(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法及び使用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/13 20100101AFI20241108BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20241108BHJP
H01M 4/136 20100101ALI20241108BHJP
H01M 10/0566 20100101ALI20241108BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20241108BHJP
H01M 10/0562 20100101ALI20241108BHJP
H01M 10/0565 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M4/13
H01M4/131
H01M4/136
H01M10/0566
H01M10/052
H01M10/0562
H01M10/0565
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532330
(86)(22)【出願日】2023-01-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2023073562
(87)【国際公開番号】W WO2023143517
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210113785.8
(32)【優先日】2022-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521228710
【氏名又は名称】北京▲衛▼▲藍▼新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING WELION NEW ENERGY TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.1,Qihang West Street,Doudian Town,Fangshan District,Beijing 102402 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 ▲紀▼▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲き▼
(72)【発明者】
【氏名】祖 晨曦
(72)【発明者】
【氏名】▲ゆ▼ 会根
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ05
5H029AJ06
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H029AL02
5H029AL06
5H029CJ08
5H029CJ22
5H029DJ08
5H029EJ03
5H029HJ02
5H029HJ04
5H029HJ05
5H029HJ09
5H050AA07
5H050AA12
5H050AA15
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB02
5H050CB07
5H050DA02
5H050DA09
5H050EA11
5H050FA04
5H050GA05
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA02
5H050HA04
5H050HA05
5H050HA09
(57)【要約】
本発明は、リチウム電池用正極板及びその製造方法を開示する。本発明の正極板は、正極材料層と、正極材料層の直上に位置する機能層と、を含み、機能層材料は成分1を含み、成分1は、Li
1-x1Ti
1-x1A
x1OPO
4、Li
1-x1Ti
1-x1A
x1PO
5、Li
2-y1Ti
1-y1A
y1OM1O
4、Li
2-y1Ti
1-y1A
y1M1O
5から選択される少なくとも1種であり、ここで、0≦x1≦0.7、0≦y1≦1であり、Aは、Nb、Ta、Sbから選択される少なくとも1種であり、M1は、Si及びGeから選択される少なくとも1種である。機能層材料は成分2をさらに含み、成分2は、LiM2
2(PO
4)
3、Li
1+x2Al
x2M2
2-x2(PO
4)
3、M2O
2、Li
16-4y2M2
y2O
8、M2P
2O
7、M3PO
4、M3
2SiO
5、M4
3(PO
4)
2、M4
2SiO
4から選択される少なくとも1種又は複数種の組み合わせであり、M2は、Ti、Ge、Zr、及びHfから選択される1種であり、ここで、0<x2<0.6であり、M3及びM4は、Al、Ga、Sc、Y、Ca、Sr、Zn、Si、In、Lu、La、Fe、Cr、Geのうちの1種であり、3<y2<4である。成分1又は成分1と成分2との混合成分は、正極の表面にコーティングされることによって正極に添加される。前記正極を含むリチウム電池は、優れたレート特性、サイクル特性、及び安全性を示す。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極材料層と、正極材料層の直上に位置する機能層と、を含むリチウム電池用正極板であって、
前記機能層材料は成分1を含み、成分1は、Li
1-x1Ti
1-x1A
x1OPO
4、Li
1-x1Ti
1-x1A
x1PO
5、Li
2-y1Ti
1-y1A
y1OM1O
4、Li
2-y1Ti
1-y1A
y1M1O
