(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】結晶化温度を上昇したポリブテン組成物の調製方法
(51)【国際特許分類】
C08L 23/20 20060101AFI20241108BHJP
C08K 5/25 20060101ALI20241108BHJP
C08K 3/34 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L23/20
C08K5/25
C08K3/34
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531353
(86)(22)【出願日】2022-12-12
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022085317
(87)【国際公開番号】W WO2023117520
(87)【国際公開日】2023-06-29
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513076604
【氏名又は名称】バーゼル・ポリオレフィン・イタリア・ソチエタ・ア・レスポンサビリタ・リミタータ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(74)【代理人】
【識別番号】100167106
【氏名又は名称】倉脇 明子
(74)【代理人】
【識別番号】100194135
【氏名又は名称】山口 修
(74)【代理人】
【識別番号】100206069
【氏名又は名称】稲垣 謙司
(74)【代理人】
【識別番号】100185915
【氏名又は名称】長山 弘典
(72)【発明者】
【氏名】グラッツィ,ミケーレ
(72)【発明者】
【氏名】マルキーニ,ロベルタ
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002BB171
4J002DJ047
4J002EQ026
4J002FD017
4J002FD206
4J002GL00
(57)【要約】
【解決手段】
結晶化温度を上昇したポリブテン-1組成物の調製方法であって、成分として、A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%のブテン-1ホモポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは、ブレンドステップ中に溶融状態にされるか、または溶融状態に維持される、前記ブテン-1ポリマーと、B)A)+B)の総重量に対して、0.1~0.5重量%の特定の式の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、をブレンドするステップを含み、このようにして得られたポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度T
c
Cを有する。
【数1】
ここで、T
c
Aはブテン-1ポリマーA)の結晶化温度である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブテン-1組成物の調製方法であって、成分として、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%、好ましくは99.6~99.85重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは、ブレンドステップ中に溶融状態にされるか、または溶融状態に維持される、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して、0.1~0.5重量%、好ましくは0.15~0.4重量%の、式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、をブレンドするステップを含み、
このようにして得られたポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度T
c
Cを有し、
【数1】
好ましくは、
【数2】
より好ましくは、
【数3】
ここで、T
c
AおよびT
c
Cは℃で表され、T
c
Aはブテン-1ポリマーA)の結晶化温度であり、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上であり、前記結晶化温度は、10℃/分の加熱および冷却速度での示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、調製方法。
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルであり、nは0~5の整数である。)
【請求項2】
前記ブレンドステップにおいて、タルクC)を添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タルクC)は、レーザー光回折によって決定された、体積基準の粒子径分布Dv(0.95)が45μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下、特に20μm以下の粒子の形態であり、下限はすべての場合において好ましくは5μmである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレンドステップは、100℃~220℃の温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカノイルヒドラジンB)は、式(II)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【化2】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルである。)
【請求項6】
前記B)は、式(III)を有する、請求項5に記載のステップ。
【化3】
【請求項7】
ポリブテン-1組成物であって、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%、好ましくは99.6~99.85重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは60℃以上、好ましくは65℃以上の結晶化温度TcAを有する、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して0.1~0.5重量%、好ましくは0.15~0.4重量%の、式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、を含み、
前記ポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度TcCを有し、
【数4】
好ましくは、
【数5】
より好ましくは、
【数6】
前記結晶化温度は、10℃/分の加熱および冷却速度での示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、ポリブテン-1組成物。
【化4】
(式中、R1は炭素数1~6のアルキルであり、R2は水素又は炭素数1~6のアルキルであり、nは0~5の整数である。)
【請求項8】
タルクC)をさらに含む、請求項7に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項9】
