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特表2024-542643治療アプリケータの位置決め用計画デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】治療アプリケータの位置決め用計画デバイス
(51)【国際特許分類】
   A61B 34/10 20160101AFI20241108BHJP
   A61B 18/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61B 34/20 20160101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B34/10
A61B18/00
A61B34/20
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532223
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-06-17
(86)【国際出願番号】 EP2022082920
(87)【国際公開番号】W WO2023099299
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21212152.9
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】イゾラ アルフォンソ アガティノ
(72)【発明者】
【氏名】オウトヴァスト ギョーム レオポルド テオドルス フレデリック
(72)【発明者】
【氏名】シアンカレラ マルティナ
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160KL01
4C160KL02
(57)【要約】
本発明は、治療アプリケータ8を位置決めするための計画デバイス2に関する。デバイス2は、アプリケータ進入点10間で検討されるべき距離rを提供するように構成された提供ユニット4と、プロセッサ6とを備える。治療アプリケータ、特にアブレーション治療アプリケータを利用する際、2つ以上のアプリケータを共に近接して配置するとアブレーションのリスクが上がり、療法の成功に必要な量より多くの組織を損傷することが分かっている。現在選択されている進入点から距離r内にある全ての進入点を、これら進入点がさらなる最適化反復では利用できないように無効化するようにプロセッサ6を構成することによって、且つその後さらなる最適化反復を行うことによって、療法の成功に関して効果的でありつつも必要な量より多くの組織をアブレーションするリスクが軽減された最適なアプリケータ構成が提供され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療アプリケータを位置決めするための計画デバイスであって、前記計画デバイスが、アプリケータ進入点間で検討されるべき距離を提供する提供ユニットと、プロセッサとを備え、前記プロセッサが、
第1のアプリケータ進入点を備える最適なアプリケータ構成を決定する最適化反復ステップを行い、
前記第1のアプリケータ進入点から前記距離内にある全ての進入点を、前記全ての進入点がさらなる最適化反復ステップでは利用できないように無効化し、
さらなるアプリケータ進入点を備える最適なアプリケータ構成を決定するさらなる最適化反復ステップを行う、計画デバイス。
【請求項2】
前記計画デバイスがアブレーション治療アプリケータに対して位置決め支援を提供し、前記プロセッサがさらに、
対象を描写する三次元医療画像データを受け取り、
前記三次元医療画像データと位置合わせされた所望のアブレーションボリュームを受け取り、
前記三次元医療画像データと位置合わせされた1つ又は複数の保護ボリュームを受け取り、
前記三次元医療画像データに位置合わせされたアブレーションアプリケータ位置の離散的な組を生成し、
アブレーションパターンの離散的な組を受け取り、
前記三次元医療画像データに位置合わせされた複合アブレーションバイナリマスクを初期化し、
前記複合アブレーションバイナリマスクを前記所望のアブレーションボリュームと比較することによって、前記三次元医療画像データに位置合わせされた非アブレーションボリュームを求め、
前記1つ又は複数の保護ボリューム、前記非アブレーションボリューム、前記アブレーションパターンの前記離散的な組、前記アブレーションアプリケータ位置の前記離散的な組、及び無効化されたアプリケータ進入点に依存して選択されたオブジェクト関数を用いて、アプリケータ進入点を含むアプリケータ構成を決定し、前記アプリケータ構成が、前記アブレーションアプリケータ位置の前記離散的な組のうちの1つ、及び前記アブレーションパターンの前記離散的な組のうちの1つを指定し、
前記複合アブレーションバイナリマスクと、前記アブレーションアプリケータ位置の前記離散的な組のうちの前記1つに位置づけられた前記アブレーションパターンの前記離散的な組のうちの前記1つとの和集合を計算することによって、前記複合アブレーションバイナリマスクを更新する、請求項1に記載の計画デバイス。
【請求項3】
選択された前記オブジェクト関数が、アブレーション範囲ベースのオブジェクト二次関数、最小/最大アブレーション範囲関数、及びユニフォームの二次範囲関数を含む、請求項2に記載の計画デバイス。
【請求項4】
前記進入点が、格子テンプレートの格子孔、皮膚進入点のうちの少なくとも1つである、請求項1から3のいずれか一項に記載の計画デバイス。
【請求項5】
前記距離が、
テンプレート又は皮膚表面平面内での最小距離、前記テンプレート又は皮膚表面平面内での最大距離のうちの少なくとも1つである、請求項1から4のいずれか一項に記載の計画デバイス。
【請求項6】
前記距離がアプリケータ軌道間の最小及び/又は最大距離である、請求項1から4のいずれか一項に記載の計画デバイス。
【請求項7】
無効化された前記進入点を考慮した上で、さらなる前記最適なアプリケータ構成が決定できなくなるまで、さらなる前記最適化反復ステップが行われる、請求項1から6のいずれか一項に記載の計画デバイス。
【請求項8】
前記プロセッサがさらに、
前記アプリケータ構成が解から取り除かれ、他のアプリケータ構成によって置き換えられる、精密化反復ステップを行い、
利用可能であれば、前記最適なアプリケータ構成を決定するためにさらなる前記最適化反復ステップを行う、請求項1から7のいずれか一項に記載の計画デバイス。
【請求項9】
各精密化反復ステップにおいて、取り除き対象の前記アプリケータ構成が、前記最適なアプリケータ構成から順番に選択される、請求項8に記載の計画デバイス。
