(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】光学材料として安定的な光活性塊状重合性ポリシクロオレフィン組成物を含むデュアルUV遮断剤
(51)【国際特許分類】
C08G 61/08 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
C08G61/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024531733
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-05-28
(86)【国際出願番号】 US2022051123
(87)【国際公開番号】W WO2023097092
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】303043461
【氏名又は名称】プロメラス, エルエルシー
(71)【出願人】
【識別番号】308014846
【氏名又は名称】メルク パテント ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100117606
【氏名又は名称】安部 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100136423
【氏名又は名称】大井 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100154449
【氏名又は名称】谷 征史
(72)【発明者】
【氏名】ブルトヴィ,オレクサンドル
(72)【発明者】
【氏名】ミスキエビッツ,パウエル
(72)【発明者】
【氏名】ユン,ヒョンジン
(72)【発明者】
【氏名】シェリン,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ハンブルガー,マヌエル
【テーマコード(参考)】
4J032
【Fターム(参考)】
4J032CA34
4J032CA35
4J032CA36
4J032CA43
4J032CA46
4J032CA53
4J032CA54
4J032CA68
4J032CB01
4J032CB03
4J032CC03
4J032CD02
4J032CE05
4J032CE12
4J032CE17
4J032CE20
4J032CE24
4J032CG02
4J032CG03
4J032CG06
4J032CG07
4J032CG08
(57)【要約】
本発明による実施形態は、潜在性オルガノ-ルテニウム化合物と、光増感剤と、組成物が好適な化学線に露光されたときに開環メタセシス重合(ROMP)および少なくとも異なる2種類のUV遮断剤を引き起こして実質的に透明なフィルムまたは三次元オブジェクトを形成する1種以上のモノマと、を包含する組成物を包含する。驚くべきことに、当該組成物は、大気条件下で最大80℃の温度で数週間、非常に安定であり、例えば窒素ブランケットなどの不活性雰囲気下で化学線にさらされたときのみ塊状重合を引き起こす。したがって、本発明の組成物は、とりわけ、3Dプリント材料、コーティング、カプセル化剤、充填材、レベリング剤を含む各種の光電子用途、に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下を含む、組成物。
a)式(I)の1種以上の単量体:
【化1】
(ここにおいて、
mは、0、1または2の整数である。
R
1、R
2、R
3、およびR
4は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
16)アルキル、パーフルオロ(C
1-C
12)アルキル、ヒドロキシ(C
1-C
16)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキル、パーフルオロ(C
6-C
10)アリール、パーフルオロ(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキル、トリ(C
1-C
6)アルコキシシリル、および下記式(A)の基からなる群より選択され、
-Z-Aryl (A)
ここにおいて、
Zは、(CR
5R
6)
a、O(CR
5R
6)
a、(CR
5R
6)
aO、(CR
5R
6)
a-O-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-O-(SiR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-(CO)O-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-O(CO)-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-(CO)-(CR
5R
6)
bからなる群より選択される結合または基であり、aおよびbは、同一または異なってもよい整数であり、それぞれ独立して1~12であり、
R
5およびR
6は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルオキシ、アセトキシ、(C
2-C
6)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖または分岐鎖のヒドロキシ(C
3-C
6)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択され、
Arylは、フェニル、または、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルオキシ、アセトキシ、(C
2-C
6)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖または分岐鎖のヒドロキシ(C
3-C
6)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される1種以上の基で置換されたフェニルである。);
b)式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物:
【化2】
(ここにおいて、
cおよびdは、0~5の整数であり、
Zは、酸素または硫黄であり、
R
7は、水素、(C
1~C
20)アルキル、(C
2~C
20)アルケニル、(C
2~C
20)アルキニル、および(C
6~C
10)アリールからなる群より選択され、
R
8、R
9、R
10、およびR
11は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C
1-C
16)アルキル、(C
1-C
16)アルコキシ、(C
1-C
16)パーフルオロアルキル、(C
3-C
7)シクロアルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリール、(C
3-C
12)ヘテロシクリル、-OR
16、-NO
2、-COOH、-COOR
16、-CONR
16R
17、-SO
2NR
16R
17、-SO
2R
16、-CHO、-COR
16からなる群より選択され、ここにおいて、R
16およびR
17は同一または異なり、それぞれ独立して、(C
1-C
6)アルキル、(C
1-C
6)パーフルオロアルキル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリールからなる群より選択される、あるいは、
2つ以上のR
8、R
9、R
10、およびR
11は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換もしくは非置換の縮合(C
4~C
8)炭素環、または置換もしくは非置換の縮合芳香環を形成する。
R
12、R
13、およびR
14はそれぞれ、同一または異なってもよく、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C
1-C
16)アルキル、(C
1-C
16)アルコキシ、(C
1-C
16)パーフルオロアルキル、(C
3-C
7)シクロアルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリール、(C
3-C
12)ヘテロシクリル、-OR
16、-NO
2、-COOH、-COOR
16、-CONR
16R
17、-SO
2NR
16R
17、-SO
2R
16、-CHO、-COR
16からなる群より選択され、R
16およびR
17は、同一または異なり、それぞれ独立して、(C
1-C
6)アルキル、(C
1-C
6)パーフルオロアルキル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリールからなる群より選択され、
R
15は、(C
1~C
16)アルキル、(C
1~C
16)パーフルオロアルキル、(C
3~C
16)シクロアルキル、(C
6~C
14)アリール、(C
6~C
14)パーフルオロアリール、および(C
3~C
12)ヘテロシクリルからなる群より選択され、
Ar
1およびAr
2は、同一または異なり、置換または非置換フェニル、置換または非置換ビフェニル、および置換または非置換ナフチルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、置換基はそれぞれ、メチル、エチル、および直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルからなる群より独立して選択される。);
c)式(V)の化合物:
【化3】
(ここにおいて、
nは、0~4の整数であり;
各R
32は、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
12)アルコキシ、(C
3-C
12)シクロアルコキシ、(C
6-C
12)ビシクロアルコキシ、(C
7-C
14)トリシクロアルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ(C
1-C
3)アルキル、および(C
6-C
10)アリールオキシからなる群より独立して選択される。);
d)式(VI)の化合物:
【化4】
(ここにおいて、
R
33は、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキルおよび(C
3-C
12)シクロアルキルからなる群より選択され、
R
34およびR
35はそれぞれ、同一または異なってよく、(C
1-C
10)アルキル、(C
6-C
18)アリール、(C
6-C
12)アリール(C
1-C
5)アルキル、および(C
1-C
5)アルキル(C
6-C
12)アリールからなる群より独立して選択され、ここで、アルキルはそれぞれ、独立して、直鎖または分岐鎖であり、必要に応じて、アルキル上のメチレンの一部が、-CO-、-O-、または-COO-からなる群より選択される基で置き換えられ得る。);および
e)式(VII)の光活性化合物:
【化5】
(ここにおいて、
Yは、ハロゲンであり、
R
30およびR
31は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
12)アルコキシ、(C
3-C
12)シクロアルコキシ、(C
6-C
12)ビシクロアルコキシ、(C
7-C
14)トリシクロアルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ(C
1-C
3)アルキル、および(C
6-C
10)アリールオキシからなる群より選択される。)、を含む組成物。
【請求項2】
前記組成物は、互いに別個の、式(I)の第1の単量体および第2の単量体を含有し、前記第1の単量体および第2の単量体のうちの一方は、少なくとも1.5の屈折率と100センチポアズ未満の粘度を有し、前記第1の単量体は、前記第2の単量体と完全に混和して透明な溶液を形成する、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記式(I)の単量体は、
【化6-1】
【化6-2】
【化6-3】
【化6-4】
【化6-5】
【化6-6】
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
Zは、酸素であり、
R
7は、水素であり、
R
8、R
9、R
10、およびR
11は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、および-NO
2からなる群より選択され、
R
12、R
13、およびR
14は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、および-NO
2からなる群より選択され、
R
15は、メチル、エチル、およびシクロヘキシルからなる群より選択され、
Ar
1およびAr
2は、同一または異なり、それぞれ独立して、フェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2,6-ジ(イソプロピル)フェニル、および2,4,6-トリメチルフェニルからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物は、
【化7-1】
【化7-2】
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
前記式(V)の化合物は、
【化8】
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
前記式(VI)の化合物は、
【化9】
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
Yは、塩素または臭素であり、
R
30およびR
31は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フェニル、シクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、およびフェノキシからなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項9】
