(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサを動作させるための方法
(51)【国際特許分類】
G01N 27/419 20060101AFI20241108BHJP
G01N 27/416 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G01N27/419 327Q
G01N27/419 327E
G01N27/416 331
G01N27/416 311G
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532660
(86)(22)【出願日】2022-11-21
(85)【翻訳文提出日】2024-07-01
(86)【国際出願番号】 EP2022082556
(87)【国際公開番号】W WO2023099253
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021213465.3
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】390023711
【氏名又は名称】ローベルト ボツシユ ゲゼルシヤフト ミツト ベシユレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
【住所又は居所原語表記】Stuttgart, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス シュヴェアツレ
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン ハラー
(72)【発明者】
【氏名】エス ジー アルピタ
(57)【要約】
測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサ(100)、特に測定ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサ(100)を動作させるための方法が提案される。センサ(100)は、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を検出するセンサエレメント(110)と、センサエレメント(110)を加熱する加熱エレメント(148)と、加熱エレメント(148)に加熱電圧(UH)を印加する電圧源(152)とを有している。本方法は、第1の時点において第1の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧(UH1)印加することと、第1の時点に続く第2の時点において第2の温度測定が無効である場合に、第2の加熱電圧(UH2)を印加することと、第2の時点及び当該第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合に、第3の加熱電圧(UH3)を印加することとを含む。センサエレメント(110)の温度が予め定められた閾値を下回る場合、第1の加熱電圧(UH1)、第2の加熱電圧(UH2)及び/又は第3の加熱電圧(UH3)が印加される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサ(100)、特に測定ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサ(100)を動作させるための方法であって、
前記センサ(100)は、前記測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を検出するセンサエレメント(110)と、前記センサエレメント(110)を加熱する加熱エレメント(148)と、前記加熱エレメント(148)に加熱電圧(U
H)を印加する電圧源(152)とを有している、方法において、
前記方法は、
・第1の時点において第1の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧(U
H1)印加することと、
・前記第1の時点に続く第2の時点において第2の温度測定が無効である場合に、第2の加熱電圧(U
H2)を印加することと、
・前記第2の時点及び前記第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合に、第3の加熱電圧(U
H3)を印加することと、
を含み、
前記センサエレメント(110)の温度が予め定められた閾値を下回る場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)、前記第2の加熱電圧(U
H2)及び/又は前記第3の加熱電圧(U
H3)が印加される、方法。
【請求項2】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、前記第2の加熱電圧(U
H2)よりも大きく、前記第2の加熱電圧(U
H2)は、前記第3の加熱電圧(U
H3)よりも大きい、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、最大許容加熱電圧であり、前記第2の加熱電圧(U
H2)は、予め定められた制限された加熱電圧であり、前記第3の加熱電圧(U
H3)は、予調整加熱電圧である、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記第2の時点において前記第2の温度測定が有効である場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)を印加することをさらに含む、
請求項1乃至3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
前記第2の時点にいたるまで前記第2の温度測定が無効である限り、前記第1の加熱電圧(U
H1)を印加することをさらに含む、
