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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ポリヌクレオチドを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C07H 21/04 20060101AFI20241108BHJP
   C12N 15/11 20060101ALI20241108BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20241108BHJP
   C07H 1/00 20060101ALN20241108BHJP
   C07H 19/073 20060101ALN20241108BHJP
【FI】
C07H21/04 A
C12N15/11 Z ZNA
C07H21/02
C07H1/00
C07H19/073
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532689
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-24
(86)【国際出願番号】 EP2022083664
(87)【国際公開番号】W WO2023099471
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】21211482.1
(32)【優先日】2021-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524203738
【氏名又は名称】エイ・ティ・ディ・バイオ・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ATDBIO LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブラウン,トム
(72)【発明者】
【氏名】コックス,オーウェン
【テーマコード(参考)】
4C057
【Fターム(参考)】
4C057AA20
4C057AA21
4C057DD03
4C057LL11
4C057LL19
4C057MM01
4C057MM04
(57)【要約】
本明細書では、ポリヌクレオチドまたはその類縁体もしくは誘導体を製造する方法であって、本明細書に規定の式(I)の化合物であり、(II)で固体支持体と結合している、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を準備することと、(ii)1つまたは複数の追加のヌクレオシド単位、ヌクレオチド単位および/またはそれらの類縁体もしくは誘導体を導入することにより、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の鎖長を延長することと、(iii)式(I)の化合物を光照射することにより、固体支持体から得られたポリヌクレオチドを切断することとを含む、方法が提供される。さらに、関連化合物、使用、および上記方法により得られるポリヌクレオチドも提供される。
【化1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリヌクレオチドまたはその類縁体もしくは誘導体を製造する方法であって、
(i)(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体
【化1】

(式中、
- (N)はヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であり、
- Qは酸素原子または硫黄原子であり、
- Rはそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、C~Cハロアルキルおよびハロゲン基から選択され、
- Rはメチル、エチルまたはC~Cハロアルキルであり、
- (A)は2-ニトロベンジル基であり、前記2-ニトロベンジル基は、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから独立して選択される1つ、2つまたは3つの基で置換されていてもよく、ここで、Rはそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC~Cアルキルおよび置換されていてもよいC~Cアルコキシルから選択され、Rはそれぞれ独立して、水素および置換されていてもよいC~Cアルキル基から選択される)
を準備することと、
(ii)1つまたは複数の追加のヌクレオシド単位、ヌクレオチド単位および/またはそれらの類縁体もしくは誘導体を導入することにより、前記支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の鎖長を延長することと、
(iii)式(I)の化合物を光照射することにより、得られたポリヌクレオチドを前記固体支持体から切断することと
を含む、方法。
【請求項2】
- Qが酸素原子であり、ならびに/または
- Rがそれぞれ独立して、水素、メチル、Cフルオロアルキルおよびフッ素から選択され、好ましくは、Rがそれぞれ水素であり、ならびに/または
- Rがメチル、エチルもしくはC~Cフルオロアルキルであり、好ましくは、Rがメチルであり、ならびに/または
- (A)が連結基と共有結合により結合しており、前記連結基は共有結合により前記固体支持体と結合している、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(A)が式(A-1)または式(A-2)で表される、請求項2に記載の方法
【化2】

(式中、
- R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択され、
好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、フッ素、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択され、より好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ水素またはメトキシであり、ここで、RおよびRは請求項1に規定のとおりであり、
- Lは前記連結基であり、
- Zは前記固体支持体である)。
【請求項4】
前記連結基が、C~C20アルキレン基、C~C20アルケニレン基、C~C20アルキニレン基および/またはヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを含み、前記アルキレン基、前記アルケニレン基または前記アルキニレン基が、ヘテロ原子;亜リン酸基;リン酸基;カルボニル基;C~C10アリール基;C~C10カルボシクリル基;5~10員のヘテロアリール基;および5~10員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基から選択される1つまたは複数の基で中断および/または末端化されていてもよく、前記連結基がさらに置換されていてもよく、
好ましくは、前記連結基が、ホスホロアミダイト基を介して前記固体支持体と結合している、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
(i)前記固体支持体がガラス、シリカ、セラミック、もしくはポリマー樹脂を含有する、および/または(ii)前記固体支持体が、直径が約10~約1000μmである粒子を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
(N)が、前記ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の3’位または5’位で、式(I)の隣り合う酸素原子と繋がっている、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
(N)が式(N-1)または式(N-2)で表される、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法
【化3】

(式中、
- Xは酸素原子、窒素原子、硫黄原子または-C(R)-であり、
- RおよびRDRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NRおよび-C(O)Rから選択され、ここで、RおよびRは請求項1に規定のとおりであり、RDRが-ORである場合、前記R基、および、前記R基のうちの1つが一緒に繋がって架橋モチーフを形成していてもよく、
- Rは水素、ヒドロキシル保護基、ホスホリル基またはその塩もしくは酸、ジホスホリル基(-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、トリホスホリル基(-P(O )-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、またはヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのリン系結合であり、
- Rは置換されていてもよい天然核酸塩基もしくは非天然核酸塩基またはその誘導体もしくは類縁体であり、
- 波線は、式(I)の化合物との結合点を示しており、
ここでより好ましくは、
- Xは、酸素原子であり、ならびに/または
- Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、C~CハロアルキルおよびC~Cアルコキシルから選択され;好ましくは、Rはそれぞれ水素であり、ならびに/または
- RDRは水素もしくはハロゲンであり、好ましくは、RDRは水素であり、ならびに/または
- Rは水素もしくはヒドロキシル保護基である)。
【請求項8】
工程(i)が、
(a)式(Ia)の化合物
【化4】

(式中、Q、R、Rおよび(A)は、請求項1から9のいずれかに規定のとおりであり、RはC~Cアルキルである)
を準備することと、
(b)前記式(Ia)の化合物を、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であって、好ましくは請求項7に規定の式(N-1)または式(N-2)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と反応させることにより、式(I)の化合物を形成することと
を含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程(i)が、式(I)または式(Ia)の化合物
【化5】

(式中、(N)、Q、R、R、Rおよび(A)は、先行する請求項のいずれか1項に規定のとおりである)
を固体支持体と結合させることを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程(ii)で前記鎖長を延長することが、
前記支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体をヌクレオシドまたはその誘導体と接触させることにより、リン系結合を形成する工程
を1回または複数回実施することを含み、
工程(ii)で前記鎖長を延長することが、
(a)(i)3’位にホスホロアミダイト基、および5’位にヒドロキシル保護基;または(ii)5’位にホスホロアミダイト基、および3’位にヒドロキシル保護基を有するヌクレオシドを準備する工程と、
(b)工程(a)のヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化させる工程と、
(c)前記支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体を、活性化した前記ヌクレオシドホスホロアミダイトと接触させることにより亜リン酸トリエステル結合を形成する工程と、
(d)前記亜リン酸トリエステル結合を酸化させてホスホトリエステル結合を形成する工程と、
(e)得られた前記支持体と結合したポリヌクレオチドの末端ヌクレオシドから前記ヒドロキシル保護基を除去する工程と
の前記工程(a)~(e)を1回または複数回実施することを好ましくは含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、前記支持体と結合したポリヌクレオチドを脱保護する1つまたは複数の工程をさらに含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
工程(iii)が、波長が約300~約500nmであるUV光を使用して式(I)の前記化合物を光照射することを含む、先行する請求項のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体
【化6】

(式中、Q、R、Rおよび(A)は請求項1から5のいずれか1項に規定のとおりであり、
(N)は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であり、好ましくは請求項7に規定のとおりの式(N-1)または式(N-2)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体である)。
【請求項14】
式(I)の化合物
【化7】

(式中、Q、R、Rおよび(A)は請求項1から5のいずれか1項に規定のとおりであり、
(N)は、請求項7に規定のとおりの式(N-1)または式(N-2)で表される)。
【請求項15】
(A)で固体支持体と結合している、支持体と結合した式(Ia)の化合物
【化8】

(式中、Q、R、Rおよび(A)は先行する請求項のいずれか1項に規定のとおりである)。
【請求項16】
請求項13に規定の支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を製造する方法であって、
(a)請求項15に規定の(A)で固体支持体と結合している式(Ia)の化合物を準備することと、
(b)式(Ia)の前記化合物をヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と反応させて、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を製造することと
を含む、方法。
【請求項17】
固相ポリヌクレオチド合成のための固体支持体カラムであって、(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を含む、固体支持体カラム
【化9】

(式中、(N)、Q、R、Rおよび(A)は、先行する請求項のいずれか1項に規定のとおりである)。
【請求項18】
ポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体を合成するための、請求項13に規定の支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体、請求項14に規定の式(I)の化合物、または請求項15に規定の式(Ia)の化合物の使用。
【請求項19】
請求項1から12のいずれか1項に規定の方法により得られるポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
発明の分野
本発明は、ポリヌクレオチドまたはその類縁体もしくは誘導体を製造する方法に関する。本発明はまた、上記方法で使用するための化合物および上記ポリヌクレオチドを使用してシーケンシングする方法に関する。本発明は、固相ポリヌクレオチド用の上記化合物を含む固体支持体カラム、ポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体を合成するための上記化合物の使用、ならびに、上記方法により得られるポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体にさらに関する。
【0002】
発明の背景
ポリヌクレオチドはヌクレオチドモノマー単位を含むバイオポリマーであり、治療、診断、および研究を含む多くの様々な分野での用途を有する。ヌクレオチド配列がカスタマイズされたポリヌクレオチドは、in vitroで、例えば、溶液相合成法または固相合成法を使用して合成することができる。
【0003】
固相化学合成法は、1960年代に開発され、溶液相合成法よりも多くの利点を有する。例えば、過剰量の溶液相試薬を使用して反応を素早く完了させることができ、不純物および過剰量の試薬を完全に洗浄することで、反応工程間の精製を必要とせずに成長しているポリヌクレオチドの容易な単離を容易化することができ、また、プロセスは、コンピューターで制御された固相合成装置でのオートメーションに適している。
【0004】
固相ポリヌクレオチド合成では通常、ポリヌクレオチドまたは初期ヌクレオシド/ヌクレオチドモノマーが固体支持体と結合し、合成が固体支持体上で実施されるように、一連の反応を実施して支持体と結合したポリヌクレオチド/初期モノマーの鎖長を延長させる。固体支持体は通常、合成カラム内のフィルターとフィルターの間に固定されている。溶液相試薬および溶媒は上記カラム内を自由に流通しうる一方で、固体支持体およびそれに結合した化合物は所定の位置に固定されている。ポリヌクレオチドまたは初期ヌクレオシド/ヌクレオチドモノマーは通常、リンカーを使用して固体支持体と結合している。
【0005】
固相ポリヌクレオチド合成で使用するための適切なリンカーの設計は課題である。例えば、リンカーは、ポリヌクレオチド合成中に使用される反応条件下では安定でなければならないが、遊離のポリヌクレオチド生成物を得るためには、ポリヌクレオチド合成が一旦完了した際に特定の条件下で切断できるものでなければならない。リンカーはまた、制御された合成を容易化するために、ポリヌクレオチドの所望の位置に結合するようなものである必要がある。
【0006】
固相ポリヌクレオチド合成を目的とする、固体支持体をポリヌクレオチドまたは初期ヌクレオシド/ヌクレオチドモノマーと結合させるために使用されてきた既知の化学リンカーがいくつか存在する。
