子粉末組成物は、薬理学的に許容される担体材料と一緒に非晶質状態でカプセル化された、薬理学的に有効な投薬量のアドレナリン受容体調節剤又はその薬学的に許容される塩を含み、
その粉末組成物は、
(a)40℃及び75%の相対湿度で少なくとも約3か月、
(b)約30℃未満で少なくとも約18か月、かつ/又は
(c)約100万ルクスを超えるUV光で、少なくとも約18時間
の保管後、約4%未満化学的に分解される。
【0039】
「無針」という用語は、体に、例えば、皮下又は筋肉内に(前述のアドレナリン自動注射器が行うように)当該有効成分を注射するために、例えば、皮膚又は粘膜表面を穿刺する手段を更に含む注射手段を含まない医薬有効成分を投与するための装置を意味する。上で定義されるかかる無針アプリケーターは、以下まとめて、「本発明のアプリケーター」と称される。
【0040】
言及され得るアドレナリン受容体(α1A、α1b、α1c、α1d、α2a、α2b、α2c、α2d、β、β、βサブ受容体を含む)の調節剤(「刺激剤」又は「アゴニスト」としても知られる)には、フェニレフリン、オキシメタゾリン、メチルドパ、クロニジン、デクスメデトミジン、ロフェキシジン、ドブタミン、ミラベグロン、ドーパミン、アルブテロール(サルブタモール)、ホルモテロール、レバルブテロール、オロダテロール、サルメテロール、ピルブテロール、テルブタリン、フェノテロール、リミテロール、ヘキソプレナリン、トレトキノール、カルブテロール、ツロブテロール、クレンブテロール、プロカテロール、ビトルテロール、インダカテロール、コルテロール、プソイドエフェドリン、エフェドリン、より好ましくはノルエピネフリン、イソプレナリン、特に、エピネフリン(一貫性のために以下「アドレナリン」と称する)が含まれる。
【0041】
本発明のアプリケーターのリザーバーに含まれる、かつ/又は含めるための組成物は、非晶質の単粒子粉末の形態である。「単粒子」とは、それらの粉末組成物を形成する複数の粒子が、均一又は不均一な混合物を含み、アドレナリン受容体調節剤又はその塩が上で定義された担体材料内に、任意選択で他の成分の存在下で、非晶質状態でカプセル化されていることを意味する。したがって、本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための粉末組成物の粒子は、アドレナリン受容体調節剤又はその薬学的に許容される塩(以下、「有効成分」と称する)、担体材料、及び任意選択で、他の成分の非晶質複合物として提供される。
【0042】
それらの性質が非晶質であることにより、かかる粉末組成物は、完全に非晶質であり得、かつ/又は主に非晶質(例えば、約80重量%超を含む約75重量%超など、約99重量%超を含む約90重量%又は95重量%超などの約50重量%超の非晶質)であり得る。代替的に、粉末組成物は、約25%未満を含む約50%未満、より好ましくは、約20%未満、例えば、約5%未満又は約1%未満を含む約10%未満の結晶質であり得る。結晶質の程度(%)は、粉末X線回折(PXRD)を使用して当業者によって決定され得る。固体NMR、FT-IR、ラマン分光法、示差走査熱量測定(DSC)微量熱量測定、及び真の密度の計算などの他の技法もまた使用され得る。
【0043】
後述するように、非晶質の物理的状態にあるにもかかわらず、本アプリケーターのリザーバーに含まれ得る組成物は、驚くべき予想外の物理的及び化学的安定性を示し、したがって、通常の保管条件下で保管した場合に優れた貯蔵寿命を示す医薬品の形態で提供され得る。
【0044】
本明細書に記載の粉末組成物の安定性は、本発明のアプリケーターのリザーバーに装填する前、及びいったん当該粉末組成物がリザーバーに装填されてもそれらの両方において優れている。後者の状況では、(改善されない場合)安定性は維持される。いずれにせよ、本発明のアプリケーターに含まれ得る組成物は、かかるアプリケーター内に、又は本明細書に記載の条件下でバルク粉末としてのいずれかで、著しい化学分解なしに保管され得る。
【0045】
本発明のアプリケーターで用いられ得る組成物は、適切な技法によって、粉末(すなわち、多粒子形態)として提供される。概して、適切な技法は、噴霧乾燥、流動床技法、共沈、超臨界流体技法、スプレー造粒、極低温技法(凍結乾燥を含む)、エレクトロスピニング及び回転ジェット技法を含む「溶媒ベース」の方法、又は、溶融造粒、溶融押出、高剪断混合(例えば、KinetiSol(登録商標))、ミリング及び担体上の溶融材料技法(例えば、Meltdose(登録商標))を含む「融合ベース」の方法に分類される。好ましい方法には凍結乾燥が含まれ、より好ましくは、本発明のアプリケーターに用いられる組成物は噴霧乾燥プロセスによって作製される。
【0046】
本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための組成物は、個々に、かつ/又は集合的に、1つ以上のかかる組成物から本質的になり得、かつ/又はそれを含み得る、複数の粒子を含む多粒子形態(例えば、単純な粉末、顆粒、ペレット及び/又はビーズ)で提供され得る。
【0047】
したがって、かかる組成物は、単純な粉末混合物、粉末ミクロスフェア、コーティングされた粉末ミクロスフェア、凍結乾燥されたリポソーム分散液、又はそれらの組み合わせの形態に(例えば、噴霧乾燥により)調製後、提供され得る。
【0048】
本発明のアプリケーターに含めるための粉末組成物がそれらの粒子から「本質的になる」場合、これは、そのアプリケーターのリザーバーが、本発明のアプリケーター又はその中に収容される組成物の基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない他の特徴及び/又は構成要素と一緒に、1つ以上のかかる組成物のみを含むことを意味すると理解される。代替的に、本発明の剤形が本発明の1つ以上の組成物「から本質的になる」状況では、これは、その剤形が、合計で、少なくとも約97重量%(例えば、約99%)を含む少なくとも約95%などの少なくとも約90%の本発明の1つ以上の組成物(複数可)を含むことを意味すると理解され得る。本発明のアプリケーターは、代替的に、2つ以上のかかる組成物(複数可)を含み得る。
【0049】
乾燥粉末又は顆粒を含む多粒子を作製するのに適切な技法には、単純な乾式混合、造粒(乾式造粒、湿式造粒、溶融造粒、熱可塑性ペレット化、スプレー造粒を含む)、押出/球形化、又はより好ましくは凍結乾燥若しくは噴霧乾燥が含まれる(以下参照)。
【0050】
乾式造粒法も当業者に周知であり、例えば以下に記載されるように、スラッギング及びローラー圧縮を含む、一次粉末粒子が高圧下で凝集される任意の技法を含む。
【0051】
湿式造粒法は、当業者に周知であり、水、エタノール又はイソプロパノールなどの揮発性の不活性溶媒を、単独又は組み合わせで、及び任意選択でバインダー又は結合剤の存在下で含む造粒流体を使用した乾燥一次粉末粒子の混合物の塊化を伴う任意の技法を伴う。この技法は、湿った塊をふるいに通して湿った顆粒を生成することを含み得、それが次いで、好ましくは乾燥による損失が約3重量%未満になるように乾燥される。
【0052】
溶融造粒は、溶融バインダー、又はプロセス中に溶融する固形バインダー(これらのバインダー材料は本発明のアプリケーターに使用される組成物の薬学的に許容される担体材料を含み得る)の添加を介して顆粒が得られる任意の技法を含むことが当業者に既知である。造粒後、バインダーは室温で固化される。熱可塑性ペレット化は溶融造粒に類似していることが既知であるが、バインダーの塑性特性が用いられる。両方のプロセスにおいて、得られる凝集体(顆粒)はマトリックス構造を含む。
【0053】
押出/球形化は、成分の乾式混合、バインダーを用いた湿式塊化、押出、押出物の均一なサイズの回転楕円体への球形化、及び乾燥を伴う任意のプロセスを含むことが当業者に周知である。
【0054】
スプレー造粒は、液体(溶液、懸濁液、溶融物)の乾燥と同時に流動床に造粒物を蓄積することを伴う任意の技法を含むことが当業者に既知である。したがって、この用語は、任意の噴霧コーティング造粒技法を一般に含むことに加えて、外来種子(細菌)が提供され、その上に顆粒が蓄積されるプロセス、並びに摩耗及び/又は破砕によって流動床に固有の種子(細菌)が形成されるプロセスを含む。噴霧された液体は細菌を覆い、粒子の更なる凝集を補助する。次に、それを乾燥させてマトリックスの形態で顆粒が形成される。
【0055】
「凍結乾燥」という用語には、リオフィリセーション又はクリオデシケーション、及び産物が凍結され、圧力が下げられ、昇華によって凍結溶媒(例えば、水)が除去される任意の低温脱溶媒和(例えば、脱水)プロセスが含まれる。
【0056】
本明細書に記載のように、本発明のアプリケーターで用いられ得る組成物は、好ましくは噴霧乾燥のプロセスによって作製される。
【0057】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物は、他の点では、当業者に既知の標準的な技法によって、標準的な装置を使用して調製され得る。この点において、本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための組成物は、本発明のアプリケーターを作製するために、関連する調製物のために当技術分野で使用される従来の薬学的添加剤及び/又は賦形剤と組み合わされ、標準的な技法を使用して様々な種類の薬学的調製物に組み込まれ得る(例えば、Lachman et al,‘The Theory and Practice of Industrial Pharmacy’,CBS,4th edition(2015)、‘Remington:The Science and Practice of Pharmacy’,Troy(ed.),Elsevier,23rd edition(2020)、及び/又は‘Aulton’s Pharmaceutics:The Design and Manufacture of Medicines’,Taylor and Aulton(eds.),Elsevier,5th edition,2017を参照されたい)。
【0058】
どのような製造方法であっても、本発明のアプリケーターに含まれる組成物は、体循環への有効成分の経粘膜送達に適しており、かつ/又はそのために製剤化されていることが好ましい。
【0059】
「経粘膜」という用語は、どのように患者に投与されても、有効成分(複数可)が溶解後、その粘膜表面を横断して吸収され得るような形態で、組成物が関連する粘膜表面に提供されることを意味することを当業者は理解するであろう。したがって、関連する粘膜表面には、口腔、鼻、眼、膣、子宮頸、肺及び/又は肛門直腸の粘膜、より特には口腔粘膜(頬及び舌下粘膜を含む)及び鼻粘膜が含まれる。
【0060】
この点において、本発明のアプリケーターを使用して、有効成分の経粘膜送達のために、その中に含まれる粉末組成物を、粘膜表面(肺、直腸、膣、口腔、舌下、又は鼻腔内を含む)を含む患者の体腔に直接送達し得る。
【0061】
したがって、かかる組成物は、本明細書に記載の粉末組成物を本発明のアプリケーターから口内及び舌下に排出することによって舌下投与され得る。
【0062】
本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための組成物が舌下投与、又はとりわけ鼻腔内投与に適しており、かつ/又はそのために製剤化されている場合、それらは好ましくは、有効成分の投薬量が約100mg以下である粉末の形態で投与される。かかる舌下及び/又は鼻用粉末組成物は、他の賦形剤と混合された本明細書で定義された本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための組成物を含み得るか、又は上記で定義された当該組成物から本質的になり得る。
【0063】
鼻腔内投与に適した本発明のアプリケーターは、当該アプリケーターのリザーバー内に1つの噴霧乾燥粉末組成物を収容し得、又は2つ以上のかかる組成物を収容し得る。後者の場合、アプリケーターは、2つ以上の投薬量の当該粉末組成物を収容し得、その投薬量は各々、薬理学的に有効な用量の有効成分(複数可)を含有する。
【0064】
2つ以上のかかる組成物は、本発明の適切なアプリケーターの繰り返しの発動によって鼻腔内投与され得る。適切なデバイス(例えば、鼻用アプリケーター又はディスペンサー(吸入器))を以下に記載する。本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための組成物は、本発明のアプリケーターを形成するために、アプリケーターの一部であり、アプリケーターに付属され、かつ/又はアプリケーターに付属して配置されるのに適しているかかるリザーバー内に提供され得る。かかる容器又はリザーバーは、1つ以上の粉末組成物を含み得、各々が薬理学的に有効な投薬量の有効成分を収容する。
【0065】
このように、適切な投薬手段及び/又は鼻用アプリケーターは、1回だけ発動され、その発動に続いて適切な用量の有効成分を含む単一の粉末組成物を送達し得(すなわち、単回使用投薬単位)、2回以上発動され、各々が適切な用量の有効成分を含む2つ以上のかかる粉末組成物を、かかる発動のたびに送達し得(すなわち、複数回使用の投薬単位)、かつ/又は1つ以上のかかる粉末組成物を含む当該組成物の交換源(例えば、容器又はリザーバー)で再充填され、単回及び/若しくは複数回の用量及び/若しくは投薬レジメンを提供し得る。
【0066】
したがって、本発明のアプリケーターに含まれる組成物は、複数の粒子の形態で投与され、その粒子は、個別及び/又は集合的に本明細書で定義される粉末組成物で構成され得、及び/又はそれを含み得る。
【0067】
かかる組成物は、固形の乾燥した自由流動性の多粒子粉末の形態で調製される。
【0068】
「乾燥」とは、本質的に水及び他の液体溶媒を含まないことを含み、これには、製剤の約5%未満又は約4%未満を含む約6%未満などの約10%未満、より好ましくは約2%未満などの約3%未満、例えば、約1%未満が、水などの液体であることが含まれる。
【0069】
「固形」という用語は、閉じ込められていないときにその形状及び密度を保持し、及び/又は分子が一般にそれらの間の反発力が許す限り強く圧縮されている物質のあらゆる形態を含むことが当業者によく理解されるであろう。したがって、本質的に固形の組成物は、少なくとも約95%(又は少なくとも約99%)を含む、少なくとも約90%などの少なくとも約80%がかかる形態にある組成物である。
【0070】
本発明の粉末組成物の流動性は、かさ密度測定、又は粉末流速依存性試験、ケーキ化試験、凝集試験などを含む粉末流量分析器(例えば、両方ともUKのStable Micro Systems又はMeriticsによって販売されるもの)で行われる測定を含む、当業者に既知の標準的な技法によって測定され得る。流動性の好ましい測定は、標準的な安息角であり、これは、回転シリンダ、固定ファンネル、又は傾斜ボックスを使用して実施され得る。
