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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】鉱物質土壌のための吸着剤物質
(51)【国際特許分類】
   B01J 20/06 20060101AFI20241108BHJP
   B01J 20/12 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/20 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20241108BHJP
   B01J 20/28 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B01J20/06 A
B01J20/12 A
B01J20/12 C
B01J20/18 B
B01J20/18 E
B01J20/20 B
B01J20/20 D
B01J20/20 E
B01J20/26 E
B01J20/28 Z
B01J20/06 B
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531357
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-05-24
(86)【国際出願番号】 EP2022083311
(87)【国際公開番号】W WO2023094608
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210540.7
(32)【優先日】2021-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505422707
【氏名又は名称】ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン・キシュケヴィッツ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・シュレーゲル
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・シーメンス
(72)【発明者】
【氏名】アンネ・ヴァーグナー
(72)【発明者】
【氏名】マルティン・カウペンヨハン
【テーマコード(参考)】
4G066
【Fターム(参考)】
4G066AA05B
4G066AA27B
4G066AA61B
4G066AA63B
4G066AC11B
4G066BA09
4G066BA20
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA41
4G066CA46
4G066DA20
4G066FA37
(57)【要約】
本発明は、少なくとも下層土及び少なくとも1種の吸着剤を含む吸着剤物質、そのような吸着剤物質を含む鉱物質土壌、吸着剤物質を作製するためのプロセス、そのような吸着剤物質を含む鉱物質土壌を作製するためのプロセス、吸着剤物質を作製するための吸着剤の使用、並びに鉱物質土壌を作製するための吸着剤物質の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸着剤物質であって、成分として、少なくとも0質量%~10質量%の表土、1質量%~99質量%の下層土、1質量%~99質量%の吸着剤、及び場合によってはさらなる成分を含む、吸着剤物質(ここで、前記質量パーセントは、乾燥物質基準で測定したものであり、前記個々の成分の含量を合計したものが100質量%である)。
【請求項2】
少なくとも0質量%~10質量%の表土、80質量%~99質量%の下層土、1質量%~20質量%の吸着剤、及び場合によってはさらなる成分を含む、請求項1に記載の吸着剤物質(ここで、前記質量パーセントは、乾燥物質基準で測定したものであり、前記個々の成分の含量を合計したものが100質量%である)。
【請求項3】
少なくとも0質量%~10質量%の表土、90質量%~99質量%の下層土、1質量%~10質量%の吸着剤、及び場合によってはさらなる成分を含む、請求項1に記載の吸着剤物質(ここで、前記質量パーセントは、乾燥物質基準で測定したものであり、前記個々の成分の含量を合計したものが100質量%である)。
【請求項4】
前記吸着剤が、活性炭、イオン交換体、粘土鉱物、ゼオライト、酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄、又はそれらの混合物からなる群より選択されることを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の吸着剤物質。
【請求項5】
前記吸着剤が、0.2~40mmの粒径を有する、細片の形態にあるオキシ水酸化鉄であることを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の吸着剤物質。
【請求項6】
吸着剤として、前記オキシ水酸化鉄の細片が変態α-FeOOHを有し、20m/gより大、好ましくは80~400m/gのBET比表面積を有することを特徴とする、請求項5に記載の吸着剤物質。
