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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】遮蔽成分を含む複合体
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/62 20170101AFI20241108BHJP
   A61K 9/51 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 31/711 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 31/12 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 31/7105 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 9/14 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
   C07K 2/00 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 15/88 20060101ALI20241108BHJP
   C12N 15/113 20100101ALI20241108BHJP
   C12N 15/115 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
A61K47/62
A61K9/51
A61K31/711
A61K48/00
A61P35/00
A61P31/12
A61K31/7105
A61K9/14
A61P37/04
A61P43/00 105
C07K2/00 ZNA
C12N15/88 Z
C12N15/113 Z
C12N15/115 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531330
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 EP2022083118
(87)【国際公開番号】W WO2023094518
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21383069.8
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524026366
【氏名又は名称】ポリペプチド セラピューティック ソリューションズ,エス.エル.
(71)【出願人】
【識別番号】524196692
【氏名又は名称】ザ リージェンツ オブ ザ ユニバーシティ オブ カリフォルニア
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】デミング,ティモシー ジョン
(72)【発明者】
【氏名】レオン,カルレス フェリップ
(72)【発明者】
【氏名】ドルツ ペレス,イレーネ
(72)【発明者】
【氏名】エステバン ペレス,セルジオ
(72)【発明者】
【氏名】エレーラ ムニョス,リディア
(72)【発明者】
【氏名】ネボット カルダ,ヴィセント ジョゼップ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA29
4C076AA65
4C076AA95
4C076BB01
4C076BB11
4C076CC29
4C076EE41
4C084AA13
4C084MA23
4C084MA38
4C084MA41
4C084MA52
4C084MA55
4C084NA13
4C084ZB091
4C084ZB092
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZB331
4C084ZB332
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA16
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA05
4C086MA23
4C086MA38
4C086MA52
4C086MA55
4C086NA13
4C086ZB09
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045FA10
4H045FA20
(57)【要約】
本発明は、細胞への核酸を含む有効成分の送達のための非ウイルスベクターとして有用な、少なくとも1種のアニオン性ポリ(メチオニンスルホキシド)ベースのコポリマーを含む新規のポリマー複合体に関する。
【選択図】なし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)カチオン性ポリマー、薬学的に許容されるそれらの塩、または任意の立体異性体あるいは立体異性体、前記カチオン性ポリマー化合物のいずれかまたはその薬学的に許容されるの塩のいずれかの混合物を含む正に帯電したナノ粒子であって、前記カチオン性ポリマーは少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分に共有結合的または静電的に結合されている正に帯電したナノ粒子と、
b)以下:
i.部分構造Iを含むコポリマー、
ii.部分構造IIを含むコポリマー、および
iii.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択される少なくとも1種のアニオン性コポリマーと
を含み、
前記部分構造I、IIおよびIIIは、-A-B-(部分構造I)、-(B-A-B-(部分構造II)、-(A-B-A-(部分構造III)のように示され、
Aの各例は、メチオニンスルホキシド、エチオニンスルホキシド、S-アルキル-システインスルホキシド、S-アルキルシステインスルホン、S-アルキルホモシステイン、S-アルキルホモシステインスルホキシド、グリコシル化システイン、セリン、ホモセリン、ホモメチオニンスルホキシド、サルコシン、グリシンおよびアラニンから独立して選択されるアミノ酸残基であり、
前記Aアミノ酸残基の少なくとも50mol%はメチオニンスルホキシドであり、
Bの各例はグルタミン酸、アスパラギン酸およびそれらの塩から独立して選択され、
mは20~600の整数であり、
nは5~200の整数であり、
pは1~2の整数である、
ポリマー複合体。
【請求項2】
前記Aアミノ酸残基の60mol%~98mol%はメチオニンスルホキシドであり、かつ前記Aアミノ酸残基の残りはサルコシン、グリシンおよびアラニンから選択される、請求項1に記載のポリマー複合体。
【請求項3】
前記Aアミノ酸残基の100mol%はメチオニンスルホキシドである、請求項1に記載のポリマー複合体。
【請求項4】
mは25~300の整数であり、
nは8~150の整数である、
請求項1~3のいずれかに記載のポリマー複合体。
【請求項5】
mは25~180の整数であり、
nは10~100の整数である、
請求項1~4のいずれかに記載のポリマー複合体。
【請求項6】
少なくとも1種の細胞標的化剤、少なくとも1種の標識剤またはイメージング剤、あるいは少なくとも1種の細胞標的化剤+少なくとも1種の標識剤またはイメージング剤は、アミノ酸側残基すなわちCもしくはN末端基を介して、アミド、エステルまたは無水物結合またはリンカーを介して、前記カチオン性ポリマーまたは前記アニオン性コポリマーのポリペプチド骨格に共有結合的に結合されている、請求項1~5のいずれかに記載のポリマー複合体。
【請求項7】
前記正に帯電したナノ粒子はコア部分を形成しており、かつ前記アニオン性コポリマーはシェル部分を形成している、請求項1~6のいずれかに記載のポリマー複合体。
【請求項8】
前記少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分は、低分子量薬物、ペプチド、抗体、核酸、アプタマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~7のいずれかに記載のポリマー複合体。
【請求項9】
前記核酸は、DNA/RNAハイブリッド、低分子干渉RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、sgRNA、ドナーDNA、自己増幅/複製RNA、環状RNA(oRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、閉鎖型直鎖状DNA(lcDNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)およびアンチセンスRNA(aRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、CRISPRガイドRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマーおよびリボザイムからなる群から選択される、請求項1~8のいずれかに記載のポリマー複合体。
【請求項10】
生物学的標的への薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分の送達のための少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分に共有結合的または静電的に結合されたカチオン性ポリマーを含む正に帯電したナノ粒子のための遮蔽物としての、
i.部分構造Iを含むコポリマー、
ii.部分構造IIを含むコポリマー、および
iii.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択される少なくとも1種のアニオン性コポリマーの使用であって、
ここでは部分構造I、IIおよびIIIは請求項1に定義されているとおりである使用。
【請求項11】
1種以上の適当な許容される賦形剤と共に請求項1~9のいずれかに記載の少なくとも1種のポリマー複合体を含む医薬、獣医学もしくは化粧品組成物。
【請求項12】
生物学的標的に少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を送達する方法であって、
a)請求項1~9のいずれかに記載のポリマー複合体、または請求項11に記載の組成物を提供する工程と、
b)前記生物学的標的を前記ポリマー複合体または前記組成物と接触させる工程と
を含む方法。
【請求項13】
a)第1の液体中のカチオン性ポリマーを提供する工程と、
b)第2の液体中の少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を提供し、かつそれを
iv.部分構造Iを含むコポリマー、
v.部分構造IIを含むコポリマー、および
vi.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択されるアニオン性コポリマーと混合する工程と、
c)前記第1の液体中の前記カチオン性ポリマーを前記少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分および前記第2の液体中の前記アニオン性コポリマーと接触させて、遮蔽されたナノ粒子を形成する工程と
を含み、
ここでは前記部分構造I、IIおよびIIIは本明細書に定義されているとおりである、
ポリマー複合体の調製のための方法。
【請求項14】
医薬として使用するための請求項1~9のいずれかに記載のポリマー複合体または請求項11に記載の組成物。
【請求項15】
(i)少なくとも1種の活性薬剤を細胞にトランスフェクトするためのトランスフェクション試薬としての使用、(ii)ペプチドまたは抗体をコードするインビボもしくはエクスビボ治療における使用、(iii)ペプチド、抗体または組換え型ウイルスの産生における使用、(iv)ウイルス感染に対する治療もしくは予防用ワクチンまたは癌に対する治療用ワクチンとしての使用、および(v)ゲノム工学、細胞再プログラム化、細胞の識別または遺伝子編集における使用のための、請求項1~9のいずれかに記載のポリマー複合体または請求項11に記載の組成物。
【請求項16】
請求項1~9に記載のポリマー複合体または請求項11に記載の組成物を含む、少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を細胞の中に送達するための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年11月25日に出願された欧州特許出願第21383069.8号の利益を主張する。
【0002】
本開示は、メチオニンスルホキシドベースのブロックを含むアニオン性コポリマーである遮蔽成分を含む新規のポリマー複合体に関する。これらのポリマー複合体は、細胞への核酸などの有効成分の送達のための非ウイルスベクターとして使用することができる。
【背景技術】
【0003】
標的細胞への有効成分、より詳細には核酸を送達するための非ウイルス合成担体としてのカチオン性ポリマーの使用は、かなりの注目を集めている。従って、具体的にはポリアニオンとして機能する核酸とカチオン性ポリマー(ポリカチオン)との静電相互作用によって形成されるポリイオン複合体(PIC)には、ポリプレックス(polyplex)という名称が与えられ、先行技術において広く開示されている。しかし適用性および実験台から商品化への移行は課題のままである。
【0004】
ポリカチオンベースの非ウイルスベクターの開発が限られている主な理由の1つは、カチオン性ポリマーは送達プロセスの異なる段階で異なる機能を示すことが求められるという点にある。例えば、ナノ粒子のプロトン移動によるポテンシャルエネルギーの変化がエンドソーム緩衝および膜不安定化の原因となる可能性があるため、ポリマー担体はエンドソーム膜バリアを克服するために高いアミン密度および適当なpKaを有することが必要となる場合がある。それどころかナノ粒子の正帯電性は、血流中での凝集および負に帯電した血清成分との非特異的相互作用を引き起こし、それにより毛細血管において血栓を生じさせる場合がある。これは、原形質膜の構築を妨げるリスクならびに高い細胞毒性および過剰な免疫応答を誘導するリスクを有する。さらに、これらの正に帯電したナノ粒子は深刻な血清阻害を引き起こす場合があり、血液から迅速に排除され、これによりそれらのインビボでの適用が妨げられる。
【0005】
これらの問題を解決するための周知の試みは、ナノ粒子の表面をポリエチレングリコール(PEG)で覆うことによる中性電荷遮蔽物の導入である。ポリエチレングリコール(PEG)は、そのステルス性および生体適合性により薬物送達およびナノ技術において広く使用されている。これらの特性のおかげで、PEGを含む微粒子送達システムは凝集を回避し、免疫系を避け、かつ結果として体内で長期循環時間を有することができる。
【0006】