【0071】
本発明の文脈において、「自由流動性」という用語は、製造中に本発明のアプリケーター(すなわち、薬物送達デバイス)に組成物を効率的に充填することを可能にし、かつ/又はデバイスから排出されたときに十分なショット重量を提供する粉末を含むことを意図している(以下を参照)。
【0072】
この用語はまた、粉末が、約40°以下を含む約45°以下などの約50°以下、例えば、約35°以下、より特に約30°以下の安息角、約0.3g/mL以上、例えば、約0.5g/mL以上などの約0.4g/mL以上、より特に約0.6g/mL以上のかさ密度、及び/又は約0.6g/mL以上などの約0.5g/mL以上、例えば、約0.7g/mL以上、特に約0.8g/mL以上のタップ密度を示すことも含み得る。
【0073】
非晶質の単粒子粉末の形態であるため、発明のアプリケーターに含めるための組成物は、有効成分のより小さい粒子と、より大きな、しかし分離された化学的に異なる担体物質の粒子と会合した規則的又は相互作用的な混合物などの混合物の形態で、異なる成分の粒子の2つ以上の別個の分離したセットの物理的会合で構成されていない。とは言うものの、本明細書に記載の粉末組成物は、その後、相互作用混合物中の分離した大きな担体粒子に付着することができる小さな粒子として提供することができ、かかる提供は、吸入、例えば、肺を目的とする剤形の場合に有用である(例えば、J.Drug Delivery,Art.ID 5635010,1-19(2018)を参照されたい)。
【0074】
前述のように、本発明のアプリケーターに含めるための組成物を作製するプロセスは、本明細書で定義される通常の保管条件下で保管された場合に、物理的及び化学的安定性の両方に関して優れた貯蔵寿命を示す医薬品の形成を可能にする。
【0075】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物は、好ましくは噴霧乾燥のプロセスによって調製される。噴霧乾燥のプロセスは、高温ガスを使用して急速に乾燥して、液体の流れを、気化した溶媒、並びに前もって溶液に溶解されていた溶質、及び/又は前もって蒸発した液体に懸濁されていた粒子を含む固形の粒子に変換することを伴う、溶液又は懸濁液(スラリーを含む)を含む液体から乾燥粉末を生成する任意の方法を含むことが当業者に理解されるであろう。
【0076】
適切な噴霧乾燥装置は、比較的均一な液滴サイズを有する噴霧へと液体を分散させる噴霧ノズルなどの何らかの形態の噴霧化手段を含む。かかる手段は、乾燥した自由流動性の粉末を生成することができる任意の手段を含み得、高圧スワールノズル、回転ディスク及び/又は噴霧器ホイール、高圧単一流体ノズル、二流体ノズル及び/又は超音波ノズルを含み得る。
【0077】
噴霧乾燥機は、単一効果又は多重効果噴霧乾燥機であり得、統合及び/若しくは外部振動流動床、粒子分離器、並びに/又はドラム又はサイクロンであり得る収集手段を含み得る。
【0078】
本発明の更なる態様によれば、本発明のアプリケーターを製造するためのプロセスが提供され、当該プロセスは、
i)アドレナリン受容体調節剤又はその薬学的に許容される塩と、薬学的に許容される担体材料とを一緒に、適切な揮発性溶媒中で混合するステップ、
ii)ステップi)からの混合物を噴霧乾燥するステップ、
iii)ステップii)からの生成物を本発明のアプリケーターのリザーバーに装填するステップを含む。
【0079】
好ましい揮発性溶媒としては、水、又は低級アルキルアルコール(例えば、メタノール、イソプロパノール、又はより特に、エタノール)、炭化水素(例えば、C5-10アルカン)、ハロアルカン(例えば、ジクロロメタン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、酢酸エチル、アセトンなど、若しくはそれらの混合物などの有機溶媒が挙げられる。
【0080】
1つ以上の有効成分、本明細書に定義される薬学的に許容される担体材料(複数可)、及び本明細書に記載の他の任意選択の成分(例えば、以下に記載のアルキル糖類)を溶媒とともに一緒に混合して、噴霧乾燥され得る溶液が得られることが好ましい。
【0081】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物に用いられる薬学的に許容される担体材料には、通常の保管条件下で固体で、薬学的使用及び/又は経粘膜(例えば、舌下又は特に鼻腔内)送達に適している(及び/又は承認される)必要があり、その物理的及び/若しくは化学的完全性を維持することができる必要があり、かつ/又は有効成分及び/若しくは組成物中に存在する、若しくは存在し得る任意の他の成分(アルキル糖類など)の物理的及び/若しくは化学的完全性に影響を及ぼさない必要がある。
【0082】
化学的にも物理的にも安定性のある粉末などの固形組成物を得ようとすると、重大な困難が生じる可能性があることは周知である。組成物の物理的形態が通常の保管条件下で変化する場合(例えば、自由流動性の粉末から排出が困難な凝集塊へ)、有効成分の用量の再現性が失われる可能性がある。これは、本明細書に記載の鼻用アプリケーターから、又はそれを介して組成物を分注する場合に特にそうであり、かかる凝集は、有効成分を分注することが完全に不可能になる可能性があり、それは緊急時には致命的となる可能性がある。
【0083】
本発明のアプリケーターに含まれる組成物は、約85%(例えば、約90%)から最大約120%(例えば、約110%などの約115%)などの約80%の目標重量に対する個々の粉末ショット重量、及び/又は約90%(例えば、約95%)~最大約115%(例えば、約105%などの約110%)などの約85%の目標重量に対する平均粉末ショット重量によって測定される最小ショット重量を有し得る。
【0084】
同様に、組成物の2回以上の用量を含有する複数回用量単位の場合、かかる安定性は、有効成分の用量の経時的な再現性を確保するために重要である。これらの問題のいずれも、被験者の健康に有害な影響を与える可能性があり、かつ/又は被験者の幸福を重大なリスクにさらす可能性がある。
【0085】
本発明のアプリケーターに含まれるある特定の組成物の場合、大気水への曝露は、固体安定性が低い粉末組成物をもたらす可能性がある。例えば、ある特定の(例えば、比較的高い)相対湿度への曝露は、例えば潮解によって、並びに/又は組成物、及び/若しくは担体材料などの組成物の個々の成分のガラス転移温度を低下させることによって、又は別の方法で組成物の物理的形態に影響を及ぼし得る。
【0086】
したがって、本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための組成物、及びそれらを含む本発明のアプリケーターは、好ましくは、本明細書で定義される保管条件下で大気水の侵入を実質的に防止する容器内にパッケージ化される。かかる容器は、ブリスターパック、ヒートシールされたアルミニウムパウチ及び/又は熱成形プラスチックなどのパッケージ材料を含み得る。かかる容器はまた、例えば、3Å又は4Åの孔径を有するシリカゲル及び/又は適切なモレキュラーシーブなどの乾燥剤を含み得る。
【0087】
「物理的及び化学的完全性を維持する」という表現は、本質的に化学的安定性及び固体安定性を意味する。
【0088】
「化学的安定性」とは、本明細書に記載の任意の粉末組成物が、(適切な医薬パッケージの有無にかかわらず)本発明のアプリケーター若しくはそれのリザーバー剤に製剤化された場合、又はそうでなければ、通常の保管条件下で、組成物自体又はそれに含まれる有効成分のいずれかのわずかな程度の化学的分解(degradation)若しくは分解(decomposition)を伴って単離された固形形態で保管され得ることを含む。
【0089】
「化学的安定性」という用語はまた、「立体化学的」及び/又は「構成的」安定性を含み、これは、有効成分の分子内の1つ以上のキラル中心で、ラセミ化などの立体化学的変換に対する耐性を意味する。これは、アドレナリンの場合に特に重要であり、Rエナンチオマー(すなわち、L-(-)-エピネフリン)が活性エナンチオマーであり、Sエナンチオマー(すなわち、D-(+)-エピネフリン)が活性が低く、したがって不純物とみなされ得る。
【0090】
「物理的安定性」又は「固体安定性」とは、本明細書に記載の任意の粉末組成物が、(適切な医薬パッケージの有無にかかわらず)本発明のアプリケーター若しくはそれのリザーバー剤に製剤化された場合、又はそうでなければ、通常の保管条件下で、組成物自体又はそれに含まれる有効成分のいずれかのわずかな程度の固体変化(例えば、結晶化、再結晶化、結晶化度の損失、固体相転移(例えば、ガラス状態若しくはゴム状態間、又は凝集形態へ))、水和、脱水、溶媒和、又は脱溶媒和を伴って、単離された固形形態で保管され得ることを含む。
【0091】
本発明のアプリケーターの「通常の保管条件」の例には、長期間(すなわち、約6か月などの約12か月以上)にわたる、約-50℃~約+80℃(好ましくは約50℃などの約-25℃~約+75℃)の温度、及び/又は約0.1~約2バールの圧力(好ましくは大気圧)、及び/又は少なくとも約460ルクスのUV光/可視光への曝露、及び/又は約5~約95%(好ましくは約10~約40%)の相対湿度が含まれる。
【0092】
かかる条件下で、本発明のアプリケーターに含まれる組成物(及び/又はそれに含まれる有効成分)は、必要に応じて約15%未満、より好ましくは約10%未満、とりわけ約5%未満が、化学的に分解(degraded)/分解(decomposed)され、かつ/又は固体変換されていることが見出され得る。当業者は、温度及び圧力の上記の上限及び下限が通常の保管条件の極値を表し、これらの極値のある特定の組み合わせが通常の保管中に経験されないことを理解する(例えば、50℃の温度及び圧力0.1バール)。
【0093】
かかる化学的安定性、特に物理的安定性は、適切な用量が患者に送達されることを確実にするために、粉末などの固体組成物において重要である。
【0094】
「通常の保管条件」の上記の定義にかかわらず、本発明のアプリケーターのリザーバーに含めるための組成物(及び/又はそれに収容される有効成分)は、
(a)40℃及び75%の相対湿度で、少なくとも約6か月若しくは少なくとも約12か月を含む少なくとも約3か月、
(b)約30℃若しくは約25℃などの約30℃未満、及び/若しくは例えば、約60%などの約65%の相対湿度で、少なくとも約36か月を含む少なくとも約24か月などの少なくとも約18か月、かつ/又は
(c)約100万ルクスを超えるUV光で、少なくとも約18時間
の保管後、約4%未満などの約5%未満(約1.5%未満、及び/又は更に約1%未満を含む、約2.5%未満(例えば、約2%未満)などの約3%未満を含む)化学的及び/又は立体化学的に分解され得る。
【0095】
したがって、本発明のアプリケーターは、任意の温度(例えば、約-20℃の低温)から最大約25℃(例えば、最大約30℃まで)で、好ましくは最大約40℃又は更に最大約50℃の変動を伴って、保管され得る。
【0096】
本発明のアプリケーターにおける使用のための組成物を生成するために用いられ得、本明細書に記載の所望の特性を有する、特に好ましい薬学的に許容される担体材料には、特に組み合わせて用いられる場合、二糖類及びポリマー材料構成要素が挙げられる。
【0097】
好ましい二糖類構成要素としては、マルチトール、スクラロース、ショ糖、イソマルト、マルトース、好ましくはラクトース(β-D-ラクトース及びα-D-ラクトース、特にα-D-ラクトース一水和物を含む)、より好ましくはトレハロースが挙げられる。
【0098】
本発明のアプリケーターにおける使用のための粉末組成物中の薬学的に許容される担体材料として用いられ得、かつ本明細書に記載の望ましい特性を有する適切なポリマー材料構成要素としては、カルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、酢酸セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース、HPMC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、メチルセルロース(MC)、エチルヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC)、修飾セルロースガム、微結晶性セルロース及びカルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース及びその誘導体;米デンプン、タピオカデンプン、小麦デンプン、並びにより特にトウモロコシデンプン及びジャガイモデンプンなどのデンプン;α化デンプン、カルボキシメチルデンプン、並びに中架橋デンプン、修飾デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体;デキストラン、プルラン、イヌリン、並びにデキストリン、シクロデキストリン、及びマルトデキストリンなど線状又は分岐状デキストリンなどのデキストリンを含む多糖類;粉末トラガカント;ココアバター及び坐剤ワックスなどのワックス状の賦形剤;固形ポリエチレングリコールなどのポリオール;カルボマー及びその誘導体などのアクリルポリマー;ポリビニルピロリドン(ポビドン、PVP);架橋ポリビニルピロリドン;ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリco-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);並びにクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム)が挙げられる。コハク酸ヒプロメロース(HPMCAS)、コポビドン及びポリビニルアルコール(PVA、又はPVOH)も言及され得る。
【0099】
より好ましいポリマー材料には、カルボキシメチルセルロースナトリウム、デンプングリコール酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、及び、特にヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース2906、好ましくはヒプロメロース2910(すなわち「E」型)、及びより好ましくはUSP/NFヒプロメロース2208(すなわち「K」型)など)、又は特に、シクロデキストリン(例えば、2-ヒドロキシプロピル-γ-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンナトリウム塩、ランダムメチル化β-シクロデキストリン、分岐β-シクロデキストリンなどのα-、β-、及びγ-シクロデキストリン及びその誘導体、特に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン)を含むデキストリンなどの多糖類、並びにマルトデキストリンなどの線状又は分岐状デキストリンが挙げられる。
