(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電気光学照射デバイス
(51)【国際特許分類】
A61N 5/06 20060101AFI20241108BHJP
A61N 5/067 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61N5/06 Z
A61N5/06 A
A61N5/067
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531329
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-05
(86)【国際出願番号】 EP2022083448
(87)【国際公開番号】W WO2023094648
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521258348
【氏名又は名称】シーボロー・ライフ・サイエンス・ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】SEABOROUGH LIFE SCIENCE B.V.
【住所又は居所原語表記】Science Park 106,3rd Floor,1098 XG Amsterdam,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110003708
【氏名又は名称】弁理士法人鈴榮特許綜合事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベレンズ、アンネ・クレア
(72)【発明者】
【氏名】クレイムス、マイケル
【テーマコード(参考)】
4C082
【Fターム(参考)】
4C082PA01
4C082PA02
4C082PC04
4C082PC08
4C082PE10
4C082PG15
4C082PJ03
4C082RC09
4C082RE22
4C082RL02
4C082RL16
(57)【要約】
電気光学デバイス(100)のユーザにフォトバイオモジュレーション効果を提供することが可能な電気光学デバイス(100)であって、700~1400nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置された少なくとも1つの第1の電気光学素子(EL1)と、制御回路(120、130)と、ドライバ回路(110)と、を有する。制御回路(120、130)は、電気光学素子(EL1)によって放出された電磁放射のオン期間を決定するように構成されたタイマ(135)を有し、及び/又はユーザにおける電磁放射の累積照射量を決定するように構成された照射量計算ユニットを有する。制御回路(120、130)は、所定の最大オン期間を超えた場合、及び/又はユーザにおける電磁放射の所定の照射量を超えた場合に、電気光学素子(EL1)を遮断するようにドライバ回路(110)に命令するように構成されている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気光学デバイス(100)のユーザにフォトバイオモジュレーション効果を提供することが可能な電気光学デバイス(100)であって、
700~1400nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置された少なくとも1つの第1の電気光学素子(EL1)と、
前記第1の電気光学素子の放出特性を調整するように構成された制御回路(120、130)と、
前記制御回路(120、130)から入力を受信し、パルス化された駆動電流を使用して、前記制御回路(120、130)から受信された前記入力に基づいて前記第1の電気光学素子を駆動するように構成されたドライバ回路(110)と、
を備え、
前記制御回路(120、130)は、前記第1の電気光学素子(EL1)によって放出された前記電磁放射のオン期間を決定するように構成されたタイマ(135)を備え、及び/又は前記ユーザにおける前記電磁放射の累積照射量を決定するように構成された照射量計算ユニットを備え、
前記制御回路(120、130)は、所定の最大オン期間を超えた場合、及び/又は前記照射量計算ユニットによって決定された前記累積照射量が前記ユーザにおける前記電磁放射の所定の照射量を超えたことを示す場合に、前記第1の電気光学素子(EL1)を遮断するように前記ドライバ回路(110)に命令するように構成されている、電気光学デバイス(100)。
【請求項2】
前記制御回路(120、130)は、前記ユーザと前記電気光学デバイス(100)との間の距離(d)を決定するように構成された近接検出ユニット(130)を含み、前記制御回路(120、130)は、決定された前記距離(d)に依存して前記タイマ及び/又は前記照射量計算ユニットを制御するように構成されている、請求項1に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項3】
前記電気光学デバイスはハンドヘルドデバイスであり、前記ドライバ回路は、前記第1の電気光学素子が前記ユーザに対して0.1mW/cm
2を上回るピーク照射強度を達成するように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで前記第1の電気光学素子を駆動するように構成され、前記第1の電気光学素子は、2×60度未満、好ましくは2×50度未満、より好ましくは2×25度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する前記電磁放射が前記電気光学デバイスから放出されるように方向付けられる、請求項1又は2に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項4】
前記電気光学デバイスはコンピュータであり、前記ドライバ回路は、前記第1の電気光学素子が前記ユーザに対して0.1mW/cm
2を上回るピーク照射強度を達成するように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで前記第1の電気光学素子を駆動するように構成され、前記第1の電気光学素子によって放出される前記電磁放射は、2×25度未満、好ましくは2×15度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する前記電磁放射が前記電気光学デバイスから放出されるように方向付けられる、請求項1~3のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項5】
照明デバイス(210)である第2の電気光学素子(EL2)を更に備え、前記ドライバ回路は、前記第1の電気光学素子が前記ユーザに対して0.1mW/cm
2を上回るピーク照射強度を達成するように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで前記第1の電気光学素子を駆動するように構成され、前記第1の電気光学素子によって放出される前記電磁放射は、2×25度未満、好ましくは2×10度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する前記電磁放射が前記電気光学デバイスから放出されるように方向付けられる、請求項1又は2に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項6】
第2の電気光学素子(EL2)を更に備え、前記第1の電気光学素子(EL1)は、前記第2の電気光学素子(EL2)が10cd/m
2を上回る輝度で放出しているときにのみ放出するように配置されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項7】
前記制御回路(120、130)によって前記第1の電気光学素子(EL1)の前記放出特性を調整することは、所定のオフ期間にわたり前記第1の電気光学素子を遮断することを伴う、請求項1~6のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項8】
所定の蓄積オフ期間は、8時間よりも長く、好ましくは12時間よりも長い、請求項7に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項9】
前記第1の電気光学素子(EL1)から0.1~5mの平均距離をあけたピーク照射強度が、0.1mW/cm
2以上、好ましくは0.4~50mW/cm
2、より好ましくは1~15mW/cm
2である、請求項1~8のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項10】
前記第1の電気光学素子から0.2~5mの平均距離をあけた1時間以上にわたる送達照射量が、0.01~50J/cm
2、好ましくは0.1~10J/cm
2である、請求項1~9のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項11】
前記第1の電気光学素子(EL1)によって放出される前記電磁放射は、2×60度未満、好ましくは2×50度未満、より好ましくは2×25度未満の半パワー全幅角を有する放射パターン(220)を有する前記電磁放射が前記電気光学デバイスから放出されるように光学部品によって方向付けられる、請求項1~10のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項12】
前記第1の電気光学素子(EL1)によって放出される前記電磁放射は、2×10度以下の半パワー全幅角を有する放射パターン(220)を有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項13】
前記電気光学デバイス(100)は、前記第1の電気光学素子(EL1)として機能する、700~1400nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置されたマイクロLED又はVCSELの第1のセットと、表示画素として機能するマイクロLEDの第2のセットとを備える表示スクリーンである、請求項1~12のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項14】
パルス周波数が100Hz以上である、請求項1~13のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【請求項15】
パルス周波数が、30Hz又は30Hzの倍数であり、好ましくは、120Hzなどの24Hzと30Hzの公倍数である、請求項1~14のいずれか一項に記載の電気光学デバイス(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本発明は、700~1000nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置された少なくとも1つの電気光学素子を有する電気光学照射デバイスの分野に関する。実際には、そのようなデバイスは、ユーザの日常の状況で使用され得る照明器具、スクリーンデバイス、モバイルデバイス、鏡等に組み込まれ得るので、それらの適用領域は多岐にわたり得る。一部のデバイスでは、拡張されたライト(lighting)機能を提供する目的があり、やはりこれも、例えば、示された放出波長を適用して、人間のユーザを刺激、治癒、又は再生させるものとして文献に記載されている既知の光線療法であるフォトバイオモジュレーション効果を得ることによって、ユーザに対する有益な効果を有し得る。
【背景技術】
【0002】