【請求項10】
前記反復中にあらゆるアプリケータ構成が1度取り除かれたとき、又は取り除かれた前記アプリケータ構成が前記反復ステップの結果として再度決定されるとき、前記精密化反復が停止される、請求項8又は9に記載の計画デバイス。
【請求項11】
各精密化反復ステップにおいて、取り除き対象の前記アプリケータ構成が、範囲ベースの関数値又は最小の最適なアプリケータ構成を選択するための導関数によって選択される、請求項8に記載の計画デバイス。
【請求項12】
アプリケータ位置決め構成の最適な組、無効化された進入点、前記進入点間で検討されるべき距離のうちの少なくとも1つを可視化する図形ユーザインタフェースをさらに備える、請求項1から11のいずれか一項に記載の計画デバイス。
【請求項13】
前記アブレーション治療アプリケータと、請求項1から12のいずれか一項に記載の計画デバイスとを備える、アブレーションシステム。
【請求項14】
治療アプリケータを位置決めするための計画方法であって、前記計画方法は、
提供ユニットが、進入点間で検討されるべき距離及び治療すべき標的の幾何学的情報を提供するステップと、
プロセッサが、第1のアプリケータ進入点を備える最適なアプリケータ構成を決定する最適化反復ステップを行うステップと、
前記プロセッサが、前記第1のアプリケータ進入点から前記距離内にある全てのアプリケータ進入点を、前記全ての進入点がさらなる最適化反復ステップでは利用できないように、無効化するステップと、
前記プロセッサが、さらなるアプリケータ進入点を備えるさらなる最適なアプリケータ構成を決定するさらなる最適化反復ステップを行うステップと、を有する、計画方法。
【請求項15】
前記治療アプリケータを位置決めするための計画コンピュータプログラムであって、前記計画コンピュータプログラムが、請求項1に記載の計画デバイスに請求項14に記載の計画方法のステップを行わせるためのプログラムコード手段を含む、計画コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、治療アプリケータを位置決めするための計画デバイス及びシステムに関し、治療アプリケータを位置決めするための計画方法及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱アブレーション又は放射線療法の形態を利用する治療アプリケータの使用が、切除不可能な腫瘍への適用性及び患者の迅速な回復を理由に、がん治療でますます普及してきている。
【0003】
そのような治療に対して、アプリケータの最適な位置決めは不可欠であり、腫瘍の位置及びサイズ、デバイスの製造元の仕様、並びに医師の経験に基づいて決定されることが多い。アブレーションデバイスは手動配置を用いることが一般的である一方、例えば米国特許出願公開第2019/0008591(A1)号及びEP3777748A1による画像誘導システムも知られている。
【0004】
しかし、そのような治療努力中に、療法の成功に必要な量より多くの組織を損傷する、アプリケータ間の物理的干渉が起きる場合があることが分かっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、アプリケータの位置決めを改善するために、治療アプリケータを位置決めするための計画デバイス及びシステム、並びにアブレーション治療アプリケータのような治療アプリケータを位置決めするための計画方法及びコンピュータプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様において、治療アプリケータを位置決めするための計画デバイスが提示される。上記計画デバイスは、アプリケータ進入点間で検討されるべき距離を提供するように構成された提供ユニットと、第1のアプリケータ進入点を備える最適なアプリケータ構成を決定する最適化反復ステップを行うように、第1のアプリケータ進入点から上記距離内にある全ての進入点を、これら全ての進入点がさらなる最適化反復ステップでは利用できないように無効化するように、且つさらなるアプリケータ進入点を備える最適なアプリケータ構成を決定するさらなる最適化反復ステップを行うように構成されたプロセッサと、を備える。
【0007】
この手法は、進入点を選択するデバイスの自由度を反復に合わせて単に徐々に低下させるという利点を有する。最初の時点では、全ての進入点が有効であり、後により詳細に説明されるアルゴリズムによって選択可能である。しかし、反復中に進入点が選択されればされるほど、より多くの進入点が無効になるため、探索及び解空間がより制約されていく。そのような技法によってもたらされた解は、ユーザによって定義された距離が順守されることを保証する。
【0008】
上記デバイスを利用することによって、熱アブレーション又は近接照射療法(brachytherapy)のような治療が改善され得ることが分かっている。詳細には、使用アプリケータ間での物理的干渉の低減が実現される。これにより、送達されるアブレーションの区域間の重複が縮小され、従って同じ組織を複数回アブレーションするリスクを軽減する。さらに、既知の治療手順と比較して、配置される必要のあるアブレーション又は近接照射療法アプリケータの数が削減される。
【0009】
一実施形態において、上記計画デバイスはアブレーション治療アプリケータに対して位置決め支援を提供し、プロセッサは対象を描写する三次元医療画像データを受け取るように、且つ三次元医療画像データに位置合わせされた所望のアブレーションボリュームを受け取るようにさらに構成されている。所望のアブレーションボリュームという用語は特定のアブレーションボリュームのためのラベルである。所望のアブレーションボリュームは三次元医療画像データに位置合わせされる。すなわち、所望のアブレーションボリュームは三次元医療画像データのある領域を示すか又は同定する。
【0010】
プロセッサは、三次元医療画像データに位置合わせされた1つ又は複数の保護ボリュームを受け取るようにさらに構成されている。1つ又は複数の保護ボリュームは、例えばそれらが過度に超音波処理されるか又はアブレーションされる場合に対象を傷つけるおそれのあるボリュームである。例えば、1つ又は複数の保護ボリュームは、臓器又は重要な解剖学的構造を保護するために使用される。
【0011】
プロセッサは、三次元医療画像データに位置合わせされたアブレーションアプリケータ位置の離散的な組を生成するようにさらに構成されている。この場合、所望のアブレーションボリュームの周りの部位は、離散的なアブレーションアプリケータ位置のパターン又は組を生成するために使用される。例えば、これらは離散的な組を生成するために予め決定されたパターン又はアルゴリズムを用いて生成されてもよい。