5から選択される少なくとも1種であり、ここで、0≦x1≦0.7、0≦y1≦1であり、Aは、Nb、Ta、Sbから選択される少なくとも1種であり、M1は、Si及びGeから選択される少なくとも1種であり、
前記成分1は、好ましくは、LiTiOPO
4、Li
0.9Nb
0.1Ti
0.9OPO
4、Li
0.9Ta
0.1Ti
0.9OPO
4、Li
2TiOSiO
4、LiTaOGeO
4のうちの少なくとも1種である、ことを特徴とするリチウム電池用正極。
【請求項2】
前記機能層材料は成分2をさらに含み、成分2は、LiM2
2(PO
4)
3、Li
1+x2Al
x2M2
2-x2(PO
4)
3、M2O
2、Li
16-4y2M2
y2O
8、M2P
2O
7、M3PO
4、M3
2SiO
5、M4
3(PO
4)
2、M4
2SiO
4から選択される少なくとも1種又は複数種の組み合わせであり、ここで、M2は、Ti、Ge、Zr、及びHfから選択される1種であり、ここで、0<x2<0.6であり、M3及びM4は、独立して、Al、Ga、Sc、Y、Ca、Sr、Zn、Si、In、Lu、La、Fe、Cr、Geから選択されるいずれか1種であり、3<y2<4であり、
前記成分2は、好ましくは、InPO
4、LATP、AlPO
4、LAGP、LATP+AlPO
4、LAGP+Al
2SiO
5、InPO
4+LATP、Al
2SiO
5、TiO
2+LiTi
2(PO
4)
3、TiP
2O
7+LiGe
2(PO
4)
3のうちの1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項3】
前記機能層材料において、成分1と成分2とで構成される混合成分の形態は、成分1の粒子と成分2の粒子とが互いに均一に混合したもの、又は各一次粒子に成分1結晶形及び成分2結晶形が含有されているものである、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項4】
前記機能層は、空隙率がp(20%≦p≦80%)、厚さがh(0μm<h≦10μm)の3次元多孔質構造である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項5】
前記機能層中の成分1の粒子径が、10nm~10μm、好ましくは50nm~1μmである、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項6】
前記機能層中の成分2の粒子径が、10nm~10μm、好ましくは50nm~1μmである、ことを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項7】
前記正極活性材料は、コバルト酸リチウム正極及びその変性材料、NCM三元正極及びその変性材料、NCA三元正極及びその変性材料、マンガン酸ニッケルリチウム正極及びその変性材料、リチウムリッチ正極及びその変性材料、リン酸鉄リチウム正極及びその変性材料のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項8】
正極活性層を製造するステップ1と、
成分1又は成分1と成分2との混合成分を溶媒と均一に混合し、粉砕して10nm~10μmのスラリーにするステップ2と、
ステップ2で得られたスラリーにバインダを加えて均一に混合し、塗布スラリーを製造するステップ3と、
ステップ3で得られたスラリーを正極活性層上に塗布し、乾燥して正極板を得るステップ4と、を含む、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板の製造方法。
【請求項9】
前記溶媒は、脱イオン水、エタノール、NMP、アルコール、イソプロパノール、アセトンのうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項7に記載の製造方法。
【請求項10】
正極板、負極板、セパレータ、電解液、及びケースを含み、前記正極板は、請求項1~7のいずれか1項に記載の正極板である、ことを特徴とするリチウム電池セル。
【請求項11】
前記リチウム電池は、液体電池又は固体電池である、ことを特徴とする請求項9に記載のリチウム電池セル。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2022年01月30日に提出された中国特許出願202210113785.8の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、リチウム電池の技術分野に関し、特に高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法及び使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性が良く、使用寿命が長く、自己放電が低く、メモリ効果がないなどの利点があり、エネルギー貯蔵、動力電池や3C電子などにおいて応用市場が徐々により広くなり、応用の将来性が期待できる。
【0004】
リチウム電池は、エネルギー密度が高まりつつあり、電気自動車、デジタル製品などのパワーエレクトロニクス製品により優れた航続を提供している。電極の極板、特に正極板の担持量及び圧縮密度を高めることは、電池のエネルギー密度を高めるための有効な方法である。しかし、正極板の担持量及び圧縮密度の向上に伴い、正極活物質層が厚くなり、空隙率が低下するため、正極板内でのリチウムイオンの輸送が困難となり、電池の分極が深刻となり、電池の放電比容量とレート特性が低下し、サイクル安定性も低下する。また、電池のエネルギー密度が高くなるにつれて、電池の安全性を保証することが難しくなる傾向がある。これらの問題を同時に解決する技術は、これまでに存在していない。