前記式(VII)の化合物は、
【化10-1】
【化10-2】
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項10】
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、2-フェネチル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(PETD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[イソプロピルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-2)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[シクロヘキシルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-3)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-4)の混合物;および
2-フェネチル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(PETD)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(BisENBTMDS)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物、
からなる群より選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項11】
以下を含む、実質的に透明なフィルムを形成するキット。
a)式(I)の1種以上の単量体:
【化11】
(ここにおいて、
mは、0、1または2の整数である。
R
1、R
2、R
3、およびR
4は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
16)アルキル、パーフルオロ(C
1-C
12)アルキル、ヒドロキシ(C
1-C
16)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキル、パーフルオロ(C
6-C
10)アリール、パーフルオロ(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキル、トリ(C
1-C
6)アルコキシシリル、および下記式(A)の基からなる群より選択され、
-Z-Aryl (A)
ここにおいて、
Zは、(CR
5R
6)
a、O(CR
5R
6)
a、(CR
5R
6)
aO、(CR
5R
6)
a-O-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-O-(SiR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-(CO)O-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-O(CO)-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-(CO)-(CR
5R
6)
bからなる群より選択される結合または基であり、aおよびbは、同一または異なってもよい整数であり、それぞれ独立して1~12であり、
R
5およびR
6は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルオキシ、アセトキシ、(C
2-C
6)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖または分岐鎖のヒドロキシ(C
3-C
6)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択され、
Arylは、フェニル、または、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルオキシ、アセトキシ、(C
2-C
6)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖または分岐鎖のヒドロキシ(C
3-C
6)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される1種以上の基で置換されたフェニルである。);
b)式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物:
【化12】
(ここにおいて、
cおよびdは、0~5の整数であり、
Zは、酸素または硫黄であり、
R
7は、水素、(C
1~C
20)アルキル、(C
2~C
20)アルケニル、(C
2~C
20)アルキニル、および(C
6~C
10)アリールからなる群より選択され、
R
8、R
9、R
10、およびR
11は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、(C
1-C
16)アルキル、(C
1-C
16)アルコキシ、(C
1-C
16)パーフルオロアルキル、(C
3-C
7)シクロアルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリール、(C
3-C
12)ヘテロシクリル、-OR
16、-NO
2、-COOH、-COOR
16、-CONR
16R
17、-SO
2NR
16R
17、-SO
2R
16、-CHO、-COR
16からなる群より選択され、ここにおいて、R
16およびR
17は同一または異なり、それぞれ独立して、(C
1-C
6)アルキル、(C
1-C
6)パーフルオロアルキル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリールからなる群より選択される、あるいは、
2つ以上のR
8、R
9、R
10、およびR
11は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換もしくは非置換の縮合(C
4~C
8)炭素環、または置換もしくは非置換の縮合芳香環を形成する。
R
12、R
13、およびR
14はそれぞれ、同一または異なってもよく、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C
1-C
16)アルキル、(C
1-C
16)アルコキシ、(C
1-C
16)パーフルオロアルキル、(C
3-C
7)シクロアルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリール、(C
3-C
12)ヘテロシクリル、-OR
16、-NO
2、-COOH、-COOR
16、-CONR
16R
17、-SO
2NR
16R
17、-SO
2R
16、-CHO、-COR
16からなる群より選択され、R
16およびR
17は、同一または異なり、それぞれ独立して、(C
1-C
6)アルキル、(C
1-C
6)パーフルオロアルキル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリールからなる群より選択され、
R
15は、(C
1~C
16)アルキル、(C
1~C
16)パーフルオロアルキル、(C
3~C
16)シクロアルキル、(C
6~C
14)アリール、(C
6~C
14)パーフルオロアリール、および(C
3~C
12)ヘテロシクリルからなる群より選択され、
Ar
1およびAr
2は、同一または異なり、置換または非置換フェニル、置換または非置換ビフェニル、および置換または非置換ナフチルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、置換基はそれぞれ、メチル、エチル、および直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルからなる群より独立して選択される。);
c)式(V)の化合物:
【化13】
(ここにおいて、
nは、0~4の整数であり;
各R
32は、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
12)アルコキシ、(C
3-C
12)シクロアルコキシ、(C
6-C
12)ビシクロアルコキシ、(C
7-C
14)トリシクロアルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ(C
1-C
3)アルキル、および(C
6-C
10)アリールオキシからなる群より独立して選択される。);
d)式(VI)の化合物:
【化14】
(ここにおいて、
R
33は、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキルおよび(C
3-C
12)シクロアルキルからなる群より選択され、
R
34およびR
35はそれぞれ、同一または異なってよく、(C
1-C
10)アルキル、(C
6-C
18)アリール、(C
6-C
12)アリール(C
1-C
5)アルキル、および(C
1-C
5)アルキル(C
6-C
12)アリールからなる群より独立して選択され、ここで、アルキルはそれぞれ、独立して、直鎖または分岐鎖であり、必要に応じて、アルキル上のメチレンの一部が、-CO-、-O-、または-COO-からなる群より選択される基で置き換えられ得る。);および
e)式(VII)の光活性化合物:
【化15】
(ここにおいて、
Yは、ハロゲンであり、
R
30およびR
31は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
12)アルコキシ、(C
3-C
12)シクロアルコキシ、(C
6-C
12)ビシクロアルコキシ、(C
7-C
14)トリシクロアルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ(C
1-C
3)アルキル、および(C
6-C
10)アリールオキシからなる群より選択される。)、を含むキット。
【請求項12】
前記式(I)の単量体は、
【化16-1】
【化16-2】
からなる群より選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項13】
前記式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物は、
【化17-1】
【化17-2】
からなる群より選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項14】
前記式(V)の化合物は、
【化18】
からなる群より選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項15】
前記式(VI)の化合物は、
【化19】
からなる群より選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項16】
前記光活性化合物は、
【化20-1】
【化20-2】
【化20-3】
からなる群より選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項17】
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、2-フェネチル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(PETD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[イソプロピルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-2)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[シクロヘキシルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-3)の混合物;
2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-4)の混合物;および
2-フェネチル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(PETD)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(BisENBTMDS)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物、
からなる群より選択される、請求項11に記載のキット。
【請求項18】
請求項1に記載の組成物を含むフィルム。
【請求項19】
請求項11に記載のキットから形成されたフィルム。
【請求項20】
デバイスをカプセル化するプロセスであって、
デバイスを提供するステップと、
請求項1に記載の組成物で前記デバイスを被覆するステップと、
好適なUV放射に露光するステップと、
前記デバイスをカプセル化するステップと、を含むプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互引用
本願は、2021年11月29日付で出願されて本願に組み込まれた米国仮出願第63/283,824号の利益を主張している。
【0002】
本発明による実施形態は、通常、潜在性オルガノ-ルテニウム化合物および特定の紫外線(UV)光遮断剤を含有する、長期保存安定的な単一成分の塊状重合性ポリシクロオレフィン単量体組成物であって、好適な光分解条件にさらされたとき、開環メタセシス重合法を介して急速に塊状重合を引き起こす組成物に関する。具体的には、本発明の組成物は、特に不活性かつ暗い雰囲気下において保管されたとき、大気温度から80℃の範囲の温度において数ヶ月まで長期保管安定性を示し、好適な化学線にさらされた場合にのみ、急速な塊状重合を引き起こして、3Dプリント材料、カプセル化剤、コーティング、および充填剤を含む光電子分野の様々な用途で用いられる透明な光学層を形成する。より具体的には、本発明は、ノルボルネン(NB)系オレフィン単量体および2種以上のUV遮断剤を包含する、単一成分の安定的な組成物であって、光透過性に優れ、多くのデバイスの中でも特に光学センサ、発光ダイオード(LED)、有機発光ダイオード(OLED)、3Dプリント材料などのデバイスの製造に所望な性質を示す組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