【0007】
最も一般的には、スクシニル系リンカーが使用される。スクシニル系リンカーの例を下記に示す。
【0008】
【化1】
【0009】
スクシニルリンカーは、さらなる反応工程を全く必要とすることなく加水分解により切断され遊離のヌクレオチドを脱離させうる。しかし、スクシニル切断の反応条件は比較的過酷であり、通常、濃縮水酸化アンモニウムの使用を要する。過酷な反応条件の使用は、合成反応に要する装置のセットアップをより複雑にし、また、合成可能なポリヌクレオチドの範囲を限定しうる。例えば、所望の修飾を構成する化学基が、ポリマー合成全体で使用される試薬による切断または修飾を受けやすい場合に、合成したポリヌクレオチド中に上記修飾を含めることができない可能性がある(例えば具体的には修飾されたヌクレオチドモノマー)。
【0010】
さらに、現実として、スクシニルリンカーを使用する場合、最初のヌクレオシド/ヌクレオチドモノマーは通常、固体支持体と事前に結合している必要がある。これは、異なる合成カラムが通常、初期ヌクレオチドモノマーに望ましい核酸塩基の素性に応じて要求されるという欠点を有する。通常、異なるカラムは、異なるモノマーのそれぞれに要求されるため、上記カラムは通常、天然核酸塩基(例えばアデニン(A)、シトシン(C)、グアニン(G)またはチミン(T))および狭い範囲の修飾された誘導体)のみにおいて利用可能である。しかし、非天然核酸塩基に望まれる好適なカラムが容易に入手できない場合は、上記方法で合成することができるポリヌクレオチドの範囲を限定してしまう。
【0011】
この懸念事項に対処するために、固体支持体上で合成された後、任意の所望のヌクレオシド/ヌクレオチドモノマーと結合できるリンカーを提供する試みがなされてきた。そのようなポリヌクレオチド合成用の「ユニバーサルな支持体」では、ポリヌクレオチドの最初のモノマーは通常、最初のカップリング反応として加えられ、事前に結合するものではない。ユニバーサルリンカーは通常、ポリヌクレオチド鎖に組み込まれる最初のヌクレオチドを、リン酸を介して支持体と結合させることにより機能する。
【0012】
ユニバーサルサポートの既知のリンカーの例を、結合した最初のヌクレオチドと共に下記に示す:
【0013】
【化2】
【0014】
DMTで保護化されたOH官能基を有する上記基は、ポリマー鎖中に組み込まれる最初のヌクレオチドとの反応のために、上記に示されるように、例えばアミド結合を介して固体支持体と結合することができる。一旦ポリマー合成が完了すると、エステル加水分解によりリンカーの歪みのある縮合環部分が開放され、その後、初期ヌクレオチドのリン酸基での分子内反応によりポリヌクレオチドが脱離する。
【0015】
上記ユニバーサルリンカーが、合成したポリヌクレオチド中に初期ヌクレオチドとしてある範囲のヌクレオチドを組み込むことを可能とする場合であっても、重大な問題が残る。例えば、遊離ポリヌクレオチド生成物を製造するためには、比較的過酷な条件下で多くの反応工程が通常必要とされる。特に、リン酸基の加水分解は通常、リン酸部分をポリヌクレオチドの末端糖環と結合したままとし、それは通常、下流の酵素反応に適合せず、対応する位置に末端ヒドロキシル基を通常必要とする。これは、リン酸基を切断するためには通常、さらなる試薬を用いて合成したポリヌクレオチドを処理する必要があることを意味し、追加の工程、さらなるコスト、および追加の精製工程の必要性を追加する。さらに、切断したリンカーが溶液相副生成物として生成する場合、所望のポリヌクレオチド生成物はこの副生成物から単離されなければならない。これらの懸念事項に対処するリンカーが必要である。
【0016】
光励起下の切断を経る光切断性リンカー、または「感光性」リンカーが知られている。光切断性リンカーは、比較的温和な切断条件の観点で、ポリヌクレオチド生成物の構造を通常変形させることがなく、ポリヌクレオチド合成中に使用される通常の反応条件とオルトゴナル(orthogonal)であるという利点を有する。
【0017】
先行の試みでは、初期ヌクレオチドを支持体と結合させるためにカルボキシル基を含む光切断性リンカーに焦点が当てられていた。上記リンカーは通常、エステル基またはカーボネート基の使用に焦点が当てられていた。既知の光切断性リンカーは、下記を含む:
【0018】
【化3】
【0019】
上記基が光化学的に切断可能である一方で、重大な問題が残る。例えば、上記のスクシネート系リンカー等のジエステル含有リンカー(上記で描かれた2つのリンカーのうちの1番目)は、リンカーの光切断が通常、単一の反応工程では遊離ヌクレオチドを生成せず、むしろスクシニル官能化ヌクレオチドを生成するという欠点を有する。同様に、上記で描かれた2つのリンカーのうちの2番目等のカーボネート含有リンカーもカーボネート官能化ヌクレオチドを生成する。その後、遊離(ポリ)ヌクレオチドを得るためにはさらなる反応工程が必要となり、複雑さに、合成過程で必要とされるコストと時間を追加する。スクシニル官能化ヌクレオチドまたはカーボネート官能化ヌクレオチドからスクシニル基またはカーボネート基を除去するためには過酷な反応条件が要求される。結果として、過酷な反応条件の使用が合成反応に必要とされる装置セットアップの複雑性を高め、また、合成可能なポリヌクレオチドの範囲を限定しうるため、上記で描かれた光切断性リンカーは、上記のスクシニル系リンカーと同様の欠点を有する。例えば、スクシニル基またはカーボネート基を除去する間に核酸塩基の保護基が少なくとも部分的に除去されうるため、保護化された核酸塩基を有する(ポリ)ヌクレオチドを生成することができない可能性がある。
【0020】
さらに、上記で描かれたもの等の光切断性リンカーで使用されるエステルモチーフおよびカーボネートモチーフの両方は、通常の加水分解条件下では安定ではなく、以降で説明するとおり、問題がある。
【0021】
より詳細には、ポリヌクレオチド合成中に保護基を使用して合成に関与するヌクレオシド、ヌクレオチドおよび/またはポリヌクレオチドに存在する各種化学基を保護することが一般的である。特に、保護基は、多くの場合、核酸塩基および/またはリン系結合に存在する。これらの保護基は通常、加水分解条件下で除去される。
【0022】
多くの場合、ポリヌクレオチドがその固体支持体から切断される前に、すなわちポリヌクレオチドが支持体に保持される間に、合成したポリヌクレオチドの核酸塩基および/またはホスホジエステル主鎖に存在する保護基を除去することが望ましい。これは、脱保護反応の副生成物、例えば除去された保護基等を完全に洗浄することを容易とする。しかし、上記で説明したとおり、エステル架橋系またはカーボネート架橋系の光切断性リンカーは、合成したポリヌクレオチドから保護基を除去するために使用される通常の脱保護条件下では安定ではない。これは、合成過程中に問題を生じさせる。脱保護が光切断前に実施される場合、ポリヌクレオチド生成物が必然的に支持体から切断され、その場合は脱保護生成物から精製することを要するため、リンカーの光切断可能な性質がほとんど不要となる。光切断が脱保護工程の前に(実際には必要に応じて)実施される場合、切断したポリヌクレオチドの下流でのプロセッシングが依然必要であり、切断した保護基からの所望のポリヌクレオチドの溶液ベースの精製が依然必要である。そのため、この領域での改良の必要がある。
【0023】
もう1つの懸念事項は、ヌクレオチドのサッカライド環が通常、複数のヒドロキシル基置換基を有することである。DNAヌクレオチドでは、3’位および5’位にヒドロキシル基が存在するのに対し、RNAヌクレオチドでは、2’位、3’位および5’位にヒドロキシル基が存在する。固体状態でのポリヌクレオチド合成では、通常、ポリヌクレオチド/初期モノマー単位がその3’ヒドロキシル基を介して固体支持体と結合することが好ましい。理由としては、ポリヌクレオチド合成が3’から5’方向または5’から3’方向のいずれによっても実施されうるものの、多くの場合、3’から5’方向にポリヌクレオチド合成を実施することが好ましいためである。3’から5’方向へのポリヌクレオチド合成が、ある場合に好ましい1つの理由は、3’から5’方向への合成に関連するモノマー単位が安価である傾向にあるためである。もう1つの理由は、容易に入手可能なモノマー単位の多様性が、5’から3’方向への合成よりも3’から5’方向への合成の方が高いためである。例えば、3’から5’方向への合成に好適な多種多様の非天然モノマー、修飾されたモノマーが市販されているが、これは5’から3’方向への合成の場合には該当しない。いくつかの既知のリンカーの欠点は、ヌクレオチドと固体支持体との間のリンカーの合成中に、かなりの量のリンカーが、3’ヒドロキシル基と優先的に結合する代わりに、2’ヒドロキシル基および/または5’ヒドロキシル基と結合する可能性があることである。同様に、この領域での改良の必要がある。
【0024】
光切断性基は、RNA合成、例えば鎖合成を確実とするために合成した鎖の末端残基に検出可能な標識を一時的に結合させるためにも使用されてきた。例えば、アルキルジアミドリンカーと共役したニトロベンゼン基とのアセタール架橋系の光切断性リンカーは、鎖合成を確実に成功させるために、ストレプトアビジン官能化ビーズと結合させるために、RNAポリマーの末端2’-OH基をビオチンと選択的に連結させるために記載されてきた。
【0025】
最初の(ポリ)ヌクレオチドを2番目の(ポリ)ヌクレオチドと結合させる化学リンカーの使用も知られている。リンカーが一方の(ポリ)ヌクレオチドの3’末端および他方の(ポリ)ヌクレオチドの5’末端と結合している場合、全体構造は、中断リンカー単位を有する単一のポリヌクレオチド鎖として捉えることができる。中断リンカー単位が感光性である場合、光励起を使用してインサイチュでポリヌクレオチド鎖を2つの別々の(ポリ)ヌクレオチド成分に切断する手法を提供する。そのようなリンカーは「ケージドストランドブレーカー(caged strand breakers)」とも呼称される。
【0026】
既知のケージドストランドブレーカーの一例は「caged strand breaker II CEP」である。「caged strand breaker II CEP」のその結合していない形態の構造を下記に示す:
【0027】
【化4】
【0028】
このリンカーがポリヌクレオチド合成中にポリヌクレオチド配列に導入される場合、下記に示される構造を有する感光性中断リンカーを有するポリヌクレオチド鎖を製造することが可能である:
【0029】
【化5】
【0030】
「caged strand breaker II CEP」等のリンカーがポリヌクレオチド鎖のインサイチュの光化学切断を可能とする一方で、大きな問題が残る。
【0031】
例えば、最初の3’ヌクレオチドを「caged strand breaker II CEP」に導入するためにホスホロアミダイトヌクレオチドモノマーを使用することは非現実的である可能性がある。理由としては、得られるリン酸ジエステル結合がアニオン性であるため、「caged strand breaker II CEP」リンカーの光切断中の除去に対する反応性が低いためである。したがって、メチルヌクレオチドホスホンアミダイトモノマーを使用して最初の3’ヌクレオチドを導入することが必須である可能性があり、それは中性電荷のメチルホスホネート結合をもたらす。
【0032】
ホスホロアミダイトモノマーは、メチルホスホンアミダイトモノマーよりもはるかに安価であり、非天然ヌクレオチドホスホロアミダイトモノマーおよび修飾されたヌクレオチドホスホロアミダイトモノマーを含むはるかに広範囲のホスホロアミダイトモノマーが市販されている。したがって、最初の3’ヌクレオチドをリンカーに導入するためにはホスホロアミダイトモノマーを使用することが可能であることが望ましく、この領域での改良の必要がある。
【0033】
このように、(i)ポリヌクレオチド合成で通常使用される反応条件にオルトゴナルで温和な条件下で切断されえ、(ii)単一の反応工程で切断されて、最小限の反応副生成物で遊離ポリヌクレオチドを提供し、(iii)合成したポリヌクレオチドを脱保護するために通常使用される反応条件下で安定であり、(iv)ポリヌクレオチド/モノマー単位の3’ヒドロキシル基と優先的に結合する、ポリヌクレオチドまたはそのモノマー単位を固体支持体と結合させるリンカーを提供することが望ましい。
【0034】
最初のポリヌクレオチドを、ホスホロアミダイトモノマーと適合する2番目のポリヌクレオチドと結合させるリンカーを提供することも望ましい。
【0035】
本発明は、これらの懸念事項のいくつかまたは全てに対処することを目的とする。
概要
本発明者らは、固相ポリヌクレオチド合成での使用に好適な、優れた光切断性を有するヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドならびにそれらの誘導体および類縁体としての式(I)の化合物を開発した。特に、これらの化合物に存在するリンカーは通常、上記で説明された望ましい利点(i)~(iv)のそれぞれを有する。
【0036】
したがって、本発明は、ポリヌクレオチドまたはその類縁体もしくは誘導体を製造する方法であって、
(i)(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体
【0037】
【化6】
【0038】
(式中、
- (N)はヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であり、
- Qは酸素原子または硫黄原子であり、
- Rはそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、C~Cハロアルキルおよびハロゲン基から選択され、
- Rはメチル、エチルまたはC~Cハロアルキルであり、
- (A)は2-ニトロベンジル基であり、前記2-ニトロベンジル基は、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから独立して選択される1つ、2つまたは3つの基で置換されていてもよく、ここで、Rはそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC~Cアルキルおよび置換されていてもよいC~Cアルコキシルから選択され、Rはそれぞれ独立して、水素および置換されていてもよいC~Cアルキル基から選択される)を準備することと、
(ii)1つまたは複数の追加のヌクレオシド単位、ヌクレオチド単位および/またはそれらの類縁体もしくは誘導体を導入することにより、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の鎖長を延長することと、
(iii)式(I)の化合物を光照射することにより、得られたポリヌクレオチドを固体支持体から切断することと
を含む、方法を提供する。
【0039】
いくつかの実施形態では、Qは酸素原子であり、ならびに/またはRはそれぞれ独立して、水素、メチル、Cフルオロアルキルおよびフッ素から選択され、好ましくは、Rはそれぞれ水素であり、ならびに/またはRはメチル、エチルもしくはC~Cフルオロアルキルであり、好ましくは、Rはメチルである。
【0040】
いくつかの実施形態では、(A)は、連結基と共有結合により結合しており、連結基は共有結合により固体支持体と結合している。
【0041】
いくつかの実施形態では、(A)は式(A-1)または式(A-2)で表される
【0042】
【化7】
【0043】
(式中、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択され、ここで、RおよびRは本明細書に規定のとおりであり、Lは連結基であり、Zは固体支持体である)。
【0044】
いくつかの実施形態では、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、フッ素、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択され、RおよびRは本明細書に規定のとおりであり、好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ水素またはメトキシである。
【0045】
いくつかの実施形態では、連結基は、C~C20アルキレン基、C~C20アルケニレン基、C~C20アルキニレン基および/またはヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを含み、前記アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基は、ヘテロ原子;亜リン酸基;リン酸基;カルボニル基;C~C10アリール基;C~C10カルボシクリル基;5~10員のヘテロアリール基;および5~10員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基から選択される1つまたは複数の基で中断および/または末端化されていてもよく、連結基はさらに置換されていてもよい。いくつかの実施形態では、連結基は、ホスホロアミダイト基を介して固体支持体と結合している。
【0046】
いくつかの実施形態では、固体支持体は、直径が約10~約1000μmである粒子を含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、固体支持体はガラス、シリカ、セラミック、またはポリマー樹脂を含む。
【0048】
いくつかの実施形態では、(N)は、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の3’位または5’位で、式(I)の隣り合う酸素原子と繋がっている。
【0049】
いくつかの実施形態では、(N)は式(N-1)または式(N-2)で表される
【0050】
【化8】
【0051】
