(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】カウンタコイルを有する無線電力共振器のためのシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
H02J 50/12 20160101AFI20241108BHJP
H01F 38/14 20060101ALI20241108BHJP
H01F 27/38 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H02J50/12
H01F38/14
H01F27/38
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531624
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022080545
(87)【国際公開番号】W WO2023102370
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517073591
【氏名又は名称】ティーシー1 エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン、ジョン・フレディ
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン、ラッセル・ユージーン
(72)【発明者】
【氏名】キーン、レイチェル
(72)【発明者】
【氏名】ハージェス、ダニエル・アイ
(72)【発明者】
【氏名】ジョンソン、ジャレッド・リチャード
【テーマコード(参考)】
5E058
【Fターム(参考)】
5E058BB19
(57)【要約】
本開示によれば、無線電力伝送のためのシステム及び方法が提供される。無線電力伝送システムで使用するための本開示の共振器装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、環状溝を画定する磁気コアと、環状溝内に配置され、第1の磁場を生成するように構成されたコイル素子と、コイル素子に近接して配置されたカウンタコイル素子であって、遠方場電磁放射の低減を促進するために、第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成された、該カウンタコイル素子と、を含む。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
無線電力伝送システムで使用するための共振器装置であって、
ハウジングと、
ハウジング内に配置され、環状溝を画定する磁気コアと、
前記環状溝内に配置され、第1の磁場を生成するように構成されたコイル素子と、
前記コイル素子に近接して配置されたカウンタコイル素子であって、遠方場電磁放射の低減を促進するために、前記第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成された、該カウンタコイル素子と、を含む、共振器装置。
【請求項2】
請求項1に記載の共振器装置であって、
前記カウンタコイル素子は、前記ハウジングの外側に配置される、共振器装置。
【請求項3】
請求項2に記載の共振器装置であって、
前記磁気コアは、第1の環状溝を画定する第1の磁気コアであり、
当該共振器装置は、第2の磁気コアをさらに含み、
前記カウンタコイル素子は、前記第2の磁気コアによって画定される第2の環状溝内に配置される、共振器装置。
【請求項4】
請求項1に記載の共振器装置であって、
前記カウンタコイル素子は、前記ハウジング内に配置される、共振器装置。
【請求項5】
請求項4に記載の共振器装置であって、
前記磁気コアは、追加の環状溝をさらに画定し、
前記カウンタコイル素子は、前記追加の環状溝内に配置される、共振器装置。
【請求項6】
請求項1に記載の共振器装置であって、
前記コイル素子は、送信コイル素子であり、
前記第1の磁場は、受信コイル素子に電流を誘導することができる、共振器装置。
【請求項7】
請求項6に記載の共振器装置であって、
前記カウンタコイル素子は、前記送信コイル素子における、前記受信コイル素子と反対になる側に配置される、共振器装置。
【請求項8】
経皮エネルギー伝送システムであって、
送信共振器であって、
第1のハウジングと、
第1の環状溝を画定する第1の磁気コアと、
前記第1の環状溝内に配置され、第1の磁場を生成するように構成された送信コイル素子と、を含む、該送信共振器と、
植込み型受信共振器であって、
第2ハウジングと、
第2の環状溝を画定する第2の磁気コアと、
前記第2の環状溝内に配置された受信コイル素子であって、前記第1の磁場により前記受信コイル素子に電流が誘導されるように構成された、該受信コイル素子と、を含む、該受信共振器と、
