(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】空気中のVOC、SVOC、および/またはPFAS化学物質の収集のための拡散ガスサンプリングのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01N 30/04 20060101AFI20241108BHJP
G01N 30/08 20060101ALI20241108BHJP
G01N 30/06 20060101ALI20241108BHJP
G01N 1/22 20060101ALI20241108BHJP
G01N 30/88 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
G01N30/04 A
G01N30/08 G
G01N30/06 G
G01N1/22 L
G01N30/88 X
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532320
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 US2022080593
(87)【国際公開番号】W WO2023097335
(87)【国際公開日】2023-06-01
(32)【優先日】2021-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518320904
【氏名又は名称】エンテック インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】カーディン, ダニエル ビー.
【テーマコード(参考)】
2G052
【Fターム(参考)】
2G052AA01
2G052AA03
2G052AB11
2G052AB22
2G052AD02
2G052AD22
2G052AD42
2G052DA27
2G052EB01
2G052EB11
2G052ED01
2G052ED06
2G052ED10
2G052FC06
2G052GA27
2G052HC22
2G052JA09
2G052JA11
(57)【要約】
拡散サンプリング装置は、屋内および屋外の空気中の化学物質の定量測定に使用される。サンプリング装置は、バイアルの内側の底部に吸着剤を含むバイアルが含まれる。サンプリング装置は、サンプリング場所へ移送する前に熱真空洗浄されることができ、および吸着剤は、揮発性または半揮発性化合物(VOCまたはSVOC)のいずれかを収集できるように選択される。拡散サンプリング期間(1時間から1か月)の後、バイアルが閉じられて、収集されたサンプルは分析のために実験室に移送される。熱真空抽出フォーカス技術を使用して、収集されたサンプルは、キャピラリベースのGCMSへのスプリットまたはスプリットレス注入用の第2の吸着剤を含むGCMS互換性の前濃縮装置に迅速に送られる。サンプラの準備や分析中に溶媒は使用されず、数千種類の化学物質について周囲空気または屋内空気の監視に必要な検出限界を達成できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイアルの内面にコートされた接着面を含む第1の吸着剤を備えたバイアルを含むサンプリング装置を使用して、拡散サンプリングプロセスで空気サンプルを収集することであって、前記第1の吸着剤が前記バイアルの前記内面に結合され、前記サンプリング装置が熱脱着および溶媒抽出と互換性がある、空気サンプルを収集することと、
前記サンプリング装置に取り付けられた不活性キャップを使用して前記サンプリング装置をシールすることと、
熱脱着または溶媒抽出を使用して、前記空気サンプルの1つ以上の化合物を化学分析用のガスクロマトグラフに送ることと、を含む方法。
【請求項2】
前記サンプリング装置は、前記第1の吸着剤の前記接着面に結合された第2の吸着剤をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記空気サンプルを収集することと、前記サンプリング装置をシールすることとの後に、
前記サンプリング装置をキャビティ内に配置された第3の吸着剤を含む前濃縮装置に結合することであって、前記キャビティの開口部を前記サンプリング装置の開口部に結合することを含む、前記サンプリング装置を前濃縮装置に結合することと、
前記第1の吸着剤に前記第3の吸着剤よりも多くの熱が加えられるように、ヒータを使用して、前記第1の吸着剤に熱を加えることと、
前記第1の吸着剤に前記熱を加えながら、前記空気サンプルの前記1つ以上の化合物を前記第1の吸着剤から前記第3の吸着剤に拡散的に移動させることと、をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
熱脱着を使用して前記空気サンプルの前記1つ以上の化合物を化学分析のために前記ガスクロマトグラフに送ることが、前記第3の吸着剤を熱脱着することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記前濃縮装置のバルブを使用して閉鎖系を形成するよう、前記サンプリング装置と前濃縮装置とをシールすることをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記前濃縮装置と前記サンプリング装置とが結合されている間に、前記前濃縮装置のバルブに結合された真空源を使用して、前記前濃縮装置と前記サンプリング装置とを真空に引くことをさらに含む、請求項3に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプリング装置を前記前濃縮装置に結合することは、前記前濃縮装置の周囲の真空スリーブを使用して、前記サンプリング装置と前濃縮装置とを結合することを含む、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプリング装置および前記前濃縮装置が真空下で閉鎖系を形成している間に、前記熱が前記第1の吸着剤に加えられる、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
前記拡散サンプリングプロセスで前記空気サンプルを収集する前に、
前記サンプリング装置をマニホールドに結合することと、
前記サンプリング装置が前記マニホールドに結合されている間に、
前記第1の吸着剤に熱を加えながら、前記マニホールドを通して前記サンプリング装置内を真空に引くことと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
バイアルの内面に結合された第1の吸着剤を有する前記バイアルを含むサンプリング装置であって、前記第1の吸着剤は接着面を含み、前記サンプリング装置は熱脱着または溶媒抽出後にガスクロマトグラフによる化学分析のために空気サンプルを拡散収集するように構成され、前記サンプリング装置は熱脱着および溶媒抽出と互換性がある、前記サンプリング装置と、
前記サンプリング装置に結合して前記サンプリング装置をシールするように構成された不活性キャップと、
を含むシステム。
【請求項11】
前記サンプリング装置は、前記第1の吸着剤の前記接着面に結合された第2の吸着剤をさらに含む、請求項10に記載のシステム。
【請求項12】
キャビティ内に配置された第3の吸着剤を含む前濃縮装置であって、前記サンプリング装置の開口部に位置する前記キャビティの開口部を有する前記サンプリング装置に結合された、前記前濃縮装置と、
前記第1の吸着剤に前記第3の吸着剤よりも多くの熱を加えるように構成されたヒータと、をさらに備える、請求項10に記載のシステム。
