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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ポリイミドを処理する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/02 20060101AFI20241108BHJP
   B29C 43/16 20060101ALI20241108BHJP
   C08G 73/10 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08J7/02 B CFG
B29C43/16
C08G73/10
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531570
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 GB2022053013
(87)【国際公開番号】W WO2023094840
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】2117218.4
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514247584
【氏名又は名称】グッドウィン ピーエルシー
【氏名又は名称原語表記】GOODWIN PLC
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100131990
【弁理士】
【氏名又は名称】大野 玲恵
(72)【発明者】
【氏名】パリン,マイケル ジェラルド
(72)【発明者】
【氏名】グッドウィン,マシュー スタンレー
(72)【発明者】
【氏名】ロングフィールド,フィリップ
【テーマコード(参考)】
4F073
4F204
4J043
【Fターム(参考)】
4F073AA32
4F073BA31
4F073BB02
4F073CA08
4F073EA14
4F073EA52
4F073HA01
4F073HA04
4F204AA40
4F204AB11
4F204AC04
4F204AR06
4F204FA01
4F204FB01
4F204FF01
4F204FN11
4F204FN15
4F204FQ01
4J043PA02
4J043QB26
4J043RA06
4J043RA35
4J043SA06
4J043SA47
4J043SB01
4J043TA22
4J043TB01
4J043UA122
4J043UA131
4J043UB121
4J043YA21
4J043YA30
(57)【要約】
ポリイミドを処理する方法であって、処理されるべきポリイミドを準備するステップと;処理されるべきポリイミドを流体と接触させて処理済みポリイミドを得るステップとを含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み;流体が、超臨界流体、接触させるステップの条件下で10.0mN m-1以下の表面張力を有する液体、またはそれらの混合物を含む、方法が開示される。本発明の方法により入手可能なポリイミド、本発明のポリイミドを含む成形ポリイミド製品、および本発明の成形ポリイミド製品を含む物品も開示される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリイミドを処理する方法であって、前記方法が、
処理されるべきポリイミドを準備するステップと;
処理されるべき前記ポリイミドを流体と接触させて処理済みポリイミドを得るステップと
を含み、
前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み;
前記流体が、超臨界流体、前記接触させるステップの条件下で10.0mN m-1以下の表面張力を有する液体、またはそれらの混合物を含む、
方法。
【請求項2】
前記流体が超臨界流体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記流体が、前記接触させるステップの条件下で8.5mN m-1以下の表面張力を有する液体を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記流体が、前記接触させるステップの条件下で4.5mN m-1以下の表面張力を有する液体を含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記流体が、メタン、エタン、エチレン、二酸化炭素、亜酸化窒素、またはそれらの混合物を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
処理されるべき前記ポリイミドが、ポリ(PMDA-co-4,4’-ODA)である、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記流体が、超臨界二酸化炭素、および/または2.0mN m-1以下の表面張力を有する液体二酸化炭素を含む、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
処理されるべき前記ポリイミドが粉末状である、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
処理されるべき前記ポリイミド中にカプセル化フィラーが存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記カプセル化フィラーがグラファイトである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処理済みポリイミドが、カプセル化フィラーを含まないか、または前記ポリイミドの重量に対して20wt%以下の量でカプセル化フィラーを含み、前記処理済みポリイミドが、100m-1を超えるBET比表面積を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記処理済みポリイミドが、前記ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%の量でカプセル化フィラーを含み、前記処理済みポリイミドが、70m-1を超えるBET比表面積を有する、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記処理済みポリイミドを添加剤と混合してポリイミド混合物を得るステップをさらに含む、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法で得られた前記処理済みポリイミド、または請求項12に記載の方法で得られた前記ポリイミド混合物を成形して、成形ポリイミド製品を得るステップをさらに含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記成形が直接成形により行われて直接成形ポリイミド製品が得られるか、または前記成形が熱間圧縮成型により行われて熱間圧縮成型ポリイミド製品が得られるか、または前記成形が熱間等方圧プレスにより行われて熱間等方圧プレスポリイミド製品が得られるか、または前記成形がラム押出により行われてラム押出ポリイミド製品が得られる、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記ポリイミド製品が直接成形ポリイミド製品であり、カプセル化フィラーを含まず、80.0MPa以上の引張強度および1.40以下の比重を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記ポリイミド製品が直接成形ポリイミド製品であり、10~20wt%のカプセル化フィラーを含み、70.0MPa以上の引張強度および1.50以下の比重を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記ポリイミド製品が、熱間圧縮成型ポリイミド製品、熱間等方圧プレスポリイミド製品、またはラム押出ポリイミド製品であり、カプセル化フィラーを含まず、90.0MPa以上の引張強度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記ポリイミド製品が、熱間圧縮成型ポリイミド製品、熱間等方圧プレスポリイミド製品、またはラム押出ポリイミド製品であり、10~20wt%のカプセル化フィラーを含み、70.0MPa以上の引張強度を有する、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
請求項1から12のいずれか一項に記載の方法により入手可能である、処理済みポリイミド。
【請求項21】
請求項13に記載の方法により入手可能である、ポリイミド混合物。
【請求項22】
100m-1を超えるBET比表面積を有するポリイミドであって、前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、前記ポリイミドが、カプセル化フィラーを含まないかまたは前記ポリイミドの重量に対して20wt%以下の量でカプセル化フィラーを含む、ポリイミド。
【請求項23】
70m-1を超えるBET比表面積を有するポリイミドであって、前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、前記処理済みポリイミドが、前記ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%の量でカプセル化フィラーを含む、ポリイミド。
【請求項24】
請求項22または23に記載のポリイミドおよび添加剤を含む、ポリイミド混合物。
【請求項25】
成形ポリイミド製品を調製する方法であって、請求項22または23に記載のポリイミドまたは請求項24に記載のポリイミド混合物を成形して成形ポリイミド製品を得るステップを含む、方法。
【請求項26】
請求項14から19および請求項25のいずれか一項に記載の方法により入手可能な、成形ポリイミド製品。
【請求項27】
直接成形結晶性ポリイミド製品であって、前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、前記直接成形結晶性ポリイミド製品が、
