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  • 特表-薄壁熱収縮チュービング 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】薄壁熱収縮チュービング
(51)【国際特許分類】
   B29C 61/06 20060101AFI20241108BHJP
   C08J 5/00 20060101ALI20241108BHJP
   B29K 27/18 20060101ALN20241108BHJP
   B29L 23/00 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
B29C61/06
C08J5/00 CEW
B29K27:18
B29L23:00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531190
(86)(22)【出願日】2023-03-03
(85)【翻訳文提出日】2024-05-23
(86)【国際出願番号】 US2023014415
(87)【国際公開番号】W WO2023200531
(87)【国際公開日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】17/722,135
(32)【優先日】2022-04-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522169793
【氏名又は名称】ゼウス カンパニー エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100094112
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 讓
(74)【代理人】
【識別番号】100136799
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 亜希
(74)【代理人】
【識別番号】100128668
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 正巳
(74)【代理人】
【識別番号】100189474
【弁理士】
【氏名又は名称】田村 修
(72)【発明者】
【氏名】バラード,ロバート エル.
(72)【発明者】
【氏名】プール,テイラー
【テーマコード(参考)】
4F071
4F210
【Fターム(参考)】
4F071AA27
4F071AF20Y
4F071AF54Y
4F071AF61Y
4F071AH07
4F071AH12
4F071BB09
4F071BC05
4F071BC12
4F210AA17
4F210AG08
4F210AH63
4F210AR12
4F210AR20
4F210QA05
4F210QC03
4F210QD25
4F210QG04
4F210QG18
4F210RA03
4F210RC02
4F210RG02
4F210RG07
4F210RG44
4F210RG52
4F210RG67
(57)【要約】
一般に少なくとも1種のフッ素化ポリマー樹脂を含む様々な所望の特性を示す熱収縮チュービングが提供される。このチュービングは、熱収縮能力、高い拡張率/回復率、低い長手方向収縮、低温での回復、及び約0.003インチ未満の平均壁厚等の所望の物理的特性を示し得る。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
約5:1を超える回復率(RR)を有するPTFE熱収縮チュービング。
【請求項2】
前記RRは、約5.5:1を超える、請求項1に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項3】
前記RRは、約6:1を超える、請求項1に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項4】
前記PTFE熱収縮チュービングは、拡張後に0.003インチ以下の平均壁厚を有する、請求項1に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項5】
直径変化対回復温度のプロットに対して310℃から330℃の間で行った線形回帰により、約1.3%/℃を超える傾き値がもたらされる、PTFE熱収縮チュービング。
【請求項6】
前記PTFE熱収縮チュービングは、約5:1を超えるRRを有する、請求項5に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項7】
前記PTFE熱収縮チュービングは、約5.5:1を超えるRRを有する、請求項5に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項8】
前記PTFE熱収縮チュービングは、約6:1を超えるRRを有する、請求項5に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項9】
前記PTFE熱収縮チュービングは、拡張後に0.003インチ以下の平均壁厚を有する、請求項5に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項10】
毎分10℃の加熱速度を使用するDSC温度ランプから得られる溶融吸熱のピーク温度に対応する温度と、引張グリップにおいて円周方向に配向された熱収縮チュービング試験片のDMA温度ランプにおいて得られたE’-T曲線における相対最小値に対応する温度との間の差が約7.5℃を超える、PTFE熱収縮チュービング。
【請求項11】
前記PTFE熱収縮チュービングは、約5:1を超えるRRを有する、請求項10に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項12】
前記PTFE熱収縮チュービングは、約5.5:1を超えるRRを有する、請求項10に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項13】
前記PTFE熱収縮チュービングは、約6:1を超えるRRを有する、請求項10に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項14】
前記PTFE熱収縮チュービングは、拡張後に0.003インチ以下の平均壁厚を有する、請求項10に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項15】
直径変化対回復温度のプロットに対して310℃から330℃の間で行った線形回帰により、約1.3%/℃を超える傾き値がもたらされる、請求項10に記載のPTFE熱収縮チュービング。
【請求項16】
内径(ID)を有するPTFEを含む壁部を備えたチュービングを含み、前記IDは拡張後に約0.3インチ以下であり、かつ350℃で10分間加熱すると、前記IDは少なくとも約78%縮小可能である、熱収縮チュービング。
【請求項17】
350℃で10分間加熱すると、前記IDは少なくとも約80%縮小可能である、請求項16に記載の熱収縮チュービング。
【請求項18】
前記熱収縮チュービングの壁部は、拡張後に約0.003インチ以下の平均壁厚を有する、請求項16に記載の熱収縮チュービング。
【請求項19】
毎分10℃の加熱速度を使用するDSC温度ランプから得られる溶融吸熱のピーク温度に対応する温度と、引張グリップにおいて円周方向に配向された熱収縮チュービング試験片のDMA温度ランプにおいて得られたE’-T曲線における相対最小値に対応する温度との間の差が約7.5℃を超える、請求項16に記載の熱収縮チュービング。
【請求項20】
