(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】製造が簡単なステータライニングを有する偏心スクリューポンプ
(51)【国際特許分類】
F04C 2/107 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
F04C2/107
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532332
(86)(22)【出願日】2022-11-18
(85)【翻訳文提出日】2024-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2022082400
(87)【国際公開番号】W WO2023099240
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】202021106537.0
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(31)【優先権主張番号】102022115814.4
(32)【優先日】2022-06-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】514210038
【氏名又は名称】ネッチュ プンペン ウント システーメ ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】NETZSCH PUMPEN & SYSTEME GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100173794
【氏名又は名称】色部 暁義
(72)【発明者】
【氏名】ドミニク シンセダー
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ ヌーブル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ヴァイグル
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン フォイト
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン シューバール
(72)【発明者】
【氏名】トマス シュミット
【テーマコード(参考)】
3H041
【Fターム(参考)】
3H041AA04
3H041BB06
3H041CC03
3H041CC07
3H041CC13
3H041CC15
3H041DD01
3H041DD05
3H041DD09
3H041DD33
3H041DD36
(57)【要約】
コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータと、を備える偏心スクリューポンプであって、ロータは、ステータ内で搬送動作中に回転し、ステータはステータハウジング(5)を含む。ステータハウジング内に、スクリューフライトを描くステータライニングが存在する。ステータライニングはスリーブである。スリーブは、その外周で支持構造を介してステータハウジングにおいて支持される。支持構造は空洞を構成する。支持構造が与える支持効果がスリーブの局所的なニーズに適合されるように、支持構造のスリーブへの結合位置に応じて、支持構造が、形成され、また寸法決定されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備える偏心スクリューポンプ(1)であって、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)はステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニングは(20)スリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記支持構造が与える支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合されるように、前記支持構造の前記スリーブ(21)への結合位置に応じて、前記支持構造(23)が、形成され、また寸法決定されていることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、リーク流の方向に沿って前記支持構造(23)に増加する壁厚を設けることによって、支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合され、または追加的もしくは代替的に、周方向に沿って見てより厚い壁厚を設けることによって、支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合され、または追加的もしくは代替的に、前記支持構造(23)の局所的なバネ効果に影響を与える、前記支持構造(23)を構成する壁の傾斜度を設計手段として使用することによって、支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合され、または追加的もしくは代替的に、与えられる支持効果が局所条件に適合されるように、前記支持構造(23)の局所的な密度が変化される、ことを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項3】
好適には請求項1または2に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベヤスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は、(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記スリーブ(21)は薄壁であり、その壁厚は、前記ステータハウジング(5)の平均インナーラジウスの、好適には1/4以下、より好適には1/10以下、理想的には1/12以下であることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項4】
請求項1~3の何れか一項に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は(巨視的な)空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記スリーブ(21)は薄壁であり、前記スリーブ(21)の壁厚は、好適には最大+/-30%、より好適には最大+/-20%、理想的には最大+/-12.5%で、局所的に変化することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項5】
請求項1~4の何れか一項に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は(巨視的な)空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記支持構造(23)はキャリアセルからなり、前記キャリアセルの各々は、空洞(25)を画定し、または囲み、前記キャリアセルによって囲まれた前記空洞(25)は、好適には前記ステータハウジング(25)に向かって開き、このようなキャリアセルによって囲まれた前記空洞(25)のクリアな断面は、好適には径方向外側の方向に減少することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記キャリアセルは、ハニカムまたは他のパイプ部分を構成し、前記ハニカムまたは他のパイプ部分は、好適には弾性効果および/または減衰効果を有する壁構造を備え、また理想的には六角形のベース面を構成することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項7】
