IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ テーデーカー エレクトロニクス アーゲーの特許一覧

<>
  • 特表-触覚デバイス 図1
  • 特表-触覚デバイス 図2
  • 特表-触覚デバイス 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】触覚デバイス
(51)【国際特許分類】
   G06F 3/041 20060101AFI20241108BHJP
   G06F 3/01 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G06F3/041 480
G06F3/01 560
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531045
(86)(22)【出願日】2022-11-17
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 EP2022082295
(87)【国際公開番号】W WO2023094262
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】102021130788.0
(32)【優先日】2021-11-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518379278
【氏名又は名称】テーデーカー エレクトロニクス アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100229448
【弁理士】
【氏名又は名称】中槇 利明
(72)【発明者】
【氏名】レンベルク,ヨックム
(72)【発明者】
【氏名】ブルガー,ヨハネス
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルネファー,ヴォルフガング
【テーマコード(参考)】
5E555
【Fターム(参考)】
5E555AA08
5E555BA08
5E555BB08
5E555BC04
5E555CA03
5E555CA17
5E555FA00
(57)【要約】
触覚デバイス(1)であって、可動表面(15)と、可動表面(15)を動作させるためのアクチュエータ(2)と、弾性当接部(7)とを備える。アクチュエータ(2)は、可動表面(15)と弾性当接部(7)との間に配置され、力(F)が可動表面(15)に作用するとき、アクチュエータ(2)の剛性(S)が、第1の力値(F1)を下回る第1の値(S1)を有し、第1の力値(F1)を超えるより大きい値(S2)を有するように構成されており、当接部(7)のばね定数は、第1の剛性値(S1)と第2の剛性値(S2)との間にある値(D)を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚デバイスであって、
可動表面(15)と、
前記可動表面(15)を動作させるためのアクチュエータ(2)と、
弾性当接部(7)とを備え、
前記アクチュエータ(2)は、前記可動表面(15)と前記弾性当接部(7)との間に配置され、
前記可動表面(15)に力(F)が作用するとき、前記アクチュエータ(2)の剛性(S)は、第1の力値(F1)を下回ると第1の剛性値(S1)を有し、前記第1の力値(F1)を上回るとより大きい剛性値(S2)を有するように構成され、
前記弾性当接部(7)のばね定数は、前記第1の剛性値(S1)と前記第2の剛性値(S2)との間にある値(D)を有する、
触覚デバイス。
【請求項2】
前記アクチュエータ(2)の方向における前記可動表面(15)の経路制限(xmax)を含み、
前記経路制限(xmax)は、機械的なストッパ(14)によって画定され、
前記ストッパ(14)の到達の際には前記アクチュエータ(2)の圧縮(Δd)は前記経路制限(xmax)未満である、
請求項1記載の触覚デバイス。
【請求項3】
前記第2の剛性値(S2)は、前記第1の剛性値(S1)の少なくとも2倍の大きさである、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項4】
前記ばね定数(D)は、前記第1の剛性値(S1)の少なくとも1.5倍の大きさであり、前記第2の剛性値(S2)の最大で0.75倍の大きさである、