直径変化対回復温度のプロットに対して310℃から330℃の間で行った線形回帰により、約1.3%/℃を超える傾き値がもたらされる、請求項16に記載の熱収縮チュービング。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、様々な分野における用途が見出される、熱収縮高分子チュービング、及びかかる熱収縮高分子チュービングの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱収縮チュービングは概して、管状に押出成形されて拡張させたプラスチック材料を含む。押出成形されて拡張させたチューブは、所定の温度に加熱したときに収縮する(すなわち、直径が小さくなる)ように設計されている。このため、熱収縮チュービングは様々な機能をもたらすことができる。熱収縮チュービングは、様々な要素に密接に被覆し、それらの要素を絶縁する(例えば、要素を摩耗から保護し、かつ熱的、化学的、湿気からの及び/又は電気的な絶縁をもたらす)ような、密着した保護用外被をもたらすことができる。熱収縮チュービングは、(すなわち、同じ熱収縮チューブ内にある)或る特定の要素をまとめるのに役立ち得る。さらに、熱収縮チュービングは、他の要素から或る特定の要素を封止/単離するように働き、2つの要素、例えば2つのチューブを接合/融着するのに使用することができる。また、熱収縮チュービングは、(例えば、別の材料を取り囲むこと、及びその材料を同様に収縮させることによって)下地材料(underlying material:中にある材料)の特性を改質するのにも役立ち得る。これらの性能によりチュービングは様々な目的に有用なものとなり、熱収縮チュービングは、様々な分野、例えば、医療、化学、電気、光学、電子、航空宇宙、自動車及び電気通信分野にまたがって利用されている。
【0003】
医療に関して、体内に挿入されるますます小さくかつより複雑なデバイス(例えば、カテーテル、内視鏡等)を設計する上で熱収縮チュービングは特に有益である。熱収縮チュービングの1つの代表的な医療用途は、ポリマーの内層と、ワイヤブレードの中間層と、別のポリマーの外層とを有する管状構造を備えるガイドカテーテルの製造に関するものである。かかるカテーテルを組み立てるために、拡張させた熱収縮チューブが典型的に、マンドレルの周囲に組み立てられたシャフトに施され、このアセンブリを、熱収縮チューブを収縮させるのに十分な高温に曝す。これらの条件下では、カテーテルシャフト内の外側の高分子層が溶融して流出し、熱収縮チューブが縮小し、カテーテルシャフトの内側及び外側の高分子層が接着するような圧縮力が加えられ、ワイヤブレードが内部に被包される。熱収縮チュービングはその後取り除かれて処分され、カテーテルアセンブリがマンドレルから取り出される。例えば、Rossに対する特許文献1、及びLunnに対する特許文献2の開示(引用することにより本明細書の一部をなす)を参照されたい。
【0004】
熱収縮チュービングは、例えば、真空拡張、ガス圧成形、逐次加熱/延伸等の様々なプロセスを使用して、数十年にわたって商業的に製造されてきたことに留意されたい。熱収縮チュービングを拡張する既知の方法は、例えば、Edwardらの特許文献3、Sullivanの特許文献4、Yoshidaらの特許文献5、Hensonの特許文献6、Hensonの特許文献7、及びRoofらの特許文献8(それぞれは引用することにより本明細書の一部をなす)の開示に示されている。しかしながら、熱収縮チュービングは、典型的には、最大4:1の回復率を有するグレードでしか商業的に入手できない。例えば、典型的なポリテトラフルオロエチレン(「PTFE」)熱収縮チュービングは現在、最大4:1の回復率で商業的に入手可能であり、典型的なフッ素化エチレンプロピレン(「FEP」)熱収縮チュービングは現在、最大2:1の回復率で商業的に入手可能である。さらに、これらの製品は、典型的には、回復時に最大15%の長手方向の長さ変化を伴う。
【0005】
したがって、デバイス部材に施すことで必要に応じてこれを被包しかつ圧縮することができ、対応する長手方向の変化の増大を伴わずに高い回復率を提供し得るチュービングが求められている。さらに、積層中の熱伝達を強化し、全体の効率を高めることができる薄壁を有するチュービングも求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第7,306,585号
【特許文献2】米国特許第5,755,704号
【特許文献3】米国特許第2,987,767号
【特許文献4】米国特許第3,412,189号
【特許文献5】米国特許第7,625,194号
【特許文献6】米国特許第9,296,165号
【特許文献7】米国特許第9,327,444号
【特許文献8】米国特許第9,440,044号
【発明の概要】
【0007】
本開示は、(従来の熱収縮チュービングで典型的に見られるような)対応する長手方向の大幅な増加を伴わずに従来の熱収縮チュービングよりも高い回復率を示す拡張された形態のフルオロポリマー熱収縮チューブに関する。さらに、本開示の或る特定の熱収縮チュービングは、商業的に入手可能なフルオロポリマー熱収縮チュービングでは以前は達成不可能であった薄壁を有し、及び/又は従来の熱収縮プロセスで使用されるよりも低い温度で回復可能である。
【0008】
本開示の一態様は、約5:1を超える回復率(RR)を有するPTFE熱収縮チュービングを提供する。幾つかの実施の形態において、本開示のPTFE熱収縮チュービングは、約5.5:1を超える、約6:1を超える、約7:1を超える、約8:1を超える、又は約9:1を超える回復率を有し得る。幾つかの実施の形態において、本開示のPTFE熱収縮チュービングは、拡張後に0.003インチ以下の平均壁厚を有し得る。或る特定の実施の形態において、PTFE熱収縮チュービングは、拡張後に約0.0005インチ以下の平均壁厚を有し得る。
【0009】
本開示の別の態様は、直径変化対回復温度のプロットに対して310℃から330℃の間で行った線形回帰により、約1.3%/℃を超える傾き値がもたらされる、PTFE熱収縮チュービングを提供する。幾つかの実施の形態において、PTFE熱収縮チュービングは、約5:1を超えるRRを有する。或る特定の実施の形態において、PTFE熱収縮チュービングは、約5.5:1を超える、約6:1を超える、約7:1を超える、約8:1を超える、又は約9:1を超えるRRを有し得る。幾つかの実施の形態において、本開示によるPTFE熱収縮チュービングは、拡張後に0.003インチ以下の平均壁厚を有し得る。或る特定の実施の形態において、PTFE熱収縮チュービングは、拡張後に約0.0005インチ以下の平均壁厚を有し得る。
【0010】
本開示の別の態様は、毎分10℃の加熱速度を使用するDSC温度ランプから得られる溶融吸熱のピーク温度に対応する温度と、引張グリップにおいて円周方向に配向された熱収縮チュービング試験片のDMA温度ランプにおいて得られたE’-T曲線における相対最小値に対応する温度との間の差が約7.5℃を超える、PTFE熱収縮チュービングを提供する。幾つかの実施の形態において、PTFE熱収縮チュービングは、約5:1を超えるRRを有し得る。或る特定の実施の形態において、PTFE熱収縮チュービングは、約5.5:1を超える、約6:1を超える、約7:1を超える、約8:1を超える、又は約9:1を超えるRRを有し得る。幾つかの実施の形態において、本開示によるPTFE熱収縮チュービングは、拡張後に0.003インチ以下の平均壁厚を有し得る。或る特定の実施の形態において、PTFE熱収縮チュービングは、拡張後に約0.0005インチ以下の平均壁厚を有し得る。幾つかの実施の形態において、直径変化対回復温度のプロットに対して310℃から330℃の間で行った線形回帰により、本開示の熱収縮チュービングについて約1.3%/℃を超える傾き値がもたらされる。
【0011】
本開示の更なる態様は、内径(ID)を有するPTFEを含む壁部を備えたチュービングを含み、IDは拡張後に約0.3インチ以下であり、かつ350℃で10分間加熱すると、IDは少なくとも約78%縮小可能である、熱収縮チュービングを提供する。幾つかの実施の形態において、10分かけて350℃に加熱すると、熱収縮チュービングのIDは、少なくとも約80%縮小可能である。幾つかの実施の形態において、熱収縮チュービング壁は、拡張後に約0.003インチ以下の平均壁厚を有する。或る特定の実施の形態において、熱収縮チュービング壁は、拡張後に約0.0005インチ以下の平均壁厚を有する。或る特定の実施の形態において、毎分10℃の加熱速度を使用するDSC温度ランプから得られる溶融吸熱のピーク温度に対応する温度と、引張グリップにおいて円周方向に配向された熱収縮チュービング試験片のDMA温度ランプにおいて得られたE’-T曲線における相対最小値に対応する温度との間の差が約7.5℃を超える。幾つかの実施の形態において、直径変化対回復温度のプロットに対して310℃から330℃の間で行った線形回帰により、本開示の熱収縮チュービングについて約1.3%/℃を超える傾き値がもたらされる。
【0012】
