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特表2024-542605固定床反応器から細胞培養物を試料採取するための方法および装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】固定床反応器から細胞培養物を試料採取するための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/00 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
C12M1/00 C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531509
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022050563
(87)【国際公開番号】W WO2023101848
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/284,169
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/284,256
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/284,371
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,トリスタン イェール
(72)【発明者】
【氏名】フィネガン,マイケル フランシス
(72)【発明者】
【氏名】フリーク,ジェイコブ ディラン
(72)【発明者】
【氏名】マニング,ダニエル トーマス
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,スティーヴン エリック
(72)【発明者】
【氏名】サビン,ダグラス グロヴナー
(72)【発明者】
【氏名】シュルテス,ジョエル アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4B029
【Fターム(参考)】
4B029AA02
4B029AA27
4B029BB01
4B029CC03
4B029DG08
4B029FA09
(57)【要約】
細胞を培養するための固定床反応器アセンブリ、およびそのようなアセンブリから細胞培養基体を試料採取する方法が提供される。このアセンブリは、細胞を培養するための内部空間およびその内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を有するバイオリアクタ容器;および各層がその上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する、内部空間内にある複数の細胞培養基体層を含む。この構造的に明確な表面は、層の厚さを通じた開口の秩序のある規則的配列を画成する。そのアセンブリは、その複数の細胞培養基体層を少なくとも部分的に取り囲み、少なくとも1つの試料アクセス窓を有するスリーブをさらに含む。その試料アクセス窓は、細胞培養基体の1つ以上の層を、開口を通じてスリーブから取り出せるようにスリーブに開口を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を培養するための固定床バイオリアクタシステムにおいて、
細胞を培養するための内部空間および該内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器、
前記バイオリアクタ容器の側壁にある少なくとも1つのポート、および
前記内部空間内に配置され、その上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する細胞培養基体であって、該構造的に明確な表面は、前記細胞培養基体の厚さを通る開口の秩序のある規則的配列を画成する、細胞培養基体、
を含み、
前記細胞培養基体の少なくとも一部は試料基体を含み、該試料基体は、該試料基体と前記細胞培養基体の残りとの間の分離境界により画成され、
前記分離境界は、前記試料基体を前記細胞培養基体の残りから分離するように作られており、
前記少なくとも1つのポートは、前記試料基体を該少なくとも1つのポートを通じて前記内部空間から取り出せるようなサイズである、固定床バイオリアクタシステム。
【請求項2】
前記分離境界が、以下:前記細胞培養基体の穿孔、その中またはそれを貫通する切り込み、もしくはその局所的に薄い部分の少なくとも1つを含む、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項3】
前記分離境界が、前記試料基体と該基体の残りとの間に取付材料をさらに含み、該取付材料は、張力下で前記試料基体および該基体の残りの一方または両方から離脱するように作られている、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項4】
複数の試料基体をさらに含む、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項5】
前記複数の試料基体の少なくとも2つは、該複数の試料基体の1つではない前記細胞培養基体の残りの一部で互いから分離される、請求項4記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項6】
前記細胞培養基体が円形ディスク形状を有する、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項7】
前記試料基体が、以下の形状:正方形、長方形、パイ形、または先細の少なくとも1つを有する、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項8】
前記試料基体が、前記細胞培養基体の外縁の狭い先細端部で先細になっている、請求項7記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項9】
前記試料基体が、前記細胞培養基体の外縁内の該試料基体の第1の端部で正方形または長方形であり、該細胞培養基体の外縁の第2の端部で先細になっている、請求項7記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項10】
前記細胞培養基体が、円形であり、複数のパイ形試料基体からなる、請求項7記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項11】
前記構造的に明確な表面が複数の編まれた繊維から作られており、
前記細胞培養基体が、積層形態に配置された複数の層を含む、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【請求項12】
前記バイオリアクタ容器が、前記内部空間から前記試料基体を無菌で取り出すように作られている、請求項1記載の固定床バイオリアクタシステム。
【発明の詳細な説明】
【優先権】
【0001】
本出願は、その内容が依拠され、ここに全て引用される、2021年11月30日に出願された米国仮特許出願第63/284371号、2021年11月30日に出願された米国仮特許出願第63/284256号、および2021年11月30日に出願された米国仮特許出願第63/284169号の米国法典第35編第119号の下での優先権の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、細胞培養中に基体の試料採取を可能にする、細胞を培養するための基体、およびそれを収容するためのバイオリアクタに関する。詳しくは、本開示は、細胞培養基体と、バイオリアクタからの試料の除去を可能にして、培養および他の過程の健康と進行をモニタするために、細胞培養過程の最中および/または後の基体の部分の無菌試料採取を可能にする、そのような基体を組み込んだバイオリアクタとに関する。
【背景技術】
【0003】
バイオプロセス産業では、ホルモン、酵素、抗体、ワクチンの生産、および細胞療法の目的で、細胞の大規模培養が行われている。細胞療法と遺伝子療法の市場は、急成長しており、有望な治療法が、臨床試験を開始し、急激に商業化に進んでいる。しかしながら、1回の細胞療法の用量は、数十億の細胞または数兆のウイルスを必要とし得る。それゆえ、臨床的に成功を収めるためには、わずかな時間で大量の細胞産物を提供できることが非常に重要である。
【0004】
バイオプロセスに使用される細胞の大部分は足場依存性であり、これは、細胞が、成長し、機能するために接着する表面が必要であることを意味する。従来、接着細胞の培養は、T-フラスコ、ペトリ皿、細胞工場、細胞積層容器、ローラーボトル、およびHYPERStack(登録商標)容器などの多数の容器形態の内の1つに組み込まれた二次元(2D)細胞接着表面上で行われる。これらの手法には、治療または細胞の大規模生産を実行可能にするのに十分に高い細胞密度を達成するのが困難であることを含む、重大な欠陥があり得る。
【0005】
培養細胞の体積密度を増加させるために、代わりの方法が提言されてきた。これらには、撹拌槽内で行われるマイクロキャリア培養がある。この手法では、マイクロキャリアの表面に付着した細胞が一定の剪断応力に曝されて、増殖と培養性能に重大な影響が及ぼされる。高密度細胞培養システムの別の例に、細胞が、間の空いた繊維空間内で増殖するときに、大きい三次元集合体を形成することができる、中空繊維バイオリアクタがある。しかしながら、細胞の成長と性能は、栄養素の欠乏により著しく阻害される。この問題を軽減するために、これらのバイオリアクタは、小さく作られ、大規模製造には適していない。
【0006】
足場依存性細胞のための高密度培養システムの別の例に、充填床バイオリアクタシステムがある。このタイプのバイオリアクタでは、接着細胞が付着する表面を提供するために、細胞基体が使用される。細胞成長に必要な栄養素と酸素を提供するために、表面に沿って、または半多孔質基体を通じて、培地が灌流される。例えば、細胞を取り込むための支持体またはマトリクスシステムの充填床を含有する充填床バイオリアクタシステムが、既に特許文献1から3に開示されている。充填床マトリクスは、通常、高分子の不織布超極細繊維または基体としての多孔質粒子から作られる。そのようなバイオリアクタは、再循環流通型バイオリアクタとして機能する。そのようなバイオリアクタに関する重大な課題の1つは、充填床内部の細胞分布の不均一性である。例えば、充填床は深層フィルタとして機能し、細胞は主に入口領域で捕捉され、接種工程中に細胞分布の勾配を生じる。それに加え、無作為な繊維充填のために、充填床の断面の細胞捕捉効率と流れ抵抗が均一ではない。例えば、培地は、細胞充填密度が低い領域では速く流れ、取り込まれた細胞の数が多いために抵抗が高い領域では、遅く流れる。これにより、体積細胞密度が低い領域には、栄養素と酸素はより効率的に送達され、細胞密度が高い領域は、次善の培養条件に維持されるというチャネリング効果が生じる。
【0007】
従来技術に開示された充填床システムの別の重大な欠点は、培養過程の終わりに無傷な生存細胞を効率的に収穫できないことである。最終産物が細胞である場合、またはバイオリアクタが「シードトレイン(seed train)」(細胞集団が、ある容器内で増殖させられ、次いで、さらなる集団の増殖のために別の容器に移送される)の一部として使用されている場合、細胞の収穫は重要である。特許文献4には、細胞収穫工程中の充填床からの細胞回収の効率を改善するためのバイオリアクタ設計が開示されている。その設計は、充填床マトリクスを緩め、充填床粒子を揺動または撹拌して、多孔質マトリクスを衝突させ、よって細胞を取り外すことに基づく。しかしながら、この手法は、多くの時間と労力を要し、著しく細胞を損傷させ、よって、全体の細胞の生存を低下させるであろう。
【0008】
いくつかの既存のバイオリアクタの解決策では、不織配列に無作為に配向した繊維からなる細胞基体材料の小片が使用される。これらの小片が容器内に充填されて、充填床を作る。しかしながら、市場での類似の解決策のように、このタイプの充填床基体にも欠点がある。詳しくは、基体片の不均一な充填により、充填床内に目に見えるチャネルが形成され、充填床を通じて優先的で不均一な培地の流れと栄養素の分布が生じる。そのようなシステムの研究で、「固定床の上部から底部に数が増加する、細胞の系統的不均一分布」、並びに「栄養素勾配・・・細胞の増殖と産生の制限をもたらす」ことが指摘され、その全てで、「細胞の不均等な分布により、トランスフェクション効率が損なわれることがある」(非特許文献1)。研究で、充填床の揺動により分散が改善されることがあるが、他の欠点があるであろう(すなわち、「接種およびトランスフェクション中に分散を良好にするのに必要な揺動は、剪断応力の増加を誘発し、転じて、細胞の生存を低下させるであろう」同文献)。別の研究では、細胞の不均一な分布により、バイオマスセンサを使用した細胞集団のモニタが困難になることが言及された(「・・・細胞が不均一に分布された場合、上部キャリア上の細胞からのバイオマス信号が、バイオリアクタ全体の一般的な見解を示さないことがある」、非特許文献2)。
【0009】
それに加え、基体片内の繊維の無作為配置および上述したものなどのバイオリアクタのある充填床と別の充填床との間の小片の充填のばらつきのために、基体は培養毎に異なるので、顧客が細胞培養性能を予測するのが困難になり得る。さらに、それ自体が無作為構造を有する、無作為に充填された基体により、細胞が充填床により閉じ込められると考えられるので、細胞を効率的に収穫するのが非常に難しくなるか、不可能になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4833083号明細書
【特許文献2】米国特許第5501971号明細書
【特許文献3】米国特許第5510262号明細書
【特許文献4】米国特許第9273278号明細書
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Rational plasmid design and bioprocess optimization to enhance recombinant adeno-associated virus (AAV) productivity in mammalian cells. Biotechnol. J. 2016, 11, 290-297
【非特許文献2】Process Development of Adenoviral Vector Production in Fixed Bed Bioreactor: From Bench to Commercial Scale. Human Gene Therapy, Vol. 26, No. 8, 2015
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
初期段階の臨床試験のためのウイルスベクターの製造は、既存のプラットフォームで可能であるが、後期の商業生産規模に到達するためには、高品質の産物を数多く産生できるプラットフォームが必要である。
【0013】