有機発光ダイオード(OLED)は、様々な用途、中でも特に平面TVをはじめとするフレキシブルディスプレイにおいて重要な位置を占める。しかし、既存のOLED、特に下部発光型OLEDは、生成された光子の約半分のみがガラス基板に入射し、そのうち25%が大気中に放出されるという短所がある。光子の残りの半分は導波されてOLEDスタックの内部で消散する。このような光子損失は、主に有機層(n=1.7~1.9)とガラス基板(n=1.5)の屈折率(n)が一致しないことに起因する。基板と有機層との屈折率(n=1.8)を一致させ、陰極までの発光区域の距離を伸ばしてプラズモン損失を抑制すると、基板に入射する光子を80~90%に増加させることができる。例えば、G.Gaertner et al.,Proc.Of SPIE,Vol.6999,69992T pp1-12(2008)を参照。
【0004】
また、OLEDはさらに他の課題に直面している。OLEDを有機材料で構成する場合、通常、湿気、酸素、温度、その他の過酷な条件に敏感である。したがって、OLEDをこのような過酷な雰囲気条件から保護する必要がある。例えば、米国公開特許第2012/0009393号を参照。
【0005】
さらに、このようなOLEDデバイスは、通常、低電媒定数(Dk)および低損失である光学的に透明な絶縁材料でカプセル化され、誘電正接(Df)とも呼ばれる。通常、このようなデバイスのほとんどにおいて、好適な絶縁材料は、例えば50GHzを超えるような高周波数で、電媒定数が3未満かつ低損失が0.001未満でなければならない。また、各種利点の中でも、有機誘電体材料は製造し易いことから、有機誘電体材料の開発への関心が高まっている。
【0006】
本技術分野が直面する問題をある程度解決するために、米国登録特許第8,263,235号は、少なくとも1つの有機発光材料、および芳香環をもたない脂肪族化合物から形成され、放出光の屈折率が1.4~1.6である発光層を用いる方法を開示している。当該特許に記載の脂肪族化合物は、通常、ポリアルキルエーテル類などであるが、高温において不安定であると知られている。例えば、Rodriguez et al.,I&EC Product Research and Development,Vol.1,No.3,206-210(1962)を参照。
【0007】
米国登録特許第9,944,818号は、屈折率を所望の範囲に適合可能であり、充填材および保護コーティング材として好適であり、各種のOLEDデバイスの製造に潜在的に役に立つ2成分の塊状重合性組成物を開示している。
【0008】
そのため、OLEDの屈折率を補完しながら、所望な各種性質の中でも特に高透過率、低電媒定数、および良好な熱的性質を示す充填材料に対する需要は依然として存在する。また、永久的な保護コーティングを容易に形成し、OLED層またはVAT 3Dプリント作業に分散される単一成分の組成物として使用可能な有機充填材料であることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、本発明の目的は、本技術分野が直面している問題点を克服することができる組成物を提供することである。より具体的には、本発明の目的は、3Dプリント製造条件および/またはOLEDデバイス製造条件下で塊状重合が可能な単一成分の組成物を提供することである。本発明のさらなる他の目的は、安定的な単一成分の塊状重合性組成物であって、通常の保管条件あるいはそれ以下の条件、例えば温度が約80℃に達する条件において粘度変化を示さず、例えば放射の使用など、3DオブジェクトまたはOLEDデバイスが最終的に製造されるプロセス条件下でのみ塊状重合を引き起こす組成物を提供することである。
【0010】
本発明のその他の目的および用途の範囲に関しては、下記の詳細説明で記述する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
驚くべきことに、本明細書に記載の2種以上のUV光遮断化合物と好適なオルガノ-ルテニウム化合物の組み合わせを潜在触媒として使用し、1種以上のオレフィン単量体および好適な光活性剤と組み合わせて採用することにより、従来得られなかった性質、すなわち1.4~1.8以上の範囲の屈折率、高い無色光透過性、2.5未満の電媒定数、典型的に5~20μmの範囲であるが、意図された用途に応じてより短いまたはより長いフィルム厚さに適合され得る充填材層の望ましいフィルム厚さ、OLEDスタック、特にカソード層(OLEDスタックの頂部にある極薄層)との適合、速い重合時間および光分解処理の可否を含むOLEDスタック上の処方物の重合との適合、OLEDスタックおよびガラスカバーに対する接着などの性質をなす透明光学層を含む3DオブジェクトまたはOLEDデバイスの製造が可能になることが今回明らかになった。重合速度は、特に3Dプリントデバイスにおいて使用されるとき、1層あたり5秒未満であり得る。本発明の組成物ではまた、典型的に低い粘度が必要とされるOLED層にわたって良好で均一なレベリングを示すことが期待されることは留意すべきである。さらに、本発明の組成物はまた、剛性のポリシクロオレフィン構造のため、低い収縮率を示すことが期待される。また、本発明の成分で速い塊状重合を引き起こすと、OLEDスタックに損傷を与え得る一時的な小分子を残さない。通常、追加的な効果を得るために、その他の小分子添加剤を採用する必要がない。さらに重要なこととして、本発明の組成物は、数時間から数日間、最大80℃までを含む大気雰囲気条件、特に不活性条件下に保たれたとき安定であり(すなわち、粘度変化なし)、UVの露光によってのみ塊状重合を引き起こす。さらに重要なこととして、本発明の組成物は、数日間、少なくとも5~10日間、通常、30日を超え数ヶ月間、初期粘度を維持するといった、優れた保存寿命安定性を示す。
【0012】
有利なこととして、本発明の組成物は、「ワンドロップフィル」(ODFとして公知)に対しても適合する。上部発光型OLEDデバイスの製造に広く用いられる通常のODFプロセスにおいて、特定の光学流体を塗布してデバイスから上部のカバーガラスへの光の透過を強化し、当該流体は、ODF法によって分散される。当該方法は、ODFという名称によって誤認されやすいが、通常、数滴、または数本の材料がシールライン内部に分散される。当該流体の塗布後、当該流体は、ダイアタッチエポキシに類似して、上部のガラスの積層に応じて広がる。このプロセスは、空気溜まりを防止するために、通常、真空下で実施される。本発明は、短時間に急速な流れで容易にかつ均一に基板を被覆する低粘度の物質を可能にする。さらに有利なこととして、本発明は、特にODF法において単一成分の組成物が2成分系を採用するよりもはるかに便利である点で、従来技術が抱えている欠陥を克服する。さらに、本明細書に記載のプロセス条件にしたがって使用される場合、本発明の組成物は、良好な機械的および熱的性質を有するより透明な3Dオブジェクトを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明による実施形態を、以下の添付の図面および/または画像を参照して下記に説明する。以下の図面は、本発明の各種の実施形態を簡略化して示したものであり、説明のみを目的とする。
【
図1】
図1は、作用例の説明に従って調製した膜のUV-Vis透過スペクトルを示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書で用いられる用語は、以下のような意味を有する。
【0015】
本明細書において冠詞「a」、「an」、「the」を使用した場合、明示的に1つの対象に一義に限定されない限り、複数の対象まで含むとみなす。
【0016】
本明細書、および本明細書に添付された特許請求の範囲に記載される成分、反応条件などの量を示す数字、数値および/または式は、その数字、数値および/または式を得るために実施された測定の不確定要素を反映しているので、別途の記載がない限り、全て「約」という用語を含むものとみなす。
【0017】
本明細書において数字の範囲が開示される場合、上記範囲は連続的であり、当該範囲の最小値と最大値、さらに上記最小値と最大値との間の全ての値を含むとみなす。さらに、上記範囲が整数値に関する場合、範囲の最小値と最大値との間の全ての整数を含む。また、特徴または特性を説明する目的で、複数の範囲を提示する場合、上記複数の範囲を組み合わせることができる。言い換えれば、別途の指示がない限り、本明細書に開示された全ての範囲は、当該範囲が含むあらゆる全ての下位範囲を包含する。例えば「1~10」という範囲を提示した場合、当該範囲は最小値1と最大値10との間のあらゆる全ての下位範囲を含むとみなすべきである。1と10との間の下位範囲の例としては、1~6.1、3.5~7.8、5.5~10などが挙げられるが、これに限定されない。
【0018】
本明細書において「ヒドロカルビル」は、炭素および水素原子を含有する基を示し、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル、アルカリル、アルケニルなどが挙げられるが、これに限定されない。「ハロヒドロカルビル」という用語は、少なくとも1つの水素をハロゲンに置き換えたヒドロカルビル基を示す。パーハロカルビルという用語は、全ての水素をハロゲンに置き換えたヒドロカルビル基を示す。
【0019】
本明細書において、「アルキル」という表現は、特定の数の炭素原子を有する、飽和した、直鎖または分岐鎖の炭化水素置換基を示す。特にアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、tert-ブチルなどである。「アルコキシ」、「チオアルキル」、「アルコキシアルキル」、「ヒドロキシアルキル」、「アルキルカルボニル」、「アルコキシカルボニルアルキル」、「アルコキシカルボニル」、「ジフェニルアルキル」、「フェニルアルキル」、「フェニルカルボキシアルキル」、および「フェノキシアルキル」などの派生表現も相応に解釈する。
【0020】
本明細書において、「シクロアルキル」という表現は、既知の環状基を全て含む。「シクロアルキル」の代表的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチルなどが挙げられるが、これに限定されない。「シクロアルコキシ」、「シクロアルキルアルキル」、「シクロアルキルアリール」、「シクロアルキルカルボニル」などの派生表現も相応に解釈する。
【0021】
本明細書において、「パーハロアルキル」という表現は、上記で定義されたアルキルであって、当該アルキル基の水素原子の全てが、フッ素、塩素、臭素、またはヨウ素から選択されるハロゲン原子に置き換えられたアルキルを示す。具体的な例としては、トリフルオロメチル、トリクロロメチル、トリブロモメチル、トリヨードメチル、ペンタフルオロエチル、ペンタクロロエチル、ペンタブロモエチル、ペンタヨードエチル、直鎖または分岐鎖のヘプタフルオロプロピル、ヘプタクロロプロピル、ヘプタブロモプロピル、ノナフルオロブチル、ノナクロロブチル、ウンデカフルオロペンチル、ウンデカクロロペンチル、トリデカフルオロヘキシル、トリデカクロロヘキシルなどが含まれる。派生表現である「パーハロアルコキシ」も相応に解釈する。本明細書に記載の、例えば、「アルキル」など一部のアルキル基は、部分的にフッ化されてもよい、すなわち、当該アルキル基内の一部の水素原子のみがフッ素原子に置き換えられてもよく、相応に解釈することはさらに留意されたい。
【0022】
本明細書において、「アシル」という表現は、「アルカノイル」と同義であり、「R-CO-」のように構造式で示されてよいが、Rは、特定の数の炭素原子を有する本明細書で定義される「アルキル」である。さらに、「アルキルカルボニル」とは、本明細書で定義される「アシル」をいう。具体的には、「(C1-C4)アシル」とは、ホルミル、アセチルまたはエタノイル、プロパノイル、n-ブタノイルなどをいう。「アシルオキシ」および「アシルオキシアルキル」などの派生表現は、相応に解釈する。
【0023】
本明細書において、「アリール」という表現は、置換または非置換のフェニルまたはナフチルを意味する。置換フェニルまたは置換ナフチルの具体的な例としては、o-、p-、m-トリル、1,2-、1,3-、1,4-キシリル、1-メチルナフチル、2-メチルナフチルなどが挙げられ得る。「置換フェニル」または「置換ナフチル」はまた、本明細書でさらに定義される、または本技術分野において既知の可能な置換基を全て含む。
【0024】
本明細書において、「アリールアルキル」という表現は、本明細書で定義されるアリールが、本明細書で定義されるアルキルにさらに結合したものを意味する。代表的な例としては、ベンジル、フェニルエチル、2-フェニルプロピル、1-ナフチルメチル、2-ナフチルメチルなどが挙げられる。
【0025】
本明細書において、「アルケニル」という表現は、特定の数の炭素原子を有し、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含む非環式の、直鎖または分岐鎖の炭化水素鎖を意味し、エテニル、および直鎖または分岐鎖のプロペニル、ブテニル、ペンテニル、ヘキセニルなどを含む。派生表現である「アリールアルケニル」および5員または6員の「ヘテロアリールアルケニル」は、相応に解釈する。このような派生表現の具体的な例としては、フラン-2-エテニル、フェニルエテニル、4-メトキシフェニルエテニルなどが挙げられる。
