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特表2024-542668高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法、及びその使用
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  • 特表-高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法、及びその使用 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法、及びその使用
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/62 20060101AFI20241108BHJP
   H01M 4/13 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/131 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/58 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/136 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/139 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/66 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M4/62 Z
H01M4/13
H01M4/525
H01M4/131
H01M4/505
H01M4/58
H01M4/136
H01M4/139
H01M4/66 A
H01M10/0566
H01M10/052
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532331
(86)(22)【出願日】2023-01-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 CN2023073560
(87)【国際公開番号】W WO2023143516
(87)【国際公開日】2023-08-03
(31)【優先権主張番号】202210113791.3
(32)【優先日】2022-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521228710
【氏名又は名称】北京▲衛▼▲藍▼新能源科技有限公司
【氏名又は名称原語表記】BEIJING WELION NEW ENERGY TECHNOLOGY CO.,LTD
【住所又は居所原語表記】No.1,Qihang West Street,Doudian Town,Fangshan District,Beijing 102402 China
(74)【代理人】
【識別番号】110002837
【氏名又は名称】弁理士法人アスフィ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】邱 ▲紀▼▲亮▼
(72)【発明者】
【氏名】▲楊▼ ▲き▼
(72)【発明者】
【氏名】王 加加
(72)【発明者】
【氏名】郭 ▲魯▼新
(72)【発明者】
【氏名】▲ゆ▼ 会根
【テーマコード(参考)】
5H017
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H017AA03
5H017BB08
5H017EE05
5H029AJ02
5H029AJ05
5H029AJ12
5H029AK01
5H029AK03
5H050AA02
5H050AA07
5H050AA15
5H050BA17
5H050CA01
5H050CA08
5H050CA09
5H050DA02
5H050DA09
5H050DA10
5H050DA11
5H050EA01
5H050GA02
5H050GA10
5H050GA22
5H050HA01
5H050HA05
(57)【要約】
本発明は、高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板を開示する。集電体と、前記集電体の表面に位置する正極材料層と、を含み、前記正極材料層は、Li1-x1Ti1-x1x1OPO、Li1-x1Ti1-x1x1PO、Li2-y1Ti1-y1y1OM1O、Li2-y1Ti1-y1y1M1Oから選択される少なくとも1種の第1成分であり、ここで、0≦x1≦0.7、0≦y1≦1であり、Aは、Nb、Ta、Sbのうちの少なくとも1種を含み、M1は、Si及びGeの少なくとも1種である。前記正極材料層は、第2成分をさらに含む。正極材料層中の第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分は正極活性材料粒子の間に分散している。前記正極を備えるリチウム電池は、優れたレート特性、サイクル特性、及び安全性を示す。本発明は、現在の正極板、セパレータ、及び電池の主流製造プロセスを変化させておらず、リチウムイオン電池の正極板の従来の主流製造プロセスと互換性があり、大規模な応用に適している。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極活性材料、導電剤、バインダ、第1成分を含む正極材料層を含むリチウム電池用正極板であって、
