(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】電池安全自動車電化のためのリッド下用途のための断熱性を改善する無機質材
(51)【国際特許分類】
H01M 50/204 20210101AFI20241108BHJP
【FI】
H01M50/204 401F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532402
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 IB2022061611
(87)【国際公開番号】W WO2023100111
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】505005049
【氏名又は名称】スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】100130339
【氏名又は名称】藤井 憲
(74)【代理人】
【識別番号】100135909
【氏名又は名称】野村 和歌子
(74)【代理人】
【識別番号】100133042
【氏名又は名称】佃 誠玄
(74)【代理人】
【識別番号】100171701
【氏名又は名称】浅村 敬一
(72)【発明者】
【氏名】ローゼン,ケルスティン ツェー.
(72)【発明者】
【氏名】シャシュケ,マルティン
(72)【発明者】
【氏名】キュースターズ,クリストフ
(72)【発明者】
【氏名】ミッデンドルフ,クラウス ハー.ゲー.
【テーマコード(参考)】
5H040
【Fターム(参考)】
5H040AA03
5H040AA37
5H040AS07
5H040AT06
5H040LL01
5H040LL04
5H040LL06
5H040NN01
(57)【要約】
本開示の一態様では、リチウムイオン電池用の熱暴走保護フィルムであって、少なくとも1つのシリコーンを含む少なくとも1つの保護層と、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて少なくとも40重量%の量の少なくとも1つのケイ酸塩化合物と、を含む、熱暴走保護フィルムが提供される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムイオン電池用の熱暴走保護フィルムであって、
少なくとも1つのシリコーンを含む少なくとも1つの保護層と、前記少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて少なくとも40重量%の量の少なくとも1つのケイ酸塩化合物と、を含む、熱暴走保護フィルム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの保護層が、前記少なくとも1つの層の総重量に基づいて、少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、更により好ましくは少なくとも70重量%の前記少なくとも1つのケイ酸塩化合物を含む、請求項1に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項3】
前記少なくとも1つのシリコーンが、少なくとも1つのシリコーンゴムである、請求項1又は2に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項4】
前記少なくとも1つのケイ酸塩化合物が、カオリン、メタカオリン、ムライト、ウォラストナイト、並びにそれらの任意の組合せ及び混合物、好ましくはメタカオリン、ムライト、及びウォラストナイト、並びにそれらの任意の組合せ及び混合物、より好ましくはムライト及び/又はウォラストナイト、更により好ましくはムライトから選択される、請求項1~3のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項5】
少なくとも1つのポリマーグリッド、好ましくは熱可塑性グリッドを更に含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項6】
前記ポリマーグリッドが、熱可塑性グリッド、熱可塑性メッシュ又は熱可塑性スクリムである、請求項5に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項7】
前記熱可塑性グリッドが、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリラクテート(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethelenetherephthalate、PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、並びにそれらの任意の組み合わせ及び混合物、好ましくはポリプロピレン及びポリアミドから選択される少なくとも1つの熱可塑性材料を含む、請求項6に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの保護層が、少なくとも1つの吸熱性充填剤を更に含むか、又は前記熱暴走保護フィルムが、少なくとも1つの吸熱性充填剤を含む少なくとも1つの追加の層を更に含み、好ましくは前記少なくとも1つの追加の層がシリコーンゴムを含む、請求項1~7のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項9】
