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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】血管内血液ポンプ
(51)【国際特許分類】
   A61M 60/515 20210101AFI20241108BHJP
   A61M 60/174 20210101ALI20241108BHJP
   A61M 60/13 20210101ALI20241108BHJP
   A61M 60/237 20210101ALI20241108BHJP
   A61M 60/531 20210101ALI20241108BHJP
   A61M 60/816 20210101ALI20241108BHJP
   A61M 60/867 20210101ALI20241108BHJP
【FI】
A61M60/515
A61M60/174
A61M60/13
A61M60/237
A61M60/531
A61M60/816
A61M60/867
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532682
(86)(22)【出願日】2022-12-02
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 US2022051660
(87)【国際公開番号】W WO2023102185
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】63/285,810
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】63/293,241
(32)【優先日】2021-12-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510121444
【氏名又は名称】アビオメド インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】セグラ オルテガ,カルロス,アレハンドロ
(72)【発明者】
【氏名】ジェンティーレ,アンドリュー
【テーマコード(参考)】
4C077
【Fターム(参考)】
4C077AA04
4C077BB10
4C077DD10
4C077EE01
4C077HH03
4C077HH10
4C077HH13
4C077HH18
4C077HH20
4C077HH21
(57)【要約】
血管内血液ポンプを用いて分光法ベース及び/又は画像ベースの検知を使用するための技法及びシステムを提供することができる。この技法は、概して、測定された組織及び/又は血液の光に対するスペクトル応答を取り込むことを含む。所定の必要性に基づいて、本方法は、例えば、スペクトル応答に基づいて、測定された組織のタイプを決定すること、測定された組織のタイプが標的組織タイプと一致するか否かを判断すること、スペクトル応答に基づいて、測定された組織の健康状態を決定すること、測定された組織の健康状態に基づいて治療計画を決定すること、血液中の成分及び/又は特性のタイプ及び/又は量を決定すること、及び/又は血液中の成分及び/又は特性のタイプ及び/又は量に基づいて心臓の回復の程度を決定することを含むことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
血管内血液ポンプで分光法ベースの検知を使用するための方法であって、
(a)測定された組織の光に対するスペクトル応答を取り込むことと、
(b)前記スペクトル応答に基づいて、前記測定された組織のタイプを決定することと、
(c)前記測定された組織のタイプが、標的組織タイプと一致するか否かを判断することと、
を含む方法。
【請求項2】
前記測定された組織の光に対する前記スペクトル応答を取り込むことが、前記測定された組織にセンサを介して光を照射し、反射光を検知することを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記反射光が分光計又は画像検出器を介して検知される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
(d)前記血管内血液ポンプが患者の血管内に挿入された距離を調整することと、ステップ(a)~(c)を繰り返すこととをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
(e)前記タイプが前記標的組織タイプと一致したときをユーザに示すことをさらに含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(f)前記血管内血液ポンプから前記標的組織タイプを有する前記測定された組織までの距離を決定することをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
(g)前記血管内血液ポンプから前記標的組織タイプを有する前記測定された組織までの前記距離が、目標距離と一致するか否かを判断することをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
(h)前記標的組織タイプを有する前記測定された組織に対する前記血管内血液ポンプの位置を調整することと、ステップ(f)~(g)を繰り返すことをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記測定された組織の前記タイプが、第1センサからの情報に基づき、前記血管内血液ポンプから前記測定された組織までの前記距離が、第2センサからの情報に基づく、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
(i)前記測定された組織の健康状態を決定することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記測定された組織の前記健康状態を決定することが、前記測定された組織の前記健康状態を、カテゴリのリストからの1つ又は複数のカテゴリに分類することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記カテゴリのリストが、健康な組織、回復した組織、及び損傷した組織を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
(j)決定された前記測定された組織の前記健康状態に基づいて治療計画を提案することをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
(k)前記治療計画を決定することをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記治療計画が複数の特性に基づき、前記複数の特性が、患者の前記測定された組織及び/又は血液の特性を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の特性が、前記患者及び/又は前記患者の心臓の特性を含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記測定された組織の前記健康状態が、評価システムによって決定され、前記評価システムが、既知の組織健康状態を有する組織のスペクトル応答のデータベースを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記測定された組織の前記健康状態を決定することが、前記測定された組織の前記スペクトル応答を、前記データベース内の既知の組織健康状態を有する組織のスペクトル応答と比較することを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記測定された組織の前記健康状態を決定することが、前記スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、前記閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有するか否かを判断することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
治療計画を提案することをさらに含み、前記治療計画は、前記スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、前記閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有する場合、ある期間の後に組織健康状態を再検査することを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
(m)血液の光に対する追加のスペクトル応答を取り込むことと、
(n)前記追加のスペクトル応答に基づいて前記血液の特性を決定することと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項22】