請求項5または6に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記キャリアセルの壁厚は、前記スリーブ(21)の平均壁厚に(完全に、または少なくとも+/-15%、より良好には少なくとも+/-7.5%で)対応することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記ステータハウジング(20)の内周面は多角形の断面を備え、前記多角形の断面は、前記ステータライニング(20)の包囲面の断面に対応することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項9】
請求項1~8の何れか一項に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、潤滑剤は、理想的にはスリーブ壁を通した拡散または加圧によって、通常は内側の潤滑剤ポケットの領域にまで、前記スリーブ(21)の外周面(22)から内周面(24)に供給されることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項10】
請求項1~9の何れか一項に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記スリーブ(21)は、前記ステータライニング(20)の他の部分に対して少なくとも局所的に、反対方向にポンプによって圧送された流体が多孔性の内壁領域を介して外部に浸透可能になることなく関連する箇所を通して前記スリーブ(21)の内面(24)にまで潤滑剤を圧送することができるように多孔性が増大した、スリーブ壁領域を備えることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項11】
好適には請求項1~10の何れか一項に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は(巨視的な)空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記支持構造(23)が温度を補償するように設計され、前記スリーブ(21)によって構成された前記スクリューフライトが、前記支持構造(23)が加熱された場合に、狭まらない、または僅かにのみ狭まることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)
【請求項12】
偏心スクリューポンプ(1)用のステータライニング(20)において、前記ステータライニング(20)は、請求項1~11の何れか一項に記載のステータライニングに関する1つまたは複数の特徴を有することを特徴とする、ステータライニング(20)。
【請求項13】
偏心スクリューポンプ(1)用のスクリューフライトを描くステータライニング(20)を製造する方法において、材料を付加的に、好適には内側から外側へ径方向に進んで、塗布することによって、スリーブ(21)を一次成形によって形成し、前記スリーブは前記スクリューフライトを構成し、前記スリーブの外周面(22)は、空洞(25)を構成するキャリアセルに、好適には一体に結合し、前記キャリアセルは、好適には同様に、材料を付加的に塗布することによって、一次成形によって形成することを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項13に記載のスクリューフライトを描くステータライニング(20)を製造する方法において、前記スリーブを、複数の、少なくとも2つの異なる材料から層状に印刷し、径方向の最内層には、好適には、鋼またはセラミックに対して、または他で使用されるロータ材料に対して、他で印刷に使用される材料と比較して低減された滑り摩擦係数を有する材料を使用することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載のスクリューフライトを描くステータライニング(20)を製造する方法において、前記キャリアセルの境界を定める壁のすべてを印刷するために、前記スリーブの印刷とは主にまたは実質的に異なる材料を使用することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1の上位概念に記載の特別に設計されたステータを備える偏心スクリューポンプと、偏心スクリューポンプの修理または近代化を目的として偏心スクリューポンプに取り付けられる対応するステータと、に関する。本発明はまた、請求項12の上位概念に記載の、偏心スクリューポンプ用のステータライニングと、請求項13の上位概念に記載の、偏心スクリューポンプ用のスクリューフライト(Schneckengang)を描く(abbildenden)ステータライニングを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏心スクリューポンプは、多岐にわたる用途を有する。
【0003】
偏心スクリューポンプは、制御が困難な粘稠度および/または固形分を有する高粘度の流体をポンプで圧送する必要がある場合に、特に好適に選択される手段である。このような理由から、偏心スクリューポンプを、まさに鉱物資源の開発にも使用することができる。
【0004】
偏心スクリューポンプは、この場合、研磨剤成分を含む流体をポンプで圧送するのに最適である。これは、偏心スクリューポンプのポンピング効果が、移動型の搬送チャンバの原理に基づくためである。この移動型の搬送チャンバは、中心のコンベヤスクリューと、ステータライニングによって構成されるダブルピッチのスクリューフライトと、の間に構成される。
【0005】
金属スクリューよりも柔らかい材料で作られたステータライニングが、時間が経つにつれて摩耗することは避けられない。
【0006】
ほとんどの場合、ステータライニングはこれまで、プラスチック、または一般的な用語を使用するとゴムなどの、加硫された材料で作られている。本明細書において「ゴム」と称される材料、またはゴム様の特性を有する材料は、シールが非常に良好であるという利点を有する。これは、スクリューのコンタクトゾーンが、接触したステータ材料を、ごく微視的よりは大きく、すなわちごくわずかに、連続的に変位させることができるためである。これは瞬間的な変位である。なぜなら、ステータ材料は(サイクル毎の必須な最小摩耗を除いて)、スクリューとの局所的な接触が再度終了するとすぐ、その元の形状に戻るためである。
【0007】
ステータライニングは、ステータライニングの中を走るスクリューの幾何学的形状に密に適合されている。すなわち、ステータライニングは、その中心に、多重巻きのスクリューフライトの非常に複雑な巻きの幾何学形状を有する。したがって、ステータライニングは、今日に至るまで、ほとんどの場合、スクリュー状の金型コアを用いて鋳造または射出成形されている。金型コアは、スクリューフライトの、後にスクリューを収容するクリアな(lichte)開口を保持する。射出成形または鋳造のプロセスが完了した後、鋳造/射出成形によって形成された未だ未焼結のステータライニングが、加硫される。より硬い材料が使用されるとすぐに、コピープロセスも、依然として使用される。