- カプセル化フィラーを含まず、前記ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、80.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、63.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して0wt%~2.0wt%の添加剤を含み、50.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して5wt%~15wt%の添加剤を含み、52.5MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、39.5MPa以上の引張強度を有する、
直接成形結晶性ポリイミド製品。
【請求項28】
熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、前記ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、前記熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品が、
- カプセル化フィラーを含まず、前記ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、87.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、66.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して0wt%~2.0wt%の添加剤を含み、52.5MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して5wt%~15wt%の添加剤を含み、49.5MPa以上の引張強度を有するか;または
- カプセル化フィラーを含まず、前記ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、59.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- 前記ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、前記ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、39.5MPa以上の引張強度を有する、
熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品。
【請求項29】
請求項26から28のいずれか一項に記載の成形ポリイミド製品を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリイミドを処理する方法、本発明の方法により入手可能なポリイミド、本発明のポリイミドを含む成形ポリイミド製品、および本発明の成形ポリイミド製品を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリイミドは、航空宇宙産業、自動車産業、ならびに石油産業、およびガス産業などの分野における用途がある、耐久性のある高性能ポリマーとして周知である。ポリイミド材料の典型的な特性としては、耐熱性、潤滑性、寸法安定性、耐薬品性、および耐クリープ性が挙げられる。そのような既知のポリイミドは、例えば米国特許第3249588号明細書、第3179631号明細書、および第4755555号明細書に記載され、長年市販されており、これは例えばDuPont社のVespel(登録商標)SP製品範囲およびSaint-Gobain performance plastics社のMeldin(登録商標)7000製品範囲などであり、これらはASTM規格D6456-10(ポリイミド樹脂から作られる完成部品の標準仕様)に準拠する。
【0003】
航空宇宙産業、自動車産業、および重工業などの分野で直面する継続的な工学上の課題は、特により高温における改善された機械的特性を有するポリイミド材料を提供することが望ましいということを示す。環境的視点および経済的視点から、揮発性有機化合物(VOC)の使用の削減を可能にし、ポリイミド材料の加工において使用される薬剤の大部分の回収および再使用も可能にするプロセスを提供することも望ましい。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、上記で論じた問題に対する解決策を提供することを目的とする。特に、本発明は、ポリイミドを処理する方法であって、処理されるべきポリイミドを準備するステップと;処理されるべきポリイミドを流体と接触させて処理済みポリイミドを得るステップとを含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み;流体が、超臨界流体、接触させるステップの条件下で10.0mN m-1以下の表面張力を有する液体、またはそれらの混合物を含み、方法が、処理済みポリイミドを添加剤と混合してポリイミド混合物を得るステップを場合によりさらに含む、方法を提供する。
【0005】
本発明はまた、本発明の処理済みポリイミドまたは本発明のポリイミド混合物を成形して成形ポリイミド製品を得る方法も提供する。
【0006】
本発明はまた、本発明の方法により入手可能な、処理済みポリイミド、ポリイミド混合物、および成形ポリイミド製品も提供する。
【0007】
本発明はまた、100m-1を超えるBET比表面積を有するポリイミドであって、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、ポリイミドが、カプセル化フィラーを含まないかまたはポリイミドの重量に対して20wt%以下の量でカプセル化フィラーを含む、ポリイミドも提供する。
【0008】
本発明はまた、70m-1を超えるBET比表面積を有するポリイミドであって、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、処理済みポリイミドが、ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%の量のカプセル化フィラーを含む、ポリイミドも提供する。
【0009】
本発明はまた、直接成形結晶性ポリイミド製品であって、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、直接成形結晶性ポリイミド製品が、
- カプセル化フィラーを含まず、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、80.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、63.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~2.0wt%の添加剤を含み、50.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して5wt%~15wt%の添加剤を含み、52.5MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、39.5MPa以上の引張強度を有する、
直接成形結晶性ポリイミド製品も提供する。
【0010】
本発明はまた、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品が、
- カプセル化フィラーを含まず、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、87.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、66.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~2.0wt%の添加剤を含み、52.5MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して5wt%~15wt%の添加剤を含み、49.5MPa以上の引張強度を有するか;または
- カプセル化フィラーを含まず、ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、59.0MPa以上の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、39.5MPa以上の引張強度を有する、
熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品も提供する。
【0011】
本発明は、本発明の成形ポリイミド製品を含む物品も提供する。
【0012】
本発明はいくつかの利点をもたらす。本発明の方法は、揮発性有機化合物の使用の削減、重合プロセスからの残留液体媒体の回収の向上(例えば90%を超える溶媒回収)、接触させるステップ後の流体の再使用、および不純物(例えば、重合プロセスからの残留末端キャッピング剤として存在する場合がある、無水酢酸および無水フタル酸、ならびにそれらの酸誘導体)の簡便な除去を可能にする。本発明の増加したSSAを有するポリイミドは、力の影響下で成形製品に加工される場合により良好に圧縮させることができるという点で利点を有し、部材におけるより高い達成可能な密度、改善された引張強度、および改善された高温の機械的特性をもたらす。本発明の成形ポリイミド製品は、VESPEL SPグレードおよびMeldin 7000グレードよりも良好な高温の機械的特性を有し得る。本出願は、アモルファス製品よりも優れた特性を有し得、例えばアモルファス製品よりも水吸収が少ない場合がある、結晶性成形ポリイミド製品を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明は、ポリイミドを処理する方法であって、
処理されるべきポリイミドを準備するステップと;
処理されるべきポリイミドを流体と接触させて処理済みポリイミドを得るステップと
を含み、
ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み;
流体が、超臨界流体、接触させるステップの条件下で10.0mN m-1以下の表面張力を有する液体、またはそれらの混合物を含む、方法を提供する。
【0014】
処理されるべきポリイミドは、PMDAに由来する第1の繰り返し単位および4,4’-ODAに由来する第2の繰り返し単位を含む。PMDAに由来する第1の繰り返し単位および4,4’-ODAに由来する第2の繰り返し単位を含むポリイミドは当技術分野において既知であり、例えば米国特許第3249588号明細書および第3179631号明細書に記載されている。