【0012】
プロセッサはアブレーションパターンの離散的な組を受け取るようにさらに構成されている。アブレーションパターンの離散的な組は複数のアブレーションパターンを含む。アブレーションパターンの離散的な組は、例えば異なる方向に配向され且つ/又は異なる出力供給量を有する、単一のアプリケータに対するアブレーションパターンであってもよい。他の例において、アブレーションパターンの離散的な組は複数のアプリケータからのものである。
【0013】
プロセッサは、三次元医療画像データに位置合わせされた複合アブレーションバイナリマスクを初期化するようにさらに構成されている。例えば、複合アブレーションバイナリマスクを初期化するステップは、空の又は未使用の複合アブレーションバイナリマスクを作成するステップである。複合アブレーションバイナリマスクという用語は特定のバイナリマスクを識別するために使用される。この場合の複合アブレーションバイナリマスクは、使用される全てのアブレーションパターンの複合又は共通部分を記憶するアブレーションバイナリマスクである。
【0014】
プロセッサは、複合アブレーションバイナリマスクを所望のアブレーションボリュームと比較することによって、三次元医療画像データに位置合わせされた非アブレーションボリュームを求めるようにさらに構成されている。複合アブレーションバイナリマスクは、連続的アブレーションアプリケータ構成リストの構成を用いて、既にアブレーションされた又はアブレーションが予定されている領域を識別するために使用される。所望のアブレーションボリュームと複合アブレーションバイナリマスクとの間の比較は、未だアブレーションされる必要のある又はアブレーションが生じるように追加のアプリケータを加える必要がある領域を見つけるために使用されてもよい。
【0015】
プロセッサは、1つ又は複数の保護ボリューム、非アブレーションボリューム、アブレーションパターンの離散的な組、アブレーションアプリケータ位置の離散的な組、及び無効化されたアプリケータ進入点に依存して選択されたオブジェクト関数を用いて、少なくとも1つのアプリケータ進入点を含むアプリケータ構成を決定するようにさらに構成されている。
【0016】
選択されたアプリケータ構成は、アプリケータ進入点の離散的な組のうちの1つ、及びアブレーションパターンの離散的な組のうちの1つを指定する。このステップにおいて、選択されたオブジェクト関数は、アプリケータ進入点の離散的な組のそれぞれにおけるアブレーションパターンの離散的な組の様々な組み合わせを評価するために使用され得る。
【0017】
選択されたオブジェクト関数は最良の選択肢を選択するために使用される。選択されたオブジェクト関数は、1つ又は複数の保護ボリュームを回避するだけでなく、非アブレーションボリュームの範囲などを客観的に測定するために使用される。
【0018】
プロセッサは、複合アブレーションバイナリマスクとアブレーションアプリケータ位置の離散的な組のうちの1つに位置づけられたアブレーションパターンの離散的な組のうちの1つとの和集合を計算することによって、複合アブレーションバイナリマスクを更新するようにさらに構成されている。
【0019】
アプリケータ進入点の構成が完了した後、この選択は複合アブレーションバイナリマスクを更新するために使用される。上述の実施形態は、対象に同時に挿入される複数のアプリケータ、及び順次挿入されるアプリケータの両方に適用する。
【0020】
選択されたオブジェクト関数は、アブレーション範囲ベースのオブジェクト二次関数、最小/最大アブレーション範囲関数、及びユニフォームの二次範囲関数を含む。これらのいずれかの関数を使用することは、アブレーション領域を選択すること、及び1つ又は複数の保護ボリュームで指定される重要な領域を保護することの両方で効果的であるため、有益である。
【0021】
好ましい実施形態において、進入点は、格子テンプレートの格子孔、皮膚進入点のうちの少なくとも1つである。格子テンプレートは、剛性格子テンプレート、可撓性格子テンプレート、特に経会陰格子テンプレート、乳房テンプレート、可撓性リードテンプレート、婦人科学的(GYN)アプリケータに取り付けられた格子、のうちの1つであってもよい。上記テンプレートは、標的の病変及びリスクのある臓器などの関心領域を区分するために使用される。
【0022】
一実施形態において、テンプレートは使用されない。この実施形態において、進入点は皮膚進入点である。
【0023】
一実施形態において、距離は、テンプレート又は皮膚表面平面での最小距離、特に最小ユークリッド距離、テンプレート又は皮膚表面平面内での最大距離、特に最大ユークリッド距離のうちの少なくとも1つであってもよい。上記距離は、さらにアプリケータ軌道間の最小及び/又は最大距離であってもよい。一般に、全ての進入点の無効化は、第1のアプリケータ進入点及び第1のアプリケータ進入点からの上記距離に基づく。
【0024】
一実施形態によれば、無効化された格子孔又は進入点を考慮した上で、さらなる最適なアプリケータ構成が決定できなくなるまで、さらなる最適化反復が行われる。
【0025】
好ましい実施形態において、プロセッサは、アプリケータ構成が解から取り除かれ他のアプリケータ構成によって置き換えられる精密化反復ステップを行うようにさらに構成されており、最適なアプリケータ構成を決定するためにさらなる最適化反復ステップが行われる。
【0026】
この助力を受けて、反復最適化の貪欲性が低減される。アプリケータ構成が取り除かれるとき、それまで無効化されていた近傍の進入点又は格子孔は全て有効化され、ソルバ選択で再度利用可能となる。
【0027】
一実施形態において、各精密化反復ステップでは、取り除き対象のアプリケータ構成は最適なアプリケータ構成から順番に、すなわち1つずつ、選択される。例えば、取り除き対象のアプリケータ構成は全てのアプリケータのリストに基づいて選択されてもよく、取り除き対象のアプリケータ構成は、例えばアプリケータのリストの全てのアプリケータ構成が少なくとも1回は取り除かれるか又は任意の他の失敗基準が満たされるまで、リストから続けて、すなわち次々に、自動的に選択されてもよい。
【0028】
他の実施形態において、反復中にあらゆるアプリケータ構成が1度取り除かれたとき、又は取り除かれたアプリケータ構成が反復ステップの結果として再度決定されるとき、精密化反復が停止される。
【0029】
