(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ヒトメタニューモウイルスワクチン
(51)【国際特許分類】
C07K 14/08 20060101AFI20241108BHJP
C12N 15/40 20060101ALI20241108BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20241108BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20241108BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20241108BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20241108BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241108BHJP
A61P 37/04 20060101ALI20241108BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241108BHJP
A61K 35/76 20150101ALI20241108BHJP
【FI】
C07K14/08 ZNA
C12N15/40
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K31/7088
A61P37/04
A61P31/14
A61K35/76
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532179
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-13
(86)【国際出願番号】 US2022080555
(87)【国際公開番号】W WO2023102373
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517055195
【氏名又は名称】サノフィ パスツール インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100216105
【氏名又は名称】守安 智
(72)【発明者】
【氏名】イヴォン・チャン
(72)【発明者】
【氏名】スカンヤ・サズマル
(72)【発明者】
【氏名】アントニア・ステューブラー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル・キシュコ
(72)【発明者】
【氏名】ソフィア・マンドル
(72)【発明者】
【氏名】リンオン・ジャン
(72)【発明者】
【氏名】ジョシュ・ディナポリ
(72)【発明者】
【氏名】ジュディス・アラマレス-サピュエイ
(72)【発明者】
【氏名】ナタリー・アノソヴァ
(72)【発明者】
【氏名】スーダ・チヴクラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒラリー・ダンツ
(72)【発明者】
【氏名】トッド・ストラグネル
(72)【発明者】
【氏名】レイチェル・グロッポ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065AA01Y
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4C086ZB33
4C087AA01
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4C087CA12
4C087NA14
4C087ZB33
4H045AA10
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4H045AA30
4H045BA55
4H045CA01
4H045DA86
4H045EA31
4H045FA74
(57)【要約】
本開示は、抗原性融合前hMPV Fポリペプチド、融合前hMPV Fポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、RNA配列、例えばmRNA配列)、抗原性融合前hMPV Fポリペプチドを含む組成物、融合前hMPV Fポリペプチドをコードする核酸配列を含む組成物、及びhMPVワクチンを提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子であって、前記融合前Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位を含む、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子。
【請求項2】
前記融合前Fポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF
0切断部位変異を更に含む、請求項1に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項3】
前記融合前Fポリペプチドがシグナルペプチドを含む、請求項1又は2に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項4】
前記融合前Fポリペプチドが、任意選択的に8xHisタグ及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項5】
前記融合前Fポリペプチドがfoldonドメインを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項6】
前記融合前Fポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸位置160でトレオニンを置換するアミノ酸置換及び配列番号1のアミノ酸位置46でアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項7】
抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子であって、前記融合前Fポリペプチドは膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、
配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF
0切断部位変異;
ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;
異種シグナルペプチド;
8xHisタグ及び/又はStrep IIタグ;並びに
foldonドメイン
を含む、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子。
【請求項8】
抗原性ヒト融合前メタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子であって、前記融合前Fポリペプチドが膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1の位置160の野生型アミノ酸を置換するアミノ酸置換及び配列番号1の位置46の野生型アミノ酸を置換するアミノ酸置換を含む、抗原性ヒト融合前メタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子。
【請求項9】
抗原性ヒト融合前メタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子であって、前記融合前Fポリペプチドが膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置160でトレオニンを置換するアミノ酸置換及び配列番号1のアミノ酸位置46でアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む、抗原性ヒト融合前メタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子。
【請求項10】
前記融合前Fポリペプチドが、位置160のアミノ酸をフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン又はロイシンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項8又は9に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項11】
前記融合前Fポリペプチドが、位置160のアミノ酸をフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項10に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項12】
前記融合前Fポリペプチドが、位置46のアミノ酸をバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン又はプロリンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項8~11のいずれか一項に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項13】
前記融合前Fポリペプチドが、位置46のアミノ酸をバリンで置換するアミノ酸置換を含む、請求項12に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項14】
前記融合前Fポリペプチドが、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む、請求項8に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項15】
前記融合前Fポリペプチドが、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF
0切断部位変異を更に含む、請求項8~14のいずれか一項に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項16】
前記融合前Fポリペプチドがシグナルペプチドを含む、請求項8~15のいずれか一項に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項17】
前記融合前Fポリペプチドが、任意選択的に8xHisタグ及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む、請求項8~16のいずれか一項に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項18】
前記融合前Fポリペプチドがfoldonドメインを含む、請求項8~17のいずれか一項に記載のhMPV Fポリペプチド又は核酸分子。
【請求項19】
抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子であって、前記融合前Fポリペプチドは膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、
配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160F、及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46V;
配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF
0切断部位変異;
ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;
シグナルペプチド;
8xHisタグ及び/又はStrep IIタグ;並びに
foldonドメイン
を含む、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子。
【請求項20】
前記hMPVがA株又はB株である、請求項1~19のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項21】
前記hMPVが、A1サブタイプ、A2サブタイプ、B1サブタイプ、又はB2サブタイプである、請求項1~20のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項22】
前記融合前Fポリペプチドが、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を含むか、又は配列番号3を含む、請求項1~21のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項23】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はこれをコードする核酸分子であって、前記Fポリペプチドが、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はこれをコードする核酸分子。
【請求項24】
前記Fポリペプチドが融合前Fポリペプチドである、請求項23に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項25】
前記Fポリペプチドが、抗原性である、請求項23に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項26】
アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160F、及びアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46Vを含む、請求項23に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項27】
前記Fポリペプチドが、配列番号7を含む、請求項23に記載のFポリペプチド又は核酸分子。
【請求項28】
請求項23~27のいずれか一項に記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
【請求項29】
配列番号8と少なくとも95%の配列同一性を有するか、又は配列番号8を含む、請求項28に記載の核酸分子。
【請求項30】
配列番号18若しくは配列番号19と少なくとも95%の配列同一性を有するか、又は配列番号18若しくは配列番号19を含む、請求項28に記載の核酸分子。
【請求項31】
請求項23~27のいずれか一項に記載のFポリペプチド又はそれをコードする核酸分子、又は請求項28~30のいずれか一項に記載の核酸分子を含む、医薬組成物。
【請求項32】
ワクチンを含む、請求項31に記載の医薬組成物。
【請求項33】
請求項1~27のいずれか一項に記載のFポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)。
【請求項34】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)であって、前記hMPV Fポリペプチド抗原が、配列番号11と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号11のアミノ酸配列からなる、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)。
【請求項35】
前記hMPV Fポリペプチド抗原が、融合前Fポリペプチドである、請求項33又は34に記載のmRNA。
【請求項36】
前記ORFがコドン最適化されている、請求項33~35のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項37】
前記mRNAが、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)及び少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列を含む、請求項33~36のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項38】
前記mRNAが、少なくとも1つの化学修飾を含む、請求項33~37のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項39】
前記mRNA中のウラシルヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%が、化学修飾される、請求項33~38のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項40】
前記ORF中のウラシルヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%が、化学修飾される、請求項33~39のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項41】
前記化学修飾が、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-l-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-l-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-l-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン及び2’-O-メチルウリジンからなる群から選択される、請求項37~39のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項42】
前記化学修飾が、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項41に記載のmRNA。
【請求項43】
前記化学修飾がN1-メチルシュードウリジンである、請求項41に記載のmRNA。
【請求項44】
前記mRNAが脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化されている、請求項33~43のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項45】
前記LNPが少なくとも一つのカチオン性脂質を含む、請求項44に記載のmRNA。
【請求項46】
前記カチオン性脂質が生分解性である、請求項45に記載のmRNA。
【請求項47】
前記カチオン性脂質が生分解性ではない、請求項45に記載のmRNA。
【請求項48】
前記カチオン性脂質が切断可能である、請求項45に記載のmRNA。
【請求項49】
前記カチオン性脂質が切断可能でない、請求項45に記載のmRNA。
【請求項50】
前記カチオン性脂質が、OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10及びGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14からなる群から選択される、請求項45に記載のmRNA。
【請求項51】
前記カチオン性脂質がcKK-E10である、請求項50[9]に記載のmRNA。
【請求項52】
前記カチオン性脂質が、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10である、請求項50に記載のmRNA。
【請求項53】
前記LNPが、ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート(PEG化)脂質、コレステロール系脂質及びヘルパー脂質を更に含む、請求項44~52のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項54】
前記LNPが、
35%~55%のモル比のカチオン性脂質、
0.25%~2.75%のモル比のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート(PEG化)脂質、
20%~45%のモル比のコレステロール系脂質、及び
5%~35%のモル比のヘルパー脂質
を含み、
前記モル比の全ては、前記LNPの総脂質含有量に対するものである、請求項44~52のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項55】
前記LNPが、
40%のモル比のカチオン性脂質、
1.5%のモル比のPEG化脂質、
28.5%のモル比のコレステロール系脂質、及び
30%のモル比のヘルパー脂質
を含む、請求項54に記載のmRNA。
【請求項56】
前記PEG化脂質が、ジミリストイル-PEG2000(DMG-PEG2000)又は2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)である、請求項53~55のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項57】
前記コレステロール系脂質がコレステロールである、請求項53~55のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項58】
前記ヘルパー脂質が、1,2-ジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である、請求項53~55のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項59】
前記LNPが、
40%のモル比のGL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10、
1.5%のモル比のDMG-PEG2000、
28.5%のモル比のコレステロール、及び
30%のモル比のDOPE
を含む、請求項45~55のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項60】
前記LNPが、
40%のモル比のcKK-E10、
1.5%のモル比のDMG-PEG2000、
28.5%のモル比のコレステロール、及び
30%のモル比のDOPE
を含む、請求項45~55のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項61】
前記LNPが30nm~200nmの平均直径を有する、請求項44~60[9]のいずれか一項に記載のmRNA。
【請求項62】
前記LNPが80nm~150nmの平均直径を有する、請求項61に記載のmRNA。
【請求項63】
請求項33~62のいずれか一項に記載のmRNAを含む医薬組成物。
【請求項64】
ワクチンを含む、請求項63に記載の医薬組成物。
【請求項65】
請求項32又は64に記載のワクチンを対象に投与することを含む、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護する方法。
【請求項66】
前記対象が、タンパク質hMPVワクチンを投与された対象と比較して、前記ワクチンの投与後にhMPVに対する中和抗体の同等の血清濃度を有する、請求項65に記載の方法。
【請求項67】
前記タンパク質hMPVワクチンがアジュバントと同時投与される、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記ワクチンが、既存のhMPV免疫を有する対象において中和抗体の血清濃度を増加させる、請求項65に記載の方法。
【請求項69】
請求項32又は64に記載のワクチンを対象に投与することを含む、hMPVに対する免疫応答を誘発すること、又はhMPV感染から対象を保護することにおいて使用するためのワクチン。
【請求項70】
hMPVに対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染から対象を保護するための医薬品の製造における、請求項32又は64に記載のワクチンの使用。
【請求項71】
免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、前記対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量の請求項1~27のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量の請求項33~62のいずれか一項に記載のmRNA、又は予防有効量の請求項32、64、及び69のいずれか一項に記載のワクチンを投与することを含む、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法。
【請求項72】
hMPV感染を予防する、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、前記対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量の請求項1~27のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量の請求項33~62のいずれか一項に記載のmRNA、又は予防有効量の請求項32、64、及び69のいずれか一項に記載のワクチンを投与することを含む、hMPV感染を予防する、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法。
【請求項73】
請求項1~27のいずれか一項に記載のFポリペプチド若しくは核酸分子、請求項33~62のいずれか一項に記載のmRNAの予防有効量、又は請求項32、64、及び69のいずれか一項に記載のワクチンの、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のための、任意選択的に請求項71又は72に記載の方法における、使用。
【請求項74】
治療を必要とする対象を治療する際に、任意選択的に請求項71又は72に記載の方法における、使用のための、請求項1~27のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子、請求項33~62のいずれか一項に記載のmRNAの予防有効量、又は請求項32、64及び69のいずれか一項に記載のワクチン。
【請求項75】
請求項1~27のいずれか一項に記載のFポリペプチド又は核酸分子の単回使用用量又は複数回使用用量、請求項33~62のいずれか一項に記載のmRNAの予防有効量、又は請求項32、64若しくは69のいずれか一項に記載のワクチンを含む容器を含むキットであって、任意選択で、前記容器がバイアル又は充填済シリンジ若しくは注射器である、キット。