【請求項7】
前記吸着剤物質が、1~200mm、好ましくは2~100mmの層厚を有する層として存在することを特徴とする、請求項1~6のいずれかに記載の吸着剤物質。
【請求項8】
表土及び下層土が、色、色の分布、色の強度、無機物質の割合、有機物質の割合、根の貫入度、主たる鉱物質成分の組成、一次粒子の凝集度、栄養素(たとえば、窒素又はリン)の割合、又は土壌生物体の割合及びタイプから選択される一つ又は複数の特徴で区別されることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の吸着剤物質。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の吸着剤物質を作製するための方法であって、前記吸着剤が、下層土、及び場合によっては表土と、前記使用される表土及び前記使用される下層土の全部の乾燥物質の合計を基準にして、1質量%~99質量%、好ましくは1質量%~10質量%、特に好ましくは1質量%~5質量%の含量で均一に混合されることを特徴とする、方法。
【請求項10】
鉱物質土壌であって、表土の最上層、その下の、請求項1~8のいずれかに記載の吸着剤物質及び/又は吸着剤の層、並びにその下の、下層土の層を含むことを特徴とする、鉱物質土壌。
【請求項11】
吸着剤物質及び/又は吸着剤の前記層が、1mm~200mm、好ましくは2mm~100mmの層厚を有する、請求項10に記載の鉱物質土壌。
【請求項12】
請求項9に従って作製された前記吸着剤物質又は請求項4~6のいずれかに記載の前記吸着剤が、表土と下層土との間に導入されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の鉱物質土壌を作製するための方法。
【請求項13】
請求項9に従って作製された前記吸着剤物質又は請求項4~6のいずれかに記載の前記吸着剤が、前記下層土から前記表土を持ち上げ、それをほぐし、場合によってはそれを裏返して、前記吸着剤物質及び/又は前記吸着剤を導入して、その後で、作製された吸着剤物質及び/又は吸着剤の前記層の上に前記表土を再適用できるようにする鋤先を有する鋤の手段によって、表土と下層土との間に導入されることを特徴とする、請求項10又は11に記載の鉱物質土壌を作製するための方法。
【請求項14】
請求項1~8のいずれかに記載の前記吸着剤物質を作製するための、活性炭、イオン交換体、粘土鉱物、ゼオライト、酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄からなる群より選択される吸着剤の使用。
【請求項15】
前記オキシ水酸化鉄が、0.2~40mmの粒径を有する細片の形態にある、請求項14に記載の吸着剤の使用。
【請求項16】
前記オキシ水酸化鉄が変態α-FeOOHを有し、20m/gより大、好ましくは80~400m/gのBET比表面積を有する、請求項14又は15に記載の吸着剤の使用。
【請求項17】
請求項10又は11に記載の鉱物質土壌を作製するための、請求項1~8のいずれかに記載の吸着剤物質、及び/又は請求項4~6のいずれかに記載の吸着剤の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも下層土及び少なくとも1種の吸着剤(adsorbent)を含む吸着剤物質(adsorber material)、そのような吸着剤物質を含む鉱物質土壌、そのような吸着剤物質を作製するための方法、そのような吸着剤物質を含む鉱物質土壌を作製するための方法、吸着剤物質を作製するための吸着剤の使用、及び鉱物質土壌を作製するための吸着剤物質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
土壌は、地球の表面上、大気圏、岩石圏、水圏及び生物圏が相互に重なりあっている領域で、土壌形成因子の、岩石、気候、植生、植物相/動物相、起伏、水、及び人間の相互作用を介して形成される。当業者の理解するところでは、土壌とは、固体の鉱物質及び有機物質及び空隙部分(その一部は、水で充満され、その一部は空気で充満されている)からなる3相系を意味している。
【0003】
土壌は、複数の層に分類される。土壌層は、均質で類似の特徴及び性質を有し、一つ又は複数の特徴で、それより上又はそれより下の領域とは異なっている、土壌の内部の領域である。上側の三つの鉱物質土壌層は、次のように分類される:表土(topsoil)(A層)、下層土(subsoil)(B層)、及び母岩(parent rock)(C層)。表土は、当業者の理解するところでは、有機物質リッチであり、一般的にその暗い色の点でその下の下層土とは区別可能であり、強い根の貫入性(root penetration)を示す土壌層である。土壌サンプルの表土と下層土での色の違いは、目で見ただけでも区別可能であり、さらには、特殊なカラーチャート、たとえばマンセル土壌カラーチャート(Munsell Soil Color Charts)を使用し、色相、色値及び彩度を基準にして、定量的に測定することもまた可能である。深部の土壌層とは対照的に、表土には、高い割合での栄養素(特には窒素)及び有機物質(腐植質)、並びにさらには、メインの鉱物質成分(細砂、シルト及びクレー)に加えて大量の土壌生物体が含まれている。