(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】新規の組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/22 20060101AFI20241108BHJP
A61P 1/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 25/06 20060101ALI20241108BHJP
A61P 25/22 20060101ALI20241108BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241108BHJP
A61P 9/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 25/30 20060101ALI20241108BHJP
A61K 8/67 20060101ALI20241108BHJP
A61Q 90/00 20090101ALI20241108BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20241108BHJP
A23L 33/155 20160101ALI20241108BHJP
C12P 23/00 20060101ALI20241108BHJP
C12N 1/15 20060101ALN20241108BHJP
C12N 1/19 20060101ALN20241108BHJP
C12N 1/21 20060101ALN20241108BHJP
C12N 5/10 20060101ALN20241108BHJP
A23K 10/16 20160101ALN20241108BHJP
【FI】
A61K31/22
A61P1/00
A61P25/06
A61P25/22
A61P27/02
A61P9/00
A61P25/30
A61K8/67
A61Q90/00
A61Q19/08
A23L33/155
C12P23/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A23K10/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532481
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-10
(86)【国際出願番号】 EP2022084470
(87)【国際公開番号】W WO2023099792
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2021-12-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(32)【優先日】2022-05-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】503220392
【氏名又は名称】ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ.
【氏名又は名称原語表記】DSM IP ASSETS B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】メンドロック‐エディンガー, クリスティン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン, アイリーン
(72)【発明者】
【氏名】ウィルダーマン, アンジェラ
(72)【発明者】
【氏名】ヒューストン, ピーター, ルイス
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4B064
4B065
4C083
4C206
【Fターム(参考)】
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4C206ZC42
(57)【要約】
本発明は、シス/トランス比が0.03未満で、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルのシス及びトランス異性体のレチノイド混合物を含む新規の組成物と、片頭痛、不安症、低眼圧症、心臓弁膜症、過敏性腸症候群、及びMDMA(一般に「エクスタシー」と呼ばれる)乱用から選択される疾患又は病状を含むがこれらに限定されない、5-HT2Bセロトニン受容体拮抗薬で治療できる疾患及び病状の治療、予防及び軽減のためのそれらの使用とに関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レチニルエステルのシス及びトランス異性体、具体的には酢酸レチニルのシス及びトランス異性体を含むレチノイド混合物であって、前記混合物内の前記シス/トランス比が、1:33.33超であり、前記比が、前記混合物中の総レチノイドを基準として、トランス異性体の重量%と比較したシス異性体の重量%として算出され、特に前記混合物が、総レチノイドを基準として0.5重量%未満のシスレチニルエステル、好ましくはシス酢酸レチニルを含むレチノイド混合物。
【請求項2】
1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:66.67、1:70、1:75、1:80、1:90、1:95、1:100、1:101.01、1:105.26、1:110、1:111.11、1:115、1:117.65、1:120、1:125、1:130、1:133.33、1:135、1:140、1:142.86、1:145、1:150、1:155、1:160、1:165、1:166.67、1:170、1:175、1:180、1:181.82、1:185、1:190、1:195、1:200、1:204.08、1:205、1:210、1:215、1:220、1:222.22、1:225、1:230、1:232.56、1:235、1:240、1:245、1:250、1:255、1:260、1:265、1:270、1:275、1:280、1:285、1:285.71、1:290、1:295、1:300、1:305、1:310、1:315、1:320、1:325、1:330、1:333.33、1:335、1:340、1:345、1:350、1:355、1:357.14、1:360、1:365、1:370、1:375、1:380、1:385、1:390、1:395又は1:400、1:405、1:410、1:420、1:430、1:440、1:450又は1:500、1:1000以下の比率で、より好ましくは1:33~1:1000、1:100~1:500、1:100~1:1000、1:125~1:1000、1:200~1:1000、1:200~1:500、1:200~1:400の範囲の比率で、酢酸レチニルのシス及びトランス異性体を含む、請求項1に記載のレチノイド混合物。
【請求項3】
前記レチノイド混合物が、約1:400の比率でシス酢酸レチニルとトランス酢酸レチニルとを含む、請求項2に記載のレチノイド混合物。
【請求項4】
総レチノイドを基準として2重量%以下のレチノールを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項5】
総レチノイドを基準として1重量%以下のレチナールを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項6】
L
*が、50~100の範囲であり、a
*が、-25~10の範囲であり、及びb
*が、40~150の範囲である色価を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の混合物。
【請求項7】
請求項1~6のいずれか一項に記載の生物学的由来である混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物。
