(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】構成要素の位置検出のための静電容量センシング
(51)【国際特許分類】
A61M 5/142 20060101AFI20241108BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61M5/142 520
A61M5/145 500
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531650
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-07-26
(86)【国際出願番号】 US2022051074
(87)【国際公開番号】W WO2023101909
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519167449
【氏名又は名称】インスレット コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100112357
【氏名又は名称】廣瀬 繁樹
(74)【代理人】
【識別番号】100114018
【氏名又は名称】南山 知広
(74)【代理人】
【識別番号】100153729
【氏名又は名称】森本 有一
(72)【発明者】
【氏名】ケペイ サン
(72)【発明者】
【氏名】ベンジャミン ラクロワ
(72)【発明者】
【氏名】スティーブン カーディナリ
(72)【発明者】
【氏名】カイル ブレインガン
(72)【発明者】
【氏名】ジェリー ウィット
(72)【発明者】
【氏名】キャロリン レイスタッド
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス コンテ
【テーマコード(参考)】
4C066
【Fターム(参考)】
4C066BB01
4C066CC01
4C066DD12
4C066QQ48
4C066QQ55
4C066QQ82
4C066QQ84
(57)【要約】
本出願においては、リニアシャトル式ポンプ等であるポンプの構成要素を位置決めするための薬剤送達装置及び方法が開示される。幾つかのアプローチでは、システムが、互いに対して移動可能な第1の端子及び第2の端子と、第1の端子と第2の端子が互いに対して移動する際に、第1の端子と第2の端子の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置と、を備える。このセンサ装置は、コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備え、2ステージ式の充電装置は、第1のスイッチに接続された第1のコンデンサと第2のスイッチに接続された第2のコンデンサとを有しており、コントローラは、第1のスイッチを閉じて第1のコンデンサを電圧源に接続し、第1のコンデンサを充電するように、かつ、第1のスイッチを開きかつ第2のスイッチを閉じて、第2のコンデンサを電圧源に接続し、第2のコンデンサを充電するように、動作可能である。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
システムであって、前記システムは、
互いに対して移動可能な第1の端子及び第2の端子と、
前記第1の端子と前記第2の端子が互いに対して移動する際に、前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置と、を備えており、前記センサ装置は、
コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備えており、前記2ステージ式の充電装置は、第1のスイッチに接続された第1のコンデンサと第2のスイッチに接続された第2のコンデンサとを備えており、前記コントローラは、
前記第1のスイッチを閉じて前記第1のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第1のコンデンサを充電するように、かつ、
前記第1のスイッチを開きかつ前記第2のスイッチを閉じて、前記第2のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第2のコンデンサを充電するように、動作可能である、システム。
【請求項2】
前記コントローラは、各サイクルについて、前記第1のコンデンサの第1の電圧と前記第2のコンデンサの第2の電圧を等しくするように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、カルマンフィルタを用いつつ、前記第2のコンデンサを連続的に充電及び放電するように動作可能である、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記2ステージ式の充電装置は第3のスイッチを備えており、かつ前記コントローラは、前記第1のコンデンサが充電されているときに前記第3のスイッチを開き、かつ前記第1のコンデンサが放電させられているときに前記第3のスイッチを閉じるように動作可能である、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記システムは、移動可能なピストンを有するポンプ機構をさらに備えており、前記第1の端子は前記ピストンに接続されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記第2の端子は導電要素であり、前記導電要素は誘電材料に結合されている、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
前記誘電材料はプリント回路基板である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記導電要素は、前記導電要素と前記第1の端子の間の静電容量が、前記導電要素の第1の端と第2の端の間で増加するような、変化のある形状を有している、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
リニアシャトル式ポンプであって、前記リニアシャトル式ポンプは、
互いに対して移動可能な第1の端子及び第2の端子を備え、前記第1の端子はポンプ機構の一部であり、前記リニアシャトル式ポンプはさらに、
前記第1の端子と前記第2の端子が互いに対して移動する際に、前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置を備えており、前記センサ装置は、
コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備えており、前記2ステージ式の充電装置は、第1のスイッチに接続された第1のコンデンサと第2のスイッチに接続された第2のコンデンサとを備えており、前記コントローラは、
前記第1のスイッチを閉じて前記第1のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第1のコンデンサを充電するように、かつ、