好気性細菌は、通常、表土の中に生息しており、それに対して、下層土は、腐植質リッチではないか又はほんのわずかに腐植質リッチであって、根の貫入をほとんど示さす、生物体がほとんど含まれない。一般的に、農業では、表土だけが利用されている。表土及び下層土は、無機物質の比率が少なくとも70質量パーセントと高いことが理由で、鉱物質土壌とも呼ばれる。それらでは、有機物質の比率が30質量%以下である。特に森林での使用では、30質量パーセントを超える(約90体積パーセント)の有機物質比率を含む有機土壌層が表土の上に存在する可能性はある。土壌から根及び土壌生物体を引き算した有機物質の総量を、腐植質(humus)と呼んでいる。これには、その土壌の内部及び上に存在する植物及び動物の死骸、及びそれらの有機転化生成物が含まれる。腐植質は、均質な土壌画分ではなく、変換された有機物質の、各種の割合での分解を合計したものである。土壌の中の有機物質の量は、通常、土壌の中の有機炭素含量(Corg含量)を測定することにより求められる。土壌中の有機物質の平均Corg含量を58%と仮定すると、これを使用して、Corg含量に実験ファクター1.72を掛け算することによって、腐植質含量、すなわち有機物質の含量を計算することができる。Corg含量は、各種の方法、たとえば元素分析(乾式灰化、DIN ISO 10964)、有機物質の湿式灰化(Lichterfelder法、DIN ISO 19684、パート2)、又は強熱減量の測定(DIN ISO 19684、パート3)によって求めることができる。Corg含量は通常、100℃より高い温度で乾燥させた土壌について測定される。
【0004】
下層土に比較して、表土は、一般的に、より高い生物活性を有しており、それにより、有機物質からの栄養元素の放出がダイナミックになり、凝集構造が形成されることになる。
【0005】
その一方で、下層土は、腐植質の含量が低く、ブロック状/プリズム状/柱状/平板状構造又は塊状構造を特徴としており、それらの特徴に基づいて、表土から、視覚的に容易に区別することができる。栄養素は、主として、風化の結果として、無機質から表土の中に放出される。
【0006】
さらには、A層及びB層は、それに加えて、さらなるサブクラスに分類することができる。本発明においては、A層及びB層には常に、前記の層それぞれのサブクラスも含まれる。
【0007】
母岩に応じて、土壌のC層は、固結性~粗結性、石灰質~非石灰質、砂状~粘土状を取ることができる。岩石の強度、石灰含量、及び組織は、土壌の形成速度の重要な因子、したがって、土壌の厚み、土壌形成層、及びそれに伴う土壌の性質たとえば、土壌構造のための決定因子である。
【0008】
当業者ならば、一つ又は複数の特徴に基づいて、各種の土壌のコアドリルからの特定の土壌又は土壌サンプルのA層、B層、及びC層を容易に区別することができる。前記特徴は、たとえば以下のものである:色、色の分布、色の強度、無機物質の割合、有機物質の割合、根の貫入度、主たる鉱物質成分の組成、一次粒子状物質の凝集度、栄養素(たとえば、窒素又はリン)の割合、又は土壌生物体の割合及びタイプ。
【0009】
陸生及び半陸生の土壌を外部環境に曝露させると、その土壌の天然の組成及び機能に影響が加わる可能性がある。それらには、たとえば、人間活動によりその土壌の中に導入されるか、過去に導入された汚染物質も含まれる。高い毒性を有することが公知の、たとえばPb、Hg、Cd、Cr、Ni、Cuカチオンのような重金属の塩は、汚染物質と呼ぶことができよう。
【0010】
それらの金属イオンを植物の中に取り込むと、それらの成長を妨げる可能性があるばかりでなく、それらの金属イオンは、動物及び人間の食物連鎖にも取り込まれ、そこに蓄積される可能性もある。それらの有毒な金属イオンが、植物に取り込まれないとすると、それらは、土壌を通して地下水の中に浸出し、水の循環の中に入ってしまう可能性がある。植物成長に不可欠な、どこにでもあるアニオン、たとえば硝酸塩又はリン酸塩が、土壌の中に、有害なほど高い濃度で導入されることもあり得る。高レベルでの肥料散布、廃水の灌漑、又はその他の廃棄物質たとえば下水スラッジ若しくは港湾汚泥の散布により、土壌中の、上述の重金属又はアニオンの蓄積がもたらされる。植物によって取り込むことができないもの、及び土壌によって拘束することができないものは、浸出液と共に浸出し、たとえば地下水におけるリン酸塩の場合のように、法的に許容される最大値を超える可能性がある。
【0011】
その結果、その地下水は、要求される純度に達するまでの、手の込んだ精製をしなければならなくなる。たとえば、その水は、地上で精製する目的で、地下から汲み上げねばならず、その後で使用したり、水の循環系に再循環させたりする。
【0012】
この目的で利用可能なのは、従来技術で公知の水処理方法、ほんの数例を挙げればたとえば、凝集濾過法、イオン交換法、吸着法、膜法、又は逆浸透法である((非特許文献1))。
【0013】
上述の方法は、高効率ではあるが、極端に高コストで、エネルギーを大量消費し、労働集約型である。場合によっては、設備投資及びランニングコストが極めて高い上に、放出限界の遵守をモニターする手段として、厳重且つ常時の水質監視が必要である。さらには、それらの方法はいつの場合も、すでに汚染された水を精製する、下流側の方法である。
