(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】円錐形に拡張可能な僧帽弁修復デバイス
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
A61F2/24
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532318
(86)(22)【出願日】2022-08-05
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 IN2022050706
(87)【国際公開番号】W WO2023112044
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】202121059026
(32)【優先日】2021-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524030754
【氏名又は名称】メリル・ライフ・サイエンシーズ・ピーブイティー・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100181113
【氏名又は名称】赤井 吉郎
(72)【発明者】
【氏名】プラモド・クマール・ミノチャ
(72)【発明者】
【氏名】デヴェシュクマール・マヘンドララール・コトワラ
(72)【発明者】
【氏名】ニラヴクマール・マヘシュバイ・ラナ
【テーマコード(参考)】
4C097
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097CC01
4C097CC05
4C097DD09
4C097DD10
4C097SA10
(57)【要約】
僧帽弁(100)における逆流を治療するためのインプラント(100)が開示される。このインプラント(100)は、頂部部分(52)およびシャンク(54)を含む少なくとも1つのファスナ(50)を備える。頂部部分(52)は、リング(51a)および複数のクラウン(60)を含む。クラウン(60)は、一次アーム(61)および二次アーム(63)を含み、一次アーム(61)は、二次アーム(63)よりも長い。リング(51a)は、シャンク(54)の近位端部(51)に装着され、ナット(53a)が、シャンク(54)の遠位端部(53)に装着される。一次アーム(61)は、リング(51a)に対して装着され、二次アーム(63)は、ナット(53a)に対して装着される。頂部部分(52)は、所定の方向に回転されることにより、ナット(53a)の上方移動をもたらして、インプラント(100)を作動させる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)であって、
a.頂部部分(52)およびシャンク(54)を含む少なくとも1つのファスナ(50)であって、前記頂部部分(52)はリング(51a)を含む、少なくとも1つのファスナ(50)と、
b.一次アーム(61)および二次アーム(63)を含む複数のクラウン(60)であって、前記一次アーム(61)は前記二次アーム(63)よりも長い、複数のクラウン(60)と、
を備え、
前記頂部部分(52)の前記リング(51a)は、前記シャンク(54)の近位端部(51)に装着されており、ナット(53a)が、前記シャンク(54)の遠位端部(53)に装着されており、
前記一次アーム(61)は前記リング(51a)に対して装着されており、前記二次アーム(63)は前記ナット(53a)に対して装着されており、
前記頂部部分(52)は、所定の方向に回転されることにより、前記ナット(53a)の上方移動をもたらし、結果として、植込み部位におけるインプラント(100)の作動をもたらすための前記クラウン(60)の径方向収縮が生じる、僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項2】
前記リング(51a)は、前記シャンク(54)に対して固定的に装着されている、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項3】
前記ナット(53a)は、前記シャンク(54)に取外し可能に装着されている、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項4】
前記複数のクラウン(60)は、6個~10個のクラウンを含む、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項5】
前記一次アーム(61)は、前記二次アーム(63)の2倍の長さである、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項6】
前記一次アーム(61)および前記二次アーム(63)は、わずかに湾曲している、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項7】
