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特表2024-542550非水系電解質組成物およびそれを含むリチウム二次電池
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】非水系電解質組成物およびそれを含むリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20241108BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 10/0569 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 4/587 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/38 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 4/48 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M10/0569
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/36 E
H01M4/587
H01M4/38 Z
H01M4/48
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531135
(86)(22)【出願日】2023-06-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 KR2023008998
(87)【国際公開番号】W WO2024043482
(87)【国際公開日】2024-02-29
(31)【優先権主張番号】10-2022-0107593
(32)【優先日】2022-08-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ユ・キョン・ジョン
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ03
5H029AJ07
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL11
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H029HJ18
5H050AA13
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB11
5H050CB29
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA18
(57)【要約】
本発明は、リチウム二次電池用電解質組成物に関するものであって、上記電解質組成物は化学式1で表される電解質を含み、4.5V以上に酸化電位窓を有することにより高電圧条件での電池充放電時の電解質組成物の酸化分解を抑制し得るという利点がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
非水系有機溶媒、リチウム塩および下記化学式1で表される電解質添加剤を含み、
酸化電位窓が4.5V以上に存在し、
【化1】
前記化学式1において、

【化2】

【化3】
または
【化4】
であり、
’およびR’’は、それぞれ水素またはメチル基であり、
は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素数6~20のアリーレン基、炭素数6~20のアリーレンオキシ基、N、SおよびOのうち1種以上のヘテロ原子を含む炭素数5~10のヘテロアリーレン基、N、SおよびOのうち1種以上のヘテロ原子を含む炭素数5~10のヘテロアリーレンオキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~10のシクロアルキル基、および
【化5】
のうち1種以上を含み、
は、フルオロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基または
【化6】
であり、かつ
前記アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、
【化7】
および
【化8】
に含まれた水素のうち1つ以上は選択的にフッ素原子で置換され、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、炭素数1~4のテトラアルキルアンモニウムおよび炭素数1~4のテトラアルキルホスホニウムのうち1種以上を含み、
lは、1~6の整数であり、
mおよびnは、それぞれ2~20の整数である、電解質組成物。
【請求項2】
前記酸化電位窓は5.0V~6.0Vの範囲内に存在する、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項3】
は、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、オキシメチレン基、ピロール基、オキシフェニレン基、オキシナフタレニル基、オキシピロール基、オキシチオフェニレン基、オキシフラニル基または
【化9】
であり、
は、フルオロ基、メチル基、フッ化メチル基、メトキシ基、フッ化メトキシ基または
【化10】
であり、かつ前記
【化11】
に含まれた水素のうち1つ以上は選択的にフッ素原子で置換され、
Mは、リチウムである、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項4】
前記化学式1で表される電解質添加剤は、下記<構造式1>~<構造式17>のうちいずれか1つ以上の化合物を含む、請求項1に記載の電解質組成物。
【化12】
【化13】
【請求項5】
前記化学式1で表される電解質添加剤は、電解質組成物全体の重量を基準として10重量%以下で含まれる、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項6】
前記非水系有機溶媒は、下記化学式2で表されるエステル系溶媒を含み、
【化14】
前記化学式2において、
【化15】
は、単一結合または二重結合であり、
およびXはそれぞれ水素、フルオロ基、メチル基、エチル基、フッ化メチル基、フッ化エチル基、またはビニル基であり、
pは、1~3の整数である、請求項1に記載の電解質組成物。
【請求項7】
前記化学式2で表されるエステル系溶媒は、ジヒドロフラノン、ビニルジヒドロフラノン、フルオロジヒドロフラノン、フラノンおよびテトラヒドロピラノンのうち1種以上を含む、請求項6に記載の電解質組成物。
【請求項8】
