(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】多機能性ラジカルスカベンジャー、これを備える高分子電解質膜、触媒層、膜-電極アセンブリ、及び燃料電池
(51)【国際特許分類】
H01M 8/1051 20160101AFI20241108BHJP
H01M 8/10 20160101ALI20241108BHJP
H01M 4/86 20060101ALI20241108BHJP
H01M 4/88 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M8/1051
H01M8/10 101
H01M4/86 M
H01M4/86 B
H01M4/88 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531072
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2022018634
(87)【国際公開番号】W WO2023096355
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10-2021-0167446
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518215493
【氏名又は名称】コーロン インダストリーズ インク
(74)【代理人】
【識別番号】100083138
【氏名又は名称】相田 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100189625
【氏名又は名称】鄭 元基
(74)【代理人】
【識別番号】100196139
【氏名又は名称】相田 京子
(74)【代理人】
【識別番号】100199004
【氏名又は名称】服部 洋
(72)【発明者】
【氏名】キム ジョンホ
(72)【発明者】
【氏名】キム ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ソン カヨン
(72)【発明者】
【氏名】コン ナコン
(72)【発明者】
【氏名】イ ユンス
(72)【発明者】
【氏名】キム ヒョンス
(72)【発明者】
【氏名】イ ジュソン
(72)【発明者】
【氏名】ナム キョンシク
(72)【発明者】
【氏名】パク チャンミ
【テーマコード(参考)】
5H018
5H126
【Fターム(参考)】
5H018AA06
5H018BB12
5H018DD08
5H018EE02
5H018EE03
5H018EE04
5H018EE06
5H018EE11
5H018EE12
5H018HH03
5H126AA05
5H126BB06
5H126FF04
5H126GG02
5H126GG06
5H126GG11
5H126GG12
5H126HH08
5H126JJ03
(57)【要約】
耐久性が改善され、放熱機能を有する多機能性ラジカルスカベンジャーが提供される。本発明に係る多機能性ラジカルスカベンジャーは、第1のラジカルスカベンジャー(radical scavenger)及び前記第1のラジカルスカベンジャーの表面上にコーティングされた機能性ナノシート層を備え、前記機能性ナノシート層は、少なくとも2つ以上の層を備え、前記少なくとも2つ以上の層は、機能性ナノシートを備える。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のラジカルスカベンジャー(radical scavenger)と、
前記第1のラジカルスカベンジャーの表面上にコーティングされた機能性ナノシート層と、
を備え、
前記機能性ナノシート層は、
少なくとも2つ以上の層を備え、
前記少なくとも2つ以上の層は、
機能性ナノシートを備える多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項2】
前記第1のラジカルスカベンジャーは、
遷移金属、遷移金属のイオン、遷移金属の酸化物、遷移金属の錯体(complex)、貴金属、貴金属のイオン、貴金属の酸化物、貴金属の錯体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つである請求項1に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項3】
前記遷移金属は、
セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、チタニウム(Ti)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、及びネオジム(Nd)からなる群より選ばれるいずれか1つである請求項2に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項4】
前記貴金属は、
銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)からなる群より選ばれるいずれか1つである請求項2に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項5】
前記機能性ナノシートは、
グラフェンナノシート(Graphene nanosheet)、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C
3N
4 nanosheet)、六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含む請求項1に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項6】
前記少なくとも2つ以上の層は、
第1の層と、
前記第1の層上に配置された第2の層と、
を備える請求項1に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項7】
前記第1の層は、
グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C
3N
4 nanosheet)または六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)を備える請求項6に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項8】
前記第1の層は、
グラフェンナノシートをさらに備え、
前記グラフェンナノシートは、
前記グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C
3N
4 nanosheet)及び六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)のうち、少なくともいずれか1つと混合されるものである請求項7に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項9】
前記第2の層は、
グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C
3N
4 nanosheet)、グラフェンナノシート、六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含む請求項6に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項10】
前記第1の層の厚みは、0.1~30nmであり、
前記第2の層の厚みは、0.1~30nmである請求項6に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項11】
