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特表2024-542708再生正極活物質、その再生方法及びそれを含む二次電池
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  • 特表-再生正極活物質、その再生方法及びそれを含む二次電池 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】再生正極活物質、その再生方法及びそれを含む二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20241108BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20241108BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20241108BHJP
   H01M 10/54 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
H01M4/525
H01M4/505
H01M4/36 C
H01M10/54
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532549
(86)(22)【出願日】2023-06-26
(85)【翻訳文提出日】2024-05-30
(86)【国際出願番号】 KR2023008812
(87)【国際公開番号】W WO2024010263
(87)【国際公開日】2024-01-11
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082984
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0082985
(32)【優先日】2022-07-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2023-0081265
(32)【優先日】2023-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521065355
【氏名又は名称】エルジー エナジー ソリューション リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100188558
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ミ・チェ
(72)【発明者】
【氏名】ドゥ・キョン・ヤン
(72)【発明者】
【氏名】ミン・ソ・キム
(72)【発明者】
【氏名】ウンキュ・ソン
(72)【発明者】
【氏名】ヨン・ジュン・キム
(72)【発明者】
【氏名】ヘミン・ユ
【テーマコード(参考)】
5H031
5H050
【Fターム(参考)】
5H031AA00
5H031HH03
5H031RR01
5H050AA17
5H050AA19
5H050BA16
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA09
5H050CB08
5H050FA18
5H050HA01
5H050HA02
5H050HA13
(57)【要約】
本発明は、再生正極活物質、その再生方法及びそれを含む二次電池に関し、より詳細には、リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含み、フッ素(F)の含量が250mg/kg以下であり、平均結晶サイズが122nm以下であることを特徴とする再生正極活物質、その再生方法及びそれを含む二次電池に関する。
本発明によれば、ハイニッケル(High-Ni)正極材が使用された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理した後、1次洗浄し、その後、リチウム前駆体を添加し、アニーリングした後、2次洗浄して、再生正極活物質の表面にフッ素(F)の含量が減少し、さらに、酸化熱処理ステップを2つのステップに分けて行うことで、バインダーがきれいに燃焼され、熱処理ステップで発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少して結晶サイズが小さくなることによって、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れた正極活物質を提供し、また、回収及び再生工程で酸を用いないので環境に優しく、これによる中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が削減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、捨てられる金属元素がなく、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく、特に水洗工程が省略されるので、経済性及び生産性が大きく改善された正極活物質の再生方法などを提供する効果がある。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含み、フッ素(F)の含量が250mg/kg以下であり、平均結晶サイズが122nm以下であることを特徴とする、正極活物質。
【請求項2】
前記正極活物質は、表面が、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングされたことを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項3】
前記金属は、ホウ素(B)、タングステン(W)またはこれらの混合であることを特徴とする、請求項2に記載の正極活物質。
【請求項4】
前記正極活物質は再生正極活物質であることを特徴とする、請求項1に記載の正極活物質。
【請求項5】
集電体上に、Niを60mol%以上含む正極活物質層が形成された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理し、前記正極活物質層中のバインダーと導電材を熱分解することによって、前記集電体を前記正極活物質層から分離し、前記正極活物質層中の正極活物質を回収するステップと、
前記回収した正極活物質を1次洗浄するステップと、
前記1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングするステップと、
前記アニーリングした正極活物質を2次洗浄するステップとを含むことを特徴とする、正極活物質の再生方法。
【請求項6】
前記酸化熱処理は、300~650℃で行うことを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項7】
前記酸化熱処理は、300~450℃で1次熱処理した後、500~650℃で2次熱処理することを特徴とする、請求項5または6に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項8】
前記1次熱処理は10分~3時間行い、前記2次熱処理は10分~2時間行うことを特徴とする、請求項7に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項9】
前記酸素は、純度が59%以上であることを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項10】
前記1次洗浄は、前記回収した正極活物質を、洗浄液として水又は塩基性のリチウム化合物水溶液に浸漬、または浸漬と同時に撹拌して行うことを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項11】
前記塩基性のリチウム化合物水溶液は、0重量%超過15重量%以下のリチウム化合物を含むことを特徴とする、請求項10に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項12】
前記アニーリングするステップにおいて1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加する方法は、1次洗浄した正極活物質をリチウム前駆体溶液に混合し、噴霧乾燥することであることを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項13】
前記2次洗浄は、アニーリングした正極活物質を洗浄液として水と混合した後、濾過するステップ、及び前記濾過後に収得した固形分の正極活物質を乾燥させるステップを含むことを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項14】
前記リチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOのいずれか1つ以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項15】
前記リチウム前駆体は、前記正極活物質層に使用された原材料の正極活物質内のリチウムを合計100mol%とするとき、1mol%~40mol%に該当する量で添加されることを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項16】
前記アニーリングは、400~1000℃で行うことを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項17】
前記正極活物質の再生方法は、前記2次洗浄した正極活物質を表面コーティングして再使用可能な正極活物質を得るステップをさらに含むことを特徴とする、請求項5に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項18】
前記表面コーティングは、金属、有機金属及び炭素成分のうちの1種以上を固相又は液相方式で表面にコーティングした後、100~1200℃で熱処理することを特徴とする、請求項17に記載の正極活物質の再生方法。
【請求項19】
リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含み、フッ素(F)の含量が305mg/kg以下であり、平均結晶サイズが139nm以下であることを特徴とする、正極活物質。
【請求項20】
前記正極活物質は、残留LiCOの含量が0.16重量%以下であることを特徴とする、請求項19に記載の正極活物質。
【請求項21】
請求項1~4、19及び20のいずれか一項に記載の正極活物質を含むことを特徴とする、二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願との相互参照]
本出願は、2022年7月6日付の韓国特許出願第10-2022-0082984号及び2022年7月6日付の韓国特許出願第10-2022-0082985号に基づいて2023年6月23日付で再出願された韓国特許出願第10-2023-0081265号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示された全ての内容は本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、再生正極活物質、その再生方法及びそれを含む二次電池に関し、より詳細には、ハイニッケル(High-Ni)正極材が使用された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理した後、1次洗浄し、その後、リチウム前駆体を添加し、アニーリングした後、2次洗浄して、再生正極活物質の表面にフッ素(F)及び反応に参加できなかったリチウム前駆体が除去され、さらに、酸化熱処理ステップを2つのステップに分けて行うことで、バインダーがきれいに燃焼され、熱処理ステップで発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少して結晶サイズ(crystallite size)が小さくなることによって、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れた正極活物質が得られ、回収及び再生工程で酸を用いないので環境に優しく、これによる中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が削減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、捨てられる金属元素がなく、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく、特に水洗工程が省略されるので、経済性及び生産性が大きく改善された正極活物質の再生方法などに関する。
【背景技術】
【0003】
リチウム二次電池は、概して、正極活物質層がアルミニウムなどの金属ホイルにコーティングされた正極、負極活物質層が銅などの金属ホイルにコーティングされた負極、正極と負極が混ざり合わないように防ぐ分離膜、及び正極と負極との間でリチウムイオンを移動できるようにする電解液などからなる。
【0004】
前記正極活物質層は、活物質として主にリチウム系酸化物を使用し、前記負極活物質層は、活物質として主に炭素材を使用するが、前記リチウム系酸化物には、一般にコバルト、ニッケルまたはマンガンなどのような希少金属が含有されているので、使用後に廃棄されるリチウム二次電池の正極、またはリチウム二次電池の製造工程で発生する正極スクラップなど(以下、「廃正極」という)から希少金属を回収して再利用する研究が多く行われている。
【0005】