前記第1成分は、Li1-x1Ti1-x1x1OPO、Li1-x1Ti1-x1x1PO、Li2-y1Ti1-y1y1OM1O、Li2-y1Ti1-y1y1M1Oのうちの少なくとも1種を含み、ここで、0≦x1≦0.7、0≦y1≦1であり、Aは、Nb、Ta、Sbのうちの少なくとも1種を含み、M1は、Si及びGeのうちの少なくとも1種であり、
前記第1成分は、好ましくはLiTiOPO、Li0.9Nb0.1Ti0.9OPO、Li0.9Ta0.1Ti0.9OPO、LiTiOSiO、LiTaOGeOのうちの少なくとも1種である、ことを特徴とするリチウム電池用正極板。
【請求項2】
前記正極材料層は第2成分をさらに含み、第2成分は、LiM2(PO、Li1+x2Alx2M22-x2(PO、M2O、Li16-4y2M2y2、M2P、M3PO、M3SiO、M4(PO、M4SiOから選択される少なくとも1種又は複数種の組み合わせであり、ここで、M2は、Ti、Ge、Zr及びHfから選択される1種であり、ここで、0<x2<0.6であり、M3及びM4は、独立して、Al、Ga、Sc、Y、Ca、Sr、Zn、Si、In、Lu、La、Fe、Cr、Geから選択されるいずれか1種であり、3<y2<4であり、
前記第2成分は、好ましくは、InPO、LATP、AlPO、LAGP、LATP+AlPO、LAGP+AlSiO、InPO+LATP、AlSiO、TiO+LiTi(PO、TiP+LiGe(POのうちの1種である、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項3】
前記第1成分と第2成分で構成される混合成分の形態は、第1成分粒子と第2成分粒子が互いに均一に混合したもの、又は各一次粒子に第1成分結晶形及び第2成分結晶形が含有されているものである、ことを特徴とする請求項1に記載の正極板。
【請求項4】
前記正極材料層中の第1成分と正極活性材料との質量比をwとすると、0<w<5%、好ましくは0.1<w<3%であり、第1成分の粒子径が、10nm~10μm、好ましくは50nm~500nmである、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項5】
第2成分と正極活性材料との質量比をwとすると、0≦w<5%、好ましくは0≦w<3%であり、第2成分の粒子径が、10nm~10μm、好ましくは50nm~500nmである、ことを特徴とする請求項2に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項6】
前記正極活性材料は、コバルト酸リチウム正極及びその変性材料、NCM三元正極及びその変性材料、NCA三元正極及びその変性材料、マンガン酸ニッケルリチウム正極及びその変性材料、リチウムリッチ正極及びその変性材料、リン酸鉄リチウム正極及びその変性材料のうちの少なくとも1種を含む、ことを特徴とする請求項1に記載のリチウム電池用正極板。
【請求項7】
第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分、正極活物質、導電性添加剤、バインダ、及び溶媒を均一に混合し、スラリーを形成するステップ1と、
ステップ1で得られたスラリーをアルミ集電体の表面に塗布し、正極板を形成するステップ2と、
ステップ2で得られた正極板を送風乾燥し真空乾燥し、最終的な正極板を得るステップ3と、を含む、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のリチウム電池用正極板の製造方法。
【請求項8】
正極板、負極板、セパレータ、電解液、及びケースを含み、前記正極板は、請求項1~5のいずれか1項に記載の正極板である、ことを特徴とするリチウム電池セル。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、2022年01月30日に提出された中国特許出願202210113791.3の利益を主張しており、当該出願の内容は引用により本明細書に組み込まれている。
【技術分野】
【0002】
本発明は、リチウム電池の技術分野に関し、特に、高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法、及びその使用に関する。
【背景技術】
【0003】
リチウムイオン電池は、エネルギー密度が高く、サイクル特性が良く、使用寿命が長く、自己放電が低く、メモリ効果がないなどの利点があり、エネルギー貯蔵、動力電池や3C電子などにおいて応用市場が徐々により広くなり、応用の将来性が期待できる。
【0004】
リチウム電池は、エネルギー密度が高まりつつあり、電気自動車、デジタル製品などのパワーエレクトロニクス製品により優れた航続を提供している。電極の極板、特に正極板の担持量及び圧縮密度を高めることは、電池のエネルギー密度を高めるための有効な方法である。しかし、正極板の担持量及び圧縮密度の向上に伴い、正極活物質層が厚くなり、空隙率が低下するため、正極板内でのリチウムイオンの輸送が困難となり、電池の分極が深刻となり、電池の放電比容量とレート特性が低下し、サイクル安定性も低下する。また、電池のエネルギー密度が高くなるにつれて、電池の安全性を保証することが難しくなる傾向がある。これらの問題を同時に解決する技術は、これまでに存在していない。
【0005】
電池のレート特性を向上させる既存の方法は次のとおりである。
【0006】