前記機能性ナノシートは、長さが30~300nmである請求項1に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項12】
前記機能性ナノシート層は、
共鳴音響混合器(Resonant Acoustic Mixer)を利用して製造されるものである請求項1に記載の多機能性ラジカルスカベンジャー。
【請求項13】
請求項1に記載の多機能性ラジカルスカベンジャーを備える高分子電解質膜。
【請求項14】
請求項1に記載の多機能性ラジカルスカベンジャーを備える触媒層。
【請求項15】
請求項13に記載の高分子電解質膜を備える膜-電極アセンブリ。
【請求項16】
請求項14に記載の触媒層を備える膜-電極アセンブリ。
【請求項17】
請求項15又は16に記載の膜-電極アセンブリを備える燃料電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多機能性複合保護膜を備えた多機能性ラジカルスカベンジャー、これを備える高分子電解質膜、触媒層、膜-電極アセンブリ、及び燃料電池に関し、より具体的に、耐久性が改善され、放熱機能を有する多機能性ラジカルスカベンジャー、これを備える高分子電解質膜、触媒層、膜-電極アセンブリ、及び燃料電池に関する。
【背景技術】
【0002】
膜-電極アセンブリ(Membrane-Electrode Assembly:MEA)とセパレータ(separator)とからなる単位セル(unitcell)の積層構造を利用して電気を発生させる高分子電解質膜燃料電池(Polymer Electrolyte Membrane Fuel Cell:PEMFC)は、高いエネルギー効率性と環境にやさしい特徴により、化石エネルギーに代えることができる次世代エネルギー源として注目されている。
【0003】
膜-電極アセンブリは、一般に、酸化極(または、アノード電極)、還元極(または、カソード電極)、及びこれらの間の高分子電解質膜(Polymer Electrolyte Membrane)を備える。
【0004】
水素ガスのような燃料が酸化極に供給されれば、酸化極では、水素の酸化反応により水素イオン(H+)と電子(e-)とが生成される。生成された水素イオンは、高分子電解質膜を介して還元極に伝達され、生成された電子は、外部回路を介して還元極に伝達される。酸素を含む空気が供給される還元極では、前記酸素の還元反応が起こる。すなわち、酸素は、水素イオン及び電子と結合して水を生成する。
【0005】
特に、高分子電解質膜は、高分子電解質膜燃料電池の性能及び寿命に莫大な影響を及ぼす。したがって、燃料電池の駆動による高分子電解質膜の劣化(degradation)を防止することが燃料電池の性能及び寿命向上に極めて重要である。
【0006】
燃料電池が駆動するときに発生する酸素ラジカルが前記高分子電解質膜の劣化の主要原因として知られている。例えば、還元極での酸素の還元反応中に過酸化水素(H2O2)が生成され、この過酸化水素から過酸化水素ラジカル(hydroperoxyl radical)(HO2・)及び/又は水酸化ラジカル(hydroxyl radical)(・OH)が生成され得る。また、前記還元極に供給される空気中の酸素が高分子電解質膜を通過して酸化極に到達する場合、前記酸化極でも過酸化水素が生成されて、過酸化水素ラジカル及び/又は水酸化ラジカルを引き起こすことができる。このような酸素ラジカルは、高分子電解質膜に含まれているイオン伝導体の劣化を引き起こして、前記高分子電解質膜のイオン伝導度を低下させる。
【0007】
酸素ラジカルのためのイオン伝導体の劣化を防止するために、前記酸素ラジカルを除去できるラジカルスカベンジャー(radical scavenger)の導入が提案された。しかし、粒子形態で電解質膜内または電極スラリー内に分散される前記ラジカルスカベンジャーは、燃料電池の運転中にラジカルを除去できる単一機能だけを表すという限界点があった。
【0008】
例えば、本出願人により公開された国際公開番号WO2020/226449 A1は、ラジカル捕獲粒子の表面上に多孔性保護膜を備え、前記多孔性保護膜がシリカ、炭素窒化物、ヘテロ原子がドーピングされたグラフェン、ポルフィリン系化合物、フェナジン系化合物、及びこれらの誘導体からなる群より選ばれる少なくとも1つの高酸化安定性物質を含む点を具体的に開示している。しかし、前記多孔性保護膜は、燃料電池駆動中、ラジカル捕獲粒子から由来する金属イオンの溶出が放出されることを防止することにより、燃料電池の寿命を長期間の間維持する技術的課題にのみ偏り、多機能性ラジカルスカベンジャーを提供できないという限界点があった。また、前記多孔性保護膜のうち1つであるg-C3N4層は、前駆体溶液を熱処理してバルク(bulk)形態に形成され、ラジカルスカベンジャーの酸素ラジカル捕獲機能が落ちるという限界点があった。また、前記公開特許は、ラジカル捕獲粒子の表面にコーティングされた2つ以上の複合膜が機能性ナノシートを備える点を一切開示できていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記限界点を解決するためのものであって、ラジカルスカベンジャーの表面上にコーティングされた機能性ナノシート層を介して、耐久性が改善され、放熱機能を有する多機能性ラジカルスカベンジャーを提供することにある。
【0010】
本発明の他の目的は、2つ以上の機能性ナノシート層が複合された保護層を形成することにより、膜-電極アセンブリの化学的耐久性及び放熱性能を共に改善する多機能性ラジカルスカベンジャーを提供することにある。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、共鳴音響混合器(Resonant Acoustic Mixer;RAM)を利用してラジカルスカベンジャーの表面上に機能性ナノシート層が容易にコーティングされるようにする多機能性ラジカルスカベンジャーの製造方法を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、前記多機能性ラジカルスカベンジャーを備える高分子電解質膜を提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、前記多機能性ラジカルスカベンジャーを備える触媒層を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、前記高分子電解質膜を備える膜-電極アセンブリを提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、前記触媒層を備える膜-電極アセンブリを提供することにある。
【0016】
本発明のさらに他の目的は、前記膜-電極アセンブリを備える燃料電池を提供することにある。
【0017】
本発明の目的は、以上で言及した目的に制限されず、言及されていない本発明の他の目的及び長所は、下記の説明により理解されることができ、本発明の実施形態により、さらに明らかに理解されるであろう。また、本発明の目的及び長所は、請求の範囲に表した手段及びその組み合わせにより実現され得ることが容易に分かるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するための本発明の一実施形態は、第1のラジカルスカベンジャー(radical scavenger)及び前記第1のラジカルスカベンジャーの表面上にコーティングされた機能性ナノシート層を備え、前記機能性ナノシート層は、少なくとも2つ以上の層を備え、前記少なくとも2つ以上の層は、機能性ナノシートを備える、多機能性ラジカルスカベンジャーを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の一側面(aspect)によれば、耐久性が改善され、放熱機能を有する多機能性ラジカルスカベンジャーを提供できる。このような多機能性ラジカルスカベンジャーを介して、化学的耐久性が改善され、燃料電池駆動の際に発生する熱を外部に効果的に放出して燃料電池の寿命を延長させることができる膜-電極アセンブリを提供できる。
