(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】IL-12及びIL-1RAの発現のための組成物と方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/24 20060101AFI20241108BHJP
C12N 15/83 20060101ALI20241108BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241108BHJP
C12N 5/071 20100101ALI20241108BHJP
C12N 5/07 20100101ALI20241108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241108BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 9/127 20060101ALI20241108BHJP
A61K 9/14 20060101ALI20241108BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20241108BHJP
A61K 47/44 20170101ALI20241108BHJP
【FI】
C12N15/24
C12N15/83 Z ZNA
C12N5/10
C12N5/071
C12N5/07
A61P43/00 111
A61P35/00
A61P37/04
A61P31/00
A61P43/00 121
A61K48/00
A61K45/00
A61K9/127
A61K9/14
A61K9/08
A61K47/44
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531600
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022080521
(87)【国際公開番号】W WO2023097318
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】523031024
【氏名又は名称】リプリケイト バイオサイエンス,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100138210
【氏名又は名称】池田 達則
(74)【代理人】
【識別番号】100170852
【氏名又は名称】白樫 依子
(72)【発明者】
【氏名】ナサニエル スティーブン ワン
(72)【発明者】
【氏名】シゲキ ジョーセフ ミヤケ-ストーナー
(72)【発明者】
【氏名】パリナズ アリアマド
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AA95Y
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4C076AA11
4C076AA19
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4C084ZB312
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC751
(57)【要約】
本開示は、分子ウイルス学の分野に関し、特に、修飾アルファウイルスのウイルスゲノム又は自己複製RNA(srRNA)構築物をコードする核酸分子、それを含む医薬組成物、及び細胞培養又は生体における所望の生成物の産生のためのそのような核酸分子及び組成物の使用に関する。また、被験体において薬力学的作用を誘導する方法も提供される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
修飾アルファウイルスゲノム又は自己複製RNA(srRNA)をコードする核酸配列を含む核酸構築物であって、前記修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部が、
a)インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列;
b)インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列;及び
c)インターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列、を含むポリペプチド構築物のコード配列で置換されており、
ここで、IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAのコード配列が、互いに作動可能に連結されている、核酸構築物。
【請求項2】
前記修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAがウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項3】
前記(a)~(c)のコード配列が単一のオープンリーディングフレーム内(すなわち、ポリシストロン性ORF内)で互いに作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項4】
前記ポリペプチド構築物をコードする核酸配列がプロモーター配列に作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項5】
前記プロモーター配列が26Sサブゲノム(sg)プロモーターである、請求項4に記載の核酸構築物。
【請求項6】
前記(a)~(c)のコード配列が、自己タンパク質分解性ペプチド又は内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする1つ又はそれ以上のコネクタ配列によって互いに作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項7】
請求項6に記載の核酸構築物であって、前記自己タンパク質分解性ペプチドが、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼ(furin)、豚テシオウイルス1 2A(P2A)、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、トーセア・アシグナウイルス2A(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2A(BmCPV2A)、軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)、又はこれらの組み合わせからの1つ又はそれ以上の自己タンパク質分解切断配列を含む、核酸構築物。
【請求項8】
請求項6に記載の核酸構築物であって、前記内部リボソーム進入部位(IRES)が、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)IRES、肝炎ウイルスIRES、ペスティウイルスIRES、クリパウイルスIRES、ロパロシフム・パディウイルスIRES、線維芽細胞増殖因子IRES、血小板由来増殖因子IRES、血管内皮増殖因子IRES、インスリン様増殖因子IRES、ピコルナウイルスIRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、Pim-1 IRES、p53 IRES、Apaf-1 IRES、TDP2 IRES、L-myc IRES、及びc-myc IRES由来である、核酸構築物。
【請求項9】
前記修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAが、VEEV/EEEVグループ、又はSFVグループ、又はSINVグループに属するアルファウイルスのものである、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項10】
前記アルファウイルスが、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEEV)、東部馬脳炎ウイルス(EEEV)、チクングニアウイルス(CHIKV)、又はシンドビスウイルス(SINV)である、請求項9に記載の核酸構築物。
【請求項11】
前記ポリペプチド構築物がN末端からC末端の方向に、
a)IL-12Aポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-1RAポリペプチド;又は、
b)IL-1RAポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-12Aポリペプチドを含み、
ここで、IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAポリペプチドは、1つ又はそれ以上の自己タンパク質分解切断配列又は内部リボソーム進入部位によって互いに作動可能に連結されている、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項12】
前記核酸配列が、配列番号10の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する、請求項1に記載の核酸構築物。
【請求項13】
請求項1に記載の核酸構築物を含む組換え細胞。
【請求項14】
前記組換え細胞が哺乳類細胞又は昆虫細胞である、請求項13に記載の組換え細胞。
【請求項15】
医薬的に許容し得る賦形剤と請求項1に記載の核酸構築物とを含む医薬組成物。
【請求項16】
前記組成物が送達ビヒクルとともに送達システムに配合されており、ここで、前記送達システムが、リポソーム、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、生理学的緩衝液、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドの結合体、又はこれらの任意の組み合わせを含む、請求項15に記載の医薬組成物。
【請求項17】
前記LNP送達システムが、カチオン性脂質、イオン化可能カチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質を含む、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項18】
前記脂質が、脂質対RNAの質量比が約100:1~約4:1で存在する、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項19】
前記脂質ベースのナノ粒子の平均直径が約25nm~約1000nmである、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項20】
前記組成物がバイオ治療薬として配合される、請求項16に記載の医薬組成物。
【請求項21】
被験体に、請求項1に記載の核酸構築物を含む組成物を投与することを含む、被験体において少なくとも1つの薬力学的作用を誘導する方法。
【請求項22】
前記投与された組成物が、免疫応答及びインターフェロンガンマ(IFNγ)などのメディエーターのうちの1つ又はそれ以上の誘導産生をもたらす、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの薬力学的作用が、免疫原性作用、バイオマーカー応答、治療作用、予防作用、所望の作用、望ましくない作用、有害作用、及び疾患モデルにおける作用のうちの1つ又はそれ以上を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記投与された組成物が腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫を増強する、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
前記被験体が癌、免疫疾患、又は慢性感染症を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物が、単一療法(単独療法)として又は少なくとも1つの追加療法と組み合わせた第1療法として、前記被験体に個別に投与される、請求項21に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2021年11月29日に出願された米国特許出願第17/537,211号の優先権を主張する。上記参照出願の開示は、図面を含め、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0002】
分野
本開示は、分子ウイルス学及び免疫学の分野に関し、特に、修飾アルファウイルスのウイルスゲノム及び自己複製RNA(srRNA)をコードする核酸分子の使用、それを含む医薬組成物、並びに細胞培養又は生体内での所望の生成物の産生のためのそのような核酸分子及び組成物の使用に関する。また、被験体において少なくとも1つの薬力学的作用を誘導する方法も提供される。
【0003】
配列表の組み込み
添付の配列表の資料は、参照により本出願に組み込まれる。添付の配列表ファイル(名前:058462-508001WO_Sequence Listing_ST26.xml)は、2022年11月28日に作成され、サイズは35KBである。
【背景技術】
【0004】
背景
インターロイキン-12(IL-12)は、食細胞、B細胞、活性化樹状細胞などの免疫系のさまざまな細胞による感染に応答して生成される多面的な炎症誘導性サイトカインである(Colombo and Trinchieri (2002), Cytokine & Growth Factor Reviews, 13: 155-168)。IL-12は、免疫系の自然及び適応的アームの相互作用を媒介する上で重要な役割を果たし、T細胞及びナチュラルキラー(NK)細胞に作用し、細胞傷害性リンパ球の増殖と活性、並びに他の炎症性サイトカイン、特にインターフェロン-γの産生を増強する。IL-12は、ジスルフィド結合によって共有結合したα鎖(p35サブユニット、IL-12A)とβ鎖(p40サブユニット、IL-12B)からなるヘテロ二量体分子であり、生物学的に活性な74kDaヘテロ二量体を形成する。
【0005】
内因性IL-12の存在は、広範な病原体並びに移植された及び化学的に誘導された腫瘍に対する免疫学的抵抗性にも必要であることが示されている(Gateley et al. (1998), Annu. Rev. Immunol., 16: 495-521)。IL-12は、IFN-γの誘導とCD8+T細胞やNK細胞などのエフェクター細胞の活性化に基づく強力な抗腫瘍活性を有することが証明されている(Brunda ef al. (1993), J. Exp. Med., 178: 1223-30)。IL-12に応答してT細胞とNK細胞によって高レベルのIFN-γが産生され(Kobayashi et al., 1989, J Exp Med; 170: 827-45)、MHCクラスI及びクラスII発現の傍分泌アップレギュレーションを介して抗原提示が強化される(Wallach et al., 1982 Nature 1982;299:833-69)。IL-12は、その抗腫瘍活性が証明されているため、ヒトの臨床試験で、腎臓癌、大腸癌、卵巣癌、黒色腫、T細胞リンパ腫などのさまざまな癌の治療のための免疫療法剤として(Atkins et al. (1997), Clin. Cancer Res., 3: 409-17; Gollob et al. (2000), Clin. Cancer Res., 6: 1678-92; and Hurteau et al. (2001), Gynecol. Oncol., 82: 7-10)、及び癌ワクチンのアジュバントとして(Lee et al. (2001), J. Clin. Oncol. 19: 3836-47)試験されている。
【0006】
IL-12の全身投与は、主にいくつかの固形腫瘍に対して有効性を示しているが、用量制限毒性があるため、治療での使用は限られている(Gollob et al., 2000, Clin. Cancer Res. 6:1678-1692)。初期の臨床開発から10年以上経過しているが、組み換えIL-12に対する重篤な毒性と全般的な応答率の低さの症例が記録されているため、これまで臨床開発は行われていない。
【0007】
インターロイキン-1も免疫応答において重要であるが、大きな関心を集めているのはこのサイトカインの阻害である。IL-1の作用形式は、インターロイキン-1受容体拮抗剤タンパク質(IL-1ra;「IRAP」としても知られている)によって媒介される。IL-1raは、細胞表面のIL-1と同じ受容体に結合し、従ってIL-1がその細胞にシグナルを送るのを妨害する。IL-1raは、白血球、例えば単球、マクロファージ、好中球、多形核細胞(PMN)、及びその他の細胞から分泌され、Arend W P, Malyak M, Guthridge C J, Gabay C (1998) “Interleukin-1 receptor antagonist: role in biology” Annu Rev. Immunol. 16:27-55 に記載されているように、さまざまなIL-1関連免疫及び炎症応答を調節することができる。IL-1raの産生は、接着性免疫グロブリンG(IgG)、その他のサイトカイン、細菌又はウイルス成分などのいくつかの物質によって刺激される。IL-1raは、関節炎、大腸炎、肉芽腫性肺疾患における重要な天然の抗炎症タンパク質である。
【0008】
IL-1raは、IL-1が重要な役割を果たす自己免疫疾患であるリウマチ様関節炎の治療に使用して、疾患に伴う炎症及び軟骨劣化を軽減することができる。例えば、Kineret(商標)(アナキンラ(anakinra))は、IL-1raの組み換え非グリコシル化型である(Amgen Manufacturing, Ltd., Thousand Oaks, Calif.)。様々な組み換えインターロイキン-1阻害剤及び治療方法が、2003年7月29日に発行されたSommer et al.の米国特許第6,599,873号;1991年12月24日に発行されたHannum et al.の米国特許第5,075,222号;及び2005年9月8日に公開されたMellis et al. の米国特許出願公開第2005/0197293号に記載されている。さらに、自己液の使用を含む体液からのIL-1raの産生方法は、2003年9月23日に発行された Reineke et al.の米国特許第6,623,472号;2004年3月30日に発行された Reinecke et al.の米国特許第6,713,246号;及び2004年7月6日に発行された Reineke et al.の米国特許第6,759,188号に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
2000年8月1日に発行された Collins et al.の米国特許第6,096,728号に記載されているように、IL-1raはヒアルロン酸との組成物の一部として送達されている。しかし、このような方法及び組成物の多くは、IL-1raの安定性及び半減期、並びに提供されるIL-1raの量及び速度に関する問題を伴う。従って、IL-1raを送達するための改良された組成物及び方法が望まれている。
【0010】
本明細書で提供される開示は、IL-12及びIL-1RAを送達するための以前の試みに存在する問題に対する解決策を提供し、癌や感染症を含む状態の治療のための改良された方法を提供できる可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
要約
本開示は、一般に、さまざまな健康状態の予防及び管理に使用するための、組み換え核酸構築物及びそれを含む医薬組成物などの免疫治療薬の開発に関する。特に、以下でより詳細に説明するように、本開示のいくつかの実施態様は、修飾アルファウイルスゲノム又は自己複製RNA(srRNA)をコードする配列を含む核酸構築物を提供し、ここで、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部は、a)インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列、b)インターロイキン12のサブユニット40(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列、及びc)インターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列を含むポリペプチド構築物のコード配列で置換されている。また、本明細書に開示された核酸構築物の1つ又はそれ以上を含むように工学操作された組み換え細胞、目的の分子を生成する方法、及び以下の1つ又はそれ以上を含む医薬組成物も開示される:(a)本開示の核酸構築物、(b)本開示の組み換え細胞、又は(c)本開示の医薬組成物。さらに、本開示の特定の態様において、被験体に少なくとも1つの薬力学的作用を誘導するための組成物及び方法が提供される。前述の概要は例示のみを目的としており、いかなる形でも限定する意図はない。本明細書に記載された例示的な実施態様及び特徴に加えて、本開示のさらなる態様、実施態様、目的、及び特徴は、図面、詳細な説明、及び請求項から完全に明らかになるであろう。