前記送信コイル素子に近接して配置されたカウンタコイル素子であって、遠方場電磁放射の低減を促進するために、前記第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成された、該カウンタコイル素子と、を備える、経皮エネルギー伝送システム。
【請求項9】
請求項8に記載の経皮エネルギー伝送システムであって、
前記カウンタコイル素子は、前記第1のハウジングの外側に配置される、経皮エネルギー伝送システム。
【請求項10】
請求項9に記載の経皮エネルギー伝送システムであって、
第3の環状溝を画定する第3の磁気コアをさらに備え、
前記カウンタコイル素子は、前記第3の環状溝内に配置される、経皮エネルギー伝送システム。
【請求項11】
請求項10に記載の経皮エネルギー伝送システムであって、
前記第3の磁気コアは、前記第1のハウジングに結合される、経皮エネルギー伝送システム。
【請求項12】
請求項8に記載の経皮エネルギー伝送システムであって、
前記カウンタコイル素子は、前記第1のハウジング内に配置される、経皮エネルギー伝送システム。
【請求項13】
請求項12に記載の経皮エネルギー伝送システムであって、
前記第1の磁気コアは、第3の環状溝をさらに画定し、
前記カウンタコイル素子は、前記第3の環状溝内に配置される、経皮エネルギー伝送システム。
【請求項14】
請求項13に記載の経皮エネルギー伝送システムであって、
前記第1の環状溝及び前記第3の環状溝は、互いに反対方向に開口している、経皮エネルギー伝送システム。
【請求項15】
無線電力伝送システムで使用するために共振器装置を組み立てる方法であって、
ハウジング内に、環状溝を画定する磁気コアを配置するステップと、
前記環状溝内に、第1の磁場を生成するように構成されたコイル素子を配置するステップと、
前記コイル素子に近接して、遠方場電磁放射の低減を促進するために、前記第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成されたカウンタコイル素子を配置するステップと、を含む、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、
前記カウンタコイル素子を配置する前記ステップは、前記ハウジングの外側に前記カウンタコイル素子を配置するステップを含む、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記磁気コアは、第1の環状溝を画定する第1の磁気コアであり、
当該方法は、第2の磁気コアによって画定される第2の環状溝内に前記カウンタコイル素子を配置するステップをさらに含む、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、
前記第2の磁気コアを前記ハウジングに結合させるステップをさらに含む、方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、
前記カウンタコイル素子を配置する前記ステップは、前記ハウジング内に前記カウンタコイル素子を配置するステップを含む、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記ハウジング内に前記カウンタコイル素子を配置する前記ステップは、前記磁気コアによって画定される追加の溝内に前記カウンタコイル素子を配置するステップを含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年12月3日出願の米国特許仮出願第63/285、637号に基づく優先権を主張するものである。上記出願の開示内容の全体は、参照により本明細書中に援用される。
【0002】
(技術分野)
本開示は、一般に、無線電力伝送システムに関し、より詳細には、カウンタコイルを有する無線電力共振器に関する。
【背景技術】
【0003】
VAD(Ventricular assist device)として知られている心室補助装置(補助人工心臓)は、植込み型の血液ポンプであり、一般に心不全またはうっ血性心不全と呼ばれる心臓が十分な循環を提供することができない症状を患っている患者において、短期使用(すなわち、数日または数か月)及び長期使用(すなわち、数年または生涯)の両方で使用される。心不全を患っている患者は、心臓移植を待つ間に、または、長期のDT治療(destination therapy)として、VADを使用することができる。別の例では、患者は、心臓手術後の回復期に、VADを使用することができる。このように、VADは、弱った心臓を補助したり(すなわち、部分的な補助)、本物の心臓の機能を効果的に代替したりすることができる。
【0004】
