(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】高精度突き出し調整を有する溶接装置、ロボット溶接システム、及びワイヤ電極の送り方法
(51)【国際特許分類】
B23K 9/12 20060101AFI20241108BHJP
【FI】
B23K9/12 301A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532419
(86)(22)【出願日】2023-04-13
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 EP2023059678
(87)【国際公開番号】W WO2023208600
(87)【国際公開日】2023-11-02
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】504380611
【氏名又は名称】フロニウス・インテルナツィオナール・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】FRONIUS INTERNATIONAL GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110002871
【氏名又は名称】弁理士法人坂本国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビンダー、マヌエル
(72)【発明者】
【氏名】ワルドホーア、アンドレス
(72)【発明者】
【氏名】スタンプフル、クリスチャン
(57)【要約】
溶接装置100及びワイヤ電極1を溶接装置100の溶接トーチ140のコンタクトチップ141から規定の自由ワイヤ電極長Sを有する位置に送る方法を提供する。一方のワイヤ電極1と他方の基準電極160との間の電圧変化に関する情報が、電圧変化の時点におけるワイヤ電極端2の位置を決定するために使用される。その後、ワイヤ電極を所望の位置に正確に移動させることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接装置(100)のワイヤ電極(1)を送る送り装置(110)と、
前記ワイヤ電極(1)に電気的に接触するワイヤ電極接触装置(150)と、
基準電位に電気的に接続する、または接続可能な基準電極(160)と、
前記ワイヤ電極接触装置(150)と前記基準電極(160)との間の電気パラメータを測定するように構成された電気パラメータ測定装置(120)と、
規定された電位に電気的に接続する、または接続可能なコンタクトチップ(141)を有する溶接トーチ(140)と、
前記ワイヤ電極(1)が前記送り装置(110)によって前記コンタクトチップ(141)のコンタクトチップ端(142)から規定の自由ワイヤ電極長(S)を有する位置へと送られる、少なくとも1つの位置決め方法を実施するように構成された制御装置(130)とを備え、
前記制御装置(130)は、前記少なくとも1つの位置決め方法を実行するために、
前記コンタクトチップ(141)が規定の電位に接続され、前記基準電極が前記基準電位に接続され、前記ワイヤ電極(1)が前記送り装置(110)により送られている間に、前記電気パラメータ測定装置(120)によって測定された電気パラメータの変化が、ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ(141)との間の電気接点で検出される、少なくとも1つの測定に基づいて、前記ワイヤ電極(1)の前記ワイヤ電極端(2)の現在位置を決定することと、
前記コンタクトチップ(141)の既知のコンタクトチップ長(L)を用いて、決定された前記現在位置に基づき、前記規定の自由ワイヤ電極長(S)が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、前記ワイヤ電極(1)を送るように前記送り装置(110)を制御することを行うように構成されている、
溶接装置(100)。
【請求項2】
前記基準電極(160)はグランド(GND)に電気的に接続する、または接続可能であり、前記電気パラメータ測定装置は、前記基準電極(160)が前記グランド(GND)に電気的に接続されたときに、少なくとも前記ワイヤ電極(1)と前記グランド(GND)との間の電圧を測定するように構成された電圧測定装置(120)を備える、請求項1に記載の溶接装置(100)。
【請求項3】
前記基準電極(160)は、前記溶接装置(100)の前記溶接トーチ(140)の前記コンタクトチップ(141)に電気的に接続する、または接続可能であり、前記電気パラメータ測定装置は、前記基準電極(160)が前記コンタクトチップ(141)に電気的に接続されたときに、前記ワイヤ電極(1)と前記コンタクトチップ(141)との間の電圧を少なくとも測定するように構成された電圧測定装置(120)を備える、請求項1に記載の溶接装置(100)。
【請求項4】
前記ワイヤ電極接触装置(150)が、前記ワイヤ電極(1)のための摺動接触部及び/または駆動ローラを有する、請求項1から3のいずれかに記載の溶接装置(100)。
【請求項5】
前記制御装置(130)は、前記制御装置(130)の構成要素に信号遅延値を提供するように構成された信号伝搬時間提供モジュール(131)を有し、前記制御装置(130)は、前記ワイヤ電極端(2)の現在位置を決定するときに、前記提供された信号遅延値を考慮に入れるように構成される、請求項1から4のいずれかに記載の溶接装置(100)。
【請求項6】
前記制御装置(130)は、前記電気パラメータの変化の複数の測定値に基づいて、前記ワイヤ電極端(2)の前記現在位置の決定を実行するように構成される、請求項1から5のいずれかに記載の溶接装置(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの位置決め方法は、精密位置決め方法を含み、前記制御装置は、前記精密位置決め方法において、
前記送り装置(110)によって前記ワイヤ電極が第1の速度(V1)で前記コンタクトチップ(141)に向かって前方に送られている間に、前記電気パラメータ測定装置(120)を用いて前記電気パラメータの第1の変化を検出することと、
その後、前記電気パラメータ測定装置(120)を用いて少なくとも前記電気パラメータの第2の変化を検出するまで、前記ワイヤ電極(1)を第2の速度(R2)で後方に送るように前記送り装置(110)を制御することと、
その後、前記電気パラメータ測定装置(120)を用いて前記電気パラメータの第3の変化を検出するまで、前記ワイヤ電極(1)を第3の速度(V3)で前方に送るように前記送り装置(110)を制御することと、
少なくとも前記電気パラメータの第3の変化が検出された測定に基づいて、前記ワイヤ電極(1)の前記現在位置を決定することと、を行うよう構成され、
前記第3の速度(V3)は好ましくは前記第1の速度(V1)よりも低い、請求項1から6のいずれかに記載の溶接装置(100)。
【請求項8】
前記制御装置(130)は、前記ワイヤ電極(1)の前記現在位置を決定した後、前記規定の自由ワイヤ電極長が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、前記ワイヤ電極(1)を第4の速度(V4)でさらに前方に送るように構成される、請求項7に記載の溶接装置(100)。
【請求項9】
請求項1から7のいずれか1項に記載の溶接装置(100)と、
前記溶接装置(100)の前記溶接トーチ(140)を案内するように構成されたロボット装置(200)と、
前記ロボット装置(200)を制御するための制御信号を生成及び送信することと、前記溶接装置(100)を制御するための制御信号を生成及び送信することとの両方を行うように構成されたシステム制御装置(300)とを備え、
前記溶接装置(100)の前記制御装置(130)は、前記制御信号のうち、前記システム制御装置(300)から位置決め方法トリガ信号を受信するように構成され、それに応答して、前記制御装置(130)は少なくとも1つの位置決め方法のうちの1つを実行する、ロボット溶接システム(1000)。
【請求項10】
前記位置決め方法は、前記溶接装置(100)が溶接のために制御される2つの位置の間を前記ロボット装置(200)が移動している間に実行され、前記移動中には溶接が行われない、請求項9に記載のロボット溶接システム(1000)。
【請求項11】
ワイヤ電極(1)を溶接装置(100)の溶接トーチ(140)のコンタクトチップ(141)から規定の自由ワイヤ電極長(S)を有する位置に送る方法であって、
前記ワイヤ電極(1)の所望の自由ワイヤ電極長(S)を規定することと(S10)、
前記ワイヤ電極(1)と基準電極(160)との間の電気パラメータを測定することと(S20)、
前記ワイヤ電極(1)をコンタクトチップ(141)の方向に送ることと(S30)、
前記ワイヤ電極(1)が送られている間に、ワイヤ電極端(2)と規定の電位に電気的に接続される前記コンタクトチップ(141)との間の電気接点で測定された電気パラメータの変化に基づいて、前記ワイヤ電極(1)の前記ワイヤ電極端(2)の現在位置を検出することと(S40)、
決定された前記現在位置に基づいて、前記コンタクトチップ(141)の既知のコンタクトチップ長(L)を使用して、前記規定の自由ワイヤ電極長(S)が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、前記ワイヤ電極(1)を送ることと(S50)、を含む方法。
【請求項12】
前記基準電極(160)は、グランド(GND)に電気的に接続され、前記ワイヤ電極(1)と前記グランド(GND)との間の電圧の測定(S20)が、前記電気パラメータを測定するために実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基準電極(160)が、前記溶接装置(100)の前記溶接トーチ(140)の前記コンタクトチップ(141)に電気的に接続され、前記ワイヤ電極(1)と前記コンタクトチップ(141)との間の電圧の測定(S20)が前記電気パラメータを測定するために実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ワイヤ電極(1)が前記コンタクトチップ端(142)に向かって第1の速度(V1)で前方に送られている間に、前記電気パラメータの第1の変化を検出することと(S41)、