従って、ポリエチレングリコール(PEG)部分を有するポリカチオンが、核酸とブロックコポリマー中のポリカチオン部分との相互作用により核酸を縮合させてコア部分を形成し、かつブロックコポリマー中の親水性かつ生体適合性のPEG部分がそのコア部分を取り囲むシェルを形成する構造を有するポリプレックスが得られることも周知である。従って、PICは核酸を安定的にカプセル化することができ、かつインビボに存在する異物認識機構を回避することができる。
【0007】
しかし、共有結合的に結合されたPEGの存在により、ナノ粒子の中性の表面が細胞の取込み効率を低下させる可能性があるため、ポリプレックスの場合にトランスフェクション効率が著しく低下する可能性があったり、あるいはタンパク質の場合に活性部位の妨げられた空間により活性損失が引き起こされる場合もあったりする。PEGは、免疫原性、アレルギー反応およびアナフィラキシーショックを引き起こす場合がある抗PEG抗体を産生することも周知である。
【0008】
少なくとも2つのジブロック、トリブロックまたはペンタブロックコポリペプチドおよび水を含むポリイオン複合体ポリペプチドヒドロゲルが開示されている。従って、例えば国際公開第2019067676号は、各コポリペプチドが互いに反対の電荷を有するイオン性セグメントを有し、かつ両方のコポリペプチドがメチオニンスルホキシド(M)セグメントを含むヒドロゲルを開示している。特に国際公開第2019067676号は、(MA)、(MA)および水によって形成されるPICヒドロゲルについて記載している。
【0009】
ヒドロゲル系は、組織再生のためのバイオインクおよび小分子もしくはタンパク質制御放出適用のための注射用デポー剤/担体としての潜在用途を有する。ゲルは、少量の固体状のミクロ相分離した成分ネットワーク(ゲル化剤)がより大量の液体様の相のバルクフローを固定化させることができるコロイド状の物質である。このミクロ相分離は核形成によって誘導される。結果としてこの物質は、その流体力学的挙動において「固体様」になる。すなわち貯蔵(弾性)率(G’)は、線形粘弾性領域内で剪断周波数範囲にわたって損失(粘性)率(G’’)よりも大きくなる。
【0010】
従って当該分野で知られている状況から、先行技術の欠点を克服する他のポリカチオンベースの非ウイルスベクターを開発することがなお必要とされている。
【発明の概要】
【0011】
本発明者らは、メチオニンスルホキシドベースのブロックを含むいくつかのアニオン性コポリマーが、低い細胞毒性、高い効率、潜在的に適切な血漿半減期時間、潜在的に高い浸透性および保持、水溶液中での高い溶解性、血流における凝集問題が制限されるかさらには完全に抑制されることによる高い安定性ならびに潜在的に異なる細胞および組織向性により、タンパク質または有効成分(核酸を含む)を細胞に送達するために、正に帯電したタンパク質またはポリカチオンベースの非ウイルスベクターのための遮蔽物として有用であることを見出した。
【0012】
本発明の目的は、新規なポリカチオンベースの非ウイルスベクター、すなわちカチオン性ポリマーと、少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分と、メチオニンスルホキシドベースのブロックを含むアニオン性コポリマーである遮蔽成分とを含むポリマー複合体を提供することにある。
【0013】
従って、本発明の一態様によれば、
a)少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分に共有結合的または静電的に結合されたカチオン性ポリマーを含む正に帯電したナノ粒子と、
b)以下:
i.部分構造Iを含むコポリマー、
ii.部分構造IIを含むコポリマー、および
iii.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択される少なくとも1種のアニオン性コポリマーと
を含み、
ここでは部分構造I、IIおよびIIIは、-A-B-(部分構造I)、-(B-A-B-(部分構造II)、-(A-B-A-(部分構造III)のように示され、
Aの各例は、メチオニンスルホキシド、エチオニンスルホキシド、S-アルキル-システインスルホキシド、S-アルキルシステインスルホン、S-アルキルホモシステイン、S-アルキルホモシステインスルホキシド、グリコシル化システイン、セリン、ホモセリン、ホモメチオニンスルホキシド、サルコシン、グリシンおよびアラニンから独立して選択されるアミノ酸残基であり、
Aアミノ酸残基の少なくとも50mol%はメチオニンスルホキシドであり、
Bの各例は、グルタミン酸、アスパラギン酸およびそれらの塩から独立して選択され、
mは10~600の整数であり、
nは5~200の整数であり、
pは1~2の整数である、
ポリマー複合体が提供される。
【0014】
本発明の目的は、カチオン性に帯電したタンパク質と、メチオニンスルホキシドベースのブロックを含むアニオン性コポリマーである遮蔽成分とを含む新規なタンパク質ベースの複合体を提供することにもある。
【0015】
従って、本発明の一態様によれば、
a)カチオン性に帯電したタンパク質と、
b)以下:
i.部分構造Iを含むコポリマー、
ii.部分構造IIを含むコポリマー、および
iii.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択される少なくとも1種のアニオン性コポリマーと
を含み、
ここでは部分構造I、IIおよびIIIは本明細書に定義されているとおりである、
タンパク質ベースの複合体が提供される。
【0016】
本発明の別の態様によれば、
生物学的標的へのタンパク質あるいは薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分の送達のための少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分に共有結合的または静電的に結合されたカチオン性ポリマーを含む正に帯電したタンパク質または正に帯電したナノ粒子のための遮蔽物としての、
i.部分構造Iを含むコポリマー、
ii.部分構造IIを含むコポリマー、および
iii.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択される少なくとも1種のアニオン性コポリマーの使用であって、
ここでは部分構造I、IIおよびIIIは本明細書に定義されているとおりである使用が提供される。
【0017】
本発明のさらなる態様は、1種以上の適当な許容される賦形剤と共に、本明細書に定義されている少なくとも1種のポリマー複合体または少なくとも1種のタンパク質ベースの複合体を含む医薬、獣医学もしくは化粧品組成物に関する。
【0018】
本発明のさらなる態様では、
a)本明細書に記載されているポリマー複合体、タンパク質ベースの複合体または組成物を提供する工程と、
b)生物学的標的を本ポリマー複合体、本タンパク質ベースの複合体または本組成物と接触させる工程と
を含む、少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を生物学的標的に送達する方法が提供される。
【0019】
この態様は、本明細書に定義されているポリマー複合体、タンパク質ベースの複合体または組成物を標的細胞に導入し得るように、本ポリマー複合体、本タンパク質ベースの複合体または本組成物を含有する溶液をヒトを含む動物に投与する工程と、本ポリマー複合体、本タンパク質ベースの複合体または本組成物をエンドソームから細胞質に移動させる工程と、細胞内で本ポリマー複合体、本タンパク質ベースの複合体または本組成物を解離させる工程と、有効成分を細胞質の中に放出する工程とを含む、少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を標的細胞に送達するための方法として言及する場合もある。
【0020】
本発明のさらなる態様では、
a)第1の液体中のカチオン性ポリマーを提供する工程と、
b)第2の液体中の少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を提供する工程と、
c)第1の液体中のカチオン性ポリマーを第2の液体中の少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分と接触させて正に帯電したナノ粒子を形成する工程と、
d)以下:
i.部分構造Iを含むコポリマー、
ii.部分構造IIを含むコポリマー、および
iii.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択されるアニオン性コポリマーを提供する工程と、
e)正に帯電したナノ粒子をアニオン性コポリマーと接触させてポリマー複合体を形成する工程と
を含み、
ここでは部分構造I、IIおよびIIIは本明細書に定義されているとおりである、
ポリマー複合体の調製のための方法が提供される。
【0021】
あるいは、
a)第1の液体中のカチオン性ポリマーを提供する工程と、
b)第2の液体中の少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を提供し、かつそれを
i.部分構造Iを含むコポリマー、
ii.部分構造IIを含むコポリマー、および
iii.部分構造IIIを含むコポリマー
から選択されるアニオン性コポリマーと混合する工程と、
c)第1の液体中のカチオン性ポリマーを少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分および第2の液体中のアニオン性コポリマーと接触させて遮蔽されたナノ粒子を形成する工程と
を含み、
ここでは部分構造I、IIおよびIIIは本明細書に定義されているとおりである、
ポリマー複合体の調製のための方法が提供される。
【0022】
本発明の一態様では、医薬として使用するための本明細書に定義されているポリマー複合体、タンパク質ベースの複合体または組成物が提供される。
【0023】
本発明の一態様では、(i)少なくとも1種の活性薬剤を細胞にトランスフェクトするためのトランスフェクション試薬として使用、(ii)組換えタンパク質、ペプチドまたは抗体をコードするインビボもしくはエクスビボ治療における使用、iii)ペプチド、タンパク質、抗体または組換え型ウイルスの産生における使用、(iv)ウイルス感染に対する治療もしくは予防用ワクチンまたは癌に対する治療用ワクチンとしての使用、および(v)細胞再プログラム化、細胞の識別、または遺伝子編集のためのゲノム工学における使用のための、本明細書に定義されているポリマー複合体、タンパク質ベースの複合体または組成物が提供される。
【0024】
本発明の別の態様では、タンパク質ベースの治療に使用するためのタンパク質ベースの複合体またはそれを含有する組成物が提供される。
【0025】
本発明のさらなる態様では、本ポリマー複合体またはそれを含有する組成物を含む、少なくとも1種の薬学的、獣医学的または化粧品的に活性な成分を細胞の中に送達するための装置が提供される。
【0026】
以下では、添付の図面を参照しながら本開示の非限定的な例について説明する。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】遮蔽された複合体:A)遺伝物質、ポリカチオンおよび遮蔽用ブロックアニオン性コポリマーによって形成された三成分複合体、B)タンパク質および遮蔽用ブロックポリアニオン性コポリマーの組立体の形成の概略図を示す。
【0028】
図2】アガロースゲル電気泳動技術によって分析した遮蔽用ポリマーV1を含むポリプレックスPXN1_8_V1_1 pDNAおよびPXN1_8_V1_0.5 pDNA(上)ならびにPXN1_15_V1_1 pDNAおよびPXN1_15_V1_0.5 pDNA(下)の結果を示す。この技術は定性的方法で、遺伝物質(DNA)に対するポリプレックスの複合体形成の能力を示す。またそれは、低および高濃度のポリアニオン性競合剤(ヘパリン)の存在下で低および高濃度において遺伝物質を放出する能力を示す。Mと標識されているレーンには、遊離pDNAが添加されている。図に示すように、遊離遺伝物質はUVトランスイルミネーター下で光っている。レーン1および4(上の図)ならびに4および7(下の図)には、ポリプレックスが添加されており、ポリカチオンが存在し、かつポリプレックスが形成されている場合に遺伝物質が封入されており、かつシグナルを観察することができないことが分かる。レーン2および5(上の図)ならびに5および8(下の図)には、低濃度のヘパリン競合物質の存在下でポリプレックスが添加されており、それらの条件下では放出を示していない。レーン3および6(上の図)ならびに6および9(下の図)には、高濃度のアニオン性ヘパリン競合物質と共にポリプレックスが添加されており、この場合、遺伝物質の放出が観察される。ポリプレックスは細胞外では低濃度の競合分子において安定でなければならないが、細胞内刺激が加えれた場合に積荷を放出するのに十分な程に不安定でなければならないため、この挙動は理想的なものである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当該技術分野で知られているそれらの通常の意味で理解されるものとする。本出願において使用されている特定の用語のための他のより具体的な定義が以下に記載されており、明示的に定められている定義がより広い定義を与えない限り、それらは本明細書および特許請求の範囲全体を通して一様に適用されることが意図されている。
【0030】
本明細書で使用される不定冠詞の「1つ(種)の(a)」および「1つ(種)の(an)」は、「少なくとも1つ(種)の」または「1つ(種)以上の」と同義である。特に明記しない限り、「その(前記)(the)」などの本明細書で使用される定冠詞は複数形の名詞も含む。
【0031】
「置換された」という用語は、既存の環境下で指定された原子の通常の原子価を超えないという条件で、指定された原子もしくは基上の1つ以上の水素原子が指示されている基から選択されたもので置換されているということを意味する。置換基および/または変数の組み合わせは許容される。「任意に置換された」という用語は、置換基の数はゼロに等しくてもゼロとは異なってもよいということを意味する。特に明記しない限り、任意に置換される基は、水素原子を任意の利用可能な炭素もしくは窒素原子上の非水素置換基で置換することによって受け入れられ得るのと同程度に多くの任意の置換基で置換することが可能である。本発明に係る化合物中の基は1つ、2つ、3つ、4つまたは5つの同一もしくは異なる置換基、特に1つ、2つまたは3つの置換基で置換することが可能である。
【0032】
本明細書で使用される「天然アミノ酸」という語句は、タンパク質において天然に生じる20種のアミノ酸のいずれかを指す。そのような天然アミノ酸としては、非極性すなわち疎水性アミノ酸、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、トリプトファンおよびプロリンが挙げられる。システインは、非極性すなわち疎水性であるが時として極性として分類される場合がある。天然アミノ酸としては、チロシン、セリン、トレオニン、アスパラギン酸(aspartic acid)(帯電している場合にはアスパラギン酸(aspartate)としても知られている)、グルタミン酸(glutamic acid)(帯電している場合にはグルタミン酸(glutamate)としても知られている)、アスパラギンおよびグルタミンなどの極性すなわち親水性アミノ酸も挙げられる。特定の極性すなわち親水性アミノ酸は環境のpHに応じて帯電している側鎖を有する。そのような荷電アミノ酸としては、リジン、アルギニンおよびヒスチジンが挙げられる。当業者であれば極性すなわち親水性アミノ酸側鎖の保護によりアミノ酸を非極性にすることができることを認識しているであろう。例えば、好適に保護されたチロシンヒドロキシル基は、ヒドロキシル基を保護することによりチロシを非極性および疎水性にすることができる。