前記少なくとも1つの吸熱性充填剤が、メタケイ酸ナトリウム五水和物、リン酸二水素アンモニウム、無機炭酸塩、好ましくは炭酸カルシウムマグネシウム及び炭酸カルシウムケイ素マグネシウム、金属水酸化物、好ましくは水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム、結晶水を含む無機質化合物、好ましくは水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、Mg(OH)
24MgCO
34H
2O、MgCl
25Mg(OH)
27H
2O、並びにそれらの任意の組合せ及び混合物から選択される、請求項8に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項10】
前記少なくとも1つの保護層が、3.5g/cm
3未満のかさ密度及び/又は0.2W/mK未満のASTM D5470による25℃での熱伝導率TCを有する無機充填剤を含む、請求項1~9のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項11】
前記熱暴走保護フィルムが、1W/mK未満、好ましくは0.8W/mK未満、より好ましくは0.7W/mK未満のASTM D5470による熱伝導率を示す、請求項1~10のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項12】
前記電池保護フィルムが、0.5~3.5mm、好ましくは0.6~3.2mm、より好ましくは0.7~3mmの厚さを有する、請求項1~11のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項13】
前記熱暴走保護フィルムが、少なくとも1つの金属メッシュを更に含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルム。
【請求項14】
熱暴走保護フィルムを調製する方法であって、以下の
(i)少なくとも1つのケイ酸塩化合物をシリコーンに配合する工程と、
前記(ii)工程(i)で得られたシリコーン組成物から少なくとも1つの保護層を形成する工程と、
(iii)任意選択で、前記工程(ii)で得られた少なくとも1つの保護層を乾燥又は硬化させ、それによって熱暴走保護フィルムを得る工程と、を含み、
前記少なくとも1つのケイ酸塩化合物が、前記少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて、少なくとも40重量%の量で前記少なくとも1つの保護層中に含有される、方法。
【請求項15】
リチウムイオン電池における熱暴走事象の防止又は緩和のための、請求項1~13のいずれか一項に記載の熱暴走保護フィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウムイオン電池用の熱保護フィルムに関する。本開示は、熱暴走保護フィルムを調製するための方法を更に提供する。更に、本開示は、リチウムイオン電池における熱暴走事象の防止又は緩和のための、熱暴走保護フィルムの使用に関する。最後に、本開示は、本明細書に記載される熱保護フィルムを含む、リチウムイオン電池モジュール及びリチウムイオン電池を提供する。
【背景技術】
【0002】
リチウムイオン技術に基づく電池は、現在、自動車e-モビリティのための好ましい解決策である。通常、複数のリチウムイオンセルが一列に積み重ねられて電池モジュールを形成する。一般的な自動車用途では、電池はハウジング内の複数のモジュールからなる。
【0003】
そのようなリチウムイオン電池は、室温~約40℃の動作ウィンドウを有する。約80~100℃の温度を超えると、制御されない電解質分解に続いてセル内部での追加の熱及び圧力上昇というリスクがある。最後に、セル内のセパレータが溶融し、結果として生じる内部ショートカットが、熱暴走と呼ばれる過剰な温度上昇をもたらす。これはまた、セル内のガス圧力の急激かつ顕著な上昇をもたらし、これはセルを破壊又は破裂させる可能性があり、高温ガスが1200℃を超える温度でセルから吹き出すことにつながり、これは更に、セルの外側で発火し、周囲のセルの損傷につながる可能性があり、同じ結果になる。もちろん、このシナリオは、現代の電動ビークル、特に自動車の構造体において大きな関心事である。最近の規制及び法律は、これを既に考慮しており、熱暴走事象の発生後、乗客がビークルから安全に離れることができる最小時間を要求している。
【0004】
