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▶ グリコサイエンス ソシエダー リミターダの特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】徐放製剤
(51)【国際特許分類】
   A01N 31/06 20060101AFI20241108BHJP
   A61K 31/7034 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 31/00 20060101ALI20241108BHJP
   C07H 15/203 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/12 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 47/54 20170101ALI20241108BHJP
   A61Q 17/02 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/362 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/365 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/27 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20241108BHJP
   A01P 17/00 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A01N31/06
A61K31/7034
A61P31/00
C07H15/203
A61K47/02
A61K47/12
A61K47/26
A61K47/54
A61Q17/02
A61K8/34
A61K8/60
A61K8/362
A61K8/365
A61K8/27
A61K8/20
A01P17/00
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532166
(86)(22)【出願日】2022-11-24
(85)【翻訳文提出日】2024-07-11
(86)【国際出願番号】 EP2022083096
(87)【国際公開番号】W WO2023099327
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21383077.1
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522322099
【氏名又は名称】グリコサイエンス ソシエダー リミターダ
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【弁理士】
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【弁理士】
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【弁理士】
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【弁理士】
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】サットン ピーター ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】ボッシュ ヘリュー ルイス
【テーマコード(参考)】
4C057
4C076
4C083
4C086
4H011
【Fターム(参考)】
4C057BB02
4C057DD01
4C057JJ55
4C076AA94
4C076BB31
4C076CC31
4C076DD23
4C076DD42
4C076DD43
4C076EE59
4C076FF31
4C083AB211
4C083AB212
4C083AB341
4C083AB342
4C083AC111
4C083AC112
4C083AC291
4C083AC301
4C083AC302
4C083AD201
4C083AD202
4C083BB42
4C083CC20
4C083DD23
4C083EE50
4C083FF01
4C086AA01
4C086AA02
4C086EA08
4C086MA03
4C086MA05
4C086MA63
4C086NA12
4C086ZB31
4H011AE02
4H011BB03
4H011BC06
4H011BC08
4H011BC18
4H011DF02
(57)【要約】
本発明は徐放製剤に関する。本発明はまた、忌避製剤の使用、その使用法、および該製剤を含む組成物にも関する。本発明はさらに、式(II)のPMDグルコバニリンコンジュゲート化合物、式(II)の化合物を調製するためのプロセス、およびさらに、PMDの制御放出のための式(II)の化合物の使用に関する。本発明はまた、PMDを含む抽出物からラセミcis/trans-PMDを単離するためのプロセスにも関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、
(b)グリコシド、
(c)有機酸、および
(d)二価金属ハロゲン化物塩
を含むことを特徴とする、徐放製剤。
【請求項2】
PMDが、PMDの8つの立体異性体、ラセミ-cis-PMD、ラセミ-trans-PMD、およびそれらの混合物のいずれかから選択されることを特徴とする、請求項1記載の徐放製剤。
【請求項3】
グリコシドが、グリコシド結合を介して非炭水化物に結合した還元糖であり、ここで該グリコシド結合はアルファ(α)またはベータ(β)のいずれかであり、かつここで該糖は、単糖、1.1~1.9の間に含まれる重合度を有する糖、二糖、または三糖である
ことを特徴とする、請求項1または2記載の徐放製剤。
【請求項4】
還元糖が、グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、タロース、フコース、キシロースおよび2-デオキシグルコース、N-アセチルグルコサミン、ならびにそれらの混合物から;好ましくは、D-グルコース、D-ガラクトース、D-アロース、D-アルトロース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-タロース、およびそれらの混合物から;より好ましくは、D-グルコースまたはD-ガラクトースから選択され;さらにより好ましくは、該糖がD-グルコースである
ことを特徴とする、請求項3記載の徐放製剤。
【請求項5】
グリコシドが、メチル-α-グルコシド、ヘキシルグルコシド、フェニル-β-グルコシド、ゲラニル-β-グルコシド、メチル-α-D-マンノピラノシド、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、およびPMDグルコバニリンコンジュゲートから選択され;好ましくは、メチル-α-グルコシドおよびPMDグルコバニリンコンジュゲートから選択されることを特徴とする、請求項1記載の徐放製剤。
【請求項6】
有機酸が、スルホン酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、およびアミノ酸から選択されることを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項記載の徐放製剤。
【請求項7】
有機酸が、クエン酸、コハク酸およびそれらの無水形態または水和物から選択されることを特徴とする、請求項6記載の徐放製剤。
【請求項8】
二価金属ハロゲン化物塩が、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、および塩化コバルトから選択され;好ましくは塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛から選択されることを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項記載の徐放製剤。
【請求項9】
PMD 1モル当たり
(a)0.01~2molの間、好ましくは0.02~1.5molの間、より好ましくは0.03~1.2molの間、より好ましくは0.05~1molの間、およびさらにより好ましくは0.07~0.75molの間のグリコシド、
(b)0.05~3molの間、好ましくは0.06~2.5molの間、より好ましくは0.08~2molの間、より好ましくは0.09~1.7molの間、より好ましくは0.1~1.5molの間およびさらにより好ましくは0.12~1.24molの間の有機酸、ならびに
(c)0.01~5molの間、好ましくは0.02~2molの間、より好ましくは0.03~1molの間、およびさらにより好ましくは0.06~0.58molの間の二価金属ハロゲン化物塩
を含むことを特徴とする、請求項1~8のいずれか一項記載の徐放製剤。
【請求項10】
昆虫忌避剤としての、請求項1~9のいずれか一項記載の徐放製剤の使用。
【請求項11】
医薬として使用するための;好ましくは防腐剤、抗生物質、殺真菌剤、殺菌剤、または抗ウイルス剤として使用するための、請求項1~9のいずれか一項記載の徐放製剤。
【請求項12】
表面上への前記徐放製剤の適用を含むことを特徴とする、請求項1~9のいずれか一項記載の徐放製剤の使用法。
【請求項13】
請求項1~9のいずれか一項記載の徐放製剤および化粧品的に許容される成分を含む、組成物。
【請求項14】
請求項1~9のいずれか一項記載の製剤からのPMDの制御放出のための、式(II):
の化合物であるPMDグルコバニリンコンジュゲートの使用。
【請求項15】
(1)塩化カルシウム、塩化マグネシウム、およびそれらの混合物から選択される塩を、PMDを含む抽出物の溶液に添加する工程、
(2)工程(1)で得た固体を分離する工程、ならびに
(3)工程(2)で分離した固体からラセミcis/trans-PMDを単離する工程
を含むことを特徴とする、PMDを含む抽出物からラセミcis/trans-PMDを単離するためのプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、徐放製剤、特に長期効果を有する昆虫忌避製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
陸上および空中の節足動物は、ヒトへの疾患伝播の最も一般的な媒介生物である。世界的な気温上昇により、それぞれの媒介生物の生息地として適切になるにつれ、これらの疾患に冒された地域数が拡大している。
【0003】
これらの節足動物、より具体的には昆虫による刺咬傷と戦う一つの方法は、昆虫忌避剤を使用することである。現在、ほとんどの市販の局所昆虫忌避剤で使用されている有効成分は空間忌避剤である。DEET(N,N-ジエチルトルアミド)、ピカリジンおよびIR3535を含む、いくつかの承認された合成局所昆虫忌避剤が市販されているが、どれも理想的ではない。例えば、DEETは刺激臭があり、蝋のような感触が残り、プラスチックおよび合成繊維を溶かす可能性がある。さらに、これらの合成分子は健康に有害であると一般に認識されており、その結果、天然の代替品の市場が急速に拡大している。
【0004】
広範な天然分子が昆虫忌避効果を提供することが公知であるが、その大多数は揮発性が高すぎて、非常に短い期間しか防護効果を提供しない。事実、多様な昆虫に対して活性があるp-メンタン-3,8-ジオール(PMD)が、世界保健機関の認める唯一の天然昆虫忌避剤であり、十分に沸点が高いため数時間にわたるゆっくりとした蒸発が可能である。
【0005】
市販の忌避製品は、典型的には各適用後に4~6時間の間の効果持続時間を有する。しかし、所与の環境において問題となる昆虫種が他の侵入種に取って代わられると、確立された市販の忌避製品はもはや適切な防護効果を提供しないこともある。1つの非限定例を用いると、市販の局所昆虫忌避剤は、朝または夕方に刺す蚊と戦うように設計されており、ここでは短い作用時間が適している。ジカウイルス、デングウイルスおよびチクングニアウイルスの感染源となる、昼間に摂食するヤブカ(Aedes)属(一般にヒトスジシマカとして公知)の生息数の未曾有の増加により、現在市販されている忌避剤および製剤の複数回の適用が必要である。多忙なライフスタイルのため、定期的な忌避剤の適用は刺されるまで忘れられやすく、使用者は罹病しやすくなる。この問題を軽減するために、高濃度の有効成分を含む伝統的忌避製品を適用し得るが、曝露量の増大は毒性および刺激性などの複数の問題を引き起こし得る。
【0006】
局所および空間忌避剤は揮発性分子で、蒸発すると皮膚の上または周囲に、完全には理解されていない複雑なメカニズムによって蚊の降着および/または刺咬を防ぐ防護区画を提供する。各有効成分は最小有効蒸発速度(MEER)を有する。この閾値を超える蒸発速度は非生産的な減少を招き、忌避剤が有効である期間が短くなり、その後濃度はMEERを満たすのに十分でなくなる。
【0007】
有効成分の制御放出を可能にする昆虫忌避製品の開発は、持続期間を延ばすと同時に、必要な有効成分の濃度を下げることにより、現在の製品に関連する多くの問題を克服するであろう。必要な有効成分の量が低下することにより、匂いの軽減、刺激性の軽減およびそのような製品によくある油っぽい感触の回避などの、さらなる利点が得られよう。
【0008】
さらに、そのような方法は、揮発性の高さゆえに現在使用することができない他の天然忌避剤を使用し得る可能性があるため魅力的であり、これは広範な有効忌避分子が耐性の発生率を低下させ得るため重要である。
【0009】
昆虫忌避剤の徐放のために、当技術分野において封入アプローチおよび前駆体アプローチの2つの主要な技術的解決法が開示されている。
【0010】
封入アプローチでは、忌避製品を全表面に、または忌避ブレスレットの場合は体の一区画に適用した後、対象となる表面から有効成分が経時的にゆっくり放出される、例えば、マイクロカプセル(例えば、EP-A-0348550(特許文献1))、リポスフェア(EP-A-0502119(特許文献2))、ポリマー(US4774082(特許文献3))またはコポリマー(US6180127(特許文献4))マトリックス内への封入により、昆虫忌避剤の徐放が得られる。
【0011】
前駆体アプローチでは、プロドラッグの調製または適切な担体分子への結合により有効成分の物理化学的特徴を変化させることで、制御放出の代替法を提供し、ここで有効成分は環境メカニズムにより放出され、MEERが維持される時間を延長すると同時に、有効成分を大過剰に適用する必要性を回避することができる。
【0012】