【0014】
土壌中の汚染物質の含量、アベイラビリティー、及び移動度を抑制するためのまた別の方法は、土壌の修復(soil remediation)である。そのための各種の方法が、従来技術からも公知である。たとえば、数多くの植物利用修復(phytoremediation)方法が公知であるが、それらの目的は、それらのイオンが地下水の中に浸出するより前に、特定の急速成長性の植物の種を蒔くことによる、植物による、汚染物質の特異的且つ最大限の取込みを達成することである。その後で、それらの植物を収穫し、焼却すると、それらの汚染物質が、固定されたままその灰の中に残る。
【0015】
しかしながら、この方法は、まず、それが高度に労働集約的であり、さらには、その土壌から汚染物質を完全に除去してしまうまでに極めて長い時間がかかるという欠点を有している。多くの場合、種蒔き、収穫、及び廃棄の多段のステップが必要である。さらには、この方法を用いると、その修復用植物が成長している間は、土壌を、たとえば農業の目的で使用することができない。
【0016】
また別の選択肢は、過激な土壌の修復である。一つの代替方法では、その汚染された土壌を深いところまで完全に除去し、最も単純な場合では、有害廃棄物ごみとして、恒久的に廃棄する。また別の代替方法では、土壌洗浄プラント(soil washing plant)によって、土壌から汚染物質を除去し、その土壌を、表面に戻す。しかしながら、この方法は、コスト的及び農業的理由がある特定の場合にのみ使用可能である。
【0017】
土壌洗浄法(エクスシチュー法)を用い、汚染物質を技術的に除去可能であるにしても、前記汚染物質と共に、貴重且つ必須の土壌成分もまた、不可逆的にその土壌から除去されてしまう。
【0018】
浸出を低減させ、それと同時に植物による取込みを抑制するために、各種の吸着物質を土壌の中に表面近くで混合することによって、上述の汚染物質の移動度を抑制させることが可能であり、このことは、実験的に試験され、報告されている。
【0019】
(特許文献1)には、球状で多孔性のゼロ価の鉄粒子状物質を用いて、土壌又は地下水を修復するための方法が記載されている。しかしながら、そこには、その土壌の性質、前記ゼロ価の鉄粒子状物質のその土壌との混合性及び吸着剤としての性質についての具体的な詳細が記載されていない。
【0020】
(特許文献2)には、汚染された土壌又は地下水を精製するための、金属のα-Fe相及び磁性のFe含量を含む鉄粒子状物質が記載されている。前記鉄粒子状物質は、ゲータイト(α-FeOOH)から、部分還元法により調製される。しかしながら、そこには、その土壌の性質及びその土壌との混合性に関しての具体的な詳細が、記載されていない。前記鉄粒子状物質の調製は、高度に手が込んでおり、そのため、大量の使用は、コスト的に実施不能である。
【0021】
(特許文献3)では、可溶性の鉄塩と水酸化ナトリウム溶液との化学反応により土壌中でインサイチューで作製されたマグネタイトが、たとえば汚染物質が充満され、漏れのあるタンクの周辺での反応性バリアとして作製されている。したがって、その中に存在している物質は化学結合されている。危険な化学薬品を取り扱うことが理由で、この方法は、注意深く、十分な安全上の配慮をもって扱う場合に限って可能であり、そのため、たとえばその上で植物が成育している耕作地の土壌では禁止される。
【0022】
(特許文献4)には、20~30部のアタパルジャイト粉、10~20部のピロリン酸ナトリウム、30~45部の活性化風化カーボン(activated weathered carbon)、10~25部の菌類残渣、1~5部の鉄粉、10~20部のスツルバイト、及び1~3部のスクロースの混合物が記載されていて、それが、温室の土壌の下に、吸着剤バリアとして配置されている。このバリアの内部に、硝酸塩及びリン酸塩が保持されていて、それによって、散水による、土壌からのそれらの浸出を防止している。欠点:その混合物の調製に手がかかり、大量使用には、コスト的に適用不能。
【0023】
しかしながら、金属酸化物の表面近くでの取込みは、植物の成長に必要とされる物質(P、Zn、Cuなど)もまた、表土の土壌溶液中での濃度が低下し、吸着結合のために、前記物質が、植物に十分に供給されないということを意味している。それに加えて、前記物質の浸出の抑制が達成されるのは、混合を実施する場合に、それらの蓄積が表面近く領域に制限されるという場合に限られる。それらの物質が、下層土の中にすでに浸透してしまっている場合には、酸化物を表面近くに組み込むことによって、それらの浸出を効果的に抑制することがもはや不可能である。さらには、表土の中にリン及び痕跡量の栄養元素のアベイラビリティーを低下させることは、植物によってリン及び重金属を除去することによる修復(植物修復)によって、それら汚染されて土壌を修復することの妨げとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】国際公開第2005/014492号パンフレット
【特許文献2】欧州特許出願公開第1318103A2号明細書
【特許文献3】米国特許第6527691B1号明細書
【特許文献4】中国特許出願公開第107501012A1号明細書
【非特許文献】