【0100】
いずれにしても、本発明のアプリケーターで用いられる組成物における使用に適したポリマーは、任意の所与の量で、例えば、二糖類と組み合わせて用いられた場合に、有効成分に適した担体材料を形成できるように、十分に高い分子量を有する必要がある。
【0101】
任意の所与のポリマーについて、ポリマー鎖長(したがって分子量)は、その粘度に正比例する。言い換えれば、そのポリマーの溶液の粘度は、特定のポリマーの分子量又は鎖長に比例する。
【0102】
この点で、以下の、任意の所与の本質的な場合について、測定値として、ポリマーが20℃で約1000mPa*s以下(より好ましくは、約60以下、特に約10以下などの約120以下)の相対粘度値を有することが好ましい場合がある。
(a)粘度に関する標準的なUSP方法、すなわち<911>方法I及び/又は<912>方法Iによる、水中のポリマーの2%溶液としての水溶性ポリマー、並びに
(b)USP方法<911>方法Iにより、溶媒系が乾燥又は部分的に水性であり得る、アセトン、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸エチル、アセトニトリル、ジクロロメタン、トルエン、及びそれらの混合物などの適した有機溶媒中のポリマーの5重量%溶液としての水不溶性ポリマー。
【0103】
当業者は、試験されるポリマーにどの試験がより適しているかを理解するであろう。
【0104】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物に用いられ得る担体材料の量は、(当該組成物の1回用量が投薬手段又は他のものに含まれるかどうかにかかわらず)典型的には、組成物の総重量に基づいて、約50重量%~約75重量%を含む約10重量%(例えば、約35重量%を含む約25重量%)~約85重量%など、最大約99重量%(例えば、最大約95重量%又は約90重量%)を含む約5重量%~約99.9重量%の範囲にある。
【0105】
材料の組み合わせとして提供されるかどうかにかかわらず、又はそうでなければ、担体材料は、以下のガラス転移温度(Tg)を有する本発明のアプリケーターに含めるための組成物を生じることができることが好ましい:
(a)医薬製剤若しくは剤形に容易に製剤化でき、その後、本明細書に記載の鼻用アプリケーター、若しくはかかるアプリケーター内、若しくはそれに付属する薬物リザーバー及び/若しくは容器などの本発明のアプリケーターに容易に装填されることができる、硬く及び/又は脆い、「ガラス状」、非晶質の、粉末状の物理的形態としてのその生成が可能であり、かつ
(b)かかるアプリケーター又はリザーバーが本明細書に記載のようにパッケージ化され、その後、高い外部温度(例えば、最大約50℃~約80℃)に曝露された後に、その組成物が、より粘性又はゴム状の状態、及び/又は結晶状態に形質転換する代わりに例のガラス状の状態に留まる程度に高い。
【0106】
このような極端な外部温度は、暖かくかつ/又は陽気な気候において、車両(例えば、ファーストレスポンダーの)の内部でしばしば経験され、そのような車両は、頻繁に、炎天下で長期間にわたり駐車され、結果として生じる熱は莫大になり得る。粉末組成物のTgが低い場合、組成物は、かかる高温に曝露された後にかかる粘性/ゴム状の状態に転換する可能性があり、これは、組成物の非効率的な投薬、例えば、アプリケーターを発動させたときに、本発明のアプリケーター又はそれに格納されたリザーバーからの組成物(及び有効成分の用量(複数可)も)の非効率的な排出を生じさせる。
【0107】
この点において、本発明のアプリケーターに含めるための組成物の最も低い測定可能なTgは、最大約25%を含む最大約30%などの最大約35%の相対湿度(例えば、約15%未満などの最大約20%、例えば、約10%未満)で測定される場合、少なくとも約60℃を含む少なくとも約55℃など、少なくとも約50℃などの少なくとも約40℃を含む少なくとも約35℃であることが好ましい。「最も低い測定可能なTg」とは、議題の粉末組成物が、その性質において不均一である粒子を含み得ることを含む。特に、粒子は担体材料の別個の領域、又はそれらの複合混合物を含み得、したがって、個々の及び別個のTg値を有し得る。最も低い測定可能なTgの値が組成物の物理的安定性に強い影響を与えることは当業者には明らかであろう。
【0108】
発明者らは、担体材料中の二糖類及びポリマー成分の相対量(特に、ポリマーがデキストリンである場合)を、有効成分の所望のレベルの物理的及び/又は化学的安定性を確保し、同時に、物理的安定性に影響を及ぼすような様式で本発明のアプリケーターに含めるための組成物のTgを低下させないように調整して得ることを見出した。
【0109】
用いられる有効成分に応じて、組成物の総重量に基づいて、重量で約50:1~約1:50の二糖類:ポリマー(例えば、デキストリン)比が機能し得ることが見出された。好ましい比率は、組成物の総重量に基づいて、約10:1~約1:40(最大約1:30又は最大約1:20を含む)、例えば、約4:1、約3:1、又は約2:1などの約5:1を含む約7:1~約1:5、例えば、1:3又は1:2を含む約1:8などの約1:10、より好ましくは約8:1(例えば、約7:1、約3:1、約2:1、又は約1:1)~約1:8(例えば、約1:3又は約1:2)の二糖類:ポリマー(例えば、デキストリン)の範囲にある。
【0110】
したがって、担体材料の特に好ましい組み合わせには、トレハロース、又はα-D-ラクトース一水和物などのラクトースと、デキストリン、特に、2-ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、又はより好ましくは、マルトデキストリンと、が挙げられる。
【0111】
マルトデキストリンはDE(デキストロース当量)によって分類され、DE値が高いほど、グルコース鎖の平均長は短くなる。好ましいマルトデキストリンとしては、DEが、8~12などの6~15、又は15を超える、例えば、38、39などの最大47、好ましくは、23、24、25、若しくは26、又はより好ましくは16、17、18、20、21、若しくは22、及び特に19のDEを有するものが挙げられる。20を超えるDEを有するマルトデキストリンは、「グルコースシロップ」と称されることが当業者には理解されるであろう。
【0112】
15を超えるDEを有するマルトデキストリンは、15以下のDEを有するものよりも低い平均分子量を有する。全てのマルトデキストリンは、異なる鎖長を有する多糖類の混合物であり、15を超えるDEを有するマルトデキストリンは、より大きな分子量の糖単位が少ない。
【0113】
12以下のDEを有するマルトデキストリンなど、より低いDEを有するマルトデキストリンが、より長い多糖鎖(例えば、約24個以上のグルコース単位を有する)を含有し、ショ糖エステルのような有効成分及び/又は界面活性剤などの他の成分と一緒に水溶液中に存在する場合に凝集体を形成し得、噴霧乾燥前に濁った溶液を生じさせるヘリックス構造を形成する傾向を有することを見出した。この濁りは、製造中に安定性及び/又は加工性の問題を起こす可能性があり、インラインフィルタの使用を必要とする。
【0114】
前述の濁りの問題が、本明細書に記載の組成物内に含まれるマルトデキストリンの相対量を低減させることによってある程度緩和され得ることを見出したが、これは、他の担体材料(例えば、二糖類)、有効成分、又はショ糖エステルなどのある特定の添加剤などの他の成分の量を増加させることによって達成され得、マルトデキストリンの分子量が高いほど、含まれる必要が少なくなり、濁りを緩和するために添加される必要がある、例えば、二糖類又はショ糖エステルが多くなる。
【0115】
この濁りを低減するためにより多くのショ糖エステルを添加する場合、本明細書に記載されるように、吸収促進効果を含む適切な(例えば、物理的、化学的及び/又は生物学的)効果を提供するために必要とされるよりも多くが添加される必要がある場合がある。逆に、担体材料中のマルトデキストリンに対して二糖類の量を増加させることは、Tgに対する負の影響を有する場合があり、したがって、本明細書に記載の組成物の固体安定性に対して負の影響を有する場合がある。
【0116】
かかる問題は、完全に異なるマルトデキストリン、すなわち、15を超えるDE、例えば、DE18、20、又はより好ましくは19のDEを有するものなどの、より高いDEを有するものを使用することによって、低減され得、おそらく完全に回避され得ることを見出した。
【0117】
上記にもかかわらず、本明細書に記載の粉末組成物における使用に適したマルトデキストリンは、それにもかかわらず、任意の所与の量(二糖類又は他のものと組み合わせて)で用いられる場合、適切な程度の物理的安定性の提供を含む、有効成分に適した担体材料を形成することができるような十分に高い分子量を有する必要がある。
【0118】
二糖類及び/又はポリマー材料(マルトデキストリンを含む)の前述のリストのうちのいずれかからの混合物が用いられ得る。
【0119】
最終混合物中のそれらの割合が何であれ、本発明のアプリケーターに含めるための組成物は、噴霧乾燥された担体材料を含み、これは、担体材料を他の必須成分と一緒に噴霧乾燥して本明細書に記載の粉末組成物を形成するか、又はより好ましくは、その組成物の必須構成要素の全てを一緒に噴霧乾燥することによってインサイチュで作製されるかのいずれかの前に、関連する成分を噴霧乾燥して複合担体材料を形成することによって調製され得る。
【0120】
特に、二糖類及びポリマー(例えば、本明細書に定義されるHPMC)及び/又は好ましくは、デキストリン、特にマルトデキストリンの組み合わせを含む本発明のアプリケーターに含まれ得る組成物は、組成物及び有効成分(特にアドレナリン及びその塩)の適切なレベルの物理的及び化学的安定性をもたらすことができることが見出された。実際、以下に記載するように、特に化学的安定性の程度は、EpiPenのようなアレルギー反応の治療のためのアドレナリンを含む現在市販されている製品と比較した場合、比較して顕著である。
【0121】
したがって、担体材料の特に好ましい組み合わせは、トレハロースと、マルトデキストリン12DEなどの11を超える、又はマルトデキストリン19DEなどの15を超えるDEを有するマルトデキストリンと、を含む。発明者らは、担体材料のかかる組み合わせを、有効成分及び存在する場合にはアルキル糖類と一緒に適切な比率で噴霧乾燥して、本明細書で定義された通常の保管条件下で、所望の物理的及び化学的安定性の両方を有する粉末組成物を生成し得ることを見出した。
【0122】
アドレナリン受容体調節剤又はその塩の組み合わせは、本発明のアプリケーターに含めるための組成物に用いられ得る。
【0123】
アドレナリン受容体調節剤の塩には、当技術分野で公知であり、Martindale-The Complete Drug Reference,40th Edition,Pharmaceutical Press,London(2020)及びそこに言及されている文書(それら文書の全てに関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる)などの医学文献において問題の薬物について記載されている任意のかかる塩を含む。
【0124】
そうでなければ、薬学的に許容される塩には、酸付加塩及び塩基付加塩が含まれ、これらの塩は、慣用的手段により、例えば、遊離酸又は遊離塩基形態の関連する有効成分と、1当量以上の適切な酸又は塩基とを、任意選択で、溶媒中で、又は塩が不溶である媒体中で反応させ、続いて、標準的技法を使用して(例えば、真空中、凍結乾燥、又は濾過によって)、当該溶媒又は当該媒体を除去することにより、形成され得る。塩はまた、例えば、適したイオン交換樹脂を使用して、塩の形態の本発明の化合物の対イオンを別の対イオンと交換することによってなど、当業者に既知の技法を使用して調製され得る。
【0125】
言及され得る特定の酸付加塩には、コハク酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、酢酸塩、安息香酸塩、シュウ酸塩、フマル酸塩、マレイン酸塩、キシナホ酸塩などのようなカルボン酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、トルエンスルホン酸塩などのようなスルホン酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩などのようなハロゲン化物塩、硫酸塩又はリン酸塩など硫酸塩及びリン酸塩が含まれる。
【0126】
言及され得るアドレナリンの特定の塩には、酒石酸水素塩が含まれる。
【0127】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物が、噴霧乾燥のプロセスによるものを含む、前述の溶媒ベースのプロセスによって作製される場合、これは、非晶質の担体材料内に自由に分散し、カプセル化されているため、もはや結晶塩の形態ではない形態での有効成分の存在をもたらし得る。しかしながら、典型的な固体混合物及び/又は粉末組成物の場合に通常存在する結晶塩の形態ではないにもかかわらず、本明細書に記載の粉末組成物は、本明細書で言及される保管条件下で、その有効成分の化学的安定性をほとんど~全く失わない可能性がある。
【0128】
本発明のアプリケーターに含まれる組成物の単回用量で用いられ得る有効成分の量は、その薬理学的効果を発揮するのに十分である必要がある。経粘膜(例えば、舌下、頬、特に鼻腔内に)投与される組成物については、その量は単回投与で約100mgを超えない必要がある。上記の関連有効成分の実際の用量は、当技術分野で公知であり、Martindale-The Complete Drug Reference,40th Edition,Pharmaceutical Press,London(2020)及びそこに言及されている文書などの医学文献において問題の薬物について記載されており、それら文書の全てに関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本発明のアプリケーターに含まれる組成物は、同じ有効成分を含む先行技術の組成物と比較して、良好な生物学的利用能及び/又は迅速な吸収を示し、より迅速な作用の発現及び/又はより高い血漿濃度をもたらすことが見出され得る。
【0129】