【0012】
本開示の1つの態様において、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAをコードする核酸配列を含む核酸構築物が本明細書に提供され、ここで、前記修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部は、a)インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列、b)インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列、c)インターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列を含むポリペプチド構築物のコード配列で置換されており、ここで、IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAのコード配列は互いに作動可能に連結されている。
【0013】
いくつかの実施態様において、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAは、ウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない。
【0014】
いくつかの実施態様において、修飾アルファウイルス又はsrRNAをコードする核酸配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施態様において、プロモーター配列は26Sサブゲノム(sg)プロモーターである。
【0015】
いくつかの実施態様において、(a)~(c)のコード配列は、単一のオープンリーディングフレーム内(すなわち、ポリシストロン性ORF内)で互いに作動可能に連結されている。
【0016】
いくつかの実施態様において、(a)~(c)のコード配列は、自己タンパク質分解性ペプチド(autoproteolytic peptide)又は内部リボソーム進入部位(IRES)をコードする1つ又はそれ以上のコネクタ配列によって互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施態様において、自己タンパク質分解性ペプチドは、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼ(furin)、豚テシオウイルス(porcine teschovirus)1 2A(P2A)、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、トーセア・アシグナウイルス(Thosea asigna virus)2A(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2A(BmCPV2A)、軟化病ウイルス(Flacherie virus)2A(BmIFV2A)、又はこれらの組み合わせからの1つ又はそれ以上の自己タンパク質分解切断配列を含む。いくつかの実施態様において、IRESは、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)IRES、肝炎ウイルスIRES、ペスティウイルス(Pestivirus)IRES、クリパウイルス(Cripavirus)IRES、ロパロシフム(Rhopalosiphum)パディウイルスIRES、線維芽細胞増殖因子IRES、血小板由来増殖因子IRES、血管内皮増殖因子IRES、インスリン様増殖因子IRES、ピコルナウイルスIRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、Pim-1 IRES、p53 IRES、Apaf-1 IRES、TDP2 IRES、L-myc IRES、及びc-myc IRESに由来する。
【0017】
いくつかの実施態様において、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAは、VEEV/EEEVグループ、SFVグループ、又はSINVグループに属するアルファウイルスのものである。
【0018】
いくつかの実施態様において、ポリペプチド構築物は、N末端からC末端の方向に、a)IL-12Aポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-1RAポリペプチド、又はb)IL-1RAポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-12Aポリペプチドを含み、ここで、IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAポリペプチドは、1つ又はそれ以上の自己タンパク質分解切断配列又は内部リボソーム進入部位によって互いに作動可能に連結されている。
【0019】
いくつかの実施態様において、前記核酸配列は、配列番号10に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0020】
1つの態様において、本明細書に開示される核酸構築物を含む組換え細胞が提供される。いくつかの実施態様において、組換え細胞は、哺乳動物細胞又は昆虫細胞である。
【0021】
さらに別の態様において、医薬的に許容し得る賦形剤と本開示の核酸構築物とを含む医薬組成物が本明細書に提供される。
【0022】
いくつかの実施態様において、組成物は送達ビヒクルとともに送達システムに配合され、送達システムは、リポソーム、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、生理学的緩衝液、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドの結合体、又はこれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施態様において、LNP送達システムは、カチオン性脂質、イオン化可能カチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質を含む。いくつかの実施態様において、脂質は、脂質とRNAの質量比が約100:1~約4:1で存在する。いくつかの実施態様において、脂質ベースのナノ粒子の平均直径は約25nm~約1000nmである。いくつかの実施態様において、組成物はバイオ治療薬として配合される。
【0023】
別の態様において、本明細書では、被験体において少なくとも1つの薬力学的作用を誘導する方法が提供される。この方法は、被験体に本開示の核酸構築物を含む組成物を投与することを含む。いくつかの実施態様において、投与された組成物は、免疫応答及びインターフェロンガンマ(IFNγ)などのメディエーターのうちの1つ又はそれ以上の誘導産生をもたらす。いくつかの実施態様において、少なくとも1つの薬力学的作用は、免疫原性作用、バイオマーカー応答、治療作用、予防作用、所望の作用、望ましくない作用、有害作用、及び疾患モデルにおける作用のうちの1つ又はそれ以上を含む。いくつかの実施態様において、投与された組成物は腫瘍微小環境における抗腫瘍免疫を増強する。いくつかの実施態様において、被験体は癌、免疫疾患、又は慢性感染症を患っている。いくつかの実施態様において、組成物は、単一療法(単剤療法)として又は少なくとも1つの追加療法と組み合わせた第1療法として、被験体に個別に投与される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本開示の特徴は、添付の特許請求の範囲に詳細に記載されている。本開示の特徴及び利点は、本開示の原理が利用されている例示的な実施態様を示す以下の詳細な説明及び添付の図面を参照することによって、さらに良く理解されるであろう。
【0025】
【
図1A-1B】
図1A~1Bは、一遺伝子(monogenic)及び複遺伝子(multigenic)VEE srRNA構築物からのインビトロのタンパク質発現のグラフ表示である。各srRNA構築物でトランスフェクトされたBHK-21細胞の上清を使用して、ELISAによってタンパク質発現を測定した。
図1Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
図1Bは、IL-RA ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
【0026】
【
図2A-2B】
図2A~2Bは、VEEにおける一遺伝子及び複遺伝子構築物からのインビトロのタンパク質生物活性のグラフ表示である。各srRNA構築物でトランスフェクトされたBHK-21細胞の上清を使用して、同族受容体を発現するレポーター細胞上のサイトカインのタンパク質生物活性を測定した。
図2Aは、IL-12バイオアッセイの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
図2Bは、IL-1RA生物活性アッセイの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
【0027】
【
図3】
図3は、srRNA構築物からのIL-12生物活性とIL-1RA発現データを組み合わせたグラフ表示である。
【0028】
【
図4A-4B】
図4A~4Bは、6つの異なるsrRNAベクターにクローン化された2つの最良の複遺伝子構成物からのタンパク質発現のグラフ表示である。
図4Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
図4Bは、IL-RA ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
【0029】
【
図5A-5B】
図5A~5Bは、6つの異なるsrRNAベクターにクローン化された2つの最良の複遺伝子構成物からのタンパク質生物活性のグラフ表示である。
図5Aは、IL-12バイオアッセイの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
図5Bは、IL-RAバイオアッセイの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
【0030】
【
図6】
図6は、6つの異なるsrRNAベクターの2つの最良の複遺伝子構成物のIL-12及びIL-1RA生物活性をまとめたグラフ表示である。
【0031】
【
図7A-7B】
図7A~7Bは、6つの異なるsrRNAベクター中の2つの最良の複遺伝子構成物によるマウス血清中のインビボのタンパク質発現のグラフ表示である。
図7Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構築物を示す。
図7Bは、IL-1RA ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構成物を示す。
【0032】
【
図8A-8B】
図8A~8Bは、最適なsrRNA構成物のさまざまな配合物からのインビボのタンパク質発現のグラフ表示である。
図8Aは、IL-12 ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構成物と配合物を示す。
図8Bは、IL-1RA ELISAの結果を示す。x軸は、試験されたさまざまな構成物と配合物を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
開示の詳細な説明
本開示は、一般的に、癌、免疫疾患、慢性感染症などのヒト疾患の治療を目的とした、インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)、インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)、及びインターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)の変種を発現する核酸構築物に関する。これらの構築物は、これまでに証明されている用量制限毒性の問題による、組換えサイトカイン投与などの治療法の問題に対処している。本明細書では、特に、インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列、インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列、及びインターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列を組換え細胞で発現するのに適した、優れた発現能力を有する遺伝子発現システムが提供される。例えば、本開示のいくつかの実施態様は、例えば以下のような核酸構築物に関する:修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部が、インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列、インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列、及びインターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列に置換されている、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAを含む発現構築物及びベクター。さらに、本明細書に開示される核酸分子の1つ又はそれ以上を含むように遺伝子操作された組み換え細胞も提供される。このような組み換え細胞から得られる生体材料及び組み換え生成物も、本出願の範囲内である。また、それを必要とする被験体において、癌の薬力学的作用を引き出すのに有用な組成物及び方法も提供される。
【0034】
本明細書で使用されているセクションの見出しは、構成目的のみであり、記載されている主題を制限するものと解釈されるべきではない。
【0035】
本開示のさまざまな特徴は、単一の実施態様の文脈で説明することができるが、特徴は別々に、又は任意の適切な組み合わせで提供することもできる。逆に、本開示は、明確さのために、本明細書で別々の実施態様の文脈で説明することができるが、本開示は単一の実施態様で実施することもできる。
【0036】
定義
特に他に明記されない限り、本明細書で使用されているすべての専門用語、表記法、及びその他の科学用語又は専門用語は、本出願が関係する技術分野の当業者によって一般的に理解されている意味を有することを意図している。場合によっては、一般的に理解されている意味を有する用語が、明確さ及び/又は参照しやすさのために本明細書で定義されており、本明細書でそのような定義が含まれていることは、必ずしも当該技術分野で一般的に理解されているものとは大幅に異なることを意味するものではない。本明細書で説明又は参照されている技術及び操作の多くは、当業者によって従来の方法論を使用して十分に理解され、一般的に使用されている。
【0037】
単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに別の意味がない限り、複数形も含む。例えば「ある細胞(a cell)」という用語には、それらの混合物を含む1つ又はそれ以上の細胞が含まれる。「A及び/又はB」は、本明細書では、次のすべての選択肢を含むために使用される:「A」、「B」、「A又はB」、及び「A及びB」。
【0038】
本明細書で使用される用語「投与」及び「投与する」は、限定されるものではないが、鼻腔内、経皮、静脈内、動脈内、筋肉内、節内、腹腔内、皮下、筋肉内、経口、膣内、及び局所投与、又はこれらの組み合わせを含む投与経路による生物活性組成物又は製剤の送達を指す。この用語には、限定されるものではないが、医療専門家による投与及び自己投与が含まれる。
【0039】
用語「細胞」、「細胞培養物」、及び「細胞株」は、特定の対象細胞、細胞培養物、又は細胞株だけでなく、培養における移植又は継代の数に関係なく、そのような細胞、細胞培養物、又は細胞株の子孫又は潜在的な子孫も指す。すべての子孫が親細胞とまったく同一であるとは限らないことを理解されたい。これは、突然変異(例えば意図的な又は予想外の突然変異)又は環境の影響(例えばメチル化又はその他のエピジェネティックな修飾)のいずれかにより、後続の世代で特定の修飾が発生する可能性があるためであり、その結果、子孫は実際には親細胞と同一ではない可能性があるが、子孫が元の細胞、細胞培養物、又は細胞株と同じ機能を保持している限り、本明細書で使用される用語の範囲内に依然として含まれる。
【0040】
用語「構築物」は、異種起源の1つ又はそれ以上の核酸配列又はアミノ酸配列を含む組換え分子、例えば組換え核酸又はポリペプチドを指す。例えば、ポリペプチド構築物は、異なる起源の2つ又はそれ以上のアミノ酸配列が単一のポリペプチド構築物内で互いに作動可能に連結されているキメラポリペプチド分子であり得る。同様に、核酸構築物は、異なる起源の2つ又はそれ以上の核酸配列が単一の核酸分子に組み立てられているキメラ核酸分子であり得る。代表的な核酸構成物には、プラスミド、コスミド、ウイルス、自律複製ポリヌクレオチド分子、ファージなどの任意の供給源から得られた、ゲノム組み込み又は自律複製が可能で、1つ又はそれ以上の核酸配列が作動可能に連結された核酸分子を含む任意の組換え核酸分子、線状又は環状、一本鎖又は二本鎖のDNA若しくはRNA核酸分子が含まれる。2つ又はそれ以上の核酸構成物は、単一のベクターなどの単一の核酸分子内に含めることができ、又は2つ又はそれ以上の別々のベクターなどの2つ又はそれ以上の別々の核酸分子内に含めることができる。
【0041】
本明細書で使用される用語「作動可能に連結された」は、2つ又はそれ以上の要素、例えばポリペプチド配列又はポリヌクレオチド配列間の物理的又は機能的な連結を示し、これにより、これらの要素が意図された様式で作動することを可能にする。例えば、本明細書に記載される核酸分子又は核酸分子内のコード配列及びプロモーター配列の文脈で使用される用語「作動可能に連結された」は、コード配列及びプロモーター配列が、転写因子又はRNAポリメラーゼによるそれぞれの結合が転写に及ぼす影響を可能にするためにインフレームであり、空間的及び距離的に適切であることを意味する。作動可能に連結された要素は、連続的又は非連続的(例えばリンカーを介して互いに連結)であってもよいことを理解されたい。ポリペプチド構築物の文脈では、「作動可能に連結された」は、構築物の記載された活性を提供するために、アミノ酸配列(例えば異なるセグメント、部分、領域、又はドメイン)間の物理的連結(例えば直接的又は間接的連結)を指す。本明細書に開示されるポリペプチド又は核酸分子の作動可能に連結されたセグメント、部分、領域、及びドメインは、連続的であっても非連続的(例えばリンカーを介して互いに連結)であってもよい。
【0042】
開示の組成物、例えば核酸構築物、srRNA、組み換え細胞、及び/又は医薬組成物の「有効量」、「治療有効量」、又は「医薬的有効量」という用語は、一般に、組成物が存在しない場合と比較して、組成物が規定の目的を達成するのに十分な量を指す(例えば投与されることの効果を達成する、免疫応答を刺激する、疾患を予防又は治療する、又は疾患、障害、感染、又は健康状態の1つ又はそれ以上の症状を軽減する)。「有効量」の例は、疾患の1つ又はそれ以上の症状の治療、予防、又は軽減に寄与するのに十分な量であり、「治療有効量」とも呼ばれる。症状の「軽減」とは、症状の重症度又は頻度の減少、又は症状の消失を意味する。「治療有効量」を含む組成物の正確な量は、治療の目的によって異なり、当業者であれば既知の技術を使用して確認することができるであろう(例えばLieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999); 及び Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照)。
【0043】
本明細書で使用される「部分(portion)」という用語は、小部分(fraction)を指す。ポリヌクレオチド配列又はアミノ酸配列又はタンパク質などの特定の構造に関して、その「部分」という用語は、前記構造の連続した部分又は不連続な部分を指す場合がある。例えば、アミノ酸配列の部分は、前記アミノ酸配列のアミノ酸の少なくとも1%、少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、及び少なくとも90%を含む。さらに又は代わりに、部分が不連続な部分である場合、前記不連続な部分は、構造の2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上の部分(例えばタンパク質のドメイン)で構成され、各部分は構造の連続要素である。例えば、アミノ酸配列の不連続部分は、前記アミノ酸配列の2、3、4、5、6、7、8、又はそれ以上、例えば4つ以下の部分から構成されることができ、ここで、各部分は、アミノ酸配列の少なくとも1、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5つの連続したアミノ酸、少なくとも10の連続したアミノ酸、少なくとも20の連続したアミノ酸、又は少なくとも30の連続したアミノ酸を含む。