それに加え、細胞を培養するため、またはAAVを製造するため、または生化学的産生のために細胞増殖を促進するためのシードトレインを作るために使用されるバイオリアクタをモニタできることが望ましい。接着細胞反応器を使用する場合、成長培地の試料は、細胞を含有しないか、または少なくとも、接着基体上での培養の状態をモニタするのに有用な程度までは細胞を含有しない。
【0014】
細胞分布が均一であり、収穫収率が容易に達成でき、増加しており、高密度フォーマットでの細胞の培養を可能にしつつ、基体を無菌でモニタすることを含む、細胞培養過程の最中および/または後に基体上の細胞を調べることによって、ユーザが細胞培養過程の状態をモニタできるようにする、細胞培養マトリクス、システム、および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本開示の実施の形態によれば、基体の全てまたは一部を試料採取して、細胞培養の状態または健康をモニタできるようにする細胞培養基体が開示されている。実施の形態は、1つ以上の層がこの試料採取を可能にするように特別に設計されている、多層固定床細胞培養マトリクスを含む。実施の形態は、そのような細胞培養基体および/またはマトリクスを備えた固定床バイオリアクタも含む。
【0016】
接着細胞バイオリアクタ床内での細胞の数およびその分布と健康を予測できるようにするために、ある方法では、細胞培養または細胞増殖過程の真っ最中に基体の一部を取り出す。この過程中に試料採取することによって、細胞培養の実施についての情報を使用して、その過程の品質と性能を評価することができる。細胞数は試料から予測することができ、増殖は、異なる時間で試料採取することによって、モニタすることができる。この情報を使用して、シードトレインやウイルスベクター産生などの特定の生物学的過程を開発し、その性能を最適化することができる。産生において、汚染されたか、または仕様から外れた実施を終わらせて、満足な結果が得られずに終わりまでこの過程を実施する費用を削減することができる。成長培地および失われた産生時間は、典型的な生物学的過程にとってかなりの費用となる。本開示の実施の形態は、固定床細胞培養基体の全てまたは一部を筐体から取り出して、その床またはバイオリアクタの容器を壊さずに、ユーザが床にアクセスできるようにする。これにより、固定床の任意の部分または選択された部分を評価することができる。その床は、細胞培養過程後、または細胞培養の「事後(post-mortem)」分析のために所望の成分の収穫が完了した後にも評価することができる。
【0017】
本開示の実施の形態によれば、細胞を培養し、細胞培養中に基体の試料採取をするための固定床バイオリアクタアセンブリが提供される。その固定床バイオリアクタアセンブリは、細胞を培養するための内部空間およびその内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器;各層がその上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する、内部空間内に配置された複数の細胞培養基体層であって、この構造的に明確な表面は、層の厚さを通る開口の秩序のある規則的配列を画成する、細胞培養基体層;およびその複数の細胞培養基体層を少なくとも部分的に取り囲み、少なくとも1つの試料アクセス窓を有するスリーブであって、その試料アクセス窓は、細胞培養基体の1つ以上の層を、開口を通じてスリーブから取り出せるように作られたスリーブ内の開口を含む、スリーブを備える。
【0018】
本開示の実施の形態によれば、バイオリアクタ容器から細胞培養基体を試料採取する方法が提供される。この方法は、バイオリアクタ容器の上部または底部を通じてバイオリアクタ容器からスリーブ内に積み重ねられた細胞培養基体層のスリーブを取り出す工程;スリーブの側面に配置された試料アクセス窓を通じて細胞培養基体の1つ以上の層を取り出す工程であって、試料アクセス窓は、スリーブ内に形成され、細胞培養基体層の少なくとも一部を露出する開口である、工程を含む。
【0019】
本開示の実施の形態によれば、細胞を培養するための固定床バイオリアクタシステムが提供される。そのシステムは、細胞を培養するための内部空間およびその内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器;そのバイオリアクタ容器の側壁にある少なくとも1つのポート;内部空間内に配置された細胞培養基体;およびバイオリアクタ容器の外部に配置された試料採取リールであって、中心軸の周りに回転して、内部空間から試料基体を無菌で取り出すように作られた試料採取リールを備える。
【0020】
実施の形態の態様によれば、試料採取リールは、基体試料がそれを通じて内部空間から試料採取リールに通過できる貫通開口を含む。試料採取リールは、試料採取リールの外殻の少なくとも一部を形成するサドル筐体を介してバイオリアクタ容器壁の外部に固定することができる。試料採取リールの貫通開口は、バイオリアクタ容器の少なくとも1つのポートと揃えられている。試料採取リールは、試料採取リールの外殻の少なくとも一部を形成する筐体キャップをさらに含む。試料採取リールは、筐体キャップとサドル筐体との間に配置された試料開口をさらに含む。試料開口は、基体試料を試料開口を通じて試料採取リールからバイオリアクタシステムの外部に取り出せるように作られている。試料採取リールは、試料基体の一部を把持するように作られたスプールをさらに含み、そのスプールは、スプールが回転したときに、試料基体がスプールに巻き付けられるように回転可能である。試料採取リールは、試料採取リールのスプールと外殻との間に配置された試料ドラムをさらに含む。試料採取リールは、サドル筐体に固定され、サドル筐体と試料ドラムとの間の空間にシールを形成するように作られて、試料基体の無菌試料採取を可能にする一連の静止Oリングをさらに含み得る。
【0021】
実施の形態の態様によれば、試料ドラムは、試料基体が試料ドラム内をスプールまで通過できるように作られたドラム開口をさらに含む。試料採取リールは、第1の方向に回転して試料基体を内部空間から取り出し、第1の方向と反対の第2の方向に回転して試料基体を試料採取リールからバイオリアクタシステムの外部に放出するように作られている。基体試料は、貫通開口の縁にある曲面または楔面によって試料採取リールの開口を通じてバイオリアクタシステムの外部に取り外される。
【0022】
本開示の実施の形態によれば、細胞を培養するための固定床バイオリアクタシステムが提供される。そのシステムは、細胞を培養するための内部空間およびその内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器;そのバイオリアクタ容器の側壁にある少なくとも1つのポート;および内部空間内に配置され、その上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する細胞培養基体であって、その構造的に明確な表面は、細胞培養基体の厚さを通る開口の秩序のある規則的配列を画成する、細胞培養基体を含む。細胞培養基体の少なくとも一部は、試料基体を含み、その試料基体は、試料基体と細胞培養基体の残りとの間の分離境界により画成される。分離境界は、試料基体を細胞培養基体の残りから分離するように作られており、少なくとも1つのポートは、試料基体を少なくとも1つのポートを通じて内部空間から取り出せるようなサイズである。
【0023】
本開示の実施の形態の様々な態様によれば、分離境界は、以下:細胞培養基体の穿孔、その中またはそれを貫通する切り込み、もしくはその局所的に薄い部分の少なくとも1つを含む。分離境界は、試料基体と基体の残りとの間に取付材料をさらに含み得、その取付材料は、張力下で試料基体および基体の残りの一方または両方から離脱するように作られている。そのシステムは、複数の試料基体をさらに含み得る。複数の試料基体の少なくとも2つは、複数の試料基体の1つではない細胞培養基体の残りの一部で互いから分離することができる。複数の試料基体の少なくとも一部は、それらの間の複数の試料基体の1つではない細胞培養基体の残りのいずれも使用せずに、分離境界で互いから分離することができる。
【0024】
バイオリアクタ容器は、試料基体を内部空間から無菌で取り出すように作られている。そのシステムは、試料基体に取り付けられた第1の端部を含むテザーを含むことがあり、そのテザーは、ポートを通じて試料基体を内部空間から引っ張り出すように作られている。そのシステムは、内部空間の外側に配置され、試料基体が少なくとも1つのポートを通じて内部空間から取り出された後に試料基体を収容するように作られた捕獲装置をさらに含むことがある。その捕獲装置は、捕獲装置に可変内部容積を持たせられる柔軟壁、プリーツ壁、または折り畳み構造を有することがある。そのシステムは、テザーの第1の端部と第2の端部との間にテザーに沿って配置された栓をさらに含み得、その栓は、試料基体が内部空間内に留まっている間にポート内に無菌シールを形成するように作られている。その栓は、テザーの第2の端部が所定の力でポートから引き離されたときに、ポートから取り除かれるように作られている。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1A】本開示の実施の形態による、細胞培養基体の三次元モデルの斜視図
図1B図1Aの基体の二次元平面図
図1C図1Bにおける基板の線A-Aに沿った断面図
図2】実施の形態による、細胞培養システムの説明図
図3A】実施の形態による、分離境界が基体試料部分を画成している、細胞培養基体の試料層の平面図
図3B】実施の形態による、試料部分が基体の試料層の残りから分離された後の、図3Aの細胞培養基体の試料層と試料部分の平面図
図4A】実施の形態による、先細端部を有する複数の基体試料部分を備えた細胞培養基体の試料層の平面図
図4B図4Aからの個々の基体試料部分を示す図
図4C図4Bの個々の基体試料部分および基体試料部分をそこを通じて固定床細胞培養基体から引き抜けるポートを示す図
図5A】実施の形態による、容器の内部槽内の細胞培養試料部分にアクセスするための多数のポートを有する細胞培養容器の側壁を示す図
図5B】実施の形態による、図5Aの線A-Aでの図5Aの側壁の断面図
図6A】実施の形態による、バイオリアクタの側面に一連の試料採取リールを有するバイオリアクタの等角図
図6B】実施の形態による、図6Aからの試料採取リールの1つの拡大等角図
図7】実施の形態による、図6Bからの試料採取リールの断面図
図8A】実施の形態による、試料基体を取り出す回転状態にある図7の試料採取リールの断面図
図8B】試料基体を取り出した後の図8Aの試料採取リールの断面図
図9A】実施の形態による、試料採取リールを回転させて、基体試料開口と筐体開口を揃えて、基体試料の取出しを可能にした後の図7~8Bの試料採取リールの断面図
図9B】実施の形態による、試料基体を生成するために反時計回りに回転させた後の、図9Aの試料採取リールの断面図
図10A】実施の形態による、基体試料開口から現れた試料基体を示す断面図
図10B】実施の形態による、試料基体が取り出された後の図10Aの試料採取リールの断面図
図11A】実施の形態による、バイオリアクタから試料基体を受け取る位置にあるスプールを示す図
図11B】実施の形態による、密閉位置にあるスプールを示す図
図11C】実施の形態による、スプールが試料基体をリールから生成する位置にある、図11Aおよび11Bのスプールを示す図
図12A】実施の形態による、試料採取のために切り込みが入れられたスリーブ内の多層細胞培養基体アセンブリの等角図
図12B図12Aのアセンブリの平面図
図13A】実施の形態による、切り込みに沿ったシールを有する図12Aのアセンブリの等角図
図13B図13Aのアセンブリの平面図
図14A】実施の形態による、バイオリアクタ容器の外側筐体内に配置された図13Aのアセンブリの等角図
図14B図14Aのアセンブリの平面図
図15】実施の形態による、試料採取するためにバイオリアクタ容器の筐体から多層細胞培養基体とスリーブが持ち上げられた、図14Aのアセンブリの等角図
図16】実施の形態による、基体試料カートリッジアセンブリの平面図
図17】実施の形態による、試料部分が繋がれている、基体試料層の平面図
図18A】実施の形態による、織物PETメッシュの基体試料層の写真
図18B】実施の形態による、接着細胞を収穫する前に織物PETメッシュのクリスタルバイオレットで染色された試料部分の写真
図18C】実施の形態による、接着細胞を収穫した後の織物PETメッシュ基体のクリスタルバイオレットで染色された試料部分の写真
図19A】実施の形態による、反応器内から試料部分を受け入れるためのバイオリアクタの側壁に取り付けられた試料捕獲装置の断面図
図19B】実施の形態による、反応器内から試料部分を受け取った図19Aの試料捕獲装置の断面図
図19C】実施の形態による、図19Aおよび19Bの試料捕獲装置のバイオリアクタへの、試料部分のテザーの周りの取付けを示す断面図
図20A】実施の形態による、別の試料捕獲装置を示す断面図
図20B】試料部分を取り出すために、試料部分のテザーに取り付けるプロセスにおける図20Aの試料捕獲装置を示す図
図20C】実施の形態による、試料部分をバイオリアクタから取り出し、試料捕獲装置を封止した後の図20Aおよび20Bの試料捕獲装置を示す図
図21A】実施の形態による、試料部分を取り出した後の、ポートを封止するためのバルブカムリングを有するバイオリアクタの側壁に取り付けられた試料捕獲装置の断面図
図21B】実施の形態による、図21Aのバルブカムリングの断面図
図21C】実施の形態による、試料部分を取り出し、図21Aおよび21Bのバルブカムリングを閉じた後の試料捕獲装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示の様々な実施の形態を、もしあれば、図面を参照して、詳しく説明する。様々な実施の形態に対する言及は、本発明の範囲を限定するものではなく、その範囲は、ここに付随の特許請求の範囲によってしか限定されない。それに加え、本明細書に述べられたどの例も、限定的ではなく、請求項に記載された発明の多くの可能な実施の形態のいくつかを述べているに過ぎない。
【0027】
本開示の実施の形態は、細胞培養基体、並びに細胞培養をモニタするために基体またはその基体の一部の試料採取を可能にする、そのような基体を組み込んだ細胞培養バイオリアクタを含む。
【0028】
従来の大規模細胞培養バイオリアクタでは、異なるタイプの充填床バイオリアクタが使用されてきた。通常、これらの充填床は、接着または浮遊細胞を維持し、成長と増殖を支援するために多孔質マトリクスを含有する。充填床マトリクスは、高い表面積対体積比を提供し、よって、細胞密度は、他のシステムにおけるよりも高くなり得る。しかしながら、充填床は、多くの場合、深層フィルタとして機能し、その場合、細胞は、マトリクスの繊維に物理的に捕えられるか、巻き込まれる。それゆえ、充填床を通る細胞接種材料の直線流のために、細胞は、充填床内の不均一な分布に曝され、充填床の深さまたは幅に亘る細胞密度のばらつきがもたらされる。例えば、細胞密度は、バイオリアクタの入口領域でより高く、バイオリアクタの出口に近いところで著しく低いであろう。充填床の内部の細胞のこのような不均一な分布により、バイオプロセス製造においてそのようなバイオリアクタの拡張性と予測可能性が著しく妨げられ、充填床の単位表面積または体積当たりの細胞の成長またはウイルスベクター産生に関する効率の低下さえもたらし得る。