(式中、Xは酸素原子、窒素原子、硫黄原子または-C(R)-であり;RおよびRDRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NRおよび-C(O)Rから選択され、ここで、RおよびRは本明細書に規定のとおりであり、RDRが-ORである場合、R基、および、R基のうちの1つが一緒に繋がって架橋モチーフを形成していてもよく、Rは水素、ヒドロキシル保護基、ホスホリル基またはその塩もしくは酸、ジホスホリル基(-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、トリホスホリル基(-P(O )-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、または、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのリン系結合であり、Rは置換されていてもよい天然核酸塩基もしくは非天然核酸塩基またはその誘導体もしくは類縁体であり、波線は、式(I)の化合物との結合点を示している)。
【0052】
いくつかの実施形態では、Xは、酸素原子であり、ならびに/またはRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、C~CハロアルキルおよびC~Cアルコキシルから選択され、好ましくは、Rはそれぞれ水素であり、ならびに/またはRDRは水素もしくはハロゲンであり、好ましくは、RDRは水素であり、ならびに/またはRは水素もしくはヒドロキシル保護基である。
【0053】
いくつかの実施形態では、工程(i)は、
(a)式(Ia)の化合物
【0054】
【化9】
【0055】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は本明細書に規定のとおりであり、RはC~Cアルキルである)
を準備することと、
(b)式(Ia)の化合物を、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であって、好ましくは本明細書に規定の式(N-1)または式(N-2)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と反応させることにより式(I)の化合物を形成することと
を含む。
【0056】
いくつかの実施形態では、工程(i)は、式(I)または式(Ia)の化合物
【0057】
【化10】
【0058】
(式中、(N)、Q、R、R、Rおよび(A)は、本明細書に規定のとおりである)
を固体支持体と結合させることを含む。
【0059】
いくつかの実施形態では、工程(ii)で鎖長を延長することは、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体を、ヌクレオシドまたはその誘導体と接触させることにより、リン系結合を形成する工程を1回または複数回実施することを含む。
【0060】
いくつかの実施形態では、工程(ii)で鎖長を延長することは、
(a)(i)3’位にホスホロアミダイト基、および5’位にヒドロキシル保護基、または(ii)5’位にホスホロアミダイト基、および3’位にヒドロキシル保護基を有するヌクレオシドを準備する工程と、
(b)工程(a)のヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化させる工程と、
(c)支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体を、活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトと接触させることにより亜リン酸トリエステル結合を形成する工程と、
(d)亜リン酸トリエステル結合を酸化させてホスホトリエステル結合を形成する工程と、
(e)得られた支持体と結合したポリヌクレオチドの末端ヌクレオシドからヒドロキシル保護基を除去する工程と
の上記工程(a)~(e)を1回または複数回実施することを含む。
【0061】
いくつかの実施形態では、工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、方法は、支持体と結合したポリヌクレオチドを脱保護する1つまたは複数の工程をさらに含む。
【0062】
いくつかの実施形態では、工程(iii)は、波長が約300~約500nmであるUV光を使用して式(I)の化合物を光照射することを含む。
【0063】
本明細書ではまた、(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体が提供される
【0064】
【化11】
【0065】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は本明細書に規定のとおりであり、(N)は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であり、好ましくは本明細書に規定の式(N-1)または式(N-2)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体である)。
【0066】
本明細書ではまた、式(I)の化合物が提供される
【0067】
【化12】
【0068】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は本明細書に規定のとおりであり、(N)は、本明細書に規定の式(N-1)または式(N-2)で表され、(A)は任意で固体支持体と結合していてもよい)。したがって、上記化合物には、固体支持体が存在していても存在していなくてもよい。
【0069】
本明細書ではまた、(A)で固体支持体と結合している、支持体と結合した式(Ia)の化合物が提供される
【0070】
【化13】
【0071】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は本明細書に規定のとおりである)。
本明細書ではまた、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を製造する方法であって、(a)本明細書に規定の(A)で固体支持体と結合している式(Ia)の化合物を準備することと、(b)式(Ia)の化合物をヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と反応させて、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を製造することとを含む、本明細書に規定の方法が提供される。
【0072】
本明細書ではまた、固相ポリヌクレオチド合成のための固体支持体カラムであって、(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を含む、固体支持体カラムが提供される
【0073】
【化14】
【0074】
(式中、(N)、Q、R、Rおよび(A)は、本明細書に規定のとおりである)。
また、ポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体を合成するための、本明細書に規定の支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体、本明細書に規定の式(I)の化合物、または本明細書に規定の式(Ia)の化合物の使用も提供される。
【0075】
さらに、本明細書に規定の方法により得られるポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体も提供される。
【0076】
発明の詳細な説明
定義
用語「ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドならびにそれらの誘導体および類縁体」は、ヌクレオシド;ヌクレオシドの誘導体;ヌクレオシドの類縁体;ヌクレオチド;ヌクレオチドの誘導体;ヌクレオチドの類縁体;ポリヌクレオチド;ポリヌクレオチドの誘導体;およびポリヌクレオチドの類縁体を含む。
【0077】
本明細書で使用されるとおり、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの「誘導体」は、DNAまたはRNAのリン酸主鎖、糖環または核酸塩基への1つまたは複数の化学修飾を含むヌクレオシド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの修飾された形態である。ヌクレオシドの誘導体は、このように、本明細書でより詳細に説明されるとおり、化学修飾されたヌクレオシドであってもよい。
【0078】
本明細書中で使用されるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの「類縁体」は、DNAおよびRNA等のヌクレオチドと構造的に類似しているが、DNAまたはRNAのリン酸主鎖、糖環または核酸塩基等の1つまたは複数の位置に修飾を含む化合物である。ヌクレオチド類縁体は、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、ロック核酸(LNA)、およびヌクレオチド側鎖を有するその他の合成ポリマーを含む。好ましくは、ヌクレオチド類縁体は、ペプチド核酸(PNA)、グリセロール核酸(GNA)、トレオース核酸(TNA)、およびロック核酸(LNA)を含む。
【0079】
特に指定のない限り、用語「ヌクレオシド」は、保護化されたヌクレオシド、すなわちそれらの化学構造に保護基を含めるように修飾されたヌクレオシドを含む。特に指定のない限り、用語「ヌクレオチド」は、保護化されたヌクレオチド、すなわちそれらの化学構造に保護基を含めるように修飾されたヌクレオチドを含む。特に指定のない限り、用語「ポリヌクレオチド」は、保護化されたポリヌクレオチド、すなわちそれらの化学構造に保護基を含めるように修飾されたポリヌクレオチドを含む。上記保護基は、官能的理由のために、例えばヌクレオチドまたはポリヌクレオチドの特性を変更するためにヌクレオチド誘導体に実施されうる修飾とは通常区別される。
【0080】
本明細書中で使用されるとおり、そして特に指定のない限り、用語「保護基」は、本分野において既知である任意の好適な保護基を指す。各種保護基は、各種化学基を保護するのに好適である。例えば、本明細書中で使用されるとおり、そして特に指定のない限り、用語「ヒドロキシル保護基」は、本分野において既知であるヒドロキシル基を保護するのに好適な任意の保護基を指す。同様に、本明細書中で使用されるとおり、そして特に指定のない限り、用語「アミン保護基」は、本分野において既知であるアミン基を保護するのに好適な任意の保護基を指す。さらに本明細書中で使用されるとおり、そして特に指定のない限り、用語「リン酸保護基」および「亜リン酸保護基」は、それぞれ本分野において既知であるリン酸基および亜リン酸基を保護するのに好適な任意の保護基を指す。
【0081】
好適なヒドロキシル保護基は、アセチル(Ac)、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、β-メトキシエトキシメチルエーテル(MEM)、4,4’-ジメトキシトリチル(DMT)、メトキシメチルエーテル(MOM)、4-モノメトキシトリチル(MMT)、レブリニル、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、p-メトキシベンジルエーテル(PMB)、p-メトキシフェニルエーテル(PMP)、メチルチオメチルエーテル、ピバロイル(Piv)、テトラヒドロピラニル(THP)、テトラヒドロフラン(THF)、トリチル(Tr)、シリルエーテル、例えばトリメチルシリル(TMS)、tert-ブチルジメチルシリル(TBDMS)、トリ-イソ-プロピルシリルオキシメチル(TOM)およびトリイソプロピルシリル(TIPS)、メチルエーテル、エトキシエチルエーテル、アリルエーテルおよびtert-ブチルエーテルを含む。
【0082】
好適なアミン保護基は、カルボベンジルオキシ(Cbz)、p-メトキシベンジルカルボニル(Moz)、tert-ブチルオキシカルボニル(BOC)、9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)、アセチル(Ac)、トリフルオロアセチル、ベンゾイル(Bz)、ベンジル(Bn)、ベンジリデン、トリチル(Tr)、カルバメート、フタルイミド、p-メトキシベンジル(PMB)、3,4-ジメトキシベンジル(DMPM)、p-メトキシフェニル(PMP)、トリクロロエチルクロロホルメート(Troc)、トシル(Ts)、ノシルおよび2-ニトロフェニルスルフェニル(Nps)を含む。
【0083】
好適なリン酸保護基および亜リン酸保護基は、アルキル基、例えばハロゲン、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)R、-NHC(O)Rおよび-CNから独立して選択される1つ、2つまたは3つの基で置換されていてもよいC~Cアルキル基、特にメチル、エチルおよび2-シアノエチル、好ましくは、2-シアノエチル;o-クロロフェニル;ならびにp-クロロフェニルを含む。
【0084】
本明細書で使用されるとおり、アルキル基は直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。C~C20のアルキル基は、1~20個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルキル基である。C~C20アルキル基は通常、C~C10アルキル基、例えばC~Cアルキル基、C~Cアルキル基またはC~Cアルキル基である。好適なC~Cアルキル基は、メチル、エチル、n-プロピル、i-プロピル、n-ブチル、sec-ブチルおよびtert-ブチルを含む。C~Cアルキル基は、好ましくは、C~Cのアルキル基であり、より好ましくは、エチルまたはメチルである。特に指定のない限り、アルキル基は、非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであってもよい。疑義を避けるために、2つのアルキル基が存在する場合、上記アルキル基は同一でも異なっていてもよい。
【0085】
本明細書で使用されるとおり、アルケニル基は直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。アルケニル基は、1本または複数本の、例えば1本または2本の、通常、1本の二重結合を有する。C~C20アルケニル基は、2~20個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルケニル基である。C~C20アルケニル基は通常、C~C10アルケニル基、例えばC~Cアルケニル基、C~Cアルケニル基またはC~Cアルケニル基である。C~Cアルケニル基は、好ましくは、C~Cアルケニル基である。C~Cアルケニル基としては、エテニル、プロペニルおよびブテニルが挙げられる。特に指定のない限り、アルケニル基は、非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであってもよい。疑義を避けるために、2つのアルケニル基が存在する場合、上記アルケニル基は同一でも異なっていてもよい。
【0086】
本明細書で使用されるとおり、アルキニル基は直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。アルケニル基は、1本または複数本の、例えば1本または2本の、通常、1本の三重結合を有する。C~C20アルキニル基は、2~20個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルキニル基である。C~C20アルキニル基は通常、C~C10アルキニル基、例えばC~Cアルキニル基、C~Cアルキニル基またはC~Cアルキニル基である。C~Cアルキニル基は、好ましくは、C~Cアルキニル基である。C~Cアルキニル基としては、エチニル、プロピニルおよびブチニルが挙げられる。特に指定のない限り、アルキニル基は、非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであってもよい。疑義を避けるために、2つのアルキニル基が存在する場合、上記アルキニル基は同一でも異なっていてもよい。
【0087】
本明細書で使用されるとおり、アルキレン基は、アルカンから2個の水素原子を除去することにより得られる、非置換、または置換された二座部分である。2個の水素原子は、同一の炭素原子から、または別の炭素原子から除去されたものであってもよい。本明細書で使用されるとおり、アルキレン基は直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。C~C20アルキレン基は、1~20個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルキレン基である。C~Cアルキレン基は通常、C~C10アルキレン基、例えばC~Cアルキレン基、C~Cアルキレン基またはC~Cアルキレン基である。好適なC~Cアルキレン基は、メチレン、エチレン、n-プロピレン、i-プロピレン、n-ブチレン、sec-ブチレンおよびtert-ブチレンを含む。C~Cアルキレン基は、好ましくは、C~Cアルキレン基、より好ましくは、エチレンまたはメチレンである。特に指定のない限り、アルキレン基は、非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであってもよい。疑義を避けるために、2つのアルキレン基が存在する場合、上記アルキレン基は同一でも異なっていてもよい。
【0088】
