(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】熱硬化性複合材の安定化及びUV安定化技術によるコーティング及びその製造技術
(51)【国際特許分類】
C08F 20/34 20060101AFI20241108BHJP
C07D 211/40 20060101ALI20241108BHJP
C07D 211/42 20060101ALI20241108BHJP
C07D 211/46 20060101ALI20241108BHJP
C07D 211/94 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08F20/34
C07D211/40
C07D211/42
C07D211/46
C07D211/94
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531274
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-18
(86)【国際出願番号】 US2022080291
(87)【国際公開番号】W WO2023097203
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524195606
【氏名又は名称】クロマフロ テクノロジーズ コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヤーダブ、サントーシュ ケイ.
(72)【発明者】
【氏名】レッティンガー、ポール エイ.
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08P
4J100BC65P
4J100CA01
4J100JA15
(57)【要約】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートなどの高機能UVS分子を合成し、UVS添加剤を使用して生成物のUV安定性を改善するために1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを使用する、反応スキーム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピペリジニルアクリラートの調製プロセスであって、
約-20℃~10℃の温度でピペリジノール及び無水物と触媒との反応混合物を形成すること;
前記反応混合物を約20℃~22℃に加温すること;
前記反応混合物を約15時間~24時間反応させること;
前記反応を飽和NaHCO
3水溶液でクエンチすること;
クエンチされた反応混合物からピペリジニルアクリラート生成物を精製すること、
を含むプロセス。
【請求項2】
前記反応混合物を加温することが、前記反応混合物を周囲室温で約20℃~22℃の温度に到達するのに十分な期間維持すること、又は前記反応混合物への熱源の適用を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記ピペリジノールが、4-ピペリジノール、3-ピペリジノール、2-ピペリジノール、又は1-ピペリジノールである、請求項1に記載のプロセス。
【請求項4】
前記無水物が、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物若しくはイソブタクリル酸無水物、マレイン酸無水物、酪酸無水物、ヘキサン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、プロピオン酸無水物、エタン酸無水物、酢酸無水物、ブタン酸無水物、長さがC
6~C
24である飽和若しくは不飽和炭化水素、又は任意の有機酸無水物である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの調製プロセスであって、
約-20℃~10℃の温度で、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール、4-ジメチルアミノピリジン及びメタクリル酸無水物の反応混合物を形成すること;
前記反応混合物を約20℃~22℃に加温すること;
前記反応混合物を約15時間~24時間反応させること;
前記反応を飽和NaHCO
3水溶液でクエンチすること;
クエンチされた反応混合物から1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を精製すること、
を含むプロセス。
【請求項6】
図2DのFTIRスペクトルを有する、請求項5に記載の1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物。
【請求項7】
図3のGC-MSスペクトルを有する、請求項5に記載の1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物。
【請求項8】
前記反応混合物が、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール(50.0g、292mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP、3.57g、29.2mmol)及びメタクリル酸無水物(45g、292mmol)で形成される、請求項5に記載のプロセス。
【請求項9】
前記反応混合物が約0℃の理想的な温度で形成される、請求項1に記載のプロセス。
【請求項10】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を精製する工程が、
クエンチされた反応生成物を約30分間撹拌すること;
層を分配し、前記生成物を含む溶液を抽出すること;
前記溶液を、飽和NaHCO
3水溶液(2×300mL)、水(300mL)、ブライン(300mL)で順次洗浄すること;
洗浄した溶液をMgSO
4で乾燥させること;及び
塩を濾別して、精製された1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を得ること、
をさらに含む、請求項5に記載のプロセス。
【請求項11】
