IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフトの特許一覧

特表2024-542672ポリウレタン製品から原料を回収する方法
<>
  • 特表-ポリウレタン製品から原料を回収する方法 図1
  • 特表-ポリウレタン製品から原料を回収する方法 図2
  • 特表-ポリウレタン製品から原料を回収する方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ポリウレタン製品から原料を回収する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/24 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
C08J11/24 ZAB
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532349
(86)(22)【出願日】2022-11-28
(85)【翻訳文提出日】2024-05-29
(86)【国際出願番号】 EP2022083538
(87)【国際公開番号】W WO2023099420
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211420.1
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515266223
【氏名又は名称】コベストロ、ドイチュラント、アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】COVESTRO DEUTSCHLAND AG
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ポール セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】ヒンツマン ディルク
(72)【発明者】
【氏名】フランシスコ カザル マリア
(72)【発明者】
【氏名】シュルフ セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】レイスキー ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】バウザ ユルゲン
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA26
4F401BA06
4F401CA22
4F401CA30
4F401CA67
4F401CA68
4F401CA75
4F401CB01
4F401CB10
4F401CB14
4F401DA12
4F401EA05
4F401EA34
4F401EA46
4F401EA54
4F401EA59
4F401EA77
4F401FA01Y
4F401FA01Z
(57)【要約】
本発明は、ポリウレタン製品から少なくとも1つの原料を回収する方法であって、(A)イソシアネート成分が、対応するアミンの1013mbar(abs.)での沸点が最大でも410℃であるイソシアネートのみを含む、イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタン製品を準備する工程と、(B)アルコール及び水を用いてポリウレタン製品の化学分解を行う工程と、(C)(C.I)10℃~60℃の範囲の温度にて、1013mbar(abs.)での沸点が40℃~120℃の範囲である有機溶媒で抽出すること、続いて、(C.II)第1の生成物相と第2の生成物相とに相分離することを含む、化学分解の生成物を処理する工程と、(D)(D.I)蒸留及び/又はストリッピングにより有機溶媒を分離することと、(D.II)第1の生成物相に溶解したアミンを蒸留によって分離してポリオールを得ることとを含む、第1の生成物相を処理してポリオールを得る工程とを含む、方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン製品から少なくとも1つの原料を回収する方法であって、
(A)イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタン製品を準備する工程と、
なお、前記イソシアネート成分は、対応するアミンの1013mbar(abs.)での沸点が410℃以下であるイソシアネートのみを含む;
(B)前記ポリウレタン製品を触媒の存在下にて液相中で化学量論的過剰のアルコール及び化学量論的過剰の水と反応させて、アルコール、水、ポリオール、及び前記イソシアネート成分のイソシアネートに対応するアミンを含む化学分解生成物を得る工程と、
(C)
(C.I)前記化学分解生成物を、10℃~60℃の範囲の温度にて、1013mbar(abs.)での沸点が40℃~120℃の範囲の有機溶媒で抽出すること、続いて、
(C.II)前記有機溶媒、前記ポリオール及び前記アミンの第1の部分、並びに任意に前記アルコールの第1の部分を含む第1の生成物相と、
前記アルコール、前記水及び前記アミンの第2の部分を含む第2の生成物相と、
に相分離すること、
を含む、前記化学分解生成物を後処理する工程と、
(D)
(D.I)蒸留及び/又はストリッピングにより前記有機溶媒を分離除去することと、
(D.II)蒸留により前記アミンの第1の部分を分離除去してポリオールを得ることと、
を含む、前記第1の生成物相を後処理してポリオールを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(E)において、前記アミンの第1の部分を前記第2の生成物相に添加し、それとともに工程(F)において後処理してアミンを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(G)において、工程(D.I)において分離除去された前記有機溶媒を工程(C.I)に供給する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
工程(D.I)において、前記有機溶媒を初めに第1段階において溶媒画分として分離除去し、次いでアルコール画分を第2段階において分離除去する、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第2段階において分離除去された前記アルコール画分を工程(B)に供給するか、又は、
前記第2段階において分離除去された前記アルコール画分をアルコール相と溶媒相とに分離し、前記アルコール相を工程(B)に供給し、前記溶媒相を工程(C.I)に供給する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
工程(B)において、
(I)前記ポリウレタン製品を、初めに(α)前記アルコール又は(β)前記アルコール及び前記水の第1の部分のみと混合し、次いで、
(II)水(α)又は前記水の第2の部分(β)を、特に前記ポリウレタン製品が溶液になってから添加する、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(II)において、工程(II)中の前記液相の温度が工程(I)における化学分解反応器の前記液相の温度と最大で20℃異なるように、前記水(α)又は前記水の第2の部分(β)を連続的に又は少量ずつ添加する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
変形例(β)において、前記水の第1の部分が、工程(B)において添加される水の総量の質量の最大4.0%である、請求項6又は7に記載の方法。
【請求項9】