【請求項76】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原又はこれをコードする核酸分子を含むワクチンであって、前記Fポリペプチドが、配列番号7と少なくとも95%の同一性を有するか、又は配列番号7のアミノ酸配列からなるアミノ酸配列を含む、ワクチン。
【請求項77】
前記hMPV Fポリペプチドが、融合前Fポリペプチドである、請求項76に記載のワクチン。
【請求項78】
請求項76又は77に記載のワクチンを対象に投与することを含む、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護する方法。
【請求項79】
前記ワクチンがアジュバントと同時投与される、請求項77に記載の方法。
【請求項80】
前記ワクチンが追加のワクチンと組み合わせて投与される、請求項78又は79に記載の方法。
【請求項81】
前記追加のワクチンが呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン又はインフルエンザワクチンである、請求項80に記載の方法。
【請求項82】
前記対象がヒトである、請求項78~81のいずれか一項に記載の方法。
【請求項83】
前記ヒト対象が乳児、幼児又は高齢成人である、請求項82に記載の方法。
【請求項84】
前記ワクチンが中和抗体の血清濃度を増加させ、前記対象が既存のhMPV免疫を有する、請求項78~83のいずれか一項に記載の方法。
【請求項85】
請求項76又は77に記載のワクチンを対象に投与することを含む、hMPVに対する免疫応答を誘発すること、又はhMPV感染から対象を保護することにおいて使用するためのワクチン。
【請求項86】
hMPVに対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染から対象を保護するための医薬品の製造における、請求項76又は77に記載のワクチンの使用。
【請求項87】
免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、前記対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下又は皮内に、予防有効量の請求項76又は77に記載のワクチンを投与することを含む、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法。
【請求項88】
hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、前記対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量の請求項76又は77に記載のワクチンを投与することを含む、hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法。
【請求項89】
任意選択的に請求項87又は88に記載の方法において、治療を必要とする対象を治療する際に使用するための医薬品を製造するための、請求項76又は77に記載のワクチンの使用。
【請求項90】
任意選択的に請求項87又は88に記載の方法において、治療を必要とする対象の治療に使用するための、請求項76又は77に記載のワクチン。
【請求項91】
請求項76又は77に記載のワクチンの単回使用用量又は複数回使用用量を含む容器を含むキットであって、任意選択で、前記容器がバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である、キット。
【請求項92】
請求項1~27のいずれか一項に記載のFポリペプチド若しくは核酸分子、又は請求項33~62のいずれか一項に記載のmRNAをコードする発現ベクター。
【請求項93】
請求項92に記載の発現ベクターを含む細胞。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、2021年11月30日に出願された米国仮出願第63/284,405号の利益を主張し、その全体があらゆる目的のために参照により組み込まれる。
【0002】
CRADA宣言
本発明は、保健福祉省の機関である国立衛生研究所との共同研究開発契約の履行において創出された。米国政府は、本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、特に小児、免疫無防備状態の患者、及び高齢者における急性呼吸器感染の主な原因である。トリメタニューモウイルスサブタイプCと密接に関連しているhMPVは、少なくとも65年間循環しており、ほぼ全ての子供が5歳までにhMPVに感染する。しかしながら、免疫は不完全であり、再感染は成人期を通して起こる。症状は、軽度(例えば、咳、鼻漏及び発熱)から重度(例えば、細気管支炎及び肺炎)に及ぶ、他の呼吸器ウイルス感染症の症状と同様である。
【0004】
現在、高い疾患負荷にもかかわらず、hMPVに対する認可されたワクチン又は治療薬はない。利用可能な有効なhMPVワクチン又は治療薬が不足しているため、hMPV感染の強力な中和のために強い免疫応答を誘発するhMPVワクチンが必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
一態様では、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子が提供され、当該融合前Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位を含む。
【0006】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異を更に含む。
【0007】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドはシグナルペプチドを含む。
【0008】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、ポリヒスチジンタグ(例えば、6xHisタグ、8xHisタグ等)及び/又はStrep IIタグであってもよい少なくとも1つのタグ配列を含む。
【0009】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、foldonドメインを含む。
【0010】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号1の位置160の野生型アミノ酸を置換するアミノ酸置換、及び配列番号1の位置46の野生型アミノ酸を置換するアミノ酸置換を含む。
【0011】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置160でトレオニンを置換するアミノ酸置換、及び配列番号1のアミノ酸位置46でアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む。
【0012】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置160のアミノ酸をフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン、又はロイシンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置160のアミノ酸をフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換を含む。
【0013】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置46のアミノ酸をバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン、又はプロリンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、位置46のアミノ酸をバリンで置換するアミノ酸置換を含む。
【0014】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVは、A株又はB株である。ある種の例示的な実施形態では、hMPVは、A1サブタイプ、A2サブタイプ、B1サブタイプ又はB2サブタイプである。
【0015】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を含むか、又は配列番号3を含む。
【0016】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)が提供される。
【0017】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0018】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0019】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0020】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するために提供される。
【0021】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子の単回使用用量又は複数回使用用量、予防有効量のmRNA、又はワクチンを含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0022】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド、核酸分子、又はmRNAをコードする発現ベクターが提供される。
【0023】
ある種の例示的な実施形態では、発現ベクターを含む細胞が提供される。
【0024】
別の態様では、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子が提供され、当該融合前Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、及び配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異;ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;異種シグナルペプチド;ポリヒスチジンタグ(例えば、6xHisタグ、8xHisタグ等)及び/又はStrep IIタグ;並びにfoldonドメインを含む。
【0025】
別の態様では、抗原性ヒト融合前メタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子が提供され、当該融合前Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンを置換するアミノ酸置換及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンを置換するアミノ酸置換を含む。
【0026】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニン、トリプトファン、又はチロシンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160Fを含む。
【0027】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、アミノ酸位置46のアスパラギンをバリン、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、又はプロリンで置換するアミノ酸置換を含む。ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、アミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46Vを含む。
【0028】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む。
【0029】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異を更に含む。
【0030】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドはシグナルペプチドを含む。
【0031】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、ポリヒスチジンタグ(例えば、6xHisタグ、8xHisタグ等)及び/又はStrep IIタグであってもよい少なくとも1つのタグ配列を含む。
【0032】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、foldonドメインを含む。
【0033】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVは、A株又はB株である。ある種の例示的な実施形態では、hMPVは、A1サブタイプ、A2サブタイプ、B1サブタイプ又はB2サブタイプである。
【0034】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を含むか、又は配列番号3を含む。
【0035】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)が提供される。
【0036】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0037】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0038】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0039】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するために提供される。
【0040】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子の単回使用用量又は複数回使用用量、予防有効量のmRNA、又はワクチンを含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0041】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド、核酸分子、又はmRNAをコードする発現ベクターが提供される。
【0042】
ある種の例示的な実施形態では、発現ベクターを含む細胞が提供される。
【0043】
別の態様では、抗原性ヒトメタニューモウイルス(hMPV)融合前Fポリペプチド、又はそれをコードする核酸分子が提供され、当該融合前Fポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、配列番号1のアミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンに置換するアミノ酸置換T160F、及び配列番号1のアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンに置換するアミノ酸置換N46V;配列番号1のアミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンに置換し、及び配列番号1のアミノ酸位置101のセリンをアルギニンに置換する、アミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異;ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;シグナルペプチド;ポリヒスチジンタグ(例えば、6xHisタグ、8xHisタグ等)及び/又はStrep IIタグ;並びにfoldonドメインを含む。
【0044】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVは、A株又はB株である。ある種の例示的な実施形態では、hMPVは、A1サブタイプ、A2サブタイプ、B1サブタイプ又はB2サブタイプである。
【0045】
ある種の例示的な実施形態では、当該融合前Fポリペプチドは、配列番号3と少なくとも95%の配列同一性を含むか、又は配列番号3を含む。
【0046】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)が提供される。
【0047】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0048】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0049】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0050】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するために提供される。
【0051】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子の単回使用用量又は複数回使用用量、予防有効量のmRNA、又はワクチンを含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0052】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド、核酸分子、又はmRNAをコードする発現ベクターが提供される。
【0053】
ある種の例示的な実施形態では、発現ベクターを含む細胞が提供される。
【0054】
別の態様では、配列番号7と少なくとも95%の配列同一性を含む、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド、又はこれをコードする核酸分子が提供される。
【0055】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは、融合前Fポリペプチドである。
【0056】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは抗原性である。
【0057】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは、アミノ酸位置160のトレオニンをフェニルアラニンで置換するアミノ酸置換T160F、及びアミノ酸位置46のアスパラギンをバリンで置換するアミノ酸置換N46Vを含む。
【0058】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドは配列番号7を含む。
【0059】
ある種の例示的な実施形態では、上記態様又は上記実施形態のいずれかのポリペプチドのいずれかをコードする核酸分子が提供される。ある種の例示的な実施形態では、核酸分子は、配列番号8と少なくとも95%の配列同一性を有する。ある種の例示的な実施形態では、核酸分子は配列番号8を含む。ある種の例示的な実施形態では、核酸分子は、配列番号18と少なくとも95%の配列同一性を有する。ある種の例示的な実施形態では、核酸分子は配列番号18を含む。ある種の例示的な実施形態では、核酸分子は、配列番号19と少なくとも95%の配列同一性を有する。ある種の例示的な実施形態では、核酸分子は配列番号19を含む。
【0060】
ある種の例示的な実施形態では、上記の実施形態のポリペプチドのいずれか、又はそれをコードする核酸分子のいずれかを含む医薬組成物が提供される。ある種の例示的な実施形態では、医薬組成物はワクチンである。
【0061】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護する方法であって、ワクチンを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0062】
ある種の例示的な実施形態では、対象は、タンパク質hMPVワクチンを投与された対象と比較して、ワクチンの投与後にhMPVに対する中和抗体の同等の血清濃度を有する。ある種の例示的な実施形態では、タンパク質hMPVワクチンは、アジュバントと同時投与される。
【0063】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは、既存のhMPV免疫を有する対象において中和抗体の血清濃度を増加させる。
【0064】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護するのに使用するためのワクチンが提供され、ワクチンを対象に投与することを含む。
【0065】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染から対象を保護するための医薬品の製造におけるワクチンの使用が提供される。
【0066】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチドをコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)が提供される。
【0067】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0068】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0069】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0070】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するために提供される。
【0071】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子の単回使用用量又は複数回使用用量、予防有効量のmRNA、又はワクチンを含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0072】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド、核酸分子、又はmRNAをコードする発現ベクターが提供される。
【0073】
ある種の例示的な実施形態では、発現ベクターを含む細胞が提供される。
【0074】
別の態様では、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)を含むメッセンジャーRNA(mRNA)が提供され、ここで、hMPV Fポリペプチド抗原は、配列番号11と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号11のアミノ酸配列からなる。
【0075】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV Fポリペプチド抗原は、融合前Fポリペプチドである。
【0076】
ある種の例示的な実施形態では、ORFはコドン最適化されている。
【0077】
ある種の例示的な実施形態では、mRNAは、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)及び少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列を含む。
【0078】
ある種の例示的な実施形態では、mRNAは、少なくとも1つの化学修飾を含む。
【0079】
ある種の例示的な実施形態では、mRNA中のウラシルヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%が化学修飾される。
【0080】
ある種の例示的な実施形態では、ORF中のウラシルヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%が化学修飾される。
【0081】
ある種の例示的な実施形態では、化学修飾は、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-l-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-l-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-l-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン及び2’-O-メチルウリジンからなる群から選択される。ある種の例示的な実施形態では、化学修飾は、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン及びそれらの組合せからなる群から選択される。ある種の例示的な実施形態では、化学修飾は、N1-メチルシュードウリジンである。
【0082】
ある種の例示的な実施形態では、mRNAは、脂質ナノ粒子(LNP)に製剤化される。
【0083】
ある種の例示的な実施形態では、LNPは、少なくとも1つのカチオン性脂質を含む。ある種の例示的な実施形態では、カチオン性脂質は生分解性である。ある種の例示的な実施形態では、カチオン性脂質は、生分解性ではない。ある種の例示的な実施形態では、カチオン性脂質は、切断可能である。ある種の例示的な実施形態では、カチオン性脂質は切断可能ではない。
【0084】
ある種の例示的な実施形態では、カチオン性脂質は、OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10及びGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14からなる群から選択される。ある種の例示的な実施形態では、カチオン性脂質は、cKK-E10である。ある種の例示的な実施形態では、カチオン性脂質は、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10である。
【0085】
ある種の例示的な実施形態では、LNPは、ポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート(PEG化)脂質、コレステロール系脂質及びヘルパー脂質を更に含む。
【0086】