廃正極から希少金属を回収する従来の技術は、廃正極を塩酸、硫酸または硝酸などで溶解させた後、コバルト、マンガン、ニッケルなどを有機溶媒で抽出し、再び正極活物質の合成のための原料として使用する方法がほとんどである。
【0006】
しかし、酸を用いた希少金属の抽出法は環境汚染の問題があり、中和工程と廃水処理工程が必ず必要であるため、工程コストが大幅に上昇し、正極活物質の主要金属であるリチウムを回収できないという欠点を有する。
【0007】
このような欠点を解消するために、最近は、廃正極から、正極活物質を分解せずに、正極活物質として直接再生する方法(direct recycled method)が研究されており、このような方法として、大きく、焼成(calcination)、溶媒溶解(solvent dissolution)、アルミニウムホイル溶解(Al foil dissolution)、破砕及びスクリーニング(crushing & screening)などの4種類程度が紹介されている。
【0008】
しかし、前記焼成方法は、工程は単純であるが、再生正極活物質の表面に、電池の出力性能などを低下させる異物が生成され、廃ガスが発生し、エネルギー消費が大きいという欠点がある。
【0009】
また、前記溶媒溶解方法は、比較的表面がきれいな再生正極活物質を得ることができるが、バインダーを溶かすために使用するN-メチル-2-ピロリドン(NMP)などの溶媒が有毒ガスであり、かつ爆発の危険性があるため、安定性が劣悪であり、高価な溶媒の回収工程が必要であるという欠点がある。
【0010】
また、前記アルミニウムホイル溶解方法は、工程安定性が良く、工程コストが低く、バインダーの除去が容易であるが、再生正極活物質の表面に除去しにくい異物が生成され、アルミニウムホイルの除去過程で水素ガスが発生して爆発の危険性があるという欠点がある。
【0011】
最後に、前記破砕及びスクリーニング方法は、最も単純な工程によるという利点があるが、集電体と正極活物質を完全に分離させることが難しく、破砕過程で正極活物質の粒度分布が変わり、バインダーが残留して再生正極活物質の電池特性が退化するという欠点がある。
【0012】
そのため、廃正極から捨てられる金属元素なしに、出力性能が改善された正極活物質を、少ない工程及び費用で、環境に優しくかつ安全に再生する方法などの開発が至急な実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記のような従来技術の問題点を解決するために、本発明は、ハイニッケル(High-Ni)正極材が使用された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理した後、1次洗浄し、その後、リチウム前駆体を添加し、アニーリングした後、2次洗浄して、再生正極活物質の表面にフッ素(F)及び反応に参加できなかったリチウム前駆体が除去され、さらに、酸化熱処理ステップを2つのステップに分けて行うことで、バインダーがきれいに燃焼され、熱処理ステップで発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少して結晶サイズ(crystallite size)が小さくなることによって、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れた正極活物質を提供し、また、正極活物質の回収及び再生工程で酸を用いないので環境に優しく、これによる中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が削減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、捨てられる金属元素がなく、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく、特に水洗工程が省略されるので、経済性及び生産性が大きく改善された正極活物質の再生方法を提供することを目的とする。
【0014】
また、本発明は、初期放電容量、出力性能(rate performance)及び容量特性に優れた二次電池を提供することを目的とする。
【0015】
本発明の上記目的及びその他の目的は、以下で説明する本発明によって全て達成することができる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の目的を達成するために、本発明は、I)リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含み、フッ素(F)の含量が250mg/kg以下であり、平均結晶サイズ(crystallite size)が122nm以下であることを特徴とする正極活物質を提供する。
【0017】
II)前記I)において、正極活物質は、表面が、金属又は炭素を含有したコーティング剤でコーティングされたものであってもよい。
【0018】
III)前記I)又はII)において、前記金属は、ホウ素(B)、タングステン(W)またはこれらの混合であってもよい。
【0019】
IV)前記I)~III)において、前記正極活物質は再生正極活物質であってもよい。
【0020】
また、本発明は、V)集電体上に、Niを60mol%以上含む正極活物質層が形成された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理し、前記正極活物質層中のバインダーと導電材を熱分解することによって、前記集電体を前記正極活物質層から分離し、前記正極活物質層中の正極活物質を回収するステップと;前記回収した正極活物質を1次洗浄するステップと;前記1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングするステップと;前記アニーリングした正極活物質を2次洗浄するステップと;を含むことを特徴とする正極活物質の再生方法を提供する。
【0021】
VI)前記V)において、前記酸化熱処理は300~650℃で行うことができる。
【0022】
VII)前記V)又はVI)において、前記酸化熱処理は、300~450℃で1次熱処理した後、500~650℃で2次熱処理することができる。
【0023】
VIII)前記V)~VII)において、前記1次熱処理は10分~3時間行い、前記2次熱処理は10分~2時間行うことができる。
【0024】
IX)前記V)~VIII)において、前記酸素は、純度が59%以上であってもよい。
【0025】
X)前記V)~IX)において、前記1次洗浄は、前記回収した正極活物質を、洗浄液として水又は塩基性のリチウム化合物水溶液に浸漬、または浸漬と同時に撹拌して行うことができる。
【0026】
XI)前記V)~X)において、前記塩基性のリチウム化合物水溶液は、0重量%超過15重量%以下のリチウム化合物を含むことができる。
【0027】
XII)前記V)~XI)において、前記アニーリングするステップにおいて1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加する方法は、1次洗浄した正極活物質をリチウム前駆体溶液に混合し、噴霧乾燥することができる。
【0028】
XIII)前記V)~XII)において、前記2次洗浄は、アニーリングした正極活物質を洗浄液として水と混合した後、濾過するステップ、及び前記濾過後に収得した固形分の正極活物質を乾燥させるステップを含むことができる。
【0029】
XIV)前記V)~XIII)において、前記リチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOのいずれか1つ以上を含むことができる。
【0030】
XV)前記V)~XIV)において、前記リチウム前駆体は、前記正極活物質層に使用された原材料の正極活物質内のリチウムを合計100mol%とするとき、1mol%~40mol%に該当する量で添加されてもよい。
【0031】
XVI)前記V)~XV)において、前記アニーリングは、400~1000℃で行うことができる。
【0032】
XVII)前記V)~XVI)において、前記正極活物質の再生方法は、前記2次洗浄した正極活物質を表面コーティングして再使用可能な正極活物質を得るステップをさらに含むことができる。
【0033】
XVIII)前記V)~XVII)において、前記表面コーティングは、金属、有機金属及び炭素成分のうちの1種以上を固相又は液相方式で表面にコーティングした後、100~1200℃で熱処理することができる。
【0034】
また、本発明は、XIX)前記V)~XVIII)による正極活物質の再生方法により製造されることを特徴とする再生正極活物質を提供することができる。
【0035】
また、本発明は、XX)リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含み、フッ素(F)の含量が305mg/kg以下であり、平均結晶サイズ(crystallite size)が139nm以下であることを特徴とする正極活物質を提供する。
【0036】
XXI)前記XX)において、前記正極活物質は、残留LiCOの含量が0.16重量%以下であってもよい。
【0037】
XXII)前記XX)又はXXI)において、前記正極活物質は再生正極活物質であってもよい。
【0038】
また、本発明は、XXIII)前記I)~IV)、XIX)、XX)及びXXII)のいずれか一項に記載の正極活物質を含むことを特徴とする二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0039】
本発明によれば、ハイニッケル(High-Ni)正極材が使用された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理した後、1次洗浄し、その後、リチウム前駆体を添加し、アニーリングした後、2次洗浄して、再生正極活物質の表面にフッ素(F)及び反応に参加できなかったリチウム前駆体が除去され、結晶サイズが小さくなり、さらに、酸化熱処理ステップを2つのステップに分けて行うことで、バインダーがきれいに燃焼され、熱処理ステップで発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少して結晶サイズ(crystallite size)が小さくなることによって、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れた正極活物質を提供し、また、正極活物質の回収及び再生工程で酸を用いないので環境に優しく、これによる中和及び廃水処理が必要でないので、工程費が削減され、正極活物質を分解せずにそのまま再生するので、捨てられる金属元素がなく、有機溶媒を使用しないので、有毒ガスの発生又は爆発の危険性がなく、特に水洗工程が省略されるので、経済性及び生産性が大きく改善された正極活物質の再生方法などを提供する効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0040】
本明細書に添付される次の図面は、本発明の実施例を例示するものであり、後述する詳細な説明と共に本発明の技術思想をさらに理解させる役割を有するものであるので、本発明は、このような図面に記載された事項に限定されて解釈されてはならない。
図1】正極シートから電極板を切断した後に廃棄される正極スクラップを示す図である。
図2】実施例1及び比較例1~3で再生された正極活物質のSEM写真である。
図3】実施例1及び比較例1~3で再生された正極活物質が適用されたコインセルの充電容量の結果を示したグラフである。
図4】実施例1及び比較例1~3で再生された正極活物質が適用されたモノセルの充放電サイクルを行った結果であって、サイクル(cycle)回数による容量維持率(%)及び抵抗増加率(%)の変化を示したグラフである。
図5】追加実施例1~3、追加比較例1及び2で再生された正極活物質が適用されたコインセルの充電容量の結果を示したグラフである。
図6】追加実施例1~3、追加比較例1及び2で再生された正極活物質が適用されたモノセルの充放電サイクルを行った結果であって、サイクル(cycle)回数による容量維持率(%)の変化を示したグラフである。
図7】本発明に係る正極活物質の再生工程に対するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明者らは、廃正極から、正極活物質を分解せずに、電池性能に優れた正極活物質として直接再生する方法(direct recycled method)を研究していたところ、ハイニッケル(High-Ni)正極材が使用された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理した後、1次洗浄し、その後、リチウム前駆体を添加してアニーリングした後、2次洗浄する場合、再生正極活物質の表面にフッ素(F)及び反応に参加できなかったリチウム前駆体が除去されて、結晶サイズが小さくなり、さらに、酸化熱処理ステップを2つのステップに分けて行う場合、バインダーがきれいに燃焼され、熱処理ステップで発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少して結晶サイズ(crystallite size)が小さくなることによって、再生された正極活物質の電池特性などが改善されることを確認し、これに基づいてさらに研究に邁進して本発明を完成するようになった。
【0042】
以下、本記載の再生正極活物質、その再生方法及びそれを含む二次電池を詳細に説明する。
【0043】
但し、本明細書及び特許請求の範囲に使用された用語や単語は、通常の又は辞書的な意味に限定して解釈されてはならず、発明者は自己の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適切に定義できるという原則に基づき、本発明の技術的思想に符合する意味及び概念で解釈されなければならない。したがって、本明細書に記載された実施例及び図面に示された構成は、本発明の一実施例に過ぎず、本発明の技術的思想をすべて代弁するものではないため、これらを代替できる様々な均等物と変形例があり得、様々な他の構成で配列、代替、組み合わせ、分離またはデザインされ得ることを理解しなければならない。