本明細書において、「ヘテロアリール」という表現は、全ての既知の芳香族ラジカル含有ヘテロ原子を含む。代表的な5員のヘテロアリールラジカルには、フラニル、チエニルまたはチオフェニル、ピロリル、イソピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリルなどが含まれる。代表的な6員のヘテロアリールラジカルには、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニルなどのラジカルが含まれる。二環式ヘテロアリールラジカルの代表的な例としては、ベンゾフラニル、ベンゾチオフェニル、インドリル、キノリニル、イソキノリニル、シンノリル、ベンゾイミダゾリル、インダゾリル、ピリドフラニル、ピリドチエニルなどのラジカルが挙げられる。
【0026】
「ハロゲン」または「ハロ」は、クロロ、フルオロ、ブロモ、およびヨードを意味する。
【0027】
広義で、「置換」という用語は、有機化合物の許容可能な置換基を全て含むと想定される。本明細書に開示される一部の特定の実施形態において、「置換」という用語は、(C1-C6)アルキル、(C2-C6)アルケニル、(C1-C6)パーフルオロアルキル、フェニル、ヒドロキシ、-CO2H、エステル、アミド、(C1-C6)アルコキシ、(C1-C6)チオアルキル、および(C1-C6)パーフルオロアルコキシからなる群より独立して選択された1種以上の置換基で置換されることを意味する。しかしながら、当該実施形態において、当業者に知られているその他の好適ないずれの置換基が用いられてもよい。
【0028】
本文、図解、実施例、および表において原子が原子価を満たすことができない場合、当該原子価を満たす適切な数字の水素原子を有するものとみなすこととする。
【0029】
「潜在有機遷移金属触媒」という用語は、特別の(一般に、大気雰囲気条件下での)温度において触媒活性をほとんど、あるいは全く示さず、熱もしくは光の一方、または両方で活性が開始される有機遷移金属化合物を意味する。通常、触媒の触媒活性は、長期間潜在させておくことができ、当該期間は、特に室温以下で暗い雰囲気中に保管した場合、5日以上になり得る。それより高い温度および/または光は、触媒活性を加速し得る。
【0030】
「化学線」または「光分解条件」という用語は、本発明の組成物を、レーザ、デジタル処理(DLP)プロジェクタ、ランプ、発光ダイオード(LED)、水銀アークランプ、光ファイバ、または液晶ディスプレイ(LCD)などから発せられ得る、好適な「電磁放射」にさらすことを意味する。
【0031】
「誘電」および「絶縁」という用語は、本明細書において互換的に使用されることが理解されるであろう。したがって、絶縁材料または層への言及には、誘電材料または層が含まれ、その逆も同様である。さらに、本明細書において、「有機電子デバイス」という用語は、「有機半導体デバイス」という用語、および、例えば電子産業、自動車産業、または他の産業で使用されるこのようなデバイスのいくつかの特定の実装形態を含むものと理解されるだろう。
【0032】
本明細書において、材料の電媒定数(Dk)は、2つの金属板の間に置かれた絶縁材料に蓄えられた電荷と、絶縁材料を真空または空気に置き換えたときに蓄えられる電荷との比である。誘電率(electric permittivity)または単に誘電率(permittivity)とも呼ばれる。自由空間の誘電率から相対的に測定されるため、相対誘電率と呼ばれることもある。
【0033】
本明細書において、「低損失」は、散逸系における振動モード(機械的、電気的、または電気機械的)のエネルギー損失率の尺度である、散逸率(Df)である。これは、振動の「品質」または耐久性を表す品質係数の逆数である。
【0034】
用語「由来の」は、重合体の繰り返し単位が、例えば式(I)、(III)、または(IV)による多環ノルボルネン型単量体から重合(形成)されることを意味し、ここにおいて、結果として得られた重合体は、開環メタセシス重合(ROMP)されて、例えば下記のように、ノルボルネン型単量体の2,3二重結合が開環重合されてなる。
【化1】
【0035】
したがって、本発明の実施により、単一成分の組成物であって、
a)式(I)の1種以上の単量体:
【化2】
(ここにおいて、
mは、0、1または2の整数である。
R
1、R
2、R
3、およびR
4は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
16)アルキル、パーフルオロ(C
1-C
12)アルキル、ヒドロキシ(C
1-C
16)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキル、パーフルオロ(C
6-C
10)アリール、パーフルオロ(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキル、トリ(C
1-C
6)アルコキシシリル、および下記式(A)の基からなる群より選択され、
-Z-Aryl (A)
ここにおいて、
Zは、(CR
5R
6)
a、O(CR
5R
6)
a、(CR
5R
6)
aO、(CR
5R
6)
a-O-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-O-(SiR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-(CO)O-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-O(CO)-(CR
5R
6)
b、(CR
5R
6)
a-(CO)-(CR
5R
6)
bからなる群より選択される結合または基であり、aおよびbは、同一または異なってもよい整数であり、それぞれ独立して1~12であり、
R
5およびR
6は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルオキシ、アセトキシ、(C
2-C
6)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖または分岐鎖のヒドロキシ(C
3-C
6)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択され、
Arylは、フェニル、または、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルオキシ、アセトキシ、(C
2-C
6)アシル、ヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル、直鎖または分岐鎖のヒドロキシ(C
3-C
6)アルキル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される1種以上の基で置換されたフェニルである。);
b)式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物:
【化3】
(ここにおいて、
cおよびdは、0~5の整数であり、
Zは、酸素または硫黄であり、
R
7は、水素、(C
1~C
20)アルキル、(C
2~C
20)アルケニル、(C
2~C
20)アルキニル、および(C
6~C
10)アリールからなる群より選択され、
R
8、R
9、R
10、およびR
11は、同一または異なり、水素、ハロゲン、(C
1-C
16)アルキル、(C
1-C
16)アルコキシ、(C
1-C
16)パーフルオロアルキル、(C
3-C
7)シクロアルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリール、(C
3-C
12)ヘテロシクリル、-OR
16、-NO
2、-COOH、-COOR
16、-CONR
16R
17、-SO
2NR
16R
17、-SO
2R
16、-CHO、-COR
16からなる群よりそれぞれ独立して選択され、ここにおいて、R
16およびR
17は同一または異なり、(C
1-C
6)アルキル、(C
1-C
6)パーフルオロアルキル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリールからなる群よりそれぞれ独立して選択される、あるいは、
2つ以上のR
8、R
9、R
10、およびR
11は、それらが結合している炭素原子と一緒になって、置換もしくは非置換の縮合(C
4~C
8)炭素環、または置換もしくは非置換の縮合芳香環を形成する。
R
12、R
13、およびR
14はそれぞれ、同一または異なってもよく、互いに独立して、水素、ハロゲン、(C
1-C
16)アルキル、(C
1-C
16)アルコキシ、(C
1-C
16)パーフルオロアルキル、(C
3-C
7)シクロアルキル、(C
2-C
16)アルケニル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリール、(C
3-C
12)ヘテロシクリル、-OR
16、-NO
2、-COOH、-COOR
16、-CONR
16R
17、-SO
2NR
16R
17、-SO
2R
16、-CHO、-COR
16からなる群より選択され、R
16およびR
17は、同一または異なり、(C
1-C
6)アルキル、(C
1-C
6)パーフルオロアルキル、(C
6-C
14)アリール、(C
6-C
14)パーフルオロアリールからなる群よりそれぞれ独立して選択され、
R
15は、(C
1~C
16)アルキル、(C
1~C
16)パーフルオロアルキル、(C
3~C
16)シクロアルキル、(C
6~C
14)アリール、(C
6~C
14)パーフルオロアリール、および(C
3~C
12)ヘテロシクリルからなる群より選択され、
Ar
1およびAr
2は、同一または異なり、置換または非置換フェニル、置換または非置換ビフェニル、および置換または非置換ナフチルからなる群よりそれぞれ独立して選択され、置換基はそれぞれ、メチル、エチル、および直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルからなる群より独立して選択される。);および
c)光活性化合物、を含む組成物が提供される。
【0036】
驚くべきことに、本発明の組成物にある添加剤を組み込むと、意図される使用または用途に応じて、組成物に追加の安定性を提供することが今回明らかになった。具体的には、ある紫外線(UV)光遮断剤を組み込むと、特に、例えば3Dプリンタのバット内またはOLEDデバイスのカプセル化内などのUV露光の環境で使用されたときに、本発明の組成物に驚くほどのさらなる安定性を付与することが今回明らかになった。さらに重要なこととして、2種以上のこのようなUV遮断化合物を組み込むと、本発明の組成物は、このような2種以上のUV遮断化合物を採用しない組成物と比較したときに、同様またはより速い速度で硬化することができる点において、さらなる相乗効果を提供することが今回見出された。これら2つ以上のUV遮断剤の組み込みによって、好適な化学線に露光されたときに本発明の組成物の塊状重合活性を減少させないので、相乗的で有益な効果を提供することは、驚くべきこととして留意したい。
【0037】
したがって、本発明の組成物は、少なくとも1種以上の式(V)の化合物を含有する:
【化4】
ここにおいて、
nは、0~4の整数であり;
各R
32は、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
12)アルコキシ、(C
3-C
12)シクロアルコキシ、(C
6-C
12)ビシクロアルコキシ、(C
7-C
14)トリシクロアルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ(C
1-C
3)アルキル、および(C
6-C
10)アリールオキシからなる群より独立して選択される。
【0038】
また、本発明の組成物は、少なくとも1種以上の式(VI)の化合物を含有する:
【化5】
ここにおいて、
R
33は、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキルおよび(C
3-C
12)シクロアルキルからなる群より選択される。
R
34およびR
35はそれぞれ、同一または異なってよく、(C
1-C
10)アルキル、(C
6-C
18)アリール、(C
6-C
12)アリール(C
1-C
5)アルキル、および(C
1-C
5)アルキル(C
6-C
12)アリールからなる群より独立して選択されてよい。いくつかの実施形態において、R
34およびR
35は、(C
4-C
8)アルキル、フェニル、およびフェニル(C
1-C
3)アルキルからなる群より独立して選択される。いくつかの他の実施形態において、R
34およびR
35は、(C
5-C
8)アルキル、およびフェニル(C
1-C
3)アルキルからなる群より独立して選択される。
R
34およびR
35のアルキル部分は、直鎖または分岐鎖であり得る。また、それぞれの場合において、分岐鎖であるアルキル部分の全体または一部が、独立して選択される。必要に応じて、R
34およびR
35のアルキル部分のメチレンのうちの1つ以上は、-CO-、-O-、または-COO-で置き換えられ得る。すなわち、アルキルの-CH
2-部分は、-CO-、-O-、または-COO-のうちの1つに置き換えられる。いくつかの実施形態において、R
34および/またはR
35のメチレン部分の1つ以上の水素は、-COO-で置き換えられる。
【0039】
驚くことに、式(V)の化合物および式(VI)の化合物を含むことで、組成物の安定性を改善するだけでなく、OLEDデバイスの製造または3D物品において組成物で製造された3D物品の光学性能を改善することが可能である。式(V)の化合物または式(VI)の化合物は、各種の機能の中でも特にUV遮断剤として作用し、例えばこれによって意図した3Dオブジェクトを形成するために組成物をバットから引き出したとき、組成物のUV露光中、任意のUV光と周辺部で接触する組成物の安定性を強化するものと考えられる。したがって、式(V)の化合物または式(VI)の化合物と類似に作用し得る任意の化合物、例えば周知のUV遮断剤なども本発明の組成物に採用され得る。所望の利益をもたらす、いずれの量の式(V)の化合物または式(VI)の化合物も、本発明の組成物に採用され得る。通常、このような量は、式(V)の化合物または式(VI)の化合物:式(II)の化合物において、約1:200モル部で変動し得る。いくつかの実施形態において、このような量は、式(V)の化合物または式(VI)の化合物:式(II)の化合物において、約1:100モル部、または約1:50モル部、などからである。しかしながら、同量の式(V)および式(VI)の化合物を使用する必要はなく、式(V)の化合物の変動量を式(VI)の化合物の適切な量と組み合わせて、通常は上記の量で使用することができると留意すべきである。