【0020】
上述した効果とともに、本発明の具体的な効果は、以下において、発明を実施するための具体的な内容を説明しつつ、共に記述する。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る膜-電極アセンブリの断面図である。
【0022】
【
図2】本発明の一実施形態に係る燃料電池を説明するための模式図である。
【0023】
【
図3】本発明の一実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーのTEM写真である。
【0024】
【
図4】本発明の他の実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーのTEM写真である。
【0025】
【
図5】本発明のさらに他の実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーのTEM写真である。
【0026】
【
図6】本発明の一実施形態に係る膜-電極アセンブリの化学的耐久性評価結果である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の各構成をより具体的に説明するが、これは、1つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容により制限されない。
【0028】
本発明の一側面による多機能性ラジカルスカベンジャーは、第1のラジカルスカベンジャー(radical scavenger)及び前記第1のラジカルスカベンジャーの表面上にコーティングされた機能性ナノシート層を備える。前記機能性ナノシート層は、少なくとも2つ以上の層を備え、前記少なくとも2つ以上の層は、機能性ナノシートを備える。本発明の一側面(aspect)によれば、耐久性が改善され、放熱機能を有する多機能性ラジカルスカベンジャーを提供できる。このような多機能性ラジカルスカベンジャーを介して、化学的耐久性が改善され、燃料電池駆動の際に発生する熱を外部に効果的に放出して燃料電池の寿命を延長させることができる膜-電極アセンブリを提供できる。本発明の他の側面によれば、単一層構造を有する機能性ナノシート層に対して少なくとも2つ以上の多重層構造を有する機能性ナノシート層がラジカルスカベンジャーの表面上に形成されることにより、長い時間が経過しても高い電圧維持率を表すことができる。
【0029】
以下では、本発明の構成をより具体的に説明する。
【0030】
1.多機能性ラジカルスカベンジャー及びその製造方法
【0031】
本発明の一実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーは、第1のラジカルスカベンジャーを備える。前記第1のラジカルスカベンジャーは、酸素の還元反応中に生成された過酸化水素から由来した酸素ラジカルを除去できる。
【0032】
前記第1のラジカルスカベンジャーは、例えば、遷移金属、遷移金属のイオン、遷移金属の酸化物、遷移金属の錯体(complex)、貴金属、貴金属のイオン、貴金属の酸化物、貴金属の錯体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。ただし、本発明の技術思想がこれに制限されるものではなく、酸素ラジカルを捕獲できる粒子形態であれば、全て適用されることができる。
【0033】
前記遷移金属は、セリウム(Ce)、マンガン(Mn)、タングステン(W)、コバルト(Co)、バナジウム(V)、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、ジルコニウム(Zr)、イットリウム(Y)、イリジウム(Ir)、鉄(Fe)、チタニウム(Ti)、モリブデン(Mo)、ランタン(La)、及びネオジム(Nd)からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0034】
前記貴金属は、銀(Ag)、白金(Pt)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、及びロジウム(Rh)からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0035】
前記第1のラジカルスカベンジャーは、平均直径が3~200nmであることができ、好ましくは、4~150nmであることができ、最も好ましくは、5~100nmであることができる。前記直径より小さい場合には、機能性ナノシートがラジカルスカベンジャーの表面にコーティングされずに、ラジカルスカベンジャーがナノシートに担持されるという問題がありうるし、前記直径より大きい場合には、ナノシートがラジカルスカベンジャー表面を完全に保護できないという問題がありうる。
【0036】
本発明に係る多機能性ラジカルスカベンジャーは、前記第1のラジカルスカベンジャーの表面上にコーティングされた機能性ナノシート層を備える。前記機能性ナノシート層は、機能性ナノシートを備える。
【0037】
本発明によれば、バルク(bulk)形態でない2次元ナノシート(nanosheet)形態で第1のラジカルスカベンジャーの表面上にコーティングされることにより、第1のラジカルスカベンジャーの酸素ラジカル捕獲効果がよく維持され得るだけでなく、第1のラジカルスカベンジャーの耐久性を向上させることができる。
【0038】
本発明に係る機能性ナノシートは、グラフェンナノシート(Graphene nanosheet)、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)、六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含むことができる。
【0039】
まず、グラフェンナノシート(Graphene nanosheet)は、2次元ナノシートであって、多孔性フレーク形態に製造されて広い比表面積を有しており、前記第1のラジカルスカベンジャーの表面にコーティングが容易になされ得るという長所がある。また、グラフェンナノシートは、前記第1のラジカルスカベンジャーの耐久性を向上させることができ、これにより、前記第1のラジカルスカベンジャーで遷移金属または貴金属イオンが溶出される現象を防止できる。さらに、グラフェンナノシートは、優れた電気及び熱伝導性を有し、燃料電池の性能及び耐久性向上に寄与することができる。したがって、本発明に係る多機能性ラジカルスカベンジャーによれば、第1のラジカルスカベンジャーが酸素ラジカル捕獲機能を容易に行うようにすることができ、第1のラジカルスカベンジャーの耐久性を向上させて、結果的に膜-電極アセンブリの化学的耐久性を向上させることができ、燃料電池の性能及び耐久性を向上させることができる。
【0040】
次に、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)は、2次元ナノシートであって、広い比表面積を有しており、前記第1のラジカルスカベンジャーの表面にコーティングが容易になされ得るという長所がある。また、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシートは、前記第1のラジカルスカベンジャーの耐久性を向上させることができ、これにより、前記第1のラジカルスカベンジャーで遷移金属または貴金属イオンが溶出される現象を防止できる。したがって、本発明に係る多機能性ラジカルスカベンジャーによれば、第1のラジカルスカベンジャーが酸素ラジカル捕獲機能を容易に行うようにすることができ、第1のラジカルスカベンジャーの耐久性を向上させて、結果的に膜-電極アセンブリの化学的耐久性を向上させることができる。