【0033】
本明細書で使用される「非天然アミノ」という語句は、上に記載されているタンパク質において天然に生じる20種のアミノ酸の一覧に含まれていないアミノ酸を指す。そのようなアミノ酸としては、19種の天然に生じるアミノ酸のいずれかのD-異性体が挙げられ、グリシンはアキラルである。非天然アミノ酸としてはホモセリンおよびオルニチンも挙げられる。他の非天然アミノ酸側鎖が当業者に周知であり、非天然脂肪族側鎖を含む。他の非天然アミノ酸としては、N-アルキル化、環化、リン酸化、アセチル化、アミド化、アジジル化(azidylated)および標識化されているものなどを含む、修飾されたアミノ酸が挙げられる。
【0034】
本明細書で使用される「繰り返し単位」または「ブロック」という用語は繰り返しモノマー単位を指す。繰り返し単位またはブロックは単一のモノマーからなっていてもよく、あるいは「混合ブロック」において生じる1種以上のモノマーからなっていてもよい。
【0035】
当業者であれば、モノマー繰り返し単位は、繰り返しモノマー単位の周囲に示されている角括弧([])によって定められていることを認識するであろう。括弧の右下にある数(または数値範囲を表す文字)は、ポリマー鎖中に存在するモノマー単位の数を表す。
【0036】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたいくつかの実施形態によれば、部分構造I、IIまたはIIIを含む少なくとも1種のアニオン性コポリマーは、タンパク質の上にあるかその間に介在している遮蔽層として機能する正に帯電したタンパク質と静電的に相互作用する。
【0037】
本発明に係る遮蔽用ポリマーのために本明細書で使用される命名法を考慮して、括弧内に言及されている数値は統計学的数として各モノマー単位の重合度(DP)を指すことに留意されたい。特定のモノマー単位のDPは、ポリマーの分子量をモノマー単位の分子量で割ることにより計算する。DP値は開環重合機構が原因で合理的な不確かさを伴い、これは本発明の文脈では±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、さらにより好ましくは±5%、特に好ましくは±2%範囲内であるとみなしてもよい。
【0038】
その少なくとも1種のアニオン性コポリマーは、部分構造Iを含むコポリマー、部分構造IIを含むコポリマーおよび部分構造IIIを含むコポリマーから選択され、部分構造I、IIおよびIIIは上に示されている。
【0039】
部分構造I、IIおよびIIIのコポリマーにおいて、mは10~600の整数である。任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、mは10~400、より詳細には15~300、さらにより詳細には20~200、さらにより詳細には25~180の整数である。他の特定の範囲は、40~380、50~350、75~300、90~250および100~200である。整数mはAアミノ酸残基の重合度に対応しており、これは実施例に示されているように、SECまたは1H-NMR分光法によって測定することができる。
【0040】
部分構造I、IIおよびIIIのコポリマーにおいて、nは5~200の整数である。任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、nは8~150、より詳細には10~120、さらにより詳細には10~110、さらにより詳細には10~100の整数である。他の特定の範囲は、5~190、6~180、7~170、12~120および15~80である。整数nはBアミノ酸残基の重合度に対応しており、これは実施例に示されているように、SECまたは1H-NMR分光法によって測定することができる。
【0041】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態では、本明細書に定義されている部分構造I、IIおよびIIIのコポリマーにおけるm:n比は、1:1~120:1、好ましくは2:1~60:1、より好ましくは4:1~20:1、さらにより好ましくは5:1~10:1の範囲である。
【0042】
部分構造I、IIおよびIIIのコポリマーにおいて、Aの各例は、メチオニンスルホキシド、エチオニンスルホキシド、S-アルキル-システインスルホキシド、S-アルキルシステインスルホン、S-アルキルホモシステイン、S-アルキルホモシステインスルホキシド、グリコシル化システイン、セリン、ホモセリン、ホモメチオニンスルホキシド、サルコシン、グリシンおよびアラニンから独立して選択されるアミノ酸残基であり、ここではAアミノ酸残基の少なくとも50mol%はメチオニンスルホキシドである。
【0043】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、Aの各例について、Aアミノ酸残基の100mol%はメチオニンスルホキシドである。
【0044】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、Aの各例について、Aアミノ酸残基の少なくとも50mol%はメチオニンスルホキシドであり、より詳細にはAアミノ酸残基の60mol%~98mol%、さらにより詳細には75mol%~95mol%、さらにより詳細には80mol%~90mol%はメチオニンスルホキシドである。
【0045】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、Aの各例について、Aアミノ酸残基の50mol%~98mol%はメチオニンスルホキシドであり、かつ残りのアミノ酸残基は独立してサルコシン、グリシンおよびアラニンから選択され、より詳細にはAアミノ酸残基の60mol%~98mol%はメチオニンスルホキシドであり、かつ残りのAアミノ酸残基は独立してサルコシン、グリシンおよびアラニンから選択され、さらにより詳細にはAアミノ酸残基の75mol%~95mol%はメチオニンスルホキシドであり、かつ残りのAアミノ酸残基は独立してサルコシン、グリシンおよびアラニンから選択される。
【0046】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、Bの各例はグルタミン酸である。
【0047】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、少なくとも1種のアニオン性コポリマーは、
(1)ポリ((L-メチオニンスルホキシド)138-stat-(L-アラニン)19-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)65、(M)138A19E65、
(2)ポリ((L-メチオニンスルホキシド)167-stat-(L-アラニン)25-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)82、(M)167A25E82、
(3)ポリ((L-メチオニンスルホキシド)154-stat-(L-アラニン)25-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)84、(M)154A25E84、
(4)ポリ((L-メチオニンスルホキシド)139-stat-(L-アラニン)20-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)98、(M)139A20E98、
(5)ポリ((L-メチオニンスルホキシド)167-stat-(L-アラニン)25-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)80、(M)167A25E80、
(6)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)155-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)30、(MA)155E30、
(7)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)155-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)60、(MA)155E60、
(8)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)155-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)65、(MA)155E65、
(9)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)155-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)90、(MA)155E90、
(10)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)155-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)120、(MA)155E120、
(11)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)100-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)30、(MA)100E30、
(12)ポリ(L-メチオニンスルホキシド)155-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)60、(M)155E60、
(13)ポリ(L-メチオニンスルホキシド)60-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)10、(M)60E10、
(14)ポリ(L-メチオニンスルホキシド)60-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)20、(M)60E20、
(15)ポリ(L-メチオニンスルホキシド)60-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)30、(M)60E30、
(16)ポリ(L-メチオニンスルホキシド)60-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)40、(M)60E40、
(17)ポリ(L-メチオニンスルホキシド)60-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)60、(M)60E60、
(18)ポリ(L-メチオニンスルホキシド)60-ブロック-(ラセミ)ポリ(L-グルタミン酸)60、(M)60(ラセミ-E)60、
(19)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)50-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)30-ブロック-ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)50、(MA)50E30(MA)50、
(20)ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)50-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)30-ブロック-ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)100-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)30-ブロック-ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)50、(MA)50E30(MA)100E30(MA)50、
(21)ポリ(L-グルタミン酸)30-ブロック-ポリ(L-メチオニンスルホキシド0.88-stat-L-アラニン0.12)100-ブロック-ポリ(L-グルタミン酸)30、E30(MOA)100E30
から選択される骨格を含む。
【0048】
部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーは、繰り返し単位としてメチオニンスルホキシドベースの部分を含むポリマー構造である。これらのポリマーは、分子量(平均分子量(MW)または数平均分子量(Mn)であってもよい)、重合度および多分散性指数を特徴とする。分子量は、例えばサイズ排除クロマトグラフィ(SEC)(ゲル浸透クロマトグラフィ(GPC)ともいう)、マトリックス支援レーザー脱着イオン化飛行時間型質量分析(MALDI-TOF MS)または1H-NMR分光法などの当該技術分野において周知の方法によって測定してもよい。これらの方法のいくつかは、以下の実施例により詳細に示されている。
【0049】
「多分散性指数」(PDI)という用語は、分子量分布の広さの尺度として使用される。PDIが大きくなる程、分子量がより広くなる。ポリマーのPDIは、重量平均(MW)/数平均(Mn)分子量の比として計算する。
【0050】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態によれば、実施例に開示されているSECによって測定される部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーの平均分子量(Mw)は、2000~50000Da、より詳細には5000~40000Da、さらにより詳細には10000~35000Daまたは20000~30000Daである。
【0051】
任意に上または下に記載されている様々な実施形態の1つ以上の特徴と組み合わせた別の実施形態では、実施例に開示されているSECによって測定される部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーの多分散性指数は、1.01~2.00、または1.01~1.8、または1.01~1.50、または1.01~1.30、または1.01~1.25である。
【0052】
本発明のポリマー複合体はナノ粒子であってもよく、ここでの有効成分、好ましくは核酸は正に帯電したナノ粒子を形成しているカチオン性ポリマーと相互作用してコア部分を形成し、アニオン性コポリマーは上記コア部分の周囲にシェル部分を形成する(図1Aを参照)。