【0015】
一般に、PMDAに由来する第1の繰り返し単位および4,4’-ODAに由来する第2の繰り返し単位を含む処理されるべき任意のポリイミドは、本発明の方法で処理されるべきポリイミドとしての使用に適している。
【0016】
処理されるべきポリイミドは、例えば、10~500kDa、100~600kDa、200~700kDa、300~800kDa、400~900kDa、または500~1000kDaの数平均分子量を有してもよい。
【0017】
処理されるべきポリイミドは、例えば、10~500kDa、100~600kDa、200~700kDa、300~800kDa、400~900kDa、または500~1000kDaの重量平均分子量を有してもよい。
【0018】
処理されるべきポリイミドは、例えば0.8~1.0、0.9~1.1、または1.0~1.2の多分散指数を有してもよい。
【0019】
処理されるべきポリイミドにおけるPMDAおよび4,4’-ODA繰り返し単位の相対的なモル量は特に限定されない。典型的には、PMDA:4,4’-ODAのモル比は1:1.1~1.1:1の範囲内である。好ましくは、PMDA:4,4’-ODAのモル比は1:1.07~1.07:1の範囲内である。より好ましくは、PMDA:4,4’-ODAのモル比は1:1.05~1.05:1の範囲内である。さらにより好ましくは、PMDA:4,4’-ODAのモル比は1:1.03~1.03:1の範囲内である。最も好ましくは、PMDA:4,4’-ODAのモル比は1:1.01~1.01:1の範囲内、または約1:1である。
【0020】
処理されるべきポリイミドは、PMDAおよび4,4’-ODAに由来する繰り返し単位に加えて、さらなる繰り返し単位をさらに含んでもよい。適切なさらなる繰り返し単位としては、二無水物モノマーに由来するもの、例えば2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ジフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)-スルホン二無水物、ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)-エーテル二無水物、2,2-ビス-(2,3-ジカルボキシフェニル)-プロパン二無水物、1,1-ビス-(2,3-ジカルボキシフェニル)-エタン二無水物、1,1-ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)-エタン二無水物、ビス-(2,3-ジカルボキシフェニル)-メタン二無水物、ビス-(3,4-ジカルボキシフェニル)-メタン二無水物、3,4,3’,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物(BTDA)、またはジフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDA)、またはそれらの混合物などに由来するものが挙げられる。適切なさらなる繰り返し単位としては、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルアミン、ベンジジン、4,4’-ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル、ビス-(4-アミノフェニル)ジエチルシラン、ビス-(4-アミノフェニル)-フェニルホスフィンオキシド、ビス-(4-アミノフェニル)-N-メチルアミン、1,5-ジアミノナフタレン、3,3’-ジメチル-4,4’-ジアミノビフェニル、3,3’-ジメトキシベンジジン、1,4-ビス-(p-アミノフェノキシ)-ベンゼン、1,3-ビス-(p-アミノフェノキシ)-ベンゼン、m-フェニレンジアミン(MPD)、p-フェニレンジアミン(PPD)、またはそれらの任意の混合物に由来するものが挙げられる。
【0021】
処理されるべきポリイミドは好ましくは、PMDAおよび4,4’-ODAに由来する繰り返し単位に加えて、さらなる繰り返し単位を含まない。したがって、処理されるべきポリイミドは好ましくは、PMDAおよび4,4’-ODAのコポリマーである。本明細書で使用するポリ(PMDA-co-4,4’-ODA)という用語は、PMDAおよび4,4’-ODAに由来する繰り返し単位に加えてさらなる繰り返し単位を含まない、PMDAおよび4,4’-ODAのコポリマーを指す。
【0022】
処理されるべきポリイミドは、無水フタル酸または無水酢酸に由来してもよく、好ましくは無水酢酸に由来してもよい単位などの、末端キャッピング単位を含んでもよい。そのような末端キャッピング単位はさらなる繰り返し単位ではない。
【0023】
処理されるべきポリイミドは典型的にはゲルではない。処理されるべきポリイミドは典型的にはエアロゲルではない。
【0024】
処理されるべきポリイミドは典型的には粉末状である。本明細書で使用する粉末という用語は、ポリイミドが複数の粒子として存在する任意の形態を指し、例えば、乾燥粉末ならびに処理されるべきポリイミドを含む湿った凝集物が含まれる。
【0025】
本明細書で使用する、処理されるべきポリイミドを含む湿った凝集物は、典型的には、処理されるべきポリイミドおよび液体媒体を含む。前記液体媒体は、処理されるべきポリイミドの調製において使用される液体(例えば、米国特許第3249588号明細書、第3179631号明細書、および/または第4755555号明細書で開示される調製方法において使用される液体、またはそのような液体(複数可)の任意の組合せ)、例えば溶媒、洗浄液、未使用の薬剤(例えばモノマーおよび末端キャッピング剤が挙げられる)などを含んでもよい。
【0026】
粉末状である場合、処理されるべきポリイミドは典型的には、10~80μmの体積中位径(Dv50)により特徴づけられる粒径を有する。好ましくは、粒径は20~70μmのDv50により特徴づけられてもよい。より好ましくは、粒径は25~60μmのDv50により特徴づけられてもよい。本明細書において他の場所で説明されるように、処理されるべきポリイミドはカプセル化フィラーを含んでもよい。上記の典型的な、好ましい、より好ましい、さらにより好ましい、および最も好ましい粒径は、処理されるべきポリイミドがカプセル化フィラーを含む実施形態、および処理されるべきポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態に適用される。本明細書において言及されるDv50値は典型的には、ISO13320:2009に準拠して脱イオン水中のレーザー回折により測定される。
【0027】
処理されるべきポリイミドはカプセル化フィラーを含んでもよい。処理されるべきポリイミドがカプセル化フィラーを含む実施形態において、カプセル化フィラーは典型的にはグラファイトである。
【0028】
処理されるべきポリイミド内でカプセル化されたフィラーの粒子は典型的には、2.0~10.0μm、好ましくは3~9μm、より好ましくは4.0~8.0μm、最も好ましくは5.0~7.0μmのDv90を有する。
【0029】
処理されるべきポリイミド中に存在するカプセル化フィラーの量は典型的には、処理されるべきポリイミドの重量に対して5~60wt%、例えば10~20wt%または35~45wt%、好ましくは12~18wt%または37~43wt%、より好ましくは14~16wt%または39~41wt%、最も好ましくは約15wt%または約40wt%である。
【0030】
処理されるべきポリイミドは、当技術分野において既知の方法、例えば米国特許第3249588号明細書、第3179631号明細書、および第4755555号明細書に記載される方法により、またはそのような既知の方法に類似する方法により調製することができる。
【0031】
本明細書で使用する、接触させるステップは、処理されるべきポリイミドを流体と接触させて処理済みポリイミドを得る、本発明の方法のステップを指す。「接触させるステップの条件」という用語は典型的には、処理されるべきポリイミドを流体と接触させる際の温度および圧力を指す。
【0032】
接触させるステップは、処理されるべきポリイミドの調製に続いて行われてもよい。既知の調製方法(例えば米国特許第3249588号明細書、第3179631号明細書、および/または第4755555号明細書で開示される方法)は典型的には、ポリイミドを析出させるステップを含む。ポリイミドを析出させるステップに続いて、既知の析出方法は典型的には、ポリイミドを洗浄するステップ、真空下でポリイミドを乾燥させるステップ、および/またはポリイミドを加熱する(例えば160℃を超える温度まで)ステップを含む。本発明の方法における接触させるステップを行う時点で、処理されるべきポリイミドは典型的には、処理されるべきポリイミドから実質的にすべての液体媒体を除去するのに十分な時間をかけて、真空下でポリイミドを乾燥させるステップおよび/またはポリイミドを加熱する(例えば160℃を超える温度まで)ステップが施されていない。この文脈において、液体媒体とは、処理されるべきポリイミドの調製において使用される液体(例えば米国特許第3249588号明細書、第3179631号明細書、および/もしくは第4755555号明細書に開示される調製方法で使用される液体、またはそのような液体(複数可)の任意の組合せ)、例えば溶媒、洗浄液、未使用の薬剤(例えばモノマーおよび末端キャッピング剤が挙げられる)などを指す。この文脈において実質的にすべての液体媒体の除去とは、前記液体媒体が処理されるべきポリイミドの重量に対して25.0wt%以下、15.0wt%以下、10.0wt%以下、5.0wt%以下、例えば2.5wt%以下、1wt%以下、0.8wt%以下、0.6wt%以下、0.4wt%以下、0.2wt%以下、または0.1wt%以下の量で存在する程度まで液体媒体を除去することを指す。
【0033】
接触させるステップは処理されるべきポリイミドが調製された実質上すぐ後に行われてもよく、または接触させるステップは処理されるべきポリイミドが調製された後に間隔を置いて行われてもよい。この文脈において、調製されたポリイミドへの言及は、析出ステップが完了した時点、洗浄ステップが完了した時点、またはポリイミドを乾燥させる(例えば真空条件下で)ステップが完了した時点のことを指してもよい。処理されるべきポリイミドが調製された後に間隔を置いて接触させるステップが行われる実施形態において、その間隔は例えば1年以下、6か月以下、4か月以下、2か月以下、1か月以下、2週間以下、1週間以下、72時間以下、48時間以下、24時間以下、12時間以下、6時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、45分以下、30分以下、20分以下、10分以下、または5分以下であってもよい。処理されるべきポリイミドは、その間隔の継続期間にわたって、本明細書に記載されるような湿った凝集物の形態であってもよい。