【0041】
次に、六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)は、前述したグラフィティック-カーボンナイトライドナノシートと同様に、2次元ナノシートであって、広い比表面積を有しており、前記第1のラジカルスカベンジャーの表面にコーティングが容易になされ得るという長所がある。
【0042】
また、六方晶窒化ホウ素ナノシートは、放熱素材であって、燃料電池駆動の際に、膜-電極アセンブリから発生する熱を外部に効果的に放出して燃料電池の寿命を延長させることができる。したがって、本発明に係る多機能性ラジカルスカベンジャーによれば、第1のラジカルスカベンジャーの本来の機能である酸素ラジカル捕獲機能を行うと共に、燃料電池駆動の際に発生する熱を外部に放出する機能を行うことができる。
【0043】
本発明に係る機能性ナノシート層は、少なくとも2つ以上の層を備えることができる。前記少なくとも2つ以上の層は、機能性ナノシートを備えることができる。
【0044】
前記少なくとも2つ以上の層は、第1の層及び前記第1の層上に配置された第2の層を備えることができる。
【0045】
前記第1の層は、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)または六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)を備えることができる。
【0046】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記第1の層は、グラフェンナノシートをさらに備えることができ、前記グラフェンナノシートは、前記グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)及び六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)のうち、少なくともいずれか1つと混合されるものであることができる。
【0047】
本発明に係るグラフェンナノシートは、炭素原子が集まって2次元平面をなしている構造であって、ハニカム構造(honeycomb structure)をなしている。特に、グラフェンナノシートは、熱伝導性が非常に高いダイヤモンドより5,000W/mK以上の高い熱伝導度を有しており、弾性度に優れ、伸ばすか、曲がっても電気的性質を失わない特性を有している。
【0048】
前記グラフェンナノシートは、前記グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)及び六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)のうち、少なくともいずれか1つと混合されることにより、多機能性ラジカルスカベンジャーの耐久性及び放熱機能をさらに向上させることができる。
【0049】
前記第2の層は、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)、グラフェンナノシート、六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含むことができる。
【0050】
前記第1の層の厚みは、0.1~30nmであることができ、好ましくは、0.2~25nm、さらに好ましくは、0.3~20nmであることができる。前記第1の層の厚みが前記数値範囲未満である場合、多機能性ラジカルスカベンジャーの多機能目的がよく実現されないことがあり、前記数値範囲を超過する場合、多機能性のための機能性ナノシート層を構成した後、前記第1のラジカルスカベンジャーの酸素ラジカルを捕獲する効果が落ちることがある。
【0051】
前記第2の層の厚みは、0.1~30nmであることができ、好ましくは、0.2~25nm、さらに好ましくは、0.3~20nmであることができる。前記第2の層の厚みが前記数値範囲未満である場合、多機能性ラジカルスカベンジャーの多機能目的がよく実現されないことがあり、前記数値範囲を超過する場合、前記第1のラジカルスカベンジャーの酸素ラジカルを捕獲する効果が落ちることがある。
【0052】
本発明に係る機能性ナノシートは、長さが30~300nmであることができる。前記機能性ナノシートは、1~20layer構造であることができる。ただし、本発明の技術思想がこれに制限されるものではなく、長さが300nmを超過した機能性ナノシートも適用されることができる。しかし、この場合、ボールミルまたはビーズ(bead)を含む油性攪拌を活用して前記数値範囲内の機能性ナノシートが60%以上になるように調整するステップがさらに必要でありうる。
【0053】
本発明に係る機能性ナノシート層は、共鳴音響混合器(Resonant Acoustic Mixer)を利用して製造されるものであることができる。
【0054】
本発明の一実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーの製造方法は、(S1)第1のラジカルスカベンジャー及び第1の機能性ナノシートを混合して第1の混合物を製造するステップ、(S2)前記第1の混合物に共鳴音響混合器(Resonant Acoustic Mixer;RAM)を利用して3~50分間、50~100gの重力加速度の雰囲気で、55~65Hzの周波数を加えて、前記第1のラジカルスカベンジャーの表面上に第1の機能性ナノシートをコーティングし、予備多機能性ラジカルスカベンジャーを製造するステップ、(S3)共鳴音響混合器を利用して、前記予備多機能性ラジカルスカベンジャーの表面上に第2の機能性ナノシートをコーティングするステップを含む。
【0055】
具体的に、前記第1の機能性ナノシートは、前記第2の機能性ナノシートと同じであるか、異なることができる。すなわち、前記第1の機能性ナノシート及び第2の機能性ナノシートは、各々独立的にグラフェンナノシート(Graphene nanosheet)、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)、六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含むことができる。前記(S2)ステップ及び前記(S3)ステップの共鳴音響混合器に関する条件は、互いに同じであるか、異なることができる。
【0056】
前記(S1)ステップにおいて、前記第1の機能性ナノシートの含量は、前記第1のラジカルスカベンジャー100重量部を基準に20~200重量部であることができ、好ましくは、25~150重量部、さらに好ましくは、30~100重量部であることができる。前記第1の機能性ナノシートの含量が前記数値範囲を外れる場合、ラジカルスカベンジャーが酸素ラジカルを捕獲する機能が落ちることがある。
【0057】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記(S1)ステップにおいてグラフェンナノシートがさらに添加され得る。具体的に、前記(S2)ステップにおいてグラフェンナノシートは、前記第1のラジカルスカベンジャー及び第1の機能性ナノシートと混合されて、複合ナノシートを形成できる。例えば、前記複合ナノシートは、六方晶窒化ホウ素ナノシートとグラフェンナノシートとが混合されたナノシート、またはグラフィティック-カーボンナイトライドナノシートとグラフェンナノシートとが混合されたナノシートであることができる。
【0058】