少なくとも前記電気パラメータの第2の変化が検出されるまで、前記ワイヤ電極(1)を第2の速度(R2)で後方に送ることと(S42)、
少なくとも前記電気パラメータの第3の変化が検出されるまで、前記ワイヤ電極(1)を第3の速度(V3)で前方に送ることと(S43)、
少なくとも前記電気パラメータの第3の変化が検出された測定に基づいて、前記ワイヤ電極端(2)の前記現在位置を決定することと(S40)、を含み、
前記第3の速度(V3)は、好ましくは前記第1の速度(V1)よりも低い、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ワイヤ電極端(2)の前記現在位置を決定(S50)した後、前記ワイヤ電極(1)は、前記規定の自由ワイヤ電極長(S)が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、第4の速度(V4)で前方に送られる(S60)、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高精度に突き出し設定された溶接装置、高精度に突き出し設定されたロボット溶接システム、及び高精度に突き出し設定されたワイヤ電極の送り方法に関する。「突き出し(stickout)」とは、溶接装置の溶接トーチのコンタクトチップのコンタクトチップ端からのワイヤ電極の自由ワイヤ電極長を意味する。
【背景技術】
【0002】
多くの溶接装置及び溶接プロセスにおいて、溶接トーチのコンタクトチップのコンタクトチップ端からの自由ワイヤ電極長を高い精度で知り、あるいは提供することが必要である。例えば、溶接トーチがロボットでガイドされる場合、ロボットの位置と共にコンタクトチップ端の位置は、ときに高い精度で知られる。したがって、ワイヤ電極端とワークピースとの間の距離が不正確であるか、あるいは分からないということは、本質的に、コンタクトチップ端からの自由ワイヤ電極長が正確に知られていないことに起因する。ワイヤ電極端とワークピースとの間の距離は、例えばアークを点火する場合に、溶接プロセスを制御するために重要となる。実際の溶接プロセスの上流または下流のプロセスについて、そのような距離を正確に知ることも重要であり得る。ワイヤ送り、すなわちワイヤ電極の送りが監視装置によって継続的に監視される場合であっても、監視エラーが蓄積する可能性があり、したがって、自由ワイヤ電極長がますます不正確に設定される可能性がある。さらに、溶接装置のユーザは、ワイヤ電極端を手動で切断するかもしれず、監視装置に知られることなく、自由ワイヤ電極長を変更しているかもしれない。
【0003】
したがって、自由ワイヤ電極長は、通常、ルーラまたはゲージを使用して測定され、これには多くの時間を要し、また、時には例えば、ロボット溶接セルに到達困難であるために、測定ができないこともある。例えば、しばしばロボット溶接セルにアクセスしないか、または自動運転もしくは安全システムが提供される。さらに、この作業には、常に人手が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、自由ワイヤ電極長を特定の精度で設定することができる溶接装置を提供することにある。さらなる目的は、そのような溶接装置を含むロボット溶接システムを提供することにある。さらなる目的は、ワイヤ電極を溶接装置の溶接トーチのコンタクトチップから正確に規定された自由ワイヤ電極の位置に送る方法を提供することにある。さらなる目的は、自由ワイヤ電極長の設定が、手動溶接中に調整可能であり、または溶接システム、例えばロボット溶接システムによって自動的に調整可能であることにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
これらの目的は、独立特許請求項の主題によって解決される。
【0006】
したがって、以下の溶接装置を提供する。
【0007】
溶接装置の(消耗)ワイヤ電極を送るための送り装置と、
ワイヤ電極に電気的に接触するワイヤ電極接触装置と、
基準電位に電気的に接続する、または接続可能な基準電極と、
ワイヤ電極接触装置と基準電極との間の電気パラメータ、特に電圧を測定するように構成された電気パラメータ測定装置、特に電圧測定装置と、
ワイヤ電極が送り装置によってコンタクトチップのコンタクトチップ端から規定の自由ワイヤ電極長(「突き出し」)を有する位置へと送られる、少なくとも1つの位置決め方法を実行するように構成された制御装置とを備え、
送り装置は、少なくとも1つの位置決め方法を実行するために、
ワイヤ電極が送り装置によって送られている間に、電気パラメータ測定装置によって測定された電気パラメータの変化を検出する少なくとも1つの測定に基づいて、ワイヤ電極のワイヤ電極端の現在位置を決定することと、
決定された現在位置に基づいて、規定の自由ワイヤ電極長がワイヤ電極端とコンタクトチップ端との間に位置するまでワイヤ電極を送るように送り装置を制御することとを行うように構成されている、溶接装置。
【0008】
したがって、本発明の基本的な概念の1つは、電気パラメータ測定、特に電圧測定(より正確には電圧変化の検出)または電流測定がワイヤ電極端の現在位置を決定するために使用されることである。この目的のために、ワイヤ電極と電気的に接触するワイヤ電極接触装置が提供される。これにより、ワイヤ電極と基準電極との間の電気パラメータ、例えば電圧を測定することができる。必然的に導電性の消耗ワイヤ電極が溶接装置内の規定された点で電気的に接触し、別の電位と接触する場合、ワイヤ電極の位置は、これらの位置を知ることによって決定することができる。
【0009】
特に、ワイヤ電極は消耗ワイヤ電極である。
【0010】
ワイヤ電極が電気絶縁ライナ内を走り、従ってワイヤ電極がコンタクトチップに入るときにのみ、コンタクトチップと電気的に接触する場合に、特に有利である。コンタクトチップはどのようなときも規定の電位(「溶接プラス」)に保たれるので、溶接電流は、溶接されるワークピースの電位(「グランド」または「溶接マイナス」)に対して流れ、電気パラメータ測定装置は、ワイヤ電極がコンタクトチップと電気的に接触することによって生じる電圧変化または電流変化を検出するのに適している。規定の基準電位にある基準電極は、好ましくは、グランドに接続され得るか、または溶接トーチのコンタクトチップに接続されるか、または接続可能であり得る。このようにして、溶接装置に既に存在し、提供されている溶接電位を有利に使用することができる。しかしながら、基準電極が、溶接プラス及び溶接マイナスとは異なるさらなる電位にあることも考えられる。
【0011】
位置決め方法は、特にワイヤ電極が、溶接トーチに対して規定の位置に、特に、コンタクトチップ端の先に規定の自由ワイヤ電極長(「突き出し」)を有する位置に運ばれる処理として理解されるべきである。位置決め方法は、溶接電流が流れない、及び/又は位置決め方法中にワークピースが加工されない、又は接触されないという点で、溶接方法又は溶接プロセスとは特に異なる。位置決め方法は、ワイヤ電極の溶接装置に通し始めるところから、例えば新しいワイヤ電極(溶接ワイヤとも呼ばれる)を通すことによって自動的に実行することができる。
【0012】
しかしながら、位置決め方法は、溶接プロセス間に実行されるときに特に有利であり、その結果、自由ワイヤ電極長、しばしばワイヤ電極端とワークピースとの間の距離もまた、特定の精度で再認知される。また、以下に説明されるように、本発明のアイデアの強みは特に、2つの溶接プロセス間のデッドタイムが、所望の自由ワイヤ電極長をリセットするために、または言い換えれば、それを再調整するために使用され得るという事実にある。このようなデッドタイムは、例えばロボット溶接システムのロボットアームが、第1の溶接処理の終点と第2の溶接処理の始点との間を移動するときに発生し得る。したがって、このデッドタイムを利用することもできる。
【0013】
手動溶接では、コンタクトチップとワークピースとの間の理想的な距離をどのようにすべきかを溶接者に知らせるように、溶接開始前に、自由ワイヤ電極長が自動的に設定される場合には有利となりうる。これは、溶接プロセスの種類、ワークピースの型などに関する溶接機械の設定に基づいて自動的に設定することができる。
【0014】
一般に、電気パラメータ測定装置は、ワイヤ電極接触装置と基準電極の間の電気パラメータ(例えば、電圧または電流、及びそれから導出される電気可変値)を測定するように構成され、ワイヤ電極のワイヤ電極端の現在位置は、ワイヤ電極が送り装置によって送られている間に、電気パラメータ測定装置によって測定される電気パラメータの電気パラメータ変化(例えば、電圧変化または電流変化)が検出される、少なくとも1つの測定に基づいて、決定され得る。例えば、測定された電流は、最初は0mAであり、ワイヤ電極とコンタクトチップとの間に電気的接触がある場合には、1mA以上500mA以下の範囲の値に増加するだろう。したがって、電気パラメータの変化は、電流の増加となるだろう。
【0015】
以下では、電気パラメータ測定装置が、ワイヤ電極(より正確にはワイヤ電極接触装置)と基準電極との間の電圧変化を測定する、または測定しうる電圧測定装置であるか、または電圧測定装置を含む変形例を例として主に用いて、本発明を説明する。しかしながら、代替的に(または追加的に)、電気パラメータ測定装置は、上述のように、電流測定装置であってもよく、または電流測定装置を備えてもよいことが理解される。
【0016】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、基準電極は、グランドに電気的に接続されるか、または接続可能である。電気パラメータ測定装置は、少なくともワイヤ電極とグランドとの間の電圧を測定するように構成された電圧測定装置であるか、または電圧測定装置を含む。特に、基準電極は、ワークピースに電気的に接続することもできる。このような構成は、極めて簡素であり、従来の溶接装置と比較して追加の要素をほとんど必要としない。
