(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】抗TREM2抗体による線維症治療法
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20241108BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241108BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241108BHJP
C07K 16/28 20060101ALN20241108BHJP
C07K 16/46 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
A61K39/395 N
A61P43/00 105
A61P43/00 111
A61P1/16
A61P35/00
A61P37/04
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531629
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-08
(86)【国際出願番号】 US2022080560
(87)【国際公開番号】W WO2023097327
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520046487
【氏名又は名称】パイオニア イミュノセラピューティクス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】ユリッチ ブラディスラバ
(72)【発明者】
【氏名】エリオット セーラ
(72)【発明者】
【氏名】リービー アリシア
【テーマコード(参考)】
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C085AA14
4C085AA16
4C085BB33
4C085BB34
4C085BB35
4C085BB36
4C085BB37
4C085BB41
4C085BB42
4C085BB43
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4H045AA10
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045CA40
4H045DA75
4H045DA76
4H045EA20
4H045GA21
(57)【要約】
抗TREM2抗体、ならびに抗TREM2抗体を作製及び使用する関連する方法が本明細書で提供される。抗TREM2抗体またはその抗原結合断片を使用して非刺激性骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させることを含む、免疫応答を増強するための、及び/または個体における免疫関連状態、例えば、線維性疾患、の治療のための、方法及び組成物もまた、本明細書で提供される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象において線維性疾患または状態を治療する方法であって、ヒトTREM2(配列番号15)に結合し、マウスTREM2(配列番号17)に対する結合について37017抗体(配列番号31及び32)と競合する単離された抗体を投与することを含む、前記方法、あるいは
線維性疾患または状態を有する対象のTREM2+骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させる方法であって、前記骨髄細胞を、ヒトTREM2(配列番号15)に結合し、任意でマウスTREM2(配列番号17)に対する結合について37017抗体(配列番号31及び32)と競合する単離された抗体と接触させることを含む、前記方法。
【請求項2】
前記抗体が、
a.配列番号9に示される配列を含むCDR-H1と、
b.配列番号10に示される配列を含むCDR-H2と、
c.配列番号11に示される配列を含むCDR-H3と、
d.配列番号12に示される配列を含むCDR-L1と、
e.配列番号13に示される配列を含むCDR-L2と、
f.配列番号14に示される配列を含むCDR-L3と
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記抗体が、脱フコシル化されており、かつ、配列番号1に示されるVH配列と、配列番号2に示されるVL配列と、活性ヒトIgG1 Fc領域と、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記が、配列番号1に示されるVH配列と、配列番号2に示されるVL配列と、N297Q変異を含むヒトアイソタイプIgG1またはIgG4 Fc-サイレント領域と、を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記抗体が、
配列番号7に示される配列の位置97にAからTへの置換と、配列番号7に示される配列の位置98にKからRへの置換と、を含むVH配列
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記抗体が、配列番号1、3、または5に示されるVH配列を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項7】
前記抗体が、配列番号1、3、または5に示されるVH配列と、配列番号2、4、または6に示されるVL配列と、を含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記抗体が、配列番号1に示されるVH配列を含む、請求項3または4に記載の方法。
【請求項9】
前記抗体が、配列番号1に示されるVH配列と、配列番号2に示されるVL配列と、を含む、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記抗体が、37012抗体である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記抗体が、配列番号25に示される重鎖配列と、配列番号26に示される軽鎖配列と、を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
対象において線維性疾患または状態を治療する方法、あるいは線維性疾患または状態を有する対象のTREM2+骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させる方法であって、ヒトTREM2(配列番号15)に結合する単離された抗体を投与することを含み、前記抗体が、
i)任意で、マウスTREM2(配列番号17)に対する結合について37017抗体(配列番号31及び32)と競合し、
ii)ヒトFcを含む、
前記方法。
【請求項13】
対象において線維性疾患または状態を治療する方法、あるいは線維性疾患または状態を有する対象のTREM2+骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させる方法であって、単離された抗体を投与することを含み、
前記抗体が、
a.配列番号9に示される配列を含むCDR-H1と、
b.配列番号10に示される配列を含むCDR-H2と、
c.配列番号11に示される配列を含むCDR-H3と、
d.配列番号12に示される配列を含むCDR-L1と、
e.配列番号13に示される配列を含むCDR-L2と、
f.配列番号14に示される配列を含むCDR-L3と
を含む、前記方法。
【請求項14】
前記抗体が、
配列番号7に示される配列の位置97にAからTへの置換と、配列番号7に示される配列の位置98にKからRへの置換と、を含むVH配列
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記抗体が、配列番号1、3、または5に示されるVH配列を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記抗体が、配列番号1、3、または5に示されるVH配列と、配列番号2、4、または6に示されるVL配列と、を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記抗体が、配列番号1に示されるVH配列を含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、配列番号1に示されるVH配列と、配列番号2に示されるVL配列と、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、37012抗体である、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、配列番号25に示される重鎖配列と、配列番号26に示される軽鎖配列と、を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項21】
前記抗体が、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって測定される場合、約1、2、3、4、または5×10
-9M以下のK
DでヒトTREM2に結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記抗体が、TREM2+骨髄細胞、任意でTREM2+マクロファージ、TREM2+CD9+マクロファージ、マクロファージ、瘢痕関連マクロファージ(SAM)、樹状細胞、好中球、または単球のうちの少なくとも1つを含む非刺激性骨髄細胞を特異的に死滅させるか、枯渇させるか、または無効化することができる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)活性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項24】
前記抗体が、抗体媒介性細胞食作用(ADCP)活性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記抗体が、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項26】
前記抗体が、モノクローナル抗体、中性抗体、アンタゴニスト抗体、アゴニスト抗体、ポリクローナル抗体、IgG1抗体、IgG3抗体、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、完全長抗体、及びそれらの抗原結合断片のうちの少なくとも1つである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項27】
前記抗体が、モノクローナル抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項28】
前記抗体が、多重特異性である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
前記抗体が、脱フコシル化されている、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項30】
前記抗体が、その抗原結合断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、(scFv)2、一本鎖抗体分子、二重可変ドメイン抗体、単一可変ドメイン抗体、線状抗体、またはVドメイン抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記抗体が、足場を含み、任意で、前記足場が、Fc、任意でヒトFcである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項32】
前記抗体が、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgMから選択されるアイソタイプである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記抗体が、IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるサブクラスを含むIgGアイソタイプである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項34】
前記抗体が、IgG1抗体である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項35】
Fcが、1つ以上の修飾を含み、前記1つ以上の修飾が、前記1つ以上の修飾を含まないFcと比較して、半減期の増加、ADCC活性の増加、ADCP活性の増加、またはCDC活性の増加をもたらす、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記Fcが、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbからなる群から選択されるFcγ受容体に結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項37】
前記抗体が、TREM2+骨髄細胞上のTREM2の細胞外ドメインに結合する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体が、骨髄細胞上のTREM2の細胞外ドメインに結合し、前記骨髄細胞が、CD45+、HLA-DR+、CD11c+、CD14+、及びBDCA3-である非刺激性骨髄細胞であり、前記抗体が、前記非刺激性骨髄細胞を前記抗体と接触させる前に前記線維性疾患に存在する非刺激性骨髄細胞のレベルよりも低いレベルまで、ADCC、CDC、及び/またはADCPを介して前記非刺激性骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させ、前記非刺激性骨髄細胞が、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、BDCA1-、及びBDCA3+である刺激性骨髄細胞と、前記非刺激性骨髄細胞と、を含む免疫細胞の集団中に存在し、前記非刺激性骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させることが、前記線維性疾患を治療する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体が、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)活性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体が、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記抗体が、抗体媒介性食作用(ADCP)活性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記抗体が、受容体リガンド遮断活性、アゴニズム活性、またはアンタゴニズム活性を有する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項43】
前記対象がヒトである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項44】
前記TREM2+骨髄細胞が、TREM2+マクロファージ、TREM2+CD9+マクロファージ、マクロファージ、瘢痕関連マクロファージ(SAM)、樹状細胞、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球、または単球のうちの少なくとも1つを含む、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項45】
前記線維性疾患または状態が、肝疾患である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項46】
前記肝疾患が、NAFLDである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項47】
前記肝疾患が、NASHである、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項48】
前記肝疾患が、線維症、NAFL、肝硬変、または肝臓癌からなる群から選択される、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項49】
前記肝疾患が、肥満から生じる脂肪肝疾患、糖尿病から生じる脂肪肝疾患、インスリン抵抗性から生じる脂肪肝疾患、高トリグリセリド血症から生じる脂肪肝疾患、無βリポタンパク血症、糖原病、ウェーバー・クリスチャン病、ウォルマン病、急性妊娠脂肪肝、及び脂肪萎縮症からなる群から選択される脂肪肝疾患である、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項50】
前記接触させることが、前記対象における免疫応答を増強する、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【請求項51】
前記増強された免疫応答が、適応免疫応答である、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記増強された免疫応答が、自然免疫応答である、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記対象が、免疫療法を、以前に受けたことがあるか、同時に受けているか、または後に受けることになる、先行請求項のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年11月29日に出願された米国仮特許出願第63/283,738号の利益を主張するものであり、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、配列表を含んでおり、配列表は、XMLフォーマットで電子的に提出され、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。上述の配列表XMLは、2022年11月15日に作成され、PII-014WO_SL.xmlという名称であり、55,804バイトのサイズである。
【背景技術】
【0003】
背景
米国では推定600,000人の個人が肝硬変を患っており、これらの患者のうち14,000人が末期状態の疾患を有しており、肝移植を待ち望んでいる。研究によると、肝硬変患者の最大40~60%が、筋肉消耗を伴うことが示唆されている。結果として生じる虚弱は、末期肝疾患(ESLD)を有する患者における機能低下、肝硬変関連合併症、入院、及び死亡の顕著な原因である。肝移植は、ESLDの根治治療であるが、肝疾患の重症度とは独立した身体的な機能低下は、移植待機リストから除外されるリスクの増加と関連している。肝硬変患者の推定40~50%は、肝硬変性サルコペニアを呈する。肝硬変性サルコペニアは、肝硬変において頻繁に起こる合併症であり、患者の生存及び生活の質に悪影響を及ぼす。肝硬変性サルコペニアは、肝硬変における尿素サイクルの機能不全に起因する高アンモニア血症から生じる全身性疾患であり、筋肉がアンモニアを解毒するものの、筋肉質量が損なわれる。サルコペニアは、生存率を低下させ、移植を受ける機会を減少させ、肝硬変患者における肝硬変関連合併症のリスクを高める。ESLDまたは肝硬変性サルコペニアを有する患者などの肝硬変を有する患者に対する現在の標準治療は、運動の増加及び食事介入などのライフスタイルの変更を含む。現時点で、承認された薬理学的介入は存在しない。
【0004】
非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)は、世界的な有病率が25%であり、肝硬変及び肝細胞癌(HCC)の主な原因である。NAFLDは、軽度の炎症を伴うか、または伴わない脂肪症(非アルコール性脂肪肝)から、壊死性炎症及び急速な線維化進行を特徴とする非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)までの連続した疾患を包含する。NAFLDは、メタボリックシンドロームの構成要素と双方向に関連しており、2型糖尿病は、肝硬変及び関連合併症のリスクを高める。NASHにおける慢性肝損傷は、肝硬変及び肝臓癌などの末期肝疾患のリスクを著しく高める。進行性肝線維症は、肝臓関連転帰及び全死亡率のリスク因子であり、非侵襲的検査の組み合わせで評価することができる。NASHを有する患者は、肝細胞癌(HCC)の発症リスクが高い。
【0005】
ライフスタイルの変更及び体重減少は、現時点で、NAFLDの予防及び治療のための唯一の選択肢である。NAFLDに対する承認された医学療法は存在しないが、いくつかの薬物が、開発の進行段階にある。したがって、肝線維症及びNAFLDを治療するための追加の療法が必要である。
【0006】
正常組織では、マクロファージなどの多くの骨髄細胞は、先天性免疫及び適応免疫の両方の適切な機能、特に創傷修復に有用である。最近、新しい瘢痕関連TREM2+CD9+マクロファージ亜集団が特定され、これは、肝線維症において拡大し、循環単球から分化し、かつ線維原性であることが示された。Ramachandran et al.Nature.2019 November;575(7783):512-518(非特許文献1)。
【0007】
関連する特許及び特許出願には、2015年9月28日に出願されたPCT/US2015/052682(特許文献1)、2016年9月28日に出願されたPCT/US2016/054104(特許文献2)、及びUSPN10,836,828(特許文献3)が含まれる(これらの各々は、参照により、それらの全体が、あらゆる目的のために本明細書に組み込まれる)。
【0008】
本明細書で引用されるすべての特許、特許出願、刊行物、文書、及び記事は、参照によりそれらの全体が本明細書に組み込まれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】PCT/US2015/052682
【特許文献2】PCT/US2016/054104
【特許文献3】USPN10,836,828
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Ramachandran et al.Nature.2019 November;575(7783):512-518
【発明の概要】
【0011】
概要
対象において線維性疾患を治療する方法であって、対象に、ヒトTREM2(配列番号15)に結合し、任意でマウスTREM2(配列番号17)に対する結合について37017抗体(配列番号31及び32)と競合する、単離された抗体を投与することを含む、方法が本明細書に記載される。
【0012】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号9に示される配列を含むCDR-H1と、配列番号10に示される配列を含むCDR-H2と、配列番号11に示される配列を含むCDR-H3と、配列番号12に示される配列を含むCDR-L1と、配列番号13に示される配列を含むCDR-L2と、配列番号14に示される配列を含むCDR-L3と、を含む。
【0013】
いくつかの実施形態では、抗体は、脱フコシル化されており、かつ、配列番号1に示されるVH配列と、配列番号2に示されるVL配列と、活性ヒトIgG1 Fc領域と、を含む。
【0014】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1に示されるVH配列と、配列番号2に示されるVL配列と、ヒトFc-サイレント領域(任意でIgG1またはIgG4アイソタイプを有し、任意でN297Q変異を含む)と、を含む。
【0015】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7に示される配列の3つすべての重鎖CDRと、配列番号8に示される配列の3つすべての軽鎖CDRと、を含む。
【0016】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号7に示される配列の位置97にAからTへの置換と、配列番号7に示される配列の位置98にKからRへの置換と、を含む。
【0017】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1、3、または5に示されるVH配列を含む。
【0018】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1、3、または5に示されるVH配列と、配列番号2、4、または6に示されるVL配列と、を含む。
【0019】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1に示されるVH配列を含む。
【0020】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号1に示されるVH配列と、配列番号2に示されるVL配列と、を含む。
【0021】
いくつかの実施形態では、抗体は、37012抗体である。
【0022】
いくつかの実施形態では、抗体は、配列番号25に示される重鎖配列と、配列番号26に示される軽鎖配列と、を含む。
【0023】
別の態様では、ヒトTREM2(配列番号15)に結合する単離された抗体であって、抗体が、マウスTREM2(配列番号17)に対する結合について37017抗体(配列番号31及び32)と競合し、活性ヒトFc領域を含む、単離された抗体が本明細書に記載される。
【0024】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト、ヒト化、またはキメラである。
【0025】
いくつかの実施形態では、抗体は、ヒト化されている。
【0026】
いくつかの実施形態では、抗体は、表面プラズモン共鳴(SPR)アッセイによって測定される場合、約1、2、3、4、または5×10-9以下のKDでヒトTREM2に結合する。
【0027】
いくつかの実施形態では、抗体は、TREM2+骨髄細胞、任意で非刺激性骨髄細胞を特異的に死滅させるか、枯渇させるか、または無効化することができる。
【0028】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)活性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体媒介性細胞食作用(ADCP)活性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性を有する。
【0029】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体媒介性細胞食作用(ADCP)活性、または補体依存性細胞傷害性(CDC)を介して、骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させる。
【0030】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体、中性抗体、アンタゴニスト抗体、アゴニスト抗体、ポリクローナル抗体、IgG1抗体、IgG3抗体、脱フコシル化抗体、二重特異性抗体、ヒト抗体、キメラ抗体、完全長抗体、及びそれらの抗原結合断片のうちの少なくとも1つである。
【0031】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0032】
いくつかの実施形態では、抗体は、多重特異性である。
【0033】
いくつかの実施形態では、抗体は、脱フコシル化されている。
【0034】
いくつかの実施形態では、抗体は、その抗原結合断片、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、scFv、(scFv)2、一本鎖抗体分子、二重可変ドメイン抗体、単一可変ドメイン抗体、線状抗体、またはVドメイン抗体である。
【0035】
いくつかの実施形態では、抗体は、足場を含み、任意で、足場は、Fc、任意でヒトFcである。
【0036】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG、IgA、IgD、IgE、及びIgMから選択されるクラスの重鎖定常領域を含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、抗体は、クラスIgG、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4から選択されるサブクラスの重鎖定常領域を含む。
【0038】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1の重鎖定常領域を含む。
【0039】
いくつかの実施形態では、Fcは、1つ以上の修飾を含み、1つ以上の修飾は、1つ以上の修飾を含まないFcと比較して、半減期の増加、ADCC活性の増加、ADCP活性の増加、またはCDC活性の増加をもたらす。
【0040】
いくつかの実施形態では、Fcは、FcγRI、FcγRIIa、FcγRIIb、FcγRIIc、FcγRIIIa、及びFcγRIIIbからなる群から選択されるFcγ受容体に結合する。
【0041】
別の態様では、線維性疾患の治療に使用するための単離された抗体が本明細書に記載される。
【0042】
別の態様では、ヒトTREM2に対する結合について本明細書に記載の抗体と競合する単離された抗体が本明細書に記載される。
【0043】
別の態様では、本明細書に記載の抗体によって結合されたヒトTREM2エピトープに結合する単離された抗体が本明細書に記載される。
【0044】
別の態様では、本明細書に記載の抗体、そのVH、そのVL、その軽鎖、その重鎖、またはそれらの抗原結合部分をコードする単離されたポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセット、任意でcDNAが本明細書に記載される。
【0045】
別の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドまたはポリヌクレオチドのセットを含むベクターまたはベクターのセットが本明細書に記載される。
【0046】
別の態様では、本明細書に記載のポリヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドのセット、または本明細書に記載のベクターまたはベクターのセットを含む、宿主細胞が本明細書に記載される。
【0047】
別の態様では、本明細書に記載の宿主細胞により抗体を発現させることと、発現された抗体を単離することと、を含む、抗体を産生する方法が本明細書に記載される。
【0048】
別の態様では、本明細書に記載の抗体と、薬学的に許容される賦形剤と、を含む、薬学的組成物が本明細書に記載される。
【0049】
別の態様では、線維性疾患または状態を治療または予防することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、対象に、例えば、有効量の本明細書に記載のTREM2に結合する抗体または薬学的組成物を投与することを含む、方法が本明細書に記載される。
【0050】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、肝疾患である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させることは、肝疾患を治療する。いくつかの実施形態では、肝疾患は、線維症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)である。いくつかの実施形態では、疾患は、がんではない。
【0051】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)、抗体媒介性細胞食作用(ADCP)活性、または補体依存性細胞傷害性(CDC)を介して、骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させる。いくつかの実施形態では、抗体は、受容体リガンド遮断活性、アゴニズム活性、またはアンタゴニズム活性を有する。
【0052】
いくつかの実施形態では、対象はヒトである。
【0053】