正極表面ドープ:公開番号CN113224287Aの発明出願は、ストロンチウムドープ三元リチウムイオン電池正極材料(Li1-xSr[Ni1-y-zCo]O、ここで、Mは、金属Mn及びAlのうちの1種であり、0<x≦0.1、0<y≦1、0<z≦1である)、その製造方法、及びその使用を開示している。ストロンチウム金属イオンをドープしてリチウム位を置換することにより、カチオンの混和の程度を軽減し、リチウムイオンチャネルを拡張し、層状構造を安定化し、リチウム電池のレート特性を効果的に向上させる。この方法は、レート特性を向上させる反面、材料の容量減衰を加速させるという問題をもたらすことが多い。
【0007】
電池の安全性を向上させる既存の方法は次のとおりである。
【0008】
正極被覆:公開番号CN113809280Aの発明出願は、焼結技術手段を変更し、被覆剤の相互作用を利用することにより、ほぼ面状の被覆効果を有する正極材料を製造した、正極材料、その製造、及びその使用を開示している。この方法により製造された正極材料は、表面被覆層の被覆範囲が広く、電解液による材料粒子の侵食の程度を大幅に低減させ、副反応の発生確率を効果的に低減させ、材料の安全性を向上させる。ただし、方法のプロセスが複雑で、電池のレート特性に影響を与えるという欠点が存在する。
【0009】
電解液添加剤の使用:公開番号CN113690490Aの発明出願は、有機溶媒の燃焼や爆発を効果的に阻止し、電解液自体の熱安定性を高め、正極の安定性を高め、電池のサイクル安定性及び安全性を改善することができる、亜リン酸エステル系リチウムイオン電池用電解液添加剤を開示している。サイクル特性やレート特性などの電池の電気的特性を損なうという欠点が存在する。
【0010】
セパレータへの接着剤塗布:公開番号CN108963153Bの発明特許出願は、リチウムイオン電池用セパレータ及びその製造方法を開示しており、ベースフィルム層の少なくとも片側の表面に水性セラミックスラリーコーティングをコーティングした後、水性セラミックスラリーコーティング及び/又はベースフィルム層の表面にポリエチレングリコール、ポリメチルメタクリレートによる複合接着剤層をコーティングすることにより、得られたリチウムイオン電池用セパレータは、良好な粘着性を有し、極板の位置ずれによる短絡を防止し、電池硬度を向上させ、電池の安全性を大幅に向上させることができる。電池のレート特性を損なうという欠点が存在する。
【0011】
電池の電気的特性と安全性の両方を向上させる既存の方法は次のとおりである。
【0012】
CN108365260Bは、ポリマー、セラミック電解質、リチウム塩及びイオン液体を原料組成として含む準固体電解質を開示している。前記セラミック電解質は、主相のリン酸リチウムチタンアルミニウムと、ヘテロ相のTiP/TiOとを含む。好ましくは、前記セラミックス電解質中のヘテロ相の含有量が2~7%であり、TiPとTiOとの質量比が1.5~2.5:1である。ヘテロ相の含有量が以上の通りであるセラミック電解質を用いて製造した準固体電解質の総合特性は最適である。前記特殊な組成及び含有量を有するヘテロ相は、リチウム吸蔵特性を有し、リチウムイオンの輸送性を向上させることができるとともに、主相のリン酸リチウムチタンアルミニウムと金属リチウムとの接触を減少させ、金属リチウムとの界面安定性を向上させることができる。しかし、この特許は、正極の電気的特性及び安全性を向上させておらず、前記方法は、既存のリチウムイオン電池用正極板の主流製造プロセスと互換性がなく、大規模な応用に適していない。
【0013】
CN113707880Aは、固体電解質を含む正極板、その製造方法及びその使用に関し、電池のレート特性を向上させ、サイクル特性及び安全性を向上させることを目的としたものである。正極スラリーに含まれる固体電解質は、極板の横方向及び縦方向に電解液の透過浸潤を容易にし、電解液の保存及び浸潤を容易にするので、セルのサイクル中に極板の膨張を緩和し、極板の膨張の過程で圧力を受けて押し出される電解液の量を減少させ、セルが長期サイクルを経ても極板内に豊富な電解液を含み、リチウムイオンの正常な輸送を確保し、サイクル特性を向上させることができる。しかし、実施例のデータから見ると、電池容量と安全性はわずかな増加しかなく、レート特性への効果はデータの裏付けがなく、従来の固体電解質の添加では、電池の電気的特性と安全性を全面的に改善する目的を達成できないことがわかった。
【0014】
したがって、電池の電気的特性と安全性を向上させながら、ステップが簡単でコストが低い方法を探す必要がある。
【発明の概要】
【0015】
上記の従来技術に存在する制限に対して、本発明は、高レート、長サイクル、高安全性のリチウム電池用正極板、その製造方法、及びその使用を提供する。本発明の正極板は、集電体と、前記集電体の表面に位置する正極材料層と、を含み、前記正極材料層は、正極活性材料、導電剤、バインダ、第1成分を含む。
【0016】
前記第1成分は、Li1-x1Ti1-x1x1OPO、Li1-x1Ti1-x1x1PO、Li2-y1Ti1-y1y1OM1O、Li2-y1Ti1-y1y1M1Oのうちの少なくとも1種を含む。ここで、0≦x1≦0.7、0≦y1≦1であり、Aは、Nb、Ta、Sbのうちの少なくとも1種を含み、M1は、Si及びGeのうちの少なくとも1種である。
【0017】
好ましくは、前記第1成分は、LiTiOPO、Li0.9Nb0.1Ti0.9OPO、Li0.9Ta0.1Ti0.9OPO、LiTiOSiO、LiTaOGeOのうちの少なくとも1種である。
【0018】