前記複合ナノシートを実現するために、前記グラフェンナノシートと第1の機能性ナノシートとの重量比(グラフェンナノシート:第1の機能性ナノシート)は、1:0.5~1:1.5、好ましくは、1:0.7~1:1.4、さらに好ましくは、1:0.8~1:1.3であることができる。グラフェンナノシートと第1の機能性ナノシートとの重量比が数値範囲を外れる場合、複合ナノシートの伝導性改善効果が落ちることがある。
【0059】
本発明のさらに他の実施形態によれば、前記(S3)ステップにおいて前記第2の機能性ナノシートの代わりにグラフェンナノシートが単独で使用されて、多機能性ラジカルスカベンジャーの最外郭表面上にグラフェンナノシート皮膜が形成され得る。すなわち、前記(S3)ステップは、共鳴音響混合器を利用して、前記予備多機能性ラジカルスカベンジャーとグラフェンナノシートとを混合するステップに代替されることができる。
【0060】
前記(S3)ステップにおいて前記グラフェンナノシートの含量は、前記予備多機能性ラジカルスカベンジャー100重量部を基準に30~150重量部であることができ、好ましくは、35~120重量部、さらに好ましくは、40~90重量部であることができる。
【0061】
2.高分子電解質膜
【0062】
本発明のさらに他の実施形態は、前述した多機能性ラジカルスカベンジャーを備える高分子電解質膜である。前述した部分と繰り返された説明は、簡略に説明するか、省略する。
【0063】
本発明の一実施形態に係る高分子電解質膜は、多機能性ラジカルスカベンジャーを備えるイオン伝導体分散液を基材に製膜した後、これを乾燥して製造されたものであることができる。
【0064】
本発明の他の実施形態に係る高分子電解質膜は、多機能性ラジカルスカベンジャーを備えるイオン伝導体分散液が含浸された多孔性支持体を備えることができる。
【0065】
本発明に係るイオン伝導体分散液は、イオン伝導体を含むことができる。前記多機能性ラジカルスカベンジャーの含量は、前記イオン伝導体100重量部を基準に0.05~20重量部であることができ、好ましくは、0.1~15重量部、さらに好ましくは、0.3~10重量部であることができる。前記多機能性ラジカルスカベンジャーの含量が前記数値範囲を超過する場合、イオン伝導度が低くなることがあり、前記数値範囲未満である場合、膜-電極アセンブリの化学的耐久性が十分に改善されないことがある。
【0066】
本発明に係るイオン伝導体は、フッ素系イオン伝導体、部分フッ素系イオン伝導体、及び炭化水素系イオン伝導体からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0067】
前記フッ素系イオン伝導体は、例えば、主鎖にフッ素を含むフッ素系高分子であって、ポリ(パーフルオロスルホン酸)、ポリ(パーフルオロカルボン酸)、スルホン酸基を含むテトラフルオロエチレンとフルオロビニルエーテルとの共重合体、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0068】
前記部分フッ素系イオン伝導体は、例えば、ポリスチレン-グラフト-エチレンテトラフルオロエチレン共重合体、またはポリスチレン-グラフト-ポリテトラフルオロエチレン共重合体であることができる。
【0069】
前記炭化水素系イオン伝導体は、例えば、スルホン化されたポリイミド(Sulfonated polyimide、S-PI)、スルホン化されたポリアリールエーテルスルホン(Sulfonated polyarylethersulfone、S-PAES)、スルホン化されたポリエーテルエーテルケトン(Sulfonated polyetheretherketone、S-PEEK)、スルホン化されたポリベンズイミダゾール(Sulfonated polybenzimidazole、S-PBI)、スルホン化されたポリスルホン(Sulfonated polysulfone、S-PSU)、スルホン化されたポリスチレン(Sulfonated polystyrene、S-PS)、スルホン化されたポリホスファゼン(Sulfonated polyphosphazene)、スルホン化されたポリキノキサリン(Sulfonated polyquinoxaline)、スルホン化されたポリケトン(Sulfonated polyketone)、スルホン化されたポリフェニレンオキサイド(Sulfonated polyphenylene oxide)、スルホン化されたポリエーテルスルホン(Sulfonated polyether sulfone)、スルホン化されたポリエーテルケトン(Sulfonated polyether ketone)、スルホン化されたポリフェニレンスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィド(Sulfonated polyphenylene sulfide)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホン(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone)、スルホン化されたポリフェニレンスルフィドスルホンニトリル(Sulfonated polyphenylene sulfide sulfone nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテル(Sulfonated polyarylene ether)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルエーテルニトリル(Sulfonated polyarylene ether ether nitrile)、スルホン化されたポリアリーレンエーテルスルホンケトン(Sulfonated polyarylene ether sulfone ketone)、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるいずれか1つであることができる。
【0070】
本発明に係る多孔性支持体は、フッ素系支持体またはナノウェブ支持体であることができる。
【0071】
前記フッ素系支持体は、例えば、高分子フィブリルの微細構造、またはフィブリルによって節が互いに連結された微細構造を有する拡張されたポリテトラフルオロエチレン(Expanded Polytetrafluoroethylene;e-PTFE)に該当することができる。また、前記多孔性支持体として、前記節が存在しない高分子フィブリルの微細構造を有するフィルムも用いられ得る。
【0072】
前記フッ素系支持体は、過フッ素化重合体を含むことができる。前記多孔性支持体は、分散重合PTFEを潤滑剤の存在下でテープに押出成形し、これにより得られた材料を延伸して、より多孔質かつより強い多孔性支持体に該当することができる。
【0073】
また、前記PTFEの融点(約342℃)を超過する温度で前記e-PTFEを熱処理することにより、PTFEの非晶質含有率を増加させることもできる。上記方法にて製造されたe-PTFEフィルムは、様々な直径を有する微細気孔及び空隙率を有することができる。上記方法にて製造されたe-PTFEフィルムは、少なくとも35%の空隙を有することができ、前記微細気孔の直径は、約0.01~1μmであることができる。
【0074】
本発明の一実施形態に係るナノウェブ支持体は、ランダムに配向された複数個の繊維からなる不織布繊維質ウェブ(nonwoven fibrous web)であることができる。前記不織布繊維質ウェブは、インターレイド(interlaid)されるが、織布と同様の方式でない、個々の繊維またはフィラメントの構造を有するシートを意味する。前記不織布繊維質ウェブは、カーディング(carding)、ガーネティング(garneting)、エアレイング(air-laying)、ウェットレイング(wet-laying)、メルトブローイング(melt blowing)、スパンボンディング(spun bonding)、及びスティッチボンディング(stitch bonding)からなる群より選ばれるいずれか1つの方法によって製造されることができる。