【請求項8】
請求項1~6のいずれか一項に記載の生物学的由来である混合物が、発酵プロセスを介して生物学的に生成される、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
請求項1~6のいずれか一項に記載の混合物が、生分解の際に人為的なCO
2排出プロファイルがゼロになる、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
請求項7~9のいずれか一項に記載の組成物であって、セロトニン5-HT2B受容体拮抗薬として使用される組成物。
【請求項11】
栄養補給食品、栄養製品、医薬製品、又は化粧製品の調製、特に薬剤の調製における請求項7~10のいずれか一項に記載の組成物であって、片頭痛症候群、好ましくは片頭痛、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤の中毒/乱用からなる群から選択される病状の治療、軽減又は予防において使用される組成物。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項に記載の混合物又は組成物を含む栄養補給食品、栄養製品、医薬製品、又は化粧製品。
【請求項13】
請求項7~12のいずれか一項に記載の組成物又は製品であって、片頭痛症候群、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤の中毒/乱用の治療又は予防のための組成物又は製品。
【請求項14】
片頭痛症候群、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤の中毒/乱用に関連する症状の予防、治療又は軽減のための方法であって、請求項7~11のいずれか一項に記載の組成物を投与することを備える方法。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、シス/トランス比が0.03未満で、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルのシス異性体とトランス異性体のレチノイド混合物を含む新規の組成物と、片頭痛、不安症、低眼圧症、心臓弁膜症、過敏性腸症候群、及びMDMA(一般に「エクスタシー」と呼ばれる)乱用から選択されるがこれらに限定されない疾患又は病状を含む、5-HT2Bセロトニン受容体拮抗薬で治療できる疾患及び病状の症状の治療、予防及び軽減のためのそれらの使用とに関する。
【0002】
セロトニン5-HT受容体は、5-HT3サブタイプを除いて、Gタンパク質共役7回膜貫通型タンパク質のスーパーファミリーに属する。それらは、受容体のリガンド依存性カチオンスーパーファミリーに属する。Gタンパク質共役受容体は、真核細胞における主要なシグナル伝達システムの1つを構成する。セロトニン5-HT2受容体は、中枢神経系及び末梢組織に広く分布する。5-HT2受容体クラスは、Gq/11と優先的に結合して、イノシトールリン酸の加水分解を増加させ、細胞質[Ca2+]を上昇させて、体内で反応を引き起こす。セロトニン5-HT2B受容体拮抗作用は、片頭痛の治療に有用であると知られている。
【0003】
記載される7つの5-HT受容体のうち、5-HT2Bは、タンパク質キナーゼCを活性化する両方ともセカンドメッセンジャーであるイノシトールトリスリン酸とジアシルグリセロールを介して信号を送る唯一の受容体である。ラットモデルにおいては、タンパク質キナーゼCガンマの活性化が、慢性片頭痛症候群の感受性を高める可能性があることが示唆されている。タンパク質キナーゼCガンマは、神経組織において高度に発現するタンパク質キナーゼCアイソフォームである。
【0004】
セロトニン受容体の活動は又、不安症、並びに過敏性腸症候群、片頭痛、低眼圧症、心臓弁疾患、及び特定の違法薬物乱用(MDMA、一般に「エクスタシー」と呼ばれる)を含む他の病気に重要な役割を果たす。
【0005】
片頭痛症候群は、中度から重度の頭痛を繰り返すことを特徴とする一次性頭痛障害である。それらは、通常、頭の片側に影響を及ぼし、拍動を伴って数時間から3日間続く。関連する症状としては、吐き気、嘔吐、及び光、音、又は匂いに対する過敏症が挙げられる。痛みは、一般的に身体活動により悪化する。最大3分の1までの人々は又、頭痛が現れる少し前に、前兆、即ち視覚障害も経験する。根本的なメカニズムは、完全には分かってなく、理解もされていない;脳への血管及び神経が関与していると考えられている。スマトリプタンなどのトリプタン系医薬製品は、心血管疾患のある人々には推奨されないが、これらは、片頭痛症候群の従来の治療法に含まれている。その他の治療法は、痛み及び吐き気などの特定の症状に対処する。セロトニン5-HT2B受容体拮抗作用は、片頭痛の治療にも有用である。
【0006】
過敏性腸症候群(IBS)の原因は、一つではないようで、患者がこの病状を発症する理由は多種多様である。症状が始まる最も一般的なきっかけは、食中毒又は胃腸炎の発作の後である。原因は明らかではないが、症状を引き起こすことが可能である多くの要因が存在する。ストレスが症状を悪化させる人もいる。不規則な食事や異常な食生活が、原因となる人もいる。特に慢性疾患のために長期間にわたり服用した場合、下痢などのIBSタイプの病状を引き起こすことがある薬剤もある。総体的に、腸及び脳の神経系、感情状態、並びに腸の免疫系の間には何らかの相互作用が存在するようである。
【0007】
IBS患者の約3分の1は、便秘の発作に苦しみ、3分の1は下痢に苦しみ、そして他の殆どの患者は、単一のパターンに当てはまらない。セロトニン受容体5-HT2B拮抗薬は、症状を改善するのに使用されることが多い。
【0008】
低眼圧症(眼圧低下とも呼ばれる)は、眼圧5mmHg以下と定義される。低眼圧は、白内障の形成を加速させ、黄斑症及び不快感をもたらすことがある。5-HT2B受容体は、これらの症状の発症をもたらす経路の重要な部分である。
【0009】
心臓弁の機能の完全性に関する問題は又、5-HT2B受容体に関連しているので、拮抗薬を用いて治療することができる。
【0010】
MDMAは、フェネチルアミン系に属し、それには、覚醒剤、幻覚剤、及び/又はエンタクトゲンとして作用するアンフェタミン及び他の化学的に関連する化合物が更に含まれる。MDMAは、一般に「モリー」又はエクスタシーと呼ばれる。それは、それらの神経受容体からセロトニン(及び、低い程度で他の神経伝達物質)を放出し、及び/又はそれらの再取り込みを阻害することにより作用し、その結果として、シナプス間隙におけるセロトニンレベルが増加する。MDMAによるセロトニンの過剰な放出が、使用者が経験する気分を高揚させる効果の原因であると思われる。しかしながら、MDMAによる大量のセロトニンの放出により、脳は、この神経伝達物質を著しく欠乏させることになり、そして、これが、MDMAを摂取後、数日間経験する否定的な心理的後遺症の一因となる。本発明による混合物及び/又は前記混合物を含む組成物の投与は、セロトニンの初期放出を妨げ、それにより気分を高揚させる体験を鈍らせるか又は打ち消し、セロトニン欠乏段階を軽減し、それにより薬物の魅力を低下させる。
【0011】
残念なことに、既知の5-HT2B拮抗薬を使用する殆どの薬物治療は、有害な副作用を伴い、長期の治療には推奨されない。
【0012】
したがって、片頭痛症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、過敏性腸症候群、及び特定の違法薬物乱用(MDMA、一般に「エクスタシー」と呼ばれる)の症状、即ち、5-HT2B経路に関連する症状を予防、治療、及び緩和するための代替療法が望まれることとなる。
【0013】