前記血液の特性が、前記血液中の少なくとも1つの物質の同定又はタイプ、及び前記少なくとも1つの物質の濃度を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記血液の特性が血液の酸素化である、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記血液の酸素化が、前記血液による前記光の吸収率、透過率及び/又は反射率の決定に基づく、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記血液の特性が溶血である、請求項21に記載の方法。
【請求項26】
前記血液の特性が乳酸アシドーシスである、請求項21に記載の方法。
【請求項27】
(o)前記追加のスペクトル応答に基づく前記血液の特性が閾値を下回る値を有する場合、アラートを生成することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項28】
(p)前記追加のスペクトル応答に基づく前記血液の複数の特性に基づいて心臓の回復の程度を決定することをさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項29】
前記複数の特性が、前記血液中の少なくとも1つの物質の同定又は分類、及び前記少なくとも1つの物質の濃度を含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
(q)前記心臓の回復の程度に基づいて治療計画を決定し提案することをさらに含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
前記心臓の回復の程度を決定することが、前記血液中の1つ又は複数の物質の同定、又はタイプ及び濃度をデータベースからの値と比較することを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項32】
血管内血液ポンプで分光法ベースの検知を使用するための方法であって、
測定された組織の光に対するスペクトル応答を取り込むことと、
前記スペクトル応答に基づいて、前記測定された組織の健康状態を決定することと、
前記測定された組織の前記健康状態に基づいて治療計画を決定することと、
前記治療計画を提案することと、
を含む方法。
【請求項33】
前記測定された組織が心臓組織である、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記測定された組織の前記健康状態を決定することが、評価システムによって決定される、請求項32に記載の方法。
【請求項35】
患者の他の成分及び/又は特性を検知及び測定することをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項36】
他の成分及び/又は特性を検知及び測定することが、前記ポンプ内及び/又はその周囲の血液に光を照射させ、前記血液中の成分から反射した後の光を検知及び分析することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
他の成分及び/又は特性を検知及び測定することが、前記ポンプが使用されている間に溶血を評価することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項38】
他の成分及び/又は特性を検知及び測定することが、乳酸の濃度を決定することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項39】
前記血液中の成分の濃度又は前記血液の特性の値が閾値を下回ると判断された場合にアラートを生成することをさらに含む、請求項35に記載の方法。
【請求項40】
選択された治療計画又は治療ステップを自動的にフォーマットし、患者の医療記録に組み込むことをさらに含む、請求項32に記載の方法。
【請求項41】
心臓の回復の程度を決定する方法であって、
血管内血液ポンプ内及び/又はその周囲の血液に光を照射することと、
前記光に対するスペクトル応答を取り込むことと、
前記血液中の成分及び/又は特性のタイプ及び/又は量を決定することと、
前記血液中の前記成分及び/又は特性の前記タイプ及び/又は量に基づいて、心臓の回復の程度を決定することと、
を含む方法。
【請求項42】
前記心臓の回復の決定が1つ又は複数の閾値を上回る及び/又は下回る場合、
前記1つ又は複数の成分の量が1つ又は複数の閾値を上回る及び/又は下回ると判断された場合、
前記血液中の前記特性が1つ又は複数の閾値を上回る及び/又は下回ると判断された場合、又は
それらの組み合わせの場合、
アラートを生成することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記心臓の回復の程度に基づいて治療計画を決定し提案することをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項44】
システムであって、
血管内血液ポンプと、
前記血管内血液ポンプの中又は上に配置されたセンサであって、1つ又は複数のプロセッサ、光源、及び検出器に動作可能に連結されたセンサと、
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、
前記光源からの光を、前記センサを通して患者の血管系内の測定対象の組織に向けさせ、
前記検出器を使用して、前記センサによって取り込まれた前記測定された組織の光のスペクトル応答を検知させ、
前記スペクトル応答に基づいて、前記測定された組織のタイプを決定させ、
前記測定された組織の前記タイプが標的組織タイプと一致するか否かを判断させる
命令を含む非一時的コンピュータ可読記憶媒体と、
を備えるシステム。
【請求項45】
前記検出器が分光計又は画像検出器である、請求項44に記載のシステム。
【請求項46】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記タイプが前記標的組織タイプと一致するときをユーザに示させる命令をさらに含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項47】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記血管内血液ポンプから前記標的組織タイプを有する前記測定された組織までの距離を決定させる命令をさらに含む、請求項46に記載のシステム。
【請求項48】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記血管内血液ポンプから前記標的組織タイプを有する前記測定された組織までの距離が目標距離と一致するか否かを判断させる命令をさらに含む、請求項47に記載のシステム。
【請求項49】
距離センサをさらに備える、請求項47に記載のシステム。
【請求項50】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記測定された組織の健康状態を決定させる命令をさらに含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項51】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記測定された組織の前記健康状態をカテゴリのリストからの1つ又は複数のカテゴリに分類させる命令をさらに含む、請求項50に記載のシステム。
【請求項52】
前記カテゴリのリストは、健康、回復、及び損傷を含む、請求項51に記載のシステム。
【請求項53】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、決定された前記測定された組織の健康状態に基づいて治療計画を決定させ提案させる命令をさらに含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項54】
前記治療計画が、複数の特性に基づいて決定され、前記複数の特性が、患者の前記測定された組織及び/又は血液の特性を含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記複数の特性が、前記患者及び/又は前記患者の心臓の特性を含む、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記1つ又は複数のプロセッサに動作可能に連結されたデータベースをさらに含む、請求項53に記載のシステム。
【請求項57】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記測定された組織のスペクトル応答を、前記データベース内の既知の組織健康状態を有する組織のスペクトル応答と比較させる命令をさらに含む、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、前記閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有するか否かを判断させる命令をさらに含む、請求項56に記載のシステム。