この点において、本発明のアプリケーターに含まれる組成物中の有効成分の薬理学的に適切な量は、文献で言及されている量よりも少なくてもよい可能性がある(上記参照)。それにもかかわらず、かかる量は、当業者によって決定され得、治療される状態の種類及び重症度、並びに個々の患者に何か最も適しているかによって異なり得る。これはまた、製剤の性質並びに治療される状態の種類及び重症度、及び治療される特定の患者の年齢、体重、性別、腎機能、肝機能及び応答によって変わる可能性が高い。
【0130】
有効成分の効力、及び用いられ得る最終製剤に応じて、本発明のアプリケーターに含めるための組成物で用いられ得る有効成分の総量は、組成物の総重量に基づいて、約0.0002重量%、例えば、約0.1重量%を含む約0.01重量%など(例えば、約1重量%、約2重量%又は約5重量%)、約10重量%(例えば、約20重量%)などの約0.001重量%、約75重量%などの最大約95重量%、例えば約50重量%、例えば約40重量%の範囲にあり得る。これは、本発明のアプリケーターに最初に存在する組成物の別個の用量(同じである必要がある)の数とは無関係である。
【0131】
肺、口腔、舌下、又は好ましくは鼻腔内を含む、経粘膜投与の場合、体重kg当たりの(遊離酸/塩基として計算される)有効成分の適切な用量は、約3μg/kg、約5μg/kg、又は約6μg/kgを含む約2μg/kgなどの約1μg/kg~約10μg/kg又は約8μg/kgなどの約12μg/kgを含む約13μg/kgなどの最大約15μg/kgの範囲にある。
【0132】
代替的に、単位投薬量当たりの(遊離酸/塩基として計算される)有効成分の適切な用量は、用いられる有効成分に応じて、約1mg~約60mg(例えば、約10mgなどの約3mg~約50mg)などの約1μg(例えば、約250μgなどの約10μg)~約100mg(例えば、約80mg)の範囲にある。
【0133】
舌下、又は好ましくは鼻腔内投与される場合、アドレナリンの特定の用量は、約0.1mg(例えば、約0.5mg)~最大約3mg又は最大約2mg(例えば、約1.2mg、約1mg、又は約0.8mgを含む約1.5mg)を含む最大約5mgなどの最大約10mgの範囲にある。
【0134】
前述のように、本発明のアプリケーターに含まれる組成物はまた、1つ以上のアルキル糖類を含み得るか、又はそれらと一緒に投与され得る。この点において、本発明のアプリケーターに含まれる組成物は、例えば、アルキル糖類を含まない、及び/又は界面活性剤として作用することが既知の異なる賦形剤を含む対応する組成物と比較して、驚くほど良好な生物学的利用能及び吸収速度を示すことが見出され得る。
【0135】
用いられ得るアルキル糖類には、アルキルグリコシドが含まれ、これは、C7-18アルキルグリコシドなどのアルキル基への連結によって結合される任意の糖として定義することができる。したがって、アルキルグリコシドは、アルキルマルトシド(ドデシルマルトシドなど)、アルキルグルコシド、アルキルスクロシド、アルキルチオマルトシド、アルキルチオグルコシド、アルキルチオショ糖、及びアルキルマルトトリオシドを含み得る。しかしながら、アルキル糖類は糖エステルであることが好ましい。
【0136】
本明細書に記載の粉末組成物に使用され得る糖エステルには、ラフィノースエステルなどの三糖類エステル、グルコースエステル、ガラクトースエステル及びフルクトースエステルなどの単糖類エステル、並びに/又は好ましくは、マルトースエステル、ラクトースエステル、トレハロースエステル、及び特に1つ以上のショ糖エステルなどの二糖類エステルが含まれる。
【0137】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物に用いられ得るショ糖エステルは、6~20の親水性-親油性バランス値を有し得る。「親水性-親油性バランス」(HLB)という用語は、当業者によって十分に理解されるであろう専門用語である(例えば、ICI Americas Incにより1976発行(1980改訂)された‘The HLB System:A Time-Saving Guide to Emulsifier Selection’を参照されたく、文書の第7章(20~21ページ)は、HLB値を決定するための方法を提供している)。ショ糖エステルの脂肪酸鎖が長く、エステル化度が高いほど、HLB値は低くなる。好ましいHLB値は、10~20、より好ましくは12~20である。
【0138】
したがって、ショ糖エステルには、C8-22飽和又は不飽和脂肪酸エステル、好ましくは飽和脂肪酸エステル、好ましくはC10-18脂肪酸エステル、最も好ましくはC12脂肪酸エステルが含まれる。かかるショ糖エステルが形成され得る特に適した脂肪酸には、エルカ酸、ベヘン酸、オレイン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸及びラウリン酸が含まれる。特に好ましいかかる脂肪酸はラウリン酸である。市販のショ糖エステルには、Surfhope(登録商標)及びRyoto(登録商標)(Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)の商標で販売されているものが含まれる。
【0139】
ショ糖エステルは、脂肪酸のジエステル又はモノエステル、好ましくはショ糖モノラウレートなどのモノエステルであり得る。当業者は、「モノラウレート」という用語がラウリン酸のモノエステルを指し、「ラウリン酸エステル」及び「ラウレート」という用語が同じ意味を有し、したがって交換可能に使用できることを理解するであろう。市販のショ糖モノラウレート製品は、「ショ糖ラウレート」と称されることもある。Surfhope(登録商標)D-1216(Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)などの市販のショ糖モノラウレート(又はショ糖ラウレート)製品は、少量のジエステル及び/又はより高級のショ糖エステル、並びに少量の他のショ糖エステル及び遊離ショ糖を含有し得、本発明での使用に適している。当業者は、本明細書における特定のショ糖エステルへの任意の言及は、主構成要素としてそのショ糖エステルを含む市販の製品を含むことを理解するであろう。
【0140】
好ましいショ糖エステルは、1つのショ糖エステルのみを含有し、これは、単一のショ糖エステル(例えば、市販のショ糖エステル製品)が、主構成要素として単一のショ糖エステルを含有することを意味する(市販の製品は、不純物を含有する場合があり、例えば、モノエステル製品は、少量のジエステル及び/又はより高級のエステルを含有し得、製品は、本発明の文脈において「1つのショ糖エステルのみを含有する」とみなされ得る)。本明細書で使用される場合、「主構成要素」という用語は、典型的に、ある特定の範囲のエステル組成で販売されている、一般的な市販の界面活性剤製品などのショ糖エステルの混合物中の主要構成要素(例えば、約70重量/重量%又は体積/体積%などの約50%超)を指すと理解されるであろう。
【0141】
特に好ましいショ糖エステルは、ショ糖モノラウレートである。
【0142】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物内又は本発明のアプリケーターに含まれる場合、用いられ得るアルキル糖類の量は、組成物の総重量に基づいて、約0.5重量%~約5重量%、好ましくは、約0.75重量%~約3重量%(例えば、約1重量%などの約2重量%まで)などの約0.1重量%~約10重量%の範囲にあり得る。
【0143】
更に、1つ以上の(更なる)界面活性剤を含む、任意選択の追加の賦形剤を本発明のアプリケーターに含めるための組成物内で用いられ得るか、又は本発明の組成物とともに投与し得る。言及され得る界面活性剤には、ポリオキシル8ステアレート(Myrj(商標)S8)、ポリオキシル32ステアレート(Gelucire(登録商標)48/16)、ポリオキシル40ステアレート(Myrj(商標)S40)、ポリオキシル100ステアレート(Myrj(商標)S100)、及びポリオキシル15ヒドロキシステアレート(Kolliphor(登録商標)HS 15)を含むポリオキシエチレンエステル(例えば、Myrj(商標))、ポリオキシルセトステアリルエーテル(例えば、Brij(商標)CS12、CS20及びCS25)、ポリオキシルラウリルエーテル(例えば、Brij(商標)L9及びL23)、及びポリオキシルステアリルエーテル(例えば、Brij(商標)S10及びS20)を含むポリオキシエチレンアルキルエーテル(例えば、Brij(商標))、並びにラウロイルポリオキシグリセリド(Gelucire(登録商標)44/14)及びステアロイルポリオキシグリセリド(Gelucire(登録商標)50/13)を含むポリオキシグリセリド(例えば、Gelucire(登録商標))、ソルビタンモノパルミテート(Span(商標)40)及びソルビタンモノステアレート(Span(商標)60)を含むソルビタンエステル(例えば、Span(商標))、ポリソルベート40(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート)、ポリソルベート60(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート)及びポリソルベート20(ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート)を含むポリソルベート(Tweens(商標))、並びにラウリルスルファトナトリウム;並びに2-オレオイルグリセロール、2-アラキドノイルグリセロール、モノラウリン、グリセロールモノミリステート、グリセロールモノパルミテート、グリセリルヒドロキシステアレート、そして好ましくは、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノオレエート(例えば、Cithrol(登録商標))及びグリセロールモノカプリレート(例えば、Capmul(登録商標))などのモノアシルグリセロール(モノグリセリド)が含まれる。他の界面活性剤としては、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ラウリルラクテート、及びポロキサマーが挙げられ得る。
【0144】
本発明のアプリケーターに含めるための組成物に含まれ得るか、又は本発明のアプリケーターに含めるための組成物とともに投与され得る他の任意選択の追加の成分(賦形剤)には、等張性及び/又は浸透圧剤(例えば、塩化ナトリウム)、コレステロール及びフィトステロール(例えば、カンペステロール、シトステロール、及びスチグマステロール)などのステロール(又はステロイドアルコール);抗酸化剤(例えば、メタ重亜硫酸ナトリウム、又は加えて、α-トコフェロール、アスコルビン酸、アスコルビン酸カリウム、アスコルビン酸ナトリウム、パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシトルエン、ブチル化ヒドロキシアニソール、没食子酸ドデシル、没食子酸オクチル、没食子酸プロピル、オレイン酸エチル、モノチオグリセロール、コハク酸ビタミンEポリエチレングリコール、又はチモール);キレート(錯化)剤(例えば、それらの薬剤のいずれかの塩形態を含む、エデト酸(EDTA)、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、マルトール及びガラクトース);防腐剤(例えば、塩化ベンザルコニウム、又は加えて、ベンジルアルコール、ホウ酸、パラベン、プロピオン酸、フェノール、クレゾール、又はキシリトール);粘度調整剤又はゲル化剤(ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースなどを含むセルロース誘導体、デンプン及び修飾デンプン、コロイド状二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミニウム、ポリカルボフィル(例えば、Noveon(登録商標))、カルボマー(例えば、Carbopol(登録商標))並びにポリビニルピロリドンなど);カルボキシメチルセルロース、修飾セルロースガム及びカルボキシメチルセルロースナトリウム(NaCMC)などの粘膜付着性ポリマー;中架橋デンプン、修飾デンプン及びデンプングリコール酸ナトリウムなどのデンプン誘導体;架橋ポリビニルピロリドン、カルボマー及びその誘導体(ポリカルボフィル、Carbopol(登録商標)など)などのアクリルポリマー;ポリエチレンオキシド(PEO);キトサン(ポリ-(D-グルコサミン));ゼラチン、アルギン酸ナトリウム、ペクチンなどの天然ポリマー;スクレログルカン;キサンタンガム;グアーガム;ポリコ-(メチルビニルエーテル/無水マレイン酸);及びクロスカルメロース(例えば、クロスカルメロースナトリウム);pH緩衝剤(例えば、クエン酸、マレイン酸、リンゴ酸、若しくはグリシン又はクエン酸ナトリウムなどのそれらの対応する塩);着色剤;浸透促進剤(例えば、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ピロリドン、又はトリカプリリン);他の脂質(中性及び極性);メチル、ヒドロキシル、アミノ、及び/又はニトロから選択される1つ以上の基で任意選択で置換された安息香酸、例えば、トルイル酸又はサリチル酸などの芳香族カルボン酸;必要に応じて、香味料(例えば、レモン、ペパーミントパウダー、又は好ましくはメンソール)、甘味料(例えば、ネオヘスペリジン、アセスルファムK、又はスクラロース)、並びに染料が含まれる。他の賦形剤としては、三糖類(例えば、ラフィノース)及びマンニトール、並びにpH調節剤(例えば、塩酸及び水酸化ナトリウム)が挙げられ得る。
【0145】
本明細書に記載の粉末組成物自体内に含められ得るかかる「追加の」賦形剤(存在し得るアルキル糖類ではない界面活性剤を含む)の総量は、組成物の総重量に基づいて、最大約5重量%などの最大約15重量%(例えば、約10重量%)であり得る。
【0146】
本発明のアプリケーターに含めるための1つ以上の粉末組成物を含む本発明のアプリケーター内に含まれ得るかかる「追加の」賦形剤の総量は、最大約90%を含む最大約99.9%などの最大約99.99%、例えば、最大約99%であり得る。
【0147】
当業者は、本発明のアプリケーターに含めるための組成物にいずれかの追加の任意選択の成分が含まれる場合、それらの成分の性質、及び/又は含まれるそれらの成分の量が、前述の理由から、粉末組成物のTgに有害な影響を及ぼしてはならないことを理解するであろう。この点において、かかる任意選択の成分は、噴霧乾燥プロセスに組み込まれ得るか(すなわち、適切な揮発性溶媒中で有効成分及び担体材料と一緒に混合され、次いで噴霧乾燥される)、又は噴霧乾燥された複数の粒子に別個に含まれ得る。