驚くべきことに、シス及びトランスのレチニルエステルの特定の混合物、即ち約0.03未満のシス/トランス比で、レチニルエステルのシス及びトランス異性体を含むレチノイド混合物、具体的には特定の比率のシス/トランス酢酸レチニルを含む混合物は、5-HT2Bセロトニン受容体に結合して拮抗するのに特に好適であるので、5-HT2B過剰活性に関連する疾患の症状を治療、予防、又は緩和するのに使用できることがわかった。このような病気には、片頭痛症候群、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、及びMDMA(一般に「エクスタシー」と呼ばれる)の乱用などが含まれる。
【0014】
したがって、本発明は、0.03未満のシス/トランス比で、特にシス/トランス比が約0.0025の範囲内であるシス/トランス比で、シス及びトランスのレチニルエステル、具体的にはシス及びトランス酢酸レチニルを含むレチノイド混合物に関する。
【0015】
特に、本発明は、0.03未満のシス/トランス比で、レチニルエステルのシス及びトランス異性体、具体的には酢酸レチニルのシス/トランス異性体を含む前記レチノイド混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物であって、例えばドライビタミンA-アセテート500(BASF)又はビタミンAアセテート結晶(DSM)などの市販の全トランス酢酸レチニルとは異なるシス/トランス比の酢酸レチニルを含む、本明細書に定義される医薬、食品、飼料又は化粧料組成物又はレチノイド混合物が含まれる組成物に関する。
【0016】
本明細書で使用される「レチニルエステル」は、式(I):
【化1】
(式中、
Rは、エステルカルボニルを含む2~18個の炭素原子を有するアルキル基、好ましくはメチル、エチル、プロピル、ブチル、ステアリル及びパルミチルから選択される)
の化合物(立体化学のいかなる表示も無)を指す。本発明の全ての実施形態においては、Rがメチルである、即ち、式(I)の化合物が酢酸レチニルであるのが最も好ましい。
【0017】
本明細書で示されるシス/トランス比は、例えば酢酸レチニル、レチノール、レチナールなどのそれぞれのレチノイドのそれぞれ全てのトランス異性体に対する全てのシス異性体の合計の重量%比を指し、例えばHPLCなどの既知の方法によって求められ、全ての異性体に対して同じ応答因子を仮定する。
【0018】
本明細書で使用する「レチノイド混合物」は、本明細書に定義した比率で、レチニルエステル異性体、具体的には酢酸レチニル異性体、例えばシス異性体及びトランス異性体などを含む。レチノイド混合物は、レチノール又はレチナールのシス及び/若しくはトランス異性体を含んでもよい。
【0019】
本明細書で使用するシス/トランス比、具体的には、酢酸レチニル、レチノール又はレチナールを含むレチノイド混合物中におけるシス異性体のトランス異性体に対する比、より具体的にはシス酢酸レチニルのトランス酢酸レチニルに対する比、又はシスレチノールのトランスレチノールに対する比、又はシスレチナールのトランスレチナールに対する比は、全て前記混合物中の総レチノイドを基準として、シス異性体の重量%を対応するトランス異性体の重量%と比較することを意味する。したがって、酢酸レチニルに関して、シス/トランス比0.03を備える混合物は、例えば、前記混合物中の総レチノイドを基準として1重量%のシス酢酸レチニルと、前記混合物中の総レチノイドを基準として33重量%のトランス酢酸レチニルとを有する混合物である。酢酸レチニルに関して、シス/トランス比0.03は、2.95重量%のシス酢酸レチニルと94.15%のトランス酢酸レチニルとの混合物、又は2.99重量%のシス酢酸レチニルと99.6%のトランス酢酸レチニルとの混合物、2.98重量%のシス酢酸レチニルと99.2重量%のトランス酢酸レチニルとの混合物、又は2.97重量%のシス酢酸レチニルと99.7重量%のトランスレチニルとの混合物に当てはまることとなる。
【0020】
本明細書で使用する用語「トランス酢酸レチニル」、「トランスレチノール」、「トランスレチナール」などは、当業者には知られており、IUPAC-IUB命名法に沿って、式(I)による化合物を含む、そのような酢酸レチニル、レチノール、レチナール化合物中の全ての二重結合が、トランス配置であることを意味する。用語「トランスレチニルエステル」、具体的には「トランス酢酸レチニル」と、「全てトランスのレチニルエステル」、具体的には「全てトランスの酢酸レチニル」とは、本明細書においては交換可能に使用される。したがって、いくつかの二重結合の1つが、トランス配置ではなく、シス配置であるならば、このような異性体は、本明細書において、例えばシス酢酸レチニル又はシスレチノール又はシスレチナールと命名される。
【0021】
本発明が対象とするシス配置のレチノイド異性体としては、9-シスレチノール、11-シスレチノール、13-シスレチノール、9,13-ジ-シスレチノール、11,13-ジ-シスレチノール、13-シス-3,4-ジデヒドロレチノール、9-シス-3,4-ジデヒドロレチノール、9,13-ジ-シス-3,4-ジデヒドロレチノール、13-シスレチナール、11-シスレチナール、11,13-ジ-シスレチナール、9,13-ジ-シスレチナール、9-シスレチナール、13-シス-3,4-ジデヒドロレチナール、11,13-ジ-シス-3,4-ジデヒドロレチナール、及び酢酸レチニルのそれぞれのシス形態(総説については、例えば、Gundersen and Blomhoff,J.Chromatogr.A935:13-43,2001の表1を参照のこと)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0022】
本発明の全ての実施形態においては、上述のレチニルエステル異性体のシス/トランス比、即ち、シス又はトランスのレチニルエステル、具体的には酢酸レチニルの重量%は、混合物中の総レチノイドを基準として、0.03未満、好ましくは0.0299、0.028、0.025、0.02、0.015、0.01、0.0099、0.0095、0.009、0.0085、0.008、0.0075、0.007、0.0065、0.006、0.0055、0.005、0.0049、0.0045、0.0043、0.004、0.0035、0.003、0.0028、0.0025、0.0022、0.002、0.0018、0.0015、0.001、0.0005以下、例えば0.0001以下などのシス/トランス比であり、より好ましくは0.0299~0.0001、0.01~0.001、0.02~0.0005、0.0099~0.0001、0.008~0.001、0.007~0.002、0.009~0.0001、0.008~0.0001、0.005~0.001、0.005~0.0001、0.005~0.0005、0.006~0.001、0.02~0.0001、0.01~0.0001、0.006~0.0001、0.0055~0.0001、0.007~0.0001、0.0045~0.0001、0.005~0.002、0.004~0.0001、0.0035~0.0001、0.003~0.0001、0.005~0.0025、0.025~0.0001、0.006~0.0005、0.006~0.0008、0.006~0.0015、0.006~0.002、0.006~0.003、0.006~0.0004、0.006~0.0025、0.004~0.0005の範囲であり、最も好ましくは約0.0025のシス/トランス比である。
【0023】