【0017】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、基準電極は、溶接装置の溶接トーチのコンタクトチップに電気的に接続されるか、または接続可能である。電気パラメータ測定装置は、少なくともワイヤ電極とコンタクトチップとの間の電圧を測定するように構成された電圧測定装置であるか、または電圧測定装置を含む。すでに説明したように、ワイヤ電極は、通常、コンタクトチップに侵入する時に、コンタクトチップと電気的に接触する(短絡)。
【0018】
本発明によれば、電気パラメータの変化、特に電圧変化または電流変化を、この時点で検出することができるため、ワイヤ電極端がコンタクトチップの入口に位置すると結論付けることができる。送り装置による既知のワイヤ電極送り速度(または略してワイヤ送り速度)と、コンタクトチップ先端とコンタクトチップ終端との間の既知の距離(コンタクトチップ長)とを使用して、ワイヤ電極端はコンタクトチップの開始の既知の位置から、コンタクトチップ端の前方の所望の規定の自由ワイヤ電極長を有する所望の終位置へと送られ得る。
【0019】
コンタクトチップの長さは、事前に知ることができ、例えば、制御ユニットに記憶され、または記憶することができる。また、記憶媒体または認証コードがコンタクトチップまたは溶接トーチに連結されることによって、制御装置はコンタクトチップの長さ(コンタクトチップ長)を自動的に決定しうることも考えられる。いくつかの変形例では、コンタクトチップ長が未知である場合、溶接装置のユーザは、例えば、ディスプレイまたはボイス制御によって、コンタクトチップの長さを入力するようにできる。次いで、ユーザはコンタクトチップ長を測定し、それを部品リストから取り出し、または何らかの他の方法でコンタクトチップ長を決定し、それを、入力装置を使用して制御装置に送信することができる。入力装置は例えば、溶接装置のタッチスクリーンとすることができる。溶接装置が音声制御システムを備えている場合、ユーザは自然言語でコンタクトチップ長を制御ユニットに伝えることもでき、または、自然言語の入出力によって、制御ユニットとユーザとの間で全体のやりとりを行うことができる。
【0020】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、ワイヤ電極接触装置は、ワイヤ電極のための摺動接触ローラ及び/または駆動ローラを有する。このようにして、ワイヤ電極は、簡単かつ制御可能な方法で電気的に接触することができる。特に駆動ローラは、送り装置内の典型的な構成要素であり、例えば、ワイヤ電極との良好な機械的接触がいずれにしても必要であり、したがって、ワイヤ電極の電気的接触を簡単に構成することができる。しかしながら、ワイヤ電極接触装置は、ワイヤ電極に押し付けられたガイドローラ、摺動接触部、又は導電性潤滑のある少なくとも1つのボールベアリングを介してワイヤ電極と電気的に接触することも考えられる。電位にタップするだけで十分であるので、ワイヤ電極への電気的結合は、必ずしも低抵抗である必要はない。例えば、ワイヤ電極への電気的結合は100キロオームまでの電気抵抗であってよく、例えば、0.5キロオーム以上100キロオーム以下、または10キロオーム以上50キロオーム以下の電気抵抗を有することができる。
【0021】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、制御装置は、制御装置の構成要素に信号遅延値(「信号伝搬時間誤差」)を提供するよう構成された信号伝搬時間提供モジュールを有する。制御装置は、ワイヤ電極端の現在位置を決定するときに、提供された信号遅延値を考慮に入れ、特にそれを補正するように構成しうる。信号伝搬時間提供モジュールは、信号遅延値を記憶された量として備えるか、または現在の信号遅延値を決定するように構成され得る。信号遅延値はユーザの要求時に、定期的に、または所定のトリガに従って自動的に、決定することができる。トリガは、例えば、現在判明している信号遅延値を用いて本発明による位置決め方法を実行しても自由ワイヤ電極長が所望の精度をもたらさないことが判明した場合の妥当性チェックの結果となりうる。
【0022】
また、制御装置は、信号遅延値を用いずにワイヤ電極端の現在位置を算出するが、送り装置を制御する制御信号を調整して規定の自由ワイヤ電極長を設定し、信号伝搬時間提供モジュールからの信号遅延値を考慮することも考えられる。特に、制御装置は、依然として送られるべきワイヤ電極長を、信号遅延値にワイヤ電極の送り速度を乗じた値に等しい値だけ減少させる。
【0023】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、またはさらなる実施形態の改良によれば、制御装置は、ワイヤ電極端の現在位置を、電気パラメータの変化(例えば、電圧変化)の複数の測定に基づいて、決定するように構成される。特に、これらの複数の測定のうちの2つ以上は、ワイヤ電極端の異なる位置で実行することができるため、これらの測定の各々は、ワイヤ電極の現在の位置についてさらなる情報を提供する。
【0024】
代替的にまたは追加的に、電気パラメータ(またはいくつかの電気パラメータ)の変化の2つ以上の測定はまた、異なるワイヤ電極送り速度方向で行われ得る、すなわち、ワイヤ電極がコンタクトチップ端に向かって前方に送られるときの少なくとも1つの測定と、ワイヤ電極が送り装置の方向の後方に送られるときの少なくとも1つの測定とが行われ得る。異なるワイヤ電極送り速度方向におけるそのような測定は、それぞれ、ワイヤ電極の同じ位置及び/または異なる位置(または溶接トーチ、特にコンタクトチップの同じ接触点及び/または異なる接触点)で行うことができる。ワイヤ電極送りの開始及び終了、並びに送り装置の他のパラメータと同様に送り速度は、好ましくは正確に知られているので、ワイヤ電極端の現在の位置及び/または挙動に関する追加の情報はこうして収集することができ、位置決め方法をさらに正確にすることができる。
【0025】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、少なくとも1つの位置決め方法は、精密位置決め方法を含む。位置決め方法は、精密位置決め方法から構成されてもよく、または精密位置決め方法に加えてさらなるオプション、たとえば簡易位置決め方法を含んでもよい。簡易位置決め方法は、簡易位置決め方法が労力をあまり必要としない(例えば、より迅速に実行され得る)点において特に精密位置決め方法と異なりうるが、精密位置決め方法と比較してワイヤ電極端の位置決めの精度は低い。
【0026】
制御装置は、精密位置決め方法において、
送り装置によってワイヤ電極が第1の速度でコンタクトチップに向かって前方に送られる間に、電気パラメータ測定装置を用いて電気パラメータの第1の変化(例えば、第1の電圧変化)を検出することと、
その後、電気パラメータ測定装置を用いて少なくとも電気パラメータの第2の変化(例えば、第2の電圧変化)を検出するまでワイヤ電極を第2の速度で後方に送るよう送り装置を制御することと、
その後、電気パラメータ測定装置を用いて電気パラメータの第3の変化(例えば、第3の電圧変化)を検出するまでワイヤ電極を第3の速度で前方に送るよう送り装置を制御することと、
少なくとも第3の変化が検出された測定に基づいて、ワイヤ電極の現在位置を決定すること、を行うように構成され得る。
好ましくは、第3の速度は第1の速度よりも低い。より低い速度で送ることによって、ワイヤ電極の送り、ひいては、ワイヤ電極の位置決めをより高い精度で行うことができる。電気パラメータの第1及び/または第2の変化を測定する主な目的は、規定の(すなわち、所望の)自由ワイヤ電極長を達成するために、ワイヤ電極端が、(より遅い)第3の速度で可能な限り少なく送られるだけでよいことを確保することにある。自由ワイヤ電極長の最も正確な設定は、ワイヤ電極を常に特に低速で送ることで達成され、その結果、オーバートラベル、スリップ、及び信号遅延によりワイヤ電極端の位置決めが不正確となることを最小限にすることが理解される。しかしながら、これとは対照的に、位置決め方法は、存在するデッドタイム内で実行できるように可能な限り迅速に実行しうることが好ましく、または、必要であれば、非常に短い追加のデッドタイムを要するのみであることが好ましい。例えば、自動車産業では、デッドタイムを可能な限りゼロに近づけることを目標とする。
【0027】
制御装置は、特に好ましくは、ワイヤ電極の現在位置を決定した後、規定の自由ワイヤ電極長がワイヤ電極端とコンタクトチップ端の間に位置するまで、ワイヤ電極を第4の速度でさらに前方に送るように構成される。第3の速度でのワイヤ電極の送りが、安定的かつ単調に増加し、第4の速度での送りへと移行する場合、特に好ましい。第4の速度は、好ましくは第3の速度よりも大きい。ワイヤ電極(正確には、ワイヤ電極端)の現在の位置が、電気パラメータの第3の変化が測定される際に正確に判明している場合、ワイヤ電極の終端の位置により迅速に到達し、例えば、より迅速に溶接を継続することができるように、ワイヤ電極自体を、(増加した)第4の速度で、規定の自由ワイヤ電極長を有する位置に送ってもよい。
【0028】
本発明はまた、本発明に係る溶接装置を含むロボット溶接システムを提供する。ロボット溶接システムは、溶接装置の溶接トーチを案内するように適合されたロボット装置(例えば、ロボットアーム)と、ロボット装置を制御するための制御信号を生成及び送信するとともに、溶接装置を制御するための制御信号を生成及び送信するように構成されたシステム制御装置とをさらに含む。溶接装置の制御装置は、有利には制御信号のうち、システム制御装置から位置決め方法トリガ信号を受信し、それに応答して少なくとも1つの位置決め方法のうちの1つを実行するように構成される。システム制御装置は、ロボット装置に組み込まれてもよく、溶接装置に組み込まれてもよく、または溶接装置及びロボット装置の両方とは別個に構成及び配置されてもよい。例えば、システム制御装置は、遠隔に配置されたサーバによって、またはクラウドコンピューティングプラットフォームによって実装してもよい。
【0029】
システム制御装置の特に有利な点は、例えば、ロボット装置はまず移動されるか、または再位置合わせされなければならないため、溶接が開始される時や、デッドタイムがある時に関する情報を有することである。例えば、システム制御装置は、溶接順序計画が与えられ、システム制御装置は、この溶接順序計画に従って、前の溶接プロセスの終了と次の溶接プロセスの開始との間にどれだけのデッドタイムが必要であるかを、自動的に決定することができる。