プロドラッグおよびコンジュゲートなどの前駆体の使用は、薬学的分野で周知である。昆虫忌避活性物質に関して、揮発性昆虫忌避分子の脂肪酸などの水溶性を低下させる化合物への結合(US-A-2004/014811(特許文献5))、水溶性エステルおよびエーテルプロドラッグの調製(EP-A-2439188(特許文献6))、昆虫忌避剤前駆体としての5および6員環環状アセタール(WO-A-99/00377(特許文献7))、1つまたは複数の糖残基への水溶性コンジュゲート(JP-A-2000-096078(特許文献8)、JP-A-H01-213291(特許文献9))、水溶性を改善するためのポリカルボン酸またはポリオールへのコンジュゲート(WO-A-2016/071521(特許文献10))、ヒアルロン酸へのコンジュゲート(WO-A-2016/071521(特許文献10))、結晶性担体へのコンジュゲート(WO-A-2010/144755(特許文献11))、架橋ポリマーゲル組成物へのコンジュゲート(US6846491(特許文献12))、バニリンへのコンジュゲート(WO-A-2007082306(特許文献13)、WO-A-2017/081445(特許文献14))、ケトンまたはアルデヒドへのコンジュゲート(GB-A-2581375(特許文献15))、および3'-ケトグリコシド(WO-A-2021/160670(特許文献16))が開示されている。
【0013】
欧州特許出願EP-A-2862442(特許文献17)は、少なくとも1つのモノテルペノイド、少なくとも1つの酸および少なくとも1つの乳化剤を含む組成物を開示している。
【0014】
そのような先行技術の方法は、昆虫忌避剤の有効な長期放出適用に関する欠点を示している。
【0015】
最新技術で利用可能な様々な提案にもかかわらず、効果、特に忌避効果を発揮するのに十分な活性物質の放出速度を示す、活性材料の徐放に使用するための新しい製剤がなお必要とされている。
【0016】
cis-PMDおよび/またはtrans-PMDの選択的単離は、当業者にとって難題であり、当技術分野においていくつかの提案が開示されている。
【0017】
例えば、CA-A-108341740(特許文献18)において、PMDの調製法が開示されており、これは、原料としてシトロネラールを使用し、触媒として酸化グラフェンを使用し、溶媒として水を使用し、かつPMDを酢酸エチル、n-ヘキサンまたはその混合物である有機溶媒に50~80℃の温度で溶解し、次いで温度を室温まで下げてcis-PMDの結晶を得、母液からtrans-PMDを得ることにより、PMDのcis型およびtrans型を精製することを特徴とする。
【0018】
US5959161(特許文献19)において、パラ-メンタン-3,8-ジオールの製造法であって、シトロネラールを濃度0.02~1.0重量%の硫酸水溶液で処理した後、エーテルおよびn-ヘキサンの混合溶媒を用いてのカラムクロマトグラフィーによりcis-およびtrans-PMDを分離する工程を含む方法が開示されている。
【0019】
したがって、cis-および/またはtrans-PMDを単離するための効率的プロセスが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】EP-A-0348550
【特許文献2】EP-A-0502119
【特許文献3】US4774082
【特許文献4】US6180127
【特許文献5】US-A-2004/014811
【特許文献6】EP-A-2439188
【特許文献7】WO-A-99/00377
【特許文献8】JP-A-2000-096078
【特許文献9】JP-A-H01-213291
【特許文献10】WO-A-2016/071521
【特許文献11】WO-A-2010/144755
【特許文献12】US6846491
【特許文献13】WO-A-2007082306
【特許文献14】WO-A-2017/081445
【特許文献15】GB-A-2581375
【特許文献16】WO-A-2021/160670
【特許文献17】EP-A-2862442
【特許文献18】CA-A-108341740
【特許文献19】US5959161
【発明の概要】
【0021】
発明の目的
本発明の目的は、徐放製剤である。
【0022】
本発明の別の局面は、前記製剤の使用である。
【0023】
本発明の別の局面は、医薬として使用するための徐放製剤である。
【0024】
本発明の別の局面は、前記製剤の使用法である。
【0025】
本発明の別の局面は、前記製剤を含む組成物である。
【0026】
本発明の別の局面は、PMDの制御放出のための式(II)のPMDグルコバニリンアセタール化合物の使用である。
【0027】
本発明の別の局面は、ラセミcis/trans-PMDを単離するためのプロセスである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1はPMDの8つの立体異性体を示す。
図2.1】図2.1および2.2は、さらなる昆虫忌避化合物の化学構造を示す。
図2.2】図2.1の説明を参照のこと。
【発明を実施するための形態】
【0029】
発明の詳細な説明
本発明の目的は、
a)p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)、
b)グリコシド、
c)有機酸、および
d)二価金属ハロゲン化物塩
を含む徐放製剤である。
【0030】
本発明の著者らは、PMD、グリコシド、有機酸および二価金属ハロゲン化物塩を含む製剤を開発し、これはヒト皮膚などの表面上でPMDを放出することができる。驚くことに、より直線的な放出特性により、本発明の製剤は、例えば昆虫忌避剤として作用するために、ヒト皮膚上で揮発性アルコールであるPMDの有効濃度を長期間にわたって放出することができ、これは通常少なくとも24時間、すなわち遊離忌避剤アルコールの送達によって観察されるよりも長く持続する。
【0031】
本発明の著者らは、遊離PMD、有機酸および二価金属ハロゲン化物塩と合わせた場合に、遊離PMDと比較して長期放出を提供する、グリコシドを含む製剤を開発した。
【0032】
実施例に示すとおり、異なるグリコシド、例えば、メチル-α-グルコシド、ヘキシルグルコシド、フェニル-β-グルコシド、ゲラニル-β-グルコシド、メチル-α-D-マンノピラノシド、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、およびPMDグルコバニリンアセタールが、PMDの徐放に適している。
【0033】
本明細書、ならびに特許請求の範囲において、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「その(the)」は、文脈が明らかにそうではないと示さない限り、複数の言及を含む。前置詞である「...と...との間」なる用語または「...から...まで」なる用語によって定義される範囲は、その両端も含む。「約」なる用語は、プラス/マイナス10%、好ましくはプラス/マイナス5%の偏りを指す。パーセンテージは、特に記載がないかぎり、重量による%(重量%)で表す。
【0034】
IUPACによれば、「部分」なる用語は分子の一部を表すために使用される。
【0035】
本明細書において用いられる「忌避剤」なる用語は、任意の昆虫を忌避するために使用される任意の物質または物質の混合物を指す。本明細書において、定義される忌避剤は、飛翔昆虫(例えば、蚊)を忌避するための好ましい用途を有する。しかし、記載の殺虫剤製剤は、コダニ、マダニ(ライム病)、および多数の他の昆虫ならびにそれらの卵および幼虫に対しても有効であり得ることが予想される。
【0036】
PMD
アルコール2-(2-ヒドロキシプロパン-2-イル)-5-メチルシクロヘキサン-1-オールは、p-メンタン-3,8-ジオール(PMD)としても公知で、以下の構造(I):
に相当する。
【0037】
本発明の文脈において、「PMD」なる用語は、p-メンタン-3,8-ジオールを指し、式(I)の化合物から誘導される任意の立体異性体、ラセミ混合物またはジアステレオマー混合物を表す。
【0038】
本発明において使用するためのPMDは、天然源由来、合成、またはその混合物であってもよい。本発明において使用するためのPMDは、化合物の実質的に純粋な形態、すなわち、95%、97%、もしくは99%より高いNMRもしくはGC純度、粗製抽出物、または例えば、天然源からの粗製抽出物の酸性条件下での処理により化学修飾された粗製抽出物であってもよい。
【0039】
PMDの純度は、文献、例えば、Barasa et al., Repellent Activities of Stereoisomers of p-Menthane-3,8-diols Against Anopheles gambiae (Diptera: Culicidae), J. Med. Entomol., 2002, 39(5), 736-741に開示されている方法を用いて、GCにより決定してもよい。
【0040】
PMDの純度は、文献、例えば、Borrego et al., Effect of the Stereoselectivity of para-Menthane-3,8-diol Isomers on Repulsion toward Aedes albopictus, J. Agric. Food Chem., 2021, 69(37), 11095-11109に開示されている方法を用いて、NMRにより決定してもよい。
【0041】
PMDは2つの幾何異性体、すなわちcisおよびtrans異性体で存在することが公知である。全体として、図1に開示するとおり、PMDには8つの異性体がある。本発明は、任意の単一の異性体および1つまたは複数の異性体の任意の組み合わせを包含する。
【0042】
ラセミ-cis-PMDは、以下のエナンチオマー:
の混合物からなる。
【0043】
ラセミ-trans-PMDは、以下のエナンチオマー:
の混合物からなる。
【0044】
PMDの異なる立体異性体は、単独、ラセミ混合物またはジアステレオマー混合物として、Barasa、前掲書に開示されているとおり、忌避効果を示す。Borrego、前掲書によれば、異なる異性体は、ヒトスジシマカ(Aedes albopictus)に対する忌避効果に差を示す。PMDの昆虫忌避特性は、Carroll et al., PMD a Registered Botanical Mosquito Repellent with DEET-Like Efficacy, J. Am. Mosquito Control Assoc., 2006, 22(3), 507-514)またはBarnard et al., Laboratory Evaluation of Mosquito Repellents Against Aedes albopictus, Culex nigripalpus, and Ochlerotatus triseriatus (Diptera: Culicidae), J. Med. Entomol., 2004, 41(4), 726-730にも開示されている。
【0045】
PMDの防腐活性、抗生活性、殺真菌活性、殺菌活性、抗ウイルス活性、および育毛活性も、例えば、US-A-2004/0247708、US-A-2007/0178048、EP-A-0934741、WO-A-01/05226、Smither et al., Investigative study into whether an insect repellent has virucidal activity against SARS-CoV-2, Microbiol. Soc., 2021, 102(4) (DOI 10.1099/jgv.0.001585)に開示されている。
【0046】
ラセミPMDおよびそのエナンチオマーは、例えば、Takasago、Sigma-Aldrich、Parchem、もしくはBOC Sciencesから市販されているか、またはBarasaら、前掲書、もしくはZimmerman et al., J. Am. Chem. Soc., 1953, 75, 2367-2370、もしくはYuasa et al., Org. Proc. Res. Devel., 2000, 4(3), 159-161に開示されている手順に従って調製することができる。PMDはまた、商業的に栽培されている(例えば、ブラジルおよび他の中南米諸国で商業的に栽培されている)、水和され、環化されたレモンユーカリ(Eucalyptus citriodora)油としても公知の、コリンビア・シトリオドラ(Corymbia citriodora)の油の酸修飾によって誘導してもよい。Citriodiol(登録商標)(Citrefine)は、コリンビア・シトリオドラの葉の抽出物を酸性条件下で単純に化学修飾して生成した製品である。これは約70重量%のラセミ-cis-およびラセミ-trans-PMDの混合物を含む。この市販製品はさらに、シトロネラール、シトロネロールおよびイソプレゴール異性体などの、直鎖および環状テルペノイド成分を少量含む。水和され、環化されたレモンユーカリ油は、Chemian Technology SARL(Chemian Technology Limited(UK)の代行)およびFulltec GmbHなどの他の供給業者からも市販されている。
【0047】
1つの態様において、PMDは、PMDの8つの立体異性体、ラセミ-cis-PMD、ラセミ-trans-PMD、およびそれらの混合物のいずれかから選択される。
【0048】
1つの態様において、PMDは、ラセミ-cis-PMDおよびラセミ-trans-PMDの混合物である。
【0049】
1つの態様において、PMDは、ラセミ-trans-PMDおよびラセミ-cis-PMDから選択され、低臭気の無臭制御放出製剤を提供する。
【0050】
1つの態様において、PMDは、ラセミ-trans-PMDである。
【0051】
1つの態様において、PMDは、ラセミ-cis-PMDである。この化合物は、ラセミ-trans-PMDよりも製造が単純であり、純粋なcis/trans-PMD混合物よりも本発明の製剤からゆっくり放出され、かつCitriodiol(登録商標)よりもはるかに低い臭気を有する。
【0052】
1つの態様において、PMDは、式(Ia)のエナンチオマー、式(Ib)のエナンチオマー、式(Ic)のエナンチオマー、および式(Id)のエナンチオマーから選択される。
【0053】
1つの態様において、PMDは、コリンビア・シトリオドラの化学修飾された粗製天然抽出物である。
【0054】
グリコシド
本発明の製剤はグリコシドを含む。本発明の徐放製剤に組み込まれるグリコシドは、表面に適用された場合、ならびに有機酸および二価金属ハロゲン化物塩との組み合わせで存在する場合、制御された速度でPMDを効果的に放出することができる。徐放製剤中に遊離形態で存在するこのPMDは、実施例に示すとおり、長時間の効果を有する効率的な昆虫忌避剤であり、上で明らかにされたとおり、防腐活性、抗生活性、殺真菌活性、殺菌活性、抗ウイルス活性、および育毛活性も示す。
【0055】
本発明の意味において、「グリコシド」なる用語は、還元糖化合物の環状体から誘導される混合アセタール(ケタール)を指し、ここでアノマーヒドロキシ基は基-ORで置き換えられている。化合物ROHは「アグリコン」と呼ばれ、炭水化物残基自体は「グリコン」と呼ばれる。
【0056】
糖がグルコースである場合、「グルコシド」および「グルコピラノシド」なる用語は区別なく使用される。
【0057】