[0002] 先行技術におけるPBMデバイスは、皮膚又は治療エリアの近接場励起(近接デバイス)を用いて高パワー又は高強度のいずれかによるPBM放射を施す機器を利用する。これらの仕様は、多くの場合医療又は治療目的に焦点を当てた専用デバイスのみに限定してPBM効果を与える。同様に、システムの多くは、身体全体を照射するように設計されており、ユーザがPBM反応を受け取るためにある時間期間にわたり動けないままとなる必要がある専用送達を必要とする。これらの制限により、一般大衆がPBMの健康上の利益を得ることが妨げられる。
【0003】
[0003] 先行技術では、例えばPCT出願WO2020/119965に記載されているようなデバイスを提供することも知られている。生体に特定の量の赤色(R)から近赤外(NIR)の放射を曝露すると、治癒の刺激、痛みの緩和、及び炎症の軽減などの有益な効果をもたらす生物学的及び/又は生化学的反応が誘発されることがわかっている。
【0004】
[0004] このフォトバイオモジュレーション(PBM)技法を用いるために、従来の手法は、皮膚の表面に直接又はその非常に近くに適用された専用デバイスを介して必要な放射を送達することであった。
【0005】
[0005] 汎用の照明システムのコンテキストの中で自由空間放射を通じてPBM効果を送達するという概念が、本出願人によって以前に提示された。必要な照射強度レベルを送達するために、例えば、参照により組み込まれるPCT出願WO2020/119965などに記載されているように、典型的にはR/NIR放射源の高ピークパルス化が用いられる。有益な効果を提供することが予想されるターゲットPBM照射量を送達するために様々な範囲のパルス幅及び周波数が記載されている。ターゲットPBM照射量を得るために、パルス幅、周波数、及び放射レベルで電気光学素子を駆動するための様々な技法が開示されている。これらの要素の1つ又は複数が本発明にも適用され得る。例えば、WO2020/119965は、照明装置を開示している。照明装置は、放射源、光源、及びドライバ回路を備え得る。光源は、可視光を放出するように適応され得る。一例において、光源は、CIE色度空間における色点を有する可視光を放出することが可能又は好適であってよく、この色点は、該色空間中の黒体線に対して10標準偏差カラーマッチング(SDCM)未満の距離を有する。ドライバ回路は、パルス化されてよく、かつ20%以下のデューティサイクルを有してよい駆動電流を提供するように適応され得る。照明装置は、駆動電流を放射源に提供するが光源には提供しないように適応され得る。
【0006】
[0006] PWM変調信号を提供する理由の1つは、一方では、かなり高い照射レベルを達成することであるが、他方では、過熱及び他の有害な可能性のある影響を防止するために平均照射を低減することである。
【0007】
[0007] PWM変調の別の理由は、これもまた典型的には特にハンドヘルドのバッテリ動作のデバイスにおいて限られたエネルギー供給手段で生成される必要な照射レベルを効率的に生成することである。放射レベル及び変調周波数を好適に選択することにより、バッテリを早く消耗しすぎることなく、利用可能な電気エネルギーのバランスのとれた使用を得ることができる。PBMのためのパルス化は、それを誘発することに関する閾値効果に起因して有効である。例えば、意味のあるPBM効果を誘発するために、皮膚表面における>0.1mW/cm2、好ましくは>0.4mW/cm2、より好ましくは>1mW/cm2の照射強度が必要であることが一般に認められている。比較として、白色光を使用して500ルクス(オフィスのライトのための典型的な目標)を達成するための連続照明は、0.2mW/cm2未満の照射強度をもたらす。PBMのための強度要件がより高いことに起因して、PBM効果に意味のある放射を継続的に送達することは、コスト及びエネルギー使用の観点から極端に高くなる可能性がある。
【0008】
[0008] その代わりに、上述の照射強度閾値を克服し、意味のあるPBM照射量を送達するために、R及び/又はNIRエミッタをパルス化するとともに、放出デバイスの高パワー密度動作の持続により熱管理課題並びに場合によって放射出力劣化及び/又は動作寿命の短縮が生じる場合にエミッタの過熱を回避する平均電力損失を維持することが有利であり得る。
【0009】
[0009] 強化されたライト素子のエネルギー消費を低減するための更なる選択肢は、限られたエタンデュにおける直接放射に好適な指向性ビームに放射を制限することであり、したがって、ユーザを照射しないので放射エネルギーが浪費されない。
【0010】
[0010] このために、更に、一般照明に必要なものよりも狭い放射パターンで光を集束させることによって、PBM照射強度を増加させることができる。即ち、構築環境のすべてのエリアが見られるためにあるレベルの照射を必要とする一般照明とは異なり、PBM放射は、指定された位置、例えば、デスクの椅子又は病室のベッドなどに位置し得る対象ターゲット又は対象ターゲットの一部分に(場合により反射器又は屈折器を使用して)方向付けられたときにのみ機能する。これにより、PBM放射の集束が、電磁放射の逆二乗則にしたがって、より少ない合計放射を使用しながら、より高い照射強度を生み出すことが可能になる。
【0011】
[0011] それでもやはり、先行技術においては、有害な可能性のある影響を依然として引き起こし得る放射レベルに曝露されることなく、デバイスの他の使用目的の一体化された様式で、拡張されたライト効果をユーザに提供することができる照射の最適化を行う必要が依然としてある。
【発明の概要】
【0012】
[0012] 本発明の目的は、自由空間を介して、対象をターゲットとする赤外線(IR)放射によるフォトバイオモジュレーション(PBM)刺激を送達することである。本発明の更なる目的は、費用効果が高く、かつあまりエネルギー集約的でない方法でPBM刺激を送達することである。本発明の更なる目的は、ターゲット対象についてのPBM照射量を監視及び制御することである。本発明を実施するのに好適な用途は、ターゲット対象の位置がわかっており、及び/又は監視され得る用途を含む。この情報は、PBM効果の最小閾値を超えるレベルのIR放射を送達する機会を提供する。ターゲット対象の位置に関する情報は、ターゲット対象が関心エリア内に留まる時間の長さも含み、それにより、照射量を計算及び監視することができる。
【0013】
[0013] 本発明の第1の態様によれば、電気光学デバイスのユーザにフォトバイオモジュレーション効果を提供することが可能又は好適なデバイスが提供され、本電気光学デバイスは、700~1400nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置された少なくとも1つの(第1の)電気光学素子(EL1)と、電気光学素子の放出特性を調整するように構成された制御回路と、制御回路から入力を受信し、パルス化された駆動電流を使用して、制御回路から受信された入力に基づいて電気光学素子を駆動するように構成されたドライバ回路と、を備える。制御回路は、電気光学素子(EL1)によって放出された電磁放射のオン期間を決定するように構成されたタイマを備えてよく、及び/又はユーザにおける電磁放射の累積照射量を決定するように構成された照射量計算ユニットを備えてよい。制御回路は、所定の最大オン期間を超えた場合、及び/又は照射量計算ユニットによって決定された累積照射量がユーザにおける電磁放射の所定の照射量を超えたことを示す場合に、電気光学素子(EL1)を遮断するようにドライバ回路に命令するように構成され得る。
【0014】
[0014] 本発明者らは、PBM効果が、全身的であり、許容可能な照射強度及び照射量範囲内である限りターゲット対象の合計表皮表面積の一部分を照射することによって達成され得ることを確立した。本発明者らは、これらの強度及び照射量範囲を確立するとともに、ターゲット対象が、指定された持続時間にわたり若しくはある距離内で、又はその両方でシステムと対話する用途を特定したので、それにより、PBM送達デバイスが、そのようなシステム内に一体化され、低エネルギー消費を使用して所望のPBM反応を達成することができる。いくつかの実施形態では、電気光学デバイスは、典型的には、使用されているときにユーザとの予測可能かつ比較的静的な距離を有する物体に組み込まれる。このようにしてPBM誘発放射源をそのようなシステム内に一体化することにより、無数のシステム、例えば、モバイル電話、ラップトップ、タブレット、モニタ、テレビジョン、ゲームシステム、ウェアラブルデバイス(ウォッチなど)、(テク)ガジェット(ウェブカメラなど)、ライトシステム、及び他のシステムなどを通して、PBM曝露への容易なアクセスが一般公衆に提供される。追加的に又は代替的に、いくつかの実施形態では、センサが、ユーザが特定の範囲内にいるかどうかを検出するように配置され、及び/又はデバイスとユーザとの間の特定の距離値を測定するように配置される。
【0015】
[0015] このようにして、照射量を確実に監視することができる。したがって、PBMデバイスは、有用であるときにのみオンであり、意味のある照射量のPBM効果を合理的な時間量で送達することを目標とし、もう必要でなくなったときに遮断されるように制御されて、過剰照射量投与状況を回避するがエネルギー節約もすることができる。
【0016】
[0016] 本発明の第2の態様によれば、電気光学デバイスが提供され、700~1400nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置された(第1の)電気光学素子を備える。そのような電気光学素子は、拡張された照射機能のため、特に、デバイスのユーザにフォトバイオモジュレーション効果を提供するために設けられ得る。このために、電気光学素子には更に、ドライバ回路が設けられ得る。ドライバ回路は、例えば、WO2020/119965に記載の1つ又は複数の要素を使用して、電気光学素子が、ユーザに対して0.1mW/cm2を上回る、好ましくは1mW/cm2を上回るピーク照射強度を達成するが10mW/cm2未満の平均照射強度となるように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで電気光学素子を駆動するように適応され得る。電気光学デバイスはまた、電気光学素子の調整を行うための出力を生成する(そしてこの出力をドライバ回路に入力として送る)ように構成された(制御)回路も備え得る。入力は、使用量に関する自動的に生成された信号に応答して生成され得る。更に電気光学デバイスは、任意選択的に、例えば、WO2020/119965に記載されているように、可視スペクトルの光を放出するように配置された第2の電気光学素子を備え得る。
【0017】
[0017] 本発明のデバイス又は装置は、単純で、時間効率が良く、エネルギー効率が良く、費用効果の高い方法で、PBM効果をユーザに送達することが可能である。デバイス又は装置は、使用が容易である。いくつかの実施形態では、人間に見えるフリッカ又は画像フリッカによりユーザ又は他の人を妨害することを回避するために、更なる手段が設けられる。本発明のデバイス又は装置は、一般に、ある最小持続時間にわたりユーザから典型的な距離をあけた典型的な幾何学的配置で使用される。典型的な距離及び幾何学的配置により、対象又は対象エリアに向かう、より狭いビーム又は指向性ビームの放射が可能になる。典型的な持続時間により、経時的なPBM放射の均一な分布が可能になる。
【0018】
[0018] 本発明の両態様は、以下の手段の1つ又は複数を備え得る。
【0019】
[0019] 電気光学デバイスは、第1の電気光学素子が規定のオン期間にわたり使用された後に受信されるタイマ信号であり得る信号に応答して、第1の電気光学素子を遮断又は抑制する遮断回路を含み得る。使用量に関する他の信号は、デバイスの前で過ぎる平均予想時間、若しくはデバイスによって受け取られた照射強度の平均計算照射量などの記録された使用量パラメータ、又はデバイスとユーザとの間の距離に関する信号を含み得る。