【請求項13】
前記前濃縮装置はバルブをさらに備え、前記バルブが閉じられ、前記サンプリング装置が前記前濃縮装置に結合されている間、前記システムは閉鎖系である、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
真空源をさらに備え、前記前濃縮装置はバルブをさらに備え、前記真空源が前記前濃縮装置の前記バルブに結合されている間に、前記真空源は前記前濃縮装置および前記サンプリング装置内に真空を引くように構成されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項15】
真空スリーブをさらに備え、前記前濃縮装置が前記サンプリング装置に結合されている間に、前記前濃縮装置が前記真空スリーブの内側に配置される、請求項12に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2021年11月29日に提出された米国特許仮出願番号63/264,651の利益を主張するものであり、その開示内容は、全ての目的のために参照により全体が明細書に組み込まれる。
【0002】
(発明の分野)
本開示は、ガスサンプルの収集、より具体的には、屋内および屋外の環境で拡散バイアルサンプラを使用した空気のサンプリングに関する。
【背景技術】
【0003】
軽い揮発性化合物から重い準揮発性化合物までを含む有機化学物質は、吸着剤を含むチューブまたはカートリッジを通してサンプルを積極的に吸引するか、真空容器の遮断バルブを開いて真空によりサンプルを容器内に吸引することによって収集できる。どちらの場合も、サンプリングを実行するために必要な機器は高価であり、かつ化学物質が時間の経過とともに集まり平均濃度を決定する長時間の統合サンプリングを実行する機能は複雑になる可能性があり、およびコストが大幅に増加する可能性がある。真空キャニスタは揮発性の範囲の化合物の収集に人気があるが、より重い半揮発性(SVOC)の範囲の化合物の回収には効果がなく、かつこれらのキャニスタのコストと入口を統合する時間も高額になる可能性がある。PFAS化合物(パーフルオロアルキル物質)は、軽いVOCから重いSVOCの範囲にわたる揮発性の範囲を持つ有毒で発がん性のある化合物であり、かつその多くはVOCやSVOCに使用されるものと同じサンプリングおよび分析技術を使用して分析できるため、この説明の目的のため、明細書ではVOCおよびSVOCに言及する場合、PFAS化合物も含まれるものと理解される。SVOCと同様に、それらは、酸性、塩基性、または中性になる可能性があり、標準pH7.0ではイオン性になる可能性がある。真空キャニスタによるサンプリングで回収されなかったSVOCおよびPFAS(パーフルオロアルキル物質)化合物は、VOCよりもさらに毒性が強い可能性があり、かつしばしば人間の内分泌系に悪影響を及ぼし、健康に影響を及ぼし、さらには癌などの命に関わる病気につながることもある。ポリウレタンフォーム(PUF)またはXAD-2樹脂を含むカートリッジを通して空気を吸引するSVOC/PFASサンプリング装置は、より軽いVOC化合物を保持せず、かつ溶媒抽出してからブローダウンして抽出物を濃縮する必要があり、これには時間がかかり、高価な設備と実験室スペースが必要になるほか、それら自身には長期間にわたって吸入すると危険な溶剤を必要する場合もある。最後に、1つ以上の吸着剤床を含む熱脱着(TD)チューブは、空気中のさまざまな化学物質を収集するために使用されているが、現場でチューブを通過する空気の量を測定するために使用されるポンプによって体積測定エラーが発生する可能性があるため、サンプラ間の一貫性が低い場合があり、また、アクティブサンプリング中のTDチューブは「チャネリング効果」の影響を受ける可能性があり、チャネリング効果により、前回の熱脱着およびベーキングイベントから冷却されたときに吸着剤に生じた隙間を空気がより速く通過する可能性がある。繰り返しになるが、これらのチューブとその現場サンプリングのコンポーネントは高価になる可能性があり、かつ適切に使用するには高度な専門知識が必要である。
【発明の概要】
【0004】
本開示は、ガスサンプルの収集、より具体的には、屋内および屋外の環境で拡散バイアルサンプラを使用した空気のサンプリングに関する。ガラスバイアルは、底面にコーティングされた薄くて熱的に安定したポリマー材料を有するように調製されており、この材料に任意の数の吸着剤を塗布して底面の吸着特性を変更できる。15から200メッシュの固体吸着剤は、多くのポリマーフィルムに容易に接着し、かつ、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン-PDMS)から構成されるこれらのフィルムは、有機化学物質またはPFAS化学物質を生成する分解をしないため、酸素やオゾンにさらされても化学的バックグラウンドに追加されることはない。熱真空洗浄プロセスを使用して、ポリマーベースと適用された吸着剤を含むバイアルを洗浄して、バイアル内のVOC/SVOC/PFAS化学物質のバックグラウンドを除去し、その後、分析用の空気サンプルを収集するために使用するサンプリング場所に移動できるまでバイアルにキャップをする。サンプリング場所では、バイアルが開かれ、一定時間、空気がバイアル内に拡散し、また、同じサイズ(IDと高さ)のバイアルを使用すると、非常に広範囲の化合物の拡散/収集速度を測定できる。現場での収集後、「拡散バイアルサンプラ」またはDVSは、収集された化合物の定量分析のためにGCMSまたはGCMSMSに簡単に接続できる二次吸着剤を含むチューブへの熱真空抽出プロセスを使用して分析するために実験室に戻される。この技術により、サンプリングプロセスが大幅に簡素化され、サンプラの準備や分析の際に溶媒が使用されなくなり、動的サンプリング技術によって生じる不一致が排除され、かつ空気中で収集および分析できるGC対応化合物の数が増え、毒性化学物質、内分泌かく乱物質、発がん性があることが知られている化合物も含まれるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1A】
図1Aから1Bは、本開示のいくつかの実施形態に従うDVSサンプラの一例である。
【
図1B】
図1Aから1Bは、本開示のいくつかの実施形態に従うDVSサンプラの一例である。
【0006】
【
図2】
図2は、本開示のいくつかの実施形態に従うDVSサンプラから化学物質を除去するために使用されるクリーンアップ技術を示す。
【0007】
【
図3A】
図3Aから3Cは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラを使用してサンプリング位置で空気を収集する方法の例を示す。
【
図3B】
図3Aから3Cは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラを使用してサンプリング位置で空気を収集する方法の例を示す。
【
図3C】
図3Aから3Cは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラを使用してサンプリング位置で空気を収集する方法の例を示す。
【0008】
【
図4A】
図4Aから4Dは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラを使用して収集されたサンプルを、分析のためにキャピラリGCMSに導入するための二次フォーカスデバイスに移送する例を示す。
【
図4B】