本明細書で使用されるとおり、アルケニレン基は、アルケンから2個の水素原子を除去することにより得られる、非置換、または置換された二座部分である。2個の水素原子は、同一の炭素原子から、または別の炭素原子から除去されたものであってもよい。本明細書で使用されるとおり、アルケニレン基は直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。アルケニレン基は、1本または複数本の、例えば1本または2本、通常、1本の二重結合を有する。C~C20アルケニレン基は、2~20個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルケニレン基である。C~C20アルケニレン基は通常、C~C10アルケニレン基、例えばC~Cアルケニレン基、C~Cアルケニレン基またはC~Cアルケニレン基である。C~Cアルケニレン基は、好ましくは、C~Cアルケニレン基である。C~Cアルケニレン基としては、エテニレン、プロペニレン、およびブテニレンが挙げられる。特に指定のない限り、アルケニレン基は、非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであってもよい。疑義を避けるために、2つのアルケニレン基が存在する場合、上記アルケニレン基は同一でも異なっていてもよい。
【0089】
本明細書で使用されるとおり、アルキニレン基は、アルキンから2個の水素原子を除去することにより得られる非置換、または置換された二座部分である。本明細書で使用されるとおり、アルキニレン基は直鎖状、分岐状または環状であってもよいが、好ましくは、直鎖状である。アルキニレン基は、1本または複数本の、例えば1本または2本の、通常、1本の三重結合を有する。C~C20アルキニレン基は、2~20個の炭素原子を含有する直鎖状または分岐状のアルキニレン基である。C~C20アルキニレン基は通常、C~C10アルキニレン基、例えばC~Cアルキニレン基、C~Cアルキニレン基またはC~Cアルキニレン基である。C~Cアルキニレン基は、好ましくは、C~Cアルキニレン基である。C~Cアルキニレン基としては、エチニレン、プロピニレンおよびブチニレンが挙げられる。特に指定のない限り、アルキニレン基は、非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであってもよい。疑義を避けるために、2つのアルキニレン基が存在する場合、上記アルキニレン基は同一でも異なっていてもよい。
【0090】
本明細書で使用されるとおり、ハロゲンは通常、塩素、フッ素、臭素またはヨウ素であり、好ましくは、塩素、フッ素または臭素であり、より好ましくは、塩素またはフッ素である。
【0091】
本明細書で使用されるとおり、C~C10アリール基は、6~10個の炭素原子を有するアリール基であり、例えば、フェニルまたはナフチルであり、好ましくは、フェニルである。アリール基またはアリール部分は、本明細書に記載のとおりに置換されたもの、または非置換であってもよい。
【0092】
本明細書で使用されるとおり、C~C10カルボシクリル基は、C、C、C、C、CまたはC10のシクロアルキル基であってもよく、好ましくは、シクロペンチルまたはシクロヘキシルである。通常、シクロアルキル基は、最大3つの置換基、例えば1つまたは2つの置換基で置換されたもの、または非置換である。
【0093】
本明細書で使用されるとおり、5~10員のヘテロアリール基は、環が完全不飽和で芳香族性であり、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5~10員の環系である。通常、上記環は、O、NおよびS選択される、最大3個または4個のヘテロ原子、例えば1個または2個のヘテロ原子を含有する。このように、5~10員のヘテロアリール基は通常、O、NおよびSから選択される、1個、2個または3個のヘテロ原子を含有する5~10員の芳香環である。好ましくは、ヘテロ原子は、OおよびNから選択される。好適な上記ヘテロアリール基としては例えば、
単環式の5~7員のヘテロアリール環、例えばフラニル、オキセピニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、トリアジニル、アゼピニル、チオフェニル、オキセピニル、およびチエピニル;ならびに
二環式の8~10員のヘテロアリール環、例えばベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、インダゾリル、ベンズイミダゾリル、アザインドリル、アザインダゾリル、プリニル、ベンゾオキサゾリル、ベンゾイソオキサゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾイソチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、キノリニル、イソキノリニル、キノリジニル、キノキサリニル、フタラジニル、キナゾリニル、シノリニル、ナフチリジニル、プテリジニルおよびベンゾチオフェニル、好ましくは、ベンゾフラニル、インドリル、イソインドリル、キノリニルおよびイソキノリニル
が挙げられる。
【0094】
好ましくは、5~10員のヘテロアリール基は、フラニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、トリアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、ピリジニル、ピリダジニル、ピリミジニルおよびピラジニルから選択される単環式の5~7員のヘテロアリール環である。
【0095】
本明細書で使用されるとおり、5~10員の飽和ヘテロ環基は、環は、少なくとも1個のヘテロ原子を含有する、5~10員の飽和環系である。通常、上記環は、O、SおよびNから選択される、最大3個または4個のヘテロ原子、例えば1個または2個のヘテロ原子を含有する。このように、5~10員の飽和ヘテロ環基は通常、O、SおよびNから選択される、1個、2個または3個のヘテロ原子を含有する5~10員の環である。好適な上記飽和ヘテロ環基は、例えば、単環式の5~8員の飽和環、より好ましくは、5~7員の環、例えばテトラヒドロフラニル、ピペリジニル、オキサゾリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、ピロリジニル、ジオキソラニル、ピペリドニル、アゼパニル、オキセパニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニルおよび1,4-ジアゼパニル、より好ましくは、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、テトラヒドロピラニル、ピペリジニル、アゼパニルおよび1,4-ジアゼパニルを含む。
【0096】
本明細書で使用されるとおり、5~10員の部分不飽和のヘテロ環基は、環が少なくとも1本の不飽和結合および少なくとも1個のヘテロ原子を含有する5~10員の環系であるが、上記環は完全不飽和または芳香族性ではない。通常、上記環は、O、NおよびSから選択される、最大3個または4個のヘテロ原子、例えば1個または2個のヘテロ原子を含有する。このように、5~10員の部分不飽和のヘテロ環基は通常、O、NおよびSから選択される、1個、2個または3個のヘテロ原子を含有する5~10員の環である。好ましくは、ヘテロ原子はOおよびNから選択される。好適な上記部分不飽和のヘテロ環基としては例えば、
単環式の部分不飽和の5~7員のヘテロ環状環、例えばジヒドロフラニル、ピラニル、ジヒドロピラニル、ジオキシニル、ジヒドロオキセピニル、テトラヒドロオキセピニル、ピロリニル、ピラゾリニル、イミダゾリニル、ジヒドロオキサゾリル、ジヒドロイソオキサゾリル、ジヒドロチアゾリル、ジヒドロイソチアゾリル、ジヒドロピリジニル、テトラヒドロピリジニル、ジヒドロピリダジニル、テトラヒドロピリダジニル、ジヒドロピリミジニル、テトラヒドロピリミジニル、ジヒドロピラジニル、テトラヒドロピラジニル、オキサジニル、ジヒドロオキサジニル、チアジニル、ジヒドロチアジニル、ジヒドロアゼピニル、テトラヒドロアゼピニル、ジヒドロチオフェニル、チオピラニル、ジヒドロチオピラニル、ジヒドロチエピニル、およびテトラヒドロチエピニル;ならびに
二環式の部分不飽和の8~10員のヘテロ環状環、例えばジヒドロベンゾフラニル、ジヒドロイソベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロキノリニル、テトラヒドロキノリニル、ベンゾオキサジニル、ジヒドロベンゾチオフェニルおよびベンゾジチオール;好ましくは、ジヒドロベンゾフラニル、ベンゾピラニル、ジヒドロベンゾピラニル、ベンゾジオキソリル、インドリニル、イソインドリニル、ジヒドロキノリニルおよびテトラヒドロキノリニル
が挙げられる。
【0097】
好ましくは、5~10員の部分不飽和のヘテロ環基は、ジヒドロフラニル、ピラニル、ピロリニルおよびオキサジニルから選択される単環式の部分不飽和の5~7員の環である。
【0098】
ヘテロ環状および/またはヘテロアリール基は、置換されたもの、または非置換であってもよい。環原子はそれぞれ非置換であってもよく、または1つまたは2つの置換基を有していてもよい。窒素原子は、二置換により正に帯電したヘテロ原子としてもよい。硫黄原子は、置換により正に帯電したヘテロ原子としてもよい。通常、ヘテロ環状基またはヘテロアリール基は最大3つの置換基、例えば1つまたは2つの置換基を有する。ヘテロ環状環またはヘテロアリール環は、ヘテロ環状環またはヘテロアリール環の任意の可能な環位置との結合により分子の残りの部分と繋がっていてもよい。
【0099】
本明細書で使用されるとおり、置換されていてもよい基は、特に指定のない限り、塩素および/またはフッ素等のハロゲン、シアノ基、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)Rならびにメチルおよび/またはエチル等のC~Cアルキル基を含んでいてもよい好適な置換基で置換されていてもよく、C~Cアルキル置換基は、それ自体が非置換、または1~3個のハロゲン原子で置換されたもののいずれかである。Rはそれぞれ独立して、水素、および、非置換または1つ、2つまたは3つのハロゲン基で置換されたC~Cアルキル基から選択される。任意の置換基は、好ましくは、ヒドロキシル基、塩素もしくはフッ素等のハロゲン、またはメチルもしくはエチル等のC~Cアルキル基である。
【0100】
特に指定のない限り、上記には、これらの置換基の公知のイオン形態、塩形態、溶媒和形態、および保護化された形態も含まれる。例えば、カルボン酸、カルボキシ基またはカルボキシル基(-COOH)への言及は、そのアニオン(カルボキシレート)形態(-COO)、塩または溶媒和物、ならびに従来の保護化された形態も含む。同様に、アミノ基への言及は、プロトン化された形態(-NHR)、アミノ基の塩または溶媒和物、例えば、塩酸塩、ならびにアミノ基の従来の保護化された形態を含む。同様に、ヒドロキシ基またはヒドロキシル基(-OH)への言及はまた、そのアニオン形態(-O)、塩または溶媒和物、ならびに従来の保護化された形態を含む。塩は、酸および塩基で形成された塩を含む。好適な酸は、無機酸、例えば、塩酸、硫酸、リン酸、二リン酸、臭化水素酸または硝酸、および、有機酸、例えばシュウ酸、クエン酸、フマル酸、マレイン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、酒石酸、安息香酸、酢酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸の両方を含む。好適な塩基は、アルカリ金属(例えばナトリウムまたはカリウム)およびアルカリ土類金属(例えばカルシウムまたはマグネシウム)水酸化物ならびに有機塩基、例えばアルキルアミン、アラルキルアミンおよびヘテロ環状アミンを含む。塩酸塩および酢酸塩、特に塩酸塩が好ましい。薬学的用途における使用が意図される場合、本明細書で提供される化合物の塩は、好ましくは、薬学的に許容される塩であってもよい。
【0101】
ある化合物は、1つまたは複数の特定の幾何形態、光学形態、エナンチオマー形態、ジアステレオマー形態、エピマー形態、アトロプ形態、立体異性形態、互変異性形態、配座異性形態、またはアノマー形態、例えばこれらに限定されないが、シス体およびトランス体;E体およびZ体;c体、t体、およびr体;エンド体およびエキソ体;R体、S体、およびメソ体;D体およびL体;d体およびl体;(+)体および(-)体;ケト体、エノール体、およびエノレート体;シン体およびアンチ体;シンクリナル形およびアンチクリナル形;α体およびβ体;アキシアル体およびエクアトリアル体;舟形、いす形、ねじれ形、エンベロープ形、および半いす形;ならびにそれらの組合せで存在していてもよく、以降ではまとめて「異性体」(または「異性形態」)と呼称する。特に指定のない限り、特定の化合物への言及は、(全体的にまたは部分的に)そのラセミ体およびその他の混合物等の全ての上記異性形態を含む。上記異性形態の調製方法(例えば、不斉合成)および分離方法(例えば、分別晶析法およびクロマトグラフ法)はいずれも当分野で知られているか、既知の手法で公知の方法を採用することにより容易に得られる。
【0102】
特に指定のない限り、特定の化合物または錯体への言及は、イオン形態、塩形態、溶媒和形態および保護化された形態も含む。
【0103】
光切断性リンカー
いくつかの実施形態では、本発明は、ポリヌクレオチドを製造する方法を提供する。上記方法は、本明細書に規定の式(I)の化合物であり、式(I)の基(A)で本明細書に記載の固体支持体と結合している、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を提供すること
【0104】
【化15】
【0105】
(式中、(N)、(A)、Q、RおよびRは上記および下記に規定のとおりである)
を含む。
【0106】
また、式(I)の化合物それ自体ならびにその誘導体、例えば本明細書に記載の式(Ia)の化合物も提供される。式(I)の化合物は、提示された方法に使用されている支持体に結合した化合物の調製に有用性があり、同様に本明細書に記載された他の用途を有する。
【0107】
式(I)の化合物は、光切断性リンカーと結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体である。本明細書に示された式(I)および関連式では、(N)はヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であり、式(I)および関連式の残りの部分は、十分な光励起により切断する光切断性リンカーを形成する。光切断は、本明細書でより詳細に記載される。この光切断性リンカーが光励起により切断する際、(N)は、切断の直接生成物が、光切断性リンカーに代えてヒドロキシル基を有するヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体となるように、光切断性リンカーから切断される。したがって、光励起を使用して、式(I)の化合物は、単一の反応工程で(N)-OHで表される化合物に転化されうる。
【0108】
より詳細には、(A)は、光励起中にリンカーの切断を容易化する2-ニトロベンジル基である。理論に拘束されるわけではないが、本発明者らは、この切断のメカニズムが、下記の1つの特定の例により示されると考えている。
【0109】
【化16】
【0110】
(式中、HBは酸であり、Bは塩基である。)しかし、本発明は、この特定の化合物またはこの特定の化合物を使用した方法に限定されない。
【0111】
当業者は、式(I)の化合物が、通常、ポリヌクレオチド合成で使用される反応条件にオルトゴナルで温和な条件下での光励起を使用して切断されうる光切断性リンカーを有利に含有することを理解するはずである。この光切断性リンカーは、単一の反応工程、通常は協奏反応工程で有利に切断されて、遊離ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を提供する。さらにケトン副生成物は揮発性であるため、容易に除去される。
【0112】
式(I)の化合物に存在する光切断性リンカーは、エステル基またはカーボネート基等の加水分解性モチーフを含まない。したがって、合成したポリヌクレオチドを脱保護するために通常使用される反応条件下、例えば、合成したポリヌクレオチド中に存在する保護化された核酸塩基から加水分解性保護基を除去するために使用される脱保護条件下で通常は安定である。例えば、通常、光切断性リンカーは、濃縮された水酸化アンモニウムおよび/またはアンモニアに対して安定である。これは、合成したポリヌクレオチドがその固体支持体から切断される前に、合成したポリヌクレオチドから各種保護基を有利に除去し、脱保護されたポリヌクレオチドの容易な単離を可能とする。
【0113】
本発明者らは、式(I)の化合物に存在する光切断性リンカーの合成中に、リンカーが、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の3’ヒドロキシル基で上記ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と有利に優先的に結合することを見出した。例えば、遊離3’-OH基および遊離5’-OH基を有する(ポリ)ヌクレオチドと連結している場合、リンカーは通常、5’-OH基よりも3’ヒドロキシル基と容易に結合する。遊離2’-OH基、遊離3’-OH基および遊離5’-OH基を有する(ポリ)ヌクレオチドと連結している場合、リンカーは通常、2’-OHまたは5’-OH基よりも3’ヒドロキシル基の方に容易に結合する。好ましくは、本発明では、リンカーは2’-ヒドロキシル基と結合しない。このように、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体が3’位で隣り合う酸素原子と結合している式(I)の化合物を製造する方が容易である。上記化合物は、3’から5’方向にポリヌクレオチド合成を実施するのに特に有用である。しかし、当業者は、要求される場合に、リンカーが、例えば5’-ヒドロキシル基に依然有効に結合しうることを理解するはずである。これは本発明の操作パラメーターである。例えば、遊離5’-OH基を有するが遊離3’-OH基を有さない(ポリ)ヌクレオチドと連結する場合、リンカーは5’ヒドロキシル基と結合しうる。
【0114】
本発明の方法および化合物を以下でより詳細に記載する。
式(I)