更なる本発明の実施形態によると、レチニルエステル異性体、具体的には上述の酢酸レチニル異性体のシス/トランス比、即ち、シスレチニルエステル又はトランスレチニルエステル、具体的には酢酸レチニルの重量%は、混合物中の総レチノイドを基準として、1:33.33超であり、好ましくは、1:35.72、1:40、1:45、1:50、1:55、1:60、1:65、1:66.67、1:70、1:75、1:80、1:90、1:95、1:100、1:101.01、1:105.26、1:110、1:111.11、1:115、1:117.65、1:120、1:125、1:130、1:133.33、1:135、1:140、1:142.86、1:145、1:150、1:155、1:160、1:165、1:166.67、1:170、1:175、1:180、1:181.82、1:185、1:190、1:195、1:200、1:204.08、1:205、1:210、1:215、1:220、1:222.22、1:225、1:230、1:232.56、1:235、1:240、1:245、1:250、1:255、1:260、1:265、1:270、1:275、1:280、1:285、1:285.71、1:290、1:295、1:300、1:305、1:310、1:315、1:320、1:325、1:330、1:333.33、1:335、1:340、1:345、1:350、1:355、1:357.14、1:360、1:365、1:370、1:375、1:380、1:385、1:390、1:395又は1:400、1:405、1:410、1:420、1:430、1:440、1:450又は1:500、1:1000以下のシス/トランス比であり、より好ましくは1:33~1:1000、1:100~1:500、1:100~1:1000、1:125~1:1000、1:200~1:1000、1:200~1:500、1:200~1:400の範囲であり、最も好ましくは約1:400のシス/トランス比である。
【0024】
本発明による、レチニルエステルのシス及びトランス異性体を含むレチノイド混合物、具体的には酢酸レチニルのシス及びトランス異性体の混合物、そして又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物は、化学又は生物学プロセスにより得られる1つ以上のシス異性体とそれぞれの全トランス異性体を混合することにより調製できる。このような全てトランス及び/又はシス異性体を調製する方法は、当業者には公知である。或いは、混合物は、プロセスを適宜調整することにより、前記異性体の比率で調製することができる。
【0025】
有利なことには、本発明の全ての実施形態においては、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルを含むレチノイド混合物は、発酵プロセスを通して生物学的に生成される。このプロセスにおいては、トランスレチニルエステル、具体的にはトランス酢酸レチニルが、特定の酵素の作用により作られ、その結果として安定した全てトランスのレチニルエステル、好ましくは全てトランスの酢酸レチニルが生成される。トランスレチニルエステル、好ましくはトランス酢酸レチニルは、熱で処理されて、シスレチニルエステル、好ましくはシス酢酸レチニルを形成することが可能であり、本発明の全ての実施形態において上述の適切なレベルに達成することができる(例えば、McBee et al.,JBC,Vol.276,No.51,pp.48483-48493,2001を参照のこと)。
【0026】
有利なことには、本発明の全ての実施形態においては、0.03未満のシス/トランス比でシス及びトランスレチニルエステル、具体的には酢酸レチニルを含むレチノイド混合物、特にシス/トランス比が約0.0025の範囲内であるレチノイド混合物は、発酵プロセスを通して生物学的に生成され、好ましくは黄色がかった色のレチノイド混合物をもたらす。
【0027】
当技術分野で知られているように、色は、XYZ、RGB、CYMK、又はL*a*b*(EN ISO/CIE 11664-4:2019によるCIELAB)などのいくつかの異なる座標系で正確に記述することができる。好ましい方法は、L*a*b*系による定義である。当業者は、異なる測色システムに応じてどの機器を使用するか、及び本明細書に記載されている混合物の色をどのように測定するかを知っている。
【0028】
本明細書で使用される「黄色がかった」色は、L*a*b*表色系によって定義される色を意味し、特にL*a*b*は(3<L*<100、-25<a*<30、10<b*<150)であり、例えばL*は50~100の範囲であり、a*は-25~10の範囲であり、b*は40~150の範囲であり、好ましくは、ここでL*は、80~100の範囲であり、a*は、-22~1の範囲であり、b*は、40~85又は100~140の範囲であり、より好ましくはL*は、80~95の範囲であり、a*は、-17~-1の範囲であり、b*は、105~135の範囲であり、特にL*は、約80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、100であり、及びa*は、約-24.9、-24、-23、-22、-21、-20、-19、-18、-17、-18、-17、-16、-15、-14、-13、-12、-11、-10、-9、-8、-7、-6、-5、-4、-3、-2、-1、0であり、及びb*は、約40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、105、106、107、108、109、110、111、112、113、114、115、116、117、118、119、120、121、122、123、124、125、126、127、128、129、130、131、132、133、134、135である。
【0029】
特定の一実施形態においては、本明細書で定義した、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルのシス及びトランス異性体を含むレチノイド混合物は、例えば細菌又は真菌細胞などの好適なレチニルエステル/酢酸レチニル産生宿主細胞を用いた発酵プロセスで生成される(Sun et al,ACS Synth.Biol.2019 Sep 20;8(9):2131-2140;Jang et al.,Microbial Cell Factories 2011,10:59を参照のこと)、ここで、細胞は、例えばレチノールの変換によるレチニルエステル、具体的には酢酸レチニルの生合成に関与する酵素などのそれぞれの酵素を発現している。特に、全て農業生産に由来するエタノール、トウモロコシ糖、又はコーン油を発酵に使用する。レチニルエステル、具体的には酢酸レチニル含む発酵生成物は、脂肪相で抽出された後、当技術分野で使用される方法により、結晶形態に精製され得る。
【0030】
いくつかの実施形態においては、本明細書で定義したレチノイドの混合物、具体的には本発明による特定なシス/トランス比を有する酢酸レチニルを含む混合物は、レチノイド産生宿主細胞を用いた発酵プロセスにおいて得られ、プロセスにおいて、ベータカロチンは、本明細書で定義されるシス/トランス比でレチナール、レチノール又は酢酸レチニルを含むレチノイドに酵素的変換され、本発明のシス/トランス比は、オキシゲナーゼ及びイソメラーゼ機能を有する1種以上の酵素を使用して得ることができる(例えば、Oberhauser et al.,PNAS,vol 105,no.48,19003,2008を参照のこと)。特に、レチノイド産生宿主生物は、ベータカロチンをレチナール及びレチノールを経由して酢酸レチニルに酵素的変換することができる。
【0031】
本明細書に使用する、用語「生物学的に生成される」は、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルが、本明細書において定義される、好適な炭素源のレチニルエステル、具体的には酢酸レチニルへの変換に関与するそれぞれの酵素を発現する好適な(カロテノイド及び/又はレチノイド産生)宿主細胞の培養を含む発酵プロセスなどのバイオ技術プロセスの助けにより生成されることを意味し、宿主細胞は、細菌、真菌、特に酵母、植物又は藻類、特に真菌細胞、例えばヤロウィア(Yarrowia)又はサッカロミセス(Saccharomyces)、又は細菌細胞、例えば大腸菌(E.coli)などから選択してもよい。レチノイドを生成することが知られている他の好適な微生物から更に選択してもよい。「バイオ生成」、「生物由来」及び「生物学的に生成される」又は「バイオベース」は、本明細書において同義語として使用される。したがって、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルを含む前記生物学的に生成されるレチノイドは、緑色植物によって糖及びデンプンに変換される大気中の二酸化炭素からの炭素(大気起源の炭素とも呼ばれる)からなり、故に好ましくは非化石燃料炭素からなる糖及びデンプンからなる。又、本明細書で定義される混合物中のレチニルエステル、具体的には酢酸レチニルの特定のトランス/シス比の形成を選択的に触媒することができる特定の酵素などの、本明細書で定義される、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルの混合物を生成するためのプロセスにおける単離した及び/又は固定化した酵素の使用も含まれる。