本開示のこれらの及び他の特徴、態様、及び利点は、以下に簡単に説明される添付の図面とともに以下の詳細な説明を読むことにより明らかになるであろう。本開示は、そのような特徴又は要素が明示的に組み合わせられるか又は他には本明細書の具体的な実施の形態の記載若しくは特許請求の範囲に列挙されるかどうかにかかわらず、本開示に示される又は請求項のいずれか1つ以上に列挙される2つ、3つ、4つ、又はそれより多くの特徴又は要素のあらゆる組合せを含む。本開示は、本開示の文脈による別段の明確な指示がない限り、その態様及び実施の形態のいずれにおいても、本開示のあらゆる分離可能な特徴又は要素を組み合わせることが可能であることが意図されるとみなされるべきであるように総体的に読まれることが意図される。
【0013】
本発明の実施形態を理解するために、添付の図面について言及する。これらは、必ずしも正しい縮尺で描かれているものではなく、図面中、参照符号は、本発明の例示的な実施形態の構成要素を表している。図面は、単なる例示であり、本発明を限定するように解釈されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】幾つかの商業的に入手可能なPTFE熱収縮チューブと比較された本開示の例示的な実施形態に従って作製されたPTFE熱収縮チューブについての温度に応じた貯蔵弾性率を示すグラフである。
図2】本開示の例示的な実施形態に従って作製されたPTFE熱収縮チューブから得られたDSC曲線とDMA曲線との重ね合わせを示す図である。
図3】様々な温度で10分間回復させた場合の、幾つかの商業的に入手可能なPTFE熱収縮チューブと比較された本開示の例示的な実施形態に従って作製されたPTFE熱収縮チューブについての310℃~330℃の範囲で測定された内径変化のパーセント及びその線形回帰を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の実施形態の幾つかであって、全てを示すものではないが、添付の図面を参照して以下でより詳細に本発明を説明する。実際のところ、これらの発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書中に記載の実施形態に限定するように解釈されるものではない。むしろ、これらの実施形態は、本開示が法的適用要件を満たすために提示されるものである。全体を通じて同様の符号は同様の要素を表す。
【0016】
本明細書において用いられる用語は、特定の実施形態を記述することのみを目的としており、本発明を制限することは意図していない。本明細書において用いられるときに、単数形「1つの("a", "an")」及び「その(the)」は、文脈において他に明確に指示されない限り、複数形も含むことを意図している。本明細書において用いられるときに、「備える、含む("comprises" and/or "comprising")」という用語は、言及された特徴、整数、工程、動作、要素、及び/又は構成要素の存在を規定するが、1つ以上の他の特徴、整数、工程、動作、要素、構成要素、及び/又はそれらのグループの存在又は追加を除外しないことは更に理解されよう。
【0017】
本開示は、本明細書において更に概説されるように、特有の特性及び特有の特性の組合せを備えた熱収縮チュービングを提供する。一般に、「熱収縮チュービング」は、ポリマー(「投入(input)」)チュービング(例えば、押出成形されたチュービング)を拡張して熱収縮チュービング(本明細書においては「拡張」形態とも呼ばれる)を得ることによって作製された収縮性チュービングである。加熱及び/又は焼結すると、熱収縮チュービングはその当初の/投入サイズと同等の(又はそれに近い)サイズ(一般にその「回復済み」サイズと呼ばれる)まで「収縮」する。本開示による熱収縮チュービングの組成及び全体のサイズは広範囲に及ぶことができ、特に限定されない。熱収縮チュービングを、例えば、拡張後のその内径(「ID」)(本明細書においては「拡張済み内径」(ID)とも呼ばれる)又は回復後のその内径(「ID」)(本明細書においては「回復済み内径(ID)」とも呼ばれる)のいずれか、その長さ、その平均壁厚、その拡張率(ER)、及びその回復率(RR)によって定義することができる。
【0018】
幾つかの実施形態において、開示された熱収縮チュービングは、1種以上のフッ素化ポリマーを含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなる。本開示による例示的なフッ素化ポリマーとしては、限定されるものではないが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(例えば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、PMVE、又はペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE))、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマー(THV)、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、又は上述のいずれか2種以上のコポリマー、ブレンド、若しくは誘導体が挙げられる。特定の実施形態において、開示された熱収縮チュービングは、PTFEを含むか、本質的にPTFEからなるか、又はPTFEからなり、このような熱収縮チュービングは、本明細書においては「PTFE熱収縮チュービング」と呼ばれる場合がある。幾つかの他の実施形態において、開示された熱収縮チューブは、ポリアリールエーテルケトン等の1種以上の非フッ素化ポリマーを含むか、本質的にそれらからなるか、又はそれらからなり得る。本開示による例示的なポリアリールエーテルケトンとしては、限定されるものではないが、ポリエーテルケトン(PEK)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルケトンケトン(PEKK)、ポリエーテルエーテルケトンケトン(PEEKK)、及びポリエーテルケトンエーテルケトンケトン(PEKEKK)が挙げられる。
【0019】
幾つかの実施形態において、1種以上の添加剤をチュービング壁内に組み込むことができる。幾つかのそのような実施形態において、1種以上の添加剤をチュービングの壁厚及び長さ全体に(例えば、実質的に均一に)分布させることができる。幾つかの実施形態において、1種以上の添加剤としては、例えば脂肪族炭化水素系潤滑剤等の潤滑剤を挙げることができる。或る特定の実施形態において、潤滑剤は、例えばナフタレンであってよい。本明細書において言及される1種以上の添加剤は、本開示の様々な実施形態による最終製品(すなわち、最終熱収縮チュービング)中に存在していても、又は存在していなくてもよいことに留意されたい。例えば、或る特定の実施形態において、潤滑剤をポリマー樹脂(例えば、PTFE樹脂等)に施した後に、投入チュービングを押出成形することができ、引き続き、投入チュービングが押出成形ダイから出た後で、かつ投入チュービングの焼結前に潤滑剤を蒸発させる。潤滑剤又はその他の添加剤の含まれ得る量は特に限定されない。幾つかの実施形態において、例えば、添加剤(例えば、潤滑剤)は、チュービングの総重量に対して、約1重量%~約30重量%、約16重量%~約25重量%、又は約10重量%~約20重量%の範囲の量で含まれていてよい。他の実施形態において、チュービングは、その中に添加剤を一切含まなくてよい。
【0020】
本開示の範囲内の熱収縮チュービングのサイズ(例えば、長さ、直径(すなわち、拡張済み内径、ID)、及び平均壁厚)は特に限定されない。例えば、本明細書に記載されるチュービングの長さは、個別サイズの単位(例えば、幾つかの実施形態において、カテーテル製造の場合には0.25インチから120インチ程度)から、輸送が容易で更に個別サイズの単位に切断され得る長さないし大規模な生産長さ(例えば、数百フィート程度等)まで様々であり得る。本明細書に記載されるチュービングの直径は、特に、チュービングに意図される用途に応じて様々であり得る。特に医療用途向けの本明細書に記載されるチュービングの或る特定の拡張済みIDは約0.01インチ~約1.5インチ(例えば、約0.025インチ~約0.75インチ、又は約0.05インチ~約0.5インチ)の範囲であり得るが、この範囲外の拡張済みIDを有するチュービングも、特に異なる分野における用途の文脈の中で本開示によって包含される。幾つかの実施形態において、例えば、チュービングの拡張済みIDは約0.034インチ~約4インチの範囲であり得る。
【0021】