【0008】
今日に至るまで、この種の「コピー旋削(Kopierdrehen)」は、依然として、工業のシリーズ生産の枠組みにおける完全に自動化されたプロセスの特徴ではなく、洗練された「職人技」の特徴を有する。
【0009】
本明細書において「ゴム」と称されるより硬い材料は、全ての用途において、ポンプで圧送される流体に対して十分に耐性があるわけではない。また、加硫工程が必須であるために、製造に多大な労力を必要とする。
【0010】
そのため、生産を更に著しく合理化できるようにするために、良好に機能するステータライニングを構築する必要性が高まっている。このステータライニングは、ゴム状材料の使用に依存せず、ゴム弾性挙動を示さず著しくより硬い、または著しく弾性が低い代替材料からも作ることができる。このようなより硬い、または弾性が低い材料製のステータに、ポンプによって圧送するよう作用する移動型の搬送チャンバへの匹敵するシールを持たせるためには、ステータライニングの形状に高い精度が保証されなければならない。また、スクリューフライトは、その幾何学的に最適な形状に、可及的に近づけて設計されなければならない。スクリューが瞬間的にゴム状のステータ材料を、やや多くまたはやや少なく「変位(verdrangt)」させることによって必要に応じて容易に補償される寛大な公差は、不可能なのである。
【0011】
この理由から、今日既知の手段で、代替材料からステータライニングを製造する際の製造の労力は、時間のかかるコピープロセスを少なくとも排除できるという事実に照らしても、依然としてかなり高い。なぜなら、スクリューフライトは、機械加工、研削、および/または浸食によって、または最初に複雑な射出成形用の型を製造することによって、極めて正確に製造されねばならないためである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の課題は、より簡単に製造できるステータライニングであって、より硬いステータ材料が使用されて効率も向上されたステータライニングを備える、偏心スクリューポンプを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1主請求項は、この課題の解決策を提供する。
【0014】
解決策は、コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータと、を備える偏心スクリューポンプである。ロータは、ステータ内で搬送動作中に回転する。この場合、ステータは、単一部品または複数部品製のステータハウジングを含む。ステータハウジング内に、スクリューフライトを描くステータライニングが存在する。スクリューフライト内で、ロータは、回転して、ポンプによって圧送するように作用する。ステータハウジングは、分割することができる。したがって、任意選択で、関連するステータライニング部分と共に、搬送方向に直列に接続された複数のステータハウジング部分から、偏心スクリューポンプを構成することもできる。これは、一般に、以下に述べることに当てはまる。
【0015】
ステータライニングの、中心の、または必須のコンポーネントは、中実材料製の、すなわち連続する、したがってシール効果のあるスリーブ壁を備える、スリーブである。このスリーブは、その外周で支持構造を介してステータハウジングにおいて支持される。支持構造は、巨視的な空洞を構成し、通常少なくとも実質的に、ステータライニングの残りの部分を構成する。
【0016】
本発明によれば、提案される解決策は、支持構造が与える支持効果がスリーブの局所的なニーズに適合されるように、支持構造のスリーブへの結合位置に応じて、支持構造が形成され、また寸法決定されていることを特徴とする。
【0017】
ここで重要なことは、スリーブは、通常は始端フランジと終端フランジを除いて、非常に「薄壁(dunnwandig)」なことである。そのため、スリーブは、スクリューの接触部がその内面に沿って「噛み合い(kammend)」、または「搾る(quetschend)」ことで周期的に作用する局所的な圧力のもとで、可逆的かつ弾性的に一定量だけたわみ、それによって必要とされるシール圧力がかかる。
【0018】
ここで、本発明によれば、最適化された支持構造が働くことになる。支持構造が与える支持効果がスリーブの局所的なニーズに適合されるように、支持構造のスリーブへの結合位置に応じて、支持構造が形成されている。
【0019】
とりわけ、以下の設計手段を使用して、本発明による効果を達成することができる。
【0020】
場所によって変化する壁厚を、使用することができる。
【0021】
そのため、例えば、増加する厚さを、すなわち、支持構造の壁厚または支持力を、搬送方向に、すなわち、通常はスリーブによって構成されたスクリューフライトが周りに巻き付く直線の中心長手方向軸線の方向に与えることができる。これは、スクリューポンプの出口で発生する高い圧負荷を考慮したものである。
【0022】
追加的または代替的に、周方向に沿って見て、より厚い壁厚を設けることができる。例えば、支持によってブリッジされるべき、スリーブとステータハウジングとの間の局所的な径方向の間隔がより大きく、その間隔を超えて支持を提供しなければならない場合である。
【0023】
追加的または代替的に、支持構造の局所的なバネ効果に影響を与える、支持構造を構成する壁の傾斜度を、設計手段として使用することができる。ここで意味するのは、スリーブによって構成されたスクリューフライトが周りに巻き付くステータ中心線から、直角に外向きに突出するラジアルに対する、壁の傾斜姿勢である。このように傾斜する壁は、スリーブによって壁に加えられて、壁に曲げ応力も発生させる圧縮応力に対して、実質的に圧縮のみが負荷される壁よりも、「より柔らかく(weicher)」またはより曲がりやすく(nachgiebiger)動作する。
【0024】
代替的または同時に、与えられる支持効果が局所条件に適合されるように、支持構造の局所的な密度を変化させることができる。例えば、後により詳説される、支持構造のセル状またはハニカム状の構成のオプションを利用して、セル密度またはハニカム密度を局所的に変えることが考えられる。これは、例えば、このタイプのセルに囲まれ、通常は自由なままである自由空間をも、特に負荷がかかるセルでは、更により小さなセルに分割し、このより小さなセルが、その(より大きな)セルに内接することによって実行することができる。
【0025】
対応して設計された支持構造によって、通常、360度の全周に、またはほぼ全周にわたって、支持が実行される。これは、支持構造が円周方向に中断してはならない、という意味ではない。
【0026】
したがって、本発明によれば、設計上で二次的または三次的な関連性しかない支持構造が提供されるだけでなく、この支持構造は何かしらの設計がされており、スクリューフライトを構成するスリーブを、とりあえずは所定の位置に保持する。そのため、スリーブの内面上の走行面に、ゴム弾性材料による被覆を依然として備えることが必要となる場合がある。
【0027】
この設計によって、ステータライニングを製造する材料の量が少なくても済む。
【0028】