【0148】
特に、本発明のアプリケーターに含めるための組成物がアドレナリンなどの非常に不安定な有効成分をもたらす化学的安定性の向上、及びそれらの組成物が主にアレルギー反応を受けやすい(したがってある特定の化学物質に感作される可能性がある)患者の治療における使用を目的としているという事実を考慮すると、関連する組成物は、かかる「追加の」賦形剤、特に塩化ベンザルコニウム、より特に亜硫酸塩などの上記の酸化防止剤及び/若しくは保存剤、並びに/又はEDTAなどのキレート剤を本質的に含まないことが好ましい。
【0149】
この点において、本発明のアプリケーターに含めるための組成物は、薬理学的に有効な投薬量のアドレナリン受容体調節剤又はその塩、本明細書に定義される薬学的に許容される担体材料、及び(任意選択で)本明細書に定義されるアルキル糖類材料から本質的になり得る。かかる組成物が上記成分から「本質的になる」場合、これは、その組成物が、組成物の基本的かつ新規の特徴(複数可)に実質的に影響を及ぼさない他の特徴及び/又は構成要素と一緒に、それらの成分のみを含むことを意味すると理解されるであろう。代替的に、本発明のアプリケーターに含めるための組成物が本発明のそれらの成分「から本質的になる」状況では、これは、その組成物が、合計で、少なくとも約97重量%(例えば、約99重量%)を含む少なくとも約95重量%などの少なくとも約90重量%のそれらの成分を含むことを意味すると理解され得る。
【0150】
本発明の更なる態様によれば、医学(ヒト及び獣医学)における、したがって、関連する有効成分が治療するのに既知である状態の医学的治療を必要とする患者の治療における、使用のための本発明のアプリケーターが提供される。
【0151】
かかる状態の「治療」には、治療的、対症的、及び緩和的治療に加えて、かかる状態の予防(prophylaxis)/予防(prevention)又は診断が含まれる。
【0152】
したがって、本発明のアプリケーターは、かかる組成物に含まれる有効成分(複数可)に応じて、様々な障害の治療において有用である。
【0153】
ドーパミンを含む本発明のアプリケーターは、心筋梗塞、外傷、内毒素敗血症、開心手術、腎不全、及び慢性心不全(うっ血性不全)に起因するショック症候群に存在する血行動態の不均衡の矯正において用いられ得、オキシメタゾリンを含む本発明のアプリケーターは、充血除去剤として用いられ得、ドブタミンを含む本発明のアプリケーターは、例えば、心不全の治療において用いられ得、ミラベグロンを含む本発明のアプリケーターは、過活動性膀胱症候群の治療において用いられ得、アルブテロール(サルブタモール)、ホルモテロール、レバルブテロール、オロダテロール、サルメテロール、及びテルブタリンなどの気管拡張剤を含む本発明のアプリケーターは、喘息(運動誘発性気管支けいれん(EIB))、及び/又は慢性閉塞性肺疾患(COPD、それに関連する気管支けいれんを含む)の治療において用いられ得る。テルブタリンを含む本発明のアプリケーターは、早産の治療においても用いられ得る。
【0154】
ノルエピネフリンを含む本発明のアプリケーターは、交感神経切除術、灰白髄炎、褐色細胞切除術、脊髄麻酔、心筋梗塞、敗血症、輸血、又は薬物反応)を含む、ある特定の急性低血圧状態で誘導される血圧制御(及び/又は心停止)において用いられ得る。イソプレナリンを含む本発明のアプリケーターは、徐脈、心臓ブロック、及び場合によっては喘息の治療において用いられ得る。
【0155】
特に、アドレナリンを含む本発明のアプリケーターは、例えば、心不全(例えば、心臓発作)並びに/又はより特に、例えば、昆虫の刺傷/咬傷、食品、薬物、及び/若しくは他の物質に対する反応の結果として、例えば、血圧の重度の低下によって特徴付けられる、極度若しくは重度のアレルギー反応、アナフィラキシー、及び/若しくはアナフィラキシーショックを含むアレルギー反応の治療において有用である。極度及び/又は重度のアレルギー反応には、例えば、真菌、細菌、及び/又はウイルスによる感染に対する反応であり得る敗血症及び/又は敗血症性ショックが更に含まれ得る。アナフィラキシー及び敗血症は更に、臓器不全及び/又は最終的な死を含む、臓器の機能障害をもたらし得る。
【0156】
アドレナリンを含む本発明のアプリケーターはまた、例えば、任意の1型過敏性反応、特にアレルギー性喘息、アレルギー性結膜炎、アレルギー性鼻炎、アナフィラキシー(特発性アナフィラキシー又は運動誘発性アナフィラキシーを含む)、血管浮腫、蕁麻疹、好酸球増加症、薬物アレルギー(抗生物質アレルギーを含む)、食物アレルギー、動物血清、昆虫の咬傷及び刺傷、診断試験物質、並びに他のアレルゲンに対するアレルギー反応の治療;気管支けいれんを軽減するための急性喘息発作の治療;全身毒性応答(アナフィラキシー様反応)の治療;心拍の機構の発作性の変化によって引き起こされる突然ではあるが顕著な心拍出量の減少による一過性の意識喪失を含む、心停止及び/若しくは失神発作を伴う一過性房室ブロックの発作(ストークスアダムズ症候群)の治療及び予防;敗血症性ショックに関連する低血圧の成人患者の平均動脈血圧の上昇を誘導すること;眼内手術中の散瞳の誘導及び維持;胃腸及び/若しくは腎臓の出血の治療;表在性出血、早産、低血症、並びに心原性、出血性、及び外傷性ショックの治療;並びに/又はクループの治療(呼吸を妨げ、特徴的な吠える咳を引き起こす上気道の感染症)において有用である。
【0157】
アドレナリンを含む本発明のアプリケーターは、上記のアナフィラキシー及び敗血症並びに/又はアナフィラキシーショック及び敗血症性ショックを含む重篤な反応の治療及び/又は予防(prevention)(予防(prophylaxis))において特に有用である。これらの重篤な反応の予防(prevention)及び/又は予防(prophylaxis)は、患者が感受性を有する、かつ/又は感作されている、上記の関連する物質への曝露(又は曝露の疑い)後にかかる反応のリスクがある患者への本発明のアプリケーターからの1つ以上の組成物の投与(自己投与を含む)によって達成され得る。
【0158】
本発明の3つの更なる態様によれば、以下が提供される。
●(例えば、その中に含まれる組成物の鼻腔内などの経粘膜投与による)アレルギー反応の治療における使用のためのアドレナリンを含む本発明のアプリケーター、
●本発明のアプリケーターを介して、当該組成物の鼻腔内などの経粘膜投与によってアレルギー反応を治療するためのアプリケーターの製造のためのアドレナリンを含む本明細書に記載の組成物の使用、及び
●アレルギー反応の治療の方法であって、その方法が、当該状態に罹患しているか、又はそれになりやすい患者に対する、アドレナリンを含む本発明のアプリケーターを介して、組成物の鼻腔内などの経粘膜投与を含む、方法。
【0159】
ヒト患者におけるアナフィラキシーを含む(例えば、重度の)アレルギー反応の治療の方法であって、
(a)かかるアレルギー反応を有しているか、又はそれを有する急性の危険性があるヒト患者を特定することと、
(b)本発明のアプリケーターを発動させることによって、当該アプリケーターから当該アレルギー反応を治療するのに適している投薬量の本明細書に定義される固形の非晶質の単粒子粉末の形態のアドレナリン又はその薬学的に許容される塩を投与し、当該投薬量のアドレナリン又はその塩を、粘膜表面を含む当該患者の体腔に分注し、したがって、当該アドレナリン又はその塩を含む当該粉末を当該粘膜表面に供給して、当該粘膜表面にわたる当該アドレナリンの吸収を促進し、したがって、当該重度のアレルギー反応を治療又は予防することと、を含む、方法が更に提供される。
【0160】
本発明のアプリケーターに含まれる組成物は、好ましくは、鼻腔内投与される。この点において、アプリケーターは、好ましくは、適した鼻用アプリケーター、又はディスペンサー手段であり、この手段は、有効成分の適した用量を本明細書に記載の1つ以上の粉末組成物の形態で鼻腔に投与することができる。
【0161】
したがって、本発明の適した鼻用アプリケーターは、1回以上の用量の関連する組成物自体を収容及び保管することができるか、又は、1回以上の用量の当該組成物を収容及び保管し、水の浸入によるものを含め、組成物の物理的及び化学的完全性の重大な損失がないようにするリザーバー/容器に取り付けることができる必要がある。このようにして、組成物は、アプリケーターデバイスがエンドユーザーによって発動されるとすぐに使用可能になり(これが単回投与又は複数回投与の使用であるかにかかわらず)、その上で、アプリケーターは、本明細書で定義される適切な用量の有効成分を有する組成物(例えば、粉末)を対象の鼻粘膜に送達する。
【0162】
適切なアプリケーター手段は、先行技術に記載されている。本発明の文脈で使用される場合、組成物は、かかる本発明のアプリケーターに取り付けられているか、又はその一部を形成するリザーバーに装填され得、アプリケーター手段、又はディスペンサーが発動されるまでそこに収容される。以下、「アプリケーター」、「ディスペンサー」、「デバイス」、「アプリケーター手段」、「分注手段」、「アプリケーターデバイス」、「分注デバイス」、及び「吸入器」という用語は、交換可能に使用され得、同じことを意味し得る。
【0163】
本発明のアプリケーターの必須要件は、固形の非晶質の単粒子粉末組成物を収容するリザーバーが不透明であることである。本発明のアプリケーターに含まれる組成物の予想外の安定性のために、投与又は使用の前にリザーバーの内容物(すなわち、粉末組成物)を検査する必要はない。これは、EpiPenなどの市販のデバイスとは対照的であり、製品ラベルは、その中に含まれる液体溶液組成物の熱、冷たさ、及び光に対する不安定性を含む非常に正当な理由のために、分注前に内容物の完全性をチェックする必要性を含む。
【0164】
これを考慮すると、本明細書に記載の粉末組成物を収容するリザーバーは、不透明であり得、これは、当業者によって、「透明又は半透明ではない、光を通さない、かつ/又は光が通過することを可能にしない」ことを含むことが理解されるであろう。
【0165】
したがって、本発明のアプリケーターは、アプリケーターのリザーバーの内容物を観察することができる検査ウィンドウを備えず(かつ必要としない)、この点において、それらの特性が完全に不透明であり得、すなわち、少なくとも約99%などの少なくとも約98%、特に約99.9%の不透明であり、かつ/又は約1%以下などの約2%以下、特に約0.1%の透明、半透明、及び/又は光に透過可能であり、リザーバーの内容物の検査を可能にし得る。
【0166】
したがって、かかるアプリケーター手段は、出口(又は分注)手段を介してリザーバーから本明細書に記載の粉末組成物を排出するための機構も含み得、この分注手段は、適切な形状のノズルなど、鼻孔などのヒトの体腔に配置するためのサイズであるあらゆるものを含む。
【0167】
したがって、粉末を排出するための機構は、デバイスを発動させるための手段を含み得、これは、呼吸で作動される発動を含み得るか、又はユーザーによるデバイスの発動時に力を生成するための発動手段を含み得る。
【0168】
したがって、アプリケーターは、治療用量の有効成分を提供する単一の投与ステップで(かつデバイスが「プライミング」を必要としない様式で)再現可能で十分な量の粉末製剤を提供することができる必要がある。
【0169】
更に、本発明のアプリケーターに含まれる組成物の予想外の安定性、及び投与使用前にリザーバーの内容物(すなわち、粉末組成物)を検査する必要がないため、患者がアレルギー反応を有するか、又はそれを有する急性の危険性であるとして特定されるとすぐに、本発明のアプリケーターを使用して、アドレナリン受容体調節剤(例えば、アドレナリン)又はその薬学的に許容される塩を粘膜表面に投与して、当該重篤アレルギー反応を治療又は予防し得る。したがって、上記で特定された投与ステップは、遅延なく、特定ステップの直後に実施され得、この遅延は、
(i)本発明のアプリケーターのリザーバー内に収容された組成物を検査し、かつ
(ii)当該アレルギー反応を効果的に治療するために、関連するアドレナリン受容体調節剤(例えば、アドレナリン)を含有する製剤が患者に安全に投与され得るかどうかを確認するのに、十分な時間を意味する。
【0170】
本明細書に記載の粉末組成物を投与するために用いられ得る鼻用アプリケーター/吸入デバイスは、肺への有効成分の送達の分野で既知の技術に基づいて適合させることができる定量吸入デバイス(MDI)、乾燥粉末吸入デバイス(DPI、低、中、及び高抵抗のDPIを含む)及びソフトミスト吸入デバイス(SMI)などの複数回用量用途を含む。
【0171】
MDIでは、粉末組成物は、噴霧剤などのそれにおいて典型的に用いられる溶剤中に懸濁された場合、安定した懸濁物を形成することができる必要があり、この噴霧剤が、送達デバイスの発動時にエアロゾルを形成するのに十分な蒸気圧を有する(例えば、炭化水素、フルオロカーボン、水素含有フルオロカーボン、又はそれらの混合物)。
【0172】
しかしながら、鼻用アプリケーターが、発動後に組成物が分注され、使用後に廃棄される単回投与アプリケーターである場合、有効成分の単回投与を送達するための適したアプリケーター手段又はデバイスには、呼吸補助式及び吹き込み補助式の考案されたもの(Optinose(登録商標)など)、並びにUS6,398,074、US6,938,798、又はUS9,724,713に記載されるものが含まれ、全ての文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。本出願の図1及び2は、それぞれ、US6,398,074の図1及び図2に基づいており、図3~7は、それぞれ、US9,724,713の図19図23に基づいている。両方とも、粉末組成物を鼻腔内投与するために用いられ得るアプリケーターの図である。
【0173】
図1では、デバイスは、出口チャネル40(すなわち、前述の「出口手段」の一部)と、ユーザーがデバイスを発動させることを可能にする把持手段60とを組み込んだ本体上部/ディスペンサーヘッド1を備える。本体上部/ディスペンサーヘッド1の内側に、参照番号2によってその組み立てが指定された要素が取り付けられ、これは、リザーバー10及び空気ブラスト20のための空気チャンバー22を組み込む。この要素2は、本体1と一体に生成することが可能である。また、本体上部1に対して、及び要素2に対してスライドできるようにするために本体下部3も提供され、ユーザーは、この本体下部に押し力を加えてデバイスを発動させる。
【0174】
リザーバー10は、本明細書に記載の組成物の単回用量を収容する。リザーバー10は、空気入口11及び生成物出口15を有する。空気を透過するグリッドを含む生成物保持デバイス12は、組成物が分注されるまで生成物をリザーバー10内に保持するために、空気入口11内に配置される。生成物出口15は、閉鎖ボール16によって、好ましくはシール様式で遮断され、これは、アプリケーターが発動されて生成物が分注されているときに空気の流れによってその遮断位置から除去される。