ある種の例示的な実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のカチオン性脂質;0.25%~2.75%のモル比のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート(PEG化)脂質;20%~45%のモル比のコレステロール系脂質;及び5%~35%のモル比のヘルパー脂質を含み、全てのモル比は、LNPの総脂質含有量に対するものである。
【0087】
ある種の例示的な実施形態では、LNPは、40%のモル比のカチオン性脂質、1.5%のモル比のPEG化脂質、28.5%のモル比のコレステロール系脂質及び30%のモル比のヘルパー脂質を含む。
【0088】
ある種の例示的な実施形態では、PEG化脂質は、ジミリストイル-PEG2000(DMG-PEG2000)又は2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)である。
【0089】
ある種の例示的な実施形態では、コレステロール系脂質は、コレステロールである。
【0090】
ある種の例示的な実施形態では、ヘルパー脂質は、1,2-ジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)又は1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)である。
【0091】
ある種の例示的な実施形態では、LNPは、40%のモル比のGL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10、1.5%のモル比のDMG-PEG2000、28.5%のモル比のコレステロール及び30%のモル比のDOPEを含む。
【0092】
ある種の例示的な実施形態では、LNPは、40%のモル比のcKK-E10、1.5%のモル比のDMG-PEG2000、28.5%のモル比のコレステロール及び30%のモル比のDOPEを含む。
【0093】
ある種の例示的な実施形態では、LNPは、30nm~200nmの平均直径を有する。ある種の例示的な実施形態では、LNPは、80nm~150nmの平均直径を有する。
【0094】
ある種の例示的な実施形態では、mRNAを含む医薬組成物が提供される。ある種の例示的な実施形態では、医薬組成物はワクチンを含む。
【0095】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護する方法であって、ワクチンを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0096】
ある種の例示的な実施形態では、対象は、タンパク質hMPVワクチンを投与された対象と比較して、ワクチンの投与後にhMPVに対する中和抗体の同等の血清濃度を有する。ある種の例示的な実施形態では、タンパク質hMPVワクチンは、アジュバントと同時投与される。
【0097】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは、既存のhMPV免疫を有する対象において中和抗体の血清濃度を増加させる。
【0098】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護するのに使用するためのワクチンが提供され、ワクチンを対象に投与することを含む。
【0099】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染から対象を保護するための医薬品の製造におけるワクチンの使用が提供される。
【0100】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0101】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のFポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又は予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0102】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンの使用は、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品の製造のために提供される。
【0103】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子、予防有効量のmRNA、又はワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するために提供される。
【0104】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド又は核酸分子の単回使用用量又は複数回使用用量、予防有効量のmRNA、又はワクチンを含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0105】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド、核酸分子、又はmRNAをコードする発現ベクターが提供される。
【0106】
ある種の例示的な実施形態では、発現ベクターを含む細胞が提供される。
【0107】
別の態様では、ヒトメタニューモウイルス(hMPV)Fポリペプチド抗原又はこれをコードする核酸分子を含むワクチンが提供され、ここでFポリペプチドは、配列番号7と少なくとも95%の同一性を有するアミノ酸配列を含むか、又は配列番号7のアミノ酸配列からなる。
【0108】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、融合前Fポリペプチドである。
【0109】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護する方法であって、ワクチンを対象に投与することを含む方法が提供される。
【0110】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンはアジュバントと同時投与される。ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは、追加のワクチンと組み合わせて投与される。ある種の例示的な実施形態では、追加のワクチンは、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)ワクチン又はインフルエンザワクチンである。
【0111】
ある種の例示的な実施形態では、対象はヒトである。ある種の例示的な実施形態では、ヒト対象は、乳児、幼児、又は高齢者である。
【0112】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは中和抗体の血清濃度を増加させ、対象は既存のhMPV免疫を有する。
【0113】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するか、又はhMPV感染から対象を保護するのに使用するためのワクチンが提供され、ワクチンを対象に投与することを含む。
【0114】
ある種の例示的な実施形態では、hMPVに対する免疫応答を誘発するため、又はhMPV感染から対象を保護するための医薬品の製造におけるワクチンの使用が提供される。
【0115】
ある種の例示的な実施形態では、免疫応答の誘発を必要とする対象において免疫応答を誘発する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0116】
ある種の例示的な実施形態では、hMPV感染を予防するか、又はhMPV感染の1つ以上の症状を軽減する方法であって、対象に、任意選択的に筋肉内、鼻腔内、静脈内、皮下、又は皮内に、予防有効量のワクチンを投与することを含む方法が提供される。
【0117】
ある種の例示的な実施形態では、治療を必要とする対象の治療に使用するための医薬品を製造するためのワクチンの使用が提供される。
【0118】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンは、治療を必要とする対象の治療に使用するために提供される。
【0119】
ある種の例示的な実施形態では、ワクチンの単回使用用量又は複数回使用用量を含む容器を含むキットが提供され、任意選択的に容器はバイアル又は充填済シリンジ又は注射器である。
【0120】
ある種の例示的な実施形態では、Fポリペプチド、核酸分子、又はmRNAをコードする発現ベクターが提供される。
【0121】
ある種の例示的な実施形態では、発現ベクターを含む細胞が提供される。
【0122】
本開示の上記及び他の特徴及び利点は、添付の図面と併せて、例示的な実施形態の以下の詳細な説明からより詳細に理解されるであろう。この特許又は出願ファイルは、カラーで作成された少なくとも1つの図面を含む。カラー図面を伴うこの特許又は特許出願公開の写しは、請求及び必要な料金の支払いに応じて特許庁によって提供される。
【図面の簡単な説明】
【0123】
【
図1】2つの例示的な構築物、D185P及びT160_N46Vとして示される21個の候補hMPV融合前F抗原のパネルの設計上の考慮事項を示す図である。構築物D185Pは、様々な新規構築物の活性を測定するためのベンチマーク参照として使用される。「(mut)」=網掛けの「ENPRRRR」アミノ酸配列及び網掛けの「P」、網掛けの「V」及び網掛けの「F」単一のアミノ酸;「リンカー」=太字、下線付きの「GGGGS」、「GRS」及び「G」アミノ酸配列;「foldon」=下線付き「GYIPEAPRDGQAYVRKDGEWVLLSTFL」アミノ酸配列;「8xHIS」=網掛けの「HHHHHHHH」アミノ酸配列;「StrepII」=網掛けの「SAWSHPQFEK」配列。
【
図2】0日目、21日目及び35日目に測定された4つのhMPV融合前F抗原タンパク質構築物に対するマウスIgG抗体価を示す(各時点で左から右に順に列挙したデータ点は以下の通りである):(1)A2-F D185P、(2)A2-F T160F_N46V、(3)A2-F K138F、及び(4)A2-F G366F_K362F、並びに対照:hMPV(5)A1-F pre-Fロット1、(6)A1-F pre-Fロット2、(7)A1-F postF、及び(8)B2 pre-F。
【
図3】4つのhMPV融合前F抗原タンパク質構築物に対して21日目及び35日目に測定されたマウスhMPVマイクロ中和抗体価を示す図である。(1)A2-F D185P、(2)A2-F T160F_N46V、(3)A2-F K138F、及び(4)A2-F G366F_K362F並びに対照:hMPV(5)A1 pre-Fロット1、(6)A1 pre-Fロット2、(7)A1 postF、及び(8)B2 pre-F。
【
図4】参照A1タンパク質、A1-A185P及びA1-postF並びにA2タンパク質抗原候補、A2-T160F_N46V及びA2-D185PについてのSEC-MALS結果を示す図である。
【
図5】nanoDSFによって測定されたA1-pre-F及びA1-post-Fについての[蛍光発光330及び350nmでの]代表的な融解曲線(上のパネル)、平滑化された一次導関数曲線(中央のパネル)、及び光散乱[mAU](下のパネル)を示す図である。
【
図6】nanoDSFによって測定された、A2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物に由来するタンパク質試料についての[蛍光発光330及び350nmでの]代表的な融解曲線(上のパネル)並びに平滑化された一次導関数曲線(中央のパネル)及び光散乱[mAU](下のパネル)を示す図である。
【
図7】0日目、21日目及び35日目に測定されたLNPと製剤化されたhMPV融合前F mRNA構築物、A2-D185P又はA2-T160F_N46Vのいずれかの投与時のマウスhMPV F抗原IgG抗体価を示す図である。
【
図8】0日目、21日目及び35日目に測定されたLNPと製剤化されたhMPV融合前F mRNA構築物、A2-D185P又はA2-T160F_N46Vのいずれかの投与時のマウスhMPVマイクロ中和抗体価を示す図である。
【
図9】結合抗原としてRSV-pre-Fタンパク質使用してエンドポイントELISAによって測定され、ウサギ抗マウスIgGで検出される、(1)RSV F mRNA、(2)RSV-F+hMPV-F mRNA;又は(3)RSVタンパク質をワクチン接種したマウスにおける抗RSV-F抗体価を示す図である。個々の動物(n=8)からの読み取り値を、平均+/-95%信頼区間でlog2変換された力価としてD35時点について示す。
【
図10】hMPV-pre-Fタンパク質を結合抗原として使用するエンドポイントELISAによって測定され、ヤギ抗マウスIgGで検出される、(1)hMPV F mRNA、(2)RSV-F+hMPV-F mRNA、又は(3)hMPVタンパク質をワクチン接種したマウスにおける抗hMPV-F抗体価を示す図である。個々の動物(n=8)からの読み取り値を、平均+/-95%信頼区間でlog2変換された力価としてD35時点について示す。
【
図11】Vero細胞の96ウェルプレート上でワクチン接種マウスの連続希釈血清と混合したRSV A2-GFP株を使用するマイクロ中和アッセイによって測定される、(1)RSV F mRNA、(2)RSV-F+hMPV-F mRNA、又は(3)RSVタンパク質をワクチン接種したマウスにおけるRSV中和抗体価を示す図である。力価を、24時間のインキュベーション後の蛍光フォーカスの逆減少を計算することによって決定した。個々の動物(n=8)からの読み取り値を、平均+/-95%信頼区間でlog2変換された力価としてD35時点について示す。
【
図12】Vero細胞の96ウェルプレート上でワクチン接種マウスの連続希釈血清と混合したhMPV A2-GFP株を使用するマイクロ中和アッセイによって測定される、(1)hMPV F mRNA、(2)RSV-F+hMPV-F mRNA、又は(3)hMPVタンパク質をワクチン接種したマウスにおけるhMPV中和抗体価を示す図である。力価を、24時間のインキュベーション後の蛍光フォーカスの逆減少を計算することによって決定した。個々の動物(n=8)からの読み取り値を、平均+/-95%信頼区間でlog2変換された力価としてD35時点について示す。
【
図13】1μgのmRNAでトランスフェクトした30万細胞/ウェルを使用した、D185P及びT160_N46VについてのhMPV Fタンパク質発現レベルの免疫ブロットを示す図である。
【
図14】pre-F抗体(パネルA)、post-F抗体(パネルB)又はpre-F/post-F抗体(パネルC)を使用して野生型HMPV F、D185P又はT160F_N46Vでトランスフェクトした細胞におけるエピトープ発現を示す図である。パネルA、B及びCのそれぞれにおいて、上のラインは、MNR hMPV T160F_N46Vに対応し、中央のラインは、MNR hMPV CAN97-83に対応し、下のラインは、MNR hMPV D185Pに対応する。
【
図15】24人のドナーにおける2つのhMPV候補の免疫原性を評価するためのhMPV MIMIC設定を示す図である。
【
図16】3つのポリオ株-ポリオ1(パネルA)、ポリオ2(パネルB)及びポリオ3(パネルC)に対して1:50希釈のIPOL(ポリオワクチン)又は未処理対照(処理なし、及び共培養中のヒト骨格筋細胞なし「抗原なし(HSKを含まない)」)のいずれかで処理したMIMIC共培養物の上清から回収された14日目に測定されたヒトIgG抗体価を示す図である。
【
図17】RSV pre-F(パネルA)及びRSV post-F(パネルC)に対する50ng/mlのRSV pre-F NP(フェリチンナノ粒子に融合したRSV pre-Fタンパク質)処理で処理したMIMIC共培養物の上清から回収した14日目に測定されたヒトIgG抗体価を示す図である。パネルCは、RSV中和アッセイで測定した場合に抗体が機能的であるかどうかを示す。
【
図18】pre-F(パネルA)及びpost-F(パネルB)抗体応答をグラフで示す図である。N=22;データは、幾何平均で95%C.I.として示されている。
【
図19】pre-F中和抗体価及びpost-F中和抗体価をグラフで示す図である。N=22;データは、幾何平均で95%C.I.として示されている。
【
図20】実験群-hMPV pre-Fタンパク質(100ng/ml又は500ng/ml)又はhMPV postF抗原タンパク質(100ng/ml)又は対照群-HSKを含まない抗原なし、RSV pre-F NP、又はhMPV pre-F(パネルA)又はhMPV post-F抗原に対するIPOL(パネルB)で処理したMIMIC共培養の上清から回収した14日目に測定したヒトIgG抗体価を示す図である。
【
図21】hMPV pre-Fタンパク質(100ng/ml又は500ng/ml)、hMPV postF抗原タンパク質(100ng/ml)、又はHSKを含まない抗原なしで処理したMIMIC共培養物の回収上清を使用して14日目に測定されたhMPVマイクロ中和抗体価を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0124】
本開示は、とりわけ、抗原性融合前hMPV Fポリペプチド、抗原性融合前hMPV Fポリペプチドをコードする核酸配列(例えば、RNA配列、例えばmRNA配列)、抗原性融合前hMPV Fポリペプチドを含む組成物、抗原性融合前hMPV Fポリペプチドをコードする核酸配列を含む組成物、及びhMPVワクチンに関する。
【0125】
I.定義
別途本明細書で定義されない限り、本発明に関連して使用される科学用語及び技術用語は、当業者によって一般に理解される意味を有するものとする。例示的な方法及び材料を下記で説明するが、本明細書で説明されているものと類似の又は均等な方法及び材料も本発明の実施又は試験で使用され得る。不一致の場合、定義を含む、本明細書が優先される。一般に、本明細書に記載される細胞及び組織培養、分子生物学、ウイルス学、免疫学、微生物学、遺伝学、分析化学、合成有機化学、医薬品及び医薬化学、タンパク質及び核酸化学並びにハイブリダイゼーションに関連して使用される命名法及び技術は、当技術分野で周知であり、一般に使用されるものである。酵素反応及び精製技術は、当技術分野で一般的に遂行されるように又は本明細書で説明されているように、製造者の仕様に従って実施される。更に、特に文脈によって要求されない限り、単数用語は、複数を含むものとし、複数用語は単数を含むものとする。この明細書及び実施形態の全体にわたって、語「有する(have)」及び「含む(comprise)」、又は「有する(has)」、「有する(having)」、「含む(comprises)」、若しくは「含む(comprising)」等の変形は、述べられる整数又は整数の群の包含を暗示するが、いかなる他の整数又は整数の群の排除も暗示しないことが理解される。本明細書で言及される全ての刊行物及び他の参考文献は、その全体が参照により組み込まれる。多数の公文書が本明細書に引用されているが、この引用は、これらの公文書のいずれもが当技術分野における共通の一般知識の部分を形成することの承認を構成しない。
【0126】
用語「1つ(a)の」又は「1つ(an)の」存在物は、その存在物の1つ以上を指す;例えば、「ヌクレオチド(a nucleotide)配列」は、1つ以上のヌクレオチド配列を表すことが理解される。したがって、用語「a」(又は「an」)、「1つ以上」、及び「少なくとも1つ」は、本明細書では同じ意味で用いることができる。
【0127】
更に、「及び/又は」は、本明細書で用いられる場合、他のものあり又はなしで2つの明記される特徴又は成分のそれぞれの具体的な開示と見なされるべきである。したがって、「A及び/又はB」等の語句に用いられるような用語「及び/又は」は、本明細書では、「A及びB」、「A又はB」、「A」(単独)、並びに「B」(単独)を含むことを意図する。同様に、「A、B、及び/又はC」等の語句に用いられるような用語「及び/又は」は、以下の態様:A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);並びにC(単独)のそれぞれを包含することを意図している。
【0128】
態様が言語「含む(comprising)」で本明細書において記載される場合はいつでも、さもなければ「からなる(consisting of)」及び/又は「から本質的になる(consisting essentially of)」という用語で記載される類似の態様がまた提供されることが理解される。
【0129】
他に定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本開示が関連する当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。例えばthe Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed.,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed.,1999,Academic Press;及びthe Oxford Dictionary of Biochemistry and Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Pressは、本開示で使用される多くの用語の一般的な辞書を当業者に提供することができる。
【0130】
単位、接頭辞及び記号は、国際単位系(SI)で認められている形式で示されている。数値範囲には、当該範囲を定義する数が含まれる。別段示されない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシへの配向で左から右に表記される。本明細書で提供される見出しは、本開示の様々な態様の限定ではない。したがって、以下ですぐ下に定義される用語は、その全体が本明細書を参照することによってより完全に定義される。
【0131】
「およそ」又は「約」という用語は、本明細書では、おおよそ、周囲、又は領域内を意味するために使用される。用語「約」が数値範囲と関連して用いられる場合、それは、示される数値よりも上に及び下に境界を広げることによってその範囲を修正する。一般に、用語「約」は、例えば、10パーセント、上に又は下に(より高い又はより低い)の、相違だけ、表示値よりも上に又は下に、数値を修正することができる。いくつかの実施形態では、この用語は、示された数値からの±10%、±5%、±4%、±3%、±2%、±1%、±0.9%、±0.8%、±0.7%、±0.6%、±0.5%、±0.4%、±0.3%、±0.2%、±0.1%、±0.05%又は±0.01%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±10%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±5%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±4%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±3%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±2%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±1%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.9%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.8%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.7%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.6%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.5%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.4%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.3%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.1%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.05%の偏差を示す。いくつかの実施形態では、「約」は、示された数値から±0.01%の偏差を示す。
【0132】
本明細書で使用される場合、「メッセンジャーRNA」又は「mRNA」という用語は、少なくとも1つのポリペプチドをコードするポリヌクレオチドを指す。mRNAは、本明細書中で使用される場合、修飾されたRNA及び修飾されていないRNAの両方を包含する。mRNAは、1つ以上のコード領域及び非コード領域を含有し得る。コード領域は、代替的にオープンリーディングフレーム(ORF)と呼ばれる。mRNAの非コード領域には、5’キャップ、5’非翻訳領域(UTR)、3’UTR及びポリ(A)尾部が含まれる。mRNAは、天然源から精製し、組換え発現系(例えば、インビトロ転写)を使用して産生させ、任意選択的に精製又は化学合成することができる。
【0133】
本明細書で使用される場合、「抗原部位φ」又は「部位φエピトープ」という用語は、hMPV F三量体の融合前形態に位置する部位を指す。部位φエピトープは、融合前hMPV Fに対する特異性を有する抗体に対する結合部位である。
【0134】
本明細書で使用される場合、「抗原部位V」又は「部位Vエピトープ」という用語は、hMPV F三量体の融合前形態に位置する部位を指す。部位Vエピトープは、融合前hMPV Fに対する特異性を有する抗体に対する結合部位である。
【0135】
本明細書で使用される場合、「抗原安定性」という用語は、経時的又は溶液中での抗原の安定性を指す。
【0136】
本明細書で使用される場合、「空洞充填置換」という用語は、融合前hMPV F三量体に存在する空洞を充填するための操作された疎水性置換を指す。
【0137】
本明細書で使用される場合、「Fタンパク質」又は「hMPV Fタンパク質」という用語は、ウイルス侵入中にウイルスエンベロープと宿主細胞膜との融合を媒介することに関与するhMPVのタンパク質を指す。Fタンパク質は、感染細胞と非感染細胞との間の融合を媒介して、多核細胞又は合胞体を形成し得る。
【0138】
本明細書で使用される場合、「hMPV Fポリペプチド」、「Fポリペプチド」、又は「Fポリペプチド抗原」という用語は、hMPV Fタンパク質の少なくとも1つのエピトープを含むポリペプチドを指す。