前記第1のスイッチを開きかつ前記第2のスイッチを閉じて、前記第2のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第2のコンデンサを充電するように、動作可能である、リニアシャトル式ポンプ。
【請求項10】
前記コントローラは、各ポンピングサイクルについて、前記第1のコンデンサの第1の電圧と前記第2のコンデンサの第2の電圧を等しくするように動作可能である、請求項9に記載のリニアシャトル式ポンプ。
【請求項11】
前記コントローラは、カルマンフィルタを用いつつ、前記第2のコンデンサを連続的に充電及び放電するように動作可能である、請求項9に記載のリニアシャトル式ポンプ。
【請求項12】
前記2ステージ式の充電装置は第3のスイッチを備えており、かつ、前記コントローラは、前記第1のコンデンサが充電されているときに前記第3のスイッチを開き、かつ前記第1のコンデンサが放電させられているときに前記第3のスイッチを閉じるように動作可能である、請求項11に記載のリニアシャトル式ポンプ。
【請求項13】
前記ポンプ機構はピストングリップを備えており、前記第1の端子は前記ピストングリップの一部である、請求項9に記載のリニアシャトル式ポンプ。
【請求項14】
前記第2の端子は導電要素であり、かつ、前記導電要素は、前記導電要素と前記第1の端子の間の静電容量が、前記導電要素の第1の端と第2の端の間で増加するような、変化のある形状を有している、請求項9に記載のリニアシャトル式ポンプ。
【請求項15】
方法であって、前記方法は、
第1の端子を第2の端子に隣接するように位置決めすることであって、前記第1の端子と前記第2の端子は互いに対して移動可能である、位置決めすることと、
前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量の変化を、センサ装置を用いて検出することであって、前記センサ装置は、コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備えている、検出することと、
前記コントローラによって、第1のスイッチを閉じて第1のコンデンサを前記電圧源に接続することによって、前記第1のコンデンサを充電することと、
前記コントローラによって、前記第1のスイッチを開きかつ第2のスイッチを閉じて、第2のコンデンサを前記電圧源に接続することによって、前記第2のコンデンサを充電することと、を含む方法。
【請求項16】
前記方法は、各ポンピングサイクルについて、前記コントローラによって、前記第1のコンデンサの第1の電圧と前記第2のコンデンサの第2の電圧を等しくすることをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記方法は、カルマンフィルタを用いつつ、前記第2のコンデンサを連続的に充電及び放電することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
前記第2のコンデンサを連続的に充電及び放電することは、
前記第1のコンデンサが充電されているときに前記コントローラによって第3のスイッチを開くことと、
前記第1のコンデンサが放電させられているときに前記コントローラによって前記第3のスイッチを開くことと、を含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記方法は、ピストングリップを備えるポンプ機構を提供することをさらに含んでおり、前記第1の端子は前記ピストングリップの一部である、請求項15に記載の方法。
【請求項20】
前記方法は、前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量が、前記第2の端子の第1の端と第2の端の間で増加するように、前記第2の端子の形状を変化させることをさらに含んでいる、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願)
本出願は、2021年11月30日に出願された、米国仮特許出願第63/284150号の利益を主張する。該出願の内容すべてが、参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本明細書に記載の実施形態は、概して薬剤送達に関する。より具体的には、本明細書に記載の実施形態は、静電容量センシングを使用してポンプ装置要素の位置を検出する、ウェアラブル薬剤送達装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0003】
多くのウェアラブル薬剤送達装置は、液体薬剤を格納するためのリザバーと、駆動機構であって、ポンプチャンバ及びピストンを備えたポンプ等であり、格納された液体薬剤をユーザへの送達のためにリザバーから吐出させる駆動機構と、を備えている。既知の装置が抱える欠点は、液体の体積が小さいときには、送達量の正確性が落ちることである。そのような不正確性は、送達量にばらつきを生じる駆動機構が採用されている多くの事例において立ち現れている。従って、駆動機構の位置及びシークエンシングを同時に確かめつつ薬剤送達の投与量を調整することができるウェアラブル薬剤送達装置を提供することへのニーズが存在する。
【発明の概要】
【0004】
本開示の幾つかの実施形態では、システムが、互いに対して移動可能な第1の端子及び第2の端子と、前記第1の端子と前記第2の端子が互いに対して移動する際に、前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置と、を備え得る。前記センサ装置は、コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備え得るのであり、前記2ステージ式の充電装置は、第1のスイッチに接続された第1のコンデンサと第2のスイッチに接続された第2のコンデンサとを備えており、前記コントローラは、前記第1のスイッチを閉じて前記第1のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第1のコンデンサを充電するように、かつ、前記第1のスイッチを開きかつ前記第2のスイッチを閉じて、前記第2のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第2のコンデンサを充電するように、動作可能である。
【0005】
本開示の幾つかの実施形態では、ウェアラブル薬剤送達装置が、互いに対して移動可能な第1の端子及び第2の端子を備え得るのであり、前記第1の端子はポンプ機構の一部であり、前記リニアシャトル式ポンプはさらに、前記第1の端子と前記第2の端子が互いに対して移動する際に、前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置を備え得る。前記センサ装置は、コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備え得るのであり、前記2ステージ式の充電装置は、第1のスイッチに接続された第1のコンデンサと第2のスイッチに接続された第2のコンデンサとを備えており、前記コントローラは、前記第1のスイッチを閉じて前記第1のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第1のコンデンサを充電するように、かつ、前記第1のスイッチを開きかつ前記第2のスイッチを閉じて、前記第2のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第2のコンデンサを充電するように、動作可能である。