前記タルクC)は、レーザー光回折によって決定された、体積基準の粒子径分布Dv(0.95)が45μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下、特に20μm以下の粒子の形態であり、下限はすべての場合において好ましくは5μmである、請求項8に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項10】
前記タルクC)は、A)+B)+C)の総重量を基準にして、0.15~2.5重量%、好ましくは0.2~2重量%、より好ましくは0.2~1.5重量%の量で存在する、請求項8又は9に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項11】
前記アルカノイルヒドラジンB)は、式(II)を有する、請求項7又は8に記載のポリブテン-1組成物。
【化5】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルである。)
【請求項12】
前記B)は、式(III)を有する、請求項11に記載のポリブテン-1組成物。
【化6】
【請求項13】
T
c
C値が85℃以上、特に85℃~98℃である、請求項7又は8に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項14】
請求項6~13のいずれか1項に記載のポリブテン-1組成物を含有する製品、好ましくは配管又は配管継手。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、結晶化温度を上昇したポリブテン-1組成物の調製方法および得られた組成物の調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、核形成剤を添加することにより、ポリオレフィンの結晶化温度を高めることができることが知られている。これらの核形成剤は通常ポリマーの溶融物からの結晶化を促進する異物(非均質核形成)である。核形成効果の結果として、結晶化温度の上昇に加えて、他の貴重な特性、特に光学的および機械的特性が向上する。
【0003】
したがって、当技術分野では、ポリオレフィンの結晶化温度を大幅に上昇させることができる核形成剤を発見するための継続的な努力がなされている。
【0004】
ポリブテン-1の最も有価な核形成剤は、結晶性がすでに高いポリブテン-1材料の結晶化温度をさらに高めることができるため、結晶化がない場合でも比較的高い結晶化温度を得ることができるはずであり、その結果、機械的特性の向上は水道管分野での使用が非常に望ましい。
【0005】
また、一般に押出成形により行われるパイプ成形ステップにおいて、押出成形を高速化するためには、十分に短い結晶化時間が必要である。
【0006】
より一般的には、多くのポリマー成形プロセスでは、高い処理速度を達成するために結晶化時間が短いことが有利である。
【0007】
出願人は、ポリブテン-1を特定のクラスのアルカノイルヒドラジンと核形成することにより、上記効果を良好に達成できることを見出した。
【発明の概要】
【0008】
したがって、本開示は、結晶化温度Tcを高めたポリブテン-1組成物の調製方法であって、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%、好ましくは99.6~99.85重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは、ブレンドステップ中に溶融状態にされるか、または溶融状態に維持される、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して、0.1~0.5重量%、好ましくは0.15~0.4重量%の、式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンとをブレンドするステップを含み、
このようにして得られたポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度T
c
Cを有し、
【数1】
ここで、T
c
AおよびT
c
Cは℃で表され、T
c
Aはブテン-1ポリマーA)の結晶化温度であり、好ましくは60℃以上、より好ましくは65℃以上であり、前記結晶化温度は、10℃/分の加熱および冷却速度での示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、調製方法を提供する。
【化1】
(式中、R1は炭素数1~6のアルキルであり、R2は水素又は炭素数1~6のアルキルであり、nは0~5の整数である。)
【0009】
ブテン-1ポリマーを含むポリオレフィンにおける安定剤としての前記ヒドラジン誘導体化合物の使用は、例えば米国特許第3773722号および米国特許第4812500号から知られている。
【0010】
しかし、結晶化温度が十分に高い結晶性ブテン-1ポリマーにおいて、このような化合物が核形成効果を有することは、これまで知られていない。
【0011】
したがって、本発明の方法は、成分A)の結晶化温度を上昇させるために、上記の割合でアルカノイルヒドラジンB)を新たに使用することにもなる。
【0012】
本開示はまた、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%、好ましくは99.6~99.85重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは、60℃以上、好ましくは65℃以上の前記結晶化温度TcAを有する、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して0.1~0.5重量%、好ましくは0.15~0.4重量%の、上記式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、を含み、
前記組成物は、以下の関係を満たす前記結晶化温度TcCを有する、ポリブテン-1組成物を提供する。
【数2】
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のポリブテン-1組成物は、下記の関係を満たす結晶化温度TcCを有することが好ましい。
【数3】
より好ましくは、本発明のポリブテン-1は、組成物の結晶化温度TcCを有する。
【数4】
前記結晶化温度は、1回の溶融サイクル後に決定され、走査速度は10℃/分である。
したがって、溶融ポリマーサンプルを最初に溶融した後の冷却運転で結晶化温度(例えば前のDSC使用)で測定され、このような結晶化温度はブテン-1ポリマーの結晶形IIに起因すると考えられる。
結晶化ピークが1つ以上検出された場合、最も強いピークの温度をブテン-1ポリマー成分A)および本発明のブテン-1ポリマー組成物の両方のTc値とする。
【0014】
成分B)のさらなる効果は、本発明のポリブテン-1組成物の結晶化時間が短いことである。
【0015】
好ましくは、それは95℃で50~150秒、特に65~130秒の結晶化半減期を有する。
【0016】
この決定は、まず、サンプルを溶融し、次に所望の温度(この場合は95℃)まで急冷し、結晶化放熱によるヒートフローを測定するDSCによって行われる。熱伝達の積分は結晶化が完了するまで、すなわち、熱伝達が停止するまでの時間の関数として記録される。
【0017】
半結晶化時間は、熱伝達積分値が最終値の半分に達する時間である。
さらに、本発明のポリブテン-1組成物は、好ましくは、以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つを有する。