前記非水系有機溶媒は、フッ素含有エーテル系溶媒、フッ素含有環状カーボネート系溶媒、鎖状カーボネート系溶媒、ホスフェート系溶媒およびスルホン系溶媒のうち1種以上の補助溶媒をさらに含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の電解質組成物。
【請求項9】
前記補助溶媒は、非水系有機溶媒全体の体積を基準として50体積%未満で含まれる、請求項8に記載の電解質組成物。
【請求項10】
正極、負極、および前記正極と前記負極との間に配置された分離膜を含む電極組立体、および
請求項1に記載の電解質組成物を含む、リチウム二次電池。
【請求項11】
前記正極は、下記化学式3または化学式4で表されるリチウム金属酸化物のうち1種以上の正極活物質を含み、
[化学式3]
Li[NiCoMn ]O
[化学式4]
LiM Mn
前記化学式3および前記化学式4において、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、BおよびMoのうち1種以上の元素であり、
x、y、z、wおよびvは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.5≦y<1、0<z≦0.3、0<w≦0.3、0≦v≦0.1であり、かつy+z+w+v=1であり、
は、Ni、CoまたはFeであり、
pは、0.05≦p≦1.0であり、
qは、1-pまたは2-pであり、
rは、0または1である、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【請求項12】
前記正極活物質は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05、LiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1およびLiNi0.5Mn1.5のうち1種以上を含む、請求項11に記載のリチウム二次電池。
【請求項13】
前記負極は、炭素物質を含有する第1負極活物質とケイ素物質を含有する第2負極活物質とを含み、
前記炭素物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックのうち1種以上を含む、請求項10に記載のリチウム二次電池。
【請求項14】
前記ケイ素物質は、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)および酸化ケイ素(SiO、ただし、0.8≦q≦2.5)のうち1種以上を含む、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【請求項15】
前記第2負極活物質は、負極活物質全体の重量に対して1重量%~20重量%で含まれる、請求項13に記載のリチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非水系電解質組成物に関するものであって、より詳細には、酸化電位窓が向上し、酸化安定性に優れ、エネルギー密度が高い電池の製造が可能な非水系液体電解質組成物およびそれを含むリチウム二次電池に関するものである。
【0002】
本出願は、2022年8月26日付の韓国特許出願第10-2022-0107593号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は、本明細書の一部として含まれる。
【背景技術】
【0003】
近年、携帯型電子機器のような小型装置のみならず、ハイブリッド自動車や電気自動車のバッテリーパックまたは電力貯蔵装置のような中大型装置にも二次電池が広く適用されている。
【0004】
このような二次電池は、電極活物質を含む組成物を好適な厚さと長さで集電体上に塗布および乾燥するか、または電極活物質自体をフィルム状に成形して正極と負極を製作し、それを絶縁体である分離膜を間に置いて共に巻いたり積層したりして電極組立体を作った後に、缶またはそれと類似した容器に入れ、電解質を注入することによって製造される。
【0005】
ここで、上記電解質は、電位窓(potential window)が正極活物質と負極活物質との間の電位差より広くなければ電極活物質界面で誘導される電解液の副反応を抑制し得ない。
【0006】
しかしながら、二次電池の適用範囲が広がるにつれて、より高いエネルギー密度を有し、4V以上の高電圧を具現する電池に対する要求が増加した。それを満たすために、従来の正極は、高電圧用正極活物質を使用することにより、電解質の電位窓が電極活物質の電位窓より狭くなるようになった。
【0007】
このような問題を解決するために、電解質と電極活物質との直接的な接触を防止する保護膜を形成することにより、電解質の分解を抑制し得る。これにより、長時間のサイクルの間に容量を維持する方案が提示された。
【0008】
一つの例として、正極保護のための電解質添加剤としてスクシノニトリル、アジポニトリル、グルタロニトリルなどが使用されている。これらは優れた熱特性および高温性能を具現し、活性化工程中の電圧降下現象を改善することが知られている。また、イオン伝導度と極性度を増加させ、ニトリル基が正極表面のコバルトのような遷移金属と強い結合をなし、メタル-リガンド間の結合が多様な界面副反応を抑制してガス生成や微細短絡経路を遮断することが知られている。しかしながら、上記電解質添加剤は、上述されたように、正極活物質の表面を保護する効果は優れているが、負極活物質に保護皮膜を形成しないため、負極活物質と電解液との副反応を抑制することはできない。したがって、負極との反応性を制御するために、ビニレンカーボネートなどの電解質添加剤を別途添加することによってセル性能を具現し得る。
【0009】
一方、ビニレンカーボネートなどの電解質添加剤は、負極と電解液との反応性を低下させ、負極における電解液の副反応を抑制し得るが、低い耐酸化性により高温および高電圧で長時間駆動される場合には、正極ではむしろガスを発生させるという問題がある。
【0010】
したがって、負極での電解液副反応が抑制されるのみならず、高い酸化電位窓を有し、正極での副反応が改善された電解質に関する研究が必要であるのが実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的は、高い酸化電位窓を有し、正極での副反応が改善されるのみならず、高電圧条件でも利用可能なリチウム二次電池用電解質組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述された問題を解決するために、
本発明は一実施形態において、
非水系有機溶媒、リチウム塩および下記化学式1で表される電解質添加剤を含み、
酸化電位窓が4.5V以上に存在する電解質組成物を提供する。
【0013】
【化1】
【0014】
上記化学式1において、

