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特表2024-542644被検体の血管系を解析するための方法及びプロセッサ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】被検体の血管系を解析するための方法及びプロセッサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 6/03 20060101AFI20241108BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20241108BHJP
【FI】
A61B6/03 560J
A61B6/03 560G
G06T7/00 612
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532224
(86)(22)【出願日】2022-11-10
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022081434
(87)【国際公開番号】W WO2023099144
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211556.2
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】110001690
【氏名又は名称】弁理士法人M&Sパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】ウィッセル トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ニッキーシュ ハンネス
(72)【発明者】
【氏名】シュネルバッヒャー ニコラス デイヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ホルガー
(72)【発明者】
【氏名】グラス ミカエル
【テーマコード(参考)】
4C093
5L096
【Fターム(参考)】
4C093AA22
4C093DA02
4C093FF16
4C093FF17
4C093FF22
4C093FF23
4C093FF42
5L096AA09
5L096BA06
5L096BA13
5L096EA18
5L096FA02
5L096FA26
5L096FA52
5L096FA64
(57)【要約】
被検体の血管系を解析するための方法が提供される。関心領域の画像内で、血管木が同定される。主要血管の標準木の一部を形成する主要血管が同定され、次に、標準木の主要血管は除外されて、同定された血管木の残りの血管が同定される。これにより、関心領域内の側副血管が分離され、側副血管の解析を行うことができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検体の血管系を解析する方法であって、
前記被検体の関心領域の画像を受信するステップと、
前記関心領域に存在する血管木を同定するステップと、
同定された前記血管木内の主要血管を同定するステップであって、前記主要血管は、前記主要血管の標準木の一部を形成する、同定するステップと、
同定された前記血管木から、同定された前記主要血管を減算し、したがって、前記標準木の前記主要血管を除外することによって、同定された前記血管木の残りの血管を同定し、これにより、前記関心領域内の側副血管を同定するステップと、
前記側副血管の解析を行うステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記関心領域に存在する前記血管木を同定するステップは、画像セグメンテーション及び血管中心線抽出を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記主要血管を同定するステップは、階層的なルールベースの分類を使用するステップを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記側副血管の解析を行うステップは、前記側副血管の数を含むパラメータを決定するステップを含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記側副血管の解析を行うステップは、前記側副血管の累積長を含むパラメータを決定するステップを含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記側副血管の解析を行うステップは、側副内腔ボリュームを含むパラメータを決定するステップを含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記側副血管の解析を行うステップは、基準値に対して前記パラメータを正規化するステップを含む、請求項4から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記側副血管の解析を行うステップは、健康な被検体に対応する前記パラメータの基準値に対して、又は特定の被検体に関連する患者グループの基準値に対して前記パラメータを正規化するステップを含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
