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特表2024-542612GDF15血漿濃度の上昇に関連する疾患の治療および予防のための合成エイコサノイド類似体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】GDF15血漿濃度の上昇に関連する疾患の治療および予防のための合成エイコサノイド類似体
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/16 20060101AFI20241108BHJP
   C07C 275/20 20060101ALI20241108BHJP
   C07C 233/56 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 9/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 9/06 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 9/04 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 9/10 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 9/12 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 7/02 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61K31/16
C07C275/20 CSP
C07C233/56
A61P3/00
A61P9/00
A61P9/06
A61P9/04
A61P9/10
A61P9/12
A61P29/00 101
A61P7/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531592
(86)(22)【出願日】2022-11-25
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022083322
(87)【国際公開番号】W WO2023094615
(87)【国際公開日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】21210906.0
(32)【優先日】2021-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524199785
【氏名又は名称】オメイコス セラピューティクス ジーエムビーエイチ
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100183656
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 晃
(74)【代理人】
【識別番号】100224786
【弁理士】
【氏名又は名称】大島 卓之
(74)【代理人】
【識別番号】100225015
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 彩夏
(74)【代理人】
【識別番号】100231647
【弁理士】
【氏名又は名称】千種 美也子
(72)【発明者】
【氏名】フィッシャー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】コンケル,アン
(72)【発明者】
【氏名】ロッシー,ジャニーン
(72)【発明者】
【氏名】稲葉 太郎
(72)【発明者】
【氏名】シュンク,ウォルフ-ハーゲン
【テーマコード(参考)】
4C206
4H006
【Fターム(参考)】
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA01
4C206GA25
4C206MA01
4C206MA04
4C206NA14
4C206ZA36
4C206ZA42
4C206ZA54
4C206ZB15
4C206ZC21
4H006AA01
4H006AA03
4H006AB23
4H006AB27
4H006BS10
4H006BT12
4H006BV22
(57)【要約】
本発明は、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患の治療または発症リスクの軽減または予防に使用するための、オメガ-3多価不飽和脂肪酸 (n-3PUFA)に由来する生理活性脂質メディエーターの代謝的に堅牢な類似体である一般式(I)に示される化合物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩であって、
【化1】
式中、
Pは一般式(II)で表される基である:
【化2】
ここで、
nは0、または3から8の整数;および
kは0、1、または2であり、好ましくは、ただし、nが0の場合kは1であり、最も好ましくはkは1である;
Xは、CHOH、CHOAc、CH(O)、または以下からなる群から選択される基を表す:
【化3】
好ましくは、Xは
【化4】
である;

ここで、
RおよびR’は、それぞれ独立に水素原子を表す;または、1つ以上のフッ素原子または塩素原子またはヒドロキシル基で置換されてもよいC-Cアルキル基を表す;
は、水酸基、C-Cアルコキシ、-NHCN、-NH(C-Cアルキル)、-NH(C-Cシクロアルキル)、-NH(アリール)、または-O(C-Cアルキルジイル)O(C=O)R11を表す;R11は、1つ以上のフッ素原子または塩素原子で任意に置換されるC-Cアルキル基;または1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基である;
は、-NHR;-NR2021;-OR22;-(OCH-CH-R23;ヒドロキシル基、C-Cアルコキシ、C-Cアルキル、およびオキソからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換された-C-C10-ヘテロシクリル;-(Xaa);糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介してエステル結合によってC(O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体を表す;
または以下の式からなる群から選択されるものである:
【化5】
ここで、
は、(SO30);(OR31);-C-Cアルカンジイル(SO32);-C-Cアルカンジイル(COH)、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を表すものであって、ここで、アリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;ここで、ヘテロアリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;ここで、シクロアルキル基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;および、ここで、ヘテロシクロアルキル基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;
30は、C-Cアルキル基、またはアリール基であり、ここで、C-Cアルキル基は、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるものであり;および、ここで、アリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、および-N(C-Cジアルキル)からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;
31は、1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cアルキル基である;または1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基である;
32は、1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cアルキル基である;または、1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基である;
20およびR21は、それぞれ独立に水素原子;1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で置換されていてよいC-Cアルキル基;1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で置換されていてよいC-Cシクロアルキル基;または-C-Cアルキルジイル(COH)を表し、または一緒になって、1つ以上のC-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、フッ素原子または塩素原子またはヒドロキシル基で置換されていてよいC-C10-ヘテロシクロアルキルを形成する;
22は、水素原子、C-Cアルキル基;またはC-Cシクロアルキル基であって、ここで、C-Cアルキル基またはC-Cシクロアルキル基は、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル、またはC-Cアルコキシ、アラルキル基、ヘテロアルキル基、またはヘテロアルキルシクロアルキル基で任意に置換されるものである;
23は、-OH、-O(C-C)アルキル、または-N(C-C)ジアルキルである;
iは1から10までの整数である;
24、R25およびR26はそれぞれ独立に水素原子;-C(=O)C11-C21アルキル;または-C(=O)C11-C21アルケニルを表す;
27は、-OH;-O(CHNH、-OCH-[CH(NH)(COH)]、-O(CHN(CH;または
【化6】
を表す;
Xaaは、Gly、従来のD,L、DもしくはLアミノ酸、非従来のD,L、DもしくはLアミノ酸、または2~10merのペプチドを表し;およびXaaは、アミド結合によってC(=O)に結合される;
oは1から10までの整数である;
は以下の式からなる群から選択されるものである:
【化7】
hは0、1、または2である;
は、水素原子;フッ素原子または塩素原子;-CF;-C(=O)OR51;-NHC(=O)OR52;-C(=O)NR5354;または-S(O)OHを表す;
51は、水素原子;C-Cアルキル基;またはC-Cシクロアルキル基を表すものであって、C-Cアルキル基またはC-Cシクロアルキル基は、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル、またはC-Cアルコキシで任意に置換されるものである;
52、R53およびR54は、それぞれ独立して、1つ以上のフッ素原子または塩素原子で任意に置換されるC-Cアルキル基;1つ以上のフッ素原子または塩素原子で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基;またはC-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキル、およびオキソ置換基からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであるアリール基を表す;
、Rはそれぞれ独立に水酸基;-O(C-C)アルキル基、-O(C-C)アルケニル基、-O(C-C)アルキルジイルO(C=O)(C-C)アルキル基、または-O(C-C)アルキルジイルO(C=O)(C-C)アルケニル基を表すものであって、C-Cアルキル基およびC-Cアルケニル基は、NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、または1、2または3個のフッ素原子または塩素原子で置換されてよい;または
はヒドロキシル基を表し、Rは以下の基を表す:
【化8】
は、C-Cアルキル、またはアリールを表すものであって、C-Cアルキルは、-NH、-NH(C-C)アルキル-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、-C(=O)-アリール、-C(=O)C-Cアルコキシで任意に置換されるものであり;およびアリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキルおよびオキソ置換基からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;
gは1または2であり;
は酸素原子;硫黄原子;またはNHを表す;
は酸素原子;硫黄原子;NH;またはN(CH)を表す;
は酸素原子;硫黄原子;窒素原子;炭素原子;またはC-OHを表し;および破線は炭素-炭素結合または炭素-炭素二重結合を表す;
Eは、一般式(III)または(IV)で表される基である:
【化9】
ここで、R12およびR13は、シス配置であることが好ましく、およびここで、式(III)における環Aは、芳香族炭素環または複素環を含む、少なくとも1つの二重結合を含む5員または6員の炭素環または複素環を表すものであって、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)および-N(C-C)ジアルキルからなる群から独立して選択される1~3個または1~4個の置換基で置換され得るものであり;ならびにLおよびTはそれぞれ独立に環原子を表し、LおよびTは互いに隣接している;
12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシル基、-NH、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、-C(=O)-アリール、-C(=O)C-Cアルキル、または-SO(C-Cアルキル);または-SOアリールを表すものであって、前記C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、またはアリールは、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;または
12およびR13は、一緒になって5員環または6員環を形成し、その環は-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;
Iは -(CH-Yであって、ここで、
mは3~6の整数であり、ただし、Eが一般式(III)による基である場合、mは3~5の整数であり、
Yは-U-V-W-(CH-(CHで表すものであって、pは0~6の整数であり; qは0または1であり;Uは存在しないか、またはCH、CHおよびNR40からなる群から選択されるが、ただし、VおよびWと一緒にエポキシ基を形成する場合、UはCHのみであり;Vは、-C(O)-、-C(O)-C(O)-、-O-、および-S-からなる群から選択され;Wは、CH、CHおよびNR40からなる群から選択されるが、ただし、UおよびVと一緒にエポキシ基を形成する場合、WはCHのみである;または
Yは、以下からなる群から選択される基を表す:
【化10】
ここで、
40、R41、R43、R44、R46、R48およびR49は、それぞれ独立に、水素原子、-C-Cアルキル、-C-Cシクロアルキル、-C-Cアルコキシ、-C(=O)アリール、または-C(=O)C-Cアルキルを表すものであって、前記いずれかのC-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、またはアリールは、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;または
40とR41、またはR43とR44は一緒になって5員環または6員環を形成し、この環は-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で置換されてよい;
42、R45、R47およびR50は、それぞれ独立に、-C-Cアルキルを表すものであって、C-Cアルキルは、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で置換されてよい;または
40とR41;R43とR44;R49とR50は一緒になって5員環または6員環を形成し、この環は-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で置換されてよい;
fは0から2までの整数であり;
ただし、
Xが一般式(II)の酸素原子に対してアルファ位またはベータ位にカルボニル炭素を有する-C(=O)O-モチーフを含まない場合、Yはオキサミド、カルバメートまたはカルバミドであり、好ましくはYは、上記で定義したオキサミドである、
GDF-15血漿濃度(好ましくは、GDF-15血漿濃度は少なくとも1000ng/Lである)の上昇に関連する疾患(好ましくは、心血管疾患および代謝性疾患から選択される)の治療、発症リスクの軽減、または予防に使用するための、一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩。
【請求項2】
請求項1に記載の使用のための化合物であって、
ただし、
nは3、5、6、7、または8である場合、kは1であり、かつEは、一般式(III)または(IV)で表される基であって、ここで、R12およびR13のそれぞれは、水素原子であり;
Pは次の基を表し:
【化11】
式中、
81は、以下からなる群から選択される基を表す:
【化12】
1’は、上記のRと定義され;
2’は、-NHR3’;-OR22’; -(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体であり;または
は、以下からなる群から選択されるものであり:
【化13】
ここで、
3’は(SO30);(OR31); -C-Cアルカンジイル(SO32);または-C-Cアルカンジイル(COH)を表す;
22’は、水素またはC-Cシクロアルキル基であり、これは-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシまたはC-Cアルコキシで任意に置換される;
23およびiは上記で定義したとおりであり;
24、R25、R26、およびR27は上記で定義したとおりであり;
4’は上記のRと定義され;およびhは上記で定義したとおりであり;
6’およびR7’は上記のRおよびRと定義され;
9’は上記のRと定義され;R9’’は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキル、およびオキソ置換基からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであるアリールを表す、請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の使用のための化合物であって、
ここで、Xが以下のものであり、
【化14】
式中、Rは、-OR22; -(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体であり;または、Rは、以下からなる群から選択されるものであり:
【化15】
23およびiは上記で定義したとおりであり;および、
ここで、R22およびR23~R27は請求項1で定義されたとおりである、
請求項1または2に記載の使用のための化合物。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための化合物であって、Xが-C(=O)OHまたはカルボン酸の適切な塩であり、好ましくは遊離カルボン酸である、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための化合物であって、Yは、請求項1で定義したオキサミドのうちの1つである、請求項1~4のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項6】
請求項1~3および5のいずれか1項に記載の使用のための化合物であって、
Xが以下のものであり、
【化16】
式中、Rは、-OR22; -(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体であり;または、式中、Rは、以下からなる群から選択されるものであり:
【化17】
ここで、R22、R23~R27、およびiは請求項1で定義したとおりであり、および、Yは請求項1で定義したオキサミドのうちの1つである、請求項1~3および5のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための化合物であって、Xが遊離カルボン酸であり、およびYは請求項1で定義したオキサミドのうちの1つである、請求項1~6のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項8】
請求項1に記載の使用のための化合物であって、以下の式(V)を有するものであり:
【化18】
式中、
55は、-OH、-OR22; -(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体を表す;
22 、R23およびiは請求項1で定義したとおりであり、好ましくはR22は水素原子またはC-Cアルキル基、より好ましくは水素原子であり、iは好ましくは2~4、より好ましくは3である;
Yは以下からなる群から選択される基を表す:
【化19】
式中、R40~R50は請求項1で定義したとおりであり、好ましくはR40は水素原子またはC-Cアルキル基であり、より好ましくは水素原子である;
57およびR58は水素であり;または、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキル、およびオキソ置換基からなる群から独立して選択される1~3個または1~4個の置換基で任意に置換される、5員環または6員環、好ましくは芳香環を一緒に形成するものであり;
sは0、1または2であるが、R57とR58が一緒になって5員環または6員環を形成する場合にはsは0であり;
式(V)における二重結合は、R57およびR58が水素である場合、またはこの二重結合がR57およびR58によって一緒に形成される5員環または6員環の一部である場合、シス配置の炭素-炭素二重結合を表す、
請求項1に記載の使用のための化合物。
【請求項9】
請求項8に記載の使用のための化合物であって、
式中、
55は、-OHまたは-(OCH-CH-R23を表し;iは2~4、好ましくは3であり; R23は好ましくはOHであり;
Yはオキサミド、カルバミドまたはカルバメート、好ましくはC-Cアルキルで置換されたオキサミド、カルバミドまたはカルバメートであり;
57およびR58は両方ともHであるか、または一緒になって置換または非置換の5員または6員の芳香環を形成し、好ましくは置換または非置換のベンジル環を形成する;および
57とR58が一緒になって置換または非置換の5員または6員の芳香環を形成する場合、sは1であるか、またはsは0である、
請求項8に記載の使用のための化合物。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための化合物であって、
該化合物は以下からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化20】
、請求項1~3のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための化合物であって、以下の式(VI)を有する化合物またはその薬学的に許容される塩である:
【化21】
、請求項1~10のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項12】
GDF-15血漿濃度(好ましくは、GDF-15血漿濃度が少なくとも1000ng/Lである)の上昇に関連する疾患は、心血管疾患であって、好ましくは、該心血管疾患は、心房細動、心房細動に伴う出血リスク、冠動脈疾患(CAD)、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、先天性心疾患、心臓弁膜症、心臓炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、血栓塞栓症、および静脈血栓症から選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【請求項13】
GDF-15血漿濃度(好ましくは、GDF-15血漿濃度が少なくとも500ng/Lである)の上昇に関連する疾患は、代謝性疾患であって、好ましくは、該代謝性疾患は、糖尿病、脂質異常症、およびメタボリックシンドロームから選択される、請求項1~11のいずれか1項に記載の使用のための化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患の治療または発症リスクの軽減または予防に使用するための、オメガ-3多価不飽和脂肪酸 (n-3 PUFA) に由来する生理活性脂質メディエーターの代謝的に堅牢な類似体である一般式(I)に示される化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
オメガ-6およびオメガ-3多価不飽和脂肪酸(n-6およびn-3 PUFA) は、哺乳類の食事の必須成分である。生物学的に最も重要なn-3 PUFAは、エイコサペンタエン酸(EPA、20:5 n-3)とドコサヘキサエン酸(DHA、22:6 n-3)である。食事から摂取されるn-3 PUFAは、血漿脂質レベル、心血管機能および免疫機能、炎症、インスリン作用、神経発達および視覚機能の調節など、正常な健康および慢性疾患に影響を与えるさまざまな生理学的プロセスに影響を与える。
【0003】
n-3 PUFAを摂取すると、体内の実質的にすべての細胞に分布し、膜の組成と機能、エイコサノイド合成、シグナル伝達、および遺伝子発現の制御に影響を及ぼす。
【0004】
Simopoulosらは、n-3 PUFAには抗炎症特性があり、したがって炎症性疾患や自己免疫疾患の管理に役立つ可能性があることを示す動物実験と臨床介入研究を要約した(非特許文献1)。
【0005】
PUFAの最も重要な生物学的役割の1つは、多くの機能を調節できる生理活性脂肪酸代謝産物の生成のための前駆体を供給することである。例えば、アラキドン酸 (AA;20:4、n-6)は、シトクロムP450(CYP)酵素によって代謝され、強力な生物活性を持ついくつかのクラスの酸素化代謝産物になる。主な代謝産物には、20-ヒドロキシエイコサテトラエン酸(20-HETE)および一連の位置異性体および立体異性体のエポキシエイコサトリエン酸(EET)が含まれる。CYP4AおよびCYP4Fアイソフォームは20-HETEを生成し、CYP2CおよびCYP2JアイソフォームはEETを生成する。
【0006】
EPA(20:5、n-3)およびDHA(22:6、n-3)は、AAを代謝するCYPアイソフォームの代替基質として機能する可能性があることが知られている(非特許文献2)。CYP2CおよびCYP2Jサブファミリーのメンバーは、AAをEETにエポキシ化し、EPAをエポキシエイコサテトラエン酸(EEQ)に、DHAをエポキシドコサペンタエン酸(EDP)に代謝する。EPAおよびDHAとAAを区別するω-3二重結合は、ほとんどのエポキシゲナーゼによる優先的な攻撃部位であり、主要な代謝産物として17,18-EEQおよび19,20-EDPが形成される。CYP4AおよびCYP4Fアイソフォームは、AAを20-HETEに水酸化し、EPAを20-ヒドロキシエイコサペンタエン酸(20-HEPE)に代謝し、DHAを22-ヒドロキシドコサヘキサエン酸(22-HDHA)に代謝する。CYP1A1、CYP2E1、およびAAを主に19-HETEに変換する他のアイソフォームは、EPAおよびDHAに対して顕著なω-3エポキシゲナーゼ活性を示す。ヒトCYP1A1変異体は、異なるエイコサペンタエン酸代謝パターンをもたらす。シトクロムP450依存性エイコサペンタエン酸代謝産物は、新規のBKチャネルアクチベーターである。CYP依存性のn-3PUFA代謝の注目すべき特徴は、n-3二重結合の優先的なエポキシ化であり、これによりEPAおよびDHAがAAと区別される。得られる代謝産物(EPA由来の17,18-EEQおよびDHA由来の19,20-EDP)は、一連のAA生成物内に相同体を持たないという点で独特である。CYPアイソフォームの基質特異性と一致して、食事によるEPA/DHA補給は、ラットのすべての主要臓器および組織において、そしておそらくヒトにおいても、AAからEPA由来およびDHA由来のエポキシ代謝産物およびω-ヒドロキシ代謝産物への重大なシフトを引き起こす。
【0007】
EETおよび20-HETEはさまざまな心血管機能の調節において重要な役割を果たす(非特許文献3)。AngII誘発性高血圧は、CYP依存性AA代謝の下方制御と関連していることが示されており(非特許文献4)、AngII誘発性高血圧と末端器官損傷のダブルトランスジェニックラット(dTGR)モデルにおいて示されている(非特許文献5)。近年、エイコサペンタエン酸 (EPA)の補給によりdTGRの死亡率が大幅に低下することが示された(非特許文献6)。さらに、dTGRはAngII誘発電気リモデリングに基づいて心室不整脈を発症することが示されている(非特許文献7)。dTGRラットをPPAR-αアクチベーターで処理すると、CYP2C23依存性のEET産生が強力に誘導され、高血圧や末端器官損傷から保護された(非特許文献8)。
【0008】
純粋なEPA-エチルエステルとDHA-エチルエステルの混合物(Solvay Arzneimittel社のOmacor、ハノーバー、ドイツ)を含むdTGRを長期間(生後4週目から7週目まで)与えると、このアンジオテンシンII誘発性高血圧モデルにおける心臓の電気リモデリングが改善された。特に、EPAおよびDHAは死亡率を低下させ、不整脈の誘発を抑制し、コネキシン43ギャップ結合部のリモデリングを防止した(非特許文献9)。一般的に、CYP依存性エイコサノイドはセカンドメッセンジャーとして考慮される必要がある:EETおよび20-HETEは、細胞外シグナルによって膜リン脂質からAAが放出(ホスホリパーゼA2による)された後CYP酵素によって産生され、イオン輸送、細胞増殖および炎症を調節するシグナル伝達経路と関連してその機能を発揮する。食事に応じて、n-3 PUFAはリン脂質のsn2位のAAを部分的に置き換え、その後のシグナル伝達経路に代替分子として関与する可能性がある。
【0009】
心臓におけるCYP依存性エイコサノイドの生物学的活性に関するいくつかの研究は、L型Ca2+および筋鞘およびミトコンドリアATP感受性カリウム(KATP)チャネルの調節におけるEETおよび20-HETEの重要な役割を示している。心筋細胞では、EET生成の阻害によりL型Ca2+電流と細胞短絡が減少し、これらの効果は11,12-EETを添加することで逆転できる(非特許文献10)。EETは心臓のKATPチャネルを活性化することも示されている。この効果は高度に立体選択的であり、11,12-EETのR,S-エナンチオマーではなく、S,Rのみに効果があった(非特許文献11)。EETを生成するヒトCYP2J2の過剰発現は、KATPチャネルの活性化を介してトランスジェニックマウス心臓の虚血後の機能回復を改善した(非特許文献12)。20-HETEは内因性KATPチャネルブロッカーとして作用することにより、逆の役割を果たすようである(非特許文献13、非特許文献14)。
【0010】
17,18-EEQや19,20-EDPなどのn-3 PUFA由来のCYP代謝産物は、哺乳類の体内でn-3 PUFAの有益な効果を仲介する上で重要な役割を果たすが、生物学的利用能が限られているだけでなく、化学的および代謝的不安定性もあるとの理由により治療薬としては使用されていない。n-3 PUFAのこれらのエポキシ代謝産物は、自動酸化、可溶性エポキシド加水分解酵素による急速な不活化、およびβ酸化による分解を受けやすい。n-3 PUFA代謝産物の改良された類似体は、n-3 PUFAのエポキシ代謝産物と比較して著しく改良された薬理学的特性を有することが特許文献1に開示されている。
【0011】
成長分化因子15(GDF-15)、別名マクロファージ阻害性サイトカイン1(MIC-1)、胎盤形質転換成長因子(PTGF-b)、前立腺由来因子(PDF)、胎盤骨形成タンパク質(PLAB)、前立腺由来因子、または非ステロイド性抗炎症薬活性化遺伝子-1(NAG-1)は炎症や酸化ストレスのマーカーであり、心血管疾患の予後不良と関連する。GDF-15は、冠状動脈疾患(CAD)患者における主要有害心血管イベント(MACE)および全死因死亡と関連していることが示された。したがって、長期MACEおよび全死因死亡を示す予後マーカーとして有用である(非特許文献15、非特許文献16を参照)。さらに、研究では、GDF-15が高血圧、糖尿病、心不全、腎機能、N末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)濃度などの他の疾患と関連していることが確認された(非特許文献17を参照)。さらにGDF-15は、全死因死亡率の強力な予測因子として特定され、年齢や性別に関係なく、多くの機能パラメーターや重要なバイオマーカーと強く関連していることが判明した(非特許文献18)。心房細動(AF)患者の心血管死と関連するバイオマーカーを調査したさらなる研究では、GDF-15が酸化ストレスと炎症の根底にあるメカニズムと強く関連していることが特定された(非特許文献19を参照)。要約すると、GDF-15は、心疾患、心血管疾患、高血圧、糖尿病、および腎機能と密接に関連する因子であるため、これらの疾患の予後マーカーとして非常に重要であるが、これらの疾患の根底にあるメカニズムに関与する因子として関与している可能性もある。最近の出版物では、GDF-15が心血管疾患(非特許文献20、特許文献2)、癌および代謝性疾患(非特許文献21)の治療標的として関連する可能性があることも示唆されている。したがって、循環GDF-15レベルを低下させることができるあらゆる治療アプローチは、循環GDF-15に関連する疾患の治療に関連する可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】WO2017/013264 A1
【特許文献2】WO 2015/054399 A1
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Simopoulos AP. Omega-3fatty acids ininflammation and autoimmune diseases. J Am. Coll. NutL 2L495-505 (2002)
【非特許文献2】Arnold C. et al., J Biol Chem. 2010 Oct22;285(43):32720-33.; Fischer R. etal., J Lipid Res. 2014 Mar16;55(6):1150-1164.
【非特許文献3】Roman RJ., Physiol Rev.2002;82:131-85
【非特許文献4】Kaergel et al., Hypertension. 2002;40:273-9
【非特許文献5】Luft et al., Hypertension.1999;33:212-8
【非特許文献6】Theuer et al.,Kidney Int. 2005;67:248-58
【非特許文献7】Fischer et sl. Am J Physiol Heart CircPhysiol. 2007; 293:H1242-1253
【非特許文献8】Muller et al., Am J Pathol. 2004;164:521-32
【非特許文献9】Fischer et al., Hypertension. 2008 Feb;51(2):540-6
【非特許文献10】Xiao et al., J Physiol.1998;508 (Pt3):777-92
【非特許文献11】Lu et al., Mol Pharmacol.2002;62:1076-83
【非特許文献12】Seubert et al., Circ Res. 2004;95:506-14
【非特許文献13】Gross et al., J Mol Cell Cardiol.2004;37:1245-9;
【非特許文献14】Nithipatikom et al.,Circ Res. 2004;95:e65-71
【非特許文献15】Li et al., Cardiovasc Diabetol, 2020, 19:120
【非特許文献16】Daniels et al., Circulation, 2011,123:2101-2110
【非特許文献17】Eggers et al., Clinical Chemistry 59:7,2013
【非特許文献18】Rothenbacher et al., Age and ageing2019,48:541-546
【非特許文献19】Pol et al., Cardiovascular Research, 2021
【非特許文献20】Rochette et al., Int.J.Mol. Sci. 2021, 22,8889
【非特許文献21】Wischhusen et al., 2020, Front. Immunol.11:951
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、GDF-15および他の重要なバイオマーカーが、n-3 PUFA代謝産物の改良された類似体によって低下するという最初の実験データを提供する。さらに、GDF-15レベルの低下により、これらの患者の治療改善がもたらされ、本発明のn-3 PUFA代謝産物の改良類似体がGDF-15レベルの上昇に関連する疾患を治療できることが示された。
【課題を解決するための手段】
【0015】
第1の態様において、上記課題は一般式(I)の化合物またはその薬学的に許容される塩の提供によって解決される:
【化1】
式中、
Pは一般式(II)で表される基である:
【化2】
ここで、
nは0、または3から8の整数、すなわち3、4、5、6、7、または8であり、好ましくは3である;および
kは0、1、または2であり、好ましくは、ただし、nが0の場合kは1であり、最も好ましくはkは1である;
Xは、CHOH、CHOAc、CH(O)、または以下からなる群から選択される基を表す:
【化3】
好ましくは、Xは
【化4】
である;