チュービングの壁厚に関して、本開示のPTFE熱収縮チュービングによって示されるより高い拡張率/回復率により、幾つかの実施形態において、例えば、本明細書において以下に示される例に示されるように、商業的に入手可能なPTFE熱収縮チュービング及び/又はFEP熱収縮チュービングよりも薄い拡張済み壁部及び回復済み壁部がもたらされ得ることに留意されたい。或る特定の例示的な実施形態において、本開示の熱収縮チュービングは約0.0001インチ~約0.005インチ、約0.0001インチ~約0.0025インチ、又は約0.0001インチ~約0.0005インチの範囲の平均壁厚を有し得る。幾つかの実施形態において、本開示の熱収縮チュービングは約0.005インチ以下、約0.003インチ以下、約0.001インチ以下、約0.00075インチ以下、又は約0.0005インチ以下の平均壁厚を有し得る。このような値は拡張後でかつ回復前の値である。
【0022】
これらのかなり薄い壁厚は、現在市場で使用されている商業的に入手可能なPTFE熱収縮チュービング及びFEP熱収縮チュービングに比べて大きな利点をもたらし得る。例えば、本開示による薄壁PTFE熱収縮製品は、リフロー中の熱伝達を強化し、リフロープロセスの全体的な効率を高めることができる。FEP熱収縮チュービングに関しては、FEPの熱伝導率(200℃以上のリフロー温度で0.180W/m・K)がPTFEの熱伝導率(200℃以上のリフロー温度で0.280W/m・K)よりもはるかに低いことが留意され、こうして、FEP熱収縮チュービングと比較してPTFE熱収縮チュービングの熱伝達が改善することが証明される。例えば、D.M. Price, M. Jarratt, Thermochimica Acta, 392, 231, 2002、及びL.K. Olifirov, A.A. Stepashkin, G. Sherif, V.V. Tcherdyntsev, Polymers, 13, 781, 2021(これらは引用することにより本明細書の一部をなす)を参照のこと。
【0023】
本明細書に記載される熱収縮チュービングは、有利な以下の特性及びそれらの2つ以上等の特性の組合せを示し得る:高い拡張率、高い回復率、より低温での回復、回復時の小さな長さ変化、及び/又は拡張及び/又は回復の後の薄壁。幾つかの実施形態において、これらの特性のうちの2つ(例えば、高い拡張率及び高い回復率、高い拡張率及びより低温での回復、高い回復率及びより低温での回復、高い拡張率及び回復時の小さな長さ変化、高い回復率及び回復時の小さな長さ変化、低温での回復及び回復時の小さな長さ変化、高い回復率及び薄壁、高い拡張率及び薄壁、低温での回復及び薄壁、小さな長さ変化及び薄壁)、これらの特性のうちの3つ以上(例えば、高い回復率、高い拡張率、及び薄壁、高い回復率、高い拡張率、及びより低温での回復、高い回復率、高い拡張率、及び回復時の小さな長さ変化等)、これらの特性のうちの4つ以上(例えば、高い回復率、高い拡張率、薄壁、及びより低温での回復、高い回復率、高い拡張率、薄壁、及び回復後の小さな長さ変化等)、又はこれらの特性のうちの5つ全てを示す熱収縮チュービングが提供される。
【0024】
このような特性は、次の等式を使用して定義され得る:
拡張率=ER=ID/ID
回復率=RR=ID/ID
長さ変化=ΔL=((L-L)/L)(100)
直径変化=ΔD=(ID-ID)/ID)(100)
【0025】
これらの等式において、L及びLは、それぞれ、熱収縮チュービング(拡張形態)の長さ及び「回復済み」(すなわち、熱収縮済み)チュービングの長さである。IDは、投入チューブ(すなわち、拡張、またその後に続く「収縮」前のチューブ)の当初の内径(ID)を指し、IDは、拡張済み熱収縮チュービングの内径(ID)を指し、かつIDは、回復済み(熱収縮済み)チューブの内径(ID)を指す。ER、RR、ΔL、及びΔDを、あらゆる回復温度で評価することができる。本明細書において使用される場合、上記パラメーターを以下の通りに計算した。
【0026】
長さ変化(ΔL)は以下のように求められる。熱収縮チュービングをオーブンに入れて無制限に回復させる前に、拡張済みチュービングを4インチの長さに切断する。試験片にバリ又はその他の変形が存在せず、かつ試験片がチュービングの長手方向軸に対して垂直であることが確保されるように、熱収縮チュービングから4インチの長さの試験片を慎重に切り出す。指定された温度での無制限の回復プロセスの後、検証済みの定規を使用して最も近い1/64インチまでチュービングの長さを再測定して、プロセス中に起こった収縮又は伸びの量を決定する。例えば、回復済み長さから拡張済み長さを減算し、拡張済み長さで割った後、この量に100を掛けて、全体的な長さ変化のパーセンテージ(ΔL)を得る。典型的には、長手方向の変化は約±20%の範囲内であると測定される(すなわち、長さ変化には回復時に約20%以下の伸び又は収縮が許容される)。幾つかの実施形態において、長手方向の変化は、約±15%、約±10%、又は約±5%の範囲内であると測定される。或る特定の実施形態において、長手方向の変化は平均して5%以下であった。PTFE熱収縮についての標準時間及び回復温度は350℃で10分間である。FEPの標準時間及び回復温度は210℃~221℃で10分間である。カテーテルの製造については、外側ジャケットをリフローさせるのに260℃でPTFEの熱収縮が回復される。
【0027】
拡張率(ER)は、測定された拡張済みIDを測定された投入IDで割ることによって計算される。回復率(RR)は以下のように求められる。拡張済みチュービングから5つの4インチ長の試験片を切り出し、それぞれの拡張済みIDを測定する。次いで、試験片を指定された温度に設定されたオーブンに個別におよそ10分間入れる(例えば、それぞれ、1つ目の試験片を310℃で加熱し、2つ目の試験片を320℃で加熱し、3つ目の試験片を330℃で加熱し、4つ目の試験片を340℃で加熱し、かつ5つ目の試験片を350℃で加熱した)。各熱収縮チュービング試験片を指定された回復温度に10分間曝した後、これをオーブンから取り出して周囲温度まで冷ます。これにより、拡張済み熱収縮チュービングが無制限の回復プロセスにかけられる。周囲温度まで冷やした後、回復済みチュービングを鋭いかみそりの刃で同じ長さの4つの切片に切断する。これにより、回復済み熱収縮チュービングの長さに沿って5箇所の異なる測定位置が得られる。次いで、検証済みの測定具を使用して、それぞれの異なる位置でIDを測定し、その平均を回復済みIDと解釈する。拡張済みチュービングのIDを、無制限の回復プロセス後に測定される回復済みチュービングのIDで割ることで、指定された温度での熱収縮製品の回復率(RR)が得られる。引き続き、熱収縮チュービングの直径変化は、拡張済みチュービングのIDから回復済みチュービングのIDを減算し、拡張済みチュービングのIDで割った後、この量に100を掛けて全体的な直径変化のパーセンテージ(ΔD)を得ることによって計算される。
【0028】
熱収縮能力に関して、或る特定の実施形態において、本明細書に開示されるチュービングは、熱に曝されると(例えば、拡張状態にあるため)収縮する(直径が小さくなる)ことが可能である。熱収縮材料は一般に下地材料(例えば、カテーテル構造、医療デバイス部材等)に施され加熱される。熱サイクルにかけられると、チュービングの内径及び外径が小さくなる(「回復済み」ID及びODと呼ばれる、拡張済みチュービングによって示されるものよりも小さい内径(ID)及び小さい外径(OD)が得られる)。好ましくは、チュービングの直径のみが実質的に収縮し、長さは実質的に収縮しない(すなわち、チュービングは1つの面でしか収縮しない)。上記のように、拡張済みIDと当初の投入IDとの間の比率を拡張率と呼ぶ。拡張率は、拡張済みIDを当初の投入IDで割ったものである。典型的に使用される温度よりも高温のダイ温度を使用することによって、4:1をはるかに超える拡張率を得ることができることが見出された。例えば、本明細書に記載されるチュービングの種類に典型的な拡張率は少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、又は少なくとも約10:1であり得る。
【0029】