【0044】
本記載で使用されたすべての技術的・科学的用語は、特に定義されていない限り、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者に共通して理解されるものと同じ意味を有する。
【0045】
正極活物質
本発明の正極活物質は、リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含み、フッ素(F)の含量が250mg/kg以下であり、平均結晶サイズが122nm以下であることを特徴とし、この場合、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという効果がある。
【0046】
前記正極活物質は、好ましくは、LiCoO(以下、「LCO」という)などのようなリチウムコバルト酸化物;LiMnO又はLiMnなどのようなリチウムマンガン酸化物;LiFePOなどのようなリチウムリン酸鉄化合物;リチウムニッケルコバルト酸化アルミニウム(NCA;lithium nickel cobalt aluminum oxide);LiNiOなどのようなリチウムニッケル酸化物;前記リチウムニッケル酸化物においてニッケル(Ni)の一部をマンガン(Mn)で置換したニッケルマンガン系リチウム複合金属酸化物;及び前記リチウムニッケル酸化物においてニッケル(Ni)の一部をマンガン(Mn)とコバルト(Co)で置換したNCM系リチウム複合遷移金属酸化物からなる群から選択された1種以上を含むことができ、この場合、電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性などに優れるという効果がある。
【0047】
前記正極活物質は、具体例として、下記化学式1
[化1]
LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表される化合物を含むことができ、この場合、電気化学的性能、抵抗特性及び容量特性などに優れるという効果がある。
【0048】
前記正極活物質は、好ましくはNiを80mol%以上含み、より好ましくは81mol%以上含み、さらに好ましくは81~95mol%含むことができ、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという効果がある。
【0049】
本記載において、Niの含量は、本発明の属する技術分野で通常用いるIC(Ion Chromatography)などを用いた測定方法による場合、特に制限されず、具体例として、IC-ICP(Inductively Coupled Plasma)分析装置、IC-ICP-MS分析装置、またはIC-ICP-AEC分析装置などを用いて測定することができる。
【0050】
前記正極活物質は、一例として、フッ素(F)の含量が250mg/kg以下、好ましくは200mg/kg以下、より好ましくは10~200mg/kgであってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0051】
本記載において、フッ素(F)の含量は、ICP分析装置を通じて測定することができ、このとき、実験室でよく使用する一般のICP分析装置により測定することができるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0052】
前記正極活物質は、一例として、平均結晶サイズが122nm以下、好ましくは115~122nm、より好ましくは120~122nmであってもよく、この範囲内で、結晶サイズが小さくなることによって、歪み(strain)を減少させてサイクルクラックを最小化することができ、電池の寿命が延びるという利点がある。
【0053】
本記載において、平均結晶サイズは、XRD結晶分析によって測定することができ、測定装置や方法による偏差はない。具体的には、正極活物質粒子をホルダーに5g入れ、X線を粒子に照射して出る回折格子を分析して求めることができる。求める方法は、主ピーク(main peak)又は3つ以上のピークの半値幅から求めることができ、これは、正極活物質粒子の一次粒子の平均結晶サイズに該当すると見ることができる。
【0054】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHが0.32重量%以下、好ましくは0.31重量%以下、より好ましくは0.01~0.31重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0055】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiCOが0.19重量%以下、好ましくは0.01~0.19重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0056】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHとLiCOの総和が0.51重量%以下、好ましくは0.50重量%以下、より好ましくは0.01~0.50重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0057】
本記載において、正極活物質の表面に残留するLiOH及びLiCOの残留量は、pH滴定装置(titrator)(Mettler toledo社製のT5)を用いて測定することができる。具体的には、正極活物質5gを蒸留水100mlに分散させ、300rpmで5分間混合した後、フィルタリングして活物質を濾過し、出てきた濾液に0.1MのHCl溶液で滴定しながらpH値の変化を測定して、pH滴定曲線(pH titration Curve)を得る。前記得られたpH滴定曲線を用いて、正極活物質内のLiOHの残留量及びLiCOの残留量を計算する。
【0058】
また、本発明の正極活物質は、リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含み、フッ素(F)の含量が305mg/kg以下であり、結晶サイズ(crystallite size)が139nm以下であることを特徴とし、この場合、容量特性及び寿命特性に優れるという効果がある。
【0059】
前記正極活物質は、好ましくはNiを80mol%以上含み、より好ましくは81mol%以上含み、さらに好ましくは81~95mol%含むことができ、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという効果がある。
【0060】
前記正極活物質は、一例として、フッ素(F)の含量が305mg/kg以下、好ましくは250mg/kg以下、より好ましくは200mg/kg以下、さらに好ましくは10~200mg/kgであってもよく、この範囲内で、容量特性に優れるという利点がある。
【0061】
前記正極活物質は、一例として、平均結晶サイズが139nm以下、好ましくは120~139nm、より好ましくは130~139nm、さらに好ましくは133~139nm、より一層好ましくは133~136nmであってもよく、この範囲内で、結晶サイズが小さくなることによって、歪みを減少させてサイクルクラックを最小化することができ、電池の寿命が延びるという利点がある。
【0062】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiCOが0.16重量%以下、好ましくは0.14重量%以下、より好ましくは0.1重量%以下、さらに好ましくは0.01~0.1重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0063】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHが0.32重量%以下、好ましくは0.3重量%以下、より好ましくは0.01~0.3重量%、さらに好ましくは0.01~0.28重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0064】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHとLiCOの総和が0.45重量%以下、好ましくは0.42重量%以下、より好ましくは0.40重量%以下、さらに好ましくは0.01~0.4重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0065】
前記正極活物質は、一例として、表面が金属又は炭素でコーティングされてもよく、好ましくは金属でコーティングされ、この場合、正極活物質自体の化学的及び物理的変化なしに正極活物質の構造的安定性が改善されることで、出力性能、寿命特性、容量などの電気化学的特性が向上し、正極活物質の表面にて異種元素で置換されて残留リチウム量の調節及びpH減少の効果により、物理化学的特性も改善される。
【0066】
前記金属は、好ましくは、B、W、Al、Ti、Mg、Ni、Co、Mn、Si、Zr、Ge、Sn、Cr、Fe、V及びYからなる群から選択される1種以上であり、より好ましくは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択された1種以上であり、さらに好ましくは、ホウ素(B)、タングステン(W)またはこれらの混合であり、より一層好ましくは、タングステン(W)及びホウ素(B)であり、具体例としてはホウ化タングステン(tungsten boride;WB)であり、この場合、抵抗特性及び寿命特性などが向上するという効果がある。
【0067】
前記コーティング剤は、一例として、コーティング処理前の正極活物質内の金属1mol%に対して0.001~0.3mol%で含まれてもよく、好ましくは0.01~0.3mol%で含まれ、より好ましくは0.01~0.15mol%で含まれ、さらに好ましくは0.01~0.1mol%で含まれ、より一層好ましくは0.01~0.05mol%であり、この範囲内で、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0068】
前記表面コーティングは、好ましくは、金属、有機金属及び炭素成分のうちの1種以上を含むコーティング剤を、固相又は液相方式で表面にコーティングした後、100~1200℃で熱処理することであり、この場合、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0069】
前記正極活物質は、好ましくは再生正極活物質であってもよく、この場合、経済性及び生産性に優れるという利点がある。
【0070】
正極活物質の再生方法
本発明の正極活物質の再生方法は、集電体上に、Niを60mol%以上含む正極活物質層が形成された廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理し、前記正極活物質層中のバインダーと導電材を熱分解することによって、前記集電体を前記正極活物質層から分離し、前記正極活物質層中の正極活物質を回収するステップと;前記回収した正極活物質を1次洗浄するステップと;前記1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングするステップと;前記アニーリングした正極活物質を2次洗浄するステップと;を含むことを特徴とし、この場合、再生正極活物質の表面にフッ素(F)及び反応に参加できなかったリチウム前駆体が除去され、結晶サイズ(crystallite size)が小さくなることによって、優れた充電容量、抵抗特性及び容量特性が実現されるという効果がある。
【0071】
以下、正極活物質の再生方法を段階別に分けて詳細に説明する。
【0072】
(a)廃正極から正極活物質を回収するステップ
本発明による(a)廃正極から正極活物質を回収するステップは、好ましくは、集電体及びこれにコーティングされた正極活物質層を含む廃正極を、酸素を投入して酸化熱処理し、正極活物質を回収するステップであってもよく、この場合、工程が簡単であり、しかも、バインダー、導電材及び集電体をきれいに除去する効果がある。
【0073】
前記廃正極は、好ましくは、使用後に廃棄されたリチウム二次電池から分離された正極、リチウム二次電池の製造工程で発生する不良正極シート、または正極スクラップなどであってもよく、より好ましくは、正極シートから正極板を打ち抜いて残った正極スクラップであってもよい。
【0074】
前記(a)ステップの正極活物質層は、好ましくは、正極活物質、バインダー及び導電材を含むことができる。
【0075】
前記正極活物質は、一例として、リチウムニッケル酸化物(LNO)系正極活物質、ニッケル・コバルト・マンガン(NCM)系正極活物質、ニッケル・コバルト・アルミニウム(NCA)系正極活物質、及びニッケル・コバルト・マンガン・アルミニウム(NCMA)系正極活物質からなる群から選択された1種以上を含むことができる。
【0076】
前記正極活物質は、好ましくは、LiCoO(以下、「LCO」という)などのようなリチウムコバルト酸化物;LiMnO又はLiMnなどのようなリチウムマンガン酸化物;LiFePOなどのようなリチウムリン酸鉄化合物;リチウムニッケルコバルト酸化アルミニウム(NCA;lithium nickel cobalt aluminum oxide);LiNiOなどのようなリチウムニッケル酸化物;前記リチウムニッケル酸化物においてニッケル(Ni)の一部をマンガン(Mn)で置換したニッケルマンガン系リチウム複合金属酸化物;及び前記リチウムニッケル酸化物においてニッケル(Ni)の一部をマンガン(Mn)とコバルト(Co)で置換したNCM系リチウム複合遷移金属酸化物からなる群から選択された1種以上であって、Niを60mol%以上含むことができ、より好ましくは、ニッケルマンガン系リチウム複合金属酸化物、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物、またはこれらの混合であり、この場合、可逆容量及び熱安定性に優れるという効果がある。