前記精製された1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物が97%+/-3%活性である、請求項5に記載のプロセス。
【請求項12】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを含むUV安定化添加剤パッケージ。
【請求項13】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートと第2の添加剤とのブレンドを含む、請求項12に記載のUV安定化添加剤パッケージ。
【請求項14】
図2DのFTIRスペクトルを有する1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を含む、請求項12に記載のUV安定化添加剤パッケージ。
【請求項15】
図3のGC-MSスペクトルを有する1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を含む、請求項12に記載のUV安定化添加剤パッケージ。
【請求項16】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを含む熱硬化性複合材。
【請求項17】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートと第2の添加剤とのブレンドを含む、請求項16に記載の熱硬化性複合材。
【請求項18】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを約0.1phr~5phrの量で含む、請求項16に記載の熱硬化性複合材。
【請求項19】
1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを約2.2phrの量で含む、請求項16に記載の熱硬化性複合材。
【請求項20】
約-20℃~10℃の温度で、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール、4-ジメチルアミノピリジン及びメタクリル酸無水物の反応混合物を形成すること;
前記反応混合物を約20℃~22℃に加温すること;
前記反応混合物を約15時間~24時間反応させること;
前記反応を飽和NaHCO
3水溶液でクエンチすること;
クエンチされた反応混合物から1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を精製すること、
によって調製される1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを含む、請求項16に記載の熱硬化性複合材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年11月23日に出願された米国仮出願第63/264,468号の利益を主張し、この出願は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
UV安定化パッケージがなければ、不飽和ポリマー複合材又はコーティングは、加速UV曝露の数百時間以内に著しい故障を受ける。これらの故障モードには、いくつかの劣化メカニズムが提案されている。最も一般的なのは、ポリマーの光酸化が酸化的黄変に寄与することである。UV光の長時間の曝露は、連鎖切断によりマイクロクラックを生じさせる。表面クラックは、劣化したパネルの勾配応力にも関連し得る。高UV放射線は、向光性の後架橋を開始し、界面張力をもたらし、表面から内層までの材料の応力をさらに増大させ得る。
【0003】
UV劣化の影響を保護するために、UVA(紫外線吸収剤)添加剤を配合物に添加する必要がある。UV安定性は、太陽光に曝露されたときにUV誘導ポリマー劣化を防止し、したがってコーティングなしのものよりも長い耐用年数を有する。
【発明の概要】
【0004】
本発明者らは、UV又は屋外耐候性を高めるためにUVS添加剤を使用して生成物のUV安定性を改善するための、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートなどの高機能UV安定化(「UVS」)分子を合成するための、ピペリジニルアクリラートの製造のための反応スキームを記載する。
【0005】
反応スキームは、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール、4-ジメチルアミノピリジン及びメタクリル酸無水物の反応混合物を約-20℃~25℃の温度で形成する工程、反応混合物を室温に加温する工程、及び反応混合物を18時間反応させる工程を含む。反応混合物を飽和NaHCO
3水溶液でクエンチし、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を精製する。1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物は、
図2DのFTIRスペクトル又は
図3のGC-MSスペクトルを有することを特徴とする。
【0006】
一態様では、本発明は、添加剤パッケージの一部として1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを有するUV安定化添加剤パッケージを含む。
【0007】
一態様では、熱硬化性複合材は、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを約2.2phrの量で含んでもよい。
【0008】
他の方法、特徴及び/又は利点は、以下の図面及び詳細な説明を検討すると明らかになるか、又は明らかになるであろう。そのような追加の方法、特徴、及び利点はすべて、この説明内に含まれ、添付の特許請求の範囲によって保護されることが意図されている。
【0009】
添付の図面では、化学式、化学構造、及び実験データが与えられ、以下に提供される詳細な説明と共に、特許請求される発明の例示的な実施形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1A】本発明の態様による、ピペリジニルアクリラート(1A)を製造するための反応スキームである。
【
図1B】本発明の態様による、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート(1B)を製造するための反応スキームである。