一実施形態において、各精密化反復ステップでは、取り除き対象のアプリケータ構成は、範囲ベースの関数値又は最小の最適なアプリケータ構成を選択するための導関数によって選択される。範囲ベースの関数値は、1組のアプリケータ構成が例えば腫瘍などの関心領域に提供する範囲を定量化する数値である。従って、アプリケータ構成が解から取り除かれ得、範囲ベースの関数値が残りのアプリケータ構成に対して求められ得る。これは繰り返されてもよく、範囲ベースの関数値、及び従って関心領域の範囲がアプリケータ構成の完全な組に対して最も変動されない残りのアプリケータ構成が決定され得る。取り除かれるアプリケータ構成はそのとき最も不適なアプリケータ構成であり、選択されてもよい。従って、最も不適なアプリケータ構成は、アプリケータ構成の完全な組の範囲ベースの関数値に対して範囲ベースの関数値を最も変動させないアプリケータ構成を意味する。
【0030】
提供ユニットは、図形ユーザインタフェース、構成ファイル、データベースのうちの少なくとも1つを含んでもよい。一般に、提供ユニットは、アプリケータ進入点間で検討される距離をプロセッサに提供するように構成されている。さらに、提供ユニットは、例えばストレージ又はユーザ入力から距離を受け取り、さらなる処理のためにその距離をプロセッサに提供するための受領ユニットでもあってもよい。
【0031】
上記デバイスは、アプリケータ位置決め構成の最適な組、無効化された進入点、進入点間で検討される距離、のうちの少なくとも1つを可視化するように構成された図形ユーザインタフェースをさらに備えてもよい。
【0032】
提供ユニットの図形ユーザインタフェース及び上記デバイスの図形ユーザインタフェースは、同一の図形ユーザインタフェースであるか、又は互いに異なる。
【0033】
図形ユーザインタフェースは、テキストフィールド、連続的スライダ、離散的スライダ、ラジオボタン又はプルダウンメニュー、格子/患者の解剖学的構造の上部に半径を可視化する間のスクロールホイール相互作用のうちの少なくとも1つを備える。
【0034】
上記デバイスは、特に、実施された設定変更後の要求に応じて、且つ/又は設定変更に際してリアルタイムで、更新されるように構成されている。
【0035】
本発明の他の態様において、アブレーションシステムが提示される。上記システムは、アブレーション治療アプリケータ、及び請求項1から12のいずれか一項で定義されるような計画デバイスを備える。
【0036】
アブレーション治療アプリケータは、焦点式超音波(FU)、マイクロ波(MW)、ラジオ波(RF)、焦点レーザアブレーション(FLA)、冷凍アブレーション、不可逆電気穿孔法(IRE)、又は近接照射療法のうちの少なくとも1つのアブレーション原理を利用する。
【0037】
適用可能な治療臓器は、前立腺、乳房、腎臓、肝臓、子宮頸部であってもよい。
【0038】
適用可能な治療作業フローは、局所的治療、四半部治療、片側前立腺治療、全体前立腺治療、部分的乳房治療であってもよい。上記分類はアブレーション処置の目的に依存する。局所的治療は前立腺内の小さい部域にのみ影響し、四半部治療は前立腺の四半部に影響し、片側前立腺治療は典型的にはその腺の半分に影響し、全体前立腺治療はその腺全てに影響する。部分的乳房治療は乳房の部分的なアブレーションに向けて進められる。
【0039】
本発明のさらなる態様において、治療アプリケータを位置決めするための計画方法が提示され、上記計画方法は、進入点間で検討されるべき距離及び治療すべき標的の幾何学的情報を提供するステップと、第1のアプリケータ進入点を備える最適なアプリケータ構成を治療すべき標的の幾何学的情報に基づいて決定する最適化反復ステップを行うステップと、第1のアプリケータ進入点から上記距離内にある全てのアプリケータ進入点を、これら進入点がさらなる最適化反復ステップでは利用できないように無効化するステップと、さらなるアプリケータ進入点を備えるさらなる最適なアプリケータ構成を治療すべき標的の幾何学的情報に基づいて決定するさらなる最適化反復ステップを行うステップと、を有する。
【0040】
上記方法を利用することによって、熱アブレーション又は近接照射療法のような治療が改善され得ることが分かっている。詳細には、使用アプリケータ間での物理的干渉の低減が実現される。これにより、送達されるアブレーション区域間の重複が縮小され、従って同じ組織を複数回アブレーションするリスクを軽減する。さらに、既知の治療手順と比較して、配置される必要のあるアブレーション又は近接照射療法アプリケータの数が削減される。
【0041】
一実施形態において、進入点は格子テンプレートの格子孔、皮膚進入点のうちの少なくとも1つである。
【0042】
さらに他の態様において、治療アプリケータを位置決めするための計画コンピュータプログラムが提示され、上記計画コンピュータプログラムが、コンピュータに請求項14で定義されるような方法のステップを行わせるためのプログラムコード手段を含む。
【0043】
治療アプリケータに対して位置決め支援を提供するための請求項1のデバイス、請求項13のアブレーションシステム、治療アプリケータに対して位置決め支援を提供するための請求項14の方法、及び請求項15のコンピュータプログラムは、特に従属請求項で定義されるような類似の且つ/又は同一の好ましい実施形態を有することが理解されよう。
【0044】
本発明の好ましい実施形態は、従属請求項又は上記の実施形態と各々の独立請求項との任意の組み合わせでもあってもよいことが理解されよう。
【0045】
本発明のこれら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかになり、以下に記載される実施形態を参照して明瞭になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0046】
図1】アブレーション治療アプリケータ及び位置決め支援デバイスを備えるアブレーションシステムの実施形態の概略例示図である。
図2】位置決め支援デバイスの実施形態の概略例示図である。
図3】臓器を治療するために位置決め支援を提供するための格子テンプレートの使用を図解する図である。
図4】治療アプリケータに対して位置決め支援を提供するための方法を図解する図である。
図5】上記方法のステップを図解する図である。
図6】上記方法の異なるステップの図解の代替例を提供する図である。
図7】治療アプリケータに対して位置決め支援を提供するためのコンピュータプログラムを図解する図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