ここで、
RおよびR’は、それぞれ独立に水素原子を表す;または、1つ以上のフッ素原子または塩素原子またはヒドロキシル基で置換されてもよいC-Cアルキル基を表す;

は、水酸基、C-Cアルコキシ、-NHCN、-NH(C-Cアルキル)、-NH(C-Cシクロアルキル)、-NH(アリール)、または-O(C-Cアルキルジイル)O(C=O)R11を表す;R11は、1つ以上のフッ素原子または塩素原子で任意に置換されるC-Cアルキル基である;または1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基である;
は、-NHR;-NR2021;-OR22;-(OCH-CH-R23;ヒドロキシル基、C-Cアルコキシ、C-Cアルキル、およびオキソからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換された-C-C10-ヘテロシクリル;-(Xaa);糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介してエステル結合によってC(O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体を表す;
または以下の式からなる群から選択されるものである:
【化5】
ここで、
は、(SO30);(OR31);-C-Cアルカンジイル(SO32);-C-Cアルカンジイル(COH)、アリール基、ヘテロアリール基、シクロアルキル基またはヘテロシクロアルキル基を表すものであって、ここで、アリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;ここで、ヘテロアリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;ここで、シクロアルキル基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;および、ここで、ヘテロシクロアルキル基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-Cジアルキル)および-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;

30は、C-Cアルキル基、またはアリール基であり、ここで、C-Cアルキル基は、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるものであり;および、ここで、アリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、および-N(C-Cジアルキル)からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;

31は、1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cアルキル基である;または1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基である;
32は、1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cアルキル基である;または、1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基である;

20およびR21は、それぞれ独立に水素原子;1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で置換されていてよいC-Cアルキル基;1つ以上のフッ素原子、塩素原子、またはヒドロキシル基で置換されていてよいC-Cシクロアルキル基;または-C-Cアルキルジイル(COH)を表し、または一緒になって、1つ以上のC-Cアルキル基、C-Cアルコキシ基、フッ素原子または塩素原子またはヒドロキシル基で置換されていてよいC-C10-ヘテロシクロアルキルを形成する;

22は、水素原子、C-Cアルキル基;またはC-Cシクロアルキル基であって、ここで、C-Cアルキル基またはC-Cシクロアルキル基は、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル、またはC-Cアルコキシ、アラルキル基、ヘテロアルキル基、またはヘテロアルキルシクロアルキル基で任意に置換されるものである;
23は、-OH、-O(C-C)アルキル、または-N(C-C)ジアルキルである;
iは1から10までの整数である;

24、R25およびR26はそれぞれ独立に水素原子;-C(=O)C11-C21アルキル;または-C(=O)C11-C21アルケニルを表す;
27は、-OH;-O(CHNH、-OCH-[CH(NH)(COH)]、-O(CHN(CH;または
【化6】
を表す;
Xaaは、Gly、従来のD,L、DもしくはLアミノ酸、非従来のD,L、DもしくはLアミノ酸、または2~10merのペプチドを表し;およびXaaは、アミド結合によってC(=O)に結合される;
oは1から10までの整数である;

は以下の式からなる群から選択されるものである:
【化7】
hは0、1、または2である;
は、水素原子;フッ素原子または塩素原子;-CF;-C(=O)OR51;-NHC(=O)OR52;-C(=O)NR5354;または-S(O)OHを表す;

51は、水素原子;C-Cアルキル基;またはC-Cシクロアルキル基を表すものであって、C-Cアルキル基またはC-Cシクロアルキル基は、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル、またはC-Cアルコキシで任意に置換されるものである;

52、R53およびR54は、それぞれ独立して、1つ以上のフッ素原子または塩素原子で任意に置換されるC-Cアルキル基;1つ以上のフッ素原子または塩素原子で任意に置換されるC-Cシクロアルキル基;またはC-Cアルキル、C-Cハロアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキル、およびオキソ置換基からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであるアリール基を表す;
、Rはそれぞれ独立に水酸基;-O(C-C)アルキル基、-O(C-C)アルケニル基、-O(C-C)アルキルジイルO(C=O)(C-C)アルキル基、または-O(C-C)アルキルジイルO(C=O)(C-C)アルケニル基を表すものであって、C-Cアルキル基およびC-Cアルケニル基は、NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、または1、2または3個のフッ素原子または塩素原子で置換されてよい;または
はヒドロキシル基を表し、Rは以下の基を表す:
【化8】
は、C-Cアルキル、またはアリールを表すものであって、C-Cアルキルは、-NH、-NH(C-C)アルキル-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシ、C-Cアルコキシ、アリール、アリールオキシ、-C(=O)-アリール、-C(=O)C-Cアルコキシで任意に置換されるものであり;およびアリール基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキルおよびオキソ置換基からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;
gは1または2、好ましくは2であり、
は酸素原子;硫黄原子;またはNHを表す;
は酸素原子;硫黄原子;NH;またはN(CH)を表す;
は酸素原子;硫黄原子;窒素原子;炭素原子;またはC-OHを表し;および破線は炭素-炭素結合または炭素-炭素二重結合を表す;
Eは、一般式(III)または(IV)で表される基である:
【化9】
ここで、R12およびR13は、シス配置であることが好ましく、およびここで、式(III)における環Aは、芳香族炭素環または複素環を含む、少なくとも1つの二重結合を含む5員または6員の炭素環または複素環を表すものであって、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)および-N(C-C)ジアルキルからなる群から独立して選択される1~3個または1~4個の置換基で置換され得るものであり;ならびにLおよびTはそれぞれ独立に環原子を表し、LおよびTは互いに隣接している;
12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシル基、-NH、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、-C(=O)-アリール、-C(=O)C-Cアルキル、または-SO(C-Cアルキル);または-SOアリールを表すものであって、前記C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、またはアリールは、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;または
12およびR13は、一緒になって5員環または6員環を形成し、その環は-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものである;