【0175】
ユーザーがデバイスを発動させると、ピストン21がチャンバー22に含まれる空気20を圧縮するように、プランジャー25に圧力が加えられる。グリッド12は空気を透過するため、チャンバー22内の空気の圧縮は空気ブラストを生み出し、これがリザーバー10に伝達され、その結果、生成物出口15を遮断している閉鎖ボール16に加えられる。
【0176】
閉鎖ボール16の寸法及びリザーバー生成物出口15でのその固定は、空気20のブラストによってリザーバー10を通して最低限の所定の圧力が生み出されたときに、ボール16がその遮断位置から除去されるようなものである。
【0177】
閉鎖ボール16によって生み出された予圧縮は、ボールがその遮断位置から除去されたときに、ユーザーの手に蓄積されるエネルギーが、プランジャー25と一体のピストン21がチャンバー22内で推進され、それによって、空気20の強力なブラスト、すなわち、粉末組成物の用量を細かく噴霧するのに適した気流を生み出すようなものであることを保証する。
【0178】
この最小圧力に達すると、ボールがデバイスの出口チャネル40に向かって迅速に移動し、ブラストによって生み出された空気20の流れが、リザーバー10内に収容される組成物の用量を実質的に全て排出する。
【0179】
好ましくは、出口チャネル40は、生成物の投与量がボール16の周りを流れることによって出口チャネル40を通って排出されることを可能にするために、閉鎖ボール16の直径よりも大きい直径を有する。発動後の同じデバイスを表す図2に示されるように、チャネル40は、生成物が排出されているときにデバイスからのボールの排出を防ぐために、ボール16を停止又は固定する手段41を備える。
【0180】
本明細書に記載の粉末組成物を鼻腔内投与するために用いられ得る更なる実施形態は、US9,724,713の列7、行50~列8、行61及び図19~23に提供され、本出願の図3~7として再現される。
【0181】
この実施形態では、リザーバー10が、ユーザーがデバイスを発動できるようにする把持手段又はフィンガーレスト60を有するディスペンサー出口チャネル40(すなわち、前述の「出口手段」の一部)を含む本体上部/ディスペンサーヘッド1内に固定される。本体上部/ディスペンサーヘッド1の放射状ショルダー37(図5を参照)は、本体上部/ディスペンサーヘッド1内のリザーバー10の組み立て位置を有利に規定する。
【0182】
機械的開口システムは、ロッド61、62のセットを含み、デバイスが発動されると、第2のロッド部分62が当該第1のロッド部分61に押される。それらの発動ストロークの終わりに、すなわち分注位置において、ロッド61、62のセットは、球形である閉鎖要素16、特に上で考察した第1の実施形態のようなボールと協同作用し、それを閉鎖位置から機械的に排出する。
【0183】
この実施形態では、ピストン21は、第1のロッド部分61から分離されており、空気チャンバー22及び第1のロッド部分61に固定されている円筒面614の両方に対してスライドする。図7は、静止位置にある、図3~6のデバイスの空気エキスペラーの斜視図である。
【0184】
したがって、空気チャンバー22は円筒形であり得、静止位置では、フルーティング又は溝615で周囲の空気と連絡し、このフルーティングは、当該円筒面614に形成され、特に静止位置でピストン21と協同作用する。したがって、ピストン21は、発動中に円筒壁614上を気密様式にスライドし、静止位置で当該フルーティング615と協同作用する内側リップ215を含む。ピストン21はまた、発動中に当該ピストン21を空気チャンバー22内で動かすプッシャー要素25(第1の実施形態では「プランジャー」と呼ばれる)の上縁251と協同作用する軸方向延長部216を含む。
【0185】
保持部材42は、発動中に第1のロッド部分61の上部軸方向端部610と接触する軸方向延長部43によって下向きに延長される。
【0186】
加えて、この実施形態では、本体外部はなく、空気チャンバー22の下部軸方向縁部上に組み立てられたカバー27のみが存在する。
【0187】
発動後に空気エキスペラーが自動的に静止位置に戻るように、空気チャンバー22の放射状フランジ225と、第1のロッド部分61及び円筒面614を形成する部分との間にばね80が提供される。
【0188】
動作原理は次のとおりである。図3の静止位置では、リザーバー10は、保持部材42及び閉鎖要素/ボール16によってシール様式で閉じられている。空気エキスペラーは、ピストン21の内側リップ215と円筒面614のフルーティング615との間の協同作用によって大気に開放されている。
【0189】
デバイスを発動させたい場合、ユーザーはプッシャー要素25を押す。この最初のストロークの間、ピストンの内側リップ215は、フルーティング615を離れて、円筒面614と気密様式に協同作用するようになり、それによって、空気チャンバー22が閉じる。同時に、プッシャー要素25の上縁251が、ピストン21の軸方向延長部216と接触し、第1のロッド部分61の上部軸方向端部610が、保持部材42の軸方向延長部43と接触する。
【0190】
しかしながら、図4に見られるように、第2のロッド部分62の上部軸方向端部621は、依然として、閉鎖要素/ボール16の丸みを帯びた表面55と接触していない。
【0191】
したがって、継続的な発動は、同時に、空気チャンバー内でピストン21を動かし、それによって、そこに含まれる空気を圧縮し、保持部材42を、リザーバー10を閉じる位置から遠ざける。第2のロッド部分62が閉鎖要素/ボール16の丸みを帯びた表面55に接触すると、当該閉鎖要素/ボールは、空気エキスペラーによって圧縮された空気の影響下で組成物が排出され得るように、その閉鎖位置から機械的に排出される。
【0192】
分注位置を図5に示す。図5に見られるように、保持部材42は、空気エキスペラーによって提供される圧縮空気の影響下で組成物が排出されている間に、第1のロッド部分61から離れる可能性がある。この位置では、当該閉鎖要素/ボールは、圧縮空気の影響下で流体又は粉末が分注され得るように、リザーバー10から排出される。したがって、閉鎖要素/ボール16は、本体上部/ディスペンサーヘッド1のスプライン3に詰まり、このスプラインは、特に、当該閉鎖要素/ボール16が当該本体上部ディスペンサーヘッド1から排出される任意のリスクを防止する。
【0193】
図6に示されるように、ユーザーがデバイスを緩めると、発動中に圧縮されていたばね80が、第1のロッド部分61をその静止位置に向けて戻す。これは、閉鎖要素16及び保持部材42をそれらの閉鎖位置に向かって、又はその近くに吸引する吸引力を生み出す。したがって、これにより、空気エキスペラーが自動的に静止位置に戻る間に汚れないように、空のリザーバーが空気エキスペラー上に組み立てられたままの状態で、新しい吸引経路が遮断される。しかしながら、当該内側リップがフルーティング615ともう一度協同作用するようになるまで円筒面614が内側リップ215上をスライドするように、ピストン21は、空気チャンバー22との摩擦及びリザーバー30内に生み出された吸引力の結果としてその分注位置に留まる。この時点で、空気チャンバー22は再び周囲の空気と連絡しており、静止位置に戻ることによる吸引力はもはや生み出されない。したがって、ピストン21はまた、その静止位置に向かって引き込まれる。これにより、使用後にリザーバーを閉じることができる。
【0194】
任意選択で、本体上部/ディスペンサーヘッド1及び空のリザーバー10によって形成されたユニットを、空気エキスペラーから取り外して、満杯のリザーバーを含む新しいユニットと交換することができる。
【0195】
使用できる適切なアプリケーターデバイスには、Aptar Pharma,Franceから入手可能なもの(UDS Monopowder)が含まれる。例えば、国際特許出願第2022/208014号及び同第2021/005311号を参照されたい。本発明による粉末組成物と組み合わせて使用され得るアプリケーターデバイスの他の例としては、米国特許出願第2011/0045088号、米国特許第7,722,566号(例えば、図1及び7を参照)及び同第5,702,362号並びに国際特許出願第2014/004400号に記載されているものが挙げられ、これらの文書の関連する開示は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0196】
本発明の更なる態様によれば、本発明のアプリケーターを製造するためのプロセスが提供され、当該プロセスは、本明細書で定義される当該組成物を当該アプリケーター内にあるか、又はそれに付属するリザーバーに装填するステップを含む。
【0197】
別の態様によれば、本発明による1つ以上の組成物を含む本発明のアプリケーターが提供され、このアプリケーターは、1つ以上の組成物を送達するために1回以上発動され得、各かかる発動で各々が適切な用量の有効成分を含み、そのアプリケーターは、以下を備える:
少なくとも1つの組成物が分注される出口、
ユーザーによるアプリケーターデバイスの発動時に外部から力(例えば、気流)を発生させる手段、
ディスペンサー出口と直接若しくは間接的に連絡しているか、又は連絡するように配置することができる、当該1つ以上の組成物を収容する少なくとも1つの(任意選択で交換可能であり、任意選択で不透明な)リザーバー、
組成物が分注されるまでリザーバー内に1つ以上の組成物を保持するための、アプリケーター及び/又はリザーバーにおける置換可能な、任意選択で可逆的なシール手段、
単回組成物が、アプリケーターが発動されたときに加力手段によって機械的に排出されるように当該シール手段と協同作用する機械的開口システム、並びに
任意選択で、更なる組成物が分注されるまで、更なる組成物をリザーバー内に保持するために、デバイス及び/又はリザーバーを再シールするための機構。
【0198】
本発明のなお更なる態様によって、単回用量の本発明による組成物を含み、その組成物を分注するのに適した本発明のアプリケーターが提供され、このアプリケーターは、以下を備える:
ディスペンサー出口、
静止位置と分注位置との間で空気チャンバー内をスライドするピストンを含む、デバイスが発動している間に空気の流れを発生させるための空気エキスペラー、
当該ピストンは、当該空気チャンバー内で気密様式にスライドする、
当該空気エキスペラーに接続されている空気入口を含む、ある用量の本発明による組成物を収容する少なくとも1つの(例えば、不透明な)リザーバー、
当該ディスペンサー出口に接続されている組成物出口、
組成物が分注されるまでリザーバー内に組成物を保持するための置換可能なシール手段(例えば、保持部材)を含む、当該空気入口、
リザーバーの組成物出口にはめられた閉鎖要素によって閉じられている、当該組成物出口、
アプリケーターが発動している間に閉鎖位置から機械的に閉鎖要素を排出するように当該閉鎖要素と協同作用する機械的開口システムを更に含む当該アプリケーター、及び
静止位置にあるとき、当該空気チャンバーと非気密様式に協同作用する、当該空気エキスペラーの当該ピストン。
【0199】
本発明の後者の態様では、以下のことが好ましい。
(i)当該ピストンが気密様式にスライドする空気チャンバーは実質的に円筒形であり、
(ii)閉鎖要素はリザーバーの組成物出口に圧力ばめされており、
(iii)当該空気チャンバーは静止位置で大気と連絡しており、かつ/又は
(iv)当該ピストンは、円筒面と協同作用するのに適している内側リップを含み、当該円筒面は、静止位置にあるピストンの当該内側リップと非気密様式に協同作用するフルーティングを含む。
【0200】
かかる鼻用アプリケーター又は分注デバイスは、鼻腔(例えば、鼻孔)への当該粉末の効率的な送達を可能にする、適切で再現可能な粉末噴霧パターン及び/又は幾何学的プルーム形状を提供することができる。
【0201】
本発明のアプリケーターで用いられる組成物において、平均粒子サイズは、重量、数、又は体積基準の平均直径として提供され得る。本明細書で使用される場合、「重量基準平均直径」という用語は、平均粒子サイズが、重量による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、ふるい分け(例えば、湿式ふるい分け)によって得られる重量分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。「体積基準平均直径」という用語は、重量基準平均直径と意味が類似しているが、平均粒子サイズが、体積による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、レーザー回折によって測定された体積分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。本明細書で使用される場合、「数基準平均直径」という用語は、平均粒子サイズが、数による粒子サイズ分布、すなわち、各サイズクラスにおける既存の分率(相対量)が、例えば、顕微鏡検査によって測定された数分率として定義される分布から特徴付けられ、かつ定義されることを含むように当業者に理解される。例えば、Malvern Instruments,Ltd(Worcestershire,UK)、Sympatec GmbH(Clausthal-Zellerfeld,Germany)及びShimadzu(Kyoto,Japan)が販売する機器など、この分野で周知の他の機器を用いて、粒子サイズを測定し得る。
【0202】
本発明のアプリケーターで用いられる粉末組成物は、典型的には、約0.5μm(例えば、約1μm)などの約0.2μm~最大約1,000μm(例えば、約400μm又は約500μmなどの最大約500μm)の範囲内の体積基準平均直径(VMD)を有し、かつ適切な粒子サイズ範囲は、かかる組成物を含むことが意図される剤形に基づいて選択され得る。
【0203】
しかしながら、当業者は、効果的な鼻腔内投与を可能にするために、粉末が典型的には約5μm~最大約300μm(例えば、最大約200μm)の範囲内の体積基準平均直径(VMD)を有することを理解するであろう。用いられるアプリケーターデバイスに応じて、VMDは、約20μm~約60μmなど、約10μm~約100μmの範囲であり得る。
【0204】
鼻腔内薬物送達のための好ましい粒子サイズ分布はまた、D10が約10μm超などの約3μm超及び約75μm未満(例えば、最大約50μm)で、D90が約100μm未満などの約80μm~約1,000μm(例えば、約500μm)であるものを含み得る。当業者は、パラメーター「D10」(又は「Dv(10)」)が、それを下回るサイズにサンプル中の材料の総体積の10%が含まれる粒子サイズ分布のサイズ(又は直径)を意味することを理解するであろう。同様に、「D90」(又は「Dv(90)」)は、それを下回るサイズに材料の90%が含まれるサイズを意味する。