いくつかの実施形態では、接触させることは、対象における免疫応答を増強する。いくつかの実施形態では、増強された免疫応答は、適応免疫応答である。いくつかの実施形態では、増強された免疫応答は、自然免疫応答である。
【0054】
いくつかの実施形態では、抗体は、ADCC、CDC、及びADCPのうちの少なくとも1つによって骨髄細胞を死滅させる。いくつかの実施形態では、抗体は、ADCC、CDC、及びADCPのうちの少なくとも1つによって骨髄細胞を無効化する。いくつかの実施形態では、抗体は、ADCC、CDC、及びADCPのうちの少なくとも1つによって骨髄細胞を枯渇させる。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)活性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体媒介性食作用(ADCP)活性を有する。いくつかの実施形態では、抗体は、受容体リガンド遮断活性、アゴニズム活性、またはアンタゴニズム活性を有する。
【0055】
いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、非刺激性骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、樹状細胞、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球、または単球のうちの少なくとも1つを含む。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、好中球である。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、腫瘍関連マクロファージである。いくつかの実施形態では、骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞及び非刺激性骨髄細胞を含む免疫細胞の集団内にある。いくつかの態様では、骨髄細胞は、TREM2+骨髄細胞である。いくつかの態様では、TREM2+骨髄細胞は、TREM2+マクロファージ、TREM2+CD9+マクロファージ、マクロファージ、瘢痕関連マクロファージ(SAM)、樹状細胞、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球、または単球のうちの少なくとも1つを含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、接触させることは、対象における免疫応答を増強する。いくつかの実施形態では、増強された免疫応答は、適応免疫応答である。いくつかの実施形態では、増強された免疫応答は、自然免疫応答である。
【0057】
いくつかの実施形態では、対象は、免疫療法を以前に受けたことがあるか、同時に受けているか、または後に受けることになる。
【0058】
別の態様では、線維性疾患を有する対象のTREM2+骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させる方法であって、骨髄細胞を、抗TREM2抗体(例えば、本明細書に記載されるもの)または本明細書に記載の薬学的組成物と接触させることを含む、方法が本明細書に記載される。
【0059】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させることは、線維性疾患に対する免疫応答を増強することによって線維症を治療する。
【0060】
別の態様では、疾患もしくは状態を有するか、または有することが疑われる対象においてTREM2を検出する方法であって、本方法が、(a)対象からの試料を受け取ることと、(b)試料を本明細書に記載の抗体と接触させることによって、試料中のTREM2の存在またはレベルを検出することと、を含む、方法が本明細書に記載される。
【0061】
いくつかの実施形態では、疾患または状態は、肝疾患である。
【0062】
別の態様では、本明細書に開示される抗体または薬学的組成物と、使用説明書と、を含む、キットが本明細書に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【
図1】H&E染色に加えて、抗CD68を使用してマクロファージについても組織を染色した。細胞内マーカーCD68は、炎症組織及び腫瘍における単球/マクロファージを免疫染色するための信頼性の高い細胞化学マーカーとして文献で広く使用されている。肺(パネルE)において、また、分析された他の組織において、対照と比較して、治療群のいずれにおいても、CD68+マクロファージ数の識別可能な変化は観察されず、このことは、抗TREM2媒介性の枯渇が、TMEにおいて特異的に生じたことを示している。
【0064】
【
図2A】示された治療群からのFFPE肺組織の抗CD68染色。
【
図2B】各セクションの8~9個のフィールドを、光学顕微鏡による定量化に使用した。
【0065】
【
図3-1】選択された組織中の細胞では、TREM2発現が欠如していたか、または非常に低かった。網掛けしたヒストグラムは、TREM2KOからのものであり、白色のヒストグラムは、野生型マウスからのものである。抗TREM2染色に使用した抗体は、R&D Systems製のクローン237920であった。
【0066】
【
図4】TREM2の細胞表面発現(白色のヒストグラム)は、MC38及びCT26腫瘍の両方内の顆粒球性または単球性のMDSCと比較して、TAMで著しく高かった。リンパ球は、TREM2を発現しない。アイソタイプ対照染色は、灰色で塗りつぶされたヒストグラムで示される。
【0067】
【
図5】TREM2の細胞表面発現(白色のヒストグラム)は、任意のPBMCサブセットと比較して、CD14由来マクロファージで著しく高かった。ヒトPBMCまたはマクロファージを、TREM2(白色のヒストグラム)またはアイソタイプ対照(灰色のヒストグラム)のいずれかについて表面染色した。PBMCサブセットを、事前に検証された多色FACSパネルを使用して、好中球、単球、またはT細胞として識別した。
【0068】
【
図6】TREM2の細胞表面発現(白色のヒストグラム)は、他の浸潤物または非CD45陽性細胞と比較して、TAMで著しく高かった。ヒト腫瘍組織からの単細胞懸濁液を、TREM2(白色のヒストグラム)またはアイソタイプ対照(灰色のヒストグラム)のいずれかについて表面染色した。免疫サブセット及び非免疫サブセットを、事前に検証された多色FACSパネルを使用して識別した。
【0069】
【
図7】乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出によって測定される相対細胞傷害性パーセントは、複数のAb濃度にわたってアイソタイプ対照Abで治療された細胞と比較して、脱フコシル化抗TREM2 mAb(PI37012)で治療された標的HEK-293細胞において著しく高かった。
【0070】
【
図8】ADCC誘導の代替物としてのNFATレポーター活性を測定する相対発光は、脱フコシル化抗TREM2 mAb(Afuc-PI-7012)及び非脱フコシル化抗TREM2 mAb(PI-7012)の濃度を増加させつつ治療された細胞において用量依存的な増加を示した。任意の濃度のFc-サイレントmAbで治療された細胞において、測定可能な相対発光は観察されなかった。
【0071】
【
図9】左パネルに、アイソタイプ対照IgG2a抗体または脱フコシル化抗TREM2 mAb(Afuc-PI-7012)による治療後のマウス肝臓細胞のH&E染色を提供する。右パネルに、アイソタイプ対照IgG2a抗体、脱フコシル化抗TREM2 mAb(Afuc-PI-7012)、またはOCAによる治療後のマウス肝臓におけるコラーゲン減少を提供する。未治療マウスまたはIgG2a治療マウスと比較して、脱フコシル化抗TREM2 mAb(Afuc-PI-7012)で治療されたマウスにおいて、線維症における統計的に有意な減少(****p<0.0001)が観察された。
【発明を実施するための形態】
【0072】
詳細な説明
本明細書を解釈する目的において、以下の定義が適用され、適当な場合はいつでも、単数形で使用される用語は複数形も含み、その逆も同様である。以下に記載されている定義が参照により本明細書に組み込まれる文書と矛盾する場合、記載されている定義が優先されるものとする。
【0073】
本明細書に記載される本発明の態様及び実施形態が、態様及び実施形態「を含む」、「からなる」、及び「から本質的になる」を含むことが理解される。
【0074】
本明細書に記載のすべての組成物、及び本明細書に記載の組成物を使用するすべての方法について、組成物は、列挙された構成要素またはステップを含むことができるか、または列挙された構成要素もしくはステップ「から本質的になる」ことができる。組成物が、列挙される構成要素「から本質的になる」と記載される場合、その組成物は、列挙される構成要素を含有し、治療されている状態に実質的に影響を与えない他の構成要素を含有してもよいが、明示的に列挙される構成要素以外の治療される状態に実質的に影響を与える他の構成要素を含有せず、あるいは、組成物が、治療されている状態に実質的に影響を与える列挙される構成要素以外の余分な構成要素を含有しない場合、その組成物は、治療されている状態に実質的に影響を与えるのに十分な濃度または量の余分な構成要素を含有しない。ある方法が、列挙されたステップ「から本質的になる」と記載される場合、その方法は、列挙されたステップを含み、治療されている状態に実質的に影響を与えない他のステップを含んでいてもよいが、その方法は、明示的に列挙されたそれらのステップ以外の治療されている状態に実質的に影響を与える他のステップを含有しない。非限定的な具体例として、組成物が、ある構成要素「から本質的になる」と記載される場合、その組成物は、治療されている状態に実質的に影響を及ぼさない任意の量の薬学的に許容される担体、ビヒクル、または希釈剤、及び他のそのような構成要素をさらに含んでもよい。
【0075】
「任意で」という用語は、連続して使用される場合、列挙された組み合わせのうちの1つからすべてを含むことを意味し、すべての部分的な組み合わせを企図する。
【0076】
本明細書で使用される「有効量」または「治療有効量」は、単回用量または一連の用量の一部としてのいずれかで個体に投与される抗TREM2抗原結合剤または抗TREM2抗体などの治療化合物の量を指し、これは、単独で、または別の治療モダリティと組み合わせて、所望の治療効果をもたらすか、またはそれに寄与するのに有効なものである。所望の治療効果の例は、免疫応答の増強、疾患の安定化、1つ以上の症状の改善である。有効量は、1回以上の投薬量で与えられ得る。
【0077】
本明細書で使用される「治療すること」という用語は、状態の進行を遅延または逆転させることを指す。本明細書で使用される「治療すること」という用語はまた、線維性疾患などの状態の進行を遅延または逆転させることを指す。「治療」という用語は、本明細書で使用される場合、線維性疾患などの状態を治療する行為も指す。
【0078】
線維性疾患または線維症は、細胞外マトリックス分子の蓄積である。この蓄積は、慢性組織損傷の共通の特徴である瘢痕組織または瘢痕領域を構成し得る。線維症の例としては、肺線維症、腎線維症、及び肝硬変が挙げられる。線維症の影響を受ける可能性のある臓器には、肝臓、肺、腎臓、及び皮膚が含まれる。線維性疾患は、NASHなどの肝疾患を含み得る。
【0079】
本明細書で使用される「個体」または「対象」は、ヒト、家畜及び農場動物、ならびにイヌ、ウマ、ウサギ、ウシ、ブタ、ハムスター、カワウソ、マウス、フェレット、ラット、ネコなどの動物園動物、スポーツ動物、またはペット動物を含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。いくつかの実施形態では、個体は、ヒトである。いくつかの実施形態では、個体は、マウスである。
【0080】
「調節する」及び「調節」という用語は、列挙された変数を低減または阻害する、または代替的に、活性化または増加させることを指す。
【0081】
「増加させる」及び「活性化する」という用語は、列挙された変数における10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上の増加を指す。
【0082】
「低減させる」及び「阻害する」という用語は、列挙された変数における10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、50倍、100倍以上の減少を指す。
【0083】
「アゴナイズする」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を誘導するための受容体シグナル伝達の活性化を指す。「アゴニスト」は、受容体に結合し、受容体をアゴナイズする実体である。
【0084】
「アンタゴナイズする」という用語は、受容体の活性化に関連する生物学的応答を阻害するための受容体シグナル伝達の阻害を指す。「アンタゴニスト」は、受容体に結合し、受容体をアンタゴナイズする実体である。
【0085】
本明細書で使用される「約」という用語は、この技術分野の当業者であれば容易に理解するそれぞれの値の通常の誤差範囲を指す。例示的な誤差範囲は、±5%である。本明細書における「約」値またはパラメータへの言及は、その値またはパラメータ自体を対象とする実施形態を含む(かつ説明する)。
【0086】
本明細書及び添付の特許請求の範囲において使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈によってそうでない旨が明示されない限り、複数の指示対象を含む点に留意されなければならない。
【0087】
本明細書に記載される構造特性及び機能特性のいずれについても、これらの特性を決定する方法は、当該技術分野で既知である。
【0088】
抗体
構造
本出願は、非刺激性骨髄細胞を無効化する抗体を含むTREM2タンパク質に結合する抗体を含む、抗体及び組成物を提供する。
【0089】
「抗体」という用語は、その最も広い意味で本明細書で使用され、抗原またはエピトープに特異的に結合する1つ以上の抗原結合ドメインを含む特定の種類の免疫グロブリン分子を含む。抗体は、無傷の抗体(例えば、無傷の免疫グロブリン)、抗体断片、及び多重特異性抗体を特異的に含む。
【0090】
認識されている免疫グロブリン遺伝子には、カッパ、ラムダ、アルファ、ガンマ、デルタ、イプシロン及びミュー定常領域遺伝子、ならびに無数の免疫グロブリン可変領域遺伝子が含まれる。軽鎖は、カッパまたはラムダのいずれかに分類される。抗体または免疫グロブリンの「クラス」は、その重鎖によって保有される定常ドメインまたは定常領域の種類を指す。抗体には、IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分割され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインはそれぞれ、α、δ、ε、γ、及びμと呼ばれる。
【0091】
例示的な免疫グロブリン(抗体)構造単位は、2つのポリペプチド鎖対から構成され、各対は、1つの「軽」鎖(約25kD)と、1つの「重」鎖(約50~70kD)とを有する。各鎖のN末端ドメインは、抗原認識に主に関与する約100~110以上のアミノ酸の可変領域を定義する。可変軽鎖(VL)及び可変重鎖(VH)という用語は、それぞれ、これらの軽鎖ドメイン及び重鎖ドメインを指す。IgG1重鎖は、N末端からC末端まで、それぞれ、VH、CH1、CH2、及びCH3ドメインを含む。軽鎖は、N末端からC末端まで、VLドメイン及びCLドメインを含む。IgG1重鎖は、CH1ドメインとCH2ドメインとの間にヒンジを含む。ある特定の実施形態では、免疫グロブリン構築物は、治療用ポリペプチドに接続されたIgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体中に見出される免疫グロブリンドメインは、ダイアボディまたはナノボディなどの免疫グロブリン系の構築物からのものであるか、またはそれに由来する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の免疫グロブリン構築物は、ラクダ科抗体などの重鎖抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。ある特定の実施形態では、本明細書で提供される免疫グロブリン構築物は、ウシ抗体、ヒト抗体、ラクダ科抗体、マウス抗体、または任意のキメラ抗体などの哺乳動物抗体由来の少なくとも1つの免疫グロブリンドメインを含む。
【0092】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、重鎖を含む。一実施形態では、重鎖は、IgAである。一実施形態では、重鎖は、IgDである。一実施形態では、重鎖は、IgEである。一実施形態では、重鎖は、IgGである。一実施形態では、重鎖は、IgMである。一実施形態では、重鎖は、IgG1である。一実施形態では、重鎖は、IgG2である。一実施形態では、重鎖は、IgG3である。一実施形態では、重鎖は、IgG4である。一実施形態では、重鎖は、IgA1である。一実施形態では、重鎖は、IgA2である。
【0093】
「超可変領域」または「HVR」という用語は、本明細書で使用される場合、配列が超可変である、及び/または構造的に定義されたループ(「超可変ループ」)を形成する抗体可変ドメインの各領域を指す。一般に、天然4本鎖抗体は、6つのHVRを含み、3つはVH(H1、H2、H3)中にあり、3つはVL(L1、L2、L3)中にある。HVRは、一般に、超可変ループ及び/または相補性決定領域(CDR)からのアミノ酸残基を含み、後者は最高の配列可変性のものであり、及び/または抗原認識に関与する。VHにおけるCDR1を除いて、CDRは一般に、超可変ループを形成するアミノ酸残基を含む。超可変領域(HVR)は、「相補性決定領域」(CDR)とも称され、これらの用語は、本明細書において、抗原結合領域を形成する可変領域の部分を参照して互換的に使用される。この特定の領域は、Kabat et al.,U.S.Dept.of Health and Human Services,Sequences of Proteins of Immunological Interest(1983)及びChothia et al.,J Mol Biol 196:901-917(1987)によって記載されており、定義には、互いに対して比較した場合のアミノ酸残基の重複またはサブセットが含まれる。それにもかかわらず、抗体またはそのバリアントのCDRを指すいずれかの定義の適用は、本明細書で定義され、使用される用語の範囲内であることが意図される。特定のCDRを包含する正確な残基の数は、CDRの配列及びサイズに応じて変動するであろう。当業者であれば、抗体の可変領域アミノ酸配列を考慮して、どの残基が特定のCDRを含むかを日常的に決定することができる。
【0094】
CDRのアミノ酸配列境界は、Kabat et al.(上記)(「Kabat」付番スキーム)、Al-Lazikani et al.,1997,J.Mol.Biol.,273:927-948(「Chothia」付番スキーム)、MacCallum et al.,1996,J.Mol.Biol.262:732-745(Contact」付番スキーム)、Lefranc et al.,Dev.Comp.Immunol.,2003,27:55-77(「IMGT」付番スキーム)、及びHonegge and Pluckthun,J.Mol.Biol.,2001,309:657-70(「AHo」付番スキーム)(これらの各々は、参照によりその全体が組み込まれる)によって記載されるものを含め、いくつかの既知の付番スキームのいずれかを使用して、当業者によって決定され得る。
【0095】
表Aは、Kabat及びChothiaスキームによって特定されるように、CDR-L1、CDR-L2、CDR-L3、CDR-H1、CDR-H2、及びCDR-H3の位置を提供する。CDR-H1については、Kabat及びChothiaの両方の付番スキームを使用して、残基の付番が提供される。
【0096】
CDRは、例えば、www.bioinf.org.uk/abs/abnum/で利用可能であり、参照によりその全体が組み込まれるAbhinandan and Martin,Immunology,2008,45:3832-3839に記載されるAbnumなどの抗体付番ソフトウェアを使用して、割り当てられてもよい。
【0097】
【0098】
「EU付番スキーム」は、一般に、抗体重鎖定常領域内の残基を指す場合に使用される(例えば、上記のKabat et al.に報告される通り)。別段の記載がない限り、EU付番スキームは、本明細書に記載される抗体重鎖定常領域中の残基を指すために使用される。
【0099】
本明細書で使用される場合、「一本鎖」という用語は、ペプチド結合によって直鎖状に連結されたアミノ酸モノマーを含む分子を指す。特定のそのような実施形態では、Fab軽鎖のC末端は、一本鎖Fab分子中のFab重鎖のN末端に接続される。本明細書でより詳細に記載されるように、scFvは、ポリペプチド鎖によって重鎖(VH)の可変ドメインのそのC末端からN末端に接続された軽鎖(VL)の可変ドメインを有する。代替的に、scFvは、ポリペプチド鎖を含み、VHのC末端が、ポリペプチド鎖によってVLのN末端に接続されている。
【0100】
「Fab断片」(断片抗原結合とも称される)は、軽鎖の定常ドメイン(CL)及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を、それぞれ、軽鎖及び重鎖上の可変ドメインVL及びVHとともに含有する。可変ドメインは、抗原結合に関与する相補性決定ループ(CDR、超可変領域とも称される)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端にいくつかの残基を付加することによって、Fab断片とは異なる。
【0101】
「F(ab’)2」断片は、ジスルフィド結合によってヒンジ領域の近くで接続された2つのFab’断片を含有する。F(ab’)2断片は、例えば、組換え方法によって、または無傷の抗体のペプシン消化によって、生成され得る。F(ab’)断片は、例えば、β-メルカプトエタノールで処理することによって解離させることができる。
【0102】
「Fv」断片は、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインの非共有結合した二量体を含む。
【0103】
「一本鎖Fv」または「scFv」は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一のポリペプチド鎖に存在する。一実施形態では、Fvポリペプチドは、scFvが抗原結合のための所望の構造を形成することを可能にするポリペプチドリンカーをVHドメインとVLドメインとの間にさらに含む。scFvの総説については、Pluckthun in The Pharmacology of Monoclonal Antibodies,vol.113,Rosenburg and Moore eds.,Springer-Verlag,New York,pp.269-315(1994)を参照されたい。HER2抗体scFv断片は、WO93/16185、米国特許第5,571,894号、及び米国特許第5,587,458号に記載されている。
【0104】
「scFv-Fc」断片は、Fcドメインに接続したscFvを含む。例えば、Fcドメインは、scFvのC末端に接続し得る。Fcドメインは、scFv内の可変ドメインの配向(すなわち、VH-VLまたはVL-VH)に応じて、VHまたはVLに続いてもよい。当該技術分野で既知であるか、または本明細書に記載される任意の好適なFcドメインを使用し得る。ある場合には、Fcドメインは、IgG4 Fcドメインを含む。
【0105】
「単一ドメイン抗体」または「sdAb」という用語は、抗体の一方の可変ドメインが他方の可変ドメインの存在なしに抗原に特異的に結合する分子を指す。単一ドメイン抗体、及びその断片は、Arabi Ghahroudi et al.,FEBS Letters,1998,414:521-526及びMuyldermans et al.,Trends in Biochem.Sci.,2001,26:230-245に記載され、これらの各々は参照によりその全体が組み込まれる。単一ドメイン抗体は、sdAbまたはナノボディとしても知られている。Sdabは、かなり安定しており、抗体のFc鎖との融合パートナーとして発現しやすい(Harmsen MM,De Haard HJ(2007).“Properties,production,and applications of camelid single-domain antibody fragments”.Appl.Microbiol Biotechnol.77(1):13-22)。
【0106】
「完全長抗体」、「インタクト抗体」、及び「全抗体」という用語は、本明細書において互換的に使用され、天然に存在する抗体構造と実質的に類似した構造を有し、Fc領域を含む重鎖を有する抗体を指す。例えば、IgG分子を指すために使用される場合、「完全長抗体」は、2本の重鎖及び2本の軽鎖を含む抗体である。
【0107】
「エピトープ」という用語は、抗体に特異的に結合する抗原の一部分を意味する。エピトープは、多くの場合、表面アクセス可能なアミノ酸残基及び/または糖側鎖からなり、特異的三次元構造特性及び特異的電荷特性を有し得る。立体配座エピトープ及び非立体配座エピトープは、変性溶媒の存在下で前者に対する結合は失われ得るが、後者に対する結合は失われないという点で識別される。エピトープは、結合に直接関与するアミノ酸残基、及び結合に直接関与しない他のアミノ酸残基を含み得る。抗体が結合するエピトープは、例えば、異なる点変異を有するTREM2バリアントに対する抗体結合の試験、またはキメラTREM2バリアントに対する抗体結合の試験などのエピトープ決定のための既知の技術を使用して決定することができる。
【0108】
「多重特異性抗体」は、2つ以上の異なるエピトープに集合的に特異的に結合する2つ以上の異なる抗原結合ドメインを含む抗体である。2つ以上の異なるエピトープは、同じ抗原(例えば、細胞によって発現される単一のTREM2分子)上のエピトープであってもよく、または異なる抗原(例えば、同じ細胞によって発現される異なるTREM2分子、もしくはTREM2分子及び非TREM2分子)上のエピトープであってもよい。いくつかの態様では、多重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合する(すなわち、「二重特異性抗体」)。いくつかの態様では、多重特異性抗体は、3つの異なるエピトープに結合する(すなわち、「三重特異性抗体」)。
【0109】
「単一特異性抗体」は、単一のエピトープに特異的に結合する1つ以上の結合部位を含む抗体である。単一特異性抗体の一例は、二価であるが(すなわち、2つの抗原結合ドメインを有する)、2つの抗原結合ドメインの各々で同じエピトープを認識する天然に存在するIgG分子である。結合特異性は、任意の好適な価数で存在してもよい。
【0110】
「モノクローナル抗体」という用語は、実質的に均質な抗体の集団由来の抗体を指す。実質的に均一な抗体の集団は、モノクローナル抗体の産生中に通常生じ得るバリアントを除いて、実質的に類似しており、同じエピトープ(複数可)に結合する抗体を含む。かかるバリアントは、一般に、わずかな量でのみ存在する。モノクローナル抗体は、典型的には、複数の抗体から単一の抗体を選択することを含む工程によって得られる。例えば、選択工程は、ハイブリドーマクローン、ファージクローン、酵母クローン、細菌クローン、または他の組換えDNAクローンのプールなどの複数のクローンからの固有のクローンの選択であり得る。選択された抗体は、例えば、標的に対する親和性(「親和性成熟」)を改善するために、抗体をヒト化するために、細胞培養物におけるその産生を改善するために、及び/または対象におけるその免疫原性を低減するために、さらに改変され得る。
【0111】
「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域によって媒介される生物学的活性を指し、その活性は、抗体アイソタイプに応じて変動し得る。抗体エフェクター機能の例としては、補体依存性細胞傷害性(CDC)を活性化するためのC1q結合、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を活性化するためのFc受容体結合、及び抗体媒介性細胞食作用(ADCP)、受容体リガンド遮断、またはアンタゴニズムが挙げられる。
【0112】
抗TREM2抗体は、表に示されるクローンなどの本明細書に記載されるものを含み得る。いくつかの実施形態では、抗体は、代替的な足場を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、代替的な足場からなる。いくつかの実施形態では、抗体は、本質的に代替的な足場からなる。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、抗体は、抗体断片からなる。いくつかの実施形態では、抗体は、本質的に抗体断片からなる。「TREM2抗体」、「抗TREM2抗体」、または「TREM2特異的抗体」は、本明細書で提供される場合、抗原TREM2に特異的に結合する抗体である。いくつかの実施形態では、抗体は、TREM2の細胞外ドメインに結合する。ある特定の実施形態では、本明細書で提供されるTREM2抗体は、異なる種に由来するTREM2タンパク質間で、またはそれらにわたって保存されるTREM2のエピトープに結合する。
【0113】
「キメラ抗体」という用語は、重鎖及び/または軽鎖の一部分が特定の供給源もしくは種に由来し、一方で、重鎖及び/または軽鎖の残りが異なる供給源もしくは種に由来する抗体を指す。
【0114】
非ヒト抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト抗体に由来する最小限の配列を含有するキメラ抗体である。ヒト化抗体は、一般に、1つ以上のCDR由来の残基が、非ヒト抗体(ドナー抗体)の1つ以上のCDR由来の残基によって置き換えられるヒト抗体(レシピエント抗体)である。ドナー抗体は、所望の特異性、親和性、または生物学的効果を有する、任意の好適な非ヒト抗体、例えば、マウス、ラット、ウサギ、ニワトリ、または非ヒト霊長類抗体であり得る。ヒト化抗体は、ヒト対象に投与されるとき、非ヒト種抗体と比較して、免疫応答を誘導する可能性が低く、及び/またはそれほど重症ではない免疫応答を誘導する。いくつかの場合では、レシピエント抗体の選択されたフレームワーク領域残基は、ドナー抗体由来の対応するフレームワーク領域残基によって置き換えられる。ヒト化抗体はまた、レシピエント抗体またはドナー抗体のいずれにも見られない残基を含んでもよい。かかる修飾は、抗体機能をさらに微調整するために行われ得る。ヒト化抗体を作製する方法の例は、それらの各々が参照によりその全体が組み込まれる米国特許第6,054,297号、同第5,886,152号及び同第5,877,293号に見出すことができる。さらなる詳細については、Jones et al.,Nature,1986,321:522-525、Riechmann et al.,Nature,1988,332:323-329、及びPresta,Curr.Op.Struct.Biol.,1992,2:593-596(その各々が、参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。
【0115】
一実施形態では、ヒト抗体由来の定常ドメイン(複数可)は、非ヒト種の可変ドメイン(複数可)に融合される。別の実施形態では、非ヒト抗体の1つ以上のCDR配列内の1つ以上のアミノ酸残基は、ヒト対象に投与されるときに、非ヒト抗体の免疫原性の可能性を低減するように変更され、変更されたアミノ酸残基は、抗体のその抗原に対する免疫特異的結合にとって重要ではないか、または作製されるアミノ酸配列への変化は、保存的な変化のいずれかであるため、ヒト化抗体の抗原に対する結合は、非ヒト抗体の抗原に対する結合よりも著しく悪くはない。
【0116】
「ヒト抗体」は、ヒトもしくはヒト細胞によって産生される抗体のアミノ酸配列に対応するアミノ酸配列、またはヒト抗体レパートリーもしくはヒト抗体コード配列を利用する非ヒト源に由来するアミノ酸配列(例えば、ヒト源から得られるか、もしくは新規に設計される)を有するものである。ヒト抗体は、ヒト化抗体を特異的に除外する。一実施形態では、可変ドメイン及び定常ドメインのすべてが、ヒト免疫グロブリン配列(完全ヒト抗体)に由来する。これらの抗体は、ヒト重鎖及び/または軽鎖をコードする遺伝子に由来する抗体を発現するように遺伝子改変されるマウスの目的の抗原による免疫付与によるものを含む様々な方式で調製され得る。