【0006】
本開示の幾つかの実施形態では、リニアシャトル式ポンプが、互いに対して移動可能な第1の端子及び第2の端子を備え得るのであり、その場合、前記第1の端子はポンプ機構の一部であり、前記リニアシャトル式ポンプはさらに、前記第1の端子と前記第2の端子が互いに対して移動する際に、前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置を備え得る。前記センサ装置は、コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備え得るのであり、前記2ステージ式の充電装置は、第1のスイッチに接続された第1のコンデンサと第2のスイッチに接続された第2のコンデンサとを備えており、前記コントローラは、前記第1のスイッチを閉じて前記第1のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第1のコンデンサを充電するように、かつ、前記第1のスイッチを開きかつ前記第2のスイッチを閉じて、前記第2のコンデンサを前記電圧源に接続し、前記第2のコンデンサを充電するように、動作可能である。
【0007】
本開示の幾つかの実施形態では、方法が、第1の端子を第2の端子に隣接するように位置決めすることであって、前記第1の端子と前記第2の端子は互いに対して移動可能である、位置決めすることと、前記第1の端子と前記第2の端子の間の静電容量の変化を、センサ装置を用いて検出することであって、前記センサ装置は、コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を備えている、検出することと、を含み得る。前記方法はさらに、前記コントローラによって、第1のスイッチを閉じて第1のコンデンサを前記電圧源に接続することによって、前記第1のコンデンサを充電することと、前記コントローラによって、前記第1のスイッチを開きかつ第2のスイッチを閉じて、第2のコンデンサを前記電圧源に接続することによって、前記第2のコンデンサを充電することと、を含み得る。
【0008】
添付の図面は、本発明の原理の実際上の適用例を含む、本開示の例示的なアプローチを示している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態による例示的なリニアシャトル式流体ポンプの斜視図を示している。
【
図2】
図2は、本開示の実施形態による、
図1に描かれたリニアシャトル式流体ポンプの端面図を示している。
【
図3A】
図3Aは、本開示の実施形態による、使用中の第1の端子及び第2の端子の単純化された図である。
【
図3B】
図3Bは、本開示の実施形態による、使用中の第1の端子及び第2の端子の単純化された図である。
【
図4】
図4は、本開示の実施形態によるセンサ装置の概略図である。
【
図5A】
図5Aは、本開示の実施形態による、連続的な電圧充電曲線を示すグラフである。
【
図5B】
図5Bは、本開示の実施形態による、連続的な電圧充電曲線を示すグラフである。
【
図6】
図6は、本開示の実施形態によるセンサ装置の概略図である。
【
図7A】
図7Aは、本開示の実施形態による、連続的な電圧充電曲線を示すグラフである。
【
図7B】
図7Bは、本開示の実施形態による、連続的な電圧充電曲線を示すグラフである。
【
図8】
図8は、本開示の実施形態によるプロセスを示している。
【
図9】
図9は、本開示の実施形態によるプロセスを示している。
【
図10】
図10は、本開示の実施形態による、薬剤送達システムの概略図を示している。
【0010】
図面は必ずしも縮尺どおりではない。図面は単なる表現であり、本開示の具体的なパラメタを描くことは意図されていない。図面は、本開示の例示的な実施形態を描くことを意図されており、従って範囲を限定するものとはみなされない。図面においては、同様の符号は同様の要素を示している。
【0011】
さらに、説明の明瞭性のために、図面中の特定の要素が省略されている場合もあれば、縮尺どおりでなく描かれている場合もある。横断面図は、説明の明瞭性のために、「スライス」の形態であるか又は「近視の」(near-sighted)横断面図であり、「真の」横断面図であれば見ることができるだろう特定の背景線が省略されているという場合がある。さらに、幾つかの参照符号が、特定の図面において省略されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本開示に従う各種アプローチが、添付の図面を参照しつつ、以下でより完全に記述され、方法の実施形態も示される。アプローチは、多くの異なる形態で具現化され得るのであり、本明細書に記載の実施形態のみに限定されると解釈されるべきではない。代わりに、これらの実施形態は、本開示がより徹底的かつ完全なものであるように、かつ当業者に対してアプローチの範囲をより完全に伝えるように、提供される。
【0013】
本明細書で開示される各種例は、ポンプの位置及びシークエンシングを制御しかつより正確に確かめる能力を備えた駆動機構及び/又はポンプシステムを提供する。結果として、リザバー及びポンプを含む薬剤送達装置は、信頼性がより高いものに、従ってユーザにとってより安全であるものになり得る。
【0014】
本明細書に記載の各種例は、ポンプが、例えばリニアシャトル式ポンプ(LVSP、linear volume shuttle pump)が、ポンピングサイクルを適切なシークエンスで実行することを可能にする。ポンプ作動中の任意の所定の時刻において、異なるポンプ要素の、即ちポンプチャンバ及びピストンの位置を知ることは有益であり、というのもポンプチャンバ及びピストンは流体の引き込み及び吐出を担当しているからである。ポンプチャンバ及びピストンの両方の位置を知ることはまた、ポンプが設計されたシークエンスで動作しているか否かを示唆しもする。本開示の幾つかの例では、第1の端子又は接触部がピストンに結合されてピストングリップ上に配置されており、かつ第2の端子又は接触部がピストングリップの下に配置されている、という場合がある。幾つかの例では、第2の端子は、プリント回路基板(PCB)内又はそれの頂部に結合されているか又は埋め込まれている、導電要素又は導電プレート(例:銅製)であり得る。本明細書でより詳細に記述されるように、2つの端子の間で形成される静電容量が、ポンプの移動している機械的部分の位置を検出するために用いられ得るのであって、これはひいてはチャンバ及びピストンの位置を追跡することのために用いられ得る。システムによって得られた、ポンプチャンバの位置についての位置情報は、例えば、ポンプが流体を適切に引き込むか又は吐出させることを保証し、究極的には引き込まれるか又は吐出させられる流体の体積を保証するように用いられ得る。
【0015】