【0034】
接触させるステップは、任意の適切な条件下で行われてもよいが、ただし処理されるべきポリイミドと接触させる流体が、超臨界流体および/またはそれらの条件下で所望の低い表面張力(例えば10.0mNm-1以下または本明細書において他の場所で説明されるような)を有する液体を含むものとする。当業者は、任意の特定の流体について適切な条件を決定することができるであろう。
【0035】
接触させるステップは、例えば5~500bar、典型的には25~400bar、好ましくは50~300bar、より好ましくは100~200bar、さらにより好ましくは140~160bar、または最も好ましくは約150barの圧力で行われてもよい。
【0036】
接触させるステップは、例えば20~200℃、典型的には40~150℃、好ましくは60~100℃、より好ましくは70~90℃、さらにより好ましくは75~85℃、最も好ましくは約80℃の温度で行われてもよい。
【0037】
接触させるステップの継続時間は特に限定されない。当業者は、例えばバッチサイズに基づき、適切な継続時間を容易に選択できる。接触させるステップの継続時間は、例えば1分以上、5分以上、10分以上、20分以上、30分以上、45分以上、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、または5時間以上であってもよい。接触させるステップの継続時間は、例えば24時間以下、12時間以下、6時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、1時間以下、45分以下、30分以下、20分以下、10分以下、または5分以下であってもよい。継続時間は、上記の上限および下限の任意の適用可能な組合せの間の範囲内であってもよい。
【0038】
接触させるステップは、処理されるべきポリイミド上に流体を流すステップを含んでもよい。接触させるステップは、処理されるべきポリイミドを流体中に浸すステップを含んでもよい。
【0039】
処理されるべきポリイミド上に流体を流す実施形態において、継続時間は、流体の流量と、処理されるべきポリイミドと接触させる流体の所望の量との組合せによって決定されてもよい。処理されるべきポリイミドがポリイミド粒子および液体媒体を含む凝集物中に存在する実施形態において、流体の所望の量は典型的には、ポリイミド粒子および液体媒体の合計質量に基づいて決定される。例えば、ポリイミド粒子および液体媒体の合計質量に対する、処理されるべきポリイミドと接触させる流体の質量の比は、典型的には1:1~25:1、好ましくは2:1~20:1、より好ましくは4:1~15:1、さらにより好ましくは6:1~10:1、最も好ましくは約8:1の範囲であってもよい。前記液体媒体は、処理されるべきポリイミドの調製において使用される液体(例えば米国特許第3249588号明細書、第3179631号明細書、および/もしくは第4755555号明細書に開示される調製方法で使用される液体、またはそのような液体(複数可)の任意の組合せ)、例えば溶媒、洗浄液、未使用の薬剤(例えばモノマーおよび末端キャッピング剤が挙げられる)などを含んでもよい。
【0040】
処理されるべきポリイミド上に流体を流す実施形態において、流体の流量は特に限定されない。当業者は、例えばバッチサイズ、および処理されるべきポリイミドと接触させる流体の所望の量に基づいて、適切な流量を容易に選択できる。流体の流量は例えば、毎分0.5kg以上の流体、毎分1kg以上の流体、毎分2kg以上の流体、毎分3kg以上の流体、毎分4kg以上の流体、毎分5kg以上の流体、毎分6kg以上の流体、毎分7kg以上の流体、毎分8kg以上の流体、毎分9kg以上の流体、毎分10kg以上の流体、または毎分25kg以上の流体であってもよい。流体の流量は例えば、毎分50kg以下の流体、毎分30kg以下の流体、毎分15kg以下の流体、毎分12kg以下の流体、毎分10kg以下の流体、毎分9kg以下の流体、毎分8kg以下の流体、毎分7kg以下の流体、毎分6kg以下の流体、毎分5kg以下の流体、毎分3kg以下の流体、毎分2kg以下の流体、または毎分1kg以下の流体であってもよい。流量は、上記の上限および下限の任意の適用可能な組合せの間の範囲内、例えば毎分25~50kgの流体であってもよく、最終的にはバッチサイズ、および/または抽出を行うのに利用されるプラントのサイズによって決定されることになる。
【0041】
固体と流体を接触させるのに適した装置は当技術分野において既知であり、当業者は適切な装置を選択できるであろう。例えば、流体が超臨界液体を含む実施形態では、超臨界抽出装置を使用してもよい。適切な超臨界抽出装置は市販されており、コーヒーのカフェイン除去およびカンナビスからのカンナビジオールの抽出などの分野で周知である。
【0042】
本明細書において言及される「流体」は、文脈上別途示されない限り、接触させるステップにおいて、処理されるべきポリイミドと接触させる流体である。流体は超臨界流体または低表面張力液体を含む。本明細書で使用する、「低表面張力液体」という用語は、接触させるステップの条件下で10.0mNm-1以下の表面張力を有する液体を指す。本明細書で使用する、「超臨界流体」という用語は、その臨界点を超える温度および圧力における物質を指し、物質の臨界点は物質の気相および液相の両方が共存できる最高の温度および圧力である。
【0043】
接触させるステップにおいて使用される流体は、低表面張力液体を含んでもよい。本明細書で使用する「表面張力」という用語は、液体を説明するのに使用される場合、液体-空気表面張力を指す。接触させるステップの条件下における液体の表面張力は、Chenet al.; Measuring Surface Tension of Liquids at High Temperature and Elevated Pressure; J. Chem. Eng. Data 2008, 53, 742-744に記載される手順にしたがって実験的に決定されてもよく、またはJ.R. Brock and R.B. Bird (AICHE Journal 1、174 (1955))、D.I. Hakim, D. Steinberg, and L.I. Stiel, (Ind. Eng. Chem. Fundam. 10, 174 (1971))、C. Miqueu, D. Broseta, J. Satherley, B. Mendiboure, J. Lachaise, and A. Gracia, (Fluid Phase Equil. 172, 169 (2000))、またはY.-X. Zuo and E.H. Stenby, (Can. J. Chem. Eng. 75, 1130 (1997))に記載される技術により経験的に計算されてもよい。
【0044】
低表面張力の液体は、接触させるステップの条件下で10.0mNm-1以下の表面張力を有し、典型的には接触させるステップの条件下で8.5mNm-1以下、好ましくは8.5以下、より好ましくは6.0、さらにより好ましくは4.5以下、さらにより好ましくは2.0以下、最も好ましくは1.0以下の表面張力を有する。
【0045】
接触させるステップがある範囲の温度および/または圧力にわたって行われる場合、接触させるステップが行われる温度および/または圧力の範囲内の温度および/または圧力において液体が特定の表面張力を有するならば、その液体は接触させるステップの条件下でその特定の表面張力を有するとみなされる。
【0046】
超臨界流体の適切な物質としては、メタン、エタン、エチレン、二酸化炭素、亜酸化窒素、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0047】
低表面張力の液体の適切な物質としては、メタン、エタン、エチレン、二酸化炭素、亜酸化窒素、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0048】
典型的には流体は超臨界COおよび/または低表面張力の液体COを含む。好ましくは、流体は超臨界COを含み、すなわち流体は超臨界COを含み、接触させるステップの温度は31.0℃以上であり、接触させるステップの圧力は73.8bar以上である(すなわち接触させるステップはCOの臨界点を超えた状態で行われる)。より好ましくは、流体は超臨界COを含み、接触させるステップの条件は60~100℃の温度および100~200barの圧力を含む。さらにより好ましくは、流体は超臨界COを含み、接触させるステップの条件は70~90℃の温度および140~160barの圧力を含む。最も好ましくは、流体は超臨界COを含み、接触させるステップの条件は約80℃の温度および約150barの圧力を含む。
【0049】
流体が低表面張力の液体COを含む場合、接触させるステップの条件は典型的には、-40.0℃以上の温度および10.0bar以上の圧力、例えば-40.0℃以上および31.0℃未満の温度、ならびに10.0bar以上および73.8bar未満の圧力を含む。
【0050】
超臨界流体および/または低表面張力の液体に加えて、流体は共溶媒をさらに含んでもよく、これはプロセスによりまたはその後の乾燥により容易に除去される。適切な共溶媒としては、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、およびトルエンを挙げることができる。
【0051】
ポリイミドは典型的には、接触させるステップによって化学的に変化しない。したがって、処理済みポリイミドの化学組成は典型的には、上記のように処理されるべきポリイミドの化学組成と同じである。
【0052】
処理済みポリイミドの物理特性は典型的には、接触させるステップの結果として改善される。処理済みポリイミドのBET比表面積は典型的には、処理されるべきポリイミドのBET比表面積よりも大きい。処理済みポリイミドのBET比表面積は典型的には、当技術分野において従来より既知の溶媒により洗浄されたポリイミドのBET比表面積よりも大きい。
【0053】
本明細書において言及されるBET比表面積は典型的には、ISO 9211:2010に準拠し、99.999%の純度を有しHOとして存在する不純物が<3ppm、Oとして存在する不純物が<5ppmである吸着物質としてのN Technical X47Sによる多点法を使用して決定される。