前記リング(51a)および前記ナット(53a)は、複数の溝(51b)および(53b)を含む、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項8】
前記一次アーム(61)は、近位端部(61a)に第1の連結構造部(62)を含む、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項9】
複数のアンカー(70)は、前記植込み部位に前記インプラント(100)を固定するために設けられている、請求項1に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【請求項10】
前記複数のアンカー(70)は、6個~10個のアンカーを含む、請求項9に記載の僧帽弁における逆流を治療するためのインプラント(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療デバイスに関する。より詳細には、本発明は、僧帽弁を修復するための医療デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトの心臓は、4つの弁、すなわち三尖弁、二尖弁(僧帽弁)、大動脈弁、および肺動脈弁を有する。二尖弁は、僧帽弁としても知られる。僧帽弁は、左心房と左心室との間に位置し、2つのフラップを有する。僧帽弁逆流は、僧帽弁の弁尖が十分に閉じないことにより、結果として左心室から左心房への血液の異常逆流が生じる最も危険な症状である。僧帽弁逆流では、左心室は、心室の容積どおりの血液を活用することができず、左心房内への過剰血液の逆流が生じる。
【0003】
例えば弁逸脱症、組織索損傷、リウマチ熱、心内膜炎、心筋異常、心不全等の、僧帽弁逆流をもたらす様々な原因が存在する。僧帽弁逆流治療は、症状の重篤度に応じたものとなる。一般的には、軽度の漏れの治療は、心臓の機能改善を専門とする薬物によって行われる。しかし、重度の漏れの場合には、外科手術が実施される場合がある。
【0004】
従来、心臓手術の場合には、開心術が実施される。かかる手術は、患者の胸部の切断および開放(例えば正中胸骨切開術または胸腔切開術のアプローチによる)を典型的に伴う。これらの手技は、疼痛を伴い侵襲性が非常に高く、しばしば内科的合併症をもたらし、さらには回復時間が遅延し得る。さらに、健康状態の良くない患者は、かような手術に伴うリスクにより開心術を受けることができない場合があり、そのため必要な心疾患の外科治療が受けられない。
【0005】
手術時間を短縮し得る経カテーテルベースのアプローチが、外科手術に利用される。
【0006】
かかるアプローチにおいては、僧帽弁における逆流は、天然僧帽弁の弁尖を修復または再建することにより治療することが可能である。僧帽弁は、支持索の置換および/または余剰弁組織の除去を行うことにより修復することが可能であり、これによって弁尖同士が緊密に閉鎖することが可能になり、したがって弁逆流が軽減され得る。僧帽弁の再建(弁輪形成術)は、弁輪に人工弁輪を装着することにより実施され得る。代替的には、クリップが弁尖を閉じるために使用され得る。かようなデバイスは、より長い時間がかかり得る危険な手技を伴う場合がある。
【0007】
あるいは、僧帽弁のサイズ調整および/または再建を行うためにサイズ調整可能デバイスが使用される場合もある。かかるインプラントの1つが、特許文献1の出願において開示されている。しかし、前記出願において開示されるインプラントは、例えば植込み部位にてインプラントを作動させるためにより多くの時間を消費するため外科手術に関連するリスクおよび合併症の増加をもたらし得るなどの、複数の制約を有し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって、従来のインプラントの制約を解消し得る、改良されたインプラントが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、僧帽弁における逆流を治療するためのインプラントに関する。このインプラントは、頂部部分およびシャンクを含む少なくとも1つのファスナを備える。頂部部分は、リングおよび複数のクラウンを含む。クラウンは、一次アームおよび二次アームを含み、一次アームは、二次アームよりも長い。リングは、シャンクの近位端部に装着され、ナットが、シャンクの遠位端部に装着される。頂部部分は、所定の方向に回転されることにより、ナットの上方移動をもたらして、インプラントを作動させる。
【0011】
前述の特徴および他の特徴、ならびに本発明の利点は、添付の図面を参照して進められる以下の詳細な説明から、さらに明らかになろう。
【0012】