請求項1乃至4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記第3の時点において前記第3の温度測定が有効である場合、又は、前記第3の時点に続く第4の時点において第4の温度測定が有効である場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)を印加することをさらに含む、
請求項1乃至5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、200ms乃至2000ms、好ましくは300ms乃至1800ms、さらに好ましくは400ms乃至1200msの予め定められた期間にわたって印加される、
請求項1乃至6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
温度測定のためのサンプリングレートは、少なくとも4msである、
請求項1乃至7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、12V乃至14Vであり、前記第2の加熱電圧(U
H2)は、9.0V乃至11.5Vであり、前記第3の加熱電圧(U
H3)は、9V以下である、
請求項1乃至8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載の方法の各ステップを実施するために構成されているコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラムを記憶した電子記憶媒体。
【請求項12】
請求項11に記載の電子記憶媒体を備えた電子制御装置(122)。
【請求項13】
測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサ(100)、特に測定ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサ(100)であって、
前記センサ(100)は、前記測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を検出するセンサエレメント(110)と、前記センサエレメント(110)を加熱する加熱エレメント(148)と、前記加熱エレメント(148)に加熱電圧(U
H)を印加する電圧源(152)とを有しており、さらに、
・第1の時点において第1の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧(U
H1)を印加し、
・前記第1の時点に続く第2の時点において第2の温度測定が無効である場合に、第2の加熱電圧(U
H1)を印加し、
・前記第2の時点及び前記第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合に、第3の加熱電圧(U
H1)を印加する
ように構成されており、
前記センサ(100)はさらに、前記センサエレメント(110)の温度が予め定められた閾値を下回る場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)、前記第2の加熱電圧(U
H2)及び/又は前記第3の加熱電圧(U
H3)を印加するように構成されている、センサ(100)。
【請求項14】
前記センサは、請求項13に記載の制御装置(122)をさらに含む、
請求項13に記載のセンサ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
従来技術
以下においては、本発明を、他の可能な構成を制限することなく、実質的に、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を定量的に及び/又は定性的に検出するために使用される方法及び装置を参照して説明する。
【背景技術】
【0002】
例えば、ガスとは、特に自動車分野における内燃機関の排気ガスであり得る。測定ガス空間とは、例えば、排気管であり得る。センサエレメントは、例えば、ラムダセンサであるものとしてよく、特にバイナリジャンプセンサ又は広帯域ラムダセンサであるものとしてよい。ラムダセンサについては、例えば、「Robert Bosch GmbH: Sensoren im Kraftfahrzeug, 1.Auflage 2010(ロバート・ボッシュ:自動車におけるセンサ、第1版、2010年)」の第160頁~第165頁に記載されている。
【0003】
ガスの割合とは、例えばターゲットガスの成分、例えば、酸素及び/又は窒素及び/又は窒素酸化物及び/又は炭化水素及び/又は他の種類のガスの成分であり得る。基本的に、センサエレメントは、他のセンサ、例えば、NOxセンサであるものとしてよい。上述した形式のセンサエレメントは、特に、1つ又は複数の固体電解質の使用に基づくものであってよく、すなわち、イオン伝導性、特に酸素イオン伝導特性を有する固体、特にセラミック固体の使用に基づくものであってよい。このような固体電解質の例は、二酸化ジルコニウム、例えば、イットリウム安定化二酸化ジルコニウム(YSZ)及び/又はスカンジウムドープ二酸化ジルコニウム(ScSZ)を基礎とした固体電解質である。ラムダセンサ、特に広帯域ラムダセンサの場合、測定中空室内へ拡散している酸素(O2)及び/又はリッチガスの量を、特に個々のセルにおいては例えば限界電流に基づいて、及び/又は、特にダブルセルにおいては中空室濃度のλ=1への閉ループ制御に必要なポンピング電流に基づいて、測定することができる。例えば、流れる測定電流は、排気ガス中のO2含有量及び/又はリッチガス含有量に比例し得る。中空室濃度の測定は、中空室内のネルンスト電極と基準空間内の酸素パージされた及び/又は空気パージされた基準電極との間のネルンスト電圧の特定に基づいて行うことができる。限界電流と酸素分圧との線形関係から、排気ガス中の酸素分圧の測定を行うことができる。
【0004】
さらに、いわゆるパーティキュレートセンサが公知である。パーティキュレートセンサにおいては、セラミック上に配置された2つの電極を用いて、排気ガス中の粒子、例えば、煤粒子又は塵埃粒子の濃度が測定される。このことは、例えば、2つの電極を分離するセラミック材料の電気抵抗を測定することによって行うことができる。より正確に言えば、電圧が電極に印加された際にこれらの電極間に流れる電流が測定される。煤粒子は、静電力に基づいて電極間に堆積し、時間と共に電極間に導電性のブリッジを形成する。こうしたブリッジが増加するにつれて測定される電流も増加する。したがって、電極での短絡が増加する。