VADへの電力供給には、無線電力伝送システムを使用することができる。無線電力伝送システムは、一般に、外部送信共振器(本明細書では、「送信(TX)モジュール」とも称する)と、患者の体内に植え込まれるように構成された植込み型受信共振器とを備える。このような無線電力伝送システムは、経皮エネルギー伝送システム(TETS)とも呼ばれている。
【0005】
TETSからの遠方場電磁(EM)放射を低減することが望ましい。TETSは、少なくとも、CISPR11グループ2クラスBの限度値などの様々な標準規格に準拠する必要がある。TETSの送信(TX)モジュールは、一般に、遠方場電磁(EM)放射の最大の発生源である。したがって、遠方場電磁(EM)放射を大幅に(例えば、少なくとも2デシベル(dB)までに)低減する送信(TX)モジュールが望まれている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
一態様では、無線電力伝送システムで使用するための共振器装置が提供される。本開示の共振器装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、環状溝を画定する磁気コアと、環状溝内に配置され、第1の磁場を生成するように構成されたコイル素子と、コイル素子に近接して配置されたカウンタコイル素子であって、遠方場電磁放射の低減を促進するために、第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成された、該カウンタコイル素子と、を含む。
【0007】
別の態様では、経皮エネルギー伝送システムが提供される。本開示の経皮エネルギー伝送システムは、送信共振器であって、第1のハウジングと、第1の環状溝を画定する第1の磁気コアと、第1の環状溝内に配置され、第1の磁場を生成するように構成された送信コイル素子と、を含む、該送信共振器と、植込み型受信共振器であって、第2ハウジングと、第2の環状溝を画定する第2の磁気コアと、第2の環状溝内に配置された受信コイル素子であって、第1の磁場により受信コイル素子に電流が誘導されるように構成された、該受信コイル素子と、を含む、該受信共振器と、を備える。本開示の経皮エネルギー伝送システムは、送信コイル素子に近接して配置されたカウンタコイル素子であって、遠方場電磁放射の低減を促進するために、第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成された、該カウンタコイル素子をさらに備える。
【0008】
さらに別の態様では、無線電力伝送システムで使用するために共振器装置を組み立てる方法が提供される。本開示の方法は、ハウジング内に、環状溝を画定する磁気コアを配置するステップと、環状溝内に、第1の磁場を生成するように構成されたコイル素子を配置するステップと、コイル素子に近接して、遠方場電磁放射の低減を促進するために、第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成されたカウンタコイル素子を配置するステップと、を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による無線電力伝送システムの簡略化された電気回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した無線電力伝送システムを使用して、心室補助装置(VAD)に電力を供給する例を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した無線電力伝送システムを実施するために使用することができる共振器の一実施形態の前面側から見た斜視図である。
【
図4】
図4は、例示的な実施形態による、
図1に示したシステムを実施するために使用することができる共振器アセンブリの斜視断面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示した無線電力伝送システムを実施するために使用することができる別の実施形態の共振器の断面図である。
【
図6】
図6は、
図5に示した共振器を含むシステムを通る磁力線を示す図である。
【
図7】
図7は、
図1に示した無線電力伝送システムを実施するために使用することができるさらに別の実施形態の共振器の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本開示は、無線電力伝送のためのシステム及び方法に関する。無線電力伝送システムで使用するための本開示の共振器装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、環状溝を画定する磁気コアと、環状溝内に配置され、第1の磁場を生成するように構成されたコイル素子と、コイル素子に近接して配置されたカウンタコイル素子と、を含む。カウンタコイル素子は、遠方場電磁放射の低減を促進するために、第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成される。