【0005】
電池のレート特性を向上させる既存の方法は次のとおりである。
【0006】
正極表面ドープ:公開番号CN113224287Aの発明出願は、ストロンチウムドープ三元リチウムイオン電池正極材料(Li1-xSrx[Ni1-y-zCoyMz]O2、ここで、Mは、金属Mn及びAlのうちの1種であり、0<x≦0.1、0<y≦1、0<z≦1である)、その製造方法、及びその使用を開示している。ストロンチウム金属イオンをドープしてリチウム位を置換することにより、カチオンの混和の程度を軽減し、リチウムイオンチャネルを拡張し、層状構造を安定化し、リチウム電池のレート特性を効果的に向上させる。この方法は、レート特性を向上させる反面、材料の容量減衰を加速させるという問題をもたらすことが多い。
【0007】
電池の安全性を向上させる既存の方法は次のとおりである。
【0008】
正極被覆:公開番号CN113809280Aの発明出願は、焼結技術手段を変更し、被覆剤の相互作用を利用することにより、ほぼ面状の被覆効果を有する正極材料を製造した、正極材料、その製造、及びその使用を開示している。この方法により製造された正極材料は、表面被覆層の被覆範囲が広く、電解液による材料粒子の侵食の程度を大幅に低減させ、副反応の発生確率を効果的に低減させ、材料の安全性を向上させる。ただし、方法のプロセスが複雑で、電池のレート特性に影響を与えるという欠点が存在する。
【0009】
電解液添加剤の使用:公開番号CN113690490Aの発明出願は、有機溶媒の燃焼や爆発を効果的に阻止し、電解液自体の熱安定性を高め、正極の安定性を高め、電池のサイクル安定性及び安全性を改善することができる、亜リン酸エステル系リチウムイオン電池用電解液添加剤を開示している。サイクル特性やレート特性などの電池の電気的特性を損なうという欠点が存在する。
【0010】
セパレータへの接着剤塗布:公開番号CN108963153Bの発明出願は、リチウムイオン電池用セパレータ及びその製造方法を開示しており、ベースフィルム層の少なくとも片側の表面に水性セラミックスラリーコーティングをコーティングした後、水性セラミックスラリーコーティング及び/又はベースフィルム層の表面にポリエチレングリコール、ポリメチルメタクリレートによる複合接着剤層をコーティングすることにより、得られたリチウムイオン電池用セパレータは、良好な粘着性を有し、極板の位置ずれによる短絡を防止し、電池硬度を向上させ、電池の安全性を大幅に向上させることができる。電池のレート特性を損なうという欠点が存在する。
【0011】
電池の電気的特性と安全性の両方を向上させる既存の方法は次のとおりである。
【0012】
CN108365260Bは、ポリマー、セラミック電解質、リチウム塩及びイオン液体を原料組成として含む準固体電解質を開示している。前記セラミック電解質は、主相のリン酸リチウムチタンアルミニウムと、ヘテロ相のTiP2O7/TiO2とを含む。好ましくは、前記セラミックス電解質中のヘテロ相の含有量が2~7%であり、TiP2O7とTiO2との質量比が1.5~2.5:1である。ヘテロ相の含有量が以上の通りであるセラミック電解質を用いて製造した準固体電解質の総合特性は最適である。前記特殊な組成及び含有量を有するヘテロ相は、リチウム吸蔵特性を有し、リチウムイオンの輸送性を向上させることができるとともに、主相のリン酸リチウムチタンアルミニウムと金属リチウムとの接触を減少させ、金属リチウムとの界面安定性を向上させることができる。しかし、この特許は、正極の電気的特性及び安全性を向上させておらず、前記方法は、既存のリチウムイオン電池用正極板の主流製造プロセスと互換性がなく、大規模な応用に適していない。
【0013】
CN113707880Aは、固体電解質を含む正極板、その製造方法及びその使用に関し、電池のレート特性を向上させ、サイクル特性及び安全性を向上させることを目的としたものである。正極スラリーに含まれる固体電解質は、極板の横方向及び縦方向に電解液の透過浸潤を容易にし、電解液の保存及び浸潤を容易にするので、セルのサイクル中に極板の膨張を緩和し、極板の膨張の過程で圧力を受けて押し出される電解液の量を減少させ、セルが長期サイクルを経ても極板内に豊富な電解液を含み、リチウムイオンの正常な輸送を確保し、サイクル特性を向上させることができる。しかし、実施例のデータから見ると、電池容量と安全性はわずかな増加しかなく、レート特性への効果はデータの裏付けがなく、従来の固体電解質の添加では、電池の電気的特性と安全性を全面的に改善する目的を達成できないことがわかった。
【0014】
したがって、電池の電気的特性と安全性を向上させながら、ステップが簡単でコストが低い方法を探す必要がある。
【発明の概要】
【0015】
上記の従来技術に存在する制限に対して、本発明は、高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法及び使用を提供する。本発明の前記正極板は、正極材料層と、正極材料層の直上に位置する機能層と、を含む。
【0016】
前記機能層材料は成分1を含み、成分1は、Li1-x1Ti1-x1Ax1OPO4、Li1-x1Ti1-x1Ax1PO5、Li2-y1Ti1-y1Ay1OM1O4、Li2-y1Ti1-y1Ay1M1O5から選択される少なくとも1種である。ここで、0≦x1≦0.7、0≦y1≦1であり、Aは、Nb、Ta、Sbから選択される少なくとも1種であり、M1は、Si及びGeから選択される少なくとも1種であり、
前記成分1は、好ましくは、LiTiOPO4、Li0.9Nb0.1Ti0.9OPO4、Li0.9Ta0.1Ti0.9OPO4、Li2TiOSiO4、LiTaOGeO4のうちの少なくとも1種である。
【0017】