【0117】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体断片を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、抗体断片からなる。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、本質的に抗体断片からなる。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fv断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、F(ab’)2断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、Fab’断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、scFv(sFv)断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、scFv-Fc断片である。いくつかの実施形態では、抗体断片は、単一ドメイン抗体の断片である。
【0118】
TREM2抗体の配列
VHドメイン
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVH配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1のVH配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号3のVH配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号5のVH配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号7のVH配列を含む。
【0119】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7で提供される例解的なVH配列に対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVH配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7で提供され、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有するVH配列を含む。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0120】
VLドメイン
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVL配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号2のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号4のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号6のVL配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号8のVL配列を含む。
【0121】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号2、4、6、及び8で提供される例解的なVL配列に対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVL配列を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号2、4、6、及び8で提供され、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有するVL配列を含む。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0122】
VH-VLの組み合わせ
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVH配列と、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVL配列と、を含む。
【0123】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1のVH配列と、配列番号2のVL配列と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号3のVH配列と、配列番号4のVL配列と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号5のVH配列と、配列番号6のVL配列と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号7のVH配列と、配列番号8のVL配列と、を含む。特定の態様では、配列番号1、3、5、及び7のいずれかを、配列番号2、4、6、及び8のいずれかと組み合わせることができる。例えば、配列番号1を、配列番号2、4、6、または8のいずれかと組み合わせることができる。別の例として、配列番号2を、配列番号1、3、5、または7のいずれかと組み合わせることができる。
【0124】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7で提供される例解的なVH配列に対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVH配列と、配列番号2、4、6、及び8で提供される例解的なVL配列に対して少なくとも約50%、60%、70%、80%、90%、95%、または99%の同一性を有するVL配列と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7で提供され、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有するVH配列と、配列番号2、4、6、及び8で提供され、最大で1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25個のアミノ酸置換を有するVL配列と、を含む。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0125】
CDR
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVHドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVHドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVHドメインの3個のCDRを含む。いくつかの態様では、CDRは、例示的なCDRである。いくつかの態様では、CDRは、Kabat CDRである。いくつかの態様では、CDRは、Chothia CDRである。いくつかの態様では、CDRは、AbM CDRである。いくつかの態様では、CDRは、Contact CDRである。いくつかの態様では、CDRは、IMGT CDRである。
【0126】
Kabat、Chothia、AbM、Contact、及びIMGTを使用して定義される配列番号1のVH及び配列番号2のVLのCDRを以下の表Bに示す。VHの例示的なCDRは、配列番号9、10、及び11として提供される。VLの例示的なCDRは、配列番号12、13、及び14として提供される。
【0127】
【0128】
いくつかの実施形態では、CDRは、配列番号1、3、5、及び7のCDR-H1、CDR-H2、またはCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有するCDRである。いくつかの実施形態では、CDR-H1は、配列番号1、3、5、及び7から選択され、最大で1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するVHドメインのCDR-H1である。いくつかの実施形態では、CDR-H2は、配列番号1、3、5、及び7から選択され、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有するVHドメインのCDR-H2である。いくつかの実施形態では、CDR-H3は、配列番号1、3、5、及び7から選択され、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有するVHドメインのCDR-H3である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0129】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVLドメインの1~3個のCDRを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVLドメインの2~3個のCDRを含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVLドメインの3個のCDRを含む。いくつかの態様では、CDRは、例示的なCDRである。いくつかの態様では、CDRは、Kabat CDRである。いくつかの態様では、CDRは、Chothia CDRである。いくつかの態様では、CDRは、AbM CDRである。いくつかの態様では、CDRは、Contact CDRである。いくつかの態様では、CDRは、IMGT CDRである。
【0130】
いくつかの実施形態では、CDRは、配列番号2、4、6、及び8のCDR-L1、CDR-L2、またはCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有するCDRである。いくつかの実施形態では、CDR-L1は、配列番号2、4、6、及び8から選択され、最大で1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有するVLドメインのCDR-L1である。いくつかの実施形態では、CDR-L2は、配列番号2、4、6、及び8から選択され、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有するVLドメインのCDR-L2である。いくつかの実施形態では、CDR-L3は、配列番号2、4、6、及び8から選択され、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有するVLドメインのCDR-L3である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0131】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVHドメインの1~3個のCDRと、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVLドメインの1~3個のCDRと、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVHドメインの2~3個のCDRと、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVLドメインの2~3個のCDRと、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号1、3、5、及び7から選択されるVHドメインの3個のCDRと、配列番号2、4、6、及び8から選択されるVLドメインの3個のCDRと、を含む。いくつかの態様では、CDRは、例示的なCDRである。いくつかの態様では、CDRは、Kabat CDRである。いくつかの態様では、CDRは、Chothia CDRである。いくつかの態様では、CDRは、AbM CDRである。いくつかの態様では、CDRは、Contact CDRである。いくつかの態様では、CDRは、IMGT CDRである。
【0132】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号11、39、51、または52から選択されるCDR-H3を含む。いくつかの態様では、CDR-H3は、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-H3は、配列番号11、39、51、または52から選択され、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有するCDR-H3である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2を含む。いくつかの態様では、CDR-H2は、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-H2は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0134】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1を含む。いくつかの態様では、CDR-H1は、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-H1は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0135】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3と、配列番号10のCDR-H2と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3と、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2と、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1と、を含む。いくつかの実施形態では、CDR-H3は、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-H3は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3であり、CDR-H2は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2であり、CDR-H1は、最大で1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0136】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号14、42、または57のCDR-L3を含む。いくつかの態様では、CDR-L3は、配列番号14、42、または57のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-L3は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号14、42、または57のCDR-L3である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0137】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号13または55のCDR-L2を含む。いくつかの態様では、CDR-L2は、配列番号13または55のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-L2は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号13または55のCDR-L2である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0138】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号12のCDR-L1を含む。いくつかの態様では、CDR-L1は、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-L1は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0139】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号14、42、または57のCDR-L3と、配列番号13または55のCDR-L2と、を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号14、42、または57のCDR-L3と、配列番号13または55のCDR-L2と、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1と、を含む。いくつかの実施形態では、CDR-L3は、配列番号14、42、または57のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、配列番号13または55のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L1は、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-L3は、最大で1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、配列番号14、42、または57のCDR-L3であり、CDR-L2は、最大で1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、配列番号13または55のCDR-L2であり、CDR-L1は、最大で1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0140】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3と、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2と、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1と、配列番号14、42、または57のCDR-L3と、配列番号13または55のCDR-L2と、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1と、を含む。いくつかの実施形態では、CDR-H3は、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H2は、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-H1は、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L3は、配列番号14、42、または57のCDR-L3と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L2は、配列番号13または55のCDR-L2と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有し、CDR-L1は、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1と少なくとも約50%、75%、80%、85%、90%、または95%の同一性を有する。いくつかの実施形態では、CDR-H3は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号11、39、51、または52のCDR-H3であり、CDR-H2は、最大で1、2、3、4、5、6、7、または8個のアミノ酸置換を有する、配列番号10、47、48、49、または50のCDR-H2であり、CDR-H1は、最大で1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、配列番号9、37、43、44、45、または46のCDR-H1であり、CDR-L3は、最大で1、2、3、4、または5個のアミノ酸置換を有する、配列番号14、42、または57のCDR-L3であり、CDR-L2は、最大で1、2、3、または4個のアミノ酸置換を有する、配列番号13または55のCDR-L2であり、CDR-L1は、最大で1、2、3、4、5、または6個のアミノ酸置換を有する、配列番号12、40、53、または54のCDR-L1である。いくつかの態様では、アミノ酸置換は、保存的アミノ酸置換である。いくつかの実施形態では、この段落に記載の抗体は、本明細書では「バリアント」と称される。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、例えば、親和性成熟、部位特異的変異誘発、ランダム変異誘発、または当該技術分野で既知であるか、もしくは本明細書に記載の任意の他の方法によって、本明細書で提供される配列に由来する。いくつかの実施形態では、そのようなバリアントは、本明細書で提供される配列に由来せず、例えば、抗体を得るために本明細書で提供される方法に従って、新たに(de novo)単離され得る。
【0141】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、配列番号9のCDR-H1と、配列番号10のCDR-H2と、配列番号11のCDR-H3と、配列番号12のCDR-L1と、配列番号13のCDR-L2と、配列番号14のCDR-L1と、を含む。
【0142】
Fc領域
本明細書の「Fcドメイン」または「Fc領域」という用語は、定常領域の少なくとも一部分を含有する免疫グロブリン重鎖のC末端領域を定義するために使用される。この用語は、天然配列Fc領域及びバリアントFc領域を含む。本明細書に別段の定めがない限り、Fc領域または定常領域におけるアミノ酸残基の付番は、Kabat et al,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,MD,1991に記載されるように、EU付番システム(EUインデックスとも呼ばれる)に従う。本明細書で使用される二量体Fcの「Fcポリペプチド」は、二量体Fcドメインを形成する2つのポリペプチドのうちの1つ、すなわち、安定した自己会合が可能な免疫グロブリン重鎖のC末端定常領域を含むポリペプチドを指す。例えば、二量体IgG FcのFcポリペプチドは、IgG CH2及びIgG CH3定常ドメイン配列を含む。Fcは、クラスIgA、IgD、IgE、IgG、及びIgMのものであってもよく、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2にさらに分割され得る。
【0143】
「Fc受容体」及び「FcR」という用語は、抗体のFc領域に結合する受容体を記載するために使用される。例えば、FcRは、天然配列ヒトFcRであってもよい。一般に、FcRは、IgG抗体(ガンマ受容体)に結合するものであり、これらの受容体の対立遺伝子バリアント及び代替的にスプライスされた形態を含む、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIサブクラスの受容体を含む。FcγRII受容体は、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)を含み、これらは、主にその細胞質ドメインが異なる同様のアミノ酸配列を有する。他のアイソタイプの免疫グロブリンはまた、特定のFcRに結合することができる(例えば、Janeway et al.,Immuno Biology:the immune system in health and disease,(Elsevier Science Ltd.,NY)(4th ed.,1999)を参照されたい)。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系活性化モチーフ(ITAM)を含有する。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメインに免疫受容体チロシン系阻害モチーフ(ITIM)を含有する(Daeron,Annu.Rev.Immunol.15:203-234(1997)に概説される)。FcRは、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)、Capel et al.,Immunomethods 4:25-34(1994)、及びde Haas et al.,J.Lab.Clin.Med.126:330-41(1995)に概説される。将来的に特定されるものを含む他のFcRは、本明細書における「FcR」という用語に包含される。この用語には、胎児への母体IgGの移行を担う新生児受容体であるFcRnも含まれる(Guyer et al.,J.Immunol.117:587(1976)、及びKim et al.,J.Immunol.24:249(1994))。
【0144】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG1抗体である。
【0145】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG3抗体である。
【0146】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG2抗体である。
【0147】
いくつかの実施形態では、抗体は、IgG4抗体である。
【0148】
CH2ドメイン中の修飾は、Fcに対するFcRの結合に影響を及ぼし得る。異なるFcガンマ(Fcγ)受容体に対するFcの親和性を選択的に改変するための、Fc領域内のいくつかのアミノ酸修飾が当該技術分野で既知である。一実施形態では、Fcは、Fc-ガンマ受容体の選択的結合を促進するための1つ以上の修飾を含む。別の実施形態では、Fcは、Fc-ガンマ受容体に対する結合親和性を低減する1つ以上の修飾を含む。
【0149】
Fcに対するFcRの結合を変化させる例示的な変異を以下に列挙する。
【0150】
S298A/E333A/K334A、S298A/E333A/K334A/K326A(Lu Y,Vernes JM,Chiang N,et al.J Immunol Methods.2011 Feb 28;365(1-2):132-41)。
【0151】
F243L/R292P/Y300L/V305I/P396L、F243L/R292P/Y300L/L235V/P396L(Stavenhagen JB,Gorlatov S,Tuaillon N,et al.Cancer Res.2007 Sep 15;67(18):8882-90、Nordstrom JL,Gorlatov S,Zhang W,et al.Breast Cancer Res.2011 Nov 30;13(6):R123)。
【0152】
F243L(Stewart R,Thom G,Levens M,et al.Protein Eng Des Sel.2011 Sep;24(9):671-8.)、S298A/E333A/K334A(Shields RL,Namenuk AK,Hong K,et al.J Biol Chem.2001 Mar 2;276(9):6591-604)。
【0153】
S239D/I332E/A330L、S239D/I332E(Lazar GA,Dang W,Karki S,et al.Proc Natl Acad Sci U S A.2006 Mar 14;103(11):4005-10)。
【0154】
S239D/S267E、S267E/L328F(Chu SY,Vostiar I,Karki S,et al.Mol Immunol.2008 Sep;45(15):3926-33)。
【0155】
S239D/D265S/S298A/I332E、S239E/S298A/K326A/A327H、G237F/S298A/A330L/I332E、S239D/I332E/S298A、S239D/K326E/A330L/I332E/S298A、G236A/S239D/D270L/I332E、S239E/S267E/H268D、L234F/S267E/N325L、G237F/V266L/S267D、ならびにWO2011/120134及びWO2011/120135(参照により本明細書に組み込まれる)に列挙される他の変異。Therapeutic Antibody Engineering(William R.Strohl and Lila M.Strohl,Woodhead Publishing series in Biomedicine No 11,ISBN 1 907568 37 9,Oct 2012による)は、ページ283に変異を列挙している。
【0156】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、エフェクター機能を媒介するその能力を改善するための修飾を含む。かかる修飾は、当該技術分野で既知であり、脱フコシル化、または活性化受容体(主にADCCの場合はFCGR3a)に対する、及びCDCの場合はC1qに対するFcの親和性の操作を含む。以下の表Cは、エフェクター機能操作の文献に報告された様々な設計をまとめたものである。
【0157】
ある特定の実施形態では、本明細書で提供される抗体は、ADCCを改善する1つ以上のアミノ酸置換、例えば、Fc領域の位置298、333、及び334のうちの1つ以上での置換を有するFc領域を含む。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Lazar et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2006,103:4005-4010(参照によりその全体が組み込まれる)に記載されるように、位置239、332、及び330での1つ以上のアミノ酸置換を有するFc領域を含む。
【0158】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される抗体は、C1q結合及び/またはCDCを改善または減少させる1つ以上の改変を含む。米国特許第6,194,551号、WO 99/51642、及びIdusogie et al.,J.Immunol.,2000,164:4178-4184(その各々が、参照によりその全体が組み込まれる)を参照されたい。
【0159】
したがって、一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、改良されたエフェクター機能を付与する表Bに記載されるような1つ以上のアミノ酸修飾を含む二量体Fcを含み得る。別の実施形態では、抗体は、エフェクター機能を改善するために脱フコシル化され得る。
【0160】
【0161】
FcγR及び/または補体結合及び/またはエフェクター機能を低減するFc修飾は、当該技術分野で既知である。かかる修飾を含む抗体は、「Fc-サイレント」抗体と呼称される。最近の刊行物では、エフェクター活性が低下またはサイレンシングされた抗体を操作するために使用されている戦略が記載されている(Strohl,WR(2009),Curr Opin Biotech 20:685-691、及びStrohl,WR and Strohl LM,“Antibody Fc engineering for optimal antibody performance”In Therapeutic Antibody Engineering,Cambridge:Woodhead Publishing(2012),pp225-249を参照されたい)。これらの戦略には、グリコシル化の修飾によるエフェクター機能の低下、IgG2/IgG4足場の使用、またはFcのヒンジもしくはCH2領域への変異の導入が含まれる。例えば、米国特許公開第2011/0212087号(Strohl)、国際特許公開第WO2006/105338号(Xencor)、米国特許公開第2012/0225058号(Xencor)、米国特許公開第2012/0251531号(Genentech)、米国特許公開第2011/0059075号(Rockefeller University/MIT)、及びStrop et al((2012)J.Mol.Biol.420:204-219)は、Fcに対するFcγRまたは補体の結合を低減するための特異的修飾を記載している。