さらに、部分的に、加硫材料という意味でゴム弾性を示さない他の材料を使用するのは非常に簡単であり、合理的な労力で初めて製造可能であるため、その使用が初めて実際に意味を持つ。この主な理由は、支持壁の、またそれによって部分的または完全に区切られた空洞の、ジオメトリ、サイズ、および間隔を介して、支持効果を非常にセンシティブに制御できるという事実である。それが薄壁に構成され、必要に応じて支持される場合、したがってかなり堅い、または弾性の低いプラスチック材料製のスリーブ、または金属スリーブにさえ、動作上必要な弾性を与えることができる。この場合、後者は、通常、非常に薄壁であり、また有利にも、ポンプで圧送される最大の固体粒子の、最大で4倍または3倍に相当する壁厚しか持たない。絶対値では、金属スリーブの壁厚は、0.3mm~2.0mm、更に良好とするには0.4mm~0.7mmが好適な選択手法である。このような金属スリーブの外周に、(通常はフィリグリー形状の)金属製の支持構造を、理想的には3D印刷によって、形成することができる。または同様に、プラスチック製の支持構造を、金属スリーブに形成することもできる。
【0029】
支持構造が構成する空洞は、巨視的であり、多孔質材料の最小限の空洞、またはそれ以外の固体材料内に時折形成されるキャビティであるだけではない。空洞は、多かれ少なかれ大きな微視的な表面粗さを除けば、幾何学的に完全に画定された形状を有することが好適であり、全体として、通常、非ランダムなパターンを構成する。任意選択で、空洞は、減衰に使用される材料などの別の材料で、完全に、または部分的に充填することができる。
【0030】
本発明の好適な設計の可能性
独立した主な請求項としてだけでなく、すでに確立された請求項の更なる展開としても、スリーブが薄壁であることが、特に有利である。この場合、スリーブの壁厚は、ステータハウジングの平均インナーラジウス(mittleren Innenradius)の、好適には1/6以下、より好適には1/10以下、理想的には1/12以下である。このような薄いスリーブは、支持なくしては、ロータのスクリューに十分に大きな抵抗を提供せず、ほぼ可撓性のホースのように挙動する。ターゲットを絞って支持することによって、このようなスリーブに所望の柔軟性のある挙動を与えることができる。これは、スリーブが、スクリュースピンドルポンプのステータライニングとして使用するには剛性が高すぎる材料自体で作られている場合に、魅力的である。
【0031】
スリーブの壁厚が実質的に一定であることが、特に有利である。
【0032】
他の場合において、別の方法で進めることが有利な場合がある。このために、独立した保護が請求される。しかしながら、すでに確立された請求項を更に発展させた保護も請求され、この場合でも、スリーブは薄壁である。そうでありながらも、スリーブの壁厚は、好適には最大+/-30%、より好適には最大+/-20%、理想的には最大+/-12.5%で、局所的に変化する。このような設計は、吸い込み側から反対のスクリューフライトの端部など、より高い圧力がかかる領域において、実際にスリーブと噛み合っているスクリューの領域のシールの向上に寄与するために、有用である。
【0033】
いくつかの用途の場合、支持構造をキャリアセルから製造することが特に有利である。キャリアセルの各々は、空洞を画定する、または空洞を囲む。そのようなキャリアセルによって囲まれた空洞のクリアな断面は、好適には、径方向外側の方向に減少する。これによって、スリーブに特殊な弾性の支持を与えることができる。これは、キャリアセルに制振材が充填されており、その制振材が、径方向外側に開いたキャリアセルにおいてこのようにして特に良好に保持される場合に、この場合のみというわけではないが、特に適用される。
【0034】
好適には六角形のベース面を有するハニカムを構成するキャリアセルを用いて支持構造を実現することが、特に有利であることが証明されている。ハニカムを構成するこのようなキャリアセルは、ハニカムがエンドレスでシームレスに互いに噛み合うパターンを構成するために、特に均一な支持を達成する。加えて、ハニカムには、必要に応じて圧力のみを吸収可能なだけでないという利点もある。その代わりに、ハニカムは、スリーブを拡張させる傾向のある長手方向および周方向の引張力に対しても支持効果を発揮できる。シームレスなハニカムネットワークは、ベルトまたは柔軟なベルトのように挙動する。
【0035】
好適には、キャリアセルの壁厚は、スリーブの平均壁厚に(完全に、または少なくとも+/-15%、より良好には少なくとも+/-7.5%で)対応する。このようにして、有害物質の蓄積が回避される。避けられない動作中の加熱の影響下でも、ステータライニングは、均一に膨張できる。局部的な張力、または熱によるスクリューに対する過度の予圧によって引き起こされる可能性のある過負荷さえも、回避される。
【0036】
場合によっては、キャリアセルの壁厚は、径方向外側の方向に増加することが、特に有利である。このようにして、スリーブの局所的な外面とステータハウジングとの間の比較的大きな間隔を埋める必要がある場合に、特に高い耐座屈性を確保することができる。
【0037】
キャリアセルの壁厚が、搬送方向の方向に増加すると、特に有利であることが証明されている。なぜなら、吸い込み側から反対のステータ端部の領域においては、ポンピング効果に起因して圧力が大幅に増加するためである。特に径方向にスリーブをより強力に支持することが、このより負荷の高い領域においても、スリーブと、それに沿って局所的に噛み合うスクリューとの間に、必要な予張力を維持することに寄与する。
【0038】
場合によっては、キャリアセルの壁が、断面において、内側から外側に走る部分的に、または全体でカーブする中心線を有することが特に有利である。このようなカーブする壁は、径方向に、または内側から外側に、この方向で直線の壁よりも、強いバネ効果または柔軟性を示す。局所的に必要なバネ効果を構造の側から調整するために、目的を定めてこれを使用することができる。
【0039】
代替的に、キャリアセルの壁が、断面において、内側から外側に走る中心線を備え、この中心線が直線であり、かつスリーブの局所接線と角度をなすことが有用であることが証明されている。このようにしても、個々のキャリアセルに、径方向に、または内側から外側に、より強いバネ効果を与えることができる。局所的に必要なバネ効果を構造の側から調整するために、これも使用することができる。
【0040】
特に有利には、少なくともスリーブは、好適にはスリーブおよび支持構造は、非加硫材料からなる。これは、理想的には、付加的製造を用いて加工できるプラスチック、理想的にはポリアミドPAである。代替的に、場合によっては、付加的製造を用いて加工できる金属材料を考慮することもできる。
【0041】
摩耗の抑制および/または潤滑の観点から、場合によっては軸受青銅などの軸受金属の粒子も含む例えば金属粒子、またはセラミック粒子などの固体粒子を充填したプラスチックを使用することも、用途によっては魅力的な場合がある。代替的に、MOS2粒子などの固体潤滑剤の粒子を充填したプラスチックも、魅力的であり得る。
【0042】
任意選択で、スリーブは、好適には径方向に見て、複数の異なる材料層で構成されている。そのため、例えば、スリーブの内面の最外層は、摩耗保護層とすることができて、その後に内側に向かって、例えば接着促進層が続くことができる。
【0043】
ステータライニングの内周面が、ステータライニングの包囲面の断面に対応する多角形の断面を有する場合、ステータパイプ内でステータライニングを、ねじれを防止するように固定することが、特に簡単で確実である。代替的に、ステータを隣接する部分にネジ止めすることも考慮可能である。