したがって、当該技術分野では、そのような熱暴走を停止させるか、又は少なくとも著しく減速させることができる材料、すなわち、熱及び爆風に対する特定の耐性、機械的強度を示し、並びに/又は容易にアクセス可能であり、製造、輸送及び適用が容易である、材料に対する要望が存在する。また、材料が三次元形状に容易に形成され、更にある種の断熱及び電気絶縁を提供することも望ましい。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、リチウムイオン電池用の熱暴走保護フィルムであって、
少なくとも1つのシリコーンを含む少なくとも1つの保護層と、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて少なくとも40重量%の量の少なくとも1つのケイ酸塩化合物と、を含む、熱暴走保護フィルムを提供する。
【0006】
本開示は、本明細書に記載の熱暴走保護フィルム複合構造体を含む、電池ケーシングを更に提供する。
【0007】
更に、本開示は、熱暴走保護フィルムを製造するための方法であって、以下の工程:
(i)少なくとも1つのケイ酸塩化合物をシリコーンに配合する工程と、
(ii)工程(i)で得られたシリコーン組成物から少なくとも1つの保護層を形成する工程と、
(iii)任意選択で、工程(ii)で得られた少なくとも1つの保護層を乾燥又は硬化させ、それによって熱暴走保護フィルムを得る工程と、を含み、
少なくとも1つのケイ酸塩化合物が、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて、少なくとも40重量%の量で少なくとも1つの保護層中に含有される、方法を提供する。
【0008】
最後に、本開示は、リチウムイオン電池における熱暴走事象の防止又は緩和のための、熱暴走保護フィルムの使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示のいずれかの実施形態を詳細に説明するのに先立ち、本開示はその用途において以下の説明に示される構造体の詳細及び構成要素の配置に限定されるものではないということが理解されるべきである。本発明は、他の実施形態も可能であり、様々な方法で実践又は実施することが可能である。本明細書で使用するとき、用語「a」、「an」及び「the」は、互換的に使用され、1つ以上を意味し、「及び/又は」は、一方又は両方の記述された事例が起こる場合があることを示すために使用され、例えば、A及び/又はBは、(A及びB)と(A又はB)とを含む。更に本明細書では、端点による範囲の記載は、この範囲内に包含される全ての数を含む(例えば、1~10は、1.4、1.9、2.33、5.75、9.98などを含む)。更に本明細書では、「少なくとも1」の記載は、1以上の全ての数(例えば、少なくとも2、少なくとも4、少なくとも6、少なくとも8、少なくとも10、少なくとも25、少なくとも50、少なくとも100など)を含む。また、本明細書において使用される語法及び専門用語は説明を目的としたものであり、限定するものとみなすべきではないことを理解されたい。限定的であることが意図される「からなる(consisting)」の使用とは異なり、「含む(including)」、「含有する(containing)」、「含む(comprising)」、又は「有する(having)」、及びそれらの変化形の使用は、限定的でないものと意図され、これらの後に列記される項目並びに追加項目を包含することを意図するものである。更に、本明細書で使用される「含む(comprise)」という用語は、「のみからなる(consists only of)」という意味で「からなる(consists of)」という用語も包含し得るが、概して、当技術分野において全般的に使用されるその意味に従って使用されることが理解される。したがって、「含む(comprise)」を「からなる(consists)」に限定すること、又は「含む(comprising)」を「からなる(consisting of)」に限定することは、本開示に完全に包含される。
【0010】
組成物の成分の量は、別途明記しない限り、重量%(又は「%wt」若しくは「wt-%」)によって示され得る。全成分の量は、別途明記しない限り、100重量%となる。成分の量がモル%によって特定される場合、全成分の量は、別途明記しない限り、100モル%となる。
【0011】
本開示のコンテキストでは、用語「室温」及び「周囲温度」は互換的に使用され、約101kPaの周囲気圧条件において、23℃(±2℃)の温度を指す。
【0012】
別途明示的に記載しない限り、本開示の全ての実施形態及び任意選択的な特徴は、自由に組み合わせることができる。
【0013】
本開示は、リチウムイオン電池用の熱暴走保護フィルムであって、少なくとも1つのシリコーンを含む少なくとも1つの保護層と、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて少なくとも40重量%の量の少なくとも1つのケイ酸塩化合物と、を含む、熱暴走保護フィルムである。
【0014】