【0011】
次に図面を参照すると、
図1は、例示的な実施形態による無線電力伝送システム100の簡略化された電気回路である。無線電力伝送システム100は、外部送信共振器102と、植込み型受信共振器104とを備える。
図1に示す無線電力伝送システム100では、電源Vs108が送信共振器102に電気的に接続されており、電源Vs108は送信共振器102に電力を供給する。受信共振器104は、負荷106(例えば、植込み型医療機器)に接続されている。受信共振器104及び負荷106は、スイッチングまたは整流デバイス(図示せず)に電気的に接続されてもよい。
【0012】
一実施形態では、送信共振器102は、コンデンサCx114によって電源Vs108に接続されたコイルLx110を含む。また、受信共振器104は、コンデンサCy116によって負荷106に接続されたコイルLy112を含む。コイルLx110(インダクタLx)及びコイルLy112(インダクタLy)は、結合係数kで接続されている。Mxyは、コイルLx110及びコイルLy112間の相互インダクタンスである。相互インダクタンスMxyは、結合係数kと下記の式(1)に示すような関係にある。
【0013】
【0014】
動作中、送信共振器102は、電源Vs108から供給された電力を無線送信する。受信共振器104は、送信共振器102から無線送信された電力を受信し、受信した電力を負荷106に供給する。
【0015】
図2は、外部コイル202(例えば、
図1に示す送信共振器102)を使用して、患者200の体内に植え込まれた植込み型コイル204(例えば、
図1に示す受信共振器104)に電力を無線送信する例を示す図である。植込み型コイル204は、受信した電力を植込み型装置206に供給する。例えば、植込み型装置206としては、ペースメーカや心臓ポンプ(例えば、左心室補助装置(LVAD))が挙げられる。いくつかの実施形態では、植込み型コイル204及び/または植込み型装置206は、電池を備えてもよいし、または電池207に接続されてもよい。
【0016】
一実施形態では、外部コイル202は、コンピュータ装置210との間で信号を送受信できるように、例えば有線接続または無線接続を介してコンピュータ装置210に通信可能に接続されている。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、外部コイル202の電源としての役割も果たす。他の実施形態では、外部コイル202は、別の電源(図示せず)に接続される。コンピュータ装置210は、メモリ装置214と、メモリ装置214に通信可能に接続されたプロセッサ212とを備える。いくつかの実施形態では、コンピュータ実行可能命令がメモリ装置214に格納されている。
【0017】
コンピュータ装置210は、ユーザインターフェース(UI)216をさらに備える。ユーザインターフェース(UI)216は、ユーザ(例えば、患者200)に情報を提示する。ユーザインターフェース(UI)216としては、例えば、陰極線管(CRT)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機LED(OLED)ディスプレイ、及び、「電子インク」ディスプレイなどのディスプレイ装置に接続されるディスプレイアダプタ(図示せず)が挙げられる。いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、1以上の表示装置を含む。さらに、いくつかの実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、プレゼンテーションインターフェースであるか、または、プレゼンテーションインターフェースを含む。プレゼンテーションインターフェースは、視覚的コンテンツを生成せずに、可聴及び/またはコンピュータで生成された音声コンテンツを生成する。例示的な実施形態では、ユーザインターフェース(UI)216は、外部コイル202と植込み型コイル204との間の接続が最適になるように、患者200が外部コイル202を配置するのを支援するよう作成された1以上の表現または画像を表示する。いくつかの実施形態では、コンピュータ装置210は、例えば腕時計型などのウェアラブルデバイスであってもよい。
【0018】
図3は、
図1に示した無線電力伝送システム100を実施するために使用することができる共振器300の一実施形態の前面側から見た斜視図である。共振器300は、例えば、外部送信共振器102(
図1)、植込み型受信共振器104(
図1)、外部コイル202(
図2)、及び/または植込み型コイル204(