【0025】
【非特許文献1】Water Treatment,American Water Works Association,3rd Edition,2003、page 1 to 7
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0026】
したがって、本発明の目的は、有害な土壌成分が、たとえば浸出によって、地下水に中に入るのを回避して、それにより、その後での地下水処理を無しですませるようにすることである。特定のイオン、たとえばリン酸塩を表土から完全に除かず、又はそれらを土壌の中に固定することもまた本発明の目的であり、そうしないと、植物にとって必須のイオンが固定されたり、植物によって取り込まれることが不可能となったりする。
【課題を解決するための手段】
【0027】
驚くべきことには、この目的は、吸着剤物質、及び吸着剤物質を含む鉱物質土壌によって達成された。
【0028】
本発明における吸着剤物質には、成分として、少なくとも0質量%~10質量%の表土、1質量%~99質量%の下層土、1質量%~99質量%の吸着剤、及び場合によってはさらなる成分が含まれる(ここで、その質量パーセントは、乾燥物質基準で測定したものであり、個々の成分の含量を合計したものが100質量%である)。
【0029】
好ましくは、本発明における吸着剤物質には、成分として、少なくとも0質量%~10質量%の表土、80質量%~99質量%の下層土、1質量%~20質量%の吸着剤、及び場合によってはさらなる成分が含まれる(ここで、その質量パーセントは、乾燥物質基準で測定したものであり、個々の成分の含量を合計したものが100質量%である)。
【0030】
特に好ましくは、本発明における吸着剤物質には、成分として、少なくとも0質量%~10質量%の表土、90質量%~99質量%の下層土、1質量%~10質量%の吸着剤、及び場合によってはさらなる成分が含まれる(ここで、その質量パーセントは、乾燥物質基準で測定したものであり、個々の成分の含量を合計したものが100質量%である)。
【0031】
本発明においては、「表土(topsoil)」は、独国において使用される用語で規定されるA層と定義される。前記A層、及びそれとB層との境界は、検討対象の鉱物質土壌をコアドリルすれば、当業者は明確に識別することができる。A層は、好ましくは、70~100質量パーセントの高い鉱物質画分を有している。
【0032】
本発明においては、「下層土(subsoil)」は、独国において使用される用語で規定されるB層と定義される。前記B層、及びそれとA層及びC層との境界は、検討対象の鉱物質土壌をコアドリルすれば、当業者は明確に識別することができる。B層は、好ましくは、70~100質量パーセントの鉱物質画分を有している。
【0033】
表土及び下層土は、土壌科学において明確に定義された用語であり、それらはさらに、とりわけ、法的規制、たとえば以下のものにおいても定義されている:「Verordnung zur Einfuehrung einer Ersatzbaustoffverordnung,zur Neufassung der Bundes-Bodenschutz- und Altlastenverordnung und zur Aenderung der Deponieverordnung und der Gewerbeabfallverordnung」[Ordinance introducing a substitute construction materials ordinance,revising the federal soil protection and contaminated sites ordinance and amending the landfill ordinance and the commercial waste ordinance](2021年7月9日、German Federal Law Gazette 2021,Part I No.43、Bonnで発行、2021年7月16日、page 2717:Article 2 Federal soil protection and contaminated sites ordinance(BBodSchV)、Section 1,§2 Definitions,Number 2;Topsoil,Number 3:Subsoil。
【0034】
各種の土壌における表土と下層土との間の境界設定もまた、土壌科学についての標準的な著作物、たとえば次の文献に詳しく説明されている:Bodenkundliche Kartieranleitung [Pedological mapping guide],KA5,2005,ed.: Wolf Eckelmann; E.Schweizerbart’sche Verlagsbuchhandlung,chapter 5.6 on horizon-based data,subchapter 5.6.3.3.3 on mineral horizons,pages 92 to 98。これらには、それらのサブクラス(それらの追加の記号は、メインの記号A(表土の場合)の後に、たとえばAhとして、又はメインの記号B(下層土の場合)の後に、たとえばBvとして記載されている)も含めた、各種の土壌層の性質が、詳しく記述されている。