前記正極材料層は第2成分をさらに含み、第2成分は、LiM2(PO、Li1+x2Alx2M22-x2(PO、M2O、Li16-4y2M2y2、M2P、M3PO、M3SiO、M4(PO、M4SiOから選択される少なくとも1種又は複数種の組み合わせであり、ここで、M2は、Ti、Ge、Zr、及びHfから選択される1種であり、ここで、0<x2<0.6であり、M3及びM4は、Al、Ga、Sc、Y、Ca、Sr、Zn、Si、In、Lu、La、Fe、Cr、Geのうちの1種であり、3<y2<4である。
【0019】
前記第2成分は、好ましくは、InPO、LATP、AlPO、LAGP、LATP+AlPO、LAGP+AlSiO、InPO+LATP、AlSiO、TiO+LiTi(PO、TiP+LiGe(POのうちの1種である。
【0020】
前記第1成分と第2成分で構成される混合成分の形態は、第1成分粒子と第2成分粒子とが互いに均一に混合したもの、又は各一次粒子に第1成分結晶形及び第2成分結晶形が含有されているものである。
【0021】
前記正極材料層中の第1成分と正極活性材料との質量比をwとすると、0<w<5%、好ましくは0.1<w<3%である。
【0022】
前記正極材料層中の第2成分と正極活性材料との質量比をwとすると、0≦w<5%、好ましくは0≦w<3%である。
【0023】
前記第1成分の粒子径が、10nm~10μmである。好ましくは、前記第1成分の粒子径が、50nm~500nmである。
【0024】
前記第2成分の粒子径が、10nm~10μmである。好ましくは、前記第2成分の粒子径が、50nm~500nmである。
【0025】
好ましくは、前記正極材料層の重量を100%として、
前記正極活性材料粒子の含有量は、80~99wt%であり、
前記導電剤の含有量は、0.1~8wt%であり、
前記バインダの含有量は、0.1~10wt%であり、
前記第1成分又は第1成分と第2成分とで構成される混合成分の含有量は、0.1~6wt%であり、
好ましくは、前記正極活性材料粒子は、コバルト酸リチウム正極及びその変性材料、NCM三元正極及びその変性材料、NCA三元正極及びその変性材料、マンガン酸ニッケルリチウム正極及びその変性材料、リチウムリッチ正極及びその変性材料、リン酸鉄リチウム正極及びその変性材料から選択される少なくとも1種であり、
前記導電剤は、Super-P、KS-6、カーボンブラック、ナノカーボンファイバー、カーボンナノチューブ、アセチレンブラック、又はグラフェンから選択される少なくとも1種であり、
前記バインダは、ポリフッ化ビニリデン、ポリフッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン、ポリテトラフルオロエチレン、上記のポリマーのホモポリマー、コポリマー、変性化合物、又は上記のポリマーと他のポリマー若しくは小分子との混合物から選択される。
【0026】
本発明の第2目的は、本発明の第1目的のリチウム電池用正極板の製造方法を提供することであり、前記第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分はホモジネート中に正極スラリー中にブレンドされる。正極板の製造において、第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分を加えて、正極活性材料粒子の間に分散させる。
【0027】
好ましくは、前記製造方法は、
第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分、正極活物質、導電性添加剤、バインダ、及び溶媒を均一に混合し、スラリーを形成するステップ1と、
ステップ1で得られたスラリーをアルミ集電体の表面に塗布し、正極板を形成するステップ2と、
ステップ2で得られた極板を送風乾燥し真空乾燥し、最終的な正極板を得るステップ3と、を含む。
【0028】
好ましくは、
ステップ1では、前記スラリー中の溶媒として、NMPが使用され、NMP:正極材料の質量比が、(2000~10):100である。
【0029】
ステップ2では、
使用する製造用スラリーは、25℃での粘度値が3500~8500mPa・Sである。
【0030】
ステップ3では、
前記送風乾燥は、温度80~180℃、時間10分~9時間であり、真空乾燥は、温度80~180℃、時間3~100時間である。
【0031】
本発明の第3目的は、リチウム電池における本発明の第1目的に記載の正極板の使用を提供することである。
【0032】
本発明では、正極板に粒子径D50が0.01~10μmの第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分を加えて、導電剤及びバインダと配合することにより、電池のレート特性、サイクル特性、及び安全性を向上させ、高レート、長サイクル、高安全性を電池に持たせる。従来、本願における第1成分は、通常、固体電解質の焼結過程で発生するヘテロ相であり、ヘテロ相の存在は一般に固体電解質のイオン伝導度を低下させ、通常、固体電解質を製造する際に除去する必要があり、従来技術は、高安全性、高レートリチウム電池において、電解質中に第1成分を積極的に導入しない。