図1はアブレーションシステム100を示す。アブレーションシステム100は、経皮的がん治療用アブレーション治療アプリケータ20として構成された治療アプリケータ8を備える。アブレーション治療アプリケータ20は、例えば、焦点式超音波(FU)、マイクロ波(MW)、ラジオ波(RF)、焦点レーザアブレーション(FLA)、冷凍アブレーション、不可逆電気穿孔法(IRE)、又は近接照射療法を利用する。これら全ての療法モダリティは、アプリケータ8を腫瘍又は冒された臓器に挿入することを必要とする。アプリケータ8の位置決めを容易にするため、格子孔12を備える格子テンプレート14が利用される。アプリケータ8は格子テンプレート14の格子孔12に挿入される。格子孔12は進入点10の例である。療法の計画に応じて、アプリケータ8は、冒された臓器又は腫瘍を治療するために特定の格子孔12に挿入される。
【0048】
ユーザがアプリケータ8を位置決めすることを支援するために、アブレーションシステム100は、治療アプリケータ8のための位置決め支援を提供するためのデバイス2を備える。デバイス2は、図2に示されるように提供ユニット4を備える。提供ユニット4は、アプリケータ進入点10間で検討されるべき距離rを提供するように構成されている。これらアプリケータ進入点10は、図1に示されるように格子テンプレート14の格子孔12であるか、又はフリーハンド進入点とも呼ばれる任意の皮膚進入点である。提供ユニットは、図形ユーザインタフェース、構成ファイル、又はデータベースを備える。デバイス2は、1組のアプリケータ位置決め構成を可視化してユーザがアプリケータ8を格子テンプレート14の格子孔12又は任意の皮膚進入点に挿入することを最終的に補助するように構成された図形ユーザインタフェース21をさらに備える。
【0049】
アプリケータ進入点10間で検討される距離rは、図1に示されるように、格子テンプレート14の表面平面16での距離である。図3は、治療対象の臓器24の方へ導く様々なアプリケータ軌道18の例を示す。
【0050】
図2を再度参照すると、デバイス2はプロセッサ6をさらに備える。デバイス2のプロセッサ6は、第1のアプリケータ進入点10を備える最適なアプリケータ構成を決定する最適化反復ステップを行うように構成されており、現在選択されている進入点10から距離r内にある全ての進入点22を、これら進入点22がさらなる最適化反復では利用できないように無効化する。プロセッサ6は、さらなるアプリケータ進入点10を備えるさらなる最適なアプリケータ構成を決定するさらなる最適化反復ステップを行うようにさらに構成されている。
【0051】
次いで、最適なアプリケータ構成を決定する最適化反復ステップの例が説明される。本明細書において、この既知の手法は、現在選択されている進入点10から距離r内にある全ての進入点22を、これら進入点22がさらなる最適化反復では利用できないように検討し無効化することによって延長される。例としては、離散的な逆方向計画最適化、又は離散連続混合の逆方向計画最適化手法が提供される。臨床専門家は、三次元医療画像データ及び1つ又は複数の保護ボリュームなどの1組の区分された関心領域と、所望のアブレーションボリュームなどの1組の達成すべき臨床目標と、使用対象のアプリケータに対するアブレーションパターンの離散的な組などのアブレーション仕様と、の入力をこれに提供するようにのみ求められる。その後、反復貪欲アルゴリズムを含む組が、設けられた臨床プロトコル目標を可能な限り満たすことができるアブレーションデバイス構成の最適な最小数を調べるために使用される。貪欲アルゴリズムは局所的最小値を探索する。
【0052】
上記例の適用は、1つ又は複数の以下のステップを有する。ステップ0において、計画者は1組の区分された関心領域を提供するように留意する。この工程は自動的に又はユーザ入力に基づいて行われる。がん組織、リスクのある組織、及び健康な組織への区分が関心対象となる。計画者は、規定の臨床プロトコル(すなわち規定の臨床目標/制約のリスト)を、後の最適化ステップ中に最適化される、対応するアブレーションベースの数学的オブジェクト関数(例えば凸二次関数)に変換するようにさらに留意する。アブレーションデバイスのサプライヤデータを考慮して、対応するアブレーションバイナリマスクが、デバイスデータシートで提供される全ての出力・時間設定に対して生成される。潜在的アプリケータ先端位置及びアプリケータ配向の3D格子がサンプリングされる。最後に、アブレーションデバイス構成の離散的な組が、サンプリングされた3Dアプリケータ先端位置/方向の組と全ての可能な出力・時間設定に関する全てのサプライヤデータベースのアブレーションバイナリマスクとを組み合わせることによって生成される。
【0053】
ステップ1によれば、アブレーションベースのオブジェクト関数値を最小化する現在において最良のアプリケータ構成が、ステップ0で生成された離散的な組から選択される。ステップ2において、ステップ1で選択されたアプリケータ構成の新しい組を考慮して、対応するアプリケータの位置が対応するアブレーションバイナリマスクと共に局所的に精密化される。ステップ1で先に行われたように、最適化装置をアプリケータ先端位置、配向、及び送達されるアブレーションバイナリマスクの最適な組に向けて導くために、ここでアブレーションベースのオブジェクト関数が使用される。ステップ3によれば、全ての臨床的制約を満たす解が達成され、且つ/又はユーザにより定義された最大数のアプリケータが選択されるまで、ステップ1及びステップ2が繰り返し実行される。
【0054】
例における他の側面は、最適化問題定義が以下のステップで説明されることである。まず最適化問題が定義される。検討下の組織ボリュームは構造に区分され、各k番目の関心構造(すなわち腫瘍、リスクのある臓器、通常組織など)に対してバイナリマスクSが提供される。
【0055】
医師は、満たされる必要のある全てのアブレーション範囲ベースの目標のリストと共に臨床プロトコルを規定する。熱アブレーション療法の典型的目標は、適合されたアブレーションを局所的がん細胞にわたって送達しつつ近傍の全ての健康な組織を可能な限り多く残すことである。大きな標的ボリュームのアブレーションは通常の組織のアブレーションにより誘発される損傷耐性と競合するため、この目標は困難である。
【0056】
1組のアブレーション範囲ベースのオブジェクト関数を導入する前に、単一のアプリケータ構成の送達されるアブレーション区域、及び複数のアプリケータ構成の送達によって生成される複合アブレーションに対して数学的表現が必要とされる。
【0057】
その後、アブレーションアプリケータ構成の最初の離散的な組が生成される。サプライヤデバイスデータシートを考慮して、アブレーション出力及び送達時間値の各j番目の組み合わせに対する予想アブレーション区域が対応する3Dアブレーションバイナリマスクに変換される。
【数1】
【0058】