【請求項59】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、前記閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有すると判断した後のある期間の後に、組織健康状態を再検査させる命令をさらに含む、請求項58に記載のシステム。
【請求項60】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、血液の光に対する追加のスペクトル応答を取り込ませ、前記追加のスペクトル応答に基づいて前記血液の特性を決定させる命令をさらに含む、請求項44に記載のシステム。
【請求項61】
前記血液の特性が、前記血液中の少なくとも1つの物質の同定又はタイプ、及び前記少なくとも1つの物質の濃度を含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項62】
前記血液の特性が血液の酸素化である、請求項60に記載のシステム。
【請求項63】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記血液による前記光の吸収率、透過率及び/又は反射の決定に基づいて前記血液の酸素化を決定させる命令をさらに含む、請求項62に記載のシステム。
【請求項64】
前記血液の特性が溶血である、請求項60に記載のシステム。
【請求項65】
前記血液の特性が乳酸アシドーシスである、請求項60に記載のシステム。
【請求項66】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記追加のスペクトル応答に基づく前記血液の前記特性が閾値を下回る値を有する場合、アラートを生成させる命令をさらに含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項67】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記追加のスペクトル応答に基づく前記血液の複数の特性に基づいて心臓の回復の程度を決定させる命令をさらに含む、請求項60に記載のシステム。
【請求項68】
前記複数の特性が、前記血液中の少なくとも1つの物質の同定又は分類、及び前記少なくとも1つの物質の濃度を含む、請求項67に記載のシステム。
【請求項69】
前記1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、前記システムに、前記心臓の回復の程度に基づいて治療計画を決定させ提案させる命令をさらに含む、請求項67に記載のシステム。
【請求項70】
前記1つ又は複数のプロセッサにより実行されると、前記システムに、前記血液中の1つ又は複数の物質の同定又はタイプ及び濃度をデータベースからの値と比較することにより、前記心臓の回復の程度を決定させる命令をさらに含む、請求項67に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2021年12月3日に出願された米国仮特許出願第63/285,810号及び2021年12月23日に出願された同第63/293,241号の優先権を主張するものであり、これら出願の各々はその全体が参照により本明細書に援用される。
【0002】
技術分野
本開示は、患者の血管内の流れをサポートするように配置された血管内血液ポンプアセンブリ等の血液ポンプアセンブリに関し、特に、デバイスと、そうしたデバイスを設置し、デバイスが設置された患者(例えば、患者の血管系)をモニタリングする方法とに関する。
【背景技術】
【0003】
背景
血管内血液ポンプは、外科的に又は経皮的に患者の体内に導入し、心臓又は循環系内のある場所から心臓又は循環系内の別の場所に血液を送るために使用することができる。例えば、左心内に展開された場合、血管内血液ポンプは、心臓の左心室から大動脈に血液をポンピングすることができる。同様に、右心内に展開された場合、血管内血液ポンプは、下大静脈から肺動脈に血液をポンピングすることができる。こうした血液ポンプの例としては、Impella(登録商標)ファミリのデバイス(Abiomed,Inc.,Danvers,MA)が挙げられる。
【0004】
血液ポンプは、患者の血管系を測定する1つ又は複数のセンサを有することができる。例えば、血管内血液ポンプは、患者の血管系、特に患者の心室腔内の圧力を測定する1つ又は複数の光学センサを含むことができ、これは、血液ポンプを動作させるため及び/又は患者の心臓の状態を評価するために使用することができる。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
概要
いくつかの実施形態では、血管内血液ポンプ等の医療デバイスを患者の体内に位置決めする方法を開示する。いくつかの実施形態では、本方法は、医療デバイス上のセンサを介して第1位置で組織のタイプを検出することと、検出された組織のタイプが標的組織タイプと一致するか否かを判断することとを含む。決定された組織タイプと標的組織タイプとが一致する場合、本方法は、血管内血液ポンプを固定することを含む。決定された組織タイプと標的組織タイプとが異なる場合、本方法は、医療デバイスを第2位置まで移動させ、検出するステップ及び判断するステップを再度実施することを含む。理解されるように、医療デバイスは、第3、第4、第5(又はそれ以上)の位置まで移動させることができ、検出するステップ及び判断するステップは、標的組織タイプと検出された組織タイプとが一致するまで繰り返される。
【0006】
いくつかの実施形態では、検出器は分光法ベースのセンサを含み、本方法は、血管内血液を使用する分光法ベースの検知のための方法を含む。本方法は、測定された組織の光に対するスペクトル応答を取り込むことと、スペクトル応答に基づいて、測定された組織のタイプを決定することと、測定された組織のタイプが、標的組織タイプと一致するか否かを判断することとを含むことができる。
【0007】
いくつかの実施形態では、測定された組織の光に対するスペクトル応答を取り込むことは、測定された組織にセンサを介して光を照射し、(例えば、分光計又は画像検出器等の検出器を介して)反射光を検知することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、血管内血液ポンプが患者の血管内に挿入された距離を調整することと、取り込むステップ、決定するステップ及び判断するステップを繰り返すことを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、決定されたタイプが標的組織タイプと一致したときの標示を生成するか、又は他の方法でそのとときを示すことを含むことができる。
【0008】
いくつかの実施形態では、本方法は、血管内血液ポンプから標的組織タイプを有する測定された組織までの距離を決定することを含むことができる。いくつかの方法では、本方法は、血管内血液ポンプから標的組織タイプを有する測定された/検出された組織までの距離が、血管内血液ポンプと患者の血管系との間の目標距離と一致するか否かを判断することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、標的組織タイプを有する測定された組織に対する血管内血液ポンプの位置を調整することと、血管内血液ポンプが標的組織から指示された距離に位置決めされるまで距離決定ステップを繰り返すこととを含むことができる。いくつかの実施形態では、測定された組織のタイプは、第1センサからの情報に基づくことができ、血管内血液ポンプから測定された組織までの距離は、距離センサから等、第2センサからの情報に基づくことができる。
【0009】
いくつかの実施形態では、本方法は、測定された組織の健康状態を決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、測定された組織の健康状態を決定することは、測定された組織の健康状態を、カテゴリのリスト(健康、回復、及び損傷等)からの1つ又は複数のカテゴリに分類することを含むことができる。
【0010】
いくつかの実施形態では、本方法は、決定された測定された組織の健康状態に基づいて治療計画を提案することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、提案すべき治療計画を決定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、治療計画は複数の特性に基づくことができ、複数の特性は、患者の測定された組織及び/又は血液の特性を含む。いくつかの実施形態では、複数の特性は、患者の心臓の特性等、患者の特性を含むことができる。いくつかの実施形態では、測定された組織の健康状態は、評価システムによって決定することができる。評価システムは、既知の組織健康状態を有する組織のスペクトル応答のデータベースを含むことができる。いくつかの実施形態では、測定された組織の健康状態を決定することは、測定された組織のスペクトル応答を、データベース内の既知の組織健康状態を有する組織のスペクトル応答と比較することを含むことができる。いくつかの実施形態では、測定された組織の健康状態を決定することは、スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有するか否かを判断することを含む。