【0005】
さらに、分子状の酸素が存在する場合に、結合した酸素を有する測定ガス成分の還元によって生じる酸素の割合を検出することによって、ガス混合物中、特に内燃機関の排気ガス中の、結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサが公知である。
【0006】
NOxセンサ又は窒素酸化物センサと簡略化され又は簡素化されて称されることもある、ガス混合物中の結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサは、例えば、「Reif, K., Deitsche, K-H.等著、“Kraftfahrtechnisches Taschenbuch(自動車技術ハンドブック)”, Springer Vieweg, Wiesbaden、2014年」の第1338頁~第1347頁に記載されている。
【0007】
今日の自動車技術において使用されている窒素酸化物センサ(=NOxセンサ)は、例えばラムダセンサなどの酸素センサと同様に、限界電流方式に従って機能する。このような窒素酸化物センサは、基準セルとも称されるネルンスト濃度セル、修正された酸素ポンピングセル、及び、別の修正された酸素ポンピングセル、いわゆるNOxセルを含む。排気ガスに曝露される外側ポンピング電極と、拡散バリアによって排気ガスから分離されている第1の中空室内の内側ポンピング電極とが、酸素ポンピングセルを形成する。第1の中空室内にはさらにネルンスト電極が配置されており、これと共にネルンストセル又は基準セルを形成する基準電極が基準ガス室内に配置されている。NOxセルは、NOxポンピング電極と対向電極とを含む。NOxポンピング電極は、第1の内側中空室に接続されておりかつ拡散バリアによって第1の内側中空室から分離された第2の中空室内に配置されている。対向電極は基準ガス室内に配置されている。第1の中空室内及び第2の中空室内の全ての電極は、共通のフィードバック導体を有している。
【0008】
窒素酸化物センサの動作時には、いわゆるO2セル内で、拡散バリアを介して排気ガスに接続されている第1の中空室から酸素が除去される。この場合、これによって得られるポンピング電流は、測定ガス流中又は排気ガス流中の周囲空気の酸素含有量に比例する。NOxセル内で、窒素酸化物がポンピングされる。第2の中空室内の雰囲気中の窒素酸化物NOxは、一定のポンピング電圧が印加されることによって還元される又は分解される。第2の中空室内の測定ガス成分が還元される又は分解されることによって生成された酸素、好適には窒素酸化物NOxの還元に由来する酸素は、基準ガス室へとポンピングされる。したがって、印加されたポンピング電圧は、NOxセルの抵抗と窒素酸化物NOxの濃度又は酸素の濃度とに対して、ポンピング電流、すなわち、窒素酸化物NOxの含有量又は酸素の含有量に比例してNOx測定信号を表すポンピング電流を生じさせる。
【0009】
内燃機関を備えたシステムにおいては、排出限界値を遵守するために複雑な排気ガス後処理システムが使用されている。ディーゼルシステムにおいては、酸素濃度及び窒素酸化物濃度を測定する複数のセンサがこれに含まれる。特に、NOxセンサは、O2濃度もNOx濃度も同時に測定可能である。これらのセンサは、典型的には測定センサとしてのセンサエレメントと小型制御装置(SCU)とから構成されている。測定センサは、電気化学プロセスによってO2濃度及びNOx濃度をそれぞれ電流信号へと変換する。SCUは、当該電流信号からO2濃度及びNOx濃度を計算し、CANインタフェースを介してこれらをエンジン制御装置(ECU)へ送信する。
【0010】
上述した排気ガスセンサには、それぞれの機能形式を保証するために加熱エレメントが設けられている。粒子センサのヒータは、例えば、センサエレメントの再生のために用いられ、再生時には加熱によって煤の燃焼が行われる。この場合、ヒータは非定常的に駆動されるのみである。他のセンサは、センサセラミックの十分に高い作業温度でしか機能せず、したがって、特定の目標温度まで連続的に加熱される。
【0011】
粒子センサは、再生の正確な制御を可能にするために、-40℃乃至950℃の測定範囲を有する組み込み型の温度測定エレメントを有する。これに対して、NOxセンサ及びラムダセンサにおいては、センサエレメントの温度は、センサセラミックの内部抵抗を介して算定される。当該内部抵抗は、各センサエレメント及び使用される評価ロジック(アナログ回路又はASIC)に依存して、上昇した温度に達してはじめて測定可能となる。ASICを使用する場合のセンサセラミックの内部抵抗のサンプリングレートは、典型的には5msである。例えば、バイナリラムダセンサに用いられるアナログ回路の場合、サンプリングレートは300ms~600msである。著しく低いサンプリングレートに基づき、温度の閉ループ制御は、較正可能な予調整成分(MAP制御)及び閉ループ制御成分(PID制御)を介して行われる。付加的に、例えば不都合な物理的な条件に基づく測定値は破棄されなければならないので、実際のサンプリングレートはさらに著しく低くなる可能性がある。
【0012】
従来技術から公知のセンサ及びこうした公知のセンサを動作させるための方法には利点もあるが、これらは、まだ改良の余地を含むものである。ここで、閉ループ制御成分は、サンプリングレートが低いにもかかわらずセンサが過熱することのないように、標準的には約2.5Vまでに制限される。8V未満の典型的な予調整成分により、閉ループ制御動作において10.5Vの最大有効加熱電圧を要求することができる。しかし、大部分のメーカ設定に対応して、12Vの最大有効ヒータ電圧が許容されている。このため、多くの場合にヒータ温度は周囲条件に動的に追従することができず、センサが酸素測定の最大信号精度に必要な温度よりも低い温度で駆動される傾向がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Robert Bosch GmbH: Sensoren im Kraftfahrzeug, 1.Auflage 2010(ロバート・ボッシュ:自動車におけるセンサ、第1版、2010年)、第160頁~第165頁