【0011】
【
図2A】メタクリル酸無水物の出発材料からの1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの形成を実証するFTIRスペクトルである。メタクリル酸無水物のFTIRスペクトルである。
【
図2B】メタクリル酸無水物の出発材料からの1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの形成を実証するFTIRスペクトルである。1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールのFTIRスペクトルである。
【
図2C】メタクリル酸無水物の出発材料からの1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの形成を実証するFTIRスペクトルである。反応開始時のメタクリル酸無水物、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジノール、及びDMAPの初期混合物のFTIRスペクトルである。
【
図2D】メタクリル酸無水物の出発材料からの1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの形成を実証するFTIRスペクトルである。反応が完了した1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートのFTIRスペクトルである。
【0012】
【
図3】1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートのGC-MS分析である。
【0013】
【
図4】本発明の一態様に従って製造された1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの再現性を実証するGC-MSオーバーレイである。
【0014】
【
図5A】本発明の一態様に従って調製された3つの熱硬化性複合材の耐候性データである。
【
図5B】本発明の一態様に従って調製された3つの熱硬化性複合材の耐候性データである。
【
図5C】本発明の一態様に従って調製された3つの熱硬化性複合材の耐候性データである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
特定の態様を以下に説明する。実施形態はかなり詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に、又は任意の特定の実施形態に制限することを意図するものではなく、又は決して限定することを意図するものではない。
【0016】
定義
【0017】
本明細書で使用される場合、「有機基」という用語は、脂肪族基、環式基、又は脂肪族基と環式基の組み合わせ(例えば、アルカリール基及びアラルキル基)として分類される炭化水素基を意味するために使用される。本発明の文脈において、本発明の化合物に適した有機基は、化合物の抗老化活性を妨害しないものである。本発明の文脈において、「脂肪族基」という用語は、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖炭化水素基を意味する。この用語は、例えば、アルキル基、アルケニル基及びアルキニル基を包含するために使用される。
【0018】
本明細書で使用される場合、ヒドロカルビルという用語は、任意の構成のいくつかの炭素原子を含む。例えば、C6ヒドロカルビル基は、アルキル、アリール及びシクロアルキルの構成を含む。ヒドロカルビル基の炭素原子は、飽和であっても不飽和であってもよい。
【0019】
本明細書で使用される場合、用語「アルキル」、「アルケニル」、及び接頭辞「alk-」は、直鎖基及び分岐鎖基を含む。別段特定されない限り、これらの基は1~20個の炭素原子を含み、アルケニル基は2~20個の炭素原子を含む。いくつかの実施形態では、これらの基は、合計で最大10個の炭素原子、最大8個の炭素原子、最大6個の炭素原子、又は最大4個の炭素原子を有する。4個以下の炭素原子を含むアルキル基は、低級アルキル基とも称され得る。アルキル基はまた、それらが含む炭素原子の数によって言及され得る(すなわち、C1~C4アルキル基は、1~4個の炭素原子を含むアルキル基である)。
【0020】
シクロアルキルは、本明細書で使用される場合、環構造を形成するアルキル基(すなわち、アルキル基、アルケニル基又はアルキニル基)を指す。環式基は、単環式又は多環式であり得、好ましくは3~10個の環炭素原子を有する。シクロアルキル基は、4個以下の炭素原子を含むアルキル基を介して主構造に結合することができる。例示的な環式基としては、シクロプロピル、シクロプロピルメチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、アダマンチル、並びに置換及び非置換のボルニル、ノルボルニル及びノルボルネニルが挙げられる。
【0021】
別段特定されない限り、「アルキレン」及び「アルケニレン」は、上に定義される「アルキル」及び「アルケニル」基の二価形態である。「アルキレニル」及び「アルケニレニル」という用語は、それぞれ「アルキレン」及び「アルケニレン」が置換される場合に使用される。例えば、アリールアルキレニル基は、アリール基が結合しているアルキレン部分を含む。
【0022】
本明細書で使用される「アリール」という用語は、炭素環式芳香環又は環系を含む。アリール基の例としては、フェニル、ナフチル、ビフェニル、フルオレニル及びインデニルが挙げられる。アリール基は、置換又は非置換であり得る。
【0023】
基が本明細書に記載の任意の式又はスキーム中に2回以上存在する場合、明示的に述べられているか否かにかかわらず、各基(又は置換基)は独立して選択される。例えば、式-C(O)-NR2の場合、各R基は独立して選択される。
【0024】