【0029】
従来技術に開示された充填床バイオリアクタにおいて遭遇する別の問題に、チャネリング効果がある。充填床の任意の所定の断面での局所繊維密度は、充填不織繊維のランダム性のために、均一ではない。培地は、繊維密度が低い(床透過性が高い)領域で速く流れ、繊維密度が高い(床透過性がより低い)領域でずっと遅く流れる。充填床を横切る結果としての不均一な培地灌流により、チャネリング効果が生じ、これは、細胞培養全体とバイオリアクタの性能に悪影響を及ぼす栄養素と代謝産物の著しい勾配として現れる。培地灌流が低い領域に位置する細胞は、飢え、非常に多くの場合、栄養素の欠乏または代謝産物中毒のために死ぬことになる。細胞収穫は、不織繊維足場が充填されたバイオリアクタが使用される場合に遭遇するさらに別の問題である。細胞培養過程の終わりに放出される細胞は、深層フィルタとしての充填床機能のために、充填床の内部に取り込まれ、細胞回収率は非常に低い。このことにより、生細胞が産生物であるバイオプロセスにおけるそのようなバイオリアクタの利用が著しく制限される。それゆえ、不均一性は、流動と剪断への曝露が異なる区域をもたらし、利用できる細胞培養区域を事実上減少させ、不均一な培養を生じ、トランスフェクション効率と細胞放出を妨げる。
【0030】
既存の細胞培養の解決策のこれらと他の問題に対処するために、本開示の実施の形態は、接着依存性細胞の効率的かつ高収率の細胞培養および細胞産物(例えば、タンパク質、抗体、ウイルス粒子)の産生を可能にする、細胞成長基体、そのような基体のマトリクス、および/またはそのような基体を使用する充填床システムを提供する。実施の形態は、均一な細胞播種および培地/栄養素灌流、並びに効率的な細胞収穫を可能にする、多孔質基体材料の規則的な秩序配列から製造された多孔質細胞培養マトリクスを含む。実施の形態は、実施の形態の均一な性能を犠牲にせずに、プロセス開発規模から完全生産サイズ規模まで、細胞を播種し成長させられる、および/または細胞産物を収穫することのできる基体およびバイオリアクタに関する拡張可能な細胞培養の解決策も提供する。例えば、いくつかの実施の形態において、バイオリアクタは、プロセス開発規模から、生産規模に亘り基体の単位表面積当たりの同等なウイルスゲノム(VG/cm)で生産規模まで、容易に拡張できる。ここに記載された実施の形態の収穫安定性および拡張性により、同じ細胞基体上での複数の規模での細胞集団を成長させるための効率的なシードトレインに使用可能になる。それに加え、ここに記載された実施の形態は、記載された他の特徴との組合せで、高収率の細胞培養の解決策を可能にする高い表面積を有する細胞培養気質を提供する。いくつかの実施の形態において、例えば、ここに述べられた細胞培養基体および/またはバイオリアクタは、バッチ当たり1016から1018のウイルスゲノム(VG)を産生できる。
【0031】
実施の形態において、接着細胞が付着し、増殖するための構造的に明確な表面積を有し、良好な機械的強度を有し、充填床または他のバイオリアクタ内で組み立てられたときに、高度に均一な多数の相互接続された流体ネットワークを形成するマトリクスが提供される。特定の実施の形態において、機械的に安定で非分解性織物メッシュを基体として使用して、接着細胞産生を支援することができる。ここに開示された細胞培養マトリクスは、高い体積密度の形式で足場依存性細胞の付着と増殖を支援する。そのようなマトリクスの均一な細胞播種、並びに細胞またはバイオリアクタの他の産生物の効率的な収穫が達成できる。それに加え、本開示の実施の形態は、接種工程中に均一な細胞分布を提供し、開示されたマトリクス上の接着細胞のコンフルエントな単層または多層を達成するように細胞培養を支援し、栄養素の拡散が限られ、代謝産物の濃度が増加した大きいおよび/または制御不能な3D細胞凝集体の形成を避けることができる。それゆえ、そのマトリクスでは、バイオリアクタの作動中、拡散限界がなくなる。それに加え、そのマトリクスは、バイオリアクタからの容易かつ効率的な細胞収穫を可能にする。1つ以上の実施の形態の構造的に明確なマトリクスにより、バイオリアクタの充填床からの完全な細胞回収と一貫した細胞収穫が可能になる。
【0032】
実施の形態によれば、治療用タンパク質、抗体、ウイルス性ワクチン、またはウイルスベクターをバイオプロセスで生産するためのマトリクスを有するバイオリアクタを使用する、細胞培養方法も提供される。
【0033】
細胞培養バイオリアクタに使用される既存の細胞培養基体(すなわち、無作為な秩序の繊維の不織基体)とは対照的に、本開示の実施の形態は、明確な秩序構造を有する細胞培養基体を含む。明確な秩序構造により、一貫した予測可能な細胞培養結果が得られる。それに加え、その基体は、細胞の閉じ込めを防ぎ、充填床を均一な流れが通れるようにする開放多孔質構造を有する。この構成により、細胞播種、栄養素の供給、細胞成長、および細胞収穫を改善することができる。1つ以上の特別な実施の形態によれば、比較的小さい厚さだけ隔てられた第1と第2の面を有する薄いシート状構造を有し、よって、シートの厚さが、基体の第1と第2の面の幅および/または長さに対して小さい、基体材料でマトリクスが形成される。それに加え、複数の孔または開口が、基体の厚さを貫通して形成されている。開口の間の基体材料は、ほぼ二次元(2D)表面であるかのように基体材料の表面に細胞を付着させ、一方で、基体材料の周りと開口を通じて適切に流体を流せるサイズと形状のものである。いくつかの実施の形態において、基体は、高分子系材料であり、成形高分子シート;厚さを貫通して開口が開けられた高分子シート;メッシュ状層に融合された多数のフィラメント;3Dプリント基体;またはメッシュ層に編み込まれた複数のフィラメントとして形成され得る。マトリクスの物理的構造は、足場依存性細胞を培養するために高い表面積対体積比を有する。様々な実施の形態によれば、マトリクスは、均一な細胞播種と成長、均一な培地灌流、および効率的な細胞収穫についてここに述べられた特定の様式でバイオリアクタ内に配列または充填することができる。
【0034】
本開示の実施の形態は、バッチ当たり約1014ウイルスゲノム超、バッチ当たり約1015ウイルスゲノム超、バッチ当たり約1016ウイルスゲノム超、バッチ当たり約1017ウイルスゲノム超、またはバッチ当たり約1016ウイルスゲノムまでまたは超の規模でウイルスゲノムを産生できる実用的サイズのウイルスベクタープラットフォームを達成できる。いくつかの実施の形態において、産生は、バッチ当たり約1015から約1018以上のウイルスゲノムである。例えば、いくつかの実施の形態において、ウイルスゲノム収量は、バッチ当たり約1015から約1016のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1016から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1016から約1018のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1017から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1018から約1019のウイルスゲノム、またはバッチ当たり約1018以上のウイルスゲノムであり得る。
【0035】
それに加え、ここに開示された実施の形態は、細胞培養基体への細胞の付着と成長だけでなく、培養細胞の生存した状態での収穫を可能にする。生存細胞を収穫できないことは、現行のプラットフォームにおける重大な欠点であり、これは、生産能力に関する十分な数の細胞の構築と維持の難点をもたらす。本開示の実施の形態の態様によれば、80%から100%生存、または約85%から約99%生存、または約90%から約99%生存を含む、生存細胞を細胞培養基体から収穫することが可能である。例えば、収穫された細胞の内、少なくとも80%が生存している、少なくとも85%が生存している、少なくとも90%が生存している、少なくとも91%が生存している、少なくとも92%が生存している、少なくとも93%が生存している、少なくとも94%が生存している、少なくとも95%が生存している、少なくとも96%が生存している、少なくとも97%が生存している、少なくとも98%が生存している、または少なくとも99%が生存している。細胞は、例えば、トリプシン、TrypLE、またはAccutase(登録商標)を使用して、細胞培養基体から放出されることがある。
【0036】
図1Aおよび1Bは、本開示の1つ以上の実施の形態の一例による、細胞培養基体100の、それぞれ、三次元(3D)斜視図および二次元(2D)平面図を示す。細胞培養基体100は、第1の方向に延在する第1の複数の繊維102および第2の方向に延在する第2の複数の繊維104から作られた織物メッシュ層である。基体100の編まれた繊維は複数の開口106を形成し、その開口は、1つ以上の幅または直径(例えば、D、D)で規定することができる。開口のサイズと形状は、織り方のタイプ(例えば、フィラメントの数、形状およびサイズ;交差するフィラメント間の角度など)に基づいて様々であり得る。織りメッシュは、マクロ規模、二次元シートまたは層として、特徴付けられることがある。しかしながら、織りメッシュを綿密に検査すると、メッシュの交差する繊維の隆起と降下のために、三次元構造が明らかになる。よって、図1Cに示されるように、織物メッシュ100の厚さTは、単繊維の厚さ(例えば、t)より厚いであろう。ここに用いられているように、厚さTは、織物メッシュの第一面108と第二面110との間の最大厚さである。理論で束縛する意図はないが、基体100の三次元構造は、接着細胞を培養するために大きい表面積を提供するので、都合よく、メッシュの構造的硬直性は、均一な流体流を可能にする一貫した予測可能な細胞培養マトリクス構造を提供できると考えられる。
【0037】
図1Bにおいて、開口106は、互いに反対の繊維102の間の距離として定義される直径D、および互いに反対の繊維104の間の距離として定義される距離Dを有する。DおよびDは、織り形状に応じて、等しくても、等しくなくても差し支えない。DおよびDが等しくない場合、大きい方を外径と称し、小さい方を内径と称することができる。いくつかの実施の形態において、開口の直径は、開口の最も広い部分を称することがある。特に明記のない限り、開口の直径は、ここに用いられているように、開口の互いに反対側にある平行な繊維間の距離を称することになる。
【0038】
複数の繊維102の所定の繊維は厚さtを有し、複数の繊維104の所定の繊維は厚さtを有する。図1Aに示されるような、円形断面の繊維の場合、または他の三次元断面の場合、厚さtおよびtは、繊維断面の最大直径または厚さである。いくつかの実施の形態によれば、複数の繊維102の全ては同じ厚さtを有し、複数の繊維104の全ては同じ厚さtを有する。それに加え、tおよびtは等しいことがある。しかしながら、1つ以上の実施の形態において、tおよびtは、複数の繊維102が複数の繊維104と異なる場合など、等しくない。それに加え、複数の繊維102および複数の繊維104の各々は、2つ以上の異なる厚さ(例えば、t1a、t1bなど、およびt2a、t2bなど)の繊維を含有することがある。実施の形態によれば、厚さtおよびtは、その上で培養されている細胞のサイズに対して大きく、よって、その繊維は、細胞の観点から平面の近似を提供し、このことにより、繊維サイズが小さい(例えば、細胞の直径の規模の)いくつかの他の解決策と比べて、細胞の付着と増殖を良好にすることができる。図1A~1Cに示されるような、織物メッシュの三次元特性のために、細胞の付着と増殖に利用できる繊維の2D表面積は、同等な平らな2D表面上に付着するための表面積を超えている。
【0039】
1つ以上の実施の形態において、繊維は、約50μmから約1000μm、約100μmから約750μm、約125μmから約600μm、約150μmから約500μm、約200μmから約400μm、約200μmから約300μm、または約150μmから約300μmの範囲の直径を有することがある。微小規模では、細胞と比べた繊維の規模のために(例えば、繊維の直径は細胞より大きい)、単繊維の表面は、接着細胞が付着し、増殖するための2D表面の近似として提示される。繊維は、約100μm×100μmから約1000μm×1000μmに及ぶ開口を持つメッシュに編むことができる。いくつかの実施の形態において、開口は、約50μmから約1000μm、約100μmから約750μm、約125μmから約600μm、約150μmから約500μm、約200μmから約400μm、または約200μmから約300μmの直径を有することがある。フィラメントの直径および開口の直径のこれらの範囲は、いくつかの実施の形態の例であって、全ての実施の形態によるメッシュの可能な特徴サイズを限定する意図はない。繊維の直径と開口の直径の組合せは、例えば、細胞培養マトリクスが多数の隣接するメッシュ層(例えば、個々の層の積層体または丸められたメッシュ層)から作られる場合、基体を通る効率的かつ均一な流体流を提供するように選択される。
【0040】
繊維の直径、開口の直径、および織り方/パターンなどの要因により、細胞の付着と成長に利用できる表面積が決まることになる。それに加え、細胞培養マトリクスが、重複する基体の積層体、ロール、または他の配置を含む場合、細胞培養マトリクスの充填密度が充填床マトリクスの表面積に影響することになる。充填密度は、基体材料の充填厚さ(例えば、基体の層に必要な空間)により代わり得る。例えば、細胞培養マトリクスの積層体が特定の高さを有する場合、積層体の各層は、積層体の全高を積層体中の層の数で割ることによって決まる充填厚さを有すると言える。その充填厚さは、繊維の直径と織り方に基づいて様々となるが、積層体中の隣接する層の揃い方に基づいても変動し得る。例えば、編み層の三次元特性のために、互いの揃い方に基づいて隣接する層が収容できるかみ合いまたは重複の特定の量がある。第1の揃い方では、隣接する層は互いにきつく収まり得るが、第2の揃い方では、隣接する層は、上層の最下点が下層の最上点と直接接触している場合など、重複がないことがあり得る。特定の用途では、層の充填密度がより低い(例えば、より高い透過性が優先事項である場合)または充填密度がより高い(例えば、基体の表面積を最大にすることが優先事項である場合)細胞培養マトリクスを提供することが望ましいことがある。1つ以上の実施の形態によれば、充填厚さは、約50μmから約1000μm、約100μmから約750μm、約125μmから約600μm、約150μmから約500μm、約200μmから約400μm、約200μmから約300μmであり得る。
【0041】