図4Aから4Dは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラを使用して収集されたサンプルを、分析のためにキャピラリGCMSに導入するための二次フォーカスデバイスに移送する例を示す。
【
図4C】
図4Aから4Dは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラを使用して収集されたサンプルを、分析のためにキャピラリGCMSに導入するための二次フォーカスデバイスに移送する例を示す。
【
図4D】
図4Aから4Dは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラを使用して収集されたサンプルを、分析のためにキャピラリGCMSに導入するための二次フォーカスデバイスに移送する例を示す。
【0009】
【
図5】
図5は、本開示のいくつかの実施形態に従う、分析をするために、吸着ペンをキャピラリベースのGCMSまたはGCMSMS化学分析装置に最終的に脱着する例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下の説明では、本明細書の一部を形成し、実施され得る具体的な例を例示することによって示される添付図面を参照する。他の例を使用することができ、本開示の例の範囲から逸脱することなく、構造的変更を行うことができることを理解されたい。
【0011】
本開示は、ガスサンプルの収集、より具体的には、屋内および屋外の環境で拡散バイアルサンプラを使用した空気のサンプリングに関する。ガラスバイアルは、底面にコーティングされた薄くて熱的に安定したポリマー材料を有するように調製されており、この材料に任意の数の吸着剤を塗布して底面の吸着特性を変更できる。15から200メッシュの固体吸着剤は、多くのポリマーフィルムに容易に接着し、かつ、シロキサン(例えば、ポリジメチルシロキサン-PDMS)から構成されるこれらのフィルムは、有機化学物質またはPFAS化学物質を生成する分解をしないため、酸素やオゾンにさらされても化学的バックグラウンドに追加されることはない。熱真空洗浄プロセスを使用して、ポリマーベースと適用された吸着剤を含むバイアルを洗浄して、バイアル内のVOC/SVOC/PFAS化学物質のバックグラウンドを除去し、その後、分析用の空気サンプルを収集するために使用するサンプリング場所に移動できるまでバイアルにキャップをする。サンプリング場所では、バイアルが開かれ、一定時間、空気がバイアル内に拡散し、また、同じサイズ(IDと高さ)のバイアルを使用すると、非常に広範囲の化合物の拡散/収集速度を測定できる。現場での収集後、「拡散バイアルサンプラ」またはDVSは、収集された化合物の定量分析のためにGCMSまたはGCMSMSに簡単に接続できる二次吸着剤を含むチューブへの熱真空抽出プロセスを使用して分析するために実験室に戻される。この技術により、サンプリングプロセスが大幅に簡素化され、サンプラの準備や分析の際に溶媒が使用されなくなり、動的サンプリング技術によって生じる不一致が排除され、かつ空気中で収集および分析できるGC対応化合物の数が増え、毒性化学物質、内分泌かく乱物質、発がん性があることが知られている化合物も含まれるようになる。
【0012】
拡散空気サンプリングは、ポンプや真空装置を使用せずに、吸着剤を屋内または屋外の空気サンプルに受動的にさらし、化合物を吸着剤上に拡散させるプロセスである。いくつかの実施形態では、サンプリング装置の形状が適切に選択されて、装置間で実質的に一貫している場合、収集速度は、任意の対象化合物に対して実質的に一定になる。拡散サンプラは動的サンプラよりも大幅に安価で、現場での使用に必要な専門知識も少なくて済む。US EPAメソッド325では、サンプリング中に入口を下に向けた状態で垂直に配置された1/4インチのOD×5mmチューブを使用して、化合物が拡散して吸着剤に入るようにするが、チューブの入口が小さいため、より大きなSVOC化合物がチューブ内に移行する速度が制限され、感度が低下する可能性がある。また、多くのSVOCおよびPFAS化合物は、拡散速度が数千倍も低い空気中の粒子に付着しているため、重力の影響で沈降する傾向があるため、サンプリング中に収集されない可能性があり、一方、個々の分子は、比較的短い空気柱上の重力による大きな影響を受けない。落下する粉塵を収集するためにこれらの熱脱着装置を逆さまに使用すると、収集チューブが汚染される可能性があり、また、脱着時にこれらの粉塵粒子がGCMSまたはGCMSMS分析装置に移行し、本来は気相化学物質のみを受け入れるように設計されているこれらの分析装置が汚染される可能性がある。より大きなサイズの形状を含むサンプラを使用すると、捕捉された化合物を実験室で回収することが困難になる可能性があり、これは、これらのサンプリング装置では、通常、より大きな断面積のデバイスでは維持されない特定の線速度を必要とする「フロースルー」熱脱着が必要になるためである。バッジやラジアルサンプラなどの断面が大きい拡散サンプラは、通常、収集された化合物を回収するために溶媒抽出される。しかしながら、収集吸着剤が溶媒抽出されると、多くの場合、サンプルのごく一部だけがGCまたはGCMSに注入されて分析される。結果として生じる希釈度は50,000:1にも達することがあり、一般にppm範囲の化合物に対する感度は大幅に制限される。しかし、多くの場合、ppb範囲、かつしばしば、ppt範囲の測定が必要であり、特に長期的ながんリスクや人体の正常なホルモン系を乱す可能性のある化学物質を監視する場合には、ppb範囲、かつしばしば、ppt範囲の測定が必要である。
【0013】
本開示の実施形態には、安価で使いやすく、長期の時間積分サンプリングを実行して、平均濃度(真のリスク因子の決定)を決定でき、かつ空気中の粒子に事前に吸着されているものであってもVOC/SVOC/PFAS化合物の感度を最大化できるサンプリング装置が含まれる。例えば、拡散バイアルサンプラ(DVS)には、バイアルの底にポリマー層や追加の吸着剤が入ったガラスバイアルが含まれる。サンプリング前に溶媒やフロースルーガスを使用して吸着剤を調整するのではなく、DVSサンプラを真空に接続して、吸着剤を高温(例えば100から300℃)に加熱して吸着剤内の化合物を放出し、熱調整中にサンプラを継続的にポンプダウンする真空ポンプに化合物を移送する。
【0014】
いくつかの実施形態では、空気中の化合物を収集するために、事前に洗浄されたDVSサンプラをサンプリング場所に持ち込み、キャップを一定期間取り外した後、キャップを再び取り付けて分析のために実験室に戻す。DVSサンプラを風の強い場所に設置する場合は、DVSサンプラの上部にスクリーンを設置して対流サンプリングを阻止し、例えば、化合物がバイアルの入口から吸着剤まで標準速度で拡散するようにすることができる。風が強い場所や空気の動きが激しい場所でのサンプリングをさらに簡素化するために、隔離蓋の下に保持されるDVSの上部に恒久的なスクリーンを追加することもできる。あるいは、DVSサンプラは、屋外に設置したときに空気の激しい動きを排除する役割を果たすボックスまたは場所に配置することもできる。屋内の空気の場合、DVSサンプラは窓から離れた場所、または強制空気流(通気口、ファンなど)から離れた場所に設置できるため、吸気スクリーンやその他の対流防止策が不要になる。一定のバイアル形状(例えば、20mL×1.08インチOD、2インチ高さ)を使用することで、異なるDVSサンプラ間で拡散速度を一定にすることができる。
【0015】