1つの態様において、グリコシドは、グリコシド結合を介して非炭水化物に結合した還元糖であり、ここでグリコシド結合はアルファ(α)またはベータ(β)のいずれかであり得、かつここで糖は、単糖、1.1~1.9の間に含まれる重合度を有する糖、二糖、または三糖である。
【0058】
1つの態様において、還元糖は、単糖、二糖、および三糖から選択される。
【0059】
1つの態様において、還元糖は、L-およびD-糖から選択される単糖である。
【0060】
1つの態様において、還元糖は、例えば、グルコース、ガラクトース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、タロース、フコース、キシロースおよび2-デオキシグルコース、N-アセチルグルコサミン、ならびにそれらの混合物から;好ましくは、D-グルコース、D-ガラクトース、D-アロース、D-アルトロース、D-マンノース、D-グロース、D-イドース、D-タロース、およびそれらの混合物から;より好ましくは、D-グルコースまたはD-ガラクトースから選択される単糖であり;さらにより好ましくは、糖はD-グルコースである。
【0061】
1つの態様において、還元糖は、例えば、ラクトース、マルトース、セロビオース、キトビオース、コジビオース、ニゲロース、イソマルトース、ソホロース、ラミナリビオース、ゲンチオビオース、ツラノース、マルツロース、ロイクロース、イソマルツロース、ゲンチオビウロース、マンノビオース、メリビオース、ルチノース、ルチヌロース、キシロビオース、およびそれらの混合物から選択される二糖であり;好ましくはラクトースまたはマルトース;より好ましくはラクトースである。
【0062】
1つの態様において、還元糖は、例えば、ニゲロトリオース、マルトトリオース、マルトトリウロース、およびそれらの混合物から選択される三糖であり;好ましくは、マルトトリオースである。
【0063】
1つの態様において、糖に存在する一級ヒドロキシ基は、エーテル、アミン、エステル、アミド、硫酸塩、リン酸塩、炭酸塩またはカルバメートとして官能基化されていてもよい。
【0064】
1つの態様において、非炭水化物(アグリコン)部分は、アルコール残基(-OR)である。アルコール(ROH)は、脂肪族または芳香族アルコールから選択され得る。重合度が1.1~1.9の間、好ましくは1.2~1.6の間である糖類は、アルコール残基がC8~C18炭化水素鎖から選択される場合、再生可能な原料から得た工業製品であるアルキルポリグリコシドの糖部分である。好ましくは、糖部分はグルコースである。
【0065】
好ましい態様において、グリコシドは、メチル-α-グルコシド、ヘキシルグルコシド、フェニル-β-グルコシド、ゲラニル-β-グルコシド、メチル-α-D-マンノピラノシド、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、およびPMDグルコバニリンコンジュゲートから選択され;好ましくは、メチル-α-グルコシドおよびPMDグルコバニリンコンジュゲートから選択される。
【0066】
1つの態様において、グリコシドはメチル-α-グルコシドである。
【0067】
1つの態様において、グリコシドはPMDグルコバニリンコンジュゲートである。
【0068】
PMDグルコバニリンコンジュゲート化合物
式(II)のPMDグルコバニリンコンジュゲート化合物は、
である。
【0069】
本記載において、式(II)の化合物は、相対的立体化学が定義されていないPMDグルコバニリンコンジュゲート;化合物がcis-PMDを用いて生成されるcis-PMDグルコバニリンコンジュゲート、cis-PMDアセタールまたはcis-アセタール;化合物がtrans-PMDを用いて生成されるtrans-PMDグルコバニリンコンジュゲート、trans-PMDアセタール、またはtrans-アセタールと、区別なく命名され得る。
【0070】
1つの態様において、PMDは、PMDの8つの立体異性体、ラセミ-cis-PMD、ラセミ-trans-PMD、およびそれらの混合物のいずれかから選択され、好ましくは、PMDは、ラセミ-cis-PMDおよびラセミ-trans-PMDの混合物であり、ここで糖部分はD-グルコースである。
【0071】
1つの態様において、PMDは、ラセミ-trans-PMDである。
【0072】
PMDグルコバニリンコンジュゲートの好ましい態様において、PMDは、ラセミ-cis-PMDおよびラセミ-trans-PMDの混合物であり、かつ糖部分はグルコースである。
【0073】
より好ましい態様において、式(II)のPMDグルコバニリンコンジュゲート化合物は、PMDがラセミ-cis-PMDおよびラセミ-trans-PMDの混合物であり、かつ糖部分がグルコース、好ましくはD-グルコースである、コンジュゲートである。
【0074】
グルコバニリン
グルコバニリンは、バニリン(4-ヒドロキシ-3-メトキシベンズアルデヒド、CAS Nr.121-33-5)を糖部分で官能基化して得られる化合物である。糖部分がD-グルコースの場合、生成物はグルコバニリン(バニリン4-O-β-D-グルコシド、CAS Nr.494-08-6)と呼ばれる。
【0075】
グルコバニリンは、バニリンポッドを含む多くの植物中の主要な天然物であり、天然バニリン生産時に内因性および外因性酵素の組み合わせによって加水分解される。
【0076】
しかし、天然バニリンや、したがってグルコバニリンは、供給量が限られているため、非常に高価である。したがって、バニリンは主に合成法と、例えば、Garcia-Bofill et al., Enzymatic synthesis of vanillin catalysed by a eugenol oxidase, Applied Catalysis A, 2019, 582, 117117に開示されているとおり、徐々に生合成法で製造されるが、いずれもグルコバニリンを前駆体として用いない。
【0077】
グルコバニリンは、例えば、Fischer et al., Synthesis of certain glucosides, Berichte, 1909, 42(2), 1465-76に開示されているとおり、伝統的な化学的方法を用いてバニリンから製造することができる。さらに、芳香族アルコール(フェノール基質)を多様な糖でO-グリコシル化する化学的方法は周知で、例えば、Jacobsson et al., Aromatic O-glycosylation, Carbohydrate Research, 2006, 341, 1266-1281に開示されている。
【0078】
グルコバニリンは、例えば、Carbosynth Ltd.からも市販されている。
【0079】
本発明の徐放製剤に組み込まれる式(II)のグルコバニリンコンジュゲート化合物は、効率的な昆虫忌避剤であるために、制御された速度でPMDを効果的に放出することができる。
【0080】
式(II)のPMDグルコバニリンコンジュゲート化合物を調製するためのプロセス
式(II)のPMDグルコバニリンコンジュゲート化合物を調製するためのプロセスは、触媒量の有機または無機酸存在下、任意に溶媒存在下での、グルコバニリンとPMDとの反応を含む。
【0081】
好ましい態様において、酸触媒は、クエン酸およびDowex酸性樹脂などのスルホン酸化合物から選択される。
【0082】
1つの態様において、アセタールの生成はいかなる溶媒も存在せずに行う。別の態様において、反応は、好ましくはアセトニトリルおよびC1~C4アルコールから選択され、より好ましくはアセトニトリルおよびエタノールから選択され、さらにより好ましくは溶媒はエタノールである、溶媒の存在下で行う。
【0083】
通常、反応は約30℃~約60℃の間、好ましくは約40℃~約55℃の間、より好ましくは約50℃の温度で行う。無溶媒の態様において、出発生成物から溶融液体を得るために初期加熱を行う。
【0084】
糖が保護されていないことを考慮すると、驚くことに、NMRにより、式(II)で表されるものとは異なる他のアセタールが、いかなる有意な程度にも生成することは観察されない。
【0085】
cis/trans-PMDグルコバニリンコンジュゲート混合物は、酸および溶媒の適切な選択によって所望の比率に調整することができる。
【0086】
1つの態様において、過剰のcis/trans-PMD混合物を用いると、触媒としてクエン酸および溶媒としてアセトニトリルを用いて、ほぼcis-PMDグルコバニリンコンジュゲートだけが生成するが、同じ溶媒中で強酸(例えば、Dowex酸性樹脂)を用いることで、cis/trans-PMDグルコバニリンコンジュゲートの1:0.5混合物が得られる。これに対し、同じ酸および溶媒としてエタノールを用いることで、cis/trans-PMDグルコバニリンコンジュゲートのそれぞれ1:0.7および1:1混合物が得られる。したがって、反応は、酸および溶媒などの反応条件の適切な選択によって、所望の異性体生成物比を得るように容易に調整することができる。
【0087】
1つの態様において、PMDグルコバニリンコンジュゲートを、Citriodiol(登録商標)およびグルコバニリンから、Dowex酸性樹脂を用い、樹脂をろ過し、次いで水に溶解して得る。
【0088】
1つの態様において、PMDグルコバニリンコンジュゲートをまた、ニートCitriodiol(登録商標)または溶媒中のCitriodiol(登録商標)中で生成し、単離することなく使用してもよい。
【0089】
式(II)のPMDグルコバニリンコンジュゲート化合物の使用
本発明の目的の別の局面は、本発明の徐放製剤からのPMDの制御放出のための、式(II)のPMDグルコバニリンコンジュゲート化合物の使用である。
【0090】
本発明の徐放製剤に含まれるPMDグルコバニリンコンジュゲートは、広範な、例えば、蚊、ハエ、マダニ、コダニ、ユスリカ、ヌカカ、アタマジラミ、ならびにその卵および幼虫の忌避などの、様々な適応の処理に適用し得る。
【0091】
有機酸
本発明の製剤は有機酸を含む。本発明の徐放製剤に組み込まれる有機酸は、制御された速度で表面に適用された場合、グリコシドおよび二価金属ハロゲン化物塩との組み合わせで存在する場合、PMDを効果的に放出することができる。製剤中に含まれる遊離PMDは、長時間の効果を有する効率的な昆虫忌避剤である。
【0092】
この製剤に含まれるのに適した有機酸は、スルホン酸、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、ヒドロキシカルボン酸、およびアミノ酸である。
【0093】
1つの態様において、有機酸はスルホン酸、例えば、p-トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはタウリンである。
【0094】
1つの態様において、有機酸はカルボン酸、例えば、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、フマル酸、または安息香酸である。
【0095】
1つの態様において、有機酸はヒドロキシカルボン酸、例えば、乳酸、酒石酸、グリコール酸、リンゴ酸、マンデル酸(2-ヒドロキシ-2-フェニル酢酸)、またはクエン酸である。
【0096】
1つの態様において、有機酸はアミノ酸、例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸、グルタミン、セリン、スレオニン、メチオニン、システイン、リジン、アルギニン、ヒスチジン、プロリン、フェニルアラニン、チロシン、またはトリプトファンである。
【0097】
好ましい態様において、有機酸は、クエン酸、コハク酸およびそれらの無水形態または水和物から選択される。1つの態様において、無水形態または水和物、好ましくは一水和物としてクエン酸が使用される。1つの態様において、コハク酸が使用される。
【0098】
1つの態様において、有機酸は、対応する共役塩基と平衡であってもよく、ここで種の間の比は製剤のpH値に依存する。
【0099】
二価金属ハロゲン化物塩
本発明の製剤は二価金属ハロゲン化物塩を含む。本発明の徐放製剤に組み込まれる二価金属ハロゲン化物は、制御された速度で表面に適用された場合、グリコシドおよび有機酸との組み合わせで存在する場合、PMDを効果的に放出することができ、効率的な昆虫忌避剤である。
【0100】
本発明の製剤に含まれるのに適した二価金属ハロゲン化物塩は、例えば、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、または塩化コバルトである。
【0101】
1つの態様において、二価金属ハロゲン化物塩は、塩化亜鉛、塩化マグネシウムおよび塩化カルシウムから選択される。
【0102】
1つの態様において、二価金属ハロゲン化物塩は塩化カルシウムである。
【0103】
1つの態様において、二価金属ハロゲン化物塩は塩化マグネシウムである。
【0104】
1つの態様において、二価金属ハロゲン化物塩は塩化亜鉛である。
【0105】
徐放製剤
徐放製剤は、PMD、グリコシド、有機酸、および二価金属ハロゲン化物塩を含む。
【0106】
1つの態様において、徐放製剤は、PMD 1モル当たり
a)0.01~2molの間、好ましくは0.02~1.5molの間、より好ましくは0.03~1.2molの間、より好ましくは0.05~1molの間、およびさらにより好ましくは0.07~0.75molの間のグリコシド。
b)0.05~3molの間、好ましくは0.06~2.5molの間、より好ましくは0.08~2molの間、より好ましくは0.09~1.7molの間、より好ましくは0.1~1.5molの間およびさらにより好ましくは0.12~1.24molの間の有機酸、ならびに
c)0.01~5molの間、好ましくは0.02~2molの間、より好ましくは0.03~1molの間、およびさらにより好ましくは0.06~0.58molの間の二価金属ハロゲン化物塩
を含む。
【0107】
1つの態様において、徐放製剤は、PMD;メチル-α-グルコシド、ヘキシルグルコシド、フェニル-β-グルコシド、ゲラニル-β-グルコシド、メチル-α-D-マンノピラノシド、メチル-α-D-ガラクトピラノシド、およびPMDグルコバニリンコンジュゲートから選択され、好ましくは、メチル-α-グルコシドおよびPMDグルコバニリンコンジュゲートから選択されるグリコシド;クエン酸およびコハク酸から選択される有機酸;ならびに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、臭化マグネシウム、ヨウ化亜鉛、塩化亜鉛、臭化亜鉛、および塩化コバルトから選択される二価金属ハロゲン化物塩を含む。
【0108】
1つの態様において、徐放製剤は、PMD、PMDグルコバニリンコンジュゲートおよびメチル-α-グルコシドから選択されるグリコシド、クエン酸およびコハク酸から選択される有機酸、ならびに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛から選択される二価金属ハロゲン化物塩を含む。
【0109】
1つの態様において、徐放製剤は、PMD、PMDグルコバニリンコンジュゲート、クエン酸、ならびに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛から選択される二価金属ハロゲン化物塩を含む。