上述した構造的要因により、細胞培養基体の単層または基体の多層を有する細胞培養マトリクスであるかにかかわらず、細胞培養マトリクスの表面積を決定することができる。例えば、特定の実施の形態において、円形で直径6cmの織物メッシュ基体の単層は、約68cmの有効表面積を有し得る。ここに用いられているような「有効表面積」は、細胞の付着と成長に利用できる基体材料の部分における繊維の全表面積である。特に明記のない限り、「表面積」に対する言及は、この有効表面積を称する。1つ以上の実施の形態によれば、直径6cmの単一織物メッシュ基体層は、約50cmから約90cm、約53cmから約81cm、約68cm、約75cm、または約81cmの有効表面積を有することがある。有効表面積のこれらの範囲は、例としてのみ与えられ、いくつかの実施の形態は、異なる有効表面積を有してもよい。細胞培養マトリクスは、本明細書の実施例に述べられるように、多孔質に関して特徴付けることもできる。
【0042】
基体メッシュは、例えば、ポリスチレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリビニルピロリドン、ポリブタジエン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンオキシド、ポリピロール、およびポリプロピレンオキシドを含む、細胞培養用途に適合する高分子材料の単繊維または多繊維から製造することができる。メッシュ基体は、例えば、編み、縦編み、または織り(例えば、平織り、あや織り、畳織り(dutch weave)、五本針織り(five needle weave))を含む、異なるパターンまたは織りを有することがある。
【0043】
メッシュフィラメントの界面化学は、所望の細胞接着特性を提供するように変更する必要があるであろう。そのような変更は、メッシュの高分子材料の化学処理により、またはフィラメント表面に細胞接着分子をグラフト化することにより、行うことができる。あるいは、メッシュに、例えば、コラーゲンまたはMatrigel(登録商標)を含む、細胞接着特性を示す生体適合性ヒドロゲルの薄層を被覆することができる。あるいは、メッシュのフィラメント繊維の表面に、当該技術分野で公知の様々なタイプのプラズマ、処理ガス、および/または化学物質による処理過程で、細胞接着特性を与えることができる。しかしながら、1つ以上の実施の形態において、メッシュは、表面処理を行わずに、効率的な細胞成長表面を提供することができる。
【0044】
より大きい表面積および高い細胞播種または増殖密度の別の利点は、ここに開示された実施の形態の費用が、競合する解決策と同じか、またはそれより安くなり得ることである。具体的に、細胞産物当たり(例えば、細胞当たりまたはウイルスゲノム当たり)の費用が、他の充填床バイオリアクタと等しいか、またはそれより安くなり得る。
【0045】
剛性が十分な構造的に明確な培養マトリクスを使用することによって、そのマトリクスまたは充填床に亘り高い流れ抵抗の均一性が達成される。様々な実施の形態によれば、そのマトリクスは、単層または多層形態で設置することができる。この融通性により、拡散限界がなくなり、マトリクスに付着した細胞に栄養素と酸素が均一に送達される。それに加え、開放マトリクスは、充填床構造においてどのような細胞取込み領域もなく、培養の終わりに高生存能力で完全な細胞収穫が可能になる。そのマトリクスは、充填床にとって充填均一性も与え、プロセス開発ユニットから、大規模工業バイオプロセスユニットへの直接的な拡張が可能になる。充填床から細胞を直接収穫する能力のために、撹拌容器または機械的に震盪された容器内でマトリクスを再懸濁させる必要(これにより、複雑さが加わるであろうし、細胞に有害な剪断応力が与えられ得る)がなくなる。さらに、細胞培養マトリクスの高い充填密度により、工業規模で管理可能な体積でのバイオプロセス生産性が高くなる。
【0046】
ここに用いられているように、「構造的に明確な」とは、基体の構造が所定の設計にしたがっており、無作為ではないことを意味する。それゆえ、構造的に明確な基体は、織物設計であり得る、3D印刷する、成形する、またはその構造を所定の計画構造に従わせる当該技術分野で公知のいくつかの他の技術によって形成することができる。
【0047】
ここに述べられるように、1つ以上の実施の形態により、前記細胞培養基体をバイオリアクタ容器内に使用することができる。例えば、その基体は、充填床バイオリアクタ構造、または三次元培養チャンバ内の他の構造内に使用することができる。しかしながら、実施の形態は、三次元培養空間に限定されず、その基体は、細胞のための培養基体を提供するために、平底培養皿内など、基体の1つ以上の層が平らになっている、二次元培養表面構造と考えられるものに使用することができる。その容器は、汚染の懸念のために、使用後に廃棄できる使い捨て容器であり得る。
【0048】
1つ以上の実施の形態によれば、細胞培養マトリクスがバイオリアクタ容器の培養チャンバ内に使用される、細胞培養システムが提供される。図2は、バイオリアクタ容器302の内部に細胞培養チャンバ304を有するバイオリアクタ容器302を含む細胞培養システム300の一例を示す。細胞培養チャンバ304内に、基体層308の積層体から作られた細胞培養マトリクス306がある。基体層308は、ある基体層の第一面または第二面が、隣接する基体層の第一面または第二面に面するように積層されている。バイオリアクタ容器302は、培地、細胞、および/または栄養素が培養チャンバ304内に入るための入口310を一方の端部に、培養チャンバ304から培地、細胞、または細胞産物を取り出すための出口312を反対の端部に有する。このように基体層を積層できるようにすることで、前記システムは、規定の構造および積層基体を通る効率的な流体流のために、細胞の付着と増殖に悪影響を与えずに、容易に拡張することができる。容器302は、概して、入口310と出口312を有すると記載されることがあるが、いくつかの実施の形態では、培養チャンバ304に培地、細胞、または他の内容物を出入りするように流すために入口310および出口312の一方または両方を使用してもよい。例えば、入口310は、細胞の播種、灌流、または培養段階中に培地または細胞を培養チャンバ304に流すために使用されることがあるが、収穫段階では、入口310を通じて培地、細胞、または細胞産物を取り出すために使用されることもある。それゆえ、「入口」および「出口」という用語は、それらの開口の機能を制限する意図はない。
【0049】
図2において、バイオリアクタ300内の固定床を流れる流体のバルク流方向は、入口310から出口312への方向にあり、この例では、基体層308の第1と第2の主面は、バルク流方向に垂直である。
【0050】
細胞培養マトリクスは、所望のシステムに応じて、培養チャンバ内に多数の構造で配置することができる。例えば、1つ以上の実施の形態において、そのシステムは、培養チャンバ内の規定の細胞培養空間の幅に亘り延在する幅をもつ基体を一層または複数層含む。多層の基体は、このようにして、所定の高さまで積層することができる。先に述べたように、基体層は、1つ以上の層の第一面と第二面が、培養チャンバ内の規定の培養空間を通る培地のバルク流方向に垂直であるように配置されることがある、または1つ以上の層の第一面と第二面が、バルク流方向と平行であることがある。1つ以上の実施の形態において、細胞培養マトリクスは、バルク流に対して第1の向きに1つ以上の基体層を、その第1の向きと異なる第2の向きに1つ以上の他の層を含む。例えば、様々な層が、バルク流方向に平行または垂直な、もしくはそれらの間のある角度で第一面と第二面を有することがある。
【0051】
1つ以上の実施の形態において、細胞培養システムは、充填床構造で細胞培養基体の複数の個別片を含み、基体の片の長さおよび/または幅は、培養チャンバに対して小さい。ここに用いられているように、基体の片は、基体の片の長さおよび/または幅が培養空間の長さおよび/または幅の約50%以下である場合、培養チャンバに対して小さい長さおよび/または幅を有すると考えられる。それゆえ、細胞培養システムは、所望の配列で培養空間中に充填された基体の複数の片を含むことがある。基体片の配列は、無作為または半無作為であることがある、もしくは片が実質的に類似の向き(例えば、水平、鉛直、またはバルク流方向に対して0°と90°の間の角度で)に配向されているなど、所定の秩序またはアライメントを有することがある。
【0052】
ここに用いられている「所定の培養空間」は、細胞培養マトリクスで占められ、細胞播種および/または培養が行われることになっている培養チャンバ内の空間を称する。規定の培養空間は、培養チャンバのほぼ全てを満たすことができる、または培養チャンバ内の空間の一部を占めてもよい。ここに用いられているように、「バルク流方向」は、細胞の培養中に、および/または培地の培養チャンバへの流入または流出中に、細胞培養マトリクスの中または上の流体または培地のバルク質量流の方向と定義される。
【0053】
1つ以上の実施の形態において、細胞培養マトリクスは、固定機構によって培養チャンバ内に固定される。その固定機構は、細胞培養マトリクスの一部を、そのマトリクスを取り囲む培養チャンバの壁に、または培養チャンバの一端にあるチャンバ壁に固定することがある。いくつかの実施の形態において、固定機構は、細胞培養マトリクスの一部を、培養チャンバの縦軸に平行に延在する部材、またはその縦軸に垂直に延在する部材など、培養チャンバを通って延在する部材に接着する。しかしながら、1つ以上の他の実施の形態において、細胞培養マトリクスは、チャンバまたはバイオリアクタ容器の壁に固定して付着されずに、培養チャンバ内に収容されることがある。例えば、そのマトリクスは、培養チャンバの境界、またはチャンバ内の他の構造部材により、マトリクスがそれらの境界または構造部材にしっかりと固定されずに、マトリクスがバイオリアクタ容器の所定の区域内に保持されるように、収容されることがある。
【0054】
バイオリアクタ容器は、必要に応じて、入口および/または出口手段に取り付けることのできる1つ以上の出口を備える。その1つ以上の出口を通じて、液体、培地、または細胞をチャンバに供給したり、チャンバから取り出したりすることができる。容器における単一ポートは入口と出口の両方の機能を果たすことができる、または専用の入口および出口のために多数のポートを設けることができる。
【0055】
1つ以上の実施の形態の充填床細胞培養マトリクスは、その細胞培養マトリクス内に配置されたか、またはそれに散在する細胞培養基体のどの他の形態もなく、織物細胞培養メッシュ基体からなり得る。すなわち、本開示の実施の形態の織物細胞培養メッシュ基体は、既存の解決策に使用される不規則な不織基体のタイプを必要としない、効果的な細胞培養基体である。これにより、高密度の細胞培養基体に、流動均一性、収穫可能性などに関連する、ここに述べられた他の利点を与えつつ、簡略設計と構造の細胞培養システムが可能になる。
【0056】
ここに述べられるように、提供される細胞培養基体およびバイオリアクタシステムは、多数の利点を提示する。例えば、本開示の実施の形態は、AAV(全血清型)およびレンチウイルスなどの多数のウイルスベクターのいずれかの産生を支援することができ、生体内および生体外の遺伝子治療用途を目指して適用することができる。均一な細胞播種と分布は、容器当たりのウイルスベクター収量を最大にし、その設計により、生存細胞の収穫が可能になり、このことは、同じプラットフォームを使用した多重展開期間からなるシードトレインにとって有用であり得る。それに加え、ここでの実施の形態は、プロセス開発規模から生産規模まで拡張可能であり、これにより、最終的に開発時間と費用が節約される。ここに開示された方法およびシステムにより、ベクターの収量を最大にし、再現性を改善するために、細胞培養過程の自動化と制御も可能になる。最終的に、ウイルスベクターの生産レベル規模(例えば、バッチ当たり1016から1018のAAV VG)に到達するのに必要な容器の数は、他の細胞培養の解決策と比べて、大幅に減少させることができる。
【0057】
細胞を培養するため、および/またはウイルス産物を生成するために使用される、および/またはシードトレインを作製して、生化学的産生のための細胞の増殖を促進するために使用されバイオリアクタをモニタできることが望ましい。バイオリアクタ内に接着細胞を使用する場合、成長培地の試料は、細胞を含有しないことになり、よって、細胞培養または細胞数は、出て行く培地で測定することができない。接着細胞培養固定床における細胞の数およびその分布を予測できるためには、方法の1つに、本開示の実施の形態にしたがって、細胞増殖プロセスの最中に基体の一部を除去することがある。細胞培養プロセス中の試料採取によって、その実施についての情報を使用して、培養プロセスの品質および性能を評価することができる。細胞数は試料から予測することができ、増殖は、異なる時間での試料採取によってモニタすることができる。この情報を使用して、シードトレインおよびウイルスベクター産生などの特定の生物学的過程を開発し、その性能を最適化することができる。産生において、汚染されたか、または仕様から外れた実施を終わらせて、満足な結果が得られずに終わりまでこの過程を実施する費用を削減することができる。成長培地および失われた産生時間は、典型的な生物学的過程にとってかなりの費用となる。
【0058】
それゆえ、本開示には、基体、および取外し可能な試料部分を作るための、高分子メッシュ基体を含む細胞培養基体の層を切断し、穿孔する方法が記載されている。本開示には、バイオリアクタから試料を無菌で取り出すための方法および装置も記載されている。細胞培養過程中に試料採取を行うことによって、その実施に関する情報を使用して、培養過程の品質と性能を評価することができる。細胞数は試料から推測することができ、増殖は、異なる時間でまたはバイオリアクタ内の異なる場所で、試料採取することによって、モニタすることができる。この情報を使用して、シードトレインおよびウイルスベクター産生などの特定の生物学的過程を開発し、そのパラメータを最適化することができる。産生において、汚染されたか、または仕様からはずれた過程を打ち切って、満足な結果が得られずに終わりまでその過程を実施する費用を削減することができる。成長培地および失われた産生時間は、典型的な生物学的過程にとってかなりの費用となる。
【0059】
ここでの実施の形態において、基体の試料部分は、試料採取を、試料採取過程中の主要なメッシュ体を乱さずに、理想的には手作業で行うために少ない力で、細胞培養基体の残りから分離可能である。例えば、比較的小さい(例えば、手で加えられる)力で、力が加えられる試料部分と、基体の残りとの間の張力により、試料部分を基体の残りから分離することができる。除去力を低く維持するために、試料部分と基体の残りとの間に分離境界を施すことができる。この分離境界は、例えば、スコーリング、穿孔、レーザ切断、または打抜きなどの他の切断手段によって形成することができ、固定床から除去できる基体の分離可能片を含む基体の層を作るために使用することができる。
【0060】
いくつかの実施の形態では、細孔または開口の秩序配列を画成する織り繊維を有する織物高分子メッシュ基体が使用される。メッシュ中の繊維の各々は非常に強力であり得るので、時には、試料を小さい力で取り外しやすくするために、取外し可能な試料とメッシュの本体との間に延在する繊維がないことが望ましい。メッシュ積層体バイオリアクタ床を作るために使用される製造・組立過程中で取り扱われる場合、メッシュ層が丈夫であることが望ましいこともある。これを成し遂げるために、いくつかの繊維を、図3Aに示されるように、試料をメッシュ本体に接続するメッシュの編み部分を残すようなやり方で切断することができる。ここに開示された様々な高分子(PETを含む)から形成することのできる、繊維の相対的な剛性のために、個々の繊維が切断されて、試料部分の分離境界を作っているにもかかわらず、織り合わされた繊維は、付着したままでいられる。図3Aの線が分離境界402を示す。図3Bは、細胞培養基体の残りから取り外された後の試料部分を示す。