しかし、多くの実験において、本願における第1成分は、固体電解質とは特性が全く異なり、このような成分のイオン伝導度は比較的低く、一般的な固体電解質のイオン伝導度である約10-4S/cmよりもはるかに小さく(すなわち、固体電解質に置き換えて電極材料に加えることができない)、電解質のイオン伝導度である10-2S/cmよりも小さく、第1成分は電解液と混合した後にイオン伝導能に直接貢献できないが、正極材料に加える際にその特定の化学組成が正極材料表面のCEIの形成に関与することができ、CEIの組成を変化させてより安定化させ、CEIの破裂とそれによる電池分極や熱暴走を回避し、さらに電池の実際の動作において正極板のレート特性、サイクル特性及び安全性を高めることができることや、混合正極に第2成分を添加すると、電解液の分解が抑制され、正極材料表面での絶縁成分の生成が抑制されること、すなわち、第2成分と第1成分を同時に使用すると、相乗効果が発揮され、優れたCEIが構築され、電池の電気的特性と安全性が総合的に向上し得ることを見出した。また、第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分をブレンドの方法で同時に正極に導入するにより、現在の正極板、セパレータ及び電池の主流製造プロセスを変更する必要がなくなり、安定性が高く、低コストであるという利点があり、大規模な応用に適している。
【0033】
本発明は、従来技術と比較して、次のような利点及び顕著な効果を有する。
【0034】
本発明のリチウム電池の正極板に添加される第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分粒子は、化学的安定性が高く、正極板の製造前に正極活物質中に直接ブレンドすることができ、現在の正極板、セパレータ及び電池の主流製造プロセスを変更することがなく、既存のリチウムイオン電池の正極板の主流の製造プロセスと互換性があり、正極及びセルの製造プロセスに影響を与えず、安定性が高く、低コストであるという利点があり、大規模な応用に適している。一方、正極材料ドープや正極表面被覆の方法は、いずれも既存の正極材料の製造技術を変更する必要があり、また、放電比容量及びレート特性を向上させることが困難である。
【0035】
本発明のリチウム電池用正極板に添加される第1成分は、従来の固体電解質とは全く異なり、リチウムイオン伝導能が低く、固体電解質材料には全く適さない。従来技術では、電池の電気的特性を向上させるために、リチウムイオン伝導度の高い添加成分を選択することが一般的であった。しかし、本発明では、リチウムイオン伝導性の低い第1成分を創造的に正極に加えることで、正極表面のCEIを改善して電池のレート特性、サイクル特性、及び安全性を著しく高めることができ、既存の技術の偏見を克服した。本発明のリチウム電池用正極板に同時に添加される第1成分と第2成分の混合成分粒子は、正極粒子表面CEIの安定性を向上させ、熱暴走時の正極からの酸素放出や電解液との反応を抑制し、電解液の分解を抑制し、電池の電気的特性と安全性を向上させることができる。実験により、第1成分と第2成分を同時に使用した場合、相乗作用の効果がより良いことが証明された。
【0036】
本発明のリチウム電池用正極板に添加される第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分粒子の含有量は特別に設計されており、その含有量が0.1重量%未満であれば、有効なCEI層を形成することが困難であり、電気的特性及び安全性の向上が不十分である。含有量が6重量%を超えていれば、電池内の不活物質の含有量が増加し、電池のエネルギー密度が低下する。得られた正極は、優れたレート特性、サイクル特性、及び安全性を示す。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】実施例2におけるリチウム電池用正極板の構造模式図である。
図2】実施例1におけるリチウム電池用正極板の構造模式図である。
図3】本発明のリチウム電池の重量物衝撃試験の模式図である。
図4】実施例11におけるリチウム電池用正極板の構造模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、特定の図面及び実施例を参照して、本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例は、本発明の更なる説明のためにのみ使用されるものであり、本発明の保護範囲を限定するものとは理解されない。当業者が本発明の内容に基づいて実施する本発明の本質的でない改良及び調整も本発明の保護範囲に属する。
実施例1
【0039】
ステップ1:第1成分LiTiOPOと第2成分Li1.4Al0.4Ti1.6(POとで構成される混合成分1kg、正極活物質としてNCM90 100kg、Super P 1kg、PVDF 1kg、及びNMP溶媒 500kgを均一に混合し、スラリーを形成した。
ステップ2:ステップ1で得られたスラリーをアルミ集電体の表面に塗布し、正極板を形成した。
ステップ3:ステップ2で得られた極板を95℃で5minベークし、28Tロールプレス、ダイカットを行い、層厚126μmの正極板を得、正極板を105℃で24時間真空乾燥し、最終的な正極板を得た。
第1成分と第2成分の含有量の比は1:4であり、第1成分及び第2成分の粒子の粒子径D50は、それぞれ200nmである。
上記の方法で製造されたリチウム電池用正極板は、図2の構造模式図に示すように、正極材料層と、集電体3と、を含み、前記正極材料層は、正極活性材料1、導電剤、バインダ、第1成分2、第2成分4を含み、正極材料層中の第1成分2及び第2成分4は、正極活性材料1粒子の間に分散されている。該正極板とSiOC650負極とを組み合わせてソフトパックリチウム電池を組み立て、上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