【非特許文献2】Reif, K., Deitsche, K-H.等著、“Kraftfahrtechnisches Taschenbuch(自動車技術ハンドブック)”, Springer Vieweg, Wiesbaden、2014年、第1338頁~第1347頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
発明の開示
よって、センサを動作させるための公知の方法の欠点を少なくとも大幅に回避し、センサのより迅速な加熱、より迅速な温度追従によるより動的な閉ループ制御動作、及び、部品保護を考慮した(センサの仕様に対応する)有効最大許容加熱電圧による加熱を可能にする、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサを動作させるための方法が提案される。
【課題を解決するための手段】
【0015】
したがって、本発明の第1の態様においては、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサ、特に測定ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサを動作させるための方法が提案される。センサは、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を検出するセンサエレメントと、センサエレメントを加熱する加熱エレメントと、加熱エレメントに加熱電圧を印加する電圧源とを有している。本方法は、次のステップ、すなわち、
・第1の時点において第1の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧を印加するステップと、
・第1の時点に続く第2の時点において第2の温度測定が無効である場合に、第2の加熱電圧を印加するステップと、
・第2の時点及び当該第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合に、第3の加熱電圧を印加するステップと、
を、好ましくは上記の順序で含む。ここで、センサエレメントの温度が予め定められた閾値を下回る場合に、第1の加熱電圧、第2の加熱電圧及び/又は第3の加熱電圧が印加される。
【0016】
本方法は、温度測定の時点でのセンサ温度が正確に既知となるという認識を利用している。閉ループ制御アルゴリズムによって問い合わせが行われた場合に、センサは、短い期間にわたって最大許容加熱電圧で加熱可能となる。直近の温度測定が欠落した場合、加熱電圧を低下させる必要がある。センサは、メーカによって指定された(目標値近傍の)温度範囲内で、比較的長い期間にわたって駆動される。これにより、センサセラミックの経時劣化現象を緩和することができる。さらに、信号測定精度を高めることができ、これにより排気ガス排出量がより低下する。センサ温度をより動的に調整することができ、比較的冷たい排気ガスの場合にも、センサの冷却をより良好に回避することができる。
【0017】
各加熱電圧の高さは、それぞれ唯一の値に固定されていないことを理解されたい。すなわち、基本的には温度制御はPID制御回路を介して行われる。したがって、印加される加熱電圧は、制御偏差、温度の時間特性及び選択されたパラメータに依存する。第1の加熱電圧から第3の加熱電圧は部品保護の理由から制御回路出力のそれぞれの上限に対応し、第1の加熱電圧の場合にはメーカ仕様に対応する。換言すれば、各加熱電圧の高さは、温度目標値からの温度実際値の偏差に合わせて調整することができる。
【0018】
第1の加熱電圧は、第2の加熱電圧よりも大きいものとしてよい。第2の加熱電圧は、第3の加熱電圧よりも大きいものとしてよい。これに応じて、温度測定値が無効である場合、加熱電圧が段階的に又は連続的に低減される。
【0019】
第1の加熱電圧は、最大許容加熱電圧であるものとしてよい。第2の加熱電圧は、予め定められた制限された加熱電圧であるものとしてよい。第3の加熱電圧は、予調整加熱電圧であるものとしてよい。センサは、メーカによって指定された(目標値近傍の)温度範囲内で、比較的長い期間にわたって駆動される。これにより、センサセラミックの経時劣化現象を緩和することができる。さらに、信号測定の精度を高めることができ、これにより、排気ガス排出量がより低下する。センサ温度をより動的に閉ループ制御することができ、比較的冷たい排気ガスの場合に、センサの冷却をより良好に回避することができる。
【0020】
本方法はさらに、第2の時点において第2の温度測定が有効である場合、第1の加熱電圧を印加することを含み得る。これに応じて、第1の加熱電圧の印加期間を延長することができる。
【0021】
本方法はさらに、第2の時点にいたるまで第2の温度測定が無効である限り、第1の加熱電圧を印加することを含み得る。これに応じて、第1の加熱電圧を印加する期間を、有効な測定値が算定されるまでとすることができる。
【0022】
本方法はさらに、第3の時点において第3の温度測定が有効である場合又は第3の時点に続く第4の時点において第4の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧を印加することを含み得る。これに応じて、有効な温度測定値が得られると直ちに、加熱電圧を(再び)増加させることができる。
【0023】
第1の加熱電圧は、200ms乃至2000ms、好ましくは300ms乃至1800ms、さらに好ましくは400ms乃至1200msの予め定められた期間にわたって印加することができる。このように、最大許容加熱電圧での動作を比較的短時間だけ行うことができるので、センサの損傷が回避される。
【0024】
温度測定のためのサンプリングレートは、少なくとも4msであるものとしてよい。このように、必要に応じて又は制御装置内の回路に応じて、温度測定が行われる。