受信した前記画像は、3D画像である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記側副血管の解析を行うステップは、基準表面への画像投影を使用して計算される正味の血管密度を決定するステップを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
受信した前記画像は、2D画像である、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムであって、前記コンピュータプログラムコード手段は、前記コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法を実施する、コンピュータプログラム。
【請求項13】
請求項12に記載のコンピュータプログラムでプログラムされた、プロセッサ。
【請求項14】
被検体の関心領域の画像を取得するためのイメージャと、
前記画像を解析して、前記関心領域内の前記側副血管の解析を行うための、請求項13に記載のプロセッサと、
を含む、イメージングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被検体の血管を表示している画像の解析に関する。
【背景技術】
【0002】
冠動脈系又は末梢系の血管疾患は、狭窄性病変や体内組織の血液供給における完全閉塞を伴うことが多い。
【0003】
側副血管形成の存在及び範囲は、2つの異なる状況の重要なマーカーとして認識されている。まず、側副血管は、人体の代償機構の作用の指標として見出されている。つまり、狭窄性病変は、側副循環の発達によって補償され、さもなければ強い虚血性で壊死しやすい部位へのかん流を維持する。したがって、側副の形成は、患者の転帰との負の相関関係を明らかにしている。つまり、側副の形成が不良ではなく適正である患者の予後は良好であることが判明している。次に、これらの側副は血液供給問題を十分に解決しないことも知られている。特にストレス下では、障害が依然として示されるためである。
【0004】
これら2つの作用のいずれも、側副循環の関連性と血管状態の定量化の必要性とを強調する。関心のパラメータは、特に、側副の絶対数、それらの直径(実際の血管の代わりにこれらの側副血行路を通過している血液量の指標であるため)、側副血行路の長さ、及び血管木のどの部分が迂回されているかである。
【0005】
血管系を解析するためのアルゴリズムが知られている。しかし、ほとんどのアルゴリズムソリューションは現在、主血管の検出に焦点を当てている。主血管はほとんどの患者で確実に検出され、通常は介入のターゲットであるためである。
【0006】
しかしながら、大きな解剖学的変異の小さな血管がいくつかある。血管木のこの残りの部分の特性は、全身性疾患の状態を示すマーカーを提供するが、現在のところ、最先端の解析応用では定量化されていない。しかし、血管系のこの無視された部分には、閉塞部位又は狭窄性部位の自然の側副血行路として機能する血管木の異なる部分を相互接続する多くの側副血管が含まれている場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そのため、特に主要な血管木に血管疾患を有する患者において、無視されることの多い側副形成の血管状態を定量化する必要がある。
【0008】
Van Horssen Pepijn他の「Innate collateral segments are predominantly present in the subendocardium without preferential connectivity within the left ventricular wall:Distribution and morphology of innate collateral connections」、Journal of Physiology、第592巻、第5号、2014年1月23日、1047~1060頁(XP055920694)は、慢性動脈疾患が発症すると側副動脈が成長し、閉塞した冠動脈のかん流部位への酸素豊富な血液の経路を提供するという理解に基づいた動脈の解析を開示している。健康な心臓における先天性の側副ネットワークの形態及び分布が定量化されている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、特許請求の範囲によって規定される。
【0010】
本発明の態様による実施例によれば、被検体の血管系を解析する方法が提供される。この方法は、
被検体の関心領域の画像を受信するステップと、
関心領域に存在する血管木を同定するステップと、
同定された血管木内の主要血管を同定するステップであって、主要血管は、主要血管の標準木の一部を形成する、同定するステップと、
同定された血管木の残りの血管を同定し、したがって、標準木の主要血管を除外し、これにより、関心領域内の側副血管を同定するステップと、
側副血管の解析を行うステップとを含む。