請求項1乃至3いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項5】
前記アクチュエータ(2)は、トランスデューサ要素(8)と少なくとも1つの支持要素(12、13)とを備え、前記支持要素は、第1の力値(F1)に達する際にトランスデューサ要素(8)で支持される、
請求項1乃至4いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項6】
前記アクチュエータ(2)は、前記アクチュエータ(2)の動作を補強する少なくとも1つの補強要素(9,10)を有し、
前記補強要素(9,10)は、前記支持要素(12,13)を含む、
請求項5記載の触覚デバイス。
【請求項7】
前記弾性当接部(7)は、前記触覚デバイスのハウジング(11)に接続されているか、又は、前記ハウジング(11)の一体てき部分である、
請求項1乃至6いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項8】
前記弾性当接部(7)は、バーとして構成されており、一側で支持されている、
請求項1乃至7いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項9】
ペン形状である、
請求項1乃至8いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項10】
前記アクチュエータ(2)は、可動要素(3)に作用するように構成されており、前記可動要素(3)は、少なくともいくつかの領域においてロッド形状であるように構成されている、
請求項1乃至9いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項11】
ユーザによって保持されるように構成されている、
請求項1乃至10いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項12】
前記アクチュエータ(2)は、センサとしても構成されている、
請求項1乃至11いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項13】
前記可動表面(15)は、ユーザによって触れられるように構成されている、
請求項1乃至12いずれか1項記載の触覚デバイス。
【請求項14】
請求項1乃至13いずれか1項記載の触覚デバイスを製造する方法であって、
2つの予め設定された剛性値(S1、S2)を有するアクチュエータ(2)を設け、
ばね定数(D)を有する弾性当接部(7)は、前記ばね定数(D)が前記アクチュエータ(2)の前記第1の剛性値と前記第2の剛性値と(S1、S2)の間にあるように選択される、
方法。
【請求項15】
前記アクチュエータ(2)の最大圧縮を特定し、
前記可動表面(15)の経路制限(xmax)を機械的なストッパ(14)によって画定し、
前記アクチュエータ(2)の圧縮が、前記ストッパ(14)到達の際に、前記アクチュエータの前記最大圧縮よりも小さくなるように、前記ばね定数(D)を選択する、
請求項14記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、触覚信号を生成する触覚デバイスに関する。かかるデバイスは、可動要素の動きを生成するアクチュエータを有する。可動要素は、例えば、接触感知表面又はペン状デバイスの先端として構成される。アクチュエータは、例えば、圧電アクチュエータ又は電磁アクチュエータである。
【0002】
触覚デバイスは、例えば接触されたときに、触覚信号を生成するように構成され得る。触覚デバイスは、例えば、タッチスクリーン、トラックパッド、押しボタン、またはスタイラス(ペン状デバイス)として構成され得る。特に、触覚デバイスは、自動車又はコンピュータにおいて使用され得る。
【0003】
DE 10 2015 117 262 A1は、圧電アクチュエータを備える触覚デバイスを開示する。US 8,416,066 B2及びWO 2020/011526 A1は、両方ともスタイラスを示す。
【0004】
かかるデバイスでは、一方では、アクチュエータによる効果的な動作を可能にするために、可撓性の可動表面を設計することが必要である。他方、アクチュエータは、例えば衝突又は落下の場合に、可動表面に作用する過度の外力によって損傷を受ける可能性がある。
【0005】