【0020】
[0020] いくつかの実施形態では、電気光学デバイスは、デバイスの設計された使用法に基づいて、ユーザにおける十分であるが過剰ではない放射強度を生成するように構成される。これらの実施形態では、電磁放射のビーム角が更に、そのような使用法に照らして最適化され得る。このようにして、最適なPBM効果を最小のエネルギー消費で達成することができる。
【0021】
[0021] 一実施形態では、電気光学デバイスは、スマートフォン又はタブレットなどのハンドヘルドデバイスである(それに組み込まれている)。ドライバ回路は、電気光学素子が、例えば電気光学デバイスから25cm又は30cmの距離をあけて、ユーザに対して0.1mW/cm2を上回る、好ましくは1mW/cm2を上回るピーク照射強度を達成するが10mW/cm2未満の平均照射強度となるように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで電気光学素子を駆動するように構成され得る。第1の電気光学素子によって放出される放射は、2×60度未満、好ましくは2×50度未満、より好ましくは2×25度未満の半パワー全幅角(full-width-at-half-power angle)を有する放射パターンを有する放射がデバイスから放出されるように方向付けられ得る。
【0022】
[0022] 別の実施形態では、電気光学デバイスは、ラップトップなどのコンピュータである(それに組み込まれている)。ドライバ回路は、電気光学素子が、例えば電気光学デバイスから50cmの距離をあけて、ユーザに対して0.1mW/cm2を上回る、好ましくは1mW/cm2を上回るピーク照射強度を達成するが10mW/cm2未満の平均照射強度となるように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで電気光学素子を駆動するように構成され得る。第1の電気光学素子によって放出される放射は、2×25度未満、好ましくは2×15度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する放射がデバイスから放出されるように方向付けられ得る。
【0023】
[0023] 一実施形態では、第2の電気光学素子(EL2)は、照明又は情報表示の目的で設置された照明デバイスである。ドライバ回路は、電気光学素子が、例えば電気光学デバイスから130cm又は170cmの距離をあけて、ユーザに対して0.1mW/cm2を上回る、好ましくは1mW/cm2を上回るピーク照射強度を達成するが10mW/cm2未満の平均照射強度となるように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで電気光学素子を駆動するように構成され得る。第1の電気光学素子によって放出される放射は、2×25度未満、好ましくは2×10度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する放射がデバイスから放出されるように方向付けられ得る。一実施形態では、第2の電気光学素子(EL2)は、白色光を放出することが可能である。
【0024】
[0024] 一実施形態では、第1の電気光学素子(EL1)は、第2の電気光学素子(EL2)が10cd/m2を上回る輝度で放出しているときにのみ放出するように配置される。
【0025】
[0025] 一実施形態では、制御回路は、ユーザとデバイスとの間の距離(d)を決定するように構成された近接検出ユニットを含み、制御回路は、決定された距離(d)に依存してタイマ及び/又は照射量計算ユニットを制御するように構成される。
【0026】
[0026] 一実施形態では、制御回路は、電気光学デバイスの1日当たりの推定使用時間にしたがってドライバ回路を制御するように構成される。
【0027】
[0027] 一実施形態では、制御回路は、デバイス使用時間の履歴テーブル及び/又は電気光学デバイスとユーザとの間の距離に依存してドライバ回路を制御するように構成される。
【0028】
[0028] 一実施形態では、デバイスは、ユーザが第1の電気光学素子と(視覚的に)接触していることを検出するように構成された検出回路を備え、制御回路は、該検出に応答するとともに、第1の電気光学素子によって引き起こされる照射のレベルを低減するように構成される。
【0029】
[0029] 一実施形態では、回路によって第1の電気光学素子の放出特性を調整することは、所定のオフ期間にわたり第1の電気光学素子を遮断することを伴う。
【0030】
[0030] 一実施形態では、所定の蓄積オフ期間は、8時間よりも長く、好ましくは12時間よりも長い。
【0031】
[0031] 一実施形態では、(第1の)電気光学素子(EL1)から0.1~5mの平均距離をあけたピーク照射強度は、0.1mW/cm2以上、好ましくは0.4~50mW/cm2、より好ましくは1~15mW/cm2である。
【0032】
[0032] 一実施形態では、(第1の)電気光学素子(EL1)から0.1~5mの平均距離をあけた照射強度は、人間にフォトバイオモジュレーション効果を誘発するのに十分である。
【0033】
[0033] 一実施形態では、(第1の)光源から0.2~5mの平均距離をあけた1時間以上にわたる送達照射量が、0.01~50J/cm2、好ましくは0.1~10J/cm2である。
【0034】
[0034] 一実施形態では、電気光学デバイスは更に、第2の電気光学素子(EL2)を含み、かつ一般照明に好適な白色光を放出するように適応された光源を備え、光源は、動作時に少なくとも250ルーメン、好ましくは少なくとも1000ルーメン、より好ましくは少なくとも2000ルーメンを放出するように適応されている。
【0035】
[0035] 一実施形態では、(第1の)電気光学素子(EL1)によって放出される放射は、2×60度未満、好ましくは2×50度未満、より好ましくは2×25度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する放射がデバイスから放出されるように、光学部品によって方向付けられる。
【0036】
[0036] 一実施形態では、(第1の)電気光学素子(EL1)によって放出される放射は、2×10度以下の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する。
【0037】
[0037] 一実施形態では、電気光学デバイスは、電気素子(EL1)として機能する、700~1400nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置されたマイクロLED又はVCSELの第1のセットと、スクリーンの表示画素として機能するマイクロLEDの第2のセットとを備える表示スクリーンである。
【0038】
[0038] 一実施形態では、パルス周波数は100Hz以上である。
【0039】
[0039] 一実施形態では、パルス周波数は、30Hz又は30Hzの倍数であり、好ましくは、120Hzなどの24Hzと30Hzの公倍数である。
【0040】
[0040] 一実施形態では、電気光学デバイスは、デバイスに組み込まれたソフトウェアアプリケーション(「アプリ」)の使用によって、上記態様のいずれかに関連する情報を取り出し、記憶し、使用し得る。
【0041】
[0041] 組み合わせて、モバイルデバイスのエネルギー使用量を最適化し、同時に、過剰曝露の可能性を制限するデバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【
図1】[0042] 第1及び第2の電気光学素子を有するデバイスの概略図を示す。
【
図2】[0043] 使用量に関する自動的に生成された信号に応答する調整回路の更なる詳細なフロー図を示す。
【
図3】[0044] 該電気光学素子によって放出される関連波長の概略図を示す。
【
図4A-4G】[0045] 第1の電気光学素子からの指向性放射を達成するための様々な実施形態を示す。
【
図5A-5C】[0046] 指向性放射を達成するための更なる実施形態を示す。
【
図6A-6H】[0047] 画像フリッカが防止されるいくつかの駆動周波数を示す。
【
図7】[0048] 照明器具のための第1の電気光学素子の概略的な照射パターンを示す。
【
図8a】[0049] ハンドヘルドデバイスのための概略的な照射パターンを示す。
【
図8b】[0050] 第1及び第2の電気光学素子を有する別のデバイスの概略図を示す。
【
図9a-9c】[0051] 電気光学デバイスがスマートフォンなどのハンドヘルドデバイスに組み込まれた実施形態を示す。
【
図10a-10b】[0052] 電気光学デバイスがラップトップコンピュータに組み込まれた実施形態を示す。
【
図11a】[0053] PBM放射を人に提供するための典型的な照射平面の幾何学的配置を示す。
【
図11b】[0054]
図11aからの照射平面における放射照度プロファイルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
[0055] 別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての用語(技術用語及び科学用語を含む)は、説明及び図面のコンテキストで読まれるとき、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されている意味と同じ意味を有する。更に、一般に使用される辞書で定義されているものなどの用語は、関連する技術分野のコンテキストにおけるそれらの意味と矛盾しない意味を有するものと解釈されるべきであり、本明細書で明確に定義されない限り、理想化された又は過度に正式な意味で解釈されるものではないことが理解されよう。いくつかの事例では、本システム及び方法の説明を曖昧にしないように、周知のデバイス及び方法の詳細な説明は省略される場合がある。「及び/又は」という用語は、関連するリストの項目のうちの1つ又は複数のあらゆる組合せを含む。「備える」及び/又は「備えている」という用語は、述べられた特徴の存在を指定するが、1つ又は複数の他の特徴の存在又は追加を排除しないことが更に理解されよう。本明細書で言及されるすべての刊行物、特許出願、特許、及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。矛盾がある場合、定義を含めて本明細書が優先される。
【0044】
[0056] 本出願全体を通して、発光ダイオード(LED)、有機LED(OLED)、レーザダイオード(LD)、垂直共振器面発光レーザ(VCSEL)、又は他の電気光学変換デバイスであり得る電気光学アセンブリのための任意の手段が、特に以下で更に明らかにされるように、本発明を実施するのに好適であり得る。
【0045】
[0057] 以下、本発明の実施形態が示される添付図面を参照して、本発明について十分に説明する。しかしながら、本発明は、多くの異なる形態で具現化することができ、本明細書に記載の実施形態に限定されるものと解釈されるべきではない。正確にいえば、これらの実施形態は、本開示が徹底的かつ完全なものとなり、当業者に本発明の範囲を十分に伝えるものとなるように提供される。
【0046】
[0058] 例示的な実施形態の説明は、記載された説明全体の一部とみなされる添付の図面に関連して読まれることが意図されている。図面において、システム、構成要素、層、及び領域のサイズ及び相対的なサイズは、明確にするために誇張していることがある。実施形態について、本発明の場合により理想化された構造及び/又は中間の構造の概略図を参照して説明する。
【0047】