本開示による熱暴走保護フィルムは、特に高温並びに/又は粒子及び/若しくはガスの流れが電池複合構造体の局所的又は小領域にのみ加えられる場合に、良好な取扱い特性、安価かつ容易な製造、非毒性、曲げ及び成形する能力、並びに高温に耐える能力などの望ましい特性の少なくとも1つ又は更には組み合わせを示し得る。特に、本明細書に記載の保護フィルムがシリコーンフィルムの形態であるという事実は、保護フィルムが可撓性であり、取り扱いが容易であり、輸送が容易であり、高速ロボット装置による場合であっても適用が容易であり、電池モジュール又は電池を製造するのに望ましい他の形状に成形することができるという利点をもたらす。更に、シリコーンフィルムは、通常、特に自動車産業で使用される現代のリチウムイオン電池における熱暴走事象中に遭遇する高温及び/又は爆風に耐えるものではない。しかしながら、本明細書に記載されるような量でケイ酸塩化合物を使用して、少なくとも特定の期間にわたってこの困難な影響に実際に耐える保護フィルムを提供することが可能になった。
【0015】
したがって、本開示による保護フィルムは、現代の電池、例えば、現代のビークルで使用されるリチウムイオン電池における熱暴走事象中に典型的に発生する高温及び高速の爆発を軽減するか、又は更には防止するのに非常に適している。
【0016】
本開示による保護フィルムは、当該技術分野において公知であり認識されている一般的な形態及び形状で提供され得る。したがって、ロール、シート、又はダイカットで提供され得るフィルムが可能である。
【0017】
概して、本明細書に記載される保護フィルムは、少なくとも1つのシリコーンを含む少なくとも1つの保護層と、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて少なくとも40重量%の量の少なくとも1つのケイ酸塩化合物と、を含む。したがって、1つの保護層からなる保護フィルムはが本開示によって包含され、また、2つ、3つ、4つ又はそれ以上の層も本明細書に開示される。少なくとも1つのケイ酸塩化合物が、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて、少なくとも40重量%の量で少なくとも1つの保護層中に含有される。この量は、好ましくはより高く、すなわち、少なくとも1つの保護層は、少なくとも1つの層の保護層の総重量に基づいて、少なくとも45重量%、好ましくは少なくとも50重量%、より好ましくは少なくとも60重量%の少なくとも1つのケイ酸塩化合物を含む。少なくとも1つの保護層のシリコーンマトリックスへのケイ酸塩化合物の高充填量は、改善された機械的、化学的及び温度耐性を提供し、一方で、シリコーンフィルムの全般的な特性は保存される。特に、フィルムは、依然として曲げることができ、巻くことができ、概して可撓性であり得る。これは、フィルムの製造、貯蔵、及び適用にとって特に有利であり、また、本明細書に記載されるような多くの用途又は保護フィルムにとって望ましい。好ましくは、本開示による保護フィルムの、少なくとも1つのケイ酸塩化合物は、少なくとも1つの保護層中に、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて、最大85重量%、好ましくは最大80重量%、より好ましくは77.5重量%の量で含有される。
【0018】
少なくとも1つのケイ酸塩化合物は、少なくとも1つのシリコーンと適合性があり保護層の改善された耐熱性及び機械的耐性の望ましい効果を提供する限り、特に限定されない。最良の結果が、カオリン、メタカオリン、ムライト、ウォラストナイト、並びにそれらの任意の組合せ及び混合物において見出された。これらの化合物の中で、ムライトが最良の温度耐性をもたらした。したがって、少なくとも1つのケイ酸塩化合物は、カオリン、メタカオリン、ムライト、ウォラストナイト、並びにそれらの任意の組合せ及び混合物、好ましくはメタカオリン、ムライト、及びウォラストナイト、並びにそれらの任意の組合せ及び混合物、より好ましくはムライト及び/又はウォラストナイト、更により好ましくはムライトから選択されることが好ましい。
【0019】
本明細書で使用される少なくとも1つのシリコーンは、それによって安定なフィルムが生成され得る限り、特に限定されない。この目的のためのシリコーンは、当該技術分野において周知であり、工業用に大量であっても、容易に商業的に入手可能である。シリコーンはまた、保護フィルムの所望の特性及び意図される用途に関して選択されてもよい。好ましくは、本明細書で使用される少なくとも1つのシリコーンは、シリコーンゴムから選択される。例えば、本明細書で使用するためのシリコーン/シリコーンゴムは、Wacker Chemie AGから商品名SilGel、例えばWacker SilGel 612 A/Bで市販されている。
【0020】
少なくとも1つの保護層は、好ましくは酸化ケイ素、金属水酸化物、好ましくは水酸化アルミニウム及び/又は水酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、並びにそれらの任意の組み合わせ及び混合物から選択される無機充填剤を更に含んでもよい。
