(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】トランスミッションへの組付け用のオイルガイドチャネル部品、およびオイルガイドチャネル部品を備えるトランスミッション
(51)【国際特許分類】
F16H 57/04 20100101AFI20241108BHJP
【FI】
F16H57/04 N
F16H57/04 J
F16H57/04 Q
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532215
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2022080923
(87)【国際公開番号】W WO2023099121
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021213491.2
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(72)【発明者】
【氏名】ヘゲダス,チャバ
(72)【発明者】
【氏名】サレツキ,マンフレート
(72)【発明者】
【氏名】ゾルド,ペーテル
(72)【発明者】
【氏名】シュリッテンバウアー,トビアス
【テーマコード(参考)】
3J063
【Fターム(参考)】
3J063AA01
3J063AB02
3J063AC01
3J063AC11
3J063BA11
3J063BB46
3J063BB48
3J063XD03
3J063XD17
3J063XD42
3J063XD47
3J063XD72
3J063XD73
3J063XF02
3J063XF12
3J063XF14
(57)【要約】
本提案は、トランスミッション(100)、特に自動車トランスミッションへの組付け用のオイルガイドチャネル部品(1)であって、オイルガイドチャネル部品(1)が、受入開口部(11)および排出開口部(12)を有する案内チャネル(2)を備え、案内チャネル(2)が、受入開口部(11)から排出開口部(12)へのオイル案内方向(F)と、オイル案内方向(F)に垂直に周方向で閉じられたチャネル壁(21)とを有し、オイルガイドチャネル部品(1)が、案内チャネル(2)を通して案内されたオイルを貯留するための少なくとも1つのオイル収集領域(13a)をさらに備え、オイルガイドチャネル部品(1)が、少なくとも1つのオイル収集領域(13a)からのオイル用の少なくとも1つの流出口(15a)を備える、オイルガイドチャネル部品(1)に関する。少なくとも1つのオイル収集領域(13a)が、第1の槽壁(25)および第1の槽底(24)を有する第1の貯留槽(13)と、第2の槽壁(27)および第2の槽底(26)を有する第2の貯留槽(14)とを含み、案内チャネル(2)が、第1の槽壁(25)および第2の槽壁(27)に隣接し、案内チャネル(2)のオイル案内方向(F)で見て、第1の槽底(24)が、受入開口部(11)と排出開口部(12)との間に配置され、第2の槽底(26)が、受入開口部(11)と第1の槽底(24)との間に配置されることが提案される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッション(100)への組付け用の、特に自動車トランスミッションへの組付け用のオイルガイドチャネル部品(1)であって、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、受入開口部(11)および排出開口部(12)を有する案内チャネル(2)を備え、前記案内チャネル(2)が、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)へのオイル案内方向(F)と、前記オイル案内方向(F)に垂直に周方向で閉じられたチャネル壁(21)とを有し、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、前記案内チャネル(2)を通して案内されたオイルを貯留するための少なくとも1つのオイル収集領域(13a)をさらに備え、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、前記少なくとも1つのオイル収集領域(13a)からのオイル用の少なくとも1つの流出口(15a)を備える、オイルガイドチャネル部品(1)において、前記少なくとも1つのオイル収集領域(13a)が、第1の槽壁(25)および第1の槽底(24)を有する第1の貯留槽(13)と、第2の槽壁(27)および第2の槽底(26)を有する第2の貯留槽(14)とを含み、前記案内チャネル(2)が、前記第1の槽壁(25)および前記第2の槽壁(27)に隣接し、前記案内チャネル(2)の前記オイル案内方向(F)で見て、前記第1の槽底(24)が、前記受入開口部(11)と前記排出開口部(12)との間に配置され、前記第2の槽底(26)が、前記受入開口部(11)と前記第1の槽底(24)との間に配置されることを特徴とするオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項2】
前記オイルガイドチャネル部品(1)が、重力(G)に対する前記オイルガイドチャネル部品(1)の向きを定義する所定の組付け状態でトランスミッション(100)内に設置されるように形成され、前記所定の組付け状態に対応する向きで、前記第1の槽底(24)と前記第2の槽底(26)とが、重力(G)に対してほぼ垂直に向き付けられ、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)までの前記オイル案内方向(F)が、重力(G)に逆らって延びる少なくとも1つの成分を有することを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項3】
前記受入開口部(11)とは反対側の、前記案内チャネル(2)の前記チャネル壁(21)の端部が、前記第1の貯留槽(13)の前記第1の槽底(24)を越えて突出して前記排出開口部(12)を画定する壁(21a)を形成することを特徴とする請求項1または2に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項4】
前記案内チャネル(2)が、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)まで連続的に閉じられており、その長手方向延在域の少なくとも80%にわたって直線状に形成されていることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項5】