いくつかの実施形態では、DVSサンプラには、捕捉する対象となる化合物に応じてさまざまな吸着剤を含めることができる。例えば、空気中のVOCを収集するにはDVSサンプラで強力な吸着剤を使用することができ、また、SVOCを収集するにはDVSサンプラで弱い吸着剤を使用できる。例えば、ほとんどのUS EPAメソッドで使用されるカラムは、分析する化合物の沸点範囲に基づいているため、通常は、より重いSVOC(PFAS)化合物を分析するには薄膜カラムを使用し、より軽いVOC(PFAS)化合物を分離して分析するには、より厚い膜のGCカラムを選択する。したがって、VOCからSVOCまでをカバーするように、2つまたは3つの別々のDVSサンプラを使用することは、実験室分析の観点からは理にかなっており、現在の環境GCMS方法との一貫性を実現する。他の吸着剤収集方法と同様に、VVOC(高揮発性有機化合物)の回収は難しい場合があり、最も軽い化合物の場合は真空キャニスタまたはその他の技術が必要になる可能性があるが、GC対応の最も重い化合物から、室温から沸点の範囲の化合物にはDVSサンプラを検討できる。熱抽出や脱着を実行できる他のサンプラとは異なり、DVSは、サンプル収集後に少量の溶媒をバイアルに追加して、LC注入するために溶媒のアリコートをバイアルに移すことで、LCMS/LCMSMS収集デバイスとしても使用できる。バイアルの底にある非常に薄い吸着剤の層により、化合物を溶媒に迅速かつ効率的に移送することができ、かつ溶媒によってpHを調節して、DVSサンプラで酸または塩基を回収することもできる。
【0016】
GC分析(例えば、GCMS、GCMSMS)を実行する場合、DVSサンプリング装置は、「Flash-VASE」またはフラッシュ真空支援吸着剤抽出と呼ばれる新しい実験室サンプル準備技術を活用する。Flash-VASEは、吸着剤を含むチューブ(例えば、吸着剤ペン)をバイアルの上部に配置し、ペン/バイアルアセンブリを真空にしてからバイアルを加熱し、化合物をガス相および吸着剤ペンに「フラッシュ」することによって、固体マトリックス内のVOCからSVOCまでの化学物質を吸着剤を含むチューブに移す技術である。Flash-VASEプロセスは手動で実行することも、自動サンプラで実行することもでき、自動サンプラでは、いつくかの実施形態では、2本の吸着ペンだけでDVSサンプラのトレイ全体を分析できる。自動サンプラの実行例では、1つの吸着ペンが次のDVSサンプラでFlash-VASE抽出を実行している間に、もう1つのペンが前のDVSサンプルを分析のためにGCMSに脱着している。いくつかの実施形態では、GCMSへのサンプルの脱着は、必要な感度に応じて、スプリットモードまたはスプリットレスモードのいずれかで実行できる。DVSサンプラへのサンプル収集と、吸着ペンでのFlash-VASE移送はどちらも拡散プロセスを使用して行われるため、チャネリング効果が回避され、現場で個別に収集された熱脱着チューブに比べて一貫性が大幅に向上する。
【0017】
特に、DVSサンプラは、周囲空気や屋内空気中に何千種類も存在する半揮発性の範囲の化合物を分析する最も簡単で、おそらく最も正確な方法である。これらの化合物を確実かつ費用対効果の高い方法で収集できないため、屋内と屋外の空気中のこれらの危険な化学物質を監視する機関の能力が制限されている。さらに、1週間や1か月のような、単一のDVSサンプラで長期間のサンプリングを実行する機能により、これらのSVOCの平均濃度を決定し、長期にわたる慢性的な暴露によって生じる疾患の可能性を評価できる。DVSサンプラは、現在使用されている他のサンプリング装置の利点をすべて備えており、欠点がまったくないため、Flash-VASE抽出およびGCMS分析と組み合わせると、将来的にこのすべてが変わる可能性がある。
【0018】
図1Aから1Bは、本開示のいくつかの実施形態に従う、DVSサンプラ100の一例である。例示のDVSサンプラ100は、バイアル102、蓋104、キャップ105、O-リング207、第1の吸着剤106、および第2の吸着剤108を含む。いくつかの実施形態では、DVSサンプラ100は、
図1Aから1Bに示されている第2の吸着剤108を省略して、バイアル102、蓋104、キャップ105、および第1の吸着剤106を含む。いくつかの実施形態では、第2の吸着剤108は、第1の吸着剤106よりも強い吸着剤であり、第1の吸着剤106は、状況によっては弱い吸着剤として作用する可能性がある。いくつかの実施形態では、C14より軽いVOCおよび/またはSVOCを収集するときに、より強力な第2の吸着剤108が使用される。いくつかの実施形態では、C14以上のVOCおよび/またはSVOC、ならびにSVOCおよびPFASを含む粒子を収集する場合、より強力な吸着剤108は省略されてもよい。第2の吸着剤108を追加すると、より軽いVOCの収集に役立つが、108を省略すると、より重いSVOC/PFASの収集が可能になり、かつ熱抽出後および再利用前の次の熱調整の前に、粉塵を洗い流しやすくなる。
【0019】
図1Aから1Bに示すように、吸着剤106および/または108は、バイアル102の底部の内面に配置される。第2の吸着剤108が使用される場合、第2の吸着剤108はバイアル上の第1の吸着剤106に「付着」するようにされる。例えば、第1の吸着剤106にはポリマー層(例えば、PDMS、ポリジメチルシロキサン)が含まれる。例えば、第1の吸着剤106は、バイアル102の内部の底部に塗布される。いくつかの実施形態では、第1の吸着剤106をバイアル102の内部の底部に事前に塗布し、続いて第2の吸着剤108の吸着剤材料にさらしてもよい。いくつかの実施形態では、第2の吸着剤108は、バイアル102の内部の底部に第1の吸着剤106を含むバイアルに添加される溶媒希釈コーティング材料(ポリマー)層に混合され、溶媒が蒸発して、第2の吸着剤108が第1の吸着剤106を介してバイアル102の底部に結合したままとする。いずれの場合も、第2の吸着剤10 は、バイアル102の底部の層に配置され、例えば、バイアル102の上部から底部までの拡散経路が、1つのサンプラから次のサンプラまで一貫しているようにする。したがって、さまざまなバイアル形状を使用できるが、例えば、形状を選択し、特定のバイアル形状の相対的なサンプリング速度(拡散吸収速度)を決定すると、一貫したサンプリングと分析に有利になる。場合によっては、複数の小さなバイアルを含む「パッケージ」が分離され、かつグループとして開封され、抽出前に酸と塩基の化合物を含むように1つ以上のバイアルのpH調整を行い、軽化合物から重化合物までを収集して、ユニバーサルサンプルパックを作成する。
【0020】
いくつかの実施形態では、第2の吸着剤108は第1の吸着剤106よりも弱い。この状況では、比較的強力な吸着剤がポリマー混合物に添加されて第1の吸着剤106が形成され、これがバイアル102の底部の内面に塗布され得る。第1の吸着剤106のキャリア溶媒が除去され、ポリマーおよび追加されたより強力な吸着剤がバイアル102の底部に結合したままになると、第2の吸着剤108を第1の吸着剤106の上に散布することができる。このように吸着剤106および108を配置すると、より重い化合物を、より強力な第1の吸着剤106から大幅に遠ざけることができ、それによって、さらに広範囲のVOC、例えば30から80℃で沸騰し、次に80から240℃で沸騰する化合物、さらにはおそらくより重い化合物を1回の分析で回収できるようになる。
【0021】