過剰な力から保護するために、触覚デバイスの移動を制限するための機械的なストッパ要素を提供することが知られている。例えば、US 9,379,305 B2は、筐体プレート上のストッパ要素を開示し、US 2012/0248935 A1は、ベースプレート上のストッパ要素を開示し、US 2021/0280768 A1は、移動制限を有するスラストプレートを開示している。
【発明の概要】
【0006】
本発明の課題は、改善された特性を有する触覚デバイスを提供することである。特に、触覚機能を維持しながら過負荷に対する保護が達成されるべきである。
【0007】
本開示の第1の態様によれば、触覚デバイスは、可動表面と、可動表面を動作させるためのアクチュエータとを有する。触覚デバイスは、例えば、タッチスクリーンとして、又はペン型デバイス(スタイラス)として構成される。触覚デバイスは、例えばスタイラスのように、ユーザによって保持されるように構成され得る。かかるデバイスでは、デバイスを落下させることによる損傷のリスクが特に高い。
【0008】
可動表面は、特に、触覚信号を出力するように構成され得る外部表面である。表面は、例えば、タッチスクリーンの表面又はスタイラスの先端などの可動要素の外面である。表面は、直接的に、アクチュエータの表面であり得る。アクチュエータは、例えば、電気信号を変換素子の動き又は変形に変換する圧電又は電磁トランスデューサ要素を有する。
【0009】
アクチュエータは、代替的に又は付加的に、可動表面におよぼされる外力を検出するように構成されたセンサとして構成され得る。特に、アクチュエータは、アクチュエータ及びセンサとして同時に構成され得る。触覚デバイス及びアクチュエータの要素は、センサ機能において変更されずに存在することができる。
【0010】
アクチュエータは、可動表面と弾性当接部との間に配置される。当接部は、特に、アクチュエータを支持し、アクチュエータが拡張するときに反力を生成するように構成される。アクチュエータの剛性挙動と当接部のばね定数とを適切に調整することによって、アクチュエータが過負荷に対してより良好に保護されることが達成され得る。この目的のために、アクチュエータは、アクチュエータの剛性が、可動表面に作用する外力の値に応じて異なる値をとるように構成される。力値が第1の力値を下回る場合、アクチュエータの剛性は第1の値を有する。力値がその力値を上回る場合、アクチュエータの剛性は第1の値よりも大きい第2の値を有する。当接部のばね定数は、第1の剛性値と第2の剛性値との間にある。
【0011】
例えば、ばね定数Dは、第1の剛性よりも少なくとも1.5倍大きい。例えば、ばね定数は、アクチュエータの第1の剛性よりも少なくとも100N/mm大きい。例えば、ばね定数は、第2の剛性よりも最大で0.75倍大きい。例えば、ばね定数は、アクチュエータの第2の剛性よりも少なくとも100N/mm小さい。
【0012】
このようにして、アクチュエータは、触覚機能性を保証するために第1の力値未満で十分に圧縮可能であり得る。特に、触覚デバイスの作動範囲は、第1の力値よりも下回ることができる。弾性当接部は、より大きなばね定数のために、作動範囲における機能性を損なわないか又はわずかにしか損なわない。第1の力値を超えると、ばね定数がアクチュエータの剛性よりも小さいので、当接部の機能が作用し始めることができる。その結果、当接部はより変形し、アクチュエータの圧縮は減少する。
【0013】
例えば、第2の剛性値は、第1の剛性値の少なくとも2倍の大きさである。第2の剛性値はまた、第1の剛性値の少なくとも4倍の大きさであり得る。
【0014】
当接部は、例えば、触覚デバイスのハウジングの縁部に接続される。当接部は、ハウジングの一体的部分として構成することもできる。当接部は、一側のみで支持され、例えば、一側でハウジングに接続され得る。例えば、当接部は、バーの形態で構成される。当接部は、円周方向に、又は2つの対向する側で支持することもできる。当接部は、異なる設計、例えば、ばね要素によって弾性的に取り付けられるプレートであってもよい。
【0015】
触覚デバイスは、機械的ストッパによって画定される、アクチュエータの方向における可動表面の経路制限(Wegbegrenzung)を備えることができる。例えば、ストッパは、ハウジング又はハウジングに固定された部品によって形成される。経路制限、すなわち、静止位置からアクチュエータの方向への表面の最大経路は、ストッパ到達の際の(bei Erreichen des Anschlags)アクチュエータの圧縮よりも大きくなり得る。アクチュエータの圧縮は、ここでは、外力の作用がない場合のアクチュエータの厚さに対するアクチュエータの厚さの変化である。