【0044】
値の範囲が提供される場合、文脈が明確に別段の定めをしない限り、その範囲の上限と下限の間と、その規定された範囲内のその他の規定値又は介在値との間の各介在値は、下限値の10分の1単位まで本開示の範囲内に含まれることが理解される。これらのより小さい範囲の上限及び下限は、独立してより小さい範囲に含まれ得、規定された範囲内の具体的に除外された制限を条件として、本開示の範囲内にも含まれる。記載された範囲に限界値の一方又は両方が含まれる場合、含まれる限界値の一方又は両方を除外した範囲も本開示に含まれる。
【0045】
本明細書では、数値の前に「約」という用語を付して特定の範囲を提示している。「約」という用語は、その後に付された正確な数値、及びその用語の後に付された数値に近い又は近似する数値を文字通り裏付けるために本明細書で使用されている。数値が具体的に記載された数値に近いか近似するかを判断する際に、近い又は近似する記載されていない数値は、それが提示される文脈において、具体的に記載された数値と実質的に同等である数値であってもよい。近似の程度が文脈から明らかでない場合、「約」は、提供された値のプラス又はマイナス10%以内、又は提供された値を含むすべての場合において最も近い有効数字に丸められた数値を意味する。いくつかの実施態様において、「約」という用語は、指定された値±10%まで、±5%まで、又は±1%までを示す。
【0046】
本明細書において2つ又はそれ以上の核酸又はタンパク質の文脈で使用される用語「同一性パーセント」は、以下に記載するデフォルトパラメータを用いたBLAST又はBLAST2.0配列比較アルゴリズムを使用して、又は用手法的整列及び目視検査によって測定された、同じであるか又は同じヌクレオチド又はアミノ酸の特定のパーセント(例えば比較ウィンドウ又は指定領域にわたって最大一致のために比較及び整列した場合、特定の領域にわたって約60%の配列同一性、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上の同一性)を有する2つ又はそれ以上の配列又は部分配列を指す。例えば、NCBIウェブサイトncbi.nlm.nih.gov/BLASTを参照のこと。従ってそのような配列は「実質的に同一」であると言われる。この定義はまた、配列の相補体を指すか又は相補体に適用することもできる。この定義には、欠失及び/又は付加、並びに置換を含む配列も含まれる。配列同一性は、公開されている手法や、広く入手可能なコンピュータプログラム、例えばGCSプログラムパッケージ(Devereux et al, Nucleic Acids Res. 12:387, 1984)、BLASTP、BLASTN、FASTA (Atschul et al., J Mol Biol 215:403, 1990)を使用して計算することができる。配列同一性は、ウィスコンシン大学バイオテクノロジーセンター(1710 University Avenue, Madison, Wis. 53705)のGenetics Computer GroupのSequence Analysis Software Packageなどの配列分析ソフトウェアを、そのデフォルトパラメータを使用して測定することができる。
【0047】
本明細書で使用される用語「医薬的に許容し得る賦形剤」は、目的の化合物を被験体に投与するための医薬的に許容し得る担体、添加剤、又は希釈剤を提供する任意の適切な物質を指す。従って「医薬的に許容し得る賦形剤」は、医薬的に許容し得る希釈剤、医薬的に許容し得る添加剤、及び医薬的に許容し得る担体と呼ばれる物質を包含することができる。本明細書で使用される用語「医薬的に許容し得る担体」には、限定されるものではないが、食塩水、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗菌剤及び抗真菌剤、等張剤及び吸収遅延剤などの医薬投与に適合するものが含まれる。補助的な活性化合物(例えば抗生物質及び追加の治療薬)も組成物に組み込むことができる。
【0048】
細胞、核酸、タンパク質、又はベクターに関して使用される「組み換え」という用語は、細胞、核酸、タンパク質、又はベクターが、例えば、実験室の方法によって修飾されたか又は実験室の方法の結果であるなどの、人間の介入によって改変又は生成されたことを示す。従って、例えば組み換えタンパク質及び核酸には、実験室の方法によって生成されたタンパク質及び核酸が含まれる。組み換えタンパク質には、タンパク質の本来(非組み換え又は野生型)の形態内に見られないアミノ酸残基が含まれ得るか、又は修飾された(例えば標識された)アミノ酸残基が含まれ得る。この用語には、ペプチド、タンパク質、又は核酸配列に対する任意の修飾が含まれ得る。このような修飾には、以下が含まれ得る:1つ又はそれ以上のアミノ酸、デオキシリボヌクレオチド、又はリボヌクレオチドを含む、ペプチド、タンパク質、又は核酸配列の任意の化学修飾;ペプチド又はタンパク質における1つ又はそれ以上のアミノ酸の付加、削除、及び/又は置換;融合タンパク質(例えば抗体断片を含む融合タンパク質)の作成;及び核酸配列内の1つ又はそれ以上の核酸の付加、削除、及び/又は置換。細胞に関して使用される「組み換え」という用語は、天然に存在する細胞を含むことを意図しているのではなく、工学操作/修飾されていなければ細胞内に存在しないポリペプチド又は核酸を含むか発現するように工学操作/修飾された細胞を包含することを意図している。
【0049】
本明細書において、「被験体(subject)」又は「個体」は、動物、例えばヒト(例えばヒト個体)及び非ヒト動物を含む。いくつかの実施態様において、「被験体」又は「個体」は医師の治療下では患者である。従って被験体は、関心のある健康状態(例えば癌)及び/又は健康状態の1つ又はそれ以上の症状を有するか、有するリスクがあるか、又は有すると疑われるヒト患者又は個体であり得る。被験体はまた、診断時又はそれ以降に関心のある健康状態のリスクがあると診断された個体であり得る。「非ヒト動物」という用語には、すべての脊椎動物、例えば哺乳動物、例えばげっ歯類、例えばマウス、非ヒト霊長類、及び他の哺乳動物、例えば羊、犬、牛、鶏、及び非哺乳動物、例えば、両生類、爬虫類などが含まれる。
【0050】
本明細書に記載された開示の態様及び実施態様には、「含む」、「からなる」、「本質的にからなる」態様及び実施態様が含まれることが理解される。本明細書で使用される「含む」は、「含む」、「含有する」、又は「特徴とする」と同義であり、包括的又はオープンエンドであり、追加の、列挙されていない要素又は方法工程を除外するものではない。本明細書で使用される「からなる」は、請求された組成物又は方法で指定されていない要素、工程、又は構成要素を除外する。本明細書で使用されている「本質的に~からなる」は、請求された組成物又は方法の基本的かつ新規な特性に実質的に影響を及ぼさない材料又は工程を除外するものではない。本明細書で特に組成物の構成要素の説明又は方法の工程の説明で「~を含む」という用語が引用されている場合、引用されている構成要素又は工程から本質的になり、引用されている構成要素又は工程からなる組成物及び方法を包含するものと理解される。
【0051】
本明細書で開示されているすべての遺伝子、遺伝子名、及び遺伝子産物は、本明細書で開示されている組成物及び方法が適用可能な任意の種の相同体に対応することを意図している。従って、これらの用語には、限定されるものではないが、ヒト及びマウスの遺伝子及び遺伝子産物が含まれる。特定の種の遺伝子又は遺伝子産物が開示されている場合、この開示は例示のみを意図しており、それが現れる文脈が明確に示していない限り、制限として解釈されるべきではないことが理解される。従って、例えば、本明細書に開示される遺伝子又は遺伝子産物は、いくつかの実施態様において哺乳動物の核酸及びアミノ酸配列に関係するが、他の動物(限定されるものではないが、他の哺乳動物、魚類、両生類、爬虫類、及び鳥類を含む)からのホモロガス(homologous)遺伝子及び/又はオーソロガス(orthologous)遺伝子及び遺伝子産物を包含することが意図されている。いくつかの実施態様において、遺伝子、核酸配列、アミノ酸配列、ペプチド、ポリペプチド、及びタンパク質はヒトのものである。用語「遺伝子」はまた、これらの変種も含むことが意図されている。
【0052】
明確にするために別々の実施態様の文脈で説明されている本開示の特定の特徴はまた、単一の実施態様で組み合わせて提供することもできることが理解される。逆に、簡潔にするために単一の実施態様の文脈で説明されている開示のさまざまな特徴はまた、個別に、又は任意の適切な部分組み合わせで提供することもできる。開示に関連する実施態様のすべての組み合わせは、本開示によって具体的に包含され、すべての組み合わせが個別に明示的に開示されているかのように本明細書に開示されている。さらに、様々な実施態様及びその要素のすべての部分組合わせも、本開示によって具体的に包含され、そのような部分組合わせのそれぞれが個別に明示的に本明細書に開示されているかのように、本明細書に開示されている。
アルファウイルス
【0053】
アルファウイルスは、一本鎖のプラスセンスRNAゲノムを有する小さなエンベロープRNAウイルスである。アルファウイルス属には、特に、シンドビスウイルス(SINV)、セムリキ森林ウイルス(SFV)、ロスリバーウイルス(RRV)、ベネズエラ馬脳炎ウイルス(VEEV)、及び東部馬脳炎ウイルス(EEEV)が含まれ、これらはすべて密接に関連しており、種々の脊椎動物、例えば哺乳類、げっ歯類、魚類、鳥類、及びヒトや馬などの大型哺乳類、並びに無脊椎動物、例えば昆虫に感染することができる。特に、シンドビスウイルスとセムリキ森林ウイルスは広く研究されており、これらのウイルスのライフサイクル、複製モードなどはよく特性解析されている。
【0054】
アルファウイルスのゲノムは約12Kbの長さで、2つのオープンリーディングフレーム(ORF)で構成されている。7Kbのフレームは非構造タンパク質(nsP)をコードし、4Kbのフレームは構造ポリタンパク質をコードする。非構造ポリタンパク質(nsP)は4つの異なるタンパク質(nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)に切断され、これらは、宿主細胞の細胞質内でのウイルスmRNAの転写と翻訳に必要である。
【0055】
nsP1タンパク質は、グアニン-7-メチルトランスフェラーゼ(MTase)とグアニルトランスフェラーゼ(GTase)の両方の活性を有するmRNAキャッピング酵素であり、これらは新しく合成されたウイルスゲノムRNA及びサブゲノムRNAのメチル化とキャッピングを指令する。nsP1のN末端ドメインのMTaseモチーフは、S-アデノシルメチオニン(AdoMet)からGTP分子(m7Gppp)のN7位へのメチル基の転移を触媒する。次に、GTaseはm7Gpppに結合して、触媒性ヒスチジンと共有結合を形成(m7Gp-GTase)し、PPiを放出する。次に、GTaseはm7Gp分子を5’-二リン酸RNAに転移して、m7GpppNp-RNAを作成する。結果として生じるキャップ構造は、ウイルスmRNAの翻訳に不可欠であり、mRNAが細胞の5’エキソヌクレアーゼによって)分解されるのを防ぐ。N末端ドメインに続いて、nsP1タンパク質を細胞膜に結合させる特徴がある。αヘリックス両親媒性ループとパルミトイル化部位の存在により、nsP1タンパク質とnsP1含有複製複合体が、おそらくnsP1と膜のアニオン性リン脂質との相互作用を介して、原形質膜上に固定されることを可能にする。
【0056】
nsP2タンパク質は、多数の酵素活性と機能的役割を有する。そのN末端領域は、スーパーファミリー1(SF1)ヘリカーゼの7つのシグネチャモチーフを有するヘリカーゼドメインを含む。これは、ウイルスRNAキャッピング反応の最初の反応を実行するRNAトリホスファターゼとして機能する。これはまた、ヌクレオチドトリホスファターゼ(NTPase)としても機能し、RNAヘリカーゼ活性を促進する。nsP2のC末端領域はパパイン様システインプロテアーゼを含み、これはウイルスの非構造ポリタンパク質の処理を担っている。このプロテアーゼはポリタンパク質内の保存されたモチーフを認識する。このタンパク質分解機能は高度に制御されており、nsP2の他のドメインによって調節される。アルファウイルスnsP2タンパク質は、感染した宿主細胞での転写及び翻訳の停止、及びウイルス因子による翻訳機構の制御に寄与するインターフェロン(IFN)媒介抗ウイルス応答の阻害に関与する毒性因子としても説明されている。
【0057】
複製複合体におけるアルファウイルスnsP3タンパク質の正確な役割は明らかではない。nsP3タンパク質は、ホスファターゼ活性及び核酸結合能力を有するN末端マクロドメイン、アルファウイルス固有ドメイン(AUD)、及びC末端超可変ドメインの3つの認識されるドメインを有する。SFV nsP3のこのドメインの欠失によりウイルスの病原性が低下することが証明されており、ウイルスRNA転写制御におけるこのドメインの重要性を示唆している。
【0058】
nsP4ポリメラーゼはアルファウイルスで最も高度に保存されたタンパク質であり、最も異なるのは、他のアルファウイルスnsP4と比較した場合、50%を超えるアミノ酸配列の同一性である。nsP4はC末端にコアRNA依存性RNAポリメラーゼ(RdRp)ドメインを含み、ウイルス複製複合体のRNA合成特性を単独で担っていることが判明している。RdRpは、マイナス鎖RNAを介してゲノムRNAを複製し、26SサブゲノムRNAを転写することに関与している。そのN末端ドメインはアルファウイルスに特異的であり、構造的に部分的に無秩序である可能性がある。
【0059】
アルファウイルスゲノムの5’側の3分の2は、ウイルスRNAの転写及び複製に必要な多数の非構造タンパク質(nsP)をコードしている。これらのタンパク質はRNAから直接翻訳され、細胞タンパク質とともに、ウイルスゲノムの複製及びsgRNAの転写に不可欠なRNA依存性RNAポリメラーゼを生成する。4つのnsP(nsP1~4)は、単一のポリタンパク質として生成され、ウイルスの複製機構を構成する。ポリタンパク質の処理は高度に調節された方法で行われ、P2/3ジャンクションでの切断がゲノム複製中のRNAテンプレートの使用に影響を与える。この部位は狭い溝の底部に位置し、容易にアクセスできない。いったん切断されると、nsP3はリング構造を形成してnsP2を取り囲む。これら2つのタンパク質は広範なインターフェイスを有する。非細胞変性ウイルス又は温度感受性表現型を産生するnsP2の変異は、P2/P3インターフェイス領域に集中している。nsP2非細胞変性変異の位置と反対のP3変異は、P2/3の効率的な切断を妨げる。これは次に、RNAの感染性に影響を与え、ウイルスRNAの産生レベルを変化させる可能性がある。
【0060】
ゲノムの3’側の1/3にはsgRNAが含まれ、これはウイルス粒子の形成に必要なすべての構造タンパク質(コア核カプシドタンパク質Cと、ヘテロ二量体として会合するエンベロープタンパク質P62及びE1)の翻訳のテンプレートとして機能する。ウイルスの膜に固定された表面糖タンパク質は、受容体の認識と膜融合による標的細胞への進入を担っている。sgRNAは、nsp4タンパク質をコードするRNA配列の3’末端に存在するp26Sサブゲノムプロモーターから転写される。P62がE2及びE3にタンパク質分解成熟すると、ウイルス表面に変化が生じる。E1、E2、そして時にはE3の糖タンパク質「スパイク」は、E1/E2二量体又はE1/E2/E3三量体を形成し、ここで、E2は中心から頂点まで伸び、E1は頂点間の空間を埋め、E3は存在する場合はスパイクの遠位端に存在する。ウイルスがエンドソームの酸性に曝露されると、E1はE2から解離してE1ホモ三量体を形成し、これは、細胞膜とウイルス膜を一緒に駆動する融合工程に必要である。アルファウイルス糖タンパク質E1はクラスIIウイルス融合タンパク質であり、これは、インフルエンザウイルスやHIVに見られるクラスI融合タンパク質とは構造が異なる。E2糖タンパク質は、細胞質ドメインを介してヌクレオカプシドと相互作用する機能を果たし、そのエクトドメインは細胞受容体に結合する役割を果たす。ほとんどのアルファウイルスは末梢タンパク質E3を失っているが、セムリキウイルスではE3はウイルス表面に結合したままである。
【0061】
アルファウイルスの複製は、宿主細胞内の膜状表面で起きることが報告されている。感染サイクルの最初の工程では、ゲノムRNAの5’末端が、RNAポリメラーゼ活性を有するポリタンパク質(nsP1~4)に翻訳され、これがゲノムRNAに相補的なマイナス鎖を生成する。ゲノムRNAの3’末端の配列は、マイナス鎖合成の開始に重要な役割を果たしており、ここで、複製が起きるためには最小限のアデニル酸残基が不可欠であることが確認されている。特に、アルファウイルスゲノムが複製するには、3’UTRに続くポリ(A)テール中に少なくとも11個の残基があって、マイナス鎖合成が効率的に開始され、こうして複製が起きることが必要であることが、過去に報告されている。また、ポリ(A)テールを25残基に延長すると複製が促進されることが過去に報告されているが、ポリ(A)をさらに34残基に延長しても複製のさらなる促進は観察されなかった。さらに、ポリ(A)内の内部の非A残基は複製に有害であることが最も多いため、3’UTRに続く3’アデニル酸残基のみを含まないレプリコンRNAは、酵素によるポリ(A)テーリングに有益ではないことを示唆している。ポリ(A)テール中に25を超えるアデニル酸残基を含むRNAテンプレートでは、マイナス鎖合成が増強されないことが過去に報告されている。複製の2番目の工程では、マイナス鎖がテンプレートとして使用され、それぞれ2つのRNAが生成される:(1)翻訳によって他のnsPを産生し、ウイルスのゲノムとして作用する二次ウイルスのゲノムに対応するプラスゲノムRNA;及び(2)感染粒子を生成するウイルスの構造タンパク質をコードするsgRNA。陽性ゲノムRNA/sgRNA比は、ポリタンパク質のnsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4へのタンパク質分解による自己切断によって調節される。実際には、ウイルス遺伝子の発現は2段階で起こる。第1段階では、陽性ゲノム鎖と陰性鎖の主な合成が行われる。第2段階では、sgRNAの合成は事実上排他的であり、その結果、大量の構造タンパク質が産生される。
【0062】
自己複製RNA
当業者には理解されるように、「自己複製RNA」という用語は、許容細胞内で自身の自己増幅又は自己複製を指令するために必要なすべての遺伝情報を含むRNA分子を指す。自身の複製を指令するために、srRNAは、一般に(1)ウイルス又は宿主細胞由来のタンパク質、核酸、又はリボ核タンパク質と相互作用してRNA増幅プロセスを触媒する可能性のあるポリメラーゼ、レプリカーゼ、又は他のタンパク質をコードし;(2)サブゲノムレプリコンでコードされたRNAの複製及び転写に必要なシス作用性RNA配列を含む。これらの配列は、複製プロセス中に、自己コード化タンパク質、又は非自己コード化細胞由来タンパク質、核酸、又はリボ核タンパク質、又はこれらの構成要素のいずれかの間の複合体に結合することができる。本開示のいくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNA構築物は、一般に以下の要素を含む:複製のためにシスで必要な5’ウイルス又は欠陥干渉RNA配列、生物学的に活性なアルファウイルス非構造タンパク質をコードする配列(例えばnsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4)、サブゲノムRNA(sgRNA)のサブゲノムプロモーター(sg)、複製のためにシスで必要な3’ウイルス配列、及び任意選択的にポリアデニル酸部分(ポリ(A))。場合によっては、異種配列の発現を指令するサブゲノムプロモーター(sg)を本開示のsrRNA構築物に含めることができる。
【0063】
さらに、srRNAという用語は、一般に、正極性又は「メッセージ」センスの分子を指し、srRNAは、既知の天然アルファウイルスの長さとは異なる長さであってもよい。本開示のいくつかの実施態様において、srRNAは、1つ又はそれ以上のアルファウイルス構造タンパク質のコード配列の少なくとも一部を含まず、及び/又は構造遺伝子をコードする配列は、異種配列で置換することができる。これらの例において、srRNAが組み換えアルファウイルス粒子にパッケージ化される場合、粒子形成につながるアルファウイルス構造タンパク質との相互作用を開始するのに役立つ1つ又はそれ以上の配列、いわゆるパッケージングシグナルを含み得る。