【0030】
システム制御装置は、少なくとも1つの位置決め方法のうちの各位置決め方法の継続時間または最大継続時間に関する情報を有するデータベースをさらに含むことができる。したがって、既知のデッドタイムに基づいて、システム制御装置は、溶接装置の制御装置を有利に制御して、次のデッドタイム内で実現可能な最も正確な位置決め方法を実行することができる。このようにして、いくつかの溶接プロセス(または、溶接タスク)を有する溶接スケジュールにおける少なくとも1つのデッドタイム、好ましくはいくつかのデッドタイム、最も好ましくは全てのデッドタイムを、溶接スケジュールにおいて使用することができ、既知の、特に規定の自由ワイヤ電極長が、溶接プロセスの開始の前に可能な限り頻繁に、または常に利用可能であることを確保することできる。
【0031】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、少なくとも1つの位置決め方法は、溶接のために溶接装置が制御される2つの位置の間をロボット装置が移動している間に実行され、そしてこの移動中には溶接は行われない。言い換えると、すでに論じたように、位置決め方法は、好ましくは、溶接装置のデッドタイム中に実行されてもよく、すなわち、例えば、溶接トーチが次の溶接プロセスのワークピースまでの正しい距離及び/または方向にはないという理由で、溶接ができないか、または溶接プロセスが実行されない時間に実行されてもよい。
【0032】
さらに、本発明は、ワイヤ電極を溶接装置の溶接トーチのコンタクトチップから規定の自由ワイヤ電極長を有する位置に送る方法を提供する。該方法は、少なくとも
ワイヤ電極の所望の自由ワイヤ電極長を規定するステップと、
ワイヤ電極と基準電極との間の電気パラメータ、例えば電圧を測定するステップと、
コンタクトチップの方向にワイヤ電極を送るステップと、
ワイヤ電極が送られている間に測定された電気パラメータの変化に基づいて、ワイヤ電極、特にワイヤ電極のワイヤ電極端の現在位置を決定するステップと、
規定の自由ワイヤ電極長がワイヤ電極端とコンタクトチップ端の間に位置するまで、決定された現在位置に基づいてワイヤ電極を送るステップと、
を含む。
【0033】
ワイヤ電極の所望の自由ワイヤ電極長は、溶接装置の制御装置に記憶された自由ワイヤ電極長の設定値に基づいて決定してよい。あるいは、所望の自由ワイヤ電極長は、例えば、上述のような、入力装置を介したユーザの入力によって、及び/またはシステム制御装置からの制御信号によって、実行される溶接プロセスに応じて規定してもよい。また、自由ワイヤ電極長は、例えばデータベースを用いて実行される溶接プロセスのパラメータに基づいて、制御装置によって自動的に規定されることも考えられる。
【0034】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、ワイヤ電極端の現在の位置を決定するときに、信号遅延値が考慮される。このようにして、現在位置をより正確に決定することができる。
【0035】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、またはさらなる実施形態の改良によれば、ワイヤ電極端の現在位置の決定は前述のように、電気パラメータの変化(たとえば、電圧変化)の複数の測定に基づいて実行される。異なる接触点におけるワイヤ電極の位置を検出または決定する際に、その位置を決定する精度を高めるためにコンピューティングデバイスによって平均化を実行してもよい。
【0036】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、基準電極は、グランドに電気的に接続されるか、または接続可能である。したがって、電気パラメータ、例えば電圧の測定は、特にワイヤ電極とグランドとの間で実行してもよい。
【0037】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、基準電極は、溶接装置の溶接トーチのコンタクトチップに電気的に接続されるか、または接続可能である。電気パラメータ、例えば電圧の測定は、特にワイヤ電極とコンタクトチップとの間で、より具体的にはワイヤ電極の電位とコンタクトチップの電位との間で実施してもよい。
【0038】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、または実施形態のさらなる改良によれば、本発明に係る方法はさらに、
ワイヤ電極が第1の速度でコンタクトチップに向かって前方に送られている間に、電気パラメータの第1の変化(例えば、第1の電圧変化)を検出することと、
少なくとも電気パラメータの第2の変化(例えば、第2の電圧変化)が検出されるまでに、第2の速度でワイヤ電極を後方に送ることと、
少なくとも電気パラメータの第3の変化(例えば、第3の電圧変化)が検出されるまで、第3の速度でワイヤ電極を前進させることと、
少なくとも、第3の変化が検出された測定に基づいて、ワイヤ電極端の現在位置を決定することと、
を含む。
【0039】
第3の速度は、好ましくは第1の速度よりも低い。前述の追加の方法ステップを有する方法は、本発明による方法として、または本発明による方法の一部として実行される、精密位置決め方法と呼ぶこともでき、いくつかの位置決め方法のうちの1つとすることができる。電気パラメータの第1の変化、電気パラメータの第2の変化、及び電気パラメータの第3の変化は、特にこの順序で検出される。
【0040】
いくつかの好ましい実施形態、変形例、またはさらなる実施形態の改良において、ワイヤ電極端の現在位置を決定した後、ワイヤ電極は、規定の自由ワイヤ電極長がワイヤ電極端とコンタクトチップ端の間に位置するまで、第4の速度で前方に送られる。第4の速度は、好ましくは第3の速度よりも大きい。第3の速度は、連続的かつ単調に第4の速度となっていくことが特に好ましい。
【0041】
さらに好ましい実施形態、変形例及び実施形態のさらなる改良が、従属請求項及び図面を参照した説明に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0042】
本発明は、図面の実施形態を参照して、以下により詳細に説明される。部分概略図を以下に示す。
【
図1】
図1a 本発明の一実施形態に係る溶接装置を示す概略図である。
【
図2】
図2a)からd)簡易位置決め方法を実行する際の異なる時間におけるワイヤ電極の位置及び移動状態を示す図である。
【
図3】
図3a)簡易位置決め方法におけるワイヤ電極の位置のシーケンス図である。
図3b)簡易位置決め方法におけるワイヤ電極の速度のシーケンス図である。
図3c)簡易位置決め方法におけるワイヤ電極と基準電極の間の電圧差のシーケンス図である。
【
図4】
図4a)からg)精密位置決め方法を実行する際の異なる時間におけるワイヤ電極の位置及び移動状態を示す図である。
【
図5】
図5a)精密位置決め方法におけるワイヤ電極の位置のシーケンス図である。
図5b)精密位置決め方法におけるワイヤ電極の速度のシーケンス図である。
図5c)精密位置決め方法におけるワイヤ電極と基準電極の間の電圧差のシーケンス図である。
【
図6】
図6a 本発明のさらなる実施形態に係る溶接装置を説明するための概略図である。
【
図7】
図7 本発明のさらに別の実施形態に係るロボット溶接システムの概略ブロック図である。
【
図8】
図8a 本発明のさらに別の実施形態に係る方法を説明する概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
すべての図において、同一または機能的に同一の要素及びデバイスには、別段の指示がない限り、同一の参照符号が与えられている。プロセスステップの名称及び符号は必ずしも順序を示唆するものではなく、より良く差別化をする目的に資するが、いくつかの変形例では順序が符号の順番に相当することもありうる。
【0044】
図1は、本発明の一実施形態による溶接装置100を示す概略図である。溶接装置100は、溶接装置100の消耗ワイヤ電極1を送る送り装置110を有する。ワイヤ電極1は例えば、駆動ローラ及び1つまたは複数のガイドローラを用いて送ることができる。
【0045】
溶接装置100はまた、コンタクトチップ141で終端する溶接トーチ140を有する。コンタクトチップ141は、溶接トーチ140のパイプベンドにおけるコンタクトチップの始端とコンタクトチップ端142との間にコンタクトチップ長Lを有する。溶接では、ワイヤ電極1は、通常、コンタクトチップ端142から規定の自由ワイヤ電極長Sまで送られる。溶接プロセス中に、自由ワイヤ電極長Sをできるだけ正確に知ることは、特に、溶接されるワークピース170からのコンタクトチップ端142との距離が分かっている場合に、非常に有利である。こうして、ワイヤ電極端2とワークピース170との間の距離もまた既知となる。既知の距離はまた、実際の溶接の上流または下流の他の用途、例えば、検知、マーキングなどのためにワイヤ電極端2を用いてワークピースを走査するのに用いることができる。
【0046】
図1はまた、溶接装置100が、溶接装置100に対して溶接電力を、特に溶接のための溶接電力を供給するように構成された溶接電源190を有することを示す。溶接電源190及び送り装置110は、
図1に概略的に示されるように、異なるハウジング内に配置してもよく、1つの同じハウジング及び/またはそれと同様のものの中に一体化してもよい。送り装置110はまた、別個のハウジング内に完全に配置してもよく、または、例えばプッシュプル送り装置の場合、溶接電源190に部分的に近接し、またはその中に配置するとともに溶接トーチ140に部分的に近接し、またはその中に配置してもよく、これにより、ワイヤ電極1が部分的に前方に押され(「プッシュ」)、部分的に引かれる(「プル」)。
【0047】
また、溶接装置100は、ワイヤ電極接触装置150を有し、それによってワイヤ電極1を電気的に接触させることができる。