【化2】

【化3】
または
【化4】
であり、
’およびR’’は、それぞれ水素またはメチル基であり、
は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素数6~20のアリーレン基、炭素数6~20のアリーレンオキシ基、N、SおよびOのうち1種以上のヘテロ原子を含む炭素数5~10のヘテロアリーレン基、N、SおよびOのうち1種以上のヘテロ原子を含む炭素数5~10のヘテロアリーレンオキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~10のシクロアルキル基、および
【化5】
のうち1種以上を含み、
は、フルオロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基または
【化6】
であり、かつ
上記アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、
【化7】
および
【化8】
に含まれた水素のうち1つ以上は選択的にフッ素原子で置換され得、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、炭素数1~4のテトラアルキルアンモニウムおよび炭素数1~4のテトラアルキルホスホニウムからなる群から選択される1種以上を含み、
lは、1~6の整数であり、
mおよびnは、それぞれ2~20の整数である。
【0015】
このとき、上記電解質組成物の酸化電位窓は5.0V~6.0Vの範囲内に存在し得る。
【0016】
また、上記化学式1において、
は、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、オキシメチレン基、ピロール基、オキシフェニレン基、オキシナフタレニル基、オキシピロール基、オキシチオフェニレン基、オキシフラニル基または
【化9】
であり、
は、フルオロ基、メチル基、フッ化メチル基、メトキシ基、フッ化メトキシ基または
【化10】
であり、かつ上記
【化11】
に含まれた水素のうち1つ以上は選択的にフッ素原子で置換され得、
Mは、リチウムであり得る。
【0017】
一つの例として、上記化学式1で表される電解質添加剤は、下記<構造式1>~<構造式17>のうちいずれか1つ以上の化合物を含み得る。
【化12】
【化13】
【0018】
また、上記化学式1で表される電解質添加剤は、電解質組成物全体の重量を基準として10重量%以下で含まれ得る。
【0019】
また、上記非水系有機溶媒は、下記化学式2で表されるエステル系溶媒を含み得る。
【0020】
【化14】
【0021】
上記化学式2において、
【化15】
は、単一結合または二重結合であり、
およびXはそれぞれ水素、フルオロ基、メチル基、エチル基、フッ化メチル基、フッ化エチル基、またはビニル基であり、
pは、1~3の整数である。
【0022】
具体的には、上記化学式2で表されるエステル系溶媒は、ジヒドロフラノン、ビニルジヒドロフラノン、フルオロジヒドロフラノン、フラノンおよびテトラヒドロピラノンのうち1種以上を含み得る。
【0023】
また、上記非水系有機溶媒は、フッ素含有エーテル系溶媒、フッ素含有環状カーボネート系溶媒、鎖状カーボネート系溶媒、ホスフェート系溶媒およびスルホン系溶媒のうち1種以上の補助溶媒をさらに含み得る。
【0024】
この場合、上記補助溶媒は、非水系有機溶媒全体の体積を基準として50体積%未満で含まれ得る。
【0025】
さらに、本発明は一実施形態において、
正極、負極、および上記正極と負極との間に配置された分離膜を含む電極組立体、および
上述された本発明に係る電解質組成物を含むリチウム二次電池を提供する。
【0026】
このとき、上記正極は、下記化学式3または化学式4で表されるリチウム金属酸化物のうち1種以上の正極活物質を含み得る。
【0027】
[化学式3]
Li[NiCoMn ]O
【0028】
[化学式4]
LiM Mn
【0029】
上記化学式3および化学式4において、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、z、wおよびvは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.5≦y<1、0<z≦0.3、0<w≦0.3、0≦v≦0.1であり、かつy+z+w+v=1であり、
は、Ni、CoまたはFeであり、
pは、0.05≦p≦1.0であり、
qは、1-pまたは2-pであり、
rは、0または1である。
【0030】
具体的には、上記正極活物質は、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05、LiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1およびLiNi0.5Mn1.5のうち1種以上を含み得る。
【0031】
また、上記負極は、炭素物質を含有する第1負極活物質とケイ素物質を含有する第2負極活物質とを含み、上記炭素物質は、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックのうち1種以上を含み得る。
【0032】
また、上記ケイ素物質は、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)および酸化ケイ素(SiO、ただし、0.8≦q≦2.5)のうち1種以上を含み得る。
【0033】
また、上記第2負極活物質は、負極活物質全体の重量に対して1重量%~20重量%で含まれ得る。
【発明の効果】
【0034】
本発明に係るリチウム二次電池用電解質組成物は、化学式1で表される電解質を含み、4.5V以上で酸化電位窓を有することにより電解質組成物の酸化安定性が向上し、高電圧での電解質組成物の分解を抑制し得るという利点がある。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、多様な変更を加えることができ、様々な実施形態を有し得るので、特定の実施形態を詳細な説明において詳細に説明する。
【0036】
しかしながら、これは本発明を特定の実施形態に対して限定しようとするものではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれるすべての変更、均等物または代替物を含むものとして理解されるべきである。
【0037】
本発明において、「含む」や「有する」などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらの組み合わせが存在することを指定しようとするものであって、1つまたはそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものとして理解されるべきである。