本発明は、式(I)の化合物の使用を含む方法を提供する。本発明はまた、式(I)の化合物自体を提供する。本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、式(I)の化合物は、位置(A)で固体支持体と結合する。
【0115】
【化17】
【0116】
式中、Qは、酸素原子または硫黄原子である。好ましくは、Qは、酸素原子である。
はそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、C~Cハロアルキルおよびハロゲン基から選択される。好ましくは、Rはそれぞれ独立して、水素、メチル、Cのフルオロアルキルまたはフッ素である。より好ましくは、Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルである。より好ましくは、Rはそれぞれが水素である。これは、式(I)の化合物の合成のより容易な合成を可能とする。
【0117】
基は同一でも異なっていてもよい。好ましくは、R基は同一である。好ましくは、1つのR基はHまたはメチルであり、他のR基はHまたはメチルである。より好ましくは、1つのR基はHであり、他のR基はHまたはメチルである。さらにより好ましくは、両方のR基はHである。
【0118】
はメチル、エチルまたはC~Cハロアルキルである。好ましくは、Rはメチル、エチルまたはC~Cフルオロアルキルである。より好ましくは、Rはメチルまたはエチルである。あるいはRはメチルまたはCFであってもよい。最も好ましくは、Rはメチルである。Rがこれらの基のうちの1つである場合、(N)と(A)とを繋げるリンカーは、光励起を使用してより容易に切断しうる、および/またはリンカーが糖環のヌクレオシドの3’位で優先的に結合する。
【0119】
(A)は2-ニトロベンジル基であり、前記2-ニトロベンジル基は、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから独立して選択される1つ、2つまたは3つの基で置換されていてもよい。
【0120】
はそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC~Cアルキルおよび置換されていてもよいC~Cアルコキシルから選択される。好ましくは、Rはそれぞれ独立して、水素またはメチルから選択され、より好ましくは、Rはそれぞれ水素である。
【0121】
はそれぞれ独立して、水素および置換されていてもよいC~Cアルキル基から選択される。好ましくは、Rはそれぞれ水素またはメチルから独立して選択され、より好ましくは、Rはそれぞれ水素である。
【0122】
本明細書で用いられるとおり、用語「2-ニトロベンジル基」は、下記に示されるとおり、ニトロ基が、式(I)の-C(R)-Q-部分に対して2位に存在するように、式(I)の隣り合う炭素原子と結合しているニトロベンジル基を指す。
【0123】
【化18】
【0124】
すなわち、(A)で表される2-ニトロベンジル基では、ニトロ基は、式(I)の隣り合う炭素原子に対してオルソ位にある;すなわちニトロ基は、式(I)の-C(R)-炭素原子に対してオルソ位にある。
【0125】
当業者は、(A)で表される2-ニトロベンジル基は、2-ニトロフェニル基とも呼称されうることを理解するはずである。
【0126】
ニトロベンゼン基(A)は、本明細書で提供されるいくつかの実施形態では、固体支持体と結合する。ニトロベンゼン基(A)は、さらに置換されたものであってもよく、または、そうでなければ非置換であってもよい。(A)がさらに置換されたものである場合、例えば電子供与基から独立して選択される1つ、2つまたは3つの置換基で置換されていてもよい。(A)は、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから独立して選択される1つ、2つまたは3つの基で置換されていてもよく、RおよびRは上記に規定のとおりである。好ましくは、(A)が置換されたものである場合、C~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択される1つ、2つまたは3つの基、好ましくは、1つまたは2つの基で置換されたものである。より好ましくは、(A)が置換されたものである場合、OR、および-OC(O)R、好ましくは、メトキシから選択される1つまたは2つの基、好ましくは、1つの基で置換されている。最も好ましくは、(A)は、ニトロベンゼンのニトロ基を別にして、また、固体支持体と結合している任意の連結基を別にして、非置換である。
【0127】
式(I)では、(N)はヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体である。当業者は、本発明の方法の最中に、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の鎖長が延長されることを理解するはずである。このように、本発明の方法またはその工程が複数回繰り返される場合、鎖長が先行の工程よりも延長されるため、サイクル間で(N)の組成が変わりうる。
【0128】
(N)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体は、任意の好適な天然の、非天然の、官能化された、および/または修飾されたヌクレオシド、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドから選択されうる。上記ヌクレオシド、ヌクレオチドならびにポリヌクレオチドの誘導体および類縁体は当分野で公知である。
【0129】
例えば、(N)は、ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドの任意の基が保護基で修飾されたものを含む。特に、上記ヌクレオシド、ヌクレオチドおよびポリヌクレオチドが、それらのサッカライド環、核酸塩基および/またはリン系結合に保護基を有することは通常である。通常使用される保護基は当分野において公知である。
【0130】
例えば、核酸塩基(例えばアデニン、グアニン、シトシンならびにそれらの誘導体および類縁体)に存在するアミノ基は、アシル基、例えばアセチル、オキシアセチル(フェノキシアセチルおよびt-ブチルフェノキシアセチルを含む)、プロピオニル、イソブチリル、ベンゾイルおよびベンジリデンを含む、当分野で知られているアミン保護基により保護化されていてもよい。ホルムアミジン基、例えばジメチルホルムアミジンおよびジ-N-ブチルホルムアミジン基もさらに使用することができる。
【0131】
リン酸結合は、リン酸保護基、例えばエチルまたは2-シアノエチルにより保護化されたものであってもよく、亜リン酸結合は、亜リン酸保護基、例えばエチルまたは2-シアノエチルにより保護化されたものであってもよい。例えば、保護基を有するホスホジエステル主鎖結合は、ホスホトリエステルとして、例えば2-シアノエチルホスホトリエステルとして存在するものであってもよい。
【0132】
(N)はまた、サッカライド環が非天然サッカライド、例えばアラビノースまたは「ロックドリボース」であるヌクレオシド、ヌクレオチドならびにポリヌクレオチドの誘導体および類縁体、または、サッカライド環に通常存在する酸素原子がそれぞれ窒素原子、硫黄原子またはメチレンモチーフで置換されているサッカライド環類縁体、例えばイミノ糖環、チオ糖環またはカルバ糖環を含む。「ロックドリボース(Locked ribose)」は、2’酸素と4’炭素とを繋げる追加の架橋を有する修飾されたリボース部分である。ロックドリボース部分の一例が下記に示されている。
【0133】
【化19】
【0134】
「ロックドリボース」サッカライド環を含有する核酸は、「ロック核酸」またはLNAとして知られている。LNAは、酵素的分解に対して高い安定性を有し、RNAおよびDNAの商業的に重要な核酸類縁体である。
【0135】
(N)は、好ましくは、サッカライド環がリボース環またはデオキシリボース環であるヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体である。このように、(N)は、好ましくは、リボヌクレオシド、リボヌクレオチド、ポリリボヌクレオチド、デオキシリボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオチド、ポリデオキシリボヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体である。より好ましくは、サッカライド環はデオキシリボース環である。このように、(N)は、より好ましくは、デオキシリボヌクレオシド、デオキシリボヌクレオチド、ポリデオキシリボヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体である。
【0136】
(N)は、ヌクレオシドモノマー単位を繋げるリン系結合がホスホジエステル結合、アルキルホスホトリエステル結合等のホスホトリエステル結合、アルキルホスホトリエステル結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合等の亜リン酸-トリエステル結合、および/またはメチルホスホネート等のアルキルホスホネート結合であるポリヌクレオチドの誘導体および類縁体を含む。特に、ホスホロアミダイト法は、ポリヌクレオチド合成の通常の方法であり、最初にリン系結合が亜リン酸-トリエステル結合であるポリヌクレオチドを生成する。上記亜リン酸-トリエステル結合は、酸化されてホスホトリエステル結合を生成することもでき、それは、脱保護されてホスホジエステル結合を生成しうる。
【0137】
(N)は、好ましくは、(N)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の式(I)の3’位または5’位で隣り合う酸素原子と(すなわち式(I)の-O-C(R-部分と)繋がっている。これは、3’から5’方向または5’から3’方向のいずれかでのヌクレオチド鎖の成長を有利に容易化する。より好ましくは、(N)は式(I)の3’位で隣り合う酸素原子と繋がっている。これは、3’から5’方向へのヌクレオチド鎖の成長を容易化し、それは通常、より安価であり、より汎用的である。
【0138】
好ましくは、(N)は、式(N-1)または式(N-2)で表される部分である。より好ましくは、(N)は式(N-1)で表される。
【0139】
【化20】
【0140】
波線は、式(I)の化合物との結合点を示している。すなわち波線は、式(I)の-O-C(R-部分)との結合を表す。
【0141】
Xは酸素原子、窒素原子、硫黄原子または-C(R)-である。好ましくは、Xは、酸素原子である。Xが酸素原子である場合、式(I)の化合物の合成はより容易である。
【0142】
およびRDRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NRおよび-C(O)Rから選択され、RDRが-ORである場合、R基、および、R基のうちの1つが一緒に繋がって架橋モチーフを形成してもよい。
【0143】
好ましくは、Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、C~CハロアルキルおよびC~Cアルコキシルから選択される。より好ましくは、Rはそれぞれ水素、フッ素、メチルおよびメトキシから選択される。さらに好ましくは、Rはそれぞれ水素である。
【0144】
好ましくは、RDRは、水素、ハロゲン、C~Cアルキルまたは-ORである。より好ましくは、RDRは水素、フッ素、メチルまたは-ORである。さらに好ましくは、RDRは水素、ヒドロキシルまたはメトキシである。さらにより好ましくは、RDRは水素またはヒドロキシルである。ある場合には、RDRはヒドロキシルではない。最も好ましくは、RDRは水素である。
【0145】
は、水素、ヒドロキシル保護基、ホスホリル基(-P(O ))またはその塩もしくは酸、ジホスホリル基(-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、トリホスホリル基(-P(O )-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、または、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのリン系結合である。
【0146】
好ましくは、Rは、水素、ヒドロキシル保護基、または、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのホスホトリエステル結合である。より好ましくは、Rは、水素またはヒドロキシル保護基である。さらに好ましくは、Rは、水素または4,4’-ジメトキシトリチル基、4-モノメトキシトリチル基、レブリニル基およびFmoc基から選択されるヒドロキシル保護基である。さらにより好ましくは、Rは、水素または4,4’-ジメトキシトリチル基である。最も好ましくは、Rは4,4’-ジメトキシトリチル基である。
【0147】
がヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのリン系結合である場合、リン系結合は、ホスホジエステル結合、アルキルホスホトリエステル結合等のホスホトリエステル結合、アルキル亜リン酸-トリエステル結合等の亜リン酸-トリエステル結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合またはメチルホスホネート等のアルキルホスホネート結合であってもよい。好ましくは、リン系結合は、ホスホジエステル結合、ホスホトリエステル結合または亜リン酸-トリエステル結合である。さらに好ましくは、リン系結合は、式(P-1)または式(P-2)で表される:
【0148】
【化21】
【0149】
式(P-1)および式(P-2)のそれぞれの左端の連結点は、連結点Aとしてマークされているが、式(N-1)または式(N-2)の隣り合う酸素原子との連結点である。式(P-1)および式(P-2)のそれぞれの右端の連結点は、連結点Bとしてマークされているが、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体との連結点である。RPPは水素、負電荷をもたらす孤立電子対、リン酸保護基または亜リン酸保護基である。好ましくは、RPPは水素、負電荷をもたらす孤立電子対、o-クロロフェニル、p-クロロフェニル、または、ハロゲン、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)R、-NHC(O)Rおよび-CNから独立して選択される1つ、2つまたは3つの基で置換されていてもよいC~Cアルキル基である。より好ましくは、RPPは、水素、負電荷をもたらす孤立電子対、o-クロロフェニル、p-クロロフェニル、メチル基または2-シアノエチル基である。さらに好ましくは、RPPは2-シアノエチル基である。
【0150】
がヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのリン系結合である場合、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体は、(N)がリン系結合により繋がっている複数のヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、またはその誘導体もしくは類縁体を含みうるような(N)で表されうる、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチド、またはその誘導体もしくは類縁体のいずれであってもよい。
【0151】
は置換されていてもよい天然核酸塩基もしくは非天然核酸塩基またはその誘導体もしくは類縁体である。天然核酸塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミン、およびウラシルを含む。非天然核酸塩基は当分野で公知であり、例えば、2-チオチミン等の天然核酸塩基の類縁体、イソグアニン、イソシアニンおよび5-アザ-7-デアザグアニン等の天然核酸塩基、ならびにキサンチン等の合成核酸塩基として当分野で使用されるその他の基の異性体を含む。例えば、非天然核酸塩基は、2-チオチミン、イソグアニン、イソシトシン、1-メチルシトシン、5-アザ-7-デアザグアニン、6-アミノ-5-ニトロピリジン-2-オン、1-メチルシトシン、キサンチン、ハイポキサンチン、7-メチルグアニン、5,6-ジヒドロウラシル、5-メチルシトシン、5-ヒドロキシメチルシトシン、2,6-ジアミノプリン、6,8-ジアミノプリン、フルオロシトシン、フルオロウラシル、メルカプトプリン、チオグアニン、5-ヒドロキシメチルウラシル、5-カルボキシシトシン、ならびに2-アミノプリンおよび三環状シトシンtC、tCOおよびtCnitro等の蛍光核酸塩基を含む。
【0152】
天然核酸塩基および非天然核酸塩基の誘導体または類縁体は、保護化された天然核酸塩基および非天然核酸塩基、すなわちそれらの化学構造に保護基を含むために修飾された核酸塩基を含む。
【0153】
好ましくは、Rは、保護化された天然核酸塩基または非天然核酸塩基である。より好ましくは、Rは保護化された天然核酸塩基である。
【0154】
DRが-ORであり、R基、および、R基のうちの1つが一緒に繋がって架橋モチーフを形成する場合、式(N-1)または式(N-2)で表される部分は、好ましくは、式(N-L1)または式(N-L2)で表される部分である:
【0155】
【化22】
【0156】
(式中、X、Rのそれぞれ、RおよびRは上記に規定のとおりである)。
支持体との結合
上記で説明したとおり、本明細書では、固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体の使用を含む方法が提供される。いくつかの実施形態では、本発明は、支持体と結合した、本明細書に記載された式(I)または式(Ia)等の関連式の化合物をさらに提供する。上記化合物は、化合物の基(A)で固体支持体と結合している。
【0157】