【0032】
一態様においては、本明細書で定義されるレチノイド混合物は、例えば油性酵母、特にヤロウィア(Yarrowia)などの真菌宿主細胞を用いた発酵により生成され、前記宿主細胞は、好適な炭素源の存在下、及び第2相溶媒としての植物由来の第2相、例えば植物油、例えばコーン油の存在下で培養され、第2相にレチノイドが蓄積される。
【0033】
好適な植物由来の第2相溶媒は、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸又はリノール酸及びグリセロールを含むがこれらに限定されない任意の植物油から選択することができ、例えば、コーン油、オリーブ油、綿実油、菜種油、ゴマ油、キャノーラ油、ベニバナ油、ヒマワリ油、大豆油、ブドウ種子油又はピーナッツ油などであり、好ましくはコーン油である。
【0034】
本発明に使用される炭素源は、直鎖アルカン、遊離脂肪酸、エタノール、グルコース、及び/又はそれらの混合物から選択してよい。
【0035】
本明細書で使用される「バイオベース」化合物は、C-14/C-12同位体比0:1を有する化石由来の化合物とは対照的に、1:0から0:1を超える範囲のC-14/C-12同位体比を有する。化合物のバイオベース含量は、例えば、D6866-05又はD6866-20などのASTM試験方法D6866、DIN SPEC 91236(CEN/TS 16137)、ISO 16620、又はDIN EN 16785/1などの既知の放射性炭素及び同位体比質量分析又は加速器質量分析により測定することができ、サンプル中のC-14/C-12同位体比を測定し、標準の100%バイオベース材料と比較して、サンプルのバイオベース含量のパーセントを示す。
【0036】
本明細書において使用する「大気起源の炭素」とは、ここ数十年の間に地球の大気中に遊離した二酸化炭素分子の炭素原子を指す。このような炭素の質量は、本明細書に記載される特定の放射性同位元素の存在により、同定可能である。「グリーン炭素」、「大気中の炭素」、「環境にやさしい炭素」、「ライフサイクル炭素」、「非化石燃料起源炭素」、「非石油起源炭素」、「大気起源炭素」、「バイオベース炭素」は、本明細書においては互換的に使用される。
【0037】
本発明の全ての実施形態においては、有利なことに、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルを含むレチノイド混合物は、単に有機的で再生可能なバイオベースの原料で生成され、特に発酵生成され、そのようなレチニルエステル、具体的には酢酸レチニルは、そのような「発酵由来の」又は「発酵生成された」レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルから分解中に放出されるCO2分子の全てが大気起源を有するので、生分解時にゼロの人為的CO2排出プロファイルを有する。したがって、大気中へのCO2の純放出量はゼロになる。
【0038】
したがって、本発明は、特に、0.03未満のシス/トランス比(混合物中の総レチノイドを基準として重量%で定義される)で、本明細書に定義するシス及びトランス異性体を含む酢酸レチニルを含むレチノイド混合物であって、前記混合物が、本出願で与えられる定義に従って、少なくとも約20%、例えば25、30、35、40、45、50、55、60、65、70、75、80、85、90、95、98又は100%のバイオベース炭素を有するレチノイド混合物に関する。
【0039】
特に、本発明は、本明細書で定義される0.03未満のシス/トランス比を有する酢酸レチニルの混合物を含む生分解性組成物であって、前記組成物中の酢酸レチニル混合物が、生分解時にゼロの人為的CO2排出プロファイルを有する生分解性組成物に関する。
【0040】
好ましい一実施形態においては、本発明によるレチノイド混合物は、本明細書に記載の範囲内で且つ全ての定義及び優先権を有するシス及びトランスレチニルエステル、具体的にはシス及びトランスの酢酸レチニルから本質的になる。
【0041】
本発明に従って使用される用語「から本質的になる」は、本明細書に定義される混合物内の成分の総量が、理想的には合計して100重量%になることを意味する。しかしながら、少量の不純物又は添加物が混合物中に存在することがあることは排除されないが、但し、そのような不純物の総量は、好ましくは約5重量%未満、より好ましくは約3、2、1重量%未満であり、例えば、使用されるそれぞれの原料及び/又はプロセスを介して導入される。
【0042】
本明細書で使用する、用語「不純物及び添加物」は、本明細書において、互換的に使用され、本発明の混合物内の共成分(co-ingredients)を指し、混合物中に存在する全成分を基準として5重量%未満の量で本発明の混合物に存在する。
【0043】
本発明によるレチノイド混合物が、本明細書に定義されるシス/トランス比を有する酢酸レチニルから本質的になるならば、前記混合物の純度、即ちシス及びトランスの酢酸レチニルの(総)量は、例えばHPLC、特に逆相C4HPLCなどの既知の方法で測定して、好ましくは少なくとも約95%、より好ましくは少なくとも約96%、最も好ましくは少なくとも約98%以上である。
【0044】
本明細書で使用する用語「純度」は、総重量に対するシス異性体とトランス異性体の合計を意味し、例えば、本明細書に示される定義によるシス酢酸レチニルとトランス酢酸レチニルの合計が、純度100%に設定した総レチノイドを基準とする純度パーセントを示す。したがって、混合物が、98.03重量%のトランスレチノールと0.25重量%のシスレチノールとから本質的になるならば、前記混合物は、レチノールに関して98.28%の純度を有する。本発明の全ての実施形態によると、レチノイド混合物は、前記混合物中の総レチノイドを基準として0.5重量%未満のシスレチニルエステル、具体的にはシス酢酸レチニルを含むのが好ましい。
【0045】
いくつかの実施形態においては、本明細書に定義されるシス/トランス比でシス及びトランス酢酸レチニルを含むレチノイド混合物は、少量の添加物、例えばジヒドロレチノール及び/又はジヒドロレチニルアセテートをはじめとするジヒドロレチノイドを、全て総レチノイドを基準として、具体的には0.2~0.01重量%以下、例えば0.2、0.18、0.16、0.15、0.14、0.12、0.1、0.05、0.01重量%以下、好ましくは0.2~0.1、0.17~0.06、0.1~0.05、0.04~0.01の範囲で、より好ましくは0.1重量%以下の割合で、更に含む。同様に好ましくは、ジヒドロレチニルアセテートの割合は、前記混合物内の総レチノイドを基準として約0.05重量%以下、特に約0.01重量%以下である。
【0046】
いくつかの実施形態においては、本明細書に定義されるシス/トランス比でシス及びトランス酢酸レチニルを含むレチノイド混合物は、少量の添加物、例えばこれらに限定されないがシスレチノール、トランスレチノール、ジヒドロレチノールをはじめとするレチノールを、前記混合物内の全て総レチノイドを基準として、例えば2重量%以下の量、例えば約1.8、1.7、1.5、1.2、1.0、0.8、0.5、0.3、0.2、0.1重量%以下、好ましくは2~0.1重量%、2~1重量%、1~0.1重量%、1.5~0.1重量%、0.5~0.2重量%、0.4~0.2重量%、1~0.2重量%の範囲、最も好ましくは2~0.9重量%又は0.4~0.1重量%の範囲のレチノールの割合で更に含む。