【0011】
いくつかの実施形態では、本方法は、治療計画を提案することを含むことができ、治療計画は、スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有する場合、ある期間の後に組織健康状態を再検査することを含む。
【0012】
いくつかの実施形態では、本方法は、血液(例えば、ポンプ内及び/又はその周囲の血液)の(例えば、光に対する)追加のスペクトル応答を取り込むことと、追加のスペクトル応答に基づいて血液の特性を決定することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、血液の特性は、血液中の少なくとも1つの物質の同定又はタイプ、及び少なくとも1つの物質の濃度を含むことができる。いくつかの実施形態では、血液の特性は(例えば、血液による光の吸収率、透過率及び/又は反射率の決定に基づいて、決定することができる)血液の酸素化であり得る。いくつかの実施形態では、血液の特性は溶血であり得る。いくつかの実施形態では、血液の特性は乳酸アシドーシスであり得る。いくつかの実施形態では、本方法は、追加のスペクトル応答に基づく血液の特性が指定された閾値を上回る(及び/又は下回る)値を有する場合、アラートを生成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、追加のスペクトル応答に基づく血液の複数の特性に基づいて心臓の回復の程度を決定することを含むことができる。
【0013】
いくつかの実施形態では、複数の特性は、血液中の少なくとも1つの物質の同定又は分類、及び少なくとも1つの物質の濃度を含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、心臓の回復の程度に基づいて治療計画を決定し提案することを含むことができる。いくつかの実施形態では、心臓の回復の程度を決定することは、血液中の1つ又は複数の物質の同定又はタイプ及び濃度をデータベースからの値と比較することを含むことができる。
【0014】
血管内血液ポンプで分光法ベースの検知を使用するための方法を提供することができる。本方法は、測定された組織(心臓組織等)の光に対するスペクトル応答を取り込むことと、スペクトル応答に基づいて、測定された組織健康状態を決定することと、測定された組織の健康状態に基づいて治療計画を決定することと、治療計画を提案することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、測定された組織の健康状態を決定することは、評価システムによって決定することができる。いくつかの実施形態では、本方法は、患者の他の成分及び/又は特性を検知及び測定することを含むことができる。いくつかの実施形態では、他の成分及び/又は特性を検知及び測定することは、ポンプ内及び/又はその周囲の血液に光を照射させ、血液中の成分から反射した後の光を検知及び分析することを含むことができる。いくつかの実施形態では、他の成分及び/又は特性を検知及び測定することは、ポンプが使用されている間に溶血を評価することを含む。いくつかの実施形態では、他の成分及び/又は特性を検知及び測定することは、乳酸の濃度を決定することを含む。いくつかの実施形態では、血液中の成分の濃度又は血液の特性の値が閾値を上回る及び/又は下回ると判断された場合にアラートを生成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、選択された治療計画又は治療ステップを自動的にフォーマットし、患者の医療記録に組み込むことを含むことができる。
【0015】
心臓の回復の程度を決定する方法も提供することができる。本方法は、血管内血液ポンプ内及び/又はその周囲の血液に光を照射することと、光に対するスペクトル応答を取り込むことと、血液中の成分及び/又は特性のタイプ及び/又は量を決定することと、血液中の成分及び/又は特性のタイプ及び/又は量に基づいて、心臓の回復の程度を決定することとを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、心臓の回復の決定が1つ又は複数の閾値を上回る及び/又は下回る場合、1つ又は複数の成分の量が1つ又は複数の閾値を上回る及び/又は下回ると判断された場合、血液中の特性が1つ又は複数の閾値を上回る及び/又は下回ると判断された場合、又はそれらの組み合わせの場合、アラートを生成することを含むことができる。いくつかの実施形態では、本方法は、心臓の回復の程度に基づいて治療計画を決定し提案することを含むことができる。
【0016】
さらに他の実施形態では、システムを提供することができる。本システムは、血管内血液ポンプと、血管内血液ポンプの中又は上に配置されたセンサであって、1つ又は複数のプロセッサ、光源、分光計又は画像検出器に連結されたセンサと、非一時的コンピュータ可読記憶媒体とを含むことができる。非一時的コンピュータ可読記憶媒体は、1つ又は複数のプロセッサによって実行されると、システムに、光源からの光を、センサを通して患者の血管系内の測定対象の組織に向けさせ、分光計又は画像検出器を使用して、センサによって取り込まれた測定された組織の光のスペクトル応答を検知させ、スペクトル応答に基づいて、測定された組織のタイプを決定させ、測定された組織のタイプが標的組織タイプと一致するか否かを判断させる命令を含むことができる。
【0017】
いくつかの実施形態では、本システムは、タイプが標的組織タイプと一致するときをユーザに示すように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、血管内血液ポンプから標的組織タイプを有する測定された組織までの距離を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、血管内血液ポンプから標的組織タイプを有する測定された組織までの距離が目標距離と一致するか否かを判断するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、測定された組織の健康状態を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、測定された組織の健康状態をカテゴリのリスト(例えば、健康、回復、及び/又は損傷)からの、1つ又は複数のカテゴリに分類するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、決定された測定された組織の健康状態に基づいて治療計画を決定し提案するように構成することができる。いくつかの実施形態では、治療計画は、複数の特性に基づいて決定することができ、複数の特性は、患者の測定された組織及び/又は血液の特性を含む。いくつかの実施形態では、複数の特性は、患者及び/又は患者の心臓の特性を含むことができる。
【0018】
いくつかの実施形態では、本システムは、1つ又は複数のプロセッサに動作可能に連結されたデータベースを含むことができる。いくつかの実施形態では、本システムは、測定された組織のスペクトル応答を、データベース内の既知の組織健康状態を有する組織のスペクトル応答と比較するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有するか否かを判断するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、スペクトル応答が、閾値を上回る第1の既知の組織健康状態を有する組織の第1スペクトル応答との類似性を有するとともに、閾値を上回る第2の既知の組織健康状態を有する組織の第2スペクトル応答との類似性を有すると判断した後のある期間の後に、組織健康状態を再検査するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、血液の(例えば、光に対する)追加のスペクトル応答を取り込み、追加のスペクトル応答に基づいて血液の特性を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、血液の特性は、血液中の少なくとも1つの物質の同定又はタイプ、及び少なくとも1つの物質の濃度を含むことができる。いくつかの実施形態では、血液の特性は血液の酸素化であり得る。いくつかの実施形態では、本システムは、血液による光の吸収率、透過率及び/又は反射の決定に基づいて血液の酸素化を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、血液の特性は溶血であり得る。いくつかの実施形態では、血液の特性は乳酸アシドーシスであり得る。いくつかの実施形態では、本システムは、追加のスペクトル応答に基づく血液の特性が閾値を下回る値を有する場合、アラートを生成するように構成することができる。
【0019】