【0021】
更に、織布層又は不織布層を追加することも、本明細書に記載される保護フィルムの製造、安定性及び/又は取扱いに関して有利であり得る。したがって、本発明による保護フィルムは、少なくとも1つの織布層又は不織布層を更に含むことが好ましい。これに関して、少なくとも1つの織布層又は不織布層は、有機繊維又は無機繊維、好ましくはフリース又は布などの不織布繊維を含むことが好ましい。有機繊維がポリマー繊維から選択され、無機繊維がガラス繊維であることも好ましい。
【0022】
本開示による保護フィルムが可撓性であり、曲げ可能であり、形状に適合性であることは既に有利であるが、保護フィルムが成形された形状に固定されたままであることは、いくつかの用途にとって更に有利である。例えば、セル、モジュール又は電池の周りに巻き付けられた保護フィルムが、セル、モジュール又は電池の製造後により剛性の状態で固定される場合に有利である。これは、熱可塑性グリッドを本明細書に記載の保護フィルムに加えるか、又は保護フィルムに組み込むことによって達成され得ることが見出された。したがって、本開示による保護フィルムは、少なくとも1つのポリマーグリッド、好ましくは熱可塑性グリッドを更に含むことが好ましい。熱可塑性グリッドの使用は、単純な加熱及びその後の冷却によって保護フィルムを予め形成された形状に固定するという利点を有する。少なくとも1つのポリマーグリッドは、少なくとも1つの保護層に組み込まれてもよく、又は少なくとも1つの保護層上に取り付けられてもよい。特に、後者は、製造の観点から有利である。なぜなら、熱可塑性グリッドは、大規模製造プロセスにおけるオプションとして、予め製造されたフィルムの上に単純に積層され得るからである。したがって、ポリマーグリッド、好ましくは熱可塑性グリッドは、少なくとも1つの保護層上に積層されることが好ましい。これに関して、ポリマーグリッドは、熱可塑性グリッド、熱可塑性メッシュ又は熱可塑性スクリムであることが好ましい。好ましくは、熱可塑性グリッドは、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン(ABS)、ポリアミド(PA)、ポリラクテート(PLA)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリエチレンテレフタレート(polyethelenetherephthalate、PET)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン(PS)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリ塩化ビニル(PVC)、並びにそれらの任意の組み合わせ及び混合物、好ましくはポリプロピレン及びポリアミドから選択される少なくとも1つの熱可塑性材料を含む。熱可塑性グリッドなどは容易に商業的に入手可能であり、本明細書に記載される保護フィルムの意図される用途に従って当業者によって選択され得る。また、熱可塑性グリッドは、少なくとも1つの熱可塑性材料でコーティング又は含浸された布、グリッド、不織布、又はメッシュ繊維材料を含んでもよい。好ましくは、繊維材料は、ポリマー材料、ガラス繊維、及び炭素繊維から選択される。これは、本開示による保護フィルムの安定性及び耐久性を更に増大させ得る。更に、熱可塑性グリッドは、0.1~1.4mm、好ましくは0.2~1.2mm、より好ましくは0.3~1mmの範囲の厚さを示すことが好ましい。熱可塑性グリッドは、50~450g/m2、好ましくは80~350g/m2、より好ましくは100~300g/m2の範囲のDIN EN 12127による面積重量を示すことが更に好ましい。
【0023】
本明細書に記載される保護フィルムへの少なくとも1つの吸熱性充填剤の添加が有利であり得ることも見出された。吸熱性充填剤は、熱暴走事象によって放出される熱を吸収する効果を有し、したがって、温度を少なくとも部分的にかつ局所的に低下させることができる。これは、本明細書に記載される保護フィルムがより長く持ちこたえることができ、及び/又はフィルムの裏側の温度が、いかなる吸熱性充填剤も含有しないフィルムと対比して、より低くなり得るという点で、有利であり得る。したがって、少なくとも1つの保護層が少なくとも1つの吸熱性充填剤を更に含むことが好ましい。加えて又は代替として、本明細書に記載の保護フィルムは、少なくとも1つの吸熱性充填剤を含む少なくとも1つの追加の層を更に含み、好ましくは、少なくとも1つの追加の層はシリコーンゴムを含む。この点に関して、少なくとも1つの吸熱性充填剤は、メタケイ酸ナトリウム五水和物、リン酸二水素アンモニウム、無機炭酸塩、好ましくは炭酸カルシウムマグネシウム及び炭酸カルシウムケイ素マグネシウム、金属水酸化物、好ましくは水酸化アルミニウム及び水酸化マグネシウム、結晶水を含む無機質化合物、好ましくは水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、Mg(OH)24MgCO34H2O、MgCl25Mg(OH)27H2O、並びにそれらの任意の組合せ及び混合物から選択されることが好ましい。