【0061】
試料片が切断されたメッシュ層は、バイオリアクタの筐体を開き、それらを床から消毒済み器具で引き抜くことによってバイオリアクタから除去することができる、またはそれらは、無菌試料採取ポートを使用することによって、反応器から除去することができる。
【0062】
試料採取片の多様性は、単層に由来し得る。織物基体を使用する実施の形態において、ほとんどの切断パターンに関して、切断パターンと関わり合うときの織り方と縦糸の方向は、構造的完全性を維持し、容易な除去を可能にすると考えられる。作られたいくつかの切断パターンはメッシュ繊維の向きの影響をそれほど受けず、メッシュの向きは精密に制御する必要はないので、これらのパターンを製造に使用することが都合よい。
【0063】
図4A~4Cは、試料採取層が多数の試料採取部分を含んでいる実施の形態の一例を示す。試料採取部分の形状は、試料採取層の外縁より内部にある試料採取部分の内側にある長方形端部、および試料採取層の外縁の外側端部にある先細端部を含む。先細端部により、バイオリアクタの側壁にあるポート424を通じて試料採取部分を容易に除去することができる。基体材料は、側壁にあるポートのサイズが、狭い端部の側と同じかまたはわずかに大きいことがあり得、試料採取部分の幅広部分が、側壁にある開口を通じて引っ張られるときに、わずかに折り曲がるか、湾曲することができるようなものである。図4Bは、取り外された後の個々の試料採取部分422の拡大図を示し、図4Cは、バイオリアクタにある側壁ポート424と試料採取部分422との間の相対的サイズの一例を示しているが、その相対的サイズは様々な実施の形態で変わり得る。
【0064】
無菌ポートアセンブリは、試料採取位置を任意の高さと向きで反応器に加えられるように、モジュール式であり得る。図5Aは、バイオリアクタ容器に組み立てられた4つの試料ポートの3層を示す。図5Bは、図5Aの線A-Aを通る平面図であり、バイオリアクタの側壁内のポート接続具の分解図である。これらのポート接続具は、試料部分を捕捉し、それらを無菌環境に維持するために容器の外部に無菌捕捉機構を取り付けるために使用することができる。本開示の実施の形態は、細胞培養の過程中に細胞培養バイオリアクタから試料を無菌で採取するための装置および方法を含む。実施の形態は、バイオリアクタの側壁にあるポートに接続されたリールまたは回転ドラムを含む。これらのリールを回転させることによって、試料基体は、バイオリアクタから無菌で取り出し、次いで、細胞数および培養の進捗および/または健康を分析するためにリールから取り出すことができる。
【0065】
図6Aは、実施の形態による、バイオリアクタ500の側面にある一連の試料採取リール502を有する細胞培養バイオリアクタ500の等角図を示す。図6Aに示された状態で、多数の基体試料504が試料採取リール502から延在しており、基体試料504が、リールによってバイオリアクタ容器の内部から取り出され、収集と分析の準備ができていることを示す。図6Bは、実施の形態による、図6Aからの試料採取リール502の1つの拡大図である。明確にするために、バイオリアクタ容器の壁は図6Bには示されていないが、バイオリアクタにあるポートへの貫通開口505を見ることができる。基体試料がバイオリアクタ容器から試料採取リール502に通過するのが、貫通開口505である。
【0066】
試料採取リール502の追加の詳細が、図7の断面図に示されている。試料採取リール502は、試料採取リール502の貫通開口505がバイオリアクタ容器の壁501にあるポートと揃うようにサドル筐体506によりバイオリアクタ容器の壁501に固定されている。試料採取リール502の外殻の残りは、筐体キャップ508から作られている。試料開口516が筐体キャップ508とサドル筐体506との間に残されており、基体試料は、この試料開口516から生じることになる(図6Aに示されるように)。スプール510が回転するときに、試料基体504がスプール510の周りに巻かれるように、試料基体504の一部を把持するように作られたスプール510が、試料採取リール502内にある。試料採取リール502は、試料採取リール502のスプール510と外側筐体(サドル筐体506と筐体キャップ508)との間に配置された試料ドラム512も含む。一連の静止Oリング514がサドル筐体506に固定され、サドル筐体506と試料ドラム512との間の空間にシールを作って、試料基体504の無菌試料採取を可能にしている。試料ドラム512は、試料基体が試料ドラム512内をスプール510まで通過できるようにするドラム開口518も備える。下記に述べるように、ドラム開口518は、試料基体を試料採取リール502から取り出すことも可能にすることになる。
【0067】
図8Aは、実施の形態による、時計回りに回転されて(その頁で見えるように)、試料基体504を貫通開口505を通じて取り出すときの、図7の試料採取リール502の断面図である。図8Bに示されるように、試料基体504の全てを貫通開口505に通過させるのに十分に試料採取リール502が回転された後、試料基体504は、続いて、バイオリアクタ容器の内部から完全に取り出され、試料採取リール502内に保持される。図9Aに示されるように、実施の形態によれば、同じ方向にさらに回転させると、基体試料開口516が貫通開口505と揃って、基体試料504の取出しが可能になる。試料基体504を取り出すために、次に、スプール510を反対方向(図9Bの頁の反時計回り)に回転させる。試料ドラム512は、逆回転の最中に適所に留まり、基体試料504は、貫通開口505と試料開口516を通じて試料採取リール502から押し出される。これらの開口を通じた基体試料504の取外しは、図9Bに示されるように、貫通開口505の縁にある曲面または楔面により支援することができる。
【0068】
試料ドラム512は、図10Aおよび10Bに示されるように、基体試料504全体を試料採取リール502から取り外されるまで、回転される。図10Bは、試料開口516近くの静止Oリング514を通過するドラム開口518により試料採取リール502の内部を密閉するために、反時計回り方向(図10Bの頁)にさらに回転させることができることも示す。それゆえ、機構全体が、バイオリアクタ容器の内部を露出せずに、基体試料を無菌状態で供給することができる。明確にするために、図11A~11Cは、どのようにドラム開口518が途中で一連のOリングを通過して、図11Cにおいて試料開口516と揃うかを認識できるように、筐体キャップ508とサドル筐体506とがない、試料ドラム512と静止Oリング514の等角図を示す。
【0069】
ここに述べられた実施の形態によれば、無菌での試料採取は、細胞培養固定床基体内のどの位置でも行うことができる。試料部分は、バイオリアクタから取り出された後、次いで、適切な条件下で分析することができる。このプロセスにより、試料が、バイオリアクタ全体を開き、基体のある部分を取り出す必要がある場合にそうなるであろう潜在的な汚染に主要な細胞培養物が曝露される(バイオリアクタに再び挿入される細胞培養物の一部にある細胞を物理的に乱すこともあるであろう)ことが制限される。
【0070】
本開示の実施の形態によれば、アセンブリの高さに沿った所定の位置で複数の層の試料採取を容易にする多層細胞培養基体アセンブリが提供される。実施の形態において、細胞培養基体積層体は、所定の試料アクセススロットを備えたスリーブ内に配置される。細胞培養基体積層体は、まだスリーブ内にある間に容器の筐体から持ち上げることができ、所定の試料アクセススロットを通じて基体の層をアセンブリから取り出すことができる。実施の形態の態様は、基体床の周りの容器内のバイパス流を防ぐために試料アクセススロットに隣接したスリーブ上のシールも含む。スリーブの閉鎖は、可変直径の基体層に適用するように調節可能であり得る。
【0071】
図12Aは、実施の形態による、試料採取のための切り込みを有するスリーブ内にある多層細胞培養基体アセンブリの等角図を示す。このアセンブリは、基体層600の多層積層体、および基体層の周りに巻き付けられたスリーブ602を含み、アセンブリの高さに沿って所定の試料アクセススロット604がある。アセンブリの高さに沿った試料アクセススロット604の間隔を空けることによって、試料は、固定床内の位置が異なることによる潜在的な変動を考慮して、固定床内の様々な位置(例えば、底部、中央部、および上部)から試料を採取することができる。図12Bは、図12Aのアセンブリの平面図を示す。図13Aは、実施の形態による、所定の試料アクセススロットに沿ってシール606が加えられた、図12Aのアセンブリの等角図を示す。図13Bは、図13Aのアセンブリの平面図を示す。図14Aは、実施の形態による、バイオリアクタ容器の外側筐体608内に配置された図13Aのアセンブリの等角図を示す。シール606は、スリーブ602と外側筐体608との間の空間を密閉して、バイパス流体流が試料アクセススロットから細胞培養基体の周りに流出するのを防ぐことができる。シール606は、外側筐体608と締まり嵌めを形成することがある、またはシール606と締まり嵌めを形成するための溝またはガスケットがあることがある。図14Bは、図14Aのアセンブリの平面図を示す。
【0072】
図15に示されるように、試料を、図14Aのアセンブリから収集する必要がある場合、実施の形態によれば、試料アクセススロット604にアクセスし、試料基体層601を、試料採取のために試料アクセススロット604を通じて取り出せるように、多層細胞培養基体層600およびスリーブ602を外側筐体608から持ち上げることができる。任意の試料基体層601を収集した後、アセンブリを、外側筐体に再び挿入し、細胞培養を継続することができる。
【0073】
図16は、実施の形態による、基体試料600および基体の周りに巻き付けられるスリーブ602の平面図である。実施の形態の態様として、スリーブ602は、所定の位置で基体の周りを完全には巻き付けないことによって、試料アクセススロットを形成することがある。それゆえは、試料アクセススロット604は、スリーブ602で形成された窓であり、窓内に基体層を十分に保持し、それでも、試料採取中に基体を取り出せるようなサイズであり得る。例えば、試料アクセススロット604または窓の開口は、基体層の最大幅よりもわずかに狭いことがあり得る。
【0074】
図17は、基体480の試料層が試料部分に成形された(484)テザー482を有し、よって、テザー482を引っ張って試料部分を取り出せる例を示す。実施の形態は、試料採取ポートの高さに到達するまで、基体の層をバイオリアクタの筐体に加える、バイオリアクタを組み立てる方法を含む。この時点で、試料採取層がバイオリアクタ容器に挿入され、テザーがポートを通じて引っ張られる。ポートの外部にある無菌容器を使用して、無菌試料採取を行うことができる。
【0075】
図18Aは、6個のパイ形試料採取部分を有する試料層を示す。試料採取部分の数と形状は様々であり得る。この場合、分離境界が、織物メッシュ基体の繊維を通じてレーザ切断されている。試料層は、層の左側にアライメント特徴も備え、これは、試料採取部分が試料採取を容易にするために所定の位置にあるように、試料層を所定の位置に保持するために有用であり得る。このアライメント特徴は、容器側壁の内部にある対応する特徴とかみ合うように設計することができる。図18Bは、基体上の接着細胞の存在を示すように染色された3個のパイ形試料部分を示す。図18Cは、基体から細胞を採取するための採取手順後の試料採取された3個のパイ形試料部分を示す。図18Bと18Cを比べると、この例における収穫手順の有効性が示される。
【0076】
図19Aは、実施の形態による、試料捕獲装置600の断面図を示す。試料捕獲装置600は、バイオリアクタ612内に保持された細胞培養基体610の試料部分を無菌で捕獲し、保持するための内部空間602を有する。捕獲装置600は、テザー616がそこを通じてバイオリアクタ612の内部に通過するポート614に結合されており、そこで、そのテザーは試料部分に結合している。シール618またはオーバーモールドがバイオリアクタ612の入口でポート内に配置されて、バイオリアクタが使用されている間に流体がポート614を通じて流出するのを阻止している。テザー616の反対側は、捕獲装置600内に配置され得る、またはポート614と反対の捕獲装置600の端部に結合し得る。試料を採取することが望ましいときに、テザー616が取り付けられた、捕獲装置の端部を、テザー616が試料部分619(図19B)をバイオリアクタ612から引っ張り出し、試料部分619が捕獲装置600内に配置されるまで、引っ張ることができる。実施の形態によれば、試料である基体層は、上述した実施の形態にしたがって切れ目を入れることができ、よって、試料部分619は容易に取り出すことができる。捕獲装置600は、高分子フイルムやバッグなど、可撓性および/または変形可能材料から製造することができる。実施の形態において、捕獲装置600は、折り目やプリーツを有する「蛇腹(bellows)」装置に似ていることがある。蛇腹が伸ばされたときに、栓が取り出され、メッシュがテザーにより蛇腹中に引っ張られる。無菌試料採取のためにこれらのタイプの捕獲装置を使用すると、基体の一部は、バルク細胞培養物を汚染させる恐れがなく、床内の任意の高さで固定床基体の縁から取り出すことができる。固定床の試料部分を筐体から容易に取り出せる設計により、床またはバイオリアクタ容器を破壊せずに、床へのアクセスがユーザに与えられる。これにより、床のどの部分も評価することができる。その筐体は、洗浄し、再利用することもできる。
【0077】
図19Bは、試料部分の捕獲中の試料捕獲装置600の断面図を示す。バイオリアクタから試料部分619を取り出した後、試料採取の無菌性を維持するために、ポート614近くの試料捕獲装置600の部分を、矢印Aで示されるように、試料捕獲装置600に内蔵された閉鎖機構によって、または力と熱の一方または両方を印加して、捕獲装置の両側を互いに密閉することによって(例えば、RFまたはヒートチューブシーラー(heat tube sealer)を使用することによって)、密閉することができる。実施の形態によれば、キャップ、折り畳み式ポート、スライド式またはヒンジ式カバー、もしくはポートを密閉し、バイオリアクタ内の細胞培養物の完全性を維持するのに適した他の手段を含む、ポートを密閉する他の手段も考えられる。
【0078】