【0053】
正に帯電したナノ粒子は、例えば有効成分とカチオン性ポリマーとを混合することにより任意の所与の緩衝液中で容易に調製することができる。水性媒体、pH、温度およびイオン強度などの調製のための条件は、当業者によって適当に調整することができる。
【0054】
本明細書で使用される「ナノ粒子」という用語は、少なくとも2つの寸法がナノスケールであり、特に3つの寸法全てがナノスケールである粒子を指す。特にナノ粒子は、ナノワイヤまたはナノチューブなどの実質的に円形の断面を有する実質的に棒状であり、「ナノ粒子」は少なくとも2つの寸法がナノスケールである粒子を指し、この2つの寸法はナノ粒子の断面である。
【0055】
本明細書で使用される「サイズ」という用語は、特徴的な物理的寸法を指す。例えば実質的に球状のナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズはナノ粒子の直径に対応している。ナノワイヤまたはナノチューブなどの実質的に円形の断面を有する実質的に棒状のナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズはナノ粒子の断面の直径に対応している。ナノキューブ、ナノボックスまたはナノケージなどの実質的に箱状のナノ粒子の場合、ナノ粒子のサイズは最大辺長さに対応している。特定のサイズを有するものとしてナノ粒子の集合に言及する場合、ナノ粒子の集合はおよそ指定されたサイズのサイズ分布を有し得ると考えられる。従って本明細書で使用されるナノ粒子の集合のサイズは、サイズ分布のピークサイズなどのサイズ分布モードを指すことができる。
【0056】
部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーは、幾何異性体(すなわちシス-トランス異性体)、光学異性体、またはジアステレオマーなどの立体異性体ならびに互変異性体として存在してもよい。従ってそれらの定義は、シス-トランス異性体、立体異性体および互変異性体ならびにこれらのラセミ混合物およびそれらの薬学的に許容される塩を含む、各および全ての個々の異性体を含むことを理解すべきである。故にカチオン性ポリマーならびに部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーの定義は、例えば可能な異性体の1つおよび対応するより小さい比の他の異性体の濃縮(すなわち、鏡像体過剰率またはジアステレオマー過剰率)を含む、任意の比の化学構造の全てのRおよびS異性体も包含することを意図している。アミノ酸の特定の事例では、それらはL体またはD体であってもよい。
【0057】
部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーは、特にそれらの薬学的に許容される塩を含む目的の投与に適した任意の形態で提供されてもよい。
【0058】
薬学的に許容される塩は、カチオン性ポリマーまたは部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーの両方の塩を指し、これらは臨床、獣医学および/または化粧用途のために許容されるものとみなされる。典型的な薬学的に許容される塩としては、カチオン性ポリマーまたは部分構造I、IIおよびIIIを含むアニオン性コポリマーの反応によって調製されるそれらの塩、および無機もしくは有機酸または有機もしくは無機塩基が挙げられる。そのような塩はそれぞれ、酸付加塩および塩基付加塩として知られている。当該塩が全体として薬学的に許容され、かつ対イオンが全体として塩に望ましくない品質を与えない限り、任意の塩の一部を形成している特定の対イオンまたは複数の対イオンは重要な性質ではないことが認識されるであろう。これらの塩は当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0059】
薬学的に許容される付加塩の例としては、無機酸、例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、ヨウ化水素酸、メタリン酸またはリン酸ならびに有機酸、例えばコハク酸、マレイン酸、酢酸、フマル酸、クエン酸、酒石酸、安息香酸、トリフルオロ酢酸、リンゴ酸、乳酸、ギ酸、プロピオン酸、グリコール酸、グルコン酸、カンファー硫酸、イセチオン酸、粘液酸、ゲンチジン酸、イソニコチン酸、糖酸、グルクロン酸、フロン酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、アントラニル酸、サリチル酸、フェニル酢酸、マンデル酸、エンボン酸(パモ酸)、エタンスルホン酸、パントテン酸、ステアリン酸、スルファニル酸、アルギン酸、ガラクツロン酸およびアリールスルホン酸、例えばベンゼンスルホン酸、p-トルエンスルホン酸、シュウ酸、メタンスルホン酸またはナフタレンスルホン酸と共に形成される酸付加塩ならびにアルカリ金属およびアルカリ土類金属、N,N-ジベンジルエチレンジアミン、クロロプロカイン、コリン、ジエタノールアミン、エチレンジアミン、メグルミン(N-メチルグルカミン)、リジンおよびプロカインなどの有機塩基と共に形成される塩基付加塩ならびに内部形成塩が挙げられる。
【0060】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、本ポリマー複合体は4~9の範囲のpH、好ましくは4.5~8.5、より好ましくは5~7.5、特に好ましくは6.5~7.4の範囲のpHにおいて水性媒体中で混合した場合に得られる。pHは溶媒として緩衝液を用いて容易に調整することができる。
【0061】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、混合される溶液のイオン強度は、ナノ粒子の構造を破壊しない範囲またはナノ粒子内にカプセル化される物質のカプセル化を阻害しない範囲に適宜調整してもよく、それは好ましくは0~1000mM、好ましくは0~300mM、より好ましくは0~150mM、特に好ましくは0~50mMの範囲内である。
【0062】
本ポリマー複合体は、動的光散乱によって測定した場合に10nm~2000nm、好ましくは20nm~800nm、より好ましくは25nm~350nm、30nm~300nmおよび30nm~200nmの範囲の粒子流体力学的直径を有していてもよい。
【0063】
本タンパク質ベースの複合体は、動的光散乱によって測定した場合に2nm~2000nm、好ましくは5nm~1000nm、より好ましくは10nm~800nm、15nm~700nmおよび20nm~600nmの範囲の粒子流体力学的直径を有していてもよい。
【0064】
本開示の文脈において「ポリプレックス」という用語は、本明細書に記載されているカチオン性ポリマーと少なくとも1種のポリアニオン性遺伝物質(好ましくは核酸)との静電相互作用によって形成されるポリマー複合体を指す。本開示の文脈において「安定化されたポリプレックス」または「遮蔽されたポリプレックス」という用語は、本明細書に記載されているカチオン性ポリマーとアニオン性遮蔽用ポリマーと少なくとも1種のポリアニオン性遺伝物質(好ましくは核酸)との静電相互作用によって形成されるポリマー複合体を指す。
【0065】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態によれば、[ブロックコポリマー中のカチオン基の総数(N)]/[核酸中のリン酸基の総数(P)]として定義される本開示のポリプレックスにおけるN/P比は、1~100、好ましくは2~50、より好ましくは2~30の範囲である。N/P比は、カチオン性ポリマーの側鎖由来のプロトン化可能なアミノ基のモル濃度(N)と混合溶液中の核酸由来のリン酸基のモル濃度(P)との比を意味する。
【0066】
カチオン性ポリマーの例としては、ポリ-L-リジン(PLL)、ポリ-L-オルニチン(PLO)、ポリ-L-ヒスチジン、ポリアミドアミン、ポリアルギニン、ポリ[2-{(2-アミノエチル)アミノ-エチル-アスパルトアミド](pAsp(DET))、ポリ(ジメチルアミノエチルメタクリレート)(pDMAEMA)、ポリエチレンイミン(PEI)、キトサン、ポリ(β-アミノエステル)、カチオン性もしくはカチオンにイオン化された脂質または脂質様物質、ならびにポリエチレングリコールとポリアルギニンのブロックコポリマー、ポリエチレングリコールとポリリジンのブロックコポリマー、ポリエチレングリコールとポリ[2-{(2-アミノエチル)アミノ}-エチル-アスパルトアミド](PEG-pAsp(DET))のブロックコポリマー、およびカチオン性ポリマーが少なくとも1種のアニオン性有効成分と複合体を形成することができ、かつ次いでこの複合体が本発明に定義されている式I、IIまたはIIIの部分構造を含む少なくとも1種の遮蔽用アニオン性コポリマーとポリマー複合体を形成することができる限り任意の他の適当なカチオン性ポリマーなどの、ポリアミノ酸をベースとするブロック、ランダムまたはグラフトのポリカチオン性の組み合わせが挙げられる。
【0067】
適当な表面官能性を用いて、細胞を能動的に標的化し、かつ細胞侵入を助けることができる細胞標的化基および/または浸透促進剤で本開示の化合物をさらに修飾し、それにより向上した細胞特異的送達を有する複合体を得てもよい。任意に本開示の化合物は、可視化および/または検出を容易にする標識剤またはイメージング剤でさらに修飾してもよい。
【0068】
従って、任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、少なくとも1種の細胞標的化剤、少なくとも1種の標識剤またはイメージング剤、または少なくとも1種の細胞標的化剤+少なくとも1種の標識剤またはイメージング剤は、アミノ酸側残基すなわちCもしくはN末端基を介して、アミド、エステル、無水物結合を介して、あるいは限定されるものではないが、アルキン、アジド、反応性ジスルフィド、マレイミド、ヒドラジド、ヒドラゾン、シッフ塩基、アセタール、アルデヒド、カルバメートおよび反応性エステルを含む1つ以上の官能基を含むリンカーを介して、カチオン性ポリマーまたはアニオン性コポリマーのポリペプチド骨格に共有結合的に結合されている。
【0069】
「細胞標的化剤」という用語は、例えば特異的細胞型において発現または過剰発現される受容体に選択的に結合するという理由から、官能化ナノ粒子を治療処置のために標的部位に向かって方向づけることによりそれらを方向づけることができる、ヒトもしくは動物の体内に存在する分子に対して親和性を示す任意の生物学的もしくは化学的構造を指す。従ってこの用語は、特異的抗原に対する抗体、その受容体に対する葉酸などの特異的受容体または抗原のためのリガンドあるいはその肝臓受容体に対するガラクトースなどの糖を含む。標的化剤は、Aおよび/またはA’部分を介してアニオン性ポリマーの官能化末端基に結合させてもよく、あるいはカチオン性ポリマーに結合させてもよい。
【0070】
細胞標的化基は当該技術分野において周知である。標的化剤の例としては、限定されるものではないが、モノクローナルおよびポリクローナル抗体(例えばIgG、IgA、IgM、IgD、IgE抗体)、断片抗体、ナノボディ、糖(例えばマンノース、マンノース-6-リン酸、ガラクトース、ガラクトサミン、マンノサミン)、タンパク質(例えばトランスフェリン)、オリゴペプチド(例えば、環状および非環状RGD含有オリゴペプチド)、オリゴヌクレオチド(例えばアプタマー)、ビタミン(例えば葉酸)、Her-2結合ペプチド、TLRアゴニスト、β-D-グルコース、Asn-Gly-Argペプチド、angiopep-2、アプタマー(A-9、A10、抗gp120、TTA1、sgc8、抗MUC-1、AS1411)、プリマキン、ジドブジン、スーパーオキシドディスムターゼ、プレドニソロン、白金、シスプラチン、スルファメトキサゾール、アモキシシリン、エトポシド、メサラジン、ドキソルビシン、パクリタキセル、5-アミノサリチル酸、デノスマブ、ドセタキセル、カルシトニン、プロアントシアニジン、メトトレキサート、カンプトテシン、ガラクトース、グリチルレチン酸、ラクトース、ヒアルロン酸、オクトレオチド、ラクトビオン酸、β-ガラクトシル部分、アラビノガラクタン、キトサン、アゾ系ポリホスファゼン、アゾ基および4-アミノ-ベンジル-カルバメート、スクシネート、4,4’-ジヒドロキシアゾベンゼン-3-カルボン酸、環状RGDペンタペプチド、アスパラギン酸オクタペプチド、アレンドロネート、トランスフェリン、ビスホスホネートアレンドロネート、モノシアロガングリオシドGM1、グルタチオン、E-セレクチンチオアプタマー、ポロキサマー-407、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子受容体(uPAR)アンタゴニスト、CXCR4ケモカイン受容体アンタゴニスト、GRP78ペプチドアンタゴニスト、RGDペプチド、RGD環状ペプチド、黄体形成ホルモン放出ホルモン(LHRH)アンタゴニストペプチド、アミノペプチダーゼ標的化ペプチド、脳ホーミングペプチド、腎臓ホーミングペプチド、心臓ホーミングペプチド、腸ホーミングペプチド、インテグリンホーミングペプチド、血管新生腫瘍内皮ホーミングペプチド、卵巣ホーミングペプチド、子宮ホーミングペプチド、精子ホーミングペプチド、小膠細胞ホーミングペプチド、滑膜ホーミングペプチド、尿路上皮ホーミングペプチド、前立腺ホーミングペプチド、肺ホーミングペプチド(例えばRCPLSHSLICY)、ラミニン受容体結合ペプチド(例えばYIGSR)、皮膚ホーミングペプチド、網膜ホーミングペプチド、膵臓ホーミングペプチド、肝臓ホーミングペプチド、リンパ節ホーミングペプチド、副腎ホーミングペプチド、甲状腺ホーミングペプチド、膀胱ホーミングペプチド、乳房ホーミングペプチド、神経芽細胞腫ホーミングペプチド、リンパ腫ホーミングペプチド、筋肉ホーミングペプチド、創傷血管系ホーミングペプチド、脂肪組織ホーミングペプチド、ウイルス結合ペプチドまたは融合ペプチドが挙げられる。
【0071】