【0205】
上記の範囲内の粒子サイズ分布及びVMDを有する粉末とは、バルクVMD及び/又は放出VMD、すなわち、それぞれ、最初にデバイスに装填されたとき及び/又はそこから排出されたときの粒子サイズ分布、を含む。
【0206】
粒子サイズは、Sympatec及びMalvernなどの製造業者から入手可能な乾式分散技法を含む乾式(又は湿式)粒子サイズ測定技法などの標準装置で測定できる。
【0207】
好ましい粒子形状は、球形又は実質的に球形を含み、これは、粒子が約20未満、より好ましくは約4未満などの約10未満、及び特に約2未満のアスペクト比を有し、かつ/又は粒子の少なくとも約90%において、平均値の約30%以下などの平均値の約50%以下、例えば、その値の約20%以下の半径(重心から粒子表面までで測定)の変動を有し得ることを意味する。
【0208】
それでも、粒子は、不規則な形状(例えば、「レーズン」型)、針型、円盤型、又は直方体型の粒子を含む、任意の形状であり得る。非球形粒子の場合、サイズは、例えば同じ重量、体積、又は表面積の対応する球形粒子のサイズとして示され得る。
【0209】
本明細書による鼻用アプリケーターから放出された(分注された)粉末組成物の噴霧角度は、好ましくは約90°未満である必要がある。
【0210】
本明細書において「約」という言葉が、例えば、用量、重量、体積、サイズ、直径、縦横比、角度などの絶対量、又は組成物中の個々の構成要素若しくは組成物の一成分の相対量(例えば、パーセンテージ)(濃度及び比率を含む)、時間枠、及び温度、圧力、相対湿度などのパラメーターなど、量の文脈で用いられる場合、かかる変数は概算であり、したがって、本明細書で指定された実際の数値から±10%、例えば、±5%、及び好ましくは±2%(例:±1%)変動する可能性があることが理解されよう。これは、かかる数字が最初にパーセンテージとして示される場合であっても当てはまる(例えば、「約10%」は、数字10について±10%を意味し得、9%~11%のいずれかである)。
【0211】
本発明の組成物及びそれに収容される組成物は、広い範囲の温度及び/又は相対湿度にわたって保管することができるという利点を有する。したがって、本発明のアプリケーターは、対象に投与される有効成分の量に影響を及ぼすことなく、低温(例えば、氷点下)に供され得る。更に、本発明のアプリケーターは、そこに収容される粉末組成物が、EpiPenなどの関連する従来技術のデバイスよりも、全ての(より高い)温度でより物理的及び化学的に安定であるという利点を有し得る。
【0212】
本発明のアプリケーターは更に、先行技術のアプリケーター又は組成物、例えば、アドレナリンを含むものと比較して有効成分のより高い生物学的利用能を提供するという利点を有し得る。本発明のアプリケーターに含まれる組成物は、より迅速な吸収とともにこのより高い生物学的利用能を提供し得、これは、かかる従来技術及び/又は市販の組成物よりも迅速な作用の開始をもたらす可能性が高く、したがって、重要な医学上の要求を満たす。
【0213】
本明細書に記載のアプリケーター、組成物、使用、及び方法は、関連する有効成分が既知の状態の治療において、鼻腔内などの経粘膜投与若しくはその他の方法による前述の状態の治療における使用のためであるかどうかにかかわらず、先行技術で既知である類似の製剤若しくは方法(治療)よりも、ファーストレスポンダー、医師、及び/若しくは患者にとって便利であり得、効果的であり得、低い毒性であり得、広範囲の活性を有し得、強力であり得、少ない副作用を生成し得、低い患者間変動を有し得るか、又はその類似の製剤若しくは方法(治療)を上回る他の有用な薬理学的特性を有し得るという利点も有し得る。
【0214】
本発明は、図面を参照して、以下の実施例によって示されるが、決して限定されるものではなく、その図1図7は、粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表し、図8は、第I相臨床研究で得られた治療によるエピネフリン血漿濃度対時間(線形スケール、算術平均)を示す。
【図面の簡単な説明】
【0215】
図1図1は粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表す。
図2図2は粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表す。
図3図3は粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表す。
図4図4は粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表す。
図5図5は粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表す。
図6図6は粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表す。
図7図7は粉末組成物を分注するために使用され得る発動装置デバイスの図面を表す。
図8図8は、第I相臨床研究で得られた治療によるエピネフリン血漿濃度対時間(線形スケール、算術平均)を示す。
【0216】
比較例1
噴霧乾燥エピネフリン(アドレナリン)製剤
酒石酸水素アドレナリン(0.729g;Fisher Scientific、Sweden)を、α-D-ラクトース一水和物(0.500g;DFE Pharma、Germany)、マルトデキストリン(Glucidex IT 12DE、1.247g、Roquette、France)、及びショ糖モノラウレートD-1216(0.025g、Mitsubishi-Kagaku Foods Corporation、Japan)とともに、ガラスフラスコに分注し(合計2.50g)、室温で撹拌することによりMQ水(47.50g)に溶解した。
【0217】
得られた混合物を、25kHzで作動する超音波ノズルを備えた噴霧乾燥機(ProCepT、Belgium)に供給した。噴霧乾燥機の供給速度を3.0g/分に設定し、入口温度を180℃に設定し、ガス流量を300L/分に設定し、サイクロンガスを1.5バールに設定した。
【0218】
得られた噴霧乾燥粉末は、25mg粉末中4mgのアドレナリン遊離塩基の名目上用量で、微細で、乾燥した、自由流動性の状態で収集された。
【0219】
乾燥粉末レーザー回折により、粉末を粒子サイズ分布(PSD)について分析した。下の表1に示すように、Mastersizer3000レーザー回折センサー(両方ともMalvern Panalytical、UK)でサイジングする前に、Aero S乾式分散ユニット(0.5バールの圧縮空気を使用)でサンプルを分散させた。
【表1】
【0220】
アドレナリン製剤のPSDは、十分に経鼻投与に適した分布内にあった。
【0221】
噴霧乾燥アドレナリン製剤のアッセイ及び純度は、HPLC/UV分析によって決定された。アッセイは99.7%で、総関連物質(RS%)(すなわち、不純物及び分解生成物)のパーセンテージは、0.29%未満であった。
【0222】
比較例2
噴霧乾燥粉末の化学的安定性
上記の比較例1からの105~115mgの量の噴霧乾燥粉末を、スクリューキャップで閉じた1.5mLのガラスバイアルに分注した。2つのバイアルを40℃及び75%の相対湿度(40/75)で気候キャビネット内に配置し、2つのバイアルを25℃及び60%の相対湿度(25/60)で気候キャビネット内に配置した。各保管条件について、1つのバイアルをそのままキャビネットに置き、更に1つバイアルをヒートシールされたアルミ小袋にパッケージ化した。
【0223】
最大18か月後の原薬の化学的安定性を、RS%として表される不純物及び分解生成物の総量とともに、以下の表2に種々の組成物及びパッケージについて要約し、NAは「分析されていない」を意味する。
【表2】
【0224】
比較例3
アドレナリンの経鼻及び筋肉内投与後のイヌにおける薬物動態研究
この研究の目的は、比較例1の組成物の経鼻投与後、及び水溶液中のアドレナリンの筋肉内投与後の基本的な薬物動態プロファイルを得て評価することであった。
【0225】
この研究は、約15~18か月齢のビーグル犬6頭、3頭の雄、3頭の雌で実施された。イヌは、潜在的な連続効果を補うためにクロスオーバー投薬レジメンで投薬された。投薬は常に朝に実施され、イヌは一晩(最低8時間)絶食させた。水は自由に与え、投与の4時間後に飼料を与えた。
【0226】
各イヌに、比較例1の組成物を4mg/動物(IN4mg)の用量で経鼻投与し、水溶液中のアドレナリン(1mg/mL)を0.3mg/動物(IM0.3mg)の用量で投与した。比較例1の組成物は、Aptar Pharma、France(UDS Monopowder)からの特定の鼻腔内デバイスによって鼻腔内投与された。
【0227】
アドレナリンの水溶液は、左後ろ脚の筋肉組織(大腿四頭筋)に筋肉内投与された。各投与間のウォッシュアウト期間は48時間であった。
【0228】
調査のインビボ部分は、実験目的及びその他の科学目的で使用される脊椎動物の保護に関する欧州条約(ETS No.123)に従って行われた。
【0229】
血液サンプルは、指定された時点で、全てのイヌから頭部前腕又は伏在静脈によって、従来の無菌条件下で収集された。KEDTAを収容するプラスチックVacuette(登録商標)チューブに1mLの体積を収集した。血液サンプルは、+4℃で3500rpmで10分間遠心分離する前に、氷上に維持した。
【0230】
血漿を抽出し、酸化防止剤としてメタ亜硫酸ナトリウムを含む事前にラベル付けされたクライオバイアルに移し、生物分析のために輸送するまで-80℃で保管した。スケジュールされたサンプリング時点は以下のとおりである:投与後-5(投薬前)、2.5、5、10、15、20、30、45、60、及び90分。
【0231】
凍結血漿サンプルは、生物分析のためにRecipharm OT、Uppsala,Swedenに輸送された。アドレナリンの血漿濃度は、重水素化内部標準としてアドレナリン-D6を使用して、0.05~100ng/mLの範囲内でイヌ血漿中のアドレナリンの濃度を測定できるHPLC-MS-MS分析を使用して決定した。分析物を、TCAでのタンパク質沈殿を使用してサンプル血漿から抽出した。遠心分離後、上清を分析に使用した。
【0232】
全てのサンプルは、最初にAcquity HSS T3カラム(2.1mm*100mm、1.7μm)を使用して分析物を分離し、その後、ポジティブエレクトロスプレーイオン化及び多重反応モニタリング(MRM)を使用してそれらを検出することによって分析された。定量化を、0.05~100ng/mLの範囲で実施した。
【0233】
薬物動態パラメーターは、Phoenix WinNonlin(v8.0)を使用した非コンパートメント分析によって計算され、以下の表3に示されている。AUClastは、最大最後のサンプリング点までの血漿濃度対時間の曲線下面積であり、Cmaxは投与後の測定可能な最高濃度であり、tmaxは測定可能な最高濃度までの時間である。表3に示されている値は、N=6の平均値である。
【表3】
【0234】
実施例1
空気中での噴霧乾燥によって生成されるエピネフリン(アドレナリン)製剤
各々、0.364gの酒石酸水素アドレナリンを有し、かつ以下の表4にグラムで示す、それぞれの量の賦形剤ラクトース一水和物、マルトデキストリン(Glucidex IT 12DE)、HPMC(Methocel K3)、ショ糖モノラウレート(D-1216)、メタ重亜硫酸ナトリウム(Merck Chemical&Lifescience AB、Sweden)、及び/又はEDTA二ナトリウム(Titriplex(登録商標)III、Merck Chemical&Lifescience AB、Sweden)を有する乾燥物質組成物を含む8つの水溶液(各50g、それぞれ製剤A~I)を、上記の比較例1に記載の一般的な手順によって噴霧乾燥し、25mgの粉末中に1.0mgの公称用量のアドレナリン遊離塩基を有する、微細で乾燥した自由流動性の粉末を生成した。
【表4】
【0235】
得られた粉末のPSDは、比較例1に記載のように決定され、以下の表5に示され、更に、十分に経鼻投与に適した分布内にあった。
【表5】
【0236】
HPLC/UV分析によって決定された最初のアッセイ及び純度(RS%として表される)を以下の表6に示す。
【表6】
【0237】
種々のアドレナリン製剤を含むバイアルを、4Åモレキュラーシーブ乾燥剤と一緒にヒートシールされたアルミニウム小袋にパッケージ化し、それらを40/75で気候キャビネットに保管することにより、本質的に上記の比較例2に記載のように、化学的安定性実験を実施した。
【0238】
最大12か月後の化学的安定性を、RS%として表される不純物及び分解生成物の総量とともに、以下の表7に種々の組成物について要約する。
【表7】
【0239】
容易に分解されるアドレナリンについて観察されたRS%の変化は、本明細書に記載の様式で製剤化された場合、原薬の化学的安定性が驚くほど良好であることを示している。
【0240】
製剤A~Iのうちの1つ以上を、ヒト患者への投与のために、上記の比較例3に記載のように、Aptar Pharma、France(UDS Monopowder)から特定の鼻腔内デバイスに装填する。
【0241】
実施例2
窒素下での噴霧乾燥によって生成されるエピネフリン(アドレナリン)製剤
各々、0.218gの酒石酸水素アドレナリンを有し、かつ以下の表8にグラムで示す、それぞれの量の賦形剤ラクトース一水和物、マルトデキストリン(Glucidex IT 12DE)、HPMC(Methocel K3)、ショ糖モノラウレート(D-1216)、及び/又はメタ重亜硫酸ナトリウムを有する乾燥物質組成物を含む5つの水溶液(各50g、それぞれ製剤J~N)を、乾燥ガスとして空気の代わりに窒素が用いられたことを除いて、上記の比較例1に記載の一般的な手順によって噴霧乾燥し、25mgの粉末中に1.0mgの公称用量のアドレナリン遊離塩基を有する、微細で乾燥した自由流動性の粉末を生成した。
【表8】
【0242】
HPLC/UV分析によって決定された最初のアッセイ及び純度(RS%として表される)を以下の表9に示す。
【表9】
【0243】
種々のアドレナリン製剤を含むバイアルを、4Åモレキュラーシーブ乾燥剤と一緒にヒートシールされたアルミニウム小袋にパッケージ化し、それらを40/75で気候キャビネットに保管することにより、本質的に上記の比較例2に記載のように、化学的安定性実験を実施した。
【0244】