【0139】
本明細書で使用される場合、「膜貫通ドメイン」という用語は、hMPVビリオンの膜を横断するhMPV F0/F1のc末端付近の約23アミノ酸配列を指す。ある種の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列GFIIVIILIAVLGSSMILVSIFIIを含む。
【0140】
本明細書中で使用されるとき、用語「細胞質尾部」とは、ビリオンの内側に位置するhMPV F0/F1のc末端におけるおよそ25個のアミノ酸配列のことを指す。ある種の実施形態では、膜貫通ドメインは、配列番号1のアミノ酸配列IKKTKKPTGAPPELSGVTNNGFIPHNを含む。
【0141】
本明細書で使用される場合、「foldonドメイン」は、T4フィブリチンの三量化ドメインを指す。
【0142】
本明細書で使用される場合、「シグナルペプチド」又は「シグナル配列」は、小胞体及びゴルジ体内の分泌経路にポリペプチドを移行させるように機能するポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシ末端に存在する約16~30アミノ酸長のペプチドを指す。ある種の実施形態では、シグナル配列が、配列番号1、3、5及び7のいずれか1つのアミノ酸1~18に対応する。
【0143】
本明細書で使用される場合、「タグ配列」又は「アフィニティータグ」は、タグ配列を含むポリペプチド又はタンパク質を精製するために使用され得るポリペプチド配列を指す。タグ配列としては、例えば、ポリヒスチジンタグ(例えば、ヘキサヒスチジン(6xHisタグ)、オクタヒスチジン(8xHisタグ)等)、グルタチオンS-トランスフェラーゼ(GST)、FLAG、ストレプトアビジン結合ペプチド(SBP)、strep II、マルトース結合タンパク質(MBP)、カルモジュリン結合タンパク質(CBP)、キチン結合ドメイン(CBD)、RNase AのSタンパク質、ヘマグルチニン(HA)、c-Myc等が挙げられる。
【0144】
本明細書で使用される場合、「プロトマー内安定化置換」という用語は、hMPV F三量体のプロトマー内の相互作用を安定化することにより、融合前立体配座を安定化するhMPV Fのアミノ酸置換を指す。
【0145】
本明細書で使用される場合、「プロトマー間安定化置換」という用語は、hMPV F三量体のプロトマーの相互作用を安定化することにより、融合前立体配座を安定化するhMPV Fのアミノ酸置換を指す。
【0146】
本明細書で使用される場合、「プロテアーゼ切断」という用語は、ポリペプチド配列のプロテアーゼ切断部位での感受性残基(例えば、リジン又はアルギニン)のタンパク質分解(「クリッピング」と呼ばれることもある)を指す。プロテアーゼ切断部位には、ウイルスプロテアーゼ切断部位、例えば、hMPV F0プロテアーゼ切断部位、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)F0プロテアーゼ切断部位、及びヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位が含まれる。
【0147】
本明細書で使用される場合、hMPV Fに関する「融合後」という用語は、ウイルス及び宿主細胞膜の併合後に生じるhMPV Fの安定な立体配座を指す。
【0148】
本明細書で使用される場合、hMPV Fに関する「融合前」という用語は、ウイルス-細胞相互作用の前に採用されるhMPV Fの立体配座を指す。
【0149】
本明細書で使用される場合、「プロトマー」という用語は、オリゴマータンパク質の構造単位を指す。hMPV Fの場合、hMPV F三量体の個々の単位はプロトマーである。
【0150】
本明細書で使用される場合、「免疫応答」という用語は、B細胞、T細胞、樹状細胞、マクロファージ又は多形核球等の免疫系の細胞の、抗原又はワクチン等の刺激に対する反応を指す。免疫応答は、例えば、インターフェロン又はサイトカインを分泌する上皮細胞を含む、宿主防御反応に関与する身体のあらゆる細胞を含むことができる。免疫応答としては、自然免疫応答及び/又は適応免疫応答が挙げられるが限定されない。
【0151】
本明細書で使用される場合、「防御免疫応答」は、対象を感染から保護する(例えば、感染症を予防するか、又は感染症に関連する疾患の発症を予防する)免疫応答を指す。免疫応答を測定する方法には、例えば、リンパ球(B細胞又はT細胞等)の増殖及び/又は活性、サイトカイン又はケモカインの分泌、炎症、抗体産生等を測定することが含まれる。
【0152】
本明細書で使用される場合、「抗体応答」は、抗体が産生される免疫応答である。
【0153】
本明細書で使用される場合、「抗原」は、生物に曝露又は投与されたとき、免疫応答を誘発する薬剤及び/又はT細胞受容体(例えば、MHC分子によって提示された場合)若しくは抗体(例えば、B細胞によって産生された)に結合する薬剤を指す。いくつかの実施形態では、抗原は、生物において体液性応答(例えば、抗原特異的抗体の産生を含む)を誘発する。代わりに又は更に、いくつかの実施形態では、抗原は、生物において細胞応答(例えば、その受容体が抗原と特異的に相互作用するT細胞が関与する)を誘発する。特定の抗原は、標的生物の1つ又はいくつかのメンバー(例えば、マウス、ウサギ、霊長類、ヒト)において免疫応答を誘発し得るが、標的生物種の全てのメンバーにおいて免疫応答を誘発するわけではない。いくつかの実施形態では、抗原は、標的生物種のメンバーの少なくとも約25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%において免疫応答を誘発する。いくつかの実施形態では、抗原は、抗体及び/又はT細胞受容体に結合し、生物において特定の生理学的反応を誘導することもあれば又は誘導しないこともある。いくつかの実施形態では、例えば、抗原はインビトロで抗体及び/又はT細胞受容体に結合し得、これは、そのような相互作用がインビボで生じるか否かにかかわらない。いくつかの実施形態では、抗原は、特異的体液性免疫又は細胞性免疫の産物と反応する。抗原には、本明細書に記載のhMPVポリペプチドが含まれる。
【0154】
本明細書で使用される場合、「アジュバント」は、抗原に対する免疫応答を増強する物質又はビヒクルを指す。アジュバントとしては、限定されないが、抗原が吸着されたミネラル(例えば、ミョウバン、水酸化アルミニウム又はリン酸塩)の懸濁液;抗原溶液が鉱油又は水中で乳化されている油中水型又は水中油型エマルション(例えば、フロイントの不完全アジュバント)を挙げることができる。抗原性を更に高めるために、死滅したマイコバクテリアが含まれるときがある(例えば、フロイント完全アジュバント)。免疫刺激性オリゴヌクレオチド(CpGモチーフを含むもの等)もアジュバントとして使用することができる(例えば、米国特許第6,194,388号明細書;同第6,207,646号明細書;同第6,214,806号明細書;同第6,218,371号明細書;同第6,239,116号明細書;同第6,339,068号明細書;同第6,406,705号明細書;及び同第6,429,199号明細書を参照されたい)。アジュバントには、Toll様受容体(TLR)アゴニスト及び共刺激分子等の生物学的分子も含まれ得る。
【0155】
本明細書で使用される場合、「抗原性hMPVポリペプチド」は、分子がhMPVに対して抗原性であるのに十分な長さのhMPVアミノ酸配列の全部又は一部を含むポリペプチドを指す。
【0156】
本明細書で使用される場合、「対象」は、動物界の任意のメンバーを指す。いくつかの実施形態では、「対象」は、ヒトを指す。いくつかの実施形態では、「対象」は、非ヒト動物を指す。いくつかの実施形態では、対象は、哺乳動物、鳥類、爬虫類、両生類、魚類、昆虫類及び/又は蠕虫を含むが、これらに限定されない。ある種の実施形態では、非ヒト対象は、哺乳動物(例えば、げっ歯類、マウス、ラット、ウサギ、サル、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、霊長類及び/又はブタ)である。いくつかの実施形態では、対象は、トランスジェニック動物、遺伝子操作された動物及び/又はクローンであり得る。いくつかの実施形態では、「個体」又は「患者」という用語が使用され、「対象」と交換可能であることが意図される。
【0157】
いくつかの実施形態では、「対象」は、65歳以上の対象、18歳~64歳(18歳~65歳未満)の対象、12歳以上の対象、12歳~17歳(12歳~18歳未満)の対象、6歳~11歳(6歳~12歳未満)の対象、2歳~5歳(2歳~6歳未満)の対象、1歳~4歳(1歳~5歳未満)の対象、2ヶ月~1歳(2ヶ月~2歳未満)の対象及び0ヶ月~2ヶ月(0ヶ月~3ヶ月未満)の対象からなる群から選択される。
【0158】
いくつかの実施形態では、「対象」は、高齢者(例えば、高齢者又は高齢成人)、成人、青年、小児、幼児、及び乳児からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、「対象」は、60歳以上の高齢者、高齢者(例えば、65歳以上)、成人(例えば、18歳~50歳又は18歳~64歳)、12歳~17歳の青年(例えば、12歳~18歳未満)、6歳~11歳の子供(例えば、6歳~12歳未満)、2歳~5歳の子供(例えば、2歳~6歳未満)、1歳~4歳の幼児(例えば、1歳~5歳未満)、2ヶ月~1歳の乳児(例えば、2ヶ月~2歳未満)、新生児(例えば、0~27日齢)、及び早産児(例えば、37週未満の在胎期間)からなる群から選択される。いくつかの実施形態では、対象は、米国FDAによって定義される小児年齢群に属する。新生児(例えば、出産から1ヶ月未満まで(「NEO」);乳児(例えば、1ヶ月~2歳未満(「INF」));子供(例えば、2歳~12歳未満「CHI」);及び青年期(例えば、12歳~17歳未満(「ADO」))。いくつかの実施形態では、対象は、米国FDAによって65歳以上又は75歳以上として定義される年齢群の高齢成人である。特に例示的な実施形態では、対象は、乳児(例えば、1ヶ月~2歳未満)、幼児(例えば、1歳~5歳未満)又は高齢者(例えば、60歳以上、65歳以上、又は75歳以上)である。
【0159】
本明細書で使用される場合、「ワクチン接種」又は「ワクチン接種する」という用語は、例えば疾患を引き起こす作用因子に対する免疫応答を生成することを意図した組成物の投与を指す。ワクチン接種は、疾患を引き起こす作用因子への曝露前、その間及び/若しくはその後並びに/又は1つ以上の症状の発現前、その間及び/若しくは又はその後、いくつかの実施形態では疾患を引き起こす作用因子への曝露前、その間及び/又はその直後に行うことができる。いくつかの実施形態では、ワクチン接種は、ワクチン接種組成物の適切又は適切に間隔を置いた複数回投与を含む。
【0160】
本明細書で使用される場合、「治療薬」又は「治療剤」という用語は、hMPV感染の1つ以上の症状を軽減又は排除することを意図した組成物の投与を指す。治療剤は、hMPVへの曝露前、曝露中及び/若しくは曝露後、並びに/又は1つ以上の症状の発症前、発症中及び/若しくは発症後に投与することができる。いくつかの実施形態では、治療剤は、ワクチン接種組成物の適切に又は適切に間隔を空けた複数回投与として対象に投与される。
【0161】
本開示は、それぞれ所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して(例えば、参照配列に対して)ある程度の同一性を有する核酸配列(例えば、DNA及びRNA配列)及びアミノ酸配列を記載する。
【0162】
「%同一の」、「%同一性」という用語又は類似の用語は特に、比較しようとする配列間の最適なアライメントにおいて同一であるヌクレオチド又はアミノ酸のパーセンテージを指すことが意図される。2つの核酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるヌクレオチドのパーセンテージを示す。2つのアミノ酸配列間の「配列同一性」は、配列間で同一であるアミノ酸のパーセンテージを示す。当該パーセンテージは、純粋に統計的であり、2つの配列間の差異は、比較される配列の全長にわたってランダムに分布し得るが、必ずしもそのように分布している必要はない。2つの配列の比較は通常、対応する配列の局所領域を同定するために、最適なアライメント後に、セグメント又は「比較の窓」に関して、当該配列を比較することによって行われる。比較のための最適なアラインメントは、手動で又はSmith and Waterman,1981,Ads App.Math.2,482による局所相同性アルゴリズムを用いて、Needleman and Wunsch,1970,J.Mol.Biol.48,443による局所相同性アルゴリズムを用いて、Pearson and Lipman,1988,Proc.Natl Acad.Sci.USA 88,2444による類似性検索アルゴリズムを用いて又は当該アルゴリズムを使用するコンピュータプログラム(Wisconsin Genetics Software Package、Genetics Computer Group、575 Science Drive,Madison,Wis.のGAP、BESTFIT、FASTA、BLAST P、BLAST N及びTFASTA)を用いて行うことができる。
【0163】
同一性パーセンテージは、比較しようとする配列が対応する同一の位置の数を決定し、この数を比較する位置の数(例えば、参照配列における位置の数)で除し、この結果に100を乗ずることによって得られる。
【0164】
いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長の少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約70%、少なくとも約80%、少なくとも約90%又は約100%である領域について与えられる。例えば、参照核酸配列が200個のヌクレオチドからなる場合、同一性の程度は、少なくとも約100、少なくとも約120、少なくとも約140、少なくとも約160、少なくとも約180又は約200個のヌクレオチドについて、いくつかの実施形態では連続ヌクレオチドで、与えられる。いくつかの実施形態では、同一性の程度は、参照配列の全長について与えられる。
【0165】
それぞれ所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、当該所与の配列の少なくとも1つの機能的特性を有し得、例えばいくつかの例では当該所与の配列と機能的に均等である。いくつかの実施形態では、所与の核酸配列又はアミノ酸配列に対して特定の程度の同一性を有する核酸配列又はアミノ酸配列は、当該所与の配列と機能的に均等である。
【0166】
本明細書で使用される場合、「キット」という用語は、1つ以上の化合物又は組成物及び1つ以上の関連材料、例えば溶媒、溶液、緩衝液、使用説明書又は乾燥剤等の関連する成分のパッケージされたセットを指す。
【0167】
II.hMPV Fポリペプチド抗原
ヒトメタニューモウイルス(hMPV)は、パラミクソウイルスファミリー内のニューモウイルスサブファミリーに属するネガティブセンス一本鎖RNAウイルスである。hMPVは、鼻及び肺の気道上皮細胞に感染し、呼吸器合胞体ウイルス(RSV)に続いて、小児の下気道感染症の2番目に一般的な原因である。hMPVは、ビリオン表面に糖タンパク質(Gタンパク質)、低分子疎水性タンパク質(SHタンパク質)及び融合タンパク質(Fタンパク質)を有するエンベロープウイルスである。
【0168】
hMPVはエンベロープウイルスであるため、宿主細胞へのhMPVの侵入は、ウイルス膜と細胞膜との融合を必要とする。パラミクソウイルス侵入は、通常、2つのウイルス糖タンパク質、融合(F)及び付着(G、H、又はHN)タンパク質を必要とし、検査された全てのパラミクソウイルス糖タンパク質によって促進される膜融合は、1つの可能性としての例外を除いて、中性pHで起こる(すなわち、SERウイルス)。ウイルス-細胞膜融合に加えて、パラミクソウイルス糖タンパク質も細胞-細胞融合を促進する。シンシチウムと呼ばれる多核巨細胞は、様々なパラミクソウイルスに感染した組織に見られ得る。hMPVに感染した培養細胞はシンシチウムを形成するが、hMPVに感染した初代ヒト気道上皮細胞の検査は、このウイルスによるシンシチウム形成が一般的なインビボ発生ではない可能性があることを示唆している。
【0169】
hMPV Fは、融合適格性になるために切断される必要がある不活性前駆体(F0)として合成されるクラスI融合糖タンパク質である。タンパク質分解的切断は、ホモ三量体に集合する2つのジスルフィド結合サブユニット(F2のN末端からF1まで)を生成する。切断は、疎水性融合ペプチドのすぐ上流の一塩基性切断部位で起こる。切断は、外因性トリプシンを培地に添加することによって、又はフリン発現プラスミドを添加することによって、組織培養において達成することができる。しかし、インビボでは、TMPRSS2等の他のセリンプロテアーゼが切断により関連している可能性が高いと考えられている。F三量体は、準安定な「融合前」又は「pre-F」立体配座でウイルス粒子に組み込まれる。膜融合を開始するために、hMPV Fが活性化され、膜融合を駆動し、非常に安定な「融合後」又は「post-F」立体配座をとるhMPV FをもたらすFタンパク質の一連の段階的な立体配座変化を受ける。
【0170】
ある種の例示的な実施形態では、F0のタンパク質分解的切断は、hMPV Fポリペプチドをコードするプラスミドとフリンをコードするプラスミドとを4:1の比のhMPVプラスミド:フリンプラスミドで共トランスフェクションすることによって達成される。
【0171】
hMPV Fポリペプチドを含む抗原性hMPVポリペプチドが本明細書で提供される。hMPV Fポリペプチドは、hMPV Fの全配列又はhMPV Fの一部を含み得る。ある種の実施形態では、一部は外部ドメインである。
【0172】
いくつかの実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、配列番号1、3、5及び7のいずれか1つと少なくとも80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%又は99.5%の同一性を有する配列を含む。
【0173】
いくつかの実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、配列番号1、3、5、及び7のいずれか1つのポリペプチドと少なくとも80%の同一性を有する修飾hMPV Fポリペプチドを含み、hMPV Fポリペプチドは抗原性である。
【0174】
いくつかの実施形態では、hMPV Fポリペプチドは、Fタンパク質の外部ドメイン部分のみを含む。
【0175】
A2-CAN97-83のF0のアミノ酸配列は、以下である。
【化1】
(アクセッション番号AAN52910;バージョンAAN52910.1;DBソースアクセッション番号AY145296.1)。膜貫通ドメインは太字で下線が引かれており、細胞質尾部は太字である。
【0176】
A2-CAN97-83のF0のヌクレオチド配列は、以下である。
【化2】
【0177】
いくつかの実施形態では、pre-Fとpost-Fとの間で共有されるhMPV Fタンパク質のエピトープが遮断される。エピトープの遮断は、抗原性hMPV FポリペプチドをコードするRNA(例えば、mRNA)が対象に投与される場合、又は抗原性hMPV Fポリペプチドが対象に投与される場合、エピトープに対する抗体の生成を低減又は排除する。これにより、融合前立体配座等のFの特定の立体配座(例えば、部位φ及び/又は部位Vを標的とする抗体)に特異的なエピトープを標的とする抗体の割合を増加させることができる。Fは、依然として細胞に入っていないウイルスにおいて融合前立体配座を有するため、pre-Fを標的とする抗体の割合が増加すると、より大きい中和度を提供することができる(例えば、本明細書中に記載されるような中和対結合比として表される)。
【0178】
本明細書に記載のhMPV Fポリペプチドは、野生型hMPV Fタンパク質(例えば、配列番号1)と比較して欠失又は置換を有し得る。
【0179】
例えば、ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、(a)膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位を含む、(b)アミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換し、アミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、配列番号1に対するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異を含む、(c)異種シグナルペプチドを含む、(d)任意選択的にポリヒスチジンタグ(例えば、6xHisタグ、8xHisタグ等)及び/又はStrep IIタグである少なくとも1つのタグ配列を含む、並びに/或いは(e)foldonドメインを含む。
【0180】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、膜貫通ドメインを欠き、細胞質尾部を欠き、アミノ酸位置100のグルタミンをアルギニンで置換する、及びアミノ酸位置101のセリンをアルギニンで置換する、配列番号1に対するアミノ酸置換Q100R及びS101Rを含むF0切断部位変異;ヒトライノウイルス3C(HRV-3C)プロテアーゼ切断部位;異種シグナルペプチド;ポリヒスチジンタグ(例えば、6xHisタグ、8xHisタグ等)及び/又はStrep IIタグ;及びfoldonドメインを含む。
【0181】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドが、配列番号1の位置185にバリン、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、又はプロリン置換を含む。
【0182】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号1の位置160におけるフェニルアラニン、トリプトファン、チロシン、バリン、アラニン、イソロイシン若しくはロイシン置換、及び/又は配列番号1の位置46におけるバリン、アラニン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、チロシン若しくはプロリン置換を含む。
【0183】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、hMPVポリペプチドの三次及び/又は四次構造を安定化する「安定化置換」である、配列番号1の位置160の置換及び配列番号1の位置46の置換を含む。安定化置換としては、限定されないが、以下の置換が挙げられる。疎水性アミノ酸(例えば、グリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、トリプトファン、プロリン及びメチオニン);親水性アミノ酸(例えば、システイン、セリン、トレオニン、アスパラギン及びグルタミン);ジスルフィド結合を形成するアミノ酸(例えば、システイン);水素結合を形成するアミノ酸(例えば、トリプトファン、ヒスチジン、チロシン及びフェニルアラニン);荷電アミノ酸(例えば、アスパラギン酸、グルタミン酸、アルギニン、リジン及びヒスチジン)等。
【0184】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、A株hMPV(例えば、A1サブタイプ又はA2サブタイプ)又はB株hMPV(例えば、B1サブタイプ又はB2サブタイプ)に由来する。
【0185】
ある種の実施形態では、「骨格」F0ポリペプチド配列を含むアミノ酸配列が提供され、以下のように記載される。
【化3】
【0186】
ある種の実施形態では、「骨格」F0ポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される。
【化4】
【0187】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号3として示される「骨格」hMPV配列を含み、任意選択的に1つ以上のアミノ酸置換を含み得る。例えば、ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドが、配列番号3の位置185にバリン、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、又はプロリン置換を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドが、配列番号3の位置160におけるフェニルアラニン、トリプトファン若しくはチロシン置換、及び/又は配列番号3の位置46におけるバリン、アラニン、グリシン、イソロイシン、ロイシン若しくはプロリン置換を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドが、配列番号3の位置100及び101の一方又は両方にアルギニン置換を含む。
【0188】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドが、配列番号3と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。
【0189】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列を含むアミノ酸配列が提供され、以下のように記載される。
【化5】
(D185P)。(小文字のアミノ酸は、リンカー、foldonモチーフ、リンカー、HRV-3C切断部位、リンカー、8X-His-タグ及びstrep-tagII領域を示す)。
【0190】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される
【化6】
(D185P)。
【0191】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される
【化7】
(D185P mRNA)。
【0192】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドが、配列番号5と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号5を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号6と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号6を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号17と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号17を含む。