上記の概要および以下の例示の実施形態の詳細な説明は、添付の図面と組み合わせて読むことにより、さらによく理解される。本開示を説明するために、本開示の例示の構造を図面に示す。しかし、本開示は、本明細書において開示される特定の方法および手段に限定されない。さらに、図面は縮尺どおりではない点が当業者には理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明の一実施形態によるインプラント100を示す図である。
【
図1a】本発明の一実施形態によるインプラント100ファスナ50を示す図である。
【
図1b】本発明の一実施形態によるインプラント100のクラウン60を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態によるインプラント100の製造に伴うプロセスの流れ図である。
【
図3】本発明の一実施形態による送達デバイス300を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明を詳細に説明する前に、本特許文献の全体において使用されるいくつかの語および表現の定義を行う。「含む」および「備える」という語ならびにそれらの派生語は、非限定的な包含を意味する。「または」という語は、非排他的であり、「および/または」を意味する。「~に結合された」および「~に関連した」という表現ならびにそれらの派生表現は、含む、~内に含まれる、~に相互連結する、包含する、~内に包含される、~に連結する、~に結合する、~に連通する、~と協働する、交互配置する、並置する、~の近傍に位置する、~と境界を画する、~に拘束される、または~という性質を有する等を意味し得る。いくつかの語および表現の定義は、本特許文献の全体にわたり適用され、かかる定義はかように定義される語および表現のこれまでのおよび将来の使用に対しても殆どではないにせよ多くの例において該当することが当業者には理解されよう。
【0015】
本明細書全体において、「一実施形態」または同様の表現は、その実施形態に関連して説明されるある特定の特性、構造、または特徴が少なくとも一実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体において「一実施形態」という表現または同様の表現がある場合には、これはいずれも同一の実施形態を示す場合があるが必ずしもそうであるとは限らず、別様のことが明示されない限りは「1つまたは複数のしかしすべてではない実施形態」を意味する。「含む」、「備える」、「有する」という語およびそれらの変形語は、別様のことが明示されない限りは「~を含むがそれに限定されない」を意味する。列挙される項目は、別様のことが明示されない限りはそれらの項目のいずれかまたはすべてが相互に排他的および/または相互に非排他的であることを示唆するものではない。また、「1つの(a、an)」および「その(the)」という語は、別様のことが明示されない限りは「1つまたは複数」を示す。
【0016】
本開示の方法の例示の実施形態の実施が、提示の都合によりある特定の連続的な順序で説明される場合があるが、本開示の実施形態は、開示される特定の連続順序とは異なる実施順序を包含し得る点を理解されたい。例えば、逐次的に説明される実施が、いくつかの例においては変更されてもまたは同時に実施されてもよい。さらに、特定の一実施形態に関連して提示される説明および開示は、その実施形態に限定されず、本明細書において開示される任意の実施形態に該当し得る。さらに、簡略化のために、添付の図面は、本開示のシステム、方法、および装置が他のシステム、方法、および装置との組合せにおいて使用され得る様々な様式を図示しない場合がある。
【0017】
さらに、これらの実施形態の説明される特性、利点、および特徴は、任意の適切な様式で組み合わされてもよい。これらの実施形態は、ある特定の実施形態の特定の特徴または利点の中の1つまたは複数を伴わずに実施されてもよい点が、関連技術の当業者には理解されよう。他の例では、さらなる特徴および利点がいくつかの実施形態において認識される場合があり、これらはすべての実施形態においては示されない場合がある。これらの実施形態のこれらの特徴および利点は、以下の説明および添付の特許請求の範囲からさらに十分に明らかになる、または以降で示される実施形態の実施により理解され得る。
【0018】
本開示によれば、医用インプラント(インプラント)が開示される。このインプラントは、患者における僧帽弁逆流を治療するために使用される。しかし、本発明のインプラントの適用は、患者の三尖弁逆流の治療に拡張されてもよい点に留意されたい。
【0019】
このインプラントは、少なくとも1つのファスナ、スロット付きナット、インプラントの円錐形拡張を可能にする所定の様式で共に結合された複数のクラウンおよびアンカーを含み得る。クラウンは、L字形状構造体で構成され得る。クラウンのこのL字形状構造体は、作動中に両アームにおける均等な応力分布を助長し、それにより組織壁部に対する損傷を防止する。
【0020】
インプラントは、円錐形に拡張可能なインプラントであってもよい。このインプラントは、天然弁輪のサイズが28mm~40mmの間である場合に僧帽弁の弁輪逆流を治療するために使用され得る。