【0035】
A転移層も含めて全部のA層が、本発明における表土の定義でカバーされ、全部のB層が、本発明における下層土の定義でカバーされているのが好ましい。
【0036】
使用可能な吸着剤は、たとえば、活性炭、イオン交換、粘土鉱物、及びゼオライトであるが、これらは、物質に対する高い結合能力を有している。いくつかの酸化鉄、特にオキシ水酸化鉄は、ヒ酸塩、バナジン酸塩、アンチモン酸塩、クロム酸塩、又はリン酸塩イオンに対して、極めて高い吸着容量を有している。さらには、多くの重金属カチオン、たとえばカドミウム、鉛、水銀、ニッケル又は銅イオンは、オキシ水酸化鉄の表面上に効果的に吸着される。
【0037】
本発明における吸着剤物質の中に存在させる少なくとも1種の吸着剤は、以下のものからなる群より選択される:活性炭、イオン交換体、粘土鉱物、ゼオライト、酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄、又はそれらの各種混合物。好ましい吸着剤は、酸化鉄及びオキシ水酸化鉄である。特に好ましい吸着剤は、オキシ水酸化鉄である。
【0038】
驚くべきことには、酸化鉄及びオキシ水酸化鉄、特にオキシ水酸化鉄が、表土の下の層の中に粒子形状で導入した場合でも、土壌の浸透性を実質的に同時に変化させることなく、上述のイオンとの高い結合力を有しているということが見出された。汚染物質イオンが表土の中に存在し、本発明における吸着剤物質中の酸化鉄の表面に結合した結果として、それらが下層土には到達することはなく、その結果、地下水の中に浸出することも不可能である。
【0039】
たとえば欧州特許第1582505B1号明細書及び米国特許第7651973B2号明細書に記載されているように、特定のオキシ水酸化鉄は、摩耗及び水流に対して、粒子形状での高い機械的安定性を有している。土壌の中で吸着剤が細粒構造を維持できるというのは、極めて重要なことである。第一には、細粒が導入された後でも、その土壌構造が変化を受けずに留まり、粉末状の吸着剤の場合には起こりうる、土壌構造の圧密化及び/又は固着化が起きない。さらには、それらの細粒が崩壊安定性を有しており、そのため、土壌の中でばらばらになって粉状になることはないが、粉状になると、汚染物質で汚染されたオキシ水酸化鉄の粉の、地下水中への望ましくない浸出が起こりうる。さらに、細粒は、容易に、且つほとんど無塵の方式で計量することが可能であり、このことは、吸着剤物質の製造では重要である。
【0040】
したがって、極めて特に好ましい吸着剤は、細片の形態(piece form)(粒子形状とも呼ばれる)にある、オキシ水酸化鉄、すなわちα-FeOOH変態を有するゲータイトである。それらは、通常0.2~40mm、好ましくは0.2~20mmの粒径を有している。それらのオキシ水酸化鉄の細片の製造は、たとえば、欧州特許第1582505B1号明細書及び欧州特許第1328476B1号明細書に記載されている。したがって、同様に極めて特に好ましい吸着剤は、α-FeOOH変態を有し、20m/gより大、特には80~400m/gのBET比表面積を有するオキシ水酸化鉄の細片である。そのようなオキシ水酸化鉄の細片又はオキシ水酸化鉄の細粒の例としては、LANXESS Deutschland GmbHにより製造された製品のBayoxide(登録商標)E33及びBayoxide(登録商標)E33HCが挙げられる。それらのオキシ水酸化鉄は、好ましいことには、高いBET比表面積を有しており、そのため、それらの細粒の上への汚染物質の急速な吸着速度が確保される。同様に極めて特に好ましい吸着剤としては、黄色顔料、一般的に、粒子形状又は圧縮粉の形態にある針状のα-FeOOH変態を有するゲータイト、たとえばLANXESSにより製造された、たとえばBayferrox又はBayoxide製品系列が挙げられる。
【0041】
本発明における吸着剤物質は、1~200mm、好ましくは2~100mmの層厚を有する、好ましくは土壌の中の層として、特に好ましくは水平層として存在させる。乾燥した固体状混合物の中の吸着剤の含量の測定には、当業者が利用可能な確立された測定方法がある。
【0042】
本発明にはさらに、その吸着剤が、使用される吸着剤、使用される表土、及び使用される下層土の全部の乾燥物質の合計を基準にして、1質量%~99質量%、好ましくは1質量%~10質量%、特に好ましくは1質量%~5質量%の含量で、下層土と、場合によっては表土と均質に混合されることを特徴とする方法による、本発明における吸着剤物質の作製も含まれる。
【0043】