図1は、ワイヤ電極接触装置150が駆動ローラによってワイヤ電極1に接触するケースを示す。ワイヤ電極1が確実に送られることを保証するために、通常、このような駆動ローラはワイヤ電極1と常にしっかりと密着するようにあらかじめ設けられている。このため、ワイヤ電極1と電気的に接触させるためにもこの駆動ローラを用いることが便利である。あるいは、ワイヤ電極1の電位をプッシュプルユニットでタップしてもよい。いくつかの実施形態では、電気モータのロータシャフトはワイヤ電極1の電位としてよく、それは例えば、駆動ローラ及びクランプアダプタが電気的に絶縁性ではないことによる。したがって、この場合、ワイヤ電極1の電位をロータシャフトでタップしてもよい。
【0048】
また、溶接装置100は、基準電位に電気的に接続された基準電極160を有する。
図1に示される例では、基準電極160がグランドGNDに、又は、言い換えると、溶接負極に接続され、溶接負極もまた、ワークピース170に接続される。溶接電源190は、コンタクトチップ141とワークピース170との間に電圧、すなわち溶接電圧を提供するように構成される。この目的のために、溶接電源190は再び
図1に概略的に示されるように、ケーブル163を介してコンタクトチップ141に電気的に接続される正極161を有する。
【0049】
送り装置110及び/または溶接トーチ140の間で、ワイヤ電極1は、通常は、少なくとも部分的に、本例では電気的に絶縁性であるライナ3内において延びる。代替的に、ライナは導電性であってもよく、この場合、電気的絶縁性が、溶接電位と同様に、ライナ3とコンタクトチップ141との間に提供されなければならない。ライナ3は、通常、ケーブルバンドル4内で延びる。
図1にも概略的に示されているように、ケーブル163は、ケーブルバンドル4内で、完全に又は部分的に走行してよい。
【0050】
送り装置110によって前方に押し出されると、ワイヤ電極1は溶接トーチ140のパイプベンドから最終的にコンタクトチップ141に入り、ワイヤ電極1はそこでコンタクトチップに導電的に接触し、これにより同電位になる。これが起こる位置(または:接触点)、すなわちコンタクトチップ141の始点が既知なので、ワイヤ電極1における電気的パラメータの変化、例えば電流または電圧の変化に関する情報を、本発明に従って使用して、ワイヤ電極端2が前記位置、すなわちコンタクトチップ141の接触点に現在あるということを決定できる。
【0051】
図1に示される実施形態では、電圧測定装置120が電気パラメータ測定装置として提供され、一方ではワイヤ電極接触装置150(したがってワイヤ電極1自体)と他方では基準電極160(ここではグランドGND)との間の電圧を測定するように構成される。
図1に示されるように、電圧測定装置120は溶接電源190の一部としてよいが、溶接装置100の別のハウジング内、例えば、送り装置110内、またはさらにもう一つの別個のハウジング内に配置してもよい。
【0052】
さらに、溶接装置100は、少なくとも1つの位置決め方法を実行するように構成された制御装置130を有する。制御装置130はまた、溶接電源190に組み込まれてよく、送り装置110に組み込まれてもよく、及び/または溶接装置100の別のハウジングに組み込まれてもよい。
【0053】
制御装置は、従来のコンピューティングユニットを含むことができ、例えばマイクロプロセッサ、中央処理装置、CPU、グラフィック処理装置、GPU、特定用途向け集積回路、ASIC、フィールドプログラマブルロジックゲート、FPGAなどが挙げられる。さらに、制御装置130は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の磁気記憶装置等の不揮発性のデータ記憶装置を含んでもよい。また、制御装置130は、RAM(Random Access Memory)を有していてもよい。制御装置130はまた、全体的または部分的に、クラウドコンピューティングプラットフォーム及び/または遠隔接続されたサーバによって実装され得る。このために、送り装置110及び/または溶接電源190は、対応するインタフェース、例えば、有線または無線(WiFi)であり得るイーサネットインタフェース、無線インタフェース、及び/または同様のものを有し得る。
【0054】
2つの異なる位置決め方法が以下に記載され、それに従って、ワイヤ電極1は、本発明に従って、コンタクトチップ端142から規定の自由ワイヤ電極長Sを有する位置に送られ得る。まず、
図2及び
図3を参照して、簡易位置決め方法(「簡易位置決め方法」)について説明する。次に、
図4及び
図5を参照して、精密位置決め方法について説明する。一つの同じ溶接装置100は、例えば、ユーザが自由に選択できる、簡易位置決め方法及び/又は精密位置決め方法の両方、又は他の位置決め方法を実行することができるように構成されているか、構成することができる。
【0055】
上述のように、より高いレベルの制御例、例えば、いわゆるシステム制御装置が、溶接装置100上で利用可能な位置決め方法のうちの1つを選択することも可能である。これは、例えば、利用可能な期間に応じて実行することができ、その結果、特に、利用可能な期間において実行しうる最も正確な位置決め方法を実行することができる。
【0056】
簡易位置決め方法の基本的な考察を
図2に示す。
図2のサブ図a)~d)は異なる時点t=t1、t=t2、t=t3、t=t4を示し、ここで、t1<t2<t3<t4である。
図2のサブ図a)~d)は、ワイヤ電極1が、送り速度V0で前方に、すなわち、コンタクトチップ端142の方向に移動し、最初はライナ3内でのみ、その後、部分的にコンタクトチップ141内、最後に(t=t4)コンタクトチップ141を越えて移動して、自由ワイヤ電極長S(「突き出し」)が形成されるときの、それぞれワイヤ電極1を示す。
【0057】
図2a)は、時間t=t1において、ワイヤ電極1がライナ3において送り速度V0で、コンタクトチップ端142の方向にどのように前進するかを示す。
【0058】
図3は、サブ図a)~c)において、
図2の位置決め方法を説明するための特性曲線を示しており、時点t1、t2、t3、及びt4は、またそれぞれの例で示されている。
図3a)は時間tの関数としてワイヤ位置xを示し、ワイヤ位置xは、ライナ内の任意のゼロ点から示される。
図3b)は、時間tの関数として、ワイヤ電極1が送り装置110を介して移動する送り速度を示す。最後に、
図3c)は、時間tの関数として、電圧測定装置120によって測定されたワイヤ電極1と基準電極160との間の電圧Uを示す。
図1に示す例では、基準電極160は、グランドGNDに接続されている。既に上述され、
図6を参照して以下に説明されるように、他の基準電極160も使用され得ることが理解される。
【0059】
図2と
図3との比較から分かるように、ワイヤ電極1は時間t1において、一定の速度V0で前方に移動し、したがって、電圧Uがゼロのままで、ワイヤ位置xが線形増加する。時間t2において、ワイヤ電極1は、溶接電源190の正の電位(溶接プラス)にある電気コンタクトチップ141に初めて接触する。したがって、この電位はワイヤ電極1にも直接印加され、このことは、
図3c)に見られるように、時間t2における電圧レベルの急激な増加によって分かる。理論的には、ワイヤ電極1の位置がこの時点で判明する。したがって、制御装置130は既知のコンタクトチップ長Lを使用して、所望の自由ワイヤ電極長Sを提供するために、ワイヤ電極1が、時点t=t2から正確に長さL+Sだけ、さらに送られなければならないということを特定することができる。簡易には、制御装置130は、ここで、対応する制御信号における対応する命令を送り装置110に送信するように構成されてもよい。
【0060】
しかしながら、
図3にも示すように、制御装置130は、信号遅延Δtがあるために、時刻t3、t3=t2+Δtにおいて、時刻t2での電圧測定装置120が測定した電圧上昇を認識するにすぎない。したがって、この信号遅延Δtは、例えば、
図2c)に示すように、ワイヤ電極1をL+Sだけ前方に送る制御指令が、実際にはt3まで出されておらず、t3の時点で、ワイヤ電極1は、すでにコンタクトチップ141内に距離Δxだけ進んでいることを意味している。
【0061】
t2における電圧変化の測定と制御装置130による処理との間の信号遅延Δtから、制御指令が実際に送り装置110に到達する信号遅延をも考慮するように拡張することができる。信号遅延は、実際の自由ワイヤ電極長Sの、所望の規定された設定値からの(小さいが、それにもかかわらず、望ましくない)逸脱を引き起こすことが明らかである。したがって、制御装置130は、制御信号を生成するとき、特に送られるべきワイヤ電極長を計算するときに、信号遅延を考慮し、特に信号遅延を補正するために考慮するように構成することができる。上記で既に説明したように、信号遅延を示す信号遅延値は、制御装置の信号伝搬時間提供モジュール131によって提供され得る。
【0062】
信号遅延値Δtが、予め、動的に、又は規則的に、より正確に決定されるほど、より正確に信号遅延を補正することができ、したがって、自由ワイヤ電極長Sの規定かつ所望の設定値を、可及的に正確にすることができる。
【0063】
以下では、精密位置決め方法が
図4及び
図5を参照して一例として説明され、これは
図2及び
図3による簡易位置決め方法の代わりに、または選択的代替手段として、
図1による溶接装置110によって実行され得る。
【0064】
図4は、サブ図a)からg)を有し、
図2と同じ状況、すなわち、ライナ3からコンタクトチップ141の方向に送られるワイヤ電極1のそれぞれの位置、及び精密位置決め方法がどのように行われるかを概略的に示す。
図5a)~c)は、精密位置決め方法に関して、簡易位置決め方法に関する
図3a)~c)と同様のグラフを示す。
【0065】
精密位置決め方法の背後にある基本的な考えは、簡易位置決め方法におけるワイヤ電極1の位置決め誤差が、本質的にワイヤ電極1の速度V0に比例して変化するということである。ワイヤ電極1の特に高速度Vは、位置決め方法が可能な限り迅速に実行され、完了され得るようにワイヤ電極1を位置決めするために好ましいが、逆に、信号伝播時間誤差(信号遅延Δt)による位置決め誤差Δxをさらに低減するために送り速度Vが特に低ければ、特に正確な位置決めには有利となるだろう。信号遅延値を使用してこの誤差を補正するための上述の方法は、もちろん、追加的に使用することができる。