【0064】
本開示のsrRNA構築物は、一般に、少なくとも約2kbの長さを有する。例えば、srRNAは、少なくとも約2kb、少なくとも約3kb、少なくとも約4kb、少なくとも約5kb、少なくとも約6kb、少なくとも約7kb、少なくとも約8kb、少なくとも約9kb、少なくとも約10kb、少なくとも約11kb、少なくとも約12kb、又は12kb以上の長さを有し得る。いくつかの実施態様において、srRNAは、約4kb~約20kb、約4kb~約18kb、約5kb~約16kb、約6kb~約14kb、約7kb~約12kb、約8kb~約16kb、約9kb~約14kb、約10kb~約18kb、約11kb~約16kb、約5kb~約18kb、約6kb~約20kb、約5kb~約10kb、約5kb~約8kb、約5kb~約7kb、約5kb~約6kb、約6kb~約12kb、約6kb~約11kb、約6Kb~約約10kb、約6kb~約9kb、約6kb~約8kb、約6kb~約7kb、約7kb~約11kb、約7kb~約10kb、約7kb~約9kb、約7kb~約8kb、約8kb~約11kb、約8kb~約10kb、約8kb~約9kb、約9kb~約11kb、約9kb~約10kb、又は約10kb~約11kbの長さを有し得る。いくつかの実施態様において、srRNAは約6kb~約14kbの長さを有し得る。いくつかの実施態様において、srRNAは約6kb~約16kbの長さを有し得る。
IL-12
【0065】
IL-12は、重鎖サブユニット(p40)と軽鎖サブユニット(p35)から構成される分子量70kDaのヘテロ二量体であり、これらはジスルフィド結合によって共有結合している。p40は食細胞によって大量に産生されるが、p35は普遍的かつ恒常的に低レベルでのみ発現しており、生物学的に活性なサイトカインの分泌にはp40の共発現が必要であると考えられている(Babik JM, Adams E, Tone Y, Fairchild PJ, Tone M, Waldmann H. Expression of murine IL-12 is regulated by translational control of the p35 subunit. JImmunol 1999; 162: 4069-4078)。
【0066】
IL-12は、NK細胞及びT細胞上に発現されるIL-12Rβ1及びIL-12Rβ2の受容体複合体を介してシグナルを伝達する。IL-12受容体の二量体化は、受容体関連ヤヌスキナーゼ(JAK)分子の活性化を誘導し、これらの分子は互いにリン酸化するとともに、SH2を含むシグナル伝達物質及び転写活性化因子4(STAT4)のドッキング部位として機能するIL-12Rβ2の細胞内ドメイン上の残基をリン酸化する。受容体関連STAT4タンパク質は、その後、リン酸化されてから核に移行し、ここでIFNγの発現及びCD4+T細胞のTヘルパー1(Th1)表現型への分極を促進する。細胞内病原体に対する免疫と癌との類似性を考慮すると、Th1応答を刺激する治療アプローチが、ワクチンアジュバント及びエピトープの選択を介して間接的に、又はIL-12の投与を介して直接的に、癌免疫療法に関して検討されてきた。前臨床モデルでは有望であるにもかかわらず、IL-12投与の治療効果は、NK細胞を介するIFNγの産生に関連する毒性のために限られている。
【0067】
IL-1RA
インターロイキン-1(IL-1)は、リンパ球及びマクロファージを刺激し、食細胞を活性化し、プロスタグランジン産生を増加させ、骨関節の変性に寄与し、骨髄細胞の増殖を増加させ、多くの慢性炎症状態に関与するサイトカインのファミリーを含む。IL-1α及びIL-1βは、マクロファージ、単球、及び樹状細胞によって生成され、感染に対する炎症反応の一部となり得る。
【0068】
IL-1サイトカインの作用形式は、IL1RN遺伝子によってコードされるインターロイキン-1受容体拮抗剤タンパク質(IL-1RA、別名「IRAP」)によって媒介される。IL-1RAは、IL-1α及びIL-1βと同じ細胞表面の受容体に結合し、こうしてこれらのサイトカインがその細胞にシグナルを送るのを妨害する。IL-1RAは、単球、マクロファージ、好中球、多形核細胞(PMN)、及びその他の細胞を含む白血球から分泌され、Arend W P, Malyak M, Guthridge C J, Gabay C (1998) “Interleukin-1 receptor antagonist: role in biology” Annu. Rev. Immunol. 16: 27-55で説明されているように、さまざまなIL-1関連免疫及び炎症反応を調節することができる。IL-1RAの産生は、接着性免疫グロブリンG(IgG)、その他のサイトカイン、細菌又はウイルス成分などのいくつかの物質によって刺激される。IL-1RAは、関節炎、大腸炎、及び肉芽腫性肺疾患における重要な天然の抗炎症タンパク質である。
【0069】
本開示の組成物
以下にさらに詳細に説明されるように、本開示の1つの態様は、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAをコードする配列を含む核酸構築物に関し、ここで、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部は、a)インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列、b)インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列、及びc)インターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列を含む、ポリペプチド構築物のコード配列に置換されている。また、本明細書に開示される核酸構築物を含むように工学操作された組み換え細胞及び細胞培養物も提供される。
【0070】
核酸構築物
以下にさらに詳細に説明されるように、本開示の1つの態様は、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAをコードする核酸配列を含む核酸構築物に関し、ここで、修飾アルファウイルスゲノム又はsrRNAのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部は、a)インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列、b)インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列、及びc)インターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列を含む、ポリペプチド構築物のコード配列に置換されている。いくつかの実施態様において、srRNA構築物をコードする配列は、例えば発現に必要な要素(例えばプロモーター配列)の制御下に置かれて、作動可能に連結されることができ、これが、宿主細胞、被験体、又は生体外無細胞発現システムにおけるsrRNA構築物の発現を可能にする。
【0071】
本明細書において用語「核酸分子」及び「ポリヌクレオチド」は互換的に使用され、cDNA、ゲノムDNA、合成DNA、及び核酸類似体を含むDNA若しくはRNA分子を含む核酸分子を含む、RNA分子及びDNA分子の両方を指す。核酸分子は、二本鎖又は一本鎖(例えばセンス鎖又はアンチセンス鎖)であり得る。核酸分子は、非従来型又は修飾されたヌクレオチドを含み得る。本明細書で使用される用語「ポリヌクレオチド配列」及び「核酸配列」は互換的に使用され、ポリヌクレオチド分子の配列を指す。ここでは、37CFR§1.822に規定されているヌクレオチド塩基の命名法が使用されている。
【0072】
本開示の核酸分子は、例えば、約1.5Kb~約50Kb、約5Kb~約40Kb、約5Kb~約30Kb、約5Kb~約20Kb、又は約10Kb~約50Kb、例えば約15Kb~30Kb、約20Kb~約50Kb、約20Kb~約40Kb、約5Kb~約25Kb、又は約30Kb~約50Kbを含む任意の長さであってもよい。
【0073】
本開示の方法の非限定的な例示的実施態様は、以下の特徴の1つ又はそれ以上を含み得る。いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、アルファウイルスsrRNAベクターのウイルス構造タンパク質CP、E1、E2、E3、及び6Kのうちの1つ又はそれ以上をコードする核酸配列の少なくとも一部を欠いている。いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、CPをコードする配列の一部又は全部を欠いている。いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、E1をコードする配列の一部又は全部を欠いている。いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、E2をコードする配列の一部又は全部を欠いている。いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、E3をコードする配列の一部又は全部を欠いている。いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、6Kをコードする配列の一部又は全部を欠いている。いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、CP、E1、E2、E3、及び6Kの組み合わせをコードする配列の一部又は全部を欠いている。本開示のいくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターの非構造タンパク質nsP1、nsP2、nsP3、及びnsP4のコード配列は存在するが、アルファウイルスsrRNAベクターの1つ又はそれ以上の構造タンパク質(例えばCP、E1、E2、E3、及び6K)をコードする配列の少なくとも一部又は全部が存在しない。
【0074】
いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、1つ又はそれ以上のウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列のかなりの部分を欠いている。当業者であれば、ウイルス構造ポリペプチドをコードする核酸配列の相当部分は、そのポリペプチドの推定識別を可能にするウイルス構造ポリペプチドをコードする充分な核酸配列を、当業者による配列の用手法的評価、又はBLASTなどのアルゴリズムを使用するコンピュータ自動化配列比較及び識別によって、含み得ることを理解するであろう(例えば“Basic Local Alignment Search Tool”; Altschul SF et al., J. Mol. Biol. 215:403-410, 1993を参照)。従って、ヌクレオチド配列の相当部分は、配列を含む核酸断片の特定の識別及び/又は単離を可能にするのに十分な配列を含む。例えば、核酸配列の相当部分は、全長核酸配列の少なくとも約20%、例えば約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%を含み得る。
【0075】
いくつかの実施態様において、アルファウイルスsrRNAベクターは、ウイルス構造タンパク質をコードする配列全体を欠いており、例えば、アルファウイルスsrRNAベクターは、ウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列を含まない。
【0076】
本開示の核酸構築物はさらに、修飾されたアルファウイルスゲノム又はsrRNAのウイルス構造タンパク質をコードする核酸配列の少なくとも一部を置換するポリペプチド構築物のコード配列を含む。原則として、本明細書に開示される核酸構築物は、一般に、ポリペプチド構築物のコード配列を任意の数含むことができる。いくつかの実施態様において、本明細書に開示される核酸構築物は、ポリペプチド構築物の少なくとも1つ、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、又は少なくとも6つのコード配列を含み得る。ポリペプチド構築物のコード配列は、コード配列と、細胞内、インビボ、及び/又はエクスビボのコード配列の適切な転写及び/又は翻訳を指令するのに十分な調節情報とを含む遺伝物質の構築物であり得る。ポリペプチド構築物のコード配列は、所望の宿主細胞及び/又は被験体を標的とするためのベクターに挿入することができる。従って、いくつかの実施態様において、用語「ポリペプチド構築物のコード配列」は用語「発現構築物」と互換的に使用することができる。いくつかの実施態様において、ポリペプチド構築物のコード配列は、例えばプロモーター及び/又は終結シグナルなどの調節要素に作動可能に連結されたタンパク質又は機能的RNAをコードする遺伝子、及び任意選択的に、遺伝子の転写又は翻訳に影響を及ぼす他の核酸配列のいずれか又は組み合わせを含む核酸構築物であり得る。
【0077】
本明細書に記載の核酸構築物は、インターロイキン12のp35サブユニット(p35又はIL-12A)又はその機能的変種のコード配列、インターロイキン12のp40サブユニット(p40又はIL-12B)又はその機能的変種のコード配列、及びインターロイキン-1受容体拮抗剤(IL-1RA)又はその機能的変種のコード配列を含み、これらは、被験体において薬力学的作用を誘発できるポリペプチドをコードする。IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAの機能的変種は、少なくとも1つの修飾された(例えばそれぞれ欠失、挿入、又は置換された)アミノ酸を含む以外は、参照タンパク質(例えばIL-12A、IL-12B、及びIL-1RA)と同じか又は本質的に同じアミノ酸配列を有するポリペプチドのコード配列を包含することができる。アミノ酸置換は、好ましくはタンパク質中の非必須アミノ酸残基における保存的アミノ酸置換であってもよい。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が類似の側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるものである。類似の側鎖を有するアミノ酸残基のファミリーは、当該技術分野で既知である。これらのファミリーには、塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えばリジン、アルギニン、ヒスチジン)、酸性側鎖を有するアミノ酸(例えばアスパラギン酸、グルタミン酸)、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸(例えばグリシン、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、システイン)、非極性側鎖を有するアミノ酸(例えばアラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、メチオニン、トリプトファン)、ベータ分岐側鎖を有するアミノ酸(例えばスレオニン、バリン、イソロイシン)、及び芳香族側鎖を有するアミノ酸(例えばチロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、ヒスチジン)が含まれる。タンパク質の変種は、タンパク質のアミノ酸配列と少なくとも約80%、90%、95%、又は99%、好ましくは少なくとも約90%、より好ましくは少なくとも約95%同一のアミノ酸配列を有し得る。好ましくは、変種は、そのタンパク質と同じ機能を保持するタンパク質の機能的変種である。核酸配列に関して使用される用語「変種」は、別の通常関連する核酸配列とは1つ又はそれ以上のヌクレオチドが異なる核酸配列を指す。従って用語「変種」は、1つ又はそれ以上の新しいヌクレオチドの挿入、1つ又はそれ以上のヌクレオチドの欠失、及び1つ又はそれ以上の既存のヌクレオチドの置換を含む、参照核酸の1つ又はそれ以上のヌクレオチドの変化を指すことができる。変種はまた、点突然変異、多重突然変異、単一ヌクレオチド多型(SNP)、欠失、挿入、及び転座を含み得る。従って、本明細書に記載のコード配列の変種は、例えば、IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAの全長の、変異した、末端切断された、不活性化されたペプチド/エピトープ、又はこれらの組み合わせであり得るポリペプチドをコードする核酸を含む。
【0078】
ヒトIL-12p35サブユニットの全長アミノ酸配列は、配列番号1に以下のように記載される:
【化1】
【0079】
あるいは、そのシグナル配列とともにヒトIL-12p35サブユニットの全長アミノ酸配列は、配列番号2に以下のように記載される:
【化2】
【0080】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の核酸構築物中のIL-12p35サブユニットのコード配列は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するIL-12p35サブユニットをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施態様において、IL-12p35サブユニットのコード配列は、配列番号1又は配列番号2のアミノ酸配列のより小さな部分をコードする。これらのより小さな部分は、配列番号1又は配列番号2の少なくとも8、10、12、14、16、18、20、30、又はそれ以上のアミノ酸を含み得る。
【0081】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の核酸中のポリペプチド構築物のコード配列は、IL-12p35サブユニットの機能的変種をコードする。
【0082】
前述したように、本明細書に記載の核酸構築物はまた、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種のコード配列も含む。
【0083】
ヒトIL-12p40サブユニットの全長アミノ酸配列は、配列番号3に以下のように記載される:
【化3】
【0084】
あるいは、そのシグナル配列とともにヒトIL-12p40サブユニットの全長アミノ酸配列は、配列番号4に以下のように記載される:
【化4】
【0085】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の核酸構築物中のヒトIL-12p40サブユニットのコード配列は、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列をコードする。いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列と、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するヒトIL-12p40サブユニットをコードする核酸配列を含む。いくつかの実施態様において、ヒトIL-12p40サブユニットのコード配列は、配列番号3又は配列番号4のアミノ酸配列のより小さな部分をコードする。これらのより小さな部分は、配列番号3又は配列番号4の少なくとも8、10、12、14、16、18、20、又はそれ以上のアミノ酸を含み得る。
【0086】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の核酸中のポリペプチド構築物のコード配列は、ヒトIL-12p40サブユニットの機能的変種をコードする。
【0087】
前述したように、本明細書に記載の核酸構築物はまた、IL-RA又はその機能的変種のコード配列も含む。
【0088】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の核酸中のポリペプチド構築物のコード配列は、IL-1RA転写物1、2、3、又は4、細胞内IL-1RA(icIL-1Ra)、又はこれらの対応するポリペプチドアイソフォームの1つ又はそれ以上の領域をコードする。あるいは、組成物は、IL-1RA転写物1、2、3、又は4、細胞内IL-1RA(icIL-1Ra)、又はこれらの対応するポリペプチドアイソフォームの全体を含む。任意の形態のヒトIL-1Ra又はその断片を含む組成物は、IL-1R1の機能を阻害する。
【0089】
IL1RN転写産物1によってコードされ、配列番号5に記載されるヒトIL-1RAのアミノ酸配列は以下の通りである:
【化5】
【0090】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、配列番号5のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するIL-1RA変種をコードする核酸配列を含む。