前記機能層材料は成分2を含み、成分2は、LiM22(PO4)3、Li1+x2Alx2M22-x2(PO4)3、M2O2、Li16-4y2M2y2O8、M2P2O7、M3PO4、M32SiO5、M43(PO4)2、M42SiO4から選択される少なくとも1種又は複数種の組み合わせであり、ここで、M2は、Ti、Ge、Zr、及びHfから選択される1種であり、ここで、0<x2<0.6であり、M3及びM4は、Al、Ga、Sc、Y、Ca、Sr、Zn、Si、In、Lu、La、Fe、Cr、Geのうちの1種であり、3<y2<4であり、前記成分2は、好ましくは、InPO4、LATP、AlPO4、LAGP、LATP+AlPO4、LAGP+Al2SiO5、InPO4+LATP、Al2SiO5、TiO2+LiTi2(PO4)3、TiP2O7+LiGe2(PO4)3のうちの1種である。
【0018】
機能層において、成分1と成分2とで構成される混合成分の形態は、成分1の粒子と成分2の粒子とが互いに均一に混合したもの、又は各一次粒子に成分1結晶形及び成分2結晶形が含有されているものである。
【0019】
前記機能層は、空隙率がp(20%≦p≦80%)、厚さがh(0μm<h≦10μm)の多孔質構造である。
【0020】
前記成分1の粒子径が、10nm~10μmである。好ましくは、50nm~1μmである。
【0021】
前記成分2の粒子径が、10nm~10μmである。好ましくは、50nm~1μmである。
【0022】
好ましくは、前記正極活性材料粒子は、コバルト酸リチウム正極及びその変性材料、NCM三元正極及びその変性材料、NCA三元正極及びその変性材料、マンガン酸ニッケルリチウム正極及びその変性材料、リチウムリッチ正極及びその変性材料、リン酸鉄リチウム正極及びその変性材料から選択される少なくとも1種であり、
前記導電剤は、Super-P、KS-6、カーボンブラック、ナノカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック又はグラフェンから選択される少なくとも1種であり、
前記バインダは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、上記のポリマーのホモポリマー、コポリマー、変性化合物、又は上記のポリマーと他のポリマー又は小分子との混合物から選択される。
【0023】
本発明の第2目的は、本発明の第1目的のリチウム電池用正極板の製造方法を提供することであり、前記成分1又は成分1と成分2との混合成分は正極表面にコーティングすることによって正極材料層の表面に機能層を形成する。正極板の表面コーティングは、成分1又は成分1と成分2的との混合成分のスラリーを含み、電極板が多孔質構造であるので、コーティング処理により成分1又は成分1と成分2との混合成分が正極表面にコーティングされると、正極の表面にコーティングが形成されることに加えて、一部の粒子が正極活性材料粒子の間に浸透して分散する。
【0024】
好ましくは、前記製造方法は、
正極活性層を製造するステップ1と、
成分1又は成分1と成分2との混合成分を溶媒と均一に混合し、粉砕して10nm~10umのスラリーにするステップ2と、
ステップ2で得られたスラリーにバインダを加えて均一に混合し、塗布スラリーを製造するステップ3と、
ステップ3で得られたスラリーを正極活性層上に塗布し、乾燥して正極板を得るステップ4と、を含む。
【0025】
好ましくは、
ステップ2では、前記スラリー中の溶媒は、脱イオン水、エタノール、NMP、アルコール、イソプロパノール、アセトンのうちの少なくとも1種を用い、
前記溶媒と正極材料との質量比が、(2000~10):100である。
【0026】
ステップ4では、
前記送風乾燥は、温度80~180℃、時間10分~9時間であり、真空乾燥は、温度80~180℃、時間3~100時間である。
【0027】
本発明の第3目的は、リチウム電池における本発明の第1目的に記載の正極板の使用を提供することである。
【0028】
前記リチウム電池は、液体電池又は固体電池である。
【0029】
本発明では、表面コーティングにより、粒子径D50が0.01~10μmの成分1又は成分1と成分2との混合成分を含む機能層を正極板の表面にコーティングすることにより、電池のレート特性、サイクル特性及び安全性を向上させることができる。従来技術では、成分1は、固体電解質の焼結過程で発生するヘテロ相であり、このようなヘテロ相の存在は固体電解質のイオン伝導度を低下させるため、固体電解質を製造する際に除去する必要があり、すなわち、通常、このような成分は極めて低いイオン伝導度のために固体電解質に用いることができないと考えられている。しかし、本発明者らは、大量の試験を通じて、このような成分のイオン伝導度は比較的に低く、一般的な固体電解質のイオン伝導度である10-4S/cmよりはるかに小さく、更に電解質のイオン伝導度である10-2S/cmよりも小さく、成分1は、電解液と混合した後にイオン伝導能に直接貢献できないが、正極に添加すると正極のレート特性、サイクル特性及び安全性を顕著に高めることができることを発見した。成分1はその特定の化学組成が正極材料の表面CEIの形成に関与することができるため、CEIの組成を変化させてより安定化させ、CEIの破裂とそれによる電池分極や熱暴走を回避し、さらに電池の実際の作動において正極板のレート特性、サイクル特性及び安全性を高めることができると考えている。また、成分2は電解液の分解及び正極材料表面の絶縁成分の生成を抑制することができるので、成分2と成分1を同時に使用することで相乗効果を発揮し、優れたCEIを構築することができ、電池の電気的特性と安全性を同時にかつ総合的に向上させることができる。特に、成分1又は成分1と成分2との混合成分が電極板表面にコーティングを形成すると、コーティングが正極と負極を分離して電池内部の短絡を防止するだけでなく、正極板表面層のCEIを改善することにより、正極板表面と平行な方向へのリチウムイオン伝導を向上させ、正極板表面での電解液の分解を減少させることができ、正極板表面が電解液との接触に最も十分な領域であるため、正極板表面を保護することにより、電池の特性を全体的かつ最も効果的に向上させることができる。表面コーティングにより添加剤を正極に導入することで、現在の正極板、セパレータ、電池の主流製造プロセスを変えることなく、電池のレート特性の発揮に役立ち、安定性が高く、コストが低いという利点があり、大規模な応用に適している。