【0040】
式(V)の化合物の代表的な例は、限定されることなく、以下のようにリストアップされる。
【化6】
【0041】
式(VI)の化合物の代表的な例は、限定されることなく、以下のようにリストアップされる。
【化7】
【0042】
本発明の組成物で使用され得る他の各種のUV光遮断化合物および/またはUV光吸収剤の例は、以下を含む。
【化8】
ここにおいて、nおよびR
32は、本明細書で定義された通りである。
【0043】
式(Va)および(Vb)の化合物の範囲内にある代表的な化合物は、以下のように示されてよい。
【化9】
【0044】
述べたように、本発明の組成物は室温では透明な液体の形態であり、約25℃~約80℃の温度で約3~6ヶ月の期間、透明な溶液のままである。通常、組成物の粘度も3ヶ月~6ヶ月の期間にわたって本質的に一定のままであることが今回観察されている。いくつかの実施形態において、約3~6ヶ月の期間保存した後の粘度の変化は、約10~20パーセントの増加である。組成物の安定性は、以下でさらに詳細に説明されるように、不活性な暗い雰囲気下で保管することによっても増加する。
【0045】
本明細書において、Arylは、下記をさらに含んでよい。
【化10】
【0046】
ここにおいて、各式中のRxは、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C3-C12)アルキル、または(C6-C10)アリールから独立して選択される。
【0047】
述べたように、式(I)の単量体は少なくとも1.5の屈折率を有する。組成物は、室温で透明な液体の形態である。驚くべきことに、上述したように、本発明の組成物は、室温~80℃の範囲の温度で安定であるため、優れた保存寿命安定性を提供する。本明細書において、「安定」とは、本発明の組成物が、室温~80℃の範囲の温度で保たれたとき、特に暗い雰囲気、例えば光のない琥珀色または茶色の容器中に保たれたときに、いかなる粘度の増加もなく透明なままであることを意味する。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、80℃未満の温度で30日を超える期間保存されたとき、粘度変化がないことを示す。したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、80℃未満の温度で40日を超える期間保存されたとき、5パーセント未満の粘度増加を示す。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、80℃未満の温度で60日~90日の期間保存されたとき、10パーセント未満の粘度変化を示す。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、80℃未満の温度で120日~180日の期間保存されたとき、20パーセント未満の粘度変化を示す。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、大気温度、例えば約20℃~25℃で長期間保存されたとき、2パーセント未満の粘度変化を示し、かかる期間は、約120日~300日またはそれ以上の範囲であってよい。すなわち、組成物の粘度は、大気温度条件で保存されたとき、本質的に変化しないままであるが、以上で開示されたように、組成物が長期間保存された後でさえも重合熱が変化しないままであることが示されたUV-DSC測定によって証明されたように、組成物は好適な化学線に露光されるとすぐに塊状重合を引き起こす。
【0048】
本発明の組成物に採用される単量体は、それ自体が文献において既知である、または本技術分野におけるいずれの既知の方法により調製されてこのような単量体もしくは類似タイプの単量体を生成し得る。
【0049】
また、本明細書に記載の単量体は、すなわち、いかなる溶媒も使用していない純粋な形態において、特定の遷移金属触媒、例えば、オルガノ-ルテニウムおよびオルガノ-オスミウム化合物などを使用した、塊状開環メタセシス重合(ROMP)条件下で重合されたとき、容易に塊状重合を引き起こす。例えば、R.H.Grubbs et al.,Handbook of Metathesis,Ed.:Wiley-VCH,Weinheim,Germany,2003、R.H.Grubbs et al.,Acc.Chem.Res. 2001,34,18-29、R.H.Grubbs et al.,Angew.Chem.Int.Ed.,2006,45,3760-3765を参照。また、本明細書に組み込まれている米国登録特許第6,838,489号を参照。本明細書における「塊状重合」という用語は、本技術分野において通常許容された意味を有する。すなわち、通常、実質的に溶媒なしで行われる重合反応である。しかしながら、一部の場合において、反応媒体内に溶媒が低い割合で存在する。例えば、このような少量の溶媒は、潜在触媒および/または活性化剤を溶解する、または反応媒体にそれらを運ぶために使用されてよい。また、一部の溶媒は、単量体の粘度を減少させるために使用されてよい。反応媒体中に使用され得る溶媒の量は、採用される単量体の総重量に対して0~5重量パーセントの範囲であってよい。触媒、活性化剤および/または単量体を溶解する好適な溶媒のいずれも、本発明に採用され得る。このような溶媒としては、アルカン、シクロアルカン、トルエン、THF、ジクロロメタン、ジクロロエタンなどが挙げられる。
【0050】
有利なこととして、1種以上の単量体自体が、潜在触媒と同様に活性化剤の溶解に使用されて溶媒を使用する必要性を回避できることが今回明らかになった。また、一方の単量体がそれ自体で他方の単量体の溶媒として機能し得るので、追加の溶媒の必要性が排除される。例えば、式(I)の第1の単量体が室温で固体である場合、室温で液体である式(I)の第2の単量体が、固体である式(I)の第1の単量体の溶媒として使用され得、その逆も同じである。したがって、このような状況において、複数の単量体が本発明の組成物に採用され得る。
【0051】
したがって、驚くべきことに、式(I)の単量体が、所望の基板上への組成物の塗布とは異なる温度および/または条件における塊状重合で結果として得られる重合体フィルムに高い屈折率を付与する高屈折率材料として機能することが今回明らかになった。通常、本発明に好適な式(I)の単量体は、少なくとも1.5の屈折率という特色をなす。いくつかの実施形態において、式(I)の単量体の屈折率は、1.5よりも高い。いくつかの他の実施形態において、式(I)の単量体の屈折率は、約1.5~1.6の範囲である。さらにいくつかの他の実施形態において、式(I)の単量体の屈折率は、1.55超、1.6超、または1.65超である。いくつかの他の実施形態においては、1.7よりも高くてもよい。
【0052】
通常、本発明の組成物は、室温で低粘度を示し、100センチポアズ以下より低くてもよい。いくつかの実施形態において、本発明の組成物の室温における粘度は、80センチポアズ未満である。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物の室温における粘度は、約10~100センチポアズの範囲である。さらにいくつかの他の実施形態において、本発明の組成物の室温における粘度は、室温で70cP未満、60cP未満、40cP未満、20cP未満である。いくつかの他の実施形態において、室温で、10cP未満であってもよく、4cP~9cPの低さで変動してよい。
【0053】
本発明の組成物が2種以上の単量体を含む場合、例えば、屈折率変更、粘度変更または両方を含む意図した利益をもたらす所望の量で単量体が存在し得る。したがって、式(I)の第1の単量体と式(II)の第2の単量体のモル比は、1:99~99:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態において、式(I)の第1の単量体:式(I)の第2の単量体のモル比は、5:95~95:5の範囲であり、いくつかの他の実施形態においては、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、60:40~40:60、50:50などである。同様に、式(I)の2種より多い異なる単量体が採用されるとき、意図した結果をもたらす、このような単量体のいかなる比も使用され得る。
【0054】
通常、本発明による組成物は、上記の式(I)の1種以上の単量体を包含し、後述のように、互いに別個の式(I)の単量体が追加で必要な場合、様々な実施形態の組成物が選択されて、このような実施形態の用途に適切かつ所望な性質が、このような実施形態に与えられるので、このような実施形態は、各種の特定の用途に適合可能である。
例えば、既に上述されたように、式(I)の特徴的な単量体を適切に組み合わせることで、所望の屈折率、粘度、光透過性を有する組成物の適合が可能になる。また、本明細書にさらに記載されるように、他の重合体物質または単量体物質、例えば、最終的な用途に応じた望ましい光学的性質の提供に適合する無機ナノ粒子などを含むのが望ましいこともある。したがって、本発明の組成物はまた、このような意図した利益をもたらす他の高屈折性重合体物質および/またはナノ粒子を含み得る。このような重合体としては、ポリ(α-メチルスチレン)、ポリ(ビニル-トルエン)、α-メチルスチレンとビニル-トルエンとの共重合体などが挙げられるが、これに限定されない。このようなナノ粒子の例としては、架橋ポリ(スチレン)、架橋ポリ(メタクリレート)、金属酸化物(例えば、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン)、シリコーン、酸化シリコーン、窒化シリコーン、および蛍光材料(例えば、リン化インジウムのようなIII-V族半導体ナノ粒子)などの材料を含む、1~100nmのサイズ範囲の有機または無機のナノ粒子が挙げられるが、これに限定されない。
【0055】
有利なこととして、本発明の組成物はまた、追加で単量体を含むことがさらに明らかになった。いくつかの実施形態において、本発明による組成物は、式(III)の単量体より選択された1種以上の単量体をさらに含んでよい。
【0056】
式(III)の単量体は、
【化11】
ここにおいて、
oは、0~2の整数であり、
Dは、SiR
21R
22R
23、または
-(CH
2)
c-O-SiR
21R
22R
23 (E);
-(CH
2)
c-SiR
21R
22R
23 (F);および
-(SiR
21R
22)
c-O-SiR
21R
22R
23 (G)
から選択される基であり、ここにおいて、
cは、1~10の整数であり、1つ以上のCH
2は、必要に応じて、(C
1-C
10)アルキル、(C
1-C
10)パーフルオロアルキル、または(C
6-C
14)アリールで置換され、
R
18、R
19、およびR
20は、同一または異なり、水素、ハロゲン、およびヒドロカルビルから互いに独立して選択され、ヒドロカルビルは、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
12)アルコキシ、(C
3-C
12)シクロアルコキシ、(C
6-C
12)ビシクロアルコキシ、(C
7-C
14)トリシクロアルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ(C
1-C
3)アルキル、または(C
6-C
10)アリールオキシから選択され、
R
21、R
22、R
23は、互いにそれぞれ独立してメチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
9)アルキル、置換または非置換(C
6-C
14)アリール、メトキシエトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
9)アルコキシ、または置換または非置換(C
6-C
14)アリールオキシである。
【0057】
本発明の本態様において、式(III)の単量体がさらなる利点を提供することが今回明らかになった。すなわち、単量体の性質に応じた式(III)の単量体は、組成物の屈折率を高めたり低めたり、電媒定数を高めたり低めたりすることがあるので、必要に合わせて適合され得る。また、式(III)の単量体は、通常、接着性を向上させるので、「接着改質剤」として使用され得る。最後に、式(III)の単量体は、他の各種利点の中でも、潜在触媒および/または活性化剤に対して、低粘度および良好な溶解性を示し得る。
【0058】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、互いに別個の、式(I)の第1の単量体および第2の単量体を含有し、当該第1の単量体および当該第2の単量体のうちの一方は、少なくとも1.5の屈折率と100センチポアズ未満の粘度を有し、当該第1の単量体は、当該第2の単量体と完全に混和して透明な溶液を形成する。しかしながら、述べたように、本発明の本実施形態において、式(III)の任意の1種以上の単量体が使用され得る。
【0059】
いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、式(IV)の1種以上の単量体を含有してもよい。
【化12】
ここにおいて、
R
24およびR
25は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキル、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
6)アルキルオキシ、アセトキシ、(C
2-C
6)アシル、フェニル、およびフェノキシからなる群より選択される、あるいは
R
24は、R
25およびそれらが結合している炭素原子と一緒になって、1つ以上の二重結合を必要に応じて含む(C
5-C
7)炭素環を形成する。
R