図19Cは、実施の形態による、バイオリアクタ632の断面図を示す。この図面では、2つの無菌試料採取ポート634が示されているが、バイオリアクタ632は、バイオリアクタの高さに沿って、バイオリアクタの周囲に、この図面に示されていない追加のポートを含有し得、よって、ユーザは、細胞培養マトリクスにおける様々な位置から試料採取できることを認識すべきである。バイオリアクタ632に細胞培養基体630を組み立てるプロセスにおいて、ポート634の高さに到達するまで、バイオリアクタ632内に基体の層を積み重ねることができる。その時点で、試料採取基体である特別に設計された基体層(例えば、上述したように、切れ目が入れられた試料部分を有する)を積層体中に挿入し、テザー636を、ポート634を通じて、捕獲装置620内の空間622に入れ、捕獲装置620の反対側に固定することができる。テザー636は、接着剤、テザーを捕獲装置の固定位置に結ぶこと、テザーを捕獲装置の反対側にある孔に通し、捕獲装置620の空間622内の無菌環境を維持するキャップまたは留め具を固定すること、または上述したいくつかの組合せを含む、どの適切な手段で固定しても差し支えない。例えば、テザー636が通過する、捕獲装置620の反対側の孔にシーラントを施すことができ、そこで、テザー636はワッシャや他の留め具に結ばれる。次に、捕獲装置620の開放端を、クランプ、バンド、ナット、接着剤、サーマルシール、または他の手段など、任意の適切な手段639でポート634に取り付けることができる。
【0079】
図20A~20Cは、実施の形態による、捕獲装置の追加の態様を示す。図20Aにおいて、組立て中に、テザー700が試料採取メッシュ層に固定される。テザー700は栓702とオーバーモールドされており、試料を採取すべきときまで、ポート704はキャップや栓706で閉じられている。試料捕獲装置710は、バイオリアクタとは別に維持されている。図19A~19Cの例と同様に、捕獲装置710は、第2のテザー714が通過する開口712を有する。開口712の近くで、第2のテザー714には、キャップ706が取り除かれ、試料を採取すべきときに、締め具716またはテザー700に結合するための他の手段が備えられている。保護カバー718が締め具716と開口712を覆って、試料が採取されるまで、捕獲装置710内に無菌環境を維持することができる。図20Bおよび20Cに示されるように、試料部分720を採取するときに、キャップ706を取り除き、締め具716をテザー700に取り付け、捕獲装置710の管722をポート704に取り付ける。試料部分720を取り出し、捕獲装置710の管内に入れた後、上述したように、管722を密閉724することができる。
【0080】
図21A~21Cは、試料を採取しないときの、バイオリアクタ上のポートを閉じるための、本開示の実施の形態による、封止手段の別の例を示す。図21Aにおける捕獲装置とバイオリアクタの構成は、図19Aに示されたものと似ており、簡潔さのために、同一の特徴は再び説明されない。図21Aは、捕獲装置800がバイオリアクタの内部まで延在し、バイオリアクタの内壁にあるポート802に取り付けられているという点で、図19Aとは異なる。それに加え、バルブカムリング804が、ポート802内の捕獲装置800の一部の周りに配置されている。図21Bは、バルブカムリング804の断面図を示す。バルブカムリング804は、バルブカムリング804を貫通する捕獲装置800の部分を必要に応じて挟んだり開けたりすることによって、機能する。バルブカムリング804の内部には、バルブカムリングがカムの表面とバルブカムリング804内の戻り止めのために一方の方向に回転したときに捕獲装置800の管を閉じた状態に圧着し、反対方向に回転したときに捕獲装置800の管を解放するボールベアリング806がある。したがって、バルブカムリング804は、試料部分を取り出すために開けられ、次いで、試料部分が、図21Cに示されるように、捕獲装置800内に配置された後に閉じられる。必要に応じて、捕獲装置800の管は、次いで、細胞培養物を保護するための追加のシールを提供するために、チューブシーラー810によって密閉することができる。
【0081】
本明細書に述べられた実施の形態によれば、捕獲装置は、細胞培養基体の試料部分を無菌で試料採取する方法を提供する。試料部分は、バイオリアクタから取り出された後、次いで、適切な条件下で、分析のために捕獲装置から取り出すことができる。このプロセスにより、試料が、バイオリアクタ全体を開き、基体のある部分を取り出す必要がある場合にそうなるであろう潜在的な汚染に主要な細胞培養物が曝露される(バイオリアクタに再び挿入される細胞培養物の一部にある細胞を物理的に乱すこともあるであろう)ことが制限される。
【0082】
定義
「全合成」または「完全合成」とは、合成供給源材料から完全になり、どのような動物由来または動物源の材料も含まない、マイクロキャリアまたは培養容器の表面など、細胞培養物品を称する。開示された全合成細胞培養物品には、異種汚染のリスクがない。
【0083】
「含む」などの用語は、限定されずに包含する、すなわち、包括的であって排他的ではないことを意味する。
【0084】
「ユーザ」は、ここに開示されたシステム、方法、物品、またはキットを使用する人を称し、細胞または細胞産物を収穫するために細胞を培養する人、またはここに記載された実施の形態にしたがって培養された、および/または収穫された細胞または細胞産物を使用する人を含む。
【0085】
本開示の実施の形態を記載する上で使用される、例えば、組成物中の成分の量、濃度、体積、工程温度、工程所要時間、収率、流量、圧力、粘度、および同様の値、並びにその範囲、または構成要素の寸法、および同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」は、例えば、材料、組成物、複合体、濃縮物、構成部品、製造物品、または使用製剤の調製に使用される典型的な測定および取扱手順により;これらの手順における故意ではない誤りにより;方法を実施するために使用される出発材料または成分の製造、供給源、または純度の差により;および同様の検討事項により生じ得る数量のばらつきを称する。「約」という用語は、特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物の経年変化により異なる量、および特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物の混合または処理により異なる量も包含する。
【0086】
「随意的」または「必要に応じて」とは、その後に記載された事象または環境が起こり得るまたは起こり得ないこと、およびその記載が、その事象または環境が生じる例と生じない例を含むことを意味する。
【0087】
名詞は、特に明記のない限り、少なくとも1つ、または1つ以上の対象を含む。
【0088】
当業者に周知の省略形を使用してよい(例えば、時間の「h」または「hrs」、グラムの「g」または「gm」、ミリリットルの「mL」、および室温の「rt」、ナノメートルの「nm」、および同様の省略形)。
【0089】
構成要素、成分、添加物、寸法、条件、および同様の属性について開示された特定の値および好ましい値、並びにその範囲は、説明のためだけであり、それらは、他の所定の値または所定の範囲内の他の値を排除するものではない。本開示のシステム、キット、および方法は、明白なまたは潜在的な中間値および範囲を含む、ここに記載された値、特定値、より特定の値、および好ましい値のどの値またはどの組合せも含み得る。
【0090】
特に明記のない限り、ここに述べられたどの方法も、その工程が特定の順序で行われることを必要とするものと解釈されることは決して意図されていない。したがって、方法の請求項が、その工程がしたがうべき順序を実際に列挙していない場合、または工程が特定の順序に限定されるべきことが、請求項または記載に他の具体的に述べられていない場合、どの特定の順序も暗示されているものとは、決して意図されていない。
【0091】
開示された実施の形態の精神または範囲から逸脱せずに、様々な改変および変更を行えることが、当業者に明白であろう。開示された実施の形態の精神および実体を含む実施の形態の改変、組合せ、部分的な組合せおよび変更が当業者に想起されるであろうから、開示された実施の形態は、付随の特許請求の範囲およびその等価物の範囲内に全てを含むと解釈されるべきである。
【0092】
説明に役立つ実行例
以下は、開示された主題の実行例の様々な態様の記述である。各態様は、開示された主題の様々な特徴、特性、または利点の1つ以上を含むことがある。この実行例は、開示された主題のいくつかの態様を説明する意図があり、全ての可能な実行例の包括的なまたは網羅的な記述と考えるべきではない。
【0093】
態様1は、細胞を培養するための固定床バイオリアクタアセンブリにおいて、細胞を培養するための内部空間およびその内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器;各層がその上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する、内部空間内に配置された複数の細胞培養基体層であって、この構造的に明確な表面は、層の厚さを通る開口の秩序のある規則的配列を画成する、細胞培養基体層;およびその複数の細胞培養基体層を少なくとも部分的に取り囲み、少なくとも1つの試料アクセス窓を有するスリーブであって、その試料アクセス窓は、スリーブ内の開口であって、細胞培養基体の1つ以上の層を、その開口を通じてスリーブから取り出せるように作られた開口を含む、スリーブを備えた固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0094】
態様2は、スリーブおよび複数の細胞培養基体層が、バイオリアクタ容器内に取出し可能に配置されている、態様1の固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0095】
態様3は、スリーブおよび複数の細胞培養基体層が、バイオリアクタ容器の上部または底部の開口を通じて一緒にバイオリアクタ容器から少なくとも部分的に抜け出ることができる、態様2の固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0096】
態様4は、バイオリアクタ容器から少なくとも部分的に抜け出るときに、少なくとも1つの試料アクセス窓に、細胞培養基体の1つ以上の層を試料採取のために取り出せるようにバイオリアクタ容器の側壁がない、態様3の固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0097】
態様5は、スリーブが、複数の細胞培養基体層の周囲を取り囲む、態様1~4のいずれかの固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0098】
態様6は、試料アクセス窓の開口が、スリーブの別の部分よりも複数の細胞培養基体層の外周を少なく取り囲むスリーブの部分で画成される、態様5の固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0099】
態様7は、開口が、取り出すべき細胞培養基体の1つ以上の層の最大幅よりも小さい幅を有する、態様1~6のいずれかの固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0100】
態様8は、少なくとも1つの試料アクセス窓が、バイオリアクタ容器の高さに沿った多数の所定の位置に配置されている、態様1~7のいずれかの固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0101】
態様9は、少なくとも1つの試料アクセス窓が、バイオリアクタ容器の底部領域、バイオリアクタ容器の中央領域、およびバイオリアクタ容器の上部領域の1つ以上に配置されている、態様8の固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0102】
態様10は、スリーブに配置された1つ以上のシールをさらに含む、態様1~9のいずれかの固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0103】
態様11は、試料アクセス窓の開口の縁に沿ってシールが配置されている、態様10の固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0104】
態様12は、シールが、バイオリアクタ容器の側壁と締まり嵌めを形成する、態様10または態様11の固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0105】
態様13は、複数の細胞培養基体層の各層が複数の編まれた繊維から作られている、態様1~12のいずれかの固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0106】
態様14は、細胞培養基体が、積層形態に配置された複数の層を含む、態様1~13のいずれかの固定床バイオリアクタアセンブリに関する。
【0107】
態様15は、バイオリアクタ容器から細胞培養基体を試料採取する方法において、バイオリアクタ容器の上部または底部を通じてバイオリアクタ容器からスリーブ内に積み重ねられた細胞培養基体層のスリーブを取り出す工程と;スリーブの側面に配置された試料アクセス窓を通じて細胞培養基体の1つ以上の層を取り出す工程であって、試料アクセス窓は、スリーブ内に形成され、細胞培養基体層の少なくとも一部を露出する開口である、工程とを含む方法に関する。
【0108】
態様16は、1つ以上の層を取り出した後、細胞培養基体層のスリーブをバイオリアクタ容器に再び挿入する工程をさらに含む、態様15の方法に関する。
【0109】
態様17は、1つ以上の層を取り出す工程が、活性細胞培養中に行われる、態様15または態様16の方法に関する。
【0110】
態様18は、細胞を培養するための固定床バイオリアクタシステムにおいて、細胞を培養するための内部空間およびその内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器;そのバイオリアクタ容器の側壁にある少なくとも1つのポート;内部空間内に配置された細胞培養基体;およびバイオリアクタ容器の外部に配置された試料採取リールであって、中心軸の周りに回転して、内部空間から試料基体を無菌で取り出すように作られた試料採取リールを備えた固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0111】
態様19は、試料採取リールが、基体試料がそれを通じて内部空間から試料採取リールに通過できる貫通開口を含む、態様18の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0112】
態様20は、試料採取リールが、試料採取リールの外殻の少なくとも一部を形成するサドル筐体を介してバイオリアクタ容器壁の外部に固定されている、態様18または態様19の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0113】
態様21は、試料採取リールの貫通開口が、少なくとも1つのポートと揃えられている、態様19または態様20の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0114】
態様22は、試料採取リールが、試料採取リールの外殻の少なくとも一部を形成する筐体キャップをさらに含む、態様18~21のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0115】
態様23は、試料採取リールが試料開口をさらに含む、態様18~22のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0116】