【0025】
第1の加熱電圧は、12V乃至14Vの範囲にあるものとしてよい。第2の加熱電圧は、9.0V乃至11.5Vであるものとしてよい。第3の加熱電圧は、9V以下であるものとしてよい。例えば、第3の加熱電圧は、5Vから最大9Vまでの範囲にある。この場合、上記の加熱電圧の高さは、加熱電圧の印加のための上述した予め定められた時間が短くなるにつれて高くすることができる。よって、電圧の印加時間が短くなるほど、電圧をより高くすることができる。
【0026】
また、本発明に係る方法の各ステップを実施するために構成されたコンピュータプログラムが提案される。
【0027】
さらに、本発明に係る方法を実施するためのコンピュータプログラムを記憶した電子記憶媒体が提案される。
【0028】
さらに、本発明に係る方法を実施するための上述したコンピュータプログラムを含む本発明に係る電子記憶媒体を備えた電子制御装置が提案される。
【0029】
最後に、本発明は、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサ、特に測定ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサであって、センサは、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を検出するセンサエレメントと、センサエレメントを加熱する加熱エレメントと、加熱エレメントに加熱電圧を印加する電圧源とを有しており、さらに、
・第1の時点において第1の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧を印加し、
・第1の時点に続く第2の時点において第2の温度測定が無効である場合に、第2の加熱電圧を印加し、
・第2の時点及び当該第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合に、第3の加熱電圧を印加する
ように構成されたセンサに関する。本センサはさらに、センサエレメントの温度が予め定められた閾値を下回る場合に、第1の加熱電圧、第2の加熱電圧及び/又は第3の加熱電圧を印加するように構成されている。
【0030】
センサはさらに、前述した又は後述する実施形態のうちの1つによる制御装置を含み得る。
【0031】
固体電解質とは、本発明の範囲においては、電解質特性、すなわち、イオン伝導性の特性を有する物体又は対象物と理解されるべきである。特に、固体電解質とは、セラミックの固体電解質であるものとしてよい。これには固体電解質のロー材料も含まれ、したがって、焼結後にはじめて固体電解質となるいわゆるグリーンシート又はブラウンシートとしての構成も含まれる。特に、固体電解質は、固体電解質層として形成可能であり、又は、複数の固体電解質層から形成可能である。層とは、本発明の範囲においては、他の要素の上、下又は中間に位置し、ある高さでの面状の拡がりを有するひとまとまりの質量体と理解されるべきである。
【0032】
電極とは、本発明の範囲においては、一般的に、固体電解質と電極とを通して電流が維持可能であるように固体電解質を接触接続させ得るエレメントであると理解されるべきである。したがって、電極は、イオンを固体電解質へ導入することが可能であり及び/又はイオンを固体電解質から取り出すことが可能であるエレメントを含み得る。典型的には、電極は、例えば、金属セラミック電極として固体電解質上に被着可能である又は他の方式により固体電解質と接続可能である貴金属電極を含む。典型的な電極材料は、白金サーメット電極である。しかし、基本的には、例えば金又はパラジウムなどの他の貴金属も使用可能である。
【0033】
本発明の範囲において、加熱エレメントとは、固体電解質及び電極を少なくともその機能温度まで、有利にはその動作温度まで加熱するために使用されるエレメントであると理解されるべきである。機能温度とは、当該温度以上で固体電解質がイオン伝導性となる温度であり、約350℃である。動作温度とは、機能温度と区別されるべき、センサエレメントが通常駆動される温度であって、機能温度よりも高い温度である。動作温度は、例えば700℃乃至950℃とすることができる。加熱エレメントは、加熱領域と少なくとも1つのリード線とを含み得る。本発明の範囲において、加熱領域とは、層構造において、加熱エレメントのうち、センサエレメントの表面に対して垂直な方向に沿って電極と重なる領域であると理解されるべきである。通常、加熱領域は動作中にリード線よりも強く加熱されるので、加熱領域とリード線とは区別可能である。加熱領域がリード線よりも高い電気抵抗を有することによって、例えば、それぞれ異なる加熱を実現することができる。加熱領域及び/又はリード線は、例えば、電気抵抗路として形成されており、電圧の印加により加熱される。加熱エレメントは、例えば、白金サーメットから製造可能である。
【0034】
測定量とは、本発明の範囲において、基本的には、任意の物理量及び/又は化学量並びに当該量を等価に表示する信号すなわち等価信号と理解されるべきである。好ましくは、測定量は、センサエレメントの少なくとも1つの測定信号である。好ましくは、測定量は、少なくとも1つのポンピング電流、例えば限界電流であり得る。例えば、測定量は、ポンピング電流に依存した量であるものとしてよい。例えば、測定量は、ポンピング電圧及び/又は変換された電荷であるものとしてよい。このことに関連して、「検出される」なる表現は、本発明の範囲においては、測定量が例えば測定信号としてセンサエレメントから出力されること、及び/又は、測定量が制御装置によって処理される及び/又は評価される及び/又は記憶されることであると理解されるべきである。
【0035】
拡散バリアとは、例えば、ガス流及び/又は液流及び/又はガス混合物流及び/又はガス成分流を抑制する材料から成る層であり、一方、層は、ガス及び/又は液体及び/又はガス混合物及び/又はガス成分及び/又はイオンの拡散を促進するものであると理解することができる。
【0036】