-Tc
C値は、85℃以上、特に85℃~98℃の値であること
-厚さ1mmの圧縮成形プラークについてISO 6721-4:2019に従ってDMTA分析により23℃で測定された引張弾性率は、500~800MPa、より好ましくは550~750MPaであること
-ISO 179-1:2010 1eAに従って測定された、23℃でのシャルピー衝撃抵抗の値は3~20kJ/m2、特に5~15kJ/m2であること
-ISO 179-1:2010 1eAに従って測定された、0℃でのシャルピー衝撃抵抗の値は、1~10kJ/m2、特に1~5kJ/m2であること
【0018】
-ISO 179-1:2010 1eAに従って測定された、-23℃でのシャルピー衝撃抵抗の値は、1~8kJ/m2、特に1~3kJ/m2であること
【0019】
ブテン-1ポリマー成分A)が1つまたは複数のブテン-1コポリマーからなる、またはそれを含む場合、そのようなコポリマーは、好ましくはエチレン、プロピレンおよびCH2=CHRアルファオレフィンから選択される1つまたは複数のコモノマーを含んでもよく、ここで、RはC3-C8アルキルラジカルであり、特にペンテン-1,4-メチル-ペンテン-1、ヘキセン-1およびオクテン-1である。
【0020】
エチレン、プロピレン、ヘキセン-1が好ましい。
【0021】
以上の定義から、「コポリマー」とは、複数のコモノマーを含むポリマーを含むことが明らかである。
【0022】
ブテン-1ポリマー成分A)は、実施例に示すように当技術分野で知られており、市販されている。
【0023】
前記ブテン-1ポリマー成分A)は、等タクシー性が高い直鎖状ポリマーであることが好ましい。
【0024】
特に、ブテン-1ポリマー成分A)は、150.91MHzで動作する13C-NMRでmmmmペンタッド/総ペンタッド、または0℃でキシレン不溶分の重量による量としてとして測定して、90~99%、より好ましくは93~99%、最も好ましくは95~99%のアイソタクティシティーを有する。
【0025】
ブテン-1ポリマー成分A)は、好ましくは0.05~50g/10分、より好ましくは0.1~10g/10分のMI2値を有し、ここでISO 1133-1:2011に従って測定された、2.16kgの荷重、190℃でのメルトフローインデックスMIである。
【0026】
ブテン-1ポリマー成分A)のMI10値は、好ましくは、1~100g/10分、より好ましくは2~50g/10分であり、ここで、MI10は、ISO 1133-1:2011に従って測定された、10kgの荷重、190℃でのメルトフローインデックスMIである。
【0027】
ブテン-1ポリマー成分A)のMI10/MI2比は、好ましくは20~40、より好ましくは25~35である。
【0028】
一実施形態では、ブテン-1ポリマー成分A)は、ホモポリマーから選択されてもよい。
【0029】
さらなる一実施形態では、ブテン-1ポリマーA)は、コモノマー含有量、特に共重合エチレン含有量が0.5~10モル%、好ましくは0.7~9モル%のコポリマーから選択されてもよい。
【0030】
さらなる一実施形態では、ブテン-1ポリマー成分A)は、以下を含むブテン-1コポリマー組成物であってもよい:
A1)ブテン-1ホモポリマー、または2モル%までの共重合コモノマー含量を有する、ブテン-1とエチレン、プロピレン、先に定義したCH2=CHRオレフィンおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー
A2)3~25モル%の共重合コモノマー含量を有する、ブテン-1と、エチレン、プロピレン、先に定義したCH2=CHRオレフィンおよびそれらの混合物から選択される少なくとも1種のコモノマーとのコポリマー
【0031】
前記組成物は、A1)+A2)の合計に対して、0.5~18モル%、好ましくは0.7~15モル%の総共重合コモノマー含量を有する。
【0032】
A1)およびA2)の相対量は、A1)+A2)の合計に対して、10重量%~40重量%、特に15重量%~35重量%のA1)と、90重量%~60重量%、特に85重量%~65重量%のA2)の範囲である。
【0033】
一実施形態では、ブテン-1ポリマー成分A)は、以下の追加の特徴のうちの少なくとも1つを有してもよい:
-結晶化温度の上限は80℃であること
-成形10日後に基準ISO 178:2010に従って測定された曲げ弾性率値は、100~800MPa、より好ましくは250~600MPa、最も好ましくは300~600MPaであること
-分子量分布Mw/Mnは4以上、好ましくは5以上であり、上限はすべての場合において好ましくは10であり、Mwは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される重量平均モル質量であり、Mnは、ゲル浸透クロマトグラフィーによって測定される数平均モル質量であること
-10℃/分の走査速度での2回目の加熱実行においてDSC(示差走査熱量測定計)によって測定された、融点TmIIは、125°C以下、好ましくは120℃以下であり、下限はすべての場合において好ましくは75℃であること
-A)の総重量を基準として、0℃でキシレンに可溶な画分の含量は、15重量%以下、より好ましくは10重量%以下であり、下限はすべての場合において好ましくは0.5重量%であること
-X線結晶化度は25~65%であること
【0034】
任意に、ブテン-1ポリマー成分A)は、以下のさらなる追加の特徴の少なくとも1つを有してもよい:
-135℃でテトラヒドロナフタレン(THN)中で測定された極限粘度(I.V.)、5dl/g以下、好ましくは3dl/g以下、下限はすべての場合において好ましくは0.4dl/gであること
-Mwは100000g/モル以上、特に100000~650000g/モルであること
-走査速度10℃/分のDSCによって測定された融点TmIは95℃~135℃であること
-密度は885~925kg/m3、好ましくは900~920kg/m3、特に912~920kg/m3であること
【0035】
前記ホモポリマーおよびコポリマーは、TiCl3又は塩化マグネシウム上に担持されたチタンのハロゲン化化合物(特にTiCl4)に基づく触媒と助触媒(特にアルミニウムのアルキル化合物)を用いてブテン-1(任意のコモノマーと)重合する、ブテン-1の低圧ツィーグラー-ナッタ重合により得られ得る。電子供与体化合物を前記触媒成分に添加して、分子量や等方規則性などのポリマー特性を調整することができる。前記電子供与体化合物の例は、カルボン酸のエステルおよびアルキルアルコキシシランである。
【0036】
特に、ブテン-1ポリマー成分A)は、(i)MgCl2上に担持されたTi化合物および内部電子供与体化合物を含む固体成分を含む立体特異的触媒の存在下、でモノマーを重合することによって調製することができる。(ii)アルキルアルミニウム化合物、および任意に、(iii)外部電子供与体化合物。
【0037】
担体としては、活性形態の二塩化マグネシウムが好適に用いられる。活性型の二塩化マグネシウムがチーグラー・ナッタ触媒の担体として特に適していることは特許文献から広く知られている。特に、米国特許第4,298,718号および米国特許第4,495,338号は、チーグラー・ナッタ触媒におけるこれらの化合物の使用を最初に記載したものである。これらの特許から、オレフィンの重合用触媒の成分において担体または共担体として使用される活性型のジハロゲン化マグネシウムが、X線スペクトルによって特徴づけられることが知られている。このX線スペクトルにおいて、非活性なハロゲン化物の強度は減少し、ハローに置き換えられ、ハローの最大強度は、より強い線の強度と比べて低い角度に移動する。