商業的に利用可能な熱収縮方法を使用して高い拡張率を達成することができるが、本開示の熱収縮チュービングは、驚くべきことに、当該技術分野において知られる従来の熱収縮チュービングと比較してより高い回復率を示し得る(例えば、当該技術分野において知られる従来の熱収縮チュービングは、典型的には4:1以下の回復率を有する)ことに留意されたい。上記のように、例えば、拡張済みIDと回復済みIDとの間の比率を回復率と呼ぶ。回復率は、拡張済みIDを回復済みIDで割ったものである。理論により縛られることを意図するものではないが、拡張済みチュービングの急速な冷却は、チュービングが明らかに回復し始める前にエントロピー的に好ましくない拡張状態に固定するのに効果的であるため、商業的に利用可能な最大4:1の回復率を超える回復率を有する最終製品が製造されることが見出された。幾つかの実施形態において、この急速な冷却は、加熱されたダイの端部に取り付けられた水冷式の環状固定具によって達成され得る。例えば、幾つかの実施形態において、本開示のPTFE熱収縮チュービングは少なくとも約4:1、少なくとも約5:1、少なくとも約6:1、少なくとも約7:1、少なくとも約8:1、少なくとも約9:1、又は少なくとも約10:1の回復率を示し得る。
【0030】
本開示の熱収縮チュービングの回復率を、それらの内径(ID)の縮小可能性(例えば、上記の等式を使用して計算されるその全体的な直径変化のパーセント(ΔD))に関して特徴付けることもできる。例えば、4.55:1の回復率は約78%縮小可能であるIDに匹敵し、5:1の回復率は約80%縮小可能であるIDに匹敵する。図3に示されるように、本開示の方法に従って作製された実施例1及び実施例2の両方とも、回復後に約80%以上の直径変化のパーセントを示したのに対し、比較例のそれぞれは、回復後に大幅により低い直径変化のパーセントを示した。
【0031】
幾つかの実施形態において、回復率が本明細書において上記の範囲内にある場合、熱収縮チュービングは、収縮したときに、長手方向に、例えば約20%未満のような小さな変化を示す。或る特定の実施形態において、そのような熱収縮チュービングは、長手方向に、例えば約20%未満、約15%未満、約10%未満、約9%未満、約8%未満、約7%未満、約6%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、約1%未満、約0.5%未満、又は約0.1%未満のような更により小さな変化を示し得る。
【0032】
本明細書に記載される熱収縮チュービングのより高い回復率は、商業的に入手可能な熱収縮チュービングに比べて或る特定の明確な利点をもたらすことに留意されたい。特に、そのようなより高い回復率は、複雑なマンドレル形状(例えば、限定されるものではないが、テーパ付きマンドレル又は急峻な遷移を有するマンドレルを含む)の被包を可能にし得る。さらに、本明細書に記載されるように、低温でそのような高い回復率をもたらすことにより、有利には、分解せずに被包することができるポリマー材料の種類が増える。例えば、幾つかの実施形態において、より高い回復率を有する外層(例えば、PTFE熱収縮外層)を備えた二重熱収縮構造により、複雑な部品及び形状の周りの溶融する内層の完全な被包が可能となり得る。二重熱収縮構造及び用途の例は、例えば、Hunterらの米国特許出願公開第2021/0370581号(これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)の開示に示されている。さらに、本明細書に記載されるように、そのような高い回復率により、直径又はテーパ角度及びテーパ長さに変化があるもの等の複雑なマンドレルの輪郭全体にわたって回復する能力を有する熱収縮チューブがもたらされ得ることから、現在市場で入手不可能な薄壁カテーテルライナーが得られる。
【0033】
或る特定の実施形態において、本明細書に記載される熱収縮チュービングを「可剥性」と説明することができ、これを容易に剥ぐか又は長手方向に裂く(例えば、熱収縮チュービングを下地材料から取り外す)ことができる。この可剥性により、有利には、チュービングを設け、使用し、幾つかの実施形態において、チュービングの長さに沿った切込み、破断線、圧痕、又は穿孔が一切無い状態で取り除くことが可能となり得る。PTFEは本来流れ方向(例えば、長手方向)に可剥性であり、これにより内側のポリマー材料(例えば、カテーテルジャケット、医療デバイス、又は二重熱収縮構造)をリフローした後に熱収縮チュービングの容易な取り外しをもたらし得ることに留意される。可剥性の熱収縮チュービングの例は、例えば、Roofらの特許文献8(これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に示されている。
【0034】
本明細書に開示されるチュービングの或る特定の特性を、示差走査熱量測定(DSC)によって評価することができる。DSCは、材料の熱的特性に関する情報を提供する分析技術であり、当業者にはよく知られている。典型的なDSC実験(一般に単一加熱温度ランプ(single heat temperature ramp)と呼ばれる)を実施して、半結晶質ポリマー材料(例えば、PTFE)についての吸熱溶融転移のピーク温度を決定することができる。溶融吸熱のピーク温度は、チュービングの特定の構成(すなわち、フッ素化ポリマー樹脂の種類)及びチュービングの以前の熱履歴(すなわち、加工中に材料に与えられた熱機械履歴)に応じて様々であり得る。DSCサーモグラムにおいて観察される溶融吸熱のピーク温度は一般にTと略される。本明細書に記載される方法を使用して本開示の熱収縮チュービングに与えられる熱機械履歴により、DSCサーモグラムにおいてバージンPTFE樹脂について観察されるものからTが変化する。
【0035】
PTFEは高い溶融温度及び溶融粘度を有することが知られており、バージンPTFE樹脂の溶融温度はおよそ342℃~345℃であり、溶融粘度は約1GPa・s~10GPa・sの範囲にある。この高い溶融粘度により流動が抑えられ、それにより他の熱可塑性プラスチックを従来の溶融押出成形技術によって(例えば、スクリュー押出機を利用して)加工することが可能となる。PTFEの高い溶融粘度のため、PTFEは、典型的には、ラム押出機を通してペーストとして押し出され、当該技術分野においてよく知られる機器及び手順を使用して焼結される。例えば、PTFEチューブを、バージンPTFE樹脂の融点(すなわち、342℃~345℃)を超える温度、例えば、約360℃~約380℃の範囲内の温度で焼結することができる。典型的には、PTFEチューブを、融合、合体、及び空隙の除去を進行させてPTFEチューブの或る特定の特性を最大化するのに十分な期間にわたって焼結する。
【0036】
本明細書に開示されるチュービングの或る特定の特性を動的機械分析(DMA)によって評価することができる。DMAは、時間、温度、及び周波数に応じたポリマーの粘弾性挙動を研究し特徴付けるのに使用される分析技術である。貯蔵弾性率(E’)は、材料の弾性挙動(すなわち、材料がエネルギーを弾性的に貯蔵する能力)の尺度である。典型的なDMA温度ランプ実験は、一定の(すなわち、線形)速度で温度を高めながら、指定された周波数で正弦波変形を加えると同時に材料の応答(すなわち、応力)をモニタリングすることを含む。
【0037】
DMAにおいて上記したように、温度ランプを受ける円周方向における熱収縮チューブから得られる試験片の貯蔵弾性率は、拡張温度に近づくまで温度とともに減少する。この時点で、E’-T(貯蔵弾性率対温度)曲線において顕著な最小値に達し、その後、熱収縮チューブが動的機械試験の方向で回復するにつれてE’が増加する。以降、E’-T曲線における最小値をE’minと呼ぶことにする。E’minの存在は結晶化プロセスとは関係なく、事前に拡張された試験片の回復において見られるようなエントロピー弾性によるものと考えられている。例えば、L. Andena el al., Polym. Eng. Sci, 44, 2004, 1368-1378(これは引用することにより本明細書の一部をなす)を参照のこと。
【0038】
E’minは、本発明の熱収縮チュービングを説明するのに重要なパラメーターであることが判明していることに留意されたい。典型的には、加工パラメーターと材料特性とを組み合わせることによって、拡張プロセス後にエントロピー的に好ましくない状態に固定される拡張済み熱収縮チューブの結晶質/非晶質形態が決定される。この形態により、チューブがその拡張形状から回復するのに利用可能なエントロピー弾性だけでなく、チューブが様々な回復温度に曝されたときに回復する程度も決定される。理論に縛られることを意図するものではないが、熱収縮チューブのTに関連して可能な限り低い温度でE’minが生ずるように加工パラメーターを調整することが重要であることが見出された。例えば、より低温でより大きな程度回復する熱収縮チューブは、多くの用途でより優れた性能を発揮する。したがって、DSC温度ランプから得られる溶融吸熱ピークとDMA温度ランプから得られるE’-T曲線における最小値との間で大きな温度差を示すPTFE熱収縮チューブを製造することが望ましい。