化合物が支持体と結合した上記実施形態では、好ましくは、(A)は支持体と化学的に結合している。好ましくは、(A)は、共有結合により固体支持体と結合している。より好ましくは、(A)は、共有結合により連結基と結合しており、連結基は共有結合により固体支持体と結合している。これは、固体支持体と安定的に結合している化合物(例えば式(I)の化合物)を提供する。
【0158】
いくつかの実施形態では、(A)は下記式(A’)の部分である。
【0159】
【化23】
【0160】
式(A’)において、R、R、RおよびRのうちの1つは、部分-L-Z(式中、Lは連結基であり、Zは固体支持体である)により置換され、R、R、RおよびRの残りの基は、式(A-1)および式(A-2)に関して下記のとおりである。
【0161】
より好ましくは、連結基は、(A)で表される2-ニトロベンジル基の4位または5位と結合している(上記で示されるとおり、ニトロ基が式(I)の-C(R)-Q-部分に対して2位に存在するように付番される場合)。すなわち、連結基は、好ましくは、2-ニトロベンジル基のニトロ基に対してパラ位またはメタ位に存在する。
【0162】
さらに好ましくは、(A)は、式(A-1)または式(A-2)の部分である。
【0163】
【化24】
【0164】
好ましくは、(A)は、式(A-1)の部分である。
式(A-1)および式(A-2)では、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素および電子供与基であってもよい置換基から選択される。式(A-1)および式(A-2)では、R、R、RおよびRは通常、それぞれ独立して水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択され、RおよびRは上記に規定のとおりである。
【0165】
好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、フッ素、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択される。より好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択される。さらにより好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、-OR、および-OC(O)Rから選択される。さらに好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素およびメトキシから選択される。理論に拘束されるわけではないが、本発明者らはR、R、RおよびRのうちの1つまたは複数が電子供与基である場合、光励起によりリンカーがより切断されやすいと考えている。R、R、Rおよび/またはRが水素である場合、式(I)の化合物はより容易に合成できる。
【0166】
好ましくは、R、R、Rおよび/またはRのうちの少なくとも1つは水素である。例えば、R、R、Rおよび/またはRのうちの1つ、2つまたは3つは水素である。好ましくは、RおよびRのうちの一方は水素であり、RおよびRのうちのもう一方は水素、-OR、および-OC(O)Rから選択される。好ましくは、RまたはRは水素である。例えば、いくつかの実施形態ではRおよびRのうちの一方は水素であり、RおよびRのうちのもう一方は水素、-OR、および-OC(O)Rから選択され、RまたはRは水素またはメトキシである。
【0167】
化合物が、上記式(A’)、式(A-1)および式(A-2)のように、連結基(L)により固体支持体(Z)と結合している場合、Lは連結基であり、Zは固体支持体である。
【0168】
連結基Lは、ポリヌクレオチドを固体支持体と連結させるのに好適な任意の連結基であってもよい。好ましくは、連結基は、C~C20アルキレン基、C~C20アルケニレン基、C~C20アルキニレン基および/またはヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドである、またはそれらを含み、前記アルキレン、アルケニレンまたはアルキニレン基は、本明細書に記載のとおりのヘテロ原子または他のヘテロ基;亜リン酸基;リン酸基;カルボニル基;C~C10アリール基;C~C10カルボシクリル基;5~10員のヘテロアリール基;および5~10員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基から選択される1つまたは複数の基により中断および/または末端化されていてもよく、連結基はさらに置換されていてもよい。好適なヘテロ原子およびヘテロ基は-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-C(O)NR等を含み、RはHまたはメチル、好ましくは、Hである。-O-原子で中断された、および/または末端化されたアルキレン基の例としては、アルキレングリコール基があるため、連結基は、ポリエチレングリコール(PEG)等のポリアルキレングリコールを含む、またはそれらからなるものであってもよい。通常、連結基は、ビオチンまたはストレプトアビジン部分と連結されていない。
【0169】
より好ましくは、連結基は、C~C10アルキレン基、C~C10アルケニレン基、および/またはポリヌクレオチドである、またはそれらを含み、前記アルキレンまたはアルケニレン基は、-O-、-S-、-SO-、-SO 、-NR-、-C(O)-、-C(O)NRから選択される1つまたは複数の基により中断および/または末端化されていてもよく、Rは、Hまたはメチル;亜リン酸基;リン酸基;Cのアリール基;C~Cカルボシクリル基;5~6員のヘテロアリール基;および5~6員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基である。さらにより好ましくは、連結基は、C~C10アルキレン基および/またはポリヌクレオチドである、またはそれらを含み、前記アルキレン基は、-O-、-NR-、-C(O)-、-C(O)NR-から選択される1つまたは複数の基により中断および/または末端化されていてもよく、RはHまたはメチル;Cのアリール基;C~Cのカルボシクリル基;5~6員のヘテロアリール基;および5~6員飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基である。好ましくは、連結基が5~6員のヘテロアリール基である、またはそれを含む場合、ヘテロアリール基はトリアゾールまたはイミダゾール、好ましくは、トリアゾールである。
【0170】
連結基は、1,2,3-トリアゾール、ポリエチレングリコール、ホスホネート基、ホスホロアミダイト基および/またはスクシニル基であってもよく、またはそれらを含んでいてもよい。
【0171】
いくつかの実施形態では、連結基は、-A-B-C-形の部分である、またはそれを含む(式中、Aは、アルキル基が非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであり、好ましくは、非置換のC~Cアルキル基であり、Bは、Cのアリール基;C~Cカルボシクリル基;5~6員のヘテロアリール基;および5~6員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基から選択される環状基であり、Cは、アルキル基が非置換、または本明細書に記載のとおりに置換されたものであり、好ましくは、非置換のC~Cアルキル基である)。
【0172】
好ましくは、連結基が-A-B-C-形の部分である、またはそれらを含む場合、Aは非置換のC~Cアルキル基であり;BはCアリール基;C~Cカルボシクリル基;5~6員のヘテロアリール基;および5~6員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基から選択される環状基であり;Cは非置換のC~Cアルキル基である。
【0173】
より好ましくは、連結基が-A-B-C-形の部分である、またはそれらを含む場合、Aは非置換のC~Cアルキル基であり;Bはトリアゾール、ベンゼン、シクロヘキサン、ピペリジン、ピリダジン、ピリジン、チアゾール、イミダゾール、好ましくは、トリアゾールから選択される環状基であり;Cは非置換のC~Cアルキル基である。
【0174】
いくつかの実施形態では、連結基は、下記形の部分である、またはそれらを含むものである:
【0175】
【化25】
【0176】
(式中、波線は分子の残りとの結合点を示している)。
好ましくは、連結基は、ホスホロアミダイト((RO)PNR)またはホスホネート基、より好ましくは、ホスホロアミダイト基を介して固体支持体と結合している。好適なホスホロアミダイト基の例としては、-O-P(OR)(NR基(式中、Rは、-CN等の置換基で置換されたC~Cアルキルであり、同一または異なっていてもよいRのそれぞれは置換されていてもよいC~Cアルキル基、好ましくは、イソプロピル等の非置換のC~Cアルキル基である)が挙げられる。したがって、好適なホスホロアミダイト基の例は2-シアノエチルジイソプロピルホスホロアミダイト(OCEP)である。上記基の、固体支持体の反応性官能基との反応は、連結基を結合させるため、支持体と化合物とを連結させる。
【0177】
具体的に開示された実施形態
好ましくは、式(I)では、
- Qは、酸素原子であり、
- Rはそれぞれ独立して、水素、メチル、Cフルオロアルキルまたはフッ素であり、
- Rはメチル、エチルまたはC~Cフルオロアルキルであり、
- (A)は2-ニトロベンジル基であり、前記2-ニトロベンジル基はC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択される1つ、2つまたは3つ、好ましくは、1つまたは2つの基で置換されていてもよく、
- Rはそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC~Cアルキルおよび置換されていてもよいC~Cアルコキシルから選択され、
- Rはそれぞれ独立して、水素および置換されていてもよいC~Cアルキル基から選択され、
- (N)は式(N-1)または式(N-2)の部分であり
【0178】
【化26】
【0179】
(式中、
・上記波線は、式(I)の化合物との結合点を示しており、
・Xは酸素原子、窒素原子、硫黄原子または-C(R)-であり、
・Rはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、C~CハロアルキルおよびC~Cアルコキシルから選択され、
・RDRは、水素、ハロゲン、C~Cアルキルまたは-ORであり、
・Rは、水素、ヒドロキシル保護基、または、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのホスホジエステル結合であり、
・Rは、置換されていてもよい天然核酸塩基または非天然核酸塩基である)、
- 式(I)の化合物が本明細書に記載のとおりに支持体と結合している場合、(A)は、式(A’)の部分である
【0180】
【化27】
【0181】
(式中、R、R、RおよびRのうちの1つが部分-L-Z(式中、Lは連結基であり、Zは固体支持体である)により置換されており、R、R、RおよびRの残りの基は、水素、C~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)R(式中、RおよびRは上記に規定のとおりである)から独立して選択され、
Lは、C~C20アルキレン基、C~C20アルケニレン基、C~C20アルキニレン基および/またはヌクレオチドまたはポリヌクレオチドである、またはそれらを含み、前記アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基は、本明細書に記載のとおりのヘテロ原子または他のヘテロ基;亜リン酸基;リン酸基;カルボニル基;C~C10アリール基;C~C10カルボシクリル基;5~10員のヘテロアリール基;および5~10員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基から選択される1つまたは複数の基により中断および/または末端化されていてもよく、連結基は、さらに置換されていてもよく、
連結基は、ホスホロアミダイト((RO)PNR)またはホスホネート基を介して固体支持体と結合している)。
【0182】
より好ましくは、式(I)では、
- Qは、酸素原子であり、
- Rはそれぞれ独立して、水素またはメチル、好ましくは、水素であり、
- Rはメチル、エチルまたはCF、好ましくは、メチルであり、
- (A)は2-ニトロベンジル基であり、前記2-ニトロベンジル基は、-OR、および-OC(O)Rから選択される1つまたは2つの基で置換されていてもよく、より好ましくは、(A)は2位のニトロ基を別にして、また、本明細書に規定の任意のL-Z部分を別にして非置換であり、
- Rはそれぞれ独立して、水素およびメチルから選択され、
- Rはそれぞれ独立して、水素およびメチルから選択され、
- (N)は式(N-1)または式(N-2)の部分であり
【0183】
【化28】
【0184】
(式中、
・波線は、式(I)の化合物との結合点を示しており、
・Xは酸素原子であり、
・Rはそれぞれ独立して、水素、フッ素、メチルおよびメトキシから選択され、好ましくは、水素であり、
・RDRは、水素、ヒドロキシまたはメトキシ、好ましくは、水素であり、
・Rは、水素、ヒドロキシル保護基、またはヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドとのホスホジエステル結合であり、
・Rは、置換されていてもよい天然核酸塩基または非天然核酸塩基、好ましくは、天然核酸塩基である)、
式(I)の化合物が本明細書に記載のとおりに支持体と結合している場合、(A)は、式(A-1)または式(A-2)の部分であり
【0185】
【化29】
【0186】
(式中、R、R、RおよびRは独立して水素、-OR、および-OC(O)R(式中、RおよびRは上記に規定のとおりである)
から独立して選択され、
Lは、C~C10アルキレン基、C~C10アルケニレン基、および/またはポリヌクレオチドである、またはそれらを含み、前記アルキレン基またはアルケニレン基は、-O-、-S-、-SO-、-SO-、-NR-、-C(O)-、-C(O)NRから選択される1つまたは複数の基により中断および/または末端化されていてもよく、Rは、Hまたはメチル;亜リン酸基;リン酸基;Cアリール基;C~Cカルボシクリル基;5~6員のヘテロアリール基;および5~6員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基であり、
連結基は、ホスホロアミダイト基を介して固体支持体と結合している)。
【0187】
ポリヌクレオチドまたはその類縁体もしくは誘導体を製造する方法
上記で検討されたとおり、本発明は、ポリヌクレオチドを製造する方法であって、(i)(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体
【0188】
【化30】
【0189】
(式中、(N)、Q、R、Rおよび(A)は上記に規定のとおりである)
を準備することと、
(ii)1つまたは複数の追加のヌクレオシド単位、ヌクレオチド単位および/またはそれらの類縁体もしくは誘導体を導入することにより、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の鎖長を延長することと、
(iii)式(I)の化合物を光照射することにより、固体支持体から得られたポリヌクレオチドを切断することと
を含む、方法を提供する。
【0190】
本発明の方法の工程(i)は、本明細書に記載の、固体支持体と結合した式(I)の化合物である、事前に調製された支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を準備することを含んでいてもよい。
【0191】
あるいは、工程(i)は、固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を調製することを含んでいてもよい。このように、工程(i)は、固体支持体に式(I)の化合物を結合させることを含んでいてもよい。
【0192】
あるいは工程(i)は、(A)で固体支持体と結合した式(Ia)の化合物から(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物を調製することを含んでいてもよく、式(I)は下記のとおりである
【0193】
【化31】
【0194】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は上記に規定のとおりであり、RはC~Cアルキルである)。
【0195】
したがって、工程(i)は、式(Ia)の化合物を(A)で固体支持体と結合させることを含んでいてもよい。例えば、本発明の方法の工程(i)は、
(a)式(Ia)の化合物
【0196】
【化32】
【0197】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は上記に規定のとおりであり、RはC~Cアルキルである)
を準備することと、
(b)式(Ia)の化合物を、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であって、好ましくは上記に規定の式(N-1)または(N-2)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と反応させることにより式(I)の化合物を形成することと
を含んでいてもよい。
【0198】
好ましくは、Rはメチルである。
本発明の方法の工程(ii)は、好ましくは、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体をヌクレオシドまたはその誘導体と接触させることにより、リン系結合を形成する工程を1回または複数回実施することを含む。
【0199】