いくつかの実施形態では、本システムは、追加のスペクトル応答に基づく血液の複数の特性に基づいて心臓の回復の程度を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、複数の特性は、血液中の少なくとも1つの物質の同定又は分類、及び少なくとも1つの物質の濃度を含む。いくつかの実施形態では、本システムは、心臓の回復の程度に基づいて治療計画を決定し提案するように構成することができる。いくつかの実施形態では、本システムは、血液中の1つ又は複数の物質の同定又はタイプ及び濃度をデータベースからの値と比較することにより、心臓の回復の程度を決定するように構成することができる。
【0020】
図面の簡単な説明
本明細書に組み込まれ、本明細書の一部を構成する添付図面は、本開示の実施形態を例示するものであり、上述した本開示の全体的な説明、及び後述する実施形態の詳細な説明とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】大動脈を通して配置された、大動脈弁を通って左心室内に延在し、一体化された圧力センサを有する、血液ポンプの図である。
図2】組織と相互作用するセンサの一実施形態の側断面図である。
図3】開示する方法の一実施形態のフローチャートである。
図4】開示する方法の別の実施形態のフローチャートである。
図5】開示する方法の別の実施形態のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
詳細な説明
以下の説明及び図面は、本開示の原理を例示している。したがって、本明細書に明示的に記載も図示もしていないが、本開示の原理を具現化するとともにその範囲内に含まれる、さまざまな配置を、当業者であれば考案することができることが、理解されよう。さらに、本明細書に列挙するすべての例は、本開示の原理、及び本技術分野を促進することに本発明者らが寄与する概念を読者が理解するのに役立つための例示的な目的のために意図されており、そうした具体的に列挙する例及び条件に限定されないものとして解釈されるべきである。さらに、本明細書で用いる場合の「又は」という用語は、別段の指示(例えば、「さもなければ」又は「又は代替形態では」)がない限り、非排他的な又はを指す。また、いくつかの実施形態は、1つ又は複数の他の実施形態と組み合わせて新たな実施形態を形成することができるため、本明細書に記載するさまざまな実施形態は、必ずしも相互に排他的ではない。
【0023】
本出願の多数の革新的な教示について、現時点で好ましい例示的な実施形態を特に参照して説明する。しかしながら、この実施形態の類は、本明細書における革新的な教示の多くの有利な使用のわずかな例を提供するに過ぎないことが理解されるべきである。概して、本出願の明細書における記載は、必ずしも、請求項に係るさまざまな実施形態のうちのいずれかを限定するものではない。さらに、いくつかの記載は、いくつかの進歩性のある特徴には適用されるが、他の特徴には適用されない場合がある。本明細書の教示から情報を得た当業者であれば、本開示が他のさまざまな技術分野又は実施形態にも適用可能であることを理解するであろう。
【0024】
さまざまな実施形態は、血管内血液ポンプに関する。既知であるように、血管内血液ポンプは、心臓又は循環系内のある場所から心臓又は循環系内の別の場所に血液を送るために、外科的に又は経皮的に患者の体内に導入することができる。例えば、左心内に展開された場合、血管内血液ポンプは、心臓の左心室から大動脈内に血液をポンピングすることができる。同様に、右心内に展開された場合、血管内血液ポンプは、下大静脈から肺動脈に血液をポンピングすることができる。場合により、こうした血液ポンプは、患者(例えば、患者の血管系)をモニタリングする等の、1つ又は複数のセンサを有することができる。
【0025】
本明細書に記載するように、本発明者らは、体内のいくつかのタイプの組織のタイプ及び特性を測定するために使用される1つ又は複数のセンサを有する、開示する経皮的心臓ポンプ等の医療デバイスの利点を認識した。例えば、本明細書におけるいくつかの実施形態では、血管内血液ポンプは、血管内血液ポンプで又はその近くにおいて、異なるタイプの組織を検出し、識別するように構成された、1つ又は複数のセンサ(例えば、1つ又は複数の分光法ベースのセンサ)を含むことができる。いくつかの実施形態では、分光法ベースの検知を使用して、心臓内及びその周囲の異なるタイプの組織を識別してそうした組織を特徴付けることができる。いくつかの実施形態では、センサは、バイオフォトニックセンサ等の光学センサを含むことができる。いくつかの実施形態では、弾性散乱分光法を使用して、さまざまなタイプの組織を識別することができる。
【0026】
本明細書における1つの態様によれば、開示するセンサ(例えば、分光法ベースのセンサ)を使用して、心臓内の血管内血液ポンプを適切に位置決めすることができる。例えば、1つ又は複数のセンサを使用して、センサ及びポンプの周囲の異なるタイプの組織、例えば、心臓内及びその周囲の組織(例えば、大動脈、心臓壁、弁、静脈等)を決定して、臨床医が、経皮血液ポンプが患者の体内に設置されている際に、所望の組織タイプに対するポンプの適切な位置を決定することができるようにすることができる。そうした例の1つでは、ポンプが所望のタイプの組織に又はその近くに位置決めされるまで、センサを使用して静脈組織、動脈及び心臓組織を識別することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数のセンサ(例えば、分光法ベースのセンサ)からの検知データを使用して、心臓内及びその周囲の異なる組織(例えば、大動脈、静脈、心臓壁)との近接性及び/又は接触を決定し、心臓内のポンプの適切な位置を決定することができる。
【0027】
理解されるように、患者の心臓内に血液ポンプを適切に位置決めするために、血液ポンプ又はセンサにおける又はその近くの組織の所望のタイプ及び/又は近接性を検知及び/又は決定するために、分光法ベースの検知について開示したが、他の実施形態では、他の好適なセンサを使用してもよい。
【0028】
いくつかの実施形態では、検知されたデータを、単独で、又は1つ又は複数の他のセンサから取得されたデータと組み合わせて使用して、ポンプを心臓内に適切に位置決めすることができる。例えば、組織センサ(例えば、分光法ベースのセンサ)からの検知データを、別のセンサから検知された(例えば、ポンプと任意の周囲組織との間の距離を示す)近接データと組み合わせて、所望の組織とポンプとの間の適切な距離を決定することができる。
【0029】
本開示の別の態様によれば、システム及び方法は、心臓の回復を評価及び追跡するために、分光法ベースの検知(又は他の好適なセンサ)を使用することができる。例えば、こうしたセンサを使用して、心臓組織の心臓治癒の進行を経時的に評価及び追跡することができる。いくつかの実施形態では、こうしたセンサを使用して、血管内血液ポンプによる治療及び/又はサポートの適切な持続時間を決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、分光法ベースのセンサを使用して、治療の開始時に、及びサポート中に(例えば、サポート中の異なる時点で)心臓組織の状態を決定することができる。いくつかの実施形態では、心臓組織の状態が、心臓組織の回復を示す心臓組織の閾値に達したとき、検知されたデータを使用して、心臓ポンプによるサポートの離脱を示唆することができる。
【0030】
理解されるように、いくつかの実施形態では、機械学習を使用して、心臓内及びその周囲の異なる組織のタイプ及び状態の両方を決定することができる。例えば、いくつかの実施形態では、センサは、既知の組織サンプルのさまざまなタイプ(例えば、大動脈、静脈、心臓壁)及び/又は心臓組織の異なる段階を検知して、サンプルの知識ベースを得ることができるように構成することができる。こうした実施形態では、検知されたデータは、光に対するスペクトル応答を含むことができる。
【0031】
別の態様によれば、分光法ベースの検知を使用して、血液化学を測定することによって心臓の回復を評価及び追跡することができる。例えば、いくつかの実施形態では、分光法ベースのセンサは、1つ又は複数の成分(例えば、乳酸、赤血球、及び/又は抗凝固剤)及び/又は血液の1つ又は複数の特性(例えば、酸素化及び/又は溶血)を測定するように配置することができる。そうした実施形態では、1つ又は複数の血液成分のレベル及び/又はそうした成分の特性を使用して、心臓の回復の程度を決定することができる。例えば、1つの実施形態では、レベルを用いて筋肉疲労を推測及び/又は検出することができ、これを用いて、心臓の回復の程度を評価することができる。
【0032】
ここで図を参照すると、図1は、患者の心臓内に導入することができるカテーテル10を有する例示的な血管内血液ポンプ1を示す。例えば、この図に示すように、いくつかの実施形態では、ポンプは、下行大動脈11内に逆行して挿入することができる。既知であるように、下行大動脈は大動脈の一部であり、大動脈は、最初に心臓から上行した後に下行し、大動脈弓14を有する。大動脈12の始点には、左心室16を大動脈12に接続する大動脈弁15があり、そこを貫通して、血管内血液ポンプが延在することができる。
【0033】