【0038】
また、本発明において、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「上に」あると記載された場合、これは他の部分の「直上に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。逆に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の「下に」あると記載された場合、それは他の部分の「直下に」ある場合のみならず、その中間に別の部分がある場合も含む。また、本出願において「上に」配置されるということは、上部のみならず下部に配置される場合も含むものであり得る。
【0039】
また、本発明において、「主成分として含む」とは、全体の重量(または全体の体積)に対して定義された成分を50重量%以上(または50体積%以上)、60重量%以上(または60体積%以上)、70重量%以上(または70体積%以上)、80重量%以上(または80体積%以上)、90重量%以上(または90体積%以上)、または95重量%以上(または95体積%以上)含むことを意味し得る。例えば、「負極活物質として黒鉛を主成分として含む」とは、負極活物質全体の重量に対して黒鉛を50重量%以上、60重量%以上、70重量%以上、80重量%以上、90重量%以上または95重量%以上含むことを意味することができ、場合によっては、負極活物質全体が黒鉛からなって黒鉛が100重量%で含まれることを意味することもあり得る。
【0040】
以下、本発明をより詳細に説明する。
【0041】
<リチウム二次電池用電解質組成物>
本発明は一実施形態において、
非水系有機溶媒、リチウム塩および下記化学式1で表される電解質添加剤を含み、
酸化電位窓が4.5V以上に存在する電解質組成物を提供する。
【0042】
【化16】
【0043】
上記化学式1において、

【化17】

【化18】
または
【化19】
であり、
’およびR’’は、それぞれ水素またはメチル基であり、
は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、炭素数6~20のアリーレン基、炭素数6~20のアリーレンオキシ基、N、SおよびOのうち1種以上のヘテロ原子を含む炭素数5~10のヘテロアリーレン基、N、SおよびOのうち1種以上のヘテロ原子を含む炭素数5~10のヘテロアリーレンオキシ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基、炭素数5~10のシクロアルキル基、および
【化20】
のうち1種以上を含み、
は、フルオロ基、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルコキシ基または
【化21】
であり、かつ
上記アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、
【化22】
および
【化23】
に含まれた水素のうち1つ以上は選択的にフッ素原子で置換され得、
Mは、リチウム、ナトリウム、カリウム、炭素数1~4のテトラアルキルアンモニウムおよび炭素数1~4のテトラアルキルホスホニウムのうち1種以上を含み、
lは、1~6の整数であり、
mおよびnは、それぞれ2~20の整数である。
【0044】
本発明に係るリチウム二次電池用電解質組成物は、非水系有機溶媒およびリチウム塩と共に化学式1で表される電解質添加剤を含む。上記電解質添加剤は、上記化学式1に示すようにスルホニルイミド(sulfonylimide)基を中心に一側に、i)飽和炭化水素鎖を含むか、または飽和炭化水素鎖に酸素原子が導入された構造、またはii)スルホニルイミド基のコンジュゲーション(conjugation)を延長するか、またはポリグリコール単位を有する構造(すなわち、「R」に該当)を介して、ビニル(vinyl)基、(メタ)アクリレート((meth)acrylate)基またはアクリルアミド(acrylamide)基が結合(すなわち、「R」に該当)された母核を有するイオン性化合物を含む。
【0045】
上記電解質添加剤は、スルホニルイミドの一側にビニル基、(メタ)アクリレート基、またはアクリルアミド基が結合され、かつそれらの間にi)飽和炭化水素鎖を含むか、または飽和炭化水素鎖に酸素原子が導入された構造、またはii)スルホニルイミド基のコンジュゲーション(conjugation)を延長するか、またはポリグリコール単位を有する構造を有するリンカー(linker、R)を導入することにより、二次電池の活性化時に正極および負極表面に有機皮膜および/または無機皮膜を均一に形成し得る。すなわち、上記電解質添加剤は、二次電池の活性化時に正極および/または負極表面に形成される有機皮膜および/または無機皮膜に単分子形態で直接的に含まれ得る。また、上記電解質添加剤は電解質の酸化電位窓を増加させ得、これにより、正極および/または負極と電解質組成物との間の副反応を抑制し得る。したがって、上記電解質添加剤は電解質組成物の酸化電位窓を拡大し得、同時にそれを含む二次電池の電気的性能を向上させ得る。
【0046】
このために、上記化学式1で表される化合物において、
は、エチレン基、プロピレン基、シクロヘキシレン基、フェニレン基、オキシメチレン基、ピロール基、オキシフェニレン基、オキシナフタレニル基、オキシピロール基、オキシチオフェニレン基、オキシフラニル基または
【化24】
であり、
は、フルオロ基、メチル基、フッ化メチル基、メトキシ基、フッ化メトキシ基または
【化25】
であり、かつ上記
【化26】
に含まれた水素のうち1つ以上は選択的にフッ素原子で置換され得、
Mはリチウムであり、lは1または2の整数であり、mは2~10の整数であり得る。
【0047】
一つの例として、上記化学式1で表される化合物は、下記<構造式1>~<構造式17>のうちいずれか1つ以上の化合物であり得る。
【化27】
【化28】
【0048】
上記<構造式1>~<構造式17>で表される電解質添加剤は、二次電池の活性化時に正極はもちろん負極の表面に有機・無機コーティング層を均一に形成し得る。また、上記電解質添加剤は、電解質組成物の酸化電位窓を容易に増加させ得、これにより、二次電池の充放電時の電極と電解質との副反応を効果的に抑制し得る。
【0049】
一つの例として、本発明に係る電解質組成物は、酸化電位窓が4.5V以上に存在し得る。より具体的には、上記電解質組成物の酸化電位窓は、4.5V~7.0V、5.0V~6.5V、5.0V~6.0V、5.3V~6.5V、または5.5V~6.0Vの範囲内に存在し得る。
【0050】