ヌクレオシドまたはその誘導体は、ヌクレオシドホスホロアミダイト、ヌクレオシドH-ホスホネートまたはヌクレオシドホスホトリエステル、好ましくは、活性化したヌクレオシドホスホロアミダイト、活性化したヌクレオシドH-ホスホネートまたは活性化したヌクレオシドホスホトリエステルであってもよい。ヌクレオシドホスホロアミダイトは、活性化剤としてテトラゾールまたはその誘導体と反応させることにより活性化させてもよく、例えば、ホスホロアミダイト(例えばホスホロアミダートのジイソプロピルアミノ基)の基を酸性のテトラゾールまたはその誘導体によりプロトン化してもよい。ヌクレオシドH-ホスホネートは、ピバロイルクロリド等の塩素化剤と反応させて活性化させてもよい。ヌクレオシドヌクレオシドホスホトリエステルは、1-(メシチルスルホニル)-3-ニトロ-1H-1,2,4-トリアゾール等のカップリング剤で反応させることにより活性化させてもよい。
【0200】
好ましくは、工程(ii)では、ヌクレオシドまたはその誘導体は、活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトである。好ましくは、活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトは、3’位または5’位に活性化したホスホロアミダイト基を有する。より好ましくは、活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトは、3’位に活性化したホスホロアミダイト基を有する。好ましくは、3’位に活性化したホスホロアミダイト基を有する活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトは、5’位にヒドロキシル保護基を有する。好ましくは、5’位に活性化したホスホロアミダイト基を有する活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトは、3’位にヒドロキシル保護基を有する。好ましくは、活性化したホスホロアミダイト基は、式(PH-A)で表される:
【0201】
【化33】
【0202】
PPおよびRは本明細書に規定のとおりである。
リン系結合は、ホスホジエステル結合、アルキルホスホトリエステル結合等のホスホトリエステル結合、アルキル亜リン酸-トリエステル結合等の亜リン酸-トリエステル結合、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、またはメチルホスホネート結合等のアルキルホスホネート結合であってもよい。好ましくは、リン系結合は、亜リン酸-トリエステル結合である。より好ましくは、リン系結合は、2-シアノエチル亜リン酸-トリエステル結合である。
【0203】
好ましくは、工程(ii)は、ヌクレオシドホスホロアミダイトを準備する工程と、ヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化させる工程と、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体を活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトと接触させることにより亜リン酸トリエステル結合を形成する工程を1回または複数回実施することを含む。
【0204】
ヌクレオシドホスホロアミダイトは、好ましくは、3’位または5’位にホスホロアミダイト基を有する。より好ましくは、ヌクレオシドホスホロアミダイトは、3’位にホスホロアミダイト基を有する。好ましくは、3’位にホスホロアミダイト基を有するヌクレオシドホスホロアミダイトは、5’位にヒドロキシル保護基を有する。好ましくは、5’位にホスホロアミダイト基を有するヌクレオシドホスホロアミダイトは、3’位にヒドロキシル保護基を有する。好ましくは、ホスホロアミダイト基は、式(PH)で表される:
【0205】
【化34】
【0206】
PPおよびRは本明細書に規定のとおりである。
工程(ii)は、任意で、亜リン酸トリエステル結合を酸化させてホスホトリエステル結合を形成することをさらに含んでいてもよい。
【0207】
工程(ii)は、任意で、ヒドロキシル保護基を除去することをさらに含んでいてもよい。
【0208】
より好ましくは、工程(ii)は、
(a)(i)3’位にホスホロアミダイト基、および5’位にヒドロキシル保護基;または(ii)5’位にホスホロアミダイト基、および3’位にヒドロキシル保護基を有するヌクレオシドを準備する工程と、
(b)工程(a)のヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化させる工程と、
(c)支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体を、活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトと接触させることにより亜リン酸トリエステル結合を形成する工程と、
(d)亜リン酸トリエステル結合を酸化させてホスホトリエステル結合を形成する工程と、
(e)得られた支持体と結合したポリヌクレオチドの末端ヌクレオシドからヒドロキシル保護基を除去する工程と
の上記工程(a)~(e)を1回または複数回実施することを含む。
【0209】
工程(a)では、ヌクレオシドは好ましくは、3’位にホスホロアミダイト基、および5’位にヒドロキシル保護基を有する。
【0210】
工程(b)は通常、ヌクレオシドホスホロアミダイトを好適な活性化剤と接触させることを含む。任意の好適な活性化剤を使用することができる。通常、活性化剤はテトラゾールまたはその誘導体である。通常、活性化剤およびヌクレオシドホスホロアミダイトは、アセトニトリル等の有機溶媒中で接触する。
【0211】
工程(c)は、工程(b)の活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトを、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体を含有するカラム内を流通させることにより実施してもよい。
【0212】
工程(d)は通常、好適な酸化剤を使用して亜リン酸トリエステルを酸化させることを含む。任意の好適な酸化剤を使用することができる。通常、酸化剤はヨウ素である。ヨウ素は、好適な溶媒と共に、例えば水およびピリジン(例えばヨウ素を約0.01~0.02Mの濃度で含む、水/ピリジン/THF 2/20/78)と共に反応で使用してもよい。
【0213】
工程(e)は、工程(d)で得られた支持体と結合したポリヌクレオチドを好適な試薬と接触させることにより実施してもよい。通常、脱保護は、支持体と結合したポリヌクレオチドをアンモニア水等の濃縮された塩基水と接触させることを含む。水溶液は、蒸発により除去することができる。
【0214】
工程(ii)は、前記反応工程を少なくとも1回、少なくとも2回、少なくとも5回、少なくとも10回、少なくとも20回、少なくとも30回、少なくとも40回、少なくとも50回、少なくとも100回、少なくとも150回、少なくとも200回、少なくとも500回、少なくとも1000回、またはそれ以上繰り返すことを含んでいてもよい。したがって、工程(ii)は、長さが少なくとも2モノマー単位、少なくとも5モノマー単位、少なくとも10モノマー単位、少なくとも20モノマー単位、少なくとも30モノマー単位、少なくとも40モノマー単位、少なくとも50モノマー単位、少なくとも100モノマー単位、少なくとも150モノマー単位、少なくとも200モノマー単位、少なくとも500モノマー単位、少なくとも1000モノマー単位、またはそれ以上であるポリヌクレオチドを形成することを含んでいてもよい。当業者は、工程(i)で準備された、支持体と結合したヌクレオシドに結合したヌクレオシドまたはその誘導体は、各繰り返しでは、同一または異なっていてもよいことを理解するはずである。したがって、上記方法で合成したポリヌクレオチドの配列は、上記方法のユーザー、例えばポリヌクレオチドの合成用に構成された装置のオペレーターにより決定することができる。
【0215】
好ましくは、本発明の方法は、支持体と結合したポリヌクレオチドを脱保護する工程を1回または複数回含む。好ましくは、これらの工程は、工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に実施される。好ましくは、支持体と結合したポリヌクレオチドを脱保護することは、支持体と結合したポリヌクレオチドに存在する1つまたは複数の核酸塩基および/または1つまたは複数のリン系結合から保護基を除去することを含む。脱保護は、使用される保護基に応じて好適な試薬で支持体と結合したポリヌクレオチドを処理することにより達成することができる。
【0216】
例えば、核酸塩基を保護するために通常使用されるベンゾイル、イソブチリルおよびジメチルホルムアミジル保護基は、濃縮された水酸化アンモニウムを使用して除去することができる。フェノキシアセチル、アセチルおよびイソプロピルフェノキシアセチル基等の核酸塩基を保護するために使用される超温和な保護基は通常、炭酸カリウムのメタノール溶液、またはアンモニア水とメチルアミン水との混合物を使用して除去することができる。シアノエチルホスホトリエステル基は、ホスホジエステル主鎖を保護するために使用することができ、濃縮された水酸化アンモニウムを使用して除去することができる。リン酸基は、メチルトリエステルとして保護化し、チオフェノールを使用して除去することができる。
【0217】
工程(iii)では、得られたポリヌクレオチドは、式(I)の化合物を光照射することにより固体支持体から切断される。
【0218】
本発明の工程(iii)は、波長が約300~約500nm、好ましくは、約325~約475nm、より好ましくは、約350~約450nmであるUV光を使用して式(I)の化合物を光照射することを含むことが好ましい。光照射は、使用される光源の電力に応じて、任意の好適な時間スケールで実施することができる。例えば、約100W~約5000W、例えば約200W~約1000W、例えば約500Wの電力を、約1分~約10時間、例えば約10分~約1時間、例えば約30分間印加することができる。好適な照射は、Hgランプにより供することができる。適切な照射条件の選択は、当業者の常套手段である。適切な照射条件は、切断の程度をモニターすること、および、使用される装置に従い、合成したポリヌクレオチドに損傷を与えることなく、最短時間で実質的に、または完全に切断可能な条件を選択することにより決定することができる。ポリヌクレオチド合成の生成物は、例えばNMR分光法および質量分光法等の技術を使用して反応をモニターすることにより評価することができる。
【0219】
本発明の方法は、任意の適切な温度で、および当業者も容易に利用可能な通常の溶媒条件下で実施することができる。通常、反応は約10℃~約100℃、例えば約20℃~約50℃、例えば約25℃~約30℃で実施される。多くの場合、反応は室温で実施できる。
【0220】
本発明の方法で使用される式(I)の化合物は、多様な周知のポリヌクレオチド合成方法、例えばホスホロアミダイト法、H-ホスホネート法およびホスホトリエステル法に適合する。このように、本発明の方法は、ポリヌクレオチド合成のホスホロアミダイト法、ポリヌクレオチド合成のH-ホスホネート法およびポリヌクレオチド合成のホスホトリエステル法を含む。好ましくは、本発明の方法は、ポリヌクレオチド合成のホスホロアミダイト法である。
【0221】
さらなる化合物
本明細書ではまた、(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体が提供される
【0222】
【化35】
【0223】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は上記に規定のとおりであり、(N)はヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体である)。好ましくは、(N)は、上記に規定の式(N-1)または式(N-2)で表され、Rは水素、ヒドロキシル保護基、ホスホリル基またはその塩もしくは酸、ジホスホリル基またはその塩もしくは酸、またはトリホスホリル基またはその塩もしくは酸である。
【0224】
この化合物は、ポリヌクレオチドの単一のモノマー単位を含み、ポリヌクレオチド合成の出発点として有用である。特に、この化合物は本発明の方法の工程(i)で準備することができる。
【0225】
本発明はまた、式(I)の化合物を提供する
【0226】
【化36】
【0227】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は上記に規定のとおりであり、(N)は上記に規定の式(N-1)または式(N-2)で表され、(A)は任意で固体支持体と結合している)。(N)は、好ましくは、上記に規定の式(N-1)で表される。
【0228】
この化合物は、式(I)の3’位または5’位、好ましくは、3’位で光切断性リンカーと結合しているヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体を含む。このように、この化合物は、3’から5’方向または5’から3’方向におけるポリヌクレオチド合成での使用に最適である。
【0229】
(A)が固体支持体と結合している場合、この化合物は本発明の方法の工程(i)により準備されうる。
【0230】
(A)が固体支持体と結合していない場合、この化合物は、(A)で固体支持体と結合している式(I)の化合物を生成するために使用することができる。あるいは、この化合物はまた、ブロックされたヌクレオチド化合物として有用である。特に、この化合物の光切断性基は、それが結合しているヌクレオシドヒドロキシル基の反応性をブロックする保護基として作用しうるが、光励起を使用して任意で除去することができる。光切断性基の除去は、遊離のヒドロキシル基を有するヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体を生成し、多様な反応(例えば鎖長を延長するためのポリヌクレオチド鎖とのカップリング反応)を経ることが可能である。
【0231】
このように、この化合物は、他の化合物との混合物と共に溶液中に存在しうるが、所望の時点において、化合物が光励起を用いて活性化されるまでは、活性がなく不活性である。
【0232】
本発明はまた、(A)で固体支持体と結合している式(Ia)の化合物を提供する
【0233】
【化37】
【0234】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は上記に規定のとおりである)。
この化合物は、(A)で固体支持体と結合している式(I)の化合物を生成するのに有用である。
【0235】
固体支持体
本明細書で提供される実施形態では、本明細書で提供される化合物は、固体支持体と結合していてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、式(I)または式(Ia)の化合物は、前記化合物の基(A)で固体支持体と結合している。
【0236】
任意の好適な固体支持体を使用することができる。
好ましくは、固体支持体は、ガラス、シリカ、セラミック、またはポリマー樹脂を含む。より好ましくは、固体支持体は、制御細孔ガラス(CPG)またはポリスチレンを有する。CPGは、1つまたは複数の官能基を導入するために適切な表面処理を用いて処理してもよい。好適な表面処理は、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン等のシランを含み、アミノプロピルCPGを与える。上記官能化CPGは、アミノプロピル基のアミノ部分をエステル基等の好適な部分と反応させることにより誘導体化することができる。好適なポリスチレン材料は通常、低膨潤性であり、および/または架橋されている。例えば、ポリスチレンは、多孔質剤の存在下でジビニルベンゼン、スチレン、および4-クロロメチルスチレンを重合させることにより得ることができる。得られたマクロ多孔性のクロロメチルMPPSはアミノメチルMPPSに変換することができる。
【0237】
通常、固体支持体は、ストレプトアビジン等のタンパク質で官能化されていない。
好ましくは、固体支持体は、直径が約1μm~約10000μm、より好ましくは、約5μm~約1000μm、さらに好ましくは、約10μm~約500μm、例えば約50~約250μmである粒子を含む。
【0238】
好ましくは、固体支持体材料粒子は多孔性である。好ましくは、固体支持体材料が多孔性である場合、孔径は約1~約1000nm、例えば約10~約100nm、例えば約50nmである。
【0239】
好ましくは、支持体材料は、ビーズである、またはそれを含む。上記ビーズは磁性を有していてもよく、例えば磁性材料を含んでいてもよい。ビーズは強磁性または常磁性であってもよい。ビーズは、酸化鉄コアを有していてもよい。
【0240】
ビーズの使用は、合成したポリヌクレオチドがシーケンシング技術、例えば本明細書に記載のとおりの液滴ベースのシーケンシングに使用される場合に有利でありうる。
【0241】
好ましくは、支持体材料は、カラム内に含有される。カラムの総容積は、約100μL~約100L、例えば約1mL~約1Lであってもよい。想定される合成スケールに応じて任意の好適な総容積を使用することができる。
【0242】
したがって、本明細書では、(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を含む固相ポリヌクレオチド合成のための固体支持体カラムであって、(N)、Q、R、Rおよび(A)が、先行する請求項のいずれか1項に規定のとおりである、固体支持体カラムが提供される。
【0243】
本開示の方法の生成物
本開示の方法は、ポリヌクレオチドまたはその類縁体もしくは誘導体を生成するために使用することができる。したがって、本明細書ではまた、本明細書で提供される方法により得られうる、または得られるポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体が提供される。
【0244】