【0039】
本明細書において提供される熱収縮チュービングは、様々な用途に使用することができる。特定の用途において、これらの熱収縮チュービングを下地材料(例えば、デバイス、デバイス部材、接合部、取付部品、ワイヤ等)に施して、加熱することで、下地材料上に被覆を形成することができる。したがって、本開示は、本明細書に開示されるチュービングが施された材料又は対象物を包含する。例えば、幾つかの実施形態において、本明細書に開示されるチュービングを含む被覆されたデバイス(例えば、医療デバイス)が提供される。例示的な被覆されたデバイスとしては、限定されるものではないが、本明細書中に開示されるチュービングのいずれかが施された医療デバイス(例えば、カテーテル)が挙げられる。
【0040】
様々な実施形態において、本明細書に開示される熱収縮チュービングは、1種以上のフッ素化ポリマー樹脂から作製される。本明細書において使用される「樹脂」とは、所与の種類のポリマー(例えば、コポリマー)又は2種以上のポリマー/コポリマーから本質的になる材料を指す。樹脂は、典型的には固体形態で(例えば、固体ペレットとして)提供されるが、これらに限定されない(限定されるものではないが、粉末、ペースト、顆粒、分散液、溶液、ゲル等を含む他の形態を有する)。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される熱収縮チュービングは、本明細書に記載される1つ以上の形態のフッ素化ポリマー樹脂を含むか、それらからなるか、又は本質的にそれらからなり得る。場合によっては、本明細書において使用される「樹脂」は1種以上の追加成分を含んでよく、及び/又は1種以上の(例えば、潤滑剤、着色剤等のような)添加剤をそこに加えることができる。他の実施形態において、1種以上の添加剤(顆粒形態、粉末形態、若しくはペレット形態、又はゲル若しくは液体の形態)をフッ素化ポリマー樹脂とともに含め、それと一緒に押出成形することができる。
【0041】
あらゆるフッ素化ポリマー樹脂を本開示に従って使用することができる。本開示に特に関連するのは、フルオロポリマー樹脂である。フルオロポリマー樹脂は、潤滑性、化学的不活性、又は高温安定性を必要とする多くの用途向けの熱収縮チュービングとして使用されることが多い。FEP、PFA、及びPTFEは、今日商業的に入手可能なより一般的なフルオロポリマー熱収縮チューブの1つであるが、本開示はこれらに限定されない。本開示により有用な例示的なフッ素化ポリマー樹脂としては、限定されるものではないが、ポリマーが、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ペルフルオロアルコキシアルカン(PFA)、ペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)(例えば、ペルフルオロ(メチルビニル)エーテル、PMVE、又はペルフルオロ(プロピルビニル)エーテル(PPVE))、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、及びフッ化ビニリデンのターポリマー(THV)、ポリ(エチレン-co-テトラフルオロエチレン)(ETFE)、エチレンクロロトリフルオロエチレン(ECTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン及びペルフルオロメチルビニルエーテルのコポリマー(MFA)、又はそれらのいずれか2種以上のコポリマー、ブレンド、若しくは誘導体を含むか、それらからなるか、又はそれらから本質的になる樹脂が挙げられる。
【0042】
或る特定の実施形態において、本開示の熱収縮チュービングは、PTFE樹脂を使用して作製されるため、幾つかの実施形態において、PTFEからなり得るか、本質的にPTFEからなり得るか、又はPTFEを含み得る。典型的には、PTFE樹脂を、例えば、固体、粉末、顆粒、分散液、溶液、ゲル等の形態のような様々な異なる形態で提供することができる。或る特定の実施形態において、PTFE熱収縮チュービングを、特にPTFE粉末を使用して作製することができる。このような実施形態において組み込まれるPTFE粉末の種類は様々であり得て、従来のPTFE押出成形グレードの粉末だけでなく、様々な粒子サイズのPTFE顆粒、粒子等も含み得る。押出成形グレードのPTFE樹脂は、ダイキン工業株式会社製のPOLYFLON(商標)PTFE F-205、及び3M(商標)社製のDYNEON(商標)PTFE TF 2053Zとして商業的に入手可能である。しかしながら、本明細書において提供される熱収縮チュービングはPTFE樹脂に限定されず、PTFEに加えて又はPTFEの代わりに、本明細書に記載される1種以上のフッ素化ポリマー樹脂を使用して作製することができることを理解されたい。
【0043】
概して、このような熱収縮チュービングを作製する方法は様々であり得る。一般に、所望の樹脂(単数又は複数)(例えば、PTFE樹脂等)を、例えば、押出成形を介してチューブ形態に成形した後、機械的に拡張する。これらの工程を実施する手段は本明細書に記載されるように様々であり得る。
【0044】
例えば、樹脂を押出成形にかけることによって、樹脂(例えば、PTFE樹脂等)を成形してチューブにすることができる。押出成形は一般に、所望の樹脂(単数又は複数)を押出機(例えば、ラム押出機)に入れることを含む。押出機内で、樹脂(単数又は複数)を加熱し、圧縮し、環状のダイセットに押し通して、チューブを製作する。様々な直径及び長さのチューブを製造することができる。チューブの寸法を押出成形ライン上の工具サイズによって定めることができ、押出成形工程の他のパラメーターを調整及び最適化して、所望のチュービングを製造することもできる。幾つかの実施形態において、比較的一様な壁厚を有するチュービングが提供される。チューブ成形工具は押出成形シリンダーの端部に取り付けられており、一般に、ロッド、マンドレル、マスターダイ、チューブダイ、及びエンドキャップヒーターを含む。
【0045】
必要とされる完成品のサイズ及び絞り率によって、使用される適切な工具が決定される。絞り率により、PTFE樹脂又はPTFE粉末の押出成形圧力、フィブリル化、及び機械的特性が制御される。絞り率は、押出成形シリンダーの断面積からマンドレルロッドの断面積を引いたものと、押出成形ダイの断面積からマンドレル先端の断面積を引いたものとの比率から計算される無名数である。
【0046】
押出プロセス中、樹脂粒子がチューブダイのゾーンに入ると、これらは高度に加圧される。流れ方向の断面積が減少するため、高圧の印加下で粒子は変形して互いに擦れ合う。PTFEが二次粒子の剪断を開始し、微結晶が機械的に絡み合い始め、その結果、隣接する粒子が相互接続される。粒子がダイの出口に向かって流れるにつれ、粒子は加速して伸長し、その間に機械的に絡み合った微結晶がほぐれ、フィブリルが生成される。典型的には、生成されるフィブリルが多いほど、ペーストはより弾性の伸張特性を獲得し、より高い押出成形圧力が引き起こされる。
【0047】
幾つかの実施形態において、押出機から出る際に、新たに形成された押出成形されたチューブを、約232℃~約260℃の範囲の温度を有する蒸発オーブンに移送して、予備成形プロセス及び押出成形プロセス中に使用された潤滑剤を全て除去することができる。或る特定の実施形態において、押出成形されたチューブを次に所望の温度で一定期間焼結して、PTFEチューブの所望の最終特性を得ることができる。幾つかの実施形態において、押出成形されたチューブを、バージンPTFE樹脂の融点(すなわち、342℃~345℃)を超える温度、例えば、約360℃~約380℃の範囲内の温度で焼結する。典型的には、押出成形されたチューブを、融合、合体、及び空隙の除去を進行させてPTFEチューブの或る特定の特性を最大化するのに十分な期間にわたって焼結する。
【0048】
或る特定の実施形態において、押出成形されたチューブを焼結プロセスに続いて空冷して、最終的なチュービングにおいて所望の結晶化度のレベルを達成することができる。最終的なチュービングの結晶化度のレベルは、当該技術分野において知られているように様々であり得る。例えば、幾つかの実施形態において、最終的なPTFEチューブの結晶化度の程度は約32%~約48%の範囲であってよい。