【0016】
例えば、ストッパ到達の際のアクチュエータの圧縮は、経路限界の半分以下である。例えば、経路制限は0.2~0.5mmの値であり、アクチュエータの圧縮は0.15mm未満である。
【0017】
アクチュエータの剛性の変化は、例えば、第1の力値に達したときにアクチュエータのトランスデューサ要素上に支持される少なくとも1つの支持要素によって達成することができる。例えば、支持要素は、アクチュエータの移動を補強する補強要素の部品である。補強要素は、例えばブラケットの形態である。支持要素は、アクチュエータの方向への補強要素の突出部として構成され得る。第1の力値に達すると、支持要素は、トランスデューサに機械的に衝突することができる。支持要素は、例えば、補強要素の一体的部分であるか又は補強要素に取り付けられ得る。支持要素をトランスデューサ要素に形成することも可能である。
【0018】
本開示のさらなる態様によれば、上述の触覚デバイスを製造する方法が開示される。この方法では、2つの予め設定された剛性値を有するアクチュエータが提供される。弾性当接部は、アクチュエータの剛性値の間にあるばね定数を有するように選択される。
【0019】
さらに、アクチュエータの最大圧縮、すなわち、アクチュエータが損傷しないようにまだ許容される圧縮を決定することができる。可動表面の経路制限は、機械的ストッパによって画定され得る。この場合、ばね定数は、経路制限に達した際に、アクチュエータの圧縮がアクチュエータの最大圧縮よりも小さくなるように選択される。
【0020】
本発明は、いくつかの態様、特にデバイス及び方法を含む。態様の1つについて記載された特徴、特性及び実施形態は、他の態様にも適宜適用されるものとする。
【0021】
さらに、ここで特定された対象の説明は、特定の実施形態に限定されない。むしろ、個々の実施形態の特徴は、技術的に意味がある場合には、互いに組み合わせることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
以下では、ここで述べる態様について、概略的な例を使用してさらに詳しく説明する。
図1図1は、触覚デバイスの一実施形態の断面図を示す図である。
図2図2は、触覚デバイスの実施形態の変位-力の線図を示す図である。
図3図3は、触覚デバイスのさらなる実施形態の断面図を示す図である。
【0023】
好ましくは、以下の図において、同じ参照符号は、様々な実施形態の機能的又は構造的に対応する部分を指す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、触覚デバイス1の実施形態の断面を示す。触覚デバイス1は、ペン形状であり、スタイラスとも称される。触覚デバイス1は、例えば、仮想現実アプリケーション又は拡張現実アプリケーションにおいて、入力及び/又は出力デバイスとして使用され得る。触覚デバイス1は、ユーザのために特定の触覚印象を生成することができる。例えば、触覚デバイス1が表面上を移動しているという印象を作成することができる。表面テクスチャの特定の印象を作成することもできる。
【0025】
この目的のために、触覚デバイス1は、ユーザに触覚的印象を与える動作、動き又は移動(Bewegungen)を生成するように構成されたアクチュエータ2を備える。特に、アクチュエータ2は、振動を発生させるように構成される。
【0026】
アクチュエータ2は、可動表面15の動作を生成するように構成される。可動表面15は、可動要素3の外側表面であり得る。特に、可動表面15は、触覚デバイス1のハウジング11に対して動作可能であるように構成される。例えば、可動要素3は、触覚デバイス1の先端部4を含む。可動要素3は、1つ以上の部品で形成され得る。いくつかのセクションにおいて、可動要素3は、ロッド、特にシャフトの形状を有する。先端部4は、ロッド形状領域の一体的部分であってもよい。先端部4は、表面上を移動することができ、先端部4の移動は、ユーザにおいて表面テクスチャの印象を生成することができる。スタイラスに可動表面15と可動要素3とを配置して、ユーザが可動表面15に直接接触することも可能である。この場合、例えば、可動表面15は触覚デバイス1の側に配置され、アクチュエータ2は、相応に回転して配向される(entsprechend gedreht orientiert)。
【0027】