【0054】
理論によって拘束されることを望まないが、超臨界流体および/または低表面張力の液体の使用が、処理されるべきポリイミド内の細孔と相互作用してBET比表面積を増加させると考えられ、ポリイミドを成形して製品とする際に、増加したBET比表面積が引張強度を向上させると考えられる。本発明において使用される流体は、ポリイミド製造プロセスの後に残留液体媒体をポリイミドの細孔およびナノ流体チャネルから抽出するのにはるかに効果的であると考えられる。
【0055】
ポリイミドの調製は典型的には、ジアミンおよび二無水物を重合してポリ(アミド-酸)を形成させ、その後ポリアミド-酸の基を縮合させてポリイミドを形成させるステップを含む。ポリイミドを流体と接触させるステップについて全般的に本明細書において言及されているが、ポリアミド-酸(例えば、析出物の形態などの固体ポリアミド-酸)を流体と接触させその後ポリイミドへ転化させる、本発明の実施形態が本明細書で開示される。接触させるステップが、処理されるべきポリアミド-酸(例えば、析出物の形態などの固体ポリアミド-酸)を流体と接触させて処理済みポリアミド-酸を得るステップを含むこと、およびこの方法が処理済みポリアミド酸を処理済みポリイミドへ転化させるステップをさらに含むことを除いて、そのような実施形態は典型的には、ポリイミドを流体と接触させる実施形態に関して本明細書に記載される通りである。したがってそのような実施形態において、本発明は、ポリイミドを処理する方法であって、処理されるべきポリアミド-酸を提供するステップと;処理されるべきポリアミド-酸を流体と接触させて処理済みポリアミド-酸を得るステップと;処理済みポリアミド酸を処理済みポリイミドへ転化させるステップとを含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み;流体が、超臨界流体、接触させるステップの条件下で10.0mN m-1以下の表面張力を有する液体、またはそれらの混合物を含む、方法を提供する。
【0056】
ポリアミド-酸からポリイミドへの転化は、例えば米国特許第3179631号明細書および/または第4755555号明細書に開示されるような既知の方法により、例えば160℃以上の温度、例えば160℃~200℃の範囲の温度での熱処理により、行うことができる。
【0057】
処理済みポリイミドは典型的には粉末状である。処理済みポリイミドの粒径は典型的には、処理されるべきポリイミドに関して上記に記載される通りである。
【0058】
本発明の方法は、処理済みポリイミドを添加剤と混合してポリイミド混合物を得る、任意選択のさらなるステップを含んでもよい。混合するステップは、添加剤との乾式ブレンド(例えば処理済みポリイミドを乾燥させた後に添加剤とのブレンド)を含んでもよい。適切な添加剤としては、成型用添加剤および潤滑剤が挙げられる。例えば、PTFEは、処理されるべきポリイミドの重量に対して0.1wt%~15wt%の量で処理済みポリイミドと混合されてもよい。PTFEは典型的には成型用添加剤および/または潤滑剤として存在する。別の例において、MoSは、処理されるべきポリイミドの重量に対して典型的には0.1wt%~15wt%の量で処理済みポリイミド粉末と混合されてもよい。MoSは典型的には潤滑剤として存在する。
【0059】
本発明の方法は、処理済みポリイミドおよび/またはポリイミド混合物を成形して成形ポリイミド製品を得る、任意選択のさらなるステップを含んでもよい。
【0060】
適切な成形技術としては、直接成形、熱間等方圧プレス、熱間圧縮成型、およびラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスを伴う)を挙げることができる。
【0061】
直接成形、熱間等方圧プレス、熱間圧縮成型、およびラム押出技術は当技術分野において既知であり、当業者は、例えば米国特許第3413394号明細書、米国特許第4238538号明細書、および加国特許第890515号明細書に記載される技術にしたがって、適切な技術を実施して所望の成形品を得ることができるであろう。
【0062】
例えば、直接成形製品は、10,000~500,000psi(例えば50,000~200,000psi、75,000~125,000psi、または約100,000psi)の圧力での直接成形、その後の200~600℃(例えば250~550℃、300~500℃、350~450℃、または約400℃)での焼成により得ることができる。
【0063】
熱間圧縮成型製品は、例えば、1時間以上、2時間以上、3時間以上、4時間以上、もしくは5時間以上、24時間以下、12時間以下、6時間以下、4時間以下、3時間以下、2時間以下、または上記の上限および下限の任意の適用可能な組合せにおける、高温および高圧での熱間圧縮成型により成形されてもよい。熱間圧縮成型の圧力は、10,000~500,000psi(例えば50,000~200,000psi、75,000~125,000psi、または約100,000psi)の範囲であってもよい。熱間圧縮成型の温度は、200~600℃(例えば250~550℃、300~500℃、350~450℃または約400℃)の範囲であってもよい。熱間圧縮成型のステップの後に、機械加工のステップが続いてもよい(例えば正確なサイズおよび/または形状を得るため)。適切な技術は米国特許第3413394号明細書に記載されている。
【0064】
ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)製品は、例えば、(a)圧縮ゾーン、それに続く(b)背圧ゾーン、それに続く(c)緩和ゾーンを有するダイでラム押出を行うことにより、特に、(1)20~600℃(例えば250~550℃、300~500℃、350~450℃、または約400℃)の範囲の温度で圧縮ゾーンにおいてポリイミドを圧縮するステップと、同時に(2)背圧ゾーンに圧縮ポリイミドを通過させることにより圧縮ゾーンの出口でポリイミドに背圧を与えるステップと、その後、(3)緩和ゾーンにおいてポリイミドへの圧力を緩和させてその弾性回復率を制御するステップとを行うことにより、成形されてもよい。そのような圧縮ポリイミドが緩和ゾーンを通過して成型品が成形される際に、このプロセスは典型的には圧縮ポリイミドの約3~5パーセントの半径方向の回復をもたらす。適切な技術が米国特許第4238538号明細書に記載されている。
【0065】
本発明のラム押出結晶性ポリイミド製品は、ラム押出に続いて熱間等方圧プレスされたラム押出結晶性ポリイミド製品を含み、ラム押出に続いて熱間等方圧プレスされていないラム押出結晶性ポリイミド製品も含む。
【0066】
熱間等方圧プレス製品は、例えば、ポリイミドを圧縮してプリフォームとし、次いでプリフォームを焼結しながら高圧において不活性溶融金属中でプリフォームをその所望の密度まで等方圧により圧縮することにより成形されてもよく、2つの圧縮ステップの間で熱処理の有無を問わない。不活性溶融金属は例えば溶融鉛であってもよい。等方圧圧縮ステップの圧力は1,000~50,000psi(例えば5,000~20,000psi、7,500~12,500psi、または約10,000psi)の範囲であってもよい。焼結および任意選択の熱処理ステップの温度は、200~600℃(例えば250~550℃、300~500℃、350~450℃、または約400℃)の範囲であってもよい。適切な技術が加国特許第890515号明細書に記載されている。
【0067】
処理済みポリイミドは、成形して成形ポリイミド製品とする前に、例えば100℃~200℃の温度で乾燥させてもよい。乾燥は、空気中、不活性雰囲気(例えばN)中、または真空下で行われてもよい。
【0068】
本発明はポリイミドも提供する。
【0069】
本発明のポリイミドは、本発明の方法により入手可能な処理済みポリイミドであってもよい。
【0070】
本発明のポリイミドは、100m-1を超えるBET比表面積を有するポリイミドであって、ポリイミドは、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、ポリイミドはカプセル化フィラーを含まないかまたはポリイミドの重量に対して20wt%以下(例えば16wt%以下)の量でカプセル化フィラーを含む
ポリイミドであってもよい。
【0071】
本発明のポリイミドは、70m-1を超えるBET比表面積(例えば85m-1以上)を有するポリイミドであって、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、処理済みポリイミドが、ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%(例えば16wt%~60wt%)の量でカプセル化フィラーを含む、ポリイミドであってもよい。
【0072】
本発明のポリイミドは、粉末、例えば乾燥粉末であってもよい。粉末状(例えば乾燥粉末状)である場合、例えばポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態において、ポリイミドは100m-1を超えるBET比表面積を有してもよい。典型的には、特にポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態において、本発明のポリイミドは、110m-1以上、好ましくは120m-1以上、より好ましくは130m-1以上、さらにより好ましくは140m-1以上、最も好ましくは150m-1以上のBET比表面積を有する。
【0073】
ポリイミドが例えばポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミド典型的には、100m-1以上、好ましくは105m-1以上、より好ましくは110m-1以上、さらにより好ましくは115m-1以上のBET比表面積を有する。
【0074】
ポリイミドが例えばポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミドは典型的には、70m-1以上、好ましくは75m-1以上、より好ましくは80m-1以上、さらにより好ましくは85m-1以上、最も好ましくは90m-1以上のBET比表面積を有する。
【0075】
ポリイミド樹脂内のカプセル化フィラーの存在は典型的には、カプセル化フィラーを含まないポリイミドと比較して、ポリイミドのBET比表面積を減少させる。しかし、カプセル化フィラーを含む本発明によるポリイミドのBET比表面積は典型的には、本発明以前の同量のカプセル化フィラーについて得られたものよりも大きくなる。