前記第2の貯留槽(14)が、第1のダム(203)を越えて前記第1の貯留槽(13)から流出するオイルによって充填可能であることを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項6】
前記第1の貯留槽(13)に少なくとも1つの第1の流出口(15)が設けられていることを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項7】
前記第2の貯留槽(14)に少なくとも1つの第2の流出口(16)が設けられ、オイルが、前記第2の貯留槽(14)から、特に第2のダム(204)を越えて前記第2の流出口(16)に到達することを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項8】
少なくとも前記第1の貯留槽(13)に、前記第1の槽底(24)から起立する仕切り壁(201)が設けられ、前記仕切り壁(201)が、前記第1の貯留槽(13)を少なくとも2つの部分領域に分割し、前記排出開口部(12)が、第1の部分領域(13b)に向かって開き、第2の部分領域(13c)が、前記仕切り壁(201)の切欠部(202)を介して前記第1の部分領域(13b)と接続されていることを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項9】
前記仕切り壁(201)がサージブレーカとして形成され、前記仕切り壁が、前記排出開口部(12)に面した底端点(206)を備え、前記底端点(206)から、反対方向へ後方に曲げられた部分壁が第1の流出口(15)および第3の流出口(16a)に向けて延びることを特徴とする請求項8に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項10】
インサート部品として形成されることを特徴とする請求項1~9のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項11】
トランスミッション(100)、特に自動車トランスミッションであって、トランスミッションハウジング(140)と、前記トランスミッションハウジング(100)内に配置された請求項1から10のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品(1)と、前記トランスミッションハウジング(140)内に配置されたトランスミッションギア(107)とを備え、前記トランスミッションギア(107)が、前記トランスミッション(100)のオイルサンプ(150)内に少なくとも部分的に配置され、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、重力(G)に対する前記トランスミッションハウジング(140)内での前記オイルガイドチャネル部品(1)の向きを定義する所定の組付け状態で前記トランスミッションハウジング(140)内に配置され、前記受入開口部(11)が、前記オイルサンプ(150)内に少なくとも部分的に配置されているトランスミッションギア(107)の端面に位置決めされ、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)までの前記オイル案内方向(F)が、重力(G)に逆らって進む少なくとも1つの成分を有し、少なくとも前記第1の槽底(24)が、前記トランスミッションギア(107)の上方に配置される、トランスミッション(100)。
【請求項12】
動作中に前記トランスミッションギア(107)によって前記オイルサンプ(150)から持ち上げられたオイルが、前記受入開口部(11)に到達し、さらに前記案内チャネル(2)の前記オイル案内方向(F)に沿って前記排出開口部(12)に到達することを特徴とする請求項11に記載のトランスミッション(100)。
【請求項13】
前記第1の貯留槽(13)に少なくとも1つの第1の流出口(15)が設けられ、前記第2の貯留槽(14)に少なくとも1つの第2の流出口(16)が設けられ、前記第1の流出口(15)の流出開口部(17)が、第1のトランスミッション要素のベアリング、特に前記トランスミッション(100)内に取り付けられた入力側ロータシャフト(102)のベアリング(175)にオイルを供給し、前記第2の流出口(16)の流出開口部(18)が、第2のトランスミッション要素のベアリング、特にピニオン(106)のベアリング(176)にオイルを供給することを特徴とする請求項11または12に記載のトランスミッション。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
従来技術では、自動車用のトランスミッションは、特に電動駆動機構と組み合わせても使用される。ここで、トランスミッションのトランスミッション要素は、従来のトランスミッションと同様にオイルで潤滑されなければならない。トランスミッションの効率を高め、コストを削減するために、従来のトランスミッションでよく使用されるトランスミッション潤滑用のオイルポンプを省くことができる。トランスミッション要素の潤滑および冷却は、好ましくは、受動的なオイル分配によって行われる。回転するトランスミッション要素の潤滑は、トランスミッションの信頼性にとって重要である。潤滑が不十分であると、トランスミッション要素のベアリングおよびシールリングへのオイルの供給が不足する可能性がある。これにより、トランスミッション要素の摩耗が高まり、故障に至ることもあり得る。
【0002】