アクチュエータ2の動作は、第1の接触表面5を介して可動要素3に伝達される。アクチュエータ2の第2の接触表面6は、弾性当接部7と接触している。アクチュエータ2が膨張すると、対抗力(gegengleiche Kraefte)が接触表面5、6に作用する。弾性当接部7は、ハウジング11に固定的に接続されてもよく、又はハウジング11の一体的部分であってもよい。
【0028】
アクチュエータ2は、電気信号が印加されると、例えば変形、膨張、又は収縮などの動きを実行するトランスデューサ要素8を有する。例えば、トランスデューサ要素8は、圧電要素として構成される。これは、圧電セラミック素子であってもよい。特に、それは多層要素であり得る。また、トランスデューサ要素8を別の方法で、例えばボイスコイル(Voice Coil)(可動コイルアクチュエータ(Schwingspulen-Stellglied))などの電磁アクチュエータとして設計することも可能である。
【0029】
アクチュエータ2は、動作、特に振動の大きさを増幅するための補強要素9も備える。補強要素9は、例えば、シートメタルとして構成される。補強要素9は、トランスデューサ要素3の縁部に取り付けられる。補強要素9は、中央領域において、可動要素3に作用するように構成された第1の接触表面5を備える。補強要素9の中央領域は、トランスデューサ要素8から離間しており、トランスデューサ要素8に対して移動することができる。軸方向に沿ったトランスデューサ要素8の動きは、補強素子9によって補強され得る。補強要素9は、例えば、ブラケット又は円錐台の形態で構成される。
【0030】
アクチュエータ2は、トランスデューサ要素9に対向する側に、さらなる補強要素10を有する。さらなる補強要素10は、当接部7に対する接触面6を備える。
【0031】
接触表面5、6の間の距離は、アクチュエータ2の厚さdを画定する。アクチュエータ2の圧縮Δdは、可動要素6に作用する外力がない場合、すなわち触覚デバイスが静止している場合の厚さと比較した厚さの変化である。アクチュエータ2が作動中に振動する場合、厚さはアクチュエータの平均厚さである。
【0032】
例えば触覚デバイス1が衝突又は落下したときに可動表面15に作用する過度の力Fは、アクチュエータ2を損傷させる可能性がある。例えば、アクチュエータ2は、先端部4が落下した場合に先端部4に衝突することがある。特に、アクチュエータ2の圧縮Δdが強すぎる場合には、損傷が生じる可能性がある。例えば、過度の圧縮Δdは、補強要素9, 10の損傷、又は、トランスデューサ要素8への取り付けの障害をもたらす可能性がある。
【0033】
圧縮を制限するために、触覚デバイス1は、一方では、アクチュエータ2の方向における可動要素3及び可動表面15の最大経路(maximalen Weg)を制限するための機械的ストッパ14を有することができる。しかしながら、一方ではアクチュエータ2が損傷する前に確実に機能し、同時に触覚機能を損なわない経路制限は、かかるストッパ14ではしばしば技術的に実現不可能であることが多いことが判明している。例えば、ストップ14は、アクチュエータ2の最大許容圧縮Δdmaxよりも著しく大きい可動要素3の経路を許容しなければならないことが必要な場合がある。例えば、可動表面15及び可動要素3の最大経路xmaxは0.3mmであり、最大許容圧縮Δdmaxは0.15mmである。
【0034】
アクチュエータ1の圧縮を制限するために、当接部7は、ばね要素として構成される。例えば、当接部7は、板ばねとして構成される。当接部7は、例えば、バー形状を有する。当接部7は、ハウジング11の縁部に固定されている。例えば、当接部7は、ハウジング11の一側にのみ固定される。当接部7は、ハウジング11の一体的部分であってもよい。また、当接部7をハウジング11に固定することも可能である。例えば、当接部7は、金属で形成されている。
【0035】
当接部7は、意図された作動範囲においてアクチュエータ2の剛性よりも大きい値のばね定数Dを有する。例えば、ばね定数Dは300 N/mmである。
【0036】
例えば、アクチュエータ2は、作動範囲内で(im Betriebsbereich)剛性S1を有する。特に、アクチュエータの剛性は、接触面5、6間の距離dに応じた接触表面5、6上の法線力の導関数の形態の差分剛性(eine differentielle Steifigkeit)である。剛性は、特定の距離範囲において一定値を有することができる。剛性は連続的に変化することも可能である。