【0044】
特に有利には、潤滑剤は、理想的にはスリーブ壁を通した拡散または加圧によって、スリーブの外周面から内周面に供給される。これは、特に、3D印刷を使用して製造されたプラスチックからなるスリーブに当てはまる。特に3D印刷または付加的製造を使用すると、スリーブの局所的な気孔率を非常にセンシティブに制御することができる。スリーブ壁において潤滑されるべき点または領域に、細孔を設けることが可能である。この細孔は、ポンプによって圧送されるべき流体が細孔を通して内側から外側に大量に放出されることなく、潤滑剤が細孔を通って外側から内側に押し出されるような寸法になっている。後者は、細孔サイズに、および/または潤滑剤が外部からスリーブに導入される逆圧力に起因すると考えられる。
【0045】
特に好適な実施形態は、スリーブと、好適にはスリーブの外周面に取り付けられたセンサと、を備える。センサは、好適には、スリーブの局所的な輪郭精度、変形、および/または温度を監視する。通常、複数のこのようなセンサが、異なる、互いに間隔をあけた位置に設けられている。
【0046】
独立した主な請求項としてだけでなく、すでに確立された請求項の更なる展開としても、支持構造が温度を補償するように設計され、スリーブによって構成されたスクリューフライトが、支持構造が加熱された場合に、狭まらない、または僅かにのみ狭まることが、特に有利である。これは、支持構造が、ステータパイプ内で支持されているにもかかわらず、スリーブの温度上昇によって引き起こされる径方向外側の方向へのスリーブの膨張を、妨げない、または著しく妨げないように設計されていることを意味する。したがって、スリーブは、膨張の制限を受けず、加熱されるとそのクリアな内径が増加することが知られているパイプと、同じように、または実質的に同じように挙動できる。
【0047】
偏心スクリューポンプ用のスクリューフライトを描くステータライニング20を製造する、特許請求の範囲に記載された方法についても、独立した保護が請求される。これは、以下を特徴とする。すなわち、材料を付加的に、好適には内側から外側へ径方向に進んで、塗布することによって、スリーブを一次成形によって形成する。スリーブは、スクリューフライトを描く。スリーブの外周面は、空洞を構成するキャリアセルに、好適には一体に結合する、または一体的に印刷されて結合する。キャリアセルは、好適には同様に、材料を付加的に塗布することによって、一次成形によって形成する。
【0048】
代替的に、スリーブは、一次成形および/または形成によって従来の非印刷方式で製造される。本発明の範囲で記載したように、この場合任意に設計できる前述のキャリアセルが、その上に印刷される。
【0049】
スリーブは、複数の異なる材料から層状に印刷することができる。径方向の最内層には、好適には、鋼に対して、他で印刷に使用される材料と比較して低減された滑り摩擦係数を有する材料を使用する。
【0050】
任意選択で、キャリアセルの境界を定める壁のすべてのために、スリーブの印刷とは主にまたは実質的に異なる材料を使用することも可能である。
【0051】
更なる設計の可能性、動作モード、および利点は、図面に基づく実施形態の以下の説明から明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】偏心スクリューポンプの概要を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態のステータライニングの斜視図である。
【
図3】スクリューフライトが周りに巻き付く中心長手方向軸線に垂直な平面での、
図2によるステータライニングを通る断面図である。実際には、スリーブ21内を見ると、その平坦な内周面に支持構造23が認められないことに留意されたい。この場合、
図3では、単により明確にするために、スリーブが透明であるかのように描いた。
【
図4】
図2によるステータライニングを通る中心長手方向断面図である。
【
図5】第2実施形態による更なるステータライニングの断面図である。
【
図6】支持構造の傾斜壁が、支持構造の支持特性をより柔らかくさせる理由を説明するための、ステータライニングの断面図である。
【
図7】支持構造を構成するハニカムの壁厚が、吸い込み側から圧力側に向かって増加する、更なる実施形態の図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
概要
図1は、本発明の基礎をなす偏心スクリューポンプ1を全体的に示す。
【0054】
このような偏心スクリューポンプ1の主な構成要素は、吸引ハウジング11と、それと流体連通するポンプ部分12と、である。
【0055】
吸引ハウジング11には、搬送される媒体用の入口13が形成されている。
【0056】
搬送された媒体は、ポンプ部分12の端部に配置された出口14を介して排出される。
【0057】
好適には、たとえそれが特許権の観点から必須でないとしても、ブロック構造が選択される。次いで、ポンプモータ15は、吸引ハウジング11にフランジで取り付けられる。ポンプモータ15は、通常、カルダニックパワートレイン16を介して、以下でより詳細に説明されるロータを駆動する。
【0058】
ポンプ部分は、その内部に回転するロータを有するステータ3によって構成される。
【0059】
偏心スクリュー2は、ロータを構成する。偏心スクリュー2は、丸ねじ(Rundgewindeschraube)として分類することができる。通常のねじと比較して、偏心スクリューは、より大きいピッチ、より大きいねじ山深さ、およびより小さいコア直径を有する。ステータ3は、ステータライニング20と、ステータライニングをその内部に受容するステータパイプ5と、からなる。ステータライニングは、ロータを補完するように形成されている。ステータライニングは、「スクリューフライト(Schneckengang)」を構成する。スクリューフライトには、2倍のピッチ長と、追加のねじ山とが装備されている。この配置によって、静止するステータ3と、その中で偏心効果を有して回転し、そのプロファイリングに起因してスクリューとも称されるロータ2との間に、一連の搬送チャンバ17が形成される。搬送チャンバ17は、連続的に、そして形状を変えることなく、吸引ハウジング11にトランペット18によって構成されたその入口側から、その出口側、すなわち出口14まで、移動する。これによって、搬送チャンバ17内に存在する媒体が、加圧されて搬送される。
【0060】
ロータの回転数を介して、出口側の方向への搬送チャンバ17の移動速度を、ひいては理論的なポンプの搬送量を制御することができる。
【0061】
ステータの巻きの数に加えて、ロータとステータとの間の接触線のタイトネス(Dichtheit)は、ポンプの吸引能力および達成可能な搬送圧力に影響を及ぼす。
【0062】
本発明による構造
図2は、第1実施形態によるステータライニング20の全体を、側面から見た斜視図を示す。より良好に理解するために、
図2を
図3と並べて見ることを推奨する。後者は、
図2に示されるステータライニングを通る垂直な断面を示す。
【0063】
ステータライニング20の中心部を構成するスリーブ21は、
図3で良好に認識できる。スリーブ21は、その内面24にスクリューフライトを表すような形状になっている。スクリューフライトは、本質的に、このスクリューフライト24内で回転して偏心スクリューポンプの典型的なポンピング効果を生成する(ここでは図示されない)スクリュー2に適合されている。