本明細書で使用される「標識またはイメージング」という用語は、本明細書に開示されている標的化分子の可視化および/または検出を容易にする分子を指す。従って本開示の文脈における「標識剤またはイメージング剤」という表現は、任意のイメージング技術において標識として使用されるか、あるいは特異的構造を増強するあらゆる物質を指す。故にイメージング剤としては、光学イメージング剤、磁気共鳴イメージング剤、放射性同位体および造影剤が挙げられる。イメージング剤または標識剤は当該技術分野において周知である。イメージング剤または標識剤の特定の例は、滅菌された空気、酸素、アルゴン、窒素、フッ素、パーフルオロカーボン、二酸化炭素、二酸化窒素、キセノンおよびヘリウムなどのガスならびにポジトロン断層法(PET)、コンピューター断層撮影法(CAT)、単一光子放射型コンピューター断層撮影法法、X線、蛍光透視法および磁気共鳴画像法(MRI)で使用される市販の薬剤である。MRIで造影剤として使用するのに適した材料の例としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)およびガドペンテト酸ジメグルミンなどの現在入手可能なガドリニウムキレートならびに鉄、マグネシウム、マンガン、銅およびクロムが挙げられる。CATおよびX線にとって有用な材料の例としては、ジアトリゾ酸およびイオタラム酸によって代表されるイオン性モノマー、イオパミドール、イオヘキソールおよびイオベルソールなどの非イオン性モノマー、イオトロールおよびイオジキサノールなどの非イオン性ダイマーならびにイオン性ダイマー、例えばイオキサグル酸などの静脈内投与のためのヨウ素ベースの材料が挙げられる。他の有用な材料としては、経口使用のためのバリウムおよび酢酸亜鉛などの不溶性塩が挙げられる。いくつかの分子においてイメージング剤は色素である。いくつかの分子においてイメージング剤は蛍光部分である。いくつかの分子において蛍光部分は、蛍光タンパク質、蛍光ペプチド、蛍光色素、蛍光材料またはそれらの組み合わせから選択される。蛍光色素の例としては、限定されるものではないが、キサンテン(例えば、ローダミン、ロドール、フルオレセインおよびそれらの誘導体)、ビマン、クマリンおよびそれらの誘導体(例えば、ウンベリフェロンおよびアミノメチルクマリン)、芳香族アミン(例えば、ダンシル、スクアリン酸色素)、ベンゾフラン、蛍光シアニン、インドカルボシアニン、カルバゾール、ジシアノメチレンピラン、ポリメチン、オキサベンズアントラン、キサンテン、ピリリウム、カルボスチリル、ペリレン、アクリドン、キナクリドン、ルブレン、アントラセン、コロネン、フェナントレン、ピレン、ブタジエン、スチルベン、ポルフィリン、フタロシアニン、ランタニド金属キレート錯体、希土類金属キレート錯体およびそのような色素の誘導体が挙げられる。フルオレセイン色素の例としては、限定されるものではないが、5-カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン-5-イソチオシアネート、フルオレセイン-6-イソチオシアネートおよび6-カルボキシフルオレセインが挙げられる。ローダミン色素の例としては、限定されるものではないが、テトラメチルローダミン-6-イソチオシアネート、5-カルボキシテトラメチルローダミン、5-カルボキシロドール誘導体、テトラメチル、テトラエチルローダミン、ジフェニルジメチル、ジフェニルジエチルローダミン、ジナフチルローダミン、ローダミン101スルホニルクロリド(テキサスレッド(TEXAS RED)(登録商標)という商品名で販売されている)が挙げられる。シアニン色素の例としては、限定されるものではないが、Cy3、Cy3B、Cy3.5、Cy5、Cy5.5、Cy7、IRDYE680、Alexa Fluor 750、IRDye800CW、ICGが挙げられる。蛍光ペプチドの例としては、GFP(緑色蛍光タンパク質)またはGFPの誘導体(例えば、EBFP、EBFP2、Azurite、mKalama1、ECFP、Cerulean、CyPet、YFP、Citrine、Venus、YPet)が挙げられる。蛍光標識は任意の好適な方法によって検出される。例えば蛍光標識は、フルオロクロムを適当な波長の光で励起させること、および生じた蛍光を検出すること、例えば顕微鏡法、目視検査、写真フィルム、電荷結合素子(CCD)、光電子増倍管などの電子検出器の使用によって検出してもよい。いくつかの分子においてイメージング剤は、ポジトロン断層法(PET)のためにポジトロン放出同位体(例えば18F)で、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)のためにγ線同位体(例えば99mTc)で、あるいは磁気共鳴画像法(MRI)のために常磁性分子またはナノ粒子(例えば、Gd3+キレートまたはコーティングされた磁鉄鉱ナノ粒子)で標識化されている。いくつかの分子においてイメージング剤は、ガドリニウムキレート、酸化鉄粒子、超常磁性酸化鉄粒子、極微小常磁性粒子、マンガンキレートまたはガリウム含有剤で標識化されている。ガドリニウムキレートの例としては、限定されるものではないが、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、1,4,7,10-テトラアザシクロドデカン-1,4,7,10-四酢酸(DOTA)および1,4,7-トリアザシクロノナン-N,N’,N’’-三酢酸(NOTA)が挙げられる。いくつかの分子においてイメージング剤は、近赤外(near-IR)イメージングのための近赤外蛍光体、生物発光イメージングのためのルシフェラーゼ(蛍、細菌または腔腸動物)または他の発光分子あるいは超音波のためのパーフルオロカーボン充填ベシクルである。いくつかの分子においてイメージング剤は核プローブである。いくつかの分子においてイメージング剤はSPECTもしくはPET放射性核種プローブである。いくつかの分子において放射性核種プローブは、テクネチウムキレート、銅キレート、放射性フッ素、放射性ヨウ素、インジウムキレートから選択される。Tcキレートの例としては、限定されるものではないが、HYNIC、DTPAおよびDOTAが挙げられる。いくつかの分子においてイメージング剤は、放射性部分、例えば211At、131I、125I、90Y、186Re、188Re、153Sm、212Bi、32P、64Cu、Luの放射性同位体などの放射性同位体などを含有している。
【0072】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、少なくとも1種の活性薬剤は、アミノ酸側残基すなわちCもしくはN末端基を介して、アミド、エステル、無水物結合を介して、あるいは限定されるものではないが、アルキン、アジド、反応性ジスルフィド、マレイミド、ヒドラジド、ヒドラゾン、シッフ塩基、アセタール、アルデヒド、カルバメートおよび反応性エステルを含む1つ以上の官能基を含むリンカーを介して、カチオン性ポリマーまたはアニオン性ポリマーのポリペプチド骨格に共有結合的に結合されている。他の実施形態では、共有結合的結合は生体応答性結合である。
【0073】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた別の好ましい実施形態では、少なくとも1種の活性薬剤は静電相互作用によりカチオン性ポリマーまたはアニオン性ポリマーのポリペプチド骨格に結合されている。
【0074】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、少なくとも1種の活性薬剤は、低分子量薬物、ペプチド、抗体、ホルモン、酵素、核酸、タンパク質およびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0075】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、有効成分は核酸であり、従って正に帯電したナノ粒子を本明細書ではポリプレックスと命名する。特定の実施形態では、正に帯電したナノ粒子は2種以上の核酸の組み合わせを含む。
【0076】
本明細書で使用される「核酸」という用語は、DNAまたはRNAを指す。任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態では、核酸はいくつか例を挙げると、DNA/RNAハイブリッド、低分子干渉RNA(siRNA)、ミクロRNA(miRNA)、シングルガイドRNA(sgRNA)、ドナーDNA、自己増幅/複製RNA、環状RNA(oRNA)、プラスミドDNA(pDNA)、閉鎖型直鎖状DNA(lcDNA)、低分子ヘアピン型RNA(shRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、アンチセンスRNA(aRNA)、メッセンジャーRNA(mRNA)、CRISPRガイドRNA、アンチセンス核酸、デコイ核酸、アプタマーおよびリボザイムであり、二本鎖、一本鎖、ヘリックス、ヘアピンなどのそれらのヌクレオチド配列および任意の構造的実施形態の両方を包含し、修飾もしくは未修飾塩基を含んでいてもよい。
【0077】
別個の核酸が提供される場合、それらは全てのDNA分子または全てのRNA分子であってもよく、あるいはDNAおよびRNA分子の混合物またはDNAおよびRNA鎖の会合を含む分子であってもよい。
【0078】
核酸は、オリゴもしくはポリ二本鎖RNA、オリゴもしくはポリ二本鎖DNA、オリゴもしくはポリ単鎖RNA、オリゴもしくはポリ単鎖DNAなどのポリもしくはオリゴヌクレオチドであってもよい。核酸に含まれているヌクレオチドのそれぞれが天然に生じるヌクレオチドまたは化学的に修飾された天然に生じないヌクレオチドであってもよい。
【0079】
核酸の鎖長は特に限定されず、核酸は10~200塩基、好ましくは20~180塩基、好ましくは25~100塩基、好ましくは30~50塩基の範囲の短い鎖を有していてもよく、あるいは核酸は200~20000塩基、より好ましくは250~約15000塩基の比較的長い鎖を有していてもよい。
【0080】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態によれば、核酸は閉鎖型直鎖状DNA(lcDNA)であり、すなわち二本鎖領域が2つの単鎖ループによって挟まれて保護されており、それによりダンベル状の分子を生成する分子である。
【0081】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態では、lcDNAはヘアピンループによって両端で共有結合的に閉鎖された目的の二本鎖DNA配列を含むステム領域からなり、lcDNAは少なくとも2つの修飾されたヌクレオチドを含む。
【0082】
本明細書で使用される「閉鎖型直鎖状DNA」または「lcDNA」という用語は、ヌクレオチドハイブリダイゼーションを可能にする条件下で「ダンベル」または「イヌの骨」状の構造を形成する単鎖の共有結合的に閉鎖されたDNA分子を指す。従って、lcDNAは単鎖DNA分子によって形成されているが、同じ分子内の2つの相補的な配列のハイブリダイゼーションによる「ダンベル」構造の形成により、2つの単鎖ループによって挟まれた二本鎖中間セグメントからなる構造が生成される。当業者は、日常的な分子生物学技術を用いて開放もしくは閉鎖型二本鎖DNAからlcDNAを生成する方法を知っている。例えば当業者は、例えばリガーゼの作用によってヘアピン型DNAアダプターを開放型二本鎖DNAの両端に結合することによりlcDNAを生成できることを知っている。「ヘアピン型DNAアダプター」は、2つの相補的な配列のハイブリダイゼーションによってステムループ構造を形成する単鎖DNAを指し、ここでは形成されたステム領域は単鎖ループによって一端で閉鎖されており、かつ他端で開放されている。
【0083】
「修飾されたヌクレオチド」は、塩基、糖またはリン酸基の修飾によって化学的に修飾されているか、あるいはその構造に非天然部分が組み込まれている任意のヌクレオチド(例えば、アデノシン、グアノシン、シチジン、ウラシルおよびチミジン)である。従って修飾されたヌクレオチドは、修飾に応じて天然に生じるものであっても天然に生じないものであってもよい。
【0084】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態によれば、[遮蔽用ポリマー中のポリアニオン性ブロックにより生じる総負電荷(-)数]/[ブロックコポリマー中のカチオン基により生じる総負電荷(-)]として定義される正に帯電したナノ粒子または正に帯電したタンパク質と本発明に係る部分構造I、IIまたはIIIを含む少なくとも1種の遮蔽用アニオン性コポリマーとの-/+比は0~2、好ましくは0.1~2、より好ましくは0.3~2、より好ましくは0.5~1.75、より好ましくは0.75~1.5の範囲である。-/+比は、混合溶液中のアニオン性ブロックにより生じる負電荷(-)のモル濃度とカチオン性ポリマーまたは正に帯電したタンパク質の側鎖由来のプロトン化可能なアミノ基により生じる正電荷(+)のモル濃度との比を意味する。
【0085】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた一実施形態では、本ポリマー複合体は、本ポリマー複合体に対する活性薬剤の質量比に基づいて1~70%w/wの範囲の量の少なくとも活性薬剤を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、この範囲は1~60%w/wである。さらにより好ましい実施形態では、本ポリマー複合体は2~50%w/wの範囲の量の活性薬剤を含む。他の好ましい範囲は2~40%w/w、3~35%w/wおよび3~30%w/wである。
【0086】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態では、本タンパク質ベースの複合体は、活性薬剤:本タンパク質ベースの複合体の質量比に基づいて5~99%w/wの範囲の量のタンパク質を含んでいてもよい。好ましい実施形態では、この範囲は15~98%w/wである。さらにより好ましい実施形態では、本タンパク質ベースの複合体は30~95%w/wの範囲の量のタンパク質を含む。他の好ましい範囲は40~92%w/w、50~90%w/wおよび60~90%w/wである。
【0087】
本開示のポリマー複合体またはタンパク質ベースの複合体は、治療もしくは診断指標のための有用なツールを構成しており、ここでは部分構造I、IIまたはIIIを含む少なくとも1種のアニオン性コポリマーは、有効成分を有する正に帯電したナノ粒子または正に帯電したタンパク質のための保護遮蔽物として機能し、これにより生理条件下での循環時間、安全性もしくは毒性学的プロファイルまたは放出プロファイルの向上などの特定の特性の向上ならびにポリプレックスの場合には所望の細胞へのトランスフェクション効率の向上も得られる。
【0088】
本開示に係る医薬、診断もしくは治療用組成物は、固体の形態または薬学的に許容される希釈液中の水性懸濁液として調製されていてもよい。これらの調製物は任意の適当な投与経路によって投与してもよく、そのような理由のために、前記調製物は選択された投与経路のための適切な医薬品形態で製剤されている。任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態では、投与は経口、局所、直腸内もしくは非経口経路(皮下、腹膜内、皮内、筋肉内、静脈内経路などを含む)によって行う。本医薬、診断もしくは治療用組成物はヒトを含む様々な種類の動物に適用してもよい。用量、投与回数および投与期間などの様々な条件は必要に応じて、動物の種類およびその状態に応じて決定してもよい。
【0089】
上記医薬、診断もしくは治療用組成物は、賦形剤、充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、滑沢剤、界面活性剤、分散剤、緩衝剤、防腐剤、可溶化剤、消毒剤、矯味剤、無痛化剤、安定化剤および等張化剤などの薬物製造においてよく使用される薬剤を必要に応じて選択および使用することにより、一般的な方法に従って調製してもよい。そのような医薬組成物の形態として、静脈内注射(点滴を含む)が一般に採用される。例えば本発明の医薬組成物は、単回用量アンプルまたは複数回用量容器の形態で提供される。