工程(B)を140℃~220℃、好ましくは170℃~200℃の温度で行う、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一方のアルコール及び水と他方のポリウレタン製品との質量比が0.5~2.5の範囲であり、前記水の質量比が前記アルコールの質量の2.0%~10%である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルコールがエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール又は上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択される、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記触媒が炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩、水酸化物、有機アミン、有機金属化合物又は上述の触媒の2つ以上の混合物から選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記イソシアネート成分がトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン系のジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート又は上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートを含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記ポリオール成分がポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリエーテルカーボネートポリオールを含む、請求項1~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記有機溶媒が脂肪族炭化水素、脂環式炭化水素、芳香族炭化水素又は上述の溶媒の2つ以上の混合物から選択される、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン製品から少なくとも1つの原料を回収する方法であって、(A)イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタン製品を準備する工程と、なお、イソシアネート成分は、対応するアミンの1013mbar(abs.)での沸点が410℃以下、好ましくは170℃~400℃の範囲であるイソシアネートのみを含む;(B)ポリウレタン製品をアルコール及び水で化学分解する工程と、(C)(C.I)10℃~60℃の範囲の温度にて、1013mbar(abs.)での沸点が40℃~120℃の範囲の有機溶媒で抽出すること、続いて、(C.II)第1の生成物相と第2の生成物相とに相分離することを含む、化学分解の生成物を後処理する工程と、(D)(D.I)蒸留及び/又はストリッピングにより有機溶媒を分離除去することと、(D.II)第1の生成物相に溶解したアミンを蒸留によって分離除去してポリオールを得ることとを含む、第1の生成物相を後処理してポリオールを得る工程とを含む、方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリウレタン製品は、産業及び日常生活において様々な用途を有する。通例、ポリウレタンフォームと、「CASE」製品として知られるものとは区別され、「CASE」は、ポリウレタンコーティング(例えば塗料)、接着剤、シーラント及びエラストマーの総称である。ポリウレタンフォームは通例、硬質フォームと軟質フォームとに分けられる。それらの異質性にも関わらず、基本ポリウレタン構造がこれらの製品全てに共通し、これは多官能性イソシアネートとポリオールとの重付加反応によって形成され、例えばジイソシアネートO=C=N-R-N=C=O及びジオールH-O-R’-O-H(ここで、R及びR’は有機基を表す)をベースとするポリウレタンの場合には、
~~~[O-R’-O-(O=C)-HN-R-NH-(C=O)]~~~
として表すことができる。
【0003】
ポリウレタン製品の大きな経済的成功こそが、多量のポリウレタン廃棄物(例えば古いマットレス又は椅子(seating furniture)から)が生じる原因であり、これを合理的に使用する必要がある。技術的に実行が最も簡単な再利用方法は焼却であり、放出される燃焼熱が他のプロセス、例えば工業プロセスに利用される。しかしながら、これでは原料サイクルを完了することができない。別の再利用方法は、ポリウレタン廃棄物を機械的に粉砕し、新たな製品の製造に使用する、いわゆる「フィジカルリサイクル」である。このタイプのリサイクルには当然ながら限界があるため、ポリウレタン結合の逆切断(retrocleavage)によってポリウレタン製造の基本原料を回収する試み(いわゆる「ケミカルリサイクル」)がなくなることはない。回収される原料は、第一にポリオール(すなわち、上記の例においてはH-O-R’-O-H、又は化学分解においてそれから形成されたポリオール)である。第二に、ウレタン結合の加水分解的切断によってアミンを回収することも可能であり(すなわち、上記の例においては、HN-R-NH)、これを後処理後にホスゲン化し、イソシアネートを得る(上述の例においては、O=C=N-R-N=C=Oを得る)ことができる。
【0004】
様々なケミカルリサイクルアプローチがこれまでに開発されている。最も重要な3つは、以下のように簡潔にまとめられる:
1. 水との反応によってアミン及びポリオールが回収され、二酸化炭素が形成される、ウレタンの加水分解。
2. ウレタン基に組み込まれたポリオールが、使用されるアルコールに置き換えられることで、ポリオールが放出される、アルコールとの反応によるウレタンのグリコール分解(Glycolysis)。このプロセスは、文献中で一般にエステル交換(より正確にはウレタン交換(transurethanization))と称される。使用されるアルコールの正確な性質に関わらず、このケミカルリサイクルの方法は通常、文献中でグリコール分解と呼ばれており、これは実際にはグリコールのみに適用される用語である。したがって、本発明の文脈においては、概してアルコール分解という用語を用いる。グリコール分解に続いて加水分解を行ってもよい。未だ変化していないグリコール分解混合物の存在下で加水分解を行う場合、加水グリコール分解と称される。
3. アルコール及び水との反応によるウレタン結合の加水グリコール分解(Hydroglycolysis)。当然ながら最初からアルコール及び水を添加することも可能であり、その場合、上記のグリコール分解及び加水分解のプロセスが並行して進行する。
【0005】
既知のポリウレタンリサイクル方法の概要は、非特許文献1による総説に与えられる。非特許文献1は、グリコール分解(上記の2.)が特に重要であると強調している。グリコール分解においては、アルコールとの反応で得られる粗生成物が2つの相に分離するか否かに応じて、「二相性」レジームと「一相性」レジームとが区別される。これは特に、使用するアルコールの選択及びプロセス条件(特に、反応混合物中の使用するアルコールの割合及び温度)に依存する。非特許文献1では、粗グリセロール(例えばバイオディーゼル製造からの廃棄物)を用いた二相性レジームが、高品質の製品を低い生産コストで回収する可能性が最も高いとされているため好まれる(ポリオールの回収が明らかに焦点である)。
【0006】
水の付加的な使用の結果として、加水グリコール分解(上記の3.)の生成物は、常に二相性となる。非特許文献2は、水の除去(実験室規模の相分離によるか、又は工業規模の用途に推奨され、「フォード加水グリコール分解プロセス」と呼ばれるプロセスでの蒸発による)と、ヘキサデカンによる残りの有機相の抽出とを含み、アミンが回収され得るアルコール相と、ポリオールが回収され得るヘキサデカン相とが形成される、この種のプロセス生成物の後処理を記載している。アミンを回収する選択肢が言及されるが、非特許文献2ではポリオールの回収にも重点が置かれている。
【0007】