Iは -(CH-Yであって、
ここで、
mは3~6の整数、すなわち3、4、5、または6であり、ただし、Eが一般式(III)による基である場合、mは3~5の整数であり、
Yは-U-V-W-(CH-(CHで表すものであって、pは0~6の整数であり; qは0または1であり;Uは存在しないか、またはCH、CHおよびNR40からなる群から選択されるが、ただし、VおよびWと一緒にエポキシ基を形成する場合、UはCHのみであり;Vは、-C(O)-、-C(O)-C(O)-、-O-、および-S-からなる群から選択され;Wは、CH、CHおよびNR40からなる群から選択されるが、ただし、UおよびVと一緒にエポキシ基を形成する場合、WはCHのみである;または
Yは、以下からなる群から選択される基を表す:
【化10】
ここで、
40、R41、R43、R44、R46、R48およびR49は、それぞれ独立に、水素原子、-C-Cアルキル、-C-Cシクロアルキル、-C-Cアルコキシ、-C(=O)アリール、または-C(=O)C-Cアルキルを表すものであって、前記いずれかのC-Cアルキル、C-Cシクロアルキル、C-Cアルコキシ、またはアリールは、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;または
40とR41、またはR43とR44は一緒になって5員環または6員環を形成し、この環は-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で置換されてよい;
42、R45、R47およびR50は、それぞれ独立に、-C-Cアルキルを表すものであって、C-Cアルキルは、-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で置換されてよい;または
40とR41;R43とR44;R49とR50は一緒になって5員環または6員環を形成し、この環は-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、C-Cアルキルカルボニルオキシ-、C-Cアルコキシカルボニルオキシ-、C-Cアルキルカルボニルチオ-、C-Cアルキルアミノカルボニル-、ジ(C-C)アルキルアミノカルボニル-、フッ素原子または塩素原子、およびヒドロキシルからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で置換されてよい;
fは0から2までの整数であり;
ただし、
Xが一般式(II)の酸素原子に対してアルファ位またはベータ位にカルボニル炭素を有する-C(=O)O-モチーフを含まない場合、Yはオキサミド(oxamide)、カルバメートまたはカルバミドであり、好ましくはYは、上記で定義したオキサミドである。
【0016】
本化合物は、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患の治療、発症リスクの軽減、または予防に使用するためのものであり、好ましくは、ここで、GDF-15血漿濃度は少なくとも1000ng/Lであり、好ましくは、ここで、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患は、心血管疾患および代謝性疾患から選択される。
【0017】
好ましい1つの態様において、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患は、代謝性疾患、好ましくは糖尿病、より好ましくは2型糖尿病、最も好ましくは糖尿病前症(pre-Diabetes)であり、GDF-15血漿濃度は少なくとも500ng/Lである。
【0018】
好ましい1つの態様において、本発明の化合物は上述の式(I)の化合物であって、
ただし、Xが一般式(II)の酸素原子に対してアルファ位またはベータ位にカルボニル炭素を有する-C(=O)O-モチーフを含まない場合、Yはオキサミド、カルバメートまたはカルバミドであり、好ましくはYは、上記で定義したオキサミドである。
【0019】
好ましい1つの態様において、式(I)の化合物は、上述の化合物であるが、
ただし、
nは3、5、6、7、または8、好ましくは3である場合、kは1であり、かつ、Eは、一般式(III)または(IV)で表される基であって、
ここで、R12およびR13のそれぞれは、水素原子であり;
Pは次の基を表し:
【化11】
式中、
81は、以下からなる群から選択される基を表す:
【化12】
1’は、上記のRと定義され;
2’は、-NHR3’;-OR22’; -(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体を表す;
または、Rは、以下からなる群から選択される:
【化13】
ここで、
3’は(SO30);(OR31); -C-Cアルカンジイル(SO32);または-C-Cアルカンジイル(COH)を表す;
22’は、水素またはC-Cシクロアルキル基であり、これは-NH、-NH(C-C)アルキル、-N(C-C)ジアルキル、-NH(C-C)アルキルジイル-C-Cアルコキシ、1、2または3個のフッ素原子または塩素原子、ヒドロキシまたはC-Cアルコキシで任意に置換される;
23およびiは上記で定義したとおりであり;
24、R25、R26、およびR27は上記で定義したとおりであり;
4’は上記のRと定義され;およびhは上記で定義したとおりであり;
6’およびR7’は上記のRおよびRと定義され;
9’は上記のRと定義され;R9’’は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキル、およびオキソ置換基からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであるアリールを表す。
【0020】
より好ましい1つの態様において、本発明の化合物は、
Xが以下のものであり、
【化14】
式中、Rは、-OR22; -(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体であり;
または、Rは、以下からなる群から選択されるものであり:
【化15】
23およびiは上記で定義したとおりであり、好ましくはiは3であり;および
ここで、R22およびR23~R27は請求項1で定義されたとおりであり、好ましくはR22は水素原子またはC-Cアルキル基、より好ましくは水素原子である。
【0021】
さらに好ましい1つの態様において、本発明の化合物は、式中Xが-C(=O)OHまたはカルボン酸の適切な塩であり、好ましくは遊離カルボン酸であるものである。
【0022】
別の好ましい1つの態様において、本発明の化合物は、Yは、上記で定義したオキサミドのうちの1つである。
【0023】
さらにより好ましくは、本発明の化合物は、Xが以下のものであり、
【化16】
式中、Rは、-OR22;-(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体であり;または、式中、Rは、以下からなる群から選択されるものであり:
【化17】
ここで、R22、R23~R27、およびiは上記で定義したとおりであり、好ましくはR22は水素原子またはC-Cアルキル基、より好ましくは水素原子であり、好ましくはiは2~4、より好ましくは3であり、Yは好ましくは上記で定義したオキサミドのうちの1つである。
【0024】
さらに好ましい1つの態様において、本発明の化合物は、式中XがC(=O)OH、好ましくは遊離カルボン酸であり、およびYは好ましくは上記で定義されたオキサミドのうちの1つである。
別のより好ましい態様において、本発明の化合物は以下の式(V)を有するものであり:
【化18】
式中、
55は、-OH、-OR22; -(OCH-CH-R23;糖類の1-O-、3-O-、または6-O-位を介するエステル結合によって-C(=O)に結合している、単糖類、もしくは二糖類、またはその誘導体を表す;
22 、R23およびiは上記で定義したとおりであり、好ましくはR22は水素原子またはC-Cアルキル基、より好ましくは水素原子であり、iは好ましくは2~4、より好ましくは3である;
Yは以下からなる群から選択される基を表す:
【化19】
式中、
【化20】
が好ましく、および
【化21】
が特に好ましい;および
式中、R40~R50は上記で定義されたとおりであり、好ましくはR40は水素原子またはC-Cアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
57およびR58は水素であり;または、C-Cアルキル、C-Cアルコキシ、C-Cアルキルチオ、フッ素原子または塩素原子、ヒドロキシル基、アミノ基、-NH(C-Cアルキル)、-N(C-C)ジアルキル、オキソ置換基からなる群から独立して選択される1~3個または1~4個の置換基で任意に置換される、5員環または6員環、好ましくは芳香環を一緒に形成する。
sは0、1または2であるが、R57とR58が一緒になって5員環または6員環を形成する場合にはsは0であり;
式(V)における二重結合は、R57およびR58が水素である場合、またはこの二重結合がR57およびR58によって一緒に形成される5員環または6員環の一部である場合、シス配置の炭素-炭素二重結合を表す。
【0025】
さらに最も好ましい1つの態様において、式(V)の化合物は以下のものであり、
式中、
55は、-OHまたは-(OCH-CH-R23を表し;iは2~4であり、好ましくはiは3であり、 R23は好ましくはOHであり;
Yはオキサミド、カルバミドまたはカルバメート、好ましくはC-Cアルキルで置換されたオキサミド、カルバミドまたはカルバメートであり;
57およびR58は両方ともHであるか、または一緒になって置換または非置換の5員または6員の芳香環を形成し、好ましくは置換または非置換のベンジル環を形成する;および
57とR58が一緒になって置換または非置換の5員または6員の芳香環を形成する場合、sは1であるか、またはsは0である。
【0026】
本発明の最も好ましい特定の化合物は、以下からなる群から選択される化合物またはその薬学的に許容される塩である。
【化22】
【0027】
上記のうち、下記式(VI)で表される化合物またはその薬学的に許容される塩が最も好ましい。
【化23】
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、 実施例2で説明した臨床研究のレイアウトを示す。
図2図2は、(A)実施例2の臨床研究の全患者、ならびにベースライン(V3)におけるGDF-15血漿濃度が(B)1000ng/L未満または(C)1000ng/L以上を有する患者のサブグループの年齢に対するベースライン(V3)におけるGDF-15血漿濃度を示す。
図3図3は、ベースライン濃度が1000ng/L以上の患者サブグループにおけるGDF-15血漿濃度(右パネル)は、化合物-02による治療によって有意に減少したことを示す。
図4図4は、ベースラインから治療終了時(3か月)までのGDF-15血漿濃度の変化を示す。化合物-02は、GDF-15血漿濃度をプラセボと比較して用量依存的に有意に30%減少させた。
図5図5は、すべての投与群において、臨床的に関連するバイオマーカー hs-CRP、PTX-3、IL-6、MMP-1、MMP-9、および NT-proBNP の有意な減少を示す。
図6図6は、GDF-15が≧1000ng/Lの患者群において、化合物-02が用量依存的にAF再発を減少させたことを示す。
図7図7は、高脂肪食(HFD)を与えられたLDLr-/-マウス(12週間)において、化合物-02がプラーク不安定性のマーカーとしてのPTX-3の循環レベルの増加を防止したことを示す。さらに、化合物-02での治療により、大動脈全体の病変サイズが55%大幅に減少した。
図8図8は、ベースラインから治療終了時(3ヶ月)までのIL-6血漿濃度の変化を示す。化合物-02は、プラセボと比較して、IL-6血漿濃度を用量依存的に有意に30%減少させた。
図9図9は、ベースラインから治療終了時(3ヶ月)までのPTX-3血漿濃度の変化を示す。化合物-02は、プラセボと比較して、PTX-3血漿濃度を用量依存的に55%有意に減少させた。
図10図10は、ベースラインから治療終了時(3ヶ月)までのhsCRP血漿濃度の変化を示す。化合物-02は、hsCRP血漿濃度を有意に減少させた。
【発明を実施するための形態】
【0029】
1つの実施形態において、本化合物は一般式(I)またはその薬学的に許容される塩である:
【化24】
式中、Pは一般式(II)で表される基である:
【化25】
式中、
nは0または3~8の整数であり;および
kは0または1であり、好ましくは、ただし、nが0の場合kは1であり、最も好ましくはkは1である;
Xは、CHOH、CHOAc、CH(O)、または以下からなる群から選択される基を表す:
【化26】
および、
好ましくは、Xは
【化27】
であり;

式中、Rは、-NHR;-NR2021;-OR22;-(OCH-CH-R23; ヒドロキシル基、C-Cアルコキシ、C-Cアルキル、およびオキソからなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換された-C-C10-ヘテロシクリル;
式中、Rは、フェニル基;窒素、酸素、及び硫黄から選択される1~4個の環ヘテロ原子を有する5員ヘテロアリール基、又は窒素、酸素、又は硫黄から選択される1~2個の環ヘテロ原子を有する5~6員ヘテロシクロアルキル基を表すものであって、ここで、フェニル基は、C-Cアルキル、C-Cアルコキシおよび-C(=O)OR51からなる群から独立して選択される1、2または3個の置換基で任意に置換されるものであり;

20およびR21は、それぞれ独立に、1つ以上のヒドロキシル基で置換されていてよいC-Cアルキル基;C-Cシクロアルキル基を表す;または一緒になって、C-C10-ヘテロシクロアルキルを形成する;
22は、水素原子、C-Cアルキル基であり;
23は、-OHであり;
iは1から10までの整数であり;
は、水素原子;フッ素原子または塩素原子;-CF;-C(=O)OR51;-NHC(=O)OR52;-C(=O)NR5354;または-S(O)OHを表す;
51は、水素原子;C-Cアルキル基を表す;
52、R53およびR54は、それぞれ独立して、C-Cアルキル基を表す;
は酸素原子;硫黄原子;またはNHを表す;
Eは、一般式(III)または(IV)で表される基である:
【化28】
式中、R12およびR13は、シス配置であることが好ましく、および式中、
式(III)における環Aは、芳香族炭素環を含む、少なくとも1つの二重結合を含む5員または6員の炭素環を表し;ならびにLおよびTはそれぞれ独立に環原子を表すものであって、LおよびTは互いに隣接している;
12およびR13は、それぞれ独立に、水素原子、フッ素原子、ヒドロキシル基を表す;
Iは -(CH-Yであって、式中、
mは3~6の整数であり、ただし、Eが一般式(III)による基である場合、mは3~5の整数であり;
Yは-U-V-W-(CH-(CHで表すものであって、pは0~6の整数であり; qは0または1であり;Uは存在しないか、またはCH、CHおよびNR40からなる群から選択されるが、ただし、VおよびWと一緒にエポキシ基を形成する場合、UはCHのみであり;