図2)を実施するために使用することができる。
【0019】
一実施形態では、共振器300は、コア302と、コイル素子304とを含む。コア302は、前面305と、背面306と、前面305及び背面306間に延びる環状側壁308とを有する。前面305には環状溝310が形成されており、これにより、前面305の中央部分に中央ポスト部312が形成されている。
【0020】
共振器300(コア302及びコイル素子304を含む)は、コンデンサ(例えば、コイル素子304に電気的に接続されたプリント基板上のコンデンサ)に接続されると、無線電力共振器として機能する。しかしながら、当業者であれば、共振器300は、コンデンサに接続されることなく、コイルアセンブリを構成することを理解するであろう。したがって、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、無線電力共振器を構成するために、コンデンサに接続されることを必要としない。それどころか、本明細書で使用するとき、「共振器」という用語は、
図3に示すように、コンデンサに接続されていないコア及びコイル素子を含むコイルアセンブリを包含するのに十分な広範さを有する。
【0021】
一実施形態では、コア302は、磁性材料から作製される。磁性材料は、例えば、ニッケル系フェライトやマンガン系フェライトなどのフェライト材料であり得る。ニッケル系フェライトは、一般に、電気伝導率が低く、損失が少ない。一方、マンガン系フェライトは、透磁率が高く(損失は許容範囲内)、磁力線の封じ込めを容易にし、近傍の導体(例えば、近くのPCBのチタン製の筐体や銅)に入る漏れ磁場を低減して損失を防止することができる。他の実施形態では、他の種類のフェライト材料を使用してもよい。例えば、いくつかの実施形態では、マグネシウム系フェライト(例えば、約1メガヘルツ(MHz)の周波数範囲においてニッケル系フェライトやマンガン系フェライトよりも性能が優れているMgCuZn)を使用してもよい。
【0022】
コイル素子304は環状溝310内に配置され、中央ポスト部312を取り囲む。共振器300は、例えば、リッツ線型の共振器または積層板型の共振器であり得る。リッツ線型の共振器では、コイル素子304は、複数のリッツ線のループを含む。積層板型の共振器では、コイル素子304は、複数の誘電体層及び導電層を交互に積層させて構成した積層板を含む。誘電体層は、例えば、セラミック、プラスチック、ガラス、及び/またはマイカ(雲母)から作製され得る。
【0023】
コイル素子304は、例えば、電源(送信共振器として機能する場合)または負荷106(受信共振器として機能する場合)に電気的に接続される。動作時には、送信共振器として動作する共振器300に電力を供給すると、コイル素子304に電流が流れ、これにより、誘導電流ループが形成される。第1の共振器の共振周波数が第2の共振器の共振周波数と重なることを条件にして、この誘導電流ループにより、第1の共振器から第2の共振器に電力を無線伝送することができる。コイル素子304は、コイル素子304を電源または負荷に電気的に接続することを容易にする複数の端子(図示せず)を有し得る。
【0024】
図4は、共振器アセンブリ400の斜視断面図である。共振器アセンブリ400は、
図3に示した共振器300と同様の共振器を備える。共振器アセンブリ400は、送信共振器402と、受信共振器404とを備える。一実施形態では、送信共振器402は、第1のハウジング412(例えば、セラミックハウジング)と、第1のハウジング412内に配置された第1のコイル素子406及び第1のコア410とを含む。同様に、受信共振器404は、第2のハウジング420(例えば、セラミックハウジング)と、第2のハウジング420内に配置された第2のコイル素子414及び第2のコア418とを含む。上述したように、受信共振器404は、一般に、患者の体内に植え込まれ、送信共振器402は、一般に、患者の体外に配置される。送信共振器402及び受信共振器404は、電界効果トランジスタ(FET)、直列インダクタ、及び/または他の電子部品などの、1以上の電子部品(図示せず)をさらに含み得る。
【0025】
この実施形態では、受信共振器404は、送信共振器402と反対になる側に、金属ディスク450をさらに含む。金属ディスク450は、例えば、チタンから作製され得る。金属ディスク450は、外面452と、内面454(すなわち、第2のコイル素子414側を向いた面)とを含む。
【0026】
図4の実施形態では、受信共振器404は、金属ディスク450の周縁部に当接する金属リング460をさらに含む。金属リング460は、金属ディスク450と同じ金属(例えば、チタン)から作製され得る。金属リング460は、金属ディスク450に溶接または他の方法で結合され、金属ディスク450と第2のハウジング420との間の接合部分としての機能を果たす。さらに、金属リング460は、第2のハウジング420にろう付けまたは他の方法で結合される。