【0038】
触媒成分(i)に用いられるチタン化合物は、TiCl4およびTiCl3であることが好ましく、また、式Ti(OR)n-yXy(式中、nはチタンの価数、Xはハロゲン、好ましくは塩素、yは1~nの範囲の数である)で表されるチタノハロアルコキシドを用いることもできる。
【0039】
内部電子供与性化合物は、好ましくはエステルから選択され、さらに好ましくは、モノカルボン酸(例えば安息香酸)またはポリカルボン酸(例えばフタル酸、コハク酸、グルタル酸)のアルキル、シクロアルキルまたはアリールエステルから選択され、前記アルキル、シクロアルキルまたはアリールは、炭素数1~18のものである。前記電子供与性化合物の例として、フタル酸ジイソブチル、フタル酸ジエチル、フタル酸ジヘキシル、3,3-ジメチルグルタル酸ジエチル又はジイソブチルが挙げられる。通常、内部電子供与性化合物はMgCl2に対するモル比が0.01~1、好ましくは0.05~0.5である。
【0040】
アルキル-Al化合物(ii)は、好ましくは、例えばトリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリ-n-ブチルアルミニウム、トリ-n-ヘキシルアルミニウム、トリ-n-オクチルアルミニウムなどのトリアルキルアルミニウム化合物の中から選択される。トリアルキルアルミニウム化合物と、ハロゲン化アルキルアルミニウム、水素化アルキルアルミニウムまたはAlEt2ClおよびAl2Et3Cl3などのアルキルアルミニウムセスキクロリドとの混合物を使用することも可能である。
【0041】
外部電子供与性化合物(iii)は、Ra
1Rb
2Si(OR3)c(式中、aおよびbは0~2の整数であり、cは1~3の整数であり、(a+b+c)は4であり、R1、R2およびR3は、ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1~18のアルキル、シクロアルキルまたはアリールである。)のケイ素化合物から選択されることが好ましい。特に好ましいケイ素化合物群としては、aは0であり、cは3であり、bは1であり、R2はヘテロ原子を含有してもよい分岐アルキル又はシクロアルキルであり、R3はメチルである。このような好ましいケイ素化合物の例は、シクロヘキシルトリメトキシシラン、t-ブチルトリメトキシシラン、ジイソプロピルドリメトキシシランおよびテキシルトリメトキシシランである。特に好ましくは、ヘキシルトリメトキシシランを使用する。
【0042】
外部電子供与体化合物(iii)は、有機アルミニウム化合物と上記外部電子供与体化合物(iii)とのモル比が、0.1~500、好ましくは1~300、より好ましくは3となるような量で、使用される。
【0043】
触媒を重合ステップに特に適したものとするために、予備重合ステップにおいて触媒を予備重合することができる。前記予備重合は、液体(スラリー又は溶液)又は気相中で、通常100℃未満、好ましくは20~70℃の温度で行われてもよい。予備重合ステップは、固体触媒成分1g当たり0.5~2000g、好ましくは5~500g、より好ましくは10~100gの量で、ポリマーを得るのに必要な時間だけ少量のモノマーで行う。
【0044】
あるいは、あるいは、ブテン-1ポリマー成分A)は、以下と接触させることによって得られるメタロセン触媒系の存在下でモノマーを重合させることによって得ることができる。
-立体剛性メタロセン化合物、
-アルミノキサン又はアルキルメタロセンカチオンを形成することができる化合物、および、任意に
-有機アルミニウム化合物。
【0045】
重合プロセスは、任意に不活性炭化水素溶媒の存在下で液相で操作することによって前記触媒を用いて、または流動床もしくは機械的に撹拌された気相反応器を使用して気相で行うことができる。
【0046】
炭化水素溶媒は、芳香族(例えば、トルエン)又は脂肪族(例えば、プロパン、ヘキサン、ヘプタン、イソブタン、シクロヘキサンおよび2,2,4-トリメチルペンタン、イソドデカンなど)であってもよい。
【0047】
好ましくは、重合プロセスは、液体ブテン-1を重合媒体として使用することによって行われる。
【0048】
重合温度は、20℃~150℃、特に50℃~90℃の間、例えば65℃~82℃であってもよい。
【0049】
分子量を制御するために、分子量調整剤、特に水素を重合環境に供給する。
【0050】
4以上のMw/Mn値、および以前に定義されたMI10/MI2比の値は、一般に広い分子量分布(MWD)になると考えられる。
【0051】
広い分子量を持つブテン-1ポリマーは、いくつかの方法で入手できる。方法の1つは、ブテン-1を(共)重合するときに、本質的に広いMWDポリマーを生成できる触媒を使用することにある。他の可能な方法は、十分に異なる分子量を有するブテン-1ポリマーを、従来の混合装置を用いて機械的にブレンドすることである。
【0052】
また、分子量の異なるブテン-1ポリマーを、各反応器に供給する分子量調整剤の濃度などの反応条件の異なる2つ以上の反応器で順次調製する多段重合方法に従った操作も可能である。
【0053】
また、各反応器に異なるモノマー量を供給することも可能である。
【0054】
特に、本発明のブテン-1ポリマー成分A)が前述の2つの成分A1)およびA2)を含む場合、重合プロセスは、直列に接続された2つ以上の反応器内で実施することができ、ここで、成分B1)およびB2)は、形成されたポリマーおよび前の段階で使用された触媒の存在下で、第1段階を除く各段階で操作される、別個の後続段階で調製される。
【0055】
触媒は、第1の反応器にのみ添加されてもよく、又は複数の反応器に添加されてもよい。
【0056】
高いMI値は重合時に直接得られる。高いMI値は、その後の化学処理(化学ビスブレーキング)によっても得られる。
【0057】
ポリマーの化学的ビスブレーキングは、過酸化物などのフリーラジカル開始剤の存在下で行われる。
【0058】
ポリマービスブレイクステップに最も好適に用いられる過酸化物の分解温度は、好ましくは150℃~250℃である。上記過酸化物としては、例えば、ジトルトブチルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサンなどが市販されている。
【0059】
ビスブレーキングプロセスに必要な過酸化物の量は、好ましくはポリマーの0.001~0.5重量%、より好ましくは0.001~0.2%の範囲である。
【0060】
式(I)のアルカノイルヒドラジンA)におけるアルキルR1およびR2の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、t-ブチル、ペンチル、ヘキシル、t-ブチルが特に好ましい。
【0061】
アルカノイルヒドラジンA)は、下記式(II)を有することが好ましい。
【化2】
(式(I)において、R
1およびR
2は、上記式(I)で記載されたものと同様の意味を有する。)
【0062】
特に好ましいアルカノイルヒドラジンA)は、式(III)を有する、2’,3-ビス[[3-[3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル]プロピオニル]]プロピオノヒドラジドとも呼ばれる化合物N,N’-ビス-β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-プロピオニル-ヒドラジンである。
【0063】
【0064】