【0077】
更に他の具体例として、前記正極活物質は、下記化学式1
[化1]
LiNiMnCo2+δ
(前記化学式1において、Mは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択される1種以上を含み、1<a≦1.1、0<x<0.95、0<y<0.8、0<z<1.0、0≦w≦0.1、-0.02≦δ≦0.02、x+y+z+w=1である。)で表される化合物であってもよい。
【0078】
前記正極活物質は、好ましくはNiを80mol%以上含み、より好ましくは81mol%以上含み、さらに好ましくは81~95mol%含むことができ、この範囲内で、初期放電容量、出力性能、容量特性及び抵抗特性に優れるという効果がある。
【0079】
前記導電材は、一例として炭素系導電材であってもよく、好ましくは、カーボンブラック、CNTまたはこれらの混合であってもよい。
【0080】
前記バインダーは、一例として高分子バインダーであってもよく、好ましくは、ポリビニリデンフルオリド(polyvinylidene fluoride、PVdF)、アクリロニトリル-ブタジエンゴム(NBR)またはこれらの混合であってもよく、より好ましくはポリビニリデンフルオリドであってもよい。
【0081】
前記酸化熱処理温度は、好ましくは400~600℃、より好ましくは500~600℃、さらに好ましくは530~580℃であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けず、バインダーや導電材中の炭素物質は、酸素と反応してCO、COガスとして燃焼されて除去されるため、バインダーと導電材の残留なしにほとんど全てが容易に除去されるという利点がある。
【0082】
前記酸化熱処理時間は、好ましくは10分~5時間、より好ましくは30分~5時間、さらに好ましくは30分~2時間、より一層好ましくは30分~1時間であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けずにバインダー等のみが除去されることで、集電体から正極活物質が容易に分離されるという利点がある。
【0083】
本記載において、酸化熱処理時間は、当該酸化熱処理温度で処理される時間であって、当該熱処理温度に到達する時間は計算しない。
【0084】
前記酸化熱処理は、一例として2つのステップに分けて行うことができ、好ましくは、300~450℃で1次熱処理した後、500~650℃で2次熱処理することができ、この場合、工程が簡単であり、しかも、バインダー、導電材及び集電体をきれいに除去し、熱分解過程で発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少し、結晶サイズ(crystallite size)が小さくなるという効果がある。
【0085】
前記1次熱処理温度は、より好ましくは300~430℃、さらに好ましくは320~400℃であってもよく、この範囲内で、バインダー及び有機物の熱分解が円滑に起こるという利点がある。
【0086】
前記1次熱処理時間は、好ましくは10分~3時間、より好ましくは20分~160分であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けずにバインダーなどのみが除去されることで、集電体から正極活物質が容易に分離されるという利点がある。
【0087】
前記2次熱処理温度は、より好ましくは510~630℃、さらに好ましくは520~630℃であってもよく、この範囲内で、バインダーと導電材が完全に燃焼し、熱分解過程で発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少し、結晶サイズが小さくなるという利点がある。
【0088】
前記2次熱処理時間は、好ましくは10分~2時間、より好ましくは20分~100分であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けずにバインダーなどのみが除去されることで、集電体から正極活物質が容易に分離されるという利点がある。
【0089】
前記1次熱処理時間及び2次熱処理時間の総和は、一例として20分~5時間、好ましくは30分~4時間であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けずにバインダーなどのみが除去されることで、集電体から正極活物質が容易に分離され、熱分解過程で発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少し、結晶サイズが小さくなるという利点がある。
【0090】
前記酸化熱処理における酸素は、一例として、純度が59%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、より一層好ましくは90~99%であってもよく、この範囲内で、バインダーと導電材が残留せずに除去されると共に、活物質内のNiの安定性が増加し、結晶サイズが小さくなるという利点がある。
【0091】
前記酸素の純度%は、体積%またはmol%であってもよい。
【0092】
本記載の酸素の純度は、特に制限されず、本発明の属する技術分野で通常用いる測定方法によって測定し得る。
【0093】
図1は、正極シートから正極板を切断した後に廃棄される正極スクラップを示す。
【0094】
図1を参照すると、長いシート状の正極集電体であるアルミニウムホイル10に、正極活物質、導電材、バインダーなどを含む正極活物質層20をコーティングして、正極シート30を製造した後、これを一定のサイズに打ち抜いて正極板40を生産し、その後に残った部分として正極スクラップ50が発生する。前記打ち抜きは、正極シートを切断する一つの手段である。
【0095】
また、前記正極活物質層20は、正極活物質、導電材、バインダー及び溶媒などが混合されたスラリーをアルミニウムホイル10にコーティングして形成されるもので、スラリーは温度などのような環境に非常に敏感であるため、コーティング条件を決めるのが非常に難しく、そのため、所定のテストを通じて所望の品質の正極シート30が製造される条件を探すまでに廃正極シートが発生する。
【0096】
参考として、下記実施例では、廃正極として正極スクラップを使用した。
【0097】
(b)回収した正極活物質を1次洗浄するステップ
本発明の正極活物質の再生方法は、(b)回収した正極活物質を1次洗浄するステップを含み、この場合、再生正極活物質の表面に存在し得るLiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)が除去され、表面が改質されるという利点がある。
【0098】
前記酸化熱処理の間に、活物質層中のバインダーと導電材からのCOとHOが活物質の表面のリチウムと反応してLiCO、LiOHが形成されたり、PVdFのようなバインダーに存在していたフッ素(F)が正極活物質を構成する金属元素と反応してLiFあるいは金属フッ化物が形成されたりすることもある。LiFあるいは金属フッ化物が残っていると、活物質の再使用時に電池特性が劣化する。
【0099】
前記1次洗浄は、洗浄液として、一例として水または塩基性のリチウム化合物水溶液を用いることができ、より好ましくは水であってもよい。
【0100】
前記水は、好ましくは、蒸留水または脱イオン水であってもよく、より好ましくは蒸留水であってもよく、この場合、正極活物質の表面に残留しやすいLiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)が除去されることで、表面が改質される効果に優れる。
【0101】
前記塩基性のリチウム化合物水溶液は、好ましくは、0重量%超~15重量%以下のリチウム化合物を含むことができ、より好ましくは、0重量%超~10重量%以下のリチウム化合物を含むことができ、この場合、正極活物質の表面に残留しやすいLiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)が除去されることで、表面が改質されるだけでなく、正極活物質に存在する遷移金属を溶出させず、洗浄過程で溶出し得るリチウムを補充するという利点がある。前記範囲よりも過量のリチウム化合物を含む場合、洗浄後にも活物質の表面に過量のLiOHが残り得るため、その後のアニーリング工程に影響を及ぼすことがある。
【0102】
前記リチウム化合物は、一例として、LiOH、LiNO、またはこれらの混合であってもよく、好ましくはLiOHであってもよく、この場合、正極活物質の表面のフッ素(F)及び反応に参加できなかったリチウム前駆体が除去されるという効果がある。
【0103】
前記1次洗浄において、回収した正極活物質と洗浄液の重量比は、一例として1:1~1:40、好ましくは1:1~1:35、より好ましくは1:1~1:30、さらに好ましくは1:1~1:20であってもよく、この範囲内で、LiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)が効果的に除去されるという利点がある。
【0104】
前記1次洗浄は、一例として、洗浄液に回収された正極活物質を浸漬しておくことによって行うことができる。前記浸漬は、一例として1週間、好ましくは1日以内、より好ましくは1時間以内、さらに好ましくは10分~50分間行うことができる。前記浸漬時間が1週間以上である場合、リチウムの過剰溶出により容量の低下が発生するおそれがある。
【0105】
前記1次洗浄は、好ましくは、洗浄液に正極活物質を浸漬した状態で撹拌することを含むことができ、この場合、洗浄工程が迅速に行われることによってリチウムの溶出を抑制することができ、工程時間が短縮されるという効果がある。
【0106】
前記1次洗浄は、好ましくは、洗浄後に正極活物質と洗浄液を濾過するステップ、及び前記濾過後に収得した固形分の正極活物質を乾燥させるステップを含むことができ、この場合、LiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)がさらに効果的に除去される。
【0107】
前記濾過は、好ましくは、フィルターを用いた減圧濾過であってもよい。
【0108】
前記乾燥は、好ましくは100~500℃、より好ましくは120~400℃、さらに好ましくは120~300℃、より一層好ましくは120~200℃で行われてもよい。
【0109】
前記乾燥は、好ましくは、真空下で行われてもよい。
【0110】
本記載において、真空乾燥は、本発明の属する技術分野で通常行われる真空乾燥であれば、特に制限されない。
【0111】
(c)1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングするステップ
本発明の正極活物質の再生方法は、(c)1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングするステップを含み、この場合、正極活物質の結晶構造を回復させることで、再使用活物質の特性を一度も使用していない新たな活物質のレベルに回復させるか、またはさらに改善するという効果がある。
【0112】
前記(c)アニーリングするステップは、好ましくは、1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、空気(air)又は酸素(O)中で400~1000℃でアニーリングするステップであってもよく、好ましくは、空気中で400~1000℃でアニーリングするステップであってもよく、この場合、結晶性の増加又は結晶構造の回復などのように結晶性を改善することによって、再生正極活物質の電池特性を向上させるという効果がある。
【0113】
前記リチウム前駆体は、好ましくは、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOからなる群から選択された1種以上であってもよい。
【0114】
前記リチウム前駆体は、好ましくは、回収した正極活物質内のリチウムの量を基準として、少なくとも前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムのモル比から、減少したリチウムの量だけ添加することができ、より好ましくは、前記(a)ステップの正極活物質内のリチウムのモル比に対して0.0001~0.2モル比となるリチウムの量で添加することができ、この範囲内で、再生正極活物質内の不足したリチウムが補充されて、結晶性の増加又は結晶構造の回復などのように結晶性を改善することによって、再生正極活物質の電池特性が向上するという利点がある。
【0115】
前記リチウム前駆体は、好ましくは、前記正極活物質層に使用された原材料の正極活物質内のリチウムを合計100mol%とするとき、1~40mol%に該当する量で添加されてもよく、より好ましくは1~15mol%に該当する量で添加されてもよく、さらに好ましくは1~10mol%に該当する量で添加されてもよく、この範囲内で、再生正極活物質に抵抗を増加させ得る残留前駆体が残らないので、電池特性の向上に非常に有用である。
【0116】
前記アニーリング温度は、リチウム前駆体の融点に応じて、制限された範囲内で調節可能であり、例えば、LiCOの場合に融点が723℃であるので、好ましくは700~900℃、より好ましくは710~780℃でアニーリングすることができ、LiOHの場合に融点が462℃であるので、好ましくは400~600℃、より好ましくは450~480℃でアニーリングすることができ、この範囲内で、結晶構造が回復されることで、電池の出力性能に優れるという効果がある。