【0049】
次いで、押出成形されたチューブ形態を(例えば、機械的手段によって)典型的には半径方向に拡張して、拡張済みチュービング材料、すなわち熱収縮チュービング(すなわち、加熱すると直径が減少するチュービング)が得られる。投入チュービング(すなわち、初期の押出成形されたチューブ形態)の拡張は、インラインで押出成形と一緒に行うか、又はオフラインで行う(すなわち、押出成形プロセスとは独立して及び/又は押出成形プロセスに続けて行う)こともできる。チュービングを半径方向に拡張する手段の全てが本発明により包含されることが意図される。一般に、拡張プロセス中に、チュービングの内側を加圧し、チューブ壁に応力を加えることによって、チュービングを半径方向に拡張する。この加圧を、チュービングの内側と外側との間に差圧を与えることができるあらゆる手段によって行うことができる。このような差圧は、チューブの中心に大気圧を上回る圧力をかけるか、チューブの外側に大気圧を下回る圧力をかけるか、又はその2つを組み合わせることによって作り出すことができる。チューブ壁に引き起こされた応力により、チューブは半径方向に拡張され、すなわち直径が増加する。拡張率を、チューブが拡張済み状態を保持し、更なる熱サイクルを受けるまで回復しないように制御することができる。チューブが拡張される程度はチュービングに意図される用途に依存する。幾つかの実施形態において、チュービングをその当初の(未拡張)直径の約1.05倍~その当初の(未拡張)直径の約10倍の内径まで拡張する。
【0050】
或る特定の実施形態において、本開示に従って作製されたPTFE熱収縮チューブを、例えば、Hensonの特許文献6(これは引用することによりその全体が本明細書の一部をなす)に記載されるプロセスを使用して半径方向に拡張することができる。例えば、特許文献6の特許は、チューブの内側にある第1の流体を使用してチューブを拡張し、チューブの外側にある第2の流体を使用して拡張チャンバ内での拡張を抑えてフルオロポリマー熱収縮チュービングを製造するプロセスを記載している。他の実施形態において、例えば、チューブの外部の空気の流量、チャンバ温度、チューブ内の空気圧、及びチューブが拡張チャンバ内を通過する速度を調整することによって、チュービングを拡張することができる。或る特定の実施形態において、本開示の熱収縮チューブを当該技術分野に知られる任意の数の方法を使用してダイを通して高温で拡張し、引き続きダイの出口で冷却する。冷却は、水、油、又は空気等の流体を使用して実現することができる。調整することができる加工パラメーターとしては、ダイの種類、ダイの直径及び長さ、ダイ温度、チューブの内側の流体圧力、チューブの外側の流体圧力、冷却方法、冷媒の種類及び温度、拡張率、チューブ材料、チューブのID、チューブのOD、並びにチューブの壁厚が挙げられる。
【0051】
本明細書において提供される熱収縮チュービングは様々な用途に使用することができる。特定の用途において、本明細書において提供される熱収縮チュービングを下地材料(例えば、デバイス、デバイス部材、接合部、取付部品、ワイヤ等)に施して、加熱する/回復させることで、下地材料上に被覆を形成することができる。したがって、本開示は、本明細書に開示されるチュービングが施された材料又は対象物を包含する。例えば、幾つかの実施形態において、本明細書に開示される(例えば、回復済み形態の)熱収縮チュービングを含む被覆されたデバイス(例えば、医療デバイス)が提供される。例示的な被覆されたデバイスとしては、限定されるものではないが、本明細書中に開示されるチュービングのいずれかが施された医療デバイス(例えば、カテーテル)が挙げられる。
【0052】
さらに、本出願はチュービングに焦点を当てているが、本明細書に記載される驚くべき有利な特性を示す他の製品を製造することもできることに留意される。例えば、広範囲のPTFE熱収縮製品を本開示に従って形成することができ、幾つかの実施形態において、本明細書に開示される熱収縮能力、より高い拡張率/回復率、低い長手方向収縮、より低い温度回復、及び/又は薄壁構造を示すことができる。
【0053】
実験
本発明の態様を以下の例によって更に十分に説明するが、これらは本発明の或る特定の態様を説明するために記載されるものであり、本発明を限定するものとして解釈されるべきではない。示される例は、特にPTFE熱収縮チュービングに関するものであるが、フルオロポリマー熱収縮チューブが概して本発明により利益を得るであろうことが理解される。
【0054】
比較例1
最初に、未拡張のコントロールPTFEチューブ試料を、本明細書において以下に示される方法に従って1:1の公称回復率で作製した。まず、PTFE微粉末を16%~25%の脂肪族炭化水素系潤滑剤と混合し、10分間圧延した後、26℃の温度制御環境において24時間の期間にわたってエージングした。潤滑剤を24時間かけて凝集したPTFE粒子内に浸透させてコーティングした。エージング後、PTFE粉末/潤滑剤混合物をプリフォームプレス内での加圧によってプリフォーム又はビレットへと成形した。ここで、PTFE粉末/潤滑剤混合物は円筒状のプリフォーム又はビレットへと圧密化された。プリフォームプレスは中心にロッドを備えており、マンドレルの周りにPTFEが流れてチューブ形状を形成することが可能となる。
【0055】
次に、円筒状/チューブ状のプリフォーム又はビレットを、円筒状のプリフォームの内径に一致するロッドを備えたラム押出機のバレル又はシリンダーに装填した。押出成形プロセス中に、PTFEプリフォームは高度に加圧され、押出成形されて加圧されたPTFEチューブが形成される。押出機から出る際に、新たに形成されたPTFEチューブを約232℃~約260℃の範囲の温度を有する蒸発オーブンに移送した。蒸発オーブンを使用して、予備成形プロセス及び押出成形プロセス中に使用された潤滑剤を除去する。
【0056】
次に、PTFEチューブを所望の温度で一定期間にわたって焼結して、PTFEチューブの最終特性を得た。PTFEチューブを、バージンPTFE樹脂の融点(342℃~345℃)を超える温度、例えば、360℃~380℃の範囲内の温度で焼結した。PTFEチューブを、溶融、合体、及び空隙の除去を進行させ、PTFEチューブの特性を最大化させる期間にわたって焼結した。引き続き、PTFEチューブを空冷して、最終製品の指定された結晶化度のレベルを達成した。典型的には、PTFEは約32%~約48%の範囲の結晶化度の程度となる。比較例1の最終製品(例えば、PTFEチューブ)を、0.359インチの内径及び約0.033インチの平均壁厚となるよう上記のように製造した。
【0057】
比較例2
比較例1に示したのと同じ方法及び条件を使用してPTFEチューブを作製した。得られたPTFEチューブは0.487インチの内径及び約0.025インチの平均壁厚を有した。
【0058】
作製後、PTFEチューブを、これが加熱されたダイに入ったときに空気で加圧することによって拡張して、必要とされる拡張率まで内径を増加させた。引き続き、膨張されたPTFEチューブを冷却して、チューブを350℃に再加熱したときにRRの値がおよそ2となるように拡張済み直径に固定した。拡張後のPTFEチューブの内径及び平均壁厚を測定した。これらを表1にまとめる。
【0059】
比較例3
比較例1に示したのと同じ方法及び条件を使用してPTFEチューブを作製した。得られたPTFEチューブは0.159インチの内径及び約0.015インチの平均壁厚を有した。
【0060】
作製後、PTFEチューブを、これが加熱されたダイに入ったときに空気で加圧することによって拡張して、必要とされる拡張率まで内径を増加させた。引き続き、膨張されたPTFEチューブを冷却して、チューブを350℃に再加熱したときにRRの値がおよそ4となるように拡張済み直径に固定した。拡張後のPTFEチューブの内径及び平均壁厚を測定した。これらを表1にまとめる。
【0061】
比較例4
比較例1に示したのと同じ方法及び条件を使用してPTFEチューブを作製した。PTFEチューブの内径及び平均壁厚を測定した。これらを表1にまとめる。
【0062】