【0162】
Fcに対するFcγRまたは補体の結合を低減するための既知のアミノ酸修飾の特定の非限定的な例としては、以下の表Dで特定されるものが挙げられる。
【0163】
【0164】
アミノ酸配列を変更することなく、Fcグリコシル化部位(Asn 297 EU番号付け)上にほとんどまたは全くフコースを伴わない抗体を産生する方法は、当該技術分野で周知である。GlymaxX(登録商標)技術(ProBioGen AG)は、フコース生合成の細胞経路を抗体産生に使用される細胞へと変える酵素のための遺伝子の導入に基づいている。これにより、抗体産生細胞によるN結合抗体炭水化物部分への糖「フコース」の付加を防止する。(von Horsten et al.(2010)Glycobiology.2010 Dec;20(12):1607-18。)脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、細菌オキシドレダクターゼGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキシロースレダクターゼ(RMD)の安定した発現を伴うCHO-DG44(Henning von Horsten et al.,Glycobiol 2010,20:1607-1618を参照されたい)、またはタンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(その各々が、参照によりその全体が組み込まれる、Ripka et al.,Arch.Biochem.Biophys.,1986,249:533-545、米国特許公開第2003/0157108号、WO2004/056312を参照されたい)、ならびにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子またはFUT8ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.,2004,87:614-622、Kanda et al.,Biotechnol.Bioeng.,2006,94:680-688、及びWO2003/085107(その各々が、参照によりその全体が組み込まれる))が挙げられる。フコシル化のレベルを低下させた抗体を得るための別のアプローチは、米国特許第8,409,572号に見出すことができ、このことは、抗体上でのフコシル化のレベルを低下させる能力について、抗体産生のための細胞株を選択することを教示する。
【0165】
抗体は、完全に脱フコシル化することができ(検出可能なフコースを含有しないことを意味する)、または部分的に脱フコシル化することができ、このことは、単離された抗体が、哺乳動物発現系によって産生される同様の抗体について通常検出されるフコースの量の95%未満、85%未満、75%未満、65%未満、55%未満、45%未満、35%未満、25%未満、15%未満、または5%未満を含有することを意味する。
【0166】
いくつかの態様では、本明細書で提供される抗体は、天然に存在するIgG1ドメインと比較して、位置Asn297でのフコース含有量が減少したIgG1ドメインを含む。かかるFcドメインは、改善されたADCCを有することが知られている。参照によりその全体が組み込まれるShields et al.,J.Biol.Chem.,2002,277:26733-26740を参照されたい。いくつかの態様では、そのような抗体は、位置Asn297に何らフコースを含まない。フコースの量は、例えば、参照によりその全体が組み込まれるWO2008/077546に記載されるような任意の好適な方法を使用して決定され得る。
【0167】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、二分されたオリゴ糖、例えば、GlcNAcによって二分される抗体のFc領域に結合された二分岐オリゴ糖を含む。かかる抗体バリアントは、低減されたフコシル化及び/または改善されたADCC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO2003/011878、米国特許第6,602,684号、及び米国特許公開第2005/0123546号に記載され、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0168】
本明細書に提供される抗体に組み込まれ得る他の例解的なグリコシル化バリアントは、例えば、米国特許公開第2003/0157108号、同第2004/0093621号、同第2003/0157108号、同第2003/0115614号、同第2002/0164328号、同第2004/0093621号、同第2004/0132140号、同第2004/0110704号、同第2004/0110282号、同第2004/0109865号、国際特許公開第2000/61739号、同第2001/29246号、同第2003/085119号、同第2003/084570号、同第2005/035586号、同第2005/035778号、同第2005/053742号、同第2002/031140号、Okazaki et al.,J.Mol.Biol.,2004,336:1239-1249、及びYamane-Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.,2004,87:614~622に記載され、それらの各々が、参照によりその全体が組み込まれる。
【0169】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Fc領域に接続されたオリゴ糖内に少なくとも1つのガラクトース残基を有するFc領域を含む。かかる抗体バリアントは、改善されたCDC機能を有し得る。そのような抗体バリアントの例は、例えば、WO1997/30087、WO1998/58964、及びWO1999/22764に記載され、これらの各々は、その全体が参照により組み込まれる。
【0170】
脱フコシル化抗体を産生することができる細胞株の例としては、細菌オキシドレダクターゼGDP-6-デオキシ-D-リキソ-4-ヘキシロースレダクターゼ(RMD)の安定した発現を伴うCHO-DG44(Henning von Horsten et al.,Glycobiol 2010,20:1607-1618を参照されたい)、またはタンパク質フコシル化が欠損しているLec13 CHO細胞(それらの各々が、参照によりその全体が組み込まれる、Ripka et al.,Arch.Biochem.Biophys.,1986,249:533-545、米国特許公開第2003/0157108号、WO2004/056312を参照されたい)、ならびにアルファ-1,6-フコシルトランスフェラーゼ遺伝子またはFUT8ノックアウトCHO細胞などのノックアウト細胞株(Yamane-Ohnuki et al.,Biotech.Bioeng.,2004,87:614-622、Kanda et al.,Biotechnol.Bioeng.,2006,94:680-688、及びWO2003/085107(その各々が、参照によりその全体が組み込まれる))が挙げられる。
【0171】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞食作用(ADCP)活性を有する。ADCPは、抗体が標的細胞の表面上の抗原に結合するときに生じ得る。単球及びマクロファージを含む、それらの細胞表面上にFc受容体を有する食細胞は、標的細胞に結合した抗体のFc領域を認識し、結合する。Fc受容体の抗体結合標的細胞に対する結合時に、標的細胞の食作用を開始することができる。ADCPは、ADCCの一形態とみなすことができる。
【0172】
いくつかの実施形態では、抗体は、免疫複合体を形成することができる。例えば、免疫複合体は、抗体によって覆われた細胞であってもよい。
【0173】
いくつかの実施形態では、抗体は、モノクローナル抗体である。
【0174】
いくつかの実施形態では、抗体は、ポリクローナル抗体である。
【0175】
いくつかの実施形態では、抗体は、ハイブリドーマによって産生される。他の実施形態では、抗体は、所望の可変ドメイン及び定常ドメインを発現するように操作された組換え細胞によって産生される。
【0176】
いくつかの実施形態では、抗体は、抗原特異性及び下部ヒンジ領域を保持する一本鎖抗体もしくは他の抗体誘導体、またはそのバリアントであってもよい。
【0177】
いくつかの実施形態では、抗体は、多官能性抗体、組換え抗体、ヒト抗体、ヒト化抗体、それらの断片またはバリアントであり得る。特定の実施形態では、抗体断片またはその誘導体は、Fab断片、Fab’2断片、CDR及びScFvから選択される。
【0178】
いくつかの実施形態では、抗体は、TREM2タンパク質などの表面抗原に特異的である。いくつかの実施形態では、治療用抗体は、抗原(例えば、抗原保有標的細胞によって特異的に発現される分子)に特異的である。特定の実施形態では、治療用抗体は、ヒトまたは非ヒト霊長類IgG1またはIgG3のFc部分を有してもよい。
【0179】
結合
標的分子に対する抗体の結合に関して、特定の抗原(例えば、ポリペプチド標的)または特定の抗原上のエピトープに対する「結合」、「特異的結合」、「~に特異的に結合する」、「~に対して特異的に結合する」、「選択的に結合する」、及び「~に対して選択的」という用語は、(例えば、非標的分子との)非特異的または非選択的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、標的分子に対する結合を測定し、それを非標的分子に対する結合と比較することによって、測定することができる。特異的結合は、標的分子上で認識されるエピトープを模倣する対照分子との競合によって決定することもできる。その場合、標的分子に対する抗体の結合が対照分子によって競合的に阻害される場合、特異的結合が示される。
【0180】
「親和性」は、分子(例えば、抗体)の単一の結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原またはエピトープ)との間の非共有結合相互作用の合計強度を指す。別段の指示がない限り、本明細書で使用される場合、「親和性」は、結合対のメンバー(例えば、抗体及び抗原またはエピトープ)間の1:1の相互作用を反映する固有の結合親和性を指す。分子XのそのパートナーYに対する親和性は、解離平衡定数(KD)によって表すことができる。解離平衡定数に寄与する動態成分は、以下により詳細に記載される。親和性は、表面プラズモン共鳴(SPR)技術(例えば、BIACORE(登録商標))またはバイオレイヤー干渉法(例えば、FORTEBIO(登録商標))などの本明細書に記載されるものを含む、当該技術分野で既知の一般的な方法によって測定することができる。
【0181】
「kd」(sec-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離速度定数を指す。この値は、koff値とも称される。
【0182】
「ka」(M-1×sec-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合速度定数を指す。この値は、kon値とも称される。
【0183】
「KD」(M)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数を指す。KD=kd/ka。いくつかの実施形態では、抗体の親和性は、そのような抗体とその抗原との間の相互作用に対するKDに関して記載される。明確にするために、当該技術分野で知られているように、より小さいKD値は、より大きい親和性相互作用を示し、より大きいKD値は、より小さい親和性相互作用を示す。
【0184】
「KA」(M-1)という用語は、本明細書で使用される場合、特定の抗体-抗原相互作用の会合平衡定数を指す。KA=ka/kd。
【0185】
2つ以上の抗体に関して本明細書で使用される場合、「~と競合する」または「~と交差競合する」という用語は、2つ以上の抗体が抗原(例えば、TREM2)に対する結合について競合することを示す。1つの例示的なアッセイでは、TREM2を表面上にコーティングし、第1のTREM2抗体と接触させ、その後、第2のTREM2抗体を添加する。別の例示的なアッセイでは、第1のTREM2抗体を表面上にコーティングし、TREM2と接触させ、その後、第2のTREM2抗体を添加する。第1のTREM2抗体の存在が、いずれかのアッセイにおいて、第2のTREM2抗体の結合を低減する場合、これらの抗体は互いに競合する。「~と競合する」という用語はまた、ある抗体が別の抗体の結合を低減するが、抗体が逆の順序で添加されるときに競合が観察されない抗体の組み合わせを含む。しかしながら、いくつかの実施形態では、第1及び第2の抗体は、それらが添加される順序にかかわらず、互いの結合を阻害する。いくつかの実施形態では、1つの抗体は、別の抗体のその抗原に対する結合を、少なくとも25%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、または少なくとも95%減少させる。当業者は、TREM2に対する抗体の親和性及び抗体の価数に基づいて、競合アッセイで使用される抗体の濃度を選択することができる。この定義に記載のアッセイは例解的であり、当業者は、任意の好適なアッセイを利用して、抗体が互いに競合するかどうかを決定することができる。好適なアッセイは、例えば、Cox et al.,“Immunoassay Methods,”in Assay Guidance Manual[Internet],Updated December 24,2014(www.ncbi.nlm.nih.gov/books/NBK92434/;2015年9月29日にアクセスした)、Silman et al.,Cytometry,2001,44:30-37、及びFinco et al.,J.Pharm.Biomed.Anal.,2011,54:351-358に記載されており、その各々は、参照によりその全体が組み込まれる。
【0186】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定される場合、約0.001、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、1.95、2、3、4、5、6、7、8、9、または10×10-9M以下のKDでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体のKDは、Biacoreアッセイによって測定される場合、約0.001~0.01、0.01~0.1、0.01~0.05、0.05~0.1、0.1~0.5、0.5~1、0.25~0.75、0.25~0.5、0.5~0.75、0.75~1、0.75~2、1.1~1.2、1.2~1.3、1.3~1.4、1.4~1.5、1.5~1.6、1.6~1.7、1.7~1.8、1.8~1.9、1.9~2、1~2、1~5、2~7、3~8、3~5、4~6、5~7、6~8、7~9、7~10、または5~10×10-9Mである。
【0187】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定される場合、約2、1.98、1.95、1.9、1.85、1.8、1.75、1.7、1.65、1.6、1.55、1.50、1.45、または1.4×10-9M以下、またはそれ未満のKDでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定される場合、1.9~1.8、1.8~1.7、1.7~1.6、1.6~1.5、または1.9~1.5×10-9MのKDでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定される場合、約10、9.56、9.5、9.0、8.88、8.84、8.5、8、7.5、7.32、7、6.5、6、5.5、5、4.5、4、3.5、3、2.5、2、1.5、または1×10-4(1/s)以下、またはそれ未満のKdでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定される場合、7~10、7~8、8~9、9~10、7~7.5、7.5~8、8.~8.5、8.5~9、9~9.5、または9.5~10×10-4(1/s)のKdでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定される場合、約4、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、45、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6、7、8、9、または10×105(1/Ms)以上、またはそれより大きいKaでヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、Biacoreアッセイによって測定される場合、4~7、4~4.5、4.5~5、5~5.5、5.5~6、6~6.5、または6.5~7、7~8、8~9、または9~10×105(1/Ms)のKaでヒトTREM2に結合する。
【0188】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1nM以下のEC50でヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、0.6~1.4nMのEC50でヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、約0.5、0.6、0.9、1.1、1.2、1.3、1.4、または1.5nMのEC50でヒトTREM2に結合する。
【0189】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、2、1.9、1.8、1.7、1.6、1.5、1.4、1.3、1.2、1.1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、または0.1nM以下のEC50でヒトTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、0.6~1.4nMのEC50でマウスTREM2に結合する。いくつかの実施形態では、抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、約0.5、0.6、0.9、1.1、1.2、1.3、1.4、または1.5nMのEC50でマウスTREM2に結合する。
【0190】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、20nM以上、またはそれより大きいEC50でヒトTREM2に結合しない。いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、フローサイトメトリーによって測定されることによって測定される場合、3nM以上、またはそれより大きいEC50でマウスTREM2に結合しない。
【0191】
目的の抗体(例えば、TREM2)によって結合される標的抗原上のエピトープに結合する抗体をスクリーンするために、Antibodies,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory,Ed Harlow and David Lane(1988)に記載されるものなどの通常の交差遮断アッセイを行うことができる。代替的に、またはこれに加えて、エピトープマッピングは、当該技術分野で既知の方法によって行うことができる。
【0192】
抗体間の競合は、試験中の抗体が、共通の抗原に対する参照抗体の特異的結合を阻害または遮断するアッセイによって決定することができる(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.50:1495,1990、Fendly et al.Cancer Research 50:1550-1558、US6,949,245を参照されたい)。過剰な試験抗体(例えば、少なくとも2倍、5倍、10倍、20倍、または100倍)が、参照抗体の結合を、例えば、競合結合アッセイで測定される場合、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%まで阻害または遮断する場合、その試験抗体は、参照抗体と競合する。競合アッセイによって特定された抗体(競合抗体)としては、参照抗体と同じエピトープに結合する抗体、及び立体障害が生じるために参照抗体によって結合されたエピトープに十分に近位の隣接するエピトープに対する抗体結合が挙げられる。例えば、TREM2に対する結合について本明細書に記載の第1の抗体と競合する第2の競合する抗体が特定され得る。特定の場合では、第2の抗体は、競合結合アッセイで測定される場合、第1の抗体の結合を、例えば、少なくとも50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%遮断または阻害することができる。特定の場合では、第2の抗体は、第1の抗体を、50%、60%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、または99%よりも大きく置き換えることができる。
【0193】
機能
いくつかの実施形態では、抗体は、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)活性を有する。ADCCは、抗体が標的細胞の表面上の抗原に結合するときに生じ得る。細胞傷害性T細胞、ナチュラルキラー(NK)細胞、マクロファージ、好中球、好酸球、樹状細胞、または単球を含む、それらの細胞表面上にFcガンマ受容体(FcγRまたはFCGR)を有するエフェクター細胞は、標的細胞に結合された抗体のFc領域を認識し、結合する。そのような結合は、細胞死につながる細胞内シグナル伝達経路の活性化を引き起こすことができる。特定の実施形態では、抗体の免疫グロブリンFc領域サブタイプ(アイソタイプ)は、ヒトIgG1及びIgG3を含む。本明細書で使用される場合、ADCCは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球、及びマクロファージ)が標的細胞上の結合抗体を認識し、その後、標的細胞の溶解を引き起こす細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介するための主要な細胞であるNK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、一方で単球は、FcγRI、FcγRII、及びFcγRIIIを発現する。まとめられた状態での造血細胞上のFcR発現は、Ravetch and Kinet,Annu.Rev.Immunol 9:457-92(1991)のページ464の表3にある。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5,500,362号または同第5,821,337号に記載されているものなどのインビトロADCCアッセイを行ってもよい。かかるアッセイに有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。代替的に、またはそれに加えて、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652-656(1998)に開示されるものなどの動物モデルで評価され得る。
【0194】
いくつかの実施形態では、抗体は、補体依存性細胞傷害性(CDC)活性を有する。抗体誘導CDCは、古典的補体カスケードのタンパク質を介して媒介され、補体タンパク質Clqの抗体に対する結合によって誘発される。Clqに結合する抗体Fc領域は、補体カスケードの活性化を誘導することができる。特定の実施形態では、抗体の免疫グロブリンFc領域サブタイプ(アイソタイプ)は、ヒトIgG1及びIgG3を含む。本明細書で使用される場合、CDCは、補体の存在下で標的を溶解する分子の能力を指す。補体活性化経路は、補体系の第1の成分(C1q)が同種の抗原と複合体化した分子(例えば、ポリペプチド(例えば、抗体))に結合することによって開始される。補体活性化を評価するために、例えば、Gazzano-Santoro et al.,J.Immunol.Methods 202:163(1996)に記載されるようなCDCアッセイを実施してもよい。
【0195】
いくつかの実施形態では、抗体は、アゴニスト抗体である。アゴニスト抗体は、抗体が細胞上で発現されるTREM2タンパク質に結合した後、NSMの1つ以上の活性または機能を誘導する(例えば、増加させる)ことができる。アゴニスト抗体は、NSMに結合し、NSMを活性化し、細胞の増殖の変化を引き起こすか、または抗原提示能力を改変し得る。アゴニスト抗体は、NSMに結合し、NSMを活性化し、改変された細胞成長またはアポトーシスをもたらす細胞内シグナル伝達経路を誘発し得る。
【0196】
いくつかの実施形態では、抗体は、アンタゴニスト抗体である。アンタゴニスト抗体は、抗体が細胞上で発現されるTREM2タンパク質に結合した後、NSMの1つ以上の活性または機能を遮断する(例えば、減少させる)ことができる。例えば、アンタゴニスト抗体は、1つ以上のNSMタンパク質に結合し、1つ以上のNSMタンパク質に結合するリガンドを遮断し、細胞の分化及び増殖を防止し、または抗原提示能力を改変し得る。アンタゴニスト抗体は、そのリガンドによってTREM2タンパク質に結合し、その活性化を防止し、細胞の成長及び生存に寄与する細胞内シグナル伝達経路を改変し得る。
【0197】
いくつかの実施形態では、抗体は、枯渇抗体である。枯渇抗体は、分子の他の免疫細胞との抗体の相互作用を介して接触すると非刺激性骨髄細胞を死滅させるものである。例えば、抗体は、TREM2タンパク質を有する細胞に結合したとき、補体タンパク質と係合し、補体依存性細胞溶解を誘導することができる。抗体はまた、TREM2タンパク質を有する細胞に結合したとき、Fc受容体を有する隣接細胞を誘発して、抗体依存性細胞傷害性(ADCC)によってそれらを死滅させることができる。
【0198】
いくつかの実施形態では、抗体は、中和抗体であり、抗体は、NSMの1つ以上の生物学的活性を中和する。いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質は、非刺激性骨髄細胞の表面上で発現され、抗体は、TREM2タンパク質の細胞外ドメインを認識する。
【0199】
いくつかの実施形態では、抗体は、NSMに対して選択的である(TREM2に優先的に結合する)。ある特定の実施形態では、NSMに選択的に結合する抗体は、0.0001nM~1μMの範囲の解離定数(Kd)を有する。ある特定の実施形態では、抗体は、異なる種由来のタンパク質にわたって保存されているTREM2タンパク質上のエピトープに特異的に結合する。別の実施形態では、選択的結合は、排他的結合を含むが、必須ではない。
【0200】
一実施形態では、その標的に結合した抗TREM2抗体は、それが結合した非刺激性骨髄細胞のインビボでの枯渇を引き起こす原因となる。いくつかの実施形態では、クラスター化された抗体によって誘導されるエフェクタータンパク質は、炎症性サイトカインの放出、抗原産生の調節、エンドサイトーシス、または細胞死滅を含む様々な応答を誘発し得る。一実施形態では、抗体は、インビボで補体を動員及び活性化するか、または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)を媒介するか、またはインビボでFc受容体に結合することによって食作用を媒介することが可能である。抗体はまた、結合時に非刺激性骨髄細胞のアポトーシスまたは壊死を誘導することによって、非刺激性骨髄細胞を枯渇させ得る。
【0201】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、インビトロであり、a)非刺激性骨髄細胞の死滅によって、b)非刺激性骨髄細胞の磁気ビーズ枯渇によって、またはc)非刺激性骨髄細胞の蛍光活性化細胞選別(FACS)選別によって、達成される。
【0202】
いくつかの実施形態では、抗体は、エフェクター分子に結合されるか、またはエフェクター分子にコンジュゲートされる。
【0203】
ある特定の実施形態では、抗体は、薬物にコンジュゲートされる。
【0204】
非刺激性骨髄細胞(NSM)
抗TREM2抗体の使用を含む、非刺激性骨髄細胞(NSM)を無効化及び/または検出するための方法及び組成物が本明細書で提供される。また、NSMタンパク質を発現する非刺激性骨髄細胞を標的化及び/または検出するための方法及び組成物も本明細書で提供される。
【0205】
また、ヒトNSMタンパク質の非ヒトホモログに向けられた抗体を、その非ヒト個体において使用することを含む、非刺激性骨髄細胞を無効化し、及び/または検出するための方法及び組成物も本明細書に提供される。
【0206】
本明細書で使用される場合、非刺激性骨髄細胞は、免疫応答を刺激するのに十分に有効ではない(例えば、刺激性骨髄細胞と比較して免疫応答を刺激するのに有効ではない)骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞と比較して、T細胞への抗原の提示にそれほど効果的ではないか、または抗原特異的T細胞応答の刺激にそれほど効果的ではない。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞と比較して、T細胞への抗原の取り込み、処理、及び/または提示能力の低下を示すことができる。非刺激性骨髄細胞は、細胞傷害性Tリンパ球を再プライミングする能力が低下しているか、または全くないか、または場合によっては効果的な細胞死滅を刺激することができない場合がある。非刺激性骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞と比較して、CD80、CD86、MHCI、及びMHCIIを含むがこれらに限定されない、抗原プロセシング、抗原提示及び/または抗原共刺激に関与する遺伝子及び細胞表面マーカーのより低い発現を示し得る。
【0207】
非刺激性骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞と比較した場合、TAP1、TAP2、PSMB8、PSMB9、TAPBP、PSME2、CD24a、CD274、BTLA、CD40、CD244、ICOSL、ICAM1、TIM3、PDL2、RANK、FLT3、CSF2RB、CSF2RB2、CSF2RA、IL12b、XCR1、CCR7、CCR2、CCL22、CXCL9、及びCCL5のうちのいずれか1つ以上を含むがこれらに限定されない、交差提示、共刺激、及び/または刺激性サイトカインに関連する遺伝子のより低い発現、ならびに抗炎症性サイトカインIL-10の増加した発現を示し得る。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、分化及び生存のために転写因子IRF4及びサイトカインGM-CSFまたはCSF-1に依存している。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、血管内皮成長因子(VEGF)及び一酸化窒素シンターゼ(NOS)を分泌することによって血管新生に寄与し、上皮成長因子(EGF)を分泌することによって細胞成長を補助することができる。
【0208】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、腫瘍関連マクロファージ(TAM)、好中球、単球、または樹状細胞(DC)である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、樹状細胞(DC)ではない。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、好中球である。