【0117】
前記アニーリング温度は、好ましくは、前記リチウム前駆体の融点を超える温度であってもよく、但し、1000℃を超える場合、正極活物質の熱分解が発生して、電池の性能低下が発生することがあるため、1000℃以下が好ましい。
【0118】
前記(c)アニーリングするステップにおいて、前記1次洗浄された正極活物質にリチウム前駆体を添加する方法は、洗浄された正極活物質を乾燥させた後、固相又は液相でリチウム前駆体を添加することであり得る。他の一例として、洗浄された正極活物質にリチウム前駆体溶液を添加し、噴霧乾燥することで、乾燥及びリチウム前駆体の添加を一つのステップで行うこともでき、この場合、乾燥による粒子の凝集が減少し、固相のリチウム前駆体を混合する過程を省略できるという利点があり、噴霧乾燥によって、塊ではなく粉末の形態で生産されるという利点がある。
【0119】
前記リチウム前駆体溶液は、一例として、水溶液または有機溶媒に溶解可能なリチウム化合物を使用することができる。
【0120】
(d)アニーリングした正極活物質を2次洗浄するステップ
本発明の正極活物質の再生方法は、(d)アニーリングした正極活物質を2次洗浄するステップを含み、この場合、リチウム前駆体の添加後に、反応に参加できずに正極活物質の表面にLiOH、LiCOなどの形態で存在するリチウム前駆体が除去されることで、その後の残留リチウム前駆体と電解液との反応による電池の性能低下及びガスの発生を防ぐという利点がある。
【0121】
前記2次洗浄は、洗浄液として、一例として水を用いて行ってもよく、好ましくは、蒸留水又は脱イオン水であってもよく、この場合、(c)アニーリングするステップで過量添加されたリチウムにより残留しやすいLiOH、LiCOなどのようなリチウム前駆体が効果的に除去されるという効果がある。
【0122】
前記2次洗浄は、好ましくは、前記アニーリングした正極活物質と洗浄液を1:1~1:20の重量比で混合した後、濾過するステップ、及び前記濾過後に収得した固形分の正極活物質を乾燥させるステップを含むことができ、この場合、(c)アニーリングするステップで過量添加されたリチウムにより残留しやすいLiOH、LiCOなどのようなリチウム前駆体が効果的に除去されるという効果がある。
【0123】
前記アニーリングした活物質と洗浄液は、好ましくは1:1~1:20の重量比で混合されてもよく、より好ましくは1:1~1:15の重量比、さらに好ましくは1:1~1:10の重量比、より一層好ましくは1:1~1:5の重量比で混合されてもよく、この場合、(c)アニーリングするステップで過量添加されたリチウムにより残留しやすいLiOH、LiCOなどのようなリチウム前駆体が効果的に除去されるという効果がある。
【0124】
前記2次洗浄は、アニーリングした正極活物質を洗浄液と混合した後、濾過するステップ、及び前記濾過後に収得した固形分の正極活物質を乾燥させるステップを含むことができ、この場合、優れた充電容量、抵抗特性及び容量特性が実現されるという効果がある。
【0125】
(e)2次洗浄した正極活物質を表面コーティングして再使用可能な正極活物質を得るステップ
本発明の正極活物質の再生方法は、(e)2次洗浄した正極活物質を表面コーティングして再使用可能な正極活物質を得るステップを含み、この場合、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0126】
前記表面コーティングは、好ましくは、金属、有機金属及び炭素成分のうちの1種以上を含むコーティング剤を、固相又は液相方式で表面にコーティングした後、100~1200℃で熱処理することであり、この場合、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0127】
前記金属を含むコーティング剤は、好ましくは、B、W、Al、Ti、Mg、Ni、Co、Mn、Si、Zr、Ge、Sn、Cr、Fe、V及びYからなる群から選択される1種以上を含むコーティング剤であり、より好ましくは、B、W、Al、Ti及びMgからなる群から選択された1種以上を含むコーティング剤であり、さらに好ましくは、ホウ素(B)、タングステン(W)またはこれらの混合を含むコーティング剤であってもよく、より一層好ましくは、タングステン(W)及びホウ素(B)を含有したコーティング剤であってもよく、具体例としては、ホウ化タングステン(tungsten boride;WB)を含有したコーティング剤であり、この場合、抵抗特性及び寿命特性などが向上するという効果がある。
【0128】
前記金属を含むコーティング剤は、一例として、前記金属を分子内の元素として含む酸化物、酸などであってもよい。
【0129】
前記有機金属を含むコーティング剤は、本発明の属する技術分野で通常使用され、前記金属を含有する有機金属化合物を含むコーティング剤であれば、特に制限されず、具体例として金属アルコキシドなどであってもよい。
【0130】
前記炭素成分を含むコーティング剤は、本発明の属する技術分野で通常使用される炭素成分を含むコーティング剤であれば、特に制限されず、具体例としてスクロースなどのような糖類であってもよい。
【0131】
前記コーティング剤は、一例として、溶媒を除いた実際に正極活物質の表面にコーティングされる成分を基準として、コーティング処理前の正極活物質内の金属1mol%に対して0.001~0.3mol%で含まれてもよく、好ましくは0.01~0.3mol%で含まれてもよく、より好ましくは0.01~0.15mol%で含まれ、さらに好ましくは0.01~0.1mol%で含まれ、より一層好ましくは0.01~0.05mol%であり、この範囲内で、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0132】
前記熱処理温度は、好ましくは100~1000℃、より好ましくは200~1000℃、さらに好ましくは200~500℃であってもよく、この範囲内で、正極活物質の熱分解による性能低下が発生しないと共に、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0133】
前記熱処理時間は、好ましくは1~16時間、より好ましくは3~7時間行うことができ、この範囲内で、正極活物質自体の性質をそのまま維持しながらも、構造的安定性及び電気化学的性能を改善するという効果がある。
【0134】
前記コーティング方法は、本発明の属する技術分野で通常用いるコーティング方法であれば、特に制限されず、一例として、液状のコーティング剤を製造して正極活物質と混合する液相法、ボールミリングの高い機械的エネルギーを用いる機械化学的方法、流動層コーティング法、噴霧乾燥法、水溶液状態でコーティング剤を正極活物質の表面に沈殿させる沈殿法、気相のコーティング剤と正極活物質との反応を活用する方法、またはスパッタリング(sputtering)法などであってもよい。
【0135】
前記金属、有機金属及び炭素成分は、一例として、球形、板状形、角形または針状形であってもよく、このような形状は、製造過程で工程条件などを変化させて調節することができ、それぞれの形状に対する定義は、本発明の属する技術分野で一般に認められる定義に従う限り、特に制限されない。
【0136】
前記コーティング剤は、好ましくは、平均直径が1~1000nmであり、比表面積が10~100m/gであってもよく、より好ましくは、平均直径が10~100nmであり、比表面積が20~100m/gであってもよく、この範囲内で、正極活物質の表面に均一に付着して、正極活物質の構造的安定性を付与することで、正極活物質の格子変形や結晶構造の崩壊による寿命特性及び電気化学的性能の低下の問題を改善することができる。
【0137】
本記載において、平均直径は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、一例として、レーザー回折法(laser diffraction method)を用いて測定することができ、具体的には、正極活物質の粒子を分散媒中に分散させた後、Microtrac MT 3000などのような市販されているレーザー回折粒度測定装置に導入して、約28kHzの超音波を出力60Wで照射し、測定装置における粒径分布の50%基準での平均粒径(D50)を算出することができる。
【0138】
本記載において、比表面積は、本発明の属する技術分野で通常用いられる測定方法により測定することができ、一例として、BET(Brunauer-Emmett-Teller)法により測定することができ、具体的には、BEL Japan社のBELSORP-mino IIを用いて、液体窒素温度下(77K)での窒素ガスの吸着量から算出することができる。
【0139】
本発明の正極活物質の再生方法による正極活物質は、一例として、フッ素(F)の含量が250mg/kg以下、好ましくは200mg/kg以下、より好ましくは10~200mg/kgであってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0140】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHが0.32重量%以下、好ましくは0.31重量%以下、より好ましくは0.01~0.31重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0141】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiCOが0.19重量%以下、好ましくは0.01~0.19重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0142】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHとLiCOの総和が0.51重量%以下、好ましくは0.50重量%以下、より好ましくは0.01~0.50重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0143】
前記正極活物質は、一例として、平均結晶サイズが122nm以下、好ましくは115~122nm、より好ましくは120~122nmであってもよく、この範囲内で、結晶サイズが小さくなることによって、歪みを減少させてサイクルクラックを最小化することができ、電池の寿命が延びるという利点がある。
【0144】
また、本発明の正極活物質の再生方法による正極活物質は、一例として、フッ素(F)の含量が305mg/kg以下、好ましくは250mg/kg以下、より好ましくは200mg/kg以下、さらに好ましくは10~200mg/kgであってもよく、この範囲内で、容量特性に優れるという利点がある。
【0145】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiCOが0.16重量%以下、好ましくは0.14重量%以下、より好ましくは0.10重量%以下、さらに好ましくは0.01~0.10重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0146】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHが0.32重量%以下、好ましくは0.30重量%以下、より好ましくは0.01~0.30重量%、さらに好ましくは0.01~0.28重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0147】
前記正極活物質は、一例として、表面に残留するLiOHとLiCOの総和が0.45重量%以下、好ましくは0.42重量%以下、より好ましくは0.40重量%以下、さらに好ましくは0.01~0.40重量%であってもよく、この範囲内で、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れるという利点がある。
【0148】
前記正極活物質は、一例として、平均結晶サイズが139nm以下、好ましくは120~139nm、より好ましくは130~139nm、さらに好ましくは133~139nm、より一層好ましくは133~136nmであってもよく、この範囲内で、結晶サイズが小さくなることによって、歪みを減少させてサイクルクラックを最小化することができ、電池の寿命が延びるという利点がある。
【0149】
図7は、本発明に係る一つの実施例であって、正極活物質の再生工程に対するフローチャートである。
【0150】
図7を参照すると、まず、廃正極として正極スクラップを準備する(ステップS10)。例えば、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物、カーボンブラック及びポリビニリデンフルオリドに、NMP(N-methyl pyrrolidone)を添加して混合製造したスラリーを、アルミニウムホイル上にコーティングし、約120℃の真空オーブンで乾燥して、正極シートを製造する。これから一定サイズの正極板を打ち抜いた後、残った正極スクラップを準備することができる。
【0151】
特に、本発明によれば、Niを60モル%以上含む正極活物質が使用された廃正極、好ましくは、Niを80mol%以上含む正極活物質、より好ましくは、Niを81mol%以上含む正極活物質、さらに好ましくは、Niを81~95mol%含む正極活物質に効果的に適用され得る。
【0152】
前記正極スクラップは、アルミニウムホイル上に正極活物質層を有し、正極活物質層は、溶媒の揮発後、正極活物質と導電材をバインダーが結合させる構造となる。したがって、バインダーを除去すると、アルミニウムホイルから正極活物質が分離される。
【0153】