前記アルカノイルヒドラジンA)は、米国特許第3773722号に例示されているように、ヒドラジンとアルキルヒドロキシフェニルアルカン酸のエステルとの反応、その後のさらなるアシル化によって調製することができる。
【0065】
式(III)のアルカノイルヒドラジンは、商品名Irganox 1024でBASFによって販売されている。
本発明のポリブテン-1組成物は、任意の成分C)としてタルクを含有することもできる。
成分C)の好ましい量は、A)+B)+C)の総重量に対して、0.15~2.5重量%、より好ましくは0.2~2重量%、最も好ましくは0.2~1.5重量%である。
特に好ましいのは、45μm以下、好ましくは35μm以下、より好ましくは25μm以下、特に20μm以下の体積基準(体積)粒子径分布Dv(0.95)を有する粒子の形態のタルクであり、この体積基準(体積)粒子径分布Dvは、レーザー光回折によって決定され、下限はすべての場合において好ましくは5μmである。
前記Dv(0.95)値に加えて、成分C)は、好ましくは、以下の体積基準の粒子径分布の特徴の少なくとも1つを有する:
-Dv(0.99)は100μm以下、または50μm以下、または30μm以下であり、下限はすべての場合において好ましくは10μmであること
-Dv(0.90)は20μm以下、または15μm以下であり、下限はすべての場合において3μmであること
-Dv(0.50)は10μm以下、または8μm以下であり、下限は2μmであること
-Dv(0.10)は5μm以下、または4μm以下であり、下限は好ましくは1μmである
体積基準の粒子径とは、対象粒子と同じ体積を有する等価球の直径をいう。
したがって、前記体積基準の粒子径分布の値は、体積分率を指定された粒子(例えば于Dv(0.95)に対して95体積%)が所定値よりも小さい等価直径を有することを意味する。
このような決定はレーザ回折により行われる。
使用される分析装置は、好ましくはマルバーン(Malvern)Mastersizer器具である。
タルクがケイ酸マグネシウム水和物であることが知られている。
通常、その式Mg3Si4O10(OH)2であることが報告されている。
本質的には、主にまたは実質的に前記水和ケイ酸マグネシウムから構成され、必要に応じて亜塩素酸塩(水和ケイ酸マグネシウムアルミニウム)およびドロマイトなどの他の鉱物材料と会合する鉱物である。
粒子径分布の前記値を達成するために、タルクは、公知の技術、例えば空気分級ミル、圧縮空気、蒸気および衝撃粉砕を用いて粉砕することができる。
本発明のポリブテン-1組成物は、成分A)、B)、および任意にC)を、当該技術分野で周知のブレンド技術および装置を用いてブレンドすることによって得ることができる。
【0066】
したがって、単軸スクリュー押出機、従来型およびCoKneader(バスのような)、二軸同方向回転スクリュー押出機またはミキサー(連続式およびバッチ式)を含む、当技術分野で一般に知られている押出機を使用することができる。このようなブレンド装置は、それぞれ成分A)、B)、および場合によりC)用の別個の供給システムを備えることができる。成分B)と任意成分C)とは、ブレンド装置、特に押出機の内部のポリマー質量に、A)がブレンド装置に供給される点から同じ供給口または下流のいずれかのいずれかの位置に添加することができ、A)が溶融した均質な質量の形態に達することができる。
【0067】
成分B)およびC)は、ポリマー担体、より好ましくはポリオレフィン担体、特にブテン-1ポリマー成分A)と同じ種類のポリブテン担体中のマスターバッチの形態で供給することができる。
【0068】
ブレンドステップ中の処理温度は、成分A)を溶融状態にする(および維持する)のに十分な温度でなければならず、または、B)および必要に応じてC)を添加したときに成分A)がすでに溶融している場合には、成分A)を溶融状態に維持するのに十分な温度でなければならない。このような温度は、好ましくは100℃~220℃、より好ましくは150℃~220℃、最も好ましくは180℃~220℃の範囲である。
【0069】
ポリマー組成物の調製時に、主成分A)とB)および他の任意のポリマー成分に加えて、安定剤(耐熱、光、UV)、可塑剤、制酸剤、帯電防止剤および撥水剤、顔料などの当分野でよく使われる添加剤を導入してもよい。
【0070】
前述したように、本発明のポリブテン-1組成物の好ましい用途は、パイプ、特に水および熱流体を運ぶためのパイプ、およびパイプ継手を製造することである。通常、機械的性能および加工性能の改良を必要とする任意の用途に有利に利用できる。
【実施例】
【0071】
本明細書で提供される様々な実施形態、組成物および方法の実施例および利点は、以下の実施形態で開示される。これらの例は単に例示的なものであり、いかなる方法であっても、添付の特許請求の範囲を限定することを意図しているものではない。
【0072】
以下の分析方法を用いてポリマー組成物を特徴付ける。
【0073】
結晶化および溶融温度
【0074】
結晶化温度(Tc)および融解温度の値は、以下の手順を使用して決定された。
【0075】
Perkin Elmer DSC-7装置を使用して、示差走査熱量測定(DSC)データを取得した。秤量したサンプル(5~10mg)をアルミディスクに封入し、200℃で10℃/分相当の走査速度で加熱した。サンプルを200℃で5分間保持し、全ての微結晶が完全に溶融するようにして、サンプルの熱履歴を解消した。続いて、10℃/分の走査速度で-20℃まで冷却し、ピーク温度を結晶化温度(Tc)とし、面積を結晶化エンタルピーとした。-20℃で5分間静置した後、10℃/分に相当する走査速度でサンプルについて200℃まで2回目の加熱を行った。この2回目の加熱運転では、ピーク温度をポリブテン-1結晶形IIの融解温度(TmII)、面積を融解エンタルピー(ΔHfII)とした。
【0076】
ポリブテン-1結晶形Iの溶融温度(TmI)を決定するために、サンプルを溶融し、200℃で5分間保持した後、10℃/minの冷却速度で20℃まで冷却した。その後、サンプルを室温で10日間保管した。10日後、サンプルをDSCにかけ、-20℃まで冷却した後、10℃/分に相当する走査速度で200℃で加熱した。この加熱運転では、サーモグラムの低温側からの最初のピーク温度を溶融温度(Tml)とした。
【0077】
95℃での半結晶化時間
【0078】
Perkin Elmer DSC-7装置を使用して、示差走査熱量測定(DSC)データを取得した。秤量したサンプル(5~10mg)をアルミディスクに封入し、10℃/分に相当する走査速度で室温から180℃まで加熱した。
【0079】
サンプルを180℃で5分間保持し、全ての微結晶が完全に溶融するようにして、サンプルの熱履歴を解消した。
【0080】
その後、60℃/分に相当する走査速度で95℃まで冷却し、95℃での結晶化発熱によるヒートフローを測定した。熱伝達の積分は、結晶化が完了するまで、すなわち伝熱が停止するまでの時間の関数として記録された。
【0081】
半結晶化時間は、熱伝達積分値が最終値の半分に達する時間である。
【0082】
粒度分布
【0083】
ISO 13320:2009にしたがってレーザ回折により粒度分布(PSD)を測定した。
【0084】
使用される装置は英国マルバーン社製のサンプル分散ユニットを備えるMastersizer(登録出願)2000である。
【0085】
検出システムは以下の特徴がある。
-赤色光:前向散乱、側方散乱、後方散乱;
-青色光:広角前後散乱散乱;
-光源:赤色光He-Neレーザー;青色光固体光源;
-光学アライメントシステム:暗視野光学レチクルを有する自動高速アライメントシステム;