【0090】
本方法が診断を指す場合、この態様は対象の単離された試料における疾患の診断のための方法として考案することもでき、本方法は、対象の単離された試料に有効量の本ポリマー複合体または上に定義されている1種以上のイメージング剤を有する医薬組成物のいずれかを前記対象に投与することを含む。これらのイメージング剤の検出は、画像診断技術などの周知の技術によって行ってもよい。本開示に適した画像診断技術の例としては、限定されるものではないが、超音波イメージング、磁気共鳴画像法(MRI)、蛍光透視法、X線、ポジトロン断層法(PET)、単一光子放射型コンピューター断層撮影法(SPECT)、蛍光顕微鏡法およびインビボ蛍光が挙げられる。
【0091】
従って本開示は、特に活性薬剤またはイメージング剤の内部移行および送達を追跡するためのバイオイメージングツールとしての本開示のポリマー複合体または医薬組成物の使用も指す。
【0092】
「バイオイメージングツール」は、本明細書によれば細胞または特定の組織のいくつかの区画を追跡するための生物学で使用されるイメージング技術で使用される試薬と理解すべきである。バイオイメージングツールの例としては、化学発光化合物、蛍光およびリン光化合物、X線またはα、βもしくはγ線放出化合物などが挙げられる。
【0093】
本開示のさらなる態様は、CRISP/Cas9方法論を用いる遺伝子編集を含む、培養物、インビボまたはエクスビボ、単細寄生虫および細菌における宿主真核細胞のトランスフェクションのために有効な、ワクチンまたは遺伝子治療などの生物医学的用途のために一般的に使用される非ウイルスベクターとしての本明細書に定義されているポリマー複合体の使用に関する。
【0094】
本開示のさらなる態様は、ワクチンおよびタンパク質置換療法などのタンパク質ベースの治療に一般的に使用される担体としての本明細書に定義されているタンパク質ベースの複合体の使用に関する。
【0095】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態では、本発明は、インビボ、インビトロまたはエクスビボにおいて活性薬剤(好ましくは、サイズおよび構造に関わらず核酸、すなわち環状および直鎖状核酸)を標的細胞に送達するためのトランスフェクション試薬としての本明細書に定義されているポリマー複合体の使用を指す。任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせた特定の実施形態では、活性薬剤は、低分子量薬物、ペプチド、タンパク質、抗体、核酸、アプタマーおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0096】
前記トランスフェクション試薬は、同時に2種以上の活性薬剤(例えば同時に2種以上の核酸)を同時トランスフェクトするためにも有用である。トランスフェクション組成物(キットなど)ならびに核酸を標的細胞に送達するためのトランスフェクション試薬を使用する方法も本発明の範囲内である。さらなる実施形態が本開示の再考により明らかになるであろう。
【0097】
本発明は、本明細書に開示されているポリマー複合体を使用することを含む、インビトロ、エクスビボおよびインビボで活性薬剤を移動させるための方法にも関する。
【0098】
本発明は、遺伝性疾患または複雑な遺伝性疾患、免疫疾患、癌、様々な組織/臓器におけるウイルス感染または腫瘍に関与または関係する1種以上の標的タンパク質の発現に対する調整作用を誘導するための医薬組成物として使用するための組成物も提供する。
【0099】
本発明は、生物製剤、特に組換えタンパク質、ペプチドまたは抗体をコードする生物製剤の作製、あるいはアデノ随伴ウイルス(AAV)、レンチウイルス(LV)、アデノウイルス、腫瘍溶解性ウイルスもしくはバキュロウイルスまたはウイルス性もしくはウイルス様粒子などの組換え型ウイルスの作製における本発明に係る組成物のインビトロまたはエクスビボでの使用にも関し、前記組成物は本明細書に定義されているポリマー複合体を含み、トランスフェクションのための少なくとも1種の核酸分子を含む。本明細書で使用される「生物製剤」という用語は、タンパク質または核酸あるいはそれらの組み合わせ、細胞またはウイルスなどの生きている実体、細胞区画、オルガノイドおよび組織を指す。
【0100】
本発明は、ゲノム工学、細胞再プログラム化、細胞の識別または遺伝子編集のための本発明に係るポリマー複合体のインビトロまたはエクスビボでの使用にも関する。
【0101】
細胞をトランスフェクトするための組成物は、本明細書に定義されているポリマー複合体と、許容される賦形剤、緩衝剤、細胞培地またはトランスフェクション培地とを含む。
【0102】
本発明は、ウイルス感染に対する治療もしくは予防用ワクチンまたは癌に対する治療用ワクチンとして使用するための本明細書に定義されている組成物にも関する。一般にこの態様では、ワクチンを全身、筋肉内、皮内、腹膜内、腫瘍内、経口、局所または皮下投与などの直接投与により送達し、前記ワクチンにおいて本組成物は薬学的に許容される媒体と混合されている。言い換えると、細胞および/または体液性応答を誘導するためにワクチンを体内、特にヒトの個体に直接注射してもよい。
【0103】
細胞標的化は異なる機構により達成され、トランスフェクション試薬、方法もしくはプロトコル、組成物または製剤および投与経路の性質および特性によって決まる。
【0104】
任意に上または下に提供されている実施形態のいずれかと組み合わせたより特定の実施形態では、本発明はそれが運ぶ活性薬剤に応じて、特に神経変性疾患、神経疾患、癌、感染症、老化関連疾患、神経炎症、脱髄性疾患、多発性硬化症、虚血性疾患、免疫不全、炎症性疾患、奇病などの異なる疾患の予防および/または治療に使用するためのポリマー複合体を指す。
【0105】
本開示に記載されている化合物、それらの薬学的に許容される塩および溶媒和物ならびにそれらを含有する医薬組成物を他のさらなる薬物と共に使用して、併用治療を提供してもよい。前記さらなる薬物は同じ医薬組成物の一部であってもよく、あるいは代わりとして式(I)を有する化合物、その薬学的に許容される塩、立体異性体または溶媒和物を含む医薬組成物と同時もしくは非同時に投与するための別個の組成物の形態で提供してもよい。
【0106】
一実施形態では、本発明は、上記本発明のポリマー複合体を含む核酸送達キットを提供する。このキットは好ましくは、癌細胞など様々な種類の標的細胞のための遺伝子治療において使用してもよい。本発明のキットでは、ブロックコポリマーの保存状態は特に限定されない。それらの安定性(防腐性)、有用性などを考慮に入れて、ブロックコポリマーを溶液、粉末などの形態で保存してもよい。
【0107】
本発明のキットは他の成分ならびに上記ポリマー複合体を含んでいてもよい。そのような他の成分の例としては、様々な種類の緩衝液、細胞に導入される様々な種類の核酸(プラスミドDNA、アンチセンスオリゴDNA、siRNAなど)、溶解のために使用される緩衝液、様々な種類のタンパク質および使用説明書(使用マニュアル)が挙げられる。
【0108】
本出願において本明細書で使用される全ての用語は、特に明記しない限り、当該技術分野で知られているそれらの通常の意味で理解されるものとする。本出願において使用されている特定の用語のための他のより具体的な定義が以下に記載されており、それらは、特に明示的に定められている定義がより広い定義を与えない限り、本明細書および特許請求の範囲全体を通して一様に適用されることを意図している。
【0109】
本明細書で使用される「障害」という用語は、全てがヒトもしくは動物の体の異常な状態または正常な機能を損なっているその部分の1つを反映しているという点で、「疾患」、「症候群」および「状態(病状と同様)」という用語と一般に同義であることを意図しており、それらと互換的に使用され、典型的に徴候および症状を区別することにより明らかにされる。
【0110】
本明細書で使用される「薬学的に許容される担体」、「薬学的に許容される賦形剤」、「生理学的に許容される担体」または「生理学的に許容される賦形剤」という用語は、液体もしくは固体充填剤、希釈液、賦形剤、溶媒または封入材料などの薬学的に許容される材料、組成物または媒体を指す。各成分は、医薬製剤の他の成分と適合可能であるという意味で「薬学的に許容される」ものでなければならない。またそれは過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性または他の問題もしくは合併症を引き起こすことなく、ヒトおよび動物の組織または臓器と接触させた状態で使用するのに適し、かつ妥当なベネフィット/リスク比に見合ったものでなければならない。
【0111】
本明細書において互換的に使用される「化粧品的に許容される担体」または「皮膚科学的に許容される担体」という用語は、特に過剰な毒性、不適合性、不安定性、アレルギー反応を引き起こすことなくヒトの皮膚と接触させた状態で使用するのに適した賦形剤または担体を指す。
【0112】
「治療的に許容される」という用語は、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応、免疫原性を引き起こすことなく患者の組織と接触させた状態で使用するのに適し、妥当なベネフィット/リスク比に見合い、かつそれらの目的の用途にとって有効な化合物を指す。
【0113】
本明細書で使用される「治療する」、「治療すること」および「治療」という用語は、疾患または障害の症状の発症を予防または遅延させること、および/または疾患または障害の症状の重症度または頻度を減らすことを含む、疾患または障害に関連する症状を寛解させることを指す。
【0114】
本明細書で使用される「保護基」という用語は、分子遮蔽において反応基に結合された場合に、反応性を減少または防止する原子のグループである。カルボキシルおよびアミノ基のための保護基が当該技術分野において周知である。当該技術分野で知られている好適なアミン保護基は限定されることなく使用することができ、その例としては、アシル系基、カルバメート系基、イミド系基およびスルホンアミド系基などが挙げられる。それらのうち、メチルオキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル、p-メトキシベンジルオキシカルボニル、t-ブチルオキシカルボニル(Boc)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(FMOC)、アリルオキシカルボニル(Alloc)、2,2,2-トリクロロエトキシカルボニル基(Troc)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)、トシル(Ts)、トリメチルシリルエチルオキシカルボニル(Teoc)、ベンズヒドリル、トリフェニルメチル(トリチル)、(4-メトキシフェニル)ジフェニルメチル(MMT)、ジメトキシトリチル(DMT)およびジフェニルホスフィノ基が好ましい。保護基の導入は、還元反応後に各保護基に対応する保護剤を反応溶液に添加することにより塩基性条件下で行ってもよい。
【0115】
本発明において「対象」は、ヒトを含む哺乳類であってもよい。当該対象は、健康な対象またはいくつかの疾患に罹患している対象であってもよい。本発明では「治療」は、疾患または障害の治癒、予防または寛解の誘導あるいは疾患または障害の進行速度の減少を指す。当該治療は、治療的有効量の医薬組成物を投与することにより達成してもよい。
【0116】
本明細書および特許請求の範囲全体を通して「~を含む」という単語およびその単語の変形は、他の技術的特徴、添加剤、成分または工程を排除することは意図していない。さらに「~を含む」という単語は、「~からなる」の場合を包含する。本発明のさらなる目的、利点および特徴は、本明細書の考察により当業者に明らかになるか、あるいは本発明の実施によって学習してもよい。以下の実施例および図面は例示として与えられており、本発明を限定することは意図していない。図面に関連しており、かつ請求項において括弧に入れられている参照符号は、単に請求項の理解度を高めることを試みるためのものであり、請求項の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。さらに本発明は、本明細書に記載されている特定の好ましい実施形態の全ての可能な組み合わせを包含する。
【実施例
【0117】
数例のみを本明細書に開示してきたが、それらの他の代替形態、修正形態、使用および/または均等物が可能である。さらに、記載されている例の全ての可能な組み合わせも包含される。従って本開示の範囲は、特定の例によって限定されるべきではなく、以下の特許請求の範囲の公正な解釈によってのみ決定されるべきである。
【0118】
アニオン性コポリマーの調製のための一般的な手順
以下に記載されている一般的な調製方法に従って、アニオン性遮蔽用コポリマーを調製した。
ROP(開環重合)によりブロックコポリマーを得た。第1の工程では、メチオニンN-カルボキシ無水物(NCA)およびアラニン-NCAを重合させてコポリマーを得、次いで第2のブロック(グルタミン酸(OtBu)NCA)を添加した。次いで、tert-ブチルヒドロペルオキシド(TBHP)を用いることによりメチオニンの酸化を行う。最後の工程は、酸性条件下でのグルタミン酸(OtBu)の脱保護からなる。
【0119】
実施例1:遮蔽用ブロックコポリマー(PMet(O)-co-PAla)-b-PGluOtBuの合成
1.1.(PMet-co-PAla)-b-PGluOtBuの重合のための一般的な手順
【化1】
ROP(開環重合)によりブロックコポリマーを得た。メチオニンN-カルボキシ無水物(NCA)およびアラニン-NCAを、撹拌子および栓が装着されたシュレンク管に添加した。3サイクルの真空/N後に、混合物を無水THFに溶解した。次いで、開始剤(i-プロピルアミン)をTHF(2mL)で希釈し、反応混合物に添加し、これを室温で3日間撹拌した。NCA消費をIRによって確認したら、対応する第2のブロックアミノ酸-NCA(グルタミン酸(OtBu)NCA)を、無水THFに溶解した反応混合物に添加した。混合物を室温で2日間撹拌した。このモノマーの完全な変換をIRによって検出した。反応混合物をジエチルエーテルの中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を凍結乾燥し、ブロックコポリマーを白色の固体として単離した。
収率:80~98%。
【0120】
1.2.メチオニンの酸化
【化2】
この酸化反応は、ブロックコポリマーを各Met単位に対して16当量の80%TBHP(tert-ブチルヒドロペルオキシド)および0.2当量のCSA(カンファースルホン酸)のMiliQ水に懸濁させることにより行った。この酸化をNa(0.1M)でクエンチし、生成物をTFF(タンジェンシャルフロー濾過)によって精製し、凍結乾燥した。
【0121】
1.3.Glu(OtBu)脱保護工程のための一般的な手順
【化3】