次に、準備した正極スクラップを適当なサイズに破砕する(ステップS20)。ここで、破砕は、正極スクラップを取り扱いが容易なサイズに切断またはシュレッディング(shredding)することを含む。具体例として、破砕した正極スクラップは、1cm×1cmのサイズであってもよい。前記破砕は、一例として、ハンドミル、ピンミル、ディスクミル、カッティングミル、ハンマミルのような様々な乾式粉砕装備を用いてもよく、生産性を高めるために高速切断機を用いてもよい。
【0154】
前記破砕は、好ましくは、正極スクラップの取り扱い及び以降の工程で用いる装備で求められる特性を考慮して、破砕を行うか否か、または片のサイズなどを決定することができるが、例えば、連続的な処理が可能な装備を用いる場合であれば、流動性が良くなければならないので、正極スクラップをさらに小さい片に破砕しなければならない。
【0155】
次に、正極スクラップに酸素を投入して酸化熱処理し、正極活物質を回収する(ステップS30)。ここで、熱処理は、活物質層中のバインダーを熱分解するために行うものである。
【0156】
前記酸化熱処理は、純度80%以上の酸素で行うことが好ましく、純度90%以上の酸素で行うことがより好ましく、この場合、ハイニッケル(High-Ni)正極材が使用された廃正極においてNiの安定性を確保することができ、バインダーと導電材がきれいに除去されるという効果がある。還元気体又は非活性気体雰囲気で熱処理を行う場合、バインダーと導電材が熱分解されずに炭化する。炭化すると、炭素成分が正極活物質の表面に残るようになり、再使用正極活物質の性能が低下する。これに対して、酸素を投入して酸化熱処理を行う場合、バインダーと導電材中の炭素成分が酸素と反応してCO、COなどのガスとして消えるため、バインダーと導電材がいずれも除去される。
【0157】
前記酸化熱処理は、好ましくは300~650℃で行い、具体例として590℃で行うが、300℃未満であると、バインダーの除去が難しいため、集電体を分離することができず、650℃を超えると、集電体が溶けてしまい、集電体を分離することができないという問題が発生する。
【0158】
前記酸化熱処理は、好ましくは、温度上昇速度が1~20℃/min、より好ましくは温度上昇速度が3~10℃/minであり、具体例としては5℃/minであり、この範囲内で、熱処理装備に無理がかかることなく実現可能であり、正極スクラップに熱衝撃などを発生させないという利点がある。
【0159】
前記酸化熱処理は、一例として、バインダーが十分に熱分解され得る程度の時間の間行うことができ、好ましくは30分以上、より好ましくは30分~5時間行い、具体例としては30分前後であり、この範囲内で、バインダーが十分に熱分解され、また、熱分解効率に優れるという効果がある。
【0160】
本記載において、ハイニッケル正極活物質は、ニッケルを60モル%以上含む正極活物質を指す。
【0161】
前記酸化熱処理ステップは、好ましくは、2つのステップに分けて行うことができ、より好ましくは、300~430℃で1次酸化熱処理した後、510~630℃で2次熱処理を行うことができ、この場合、2つのステップにわたる熱処理により、熱分解過程で発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少し、結晶サイズが小さくなるという利点がある。
【0162】
前記1次酸化熱処理温度は、さらに好ましくは320~400℃で行われてもよい。
【0163】
前記1次熱処理時間は、好ましくは10分~3時間、より好ましくは20分~160分間行われてもよい。
【0164】
前記2次酸化熱処理温度は、さらに好ましくは520~630℃であってもよく、この範囲内で、バインダーと導電材が十分に熱分解されると共に、熱分解過程で発生するフッ素(F)及び残留リチウムが減少し、結晶サイズが小さくなるという利点がある。
【0165】
前記2次熱処理時間は、好ましくは10分~2時間、より好ましくは20分~100分であってもよく、この範囲内で、集電体は溶けずにバインダーなどのみが除去されることで、集電体から正極活物質が容易に分離されるという利点がある。
【0166】
前記酸化熱処理は、好ましくは、温度上昇速度が1~20℃/min、より好ましくは温度上昇速度が3~10℃/minであり、具体例としては5℃/minであり、この範囲内で、熱処理装備に無理がかかることなく実現可能であり、正極スクラップに熱衝撃などを発生させないという利点がある。
【0167】
前記酸化熱処理は、一例として、様々な形態のファーネス(furnace)を用いて行い、例えば、ボックスタイプのファーネスを用いて行い、生産性を考慮すると、連続的な処理が可能なロータリーキルン(rotary kiln)を用いて行う。
【0168】
前記酸化熱処理後には、大気中で徐冷または急冷させることができる。
【0169】
次に、回収した正極活物質を1次洗浄する(ステップS40)。
【0170】
前記酸化熱処理ステップS30で回収した正極活物質の表面にフッ素(F)及びリチウムが残留するため、これを除去する洗浄工程が必要である。
【0171】
前記1次洗浄ステップは、回収した正極活物質を、洗浄液として水又は塩基性のリチウム化合物水溶液、好ましくは水で洗浄する。
【0172】
前記水は、好ましくは、蒸留水または脱イオン水であってもよく、この場合、LiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)が除去されることで、表面が改質されるという利点がある。
【0173】
前記塩基性のリチウム化合物水溶液は、0重量%超~15重量%以下、好ましくは0重量%超~10重量%以下のリチウム化合物を含むようにし、このような場合、再生正極活物質の表面に存在し得るLiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)が除去されることで、表面が改質されるという利点がある。前記リチウム化合物が15重量%を超える場合、洗浄後にも正極活物質の表面に過量のLiOH、LiNOなどのリチウム化合物が残り得るため、その後のアニーリング工程に影響を及ぼすことがある。
【0174】
前記リチウム化合物は、具体的にLiOHであり得る。
【0175】
前記1次洗浄は、洗浄液に回収された活物質を浸漬しておくことによって行うことができる。浸漬後、1週間、好ましくは1日以内、さらに好ましくは1時間以内で洗浄を行うことができる。1週間以上洗浄する場合、リチウムの過剰溶出により容量の低下が発生するおそれがある。したがって、1時間以内で行うことが好ましい。1次洗浄は、洗浄液に活物質を浸漬しておくこと、浸漬した状態で撹拌することなどを含む。なるべく撹拌を並行して行うのが良い。洗浄液としてリチウム化合物水溶液を使用する場合に、撹拌せずに浸漬のみを行うと、洗浄工程が遅く行われ、リチウムの溶出の原因となり得る。撹拌を並行して行うと、工程時間を最小化することができるので、撹拌はリチウム化合物水溶液の含浸と同時に行うことが好ましい。
【0176】
前記1次洗浄後には、濾過、及びオーブン(convection type)での空気中乾燥までさらに行うことができる。
【0177】
前記1次洗浄において、回収した正極活物質と洗浄液の重量比は1:1~1:40、好ましくは1:1~1:35、より好ましくは1:1~1:30であってもよく、この範囲内で、LiFなどのような金属フッ化物(metal fluoride)が効果的に除去されるという利点がある。
【0178】
前記1次洗浄は、好ましくは、洗浄後に正極活物質と洗浄液を濾過するステップ、及び前記濾過後に収得した固形分の正極活物質を乾燥させるステップを含むことができる。
【0179】
前記濾過は、好ましくは、フィルターを用いた減圧濾過であり、前記乾燥は、120~140℃下の真空乾燥である。
【0180】
次に、1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングする(ステップS50)。
【0181】
前記アニーリングステップS50は、1次洗浄した正極活物質にリチウム前駆体を添加し、アニーリングすることが重要である。先のステップS30及びS40を経る間に正極活物質内のリチウムの損失が発生し得るが、ステップS50では、そのようなリチウムの損失量を補充する。
【0182】
それだけでなく、ステップS50では、アニーリングを通じて活物質の結晶構造を回復させることで、再使用活物質の特性を一度も使用していない新たな活物質のレベルに回復させるか、またはさらに改善する。
【0183】
先のステップS30、S40を経る間に正極活物質の表面に変形構造が生じることがあり、具体例として、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物である活物質は、ステップS40でNiが水分によって岩塩(rock salt)化[NiCO・2Ni(OH))HO]されて、スピネル構造が形成され得る。このまま電池を製造すると、容量の減少など、電池の特性が低下することがある。本発明では、ステップS50を通じて結晶構造を回復させる。具体例として、NCM系リチウム複合遷移金属酸化物である正極活物質を、再び六方晶構造に回復させる。これによって、未使用の正極活物質と類似のレベルに初期特性を回復又は改善させることができる。
【0184】
ステップS50のリチウム前駆体は、LiOH、LiCO、LiNO及びLiOのいずれか1つ以上であってもよい。
【0185】
1次洗浄された活物質にリチウム前駆体を添加する方法は、洗浄された正極活物質を乾燥させた後、固相又は液相でリチウム前駆体を添加することであり得る。他の例として、洗浄された正極活物質にリチウム前駆体溶液を添加し、噴霧乾燥して、乾燥及びリチウム前駆体の添加を一つのステップで行うこともできる。リチウム前駆体溶液は、水溶液または有機溶媒に溶解可能なリチウム化合物を使用することができる。
【0186】
1次洗浄による表面改質工程後にオーブンなどで直ぐに乾燥する場合、正極活物質粒子が凝集して塊になり得る。このように凝集した粒子にリチウム前駆体を混合するためには、塊に対するグラインディングが必要となり得るため、工程が複雑で連続工程が難しくなり得る。また、特にNCM系正極活物質の場合には、水分がある状態でリチウム前駆体と粉末混合、ミリングなどを行うと、正極活物質が水分を吸収して凝集現象が激しく発生する。したがって、1次洗浄後、正極活物質をリチウム前駆体溶液に混合し、分散させて噴霧乾燥すれば、乾燥による粒子の凝集、固相のリチウム前駆体を混合する煩わしさを解消することができる。すなわち、噴霧乾燥によっては、塊ではなく粉末の形態で生産される利点を有することができる。
【0187】
噴霧乾燥時に、噴霧した直後にリチウム前駆体溶液が乾燥されながら、リチウム前駆体成分が正極活物質の表面にコーティング又は接触し、このとき、溶媒であるリチウム前駆体溶液の乾燥時に、毛管力(capillary force)によって粒子が凝集して粒径が調節される利点も有する。電極から作られた正極スクラップの場合、圧延工程によって表面の粒子が押され、ひび割れたり、割れたりし得る。特に、LCOに比べてNCM系正極活物質は、電極の形成時に圧延による粒子の割れが大きいため、未使用の正極活物質に比べて、回収した正極活物質内では小さい粒子を多く含むようになり、粒径が不均一であるという問題がある。
【0188】
また、NCM系活物質は、数十~数百nmの大きさを有する1次粒子が集まって2次粒子化された大粒子を含むものを使用しており、このような活物質から製造した正極は、電極内の気孔度(porosity)を調節するために圧延する過程で、2次粒子が割れて1次粒子化されるか、またはそれよりは大きさが大きいが、大粒子よりは小さい小粒子化されることもある。
【0189】
圧延によって割れた粒子が多いほど、活物質の比表面積が増加するため、圧延された電極から得られる再使用活物質の場合には、再使用時にスラリー物性、電極接着力、及び電極の性能に悪い影響を与え得るという問題が発生することがある。
【0190】
以上説明したように、噴霧乾燥ステップを通じて、正極活物質の表面にリチウム前駆体がコーティングされ、正極活物質は粒子が調節されて得られる。リチウム前駆体の添加及び粒子化、そして乾燥が一つのステップで行われるので、工程単純化の効果がある。また、噴霧乾燥が、単純に活物質を収得するための手段ではなく、既に使用されて圧延などで割れた粒子を再び粒子化するための手段であるという点で特別である。
【0191】
また、一定の濃度のリチウム前駆体溶液に、先のステップで洗浄された正極活物質粒子を混合して分散させるだけでよいので、洗浄と噴霧乾燥は、連続工程が可能であるという利点もある。このように、本実施例に係る正極活物質の再生方法では、工程の連続性があり、リチウム前駆体のコーティング、乾燥及び粒子化(換言すれば、粒子の再調節)が一つのステップで同時に行われる利点もある。
【0192】
また、先のステップS30及びS40を経る間に正極活物質内のリチウムの損失が発生するため、ステップS50では、そのようなリチウムの損失量を補充する。それだけでなく、先のステップを経る間に正極活物質の表面に変形構造(例として、LCO活物質の場合にCo)が生じることがあるため、ステップS50では、アニーリングを通じて正極活物質の結晶構造を回復させることで、再生正極活物質の電池特性を改善し、新生正極活物質のレベルまで回復させる。ここで、「新生」は、「再生」の反対の概念であって、初めて作られたことを意味し、実施例で使用した「原材料」などと同じ言葉である。
【0193】
前記リチウム前駆体としては、具体例としてLiOHを使用する。
【0194】