【0021】
次に図面を具体的に参照すると、
図1はインプラント100を示す。インプラント100は、僧帽弁の弁尖の再建および/または再連結を行うために僧帽弁の弁輪にて展開され、それにより僧帽弁の弁輪直径を縮小し逆流を軽減させ得る。
【0022】
インプラント100は、円錐形に拡張可能な構成において図示される。インプラント100は、所定の様式で相互に結合された1つまたは複数の構成要素を含み得る。インプラント100は、天然弁輪の直径が25mm超である僧帽弁において使用され得る。
【0023】
インプラント100は、少なくとも1つのファスナ50、複数のクラウン60、および複数のアンカー70を含み得るが、これらに限定されない。インプラント100のこれらの構成要素は、患者の僧帽弁狭窄を修復するための機能ユニットとして一体的に作動するように設計される。
【0024】
ファスナ50は、316L SS、316LVM SS、304 SS、ニチノールから作製され得るがこれらに限定されない。一実施形態では、ファスナ50は316L SSから作製される。
【0025】
ファスナ50(
図1aに図示するような)は、頂部部分52およびシャンク54を含み得る。シャンク54は、近位端部51と、遠位端部53と、近位端部51と遠位端部53との間に延在する長さL1とを含む。長さL1は10mm~30mmの範囲内であってもよい。一実施形態では、長さL1は20mmである。ファスナ50の頂部部分52は、以降の段落で説明されるようにシャンク54にて装着されたリング51aを含む。
【0026】
シャンク54は、1mm~5mmの範囲内の所定の外径を含み得る。一実施形態では、外径は3mmである。シャンク54はねじ山を有し得る。シャンク54は、0.3mm~0.8mmの範囲の所定のピッチを含み得る。一実施形態では、シャンク54のねじ山のピッチは0.5mmである。
【0027】
ファスナ50は、近位端部51および遠位端部53のそれぞれに配設された少なくとも1つのスロット(図示せず)を含み得る。シャンク54の近位端部51に存在するスロットは、頂部部分52のリング51aを装着するために使用されてもよく、シャンク54の遠位端部53に存在するスロットは、
図1に示すようにナット53aを装着するために使用され得る。インプラント100の頂部部分52は、植込み部位にてインプラント100を作動させるために所定の方向に回転され得る。一実施形態では、頂部部分52は、時計回り方向に回転される。頂部部分52の回転により、ナット53aの上方移動が誘起され、結果としてクラウン60が径方向に収縮し、インプラント100が作動し得る。
【0028】
リング51aは、溶接によりシャンク54上に固定的に装着され得る。ナット53aは、シャンク54に対して取外し可能に螺着され得る。リング51aおよびナット53aは、それぞれ複数の第1の溝51bおよび複数の第2の溝53bを含み得る。複数の溝51bおよび53bは、以降において説明するようにクラウン60を装着するために使用され得る。複数の溝51bおよび53bは、5~10個の範囲内であってもよい。一実施形態では、リング51aおよびナット53aは6個の溝51bおよび53bを含む。各溝51bおよび53bは、相互に等距離に位置する。溝51bおよび53bは、例えば矩形、円形、正方形、等々のしかしこれらに限定されない様々な形状を有し得る。一実施形態では、溝51bおよび53bは矩形形状である。
【0029】
リング51aは、4mm~8mmの範囲の直径を有し得る。一実施形態では、リング51aの直径は6mmである。ナット53aは、2mm~8mmの範囲の直径を有し得る。ナット53aのピッチは0.3mm~0.8mmの範囲であってもよい。一実施形態では、ナット53aのピッチは0.5mmである。
【0030】
クラウン60は、所定の形状で製造され得るが、L字形状、W字形状等に限定されない。一実施形態では、クラウン60は、
図1bに示すようにL字形状で製造される。クラウン60のL字形状設計は、インプラント100に対する応力を軽減し、したがって僧帽弁の天然弁輪に対する損傷を防止し、僧帽弁の平滑な作動を補助する。さらに、クラウン60のL字形状は、単純な様式でデバイスを組み立てることを助長し得る。
【0031】
インプラント100は、所定個数のクラウン60を含み得る。この所定個数のクラウン60は、6~10個の範囲内であってもよい。一実施形態では、インプラント100は、7個のクラウン60を含む。クラウン60は、少なくとも2つのアームを、すなわち一次アーム61および二次アーム63を含み得る。クラウン60は、アンカー70、ファスナ50、およびナット53aを組み立てるために使用され得る。さらに、クラウン60は、植込み部位におけるインプラント100の拡張および収縮を実施するために使用され得る。一次アーム61は、所定の比率において二次アーム63よりも長くてもよい。一実施形態では、一次アーム61は、二次アーム63の長さの2倍である。一次アーム61は、近位端部61aと、遠位端部61bと、一次アーム61と二次アーム63との間に延在する長さL2とを含み得る。長さL2は、25mm~32mmの範囲であってもよい。一実施形態では、長さL2は28mmである。