【0110】
1つの態様において、徐放製剤は、PMD、メチル-α-グルコシド、クエン酸、ならびに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛から選択される二価金属ハロゲン化物塩を含む。
【0111】
1つの態様において、徐放製剤は、PMD、PMDグルコバニリンコンジュゲート、コハク酸、ならびに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛から選択される二価金属ハロゲン化物塩を含む。
【0112】
1つの態様において、徐放製剤は、PMD、メチル-α-グルコシド、コハク酸、ならびに塩化カルシウム、塩化マグネシウム、および塩化亜鉛から選択される二価金属ハロゲン化物塩を含む。
【0113】
1つの態様において、徐放製剤中のPMDの含有量は、表面の1平方センチメートルあたり少なくとも0.1、好ましくは0.2mgのPMDを送達することができる。
【0114】
PMDの放出は一般に、広く使用され当業者には公知の様々な化粧品組成物およびデバイスによって達成される。非限定例には、溶液、クリーム、粉末、ペースト、スプレー、ローション、フィルムが含まれ、またはワイプ、マスクおよびスティック、医療用デバイスもしくは表面などの材料中もしくはその上に含浸させる。
【0115】
本発明の別の局面は、昆虫忌避剤としての徐放製剤の使用である。
【0116】
また、医薬として使用するための徐放製剤も本発明の一部を形成する。特に、防腐剤、抗生物質、殺真菌剤、殺菌剤、または抗ウイルス剤として使用するため。
【0117】
実施例の項に示すとおり、本発明の徐放製剤は、驚くことに、PMDのゆっくりかつ長時間の放出を提供する。徐放製剤の有効性は、PMDの昆虫忌避効果を評価することによって示される。この製剤は、例えば、Mosiguard(登録商標)およびDEETなどの市販製品と比較して、著しく改善された長期持続性の昆虫忌避効果を可能にする(実施例11および17参照)。実施例13および実施例19に示すとおり、trans-PMDおよびcis-PMDはそれぞれ、Citriodiol(登録商標)含有忌避剤と比較してはるかに臭気が低い、制御放出忌避剤を提供する。
【0118】
また、徐放製剤の使用法であって、該製剤を、直接または組成物の形態で、表面上に適用することを含む方法も、本発明の一部を形成する。
【0119】
本発明の製剤は、皮膚、毛髪、衣服、植物、もしくは作物、穀物貯蔵物などの軟質表面、または木材、合成材料、もしくはセラミック材料などの硬質表面などの任意の表面に適用し得る。1つの態様において、製剤は皮膚に適用する。
【0120】
PMD、グリコシド、有機酸および二価金属ハロゲン化物を含む製剤の製造は、当業者には日常作業の問題である。溶液、クリーム、ペースト、粉末、スプレー、ローション、およびフィルムの形態の組成物の調製に関する情報は、例えば、Remington The Science and Practice of Pharmacy, 20th Ed, Lippincott Williams & Wilkins, 2000, Philadelphia, Part 5, Pharmaceutical Manufacturingなどの周知のハンドブックに記載されている。
【0121】
驚くことに、徐放製剤は、グリコシド、有機酸および二価金属ハロゲン化物塩と組み合わせると、その中に存在する遊離PMDを放出することができる。
【0122】
実施例に示すとおり、異なるグルコピラノシド(実施例7)、異なるグリコシド(実施例16)、異なる有機酸(実施例9および14)、および異なる二価金属ハロゲン化物(実施例15)で徐放性が得られる。インビトロ試験(実施例17)およびインビボ試験(実施例11)の両方が、市販の組成物と比較して、Citriodiol(登録商標)または本発明の純粋なPMDのいずれかを含む徐放製剤の利点を示す。
【0123】
組成物
徐放製剤を含む組成物もまた、本発明の目的の一部を形成する。
【0124】
1つの態様において、組成物は、徐放製剤および化粧品的に許容される成分を含む。
【0125】
本明細書において用いられる「化粧品的に許容される」とは、この用語が形容する製品または化合物が、過度の毒性、不適合性、不安定性、刺激、アレルギー反応などを伴わずに、組織(例えば、皮膚)と接触して使用するのに適していることを意味する。この用語は、それが形容する成分/製品を、化粧品としての使用のみに限定することを意図するものではない。
【0126】
1つの態様において、組成物は、
a)5重量%~80重量%の間の徐放製剤、および
b)20重量%~95重量%の間の化粧品的に許容される成分
を含み、ここで成分のパーセンテージは収支が100%になるように調節される。
【0127】
組成物は、好ましくは10重量%~75重量%の間の徐放製剤、より好ましくは15重量%~70重量%の間、より好ましくは25重量%~65重量%の間、およびさらにより好ましくは30重量%~60重量%の間の徐放製剤を含む。
【0128】
組成物は、化粧品的に許容される成分を含み、これは、本発明の文脈において、化粧品的に許容される媒体、化粧品成分、およびそれらの混合物から選択される。
【0129】
化粧品的に許容される媒体(または担体)は、化粧品成分が溶解、乳化、分散、または懸濁している媒体である。この媒体は、水、水混和性非水性媒体、例えばエタノールまたはイソプロパノール、および水非混和性非水性媒体、例えば、植物油、脂肪族エステル、中鎖トリグリセリド、またはアルカンから選択される。好ましくは、組成物は媒体として水を含む。
【0130】
1つの態様において、化粧品成分は、好ましくは、界面活性剤(乳化剤)、脂質化合物、軟化剤、密度因子、増粘剤、安定剤、ヒドロトロープ、保存剤、エッセンス、着色剤、シリコーン化合物、脂肪、ワックス、レシチン、リン脂質、UV日焼け防止因子、フィルム形成剤、およびそれらの混合物から選択される。
【0131】
本発明による使用のための組成物の物理的形態は重要ではない。この組成物は、溶液、ローション、クリーム、ゲル、スティック、スプレー、軟膏、クレンジング液体洗浄剤および固形バー、シャンプー、ペースト、粉末、フォーム、ムース、ミルク、乳剤、分散剤、懸濁剤、またはワイプなどの固体および液体組成物が含まれるが、それらに限定されるわけではない、多様な製品型に作製し得る。
【0132】
本発明において有用な局所用組成物は、溶液として製剤してもよい。溶液は、好ましくは、水性溶媒(例えば、約0重量%~約95重量%または約20重量%~約85重量%の化粧品的に許容される水性溶媒)を含み得る。より好ましくは、そのような組成物は、約20重量%の水性溶媒を含み得るが、これは製剤に応じて変動し得る。そのような溶媒には、水と組み合わせて、エタノール、イソプロパノール、グリセロール(グリセリン)、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、それらの混合物などが含まれ得る。1つの態様において、本発明において有用な局所用組成物は、軟化剤を含む溶液として製剤し得る。そのような組成物は、好ましくは、約2重量%~約50重量%の軟化剤を含む。本明細書において用いられる「軟化剤」は、乾燥の予防または緩和のため、ならびに皮膚の保護のために使用される材料を指す。1つの態様において、溶液は、非水性溶媒を含む、例えば、約20重量%~約85重量%の化粧品的に許容される非水性溶媒を含む、無水混合物である。
【0133】
ローションは溶液から作製してもよい。ローションは典型的には約1重量%~約20重量%の軟化剤および約50重量%~約90重量%の水を含む。
【0134】
別の型の製品はクリームであってもよい。クリームは典型的には約5重量%~約50重量%の軟化剤および約45重量%~約85重量%の水を含む。
【0135】
別の型の製品は軟膏であってもよい。軟膏は、植物油または半固体炭化水素の単純な基剤で構成され得る。軟膏は約2重量%~約100重量%の軟化剤、および約0.1重量%~約5重量%の増粘剤を含み得る。
【0136】
本発明において有用な局所用組成物はまた、好ましくは乳剤として製剤してもよい。1つの態様において、組成物は、水および親油性相を含み、例えば、水中油(O/W)、油中水(W/O)型、多層乳剤(W/O/W)、もしくはPIT型乳剤、またはマイクロエマルションなどの、乳剤または分散剤の形態で提示される。担体が乳剤の場合、担体の約1重量%~約10重量%は、1つまたは複数の乳化剤で構成されるべきである。乳化剤は、非イオン性、アニオン性、カチオン性、または両性であり得る。
【0137】
本発明において有用な局所用組成物は、ゲルとして製剤してもよい。水性ゲルに適したゲル化剤には、天然ゴム、アクリル酸およびアクリレートポリマーおよびコポリマー、ならびにセルロース誘導体(例えば、ヒドロキシメチルセルロースおよびヒドロキシプロピルセルロース)が含まれるが、それらに限定されるわけではない。油(植物油、エステルなどの)に適したゲル化剤には、ワックス、改質シリカ、セルロース誘導体、ポリアミド、ポリウレタン、およびL-グルタミン酸誘導体が含まれるが、それらに限定されるわけではない。そのようなゲルは典型的には約0.1重量%~20重量%の間のそのようなゲル化剤を含む。
【0138】
本発明の使用に有用な組成物は一般に、局所用組成物を作製する技術分野で公知のものなどの通常の方法によって調製する。そのような方法は典型的には、加熱、冷却、真空の適用などを伴い、または伴わずに、成分を1つまたは複数の工程で比較的均一な状態まで混合することを含み得る。
【0139】
界面活性剤(乳化剤)
1つの態様において、組成物は、化粧品成分の溶解、乳濁、分散、または懸濁を容易にするための界面活性剤(乳化剤)を含むことができる。
【0140】
界面活性剤は、アニオン性、非イオン性、カチオン性および/または両性であり得る。
【0141】
界面活性剤の含有量は通常、1重量%~30重量%の間、好ましくは2重量%~20重量%の間、より好ましくは3重量%~10重量%の間、およびさらにより好ましくは4重量%~8重量%の間からなる。
【0142】
アニオン性界面活性剤の典型例は、例えば、石鹸、スルホン化アルカン、スルホン化オレフィン、アルキル硫酸塩、脂肪族アルコールエーテル硫酸塩、グリセロールエーテル硫酸塩、脂肪酸エーテル硫酸塩、モノ-およびジアルキルスルホサクシネート、モノ-およびジアルキルスルホサクシナメート、エーテルカルボン酸およびそれらの塩、脂肪酸イセチオネート、脂肪酸サルコシネート、脂肪酸タウリド、N-アシルアミノ酸である。
【0143】
非イオン性界面活性剤の典型例は、例えば、ポリアルコキシル化脂肪族アルコール、ポリアルコキシル化脂肪酸、ポリアルコキシル化脂肪酸アミド、ポリアルコキシル化脂肪族アミン、アルコキシル化トリグリセリド、混合エーテル、アルキルポリグリコシド、N-アルキルソルビタンエステル、脂肪酸エステルポリエトキシル化ソルビタン、およびアミンオキシドである。
【0144】
カチオン性界面活性剤の典型例は、例えば、4級アンモニウム化合物、およびトリアルカノールアミンと脂肪酸とのエステルの4級化塩、例えばエステルクォートである。
【0145】
両性界面活性剤の典型例は、例えば、アルキルベタイン、アルキルアミドベタイン、アミノプロピオネート、アミノグリシネート、イミダゾリニウムベタインおよびスルホベタインである。
【0146】
前述の界面活性剤は専ら公知の化合物であり、その構造および調製は当業者には周知で、例えば、X. Domingo's book, A guide to the surfactants world, Proa, Barcelona, 1995に記載されている。
【0147】
脂質成分および軟化剤
組成物は通常、それらの官能特性および皮膚科学的特性を最適化するために、さらなる脂質化合物および軟化剤を含む。
【0148】
脂質および軟化化合物は通常、全量で1重量%~50重量%の間、好ましくは5重量%~25重量%の間、およびより好ましくは5重量%~15重量%の間で含まれる。
【0149】
適切な脂質化合物は、6~18個の炭素原子、好ましくは8~10個の炭素原子を有する脂肪族アルコール系のゲルベアルコール(BASF社の製品Eutanol(登録商標)Gなどの)、直鎖C6~22アルコールとの直鎖脂肪酸エステルC6~22、C6~22直鎖アルコールとのC6~13分枝カルボン酸エステル、例えば、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸ミリスチル、ステアリン酸ミリスチル、ステアリン酸ベヘニル、イソステアリン酸ベヘニル、オレイン酸ベヘニル、ベヘン酸ベヘニル、エルカ酸ベヘニル、またはミリスチン酸エルシルである。
【0150】
さらに、分枝アルコールとのC6~22直鎖脂肪酸エステル、特に2-エチルヘキサノール(例えばBASF社の製品Cetiol(登録商標)868)、およびミリスチン酸イソプロピル;直鎖または分枝C6~22脂肪族アルコールとのC18~38アルキルヒドロキシカルボン酸エステル;多価アルコール、および/またはゲルベアルコールとの直鎖および/または分枝脂肪酸エステル;6~10炭素原子の脂肪酸系トリグリセリド(例えばBASF社の製品Mirytol(登録商標)318);6~18炭素原子の脂肪酸系モノ/ジ/トリグリセリドの液体混合物; 6~22炭素原子の脂肪族アルコール、および/またはゲルベアルコールと芳香族カルボン酸、特に安息香酸とのエステル;2~12炭素原子のジカルボン酸と1~22炭素原子の直鎖もしくは分枝アルコール、または2~10炭素原子および2~6ヒドロキシル基を有するポリオールとのエステル;植物油;分枝一級アルコール;置換シクロヘキサン;直鎖および分枝C6~22脂肪族アルコールカーボネート、例えば、ジカプリリルカーボネート(例えばBASF社の製品Cetiol(登録商標)CC);アルキル基1つ当たり6~22炭素原子を有する対称または非対称直鎖または分枝ジアルキルエーテル、例えば、ジカプリリルエーテル(例えばBASF社の製品Cetiol(登録商標)OE);脂肪族またはナフテン炭化水素、例えば、スクアラン、スクアレンまたはジアルキルシクロヘキサン、ならびにそれらの混合物が適切である。
【0151】
密度因子および増粘剤
密度因子および増粘剤は一般に、粘性およびレオロジー挙動を調節するために組成物において使用される。
【0152】
考慮される密度因子の中には、第一に、12~22炭素原子、好ましくは16~18炭素原子の鎖を有する脂肪族アルコール、およびさらに部分グリセリド、脂肪酸またはヒドロキシル化脂肪酸がある。
【0153】
適切な増粘剤は、例えば、親水性無水ケイ酸(Evonik社のAerosil(登録商標)製品などの);多糖類、特にキサンタンガム、グアーガム、寒天、アルギン酸塩およびチロース、カルボキシメチルセルロースおよびヒドロキシエチルセルロース、ならびにポリエチレングリコールモノ-および高分子量脂肪酸ジエステル;ポリアクリレート(例えば、Lubrizol社のCarbopol(登録商標)およびPemulen(登録商標)タイプ;Sigma社のSynthalene(登録商標)、CP Kelco社のKeltrol(登録商標)タイプ;Seppic社のSepigel(登録商標)およびSimulgel(登録商標)タイプ;Allied Colloids社のSalcare(登録商標)タイプ)、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、およびポリビニルピロリドンである。