本明細書はLVSPの文脈で記述されているが、ウェアラブル薬剤送達装置のための他のタイプのポンプ機構も、本開示の範囲内で可能である。さらに、本明細書に記載のウェアラブル薬剤送達装置は、血中グルコースセンサ等の分析物センサを備え得るのであって、センサのカニューレ又はマイクロニードルアレイは、装置が装置のユーザの分析物レベルを測定できるように、動作可能であり得る。
【0016】
図1~2は、本開示の実施形態によるLVSP100(以後、「ポンプ」)を示している。図示されているように、ポンプ100は、ポンプハウジング102を備え得るのであり、ここでポンプハウジング102は、流体リザバー104、ポンプチャンバ106、及びピストン108と結合して一体化している。示されている位置では、ピストン108は、そのストロークの最後には、ポンプチャンバ106内に完全に挿入され得る。幾つかの実施形態では、流体リザバー104は、流体又は液体の薬剤を含み得る。ポンプハウジング102は、基部110、ポンプチャンバ106を保持するための、基部110から延びるシャーシ111、及びポンプチャンバ106とインタフェース接続するように動作可能なリザバー壁112を備え得る。限定するものではないが、ポンプハウジング102は、射出成型プラスチック又は他の類似の材料から形成され得る。
【0017】
図示されてはいないが、ポンプチャンバ106は、入口通路又は入口要素、及び出口通路又は出口要素を備え得る。液体又は流体は、入口通路を通ってポンプチャンバ106に入り、出口通路を通ってポンプチャンバ106から出ていくことができる。1つ以上のプランジャー要素が、入口通路及び出口通路と一緒に動作し、流体をポンプチャンバ106内へと引き込み、かつポンプチャンバ106からその流体を吐出させることができる。様々な例では、ポンプチャンバ106は、流体又は液体の薬剤を格納する流体リザバー104に結合され得る。例えば、入口は流体リザバー104に結合されており、出口通路は、流体リザバー104内に格納されている流体薬剤を受け取るべき患者又はユーザに結合されている流体経路要素(図示されてはいない)に結合されている、という場合がある。
【0018】
さらに図示されているように、ポンプ100は、ポンプチャンバ106に結合されたディテント装置115を備え得る。幾つかの実施形態では、このディテント装置115は、ディテントキャップ又はボディ116、ディテントボディ116から延びる1つ以上のディテントアーム117、及び1つ以上のディテント係合部材118を備え得る。図示されているように、ディテント係合部材118は、基部110から延び得る。ディテントボディ116は、ポンプチャンバ106の一端を覆うように延びかつ/又はそれに当接し得る。幾つかの実施形態では、ディテントボディ116は、ピストン108にさらに当接し得るのであり、その際、ディテントボディ116の開口(図示されてはいない)は、ピストン108のロッド132(
図2)がそれを貫通することができるようにし得る。上記のディテント装置115は非限定的なものであり、他のポンプ構造が本開示の範囲内で可能であることは、理解されたい。
【0019】
ディテントアーム117は、1つ以上の峰部の間に配置された凹部又は谷部であり得る、1つ以上の捕獲位置を備え得る。この捕獲位置は、ディテント係合部材118の寸法に概ね従うようにカーブさせられ得るのであり、この例においては、丸みを帯びた突出部122を備え得る。この捕獲位置は、所望の時刻より前にディテントボディ116が移動することを制限するような追加的な摩擦力を加えることによって、ポンプチャンバ106及び/又はピストン108の離散的な位置決めを可能にし得る。
【0020】
さらに図示されているように、ポンプ100は、ピストン108に結合されたピストングリップ125を備え得る。ピストングリップ125は、ピストン108の外側と係合している1つ以上のグリップ要素(図示されてはいない)を備え得る。動作中、ピストングリップ125の移動によって、ピストン108は、ポンプチャンバ106内の流体の受け取り及び送達を制御するために、ポンプチャンバ106に対して軸方向に移動させられる。ピストングリップ125は、多様な機構及び/又はアクチュエータによって作動させられ得る。様々な例において、ピストングリップ125は、往復移動をもたらすことができるアクチュエータによって作動させられ得るのであり、そのようなアクチュエータとしては、例えば圧電ベースのアクチュエータ、ソレノイドベースのアクチュエータ、ニチノールベースのアクチュエータ、ばねベースのアクチュエータ、ギア列を有する回転モータ、直流(DC)モータ、又はそれらの任意の組み合わせが挙げられる。これらの例の各々を用いて、流体を往復させる所望の効果を達成することができる。
【0021】
幾つかの実施形態では、ピストングリップ125は、ピストン108の反対同士の側に延びるグリップボディ127を備え得る。グリップボディ127は、概ね平面的な構成要素であり得るのであり、それから延びる1つ以上のばねフッター128を含んでいる。図示されているように、各ばねフッター128は、側部ばね129に係合しかつそれを内部に保持するための1つ以上のタブ171を備え得る。この実施形態では、2つの側部ばね129は、ピストン108の反対同士の側上に、ピストン108、ポンプチャンバ106、及びディテントボディ116を通って延びる中央軸に平行に、配置され得る。もっとも、代替的な実施形態においては、1つのばねが用いられ、その1つのばねが軸方向にピストン108と整列させられている場合もある。側部ばね129は、ピストングリップ125を、従ってピストン108を、ポンプチャンバ106に向かって付勢するように、又は他の実施形態ではポンプチャンバ106から離れるように付勢するように、ばね力を提供し得る。
【0022】
図2に示されているように、幾つかの実施形態では、ポンプ100は、ピストングリップ125にもしくはその一部に結合されているか又はピストン108と一緒に移動可能である、第1の端子140を備え得る。より具体的には、第1の端子140は、ピストングリップ125の下方ブリッジ142に結合された導電プレート(例:銅製)であり得る。下方ブリッジ142は、PCB143に結合されているか又はその中に埋め込まれている導電プレート(例:銅製)であり得る第2の端子141を覆うように、延び得る。第1の端子140は、代替的な実施形態においては、ピストングリップ125の複数の異なる部分に対して固定され得る。
【0023】
図3A~3Bは、使用中の第1の端子140、第2の端子141、及び基板(例:PCB143)の単純化された表現である。第1の端子140及びピストングリップ(図示されてはいない)は、
図3Aに示された第1の位置と
図3Bに示された第2の位置の間を、往復する形で移動し得る。幾つかの実施形態では、第2の端子141は、以下のような変化のある形状(例:三角形)を有している、即ち、第1の端子140と第2の端子141の間の重複表面積が増加することによって、第2の端子141の第1の端145から第2の端146の間での静電容量を増加させるような、変化のある形状を有している。第1の端子140と第2の端子141の間の、(例えば、y方向の)離隔距離が、検出可能な範囲の静電容量を形成するように選択され得る。限定するものではないが、離隔距離は、50~200ミクロンの間であるとよい。幾つかの実施形態では、より大きな静電容量が所望でありかつ追加的な摩擦が第1の端子140と第2の端子141の間の移動に影響しない場合には、基板は誘電体であり、第1の端子140と第2の端子141の間の空間又はギャップ「G」(