[0059] フォトバイオモジュレーション(PBM)は、生体の少なくとも一部分を特定のエネルギー/パワーレベルで照射して生物学的又は生化学的反応を誘発することを伴う。照射は、赤色光などの可視スペクトル、又は近赤外(NIR、700~1400nm)若しくは赤外(IR)などの非可視スペクトルにおけるものであり得る。身体的及び心理的症状を治療するためにPBM療法を用いることの医学的利益について、著しい量の研究がなされてきた。
【0048】
[0060] いくつかの実施形態では、第1の電気光学素子が1mW/cm2を上回るピーク照射強度を達成するが10mW/cm2未満の平均照射強度となるように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで第1の電気光学素子を駆動するためのドライバ回路が使用され、その趣旨の例示的なドライバ回路が以前の出願に説明されている。
【0049】
[0061] WO2020/119965は、連続波の赤外光と比較して、エネルギー消費を制限しながらPBM効果を誘発するために、パルス化されたNIR又はIR光を一般的なライト用途に追加することを開示している。
【0050】
[0062] WO2021/099642は、連続波の赤色光と比較して、エネルギー消費を制限しながらPBM効果を誘発するために、パルス化された赤色光を一般的なライト用途に追加することを開示している。
【0051】
[0063] このようなドライバ回路の例示的な実施形態は、PWM信号を利用することができ、第1のパルス電流のパルスの幅は、0.05ms以上であり得る。第1のパルス電流のパルス間の期間は、0.05ms以上であり得る。例えば、LEDは、8msの期間にわたり、10Hzの周波数でパルスオンされ得る。例えば1~10mW/cm2などの適切な照射強度レベル下で、2.3~23J/cm2の照射量が達成される。
【0052】
[0064] 残念ながら、この比較例は、人間に見えるフリッカを示さない場合があるが、ビデオレコーダ及びカメラ、スマートフォンに埋め込まれたカメラも含む電子撮像機器において使用されるセンサによって引き起こされる場合がある画像フリッカを引き起こす可能性がある。そのようなセンサは、人間の眼よりも赤外光に対して感度が高い可能性がある。特に、
図3に示すように、CCD及びCMOSセンサは、600nmから1000nmを超えるまでの波長レジームの光に対して感度が非常に高い。この波長レジームの光は、これらのデバイスの撮像機能と干渉する可能性がある。特に、特定の条件下では、この波長レジームにおけるパルス放射により、そのような撮像デバイスの操作者に観察可能な画像フリッカが生じる可能性がある。
【0053】
[0065] 顕著な画像フリッカを回避するために、PBM光源をパルス化するのに100Hz以上のパルス周波数を選択することが望ましい。本発明の別の態様によれば、スマートフォンビデオカメラなどの撮像機器で使用される典型的なフレームレートの倍数、特に、1つ又は複数のPBM照明器具の近傍で使用される撮像機器のフレームレートの倍数であるPBM光源のパルス周波数を選択することが望ましい。
【0054】
[0066] 例えば、関連する撮像機器のフレームレートが30フレーム毎秒(fps)である場合、NIR PBM LEDのパルス周波数の好適な選択は、30Hz、60Hz、又は90Hz、及び約100Hz以上の任意の周波数であり得る。複数の撮像機器のフレームレート、例えば、スマートフォン及びデジタルカメラなどの一般に入手可能な撮像機器ですべて使用され得る24、30、及び60fpsなどが関係する場合、PBM LEDをパルス化するための好適なパルス周波数は、100Hz以上も使用され得るが、120Hzなどのこれらの周波数の公倍数であり得る。
【0055】
[0067] WO2020/119965及びWO2021/099642は、エネルギー効率の良い方法でPBM照射量を送達することを目的としているが、赤色光、NIR光、又はIR光は、環境を照明することを意図する可視光と全く同様に、環境内に均一に分布される。そのようなデバイス(例えば、卓上ランプ又はパネル)の可視光放射パターンの光学設計は、PBMの理想的なNIR放射パターンとは異なるものであり、前者は、部屋全体又は仕事場の広いエリアを照明するべきであるが、後者は、対象に方向付けられるべきである。
【0056】
[0068] 対象に集束されるNIRビームは、すべてのNIR光が対象に向かっていき、何もない空間を「照明する」ためにNIR光が使用されないので、より少ないNIR LEDが使用されることを可能にする。更に、「対象エリア」がより良好に定義されるほど、NIRビームはより良好に集束され得る。PBM効果を誘発するためにPBM放射が対象ターゲットエリアに方向付けられる必要があるだけなので、より効率的なPBM放射の送達が可能である。
【0057】
[0069] デジタルカメラなどの電子撮像システムは、深赤色及びNIR放射に対して人間の眼よりも感度が高いセンサ(例えば、CMOS又はCCDセンサ)を有する。これにより、PBM照明システムが、人間の眼にはフリッカとして直接見えないが、それでも電子撮像システムを介して知覚されたときにフリッカとして現れる、パルス化された放射を提供する状況が生じる可能性がある。この「画像フリッカ」は煩わしいものであり、例えば、病院環境における患者の健康監視などの重要なタスクに混乱を招く可能性がある。したがって、著しいレベルの人間に見えるフリッカ又は画像フリッカに見舞われない、有効なPBM照射量の自由空間送達のための方法を提供することが望ましい。
【0058】
[0070] 次に
図1を参照すると、第1の電気光学素子EL1及び任意選択の第2の電気光学素子EL2を有するデバイス100の概略図が示されている。
【0059】
[0071] 第1の電気光学素子EL1は、700~1400nmのピーク放出波長を有する電磁放射を放出するように配置されて設けられる。このような第1の電気光学素子EL1は、拡張された機能のため、特に、デバイス100のユーザにフォトバイオモジュレーション効果を提供するために設けられ得る。第1の電気光学素子EL1は、第2の電気光学素子EL2のスペクトル範囲と部分的に重なり得るが、より長い(IR)波長にわたる範囲の放射を放出するように配置される。例示的な範囲は、第1の電気光学素子EL1から0.2~5mの平均距離をあけて0.1mW/cm2以上、好ましくは0.4~50mW/cm2、より好ましくは1~15mW/cm2のピーク照射強度を有する放射源を含む。第2の放射源が、特に一般照明と組み合わせたときに、任意の好適な距離にあり得るが、第1の電気光学素子EL1から0.1~5mの平均距離をあけた照射強度が、人間にフォトバイオモジュレーション効果を誘発するのに十分である。
【0060】
[0072] 第2の電気光学素子EL2は、可視スペクトルの光を放出するように配置され得る。使用法又は形態が制限されることなしに、そのような第2の電気光学素子EL2は、直接照明若しくは間接照明又は情報表示の目的のため、及びユーザ、特にユーザの眼の直接照射若しくは間接照射のための、指向性又は非指向性発光デバイスであり得る。例は、ユーザの日常の状況で使用され得る照明器具、スクリーンデバイス、モバイルデバイス等であり得る。特に、そのようなデバイスは、照明又は表示を目的として使用されてよく、その目的のために、
図3に400~700nmのスペクトル範囲の主要放出を有するものとして示される可視範囲の光を放出する。更に、照明又は表示を目的として、デバイスは、特に、以下で更に説明する白色光を提供するために、いくつかのサブ光源、例えば、様々なスペクトルサブレンジの広範な光源を備え得る。
【0061】
[0073] デバイス100には更に、第1の電気光学素子EL1が、WO2020/119965にも記載されているように、ユーザに対して0.1mW/cm2を上回る、好ましくは0.4mW/cm2を上回る、より好ましくは1.0mW/cm2を上回るピーク照射強度を達成するが10mW/cm2未満の平均照射強度となるように、パルス幅、周波数、及び放射レベルで第1の電気光学素子EL1を駆動するドライバ回路110が設けられ得る。
【0062】
[0074] 本発明の一態様によれば、制御回路120が、使用量に関する自動的に生成された信号に応答して、第1の電気光学素子EL1の調整を行うための、ドライバ回路110への出力を生成するように配置される。そのような信号は、多くの実装形態によって制御回路130によって受信されてよく、その開示は、あり得る適用例の範囲を限定することなく、いくつかの例示的な形態を例示する。第2の電気光学素子EL2のために、同じドライバ回路が使用されてもよいし、又は別個のドライバ回路が使用されてもよい。
【0063】
[0075] 例えば、使用量に関する信号は、電気光学デバイス100の1日当たりの推定使用時間にしたがって生成され得る。このために、
図2に更に例示されるように、「ウォッチドッグ」回路が、PBMステータスがアクティブであるときに、デバイスへのユーザ曝露を示す「スクリーンタイム」を記録し得る。スクリーンタイムのインジケーションに基づいて、合計曝露時間が推定されてよく、これは回路110の機能を制御するタイマ135を制御する。
【0064】
[0076] 使用量は、デバイス100をその一次目的で使用するため、即ち、第2の電気光学素子EL2をアクティブ化するために、ユーザによってデバイス100を単にアクティブ化することによって既に記録されていてよい。
【0065】
[0077] 使用量に関する信号が導出されてもよいし、又は以下の例で更に例示される顔認識回路など、デバイス100に設けられた様々なシステムからより複雑なパラメータが導出されてもよい。
【0066】
[0078] また、ユーザの距離パラメータdを出力するようにプログラムされた近接検出ユニットに基づく推定照射量を含んでもよく、ここにおいて、使用量に関する信号は、
図2に更に例示されるように、所定の推定照射量レベルを超えた場合に、出力された平均距離パラメータに基づいて生成される。
【0067】
[0079] より詳細には、
図2は、使用量に関する自動的に生成された信号に応答する制御回路130の更なる詳細なフロー図を示す。この図は、近接検出時に渡される使用量についての信号を提供する。そのような検出は、PBM効果を提供する好適な照射量を照射することができるときに第1の電気光学素子EL1が好ましくはアクティブであるので有用である。
【0068】
[0080] したがって、前述したドライバ回路110への調整信号を提供する制御回路130によって、例示的な形態の使用量信号が生成される。制御回路120は、近接検出を、検出された「オン期間」と組み合わせ、特に、所定の最大オン期間を超えた場合に使用量に関する信号が生成される。オン期間は、近接条件を満たしたときにタイマを開始するタイマ135によって検出され得る。
【0069】
[0081] タイマ(又は別のクロック)は更に、1日の中の時間を示す働きをし得る。PBM効果は、ユーザの観点からすると日中時間の間に送達されると最も効果的である可能性がある。この場合、PBMデバイスがローカル時間帯のタイマ又はクロックにクエリし、日中時間が現在有効であるか否かを決定することが有利であり得る。そうではない場合、特にエネルギー節約の観点から、日中でない時間の間PBMデバイスを遮断するか又はディセーブルにすることが有利であり得る。
【0070】
[0082] 例示された例では、そのような条件は、ユーザの顔が50cmの距離d内で、又はより具体的には、10cm~50cmの範囲の距離内で検出されるというものであり得る。下限は、安全性の側面、特に、以下で更に説明する眼の安全性によって決定され得る。上限は、照射レベルが低すぎると少なくなるPBM効果を高めるために、決定された最小照射レベルによって決定され得る。
【0071】