【0154】
ヒドロトロープ
組成物の流動性を改善するために、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、またはポリオールなどのヒドロトロープを使用することも可能である。ここで考慮されるポリオールは、好ましくは2~15の炭素原子および少なくとも2つのヒドロキシル基を有する。ポリオールはまた、他の官能基、特にアミノ基を含み得、または窒素で修飾され得る。典型例は、グリセロール;アルキレングリコール、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ならびに平均分子量100~1,000ダルトンのポリエチレングリコール;自己縮合度1.5~10の工業的オリゴグリセロール混合物、例えばジグリセロール含量40重量%~50重量%の工業的ジグリセロール混合物;メチロール化合物、例えば特にトリメチロールメタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールブタン、ペンタエリスリトールおよびジペンタエリスリトール;アルキル部分に1~8炭素原子の鎖を有するアルキルグリコシド;ソルビトールまたはマンニトールなどのC5~12糖アルコール;グルコースまたはスクロースなどの5~12炭素原子を有する糖;グルカミンなどのアミノ糖;ジエタノールアミンまたは2-アミノ-1,3-プロパンジオールなどのジアルコールアミンである。
【0155】
1つの態様において、グリセロール、プロピレングリコール、およびそれらの混合物を、組成物中のヒドロトロープとして使用する。
【0156】
保存剤
組成物中で使用するのに適した保存剤には、例として、フェノキシエタノール、3-(4-クロロフェノキシ)-1,2-プロパンジオール(クロルフェネシン)、ペンタンジオールまたはソルビン酸、および欧州議会および理事会規則(EC)No 1223/2009の付属書Vに示された追加物質のクラスが含まれる。
【0157】
本発明の徐放製剤と、フィルム形成ポリマー、例えば、ポリ酢酸ビニルとポリビニルピロリドンとの組み合わせ、および油、例えば、ミリスチン酸イソプロピルなどの化粧品成分とを含む組成物は、市販の製品と比較してはるかに長い忌避効果を提供する(実施例11参照)。
【0158】
1つの態様において、組成物は、エッセンシャルオイル、天然昆虫忌避剤、合成忌避剤、およびそれらの混合物から選択される、さらなる昆虫忌避化合物を含む。
【0159】
さらなる昆虫忌避化合物は、例えば、DEET(N,N-ジエチル-メタ-トルアミド)、イカリジン(ピカリジン)、DEPA(N,N-ジエチルフェニルアセトアミド)、IR3535、N-ブチル-アセトアニリド、MGK Repellent 264、N-メチルネオデカンアミド、AI3-35765、AI3-37220(SS220)、MGK Repellent 326、ゲラニオール、チモール、オイゲノール、カルバクロール、バニリン、リモネン、ヌートカトン、スパツレノール、フタル酸ジブチル(DBP)、フタル酸ジメチル(DMP)、炭酸ジメチル(DMC)、フタル酸ジオクチル、安息香酸ベンジル、インダロン、ネペタラクトン、アントラニル酸メチル、アントラニル酸エチル、シクロヘキサンプロピオン酸、ノナン酸、2-エチルヘキサン酸、ウンデシレン酸、乳酸、ジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、Rutgers 612、ピレスロイド、カーバメート、およびそれらの混合物から選択される。いくつかの昆虫忌避化合物の化学構造を図2.1および図2.2に示す。好ましくは、組成物は、ゲラニオール、ヌートカトン、ニーム油、DEET、イカリジン、IR3535、およびそれらの混合物から選択されるさらなる昆虫忌避化合物を含む。
【0160】
cis/trans-PMDを単離するためのプロセス
本発明の別の局面は、PMDを含む抽出物からラセミcis/trans-PMDを単離するためのプロセスである。
【0161】
プロセスは、
1)塩化カルシウム、塩化マグネシウム、およびそれらの混合物から選択される塩を、PMDを含む抽出物の溶液に添加する工程、
2)工程1)で得た固体を分離する工程、ならびに
3)工程2)で分離した固体からラセミcis/trans-PMDを単離する工程
を含む。
【0162】
好ましい態様において、プロセスは、
a)抽出物を溶媒、好ましくはC5~C12炭化水素と脂肪族アルコールとの混合物に溶解する工程;好ましくは、脂肪族アルコールは、メタノール、エタノール、n-プロパノール、i-プロパノール、n-ブタノール、i-ブタノール、sec-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、メチルイソプロピルカルビノール、および2-メチル-2ブタノールから選択され;より好ましくは、溶媒はヘキサンとエタノールとの混合物である、
b)塩化カルシウム、塩化マグネシウム、およびそれらの混合物から選択される塩を添加する工程、
c)工程b)で得た混合物を室温で撹拌する工程、
d)工程c)の撹拌後に得た固体を分離する工程、
e)工程d)で得た固体を、水と水非混和性溶媒との混合物に溶解する工程;好ましくは、水非混和性溶媒は、ヘキサン、シクロヘキサン、ジクロロメタン、1,2-ジクロロエタン、クロロホルム、ジエチルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、酢酸エチル、ベンゼン、トルエン、キシレン、1-ブタノール、2-ブタノール、n-ペンタノール、i-ペンタノール、アミルアルコール、ネオペンチルアルコール、sec-アミルアルコール、3-ペンタノール、メチルイソプロピルカルビノール、および2-メチル-2ブタノールから選択され;より好ましくは、水非混和性溶媒はヘキサンである、
f)工程e)からヘキサン相を分離する工程、ならびに
g)乾燥し、蒸留によりヘキサンを除去する工程
を含む。
【0163】
1つの態様において、工程a)の脂肪族アルコールは、触媒量、例えば、溶媒の全量に対して0.01~0.1体積%の間、好ましくは0.02~0.07体積%の間、より好ましくは約0.05体積%で存在する。
【0164】
プロセスは、PMDを含む抽出物からラセミcis/trans-PMDを、抽出物中に含まれるPMDの実質的に定量的な回収率で単離することを可能にする。
【0165】
1つの態様において、PMDを含む抽出物は、市販の製品Citriodiol(登録商標)である。
【0166】
以下の実施例において、本発明の化合物の調製、および徐放製剤の性能試験に関する実験を示す。
【実施例
【0167】
1Hおよび13C NMRスペクトルは、重水素化クロロホルム、重水または重水素化ジメチルスルホキシド中、Varian Mercury 400(1Hは400.1Mz、13Cは100.6MHz)で得た。高分解能質量スペクトル(HRMS)は、LC/MSD-TOF質量分析装置(Agilent Technologies)を用いて取得した。
【0168】
反応経過および生成物混合物を、市販のシリカゲル60プレートでの薄層クロマトグラフィー(TLC)または前述の装置を用いた1H NMRによりモニターした。クロマトグラフィーには、カラム等級のシリカゲル(0.040~0.063mmメッシュサイズ)を使用した。
【0169】
純度約95%のラセミcis/trans-PMDをBoc Sciences社から購入し、それ以上の処理をせずに使用するか、または酢酸エチル/ヘキサン1:3を用いてのシリカ上のカラムクロマトグラフィーによりcisおよびtrans異性体(約6:4混合物)を分離した。より速く溶出するcis異性体は、Sigma-Aldrich(Merck)から購入した標準となる(1S,2R,5R)-2-(1-ヒドロキシ-1-メチルエチル)-5-メチルシクロヘキサノールと1H-NMRにより同一であった。
【0170】
実施例中の「cis/trans-PMD」、「cis-PMD」および「trans-PMD」なる用語はそれぞれ、特に記載がないかぎり、「ラセミcis/trans-PMD」、「ラセミcis-PMD」および「ラセミtrans-PMD」を指す。
【0171】
約70重量%のラセミcis-およびラセミtrans-PMDの混合物を含み、ラセミcis-PMD/ラセミtrans-PMDの比が約1.9:1であるCitriodiol(登録商標)は、Citrefine Ltd.から寄贈された。
【0172】
グルコバニリンは、Carbosynth Ltdから購入、または標準的な文献手順を用いて社内で製造した。
【0173】
他の化学物質はすべてSigma-Aldrich(Merck)から、またはCymit Quimicaを通じて様々な商業的供給源から購入した。
【0174】
薄いコラーゲン膜であるHemotek膜は、Hemotek Ltd.(UK)から購入した。
【0175】
インキュベーションは標準的な装置にて32℃で行った。
【0176】
実施例1: ラセミcis-PMDグルコバニリンコンジュゲートの調製
グルコバニリン(1.03g、3.2mmol)、ラセミcis-パラ-メンタン-3,8-ジオール(2.04g、11.9mmol)およびクエン酸一水和物(0.24g、1.2mmol)の混合物をアセトニトリル(10mL)に懸濁し、50℃で21時間撹拌した。
【0177】
得られた溶液を、減圧下での蒸留により濃縮し、シリカ上のクロマトグラフィにより、残存ジオールを除去するためにEtOAc/ヘキサン1:1を用い、続いてMeOH/ジクロロメタン1:10を用いての勾配溶出により精製して、表題化合物を無臭の白色固体で得た(1.42g、92%)。
【0178】
質量分析、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて、化合物を特徴づけた。
【0179】
実施例2: ラセミtrans-PMDグルコバニリンコンジュゲートの調製
グルコバニリン(0.5g、1.6mmol)、ラセミtrans-パラ-メンタン-3,8-ジオール(1.0g、5.8mmol)およびクエン酸一水和物(0.1g、0.52mmol)の混合物をアセトニトリル(2mL)に懸濁し、50℃で22時間撹拌した。
【0180】
得られた溶液を室温まで冷却し、シリカ上のクロマトグラフィにより、残存ジオールを除去するためにEtOAc/ヘキサン1:1を用い、続いてMeOH/ジクロロメタン1:10を用いての勾配溶出により精製して、表題化合物を無臭の白色固体で得た(0.73g、74%)。固体(50mg)は水(0.1mL)に容易に溶解することが判明した。
【0181】
質量分析、1H-NMRおよび13C-NMRを用いて、化合物を特徴づけた。
【0182】
実施例3: Citriodiol(登録商標)からのラセミcis/trans-PMDグルコバニリンコンジュゲートの調製の一般手順
Citriodiol(登録商標)は、約70重量%のラセミ-cis-およびラセミ-trans-PMDの混合物を含み、ラセミcis-PMD/ラセミtrans-PMDの比が約1.9:1である市販製品である。
【0183】
グルコバニリン、Citriodiol(登録商標)およびDowex(登録商標)50WX8、スルホン酸樹脂の混合物をエタノールに懸濁し、50℃で23時間撹拌した。得られた溶液を室温まで冷却し、ろ過して、PMDグルコバニリンアセタール粗製反応混合物をろ液として得た。残渣をエタノール(2×1mL)で洗浄し、ろ液を合わせて淡黄色溶液を得た。
【0184】
溶液の一定量を取り、溶媒を減圧蒸留により除去し、PMDグルコバニリンアセタール粗製反応濃縮物を得た。CDCl3中の残渣の13C-NMRスペクトルにおいて、前述の番号付けシステムによるC11のシグナル(cis-PMDアセタールについては95.6ppm、trans-PMDアセタールについては94.8ppmおよび94.9ppmのシグナルの和)を積分すると、cis/transアセタールの比は1:2.6であることが判明した。次いで、この材料を減圧蒸留により濃縮し、残渣をシリカ上のクロマトグラフィにより、残存ジオールを除去するためにEtOAc/ヘキサン1:1を用い、続いてMeOH/ジクロロメタン1:10を用いての勾配溶出により精製して、表題化合物をガラス状固体で得た。
【0185】
続く実施例5、6、9および10で使用した材料を、この一般的手順に従って調製したが、表Iに示すとおり、異なるCitriodiol(登録商標)/グルコバニリン比を用いて異なるバッチから調製した。
【0186】
【表I】
N/A:材料は単離されず、PMD/アセタール比だけを決定した。
【0187】
実施例4: ラセミcis/trans-PMDの異性体混合物およびtrans-PMDグルコバニリンアセタールを、異なる量のクエン酸および塩化カルシウムと共に含む紙ディスクからのPMD減少の 1 H-NMRによる測定
cis/trans-PMDの異性体混合物およびtrans-PMD-グルコバニリンアセタール(以降、trans-アセタール)を、異なる量のクエン酸および塩化カルシウムと共に含む紙ディスクからのPMD減少を測定するために、表IIに示すとおり、以下の混合物を調製した。
【0188】
【表II】
【0189】
前述の混合物において使用する保存溶液は、以下の成分を含んでいた:
・保存溶液1:0.5mLのMeOH-d4中200mgのcis/trans-PMDおよび130mgの純粋なtrans-PMDグルコバニリンアセタール。
・保存溶液2:200μLのMeOH-d4で希釈した200μLの保存溶液1。
・保存溶液3:1mLのMeOH-d4中400mgのクエン酸。
・保存溶液4:0.7gの無水塩化カルシウムを1mLの重水に溶解した。
【0190】
保存溶液をガラスバイアルに、上の表Iに示す順序および量で加えた。
【0191】
十分に混合した後、50μLの各混合物を、並行の直径5cmの紙タオルディスクの全表面に滴加し、続いて32℃でインキュベートした。
【0192】
2時間および18.5時間後に各紙ディスクの約4分の1を切り取り、DMSO-d6(0.9mL)で洗浄し、1H-NMRで分析した。実験番号2からの混合物で処理した紙のさらに4分の1を、90.5時間後に同様に処理し、分析した。cis-PMD/trans-アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、それぞれ1.17および1.26ppmのそれらのメチルプロトンの積分値の比較によって決定した。
【0193】
実験4.1では、少量のcis/trans-アセタール異性化が観察され、したがってcis-PMDおよびtran-PMD比を、1.41および1.26ppmのアセタール積分値の組み合わせに対して決定した。異なる時点で得られた結果を以下の表IIIに示す。
【0194】
【表III】
NR=実施していない
【0195】