本出願を通して使用される特定の用語の説明及び列挙を簡略化する手段として、「基」及び「部分」という用語は、置換を可能にするか又は置換され得る化学種と、置換を可能にしないか又は置換され得ない化学種とを区別するために使用される。したがって、「基」という用語が化学的置換基を説明するために使用される場合、説明される化学物質は、非置換基、並びに例えば鎖中に非過酸化物O、N、S、Si又はF原子を有する基、並びにカルボニル基又は他の従来の置換基を含む。「部分」という用語が化合物又は置換基を説明するために使用される場合、非置換化学物質のみが含まれることが意図される。例えば、「アルキル基」という語句は、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチルなどの純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基だけでなく、ヒドロキシ、アルコキシ、アルキルスルホニル、ハロゲン原子、シアノ、ニトロ、アミノ、カルボキシルなどの当技術分野で公知のさらなる置換基を有するアルキル置換基も含むことが意図される。したがって、「アルキル基」は、エーテル基、ハロアルキル、ニトロアルキル、カルボキシアルキル、ヒドロキシアルキル、シアノアルキルなどを含む。一方、「アルキル部分」という語句は、メチル、エチル、プロピル、tert-ブチルなどの純粋な開鎖飽和炭化水素アルキル置換基のみを含むことに限定される。
【0025】
用語「含む(includes)」又は「含む(including)」が本明細書又は特許請求の範囲で使用される限り、用語「含む(comprising)」が特許請求の範囲で移行語として使用される場合に解釈されるように、用語「含む(comprising)」と同様に包括的であることが意図される。さらに、用語「又は」が使用される限り(例えば、A又はB)、「A若しくはB又は両方」を意味することが意図される。「両方ではなくA又はBのみ」が意図される場合、用語「両方ではなくA又はBのみ」が使用される。したがって、本明細書における用語「又は」の使用は包括的であり、排他的な使用ではない。本明細書及び特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は複数を含む。最後に、「約」という用語が数字と組み合わせて使用される場合、その数字の±1.0%を含むことが意図される。例えば、「約10」は、9~11を意味し得る。反応物及び成分は同じ概念を指し、全体としての反応物混合物の一部を指す。フィルムという用語は、表面に適用されるコーティング又はシート又は層を指すこともできる。表面は、任意の所望の材料又は形状であってもよい。
【0026】
一態様では、本発明は、任意のピペリジニルアクリラート、特に1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの調製プロセスを十分に記載する。簡潔には、約-20℃~10℃の温度で、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール、4-ジメチルアミノピリジン及びメタクリル酸無水物の反応混合物が形成される。反応混合物を室温(18℃~25℃)に加温し、反応混合物を18(15~24)反応させた後、反応混合物を飽和NaHCO3水溶液でクエンチし、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を精製する。
【0027】
一態様では、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物は、
図2DのFTIRスペクトルを有することを特徴とする。
【0028】
一態様では、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物は、
図3のGC-MSスペクトルを有することを特徴とする。
【0029】
一態様では、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート反応スキームは、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール(50.0g、292mmol)、4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP、3.57g、29.2mmol)及びメタクリル酸無水物(45g、292mmol)との反応混合物を形成する工程を含む。
【0030】
一態様では、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート反応スキームは、約0℃又は0℃で反応混合物を形成することを含む。
【0031】
一態様では、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を反応混合物から精製する工程は、クエンチされた反応生成物を約30分間撹拌すること;層を分配し、生成物を含む溶液を抽出すること;溶液を、飽和NaHCO3水溶液(2×300mL)、水(300mL)、ブライン(300mL)で順次洗浄すること;洗浄した溶液をMgSO4で乾燥させること;及び塩を濾別して、精製された1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を得ること、を含んでもよい。
【0032】
一態様では、精製された1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物は97%活性である。
【0033】
一態様では、本発明は、添加剤パッケージの一部として1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを有するUV安定化添加剤パッケージを含む。
【0034】
一態様では、添加剤パッケージの1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートは、
図2DのFTIRスペクトルを有することを特徴とする。
【0035】
一態様では、添加剤パッケージの1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートは、
図3のGC-MSスペクトルを有することを特徴とする。
【0036】
一態様では、本発明は、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを含む熱硬化性複合材を記載する。
【0037】