Vは、-C(O)-、-C(O)-C(O)-、-O-、および-S-からなる群から選択され;Wは、CH、CHおよびNR40からなる群から選択されるが、ただし、UおよびVと一緒にエポキシ基を形成する場合、WはCHのみである;または
Yは、以下からなる群から選択される基を表す:
【化29】
式中、
40、R41、R43、R44はそれぞれ独立に水素原子、-C-Cアルキルを表す;
42、R45は、それぞれ独立に、-C-Cアルキルを表すが、ただし、
Xが一般式(II)の酸素原子に対してアルファ位またはベータ位にあるカルボニル炭素を有する-C(=O)O-モチーフを含まない場合、Yはオキサミド、カルバメートまたはカルバミドであり、好ましくは、Yは上記で定義されたオキサミドである。
【0030】
1つの好ましい実施態様において、式(I)の化合物は上記のとおりの化合物であるが、ただし、nが3または5の場合、kは1であり、およびEは一般式(III)または一般式(IV)で示される基であって、式中、R12およびR13はそれぞれ水素原子であり;
Pは次の基を表す:
【化30】
式中、
81は以下からなる群から選択される基を表す:
【化31】
2’は、-NHR3’;-OR22’; -(OCH-CH-R23を表す;
式中、
3’は、Cアリールを表す;
22’は、水素である;
23およびiは、上記で定義したとおりである;
【0031】
さらに好ましくは本発明の化合物は、
式中Xが
【化32】
であり、
式中、Rは、-OR22; -(OCH-CH-R23である;
式中、R23およびiは、上記で定義されたものであり;および
式中、R22およびR33は請求項1で定義されるものである。
【0032】
さらに好ましくは本発明の化合物は、
式中、Xは、-C(=O)OH、またはカルボン酸の適切な塩、好ましくは遊離カルボン酸である。
【0033】
さらに好ましくは本発明の化合物は、
式中Xが
【化33】
であり、
式中、Rは、-OR22; -(OCH-CH-R23である;および
22、R23およびiは請求項1で定義したとおりであり、Yは請求項1で定義したオキサミドのうちの1つである。
【0034】
さらに好ましくは本発明の化合物は、式中Xは、-C(=O)OH、好ましくは遊離カルボン酸であり、および、Yは上記で定義したオキサミドのうちの1つである。
【0035】
別のより好ましい態様において、本発明の化合物は以下の式(V)を有するものである:
【化34】
式中、
55は、-OH、-OR22; -(OCH-CH-R23を表し;
22 、R23およびiは請求項1で定義したとおりであり、好ましくは、R22は水素原子またはC-Cアルキル基、より好ましくは水素原子であり、iは好ましくは2~4、より好ましくは3である;
Yは以下からなる群から選択される基を表す:
【化35】
式中、R40~R50は請求項1で定義されたとおりであり、好ましくはR40は水素原子またはC-Cアルキル基であり、より好ましくは水素原子である。
57およびR58は水素であり;
sは0、1または2であり;
式(V)における二重結合は、R57およびR58が水素である場合、シス配置の炭素-炭素二重結合を表す。
【0036】
さらに最も好ましい1つの態様において、式(V)の化合物は以下のものであり、
式中、
55は、-OHまたは-(OCH-CH-R23を表し;iは2~4であり、好ましくは、iは3であり、 R23は好ましくはOHであり;
Yはオキサミド、カルバミドまたはカルバメート、好ましくはC-Cアルキルで置換されたオキサミド、カルバミドまたはカルバメートであり;
57およびR58は両方ともHである。
【0037】
本発明の化合物は、以下の実験セクションで実証されるように、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患、好ましくは心血管疾患、または代謝性疾患を治療し、発症のリスクを軽減し、または予防するのに有効であるという利点を有する。これらの疾患における上昇したGDF-15血漿濃度は、好ましくは少なくとも500ng/L、750ng/L、900ng/L、1000ng/L、1200ng/Lまたは1500ng/L、好ましくは少なくとも900ng/L、1000ng/L、1200ng/L、より好ましくは少なくとも1000ng/Lである。本発明の化合物は、同時に、医薬製剤化およびそれを必要とする対象への投与に対して代謝的に強い。
【0038】
本明細書に記載される化合物は、一般に、標準命名法を使用して記載される。不斉中心を有する化合物については、特に断りのない限り、すべての光学異性体およびその混合物が包含されるものと理解される。2つ以上の非対称要素を含む化合物は、ジアステレオマーの混合物として存在することもある。さらに、炭素-炭素二重結合を有する化合物は、Z-形およびE-形で存在する可能性があり、特に指定しない限り、化合物のすべての異性体形が本発明に含まれる。化合物が様々な互変異性体形態で存在する場合、列挙される化合物は、いずれか1つの特定の互変異性体に限定されず、むしろすべての互変異性体形態を包含することが意図される。列挙された化合物はさらに、1つ以上の原子が同位体、すなわち同じ原子番号を有するが異なる質量数を有する原子で置換された化合物を包含することを意図する。一般的な例として、限定するものではないが、水素の同位体には三重水素および重水素が含まれ、炭素の同位体には11C、13C、および14Cが含まれる。
【0039】
1つ以上の立体中心を有する、本明細書に提供される式による化合物は、少なくとも50%のエナンチオマー過剰率を有する。例えば、そのような化合物は、少なくとも60%、70%、80%、85%、90%、95%、または98%のエナンチオマー過剰率を有し得る。化合物のいくつかの実施形態は、少なくとも99%の鏡像体過剰率を有する。単一の鏡像異性体(光学活性体)が、不斉合成、光学的に純粋な前駆体からの合成、例えば、改変されたCYP102(CYPBM-3)を使用した生合成、あるいはラセミ体の分離、例えば、酵素的分離、または分離剤の存在下での結晶化のような従来の方法による分離によって、または例えばキラルHPLCカラムを使用するクロマトグラフィーの使用によって、得られることは明らかである。
【0040】
特定の化合物は、本明細書では、例えば、P、E、I、R~R50、X~X81、およびYなどの変数を含む一般式を使用して記載される。特に指定のない限り、このような式内の各変数は他の変数とは独立して定義され、式内で複数回出現する変数は出現するたびに独立して定義される。したがって、例えば、基が0~2個のRで置換されることが示されている場合、その基は非置換であってもよく、または2つまでのR基で置換されていてもよく、各出現時のRはRの定義とは独立して選択される。また、置換基および/または変数の組み合わせは、そのような組み合わせが安定な化合物、すなわち、単離、特性評価、生物学的活性の試験が可能な化合物をもたらす場合にのみ許容される。
【0041】
本明細書に開示される化合物の「薬学的に許容される塩」は、過度の毒性または発がん性、および好ましくは刺激、アレルギー反応、または他の問題や合併症を伴わずにヒトまたは動物の組織と接触して使用するのに適していると当技術分野で一般に考えられている酸または塩基の塩である。このような塩には、アミンなどの塩基性残基の無機酸塩および有機酸塩、ならびにカルボン酸などの酸性残基のアルカリ塩または有機塩が含まれる。
【0042】
適切な薬学的塩としては、例えば、塩酸、リン酸、臭化水素酸、リンゴ酸、グリコール酸、フマル酸、硫酸、スルファミン酸、スルファニル酸、ギ酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、エタンジスルホン酸、2-ヒドロキシエチルスルホン酸、硝酸、安息香酸、2-アセトキシ安息香酸、クエン酸、酒石酸、乳酸、ステアリン酸、サリチル酸、グルタミン酸、アスコルビン酸、パモ酸、コハク酸、フマル酸、マレイン酸、プロピオン酸、ヒドロキシマレイン酸、ヨウ化水素酸、フェニル酢酸、アルカン酸、例えば酢酸、HOOC-(CH-COOH(ここで、nは0~6の任意の整数、すなわち、0、1、2、3、4、5または6)などの酸の塩が挙げられるが、これらに限定されない。同様に、薬学的に許容されるカチオンには、ナトリウム、カリウム、カルシウム、アルミニウム、リチウムおよびアンモニウムが含まれるが、これらに限定されない。当業者であれば、本明細書に提供される化合物のさらに薬学的に許容される塩を認識するであろう。一般に、薬学的に許容される酸または塩基の塩は、任意の従来の化学的方法によって、塩基性または酸性部分を含む親化合物から合成することができる。簡単に言うと、このような塩は、水中もしくは有機溶媒中、あるいは両者の混合物中で、これらの化合物の遊離酸または塩基形態を化学量論量の適切な塩基または酸と反応させることによって調製できる。一般に、エーテル、酢酸エチル、エタノール、イソプロパノールまたはアセトニトリルなどの非水性媒体の使用が好ましい。
【0043】
式(I)の各化合物は、水和物、溶媒和物、または非共有結合錯体として存在してもよいが、必ずしも存在する必要はないことは明らかであろう。また、様々な結晶形および多形は、本明細書で提供される式(I)の化合物のプロドラッグと同様に、本発明の範囲内である。
【0044】
「プロドラッグ」は、本明細書に提供される化合物の構造要件を完全には満たさない可能性があるが、対象または患者への投与後にインビボで修飾されて、本明細書に提供される式(I)の化合物を生成する化合物である。例えば、プロドラッグは、本明細書で提供される化合物のアシル化誘導体であってもよい。プロドラッグには、ヒドロキシ、カルボキシ、アミンまたはスルフヒドリル基が、哺乳動物対象に投与されると開裂してそれぞれ遊離のヒドロキシ、カルボキシ、アミノ、またはスルフヒドリル基を形成する任意の基に結合している化合物が含まれる。プロドラッグの例には、本明細書に提供される化合物内のアルコールおよびアミン官能基の酢酸塩、ギ酸塩、リン酸塩および安息香酸塩誘導体が含まれるが、これらに限定されない。本明細書で提供される化合物のプロドラッグは、修飾がインビボで切断されて親化合物が生成されるような方法で、化合物中に存在する官能基を修飾することによって調製され得る。
【0045】
本明細書で使用される「置換基」とは、対象の分子内の原子に共有結合している分子部分を指す。例えば、「環置換基」は、環メンバーである原子、好ましくは炭素原子または窒素原子に共有結合している、ハロゲン、アルキル基、ハロアルキル基または本明細書に記載の他の置換基などの部分であり得る。本明細書で使用される用語「置換され」は、指定された原子の通常の価数を超えないことを条件として、指定された原子上の任意の1つ以上の水素が、指定された置換基から選択されたもので置換され、その置換により安定な化合物、すなわち、単離され、特徴づけされ、生物学的活性について試験され得る化合物が得られることを意味する。置換基がオキソ、つまり=Oの場合、原子上の2つの水素が置き換えられる。芳香族炭素原子の置換基であるオキソ基は、-CH-を-C(=O)-に変換し、芳香族性を失う。例えば、オキソで置換されたピリジル基はピリドンである。
【0046】
「任意に置換され」との表現は、1、2、3またはそれ以上の水素原子がそれぞれの置換基によって互いに独立して置換されていてもよい基を指す。
【0047】
本明細書で使用する「アミノ酸」という用語は、1つ以上のアミノ置換基を含む任意の有機酸、例えばα-、β-またはγ-アミノ、脂肪族カルボン酸の誘導体を指す。本明細書で使用されるポリペプチド表記に関して、例えば、Xaa、すなわち、XaaXaaXaaXaaXaaについて、Xaa~Xaaは、定義されたアミノ酸からそれぞれ独立して選択され、標準的な使用法および慣例に従って、左側の方向がアミノ末端の方向であり、右側の方向がカルボキシ末端の方向である。
【0048】
「従来のアミノ酸」という用語は、20の天然に存在するアミノ酸を指し、すべての立体異性体アイソフォーム、すなわち、そのD,L-、D-およびL-アミノ酸を包含する。これらの従来のアミノ酸は、本明細書においては、従来の3文字または1文字の略語によっても呼ばれることがあり、それらの略語は従来の用法に従う(例えば、Immunology-;A Synthesis, 2nd Edition, E.S. Golub and D. R. Gren,Eds., Sinauer Associates, Sunderland Mass. (1991)を参照)。
【0049】
「非従来型アミノ酸」という用語は、非天然アミノ酸または化学的アミノ酸類似体、例えば、α,α-二置換アミノ酸、N-アルキルアミノ酸、ホモアミノ酸、デヒドロアミノ酸、芳香族アミノ酸(フェニルアラニン、チロシンおよびトリプトファンを除く)、およびオルト-、メタ-またはパラ-アミノ安息香酸を指す。非従来型アミノ酸には、1、3またはそれ以上の置換パターンで分離されたアミンおよびカルボキシル官能基を有する化合物、例えば、β-アラニン、γ-アミノ酪酸、フライディンガーラクタム、二環式ジペプチド(BTD)、アミノメチル安息香酸および当技術分野でよく知られる他のものも含まれる。スタチン様アイソスター、ヒドロキシエチレンアイソスター、還元アミド結合アイソスター、チオアミドアイソスター、尿素アイソスター、カルバメートアイソスター、チオエーテルアイソスター、ビニルアイソスターおよび当技術分野で公知の他のアミド結合アイソスターも使用することができる。類似体または非従来型アミノ酸を使用すると、生理学的条件下での分解に対する耐性がより高いため、追加されたペプチドの安定性と生物学的半減期が改善される可能性がある。当業者であれば、同様のタイプの置換を行うことができることを認識するであろう。ペプチドの適切な構成要素として使用できる非従来型アミノ酸の非限定的なリストとその標準略語(括弧内)は次のとおりである:αアミノ酪酸(Abu)、L-N-メチルアラニン(Nmala)、α-アミノ-α-メチル酪酸(Mgabu)、L-N-メチルアルギニン(Nmarg)、アミノシクロプロパン(Cpro)、L-N-メチルアスパラギン(Nmasn)、カルボン酸L-N-メチルアスパラギン酸( Nmasp)、アニイノイソ酪酸 (Aib)、 L-N-メチルシステイン(Nmcys)、アミノノルボルニル (Norb)、L-N-メチルグルタミン (Nmgln)、カルボン酸 L-N-メチルグルタミン酸 (Nmglu)、シクロヘキシルアラニン (Chexa)、L-N-メチルヒスチジン (Nmhis)、シクロペンチルアラニン (Cpen)、L-N-メチルイソロイシン (Nmile)、L-N-メチルロイシン(Nmleu)、L-N-メチルリシン (Nmlys)、L-N-メチルメチオニン (Nmmet)、L-N-メチルノルロイシン (Nmnle)、L-N-メチルノルバリン (Nmnva)、L-N-メチルオルニチン (Nmorn)、L-N-メチルフェニルアラニン (Nmphe)、L-N-メチルプロリン (Nmpro)、L-N-メチルセリン (Nmser)、L-N-メチルスレオニン (Nmthr)、L-N-メチルトリプトファン (Nmtrp)、D-オルニチン(Dorn)、L-N-メチルチロシン (Nmtyr)、L-N-メチルバリン (Nmval)、L-N-メチルエチルグリシン (Nmetg)、L-N-メチル-t-ブチルグリシン (Nmtbug)、L-ノルロイシン (NIe)、L-ノルバリン ( Nva)、α-メチル-アミノイソ酪酸 (Maib)、α-メチル-γ-アミノ酪酸 (Mgabu)、D-α-メチルアラニン (Dmala)、α-メチルシクロヘキシルアラニン (Mchexa)、D-α-メチルアルギニン (Dmarg)、α-メチルシクロペンチルアラニン (Mcpen)、D-α-メチルアスパラギン(Dmasn)、α-メチル-α-ナフチルアラニン (Manap) 、D-α-メチルアスパラギン酸(Dmasp)、α-メチルペニシラミン(Mpen)、D-α-メチルシステイン(Dmcys)、N-(4-アミノブチル)グリシン(NgIu)、D-α-メチルグルタミン(Dmgln)、N-(2-アミノエチル)グリシン(Naeg)、D -α-メチルヒスチジン (Dmhis)、N-(3-アミノプロピル)グリシン (Norn)、D-α-メチルイソロイシン (Dmile)、N-アミノ-α-メチル酪酸(Nmaabu)、D-α-メチルロイシン(Dmleu)、α-ナフチルアラニン(Anap)、D-α-メチルリシン(Dmlys)、N-ベンジルグリシン(Nphe)、D-α-メチルメチオニン(Dmmet) )、N-(2-カルバミルエチル)グリシン (NgIn)、D-α-メチルオルニチン (Dmorn)、N-(カルバミルメチル)グリシン (Nasn)、D-α-メチルフェニルアラニン (Dmphe)、N-(2-カルボキシエチル)グリシン(NgIu)、D-α-メチルプロリン (Dmpro) 、N-(カルボキシメチル)グリシン (Nasp)、D-α-メチルセリン (Dmser)、N-シクロブチルグリシン (Ncbut)、D-α-メチルスレオニン (Dmthr)、N-シクロヘプチルグリシン (Nchep)、D-α-メチルトリプトファン (Dmtrp)、N-シクロヘキシルグリシン (Nchex)、D-α-メチルチロシン (Dmty)、N-シクロデシルグリシン(Ncdec)、 D-α-メチルバリン(Dmval)、N-シクロドデシルグリシン(Ncdod)、D-N-メチルアラニン(Dnmala)、N-シクロオクチルグリシン (Ncoct)、D-N-メチルアルギニン (Dnmarg)、N-シクロプロピルグリシン (Ncpro)、D-N-メチルアスパラギン (Dnmasn)、N-シクロウンデシルグリシン (Ncund)、D-N-メチルアスパラギン酸 (Dnmasp)、N-(2,2-ジフェニルエチル)グリシン(Nbhm)、D-N-メチルシステイン (Dnmcys)、N-(3,3-ジフェニルプロピル)グリシン (Nbhe)、D-N-メチルグルタミン(Dnmgln)、N-(3-グアニジノプロピル)グリシン (Narg)、D-N-メチルグルタメート (Dnmglu)、N-(1-ヒドロキシエチル)グリシン (Ntbx) 、D-N-メチルヒスチジン (Dnmhis)、N-(ヒドロキシエチル) グリシン (Nser)、D-N-メチルイソロイシン (Dnmile)、N-(イミダゾリルエチル) グリシン (Nhis)、D-N-メチルロイシン (Dnmleu)、N-(3-インドリルエチル) グリシン (Nhtrp)、D-N-メチルリシン (Dnnilys)、N- メチル-γ-アミノ酪酸(Nmgabu)、N-メチルシクロヘキシルアラニン(Nmchexa)、D-N-メチルメチオニン (Dnmmet)、D-N-メチルオルニチン (Dnmorn)、N-メチルシクロペンチルアラニン (Nmcpen)、N-メチルグリシン(NaIa)、D-N-メチルフェニルアラニン (Dnmphe)、N-メチルアミノイソ酪酸 (Nmaib)、D-N-メチルプロリン (Dnmpro)、N-(1-メチルプロピル)グリシン(Nile)、D-N-メチルセリン (Dnmser)、N-(2-メチルプロピル)グリシン(Nleu)、D-N-メチルスレオニン (Dnmthr)、D-N-メチルトリプトファン (Dnmtrp) 、N-(1-メチルエチル)グリシン(Nval)、D-N-メチルチロシン (Dnmtyr)、N-メチルα-ナフチルアラニン(Nmanap)、D-N-メチルバリン (Dnmval)、N-メチルペニシラミン (Nmpen)、γ-アミノ酪酸 (Gabu)、 N-(p-ヒドロキシフェニル)グリシン (Nhtyr)、L-/-ブチルグリシン (Tbug)、N-(チオメチル)グリシン (Ncys)、L-エチルグリシン(Etg)、ペニシラミン (Pen)、L-ホモフェニルアラニン (Hphe)、L-α-メチルアラニン (Mala)、L-α-メチルアルギニン (Marg)、L-α-メチルアスパラギン (Masn)、L-α-メチルアスパラギン酸 (Masp)、L-α-メチル-t-ブチルグリシン (Mtbug)、L-α-メチルシステイン (Mcys)、L-メチルエチルグリシン (Metg)、L-α-メチルグルタミン (MgIn)、L-α-メチルグルタミン酸 (MgIu)、L-α -メチルヒスチジン (Mhis)、L-α-メチルホモフェニルアラニン (Mhphe)、L-α-メチルイソロイシン (Mile)、N-(2-メチルチオエチル)グリシン (Nmet)、L-α-メチルロイシン (Mleu)、L-α-メチルリジン (Mlys)、L- α-メチルメチオニン(Mmet)、L-α-メチルノルロイシン(MnIe)、L-α-メチルノルバリン(Mnva)、L-α-メチルオルニチン(Morn)、L-α-メチルフェニルアラニン (Mphe)、L-α-メチルプロリン (Mpro)、L-α-メチルセリン (Mser)、L-α-メチルスレオニン (Mthr)、L-α-メチルトリプトファン (Mtrp)、L-α-メチルチロシン (Mtyr)、L-α-メチルバリン (Mval)、L-N-メチルホモフェニルアラニン (Nmhphe)、N-(N-(2,2-ジフェニルエチル)カルバミルメチル)グリシン(Nnbhm)、N-(N-(3,3 -ジフェニルプロピル)カルバミルメチル)グリシン (Nnbhe)、1- カルボキシ-1-(2,2-ジフェニルエチルアミノ)シクロプロパン (Nmbc)、L-O-メチルセリン(Omser)、L-O-メチルホモセリン (Omhser)。