【0076】
ポリイミドは、500m-1以下、例えば400m-1以下、300m-1以下、200m-1以下、150m-1以下、または100m-1以下のBET比表面積を有してもよい。
【0077】
本明細書において言及されるBET比表面積は典型的には、ISO 9211:2010に準拠し、99.999%の純度を有しHOとして存在する不純物が<3ppm、Oとして存在する不純物が<5ppmである吸着物質としてのN Technical X47Sによる多点法を使用して決定される。
【0078】
本発明のポリイミドは粉末状であってもよく、典型的には10~80μmの体積中位径(Dv50)によって特徴づけられる粒径を有する。好ましくは、粒径は20~70μmのDv50によって特徴づけられてもよい。より好ましくは、粒径は25~60μmのDv50によって特徴づけられてもよい。
【0079】
ポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態において、本発明のポリイミドは、10~80μm、好ましくは20~70μm、より好ましくは35~60μm、さらにより好ましくは45~50μm、最も好ましくは約47.5μmの粒径(Dv50)を有してもよい。
【0080】
ポリイミドがポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミドは、10~80μm、好ましくは20~70μm、より好ましくは25~50μm、さらにより好ましくは35~40μm、最も好ましくは約38μmの粒径(Dv50)を有してもよい。
【0081】
ポリイミドがポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミドは、10~80μm、好ましくは20~50μm、より好ましくは25~45μmの粒径(Dv50)を有してもよい。
【0082】
本発明のポリイミドは、上記のようなBET比表面積および上記のような粒径(Dv50)を有してもよい。上記のあらゆるBET比表面積と上記のDv50粒径のいずれかとの組合せが開示される。例えば、特にポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態において、本発明のポリイミドは、10~80μmの粒径(Dv50)および100m-1を超えるBET比表面積(例えば100~500m-1、100~400m-1、100~300m-1、100~200m-1);20~70μmの粒径(Dv50)および110m-1以上のBET比表面積(例えば110~500m-1、110~400m-1、110~300m-1、110~200m-1);35~60μmの粒径(Dv50)および120m-1以上のBET比表面積(例えば120~500m-1、120~400m-1、120~300m-1、120~200m-1);45~50μmの粒径(Dv50)および130m-1以上のBET比表面積(例えば130~500m-1、130~400m-1、130~300m-1、130~200m-1);または約47.5μmの粒径(Dv50)および130m-1以上のBET比表面積(例えば130~500m-1、130~400m-1、130~300m-1、130~200m-1)を有してもよい。
【0083】
ポリイミドがポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミドは、10~80μmの粒径(Dv50)および100m-1を超えるBET比表面積(例えば100~450m-1、100~350m-1、100~250m-1、100~150m-1);20~70μmの粒径(Dv50)および105m-1以上のBET比表面積(例えば105~450m-1、105~350m-1、105~250m-1、105~150m-1);25~50μmの粒径(Dv50)および110m-1以上のBET比表面積(例えば110~450m-1、110~350m-1、110~250m-1、110~150m-1);35~40μmの粒径(Dv50)および115m-1以上のBET比表面積(例えば115~450m-1、115~350m-1、115~250m-1、115~150m-1);または約38μmの粒径(Dv50)および115m-1以上のBET比表面積(例えば115~450m-1、115~350m-1、115~250m-1、115~150m-1)を有してもよい。
【0084】
ポリイミドがポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミドは、10~80μmの粒径(Dv50)および70m-1を超えるBET比表面積(例えば70~200m-1、70~150m-1、70~100m-1、85~200m-1、85~150m-1、85~100m-1);20~50μmの粒径(Dv50)および75m-1以上のBET比表面積(例えば75~200m-1、75~150m-1、75~100m-1、85~200m-1、85~150m-1、85~100m-1);25~40μmの粒径(Dv50)および80m-1以上のBET比表面積(例えば80~200m-1、80~150m-1、80~100m-1);25~40μmの粒径(Dv50)および85m-1以上のBET比表面積(例えば85~200m-1、85~150m-1、85~100m-1);または25~40μmの粒径(Dv50)および90m-1以上のBET比表面積(例えば90~200m-1、90~150m-1、90~100m-1)を有してもよい。
【0085】
本発明のポリイミドはカプセル化フィラーを含んでもよい。本発明のポリイミドにおけるカプセル化フィラーは典型的には、本発明の方法に関連して本明細書の別の場所に記載される通りである。上記の典型的な、好ましい、より好ましい、さらにより好ましい、および最も好ましい粒径は、本発明のポリイミドがカプセル化フィラーを含む実施形態、および処理されるべきポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態に適用される。本明細書において言及されるDv50値は典型的には、ISO13320:2009にしたがって脱イオン水中のレーザー回折により測定される。
【0086】
本発明のポリイミドは典型的には結晶性ポリイミドである。本明細書で使用する結晶性という用語は、ポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態、およびポリイミドがポリイミドの重量に対して最大で20wt%までの量(例えばポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%)でカプセル化フィラーを含む実施形態では、15.0以上の結晶化指数を有するポリイミドを指し、ポリイミドがポリイミドの重量に対して20wt%以上の量(例えばポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%)でカプセル化フィラーを含む実施形態では、17.0以上の結晶化指数を有するポリイミドを指す。
【0087】
ポリイミドがカプセル化フィラーを含まない実施形態、およびポリイミドがポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミドの結晶化指数は典型的には、15.0以上、例えば15.5以上、16.0以上、16.5以上、17.0以上、17.5以上、18.0以上、20.0以上、22.0以上、24.0以上、26.0以上、28.0以上、または30.0以上である。
【0088】
ポリイミドがポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%の量でカプセル化フィラーを含む実施形態において、本発明のポリイミドの結晶化指数は典型的には、17.0以上、例えば17.5以上、18.0以上、18.5以上、19.0以上、19.5以上、20.0以上、22.0以上、24.0以上、26.0以上、28.0以上、30.0以上である。
【0089】
本発明のポリイミドの結晶化指数は、90.0以下、例えば80.0以下、70.0以下、60.0以下、または50.0以下であってもよい。
【0090】
本発明のポリイミドの結晶化指数は典型的には、17.0~90.0、好ましくは20.0~80.0、より好ましくは25.0~70.0、さらにより好ましくは30.0~60.0である。
【0091】
本発明のポリイミドの結晶化指数は典型的には、示差走査熱量測定法(DSC)により測定される。使用することができる適切な装置は、例えば、穴あきの蓋のついた70μl白金皿を備えたDSC 1(Mettler Toledo)である。試料は例えば5mgの試料であってもよく、10 ℃/分の加熱速度で40℃から700℃まで加熱することができる。その後結晶化度αをピーク面積:
【0092】
【数1】
から見積もることができ、式中、Δhはピーク面積から決定される試料の比融解エンタルピー(J/g)であり、Δhは100%結晶性物質の融解エンタルピーである。ポリイミドの融解熱は、“Handbook of Polymers” By George Wypych (2ndedition, 2016, ChemTec Publishing)などの文献ソースから得ることができる。ポリ(PMDA-co-4,4’-ODA)については、139J/gの融解熱を使用することができる。
【0093】
本発明はまた、成形ポリイミド製品も提供する。
【0094】
本発明の成形ポリイミド製品は、処理済みポリイミドまたはポリイミド混合物を成形して成形ポリイミド製品を得るステップを含む、本発明の方法により得ることができる。
【0095】
本発明の成形ポリイミド製品は、直接成形結晶性ポリイミド製品であって、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、直接成形結晶性ポリイミド製品が、