26は、水素、ハロゲン、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
16)アルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキル、ヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
16)アルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルコキシ、-O(CO)R
27、または-O(CO)OR
27であり、ここでR
27は、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
16)アルキル、(C
6-C
10)アリール、または(C
6-C
10)アリール(C
1-C
6)アルキルである。
【0060】
したがって、式(I)の単量体の範囲内のいずれの単量体も、本発明の組成物に採用され得る。式(I)の単量体の代表的な例としては、限定されることなく、以下が挙げられる:
【化13-1】
【化13-2】
【化13-3】
【化13-4】
【化13-5】
【0061】
同様に、式(III)の単量体の範囲内のいずれの単量体も、本発明の組成物に採用され得る。式(III)の単量体の代表的な例としては、限定されることなく、以下が挙げられる:
【化14-1】
【化14-2】
【0062】
式(IV)の単量体の代表的な例としては、限定されることなく、以下が挙げられる:
【化15-1】
【化15-2】
【0063】
述べたように、本発明の組成物は、組成物が好適な化学線にさらされたとき、ROMP条件下で本明細書に記載の塊状重合をもたらす、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物を少なくとも1種含む。通常、式(II)のこのようなオルガノ-ルテニウム化合物は、「潜在」であり、特定の条件下でのみ活性化する。また、本明細書において、「潜在」とは、本発明の組成物に使用されたオルガノ-ルテニウム触媒が、本発明の組成物を大気条件下で最大80℃の温度で保存したときに長期間、不活性のままであることを意味する。したがって、いくつかの実施形態において、オルガノ-ルテニウム触媒は、80℃未満の温度で保存されたとき、30日を超える期間、潜在のままである。いくつかの他の実施形態において、オルガノ-ルテニウム触媒は、50℃未満の温度で保存されたとき、40日~90日の期間、潜在のままである。
【0064】
通常、式(I)または式(III)または式(IV)の単量体の開環メタセシス重合をもたらす式(II)の潜在性オルガノ-ルテニウム化合物のいずれも、本発明の組成物に採用され得る。興味深いことに、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物は、約25℃の温度(すなわち、大気条件)から約80℃の温度までにおいて非常に安定であり、そのように、あるいは式(I)または(III)または(IV)の1種以上の単量体の存在下で、3~6ヶ月またはそれ以上を含む数日間、保存され得ることが今回明らかになった。すなわち、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物は、室温または室温付近から最大80℃の上昇した温度まで安定であるにもかかわらず、必要なときにのみ、熱、酸、光、および化学的活性化を限定することなく含む、様々な条件によって容易に活性化され得る、潜在触媒として機能する。化学的活性化には、熱酸発生剤または光酸発生剤の使用が含まれてよい。
【0065】
文献で知られている潜在触媒のいくつかは、本明細書で特定される条件下では安定ではなく、それらのほとんどは、本明細書に記載されるような必要とされる保存寿命安定性を示さない。例えば、Grubbs,et al.,Organometallics,2011,30(24):6713-6717、Sutar et al.,Angew.Chem.Int.Ed.2016,55,764-767、Leitgeh,et al.,Monatsh Chem(2014)145:1513-1517、van Hensbergen,et al.,J.Mater.Chem.C.2015,3,693-702、Grubbs,et al.,J.Am.Chem.Soc.,2009,131,203802039、Zak,et al.,Eur.J.Inorg.Chem.,2014、1131-1136、Gawin,et al.,ACS Catal.2017,7,5443-5449を参照。このような触媒のその他の例は、該当箇所が本明細書に組み込まれている米国登録特許第9,328,132号においても参照できる。したがって、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物を包含する組成物は、本明細書に記載のように、各種用途において従来達成できなかった利点を提供する。
【0066】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物を含有し、ここにおいて、
Zは、酸素であり、
R7は、水素であり、
R8、R9、R10、およびR11は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、および-NO2からなる群より選択され、
R12、R13、およびR14は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、および-NO2からなる群より選択され、
R15は、メチル、エチル、およびシクロヘキシルからなる群より選択され、
Ar1およびAr2は、同一または異なり、それぞれ独立して、フェニル、2,6-ジメチルフェニル、2,6-ジエチルフェニル、2,6-ジ(イソプロピル)フェニル、および2,4,6-トリメチルフェニルからなる群より選択される。
【0067】
したがって、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物の範囲内に属する、少数の例示的な潜在触媒は、限定されることなく、以下からなる群より選択されてよい。
【化16-1】
【化16-2】
【0068】
興味深いことに、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物は、好適な光分解条件にさらされたとき、ある既知の光活性化合物によって活性化され得、それによって、本明細書に記載のROMP条件下で、本発明の組成物に含まれる式(I)または式(III)または式(IV)の1種以上の単量体の塊状重合を促進することが今回明らかになった。したがって、例えば、ある種類の置換キサントン誘導体などある既知の光活性化合物が本目的に使用され得ることが今回明らかになり、これは、以下の構造式(VII)によって示される:
【化17】
ここにおいて、
Yは、ハロゲンであり、
R
30およびR
31は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
12)シクロアルキル、(C
6-C
12)ビシクロアルキル、(C
7-C
14)トリシクロアルキル、(C
6-C
10)アリール、(C
6-C
10)アリール(C
1-C
3)アルキル、(C
1-C
12)アルコキシ、(C
3-C
12)シクロアルコキシ、(C
6-C
12)ビシクロアルコキシ、(C
7-C
14)トリシクロアルコキシ、(C
6-C
10)アリールオキシ(C
1-C
3)アルキル、および(C
6-C
10)アリールオキシからなる群より選択される。
【0069】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は、以下のとおりである。
Yは、塩素または臭素であり、
R30およびR31は、同一または異なり、それぞれ独立して、水素、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、フェニル、シクロヘキシル、メトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、およびフェノキシからなる群より選択される。
【0070】
式(VII)の化合物の代表的な例は、限定されることなく、以下のようにリストアップされる。
【化18-1】
【化18-2】
【化18-3】
【0071】
述べたように、驚くべきことに、式(II)の化合物の、式(VII)の化合物のうちの1種以上と組み合わせた好適な組み合わせを採用することで、組成物が好適な化学線、通常約240nm~410nmの波長にさらされたとき、単量体の塊状重合が誘因されることが今回明らかになった。組成物は、塊状開環メタセシス重合(ROMP)を引き起こして透明なフィルムまたはオブジェクトを形成する。
【0072】
意図した結果をもたらす任意の量の式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物は、本発明の組成物中に採用され得る。通常、式(I)、式(III)、および式(IV)の単量体:式(II)の化合物の組み合わせたモル比は、10,000:1~5,000:1以下の範囲である。いくつかの他の実施形態において、単量体:式(II)の化合物のこのようなモル比は、15,000:1、20,000:1以上である。
【0073】
意図した結果をもたらす任意の量の式(VII)の化合物は、本発明の組成物中に採用され得る。通常、採用される式(VII)の化合物の量は、採用される単量体100部あたりの0.5部(phr)から採用される単量体100部あたりの約3部以上の範囲であり得る。いくつかの他の実施形態において、このような式(VII)の化合物の量は、100phrの単量体あたり1phr、100phrの単量体あたり1.5phr、100phrの単量体あたり2phr、100phrの単量体あたり2.5phrである。いくつかの他の実施形態において、採用される式(VII)の化合物の量は、本発明の組成物の意図した硬化速度に応じて、100phrあたり0.5phr未満または100phrあたり3phr超であり得る。
【0074】
いくつかの実施形態において、本発明による組成物は、好適なUV照射で露光されると、塊状重合を引き起こして実質的に透明なフィルムを形成する。単量体は塊状重合を引き起こして、可視光線に対して実質的に透明なフィルムを形成する。すなわち、ほとんどの可視光線は、当該フィルムを透過する。いくつかの実施形態において、本発明の組成物から形成されたこのようなフィルムは、可視光線の90パーセント以上の透過率を示す。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物から形成されたこのようなフィルムは、可視光線の95パーセント以上の透過率を示す。
【0075】
本発明の組成物が、好適な化学線に露光されたとき、2種のUV遮断剤のいずれも含まない組成物と同様の速度で塊状重合を引き起こすことはさらに留意されたい。同様に、本発明の組成物は、UV遮断剤のうちの1種のみを含む組成物と比較したとき、同様の重合速度を示す。したがって、好適な化学線にさらされたとき、本発明の組成物の重合速度の活性に識別可能な減少はない。さらに、本発明の組成物から形成されたフィルムは、
図1および
図2に示すように、実質的に同じ透過率を示し、本発明の組成物は、370nm~800nmの波長で90%超の透過率を示すことを示す。本態様は、以下に記載する作用の実施形態においてさらに説明する。
【0076】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、好適な化学線に露光した後、5秒未満で塊状重合を引き起こして、透明フィルムなどの固体オブジェクトを形成することができる。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、好適な化学線に露光した後、10秒未満で塊状重合を引き起こして、透明フィルムなどの固体オブジェクトを形成することができる。さらにいくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、好適な化学線に露光された後、1~10秒、2~9秒、3~8秒、4~7秒などにおいて、塊状重合を引き起こして、透明フィルムなどの固体オブジェクトを形成することができる。
【0077】
さらに他の実施形態において、本発明の組成物は、80℃~100℃の温度で好適なUV照射で露光されると、塊状重合を引き起こして実質的に透明なフィルムまたはオブジェクトを形成する。
【0078】
いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物は、通常、約240nm~400nmの範囲であり得る電磁放射の特定の波長で活性化され得る。したがって、当該電磁放射に活性である任意の化合物は、3D製造方法で安定的な本発明の組成物に採用され得る。いくつかの実施形態において、式(VII)の化合物を活性化するような放射の波長は、260nmである。いくつかの他の実施形態において、式(VII)の化合物を活性化するような放射の波長は、310nmである。さらにいくつかの他の実施形態において、式(VII)の化合物を活性化するような放射の波長は、395nmである。
【0079】
しかし、本明細書において採用された式(II)の潜在性オルガノ-ルテニウム化合物を活性化し得る、その他の既知の光活性化合物はいずれも、本発明の組成物で使用され得る。このような化合物は全て、本発明の一部である。
【0080】
有利なこととして、1つ以上の単量体架橋剤の好適な量での採用は、本発明の組成物から形成されて結果として得られる三次元オブジェクトの機械的性質を劇的に向上させ得ることが今回さらに明らかになった。代表的なこのような好適な単量体架橋剤は、以下からなる群より選択され得る:
【化19】
ここで、
mは、0、1または2の整数であり、
bは、1~10の整数であり、
Kは、CH
2、CH
2-CH
2、O、およびSからなる群より選択され、
Xは、O、S、NR
a、SiR
bR
c、SiR
bR
cO(SiR
bR
cO)
nSiR
bR
c、SiR
bR
c(C
6-C
10)アリールSiR
bR