【0050】
アルキルという表現は、1~20個の炭素原子、好ましくは1~10個の炭素原子を含む飽和の直鎖または分枝鎖炭化水素基、例えば、nオクチル基、特に1~6、すなわち1、2、3、4、5、または6個の炭素原子、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、nブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、nペンチル、イソペンチル、nヘキシル、または2,2ジメチルブチルを指す。
【0051】
アルケニルという表現は、2~21個の炭素原子、好ましくは2~6個の炭素原子、すなわち2、3、4、5または6個の炭素原子を含む、少なくとも部分的に不飽和の、直鎖または分枝鎖の炭化水素基、例えば、エテニル(ビニル)基、プロペニル(アリル)基、イソプロペニル基、ブテニル基、イソプレニル基もしくはヘキサ-2エニル基、または11~21個の炭素原子、すなわち11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、または21個の炭素原子、例えば、一価不飽和脂肪酸に見られるような、1つの二重結合によって中断されたメチレン鎖を含む炭化水素基、またはメチレンで中断されたポリエン、例えば、多価不飽和脂肪酸に見られるような、次の構造単位-[CH=CH-CH]-を2つ以上含む炭化水素基を指す。アルケニル基は、1つ以上、好ましくは1、2、3、4、5、または6個の二重結合を有する。
【0052】
アルキニルという表現は、2~20個の炭素原子、好ましくは2~10個の炭素原子、特に2~6個、すなわち2、3、4、5または6個の炭素原子を含む、少なくとも部分的に不飽和の直鎖または分枝炭化水素基、例えばエチニル基、プロピニル基、ブチニル基、アセチレニル基またはプロパルギル基を指す。好ましくは、アルキニル基は、1つまたは2つ(特に好ましくは1つ)の三重結合を有する。
【0053】
さらに、アルキル、アルケニルおよびアルキニルという用語は、1つまたは複数の水素原子が、例えば、ハロゲン原子、好ましくはFまたはClによって置換されている基、例えば2,2,2-トリクロロエチル基またはトリフルオロメチル基を指す。
【0054】
ヘテロアルキルという表現は、1つ以上、好ましくは1、2または3個の炭素原子が、酸素、窒素、リン、ホウ素、セレン、ケイ素または硫黄原子によって、好ましくは酸素、硫黄または窒素原子によって、互いに独立して置換されているアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を指す。ヘテロアルキルという表現は、カルボン酸、または例えばアシル、アシルアルキル、アルコキシカルボニル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、カルボキシアルキルアミドまたはアルコキシカルボニルオキシなどのカルボン酸から誘導される基を指すこともできる。
【0055】
好ましくは、ヘテロアルキル基は、1~10個の炭素原子と、酸素、窒素および硫黄(特に酸素および窒素)から選択される1~4個のヘテロ原子とを含む。特に好ましくは、ヘテロアルキル基は、1~6個、すなわち1、2、3、4、5または6個の炭素原子と、酸素、窒素および硫黄から、特に酸素と窒素から選択される1、2または3個、特に1または2個のヘテロ原子を含む。
【0056】
ヘテロアルキル基の例は、次の式の基:Ra-O-Ya-、Ra-S-Ya-、Ra-N(Rb)-Ya-、Ra -CO- Ya -、Ra-O-CO-Ya-、Ra-CO-O-Ya-、Ra-CO-N(Rb)-Ya-、Ra-N(Rb)-CO-Ya-、Ra-O-CO-N(Rb)- Ya-、Ra-N(Rb)-CO-O-Ya-、Ra-N(Rb)-CO-N(Rc)-Ya-、Ra-O-CO-O-Ya-、Ra-N(Rb)-C(=NRd)-N(Rc)-Ya-、Ra-CS-Ya-、Ra-O-CS-Ya-、Ra-CS-O-Ya-、Ra-CS-N(Rb)-Ya-、Ra-N(Rb)-CS-Ya-、Ra-O-CS-N(Rb)-Ya-、Ra-N(Rb)-CS-O-Ya-、Ra-N(Rb)-CS-N(Rc)-Ya-、Ra-O-CS-O-Ya-、Ra-S-CO-Ya-、Ra-CO-S-Ya-、Ra-S-CO-N(Rb)-Ya-、Ra-N(Rb)-CO-S-Ya-、Ra-S-CO-O-Ya-、Ra-O-CO-S-Ya-、Ra-S-CO-S-Ya -、Ra-S-CS-Ya-、Ra-CS-S-Ya-、Ra-S-CS-N(Rb)-Ya-、Ra-N(Rb)-CS-S-Ya-、Ra-S-CS-O-Ya-、Ra-O-CS-S-Ya-であって、式中、Rは、水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアルケニル基またはC~Cアルキニル基であり;Rは、水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアルケニル基またはC~Cアルキニル基であり;Rは水素原子、C~Cアルキル基、C~Cアルケニル基またはC~Cアルキニル基であり;Rは、水素原子、C~Cアルキル、C~CアルケニルまたはC~Cアルキニル基であり;およびYは、直接結合、C~Cアルキレン、C~Cアルケニレン、またはC~Cアルキニレン基であり、ここで、各ヘテロアルキル基は少なくとも1つの炭素原子を含み、1つ以上の水素原子はフッ素原子または塩素原子で置換されてもよい。
【0057】
ヘテロアルキル基の具体例としては以下のものが挙げられる:メトキシ、トリフルオロメトキシ、エトキシ、n-プロピルオキシ、イソプロピルオキシ、ブトキシ、tert-ブチルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、-CHCHOH、-CHOH、メトキシエチル、1-メトキシエチル、1-エトキシエチル、2-メトキシエチルまたは2-エトキシエチル、メチルアミノ、エチルアミノ、プロピルアミノ、イソプロピルアミノ、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、イソプロピルエチルアミノ、メチルアミノメチル、エチルアミノメチル、ジイソプロピルアミノエチル、メチルチオ、エチルチオ、イソプロピルチオ、エノールエーテル、ジメチルアミノメチル、ジメチルアミノエチル、アセチル、プロピオニル、ブチリルオキシ、アセチルオキシ、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロピオニルオキシ、アセチルアミノまたはプロピオニルアミノ、カルボキシメチル、カルボキシエチルまたはカルボキシプロピル、N-エチル-N-メチルカルバモイルまたはN-メチルカルバモイル。ヘテロアルキル基のさらなる例は、ニトリル、イソニトリル、シアネート、チオシアネート、イソシアネート、イソチオシアネートおよびアルキルニトリル基である。
【0058】
アルコキシという表現は、酸素に単結合したアルキル基を指す。
【0059】
アルキルチオという表現は、硫黄に単数結合したアルキル基を指す。
【0060】
シクロアルキルおよび炭素環という表現は、1つまたは複数の環、好ましくは1または2個の環を含み、3~14個の環炭素原子、好ましくは3~10個、特に3、4、5、6または7個の環炭素原子、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、スピロ[4,5]デカニル、ノルボルニル、シクロヘキシル、デカリニル、ビシクロ-[4.3.0]ノニル、テトラリン、またはシクロペンチルシクロヘキシル基を含む炭化水素の飽和環状基を指す。さらに、シクロアルキルという表現は、1つ以上の水素原子がフッ素原子、塩素原子、臭素原子もしくはヨウ素原子によって、またはOH、=O、SH、NH、=NH、NもしくはNO基によって置換されている基、従って、例えば、シクロヘキサノン、2-シクロヘキセノンまたはシクロペンタノンのようなシクロケトンを指す。シクロアルキル基のさらなる具体例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、スピロ[4,5]デカニル、ノルボルニル、シクロヘキシル、シクロペンテニル、シクロヘキサジエニル、デカリニル、ビシクロ-[4.3.0]ノニル、テトラリン、シクロペンチルシクロヘキシル、フルオロシクロヘキシルまたはシクロヘキサ-2-エニル基である。
【0061】
アリールという表現は、6~14個の環炭素原子、好ましくは6~10個、特に6個の環炭素原子を含む1つ以上の環を含む芳香族基を指す。
【0062】
ヘテロアリールという表現は、5~14個の環原子、好ましくは5~10個、特に5または6個の環原子を含む1つまたは複数の環を含み、および1つまたは複数の、好ましくは1、2、3または4個の酸素、窒素、リンまたは硫黄の環原子、好ましくはO、SまたはNを含む、芳香族基を指す。例としては、ピリジル (例えば、4-ピリジル)、イミダゾリル(例えば、2-イミダゾリル)、フェニルピロリル (例えば、3-フェニルピロリル)、チアゾリル、イソチアゾリル、1,2,3-トリアゾリル、1,2,4-トリアゾリル、オキサジアゾリル、チアジアゾリル、インドリル、インダゾリル、テトラゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、ピリダジニル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、イソオキサゾリル、インダゾリル、インドリル、ベンズイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンズチアゾリル、ピリダジニル、キノリニル、イソキノリニル、ピロリル、プリニル、カルバゾリル、アクリジニル、ピリミジル、2,3’-ビフリル、ピラゾリル(例えば、3-ピラゾリル)およびイソキノリニル基である。ヘテロシクロアルキルという表現は、1つまたは複数(好ましくは1、2または3)の環炭素原子がそれぞれ独立して、酸素、窒素、ケイ素、セレン、リンまたは硫黄原子によって(好ましくは酸素、硫黄または窒素原子によって)置換されている、上記のとおり定義されたシクロアルキル基を指す。ヘテロシクロアルキル基は、3~10個(特に3、4、5、6または7個)の環原子(好ましくはC、O、NおよびSから選択される)を含む好ましくは1または2個の環を有する。ヘテロシクロアルキルという表現はさらに、1つ以上の水素原子がフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素原子により、またはOH、=O、SH、=S、NH、=NH、NもしくはNO基により置換された基を指す。例としては、ピペリジル、プロリニル、イミダゾリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、ウロトロピニル、ピロリジニル、テトラヒドロチオフェニル、テトラヒドロピラニル、テトラヒドロフリルまたは2ピラゾリニル基、ならびにラクタム、ラクトン、環状イミドおよび環状無水物が挙げられる。
【0063】
アルキルシクロアルキルという表現は、シクロアルキルと、上記の定義によるアルキル、アルケニルまたはアルキニル基の両方を含む基、例えば、アルキルシクロアルキル、シクロアルキルアルキル、アルキルシクロアルケニル、アルケニルシクロアルキルおよびアルキニルシクロアルキル基を指す。アルキルシクロアルキル基は、好ましくは、3~10個(特に3、4、5、6または7個)の環炭素原子を有する1つまたは2つの環系、および1つまたは2~6個の炭素原子を有する1つまたは2つのアルキル、アルケニルまたはアルキニル基を含むシクロアルキル基を含む。アラルキルという表現は、アリール基と、上記の定義によるアルキル、アルケニル、アルキニルおよび/またはシクロアルキル基の両方を含む基、例えば、アリールアルキル、アリールアルケニル、アリールアルキニル、アリールシクロアルキル、アリールシクロアルケニル、アルキルアリール-シクロアルキルおよびアルキルアリールシクロアルケニル基を指す。アラルキルの具体例は、トルエン、キシレン、メシチレン、スチレン、塩化ベンジル、o-フルオロトルエン、1Hインデン、テトラリン、ジヒドロナフタレン、インダノン、フェニルシクロペンチル、クメン、シクロヘキシルフェニル、フルオレンおよびインダンである。アラルキル基は、好ましくは、6~10個の炭素原子を含む1つまたは2つの芳香環系(1つまたは2つの環)、および1または2~6個の炭素原子を含む1つまたは2つのアルキル、アルケニルおよび/またはアルキニル基および/または5または6個の環炭素原子を含むシクロアルキル基を含む。
【0064】
ヘテロアルキルシクロアルキルという表現は、1個以上、好ましくは1、2または3個の炭素原子が互いに独立して酸素、窒素、ケイ素、セレン、リンまたは硫黄原子によって(好ましくは酸素、硫黄または窒素原子によって)置換されている、上記で定義したアルキルシクロアルキル基を指す。ヘテロアルキルシクロアルキル基は、好ましくは、3~10個(特に3、4、5、6または7個)の環原子を有する1または2個の環系、および1または2~6個の炭素原子を有する1または2個のアルキル、アルケニル、アルキニルまたはヘテロアルキル基を含む。このような基の例は、アルキルヘテロシクロアルキル、アルキルヘテロシクロアルケニル、アルケニルヘテロシクロアルキル、アルキニルヘテロシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルヘテロシクロアルキルおよびヘテロアルキルヘテロシクロアルケニルであり、環状基は飽和またはモノ、ジ、もしくはトリ不飽和である。
【0065】
複素環という表現は、上記で定義したヘテロアリール基、ならびに1つ以上(好ましくは1、2または3)の環炭素原子がそれぞれ独立して酸素、窒素、ケイ素、セレン、リン、または硫黄原子によって、好ましくは酸素、硫黄または窒素原子によって置換されている上記で定義したシクロアルキル基または炭素環を指す。複素環は、好ましくは、3~10個、特に3、4、5、6または7個の環原子、好ましくはC、O、NおよびSから選択される環原子を含む1または2個の環を有する。.例としては、アジリジニル、オキシラニル、チイラニル、オキサジリジニル、ジオキシラニル、アゼチジニル、オキセタニル、チエタニル、ジアゼチジニル、ジオキセタニル、ジチエタニル、ピロリジニル、テトラヒドロフラニル、チオラニル、ホスホラニル、シロラニル、アゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、イミダゾリジニル、ピラゾリジニル、オキサゾリジニル、イソオキサゾリジニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、ジオキソラニル、ジチオラニル、ピペラジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、トリオキサニル、アゼパニル、オキセパニル、チエパニル、ホモピペラジニル、またはウロトロピニル基が挙げられる。
【0066】
ヘテロアラルキルという表現は、1つまたは複数(好ましくは1、2、3または4)の炭素原子がそれぞれ独立して、酸素、窒素、ケイ素、セレン、リン、ホウ素または硫黄原子(好ましくは、酸素、硫黄または窒素)によって置換されている、上記で定義したアラルキル基を指し、すなわち、それぞれアリールまたはヘテロアリール、ならびに上記の定義によるアルキル、アルケニル、アルキニルおよび/またはヘテロアルキルおよび/またはシクロアルキルおよび/またはヘテロシクロアルキル基の両方を含む基を指す。ヘテロアラルキル基は、好ましくは、5または6~10個の環炭素原子を含む1つまたは2つの芳香環系(1または2環)と、1または2~6個の炭素原子を含む1つまたは2つのアルキル、アルケニルおよび/またはアルキニル基および/または5もしくは6個の環炭素原子を含むシクロアルキル基を含むものであって、これらの炭素原子のうち1、2、3、または4個が酸素、硫黄、または窒素原子に置換されているものである。
【0067】