中空室とは、センサエレメント内の、構造的には確かに測定ガス空間から分離されているが、測定ガス空間からのガス成分及び/又はガス混合物及び/又はガスを例えば少なくとも1つのガス進入路及び/又は拡散バリアを介して供給可能である空間のことであると理解することができる。中空室は、例えば、チャンバであるものとしてよい。当該装置は、少なくとも1つの基準ガス室及び/又は少なくとも1つの基準ガス通路を有し得る。固体電解質は、好ましくはイオン伝導性の固体電解質であるものとしてよい。拡散バリアを介して、特に中空室へ向かって、特にガス及び/又はその少なくとも一部のガス交換が、好ましくは拡散によって可能となり得る。
【0037】
「第1の」、「第2の」などの数称は、部品及び特徴の単なる呼称及び語の区別として用いられる。これらの記載は、特に、順序、重み、又は、例えば、さらに当該タイプの他の部品若しくは他の特徴が存在するかどうかに関する情報を与えるものではない。
【0038】
本発明の任意選択手段としてのさらなる詳細及び特徴は、図面に概略的に示した好ましい実施例についての以下の説明から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【
図1】本発明に係るセンサの基本構造を示す図である。
【
図2】一実施形態によるセンサの経時変化を補償するための信号処理を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0040】
発明の実施形態
図1には、本発明に係る方法を実施するために特に適した本発明に係るセンサ100の基本構造が示されている。
【0041】
センサ100は、測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するように構成されている。単なる例であるが、センサ100は、ガス混合物中、例えば、内燃機関の排気ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分(以下においては、例として窒素酸化物NOxを挙げる)の少なくとも1つの割合を検出するように構成されている。このために、センサ100はセンサエレメント110を含む。センサエレメント110は、外側ポンピング電極114と内側ポンピング電極116との間に構成された第1のポンピングセル112を有しており、ここで、ポンピング電極114,116は固体電解質117によって相互に接続されている。この場合、ポーラス質の酸化アルミニウム層118によってセンサ100の周囲から分離されている外側ポンピング電極114は、第1の導電性接続部120を有しており、この第1の導電性接続部120を介して、第1のポンピングセル112において第1のポンピング電流IP1が生成される。このために、導電性接続部120は、電子制御装置122の端子P1に接続されている。制御装置122は、センサ100の一部であっても、又は、センサ100に接続されるものであってもよい。完全な電流回路を得るために、内側ポンピング電極116も同様に、電子制御装置122の共通端子COMへ通じる導電性接続部124を有している。第1のポンピングセル112は第1の中空室126に接して位置しており、この第1の中空室126はセンサエレメント110の内部に位置しており、測定ガスに接続されている。第1のポンピングセル112において第1のポンピング電流IP1を生成することによって、ガス混合物の分子状酸素から形成された第1の割合の酸素イオンが、第1の中空室126とセンサ100の周囲との間で輸送される。周囲から第1の中空室126への入口経路に2つの拡散バリア128が設けられている。
【0042】
センサエレメント110はさらに、ネルンスト電極132と基準電極134とを有する電気的な基準セル130を有している。ネルンスト電極132は内側ポンピング電極116と共に共通端子COMへの導電性接続部124を有しているが、基準電極134は、外部の電子制御装置122のネルンスト電圧Vs用の端子Vsへの別個の導電性接続部136を有している。基準セル130は、基準ガス室138に接して位置している。測定ガス空間126からの及び/又はセンサ100の周囲からの酸素イオンの第2の割合は、端子Vsと共通端子COMとの間に基準ポンピング電流を印加することによって、基準ガス室138へ輸送される。ここで、基準ポンピング電流の値は、定められた割合の酸素イオンが基準ガス室138内に形成されるように設定される。好適には、このことに関連して、第1のポンピング電流IP1の値も、測定ガス空間126内の酸素イオンの第1の割合と基準ガス室138内の酸素イオンの第2の割合との間の定められた比が生じるように設定される。
【0043】
ガス混合物にさらに含まれている、結合した酸素を有する測定ガス成分すなわち窒素酸化物NOxは、特に拡散により、影響をほとんど受けずに、センサエレメント110の「NOxポンピングセル」とも称されることのある第2のポンピングセル140へ到達する。第2のポンピングセル140は、NOxポンピング電極142とNOx対向電極144とを有しており、センサエレメント110の内部の第2の中空室145に接して位置している。第2の中空室145は、複数の拡散バリア128のうちの1つによって第1の中空室126から分離されている。2つの電極のうちの少なくとも1つ、すなわち、NOxポンピング電極142及び/又はNOx対向電極144は、電圧が印加されると、測定ガス成分NOxからの触媒作用によって、さらなる分子状酸素が第2のポンピングセル140において生成可能となるように構成されている。
【0044】
NOxポンピング電極142は、共通端子COMへ通じる導電性接続部を有していないが、NOx対向電極144は、第2のポンピング電流IP2を第2のポンピングセル140に印加することが可能である導電性接続部146を有している。このために、導電性接続部146は、外部の電子制御装置122の端子P2に接続されている。第2のポンピング電流IP2が第2のポンピングセル140に印加されると、さらなる分子状酸素から形成された所定の割合のさらなる酸素イオンが基準ガス室138へ輸送される。
【0045】