c、-C(O)-、-C(O)O-、-OC(O)-、-OC(O)-O-、-S-C(O)-、-C(O)-S-、-CH=CH-、および-C≡C-からなる群より選択される結合または成分であり、
R
a、R
b、およびR
cは、互いに独立して、水素、メチル、エチル、または直鎖または分岐鎖の(C
3-C
12)アルキル、(C
3-C
8)シクロアルキル、(C
5-C
12)ビシクロアルキル、(C
5-C
12)ビシクロアルケニル、および(C
5-C
12)ビシクロアルケニル(C
1-C
3)アルキルSi(CH
3)
2からなる群より選択され、O、NR
aおよび/またはS原子が、互いに直接連結されておらず、
nは、0~10の整数である。
【0081】
有利なこととして、式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の1種以上の化合物を組み込むことで、組成物の性質を意図した目的に適合され得ることが今回明らかになった。例えば、式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の1種以上の化合物と本発明の組成物との好適な組み合わせにより、各種性質の中でも、本発明の組成物から形成される物品の機械的性質が改善されることが可能である。特に、式(VIIIa)または式(VIIIb)の化合物の範囲内に特定のシロキサン化合物を組み込むことで、それから形成される製品の衝撃強度が向上することが今回明らかになった。意図した利益をもたらす、任意の量の式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の1種以上の化合物が、採用され得る。通常、このような量は、採用される場合、式(III)または式(IV)の1種以上の単量体と、式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の1種以上の化合物とを組み合わせた、式(I)の単量体の総モルに基づいた式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の1種以上の化合物の0~20モルパーセントの範囲であり得る。いくつかの実施形態において、このような量は、1~15モルパーセントの範囲であってよく、いくつかの他の実施形態において、このような量は、0.5~10モルパーセントの範囲であってよく、さらにいくつかの他の実施形態において、このような量は、0.5~5モルパーセントの範囲であってよい。
【0082】
したがって、いくつかの実施形態において、本発明の組成物から形成される重合体の衝撃強度は、少なくとも40J/mである。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物から形成される重合体の衝撃強度は、少なくとも60J/mである。さらにいくつかの他の実施形態において、本発明の組成物から形成される重合体の衝撃強度は、少なくとも80J/m、100J/m以上、140J/m以上であり、または、例えば、170J/m超、180J/m超、200、220、もしくは240J/m超など、160J/mより高くてよく、または、本明細書に記載されたように採用された単量体のタイプに応じて500、550、600、700、または800J/m超であってもよい。いくつかの実施形態において、式(I)の1種以上の単量体自体を含む本発明の組成物から形成される重合体は、50~800J/mの範囲であり得る異常な衝撃強度を示し得る。
【0083】
いくつかの実施形態において、式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の化合物はそれぞれ、m=0およびK=CH2を有する。いくつかの実施形態において、式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の化合物は、それぞれ、m=1およびK=CH2を有する。さらにいくつかの他の実施形態において、式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の化合物は、それぞれ、m=2およびK=CH2を有する。
【0084】
式(VIIIa)または式(VIIIb)の範囲内の化合物の代表的な例には、限定されないが、以下を含む:
【化20-1】
【化20-2】
【0085】
また、多官能性シクロオレフィンペンダント基を有する他の各種オリゴマまたは重合体のポリシロキサンは、式(VIIIa)の化合物の範囲内にあってもなくてもよく、本発明の組成物中の架橋分子として好適である。このような例としては、下記式のオリゴマシロキサンが挙げられる。
【化21】
ここで、bは、1~9の整数であり;
nは、1~10の整数であり;
R
bおよびR
cは、独立して、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、およびフェニルからなる群より選択される。
【0086】
式(VIIIa)、式(VIIIb)、または式(VIIIc)の化合物の他の各種非限定的な例は、以下からなる群より選択されてよい。
【化22-1】
【化22-2】
【化22-3】
【化22-4】
【化22-5】
【0087】
式(VIIIa)、式(VIIIb)、および式(VIIIc)の化合物の範囲内の他の各種非限定的な例は、以下に列挙され得る。
【化23-1】
【化23-2】
【0088】
本発明のいくつかの実施形態において、本発明の組成物は、式(I)の単量体と、存在する場合は、式(III)または式(IV)の単量体との塊状重合を促進するために、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物を活性化し得る他の光増感剤化合物を追加で含有してよい。この目的のために、任意の好適な増感剤化合物は、本発明の組成物中に採用され得る。このような好適な増感剤化合物には、アントラセン、フェナントレン、クリセン、ベンズピレン、フルオランテン、ルブレン、ピレン、キサントン、インダントレンなどの光増感剤、およびこれらの混合物を含む。いくつかの例示的な実施形態において、好適な増感剤成分は、その混合物を含む。通常、光増感剤は、照射光源からエネルギーを吸収し、そのエネルギーを本発明の組成物に採用された所望の基板/反応物に伝達する。
【0089】
本発明による組成物は、組成物と組成物から結果として作られるオブジェクトの両方の性質を改善する目的に有用であり得る任意的な添加剤をさらに含有してよい。このような任意的な添加剤は、例えば、抗酸化剤および相乗剤を含んでよい。
【0090】
本発明の別の実施形態において、本発明の組成物は、2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物を包含する。
【0091】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の組成物は、2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、2-フェネチル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(PETD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物を包含する。
【0092】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の組成物は、2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、5-フェネチルビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン(PENB)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[イソプロピルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-2)の混合物を包含する。
【0093】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の組成物は、2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[シクロヘキシルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-3)の混合物を包含する。
【0094】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の組成物は、2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(HexylTD)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-4)の混合物を包含する。
【0095】
本発明のさらに別の実施形態において、本発明の組成物は、2-フェネチル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン(PETD)、1,3-ビス(2-(ビシクロ[2.2.1]ヘプト-5-エン-2-イル)エチル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン(BisENBTMDS)、1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン(CPTX)、2,5-ビス(5-tert-ブチル-ベンゾオキサゾール-2-イル)チオフェン(BTBBT)、6-ブチル-2-(2-ヒドロキシ-3-(2-フェニルプロパン-2-イル)-5-(2,4,4-トリメチルペンタン-2-イル)フェニル)-[1,2,3]トリアゾロ[4,5-f]イソインドール-5,7(2H,6H)-ジオン(Tinuvin 970)、および[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)(Ru-1)の混合物を包含する。
【0096】
本発明のさらなる態様において、実質的に透明なフィルムを形成するキットが提供される。本発明の組成物は、このキット内に分散される。したがって、いくつかの実施形態において、式(I)の1種以上の単量体、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、および式(V)の化合物、式(VI)の化合物、および式(VII)の化合物、ならびに必要に応じて、式(III)の1種以上の単量体、および/または式(VII)の1種以上の単量体および本明細書に記載の他の各種添加剤が分散されたキットが提供される。
【0097】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、本発明によるキットは、式(I)の1種以上の単量体、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、および式(VII)の化合物を含む。
【0098】
さらにいくつかの他の実施形態において、本発明によるキットは、式(I)の1種以上の単量体、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、式(VII)の化合物、および本明細書に記載の1種以上の添加剤を含有する。
【0099】
いくつかの実施形態において、上記のキットは、本明細書に記載の、互いに別個の式(I)の2種以上の単量体を包含する。いくつかの他の実施形態において、本発明のキットは、少なくとも2種の単量体を含み、第1の単量体は第2の単量体および/または式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、および本明細書に記載の添加剤の溶解を促進する。本明細書に記載の式(I)の単量体はいずれも、本実施形態に使用され得る。これらの成分に含まれた式(I)の第1の単量体と第2の単量体とのモル比は、変動でき、1:99~99:1、10:90~90:10、20:80~80:20、30:70~70:30、60:40~40:60、50:50などの範囲であってよい。いくつかの他の実施形態において、キットは、互いに別個の式(I)の2種を超える単量体が分散されている組成物を包含し得る。さらに、上述のように、式(I)の第1の単量体は、式(I)の第2の単量体に完全に可溶であり、室温で透明な溶液を形成する。いくつかの実施形態において、単量体混合物は、わずかに上昇した温度で、例えば30℃、40℃、または50℃で透明な溶液であってよい。
【0100】
本発明の本実施形態の他の態様において、本発明の組成物は、十分な時間をかけて好適な放射にさらされたとき、塊状重合を引き起こして重合体フィルムまたは固体オブジェクトを形成する。言い換えれば、本発明の組成物は、カプセル化されるべき表面または基板に注がれ、単量体の重合を引き起こすために好適な放射に露光されて、透明フィルムまたは固体オブジェクトの形態であり得る固形の透明な重合体を形成する。通常、上述のように、このような重合は、約240nm~410nmの範囲の波長で化学線に露光されたときに起こり得る。組成物はまた、好適な放射と熱に同時にさらされて、塊状重合を引き起こし得る。本発明を実施することで、採用された製造方法に応じて、実質的に透明なフィルムであるこのような基板上の重合体フィルム、または固体オブジェクトを得ることが可能である。本明細書における「実質的に透明なフィルム」とは、本発明の組成物から形成されたフィルムが、可視光線で光学的に透明であることを意味する。したがって、本発明のいくつかの実施形態において、当該フィルムは、少なくとも90パーセントの可視光線透過率を有し、いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物から形成されたフィルムは、少なくとも95パーセントの可視光線透過率を有する。
【0101】
いくつかの実施形態において、本明細書に記載のキットは、上記の具体的に列挙された混合物のいずれか1つを含む組成物を包含する。
【0102】
本発明のさらに別の態様によれば、各種光電子デバイスの製造のために実質的に透明なフィルムを形成する方法であって、