個人衛生モニタリング中に着用されるバッジと比較して、バイアルの入口から吸着剤までの距離が長いため、DVSサンプラの取り込み速度は、例えば個人衛生モニタリングのバッジの取り込み速度よりも遅くなる可能性がある。しかしながら、サンプルの分析は熱脱着によって行われるため、GCMSに到達する最終量は、溶媒抽出とGC注入中の分割を使用して通常は2000:1または最大50,000:1に希釈されるため、バッジでサンプリングした量の0.002から0.05%と比較して、サンプリングした量の5から100%になる可能性がある。DVSサンプラのサンプリング速度を低くすると、入口周辺の局所環境が適切にパージされず、サンプラの入口周辺の空気の濃度や圧力が低下する飢餓状態を解消できるという利点がある。言い換えると、サンプラの入口の空気がすでに抽出されている場合は、2度目に抽出することはできないため、抽出された空気は、化学物質がサンプラによって空気から吸着される速度の5から10倍の速度で移動して、飢餓現象を回避する必要がある。したがって、より遅いサンプリング速度と分析中のはるかに高いサンプル回収率の組み合わせは、従来の職場監視バッジによって提供されるものよりもはるかに優れたソリューションであり、特にサンプリング装置上の十分な空気流量を信頼できない室内空気質(IAQ)の判定に優れている。さらに、バッジの上のプラスチック製の囲いにより粉塵が収集媒体まで通過できないため、バッジは粉塵に結合した化学物質を収集できない。粒子に結合していないSVOCであっても、収集媒体に拡散せずにプラスチックバッジの囲いに付着して、失われる可能性がある。DVSサンプラでは、サンプリングプロセスを可能にするために蓋/キャップが取り外されると、空気と収集媒体の間にそのような障壁がなくなる。
【0022】
DVSサンプラ100には、洗浄後や実験室への輸送および実験室からの輸送中に、サンプラを隔離するための不活性で非吸着性/非吸収性の蓋104が含まれている。
図1Aから1Bに示されているように、蓋104とそのシーリングO-リング107は、キャップ105のネジを使用してバイアル102の上部にしっかりと押し付けられ、およびこの組み合わせにより、漏れのないシールが保証され、サンプラ100の環境からの有機化合物が第2の吸着剤108および/または第1の吸着剤106に収集されることなく、サンプリング場所への輸送中およびサンプリング場所からの輸送中にVOC/SVOC/PFASが収集されるのを防ぐ。いくつかの実施形態では、キャップ105およびバイアル102には、キャップ105とのシール形成を容易にするためのねじ山が含まれている。蓋はシールするために小さなO-リング107を使用するが、それ以外はステンレス鋼やセラミックコーティングされたステンレス鋼などの非吸収性、非吸着性の材料である。状況によっては、現場サンプリング中に保管の連鎖を維持し、適切なデータ整合性を確保するために、サンプラ100にバーコードまたはその他の追跡技術のラベルを貼ることができる。マルチポジションバイアルキャリアは、輸送中およびサンプリング中にバイアルを保持し、実験室でバイアルが熱または液体抽出されるまで、各バイアルを追跡するためにも使用でき、例えば、これには、1から4つのポジションが含まれる。
【0023】
図2は、本開示のいくつかの実施形態に従う、DVSサンプラ100から化学物質を除去するために使用されるクリーンアップ技術を示す。
図2には、DVSサンプラ100、ヒータ202、およびマニホールド204が含まれている。
図2に示すように、マニホールド204には、真空ポンプ210への接続212が含まれる。
【0024】
状況によっては、サンプラ100を現場に配置する前、またはサンプラ100から残留化学物質を除去することが望ましいその他の時点で、クリーンアップ技術が実行される。クリーンアップ技術は、サンプリング後に実験室で化学物質を回収するために使用される技術に類似しており、
図4Aから4Dを参照して以下で詳しく説明する。
図2の例では、クリーンアップ中に、DVSサンプラ100は、分析のためのサンプル回収中よりも高い真空と温度に長時間さらされ、次の現場のサンプリングイベント中に追加されるもの以外はサンプラ100に実質的に何も残らないようにする。
【0025】
ヒータ202(例えば、オーブンやブロックヒータ)はバイアル内の吸着剤を加熱するために使用され、非加熱マニホールド204はサンプラ100の上部にO-リングシールを作製する。
図2に示すように、O-リング206(例えば、シリコンまたはFKM)を使用してサンプラ100の上部をシールして、多数のDVSサンプラ100を同時に洗浄できるように配置することができる。例えば、10、20、30、またはそれ以上のサンプラ100を同時に洗浄することができる。
【0026】
いくつかの実施形態では、ヒータ202は、サンプラ100の上部部分よりもサンプラ100の下部部分に多くの熱を加えることができる。いくつかの実施形態では、ヒータ202はバイアル102に均一にまたは実質的に均一に熱を加える。サンプラ100、特に第1の吸着剤106および/またはオプションの第2の吸着剤108が配置されているサンプラ100の底部を加熱することにより(
図1Aから1Bを参照)、吸着剤106および/または108内の化学物質の親和性をほぼゼロにまで低減することができ、化学物質が真空ライン208を通じてガス放出され、ポンプ210に排出される。周囲の大気圧に比べて強い真空(例えば、1Torr以上)により、例えば数ポンドのシール力が生成され、洗浄中にDVSサンプラ100がマニホールド204にシールされたままになる。いくつかの実施形態では、サンプラ100を洗浄した後で、真空状態のまま、マニホールド204を持ち上げて、すべてのサンプラ100をヒータ202から取り外し、室温トレイに移して急速に冷却することができる。いくつかの実施形態では、マニホールド204を介して窒素をサンプラ100に導入して、サンプラ100をマニホールド204から解放することができる。高純度窒素をマニホールド204に導入することにより、DVSサンプラ100はマニホールド204から排出され、キャップ105と不活性ライナーで素早くシールできるようになる。いくつかの実施形態では、ライナーはシロナイトコーティングされたステンレス鋼とシールを形成するためのO-リングで作られている。これらのライナーとO-リングは、加熱された真空バイアルまたはチャンバー内で洗浄できる。
【0027】
いくつかの実施形態では、不活性ライナー、O-リング、および/またはDVSサンプラ100は、熱真空洗浄システムを使用して洗浄して再利用することができる。例えば、熱真空洗浄システムには、バイアル、給水装置、1つ以上のヒータ、真空源、および洗浄対象の部品にさまざまな流体(例えば、蒸気、窒素)を送るための複数の移送ラインが含まれ得る。いくつかの実施形態では、真空洗浄システムを使用した洗浄には、バイアルに1つ以上の部品を配置し、部品を脱イオン水ですすぎ、部品を蒸気洗浄し、部品を真空洗浄し、その後、洗浄システムの環境内の空気による汚染を回避しながら窒素を適用して真空を解除することが含まれ得る。
【0028】
図3Aから3Cは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラ100を使用してサンプリング位置で空気を収集する方法の例を示している。以下でより詳しく説明するように、サンプラ100の環境における空気の移動の速度と一貫性、および塵埃および塵埃に吸着された重い化合物の収集が望ましいかどうかに応じて、サンプリング中に、DVSサンプラ100は、
図3Aに示すように直立させて配置することも、
図3Bに示すように逆さまに配置することも、
図3Cに示すように横向きに配置することもできる。いくつかの実施形態では、DVSサンプラ100は拡散サンプリングプロセスで使用される。
【0029】
サンプラ100上の空気の移動速度がかなり遅い状況では、