個のアプリケータ構成の離散的な組Cが構築される。ここで、各アプリケータ構成は、離散化されたアプリケータ経路(すなわち皮膚挿入点、方向、及び最終的なアプリケータ先端位置)の組み合わせと、出力・送達時間設定によって生成される予測バイナリマスクAとからなる。適度に低い濃度Nを保つために、組Cに対しては、少なくとも部分的に腫瘍領域に重なっているバイナリマスクを有するアプリケータ構成のみが検討される。さらに、選択された最良のアプリケータの離散的位置及び方向の以後の局所的精密化により、アプリケータ位置及び方向の適度なサンプリング係数及び粗空間離散化が組Cを追加するために使用され得る。
【0059】
最後に、複数のアブレーションデバイス構成が送達されるとき、複合アブレーションバイナリマスクAは全ての関連するアブレーションバイナリマスクAの和集合として定義される。
A=∪ (E2)
【0060】
アブレーション分画ボリュームの概念が、アブレーションによって影響を受ける構造のボリュームを定量化するために以下で使用される。k番目の区分された構造を考慮して、複合アブレーションバイナリマスクAによって生成されるその現在のアブレーション分画構造ボリュームvが、
【数2】
により与えられる。
【0061】
ここで、Sはk番目の区分された関心領域のバイナリマスクを示し、|・|は濃度(すなわちサイズ)演算子であり、|A∩S|は累積アブレーションボリュームと構造(すなわち現在アブレーションされる区分された構造の部分)との間の共通部分の濃度を示す。
【0062】
一般に、全ての関心領域に対する臨床目標は、集合
【数3】
の対応する、両側性又は片側性であり閉じており真のアブレーション範囲ベースの関数に変換される。
【0063】
腫瘍の必要なアブレーション範囲を達成しつつ近傍の健康な組織を可能な限り多く残すために、医師は全ての関心領域でのアブレーション範囲に対する閾値を規定してもよい。例えば、k番目の構造の所与の最小(及び/又は最大)ボリューム分画tがアブレーションされる。この目的のため、以下のアブレーション範囲ベースの二次オブジェクト関数が最適化制約として使用される。
【数4】
【0064】
ここで、H(・)はヘヴィサイドの階段関数であり、tは規定の最小(最大)アブレーション分画ボリューム閾値であり、vは複合アブレーションAにより生成される現在のアブレーション分画構造ボリューム(式E3を参照)を示す。
【0065】
全ての数学的目的f(A)は、全ての選択されたアブレーションアプリケータ構成によって生成される複合アブレーション区域バイナリマスクAの関数として与えられる(式2を参照)。以下の合成オブジェクト関数
【数5】
が、望まれるアブレーション範囲を実現するために定義され最小化され得る。
【0066】
数量w及びwは、それぞれ全てのアブレーション範囲ベースのオブジェクト関数及び正則化項に対する、手動設定された重要性重みを表す。正則化項R(A)は任意選択であり、様々な形態を有する。これは、いくつかの要求された具体的なアブレーション区域特性を実施するために使用され得る。例えば、複合アブレーションバイナリマスクAに対する過度に高い濃度(すなわちサイズ)を回避するためのチコノフ正則化(Tikhonov regularization)、又は腫瘍小領域の余分なアブレーションにつながる全ての送達されたアプリケータのアブレーションバイナリマスク間での重複(すなわち共通部分)のサイズを制御(例えば低下)するための正則化項を使用してもよい。
【0067】
次のステップとして、最適な離散的アプリケータ構成が以下のように選択される。N個のアプリケータ構成の離散的な組Cが与えられ、各c番目の構成に対してアブレーションバイナリマスクAが計算されることが想定される。Pは現在選択されているアプリケータ構成の組としてとして定義され、Aは式E2に示されるように計算される対応する複合(すなわち和集合)アブレーション区域バイナリマスクである。
【0068】
貪欲反復アルゴリズムを含む組を使用するいくつかの例の目標は、式(E6)のアブレーションベースの関数F(A)の改善された値を潜在的にもたらすことができる新しいアプリケータ構成cを選択組Pに加えることである。現在のステップnにおける最良のアプリケータ構成の選択について、オブジェクト関数値f、すなわち範囲ベースの関数値が、
=F(A∪A),c=1,...,N (E7)
によって、各可能なc番目のアプリケータ構成に対して計算される。
【0069】
ここで、cはアブレーションアプリケータ構成の指数を表し、Nは離散的組Cにおけるアプリケータの構成の総数である。各反復nでは、最小オブジェクト関数値に対応するアプリケータ構成cが選択され、アプリケータ構成の最適な組Pに加えられる。
=min{f},c=1,...,N (E8)
【0070】
この例において、複数の最適なアプリケータ構成が連続的に選択される貪欲反復アルゴリズムが開示されている。最良のアプリケータ構成の選択は、各アルゴリズム反復で全てのN個のアブレーションデバイス構成に対してオブジェクト関数f=F(A∪A)を計算することを必要とする。結果として、全てのアブレーション分画構造ボリュームv(式E3)が、アルゴリズムの各n番目の反復で全てのN個のアブレーションデバイス構成に対して再計算される。これらのボリューム測定計算は、アルゴリズム性能に対する深刻なボトルネックを表す場合がある。これらvの計算の速度を上げるために、以下の式、
(A∪A,S)=v(A,S)+v(A,S)-v(A∩A,S) (E9)
が使用され得る。
【0071】
ここで、式E9の右辺において、v(A,S)の数量は最初に予め計算されてもよく、v(A,S)の値は以前のアルゴリズム反復から与えられ既知であり、一方で最後の項のv(A∩A,S)のみが、全てのN個のアブレーションデバイス構成に対する新しいv(A∪A,S)の値を得るために計算される。共通部分組(A∩A)の濃度は和集合組(A∪A)の濃度より明らかに小さいため、式E9を使用してv(A∪A,S)を計算することで、必要な計算時間を大幅に短縮することができる。
【0072】
次いで、選択されたアプリケータ構成の反復的な局所的精密化が行われる。前のステップからの選択されたアプリケータ構成の新しい組Pを考慮して、離散連続混合反復の制約された最適化の問題を解決することによって、対応するアプリケータの空間的位置及び送達されるアブレーションバイナリマスクが局所的に精密化され得る。この局所的精密化ステップは必須ではなく、最初のステップにおけるアプリケータ構成の最初の組Cの生成のために使用される空間的離散化が医師によって十分に正確であるとみなされた場合に、省略されてもよい。
【0073】
しかし、極度の粗空間の離散化が計算負荷を軽減するために使用される場合、送達されるアプリケータ構成の精確性を向上し結果的に腫瘍のアブレーション範囲を広げるために反復的な局所的精密化ステップが行われ得る。各精密化反復において、まず、現在選択されている全てのアプリケータのアブレーションマスクの最適な局所的剛体変換が、治療目標に関するアブレーションベースの汎関数を最小化することによって決定される。