【0037】
意図された作動範囲は、可動表面15にかかる力の第1の値F1によって画定される。力が値F1以下である限り、触覚デバイスは、触覚信号が出力されるべき作動範囲内にある。
【0038】
アクチュエータ2の剛性S1は、作動範囲において、当接部7のばね定数Dよりも低いので、アクチュエータ2は、力が加えられると、主に圧縮され、一方、当接部7は、わずかに変形されるだけである。当接部7のばね定数Dが作動範囲においてアクチュエータ2の剛性S1よりも大きいという事実は、アクチュエータ2の機能性が損なわれないか又はわずかにしか損なわれないことを意味する。例えば、ばね定数Dは、アクチュエータ2の第1剛性S1よりも少なくとも100N/mm大きい。例えば、ばね定数Dは、第1の剛性S1よりも少なくとも1.5倍大きい。
【0039】
アクチュエータ2は、第1の力値F1を上回るとき、アクチュエータ2の剛性が当接部7のばね定数よりも大きい値S2を有するように構成される。このようにして、アクチュエータ2の圧縮が低減され、当接部7のより大きな変形が達成される。
【0040】
異なる力範囲において剛性を調整するために、アクチュエータ1は、1つ以上の支持要素12、13を有する。例えば、支持要素12、13は、それぞれの接触表面5、6よりもトランスデューサ要素8の近くに配置されている。支持要素12、13は、補強要素9、10に一体化され得る。例えば、支持要素12,13は、補強要素9,10の凹部として形成され、補強要素9,10のトランスデューサ要素8からの距離を減少させる。例えば、接触面5、6の近傍では、距離が減少する。
【0041】
外力が第1の値F1から(ab einem ersten Wert F1)可動要素3に作用し、したがってアクチュエータに一定の圧縮がかかると、支持要素12、13がトランスデューサ要素8と接触する。これにより、アクチュエータ1の剛性が第1の値S1から第2の値S2まで増加することになり、したがって、アクチュエータ1をさらに圧縮することがより困難になる。
【0042】
値S2は、ばね定数Dよりも大きい。例えば、S2は、S1の2倍以上である。例えば、S2>2×S1である。S2は、S1の少なくとも4倍の大きさであり得る。例えば、S2>4×S1である。このようにして、第1の力値F1を超えた場合に、アクチュエータ2のさらなる圧縮が著しく低減されることを確実にすることができる。
【0043】
可動要素3がストッパ14と接触すると、可動要素3とハウジング11との間に経路制限が作用する。例えば、ストッパ14は、第2の力F2=50Nで可動要素3に作用する。可動要素3及びストッパ14の変形可能性によって本質的に決定される経路制限の剛性S3は、S2よりも大きい。例えば、剛性S3は、S2の少なくとも2倍である。
【0044】
全体として、当接部7と、アクチュエータ3の剛性値を調整と、を使用することによって、経路制限が作用するまで可動表面15の経路を十分に大きくすることができ、その結果、触覚機能が損なわれず、同時に、過負荷に対するアクチュエータ2の効果的な保護が達成されることを実現することができる。
【0045】
特定の実施形態において、触覚デバイス1は、特に図1に示されるように、スタイラスとして構成される。アクチュエータ2は、圧電アクチュエータとして構成されている。例えば、アクチュエータは、7×3.75×1.3mm(長さ×幅×高さ)の寸法を有する。アクチュエータ2の剛性の増大は、例えば、第1の力F1=5Nで達成される。
【0046】
図2は、触覚デバイスの様々な構成要素の移動又は圧縮の変位-力の線図を示す。経路xはmmで与えられ、可動要素6又は先端4にかかる外部からの力FはNで与えられる。
【0047】
作動範囲において、すなわち、F1以下の力Fが加えられるとき、アクチュエータ2の剛性S1は低い値にあり、その結果、アクチュエータ2は高度に圧縮される。圧縮曲線Δdの勾配は、本質的に剛性S1によって決定される。
【0048】
F1以上の値の力Fが加えられると、アクチュエータ2の剛性が増加する。剛性の増大は、支持要素12、13がトランスデューサ要素8に当接すること(das Anliegen)によって達成され得る。剛性の増大は、補強要素9,10の他の幾何学的形状によっても達成することができる。F1よりも大きな力が加えられると、アクチュエータ2の剛性は、当接部7のばね定数よりも大きくなる。アクチュエータ2の圧縮Δdは、力が増加するにつれて、この領域においてわずかに増加するだけである。その代わりに、当接部7はより変形する。