好ましい実施態様においては、本発明における吸着剤物質が、吸着剤(1種又は複数)、たとえば活性炭、イオン交換体、粘土鉱物、ゼオライト、酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄、又はそれらの各種混合物、好ましくはオキシ水酸化鉄、特に好ましくはオキシ水酸化鉄の細片を、根の強い貫入性を有する表土の下に導入することにより作製される。このことは、一方では、そのような吸着剤を根の貫入性が低い下層土の中に混ぜ込むか、或いは前記吸収剤を、層として、好ましくは水平層として前記下層土の表面に適用するか、のいずれかで達成することができる。このことは、好ましい実施態様において、たとえば適切な技術的装置を使用して、たとえば耕作地で、下層土との境界で表土を除去し、その下層土に対して、層として、好ましくは水平層として吸着剤を適用し、最後のステップとして、たとえば、前記の層に対して、表土を180度裏返えして再適用することにより、達成することができる。このことは、さらに好ましい実施態様において、たとえば適切な技術的装置を使用して、たとえば耕作地で、下層土との境界で表土を除去し、次いで下層土の所定の層を除去し、次いでその除去した下層土と吸着剤とを混合し、次いで残っている下層土に対してこの混合物を、層として、好ましくは水平層として適用し、最後のステップとして、表土、たとえば層として存在している吸着剤物質に対して、表土を180度裏返えして再適用することにより、達成することができる。
【0044】
オキシ水酸化鉄の細粒を土壌の中に導入するために使用することが可能な技術的手段としては、たとえば、鋤先が挙げられるが、それを用いて、下層土から表土を持ち上げ、それをほぐし、場合によってはそれを裏返して、吸着剤物質及び/又は吸着剤を導入して、その後で、吸着剤物質及び/又は吸着剤の上に表土を再適用できるようにする。
【0045】
本発明においては、この結果、表土-下層土の境界層、又は下層土そのものの中に、透過性の反応性層が得られ、それが、アニオン、たとえばリン酸塩及び重金属の浸出を効果的に抑制し、植物の中へのそれらの物質の取込みを妨害することはない。ここで述べた一例は、たとえば、植物修復に関連して重金属を除去するための植物の栽培である。
【0046】
本発明における方法によって、さらに、新規な構造を有する新規な鉱物質土壌がもたらされる。したがって、人為的に土壌が新規に形成されるということも可能である。したがって、本発明にはさらに、新規な鉱物質土壌も含まれる。本発明におけるこの土壌は、それが、表土の最上層、及びその下の本発明における吸着剤物質の層、及びその下の下層土の層を有しているということを特徴としている。
【0047】
本発明における土壌が、吸着剤物質の層、及び/又は1mm~200mm、好ましくは2mm~100mmの層厚を有する吸着剤を有しているのが好ましい。
【0048】
本発明における鉱物質土壌の中に存在する表土が、70~100質量パーセントの鉱物質画分を有しているのが、同様に好ましい。
【0049】
本発明における鉱物質土壌の中に存在する下層土が、70~100質量パーセントの鉱物質画分を有しているのが、同様に好ましい。
【0050】
特定の土壌の表土及び下層土が、たとえば以下のような特徴によって、相互に明確に区別できるのが同様に好ましい:色、色の分布、色の強度、無機物質の割合、有機物質の割合、根の貫入度、主たる鉱物質成分の組成、一次粒子状物質の凝集度、栄養素(たとえば、窒素又はリン)の割合、又は土壌生物体の割合及びタイプ。
【0051】
同様に、本発明における鉱物質土壌の中に存在する吸着剤物質の層は、以下のものからなる群より選択される吸着剤を含んでいる:活性炭、イオン交換体、粘土鉱物、ゼオライト、酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄、又はそれらの混合物。
【0052】
極めて特に好ましい、本発明における鉱物質土壌の中の吸着剤は、細片の形態にある(粒子形状とも呼ばれる)オキシ水酸化鉄、すなわち、α-FeOOH変態を有するゲータイトである。それらは、通常0.2~40mm、好ましくは0.2~20mmの粒径を有している。同様に極めて特に好ましい、本発明における鉱物質土壌の中の吸着剤は、α-FeOOH変態を有し、20m/gより大、特には80~400m/gのBET比表面積を有するオキシ水酸化鉄の細片である。そのようなオキシ水酸化鉄の細片又はオキシ水酸化鉄の細粒の例としては、LANXESS Deutschland GmbHにより製造された製品のBayoxide(登録商標)E33及びBayoxide(登録商標)E33HCが挙げられる。それらのオキシ水酸化鉄は、同様に極めて特に好ましいことには、高いBET比表面積を有しており、そのため、それらの細粒の上への汚染物質の急速な吸着速度が確保される。同様に極めて特に好ましい吸着剤としては、黄色顔料、一般的に、粒子形状又は圧縮粉の形態にある針状のα-FeOOH変態を有するゲータイト、たとえばLANXESSにより製造された、たとえばBayferrox又はBayoxide製品系列が挙げられる。
【0053】
本発明における鉱物質土壌においては、当業者は、たとえばコアドリルの形態にある土壌サンプルに基づいて、表土、吸着剤物質及び/又は吸着剤の層、並びに下層土の間の一つ又は複数の特徴に基づいて、容易に区別することができる。前記特徴は、たとえば以下のものである:色、色の分布、色の強度、無機物質の割合、有機物質の割合、吸着剤の割合、根の貫入度、主たる鉱物質成分の組成、一次粒子状物質の凝集度、栄養素(たとえば、窒素又はリン)の割合、又は土壌生物体の割合及びタイプ。
【0054】
本発明はさらに、本発明における吸着剤物質及び/又は吸着剤を、表土と下層土との間に導入することを特徴とする、本発明における土壌を作製する方法にも関する。
【0055】