上記酸化電位窓とは、正極と負極との間で発生する電気化学的酸化還元以外に、二次電池内部で付加的な電気化学反応が起こらない電圧の範囲をいう。また、上記酸化電位窓は、基準電極(reference electrode)としてリチウム電極を使用したときに測定された値であり得、これにより、Li/Liに対する相対値を意味し得る。本発明は、電解質の酸化電位窓が上記範囲から外れる場合に電位窓が狭くなるため、電池の充電・放電により非水系電解質自体が電気分解を起こしてリチウム二次電池の寿命が短くなり、発生するガスによる安全性の問題が発生するという問題がある。また、本発明に係る電解質組成物は、上述された酸化電位窓の範囲を満たす場合に、二次電池の充放電時に印加される電位に対して安定性が向上し得る。これにより、上記電解質組成物を含むリチウム二次電池は、電池の寿命が向上するのみならず、爆発などの危険性が低減され得る。
【0051】
また、上記電解質添加剤は、電解質組成物内に特定の含有量で含まれ得る。具体的には、上記化学式1で表される化合物を含む電解質添加剤は、電解質組成物全体の重量に対して10重量%以下であり得、具体的には0.01重量%~5重量%で含まれ得、より具体的には電解質組成物全体の重量に対して0.05重量%~3重量%、または1.0重量%~2.5重量%で含まれ得る。本発明は、電解質添加剤が過量に使用される場合に、電解質組成物の粘度上昇により電極と分離膜に対する濡れ性が低下することを防止する一方、電解質組成物のイオン伝導性が低下して電池性能が低下することを予防し得る。また、本発明は、電解質添加剤の含有量が上記範囲から外れる微量が使用されて添加剤の効果が微かに具現されることを防ぎ得る。
【0052】
本発明に係る電解質組成物は液体電解質であって、リチウム塩と共に非水系有機溶媒を含む。このとき、上記非水系有機溶媒は、電解質添加剤との相乗効果(synergy effect)のために下記化学式2で表されるエステル系溶媒を主成分として含み得る。
【0053】
【化29】
【0054】
上記化学式2において、
【化30】
は、単一結合または二重結合であり、
およびXはそれぞれ水素、フルオロ基、メチル基、エチル基、フッ化メチル基、フッ化エチル基、またはビニル基であり、
pは1~3の整数である。
【0055】
一つの例として、上記化学式2で表されるエステル系溶媒は、下記に示すエステル系化合物のうち1種以上を含み得る。
【化31】
【0056】
上記エステル系化合物は、それ自体では、カーボネート系溶媒と比較して低い電解質組成物の酸化電位窓を具現する。しかしながら、上記エステル系化合物は、化学式1で表される電解質添加剤と併用される場合には、酸化電位窓の拡張性に優れるのみならず、電解質の安定性がより向上し、高温および/または高電圧でのガス発生量が低減され得る。
【0057】
また、上記非水系有機溶媒は、上述されたエステル系溶媒と共に、フッ素含有エーテル系溶媒、フッ素含有環状カーボネート系溶媒、鎖状カーボネート系溶媒、ホスフェート系溶媒、およびスルホン系溶媒のうち1種以上の補助溶媒をさらに含み得る。
【0058】
具体的には、上記フッ素含有エーテル系溶媒は、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル(TTE)などを適用し得、上記フッ素含有環状カーボネート系溶媒は、フルオロエチレンカーボネート(FEC)などを適用し得る。また、上記鎖状カーボネート系溶媒は、エチルメチルカーボネート(EMC)、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)などを適用し得、上記ホスフェート系溶媒は、トリメチルホスフェート(TMP)、トリス(2-エチルヘキシル)ホスフェートなどを適用し得る。また、上記スルホン系溶媒は、スルホラン(sulfolane)、メチルスルホラン、ジメチルスルホキシド、スルホンアミドなどを適用し得る。
【0059】
上記補助溶媒は、酸化還元に対する電気化学的な安定性と熱や溶質との反応に関する化学的安定性の観点から、1種類を単独でエステル系溶媒と混合してもよく、2種類以上を用途に合わせて任意の組み合わせでエステル系溶媒と混合して用いてもよい。
【0060】
また、上記補助溶媒は、エステル系溶媒と混合するときに一定の体積比を満たすように混合され得る。具体的には、上記補助溶媒は、非水系有機溶媒全体の体積を基準として50体積%未満で含まれ得、より具体的には、非水系有機溶媒全体の体積を基準として40体積%以下、30体積%以下、20体積%以下、1体積%~30体積%、1体積%~20体積%、5体積%~20体積%、10体積%~20体積%、または20体積%~30体積%で含まれ得る。
【0061】
本発明は、非水系有機溶媒全体のうちの補助溶媒の含有量を上記割合に調節することにより、エステル系溶媒と補助溶媒の相溶性を高く維持し得、同時に電池の電荷移動度および/またはイオン移動度などを高めて電池の性能を改善し得る。
【0062】
また、上記非水系有機溶媒は、当業界で非水系電解質に使用する溶媒を追加的に混合し得、このとき、混合量は非水系有機溶媒全体の重量に対して10重量%未満であり得る。混合可能な非水系有機溶媒としては、例えば、N-メチル-2-ピロリジノン、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、1,2-ジメトキシエタン(DME)、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、1,3-ジオキソラン、ホルムアミド、ジメチルホルムアミド、ジオキソラン、アセトニトリル、ニトロメタン、ギ酸メチル、酢酸メチル、リン酸トリエステル、トリメトキシメタン、ジオキソラン誘導体、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、プロピレンカーボネート誘導体、テトラヒドロフラン誘導体、エーテル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチルなどの非プロトン性有機溶媒が使用され得る。
【0063】
一方、上記リチウム塩は、当業界で非水系電解質に使用するものであれば、特に制限なく適用され得る。具体的には、上記リチウム塩は、LiCl、LiBr、LiI、LiClO、LiBF、LiB10Cl10、LiPF、LiCFSO、LiCFCO、LiAsF、LiSbF、LiAlCl、CHSOLi、(CFSONLi、(FSONLi、LiBF(C)(LiODFB)、LiTDI、CLiOP(LiDFOP)、およびLiFNO(LiFSI)のうち1種以上を含み得る。
【0064】
これらのリチウム塩の濃度に対しては特に制限はないが、好適な濃度範囲の下限は0.5mol/L以上、具体的には0.7mol/L以上、より具体的には0.9mol/L以上であり、好適な濃度範囲の上限は2.5mol/L以下、具体的には2.0mol/L以下、より具体的には1.5mol/L以下の範囲である。リチウム塩の濃度が0.5mol/Lを下回ると、イオン伝導度が低下することにより、非水系電解液電池のサイクル特性、出力特性が低下するおそれがある。また、リチウム塩の濃度が2.5mol/Lを超えると、非水系電解液電池用電解液の粘度が上昇することにより、これもまたイオン伝導度を低下させるおそれがあり、非水系電解液電池のサイクル特性、出力特性を低下させるおそれがある。