理解されるように、血液ポンプは、身体の他の好適な部分に挿入することができる。例えば、いくつかの実施形態では、血液ポンプを右心室に挿入することができる。いくつかの実施形態では、血液ポンプを大腿動脈又は頸静脈に挿入することができる。
【0034】
図1に示すように、血管内血液ポンプ1は、回転ポンピングデバイス50を含むことができ、回転ポンピングデバイス50は、カテーテルホース20の遠位端に締結され、そこから軸方向に距離を置いて配置されたポンプセクション52(本明細書では、単に「ポンプ」と呼ぶこともある)を有する。いくつかの実施形態では、血液ポンプは、ポンプセクションに動作可能に連結されたモータセクション51を含むことができる。いくつかの実施形態では、モータセクションは、カテーテルホースの遠位端から遠位側に位置決めすることができる。いくつかの実施形態では、モータセクションは、カテーテルホースから近位側に位置決めすることができ、可撓性駆動シャフトを介してポンプセクションに連結することができる。
【0035】
血管内血液ポンプは、(可撓性フローカニューレであり得る)カニューレ53を含むことができ、カニューレ53は、ポンプセクション52の流入端から遠位方向に突出し、その端部に位置する吸引入口54を有する。吸引入口54の遠位側には、例えば「ピッグテール」として又はJ字型に構成することができる、軟質の可撓性先端部55を設けることができる。カテーテルホース20を通して、ポンピングデバイス50を動作させるために重要である可能性のあるさまざまなライン及びデバイスが延在している。
【0036】
いくつかの実施形態では、ポンプは、光ファイバ28A、28Bを含むことができ、それらは、その近位端で評価デバイス100に取り付けられている。これらの光ファイバ28A、28Bは、それぞれ、光学センサ(圧力センサ等)の一部であってもよく、光学センサのセンサヘッド30、60は、一方では吸引入口54の近くに、他方ではポンプセクション52のハウジング上の外側に位置することができる。図1は、センサヘッド30が血液ポンプの外側にあるように示しているが、センサヘッドは、血液ポンプの内部、好ましくは流入ケージ内に位置することも可能であり、流入ケージは、内部を通して、吸引入口54を画定する内腔を有する。こうした実施形態では、情報(例えば、圧力情報)は、センサヘッド30及び60によって評価デバイス100に送信することができ、評価デバイス100において電気信号に変換し、例えば、表示画面101に表示することができる。
【0037】
また図1に示すように、ポンプは、本明細書に記載するような、分光法ベースの検知のために配置されたセンサ等のセンサ110を含むことができる。この図に示すように、センサ110は、いくつかの実施形態では、入口52ハウジング上に配置することができる。センサは、可撓性先端部55、カニューレ53、及び/又は出口60ハウジングの上等、ポンプの他の好適な部分に位置決めすることもできる。理解されるように、いくつかの実施形態では、ポンプは単一のセンサ(例えば、分光法ベースのセンサ)のみを含むことができる。しかしながら、他の実施形態では、ポンプは、2つ以上のそうしたセンサ(例えば、センサ110と、分光法ベースの検知のために配置された追加のセンサ111との両方)を含むことができる。複数のセンサが使用される場合、センサのうちの2つ以上は、ポンプの同じ部分に(例えば、入口ハウジング上に)及び/又はポンプの異なる部分に(例えば、可撓性先端部及び入口ハウジング上に)位置することができる。
【0038】
いくつかの実施形態では、センサを介して組織120のセクションに光(例えば、白色光)を向けることができ、組織からの反射光は、センサによって検出された後、分光計又は画像検出器等の検出器125によって分析される。別個であってもよく、又は分光計若しくは画像検出器の一部であってもよい光源126は、評価デバイスに連結することができる。理解されるように、反射光の検出及び測定された強度及び波長は、それらが反射する表面の組成及びテクスチャに相関する可能性がある。
【0039】
また図1に示すように、1本又は複数本のファイバ(例えば、第1ファイバ128)が、センサ110と評価デバイス100との間に延在することができる。こうした実施形態では、光ファイバは、(例えば、反射光を分光計又は画像検出器に伝送することによって)分光法検知を可能にすることができる。例えば、いくつかの実施形態では、遠位端は、組織内に向いた開口小面を含むことができ、近位端は、分光計とインタフェースすることができる。
【0040】
図2を参照すると、いくつかの実施形態では、1つ又は複数のファイバ(例えば、第1ファイバ128)を分光計又は画像検出器に動作可能に接続することができ、1つ又は複数の他のファイバ(例えば、第2ファイバ129)を光源に動作可能に接続することができる。いくつかの実施形態では、単一の第1ファイバが分光計又は画像検出器に接続され、複数の第2ファイバが光源に接続される。各ファイバの遠位端112を組織120の一部に向けることができ、第2ファイバからの光131を組織に向けて、光の少なくとも一部が組織の表面から反射するようにすることができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の波長の光(1つ又は複数の可視波長の光(一般に、約400nm~700nm)及び/又は1つ又は複数の赤外波長の光(一般に、約700nm~1mm)等)は、センサに面する組織の第1層142の表面141(これは血液-組織界面と理解することができる)から反射することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の波長の光は、第1層を透過し、センサに面する組織の第2層144の表面143(これは、第1層-第2層界面として理解することができる)から反射することができ、ここで、第1層は、第2層とセンサとの間にある。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の波長は、第1及び第2層を透過し、センサに面する組織の第3層146の表面145(これは、第2層-第3層界面として理解することができる)から反射することができ、ここで、第1及び第2層は、第3層とセンサとの間にある。パワー、波長等に応じて、光は、第3層を越えてさらなる層を透過し続け、第3層を越えた表面から反射する場合がある。いくつかの実施形態では、光は組織と相互作用する前に血液等の体液140を透過する場合があることに留意されたい。
【0041】
表面から反射した後、光源から伝送された光の少なくとも一部は、第1ファイバの遠位端に入射し、その後、検出器(例えば、分光計又は画像検出器)に伝送される。
【0042】
次いで、検出器は試料のスペクトル特性を決定することができる。検出器は、例えば、試料の透過率及び/又は反射率を決定することができる。検出器は、試料の吸光度を決定することができる。
【0043】
本明細書で使用する場合の「スペクトル特性」は、スペクトルにおける広帯域スペクトルプロファイル、ピーク及び吸収帯等の特性を含むことができ、時間的特性を含むことができる。いくつかの実施形態では、試料のスペクトル特性を使用して、試料のタイプ及び特性を決定することができる。図1を参照すると、いくつかの実施形態では、評価デバイスに連結された1つ又は複数のプロセッサ102を使用して、必要な分析を実行することができる。当業者には理解されるように、プロセッサは、さまざまな機能を実行するために必要に応じて、メモリ、非一時的コンピュータ可読記憶媒体、有線又は無線インタフェース等のさまざまな他のコンポーネント103、104に連結することができる。
【0044】
いくつかの実施形態では、試料のタイプ及び特性は、スペクトル値又は他のスペクトル特性を、評価デバイスに連結されたデータベースに存在する可能性のある、既知の組織及び組織特性の知識バンク内のものと比較することによって、決定することができる。いくつかの実施形態では、訓練された機械学習(ML)モデルを使用してスペクトル特性を分類し、それによって試料のタイプ及び特性を決定することができる。例えば、分光計又は画像検出器は、プロセッサに試料のスペクトルプロファイルを送信することができ、その後、プロファイルの特徴を抽出することができ、訓練されたMLモデルを使用して、抽出された特徴に基づいて試料のタイプ及び特徴を決定することができる。
【0045】
いくつかの実施形態では、タイプは、特定の所望のタイプの組織(例えば、組織サンプルが心臓組織であるか否か)の単純な二値判定を含むことができる。いくつかの実施形態では、タイプは、センサが検出している血管のカテゴリ又は位置(例えば、心臓、動脈、静脈等)に関連する決定を含むことができる。いくつかの実施形態では、特性は、1つ又は複数の検出された物質及び/又は検出された物質の1つ又は複数の濃度を含むことができる。いくつかの実施形態では、特性は、検出されたものが健康な組織であるか、回復した組織であるか、又は損傷した組織であるかを含むことができる。
【0046】