【0091】
IL1RN転写物2によってコードされ、配列番号6に記載されるヒトIL-1RAのアミノ酸配列は以下の通りである(NCBI登録番号NM_173841):
【化6】
【0092】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、配列番号6のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するIL-1RA変種をコードする核酸配列を含む。
【0093】
IL1RN転写物3によってコードされ、配列番号7に記載されるヒトIL-1RAのアミノ酸配列は以下の通りである(NCBI登録番号NM_000577):
【化7】
【0094】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、配列番号7のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するIL-1RA変種をコードする核酸配列を含む。
【0095】
IL1RN転写物4によってコードされ、配列番号8に記載されるヒトIL-1RAのアミノ酸配列は以下の通りである(NCBI登録番号NM_173843):
【化8】
【0096】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、配列番号8のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するIL-1RA変種をコードする核酸配列を含む。
【0097】
配列番号9に記載のヒト細胞内IL-1RAであるicIL-1Raのアミノ酸配列は以下の通りである(NCBIアクセス番号M55646):
【化9】
【0098】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、配列番号9のアミノ酸配列と少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有するIL-1RA変種をコードする核酸配列を含む。
【0099】
いくつかの実施態様において、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種のコード配列は、単一のポリペプチド(例えば一遺伝子)のコード配列を含む。いくつかの実施態様において、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種のコード配列は、複数のポリペプチドのコード配列、例えば複遺伝子(例えば二遺伝子又は三遺伝子)のコード配列を含む。いくつかの実施態様において、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種のコード配列のそれぞれは、別個のプロモーター配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施態様において、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種のコード配列は、単一のオープンリーディングフレーム内(例えばポリシストロン性ORF内)で互いに作動可能に連結されている。いくつかの実施態様において、ポリシストロン性ORFのコード配列は、プロモーター配列に作動可能に連結されている。いくつかの実施態様において、プロモーター配列の少なくとも1つはサブゲノム(sg)プロモーターである。いくつかの実施態様において、sgプロモーターは26Sゲノムプロモーターである。
【0100】
いくつかの実施態様において、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種のコード配列は、直接又は間接的に(例えば1つ又はそれ以上のコネクタ配列を介して)互いに連結することができる。例えば、いくつかの実施態様において、コード配列は、例えば、互いに隣接して、互いに直接連結することができる。いくつかの実施態様において、コード配列の少なくとも2つ(例えば2、3、4、又は5つ)は、1つ又はそれ以上のコネクタ配列によって互いに作動可能に連結される。いくつかの実施態様において、コネクタ配列の長さ及びアミノ酸組成は、ポリペプチドの互いに対する配向、柔軟性、及び/又は近接性を変化させ、コード化されたタンパク質の所望の活性又は特性を達成するために最適化することができる。いくつかの実施態様において、複数のコネクタ配列のうちのあるコネクタ配列は、自己タンパク質分解性ペプチド配列の1つ又はそれ以上のコード配列を含む。一般に、当該技術分野で知られている任意のタンパク質分解切断部位を本開示の核酸分子に組み込むことができ、例えば、プロテアーゼによって生成後に切断されるタンパク質分解切断配列とすることができる。さらに適切なタンパク質分解切断部位はまた、外部プロテアーゼの付加後に切断できるタンパク質分解切断配列も含む。本明細書で使用される用語「自己タンパク質分解性ペプチド」は、自己タンパク質分解活性を有し、より大きなポリペプチド部分からそれ自体を切断することができる「自己切断」ペプチドを指す。ピコルナウイルス群のメンバーである口蹄疫ウイルス(FMDV)で最初に特定され、その後、例えば、ウマ鼻炎Aウイルス(E2A)、豚テシオウイルス(teschovirus)-1(P2A)、及びトーセア・アシグナウイルス(Thosea asigna virus:T2A)由来の「2A様」ペプチドなどのいくつかの自己タンパク質分解性ペプチドが特定され、タンパク質分解切断におけるこれらの活性は、さまざまなエクスインビトロ、インビトロ、エクスビボ、及びインビボ真核生物システムで示されている。このように、自己タンパク質分解性ペプチドの概念は、当業者は利用可能であり、多くの天然に存在する自己プロテアーゼシステムが特定されている。よく研究されている自己プロテアーゼシステムには、例えば、ウイルスプロテアーゼ、発生タンパク質(例えばHetR、ヘッジホッグタンパク質)、RumA自己プロテアーゼドメイン、UmuDなど)である。本開示の組成物及び方法に適した自己タンパク質分解性ペプチドの非限定例には、カルシウム依存性セリンエンドプロテアーゼ(furin)、豚テシオウイルス(teschovirus)-12A(P2A)、口蹄疫ウイルス(FMDV)2A(F2A)、馬鼻炎Aウイルス(ERAV)2A(E2A)、トーセア・アシグナウイルス2A(T2A)、細胞質多角体病ウイルス2A(BmCPV2A)、フ軟化病ウイルス2A(BmIFV2A)、又はこれらの組み合わせからの1つ又はそれ以上の自己タンパク質分解切断配列が含まれる。
【0101】
いくつかの実施態様において、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種のコード配列は、1つ又はそれ以上の内部リボソーム進入部位(IRES)のコード配列によって、互いに作動可能に連結されている。IRES又は「内部リボソーム進入部位」は、2シストロン性mRNAの翻訳の内部開始によって第2の遺伝子に由来する発現産物の生成を可能にする、ポリシストロン性遺伝子の間に位置する配列である。これは、シストロン(タンパク質コード領域)の開始コドン(例えばATG)への直接的な内部リボソーム進入を促進し、こうして遺伝子のキャップ非依存的翻訳をもたらす。例えば、Jackson et al., 1990. Trends Biochem Sci 15(12):477-83) 及びJackson and Kaminski. 1995. RNA 1(10):985-1000を参照されたい。いくつかの実施態様において、IRESは、ウイルスIRES、細胞IRES、又は人工IRESであり得る。当業者が一般的に使用するIRESの例には、米国特許第6,692,736号に記載されているものが含まれる。いくつかの実施態様において、IRESは、カポジ肉腫関連ヘルペスウイルス(KSHV)IRES、肝炎ウイルスIRES、ペスティウイルス(Pestivirus)IRES、クリパウイルス(Cripavirus)IRES、ロパロシフム・パディウイルス(Rhopalosiphum padi virus)IRES、線維芽細胞増殖因子IRES、血小板由来増殖因子IRES、血管内皮増殖因子IRES、インスリン様増殖因子IRES、ピコルナウイルスIRES、脳心筋炎ウイルス(EMCV)IRES、Pim-1IRES、p53IRES、Apaf-1 IRES、TDP2 IRES、L-mycIRES、及びc-mycIRESから選択される。いくつかの実施態様において、IRESはEMCVから得られる。
【0102】
当業者であれば、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種の発現が適切に維持される限り、IL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種のコード配列、自己タンパク質分解性ペプチドをコードする配列、又はIRESの異なる構成を使用できることを理解するであろう。これらの配列は、典型的には、目的の遺伝子によってコードされるポリペプチドが、自己プロテアーゼによる切断後に、プロテアーゼ及び他の配列から放出されるように、構成されるであろう。
【0103】
本明細書で使用される用語「作動可能に連結された」は、2つ又はそれ以上の配列間の機能的連結を意味する。例えば、目的のポリヌクレオチドと調節配列(例えばプロモーター)との間の作動可能な連結は、目的のポリヌクレオチドの発現を可能にする機能的連結である。この意味で、用語「作動可能に連結された」は、調節領域が目的のコード配列の転写又は翻訳を調節するのに有効となるような、調節領域と転写されるコード配列との配置を指す。本明細書に開示されるいくつかの実施態様において、用語「作動可能に連結された」は、調節配列がポリペプチド又は機能的RNAをコードする配列に対して適切な位置に配置され、その結果、制御配列が、ポリペプチドをコードするmRNA、ポリペプチド、及び/又は機能的RNAの発現又は細胞局在を指令又は調節する構成を指す。従って、プロモーターは、核酸配列の転写を媒介できる場合、核酸配列と作動可能に連結されている。作動可能に連結された要素は、連続していても連続していなくてもよい。
【0104】
2つ又はそれ以上のDNA配列を作動可能に連結するための基本技術は、当業者にはよく知られており、そのような方法は、標準的な分子生物学的操作に関する多くの書籍に記載されている(例えばManiatis et al.,“Molecular Cloning: A Laboratory Manual” 2nd ed. Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y.;及び Gibson et al., Nature Methods 6:343-45, 2009を参照)。
【0105】
図1A~1B及び2A~2Bに示すように、IL-12及びIL-1RAタンパク質の発現及び生物活性は、遺伝子の順序が異なる、異なる2遺伝子構築物から測定された。本明細書に記載の核酸構築物の例示的な構成を以下の表1に示す。
【表1】
【0106】
いくつかの実施態様において、核酸構築物の順序は、pRB-299及びpRB-306からなる群から選択される。
【0107】
いくつかの実施態様において、ポリペプチド構築物は、N末端からC末端の方向に、a)IL-12Aポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-1RAポリペプチド、又はb)IL-1RAポリペプチド、IL-12Bポリペプチド、及びIL-12Aポリペプチドを含み、ここで、IL-12A、IL-12B、及びIL-1RAポリペプチドは、1つ又はそれ以上の自己タンパク質分解切断配列又は内部リボソーム進入部位によって互いに作動可能に連結されている。
【0108】
いくつかの実施態様において、核酸配列は、配列番号10の核酸配列に対して、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、少なくとも99%、又は100%の配列同一性を有する。
【0109】
いくつかの実施態様において、IL-12p35、IL-12p40、及びIL-1RAのコード配列は、安定性、効力、及び発現(例えば翻訳効率)の向上などの所望の特性に合わせて再設計及び/又は最適化されており、その結果、バイオ治療薬の製造、送達、及び投与の効果を最大化することができる。例えば、いくつかの実施態様において、コード配列は、参照コード配列の発現レベルよりも高いレベルでの発現に合わせて最適化されている。ヌクレオチド配列の配列最適化に関して、遺伝コードの縮重は、遺伝子から生成されるポリペプチドのアミノ酸配列を変化させることなく、遺伝子のタンパク質コード配列の少なくとも1つの塩基を異なる塩基で置換する可能性を提供する。従って、本開示の核酸構築物は、遺伝コードの縮重に従って置換することにより、本明細書に開示される任意のポリヌクレオチド配列から変更された任意の塩基配列を有してもよい。コドン使用法を記載した参考文献は、公に容易に入手可能である。いくつかの実施態様において、ポリヌクレオチド配列変種は、例えば、特定の宿主に対する発現を最適化する(例えばアルファウイルスmRNAにおけるコドン使用法を、ヒト、非ヒト霊長類、ハムスター、マウス、又はサルなどの他の生物が好むものに変更する)などのさまざまな理由で生成され得る。従って、いくつかの実施態様において、コード配列は、発現に最適化されたコドンを使用することにより、標的宿主細胞における発現のために最適化される。宿主細胞発現に最適な好ましいコドンを使用して、遺伝子をコードする合成核酸配列を構築する技術は、当技術分野で周知の技術によって、宿主細胞ゲノムの天然タンパク質をコードするコドン使用の共通性及びその相対的存在量を分析する計算方法によって決定することができる。コドン使用データベースは、哺乳類細胞環境におけるコドン最適化配列の生成に使用することができる。さらに、ある生物からの配列を別の宿主生物の最適なコドン使用に変換するためのさまざまなソフトウェアツール、例えばJCatコドン最適化ツール(JCat Codon Optimization Tool:www.jcat.de)、Integrated DNA Technologies (IDT) コドン最適化ツール、又はOptimizerオンラインコドン最適化ツールが利用可能である。このような合成配列は、合成核酸分子の構築に関する当技術分野で周知の技術によって構築することができ、さまざまな販売業者から入手することができる。
【0110】
いくつかの実施態様において、コード配列は、RNAの安定性及び/又は発現の増強のために最適化される。RNAの安定性は、一般に、RNAの「半減期」に関連する。「半減期」は、分子の活性、量、又は数の半分を除去するのに必要な期間に関連する。本開示の文脈では、RNAの半減期は、前記RNAの安定性を示す。RNAの半減期は、RNAの「発現期間」に影響を与え得る。RNAの安定性の増強に使用するための原理、戦略、及び方法に関する追加情報は、例えば、Leppek K. et al., Combinatorial optimization of mRNA structure, stability, and translation for RNA-based therapeutics. bioRxiv. (プレプリント). Mar 30, 2021. doi: 10.1101/2021.03.29.437587中に見いだすことができる。
【0111】
組み換え細胞
本開示の核酸構築物は、宿主細胞に導入して核酸分子を含む組み換え細胞を産生することができる。従って、本明細書に記載の修飾アルファウイルスゲノムをコードする核酸構築物を含む原核細胞又は真核細胞も本開示の特徴である。関連する態様において、本明細書に開示されるいくつかの実施態様は、動物細胞などの宿主細胞に本明細書に提供される核酸構築物を導入し、次に、形質転換された細胞を選択又はスクリーニングすることを含む、細胞を形質転換する方法に関する。本発明の核酸構築物の細胞への導入は、当業者に既知の方法、例えば、ウイルス感染、トランスフェクション、接合、プロトプラスト融合、リポフェクション、電気穿孔法、ヌクレオフェクション、リン酸カルシウム沈殿、ポリエチレンイミン(PEI)媒介トランスフェクション、DEAE-デキストラン媒介トランスフェクション、リポソーム媒介トランスフェクション、粒子銃技術、直接微量注入法、ナノ粒子媒介核酸送達などによって達成することができる。
【0112】
1つの態様において、本開示のいくつかの実施態様は、組換え細胞、例えば本明細書に記載の核酸構築物を含む組換え動物細胞に関する。核酸構築物は、宿主ゲノムに安定的に組み込まれ得るか、又はエピソーム複製され得るか、又は安定な又は一過性の発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞内に存在し得る。従って、本開示のいくつかの実施態様において、核酸構築物は、エピソーム単位として組換え宿主細胞内で維持され、複製される。いくつかの実施態様において、核酸構築物は、組換え細胞のゲノムに安定的に組み込まれる。安定した組み込みは、古典的なランダムゲノム組換え技術を使用して、又はガイドRNA誘導CRISPR/Cas9又はTALENゲノム編集などのより正確なゲノム編集技術を使用して完了することができる。いくつかの実施態様において、核酸構築物は、安定発現又は一過性発現のためのミニサークル発現ベクターとして組換え宿主細胞内に存在し得る。
【0113】
いくつかの実施態様において、組換え細胞は、細菌である大腸菌などの原核細胞、又は昆虫細胞(例えば蚊細胞又はSf21細胞)又は哺乳動物細胞(例えばCOS細胞、NIH3T3細胞、又はHeLa細胞)などの真核細胞である。いくつかの実施態様において、細胞はインビボである。いくつかの実施態様において、細胞はエクスビボである。いくつかの実施態様において、細胞はインビトロである。いくつかの実施態様において、組換え細胞は真核細胞である。いくつかの実施態様において、組換え細胞は動物細胞である。いくつかの実施態様において、動物細胞は脊椎動物細胞又は無脊椎動物細胞である。いくつかの実施態様において、組換え細胞は哺乳動物細胞である。いくつかの実施態様において、組換え細胞は、以下からなる群から選択される:SV40によって形質転換されたサル腎CV1細胞(COS-7)、ヒト胎児腎細胞(例えばHEK293又はHEK293細胞)、ベビーハムスター腎細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(例えばTM4細胞)、サル腎細胞(CV1)、ヒト子宮頸癌細胞(HeLa)、イヌ腎細胞(MDCK)、バッファローラット肝細胞(BRL3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(HepG2)、マウス乳腺腫瘍(MMT060562)、TRI細胞、FS4細胞、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、アフリカミドリザル腎細胞(Vero細胞)、ヒトA549細胞、ヒト子宮頸細胞、ヒトCHME5細胞、ヒトPER.C6細胞、NS0マウス骨髄腫細胞、ヒト類表皮喉頭細胞、ヒト線維芽細胞、ヒトHUH-7細胞、ヒトMRC-5細胞、ヒト筋肉細胞、ヒト内皮細胞、ヒト星状細胞、ヒトマクロファージ細胞、ヒトRAW264.7細胞、マウス3T3細胞、マウスL929細胞、マウス結合組織細胞、マウス筋肉細胞、及びウサギ腎細胞。
【0114】
いくつかの実施態様において、組換え細胞は昆虫細胞、例えば昆虫細胞株の細胞である。いくつかの実施態様において、組換え細胞はSf21細胞である。追加の適切な昆虫細胞株には、限定されるものではないが、双翅目(Diptera)、鱗翅目(Lepidoptera)、及び半翅目(Hemiptera)の昆虫から確立された細胞株が含まれ、異なる組織源から誘導することができる。いくつかの実施態様において、組換え細胞は鱗翅目昆虫細胞株の細胞である。過去数十年間、鱗翅目昆虫細胞株の入手可能性は10年あたり約50株増加している。入手可能な鱗翅目昆虫細胞株に関するさらなる情報は、例えば、Lynn D.E., Available lepidopteran insect cell lines. Methods Mol Biol. 2007;388:117-38に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施態様において、組換え細胞は蚊細胞、例えばハマダラカ(Anopheles:An.)、イエカ(Culex:Cx.)、及びヤブカ(Aedes:tegomyia)(Ae.)属の蚊種の細胞である。本明細書に記載の組成物及び方法に適した例示的な蚊細胞株には、以下の蚊種からの細胞株が含まれる:ネッタイシマカ(Aedes aegypti)、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)、ヤブカ(Aedes pseudoscutellaris)、トリセリアトゥス(Aedes triseriatus)、キンイロヤブカ(Aedes vexans)、ガンビエハマダラカ(Anopheles gambiae)、ステフェンシハマダラカ(Anopheles stephensi)、アルビマヌスハマダラカ(Anopheles albimanus)、ネッタイイエカ(Culex quinquefasciatus)、タイイエカ(Culex theileri)、コガタアカイエカ(Culex tritaeniorhynchus)、カラツイエカ(Culex bitaeniorhynchus)、及びトキソリンチテスアンボイネンシス(Toxorhynchites amboinensis)。適切な蚊細胞株には、限定されるものではないが、CCL-125、Aag-2、RML-12、C6/26、C6/36、C7-10、AP-61、A.t.GRIP-1、A.t.GRIP-2、UM-AVE1、Mos.55、Sua1B、4a-3B、Mos.43、MSQ43、及びLSB-AA695BB。いくつかの実施態様において、蚊細胞はC6/26細胞株の細胞である。