実験4.1(cis/trans-PMD、trans-PMDグルコバニリンアセタール、クエン酸および塩化カルシウム)の結果は、cis-PMDおよびtrans-PMDはいずれもPMD異性体およびtrans-アセタール(全PMDに対して0.27当量)の混合物から、クエン酸(全PMDに対して1当量)および塩化カルシウム(全PMDに対して1.7当量)の存在下では、それらの非存在下(実験4.2、4.3および4.4)よりもはるかに遅い速度で減少することを明らかに示している。
【0196】
cis-およびtrans-PMD混合物(例えば、Citriodiol(登録商標))を使用した、この後のすべての例において、1H-NMRピークの重なりが少ないために分析が容易であることから、cis-PMD減少のみを分析した。しかし、すべての場合において、PMD異性体の比は定量的に類似している(すなわち、本実施例に示すとおり、両方のPMD異性体はほぼ同程度に保持されている)。
【0197】
実施例5: エタノールおよび水中にcis/trans-PMDの異性体混合物および純粋なtrans-PMDグルコバニリンアセタール(trans-アセタール)またはPMDグルコバニリンアセタール粗製反応濃縮物を含む紙ディスクまたはHemotek膜からのPMD減少の 1 H-NMRによる測定
エタノールおよび水中にcis-およびtrans-PMDならびにtrans-PMDグルコバニリンアセタールを、クエン酸および塩化カルシウム存在下、および非存在下で含む紙ディスクまたはHemotek膜からのPMD減少を測定するために、表IVに示すとおり、以下の混合物を調製した。
【0198】
【表IV】
【0199】
実験番号5.1は実施例4の実験番号4.1の繰り返しであるが、MeOH-d4ではなくエタノールを用いたことに留意されたい。
【0200】
以下の保存溶液を調製した:
・保存溶液1:無水エタノール(1mL)中400mgのcis/trans-PMDおよび260mgのtrans-PMDグルコバニリンアセタール。
・保存溶液2:1mLの無水エタノール中400mgのクエン酸。
・保存溶液3:1mLの重水に溶解した0.7gの無水塩化カルシウム。
・保存溶液4:200μLの無水エタノールに溶解した200mgの実施例3のPMDグルコバニリンアセタール粗製反応濃縮物。
【0201】
保存溶液をガラスバイアルに、上の表に示す順序および量で加え、十分に混合した後、澄明無色溶液を得たが、実験番号5.3は例外で淡紫色溶液であった。
【0202】
50μLの各混合物を、上の表に示すとおり、並行の直径5cmの紙タオルディスクまたはHemotek膜の全表面に滴加し、続いて32℃でインキュベートした。
【0203】
17.5時間後に各ディスクの約2分の1を切り取り、DMSO-d6(0.9mL)で洗浄し、1H-NMRで分析した。出発混合物が平衡状態であった実験3および4において、cis-PMD/trans-アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、それぞれ1.17および1.26ppmのそれらのメチルプロトンの積分値の比較によって決定した。実験1および2では、いくらかのcis/trans異性化が起こり、したがってcis-PMD/全アセタール比を、1.17ppmのシグナルの積分値ならびに1.41および1.26ppmのシグナルの積分値の組み合わせから決定した。
【0204】
保存溶液1は、実験番号1および2の時間ゼロの比として測定した1H-NMRにより、cis-PMD/アセタール比3.07を示した。
【0205】
保存溶液4は、反応3および4の時間ゼロの比として測定した1H-NMRにより、cis-PMD/アセタール比1.17を示した。
【0206】
表Vは、本実施例で得た結果を示す。
【0207】
【表V】
【0208】
以下を観察することができる:
-実験番号5.1からのcis-PMD減少は、実施例4の実験番号4.1と同等で、結果は再現性があることを示している。
-紙(実験番号5.1)およびHemotek膜(実験番号5.2)からのcis-PMD減少は非常に類似しており、効果は表面のタイプと無関係であることを示している。
-クエン酸および塩化カルシウム存在下(実験番号5.3)でのCitriodiol(登録商標)/trans-アセタール混合物からのcis-PMD減少は、それらの非存在下(実験番号5.4)よりも実質的に低かった。
【0209】
実施例6: 紙上へのクエン酸および塩化カルシウムの異なる添加量を用いてのPMDグルコバニリンアセタール粗製反応混合物からのPMD減少の測定
表VIに示すとおり、クエン酸および塩化カルシウムの異なる添加量を用いての、cis-PMDおよびtrans-PMDグルコバニリンアセタールを含む紙ディスクからのPMD減少を1H-NMRにより測定するために、以下の組成物を調製した。
【0210】
【表VI】
1時間:20.5時間;2時間:19時間;3時間:21時間
【0211】
実施例3に示すとおりに調製したPMDグルコバニリンアセタール粗製反応混合物を含む、1mLの保存溶液1を、表VIに開示する量のクエン酸および塩化カルシウムと混合することにより、組成物を調製した。
【0212】
50μLの各混合物を、上の表に示すとおり、並行の直径5cmの紙タオルディスクの全表面に滴加し、続いて32℃でインキュベートした。
【0213】
表示の時点で各ディスクの約4分の1を切り取り、DMSO-d6(0.9mL)で洗浄し、1H-NMRで分析した。cis-PMD/trans-アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、それぞれ1.17および1.26ppmのそれらのメチルプロトンの積分値の比較によって決定した。
【0214】
保存溶液1は、時間ゼロの比として測定した1H-NMRにより、cis-PMD/trans-アセタール比10.18を示した。残存するcis-PMD%を、前記時間ゼロの値を考慮して、20.5時間の値を用いて算出した。
【0215】
この実験から、クエン酸および塩化カルシウムの組み合わせは、ゆっくりとしたPMD減少効果を提供することが示された。
【0216】
実施例7: cis/trans-PMDの異性体混合物、クエン酸、塩化カルシウムおよび異なるグルコピラノシドを含む紙ディスクからのPMD減少の測定
cis/trans-PMDの異性体混合物、クエン酸、塩化カルシウムおよび異なるグルコピラノシドを含む紙ディスクからのPMD減少を測定するために、表VIIに示す混合物を調製した。
【0217】
【表VII】
【0218】
以下の保存溶液を調製した:
・保存溶液1:0.8mLのMeOH-d4に溶解した300mgのcis/trans-PMD。
・保存溶液2:1mLのMeOH-d4に溶解した400mgのクエン酸。
・保存溶液3:1mLの重水に溶解した0.7gの無水塩化カルシウム。
【0219】
上の表に示すグルコピラノシド(20mg)を並行ガラスバイアル中に秤量し、保存溶液を表VIIに示す場合に、表VIIに示す量で添加した。
【0220】
十分に混合した後、50μLの各混合物を、並行の直径5cmの紙タオルディスクの全表面に滴加し、続いて32℃でインキュベートした。
【0221】
3時間および21時間後に各紙ディスクの約4分の1を切り取り、DMSO-d6(0.9mL)で洗浄し、1H-NMRで分析した。
【0222】
cis-PMD/グルコピラノシドの比を、1H-NMRスペクトルから、以下のシグナルを用いて決定した。
-実験7.1:trans-アセタールのいくらかは、紙への添加前に溶液中でのcis/trans-PMDとの平衡化により、cis-アセタールに変換したことが観察された。5.70および6.68ppmのシグナルの比較により、trans-アセタール/cis-アセタールの比は、いったん紙表面に添加されると、著しく変化しないことが観察された。したがって、cis-PMD/全アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、4.15ppmのcis-PMDのシグナルならびに5.70および5.68ppmのアセタールシグナルの組み合わせの積分値の比較によって決定した。
-実験7.2:4.15/5.08ppmのピーク
-実験7.3:4.15ppmのピーク/1.17ppmの溶媒ピークのハーモニック。
-実験7.4:4.15/4.84ppmのピーク
-実験7.5:4.15/4.90ppmのピーク
-実験7.6:実験7.1と同様
【0223】
次いで、比の差を用いてPMD減少の程度を決定し、表VIIIに示す。
【0224】
【表VIII】
【0225】
cis-PMDは、クエン酸および塩化カルシウム存在下、異なるグルコピラノシドを用いると、グルコシドが存在しない場合に比べて、紙から著しく遅い速度で減少することが明らかである。また、試験したすべてのグルコシドは、PMD減少の保持に対してプラスの効果を有することが観察される。
【0226】
実施例8: 異なる添加量で紙に添加したcis-PMDおよびメチル-α-グルコピラノシドの混合物と比較しての、cis-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウムの混合物からのPMD減少の測定
クエン酸および塩化カルシウムの組み合わせ存在下および非存在下の両方で、cis-PMDおよびメチル-α-グルコシドの混合物からのPMD減少を測定するために、保存溶液を、表IXに示す量の材料を混合し、続いてヒートガンで緩やかに加熱することにより調製した。
【0227】
【表IX】
【0228】
50μLの各保存溶液を、並行の直径5cmの紙タオルディスクの全表面に滴加し、続いて32℃でインキュベートした。
【0229】
19時間後に各ディスクの約4分の1を切り取り、DMSO-d6(0.9mL)で洗浄した。重水2滴を各試料に加え、続いて1H-NMRで分析した。cis-PMD/メチル-α-グルコピラノシドの比を、1H-NMRスペクトルから、それぞれ4.15/4.90ppmのそれらのプロトンの積分値の比較によって決定した。保存溶液1および2について得たデータを以下の表Xに、それぞれ実験番号8.1および8.4として報告する。
【0230】
時間ゼロデータを、前述のとおり保存溶液の分析によって得た。
【0231】
続く実験を、上で示したのと同じ様式で、0.25および0.5mLの保存溶液1および2を並行の紙上に滴加することにより実施した。22.5および45時間の時点で得たデータも、以下の表Xに報告する。
【0232】
【表X】
NR=実施していない
ND=決定していない
【0233】
このデータは、異なる濃度の混合物を適用して、メチル-α-グルコピラノシドとクエン酸および塩化カルシウム存在下では、メチル-α-グルコピラノシド単独の存在下と比較して、著しく多くのPMDが紙上に残ることを明確に示している。
【0234】
実施例9: 紙からのPMD減少に対する代替の酸の効果
紙からのPMD減少に対する代替の酸の効果を測定するために、50μLの無水塩化カルシウム/水溶液0.7:1(w/v)を、実施例3に示すとおりに調製したPMDグルコバニリンアセタール粗製反応混合物0.5mLに添加した。
【0235】
前述の混合物の0.1mLの一定量に10mg量のp-トルエンスルホン酸および酒石酸を加え、それぞれ混合物1および2を得た。
【0236】
各混合物のすべてを、並行の直径5cmの紙タオルディスク3枚に適用し、次いで32℃でインキュベートした。
【0237】
27時間後に各ディスクの約4分の1を切り取り、DMSO-d6(0.9mL)で洗浄し、1H-NMRで分析した。cis-PMD/cis-アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、それぞれ1.17および1.26ppmのそれらのメチルプロトンの積分値の比較によって決定した。
【0238】
時間ゼロ比を、PMDグルコバニリンアセタール粗製反応混合物の同じピークの積分によって決定した。
【0239】
結果を表XIに示す。
【0240】
【表XI】
【0241】
p-トルエンスルホン酸および酒石酸存在下で、低いレベルのcis-PMD減少が観察された。
【0242】
したがって、pKaが大きく異なる二酸および酸を使用して、同じ徐放効果を提供することができる。
【0243】
実施例10: ポリマー存在下および非存在下の両方で皮膚に適用した、PMDグルコバニリンアセタール粗製反応混合物からのcis-PMD減少の測定
Kollicoat(登録商標)SR 30 Dなどのポリマー存在下および非存在下の両方で皮膚に適用した、cis-PMDからのPMD減少を測定するために、以下の混合物を調製した:
・混合物1:クエン酸一水和物(212mg)を、3mLの実施例3に示すとおりに調製したPMDグルコバニリンアセタール粗製反応混合物および150μLの0.7:1(w/v)無水塩化カルシウム/水溶液に、ヒートガンを用いて緩やかに加熱しながら溶解した。
・混合物2:Kollicoat(登録商標)SR 30 D(0.2g)およびミリスチン酸イソプロピル(30mg)を1mLの混合物1で希釈し、ヒートガンで緩やかに加熱した後、粘性で、わずかに不透明な溶液を得た。
【0244】
各混合物(50μL)を前腕の皮膚の直径5cmの円形領域に塗布した。混合物2で処理した領域は、混合物1で処理した領域よりも明らかに粘着性が低かった。
【0245】
4時間後、Sellotape(登録商標)(Miarco Gamma Azul)の2×2cm×5cm片を連続して適用することにより、各領域をテープ剥離した。次いで、各領域を剥離するのに使用した2つのテープを合わせ、DMSO-d6(1mL)で洗浄し、得られた溶液を1H-NMRで分析した。
【0246】
cis-PMD/cis-アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、それぞれ1.17および1.41ppmのそれらのメチルプロトンの積分値の比較によって決定した。
【0247】
結果を表XIIに示す。
【0248】
【表XII】
【0249】
cis-PMD/cis-アセタールの比はほぼ同等で、膜形成ポリマーおよびミリスチン酸イソプロピルの添加が、PMD減少速度に著しい影響を与えることなく、忌避剤混合物の皮膚感触にプラスの効果を有することが示された。
【0250】
実施例11: インビボ忌避効果-比較実験
以下の一連の実験は、別々の日であるが、同様の条件下で行った。したがって、以下の表に示す公知の量の混合物を、一名の中年男性志願者(おおよその皮膚面積は1200cm2と計算された)の一方の下腿および足の甲に塗布した。同じ志願者の他方の下腿および足は未処理のままか、または公知の量の別の混合物で処理した。志願者は実験と実験の間にシャワーを浴び、処理した下肢と未処理の下肢を交替させた。
【0251】
以下の表に示す混合物適用後の期間に、志願者はヒトスジシマカが生息していることが公知の場所(Sant Cugat del Valles、Spain)に立った。志願者は各蚊が各脚に降着した時点を計測し、払い落とした後、同じ蚊が2度降着しないようにわずかに異なる場所に移動し、30分間計測および移動を再開した。複数の蚊が同時に降着した場合、すべてを計測した。
【0252】