これらの原理に基づいて機能するプロセスの特許が、特許文献1に付与されている。ポリウレタンからポリエーテルポリオールを回収するプロセスであって、(a)上記ポリウレタンを、非酸化雰囲気下で185℃~220℃の温度にて225℃~280℃の沸点を有する飽和アルコールに溶解して、溶液を形成する工程と、(b)上記溶液を175℃~220℃の温度に保持しながら、加水分解を受ける溶解生成物をアミン及びアルコールに実質的に加水分解するのに必要とされる時間にわたり、上記溶液を上記非酸化雰囲気下でアルカリ金属水酸化物触媒の存在下にて水とともに還流する工程と、なお、上記アルカリ金属水酸化物触媒は、上記ポリウレタンフォームの重量をベースとして少なくとも0.1質量%の範囲の量で上記溶液に含まれる;(c)非酸化雰囲気下で上記溶液から加水分解後に残存する水を除去する工程と、(d)非酸化雰囲気下で上記アルコールと実質的に混和せず、230℃~300℃の沸点を有するアルカン(特にヘキサデカン)を用いて、上記ポリオールを加水分解溶液から抽出する工程と、(e)抽出されたポリオールを約230℃未満の温度での真空精製に供する工程とを含む、プロセスが特許文献1に記載されている。
【0008】
工程(a)においては、ポリウレタンを飽和アルコールのアルコール基と反応させ、ポリオール、尿素及びカルバメートを形成する(第3欄42行~46行を参照されたい)。
【0009】
工程(b)においては、水及びアルカリ金属水酸化物触媒を、工程(a)で得られた溶液に別個に又は触媒水溶液の形態で添加し、カルバメート及び尿素をアミン及びアルコールに分解する。工程(a)及び工程(b)は全体として、アルコールの添加と水の添加との時間遅延を含めて加水グリコール分解(より正確には加水アルコール分解(hydroalcoholysis))と記載される。溶液が175℃~200℃の温度で沸騰するような量で水を添加する。アルコールがジエチレングリコールである場合、用いられるジエチレングリコールの質量の2.4%~0.6%、好ましくは1.1%の量の水を添加する(第4欄39行~46行を参照されたい)。加水分解で消費された水は、含水量を一定に保つために更なる水の添加によって補充される。加水分解後、工程(e)の抽出を行うことができるようになる前に用いられた水を工程(c)で除去する必要がある(第5欄、31行~33行)。
【0010】
特許文献2には、ポリウレタンフォームを初めにアルコールに溶解し、次いで水及び触媒を添加し、反応混合物を還流下で加熱するプロセスが記載されている。得られる反応生成物は、一相性(この場合、真空蒸留によって精製する)又は二相性(この場合、ポリオール相を除去し、真空蒸留によって精製する)のいずれかである。このようにして回収されたポリオールは、新たなポリウレタンフォームの製造に使用することができる。
【0011】
文献から知られているケミカルリサイクルプロセスのうち、工業規模で持続的に稼働しているものはごく僅かであり、多くはパイロット規模にさえ達していない(非特許文献1)。環境意識の一般的な高まり及び産業プロセスを可能な限り持続可能なものとする努力の高まりを考えると、どちらも基本的にはケミカルリサイクルを支持しているが、ポリウレタン製品のケミカルリサイクルが技術的及び経済的な観点から未だ決して成熟していないことが明らかに示される。特に回収された生成物の純度に関して課題がある。ポリウレタンフォームの製造に再利用する場合、例えば発泡特性に悪影響を与えないためには、可能な限りアミン不純物を含まないポリオールを回収する必要がある。アミンの回収を更に目的とする場合、これらも当然ながら最大純度で得る必要がある。加えて、再利用されるポリウレタン製品は、通常は様々な助剤及び添加剤(安定剤、触媒等)を依然として含有しており、これらを経済的に実行可能かつ環境に優しい方法で実際のリサイクル対象製品から分離し、廃棄する必要がある。さらに、経済的なリサイクルプロセスでは、使用した試薬(例えば、使用したアルコール)を可能な限り完全に回収し、再利用し得る(すなわちクローズドループに従う)ことを確実にする必要がある。
【0012】
特許文献3は、かかる難点の解決策に関する。特許文献3には、ポリウレタン製品から原料を回収する方法であって、(A)イソシアネート及びポリオールをベースとするポリウレタン製品を準備する工程と、(B)触媒の存在下でポリウレタン製品を(一価又は多価)アルコールと反応させて、第1の生成物混合物を得る工程と、(C)(C.I)工程(B)において得られた第1の生成物混合物を、第1の生成物混合物中に存在する水を事前に除去することなく、工程(B)に使用されるアルコールと完全には混和しない有機溶媒と合わせ、第1のアルコール相及び第1の溶媒相への相分離を行うことと、(C.II)第1の溶媒相を後処理してポリオールを回収することとを含む、第1の生成物混合物からポリオールを回収する工程と、好ましくは、(D)アミンを回収する工程とを含む、方法が記載されている。記載の方法は、言及された問題に関して解決への有望なアプローチを提供し、特に効率的で環境に優しい方法でアミンを回収することができ、同時にポリウレタン製品に由来する付随物質(例えば安定化剤)を見事に排出する方法を示してはいるが、欠点が全くない訳ではない。例えば、ポリオール相は、(少量ではあるが)カルバメートとの混合物で得られ、カルバメートを分離除去する必要があり、非常に高い沸点を有するため、単純な蒸留によって除去することは困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】米国特許第4,336,406号
【特許文献2】米国特許第4,317,939号
【特許文献3】国際公開第2020/260387号
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Simon, Borreguero, Lucas and Rodriguez in Waste Management 2018, 76, 147-171
【非特許文献2】Braslaw and Gerlock in Ind. Eng. Chem. Process Des. Dev. 1984, 23, 552-557
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
このため、ポリウレタンのケミカルリサイクルの分野において更なる改善が必要とされていた。特に、ポリウレタン製品からポリオール、好ましくは更にアミンを高純度かつ効率的に、特に工業的規模での使用を経済的に達成可能なものとする方法で回収し得ることが望ましい。この目的で、化学分解及び化学分解からの粗処理生成物の後処理が、最小限の複雑さで最大純度のポリオールを回収し得るように構成される方法が望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この要件を考慮すると、本発明は、ポリウレタン製品から少なくとも1つの原料を回収する方法であって、
(A)イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタン製品を準備する工程と、
なお、イソシアネート成分は、対応するアミンの1013mbar(abs.)での沸点が410℃以下、好ましくは170℃~400℃の範囲であるイソシアネートのみを含む;
(B)ポリウレタン製品を触媒の存在下にて液相中で化学量論的過剰のアルコール及び化学量論的過剰の水と反応させて(=化学分解)、アルコール(化学分解において未変換のアルコール)、水(化学分解において未変換の水)、(少なくとも)ポリオール(特にポリオール成分からの、又は場合によっては化学分解においてポリオール成分から形成されたポリオール)、及び(少なくとも)イソシアネート成分のイソシアネートに対応するアミンを含む化学分解生成物を得る工程と、
(C)
(C.I)化学分解生成物を、10℃~60℃の範囲の温度にて、1013mbar(abs.)での沸点が40℃~120℃の範囲の有機溶媒で、任意に更に水を添加しながら抽出すること、続いて、
(C.II)有機溶媒(少なくともその大部分)、ポリオール(少なくともその大部分)及びアミンの第1の(比較的小さな)部分、並びに任意にアルコールの第1の(比較的小さな)部分を含む第1の生成物相と、
アルコール(少なくともその大部分、場合によってはアルコールの第2の(より大きな)部分のみ)、水(少なくともその大部分)及びアミンの第2の部分(=大部分)を含む第2の生成物相と、