【0075】
前記繊維は、1つ以上の重合体材料を含むことができ、一般に、繊維形成重合体材料として使用されるものであれば、いずれのものでも使用可能であり、具体的に、炭化水素系繊維形成重合体材料を使用することができる。例えば、前記繊維形成重合体材料は、ポリオレフィン、例えば、ポリブチレン、ポリプロピレン、及びポリエチレン、ポリエステル、例えば、ポリエチレンテレフタレート及びポリブチレンテレフタレート、ポリアミド(ナイロン-6及びナイロン-6,6)、ポリウレタン、ポリブテン、ポリ乳酸、ポリビニルアルコール、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、流体結晶質重合体、ポリエチレン-コ-酢酸ビニル、ポリアクリロニトリル、サイクリックポリオレフィン、ポリオキシメチレン、ポリオレフィン系熱可塑性弾性重合体、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれるいずれか1つを含むことができる。ただし、本発明の技術思想がこれに制限されるものではない。
【0076】
本発明の一実施形態に係るナノウェブ支持体は、ナノ繊維が複数の気孔を含む不織布形態で集積された支持体であることができる。
【0077】
前記ナノ繊維は、優れた耐化学性を表し、疏水性を有し、高湿の環境で水分による形態変形の恐れがない炭化水素系高分子を好ましく使用することができる。具体的に、前記炭化水素系高分子では、ナイロン、ポリイミド、ポリアラミド、ポリエーテルイミド、ポリアクリロニトリル、ポリアニリン、ポリエチレンオキサイド、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート、スチレンブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニリデンフルオライド、ポリビニルブチレン、ポリウレタン、ポリベンズオキサゾール、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルフィド、ポリエチレン、ポリプロピレン、これらの共重合体、及びこれらの混合物からなる群より選ばれるものを使用することができ、この中でも、耐熱性、耐化学性、及び形態安定性により優れたポリイミドを好ましく使用することができる。
【0078】
前記ナノウェブ支持体は、電気放射により製造されたナノ繊維がランダムに配列されたナノ繊維の集合体である。このとき、前記ナノ繊維は、前記ナノウェブの多孔度及び厚みを考慮して、電子走査顕微鏡(Scanning Electron Microscope、JSM6700F、JEOL)を用いて50個の繊維直径を測定し、その平均から計算したとき、40~5000nmの平均直径を有することが好ましい。
【0079】
仮に、前記ナノ繊維の平均直径が前記数値範囲未満である場合、前記多孔性支持体の機械的強度が低下することがあり、前記ナノ繊維の平均直径が前記数値範囲を超過する場合、多孔度が顕著に落ち、厚みが厚くなることがある。
【0080】
前記不織繊維質ウェブの厚みは、10~50μmであることができ、具体的に、15~43μmであることができる。前記不織繊維質ウェブの厚みが前記数値範囲未満である場合、機械的強度が落ちることがあり、前記数値範囲を超過する場合、抵抗損失が増加し、軽量化及び集積化が落ちることがある。
【0081】
前記不織布繊維質ウェブは、坪量(basic weight)が5~30mg/cm2であることができる。前記不織布繊維質ウェブの坪量が前記数値範囲未満である場合、目に見える気孔が形成されて、多孔性支持体として機能し難いことがあり、前記数値範囲を超過する場合には、ポアがほとんど形成されない紙または織物の形態のように製造されることができる。
【0082】
本発明に係る多孔性支持体は、多孔度は30~90%に該当することができ、好ましくは、60~85%に該当することができる。前記多孔性支持体の多孔度が前記数値範囲未満である場合、イオン伝導体の含浸性低下の問題が生じることがあり、前記数値範囲を超過する場合、形態安定性が低下することにより、後工程が円滑に進行されないことがある。
【0083】
前記多孔度は、下記の数学式1により、前記多孔性支持体の全体体積に対する多孔性支持体内の空気体積の割合によって計算することができる。このとき、前記全体体積は、長方形形態のサンプルを製造して、横、縦、厚みを測定して計算し、空気体積は、サンプルの質量を測定後、密度から逆算した高分子体積を全体体積から引いて得ることができる。
【0084】
[数1]
【0085】
多孔度(%)=(多孔性支持体内の空気体積/多孔性支持体の全体体積)×100
【0086】
3.触媒層
【0087】
本発明のさらに他の実施形態は、前述した多機能性ラジカルスカベンジャーを備える触媒層である。前述した部分と繰り返された説明は、簡略に説明するか、省略する。
【0088】
本発明に係る触媒層は、電極スラリーを高分子電解質膜の少なくとも一面上にコーティングして製造されたものであることができる。
【0089】
前記電極スラリーは、本発明に係る多機能性ラジカルスカベンジャーを備えることにより、膜-電極アセンブリの化学的耐久性を改善させることができ、燃料電池駆動の際に発生する熱を外部に効率的に放出することができる。
【0090】
4.膜-電極アセンブリ
【0091】
本発明のさらに他の実施形態は、前記高分子電解質膜を備える膜-電極アセンブリである。
【0092】
本発明のさらに他の実施形態は、前記触媒層を備える膜-電極アセンブリである。
【0093】
本発明のさらに他の実施形態は、第1の多機能性ラジカルスカベンジャーを備える高分子電解質膜及び前記高分子電解質膜の少なくとも一面上にコーティングされた第2の多機能性ラジカルスカベンジャーを備える触媒層を備える膜-電極アセンブリである。前記第1の多機能性ラジカルスカベンジャーは、前記第2の多機能性ラジカルスカベンジャーと同じであるか、異なることができる。
【0094】
本発明によれば、膜-電極アセンブリが多機能性ラジカルスカベンジャーを備えることにより、化学的耐久性が改善され、燃料電池駆動の際に発生する熱を外部に効果的に放出して燃料電池の寿命を延長させることができる膜-電極アセンブリを提供できる。
【0095】
図1は、本発明の一実施形態に係る膜-電極アセンブリの断面図である。
【0096】
以下、
図1を参考して本発明の構成を詳細に説明する。
【0097】
本発明に係る膜-電極アセンブリ100は、前記高分子電解質膜50を備える膜-電極アセンブリ100であって、互いに対向して位置するアノード電極20とカソード電極20’、及び前記アノード電極20と前記カソード電極20’との間に位置する前記高分子電解質膜50を備える。
【0098】
前記アノード及びカソード電極20、20’は、電極基材40、40’と、前記電極基材40、40’表面に形成された触媒層30、30’とを備え、前記電極基材40、40’と前記触媒層30、30’との間に前記電極基材40、40’での物質拡散を容易にするために、炭素粉末、カーボンブラックなどの導電性微細粒子を含む微細気孔層(図示せず)をさらに備えることもできる。
【0099】
前記アノード及びカソード電極20、20’の触媒層30、30’は、触媒を含む。前記触媒では、電池の反応に参加し、通常、燃料電池の触媒として使用可能なものはいずれのものも使用することができる。好ましくは、白金系金属を使用することができる。
【0100】