【0032】
二次アーム63は、一次アーム61の遠位端部61bから所定の長さL3の位置で分岐し得る。長さL3は、4mm~8mmの範囲内であってもよい。一実施形態では、長さL3は6mmである。二次アーム63は、近位端部63aと、遠位端部63bと、近位端部63aと遠位端部63bとの間に延在する長さL4とを含み得る。長さL4は、10mm~15mmの範囲内であってもよい。一実施形態では、長さL4は12mmである。
【0033】
さらに別の実施形態では、二次アーム63は一次アーム61よりも長い。
【0034】
一次アーム61および二次アーム63は、直線状または曲線状であってもよい。一実施形態では、一次アーム61および二次アーム63は、18mm~25mmの範囲の曲率半径を有して、わずかに(slightly)湾曲している。一実施形態では、曲率半径は21mmである。クラウン60の2つのアームは、300ミクロン~750ミクロンの範囲の所定の厚さを有し得る。一実施形態では、この厚さは550ミクロンである。
【0035】
クラウン60は、それぞれリング51aおよびナット53aの中に設けられた溝51bおよび53bによりファスナ50と組み立てられ得る。クラウン60は、限定するものではないが溶接、接着、スナップ固定機構等によって固定され得る。一実施形態では、クラウン60は、溶接により固定される。以降で説明されるように、一次アーム61はリング51aに対して装着され、二次アーム63はナット53aに対して装着され得る。
【0036】
一次アーム61は、近位端部61aに第1の連結構造部62を含み得る。第1の連結構造部62は、例えば嘴形状構造部、T字形状構造部等のしかしこれらに限定されない形状に設定され得る。一実施形態では、第1の連結構造部62は、嘴形状構造部に形状設定される。第1の連結構造部62は、ファスナ50のリング51aの複数の第1の溝51bの内部に取り付けられ得る。さらに、二次アーム63は、ナット53aの複数の第2の溝53bの内部に取り付けられ得る。さらに、一次アーム61は、
図1に示すように遠位端部61bに第2の連結部材64を含み得る。第2の連結部材64は、クラウン60にアンカー70を組み付けるために使用され得る。第2の連結部材64は、例えば矩形形状、正方形形状、楕円形形状等の、しかしこれらに限定されない所定の形状で製造されてもよい。一実施形態では、第2の連結部材64は矩形形状である。第2の連結部材64は、
図3に示すようにクラウン60上にアンカー70を装着するために複数のスロット(図示せず)を含み得る。これらの複数のスロットは、インプラント100の作動時にアンカー70への平滑移動をもたらすために使用され得る。
【0037】
クラウン60は、例えばSS(ステンレス鋼)合金、ニチノール合金(TiNi-SS、TN3、TNG、TiNi-YY、Ti-Ni-01、およびTi-Ni-02)、ならびにCoCr(コバルトクロム)合金などの、しかしこれらに限定されない生体適合性金属材料から作製され得る。一実施形態では、インプラント100のクラウン60は、ニチノール合金が超弾性特性および形状記憶特性を有することを理由としてニチノール合金から作製される。
【0038】
アンカー70は、例えばばね、コイル等の弾性部材であってもよい。一実施形態では、アンカー70はコイルである。インプラント100は、6~10個の範囲である所定個数のアンカー70を含んでもよい。一実施形態では、インプラント100は9個のアンカーを含む。アンカー70は、僧帽弁の弁輪上へのインプラント100のアンカリングを助長し得る。アンカー70は、0.1mm~0.4mmの間の範囲の直径のワイヤを巻くことにより製造され得る。一実施形態では、この直径は0.2mmである。アンカー70は、0.5mm~3mmの範囲である所定のピッチを有し得る。一実施形態では、アンカー70のピッチは1mmである。
【0039】
アンカー70は、近位端部71と、遠位端部73と、近位端部71と遠位端部73との間に延在する長さL5とを有し得る。長さL5は、5mm~20mmの範囲であってもよい。一実施形態では、この長さL5は12mmである。長さL5は、僧帽弁の天然弁輪の厚さにしたがって変化し得る。
【0040】
アンカー70は、クラウン60に装着され得る。一実施形態では、一次アーム61の遠位端部61bは、アンカー70の近位端部71に装着される。アンカー70は、クラウン60に手動で装着され得る。さらに、アンカー70の遠位端部73は先鋭エッジを有してもよく、この先鋭エッジは、インプラント100のアンカリングを容易にするために、組織に対して最小限の損傷を与えつつ天然僧帽弁の組織壁部に対するインプラント100の効果的な貫入を助長し得る。代替的には、遠位端部73は、組織壁部中へのアンカー70の貫入を助長し得るフック(図示せず)を含む。
【0041】