【0115】
別の態様において、本明細書に開示される少なくとも1つの組換え細胞と培養培地とを含む細胞培養物が提供される。一般に、培養培地は、本明細書に記載される細胞を培養するための任意の適切な培養培地であり得る。多種多様な上記の宿主細胞及び種の形質転換技術は、当技術分野で既知であり、技術文献及び科学文献に記載されている。従って、本明細書に開示されている少なくとも1つの組換え細胞を含む細胞培養物も、本出願の範囲内である。細胞培養物を生成し維持するのに適した方法及びシステムは、当該技術分野で既知である。
【0116】
本明細書に開示されている方法によって産生される組換えポリペプチドも、本開示の範囲内である。
【0117】
組換えポリペプチドを産生するための開示された方法の非限定的な例示的実施態様は、以下の特徴の1つ又はそれ以上を含み得る。いくつかの実施態様において、本開示の組換えポリペプチドを産生する方法は、産生されたポリペプチドを単離及び/又は精製することをさらに含む。いくつかの実施態様において、本開示のポリペプチドを産生する方法は、産生されたポリペプチドの構造を修飾して半減期を延長することをさらに含む。
【0118】
医薬組成物
本開示の核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチドは、医薬組成物を含む組成物に組み込むことができる。このような組成物は、一般に、本明細書に記載及び提供される核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチドの1つ又はそれ以上、及び医薬的に許容し得る賦形剤、例えば担体を含む。いくつかの実施態様において、本開示の組成物は、癌、免疫疾患、又は慢性感染症などの健康状態の予防、治療、又は管理のために配合される。例えば、本開示の組成物は、予防組成物、治療組成物、若しくは医薬的に許容し得る賦形剤を含む医薬組成物、又はこれらの混合物として配合することができる。いくつかの実施態様において、本開示の組成物は、バイオ治療薬として使用するために配合される。いくつかの実施態様において、本出願の組成物は、アジュバントとして使用するために配合される。
【0119】
従って、1つの態様において、本明細書では、医薬的に許容し得る賦形剤と、a)本開示の核酸構築物、b)本開示の組み換え細胞、及び/又はc)本開示の組み換えポリペプチドとを含む医薬組成物が提供される。
【0120】
本開示の医薬組成物の非限定的な例示的実施態様は、以下の特徴の1つ又はそれ以上を含み得る。本開示の核酸構築物は、裸の形態で使用することも、送達ビヒクルとともに配合することもできる。例示的な経路は、遊離形態で使用して、例えば核酸(例えばベクター)に挿入される。例えば、以下でより詳細に説明するように、本明細書に記載の核酸構築物はワクチンとして使用し得る。
【0121】
本開示の医薬組成物に使用するために、本明細書に記載の核酸又は組み換え細胞を送達ビヒクル中に配合するか、送達ビヒクルとともに配合することができる。本開示の組成物及び方法に適した送達ビヒクルの例としては、限定されるものではないが、リポソーム(例えば中性又はアニオン性リポソーム)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、又は送達を容易にし及び/又は免疫応答を増強することができる生物活性リガンドと結合したものが含まれる。これらの化合物は、当業者には容易に入手可能である。例えば、Liposomes: A Practical Approach, RCP New Ed, IRL press (1990) を参照されたい。リポソーム以外の他のアジュバントなども使用され、当該分野で知られている。アジュバントは、抗原(例えばsrRNA構築物)を局所的な沈着物に隔離することにより、抗原が急速に分散することを防ぐことができ、又は、マクロファージ及び免疫系の他の構成要素に対して走化性である因子を宿主が分泌するように刺激する物質を含み得る。当業者は、例えば、以下に記載するものから適切な選択を行うことができる。
【0122】
従って、いくつかの実施態様において、本開示の組成物は以下の1つ又はそれ以上を含み得る:生理学的緩衝液、リポソーム、脂質ベースのナノ粒子(LNP)、ポリマーナノ粒子、ウイルスレプリコン粒子(VRP)、ミクロスフェア、免疫刺激複合体(ISCOM)、生物活性リガンドの結合体、又はこれらの任意の組み合わせ。
【0123】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物は、脂質ベースのナノ粒子(LNP)によって細胞又は被験体に送達することができる。LNPは一般に、ウイルス粒子よりも免疫原性が低い。多くのヒトはウイルス粒子に対する既存の免疫を有するが、LNPに対するあらかじめ存在する免疫はない。さらに、LNPに対する適応免疫応答は起こりにくいため、LNPを繰り返し投与することができる。
【0124】
本明細書に記載の組成物及び方法に適した脂質は、カチオン性脂質、イオン化可能カチオン性脂質、アニオン性脂質、又は中性脂質であり得る。
【0125】
いくつかの実施態様において、本開示のLNPは1つ又はそれ以上のイオン化可能脂質を含み得る。本明細書で使用される用語「イオン化可能脂質」は、pHが脂質のイオン化可能基のpKaよりも低くなるとカチオン性であるか又はイオン化(プロトン化)可能になるが、より高いpH値ではより中性である脂質を指す。pKaよりも低いpH値では、脂質は負に荷電した核酸(例えばオリゴヌクレオチド)と結合することができる。本明細書で使用されている用語「イオン化可能脂質」には、生理学的pHからpHが低下すると正電荷を帯びる脂質、及び生理学的pHなどの選択的pHで正味の正電荷を帯びる多数の脂質種のいずれかが含まれる。DOTMAなどの永久カチオン性脂質は、臨床使用には毒性が強すぎることが証明されている。イオン化可能脂質は、他の実施態様による脂質配合物中に、好ましくは約30~約70モル%の割合で存在することができ、いくつかの実施態様において約30モル%、他の実施態様において約40モル%、他の実施態様において約45モル%、他の実施態様において約47.5モル%、さらに他の実施態様において約50モル%、さらに他の実施態様において約60モル%の割合で存在することができる(「モル%」は、特定の成分の合計モルのパーセントを意味する)。この段落の用語「約」は、プラスマイナス5モル%の範囲を意味する。DODMA、すなわち1,2-ジオレイルオキシ-3-ジメチルアミノプロパンは、DLin-MC3-DMA又は0-(Z,Z,Z,Z-ヘプタトリアコンタ-6,9,26,29-テトラエン-19-イル)-4-(N,N-ジメチルアミノ)(「MC3」)と同様にイオン化可能脂質である。
【0126】
本開示の組成物及び方法に適した例示的なイオン化可能脂質としては、PCT公開公報WO2020252589A1号及びWO2021000041A1号、米国特許第8,450,298号、及び第10,844,028号、並びにLove K.T. et al., Proc Natl Acad Sci USA, Feb. 2, 2010 107 (5) 1864-1869(これらはすべて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる)に記載されたものを含む。従って、いくつかの実施態様において、本開示のLNPは、Love K.T. et al., 2010 (前述)に記載されているC16-96、C14-110、及びC12-200などの1つ又はそれ以上の脂質化合物を含む。いくつかの実施態様において、LNPは、ALC-0315、C12-200、LN16、MC3、MD1、SM-102、及びこれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるイオン化可能カチオン性脂質を含む。いくつかの実施態様において、本開示のLNPはC12-200を含む。C12-200脂質の構造は当業界では既知であり、例えば米国特許第8,450,298号及び10,844,028号に記載されており、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。いくつかの実施態様において、C12-200はコレステロール、C14-PEG2000、及びDOPEと組み合わされる。いくつかの実施態様において、C12-200はDSPC及びDMG-PEG2000と組み合わされる。
【0127】
いくつかの実施態様において、本開示のLNPは、1つ又はそれ以上のカチオン性脂質を含む。適切なカチオン性脂質は、限定されるものではないが、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、及び7C1を含む。いくつかの実施態様において、本開示のLNPは1つ又はそれ以上の中性脂質を含む。本開示の組成物及び方法に適した非限定的な中性脂質は、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMを含む。いくつかの実施態様において、本開示のLNPは、PCT公開公報WO2020252589A1号及びWO2021000041A1号に記載された1つ又はそれ以上のイオン化脂質化合物を含み、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0128】
当該技術分野で知られている他の多くの脂質又は脂質の組み合わせを使用して、LNPを生成することができる。LNPを生成するための使用に適した脂質の非限定例としては、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)が含まれる。カチオン性脂質の非限定例としては、98N12-5、C12-200、C14-PEG2000、DLin-KC2-DMA(KC2)、DLin-MC3-DMA(MC3)、XTC、MD1、7C1、及びそれらの任意の組み合わせが含まれる。中性脂質の非限定例としては、DPSC、DPPC、POPC、DOPE、及びSMが含まれる。PEG修飾脂質の非限定例としては、PEG-DMG、PEG-CerC14、及びPEG-CerC20が含まれる。
【0129】
いくつかの実施態様において、本開示のLNPは、C12-200、C14-PEG2000、DOPE、DMG-PEG2000、DSPC、DOTMA、DOSPA、DOTAP、DMRIE、DC-コレステロール、DOTAP-コレステロール、GAP-DMORIE-DPyPE、及びGL67A-DOPE-DMPE-ポリエチレングリコール(PEG)からなる群から選択される少なくとも1つの脂質を含む。いくつかの実施態様において、C12-200は、コレステロール、C14-PEG2000、及びDOPEと組み合わされる。いくつかの実施態様において、C12-200は、DSPC及びDMG-PEG2000と組み合わされる。
【0130】
いくつかの実施態様において、LNP送達システムにおける脂質と核酸の質量比は、約100:1~約3:1、約70:1~10:1、又は16:1~4:1である。いくつかの実施態様において、LNP送達システムにおける脂質と核酸の質量比は、約16:1~4:1である。いくつかの実施態様において、LNP送達システムにおける脂質と核酸の質量比は、約20:1である。いくつかの実施態様において、LNP送達システムにおける脂質と核酸の質量比は、約8:1である。いくつかの実施態様において、脂質ベースのナノ粒子の平均直径は、約1000nm未満、約500nm、約250nm、約200nm、約150nm、約100nm、約75nm、約50nm、又は約25nmである。いくつかの実施態様において、LNPの平均直径は約70nm~100nmの範囲である。いくつかの実施態様において、LNPの平均直径は約88nm~約92nm、82nm~約86nm、又は約80nm~約95nmの範囲である。
【0131】
いくつかの実施態様において、本開示の組成物はリポソームに配合される。いくつかの実施態様において、本開示の組成物は脂質ベースのナノ粒子(LNP)に配合される。いくつかの実施態様において、本開示の組成物はポリマーナノ粒子に配合される。
【0132】
上述したように、「構造脂質」又は「ヘルパー脂質」としても知られている神経脂質も脂質製剤に、及びいくつかの実施態様において脂質粒子に、取り込みことができる。脂質製剤及び脂質粒子は、組成物の約10~40モル%で1つ以上の構造脂質を含み得る。適切な構造脂質は、製造中に粒子の形成をサポートする。構造脂質とは、生理学的pHで陰イオン性、非荷電性、又は中性両性イオン性の形態で存在する多数の脂質種のいずれかを指す。代表的な構造脂質には、ジアシルホスファチジルコリン、ジアシルホスファチジルエタノールアミン、ジアシルホスファチジルグリセロール、セラミド、スフィンゴミエリン、ジヒドロスフィンゴミエリン、セファリン、及びセレブロシドが含まれる。
【0133】
例示的な構造脂質としては、両性イオン脂質、例えば、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジオレオイルホスファチジルエタノールアミン(DOPE)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイルホスファチジルエタノールアミン(POPE)及びジオレオイルホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-1-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、1-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)、及び1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(トランスDOPE)が含まれる。
【0134】
別の実施態様において、構造脂質は、生理学的pHで負に帯電する任意の脂質であり得る。これらの脂質には、ホスファチジルグリセロール類、例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルグリセロール(POPG)、カルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ジアシルホスファチジルセリン、ジアシルホスファチジン酸、及び中性脂質に結合した他のアニオン性修飾基が含まれる。他の適切な構造脂質には、糖脂質(例えばモノシアロガングリオシドGM1)が含まれる。
【0135】
脂質製剤の実施態様には、混合物の完全性を確保するために安定剤を含めることができる。安定剤は、分子間の疎水性-親水性相互作用を破壊したり形成を助けたりする分子のクラスである。適切な安定剤としては、限定されるものではないが、ポリソルベート80(別名ツイーン80、IUPAC名2-[2-[3,4-ビス(2-ヒドロキシエトキシ)オキソラン-2-イル]-2-(2-ヒドロキシエトキシ)エトキシ]エチルオクタデカ-9-エノエート)、Myrj52(ポリオキシエチレン(40)ステアレート)、及びBrij(商標)S10(ポリオキシエチレン(10)ステアリルエーテル)が含まれる。ポリエチレングリコール結合脂質も使用することができる。安定剤は、単独で、又は互いに組み合わせて使用することができる。
【0136】
いくつかの実施態様において、安定剤は、脂質混合物全体の約1~3モル%を構成する。いくつかの実施態様において、安定剤は、脂質混合物全体の約0.5~2.5モル%を構成する。いくつかの実施態様において、安定剤は2.5モル%を超えて存在する。いくつかの実施態様において、安定剤は5モル%で存在する。いくつかの実施態様において、安定剤は10モル%で存在する。いくつかの実施態様において、安定剤は約0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5モル%などである。他の実施態様において、安定剤は脂質混合物の2.6~10モル%である。他の実施態様において、安定剤は脂質混合物の10モル%を超えて存在する。
【0137】
特定の用途のために、脂質組成物にステロイドも含めることができ、それから作成された脂質粒子には、コレステロールや植物ステロールなどのステロール類が含まれる。
【0138】
いくつかの実施態様において、本明細書に記載の治療組成物、例えば核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、癌に罹患しているか、罹患している疑いがあるか、又は癌を発症するリスクが高い可能性がある被験体を、予防又は治療する方法で使用するために、治療組成物に取り込まれる。
【0139】
いくつかの実施態様において、組成物は免疫原性組成物、例えば被験体における免疫応答を刺激することができる組成物である。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物はワクチンとして配合される。いくつかの実施態様において、医薬組成物はアジュバントとして配合される。いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は、生物治療薬として、例えば生物活性を有する異なる分子の遺伝子送達のためのビヒクルとして配合される。バイオ治療薬の非限定例には、サイトカイン、ケモカイン、その他の可溶性免疫調節薬、酵素、ペプチド及びタンパク質アゴニスト、ペプチド及びタンパク質拮抗剤、ホルモン、受容体、抗体及び抗体誘導体、増殖因子、転写因子、及び遺伝子サイレンシング/編集分子が含まれる。いくつかの実施態様において、医薬組成物はアジュバントとして配合される。
【0140】
いくつかの実施態様において、免疫原性組成物は実質的には、非免疫原性又は最小限の免疫原性(例えば被験体における免疫応答の刺激が最小である組成物)である。いくつかの実施態様において、非免疫原性又は最小限の免疫原性組成物はバイオ治療薬として配合される。いくつかの実施態様において、医薬組成物は、鼻腔内投与、経皮投与、腹腔内投与、筋肉内投与、節内投与、腫瘍内投与、関節内投与、静脈内投与、皮下投与、膣内投与、及び経口投与のうちの1つ又はそれ以上のために配合される。
【0141】
注射用途に適した医薬組成物には、無菌水溶液又は分散液、及び無菌注射用溶液又は分散液を即時に調製するための無菌粉末が含まれる。静脈内投与の場合、適切な担体には、生理食塩水、殺菌水、Cremophor EK(商標)(BASF, Parsippany, N.J.)、又はリン酸緩衝化生理食塩水(PBS)、トリス(トロメタミン)、及びHEPESが含まれる。これらの場合、組成物は滅菌されており、注射しやすい程度に流動性があるべきである。これは製造及び保管条件下で安定であり、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から保護され得る。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、及びこれらの適切な混合物を含む溶媒又は分散媒体でもよい。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用によって、分散液の場合の必要な粒子サイズの維持によって、及び例えばドデシル硫酸ナトリウムなどの界面活性剤の使用によって維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。多くの場合、等張剤、例えば糖、多価アルコール(例えばマンニトール、ソルビトール)、スクロース、トレハロース、及び/又は塩化ナトリウムを組成物に含めることが一般的である。いくつかの実施態様において、組成物はトリス及びスクロースを含む。注射用組成物の吸収の延長は、組成物中に吸収を遅らせる薬剤、例えばモノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンを含めることによって行うことができる。
【0142】
無菌注射液は、必要に応じて、上記に列挙した構成要素の1つ又は組み合わせを含む適切な溶媒に必要量の活性化合物を取り込み、次に濾過滅菌することによって調製することができる。一般に、分散液は、基本分散媒体及び上記に列挙したもののうちの必要な他の構成要素を含む無菌ビヒクル中に活性化合物を取り込むことによって調製される。