[0083] オン期間はまた、他の手段、例えば、以下で更に説明する、モバイル電話ユーザのスクリーンタイムの合計使用量を記録するスクリーンタイムパラメータによって検出され得る。例えば、使用量に関する信号は、電気光学デバイスの1日当たりの推定使用時間にしたがって生成される。別の例は、使用デバイス使用時間の履歴テーブルから導出された使用量に関する信号を提供するようにプログラムされた制御回路を含み得る。
【0072】
[0084]
図4a~
図4gは、第1の電気光学素子EL1からの指向性放射を達成するための様々な実施形態を示す。特に、動作中にPBM放射をユーザに向けて方向付けるための光学部品が示されている。例として、これらの光学部品を使用することができる。
【0073】
[0085] 第1の電気光学素子EL1によって放出される放射は、2×60度未満、好ましくは2×50度未満、より好ましくは2×25度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する放射がデバイス100から放出されるように、光学部品によって方向付けられ得る。
【0074】
[0086] 放射パターンが広くなると、ユーザを直接ターゲットとしない過度の放射を生成するという欠点がもたらされ、その結果、放射が浪費され、PBM効果を誘発するように使用されることができない。したがって、最適な意味では、第1の電気光学素子EL1は、(例えば、浴室環境における)任意の皮膚であり得るユーザの皮膚に衝突する直接放射でのみユーザを照射するために設けられる。
【0075】
[0087] 光学部品は、屈折性(
図4A)及び/又は反射性(
図4B)、又はそれらの組合せであってよく、好適な種類の電気光学素子、特にLED若しくはVCSELアレイ又はそれらの組合せに対応してよい。組み合わせた形態では、全内部反射光学部品(
図4E)を、それ自体が既知のタイプのフレネル型レンズ(
図4F及び
図4G)であり得るレンズと組み合わせて使用することができる。回折光学部品もまた選択肢である。
【0076】
[0088] VCSELアレイ(垂直共振器型面発光レーザアレイ)は、LEDと同様に効率的であり、
図4C及び
図4Dに概略的に例示されるように、更に狭い放射パターンを提供することができる。また、ビームをわずかに拡散させ、高パワー単一レーザビームに関連するレーザ安全性の問題を回避するために、マルチモード及び/又はマルチビームVCSELアレイを光学素子と組み合わせることができる。市販のVCSELアレイ製品である、II-VI, Inc.からのAPS6401010002は、3Aの順方向電流で25度の全幅ビームで典型的な2.2Wを送達する。特定のこの製品は940nm(InGaAs)用であるが、850nm(GaAs)バージョンが現在の技術水準で可能であり、同様の性能特性を有することが期待され得る。このソリューションは、前の段落で説明したLEDソリューションの照射強度の約5倍を有することになる。また、放出されたビームを集束させるためのレンズ素子が必要なくてよい。
【0077】
[0089] PBMにレーザデバイスが使用される場合、レーザが引き起こす可能性がある眼の安全性の問題を回避することが好ましい。これを行う1つの方法は、レーザのコヒーレンスを壊すとともに有効光源サイズを増加させる光学拡散器素子を(EELD又はVCSELエミッタとユーザの目との間に)含めることであり、眼の安全性の危険を低減し、PBMデバイスについてのレーザベースの眼の安全性の等級の要件を回避することを可能にする。
【0078】
[0090]
図5a~
図5cは、指向性放射を達成するための更なる実施形態を示す。
図5Aに開示された実施形態では、LEDデバイス200gが、レンズ形成光学部品に埋め込まれていてよく、レンズ形成光学部品は、全内部反射(TIR)の原理を使用して光を前方方向に反射するように部分的に成形されていてよい。
【0079】
[0091] PBM効果が、0.1mW/cm2を上回る、好ましくは0.4mW/cm2を上回る、より好ましくは1.0mW/cm2を上回るピーク照射強度を少なくとも有する境界内に保たれる作用深さを得るために、そのような光学部品には、例えば3mmを超えるかなりの高さが必要になる可能性がある。
【0080】
[0092] 光学部品の高さを低減するために、発明の代替として、光学部品は、各マイクロレンズの焦点中心に「マイクロ」LEDが位置するマイクロレンズアレイとして設計されてもよく、これは、発光LED表面をアクティブなマイクロエリアのパターン化された形態で構成することによって好適に達成することができ、それによって光学部品の高さを制限し、同時に、PBM効果が依然としてアクティブであるかなりの作用深さを達成する。これらのマイクロレンズアレイは、例えば
図5B又は
図5Cに示すタイプの任意の好適な形状であり得る。
【0081】
[0093] 別の例では、LEDは、Luxeon IR Compact L1IZ-A850000000000などの単一の市販のLEDであってもよい。LEDは、50(2×25)度のFAHPを有する放射パターンを提供するために、上述のようにレンズ素子と共に、モバイル電話などのパーソナルデバイス内に取り付けられ得る。PBM効果を達成するのに十分な駆動電流を供給することができるように、ドライバ回路110が電話内に設けられる。例えば、LEDは、850nmで約1.9Wのピーク放射パワー出力を達成するために、10%のデューティファクタ(100Hz)で1msのパルスにおいて1.5Aのピーク電流で駆動され得る。レンズ素子がこの一次放射の80%を収集することができる場合、送達される最大強度は、直径30cmのターゲットエリア内で約1.5W、即ち2.1mW/cm2であり得る。(放射パターンのエッジにおける、半強度角における)最小強度は、1.1mW/cm2であり得る。したがって、3時間のスクリーンタイムでは、ユーザへの送達照射量は、1.1~2.2J/cm2の範囲であり得る。LEDに送達される合計電流は、10%のDFで3時間にわたる1500mA、即ち、合計450mAhであってよく、これは、典型的な大型スマートフォンバッテリの合計電荷(3000mAh)の約15%であり、これは、一体化されたPBM能力のこれまで不可能であった期待される健康上の利益を与えられた多くのモバイルデバイスOEMにとって許容可能であるはずである。
【0082】
[0094] 効率は、放射を更に集束させること、即ち、より狭いFAHPによって改善することができ、レンズの光学効率又はLED自体の効率が増加する。PBMデバイスEL1への電流は、モバイル電話のLED「フラッシュ」機能用に開発されたものなどの電子ドライバチップによって供給され得る。例えば、Kinetic TechnologiesからのFlash LED Driver KTD2681は、プログラム可能なパルスモードで1.5Aまで送達することができる。
【0083】
[0095] 薄型設計を達成するために、
図5B及び
図5Cに示すように、いわゆるミニLED及びマイクロLEDを利用することができる。ミニLED(典型的には、チップ寸法が250μm以下)及びマイクロLED(典型的には、チップ寸法が50μm未満)は、ディスプレイなどの用途において最近関心を集めている。光学素子はチップサイズに合わせてスケール調整されるので、レンズ又は反射器素子の全体サイズは、高パワーLEDチップ200を(合計して同じ総面積の)ミニLED若しくはマイクロLEDアレイと置き換えることによって低減され得る。理想的には、チップ高さは比例して低減され、これは、LEDチップ基板を薄化する(又は取り除く)ことによって達成することができる。
【0084】
[0096] マイクロLEDベースのディスプレイ及び照明システムが、近年関心を集めている。ディスプレイの場合、従来のLCD又はOLEDスタックを使用するのとは異なり、マイクロLEDは、ディスプレイ自体の表面積と比較して、非常に少量の半導体材料を使用して表示画素を構築する可能性を提供する。これは、画素間又は画素内のいずれかにおいて、ディスプレイに追加の構成要素を含める余地があることを意味する。例えば、画素に含まれる赤、緑、及び青色のマイクロLEDが、NIRマイクロLED又はVCSELのいずれかである、NIRエミッタも含み得る。このようにして、NIR発光を、ディスプレイにシームレスに一体化し、所望されるときにPBM効果を提供するために使用することができる。
【0085】
[0097] ドームレンズのミニLEDアレイ手法を使用した全高の低減の一例が
図5Bに例示されている。比較例として、Lumiledsからの市販のIR LED L1I0-Axxx050000000は、2×25=50度のFAHPと、3.4mmの全高とを有し、そのうちの2.6mmはレンズによるものであり、0.8mmはチップ及びサブマウントによるものである。このLED製品のチップは1×1mm
2である。LEDチップを、各々が250×250μm
2の16個のミニLEDに分割すると、同じ光学効率を維持しながら、レンズの高さをその元の値の1/4、即ち0.65mmに縮小することができる。これは、LEDチップの高さも(例えば、基板の薄化によって)低減されることを想定している。この場合のミニLEDベースのパッケージの全厚は、0.8+0.65=1.45mmであり、光学性能及びFAHPは、比較例と同様であり得る。
【0086】
[0098] 代替の実施形態として、TIRレンズのミニLEDアレイの例を
図5Cに示す。上述のドームレンズの場合と同様に、パワーLEDチップを4×4アレイのミニLEDに分割すると、TIRレンズ素子の高さを4分の1に低減することができる。側面放出が上面放出よりも優勢になるほどチップ幅が狭くなると、高い光学効率を依然として達成しながら設計を単純化し、更に外形を低減するために、上面ドーム要素を排除することが許容され得る(図中の「代替」設計を参照)。
【0087】
[0099] ミニLEDデバイス及びマイクロLEDデバイスは、従来のLED製造技法を使用して製造され、場合によっては、従来のチップハンドリング技法を用いて組み立てられ得る。デバイスが非常に小型になるか、又は非常に多くを取り扱う必要があるとき、マストランスファなどの高度な技法が利用され得る。マストランスファ技法は、当該技術分野において既知であり、とりわけ、エラストマーピックアンドプレース、レーザ転写、及び静電ピックアンドプレースを含む。
【0088】
[0100] 特定の例では、PBMデバイスEL1は、モバイル電話デバイス内のプリント回路基板(PCB)上に取り付けられた単一の高パワーIR LEDを備えてよく、それにより、電話が使用されているときにLED発光をユーザの顔に方向付けることができる。LEDが放出した放射を集束させ、送達される照射強度を増加させるために、デバイスとユーザとの間にレンズ素子が含められる。
【0089】
[0101] 例えば、ターゲット放射パターンは、約50度の半パワー全角(FAHP:full-angle at half-power)であり得る。そのような放射パターンにより、対象の顔が電話から30cm(典型的な距離)離れているときに、PBMデバイスEL1からの送達された赤外線放射の大部分がターゲット対象の有用な部分に送達されることが確実になり得る。また、ユーザの(露出した)顔のごくわずかな一部分ではなく、顔の大部分がPBM放射を受けることができることが確実になる。
【0090】
[0102] レンズ素子は、モバイル電話構造内の空間(厚さ)を節約するために、標準的な屈折レンズ素子ではなく、フレネルレンズなどの平面光学部品であることが好ましい場合がある。
【0091】
[0103] 上述のように、PBMデバイスは、全体的な熱管理及びエネルギー使用を容易にしながら、必要な強度レベルを提供するためにパルス化され得る。PBMデバイスがパルス化される場合、最小パルス長は、有効なPBM刺激を確実にするために、少なくとも1msであるべきである。また、PBMデバイスがパルス化される場合、繰り返し周波数は、デバイスの動作が、モバイル電話カメラ自体を含む、使用の近傍にある撮像デバイスによって拾われる可能性がある画像フリッカを引き起こさないようなものであるべきである。