【0030】
本発明は、従来技術と比較して、次のような利点及び顕著な効果を有する。
【0031】
本発明のリチウム電池正極の表面機能層中の成分1又は成分1と成分2の混合成分粒子は化学的安定性が高く、正極板の製造後に表面コーティングにより正極に添加することができ、従来の正極板、セパレータ及び電池の主流製造プロセスを変えることがなく、既存のリチウムイオン電池用正極板の主流製造プロセスと互換性があり、正極及びセルの製造プロセスに影響を及ぼさず、安定性が高く、低コストであるという利点があり、大規模な応用に適している。一方、正極材料ドープや正極表面被覆の方法は、いずれも既存の正極材料の製造技術を変更する必要があり、また、放電比容量及びレート特性を向上させることが困難である。
本発明のリチウム電池用正極板に添加される成分1は、従来の固体電解質とは異なり、リチウムイオン伝導能が低い。従来技術では、電池の電気的特性を向上させるために、リチウムイオン伝導度の高い添加成分を選択することが一般的であった。しかし、成分1のようなリチウムイオン伝導度の低い粒子を創造的に正極に加えると、正極粒子の表面CEIを改善することによって、電池のレート特性、サイクル特性及び安全性を著しく向上させることができ、既存の技術的偏見を克服できることを発見した。
【0032】
本発明のリチウム電池用正極板に同時に添加される成分1と成分2との混合成分粒子は、正極粒子表面CEIの安定性を向上させ、熱暴走時の正極からの酸素放出や電解液との反応を抑制し、電解液の分解を抑制し、電池の電気的特性と安全性を向上させることができる。実験により、成分1と成分2を同時に使用した場合、相乗作用の効果がより良いことが証明された。
【0033】
成分1又は成分1と成分2との混合成分は、正極板の表面に安全コーティングを形成し、正極と負極を分離することができ、電池の安全性を高める作用があり、安全コーティングを有する電池は、安全コーティングが正極と負極を分離して短絡を防止することができるので、ホットボックス試験において発火しない、爆発しないことが実験的に証明されている。安全コーティングは、正極と負極を分離して電池内部の短絡を防止するだけでなく、正極板表面層のCEIを改善することにより、正極板表面に平行な方向へのリチウムイオン伝導を改善し、正極板表面での電解液の分解を減少させることができる。正極板表面は電解液との接触が最も十分な領域であることから、正極板表面を保護することにより、電池特性を最も効果的に向上させることができるからである。
【0034】
本発明のリチウム電池用正極板の機能層の空隙率は特別に設計されており、空隙率が20%未満であれば、電池のレート特性に不利であり、空隙率が80%を上回っていれば、電池のサイクル特性に不利である。機能層の厚さは特別に設計されており、コーティングの厚さが10μmより大きければ、電池のレート特性に不利である。
【0035】
前記正極は、優れたレート特性、サイクル特性及び安全性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】実施例1におけるリチウム電池用正極板の構造模式図である。
【
図2】実施例2におけるリチウム電池用正極板の構造模式図である。
【
図4】実施例9におけるリチウム電池用正極板の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、特定の図面及び実施例を参照して、本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の更なる説明のためにのみ使用されるものであり、本発明の保護範囲を限定するものとは理解されない。当業者が本発明の内容に基づいて実施する本発明の本質的でない改良及び調整も本発明の保護範囲に属する。
実施例1
【0038】
ステップ1:NCM正極活性層を製造し、活性材料の質量を100gとした。
ステップ2:成分1 LiTiOPO
4と成分2 Li
1.4Al
0.4Ti
1.6(PO
4)
3とで構成される混合成分25kgとNMP 500kgとを均一に混合し、粉砕してD50:300nmのスラリーにした。成分1と成分2との比は1:4であった。
ステップ3:ステップ2で得られたスラリーにPVDF 1kgを加えて均一に撹拌し、粘度値200mPa・Sの塗布スラリーを製造した。
ステップ4:ステップ3で得られたスラリーをNCM90正極活性層上に塗布し、ベークし、コーティング厚さ1μm、空隙率40%の正極板を得た。
上記の方法で製造されたリチウム電池用正極板は、
図1の構造模式図に示すように、集電体5と、集電体5上に位置する正極材料層と、正極材料層の直上に位置する機能層3と、を含み、前記正極材料層は、正極活性材料4、導電剤、バインダを含み、前記機能層3は、成分1の粒子1と、成分2の粒子2と、を含み、ここで、機能層3中の成分1の粒子及び成分2の粒子は、均一に分布しており、成分1の粒子及び成分2の粒子の一部は正極材料層内に拡散しており、正極活性材料4の粒子間に分布している。該正極板とSiOC650負極とを組み合わせてソフトパックリチウム電池を組み立て、上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