【0209】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞及び刺激性骨髄細胞は、それらが発現するマーカー、またはそれらが選択的に発現するマーカーに基づいて識別される。細胞表面マーカーの発現は、「+」または「陽性」として説明することができる。細胞表面マーカーの不在は、「-」または「陰性」として説明することができる。細胞表面マーカーの発現は、「高」(高レベルのメイカー(maker)を発現する細胞)または「低」(低レベルのマーカーを発現する細胞)としてさらに説明することができ、これは、細胞表面上の各マーカーの相対的発現を示す。マーカーのレベルは、当該技術分野で既知の様々な方法、例えば、免疫染色及びFACS分析、またはゲル電気泳動及びウェスタンブロッティングによって決定され得る。
【0210】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、樹状細胞(DC)である。いくつかの実施形態では、樹状細胞は、棘状または樹状の形態によって識別することができる。一実施形態では、非刺激性樹状細胞は、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA1+(DC1細胞とも称される)である。一実施形態では、非刺激性樹状細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA3+(DC2細胞とも称される)ではない。一実施形態では、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA3+である樹状細胞は、刺激性骨髄細胞である。
【0211】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、非刺激性マクロファージである。いくつかの実施形態では、例えば、ヒトにおいて、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+である。いくつかの実施形態では、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+である。いくつかの実施形態では、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11c+である。いくつかの実施形態では、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-である。いくつかの実施形態では、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+である。いくつかの実施形態では、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11c+である。いくつかの実施形態では、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+、及びCD11c+である。いくつかの実施形態では、非刺激性マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+、及びCD11c+である。
【0212】
いくつかの実施形態では、本発明の方法及び組成物は、他の哺乳動物、例えばマウスにおいてTAM及びDCを標的とするのに有用である。そのような実施形態では、マウスTAM及びDCをTREM2抗体と接触させる。一実施形態では、例えば、マウスにおいて、マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b高、及びCD11c低(TAM1とも称される)である。一実施形態では、例えば、マウスにおいて、マクロファージは、少なくともCD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b低、及びCD11c高(TAM2とも称される)である。「CD11b高マクロファージ」という用語は、本明細書で使用される場合、高レベルのCD11bを発現するマクロファージに関する。「CD11b低マクロファージ」という用語は、本明細書で使用される場合、CD11b高マクロファージのレベルよりも実質的に低いCD11bのレベルをその表面上で発現するマクロファージに関する。「CD11c高マクロファージ」という用語は、本明細書で使用される場合、高レベルのCD11cを発現するマクロファージに関する。「CD11c低マクロファージ」という用語は、本明細書で使用される場合、CD11c高マクロファージのレベルよりも実質的に低いCD11cのレベルをその表面上で発現するマクロファージに関する。
【0213】
いくつかの実施形態では、本発明の非刺激性骨髄細胞は、TAM及びDC1細胞のうちの1つ以上を含む。
【0214】
いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、本発明の非刺激性骨髄細胞は、TAM1、TAM2、及びDC1細胞のうちの1つ以上を含む。そのような実施形態では、本発明の非刺激性骨髄細胞を、TREM2抗体と接触させる。
【0215】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、骨髄細胞であり、腫瘍内である。
【0216】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞及び非刺激性骨髄細胞を含む免疫細胞の集団内にある。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、非刺激性骨髄細胞のみを含む免疫細胞の集団内にある。本発明の免疫細胞の集団は、純粋であり、均質であり、不均一であり、様々な供給源(例えば、疾患組織、健康な組織、細胞バンク)に由来し、一次細胞培養物中で維持し、不死化培養物中で維持し、及び/またはエクスビボ培養物中で維持し得る。
【0217】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、腫瘍関連マクロファージである。
【0218】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、樹状細胞である。
【0219】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA1+である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA1+である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA1+である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA1+である細胞から本質的になる。
【0220】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-である細胞から本質的になる。
【0221】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+である細胞から本質的になる。
【0222】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11c+である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11c+である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11c+である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11c+である細胞から本質的になる。
【0223】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、及びCD11c+である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、及びCD11c+である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、及びCD11c+である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、及びCD11c+である細胞から本質的になる。
【0224】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+である細胞から本質的になる。
【0225】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+、及びCD11c+である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+、及びCD11c+である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+、及びCD11c+である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b+、及びCD11c+である細胞から本質的になる。
【0226】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+、及びCD11c+である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+、及びCD11c+である細胞を含む。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+、及びCD11c+である細胞からなる。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、BDCA3-、CD11b+、及びCD11c+である細胞から本質的になる。
【0227】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA3+ではない。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA3+ではない細胞を含む。
【0228】
いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b高、及びCD11c低である。いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b高、及びCD11c低である細胞を含む。いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b高、及びCD11c低である細胞からなる。いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b高、及びCD11c低である細胞から本質的になる。そのような実施形態では、非刺激性マウス骨髄細胞を、TREM2抗体と接触させる。
【0229】
いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b低、及びCD11c高である。いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b低、及びCD11c高である細胞を含む。いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b低、及びCD11c高である細胞からなる。いくつかの実施形態では、例えば、マウスにおいて、非刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14+、CD11b低、及びCD11c高である細胞から本質的になる。そのような実施形態では、非刺激性マウス骨髄細胞を、TREM2抗体と接触させる。
【0230】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、線維性組織内にある。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、肝臓組織内にある。
【0231】
いくつかの実施形態では、免疫細胞の集団は、線維性組織内にある。いくつかの実施形態では、免疫細胞の集団は、肝臓組織内にある。
【0232】
いくつかの実施形態では、非刺激性細胞及び刺激性骨髄細胞は、線維性組織内にある。いくつかの実施形態では、非刺激性細胞及び刺激性骨髄細胞は、肝臓組織内にある。
【0233】
いくつかの実施形態では、生体試料は、非刺激性骨髄細胞及び刺激性骨髄細胞を含む免疫細胞の集団を含む。
【0234】
NSM細胞は、腫瘍組織中に存在し、それらのNSM細胞マーカーの発現によって他の細胞型から識別され得るDC1、TAM1、及びTAM2細胞を総称して指すことができる。例えば、SDCよりもNSM細胞においてより高い存在量で発現または翻訳される遺伝子及び関連タンパク質は、NSMマーカーとして機能し得る。例示的なNSMマーカーは、CD11bである。追加の例示的なNSMマーカーを表Aに列挙する。NSM細胞は、その細胞表面上でTREM2、MS4A7、C5AR1、LYVE1、ABCC3、LILRB4、MRC1/CD206、SIGLEC1、STAB1、TMEM37、MERTK、及びTMEM119を発現することができる。いくつかの態様では、NSM細胞は、KIT、CCR7、BATF3、FLT3、ZBTB46、IRF8、BTLA、MYCL1、CLEC9A、BDCA3、及びXCR1のうちの少なくとも1つを発現しない。
【0235】
一実施形態では、NSM細胞は、表Aに列挙されるNSMマーカー遺伝子の1つ以上を発現する。別の実施形態では、NSM細胞は、表Dに列挙されるNSMマーカーのうちの2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18個以上を発現する。別の実施形態では、NSM細胞は、表Dに列挙されるNSMマーカーの大部分またはすべてを発現する。別の実施形態では、NSM細胞は、MRC1、MS4A7、C1QC、APOE、C1QB、C1QA、及びC5AR1を発現するものとして特定される。
【0236】
【0237】
刺激性骨髄細胞
本明細書で使用される場合、刺激性骨髄細胞(特定の態様ではSDCとも呼ばれる)は、免疫応答を刺激するのに有効である(例えば、非刺激性骨髄細胞と比較して免疫応答を刺激するのにより有効である)骨髄細胞である。いくつかの実施形態では、刺激性骨髄細胞は、非刺激性骨髄細胞と比較して、T細胞への抗原の提示に有効であるか、または特定のT細胞応答の刺激に有効である。いくつかの実施形態では、刺激性骨髄細胞は、非刺激性骨髄細胞と比較して、T細胞への抗原の取り込み、処理、及び/または提示能力の増加を示すことができる。刺激性骨髄細胞は、非刺激性骨髄細胞と比較して、細胞傷害性Tリンパ球を再プライミングする能力の増加を有するか、または場合によっては、効果的な細胞死滅を刺激することができる。刺激性骨髄細胞は、刺激性骨髄細胞と比較して、CD80、CD86、MHCI、及びMHCIIを含むがこれらに限定されない、抗原プロセシング、抗原提示及び/または抗原共刺激に関与する遺伝子及び細胞表面マーカーのより高い発現を示し得る。
【0238】
例示的な刺激性骨髄細胞マーカーを表Aに列挙する。例えば、ヒトSDCにおいて、Xcr1、Clec9a、及びBDCA3(CD141)の発現は、SDC同一性のマーカーである。マウスにおいて、CD103もまた、SDC同一性の強力なマーカーとして使用することができるが、これはヒトSDCでは発現されないことに留意されたい。
【0239】
一実施形態では、SDCは、樹状細胞同一性を有し、表Aに列挙されるSDCマーカーのうちの1つ以上も発現する骨髄細胞である。別の実施形態では、SDCは、樹状細胞同一性を有し、表Aに列挙されるSDCマーカーのうちの2、3、4、5、6、7、8、9個、またはすべても発現する骨髄細胞である。別の実施形態では、SDCは、BDCA3、KIT、CCR7、BATF3、FLT3、ZBTB46、IRF8、BTLA、MYCL1、XCR1及びCLEC9Aを発現する骨髄樹状細胞として特定される。SDCの細胞は、KIT、CCR7、BATF3、FLT3、ZBTB46、IRF8、BTLA、MYCL1、CLEC9A、BDCA3、及びXCR1のうちの少なくとも1つを発現することができる。いくつかの実施形態では、SDCは、その細胞表面上でTREM2、MS4A7、C5AR1、LYVE1、ABCC3、LILRB4、MRC1/CD206、SIGLEC1、STAB1、TMEM37、MERTK、及び/またはTMEM119を実質的に発現しない。いくつかの実施形態では、SDCは、C5AR1、LYVE1、ABCC3、MRC1、SIGLEC1、STAB1、C1QB、C1QA、TMEM37、MERTK、C1QC、TMEM119、MS4A7、APOE、CYP4F18、TREM2、TLR7、及び/またはLILRB4を実質的に発現しない。フローサイトメトリー及びPCRは、他の技術分野で認識されているアッセイの中でも、本明細書に開示されるマーカーの発現を評価するために使用することができる。
【0240】
刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、CD11c+、及びBDCA3+であり得る。刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、及びBDCA3+であり得る。刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD14-、及びBDCA3+であり得る。刺激性骨髄細胞は、CD45+、HLA-DR+、CD11c+、及びBDCA3+であり得る。
【0241】
タンパク質、ヌクレオチド、及びホモログ
NSMタンパク質を発現する非刺激性ヒト骨髄細胞を無効化及び/または検出するための方法及び組成物が本明細書で提供される。いくつかの実施形態では、本発明は、NSMタンパク質ホモログを発現する非ヒト哺乳動物細胞由来の非刺激性骨髄細胞の無効化及び/または検出を対象とする。例えば、マウス中のNSMタンパク質は、そのヒトホモログと同等の制限された発現パターンを発現することができる。したがって、一実施形態では、NSMタンパク質を発現する非刺激性マウス骨髄細胞を無効化及び/または検出するための方法及び組成物が本明細書で提供される。また、本明細書では、NSMタンパク質のホモログを発現する任意の個体からの非刺激性細胞を、NSMタンパク質のホモログと同様の発現パターンで無効化及び/または検出するための同様の方法及び組成物も提供され、これらの細胞は、NSMタンパク質のものと同等の発現パターンを示す。
【0242】
NSMタンパク質またはヌクレオチドは、C5AR1、LYVE1、ABCC3、MRC1、SIGLEC1、STAB1、C1QB、C1QA、TMEM37、MERTK、C1QC、TMEM119、MS4A7、APOE、CYP4F18、TREM2、TLR7、及びLILRB4、ならびにそれらのホモログのうちの少なくとも1つ以上を含み得る。SDCタンパク質またはヌクレオチドは、KIT、CCR7、BATF3、FLT3、ZBTB46、IRF8、BTLA、MYCL1、CLEC9A、BDCA3、及びXCR1、ならびにそれらのホモログのうちの少なくとも1つ以上を含み得る。細胞表面NSMタンパク質は、TREM2、MS4A7、C5AR1、LYVE1、ABCC3、LILRB4、MRC1/CD206、SIGLEC1、STAB1、TMEM37、MERTK、及びTMEM119のうちの少なくとも1つ以上を含み得る。細胞表面NSMタンパク質は、単独で、または組み合わせて、1つ以上の抗TREM2抗体によって標的化することができる。一般に、NSMは、NSMタンパク質またはヌクレオチドに対して陽性であり、SDCタンパク質またはヌクレオチドに対して陰性である。逆に、SDCは、一般に、SDCタンパク質またはヌクレオチドに対して陽性であり、NSMタンパク質またはヌクレオチドに対して陰性である。
【0243】
本明細書に記載の抗体は、少なくとも1つのポリペプチドを含むが、典型的には、HC/LCの二量体、すなわち4つのポリペプチドを含む。本明細書に記載のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも記載される。抗体は、典型的には、単離される。
【0244】
本明細書で使用される場合、「単離された」とは、その天然細胞培養環境の構成要素から特定され、分離及び/または回収されている薬剤(例えば、ポリペプチドまたはポリヌクレオチド)を意味する。その天然環境の汚染構成要素は、抗体の診断または治療用途を妨げる材料であり、酵素、ホルモン、及び他のタンパク質性または非タンパク質性溶質を含み得る。単離されたとはまた、例えば、ヒトの介入によって合成的に生成されている薬剤を指す。
【0245】
「ポリペプチド」、「ペプチド」、及び「タンパク質」という用語は、アミノ酸残基のポリマーを指すために本明細書で互換的に使用される。すなわち、ポリペプチドに関する説明は、ペプチドの説明及びタンパク質の説明に等しく適用され、逆もまた同様である。これらの用語は、天然に存在するアミノ酸ポリマー、及び1つ以上のアミノ酸残基が非天然にコードされたアミノ酸であるアミノ酸ポリマーに適用される。本明細書で使用される場合、この用語は、完全長タンパク質を含む任意の長さのアミノ酸鎖を包含し、アミノ酸残基は、共有結合ペプチド結合によって連結される。
【0246】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸及び非天然に存在するアミノ酸、ならびに天然に存在するアミノ酸と同様の様式で機能するアミノ酸類似体及びアミノ酸模倣物を指す。天然にコードされるアミノ酸は、20個の一般的なアミノ酸(アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プラリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシン、及びバリン)ならびにピロリシン及びセレノシステインである。アミノ酸類似体とは、天然に存在するアミノ酸と同じ基本化学構造を有する化合物、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、及びホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、メチオニンメチルスルホニウムなどのR基に結合する炭素を指す。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸への言及としては、例えば、天然に存在するタンパク質を構成するL-アミノ酸、D-アミノ酸、アミノ酸バリアント及び誘導体などの化学修飾アミノ酸、β-アラニン、オルニチンなどの天然に存在するタンパク質を構成しないアミノ酸、ならびにアミノ酸の特徴であることが当該技術分野で既知の特性を有する化学合成化合物が挙げられる。天然に存在しないアミノ酸の例としては、α-メチルアミノ酸(例えば、α-メチルアラニン)、D-アミノ酸、ヒスチジン様アミノ酸(例えば、2-アミノ-ヒスチジン、β-ヒドロキシ-ヒスチジン、ホモヒスチジン)、側鎖に余分なメチレンを有するアミノ酸(「ホモ」アミノ酸)、及び側鎖のカルボン酸官能基がスルホン酸基(例えば、システイン酸)で置き換えられているアミノ酸が挙げられるが、これらに限定されない。合成の天然に存在しないアミノ酸、置換アミノ酸、または1つ以上のD-アミノ酸を含む、天然に存在しないアミノ酸を本発明のタンパク質に組み込むことは、多くの異なる方式で有利であり得る。D-アミノ酸含有ペプチドなどは、L-アミノ酸含有対応物と比較して、インビトロまたはインビボで増加した安定性を示す。したがって、D-アミノ酸を組み込んだペプチドなどの構築は、より大きい細胞内安定性が所望される場合または必要とされる場合に特に有用であり得る。より具体的には、D-ペプチドなどは、内因性ペプチダーゼ及びプロテアーゼに耐性があり、それによって、そのような特性が望ましい場合に、分子の改善されたバイオアベイラビリティ、及びインビボでの延長された寿命を提供する。加えて、D-ペプチドなどは、Tヘルパー細胞への主要な組織適合性複合体クラスII制限された提示のために効率的に処理することができず、したがって、全生物において体液性免疫応答を誘導する可能性が低い。
【0247】
アミノ酸は、本明細書では、一般に知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionによって推奨された1文字の記号のいずれかによって称され得る。ヌクレオチドも同様に、一般に認められた1文字のコードによって称され得る。
【0248】
また、本発明には、抗体のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドも含まれる。「ポリヌクレオチド」または「ヌクレオチド配列」という用語は、2つ以上のヌクレオチド分子の連続した伸長部を示すことが意図される。ヌクレオチド配列は、ゲノム、cDNA、RNA、半合成もしくは合成起源、またはそれらの任意の組み合わせのものであり得る。
【0249】
「核酸」という用語は、一本鎖または二本鎖のいずれかの形態のデオキシリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、リボヌクレオシド、またはリボヌクレオチド、及びそれらのポリマーを指す。特に限定されない限り、この用語は、参照核酸と同様の結合特性を有し、天然に存在するヌクレオチドと同様の様式で代謝される天然ヌクレオチドの既知の類似体を含む核酸を包含する。特に限定されない限り、この用語はまた、PNA(ペプチド核酸)、アンチセンス技術で使用されるDNAの類似体(ホスホロチオエート、ホスホロアミデートなど)を含むオリゴヌクレオチド類似体を指す。別段の指示がない限り、特定の核酸配列はまた、明示的に示される配列と同様に、その保存的に改変されたバリアント(縮退コドン置換を含むがこれらに限定されない)及び相補的配列を暗黙的に包含する。具体的には、縮重コドン置換は、1つ以上の選択された(またはすべての)コドンの第3の位置が混合塩基及び/またはデオキシイノシン残基で置換されている配列を生成することによって達成され得る(Batzer et al.,Nucleic Acid Res.19:5081(1991)、Ohtsuka et al.,J.Biol.Chem.260:2605-2608(1985)、Rossolini et al.,Mol.Cell.Probes 8:91-98(1994))。
【0250】
「保存的に修飾されたバリアント」は、アミノ酸及び核酸配列の両方に適用される。特定の核酸配列に関して、「保存的に修飾されたバリアント」は、同一または本質的に同一のアミノ酸配列をコードするか、または核酸が本質的に同一の配列にアミノ酸配列をコードしない核酸を指す。遺伝暗号の縮退のために、多数の機能的に同一の核酸が任意の所与のタンパク質をコードする。例えば、コドンGCA、GCC、GCG及びGCUはすべて、アミノ酸アラニンをコードする。したがって、アラニンがコドンによって指定されるすべての位置において、コドンは、コードされたポリペプチドを改変することなく、記載される対応するコドンのいずれかに改変され得る。そのような核酸バリエーションは、保存的に修飾されたバリエーションの1つの種である「サイレントバリエーション」である。ポリペプチドをコードする本明細書のすべての核酸配列はまた、核酸のすべての可能なサイレント変異を説明する。当業者であれば、核酸中の各コドン(通常はメチオニンの唯一のコドンであるAUG、及び通常はトリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)は、機能的に同一の分子をもたらすように修飾され得ることを認識するであろう。したがって、ポリペプチドをコードする核酸の各サイレント変異は、記載されている各配列において暗黙的である。
【0251】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一のアミノ酸または小さい割合のアミノ酸を改変、付加または欠失させる核酸、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質配列への個々の置換、欠失、または付加が、「保存的に改変されたバリアント」であり、改変が、アミノ酸の欠失、アミノ酸の付加、またはアミノ酸の化学的に類似したアミノ酸による置換をもたらすことを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者に知られている。このような保存的に修飾されたバリアントは、本明細書に記載の多型バリアント、種間ホモログ、及び対立遺伝子に加えてであり、また、これらを除外しない。
【0252】
機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当業者に知られている。以下の8つの群は、各々、互いに保存的な置換であるアミノ酸を含有する。1)アラニン(A)、グリシン(G)、2)アスパラギン酸(D)、グルタミン酸(E)、3)アスパラギン(N)、グルタミン(Q)、4)アルギニン(R)、リジン(K)、5)イソロイシン(I)、ロイシン(L)、メチオニン(M)、バリン(V)、6)フェニルアラニン(F)、チロシン(Y)、トリプトファン(W)、7)セリン(S)、スレオニン(T)、及び[0139]8)システイン(C)、メチオニン(M)(例えば、Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W H Freeman & Co.;2nd edition(December 1993を参照されたい)。
【0253】
「同一の」または「同一性」パーセントという用語は、2つ以上の核酸配列またはポリペプチド配列に関して、同じである2つ以上の配列またはサブ配列を指す。配列は、以下の配列比較アルゴリズム(または当業者に利用可能な他のアルゴリズム)のうちの1つを使用して、または手動アラインメント及び目視検査によって測定されるように、比較ウィンドウまたは指定された領域にわたって、最大一致について比較され、アラインメントされたときに、同じ(すなわち、指定された領域にわたる約60%の同一性、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、または約95%の同一性)であるアミノ酸残基またはヌクレオチドの割合を有する場合、「実質的に同一」である。アミノ酸配列同一性パーセントを決定する目的のためのアラインメントは、例えば、BLAST、BLAST-2、ALIGN、MEGALIGN(DNASTAR)、CLUSTALW、CLUSTAL OMEGA、またはMUSCLEソフトウェアなどの公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを使用して、当該技術分野の技術の範囲内にある様々な方式で達成することができる。この定義はまた、試験配列の相補体を指す。同一性は、少なくとも約50アミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、または75~100アミノ酸もしくはヌクレオチド長の領域にわたって、または特定されない場合、ポリヌクレオチドもしくはポリペプチドの配列全体にわたって存在し得る。ヒト以外の種由来のホモログを含む本発明のポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、本明細書に記載のポリヌクレオチド配列またはその断片を有する標識されたプローブを用いたストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下でライブラリをスクリーニングし、完全長cDNA及び上述のポリヌクレオチド配列を含有するゲノムクローンを単離するステップを含む工程によって得られ得る。かかるハイブリダイゼーション技術は、当業者に周知である。
【0254】
配列比較のために、典型的には、1つの配列が参照配列として機能し、これと試験配列を比較する。配列比較アルゴリズムを使用する場合、試験配列及び参照配列をコンピュータに入力し、必要に応じてサブシーケンス座標を指定し、配列アルゴリズムプログラムパラメータを指定する。デフォルトのプログラムパラメータを使用することができ、または代替的なパラメータを指定することができる。その後、配列比較アルゴリズムは、プログラムパラメータに基づいて、参照配列に対する試験配列の配列同一性パーセントを算出する。
【0255】