【0092】
[0104] 例えば、参照により組み込まれる米国仮出願第63166331号に開示されているように、少なくとも100ヘルツ以上のパルス繰り返し速度を有することが好ましい場合がある。
【0093】
[0105]
図6a~
図6hは、画像フリッカが防止されるいくつかの駆動周波数を示す。例示された例は、80Hz辺りではフリッカが依然として観察可能であり得るのに対して、80Hzを上回るパルス周波数では、そのような画像フリッカを防止することができることを示す。
【0094】
[0106] 示されている画像は、観察されるのに十分に高い周囲強度レベルで10~320Hzの可変周波数でパルス化されたNIR LEDアレイのスマートフォンカメラから生成されたビデオスクリーンショットであり、画像Aは10Hz、Bは20Hz、Cは25Hz、Dは30Hz、Eは50Hz、Fは80Hz、Gは100Hz、及びHは320Hzである。画像フリッカは、10Hz、20Hz、25Hz、50Hz、及び80Hzで観察される。画像フリッカは、スクリーンショットに横縞として現れる。
図6a~
図6hの撮像に使用されたスマートフォンカメラのフレームレートに相当する30Hzでは、画像フリッカが観察可能でないことに注目すべきである。また、100Hz以上の周波数では、観察可能な画像フリッカがいずれも観察されないことにも注目すべきである。
【0095】
[0107]
図7は、ユーザのごく近傍に照明目的で設置された照明デバイスの一例としての照明器具210のための第1の電気光学素子EL1の概略的な照射パターンを示す。したがって、照明器具210は、PBM効果を提供するための第1の電気光学素子EL1で強化されており、同時に、一般照明に好適な白色光を放出するように適応された第2の電気光学素子EL2を含む光源を備え、例えば、光源は、動作時に少なくとも250ルーメン、好ましくは少なくとも1000ルーメン、より好ましくは少なくとも2000ルーメンを放出するように適応されている。開示された例示的な形態は、一般照明のために典型的に使用されるトロファ照明器具210に一体化されたPBM能力を示す。
【0096】
[0108] 1つの実施形態では、典型的なオフィス環境が考慮される。典型的な天井高さZ3は、2.7mである。着座している人の肩の典型的な高さは100cmであり、トロファパネルの下170cmにPBMアクションのためのターゲット距離Z1を提供し、第1のターゲット「照射平面」P1を決定する。第2のターゲット照射平面P2は、トロファ照明器具210の下に起立している人の肩の高さにある。起立している人の肩の典型的な高さは140cmであり、第2のターゲット照射平面P2のために、トロファパネルの下130cmにPBMアクションのためのターゲット距離Z2を提供する。典型的な「2×4」パネルは、約3000ルーメンを送達し、天井高さZ3に対して1:1~2:1の比で、即ち2.7~5.4m離隔され得る。
【0097】
[0109] 特定の例では、28個の高パワーIR LEDを備えるPBMデバイスEL1が、LED発光が下方に方向付けられるように、トロファパネル内の1つ又は複数のプリント回路基板(PCB)上に取り付けられる。LEDが放出した放射を集束させ、送達される照射強度を増加させるために、デバイスとユーザとの間にレンズ素子が含められる。例えば、ターゲット放射パターンは、約90度の半パワー全角(FAHP)であり得る。前述のように、PBMデバイスは、全体的な熱管理を容易にしながら、必要な強度レベルを提供するためにパルス化され得る。PBMデバイスがパルス化される場合、繰り返し周波数は、デバイスの動作が、使用の近傍にある撮像デバイスによって拾われる可能性がある画像フリッカを引き起こさないようなものであるべきである。例えば、少なくとも100ヘルツ以上のパルス繰り返し速度を有することが好ましい場合がある。
【0098】
[0110] 例えば、LEDは、Luxeon IR LED L1IZ-A850090000000などの市販のLEDであり得る。LEDは、トロファ内に取り付けられ、90度のFAHPを有する放射パターンを提供するために一体化レンズを搭載し得る。PBM効果を達成するのに十分な駆動電流を供給することができるように、ドライバ回路110がパネル内に設けられる。例えば、LEDは、各々が850nmで約3.1Wのピーク放射パワー出力を達成するために、10%のデューティファクタ(100Hz)で1msのパルスにおいて3.0Aのピーク電流で駆動され得る。
【0099】
[0111] 複数のトロファパネルが、天井高さZ3と同じ距離diである2.7m離隔されるようにして使用され得る。第1のターゲット照射平面P1では、送達されるピーク強度は、トロファ210のうちの1つの直下で約1.0mW/cm2であり得る。トロファ210のちょうど中間では、ピーク照射強度は、例えば約0.6mW/cm2など、少なくなり得る。第2のターゲット照射平面P2では、送達されるピーク強度は、トロファのうちの1つの直下で約1.6mW/cm2であり得る。トロファのちょうど中間では、ピーク照射強度は、例えば約0.8mW/cm2など、少なくなり得る。ターゲット対象がパネル下のビーム放射パターン内で8時間の相互作用を受ける場合、送達される照射量は、1.6~4.7J/cm2の範囲であり得る。IR LEDが8時間の期間の間、絶えずパルス化していると想定すると、この期間中にLEDによって損失される平均電力は約30Wであってよく、照明目的のためのトロファパネルの消費電力よりも少ない可能性が高い。
【0100】
[0112] 上述のように、IR LEDは、トロファに組み込まれ得るか又はIR LEDと通信する外部デバイス、例えばリモート制御部であり得る関連付けられたセンサデバイスによってターゲット対象の存在が検出されたときなど、「オン」状態が決定されたときにのみ動作させることによって、より効率的に動作され得る。
【0101】
[0113] また、日中時間の典型である時間ウィンドウ内の8時間の期間など、1日の限られた時間の間のみIR LEDをオンにすることが好ましい。「オン」状態が決定されたときに、急激にオンになるのではなく、IR LEDは、数秒又は更には数分かけてゆっくりと、それらのターゲット動作レベルまで(振幅又はデューティファクタのいずれかにおいて)ランプアップ(ramped up)されてよく、それにより、周囲の赤色及び/又はIR放射のレベルの突然の変化に感度のある近傍の人又はデバイスを妨害しないようにする。
【0102】
[0114] トロファパネル間の間隔がより広い場合、ターゲット照射平面全体にわたってより均一な照射強度を送達するために、NIR LEDのためのいわゆる「バットウィング」放射パターン光学部品を利用することが可能である。バットウィング放射パターン光学部品は、当該技術分野で周知であり、説明された効果を達成するためにNIRデバイスと結合され得る。
【0103】
[0115] 上述の計算された照射強度レベルは、直進のみ(シングルパス)のIR放射を表す。実際には、表面(例えば、壁、天井、机など)からの反射は、ピークIR照射レベルを高め、PBM効果効能を増加させるか、又はPBM効果を達成するために必要なパワーレベルを低減する働きをし得る。
【0104】
[0116]
図8aは、Alfaitouri et al. The Effect of Posture and Duration of Smartphone Usage on Neck Flexion Angle, Proceedings of the Human Factors and Ergonomics Society 2019, Annual meeting, 962-966 によって測定された、ハンドヘルドデバイスのための概略的な照射パターンを示す。
【0105】
[0117] 本発明の一態様によれば、制御回路120は、使用量に関する自動的に生成された信号に応答して、第1の電気光学素子EL1の調整を行う。この調整は、電気光学素子EL1のオフ切り替え、又は例えば放射レベルを低下させることによる抑制であり得る。
【0106】
[0118] 制御回路120は更に、PBM照射プログラムの意図しない再開による過剰曝露なしに、身体がPBM効果に好適に順応できるように、所定の蓄積オフ期間が8時間よりも長く、好ましくは12時間よりも長いことを確実にするようにプログラムされ得る。例えば、調整回路は、第1の光源から0.1~5mの平均距離をあけた1時間以上にわたる送達照射量が、0.01~50J/cm2、好ましくは0.1~10J/cm2となるように制御し得る。
【0107】
[0119] PBM照射量の観点からの本発明に関する安全性を制御するための使用量制御回路130に加えて、眼の安全性に注意することも重要である。IEC 62471、即ちランプ及びランプシステムの光生物学的安全性にしたがって、網膜の熱損傷から保護するために、光源の平均放射輝度は、網膜の熱危険限界L_IRを超えないように管理される。
【0108】
[0120] ハンドヘルドデバイスは、モバイル電話を含むが、例えば、タブレット、ゲームデバイス、AR/VRヘッドセット、ウォッチ、スマートグラスなどのモバイルスクリーンデバイスも含む、任意のモバイルデバイスであり得る。モバイルデバイスは、可視光を提供するのに好適な第2の電気光学素子EL2を備え得る。眼に対する視覚刺激が弱いか又は全くない条件下では、L_IRはかなり低い可能性がある。例えば、850nmのIRエミッタの場合及び光源の視覚に関する最悪の場合の仮定では、L_IRは60000W/m2/srである。控えめにみて、すべての放射がランバート放出パターンの上面から出るように1×1mm2パワーIR LEDチップを考える場合、LEDチップの光パワーが、60000×p×1E-6/(850nmではR(λ)=0.5)~0.38Wの平均パワーを超えると、L_IRを超える可能性がある。10%のデューティファクタの状況では、LED当たりのピークパワーは、好ましくは、3.8W未満に保たれる。
【0109】
[0121] 網膜の熱危険限界は、眼が、IR放射曝露と同時に、ほとんどの照明及び表示システム(典型的には100cd/m2以上を放出する)によって容易に満たされる10cd/m2を上回る視覚刺激を受ける場合に、かなり上昇する可能性がある。これらの条件下で、最悪の場合の仮定の下でのIEC 62471によるL_IR限界は、281171W/m2/srに増加する。
【0110】
[0122] 上記のように、控えめにみて、すべての放射がランバート放出パターンの上面から出るように1×1mm2パワーIR LEDチップを考える場合、LEDチップの光パワーが、281171×p×1E-6/(850nmではR(λ)=0.5)~1.77Wの平均パワーを超えると、L_IRを超える可能性がある。10%のデューティファクタの状況では、ピークパワーは、17.7W未満に保たれるべきである。網膜の熱危険限界は、10cd/m2を上回る視覚刺激がIR放射と共に存在するときにかなり高くなるので、視覚刺激を本発明の実施形態に含めることが好ましい。
【0111】
[0123] また、視覚刺激が存在しない場合、網膜の熱危険限界を超えないことを確実にするために、パワーを低減し、及び/又はIR放射源をオフにすることが好ましい場合がある。
【0112】
[0124] したがって、好ましい例示的な実施形態では、ユーザの眼に直接放射するデバイスには、好ましくは、目検出又は顔認識回路140(
図8bを参照)が設けられる。
【0113】