態様24は、試料開口が、筐体キャップとサドル筐体との間に配置されている、態様23の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0117】
態様25は、試料開口が、基体試料を試料採取リールから試料開口を通じてバイオリアクタシステムの外部に取り出せるように作られている、態様23または態様24の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0118】
態様26は、試料採取リールが、試料基体の一部を把持するように作られたスプールをさらに含み、そのスプールは、スプールが回転したときに、試料基体がスプールに巻き付けられるように回転可能である、態様18~25のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0119】
態様27は、試料採取リールが、試料採取リールのスプールと外殻との間に配置された試料ドラムをさらに含む、態様26の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0120】
態様28は、試料採取リールが、サドル筐体に固定され、サドル筐体と試料ドラムとの間の空間にシールを形成して、試料基体の無菌試料採取を可能にするように作られた一連の静止Oリングをさらに含む、態様27の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0121】
態様29は、試料ドラムが、試料基体が試料ドラム内をスプールまで通過できるように作られたドラム開口をさらに含む、態様27または態様28の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0122】
態様30は、試料採取リールが、第1の方向に回転して試料基体を内部空間から取り出し、第1の方向と反対の第2の方向に回転して試料基体を試料採取リールからバイオリアクタシステムの外部に放出するように作られている、態様18~29のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0123】
態様31は、基体試料が、貫通開口の縁にある曲面または楔面によって試料採取リールの開口を通じてバイオリアクタシステムの外部に取り外される、態様18~30のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0124】
態様32は、細胞培養基体が複数の編まれた繊維から作られている、態様18~31のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0125】
態様33は、細胞培養基体が、積層形態に配置された複数の層を含む、態様18~32のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0126】
態様34は、バイオリアクタ容器が、試料基体を内部空間から無菌で取り出すように作られている、態様18~33のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0127】
態様35は、細胞を培養するための固定床バイオリアクタシステムにおいて、細胞を培養するための内部空間およびその内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器;そのバイオリアクタ容器の側壁にある少なくとも1つのポート;および内部空間内に配置され、その上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する細胞培養基体であって、その構造的に明確な表面は、細胞培養基体の厚さを通る開口の秩序のある規則的配列を画成する、細胞培養基体を含み、細胞培養基体の少なくとも一部は試料基体を含み、その試料基体は、試料基体と細胞培養基体の残りとの間の分離境界により画成され、分離境界は、試料基体を細胞培養基体の残りから分離するように作られており、少なくとも1つのポートは、試料基体を少なくとも1つのポートを通じて内部空間から取り出せるようなサイズである、固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0128】
態様36は、分離境界が、以下:細胞培養基体の穿孔、その中またはそれを貫通する切り込み、もしくはその局所的に薄い部分の少なくとも1つを含む、態様35の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0129】
態様37は、分離境界が、試料基体と基体の残りとの間に取付材料をさらに含み、その取付材料は、張力下で試料基体および基体の残りの一方または両方から離脱するように作られている、態様35または態様36の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0130】
態様38は、複数の試料基体をさらに含む、態様35~37のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0131】
態様39は、複数の試料基体の少なくとも2つは、複数の試料基体の1つではない細胞培養基体の残りの一部で互いから分離される、態様38の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0132】
態様40は、複数の試料基体の少なくとも一部が、それらの間の複数の試料基体の1つではない細胞培養基体の残りのいずれも使用せずに、分離境界で互いから分離される、態様38または態様39の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0133】
態様41は、細胞培養基体が円形ディスク形状を有する、態様35~40のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0134】
態様42は、試料基体が、以下の形状:正方形、長方形、パイ形、または先細の少なくとも1つを有する、態様35~41のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0135】
態様43は、試料基体が、細胞培養基体の外縁の狭い先細端部で先細になっている、態様42の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0136】
態様44は、試料基体が、細胞培養基体の外縁内の試料基体の第1の端部で正方形または長方形であり、細胞培養基体の外縁の第2の端部で先細になっている、態様42または態様43の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0137】
態様45は、細胞培養基体が、円形であり、複数のパイ形試料基体からなる、態様42の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0138】
態様46は、構造的に明確な表面が、1つ以上の繊維から作られている、態様35~45のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0139】
態様47は、細胞培養基体が、複数の編まれた繊維から作られている、態様46の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0140】
態様48は、細胞培養基体が、積層形態に配置された複数の層を含む、態様35~47のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0141】
態様49は、バイオリアクタ容器が、内部空間から試料基体を無菌で取り出すように作られている、態様35~48のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0142】
態様50は、試料基体に取り付けられた第1の端部を含むテザーをさらに含み、そのテザーは、ポートを通じて試料基体を内部空間から引っ張り出すように作られている、態様35~49のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0143】
態様51は、内部空間の外側に配置され、試料基体が少なくとも1つのポートを通じて内部空間から取り出された後に試料基体を収容するように作られた捕獲装置をさらに含む、態様35~50のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0144】
態様52は、捕獲装置が、捕獲装置に可変内部容積を持たせられる柔軟壁、プリーツ壁、または折り畳み構造を有する、態様51の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0145】
態様53は、テザーの第1の端部と第2の端部との間にテザーに沿って配置された栓をさらに含み、その栓は、試料基体が内部空間内に留まっている間にポート内に無菌シールを形成するように作られている、態様50~52のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0146】
態様54は、栓が、テザーの第2の端部が所定の力でポートから引き離されたときに、ポートから取り除かれるように作られている、態様53の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0147】
態様55は、捕獲装置が、少なくとも試料基体が内部空間内に留まっている間、ポートに取り付けられている、態様51~54のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0148】
態様56は、捕獲装置が、ポートに取外し可能に取り付けられている、態様55の固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0149】
態様57は、捕獲装置が、ポートおよびバイオリアクタ容器とは別個であり、捕獲装置は、試料基体を内部空間からポートを通じて取り出す最中にポートに一時的に取り付けられるように作られている、態様51~54のいずれかの固定床バイオリアクタシステムに関する。
【0150】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0151】
実施形態1
細胞を培養するための固定床バイオリアクタアセンブリにおいて、
細胞を培養するための内部空間および該内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器、
各層がその上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する、前記内部空間内に配置された複数の細胞培養基体層であって、該構造的に明確な表面は、前記層の厚さを通る開口の秩序のある規則的配列を画成する、細胞培養基体層、および
前記複数の細胞培養基体層を少なくとも部分的に取り囲み、少なくとも1つの試料アクセス窓を有するスリーブであって、該試料アクセス窓は、該スリーブ内の開口であって、前記細胞培養基体の1つ以上の層を、該開口を通じて該スリーブから取り出せるように作られた開口を含む、スリーブ、
を備えた固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0152】
実施形態2
前記スリーブおよび前記複数の細胞培養基体層が、前記バイオリアクタ容器内に取出し可能に配置されている、実施形態1に記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0153】
実施形態3
前記スリーブおよび前記複数の細胞培養基体層が、前記バイオリアクタ容器の上部または底部の開口を通じて一緒に該バイオリアクタ容器から少なくとも部分的に抜け出ることができる、実施形態2に記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0154】
実施形態4
前記バイオリアクタ容器から少なくとも部分的に抜け出るときに、前記少なくとも1つの試料アクセス窓に、前記細胞培養基体の1つ以上の層を試料採取のために取り出せるように該バイオリアクタ容器の側壁がない、実施形態3に記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0155】
実施形態5
前記スリーブが、前記複数の細胞培養基体層の周囲を取り囲む、実施形態1から4のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0156】
実施形態6
前記試料アクセス窓の開口が、前記スリーブの別の部分よりも前記複数の細胞培養基体層の外周を少なく取り囲む該スリーブの部分で画成される、実施形態5に記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0157】
実施形態7
前記開口が、取り出すべき前記細胞培養基体の1つ以上の層の最大幅よりも小さい幅を有する、実施形態1から6のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0158】
実施形態8
前記少なくとも1つの試料アクセス窓が、前記バイオリアクタ容器の高さに沿った多数の所定の位置に配置されている、実施形態1から7のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0159】
実施形態9
前記少なくとも1つの試料アクセス窓が、前記バイオリアクタ容器の底部領域、該バイオリアクタ容器の中央領域、および該バイオリアクタ容器の上部領域の1つ以上に配置されている、実施形態8に記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0160】
実施形態10
前記スリーブに配置された1つ以上のシールをさらに含む、実施形態1から9のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0161】
実施形態11
前記試料アクセス窓の開口の縁に沿って前記シールが配置されている、実施形態10に記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0162】
実施形態12
前記シールが、前記バイオリアクタ容器の側壁と締まり嵌めを形成する、実施形態10または11に記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0163】
実施形態13
前記複数の細胞培養基体層の各層が複数の編まれた繊維から作られている、実施形態1から12のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0164】
実施形態14
前記細胞培養基体が、積層形態に配置された複数の層を含む、実施形態1から13のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタアセンブリ。
【0165】
実施形態15
バイオリアクタ容器から細胞培養基体を試料採取する方法において、