-レーザーシステム:クラス1レーザー製品。
【0086】
PSD決定は、分散微粒子サンプルを介してレーザー単色光が散乱する光回折原理に基づいている。シグナルは、受信シグナルを処理して次元の物理量に変換するために、機器に接続されたコンピュータによって受信される。
【0087】
結果は、106クラスの直径(仮想ふるい)と、体積および追加の導出パラメータに関する関連累積パーセンテージで構成されるPSDレポートによって表される。
【0088】
測定データは、バックグラウンドの電気ノイズに加えて、光学系上の塵や分散剤中に浮遊する汚染物質による散乱データによっても汚染される。このため、サンプル分散ユニットが清潔で、微量の不純物や残留物質がすべて除去されていることを確認する必要がある。
【0089】
したがって、純分散剤(溶媒)を用いたバックグラウンド測定および電気バックグラウンド測定を行った。得られた総バックグラウンド値をサンプル測定から減算して、真のサンプルデータを得た。
【0090】
バックグラウンド測定の場合、帯電防止剤として2g/1 SPAN 80 Pureを含む無水n-ヘプタン溶媒をサンプル分散ユニットに導入した。各測定の前に、超音波処理(60秒)により溶媒中の残留空気を除去した。
【0091】
次に、撹拌機と循環ポンプを2205rpmの出力範囲で動作しながら、溶媒を測定セルに送った。
【0092】
測定
【0093】
撹拌により無水n-ヘプタンに懸濁液されたサンプルをサンプルユニットに直接添加した。
【0094】
凝集体(存在する場合)の分解を促進するには、サンプル懸濁液の循環に2分を要した。
【0095】
モニター上で遮蔽バーを確認することができ、サンプルの最適な体積濃度に到達することができた。サンプルの濃度は10%~30%の範囲内の掩蔽値に対応していなければならない。この範囲は代表性と安定した結果を保証する。
【0096】
屈折率(RI)は以下のように設定された。
粒子RI:1.596;
分散剤RI:1.390。
【0097】
測定時間は4秒である。
【0098】
レーザー装置から受信したシグナルを処理した。次に、Mastersizer装置が提供するソフトウェアでPSDを計算した。
【0099】
メルトフローインデックスMI
【0100】
ISO 1133-12012-03に従って、190℃、所定の荷重で決定した。
【0101】
極限粘度
【0102】
標準ASTM D 2857-16にしたがって135℃でテトラヒドロナフタレンにて決定した。
【0103】
引張弾性率(MET-DMTA)
【0104】
ISO 6721-4:2019にしたがって、23℃で動機械的熱分析(DMTA)により1mm厚の圧縮成形板上で決定した。
【0105】
曲げ弾性率
【0106】
成形10日後、標準ISO 178:2019にしたがって測定した。
【0107】
23℃および0℃におけるアイゾット耐衝撃性
【0108】
成形後10日後、ISO 179-1:2010 1eAに従って測定した。
【0109】
コモノマー含有量
【0110】
ブテン-1ポリマーのコモノマー含有量はFT-IRによって決定された。
【0111】
ポリマーのプレスフィルムのスペクトルは、吸光度対波数(cm-1)で記録された。以下の測定値でエチレン含有量を計算した。
a)膜厚の分光正規化に使用される、4482~3950cm-1の結合吸収バンドの面積(At)。
b)ポリマーサンプルのスペクトルとメチレン基シーケンスBEE およびBEB(B:1、ブテン単位、E:エチレン単位)による吸収バンドの間のデジタル減算の減算係数(FCRC2)(CH2シェイク振動) 。
c)C2PB スペクトルを差し引いた後の残りの帯域の面積(AC2,block)。それは、メチレン基のシーケンスEEE(CH2シェイク振動)に由来する。
【0112】
装置
【0113】
上述したスペクトル測定を提供することができるフーリエ変換赤外分光光度計(FTIR)を用いた。
【0114】
200℃に加熱可能なプラテンを有する油圧プレス(Carver又は等価物)を用いた。
【0115】
方法
【0116】
(BEB+BEE)シーケンスの較正
【0117】
%(BEB+BEE)wt対FCRC2/Atをプロットすることにより、較正直線を得た。傾きrと切片Irは線形回帰により計算した。
【0118】
EEEシーケンスの較正
【0119】
%(EEE)wt対AC2,block/Atをプロットすることにより、較正直線を得た。傾きGHと切片IHは、線形回帰によって計算した。
【0120】
サンプルの調製
【0121】
油圧プレスを使用して、約1.5gのサンプルを2枚のアルミニウム箔の間に押し付けることにより、厚いシートを得た。均一性の問題があれば、最低2回のプレス操作を行うことを提案する。このシートからごく一部を切り出して膜を成形した。推奨膜厚は、0.1~0.3mmである。
【0122】
プレス温度は、140(10℃である。
【0123】
結晶相の変化は時間の経過とともに起こるため、成形後すぐにサンプル膜のIRスペクトルを収集することを提案する。
【0124】
手順
【0125】
機器データ取得パラメータは次のとおりである。
パージ時間:最低30秒
収集時間:最低3分
アポダイゼーション:Happ-Genzel
分解能:2cm-1
空気バックグラウンドに対するサンプルのIRスペクトルを収集した。
【0126】
計算
エチレン単位のBEE+BEBシーケンスの重量濃度を計算した。
【数5】
残留バンドの肩の間のベースラインを使用して、上記の減算後の残留領域(AC2,block)を計算した。
エチレン単位のEEEシーケンスの重量濃度を計算した。
【数6】
エチレンの総量を重量パーセントで計算した。
【数7】
【0127】
アイソタクチックペンタッド含有量の決定
13C NMRスペクトルは、重水素化1,1,2,2-テトラクロロエタン中のポリマー溶液(8~12重量%)について120℃で取得した。
13C NMRスペクトルは低温プローブを備えたBruker AV-600分光器で取得され、該分光器はフーリエ変換モードで120℃、150.91 MHzで作動し、
1H-
13C結合を除去するためにパルスとCPD(WALTZ 16)との間に15秒の遅延を有する90°パルスを使用する。60ppm(0~60ppm)のスペクトルウィンドウを使用して約512個のトランジェントを32Kデータ点に記憶した。mmmmペンタッドピーク(27.73ppm)を参考とした。
割り当ては、文献(Macromolecules 1991,24,2334-2340、Asakura T.著)に記載されているように行った。
ブテン-1ポリマーのペンタドタクティシティーの百分率値(mmmm%)は分岐メチレン炭素のNMR領域内の関連ペンタッドシグナル(ピーク面積)から計算された立体規則性ペンタッド(アイソタクチックペンタッド)の百分率であり、以下のとおりである。
【数8】
ここでは、Alは28.0と27.59ppmとの間の面積であり、
A2は27.59と26.52ppmとの間の面積である。
【0128】
0℃でキシレンに可溶な画分と不溶な画分(XS-0℃)
【0129】
ポリマーサンプル2.5gを135℃で撹拌し、250mlのキシレンに溶解した。30分後、溶液を撹拌しながら100℃まで冷却した後、氷水浴に入れて0℃まで冷却した。その後、溶液を氷水浴中で1時間静置した。ろ紙で沈殿物を濾過した。ろ過中、フラスコ内温をできるだけ0℃に近づけるために、フラスコを氷水浴中に放置した。濾過終了後、濾液温度を25℃に保ち、メスフラスコを水流浴に約30分間浸漬した後、50mlのアリコートを2つにわけた。溶液アリコートを窒素ガス流中で蒸発させ、残留物を一定重量に達するまで80℃の真空で乾燥させた。両残留物の重量差は3%未満でなければならない。それ以外の場合は、テストを繰り返す必要がある。そこで、残留物の平均重量からポリマー可溶物の重量百分率(0℃でのキシレン可溶物=XS0℃)を計算した。0℃でのo-キシレン中の不溶画分(0℃でのキシレン不溶物=XI%0℃)は以下のとおりである。