【0011】
この解析では、特に側副血管に関連する血管状態の定量化に使用するために臨床医に報告される測定値を提供できる。これは主要血管木に血管疾患の存在を示す。
【0012】
この方法では、まず、検出された血管木全体(つまり、正味)の一部として標準血管木を検出する。標準木は、例えば健康な個人にも存在する主要な大血管幹に基づいた、階層的なルールベースの分類によって抽出される。血管木の統計的アトラスを使用してもよい。統計的アトラスでは、木の構造パラメータ及び位置パラメータに確率が割り当てられる。
【0013】
残りの血管系は側副血管を含み、これらの血管は、特に側副血管形成の解剖学的特性を定量化するために解析される。残りの血管は、同定された血管木から主要血管を減算することによって見つけられる。例えば、定量化された解剖学的特性には、側副血管の数、側副血管の内腔面積若しくは血液量、血管長、又は正味の血管密度などのパラメータが含まれる。
【0014】
関心領域に存在する血管木を同定するステップは、例えば画像セグメンテーション及び血管中心線抽出を含む。2D画像データ及び3D画像データの両方から血管形状を抽出するためのアルゴリズムは知られている。画像データは、冠動脈コンピューダ断層撮影血管造影(CCTA)画像などの低解像度画像に適用できる。
【0015】
主要血管を同定するステップは、例えば階層的なルールベースの分類を使用するステップを含む。ここでも、このためのアルゴリズムは知られている。
【0016】
側副血管の解析には、側副血管の形成を示す1つ以上のパラメータの決定が含まれる。
【0017】
第1の実施例では、パラメータは側副血管の数を含む。
【0018】
第2の実施例では、パラメータは側副血管の累積長を含む。
【0019】
第3の実施例では、パラメータは側副内腔ボリュームを含む。
【0020】
第4の実施例では、パラメータは血管間面積に関連している。このパラメータは、例えば基準表面への投影で計算された正味の血管密度を含む。この投影により、関心領域の3Dボリュームを表す2D画像の解析によって、正味密度を取得できる。例えば基準表面は、セグメント化された心臓画像と並べられた心外膜壁を含む。
【0021】
側副血管の解析を行うステップは、例えば標準木のパラメータの値に対してパラメータを正規化するステップを含む。
【0022】
或いは、側副血管の解析を行うステップは、健康な被検体に対応するパラメータの基準値に対して、又は特定の患者グループの基準値に対してパラメータを正規化するステップを含んでいてもよい。
【0023】
どちらの場合も、これは標準血管木又は健康な集団を参照してすぐに理解可能な尺度を提供する。
【0024】
受信画像は、3Dコンピュータ断層撮影(CT)血管造影画像や3D磁気共鳴血管造影(MRA)画像などの3D画像であってもよい。
【0025】
ただし、受信画像は、2D X線血管造影画像などの2D画像であってもよい。
【0026】
したがって、本発明は、診断3Dイメージングと介入2D血管造影の両方に適用可能である。
【0027】
本発明はまた、コンピュータプログラムコード手段を含むコンピュータプログラムを提供する。コンピュータプログラムコード手段は、該コンピュータプログラムがコンピュータ上で実行されると、前述の方法を実施する。
【0028】
本発明はまた、上記のコンピュータプログラムでプログラムされたプロセッサも提供する。
【0029】
本発明はまた、イメージングシステムも提供する。このシステムは、
被検体の関心領域の画像を取得するためのイメージャと、
画像を解析して、関心領域内の側副血管の解析を行うための上記のプロセッサとを含む。
【0030】
本発明のこれらの及び他の態様は、以下に説明する実施形態から明らかになり、また、当該実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
本発明をより深く理解し、それがどのように実行されるかをより明確に示すために、ほんの一例として添付の図面を参照する。
【0032】
図1図1は、主要血管及び血管の完全なネットワークを示している心臓の3D画像を示す。
図2図2は、足部に疾患のない患者の足の末梢血管系を示す。
図3図3は、下ふくらはぎと足に重度の閉塞がある患者の足の末梢血管系を示す。
図4図4は、被検体の血管系を解析する方法を示す。
図5図5は、3D CTデータなどの3D画像からどのように血管系を同定するかを概略的に示す。
図6図6は、図5の楕円A~C、血管の決定された向き、及び血管軸に垂直な断面における血管形状Dを示す。
図7図7は、血管系がどのようにセグメント化されるかを示す。
図8図8は、3D画像データから中心線を抽出する手順を示す。
図9図9は、LCX血管の拡大された長手方向図を示す。
図10図10は、側副がほとんど形成されていない患者の足の血管系の完全及び標準木がセグメンテーションによって同定された後の介入2D血管造影図の例を示す。
図11図11は、側副の形成が中程度である患者の足の血管系の完全及び標準木がセグメンテーションモジュールによって同定された後の介入2D血管造影図の例を示す。