前記バイオリアクタ容器の上部または底部を通じて該バイオリアクタ容器からスリーブ内に積み重ねられた細胞培養基体層のスリーブを取り出す工程と、
前記スリーブの側面に配置された試料アクセス窓を通じて前記細胞培養基体の1つ以上の層を取り出す工程であって、該試料アクセス窓は、該スリーブ内に形成され、前記細胞培養基体層の少なくとも一部を露出する開口である、工程と、
を含む方法。
【0166】
実施形態16
前記1つ以上の層を取り出した後、前記細胞培養基体層のスリーブを前記バイオリアクタ容器に再び挿入する工程をさらに含む、実施形態15に記載の方法。
【0167】
実施形態17
前記1つ以上の層を取り出す工程が、活性細胞培養中に行われる、実施形態15または16に記載の方法。
【0168】
実施形態18
細胞を培養するための固定床バイオリアクタシステムにおいて、
細胞を培養するための内部空間および該内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器、
前記バイオリアクタ容器の側壁にある少なくとも1つのポート、
前記内部空間内に配置された細胞培養基体、および
前記バイオリアクタ容器の外部に配置された試料採取リールであって、中心軸の周りに回転して、前記内部空間から試料基体を無菌で取り出すように作られた試料採取リール、
を備えた固定床バイオリアクタシステム。
【0169】
実施形態19
前記試料採取リールが、前記基体試料がそれを通じて前記内部空間から該試料採取リールに通過できる貫通開口を含む、実施形態18に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0170】
実施形態20
前記試料採取リールが、該試料採取リールの外殻の少なくとも一部を形成するサドル筐体を介して前記バイオリアクタ容器壁の外部に固定されている、実施形態18または19に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0171】
実施形態21
前記試料採取リールの貫通開口が、前記少なくとも1つのポートと揃えられている、実施形態19または20に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0172】
実施形態22
前記試料採取リールが、該試料採取リールの外殻の少なくとも一部を形成する筐体キャップをさらに含む、実施形態18から21のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0173】
実施形態23
前記試料採取リールが試料開口をさらに含む、実施形態18から22のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0174】
実施形態24
前記試料開口が、前記筐体キャップと前記サドル筐体との間に配置されている、実施形態23に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0175】
実施形態25
前記試料開口が、基体試料を前記試料採取リールから該試料開口を通じて前記バイオリアクタシステムの外部に取り出せるように作られている、実施形態23または24に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0176】
実施形態26
前記試料採取リールが、前記試料基体の一部を把持するように作られたスプールをさらに含み、該スプールは、該スプールが回転したときに、前記試料基体が該スプールに巻き付けられるように回転可能である、実施形態18から25のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0177】
実施形態27
前記試料採取リールが、該試料採取リールの前記スプールと前記外殻との間に配置された試料ドラムをさらに含む、実施形態26に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0178】
実施形態28
前記試料採取リールが、前記サドル筐体に固定され、該サドル筐体と前記試料ドラムとの間の空間にシールを形成して、前記試料基体の無菌試料採取を可能にするように作られた一連の静止Oリングをさらに含む、実施形態27に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0179】
実施形態29
前記試料ドラムが、前記試料基体が該試料ドラム内を前記スプールまで通過できるように作られたドラム開口をさらに含む、実施形態27または28に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0180】
実施形態30
前記試料採取リールが、第1の方向に回転して前記試料基体を前記内部空間から取り出し、該第1の方向と反対の第2の方向に回転して該試料基体を該試料採取リールから前記バイオリアクタシステムの外部に放出するように作られている、実施形態18から29のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0181】
実施形態31
前記基体試料が、前記貫通開口の縁にある曲面または楔面によって前記試料採取リールの開口を通じて前記バイオリアクタシステムの外部に取り外される、実施形態18から30のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0182】
実施形態32
前記細胞培養基体が複数の編まれた繊維から作られている、実施形態18から31のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0183】
実施形態33
前記細胞培養基体が、積層形態に配置された複数の層を含む、実施形態18から32のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0184】
実施形態34
前記バイオリアクタ容器が、前記試料基体を前記内部空間から無菌で取り出すように作られている、実施形態18から33のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0185】
実施形態35
細胞を培養するための固定床バイオリアクタシステムにおいて、
細胞を培養するための内部空間および該内部空間を少なくとも部分的に画成する側壁を備えたバイオリアクタ容器、
前記バイオリアクタ容器の側壁にある少なくとも1つのポート、および
前記内部空間内に配置され、その上で細胞を培養するための構造的に明確な表面を有する細胞培養基体であって、該構造的に明確な表面は、前記細胞培養基体の厚さを通る開口の秩序のある規則的配列を画成する、細胞培養基体、
を含み、
前記細胞培養基体の少なくとも一部は試料基体を含み、該試料基体は、該試料基体と前記細胞培養基体の残りとの間の分離境界により画成され、
前記分離境界は、前記試料基体を前記細胞培養基体の残りから分離するように作られており、
前記少なくとも1つのポートは、前記試料基体を該少なくとも1つのポートを通じて前記内部空間から取り出せるようなサイズである、固定床バイオリアクタシステム。
【0186】
実施形態36
前記分離境界が、以下:前記細胞培養基体の穿孔、その中またはそれを貫通する切り込み、もしくはその局所的に薄い部分の少なくとも1つを含む、実施形態35に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0187】
実施形態37
前記分離境界が、前記試料基体と該基体の残りとの間に取付材料をさらに含み、該取付材料は、張力下で前記試料基体および該基体の残りの一方または両方から離脱するように作られている、実施形態35または36に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0188】
実施形態38
複数の試料基体をさらに含む、実施形態35から37のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0189】
実施形態39
前記複数の試料基体の少なくとも2つは、該複数の試料基体の1つではない前記細胞培養基体の残りの一部で互いから分離される、実施形態38に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0190】
実施形態40
前記複数の試料基体の少なくとも一部が、それらの間の該複数の試料基体の1つではない前記細胞培養基体の残りのいずれも使用せずに、前記分離境界で互いから分離される、実施形態38または39に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0191】
実施形態41
前記細胞培養基体が円形ディスク形状を有する、実施形態35から40のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0192】
実施形態42
前記試料基体が、以下の形状:正方形、長方形、パイ形、または先細の少なくとも1つを有する、実施形態35から41のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0193】
実施形態43
前記試料基体が、前記細胞培養基体の外縁の狭い先細端部で先細になっている、実施形態42に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0194】
実施形態44
前記試料基体が、前記細胞培養基体の外縁内の該試料基体の第1の端部で正方形または長方形であり、該細胞培養基体の外縁の第2の端部で先細になっている、実施形態42または43に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0195】
実施形態45
前記細胞培養基体が、円形であり、複数のパイ形試料基体からなる、実施形態42に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0196】
実施形態46
前記構造的に明確な表面が、1つ以上の繊維から作られている、実施形態35から45のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0197】
実施形態47
前記細胞培養基体が、複数の編まれた繊維から作られている、実施形態46に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0198】
実施形態48
前記細胞培養基体が、積層形態に配置された複数の層を含む、実施形態35から47のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0199】
実施形態49
前記バイオリアクタ容器が、前記内部空間から前記試料基体を無菌で取り出すように作られている、実施形態35から48のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0200】
実施形態50
前記試料基体に取り付けられた第1の端部を含むテザーをさらに含み、該テザーは、前記ポートを通じて前記試料基体を前記内部空間から引っ張り出すように作られている、実施形態35から49のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0201】
実施形態51
前記内部空間の外側に配置され、前記試料基体が前記少なくとも1つのポートを通じて前記内部空間から取り出された後に該試料基体を収容するように作られた捕獲装置をさらに含む、実施形態35から50のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0202】
実施形態52
前記捕獲装置が、該捕獲装置に可変内部容積を持たせられる柔軟壁、プリーツ壁、または折り畳み構造を有する、実施形態51に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0203】
実施形態53
前記テザーの第1の端部と第2の端部との間に該テザーに沿って配置された栓をさらに含み、該栓は、前記試料基体が前記内部空間内に留まっている間に前記ポート内に無菌シールを形成するように作られている、実施形態50から52のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0204】
実施形態54
前記栓が、前記テザーの第2の端部が所定の力で前記ポートから引き離されたときに、該ポートから取り除かれるように作られている、実施形態53に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0205】
実施形態55
前記捕獲装置が、少なくとも前記試料基体が前記内部空間内に留まっている間、前記ポートに取り付けられている、実施形態51から54のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0206】
実施形態56
前記捕獲装置が、前記ポートに取外し可能に取り付けられている、実施形態55に記載の固定床バイオリアクタシステム。
【0207】
実施形態57
前記捕獲装置が、前記ポートおよび前記バイオリアクタ容器とは別個であり、該捕獲装置は、前記試料基体を前記内部空間から前記ポートを通じて取り出す最中に該ポートに一時的に取り付けられるように作られている、実施形態51から54のいずれか1つに記載の固定床バイオリアクタシステム。
【符号の説明】
【0208】
100 基体
102 第1の複数の繊維
104 第2の複数の繊維
106 開口
108 第一面
110 第二面
300 細胞培養システム
302 バイオリアクタ容器
304 細胞培養チャンバ
306 細胞培養マトリクス
308、600 基体層
310 入口
312 出口
402 分離境界
422 試料採取部分
424 側壁ポート
480 基体
482、616、700 テザー
500、612、632 バイオリアクタ
502 試料採取リール
504 多数の試料基体
505 貫通開口
506 サドル筐体
508 筐体キャップ
510 スプール
512 試料ドラム
514 静止Oリング
516 試料開口
518 ドラム開口
600、620、710、800 捕獲装置
601 試料基体層
602 スリーブ
604 試料アクセススロット
606 シール
608 外側筐体
610 細胞培養基体
614、704、802 ポート
618 シール
619、720 試料部分
620 空間
634 無菌試料採取ポート
706 栓
716 締め具
718 保護カバー
722 管
804 バルブカムリング
806 ボールベアリング
810 チューブシーラー
図1A
図1B
図1C
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6A
図6B
図7
図8A
図8B
図9A
図9B
図10A
図10B
図11A
図11B
図11C
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15
図16
図17
図18A
図18B
図18C
図19A
図19B
図19C
図20A
図20B
図20C
図21A
図21B
図21C
【国際調査報告】