【0074】
最初に選択された離散的アプリケータ位置及びアブレーションバイナリマスクから始まり、腫瘍のアブレーション範囲を広げるために、最適な回転並進移動(roto-translation)変換(R,t)が計算されてアプリケータ位置/方向に適用される。これは、選択されたアプリケータ先端位置及び方向並びに各格子位置xでの関連するバイナリマスクを変換するために使用される剛体変換のパラメータR,tに対する、式E6で導入される関数
【数6】
を最小化することによって
A[R,t](x)=∪p∈P(Rx+t
として実現され得る。
【0075】
任意選択で、最適化の探索を臨床的に送達可能なアプリケータの回転並進移動変換のみを含む実現可能な解の組に限定するために、下界及び上界が最適化問題に適用されてもよい。最後に、結果として、全ての選択されたアプリケータ構成に対する最適な剛体変換パラメータ(R ,t )が得られる。第2の局所的精密化ステップとして、剛体変換されたアプリケータの位置は固定され続け、対応する送達されたアブレーションバイナリマスクAは最適に更新される。ここで、デバイスの製造元の仕様で提供される全ての可能なバイナリマスクは、現在の回転並進移動されたアプリケータの位置で評価される。最後に、アブレーション範囲の最小オブジェクト関数値、すなわち範囲ベースの最小関数値をもたらすアブレーションマスクAの新しい組が選択される。
【0076】
この局所的精密化ステップの計算コストを削減するために、最後に選択されたアプリケータ構成のアブレーションバイナリマスクのみを更新しつつ他の全ての選択されたアプリケータのバイナリマスクは固定されたままとなるようにオブジェクト関数評価を限定してもよい。この反復的な局所的精密化ステップは、ユーザにより規定されたアブレーションベースのオブジェクト関数の精確度、及び/又は局所的精密化反復の最大数が達成されるまで、アプリケータの位置決めの最適化と最適なバイナリマスクの選択との間で切り替わる。
【0077】
次いで、反復的最適化戦略が説明される。最初の離散的組からのアプリケータ構成の最適な選択と、連続的最適化方法を用いた現在選択されているアプリケータ構成の局所的精密化との間で切り替わる反復的戦略において、手順パラメータ(P,R ,t )が最適化される。まず、離散的アプリケータ構成の大きな組から最良のアプリケータ構成が選択され、その後、第2のステップ中に、現在選択されている全てのアプリケータが腫瘍の総アブレーション範囲などを向上するために局所的に再配置される。
【0078】
所与の相対的なアブレーション範囲ベースの関数Fの精確度が達成され、且つ/又は選択されるアブレーションアプリケータの所与の最大数に達された場合/とき、アルゴリズム反復が停止される。これらの場合では、最後に達成された解がNsel個の選択されたアプリケータと共に戻される。
【0079】
最後に、総計算時間を改善するために、各反復で2つ以上の新しいアプリケータ構成を選択してもよい。これにより、最適解を調べるために必要な関数計算の回数が減るが、代償としてアブレーション範囲の品質が多少劣化する。
【0080】
選択されたアプリケータの構成の組P及び対応する複合アブレーション区域Aは、臨床専門家の先験的知識を利用することによって適切に初期化され得る。そのような初期化が利用可能でない場合、完全に空の初期設定(すなわち
【数7】

【数8】
)が想定され、その場合、この反復的戦略は最も有望なアプリケータ構成を含む組Pを追加する。
【0081】
最適化された計画が臨床専門家によって送達されてもよい。ここで、埋入されたアプリケータはリアルタイムで連続的に追跡される。検出されたアプリケータ先端が計画された位置に対して誤配置されている場合、予期された計画品質を再確立するためにアプリケータの残りの組及び対応する複合アブレーションを適応的に再最適化するべく、これら追跡された誤配置が考慮されてもよい。
【0082】
図4は、治療アプリケータ8のための位置決め支援を提供するための関連方法200を示す。方法200は、進入点10間で検討されるべき距離r及び治療すべき標的の幾何学的情報を提供するステップ202と、最適化反復ステップ、及び治療すべき標的の幾何学的情報に基づいて第1のアプリケータ進入点10を選択することを有する最適なアプリケータ構成を決定する決定ステップを行うステップ204と、現在第1に選択されているアプリケータ進入点10から上記距離r内にある全てのアプリケータ進入点22を、これら進入点22がさらなる最適化反復ステップでは利用できないように無効化するステップ206と、さらなる最適化反復ステップ、及び治療すべき標的の幾何学的情報に基づいてさらなるアプリケータ進入点10を選択することを有するさらなる最適なアプリケータ構成を決定する決定ステップを行うステップ208とを有する。
【0083】
第1のアプリケータ進入点10を選択することを有する、最適なアプリケータ構成を決定する反復ステップは、この場合も上記のアルゴリズムに基づく。
【0084】
デバイス2及び方法200によって行われるステップが図5及び図6に対して図解される。図5の左側の格子テンプレート14で示されるように、アプリケータ進入点10を選択することを有する最適なアプリケータ構成を含む最適化反復が行われる。次のステップとして、進入点10から距離r内にある全ての進入点22は、これら進入点22がさらなる最適化反復では利用できないように無効化される。その後、図5の中央に配置されている格子テンプレート14で示されるように、さらなる最適化反復が行われ、さらなるアプリケータ進入点10を選択することを有するさらなる最適なアプリケータ構成が決定される。やはりここでも、現在選択されている進入点10から距離r内にある全ての進入点22は無効化される。無効化された進入点22を考慮してさらなる最適なアプリケータ構成が決定され得なくなるまで、反復ステップが行われる。
【0085】
換言すれば、各現在選択されている進入点10の周りに適用された灰色で示されるように、無効化された進入点22は円形無効化マスクを形成する。上記方法は、ソルバ自由度とも呼ばれる最適化自由度を反復に合わせて単に徐々に低下させるという利点を有する。最初の時点では全ての進入点10又は格子孔12が有効であり選択可能であるが、反復中にソルバが進入点10又は格子孔12を選択すればするほど、より多くの進入点10が無効になるため、ソルバの探索及び解空間がより制約されていく。そのような技法を用いるソルバによってもたらされた解は、ユーザによって定義された最小距離rが行使されることを保証する。