一態様では、熱硬化性複合材は、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを、約0.1phr~5phrの量、又は約2.2phrの量、又は2.2phrの量若しくは成形部品の0.8重量%で含んでもよい。
【0038】
一態様では、熱硬化性複合材の1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートは、約-20℃~10℃の温度で、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール、4-ジメチルアミノピリジン及びメタクリル酸無水物の反応混合物を形成すること;反応混合物を室温(18℃~25℃)に加温すること;反応混合物を18(15~24)時間反応させること;反応を飽和NaHCO3水溶液でクエンチすること;及びクエンチされた反応混合物から1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート生成物を精製すること、によって調製される。
【0039】
ピペリジニルアクリラートを製造するための反応スキームを
図1Aに示す。簡潔には、一般式:
【化1】
のピペリジノール
式中、R
1、R
2、及びR
3は、それぞれ独立して、水素;C
1~C
6ヒドロカルビル基;C
1~C
6芳香族基、アルキル基、アリール基若しくはアルコキシ基であり、C
1~C
6ヒドロカルビル基、又は置換若しくは非置換の直鎖C
5~C
24アルキル基、又は非置換の直鎖C
5~C
12アルキル基は、一般式:
【化2】
の無水物と組み合わされ、
式中、各R
4は、C
1~C
6ヒドロカルビル基;C
1~C
6アルキル基、アリール基若しくはアルコキシ基、又はC
1~C
6ヒドロカルビル基、又は非置換の直鎖C
5~C
12アルキル基、長さがC
6~C
24である飽和若しくは不飽和炭化水素である。
【0040】
式IIIに示す生成物を生成する反応スキーム:
【化3】
図1Aの反応スキームによる。
【0041】
図1Aの反応スキームは、反応物1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール及びメタクリル酸無水物に適用されると、式IVの生成物を生成する。
【化4】
【0042】
具体的に反応スキームを参照すると、ピペリジノール及び無水物反応物は、好ましくは0℃付近の温度で組み合わされる。温度は、-20℃~25℃の間、又は-10℃~10℃の間、又は-5℃~5℃の間、又はより好ましくは-1℃~1℃の間で変化し得るが、これらの範囲のいずれか内の任意の単一の特定の温度が本発明に包含されることが理解される。
【0043】
ピペリジノール反応物:一般に、式Iの一般構造を有する任意の反応物が本発明のプロセスで使用可能である。さらに、反応スキームは4-ピペリジノールの使用によって例示されていることが理解される。3-ピペリジノール、2-ピペリジノール、又は1-ピペリジノールとして特徴付けられるピペリジノールも、本発明の一態様としてさらに包含される。
【0044】
無水物反応物:一般に、式IIの一般構造の任意の無水物が本発明のプロセスにおいて使用可能である。場合によっては、無水物は、アクリル酸無水物、メタクリル酸無水物若しくはイソブタクリル酸無水物、マレイン酸無水物、酪酸無水物、ヘキサン酸無水物、シクロヘキサンカルボン酸無水物、プロピオン酸無水物、エタン酸無水物、酢酸無水物、ブタン酸無水物、長さがC6~C24である飽和若しくは不飽和炭化水素、又は任意の有機酸無水物である。
【0045】
反応物に加えて、触媒を添加して反応物混合物を形成する。場合によっては、触媒は4-DMAPである。ピペリジノール、無水物、触媒反応物混合物を0℃付近の温度から室温まで上昇させる。室温は、約20℃~22℃と定義することができる。しかしながら室温は実際には、約18℃~25℃の温度範囲を含み得ることが理解される。室温の到達は、平衡によって室温に到達するのに十分な時間にわたって反応混合物を安定な室温環境に維持した結果であってもよく、又は外部源から反応混合物に熱を加えた結果であってもよい。
【0046】
好ましくは、ピペリジノール、無水物、触媒反応物混合物を室温で約18時間の反応時間維持する。反応時間は、約15時間~約24時間で変化し得、この範囲内に見出される任意の単一の数値を含むことが理解される。反応時間は、反応物混合物が組み合わされた時点から測定されてもよく、あるいは反応物混合物が室温に到達したときにタイミングが開始されてもよい。
【0047】
反応時間が完了した後、反応をクエンチする。例示的なクエンチ剤は、飽和NaHCO3である。しかしながら、追加の又は異なるクエンチ剤が十分に本発明の範囲内であることが理解される。飽和NaHCO3を反応物混合物に添加する場合、例えば、クエンチされた反応混合物を撹拌し、分配し、反応物生成物を含む溶液を飽和NaHCO3、水、ブラインで洗浄する。続いてMGSO4上で乾燥させ、塩を濾別する。
【0048】
記載される反応スキームは、いくつかの利点を有する。特に、揮発し、無水物反応物の重合を引き起こす傾向がある高い反応温度が回避される。さらに、高価で時間のかかるプロセス及び塩の使用は、この反応スキームでは不要である。
【0049】
反応物生成物であるピペリジニルアクリラート、具体的には1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートは、有効なUV安定剤添加剤である。UV安定剤は、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラート、又は1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートと他のUV安定剤とのブレンドを含んでもよい。
【実施例】
【0050】
例1:1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの合成
【0051】
材料:
a)1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール;
b)4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP);
c)メタクリル酸無水物;及び
d)炭酸水素ナトリウム
【0052】
装置:
a)丸瓶フラスコ;