- カプセル化フィラーを含まず、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、80.0MPa以上の(例えば85.0MPa以上、90.0MPa以上、95.0MPa以上、または100.0MPa以上)引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、63.0MPa以上(例えば69.0MPa以上、74.0MPa以上、79.0MPa以上、84.0MPa以上、または89.0MPa以上)の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~2.0wt%の添加剤を含み、50.0MPa以上(例えば55.0MPa以上、60.0MPa以上、65.0MPa以上、70.0MPa以上、または75.0MPa以上)の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して5wt%~15wt%の添加剤を含み、52.5MPa以上(例えば57.5MPa以上、62.5MPa以上、67.5MPa以上、または72.5MPa以上)の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、39.5MPa以上(例えば44.5MPa以上、49.5MPa以上、54.5MPa以上、または59.5MPa以上)の引張強度を有する、
直接成形結晶性ポリイミド製品であってもよい。
【0096】
本発明の成形ポリイミド製品は、80.0MPa以上の引張強度を有する直接成形結晶性ポリイミド製品であってもよく、直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラーを含まず、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む。直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラーを含まない実施形態は、添加剤、例えばポリイミドの重量に対して0.5wt%以下のPTFEを含んでもよい。そのような添加剤は、樹脂を使用する成型作業の際に離型を補助し得る。
【0097】
本発明の成形ポリイミド製品は、63.0MPa以上(例えば69MPa以上)の引張強度を有する直接成形結晶性ポリイミド製品であってもよく、直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のグラファイト)を含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む。直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のグラファイト)を含む実施形態は、添加剤、例えばポリイミドの重量に対して0.5wt%以下のPTFEを含んでもよい。そのような添加剤は、樹脂を使用する成型作業の際に離型を補助し得る。
【0098】
本発明の成形ポリイミド製品は、50.0MPa以上(例えば55MPa以上)の引張強度を有する直接成形結晶性ポリイミド製品であってもよく、直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して40wt%±5.0wt%のグラファイト)を含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む。直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラーを含む(例えばポリイミドの重量に対して40wt%±5.0wt%のグラファイト)実施形態は、添加剤、例えばポリイミドの重量に対して2.0wt%以下のPTFEを含んでもよい。そのような添加剤は、樹脂を使用する成型作業の際に離型を補助し得る。
【0099】
本発明の成形ポリイミド製品は、52.5MPa以上の引張強度を有する直接成形結晶性ポリイミド製品であってもよく、直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±3.0wt%のグラファイト)および添加剤(例えばポリイミドの重量に対して10wt%±1.0wt%のPTFE)を含み、ポリイミドがピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む。
【0100】
本発明の成形ポリイミド製品は、39.5MPa以上の引張強度を有する直接成形結晶性ポリイミド製品であってもよく、直接成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して40wt%±5.0wt%のグラファイト)および添加剤(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のPTFE)を含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む。
【0101】
本発明の成形ポリイミド製品は、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、ポリイミドがピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含み、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品が、
- カプセル化フィラーを含まず、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、87.0MPa以上(例えば92.0MPa以上、97.0MPa以上、102.0MPa以上、または107.0MPa以上)の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~0.5wt%の添加剤を含み、66.0MPa以上(例えば71.0MPa以上、76.0MPa以上、81.0MPa以上、または86.0MPa以上)の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して0wt%~2.0wt%の添加剤を含み、52.5MPa以上(例えば57.5MPa以上、62.5MPa以上、67.5MPa以上、または72.5MPa以上)の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して5wt%~15wt%の添加剤を含み、49.5MPa以上(例えば54.5MPa以上、59.5MPa以上、64.5MPa以上、または69.5MPa以上)の引張強度を有するか;または
- カプセル化フィラーを含まず、ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、59.0MPa以上(例えば64.0MPa以上、69.0MPa以上、74.0MPa以上、または79.0MPa以上)の引張強度を有するか;または
- ポリイミドの重量に対して20wt%~60wt%のカプセル化フィラーを含み、ポリイミドの重量に対して10wt%~20wt%の添加剤を含み、39.5MPa以上(例えば44.5MPa以上、49.5MPa以上、54.5MPa以上、または59.5MPa以上)の引張強度を有する、
熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であってもよい。
【0102】
本発明の成形ポリイミド製品は、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、前記成形ポリイミド製品が87.0MPa以上の引張強度を有し、成形ポリイミド製品がカプセル化フィラーを含まず、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であってもよい。熱間等方圧プレスポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)ポリイミド製品、または熱間圧縮成型ポリイミド製品がカプセル化フィラーを含まない実施形態は、添加剤、例えばポリイミドの重量に対して0.5wt%以下のPTFEを含んでもよい。そのような添加剤は、樹脂を使用する成型作業の際に離型を補助し得る。
【0103】
本発明の成形ポリイミド製品は、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、前記成形ポリイミド製品が66.0MPa以上の引張強度を有し、前記成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のグラファイト)を含み、ポリイミドがピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であってもよい。熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のグラファイト)を含む実施形態は、添加剤、例えばポリイミドの重量に対して0.5wt%以下のPTFEを含んでもよい。そのような添加剤は、樹脂を使用する成型作業の際に離型を補助し得る。
【0104】
本発明の成形ポリイミド製品は、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、前記成形ポリイミド製品が52.5MPa以上の引張強度を有し、前記成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して40wt%±5.0wt%のグラファイト)を含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であってもよい。熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して40wt%±5.0wt%のグラファイト)を含む実施形態は、添加剤、例えばポリイミドの重量に対して2.0wt%以下のPTFEを含んでもよい。そのような添加剤は、樹脂を使用する成型作業の際に離型を補助し得る。
【0105】
本発明の成形ポリイミド製品は、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、前記成形ポリイミド製品が49.5MPa以上の引張強度を有し、前記成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±3.0wt%のグラファイト)および添加剤(例えばポリイミドの重量に対して10wt%±1.5wt%のPTFE)を含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であってもよい。
【0106】
本発明の成形ポリイミド製品は、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、前記成形ポリイミド製品が59.0MPa以上の引張強度を有し、前記成形ポリイミド製品がカプセル化フィラーを含まず添加剤(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.5wt%の二硫化モリブデン)を含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であってもよい。