図3A)はより小さく設けられ得る。
【0024】
図4は、第1の端子140と第2の端子141が互いに対して移動する際の、第1の端子140と第2の端子141の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置150の概略図である。図示されているように、センサ装置150は、第1のコンデンサ(CS)151、第2のコンデンサ152(CR)、第1のスイッチ(SW1)153、及び第2のスイッチ154(SW2)を含む2ステージ式の充電装置であり得る。第1のコンデンサ151及び第2のコンデンサ152は、1つの側では電圧源(VS)156に接続されており、第2の側ではマイクロコントローラユニット(MCU)であり得るコントローラ155に接続されている。限定するものではないが、コントローラ155は、パルス幅変調装置(PWM)タイマー158、入力/出力駆動部又はコンパレータ入力部159、及びカウンタ160を備えているとよい。第1のスイッチ153は、第1のコンデンサ151と電圧源156の間に配置され得るのであり、一方、第2のスイッチ154は第1のコンデンサ151と第2のコンデンサ152の間に配置され得る。
【0025】
使用中には、コントローラ155は、第1のスイッチ153及び第2のスイッチ154を動作させ、第2のコンデンサ152に電圧を充電し得る。例えば、ポンプチャンバ106の充填及び吐出のサイクルの各々について、コントローラ155は電圧源156を第1のコンデンサ151と接続して第1のコンデンサ151を完全に充電し、その後、第1のスイッチ153を開きかつ第2のスイッチ154を閉じ、第1のコンデンサ151の電圧と第2のコンデンサ152の電圧を等しくすることができる。第2のコンデンサ152の電圧は、
図5Aに示されているように、増加を示す連続的な充電曲線として現れ得る。
図5Bは、離散的な時間間隔にわたる充電曲線を例示している幾つかの実施形態では、この充電プロセスは離散的な時間のポンピングプロセスとして見られ得るのであり、VRの上昇は、電圧源156によって完全に充電されたVSからの各n番目の時間ごとに、以下の数式1に従って計算することができる。
【0026】
【0027】
幾つかの実施形態では、測定継続時間Tmeasは、コントローラ155によって、VRの充電開始からVRが特定の閾値に達するまでのカウンタ値増分をカウントすることによって、得られ得る。この閾値は、デジタルI/Oレベル「High」であるか、コンパレータ入力部159にセットされた電圧トリガ値であるかのいずれかであり得る。
【0028】
図6は、第1の端子と第2の端子が互いに対して移動している際、第1の端子と第2の端子の間の静電容量の変化を検出するように動作可能なセンサ装置250の概略図である。この実施形態では、第1のコンデンサ(Cs)251及び/又は第2のコンデンサ252(Cr)の充電/放電を高速で検出することを可能にすべく、カルマンフィルタが採用され得る。図示されているように、センサ装置250は、第1のスイッチ(SW1)253及び第2のスイッチ254(SW2)をさらに備え得る。第1のコンデンサ251及び第2のコンデンサ252は、1つの側では電圧源(Vs)256に接続されており、第2の側ではMCUであり得るコントローラ255に接続されているという場合がある。限定するものではないが、コントローラ255は、PWMタイマー258、PWM/IO259、カウンタ260、及びアプリケーションデリバリーコントローラ(ADC)261を備え得る。第1のスイッチ253は第1のコンデンサ251と電圧源256の間に配置され、一方第2のスイッチ254は第1のコンデンサ251と第2のコンデンサ252の間に配置されているという場合がある。この実施形態では、センサ装置250は第3のスイッチ(SW3)263をさらに備え得る。
【0029】
第2のコンデンサ252は、カルマンフィルタを用いつつ、連続的に充電及び放電させられ得るのであり、その際、第1のスイッチ253が充電フェーズで使用され、第3のスイッチ263が放電フェーズで使用されている。第1の端子及び/又は第2の端子の移動が起きる際、第1のコンデンサ251の静電容量は突然に変化し、一方、カルマンフィルタの推定静電容量Csは、少数のサンプルがADCで読み取られた後に変化する。従って、ピストングリップの移動は、最低限の遅延量で、センサ装置250によって捕捉され得る。このような他のやり方では、移動(即ち、第1の端子及び/又は第2の端子の互いに対する移動)センシングの遅延は、カルマンフィルタを使用して最小化されるのである。
【0030】
幾つかの実施形態では、第2のコンデンサ252の放電は不要であり得る。電圧(VR)曲線が
図7A~7Bに示されており、ここでは、
図7Aは移動を伴わない場合の第1のコンデンサ251の連続的な充電/放電を示しており、
図7Bは、充電/放電の途中で移動が発生する場合の第1のコンデンサの連続的な充電/放電を示している。端子の機械的移動と静電容量のセンシングが同期されていないときには、この連続的な動作が移動の「即時」検出を可能にする。この連続的な動作がなければ、静電容量の測定は一定の間隔で実施されるのみであり、第2のコンデンサ252の放電が誤検出に繋がるおそれがある。しかし、カルマンフィルタを用いると、第1のコンデンサ251を連続的に充電及び放電させることができる。
【0031】
図8を参照すると、本開示の実施形態によるカルマンフィルタを用いたプロセス300が、より詳細に説明される。カルマンフィルタは、履歴データを格納しておくために必要なメモリ空間が最小である時間ドメインフィルタである。カルマンフィルタは、次の電圧点及び実際の静電容量値がどのようであるかを連続的に推定する。幾つかの実施形態では、拡張カルマンフィルタ(EKF)モデルが用いられる。該モデルでは、カルマンフィルタのアルゴリズムは、電圧充電値の推定値及びコンデンサの値の推定値を同時に使用して、パラメタ及びシステム状態を同時的に推定する設計で実装される。
【0032】
より具体的には、ブロック301では、t-0における電圧(VR)の初期予測が、以下の数式に従って実施される。
【0033】
【0034】
もっとも、幾つかの実施形態では、EKFの結果は、初期推測値に対して敏感ではない場合もある。なお、以下において、Xは推定する変数又は状態である。
【0035】
【0036】
シミュレーションが曲線生成において3pFのコンデンサを使用している幾つかの実施形態では、第1のコンデンサ251についてのCSの初期予測値は、以下の数式に従って計算される。
【0037】
【0038】
初期推測値は、推定される状態VR及びパラメタCSを含む以下のようなベクトルを形成する。
【0039】
【0040】
幾つかの実施形態では、初期推測値は2つの変数の分散も含み得る。共分散行列Pは、以下の数式によって示されているように初期設定され得る。
【0041】
【0042】
次に、ブロック302では、次の変数値(例:Xn及びPn)が予測される。幾つかの実施形態では、この推定は、以下のようなシステムモデルに基づき得る。
【0043】
【0044】
状態及びパラメタの予測値に沿って、共分散行列は以下のように予測される。