b)マグネチックスターラーホットプレート;
c)分液漏斗;及び
d)ガラス還流コイル凝縮器
【0053】
手順:
【0054】
1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノール(50.0g、292mmol)及び4-ジメチルアミノピリジン(4-DMAP、3.57g、29.2mmol)及びメタクリル酸無水物(45g、292mmol)を、より低い温度(0℃、又は約-20℃~約10℃)で丸底フラスコに加える。反応混合物を室温(約18℃~25℃)までゆっくり加温し、18(約15~24)時間反応させた後、飽和NaHCO3水溶液(300mL)でクエンチし、次いで、30分間激しく撹拌した後、層を分配する。溶液を飽和NaHCO3水溶液(2×300mL)、水(300mL)、ブライン(300mL)で順次洗浄し、MgSO4で乾燥させ、塩を濾別した。
【0055】
FTIR及びGC-MSによる生成物の特性評価:
【0056】
図2Aにおいて、メタクリル酸無水物のFTIRスペクトルは、赤外スペクトルにおいて1780cm
-1に有意なカルボニル吸収を有することが知られている。Sigma-Aldrichによって供給されるメタクリル酸無水物の特性評価については、
図2Aを参照されたい。
図1に記載の反応では、メタクリル酸無水物が1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールのヒドロキシルと反応してエステルを形成するときにカルボニルが消費される。1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジノールのFTIRスペクトルを
図2Bに示す。反応が進行するにつれて、1780cm
-1で無水物カルボニルの強度が低下する(
図2B)。
図2Cに示すように、1780cm
-1でのカルボニル吸収は、1720cm
-1での同様のカルボニルよりも弱い。
図2Dは、1780cm
-1の完全な除去を実証し、それにより、完全に反応した生成物、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを実証する。
【0057】
図3では、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの完成した反応生成物のGC-MS分析が実証されている。
【0058】
図4において、反応スキーム及び反応生成物の精製の再現性は、異なる生成物についての同一の出力を示すGC-MSオーバーレイによって実証される。
【0059】
例2:オレイン酸ピペリジノールアクリラートの合成
【0060】
オレイン-ピペリジニルアクリラートは、
図1Aの反応スキームに従って製造することができる。簡潔には、ピペリジノール、4-ジメチルアミノピリジン及びオレイン酸無水物を丸底フラスコ中に約0℃(-20~10)の温度で添加する。反応混合物を室温(18~25℃)までゆっくり加温し、18(約15~24)時間反応させた後、クエンチする。クエンチは、例えば、飽和NaHCO
3水溶液(300mL)を添加し、30分間激しく撹拌した後、層を分配することによって行うことができる。次いで、溶液を飽和NaHCO
3水溶液(2×300mL)、水(300mL)、ブライン(300mL)で順次洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、塩を濾別した。
【0061】
例3:1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートを含む繊維強化複合材の耐候性データ
【0062】
UV安定剤添加剤としての1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートの有効性は、耐候性試験によって実証された。
【0063】
黒色パネルを、以下から構成されるベースバルク成形コンパウンド(BMC)配合物を使用して成形した:
i.ポリントポリライト31610-これは、不飽和イソフタル変性ポリエステル樹脂、33.5%スチレン溶液中66.5%(w/w)の不揮発性樹脂である。
ii.Ineos Aropol 63004-これは、33.5%スチレン中の66.5%(w/w)ポリスチレンの溶液である。
iii.CM-20540は、Chromaflo Techologies Corp.製の不飽和ポリエステル樹脂中のカーボンブラックの分散液である。
iv.Huber SB 432は、Huber Corporation製のアルミニウム三水和物充填剤のグレードである。
v.Synermix 77-90517は、Chromaflo Technologies Corp.製の独自の離型配合物である。
vi.AM-9033は、Chromaflo Technologies Corp.製の不飽和ポリエステル樹脂中の40%酸化マグネシウムの分散物である。
vii.以下の表に記載の2.2phrの実験添加剤(樹脂100部あたりの部、成形部品の0.8%)。
【0064】
【0065】
LWR-36476、WE-70785の下で、ASTM G155(boro/boro、WR65M)によって、合計30のパネル、各実験試行の5つを1000時間風化させた。1000時間で以下の%光沢保持率
【表2】
【0066】
示されるように、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートは、UV安定剤として特に有効である。1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン-4-イルメタクリラートと他の添加剤とのさらなるブレンドも有効なUV安定剤である。
上述したように、本出願は実施形態の説明によって例示されており、実施形態はかなり詳細に説明されているが、添付の特許請求の範囲をそのような詳細に制限することを意図するものではなく、又は決して限定することは意図するものではない。追加の利点及び修正は、本出願の利益を有する当業者には容易に明らかになるであろう。したがって、本出願は、そのより広い態様において、示された特定の詳細及び例示的な例に限定されない。一般的な発明概念の趣旨又は範囲から逸脱することなく、そのような詳細及び例から逸脱することができる。
【国際調査報告】