独国特許発明第10102017108748号明細書から、自動車トランスミッションへの組付け用のオイルガイドチャネル部品が知られている。記載されるトランスミッションは、トランスミッションハウジングと、トランスミッションハウジング内に配置された少なくとも1つのトランスミッションギアとを備え、トランスミッションギアが、トランスミッションのオイルサンプ内に少なくとも部分的に配置されている。回転するトランスミッションギアは、一部がオイルサンプを通って転がり、その際にオイルを取り上げる。これは、専門用語でしばしばスプラッシュ(Planschen)とも呼ばれるプロセスである。トランスミッションギアによって取り上げられたオイルをトランスミッション内で的確に分配するために、従来技術では眼鏡のような形状のオイルガイドチャネル部品が使用され、この部品は、トランスミッションにインサート部品として挿入することができる。オイルガイドチャネル部品は、いくつかのカバーと、受入開口部および排出開口部を有する案内チャネルとを備え、案内チャネルは、受入開口部から排出開口部までのオイル案内方向と、オイル案内方向に垂直に周方向で閉じられたチャネル壁とを有する。独国特許発明第10102017108748号明細書では、チャネル壁は、トランスミッションのトランスミッションギアの歯車軸の周りで湾曲した半円弧状の中空体によって形成され、半円弧状の中空体は、オイルガイドチャネル部品の所定の組付け状態では、主としてトランスミッションのオイルサンプの液位よりも上方にある。湾曲した案内チャネルは、キャッチマウスとして構成された、オイルを受け入れるための受入開口部を有し、オイルは、半円弧状の中空体によって囲まれたトランスミッションギアと噛み合う別のトランスミッションギアによって持ち上げられ、第2のトランスミッションギアによってキャッチマウスまでさらに輸送される。ここで、キャッチマウスとは反対側の、スロットル穴を除いて閉じられて形成された半円弧状の中空体の端部セクションは、案内チャネルを通して運搬されるオイルを貯留するためのオイル収集領域を形成する。スロットル穴は、案内チャネルの唯一の排出開口部を形成し、したがって同時に、少なくとも1つのオイル収集領域からのオイル用の流出口となる。スロットル穴は、2つのトランスミッションギアの噛合領域よりも垂直方向で上方に位置し、したがって、流出するオイルの流れが噛合領域に流れ落ち、ギアの接触面を濡らす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許発明第10102017108748号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、トランスミッションへの組付け用の、特に自動車トランスミッションへの組付け用のオイルガイドチャネル部品であって、オイルガイドチャネル部品が、受入開口部および排出開口部を有する案内チャネルを備え、案内チャネルが、受入開口部から排出開口部へのオイル案内方向と、オイル案内方向に垂直に周方向で閉じられたチャネル壁とを有し、オイルガイドチャネル部品が、案内チャネルを通して案内されたオイルを貯留するための少なくとも1つのオイル収集領域をさらに備え、オイルガイドチャネル部品が、少なくとも1つのオイル収集領域からのオイル用の少なくとも1つの流出口を備える、オイルガイドチャネル部品に関する。本発明によれば、少なくとも1つのオイル収集領域が、第1の槽壁および第1の槽底を有する第1の貯留槽と、第2の槽壁および第2の槽底を有する第2の貯留槽とを備え、案内チャネルが、第1の槽壁および第2の槽壁に隣接し、案内チャネルのオイル案内方向で見て、第1の槽底が、受入開口部と排出開口部との間に配置され、第2の槽底が、受入開口部と第1の槽底との間に配置される。
【0005】
さらに、本発明は、トランスミッション、特に自動車トランスミッションであって、トランスミッションハウジングと、トランスミッションハウジング内に配置された、上述した特徴を有するオイルガイドチャネル部品と、トランスミッションハウジング内に配置されたトランスミッションギアとを備え、トランスミッションギアが、トランスミッションのオイルサンプ内に少なくとも部分的に配置され、オイルガイドチャネル部品が、重力に対するトランスミッションハウジング内でのオイルガイドチャネル部品の向きを定義する所定の組付け状態でトランスミッションハウジング内に配置され、受入開口部が、オイルサンプ内に少なくとも部分的に配置されているトランスミッションギアの端面に位置決めされ、受入開口部から排出開口部までのオイル案内方向が、重力に逆らって進む少なくとも1つの成分を有し、少なくとも第1の槽底が、トランスミッションギアの上方に配置される、トランスミッションに関する。
【0006】
本出願の文脈において、「オイル」とは、オイルとして市販されているかどうかに関わらず、トランスミッションに適した液体潤滑剤を意味する。例えば、ATF(オートマチックトランスミッションフルード)と呼ばれる潤滑剤または同様の物質でよい。好ましくは、MTFである。
【0007】
重力に対するトランスミッション内でのオイルガイドチャネル部品の向きを定義する所定の組付け状態とは、地球の重力場に対する関連のトランスミッションの向きが既知である場合に、トランスミッションハウジングに対するオイルガイドチャネル部品の特定の向きを表す組付け状態を意味する。地球の重力場に対するトランスミッションの向きは、トランスミッションの通常位置に関して一般に知られており、通常位置とは、意図された用途において重力に対してトランスミッションが向き付けられる位置である。トランスミッションが自動車トランスミッションである場合、自動車が通常位置で地球の重力場に対して水平に向き付けられているときに、トランスミッションは地球の重力に対して特定の向きを取る。これは、自動車が実際に地球の重力場に対して水平に移動されるか、傾斜角のある坂を走行するかに関係なく当てはまる。したがって、自動車におけるトランスミッションの既知の組付け位置から、オイルガイドチャネル部品が通常位置で重力に対して特定の向きを取るようにオイルガイドチャネル部品をトランスミッション内に設置することができる方法を原理的に導出することができる。
【0008】
受入開口部から排出開口部まで重力に逆らって進むオイル案内方向の成分とは、移動成分に分解されたオイル案内方向が、重力に逆らって向けられた少なくとも1つの成分または移動成分を有することを意味する。これに関し、オイル案内方向全体が重力の方向と逆平行に進む必要は必ずしもない。例えば、オイル案内方向は、重力に対して斜めに進むことも、逆に重力に対して平行に進むこともあり得る。
【0009】
オイルガイドチャネル部品とは、オイル輸送のための少なくとも1つの案内チャネルを備える部品を意味する。オイルガイドチャネル部品は、オイルガイドチャネル部品に供給されたオイルを、重力の影響下でオイルガイドチャネル部品内で分配するように構成することができる。オイルガイドチャネル部品は、特に、トランスミッションの組立て時にトランスミッションに挿入されるインサート部品として構成することができる。オイルガイドチャネル部品は、プラスチック、金属、またはプラスチックと金属の複合材から作製することができる。オイルガイドチャネル部品は、一部片または複数部片で構成することができる。特に、スナップ接続またはクリップ接続によって互いに機械的に接続される2つ以上のシェル部品からオイルガイドチャネル部品を組み立てることが可能である。
【0010】