図1Aから1Bに示す隔離蓋104とキャップ105を単に取り外すことが、周囲の空気をサンプラ100に取り込むことでサンプリングプロセスを開始する。例えば、屋内空気のモニタリングの場合、サンプリング期間を1から30日とすると、サンプリング期間中のその場所の空気の代表的なサンプリングが提供される。空気の動きが激しい領域でサンプリングを行う場合、例えば、スクリーン302をサンプラ100の上部に追加して対流サンプリングを排除することができ、対流サンプリングが発生すると、吸収率が未知の量まで増加する。例えば、屋内の空気の場合、DVSサンプラ100を強制換気口や開いた窓から離れた場所に配置すれば、これは問題になりない。場合によっては、サンプリングレートを遅くする必要がある場合があり、これは、
図3Aから3Cのスクリーン302の位置、またはサンプラ100の開口部よりも小さい開口部を持つ
図1Aから1Bの蓋104の位置に第2の蓋を追加することによって行うことができる。これは、サンプリング時間が非常に長い場合、または空気中の有機物含有量が多い環境でのみ必要になる場合がある。その他の場合では、最大200:1のスプリット注入を使用すると、GC/GCMSに送られるサンプルの量を減らすことができるため、これはGCカラムまたはMS(MSMS)検出器に到達するサンプルの量を最適化するもう1つの方法である。
【0030】
状況によっては、これらの化合物の拡散があらゆる方向にランダムに発生するため、サンプラ100の向きが気相分子の取り込み速度にほとんど影響を与えないことがある。しかしながら、
図3Aのように、サンプラ100の開口部304が上を向くように配置した場合、空気中の粒子に付着した重い化学物質のサンプリング速度ははるかに速くなる。例えば、これらの化学物質は簡単に吸入され、体内に吸収される可能性が非常に高いため、空気をサンプリングして分析する際には、通常、これらの粒子に結合した化学物質も含めることが重要である。しかし、
図3Bのように、サンプラ100の開口部304が下を向いている場合、つまりDVSサンプラが、おそらく天井付近の何らかのサポートから吊り下げられている場合、粒子の導入ははるかに少なくなり、潜在的には10倍かそれ以下になる可能性がある。ガス相中のそれらではなく粒子上のこれらの化合物の濃度を測定したい場合は、
図3Aに示すように、1つを上に向けて、
図3Bに示すように、もう1つを下に向けて、2つのDVSサンプラ100をサンプリング位置に配置するとよい。しかしながら、状況によっては、どの化合物が存在するかを判断することが目的であり、屋内の空気中の塵埃が場所によって統計的に類似している可能性があることを考慮すると、
図3Aに示すように、サンプラ100の開口部304を上に向けてサンプルを収集することが、特定の化学物質の濃度が他の場所よりも高い場所を特定するために重要であり、また、容易に吸入され、かつ人間の体内に吸収される可能性のある空気中の汚染物質を含めるためにも重要である。中間粒子の収集方向として、
図3Cに示すように水平に配置されたサンプラ100が考えられる。1時間から1か月の期間にわたってサンプルを収集した後、例えば、分析のために実験室に返却するため、サンプラ100にキャップをする(例えば、
図1Aから1Bに示す蓋104とキャップ105を使用)。
【0031】
図4Aから4Dは、いくつかの実施形態に従う、DVSサンプラ100を使用して収集されたサンプルを、分析のためにキャピラリGCMSに導入するために二次フォーカスデバイス400に移送する例を示している。
図4Aから4Dに示すように、フォーカスデバイス400は、吸着剤406を含むキャビティへの開口部403、チャネル405、バルブ408、脱着ポート410、およびシール412を備えた本体401を含む。
図4Aから4Dに示すサンプル移送プロセス中、DVSサンプラ100はヒータ414内に配置され、かつ真空スリーブ402によってフォーカスデバイス400に結合されており、これについては、以下でさらに詳しく説明する。
【0032】
GC分析の場合、DVSサンプラ100のワークアップは、溶媒を使用した抽出と、それに続く分析前に溶媒抽出物を濃縮するためのブローダウンプロセスを必要とするポリウレタンフォーム(PUF)カートリッジまたはXAD-2チューブのワークアップとは大きく異なる。ポリウレタンフォーム(PUF)カートリッジまたはXAD-2チューブの実装は非常に高価になる可能性があり、ほとんどの屋内環境にはまったく適合せず、サンプルワークアップ中に大量の溶媒を使用することは、化学者と周囲の環境の両方にとって健康上の懸念であると考えられている。
【0033】
図4Aから4Dでは、DVSサンプラ100が真空スリーブ402に取り付けられており、これによって吸着装置400(吸着ペン)が取り付けられ、吸着ペン400の上部404を通して真空が生成される。例えば、サンプル移送プロセスの一部(例えば、開始時)では、DVSサンプラ100がヒータ414で加熱されている間に、吸着ペン400の上部にあるバルブ408を介してシステムに真空を適用することができる。いくつかの実施形態では、真空源は、チャネル405、吸着剤406、および開口部403などの吸着ペン400を介してDVSサンプラ100に流体的に結合できる。DVSサンプラと吸着ペン400に真空が引き込まれると、真空源を取り外すか、真空源を非アクティブ化することで、真空排出プロセスを停止できる。例えば、真空源が取り外された場合でも、吸着ペン400のシール412とバルブ408によって、閉鎖系内の真空を維持できる。真空引き中または真空引き後に、ヒータ414は、例えばDVSサンプラ100に熱を加えることができる。いくつかの実施形態では、ヒータの位置により、吸着剤ペン400内の吸着剤406は、DVSサンプラ100内の吸着剤106および/または108よりも低い温度に保たれ、ヒータは、吸着剤ペン400内の吸着剤406より、DVSサンプラ100内の吸着剤106および/または108により多くの熱を加える。
【0034】
図4Cは、いくつかの実施形態に従う、サンプル移送中のDVSサンプラ100のクローズアップ図である。
図4Cに示すように、DVSサンプラ100は、バイアル102の内面に第1の吸着剤106と第2の吸着剤108とを含む。
図4Aから4Bに示すサンプル移送中、
図4Cに示す例では、1つ以上の化合物が第1の吸着剤106および第2の吸着剤108から吸着剤ペン400内の吸着剤406に移送される。
【0035】
図4Dは、いくつかの実施形態に従う、サンプル移送中のDVSサンプラ100のクローズアップ図である。
図4Dに示すように、DVSサンプラ100は、バイアル102の内面に第1の吸着剤106を含んでおり、第2の吸着剤108を含んでいない。
図4Aから4Bに示すサンプル移送中、
図4Dに示す例では、1つ以上の化合物が、第1の吸着剤106から、またはDVSサンプラ100内で収集された粒子から、吸着剤ペン400内の吸着剤406に移送される。
【0036】