【0027】
送信共振器402の第1のコア410は、中実のコア(a closed, or solid core)である。すなわち、第1のコア410の中央部分470は、第1のコア410の残りの部分と連続しており、第1のコア410の残りの部分と同じ磁性材料(例えば、フェライト)を含む。したがって、第1のコア410は、一般に、(リング形状ではなく)ディスク形状を有する。
【0028】
図5は、(
図1に示した)無線電力伝送システム100を実施するために使用することができる別の実施形態の送信共振器500の断面図である。送信共振器500は、ハウジング502と、コア504と、コイル素子506とを含む。コア504は、断面U形状(断面コの字状)の環状溝508を有し、コイル素子506は、環状溝508内に配置される。
【0029】
図5に示すように、コア504は、中空のコア(an open core)である。すなわち、コア504は、金属材料または磁性材料を含まない中央開口部510を有する。その代わりに、非磁性材料または非金属材料から作製された1以上の層512が、中央開口部510内に配置される。図示の実施形態では、層512は、第1の層520、第2の層522、及び第3の層524を含む。あるいは、層512は、任意の適切な数の層を含むことができる。さらに、図示の実施形態では、第1の層520、第2の層522、及び第3の層524は、互いに異なる厚さを有する。あるいは、第1の層520、第2の層522、及び第3の層524のうちの少なくともいくつかは、互いに同じ厚さを有する。
【0030】
第1の層520、第2の層522、及び第3の層524は、互いに同じ材料から作製してもよいし、または、互いに異なる材料から作製してもよい。第1の層520、第2の層522、及び第3の層524を作製する材料としては、例えば、酸化アルミニウム、エポキシ(例えば、EpoTekT 7110)、プリント回路基板(PCB)基材材料などが挙げられる。当業者であれば、任意の適切な材料を使用できることを理解するであろう。いくつかの実施態様では、第1の層520、第2の層522、及び第3の層524のうちの少なくとも1つは、空気の層を含み得る。
【0031】
注目すべきことには、
図5に示したコア504の中空コア構成は、
図4に示した中実コア構成と比較して、放射される電磁(EM)場が低減する。さらに、第1の層520、第2の層522、及び第3の層524を作製する材料の選択に応じて、送信共振器500の全体温度も、
図4に示した送信共振器と比較して低下する。
【0032】
図6は、
図5に示した送信共振器500を含むシステム600を通る磁力線602を示す図である。明確にするために、受信共振器604も示している。注目すべきことには、システム600は、送信共振器500における、受信共振器604と反対になる側に(送信共振器500の背面側とも称する)に、送信共振器500に近接して配置された追加のコイルアセンブリ610をさらに備える。いくつかの実施形態では、追加のコイルアセンブリ610は、送信共振器500に結合され得る。
【0033】
この実施形態では、追加のコイルアセンブリ610は、断面U形状(断面コの字状)の環状溝614を有するコア612と、環状溝614内に配置されたカウンタコイル素子616(counter-coil element)とを含む。環状溝614は、送信共振器500における環状溝508とは反対方向に開口している。カウンタコイル素子616は、上述のコイル素子と同様に、複数のリッツ線のループ、または、複数の積層板を含み得る。
【0034】
カウンタコイル素子616に電流を流すと、コイル素子506によって生成される磁場に対して位相がずれた磁場が生成される。例えば、カウンタコイル素子616がリッツ線のループを含む場合、リッツ線のループは、コイル素子506の巻線とは逆方向に巻かれた巻線を有し、その結果、カウンタコイル素子616は、コイル素子506の位相とは180°反対の位相で動作する。さらに、カウンタコイル素子616におけるアンペアターン数(アンペア回数)は、コイル素子506のアンペアターン数の分数、すなわち、カウンタコイル素子616のターン数をコイル素子506のターン数で割った比であってもよい。
【0035】
別の実施形態では、別個の一連の電子機器(例えば、インバータなど)を使用して、位相及びアンペアターンがコイル素子506と異なるように、カウンタコイル素子616に電流を流してもよい。この実施形態は、カウンタコイル素子616の位相及びアンペアターンを互いに独立して制御することを可能にする。
【0036】
図6に示す実施形態では、カウンタコイル素子616用のコア612は、コイル素子506用のコア504とは別のコアである。いくつかの実施態様では、カウンタコイル素子616及びコイル素子506は、コアを共有する(例えば、