本出願の文脈では、仮定される基準点に対して、「下」または「下方」という用語により、重力の方向で見てより低い点にある位置を表し、「上」または「上方」という用語によって、重力の方向で見てより高い点にある位置を表し、ここで、所定の組付け状態に対応するオイルガイドチャネル部品の向きが仮定される。
【0011】
トランスミッションのオイルサンプとは、トランスミッションハウジング内部で、重力の影響下でオイルが貯留される領域を意味する。トランスミッションのオイルサンプ内に少なくとも部分的に配置されているトランスミッションギアとは、重力の方向で下側の部分でオイルサンプに浸かっているトランスミッションギアを意味し、トランスミッションギアの上側部分はオイルサンプから出ている。トランスミッションギアの回転時、トランスミッションギアは、オイルサンプからオイルを取り出し、重力に反して放出点または吐出点(Abschlagpunkt)に輸送する。このプロセスは「スプラッシュ」と呼ばれる。ここで、トランスミッションギアを通るオイルの循環および搬送性能は、速度に直接依存し、粘性に関して温度にも依存する。オイルサンプからトランスミッションギアに輸送されるオイル量により、動作中にオイルサンプの液位が低下する。したがって、トランスミッションギアは、オイル搬送トランスミッションギアとみなすことができる。ここで、トランスミッションハウジング内でのより高速の回転時にトランスミッションギアおよび場合によってはさらなるトランスミッションギアによって散布されたオイルは、すぐにはオイルサンプに戻ることができない場所に到達する可能性がある。しかし、トランスミッションギアから十分にオイルが搬送され、トランスミッションが乾燥せずに動作することを保証するためには、オイルサンプは、適切な量のオイルを含まなければならない。一方、オイルサンプ内のオイル量が高すぎると、トランスミッションの不利な引き摺り損失が増加するので望ましくない。したがって、折衷案として、トランスミッションギアによって輸送されるオイル量をトランスミッションの潤滑点にできるだけ的確に供給して飛散損失を回避すると共に、トランスミッションの引き摺り損失ができるだけ低くなる液位までオイルサンプ内の液位を下げられるようにすることが望ましい。これは、オイルガイドチャネル部品によって実現される。
発明の利点
本発明によるオイルガイドチャネル部品は、トランスミッションハウジング内部の回転するトランスミッション要素のベアリングへの的確なオイル供給を可能にする。これは、少なくとも1つのオイル収集領域が、第1の槽壁および第1の槽底を有する第1の貯留槽と、第2の槽壁および第2の槽底を有する第2の貯留槽とを備え、案内チャネルが、第1の槽壁および第2の槽壁に隣接し、案内チャネルのオイル案内方向で見て、第1の槽底が、受入開口部と排出開口部との間に配置され、第2の槽底が、受入開口部と第1の槽底との間に配置されることによって実現される。
【0012】
トランスミッション内の潤滑点は垂直方向で異なる位置にあるので、オイルは、トランスミッションハウジング内で下にあるオイルサンプから入力シャフトまで上向きに搬送されなければならず、その間にも潤滑点が配置されている。ここで、受入開口部と第1の槽底との間に配置された第2の槽底を有する第2の貯留槽を備える2段階のオイル収集領域により、有利には、重力に対して異なる垂直平面内にある潤滑点にオイルをより容易に送ることができることが実現される。
【0013】
オイルガイドチャネル部品は、特に有利には、重力に対するオイルガイドチャネル部品の向きを定義する所定の組付け状態でトランスミッション内に設置されるように形成され、所定の組付け状態に対応する向きで、第1の槽底と第2の槽底とが、重力に対してほぼ垂直に向き付けられ、受入開口部から排出開口部までのオイル案内方向が、重力に逆らって延びる。本発明によるオイルガイドチャネル部品は、特に、所定の組付け状態で、案内チャネルの受入開口部を、トランスミッションのトランスミッションギアの端面に位置決めし、槽底をトランスミッションギアの上方に位置決めすることができるようにトランスミッションに組み付けることができる。受入開口部を通して案内チャネルに取り上げられたオイルは、重力に逆らって排出開口部まで輸送することができ、排出開口部から出るオイルは、第1の貯留槽に貯留することができる。
【0014】
オイル収集領域が、歯車軸の周りで湾曲した半円弧状の中空体の端部領域を形成する、従来技術から知られている解決策とは対照的に、本発明では、オイル収集領域は、第1および第2の貯留槽を含む。少なくとも第1のオイル貯留槽は、オイル搬送トランスミッションギアの上方に配置することができる。第2のオイル貯留槽は、第1のオイル貯留槽の下に配置され、重力の方向で、例えば少なくとも部分的にオイル搬送トランスミッションギアの端面の下、またはその全部もしくは一部よりも上に位置することができる。第1および第2の貯留槽に貯留されたオイルの貯蔵により、動作中にトランスミッションハウジングの底部のオイルサンプが下がる。案内チャネルは、受入開口部から排出開口部まで、好ましくはその長手方向延在域方向の80%にわたって直線状に延びることができる、単純な、周方向で閉じられたチャネルとして形成される。受入開口部の開口断面は、排出開口部の開口断面に対応し得る。周方向のチャネル壁を有する案内チャネルは、オイルガイドチャネル部品と一体化された案内チャネルとなる。
【0015】
従来技術とは対照的に、オイルガイドチャネル部品は、オイルが案内チャネル内に貯留されるのではなく、案内チャネルの外側で第1および第2の貯留槽内に貯留されるように設計される。これにより、有利には、動作時に第1および第2の貯留槽に含まれている貯蔵を最初に潤滑点への供給に使用することができるので、速度変動時にも、トランスミッションベアリングの十分な潤滑が可能である。少なくとも1つの流出口、しかし好ましくは複数の流出口が第1および第2の貯留槽に存在して、トランスミッション内の様々なベアリングへのオイル供給を実現することができる。有利には、従来技術と比較して、動作中に案内チャネルを通して搬送されるオイルの量は、オイル収集領域から流出口を通って流出するオイル量とは関係なく設計することができる。案内チャネルは、第1および第2の貯留槽を満たすためにのみ使用され、第1の貯留槽および第2の貯留槽からのオイルの流出は、貯留槽の幾何学的設計と、割り当てられた流出口の幾何学的設計とによって調整することができる。したがって、トランスミッション要素のベアリング点へのオイル供給は、有利には、位置的にも、時間経過に関しても最適化することができる。したがって、特に、回転するトランスミッション要素が重力に対して複数の平面内で重ねて配置されているトランスミッションにおいて、ベアリング点の潤滑の改良が実現される。