に相分離すること、
を含む、化学分解生成物を後処理する工程と、
(D)
(D.I)蒸留及び/又はストリッピングにより有機溶媒(少なくともその大部分)を分離除去することと、
(D.II)蒸留によりアミンの第1の部分を分離除去してポリオール(すなわち少なくとも1つの原料)を得ることと、
を含む、第1の生成物相を後処理してポリオールを得る工程と、
を含む、方法を提供する。
【0017】
全く驚くべきことに、(A)において指定されるポリウレタン製品の場合、加水アルコール分解として化学分解を構成し、10℃~60℃の範囲の温度にて、1013mbar(abs.)での沸点が40℃~120℃の範囲である有機溶媒を用いた抽出によって化学分解生成物の後処理を構成すると、後続の後処理工程において高純度のポリオールを簡単な方法で得ることが可能であることが見出された。
【0018】
本発明の文脈におけるポリウレタン製品は、多官能性イソシアネート(=ポリウレタン調製におけるイソシアネート成分)とポリオール(=ポリウレタン調製におけるポリオール成分)との重付加生成物(場合により、完全には正しくないが、重縮合生成物とも称される)である。ポリウレタン製品は概して、上で概説したポリウレタン基本構造のみならず、他の構造、例えば尿素結合を有する構造も含む。ポリウレタン構造に加えた、純粋なポリウレタン基本構造から逸脱したかかる構造の存在は、本発明の範囲から逸脱するものではない。
【0019】
イソシアネートに対応するアミンは、R-NH+COCl→R-N=C=O+2HClに従い、ホスゲン化してイソシアネートを得ることができるアミンである。本発明の専門用語においては、イソシアネートという用語は、ポリウレタン化学と関連して当業者に既知の全てのイソシアネートを、それらの対応するアミンが(A)において規定される条件を満たす限りにおいて包含する。本発明の文脈におけるイソシアネートは、特にトリレンジイソシアネート(TDI;対応するアミンはトリレンジアミン、TDAである)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート(「モノマーMDI」、mMDI;対応するアミンはジフェニルメタン系のジアミン、mMDAである)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(TDI;対応するアミンはペンタン-1,5-ジアミン、PDAである)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI;対応するアミンはヘキサメチレン-1,6-ジアミン、HDAである)、イソホロンジイソシアネート(IPDI;対応するアミンはイソホロンジアミン、IPDAである)及びキシリレンジイソシアネート(XDI;対応するアミンはキシリレンジアミン、XDAである)である。「イソシアネート」という表現は、例えば「厳密に1つのイソシアネート」という表現による別段の明示的な記載がない限り、2種以上の異なるイソシアネート(例えば、MDIとTDIとの混合物)がポリウレタン製品の製造に使用されている実施の形態も当然ながら包含する。ポリウレタン製品の調製に使用される全てのイソシアネートが、(ポリウレタン製品の)イソシアネート成分と総称される。イソシアネート成分は、少なくとも1つのイソシアネートを含む。同様に、ポリウレタン製品の調製に使用される全てのポリオールが、(ポリウレタン製品の)ポリオール成分と総称される。ポリオール成分は、少なくとも1つのポリオールを含む。
【0020】
本発明の専門用語において、ポリオールという用語は、ポリウレタン化学に関連して当業者に既知の全てのポリオール、例えば、特にポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及びポリエーテルカーボネートポリオールを包含する。「ポリオール」という表現は、2種以上の異なるポリオールがポリウレタン製品の製造に用いられている実施の形態も当然ながら包含する。したがって、以下で例えば「ポリエーテルポリオール」に言及する場合、この専門用語は、2種以上の異なるポリエーテルポリオールがポリウレタン製品の製造に使用されている実施の形態も当然ながら包含する。ポリオールという用語は、ポリウレタン製品の製造に最初に使用されたポリオールから化学分解中に形成されたポリオールを表すこともある。しかしながら、更に下に詳細に説明するように、ポリオール成分のポリオールは、好ましくは化学分解中にそのように回収することができるポリエーテルポリオール又はポリアクリレートポリオールである。
【0021】
「ポリウレタン製品と化学量論的過剰のアルコール及び化学量論的過剰の水とを反応させる」という表現は、工程(B)で使用される水の全てを工程(B)の開始時に即座に添加する必要があることを必ずしも意味する訳ではない。その代わりに、工程(B)の開始時に、初めは水を添加しないか、又は水の一部のみを添加し、反応時間中に水/残りの水を続けて添加する実施の形態が本発明に包含される。原則として、アルコール又は水とアルコールとの混合物を徐々に添加することも考えられる。
【0022】
本発明の方法においては、水及びアルコールは、超化学量論的量で使用される。これは、ポリウレタン結合の全てを加水分解して、二酸化炭素の放出によりアミン及びポリオールを得るのに理論的に十分な量の水が使用されることを意味する。同様に、超化学量論的量のアルコールの使用は、上記アルコールが、全てのポリウレタン結合を変換してカルバメート及びポリオールを形成するのに理論的に十分な量で使用されることを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】少なくともポリオール原料12を得る本発明の方法の概略可視化図である。
図2】アミン原料18を同様に得る本発明の方法の好ましい実施形態の概略図である。
図3】同じタイプの新たなポリオールとの比較による、本発明の方法によって回収されるポリオールの異なる温度での動粘度を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
初めに、本発明の様々な考え得る実施形態の概要を続けて示す。
【0025】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第1の実施形態においては、工程(E)において、アミンの第1の部分を第2の生成物相に添加し、それとともに工程(F)において後処理してアミンを得る。
【0026】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第2の実施形態においては、工程(G)において、工程(D.I)において分離除去された有機溶媒を工程(C.I)に供給する。
【0027】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第3の実施形態においては、工程(D.I)において、有機溶媒を初めに第1段階において溶媒画分として分離除去し、次いでアルコール画分(アルコールの第1の(比較的小さな)部分、場合によっては有機溶媒の(比較的小さな)部分を含有する)を第2段階において分離除去する。
【0028】
第3の実施形態の特定の構成である本発明の第4の実施形態においては、第2段階を薄膜蒸発器、ショートパス蒸発器又はフラッシュ蒸発器内で行う。
【0029】
第3の実施形態及び第4の実施形態の特定の構成である本発明の第5の実施形態においては、第2段階において分離除去されたアルコール画分を工程(B)に供給する。
【0030】
第3の実施形態及び第4の実施形態の更なる特定の構成である本発明の第6の実施形態においては、第2段階において分離除去されたアルコール画分をアルコール相と溶媒相とに分離し、アルコール相を工程(B)に供給し、溶媒相を工程(C.I)に供給する。
【0031】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第7の実施形態においては、工程(D.I)における有機溶媒の分離除去を流下膜式蒸発器、自然循環蒸発器、タンク蒸発器、強制循環蒸発器又はフラッシュ蒸発器内で行う。