真空状態を作り出し、その後真空ポンプを吸着剤ペン400から取り外すか、真空ポンプを吸着剤ペン400から取り外さずに真空ポンプをオフにして真空に引くことを解除すると、DVSサンプラ100内の吸着剤106および/または108を加熱しながら吸着剤ペン内の吸着剤406を冷却状態に維持することで、熱脱着対応化合物のすべてまたは実質的にすべて(例えば、>95%)をDVSサンプラ100から吸着剤ペン400に3から10分または3から5分という非常に短い時間で非常に迅速に移送する閉鎖系が得られる。例えば、DVSサンプラ100の吸着剤106および/または108に保持された化合物は、真空下でDVSサンプラ100の吸着剤106および/または108から吸着剤ペン400の吸着剤406に拡散的に移送することができる。いくつかの実施形態では、真空を引くことにより、吸着剤106および/または108から吸着剤406への化合物の拡散速度が増加または最大化される。このように、化合物をDVSサンプラ100から吸着剤ペン400に拡散的に移送すると、チャネリング(例えば、化合物の動的移送中にキャリア流体の流れによって化合物が吸着剤406にさらに「押し込まれる」)が軽減されるため、GCMS分析中の化合物の回収率が向上し、かつこの技術で分析できる化合物の範囲が広がるため、有利である。例えば、吸着剤406を加熱せずに吸着剤106および/または108を加熱すると、高温の吸着剤に長時間さらすことができない熱的に不安定な化合物のサンプリングが可能になる。DVSサンプラ100で使用される吸着剤106および/または108は主に疎水性であるため、水分の収集は最小限に抑えられ、GCMSでの応答の減衰は予想されない。短い移送期間の後、DVSサンプラ100/吸着ペン400アセンブリは室温トレイに短時間移動し、そこで吸着ペン400を取り外してスリーブ内に隔離し、GCMS分析を待つ。多くのSVOC/PFAS化合物は塩として粒子に結合しており、かつそれ自体は完全に非揮発性である。しかしながら、DVS媒体のpHは、脱着直前に酸性度を高めたり、または塩基性度を高めたりすることができるため、一方では酸性/中性化合物として分類される化合物を回収することができ、また、他方では塩基性に分類される化合物(アミン、アミドなど)を脱プロトン化して中性非イオン性形態にすることができ、熱脱着を使用して回収および分析することができる。このpH変化を実現するには、例えば、適切な強度のクエン酸やNH4OH、またはその他のpH調整溶液などを使用して、適切な溶液を1マイクロリットル追加するだけで十分である。
【0037】
図5は、本開示のいくつかの実施形態に従う、分析をするために、吸着ペン400をキャピラリベースのGCMSまたはGCMSMS化学分析装置500に最終的に脱着する例を示している。
図5に示すように、化学分析装置500は、熱脱着装置501、キャリア流体供給装置506、圧力コントローラ508、バルブ510aから510d、スプリットコントローラ512、プレカラム504、ジャンクション514、GCカラム502、および検出器516を含む。吸着ペン400は、熱脱着装置501に挿入されて、例えば脱着温度(例えば、100から500℃)まで加熱される。いくつかの実施形態では、吸着ペン400を予熱した後、吸着ペン400は、バルブ510aから510dの1つ以上を使用して脱着することができる。例えば、キャリア流体は、供給装置506からバルブ510bを通り、脱着ポート410を介して吸着ペン400に流れ込むことができ、および化合物の少なくとも一部がプレカラム504に移送され得る。いくつかの実施形態では、バルブ510cおよび/またはバルブ510dを開いてスプリット注入を実行することができる。いくつかの実施形態では、プレカラム504への移送中にバルブ510cおよび510dを閉じて、スプリットレス注入を実行することができる。いくつかの実施形態では、化合物は、ジャンクション514を介してプレカラム504からGCカラム502に移送されることができる。バルブ510dを使用してスプリット注入を実行する場合、いくつかの実施形態では、サンプルの一部がバルブ510dおよびスプリットコントロール512を介してシステムから排出され、かつサンプルの一部がGCカラム502に進む。いくつかの実施形態では、サンプルがGCカラム502に移されると、キャリア流体がバルブ510aを介して導入され、サンプルとキャリア流体のGCカラム502から検出器502への流れを制御して、サンプルの化学分析を行うことができる。いくつかの実施形態では、検出器502は質量分析計である。分析後、いくつかの実施形態では、吸着ペン400をベークアウト温度(例えば、100から500℃)まで加熱して、バルブ510aおよび510cを開いて吸着ペン400から残りの化合物を除去し、吸着ペン400をその後の分析で再利用できるようにすることができる。
【0038】
分析装置500の設計により、おそらくサンプルの1から10%のみがGCカラム502に移送されるスプリット注入、または吸着ペン400の脱着中に対象の化合物を保持するプレカラム504が選択されるスプリットレス技術のいずれかが可能になる。短期間のサンプリング(1から8時間)を実行する場合、場合によっては、スプリットレス注入が必要になることがあるが、より長いサンプリング時間の場合、スプリットレス注入を使用すると、ppt範囲の化合物でもGCMSに過負荷がかかる可能性があるため、このような場合には10:1または最大200:1のスプリット注入が必要になることがある。しかしながら、濃度がPPM範囲になる可能性がある産業環境でのエリアまたは個人のモニタリングにDVSサンプラを使用する場合は、1から8時間のサンプリングでもカラムの過負荷を防ぐためにスプリット注入が必要になる場合があり、または、前述のように、DVSサンプラ100の開口部に小さなサンプリング穴のある蓋を使用してサンプリング速度を遅くすることができる。
図5に示すシステム500への吸着ペン400の配送は、レールベースの自動サンプラを使用して自動化することができ、各トレイに30本の吸着ペン400(合計240本のペン)が含まれる最大8つのトレイを管理して、生産ラボ環境での大幅なラボスループットを実現する。あるいは、いくつかの実施形態では、DVSから吸着ペンへの移送時間が3から10分、または3から5分と短いため、2本の吸着ペンだけで100本以上のバイアルを分析でき、これは、一方のペンをGCMS分析で分析し、もう一方の吸着ペンで次のDVSサンプルを収集し、2本の吸着ペンデバイスを使用してすべてのサンプルが分析されるまで交互に行うことで自動化される。
図4Aから4Dを参照して上で説明したDVSサンプラ100から吸着ペン400への移送の拡散特性により、化学物質は吸着ペン400の吸着剤406の奥深くまで「流れ」ない(チャネリング効果)ため、GCMS500への脱着後、吸着ペン400に残っているレベルは通常10,000分の1未満であり、そのため、再利用前に吸着ペン400を別途ベークアウトする必要がない。このことからも、この技術は、例えば正確な結果を保証するために高品質の機器ブランクを達成する必要がある高生産実験室用であると考えられる。いくつかの実施形態では、DVSサンプラ100は、液体クロマトグラフィー分離および1つまたは複数の段階の質量分析検出(LCMS、LCMSMS)による分析用のサンプルを収集することもできる。このような場合、ポリマーフィルムから化合物を抽出するために少量の溶媒が追加され、この場合、GCに適合しないこれらの化合物は一般に蒸気圧が低いため、第1の吸着剤106のみを備え、かつ追加の第2の吸着剤108を備えていないDVSサンプラ100を使用できる。この場合、LC対応化合物の液相への移行は非常に容易に起こり、かつ多くのLC対応溶媒は極性が高すぎて、DVSサンプラ100の底部をコーティングするために使用される一般的な(PDMSおよびその他)ポリマーを溶解できないため、サンプラを複数回使用できるようになる。低pH、高pH、またはpH調整されていない溶媒をポリマー層にさらすと、LCMS/LCMSMSシステムへの自動注入のため溶媒はバイアルに移され得る。その後、サンプラは水で洗浄され、真空熱調整されて、新しいサンプルを収集するために現場に送られる。このプロセスは、DVSを交換する前に何十回も発生する可能性がある。
【0039】