【0143】
いくつかの実施態様において、組成物は、鼻腔内投与、経皮投与、筋肉内投与、腫瘍内投与、節内投与、静脈内投与、腹腔内投与、経口投与、膣内投与、又は頭蓋内投与のうちの1つ又はそれ以上の投与用に配合される。
【0144】
開示の方法
本明細書に記載の治療組成物のいずれか1つ、例えば核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の投与は、被験体において少なくとも1つの薬力学的作用を誘導するために使用することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、免疫応答及びインターフェロンガンマ(IFNγ)などのメディエーターのうちの1つ又はそれ以上の誘導産生をもたらすことができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の投与された組成物は、腫瘍微小環境における腫瘍免疫を増強する。いくつかの実施態様において、被験体は、1つ又はそれ以上の関連する健康状態又は疾患を有するか、有すると疑われるか、又は発症するリスクが高い可能性がある。いくつかの実施態様において、被験体は、癌、免疫疾患、又は慢性感染症を有する。いくつかの実施態様において、被験体は、医師の治療を受けている患者である。
【0145】
本開示の方法に適した免疫疾患の例には、限定されるものではないが、以下が含まれる:関節リウマチ、変形性関節症、スチル病、家族性地中海熱、全身性強皮症、多発性硬化症、強直性脊椎炎、橋本甲状腺炎、全身性エリテマトーデス、シェーグレン症候群、糖尿病性網膜症、糖尿病性血管症、糖尿病性神経痛、膵島炎、乾癬、大脱毛症、温冷自己免疫性溶血性貧血(AIHA)、悪性貧血、急性炎症性疾患、自己免疫性副腎炎、慢性炎症性脱髄性多発神経炎(CIDP)、ランバート・イートン症候群、苔癬性硬化症、ライム病、バセドウ病、ベーチェット病、メニエール病、反応性関節炎(ライター症候群)、チャーグ・ストラウス症候群、コーガン症候群、CREST症候群、尋常性天疱瘡及び落葉状天疱瘡、水疱性類天疱瘡、リウマチ性多発筋痛、多発性筋炎、原発性胆汁性肝硬変、膵炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、リウマチ熱、サルコイドーシス、シェーグレンセン症候群、強皮症、セリアック病、スティフマン症候群、高安動脈炎、一過性グルテン不耐症、自己免疫性ぶどう膜炎、白斑、多発性軟骨炎、疱疹状皮膚炎(DH)又はデューリング病、線維筋痛症、グッドパスチャー症候群、ギラン・バレー症候群、橋本甲状腺炎、自己免疫性肝炎、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、重症筋無力症、免疫複合体疾患、糸球体腎炎、結節性多発動脈炎、抗リン脂質症候群、多腺性自己免疫症候群、特発性肺線維症、特発性血小板減少性紫斑病(ITP)、蕁麻疹、自己免疫性不妊症、若年性関節リウマチ、サルコイドーシス、及び自己免疫性心筋症。
【0146】
本開示の方法に適した感染の非限定例には、例えば、ヒト免疫不全ウイルス(HIV)、B型肝炎ウイルス(HBV)、C型肝炎ウイルス(HCV)、サイトメガロウイルス(CMV)、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)、ヒトパピローマウイルス(HPV)、エプスタイン・バーウイルス(EBV)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス2(SARS-CoV2)、重症急性呼吸器症候群コロナウイルス(SARS-CoV)、中東呼吸器症候群(MERS)、インフルエンザウイルス、エボラウイルスなどのウイルスによる感染症が含まれる。本開示の方法に適した追加の感染症には、細胞内寄生虫、例えば、リーシュマニア、リケッチア、クラミジア、コクシエラ、マラリア原虫、ブルセラ、マイコバクテリア、リステリア、トキソプラズマ、及びトリパノソーマによる感染症が含まれる。
【0147】
いくつかの実施態様において、核酸構築物、組換え細胞、組換えRNA分子、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、以下の疾患の治療及び/又は予防に有用であり得る:免疫疾患、自己免疫疾患、又は炎症性疾患、例えば、糸球体腎炎、炎症性腸疾患、腎炎、腹膜炎、乾癬性関節炎、変形性関節症、スチル病、家族性地中海熱、全身性強皮症及び硬化症、炎症性腸疾患(IBD)、クローン病、潰瘍性大腸炎、急性肺損傷、髄膜炎、脳炎、ぶどう膜炎、多発性骨髄腫、糸球体腎炎、腎炎、喘息、アテローム性動脈硬化症、白血球接着不全症、多発性硬化症、レイノー症候群、シェーグレン症候群、若年発症糖尿病、ライター病、ベーチェット病、免疫複合体腎炎、IgA腎症、IgM多発性神経障害、免疫介在性血小板減少症、溶血性貧血、重症筋無力症、ループス腎炎、ループスエリテマトーデス、関節リウマチ(RA)、強直性脊椎炎、天疱瘡、バセドウ病、橋本甲状腺炎、小血管血管炎、オーメンズ症候群、慢性腎不全、自己免疫甲状腺疾患、急性伝染性単核球症、HIV、ヘルペスウイルス関連疾患、ヒトウイルス感染症、コロナウイルス、その他のエンテロウイルス、ヘルペスウイルス、インフルエンザウイルス、パラインフルエンザウイルス、呼吸器合胞体ウイルス又はアデノウイルス感染症、細菌性肺炎、創傷、敗血症、脳卒中/脳浮腫、虚血再灌流障害、及びC型肝炎。
【0148】
本開示の方法に適した炎症性疾患の非限定例には、喘息、炎症性腸疾患(IBD)、慢性大腸炎、脾腫、及び関節リウマチなどの炎症性疾患が含まれる。1つの態様において、被験体に薬力学的作用を誘導する方法が本明細書に提供され、この方法は、被験体に以下の1つ又はそれ以上を含む組成物を投与することを含む:(a)本明細書に記載の核酸構築物、(b)本明細書に記載の組換え細胞、及び(b)本明細書に記載の医薬組成物。いくつかの実施態様において、薬力学的作用には、被験体における免疫応答の誘発が含まれる。
【0149】
薬力学的作用を誘導する方法の非限定的な例示的実施態様には、以下の特徴の1つ又はそれ以上が含まれ得る。いくつかの実施態様において、投与された組成物は、被験体において1つ又はそれ以上の炎症促進性分子の産生を誘導する。いくつかの実施態様において、1つ又はそれ以上の炎症促進性分子には、インターフェロンガンマ(IFNγ)、サイトカイン、TNF-α、GM-CSF、及びMIP1α、グランザイムB、グランザイムA、パーフォリン、又はこれらの任意の組み合わせが含まれる。いくつかの実施態様において、投与された組成物は、IL-1α又はIL-1βシグナル伝達経路の一方又は両方の生成を阻害する。いくつかの実施態様において、投与された組成物は、IL-6又はVEGF発現レベルの変動、血管新生、腫瘍転移、免疫抑制、又は組織リモデリングを誘導する。いくつかの実施態様において、被験体は過去に1つ又はそれ以上の治療法で治療されており、前記1つ又はそれ以上の治療法に対して少なくとも部分的な耐性を発現している。いくつかの実施態様において、前記1つ又はそれ以上の治療法の少なくとも1つには小分子が含まれる。いくつかの実施態様において、被験体は癌、免疫疾患、又は慢性感染症に罹患している。
【0150】
上述したように、本明細書に記載の治療組成物、例えば核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のいずれかの投与は、被験体において少なくとも1つの薬力学的作用を誘導するために使用することができる。いくつかの実施態様において、本明細書に記載の核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の少なくとも1つの薬力学的作用を付与する能力についての分析は、インビボ又はエクスビボで行われる。分析可能な薬力学的作用の例には、免疫原性作用(例えばインビボの免疫応答の誘発)、バイオマーカー応答、治療作用、予防作用、所望の作用、望ましくない作用、有害作用、及び疾患モデルにおける作用が含まれる。いくつかの実施態様において、薬力学的作用の評価には、インビボの免疫応答の誘導の評価が含まれる。いくつかの実施態様において、薬力学的作用の評価には、免疫応答を増強し血管新生及び転移を予防することができるサイトカイン経路の誘導を評価することが含まれる。
【0151】
いくつかの実施態様において、開示された組成物は、意図された投与経路と適合するように配合される。例えば、本開示の核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、経口、吸入、又は非経口経路によって投与され得る。非経口投与経路の例には、例えば、筋肉内、腫瘍内、眼内、静脈内、節内、皮内、皮下、経皮(局所)、経粘膜、膣内、及び直腸投与が含まれる。いくつかの実施態様において、組成物は筋肉内に投与される。いくつかの実施態様において、組成物は腫瘍内に投与される。非経口投与に使用される溶液又は懸濁液には、以下の構成要素が含まれ得る:無菌希釈剤、例えば注射用水、生理食塩水、固定油、ポリエチレングリコール、グリセリン、プロピレングリコール、又はその他の合成溶媒:抗細菌剤、例えばベンジルアルコール又はメチルパラベン;酸化防止剤、例えばアスコルビン酸又は亜硫酸水素ナトリウム;キレート剤、例えばエチレンジアミン四酢酸(EDTA);緩衝剤、例えば酢酸塩、クエン酸塩、リン酸塩、トリス、スクロース、及び張性調整剤、例えば塩化ナトリウム又はデキストロース。pHは酸又は塩基、例えば一塩基性及び/又は二塩基性リン酸ナトリウム、塩酸、又は水酸化ナトリウムで調整することができる(例えばpHを約7.2~7.8、例えば7.5に)。非経口製剤は、ガラス製又はプラスチック製のアンプル、使い捨て注射器、又は複数回投与用バイアルに封入することができる。
【0152】
本明細書に記載の治療組成物、例えば核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、1日1回以上から1週間に1回以上(1日おきに1回を含む)まで投与することができる。本開示の対象の核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の治療有効量による被験体の治療は、1回の治療、又は一連の治療を含み得る。いくつかの実施態様において、組成物は、1週間間隔で投与され、例えば1週間から2週間、2週間から3週間、又は3週間から4週間間隔で、1回から2回、2回から3回、又は3回から4回の投与が行われる。これに続いて、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、又は4ヶ月ごとに追加の投与が行われてもよい。いくつかの実施態様において、3回投与を3週間から4週間間隔で筋肉内に投与し、その後3ヶ月ごとに筋肉内投与することができる。あるいは、組成物は、より短い間隔で、例えば、5日間は8時間ごとに投与し、その後2~14日間、例えば9日間の休止期間を置き、その後さらに5日間は8時間ごとに投与することもできる。核酸構築物及び組換えポリペプチドに関しては、本開示の核酸構築物又は組換えポリペプチドの治療有効量(例えば有効投与量)は、選択された核酸構築物又は組換えポリペプチドに依存する。
【0153】
上で論じたように、治療有効量は、癌などの健康状態に罹患しているか、罹患していると疑われているか、又はそのリスクがある被験体に投与した場合に、特定の作用を促進するのに十分な治療組成物の量を含む。いくつかの実施態様において、有効量は、疾患の症状の発現を予防するか又は遅延させるか、疾患の症状の経過を変える(例えば、限定されるものではないが、疾患の症状の進行を遅らせる)か、又は疾患の症状を逆転させるのに十分な量を含む。
【0154】
治療は、疾患の兆候又は症状の少なくともいずれか1つ又はすべてが改善又は緩和された場合に、有効な治療とみなされる。有効性は、入院又は医療介入の必要性によって評価される個体の症状の悪化がないこと(例えば疾患の進行が停止するか、又は少なくとも遅くなる)によっても測定することができる。これらの指標を測定する方法は、当業者に既知であるか、及び/又は本明細書に記載されている。治療は、被験体又は動物(一部の非限定例はヒト又は哺乳動物を含む)における疾患のあらゆる治療を含み、(1)疾患の抑制、例えば症状の進行の停止又は遅延、又は(2)疾患の緩和、例えば症状の退行、及び(3)症状の発症の可能性の防止又は低減を含む。
【0155】
いくつかの実施態様において、本開示の核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物は、医薬的に許容し得る担体を含む組成物中で、免疫応答を刺激するのに有効な量で、被験体に投与することができる。一般に、被験体は、最初の一連の注射(又は以下に記載される他の経路の1つによる投与)によって免疫され、次に、最初の一連の投与によって得られる保護を高めるためにブースターを投与することができる。最初の一連の注射及びその後のブースターは、被験体における免疫応答を刺激するのに必要な用量及び期間で投与される。開示された方法のいくつかの実施態様において、被験体は哺乳動物である。いくつかの実施態様において、哺乳動物はヒト被験体である。
【0156】
上述したように、注射用に適した医薬的に許容し得る担体には、無菌水溶液(水溶性の場合)又は分散液、及び無菌注射用液又は分散液を即時調製するための無菌粉末が含まれる。これらの場合、組成物は無菌でなければならず、容易に注射できる程度に流動的でなければならない。組成物はさらに、製造及び保管条件下で安定している必要があり、細菌や真菌などの微生物の汚染作用から防御されなければならない。担体は、例えば、水、エタノール、ポリオール(例えばグリセロール、プロピレングリコール、及び液体ポリエチレングリコールなど)、これらの適切な混合物、及び植物油を含む溶媒又は分散媒体であり得る。適切な流動性は、例えば、レシチンなどのコーティングの使用、分散の場合の必要な粒子サイズの維持、及び界面活性剤の使用によって、維持することができる。微生物の作用の防止は、さまざまな抗菌剤及び抗真菌剤、例えばパラベン、クロロブタノール、フェノール、アスコルビン酸、チメロサールなどによって達成することができる。
【0157】
無菌注射液は、必要に応じて、上に列挙した構成要素の1つ又は組み合わせを含む適切な溶媒中で、必要な量の核酸構築物、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを取り込み、続いて濾過滅菌することによって調製することができる。
【0158】
核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物が上記のように適切に保護されている場合、これらは、例えば不活性希釈剤又は同化可能な食用担体とともに経口投与することができる。核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物、及び他の構成要素は、ハードシェル又はソフトシェルゼラチンカプセルに封入するか、錠剤に圧縮するか、又は個々の食事に直接取り込むこともできる。経口治療投与の場合、活性化合物は賦形剤に取り込まれ、摂取可能な錠剤、口腔内錠剤、トローチ剤、カプセル剤、エリキシル剤、懸濁剤、シロップ、ウエハーなどの形態で使用することができる。
【0159】
追加の治療法
いくつかの実施態様において、本開示による組成物は、被験体に個別に、単一療法(単独療法)として、又は少なくとも1つの追加の治療法(例えば第2療法)と組み合わせた第1療法として投与される。いくつかの実施態様において、第2療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、標的化療法、及び手術からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、第2療法は、化学療法、放射線療法、免疫療法、ホルモン療法、毒素療法、又は手術からなる群から選択される。いくつかの実施態様において、第1療法及び第2療法は同時に施される。いくつかの実施態様において、第1療法は、第2療法と同時に施される。いくつかの実施態様において、第1療法及び第2療法は、順次施される。いくつかの実施態様において、第1療法は、第2療法の前に施される。いくつかの実施態様において、第1療法は第2療法の後に施される。いくつかの実施態様において、第1療法は第2療法の前及び/又は後に施される。いくつかの実施態様において、第1療法と第2療法は交互に施される。いくつかの実施態様において、第1療法と第2療法は単一製剤で一緒に施される。
【0160】
キット
また、本明細書に記載された方法を実施するための様々なキット、並びにその作成及び使用に関する説明書も本明細書に提供される。特に、本開示のいくつかの実施態様は、被験体において薬力学的作用を誘導するためのキットを提供する。他のいくつかの実施態様は、それを必要とする被験体における癌の治療方法のためのキットに関する。例えば本明細書では、いくつかの実施態様において、本明細書に提供及び記載されている核酸構築物、組換え細胞、組換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のうちの1つ又はそれ以上、並びにその作成及び使用に関する説明書を含むキットが提供される。
【0161】
いくつかの実施態様において、本開示のキットは、提供される核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを被験体に投与するのに有用な1つ又はそれ以上の手段をさらに含む。例えば、いくつかの実施態様において、本開示のキットは、提供される核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のいずれか1つを被験体に投与するために使用される1つ又はそれ以上の注射器(充填済み注射器を含む)及び/又はカテーテル(充填済みカテーテルを含む)をさらに含む。いくつかの実施態様において、キットは、所望の目的、例えば、それを必要とする被験体の状態の診断、予防、又は治療のために、他のキット構成要素と同時に又は逐次投与することができる1つ又はそれ以上の追加の治療薬を有し得る。
【0162】
上記のキットのいずれかは、さらに1つ又はそれ以上の追加の試薬を含むことができ、ここで、そのような追加の試薬は以下から選択することができる:希釈緩衝液;復元溶液、洗浄緩衝液、対照試薬、対照発現ベクター、陰性対照、陽性対照、本開示の提供された核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物のインビトロ産生に適した試薬。
【0163】
いくつかの実施態様において、キットの構成要素は別々の容器に入っていてもよい。他のいくつかの実施態様において、キットの構成要素は単一の容器中に組み合わされてもよい。従って、本開示のいくつかの実施態様において、キットには、本明細書で提供及び説明されている核酸構築物、組み換え細胞、組み換えポリペプチド、及び/又は医薬組成物の1つ又はそれ以上が1つの容器(例えば無菌ガラス又はプラスチックバイアル)に含まれ、別の治療薬が別の容器(例えば無菌ガラス又はプラスチックバイアル)に含まれている。
【0164】
別の実施態様において、キットには本明細書に記載の組成物の組み合わせが含まれ、これには、本開示の1つ又はそれ以上の核酸構築物、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドが、任意選択的に医薬組成物中に一緒に配合された1つ又はそれ以上のさらなる治療剤と組合わされて、単一の共通容器内に含まれている。
【0165】
キットが、被験体への非経口投与用の医薬組成物を含む場合、キットは、そのような投与を行うための器具(例えば注射器具又はカテーテル)を含み得る。例えば、キットは、本開示の1つ又はそれ以上の核酸構築物、組換え細胞、及び/又は組換えポリペプチドを含む上記で説明した1つ又はそれ以上の皮下注射針又はその他の注射器具を含み得る。
【0166】
いくつかの実施態様において、キットには、本明細書に開示された方法を実施するために、キットの構成要素を使用するための説明書がさらに含まれ得る。例えば、キットには、キット内の医薬組成物及び剤形に関する情報を含む添付文書が含まれ得る。一般に、そのような情報は、患者及び医師が、封入された医薬組成物及び剤形を効果的かつ安全に使用するのに役立つ。例えば、開示内容の組み合わせに関する以下の情報が添付文書に記載される場合がある:薬物動態、薬力学、臨床試験、有効性パラメータ、適応症及び使用法、禁忌、警告、注意事項、副作用、過剰投与、適切な投与量及び投与方法、供給方法、適切な保管条件、参考文献、製造元/販売元情報、及び知的所有権情報。
【0167】