【0086】
図6は、提起された反復が互いに離隔された格子孔12を備える格子テンプレート14に適用される他の例を示す。短い距離rに対して、アプリケータ8はあらゆる格子孔12に挿入され得る。これは図6の左側で示される。中央のテンプレート14又は右側のテンプレート14で示されるように、距離がr又はrに近づいて増加される場合、格子孔12は無効化される。図6の中央で示されるように、進入点10を通る仮想の鉛直軸線及び水平軸線(図6で図示せず)に沿った格子孔22のみが無効化される。右側の格子テンプレート14では、進入点10を通る仮想の水平軸線又は鉛直軸線に対して斜めにある格子孔22も無効化される。
【0087】
一般に、テンプレート又は皮膚表面平面16(図1を参照)において、距離rは最小距離、特に最小ユークリッド距離であってもよい。テンプレート又は皮膚表面平面16内において、距離rは最大距離、特に最大ユークリッド距離でもあってもよい。距離rは、図3で示されるようなアプリケータ軌道18の間の最小及び/又は最大距離でもあってもよい。
【0088】
最適化は、発見的で反復的で離散的な最適化を含む。アプリケータ8がアブレーションアプリケータ20である場合、最適化反復は、格子テンプレート14の格子の幾何学的情報、局所的なアブレーション範囲の目標、治療用に使用すべき選択されたアプリケータ8のための製造元アブレーション区域、特に病変及びリスクのある臓器といった、格子位置を導く関心領域を考慮した区分メッシュ、のうちの少なくとも1つを考慮する。格子テンプレート40の格子の幾何学的情報は、格子モデル、格子サイズ、格子孔の数、格子孔間の距離、のうちの少なくとも1つを含む。図2に示されるデバイス2のプロセッサ6は、最適なアプリケータ構成が解から取り除かれて新しい最適なアプリケータ構成によって置き換えられる精密化反復を行うようにさらに構成されている。一実施形態において、精密化反復は、各反復ステップで最適なアプリケータ構成を1つずつ、すなわち順番に取り除くことを有してもよい。例えば、アプリケータのリストが使用されてもよく、精密化反復の各反復ステップにおいて、アプリケータのリストのあるアプリケータに対応するアプリケータ構成が取り除かれる。この場合、アプリケータ構成は続けて、すなわちリストのアプリケータの順序により定義されるように、取り除かれてもよい。代替的に、現在の解から取り除かれる際に汎関数を可能な限り劣化させないアプリケータ構成が、選択され取り除かれてもよい。このアプリケータ構成は、最小の最適な、すなわち残りのアプリケータ構成が最適化のそれぞれの目標に対してより大きな影響を及ぼす、アプリケータ構成とみなされてもよい。それぞれの最小の最適なアプリケータ構成は、例えば上記の式E7を利用して、アプリケータ及びアブレーション区域の所与の組に対して計算され得る範囲関数値に基づいて、決定され得る。さらに、最小の最適なアプリケータ構成を決定するために、必要であれば、範囲ベースの関数値に基づき、汎関数微分も分析的に計算されるか又は離散的に概算されてもよい。
【0089】
図7はコンピュータプログラム300を示す。コンピュータプログラム300は、治療アプリケータ8に対する位置計画のための支援を提供する。コンピュータプログラム300は、コンピュータに図4で示されるような方法のステップを行わせるためのプログラムコード手段302を含む。
【0090】
デバイス2又は方法200は、近接照射療法のカテーテル位置、熱アブレーションの提案、二重時間、アブレーション時間/出力の値、のうちの少なくとも1つの送達パラメータを提供するようにさらに構成されている。方法200又はデバイス2の助力を受けて、ユーザによって規定される距離rより短い距離にある格子孔12にわたってアブレーション区域を送達することが回避される。このことは、アプリケータ8間での物理的干渉の低減、及び同じ組織を複数回治療するリスクを軽減することを意味するアブレーション区域間での重複の縮小による、治療実行複雑性の低減にもつながる。
【0091】
開示される実施形態の他の変形形態が、図面、開示内容、及び添付の特許請求の範囲の検討から、特許請求された本発明を実施する当業者によって理解され、もたらされてもよい。
【0092】
特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素又はステップを排除せず、単数形の要素は複数性を排除しない。
【0093】
単一のユニット又はデバイスは、特許請求の範囲に記載されるいくつかの項目の機能を果たす。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これら手段の組み合わせが有利に使用され得ないことを示すものではない。
【0094】
1つ又はいくつかのユニット又はデバイスによって行われる、最適化反復を行うこと、又は現在選択されている進入点から距離内の全てのアプリケータ進入点を無効化することなどの手順は、任意の他の数のユニット又はデバイスによって行われてもよい。これらの手順は、コンピュータプログラムのプログラムコード手段及び/又は専用のハードウェアとして実施されてもよい。
【0095】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと共に又は一部として供給される光学記憶媒体又は固体媒体などの好適な媒体に記憶/分配されるが、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介するような他の形態でも分配される。特許請求の範囲内のいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0096】
本発明は、治療アプリケータに対して位置決め支援を提供するための計画デバイスに関する。上記デバイスは、アプリケータ進入点間で検討されるべき距離を提供するように構成された提供ユニットと、プロセッサとを備える。治療アプリケータ、特にアブレーション治療アプリケータを利用する際、2つ以上のアプリケータを共に近接して配置するとアブレーションのリスクが上がり、療法の成功に必要な量より多くの組織を損傷することが分かっている。現在選択されている進入点から距離r内にある全ての進入点を、これら進入点がさらなる最適化反復では利用できないように無効化するようにプロセッサを構成することによって、且つその後さらなる最適化反復を行うことによって、療法の成功に関して効果的でありつつも必要な量より多くの組織をアブレーションするリスクが軽減された最適なアプリケータ構成が提供され得る。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】