【数9】
【0130】
X線結晶化度の決定
【0131】
X線結晶化度は、固定スリットを備えたCu-Kα1放射線を用いて、回折角度2θ=5°と2θ=35°の間で、6秒ごとに0.1°のステップでスペクトルを収集したX線回折粉末回折計を用いて測定した。
【0132】
測定は、厚さ1.5~2.5mm程度、直径2.5~4.0cm程度の円盤状の圧縮成形試験片に対して行った。これらの試験片を200℃±5℃の温度で、特に大きな圧力を加えることなく10分間圧縮成形プレスで得た後、約10kg/cm2の圧力を数秒間かけ、最後の操作を3回繰り返した。
【0133】
回折パターンを使用して、スペクトル全体に適切な線形ベースラインを定義し、スペクトルプロファイルとベースラインの間の総面積(Ta)(カウント/秒・2θで表される)を計算することにより、結晶化度に必要なすべての成分を導き出した。
次に、全スペクトルに沿って、2相モデルに従ってアモルファス領域と結晶領域を分離する適切なアモルファスプロファイルを定義した。したがって、カウント/秒・2θで表される非晶質領域(Aa)を、非晶質プロファイルとベースラインとの間の領域、およびカウント/秒・2θで表される結晶領域(Ca)をCa=Ta-Aaとして計算してもよい。
【0134】
次に、次式に基づいてサンプルの結晶化度を計算した。
【数10】
【0135】
GPCによるMw/Mnの決定
【0136】
平均MnおよびMw、ならびにそこから導き出されるMw/Mnの決定は、Waters GPCV 2000装置を使用して実行された。Waters GPCV 2000装置は、4つのPLgel Olexis混合ゲル(Polymer Laboratories)からなるカラムセットおよびIR4赤外線検出器(PolymerChar)を備える。カラムの寸法は300(×7.5mmであり、粒子径は13μmである。移動相として1-2-4-トリクロロベンゼン(TCB)を用い、その流速を1.0ml/分に保持した。すべての測定は150℃で行われた。TCB中の溶液濃度を0.1g/dLとし、分解を防止するために0.1g/1の2,6-ジブチル-p-クレゾールを添加した。GPC計算では、Polymer Laboratoriesから供給された10個のポリスチレン(PS)標準サンプル(ピーク分子量は580~8500000の範囲)を使用してユニバーサル検量線を得た。3次多項式フィットを使用して、実験データを補間し、関連する検量線を取得した。Empower(Waters)を用いてデータ取得および処理を行った。Mark-Houwink関係を使用して、分子量分布と関連する平均分子量を決定した。PSとポリブテン(PB)のK値は、それぞれKPS=1.21×10-4dL/gおよびKPB=1.78×10-4dL/gであり、PSのマーク-フウィンク指数α=0.706、とPBのマーク-フウィンク指数α=0.725を併用する。
【0137】
ブテン-1/エチレンコポリマーに対して、データ評価上、組成が全分子量にわたって一定であると仮定し、下記の線形結合を用いてMark-Houwink関係のK値を計算した。
【数11】
ここでは、K
EBはコポリマーの定数であり、K
PE(4.06×10
-4,dL/g)およびK
PB(1.78×10
-4dl/g)はポリエチレンおよびポリブテンの定数であり、x
Eおよびx
Bはエチレンおよびブテン-1重量%含有量である。Mark-Houwink指数α=0.725は、組成に関わらず、全てのブテン-1/エチレンコポリマーに使用される。
【0138】
密度
【0139】
標準ISO 1183-1:2019にしたがって23℃で決定した。
【0140】
実施例1、2、および比較例1、2
【0141】
ポリブテン-1組成物を調製するために、以下の材料を用いた。
【0142】
ブテン-1ポリマーA)
【0143】
ジーグラー-ナッタ触媒を液体モノマー重合により調製した、曲げ弾性率450MPa、MI1012g/10分、MI20.4g/10分、0℃でキシレンに可溶な画分の含有量が2重量%、密度が914kg/cm3であるブテン-1ホモポリマー。
【0144】
これは、商標Toppyl PB 0110Mで市場で入手可能であり、LyondellBasellによって販売されている。
【0145】
アルカノイルヒドラジン成分B)
【0146】
上記式(III)を有するアルカノイルヒドラジン、商標であるIrganox 1024でBASFが販売している。
【0147】
タルクC)
【0148】
表1に記載されている体積基準の粒子径分布を有するタルク、添加剤を含まない、商標HM05でイミファビが販売している。
【0149】
Irgafos 168(登録商標)
【0150】
トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)ホスファイト、Ciba Geigyから販売、熱安定剤。
【表1】
【0151】
ポリブテン-1組成物の調製
【0152】
前記成分を、共回転二軸スクリュー、分割スクリュー直径27mm、L/D比40:1、最大スクリュー速度500rpmを備えたLeistritz Micro27押出機内で溶融してブレンドした。
【0153】
主な押出パラメータ:
温度:200℃
スクリュー速度:200rpm
出力:15kg/h
【0154】
このようにして得られた最終組成物の成分量と性能は表3に記載されている。
【表2】
注:n.m.=未測定。
【手続補正書】
【提出日】2024-05-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブテン-1組成物の調製方法であって、成分として、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは、ブレンドステップ中に溶融状態にされるか、または溶融状態に維持される、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して、0.1~0.5重量%の、式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、をブレンドするステップを含み、
このようにして得られたポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度T
c
Cを有し、
【数1】
ここで、T
c
AおよびT
c
Cは℃で表され、T
c
Aはブテン-1ポリマーA)の結晶化温度であり、前記結晶化温度は、10℃/分の加熱および冷却速度での示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、調製方法。
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルであり、nは0~5の整数である。)
【請求項2】
前記ブレンドステップにおいて、タルクC)を添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タルクC)は、レーザー光回折によって決定された、体積基準の粒子径分布Dv(0.95)が45μm以下の粒子の形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレンドステップは、100℃~220℃の温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカノイルヒドラジンB)は、式(II)を有する、請求項1又は2に記載の方法。