前記白金系金属は、白金(Pt)、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、白金-M合金、非白金合金、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる1つを含むことができ、より好ましくは、前記白金系触媒金属群より選ばれる2種以上の金属を組み合わせたものを使用することができるが、これに限定されるものではなく、本技術分野において使用可能な白金系触媒金属であれば、制限なしに使用することができる。
【0101】
前記Mは、パラジウム(Pd)、ルテニウム(Ru)、イリジウム(Ir)、オスミウム(Os)、ガリウム(Ga)、チタニウム(Ti)、バナジウム(V)、クロム(Cr)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、金(Au)、亜鉛(Zn)、スズ(Sn)、モリブデン(Mo)、タングステン(W)、ランタン(La)、及びロジウム(Rh)からなる群より選ばれるいずれか1つ以上に該当することができる。具体的に、前記白金合金として、Pt-Pd、Pt-Sn、Pt-Mo、Pt-Cr、Pt-W、Pt-Ru、Pt-Ru-W、Pt-Ru-Mo、Pt-Ru-Rh-Ni、Pt-Ru-Sn-W、Pt-Co、Pt-Co-Ni、Pt-Co-Fe、Pt-Co-Ir、Pt-Co-S、Pt-Co-P、Pt-Fe、Pt-Fe-Ir、Pt-Fe-S、Pt-Fe-P、Pt-Au-Co、Pt-Au-Fe、Pt-Au-Ni、Pt-Ni、Pt-Ni-Ir、Pt-Cr、Pt-Cr-Ir、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0102】
また、前記非白金合金として、Ir-Fe、Ir-Ru、Ir-Os、Co-Fe、Co-Ru、Co-Os、Rh-Fe、Rh-Ru、Rh-Os、Ir-Ru-Fe、Ir-Ru-Os、Rh-Ru-Fe、Rh-Ru-Os、及びこれらの組み合わせからなる群より選ばれる単独または2種以上を混合して使用することができる。
【0103】
前記触媒として触媒自体(black)を使用することができ、担体に担持させて使用することもできる。
【0104】
5.燃料電池
【0105】
本発明のさらに他の実施形態は、前記膜-電極アセンブリを備える燃料電池である。
【0106】
図2は、本発明の一実施形態に係る燃料電池を説明するための模式図である。
【0107】
図2に示すように、本発明に係る燃料電池200は、燃料と水とが混合された混合燃料を供給する燃料供給部210、前記混合燃料を改質して水素ガスを含む改質ガスを発生させる改質部220、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスが酸化剤と電気化学的な反応を起こして電気エネルギーを発生させるスタック230、及び酸化剤を前記改質部220及び前記スタック230に供給する酸化剤供給部240を備えることができる。
【0108】
前記スタック230は、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスと酸化剤供給部240から供給される酸化剤との酸化/還元反応を導いて電気エネルギーを発生させる複数の単位セルを備えることができる。
【0109】
それぞれの単位セルは、電気を発生させる単位のセルを意味するものであって、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤との中の酸素を酸化/還元させる前記膜-電極アセンブリと、水素ガスを含む改質ガスと酸化剤とを膜-電極アセンブリに供給するための分離板(または、バイポーラプレート(bipolar plate)ともいい、以下、「分離板」と称する)とを備えることができる。前記分離板は、前記膜-電極アセンブリを中心に、その両側に配置される。このとき、前記スタックの最外側に各々位置する分離板を特にエンドプレートとも称する。
【0110】
前記分離板のうち、前記エンドプレートには、前記改質部220から供給される水素ガスを含む改質ガスを注入するためのパイプ状の第1の供給管231と、酸素ガスを注入するためのパイプ状の第2の供給管232とが備えられ、他の1つのエンドプレートには、複数の単位セルで最終的に未反応されて残った水素ガスを含む改質ガスを外部に排出させるための第1の排出管233と、前記した単位セルで最終的に未反応されて残った酸化剤を外部に排出させるための第2の排出管234とが備えられ得る。
【0111】
前記燃料電池において、前記電気発生部を構成するセパレータ、燃料供給部、及び酸化剤供給部は、通常の燃料電池で使用されるものであるから、本明細書において詳細な説明を省略する。
【0112】
以下、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者が容易に実施できるように本発明の実施例について詳細に説明するが、これは、1つの例示に過ぎず、本発明の権利範囲が次の内容により制限されない。
【0113】
[製造例1:ラジカルスカベンジャーの製造]
【0114】
下記の比較例及び実施例によるラジカルスカベンジャーを製造した。
【0115】
<比較例1:通常のCeO2>
【0116】
粒子の平均直径が50nmであるCeO2を準備した。
【0117】
<比較例2:CeO2の表面にbulk g-C3N4層が形成されたラジカルスカベンジャー>
【0118】
メチルピロリジン溶媒の全体重量を基準に3重量%のジシアンジアミドを含有した前駆体溶液に前記メチルピロリジン溶媒100重量部を基準に2重量部のCeO2ナノ粒子を投入した後、25℃で10時間の間250rpmで攪拌した。次いで、3600rpmで遠心分離を行い、60℃で一晩乾燥することにより、表面にジシアンジアミド層が形成されたCeO2ナノ粒子を収得した。表面にジシアンジアミド層が形成されたCeO2ナノ粒子を550℃で4時間の間熱処理し、前記ジシアンジアミド層をbulk g-C3N4層に切り換えることにより、ラジカルスカベンジャーを収得した。前記ラジカルスカベンジャーを80℃の1.5M硫酸に入れ、3時間の間攪拌することにより、前記g-C3N4の多孔性保護膜に吸着された不純物を除去し、蒸留水で複数回濯いだ後、乾燥することにより、最終的に、CeO2の表面にg-C3N4層(bulk)が形成されたラジカルスカベンジャーを製造した。
【0119】
<比較例3:CeOx@h-BN nanosheet>
【0120】
反応容器にCeO2 100重量部と、長さが200~300nmであり、5~10多重層(multi-layer)構造を有する六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)70重量部を、共鳴音響混合器(Resonant Acoustic Mixer)を利用して10分間80gの重力加速度の雰囲気で60Hzの周波数を加えながらこれらを混合した。
最終的に、CeO2の表面に厚みが9nmであり、単一層構造を有する六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)層を形成した。
【0121】
<実施例1:CeOx@h-BN nanosheet @g-C3N4 nanosheet>
【0122】