「比較ウィンドウ」は、本明細書で使用される場合、2つの配列が最適にアラインメントされた後に、配列が同じ数の連続位置の参照配列と比較され得る、20~600、通常は約50~約200、より通常は約100~約150からなる群から選択される連続位置の数のうちのいずれか1つのセグメントへの参照を含む。比較のための配列のアラインメントの方法は、当業者に既知である。比較のための配列の最適なアラインメントは、限定されないが、Smith and Waterman(1970)Adv.Appl.Math.2:482cの局所的な相同性アルゴリズムによって、Needleman and Wunsch(1970)J.Mol.Biol.48:443の相同性アラインメントアルゴリズムによって、Pearson and Lipman(1988)Proc.Nat’l.Acad.Sci.USA 85:2444の類似性方法のサーチによって、これらのアルゴリズム(Wisconsin Genetics Software Package,Genetics Computer Group,575 Science Dr.,Madison,Wis.におけるGAP、BESTFIT、FASTA、及びTFASTA)のコンピュータによる実装によって、または手動のアラインメント及び目視検査(例えば、Ausubel et al.,Current Protocols in Molecular Biology(1995 supplement)を参照されたい)によって、行うことができる。
【0256】
配列同一性パーセント及び配列類似性を決定するのに好適なアルゴリズムの一例は、BLAST及びBLAST 2.0アルゴリズムであり、それぞれ、Altschul et al.(1997)Nuc.Acids Res.25:3389-3402、及びAltschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403-410に記載されている。BLAST分析を実行するためのソフトウェアは、World Wide Webのncbi.nlm.nih.gov.において利用可能なNational Center for Biotechnology Informationによって公的に利用可能である。BLASTアルゴリズムパラメータW、T、及びXは、アラインメントの感度及び速度を決定する。BLASTNプログラム(ヌクレオチド配列用)は、デフォルトとして、11のワード長(W)、期待値(E)または10、M=5、N=-4及び両方の鎖の比較を使用する。アミノ酸配列については、BLASTPプログラムは、3のワード長、及び10の期待値(E)、及びBLOSUM62スコアリングマトリックス(Henikoff and Henikoff(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:10915を参照されたい)50のアラインメント(B)、10の期待値(E)、M=5、N=-4、及び両方の鎖の比較を使用する。BLASTアルゴリズムは、典型的には、「低複雑性(low complexity)」フィルターをオフにして実行される。
【0257】
BLASTアルゴリズムはまた、2つの配列間の類似性の統計分析を行う(例えば、Karlin and Altschul(1993)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:5873-5787を参照されたい)。BLASTアルゴリズムが提供する類似性の1つの測定は、最小合計確率(P(N))であり、これは、2つのヌクレオチドまたはアミノ酸配列の間の一致が偶然に起こる確率の指標を提供する。例えば、核酸は、試験核酸と参照核酸との比較における最小合計確率が約0.2未満、または約0.01未満、または約0.001未満である場合、参照配列と類似であるとみなされる。
【0258】
「~に選択的に(または特異的に)ハイブリダイゼーションする」という語句は、その配列が複合体混合物(全細胞またはライブラリDNAまたはRNAを含むが、これらに限定されない)中に存在する場合、ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件下で、分子が特定のヌクレオチド配列にのみ結合するか、二本鎖化するか、またはハイブリダイゼーションすることを指す。
【0259】
「ストリンジェントなハイブリダイゼーション条件」という語句は、当該技術分野で既知であるように、低いイオン強度及び高温の条件下でのDNA、RNA、または他の核酸の配列、またはそれらの組み合わせのハイブリダイゼーションを指す。典型的には、ストリンジェントな条件下で、プローブは、核酸(限定されないが、全細胞またはライブラリDNAまたはRNAを含む)の複合体混合物中でその標的子配列にハイブリダイズするが、複合体混合物中の他の配列にはハイブリダイズしない。ストリンジェントな条件は、配列依存性であり、異なる環境で異なることになる。より長い配列は、より高い温度で特異的にハイブリダイゼーションする。核酸のハイブリダイゼーションに関する広範なガイドは、Tijssen,Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology--Hybridization with Nucleic Probes,“Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid assays”(1993)に見出される。
【0260】
本明細書で使用される場合、「操作する、操作された、操作すること」という用語は、ペプチド骨格の任意の操作、または天然に存在するもしくは組換えポリペプチドもしくはその断片の翻訳後修飾を含むとみなされる。操作することには、アミノ酸配列、グリコシル化パターン、または個々のアミノ酸の側鎖基の改変、ならびにこれらのアプローチの組み合わせが含まれる。操作されたタンパク質は、標準的な分子生物学的技術によって発現され、産生される。
【0261】
「単離された核酸分子またはポリヌクレオチド」とは、その天然環境から取り出されている核酸分子、DNAまたはRNAを意図する。例えば、ベクターに含まれたポリペプチドをコードする組換えポリヌクレオチドは、単離されたものとみなされる。単離されたポリヌクレオチドのさらなる例としては、異種宿主細胞に維持された組換えポリヌクレオチド、または溶液中で精製された(部分的もしくは実質的に)ポリヌクレオチドが挙げられる。単離されたポリヌクレオチドは、通常、ポリヌクレオチド分子を含む細胞に含まれるポリヌクレオチド分子を含むが、ポリヌクレオチド分子は、染色体外に、またはその天然の染色体位置とは異なる染色体位置に存在する。単離されたRNA分子としては、インビボまたはインビトロRNA転写産物、及び陽性及び陰性の鎖形態、ならびに二本鎖形態が挙げられる。本明細書に記載の単離されたポリヌクレオチドまたは核酸は、例えば、PCRまたは化学合成を介して合成的に生成されるかかる分子をさらに含む。加えて、ある特定の実施形態では、ポリヌクレオチドまたは核酸は、プロモーター、リボソーム結合部位、または転写終結因子などの調節エレメントを含む。
【0262】
「ポリメラーゼ連鎖反応」または「PCR」という用語は、一般に、例えば、米国特許第4,683,195号に記載されるように、インビトロで所望のヌクレオチド配列を増幅するための方法を指す。一般に、PCR方法は、テンプレート核酸に優先的にハイブリダイゼーションすることができるオリゴヌクレオチドプライマーを使用して、プライマー伸長合成の繰り返しサイクルを伴う。
【0263】
本発明の参照ヌクレオチド配列に対して、少なくとも、例えば、95%「同一」のヌクレオチド配列を有する核酸またはポリヌクレオチドとは、ポリヌクレオチド配列が参照ヌクレオチド配列の100個のヌクレオチドごとに最大5個の点変異を含み得ることを除いて、ポリヌクレオチドのヌクレオチド配列が参照配列に対して同一であることが意図される。言い換えれば、参照ヌクレオチド配列に対して少なくとも95%同一のヌクレオチド配列を有するポリヌクレオチドを得るために、参照配列中のヌクレオチドの最大5%が欠失しているか、または別のヌクレオチドで置換されてもよく、または参照配列中の全ヌクレオチドの最大5%の数のヌクレオチドが参照配列に挿入されてもよい。参照配列のこれらの変化は、参照ヌクレオチド配列の5’もしくは3’末端位置、またはそれらの末端位置の間の任意の場所で生じてもよく、参照配列内の残基の間に個々に散在するか、または参照配列内の1つ以上の連続した基の中にかのいずれかで散在する。実用的な問題として、任意の特定のポリヌクレオチド配列が、本発明のヌクレオチド配列に対して少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、または99%同一であるかどうかは、ポリペプチドについて上で考察されたもの(例えば、ALIGN-2)などの既知のコンピュータプログラムを使用して、慣例的に決定することができる。
【0264】
ポリペプチドの誘導体、またはバリアントは、その誘導体またはバリアントのアミノ酸配列が、元のペプチドからの100個のアミノ酸配列と少なくとも50%の同一性を有する場合、ペプチドと「相同性」を共有するか、または「相同性である」と言われる。ある特定の実施形態では、誘導体またはバリアントは、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチドまたはペプチドの断片のいずれかと少なくとも75%同じである。ある特定の実施形態では、誘導体またはバリアントは、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチドまたはペプチドの断片のいずれかと少なくとも85%同じである。ある特定の実施形態では、誘導体のアミノ酸配列は、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチドまたはペプチドの断片のいずれかと少なくとも90%同じである。いくつかの実施形態では、誘導体のアミノ酸配列は、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチドまたはペプチドの断片のいずれかと少なくとも95%同じである。ある特定の実施形態では、誘導体またはバリアントは、誘導体と同じ数のアミノ酸残基を有するペプチドまたはペプチドの断片のいずれかと少なくとも99%同じである。
【0265】
「修飾された」という用語は、本明細書で使用される場合、ポリペプチドの長さ、アミノ酸配列、化学構造、共翻訳修飾、またはポリペプチドの翻訳後修飾の変化など、所与のポリペプチドに加えられた任意の変更を指す。「(修飾された)」という形態の用語は、考察さられているポリペプチドが任意で修飾されていること、すなわち、考察中のポリペプチドが修飾されていてもよく、または修飾されていなくてもよいことを意味する。
【0266】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、本明細書に開示される表(複数可)または受託番号(複数可)に示される関連する(例えば、ポリペプチド及び/または抗体)アミノ酸配列またはその断片に対して少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、本明細書に開示される単離された抗体またはタンパク質は、本明細書に開示される表(複数可)または受託番号(複数可)に示される関連するヌクレオチド配列またはその断片に対して少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であるポリヌクレオチドによってコードされるアミノ酸配列を含む。いくつかの態様では、ヌクレオチド配列は、本明細書に開示される表(複数可)または受託番号(複数可)に示されるものなど、本明細書に開示されるヌクレオチド配列に対して少なくとも80、85、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、または100%同一であるヌクレオチド配列を含む。
【0267】
薬学的組成物
本出願は、本明細書に記載の抗体のうちのいずれか1つ以上を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに含む薬学的組成物を含む、抗体を含む組成物を提供する。いくつかの実施形態では、組成物は、滅菌である。薬学的組成物は、一般に、有効量の抗体を含む。
【0268】
これらの組成物は、本明細書に開示される抗体のうちの1つ以上に加えて、薬学的に許容される賦形剤、担体、緩衝液、安定剤、または当業者に周知の他の材料を含み得る。そのような材料は、非毒性でなければならず、活性成分の有効性を妨げてはならない。担体または他の材料の正確な性質は、投与経路、例えば、経口、静脈内、皮膚または皮下、鼻、筋肉内、腹腔内経路に依存し得る。
【0269】
ポリペプチド、抗体(例えば、抗TREM2抗体)、核酸、低分子、または個体に与えられる他の薬学的に有用な化合物であるかどうかにかかわらず、投与は、好ましくは、「治療有効量」または「予防有効量」(場合によっては、予防は療法とみなすことができるが)での投与であり、これは、個体に有益性を示すのに十分である。投与される実際の量、及び投与の速度及び時間経過は、治療されているタンパク質凝集疾患の性質及び重症度に依存するであろう。治療の処方、例えば、投薬量の決定などは、一般開業医及び他の医師の責任の範囲内であり、典型的には、治療される障害、個々の対象の状態、送達部位、投与方法、及び開業医に知られている他の要因を考慮に入れる。上述の技術及びプロトコルの例は、Remington’s Pharmaceutical Sciences,16th edition,Osol,A.(ed),1980に見出すことができる。
【0270】
組成物は、治療すべき状態に応じて、単独で、または他の治療と組み合わせて、同時にまたは逐次にかのいずれかで投与することができる。
【0271】
方法
調製方法
本明細書に記載の抗体は、例えば、米国特許第4,816,567号に記載されるように、組換え方法及び組成物を使用して産生することができる。
【0272】
一実施形態では、本明細書に記載される抗体をコードする単離された核酸が提供される。かかる核酸は、抗体のVLを含むアミノ酸配列及び/または抗体のVHを含むアミノ酸配列(例えば、抗体の軽鎖及び/または重鎖)、または単一ドメイン抗体のVHHを含むアミノ酸配列をコードし得る。さらなる実施形態では、かかる核酸を含む1つ以上のベクター(例えば、発現ベクター)が提供される。一実施形態では、核酸は、マルチシストロンベクターにおいて提供される。さらなる実施形態では、かかる核酸を含む宿主細胞が提供される。そのような一実施形態では、宿主細胞は、以下を含む(例えば、以下により、形質転換されている)。(1)抗体のVLを含むアミノ酸配列及び抗原結合ポリペプチド構築物のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含むベクター、または(2)抗原結合ポリペプチド構築物のVLを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第1のベクター、及び抗原結合ポリペプチド構築物のVHを含むアミノ酸配列をコードする核酸を含む第2のベクター。一実施形態では、宿主細胞は、真核細胞、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、またはヒト胚腎(HEK)細胞、またはリンパ球細胞(例えば、Y0、NS0、Sp20細胞)である。一実施形態では、抗体を作製する方法が提供され、この方法は、上で提供されるように、抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を、抗体の発現に好適な条件下で培養することと、任意で、抗体を宿主細胞(または宿主細胞培養培地)から回収することと、を含む。
【0273】
抗体の組換え産生のために、例えば、上述のような抗体をコードする核酸を単離し、宿主細胞におけるさらなるクローニング及び/または発現のために1つ以上のベクターに挿入する。かかる核酸は、従来の手順を使用して(例えば、抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合可能であるオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離され、配列決定され得る。
【0274】
「実質的に精製された」という用語は、ある特定の実施形態では、実質的に細胞物質を含まない組換え産生ヘテロ多量体の場合には、その天然に存在する環境に見られるように、タンパク質、すなわち天然細胞、または宿主細胞に通常付随するか、またはそれらと相互作用する構成要素を実質的にまたは本質的に含まなくてもよい本明細書に記載の構築物、またはそのバリアントを指し、約30%未満、約25%未満、約20%未満、約15%未満、約10%未満、約5%未満、約4%未満、約3%未満、約2%未満、または約1%未満(乾燥重量)の汚染タンパク質を有するタンパク質の調製物を含む。ヘテロ多量体またはそのバリアントが、宿主細胞によって組換え的に産生される場合、ある特定の実施形態では、タンパク質は、細胞の乾燥重量の約30%、約25%、約20%、約15%、約10%、約5%、約4%、約3%、約2%、または約1%以下で存在する。ヘテロ多量体またはそのバリアントが、宿主細胞によって組換え産生される場合、ある特定の実施形態では、タンパク質は、細胞の乾燥重量の約5g/L、約4g/L、約3g/L、約2g/L、約1g/L、約750mg/L、約500mg/L、約250mg/L、約100mg/L、約50mg/L、約10mg/L、または約1mg/L以下で培養培地中に存在する。ある特定の実施形態では、本明細書に記載の方法によって生成される「実質的に精製された」ヘテロ多量体は、SDS/PAGE分析、RP-HPLC、SEC、及びキャピラリー電気泳動などの適切な方法によって決定される場合、少なくとも約30%、少なくとも約35%、少なくとも約40%、少なくとも約45%、少なくとも約50%、少なくとも約55%、少なくとも約60%、少なくとも約65%、少なくとも約70%の純度レベル、具体的には、少なくとも約75%、80%、85%の純度レベル、より具体的には、少なくとも約90%の純度レベル、少なくとも約95%の純度レベル、少なくとも約99%以上の純度レベルを有する。
【0275】
抗体コードベクターのクローニングまたは発現に好適な宿主細胞には、本明細書に記載される原核細胞または真核細胞が含まれる。
【0276】
「組換え宿主細胞」または「宿主細胞」は、挿入に使用される方法、例えば、組換え宿主細胞を作製するための直接取り込み、形質導入、f-交配、または当該技術分野で既知の他の方法にかかわらず、外因性ポリヌクレオチドを含む細胞を指す。外因性ポリヌクレオチドは、非組み込みベクターとして維持されてもよく、例えば、プラスミドとして維持されてもよく、または代替的に、宿主ゲノムに組み込まれてもよい。宿主細胞は、CHO、CHOの誘導体、NS0、Sp2O、CV-1、VERO-76、HeLa、HepG2、Per.C6、またはBHKを含み得る。
【0277】
本明細書で使用される場合、「真核生物」という用語は、動物(哺乳動物、昆虫、爬虫類、鳥などを含むがこれらに限定されない)、毛様体、植物(単子葉植物、双子葉植物、藻などを含むがこれらに限定されない)、真菌、酵母、鞭毛虫、小胞子体、原生生物などの系統発生ドメインに属する生物を指す。
【0278】
本明細書で使用される場合、「原核生物」という用語は、原核生物を指す。例えば、非真核生物は、真正細菌(大腸菌(Escherichia coli)、サーモス・サーモフィルス(Thermus thermophilus)、バシラス・ステアロサーモフィルス(Bacillus stearothermophilus)、シュードモナス・フルオレッセンス(Pseudomonas fluorescens)、シュードモナス・エルジノーサ(Pseudomonas aeruginosa)、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)などを含むが、これらに限定されない)系統発生ドメイン、または古細菌(メタノコッカス・ヤンナスキ(Methanococcus jannaschii)、メタノバクテリウム・サーモオートトロフィカム(Methanobacterium thermoautotrophicum)、ハロバクテリウム(Halobacterium)、例えば、ハロフェラックス・ボルカニ(Haloferax volcanii)およびハロバクテリウム(Halobacterium)属の種NRC-1、アルケオグロブス・フルギダス(Archaeoglobus fulgidus)、ピロコッカス・フリオスス(Pyrococcus furiosus)、ピロコッカス・ホリコシイ(Pyrococcus horikoshii)、アエロピルム・ペルニクス(Aeuropyrum pernix)などを含むが、これらに限定されない)系統発生ドメインに属し得る。
【0279】
例えば、抗体は、特にグリコシル化及びFcエフェクター機能が必要とされない場合、細菌において産生され得る。細菌における抗体断片及びポリペプチドの発現については、例えば、米国特許第5,648,237号、同第5,789,199号、及び同第5,840,523号を参照されたい。(また、大腸菌における抗体断片の発現を記載する、Charlton,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.,2003),pp.245-254を参照されたい。)発現後、抗体は、可溶性画分で細菌細胞ペーストから単離されてもよく、さらに精製され得る。
【0280】
原核生物に加えて、糸状菌または酵母等の真核微生物は、抗体コードベクターに好適なクローニングまたは発現宿主であり、それには、グリコシル化経路が「ヒト化」されており、部分的または完全ヒトグリコシル化パターンを有する抗体の産生をもたらす、真菌及び酵母株が含まれる。Gerngross,Nat.Biotech.22:1409-1414(2004)、及びLi et al.,Nat.Biotech.24:210-215(2006)を参照されたい。
【0281】
グリコシル化抗体の発現に好適な宿主細胞はまた、多細胞生物(無脊椎動物及び脊椎動物)に由来する。無脊椎動物細胞の例としては、植物及び昆虫細胞が挙げられる。特に、ヨトウガ(Spodoptera frugiperda)細胞のトランスフェクションのために、昆虫細胞と併せて使用され得る多数のバキュロウイルス株が特定されている。
【0282】
植物細胞培養物もまた、宿主として利用することができる。例えば、米国特許第5,959,177号、同第6,040,498号、同第6,420,548号、同第7,125,978号、及び同第6,417,429号(トランスジェニック植物において抗体を産生するためのPLANTIBODIES(商標)技術について記載する)を参照されたい。
【0283】
脊椎動物細胞もまた、宿主として使用され得る。例えば、懸濁液中で成長するように適合される哺乳動物細胞株が、有用であり得る。有用な哺乳動物宿主細胞株の他の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS-7)、ヒト胚性腎臓株(例えば、Graham et al.,J.Gen Virol.36:59(1977)に記載されるような、293または293細胞)、ベビーハムスター腎臓細胞(BHK)、マウスセルトリ細胞(Mather,Biol.Reprod.23:243-251(1980)に記載されるような、TM4細胞)、サル腎臓細胞(CV1)、アフリカグリーンサル腎臓細胞(VERO-76)、ヒト子宮頸癌細胞(HELA)、イヌ腎臓細胞(MDCK、バッファローラット肝細胞(BRL 3A)、ヒト肺細胞(W138)、ヒト肝細胞(Hep G2)、マウス乳腺腫瘍(MMT 060562)、例えば、Mather et al.,Annals N.Y.Acad.Sci.383:44-68(1982)に記載されるような、TRI細胞、MRC5細胞、及びFS4細胞である。他の有用な哺乳動物宿主細胞株には、DHFR-CHO細胞を含むチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞(Urlaub et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 77:4216(1980))、ならびにY0、NS0及びSp2/0などの骨髄腫細胞株が含まれる。抗体産生に好適な特定の哺乳動物宿主細胞株の概説については、例えば、Yazaki and Wu,Methods in Molecular Biology,Vol.248(B.K.C.Lo,ed.,Humana Press,Totowa,N.J.),pp.255-268(2003)を参照されたい。
【0284】
一実施形態では、本明細書に記載の抗体は、安定した哺乳動物細胞において、少なくとも1つの安定した哺乳動物細胞を、抗体をコードする核酸により、所定の比率でトランスフェクションすることと、少なくとも1つの哺乳動物細胞において核酸を発現させることと、を含む方法によって産生される。いくつかの実施形態では、核酸の所定の比率は、一過性トランスフェクション実験において決定され、発現産物中の抗体の最高割合をもたらす入力核酸の相対比率を決定する。
【0285】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定した哺乳動物細胞において抗体を産生する方法であり、少なくとも1つの安定した哺乳動物細胞の発現産物は、単量体重鎖または軽鎖ポリペプチド、または他の抗体と比較して、所望のグリコシル化抗体をより高い割合で含む。
【0286】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載の安定した哺乳動物細胞においてグリコシル化抗体を産生する方法であり、この方法は、所望のグリコシル化抗体を特定し、精製することを含む。いくつかの実施形態では、上述の特定は、液体クロマトグラフィー及び質量分析の一方または両方によるものである。
【0287】
必要に応じて、抗体は、発現後に精製または単離され得る。タンパク質は、当業者に既知の様々な方式で単離または精製され得る。標準的な精製方法には、FPLC及びHPLCなどのシステムを使用して、大気圧または高圧で実施する、イオン交換、疎水性相互作用、親和性、サイジングまたはゲル濾過、及び逆相を含むクロマトグラフィー技術が含まれる。精製方法には、電気泳動技術、免疫学的技術、沈殿技術、透析技術、及びクロマトフォーカシング技術も含まれる。限外濾過及びダイアフィルトレーション技術も、タンパク質濃度と併せて有用である。当該技術分野で周知であるように、様々な天然タンパク質は、Fc及び抗体に結合し、これらのタンパク質は、本発明において、抗体の精製のための使用を見出すことができる。例えば、細菌タンパク質A及びGは、Fc領域に結合する。同様に、細菌タンパク質Lは、いくつかの抗体のFab領域に結合する。精製は、多くの場合、特定の融合パートナーによって可能にすることができる。例えば、GST融合を用いる場合はグルタチオン樹脂、Hisタグを用いる場合はNi+2親和性クロマトグラフィー、またはフラグタグを使用する場合は固定化抗フラグ抗体を使用して、抗体を精製してもよい。好適な精製技術の一般的なガイダンスについては、例えば、参照により完全に組み込まれた参考文献Protein Purification:Principles and Practice,3rd Ed.,Scopes,Springer-Verlag,NY,1994を参照されたい。必要な精製の程度は、抗体の使用に応じて変動することになる。いくつかの場合では、精製は必要ではない。
【0288】
ある特定の実施形態では、抗体は、Q-セファロース、DEAEセファロース、poros HQ、poros DEAF、Toyopearl Q、Toyopearl QAE、Toyopearl DEAE、Resource/Source Q and DEAE、Fractogel Q及びDEAEカラムでのクロマトグラフィーを含むが、これらに限定されないアニオン交換クロマトグラフィーを使用して精製される。
【0289】
特定の実施形態では、本明細書に記載のタンパク質は、SP-セファロース、CMセファロース、poros HS、poros CM、Toyopearl SP、Toyopearl CM、Resource/Source S and CM、Fractogel S及びCMカラム、ならびにそれらの等価物及び匹敵するものを含むが、これらに限定されないカチオン交換クロマトグラフィーを使用して精製される。
【0290】
加えて、本明細書に記載の抗体は、当該技術分野で既知の技術を使用して化学合成することができる(例えば、Creighton,1983,Proteins:Structures and Molecular Principles,W.H.Freeman & Co.,N.Y and Hunkapiller et al.,Nature,310:105-111(1984)を参照されたい)。例えば、ポリペプチドの断片に対応するポリペプチドは、ペプチド合成器の使用によって合成することができる。さらに、必要に応じて、非古典的アミノ酸または化学アミノ酸類似体を、ポリペプチド配列への置換または付加として導入することができる。非古典的アミノ酸としては、一般的なアミノ酸のD異性体、2,4-ジアミノ酪酸、アルファ-アミノイソ酪酸、4アミノ酪酸、Abu、2-アミノ酪酸、g-Abu、e-Ahx、6アミノヘキサン酸、Aib、2-アミノイソ酪酸、3-アミノプロピオン酸、オルニチン、ノルロイシン、ノルバリン、ヒドロキシプロリン、サルコシン、シトルリン、ホモシトルリン、システイン酸、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、フェニルグリシン、シクロヘキシルアラニン、アラニン、フルオロ-アミノ酸、デザイナーアミノ酸、例えば、メチルアミノ酸、C-メチルアミノ酸、N-メチルアミノ酸、及び一般的なアミノ酸類似体が挙げられるが、これらに限定されない。さらに、アミノ酸は、D(右旋性)またはL(左旋性)であり得る。
【0291】
使用方法
一態様では、本出願は、対象において線維性疾患または状態を治療する方法であって、ヒトTREM2(配列番号15)に結合し、マウスTREM2(配列番号17)に対する結合について37017抗体(配列番号31及び32)と競合する単離された抗体を投与することを含む、方法、あるいは線維性疾患または状態を有する対象のTREM2+骨髄細胞を死滅させるか、無効化するか、または枯渇させる方法であって、骨髄細胞を、ヒトTREM2(配列番号15)に結合し、任意でマウスTREM2(配列番号17)に対する結合について37017抗体(配列番号31及び32)と競合する単離された抗体と接触させることを含む、方法を提供する。
【0292】
いくつかの実施形態では、抗体は、
配列番号9、37、43、44、45、または46に示される配列を含むCDR-H1と、
配列番号10、47、48、49、または50に示される配列を含むCDR-H2と、
配列番号11、39、51、または52に示される配列を含むCDR-H3と、
配列番号12、40、53、または54に示される配列を含むCDR-L1と、
配列番号13または55に示される配列を含むCDR-L2と、
配列番号14、42、または57に示される配列を含むCDR-L3と、を含む。
【0293】
いくつかの実施形態では、TREM2抗体の投与は、アイソタイプ対照抗体の投与と比較して、対象における線維症を低減する。例えば、TREM2抗体の投与は、アイソタイプ対照抗体の投与と比較して、対象における線維症を少なくとも約1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍、もしくは100倍以上、または1~2倍、2~3倍、3~4倍、4~5倍、5~6倍、6~7倍、7~8倍、8~9倍、9~10倍、10~20倍、20~30倍、30~40倍、40~50倍、50~60倍、60~70倍、70~80倍、80~90倍、90~100倍以上低減することができる。他の実施例では、TREM2抗体の投与は、対象における線維症を、アイソタイプ対照抗体の投与と比較して、少なくとも約1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、100%、200%、300%、400%、500%、600%、700%、800%、900%、1000%以上、または1~10%、10~20%、20~30%、30~40%、40~50%、50~60%、60~70%、70~80%、80~90%、もしくは90~100%、100~200%、200~300%、300~400%、400~500%、500~600%、600~700%、700~800%、800~900%、900~1000%以上低減することができる。線維症の低減は、肝生検または肝バイオマーカーもしくは画像化のための血清アッセイなどの当業者に既知の任意の非侵襲的アッセイによって決定することができる。そのような非侵襲的アッセイは、Papastergiou et al,Non-invasive assessment of liver fibrosis,Ann Gastroenterol.2012;25(3):218-231に記載されており、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0294】