いくつかの実施形態では、センサは、組織に関係するのではなく、近赤外(NIR、典型的には約750nm~約1.4μmの波長を含む)光等の赤外(IR、典型的には約750nm~約1mmの波長を含む)光を含む可能性のある光(例えば、白色光、典型的には約380nm~約750nmの波長を含む)を、ポンプ内及び/又はポンプ周囲の血液に照射する(irradiate)/照射する(shine)ことができる。例えば、光は、ポンプが配置されている血管系内の(例えば、心室内の)血液を照射することができる。本明細書で開示するように、透過光及び/又は反射光は、分光計又は画像検出器等の検出器によって検知及び分析することができる。いくつかの実施形態では、検知されたデータを使用して、血液中の成分のタイプ及び量、及び/又は血液の特性を決定することができる。いくつかの実施形態では、この情報を使用して、心臓の回復の程度を決定することができる。
【0047】
分光法ベースの検知をポンプとともに使用する方法を提供することができる。図3は、そうした方法の一実施形態を示すフローチャートを提供する。この図に示すように、方法200は、光に対する第1組織のスペクトル応答を取り込むこと(210)を含むことができる。いくつかの実施形態では、これは、センサを介して第1組織に光を照射することと、(例えば、分光計又は画像検出器を介して)透過光及び/又は反射光を検知することとを含むことができる。
【0048】
次いで、透過光及び/又は反射光(例えば、検知されたデータ)を分析して、第1組織のタイプを決定することができる(220)。本明細書で開示するように、いくつかの実施形態では、これは、検知されたデータをデータベースに格納されたデータと比較することによって行うことができる。本明細書で開示するように、いくつかの実施形態では、これは、検知されたデータから特徴を抽出し、訓練された機械学習(ML)モデルが決定を提供することができるようにすることによって、行うことができる。
【0049】
次に、第1組織タイプを、所望/標的組織タイプと比較することができる。本明細書における目的で、所望の組織タイプは、体内のポンプの所望の位置の組織タイプを含むことができる。その点で、第1組織の決定された組織タイプを使用して、心臓内及びその周囲におけるポンプの位置を決定することができる。例えば、図1を簡単に参照すると、いくつかの実施形態では、第1センサ(例えば、センサ110)からの検知されたデータを使用して、(例えば、その検知されたデータが心臓組織を示す場合)血液ポンプへの入口が左心室内に位置決めされているか否かを決定することができ、第2センサ(例えば、追加のセンサ111)からの検知されたデータを使用して、(例えば、その検知されたデータが大動脈組織を示す場合)出口が大動脈内にあるか否かを判断することができる。
【0050】
いくつかの実施形態では、取り込むステップ210、決定するステップ220、及び比較するステップ230の頻度は、1Hz以上であり得る。すなわち、本システムは、1秒以下で、透過光からスペクトル応答を取り込み、組織のタイプを決定し、所望の組織タイプと比較することができる。いくつかの実施形態では、頻度は1~60Hzであり得る。いくつかの実施形態では、これらのステップは、デバイスが挿入されている間に自動的に行うことができる。いくつかの実施形態では、これらのステップは、臨床医が手動で(例えば、ボタン又はスイッチを押すことなどにより)要求したときに(又は、要求している間に)行ってもよい。さらに他の実施形態では、取り込む頻度は、定時ステップ(例えば、1秒ごと、3秒ごと、5秒ごと、30秒ごと等)を含むことができる。
【0051】
いくつかの実施形態では、第1組織の決定された組織タイプが所望の組織タイプと一致する場合、本方法は、アラートを生成すること(243)を含むことができる。いくつかの実施形態では、アラートは、ポンプが適所にあることを示すことができる。いくつかの実施形態では、アラートは、ポンプを挿入する臨床医が変化に気付くべきであることを示すことができる。例えば、図1を参照すると、血液ポンプは、患者の体内に挿入される際、大動脈弁を通過して左心室に入ることができる。心臓組織が最初に検出されると、血液ポンプがほぼ適所にあることを臨床医に知らせるアラートを生成することができる。又は、異なる例では、システムが大動脈弓を下行大動脈から区別するように構成されている場合、アラートを使用して、ポンプが大動脈弁に近づいていること(及び心臓内の配置)を臨床医に認識させることができる。
【0052】
いくつかの実施形態では、第1組織の決定された組織タイプが、所望の組織タイプ(例えば、ポンプの所望の位置の組織タイプ)と一致する場合、本方法は、臨床医に、ポンプの位置の調整を停止させること(240)を含むことができる。いくつかの実施形態では、こうしたステップは、臨床医がポンプの前進を停止するようにという臨床医へのアラートに応答するものであり得る。その後、臨床医はポンプを適所に固定することができる(242)。
【0053】
いくつかの実施形態では、第1組織の所望の組織タイプが、決定された組織タイプと一致する場合であっても、臨床医は、心臓内のポンプの位置を依然として調整することができる。例えば、ポンプはまた、例えば距離センサであってもよい、1つ又は複数の近接センサ(センサ30、60のうちの1つ等)を含むことができる。理解されるように、他の実施形態では、任意の適切な距離センサを使用することができる。例えば、距離センサはIR距離センサであってもよい。距離センサはまた、超音波距離センサ、レーザ距離センサ(例えば、LiDARセンサ及び/又はLED飛行時間(TOF)センサ)であってもよい。
【0054】
近接センサを使用して、所望の組織タイプに対するポンプの位置を決定する(244)ことができる。こうした実施形態では、所望の組織タイプ及び所望の組織タイプに対するポンプの近接性が満たされたと判断される(248)まで、臨床医は、ポンプを調整する/移動させる(246)ことができ、その後、ポンプを適所に固定する(242)ことができる。
【0055】
いくつかの実施形態では、位置を決定する更新の頻度は1Hz以上であり得る。いくつかの実施形態では、頻度は1~60Hzであり得る。頻度は、時間ベースであってもよい。いくつかの実施形態では、これらのステップは、デバイスが挿入されている間に自動的に行ってもよい。いくつかの実施形態では、これらのステップは、臨床医が手動で(例えば、ボタン又はスイッチを押すこと等により)要求したときに(又は、要求している間に)行ってもよい。
【0056】
決定された組織タイプがポンプの所望の位置のものと一致しない場合、臨床医は、身体内の(例えば、心臓内及びその周囲の)ポンプの位置を調整することができる(250)。上記と同様に、臨床医に、ポンプが所望の位置又はその近くにあることを警告するアラートを提供することができる。
【0057】
理解されるように、決定された組織タイプが所望の組織タイプと一致するまで、検知プロセス及び調整プロセスを数回(又はそれ以上)繰り返すことができる(図3の破線参照)。この点で、センサは、次いで、第2組織の光に対するスペクトル応答を取り込み、第2組織の組織タイプを所望の組織タイプの組織タイプと比較することができる。次いで、第2組織タイプが所望の組織タイプのものであるか否かに応じて、ポンプを移動させる(又は移動させない)場合がある。上記と同様に、臨床医は、所望の組織タイプに到達した後も、(例えば、1つ又は複数の近接センサを使用することにより)組織に対する所望の近接性に到達するまで等、依然としてポンプを移動させることができる。
【0058】
図4は、ポンプを用いて分光法ベースの検知を使用するための別の方法を示す。この図に示すように、方法300は、測定された組織の光に対するスペクトル応答を取り込むこと(210)を含むことができる。いくつかの実施形態では、組織は心臓組織である。
【0059】
次に、本方法は、スペクトル応答に基づいて組織健康状態を決定すること(310)を含むことができる。いくつかの実施形態では、これは、組織が健康な組織であるか、回復した組織であるか、又は損傷した組織であるかを判断することを含むことができる。いくつかの実施形態では、評価システムは、既知の組織健康状態(例えば、健康な組織、回復した組織、及び損傷した組織)を有する組織のスペクトル応答のデータベースを含むことができる。そうした実施形態では、組織健康状態を決定するステップは、測定された組織のスペクトル応答を、その組織タイプのデータベース内の既知の組織のスペクトル応答と比較することを含むことができる。本方法はまた、スペクトル応答から特徴を抽出することと、抽出された特徴を訓練されたMLモデルに与えて、測定された組織の組織健康状態を分類することを含むことができる。
【0060】
上述したように、分光法ベースの検知方法は、患者の他の成分及び/又は特性を検知及び測定すること(320)を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、光をポンプ内及びその周囲の血液に向けることができ、透過光及び/又は反射光が(例えば、分光計又は画像検出器を介して)検知及び分析される。そうした実施形態において、スペクトル読取値を使用して、血液のいくつかの成分及び/又は特性のタイプ及び量(例えば、濃度、絶対量、相対量等)を決定することができる。1つの実施形態では、センサは、(例えば、酸素化血液対非酸素化血液の光の吸収率、透過率、及び/又は反射率を見て比較することにより)血液の酸素化を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、比較された吸収率のみに基づく。いくつかの実施形態では、比較された透過率のみに基づく。いくつかの実施形態では、比較された反射率のみに基づく。