【0016】
有利には第1および第2の貯留槽を中間貯留部として使用することができるので、トランスミッションを駆動する電気機械の作動停止時間が短い場合にも、電気機械が再び始動したときに、より高速の潤滑が提供される。より長い休止期間の場合、任意選択で、第1の貯留槽および/または第2の貯留槽は、それぞれの槽底での小さな流出開口部を通して、オイルサンプの方向へ完全に空にすることもできる。しかし、流出開口部は必ずしも必須ではない。
【0017】
本発明の有利な実施形態および発展形態は、引用形式請求項に提示される特徴によって可能にされる。
有利には、受入開口部とは反対側の、案内チャネルのチャネル壁の端部が、第1の貯留槽の第1の槽底を越えて突出して排出開口部を画定する壁を形成することができる。したがって、この壁を越えて流出するオイルは、有利には、第1の貯留槽に直接流れ、第1の貯留槽を満たすことができる。
【0018】
有利には、案内チャネルが、受入開口部から排出開口部まで連続的に閉じられており、その長手方向延在域の少なくとも80%にわたって直線状に形成され得る。これにより、案内チャネルに供給されたオイルを排出開口部の方向に向けてできるだけ妨げなく輸送することができる。直線状の案内チャネルは、トランスミッション内で、特に、所定の組付け状態において一部がトランスミッションギアの端面に対して接線方向に延びるように向き付けることができる。案内チャネルの受入開口部は、例えばキャッチマウスとして形成することができ、受入開口部の周縁部は、案内チャネルの接線角度に対応して面取りして形成することができ、それにより受入開口部をトランスミッションギアの端面にできるだけ近づけることができる。ここで、周縁部の輪郭は、トランスミッションギアの端面の曲率半径に適合させることができる。所定の組付け状態に対応するオイルガイドチャネル部品の向きでは、案内チャネルの排出開口部から出たオイルが重力の方向に流れて第1の貯留槽に集まり、それにより第1の貯留槽が満たされる。
【0019】
第2の貯留槽を、第1のダムを越えて第1の貯留槽から流出するオイルによって容易に充填することができる。それにより、第1の貯留槽は、まず第1のダムの高さまで満たされる。この高さに達するとすぐに、オイルガイドチャネル部品内のオイルは、第1のダムを越えて第2の貯留槽の方向に流れる。
【0020】
有利には、第1の貯留槽が少なくとも1つの第1の流出口を備え、第2の貯留槽が少なくとも1つの第2の流出口を備え、オイルが、第2の貯留槽から、特に第2のダムを越えて第2の流出口に到達する。少なくとも1つの第1の流出口と少なくとも1つの第2の流出口とは、トランスミッション内の異なる垂直平面内にある異なるベアリングに潤滑油を供給することができる。ここで、ベアリングへのオイル供給は、有利には「受動的」であり、すなわち、それぞれに割り当てられた流出口を通してオイルが流出されることによって行われる。
【0021】
さらに、第1の貯留槽に、第1の槽底から起立する仕切り壁を設けることができ、仕切り壁が、第1の貯留槽を少なくとも2つの部分領域に分割し、排出開口部が、第1の部分領域に向かって開き、第2の部分領域が、仕切り壁の切欠部を介して第1の部分領域と接続されている。第1の貯留槽が満たされると、オイルが仕切り壁を越え、オイルが両方の部分領域に到達する。第2の部分領域から、オイルは、最初に切欠部を通して第1の部分領域の方向に導かれる。ここで、仕切り壁が、特にサージブレーカとして形成され得て、排出開口部に面した底端点を備えることができ、底端点から、反対方向へ後方に曲げられた部分壁が第1の流出口および第3の流出口に向けて延びる。案内チャネルの排出開口部から出たオイルは、底端点に当たり、2つの部分的な流れに分割され、互いに反対側の流出口の方向へ流れる。
【0022】
特に有利には、本発明によるオイルガイドチャネル部品は、トランスミッションと組み合わせて使用可能であり、オイルガイドチャネル部品は、トランスミッションのトランスミッションハウジング内で使用可能である。トランスミッションは、トランスミッションハウジング内に配置された少なくとも1つのトランスミッションギアを備え、トランスミッションギアが、トランスミッションのオイルサンプ内に少なくとも部分的に配置される。オイルガイドチャネル部品が、重力に対するトランスミッションハウジング内でのオイルガイドチャネル部品の向きを定義する所定の組付け状態でトランスミッションハウジング内に配置され、受入開口部が、オイルサンプ内に少なくとも部分的に配置されているトランスミッションギアの端面に位置決めされ、受入開口部から排出開口部までのオイル案内方向が、重力に逆らって進む少なくとも1つの成分を有し、少なくとも第1の槽底が、トランスミッションギアの上方に配置される。
【0023】
動作中にトランスミッションギアによってオイルサンプから持ち上げられたオイルが、有利には、受入開口部に到達し、さらに案内チャネルのオイル案内方向に沿って排出開口部に到達する。
【0024】
有利には、第1の貯留槽には少なくとも1つの第1の流出口が設けられ、第2の貯留槽には少なくとも1つの第2の流出口が設けられ、第1の流出口の流出開口部が、第1のトランスミッション要素のベアリング、特にトランスミッションに取り付けられた入力側ロータシャフトのベアリングにオイルを供給し、第2の流出口の流出開口部が、第2のトランスミッション要素のベアリング、特にピニオンのベアリングにオイルを供給する。第1の流出口および第2の流出口、ならびに場合によってはさらなる流出口を介して、トランスミッションのトランスミッション要素の様々なベアリングにオイルを供給することができる。
【0025】
以下、本発明の可能な実施形態を、添付図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】電気機械(図示せず)によって駆動され、オイルガイドチャネル部品を挿入することができる自動車のトランスミッションを通る断面図である。
【
図2】本発明による、トランスミッションへの組付け用のオイルガイドチャネル部品の例示的実施形態の斜視図である。
【
図3】
図2に示されるようにオイルガイドチャネル部品が所定の組付け状態で挿入されている、
図1の図での構造に対応するトランスミッションハウジングを備えるトランスミッションの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、トランスミッション100を含む自動車用の駆動装置を示す。トランスミッションの記述は、以下でさらに述べるオイルガイドチャネル部品の使用可能性を説明するのに役立つ。