【0107】
本発明の成形ポリイミド製品は、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であって、前記成形ポリイミド製品が39.5MPa以上の引張強度を有し、前記成形ポリイミド製品がカプセル化フィラー(例えばポリイミドの重量に対して40wt%±5.0wt%のグラファイト)および添加剤(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のPTFE)を含み、ポリイミドが、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含む、熱間等方圧プレス結晶性ポリイミド製品、ラム押出(場合によりその後熱間等方圧プレスされてもよい)結晶性ポリイミド製品、または熱間圧縮成型結晶性ポリイミド製品であってもよい。
【0108】
本明細書で使用する、成形ポリイミド製品の引張強度は、2.5mm厚さの試験片に基づいたASTM D1708により、1mm毎分の試験スピードで決定される通りである。別段の指定がない限り、引張強度は23℃で測定される通りである。
【0109】
本発明の成形ポリイミド製品は、ピロメリト酸二無水物(PMDA)に由来する第1の繰り返し単位および4,4’-オキソジアニリン(4,4’-ODA)に由来する第2の繰り返し単位を含むポリイミドを含む。本発明の成形ポリイミド製品に含まれるポリイミドの組成は典型的には、本発明の方法の処理されるべきポリイミドおよび/または処理済みポリイミドに関して上記で記載される通りである。
【0110】
本発明の成形ポリイミド製品はカプセル化フィラーを含んでもよい。成形ポリイミド製品がカプセル化フィラーを含む実施形態において、カプセル化フィラーは典型的にはグラファイトである。成形ポリイミド製品に含まれるカプセル化フィラーの粒子は典型的には、2.0~10.0μm、好ましくは3~9μm、より好ましくは4.0~8.0μm、最も好ましくは5.0~7.0μmのDv90を有する。成形ポリイミド製品中に存在するカプセル化フィラーの量は典型的には、成形ポリイミド製品の重量に対して5~60wt%、例えば10~20wt%または35~45wt%など、好ましくは12~18wt%または37~43wt%、より好ましくは14~16wt%または39~41wt%、最も好ましくは約15wt%または約40wt%である。
【0111】
本発明の成形ポリイミド製品は添加剤を含んでもよい。適切な添加剤としては、成型用添加剤および潤滑剤、例えばPTFEおよびMoSなどが挙げられる。例えば、成形ポリイミド製品は、成形ポリイミド製品の重量に対して0.1wt%~15wt%の量でPTFEを含んでもよい。PTFEは典型的には成型用添加剤および/または潤滑剤として存在する。別の実施例において、MoSは典型的には成形ポリイミド製品の重量に対して0.1wt%~15wt%の量で処理済みポリイミド粉末と混合されてもよい。MoSは典型的には潤滑剤として存在する。
【0112】
本発明の直接成形ポリイミド製品は、80.0MPa以上の引張強度および1.40以下の比重を有してもよい。典型的には、そのような実施形態において、成形ポリイミド製品はフィラーを含まない(例えばグラファイトを含まない)。
【0113】
本発明の直接成形ポリイミド製品は、70.0MPa以上の引張強度および1.50以下の比重を有してもよい。典型的には、そのような実施形態において、成形ポリイミド製品は上記で説明されるようなフィラーを含む(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のグラファイトを含む)。
【0114】
本発明の直接成形ポリイミド製品は、260℃で40.0MPa以上、例えば260℃で41.0MPa以上、260℃で42.0MPa以上、または260℃で43.0MPa以上、260℃で44.0MPa以上、または260℃で45.0MPa以上の引張強度を有してもよい。
【0115】
本発明の直接成形ポリイミド製品は、260℃で40.0MPa以上の引張強度および1.40以下の比重を有してもよい。典型的には、そのような実施形態において、成形ポリイミド製品はフィラーを含まない(例えばグラファイトを含まない)。
【0116】
本発明の直接成形ポリイミド製品は、260℃で40.0MPa以上の引張強度および1.50以下の比重を有してもよい。典型的には、そのような実施形態において、成形ポリイミド製品は上記で説明されるようなフィラーを含む(例えばポリイミドの重量に対して15wt%±1.0wt%のグラファイトを含む)。
【0117】
本発明の成形ポリイミド製品は、110.0MPa以下、例えば105.0MPa以下、100.0MPa以下、95.0MPa以下、90.0MPa以下、85.0MPa以下、80.0MPa以下、75.0MPa以下、または70.0MPa以下の引張強度を有してもよい。
【0118】
ポリイミド樹脂内のカプセル化フィラーの存在、および/または添加剤の存在は、典型的には、カプセル化フィラーおよび/または添加剤を含まないポリイミドと比較して、ポリイミドの引張強度を低下させる。しかし、カプセル化フィラーおよび/または添加剤を含む本発明によるポリイミドの引張強度は典型的には、本発明以前の結晶性ポリイミド製品における同量のカプセル化および/またはブレンドされたフィラーおよび/または添加剤において得られるものよりも大きくなる。
【0119】
本明細書で使用する、成形ポリイミド製品の比重は典型的には脱イオン水を基準とするものであり、当業者に既知の方法により、例えばASTM D792-20により、または指定の温度、典型的には20.0℃における試験物体の体積を決定し(例えば円筒形の試験物体の長さおよび直径をノギスにより測定し、測定された長さおよび直径に基づいて試験物体の体積を計算することにより)、試験物体の質量を測定し(例えば0.001g以下の精度を有するデジタルスケールにおいて)、計算された体積および測定された質量に基づき試験物体の密度を計算し、指定の温度における脱イオン水の密度についての文献値(例えば20.0℃で0.9982gcm-3)を基準とした密度を表すことにより、決定されてもよい。
【0120】
本明細書で使用する、本発明の成形ポリイミド製品の結晶化度は典型的には、本発明のポリイミドに関して上記で説明される通りである。
【0121】
本発明の成形ポリイミド製品は任意の種類の製品であってもよい。例としては、ハンドリング機械部品(例えば半導体ハンドリング機械部品、ガラスハンドリング機械部品)、チップテストソケット、ウエハー締め付けリング、バルブシート、シーリング用途の製品、スプライン継手、軸受(例えば玉軸受)、ブッシング、ロッキングファスナー(例えば航空宇宙用)、ピボットブッシング(例えばユニゾンリング用)、およびスラストワッシャが挙げられる。
【0122】
本発明は、本発明の成形ポリイミド製品を含む物品も提供する。物品の性質は特に限定されず、成形ポリイミド製品の用途に応じて決まることになる。例えば、成形ポリイミド製品が半導体ハンドリング機械部品である場合、物品は半導体ハンドリング機械であってもよい。
【実施例
【0123】
[実施例1]
米国特許第3249588号明細書の実施例IIIに教示される手順にほぼしたがって、ポリイミド粉末を製造した。米国特許第3249588号明細書の実施例IIIに報告される真空乾燥ステップの前に製造手順を停止した。
【0124】
このようにして得られたポリイミド粉末はウェットなろ過ケーキの形態であり、80℃および150barにおいて25L超臨界流体抽出器中で超臨界COと接触させた。ポリイミドろ過ケーキ1kg当たり、8kgのCOを抽出において使用した。処理済みポリイミド粉末を得た。
【0125】
[実施例2]
ポリイミドへの転化の前にポリアミド酸溶液中にグラファイトが存在したこと以外は、実施例1と同じ手順にしたがって、処理済みポリイミド粉末を得た。使用したグラファイトは、5.5~6.8μmのD90(レーザー回折)を有する合成グラファイトとした。添加されるグラファイトの量は、その後得られるポリイミドの重量に対して15wt%であった。
【0126】
[比較例1]
ポリイミド粉末を超臨界COと接触させるステップを行わずに、実施例1と同じ手順にしたがってポリイミド粉末を得て、真空乾燥させた。
【0127】
[比較例2]
ポリイミド粉末を超臨界COと接触させるステップを行わずに、実施例2と同じ手順にしたがってポリイミド粉末を得て、真空乾燥させた。
【0128】
評価
ISO 9211:2010に準拠し、99.999%の純度を有しHOとして存在する不純物が<3ppm、Oとして存在する不純物が<5ppmである吸着物質としてのN Technical X47Sによる多点法を使用して、実施例1および2ならびに比較例1および2で得られたポリイミド粉末のBET比表面積を測定した。
【0129】
ポリイミド粉末を200℃まで加熱し次いで加熱されていないプレス工具で100,000psiにおいて直接成形し、その後400℃で焼成することにより、実施例1および2ならびに比較例1および2で得られたポリイミド粉末から厚さ2.5mmの試験片を調製した。ASTM D1708に準拠し、1mm/分の試験スピードで、23℃にて引張強度を測定した。
【0130】
DSCにより結晶化指数を測定した。
【0131】
結果を下記の表1に示す。
【0132】
【表1】
【0133】
高温(260℃)での引張強度特性を決定するために実施例1および2も試験を行い、結果をVespel SP1(フィラー添加なし)およびVespel SP21(15%のグラファイトが添加された)製品の文献値と比較した。高温とは別に、引張強度試験は上記で説明される通りとした。結果を下記の表2に示す。
【0134】
【表2】
【0135】
上記の結果は、本発明によるポリイミド粉末が、超臨界/低表面張力洗浄ステップを行わずに得られた対応するポリイミド粉末よりも大きいBET表面積、ならびに周囲温度および高温での改善された引張強度を有することを示す。
【0136】
本発明は、様々な非限定的な実施形態および実施例に関連して説明されている。当業者は、特許請求の範囲において指定される要素と等価である任意の要素を十分に考慮し、特許請求の範囲が決定することになる本発明の特許が与える保護の範囲から逸脱することなく、実施形態および実施例に対して様々な修正を行うことができることを認識するであろう。
【0137】
本明細書において言及されるあらゆる文献(特許文献および非特許文献を含む)は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【国際調査報告】