本願に使用されるリチウム電池の電気化学的特性のテスト方法は以下のとおりである。
1.サイクル特性のテスト
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)放電終止電圧に達するまで電池を1C定電流で放電した後、放電を停止し、放電容量を記録し、これで1サイクルを完了する。
c)放電容量が第1サイクルの放電容量の80%を下回るまでステップaとbを繰り返し、その時点での電池のサイクル総数を記録する。
2.レートテスト
a)23℃±2℃で電池をそれぞれ0.1C、0.2C、0.33C、1C、2C、3Cのレートで充電終了電圧まで充電した後、放電終了電圧まで同レート電流で放電し、同レートでは4サイクル行う。
b)各レートでの放電容量を記録する。
c)0.33C放電容量に対する2C又は3C放電容量の比を計算し、2C/0.33C又は3C/0.33Cと表記し、レート特性を評価する。
3.高温サイクル
a)45℃で、充電終了電圧に達するまで1C電流で定電流充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止する。
b)電池を45℃で5h静置する。
c)高温45℃の条件下で、放電終止電圧に達するまで電池を1C電流で定電流放電した後、放電を停止し、放電容量を記録し、これで1サイクルを完了する。
d)放電容量が第1サイクルの放電容量の80%を下回るまでステップa~cを繰り返し、その時点での電池の放電容量及びサイクル総数を記録する。
リチウムイオン電池の安全性テスト方法は以下のとおりである。
1.過充電
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)電池が熱暴走するまで1C定電流で充電を持続し、熱暴走し始めたときの電池の電圧値を記録する。
2.ホットボックス
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)電池をテストボックスに入れる。試験箱を5℃/minの昇温速度で昇温し、箱内の温度が160℃±2℃に達した後、温度を一定にし、1h持続する。
電池が発煙、発火、爆発しなければ、合格とし、そうでなければ合格しない。
3.落下
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)コンクリートスラブ上に1mの落下高さから自由落下する。
ソフトパック電池の面ごとに1回ずつ落下し、計6回の試験を行う。
6回の実験の後、電池が発煙、発火、爆発しなければ合格とし、そうでなければ合格しない。
4.重量物衝撃
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)プラットフォームの表面に電池8を置き、直径15.8mm±0.2mmの金属棒9を電池の幾何中心の上面に横置きし、610mm±25mmの高所から質量9.1kg±0.1kgの重量物を用いて、金属棒を置いた電池表面に自由落下状態で衝突させ、6h観察し、重量物衝撃試験の模式図を図3に示し、ここで、5は牽引ロープ、6はガイドパイプ、7は鋼鉄の衝撃箱(蝶番扉は図示せず)である。
ソフトパック電池の広い面に対してだけ衝撃試験を行って、サンプルごとに1回だけの衝撃試験を行うようにする。
電池が発煙、発火、爆発しなければ、合格とし、そうでなければ合格しない。
5.突き刺し
a)23℃±2℃で、充電終了電圧に達するまで1C定電流で充電した後、定電圧充電に切り替え、充電電流レートが0.05Cに低下すると、充電を停止し、1h静置する。
b)φ8mmの耐高温鋼針(針先の円錐角度は45°で、針の表面はつややかで、さび、酸化層や油汚れがない)を用いて、25mm/sの速度で、電池の極板に垂直な方向から電池を突き刺す面の幾何中心で突き刺し、鋼針を蓄電池の中に残す。
c)1h観察する。
電池が発煙、発火、爆発しなければ、合格とし、そうでなければ合格しない。
実施例2
【0040】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgを、第1成分1kgのみを含有し、第2成分を含有しないものに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、電池構造をNCM83||SiOC650にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。製造されたリチウム電池用正極板は、図1の構造模式図に示すように、正極材料層と、集電体3と、を含み、前記正極材料層は、正極活性材料1、導電剤、バインダ、第1成分2を含み、正極材料層中の第1成分2は、正極活性材料1粒子の間に分散している。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。この正極板を用いて製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例3
【0041】
第2成分をAlPOに変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をNCM83||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例4
【0042】