本願に使用されるリチウム電池の電気化学的特性のテスト方法は以下のとおりである。
1.サイクル特性のテスト
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)放電終止電圧に達するまで電池を1C定電流で放電した後、放電を停止し、放電容量を記録し、これで1サイクルを完了する。
c)放電容量が第1サイクルの放電容量の80%を下回るまでステップaとbを繰り返し、その時点での電池のサイクル総数を記録する。
2.レートテスト
a)23℃±2℃で電池をそれぞれ0.1C、0.2C、0.33C、1C、2C、3Cのレートで充電終了電圧まで充電した後、放電終了電圧まで同レート電流で放電し、同レートでは4サイクル行う。
b)各レートでの放電容量を記録する。
c)0.33C放電容量に対する2C又は3C放電容量の比を計算し、2C/0.33C又は3C/0.33Cと表記し、レート特性を評価する。
3.高温サイクル
a)45℃で、充電終了電圧に達するまで1C電流で定電流充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止する。
b)電池を45℃で5h静置する。
c)高温45℃の条件下で、放電終止電圧に達するまで電池を1C電流で定電流放電した後、放電を停止し、放電容量を記録し、これで1サイクルを完了する。
d)放電容量が第1サイクルの放電容量の80%を下回るまでステップa~cを繰り返し、その時点での電池の放電容量及びサイクル総数を記録する。
リチウムイオン電池の安全性テスト方法は以下のとおりである。
1.過充電
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)電池が熱暴走するまで1C定電流で充電を持続し、熱暴走し始めたときの電池の電圧値を記録する。
2.ホットボックス
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)電池をテストボックスに入れる。試験箱を5℃/minの昇温速度で昇温し、箱内の温度が160℃±2℃に達した後、温度を一定にし、1h持続する。
電池が発煙、発火、爆発しなければ、合格とし、そうでなければ合格しない。
3.落下
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)コンクリートスラブ上に1mの落下高さから自由落下する。
ソフトパック電池の面ごとに1回ずつ落下し、計6回の試験を行う。
6回の実験の後、電池が発煙、発火、爆発しなければ合格とし、そうでなければ合格しない。
4.重量物衝撃
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)プラットフォームの表面に電池8を置き、直径15.8mm±0.2mmの金属棒9を電池の幾何中心の上面に横置きし、610mm±25mmの高所から質量9.1kg±0.1kgの重量物を用いて、金属棒を置いた電池表面に自由落下状態で衝突させ、6h観察し、重量物衝撃試験の模式図を
図3に示し、ここで、5は牽引ロープ、6はガイドパイプ、7は鋼鉄の衝撃箱(蝶番扉は図示せず)である。
ソフトパック電池の広い面に対してだけ衝撃試験を行って、サンプルごとに1回だけの衝撃試験を行うようにする。
電池が発煙、発火、爆発しなければ、合格とし、そうでなければ合格しない。
5.突き刺し
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)φ8mmの耐高温鋼針(針先の円錐角度は45°で、針の表面はつややかで、さび、酸化層や油汚れがない)を用いて、25mm/sの速度で、電池の極板に垂直な方向から電池を突き刺す面の幾何中心で突き刺し、鋼針を蓄電池の中に残す。
c)1h観察する。
電池が発煙、発火、爆発しなければ、合格とし、そうでなければ合格しない。
実施例2
【0039】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgを、成分1 25kgのみを含有し、成分2を含有しないものに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、電池構造をNCM83||SiOC650にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。製造されたリチウム電池用正極板は、
図2に示す構造模式図のように、集電体5と、集電体5上に位置する正極材料層と、正極材料層の直上に位置する機能層3と、を含み、前記正極材料層は、正極活性材料4、導電剤、バインダを含み、前記機能層3は、成分1の粒子1を含み、ここで、機能層3中の成分1の粒子は均一に分布しており、成分1の粒子の一部は正極材料層内に拡散しており、正極活性材料4の粒子間に分布している。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。この正極板を用いて製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例3
【0040】
成分2をAlPO4に変更し、正極活物質をNCM83に変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をNCM83||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例4
【0041】