図1および関連する説明も参照されたい。
【0064】
図2で良好に理解できるように、スリーブ21の外周面22のトポグラフィーから、スリーブ21がその内部に備える螺旋形状の経路を認識できる。
【0065】
また、
図2と
図3との比較から良好に認識できるように、巨視的な空洞25を構成する支持構造23は、スリーブ21の外周に隣接し、通常は一体に接続される。この場合、支持構造は、リングまたはパイプ部分26によって構成される。特に有利には、各リングまたはパイプ部分は、スリーブによって構成されたスクリューフライトが巻き付く中心長手方向軸線に沿う第1壁部分およびそれに直交する第2壁部分を備えるだけでなく、各リングまたはパイプ部分が、前述の中心長手方向軸線に対して斜めに走る、単に些細ではない、更なる壁部分をも備える。
【0066】
特に有利には、この場合、この実施形態で使用されるパイプ部分は、六角形のハニカムの形状である。これらは、それぞれ、直に隣接するものと、接続されている、または壁を共有する。ここで好適には、これらのハニカム状のリング26のそれぞれは、径方向外側の方向の全長で六角形の断面を装備し、すでに簡単に述べたように、その中心に巨視的な空洞25を囲む。これらのハニカム状のリングのそれぞれは、
図3に示すように、その径方向外側の開いた側が、ステータパイプの内面に当接する。
【0067】
ここに示される実施形態では、各空洞25は、それぞれ、それを区切るリングまたはパイプ部分によって、隣接する空洞から完全に分離されている。
【0068】
これに基づいて、ハニカム状のリング26のそれぞれが、それぞれ支柱のように機能し、それによって支持構造23を構成していることが容易に理解できる。
【0069】
好適には、ハニカム状の各リング26の、支持力、またはバネ効果は、その壁の厚さを対応して決定することによって非常に正確に調整できることは、容易に明らかである。壁厚が厚くなるほど、支持効果も高まる。この場合、支持構造によって囲まれる空洞の体積は、小さくなる。これらすべてにおいて、支持構造23、またはそのハニカム状のリング、またはその空洞25は、数学的に記述可能である、したがって定義された形状を有することが興味深い。このようにして、支持効果を非常に適切に計算できるだけでなく、ステータライニング20を、例えば3D印刷によって付加的(additiv)に製造することもできる。
【0070】
支持構造23がスリーブ21をどれだけ集中的に支持するかは、当然、個々の場合に依存する。そのための指標が、耐荷重値TWである。耐荷重値TWは、ステータライニングの外周を囲む仮想の外側面がステータハウジングにおいて支持されるパーセンテージを示す。有用な耐荷重値TWは、20%~80%、更に良好には30%~75%である。
【0071】
見ての通り、スリーブの壁厚、または平均壁厚W1、W2、Wnは僅かである。この実施形態では、薄壁のスリーブ21の壁厚は、ステータハウジングのクリアな開口を描く半径の10分の1未満に制限されている。
【0072】
多くの場合、
図3にも示されるように、スリーブ21の壁厚は、一定である、または実質的に一定である。他の場合において、スリーブの壁厚を局所的に変化させることが有用である。ほとんどの場合、平均値のプラスマイナス30%の最大変動を超えるべきではない。
【0073】
見ての通り、要素の壁厚は、スリーブ21の壁厚に(完全にまたは実質的に)対応する支持構造23を、例えばハニカム状のリング26を構成できる。ここで、該当する要素を特に座屈に対して耐性にするために、リングまたはパイプ部分26の、またはそれらの代わりに支持構造23を構成する他の要素の壁厚を径方向外側の方向に増加させることが、特に興味深い場合がある。なぜならば、該当する要素に作用する曲げモーメントが、内側から外側に向かって径方向に自然に増加するためである。
【0074】
また、
図3に基づいて良好に認識できるように、ステータハウジング5は、多角形、理想的には八角形であるクリアな断面を内側に備える。つまり、すなわち周方向に走るステータハウジング5の内面は、互いに角度を付けて配置された多数の平坦な表面ストリップ27によって構成される。このようにして、支持構造23を構成する要素を、ステータハウジング5の内面において効果的に支持することができる。そのため、ステータライニング20は、動作中に全く回転せず、常に静止したままとなる。
【0075】
図5は、本発明によるステータライニング20の別の実施形態を示す。
【0076】
ここでもまた、ステータライニング20は、中実材料製のスリーブ21を含む。スリーブ21は、ポンプによって圧送される流体をスクリューの近傍で気密に保持する。このスリーブも、その外周で支持構造23を介して支持される。支持構造23は、巨視的な空洞25を構成し、それ自体がステータハウジング5において支持される。
【0077】
ここでは、支持構造23は、好適には、周方向に閉鎖されたキャリアセルから構成される。ここでも、空洞25は、それぞれ、ステータハウジングに向かって開いている。
図5に基づいて良好に認識できるように、このようなキャリアセルによって囲まれた空洞25のクリアな断面は、径方向外側の方向に減少する。したがって、断面は、少なくとも1つの切断面においてアンダーカットを構成するが、通常はさらに、径方向外側の方向で全周にアンダーカットを構成する。
【0078】
図6は、支持構造23の局所的なバネ効果に影響を与える、支持構造23を構成する壁の傾斜度を、設計手段として使用する例を示す。ここで、(すでに力の分解を受けている)矢印Pで表される径方向外向きの内圧成分と比較して、ここで見られるパイプ部分26の壁部分は、角度アルファ(alpha)だけ傾斜している。したがって、この壁部分は、圧縮力による負荷を受けるだけでなく、曲げモーメントも受ける。径方向の内圧成分がより大きく、角度アルファがより大きいほど、それによって生じる曲げモーメントが、壁を時計回り(図示の断面図の上側)または反時計回り(図示の断面図の下側)に回転させる傾向が強くなる。このような回転によって、壁部分は、たわむ傾向にあり、したがってより柔らかく、曲がりやすく動作する。つまり、角度アルファが大きいほど、柔軟性がより大きくなる。
【0079】
一般的事項
これまでの請求項から独立して、しかしながら、またそれらと組み合わせて、および/または本明細書の他の特徴と組み合わせて、コンベヤスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータと、を備える偏心スクリューポンプについても保護が請求される。この場合、ロータは、ステータ内で搬送動作中に回転する。ステータは、(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング5を含む。ステータハウジング内に、スクリューフライトを描くステータライニング20が存在する。ステータライニングは、中実材料製のスリーブである。これは、その外周で巨視的な空洞を構成する支持構造を介してステータハウジングにおいて支持される。
【0080】