図12図12は、本発明の方法を用いて解析するための画像を提供するために使用されるイメージングシステムの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明を、図を参照して説明する。
【0034】
詳細な説明及び具体的な実施例は、装置、システム、及び方法の模範的な実施形態を示しているが、説明のみを目的としたものであり、発明の範囲を限定することを意図したものではないことが理解されるべきである。本発明の装置、システム、及び方法のこれらの及び他の特徴、態様並びに利点は、次の説明、添付の特許請求の範囲、及び添付の図面からよりよく理解されるようになるであろう。図は概略図に過ぎず、縮尺どおりに描かれていないことが理解されるべきである。また、図全体で同じ参照番号を使用して、同じ部分又は類似の部品を示すことが理解されるべきである。
【0035】
本発明は、被検体の血管系を解析するための方法を提供する。関心領域の画像内で、血管木が同定される。主要血管の標準木の一部を形成する主要血管が同定され、次に、同定された血管木の残りの血管が同定され、標準木の主要血管は除外される。これにより、関心領域内の側副血管が分離され、側副血管の解析を行うことができる。
【0036】
図1では、上図に心臓の3D画像を示し、主要血管10が示されている。主要血管10はほとんどの患者に見られるが、より細かいスケールでは血管はより強く異なっている可能性がある。これらのうち、血流の側副血行路を確立できる多数の側副血管がある可能性がある。これらの側副の数及び範囲は、冠動脈疾患を示す説明的なマーカーであることがわかっている。
【0037】
図1は、下図に、血管のネットワーク全体を示し、小さい側副血管を示している。冠動脈血管木により、心筋かん流が確保される。解剖学的変異は、木がより細かくなるほど大きくなる。
【0038】
図2は、足の末梢血管系を示している。上図では、患者は足部には疾患がなく(又は、図3よりも疾患の程度は少ない)、主にふくらはぎから来て足に供給する3つの主要血管を示している。下図は、下ふくらはぎと足に重度の閉塞がある患者のものである。代償機構として、いくつかの側副が発達している。
【0039】
本発明は、解析のために側副血管を分離することに基づいている。
【0040】
図4は、被検体の血管系を解析する方法を示す。
【0041】
ステップ40では、被検体の関心領域の画像が取得される。これは、心臓付近の血管木の解析のための胸部領域であり得るが、どの関心領域であってもよい。
【0042】
ステップ42では、関心領域に存在する血管木が同定される。
【0043】
ステップ44では、主要血管、つまり、主要血管の標準木の一部を形成する主要血管が同定される。
【0044】
次に、ステップ46では、同定された血管木内の残りの血管、つまり、関心領域に存在する、標準木の主要血管は除いた全ての同定された血管が同定される。したがって、これらは関心領域の側副血管である。
【0045】
ステップ48では、側副血管の解析が行われる。この解析では、画像データに適用された1つ以上の尺度に基づいて、1つ以上の解剖学的パラメータが記述される。
【0046】
これらのパラメータは、特に主要血管木に血管疾患がある場合に、血管の状態を定量化するために使用される。血液供給された側副の数及び特徴は、身体がその標準的な経路に依存できなくなる程度、したがって、側副が全体の血液供給を維持する上でどの程度重要な役割を果たすかを示す。
【0047】
図5図7は、Graham他による「Robust 3-D Airway Tree Segmentation for Image-Guided Peripheral Broncoscopy」(TMI、29:4、2010)に説明されているプロセスを概略図で示している。
【0048】
図5は、3D CTデータなどの3D画像からどのように血管系を同定するかを概略的に示す。
【0049】
一連の2D楕円A、B、Cが取得される。これは、一組の単純な閾値化操作の後に、連結成分解析及び局所楕円フィッティングを行うことによって、3つの軸(x、y、z)全てに沿って行われる。
【0050】
楕円は、3つの連続した楕円を接続する血管中心線60に直交する平面に投影され、軸と整列しなくなる最終的な楕円Dがもたらされる。
【0051】
図6は、楕円A~C、血管の決定された向き、及び血管軸に垂直な断面における血管形状Dを示す。この図から、血管の直径及び面積を求めることができる。
【0052】
図7は、どのように血管系がセグメント化されるかを示す。パネルAに示すように、一連の楕円が取得される。これらはパネルBに示すように、血管セグメントのセットに集められる。血管セグメント間の間隙は、パネルCに示すように、補間ステップによって埋められ、血管枝が得られる。血管枝は、パネルDに示すように、ボクセル化され、全ての枝の結合によりバイナリ血管マスクが得られる。
【0053】
この手順の詳細は、
Graham、Robust Methods for Human Airway-Tree Segmentation and Anatomical-Tree Matching、博士論文、2008、https://etda.libraries.psu.edu/files/final_submissions/4430に記載されている。