【0032】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第8の実施形態においては、工程(D.II)におけるアミンの第1の部分の分離除去を薄膜蒸発器、ショートパス蒸発器又はフラッシュ蒸発器内で行う。
【0033】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第9の実施形態においては、工程(D.II)におけるアミンの第1の部分の分離除去を0.1mbar(abs.)~5.0mbar(abs.)の圧力及び140℃~240℃の温度で行う。
【0034】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第10の実施形態においては、工程(B)において、
(I)ポリウレタン製品を、初めに(α)アルコール(=変形例(α))又は(β)アルコール(=変形例(β))及び水の第1の部分のみと混合し、次いで、
(II)水(α)又は水の第2の部分(β)を、特にポリウレタン製品が溶液になってから添加する。
【0035】
第10の実施形態の特定の構成である本発明の第11の実施形態においては、工程(II)において、工程(II)中の液相の温度が工程(I)における化学分解反応器の液相の温度と最大で20℃、好ましくは最大で15℃、より好ましくは最大で10℃、更に好ましくは最大で5.0℃、非常に並外れて好ましくは最大で1.0℃異なるように、水(α)又は水の第2の部分(β)を連続的に又は少量ずつ添加する。
【0036】
第10の実施形態及び第11の実施形態の特定の構成である本発明の第12の実施形態においては、変形例(β)において、水の第1の部分が、工程(B)において全体として(すなわち(I)及び(II)を合わせて)添加される水の質量の最大4.0%、特に2.0%~4.0%である。
【0037】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第13の実施形態においては、工程(B)を140℃~220℃、好ましくは170℃~200℃の範囲の温度で行う。
【0038】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第14の実施形態においては、一方のアルコール(全体として使用)及び水(全体として使用)と他方のポリウレタン製品との質量比(すなわち[m(アルコール)+m(水)]/m(ポリウレタン製品)、m=質量である)は、0.5~2.5の範囲であり、水の質量は、アルコールの質量の2.0%~10%である。
【0039】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第15の実施形態においては、アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール又は上述のアルコールの2つ以上の混合物から選択される。
【0040】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第16の実施形態においては、触媒は炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩、水酸化物(特にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態で上述の触媒を使用)、有機アミン、有機金属化合物又は上述の触媒の2つ以上の混合物から選択される。
【0041】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第17の実施形態においては、触媒の質量は、ポリウレタン製品の質量の0.1%~3.5%である。
【0042】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第18の実施形態においては、イソシアネート成分はトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン系のジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート又は上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートを含む。
【0043】
第18の実施形態の特定の構成である本発明の第19の実施形態においては、イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート又はトリレンジイソシアネートとジフェニルメタン系のジイソシアネートとの混合物を含む。
【0044】
第19の実施形態の特定の構成である本発明の第20の実施形態においては、イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネートを含む。
【0045】
第20の実施形態の特定の構成である本発明の第21の実施形態においては、イソシアネート成分は、トリレンジイソシアネート以外の更なるイソシアネートを含まない。
【0046】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第22の実施形態においては、ポリオール成分はポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリエーテルカーボネートポリオールを含む。ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールを含有するのが好ましい。より好ましくは、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールである(すなわち、ポリエーテルポリオール以外のポリオールを含有しないが、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が含まれ、本実施形態の範囲から逸脱しない)。
【0047】
第22の実施形態の特定の構成である本発明の第23の実施形態においては、ポリエーテルポリオールは、スチレン-アクリロニトリルコポリマー充填ポリエーテルポリオールである。
【0048】
他の全ての実施形態と組み合わせることができる本発明の第24の実施形態においては、有機溶媒は脂肪族炭化水素(特にヘキサン)、脂環式炭化水素(特にシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(特にトルエン)又は上述の溶媒の2つ以上の混合物から選択される。
【0049】
本発明の上で簡単に概説した実施形態及び考え得る更なる構成を、以下でより詳細に明らかにする。当業者にとって逆のことが文脈から明らかに見て取れないか、又は明示的に記載されない限り、上記の全ての実施形態及び下記の本発明の更なる構成を所望に応じて互いにまとめて組み合わせることができる。
【0050】
ケミカルリサイクル用のポリウレタン製品の準備
本発明の方法の工程(A)(図1の1000)は、化学分解の準備において化学的にリサイクルされるポリウレタン製品1を準備することを含む。
【0051】
これは原則として、どのような種類のポリウレタン製品であってもよいが、ポリウレタンフォーム、特に軟質ポリウレタンフォームが好ましい。ポリウレタンフォームは通例、発泡剤としてペンタン、ジクロロメタン及び/又は二酸化炭素を用いて製造される。
【0052】
加えて、イソシアネート成分に関して、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタン系のジイソシアネート(mMDI)、ペンタン1,5-ジイソシアネート(PDI)、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート(HDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)及び上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートをベースとするポリウレタン製品が好ましい。イソシアネート成分に関してTDI及び/又はmMDIをベースとするポリウレタン製品が特に好ましく、TDIが非常に特に好ましい。非常に並外れて好ましくは、イソシアネート成分は、TDI以外の更なるイソシアネートを含まない。イソシアネート成分のイソシアネートが、例えば特に好ましいイソシアネートであるTDI及びmMDIの場合のように様々な異性体の形態である場合、異性体分布は本発明にとって重要ではない。