前記リチウム前駆体は、前記正極活物質層に使用された新生正極活物質内のリチウムと他の金属のモル比を対比して、少なくとも損失したリチウムのモル比だけ添加することが好ましい。損失したリチウムの量よりも過度に多い量のリチウム前駆体の添加は、未反応のリチウム前駆体を再生正極活物質に残すようになり、これは、抵抗を増加させる役割をするため、適切な量のリチウム前駆体の投入が必要である。一例として、新生正極活物質内のリチウムと他の金属のモル比が1である場合、リチウムが0.001~0.4モル比となる量のリチウム前駆体を添加することができ、好ましくは、リチウムが0.01~0.2モル比となる量のリチウム前駆体を添加することができる。
【0195】
具体例として、リチウム前駆体を、ICP分析の結果に基づいて、新生正極活物質内のリチウム含量に対する損失した比率である0.09~0.1モル比(リチウム金属基準)で添加すると、新生正極活物質と同等レベルまで容量改善効果を示す。ここで、ICP分析の結果は、±0.02程度の誤差値を有する。
【0196】
具体的には、前記リチウム前駆体は、好ましくは、前記正極活物質層に使用された原材料の正極活物質内のリチウムを合計100mol%とするとき、1mol%~40mol%に該当するリチウムの量、より好ましくは1~15mol%、さらに好ましくは1~10mol%に該当するリチウムの量で添加されてもよい。
【0197】
前記アニーリングは、一例として、400~1000℃の条件下の空気中で行い、好ましくは600~900℃の条件下で行い、この温度は、リチウム前駆体の種類に応じて、制限された範囲内で修正しなければならない。
【0198】
前記アニーリング温度は、リチウム前駆体の融点を超える温度が好ましい。但し、1000℃を超える温度では、正極活物質の熱分解が発生して性能の低下が発生するため、1000℃を超えないようにする。例として、リチウム前駆体としてLiCOを使用する場合、アニーリング温度は700~900℃が適切であり、さらに好ましくは710~780℃であり、最も好ましくは750~780℃であってもよい。また、リチウム前駆体としてLiOHを使用する場合、アニーリング温度は400~600℃が適切であり、さらに好適には450~480℃であり、最も好適には470~480℃である。
【0199】
前記アニーリング時間は、一例として1時間以上とすることがよく、好ましくは15時間以下であり、より好ましくは4~6時間である。アニーリング時間が長いと、結晶構造の回復が十分になされ得るが、長時間アニーリングするとしても性能に大きな影響を与えることはない。このとき、アニーリング装備は、熱処理ステップS30と同一または類似の装備を用いることができる。
【0200】
次に、アニーリングした正極活物質を2次洗浄する(ステップS60)。
【0201】
前記アニーリングするステップS50で反応に参加できなかったリチウム前駆体が正極活物質の表面にLiOH、LiCOの形態で存在するため、これを除去する残留リチウム除去工程が必要である。特にハイニッケル(High-Ni)正極活物質は、カチオン混合現象により過量のLiが要求され、これにより、表面に炭酸リチウム(LiCO)などのようなリチウム不純物が残留しやすくなり、このような不純物は、後で電解液と反応して電池の性能を低下させ、ガスを発生させることがあるため、徹底的に除去されなければならない。
【0202】
前記2次洗浄は、洗浄液として、蒸留水を好ましく用いることができ、この場合、安全かつ安価でありながらも、正極活物質に存在する遷移金属を溶出させないという利点がある。
【0203】
前記洗浄は、好ましくは、アニーリングした正極活物質と洗浄液を1:1~1:10の重量比、より好ましくは1:1~1:5の重量比で混合した後、濾過するステップ、及び前記濾過後に収得した固形分の正極活物質を乾燥させるステップを含むことができ、この場合、ステップS50で過量添加されたリチウムにより残留しやすいLiOH、LiCOなどのようなリチウム前駆体が効果的に除去されるという効果がある。
【0204】
前記アニーリングした正極活物質と蒸留水の混合は、好ましくは撹拌によって行い、前記撹拌は、特に制限されないが、機械的撹拌または超音波撹拌である。
【0205】
前記濾過は、好ましくは、フィルターを用いた減圧濾過であり、前記乾燥は、120~140℃下の真空乾燥である。
【0206】
次に、選択的なステップとして、洗浄した正極活物質に表面コーティングを行うことができる(ステップS70)。
【0207】
前記表面コーティングは、一例として、金属、有機金属または炭素成分を含有したコーティング剤を、固相又は液相方式で表面にコーティングした後、熱処理することであり、熱処理温度が低すぎると、目的とする異種金属による表面保護層が形成されず、熱処理温度が高すぎると、正極活物質の熱分解により電池の性能が低下する。
【0208】
具体的には、B、W、B-Wなどを含む金属酸化物または酸(acid)を、洗浄した正極活物質にコーティングした後、熱処理すると、正極活物質の表面にリチウムボロンオキシド層などのような表面保護層が形成される。
【0209】
前記表面コーティングの固相又は液相方式は、一例として、混合(mixing)、ミリング(milling)、噴霧乾燥(spray drying)またはグラインディング(grinding)などの方法であってもよい。
【0210】
前記アニーリングするステップS50においてリチウム:正極活物質内の他の金属のモル比を1:1になるようにすると、表面コーティングステップS70で正極活物質内のリチウムとコーティング剤が反応して、リチウム:正極活物質内の他の金属のモル比が1:1未満になり、このような再生正極活物質は、電池容量を100%十分に発揮できなくなる。しかし、前記アニーリングするステップS50でリチウム前駆体を、正極活物質内の他の金属と対比して0.0001~0.1モル比さらに多く含まれるように過剰添加すると、表面コーティングステップS70で表面保護層が形成されながら、リチウム:正極活物質内の他の金属のモル比が1:1になることで、電池の容量低下が発生しなくなる。
【0211】
二次電池
本発明の二次電池は、前記正極活物質を含み、この場合、正極活物質の表面にフッ素(F)及び反応に参加できなかったリチウム前駆体が除去され、結晶サイズ(crystallite size)が小さくなることによって、充電容量、抵抗特性及び容量特性に優れ、また、正極活物質の回収及び再生工程で酸と有機溶媒を用いないので環境に優しく、特に初期水洗工程が省略されるので、経済性及び生産性に優れるという効果がある。
【0212】
本発明の二次電池は、上述した正極活物質及びその再生方法の内容をすべて含むことができる。したがって、ここでは、それについての重複記載を省略する。
【0213】
以下、本発明の理解を助けるために好ましい実施例を提示するが、以下の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の範疇及び技術思想の範囲内で様々な変更及び修正が可能であることは当業者にとって明らかであり、このような変更及び修正が添付の特許請求の範囲に属することも当然である。
【0214】
[実施例]
実施例1
正極板の打ち抜き後に捨てられた正極スクラップ(集電体:アルミニウムホイル、正極活物質:NCM系リチウム複合遷移金属酸化物であって、ニッケル含量85mol%)を破砕し、これを、純度95%の酸素を投入して590℃下で30分間酸化熱処理して、バインダーと導電材を除去し、集電体と正極活物質を分離した後、正極活物質を回収した。ここで、熱処理温度に到達するまでの温度上昇速度は5℃/minであり、酸素(O)は10L/minで供給した。
【0215】
前記回収した正極活物質を蒸留水に浸漬と同時に撹拌して1次洗浄した。このとき、回収した正極活物質:蒸留水の重量比を1:30として、500rpmで10分間撹拌した後、フィルターを用いた減圧濾過で活物質のみを取り出した。前記1次洗浄した正極活物質は、原材料と対比して正極活物質内のリチウム1モルを基準として0.11モルが減少した。
【0216】
前記1次洗浄した正極活物質を、100℃で一晩乾燥後、リチウム前駆体としてLiOHを添加し、空気(air)中で750℃の下、5時間アニーリングした。ここで、空気(air)は、3L/minで供給した。このとき、リチウム前駆体は、前記原材料の正極活物質内のリチウムを合計100mol%とするとき、18mol%に該当する量で投入した。
【0217】
前記アニーリングした正極活物質と蒸留水を1:1の重量比で混合し、500rpmの条件下で5分間撹拌して2次洗浄した後、減圧濾過して固形分を収得した。前記固形分を100℃下で12時間真空乾燥して、洗浄された正極活物質を得た。
【0218】
前記洗浄された正極活物質をホウ酸(boric acid)でコーティングした後、300℃下で5時間加熱して、最終再生正極活物質を製造した。ここで、ホウ酸は、先の工程で消失されたホウ素(boron)1000ppmに該当する量で投入し、熱処理温度に到達するまでの温度上昇速度は2℃/minであり、空気(air)は3L/minで供給した。
【0219】
本記載において、正極活物質内のリチウムと他の金属のモル比、LiFの残存量などは、ICP分析装置を用いて測定した。このとき、実験室でよく使用する一般のICP分析装置で測定することができるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0220】
比較例1
前記実施例1の酸化熱処理するステップにおいて、酸素の代わりに空気(酸素21%含有)を投入して熱処理することに変更した以外は、前記実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0221】
比較例2
前記実施例1の酸化熱処理するステップにおいて、酸素の代わりに空気(酸素21%含有)を投入して熱処理し、1次洗浄ステップを行わなかった以外は、前記実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0222】
比較例3
前記実施例1において、1次洗浄ステップを行わなかった以外は、前記実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0223】
[試験例I:SEM分析]
前記実施例1及び比較例1~3で収得した再生正極活物質をSEM装置で撮影して図2に示した。SEM写真は、実験室でよく使用する一般のSEM装置で撮影した。具体的には、HITACHI社のs-4200を使用して撮影した。しかし、測定装置や方法による偏差はない。
【0224】
図2から確認できるように、実施例1で製造された再生正極活物質は、小さな粒子に割れ、このように割れた粒子は、大粒子に接触(contact)又は分散していることが確認できた。反面、比較例1~3は、粒子同士が小さな粒子に割れずに凝集していることが確認できた。
【0225】
[試験例II:XRD分析]
前記実施例1及び比較例1~3で収得した再生正極活物質を、XRD結晶分析によって結晶サイズを測定した。
【0226】
具体的には、実施例1及び比較例1~3で収得した再生正極活物質粒子を、それぞれホルダーに5g入れ、X線を粒子に照射して生成される回折格子を分析して求めた。求める方法は、主ピーク(main peak)又は3つ以上のピークの半値幅から求め、これは、再生正極活物質粒子の一次粒子の平均結晶サイズに該当した。この結果による再生正極活物質の一次粒子の平均結晶サイズを下記の表1に示した。
【0227】
【表1】
【0228】
前記表1に示したように、実施例1で製造された再生正極活物質の結晶サイズは、比較例1~3に比べて小さくなったことを確認することができ、このように結晶サイズが小さくなると、歪みを減少させてサイクルクラックを最小化することができ、電池の寿命が延びる利点を有するようになる。
【0229】
[試験例III:残留フッ素(F)の含量]
前記実施例1及び比較例1~3で収得した再生正極活物質に残っているフッ素(F)の含量を、ICP分析装置を用いて測定し、その結果を下記の表2に示した。このとき、実験室でよく使用する一般のICP分析装置で測定することができるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0230】
【表2】
【0231】
前記表2から確認できるように、本発明に係る実施例1は、比較例1~3と比較して、残留フッ素の含量が著しく減少したことが分かった。
【0232】
[試験例IV:残留リチウムの含量]
前記実施例1及び比較例1~3で得た再生正極活物質の残留リチウムの含量を、下記のように測定し、その結果を下記の表3に示した。
*残留リチウムの含量:正極活物質5gを蒸留水100mlに分散させ、300rpmで5分間混合した後、フィルタリングして活物質を濾過し、得られた濾液に0.1MのHCl溶液で滴定しながらpH値の変化を測定して、pH滴定曲線(pH titration Curve)を得る。前記得られたpH滴定曲線を用いて、正極活物質内のLiOHの残留量及びLiCOの残留量を計算した。
【0233】
【表3】
【0234】
前記表3に示したように、前記実施例1は、比較例1~3と比較して、再生正極活物質の残留リチウムの含量が減少したことが確認できた。
【0235】
[試験例V:CHCセルの評価]
前記実施例1及び比較例1~3で得た再生正極活物質の電気化学的性能を、下記のようなCHCセルの評価を通じて測定し、その結果を図3に表した。
*CHCセルの評価:再生正極活物質97.5重量%、導電材であるカーボンブラック1重量%、及びバインダーであるPVdF1.5重量%を秤量し、これらをNMPに混合してスラリーを製造した。これをアルミニウムホイルにコーティングして正極を製造した後、セル(Coin Half Cell、CHC)を製造し、電圧は3~4.3Vの条件とし、充放電は0.1C/0.1Cで行い、電解液としてエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(重量比)、及びその他の添加剤を含む条件下で電気化学的性能(充電容量、放電容量及び効率)を評価した。
【0236】