【0045】
【0046】
この例では、Fn-1は、数式7から導き出される状態/パラメタの遷移行列のヤコビ行列であり、QはFの共分散行列である。この予測は、次の状態がどうなるかについてのコントローラの「推測」である。
【0047】
次に、ブロック303では、予測値は、以下のように定められる観測値と比較される。
【0048】
【0049】
ADCという上付き文字は、その値がADC261の読み込み値であることを示している。他の実施形態では、観測値Znをモデル化するための異なった方法が実施され得る。観測値が計算された後に、ブロック304で、差分(即ち、イノベーションベクトル)が以下のように計算される。
【0050】
【0051】
ブロック305では、カルマンゲインは、結果的に以下のように計算され得る。
【0052】
【0053】
この例では、Hnは状態観測ベクトル(数式9)のヤコビ行列である。カルマンゲインを計算し、「観測値によってアップデートされた」結果の推定値は、以下のように見出され得る。
【0054】
【0055】
最後に、アップデートされた推定値に関連付けられた共分散行列は、以下のように計算される。
【0056】
【0057】
代替的な実施形態では、プロセス300は、電圧推定(数式2)を無視し、ADC読み込み値を観測値のみのために使用し、CSの推定にのみ集中することができる。この方法によって、静電容量推定値の収束を高速化することができるだろう。
【0058】
幾つかの実施形態では、アルゴリズムの実際のデータがMCUの読み取りから入手可能であり、計算がMCU255内で実行されると、プロセス300は、より安定した実装及びより高速の収束へと進歩させられ得る。モデルが実際のシステムのふるまいに近づけば近づくほど、アルゴリズムの収束も速くなる。
【0059】
次に、
図9に移ると、本開示の実施形態による他のプロセス400が説明される。ブロック401では、このプロセスは第1の端子を第2の端子に隣接するように位置決めすることを含み得る。ここで、第1の端子と第2の端子は互いに対して移動可能である。幾つかの実施形態では、第1の端子はウェアラブル薬剤送達装置のピストングリップの一部であるか又はそれに結合されている。第2の端子は、ピストングリップの下の基板(例:PCB)の一部であり得る。幾つかの実施形態では、第2の端子は、第1の端子と第2の端子が互いに対して移動する際にそれに対応して変化する静電容量を形成するような、第1の端から第2の端に向かって変化する幾何形状を有している、導電プレートである。
【0060】
ブロック402では、プロセス400は、センサ装置を用いて第1の端子と第2の端子の間の静電容量の変化を検出することを含み得る。ここで、センサ装置は、コントローラ及び電圧源に接続された2ステージ式の充電装置を含んでいる。幾つかの実施形態では、センサ装置は、第1のコンデンサ、第2のコンデンサ、第1のスイッチ、及び第2のスイッチを含み得る。幾つかの実施形態では、センサ装置は第3のスイッチを含み得る。第1のコンデンサ及び第2のコンデンサは、1つの側で電圧源に接続されており、かつ第2の側ではマイクロコントローラユニットであり得るコントローラに接続されているという場合がある。第1のスイッチは第1のコンデンサと電圧源の間に配置され得るのであり、一方で第2のスイッチは第1のコンデンサと第2のコンデンサの間に配置され得る。幾つかの実施形態では、第1のコンデンサ(Cs)及び/又は第2のコンデンサ(Cr)の充電/放電を高速で検出することを可能にすべく、カルマンフィルタが採用され得る。
【0061】
ブロック403では、プロセス400は、コントローラによって、第1のスイッチを閉じて第1のコンデンサを電圧源に接続することにより、第1のコンデンサを充電することを含み得る。ブロック404では、プロセス400は、コントローラによって、第1のスイッチを開きかつ第2のスイッチを閉じて第2のコンデンサを電圧源に接続することにより、第2のコンデンサを充電することを含み得る。
【0062】
幾つかの実施形態では、プロセス400は、各ポンピングサイクルについて、コントローラによって、第1のコンデンサの第1の電圧と第2のコンデンサの第2の電圧を等しくすることをさらに含み得る。幾つかの実施形態では、プロセス400は、カルマンフィルタを用いて第2のコンデンサを連続的に充電及び放電することをさらに含み得る。幾つかの実施形態では、第2のコンデンサを連続的に充電及び放電することは、第1のコンデンサが充電されているときに、コントローラによって第3のスイッチを開くことと、第1のコンデンサが放電されているときに、コントローラによって第3のスイッチを閉じることと、を含み得る。
【0063】
図10は、例示的なシステム(以後、「システム」)500の単純化されたブロック図を示している。システム500は、ウェアラブル型又はオンボディ型の薬剤送達装置かつ/又は患者503の皮膚に取付けられた分析物センサであり得る。システム500はコントローラ502、ポンプ機構504(以後、「ポンプ504」)、及びセンサ508を備え得る。センサ508は、グルコースモニタ又は他の分析物モニタであり得るのであって、例えば持続グルコースモニタである。さらに、センサ508は上記ウェアラブル装置に組み込まれ得る。センサ508は、例えば、ユーザの血中グルコース(BG)値を測定し、BG測定レベル信号512を生成するように動作可能であり得る。コントローラ502、ポンプ504、及びセンサ508は、有線又は無線通信経路を介して互いに通信可能に結合され得る。例えば、コントローラ502、ポンプ504、センサ508は、各々、Bluetooth(登録商標)等の1つ以上の通信プロトコルを介して通信するように動作可能な、無線高周波トランシーバを備え得る。システム500はまた、送達ポンプ装置505であって、リザバー526に結合されており、液体薬剤525をそこから吐出させるための駆動機構を備えている、送達ポンプ装置(以後、「装置」)505も備え得る。幾つかの実施形態では、駆動機構506は、ピストングリップ535に結合されているか又はそれの一部である、第1の端子540を備え得る。幾つかの実施形態では、第1の端子540は、ピストングリップ535の下方ブリッジに結合された導電プレート(例:銅製)であり得る。下方ブリッジは、PCB(図示されてはいない)に結合されているか又はその内部に埋め込まれている導電プレート(例:銅製)であり得る第2の端子541を覆うように、延び得る。システム500は、簡潔性のために図示及び説明されていない追加的な構成要素を含み得る。
【0064】
コントローラ502は、BG所望レベル信号を受け取り得るのであって、これは、患者503にとっての所望のBGレベル又は範囲を示す、第1の信号であり得る。BG所望レベル信号は、装置505上のコントローラ509のメモリに格納されるか、コントローラ502又は他の装置へのユーザインターフェースから受け取られるか、又は、患者503のBGレベルを自動決定するコントローラ509(又はコントローラ502)内のアルゴリズムによって受け取られる。センサ508は、患者503に結合され、患者503のBGレベルのおおよその値を測定するように動作可能であり得る。BG測定レベル又は測定値に応じて、センサ508はBG測定値を示す信号を生成し得る。図示されているように、コントローラ502はまた、センサ508から、通信経路を介して、BG測定レベル信号512を受け取り得るのであり、これは第2の信号であり得る。