PMet(O)-co-PAla-b-PGluOtBuのブロックコポリマーを0℃(100mg/mL)でトリフルオロ酢酸に溶解し、混合物を5℃で1時間撹拌した。反応混合物をジエチルエーテルの中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を遠心分離(3750rpm、4分)によって単離し、真空乾燥した。ブロックコポリマーを白色の固体として単離した。
収率:70~95%。
[V1~V5]H NMR(DO):δ1.50(d,CH3 Ala),1.90-2.49(m,2CH2 Glu+CH2 Met(O)),2.85-3.20(m,CH2 Met(O)),4.25-4.65(m,CH Met(O)+CH Ala+CH Glu)。
【表1】
NMRによって決定。SEC-MALSによって決定。SECカラム較正によって決定。
V1=iPr-P[Met(O)138-co-Ala19]-b-PGlu(ONa)65
V2=iPr-P[Met(O)167-co-Ala25]-b-PGlu(ONa)82
V3=iPr-P[Met(O)154-co-Ala25]-b-PGlu(ONa)84
V4=iPr-P[Met(O)139-co-Ala20]-b-PGlu(ONa)98
V5=iPr-P[Met(O)167-co-Ala25]-b-PGlu(ONa)80
ここに記載されているDP数は±20%範囲内の合理的な不確かさを伴う。
【0122】
実施例2:ポリカチオン性担体の合成および説明
遮蔽用ポリマーによってポリプレックスに付与される安定化能力および向上したトランスフェクション特徴を証明するために、汎用基準であるjetPEI(登録商標)(Polyplus-transfection社、フランスのイルキルシュ)(Polyplus:101-10Nを参照)を使用した。JetPEI(登録商標)は、低い毒性で哺乳類細胞へのロバストかつ有効であって再現可能なDNAトランスフェクションを保証する強力な試薬である。jetPEI(登録商標)は主に、Polyplus-transfection社で製造された直鎖状ポリエチレンイミンで構成されている。jetPEI(登録商標)は、7.5mMの無菌非発熱性水溶液(窒素残留物の濃度として表される)として提供される。さらに、他の市販のカチオン性ポリマー、すなわちnbu-ポリ-L-オルニチン(PLO)臭化水素酸塩(Polypeptide Therapeutic Solutions社から供給、カタログバッチ番号:CM-CC1004-01-42B)、キトサン(CHI)(Kytozyme社から購入(15~20kDa))、直鎖状ポリ-L-リジン(nbu-PLL)(Polypeptide Therapeutic Solutions社から供給、バッチ番号:CM-CC1030-02-08A)および星型ポリ-L-リジン(St-PLL)(Polypeptide Therapeutic Solutions社から供給、バッチ番号:PI03-01-166C)を試験した。また、非常に異なる構造および組成の他のポリカチオンの安定化を証明するために、星型ポリアミノ酸をベースとする異なるポリカチオン性NVVを合成し、そのポリプレックスも安定化させてアッセイした。以下の実施例は、遺伝物質を複合体に形成して輸送するために使用される上記ポリカチオン性化合物の調製について記載している。
【0123】
実施例2.1:化合物N1の調製
【化4】
一般的に言えば、本開示に係る式(N1)の化合物を合成するために、最初に2~3つの工程の中で3アーム星型開始剤を得た。次いで、そのような開始剤を使用してy-ベンジル-L-アスパルテートNCAおよびL-フェニルアラニンNCAを重合して、保護された星型ランダムコポリマーベンジル(St-PAsp(Bz)-co-PPhe)を得た。ベンジル基をアミノ分解反応によって除去して、対応するStar-PAsp-オリゴアミン-co-PPheを得た。
【0124】
スキーム1は重合およびアミノ分解工程の特定の例を示す。
【化5】
【0125】
2.1.A.3アーム星型開始剤の合成
3アーム星型開始剤への合成経路が以下に記載されている。
【0126】
2.1.A.1.N,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(St-S-S-開始剤)(5)
スキーム2に開示されている一般的な手順に従って、N,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(St-S-S-開始剤)(5)を合成した。
【化6】
【0127】
トリマーアミン開始剤の合成はカップリング反応で開始し、その後にアミン脱保護を行った。
【0128】
工程(a):((((ベンゼントリカルボニルトリス-(アザンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))トリス(ジスルファンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))-トリカルバミン酸トリ-tert-ブチルの合成
【化7】
N-(tert-ブチルオキシカルボニル)シスタミン(7.99、27mmol、3.3当量)を火炎乾燥した二口丸底フラスコの中に秤量し、56mLの無水THFに溶解した。新しく蒸留したDIPEA(4.75mL、27mmol、3.3当量)を添加し、室温で15分間撹拌した。1,3,5-ベンゼントリカルボニル三塩化物(2.25g、8.3mmol、1当量)を火炎乾燥した二口丸底フラスコの中に秤量し、28mLの無水THFに溶解した。三塩化物溶液を注射器によりN-(tert-ブチルオキシカルボニル)シスタミン混合物にゆっくりと添加した。反応の進行を薄層クロマトグラフィ(TLC)で監視した。4時間後、溶媒を真空蒸発させ、残留物を酢酸エチルに溶解した。有機層をMilli-Q水、1M塩酸および飽和重炭酸ナトリウム溶液で連続的に洗浄した。有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥し、真空濃縮して((((ベンゼントリカルボニルトリス-(アザンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))トリス-(ジスルファンジイル))トリス(エタン-2,1-ジイル))-トリカルバミン酸トリ-tert-ブチルを白色の泡として得た(7.5g、η=98%)。
H NMR(CDCl):δ=1.39(brs,27H,-C(CH),2.84(t,J=6.26Hz,6H,CH),2.96(t,J=6.84Hz,6H.CH),3.46(m,6H,CH),3.79(m,6H,CH),5.18(brs,3H,-NHBoc),7.39(brs,3H,アリールCH)。
【0129】
工程(b):N,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩(St-S-S-開始剤)(5)の合成
【化8】
7.5g(8.19mmol)の開始剤(5)を無水ジクロロメタン(180mL)に溶解し、90mLのTFAを添加した。反応系を窒素雰囲気下で60分間撹拌し、反応の完了をTLCで監視した。溶媒を真空下で蒸発させた。開始剤のTFA塩(5)(7g、7.31mmol)を定量的収率で得て真空乾燥した。
H NMR(DO):δ=2.86(m,12H),3.25(t,J=6.49Hz,8H),3.60(t,J=6.85Hz,8H),8.02(brs,3H,アリールCH)。
【0130】
2.1.B.疎水性断片を含む星型PAsp(Bz)(6)コポリマーの合成
【化9】
疎水性残基を有するコポリマーを合成するために、開始剤としてN,N,N-トリス(2-((2-アミノエチル)ジスルファニル)エチル)-ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミドのトリフルオロ酢酸塩を用いて、開環重合機構により重合を行った。
【0131】
St-S-S-PAsp(Bz)(45)-co-PPhe(5)(N1)の合成のための一般的な手順
β-ベンジル-L-アスパルテート-N-カルボキシ無水物(3.5g、14.15mmol)およびL-フェニルアラニン-N-カルボキシ無水物(1.57mmol)を、撹拌子および栓が装着されたシュレンク管に添加し、3サイクルの真空/Nでパージし、無水クロロホルム(100mL)およびDMF(6mL)の混合物に溶解した。次いで、星型開始剤をDMF(4mL)に溶解し、反応混合物に添加した。混合物を50℃で16時間撹拌した。完了したら、反応混合物は透明になり、このモノマーの完全な変換をIRによって検出することができた。反応混合物をジエチルエーテルの中に注いで生成物を沈殿させた。沈殿物を遠心分離(3750rpm、4分)により単離し、真空乾燥した。コポリマーを白色の固体として単離した。
収率:70~80%。
H NMR(TFA):δ=2.99(s,2H,CH),3.94(brs,1H,CH),4.93(s,1H,CH),5.15(m,2H,ベンジルCH2),7.20(s,5H,アリールCH),8.42(s,アリールCH)。
【0132】
反応させることができる対応するモノマー単位の混合比を変えることにより、繰り返し単位比の導入を調整した。この前駆体では、疎水性残基はH-NMRによればポリアスパラギン酸の保護基に一致している。この系をアミノ分解反応後に分析する(次の実施例5.1.C)。
【0133】
2.1.C.両親媒性ポリアスパルトアミド誘導体St-S-S-PAspDET-co-PR18(10)の合成
以下の合成経路に示されているように、ポリアミノ酸をPBLAとDETとの同時アミノ分解反応により調製した。
【化10】
【0134】
一例として、本明細書において本発明者らはR18がフェニルアラニン基を表している合成方法について記載している。St-S-SPAsp(Bz)45-co-PPheのコポリマー(5)(500mgのコポリマー、470mgのPBLA、DP:45)をNMP(10mL)に溶解し、4℃に冷却した。得られたコポリマー溶液をDETの混合物に滴下し(PAsp(Bz)の単位に対して12mL、50当量)、この溶液を窒素雰囲気下、4℃で4時間撹拌した。この時間の後に、中和(pH3.5)のために反応混合物を冷たいHCl(6M)の中に滴下した。ポリマー生成物を遠心支援限外濾過により精製した。濾過後に残りの水性ポリマー溶液を凍結乾燥して最終生成物を得た。
収率:70~80%。
H NMR(DO)[R18=Phe側鎖]:δ=2.91(brs,2H,CH2),3.84-3.18(m,2H,CH2),7.34(brs,5H,PheのアリールCH),8.33(s,アリールCH)。
【0135】
表2は、式(N1)に係る両親媒性コポリマーSt-S-S-PAspDET-co-R18を指す。
【表2】
NMRによって決定。SECによって決定。MnおよびDPはそれぞれ、数平均モル質量および重合度を指す。DはSEC-MALSソフトウェア分析によって決定された多分散性を表す。
【0136】
実施例2.2:化合物N3の調製
St-S-S-PAspDET-co-R1(N1)の合成と同様に、同じ実験手順を使用してSt-S-S-PAspDET-co-PAspイミダゾールアミン(N3)を生成する。
【化11】
前のセクションに記載されている実験手順に従って、St-S-S-ポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)(星型PAsp(Bz))(7)の合成を行った。
収率:70~90%。
H NMR(TFA):δ=2.92(m,2H,CH),4.85(s,1H,CH),5.05(m,2H,ベンジルCH),7.13(s,5H,アリールCH),8.38(s,アリールCH)。
【表3】
NMRによって決定。SECによって決定。MnおよびDPはそれぞれ数平均モル質量および重合度を指す。DはSEC-MALSソフトウェア分析によって決定された多分散性を表す。
【0137】
St-PAspDET-co-PAspイミダゾールアミン(N3)を生成するためのポリ(β-ベンジル-L-アスパルテート)(7)のアミノ分解反応をN1と同じ実験手順に従って行ったが、この場合、2種類のアミンすなわちジエチレントリアミンおよび1-(3-アミノプロピル)イミダゾールを使用する。
H NMR[St-PAspDET/イミダゾールアミン](DO):δ=2.14(brs,2H,CH),2.87(brs,2H,CH2),3.22(m,2H,CH),4.30(brs,2H,CH),7.52(s,イミダゾールCH),7.57(s,イミダゾールCH),8.34(s,アリールCH),8.78(s,イミダゾールCH)。
【表4】
NMRによって決定。SECによって決定。MnおよびDPはそれぞれ数平均モル質量および重合度を指す。DはSEC-MALSソフトウェア分析によって決定された多分散性を表す。
【0138】
実施例3:ポリプレックス製剤
ポリプレックス製剤を「PXNn_比1_遮蔽用ポリマー_比2 nuc」と命名し、ここでは「N」は本明細書において提供されるポリカチオン性化合物の命名法に対応しており(すなわち、N1は上記実施例2.1に記載されているStar-PAsp-オリゴアミン-co-PPheカチオン性ポリマー、N2は基準jetPEI(登録商標)、N3は上記実施例2.2に記載されているSt-S-S-PAspDET-co-PAspイミダゾールアミンカチオン性ポリマー)、N4は星型ポリ-L-リジン(St-PLL Curapath社のカタログ、製品番号:1075)、N5は直鎖状ポリ-L-リジン(nbu-PLL、Curapath社のカタログ、製品番号:1019)、N6はnbu-ポリ-L-オルニチン(PLO Curapath社のカタログ、製品番号:1018)、N7はキトサン(CHI、Kitozyme社のカタログから取得、キトサン15~20kDa)を使用してポリプレックスを形成した)、「比1」はカチオン性ポリマー:遺伝物質のN/P比を指し、「遮蔽用ポリマー」はポリアニオン性遮蔽用ジブロックコポリマー(Vn)を指し、「比2」は、カチオン性ポリマー:遮蔽用(アニオン性)ポリマーの+/-比を指し、「nuc」は核酸の種類、すなわちpDNA、mRNAまたはlcDNAを指す。
【0139】
以下の実施例では、6233bpの発現ルシフェラーゼを含有するpDNA(PlasmidFactory社から購入、PF461(pCMV-luc)を参照)、市販のmRNA(luc)(Trilink Biotechnologies社から購入)、市販のpDNA(GFP)(PlasmidFactory有限合資会社から得た)およびlcDNA(配列番号1)(これらはHeinrich,M.ら「原核生物の切断/結合酵素TelNによって生成された閉鎖型直鎖状ミニDNAは哺乳類細胞において機能的である(Linear closed mini DNA generated by the prokaryotic cleaving-joining enzyme TelN is functional in mammalian cells)」,J Mol Med,2002,第80版,pp.648-654に開示されている方法などの標準的な分子生物学的方法に従って得た)を用いた。
【0140】
当該実施例における配列番号1に係るlcDNAの配列は表5の配列である。
【表5】
【0141】