【0053】
ポリオール成分に関しては、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエーテルカーボネートポリオール、ポリアクリレートポリオール又は上述のポリオールの2つ以上の混合物から選択されるポリオールをベースとするポリウレタンフォームが好ましく、ポリエーテルポリオール及びポリアクリレートポリオールが特に好ましい。最も好ましくは、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールを含有する。非常に並外れて好ましくは、ポリオール成分は、ポリエーテルポリオールである(すなわち、ポリエーテルポリオール以外のポリオールを含有しないが、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が包含され、本実施形態の範囲から逸脱しない)。ポリエーテルポリオールは、スチレン-アクリロニトリルコポリマー(SANコポリマー)で充填されたものであってもよい。それをかかるポリオール成分にも適用し得ることが本発明の利点の1つである。ポリオール成分がSANコポリマー充填ポリエーテルポリオールをベースとするポリウレタン製品の化学分解における問題は、化学分解中の微細なポリマー粒子としてSANコポリマーが放出される場合があることである。これは、選択される化学分解方法に関係なく当てはまる。反応混合物中の微細なポリマー粒子として存在するSANポリマーは、例えばその後の抽出方法による分離に問題を引き起こす。さらに、ポリマー粒子の細かさにより、フィルターが急速に詰まり、更なる除去が可能ではなくなるため、濾過は殆ど不可能である。本発明による加水アルコール分解の利点は、ポリエーテルポリオールからの遊離後に、SANポリマーが加水分解工程により部分的に可溶型となるため、抽出による化学分解後の反応混合物の後処理を問題なく進めることができることである。
【0054】
最も好ましくは、ポリウレタン製品は、イソシアネート成分が、TDI又はmMDIのいずれか、特にTDIを含有し(任意の他のイソシアネートを含有しない)、ポリオール成分が、ポリエーテルポリオールを含有する(特にポリエーテルポリオールであり、すなわちポリエーテルポリオール以外の更なるポリオールを含有しないが、2つ以上の異なるポリエーテルポリオールの混合物が含まれ、本実施形態の範囲から逸脱しない)ものである。
【0055】
好ましくは、工程(A)は更に、工程(B)におけるウレタン結合の切断のための準備工程を含む。これは特に、ポリウレタン製品の機械的粉砕である。かかる準備工程は、当業者に既知である。例えば非特許文献1を参照されたい。ポリウレタン製品の特性によっては、粉砕操作を容易にするために機械的粉砕の前にポリウレタン製品を「凍結」することが有利であり得る。これは、特にポリウレタンフォームについて当てはまる。
【0056】
上記の準備工程を化学分解の場所から空間的に離れた場所で行うことも考えられる。その場合、準備されたポリウレタン製品を更なる輸送のために好適な輸送車両、例えばサイロ車両に移す。更なる輸送のために、準備されたポリウレタン製品を、特にポリウレタンフォームの場合、付加的に圧縮し、より高い質量対体積比を達成してもよい。次いで、ポリウレタン製品を化学分解の位置で化学分解のために準備された反応装置に移す。使用される輸送車両を反応装置に直接接続することも考えられる。
【0057】
化学分解生成物を得るためのポリウレタン製品の化学分解
本発明の方法の工程(B)(図1の2000)は、工程(A)において準備されたポリウレタン製品のアルコール2及び水3による化学分解を含む。
【0058】
化学分解は、酸素の非存在下で行うのが好ましい。これは、反応が不活性ガス雰囲気(特に窒素、アルゴン又はヘリウム雰囲気)で行われることを意味する。不活性ガス飽和により、使用される化学分解試薬(水及びアルコール)から酸素を除去することも好ましい。
【0059】
化学分解は、好ましくは140℃~220℃、好ましくは170℃~200℃の温度で行われる。圧力に関して特別な要求はない。反応は、減圧又は高圧のいずれでも、例えば200mbar(abs.)~2000mbar(abs.)、好ましくは500mbar(abs.)~1500mbar(abs.)、より好ましくは900mbar(abs.)~1300mbar(abs.)の圧力、特に周囲圧力で行うことができる。
【0060】
工程(B)に適切なアルコール2は、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、メチルグリコール、トリエチレングリコール、グリセロール、2-メチルプロパン-1,3-ジオール又は上述のアルコールの2つ以上の混合物である。
【0061】
工程(B)に適した触媒は、特に炭酸塩、炭酸水素塩、オルトリン酸塩、オルトリン酸一水素塩、メタリン酸塩、水酸化物(特にアルカリ金属塩又はアルカリ土類金属塩の形態で上述の触媒を使用)、有機アミン、有機金属化合物又は上述の触媒の2つ以上の混合物である。触媒は、その質量がポリウレタン製品の質量の0.1%~3.5%となるような量で使用するのが好ましい。
【0062】
工程(B)は、一方のアルコール(全体として使用)及び水(全体として使用)と他方のポリウレタン製品との質量比(すなわち[m(アルコール)+m(水)]/m(ポリウレタン製品)、m=質量である)が0.5~2.5の範囲であり、水の質量がアルコールの質量の2.0%~10%となるように行うのが好ましい。本発明の文脈における水に関する定量的数値は、加水分解的カルバメート切断のための試薬として添加する水に関するものである。比較すると、いずれの場合にも、使用されるアルコール及び/又は使用されるポリウレタン製品中に存在する水分に由来する水の量は少ない。使用されるアルコール又は使用されるポリウレタン製品中の水分とは、工業的規模で発生し得るような微量の水分を意味する。当然ながら、アルコールと、加水分解的切断に使用される水とを予め混合するか、又は加水分解的切断に使用される水でポリウレタン製品を湿らせることが可能である。かかる実施形態は、本発明の範囲から逸脱するものではなく、このようにして添加される水は、当然ながら上記の定量的数値に考慮すべきであり、すなわち、必要に応じて付加的に添加される水の量は、それに応じて低減すべきである。触媒を水溶液の形態で使用する場合、溶媒として使用される水を同様に上記の定量的数値に考慮すべきであり、すなわち、必要に応じて付加的に添加される水の量は、それに応じて低減すべきである。
【0063】
既に述べたように、工程(B)のちょうど開始時に全ての水を添加する必要はない。この場合、上述の「アルコールの質量の2.0%~10%」という量は、工程(B)の反応時間の終了時までに合計で添加される水の量に関する。アルコールを徐々に添加する場合、同じことが当てはまる。
【0064】
特に、工程(B)において、
(I)初めにポリウレタン製品を、(α)アルコール又は(β)アルコール及び水の第1の部分のみと混合し、次いで、
(II)水(α)又は水の第2の部分(β)を、特にポリウレタン製品が溶液になってから添加することも可能である。
【0065】
これに関連して「溶液になった」という表現は、完全に均一な混合物という意味で「真の」溶液の存在を必ずしも意味する訳ではない。ポリウレタン製品の「濁った」溶液が存在する場合も十分にあり得る。これは本発明の範囲から外れるものではない。
【0066】