吸着剤物質及び/又は吸着剤を表土と下層土との間の境界層に導入するために好適に使用できるのは、下層土から表土を持ち上げ、それをほぐし、場合によってはそれを裏返して、吸着剤物質及び/又は吸着剤を導入して、その後で、作製された本発明における吸着剤物質及び/又は吸着剤の上に表土を再適用できるようにする技術的装置である。使用されるその技術的装置が、下層土から表土を持ち上げ、それをほぐし、場合によってはそれを裏返して、吸着剤物質及び/又は吸着剤を導入して、その後で、作製された本発明における吸着剤物質及び/又は吸着剤の上に表土を再適用できるようにする鋤先を有する鋤であれば、特に好ましい。このことは、好ましい実施態様において、たとえば適切な技術的装置を使用して、たとえば耕作地で、下層土との境界で表土を除去し、その下層土に対して、層として吸着剤物質を適用し、最後のステップとして、たとえば、作製された吸着剤物質及び/又は吸着剤の層に対して、表土を180度裏返えして再適用することにより、達成することができる。
【0056】
本発明における吸着剤物質及び本発明における土壌は、対象となっている土壌の中をコアドリルし、下層土と表土との間の境界層付近で、ドリルコアで各種の層厚のサンプルを採取することにより、容易に識別することができる。これらのサンプルについて、次いで、適切な定量的測定法を用いて、関連のサンプルの層厚の中で、表土及び下層土での吸着剤の含量を求める。
【0057】
本発明はさらに、先に述べた好ましい、及び特に好ましい実施態様も含めて、本発明における吸着剤物質を作製するための、活性炭、イオン交換体、粘土鉱物、ゼオライト、酸化鉄、及びオキシ水酸化鉄からなる群より選択される吸着剤の使用にも関する。
【0058】
本発明はさらに、先に述べた好ましい、及び特に好ましい実施態様も含めて、上で記載した本発明における鉱物質土壌を作製するための、先に述べた好ましい及び特に好ましい実施態様も含めた、上で記載した吸着剤物質の使用にも関する。
【0059】
本発明における吸着剤物質、及びそれから新規に形成された本発明における鉱物質土壌は、驚くべきことには、表土における植物のためのターゲット物質のアベイラビリティーを変化させることなく、それにも関わらず下層土、したがって地下水の汚染を最小限とするという利点を有している。
【実施例
【0060】
I.吸着剤物質(下層土と吸着剤との混合物)の作製
95重量部の、公知のFe3+含量を有する下層土を、5重量部の、0.5~2mmの粒径及び130m/gのBETを有する、α-FeOOH細片(Bayoxide(登録商標)E33、LANXESS Deutschland GmbH製)と混合し、目視検査で均一とみなされる混合物を作製した。
【0061】
II.鉱物質土壌を作製するための、下層土の最上層の中での吸着剤物質の取込み
このことは、実施例Iからの混合物を、パーコレーションカラムAの中にボトム層として移すことにより、達成された。比較のために、吸着剤を含まない同一の下層土の同一量を、パーコレーションカラムBの中に充填した。両方のパーコレーションカラムの中に、同一の表土の同一量を、最上層として充填した。
【0062】
III.吸着剤物質における汚染物質の保持比の測定
実施例Iに従って、下層土を粒子状酸化鉄と混合することにより作製した本発明における吸着剤物質の有効性を試験するために、土壌カラムを用いてパーコレーション試験を実施した。
【0063】
これは、実施例IIからのパーコレーションカラムA及びBに水を噴霧し、パーコレーションカラムA(溶出液A)及びパーコレーションカラムB(溶出液B)からの溶出液を、同じサイズの各種の画分で収集することにより達成された。溶出液A及びBにおいて、オルト-リン酸塩、リン(全リン)、鉛、銅イオン、カドミウムイオン、亜鉛イオンの溶出液の中の濃度「c(溶出液A)」及び「c(溶出液B)」を測定した。吸着剤物質の中でのそれぞれの汚染物質のそれぞれの保持比(保持比r、単位;パーセント)は、次式の手段により計算した。
r=[c(溶出液B)-c(溶出液A)]*100/c(溶出液B)
【0064】
溶出液の中、及び担持させたオキシ水酸化鉄又は溶液の中でのCu、Zn、Pb、及びCdの含量は、慣用される方法、たとえば原子吸光分光測定の手段によるか、又はDIN 38406-29(1999)に従った質量分光測定(ICP-MS)の手段によるか、又はEN-ISO 11885(1998)に従い、それぞれの場合において励起ユニットとして高周波誘導結合プラズマを用いた発光分光測定法(ICP-OES)によって測定した。
【0065】
それらの試験で、下水利用農場(sewage farm)の土壌(サイトG)及び農場の(agricultural)土壌(サイトH)の下層土物質の中に5質量%のオキシ水酸化鉄の細粒(Bayoxide(登録商標)E33、LANXESS Deutschland GmbH)を混合すると、これら汚染物質の、その下にある下層土の中への導入が、顕著に低減されるようになるということが示された(表1)。
【0066】
【表1】
【0067】
本発明における混合物の中に吸着剤として存在しているオキシ水酸化鉄のBET比表面積は、DIN 66131(1993)に従った、キャリヤーガス法(He:N=90:10)の手段で、一点法により求めた。測定の前に、そのサンプルを、乾燥窒素気流中、140℃で1時間加熱した。
【国際調査報告】