例としては、アリールヘテロアルキル、アリールヘテロシクロアルキル、アリールヘテロシクロアルケニル、アリールアルキルヘテロシクロアルキル、アリールアルケニルヘテロシクロアルキル、アリールアルキニルヘテロシクロアルキル、アリールアルキルヘテロシクロアルケニル、ヘテロアリールアルキル、ヘテロアリールアルケニル、ヘテロアリールアルキニル、ヘテロアリールヘテロアルキル、ヘテロアリールシクロアルキル、ヘテロアリールシクロアルケニル、ヘテロアリールヘテロシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロシクロアルケニル、ヘテロアリールアルキルシクロアルキル、ヘテロアリールアルキルヘテロシクロアルケニル、ヘテロアリールヘテロアルキルシクロアルキル、ヘテロアリールヘテロアルキルシクロアルケニル基およびヘテロアリールヘテロアルキルヘテロシクロアルキル基、環状基は飽和またはモノ、ジ、もしくはトリ不飽和が挙げられる。具体例は、テトラヒドロイソキノリニル、ベンゾイル、2-または3-エチルインドリル、4-メチルピリジノ、2-、3-または4-メトキシフェニル、4-エトキシフェニル、2-、3-または4-カルボキシフェニルアルキル基である。
【0068】
上述のとおり、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アルキルシクロアルキル、ヘテロアルキルシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキルおよびヘテロアラルキルという表現は、そのような基の1つ以上の水素原子が互いに独立してフッ素、塩素、臭素もしくはヨウ素原子によって、またはOH、=O、SH、=S、NH、=NH、N、またはNO基によって置換されている基も指す。
【0069】
本明細書で使用される一般用語「環」には、別段の定義がない限り、シクロアルキル基または炭素環、複素環、アリール基、およびヘテロアリール基が含まれる。
【0070】
本明細書で使用される「ハロ」、「ハロゲン」または「ハロゲン原子」という表現は、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素、好ましくはフッ素および/または塩素を意味する。
【0071】
本明細書で使用される単糖または二糖、およびそれらの誘導体との表現は、単糖または二糖の群に属する、または単糖または二糖の群に由来する炭水化物または糖を意味する。
【0072】
単糖、二糖、およびそれらの誘導体の例は、グルコース、3-O-メチルグルコース、1-デオキシ-グルコース、6-デオキシグルコース、ガラクトース、マンノース、フルクトース、キシロース、リボース、セロビオース、マルトース、乳糖、ゲンチオビオース、サッカロース、トレハロース、およびマンニトール、ソルビトール、およびリビトールを含む。好ましくは、糖類は、D型糖類、例えば、D-グルコース、3-O-メチル-D-グルコース、1-デオキシ-D-グルコース、または6-デオキシ-D-グルコース、D-ガラクトース、D-マンノースである。
【0073】
本明細書で使用される場合、長さの範囲の制限を定義する文言、例えば「1から5まで」は、1から5までの任意の整数、すなわち、1、2、3、4、および5を意味する。言い換えると、明示的に言及された2つの整数によって定義される任意の範囲は、前記限界を定義する任意の整数および前記範囲に含まれる任意の整数を含んで開示することを意味する。
【0074】
「-C(=O)O-モチーフ」という表現は、(i)任意の炭素またはヘテロ原子に結合したsp混成カルボニル炭素、および(ii)水素または他の任意の化学原子に結合し得る酸素に結合したsp混成カルボニル炭素を含む基を明確に定義するために本明細書で使用される。「カルボキシル基」という用語は、カルボン酸のみを説明していると誤解される可能性があるため、「-C(=O)O-モチーフ」の説明では避けられている。
【0075】
「アルファ位に」という用語は、直接隣接する位置を表すために使用され、「ベータ位に」という用語は、原子または基Aと原子または基Bの隣接する位置を示し、AとB間にさらに1つの原子または基が局在していることを特徴とする。
【0076】
本明細書において、オキサミド(oxaminde)という用語は、2つのカルボニル炭素と2つの窒素を含む任意に置換された有機化合物を指し、この化合物はシュウ酸由来の任意に置換されたジアミドである。
【0077】
当業者であれば、本発明の一般式(I)のn-3 PUFA類似体のいくつかは、オメガ-3(n-3)多価不飽和脂肪酸(PUFA)からシトクロムP450(CYP)酵素によって生成される天然に存在するエポキシ代謝物の「バイオアイソスター(bioisoster)」を表すことは容易に理解できるであろう。バイオアイソスターとは、原子または原子群を、ほぼ類似した別の原子または原子群と交換して生成される化合物であり、これにより、親化合物と同様の生物学的特性を持つ新しい化合物が生成される。例えば、生物学的等価性(bioisosterism)は、例えば、化合物の毒性を弱めたり、活性を変えたり、薬物動態および/または代謝を変えたりといった、化合物の望ましい生物学的または物理的特性を改善するために医薬化学者によって使用されてきた。例えば、化合物中の代謝酸化部位の水素原子をフッ素に置き換えると、そのような代謝が起こらなくなる可能性がある。フッ素は水素原子と大きさが似ているため、分子の全体的なトポロジーは大きな影響を受けず、望ましい生物学的活性は影響を受けない。しかしながら、代謝経路がブロックされると、その化合物の半減期は長くなる可能性がある。もう一つの例は、カルボン酸基のバイオアイソスター置換(bioisosteric replacement)であり、これにより、生物学的利用能の改善、血液脳関門透過の強化、活性の増加、化学的安定性の向上、および/または標的に対する選択性の向上を示す類似体が得られる(例えば、教科書「The practice of medicinal chemistry」、CamilleGeorges Wermuth編、3rd edition, AcademicPress, 2008, 例えば p. 303-310;BallatoreC. ら、「Carboxylic Acid (Bio)Isosteres in Drug Design」、ChemMedChem 8、385-395 (2013)を参照)。さらに、生物学的等価性は、化合物の「プロドラッグ」、すなわち、最初は不活性(または活性が低い)の形で対象または患者に投与され、その後、体内の通常の代謝プロセスを通じて活性型に変化する化合物、を提供するためにも使用できる。例えば、化合物を脂質および/または糖ユニットと結合させることで、親化合物と比較して薬物送達が向上した類似体(プロドラッグ)が得られる(例えば、Wong A. and Toth I.”Lipid, Sugar andLiposaccharide Based Delivery Systems”,CurrentMedicinal Chemistry 8, 1123-1136 (2001)を参照)。
【0078】
本発明の一般式(I)のn-3 PUFA類似体は、有機合成の分野の当業者によく知られているいくつかの方法で製造することができる。例えば、本発明の化合物は、有機合成化学の分野で知られている合成方法、または当業者に理解されるその変形を使用して、以下に示す一般的な反応スキームに従って合成することができる。特に明記しない限り、すべての変数、例えば、n、k、R(Rともいう)、R、R、R、R41、R42、R44、およびR45は、上記で定義された意味を持つ。出発物質として、標準的な市販グレードの試薬は、それ以上精製することなく使用することができ、または、そのような物質から通常の方法で容易に調製することもできる。有機合成分野の当業者であれば、本発明で使用される化合物を製造するために用いられる追加の工程を含め、出発物質および反応条件が変化する可能性があることを認識するであろう。
【0079】
本発明の化合物は、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患を治療し、発症リスクを低減し、または予防するのに有効であり、ここで、好ましくは、GDF-15の血漿濃度は少なくとも1000ng/Lであり、ここで、好ましくは、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患は、心血管疾患および代謝性疾患から選択される。
【0080】
1つの実施形態において、心血管疾患は、心房細動、心房細動に伴う出血リスク、冠動脈疾患(CAD)、狭心症、心筋梗塞、脳卒中、心不全、高血圧性心疾患、リウマチ性心疾患、心筋症、先天性心疾患、心臓弁膜症、心臓炎、大動脈瘤、末梢動脈疾患、血栓塞栓症、静脈血栓症から選択される。1つの好ましい実施形態において、心血管疾患は、心房細動、心房細動に伴う出血リスク、心不全、冠動脈疾患(CAD)および末梢動脈疾患から選択される。より好ましい1つの実施形態において、心血管疾患は、心房細動またはそれに関連する疾患(出血リスクなど)である。最も好ましい実施形態において、心血管疾患は、心房細動である。
【0081】
1つの好ましい実施形態において、心血管疾患(または上記の明示的に開示された心血管疾患のいずれか)は、GDF-15血漿濃度の上昇に関連しており、GDF-15血漿濃度は、好ましくは少なくとも500ng/L、750ng/L、900ng/L、1000ng/L、1200ng/Lまたは1500ng/L、好ましくは少なくとも900ng/L、1000ng/L、1200ng/L、より好ましくは少なくとも1000ng/Lである。
【0082】
1つの実施形態において、代謝性疾患は、糖尿病、脂質異常症、およびメタボリックシンドロームから選択される。
【0083】
1つの好ましい実施形態において、代謝性疾患(または上記で明らかにされた疾患のいずれか)は、GDF-15血漿濃度の上昇に関連しており、GDF-15血漿濃度は、好ましくは少なくとも500ng/L、750ng/L、900ng/L、1000ng/L、1200ng/Lまたは1500ng/L、好ましくは少なくとも900ng/L、1000ng/L、1200ng/L、より好ましくは少なくとも1000ng/Lである。
【0084】
1つの実施形態において、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患は心血管疾患ではない。
【0085】
1つの実施形態において、GDF-15血漿濃度の上昇に関連する疾患は代謝性疾患ではない。
【0086】
1つの実施形態において、本発明の化合物について本明細書で例示したものと同じ用途のために、本発明の化合物を含む組成物、好ましくは医薬組成物が提供される。
【0087】
1つの好ましい実施形態において、本発明によって使用される化合物または組成物は、経口、局所、皮下、硝子体内、筋肉内、腹腔内、静脈内、または鼻腔内に投与され、好ましくは経口または静脈内、より好ましくは経口または腹腔内に投与される。眼科疾患の治療における眼科用薬剤の好ましい投与経路は、局所、局所眼(例えば、結膜下、硝子体内、眼球後、前眼房内)、および全身投与である。後者は、経口、筋肉内または静脈内投与によって達成されることが好ましい。
【0088】
本発明によって使用される化合物または組成物は、スプレー、エアロゾル、フォーム剤、吸入剤、粉末剤、錠剤、カプセル剤、ソフトゼラチンカプセル剤、茶剤、シロップ剤、顆粒剤、チュアブル錠、軟膏剤、クリーム剤、ゲル剤、坐薬、トローチ剤、リポソーム組成物、および注射に適した溶液からなる群から選択される剤形であることがさらに好ましい。
【0089】
本発明によって使用される組成物は、さらに、式(I)の化合物の少なくとも1つと、任意に、1つ以上の担体物質、例えば、ヒドロキシプロピルβ-シクロデキストリンなどのシクロデキストリン、ミセルまたはリポソーム、賦形剤および/またはアジュバントを含んでもよい。さらに、例えば、水、緩衝液(例えば、中性緩衝生理食塩水またはリン酸緩衝生理食塩水)、エタノール、鉱油、植物油、ジメチルスルホキシド、炭水化物(例えば、グルコース、マンノース、スクロースまたはデキストラン)、マンニトール、タンパク質、アジュバント、ポリペプチドまたはグリシンなどのアミノ酸、抗酸化剤、EDTAまたはグルタチオンなどのキレート剤、および/または防腐剤のうちの1つ以上を含んでいてもよい。さらに、本明細書で提供される組成物には、1つ以上の他の有効成分が含まれる場合があるが、含まれる必要はない。例えば、本発明の化合物は、直接トロンビン阻害剤、スタチン、RAS薬、ベータ遮断薬、利尿薬、直接作用型Xa因子阻害剤、ビタミンK拮抗薬、カルシウムチャネル遮断薬およびメトホルミンと組み合わせて有利に使用することができる。
【0090】
使用のための組成物は、例えば、経皮または経眼などの局所、経口、経頬、経鼻、経膣、経直腸または非経口投与を含む、任意の適切な投与経路用に製剤化され得る。本明細書で用いられる「非経口」という用語には、皮下、皮内、血管内(例えば、静脈内)、筋肉内、脊髄、頭蓋内、髄腔内、眼内、眼周囲、眼窩内、滑液包内、腹腔内および局所眼内(例えば、結膜下、硝子体内、眼球後、前眼房内)への注射ならびに同様の注射または注入技術が含まれる。特定の実施形態において、経口使用に適した形態の組成物が好ましい。そのような形態には、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性もしくは油性懸濁液、分散性粉末または顆粒、乳剤、ハードもしくはソフトカプセル、シロップまたはエリキシル剤が含まれる。さらに他の実施形態では、本明細書で提供される組成物は、凍結乾燥物として製剤化されてもよい。
【0091】
経口使用を意図した組成物は、魅力的で口当たりの良い製剤を提供するために、甘味料、香味料、着色料、および/または保存料などの1つ以上の成分をさらに含んでもよい。錠剤には、錠剤の製造に適した生理学的に許容される賦形剤と混合された有効成分が含まれる。このような賦形剤には、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、リン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤、例えば、コーンスターチ、アルギン酸などの造粒剤および崩壊剤、例えばデンプン、ゼラチン、アカシアなどの結合剤、及び例えばステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、タルクなどの潤滑剤が含まれる。錠剤はコーティングされていないか、または既知の技術によってコーティングされ、消化管内での崩壊および吸収を遅らせ、それによって長期間にわたって持続的な作用をもたらすことができる。例えば、グリセリルモノステアレートやグリセリルジステアレートなどの遅延物質を使用することができる。このような組成物を調製する方法は公知である(例えば、H. C. Ansel and N. G. Popovish, Pharmaceutical Dosage Forms and DrugDeliverySystems, 5th ed., Lea and Febiger (1990)を参照)。
【0092】
経口投与用の製剤は、活性成分が不活性固体希釈剤(例えば炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、またはカオリンなど)と混合されたハードゼラチンカプセル、または活性成分が水または油媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、またはオリーブ油など)と混合されたソフトゼラチンカプセルとして提供されることもある。
【0093】
水性懸濁液には、水性懸濁液の製造に適した賦形剤と混合された有効成分が含まれる。このような賦形剤には、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントゴム、およびアカシアゴムなどの懸濁剤;および分散剤または湿潤剤(例えば、レシチンなどの天然リン脂質)、アルキレンオキシドとポリオキシエチレンステアレートなどの脂肪酸の縮合生成物、エチレンオキシドとヘプタデカエチレンオキシセタノールなどの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、脂肪酸およびポリオキシエチレンソルビトールモノオレエートなどのヘキシトールから誘導された部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物、または脂肪酸およびヘキシル酸無水物(例えばポリエチレンソルビタンモノオレエートなど)から誘導された部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物が含まれる。水性懸濁液には、1種以上の防腐剤(例えば、エチルまたはn-プロピルp-ヒドロキシ安息香酸)、1種以上の着色剤、1種以上の香味剤、および1種以上の甘味剤(例えば、スクロースまたはサッカリン)も含まれ得る。
【0094】
油性懸濁液は、例えば落花生油、オリーブ油、ゴマ油、またはココナッツ油などの植物油、または流動パラフィンなどの鉱油に有効成分を懸濁することによって製剤化することができる。油性懸濁液には、蜜蝋、硬質パラフィン、またはセチルアルコールなどの増粘剤を含んでよい。口当たりの良い経口製剤を提供するために、上記のような甘味料および/または香味料を添加してもよい。このような懸濁液は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することで保存することができる。
【0095】
水を加えて水性懸濁液を調製するのに適した分散性粉末および顆粒は、分散剤または湿潤剤、懸濁剤、および1つ以上の防腐剤と混合した有効成分を提供する。適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤としては、すでに上記で述べたものが挙げられる。甘味料、香味料、着色料などの追加の賦形剤も存在する場合がある。
【0096】
使用のための組成物は、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、例えばオリーブ油または落花生油などの植物油、例えば流動パラフィンなどの鉱油、またはそれらの混合物であってもよい。適切な乳化剤としては、例えばアカシアガムまたはトラガカントガムなどの天然ガム、例えば大豆レシチンなどの天然リン脂質、脂肪酸とヘキシトールから誘導されたエステルまたは部分エステル、例えばソルビタンモノオレエートなどの無水物、および脂肪酸とヘキシトールから誘導された部分エステルと、エチレンオキシド(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートなど)との縮合生成物が挙げられる。エマルジョンには、1種以上の甘味料および/または香味料も含まれてよい。