アンカー70は、例えば316L SS、316LVM SS、304 SSなどのしかしこれらに限定されない金属材料から作製され得る。一実施形態では、アンカー70は316L SSから作製される。
【0042】
本発明によれば、
図2はインプラント100の製造に伴うプロセスの流れ図を示す。このプロセスは、ステップ201にて開始される。ステップ201では、ニチノールから作製されたチューブが、クラウン60を形成するための切断プロセスを受ける。ニチノールチューブは、酸化物を含まないチューブであってもよい。この切断は、例えば液体ジェット加工、レーザ切断、アブレイシブジェット加工等の、しかしこれらに限定されない任意の手段により実施され得る。一実施形態では、ニチノールチューブの切断はレーザ切断により実施される。チューブは、4mm~6mmの範囲内の外径を有してもよい。一実施形態では、このチューブの外径は5.5mmである。さらに、チューブは、0.40mm~0.90mmの範囲内の所定の壁部厚さを有してもよい。一実施形態では、チューブの厚さは0.6mmである。
【0043】
レーザ切断は、例えばアルゴンガスまたは酸素ガスなどのしかしこれらに限定されないガスを用いて実施され得る。一実施形態では、レーザ切断はアルゴンガスを用いて実施される。アルゴンガスの圧力は、2バール~18バールの範囲内に維持され得る。
【0044】
ステップ203では、前ステップで得られたクラウン60が、平滑表面を作製するために研磨およびホーニング仕上げプロセスを受ける。研磨プロセスは、ダイアモンドヤスリおよび/または研磨ヤスリにより実施され得る。一実施形態では、ホーニング仕上げは、3.4mm~3.5mmの研磨砥石を使用して実施される。代替的には、研磨ゲルが、レーザ切断プロセスの最中に発生したバリを除去するためにさらに使用されてもよい。
【0045】
ステップ205では、クラウン60は、前ステップでの研磨およびホーニング仕上げの後に形状固定化プロセスを受ける。この形状固定化プロセスは、型を使用した熱処理により実施され得る。形状固定化は、複数のステップで実施される。第1に、レーザ切断されたクラウン60が、マンドレルを使用することにより、3mm~5mmの範囲のクリンプ時直径から20mm~45mmの範囲の拡張時直径へと拡張される。拡張後に、クラウン60は、所定の曲率半径をクラウン60に対して与えるために成形プロセスを受けてもよい。成形プロセスは、3つのステップで実施される。成形プロセスは、10分~15分にわたり505℃の温度にて実施され得る。一実施形態では、成形は、15分の期間にわたり505℃で実施される。
【0046】
ステップ207では、クラウン60は、サンドブラストプロセスを受ける。サンドブラストプロセスは、アルミニウム酸化物粉末を用いて実施され得る。アルミニウム酸化物粉末は、所定の期間にわたり所定の周期にてクラウン60に対して打撃を与えることができる。この所定の周期および所定の期間は、それぞれ45~85Hzの範囲内および3分~10分の範囲内であってもよい。一実施形態では、周期は55~65Hzの範囲内であり、時間は5分~8分である。この粉末により印加される圧力は、20psi~90psiの範囲内で変化してもよく、好ましくは30psi~60psiの範囲内で変化してもよい。サンドブラストプロセスは、アルミニウム粉末によるアブレーションによりクラウン60に非常に平滑な外方表面を形成することができる。また、サンドブラストプロセスは、酸化物層と前ステップでのレーザ切断により残された条線とを除去する、微小クラック発生傾向を軽減する、および/またはクラウン60の外方表面に対して光テクスチャを与えることができる。
【0047】
最後に、ステップ209では、クラウン60は電解研磨プロセスを受ける。電解研磨プロセスは、電解質溶液中にインプラント100を浸漬し所定の期間にわたり所定の電圧で電流を送ることにより実施される。電解質溶液は、20%~25%の過フッ素酸(purfluoric acid)および75%~80%の酢酸の混合物などの濃酸溶液であってもよい。電解研磨のために使用される電圧は8V~12Vであり、電流は0.3A~1.5Aであり、好ましくは0.8A~0.10Aである。所定の期間は、1分~8分の範囲内であり、好ましくは2~6分の範囲内である。
【0048】
ステップ211では、例えばファスナ50、複数のクラウン60、複数のアンカー70などの構成要素が、
図1に示すようなインプラント100を形成するために共に組み立てられる。
【0049】
ステップ213では、インプラント100が、
図3に示すような送達デバイス300上に装填される。
【0050】
送達デバイス300は、シャフト310および本体320を含み得る。シャフト310は、近位端部311および遠位端部313を含み得る。シャフト310は、近位端部311にヘッド315を含み得る。
【0051】