式(I)の1種以上の単量体、式(II)のオルガノ-ルテニウム化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、式(VII)の化合物、ならびに、必要に応じて式(III)または式(IV)の1種以上の単量体および本明細書に記載の1つ以上の添加剤を含む均質で透明な組成物を形成するステップと、
当該組成物で好適な基板を被覆する、または好適な基板上に当該組成物を注いでフィルムを形成するステップと、
当該単量体の重合を引き起こすために、当該フィルムを好適な放射に露光するステップ、または当該フィルムを好適な温度に加熱するステップと、を含む方法をさらに提供する。
【0103】
本発明の組成物で所望の基板を被覆してフィルムを形成するステップは、スピンコート法など、本明細書に記載のおよび/または当該技術分野の当業者に既知の任意の被覆またはプリント手順によって実施され得る。その他の好適な被覆法には、スプレー法、ドクターブレード法、メニスカスコート法、インクジェットコート法、およびスロットコート法が含まれるが、これに限定されない。組成物はまた、本技術分野において既知のように、基板上にインクジェットプリントすることができる。混合物はまた、基板に注がれてフィルムを形成し得る。好適な基板は、電気デバイス、電子デバイス、または光電子デバイス、例えば半導体基板、セラミックス基板、ガラス基板に使用される、または使用されてよい任意の適切な基板を含む。
【0104】
次に、被覆基板は、好適な化学線に露光される、すなわち、本明細書に記載のような240nm~410nmの範囲の波長を有する放射に露光されて塊状重合を促進する。いくつかの実施形態において、基板は、放射に露光され、約40℃~約90℃の温度で約2分~10分間焼成される。いくつかの他の実施形態において、基板は、放射に露光され、約60℃~約90℃の温度で5分~20分間焼成される。
【0105】
こうして、形成されたフィルムは、当該技術分野で既知の任意の方法で光学的性質を評価される。例えば、可視スペクトルでのフィルムの屈折率は、楕円計測法で測定され得る。フィルムの光学的品質は、目視観察により測定され得る。定量的なパーセント透過率は、可視分光法によって測定され得る。通常、本発明によって形成されたフィルムは、優れた光透過性を示し、本明細書に記載の所望の屈折率に適合され得る。
【0106】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、本明細書に記載の組成物の塊状重合によって得られた光学的に透明なフィルムを提供する。別の実施形態において、本明細書に記載の本発明の透明フィルムを含む光電子デバイスを提供する。透明フィルムの厚さは、0.5μm~100μmの間、好ましくは1mm~50μmの間の任意の範囲であり得る。
【0107】
述べたように、本発明の組成物は、任意の既知の三次元(3D)プリント技術およびその他のプリント技術に使用され得る。当該技術分野に既知の3Dプリント手順のうちの一部は、連続液体界面生産方式(CLIP)、レイヤバイレイヤ方式(LBL)、インクジェットプリント、および、正面開環メタセシス(FROMP)技術などの正面重合法を含む。例えば、Robertson et al.,Nature,Vol.557、223-227(2018)を参照。
【0108】
CLIP方式において、本発明の組成物を含む液体樹脂槽の下の酸素/UV透過性窓を通して一連の連続UVイメージ(デジタル光処理(DLP)イメージングユニットまたは一部を生成するためのレーザによって生成される)を投射することによって3Dオブジェクトが連続的に形成される。窓の上に生成されるデッドゾーンは、前進する部分の下で液体界面を維持する。デッドゾーンの上では、硬化する部分が樹脂槽から連続的に引き出される。この引き出しによって生じる吸入力によって、同時に樹脂槽は再補充される。このように、100ミクロン未満の部分分解能で最大数cmの別個の寸法の各種部品が製造され得る。
【0109】
3Dインクジェットプリント技術において、本発明の組成物は、光重合性インク組成物として使用され、基板、典型的にシリコーンウェハ上に、ラインおよびバイアスを形成し得る。したがって、電子および光電子分野の用途で有用な多様な部品は、本発明の組成物を使用して製造され得る。非限定的なこのような用途としては、各種の基板でのOLEDデバイスの製造が挙げられ、実質的に粒子がない環境で高収率に生産され得る。本発明の組成物は、このようなOLEDデバイスの一部において有機カプセル化剤層および/または充填材料として作用し得る。
【0110】
したがって、本発明のさらに別の態様において、三次元オブジェクトを形成する方法であって、
式(I)の1種以上の単量体、式(II)の少なくとも1種のオルガノ-ルテニウム化合物、式(V)の化合物、式(VI)の化合物、式(VII)の化合物、および、必要に応じて式(III)の1種以上の単量体および/または式(IV)の1種以上の単量体を、本明細書に記載の1種以上の添加剤と組み合わせて含む組成物であって、均質で透明な組成物を不活性雰囲気でブランケットした好適な容器に提供するステップと、
容器から組成物を引き出しながら、好適なUV放射に露光するステップと、
三次元オブジェクトを形成するステップと、を含む方法を提供する。
【0111】
驚くべきことに、不活性雰囲気でブランケットした好適な容器に組成物を置くことで、いずれの空隙もなく優れた光学的、熱的、および機械的な性質を示す3Dオブジェクトを形成することが可能であることが明らかになった。このような不活性ブランケット雰囲気は、この効果をもたらす任意の不活性気体を使用することによって達成され得る。非限定的なこのような不活性気体としては、窒素、ヘリウム、アルゴンなどが挙げられる。いくつかの実施形態において、使用される不活性雰囲気は、乾燥窒素でパージするやり方による。
【0112】
したがって、本発明の方法によって形成された3Dオブジェクトは、優れた光学的、熱的、および機械的な性質を示す。通常、それらオブジェクトの性質は、意図した最終的な用途に適合され得る。例えば、このような3Dオブジェクトを形成するために、3Dオブジェクトの熱的性質は、採用される場合、式(III)または式(IV)の単量体と組み合わせた式(I)の単量体のタイプに応じて、最大180℃以上でも安定であるように適合され得る。同様に、機械的な性質も、本明細書に記載の好適な単量体を単に選択することによって、所望の機械的性質に適合され得る。通常、単量体の適切な選択によって、非常に優れた衝撃強度を保つ部品が製造され得る。最も重要なことに、本発明の組成物は、3Dプリント条件に対して安定であり、約5~10日の範囲の数日間、任意の分解および/または早期重合なく、最大80℃の温度に耐えられるので、各種利益の中でも、長い保存寿命安定性が提供される。いくつかの実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも6日間、80℃で安定である。いくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも10日間、50℃で安定である。さらにいくつかの他の実施形態において、本発明の組成物は、少なくとも8日間、80℃で安定である。
【0113】
したがって、本発明のいくつかの実施形態において、優れた光学的、熱的、かつ機械的な性質を示す本発明の組成物を含む、三次元オブジェクトも提供する。
【0114】
本発明の組成物は、環境条件、特に酸素および湿気に敏感な各種、電子または光電子デバイス、特に有機電子デバイスにおける保護層としても有用である。本発明の組成物は、環境条件に対して非常に必要な保護を提供するこのような保護層として機能する。通常、このような用途、例えば、有機発光ダイオード(OLED)デバイスにおいて、OLEDまたはOLEDスタックの複数の層は、好適な基板上に形成された後、本発明の組成物によってカプセル化される。
【0115】
OLEDスタックのカプセル化は、浸漬コート法、インクジェットコート法、スピンコート法などの方法を含むがこれらに限定されない任意の既知の方法によって実行され得る。次いで、被覆されたOLEDスタックは、好適な化学線にさらされて、ROMPを介してOLEDスタック上に透明な重合体層を形成する。透明な重合体層の形成前または後に、導電層が重合体層上に堆積される。このような導電層は、例えば、とりわけ、化学蒸着(CVD)法などの任意の既知の方法によって堆積され得る。本発明の組成物から形成された重合体層は、このようなCVD法に対して安定であり、本明細書に記載の各種性質の中でも、特に透明な性質を維持する。最後に、OLEDデバイスは、必要に応じて、上記の本発明の組成物で被覆し、好適な化学線にさらすことによって別の重合体層を形成することで保護され得る。このようなスタックプロセスは、透明な重合体層の形成および/または導電層の堆積という複数のプロセスが必要となり得る。
【0116】
下記の実施例には、本発明の特定の化合物/単量体、重合体、および組成物の調製および使用の方法が詳細に記載されている。詳細な調製は、上述のより一般的な記載された方法の範囲内にあり、その例示の役割をする。実施例は、説明のみを目的とし、本発明の範囲を限定することを意図しない。実施例において、および本明細書を通して、単量体の対触媒比は、モル対モル基準に基づく。
【実施例】
【0117】
次の略語は、本明細書において本発明の特定の実施形態を説明するために採用されたいくつかの化合物、器具、および/または方法を記述するために用いられた。
【0118】
HexylTD:2-ヘキシル-1,2,3,4,4a,5,8,8a-オクタヒドロ-1,4:5,8-ジメタノナフタレン
Ru-1:[1,3-ビス(2,6-ジイソプロピルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン]{2-[(E)-({2-[メチルチオ-κS]フェニル}イミノ-κN)メチル]フェノキシド-κO}[2-(オキシド-κO)ベンジリデン-κC]ルテニウム(II)
CPTX:1-クロロ-4-プロポキシ-9H-チオキサンテン-9-オン
BTBBT:2,5-ビス(5-(tert-ブチル)ベンゾ[d]オキサゾール-2-イル)チオフェン
Bodo Moller Chemie社から市販中のTinuvin 970
phr:単量体100部あたりの部
【0119】
本発明で用いられる各種の単量体は、市販のものであるか、現在同時係属中の米国登録特許第9,944,818号に記載の手順で容易に調製され得る。
【0120】
下記の実施例は、本発明の組成物が室温または60℃で数日間相当な安定性を維持し、次のようにUV光に露光すると、非常に容易に塊状重合を引き起こして所望のオブジェクトを以下に特定されるように形成されることを立証する。
【0121】
実施例1~3
【0122】
組成物の調製(作用例1~3、比較例1、参照例1~3)
茶色のガラス瓶において、CPTX(1.5phr)を30℃で20分間超音波処理することによりHexylTD(10,000モル部)に溶解して、透明な溶液を形成した。溶液を窒素で8時間パージした。Ru-1触媒(1モル部)を、グローブボックス内のパージされた溶液に添加し、30分間超音波処理して、触媒を完全に溶解した。さらなる実験に先立って、サンプルが完全に溶解したかを光学的に確認し、濾過した。
任意の(c)化合物および/または(d)化合物を含む組成物については、HexylTDの相対量を減少させ、CPTXおよびRu-1の濃度を一定に保った。調製した組成物を表1に記載する。例えば、作用例3の組成物は、作用例3の組成物の全重量(100重量%)と比較して、それぞれ、0.5重量%および2重量%のBTBBTおよびTinuvin(登録商標)970を有する。
【0123】
薄膜の調製(スピンコート+UV硬化)
表1に記載の組成物の薄膜は、窒素下のグローブボックス内で、予め洗浄した石英基板上にスピンコートすることにより調製した。湿膜に395nmのUV光を照射して膜を硬化させ、適用した量は、通常の1~5J/cm2の間であり、使用した正確な量を表1にまとめる。スピンコートパラメータは、8μmの硬化膜厚を得ることに最適化された。膜厚は、膜を硬化させた後、触針式表面形状計を用いて膜表面と基板表面(メスで引っ掻いた後)との高低差として、表面形状測定により求めた。
【0124】
透過スペクトル
石英スライド上の硬化薄膜で透過スペクトルを記録した。250~800nmの範囲でスペクトルを収集し、空の石英スライドに基準化した。表1に膜の光学特性をまとめる。UV硬化量として、表1に、λ=395nm[J/cm
2]の値を記載する。
データから分かるように、(c)化合物または(d)化合物を添加した組成物によって作られた膜は、可視域における透過率に実質的な変化を示さない。すなわち、全ての膜は、
図1によって証明されたように、可視スペクトルの450~800nmにおける98%超の透過率を示す。
【0125】
(c)化合物および(d)化合物を添加した組成物によって作られた膜は、UV光範囲における透過率を低下させる。これは、すでにこれらの材料の薄膜を使用して、下層をUV光から保護できることを示す。(c)化合物および/または(d)化合物の一部は、この波長付近で実質的な吸収を示すが、膜の硬化は395nmの光で行うことができる。比較例1および作用例3の透過率スペクトルプロットを
図1に示す。
【0126】
硬化率の測定
調製した膜を基板から削り取ることによって硬化した材料を収集し、ATR-FTIR分光法により分析した。スペクトルは、ベースライン補正され、2851cm-1のピークで正規化された。3058cm-1における単量体固有の振動を積分し、未硬化製剤の信号の積分と比較することによって硬化率を定めた。
【0127】
結果から分かるように、(c)化合物および(d)化合物の組み合わせは、250~400nmの範囲における透過率を低下させるが、硬化率は高いままである(作用例1~3)。膜中のHexylTDの存在を低減できるため、得られる膜の硬化率が高いことが好ましい。
【0128】
【0129】
本発明を上記実施例を挙げて説明したが、本発明は実施例に限定されず、本明細書で上述の一般的な領域を総体的に包括している。その精神および範囲から逸脱することなく、様々な修正および実施形態が成され得る。
【国際調査報告】