第2成分をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOに変更し、第1成分及び第2成分中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOの質量比を1:8:1にし、正極活物質をLCOに変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をLCO||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例5
【0043】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgを、第1成分 LiTaOSiO1kgのみを含有し、第2成分を含有しないものに変更し、正極活物質をLFPに変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造を黒鉛||LFPにした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例6
【0044】
第1成分をLiTaOSiOに変更し、第2成分をLi1.4Al0.4Ge1.6(POに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造を黒鉛||NCM83にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例7
【0045】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgを、第1成分 LiTaOGeO1kgのみを含有し、第2成分を含有しないものに変更し、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例8
第1成分をLiTaOGeOに変更し、第2成分をAlSiOに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、電池構造をNCM83||SiOC650に変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例9
【0046】
第2成分をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOに変更し、第1成分及び第2成分中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOの質量比を1:8:1にし、第1成分及び第2成分粒子の粒子径D50を50nmに変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例10
【0047】
第2成分をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOに変更し、第1成分と第2成分の2種の成分の比を1:8:1に変更し、第1成分及び第2成分粒子の粒子径D50を500nmに変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例11
【0048】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分の全量を0.5kgに変更し、第2成分を、Li1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOに変更し、第1成分及び第2成分中のLi1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOの質量比を1:8:1にした。混合成分の各一次粒子に第1成分結晶形及び第2成分結晶形粒子が含有されており、混合成分の一次粒子の粒子径D50は200nmであった。混合形態は図4に示され、ここで、1は活物質、2は同一粒子中の第1成分と第2成分の混合成分であり、3は集電体であった。それ以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
実施例12
【0049】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分の全量を5kgに変更し、第2成分をLi1.4Al0.4Ti1.6(PO、及びAlPOに変更し、第1成分と第2成分の2種の成分の比を1:8:1に変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例1
【0050】
第1成分及び第2成分を含まない以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例2
【0051】
第1成分及び第2成分を含まず、正極活物質をNCM83に変更し、電池構造をNCM83||SiOC650にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例3
【0052】
第1成分及び第2成分を含まず、正極活物質をNCM83に変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をNCM83||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例4
【0053】
第1成分及び第2成分を含まず、正極活物質をLCOに変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をLCO||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例5
【0054】