工程(I)及び工程(II)において工程(B)を行う過程で、工程(II)において、工程(II)中の液相の温度が工程(I)における液相の温度と最大で20℃、好ましくは最大で15℃、より好ましくは最大で10℃、更に好ましくは最大で5.0℃、非常に並外れて好ましくは最大で1.0℃異なるように、水(α)又は水の第2の部分(β)を連続的に又は少量ずつ添加することが特に好ましい。化学分解の進行を確実にするのに常に十分に高い温度がこれにより達成される。水の一部が化学分解の開始時に既に添加されている場合(=変形例(β))、水の第1の部分が工程(B)において(すなわち(I)及び(II)を合わせて)添加される水の総量の質量の最大4.0%、特に2.0%~4.0%であることが好ましい。
【0067】
ポリオールを得ること
工程(B)により、
イソシアネート成分のイソシアネートに対応する(少なくとも)1つのアミンと、
(少なくとも)1つのポリオール(ポリオール成分に由来する又は工程(B)においてポリオール成分から形成される)と、
(超化学量論的に使用されるため、不完全に変換された)アルコールと、
(超化学量論的に使用されるため、不完全に変換された)水と、
を含有する化学分解生成物4が得られる。
【0068】
続く工程において、この化学分解生成物を後処理してポリオール原料を回収する。
【0069】
この後処理には、初めに工程(C)(図1の3000)が含まれ(図1も参照されたい)、化学分解生成物を抽出(工程(C.I)-図1の3100)及び相分離(工程(C.II)-図1の3200)に供する。本発明によると、工程(C.I)に使用される抽出剤は、1013mbar(abs.)での沸点が40℃~120℃の範囲である有機溶媒5である。好適な有機溶媒は、特に脂肪族炭化水素(例えばヘキサン)、脂環式炭化水素(例えばシクロヘキサン)、芳香族炭化水素(例えばトルエン)又は上述の溶媒の2つ以上の混合物である。抽出は、10℃~60℃の温度(例えば常温)で行われる。
【0070】
抽出のプロセス生成物6は二相性であり、工程(C.II)においてその相に分離される。この相分離を促進するために、抽出において更なる水を添加することが有利な場合がある。工程(C.II)において得られる相の一方は、有機溶媒(少なくともその大部分)、ポリオール(少なくともその大部分)及びアミンの第1の(比較的小さな)部分、並びに任意にアルコールの第1の(比較的小さな)部分を含有する。この相は、本発明の専門用語においては、第1の生成物相7と称される。この相は、少なくともポリオールの大部分を含有するため、ポリオール相と称されることもある。第2の相は、アルコール(少なくともその大部分、また、場合によってはアルコールの第2の(より大きな)部分のみ)、水(少なくともその大部分)及びアミンの第2の部分(=大部分)を含有する。この相は、本発明の専門用語においては、第2の生成物相8と称される。この相は、アミンの大部分を含有するため、アミン相と称されることもある。工程(C)において、このようにしてアミン及びポリオール(の大部分)の分離が達成される。この分離が、全てのポリオールが第1の生成物相に入り、全てのアミンが第2の生成物相に入るという意味で必ずしも完全に進行する必要がないことは当業者には自明である。一般的な溶解度平衡の結果として、通常は少量のアミンが第1の生成物相に入ることが当てはまる。少量のポリオールが第2の生成物相に入ることも珍しいことではなく、これは当然ながら本発明の範囲から外れるものではない。
【0071】
次いで、工程(C.II)に続いて、工程(D)(図1の4000)において第1の生成物相からポリオールを得る。この目的で、最初に、工程(D.I)(図1の4100)において、蒸留及び/又はストリッピング(10)により、有機溶媒を殆どないし完全に分離除去する。この目的で、流下膜式蒸発器、自然循環蒸発器、タンク蒸発器、強制循環蒸発器又はフラッシュ蒸発器を使用することが好ましい。好ましくは、分離除去された有機溶媒を工程(G)において、任意に精製後に工程(C.I)に供給し、そこで抽出剤として使用する(図1に点線矢印で示す)。
【0072】
有機溶媒を分離除去した後、第1の生成物相に溶解したアミン(=アミンの第1の部分)11を蒸留によって分離し、精製されたポリオール12が残る(工程(D.II);図1の4200)。アミンの第1の部分11のこの分離除去は、好ましくは薄膜蒸発器、ショートパス蒸発器又はフラッシュ蒸発器において、特に0.1mbar(abs.)~5.0mbar(abs.)の圧力及び140℃~240℃の温度で達成される。
【0073】
既に述べたように、第1の生成物相は、化学分解に使用したアルコールの画分を含有していてもよい。これは工程(D.II)においてアミンの第1の部分とともに分離除去することができ、続いて流れ11の一部となる。更に下に更に詳細に説明するように、アミンを得るためには、工程(E)においてアミンの第1の部分11を第2の生成物相に供給し、それとともに後処理することが好ましい。これは、第2の生成物相がいずれの場合にもアルコールの大部分を含有するため、流れ11がアルコールの画分を含有する記載の場合にも問題なく可能である。
【0074】
しかしながら、工程(D.I)において、有機溶媒を初めに第1段階において溶媒画分として分離除去し(これは有利には工程(C.I)に供給される)、次いでアルコール画分(アルコールの第1の(比較的小さな)部分、及び場合によっては有機溶媒の(比較的小さな)部分を含有する)を第2段階において分離除去することも可能である。第2段階に適した装置は、特に工程(D.II)に対するものと同じ、すなわち薄膜蒸発器、ショートパス蒸発器又はフラッシュ蒸発器である。第2段階において分離除去されたアルコール画分は、依然として溶媒画分を含有することがあり、場合によっては自然に2つの相、すなわちアルコール相と溶媒相とに分離することがある。アルコール相は、好ましくは工程(B)に供給され、(溶媒画分のような)溶媒相は工程(C.I)に供給される。自然な相分離が起こらない場合、アルコール画分を工程(B)に供給することが好ましい。工程(D.I)の記載の二段階実行は、第1の生成物相に溶解した未変換のアルコールの画分の分離回収を可能にし、したがって、かかる割合が比較的大きい場合に特に望ましい。
【0075】
アミンを得ること
工程(C.II)において得られた第2の生成物相8を後処理し、更なるアミン原料を回収することが好ましい。適切には(この点で図2も参照されたい)、工程(E)(図2の5000)において、工程(D.II)において分離除去されたアミンの第1の部分11を第2の生成物相8と混合し、得られた混合物13を後処理してアミン18を得る(工程(F);図2の6000)。既に述べたように、第2の生成物相8が、化学分解に使用されたアルコール(少なくともその大部分、また、場合によってはアルコールの第2の(比較的大きな)部分のみ)、水(少なくともその大部分)及びアミンの第2の部分(=大部分)、並びにアミンの第1の部分11、並びにアミンを含有し、場合によっては化学分解に使用したアルコールの画分も含有するため、混合物13は本質的にアミン、水及びアルコールからなる。
【0076】
このアミン-水-アルコール混合物13を蒸発プロセスに供してアミンを得る。これは、好ましくは2段階で達成され、第1段階(工程(F.I);図2の6100)において、水14を蒸発させ、アミン-アルコール混合物15が残り、第2段階(工程(F.II);図2の6200)において、アルコール画分16を蒸発させ、精製前のアミン相17が残る。アミン-水-アルコール混合物13が依然として有機溶媒5の画分(溶媒平衡の位置によっては除外することができない)を含有する場合、これは好ましくは水の蒸発前に、又は沸点の位置(又は共沸混合物の存在)に応じて、任意に水とともに(続いて相分離が行われる)、或いは水が分離除去された後に蒸留除去される。工程(F)において分離除去された水は、工程(B)(図の2000)に使用される水3の構成成分として使用されるのが好ましい。付加的に必要とされる水は、他の慣例的な水源(例えば真水又は復水)に由来し得る。
【0077】
第2の蒸発段階(工程(F.II);図2の6200)で得られたアルコール画分16は、好ましくは(任意に精製後に)工程(B)(図の2000)にリサイクルされ、そこで化学分解に使用されるアルコール2の構成成分として使用される。
【0078】
次いで、アミン18を精製前のアミン相17から単離する。この目的に必要とされる後処理(工程(F.III);図2の6300)は、蒸留によって達成するのが好ましい。