【0193】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列を含むアミノ酸配列が提供され、以下のように記載される
【化8】
(T160F_N46V)。(小文字のアミノ酸は、リンカー、foldonモチーフ、リンカー、HRV-3C切断部位、リンカー、8X-His-タグ及びstrep-tagII領域を示す)。
【0194】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される
【化9】
(T160F_N46V)。
【0195】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される
【化10】
(T160F_N46V)。
【0196】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチド配列をコードするヌクレオチド配列が提供され、以下のように記載される
【化11】
(T160F_N46V)。
【0197】
ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドが、配列番号7と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリペプチドは、配列番号7を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号8を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号18と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号18を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号8と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号8を含む。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号19と少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、又は99%の配列同一性を有する。ある種の実施形態では、hMPVポリヌクレオチドは、配列番号19を含む。
【0198】
一般に、本明細書に記載の構築物中の位置は、例えば標準的なパラメータ(EBLOSUM62マトリックス、ギャップペナルティ10、ギャップ拡張ペナルティ0.5)を用いたNeedleman-Wunschアルゴリズムを使用して、ペアワイズアライメントによって、参照配列、例えば配列番号1の野生型配列又は配列番号3の骨格配列にマッピングすることができる。
【0199】
III.組換えhMPV Fポリペプチド抗原
ある種の実施形態では、本開示のhMPVワクチンは、少なくとも1つのhMPV Fポリペプチド抗原を含み得る。本開示のhMPV Fポリペプチド抗原は、様々な方法によって作製することができる。一実施形態では、真核生物又は原核生物起源であり得る宿主細胞株が、hMPV Fポリペプチドの発現のために使用される。一実施形態では、hMPV Fポリペプチドの発現に使用される宿主細胞株は、細菌起源のものである。一実施形態では、hMPV Fポリペプチドの発現に使用される宿主細胞株は、哺乳動物起源のものである。その中で発現される所望の遺伝子産物に最も適した特定の宿主細胞株を決定することができる。例示的な宿主細胞株には、DG44及びDUXB11(チャイニーズハムスター卵巣系統、DHFRマイナス)、HELA(ヒト子宮頸癌)、CVI(サル腎臓株)、COS(SV40T抗原を有するCVIの誘導体)、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)、R1610(チャイニーズハムスター線維芽細胞)BALBC/3T3(マウス線維芽細胞)、HAK(ハムスター腎臓株)、SP2/O(マウス骨髄腫)、BFA-1c1BPT(ウシ内皮細胞)、RAJI(ヒトリンパ球)、及び293(ヒト腎臓)が含まれるが、これらに限定されない。宿主細胞株は、典型的には、商業サービスのAmerican Tissue Culture Collection(ATCC)又は公の文献から入手可能である。
【0200】
ある種の実施形態では、バキュロウイルス細胞を使用して、本明細書に記載のhMPV Fポリペプチド抗原を発現させ得る。バキュロウイルスAutographa californica Nuclear Polyhedrosis Virus(AcNPV)は、例えば、hMPV Fポリペプチドを発現させるために使用することができる。
【0201】
組換えバキュロウイルスは、バキュロウイルスDNAと目的のhMPV F配列を含むキメラプラスミドとの間の相同組換えによってhMPV Fポリペプチドを発現するように構築され得る。組換えウイルスは、それらの異なるプラーク形態によって検出され、均質にプラーク精製され得る。
【0202】
組換えhMPV Fポリペプチドは、限定されないが、鱗翅目(Lepidopteran)種スポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)に由来する細胞を含む細胞において産生され得る。バキュロウイルスに感染させることができる他の適切な昆虫細胞、例えば、カイコ(Bombyx mori)、ガレリア・メラノーマ(Galleria mellanoma)、トリクプルシア・ニィ(Trichplusia ni)又はラマントリア・ディスパル(Lamanthria dispar)種由来のものもまた、組換えhMPV Fポリペプチドを産生するための適切な基質として使用することができる。
【0203】
組換えhMPV Fポリペプチドは、他の発現ベクター、例えば、Entomopoxウイルス(昆虫のポックスウイルス)、細胞質多角体病ウイルス(CPV)、及び組換えhMPV F遺伝子構成的発現による昆虫細胞の形質転換においても発現され得る。
【0204】
組換えタンパク質のバキュロウイルス発現は、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる米国特許第5,762,919号明細書に更に記載されている。
【0205】
ある種の実施形態では、藻類細胞、例えば微細藻類細胞を使用して、本明細書に記載の組換えhMPV Fポリペプチド抗原を発現させることができる。いくつかの実施形態では、微細藻類宿主細胞は、ヘテロコント又はストラメノパイルである。いくつかの実施形態では、微細藻類宿主細胞は、ラビリンチュラ(Labyrinthulomycota)門のメンバーである。いくつかの実施形態では、ラビリンチュラ(Labyrinthulomycota)宿主細胞は、トラウストキトリレス目又はラビリンチュラ目のメンバーである。
【0206】
微細藻類宿主細胞におけるhMPVポリペプチド抗原の発現に使用される発現系は、微細藻類細胞において活性な調節制御要素を含む。いくつかの実施形態では、発現系は、ラビリンチュラ(Labyrinthulomycota)細胞において活性な調節制御要素を含む。いくつかの実施形態では、発現系は、トラウストキトリにおいて活性な調節制御要素を含む。いくつかの実施形態において、発現系は、スエヒロタケ又はトラウストヒトリウムにおいて活性である調節制御要素を含む。様々なプロモータを含む多くの調節制御要素は、多くの多様な種で活性である。したがって、調節配列は、それらが単離された細胞と同一の細胞型において利用することができ、又はそれらが単離された細胞とは異なる細胞型において利用することができる。
【0207】
いくつかの実施形態では、微細藻類細胞におけるhMPV Fポリペプチド産生のために使用される発現系は、ラビリンチュラ(Labyrinthulomycota)配列に由来する調節要素を含む。いくつかの実施形態では、微細藻類細胞においてhMPV Fポリペプチドを産生するために使用される発現系は、非ラビリンチュラ(Labyrinthulomycota)藻類配列に由来する配列を含む、非ラビリンチュラ(Labyrinthulomycota)配列に由来する調節要素を含む。いくつかの実施形態では、発現系は、hMPV Fポリペプチドをコードするポリヌクレオチド配列を含み、ポリヌクレオチド配列は、微細藻類宿主細胞において機能的である任意のプロモータ配列、任意のターミネータ配列及び/又は任意の他の調節配列と会合する。誘導性又は構成的に活性な配列を使用することができる。ある種の実施形態では、微細藻類宿主細胞におけるhMPV Fポリペプチドの発現のための発現カセット、並びにそれを含む藻類細胞が提供される。
【0208】
組換えタンパク質の微細藻類発現は、国際公開第2011/082189号パンフレット及び国際公開第2011/090731号パンフレットに記載され、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0209】
ある種の実施形態では、CHO細胞を使用して、本明細書に記載のhMPV Fポリペプチドを発現させることができる。ある種の実施形態では、hMPV Fを発現するベクターを含むCHO細胞株が提供される。ある種の実施形態では、当該CHO細胞株は、当該ベクターでトランスフェクトされる(安定に又は一過性にトランスフェクトされる)。ある種の実施形態では、当該CHO細胞株は、そのゲノムに組み込まれた当該ベクターを含む。CHO細胞株は、工業的なタンパク質生産に一般的に使用されており、多くのCHO細胞株が公知であり、例えばATCCから市販されている。例えば、そのようなCHO細胞株としては、例えば、CHO-K1細胞株(ATCC番号:CCL-61)、CHO DP-12細胞株(ATCC番号CRL-12444及び12445)及びCHO1-15細胞株(ATCC番号CRL-9606)が挙げられる。
【0210】
インビトロ生成により、所望のポリペプチドを大量に得るためのスケールアップが可能になる。組織培養条件下で細胞を培養する技法は、当技術分野において公知であり、この技法としては、例えば、エアリフト反応器若しくは連続撹拌反応器での均質懸濁培養、又は例えば、中空繊維内、マイクロカプセル内、アガロースマイクロビーズ上若しくはセラミックカートリッジ上に固定又は捕捉した細胞の培養が挙げられる。必要及び/又は所望であれば、ポリペプチドの溶液は、慣用的なクロマトグラフィ法、例えば、ゲル濾過、イオン交換クロマトグラフィ、DEAE-セルロースでのクロマトグラフィ、及び/又は(免疫)アフィニティークロマトグラフィを用いて精製することができる。
【0211】
IV.RNA
ある種の実施形態では、本開示のhMPVワクチンは、hMPV Fポリペプチド抗原をコードするORFを含む少なくとも1つのリボ核酸(RNA)を含み得る。ある種の実施形態では、RNAは、hMPV Fタンパク質抗原をコードするORFを含むメッセンジャーRNA(mRNA)である。ある種の実施形態では、RNA(例えば、mRNA)は、少なくとも1つの5’UTR、3’UTR、ポリ(A)尾部及び/又は5’キャップを更に含む。
【0212】
ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質抗原は、以下のように記載される
【化12】
(A2-D185P)。
【0213】
ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質抗原は、(配列番号6)として示されるmRNA ORFによってコードされる(A2-D185P mRNA ORF)。
【0214】
ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質抗原は、(配列番号17)(AD185P mRNA ORF)として示されるコドン最適化mRNA ORFによってコードされる。
【0215】
ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質抗原は、以下のように記載される
【化13】
(A2-T160F_N46V)。
【0216】
ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質抗原は、(配列番号8)(A2-T160F_N46V mRNA ORF)として示されるmRNA ORFによってコードされる。
【0217】
ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質抗原は、(配列番号18)(T160F_N46V mRNA ORF)として示されるコドン最適化mRNA ORFによってコードされる。
【0218】
ある種の実施形態では、hMPV Fタンパク質抗原は、(配列番号19)(T160F_N46V mRNA ORF)として示されるコドン最適化mRNA ORFによってコードされる。
【0219】
II.A.5’キャップ
mRNAの5’キャップは、ほとんどの真核細胞に見られるヌクレアーゼに対する耐性を提供し、翻訳効率を促進することができる。いくつかのタイプの5’キャップが知られている。7-メチルグアノシンキャップ(「m7G」又は「Cap-0」とも呼ばれる)は、5’-5’-三リン酸結合を介して第1の転写されたヌクレオチドに連結されたグアノシンを含む。
【0220】
5’キャップは、典型的には以下のように添加される。最初に、RNA末端ホスファターゼが5’ヌクレオチドから末端リン酸基の1つを除去し、2つの末端リン酸を残す;次いで、グアノシン三リン酸(GTP)が、グアニリルトランスフェラーゼを介して末端リン酸に付加され、5’5’5三リン酸結合を生成する;次いで、グアニンの7-窒素がメチルトランスフェラーゼによってメチル化される。キャップ構造の例には、m7G(5’)ppp、(5’(A、G(5’)ppp(5’)A及びG(5’)ppp(5’)Gが含まれるが、これらに限定されない。追加のキャップ構造は、参照により本明細書に組み込まれる米国特許出願公開第2016/0032356号明細書及び米国特許出願公開第2018/0125989号明細書に記載されている。
【0221】
製造業者のプロトコルに従って5’-グアノシンキャップ構造を生成するために、以下の化学的RNAキャップ類似体を使用してインビトロ転写反応中にポリヌクレオチドの5’-キャッピングを同時に完了させることができる:3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G(ARCAキャップ);G(5’)ppp(5’)A;G(5’)ppp(5’)G;m7G(5’)ppp(5’)A;m7G(5’)ppp(5’)G;m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG;m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pU;及びm7G(5’)ppp(5’)(2’OMeG)pG(New England BioLabs,Ipswich,MA;TriLink Biotechnologies)。改変RNAの5’キャッピングは、ワクシニアウイルスキャッピング酵素を使用して転写後に完了し、Cap0構造を生成することができる。m7G(5’)ppp(5’)G。ワクシニアウイルスキャッピング酵素と2’-Oメチル-トランスフェラーゼの両方を使用してキャップ1構造を生成して、m7G(5’)ppp(5’)G-2’-O-メチルを生成することができる。Cap2構造は、Cap1構造から生成され、続いて2’-Oメチル-トランスフェラーゼを使用して5’-最後から3番目のヌクレオチドの2’-O-メチル化が行われ得る。Cap3構造は、Cap2構造から生成され、続いて2’-Oメチル-トランスフェラーゼを使用して5’-最後から4番目のヌクレオチドの2’-O-メチル化が行われ得る。
【0222】
ある種の実施形態では、本開示のmRNAは、3’-O-Me-m7G(5’)ppp(5’)G(ARCAキャップ)、G(5’)ppp(5’)A、G(5’)ppp(5’)G、m7G(5’)ppp(5’)A、m7G(5’)ppp(5’)G、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pG、m7G(5’)ppp(5’)(2’OMeA)pU及びm7G(5’)ppp(5’)(2’OMeG)pGからなる群から選択される5’キャップを含む。
【0223】
ある種の実施形態では、本開示のmRNAは、
【化14】
の5’キャップを含む。
【0224】
II.B.非翻訳領域(UTR)
いくつかの実施形態では、本開示のmRNAは、5’及び/又は3’非翻訳領域(UTR)を含む。mRNAでは、5’UTRは転写開始部位で始まり、開始コドンまで続くが、開始コドンを含まない。3’UTRは終止コドンの直後に始まり、転写終結シグナルまで続く。
【0225】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるmRNAは、mRNAの安定性又は翻訳に影響を及ぼす1つ以上の要素を含む5’UTRを含み得る。いくつかの実施形態では、5’UTRは、約10~5,000ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、5’UTRは、約50~500ヌクレオチド長であり得る。いくつかの実施形態では、5’UTRは、少なくとも約10ヌクレオチド長、約20ヌクレオチド長、約30ヌクレオチド長、約40ヌクレオチド長、約50ヌクレオチド長、約100ヌクレオチド長、約150ヌクレオチド長、約200ヌクレオチド長、約250ヌクレオチド長、約300ヌクレオチド長、約350ヌクレオチド長、約400ヌクレオチド長、約450ヌクレオチド長、約500ヌクレオチド長、約550ヌクレオチド長、約600ヌクレオチド長、約650ヌクレオチド長、約700ヌクレオチド長、約750ヌクレオチド長、約800ヌクレオチド長、約850ヌクレオチド長、約900ヌクレオチド長、約950ヌクレオチド長、約1,000ヌクレオチド長、約1,500ヌクレオチド長、約2,000ヌクレオチド長、約2,500ヌクレオチド長、約3,000ヌクレオチド長、約3,500ヌクレオチド長、約4,000ヌクレオチド長、約4,500ヌクレオチド長又は約5,000ヌクレオチド長である。
【0226】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるmRNAは、ポリアデニル化シグナル、細胞内でのmRNAの位置の安定性に影響を及ぼすタンパク質の結合部位又はmiRNAの1つ以上の結合部位のうちの1つ以上を含む3’UTRを含み得る。いくつかの実施形態では、3’UTRは、50~5,000ヌクレオチド長又はそれより長くてもよい。いくつかの実施形態では、3’UTRは、50~1,000ヌクレオチド長又はそれより長くてもよい。いくつかの実施形態では、3’UTRは、少なくとも約50ヌクレオチド長、約100ヌクレオチド長、約150ヌクレオチド長、約200ヌクレオチド長、約250ヌクレオチド長、約300ヌクレオチド長、約350ヌクレオチド長、約400ヌクレオチド長、約450ヌクレオチド長、約500ヌクレオチド長、約550ヌクレオチド長、約600ヌクレオチド長、約650ヌクレオチド長、約700ヌクレオチド長、約750ヌクレオチド長、約800ヌクレオチド長、約850ヌクレオチド長、約900ヌクレオチド長、約950ヌクレオチド長、約1,000ヌクレオチド長、約1,500ヌクレオチド長、約2,000ヌクレオチド長、約2,500ヌクレオチド長、約3,000ヌクレオチド長、約3,500ヌクレオチド長、約4,000ヌクレオチド長、約4,500ヌクレオチド長又は約5,000ヌクレオチド長である。
【0227】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるmRNAは、mRNA転写物によってコードされる遺伝子と異なる遺伝子(すなわち、UTRは、異種UTRである)に由来する5’又は3’UTRを含み得る。
【0228】
ある種の実施形態では、5’及び/又は3’UTR配列は、mRNAの安定性を高めるために安定である(例えば、グロビン、アクチン、GAPDH、チューブリン、ヒストン又はクエン酸サイクル酵素)mRNAに由来し得る。例えば、5’UTR配列は、ヌクレアーゼ耐性を改善し、且つ/又はmRNAの半減期を改善するために、CMV前初期1(IE1)遺伝子の部分配列又はその断片を含み得る。ヒト成長ホルモン(hGH)をコードする配列又はその断片をmRNAの3’末端又は非翻訳領域に含めることも企図される。一般に、これらの修飾は、修飾されていない対応物と比較してmRNAの安定性及び/又は薬物動態特性(例えば、半減期)を改善し、例えば、インビボヌクレアーゼ消化に対するそのようなmRNA耐性を改善するために行われる修飾を含む。
【0229】
例示的な5’UTRは、CMV前初期1(IE1)遺伝子に由来する配列(米国特許出願公開第2014/0206753号明細書及び同第2015/0157565号明細書(これらの各々は参照により本明細書に組み込まれる))、又は配列GGGAUCCUACC(配列番号16)(米国特許出願公開第2016/0151409号明細書(あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる))を含む。
【0230】
様々な実施形態では、5’UTRは、TOP遺伝子の5’UTRに由来し得る。TOP遺伝子は、典型的には、5’末端オリゴピリミジン(TOP)域の存在を特徴とする。更に、ほとんどのTOP遺伝子は、成長関連翻訳調節によって特徴付けられる。しかし、組織特異的翻訳調節を有するTOP遺伝子も知られている。ある種の実施形態では、TOP遺伝子の5’UTRに由来する5’UTRは、5’TOPモチーフ(オリゴピリミジン領域)を欠く(例えば、米国特許出願公開第2017/0029847号明細書、同第2016/0304883号明細書、同第2016/0235864号明細書及び同第2016/0166710号明細書(これらの各々は、参照により本明細書に組み込まれる))。
【0231】
ある種の実施形態では、5’UTRは、リボソームタンパク質ラージ32(L32)遺伝子(上記の米国特許出願公開第2017/0029847号明細書)に由来する。
【0232】
ある種の実施形態では、5’UTRは、ヒドロキシステロイド(17b)デヒドロゲナーゼ4遺伝子(HSD17B4)の5’UTRに由来する(上記の米国特許出願公開第2016/0166710号明細書)。
【0233】
ある種の実施形態では、5’UTRは、ATP5A1遺伝子(上記の米国特許出願公開第2016/0166710号明細書)の5’UTRに由来する。
【0234】
いくつかの実施形態では、内部リボソーム進入部位(IRES)が、5’UTRの代わりに使用される。
【0235】
いくつかの実施形態では、5’UTRは、配列番号13に示される核酸配列を含む:
【化15】
【0236】
いくつかの実施形態では、3’UTRは、配列番号14に示される核酸配列を含む:CGGGUGGCAUCCCUGUGACCCCUCCCCAGUGCCUCUCCUGGCCCUGGAAGUUGCCACUCCAGUGCCCACCAGCCUUGUCCUAAUAAAAUUAAGUUGCAUC。5’UTR及び3’UTRは、参照により本明細書に組み込まれる、国際公開第2012/075040号パンフレットに更に詳細に記載されている。
【0237】
II.C.ポリアデニル化尾部
本明細書で使用される場合、「ポリ(A)配列」、「ポリ(A)尾部」及び「ポリ(A)領域」という用語は、mRNA分子の3’末端のアデノシンヌクレオチドの配列を指す。ポリ(A)尾部は、mRNAに安定性を付与し、mRNAをエキソヌクレアーゼ分解から保護し得る。ポリ(A)尾部は翻訳を増強し得る。いくつかの実施形態では、ポリ(A)尾部は、本質的にホモポリマーである。例えば、100個のアデノシンヌクレオチドのポリ(A)尾部は、本質的に100個のヌクレオチドの長さを有し得る。ある種の実施形態では、ポリ(A)尾部は、アデノシンヌクレオチドと異なる少なくとも1つのヌクレオチド(例えば、アデノシンヌクレオチドではないヌクレオチド)によって中断され得る。例えば、100個のアデノシンヌクレオチドのポリ(A)尾部は、100個を超えるヌクレオチドの長さを有し得る(100個のアデノシンヌクレオチドと、アデノシンヌクレオチドと異なる少なくとも1つのヌクレオチド又はヌクレオチドのストレッチとを含む)。ある種の実施形態では、ポリ(A)尾部は、配列AAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAGCAUAUGACUAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA(配列番号15)を含む。
【0238】
本明細書で使用される「ポリ(A)尾部」は、典型的にはRNAに関する。しかしながら、本開示との関連において、この用語は、DNA分子中の対応する配列(例えば、「ポリ(T)配列」)にも同様に関する。
【0239】
ポリ(A)尾部は、約10~約500個のアデノシンヌクレオチド、約10~約200個のアデノシンヌクレオチド、約40~約200個のアデノシンヌクレオチド又は約40~約150個のアデノシンヌクレオチドを含み得る。ポリ(A)尾部の長さは、少なくとも約10、50、75、100、150、200、250、300、350、400、450又は500のアデノシンヌクレオチドであり得る。
【0240】
核酸がRNAであるいくつかの実施形態では、核酸のポリ(A)尾部は、RNAのインビトロ転写中にDNA鋳型から得られる。ある種の実施形態では、ポリ(A)尾部は、DNA鋳型から転写されることなく、一般的な化学合成方法によってインビトロで得られる。様々な実施形態では、ポリ(A)尾部は、市販のポリアデニル化キット及び対応するプロトコルを使用して(RNAインビトロ転写後に)RNAの酵素的ポリアデニル化によって、又は代替的に、固定化ポリ(A)ポリメラーゼを使用することによって、例えば国際公開第2016/174271号パンフレットに記載される方法を使用して、生成される。
【0241】
核酸は、酵素的ポリアデニル化によって得られたポリ(A)尾部を含み得、核酸分子の大部分は、約100(+/-20)~約500(+/-50)又は約250(+/-20)のアデノシンヌクレオチドを含む。
【0242】
いくつかの実施形態では、核酸は、例えば国際公開第2016/091391号パンフレットに記載されているように、鋳型DNAに由来するポリ(A)尾部を含み得、酵素的ポリアデニル化によって生成された少なくとも1つの更なるポリ(A)尾部を更に含み得る。