本体320は、1つまたは複数のローラを含んでもよく、例えば近位ローラ321、遠位ローラ322、および少なくとも1つのガイドプレート323のセットなどを含み得る。送達デバイス300の近位ローラ321および遠位ローラ322は、インプラント100のアンカー70およびファスナ50にそれぞれ装着される。近位ローラ321は、2つのシャフトを含んでもよく、例えばプレーンシャフト324およびねじ山付きシャフト325などを含み得る。ねじ山付きシャフト325は、時計回り方向および反時計回り方向への回転移動を可能にし得る。近位ローラ321のプレーンシャフト324は、前方および後方への軸方向移動を可能にする。
【0052】
近位ローラ321は、組織弁輪上にインプラント100を固定するために、アンカー70のフックに位置するワイヤ327の補助によりアンカー70に対して連結される。遠位ローラ322は、ファスナ50を回転させてインプラント100を作動させるために、ワイヤ327の補助により頂部部分52に対して連結される。ガイドプレート323は、近位ローラ321と遠位ローラ322とインプラント100との間に配置され、これらの構成要素に対してワイヤ327を案内しインプラント100に対して個々の移動を可能にするために主に使用される。
【0053】
ステップ215では、インプラント100は、一次パッケージングプロセスを受ける。インプラント100は送達デバイス300と共に、アルミニウムから作製されたパウチ内にパッケージングされ得る。同様に、インプラント100は、送達デバイス300と共に、アルミニウムから作製されたパウチ内にパッケージングされ得る。
【0054】
一次パッケージング後に、ステップ217にて、インプラント100は一次滅菌プロセスを受ける。この一次滅菌プロセスは、例えばETO(エチレン酸化物)ガス、窒素ガスなどのガスを使用したガス滅菌により実施され得る。一実施形態では、一次滅菌プロセスは、ETO(エチレン酸化物)ガスにより実施される。
【0055】
ステップ219では、インプラント100は二次パッケージングプロセスを受ける。二次パッケージングプロセスの最中に、インプラント100は、プラスチックボックス、カードボードボックス等の中にパッケージングされ得る。一実施形態では、インプラント100はプラスチックボックス内にパッケージングされる。
【0056】
二次パッケージング後に、ステップ221にて、インプラント100は所定の温度で保管され得る。一実施形態では、インプラント100は室温で保管される。
【0057】
次に、以下の実施例を利用して本発明を説明する。
【0058】
次に、以下の実施例を利用して本発明を説明する。
【実施例1】
【0059】
実施例1(本発明):36mmの初期直径を有する弁尖を含む僧帽弁のin-vitro組織モデルを使用した。円錐形に拡張可能な構成において40mm直径を有するインプラントを用意した。このインプラントを、僧帽弁の弁尖を覆うように配置し、アンカーの補助によりアンカリングした。これらのアンカーがin-vitro組織モデルの弁尖上に位置決めされ固定されると、単一ファスナを回転することにより、インプラントを作動させた。ファスナがスパナの補助により回転されると、ナットが上方へ移動し、結果としてインプラントがクリンプされ、弁尖直径が36mmから30mmへと縮小した。この工程全体の有効な様式での実施に要した時間は、in-vitroモデルにおいて20分であった。
【実施例2】
【0060】
実施例2:34mmの初期直径サイズを有する弁尖を含む僧帽弁のin-vitro組織モデルを使用した。V字形状の複数のクラウンおよび複数のファスナを有する直径38mmのインプラントを治療部位にて使用した。インプラントのV字形状クラウンは、治療部位にてより高い応力を被ることが判明した。さらに、弁修復に要した時間は、本発明よりも比較的長かった。
【0061】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。より一般的には、本明細書において説明されるすべてのパラメータ、寸法、材料、および構成は例示的なものとして意図され、実際のパラメータ、寸法、材料、および/または構成は、具体的な用途または本発明の教示を利用する用途に応じて決定される点が、当業者には容易に理解されよう。
【符号の説明】
【0062】
50 ファスナ
51 近位端部
51a リング
51b 第1の溝
52 頂部部分
53 遠位端部
53a ナット
53b 第2の溝
54 シャンク
60 クラウン
61 一次アーム
61a 近位端部
61b 遠位端部
62 第1の連結構造部
63 二次アーム
63a 近位端部
63b 遠位端部
64 第2の連結部材
70 アンカー
71 近位端部
73 遠位端部
100 インプラント
300 送達デバイス
310 シャフト
311 近位端部
313 遠位端部
315 ヘッド
320 本体
321 近位ローラ
322 遠位ローラ
323 ガイドプレート
324 プレーンシャフト
325 ねじ山付きシャフト
327 ワイヤ
L1 長さ
L2 長さ
L3 長さ
L4 長さ
L5 長さ
【国際調査報告】