【0049】
力値F2に達すると、機械的ストッパ14が可動要素3に作用する。アクチュエータ2の圧縮Δdは、力が増加するときに最小限に増加するだけである。特に、非常に大きな力が作用した場合でも、圧縮Δdは、例えば、ストッパまでの可動部3の経路が著しく大きく、例えば0.3mm以上であっても、0.15mmの最大圧縮Δd未満に留まる。
【0050】
また、線図には、力Fの方向における、当接部7の変形xWの過程、特に、第2の接触表面6が当接する当接部7の中央領域の移動が示されている。さらに、力Fの方向における可動表面15又は可動要素3の経路xBが示されている。F2以上の力では、可動要素3は、ストッパ14と接触し、その結果、さらなる変位は、構成要素を変形させることによってのみ達成され得る。例えば、可動表面15又は可動要素3又はストッパ14の湾曲又は変形がここで起こる。
【0051】
アクチュエータ3及び当接部7に作用する力FAも示されている。ここでも、ストッパにより、外力Fの値F2から力FAがわずかに増加するだけであることがわかる。
【0052】
アクチュエータにかかる圧縮力は、弾性当接部7と、アクチュエータ2の剛性値S1、S2の設定とによって制限することができる。例えば、400Nの外力が可動要素3に作用しても、アクチュエータ2にかかる圧縮力は80N未満のままである。
【0053】
図3は、触覚デバイス1のさらなる実施形態を示す。ここでも、アクチュエータ2は、可動要素3と弾性当接部7との間に配置されている。当接部7は、ハウジング11の縁部に保持されている。例えば、当接部7は、バー又はディスクの形態である。アクチュエータ2は、図1に示される実施形態のように構成され得る。特に、アクチュエータ2は、第1の力値F1でその剛性を増加させるように構成される。この目的のために、アクチュエータ2は、補強要素8、9に一体化され得る支持要素12、13を備える。
【0054】
図3に示される実施形態とは対照的に、触覚デバイス1は、スタイラスの形態ではなく、触覚タッチ表面、例えば、タッチスクリーン(Touchscreen)又は押しボタンを有するように構成される。特に、可動要素3は、ユーザによって、信号入力又は応答受信のために、指又は入力機器でタッチされるように設計された可動表面15を有する。例えば、ユーザは指で押すことによって入力を行うか、又は、触覚信号、特に入力に対する触覚応答を受信する。
【0055】
ここでも、機械的なストッパ14が、可動要素3の経路を制限するために使用される。例えば、経路制限はxB=0.3mmである。経路制限は、例えば、力F2=50Nで到達される。
【0056】
例えば、アクチュエータ2は、12×4×1.75mm(長さ×幅×高さ)の構成要素寸法を有する。アクチュエータの第1の剛性S1は、例えば100N/mmである。第1の値F1の所定の外力Fで、アクチュエータの剛性は、例えば、値S2=1800N/mmまで増加する。例えば、第1の値F1は8Nである。当接部7のばね定数Dは、剛性値S1とS2との間にある。例えば、ばね定数Dは300N/mmである。
【符号の説明】
【0057】
1 触覚デバイス(Haptik-Vorrichtung)
2 アクチュエータ(Aktuator)
3 可動要素(bewegliches Element)
4 先端(Spitze)
5 第1接触面(erste Kontaktflaeche)
6 第2接触面(zweite Kontaktflaeche)
7 当接部(Widerlager)
8 トランスデューサ要素(Wandlerelement)
9 補強要素(Verstaerkungselement)
10 さらなる補強要素要素(weiteres Verstaerkungselement)
11 ハウジング(Gehaeuse)
12 支持要素(Stuetzelement)
13 支持要素(Stuetzelement)
14 ストッパ(Anschlag)
15 可動表面(bewegliche Oberflaeche)
d 厚さ(Dicke)
Δd 圧縮(Kompression)
Δdmax 最大圧縮(maximale Kompression)
S 剛性(Steifigkeit)
S1 第1の剛性値(erster Steifigkeitswert)
S2 第2の剛性値(zweiter Steifigkeitswert)
D ばね定数(Federkonstante)