最大12か月後の化学的安定性を、RS%として表される不純物及び分解生成物の総量とともに、以下の表10に種々の組成物について要約する。
【表10】
【0245】
製剤J~Nのうちの1つ以上を、ヒト患者への投与のために、上記の比較例3に記載のように、Aptar Pharma、France(UDS Monopowder)から特定の鼻腔内デバイスに装填する。
【0246】
実施例3
種々の二糖類及びマルトデキストリンの評価
各々、0.364gの酒石酸水素アドレナリン(Transo Pharm、Taiwan)を有し、かつ以下の表11にグラムで示す、それぞれの量の二糖類(ラクトース一水和物(LT)、トレハロース(TH、Sigma-Aldrich(Merck)、Sweden)ショ糖(SU)、及びマルトース(MT)(両方ともMerck、Germany)、マルトデキストリン(Glucidex IT 6DE、Glucidex IT 12 DE又はGlucidex IT 19 DE、全てRoquette、France)、及びショ糖モノラウレート(D-1216、SM)を有する乾燥物質組成物を含む9つの水溶液(各50g、それぞれ製剤O~W)を、上記の比較例1に記載の一般的な手順によって噴霧乾燥し、25mgの粉末中の1.0mgの公称用量のアドレナリン遊離塩基を有する、微細で乾燥した自由流動性の粉末を生成した。
【表11】
【0247】
種々のアドレナリン製剤を含むバイアルを、4Åモレキュラーシーブ乾燥剤と一緒にヒートシールされたアルミニウム小袋にパッケージ化し、それらを40/75で気候キャビネットに、及び50℃、周囲RHで従来のオーブンに保管することにより、本質的に上記の比較例2に記載のように、化学的安定性実験を実施した。
【0248】
最大1か月(40/70)、及び最大4週間(50℃)後の化学的安定性を、RS%として表される不純物及び分解生成物の総量とともに、以下の表12に種々の組成物について要約する。
【表12】
【0249】
製剤O~Wのうちの1つ以上を、ヒト患者への投与のために、上記の比較例3に記載のように、Aptar Pharma、France(UDS Monopowder)から特定の鼻腔内デバイスに装填する。
【0250】
実施例4
保管の安定性
分析研究所に到着した時点で貯蔵寿命が約9~12か月残っている市販のEpiPen(Meda Pharma GmbH&Co.KG、Germany)を薬局から購入した。
【0251】
化学的安定性実験を、本質的に比較例2に記載のように実施し、40/75で気候キャビネット内にEpiPenを保管した。最大3か月後の化学的安定性を、RS%として表される不純物及び分解生成物の総量とともに、以下の表13に種々の組成物について要約する。
【表13】
【0252】
別個の実験では、3つのEpipen自動注射器、1つはその元のパッケージ内(対照)、1つは外箱が取り外され(元)、1つはプラスチック保護パッケージから剥がされ、製品を収容したガラスシリンジのみが残されて(シリンジのみ)、光ボックスに置かれ、120万ルクスのUV光に18時間曝露された。製剤S(上記の実施例1を参照されたい)、及び製剤W(上記の実施例1の製剤Wと同じ組成を有したが、より大規模に調製された)も、同じ直接光曝露に供された。化学的安定性を、RS%として表される不純物及び分解生成物の総量とともに、以下の表14に種々の組成物について要約する。
【表14】
【0253】
サンプルのナンチオマー純度(Epipen、上記実施例1からの製剤A、及び製剤W(上記参照))もまた、標準的なUSPベースの方法に従って、40/75で最大6か月間保管した後、キラルHPLCによって決定した。
【0254】
(S-アドレナリンの%)として表されるナンチオマー安定性を、以下の表15に種々の組成物について要約する。
【表15】
【0255】
実施例5
トレハロース及び種々のマルトデキストリンを使用したアドレナリンの種々の用量の評価
各々、以下の表16にグラムで示す、それぞれの量の酒石酸水素アドレナリン(Transo Pharm、Taiwan)、トレハロース、マルトデキストリン(Glucidex IT 12 DE又はGlucidex IT 19 DE)、及びショ糖モノラウレート(D-1216)を有する乾燥物質組成物を含む4つの水溶液(各50g、それぞれ製剤X~AA)を、上記の比較例1に記載の一般的な手順によって噴霧乾燥し、25mgの粉末中の1.0mg又は3.0mgの公称用量のアドレナリン遊離塩基を有する、微細で乾燥した自由流動性の粉末を生成した。
【表16】
【0256】
種々のアドレナリン製剤を含むバイアルを、4Åモレキュラーシーブ乾燥剤と一緒にヒートシールされたアルミニウム小袋にパッケージ化し、それらを40/75で気候キャビネットに保管することにより、本質的に上記の比較例2に記載のように、化学的安定性実験を実施した。
【0257】
1か月後の化学的安定性を、RS%として表される不純物及び分解生成物の総量とともに、以下の表17に種々の組成物について要約する。
【表17】
【0258】
製剤X~AAのうちの1つ以上を、ヒト患者への投与のために、上記の比較例3に記載のように、Aptar Pharma、France(UDS Monopowder)から特定の鼻腔内デバイスに装填する。
【0259】
15未満(例えば、6又は12)のDEを有するマルトデキストリンを含む上記の実施例1、2、3、及び5に開示の全ての製剤は、溶液を透明にする40%の二糖類が使用されない限り、目で観察するとわずかに濁っていることが見出された。
【0260】
マルトデキストリンが15を超える(例えば、19)DEを有する上記実施例3及び5に開示の全ての製剤は、目で観察すると濁っていないことが見出された。
【0261】
実施例6
最も低い測定可能なTg値
以下の表18で特定される約6~9mgの様々な製剤のサンプルを個々の示差走査熱量測定(DSC)るつぼに量り、以下のとおり、0%、11%、22%、33%、及び43%のRH条件で開放バイアル内で平衡化させた。
【0262】
0%RH条件の場合、シリカゲル/モレキュラーシーブを用いた乾燥剤を使用した。他の4つのRH条件の場合、飽和塩水溶液を以下のとおり調湿器として使用した:11%RH-LiCl、22%RH-CHCOOK、33%RH-MgCl、43%RH-KCO
【0263】
次いで、各サンプルを蓋で閉じ、変調DSCを使用して分析して、見かけのガラス転移温度(Tg)を決定した。
【0264】
DSCは、Netzsch DSC 204F1機器を使用して実施した。調査した製剤の各々についてのガラス転移温度(Tg値)を、密閉型アンプル又は穿孔蓋(0%RH)を使用して決定した。飽和塩水溶液と一緒に保管された全てのサンプルの密閉パンに密閉蓋を適合させ、圧着した。
【0265】
0%RH条件の場合、器具によって蓋に0.3mmの穴が開けられた蓋を備えた従来のDSCパンを使用した。これは、サンプルが器具内で窒素に囲まれ、加熱段階中に潜在的に吸収された水分が放出される実験中に完全に乾燥状態を促進するために実施された。
【0266】
残りのサンプルの場合、DSCの蓋はDSCの実行中ずっと気密であった。カップ内のサンプルの周囲のガス空間が非常に小さかったため、平衡時の気相中に存在する水の量が厳密に制限され、実験時間が非常に短かったため、より低い温度範囲で全てのTg値の温度が上昇しているにもかかわらず、実験を通してサンプル中に平衡水が維持されていると推測できる。
【0267】
5K/分の平均加熱速度、20秒の変調期間、及び±0.5Kの振幅で変調温度プロファイルを使用して、各サンプルを分析した。開始時の最小温度は0℃であり、最大温度は200℃であった。加熱する前に、温度を0℃で15分間保持した。
【0268】
上記実施例3及び5に従って調製された製剤を分析し、Tg測定値を以下の表18に示す。
【表18】
【0269】
比較として、上記の比較例4に従って調製された製剤Dは、0%RHで78℃、11%THで64℃、及び33%RHで59℃のTgを示した。
【0270】
上記の値は全て許容されるとみなされる。
【0271】
実施例7
鼻腔内投与されたエピネフリン-薬物動態研究(健康なボランティア)
4つの1mgのエピネフリン鼻用粉末製剤(製剤1~4)を、本質的には上記の比較例1に記載のように(噴霧乾燥機の送り速度を4.0g/分に設定したことを除いて)ではあるが、以下の表19に示すように、様々な量のトレハロース及びマルトデキストリンを用いて作製した。
【表19】
【0272】
第I相臨床研究は、参照の市販製品EpiPen(登録商標)に対して、4つのエピネフリン鼻用粉末の生物学的利用能を決定することを主な目的として実施された。(「参照」、エピネフリン、筋肉内注射、0.3mg、Meda AB,Solna、Sweden)。
【0273】
副次的な目的は、追加のPKパラメーターを特徴付けること、治療間の収縮期/拡張期血圧(SBP/DBP)、平均動脈血圧(MAP)、及び心拍数(HR)に対する薬力学的(PD)効果を比較すること、並びに治験製剤の安全性及び忍容性を評価することであった。
【0274】
この研究は、健康な対象におけるエピネフリン筋肉内注射に対する4つの粉末製剤の比較生物学的利用能を評価するためのランダム化シーケンス、単一センター、非盲検、5期間クロスオーバー研究であった。各対象は、製剤1~4の各々、並びにRefを、24時間のウォッシュアウト期間で区切られた、予め設定されたランダム化スケジュールに従って連続で受けた。
【0275】
対象は、関連する治験医薬製品(IMP)又は参照(使用された場合)の最初の用量の投与直前にランダム化された。コンピューターで生成されたランダム化スケジュールを使用して、対象番号を10個の治療シーケンスのうちの1つに割り当てた。
【0276】
最大投薬の28日前までに約65人の対象に対して研究に含めるためのスクリーニングを行った。40人の適格な対象(18~55歳の健康な男性又は妊娠していない、授乳していない、女性で、肥満度指数が18.5~30.0kg/mの対象)が、IMP投与の前夜(-1日目)に臨床ユニットに入院し、最終投与後(5つの治療全てを受けた後)24時間で退院するまで現場に留まった。
【0277】
製剤1~4は、Aptar Pharma、France(UDS Monopowder)からの特定の鼻腔内デバイスによって鼻腔内に投与された。対象は、1、2、3、4、及び5日目の朝に、ロジスティック要件に基づいて適切な対象間の間隔(約10分)でIMP又は参照を受けた。投与日ごとに、交互の鼻孔にIMPを投与した。対象の継続的な健康を確保するために、最終投与の3~5日後にフォローアップの電話が行われた。
【0278】
登録された40人の対象のうち、37~39人が全てのIMP及び参照を受けた。分析の目的のために、37~39人の対象を安全性集団、安全性分析データセット、及びPK集団に含めた。
【0279】
エピネフリンの血漿濃度を、非コンパートメント分析法を使用して分析し、以下に示す標準的なPKパラメーターの推定値が得た:
【表20】
【0280】
以下のパラメーターを使用して、PD効果を分析した。
【表21】
【0281】
安全性パラメーターの評価は、有害事象(AE)、局所忍容性、検査室評価、バイタルサイン、心電図(ECG)、及び身体検査所見の分析で構成されていた。
【0282】
対数変換された曝露パラメーター(AUC及びCmax)を標準的な方法と比較して、相対的生物学的利用能を評価した。単一の混合効果モデルを各パラメーターに適合させて、対象となる全ての治療比較の幾何平均比(GMR)及び対応する信頼区間(CI)の推定値を得た。モデルには、実際に受けた治療、試験日(すなわち期間)並びに固定効果として適合された計画シーケンス及びランダム効果として適合されたシーケンス内の対象のための用語が含まれた。結果は線形スケールに逆変換されて表示された。次の比較が関心のあるものであった。
●参照と比較した相対的生物学的利用能:AUC(0~t)、AUC(0~inf)、及びCmaxのIMP:参照GMRが決定された
●参照と比較した部分的なAUC:s:AUC(0~10)、AUC(0~20)、AUC(0~30)、AUC(0~45)、及びAUC(0~60分)のIMP:参照GMRが決定された
【0283】
PDパラメーターについては、算術平均差及び対応する90%信頼区間を使用して比較を行った。
【0284】
結果
治療ごとの算術平均エピネフリン血漿濃度対時間(線形スケール)を図8に示す。治療ごとの幾何平均エピネフリン血漿濃度対時間(半対数スケール)を以下の表20に記載する。
【表22】
【0285】
相対的生物学的利用能(GMR、CI90%)の分析を以下の表21に示す。
【表23】
【0286】
全てのIMP製剤は、参照と比較して、エピネフリンのより高い全体的な血漿曝露、及び同様又はより高いピーク血漿曝露を示した。
【0287】
以下の表22は、治療ごとのエピネフリン部分AUC(幾何平均として、幾何CV%)の記述的統計を示す。表23は、参照(GMR、90%CI)と比較した、製剤1~4の部分AUCを示す。
【表24】
【表25】
【0288】
全てのIMP製剤は、投薬後の最初の20分後に参照と同等又はより高いエピネフリンの血漿曝露を示した。
【0289】
収縮期(表24)及び拡張期(表25)の血圧に対する全てのIMP製剤及び参照の効果を以下に示す。
【表26】
【表27】
【0290】
それぞれ、以下に、平均動脈血圧に対する全てのIMP製剤及び参照の効果を表26に示し、心拍数に対する効果を表27に示す。
【表28】
【表29】
【0291】
表28~31は、参照(算術平均差、90%CI)と比較した製剤1~4のPDパラメーターを示す。表28は、収縮期血圧(SBP)の比較を示し、表29は拡張期血圧(DBP)について、表30は平均動脈血圧(MAP)について、及び表31は心拍数(HR)について示す。
【表30】
【表31】
【表32】
【表33】
【0292】
SPB、DBP、及びMAP(表28~30)については、AUECパラメーター及びEmaxは、参照と比較して全てのIMPについて有意に高かった(90%CI>0)。HR(表31)については、ほとんどのIMPは、参照と比較してAUECパラメーターが高く、Emaxも高い傾向があった。
【0293】
全てのエピネフリン鼻用粉末製剤(1~4)は、参照よりもエピネフリンの総曝露(AUC(t))が高く、参照と比較してCmaxが同様又はより高かった。Tmaxは、製剤1~4については参照よりも若干低かったが、表23に示されるように、20分後、4つのエピネフリン鼻用粉末製剤は全て、参照と同様又はより高いエピネフリン曝露を有した。
【0294】
エピネフリン鼻用粉末の経鼻投与は、安全であるとみなされ、本試験では重篤な有害事象(AE)は報告されなかった。最も一般的に報告されたAEは、鼻の不快感、鼻痛、頭痛、及び動悸であった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】