【0065】
また、一度に多量のリチウム塩を非水系有機溶媒に溶解すると、リチウム塩の溶解熱のため液温が上昇する場合がある。このように、リチウム塩の溶解熱によって非水系有機溶媒の温度が著しく上昇すると、フッ素を含有するリチウム塩の場合は分解が促進されてフッ化水素(HF)が生成するおそれがある。フッ化水素(HF)は、電池性能の劣化の原因となるため好ましくない。したがって、上記リチウム塩を非水系有機溶媒に溶解するときの温度は特に限定されないが、-20℃~80℃に調節され得、具体的には0℃~60℃に調節され得る。
【0066】
また、上記電解質組成物は、上述された基本成分以外に添加剤をさらに含み得る。本発明の要旨を損なわない限り、本発明の非水系電解液に一般的に用いられる添加剤を任意の割合で添加してもよい。具体的には、シクロヘキシルベンゼン、ビフェニル、t-ブチルベンゼン、カーボネート、ビニルエチレンカーボネート、ジフルオロアニソール、フルオロエチレンカーボネート、プロパンスルトン、スクシノニトリル、ジメチルビニレンカーボネートなどの添加剤が挙げられる。上記添加剤は、過充電防止効果、負極皮膜形成効果、正極保護効果を有し得る。また、リチウムポリマー電池と呼ばれる非水系電解液電池に使用される場合と同様に、非水系電解液電池用電解液をゲル化剤や架橋ポリマーにより固体化して使用することも可能である。
【0067】
<リチウム二次電池>
さらに、本発明は一実施形態において、
正極、負極、および上記正極と負極との間に配置された分離膜を含む電極組立体、および
上述された本発明に係る電解質組成物を含むリチウム二次電池を提供する。
【0068】
本発明に係るリチウム二次電池は、正極、分離膜および負極が順次配置された電極組立体と、リチウム塩および電解質添加剤が非水系有機溶媒に溶解された形態を有する電解質組成物とを含む。このとき、上記リチウム二次電池は、酸化電位窓が拡張された上述の本発明の電解質組成物を含み、高電圧条件での駆動時の電解質の分解などの副反応が改善され得るので、高電圧駆動条件が要求される分野に有用に適用され得る。
【0069】
以下、上記リチウム二次電池の各成分をより詳細に説明する。
【0070】
上記電極組立体は、正極、分離膜および負極を含む。ここで、上記正極は、正極集電体上に正極活物質を含むスラリーを塗布、乾燥およびプレスして製造される正極合材層を備え、必要に応じて導電材、バインダー、その他の添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0071】
上記正極活物質は、正極集電体上で電気化学的に反応を起こし得る物質であって、可逆的にリチウムイオンのインターカレーションとデインターカレーションが可能な下記化学式3および化学式4で表されるリチウム金属酸化物のうち1種以上を含み得る。
【0072】
[化学式3]
Li[NiCoMn ]O
【0073】
[化学式4]
LiM Mn
【0074】
上記化学式3および化学式4において、
は、W、Cu、Fe、V、Cr、Ti、Zr、Zn、Al、In、Ta、Y、La、Sr、Ga、Sc、Gd、Sm、Ca、Ce、Nb、Mg、B、およびMoからなる群から選択される1種以上の元素であり、
x、y、z、wおよびvは、それぞれ1.0≦x≦1.30、0.5≦y<1、0<z≦0.3、0<w≦0.3、0≦v≦0.1であり、かつy+z+w+v=1であり、
は、Ni、CoまたはFeであり、
pは、0.05≦p≦1.0であり、
qは、1-pまたは2-pであり、
rは、0または1である。
【0075】
上記化学式3および化学式4で表されるリチウム金属酸化物は、それぞれニッケル(Ni)とマンガン(Mn)を高含有量で含有する物質であって、正極活物質として使用する場合には、高容量および/または高電圧の電気を安定的に供給し得るという利点がある。
【0076】
このとき、上記化学式3で表されるリチウム金属酸化物としては、LiNi0.8Co0.1Mn0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.9Co0.05Mn0.05、LiNi0.6Co0.2Mn0.1Al0.1、LiNi0.6Co0.2Mn0.15Al0.05、LiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1などを含み得、上記化学式4で表されるリチウム金属酸化物は、LiNi0.7Mn1.3、LiNi0.5Mn1.5、LiNi0.3Mn1.7、LiFePO、LiFe0.9Mn0.1PO、LiFe0.7Mn0.3PO、LiFe0.5Mn0.5POなどを含み得、これらを単独で使用するかまたは併用して使用し得る。
【0077】
リチウム鉄リン酸化物(LiFePO)のような正極活物質は、電池の活性化工程時に正極合材層表面に有機・無機皮膜を形成するのに必要な電圧条件まで到達しにくいため、上記有機・無機皮膜を安定的に形成することが難しい。しかしながら、化学式3および化学式4で表されるリチウム金属酸化物は、正極活物質として使用する場合に、電池の活性化工程時に有機・無機皮膜を形成するのに必要な電圧条件を容易に満たし得るので、正極表面に安定的に均一に有機・無機皮膜を形成し得る。また、このように形成された有機・無機皮膜は、正極表面で誘導される電解質組成物の酸化を抑制し得る。
【0078】
また、上記正極活物質は、正極合材層の重量を基準として85重量部以上で含まれ得、具体的には90重量部以上、93重量部以上、または95重量部以上で含まれ得る。
【0079】
また、上記正極合材層は、正極活物質と共に、導電材、バインダー、その他の添加剤などをさらに含み得る。
【0080】
このとき、上記導電材は、正極の電気的性能を向上させるために使用されるものであって、当業界で通常使用されるものを適用し得る。具体的には、上記導電材は、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、デンカブラック、ケッチェンブラック、スーパーP、チャンネルブラック、ファーネスブラック、ランプブラック、サーマルブラック、グラフェンおよびカーボンナノチューブから選択される1種以上を含み得る。
【0081】
また、上記導電材は、各正極合材層の重量を基準として0.1重量部~5重量部で含まれ得、具体的には0.1重量部~4重量部、2重量部~4重量部、1.5重量部~5重量部、1重量部~3重量部、0.1重量部~2重量部、または0.1重量部~1重量部で含み得る。
【0082】