F1 第1の力値(erster Kraftwert)
F2 第2の力値(zweiter Kraftwert)
xW 当接部経路(Weg Widerlager)
xB 可動部経路(Weg bewegliches Teil)
F 外側からの力(Kraft von aussen)
FA アクチュエータにかかる力(Kraft auf Aktuator)
S3 剛性ストッパ(Steifigkeit Anschlag)
xmax 経路制限(Wegbegrenzung)
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
触覚デバイスであって、
可動表面と、
前記可動表面を動作させるためのアクチュエータと、
弾性当接部とを備え、
前記アクチュエータは、前記可動表面と前記弾性当接部との間に配置され、
前記アクチュエータの剛性は、前記可動表面に力が作用するとき、第1の力値を下回ると第1の剛性値を有し、前記第1の力値を上回るとより大きい第2の剛性値を有するように構成され、
前記弾性当接部のばね定数は、前記第1の剛性値と前記第2の剛性値との間にある値を有する、
触覚デバイス。
【請求項2】
前記アクチュエータの方向における前記可動表面の経路制限を含み、
前記経路制限は、機械的なストッパによって画定され、
前記ストッパに到達する際に前記アクチュエータの圧縮は前記経路制限未満である、
請求項1記載の触覚デバイス。
【請求項3】
前記第2の剛性値は、前記第1の剛性値の少なくとも2倍の大きさである、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項4】
前記ばね定数は、前記第1の剛性値の少なくとも1.5倍の大きさであり、前記第2の剛性値の最大で0.75倍の大きさである、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項5】
前記アクチュエータは、トランスデューサ要素と少なくとも1つの支持要素とを備え、前記支持要素は、前記第1の力値に達する際にトランスデューサ要素で支持される、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項6】
前記アクチュエータは、前記アクチュエータの動作を補強する少なくとも1つの補強要素を有し、
前記補強要素は、前記支持要素を含む、
請求項5記載の触覚デバイス。
【請求項7】
前記弾性当接部は、前記触覚デバイスのハウジングに接続されているか、又は、前記ハウジングの一体てき部分である、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項8】
前記弾性当接部は、バーとして構成されており、一側で支持されている、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項9】
ペン形状である、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項10】
前記アクチュエータは、可動要素に作用するように構成されており、前記可動要素は、少なくともいくつかの領域においてロッド形状であるように構成されている、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項11】
ユーザによって保持されるように構成されている、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項12】
前記アクチュエータは、センサとしても構成されている、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項13】
前記可動表面は、ユーザによって触れられるように構成されている、
請求項1又は2記載の触覚デバイス。
【請求項14】
請求項1又は2記載の触覚デバイスを製造する方法であって、
2つの予め設定された剛性値を有する前記アクチュエータを設け、
ばね定数を有する前記弾性当接部は、前記ばね定数が前記アクチュエータの前記第1の剛性値と前記第2の剛性値との間にあるように選択される、
方法。
【請求項15】
前記アクチュエータの最大圧縮を特定し、
前記可動表面の経路制限を機械的ストッパによって画定し、
前記ストッパに到達する際に、前記アクチュエータの圧縮は前記アクチュエータの前記最大圧縮よりも小さくなるように、前記ばね定数を選択する、
請求項14記載の方法。
【国際調査報告】