実験A:市販のMosiguard(登録商標)と比較してのCitriodiol(登録商標)/メチル-α-グルコピラノシド/クエン酸/塩化カルシウム混合物のインビボ忌避効果
以下の混合物を試験した:
・混合物1:Mosiguard(登録商標)はAmazonからオンラインで購入し、Citrefine社製であった。Mosiguard(登録商標)はラベルによると30%のCitriodiol(登録商標)を含有していた。
・混合物2:Citriodiol(登録商標)(6.0g)、メチル-α-グルコピラノシド(2.2g)およびクエン酸一水和物(2.2g)をエタノール(14mL)および0.7:1(w/v)無水塩化カルシウム/水溶液(2.0mL)で、ヒートガンを用いて緩やかに加熱しながら希釈した。Kollicoat(登録商標)SR 30 D(8mL)およびミリスチン酸イソプロピル(1.2mL)を加え、粘性で、わずかに不透明な溶液を得た。混合物は不安定な乳濁液で、数時間後にゆっくりと2相に分離したため、適用前に十分に振盪する必要があった。
【0253】
前述のとおり、混合物1(1mL)を左脚に適用し、混合物2(2mL)を右脚に適用して、経時的な降着を以下の表XIIIに報告する。
【0254】
【表XIII】
【0255】
実験期間中、いずれの脚にも皮膚刺激は観察されなかった。混合物1で処理した領域には9時間後に蚊の著しい降着が観察され、混合物2で処理した領域には15時間後にのみ蚊の降着が観察された。
【0256】
混合物2は明らかに、適用した用量で混合物1よりも少なくとも3時間長い蚊の忌避効果を提供する。
【0257】
実験B:2倍の処方用量でのMosiguard(登録商標)のインビボ忌避効果
以下の混合物を試験した:
・混合物1:前述のとおり2mLのMosiguard(登録商標)(Citrefine)を右脚に適用し、左脚は未処理であった。
【0258】
経時的な降着を以下の表XIVに報告する。
【0259】
【表XIV】
【0260】
実験期間中、いずれの脚にも皮膚刺激は観察されなかった。使用するMosiguard(登録商標)の用量を実験Aと比べて2倍にすると、9.5時間の持続時間しか得られなかった。
【0261】
実験C:cis-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸および塩化カルシウム混合物のインビボ忌避効果
以下の混合物を試験した:
・混合物1:cis-PMD(0.6g)、メチル-α-グルコピラノシド(0.22g)およびクエン酸一水和物(0.22g)をエタノール(1.4mL)および0.7:1(w/v)無水塩化カルシウム/水溶液(0.2mL)で、ヒートガンを用いて緩やかに加熱しながら希釈した。Kollicoat(登録商標)SR 30 D(0.8mL)およびミリスチン酸イソプロピル(0.12mL)を加え、粘性で、わずかに不透明な溶液を得た。混合物は不安定な乳濁液で、数時間後にゆっくりと2相に分離したため、適用前に十分に振盪する必要があった。前述のとおり2mLの混合物1を左脚に適用し、右脚は未処理であった。
【0262】
経時的な降着を以下の表XVに報告する。
【0263】
【表XV】
【0264】
実験終了時、蚊の活動性がそれ以上観察されなくなると、処理した左脚の無毛の皮膚の直径約5cmの円形領域を、実施例10と同様にテープ剥離し、処理し、1H-NMRで分析した。例外は、分析前にNMR試料に2滴の重水を加えたことであった。4.14ppmのcis-PMD多重線と4.52ppmのメチル-α-グルコシド二重線の積分値を比較すると、約25%のcis-PMDが皮膚上に残っていた。
【0265】
実験期間中、いずれの脚にも皮膚刺激は観察されなかった。この混合物は皮膚上で、実験Aで使用したCitriodiol(登録商標)混合物よりもはるかに低い臭いを発生した。
【0266】
混合物1は少なくとも14時間にわたって蚊の忌避効果を提供した。25%の活性物質の残りは、蚊の活動性が失われなければ、さらに長い持続時間が可能であり得たことを示唆している。
【0267】
実験D:エタノール中の20体積%DEETのインビボ忌避効果
以下の混合物を試験した:
・混合物1:20mLのN,N-ジエチル-メタ-トルアミド(DEET)をエタノールで100mLに希釈した。前述のとおり1mLの混合物1を左脚に適用し、右脚は未処理であった。
【0268】
経時的な降着を以下の表XVIに報告する。
【0269】
【表XVI】
【0270】
20体積%のDEETは、実験AおよびCで使用した混合物よりも著しく短い防護期間を提供することが観察される。
【0271】
実施例12: 皮膚上のcis-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸および塩化カルシウムの混合物からのcis-PMDの減少の測定
実施例11、実験Cに記載のとおりに混合物を調製した。
【0272】
混合物(50μL)を前腕皮膚の直径7×5cmの円形領域に塗布した。
【0273】
様々な時間の後、各領域を実施例10に記載のとおりにテープ剥離し、DMSO-d6(1mL)で洗浄し、2滴の重水を加え、得られた溶液を1H-NMRで分析した。
【0274】
cis-PMD/メチルグルコピラノシドの比を、それぞれ4.14ppmのcis-PMD多重線と4.52ppmのメチル-α-グルコシド二重線の積分値の比較により決定し、残存するcis-PMDを算出した。
【0275】
表XVIIは、cis-PMDの減少の直線性を示す。
【0276】
【表XVII】
【0277】
20時間後に得られた異常値の結果を除外して、皮膚からのcis-PMDの減少は直線的に起こることが明らかに示された。
【0278】
実施例13: 皮膚上のcis-またはtrans-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウムの混合物からのcis-PMDおよびtrans-PMDの減少の測定
並行混合物を、実施例11、実験Cに記載のとおりに調製したが、混合物1はcis-PMDを含み、混合物2はtrans-PMDを含んでいた。
【0279】
各混合物(50μL)を前腕皮膚の直径2×5cmの円形領域に塗布した。
【0280】
時間ゼロおよび6時間後、各領域を実施例10に記載のとおりにテープ剥離し、DMSO-d6(1mL)で洗浄し、2滴の重水を加え、得られた溶液を1H-NMRで分析した。
【0281】
cis-PMD/メチルグルコシドの比を、それぞれ4.14ppmのcis-PMD多重線と4.52ppmのメチル-α-グルコシド二重線の積分値の比較により決定し、残存するcis-PMDを算出した。
【0282】
trans-PMD/メチルグルコシドの比を、cis 1.05ppmのtrans-PMDメチルシグナルの積分値(3で割った値)と4.52ppmのメチル-α-グルコピラノシド二重線の積分値の比較により決定した。
【0283】
表XVIIIは結果を示す。
【0284】
【表XVIII】
【0285】
本実施例における積分は、短期間であったため、特に信頼できるものではなかったが、混合物1には皮膚上でPMD臭があったのに対し、混合物2は無臭であったことは注目に値し、無臭の忌避剤を開発する可能性を開いた。
【0286】
実施例14: 皮膚上のcis-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、カルボン酸、および塩化カルシウムの混合物からのcis-PMDの減少の測定
並行混合物を、実施例11、実験Cに記載のとおりに調製したが、混合物1はクエン酸一水和物を含み、混合物2はコハク酸を含んでいた(いずれも同じ重量当量)。
【0287】
各混合物(50μL)を前腕皮膚の直径3×5cmの円形領域に塗布した。
【0288】
様々な時点で、各領域を実施例10に記載のとおりにテープ剥離し、DMSO-d6(1mL)で洗浄し、2滴の重水を加え、得られた溶液を1H-NMRで分析した。
【0289】
cis-PMD/メチル-α-グルコピラノシドの比を、それぞれ4.14ppmのcis-PMD多重線と4.52ppmのメチル-α-グルコピラノシド二重線の積分値の比較により決定し、残存するcis-PMDを算出した。
【0290】
表XIXは結果を示す。
【0291】
【表XIX】
【0292】
クエン酸とコハク酸のpKaはかなり異なるにもかかわらず、クエン酸およびコハク酸を含む混合物からのPMD減少速度は同等であることが観察される。
【0293】
実施例15: ラセミcis/trans-PMDの異性体混合物およびtrans-PMDグルコバニリンアセタール(trans-アセタール)を、クエン酸および様々な金属ハロゲン化物と共に含む並行紙ディスクからのPMD減少の 1 H-NMRによる測定
表XXに示すとおりに並行混合物を調製した。
【0294】
【表XX】
【0295】
以下の保存溶液を調製した:
・保存溶液1:0.6mLのEtOHおよび110μLの水に溶解した0.11gのcis/trans-PMD、75mgのtrans-PMDグルコバニリンアセタールおよび90mgのクエン酸一水和物。
【0296】
保存溶液1(60μL)を、上の表XXに示す異なる塩(5mg)を含むガラスバイアルに添加した。
【0297】
十分に混合し、緩やかに加熱してすべての固体を溶解した後、各バイアルの内容物を並行の直径5cmの紙タオルディスクの全表面に滴加し、続いて32℃でインキュベートした。
【0298】
2時間および20.5時間後に各紙ディスクの約4分の1を切り取り、DMSO-d6(0.9mL)で洗浄し、1H-NMRで分析した。
【0299】
cis-PMD/全アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、4.15ppmのcis-PMDのシグナルと、5.70および5.68ppmの合わせたアセタールシグナルの積分値の比較によって決定した。実施例7のとおり、いくらかのアセタール異性化が観察される場合もあるが、これはPMDの保持と相関しないことに留意されたい。
【0300】
2つの時点間の比の差を以下の表XXIに示す。
【0301】
【表XXI】
【0302】
試験したすべての二価金属ハロゲン化物は、塩を含まない混合物に比べてPMDの減少速度が低かった。亜鉛およびコバルト塩はカルシウムまたはマグネシウム塩よりも効果的であった。塩化物は、臭化物またはヨウ化物よりも効果的であった。
【0303】
実施例16: ラセミcis/trans-PMDの異性体混合物、クエン酸、塩化カルシウムおよび代替グリコシドを含む並行紙ディスクからのPMD減少の 1 H-NMRによる測定
表XXIIに示すとおりに並行混合物を調製した。
【0304】
【表XXII】
【0305】
以下の保存溶液を調製した:
・保存溶液1:0.12gのcis/trans-PMD、90mgのクエン酸一水和物および77mgの無水塩化カルシウムの混合物をエタノール(0.6mL)および脱イオン水(110μL)に、ヒートガンを用いて緩やかに加熱しながら溶解した。
・保存溶液2:0.12gのcis/trans-PMDおよび90mgのクエン酸一水和物の混合物をエタノール(0.6mL)および脱イオン水(110μL)に溶解した。
【0306】
表XXIIに示すグリコシド(5mg)を並行ガラスバイアルに秤量し、60μLの保存溶液1または2を加えた。
【0307】
得られた混合物をヒートガンにより緩やかに加熱して無色溶液を生成し、各混合物全体を並行の直径5cmの紙タオルディスクの全表面に滴加し、続いて32℃でインキュベートした。
【0308】
2.25時間および19時間後に各紙ディスクの約4分の1を切り取り、DMSO-d6(1mL)で洗浄し、2滴の重水を加え、試料を1H-NMRで分析した。
【0309】
cis-PMD/グリコシドの比を、下記から決定した:
-実験16.1:4.65/4.02ppmのピーク
-実験16.2:実施例7に記載のとおり、紙への添加前に溶液中でいくらかの初期のアセタール異性化があったため、cis-PMD/全アセタールの比を、1H-NMRスペクトルから、4.15ppmのcis-PMDのシグナルと、5.70および5.68ppmの合わせたアセタールシグナルの積分値の比較によって決定した。
-実験16.3:4.14/4.48ppmのピーク
-実験16.4:実験16.2と同様
-実験16.5:4.14/4.51ppmのピーク
-実験16.6:4.14/4.50ppmのピーク
【0310】
次いで、表XXIIIに示すとおり、比の差を用いてPMD減少の程度を決定した。
【0311】
【表XXIII】
【0312】
すべてのグリコシドは、存在すると、対照実験16.4(塩化カルシウムを加えていない)と比較して、PMDの保持をもたらすことが明らかである。
【0313】
したがって、アグリコン型(実施例7参照)、糖の立体化学(糖の種類)およびグリコシド結合の立体化学が異なる広範囲のグリコシドを用いて、PMD徐放効果を維持することができる。
【0314】
実施例17: 市販のMosiguard(登録商標)と比べてのCitriodiol(登録商標)、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウム混合物のインビトロ忌避効果
ヒトスジシマカを飼育し、温度26±2℃、相対湿度80%±10%以上、12時間:12時間(明:暗)の光周期で維持した。蚊成虫の集団に糖液(10%)を給餌したが、試験前に血液は給餌しなかった。
【0315】
以下の混合物を調製した:
・混合物1:Mosiguard(登録商標)はAmazonからオンラインで購入し、Citrefine社製で、ラベルによると30v/vのCitriodiol(登録商標)を含有していた。
・混合物2:Citriodiol(登録商標)(6.0g)、メチル-α-グルコピラノシド(2.2g)およびクエン酸一水和物(2.2g)をエタノール(14mL)および0.7:1w/v無水塩化カルシウム/水溶液(2.0mL)で、ヒートガンを用いて緩やかに加熱しながら希釈した。Kollicoat(登録商標)SR 30 D(8mL)およびミリスチン酸イソプロピル(1.2mL)を加え、粘性で、わずかに不透明な溶液を得た。混合物は不安定な乳濁液で、数時間後にゆっくりと2相に分離したため、適用前に十分に振盪する必要があった。
【0316】
60μLの混合物1を、羊の血液を含む直径3.7cmの金属Hemotekレザバーに張った4つの並行Hemotek膜それぞれに塗布した。さらに4つの膜を60μLの混合物2で同様に処理した。さらに1つの膜は未処理のままにした。
【0317】
残存溶媒を約5分間かけて乾燥させた後、試料を37℃のHemotekヒーター装置に取り付け、膜カバーレザバーを5分間かけて温め、続いてアスピレーターを用いて選択および回収し、12×20cmのプラスチック試験容器内でバッチ(雌15匹)に編成した、5~7日齢の活動性の宿主探索雌蚊に膜を曝露し、20分の期間の降着数を記録した。
【0318】
次いで、膜で覆ったレザバーをHemotek加熱装置から取り外し、32℃のインキュベーターに貯蔵し、加熱したHemotekヒーター装置に様々な間隔で定期的に再度取り付け、前述のとおり、蚊の降着を新鮮な蚊のバッチに対して判定した。
【0319】