いくつかの態様では、線維症を治療することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量のTREM2発現(TREM2+)細胞に結合し、枯渇させるか、無効化するか、または死滅させるための手段を投与することを含み、TREM2+細胞に結合し、枯渇させるか、無効化するか、または死滅させるための手段の量が、TREM2+細胞においてアポトーシスを促進するのに有効であり、それによって、細胞を枯渇させるか、無効化するか、または死滅させ、それによって、対照において線維症を治療する、方法が本明細書で提供される。いくつかの態様では、線維症を治療することを必要とする対象においてそれを行う方法であって、有効量のTREM2の阻害剤を投与することを含み、阻害剤が、TREM2に結合するための手段であり、阻害剤が結合するTREM2が、配列番号15に示される配列を含む、方法が本明細書で提供される。
【0295】
一態様では、本出願は、非刺激性骨髄細胞をヒト抗体などの抗TREM2抗体と接触させ、非刺激性骨髄細胞の無効化をもたらす方法を提供する。
【0296】
別の態様では、本出願は、非刺激性骨髄細胞を抗TREM2マウス抗体と接触させ、非刺激性骨髄細胞の無効化をもたらす方法を提供する。
【0297】
いくつかの実施形態では、非刺激性細胞は、DC1細胞、及びTAM細胞のうちの1つ以上である。
【0298】
いくつかの実施形態では、本出願は、非刺激性骨髄細胞を無効化する方法であって、非刺激性骨髄細胞をTREM2抗体と接触させ、それによって非刺激性骨髄細胞を死滅させることを含む、方法を提供する。無効化とは、細胞を部分的または完全に機能的ではない状態にすることを指す。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞において成長停止を誘導することをもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞内のアポトーシスをもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性細胞の無効化は、例えば、補体依存性細胞傷害性(CDC)または抗体依存性細胞傷害性(ADCC)によって、細胞の溶解をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞内の壊死をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞において成長停止を誘導することをもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞を不活性化することをもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞内のTREM2タンパク質の活性を中和することをもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞の増殖の減少をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、細胞の分化をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、阻害性抗原提示細胞として作用する細胞の能力の低下をもたらすか、または活性化抗原提示細胞として作用する細胞の能力の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、腫瘍組織または腫瘍微小環境(TME)内の細胞の誤った局在化をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、腫瘍組織または腫瘍微小環境内の細胞の空間的組織の変化をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の無効化は、腫瘍組織またはTME内の細胞の時間的発現の変化をもたらす。いくつかの実施形態では、本方法は、非刺激性骨髄系細胞を除去することをさらに含む。
【0299】
本明細書に記載の非刺激性骨髄細胞の無効化のありとあらゆる態様では、特性(複数可)または機能(複数可)の態様の任意の増加または減少または変化は、抗TREM2抗体と接触していない細胞と比較した場合のものである。
【0300】
別の態様では、本出願は、非刺激性骨髄細胞を抗TREM2抗体と接触させる方法を提供し、これにより、非刺激性骨髄細胞の機能の調節をもたらす。調節は、以下のうちのいずれか1つ以上であり得る。いくつかの実施形態では、非刺激性細胞は、DC1細胞、TAM1細胞、及びTAM2細胞のうちの1つ以上である。いくつかの実施形態では、機能の調節は、非刺激性骨髄細胞の無効化をもたらす。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の機能の調節は、例えば、MHCI分子上の抗原をナイーブCD8+T細胞に交差提示する非刺激性細胞の能力を増加させることによって、天然及び活性化CD8+T細胞の両方を刺激する細胞の能力の増加をもたらす。いくつかの実施形態では、調節は、例えば、T細胞受容体(TCR)シグナル伝達、T細胞増殖、またはT細胞サイトカイン産生を誘発する細胞の能力を含む、非刺激性骨髄細胞のT細胞刺激機能を増加させる。一実施形態では、非刺激細胞の生存が減少するか、または非刺激細胞の増殖が減少する。一実施形態では、刺激性骨髄細胞の非刺激性骨髄細胞に対する比率が増加する。
【0301】
本明細書に記載の非刺激性骨髄細胞の機能の減少のありとあらゆる態様では、特性(複数可)または機能(複数可)の態様の任意の増加または減少または変化は、抗TREM2抗体と接触していない細胞と比較した場合のものである。
【0302】
いくつかの実施形態では、本出願は、非刺激性骨髄細胞を死滅させる(細胞死を誘導するとも称される)方法であって、非刺激性骨髄細胞を抗TREM2抗体と接触させ、それによって非刺激性骨髄細胞を死滅させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、死滅は、抗TREM2抗体と接触していない非刺激性骨髄細胞と比較して増加する。いくつかの実施形態では、接触は、非刺激性骨髄細胞においてアポトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、接触は、非刺激性骨髄細胞においてアポトーシスを誘導する。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、非刺激性骨髄細胞及び刺激性骨髄細胞を含む免疫細胞の集団内にある。いくつかの実施形態では、本方法は、非刺激性骨髄系細胞を除去することをさらに含む。いくつかの実施形態では、細胞の10%~80%が死滅する。いくつかの実施形態では、細胞の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、または80%が死滅する。
【0303】
いくつかの実施形態では、本発明の出願は、刺激性骨髄細胞及び非刺激性骨髄細胞を含む免疫細胞の集団における刺激性骨髄細胞の非刺激性骨髄細胞に対する比率を増加させる方法であって、免疫細胞の集団を抗TREM2抗体と接触させることを含む、方法を提供する。いくつかの実施形態では、比率は、抗TREM2抗体と接触していない細胞の集団と比較して、増加する。いくつかの実施形態では、DC2細胞のDC1細胞に対する比率が増加する。いくつかの実施形態では、DC2細胞のTAM1細胞に対する比率が増加する。いくつかの実施形態では、DC2細胞のTAM2細胞に対する比率が増加する。いくつかの実施形態では、DC2細胞のTAM1+TAM2細胞に対する比率が増加する。いくつかの実施形態では、DC2細胞のTAM1+DC1細胞に対する比率が増加する。いくつかの実施形態では、DC2細胞のDC1+TAM2細胞に対する比率が増加する。いくつかの実施形態では、DC2細胞のDC1+TAM1+TAM2細胞に対する比率が増加する。いくつかの実施形態では、少なくとも比率は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、または100%増加する。
【0304】
いくつかの実施形態では、接触前の刺激性骨髄細胞の非刺激性骨髄細胞に対する比率は、0.001:1~0.1:1の範囲である。いくつかの実施形態では、接触後の刺激性骨髄細胞の非刺激性骨髄細胞に対する比率は、0.1:1~100:1の範囲である。
【0305】
いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の数は減少している。いくつかの実施形態では、刺激性骨髄細胞は、DC2細胞である。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、例えば、壊死またはアポトーシスによって死滅する。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、成長停止を受けるように誘導される。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞は、もはや増殖しない。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の空間的局在化が変化し、TMEの特定の領域において比率が増加する。いくつかの実施形態では、非刺激性骨髄細胞の時間的発現は変化し、比率は特定の時間中に増加する。
【0306】
いくつかの実施形態では、接触はインビトロである。いくつかの実施形態では、接触はインビボである。いくつかの特定の実施形態では、接触は、ヒトにおいてインビボである。いくつかの実施形態では、接触は、抗TREM2抗体を投与することによって行われる。いくつかの実施形態では、線維性疾患は、がんではない。
【0307】
いくつかの実施形態では、抗体を受ける個体(ヒトなど)は、線維性疾患、例えば、肝疾患を有する。いくつかの実施形態では、肝疾患は、線維症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪肝(NAFL)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、または肝臓癌である。いくつかの実施形態では、肝疾患は、肝炎から生じる肝疾患、肥満から生じる脂肪肝疾患、糖尿病から生じる脂肪肝疾患、インスリン抵抗性から生じる脂肪肝疾患、高トリグリセリド血症から生じる脂肪肝疾患、無βリポタンパク血症、糖原病、ウェーバー・クリスチャン病、ウォルマン病、急性妊娠脂肪肝、及び脂肪萎縮症などの脂肪肝疾患である。
【0308】
NASHは、炎症、肝細胞傷害、及び様々な程度の線維症の存在として特徴付けられる。NASHの病因に関与する根本的な機構は、完全には理解されていない。肝臓マクロファージがNASHの進行及び修復の両方を調整することが示されている。NASH進行中の肝臓マクロファージの活性化は、サイトカイン、脂質代謝産物、及び他のシグナル分子などの様々な刺激に依存する動的な手順である。周囲の細胞とともに、肝臓マクロファージは、炎症応答、線維形成、血管リモデリングなどを引き起こし得る。肝臓マクロファージと周囲の細胞との間の細胞間シグナル伝達は、NASH発達に関与することが知られている。肝臓マクロファージは、NASH治療のための魅力的な標的である。
【0309】
TREM2発現は、NASHの重症度と強く関連していた。肝臓の疾患が多いほど、細胞は、より多くのTREM2を産生する。マクロファージは、疾患肝臓において実質的により高い割合で存在し、より活発にTREM2を産生していた。高発現TREM2によってマークされるNASH特異的マクロファージ集団は、NASH関連マクロファージ(NAM)と呼称され、マウス及びヒトの両方のNASH肝臓において観察された。TREM2+CD9+マクロファージの病原性亜集団は、scar関連マクロファージ(SAMacs)と名付けられ、NASHを有するヒト肝臓の線維化ニッチにおいても特定された。SAMacsの拡大は、NASH誘導性肝線維症の程度と正の相関があった。
【0310】
いくつかの実施形態では、個体に、有効量の抗TREM2抗体を含む組成物を投与することを含む、個体において線維性疾患を治療する方法。
【0311】
いくつかの実施形態では、ヒトにおける線維性疾患を治療すること、または治療は、(1)線維性疾患を発症するリスクを防止もしくは軽減すること、すなわち、線維性疾患の素因があり得るが、線維性疾患の症状をまだ経験していないか、または示していない対象において線維性疾患の臨床症状を発症させないこと(すなわち、予防)、(2)線維性疾患を阻害すること、すなわち、線維性疾患もしくはその臨床症状の発症を阻止もしくは軽減すること、及び/または(3)線維性疾患を軽減すること、すなわち、線維性疾患の退縮、逆転、もしくは改善を引き起こすこと、もしくはその臨床症状の数、頻度、持続時間もしくは重症度を低下させること、のうちの1つ以上を含む。
【0312】
いくつかの実施形態では、ヒトにおけるNAFLDまたはNASHなどの肝疾患を治療すること、または治療は、(1)NAFLDもしくはNASHを発症するリスクを防止もしくは軽減すること、すなわち、NAFLDもしくはNASHの素因があり得るが、NAFLDもしくはNASHの症状をまだ経験していないか、または示していない対象においてNAFLDもしくはNASHの臨床症状を発症させないこと(すなわち、予防)、(2)NAFLDもしくはNASHを阻害すること、すなわち、NAFLDもしくはNASHもしくはその臨床症状の発症を阻止もしくは軽減すること、及び(3)NAFLDもしくはNASHを軽減すること、すなわち、NAFLDもしくはNASHの退縮、逆転、もしくは改善を引き起こすこと、もしくはその臨床症状の数、頻度、持続時間もしくは重症度を低下させること、のうちの1つ以上を含む。
【0313】
特定の対象の治療有効量は、治療される対象の健康及び身体状態、NAFLDまたはNASHの程度、医療状況の評価、及び他の関連する要因に応じて変化する。治療有効量は、日常的な試験を通じて決定することができる比較的広い範囲に収まることが予想される。線維性疾患の治療の当業者であれば、過度の実験なしに、個人的な知識及び本出願の開示に依存して、疾患の特定の段階に対する治療有効量を確認して、治療有効量を達成することができるであろう。
【0314】
別の態様では、本発明は、個体に、有効量の抗TREM2抗体を含む組成物を投与することを含む、個体において免疫関連状態を治療する方法を提供する。別の態様では、本発明は、個体に、有効量の抗TREM2抗体を含む組成物を投与することを含む、個体において免疫応答を増強する方法を提供する。いくつかの実施形態では、これらの方法は、PDL遮断療法、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗PD-L2抗体、CTLA4遮断療法、抗CTLA-4抗体、T細胞上の阻害分子が遮断される一般化されたチェックポイント遮断療法、養子T細胞療法、CAR T細胞療法、樹状細胞または他の細胞療法、ならびに従来の化学療法などの他の併用療法と組み合わせてさらに提供される。
【0315】
いくつかの実施形態では、本方法は、個体からの生体試料中のTREM2タンパク質の発現レベルを決定することをさらに含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、限定されないが、体液、組織試料、臓器試料、尿、糞便、血液、唾液、CSF、及びそれらの任意の組み合わせを含む。いくつかの実施形態では、生体試料は、組織に由来する。いくつかの実施形態では、発現レベルは、TREM2タンパク質をコードするmRNAのmRNA発現レベルを含む。いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質の発現レベルは、NSMのタンパク質発現レベルを含む。いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質の発現レベルは、FACS、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、放射免疫アッセイ、ドットブロッティング、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光法、質量分析、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、及びFISH、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を使用して、試料中で検出される。
【0316】
別の態様では、本出願は、一般に非刺激性骨髄細胞の存在もしくは不在を決定するための方法、または特定の非刺激性骨髄細胞(例えば、DC1細胞、TAM1細胞、及び/またはTAM2細胞)の存在もしくは不在を決定するための方法であって、非刺激性骨髄細胞を含む細胞の集団を抗TREM2抗体と接触させることと、非刺激性骨髄細胞の数を定量化することと、を含む、方法を提供する。別の態様では、本出願は、非刺激性骨髄細胞の存在もしくは不在を決定するための方法であって、非刺激性骨髄細胞及び刺激性骨髄細胞を含む免疫細胞の集団を抗TREM2抗体と接触させることと、抗体の細胞に対する結合を示す複合体または部分を検出することと、任意で、集団内の非刺激性骨髄細胞の数を定量化することと、を含む、方法を提供する。別の態様では、非刺激性骨髄細胞の刺激性骨髄細胞に対する相対比率を決定する方法であって、非刺激性骨髄細胞及び刺激性骨髄細胞を含む免疫細胞の集団を抗TREM2抗体と接触させることと、刺激性骨髄細胞及び非刺激性骨髄細胞の数を定量化することと、非刺激性骨髄細胞の刺激性骨髄細胞に対する相対比率を決定すること、を含む、方法が提供される。
【0317】
検出及び/または定量化のために本明細書に記載される実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2タンパク質に結合するが、必ずしもADCCなどの生物学的応答に影響を及ぼす必要はないが、生物学的応答に影響を及ぼしてもよい。
【0318】
別の態様では、本発明は、免疫関連状態の治療のために免疫療法(例えば、抗TREM2抗体による)に応答し得る個体を特定するための方法であって、個体からの生体試料中のTREM2タンパク質の発現レベルを検出することと、TREM2タンパク質の発現レベルに基づいて、個体が免疫療法に応答し得るかどうかを決定することと、を含み、健康な個体と比較して個体におけるTREM2タンパク質のレベルの上昇が、その個体が免疫療法に応答し得ることを示す、方法を提供する。いくつかの実施形態では、これらの方法はまた、個体における免疫関連状態を診断するために使用されてもよく、TREM2タンパク質の発現レベルに基づいており、健康な個体と比較して、個体におけるTREM2タンパク質のレベルの上昇が、その個体が線維性疾患に罹患していることを示す。いくつかの実施形態では、発現レベルは、TREM2タンパク質をコードするmRNAのmRNA発現レベルを含む。他の実施形態では、TREM2タンパク質の発現レベルは、TREM2タンパク質のタンパク質発現レベルを含む。いくつかの実施形態では、TREM2タンパク質の発現レベルは、FACS、ウェスタンブロット、ELISA、免疫沈降、免疫組織化学、免疫蛍光、放射免疫アッセイ、ドットブロッティング、免疫検出方法、HPLC、表面プラズモン共鳴、光学分光法、質量分析、HPLC、qPCR、RT-qPCR、多重qPCRまたはRT-qPCR、RNA-seq、マイクロアレイ分析、SAGE、MassARRAY技術、及びFISH、ならびにそれらの組み合わせからなる群から選択される方法を使用して、試料中で検出される。これらの実施形態では、抗TREM2抗体は、TREM2タンパク質に結合するが、必ずしもADCCなどの生物学的応答に影響を及ぼす必要はない。いくつかの実施形態では、生体試料は、組織に由来する。いくつかの実施形態では、生体試料は、限定されないが、体液、組織試料、臓器試料、尿、糞便、血液、唾液、CSF、及びそれらの任意の組み合わせを含む。
【0319】
また、対象の免疫応答を増強するか、または免疫療法治療の有効性を増強する方法が本明細書に開示される。一般に、SDCの存在量を増加させる治療は、無再発生存時間などの対象の転帰を改善し、免疫療法治療の有効性を増強する。治療により、対象においてSDC細胞の相対的または絶対的存在量を増加させることができる。治療により、対象においてNSM細胞の相対的または絶対的存在量を減少させることができる。
【0320】
一般的な治療戦略の例示的な方法は、Flt3Lの全身導入によってSDCの数を増加させることを含む。別の方法は、CSF1を同時に遮断しながら、Flt3Lで対象の自己骨髄または血液細胞を治療することである。骨髄または血液前駆細胞集団におけるIRF8、Mycl1またはBATF3またはZBTB46などのSDC転写因子の発現、例えばレトロウイルスによる発現もまた、SDC発生を促進するために使用してもよい。治療の別の戦略には、SDCを選択的に制限しながら、NSM細胞を体系的に除去することが含まれる。これにより、これらの集団の比率に全体的に好ましい変化を生じさせることができる。NSM細胞の除去は、TREM2表面タンパク質に対する抗体の投与を含む任意の手段によって達成され得る。
【0321】
いくつかの実施形態では、SDC増強治療は、対象の自然免疫系が疾患を制御または根絶することをよりよく可能にするために、療法的治療として適用される。別の実施形態では、本発明のSDC増強治療は、免疫療法治療などの療法的治療と組み合わせて適用され(そのような適用は、免疫療法治療の前、同時、または後である)、SDC増強治療は、療法的治療の有効性を増加させるための補助治療またはアジュバント治療として機能する。
【0322】
投与方法
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、個体における免疫関連状態の治療に有用である。一実施形態では、個体はヒトであり、抗体はTREM2抗体である。別の実施形態では、個体はマウスであり、抗体はTREM2抗体である。
【0323】
任意の線維性疾患を、本明細書で提供される抗体で治療してもよい。疾患は、線維症、非アルコール性脂肪肝疾患(NAFLD)、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、肝硬変、または医学分野で知られている肝臓癌であり得る。いくつかの実施形態では、免疫関連状態は、肝疾患などの線維性疾患であり得る。
【0324】
いくつかの実施形態では、免疫関連状態は、非刺激性骨髄細胞(ヒトにおける)上のTREM2タンパク質の発現または非ヒト種におけるTREM2タンパク質のホモログの発現に関連する免疫関連状態である。いくつかの実施形態では、免疫関連状態は、刺激性骨髄細胞と比較して、非刺激性骨髄細胞上のTREM2タンパク質の過剰発現に関連する免疫関連状態である。いくつかの実施形態では、TREM2 mRNAまたはTREM2タンパク質の過剰発現は、刺激性骨髄細胞と比較して、およそ少なくとも2倍、5倍、10倍、25倍、50倍、または100倍高い。
【0325】
いくつかの実施形態では、治療は、対象における免疫応答を増強する。いくつかの実施形態では、増強された免疫応答は、適応免疫応答である。いくつかの実施形態では、増強された免疫応答は、自然免疫応答である。
【0326】
いくつかの実施形態では、抗体は、静脈内に、筋肉内に、皮下に、局所的に、経口的に、経皮的に、腹腔内に、眼窩内に、移植によって、吸入によって、髄腔内に、脳室内に、または鼻腔内に投与される。有効量の抗TREM2抗体を、疾患の治療のために投与してもよい。抗TREM2抗体の適切な投薬量は、治療される疾患の種類、抗TREM2抗体の種類、疾患の重症度及び経過、個体の臨床状態、治療に対する個体の臨床歴及び応答、ならびに主治医の裁量に基づいて決定され得る。
【0327】
併用療法
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される抗体は、少なくとも1つの追加の治療剤とともに投与される。任意の好適な追加の治療剤は、本明細書で提供される抗体とともに投与され得る。
【0328】
線維性疾患の治療のために、抗TREM2抗体は、1つ以上の追加の治療剤と組み合わされてもよい。
【0329】
キット及び製造物品
本出願は、本明細書に記載の抗体組成物のうちのいずれか1つ以上を含むキットを提供する。いくつかの実施形態では、キットは、二次抗体、免疫組織化学分析のための試薬、薬学的に許容される賦形剤及び取扱マニュアル、ならびにそれらの任意の組み合わせのうちのいずれかから選択される構成要素をさらに含む。1つの特定の実施形態では、キットは、本明細書に記載の抗体組成物のうちのいずれか1つ以上を、1つ以上の薬学的に許容される賦形剤とともに含む薬学的組成物を含む。
【0330】
本出願はまた、本明細書に記載の抗体組成物またはキットのうちのいずれか1つを含む製造物品を提供する。製造物品の例としては、バイアル(密封バイアルを含む)が挙げられる。
【実施例】
【0331】
以下は、本発明を実施するための特定の実施形態の実施例である。これらの実施例は、例解目的で提示されているにすぎず、決して本発明の範囲を限定することを意図するものではない。使用される数値(例えば、量、温度など)に対する正確さを確保する努力がなされているが、当然いくつかの実験によるエラー及び偏差が許容されるはずである。
【0332】
本発明の実施は、別途指示のない限り、当業者の範囲内で、タンパク質化学、生化学、組換えDNA技術、及び薬理学の従来の方法を用いるであろう。そのような技術は、文献で完全に説明される。例えば、T.E.Creighton,Proteins:Structures and Molecular Properties(W.H.Freeman and Company,1993)、A.L.Lehninger,Biochemistry(Worth Publishers,Inc.,current addition)、Sambrook,et al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual(2nd Edition,1989)、Methods In Enzymology(S.Colowick and N.Kaplan eds.,Academic Press,Inc.)、Remington’s Pharmaceutical Sciences,18th Edition(Easton,Pennsylvania:Mack Publishing Company,1990)、Carey and Sundberg Advanced Organic Chemistry 3rd Ed.(Plenum Press)Vols A and B(1992)を参照されたい。
【0333】
実施例1:抗TREM2抗体。
抗TREM2抗体は、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれるUSPN10,836,828に開示されるように得られた。表1Aは、ヒト化態様の抗TREM2抗体のVL、VH、及び完全重鎖及び軽鎖配列を示す。37017は、追加の変異を介して他のヒト化態様が作製された親ヒト化クローンである。表1Bは、CDR配列を示す(CDR定義を比較する表については、Dr.Andrew C.R.Martin www.bioinf.org.uk/abs/のウェブサイトを参照されたい)。
【0334】
【0335】
【0336】
【0337】
VLドメインでは、CDRにおいて、Asn28、Asn31、Asn32及びAsn53は、配列及び配座に基づいて脱アミド化の可能性が低い。Asn93は、脱アミド化の可能性が低程度から中程度であり、この翻訳後修飾の低レベルを示す可能性がある。VHドメインでは、Asn31は、配列及び配座に基づいて脱アミド化の可能性が低い。CDR-H2では、Asn53は、脱アミド化の中程度の可能性を有し、翻訳後修飾を防止するために、Asn53をGln、SerまたはAlaに改変し、結合の維持を実験的に決定することができる。CDR-H3では、Trp100は、特にストレス条件下で、溶媒曝露されてもよく、酸化の可能性を有し得る。
【0338】
溶液内エンドプロテイナーゼ消化
モノクローナル抗体(mAb)の溶液内エンドプロテイナーゼ消化を、mAb配列決定分析のために行った。50μgの抗体をDTTで還元し、ヨードアセトアミドを用いてアルキル化し、アセトン沈殿を行い、1μg/μLの濃度の水中で再構成させた。抗体試料の溶液内消化を、Asp-N、キモトリプシン、エラスターゼ、トリプシン及びペプシンの5つの個々の酵素消化を使用して、製造業者の指示に従って行った。次に、試料を凍結乾燥し、0.1%TFA中に再懸濁させ、C18 Zip-Tipを使用して精製した。その後、試料を高減圧遠心分離によって乾燥させ、質量分析まで凍結させたままにした。
【0339】
質量分析
インタクトな質量測定
mAb試料を変性させ、還元し、酸性化した。次いで、タンパク質を、Waters QToF Ultima Global質量分析計(LC-ESI-TOF MS)に接続されたAgilent 1100 HPLCを使用して分析した。適切なLC-MSスペクトルを、Waters MassLynx4.1ソフトウェアを使用して処理した(結合、減算、平滑化、及びデコンボルーション)。
【0340】
LC-MS/MS分析
精製されたペプチドを、0.1%のギ酸に再懸濁させ、各消化物の半分を、ナノスプレー源及びEASY-nLC 1000システム(Thermo Fisher Scientific)を装備したOrbitrap分析機(Q-Exactive,Thermo Fisher Scientific)で分析した。ペプチドを、PepMap(登録商標)RSLC 2μm C18樹脂(Thermo Fisher Scientific)を充填した50cm(内径75μm)のEASY-Sprayカラムに800Barの圧力でロードした。ペプチドを、0.1%のギ酸中0%~30%のアセトニトリルとしての勾配設定を使用して、60分間かけて250nl/分の速度で溶出させた。ペプチドを、ナノエレクトロスプレーイオン源によってQ-Exactive質量分析計(Thermo Fisher Scientific)に導入した。機器の方法は、自動ゲイン制御(AGC)ターゲットが1E6、最大イオン注入時間が120ms、分解能が70000のOrbitrap質量分析機で1回のMSフルスキャン(400~1600m/z)、その後、分解能が17500、AGCターゲットが5E5、最大イオン時間が100msの10回のデータ依存性MS/MSスキャン、及び1回のマイクロスキャンからなっていた。MS/MSスキャンをトリガする強度閾値を1.0%のアンダーフィル比に設定した。正規化された衝突エネルギーが30に設定されたHCD衝突セルで断片化を行った。動的除外は、8秒の設定を使用して適用した。
【0341】
表2は、ヒト化クローンの生物物理学的特性をまとめたものである。分子量及び消光係数は、四次構造における寄与タンパク質鎖の合計について推定される。デフォルトでは、計算は、各鎖からの等しい単量体の寄与を想定している。消光係数は、M-1cm-1の単位で、タンパク質1モル当たり280nmでの予測吸光度である。グリコシル化、リン酸化、及びタンパク質分解などの潜在的な翻訳後修飾は、分子量または消光係数の推定では考慮されない。
【0342】
【0343】
実施例2:抗TREM2抗体の産生及び特性決定
抗体産生及び特性決定