反応容器にCeO2 100重量部、長さが200~300nmであり、5~10多重層(multi-layer)構造を有する六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)70重量部を添加した。共鳴音響混合器(Resonant Acoustic Mixer)を利用して前記CeO2と六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)とを10分間80gの重力加速度の雰囲気で60Hzの周波数を加えながら混合した。1次的に、CeO2の表面に六方晶窒化ホウ素ナノシート層を形成して予備多機能性ラジカルスカベンジャー(CeO2@h-BN nanosheet)を製造した。その後、前記予備多機能性ラジカルスカベンジャー170重量部、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)50重量部を共鳴音響混合器(Resonant Acoustic Mixer)を利用して10分間80gの重力加速度の雰囲気で60Hzの周波数を加えながら混合した。最終的に、実施例1による多機能性ラジカルスカベンジャー(CeO2@h-BN nanosheet @g-C3N4 nanosheet)を製造した。
【0123】
<実施例2:CeOx@g-C3N4 nanosheet @graphene nanosheet>
【0124】
実施例1と同じ方法にて多機能性ラジカルスカベンジャーを製造するものの、前記六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)の代わりに、グラフィティック-カーボンナイトライドナノシート(g-C3N4 nanosheet)を使用して予備多機能性ラジカルスカベンジャー(CeO2@g-C3N4 nanosheet)を製造し、前記グラフィティック-カーボンナイトライドナノシートの代わりに、グラフェンナノシート(1~10layer)を使用して、最終的に、実施例2による多機能性ラジカルスカベンジャー(CeO2@g-C3N4 nanosheet @ graphene nanosheet)を製造した。
【0125】
<実施例3:CeO2@h-BN nanosheet+graphene nanosheet @g-C3N4 nanosheet>
【0126】
実施例1と同じ方法にて多機能性ラジカルスカベンジャーを製造するものの、前記六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)の代わりに、同じ含量の六方晶窒化ホウ素ナノシート(h-BN nanosheet)とグラフェンナノシートとが1:1の重量比で混合された混合物を使用して、予備多機能性ラジカルスカベンジャー(CeO2@h-BN nanosheet+graphene nanosheet)を製造した。最終的に、実施例3による多機能性ラジカルスカベンジャー(CeO2@h-BN+graphene nanosheet @g-C3N4 nanosheet)を製造した。
【0127】
[製造例2:膜-電極アセンブリの製造]
【0128】
前記製造例1によるラジカルスカベンジャーを備える膜-電極アセンブリを下記のように製造した。膜-電極アセンブリは、通常の方法により製造された。
【0129】
<比較例1>
【0130】
田中(Tanaka)社の商用Pt/C触媒10gを反応容器に入れ、溶媒で濡らして合成触媒溶液を製造した、前記合成触媒溶液に、前記触媒100重量部を基準に前記比較例1によるラジカルスカベンジャー3.5重量部を添加して、これらを高圧分散器を利用して分散させて電極スラリーを製造した。前記電極スラリーを高分子電解質膜(商品名:Nafion D-520)の一面上に直接コーティングして膜-電極アセンブリを製造した。
【0131】
<比較例2>
【0132】
比較例1と同じ方法にて膜-電極アセンブリを製造するものの、前記比較例1によるラジカルスカベンジャーの代わりに、前記比較例2によるラジカルスカベンジャーを使用した。
【0133】
<比較例3>
【0134】
比較例1と同じ方法にて膜-電極アセンブリを製造するものの、前記比較例1によるラジカルスカベンジャーの代わりに、前記比較例3によるラジカルスカベンジャーを使用した。
【0135】
<実施例1>
【0136】
比較例1と同じ方法にて膜-電極アセンブリを製造するものの、前記比較例1によるラジカルスカベンジャーの代わりに、前記実施例1による多機能性ラジカルスカベンジャーを使用した。
【0137】
<実施例2>
【0138】
比較例1と同じ方法にて膜-電極アセンブリを製造するものの、前記比較例1によるラジカルスカベンジャーの代わりに、前記実施例2による多機能性ラジカルスカベンジャーを使用した。
【0139】
<実施例3>
【0140】
比較例1と同じ方法にて膜-電極アセンブリを製造するものの、前記比較例1によるラジカルスカベンジャーの代わりに、前記実施例3による多機能性ラジカルスカベンジャーを使用した。
【0141】
[実験例1:実施例1(CeO2@h-BN nanosheet @g-C3N4 nanosheet)のTEM写真]
【0142】
図3は、本発明の一実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーのTEM(Transmission Electron Microscope)写真である。
【0143】
図3に示すように、実施例1による多機能性ラジカルスカベンジャーは、CeO
2の表面上に複合皮膜を含むことが分かる。
【0144】
[実験例2:実施例2(CeO2@g-C3N4 nanosheet @ graphene nanosheet)のTEM写真]
【0145】
図4は、本発明の他の実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーのTEM(Transmission Electron Microscope)写真である。
【0146】
図4に示すように、実施例2による多機能性ラジカルスカベンジャーは、CeO
2の表面上に複合皮膜を含むことが分かる。
【0147】
[実験例3:実施例3(CeO2@h-BN nanosheet+graphene nanosheet@g-C3N4 nanosheet)のTEM写真]
【0148】
図5は、本発明のさらに他の実施形態に係る多機能性ラジカルスカベンジャーのTEM(Transmission Electron Microscope)写真である。
【0149】
図5に示すように、実施例3による多機能性ラジカルスカベンジャーは、CeO
2の表面上に複合皮膜を含むことが分かる。
【0150】
[実験例4:膜-電極アセンブリの化学的耐久性評価]
【0151】
図6は、本発明の一実施形態に係る膜-電極アセンブリの化学的耐久性評価結果である。
【0152】
前記製造例2による膜-電極アセンブリに対して化学的耐久性を米国エネルギー省(Department of Energy:DOE)の耐久性評価プロトコル(80℃、OCV loss<20%)に基づいて評価した。具体的に、膜-電極アセンブリの化学的耐久性評価のために、OCV維持法(OCV hold method)を行って電圧維持率(Voltage retention)を各々測定し、その測定値を
図6に示した。
【0153】
図6に示すように、実施例1~3は、比較例1~3に対して長い時間が経過しても高い電圧維持率を見せ、化学的耐久性が顕著に改善されたことを類推できる。
【0154】
一方、機能性ナノシート層の構造の観点で比較例3及び実施例1を比較すれば、ラジカルスカベンジャーの表面上に2つ以上の多重層構造を有する機能性ナノシート層が形成されることにより、単一層構造を有する機能性ナノシート層に対して長い時間が経過しても高い電圧維持率を表すことが確認できる。これを通じて、機能性ナノシート層が2つ以上の層構造を有する多重層構造であるとき、化学的耐久性が顕著に改善されることを類推できる。
【0155】
以上において本発明の望ましい実施形態等について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されるものではなく、次の請求の範囲で定義している本発明の基本概念を利用した当業者の種々の変形及び改良形態も本発明の権利範囲に属するものである。
【国際調査報告】