[0125] 人間の眼の赤外線放射危険曝露限界E_IRは、放射照度によって駆動される。IEC 62471によれば、限界は、780~3000nm内で10mW/cm2の平均放射照度である。10%のデューティファクタで動作するエミッタの場合、ピーク放射照度に関する限界は100mW/cm2である。
【0114】
[0126]
図2に関連して先に説明したように、使用量制御回路130は、ユーザの距離パラメータdを出力するようにプログラムされた近接検出ユニットを含んでよく、使用量に関する信号は、所定の推定照射量レベルを超えた場合に、出力された平均距離パラメータに基づいて生成される。特にモバイル電話の場合、使用量に関する信号は、例えば使用デバイス使用時間の履歴テーブルから導出され得る、電気光学デバイス100の1日当たりの推定使用時間にしたがって生成され得る。
【0115】
[0127] 制御回路130は更に、計算された曝露スケジュールをドライバ回路110に提供する照射量計算ユニットを備えてよく、所定の照射量を超えたときに使用量に関する信号が生成される。
【0116】
[0128] 第1の電気光学素子EL1は、第2の電気光学素子EL2が10cd/m2を上回る放射強度で放出しているときにのみ放出するように配置され得る。目検出回路140は、この趣旨で制御回路130に命令を提供してよく、これは、好適には、第2の電気光学素子EL2の放射レベルであり得る。これは、瞳孔反応を好適にトリガし、安全な状態で照射する手段を提供することができる。
【0117】
[0129] したがって、デバイス100は、ユーザが第1の電気光学素子EL1に(視覚的に)接触したことを検出し、それに応答して、第1の電気光学素子EL1の照射レベルを調整するために使用量に関する信号を生成するアクションを行うためのコントローラ130、140、120を備え得る。
【0118】
[0130]
図9a~
図9cは、電気光学デバイスがスマートフォン又はタブレットなどのハンドヘルドデバイスに組み込まれた実施形態を示す。
【0119】
[0131] そのようなハンドヘルドデバイスとユーザとの間の距離は予測可能であるので(例えば25cm又は30cm)、センサがなくても必要な放射強度を確実に達成することができる。第1の電気光学素子EL1によって放出される放射は、2×60度未満、好ましくは2×50度未満、より好ましくは2×25度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する放射がデバイスから放出されるように方向付けられ得る。有利なことに、第1の電気光学素子EL1は、
図9cに示す、顔認識センサ又は顔検出センサも含むデバイスのエリアに配置され得る。これにより、デバイスの照射量制御及び他の制御機能を更に改善することができる。
【0120】
[0132]
図10a~
図10bは、電気光学デバイスがラップトップコンピュータなどのコンピュータに組み込まれた実施形態を示す。この場合も、デバイスとユーザとの間の予測可能な距離により、所望の放射強度を確実に達成することが可能になる。第1の電気光学素子EL1は、コンピュータの任意の場所、例えば、スクリーンの上(例えば、
図10aを参照)、又はキーボード260の隣(例えば、
図10bを参照)に配置され得る。第1の電気光学素子によって放出される放射は、2×25度未満、好ましくは2×15度未満の半パワー全幅角を有する放射パターンを有する放射がデバイスから放出されるように方向付けられ得る。
【0121】
[0133]
図9A~
図9c及び
図10a、
図10bの実施形態では、電気光学素子EL1は、代替的に、例えば上述のマイクロLEDを使用して、ディスプレイに一体化されていてもよい。
【0122】
[0134]
図11aは、PBM放射を人に提供するための典型的な照射平面240を示す。図では、典型的な距離及び平面寸法は約30cmであるが、これは、用途(テレビスクリーン等)に依存して、10cm以上のオーダー、例えば50cm、又は更には5000cmであり得る範囲の例示にすぎない。照射平面240内の曝露エリアは、典型的には、顔の幅又は体の幅などの人間の横方向の寸法に制限され、典型的には50cmを超えなくてよい。
【0123】
[0135] 本発明のデバイス又は装置は、蓄積照射量を計算するために、クロック及び距離センサなどの照射量監視システムを含む。更に、デバイスは、「オン状態」を決定するために、近接センサ又は他のセンサ(例えば、顔検出)を含み得る。照射量監視は、デバイスが「オフ状態」も決定することができることを意味する。デバイスは、持続時間全体を通した精密な照射量制御及び均一なパワー分配のためのフィードバックループを提供するために、これら及び他のセンサ及びタイマを含み得る。
【0124】
[0136] 放射照度は距離に依存する。本発明の実施形態は、人間の眼のための安全機構としての働きをする制御部を含む。例えば、近接センサ又は顔認識システムは、本発明のシステムにおけるPBM放射源からのユーザの目の距離dを決定することができる。PBM光源パワーとユーザの目の距離との組み合わせにより、E_IRを超えることになる場合、PBM光源パワーは、下げられるか、又は更にはオフにされるべきである。
【0125】
[0137] 一例として、本発明者らは、市販のIR LEDであるLumileds部品番号L1IZ-A850000000000と共に機能するフレネルレンズシステムを設計した。LEDは、レンズの背面のキャビティに挿入され、フレネルレンズの上面と組み合わされた放物面の側面は、レンズの上部からLEDの底部までの全高が3mmになるようなコンパクトな設計で集束効果を提供する。このレンズは、(2×25度のビームへの)約50%のビーム効率を有し、1ワットの光パワーを放出する単一のIR LEDから30cmをあけて約1mW/cm2の放射照度を作り出すことができる。光源がcwで駆動される場合、ユーザの目がLEDから3cmの距離に迫るときに、放射の逆二乗則によれば、放射照度は30cmあけたときよりも100倍高くなる、即ち約100mW/cm2(E_IR限界)となる可能性があるので、LEDパワーを下げるか又はオフにしなければならない。
【0126】
[0138] 同じレンズ配置を考慮する別の例として、単一のLEDが10%のデューティファクタで、ただし5Wなどのより高いピーク光出力(0.5mW/cm2の平均放射照度を与える)で動作される場合、目がLED光源から2.12cmの距離に達したときにパワーを下げるべきである。
【0127】
[0139] 重なり合う放射パターンを有する複数のLEDである場合、すぐ上で説明されたものよりもデバイスから更に遠い距離をあけたところで、パワーを低減する必要があり得る。例えば、各々が10%のデューティファクタで5Wで動作する4つのLEDを含むタブレットは、LEDアレイを含む平面に対して8.5cmよりも近い距離をあけたところで100mW/cm2の放射照度を超える可能性がある。この場合、PBMタブレットデバイスは、E_IR限界を超えないように、ユーザの目がこの距離に接近したときに、LEDへのパワーを下げるか又はオフにするべきである。
【0128】
[0140] 本発明について、図面及び前述の説明において詳細に例示及び説明したが、そのような例示及び説明は、例示的又は実例的なものであって限定的なものではないとみなされるべきであり、本発明は、開示された実施形態に限定されるものではない。更に、当業者は、本明細書で使用されるテストという用語が、特定の物理的設計に限定されず、チップダイと相互接続し得るすべての種類の構造を包含することができることを理解する。
【0129】
[0141] 更に、本発明は、特定のタイプの用途に限定されず、例えば、自動車内装、航空機内装、産業用ライト、屋外ライト、住宅用ライト、商業用/建築用ライト、プロジェクタ(テーブルトップ&オーバーヘッド)、デスクトップモニタ、大型ディスプレイ(TV)、プロジェクタ(超小型かつ高ポータブル性)、公共輸送ディスプレイ、産業目的(例えば、加工目的(例えば、硬化)の(O)LEDベースのライト/照明、ウェアラブル、コンピュータアクセサリ、(テク)ガジェット、3相レールアクセサリ)などの用途で使用され得る。
【0130】
[0142] 第2の光は、白色光、即ち、色度空間におけるいわゆる黒体線に近い色度を有する、即ち、
図3に例示される範囲の波長のスペクトル組成からなる発光スペクトルを有する光が可能な光源であり得る。
【0131】
[0143] ANSI C78.377に定義されているように、白色光は、黒体線に沿い、かつu’v’色度空間における黒体線からの距離であるDuvに関してその+/-0.006以内の色度を含む。ANSI C78.377は、2200~6500Kの色温度についての白色を定義するが、第2の光は、この範囲外の色温度を提供し得る。第2の光は、u’v’色度空間における黒体線の周りの+/-0.0006のDuv限界でANSI C78.377によって指定された領域に近いがその外側の色度を有する光である、いわゆる着色白色光を作り出すこともできる。
【0132】
[0144] 第2の光は、テレビジョン、モニタ、ラップトップ、タブレット、ノートブック、又は電話デバイスなどのディスプレイからのものであり得る。第2の光は、好ましくは、1cd/m2よりも大きい、より好ましくは10cd/m2よりも大きい輝度で発光する。これらの輝度レベル以上において、瞳孔サイズの順応が作用し始め、これにより、PBMに使用される赤外線放射への曝露に対する眼の安全性の危険のリスクが低減する。人間の眼の完全に暗順応した瞳孔は、直径が約7mmである。1cd/m2の輝度を有する白色光源が存在すると、瞳孔は約5mmまで収縮する。10cd/m2では、直径約4mmに収縮する(Watson, A. B., & Yellott, J. I. (2012). A unified formula for light-adapted pupil size. Journal of Vision, 12(10) 12, 1-16)。
【0133】
[0145] スマートフォンユーザは典型的な姿勢を有し(
図8a)、電話と顔との間の距離dは周知であり、約30cmである。更に、人が毎日電話を使用して過ごす時間は周知である(典型的には、>3h)。この情報、並びに発明者らによって決定されたPBM照射強度及び照射量のターゲット範囲を使用して、スマートフォンに一体化されるための実用的なPBMデバイスを説明することができる。
【0134】
[0146] 上述したように、人は、非常に予測可能な方法でモバイル電話と対話する。更に、多くのモバイル電話は、人間がデバイスと対話する持続時間、いわゆる「スクリーンタイム」を監視するための機構を有する。近年のモバイル電話ユーザの平均スクリーンタイムは、典型的には1日当たり3時間である。
【0135】
[0147] 電話からユーザの顔までの距離d、及びスクリーンタイムの合計量を知ることにより、例えば、ユーザが自然の太陽放射にアクセスできない場合に、健康上の利益を提供するために、電話のユーザにとって意味のあるPBM照射量を計算することが可能になる。この実施形態では、PBMデバイスEL1は、ユーザに向かって面してモバイル電話に含まれる。PBMデバイスは、0.1mW/cm2よりも大きい、好ましくは0.4mW/cm2よりも大きい、より好ましくは1.0mW/cm2よりも大きい照射強度レベルでユーザの顔にIR放射を送達することが可能である。
【0136】
[0148] PBMデバイスは、電話によって監視される、ユーザの顔が電話と対話している時間中にIR放射を送達するが、ユーザが電話と対話していないときには、エネルギーを節約するためにオフにされ得る。
【0137】
[0149] 1日当たり3時間のスクリーンタイム及び1mW/cm2よりも大きい照射強度レベルという典型的な使用の場合では、達成される照射量は、PBMデバイスの連続波(cw)動作について10J/cm2よりも大きい。しかしながら、本発明者らによって決定されたように、1J/cm2程度の低い照射量が、プラスのPBM効果を有し得る。したがって、PBMデバイスは、パルスモードで10%のデューティファクタ(DF)で動作され、>1J/cm2、好ましくは>4J/cm2を送達し得る。