【0024】
低密度及び/又は低熱伝導率を有する無機充填剤を、本明細書に記載の保護フィルムの少なくとも1つの保護層に添加することが有利であり得ることが更に見出された。特に、より低い密度は、保護フィルムの重量を低下させるのに有利であり得、低い熱伝導率の材料は、特定の断熱及び保護をそれぞれ提供する保護フィルムを提供するという利点を有し得る。したがって、少なくとも1つの保護層は、低密度及び/又は低熱伝導率を有する無機充填剤を含むことが好ましい。これに関して、無機充填剤は、ASTM D5470に従って25℃で0.2W/mK未満、好ましくは0.15W/mK未満、より好ましくは0.1W/mK未満、更により好ましくは0.8W/mK未満の熱伝導率TCを有することが好ましい。無機充填剤は、ASTM D5470に従って25℃で0.001W/mK超の熱伝導率TCを有することが更に好ましい。密度に関して、無機充填剤は、3.5g/cm3未満、好ましくは3.2g/cm3未満、より好ましくは3g/cm3未満のかさ密度を示すことが好ましい。これらのパラメータに該当する任意の無機材料を使用することができるが、無機充填剤は、珪藻土、パーライト及びヒュームドシリカ並びにそれらの任意の組合せ及び混合物から選択されることが好ましい。これらの化合物は、大量に容易に入手可能であり、非毒性であり、本明細書に記載される少なくとも1つの保護層中の少なくとも1つのケイ酸塩化合物及びシリコーンゴムと適合性がある。好ましくは、無機充填剤及び少なくとも1つのケイ酸塩化合物は、請求項1~3のいずれか一項に定義されるような総量で少なくとも1つの保護層中に含有される。要約すると、低い熱伝導率を有する保護フィルムを有することが望ましい。これは、本開示による保護フィルムによって達成することができる。したがって、本明細書に記載される保護フィルムは、有利には、1W/mK未満、好ましくは0.8W/mK未満、より好ましくは0.7W/mK未満のASTM D5470による熱伝導率を示すことができる。
【0025】
本明細書に記載される保護フィルムは、少なくとも1つの金属メッシュを更に含むことも好ましい。これは、特に爆風に対する改善された機械的安定性の利点を有し、衝突点からの熱エネルギーの放散を助けることもできる。少なくとも1つの金属メッシュは、少なくとも1つの保護層上に取り付けられてもよく、又は少なくとも1つの保護層内に埋め込まれてもよい。好ましくは、金属メッシュの金属は、鋼、チタン、アルミニウム、及びそれらの任意の組合せから選択され、好ましくは鋼及びアルミニウムから選択され、より好ましくは鋼から選択される。少なくとも1つの金属メッシュは、0.3mm~2mm、好ましくは0.5~1.8mm、より好ましくは0.6~1.7mmの範囲の厚さを有することが好ましい。金属メッシュは、0.5~3mm、好ましくは0.7~2.8mm、より好ましくは0.9~2.5mmの範囲のメッシュ幅を示すことができる。
【0026】
本開示による保護フィルムは、好ましくは、少なくとも0.5mm、好ましくは少なくとも0.6mm、より好ましくは0.7mmの厚さを有する。本明細書に記載される保護フィルムは、最大3.5mm、好ましくは最大3.2mm以下、より好ましくは最大3mmの厚さを有することも好ましい。好ましくは、保護フィルムは、0.5~3.5mm、好ましくは0.6~3.2mm、より好ましくは0.7~3mmの範囲の厚さを有する。より薄い厚さでは、熱暴走事象の場合に所望の保護を提供することができない場合があり、より厚い厚さでは、多くの用途にとって非実用的であるとみなされる場合がある。概ね、本明細書に記載される保護フィルムは、少なくとも900g/m2、より好ましくは少なくとも1000g/m2、より好ましくは少なくとも1100g/m2、更により好ましくは少なくとも1200g/m2の面積重量を示すことも好ましい。好ましくは、熱暴走保護フィルムは、最大8000g/m2、好ましくは最大7000g/m2、より好ましくは最大6000g/m2の面積重量を示す。したがって、本明細書に記載される熱暴走保護フィルムは、900~8000g/m2、好ましくは1000~7000g/m2、より好ましくは1100~6000g/m2の範囲の面積重量を示すことが好ましい。
【0027】
本開示による保護フィルムは、有利には、断熱を提供することができる。また、本明細書に記載の保護フィルムは、アーク放電に対する電気絶縁を更に提供することができる。アーク放電に対する断熱及び電気絶縁の両方が、リチウムイオン電池又は電池モジュールにおける熱暴走事象において非常に有利である。この点に関して、保護フィルムは、1~20KV/mmの範囲のDIN EN ISO 60243-2(DC)による絶縁破壊強度、直流を示すことが好ましい。
【0028】