【0243】
ある種の実施形態では、核酸は、少なくとも1つのポリアデニル化シグナルを含む。
【0244】
様々な実施形態では、核酸は、少なくとも1つのポリ(C)配列を含み得る。
【0245】
本明細書で使用される「ポリ(C)配列」という用語は、最大約200個のシトシンヌクレオチドの配列であることを意図している。いくつかの実施形態では、ポリ(C)配列は、約10~約200個のシトシンヌクレオチド、約10~約100個のシトシンヌクレオチド、約20~約70個のシトシンヌクレオチド、約20~約60個のシトシンヌクレオチド又は約10~約40個のシトシンヌクレオチドを含む。いくつかの実施形態では、ポリ(C)配列は約30個のシトシンヌクレオチドを含む。
【0246】
II.D.化学修飾
本明細書に開示されるmRNAは、修飾されていても又はされていなくてもよい。いくつかの実施形態では、mRNAは、少なくとも1つの化学修飾を含み得る。いくつかの実施形態では、本明細書に開示されるmRNAは、典型的にはRNA安定性を高める1つ以上の修飾を含み得る。例示的な修飾としては、骨格修飾、糖修飾又は塩基修飾を挙げることができる。いくつかの実施形態では、開示されるmRNAは、プリン(アデニン(A)及びグアニン(G))又はピリミジン(チミン(T)、シトシン(C)及びウラシル(U))を含むが、これらに限定されない天然に存在するヌクレオチド及び/又はヌクレオチド類似体(修飾ヌクレオチド)から合成され得る。ある種の実施形態では、開示のmRNAは、プリン及びピリミジンの修飾ヌクレオチド類似体又は誘導体、例えば1-メチル-アデニン、2-メチル-アデニン、2-メチルチオ-N-6-イソペンテニル-アデニン、N6-メチル-アデニン、N6-イソペンテニル-アデニン、2-チオ-シトシン、3-メチル-シトシン、4-アセチル-シトシン、5-メチル-シトシン、2,6-ジアミノプリン、1-メチル-グアニン、2-メチル-グアニン、2,2-ジメチル-グアニン、7-メチル-グアニン、イノシン、1-メチル-イノシン、シュードウラシル(5-ウラシル)、ジヒドロ-ウラシル、2-チオ-ウラシル、4-チオ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5-(カルボキシヒドロキシメチル)-ウラシル、5-フルオロ-ウラシル、5-ブロモ-ウラシル、5-カルボキシメチルアミノメチル-ウラシル、5-メチル-2-チオ-ウラシル、5-メチル-ウラシル、N-ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、5-メチルアミノメチル-ウラシル、5-メトキシアミノメチル-2-チオ-ウラシル、5’-メトキシカルボニルメチル-ウラシル、5-メトキシ-ウラシル、ウラシル-5-オキシ酢酸メチルエステル、ウラシル-5-オキシ酢酸(v)、1-メチル-シュードウラシル、ケオシン、β-D-マンノシル-ケオシン、ホスホルアミデート、ホスホロチオエート、ペプチドヌクレオチド、メチルホスホネート、7-デアザグアノシン、5-メチルシトシン及びイノシンから合成され得る。
【0247】
いくつかの実施形態では、開示されるmRNAは、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、2-チオウリジン、4’-チオウリジン、5-メチルシトシン、2-チオ-l-メチル-1-デアザ-シュードウリジン、2-チオ-l-メチル-シュードウリジン、2-チオ-5-アザ-ウリジン、2-チオ-ジヒドロシュードウリジン、2-チオ-ジヒドロウリジン、2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-2-チオ-シュードウリジン、4-メトキシ-シュードウリジン、4-チオ-l-メチル-シュードウリジン、4-チオ-シュードウリジン、5-アザ-ウリジン、ジヒドロシュードウリジン、5-メチルウリジン、5-メチルウリジン、5-メトキシウリジン及び2’-O-メチルウリジンを含むが、これらに限定されない少なくとも1つの化学修飾を含み得る。
【0248】
いくつかの実施形態では、化学修飾は、シュードウリジン、N1-メチルシュードウリジン、5-メチルシトシン、5-メトキシウリジン及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0249】
いくつかの実施形態では、化学修飾は、N1-メチルシュードウリジンを含む。
【0250】
いくつかの実施形態では、mRNA中のウラシルヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%が化学修飾される。
【0251】
いくつかの実施形態では、ORF中のウラシルヌクレオチドの少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%又は100%が化学修飾される。
【0252】
そのような類似体の調製は、例えば、米国特許第4,373,071号明細書、米国特許第4,401,796号明細書、米国特許第4,415,732号明細書、米国特許第4,458,066号明細書、米国特許第4,500,707号明細書、米国特許第4,668,777号明細書、米国特許第4,973,679号明細書、米国特許第5,047,524号明細書、米国特許第5,132,418号明細書、米国特許第5,153,319号明細書、米国特許第5,262,530号明細書、及び米国特許5,700,642号明細書に記載されている。
【0253】
II.E.mRNA合成
本明細書に開示されるmRNAは、様々な方法のいずれかに従って合成され得る。例えば、本開示によるmRNAは、インビトロ転写(IVT)を介して合成され得る。インビトロ転写のためのいくつかの方法は、例えば、Geall et al.(2013)Semin.Immunol.25(2):152-159;Brunelle et al.(2013)Methods Enzymol.530:101-14に記載されている。簡潔には、IVTは、典型的には、プロモータ、リボヌクレオチド三リン酸のプール、DTT及びマグネシウムイオンを含み得る緩衝系、適切なRNAポリメラーゼ(例えば、T3、T7又はSP6 RNAポリメラーゼ)、DNase I、ピロホスファターゼ及び/又はRNase阻害剤を含有する線状又は環状DNA鋳型を用いて行われる。正確な条件は、特定の用途に応じて異なり得る。これらの試薬の存在は、一般に、最終mRNA産物において望ましくなく、これらの試薬は、治療的使用に適した清浄な及び/又は均一なmRNAを提供するために精製又は除去することができる不純物又は夾雑物と考えることができる。いくつかの実施形態では、インビトロ転写反応から提供されるmRNAが望ましい場合があるが、細菌、真菌、植物及び/又は動物から産生される野生型mRNAを含む他のmRNA源を本開示に従って使用することができる。
【0254】
V.脂質ナノ粒子(LNP)
本開示のLNPは、以下の4つのカテゴリー:(i)イオン化可能な脂質(例えば、カチオン性脂質);(ii)PEG化脂質;(iii)コレステロール系脂質(例えば、コレステロール)、及び(iv)ヘルパー脂質の脂質を含むことができる。
【0255】
A.カチオン性脂質
イオン化脂質は、mRNA封入を促進し、カチオン性脂質であり得る。カチオン性脂質は、低pHで正に帯電した環境を与え、負に帯電したmRNA原薬の効率的なカプセル化を促進する。例示的なカチオン性脂質を以下の表1に示す。
【0256】
【0257】
【0258】
【0259】
【0260】
【0261】
カチオン性脂質は、[ckkE10]/[OF-02]、[(6Z,9Z,28Z,31Z)-ヘプタトリアコンタ-6,9,28,31-テトラエン-19-イル]4-(ジメチルアミノ)ブタノエート(D-Lin-MC3-DMA);2,2-ジリノレイル-4-ジメチルアミノエチル-[1,3]-ジオキソラン(DLin-KC2-DMA);1,2-ジリノレイルオキシ-N,N-ジメチル-3-アミノプロパン(DLin-DMA);ジ((Z)-ノナ-2-エン-1-イル)9-((4-(ジメチルアミノ)ブタノイル)オキシ)ヘプタデカンジオエート(L319);9-ヘプタデカニル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノアート(SM-102);[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315);[3-(ジメチルアミノ)-2-[(Z)-オクタデカ-9-エノイル]オキシプロピル](Z)-オクタデカ-9-エノエート(DODAP);2,5-ビス(3-アミノプロピルアミノ)-N-[2-[ジ(ヘプタデシル)アミノ]-2-オキソエチル]ペンタンアミド(DOGS);[(3S,8S,9S,10R,13R,14S,17R)-10,13-ジメチル-17-[(2R)-6-メチルヘプタン-2-イル]-2,3,4,7,8,9,11,12,14,15,16,17-ドデカヒドロ-1H-シクロペンタ[a]フェナントレン-3-イル]N-[2-(ジメチルアミノ)エチル]カルバメート(DC-Chol);テトラキス(8-メチルノニル)3,3’,3’’,3’’’-(((メチルアザンジイル)ビス(プロパン-3,1ジイル))ビス(アザントリイル))テトラプロピオン酸(306Oi10);デシル(2-(ジオクチルアンモニオ)エチル)ホスフェート(9A1P9);エチル5,5-ジ((Z)-ヘプタデカ-8-エン-1-イル)-1-(3-(ピロリジン-1-イル)プロピル)-2,5-ジヒドロ-1H-イミダゾール-2-カルボキシレート(A2-イソ5-2DC18);ビス(2-(ドデシルジスルファニル)エチル)3,3’-((3-メチル-9-オキソ-10-オキサ-13,14-ジチア-3,6-ジアザヘキサコシル)アザンジイル)ジプロピオネート(BAME-O16B);1,1’-((2-(4-(2-((2-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)エチル)ピペラジン-1-イル)エチル)アザンジイル)ビス(ドデカン-2-オール)(C12-200);3,6-ビス(4-(ビス(2-ヒドロキシドデシル)アミノ)ブチル)ピペラジン-2,5-ジオン(cKK-E12);ヘキサ(オクタン-3-イル)9,9’,9’’,9’’’,9’’’’,9’’’’’-((((ベンゼン-1,3,5-トリカルボニル)イリス(アザンジイル))トリス(プロパン-3,1-ジイル))トリス(アザントリイル))ヘキサノナノエート(FTT5);(((3,6-ジオキソピペラジン-2,5-ジイル)ビス(ブタン-4,1-ジイル))ビス(アザントリイル))テトラキス(エタン-2,1-ジイル)(9Z,9’Z,9’’Z,9’’’Z,12Z,12’Z,12’’Z,12’’’Z)-テトラキス(オクタデカ-9,12-ジエノエート)(OF-Deg-Lin);TT3;N1,N3,N5-トリス(3-(ジドデシルアミノ)プロピル)ベンゼン-1,3,5-トリカルボキサミド;N1-[2-((1S)-1-[(3-アミノプロピル)アミノ]-4-[ジ(3-アミノプロピル)アミノ]ブチルカルボキサミド)エチル]-3,4-ジ[オレイルオキシ]-ベンズアミド(MVL5);ヘプタデカン-9-イル8-((2-ヒドロキシエチル)(8-(ノニルオキシ)-8-オキソオクチル)アミノ)オクタノアート(脂質5);及びそれらの組合せを含む群から選択され得る。
【0262】
ある種の実施形態では、カチオン性脂質は生分解性である。
【0263】
種々の実施形態では、カチオン性脂質は生分解性ではない。
【0264】
いくつかの実施形態では、カチオン性脂質は切断可能である。
【0265】
ある種の実施形態では、カチオン性脂質は切断可能ではない。
【0266】
カチオン性脂質は、Dong et al.(PNAS.111;11:3955-60.2014);Fenton et al.(Adv Mater.28:2939.2016);米国特許第9,512,073号明細書;及び米国特許第10,201,618号明細書に更に詳細に記載されており、その各々は参照により本明細書に組み込まれる。
【0267】
B.PEG化脂質
PEG化脂質成分は、ナノ粒子の粒径及び安定性の制御を提供する。このような成分を添加することにより、複雑な凝集が防止され、循環寿命を延ばし、標的組織への脂質-核酸医薬組成物の送達を増大させる手段を提供し得る(Klibanov et al.,FEBS Letters 268(1):235-71990)。これらの成分は、インビボで医薬組成物から迅速に交換されるように選択され得る(例えば、米国特許第5,885,613号明細書を参照されたい)。
【0268】
企図されるPEG化脂質としては、誘導体化セラミド(例えば、N-オクタノイル-スフィンゴシン-1-[スクシニル(メトキシポリエチレングリコール)](C8 PEGセラミド))等の、C6~C20(例えば、C8、C10、C12、C14、C16又はC18)長のアルキル鎖を有する脂質に共有結合した、最大5kDa長のポリエチレングリコール(PEG)が挙げられるが、これらに限定されない。いくつかの実施形態では、PEG化脂質は、1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール(DMG-PEG);1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DSPE-PEG);1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン-ポリエチレングリコール(DLPE-PEG);又は1,2-ジステアロイル-rac-グリセロ-ポリエテレングリコール(DSG-PEG)、PEG-DAG;PEG-PE;PEG-S-DAG;PEG-S-DMG;PEG-cer;PEG-ジアルキルオキシプロピルカルバメート;2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159);及びそれらの組合せである。
【0269】
ある種の実施形態では、PEGは、高分子量、例えば2000~2400g/molを有する。ある種の実施形態では、PEGは、PEG2000(又はPEG-2K)である。ある種の実施形態では、本明細書のPEG化脂質は、DMG-PEG2000、DSPE-PEG2000、DLPE-PEG2000、DSG-PEG2000、C8PEG2000又はALC-0159(2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド)である。ある種の実施形態では、本明細書中のPEG化脂質は、DMG-PEG2000である。
【0270】
C.コレステロール系脂質
コレステロール成分は、ナノ粒子内の脂質二重層構造に安定性をもたらす。いくつかの実施形態では、LNPは、1つ以上のコレステロール系脂質を含む。適切なコレステロール系脂質としては、例えば、DC-Choi(N,N-ジメチル-N-エチルカルボキサミドコレステロール)、l,4-ビス(3-N-オレイルアミノ-プロピル)ピペラジン(Gao et al.,Biochem Biophys Res Comm.(1991)179:280;Wolf et al.,BioTechniques(1997)23:139;米国特許第5,744,335)、イミダゾールコレステロールエステル(「ICE」;国際公開第2011/068810号パンフレット)、シトステロール(22,23-ジヒドロスチグマステロール)、β-シトステロール、シトスタノール、フコステロール、スチグマステロール(スチグマスタ-5,22-ジエン-3-オール)、エルゴステロール;デスモステロール(3β-ヒドロキシ-5,24-コレスタジエン);ラノステロール(8,24-ラノスタジエン-3b-オール);7-デヒドロコレステロール(Δ5,7-コレステロール);ジヒドロラノステロール(24,25-ジヒドロラノステロール);チモステロール(5α-コレスタ-8,24-ジエン-3β-オール);ラソステロール(5α-コレスタ-7-エン-3β-オール);ジオスゲニン((3β,25R)-スピロスト-5-エン-3-オール);カンペステロール(カンペスト-5-エン-3β-オール);カンペスタノール(5a-カンペスタン-3b-オール);24メチレンコレステロール(5,24(28)-コレスタジエン-24-メチレン-3β-オール);コレステリルマルガレート(コレスタ-5-エン-3β-イルヘプタデカノエート);オレイン酸コレステリル;コレステリルステアレート及びコレステロールの他の修飾形態が挙げられる。いくつかの実施形態では、LNPに使用されるコレステロール系脂質は、コレステロールである。
【0271】
D.ヘルパー脂質
ヘルパー脂質は、LNPの構造的安定性を増強し、エンドソーム脱出におけるLNPを助ける。それは、mRNA薬物ペイロードの取込み及び放出を改善する。いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、薬物ペイロードの取込み及び放出を増強するための融合特性を有する双性イオン脂質である。ヘルパー脂質の例は、1,2-ジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)、1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC)、1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホ-L-セリンコリン(DOPS)、1,2-ジエライドイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DEPE)及び1,2-ジオレオイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DPOC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、DMPC、1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DLPC);1,2-ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)及び1,2-ジラウロイル-sn-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DLPE)である。
【0272】
他の例示的なヘルパー脂質は、ジオレオイルホスファチジルコリン(DOPC)、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジパルミトイルホスファチジルグリセロール(DPPG)、パルミトイルオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、パルミトイルオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(POPE)、ジオレオイル-ホスファチジルエタノールアミン4-(N-マレイミドメチル)-シクロヘキサン-l-カルボキシレート(DOPE-mal)、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジミリストイルホスホエタノールアミン(DMPE)、ホスファチジルセリン、スフィンゴ脂質、スフィンゴミエリン、セラミド、セレブロシド、ガングリオシド、16-O-モノメチルPE、16-O-ジメチルPE、18-1-トランスPE、l-ステアロイル-2-オレオイル-ホスファチジルエタノールアミン(SOPE)又はこれらの組合せである。ある種の実施形態では、ヘルパー脂質は、DOPEである。ある種の実施形態では、ヘルパー脂質は、DSPCである。
【0273】
種々の実施形態では、本LNPは、(i)OF-02、cKK-E10、GL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1、GL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10又はGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14から選択されるカチオン性脂質;(ii)DMG-PEG2000;(iii)コレステロール;及び(iv)DOPEを含む。
【0274】
E.脂質成分のモル比
上記成分のモル比は、mRNAの送達におけるLNPの有効性にとって重要である。カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロール系脂質及びヘルパー脂質のモル比は、A:B:C:D(ここで、A+B+C+D=100%)である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するLNP中のカチオン性脂質のモル比(すなわち、A)は、35~55%、例えば35~50%(例えば、38~42%、例えば40%又は45~50%)である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するPEG化脂質成分のモル比(すなわち、B)は、0.25~2.75%(例えば、1.5%等の1~2%)である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するコレステロール系脂質のモル比(すなわち、C)は、20~50%(例えば、27~30%、例えば28.5%又は38~43%)である。いくつかの実施形態では、総脂質に対するヘルパー脂質のモル比(すなわち、D)は、5~35%(例えば、30%等の28~32%又は10%等の8~12%)である。いくつかの実施形態では、(PEG化脂質+コレステロール)成分は、ヘルパー脂質と同じモル量を有する。いくつかの実施形態では、LNPは、ヘルパー脂質に対するカチオン性脂質のモル比は、1超である。
【0275】
ある種の実施形態では、本開示のLNPは、
35%~55%又は40%~50%(例えば、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%又は55%のモル比のカチオン性脂質)のモル比のカチオン性脂質;
0.25%~2.75%又は1.00%~2.00%(例えば、0.25%、0.50%、0.75%、1.00%、1.25%、1.50%、1.75%、2.00%、2.25%、2.50%又は2.75%のモル比のPEG化脂質)のモル比のポリエチレングリコール(PEG)コンジュゲート(PEG化)脂質;
20%~50%、25%~45%又は28.5%~43%のモル比(例えば、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%又は50%のモル比のコレステロール系脂質)のコレステロール系脂質;及び
5%~35%、8%~30%又は10%~30%(例えば、5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%又は35%のモル比のヘルパー脂質)のモル比のヘルパー脂質を含み、
モル比の全ては、LNPの総脂質含有量に対するものである。
【0276】
ある種の実施形態では、LNPは、40%のモル比のカチオン性脂質、1.5%のモル比のPEG化脂質、28.5%のモル比のコレステロール系脂質及び30%のモル比のヘルパー脂質を含む。
【0277】
ある種の実施形態では、PEG化脂質は、ジミリストイル-PEG2000(DMG-PEG2000)である。
【0278】
種々の実施形態では、コレステロール系脂質は、コレステロールである。
【0279】
いくつかの実施形態では、ヘルパー脂質は、1,2-ジオレオイル-SN-グリセロ-3-ホスホエタノールアミン(DOPE)である。
【0280】
ある種の実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のOF-02;0.25%~2.75%のモル比のDMG-PEG2000;20%~50%のモル比のコレステロール;及び5%~35%のモル比のDOPEを含む。
【0281】
ある種の実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のcKK-E10;0.25%~2.75%のモル比のDMG-PEG2000;20%~50%のモル比のコレステロール;及び5%~35%のモル比のDOPEを含む。
【0282】
ある種の実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のGL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1;0.25%~2.75%のモル比のDMG-PEG2000;20%~50%のモル比のコレステロール;及び5%~35%のモル比のDOPEを含む。
【0283】
ある種の実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のGL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10;0.25%~2.75%のモル比のDMG-PEG2000;20%~50%のモル比のコレステロール;及び5%~35%のモル比のDOPEを含む。
【0284】
ある種の実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14;0.25%~2.75%のモル比のDMG-PEG2000;20%~50%のモル比のコレステロール;及び5%~35%のモル比のDOPEを含む。
【0285】
ある種の実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のSM-102;0.25%~2.75%のモル比のDMG-PEG2000;20%~50%のモル比のコレステロール;及び5%~35%のモル比のDSPCを含む。
【0286】
ある種の実施形態では、LNPは、35%~55%のモル比のALC-0315;0.25%~2.75%のモル比のALC-0159;20%~50%のモル比のコレステロール;及び5%~35%のモル比のDSPCを含む。
【0287】
ある種の実施形態では、LNPは、40%のモル比のOF-02;1.5%のモル比のDMG-PEG2000;28.5%のモル比のコレステロール;及び30%のモル比のDOPEを含む。
【0288】
ある種の実施形態では、LNPは、40%のモル比のcKK-E10;1.5%のモル比のDMG-PEG2000;28.5%のモル比のコレステロール及び30%のモル比のDOPEを含む。
【0289】
ある種の実施形態では、LNPは、40%のモル比のGL-HEPES-E3-E10-DS-3-E18-1;1.5%のモル比のDMG-PEG2000;28.5%のモル比のコレステロール及び30%のモル比のDOPEを含む。
【0290】