図3は、実施例1及び比較例1~3で製造又は準備した再生正極活物質のそれぞれに対してコインセルの評価を行った結果であって、本発明による再生正極活物質(実施例1)は、比較例1~3と比較して、充電容量に優れることが確認できた。
【0237】
[試験例VI:モノセルの評価]
前記実施例1及び比較例1~3で得た再生正極活物質で製造されたモノセルの容量維持率及び抵抗増加率を、下記のようなモノセルの評価を通じて測定し、その結果を図4に示した。
*モノセルの製造:コインセルの条件と同一の正極活物質スラリーを、20μmの厚さのアルミニウムホイルに塗布し、130℃で1時間乾燥した後、30mm×42mmのサイズに打ち抜いて正極を製造した。
【0238】
一方、天然黒鉛:人造黒鉛の5:5の重量比の混合物95.6重量%に導電材3.3重量%、バインダー1.1重量%を混合して負極活物質スラリーを製造し、10μmの厚さの銅ホイルに塗布した後、圧延及び乾燥し、その後、31mm×43mmのサイズに打ち抜いて負極を製造した。
【0239】
製造した正極及び負極を分離膜と接合した後、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の重量比の電解液を注入し、その後、真空シールしてモノセルを製造した。これを10時間のエージング(aging)を経た後に電気化学的評価を行った。
【0240】
*高温(45℃)での容量維持率の測定:前記実施例1及び比較例1~3で得た再生正極活物質で製造されたモノセルのそれぞれを、0.1Cレート(rate)でフォーメーション(formation)を行った後、電池内のガスを除去した(degas工程)。その後、4.2V、1C、0.05Cカットオフ(cut-off)CC/CV充電、及び2.5V、0.5C CC放電を高温(45℃)でそれぞれ200回行い、1回行ったときの放電容量及び200回行った後の放電容量を、PNE-0506充放電器(製造社:(株)PNEソリューション、5V、6A)を用いて測定し、1回行ったときの放電容量を初期容量に設定した。その後、200回目の放電容量と初期容量(100%)を比較して、下記数式1によって容量維持率を計算し、その結果を図4に示した。
【0241】
[数式1]
容量維持率(%)=(高温サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
【0242】
*高温(45℃)での抵抗増加率の測定:前記実施例1及び比較例1~3で得た再生正極活物質で製造されたモノセルのそれぞれを、0.1Cレートでフォーメーション(formation)を行った後、電池内のガスを除去した(degas工程)。前記ガスが除去されたリチウム二次電池を常温(25℃)の充放電器に移した後、0.33Cレートで4.2Vまで定電流/定電圧の条件で充電及び0.05Cカットオフ充電を行い、0.33C 2.5Vで放電を行った。前記充/放電をそれぞれ3回行った後の放電容量を基準として、SOC(State Of Charge)を50%に合わせた。このとき、2.5Cで10秒間放電パルス(pulse)を与えたときに現れる電圧降下を通じて、直流内部抵抗をPNE-0506充放電器(製造社:(株)PNEソリューション、5V、6A)を用いて測定し、このときの抵抗を初期抵抗に設定した。
【0243】
その後、4.2V、1C、0.05CカットオフCC/CV充電及び2.5V、0.5C CC放電を高温(45℃)でそれぞれ200回行った後、リチウム二次電池を常温(25℃)の充放電器に移し、その後、SOC(State Of Charge)を50%に合わせた後、2.5Cで10秒間放電パルス(pulse)を与えたときに現れる電圧降下を通じて、直流内部抵抗をPNE-0506充放電器(製造社:(株)PNEソリューション、5V、6A)を用いて測定した。これを初期抵抗(0%)と比較して、下記数式2によって抵抗増加率(%)を計算し、その結果を図4に示した。
【0244】
[数式2]
抵抗増加率(%)={(高温サイクル後の抵抗-初期抵抗)/初期抵抗}×100
【0245】
図4に示されたように、サイクル回数が増加するにつれて、実施例1は、比較例1~3と比較して、容量維持率は高く、抵抗増加率は低いことが確認できた。
【0246】
[追加実施例]
追加実施例1
正極板の打ち抜き後に捨てられた正極スクラップ(集電体:アルミニウムホイル、正極活物質:NCM系リチウム複合遷移金属酸化物であって、ニッケル含量86mol%)を破砕し、これを、純度95%の酸素を投入して350℃下で2時間1次熱処理した後、温度を590℃に上げて30分間2次熱処理して、バインダーと導電材を除去し、集電体と正極活物質を分離した後、正極活物質を回収した。ここで、熱処理温度に到達するまでの温度上昇速度は5℃/minであり、酸素(O)は10L/minで供給した。
【0247】
前記回収した正極活物質を、洗浄液として蒸留水に浸漬と同時に撹拌して1次洗浄した。このとき、回収した正極活物質:洗浄液の重量比を1:30として、500rpmで10分間撹拌した後、フィルターを用いた減圧濾過で活物質のみを取り出した。前記1次洗浄した正極活物質は、原材料と対比して正極活物質内のリチウム1モルを基準として0.11モルが減少した。
【0248】
前記1次洗浄した正極活物質を、100℃で一晩乾燥後、リチウム前駆体としてLiOHを添加し、空気(air)中で750℃の下、5時間アニーリングした。ここで、空気(air)は、3L/minで供給した。このとき、リチウム前駆体は、前記正極活物質層に使用された原材料の正極活物質内のリチウムを合計100mol%とするとき、18mol%に該当する量で添加した。
【0249】
前記アニーリングした正極活物質と蒸留水を1:10の重量比で混合し、500rpmの条件下で5分間撹拌して2次洗浄した後、減圧濾過して固形分を収得した。前記固形分を100℃下で12時間真空乾燥して、洗浄された正極活物質を得た。
【0250】
前記洗浄された正極活物質をホウ酸(boric acid)でコーティングした後、300℃下で5時間加熱して、最終再生正極活物質を製造した。ここで、ホウ酸は、先の工程で消失されたホウ素(boron)1000ppmに該当する量で投入し、熱処理温度に到達するまでの温度上昇速度は2℃/minであり、空気(air)は3L/minで供給した。
【0251】
本記載において、正極活物質内のリチウムと他の金属のモル比、LiFの残存量などは、ICP分析装置を用いて測定した。このとき、実験室でよく使用する一般のICP分析装置で測定することができるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0252】
本記載において、ppmは、別途の定義がない限り、重量基準である。
【0253】
追加実施例2
前記追加実施例1において、1次熱処理を350℃で30分間行った後、2次熱処理を590℃で30分間行った以外は、前記追加実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0254】
追加実施例3
前記追加実施例1において、1次熱処理を350℃で30分間行った後、2次熱処理を570℃で30分間行った以外は、前記追加実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0255】
追加比較例1
前記追加実施例1において、1次及び2次熱処理ステップを、550℃下で30分間行った以外は、前記追加実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0256】
追加比較例2
前記追加実施例1において、回収した正極活物質を、1次洗浄を行わずに、直ぐにアニーリングステップに提供した以外は、前記追加実施例1と同様の方法で再生正極活物質を製造した。
【0257】
[試験例I:XRD分析]
前記追加実施例1~3、追加比較例1で収得した再生正極活物質を、XRD結晶分析によって結晶サイズを測定した。
【0258】
具体的には、追加実施例1~3、追加比較例1で収得した再生正極活物質粒子を、それぞれホルダーに5g入れ、X線を粒子に照射して出る回折格子を分析して求めた。求める方法は、主ピーク(main peak)又は3つ以上のピークの半値幅から求め、これは、再生正極活物質粒子の一次粒子の平均結晶サイズに該当した。この結果による再生正極活物質の一次粒子の平均結晶サイズを下記の表4に示した。
【0259】
【表4】
【0260】
前記表4に示したように、追加実施例1~3で製造された再生正極活物質の結晶サイズは、追加比較例1に比べて小さくなったことを確認することができ、このように結晶サイズが小さくなると、歪みを減少させてサイクルクラックを最小化することができ、電池の寿命が延びる利点を有するようになる。
【0261】
[試験例II:残留フッ素(F)の含量]
前記追加実施例1~3、追加比較例1及び2で収得した再生正極活物質に残っているフッ素(F)の含量を、ICP分析装置を用いて測定し、その結果を下記の表5に示した。このとき、実験室でよく使用する一般のICP分析装置で測定することができるが、測定装置や方法による偏差はない。
【0262】
【表5】
【0263】
前記表5から確認できるように、本発明に係る追加実施例1~3は、追加比較例1及び2と比較して、残留フッ素の含量が減少したことが確認できた。特に、1次洗浄を行わなかった追加比較例2は、残留フッ素の含量が非常に大きいことが分かった。
【0264】
[試験例III:残留リチウムの含量]
前記追加実施例1~3、追加比較例1及び2で得た再生正極活物質の残留リチウムの含量を、下記のように測定し、その結果を下記の表6に示した。
*残留リチウムの含量:正極活物質5gを蒸留水100mlに分散させ、300rpmで5分間混合した後、フィルタリングして活物質を濾過し、得られた濾液に0.1MのHCl溶液で滴定しながらpH値の変化を測定して、pH滴定曲線(pH titration Curve)を得る。前記得られたpH滴定曲線を用いて、正極活物質内のLiOHの残留量及びLiCOの残留量を計算した。
【0265】
【表6】
【0266】
前記表6に示したように、前記追加実施例1~3は、追加比較例1及び2と比較して、再生正極活物質の残留リチウムの含量が減少したことが確認できた。
【0267】
[試験例IV:CHCセルの評価]
前記追加実施例1~3、追加比較例1及び2で得た再生正極活物質の電気化学的性能を、下記のようなCHCセルの評価を通じて測定し、その結果を図5に示した。
*CHCセルの評価:再生正極活物質97.5重量%、導電材であるカーボンブラック1重量%、及びバインダーであるPVdF1.5重量%を秤量し、これらをNMPに混合してスラリーを製造した。これをアルミニウムホイルにコーティングして正極を製造し、電解液としてエチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7(重量比)、及びその他の添加剤を含んでセル(Coin Half Cell、CHC)を製造した。製造したコインセルを、25℃で0.1Cの定電流で4.3Vまで0.05Cカットオフ(cut off)で充電を行った。その後、0.1Cの定電流で3.0Vになるまで放電を行った。このときの充電容量を測定し、これを図5に示した。
【0268】
図5は、追加実施例1~3、追加比較例1及び2で製造した再生正極活物質のそれぞれに対してコインセルの評価を行った結果であって、本発明による再生正極活物質(追加実施例1~3)は、追加比較例1及び2と比較して、充電容量に優れることが確認できた。
【0269】
[試験例V:モノセルの評価]
前記追加実施例1~3、追加比較例1及び2で得た再生正極活物質で製造されたモノセルの容量維持率を、下記のようなモノセルの評価を通じて測定し、その結果を図6に示した。
*モノセルの製造:コインセルの条件と同一の正極活物質スラリーを、20μmの厚さのアルミニウムホイルに塗布し、130℃で1時間乾燥した後、30mm×42mmのサイズに打ち抜いて正極を製造した。
【0270】
一方、天然黒鉛:人造黒鉛の5:5の重量比の混合物95.6重量%に導電材3.3重量%、バインダー1.1重量%を混合して負極活物質スラリーを製造し、10μmの厚さの銅ホイルに塗布した後、圧延及び乾燥し、その後、31mm×43mmのサイズに打ち抜いて負極を製造した。
【0271】
製造した正極及び負極を分離膜と接合した後、エチレンカーボネート(EC):エチルメチルカーボネート(EMC)=3:7の重量比の電解液を注入し、その後、真空シールしてモノセルを製造した。これを10時間のエージング(aging)を経た後に電気化学的評価を行った。
【0272】
*高温(45℃)での容量維持率の測定:前記追加実施例1~3、追加比較例1及び2で得た再生正極活物質で製造されたモノセルのそれぞれを、0.1Cレート(rate)でフォーメーション(formation)を行った後、電池内のガスを除去した(degas工程)。その後、4.2V、1C、0.05Cカットオフ(cut-off)CC/CV充電、及び2.5V、0.5C CC放電を高温(45℃)でそれぞれ100回行い、1回行ったときの放電容量及び100回行った後の放電容量を、PNE-0506充放電器(製造社:(株)PNEソリューション、5V、6A)を用いて測定し、1回行ったときの放電容量を初期容量に設定した。その後、100回目の放電容量と初期容量(100%)を比較して、下記数式1によって容量維持率を計算し、その結果を図6に示した。
【0273】
[数式1]
容量維持率(%)=(高温サイクル後の放電容量/初期放電容量)×100
【0274】
図6に示したように、サイクル回数が増加するにつれて、追加実施例1~3は、追加比較例1及び2と比較して、容量維持率が高いことが確認できた。
【符号の説明】
【0275】
10 集電体
20 活物質層
30 正極シート
40 正極板
50 正極スクラップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】