【0097】
シロップやエリキシル剤は、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースなどの甘味料を使用して製剤化されることがある。このような製剤には、1つ以上の粘滑剤、保存料、香味剤、および/または着色剤も含まれ得る。
【0098】
本発明によって使用される化合物は、局所投与用、例えば皮膚または粘膜(例えば眼などの)への局所適用用に製剤化することができる。局所投与用の製剤は、通常、追加の任意の成分の有無にかかわらず、活性剤と組み合わせた局所用媒体を含む。適切な局所用媒体および追加の成分は、当該技術分野で周知であり、媒体の選択は、特定の物理的形態および送達モードに依存することは明らかである。局所用媒体としては、水;エタノールやイソプロピルアルコールなどのアルコールまたはグリセリンなどの有機溶媒;例えばブチレン、イソプレン、プロピレングリコールなどのグリコール;例えばラノリンなどの脂肪族アルコール、水と有機溶媒の混合物、およびアルコールやグリセリンなどの有機溶媒の混合物;脂肪酸、油(例えば鉱油などの油、天然または合成由来の脂肪、ホスホグリセリド、スフィンゴ脂質、およびワックスなど)を含むアシルグリセロールなどの脂質ベースの物質;コラーゲンやゼラチンなどのタンパク質ベースの物質;非揮発性および揮発性の両方のシリコーンベースの物質;およびマイクロスポンジやポリマーマトリックスなどの炭化水素ベースの物質が含まれる。組成物は、例えば安定剤、懸濁剤、乳化剤、粘度調整剤、ゲル化剤、防腐剤、抗酸化剤、皮膚浸透促進剤、保湿剤、徐放性物質など、適用された製剤の安定性または有効性を改善するために適合された1つ以上の成分をさらに含んでもよい。このような成分の例は、Martindale-The Extra Pharmacopoeia(PharmaceuticalPress, London 1993)、Martin (ed.), Remington'sPharmaceutical Sciences に記載されている。製剤には、ヒドロキシメチルセルロースまたはゼラチンマイクロカプセルなどのマイクロカプセル、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子、またはナノカプセルが含まれる場合がある。
【0099】
局所使用のための製剤は、例えば、固形物、ペースト、クリーム、フォーム、ローション、ゲル、粉末、水性液体、乳剤、スプレー、点眼薬および皮膚パッチなどの様々な物理的形態で調製することができる。このような形態の物理的外観および粘度は、配合物中に存在する乳化剤および粘度調整剤の存在および量によって制御され得る。固形物は一般に固く、注ぎ出すことができず、通常はバーやスティック、または粒子の形状で製剤化され;固形物は不透明または透明でよく、任意で溶剤、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤、および最終製品の効能を増大または強化するその他の有効成分を含むことができる。クリームとローションは、粘度が主な違いである以外は、多くの場合は似ている;ローションとクリームはどちらも不透明、半透明、または透明でよく、乳化剤、溶剤、粘度調整剤、ならびに保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤、最終製品の効能を高めるその他の有効成分が含むことができる。ゲルは、厚いまたは高粘度のものから薄いまたは低粘度のものまで、さまざまな粘度で調製できる。これらの製剤には、ローションやクリームと同様に、溶剤、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤、最終製品の効能を高めるその他の有効成分も含むことができる。液体はクリーム、ローション、またはジェルよりも薄く、しばしば乳化剤を含まない。液体局所用製品には、溶剤、乳化剤、保湿剤、皮膚軟化剤、香料、染料/着色剤、防腐剤、最終製品の効能を高めるその他の有効成分をしばしば含む。
【0100】
局所用製剤に使用するのに適した乳化剤としては、イオン性乳化剤、セテアリルアルコール、ポリオキシエチレンオレイルエーテルなどの非イオン性乳化剤、PEG-40ステアレート、セテアレス-12、セテアレス-20、セテアレス-30、セテアレスアルコール、PEG-100ステアレート、およびグリセリルステアレートが含まれるが、これらに限定されない。適切な粘度調整剤には、ヒドロキシエチルセルロース、キサンタンガム、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、シリカ、マイクロクリスタリンワックス、蜜蝋、パラフィン、およびパルミチン酸セチルなどの保護コロイドまたは非イオン性ガムが含まれるが、これらに限定されない。ゲル組成物は、キトサン、メチルセルロース、エチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリクオタニウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボマー、またはアンモニア化グリチルリチン酸などのゲル化剤を添加することによって製剤され得る。適切な界面活性剤としては、非イオン性、両性、イオン性、および陰イオン性界面活性剤が挙げられるが、これらに限定されない。例えば、ジメチコンコポリオール、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80、ラウラミドDEA、コカミドDEA、およびコカミドMEA、オレイルベタイン、コカミドプロピルホスファチジルPGジモニウムクロリド、およびラウレス硫酸アンモニウムの1つ以上を局所用製剤に使用してもよい。
【0101】
適切な防腐剤には、メチルパラベン、プロピルパラベン、ソルビン酸、安息香酸、およびホルムアルデヒドなどの抗菌剤、ならびにビタミンE、アスコルビン酸ナトリウム/アスコルビン酸、および没食子酸プロピルなどの物理的安定剤および抗酸化剤が含まれるが、これらに限定されない。適切な保湿剤には、乳酸およびその他のヒドロキシ酸とその塩、グリセリン、プロピレングリコール、およびブチレングリコールなどが含まれるが、これらに限定されない。適切な皮膚軟化剤には、ラノリンアルコール、ラノリン、ラノリン誘導体、コレステロール、ワセリン、イソステアリルネオペンタン酸、および鉱油などが含まれる。適切な香料と着色料には、FD&C赤色 40号、およびFD&C黄色5号などが含まれるが、これらに限定されない。局所製剤に含めることができるその他の適切な追加成分には、研磨剤、吸収剤、固化防止剤、消泡剤、帯電防止剤、例えばマンサクなどの収斂剤、アルコール、およびカモミール抽出物などのハーブ抽出物、結合剤/賦形剤、緩衝剤、キレート剤、皮膜形成剤、コンディショニング剤、噴射剤、乳白剤、pH調整剤、および保護剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0102】
ゲルの製剤化に適した局所用媒体の一例は、ヒドロキシプロピルセルロース(2.1%)、70/30イソプロピルアルコール/水(90.9%)、プロピレングリコール(5.1%)、およびポリソルベート80(1.9%)である。フォーム剤として製剤化するのに適した局所用媒体の例は、セチルアルコール(1.1%)、ステアリルアルコール(0.5%)、クオタニウム52(1.0%)、プロピレングリコール(2.0%)、エタノール95PGF3(61.05%)、脱イオン水(30.05%)、P75炭化水素推進剤(4.30%)である。すべてのパーセントは重量によるものである。
【0103】
局所組成物の一般的な送達方法には、指を使用した塗布;布、ティッシュ、綿棒、棒またはブラシなどの物理的な塗布具を使用した塗布;ミスト、エアロゾル、または泡の噴霧を含む噴霧;スポイトによる塗布;散布;浸漬;およびすすぎが含まれる。制御放出媒体も使用することができ、組成物は経皮パッチとして経皮投与用に製剤化することができる。
【0104】
使用のための組成物は、スプレー、ミスト、またはエアロゾルを含む吸入製剤として製剤化されてもよい。このような製剤は、喘息やその他の呼吸器疾患の治療に特に有用である。吸入製剤の場合、本明細書で提供される化合物は、当業者に知られている任意の吸入方法によって送達され得る。このような吸入方法および装置には、CFCやHFAなどの噴射剤、または生理学的および環境的に許容される噴射剤を使用した定量噴霧式吸入器が含まれるが、これらに限定されない。その他の適切な装置としては、呼吸作動式吸入器、多用量ドライパウダー吸入器、およびエアロゾルネブライザーなどがある。本発明の方法で対象に使用されるエアロゾル製剤には、通常、推進剤、界面活性剤、および共溶媒が含まれ、適切な計量バルブによって閉じられる従来のエアロゾル容器に充填することができる。
【0105】
吸入剤組成物は、噴霧および気管支内使用に適した有効成分を含む液体または粉末組成物、または定量投与量を分配するエアロゾルユニットを介して投与されるエアロゾル組成物を含み得る。適切な液体組成物は、水性の、薬学的に許容される吸入溶媒、例えば等張食塩水または殺菌水中に有効成分を含んでなる。溶液は、ポンプまたはスクイーズ作動式噴霧スプレーディスペンサーによって、または液体組成物の必要投与量を患者の肺に吸入させるかまたは吸入を可能にする他の従来の手段によって投与される。担体が液体であり、例えば鼻スプレーまたは点鼻薬として投与するための適切な製剤には、有効成分の水性溶液または油性溶液が含まれる。
【0106】
鼻腔投与に適した製剤または組成物(担体は固体)には、例えば、20~500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗い粉末が含まれ、これは嗅ぎタバコを投与する方法、すなわち、鼻の近くに保持された粉末の容器から鼻腔を通して急速に吸入することによって投与される。適切な粉末組成物としては、例えば、気管支内投与に適したラクトースまたはその他の不活性粉末と十分に混合された有効成分の粉末製剤が挙げられる。粉末組成物は、エアロゾルディスペンサーを介して投与することもでき、または、破砕可能なカプセルに封入し、患者がカプセルに穴を開けて吸入に適した一定の流れで粉末を吹き出す装置に挿入することもできる。
【0107】
使用のための組成物は、例えば直腸投与用の坐剤の形態で調製してもよい。このような組成物は、常温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって直腸内で溶解して薬剤を放出する適切な非刺激性の賦形剤と薬剤を混合することによって調製することができる。適切な賦形剤としては、例えば、ココアバターおよびポリエチレングリコールが挙げられる。
【0108】
使用のための組成物は、投与後に調節因子をゆっくりと放出するカプセルなどの製剤などの徐放性製剤として製剤化されてもよい。このような製剤は、一般に、周知の技術を使用して調製され、例えば、経口、直腸、または皮下移植、または所望の標的部位への移植によって投与され得る。このような製剤内で使用される担体は生体適合性があり、また生分解性であってもよく;好ましくは、製剤は比較的一定レベルの調節剤放出を提供する。徐放性製剤に含まれる調節剤の量は、例えば、移植部位、放出速度および予想される放出期間、ならびに治療または予防する病状の性質によって異なる。
【0109】
しかしながら、特定の患者に対する特定の投与量レベルは、使用される特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康状態、性別、食事、投与時間、投与経路、および排泄速度、薬剤の組み合わせ(すなわち、患者の治療に使用されている他の薬剤)、および治療を受けている特定の疾患の重症度など、を含むさまざまな要因に依存することが理解されるであろう。
【0110】
本発明の好ましい化合物は、特定の薬理学的特性を有する。このような特性には、経口バイオアベイラビリティが含まれるが、これに限定されるものではなく、上述の好ましい経口投与形態は、生体内での治療上有効なレベルの化合物を提供することができる。
【0111】
本明細書で提供されるn-3 PUFA誘導体は、好ましくは、例えばヒトなどの患者に経口または非経口で投与され、患者の少なくとも1つの体液または組織内に存在する。
【0112】
本明細書で使用される用語「治療」は、疾患修飾治療(disease-modifying treatment)のあらゆるタイプを包含し、対症療法、すなわち症状の発症後の治療を含むが、予防的であってもよい。しかしながら、疾患修飾治療には、症状の発症を予防し、少なくとも発症を遅らせるため、または発症後の症状の重症度を軽減するために、症状の発症前に投与することが含まれてもよい。疾患修飾治療は、症状の重症度および/または持続期間を軽減するために、症状の発症後に治療的に行われてもよい。症状の発症後の治療は、単に疾患の進行を止めること(病状の安定)だけになってもよい。特定の実施形態において、本明細書で提供されるn-3PUFA誘導体は、理想的には、疾患および/または症状を実際に予防するために、すなわち、疾患および/または症状の発症前に予防的に投与されるが、必ずしもそうである必要はない。本発明の文脈における予防および予防的という用語は、本発明の化合物が症状の発症前に投与されることを単に表すものであると理解される。予防的投与は、本明細書で論じられている疾患に明らかに関連する症状の発症前に投与されることがある:本明細書で提供されるn-3PUFA誘導体は、例えば、本発明のn-3 PUFA誘導体の1つで治療できる状態または疾患の1つを発症する傾向を示す可能性がある特定の状態を被験体が示す場合に、被験体に予防的に投与することができる。このような兆候となる症状としては、高血圧や糖尿病などが挙げられる。このような予防的治療は一次予防と呼ばれる。別の実施形態において、本発明で提供されるn-3PUFA誘導体は、対象が、本発明のn-3 PUFA誘導体で治療できる状態または疾患に以前に罹患していたが、現在は症状が現れていない場合に、予防的に対象に投与することができる。このような予防的治療は二次予防と呼ばれる。一次予防または二次予防の目的でn-3PUFA誘導体を投与される患者は、そのような治療が必要であるとみなされる。本明細書に記載の用量で投与される患者には、哺乳類、特にヒト、犬、猫、馬などの飼いならされたペット動物、および牛、豚、羊などの家畜が含まれるが、これらに限定されない。
【0113】
本発明によるn-3 PUFA類似体の活性は、例えば、適切なインビトロおよび/またはインビボアッセイで測定することができる。例えば、本発明によるn-3PUFA類似体の生物学的活性は、当業者に知られているKangおよびLeaf(Proc Natl Acad Sci U S A, 1994.91(21): p. 9886-90)の確立された細胞モデルを使用して決定することができる。
【0114】
本明細書の図および実施例は本発明を説明するためのものであり、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例
【0115】
実施例1 化合物の合成
【0116】
本発明の化合物の合成は特許出願WO2010/081683 A1、WO2015/110262A1、 WO2017/013264 A1およびWO2017/168007 A1に記載されている。
【0117】
本発明の化合物の例示的な合成を以下に開示する。当業者であれば、以下の合成経路および上記特許出願すなわち、WO2010/081683A1、WO2015/110262A1、 WO2017/013264A1およびWO2017/168007 A1に開示されたさらなる合成指示に従うことによって、本発明の他の化合物を合成する方法を知っているであろう。
【0118】
化合物-01(Comp-01)
化合物-01(Comp-01) の合成は化合物-03(Comp-03)の合成と同様であるが、尿素基は特許出願 WO2010/081683 (実施例13)に記載されている合成経路に従って導入された。
【0119】
化合物-02(Comp-02)
合成の要約
【化36】
【0120】
一般的な方法
NMRスペクトルは、HNMRではBruker Avance 400 MHz、13CNMRでは100 MHzで記録された。LCMSは、Shimadzu LCMS 2010(カラム:sepax ODS 50x2.0 mm、5um)またはAgilent 1200 HPLC、1956 MSD(カラム:Shim-pack XR-ODS 30x3.0 mm、2.2um)の四重極質量分析計でES(+)イオン化モードで操作して取得された。クロマトグラフィー精製は、100~200メッシュのシリカゲルを使用したフラッシュクロマトグラフィーによって行われた。無水溶媒は、使用前に3AMSカラムで前処理した。市販の試薬はすべて、特に記載がない限り、受け取ったまま使用した。
【0121】
化合物-02の調製の一般的な手順
【化37】
【表A】
500 mL THF中のメタンアミン(64.29 g、952.17 mmol、1.30 Eq)にEt3N(75 g、732.44mmol)を加え、その溶液を-10℃でTHF(1.5 L)中の化合物-01(100.00 g、732.44 mmol、1.00 eq)、Et3N(111 g、1.1mol)に加えた。そして混合物を25℃で16時間撹拌した。次に混合物はろ過さし、ろ液を2N HCl(500mL)で洗浄し、EA(300mL×4)で抽出し、濃縮し、シリカゲル(PE:EA=3:1~1:1)で精製して、化合物-02(70.00g、533.82mmol、収率72.88%)を黄色の油として得た。
TLC情報(PE:酢酸エチル=2:1);Rf(Comp-02)=0.39;LCMS:ET2662-1-P1A(M+H+):131.7;1HNMR(CDCl3、400 MHz)4.36~4.24(q,J=8 Hz、2H)、2.93~2.85(d,J=4 Hz、3H)、1.38~1.30(t,J=8 Hz、3H)。
【0122】
実施例2:持続性心房細動(AF)患者を対象とした第II相臨床試験における化合物-02の有効性
【0123】
臨床第II相試験では、持続性心房細動の患者119名を対象に、化合物-02(一般式(VI)の構造)による治療効果を調査した。患者はプラセボ群と、化合物-02の投与量が異なる3つの治療群に分けられた。低用量、中用量、高用量群に、それぞれ4mg、12mg、または24mgの化合物-02を1日1回経口投与した。
【0124】
研究参加者は、化合物-02による治療開始の少なくとも1週間前に植込み型心臓モニター(ICM)を装着した。化合物-02による治療は合計3か月間(すなわち、1日目から99日目まで)継続され、直流除細動(DCC)の少なくとも1週間前に開始された(研究プロトコルの詳細については図1を参照)。