【0138】
[0150] 代替的に、当然ながらより高い強度が可能であるが、電話のバッテリ消耗という代償がある。ターゲット対象への過剰照射量投与のリスクもある。過剰照射量投与は、インビトロ研究、動物モデル、及び人間に対する局所治療についての科学文献に報告されており、波長に依存するものであるが、全身PBMについての具体的な数字は定義しにくいままである。
【0139】
[0151] モバイル電話は、PBMデバイスのオン時間を監視するための回路及び/又はセンサを含んでよく、電話をスタンバイモードにするソフトウェアセンサシステムと同様に、ターゲットPBM照射量レベルを達成した場合、又は電話のバッテリ節約が必要である場合に、PBMデバイスをシャットダウンすることができる。
【0140】
[0152] 標準的な慣例に沿って、当業者であれば、例えば許容範囲内の最小の非ゼロのパワー値に切り替えることによって送信をオフにすることができることを理解するであろう。本発明のコンテキストでは、「遮断する」及び「シャットダウンする」という用語は、例えば電気光学素子EL1による電磁放射がPBM反応をほとんど誘発することができないレベルの非ゼロの小さいパワー値もカバーするものとして同様に理解される。
【0141】
[0153] スマートフォンについての上記の詳細な例は、タブレット及び電子リーダーなどの用途に同様に適用される。本発明は、ラップトップコンピュータ、航空機及びバスの座席後部ディスプレイ、トレッドミル及びスピニングバイクなどのフィットネスデバイスのディスプレイ、及び同様のディスプレイなどの他のデバイスにも適用することができる。これらの用途では、スクリーンとユーザとの間の典型的な距離は約50cmである。この場合、PBM照射量要件を満たし、放射を効率的に送達するために、上記の例と比較してより狭いFAHP、例えば30度を有するLEDが必要になる。
【0142】
[0154] これが集束レンズの空間要件に起因して達成するのが困難である場合、別の選択肢は、LEDの数を増加させることである。例えば、上記の詳細な例で使用される4つの(1つではない)LEDを使用すると、これらの用途のために、同じスクリーンタイムで意味のあるPBM照射量を送達することができることになる。これらの場合、これらのデバイスではより大型のバッテリ及び/又は外部電源が利用可能であるため、スマートフォンと比較して、余分な電力要件はあまり関係しない。
【0143】
[0155] 同様の構成を、コンピュータキーボード内、又はビデオゲーム用の制御部内のPBMデバイスに用いることができ、動作中にPBM放射をユーザに向かって方向付けるための光学部品が含められる。また、この構成は、ハンドル若しくはダッシュボード、若しくは車の天井(又は飛行機の乗客の上)のドームにPBMデバイスを含めることによって車の運転者に適用されてもよいし、又はフィットネス機器のユーザに適用されてもよい。
【0144】
[0156] NIR光/PBMは、人間の眼に対するプラスの効果にも関係がある。視力にマイナスの効果を及ぼすと言われることも多いスマートフォンの使用と組み合わせると、これは新しいユニークなセールスポイントとなり得る。Boris T. Ivandic and Tomislav Ivandic.Photomedicine and Laser Surgery.Jun 2008.241-245、Goo H, Kim H, Ahn J, Cho KJ Effects of Low-level Light Therapy at 740 nm on Dry Eye Disease In Vivo. Medical Lasers 2019;8:50-58、Geneva, Ivayla I. Photobiomodulation for the treatment of retinal diseases: a review. International journal of ophthalmology vol. 9,1 145-52. 18 Jan. 2016.、を参照されたい。
【0145】
[0157] NIRデバイスは、直接見ると、依然として人間の眼にかすかに知覚可能である可能性がある。例えば、NIR LEDの発光面を見ると、薄暗い暗赤色の赤熱光が観察される場合がある。場合によっては、この外観は望ましくない場合がある。そのような場合、バンドパスフィルタ又はロングパスフィルタ材料が、エミッタと見る者との間に置かれ、例えば、スマートフォン、タブレット、ラップトップ、又は本発明によって使用可能な他のデバイスのうちのいずれかの筐体内に一体化され得る。これらの材料は、NIR放射の大部分を透過するが、例えば700nm未満、又は780nm未満の可視スペクトルの放射をブロックする。そのような材料は、今日市販されており、Tokai Optical Co., Ltd.からの製品のColor IR透過シート/White Color IR透過シートのファミリなどがある。NIRデバイスとユーザとの間に用いられると、そのような材料は、デバイスが、動作中に人間の眼に知覚可能な赤熱光を何ら示さないまま、その意図されたPBM効果を送達することができることをもたらす。
【0146】
[テレビジョンディスプレイ]
[0158] PBM一体化ディスプレイの概念を更に広げると、テレビジョン(TV)ディスプレイにPBMを含めることが考えられる。TVの平均視聴距離は、そのサイズに依存する。大まかな経験則は、スクリーン対角線の2倍の着座距離である。この経験則を使用して、以下の表に示すように、上述した意味のあるPBM効果(この場合、>1mW/cm
2のピーク照射強度)を送達するのに必要なLED又はVCSELデバイスの数を計算することができる。
【表1】
【0147】
[0159] 上記の表は、先に詳述したように、10%のデューティファクタのパルス動作についてのものである。デバイスのカウントは、特に、熱管理のための十分な空間があるより大型のディスプレイの場合に可能である、連続波(cw)モードでデバイスを動作させることによって低減することができる(最大10分の1)。代替的に、放射パターンを狭くすることにより、必要なデバイスの数を低減することもできるが、例えばPBM一体化TVが据え付けられたリビングルームの各着座エリアなど、用途におけるターゲットカバレッジエリアを達成するために、注意を払うべきである。
【0148】
[浴室環境]
[0160] PBMはまた、浴室の鏡又はシャワーなどの美容及びホームケア環境に含められ得る。上記の場合のように、ユーザの位置はかなりよく知られており、その近接が(例えば、近接検出器によって、又はシャワー水などの他のプロキシがオンにされることによって)検出され得る。しかしながら、これらの用途では、ディスプレイとは対照的に、ユーザがデバイスと対話する時間の量は短くなり得る。例えば、平均シャワー持続時間は、約8分であり、これは、典型的な毎日のスクリーンタイムよりもはるかに短い。
【0149】
[0161] シャワー用途の詳細な例では、LEDは、これもまた50度のFAHPを与える一体化レンズを含む、Luxeon IR Compact L1IZ-A850050000000などの市販のLEDであり得る。この場合、複数のLEDが必要となる。
【0150】
[0162] LEDは、シャワーヘッドの近くの固定具内に取り付けられてもよいし、又はシャワー室の天井のドーム固定具内に一体化されてもよい。電源及びドライバ回路が、PBM効果を達成するのに十分な駆動電流を供給するためにLEDに結合される。いくつかの実施形態では、LED光は、LED及び電子機器をシャワーエリアのすぐ外に置いておけるように、光ファイバ又はバンドルファイバ内に結合され、シャワー内に送達され得る。
【0151】
[0163] 持続時間が短いことに起因して、意図された照射量を達成するためにLEDをcwモードで駆動することが助けとなる。例えば、5つのLEDは、850nmで約1.8Wの連続放射出力を達成するために、各々が1.5Aの連続電流で駆動され得る。光学システム全体がこの一次放射の80%を収集すると仮定すると、送達される平均強度は、50cmの距離をあけて直径45cmのターゲットエリア内で、ビームのピークで約1.4W、即ち4.6mW/cm2となる。最小強度(放射パターンのエッジにおける、半強度角における)は、2.3mW/cm2となる。したがって、8分のシャワーでは、ユーザに対する送達照射量は、1.1~2.2J/cm2の範囲となる。LEDに送達されるパワーは、「オン」時間中、約24Wとなる。
【0152】
[0164] 「オン」時間は、LED制御電子機器と通信する近接センサを含めることによって、誰かがシャワー室にいる若しくは水流センサに結合されたときにのみオンにすることを可能にするか、シャワー水が流れているときにのみオンにすることを可能にするか、又は両方の条件が満たされるように制御され得る。
【0153】
[0165] 上記と同様の計算が、浴室又は着替え室の用途に適用され、例えば、LEDは、鏡の中に、鏡の後ろに、又は壁若しくは天井のライト照明器具の中に一体化され得る。近接センサが、人の存在を検出するためにエリア内に含められてよく、誰かがいるときにのみPBMデバイスがオンになることを可能にする。
【0154】
[0166] 照射量を監視することができるように、特定のセンサが、PBMデバイスからの対象の距離dを検出し得る。したがって、PBMデバイスは、有用であるときにのみオンであり、意味のある照射量のPBM効果を合理的な時間量で送達することを目標とし、もう必要でなくなったときに遮断されるように制御されて、過剰照射量投与状況を回避するがエネルギー節約もすることができる。
【0155】
[0167] 当然ながら、そのようなシステムは、家の任意の他のエリア、又は、スパ、ジム、職場、作業場などを含む、人間のための他の建築環境に設置され得る。
【0156】
[0168] 開示された実施形態に対する他の変形例が、図面、開示、及び添付の特許請求の範囲の参酌から、請求項に記載の発明を実施するにあたり当業者によって理解され得る。特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は複数を除外するものではない。単一のユニットが、特許請求の範囲に記載されたいくつかの項目の機能を果たし得る。単に特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているということだけでは、これらの手段の組合せを有利に使用できないことを示さない。特許請求の範囲におけるいずれの参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0157】
100…デバイス
110…ドライバ回路
120…制御回路
130…制御回路
135…タイマ
140…目検出回路/顔認識回路
150…近接センサがアクティブ化される
160…10cm<d<500cmであるかをチェックする
170…タイマを開始する
180…IR LEDをオフにし、タイマを一時停止する
190…t≧tdoseであるかをチェックする
200…LEDチップ
210…照明器具(例えば、2×4のトロファ照明器具)
220…放射パターン(例えば、2×45°)
230…LED及びレンズ
240…照射平面
250…カメラ
260…キーボード
270…マウスパッド
EL1…第1のEO素子
EL2…第2のEO素子
P1…公称着座肩平面
P2…公称起立肩平面
P3…床面
di…照明器具間距離(例えば、2.7m)
d…距離(例えば、30cm)
Z1…第1の垂直距離(例えば、1.7m)
Z2…第2の垂直距離(例えば、1.3m)
Z3…第3の垂直距離(例えば、2.7m)
【国際調査報告】