【0065】
BG所望レベル信号及びBG測定レベル信号512に基づき、コントローラ502又はコントローラ509は、ポンプ504の動作を方向づけるための1つ以上の制御信号を生成し得る。例えば、コントローラ502又はコントローラ509からの1つの制御信号519によって、ポンプ504は、装置505と動作可能に接続された1つ以上の電力要素523を起動又はアクティベートし得る。指定量の液体薬剤525は、ユーザのBG測定レベルをBG所望レベルまで動かすためのインスリンのおおよその量を決定し得る。ポンプ504の動作に基づいて、患者503は、制御信号519によって決定されたように、リザバー526から液体薬剤を受け取り得る。システム500は、閉ループシステムとして動作してもよいし、開ループシステムとして動作してもよいし、又はハイブリッドなシステムとして動作してもよい。例示的な閉ループシステムでは、コントローラ509は、コントローラ502からの入力なしで装置505の動作を方向づけることができ、かつセンサ508からのBGレベル信号512を受け取ることができる。センサ508は、装置505内に保管される場合もあれば、別個の装置内に格納されて装置505と無線で直接通信する場合もある。
【0066】
さらに図示されているように、システム500は、コントローラ502又はコントローラ509と通信するニードル展開要素528を備え得る。このニードル展開要素528は、患者503の体内に展開可能なニードル/カニューレ529を備えておりかつその遠位端に1つ以上の穴を有している、という場合がある。装置505は、流体経路要素530によって、ニードル/カニューレ529に接続され得る。流体経路要素530は、任意のサイズ及び形状であってよく、かつ任意の適切な材料から作製されてよい。流体経路要素530は、リザバー526内の液体薬剤525等の流体がニードル/カニューレ529に送られることができるようにすることができる。
【0067】
コントローラ502/509は、ハードウェア、ソフトウェア、又はそれらの任意の組み合わせにおいて実装され得る。コントローラ502/509は、例えば、プロセッサ、ロジック回路、又はメモリに結合されたマイクロコントローラであり得る。コントローラ502/509は、日付及び時刻、ならびにプロセッサによって実行される他の機能(計算等)を維持することができる。コントローラ502/509は、コントローラ502/509がポンプ504の動作を方向づけることができるように、メモリ(図示されてはいない)に格納されたAP(artificial pancreas)アルゴリズムを実行するように動作可能であり得る。例えば、コントローラ502/509は、センサ508からの入力を受け取るように動作可能であり、この際、該入力は自動インスリン送達(AID)アプリケーションのセッティングを示している。AIDアプリケーションのセッティングに基づいて、コントローラ502/509は、ポンプ504のふるまいを修正し、その結果として、液体薬剤525が装置505を介して患者503に送達されるようにすることができる。
【0068】
幾つかの実施形態では、コントローラ502/509は、センサ装置550と共に動作する場合があり、このセンサ装置550は、上記のセンサ装置150又はセンサ装置250と同じか又は類似であってよい。センサ装置550は、図示されているように装置505の一部であってもよいし、装置505の外部に配置されていてもよい。幾つかの実施形態では、センサ装置550は、第1のコンデンサ551及び第2のコンデンサ552を備える2ステージ式の充電装置であり得る。第1のコンデンサ551及び第2のコンデンサ552は、1つの側では電力要素523等の電圧源に接続されており、第2の側ではコントローラ502/509に接続されているという場合がある。使用中、コントローラ502/509は、センサ装置550の第1のスイッチ及び第2のスイッチを動作させ、第2のコンデンサ552の電圧を充電することができる。例えば、ポンプチャンバの充填及び吐出サイクルの各々について、コントローラ502/509は、電圧源を第1のコンデンサ551に接続して第1のコンデンサ551を完全に充電し、その後、第1のスイッチを開きかつ第2のスイッチを閉じることによって第1のコンデンサ551と第2のコンデンサ552の電圧を等しくする、という場合がある。第2のコンデンサ552の電圧は、増加する、連続的な充電曲線として現れ得る。
【0069】
幾つかの実施形態では、第1のスイッチが充電フェーズで用いられ、第3のスイッチが放電フェーズで用いられている際、第2のコンデンサ552はカルマンフィルタを用いつつ、連続的に充電及び放電させられ得る。第1の端子540及び/又は第2の端子541の移動が起きる際、第1のコンデンサ551の静電容量は突然に変化し、一方、カルマンフィルタにおける推定静電容量は、少数のサンプルがコントローラ502/509のADC内で読み取られた後で変化する。従って、ピストングリップ535の移動は、最小限の遅延量(例:100~400μs)で、センサ装置550によって捕捉され得る。このような他のやり方では、移動が開始されてから移動がセンシングされるまでの遅延は、カルマンフィルタを使用して最小化されるのである。
【0070】
幾つかの実施形態では、センサ508は、例えば、持続グルコースモニタ(CGM)であり得る。センサ508は、ポンプ504から物理的に分離されている場合もあれば、その同じハウジング内に統合された構成要素である場合もある。センサ508は、コントローラ502に、ユーザの血中グルコースレベルの測定値又は検出値を示すデータを提供し得る。
【0071】
電力要素523は、装置505に電力を供給するための、バッテリ、圧電装置等であり得る。他の実施形態では、電力要素523又は追加的な電力源(図示されてはいない)は、ポンプ504の他の構成要素に電力を供給することも可能であり、他の構成要素は、例えばコントローラ502、メモリ、センサ508、及び/又はニードル展開要素528であり得る。
【0072】
一例では、センサ508は、コントローラ502に通信可能に結合された装置であり、事前決定された時間間隔で、例えば5分、10分等の間隔で、血中グルコース値を測定するように動作可能であり得る。センサ508は、多数の血中グルコース測定値をAPアプリケーションに提供し得る。
【0073】