【0028】
トランスミッション100は、入力側で、ロータシャフト103を備える電気機械(図示せず)に接続される。ロータシャフト103は、2つのベアリング175、175bで軸支され、トランスミッションの駆動シャフト101または中間シャフトに相対回転不能に連結されたギア104と噛み合う。駆動シャフト101は、その外周にわたって、トランスミッションハウジング(
図1には図示せず)内の軸方向で離間された2つのベアリング点171および172で回転可能に軸支されている。
【0029】
さらに、トランスミッション100はクラッチ機構120も含み、クラッチ機構120は、例えば好ましくは電気作動可能な回転アクチュエータ123によって制御可能である。電気アクチュエータ123は、例えば、スピンドルドライブおよびシフトフォーク129を介してクラッチ要素121に作用することができ、クラッチ要素121は、軸方向で摺動可能にガイドハブ(
図1では見えない)に支持される。クラッチ要素121は、例えばリング状に形成され、シフトフォーク129に対して回転することができる。クラッチ要素121は、ガイドハブの外歯列に係合する内歯列を備えることができ、したがって、クラッチ要素121は、駆動シャフト101の軸線と平行にガイドハブに対して摺動可能である。ガイドハブおよびそれと係合しているクラッチ要素121は、相対回転不能に駆動シャフト101に支持される。さらに、ピニオン106に相対回転不能に連結された連結要素122も設けられる。ピニオン106は、例えばニードルベアリングとして形成されたベアリング176によって、駆動シャフト101に回転可能に軸支される。連結要素122は、外歯列を備えることができる。回転アクチュエータ123の作動時、スピンドルドライブは、クラッチ要素121の内歯列が連結要素122の外歯列に係合するまで、シフトフォークを介してクラッチ要素121を軸方向に摺動し、その係合により、クラッチ要素121は相対回転不能に連結要素122に連結される。連結により、ギア104、駆動シャフト101、ガイドハブ、クラッチ要素121、連結要素122、およびピニオン106は、駆動シャフト101の軸線の周りでブロックとして回転する。切離し時、回転アクチュエータ123によってクラッチ要素121が連結要素122から
図1の右側に引き離され、それにより、ピニオン106と駆動シャフト101との間の連結が解除される。ここで、ピニオン106は、駆動シャフト101の周りで回転することができる。
【0030】
ピニオン106は、トランスミッションギア107と噛み合う。トランスミッションギア107は、ディファレンシャル130に相対回転不能に連結されている。ディファレンシャル130は、ディファレンシャル130と共に回転駆動することができる第1の出力シャフト102aおよび第2の出力シャフト102bの形態での出力シャフト102を備える。トランスミッションギア107は、ディファレンシャル130のディファレンシャルケージ108に固定接続される。
図3に示されるように、ディファレンシャル130は、トランスミッション100のトランスミッションハウジング140に統合することができる。
【0031】
既に述べたように、切離し状態では、ピニオン106と駆動シャフト101との間の連結は、クラッチ機構120によって解除される。ここで、例えば自動車の運転状態で電気機械がさらにオフに切り替えられる場合、ロータシャフト103および駆動シャフト101は駆動されなくなる。ここで、まだ転動中の自動車の車輪は、出力シャフト102を介してトランスミッションギア107を駆動し、トランスミッションギア107はピニオン106と噛み合っており、したがってピニオン106は駆動シャフト101の周りを回転する。この状態でも、例えばトランスミッション100のオイルサンプの上方に配置されたピニオン106のベアリング176に十分にオイルが供給されることを保証しなければならない。
【0032】
図2は、例えば
図1に基づいて示されるトランスミッション100に設置されるように意図され得る本発明によるオイルガイドチャネル部品1の例示的実施形態を示す。オイルガイドチャネル部品1は、ここに示されているように、トランスミッション100の組立て時にトランスミッション100に挿入されるインサート部品として構成することができる。オイルガイドチャネル部品1は、プラスチック、金属、またはプラスチックと金属の複合材から作製することができ、一部片または複数部片で構成することができる。特に、スナップ接続またはクリップ接続によって互いに機械的に接続される2つ以上のシェル部品からオイルガイドチャネル部品を組み立てることが可能である。
【0033】
オイルガイドチャネル部品1は、受入開口部11および排出開口部12を有する案内チャネル2(
図3でより良く見ることができる)を備え、案内チャネル2は、受入開口部11から排出開口部12までのオイル案内方向F(
図3に示されている)と、オイル案内方向Fに対して垂直に周方向で閉じられたチャネル壁21とを備える。オイルガイドチャネル部品1は、案内チャネル2を通して搬送されるオイルを貯留するためのオイル収集領域13aと、オイル収集領域13aからのオイル用の流出口15aとをさらに備える。
【0034】
図2に示されるように、オイル収集領域13aは、オイルガイドチャネル部品1の上端にある第1の貯留槽13を含む。第1の貯留槽13は、第1の槽壁25および第1の槽底24を備える。
図3で最も良く見ることができるように、案内チャネル2の受入開口部11とは反対側のチャネル壁21の端部は、第1の貯留槽13の第1の槽底24の上方に突き出して排出開口部12を画定する壁21aを形成する。
【0035】
さらに
図2で見ることができるように、第1の貯留槽13には、第1の槽底24から起立する仕切り壁201が設けられており、仕切り壁201の高さは、槽壁25の高さよりも低く形成されている。仕切り壁201は、第1の貯留槽13を少なくとも2つの部分領域に分割し、排出開口部12は、第1の部分領域13bに向かって開いている。第2の部分領域13cは、仕切り壁201の狭い切欠部202を介して第1の部分領域13bと接続されている。