【0054】
要約すると、セグメンテーションステップでは、軸整列した楕円を使用して局所情報を収集し、バイナリボクセルマスクを生成する。任意選択で、セグメンテーションモジュールは、外部の確率的アトラスを参照として使用してもよい。
【0055】
図8は、3D CTデータなどの3D画像データから中心線を抽出する手順を示している。パネルAに示すバイナリマスクから開始して、パネルBに示すように距離変換を使用する。そして、パネルCに示すように、中心線トラッカの入力として、ピークまでの距離(distance-to-peak)マスクが適用される。また、カルシウムペナルティ80を、平均大動脈強度+3標準偏差に基づく閾値と共に使用して、中心線が石灰化組織を通過しないようにすることができる。
【0056】
したがって、中心線抽出は、血管によって占められている画像ボリュームを含むバイナリマスクを、枝を次々にトレースすることによってツリー構造に変換するプロセスである。
【0057】
その後、後処理を使用して静脈枝を取り除き、二重検出を除去できる。平滑化を適用することもできる。最大長、分岐深さ、血管内径、冠動脈血管アトラスとの一致、血管曲率、分岐角度、及び位置などのヒューリスティックのセットが、例えば、後処理中に使用される。
【0058】
親血管(例えば左回旋枝、LCX)を所与とすると、子血管(例えば辺縁部や対角枝)の検出は、血管の腸管展開図(stretched lumen view)を計算することによって支援される。これは、親血管の中心線に垂直な等サイズの断面画像のシーケンスである。次に、ニューラルエンコーダモデルを適用して(単一又は複数の断面を入力として)側分岐を検出する。
【0059】
図9は、LCX血管の拡大された長手方向図を示しており、マーカー90の左側に第1の辺縁動脈枝M1及び第2の辺縁動脈枝M2がある。右側の矢印92は、側副血流の候補となるより小さな枝を更に示している。
【0060】
標準木と側副木との分離のために、標準木は、ルールベースの分類を適用することによって候補中心線の集合から分離される。ルールの分類及び適用は、例えば、動脈口のおける左主(LM)冠動脈又は右冠動脈(RCA)の子孫から始まり、親から子へと血管木を下っていくなど、階層的に行われる。
【0061】
多数のルールには、例えば、次のものが含まれる:
最小の内腔面積/血管径(つまり、血管内径の閾値)を必要とすること、
主血管からの先験的に既知の場所からのみ分岐すること。冠動脈の場合、左前下行枝(LAD)からの典型的なLCX分岐点の確率分布は、以前の患者データのセットからモデル化され、LM動脈からの親の子孫の関数としてLAD中心線にエンコードされる。
原点(冠動脈口など)又は親の子孫から一定の最大長で切り捨てる。
【0062】
セグメンテーション及び分離のプロセスからの出力は、ラベル付きの標準血管木と、小さな血管及び側副循環を含む残りの木とによって最終的に与えられる。
【0063】
次に、側副血管の解析に使用可能な解剖学的パラメータが説明される。
【0064】
セグメンテーション及び分離関数からの出力は、Aが全ての検出された/セグメント化された血管を含む添字集合を示し、Sが標準血管木に属する全ての検出された血管をランオーバーする添字集合を示すような形式に入れられる。
【0065】
上記の指定された基準によると、(S⊆A)である。この表記法を使用すると、側副血管の定量化の具体的な実現には、次のことが必要になる:
検出された側副の数は、N=|A|-|S|として定量化でき、ここで、|A|は、所与の添字集合の濃度を示す。
【0066】
累積側副血管長Lは、次のように定量化できる:
【数1】
ここで、
【数2】
は、血管a∈Aのセグメント化された血管輪郭C上の線積分である。これは通常、全てのn血管セグメントを合計した離散バージョン
【数3】
によって近似される。
【0067】
累積側副内腔ボリュームVは、次のように定量化できる:
【数4】
ここで、A(l)は、輪郭点lにおける現在の血管の断面積を示す。この方程式は実際には上述のように離散化される。
【0068】
断面積(楕円など)をフィッティングする代わりに、血管セグメンテーションは、バイナリ(ボクセル化された)ビットマスクに基づいて行うことができ、そして、側副内腔ボリュームは、単純に添字集合Aから全てのボクセルを合計し、添字集合Sから全てのボクセルを減算し、所与の収集の空間ボクセル分解能を使用して、ボクセル数を物理ボリューム尺度に変換することによって計算される。
【0069】
血管間面積(つまり、血管間の空間)を定量化できる。この尺度は、血管密度又はカバレッジを表す。計算を容易にするために、既知の表面積Asurf(O)の2D表面Oへの投影(例えば心筋への冠状血管のために)を行うことができる。
【0070】
血管木投影は、基準表面の表面法線を使用することによって、血管木内腔ビットマスクの各ボクセルについて計算され、次の面積が得られる:
vessel≦Asurf
【0071】
この埋め込み2D空間において、血管間面積Avoid=Asurf-Avesselや、血管密度D=Avessel/Asurfなどのメトリックを計算できる。
【0072】