【0066】
したがって、精密位置決め方法の背後にある考えは、相対的に高い正の第1の送り速度V1で実行される第1の大まかなステップにおいて、ワイヤ電極、特にワイヤ電極端2の位置が大まかに決定されることである。同様に、電圧測定装置120によりワイヤ電極1と基準電極160との間の電圧変化を測定することが行われる。
図4a)及び4b)は、
図2a)及び
図2b)の処理と同様の時点t=t1及びt=t2と同様にこれを示す。
【0067】
その後、制御装置130は、またある信号遅延を伴って、送り装置110に対して、ワイヤ電極1を停止させ、第2の速度R2で後方に移動させるように指示する。後方への移動は、時点t=t3で始まり、時点t=t4の間継続する。ワイヤ電極1は依然としてコンタクトチップ141と電気的に接触しているので、電圧測定装置120によって測定される電圧Uはゼロとは異なったままであるが、ワイヤ位置xはゆっくりと減少する。これは、ワイヤ電極1がコンタクトチップ141から再びちょうど電気的に切り離される、
図4e)に示される時点t5、まで継続し、次いで、
図5c)に示されるように、時点t5において、電圧Uがゼロまで電圧降下することになる。
【0068】
第2の負の速度R2で後退して、ワイヤ電極1を、コンタクトチップ141との接触点近くに可能な限り正確に再配置させ、その結果、簡易位置決め方法で既に知られているステップを再度実行することができるが、精度を高めることができる。したがって、負である第2の速度R2は、正である第1の速度V1よりも絶対値が小さく、特に第1の速度V1の絶対値の50%未満、特に好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満であるように選択されることが好ましい。
【0069】
時刻t5において、送り装置110は、再度、制御装置130によって、ワイヤ電極1を前方に、すなわち、正で第1の速度V1より絶対値が小さい第3の速度V3で送るように指示される。第3の速度V3は、第2の速度R2以下であってもよい。
【0070】
例えば、第1の速度は150m/分まで、第2の速度は100m/分まで、及び/又は第3の速度は75m/分までとしてよい。
【0071】
時刻t5以降は、原理的には簡易位置決め方法と同様の手順であり、開始速度が元の前進送り速度V1(または
図2、
図3のV0)ではなく、より低い速度V3である点が異なる。したがって、対応する信号伝播時間誤差は、当然のことながら、第2の速度R2で送る際、及び第3の速度V3で送る際にも存在するが、原理的には無視することができ、
図5には詳細に示されていない。しかしながら、原理的には、既に述べたように、精密位置決め方法において、信号伝搬時間提供モジュール131が、制御装置130がその後補正する対応する信号遅延値を提供することで、追加の信号伝搬時間差を考慮に入れることもできる。
【0072】
時点t6において、ワイヤ電極1とコンタクトチップ141との間に電気的接触が再び確立され、その結果、電圧Uは再びゼロではない値Usまで増加する。したがって、低速V3により、制御装置130は、ワイヤ電極端2の現在の位置を非常に正確に把握する。したがって、制御装置130は、所望の自由ワイヤ電極長Sとなるまでワイヤ電極1をさらに前方に送るために、対応する制御信号を送り装置110に送信することができる。
【0073】
図5b)に示されるように、初めは第3の(前進)速度V3で継続してよい。この速度は、精密位置決め方法の終了まで維持してもよい。あるいは、
図4b)に示されるように、精密位置決め方法をさらに速く完了するために、最終的な調整を第4の正の速度V4で実行してもよい。したがって、第4の速度V4は、好ましくは第3の速度V3よりも大きい。
【0074】
第3の速度V3は、特に好ましくは連続的かつ単調に増加する態様で第4の速度V4に移行することができる。第4の速度V4は、ワイヤ電極1の加減速の不正確さを、信号遅延誤差と同じ大きさのオーダーにするように選択されてよい。したがって、ワイヤ電極1を送り装置110によってより正確に加減速できるほど、例えばV4=V1まで、より高い第4の速度V4を選択することができる。
【0075】
図6は、本発明のさらなる可能な実施形態の概略図を示す。
図6に示す実施形態では、電圧測定装置120がワイヤ電極1とグランドGNDとの間の電圧を測定するように構成されていない点に相違がある。代わりに、電圧測定装置120は、測定電圧源121と並列に、かつ(ワイヤ電極接触装置150を介して)ワイヤ電極1と基準電極160の間に直列に接続される。基準電極160は、ここでは溶接電源190の正電極161の電位に接続される。測定電圧源121は、電源190に設置または一体化することができるが、外部に配置することも、外部に接続することもできる。測定は常に必要ではないので(特に、溶接プロセス中には必要ない)、測定電圧源121は、オン及びオフに切り換えられるように構成され得る。例えば、測定電圧源121は、溶接プロセス中に(好ましくは自動的に)オフに切り換えられ、溶接プロセスの終了時に(特に、後に溶接ロボットの再位置合わせが行われる場合に)自動的に再びオンに切り換えられるようにすることができる。
【0076】
ワイヤ電極1がコンタクトチップ141と電気的に接触していない限り、電圧測定装置120は、測定電圧源121によって出力される測定電圧(または補助電圧)を測定する。この測定電圧の適切な値は、3Vボルト~60Vボルトである。ワイヤ電極1とコンタクトチップ141との間に電気的接触が生じるとすぐに、代わりに短絡が生じ、電圧測定装置120によって検出される。
【0077】
したがって、この実施形態では、ゼロまでの電圧降下(短絡)を用いて、ワイヤ電極端2の位置を検出することができる。したがって、
図2及び
図3による簡易位置決め方法、ならびに
図4及び
図5による精密位置決め方法は、
図6による実施形態においても同様に使用することもできる。
【0078】
電圧測定装置120の代わりに、
図6に示される変形例では、電流測定装置を使用することもできる。したがって、電圧変化の代わりに、電流変化を測定することもでき、この場合、ワイヤ電極1がコンタクトチップ141に接触するとすぐに電流の増加を測定することができる。
【0079】
図7は、本発明のさらに別の実施形態によるロボット溶接システム1000の概略ブロック図を示す。
【0080】
ロボット溶接システム1000は、特に前述の
図1から
図6に記載されているような本発明の一実施形態による溶接装置100を備える。ロボット溶接システム1000は、溶接装置100の溶接トーチ140を案内するように構成されたロボット装置200をさらに備える。この実施例では、ロボット装置200がほぼ人間の大きさのロボットアームとして設計されている。溶接装置100の送り装置110は、例えば、ワイヤディスペンサ5としてバレルに配置され、それからワイヤ電極1を取り出して送る。
【0081】
ロボット溶接システム1000はまた、システム制御装置300を有し、ロボット装置200を制御するための制御信号を生成及び送信するとともに、溶接装置100の制御装置130を制御するための制御信号を生成及び送信するように構成される。
図7に示すように、システム制御装置300は溶接装置100の溶接電源190のハウジングに組み込まれてもよく、例えば、溶接装置100の制御装置130に組み込まれてもよい。あるいは、システム制御装置300はまた、ロボット装置200に組み込まれてもよく、または例えば、クラウドコンピューティングプラットフォームなどの追加のコンピューティングデバイスによって、別個に形成されてもよい。
【0082】
溶接装置100の制御装置130は、システム制御装置300からの制御信号のうち(すなわち、制御信号とともに)、システム制御装置300からの位置決め方法トリガ信号を受信するように構成され、それに応答して、制御装置130は、少なくとも1つの位置決め方法のうちの1つを実行する。
【0083】
有利には、位置決め方法は、溶接装置100が溶接のために制御される2つの位置の間を、ロボット装置200が移動している間に実行され、移動中には溶接は行われない。したがって、位置決め方法は、好ましくは溶接順序計画のデッドタイム内で実行され、特に、突き出しを設定するときに最大の精度を得るために、溶接順序計画に応じた利用可能なデッドタイムを利用する位置決め方法を用いて実行される。
【0084】
図8は、本発明のさらに別の実施形態による方法を説明するための概略フローチャートを示す。
図7に従って説明される方法は、特に、本発明の一実施形態による溶接装置またはロボット溶接システム、特に、
図1~
図8のうちの1つに記載されるような溶接装置100またはロボット溶接システム1000を用いて、実行され得る。したがって、本方法は本発明による溶接装置及び/または本発明によるロボット溶接システムの実施形態の任意の記載されたオプション、変形例、またはさらなる発展形態に従って適応可能であり、逆もまた同様である。
【0085】
ステップS10において、ワイヤ電極1の所望の自由ワイヤ電極長Sは、例えば、溶接順序計画、ユーザ入力、事前設定等のパラメータ出力によって規定される。
【0086】
ステップS20において、ワイヤ電極1と基準電極160との間の電圧が測定され、特に連続的に監視される。上述のように、基準電極160は例えば、グランドGNDまたは溶接負極、溶接正極、または別の既定の電位値に接続することができる。決定的な要素は、ワイヤ電極1が電気接点に接触したときに、測定または監視された電圧の電圧変化を検出できることであり、それによって、接点とコンタクトチップ端142との間のワイヤ電極1の経路に沿った距離が判明することである。
【0087】
ステップS30において、ワイヤ電極1は、コンタクトチップ141の方向、より正確にはコンタクトチップ端142の方向に送られる。ワイヤ電極端2がすでにコンタクトチップ141に挿入されている場合、測定された電圧によって特定されうる。次いで、ワイヤ電極端2は、まず、上述の精密位置決め方法と同様に、さらなるステップが実行される前に、送り装置110によって、再度コンタクトチップ141の外に出るまで後退させることができる。
【0088】