図2でさらに見ることができるように、仕切り壁201は、排出開口部12に面した底端点206を備えたサージブレーカとして形成することができる。底端点206から、反対方向へ後方に曲げられた部分壁が、第1の貯留槽13の第1の流出口15および第3の流出口16aまで延びている。排出開口部12から出たオイルは、壁21を越えて第1の貯留槽13に流れ込み、そこで底端点206に当たる。ここで、オイルが仕切り壁201を一部越えることがあり、オイルが第1の部分領域13bおよび第2の部分領域13aに貯留する。そこから、オイルは、第1の流出口15を通って流出開口部17の方向に流れ、第3の流出口16aを通って流出開口部18aの方向に流れる。第1の流出口15および第2の流出口16は、角度付きの溝として形成することができる。
【0036】
図2でさらに見ることができるように、オイルガイドチャネル部品1のオイル収集領域は第2の貯留槽14を含み、第2の貯留槽14は、第2の槽壁27および第2の槽底26を備える。第2の貯留槽14は、案内チャネルの受入開口部11と第1の貯留槽13の第1の槽底24との間に配置される。第1の貯留槽13の槽壁25は、第2の貯留槽14に面する側で、第1のダム203によって中断されている。第1のダム203の高さは、槽壁25の高さよりもかなり低く形成される。第1の貯留槽13を満たしたオイルは、充填レベルが十分である場合、一部がダム203を越えて第2の貯留槽14の方向に流出する。第2の貯留槽14の槽壁27も、一箇所で第2のダム204によって中断されることがあり、第2のダム204の高さは、第2の槽壁27の高さよりも低く形成される。第2の貯留槽14が十分に満たされると、オイルは、第2のダム204を通って、角度付きの溝として形成された第2の流出口16に到達し、第2の流出口16は、さらなる流出開口部18を備える。
【0037】
図2に示されるオイルガイドチャネル部品1は、重力Gに対するオイルガイドチャネル部品の向きを定義する所定の組付け状態でトランスミッションのトランスミッションハウジング140内に配置されるように設計されている。限定はされないが、オイルガイドチャネル部品1は、好ましくは、
図1に示されるトランスミッション100に挿入されるように意図されている。このために、オイルガイドチャネル部品1は、対応する突起および保持カムを設けられ、突起および保持カムによって、オイルガイドチャネル部品1を、トランスミッション100のトランスミッションハウジング140内で、トランスミッション100の通常位置に対して所定の向きで設置して固定することができる。
【0038】
図3は、
図1に示されるトランスミッションに対応する基本構造を有するトランスミッション100と、そこに設置された
図2のオイルガイドチャネル部品1とを示す。見て分かるように、案内チャネル2の受入開口部11は、トランスミッションギア107の端面に、およびトランスミッションギア107の端面のすぐ近くに位置決めすることができ、第1の貯留槽13の第1の槽底24、およびまたこの実施形態では例えば第2の貯留槽14の槽底26は、トランスミッションギア107の上方に配置することができる。オイル案内方向Fは、重力Gに逆らって受入開口部11から排出開口部12まで進む成分を有する。
図3に、トランスミッション100の通常位置に関して重力Gの向きが示されている。見て分かるように、オイル案内方向Fは重力に対していくぶん斜めに進み、重力と正反対の比較的大きな成分を有する。案内チャネル2のオイル案内方向Fで見て、第1の槽底24は、受入開口部11と排出開口部12との間に配置され、第2の槽底26は、受入開口部11と第1の槽底24との間に配置される。
【0039】
案内チャネル2は、好ましくは、その長手方向延在域の80%にわたって直線状に構成され、少なくともトランスミッションギア107の領域では、好ましくはトランスミッションギア107の端面に対して接線方向に延びる。受入開口部11は、キャッチマウスとして形成することができ、受入開口部11の周縁部は、重力の方向と搬送方向Fとが成す角度に対応して面取りして形成することができ、それにより受入開口部11をトランスミッションギア107の端面にできるだけ近づけることができる。ここで、周縁部の輪郭は、図示されるように、トランスミッションギア107の端面の曲率半径に適合させることができる。
【0040】
トランスミッション100のトランスミッションギア107は、オイルサンプ150内に部分的に配置される。トランスミッションギア107は、オイルサンプ150からオイルを取り出し、案内チャネル2の受入開口部11にオイルを輸送する。オイルの移動パルスにより、案内チャネル2内のオイルは、オイル案内方向Fで排出開口部12まで押し出される。
【0041】
オイルガイドチャネル部品1から第1の流出口15、第2の流出口18、および第3の流出口18aを通って流出するオイルは、トランスミッション100内で、互いに空間的に離れていることがあるトランスミッション要素の異なるベアリングに導かれることがある。例えば、第1の流出口15は流出開口部17を介して、また第3の流出口16aは流出開口部18aを介して、トランスミッション要素の第1および/または第2のベアリング、特にトランスミッション100に取り付けられた入力側ロータシャフト103のベアリング175およびベアリング175bにオイルを供給することができる。第2の流出口16の流出開口部18は、受入開口部11と排出開口部12との間に配置された別の平面内で、さらなるトランスミッション要素のベアリング、特にピニオン106のベアリング176にオイルを供給することができる。
【0042】
第1の貯留槽および第2の貯留槽、ならびにそこから分岐する流出口によって、回転するトランスミッション要素のベアリングへの潤滑油の最適な供給を、異なる構成のトランスミッションにも最適に適応させることができることを理解されたい。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランスミッション(100)への組付け用の、特に自動車トランスミッションへの組付け用のオイルガイドチャネル部品(1)であって、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、受入開口部(11)および排出開口部(12)を有する案内チャネル(2)を備え、前記案内チャネル(2)が、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)へのオイル案内方向(F)と、前記オイル案内方向(F)に垂直に周方向で閉じられたチャネル壁(21)とを有し、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、前記案内チャネル(2)を通して案内されたオイルを貯留するための少なくとも1つのオイル収集領域(13a)をさらに備え、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、前記少なくとも1つのオイル収集領域(13a)からのオイル用の少なくとも1つの流出口(15a)を備える、オイルガイドチャネル部品(1)において、前記少なくとも1つのオイル収集領域(13a)が、第1の槽壁(25)および第1の槽底(24)を有する第1の貯留槽(13)と、第2の槽壁(27)および第2の槽底(26)を有する第2の貯留槽(14)とを含み、前記案内チャネル(2)が、前記第1の槽壁(25)および前記第2の槽壁(27)に隣接し、前記案内チャネル(2)の前記オイル案内方向(F)で見て、前記第1の槽底(24)が、前記受入開口部(11)と前記排出開口部(12)との間に配置され、前記第2の槽底(26)が、前記受入開口部(11)と前記第1の槽底(24)との間に配置されることを特徴とするオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項2】