これまでの請求項から独立して、しかしながら、またそれらと組み合わせて、および/または本明細書の他の特徴と組み合わせて、コンベヤスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータと、を備える偏心スクリューポンプについても保護が請求される。この場合、ロータは、ステータ内で搬送動作中に回転する。ステータは、(単一部品または複数部品製の)ステータハウジングを含む。ステータハウジング内に、スクリューフライトを描くステータライニングが存在する。ステータライニングは、中実材料製のスリーブである。これは、その外周で、(実質的にまたは完全に)、その始端フランジおよび終端フランジのみを介してステータハウジングにおいて支持される(または、完全に自立しているため、ステータハウジングがない)。
【0081】
ごく一般的に、好適に使用されるプラスチック材料は、ABS、PE、またはHDPE、PVC、ナイロン、およびポリエステル、ならびにPPおよびPETまたはPTFEでもあることにも、留意されたい。
【0082】
非常に魅力的なオプションは、統合された冷却チャネルまたは加熱チャネルを有するステータライニングを設けることである。これによっては、動作中に発生する摩擦熱を非常に効果的に放散できるだけではない。むしろ、任意選択で、温度制御下で輪郭を調整しつつ制御することも可能である。したがって、スクリューとスリーブとの間の予圧に全体的または局所的に影響を与えるために、目標を絞って加熱または冷却を実行できる。
【0083】
本発明は、さらに、ここで問題としているような偏心スクリューポンプのステータを製造する方法に関する。
【0084】
偏心スクリューポンプ1用の、ステータライニングの性質について請求項1から11が開示する1つまたは複数の特徴を好適には備える、スクリューフライトを描くステータライニング20を製造する方法についても、保護が請求される。これは、以下を特徴とする。すなわち、材料を付加的に(好適には内側から外側へ径方向に進んで)塗布することによって、スリーブ21を一次成形によって形成する。スリーブ21は、スクリューフライトを描く。スリーブ21の外周面22は、空洞25を構成するキャリアセルに結合する。キャリアセルは、好適には、同様に材料を付加的に塗布することによって、一次成形によって形成する。
【0085】
さらに、そのようなステータライニングを有する偏心スクリューポンプを製造する方法についても、保護が請求される。
【0086】
さらに、スリーブ21の壁厚が実質的に一定であることは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0087】
さらに、スリーブ21の外周面22のトポグラフィーが、その内部で螺旋形状の経路を示すことは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0088】
さらに、キャリアセルの壁厚が搬送方向の方向に増加することは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0089】
さらに、キャリアセルの壁が、断面において、内側から外側に走る中心線を備え、それがカーブしていることは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0090】
さらに、キャリアセルの壁が、断面において、内側から外側に走る中心線を備え、この中心線が、直線であり、かつスリーブ21の局所接線と角度をなすことは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0091】
さらに、少なくともスリーブ21が、好適にはスリーブ21および支持構造23が、非加硫材料からなること、好適には付加的製造を用いて加工できるプラスチック、理想的にはポリアミドPA、または代替的に付加的製造を用いて加工できる金属材料からなることは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0092】
スリーブ21が、好適には、金属が、セラミックが、またはMOS2が充填されたプラスチックからなることは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0093】
スリーブ21が、好適には径方向に見て、複数の異なる材料層で構成されていることは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0094】
ステータライニング20が、その支持構造23の径方向外側の端部と共に、多角形、好適には八角形の断面を有する仮想の包囲面を画定することは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【0095】
スリーブ21が、好適には、輪郭を導くことを監視するために、および/または温度を監視するために、その外周面22に取り付けられたセンサを好適には備えることは、上述の、および/または請求される複数の偏心スクリューポンプの1つにとって有利である。
【符号の説明】
【0096】
1 偏心スクリューポンプ
2 偏心スクリュー、または略してスクリュー
3 ステータ
4 なし
5 ステータパイプまたはステータハウジング
6から10 なし
11 吸引ハウジング
12 ポンプ部分
13 入口
14 出口
15 ポンプモータ
16 パワートレイン
17 搬送チャンバ
18 トランペット
19 なし
20 ステータライニング
21 スリーブ
22 スリーブの外周面(ここでは螺旋形状の経路を有する)
23 支持構造
24 スリーブの内面
25 空洞
26 通常はハニカム状のリング、そうでなければリングまたはパイプ部分
27 ステータハウジングの内部の平坦な表面ストリップ
L 中心長手方向軸線
TW 耐荷重値
W1、W2、Wn
【手続補正書】
【提出日】2024-07-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備える偏心スクリューポンプ(1)であって、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)はステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニングは(20)スリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記支持構造が与える支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合されるように、前記支持構造の前記スリーブ(21)への結合位置に応じて、前記支持構造(23)が、形成され、また寸法決定されていることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項2】
請求項1に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、リーク流の方向に沿って前記支持構造(23)に増加する壁厚を設けることによって、支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合され、または追加的もしくは代替的に、周方向に沿って見てより厚い壁厚を設けることによって、支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合され、または追加的もしくは代替的に、前記支持構造(23)の局所的なバネ効果に影響を与える、前記支持構造(23)を構成する壁の傾斜度を設計手段として使用することによって、支持効果が前記スリーブ(21)の局所的なニーズに適合され、または追加的もしくは代替的に、与えられる支持効果が局所条件に適合されるように、前記支持構造(23)の局所的な密度が変化される、ことを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項3】