ステップS40において、ワイヤ電極1が送られている間の測定された電圧の電圧変化に基づいて、特に、ゼロから基準電極160の基準電位への電圧変化、または基準電位からゼロへ電圧変化に基づいて、ワイヤ電極1のワイヤ電極端2の現在位置が決定される。
【0089】
ステップS50において、規定の自由ワイヤ電極長Sがワイヤ電極端2とコンタクトチップ端142の間に位置するようになるまで、決定された現在位置に基づいてワイヤ電極1が送られる。
【0090】
ワイヤ電極端2の現在位置の検知S40は、特に、上述の簡易位置決め方法に従って、及び/又は上述の精密位置決め方法に従って実行することができる。
【0091】
精密位置決め方法は、特に、
図4及び
図5を参照して説明されるように実行することができ、以下のステップを含むことができる。
【0092】
ステップS41において、ワイヤ電極1は、コンタクトチップ端142に向かって第1の速度V1で前方に送られている間に第1の電圧変化が検出される(例えば、時点t2における
図5c)のUsから0)。
【0093】
ステップS42において、ワイヤ電極1は、少なくとも第2の電圧変化(例えば、時点t5における
図5c)の0からUs)が検出されるまで(有利にはわずかに超えるまで)、第2の速度R2で後方に送られる。
【0094】
ステップS43において、ワイヤ電極1は、少なくとも第3の電圧変化(例えば、時点t6における
図5c)の0からUs)が検出されるまで、第3の速度V3で前方に送られる。
【0095】
ワイヤ電極端2の現在位置の決定S40は、少なくとも、第3の電圧変化が検出された測定に基づいており、第3の速度V3は、好ましくは第1の速度V1よりも低い(V3<V1)。特に、第3の電圧変化の時刻t6は、規定された電気接点(例えば、コンタクトチップ141の始まり)におけるワイヤ電極端2の位置と関連付けることができる。接触点からワイヤ電極端2の所望の位置までの距離(例えば、コンタクトチップ長L+突き出しS)に関する情報と共に、ステップS44において、どれだけワイヤ電極1が送られているか、または時間t6の後にまだどれだけワイヤ電極1が送られるべきかを決定することが可能である。次いで、ステップS50において、対応する送りを、送り装置110によって、例えば、第4の速度V4で行うことができ、好ましくは以下が適用される。
・ V4>V3
・ V4<V1またはV4=V1、及び/または
・ |V4|>|R2|
【0096】
例えば、
図7に関連して説明したロボット溶接システム1000に関して、本方法は、選択的に、さらなるステップを含むことができる。例えば、ステップS60において、溶接装置100の次のデッドタイムに関する情報を受信することができる。ステップS70において、次のデッドタイムに基づいて(例えば、次の溶接プロセスを開始するためにロボット装置200を移動させるとき)、簡易位置決め方法及び/または精密位置決め方法などの、そのあと実行される、精密位置決め方法を選択することができる。好ましくはデッドタイム内で完全に実行され得る最も正確な位置決め方法が選択されるべきであるという基準に従って選択がなされる。
【0097】
しかしながら、本プロセスの変形例では、位置決め方法は、常に2つの溶接プロセスの間において実行されること、所望の位置決め方法が完全に実行され得ることを確保するためにデッドタイム(すなわち、溶接非実行時間)を延長することが決定され得る。
【0098】
前述の詳細な説明では、記載の厳格性を高めるために、様々な特徴が1つまたは複数の実施例においてまとめられている。しかしながら、上記の説明は単なる例示であり、決して限定するものではないことを理解されたい。様々な特徴及び実施形態のすべての代替物、変更、及び同等物を網羅することが意図される。多くの他の例は、上記の説明に鑑みて、当業者には直ちにかつ直接的に明らかであろう。
【0099】
実施形態は、本発明の根底にある原理及び実際に可能な用途を最も良く例示するために選択され、記載されている。これにより、当業者は意図される使用に関して、本発明及びその様々な実施形態を最適に修正し、利用することができる。別々に記載されたユニットは、互いに部分的に一体化されてもよいことがさらに理解される。
【0100】
本発明の概念は以下のように説明することができる。本発明は、溶接装置100及び溶接装置100の溶接トーチ140のコンタクトチップ141(特にコンタクトチップ端142)から規定の自由ワイヤ電極長Sを有する位置にワイヤ電極1を送るための方法を提供する。一方のワイヤ電極1と他方の基準電極160との間の電圧変化に関する情報が、電圧変化の時点におけるワイヤ電極端2の位置を決定するために使用される。次いで、ワイヤ電極を所望の位置に正確に送ることができる。
【符号の説明】
【0101】
1 ワイヤ電極
2 ワイヤ電極端
3 ライナ
4 ケーブルバンドル
5 ワイヤディスペンサ
100 溶接装置
110 送り装置
120 電圧測定装置
121 測定電圧源
130 制御装置
140 溶接トーチ
141 コンタクトチップ
142 コンタクトチップ端
160 基準電極
161 電極
163 ケーブル
170 ワークピース
190 溶接電源
200 ロボット装置
300 システム制御装置
1000 ロボット溶接システム
L コンタクトチップ長
S コンタクトチップの先の自由ワイヤ電極長
S10~S50 方法ステップ
t1~t6 時点
【手続補正書】
【提出日】2024-05-30
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶接装置(100)のワイヤ電極(1)を送る送り装置(110)と、
前記ワイヤ電極(1)に電気的に接触するワイヤ電極接触装置(150)と、
基準電位に電気的に接続する、または接続可能な基準電極(160)と、
前記ワイヤ電極接触装置(150)と前記基準電極(160)との間の電気パラメータを測定するように構成された電気パラメータ測定装置(120)と、
規定された電位に電気的に接続する、または接続可能なコンタクトチップ(141)を有する溶接トーチ(140)と、
前記ワイヤ電極(1)が前記送り装置(110)によって前記コンタクトチップ(141)のコンタクトチップ端(142)から規定の自由ワイヤ電極長(S)を有する位置へと送られる、少なくとも1つの位置決め方法を実施するように構成された制御装置(130)とを備え、
前記制御装置(130)は、前記少なくとも1つの位置決め方法を実行するために、
前記コンタクトチップ(141)が規定の電位に接続され、前記基準電極が前記基準電位に接続され、前記ワイヤ電極(1)が前記送り装置(110)により送られている間に、前記電気パラメータ測定装置(120)によって測定された電気パラメータの変化が、ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ(141)との間の電気接点で検出される、少なくとも1つの測定に基づいて、前記ワイヤ電極(1)の前記ワイヤ電極端(2)の現在位置を決定することと、
前記コンタクトチップ(141)の既知のコンタクトチップ長(L)を用いて、決定された前記現在位置に基づき、前記規定の自由ワイヤ電極長(S)が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、前記ワイヤ電極(1)を送るように前記送り装置(110)を制御することを行うように構成されている、
溶接装置(100)。
【請求項2】
前記基準電極(160)はグランド(GND)に電気的に接続する、または接続可能であり、前記電気パラメータ測定装置は、前記基準電極(160)が前記グランド(GND)に電気的に接続されたときに、少なくとも前記ワイヤ電極(1)と前記グランド(GND)との間の電圧を測定するように構成された電圧測定装置(120)を備える、請求項1に記載の溶接装置(100)。
【請求項3】
前記基準電極(160)は、前記溶接装置(100)の前記溶接トーチ(140)の前記コンタクトチップ(141)に電気的に接続する、または接続可能であり、前記電気パラメータ測定装置は、前記基準電極(160)が前記コンタクトチップ(141)に電気的に接続されたときに、前記ワイヤ電極(1)と前記コンタクトチップ(141)との間の電圧を少なくとも測定するように構成された電圧測定装置(120)を備える、請求項1に記載の溶接装置(100)。
【請求項4】
前記ワイヤ電極接触装置(150)が、前記ワイヤ電極(1)のための摺動接触部及び/または駆動ローラを有する、請求項1から3のいずれかに記載の溶接装置(100)。
【請求項5】
前記制御装置(130)は、前記制御装置(130)の構成要素に信号遅延値を提供するように構成された信号伝搬時間提供モジュール(131)を有し、前記制御装置(130)は、前記ワイヤ電極端(2)の現在位置を決定するときに、前記提供された信号遅延値を考慮に入れるように構成される、請求項1から
3のいずれか
1項に記載の溶接装置(100)。
【請求項6】
前記制御装置(130)は、前記電気パラメータの変化の複数の測定値に基づいて、前記ワイヤ電極端(2)の前記現在位置の決定を実行するように構成される、請求項1から
3のいずれか
1項に記載の溶接装置(100)。
【請求項7】
前記少なくとも1つの位置決め方法は、精密位置決め方法を含み、前記制御装置
(130)は、前記精密位置決め方法において、
前記送り装置(110)によって前記ワイヤ電極が第1の速度(V1)で前記コンタクトチップ(141)に向かって前方に送られている間に、前記電気パラメータ測定装置(120)を用いて前記電気パラメータの第1の変化を検出することと、
その後、前記電気パラメータ測定装置(120)を用いて少なくとも前記電気パラメータの第2の変化を検出するまで、前記ワイヤ電極(1)を第2の速度(R2)で後方に送るように前記送り装置(110)を制御することと、
その後、前記電気パラメータ測定装置(120)を用いて前記電気パラメータの第3の変化を検出するまで、前記ワイヤ電極(1)を第3の速度(V3)で前方に送るように前記送り装置(110)を制御することと、
少なくとも前記電気パラメータの第3の変化が検出された測定に基づいて、前記ワイヤ電極(1)の前記現在位置を決定することと、を行うよう構成され、
前記第3の速度(V3)は好ましくは前記第1の速度(V1)よりも低い、請求項1から
3のいずれか
1項に記載の溶接装置(100)。