また、上記バインダーは、正極活物質、正極添加剤および導電材が互いに結着されるようにする役割を果たし、このような機能を有するものであれば、特に制限なく使用され得る。具体的には、上記バインダーとしては、ポリビニリデンフルオライド-ヘキサフルオロプロピレンコポリマー(PVDF-co-HFP)、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride、PVDF)、ポリアクリロニトリル(polyacrylonitrile)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate)およびこれらの共重合体から選択される1種以上の樹脂を含み得る。一つの例として、上記バインダーは、ポリビニリデンフルオライド(polyvinylidenefluoride)を含み得る。
【0083】
また、上記バインダーは、各正極合材層の重量を基準として1重量部~10重量部で含まれ得、具体的には2重量部~8重量部、または1重量部~5重量部で含まれ得る。
【0084】
上記正極合材層の総厚みは特に制限されるものではないが、具体的には50μm~300μmであり得、より具体的には100μm~200μm、80μm~150μm、120μm~170μm、150μm~300μm、200μm~300μm、または150μm~190μmであり得る。
【0085】
また、上記正極は、正極集電体として当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものを使用し得る。例えば、上記正極集電体は、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用し得る。上記正極集電体は、アルミニウムやステンレススチールである場合に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記集電体の平均厚さは、製造される正極の導電性と総厚みを考慮して3μm~500μmで好適に適用され得る。
【0086】
さらに、上記負極は、正極と同様に、負極集電体上に負極活物質を塗布、乾燥およびプレスして製造される負極合材層を備え、必要に応じて導電材、バインダー、その他の添加剤などを選択的にさらに含み得る。
【0087】
上記負極活物質は炭素物質を含み得る。具体的には、上記炭素物質とは、炭素原子を主成分とする素材を意味し、このような炭素物質としては、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、難黒鉛化炭素、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケッチェンブラックから選択される1種以上を含み得る。
【0088】
また、上記負極活物質は、炭素物質と共にケイ素物質をさらに含み得る。上記ケイ素物質は、ケイ素原子を主成分とする素材を意味する。このようなケイ素物質としては、ケイ素(Si)、炭化ケイ素(SiC)、一酸化ケイ素(SiO)または二酸化ケイ素(SiO)を単独で含むかまたは併用し得る。上記負極活物質は、ケイ素(Si)含有物質として一酸化ケイ素(SiO)および二酸化ケイ素(SiO)が均一に混合されるかまたは複合化されて負極合材層に含まれる場合に、これらは酸化ケイ素(SiO、ただし、0.8≦q≦2.5)で表され得る。
【0089】
また、上記ケイ素物質は、負極活物質全体の重量に対して1重量%~20重量%で含まれ得、具体的には3重量%~10重量%、8重量%~15重量%、13重量%~18重量%、または2重量%~8重量%で含まれ得る。本発明は、上記のような含有量の範囲にケイ素物質の含有量を調節することにより、電池のエネルギー密度を極大化し得る。
【0090】
また、上記負極集電体は、当該電池に化学的変化を誘発せずに高い導電性を有するものであれば、特に制限されるものではない。例えば、上記負極集電体は、銅、ステンレススチール、ニッケル、チタン、焼成炭素などを使用し得る。上記負極集電体は、銅やステンレススチールである場合に、カーボン、ニッケル、チタン、銀などで表面処理されたものを使用することもできる。また、上記負極集電体の平均厚さは、製造される負極の導電性と総厚みを考慮して1μm~500μmで好適に適用され得る。
【0091】
一方、各単位セルの正極と負極との間に介在される分離膜とは、高いイオン透過度と機械的強度を有する絶縁性薄膜を意味する。上記分離膜としては、当業界で通常使用されるものであれば特に制限されないが、具体的には、耐薬品性があり疎水性であるポリプロピレン、ポリエチレン、およびポリエチレン-プロピレン共重合体のうち1種以上の重合体を含むものを使用し得る。上記分離膜は、上述された重合体を含むシートや不織布などの多孔性高分子基材形態を有し得、場合によっては、上記多孔性高分子基材上に有機物または無機物粒子が有機バインダーによりコーティングされた複合分離膜の形態を有することもできる。また、上記分離膜は、気孔の平均直径が0.01μm~10μmであり得、平均厚さは5μm~300μmであり得る。
【0092】
一方、本発明に係るリチウム二次電池は特に制限されるものではないが、用途に応じて円筒形、角形、パウチ(pouch)型またはコイン(coin)型などを多様に適用し得る。本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池は、パウチ型二次電池であり得る。
【0093】
以下、本発明を実施例および実験例によって、より詳細に説明する。
【0094】
ただし、下記実施例および実験例は本発明を例示するものであり、本発明の内容が下記実施例および実験例に限定されるものではない。
【0095】
<実施例1~25および比較例1~4.リチウム二次電池用電解質組成物の製造>
電解質添加剤をLiPFが1Mで溶解された非水系溶媒に電解質添加剤を電解質組成物全体の重量を基準に秤量して混合することにより、リチウム二次電池用非水系電解質組成物を製造した。このとき、リチウム塩の種類、非水系溶媒の組成、電解質添加剤の種類および含有量は下記表1に示す通りである。
【0096】
【表1A】
【表1B】
【0097】
<比較例5.リチウム二次電池用電解質組成物の製造>
電解質添加剤として構造式1で表される化合物の代わりに構造式1で表される化合物を重合したオリゴマー(重量平均分子量:2,500~5,000)を使用したことを除いて、実施例1と同様の方法を実行し、リチウム二次電池用非水系電解質組成物を製造した。
【0098】
<実施例26~50および比較例6~10.リチウム二次電池の製造>
正極活物質として粒子サイズが5μmであるLiNi0.7Co0.1Mn0.1Al0.1を用意し、カーボン系導電材およびバインダーとしてポリビニリデンフルオライドと94:3:3の重量比でN-メチルピロリドン(NMP)に混合してスラリーを形成し、アルミニウム薄板上にキャスティングして、120℃の真空オーブンで乾燥させた後に圧延して正極を製造した。