ある種の実施形態では、LNPは、40%のモル比のGL-HEPES-E3-E12-DS-4-E10;1.5%のモル比のDMG-PEG2000;28.5%のモル比のコレステロール及び30%のモル比のDOPEを含む。
【0291】
ある種の実施形態では、LNPは、40%のモル比のGL-HEPES-E3-E12-DS-3-E14;1.5%のモル比のDMG-PEG2000;28.5%のモル比のコレステロール;及び30%のモル比のDOPEを含む。
【0292】
ある種の実施形態では、LNPは、50%のモル比の9-ヘプタデカニル8-{(2-ヒドロキシエチル)[6-オキソ-6-(ウンデシルオキシ)ヘキシル]アミノ}オクタノエート(SM-102);10%のモル比の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);38.5%のモル比のコレステロール;及び1.5%のモル比の1,2-ジミリストイル-rac-グリセロ-3-メトキシポリエチレングリコール-2000(DMG-PEG2000)を含む。
【0293】
ある種の実施形態では、LNPは、46.3%のモル比の(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315);9.4%のモル比の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);42.7%のモル比のコレステロール;及び1.6%のモル比の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)を含む。
【0294】
ある種の実施形態では、LNPは、47.4%のモル比の(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ジ(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカノエート)(ALC-0315);10%のモル比の1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン(DSPC);40.9%のモル比のコレステロール;及び1.7%のモル比の2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド(ALC-0159)を含む。
【0295】
LNP製剤中に含まれる各脂質の実際の量を計算するために、まず、カチオン性脂質のモル量を、所望のN/P比(ここで、Nは、カチオン性脂質中の窒素原子の数であり、Pは、LNPによって輸送されるmRNA中のリン酸基の数である)に基づいて決定する。次に、カチオン性脂質のモル量及び選択したモル比に基づいて、他の脂質のそれぞれのモル量を計算する。次いで、これらのモル量を、各脂質の分子量を用いて重量に変換する。
【0296】
F.緩衝剤及び他の成分
核酸及び/又はLNPを安定化し(例えば、ワクチン製品の貯蔵寿命を延長するために)、LNP医薬組成物の投与を容易にし、且つ/又は核酸のインビボ発現を増強するために、核酸及び/又はLNPを1つ以上の担体、標的化リガンド、安定化試薬(例えば、防腐剤及び抗酸化剤)及び/又は他の薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて製剤化することができる。そのような賦形剤の例は、パラベン、チメロサール、チオマーサル、クロロブタノール、塩化ベンザルコニウム及びキレート剤(例えば、EDTA)である。
【0297】
本開示のLNP組成物は、凍結液体形態又は凍結乾燥形態として提供することができる。様々な凍結保護剤、例えば、以下に限定されないが、スクロース、トレハロース、グルコース、マンニトール、マンノース、デキストロース等を使用することができる。凍結保護剤は、LNP組成物の5~30%(w/v)を構成し得る。いくつかの実施形態では、LNP組成物は、例えば5~30%(例えば、10%)(w/v)のトレハロースを含む。凍結保護剤と共に製剤化されると、LNP組成物は、-20℃~-80℃で凍結(又は凍結乾燥及び凍結保存)され得る。
【0298】
LNP組成物は、緩衝水溶液で患者に提供され得る(予め凍結されている場合には解凍されるか、又は予め凍結乾燥されている場合にはベッドサイドにおいて緩衝水溶液で再構成され得る)。緩衝溶液は等張性であり得、例えば筋肉内又は皮内注射に適している。いくつかの実施形態では、緩衝液は、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)である。
【0299】
VI.LNPワクチンを作製するためのプロセス
本発明のLNPは、様々な技術によって調製することができる。例えば、多重膜小胞(MLV)は、脂質を適切な溶媒に溶解することによって適切な容器又は容器の内壁に選択された脂質を堆積させ、次いで溶媒を蒸発させて容器の内側に薄膜を残すことによって又は噴霧乾燥によって等、従来の技術に従って調製され得る。次いで、MLVの形成をもたらすボルテックス運動で水相を血管に添加することができる。次いで、単層小胞(ULV)は、多層小胞の均質化、超音波処理又は押し出しによって形成することができる。更に、単層小胞は、洗剤除去技術によって形成することができる。
【0300】
様々な方法が米国特許出願公開第2011/0244026号明細書、米国特許出願公開第2016/0038432号明細書、米国特許出願公開第2018/0153822号明細書、米国特許出願公開第2018/0125989号明細書及び米国特許出願公開第2021/0046192号明細書に記載されており、LNPワクチンを作製するために使用することができる。1つの例示的なプロセスは米国特許出願公開第2016/0038432号明細書に記載されているように、最初に脂質を脂質ナノ粒子に予備形成することなく、脂質の混合物と混合することによってmRNAをカプセル化することを伴う。別の例示的なプロセスは、米国特許出願公開第2018/0153822号明細書に記載されているように、予め形成されたLNPをmRNAと混合することによってmRNAをカプセル化することを伴う。
【0301】
いくつかの実施形態では、mRNAをロードしたLNPを調製するプロセスは、1つ以上の溶液を周囲温度より高い温度に加熱する工程を含み、1つ以上の溶液は、予め形成された脂質ナノ粒子を含む溶液であり、溶液はmRNAを含み、混合溶液はLNP封入mRNAを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程前にmRNA溶液及び予め形成されたLNP溶液の一方又は両方を加熱する工程を含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程中、予め形成されたLNPを含む溶液、mRNAを含む溶液及びLNP封入mRNAを含む溶液の1つ以上を加熱することを含む。いくつかの実施形態では、プロセスは、混合工程後にLNP封入mRNAを加熱する工程を含む。いくつかの実施形態では、溶液の1つ以上が加熱される温度は、約30℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃又は70℃以上である。いくつかの実施形態では、溶液の1つ以上が加熱される温度は、約25~70℃、約30~70℃、約35~70℃、約40~70℃、約45~70℃、約50~70℃又は約60~70℃の範囲である。いくつかの実施形態では、温度は、約65℃である。
【0302】
本開示に適したmRNA溶液を調製するために、様々な方法が使用され得る。いくつかの実施形態では、mRNAは、本明細書中に記載される緩衝液に直接溶解され得る。いくつかの実施形態では、mRNA溶液は、封入のために脂質溶液と混合する前に、mRNAストック溶液を緩衝溶液と混合することによって作製され得る。いくつかの実施形態では、mRNA溶液は、封入のために脂質溶液と混合する直前にmRNAストック溶液を緩衝溶液と混合することによって作製され得る。いくつかの実施形態では、適切なmRNAストック溶液は、mRNAを約0.2mg/ml、0.4mg/ml、0.5mg/ml、0.6mg/ml、0.8mg/ml、1.0mg/ml、1.2mg/ml、1.4mg/ml、1.5mg/ml又は1.6mg/ml、2.0mg/ml、2.5mg/ml、3.0mg/ml、3.5mg/ml、4.0mg/ml、4.5mg/ml又は5.0mg/ml以上の濃度で水又は緩衝液中に含有し得る。
【0303】
いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、ポンプを使用して緩衝溶液と混合される。例示的なポンプには、ギアポンプ、蠕動ポンプ及び遠心ポンプが含まれるが、これらに限定されない。典型的には、緩衝液は、mRNAストック溶液よりも速い速度で混合される。例えば、緩衝液は、mRNAストック溶液の速度よりも少なくとも1倍、2倍、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、15倍又は20倍大きい速度で混合され得る。いくつかの実施形態では、緩衝液は、約100~6000ml/分(例えば、約100~300ml/分、300~600ml/分、600~1200ml/分、1200~2400ml/分、2400~3600ml/分、3600~4800ml/分、4800~6000ml/分又は60~420ml/分)の範囲の流速で混合される。いくつかの実施形態では、緩衝溶液は、約60ml/分、100ml/分、140ml/分、180ml/分、220ml/分、260ml/分、300ml/分、340ml/分、380ml/分、420ml/分、480ml/分、540ml/分、600ml/分、1200ml/分、2400ml/分、3600ml/分、4800ml/分又は6000ml/分以上の流量で混合される。
【0304】
いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、約10~600ml/分(例えば、約5~50ml/分、約10~30ml/分、約30~60ml/分、約60~120ml/分、約120~240ml/分、約240~360ml/分、約360~480ml/分又は約480~600ml/分)の範囲の流速で混合される。いくつかの実施形態では、mRNAストック溶液は、約5ml/分、10ml/分、15ml/分、20ml/分、25ml/分、30ml/分、35ml/分、40ml/分、45ml/分、50ml/分、60ml/分、80ml/分、100ml/分、200ml/分、300ml/分、400ml/分、500ml/分又は600ml/分以上の流速で混合される。
【0305】
脂質ナノ粒子に所望のmRNAを組み込むプロセスは、「負荷」と呼ばれる。例示的な方法は、Lasic et al.,FEBS Lett.(1992)312:255-8に記載されている。LNPに組み込まれた核酸は、脂質ナノ粒子の内部空間内、脂質ナノ粒子の二重層膜内又は脂質ナノ粒子膜の外面に完全に又は部分的に位置し得る。脂質ナノ粒子へのmRNAの組み込みは、本明細書では「カプセル化」とも呼ばれ、核酸は、完全に又は実質的に脂質ナノ粒子の内部空間内に含まれる。
【0306】
適切なLNPは、様々なサイズで作製され得る。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子のサイズの減少は、mRNAのより効率的な送達に関連する。適切なLNPサイズの選択は、標的細胞又は組織の部位及び脂質ナノ粒子が作製されている用途をある程度考慮に入れることができる。
【0307】
脂質ナノ粒子の集団のサイジングのための様々な方法が利用可能である。様々な実施形態では、本明細書の方法は、LNP粒径を測定するためにZetasizer Nano ZS(Malvern Panalytical)を利用する。一プロトコルでは、10μlのLNP試料を990μlの10%トレハロースと混合する。この溶液をキュベットに入れ、次いでZetasizerに入れる。z平均直径(nm)又はキュムラント平均は、試料中のLNPの平均サイズと見なされる。Zetasizerマシンは、動的光散乱(DLS)及び自己相関関数のキュムラント解析を使用して多分散性指数(PDI)を測定するために使用することもできる。平均LNP直径は、形成されたLNPの超音波処理によって減少し得る。断続的な超音波処理サイクルを準弾性光散乱(QELS)評価と交互にして、効率的な脂質ナノ粒子合成を導くことができる。
【0308】
いくつかの実施形態では、精製LNPの大部分、すなわちLNPの約50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%超は、約70~150nm(例えば、約145nm、約140nm、約135nm、約130nm、約125nm、約120nm、約115nm、約110nm、約105nm、約100nm、約95nm、約90nm、約85nm又は約80nm)のサイズを有する。いくつかの実施形態では、精製脂質ナノ粒子の実質的に全て(例えば、80%又は90%超)は、約70~150nm(例えば、約145nm、約140nm、約135nm、約130nm、約125nm、約120nm、約115nm、約110nm、約105nm、約100nm、約95nm、約90nm、約85nm又は約80nm)のサイズを有する。
【0309】
ある種の実施形態では、LNPは、30~200nmの平均直径を有する。
【0310】
様々な実施形態では、LNPは、80~150nmの平均直径を有する。
【0311】
いくつかの実施形態では、本組成物中のLNPは、150nm未満、120nm未満、100nm未満、90nm未満、80nm未満、70nm未満、60nm未満、50nm未満、30nm未満又は20nm未満の平均サイズを有する。
【0312】
いくつかの実施形態では、本組成物中のLNPの約70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%超は、約40~90nm(例えば、約45~85nm、約50~80nm、約55~75nm又は約60~70nm)又は約50~70nm(例えば、約55~65nm)の範囲のサイズを有し、噴霧による肺送達に適している。
【0313】
いくつかの実施形態では、本開示によって提供される医薬組成物中のLNPの分散度又は分子サイズの不均一性の尺度(PDI)は、約0.5未満である。いくつかの実施形態では、LNPは、約0.5未満、約0.4未満、約0.3未満、約0.28未満、約0.25未満、約0.23未満、約0.20未満、約0.18未満、約0.16未満、約0.14未満、約0.12未満、約0.10未満又は約0.08未満のPDIを有する。PDIは、上述のようにZetasizerマシンによって測定することができる。
【0314】
いくつかの実施形態では、本明細書に提供される医薬組成物中の精製LNPの約75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%又は99%超は、それぞれの個々の粒子内にmRNAを封入する。いくつかの実施形態では、医薬組成物中の精製脂質ナノ粒子の実質的に全て(例えば、80%又は90%超)は、個々の粒子内にmRNAを封入する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、50%~99%又は約60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、92%、95%、98%若しくは99%より大きい封入効率を有する。典型的には、本明細書で使用するための脂質ナノ粒子は、少なくとも90%(例えば、少なくとも91%、92%、93%、94%又は95%)の封入効率を有する。
【0315】
いくつかの実施形態では、LNPは、1対10のN/P比を有する。いくつかの実施形態では、脂質ナノ粒子は、1、約1、約2、約3、約4、約5、約6、約7又は約8を超えるN/P比を有する。ある種の実施形態では、本明細書の典型的なLNPは、4のN/P比を有する。
【0316】
いくつかの実施形態では、本開示による医薬組成物は、少なくとも約0.5μg、1μg、5μg、10μg、100μg、500μg又は1000μgの封入mRNAを含有する。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、約0.1μg~1000μg、少なくとも約0.5μg、少なくとも約0.8μg、少なくとも約1μg、少なくとも約5μg、少なくとも約8μg、少なくとも約10μg、少なくとも約50μg、少なくとも約100μg、少なくとも約500μg又は少なくとも約1000μgの封入mRNAを含有する。
【0317】
いくつかの実施形態では、mRNAは、DNA鋳型の化学合成又はインビトロ転写(IVT)によって作製することができる。このプロセス、IVTプロセスでは、cDNA鋳型を使用してmRNA転写物を生成し、DNA鋳型をDNaseによって分解する。転写物を深層濾過及び接線流濾過(TFF)によって精製する。精製された転写物は、キャップ及び尾部を付加することによって更に修飾され、修飾されたRNAは、深層濾過及びTFFによって再び精製される。
【0318】
次いで、mRNAを水性緩衝液中で調製し、LNPの脂質成分を含有する両親媒性溶液と混合する。LNPの4つの脂質成分を溶解するための両親媒性溶液は、アルコール溶液であり得る。いくつかの実施形態では、アルコールはエタノールである。水性緩衝液は、例えば、クエン酸塩、リン酸塩、酢酸塩又はコハク酸塩緩衝液であり得、約3.0~7.0、例えば、約3.5、約4.0、約4.5、約5.0、約5.5、約6.0又は約6.5のpHを有し得る。緩衝剤は、塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩及び/又はカルシウム塩)等の他の成分を含み得る。特定の実施形態では、水性緩衝液は、1mMクエン酸塩、150mM NaCl、pH4.5を有する。
【0319】
mRNA-LNP組成物を作製するための例示的で非限定的なプロセスは、緩衝mRNA溶液をエタノール中の脂質の溶液と制御された均一な様式で混合することを含み、脂質:mRNAの比率は、混合プロセスを通して維持される。この例示的な実施例では、mRNAは、クエン酸一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物及び塩化ナトリウムを含有する水性緩衝液中に存在する。mRNA溶液を溶液に添加する(1mMクエン酸緩衝液、150mM NaCl、pH4.5)。4つの脂質(例えば、カチオン性脂質、PEG化脂質、コレステロール系脂質及びヘルパー脂質)の脂質混合物をエタノールに溶解する。mRNA水溶液とエタノール脂質溶液を、ほぼ「無パルス」ポンプシステムを備えた「T」ミキサー内で4:1の体積比で混合する。次いで、得られた混合物を下流精製及び緩衝液交換に供する。緩衝液交換は、透析カセット又はTFFシステムを使用して達成され得る。TFFを使用して、T混合プロセスによる形成直後に得られた新生LNPを濃縮及び緩衝液交換することができる。ダイアフィルトレーションプロセスは、透過液流と同じ速度で適切な緩衝液を添加することによって体積を一定に保つ連続操作である。
【0320】
VII.hMPVワクチンの包装及び使用
本明細書に記載の1つ以上のhMPV Fポリペプチド抗原は、ワクチンとして対象に投与され得る。本明細書に記載のhMPVワクチンは、非経口(例えば、筋肉内、皮内、又は皮下)投与又は鼻咽頭(例えば、鼻腔内)投与のために製剤化又は包装することができる。様々な実施形態では、hMPVワクチンは、肺投与のために製剤化又は包装され得る。様々な実施形態では、hMPVワクチンは、静脈内投与のために製剤化又は包装され得る。ワクチン組成物は、即時製剤の形態であり得、組成物は、凍結乾燥され、使用直前に生理学的緩衝液(例えば、PBS)で再構成される。ワクチン組成物は、水溶液又は凍結水溶液の形態でも出荷及び提供され得、再構成なしに対象に直接投与され得る(以前に凍結されている場合、解凍後)。
【0321】
したがって、本開示は、単一の容器でhMPVワクチンを提供するか、又は1つの容器(例えば、第1の容器)でhMPVワクチンを提供し、別の容器(例えば、第2の容器)で再構成するための生理学的緩衝液を提供するキット等の製造品を提供する。容器は、単回使用用量又は複数回使用用量を含有し得る。容器は、前処理されたガラスバイアル又はアンプルであり得る。製品は、使用説明書も含み得る。
【0322】
hMPVワクチンの投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、気管内、硬膜外及び経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮又は皮膚粘膜ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。
【0323】
特に例示的な実施形態では、ワクチンは、注射によって筋肉内(IM)投与される。hMPVワクチンは、例えば上腕の三角筋で対象に注射することができる。そのような実施形態では、注射剤は、従来の形態で、すなわち、液体溶液若しくは懸濁液として、注射前に液体の溶液若しくは懸濁液とするのに適した固体形態として、又はエマルションとしてのいずれかで調製される。いくつかの実施形態では、注射溶液及び懸濁液は、滅菌粉末、凍結乾燥粉末、又は顆粒から調製される。
【0324】
本明細書に記載の医薬組成物は、標準的な針及び注射器を用いて、例えば、筋肉内、皮下又は静脈内に送達することができ、標準的な針及び注射器は、任意選択的に予め充填されている。更に、ペン送達装置(例えば、注入器(例えば、単室又は多室)又は自動注入器ペン)は、本明細書に記載の医薬組成物を送達する用途を有する。そのようなペン送達装置は、再使用可能又は使い捨て可能であり得る。いくつかの実施形態では、ワクチンは、吸入で使用するために提供され、予め充填されたポンプ、エアロゾル化装置又は吸入器で提供される。ある種の実施形態では、充填済シリンジを鼻腔内送達のための滴下投与に利用することができる。
【0325】
hMPVワクチンは、それを必要とする対象に、予防有効量、すなわち十分な時間(例えば、1年、2年、5年、10年又は生涯)にわたって標的病原体に対する十分な免疫防御を提供する量で投与することができる。十分な免疫保護は、例えば、病原体による感染に関連する症状の予防又は緩和であり得る。いくつかの実施形態では、所望の予防効果を達成するために、ワクチンの複数回用量(例えば、2回投与)を、それを必要とする対象に投与する(例えば、注射)。用量(例えば、初回用量及び追加用量)は、少なくとも例えば2週間、3週間、4週間、1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月、4ヶ月、5ヶ月、6ヶ月、1年、2年、5年又は10年の間隔で分けられ得る。
【0326】
VIII.医薬組成物
本開示に従って精製されたhMPVポリペプチド抗原は、例えばワクチンとして使用するための医薬組成物中の成分として有用であり得る。これらの組成物は、典型的には、RNA又は結合ポリペプチド及び薬学的に許容される担体を含む。本開示の医薬組成物は、小分子免疫賦活化剤(例えば、TLRアゴニスト)等の1つ以上の追加の成分も含み得る。本開示の医薬組成物は、リポソーム、水中油型エマルション又は微粒子等のRNAのための送達系も含み得る。いくつかの実施形態では、医薬組成物は、脂質ナノ粒子(LNP)を含む。ある種の実施形態では、組成物は、LNP内に封入された抗原コード核酸分子を含む。
【0327】
hMPV結合ポリペプチドを患者に投与することを含む方法であって、hMPV結合ポリペプチドアンタゴニストが医薬組成物中に含まれる方法が提供される。本明細書に記載の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、及び適切な移入、送達、耐性等を提供する他の薬剤と共に製剤化される。多数の適切な製剤は、全ての医薬化学者に知られている処方書:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAに見ることができる。これらの製剤には、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、脂質(カチオン性又はアニオン性)含有小胞(LIPOFECTIN(商標)等)、DNAコンジュゲート、無水吸収ペースト、水中油型及び油中水型エマルション、エマルションカルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、及びカルボワックスを含有する半固体混合物が含まれる。Powell et al.“Compendium of excipients for parenteral formulations”PDA(1998)J Pharm Sci Technol.52:238-311も参照されたい。
【0328】
様々な送達系が公知であり、本明細書に記載の医薬組成物を投与するために使用することができ、例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセル、変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体媒介性エンドサイトーシスに封入することができる(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432)。投与方法には、皮内、筋肉内、腹腔内、静脈内、皮下、鼻腔内、気管内、硬膜外及び経口経路が含まれるが、これらに限定されない。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば注入又はボーラス注射によって、上皮又は皮膚粘膜ライニング(例えば、口腔粘膜、直腸及び腸粘膜等)を介した吸収によって投与され得、他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与され得る。
【0329】
本明細書に記載の医薬組成物は、標準的な針及びシリンジ(例えば、充填済シリンジ)を用いて皮下又は静脈内に送達することができる。更に、皮下送達に関して、ペン送達装置(例えば、自動注射器ペン)は、本明細書に記載の医薬組成物を送達する際の用途を容易に有する。
【0330】
副鼻腔への直接投与のために、本明細書に記載の医薬組成物は、例えば、マイクロカテーテル(例えば、内視鏡及びマイクロカテーテル)、エアロゾル化装置、粉末ディスペンサー、ネブライザー又は吸入器を使用して投与され得る。この方法は、エアロゾル化製剤中のhMPV結合ポリペプチドの投与を必要とする対象への投与を含む。エアロゾル化抗体は、例えば、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる米国特許第8,178,098号明細書に記載されているように調製することができる。
【0331】