センサエレメント110は、さらに加熱エレメント148を有しており、加熱エレメント148は、2つのリード線150によって制御装置122の端子HTR+及びHTR-に接続されており、これらを介して加熱電流が加熱エレメント148に導入可能であり、加熱エレメント148は、加熱電力を生成することによってセンサエレメント110を所望の温度へと移行させることができる。この目的のために、センサ100は、加熱エレメント148に加熱電圧UHを印加する電圧源152を有する。電圧源152は、制御装置122によって開ループ制御又は閉ループ制御され、この目的のために制御装置122に接続されている。
【0046】
センサ100の動作時、第1のポンピングセル112の第1のポンピング電流IP1と第1のポンピングセル112に印加される電圧UP1とが検出される。結合した酸素を有する測定ガス成分を示すセンサエレメント110の測定信号は、第2のポンピングセル140の第2のポンピング電流IP2に基づいて算定される。
【0047】
以下においては、センサを動作させるための方法を説明する。本方法は、コンピュータ実装可能である。センサエレメントの温度が予め定められた閾値を下回る場合に後続の方法ステップが実行されることを明示的に強調しておく。換言すれば、特に、センサエレメント110の温度が予め定められた閾値を下回る場合、すなわち、加熱エレメント148の閉ループ制御アルゴリズムによる問い合わせが行われた場合に、加熱エレメント148に加熱電圧UHが印加される。この場合、センサエレメント110の温度調整は閉ループ制御によって行われる。この場合、閉ループ制御成分は標準的に約2.5Vまでに制限されている。8V未満の典型的な予調整成分により、閉ループ制御動作において、10.5Vの予め定められた制限された加熱電圧UHlimが要求可能となる。なお、メーカ設定の大部分に対応するように、例えば12Vの有効加熱電圧UHmaxが許容される。ここで、温度は定期的に測定される。例えば、温度測定のためのサンプリングレートは少なくとも4msである。ASICが使用される場合のセンサセラミックの内部抵抗のサンプリングレートは、典型的には5msである。例えば、バイナリのラムダセンサに用いられるアナログ回路の場合、サンプリングレートは300ms~600msである。
【0048】
第1の時点において第1の温度測定が有効であり、したがって、センサエレメント110の温度が既知である場合、第1の加熱電圧UH1が印加される。第1の加熱電圧UH1は最大許容加熱電圧UHmaxであり、すなわち、センサ100のメーカが最大許容可能と示している値を有する加熱電圧である。例えば、第1の加熱電圧UH1は12Vである。第1の加熱電圧UH1は、200ms乃至2000ms、好ましくは300ms乃至1800ms、さらに好ましくは400ms乃至1200msの予め定められた短い期間にわたって、例えば600msの予め定められた短い期間にわたって印加される。
【0049】
第1の時点に続く第2の時点において、例えば、故障のために第2の温度測定が無効である場合には、第2の加熱電圧UH2が印加される。第1の加熱電圧UH1は第2の加熱電圧UH2よりも大きい。第2の加熱電圧UH2は、予め定められた制限された加熱電圧UHlimである。例えば、第2の加熱電圧UH2は、8Vの最大予調整成分と2.5Vの閉ループ制御成分とから得られる10.5Vである。
【0050】
第2の時点において第2の温度測定が有効である場合、(引き続き)第1の加熱電圧UH1が印加される。すなわち、第2の時点にいたるまで第2の温度測定が無効である限り、第1の加熱電圧UH1の印加が行われる。
【0051】
第2の時点及び当該第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合には、第3の加熱電圧UH3が印加される。第2の加熱電圧UH2は第3の加熱電圧UH3よりも大きい。第3の加熱電圧UH3は予調整加熱電圧UHmapであり、すなわち、予調整成分に対応する加熱電圧である。第3の加熱電圧UH3は、例えば、8V以下である。
【0052】
本方法においては、第3の時点において第3の温度測定が有効である場合又は当該第3の時点に続く第4の時点において第4の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧UH1を(再び)印加することができる。
【0053】
この場合、従来技術による加熱電圧の実際限界は、UHlim=10.5Vに対応する。最大許容加熱電圧UHMaxとUlimとの時間比が1:1であるとき、本発明に係る方法を用いて、効果的に達成可能なエネルギ入力Eを、次の計算、すなわち、
Etot=(Emax*0.5+Elim*0.5)/Elim=(122*0.5+10.52*0.5)/10.52=1.153
から得られるように、15%増加させることができる。ここで、Etotは、総エネルギ入力であり、Emaxは、最大許容エネルギ入力であり、Elimitは、エネルギ入力の限界である。
【0054】
変換は、新しい温度測定値でリセットされるそれぞれ異なる時間的なデバウンシングによって行われる。最後の測定値からどれだけの時間が経過したかに応じて、加熱電圧の閉ループ制御は、較正可能な限界に対応するように制限される。その際には、以下の例に従って3つ以上の段階付けも考えられる。
【0055】
図2には、例としての加熱電圧の特性が示されている。X軸154には、時間が単位sでプロットされている。Y軸156には、加熱電圧が単位Vでプロットされている。曲線158は、例示的な加熱電圧の時間特性である。第1の範囲160においては、例えば、温度測定の1つおきの測定値が有効となっている。したがって、本発明に係る方法においては、第1の加熱電圧U
H1すなわち最大許容加熱電圧U
Hmaxと、第2の加熱電圧U
H2すなわち予め定められた制限された加熱電圧U
Hlimとの間での交番が行われる。第2の範囲162においては、全ての測定値が有効である。このため、温度測定の測定値が有効である期間の全体にわたって、第1の加熱電圧U
H1が加熱エレメント148に印加される。第3の範囲164においては、比較的長い時間にわたって新たな有効な測定値が存在しない。したがって、加熱電圧は、まず第2の加熱電圧U
H2へ低減され、続いて第3の加熱電圧U