輸送及び適用目的のために、保護フィルムは、その主表面の少なくとも1つの上に少なくとも1つのライナーを更に含むことが好ましい。シリコーンフィルム用のライナーは当業者に周知であり、容易に商業的に入手可能である。本発明による保護フィルムは、シートの形態で提供されてもよく、ロールに巻き取られた形態で提供されてもよく、好ましくは、レベルワウンド(level-wound)ロールで提供されてもよい。後者は、自動化された装置、特に高速ロボット装置による適用に適しているので特に有利であり、これは大規模な工業生産作業に非常に望ましい。
【0029】
本開示はまた、本開示による保護フィルム、及び保護フィルムを含むリチウムイオン電池を含む、リチウムイオン電池モジュール、すなわち、本明細書に記載のリチウムイオン電池モジュールを提供する。
【0030】
本開示は、熱暴走保護フィルムの調製方法であって、以下:
(i)少なくとも1つのケイ酸塩化合物をシリコーンに配合する工程と、
(ii)工程(i)で得られたシリコーン組成物から少なくとも1つの保護層を形成する工程と、
(iii)任意選択で、工程(ii)で得られた少なくとも1つの保護層を乾燥又は硬化させ、それによって熱暴走保護フィルムを得る工程と、を含み、
少なくとも1つのケイ酸塩化合物が、少なくとも1つの保護層の総重量に基づいて、少なくとも40重量%の量で前記少なくとも1つの保護層中に含有される、方法を提供する。
【0031】
本明細書に記載される保護層及び保護フィルムに関連して本明細書に開示される材料、量、厚さ及び他のパラメータは、本開示による方法にも制限なく適用されることが理解される。少なくとも1つのケイ酸塩化合物をシリコーン、好ましくはシリコーンゴムに配合することは、当該技術分野で十分に確立された手段によって実施することができる。少なくとも1つの保護層を形成することは、工程(i)で得られたシリコーン組成物をカランダ処理(calandring)し、層化、コーティング及び/又は噴霧することによって達成され得る。
【0032】
最後に、本開示は、リチウムイオン電池における熱暴走事象の防止又は緩和のための、本明細書に記載の保護フィルムの使用を提供する。好ましくは、リチウムイオン電池は、自動車、商業輸送、船舶、構造体又は航空宇宙用途における電池である。特に、電池は、ビークル、建物、又は自転車の電池であることが好ましい。
【実施例】
【0033】
本開示を更に説明するが、本開示をこれらに限定することを望むものではない。以下の実施例は、特定の実施形態を説明するために提示するが、いかなる方法によっても限定することを意図するものではない。その前に、材料及びこれらの特性を特徴付けるために使用されるいくつかの試験方法を説明する。全ての部及び百分率は、別段の指示のない限り、重量に基づく。
【0034】
試験方法
トーチ及びグリット試験(Torch and Grit Test、T&GT)
各サンプルを、VHBテープ(3M Company)によって厚さ0.7mmの亜鉛メッキ鋼又はステンレス鋼シートのいずれかにマウントした。サンプルは、Bethlehem Apparatus Company Inc(Hellertown,PA,USA)から入手したChampion Bench水素トーチバーナーのノズルから、44.5mmに配置した。熱電対(TC0)は、バーナのノズルから31.8mmに配置し、別の熱電対は当該鋼シートの裏側の中心に置いた。ブラスターガンには、120グリットの酸化アルミニウムの非成形媒体を装填し、サンプルから同じ距離(44.5mm)でトーチのノズルと整列させた。Champion Bench Burnerのトーチを1200℃に調整した。次いで、媒体ブラスターガンを172.4kPa又は344.7kPaで作動させた。サンプルは、1)標的位置において、10秒の活性ブラスト時間及び5秒の不活性ブラスト時間で各々15秒間続く12のブラスト(爆風)サイクルに曝し、又は2)38.1mm(1.5インチ)の間隔を開けた3つの標的位置において、5秒の不活性ブラスト時間、続いて10秒の活性ブラスト時間、次いで5秒の非活性ブラスト時間の20秒続く1つのブラストサイクルのいずれかに曝した。バリア物品の層に溶け落ち又は媒体ブラストのいずれかによって引き起こされたホールが視認された場合、サンプル試験を停止した。
【0035】
絶縁耐力試験
材料の絶縁耐力は、DIN EN 60243-2に従って直流で測定した。結果をKV/mmとして決定した。
【0036】
自由落下衝撃試験
サンプルの機械的安定性を評価するための単純な自由落下衝撃試験(自動車用途において道路衝撃、加速及び振動から予想される)を実施した。以下のプロトコルに従った:トーチ&グリット試験においても使用した実施例及び比較例のサンプルを、1.8mの高さから床に落とした。この手順を20サイクル続けた。各サイクルの後、亀裂、部品の脱落、又は構造体の破壊などの損傷についてサンプルを目視検査した。
【0037】
調製
以下の層を有する構造体を作製した:
1.)ECRガラスVlies 50g/m2 0.5mmの厚さ
2.)ケイ酸塩化合物充填剤を有するシリコーンゴム
3.)任意選択で、布地又は金属メッシュ
4.)任意選択で、ケイ酸塩化合物充填剤を有するシリコーンゴム
5.)ECRガラスVlies 50g/m2 0.5mmの厚さ
【0038】
層1.)及び2.)を使用して層2.)及び4.)を包み、乾燥が完了するまで製造中の適切な取り扱いを可能にした。