【化2】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルである。)
【請求項6】
前記B)は、式(III)を有する、請求項5に記載のステップ。
【化3】
【請求項7】
ポリブテン-1組成物であって、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは60℃以上の結晶化温度T
c
Aを有する、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して0.1~0.5重量%の、式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、を含み、
前記ポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度T
c
Cを有し、
【数2】
前記結晶化温度は、10℃/分の加熱および冷却速度での示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、ポリブテン-1組成物。
【化4】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルであり、nは0~5の整数である。)
【請求項8】
タルクC)をさらに含む、請求項7に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項9】
前記タルクC)は、レーザー光回折によって決定された、体積基準の粒子径分布Dv(0.95)が45μm以下の粒子の形態である、請求項8に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項10】
前記タルクC)は、A)+B)+C)の総重量を基準にして、0.15~2.5重量%の量で存在する、請求項8又は9に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項11】
前記アルカノイルヒドラジンB)は、式(II)を有する、請求項7又は8に記載のポリブテン-1組成物。
【化5】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルである。)
【請求項12】
前記B)は、式(III)を有する、請求項11に記載のポリブテン-1組成物。
【化6】
【請求項13】
T
c
C値が85℃以上である、請求項7又は8に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項14】
請求項6~13のいずれか1項に記載のポリブテン-1組成物を含有する製品、好ましくは配管又は配管継手。
【手続補正書】
【提出日】2024-06-13
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリブテン-1組成物の調製方法であって、成分として、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは、ブレンドステップ中に溶融状態にされるか、または溶融状態に維持される、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して、0.1~0.5重量%の、式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、をブレンドするステップを含み、
このようにして得られたポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度T
c
Cを有し、
【数1】
ここで、T
c
AおよびT
c
Cは℃で表され、T
c
Aはブテン-1ポリマーA)の結晶化温度であり、前記結晶化温度は、10℃/分の加熱および冷却速度での示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、調製方
法
【化1】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルであり、nは0~5の整数である
)。
【請求項2】
前記ブレンドステップにおいて、タルクC)を添加する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記タルクC)は、レーザー光回折によって決定された、体積基準の粒子径分布Dv(0.95)が45μm以下の粒子の形態である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ブレンドステップは、100℃~220℃の温度で行われる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前記アルカノイルヒドラジンB)は、式(II)を有する、請求項1又は2に記載の方
法
【化2】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルである
)。
【請求項6】
前記B)は、式(III)を有する、請求項5に記載の
方法。
【化3】
【請求項7】
ポリブテン-1組成物であって、
A)A)+B)の総重量に対して、99.5~99.9重量%の、ブテン-1ホモポリマー、ブテン-1コポリマーおよびこれらの混合物から選択されるブテン-1ポリマーであって、前記ブテン-1ポリマーは60℃以上の結晶化温度T
c
Aを有する、前記ブテン-1ポリマーと、
B)A)+B)の総重量に対して0.1~0.5重量%の、式(I)の1種または複数種のアルカノイルヒドラジンと、を含み、
前記ポリブテン-1組成物は、以下の関係を満たす結晶化温度T
c
Cを有し、
【数2】
前記結晶化温度は、10℃/分の加熱および冷却速度での示差走査熱量測定(DSC)によって決定される、ポリブテン-1組成
物
【化4】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルであり、nは0~5の整数である
)。
【請求項8】
タルクC)をさらに含む、請求項7に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項9】
前記タルクC)は、レーザー光回折によって決定された、体積基準の粒子径分布Dv(0.95)が45μm以下の粒子の形態である、請求項8に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項10】
前記タルクC)は、A)+B)+C)の総重量を基準にして、0.15~2.5重量%の量で存在する、請求項8又は9に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項11】
前記アルカノイルヒドラジンB)は、式(II)を有する、請求項7又は8に記載のポリブテン-1組成
物
【化5】
(式中、R
1は炭素数1~6のアルキルであり、R
2は水素又は炭素数1~6のアルキルである
)。
【請求項12】
前記B)は、式(III)を有する、請求項11に記載のポリブテン-1組成物。
【化6】
【請求項13】
T
c
C値が85℃以上である、請求項7又は8に記載のポリブテン-1組成物。
【請求項14】
請求項
7に記載のポリブテン-1組成物を含有する製品、好ましくは配管又は配管継手。
【国際調査報告】