標準的なタンパク質発現ベクターを、標準的な方法を使用してHEK293にトランスフェクトし、その後、細胞を7日間成長させ、収穫した。HEK293に加えて、CRISPR/Cas9編集(Alexander Weiss,University of Toronto)によって、哺乳動物a1,6-フコシルトランスフェラーゼ(FUT8)が欠損した293細胞でも抗体を産生した。上清pHを1MのHepes pH7.4で調節し、アジ化ナトリウムを添加して微生物の成長を防止した。KanCap A樹脂を使用してタンパク質を捕捉し、PBS、及び1Mの塩化ナトリウムを含有するPBSで洗浄した後、抗体を50mMのクエン酸塩pH3.5、100mMのNaCLで溶出させた。溶出直後に、溶液を0.5Mのアルギニンを含有する1MのTris(pH8)で中和した。標準的な技術を使用して、緩衝液をPBSに交換したタンパク質について、生物物理学的特性決定を行った。タンパク質をOD280によって定量化し、量及び濃度を、計算された消光係数を使用して決定した。還元型及び非還元型のSDS-PAGE(Biorad criterion Tris/グリシン/SDS、4~20%)またはPerkin Elmer GXIIキャピラリー電気泳動システムを使用して、純度及びおおよその分子質量を決定した。凝集状態を、Sepax Zenix-C SEC-300、3um、300Å、4.6×150mmサイズ排除カラム及びPBSランニング緩衝液を使用して280nmで検出するHPLCによって決定した。
【0344】
表面プラズモン共鳴(SPR)を使用した抗体親和性測定
結合動態は、ヒトTREM2 His(Sino Biological,Beijing,P.R.China)または抗HisキャプチャによってSeries S CM5チップ上で捕捉されたヒト、またはアミンカップリングによってチップに直接固定化されたTREM2ヒトIgG1 Fc融合タンパク質(純度95%超に精製された社内SEC)を用いた、Biacore T200(GE Healthcare,UK)を使用する表面プラズモン共鳴によって決定した。示された抗体の連続希釈液を30μl/分で2分間注入した。次に、PBSまたは系の緩衝液を30μl/分で400秒間注入して、解離を観察した。結合応答は、ブランクフローセル上の応答を減算することによって修正した。動態分析のために、kon及びkoff値のグローバルフィッティングの1:1 Langmuirモデルを使用した。Kd値は、kon及びkoffの比率から決定した。
【0345】
【0346】
【0347】
低いリガンド密度(RL=500RU)では、ヒトTREM2-Fcに対するPI37017の結合動態は、良好な適合をもたらさなかった。
【0348】
実施例3:抗TREM2抗体の細胞結合
細胞結合(EC50測定):
100,000~500,000個のExpi 293親細胞またはExpi 293を過剰発現するヒトまたはマウスのTREM2を96ウェルプレートにプレーティングし、死滅細胞をZombie Near Infrared(Biolegend)で染色した。示される非コンジュゲート抗体の滴定を、8~10点にわたる1:3の希釈範囲で0μg/ml~10μg/mlの範囲内のこれらの細胞とともにインキュベートした。それらのアイソタイプ(hIgG1またはmIgG2a)に応じて、これらの一次非コンジュゲート抗体を、Alexa Fluor 647コンジュゲート抗ヒトFcまたは抗マウスFc二次抗体(Jackson Immunoresearch)で検出した。Alexa Fluor 647シグナルを、フローサイトメトリー(BD Fortessa X-14,BD Biosciences)によって測定した。EC50値を、Graphpad Prism(Graphpad Software)でHEK293親細胞から生成したバックグラウンド蛍光を超えて過剰発現細胞に結合する抗体から生成した曲線フィッティングシグナルによって計算した。
【0349】
【0350】
実施例4:抗TREM2療法に関連する明白な毒性はない
材料及び方法
7012抗体(PI37012のCDR配列を有し、マウスIgG2aフォーマットでマウス化されている)で処理されたマウス由来の組織(肺、肝臓、脳、腎臓、及び心臓)を、10%中性緩衝ホルマリン中で少なくとも24時間保存し、組織学のために通常通り処理し、5~6μmに切断し、切片をヘマトキシリン及びエオシンで染色した。染色されたスライドを低出力(40~100倍)の光学顕微鏡を使用して検査し、HistoWizによって画像を得た。抗CD68抗体(AbD Serotec)を使用してCD68陽性細胞を検出し、光学顕微鏡を使用して40倍断面の8~9個のフィールドを定量化した。
【0351】
結果
治療後のマウス組織(肺、肝臓、心臓、腎臓、及び脳)のH&E染色による肉眼的形態学的分析は、アイソタイプ対照治療マウスと比較して、PI-7012、afuc-PI-7012、及び抗PD-1併用治療マウスにおける形態学的変化を明らかにしなかった(
図1は、肺組織の染色を示す)。
【0352】
H&E染色に加えて、抗CD68を使用してマクロファージについても組織を染色した。細胞内マーカーCD68は、炎症組織及び腫瘍における単球/マクロファージを免疫染色するための信頼性の高い細胞化学マーカーとして文献で広く使用されている。肺(
図2A)において、また、分析された他の組織において、対照と比較して、治療群のいずれにおいても、CD68+マクロファージ数の識別可能な変化は観察されず(
図2B)、このことは、抗TREM2媒介性の枯渇が、TMEにおいて特異的に生じたことを示している。
【0353】
実施例5:健康なマウス組織におけるTREM2の限定的な発現
材料及び方法
すべての動物試験は、Murigenics Animal Studies Committeeによって承認された。C57BL/6J-Trem2em2Adiuj/J(以下、TREM2KOと称される)及び対照C57BL/6Jマウスは、The Jackson Laboratoryからのものであった。全肺、脾臓、及び骨を採取し、フローサイトメトリーのために直ちに処理した。血液は、並行して心臓穿刺によって採取した。組織を、Miltenyi MACS組織解離キットを使用して単一細胞懸濁液に処理した。赤血球を、1倍の赤血球溶解緩衝液(Biolegend)を使用して溶解した。細胞表面染色のために処理する前に、細胞をFixable Viability Dye(ThermoFisher Scientific)で染色した。抗マウス免疫表現型抗体をFcブロックとともにFACS緩衝液(2%FBS、2mM EDTA、1倍のPBS)中で希釈し、氷上で30分間染色した。染色後、細胞をFACS緩衝液で2回洗浄し、次いで、PBS中の2%のパラホルムアルデヒド中で15分間固定した。LSR Fortessaフローサイトメーター(BD)またはAttuneフローサイトメーター(Thermo Fisher)ですべてのデータを収集し、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。TREM2KO細胞染色は、網掛けしたプロットで示され、野生型細胞染色は、白色のプロットで示される。
【0354】
結果
TREM2は、活性化マクロファージ、未成熟樹状細胞、破骨細胞、及びミクログリア上で発現される
2、3。高レベルのTREM2を発現する細胞は、免疫サーベイランス、細胞間相互作用、組織破片クリアランス、及び潜在的な炎症反応の解決に関与すると考えられている
4。遺伝子ノックダウンまたはノックアウトによるこれらの細胞上のTREM2発現の欠如は、細胞破片を食作用させる能力を損なわせ、調節サイトカインの産生を増加させる
5。生理学的設定では、FACSプロットに見られるように、末梢血、脾臓、肝臓、または肺におけるTREM2の検出可能な発現は、非常に低いか、または全くない(
図3)。しかしながら、肺または肝臓に存在するマクロファージを単離し、純粋な細胞集団としてTREM2について染色すると、TREM2の発現が検出可能になる。
【0355】
実施例6:TREM2は主にマウスTAM上で発現される。
材料及び方法
腫瘍組織を処理して、標準的な方法によって単一細胞懸濁液を単離した。簡潔に述べると、腫瘍をかみそり刃で細かく粉砕し、Miltenyi MACS解離キットからの酵素を含有するRPMI-1640培地中で消化した。腫瘍を、製造業者の推奨に従ってGentleMACで処理し、37℃で約40分間インキュベートした。消化混合物を、2mMのEDTA及び2%ウシ胎児血清を含有するPBSでクエンチした。次いで、単一細胞懸濁液を70μmのフィルターに通し、次いで、細胞をFACS緩衝液ですすいだ。遠心分離後、細胞ペレットをFACS緩衝液に再懸濁させ、抗体カクテルで染色して、腫瘍関連マクロファージ及び他の免疫細胞集団を特定した6。TREM2KO細胞染色は、網掛けしたプロットで示され、野生型細胞染色は、白色のプロットで示される。
【0356】
結果
T細胞、B細胞、NK細胞、及び他の非骨髄性細胞集団、ならびにCD45陰性細胞は、細胞表面上で検出可能なTREM2発現を発現しない。しかしながら、腫瘍関連マクロファージ(TAM)及び骨髄由来サプレッサー細胞(MDSC)を含む骨髄細胞サブセットは、細胞表面上でTREM2を様々な程度に発現する。腫瘍微小環境においてTREM2が陽性である細胞型のうち、TAM上の受容体発現密度は、腫瘍起源にかかわらず、他の細胞型よりも著しく高かった(
図4に示すCT26及びMC38)。
【0357】
実施例7:ヒト末梢血白血球における限定的なTREM2発現
材料及び方法
正常なヒトボランティアから得られた末梢血単核細胞(PBMC)大比陰性選別されたCD14+単球は、AllCells Inc.によって提供された。CD14+単球は、標準プロトコルを使用して、インビトロで分化された5。CD14+単球を、2mMのL-グルタミン、100μg/mlのストレプトマイシン、100U/mlのペニシリン、及び10%の熱不活性化FBSを補充したRPMI-1640培地からなる完全培地中で培養した。マクロファージへの分化を誘発するために、50ng/mLのM-CSFを培地に加えた。培地を2~3日ごとに補充した。7日後、マクロファージをピペッティングによって収集し、付着細胞をその後のトリプシン化によって収集した。次いで、細胞を遠心分離し、抗生物質、2%のFBS、及び組換えヒトIFN-g、及び100ng/mLのLPSを補充したRPMI-1640中に再懸濁させた。これらのマクロファージを、標準的な骨髄性カクテルを使用してPBMCと並行して表面染色して、細胞サブセットにおけるTREM2の細胞表面染色を評価した。対照mAbで染色した細胞を網掛けしたプロットで示す。抗TREM2 mAbで染色した細胞を白色のプロットで示す。
【0358】
結果
図5に見られるように、エクスビボ分化マクロファージは、評価された任意のPBMCベースの細胞型と比較して、TREM2の著しく高い細胞表面受容体密度を示す。文献で報告された観察と同様に、単球及びいくつかの好中球は、より低いレベルのTREM2を発現する。
【0359】
実施例8:TREM2は主にヒトTAM上で発現される。
材料及び方法
ヒト腫瘍組織は、Cooperative Human Tissue Network(CHTN)から得た。新鮮なヒト腫瘍組織を、Miltenyi MACS解離キット及びgentleMACSプロトコルを使用して単一細胞懸濁液に解離させた。ヒト腫瘍組織の単一細胞懸濁液を、事前検証済みのマルチカラーFACSパネルを使用して表面染色した。LSR Fortessaフローサイトメーター(BD)またはAttuneフローサイトメーター(Thermo Fisher)ですべてのデータを収集し、FlowJoソフトウェアを使用して分析した。数字は、抗TREM2染色-アイソタイプ対照染色として定義される、各集団の染色指数を示す。
【0360】
結果
腫瘍微小環境内では、TREM2発現は、他の細胞と比較して、TAM上で高レベルに差異的に発現され(
図6)、TAMにとって翻訳上関連するマーカーとなる。粘液性腺癌における様々な細胞集団におけるTREM2抗体(白色)またはアイソタイプ対照(網掛け)染色の代表的なヒストグラムを示す。まとめると、このデータは、TREM2標的化剤が、末梢細胞または他の組織常駐免疫サブセットへの巻き添えの影響が比較的低いか、または全くない特異的なTAM枯渇を補助するという仮説を裏付けている。
【0361】
実施例9:抗TREM2抗体によるADCC誘導
材料及び方法
TYROBPに融合したヒトTREM2を過剰発現するHEK-293細胞(DAP12)を標的細胞として用いた。高純度で選別され、CD16を発現するように評価された一次ヒトNK細胞を、100ng/mLの組換えIL-2含有培地中での培養に適応させた後、エフェクター細胞として使用した。標的細胞を最初に、示された濃度の抗体(PI37012抗TREM2 mAbまたはアイソタイプ対照)とともに、U底96ウェルプレート中で20分間インキュベートした。20分後、エフェクター細胞を培養プレートに添加して、1:5のエフェクター対標的比(ウェル当たり10,000標的細胞:50,000個のNK細胞)を得た。アッセイプレートを37℃で4~6時間インキュベートし、続いて、供給業者(Promega)の指示に従って市販のキットを使用して、標的細胞傷害性の尺度としての乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)放出について上清を試験した。
【0362】
結果
図7に見られるように、LDH放出によって測定される相対細胞傷害性は、すべての試験されたmAb濃度にわたってアイソタイプ対照(白色のバー、右側に示される)と比較して、抗TREM2 mAbとともにインキュベートされた標的細胞(黒色のバー、左側に示される)において、増加した。これらの結果は、抗TREM2抗体が、TREM2を発現する標的細胞においてADCCを誘導することを示す。
【0363】
実施例10:Fcドメイン脱フコシル化は、ADCCの誘導を促進する
材料及び方法
マウスTREM2またはGFPのみを安定的に発現する緑色蛍光タンパク質(GFP)標識Expi293細胞を、8%CO2、及び37℃でExpi293培地(Gibco)中で維持した。マウスFcγRIV発現Jurkat/NFAT-ルシフェラーゼレポーター細胞株(Promega)を用いて、マウス抗TREM2抗体のFcγR依存性の活性を評価した。標的細胞を1mL当たり1×106個の細胞でアッセイ培地(10%ウシ胎児血清及び55μMの2-メルカプトエタノールを含有するRPMI 1640)に再懸濁させ、25,000個の細胞を含有する細胞懸濁液25μLを白壁の平底96ウェルアッセイプレート(Corning)にプレーティングした。アッセイ培地中、3倍の濃度でモノクローナル抗体(脱フコシル化PI-7012抗TREM2、PI-7012抗TREM2、及びPI-7012抗TREM2 Fcサイレント抗体を含む)の用量滴定を調製し、25μLの抗体を細胞懸濁液に添加した。抗体の添加後、75,000個の細胞を含有する25μLのエフェクター細胞懸濁液をウェルに添加して、3:1のエフェクター:標的細胞比を得た。細胞を5%CO2、37℃に設定したインキュベーターで約5.5時間共培養した後、75μLのBio-Gloルシフェラーゼアッセイ試薬(Promega)を各ウェルに加え、アッセイプレートをさらに遮光しながら15分間インキュベートした。発光(RLU)をTecan Sparkプレートリーダーで評価し、ADCC活性の代理測定として使用した。
【0364】
結果
図8に見られるように、脱フコシル化抗TREM2 mAb(円形のデータポイントによって示される)は、NFATレポーター活性によって測定されるように、ADCCの最大の誘導を引き起こした。脱フコシル化されていない抗TREM2抗体も、相対レベルが低下しているにもかかわらず、ADCCを誘導した。対照的に、ADCCの測定可能な誘導は、Fc-サイレント抗TREM2 mAbで治療された標的細胞において観察されなかった。
【0365】
実施例11:肝線維症の抗TREM2抗体治療
げっ歯類における以前の研究は、肝線維症の進行及び退縮の両方を調整するマクロファージ亜集団を強調しており、局所増殖は、げっ歯類モデルにおける線維症の部位におけるマクロファージの拡大において重要な役割を果たす。Duffield JS,et al.J Clin Invest.2005;115:56-65.、Ramachandran P,et al.Proc Natl Acad Sci.2012;109:E3186-E3195.、Karlmark KR,et al.Hepatology.2009;50:261-274.、Minutti CM,et al.Science(80-.).2017;356:1076-1080。
【0366】
8~10週齢の成体雄C57BL/6JCrlマウスは、Charles Riverから購入する。マウスは、特定の病原体を含まない条件下で収容される。すべての実験プロトコルは倫理的に承認されている。肝線維症は、以前に記載されているように、オリーブ油中で1:3で希釈した、0.4μl/体重g数の用量の週2回の腹腔内四塩化炭素(CCl4)の4週間(9回の注射)で誘導される(Ramachandran P,et al.Proc Natl Acad Sci.2012;109:E3186-E3195.)。マウスは、CCl4を受けるか、または健康な対照として機能するようにランダムに割り当てられる。
【0367】
マウスに、CCl4投与後に抗体治療を行う。抗体は、抗TREM2またはアイソタイプ対照のいずれかである。例示的な抗体投与プロトコルを以下の表6に示す。PI-7012、Fc-サイレントPI-7012、及びAfuc-PI-7012(PI37012のCDR配列を有し、マウスIgG2aフォーマットでマウス化されている)を、USPN 10,836,828(あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように生成した。
【0368】
【0369】
肝臓組織は、最終的なCCl4注射の後の異なる時点で採取される。
【0370】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して線維症の退縮または線維症進行の遅延をもたらす。
【0371】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して、瘢痕領域におけるTREM2+マクロファージの数の減少をもたらす。
【0372】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して、肝硬変性肝臓(例えば、線維化ニッチ内)におけるTREM2+マクロファージの数の減少をもたらす。
【0373】
加えて、体重、肝臓重量、肝臓酵素、生存、ヒドロキシプロリン、及び/または組織病理学は、対照と比較して、抗TREM2抗体治療群の改善を示す。
【0374】
実施例12:追加の線維症モデルにおける抗TREM2抗体治療
肺、NASH、皮膚、及び腎臓を含む追加の線維症モデルを試験する。
【0375】
肺
肺線維症は、Della Latta,V,et al.Pharmacol Res.2015;97:122-130、Izbicki,G,et al.Int J Exp Pathol.2002;83:111-119、及びMouratis,MA,et al.Curr Opin Pul Med.2011;17:355-361(これらは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、ブレオマイシン投与(中咽頭)によって誘導される。代替的に、肺線維症は、Barbarin,V,et al.Respir Res.2005;6:112、及びBrass,DM,et al.Am J Physiol Lung Cell Mol Physio 2010;200:L664-L671に記載されるように、中咽頭経路を介して送達されるシリカによって誘導される。マウスに、ブレオマイシン投与後に抗体治療を行う。抗体は、抗TREM2またはアイソタイプ対照のいずれかである。例示的な抗体投与プロトコルを以下の表7に示す。
【0376】
【0377】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して線維症の退縮または線維症進行の遅延をもたらす。
【0378】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して、瘢痕領域におけるTREM2+マクロファージの数の減少をもたらす。
【0379】
加えて、体重、正規化された肺重量、BAL白血球数、BALサイトカインレベル、及び/またはSircolアッセイは、対照と比較して、抗TREM2抗体治療群の改善を示す。
【0380】
NASH
非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)は、Nakamura,A et al.Int J Mol Sci.2013;14:21240-21257、Xu,Z-J,et al.Dig Dis Sci.2010;55:931-940、及びLarter,CZ,et al.J Gastroen Hepatol.2008;23:1635-1648(これらは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、14週間にわたって高脂肪餌を与えることによって誘導される。
【0381】
マウスに、高脂肪餌投与後に抗体治療を行う。抗体は、抗TREM2またはアイソタイプ対照のいずれかである。例示的な抗体投与プロトコルを以下の表8に示す。
【0382】
【0383】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して線維症の退縮または線維症進行の遅延をもたらす。
【0384】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して、瘢痕領域におけるTREM2+マクロファージの数の減少をもたらす。
【0385】
加えて、体重、肝臓重量、肝臓酵素、組織学、生存、ヒドロキシプロリン、MCP1、コラーゲン、SMA-a、トリグリセリド、コレステロール、及び/または組織病理学は、対照と比較して、抗TREM2抗体治療群の改善を示す。
【0386】
皮膚
皮膚線維症は、Yamamoto,T,et al.Exp Dermatol.2005;14:81-95、Ruzehaji,N,et al.Arthritis Res Ther.2015;17:145、及びYamamoto,T,et al.J Invest Dermatol.1999;112:456-462(これらは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、ブレオマイシン投与によって誘導される。
【0387】
マウスに、ブレオマイシン投与後に抗体治療を行う。抗体は、抗TREM2またはアイソタイプ対照のいずれかである。例示的な抗体投与プロトコルを以下の表9に示す。
【0388】
【0389】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して線維症の退縮または線維症進行の遅延をもたらす。
【0390】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して、瘢痕領域におけるTREM2+マクロファージの数の減少をもたらす。
【0391】
加えて、体重、組織学、及び/またはヒドロキシプロリンは、対照と比較して、抗TREM2抗体治療群の改善を示す。
【0392】
腎臓
腎線維症は、Chavalier,RL,et al.Kidney Int.2009;75:1145-1152及びNogueira,A,et al.In Vivo.2017;31:1-22(これらは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、尿管閉塞によって誘導される。代替的に、Yang,H-C,et al.Drug Discov Today Dis Models.2010;7:13-19及びStreet,JM,et al.Physiol Rep.2014;2:e12088(これらは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、葉酸による処理によって、腎線維症が誘導される。
【0393】
マウスに、尿管閉塞後に抗体治療を行う。抗体は、抗TREM2またはアイソタイプ対照のいずれかである。例示的な抗体投与プロトコルを以下の表10に示す。
【0394】
【0395】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して線維症の退縮または線維症進行の遅延をもたらす。
【0396】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して、瘢痕領域におけるTREM2+マクロファージの数の減少をもたらす。
【0397】
加えて、腎臓重量、組織学、及び/またはヒドロキシプロリンは、対照と比較して、抗TREM2抗体治療群の改善を示す。
【0398】
心臓
心臓線維症は、Kaur,H,et al.Circ Res.2016;118:1906-1917、Sopel,MJ,et al.Lab Invest.2011;91:565-578、及びWang,N-P,A,et al..J Renin Angiotensin Aldosterone Syst.2017;18:1470320317706653(これらは、あらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる)に記載されるように、アンジオテンシンIIの注入によって誘導される。
【0399】
マウスに、アンジオテンシンIIによる治療後に抗体治療を行う。抗体は、抗TREM2またはアイソタイプ対照のいずれかである。例示的な抗体投与プロトコルを以下の表11に示す。
【0400】
【0401】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して線維症の退縮または線維症進行の遅延をもたらす。
【0402】
抗TREM2抗体の投与は、対照と比較して、瘢痕領域におけるTREM2+マクロファージの数の減少をもたらす。
【0403】
加えて、心臓重量、組織学、及び/またはヒドロキシプロリンは、対照と比較して、抗TREM2抗体治療群の改善を示す。
【0404】
実施例13:肝線維症の抗TREM2抗体治療
材料及び方法
Jackson Laboratoryからの6~8週齢のC57BL/6J雄マウスを5つの群に分けた。すべての群に、24週間にわたって週1回のCCl4注射(0.2μl、100%CCl4/体重のグラム数)を加えたWestern餌と砂糖水(フルクトース/グルコース混合物)を与えた。Jiao,J.,et al,2012 Dendritic cell regulation of carbon tetrachloride-induced murine liver fibrosis regression.Hepatology 55,244-255を参照されたい。群3(アイソタイプ対照)及び群4(抗TREM2[Afuc PI-7012、)の各々3匹の動物を22週間にわたって治療した。オベチコール酸(OCA)を陽性対照として使用した。すべてのマウス群に、12週間にわたって治療を行わず餌のみを与えた。抗体またはOCAによる治療は、13週目に開始した。プロトコルは、以下の表12に提供される。
【0405】
【0406】
動物を、CCl4注射の前に1週間に1回計量した。薬物及びビヒクルを、5日ごとまたは1日1回(群5)、12週間(13~24週間)にわたって腹腔内投与した。薬物の量を体重に合わせて調整した。順応期間及び薬物治療期間中、すべての動物を投与期間中毎日検査した。動物の状態に関する任意の公然の行動/生理学的影響または他の関連する観察を記録した。
【0407】
ビヒクル及び抗TREM2抗体群の各々3匹の動物を22週目に安楽死させ、scRNA分析を進めるかどうかを決定した。これらの動物からの肝臓を計量し、10%ホルマリンで固定し、切片化し、H&E及びシリウスレッドで染色した。実験の終了時に、マウスの体重、肝臓及び脾臓の重量を記録した。血清トランスアミナーゼ(ALT及びAST)、血清中の総コレステロール及びトリグリセリド、投与前16週、投与後4時間及び終了時の抗TREM2抗体曝露分析(データ図示せず)を含む血清分析のために血液を採取した。
【0408】
肝葉を10%ホルマリンで固定し、埋包し、切片化し、H&E及びシリウスレッドで染色した。一般形態は、盲検化された病理医によって評価され、NAFLD活性スコア(小葉炎症、脂肪症、風船様肝細胞)及び線維症ステージを評価した。形態測定によるコラーゲン定量化は、製造業者の指示に従ってBioquant(商標)で決定した。標準的なプロトコルに従って、mRNA及びタンパク質抽出のために、急速凍結肝臓組織を調製した。以下の線維原性遺伝子についてqPCRを行った。コラーゲンI、アルファ-1平滑筋アクチン、ベータ-PDGF受容体、MMP2、及びTIMP2。データを、好適なハウスキーピング遺伝子に対して正規化した。a-SMA及びコラーゲンのウェスタンブロッティングも行った。
【0409】
結果
図9に示されるように、対照と比較して、抗TREM2抗体治療後の肝線維症の著しい減少が観察された。
図9の左パネルは、mIgG2aアイソタイプ対照抗体または抗TREM2抗体で治療されたマウス由来の肝臓のH&E染色を示す。肝線維症の著しい減少が、抗TREM2抗体で治療されたマウスの肝臓において観察された。個々のマウス肝臓中のコラーゲン量も、PSR染色を介して定量化した。
図9の右パネルに示されるように、抗TREM2抗体による治療は、12週間または24週間の未治療マウス及びアイソタイプ対照マウスと比較して、コラーゲンを著しく減少させた。
図9の右パネルにも示されるように、抗TREM2抗体による治療は、対照OCA治療マウスよりもコラーゲンを減少させた。表13及び14は、TREM2抗体(表13)及びOCA(表14)で治療された個々のマウスにおけるPSR陽性面積を提供する。
【0410】
【0411】
TREM2抗体治療マウスのうち2匹は、0.01未満のPSR陽性面積を有し、12匹のTREM2抗体治療マウスのうち10匹は、0.1未満のPSR陽性面積を有していた(83.3%)。対照的に、OCA治療マウスのいずれも0.01未満のPSR陽性面積を有しておらず、13匹のOCA治療マウスのうちの7匹のみが0.1未満のPSR陽性面積を有していた(53.8%)。したがって、TREM2抗体治療は、OCA治療と比較して、線維症の低減において、より効果的であった。
【0412】
したがって、抗TREM2抗体治療は、インビボ肝線維症モデルにおいて、線維症を首尾良く低減した。
参考文献
1.Nimmerjahn,F.& Ravetch,J.V.Divergent Immunoglobulin G Subclass Activity Through Selective Fc Receptor Binding.Science(80-.).310,1510 LP-1512(2005).
2.Ford,J.W.& McVicar,D.W.TREM and TREM-like receptors in inflammation and disease.Curr.Opin.Immunol.21,38-46(2009).
3.Colonna,M.TREMs in the immune system and beyond.Nat.Rev.Immunol.3,445(2003).
4.Takahashi,K.,Rochford,C.D.P.& Neumann,H.Clearance of apoptotic neurons without inflammation by microglial triggering receptor expressed on myeloid cells-2.J.Exp.Med.201,647 LP-657(2005).
5.Piccio,L.et al.Blockade of TREM-2 exacerbates experimental autoimmune encephalomyelitis.Eur.J.Immunol.37,1290-1301(2007).
6.Broz,M.L.et al.Dissecting the Tumor Myeloid Compartment Reveals Rare Activating Antigen-Presenting Cells Critical for T Cell Immunity.Cancer Cell 26,638-652(2017).
【0413】
本発明は、好ましい実施形態及び様々な代替実施形態を参照して特に示され、説明されてきたが、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態及び詳細における様々な変更が本明細書になされ得ることは、関連する技術分野の当業者には理解されよう。
【0414】
本明細書の本文中で引用したすべての参考文献、発行済特許、及び特許出願は、それらの全体があらゆる目的のために参照により本明細書に組み込まれる。
【0415】
【配列表】
【国際調査報告】