H3すなわち予調整加熱電圧U
Hmapまで低減される。加熱電圧が低減された後の温度測定の第1の有効な測定値に対応する第4の範囲166において、第1の加熱電圧U
H1までの(再)増加が行われる。
【手続補正書】
【提出日】2024-07-22
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサ(100)、特に測定ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサ(100)を動作させるための方法であって、
前記センサ(100)は、前記測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を検出するセンサエレメント(110)と、前記センサエレメント(110)を加熱する加熱エレメント(148)と、前記加熱エレメント(148)に加熱電圧(U
H)を印加する電圧源(152)とを有している、方法において、
前記方法は、
・第1の時点において第1の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧(U
H1)
を印加することと、
・前記第1の時点に続く第2の時点において第2の温度測定が無効である場合に、第2の加熱電圧(U
H2)を印加することと、
・前記第2の時点及び前記第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合に、第3の加熱電圧(U
H3)を印加することと、
を含み、
前記センサエレメント(110)の温度が予め定められた閾値を下回る場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)、前記第2の加熱電圧(U
H2)及び/又は前記第3の加熱電圧(U
H3)が印加される、方法。
【請求項2】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、前記第2の加熱電圧(U
H2)よりも大きく、前記第2の加熱電圧(U
H2)は、前記第3の加熱電圧(U
H3)よりも大きい、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、最大許容加熱電圧であり、前記第2の加熱電圧(U
H2)は、予め定められた制限された加熱電圧であり、前記第3の加熱電圧(U
H3)は、予調整加熱電圧である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、
前記第2の時点において前記第2の温度測定が有効である場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)を印加することをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項5】
前記方法は、
前記第2の時点にいたるまで前記第2の温度測定が無効である限り、前記第1の加熱電圧(U
H1)を印加することをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記方法は、
前記第3の時点において前記第3の温度測定が有効である場合、又は、前記第3の時点に続く第4の時点において第4の温度測定が有効である場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)を印加することをさらに含む、
請求項
1に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、200ms乃至2000ms、好ましくは300ms乃至1800ms、さらに好ましくは400ms乃至1200msの予め定められた期間にわたって印加される、
請求項
1に記載の方法。
【請求項8】
温度測定のためのサンプリングレートは、少なくとも4msである、
請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の加熱電圧(U
H1)は、12V乃至14Vであり、前記第2の加熱電圧(U
H2)は、9.0V乃至11.5Vであり、前記第3の加熱電圧(U
H3)は、9V以下である、
請求項
1に記載の方法。
【請求項10】
コンピュータ上で実行されるときに、当該コンピュータに、請求項
1に記載の方法の各ステップを実施
させるため
のコンピュータプログラム。
【請求項11】
請求項10に記載のコンピュータプログラムを記憶した電子記憶媒体。
【請求項12】
請求項11に記載の電子記憶媒体を備えた電子制御装置(122)。
【請求項13】
測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を特定するセンサ(100)、特に測定ガス中の分子状の測定ガス成分及び/又は結合した酸素を有する測定ガス成分の少なくとも1つの割合を検出するセンサ(100)であって、
前記センサ(100)は、前記測定ガス空間内のガスの少なくとも1つの割合を検出するセンサエレメント(110)と、前記センサエレメント(110)を加熱する加熱エレメント(148)と、前記加熱エレメント(148)に加熱電圧(U
H)を印加する電圧源(152)とを有しており、さらに、
・第1の時点において第1の温度測定が有効である場合に、第1の加熱電圧(U
H1)を印加し、
・前記第1の時点に続く第2の時点において第2の温度測定が無効である場合に、第2の加熱電圧(
U
H2
)を印加し、
・前記第2の時点及び前記第2の時点に続く少なくとも1つの第3の時点において第3の温度測定が無効である場合に、第3の加熱電圧(
U
H3
)を印加する
ように構成されており、
前記センサ(100)はさらに、前記センサエレメント(110)の温度が予め定められた閾値を下回る場合に、前記第1の加熱電圧(U
H1)、前記第2の加熱電圧(U
H2)及び/又は前記第3の加熱電圧(U
H3)を印加するように構成されている、センサ(100)。
【請求項14】
前記センサは、請求項
12に記載の
電子制御装置(122)をさらに含む、
請求項13に記載のセンサ(100)。
【国際調査報告】