新しいサンプラは、屋外の空気、職場の空気、特に屋内の空気質の調査中に、VOCからSVOCまでを測定するためのシンプルでありながら定量的で感度の高い技術を提供することができる。サンプラは、発がん性により一般の人々だけでなく、妊婦や生後数年間の子供にも危険因子となる多くの化合物の時間加重平均濃度を正確に測定できる。屋内空気中に含まれる化学物質の多くは内分泌かく乱物質であり、胎児や青少年の発育に影響を及ぼし、過去数十年間に増加している自閉症やその他の障害を引き起こす可能性があり、これは、環境中のこれらの内分泌かく乱物質のレベルの上昇が原因である可能性がある。多くの研究者は、食物、空気、水、および衣類内の化学物質への曝露がこれらの発達障害の原因であると信じており、かつ屋内空気の質を監視するための改良された装置を疫学的研究と組み合わせて使用することで、これらの障害やその他の障害の原因となる可能性が高い化学物質を突き止めることができる可能性がある。
【0040】
DVSサンプラは、病院、オフィスビル、車内、学校、および他の場所の空気の監視など、他の空気質の決定にも使用できる。これらの安価なサンプラは、建物内で増殖しているものではなく、屋外で発生した可能性のある胞子を探すだけでなく、建物内で増殖しているカビの存在を示す微生物VOCを探すために使用できる。カビの胞子は壁の中に閉じ込められる可能性があり、現在の測定技術では不可視であるが、微生物のVOCは壁を透過し、屋内環境のどこにでも設置されたDVSサンプラを使用して検出される。この技術を使用すれば、潜水艦の空気も理想的に監視でき、宇宙ステーションの低重力または無重力の場所の空気も監視できる。この低コストでありながら非常に効果的なデバイスを使用すると、民間航空機や軍用航空機の客室内の空気の質も監視できる。
【0041】
いくつかの実施形態は、バイアルの内面にコートされた接着面を含む第1の吸着剤を備えたバイアルを含むサンプリング装置を使用して、拡散サンプリングプロセスで空気サンプルを収集することであって、前記第1の吸着剤が前記バイアルの前記内面に結合され、前記サンプリング装置が熱脱着および溶媒抽出と互換性がある、空気サンプルを収集することと、前記サンプリング装置に取り付けられた不活性キャップを使用して前記サンプリング装置をシールすることと、熱脱着または溶媒抽出を使用して、前記空気サンプルの1つ以上の化合物を化学分析用のガスクロマトグラフに送ることと、を含む方法に関する。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記サンプリング装置は、前記第1の吸着剤の前記接着面に結合された第2の吸着剤をさらに含む。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記方法は、前記空気サンプルを収集することと、前記サンプリング装置をシールすることとの後に、前記サンプリング装置をキャビティ内に配置された第3の吸着剤を含む前濃縮装置に結合することであって、前記キャビティの開口部を前記サンプリング装置の開口部に結合することを含む、前記サンプリング装置を前濃縮装置に結合することと、前記第1の吸着剤に前記第3の吸着剤よりも多くの熱が加えられるように、ヒータを使用して、前記第1の吸着剤に熱を加えることと、前記第1の吸着剤に前記熱を加えながら、前記空気サンプルの前記1つ以上の化合物を前記第1の吸着剤から前記第3の吸着剤に拡散的に移動させることと、をさらに含む。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、熱脱着を使用して前記空気サンプルの前記1つ以上の化合物を化学分析のために前記ガスクロマトグラフに送ることが、前記第3の吸着剤を熱脱着することを含む。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記方法は、前記前濃縮装置のバルブを使用して閉鎖系を形成するよう、前記サンプリング装置と前濃縮装置とをシールすることをさらに含む。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記方法は、前記前濃縮装置と前記サンプリング装置とが結合されている間に、前記前濃縮装置のバルブに結合された真空源を使用して、前記前濃縮装置と前記サンプリング装置とを真空に引くことをさらに含む。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記サンプリング装置を前記前濃縮装置に結合することは、前記前濃縮装置の周囲の真空スリーブを使用して、前記サンプリング装置と前濃縮装置とを結合することを含む。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記サンプリング装置および前記前濃縮装置が真空下で閉鎖系を形成している間に、前記熱が前記第1の吸着剤に加えられる。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記方法は、前記拡散サンプリングプロセスで前記空気サンプルを収集する前に、前記サンプリング装置をマニホールドに結合することと、前記サンプリング装置が前記マニホールドに結合されている間に、前記第1の吸着剤に熱を加えながら、前記マニホールドを通して前記サンプリング装置内を真空に引くことと、を含む。
【0042】
いくつかの実施形態は、バイアルの内面に結合された第1の吸着剤を有する前記バイアルを含むサンプリング装置であって、前記第1の吸着剤は接着面を含み、前記サンプリング装置は熱脱着または溶媒抽出後にガスクロマトグラフによる化学分析のために空気サンプルを拡散収集するように構成され、前記サンプリング装置は熱脱着および溶媒抽出と互換性がある、前記サンプリング装置と、前記サンプリング装置に結合して前記サンプリング装置をシールするように構成された不活性キャップと、を含むシステムに関する。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記サンプリング装置は、前記第1の吸着剤の前記接着面に結合された第2の吸着剤をさらに含む。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記システムは、キャビティ内に配置された第3の吸着剤を含む前濃縮装置であって、前記サンプリング装置の開口部に位置する前記キャビティの開口部を有する前記サンプリング装置に結合された、前記前濃縮装置と、前記第1の吸着剤に前記第3の吸着剤よりも多くの熱を加えるように構成されたヒータと、をさらに備える。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記前濃縮装置はバルブをさらに備え、前記バルブが閉じられ、前記サンプリング装置が前記前濃縮装置に結合されている間、前記システムは閉鎖系である。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記システムは真空源をさらに備え、前記前濃縮装置はバルブをさらに備え、前記真空源が前記前濃縮装置の前記バルブに結合されている間に、前記真空源は前記前濃縮装置および前記サンプリング装置内に真空を引くように構成されている。さらに、または代替的に、いくつかの実施形態では、前記システムは真空スリーブをさらに備え、前記前濃縮装置が前記サンプリング装置に結合されている間に、前記前濃縮装置が前記真空スリーブの内側に配置される。
【0043】
添付の図面を参照して実施例を完全に説明してきたが、様々な変更および修正が当業者には明らかとなることに留意されたい。かかる変更および修正は、添付の特許請求の範囲によって定義される本開示の実施例の範囲内に含まれるものとして理解されるべきである。
【国際調査報告】