【0125】
この研究では、化合物-02の安全性プロファイルが良好であることが明らかになり、研究参加者のECGの変化や他の種類の不整脈は観察されなかった。すべての研究グループで治療コンプライアンスが高かった。
【0126】
血漿サンプルは、異なる研究訪問時に患者から採取された。バイオマーカーは、ベースライン(V3)と治療終了時(V8)に分析された。119人の研究参加者について、バイオマーカーの完全なセットを入手することができた。分析により、ベースライン(V3)と治療終了時(V8)の間でバイオマーカーが一貫して減少していることが明らかになり、特にGDF-15、IL-6、およびPTX-3が大幅に減少した。
【0127】
GDF-15濃度は、固定化マウスモノクローナル抗GDF-15抗体および西洋ワサビペルオキシダーゼ結合モノクローナル抗GDF-15抗体を使用した固相サンドイッチELISA (Human GDF-15 Quantikine ELISAキット、R&D Systems)により、EDTA処理した血漿サンプルで測定された。酵素反応の基質は過酸化水素とテトラメチルベンジジンである。反応は硫酸の添加により停止される。反応生成物は450nmの分光光度計で測定される (Sunrise Absorbance Reader、TECAN)。
【0128】
病態生理学的GDF-15血漿濃度を有する患者のサブグループ
【0129】
研究対象集団全体のGDF-15レベルは、研究参加者のグループ全体にわたって年齢依存的な増加を示した(相関 r=0.4121、p<0.0001、図2Aを参照)。しかしながら、患者のサブグループでは、病態生理学的に高いGDF-15血漿濃度(1000ng/L以上)が示された。この患者のサブグループ内では、GDF-15血漿濃度と年齢の間に有意な相関関係は存在しなかったが(図2Cを参照)、一方、GDF-15血漿濃度が1000ng/L未満の患者のサブグループでは、年齢との有意な相関関係が示された(図2Bを参照)。これは、病態生理学的に高いGDF-15血漿濃度は疾患によって引き起こされるものであり、GDF-15血漿濃度が低い患者群のように単に年齢の結果ではないことを示す。
【0130】
ベースライン訪問時(V3)にGDF-15レベルが高かった(すなわち、GDF-15血漿濃度1000ng/L以上)患者サブグループでは、プラセボ治療群と比較して、化合物-02による治療終了時(V8)にGDF-15レベルの有意な低下が観察された(p=0.02;図3右パネル参照)。対照的に、ベースライン訪問時にGDF-15血漿濃度が1000ng/L未満であった患者サブグループでは、治療終了時にGDF-15血漿濃度に有意な変化は見られなかった(図3左パネル参照)。図4からわかるように、GDF-15血漿濃度の観察された減少も用量依存的だった。
【0131】
これは、この特定の患者サブグループ、すなわち病態生理学的GDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者において化合物-02の効果があることを示唆する。
【0132】
病態生理学的にGDF-15血漿濃度が上昇したサブグループも、以下の表1に示すように、GDF-15血漿濃度が低い患者グループと比較して、同じ臨床特性において有意な差が見られた。GDF-15血漿濃度が1000ng/L以上のサブグループは、さらに年齢と心拍数が高いことも示された。さらに、CHA2DS2-VAScスコアが高いほど、脳卒中のリスクが高いことを示す。糸球体濾過率 (GFR)が低いのは、この患者群の加齢によるものと考えられる。
【0133】
表1:研究対象集団の臨床ベースライン結果、データは平均±SD、中央値(四分位数)、または頻度(%)として表示される。
【表1】
【0134】
心房細動に対する化合物-02の治療効果
【0135】
病態生理学的GDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者のサブグループについて、化合物-02による治療によって引き起こされるその他の影響についてさらに調査した。したがって、疾患に関連することが知られているバイオマーカーのパネルが、治療期間全体にわたって測定され、比較された。
【0136】
GDF-15血漿濃度の減少に加えて、すべての投与群において、治療終了時のhs-CRP、PTX-3、IL-6、MMP-1、MMP-9、およびNT-proBNPの血漿濃度の有意な減少が観察された(図5参照)。さらに臨床的に関連するマーカー、特にPTX-3およびIL-6の減少は、少なくとも病態生理学的GDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者のサブグループにおいて、化合物-02の治療効果があることを示す。
【0137】
実際、GDF-15の血漿濃度が1000ng/L以上の患者のサブグループでは、心房細動(AF)の再発の大幅な減少が観察された(図6参照)。さらに、電気的除細動後のAF再発の減少は用量依存的であった。これは、持続性AF患者、特に治療開始前のGDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者における化合物-02の治療効果を実証している。
【0138】
実施例3:化合物-02の抗動脈硬化作用
【0139】
化合物-02による冠動脈疾患に対する治療効果
【0140】
本発明者らは、GDF-15レベルを低下させることによる冠動脈疾患(CAD)の治療における化合物-02の可能性のある治療効果をさらに調査した。ペントラキシン-3(PTX-3)は、特にアテローム性動脈硬化性プラークの領域でマクロファージと血管平滑筋細胞によって生成される心臓炎症の既知のバイオマーカーである。PTX-3はプラーク不安定性のマーカーとしてもみなされており(Soeki et al., J Cardiol. 58:151-157. 2011)、したがって冠動脈疾患に関して臨床的に重要である。
【0141】
さらに、実施例2の研究では、化合物-02によるGDF-15の低下が、全身性慢性炎症(hs-CRP)および動脈硬化性プラーク脆弱性(PTX-3)の重要なバイオマーカーの低下、ならびに脂質代謝(HDL/LDL比)の改善と相関していることが示された(下の表2参照)。さらに、GDF-15の低下は、急性冠動脈症候群患者のリスク層別化マーカーであるNT-proBNPの減少(0.368)と相関していた。
【0142】
表2:時点比較ベースライン(V3)と治療終了時(V8);GDF-15が1000ng/L以上:化合物-02、全投与群合計;スピアマン順位相関デルタV8-V3(n=15)
【表2】
【0143】
アテローム性動脈硬化症の動物モデルにおける化合物-02による治療効果
【0144】
化合物-02の効果は、動脈硬化のよく知られた動物モデルである高脂肪食(HFD)を摂取している、破壊された低密度リポタンパク質受容体を持つマウス(LDLr-/-マウス)で調査された。これらのマウスは、対照群として標準的な飼料を与えられて飼育されたか、または動脈硬化性プラークの形成を増やすために12週間高脂肪食を与えられた。高脂肪食を与えられたマウスのグループは、3つの異なるグループに分けられ、(1)HFDのみ、(2)HFDとオメガ3酸エチルエステル(OMACOR)、(3)HFDと化合物-02が与えられた。OMACORは、魚油に自然に含まれるオメガ3脂肪酸であるエイコサペンタエン酸(EPA)とドコサヘキサエン酸(DHA)のエチルエステルである。25gのマウスの平均食事摂取量4gに基づいて、マウスに4g/kg/日のOMACORが与えられた。化合物-02は、25gマウスの平均食事摂取量4gに基づいて120mg/kg/日の用量で与えられた。すべてのグループには10匹のマウスが含まれていた(N=10)。
【0145】
標準的な飼料を与えた対照動物と比較して、HFDを与えられたマウスではPTX-3レベルが著しく増加し(図7A参照)、HFDを与えることによるリスクの増加が確認された。HFDとOMACORを摂取したマウスでも同様の増加が観察された。対照的に、化合物-02を補充したHFDを与えられたマウスでは、PTX-3レベルの増加は見られず、対照動物のレベルに留まった(図7A参照)。
【0146】
本発明者らはまた、化合物-02で治療したマウスで大動脈全体の病変が著しく減少したことを観察したが、これはこれらのマウスで観察された循環PTX-3レベルの増加の防止と一致している(図7B参照)。化合物-02を与えられたマウスでは、HFDのみを与えられたマウスと比較して、大動脈全体の病変サイズが約55%減少した。
【0147】
実施例2の臨床試験ですでに観察された、化合物-02による治療に対する心臓炎症のバイオマーカーであるPTX-3の減少は、アテローム性動脈硬化症の動物モデルでも観察された。さらに、化合物-02による治療はバイオマーカーのレベルを低下させただけでなく、より重要なことに病変のサイズを縮小させ、アテローム性動脈硬化症に対する治療活性を実証した。
【0148】
アテローム性動脈硬化症は、冠動脈疾患および末梢動脈疾患の最も一般的な根本的メカニズムである。
【0149】
実施例4:冠動脈疾患患者の心血管リスクの軽減
【0150】
観察されたGDF-15およびPTX-3レベルの減少に加えて、化合物-02は、実施例2で報告された臨床試験においてインターロイキン-6(IL-6)のレベルをさらに低下させた。最近、冠動脈疾患(CAD)患者における薬理学的介入によるIL-6レベルの低下は、脂質低下とは無関係に、心血管事象発生率の低下をもたらすことが示された(Ridker PM et al., EurHeart J 2018, 39:3499-3507)。CANTOS研究では、CADを患う4833人の患者が、IL-6経路を調節して循環IL-6レベルを低下させる抗IL-1β抗体カナキヌマブで治療された。
【0151】
CANTOS研究の患者では、循環血中のIL-6レベルが低下しており、プラセボ群と比較して主要な心臓関連有害事象(MACE)が32%減少したことが示された。したがって、CANTOS研究は、CAD患者のIL-6レベルを下げることで大きな治療効果が得られるという概念を臨床的に証明する研究である。注目すべきことに、このIL-6低下の効果は脂質低下効果とは無関係であることがわかった。
【0152】
したがって、実施例の臨床試験において化合物-02による治療に反応してIL-6レベルが25~40%大幅に減少したことは、化合物-02が少なくともMACE発生率を低下させることによってCAD患者に治療効果をもたらすことを示している。
【0153】
実施例5:化合物-02による治療は心不全のリスクを低下させる
【0154】
実施例2の臨床試験のGDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者サブグループをさらに分析したところ、化合物-02による治療によりGDF-15レベルが低下したことに応じて心不全のマーカーが減少することが明らかになった。
【0155】
具体的には、化合物-02によるGDF-15血漿濃度の低下は、心不全における現在のゴールドスタンダードバイオマーカーであるN末端プロB型ナトリウム利尿ペプチド(NT-proBNP)(McKie et al., J Am Coll Cardiol, 2016 Dec6;68(22):2437-2439参照)の低下と相関している。ベースライン(V3)と治療終了(V8)の時点比較では、GDF-15レベルとNT-proBNPの相関が示された(下の表3参照)。
【0156】
表3:時点比較ベースライン(V3)と治療終了時(V8);GDF-15が1000ng/L以上:化合物-02、全投与群合計;スピアマン順位相関デルタV8-V3(n=26)
【表3】
【0157】
実施例6:化合物-02による治療は糖尿病を改善する
【0158】
GDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者サブグループをさらに分析したところ、糖尿病の治療において化合物-02によるGDF-15レベルの低下に治療効果があることが明らかになった。
【0159】
ベースライン(V3)と治療終了(V8)のパラメーターの時点比較により、GDF-15レベルの低下とHbA1cの低下の間に相関関係があることが明らかになった(下の表4参照)。糖化ヘモグロビンは糖化によってヘモグロビンに糖が結合した産物である。糖化ヘモグロビン(HbA1c)の量の増加は、血糖値が過剰であることを示す。赤血球の平均寿命は約3か月であるため、HbA1cの量は過去8~12週間の平均血糖値を反映する。これは糖尿病管理において最も広く使用されているマーカーであり、レベルの低下は血糖コントロールの改善を示し、糖尿病の長期的な影響を軽減するために必要である。したがって、観察されたHbA1cの減少は、化合物-02による治療によってGDF-15レベルを下げることによる治療上の利点を示す。
【0160】
化合物-02による糖尿病治療における治療効果は、化合物-02による治療に反応してGDF-15レベルが低下することで、全身性慢性炎症および血管疾患の重要なバイオマーカー(hs-CRP、IL-6、PTX-3)が減少するという発見によってさらに裏付けられている。
【0161】
表4:時点比較ベースライン(V3)と治療終了時(V8);GDF-15が1000ng/L以上:化合物-02、全投与群合計;スピアマン順位相関デルタV8-V3(n=15)
【表4】
【0162】
実施例7:化合物-02による治療は脂質異常症を改善する
【0163】
GDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者サブグループをさらに分析したところ、化合物-02を介したGDF-15レベルの低下が、脂質異常症の治療に治療効果があることが明らかになった。
【0164】
脂質異常症は脂質(例えば、トリグリセリド、コレステロール、特にLDL)の増加を特徴とし、冠動脈疾患や末梢動脈疾患を含む心血管疾患やメタボリックシンドロームの発症の危険因子となる。
【0165】
GDF-15血漿濃度が1000ng/L以上の患者サブグループでは、化合物-02による治療によりGDF-15レベルが低下したことに応じて、HDL/LDL比が改善することが観察された(上の表2参照)。さらに、トリグリセリドのレベルと化合物-02による治療に対するGDF-15値の減少との間に相関関係が認められ(上の表4参照)、これは脂質異常症の治療における治療効果を裏付ける。
【0166】
図面の用語
Cardioversion電気除細動
Screening スクリーニング
Day 日
after last dose 最後の投与後
Insertion of ICM ICMの挿入
Treatment phase 治療段階
Continuous Monitoring 継続的なモニタリング
GDF-15 levels in study population研究対象集団におけるGDF1-15レベル
Age(year) 年齢(年)
GDF-15 at V3 V3でのGDF1-15
Delta GDF-15 level デルタGDF1-15レベル
Placebo プラセボ
Compound-02 化合物-02
Change in GDF-15 from Baseline to End-of-Treatment (3 months) ベースラインから治療終了まで(3ヶ月)のGDF1-15の変化
Selected population 選択された対象群
Persistent AF patients with GDF-15 baseline values ≧1000ng/L GDF1-15ベースライン値が1000ng/L以上の持続性AF患者
Group 群
N number N数
Median 中央値
CI of Median 中央値の信頼区間
Median (Quartiles) of Differences 差異の中央値(四分位数)
p-value p値
Comparison vs. Placebo プラセボとの比較
Comparison V3 vs. V8 V3とV8の比較
Median effect size 中央効果サイズ
Wilcoxon test without adjustment 調整なしのウィルコクソン検定
Wilcoxon paired test ウィルコクソンのペア検定
Treatment 治療
ALL 全て
Median effect sizes and timepoint comparison statistics中央効果サイズと時点比較統計
Subgroup of GDF-15 ≧1000 ng/L GDF1-15が1000ng/L以上のサブグループ
Biomarkers バイオマーカー
For analyzing timepoint comparisons (delta V8-V3), paired Wilcozon test wasused
see below 下参照
colour code for p-value p値のカラーコード
Significant increase 有意な増加
Significant decrease 有意な減少
No change 変化なし
Trend in increase 増加傾向
Trend in decrease 減少傾向
Recurrence of AF (Yes/No) AFの再発(はい/いいえ)
Lesions in whole aorta 大動脈全体の病変
Control 対照
Kruskal-Wallis with Dunn’s multiple comparisons test Kruskal-WallisとDunnの多重比較検定
One-way ANOVA with Dunnett’s multiple comparisons testダネットの多重比較検定による1元配置分散分析
Change in IL-6 from Baseline to End-of-Treatment (3 months) ベースラインから治療終了まで(3ヶ月)のIL-6の変化
Change in PTX-3 from Baseline to End-of-Treatment (3 months) ベースラインから治療終了まで(3ヶ月)のPTX-3の変化
Change in hsCRP from Baseline to End-of-Treatment (3 months) ベースラインから治療終了まで(3ヶ月)のhsCRPの変化
図1
図2
図3
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図5
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図9
図10
【国際調査報告】