好適には請求項1または2に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベヤスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は、(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記スリーブ(21)は薄壁であり、その壁厚は、前記ステータハウジング(5)の平均インナーラジウスの、好適には1/4以下、より好適には1/10以下、理想的には1/12以下であることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項4】
請求項1
または2に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は(巨視的な)空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記スリーブ(21)は薄壁であり、前記スリーブ(21)の壁厚は、好適には最大+/-30%、より好適には最大+/-20%、理想的には最大+/-12.5%で、局所的に変化することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項5】
請求項1
または2に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は(巨視的な)空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記支持構造(23)はキャリアセルからなり、前記キャリアセルの各々は、空洞(25)を画定し、または囲み、前記キャリアセルによって囲まれた前記空洞(25)は、好適には前記ステータハウジング(25)に向かって開き、このようなキャリアセルによって囲まれた前記空洞(25)のクリアな断面は、好適には径方向外側の方向に減少することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項6】
請求項5に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記キャリアセルは、ハニカムまたは他のパイプ部分を構成し、前記ハニカムまたは他のパイプ部分は、好適には弾性効果および/または減衰効果を有する壁構造を備え、また理想的には六角形のベース面を構成することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項7】
請求項
5に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記キャリアセルの壁厚は、前記スリーブ(21)の平均壁厚に(完全に、または少なくとも+/-15%、より良好には少なくとも+/-7.5%で)対応することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項8】
請求項7に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記ステータハウジング(20)の内周面は多角形の断面を備え、前記多角形の断面は、前記ステータライニング(20)の包囲面の断面に対応することを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項9】
請求項1
または2に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、潤滑剤は、理想的にはスリーブ壁を通した拡散または加圧によって、通常は内側の潤滑剤ポケットの領域にまで、前記スリーブ(21)の外周面(22)から内周面(24)に供給されることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項10】
請求項1
または2に記載の偏心スクリューポンプ(1)において、前記スリーブ(21)は、前記ステータライニング(20)の他の部分に対して少なくとも局所的に、反対方向にポンプによって圧送された流体が多孔性の内壁領域を介して外部に浸透可能になることなく関連する箇所を通して前記スリーブ(21)の内面(24)にまで潤滑剤を圧送することができるように多孔性が増大した、スリーブ壁領域を備えることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)。
【請求項11】
好適には請求項1
または2に記載の偏心スクリューポンプ(1)であって、コンベアスクリューを構成するロータと、スクリューフライトを構成するステータ(3)と、を備え、前記ロータは、前記ステータ内で搬送動作中に回転し、前記ステータ(3)は(単一部品または複数部品製の)ステータハウジング(5)を含み、前記ステータハウジング内に、前記スクリューフライトを描くステータライニング(20)が存在し、前記ステータライニング(20)は中実材料製のスリーブ(21)であり、前記スリーブは、その外周で支持構造(23)を介して前記ステータハウジング(5)において支持され、前記支持構造は(巨視的な)空洞(25)を構成する偏心スクリューポンプ(1)において、前記支持構造(23)が温度を補償するように設計され、前記スリーブ(21)によって構成された前記スクリューフライトが、前記支持構造(23)が加熱された場合に、狭まらない、または僅かにのみ狭まることを特徴とする、偏心スクリューポンプ(1)
【請求項12】
偏心スクリューポンプ(1)用のステータライニング(20)において、前記ステータライニング(20)は、請求項1
または2に記載のステータライニングに関する1つまたは複数の特徴を有することを特徴とする、ステータライニング(20)。
【請求項13】
偏心スクリューポンプ(1)用のスクリューフライトを描くステータライニング(20)を製造する方法において、材料を付加的に、好適には内側から外側へ径方向に進んで、塗布することによって、スリーブ(21)を一次成形によって形成し、前記スリーブは前記スクリューフライトを構成し、前記スリーブの外周面(22)は、空洞(25)を構成するキャリアセルに、好適には一体に結合し、前記キャリアセルは、好適には同様に、材料を付加的に塗布することによって、一次成形によって形成することを特徴とする、方法。
【請求項14】
請求項13に記載のスクリューフライトを描くステータライニング(20)を製造する方法において、前記スリーブを、複数の、少なくとも2つの異なる材料から層状に印刷し、径方向の最内層には、好適には、鋼またはセラミックに対して、または他で使用されるロータ材料に対して、他で印刷に使用される材料と比較して低減された滑り摩擦係数を有する材料を使用することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項13または14に記載のスクリューフライトを描くステータライニング(20)を製造する方法において、前記キャリアセルの境界を定める壁のすべてを印刷するために、前記スリーブの印刷とは主にまたは実質的に異なる材料を使用することを特徴とする、方法。
【国際調査報告】