【0047】
いくつかの実施形態においては、本明細書に定義されるシス/トランス比でシス及びトランス酢酸レチニルを含むレチノイド混合物は、少量の添加物、例えばこれらに限定されないが例えば9-シスレチナール、トランスレチナールなどをはじめとするレチナールを、前記混合物内の全て総レチノイドを基準として、例えば1重量%以下の量、例えば約0.8、0.7、0.5、0.2、0.1、0.08、0.05、0.03、0.02、0.01、0.005重量%以下、好ましくは1~0.005重量%、0.5~0.01重量%、0.5~0.02重量%、0.05~0.01重量%、0.05~0.02重量%、0.04~0.1重量%、0-2~0.04重量%の範囲、最も好ましくは0.2~0.019重量%又は0.04~0.01重量%の範囲での割合のレチナールの割合で更に含む。
【0048】
本発明の別の実施形態は、セロトニン5-HT2B受容体の拮抗に反応する有害な病状を治療又は予防する方法であって、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明によるレチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の有効量を、それらを必要とする人に投与することを備える方法である。好ましくは、有害病状は、片頭痛症候群、不安症、低眼圧症、心臓弁膜症、過敏性腸症候群、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤、特にメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の中毒/乱用からなる群から選択される。
【0049】
別の実施形態は、セロトニン5-HT2B受容体の拮抗に反応する有害な病状を治療又は予防するための、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明によるレチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用である。本発明の別の実施形態は、セロトニン5-HT2B受容体の拮抗に反応する有害な病状を治療又は予防する薬剤を含む栄養補給食品、栄養製品、食品、飼料製品、医薬製品又は化粧製品の製造における、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明によるレチノイド混合物及び/又は組成物の使用である。
【0050】
したがって、本発明は、本明細書で定義される、レチニルエステル、具体的には酢酸レチニルの特定のシス/トランス比を有するレチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用に関し、前記混合物/組成物は、5-HT2B受容体拮抗薬として、特に、片頭痛症候群、不安症、低眼圧症、心臓弁膜症、過敏性腸症候群、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤、特にメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)の中毒/乱用に関連する症状又は有害な病状の治療又は予防又は軽減に使用される。
【0051】
本発明の全ての実施形態においては、適用は、局所的又は経口的に行うことができ、経口投与が好ましい。
【0052】
本発明の全ての実施形態においては、有害な病状には有害な皮膚の病状も含まれることがあることは十分に理解される。
【0053】
「予防」又は「予防法」には、完全な予防だけでなく、発症を遅らせること、症状の重篤度を軽減すること、及び/又は病状の再発までの期間を長くすることが含まれる。
【0054】
本発明の別の実施形態は、片頭痛の症状を治療、予防又は軽減する方法であって、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を5-HT2B受容体に拮抗する量投与することを備える、好ましくは、片頭痛を経験している、又は片頭痛を経験するリスクがある人に、そのような混合物及び/又は組成物を投与するステップを備える方法である。
【0055】
更なる一実施形態は、片頭痛の重篤度を治療、予防又は軽減するための、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明によるレチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用である。
【0056】
別の実施形態は、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を、片頭痛症候群、特に片頭痛の症状を治療、予防又は軽減する薬剤を含む栄養補給食品、栄養製品、医薬、飼料製品、食品又は化粧製品の製造に使用することである。
【0057】
別の実施形態においては、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物は、不安症に伴う症状を治療、予防、軽減するのに使用される。
【0058】
本発明の別の実施形態は、不安症の症状を治療、予防又は軽減する方法であって、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を5-HT2B受容体に拮抗する量投与することを備える方法である。
【0059】
別の実施形態は、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を、不安症の症状を治療、予防又は軽減する薬剤を含む栄養補給食品、栄養製品、医薬、食品、飼料製品又は化粧製品の製造に使用することである。
【0060】
本発明の別の実施形態は、過敏性腸症候群(IBS)症状を治療、予防又は軽減する方法であって、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を5-HT2B受容体に拮抗する量投与することを備える方法である。
【0061】
更なる一実施形態は、IBSを治療、予防又は軽減するための、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明によるレチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用である。別の実施形態は、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、前記レチノイド混合物又は組成物の使用であって、IBSの症状を治療、予防、軽減する薬剤を含む栄養補給食品、栄養製品、食品、飼料製品、医薬製品又は化粧製品の製造における使用である。特に好ましいレチニルエステルは、酢酸レチニルである。
【0062】
本発明の別の実施形態は、白内障の形成を含む低眼圧症の症状を治療、予防又は軽減する方法であって、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、特定のシス/トランス比を有するレチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を5-HT2B受容体に拮抗する量投与することを備える方法である。
【0063】
更なる一実施形態は、白内障を含む低眼圧症の症状を治療、予防又は軽減するための、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用である。
【0064】
更なる一実施形態は、白内障を含む低眼圧症の症状を治療、予防又は軽減する薬剤を含む栄養補給食品、栄養製品、医薬製品、飼料製品、食品又は化粧製品の製造における、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用である。