【0039】
全般的には、ケイ酸塩化合物をシリコーンゴム(Wacker Silgel 612又は2成分シリコーンゴムのいずれか)に配合し、得られたシリコーンゴム/ケイ酸塩化合物充填剤組成物をポリマーキャリア上に所望の厚さでコーティングすることによって、保護層を形成した。布地又は金属メッシュが使用された場合(上記の層3.))、シリコーンゴム/ケイ酸塩化合物充填剤組成物は、布地又は金属メッシュの両側にコーティングされた。その後、ECRガラスフリースを両面に適用した。最後に、この構造体を室温で3時間乾燥させた。
【表1】
【表2】
【表3】
【0040】
上記の層1)、2)及び5)からなるフィルムを、処方物1、2及び3を用いて製造し、それぞれ実施例1、2及び3を得た。比較例1として、ケイ酸塩化合物充填剤を全く含まない、層2.)を含むフィルムを使用した。フィルムのサンプルを炉に入れ、異なる温度に10分間曝露したときの安定性について試験した。結果を表4に要約する。
【表4】
【0041】
評価により、ケイ酸塩化合物を全く含まない比較例1は、400℃までは安定であるが、それを超える温度では安定でないことが示された。実際に、比較例1の材料は崩壊し、より高い温度ではSiO
2粉末のみが残った。対照的に、実施例1、2及び3は、最大1200℃の温度への曝露に耐えた。
【表5】
【0042】
処方物4を使用して、2つの更なるフィルム、すなわち、鋼ワイヤメッシュ(上記の層1.)~5))を含む実施例4、及び金属メッシュ(すなわち、実施例1~3のような)を含まない実施例5を製造した。実施例5及び実施例6によるフィルムの詳細並びにトーチ及びグリット試験(手順1及び2の両方に従う)の試験結果を表6に要約する。
【表6】
【0043】
実施例4及び5によるフィルムの両方が、トーチ及びグリット試験の両方の手順に耐えた。
【0044】
処方物5及び6では、ケイ酸塩化合物(例えば、ムライト)の一部を、低い熱伝導率を有する無機充填剤、すなわち、それぞれ珪藻土及びパーライトで置き換えた。処方物5及び6を表7及び表8に要約する。
【表7】
【表8】
【0045】
実施例1~3の手順に従って、処方物5及び6をそれぞれフィルム6及び7に形成した。結果を表9に要約する。
【表9】
【0046】
実施例6及び例7のフィルムを、次いで、トーチ及びグリット試験で試験した(手順1)。また、裏面の温度を測定した。表10において、これは、実施例5のフィルムを用いて同じ試験を行うことから得られた結果と比較される。
【表10】
【0047】
低密度及び低熱伝導率の無機質充填剤を有する実施例6及び7は、トーチ及びグリット試験において、実施例5よりも低いサンプルの裏面温度を示した。また、機械的性能及び耐爆風性は、実施例5と比較していくらか低下する。しかしながら、機械的性能及び耐爆風性は、多くの用途に対して既に十分であり得る。これにより、断熱とともに耐爆風性を提供することが可能となる。
【0048】
次いで、実施例5によるフィルムを、それぞれ、処方物7及び処方物8の吸熱性充填剤を含有する層を適用することによって、更に使用した。処方物7及び8を表11及び表12に要約する。
【表11】
【表12】
【表13】
【0049】
実施例4、5、8及び10は、トーチ&グリット試験においてプレートが溶け落ちないという点で優れた性能を示した。一方、実施例9及び11では、最終的にプレートが溶け落ちたが、それぞれの穴は小さく(それぞれ 10mm及び8mm)、特にワイヤーメッシュが使用されていないという事実を考慮すると、全体的な性能は非常に良好であるとみなされた。
【0050】
更に、本明細書に記載の保護フィルムの製造において、熱可塑性スクリムを使用した。熱可塑性スクリムとして、Delcotex Delius Techtex GmbH & Co.KG,Germanyによって製造された商品名「Delcotex Delicomp」のポリプロピレンスクリムを使用した。特に、Delcotex 86061は、200g/m2のDIN EN 12127による面積重量及び0.8mmのDIN EN ISO 5084による厚さを有するスクリムタイプである。Delcotex 86072もまた、270g/m2のDIN EN 12127による面積重量及び0.65mmのDIN EN ISO 5084による厚さを有するスクリムタイプである。本明細書に記載の処方物4を使用して、約3mmの厚さを有し、以下の構造体を有するフィルムを調製した:
第1の構造体:
層1:処方物4
層2:熱可塑性グリッド
層3:処方物4
第2の構造体:
層1:処方物4
層2:層1に積層された熱可塑性グリッド。
【0051】
調製後、このようにして得られた全てのフィルムは、柔軟で、曲げ可能であり、3D形状に成形可能であった。ホットエアガンを用いてサンプルを加熱し、熱可塑性グリッドの熱活性化を開始することによって、異なる形状が作製された。材料を冷却した後、所望の形状を凍結した。それによって、本明細書に記載される保護フィルムを特定の形状に形成し、熱活性化後に3次元安定性を達成することが可能になる。
【国際調査報告】