図7参照)。さらに、いくつかの実施形態では、電磁(EM)放射のさらなる低減を促進するために、システム600は、追加のカウンタコイル素子(図示せず)をさらに備えてもよい。
【0037】
図6に示すように、カウンタコイル素子616は、コイル素子506によって生成された遠方場電磁(EM)放射を少なくとも部分的に相殺する磁場620を生成する。本明細書で使用するとき、遠方場電磁(EM)放射とは、コア504の外径よりも大きいコイル素子506からの距離(コア504の外径の数倍の距離を含む)における電磁(EM)放射を指す。
【0038】
例えば、一実施形態では、遠方場電磁(EM)放射は、送信共振器500のすぐ背後(裏側)の領域(すなわち、受信共振器604とは反対側の領域)において、32.5%まで低減され得る。カウンタコイル素子616の位相及びアンペアターンが互いに独立して制御される場合には、遠方場電磁(EM)放射のさらなる低減が可能である(例えば、最大60%または7.9dBの低減が可能である)。
【0039】
いくつかの実施形態では、遠方場電磁(EM)放射は、送信共振器500内の2つの物理的に異なるコイル、すなわち、励磁コイル及び共振器コイルで発生する。共振器コイルが主な発生源であるが、励磁コイル及び共振器コイルの両方が寄与している。また、励磁コイル及び共振コイルは、互いに同位相で動作しない。したがって、このような実施形態では、カウンタコイル素子616は、励磁コイル及び共振コイルの位相の加重平均とは180°反対の位相で動作させることができる。
【0040】
図7は、(
図1に示した)無線電力伝送システム100を実施するために使用することができるさらに別の実施形態の送信共振器700の断面図である。送信共振器700は、ハウジング702と、コア704とを含む。本実施形態では、コア704は、互いに対向する、第1の断面U形状(断面コの字状)の環状溝706と、第2の断面U形状(断面コの字状)の環状溝708とを有する。送信コイル素子710が、第1の断面U形状の環状溝706内に配置され、カウンタコイル素子712が、第2の断面U形状の環状溝708内に配置される。すなわち、この実施形態では、送信コイル素子710及びカウンタコイル素子712は、同じコア704において互いに対して反対側に配置される(そして、両方とも、送信共振器700のハウジング702内に配置される)。送信コイル素子710及びカウンタコイル素子712が同じコア704を共有することにより、カウンタコイル素子712を配置するために必要な追加のスペース及び重量を減らすことができる。
【0041】
注目すべきことには、上述したカウンタコイル素子は、送信共振器700の背後(裏側)の領域における遠方場電磁(EM)放射を著しく減少させるが、他の領域(例えば、受信共振器604の背後(裏側)の領域)における遠方場電磁(EM)放射への影響は最小限に抑えることができる。
【0042】
本明細書で説明した実施形態は、無線電力伝送のためのシステム及び方法に関する。無線電力伝送システムで使用するための本開示の共振器装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置され、環状溝を画定する磁気コアと、環状溝内に配置され、第1の磁場を生成するように構成されたコイル素子と、コイル素子に近接して配置されたカウンタコイル素子と、を含む。カウンタコイル素子は、遠方場電磁放射の低減を促進するために、第1の磁場に対して位相がずれた第2の磁場を生成するように構成される。
【0043】
本開示の実施形態及び実施例を、特定の実施形態を参照して説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本開示の原理及び適用の単なる例示であることを理解されたい。したがって、特許請求の範囲によって定義される本開示の精神及び範囲から逸脱することなく、例示的な実施形態及び実施例に対して様々な変更を加えたり、他の構成を考案したりすることができることを理解されたい。したがって、本出願は、それらの実施形態の改変例や変形例、及びそれらの均等物を包含することを意図している。
【0044】
本明細書は、実施例を用いて、最良の実施の形態(ベストモード)を含む本発明の内容を開示し、かつ、本開示を当業者が実施(任意の装置またはシステムの作製及び使用、並びに組み込まれた任意の方法の実施を含む)することを可能にする。本発明の特許される技術範囲は、特許請求の範囲の請求項の記載によって定義され、当業者が想到可能な別の実施例も包含する。そのような別の実施例は、請求項の文言と相違しない構成要素を含む場合、または、請求項の文言とは実質的に相違しない均等な構成要素を含む場合、その請求項の範囲内に含まれるものとする。
【国際調査報告】