【0061】
センサを使用して、ポンプが使用されている間に溶血を評価することもできる。例えば、いくつかの実施形態では、センサは、破壊された赤血球のスペクトル応答を検出することができる場合がある。例えば、いくつかの実施形態では、スペクトル応答は、全赤血球を示す1つ又は複数の特徴、及び破壊された赤血球を示す1つ又は複数の特徴を含むことができる。いくつかの実施形態では、光ファイバセンサは、ラマン分光法を使用して、血液の化学組成に関する情報を提供するように構成することができる。
【0062】
いくつかの実施形態では、センサは、ポンプが回転を開始する時点又はその前に1つ又は複数のスペクトル読取値を取り込み、評価デバイスは、ポンプが回転を開始した後に取り込まれたスペクトル読取値を最初の読取値と比較して、何らかの変化があったか否かを判断する。このように、本方法は、血液に対する絶対的変化及び/又は相対的変化を提供することができる。
【0063】
さらに他の実施形態では、センサは、乳酸等の筋肉疲労を示す可能性のある1つ又は複数の成分を測定するように構成してもよい。
【0064】
理解されるように、検知されたデータに応じて、評価システム及び/又はディスプレイは、いくつかの値が予め決められた閾値に達した(又はそれを下回った)場合、(例えば、臨床医に)アラートを提供する(325)ように配置することができる。
【0065】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えば、決定された組織の健康状態に基づいて、治療計画を決定すること(330)を含むことができる。そうした決定は、1つ又は複数のプロセッサによって行うことができ、訓練されたMLモデルを含むことができる評価システムによって行うことができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、治療計画は、組織及び/又は血液の他の特性に基づいてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、治療計画は、決定された組織の健康状態、並びに血液中のいくつかの物質(例えば、乳酸等)の濃度、及び/又はスペクトル応答が「完全な」又は「健康な」組織のスペクトル応答と一致する程度に基づいて、決定することができる。さらに理解されるように、組織が回復した組織であると判断されても、患者の他の特性(例えば、年齢、体重、BMI等)及び/又は心臓(例えば、脈拍数、左心室の血圧等)が、治療を継続すべきことを示唆する場合がある。
【0067】
例えば、組織が回復した組織であると判断された場合、評価システムは、臨床医が患者をポンプから離脱させることを検討するよう提案することができる。理解されるように、決定された組織の特性が損傷であると判断された場合、システムは、ポンプによる患者のサポートを維持することを提案することができる。
【0068】
いくつかの実施形態では、本方法は、例えばディスプレイを介して、臨床医等に、決定された治療計画を提案すること(340)を含むことができる。臨床医は、提案された計画を受け入れるか又は拒否することができる。いくつかの実施形態では、複数の治療計画を提案することができ、臨床医は計画を選択することができる。いくつかの実施形態では、所定の治療ステップを提案することができ、臨床医は1つ又は複数の治療ステップを選択することができる。
【0069】
いくつかの実施形態では、その後、受け入れられた治療計画及び/又は治療ステップを、自動的にフォーマットして、患者の医療記録に組み込む(345)ことができ、この医療記録は、評価デバイスが動作可能に連結された1つ又は複数のデータベースに格納することができる。
【0070】
上記では、単一の定義された組織健康状態を有する組織として記載しているが、検査された心臓組織は、2つ以上の組織健康状態(例えば、回復した組織及び損傷した組織の両方)に対応するスペクトル応答を有する可能性があることが理解されよう。上記と同様に、スペクトル応答が2つ以上の組織健康状態を有する組織に対応する場合では、評価システムは、ある一定期間後に再検査して組織健康状態を再度チェックするという治療計画を提案するように構成してもよく、又はある一定期間後に自動的に再検査するように構成してもよい。
【0071】
図5は、こうした測定値を使用して心臓の回復の程度を決定し、治療計画で提案することができる方法を示す。例えば、この図に示すように、方法400は、ポンプ内/周囲の血液に光(例えば、可視波長、NIR波長等であり得る、本明細書で開示するような光)を照射すること(410)と、及び光に対するスペクトル応答を取り込むこと(420)とを含むことができる。
【0072】
本方法は、本明細書で開示するように、血液中の成分及び/又は特性のタイプ及び/又は量を決定すること(430)を含むことができる。いくつかの実施形態では、この決定は、スペクトル応答に基づくことができる。例えば、スペクトル応答に基づいて(例えば、データベース内のプロファイルと比較し、及び/又は訓練されたMLモデルを使用してそうした決定を行うことにより)、所定の成分の濃度、溶血の程度、及び/又は血液酸素化を決定すること。いくつかの実施形態では、他のセンサ(例えば、圧力センサ、pHセンサ、距離センサ等)から受信したデータに基づいて、1つ又は複数の決定を行うことができる。
【0073】
本方法は、成分及び/又は特性に基づいて心臓の回復の程度を決定すること(440)も含むことができる。例えば、これは、血液化学に基づいて(例えば、血液中の化学物質等のいくつかの成分の存在又は量に基づいて)心臓の回復の程度を決定することを含むことができる。
【0074】
本方法は、いくつかの条件が満たされた場合にアラートを生成すること(450)も含むことができる。いくつかの実施形態では、心臓の回復の決定が1つ又は複数の閾値を上回る(及び/又は下回る)場合に、アラートを生成することができる。いくつかの実施形態では、1つ又は複数の成分の量が1つ又は複数の閾値を上回る(及び/又は下回る)と判断された場合に、アラートを生成することができる。いくつかの実施形態では、血液中の特性が1つ又は複数の閾値を上回る(及び/又は下回る)と判断された場合に、アラートが生成することができる。
【0075】
最後に、本方法は、治療計画を決定すること(460)と、提案すること(470)とを含むことができる。こうした計画は、本明細書で開示するように、評価システムを介して決定することができる。決定は、心臓の回復の程度によって決まる可能性がある。例示的な実施形態では、本方法は、分光法ベースのセンサを介して血液に光を照射することと、光に対するスペクトル応答を取り込んで分析することと、血液中の乳酸の量を決定することと、血液中の乳酸の量に基づいて心臓の回復の程度を推測することと、乳酸のレベルが回復した心臓のレベルに対応する場合、患者を心臓ポンプから離脱させる等の治療計画を提案することとを含むことができる。
【0076】
理解されるように、いくつかの実施形態では、評価システムは、心臓の回復の異なる段階、及び各段階に対応することができる異なる成分のレベルを含む、データベースを含むことができる。いくつかの実施形態では、心臓の回復の段階を決定することは、血液中のさまざまな成分のタイプ及び量をデータベース内のものと比較することを含むことができる。いくつかの実施形態では、2つの段階(例えば、損傷した段階及び回復した段階)があり得る。他の実施形態では、異なるエンドポイントに基づくことができる、3つ以上の段階があってもよい。例えば、1つの実施形態では、段階は回復エンドポイント(例えば、重傷、中程度の損傷、軽傷、及び回復)を使用してもよく、別の実施形態では、段階は手術エンドポイント(例えば、手術直後、短期回復期間、長期回復期間、回復後)を使用してもよい。いくつかの実施形態では、これらのレベルは、心臓の回復の異なる段階に対応する可能性がある、筋肉疲労の異なるレベルに対応する場合がある。いくつかの実施形態では、訓練されたMLモデルを使用して、受信したセンサデータからの抽出された特徴に基づいて心臓の回復の段階を決定することができる。決定されたレベルに応じて、評価システムは治療計画を提案することができる。
【0077】
本開示の実施形態について、同様の参照番号が類似するか又は同一の要素を識別する図を参照して、詳細に説明している。開示する実施形態は、さまざまな形態で具体化することができる本開示の単なる例であることが理解されるべきである。周知の機能又は構造については、不必要な詳細で本開示が不明瞭になるのを避けるために、詳細には説明していない。したがって、本明細書で開示する所定の構造的及び機能的な詳細は、限定的なものとして解釈されるべきではなく、単に特許請求の範囲の基礎として、且つ実質的に任意の適切に詳述した構造において本開示をさまざまに採用することを当業者に教示するための代表的な基礎として、解釈されるべきである。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】