【0065】
本発明の別の実施形態は、心臓弁膜症の症状を治療、予防又は軽減する方法であって、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を5-HT2B受容体に拮抗する量投与することを備える方法である。
【0066】
更なる一実施形態は、心臓弁膜症の症状を治療、予防又は軽減するための、本明細書に定義される、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用である。
【0067】
別の実施形態は、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を、心臓弁膜症の症状を治療、予防又は軽減する薬剤を含む栄養補給食品、栄養製品、食品、飼料、医薬又は化粧製品の製造に使用することである。
【0068】
本発明の一実施形態は、フェネチルアミン薬物依存症に関連する症状を予防、治療、又は軽減する方法であって、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の、セロトニン5-HT2B拮抗量を、それらを必要とする人に、又はセロトニンの過剰放出を引き起こす薬物、フェネチルアミン系薬物、好ましくはメチレンジオキシメタンフェタミン(MDMA)(これに限定されない)のリスクがある人又は乱用の人に、投与することを備える。
【0069】
別の実施形態は、フェニルエチルアミン薬物を乱用する人に対して、フェニルエチルアミン薬物の魅力を軽減するための、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による医薬、食品、飼料又は化粧料組成物の使用である。好ましい実施形態においては、薬物は、MDMAである。
【0070】
別の実施形態は、本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を、フェニルエチルアミン薬物の乱用を治療、予防又は軽減する薬剤を含む栄養補給食品、栄養製品、医薬製品、又は化粧製品の製造に使用することである。好ましい実施形態においては、薬物は、MDMAである。
【0071】
本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物は、他の活性成分と組み合わせて、有益な結果を有する製品を製造してもよい。更なる活性成分の例としては、ビタミンE、水溶性トマト抽出物、レスベラトロール、ビタミンD、25-ヒドロキシビタミンD3、ヒドロキシチロソロール、多価不飽和脂肪酸(PUFA)、ヒトミルクオリゴ糖、カンナビノイド及びその混合物が挙げられる。
【0072】
本発明による製品は、一般的に、本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を、栄養補給食品、医薬製品、栄養製品又は化粧製品に従来使用されている好適な担体及び/又は賦形剤及び/又は希釈剤と混合することによって調製され、本明細書で定義される0.03未満のシス/トランス比を有する酢酸レチニルを含む十分な量のレチノイド混合物の1日の推奨用量、具体的には成人に対して1日当たり最大2mgまでの酢酸レチニルを含む。
【0073】
本出願において使用される「化粧製品」という用語は、Roempp Lexikon Chemie,10th edition 1997,Georg Thieme Verlag Stuttgart,New Yorkの表題「Kosmetika」で定義された組成物及びA.Domsch,“Cosmetic Compositions”,Verlag fuer chemische Industrie(ed.H.Ziolkowsky),4th edition,1992に開示されている化粧料組成物を指す。
【0074】
活性成分の組み合わせの場合には、栄養補給食品、栄養製品、医薬製品、飼料製品、食品又は化粧製品内で組み合わせた成分の投与量が、少なくとも0.1~10mg/日となるように調節され得るが、30mg/日を超えないのが望ましい。
【0075】
所望の場合には、1日の摂取量を1日2回の錠剤など、2回以上の投与量に分けることができる。
【0076】
非ヒト動物に関しては、上記のヒト投与量を動物の体重に対して調節することができる。
【0077】
本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を含む栄養補給食品、栄養製品、飼料製品、食品、医薬製品又は化粧製品は、ヒト又は動物の体に投与するのに好適である任意のガレヌス形態、殊に経口投与用の従来からの任意の好適な形態、例えば、固形状態、例えば食品用の(添加剤/サプリメント)、又は食品若しくは飼料プレミックス、強化食品若しくは飼料、錠剤、丸剤、顆粒、糖衣丸、カプセル剤、及び発泡性製剤、例えば粉末及び錠剤の形態をとるか、或いは例えば、飲料、ペースト及び油状懸濁液として溶液、エマルション又は懸濁液などの液体状態であってよい。ペーストは、ハード又はソフトシェルカプセルに封入され得て、そのカプセルは、例えば(魚、ブタ、家禽、ウシ)ゼラチンのマトリックス、植物タンパク質又はスルホン酸リグニンを特徴とする。他の用途形態の例は、局所、経皮、非経口又は注射可能な投与の形態である。栄養補給食品、栄養製品、医薬製品、食品、飼料製品、又は化粧製品は、放出制御(遅延)製剤の形態であってもよい。本発明による栄養補給食品、栄養製品、医薬製品、食品、飼料製品、又は化粧製品は、更に、保護親水コロイド(ガム、タンパク質、修飾デンプン)、結合剤、皮膜形成剤、カプセル化剤/材料、壁/シェル材料、マトリックス化合物、コーティング、乳化剤、表面活性剤、可溶化剤(オイル、脂肪、ワックス、レシチン等)、吸着剤、担体、充填剤、共化合物(co-compound)、分散剤、湿潤剤、加工助剤(溶媒)、流動剤、矯味剤、増量剤、ゼリー化剤、ゲル形成剤、酸化防止剤及び抗菌剤を含有し得る。
【0078】
本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、医薬、食品、飼料又は化粧料組成物を含有するのに好適である食品の例は、シリアルバー、ヨーグルトなどの乳製品、ケーキ及びクッキーなどのベーカリー製品である。強化食品の例は、シリアルバー、並びにパン、ブレッドロール、ベーグル及びクッキーなどのパン菓子製品である。栄養補助食品の例は、錠剤、丸剤、顆粒、糖衣丸、カプセル、並びにノンアルコール飲料の形態の発泡性製剤、例えばソフトドリンク、フルーツジュース、レモネード、水に近い飲料、お茶及び液体食品の形態の牛乳ベースの飲料、例えばスープ及び乳製品(ミューズリー(muesli)飲料)である。飲料も又適切である。飲料は、ノンアルコール及びアルコール飲料、並びに飲料水及び液体食品に加えられる液体配合物を包含する。ノンアルコール飲料は、例えばソフトドリンク、スポーツドリンク、フルーツジュース、野菜ジュース(例えば、トマトジュース)、レモネード、お茶及び牛乳ベースの飲料である。液体食品は、例えばスープ及び乳製品(ミューズリー飲料)である。
【0079】
本明細書に記載の全ての定義及び優先権を有する本発明による、レチノイド混合物及び/又は前記混合物を含む医薬、食品、飼料又は化粧料組成物に加えて、本発明による栄養補給食品、栄養製品、食品、飼料製品、医薬製品又は化粧製品は、水、あらゆる由来のゼラチン、植物性ガム、スルホン酸リグニン、タルク、糖、デンプン、アラビアガム、植物油、ポリアルキレングリコール、香味剤、防腐剤、安定剤、乳化剤、緩衝剤、潤滑剤、着色剤、湿潤剤、充填剤、及びそれぞれの分野で使用されるものなどの従来の添加剤及び補助剤、賦形剤又は希釈剤を含有してよいが、これらに限定されない。担体材料は、経口/非経口/注射/局所投与に好適であり得る。
【0080】
以下の実施形態(1)~(14)は、特に本発明の範囲内である:
(1):レチニルエステルのシス異性体とトランス異性体の混合物であって、前記混合物内のシス/トランス比が、0.03未満、好ましくは0.0299、0.028、0.025、0.02、0.015、0.01、0.0099、0.0095、0.009、0.0085、0.008、0.0075、0.007、0.0065、0.006、0.0055、0.005、0.0049、0.0045、0.0043、0.004、0.0035、0.003、0.0028、0.0025、0.0022、0.002、0.0018、0.0015、0.001、0.0005以下、例えば0.0001以下のシス/トランス比であり、より好ましくは0.0299~0.0001、0.01~0.001、0.02~0.0005、0.0099~0.0001、0.008~0.001、0.007~0.002、0.009~0.0001、0.008~0.0001、0.005~0.001、0.005~0.0001、0.005~0.0005、0.006~0.001、0.02~0.0001、0.01~0.0001、0.006~0.0001、0.0055~0.0001、0.007~0.0001、0.0045~0.0001、0.005~0.002、0.004~0.0001、0.0035~0.0001、0.003~0.0001、0.005~0.0025、0.025~0.0001、0.006~0.0005、0.006~0.0008、0.006~0.0015、0.006~0.002、0.006~0.003、0.006~0.0004、0.006~0.0025、0.004~0.0005の範囲であり、最も好ましくは約0.0025のシス/トランス比である混合物。
(2):実施形態(1)の混合物を含む組成物。
(3):実施形態(1)の混合物又は実施形態(2)の組成物であって、レチニルエステルが、酢酸レチニルである混合物又は組成物。
(4):実施形態(1)、(2)、(3)の混合物/組成物であって、レチニルエステルが、生物学的由来である混合物/組成物。
(5):実施形態(1)、(2)、(3)又は(4)の混合物/組成物であって、混合物が、混合物中の全成分を基準として少なくとも約95%の酢酸レチニルからなる混合物/組成物。
(6):実施形態(1)、(2)、(3)、(4)又は(5)の混合物/組成物であって、前記混合物中に全成分を基準として最大約2%までの割合のレチノールを含む混合物/組成物。
(7):セロトニン5-HT2B受容体の拮抗に反応する有害な病状を予防又は治療する方法であって、実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の混合物/組成物の有効量を、それらを必要とする人に投与することを備える方法。
(8):片頭痛症候群、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤の中毒/乱用に関連する症状の予防、治療又は軽減のための実施形態(7)の方法。
(9):実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の混合物/組成物のセロトニン5-HT2B受容体拮抗薬としての使用。
(10):実施形態(9)による使用であって、前記5-HT2B受容体拮抗薬が、片頭痛症候群、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤の中毒/乱用の治療又は予防のために使用される使用。
(11):実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)、(6)、(9)又は(10)による混合物又は組成物の使用であって、片頭痛症候群、好ましくは片頭痛、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤の中毒/乱用からなる群から選択される病状の治療、軽減又は予防において、栄養補給食品、栄養製品、医薬、又は化粧料組成物若しくは化粧製品の調製において、特に薬剤の調製においての使用。
(12):実施形態(1)、(2)、(3)、(4)、(5)又は(6)の混合物又は組成物を含む栄養補給食品、栄養製品、医薬、又は化粧料組成物若しくは化粧製品。
(13):片頭痛症候群、不安症、過敏性腸症候群、低眼圧症、心臓弁膜症、及び1種のフェネチルアミン系覚醒剤の中毒/乱用の治療又は予防のための実施形態(12)による組成物又は製品。
(14):経口投与に好適な形態での実施形態(13)による組成物又は製品。
【0081】
本発明をよりよく説明するために、以下の非限定的な実施例を示す。
【0082】
[実施例]
[実施例1:IP1機能的アッセイを用いるヒトセロトニン5-HT2Bの拮抗作用]
本明細書に定義される酢酸レチニルを含むレチノイド混合物を、国際公開第2022/090549号パンフレット(実施例1)に記載の通りに生成でき、その場合には、レチノイドを脂質相に蓄積した後に、エタノール又は当技術分野で公知の溶媒で単離/抽出する。
【0083】
トランスフェクトしたCHO細胞で発現したヒト5-HT2B受容体を用いて、HTRF(登録商標)検出法を用いてアゴニスト誘導性イノシトール一リン酸(IP1)産生に対する影響を測定することにより、拮抗作用を決定する(Porter et al.,1999,Brit.J.Pharmacol.,128:13-20;Trinquet et al.,2006,Analytical Biochemistry 358,126-135)。
【0084】
CHO細胞を、10mMのHepes/NaOH(pH7.4)、4.2mMのKCl、146mMのNaCl、1mMのCaCl2、0.5mMのMgCl2、5.5mMのグルコース、及び50mMのLiClを含有する緩衝液に懸濁した後、約20000細胞/ウェルの密度でマイクロタイタープレートに分配し、緩衝液(基礎コントロール)、試験化合物、即ち参照サンプル、及び本発明の酢酸レチニル(「retAc」)の混合物(表1を参照)、又は非常に強力な既知の参照拮抗薬SB-206553の存在下で、室温で5分間プレインキュベートする。その後、参照アゴニスト5-HT(セロトニン)を最終濃度30nMで添加する。基礎コントロール測定では、個々のアッセイウェルは、5-HTを含有しない。37℃で30分間インキュベートした後、細胞を溶解させて、蛍光アクセプター(D2標識IP1)及び蛍光ドナー(ユーロピウムクリプテートで標識した抗IP1抗体)を添加する。室温で60分後、マイクロプレートリーダー(Envision、PerkinElmer)を用いて、波長Ex=337nm、並びにEm=620及び665nmで蛍光移動を測定する。IP1濃度は、665nmで測定したシグナルを620nmで測定したシグナルで割る(比)ことで求めることができる。結果は、30nMの5-HTに対するコントロール反応の阻害率として表す。平均値、標準偏差を算出し、用量反応モデルを用いてIC50値を算出する。
【0085】
【0086】
標準参照拮抗薬SB-206553を、それぞれの実験においていくつかの濃度で試験して、濃度反応曲線を生成する。用量反応曲線をIC50値の算出に用いる。同じ手順をRetAc mix及びReference RetAcに対して行い、IC50値を求める。結果を表2に示す。本発明による酢酸レチニルミックスを使用する場合には、IC50値は、劇的に減少し、即ち、拮抗作用が、Reference retAcと比較して劇的に増加する。
【0087】
【0088】
[実施例2:製剤]
ジェル、エマルション、シャンプー、ヘアクリーム、ローション、メークアップ、化粧水、アフターシェーブ、クリーム、手指消毒剤の形態の化粧品製剤は、当技術分野で公知の方法に従って作られる。特に指示がない場合、製剤のpHを適切と思われるpH3~7.5に調整する。以下の製剤において、用語「新規成分」は、表1に示すシス/トランス比を有する酢酸レチニル(RetAc mix)を指す。
【0089】
【0090】
【0091】
【0092】
【0093】
【0094】
【0095】
【0096】
【0097】
【0098】
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【国際調査報告】