【請求項8】
前記制御装置(130)は、前記ワイヤ電極(1)の前記現在位置を決定した後、前記規定の自由ワイヤ電極長
(S)が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、前記ワイヤ電極(1)を第4の速度(V4)でさらに前方に送るように構成される、請求項7に記載の溶接装置(100)。
【請求項9】
請求項1から
3のいずれか1項に記載の溶接装置(100)と、
前記溶接装置(100)の前記溶接トーチ(140)を案内するように構成されたロボット装置(200)と、
前記ロボット装置(200)を制御するための制御信号を生成及び送信することと、前記溶接装置(100)を制御するための制御信号を生成及び送信することとの両方を行うように構成されたシステム制御装置(300)とを備え、
前記溶接装置(100)の前記制御装置(130)は、前記制御信号のうち、前記システム制御装置(300)から位置決め方法トリガ信号を受信するように構成され、それに応答して、前記制御装置(130)は少なくとも1つの位置決め方法のうちの1つを実行する、ロボット溶接システム(1000)。
【請求項10】
前記位置決め方法は、前記溶接装置(100)が溶接のために制御される2つの位置の間を前記ロボット装置(200)が移動している間に実行され、前記移動中には溶接が行われない、請求項9に記載のロボット溶接システム(1000)。
【請求項11】
ワイヤ電極(1)を溶接装置(100)の溶接トーチ(140)のコンタクトチップ(141)から規定の自由ワイヤ電極長(S)を有する位置に送る方法であって、
前記ワイヤ電極(1)の所望の自由ワイヤ電極長(S)を規定することと(S10)、
前記ワイヤ電極(1)と基準電極(160)との間の電気パラメータを測定することと(S20)、
前記ワイヤ電極(1)をコンタクトチップ(141)の方向に送ることと(S30)、
前記ワイヤ電極(1)が送られている間に、ワイヤ電極端(2)と規定の電位に電気的に接続される前記コンタクトチップ(141)との間の電気接点で測定された電気パラメータの変化に基づいて、前記ワイヤ電極(1)の前記ワイヤ電極端(2)の現在位置を検出することと(S40)、
決定された前記現在位置に基づいて、前記コンタクトチップ(141)の既知のコンタクトチップ長(L)を使用して、前記規定の自由ワイヤ電極長(S)が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、前記ワイヤ電極(1)を送ることと(S50)、を含む方法。
【請求項12】
前記基準電極(160)は、グランド(GND)に電気的に接続され、前記ワイヤ電極(1)と前記グランド(GND)との間の電圧の測定(S20)が、前記電気パラメータを測定するために実行される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記基準電極(160)が、前記溶接装置(100)の前記溶接トーチ(140)の前記コンタクトチップ(141)に電気的に接続され、前記ワイヤ電極(1)と前記コンタクトチップ(141)との間の電圧の測定(S20)が前記電気パラメータを測定するために実行される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ワイヤ電極(1)が前記コンタクトチップ端(142)に向かって第1の速度(V1)で前方に送られている間に、前記電気パラメータの第1の変化を検出することと(S41)、
少なくとも前記電気パラメータの第2の変化が検出されるまで、前記ワイヤ電極(1)を第2の速度(R2)で後方に送ることと(S42)、
少なくとも前記電気パラメータの第3の変化が検出されるまで、前記ワイヤ電極(1)を第3の速度(V3)で前方に送ることと(S43)、
少なくとも前記電気パラメータの第3の変化が検出された測定に基づいて、前記ワイヤ電極端(2)の前記現在位置を決定することと(S40)、を含み、
前記第3の速度(V3)は、好ましくは前記第1の速度(V1)よりも低い、請求項11から13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記ワイヤ電極端(2)の前記現在位置を決定(S50)した後、前記ワイヤ電極(1)は、前記規定の自由ワイヤ電極長(S)が前記ワイヤ電極端(2)と前記コンタクトチップ端(142)の間に位置するまで、第4の速度(V4)で前方に送られる(S60)、請求項14に記載の方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0053
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0053】
制御装置130は、従来のコンピューティングユニットを含むことができ、例えばマイクロプロセッサ、中央処理装置、CPU、グラフィック処理装置、GPU、特定用途向け集積回路、ASIC、フィールドプログラマブルロジックゲート、FPGAなどが挙げられる。さらに、制御装置130は、例えばハードディスクやSSD(Solid State Drive)等の磁気記憶装置等の不揮発性のデータ記憶装置を含んでもよい。また、制御装置130は、RAM(Random Access Memory)を有していてもよい。制御装置130はまた、全体的または部分的に、クラウドコンピューティングプラットフォーム及び/または遠隔接続されたサーバによって実装され得る。このために、送り装置110及び/または溶接電源190は、対応するインタフェース、例えば、有線または無線(WiFi)であり得るイーサネットインタフェース、無線インタフェース、及び/または同様のものを有し得る。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0061
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0061】
t2における電圧変化の測定と制御装置130による処理との間の信号遅延Δtから、制御指令が実際に送り装置110に到達する信号遅延をも考慮するように拡張することができる。信号遅延は、実際の自由ワイヤ電極長Sの、所望の規定された設定値からの(小さいが、それにもかかわらず、望ましくない)逸脱を引き起こすことが明らかである。したがって、制御装置130は、制御信号を生成するとき、特に送られるべきワイヤ電極長を計算するときに、信号遅延を考慮し、特に信号遅延を補正するために考慮するように構成することができる。上記で既に説明したように、信号遅延を示す信号遅延値は、制御装置130の信号伝搬時間提供モジュール131によって提供され得る。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0063
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0063】
以下では、精密位置決め方法が
図4及び
図5を参照して一例として説明され、これは
図2及び
図3による簡易位置決め方法の代わりに、または選択的代替手段として、
図1による溶接装置
100によって実行され得る。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0067
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0067】
その後、制御装置130は、またある信号遅延を伴って、送り装置110に対して、ワイヤ電極1を停止させ、第2の速度R2で後方に
送るように指示する。後方への移動は、時点t=t3で始まり、時点t=t4の間継続する。ワイヤ電極1は依然としてコンタクトチップ141と電気的に接触しているので、電圧測定装置120によって測定される電圧Uはゼロとは異なったままであるが、ワイヤ位置xはゆっくりと減少する。これは、ワイヤ電極1がコンタクトチップ141から再びちょうど電気的に切り離される、
図4e)に示される時点t5、まで継続し、次いで、
図5c)に示されるように、時点t5において、電圧Uがゼロまで電圧降下することになる。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0068
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0068】
第2の負の速度R2で後退して、ワイヤ電極1を、コンタクトチップ141との接触点の少し前に可能な限り正確に再配置させ、その結果、簡易位置決め方法で既に知られているステップを再度実行することができるが、精度を高めることができる。したがって、負である第2の速度R2は、正である第1の速度V1よりも絶対値が小さく、特に第1の速度V1の絶対値の50%未満、特に好ましくは10%未満、特に好ましくは5%未満であるように選択されることが好ましい。
【手続補正7】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0070
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0070】
例えば、第1の速度V1は150m/分まで、第2の速度R2は100m/分まで、及び/又は第3の速度V3は75m/分までとしてよい。
【手続補正8】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0096
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0096】
例えば、
図7に関連して説明したロボット溶接システム1000に関して、本方法は、選択的に、さらなるステップを含むことができる。例えば、ステップS60において、溶接装置100の次のデッドタイムに関する情報を受信することができる。ステップS70において、次のデッドタイムに基づいて(例えば、次の溶接プロセスを開始するためにロボット装置200を移動させるとき)、簡易位置決め方法及び/または精密位置決め方法などの、そのあと実行される
、位置決め方法を選択することができる。好ましくはデッドタイム内で完全に実行され得る最も正確な位置決め方法が選択されるべきであるという基準に従って選択がなされる。
【国際調査報告】