成分2をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4に変更し、成分1及び成分2中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4の質量比を1:8:1にし、正極活物質をLCOに変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をLCO||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例5
【0042】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgを、成分1 LiTaOSiO4 25kgのみを含有し、成分2を含有しないものに変更し、正極活物質をLFPに変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造をLFP||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例6
【0043】
成分1をLiTaOGeO4に変更し、成分2をLi1.4Al0.4Ge1.6(PO4)3に変更し、正極活物質をNCM83に変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造をNCM83||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例7
【0044】
成分2をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4に変更し、成分1及び成分2中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4の質量比を1:8:1にし、空隙率を80%に変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例8
【0045】
成分2をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4に変更し、成分1及び成分2中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4の質量比を1:8:1にし、空隙率を20%に変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例9
【0046】
成分2をLi
1.4Al
0.4Ti
1.6(PO
4)
3、及びAlPO
4に変更し、成分1及び成分2中のLi
1.4Al
0.4Ti
1.6(PO
4)
3、及びAlPO
4の質量比を1:8:1にし、コーティング厚さを500nmに変更した。混合成分の各一次粒子に成分1結晶形及び成分2結晶形粒子が含有されており、混合成分の一次粒子の粒子径D50は300nmであり、成分1と成分2との混合成分の形態は
図4に示され、ここで、1は、成分1と成分2との一粒子中の混合成分であり、2は、コーティングであり、3は、活物質であり、4は、集電体であった。それ以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例10
【0047】
成分2をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4に変更し、成分1及び成分2中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4の質量比を1:8:1にし、コーティング厚さを10μmに変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例11
【0048】
成分2をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4に変更し、成分1及び成分2中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4の質量比を1:8:1にし、空隙率を20%に変更し、成分1と成分2とで構成される混合成分のD50を50nmにした以外、残りのパラメータは実施例9と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例12
【0049】
成分2をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4に変更し、成分1及び成分2中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4の質量比を1:8:1にし、成分1と成分2とで構成される混合成分のD50を1μmに変更した以外、残りのパラメータは実施例9と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例13
【0050】
成分2をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4に変更し、成分1及び成分2中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3、及びAlPO4の質量比を1:8:1にし、成分1と成分2とで構成される混合成分のD50を50nmに変更し、コーティング厚さを10nmに変更し、残りのパラメータは実施例9と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例1
【0051】
成分1及び成分2を含まない以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例2
【0052】
成分1及び成分2を含まず、正極活物質をNCM83に変更し、電池構造をNCM83||SiOC650にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例3