本方法を実施するための説明は、一般に、適切な記録媒体に記録される。例えば、説明は、紙やプラスチックなどの基板に印刷することができる。説明は、キットの添付文書として、キットの容器又はその構成要素(例えばパッケージ又はサブパッケージに関連して)のラベルなどに存在することができる。説明は、CD-ROM、ディスク、フラッシュドライブなどの適切なコンピュータ読み取り可能記憶媒体に存在する電子記憶データファイルとして存在することができる。場合によっては、実際の説明がキットに存在しないが、リモートソース(例えばインターネット経由)から説明を取得するための手段が提供される。この実施態様の例は、説明を表示したり、説明をダウンロードしたりできるウェブアドレスを含むキットである。説明と同様に、説明を取得するためのこの手段は、適切な基板に記録することができる。
【0168】
本開示で言及されているすべての刊行物及び特許出願は、個々の刊行物又は特許出願が参照により組み込まれることが具体的にかつ個別に示されている場合と同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0169】
本明細書で引用されている参考文献が先行技術を構成するということを承認するものではない。参考文献の議論は、その著者の主張を述べるものであり、出願人は、引用された文書の正確性及び妥当性に異議を唱える権利を留保する。科学雑誌の記事、特許文書、及び教科書を含む多数の情報源が本明細書で参照されているが、この参照が、これらの文書のいずれかが当該技術分野における一般的な知識の一部を構成するということを承認するものではないことは明らかである。
【0170】
本明細書で示されている一般的な方法の説明は、例示のみを目的としている。他の代替方法及び代替手段は、本開示を検討すれば当業者には明らかであり、本出願の精神及び範囲内に含まれるものとする。
【0171】
さらなる実施態様は、以下の実施例でさらに詳細に開示されるが、これらは例示として提供されており、本開示又は請求項の範囲を制限することを意図するものではない。
【実施例】
【0172】
本発明の実施では、特に明記しない限り、分子生物学、微生物学、細胞生物学、生化学、核酸化学、及び免疫学の従来の技術が採用され、これらは当業者によく知られている。このような技術は、以下の文献、例えば、Sambrook, J., & Russell, D. W. (2012). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (4th ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory 及び Sambrook, J., & Russel, D. W. (2001). Molecular Cloning: A Laboratory Manual (3rd ed.). Cold Spring Harbor, NY: Cold Spring Harbor Laboratory (本明細書において、一緒に “Sambrook”と呼ばれる); Ausubel, F. M. (1987). Current Protocols in Molecular Biology. New York, NY: Wiley (including supplements through 2014); Bollag, D. M. et al. (1996). Protein Methods. New York, NY: Wiley-Liss; Huang, L. et al. (2005). Nonviral Vectors for Gene Therapy. San Diego: Academic Press; Kaplitt, M. G. et al. (1995). Viral Vectors: Gene Therapy and Neuroscience Applications. San Diego, CA: Academic Press; Lefkovits, I. (1997). The Immunology Methods Manual: The Comprehensive Sourcebook of Techniques. San Diego, CA: Academic Press; Doyle, A. et al. (1998). Cell and Tissue Culture: Laboratory Procedures in Biotechnology. New York, NY: Wiley; Mullis, K. B., Ferre, F. & Gibbs, R. (1994). PCR: The Polymerase Chain Reaction. Boston: Birkhauser Publisher; Greenfield, E. A. (2014). Antibodies: A Laboratory Manual (2nd ed.). New York, NY: Cold Spring Harbor Laboratory Press; Beaucage, S. L. et al. (2000). Current Protocols in Nucleic Acid Chemistry. New York, NY: Wiley (2014年までの増刊を含む); 及び Makrides, S. C. (2003). Gene Transfer and Expression in Mammalian Cells. Amsterdam, NL: Elsevier Sciences B.V.で詳細に説明されおり、これらの開示は参照により本明細書に組み込まれる。
【0173】
さらなる実施態様は、以下の実施例でさらに詳細に開示されるが、これらの実施例は例示として提供されており、いかなる意味においても本開示又は請求項の範囲を制限することを意図するものではない。
【0174】
実施例1
アルファウイルスベクターの構築
本実施例では、基本のアルファウイルスベクター(例えば異種遺伝子を含まないベクター)を構築し、次に、このベクターを、1つ又はそれ以上の目的の遺伝子(例えばIL-12p35サブユニット又はその機能的変種、IL-12p40サブユニット又はその機能的変種、及びIL-1RA又はその機能的変種)を発現するベクターの構築に使用するために実施された実験を説明する。
【0175】
EEEV基本ベクター
基本のEEEVベクター(すなわち、目的の異種遺伝子を含まない)は、以下のように構築された:基本のEEEVベクターは、いくつかの修飾を加えた参照配列(Genbank EF151502)から4つの約4kbの部分で新規合成された(Twist Bioscience)。サイレント変異G301A、A3550C、G4516A、G5725A、G7399A変異が取り込まれて、制限酵素切断部位が除去された。固有の制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)が、本来のEEEV構造遺伝子のコード配列(ここで、5’Aは構造ポリタンパク質のATG開始コドンの位置と一致し、3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTAAの位置と一致する)の代わりに取り込まれた。5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号11)がSpeI部位の上流に挿入され、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC-3’;配列番号12)が、以後のGibson Assembly(登録商標)操作(Gibson et al., Nat. Methods 6, 343-345, 2009)のためにSpeI部位の下流に挿入された。バクテリオファージT7RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号13)はEEEVゲノム配列の上流で、かつ後にSapI部位が続くポリ(A)配列の下流に含まれ、これが認識部位の上流を切断する。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号14)があり、その後に固有の制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)が続く。これらの部分は、5つのピースからなるGibson Assembly(登録商標)反応物(線状化されたpYL主鎖と4つの合成断片)と組み合わされて、EEEV基本ベクターが得られた。
【0176】
CHIKV基本ベクター
基本のCHIKV S27ベクターは、サイレントA5366G変異と、CHIKV構造遺伝子のコード配列(ここで、5’Aは構造ポリタンパク質のATG開始コドンの位置と一致し、及び3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTAAの位置と一致する)の代わりに固有の制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)とを有する参照配列(Genbank AF369024)から、4つの約4kb部分で新規合成された(Twist Bioscience, Thermo Fisher GeneArt)。5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号11)がSpeI部位の上流に挿入され、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC-3’;配列番号12)が、以後のGibson Assembly(登録商標)操作のためにSpeI部位の下流に挿入された。バクテリオファージT7RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号13)はCHIKVゲノム配列の上流で、かつ後にSapI部位が続くポリ(A)配列の下流に含まれ、これが認識部位の上流を切断する。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号14)があり、その後に固有の制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)が続く。これらの部分は、5つのピースから成るGibson Assembly(登録商標)反応物(線状化されたpYL主鎖と4つの合成断片)と組み合わされて、CHIKV S27基本ベクターが得られた。
【0177】
CHIKV DRDE基本ベクターは、参照配列(Genbank EF210157)から同様に構築されたが、DRDE 3’UTRの代わりにS27 3’UTRが使用された。
【0178】
SINV基本ベクター
基本のSINV Girdwoodベクターは、SINV構造遺伝子のコード配列(ここで、5’Aは構造ポリタンパク質遺伝子のヌクレオチド93に続くP2A配列の次のヌクレオチドであり、及び3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTGAの位置と一致する)の代わりに固有の制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)を有するGirdwood株参照配列(Genbank MF459683)から、4つの約4kb部分で新規合成された(Twist Bioscience, Thermo Fisher GeneArt)。バクテリオファージT7RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号13)はSINVゲノム配列の上流で、かつ後にSapI部位が続くポリ(A)配列の下流に含まれ、これが認識部位の上流を切断する。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号14)があり、その後に固有の制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)が続く。これらの部分は、5つのピースから成るGibson Assembly(登録商標)反応物(例えば線状化されたpYL主鎖と4つの合成断片)と組み合わされて、SINV Girdwood基本ベクターが生成された。
【0179】
基本のSINV AR86ベクターは、参照配列(Genbank U38305)から同様に構築されたが、nsP2コード配列はGirdwood参照配列から得られた。
【0180】
VEE基本ベクター
基本のVEEベクターは、サイレントA2087G変異と、VEE構造遺伝子のコード配列(ここで、5’Aは構造ポリタンパク質遺伝子のヌクレオチド93に続くP2A配列の次のヌクレオチドであり、3’Tは構造ポリタンパク質の停止コドンTGAの位置と一致する)の代わりに、固有の制限酵素切断部位(SpeI、5’-A’CTAG,T-3’)とを有するTC-83株参照配列(Genbank L01443)から、4つの約4kb部分で新たに合成された(Twist Bioscience, Thermo Fisher GeneArt)。5’アダプター配列(5’-CTGGAGACGTGGAGGAGAACCCTGGACCT-3’;配列番号11)がSpeI部位の上流に挿入され、3’アダプター配列(5’-GACCGCTACGCCCCAATGACCCGACCAGC-3’;配列番号12)が、以後のGibson Assembly(登録商標)操作のためにSpeI部位の下流に挿入された。バクテリオファージT7RNAポリメラーゼプロモーター(5’-TAATACGACTCACTATAG-3’;配列番号13)はVEEゲノム配列の上流で、かつ後にSapI部位が続くポリ(A)配列の下流に含まれ、これが認識部位の上流を切断する。SapI部位のすぐ下流には、T7ターミネーター配列(5’-AACCCCTCTCTAAACGGAGGGGTTTTTTT-3’;配列番号14)があり、その後に固有の制限酵素切断部位(NotI、5’-GC’GGCC,GC-3’)が続く。これらの部分は、5つのピースから成るGibson Assembly(登録商標)反応物(線状化されたpYL主鎖と4つの合成断片)と組み合わされて、VEE基本ベクターが得られた。
【0181】
最終ベクター
異種遺伝子を含むベクターの構築は、以下のように実行された:空の基本ベクターをSpeI消化によって線状化した。IL-12A、IL12-B、IL-1RN遺伝子を、コンピューター(in silico)でヒト発現用にコドン最適化/リファクタリングし、EMCV IRESとともに新規合成した(IDT)。合成産物を、遺伝子の末端に5’又は3’アダプター配列を付加するプライマー、又は隣接する遺伝子挿入物にP2A配列及び/又は相同配列を付加するプライマーを使用して増幅した。消化産物とPCR産物は、Gibson Assembly(登録商標)操作によって組み合わされて、最終的なベクターが得られた。
【0182】
実施例2
修飾アルファウイルスベクターのインビトロ評価
本例では、上記実施例1で説明した合成srRNA構築物の発現レベルを評価し、これらの差異的な挙動(例えば、複製及びタンパク質発現)を調べるために実施されたインビトロ実験の結果について説明する。
【0183】
インビトロ転写:RNAは、5’ARCAキャップ付きバクテリオファージT7ポリメラーゼを用いてSapI線状化プラスミドテンプレートからのインビトロ転写(HiScribe(商標)T7 ARCA mRNAキット、NEB)により、又はキャップなし転写(HiScribe(商標)T7 High Yield RNA合成キット、NEB)後に5’キャップ1(Vaccinia Capping System、mRNAキャップ2’-O-メチルトランスフェラーゼ、NEB)を付加して、調製された。次に、RNAをフェノール/クロロホルム抽出又はカラム精製(Monarch(登録商標)RNA Cleanupキット、NEB)を使用して精製した。RNA濃度は260nmの吸光度で測定した(Nanodrop、Thermo Fisher Scientific)。
【0184】
複製:RNAは、BHK-21細胞又はVero細胞(例えば4D-Nucleofector(商標)、Lonza)への電気穿孔法により形質転換された。形質転換の15~22時間後、細胞を固定し、透過処理(eBioscience(商標)Foxp3/転写因子染色緩衝液セット、Invitrogen)し、PE結合抗dsRNAマウスモノクローナル抗体(J2、Scicons)を使用して染色して、dsRNA+細胞の頻度と個々の細胞におけるdsRNAの平均蛍光強度(MFI)を、蛍光フローサイトメトリーにより定量した。
【0185】
ELISAによるタンパク質発現:電気穿孔したBHK-21細胞から、500ngのsrRNA一遺伝子又は複遺伝子構築物を用いて、ヒトIL-12p70及びIL-1RAを検出した。トランスフェクション後約24時間及び48時間に上清を採取し、RnD SystemsのヒトIL-12p70(カタログ番号DY1270)及びRnD SystemsのヒトIL-1ra/IL-1F3 DuoSet ELISA(カタログ番号DY280)でアッセイした。
【0186】
生物活性アッセイ:ヒトIL-12p70及びIL-1RAを、電気穿孔したBHK-21細胞から500ngのsrRNA一遺伝子又は複遺伝子構築物を用いて検出した。トランスフェクション後約24時間及び48時間に上清を採取し、PromegaのGloMaxバイオアッセイ(カタログ番号JA2601)を用いて、IL-12をアッセイした。IL-1RAは、メーカーのプロトコールに従って、4ng/mLIL1β(最終濃度1ng/mL)でプレインキュベートしたIL-1βレポーターHEK293細胞(Invivogen、hkb-il1bv2)及びトランスフェクトしたBHK細胞からの上清を使用してアッセイした。
【0187】
遺伝子の数と順序の評価
トランスフェクトされたBHK-21細胞から測定されたマウスIL-12及びIL-1RA検出ELISAアッセイの結果を、
図1A、1B、4A、及び4Bに示す。IL-12サブユニットp35、IL-12サブユニットp40、及びIL-1RAの順序が異なる一遺伝子又は複遺伝子の形態のさまざまな構築物を試験して、構築物内のどの遺伝子構成がIL-12及びIL-1RAの最も強固な発現をもたらすかを決定した。Y軸は、IL-12又はIL-1RAの濃度をng/mLで示す。
図3は、試験された各構築物から測定された対応するIL-12及びIL-1RAの濃度を示す。
【0188】
マウスIL-12及びIL-1RA検出生物活性は、異なるサイトカイン受容体を発現するレポーター細胞で試験した異なるsrRNA構築物でトランスフェクトしたBHK-21細胞の上清から測定された。結果は
図2A、2B、5A、及び5Bに示される。
図6は、試験した各構築物から測定された対応するIL-12及びIL-1RA生物活性を示す。
【0189】
実施例3
修飾アルファウイルスベクターのインビボ評価
本実施例では、本明細書に記載のsrRNA構築物(例えば未配合ベクター及びLNP配合ベクターの両方)を評価するために実施したインビボ実験の結果について説明する。
【0190】
これらの実験では、さまざまなアルファウイルス株に由来する合成srRNA構築物を設計し、その後評価した。
【0191】
マウスと注射。BALB/cマウスは、Charles River Labs、Envigo、又はJackson Laboratoriesから購入した。投与当日、0.01~40μgの物質を大腿四頭筋の片方又は両方の大腿四頭筋に分割して筋肉内注射した。ベクターは、生理食塩水中で未配合のままか又はLNP配合で投与した。マウスは、試験期間中、体重及びその他の一般的な観察項目について追跡された。薬物動態試験のため、マウスには0日目にのみ投与された。
【0192】
LNP配合。レプリコンRNAを、マイクロ流体ミキサーを使用して脂質ナノ粒子に配合し、動的光散乱を使用して粒子サイズ、多分散性について、及びカプセル化効率について分析した。脂質はエタノールに懸濁した。L1の場合、RNAは10mMクエン酸緩衝液(pH5.0)に172μg/mlの濃度で懸濁し、3:1(水性:有機)の流速で混合された。L2については、RNAは250mM NaOAc(pH4.0)に82μg/mlの濃度で懸濁し、3:1(水性:有機)の流速で混合した。
【0193】
ELISA。IL-12及びIL-1RAの血清濃度を測定するために、ヒトIL-12 p70 DuoSet ELISA(RnD Systems、カタログ番号DY1270)及びヒトIL-1ra ELISAキット(Abcam、ab211650)を使用して、製造元のプロトコールに従ってELISA分析を実施した。
【0194】
遺伝子と脂質配合の順序の評価。次に、インビトロアッセイから得られた2つの最良の複遺伝子構成を、マウス血清中のタンパク質発現について、6つの異なるsrRNAベクターでインビボで試験した。結果は
図7A及び7Bに示される。おそらくタンパク質の半減期が短いため、IL-1RAが検出されなかった場合があったことに注意されたい。
【0195】
次に、複遺伝子構成を異なる配合で試験し、ELISAによってインビボでタンパク質発現を分析した。結果は
図8A及び8Bに示される。
【0196】
本開示の特定の代替態様を開示したが、さまざまな修飾及び組み合わせが可能であり、これらは添付の特許請求の範囲の真の精神及び範囲内であると考えられることを理解されたい。従って、ここに提示された要約及び開示内容そのものに限定する意図はない。
【配列表】
【国際調査報告】