注射用製剤としては、静脈注射用、皮下注射用、皮内注射用、及び筋肉注射用、点滴用等の剤形が挙げられ得る。これらの注射用製剤は、公知の方法により調製することができる。例えば、注射用製剤は、例えば、注射に従来使用されている滅菌水性媒体又は油性媒体に上記の抗体又はその塩を溶解、懸濁又は乳化することによって調製され得る。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、ブドウ糖及びその他の補助剤を含む等張液等が挙げられ、アルコール(例えば、エタノール)、多価アルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤(例えば、ポリソルベート80、HCO-50(硬化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50mol)付加物))等の適当な可溶化剤と組み合わせて使用することができる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、大豆油等が挙げられ、安息香酸ベンジル、ベンジルアルコール等の可溶化剤と組み合わせて使用することができる。このようにして調製された注射剤は、典型的には適当なアンプルに充填される。
【0332】
有利には、上記の経口又は非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量に適合するのに適した単位用量の剤形に調製される。単位用量のそのような剤形としては、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル)、坐剤等が挙げられる。
【0333】
IX.ワクチン接種方法
本明細書に開示されるhMPVワクチンは、hMPV Fタンパク質に対する免疫応答を誘導するために対象に投与することができ、対象の抗抗原抗体価は、本明細書に開示されるhMPVワクチンを接種していない対象の抗抗原抗体価と比較して又はhMPVに対する代替ワクチンと比較して、ワクチン接種後に増加する。「抗-抗原抗体」は、抗原に特異的に結合する血清抗体である。
【0334】
一態様では、本開示は、本明細書に記載のhMPVワクチンを対象に投与することを含む、hMPVに対する免疫応答を誘発する、又はhMPV感染から対象を保護する方法を提供する。本開示はまた、hMPVに対する免疫応答を誘発することにおいて、又はhMPV感染から対象を保護することにおいて使用するための、本明細書に記載のhMPVワクチンを提供する。本開示はまた、hMPVに対する免疫応答を誘発するための、又はhMPV感染から対象を保護するためのワクチンの製造に使用するための、本明細書に記載のhMPV mRNAを提供する。
【0335】
ある種の実施形態では、対象は、アジュバントと同時投与されるhMPVタンパク質ワクチンを投与された対象と比較して、hMPVワクチンの投与後にhMPVに対する中和抗体の同等の血清濃度を有する。
【0336】
ある種の実施形態では、hMPVワクチンは、hMPV Fタンパク質の部位φへの結合特異性で抗体の血清濃度を増加させる。
【0337】
ある種の実施形態では、hMPVワクチンは、hMPV Fタンパク質の部位Vへの結合特異性で抗体の血清濃度を増加させる。
【0338】
ある種の実施形態では、hMPVワクチンは、既存のhMPV免疫を有する対象における中和抗体の血清濃度を増加させる。
【0339】
本発明をよりよく理解するために、以下の実施例を記載する。これらの実施例は、例示のみを目的とし、決して本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【実施例】
【0340】
特定の実施形態の前述の説明は、本開示の一般的な性質を十分に明らかにするため、他者は、当業者の技術の範囲内で知識を適用することにより、本開示の一般的な概念から逸脱することなく、過度の実験を行うことなく、そのような特定の実施形態を様々な用途に容易に修正及び/又は適合させることができる。したがって、そのような適合形態及び修正形態は、本明細書に提示された教示及びガイダンスに基づいて、開示された実施形態の均等物の意味及び範囲内にあることが意図される。本明細書の表現又は用語は、本明細書の用語又は表現が教示及びガイダンスに照らして当業者によって解釈されるように、限定ではなく説明を目的とするものであることを理解されたい。
【0341】
実施例1:融合前安定化hMPV F糖タンパク質抗原構築物の作製
融合前立体配座の安定性を改善し、精製を強化し、より高い中和抗体価を誘導するために、候補hMPV融合前F抗原構築物のパネルを、A2-CAN97-83(配列番号1)と命名されたカナダ由来のA2サブタイプに基づく野生型hMPV-F抗原における変異を用いて設計した。
【0342】
候補hMPV融合前F抗原構築物のパネルの設計検討事項のグラフ表示を、2つの例示的構築物、D185P(配列番号5)及びT160F/N46V(配列番号7)について
図1に示す。各構築物は、以下の特徴を含んでいた:(1)シグナルペプチド;(2)アミノ酸100~101におけるpre-F切断部位変異(QSからRR);(3)膜貫通ドメイン及び細胞質尾部の除去;(4)フィブリチンモチーフ(すなわち、foldonドメイン)の付加;(5)HRV-3C切断部位;(6)8xHisタグ及びStrep IIタグ;並びに(7)項目(4)~(6)に対する適切なリンカー(配列番号3)
【0343】
この骨格から、インシリコ分析を行って、充填空洞変異又は界面安定性変異のいずれかを付加することによってpre-F立体配座安定性を増加させるであろう一点又は二点変異を決定した。合計で、候補hMPV融合前F抗原のパネルは、表1の列1に示すように21の異なる構築物で構成されていた。
【0344】
実施例2:融合前安定化hMPV F抗原構築物のタンパク質発現の評価
候補hMPV融合前F抗原構築物のそれぞれに対する核酸分子を単離し、発現ベクターにクローニングした。Expi293Fヒト細胞を使用した哺乳動物一過性トランスフェクション時の各構築物のタンパク質発現の産生を評価した。構築物のトランスフェクションの24時間後、細胞溶解物又は上清をウエスタンブロットによる分析のために回収した。
【0345】
21の候補設計のうち、9つのタンパク質抗原が産生された。しかし、1L培養物からのSDS-PAGEによって決定したところ、4つのタンパク質抗原のみが90%以上の純度を有していた。21個の構築物全てのタンパク質発現特性を表1に示す。高いタンパク質産生及び純度を有する構築物は、以下の変異を有していた:D185P、T160F_N46V、K138F、及びG366F_K362F。
【0346】
【0347】
実施例3:マウスにおける融合前安定化hMPV F抗原タンパク質構築物の免疫原性
続いて、表1に記載の純度90%以上の4つの候補hMPV F抗原構築物を、A1株由来の参照hMPV-Fタンパク質と比較して、マウスにおける免疫原性について評価した。
【0348】
表2に示す8匹のBALB/cマウス(N=8)の群に、水酸化アルミニウム(Al(OH)
3)をアジュバントとして添加した0.5μg用量のタンパク質抗原を、0日目(D)及び21日目(D)に筋肉内(IM)注射によって投与した。全てのマウスから採血し、各ワクチン投与前並びに最後のワクチン接種の2週間後(D35)に血清を抽出した。次いで、血清を使用して、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)(
図2)及びhMPVマイクロ中和アッセイ(
図3)によって測定される循環抗hMPV-F IgG力価を決定して、抗体応答の中和活性を決定した。post-F群の全てのタンパク質が実際にpost-F立体配座にあることを確実にするために、タンパク質を投与の準備に先立って10分間70℃に加熱した。
【0349】
【0350】
データは、A2-K138F変異を有する構築物がhMPV-F ELISAによって最も高い結合抗体価を誘導し、A2-T160F_N46V、A2-G366F_K362F、最後にA2-D185Pが続くことを示す(
図2)。hMPV A2-GFPウイルスを用いたマイクロ中和によって評価した場合、A2-T160F_N46Vが最も高い中和力価を有し、A2-K138F、A2-D185P及びA2-G366F_K362Fがこれに続いた(
図3)。
【0351】
A2-K138Fは最も高い結合抗体価及び2番目に高い中和抗体価を有したが、この構築物は溶液中で凝集体を形成することが見出され、不適切なタンパク質フォールディングの可能性を示し、したがって更なる評価から除外された。A2-G366F_K362Fもまた、2番目に低い結合抗体価及び最も低い中和抗体価を有したので、更なる評価から除外された。したがって、A2-D185P及びA2-T160F_N46Vは、最高品質の抗体を誘導することが見出され、実施例4に記載されるように純度、サイズ及び熱安定性を評価するための高度分析解析のために選択された。
【0352】
実施例4:融合前安定化hMPV F抗原構築物の物理化学的特徴付け
A2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物から産生されたタンパク質の純度、サイズ及び熱安定性を更に特徴付けるために、HP-SEC、SEC-HPLC、SEC-MALS及びnanoDSF分析を行った。
【0353】
純度及びサイズ
HP-SEC、SEC-HPLC、及びSEC-MALS分析の結果を以下の表3に要約する。
【0354】
【0355】
MALSからの分子量(MW)を三量体ピークについて決定した。SEC-HPLCの条件は以下の通りであった:TSK 3000SWxl SECカラム、リン酸緩衝液(0.2MのNaH2PO4、0.1Mのアルギニン、1%のIPA、pH6.5)、流速0.5ml/分。SEC-MALSの条件は以下の通りであった:1.7μM、200ÅのBEHタンパク質カラム、及びpH7.5の50mMのTris緩衝液、流速0.3ml/分。
【0356】
図4は、参照A1タンパク質、A1-A185P及びA1-post-F、並びに以下のA2タンパク質抗原候補、A2-T160F_N46V及びA2-D185PについてのSEC-MALS結果を示す。4つ全てのタンパク質のデータも表3にまとめている。両方のA1参照タンパク質は、A1-A185P及びA1-post-Fについて、それぞれ98.8%以上の三量体形成並びに224及び283kDaのMWを示す。A2-T160F_N46V及びA2-D185P構築物由来のタンパク質は、それぞれ267及び224kDaのMWを有する97.4%及び97.1%の三量体で構成されていた。
【0357】
熱安定性
タンパク質変性の開始温度(Tonset)及び融点(Tm)を、A1-pre-F及びA1-post-Fタンパク質並びにA2候補タンパク質抗原、A2-T160F_N46V及びA2-D185Pの大バッチロット及び小バッチロットの両方でナノスケール示差走査蛍光測定(nanoDSF)を使用して決定した。試料を製剤緩衝液で最終濃度0.5mg/mlに希釈し、二連でnanoDSFキャピラリーに充填した。全ての測定は、nanoDSF装置を使用して行った。加熱速度は、20℃から95℃まで毎分1.5℃であった。データは、PR.Stability Analysis v1.01を用いて記録し、分析した。
【0358】
図5は、A1-preF(A185P)及びA2-postF(n=3)の融解曲線を示し、それぞれ60.12℃及び86.7℃のTm値をもたらす。このデータは、nanoDSFがA1の融合前抗原と融合後抗原とを区別することができ、融解温度が約27℃異なることを示している。
【0359】
興味深いことに、A2 hMPV-F候補タンパク質抗原の熱安定性特性を比較すると、
図6に見られるように、A2-T160F_N46V構築物に由来するタンパク質は、A2-D185P構築物から産生されるより最小限に操作されたタンパク質よりも熱安定性であり、ほぼ9℃の融点上昇を伴うことが分かった(Tmそれぞれ70.4℃及び79.3℃)。
【0360】
実施例5:融合前安定化hMPV F抗原構築物をコードするmRNA
hMPV F抗原構築物の免疫原性を更に改善できるかどうかを決定するために、A2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物をmRNA系ワクチンでの試験のために選択した。A2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物のアミノ酸配列を、それぞれ配列番号9及び配列番号11に示す。A2-D185P構築物及びA2-T160F_N46V構築物のmRNA ORFを、それぞれ配列番号6及び配列番号8に示す。A2-D185P構築物及びA2-T160F_N46V構築物のためのコドン最適化mRNA ORFを、それぞれ配列番号17及び配列番号18に示す。
【0361】
本明細書に記載のmRNAは、hMPV Fタンパク質抗原をコードするオープンリーディングフレーム(ORF)、少なくとも1つの5’非翻訳領域(5’UTR)、少なくとも1つの3’非翻訳領域(3’UTR)、及び少なくとも1つのポリアデニル化(ポリ(A))配列を含んでいた。mRNAは、以下の構造を有する5’キャップを更に含んでいた。
【化16】
【0362】
5’UTR及び3’UTRの核酸配列を、それぞれ配列番号13及び14に列挙する。
【0363】
実施例6:マウスにおける融合前安定化hMPV F抗原mRNA構築物の免疫原性
mRNAを発現するA2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物の相対的な免疫原性を、脂質ナノ粒子(LNP)と共に製剤化されたmRNAによるIM注射の前後に循環抗hMPV-F力価を測定することによってマウスにおいて試験した。各mRNAを、40%のカチオン性脂質OF-02、30%のリン脂質DOPE、1.5%のPEG化脂質DMGPEG2000及び28.5%のコレステロールで構成されるLNPにカプセル化した。或いは、LNP脂質は、カチオン性脂質:PEG化脂質:コレステロール:リン脂質が、40:1.5:28.5:30である比として列挙され得る。
【0364】
8匹のBALB/cマウス(N=8)の群に、D0及びD21に1μg用量をIM注射によって投与した。全てのマウスから採血し、各ワクチン投与前並びに最後のワクチン接種の2週間後(D35)に血清を抽出した。次いで、血清を使用して、ELISA(
図7)及びhMPVマイクロ中和アッセイ(
図8)によって測定される循環抗hMPV-F IgG力価を決定して、抗体応答の中和活性を決定した。
【0365】
mRNAを発現するA2-D185P及びA2-T160F_N46V構築物の両方が、hMPV-F ELISAによって、全ての時点で同様に高力価の結合抗体を誘導した(
図7)。A2-GFPウイルスを用いたマイクロ中和によって評価した場合、同様に強力な中和力価が両構築物によって誘導された(
図8)。したがって、mRNA-LNPを介して発現させた場合、両方の抗原は同様に免疫原性であった。
【0366】
実施例7:hMPV及びRSVを対象としたmRNA多病原体ワクチンの合理的設計
RSV及びhMPVは、インフルエンザウイルスに次いでヒト集団内で広範な罹患率を引き起こす呼吸器ウイルスである(Collins et al.2013,Fields Virology.6 ed:Lippincott Williams and Wilkins)。疾患負荷にもかかわらず、両方のウイルスに対するワクチン及び治療戦略は依然として限られている。hMPV表面糖タンパク質とRSV表面糖タンパク質との間の実質的な相同性、並びに両方のウイルスに対する保護がより少ない注射をもたらし、ワクチンスケジュールを単純化するという実際的な考慮事項を考慮して(Lauer et al.2017,Clin Vaccine Immunol.24(1):e00298-16)、RSV及びhMPV抗原構築物を含む混合mRNAワクチンを設計した。
【0367】
したがって、以下の2つのmRNA:(1)RSV F抗原構築物、FD3;及び(2)hMPV F抗原構築物、A2-CAN97-83を含む混合ワクチンを共製剤化した。
【0368】
mRNA hMPV構築物、並びに使用される5’及び3’UTRは、実施例6に記載されている。
【0369】
使用されるmRNA RSV構築物は、米国仮特許出願第63/276,233号明細書に記載されており、あらゆる目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0370】
実施例8:マウスにおけるhMPV及びRSVに対するmRNA多病原体ワクチンの免疫原性
実施例7に記載のhMPV及びRSVに対するmRNA多病原体ワクチンの相対免疫原性を、脂質ナノ粒子(LNP)を配合したmRNAをIM注射する前後に循環抗RSV FD3及び抗hMPV-F力価を測定することによってマウスにおいて評価した。各mRNAを、40%のカチオン性脂質OF-02、30%のリン脂質DOPE、1.5%のPEG化脂質DMGPEG2000及び28.5%のコレステロールで構成されるLNPにカプセル化した。或いは、LNP脂質は、カチオン性脂質:PEG化脂質:コレステロール:リン脂質が、40:1.5:28.5:30である比で列挙され得る。
【0371】
5群のBALB/cマウス(N=8)を、以下のレジメンに従ってD0及びD21のIM注射を介して免疫した:(1)群1-右後肢に投与した総体積50μL中のcOrn-EE1 LNPと製剤化した1μg用量のRSV mRNAを投与した。(2)群2-右後肢に投与した総体積50μL中のcOrn-EE1 LNPと製剤化した1μg用量のhMPV mRNAを投与した。(3)群3-各後肢に50μLで送達した、100μLの総体積の単一のcOrn-EE1 LNP中に1μgのRSV及び1μgのhMPV mRNAを含む共製剤を投与した。(4)群4-RSV免疫原性対照として右後肢に投与した総体積50μL中にミョウバンをアジュバントとして添加した1μgのRSV pre-Fタンパク質ナノ粒子を投与した。(5)群5-hMPV免疫原性対照として右後肢に投与した総体積50μL中にミョウバンをアジュバントとして添加した1μgのhMPV pre-Fを投与した。
【0372】
各ワクチン投与前並びに最後のワクチン接種(D35)の2週間後に全てのマウスから採血し、D35血清をELISAで試験して循環抗RSV及び抗hMPV-F力価を決定し、マイクロ中和アッセイで試験してRSV及びhMPV抗体応答の中和活性を決定した。
【0373】
RSV mRNAは、単独で与えられた場合、又はhMPVと共製剤化された場合、RSV-F ELISAによって同様の力価を誘導した(
図9)。同様に、hMPV mRNAは、単独で与えられたとき、又はRSVと共製剤化されたとき、hMPV-F ELISAによって同様の力価を誘導した(
図10)。RSV A2-GFPウイルスを用いたマイクロ中和によって評価した場合、単独又はhMPVと組み合わせて送達されたRSV mRNAによって同様に強力な中和力価が誘導された(
図11)。hMPV A2-GFPウイルスを用いたマイクロ中和によって評価した場合、単独又はRSVと組み合わせて送達されたhMPV mRNAによって同様に強力な中和力価が誘導された(
図12)。したがって、単一のLNPとして送達されるRSV及びhMPV mRNAの共製剤による免疫化は、単独で送達されるいずれの抗原に対しても同様に免疫原性である。
【0374】
実施例9:hMPV Fポリペプチド抗原-抗体結合の分析
hMPV F構築物への抗体の結合をオクテットで試験した。全ての試料及び抗体を動的緩衝液(ForteBio動的緩衝液1X希釈+PBS)で希釈して、それぞれ5μg/mL及び1μg/mLの最終濃度にした。抗体をプロテインAバイオセンサにロードし、全ての抗原の結合を以下の条件で試験した:初期ベースライン(120秒)、抗体の負荷(180秒)、第2のベースライン(120秒)、抗原の会合(180秒)、抗原の解離(120秒)。結合結果を、ForteBio Data Analysis 12.0ソフトウェアを使用して分析した。
【0375】
表4は、A2-T160F_N46V及びA2-D185Pが、mAb MPE8、101F、338及びDS7について予想される結合パターンを有したことを示す。
【0376】
【0377】
実施例10:hMPV F抗原発現
HEK293細胞-30万細胞/ウェル
次に、HELA細胞を6ウェルプレートに2mLDMEM+10%FBS中30万細胞/ウェルで播種した。翌日、リポフェクタミン2000を含む1μg/ウェルのhMPV mRNA構築物で細胞をトランスフェクトした。翌日、細胞を回収し、500μL/ウェルのRIPA+1xHALT+0.2%Omnicleaveに溶解した。溶解物を氷上で10分間インキュベートした。15μLの溶解物を5μLのNuPAGE LDS試料緩衝液と合わせた。
【0378】
試料を、185Vで75分間、8~16%勾配SDS-PAGEで泳動した。タンパク質をニトロセルロース膜に転写した。ブロットを室温で1時間、インターセプトタンパク質非含有ブロッキング緩衝液でブロッキングした。ブロットを、1次抗体であるNBP2-50505マウス抗hMPV-F(hMPV24)(Novus)により、インターセプトタンパク質非含有ブロッキング緩衝液において4℃で一晩染色した。ブロットをTBSTにより3x5分間洗浄した。ブロットを、インターセプトブロッキング緩衝液中のロバ抗マウス800二次抗体により室温で1時間染色した。ブロットをTBSTで4x5分洗浄し、次いで、Licor Odysseyでスキャンした。
【0379】
結果を
図13に示す。D185Pは、60kDaの予想分子量付近で強い発現を示した。T160F_N46Vはタンパク質発現を示したが、シグナルはD185Pより有意に低かった。
【0380】
HSKM細胞
mRNAを24ウェルプレート中のヒト骨格筋(HSKM)細胞にトランスフェクトした。24時間後、フローシトメトリを使用してエピトープ発現を測定した。細胞数/ウェル=100k。24時間のトランスフェクション後、ウェルをPBSで洗浄し、トリプシン(0.25%)を添加して細胞を分離した。細胞をフローシトメトリのために96ウェルプレートに分配し、抗体を添加する前に細胞内染色(Cytoperm)について処理した。二次抗体はヤギ抗ヒトIgG(Jackson Immuno Research-カタログ番号109-115-098)であった。
【0381】
MNR hMPV D185P発現レベルは、MNR hMPV CAN97-83と同様であった。MNR hMPV T160F_N46Vは、全てのエピトープについてより高い発現レベルを示した。
【0382】
実施例11:MIMICシステムにおけるpre-及びpost-安定化hMPV F抗原タンパク質構築物の免疫原性
序論:
MIMIC(著作権)(モジュール免疫インビトロ構築物(Modular Immune In vitro Construct))システムは、インビボでワクチン接種/変曲部位で起こるインビトロでの自然免疫応答及び適応免疫応答を刺激することができる。Williams et al.(2015)Sanofi Pasteur poster,“In vitro differentiation of class-switched YF specific antibody secreting cells from naive B cells”。MIMICシステムを使用すると、ヒト生理学に固有のいくつかの態様、例えばHLAハプロタイプ、年齢、自己免疫像、及び性別を再現することができ、それによって動物モデルで行われる免疫原性研究を補完する。Higbee et al.(2009)ATLA37:19-27。
【0383】
この目的のために、pre-及びpost-hMPV F抗原タンパク質構築物を、対照と比較して免疫原性応答の質を評価するために、MIMICシステムで試験した。対照群を含めた:未処理対照(ヒト骨格筋細胞を含まない(HSKを含まない)抗原なし)、参照抗原-フェリチンナノ粒子に融合したRSV pre-Fタンパク質(pre-F NP)及びポリオワクチン(IPOL)。
【0384】
材料及び方法
簡潔には、22人の異なるヒト血液ドナーから磁気ビーズ分離キットを介してPBMCを採取した。ヒト樹状細胞(DC)及びそれから選択されるB細胞をヒト骨格筋細胞(HSKMC)に添加して共培養し、hMPV pre-F抗原タンパク質(100ng/ml又は500ng/ml)又はhMPV post-F抗原タンパク質(100ng/ml)のいずれかで刺激した。B細胞応答については、14日間の共培養の後、上清を回収し、抗体の特異性及び機能について分析した。
【0385】
結果:
図15は、MIMIC設定を示す。同様のレベルの発現が、T160F_N46V及びD185Pについて、75ng/ml及び375ng/mlの用量で、共通のpre-F/post-Fエピトープについて観察された(
図14、パネルA~C)。活性化MIMIC共培養を確認するために、以前に分析したポリオワクチン(IPOL)及び抗原(RSV pre-F-NP)を陽性対照として使用した。
図16に示すように、パネルA~C、1:50希釈でのIPOL処理は、未処理対照と比較して、3つのポリオ株(ポリ1、2、及び3)に対する抗体応答を誘発した。同様に、共培養の50ng/mlのRSV pre-F NP処理は、RSV pre-F(
図17、パネルA)及びRSV post-F(
図17、パネルB)の両方に対するIgG特異的抗体応答を誘発した。更に、これらの抗体は、RSV中和アッセイ(
図17、パネルC)で測定した場合にも機能的であった。
【0386】
hMPVのpre-F及びpost-Fタンパク質は、高いpre-F及びpost-F抗体応答(
図18、パネルA及びB)及び高い中和抗体価(
図19)を示した。
【0387】
実験群、hMPV pre-F抗原タンパク質又はhMPV post-F抗原タンパク質で処理した共培養物からの上清は、抗原対照なしと比較して、hMPV pre-F(
図20、パネルA)及びhMPV post-F抗原(
図20、パネルB)の両方に対する堅牢なIgG抗体応答を誘発した。また、これらの抗体は、hMPV中和アッセイ(
図21)で測定したところ、機能的であった。3つ全ての処理群からの抗体は、hMPV pre-及びpost-融合F抗原に結合し、ウイルス感染力を中和し、pre-及びpost-hMPVが中和エピトープを共有するという考えを裏付けている。
【0388】
本開示の他の実施形態は、本明細書の考察及び本明細書に開示される開示の実施から当業者に明らかであろう。本明細書及び実施例は、例示としてのみ考慮されることが意図され、本開示の真の範囲及び趣旨は、以下の特許請求の範囲によって示される。
【0389】
本明細書で引用される全ての特許及び刊行物は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【配列表】
【国際調査報告】