次いで、PTFEチューブを加熱し、これがダイに入ったときに圧縮空気を用いて膨張させることによって、PTFEチューブを拡張した。ダイはそのIDに沿って開口部を有し、これにより、圧縮空気がPTFEチューブのODとダイのIDとの間を循環して、所望の拡張済み直径を維持することが可能となる。引き続き、このように膨張されたPTFEチューブをダイから出たときに冷却して、チューブを350℃に再加熱したときにRRの値がおよそ4となるように拡張済み直径に固定した。拡張後のPTFEチューブの内径及び平均壁厚を測定した。これらを表1にまとめる。
【0063】
比較例5
市場で商業的に入手可能なPTFE熱収縮チューブを購入した。PTFEチューブの内径及び平均壁厚を測定した。これらを表1にまとめる。準備した後、PTFEチューブを次にオーブン内で350℃に10分間加熱した。RRはほぼ4であると計算された。
【0064】
実施例1
比較例1に示したのと同じ方法及び条件を使用してPTFEチューブを作製した。得られたPTFEチューブは0.042インチの内径及び約0.013インチの平均壁厚を有した。
【0065】
作製後、PTFEチューブを次に比較例4のプロセスを使用して拡張した。しかしながら、この例では、膨張空気圧、膨張空気温度、ダイ空気圧、ダイ空気温度、ダイ空気流量、チューブ処理量、冷却空気温度、及び流量の加工パラメーターを全て調整して、本開示によるPTFE熱収縮チューブを得た。特に、PTFEチューブを、443℃の拡張温度、40psiの内部空気圧、及び2立方フィート毎分(cfm)のダイ空気流量を使用して拡張した。拡張後のPTFEチューブの内径及び平均壁厚を測定した。これらを表1にまとめる。
【0066】
実施例2
比較例1に示したのと同じ方法及び条件を使用してPTFEチューブを作製した。得られたPTFEチューブは0.042インチの内径及び約0.013インチの平均壁厚を有した。
【0067】
PTFEチューブを次に比較例4のプロセスを使用して拡張した。しかしながら、この例では、膨張空気圧、膨張空気温度、ダイ空気圧、ダイ空気温度、ダイ空気流量、チューブ処理量、冷却空気温度、及び冷却空気流量の加工パラメーターを全て調整して、本開示によるPTFE熱収縮チューブを得た。特に、PTFEチューブを、443℃の拡張温度、45psiの内部空気圧、及び2立方フィート毎分(cfm)のダイ空気流量を使用して拡張した。拡張後のPTFEチューブの内径及び平均壁厚を測定した。これらを表1にまとめる。
【0068】
累積結果
以下の表1は、比較例1~比較例5及び実施例1~実施例2において作製された最終PTFEチューブの公称チューブ寸法を示す。測定される寸法としては、拡張後の内径、拡張後の平均壁厚、及び公称回復率が挙げられる。内径及び壁厚は両方ともインチ単位で測定された。以下の表1に示されるように、実施例1及び実施例2に従って作製されたPTFEチューブは、殆どの比較例と比較して大幅により小さい内径、比較例1及び比較例2と比較して大幅により小さい壁厚、並びに最高の回復率を示した。
【0069】
【表1】
【0070】
以下の表2は、比較例1~比較例5及び実施例1~実施例2において作製された最終PTFEチューブのDMA温度ランプ及びDSC温度ランプのデータの概要を示す。本発明の例示的な実施形態のDMA及びDSCのデータを図2に示す。表2において記録される特定のパラメーターとしては、最小貯蔵弾性率が生ずる温度(E’min)、溶融吸熱のピーク温度(T)、及び最小貯蔵弾性率が生ずる温度と溶融吸熱のピーク温度との差(ΔT(T-E’min))が挙げられる。DSCサーモグラムを取得するのに、PTFEチューブからおよそ10mgの試験片を切り出し、非気密封止アルミニウムパン内で圧着し、TA InstrumentsのDSC2500(デラウェア州ニューキャッスル)において単一温度ランプを使用して周囲温度から400℃まで10℃/分の加熱速度で加熱してTを決定した。DMA温度ランプデータを取得するのに、収縮チューブから5mmの長さを切り出し、円周方向に配向した矩形の試験片が得られるように環状物を長手方向に細切りにすることによって試験片を作製した。E’の温度スキャンを、TA InstrumentsのQ800 DMA(デラウェア州ニューキャッスル)において引張モードで、毎分3℃の加熱速度、1Hzで15μmの変形振幅にて周囲温度からおよそ340℃まで収集した。図1に示されるように、収集された温度スキャンの一部は、340℃の最終温度に達する前に機器によって自動的に停止されたことに留意されたい。理論に縛られることを意図するものではないが、これは、一部の試験片が340℃になる前に或る程度回復し、引張グリップが物理的に接触して、機器が実験を強制的に終了したためである。
【0071】
【表2】
【0072】
図1は、比較例1~比較例5及び実施例1~実施例2についてのE’最小値の温度における分離を示す。図1に示されるように、コントロール試料(比較例1)は、比較例2~比較例5及び実施例1~実施例2によって示されるようなE’-T曲線におけるはっきりと画定された相対最小値を示さない。これにより、本明細書において定義及び開示されるE’minが、拡張中にPTFE熱収縮チュービング内に固定されたエントロピー的に好ましくない状態によって動かされ、PTFE熱収縮チュービングの加熱により回復が開始されるときに利用可能なエントロピー弾性の量によって直接影響されることが実証される。
【0073】
図2は、本開示の例示的な実施形態を代表するものである実施例1についてのE’最小値及び溶融吸熱のピークの温度における分離を示す。図2に示されるように、実施例1の熱収縮チューブは、DSCサーモグラムにおいて観察される溶融吸熱ピークとDMA温度ランプ中に得られるE’-T曲線における最小値との間に大きな温度差を示す。
【0074】
以下の表3は、本明細書において上記のように様々な温度で10分間回復させたときの、比較例2~比較例5及び実施例1~実施例2のPTFE熱収縮チュービング試料についての回復率(RR)及び長さ変化(ΔL)をまとめている。表3に示されるように、実施例1及び実施例2は、回復時の最終製品の長さ変化に重大な悪影響を与えることなく、比較例と比較して大幅により高い回復率を示した。
【0075】
【表3】
【0076】
以下の表4は、様々な温度で10分間回復させたときの、比較例2~比較例5及び実施例1~実施例2のPTFE熱収縮チュービング試料についての直径変化をまとめている。表4に示されるように、実施例1及び実施例2は、全ての温度範囲にわたって、比較例と比較して直径変化において大幅により高いパーセンテージを示した。
【0077】
【表4】
【0078】
以下の表5は、310℃~330℃の範囲における各例についての直径変化の線形回帰から得られた線形回帰データを示す。PTFEチューブが10分間曝された様々な回復温度で直径変化を計算した。このデータをOriginLabのOriginPro 2019 v.9.6データ解析及びグラフ作成ソフトウェアにインポートし、直径変化を回復温度に対してプロットした。例の熱収縮チューブがより低い温度でより大きく回復する傾向を評価するのに、310℃~330℃(PTFE熱収縮についての達成可能な最大のRRが生ずる350℃よりも十分に低い)の範囲において、各例の直径変化対回復温度のプロットについて線形回帰を行った。それぞれの回帰直線を含む各例についての直径変化対回復温度のプロットを図3に示す。
【0079】
【表5】
【0080】
以下の表6は、310℃~330℃の範囲における各例についての平均直径変化をまとめている。平均直径変化の値は、表5における線形回帰データから得られた傾き値に相当する。この分析から、傾き値/直径変化が大きいほど、より低温で熱収縮チューブが更なる程度まで回復することが説明されると結論付けることができる。一方、傾き値/直径変化が小さいほど、より低温で熱収縮チューブがより低い程度回復することが説明される。表6に示されるように、実施例1及び実施例2は、比較例と比較して、測定された温度範囲にわたって大幅により大きな直径変化を示したことから、熱収縮チューブがより低温で更なる程度回復することが証明される。
【0081】
【表6】
【0082】
本開示の多くの変形形態及び他の実施形態が、上記説明に提示された教示の利益を有する、本開示が関係する技術分野の当業者には思い付くであろう。したがって、本開示は、開示された特定の実施形態に限定されるものではなく、変形形態及び他の実施形態が、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されていることが理解されるべきである。特定の用語が本明細書において用いられているが、それらの用語は、限定の目的で用いられているのではなく、一般的かつ説明的な意味でのみ用いられている。
図1
図2
図3
【国際調査報告】