混合物1で処理した膜は、最初の4時間は未処理の膜と比較して著しい忌避効果を示したが、6時間後には忌避活性が顕著に減少した。これに対し、混合物2で処理した膜は、6時間の試験期間中、一貫した忌避活性を維持した。
【0320】
Citriodiol(登録商標)、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウムを含む混合物は、そのCitriodiol(登録商標)含有量が低いにもかかわらず、同量のMosiguard(登録商標)よりも長時間効果を保持したと結論することができる。
【0321】
実施例18: インビボ忌避効果試験
本実施例において、ヒトスジシマカを用いた腕をケージに入れるインビボ試験により、Citriodiol(登録商標)、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウム混合物と市販のMosiguard(登録商標)との忌避効果の比較を行った。
【0322】
ECHA(欧州化学品庁)の手順(最終更新2022年3月)を採用して、蚊に対する忌避剤の試験を設計した。忌避活性の評価を、約78m3のチャンバー容積で、制御された気候条件下で実施した。すべての試験は、5~10日齢のヒトスジシマカの非血液給餌雌で行った。蚊を温度25±2℃、相対湿度60±5%、および光周期12:12時間(L:D)の実験室条件下で飼育した。試験期間前および試験期間中に砂糖水(5%)を与えて、良好な体型を促進した。試験は4名の参加者(男性2名および女性2名、19~54歳)で行った。全員が、研究の目的および手順ならびに試験中の彼らの役割について説明するインフォームドコンセントの用紙に署名した。参加者には試験の12時間前から、香料、ニコチン、アルコールおよび忌避剤の使用を避けるよう依頼した。忌避剤を適用する前に、曝露する皮膚を無香料の石鹸で洗浄し、水ですすぎ、70%エタノールですすぎ、次いでタオルで乾燥した。通常のAIC(腕をケージに入れる)試験(WHO, 2009およびEPA, 2010)を実施した。試験の24時間前に、30×30×30cmのケージを8つ(参加者1人につき2つ)、約38匹の蚊の密度で準備した。
【0323】
以下の混合物を調製した:
・混合物1:Mosiguard(登録商標)はAmazonからオンラインで購入し、Citrefine社製で、ラベルによると30v/vのCitriodiol(登録商標)を含有していた。
・混合物2:Citriodiol(登録商標)(3.0g)、メチル-α-グルコピラノシド(0.19g)およびコハク酸(2.2g)および無水塩化マグネシウム(0.07g)を無水エタノール(3.00g)、Kollicoat(登録商標)SR 30 D(2.30g)および2M水酸化ナトリウム水溶液(0.25mL)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、澄明な粘性の液体を得た。
【0324】
左前腕を混合物1により600cm2あたり1mlの適用率で処理し、右前腕を混合物2で同様に処理した。適用する忌避剤の量は、各参加者の腕の寸法(周囲および長さ)に基づき、曝露する面積を考慮して計算した。忌避活性を、各参加者の前腕をケージ内の蚊に1時間につき3分間、最長8時間まで、または各暴露期間中の降着数を計数して忌避活性の減少が検出されるまで暴露して測定した。1回目の曝露(T1)は、混合物の皮膚への適用の1時間後であった。
【0325】
降着は、飛翔している蚊がプロービングまたは刺咬することなく皮膚に降りる場合に起こった。プロービングは、蚊が血液を摂取することなく口器で皮膚を貫通する場合に起こった。降着が起これば、蚊の刺咬および吸血を防ぐため、参加者にはゆっくり腕を振るか、または軽く息を吹くことを許可した。
【0326】
各混合物の完全防護時間(CPT)を推定した。CPTは、1回目のプロービング事例であり、同じ曝露期間またはその後の3分間の曝露期間中の2回目のプロービング事例によって確認しなければならない。
【0327】
経時的な降着を以下の表XXIVに報告する。
【0328】
【表XXIV】
【0329】
混合物2は混合物1(3.25時間)に比べて明らかに長い平均CPT(4.75時間)を示した。統計分析によると、混合物2は市販のMosiguard(登録商標)(混合物1)よりも、同じCitriodiol適用量で約50%長い持続時間を示した。
【0330】
いずれの混合物からも皮膚刺激は観察されなかった。
【0331】
同じ混合物2の異なるバッチを200gスケールで調製し、1.4ml/600cm2で適用して試験した。10名の志願者に対する12時間の試験で、皮膚の曝露面積100cm2および1箱あたり80匹の蚊を使用した。完全防護時間は9、11、12、12、12、12、12、12、12、および9時間で、平均防護時間は11時間であったが、試験をより長く実施した場合はより長くなる可能性がある。
【0332】
実施例19: インビボ忌避効果試験
本実施例において、ヒトスジシマカを用いた腕をケージに入れるインビボ試験により、cis-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウム混合物とtrans-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウム混合物との忌避効果の比較を行った。
【0333】
腕をケージに入れる蚊の試験を、実施例18に示すのと本質的に同じ手順を用いて実施したが、ただし各混合物1.5mlを4名の志願者の各前腕600cm2の領域に適用した。
【0334】
以下の混合物を調製した:
・混合物1:cis-PMD(3.0g)、メチル-α-グルコピラノシド(0.64g)、コハク酸(0.64g)および無水塩化マグネシウム(0.24g)の混合物を無水エタノール(2.92g)、2M水酸化ナトリウム水溶液(0.42g)、脱イオン水(1.30g)およびKollicoat(登録商標)SR 30 D(0.3g)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、無色の不透明な液体を得た。
・混合物2:trans-PMD(3.0g)、メチル-α-グルコピラノシド(0.64g)、コハク酸(0.64g)および無水塩化マグネシウム(0.24g)の混合物を無水エタノール(2.92g)、2M水酸化ナトリウム水溶液(0.42g)、脱イオン水(1.30g)およびKollicoat(登録商標)SR 30 D(0.3g)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、無色の不透明な液体を得た。
【0335】
経時的な降着を以下の表XXVに報告する。
【0336】
【表XXV】
【0337】
混合物1は混合物2(1.75時間)に比べて長い平均CPT(4時間)を示した。いずれの混合物も男性志願者に対しては同様に作用し、女性志願者に対しては混合物1が混合物2よりもごくわずかに良好に作用した。
【0338】
いずれの混合物からも皮膚刺激は観察されなかった。
【0339】
実施例20: インビボ忌避効果試験
本実施例において、ヒトスジシマカを用いた腕をケージに入れるインビボ試験を用いて、無水エタノール中の低濃度のcis-PMD、cis/trans-PMD、およびCitriodiol(登録商標)を含む混合物を、Mosiguard(登録商標)の希釈溶液、ならびにcis-PMDおよびtran-PMDの比較溶液と比較しての、模擬長期試験を行った。
【0340】
この実験の目的は、低濃度のcis-PMD、Citriodiol(登録商標)およびcis/trans-PMDを含むが、メチル-α-グルコピラノシド、コハク酸、塩化マグネシウムまたはKollicoat(登録商標)SR 30 Dの濃度は下げていない混合物を、有効成分濃度をエタノールで同程度に希釈したMosiguard(登録商標)、cis-PMDおよびtrans-PMDと比較することにより、より長期にわたる忌避効果を模擬することであった。
【0341】
腕をケージに入れる蚊の試験を、実施例18に示すのと本質的に同じ手順を用いて実施したが、ただし各混合物1.5mlを4名の志願者の各前腕600cm2の領域に適用した。
【0342】
以下の混合物を調製した:
・混合物1(比較):Amazonからオンラインで購入し、Citrefine社製で、ラベルによると30v/vのCitriodiol(登録商標)を含む、4mlのMosiguard(登録商標)を無水エタノール(6ml)で希釈した。
・混合物2:cis-PMD(1.44g)、メチル-α-グルコピラノシド(1.32g)、コハク酸(1.30g)および無水塩化マグネシウム(0.50g)の混合物を無水エタノール(9.5ml)、脱イオン水(5.5ml)およびKollicoat(登録商標)SR 30 D(1.2ml)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、無色の不透明な液体を得た。
・混合物3:市販のcis/trans-PMD(1.44g)、メチル-α-グルコピラノシド(1.32g)、コハク酸(1.30g)および無水塩化マグネシウム(0.48g)の混合物を無水エタノール(8.3ml)、脱イオン水(1.8ml)、Kollicoat(登録商標)SR 30 D(4.8ml)およびグリセリン(1.2ml)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、粘性の液体を得た。
・混合物4:Citriodiol(登録商標)(1.44g)、メチル-α-グルコピラノシド(1.32g)、コハク酸(1.30g)および無水塩化マグネシウム(0.48g)の混合物を無水エタノール(8.3ml)、脱イオン水(1.8ml)、Kollicoat(登録商標)SR 30 D(4.8ml)およびグリセリン(1.2ml)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、粘性の液体を得た。
・混合物5(比較):cis-PMD(0.72g)を無水エタノール(9.6ml)に溶解して、澄明な液体を得た。
・混合物6(比較):市販のcis/trans-PMD(0.72g)を無水エタノール(9.6ml)に溶解して、澄明な液体を得た。
【0343】
経時的な降着を以下の表XXVIに報告する。
【0344】
【表XXVI】
(比較混合物をイタリックで示し、本発明の混合物を太字で示す)
【0345】
混合物2は混合物5と比べて忌避活性の低下が明らかに遅く、cis-PMDは、本発明に従いメチル-α-グルコピラノシド、コハク酸および塩化マグネシウムと製剤した場合、伝統的な様式(アルコール中)で製剤した同じ濃度のcis-PMDと比べて、インビボでのcis-PMDの忌避性能に著しく良い影響を与えることを示した。混合物3は混合物6と比べて忌避活性の低下が明らかに遅く、cis/trans-PMDは、本発明に従いメチル-α-グルコピラノシド、コハク酸および塩化マグネシウムと製剤した場合、伝統的な様式(アルコール中)で製剤した同じ濃度のcis/trans-PMDと比べて、インビボでのcis/trans-PMDの忌避性能に著しく良い影響を与えることを示した。平均して、混合物4は混合物1と比べて忌避活性の低下が明らかに遅く、Citriodiol(登録商標)は、本発明に従いメチル-α-グルコピラノシド、コハク酸および塩化マグネシウムと製剤した場合、伝統的な様式(希釈したMosiguard(登録商標))で製剤した同じ濃度のCitriodiol(登録商標)と比べて、インビボでのCitriodiol(登録商標)の忌避性能に著しく良い影響を与えることを示した。
【0346】
実施例21: インビボ忌避効果試験
本実施例において、ヒトスジシマカを用いた腕をケージに入れるインビボ試験により、pH調節をした場合と、pH調節をしない場合の、cis-PMD、メチル-α-グルコピラノシド、クエン酸、および塩化カルシウム混合物の忌避効果の比較を行った。
【0347】
腕をケージに入れる蚊の試験を、実施例18に示すのと本質的に同じ手順を用いて実施したが、ただし各混合物1mlを4名の志願者の各前腕600cm2の領域に適用した。
【0348】
以下の混合物を調製した:
・混合物1:cis-PMD(1.2g)、メチル-α-グルコピラノシド(0.64g)、コハク酸(0.64g)および無水塩化マグネシウム(0.24g)の混合物を無水エタノール(3.24g)、2M水酸化ナトリウム水溶液(0.42g)、脱イオン水(2.50g)およびKollicoat(登録商標)SR 30 D(0.30g)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、無色の不透明な液体を得た。
・混合物2:cis-PMD(1.2g)、メチル-α-グルコピラノシド(0.64g)、コハク酸(0.64g)および無水塩化マグネシウム(0.24g)の混合物を無水エタノール(3.56g)、脱イオン水(2.50g)およびKollicoat(登録商標)SR 30 D(0.30g)で希釈した。混合物をヒートガンで緩やかに加熱し、無色の不透明な液体を得た。
【0349】
経時的な降着を以下の表XXVIIに報告する。
【0350】
【表XXVII】
【0351】
混合物1は混合物2よりも経時的な忌避活性の減少速度率がわずかに低下した。
【0352】
いずれの混合物からも皮膚刺激は観察されなかった。
【0353】
実施例22: Citriodiol(登録商標)からの純粋なラセミcis/trans-PMDの抽出と続くラセミcis-PMDの選択的結晶化
Citriodiol(登録商標)(30.0g)をヘキサン(200ml)に溶解した。エタノール(0.10ml)を加え、続いて無水塩化カルシウム(19.3g、Citriodiol(登録商標)中の全PMDに対して約1.4当量)を加え、混合物を室温で4時間激しく撹拌した。混合物をろ過し、白色固体残渣をヘキサン(20ml)で洗浄した。次いで、残渣を水(100ml)およびヘキサン(100ml)の混合物に溶解し、水相を分液により除去し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧蒸留により除去して、ラセミcis/trans-PMDを得た(20.8g、Citriodiol(登録商標)中の全PMDに基づく回収率約99%)。この生成物は、1H-NMRにより標準のcis/trans-PMDと同一であり、出発原料のCitriodiol(登録商標)と本質的に同じCis/Trans比を含んでいた(約6:4のcis/trans-PMD)。無水塩化カルシウムの代わりに無水塩化マグネシウムを用いても本質的に同じ結果を得ることができる。
【0354】
ラセミcis/trans-PMD(100.0g)を酢酸エチル(15ml)に70℃に加熱しながら溶解した。ヘキサン(30ml)を滴加し、溶液を室温まで冷却し、次いで15℃までさらに冷却した。撹拌を3時間続け、混合物をろ過し、ラセミcis-PMD(33.0g、出発原料中のcis-PMDに基づき約53%)を白色固体として得た。この材料は1H-NMRにより標準のcis-PMDと同一であった。
【0355】
同様の結果が、出発原料に対して10倍量のヘプタンを用いた再結晶でも得られた。
図1
図2.1】
図2.2】
【国際調査報告】