【0099】
これとは別に、天然黒鉛および人造黒鉛が1:1の重量比で混合された負極活物質を用意し、負極活物質97重量部とスチレンブタジエンゴム(SBR)3重量部とを水と混合してスラリーを形成し、銅薄板上にキャスティングして、130℃の真空オーブンで乾燥させた後に圧延して負極を製造した。
【0100】
上記得られた正極および負極に18μmのポリプロピレンからなるセパレーターを介在させ、ケースに挿入した後に、下記表2に示すように上記実施例と比較例で製造された電解質組成物を注入してリチウム二次電池を組立てた。
【0101】
組立てられた各リチウム二次電池の初期充電を行った。具体的には、リチウム二次電池を下記表2に示す条件で55±2℃で4.2Vの充電終止電圧となるように初期充電して活性化されたリチウム二次電池を製造した。
【0102】
【表2】
【0103】
<実験例1.>
本発明に係る電解質組成物の性能を評価するために、製造例と比較例で使用された電解質組成物を対象に下記のような実験を行った。
【0104】
イ)三電極電池のサイクリックボルタンメトリー(CV)評価
まず、コーティング層が正極表面に形成されることを確認するために、白金電極、白金電極およびリチウム金属電極を三電極として含む電池に実施例1~実施例25と比較例1~比較例5で使用された電解質組成物をそれぞれ注入して三電極電池を製作し、製作された各電池に対してサイクリックボルタンメトリー(CV)分析を行った。このとき、サイクリックボルタンメトリー(CV)は、60℃で観察範囲3.0V~6.0V(リチウム基準)および測定速度10mV/sの条件下で行われた。また、リチウム(Li/Li)に対する電解質組成物が酸化分解される電位を算出し、その結果を下記表3に示した。
【0105】
【表3】
【0106】
表3に示すように、本発明に係る電解質組成物は、化学式1で表される電解質添加剤を含み、酸化電位窓が拡張されることが確認された。具体的には、実施例の電解質組成物は、電解質添加剤が含有され、約5.15±0.05V以上で電流が増加した。これに対し、電解質添加剤を含まないかまたは本発明と異なる電解質添加剤を含む比較例の電解質組成物は、4.90±0.05V以下で電流が増加することが示された。
【0107】
このような電流の増加は、電解質の酸化分解が発生し、正極表面で有機・無機コーティング層を形成することを示すものである。すなわち、上記実施例の電解質組成物は、比較例の電解質組成物と比較して化学式1で表される電解質添加剤を含有することにより、酸化電位窓が約0.25V以上拡張されることを意味する。これらの結果から、本発明に係る電解質組成物は酸化安定性が向上することが分かる。
【0108】
ロ)半電池の微分容量曲線分析
本発明に係る電解質組成物の負極表面での作用を確認するために、リチウム金属と黒鉛(人造黒鉛:天然黒鉛=9:1の重量比の混合)を用いて半電池を製作し、上記半電池に実施例1~実施例25と比較例1~比較例5で製造された電解質組成物をそれぞれ注入した。その後25℃で3.5±0.5Vで0.005Cの速度で0.05Vまで充電し、電位値(V)と容量値(mAh)を測定した後に、電位値を容量値から微分(dQ/dV)して還元電位値を算出した。
【0109】
その結果、本発明による化学式1で表される電解質添加剤を含む実施例の電解質組成物は、電解質添加剤を含まない比較例の電解質組成物と異なり、リチウムと比べて1.32V付近の電圧で下降ピークを示すことが確認された。上記下降ピークは、負極である黒鉛電極表面で還元反応が発生したことを意味するものであって、電解質組成物内に含まれた化学式1で表される電解質添加剤が、リチウムに対して1.32V付近で、負極表面で還元反応により皮膜物質に転換されることを示す。
【0110】
これらの結果から、本発明に係るリチウム二次電池は、活性化工程時に負極表面で還元反応が誘導され、有機・無機コーティング層が形成されることが分かる。
【0111】
<実験例2.>
本発明に係る電解質組成物の高温高電圧条件での酸化安定性を評価するために、実施例26~実施例50および比較例6~比較例10で製造されたリチウム二次電池を対象に高率放電容量およびガス発生量を測定した。
【0112】
具体的には、実施例26~実施例50および比較例6~比較例10のリチウム二次電池をそれぞれ25℃で0.33Cの速度で4.2VまでCC-CV条件で充電し、0.33Cの速度で2.5VまでCC条件で放電して活性化した。その後、活性化された各リチウム二次電池をそれぞれ0.33Cの速度で4.5VまでCC-CV条件で充電し、0.33Cの速度で2.5VまでCC条件で放電した。上記充電および放電を1サイクルとして3サイクルの充放電を行った。
【0113】
その後、アルキメデスの原理を用いて二次電池の体積を測定した。その後、60℃で0.33Cの速度で4.5VまでCC-CV条件で満充電し、2.5Cの速度で2.5VまでCC条件で放電して高温での高率放電容量を測定した。また、高率放電容量の測定が完了したら、先に体積を測定した方法と同様に二次電池の体積を測定して体積変化量を算出した。このとき、体積変化量は、高温/高率充放電時に発生したガス量を意味すると判断した。得られた結果を下記表4に示した。
【0114】
【表4】
【0115】
本発明に係るリチウム二次電池は、酸化電位窓が拡張された本発明の電解質組成物を含み酸化安定性に優れるため、高温および高電圧条件で優れた電池性能を示すことが分かる。
【0116】
具体的には、実施例で製造されたリチウム二次電池は、化学式1で表される電解質添加剤を含有する電解質組成物を含み、高温および高電圧条件で665mAh以上の高い放電容量を示すことが確認された。特に、実施例のリチウム二次電池のうち、電解質組成物にエステル系有機溶媒を含有する場合には、充放電時に電解質組成物が分解されて発生するガス量が1900μl未満と低くなった。
【0117】
これらの結果から、本発明に係るリチウム二次電池は、化学式1で表される電解質を含み、4.5V以上で酸化電位窓を有する電解質組成物を含み、高温および/または高電圧条件でも優れた電気的性能を示すことが分かる。
【0118】
以上、本発明の好ましい実施例を参照して説明したが、当該技術分野における熟練した当業者または当該技術分野において通常の知識を有する者であれば、後述される特許請求の範囲に記載された本発明の思想および技術領域から逸脱しない範囲内で本発明を多様に修正および変更し得ることを理解できるだろう。
【0119】
したがって、本発明の技術的範囲は、明細書の発明の概要に記載された内容に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められるべきである。
【国際調査報告】