前記オイルガイドチャネル部品(1)が、重力(G)に対する前記オイルガイドチャネル部品(1)の向きを定義する所定の組付け状態でトランスミッション(100)内に設置されるように形成され、前記所定の組付け状態に対応する向きで、前記第1の槽底(24)と前記第2の槽底(26)とが、重力(G)に対してほぼ垂直に向き付けられ、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)までの前記オイル案内方向(F)が、重力(G)に逆らって延びる少なくとも1つの成分を有することを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項3】
前記受入開口部(11)とは反対側の、前記案内チャネル(2)の前記チャネル壁(21)の端部が、前記第1の貯留槽(13)の前記第1の槽底(24)を越えて突出して前記排出開口部(12)を画定する壁(21a)を形成することを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項4】
前記案内チャネル(2)が、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)まで連続的に閉じられており、その長手方向延在域の少なくとも80%にわたって直線状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項5】
前記第2の貯留槽(14)が、第1のダム(203)を越えて前記第1の貯留槽(13)から流出するオイルによって充填可能であることを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項6】
前記第1の貯留槽(13)に少なくとも1つの第1の流出口(15)が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項7】
前記第2の貯留槽(14)に少なくとも1つの第2の流出口(16)が設けられ、オイルが、前記第2の貯留槽(14)から、特に第2のダム(204)を越えて前記第2の流出口(16)に到達することを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項8】
少なくとも前記第1の貯留槽(13)に、前記第1の槽底(24)から起立する仕切り壁(201)が設けられ、前記仕切り壁(201)が、前記第1の貯留槽(13)を少なくとも2つの部分領域に分割し、前記排出開口部(12)が、第1の部分領域(13b)に向かって開き、第2の部分領域(13c)が、前記仕切り壁(201)の切欠部(202)を介して前記第1の部分領域(13b)と接続されていることを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項9】
前記仕切り壁(201)がサージブレーカとして形成され、前記仕切り壁が、前記排出開口部(12)に面した底端点(206)を備え、前記底端点(206)から、反対方向へ後方に曲げられた部分壁が第1の流出口(15)および第3の流出口(16a)に向けて延びることを特徴とする請求項8に記載のオイルガイドチャネル部品。
【請求項10】
インサート部品として形成されることを特徴とする請求項1に記載のオイルガイドチャネル部品(1)。
【請求項11】
トランスミッション(100)、特に自動車トランスミッションであって、トランスミッションハウジング(140)と、前記トランスミッションハウジング(100)内に配置された請求項1から10のいずれか一項に記載のオイルガイドチャネル部品(1)と、前記トランスミッションハウジング(140)内に配置されたトランスミッションギア(107)とを備え、前記トランスミッションギア(107)が、前記トランスミッション(100)のオイルサンプ(150)内に少なくとも部分的に配置され、前記オイルガイドチャネル部品(1)が、重力(G)に対する前記トランスミッションハウジング(140)内での前記オイルガイドチャネル部品(1)の向きを定義する所定の組付け状態で前記トランスミッションハウジング(140)内に配置され、前記受入開口部(11)が、前記オイルサンプ(150)内に少なくとも部分的に配置されているトランスミッションギア(107)の端面に位置決めされ、前記受入開口部(11)から前記排出開口部(12)までの前記オイル案内方向(F)が、重力(G)に逆らって進む少なくとも1つの成分を有し、少なくとも前記第1の槽底(24)が、前記トランスミッションギア(107)の上方に配置される、トランスミッション(100)。
【請求項12】
動作中に前記トランスミッションギア(107)によって前記オイルサンプ(150)から持ち上げられたオイルが、前記受入開口部(11)に到達し、さらに前記案内チャネル(2)の前記オイル案内方向(F)に沿って前記排出開口部(12)に到達することを特徴とする請求項11に記載のトランスミッション(100)。
【請求項13】
前記第1の貯留槽(13)に少なくとも1つの第1の流出口(15)が設けられ、前記第2の貯留槽(14)に少なくとも1つの第2の流出口(16)が設けられ、前記第1の流出口(15)の流出開口部(17)が、第1のトランスミッション要素のベアリング、特に前記トランスミッション(100)内に取り付けられた入力側ロータシャフト(102)のベアリング(175)にオイルを供給し、前記第2の流出口(16)の流出開口部(18)が、第2のトランスミッション要素のベアリング、特にピニオン(106)のベアリング(176)にオイルを供給することを特徴とする請求項11に記載のトランスミッション。
【国際調査報告】