【0079】
ポリウレタン製品に由来する不純物の経済的かつ環境に優しい出口を提供するアミン後処理の特に有利な構成においては、アミン相8からアミンを得ることは、アミン相をアミンの新たな製造に由来するアミンの粗生成物画分と混合することで、新たに調製されたアミンの後処理に組み込まれる。この実施形態は、特許文献3(23頁31行目~27頁7行目)に詳細に記載されており、現時点で参照される。
【0080】
以下の実施例は、本発明を更に説明することを意図したものである。
【実施例
【0081】
分析
ヒドロキシル価(OHNとも呼ばれる、単位はmg KOH/g)は、ポリオールの特性を決定する標準的な方法であり、以下のように決定した。
【0082】
ポリオールに過剰な無水フタル酸(PA)を混合する。残りのPAを水で加水分解する。各OH基は、無水物基と反応してエステルを形成する。PAから放出されたCOOH基は、KOH溶液で滴定することができ、これによりOH基の数を計算することができる。
【0083】
アミン価は、酢酸中の0.1M過塩素酸でのアミン窒素の滴定によって決定した。OHNと同様、これを試験した物質1g当たりのmg KOHで報告する。
【0084】
試験したポリオール(最初に使用したポリオール及び回収されたポリオール)の粘度は、Anton Paarの加熱可能なMCR 301回転粘度計を用い、20℃~180℃の温度範囲で測定した。
【0085】
実施例1(本発明)
300gのジエチレングリコール(DEG、2)及び5.4gのNaCOを丸底フラスコに初めに投入し、180℃まで加熱した。続いて、300gのTDIベースのポリウレタンフォーム1を段階的に添加した。フォームの全量を添加した後、得られた反応混合物を更に3時間180℃に保持した。反応時間後に、17gの脱塩(DM)水3を反応混合物に180℃で段階的に添加した(加水グリコール分解工程)。続いて、反応混合物を更に2.5時間180℃に保持した(工程(A)及び工程(B);(図1の1000及び2000))。
【0086】
得られた反応混合物4を3質量部のシクロヘキサン5と連続的に接触させ(工程(C.I);図1の3100))、その結果、ポリオールに富んだ相(軽相、第1の生成物相、7)及びDEGに富んだ相(重相、第2の生成物相、8)が形成された。相を分離した(工程(C.II);(図1の3200))。
【0087】
最初に、シクロヘキサン10の大部分を軽相からロータリーエバポレーターを用いてバッチ蒸発で除去した。この目的で、混合物を、120℃及び20mbar(abs.)の油浴によって加熱した丸底フラスコ内で凝縮が終わるまで加熱した(工程(D.I);図1の4100)。
【0088】
このようにして得られたシクロヘキサン枯渇混合物を190℃及び5mbar(abs.)未満のショートパス蒸発器に連続的に供給した。蒸発可能な蒸気(11、DEG及びTDAを含有する、アミンの第1の部分)は、ここで内部の水冷冷却コイルに凝結した(工程(D.II);図1の4200)。
【0089】
このようにして得られたポリオール(12、再生ポリオール)を分析し、以下のOH価及びアミン価を確認した:
OHN:49.1mg KOH/g、アミン価:0.36mg KOH/g。
【0090】
変換されたポリウレタンフォームの製造に最初に使用したポリオール(元のポリオール)は、以下の値を有する:
OH価:48.0mg KOH/g、アミン価:0.00mg KOH/g。
【0091】
再生ポリオールが、OH価及びアミン価の本質的な特性に関して元のポリオールに非常に類似していることが分かる。これは、異なる温度での粘度の比較によって確認される。この点で、温度θ(℃)を横軸に示し、動粘度η(mPa・s)を縦軸に示す図3を参照する。再生ポリオールの値を「×」で表示し、元のポリオールの値を黒い三角で表示する。線(元のポリオールは破線、再生ポリオールは実線)は、測定点に適合させたべき関数を表す。これらの関数がほぼ合同であることが分かる。
図1
図2
図3
【手続補正書】
【提出日】2024-07-04
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタン製品から少なくとも1つの原料を回収する方法であって、
(A)イソシアネート成分及びポリオール成分をベースとするポリウレタン製品を準備する工程と、
なお、前記イソシアネート成分は、対応するアミンの1013mbar(abs.)での沸点が410℃以下であるイソシアネートのみを含む;
(B)前記ポリウレタン製品を触媒の存在下にて液相中で化学量論的過剰のアルコール及び化学量論的過剰の水と反応させて、アルコール、水、ポリオール、及び前記イソシアネート成分のイソシアネートに対応するアミンを含む化学分解生成物を得る工程と、
(C)
(C.I)前記化学分解生成物を、10℃~60℃の範囲の温度にて、1013mbar(abs.)での沸点が40℃~120℃の範囲の有機溶媒で抽出すること、続いて、
(C.II)前記有機溶媒、前記ポリオール及び前記アミンの第1の部分、並びに任意に前記アルコールの第1の部分を含む第1の生成物相と、
前記アルコール、前記水及び前記アミンの第2の部分を含む第2の生成物相と、
に相分離すること、
を含む、前記化学分解生成物を後処理する工程と、
(D)
(D.I)蒸留及び/又はストリッピングにより前記有機溶媒を分離除去することと、
(D.II)蒸留により前記アミンの第1の部分を分離除去してポリオールを得ることと、
を含む、前記第1の生成物相を後処理してポリオールを得る工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
工程(E)において、前記アミンの第1の部分を前記第2の生成物相に添加し、それとともに工程(F)において後処理してアミンを得る、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(D.I)において、前記有機溶媒を初めに第1段階において溶媒画分として分離除去し、次いでアルコール画分を第2段階において分離除去する、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記第2段階において分離除去された前記アルコール画分を工程(B)に供給するか、又は、
前記第2段階において分離除去された前記アルコール画分をアルコール相と溶媒相とに分離し、前記アルコール相を工程(B)に供給し、前記溶媒相を工程(C.I)に供給する、請求項に記載の方法。
【請求項5】
工程(B)において、
(I)前記ポリウレタン製品を、初めに(α)前記アルコール又は(β)前記アルコール及び前記水の第1の部分のみと混合し、次いで、
(II)水(α)又は前記水の第2の部分(β)を、特に前記ポリウレタン製品が溶液になってから添加する、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程(II)において、工程(II)中の前記液相の温度が工程(I)における化学分解反応器の前記液相の温度と最大で20℃異なるように、前記水(α)又は前記水の第2の部分(β)を連続的に又は少量ずつ添加する、請求項に記載の方法。
【請求項7】
前記イソシアネート成分がトリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン系のジイソシアネート、ペンタン1,5-ジイソシアネート、ヘキサメチレン1,6-ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート又は上述のイソシアネートの2つ以上の混合物から選択されるイソシアネートを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記ポリオール成分がポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリアクリレートポリオール及び/又はポリエーテルカーボネートポリオールを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】