投影は、例えば左室心筋心外膜面をキャプチャする指向性のセグメンテーションメッシュを考慮することによって取得される。この場合、その法線ベクトルがそのマッピングのための(局所)投影方向として機能する。
【0073】
このように、種々可能なパラメータが上記で設定される。これらのパラメータのうちの1つ以上が決定され得る。このように、パラメータは、側副血管の数、側副血管の累積長、(累積)側副内腔ボリューム、又は正味の血管密度などの血管間面積に関連するパラメータを含み得る。
【0074】
上記の解析から出力されたパラメータ(N、L、Vなど)は、標準血管木又は血管木全体からの対応する値を基準値として使用することによって、正規化された尺度に変換できる。そして、例えば、
【数5】
であり、
【数6】
は正規化された量を表し、1よりも大きい任意の値が標準血管木の超過を示す。拡張終期の左心室容積によって正規化された総血液量も報告できる。
【0075】
更に、基準パラメータ値(例えば、N、L、Vの)を、健康な患者コホートから記録し、これらの基準値を正規化に使用することができる。この場合、正規化された値は、選択されたコホートによって設定される健康な患者標準からの偏差を示す。
【0076】
一般的な1人の健康な患者に対してのみパラメータを正規化するのではなく、得られたパラメータ値は、特定の患者に関する同定の母集団統計値のコンテキスト内で解釈されてもよい。これらの統計値は、例えば、転帰、疾患の重症度などの他の臨床パラメータと関連している場合がある。
【0077】
特定の患者統計値に対して現在のパラメータ値のセットを解釈するために、1つのアプローチでは、患者プロパティの分布全体内での患者の位置を明示し、現在のものに近い患者のパラメータを使用する。暗黙的なアプローチでは、統計値のデータ駆動型モデリング又は学習を使用し、患者がいくつかのグループのいずれかに分類される。
【0078】
上記の解析は、3D血管造影CTスキャン画像又は3D磁気共鳴血管造影(MRA)画像などの3D画像データに基づいている。しかし、本発明は、2D X線血管造影画像にも適用できる。
【0079】
図10は、足の血管系の完全及び標準木がセグメンテーションモジュールによって同定された後の介入2D血管造影図の例を示す。
【0080】
上の図は完全木Aを示し、真ん中の図は標準木Sを示し、下の図は残りの木R=A\Sを示す。図10は、側副形成がほとんど又はまったくない患者のものである。
【0081】
図11は、側副の形成が中程度である患者の足の血管系の完全及び標準木がセグメンテーションモジュールによって同定された後の介入2D血管造影図の例を示す。
【0082】
ここでも、上の図は完全木Aを示し、真ん中の図は標準木Sを示し、下の図は残りの木R=A\Sを示す。
【0083】
この場合、フォアショートニング作用を引き起こすイメージングモダリティの投影性に起因して、側副定量化パラメータは近似値にしかならない。正味の密度計算のための表面は、検出器平面によって直接与えられる。
【0084】
セグメンテーション及び側副定量化のステップは、スペクトル若しくはダイナミックCT又はX線スキャンを使用して向上させることができる。
【0085】
図12は、本発明の方法を用いて解析するための画像を提供するために使用されるイメージングシステムの例を示す。
【0086】
この説明でのイメージング装置100は、X線コンピュータ断層撮影(CT)スキャナである。
【0087】
イメージング装置100は一般的に、固定ガントリ102と、回転ガントリ104とを含む。回転ガントリ104は、固定ガントリ102によって回転可能に支持され、長手方向軸、軸方向、又はz軸の周りで検査領域の周りを回転する。
【0088】
カウチなどの患者支持体120は、検査領域内で物体や、人間の患者などの被検体を支持する。支持体120は、物体又は被検体のロード、スキャン、及び/又はアンロードのために物体又は被検体を移動する。支持体120は、軸方向に沿って移動可能である。つまり、z軸又は長手方向軸の方向に沿って移動可能である。支持体を移動させると、支持体に対する(したがって、支持体によって支えられている被検体に対する)回転ガントリの軸方向位置が変化する。
【0089】
X線管などの放射線源108が、回転ガントリ104によって回転可能に支持されている。放射線源108は回転ガントリ104と共に回転し、検査領域106を横断する放射線を放出する。
【0090】
放射線に反応する検出器アレイ110が、検査領域106を挟んで放射線源108の反対側の角度に対する弧の範囲を定める。検出器アレイ110には、z軸方向に沿って延在する1列以上の検出器が含まれ、検査領域106を横断する放射線を検出し、それを示す投影データを生成する。
【0091】
ガントリ104の回転によって、被検体に対するスキャナの角度位置又は回転位置が変化し、z軸に沿った支持体の移動によって、被検体に対するスキャナの軸方向位置が変化する。
【0092】