幾つかの実施形態では、ポンプ504は、通常の動作モードにあるときには、センサ508又はポンプ504の他の機能要素によって提供された情報(例:血中グルコース測定値、血中グルコース目標値、インスリンオンボード、以前のインスリン送達、時刻、曜日、慣性測定ユニットからの入力値、GPSシステム利用可能装置、Wi-Fi利用可能装置等)に基づいて、リザバー526内に格納されたインスリンを患者503に送達する。例えば、ポンプ504は、薬剤又は治療薬の送達を制御するためのコントローラ502/509として実装され得るアナログかつ/又はデジタル回路を含み得る。コントローラ502/509を実装するように用いられる回路は、ディスクリートで専用化されたロジック及び/又はコンポーネント、特定用途向け集積回路、ソフトウェア命令を実行するマイクロコントローラ又はプロセッサ、ファームウェア、プログラミング命令又はメモリに格納されたAPアプリケーション等のプログラミングコードの有効化、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。例えば、コントローラ502/509は、コントローラ502/509を、血中グルコース測定値を血中グルコース目標値までもっていくために、事前決定された時間間隔で、又は必要に応じて、投与量の薬剤又は治療薬をユーザに送達するように、動作可能にする、制御アルゴリズム及び他のプログラミングコードを実行し得る。ベーサル投与及びボーラス投与のサイズ及び/又はタイミングは、情報(例:血中グルコース測定値、血中グルコース目標値、インスリンオンボード、以前のインスリン送達、時刻、曜日、慣性測定ユニットからの入力、GPSシステム利用可能装置、Wi-Fi利用可能装置等)に基づいて自動的に決定される場合もあれば、患者503又は第三者(例えば、ヘルスケアプロバイダ、親又は保護者、ウェアラブル薬剤送達装置の製造者等)によって、有線又は無線リンクを用いて、例えばAPアプリケーション内に事前プログラムされているという場合もある。
【0074】
図示されてはいないが、幾つかの実施形態では、センサ508はプロセッサ、メモリ、センシング装置又は測定装置、及び通信装置を含み得る。メモリは、APアプリケーションのインスタンス及び他のプログラミングコードを格納することができ、かつAPアプリケーションに関連するデータを格納するように動作可能であり得る。
【0075】
様々な実施形態では、センサ508のセンシング/測定装置は、血中グルコース測定要素、心拍数モニタ、血中酸素センサ要素等の1つ以上のセンシング要素を含み得る。センサプロセッサは、ディスクリートで専用化されたロジック及び/又はコンポーネント、特定用途向け集積回路、ソフトウェア命令を実行するマイクロコントローラ又はプロセッサ、ファームウェア、メモリに格納されたプログラミング命令、又はそれらの任意の組み合わせを含み得る。
【0076】
上記の議論は、例示及び説明の目的のために提示されたのであり、本開示を本明細書に記載の形態に制限することは意図されていない。例えば、本開示の各種特徴は、本開示を合理化する目的のために、1つ以上の態様、実施形態、又は構成にまとめられ一体化している場合がある。しかしながら、本開示の特定の態様、実施形態、又は構成の各種特徴が組み合わせられて代替的な態様、実施形態、又は構成を形成し得ることは、理解されるべきである。
【0077】
本明細書で使用される際、単数形で記載されており、先に「a」、「an」が付いている要素又はステップは、要素又はステップの複数性を除外するものではなく、これはそのような除外が明示的に記載されていない限りにおいてはそうであることは、理解されたい。さらに、本開示の「一実施形態」の参照は、記載された特徴を組み込んだ追加的な実施形態の存在を排除するものであると解釈されることを意図されたものではない。
【0078】
本明細書における、「含む」、「備える」、又は「有する」及びそれらの変形の使用は、その後に列挙される項目、それらの等価物、及び追加的な項目を包含することを意味されている。従って、「含む」、「備える」、又は「有する」及びそれらの変形である語は、オープンエンドな表現であり、本明細書においては相互可換に用いられ得る。
【0079】
本明細書で使用される際、「少なくとも1つ」、「1つ以上」、及び「及び(かつ)/又は」というフレーズは、使用時に共同的かつ分離的の両方であるオープンエンドな表現である。例えば、「A、B、及びCのうち少なくとも1つ」、「A、B、又はCのうち少なくとも1つ」、「A、B、及びCのうち1つ以上」、「A、B、又はCのうち1つ以上」、及び「A、B、及び/又はC」は、各々、Aのみ、Bのみ、Cのみ、A及びB、A及びC、B及びC、又は、A及びB及びC、を意味する。
【0080】
方向に関するすべての記載(例:近位、遠位、上方、下方、上向き、下向き、左、右、横方向、長手方向、前、後、頂部、底部、上、下、鉛直、水平、径方向、軸方向、時計回り、及び反時計回り)は、読者が本開示を理解することを助けるための識別目的のためにのみ使用されており、特に本開示の位置、向き、用途に関する本開示の限定を作り出すものではない。接続の記載(例:取付けられている、結合されている、接続されている、及び接合されている)は、広く解釈されるべきであり、特段の示唆がない限り、集まった要素同士の間に中間的な部材を含んでいる場合もあれば、要素間の相対移動を含んでいる場合もある。このように、接続の記載は、必ずしも、2つの要素が直接的に接続されておりかつ互いに対して固定された関係であることを示唆するものではない。
【0081】
さらに、識別用の記載(例:一次的な、二次的な、第1の、第2の、第3の、第4の)は、重要性又は優先度を示唆することを意図されてはおらず、ある要素と他の要素を区別するために用いられる。図面は例示の目的のみのためであり、本明細書に添付の図中に反映されている寸法、位置、順序、及び相対的なサイズは、変化し得る。
【0082】
さらに、幾つかの実施形態において、「実質的な」又は「実質的に」という語は、「おおよそ」又は「概ね」という語と同様に、可換に用いられ得るのであって、当業者にとって受容可能な関連する測定値を用いて記述され得る。例えば、これらの語は、基準パラメタとの比較としてはたらき得るのであって、意図された機能を提供できる逸脱を示唆することができる。限定するものではないが、基準パラメタからの逸脱は、例えば、1%未満の、3%未満の、5%未満の、10%未満の、15%未満の、20%未満の、量などであり得る。
【0083】
さらに、本明細書で開示された各種方法は、一連の行為又はイベントとして記述されているが、本開示は、特段の記載がない限り、そのような行為又はイベントの説明された順番には限定されない。本開示によれば、例えば、本開示に従って、幾つかの行為が、本明細書で説明及び/又は記述された順番とは異なった順番で、かつ/又は他の行為又はイベントと同時に、起こる場合がある。加えて、本開示によれば、すべての説明された行動又はイベントが、方法論を実装するために必要であるわけではない場合もある。さらに、本方法は、本明細書で説明及び記述された構造の形成及び/又は加工に関連付けられて実装され得るのであり、同様に、説明されてはいない他の構造にも関連付けられて実装され得る。
【0084】
本開示は、本明細書に記載の具体的な実施形態によって範囲を限定されるべきものではない。実際、当業者には、本開示に記載のものに加えて、本開示の他の様々な実施形態及び修正が、前述の記載および添付の図面から明らかであろう。このように、そのような他の実施形態及び修正が、本開示の範囲に入ることを意図されている。さらに、本開示は、本明細書においては、特定の目的のために、特定の環境で、特定の実装の文脈で記載されている。当業者であれば、その有用性はそれに限定されるものではなく、本開示は多くの目的のために、多くの環境で、利益を有するように実装され得ることを、認識できよう。このように、以下に記載の請求項は、本明細書に記載された本開示の完全な幅広さ及び精神から見て解釈されるべきである。
【国際調査報告】