第1成分及び第2成分を含まず、正極活物質をLFPに変更し、負極を黒鉛にし、電池構造をLFP||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例6
【0055】
第1成分及び第2成分を含まず、正極活物質をNCM83に変更し、負極を黒鉛にし、電池構造をNCM83||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例7
【0056】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgをAl 1kgに変更した以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例8
【0057】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgをZnO 1kgに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、電池構造をNCM83||SiOC650にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例9
【0058】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgをLi1.4Al0.4Ti1.6(PO 1kgに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をNCM83||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例10
【0059】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgをAlPO1kgに変更し、正極活物質をLCOに変更し、負極をSiOC450に変更し、電池構造をLCO||SiOC450にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例11
【0060】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgをLi0.5La0.5TiO1kgに変更し、第2成分を含まず、正極活物質をLFPに変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造をLFP||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
比較例12
【0061】
第1成分と第2成分とで構成される混合成分1kgをLiLaZr12 1kgに変更し、正極活物質をNCM83に変更し、負極を黒鉛に変更し、電池構造をNCM83||黒鉛にした以外、他のパラメータを実施例1と同様にした。上記のように製造されたリチウム電池について、注液、化成、容量グレーディングなどの工程をした後、電気化学テスト及び安全性テストをそれぞれ行った。製造されたリチウム電池の電気化学的特性の具体的なテスト結果を表1、安全性テスト結果を表2に示す。
表1には、実施例の電気化学的特性のデータが示されている。
【0062】
【表1】

表2には、実施例の安全性のデータが示されている。
【0063】
【表2】
【0064】
表1及び表2のデータから、正極に第1成分又は第1成分と第2成分との混合成分をブレンドすることにより、電池のレート特性、サイクル特性及び安全性を大幅に向上させることができる。実施例5と比較例11を比較すると、高効率CEIを構築することが、液体電池及び混合固液電池の電気的特性及び安全性を向上させる鍵となるため、正極に第1成分をブレンドすることは、リチウムイオン伝導度の高い固体電解質をブレンドするよりも、電池レート特性、サイクル特性及び安全性を向上させる効果がはるかに強いことが分かった。実施例1と実施例7との比較から分かるように、第1成分と第2成分とを同時にブレンドした混合成分は、第1成分と第2成分とが相乗的にCEIを向上させることができるので、第1成分のみをブレンドした場合よりも、電池のレート特性、サイクル特性、及び安全性をさらに向上させることができる。実施例1と実施例9、10との比較から分かるように、第1成分と第2成分には最適な粒子径が存在し、粒子径の最適化は電池のレート特性及びサイクル特性を向上させることができ、粒子径が小さすぎると、第1成分又は第1成分粒子と第2成分とで構成される混合成分粒子が凝集しやすく、粒子径が大きすぎると、第1成分又は第1成分と第2成分とで構成される混合成分粒子が活物質粒子表面と十分に接触できず、粒子径が小さすぎても大きすぎても、安定なCEIの構築に不利である。実施例1と比較例11、12との比較から分かるように、第1成分と第2成分の添加量には最適な比が存在し、添加量が低すぎると、電池のレート特性及び安全性を向上させることができず、添加量が高すぎると、第1成分又は第1成分と第2成分とで構成される混合成分が高すぎると粒子が蓄積してリチウムイオン伝導度の低い領域が形成されるため、より高いレート特性を発揮することができない。
【0065】
以上の実施形態は、本発明の原理を説明するために採用された例示的な実施形態にすぎないが、本発明はこれに限定されないことが理解されるべきである。当業者にとっては、本発明の精神及び本質から逸脱することなく、様々な変形及び改良を行うことができ、これらの変形及び改良は、本発明の保護範囲とみなされる。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】