典型的なスキャンは、スキャンプロトコルを用いて事前に設定される。スキャンプロトコルは、複数のスキャンパラメータを含む。スキャンパラメータは、とりわけ、スキャナの軸方向軸及び回転軸に対するスキャンの空間範囲を画定する。例えば、スキャンパラメータには、イメージング装置の1つ以上の軸(例えば、回転軸及び軸方向軸の片方又は両方)に沿ったスキャン範囲の境界(つまり、開始点と終了点)が含まれる。スキャン範囲は、スキャン中にイメージングデータが収集される視野(FOV)を画定する。スキャンパラメータには、通常、管電流、管電圧、スキャン空間分解能、スキャン時間分解能、及び/又はファン角度などの多数の他のパラメータも含まれる。分解能パラメータは、ガントリ104の回転速度と、ガントリを通る支持体120の軸方向移動の速度とによって定義できる。
【0093】
汎用コンピューティングシステム又はコンピュータが、オペレータコンソール112として機能し、マウス、キーボードなどの入力デバイス114と、ディスプレイモニタなどの出力デバイス116とを含む。コンソール、入力デバイス、及び出力デバイスが、ユーザインターフェース30を形成する。コンソール112は、オペレータがシステム100の動作を制御することを可能にする。
【0094】
再構成装置118が、投影データを処理し、ボリュメトリック画像データを再構成する。このデータは、出力デバイス116の1つ以上のディスプレイモニタを介して表示できる。
【0095】
再構成装置118は、フィルタ補正逆投影(FBP)再構成、(画像ドメイン及び/又は投影ドメインの)低ノイズ再構成アルゴリズム(反復再構成など)、及び/又は他のアルゴリズムを採用できる。再構成装置118は、物理メモリや他の非一時的な媒体などのコンピュータ可読記憶媒体にエンコード又は埋め込みされるコンピュータ可読命令を実行するマイクロプロセッサを介して実施できることが理解されるものとする。更に又は或いは、マイクロプロセッサはキャリア波、信号、及び他の一時的(又は非、非一時的)媒体によって運ばれるコンピュータ可読命令を実行することもできる。
【0096】
再構成装置118には、生成された3D CTスキャン画像を解析して、関心領域内の側副血管の解析を行うための上記の方法を実施するためにコンピュータプログラムでプログラムされたプロセッサが組み込まれていてもよい。
【0097】
血管の同定及び側副血管の解析には、トレーニングされたニューラルネットワークの使用や、手作りのアルゴリズムの使用が含まれる場合がある。
【0098】
前述のように、システムはプロセッサを使用してデータ処理を行う。プロセッサは、ソフトウェアやハードウェアを使用して、様々なやり方で実装して、必要な様々な機能を行うことができる。通常、プロセッサは、ソフトウェア(例えばマイクロコード)を使用してプログラムされて、必要な機能を行う1つ以上のマイクロプロセッサを用いる。プロセッサは、一部の機能を行うための専用ハードウェアと、他の機能を行うための1つ以上のプログラム済みマイクロプロセッサ及び関連回路との組み合わせとして実装できる。
【0099】
本開示の様々な実施形態に用いられ得る回路の例としては、従来のマイクロプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、及びフィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0100】
様々な実装形態では、プロセッサは、RAM、PROM、EPROM、及びEEPROM(登録商標)などの揮発性及び不揮発性コンピュータメモリなどの1つ以上の記憶媒体と関連付けられ得る。記憶媒体は、1以上のプロセッサ及び/又はコントローラ上で実行されると、必要な機能を実行する1つ以上のプログラムでエンコードされ得る。様々な記憶媒体は、プロセッサ又はコントローラ内で固定されていても、そこに保存されている1つ以上のプログラムをプロセッサにロードできるように輸送可能であってもよい。
【0101】
開示された実施形態の変形例は、図面、開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、請求項に係る発明を実施する際に当業者によって理解され、実行され得る。特許請求の範囲において、「含む」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、単数形の要素は複数を排除するものではない。
【0102】
特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせを有利に使用することができないことを意味するものではない。
【0103】
コンピュータプログラムは、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される、光記憶媒体又は固体媒体などの任意の適切な媒体に保存/配布することができるが、インターネット又は他の有線若しくはワイヤレス通信システムを介してなど他の形式で配布することもできる。
【0104】
「~するように適応されている」という用語が、特許請求の範囲又は説明で使用されている場合、「~するように適応されている」という用語は「~するように構成されている」という用語と同等であることを意図していることに留意されたい。
【0105】
特許請求の範囲における任意の参照符号は、範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
【国際調査報告】