【0053】
成分1及び成分2を含まず、正極活物質をNCM83に変更し、負極をSiOC450にし、電池構造をNCM83||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例4
【0054】
成分1及び成分2を含まず、正極活物質をLCOに変更し、負極をSiOC450にし、電池構造をLCO||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例5
【0055】
成分1及び成分2を含まず、正極活物質をLFPに変更し、負極を黒鉛にし、電池構造をLFP||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例6
【0056】
成分1及び成分2を含まず、正極活物質をNCM83に変更し、負極を黒鉛にし、電池構造をNCM83||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例7
【0057】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgをAl2O3 25kgに変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例8
【0058】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgをZnO 25kgに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、電池構造をNCM83||SiOC650にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例9
【0059】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgをLi1.4Al0.4Ti1.6(PO4)3 25kgに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をNCM83||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例10
【0060】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgをAlPO4 25kgに変更し、正極活物質をLCOに変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をLCO||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例11
【0061】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgをLi0.5La0.5TiO3 25kgに変更し、正極活物質をLFPに変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造をLFP||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例12
【0062】
成分1と成分2とで構成される混合成分25kgをLi7La3Zr2O12 25kgに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造をNCM83||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
表1には、実施例の電気化学的特性のデータが示されている。
【0063】
【表1】
表2には、実施例の安全性のデータが示されている。
【0064】
【0065】
表1及び表2のデータから、正極表面に、成分1又は成分1と成分2との混合成分を含む機能層をコーティングすることにより、電池のレート特性、サイクル特性及び安全性を大幅に向上させることができる。実施例5と比較例11を比較すると、高効率CEIを構築することが、液体電池及び固体電池の電気的特性及び安全性を向上させる鍵となるため、正極に成分1をコーティングすることは、リチウムイオン伝導度の高い固体電解質をコーティングするよりも、電池レート特性、サイクル特性及び安全性を向上させる効果がはるかに強いことが分かった。実施例1と実施例7、8との比較から、本発明のリチウム電池の正極板上の機能層の空隙率には最適設計が存在し、空隙率が小さすぎると、電池のレート特性に不利であり、空隙率が大きすぎると、電池のサイクル特性発揮に不利であることが分かった。実施例1と実施例9、10、13との比較から、機能層には最適な厚さが存在し、厚さが小さすぎると、安全性発揮に不利であり、厚さが大きすぎると、レート特性発揮に不利であることが分かった。実施例1と実施例11、12との比較から、成分1と成分2には最適な粒子径が存在し、粒子径の最適化は電池の電気的特性と安全性を向上させることができ、粒子径が小さすぎると、添加剤粒子が凝集しやすくてレート特性に影響し、粒子径が大きすぎると、添加剤粒子が活物質粒子の表面と十分に接触することができず、特にレート特性と安全性に影響し、粒子径が小さすぎても大きすぎても、安定したCEIの構築には不利である。
【0066】
以上の実施形態は、本発明の原理を説明するために採用された例示的な実施形態にすぎないが、本発明はこれに限定されないことが理解されるべきである。当業者にとっては、本発明の精神及び本質から逸脱することなく、様々な変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良は、本発明の保護範囲とみなされる。
【国際調査報告】