3.1.ポリプレックス製剤の手順1
安定性、サイズ、毒性およびトランスフェクション能力を調べるために、遮蔽されたポリプレックス製剤を以下のようにin-situで調製した(ピペット中で混合)。
【0142】
指示されている電荷比(+/-)またはアミン:リン酸比(N/P)で、所望の量のpDNA、mRNAまたはlcDNAおよび計算した量のカチオン性ポリマーを別個の管の中のPBS(pH7.4)で希釈した。アミド窒素ではなくプロトン化可能な窒素のみを+/-比およびN/P比の計算において検討した。ポリプレックス形成の前に、対応する量の遮蔽用ポリマーを核酸試験管に添加して混合した。遮蔽されたポリプレックスの形成のために、カチオン性ポリマー溶液および遺伝物質+遮蔽用ポリマー溶液を迅速に上下にピペットすることにより混合し(10回)、室温で20分間インキュベートした。次いで、形成されたポリプレックスをDLSによって特性評価してサイズを決定した。
【0143】
特定の実施例として、20μgのpDNAが充填された遮蔽されたポリプレックスPXN1_8_V1_1 pDNA(ポリプレックスの最終体積は200μl)を示す。他のポリプレックスの製剤化を同様の方法で行った。本発明に係る遮蔽用アニオン性ポリマー量は以下のように計算する:NP8比のために必要とされるアミンの量を確立したら2で割り、それらの半分をポリマーとDNAとの相互作用のために用い、他の半分を必要とされる遮蔽用アニオン性ポリマーNP比(NP1)と対比させる。
【0144】
最初に、10mg/mlの遮蔽用ポリマーストック水溶液および4mg/mlのポリカチオン性ポリマーストック水溶液を調製した。この実験手順は以下のように行った。
1.80μlのPBSをエッペンドルフチューブの中に添加する。次いで、1mg/mlのストックからの20μlのpDNAを希釈し、10mg/mlのストックからの15.8μlの遮蔽用ポリマーを添加する(115.8μlの最終体積)。
2.ポリカチオン性ポリマー溶液から18.2μl(ストック4mg/ml)をpDNA-遮蔽用ポリマー溶液に添加し、200μlの最終体積までPBSで完全にする(66μlのPBS)。
3.室温で20分間インキュベートする。
4.ポリプレックスはすぐに使用できる状態にある。
【0145】
この最初の方法で製剤化したそれらの試料を、そのin-vitro試験のために同様の方法で調製した。24時間のインキュベーション後に、毒性およびトランスフェクション効率を評価した。各ポリマーについて調べた比は、N/P8、15または30であった。トランスフェクションのための陽性対照として、jetPEI(登録商標)(Polyplus-transfection社、フランスのイルキルシュ)(Polyplus:101-10Nを参照)を、窒素:リン比(NP5)で使用した。細胞トランスフェクションは、製造業者の説明書に従ってjetPEI(登録商標)を用いて行った。jetPEI(登録商標)は主に、Polyplus-transfection社で製造された直鎖状ポリエチレンイミンで構成されている。jetPEI(登録商標)は7.5mMの無菌かつ非発熱性水溶液(窒素残留物の濃度として表される)として提供される。
【0146】
実施例4:遮蔽されたポリプレックスのサイズおよび安定性
ポリプレックスの安定性は、効率的な治療法を開発する上で主要な側面である。標的作用部位への循環中に安定であることが求められる投与経路に従って薬物が遭遇する生理条件を模倣するためのパネルアッセイにより、当該医薬品製剤の中長期間安定性の保証を追跡する。正の表面電荷を示すポリプレックスが全身に投与された場合に、不正確な細胞生物学評価および深刻な毒性問題を引き起こし得る塩誘導凝集を起こすことは周知である。初期安定性調査は、本プロジェクトの間に現在開発中であり、それらはポリプレックス粒子特性(サイズ)を監視することを目指している。
【0147】
173の固定散乱角で532nmのレーザーを備えたMalvern ZetasizerNanoZS機器を用いて、異なるN/P比のpDNA、mRNAまたはlcDNA、異なるポリカチオンおよび遮蔽用ポリマーを用いて形成された安定化されたポリプレックスのサイズの測定を行った。石英ガラス製の高性能キュベット(Hellma Analytics社)を用いて20μlの試料を測定した。n>3の測定によりサイズ分布を測定した(直径:nm)。安定性の測定のために、ポリプレックスを実験中に冷蔵庫(2~8℃)に維持し、ポリプレックスの安定性を異なる時間で測定した。
【0148】
4.1.N1およびV1ならびに積荷としてのpDNAによって形成されたポリプレックスの安定化
ポリプレックス製剤手順1(上に報告されているとおり)によるN1ポリプレックスの異なる時間での安定性および形成を、異なるNP比(8および15)およびPBS(pH7.4)中で異なる-/+電荷比の遮蔽用ポリマーV1を用いて調べた。この実験のために異なる量の遺伝物質も使用した(表3に示されている)。DLS(Malvern Panalytical社、スペイン)によってサイズを測定する前に、最終ポリプレックス溶液(200μl)を放置して20分間安定化させた。実験中にポリプレックスを冷蔵庫に維持し、ポリプレックスの安定性を異なる時間で測定した。
【0149】
表6に示すように、遮蔽用ポリマーの存在により、溶液中で最長で少なくとも数日にわたってポリプレックスへの向上した安定性が得られ、長期間にわたって一定のサイズが維持され、凝集が回避された。
【表6】
D(n)はDLSによって測定された流体力学的直径を表し、N/Aは凝集が存在したために測定することができないことを表す。
【0150】
この表において観察することができるように、ポリプレックスのサイズは遺伝物質の質量および最終製剤中に存在する遮蔽用ポリマーの比によって決まる。遮蔽用ポリマーなしに製剤化されたそれらのポリプレックス(すなわちPXN1_8_V1_0 pDNA)は、DLS技術によって測定することができない大きい凝集体を形成した。
【0151】
4.2.N2およびV1ならびに積荷としてのpDNAによって形成されたポリプレックスの安定化
表7に示すように、遮蔽用ポリマーの存在により、最長で少なくとも数日にわたって溶液中で実施例4.1に示されている手順によって製剤化されたポリプレックスへの向上した安定性が得られ、長期間一定のサイズが維持され、凝集が回避された。
【表7】
D(n)は、DLSによって測定された流体力学的直径を表し、N/Aは凝集が存在したために測定することができないことを表す。
【0152】
4.3.N1またはN3およびV1ならびに積荷としてのmRNAによって形成されたポリプレックスの安定化
mRNAと共にNP=15を用いたPBS(pH7.4)中でのポリプレックス安定性を、遮蔽用ポリマーV1を用い、+/-=0.5、1、2を用いて異なる時間で調べた。DLS(Malvern Panalytical社、スペイン)によってサイズを測定する前に、最終ポリプレックス溶液を放置して20分間安定化させた。実験中にポリプレックスを冷蔵庫に維持し、ポリプレックスの安定性を異なる時間で測定した。
【0153】
これらの結果から、遺伝物質としてmRNAを用い、24時間のポリプレックス安定化のためにどんな+/-比を用いたとしても、20のNP比のN1およびN3複合体化ポリマーがV1により安定となることが実証された。特筆すべき点は、+/-比を増加させるにつれて安定性期間が少なくとも5日延びることである。この現象は、遮蔽物の濃度の上昇により安定化特性が向上するという事実に関連している。表8に示すように、遮蔽用ポリマーの存在によりポリプレックスの安定化が促進される。
【表8】
D(n)は、DLSによって測定された流体力学的直径を表し、N/Aは凝集が存在したために測定することができないことを表す。
【0154】
4.4.N1またはN3およびV1ならびに積荷としてのlcDNAによって形成されたポリプレックスの安定化
lcDNAと共にNP=20を用いたPBS(pH7.4)中でのポリプレックス安定性を、遮蔽用ポリマーV1を用い、+/-=0.5、1、2を用いて異なる時間で調べた。Stunner(Unchained Labs社、ベルギー)によってサイズを測定する前に、最終ポリプレックス溶液を放置して20分間安定化させた。実験中にポリプレックスを冷蔵庫に維持し、ポリプレックスの安定性を異なる時間で測定した。
【0155】
異なる種類の遺伝物質の使用により、先に表9に記載されている結果と同様の結果が得られ、V1+/-1および2により少なくとも7日にわたって安定なポリプレックスが得られることに留意されたい。表9に示すように、lcDNAを用いた場合に遮蔽用ポリマーの存在によりポリプレックスの安定化が促進される。
【表9】
Z-aveは、Stunnerによって測定した流体力学的直径を表し、N/Aは凝集が存在したために測定することができないことを表す。
【0156】
4.5.N4、N5、N6またはN7およびV1ならびに積荷としてのpDNAによって形成されたポリプレックスの安定化
pDNAおよび異なる複合体化ポリマーと共にNP=15を用いたPBS(pH7.4)中でのポリプレックス安定性を、異なる時間で遮蔽用ポリマーV1を用い、+/-=0.5、1、2を用いて調べた。DLS(Malvern Panalytical社、スペイン)によりサイズを測定する前に、最終ポリプレックス溶液を放置して20分間安定化させた。実験中にポリプレックスを冷蔵庫に維持し、ポリプレックスの安定性を異なる時間で測定した。
【0157】
表10に示すように、V1は異なる化学的性質で作製されたポリプレックスの安定化のために用いることもできる。これらの系は、その製剤のためにPBSを用いた場合に少なくとも1日にわたって安定であった。さらに、これらのポリマーN6 nbu-ポリ-L-オルニチン(PLO)臭化水素酸塩およびN7 CHIのいくつかにより、それらを酢酸緩衝液で調製した場合に、5日間にわたって安定なポリプレックスが得られた。酢酸緩衝液の使用は、それらの残基のそれらの完全なプロトン化または中性のpHでのそれらの限られた溶解性を促進するために必要とされる。直鎖状N5ポリ-L-リジンおよびN4星型ポリ-L-リジンも試験した。
【表10】
D(n)はDLSによって測定された流体力学的直径を表し、N/Aは凝集が存在したために測定することができないことを表し、Ac上付き文字は酢酸緩衝液(pH=5)中で製剤化されたことを示す。
【0158】
実施例5:複合体形成/分解実験
さらに、第1のスクリーニング方法として電気泳動ゲルを用いて、ポリプレックスにおける複合体形成の有効性および遊離pDNAの存在の可能性を評価した。電気泳動を行うために、E-gel Power Snap電気泳動装置およびE-Gel Powerスナップカメラ(Invitrogen社)を使用した。SYBR safe DNAマーカー(SYBR safeを含むE-Gel(登録商標)1.2%、Invitrogen社)を含めて調製した1.2%アガロースゲルを使用した。異なるNPおよび異なる-/+遮蔽用ポリマー比におけるポリプレックス(20μl)の複合体形成効率を評価し、低ヘパリン(0.075IU/ml)および高ヘパリン(200IU/ml)濃度(PanReacAppliChem、スペイン)の存在下でポリプレックスの分解も評価した。低濃度では、0.1μlの15IU/mlヘパリン溶液を20μlの既に形成されたポリプレックスに添加し、高濃度では、0.8μlの5000IU/mlヘパリン溶液を20μlのポリプレックスに添加した。ゲル(20μl/ウェル)を充填したら、使用するゲルの種類に従って機器プロトコルを選択する(本発明者らの場合、約40分のプロトコルであったが、試料に従って時間は修正することができる)。
【表11】
【0159】
全ての事例において、異なるNPまたは低濃度のヘパリンにおいて遊離pDNAは観察されない。しかし高濃度のヘパリンでは、ポリマーに結合するためのヘパリンとpDNAとの競合により遊離pDNAシグナルが観察され、これはそれらの積荷を放出するポリマーの能力を示している(図1ではゲルの代表的な画像を観察することができる)。
【表12】
【0160】
PXN2_5_V1_1 pDNAの全ての事例において、pDNAは分解される。PXPEI_5_V1_0.5 pDNAでは、高濃度のヘパリンにおいて遊離pDNAが観察される(図2ではゲルの代表的な画像を観察することができる)。
【0161】
実施例6A:細胞培養
10%ウシ胎児血清(Hyclone#SV30160.03HI、GE Healthcare Europe GmbH社によって提供)が添加されたGlutamax(Gibco-Thermo Fisher社#61965-059)を含むDMEM高グルコース中でHeLa細胞を培養した。100μlの最終体積で10000細胞/ウェルを含む96ウェルプレート上でトランスフェクションを行い、細胞を37℃および5%COで24時間インキュベートした。24時間後に培地を除去し、90μlの完全培地で新しくした。PBSを用いてトランスフェクション混合物を調製し、陽性対照(JetPEI)の場合、製造業者のガイドラインに従い(#101-10N、Polyplus Transfection社)、20分間の安定化後に10μlの各製剤を細胞に添加した。24時間後に細胞を回収して処理した。
【0162】
実施例6B:細胞毒性評価のためのATP評価
インキュベーションから24時間後に、培地を吸引し、50μl/ウェルのATPLite試薬(ATPLite(PerkinElmer社)#6016731)を添加した。プレートを室温および暗所で10分間インキュベートした。VictorNivo(PerkinElmer社)を用いて発光を分光光度的に読み取り、データは未処理対照細胞を100%として細胞生存率として表した。
【0163】
実施例6C:ルシフェラーゼアッセイ
インキュベーションから24時間後に、製造業者の説明書に従って100μlのBrightGlo試薬(Promega社#E2620)を各ウェルに添加した。5分間の室温でのインキュベーション後に、VictorNivo(PerkinElmer社)を用いてルシフェラーゼ活性を測定した。データは、トランスフェクションの陽性に対するトランスフェクション率に対する発光として表した。
【0164】
実施例6D:HeLa細胞におけるN1およびV1によって形成されたポリプレックスの生物活性
HeLa細胞においてN1およびV1によって形成されたポリプレックスのトランスフェクション効率および細胞生存度が以下の表において報告されている。トランスフェクションデータは陽性対照の割合(%)として表されている。jetPEI(登録商標)は24時間の処理後に100%の陽性対照であり、細胞生存度を未処理(NT)細胞と比較すると、NT細胞に対するATP含有量の読み取りは100%に等しい。
【表13】
【0165】
上記データから抽出することができるように、遮蔽用ポリマーの存在は、HeLa細胞における細胞生存度を高くするだけでなく、本ポリマー複合体にほとんど毒性を与えないがトランスフェクション効率を最大3倍高める。
【0166】
先行技術文献
国際公開第2019067676号
J Mol Med,2002,第80版,pp.648-654
図1
図2
【配列表】
2024542574000001.xml
【国際調査報告】