用語「ポリヌクレオチド」は、それぞれのヌクレオチドの3’末端および5’末端がリン系結合により繋がっているヌクレオチドの一本鎖または二本鎖の共有結合により結合した配列を指す。本開示の方法の生成物に存在するリン系結合は、天然ポリヌクレオチドでのようにホスホジエステル結合であってもよく、または非天然リン系結合、例えばホスホトリエステル結合、例えば、メチルホスホトリエステル結合およびエチルホスホトリエステル結合等のアルキルホスホトリエステル結合;ホスホロチオエート結合;ホスホロジチオエート結合;およびアルキルホスホネート結合、例えばメチルホスホネート結合であってもよい。
【0245】
ポリヌクレオチドは、デオキシリボヌクレオチド塩基またはリボヌクレオチド塩基で構成されるものであってもよい。核酸はさらに、修飾されたDNAもしくはRNA、例えばメチル化されたDNAもしくはRNA、または翻訳後修飾、例えば7-メチルグアノシンを用いた5’-キャッピング、切断およびポリアデニル化等の3’-プロセッシング、およびスプライシングに付されたRNAを含むものであってもよい。核酸は、また合成核酸(XNA)、例えばヘキシトール核酸(HNA)、シクロヘキセン核酸(CeNA)、トレオース核酸(TNA)、グリセロール核酸(GNA)、ロック核酸(LNA)およびペプチド核酸(PNA)を含むものであってもよい。核酸の大きさは、本明細書では「ポリヌクレオチド」とも呼称されるが、通常、2本鎖のポリヌクレオチドについては塩基対の数値(bp)で表現され、あるいは、1本鎖のポリヌクレオチドの場合はヌクレオチドの数(nt)として表現される。1000bpまたは1000ntは、1キロベース(kb)に等しい。長さがおよそ40ヌクレオチド未満であるポリヌクレオチドは通常、「オリゴヌクレオチド」と呼称され、例えばポリメラーゼ鎖反応(PCR)を介してDNA操作で使用するためのプライマーを含むものであってもよい。
【0246】
合成したポリヌクレオチドは、任意のヌクレオチドの任意の組合せを有していてもよい。ヌクレオチドは、天然に存在するものまたは人工的なものであってもよい。ポリヌクレオチドの1つまたは複数のヌクレオチドは、酸化されたもの、またはメチル化されたものであってもよい。ポリヌクレオチドの1つまたは複数のヌクレオチドは損傷されたものであってもよい。例えば、ポリヌクレオチドは、ピリミジン二量体を含むものであってもよい。上記二量体は通常、紫外光による損傷に関連しており、皮膚メラノーマの主要な原因である。ポリヌクレオチドの1つまたは複数のヌクレオチドは、例えばラベルまたはタグと共に修飾されていてもよく、その好適な例は当業者により知られている。ポリヌクレオチドは、1つまたは複数のスペーサーを含むものであってもよい。ヌクレオチドは通常、本明細書により詳細に記載されているとおり、核酸塩基、糖および少なくとも1つのリン酸基を含有する。核酸塩基および糖は、ヌクレオシドを形成する。核酸塩基は通常、ヘテロ環状である。核酸塩基は、これらに限定されないが、プリンおよびピリミジン、より具体的にはアデニン(A)、グアニン(G)、チミン(T)、ウラシル(U)、およびシトシン(C)を含む。糖は通常、ペントース糖である。ヌクレオチド糖は、これらに限定されないが、リボースおよびデオキシリボースを含む。糖は好ましくは、デオキシリボースである。ポリヌクレオチドは、好ましくは、下記ヌクレオシド:デオキシアデノシン(dA)、デオキシウリジン(dU)および/またはチミジン(dT)、デオキシグアノシン(dG)、およびデオキシシチジン(dC)を含む。ヌクレオチドは通常、リボヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドである。ヌクレオチドは通常、モノホスフェート、ジホスフェートまたはトリホスフェートを含有する。ヌクレオチドは、3つを超えるリン酸、例えば4つまたは5つのリン酸を含むものであってもよい。リン酸は、ヌクレオチドの5’位または3’位に結合したものであってもよい。ポリヌクレオチドのヌクレオチドは、任意の方法により互いに結合したものであってもよい。ヌクレオチドは通常、核酸と同様に、それらの糖およびリン酸基により結合している。ヌクレオチドは、ピリミジン二量体でのようにそれらの核酸塩基を経由して繋がっているものであってもよい。
【0247】
ポリヌクレオチドに含有されるヌクレオチドとしては、これらに限定されないが、アデノシン一リン酸(AMP)、グアノシン一リン酸(GMP)、チミジン一リン酸(TMP)、ウリジン一リン酸(UMP)、5-メチルシチジン一リン酸、5-ヒドロキシメチルシチジン一リン酸、シチジン一リン酸(CMP)、環状アデノシン一リン酸(cAMP)、環状グアノシン一リン酸(cGMP)、デオキシアデノシン一リン酸(dAMP)、デオキシグアノシン一リン酸(dGMP)、デオキシチミジン一リン酸(dTMP)、デオキシウリジン一リン酸(dUMP)、デオキシシチジン一リン酸(dCMP)およびデオキシメチルシチジン一リン酸が挙げられる。ヌクレオチドは、好ましくは、AMP、TMP、GMP、CMP、UMP、dAMP、dTMP、dGMP、dCMPおよびdUMPから選択される。ヌクレオチドは、無塩基(すなわち核酸塩基を欠く)であってもよい。ヌクレオチドはまた、核酸塩基および糖を欠くものであってもよい(すなわちC3スペーサーであってもよい)。
【0248】
通常、ポリヌクレオチドは、DNAおよび/またはRNA、好ましくは、DNAからなる、またはそれらを含有する。
【0249】
ポリヌクレオチドの長さは、少なくとも10、少なくとも50、少なくとも100、少なくとも150、少なくとも200、少なくとも250、少なくとも300、少なくとも400または少なくとも500のヌクレオチドまたはヌクレオチド対であってもよい。
【0250】
本開示の方法により生成したポリヌクレオチドの用途
本開示の方法により提供され、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、多くの潜在的な用途を有する。用途は特に限定されず、本明細書で提供される、および本明細書に開示された方法により提供されるポリヌクレオチドはポリヌクレオチドが必要とされるいかなる用途にも使用することができる。
【0251】
いくつかの実施形態では、本明細書で提供される方法は、純度が非常に高いポリヌクレオチドを準備することを可能とする。したがって、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、純度が高いことを要する用途に特に有用である。好ましくは、本開示の方法で得られるポリヌクレオチドの純度は、少なくとも99%、例えば少なくとも99.9%、例えば少なくとも99.99%、より好ましくは、少なくとも99.999%以上である。
【0252】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドの1つの用途は、PCR(ポリメラーゼ鎖反応)での用途である。PCRの実施方法は当業者にとって周知である。例えば、PCRを実施する1つの実施形態では、ポリメラーゼが鎖延長を触媒できるような条件下で標的ポリヌクレオチドに相補的であるプライマーを標的ポリヌクレオチドと接触させることを含み、これにより標的ポリヌクレオチドを増幅する。本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、それらの高い純度により、PCR用プライマーとして特に有用である。
【0253】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドのもう1つの用途は、治療用ポリヌクレオチドの調製での用途である。治療用ポリヌクレオチドは、多様な病状の処置で使用するための研究が行われており、抗がん薬として、および抗ウイルス薬としての特定の用途を有する。
【0254】
本明細書で提供されるポリヌクレオチドのさらなる用途は、次世代シーケンシング技術での用途を含む。例えば、本明細書で提供されるポリヌクレオチドは、下記で説明されるドロップシーケンスシーケンシング法等の単一細胞シーケンシング技術のバーコードとして使用することができる。
【0255】
単一細胞シーケンシング技術
本発明の方法は、細胞のゲノムをシーケンシングする方法における使用、特に「ドロップシーケンス」技術として知られる細胞シーケンシング技術において使用するための、支持体と結合したポリヌクレオチドを生成するために有利に使用されうる。同様に、本発明のいくつかの化合物は、ドロップシーケンス技術が関与する方法において有利に使用されうる。
【0256】
標準ドロップシーケンス技術では、マイクロ流体デバイスは、油中の水滴のエマルションであって、水滴のそれぞれが、単一の生体細胞(例えばヒト細胞等の哺乳類の細胞、または細菌性細胞)を最大量、およびポリヌクレオチド「バーコード」を規定するポリヌクレオチド配列と結合したバーコードされた固体支持体、例えばバーコードされたビーズを含有するエマルションを生成するために使用される。本発明の支持体と結合したポリヌクレオチドは、この手法で使用することができる。
【0257】
より詳細には、ドロップシーケンスシーケンシングで使用するための、支持体と結合したポリヌクレオチドは、通常、標的細胞ポリヌクレオチド(cellular target polynucleotides)、ポリヌクレオチド「バーコード」およびユニバーサル配列を識別するための分子指標を含む。支持体と結合したポリヌクレオチドは通常、3’-ポリT末端を含み、すなわち、ポリヌクレオチドの3’末端にそれらの核酸塩基としてのチミンを有する、連続したいくつかの、例えば約5~約50、例えば約10~約40、例えば約30のヌクレオチド単位が存在する。分子指標は、約5~約15のヌクレオチドを含みうる。バーコードは、約4~約50、例えば約5~約30、例えば約6~約20、例えば約8~約15のモノマー単位を有しうる。ユニバーサル配列は、任意の所望の長さを有するものであってもよい。
【0258】
細胞は通常、5’-ポリA領域を有するmRNAを含有する。すなわち、mRNAの5’末端に、核酸塩基としてアデニンを有する、連続したいくつかのヌクレオチドが存在する。通常、ドロップシーケンス技術では、細胞は溶解し、それらのmRNAはそれらのそれぞれの液滴中に放出される。mRNA鎖の5’-ポリA領域は、支持体と結合したポリヌクレオチドの3’-ポリT末端にハイブリダイズすることにより、単一細胞から単一の固体支持体上にmRNA鎖を捕捉する。得られた支持体と結合したポリヌクレオチドmRNA集合体は、多くの場合、「STAMPs」-微粒子に結合した単一細胞トランスクリプトーム(Single cell Transcriptomes Attached to MicroParticles)と呼称される。
【0259】
その後、エマルションを破壊し、STAMPSを放出させてもよく、それはトランスクリプトームライブラリを作成するために使用されうる。STAMPSは、固体支持体上のバーコードにより識別することができ、逆転写、PCRおよびシーケンシングを経てmRNA鎖配列を決定することができる。
【0260】
従来は、ドロップシーケンス技術で使用される3’-ポリT末端を有する支持体と結合したポリヌクレオチドは、mRNA鎖を用いるハイブリダイズに利用可能な遊離の3’末端を得るために、5’から3’方向の固相ポリヌクレオチド合成を用いて固体支持体上で直接的に合成されていた。
【0261】
しかし、本発明の化合物および方法は、3’末端でバーコードされた固体支持体と結合した、ドロップシーケンス技術で使用するための、支持体と結合したポリヌクレオチドを生成するために使用することができる。これは、下記を含むいくつかの利点がある:(i)バーコードされた支持体と結合したポリヌクレオチドの生成に必要な試薬がはるかに安価である、特に、3’から5’方向の固相ポリヌクレオチド合成に通常使用される、いわゆる「標準」ヌクレオチドホスホロアミダイトは、5’から3’方向への合成で通常使用されるいわゆる「リバースヌクレオチドホスホロアミダイト」(reverse nucleotide phosphoramidites)よりもおよそ1桁分安価である;(ii)3’から5’方向の固相ポリヌクレオチド合成のカップリング効率は通常、5’から3’方向の合成よりも高い;および(iii)市販の「標準の」ヌクレオチドホスホロアミダイトの多様性は、市販の「リバースヌクレオチドホスホロアミダイト」よりもはるかに多く、それは優れたカスタマイズ性、したがってmRNA鎖を捕捉するポリヌクレオチドの改良を可能とする。
【0262】
3’から5’方向で合成したこれらのバーコードされた支持体と結合したポリヌクレオチドは、光励起を使用して光切断性リンカーを切断させて、エマルションを破壊する前に、ポリヌクレオチドがそれらのバーコードされた支持体から切断されるドロップシーケンス技術で使用することができる。後続の逆転写工程およびPCR工程は、その時に「液滴で」実施して、個々の水滴のそれぞれに存在するmRNA鎖をシーケンシングすることができる。
【0263】
したがって、本明細書では、細胞により発現されたポリヌクレオチドをシーケンシングする方法であって、本明細書に記載の支持体と結合したポリヌクレオチドを準備することであって、前記ポリヌクレオチドが本明細書に記載の光切断性リンカーにより前記支持体と結合していることと、支持体と結合したポリヌクレオチドまたは光切断した生成物が標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする条件下で、前記支持体と結合したポリヌクレオチドまたは前記支持体と結合したポリヌクレオチドの光切断した生成物を標的ポリヌクレオチドと接触させることと、標的ポリヌクレオチドに相補的な相補ポリヌクレオチド鎖を酵素的に合成することと、合成した相補ポリヌクレオチド鎖またはそれに相補的なポリヌクレオチド鎖をシーケンシングすることにより、標的ポリヌクレオチドの配列を決定することとを含む、方法が提供される。
【0264】
本発明のさらなる実施形態
本明細書ではまた、
- 本明細書に記載のとおりの、光切断性リンカー、例えば式(Ia)の化合物で修飾された固体支持体と、
- 好ましくは、複数のヌクレオチドモノマーを含むポリヌクレオチドを合成するための試薬と
を含む、ポリヌクレオチドを調製するためのキットが提供される。
【0265】
好ましくは、固体支持体および光切断性リンカーは本明細書に規定のとおりである。
さらに、ポリヌクレオチド合成を実施するための装置であって、
- 本明細書に記載のとおりの、光切断性リンカーで修飾された固体支持体と、
- 固体支持体に照射して光切断性リンカーを切断させる光源と
を備える、装置が提供される。
【0266】
好ましくは、固体支持体、光源および光切断性リンカーは本明細書に規定のとおりである。
【0267】
方法
本発明の化合物は、任意の好適な方法により調製することができる。本発明の代表的な化合物の通常の合成ルートの詳細は、以下および実施例で説明されている。
【0268】
要約すると、本発明の化合物は、下記スキームによる反応で通常調製することができる:
【0269】
【化38】
【0270】
出発材料SMは容易に入手できる。A:SMの、例えばSOClとの反応は、例えばNBSが(A)基のアルキルを官能化するために使用される前に、例えばRのグリニャール誘導体との反応のためにカルボン酸を活性化させる。他の官能化化学も容易に利用できる。B:カルボン酸の還元は、例えばNaBHを使用して達成して(QがOである場合に)アルコールを得ることができる。QがO以外である場合、アルコールを他の官能基に変換するために標準的な変換を使用することができる。C:(D:)硫黄含有CR 誘導体と反応させて工程Eでヌクレオチド、ヌクレオシドまたはポリヌクレオチドと反応させるための反応基を導入する前に、臭素をアジ化物に変換するためにNaNを使用することができる。その後、アジ化物は、例えばFの1つまたは複数の求核置換工程を経由して、通常の化学を使用して、固体支持体と結合させるために連結基に変換することができる。
【0271】
本発明の例示の化合物の合成ルートの詳細は下記で説明されている。
さらなる実施形態
以下は、本発明の付番された態様である。
【0272】
[1]
ポリヌクレオチドまたはその類縁体もしくは誘導体を製造する方法であって、
(i)(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体
【0273】
【化39】
【0274】
(式中、
- (N)はヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であり、
- Qは酸素原子または硫黄原子であり、
- Rはそれぞれ独立して、水素、メチル、エチル、C~Cハロアルキルおよびハロゲン基から選択され、
- Rはメチル、エチルまたはC~Cハロアルキルであり、
- (A)は2-ニトロベンジル基であり、前記2-ニトロベンジル基は、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから独立して選択される1つ、2つまたは3つの基で置換されていてもよく、ここで、Rはそれぞれ独立して、水素、置換されていてもよいC~Cアルキルおよび置換されていてもよいC~Cアルコキシルから選択され、Rはそれぞれ独立して、水素および置換されていてもよいC~Cアルキル基から選択される)
を準備することと、
(ii)1つまたは複数の追加のヌクレオシド単位、ヌクレオチド単位および/またはそれらの類縁体もしくは誘導体を導入することにより、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の鎖長を延長することと、
(iii)式(I)の化合物を光照射することにより、上記固体支持体から得られたポリヌクレオチドを切断することと
を含む、方法。
【0275】
[2]
- Qが酸素原子であり、ならびに/または
- Rがそれぞれ独立して、水素、メチル、Cフルオロアルキルおよびフッ素から選択され、好ましくは、Rがそれぞれ水素であり、ならびに/または
- Rがメチル、エチルもしくはC~Cフルオロアルキルであり、好ましくは、Rがメチルである、態様1の方法。
【0276】
[3]
(A)が連結基と共有結合により結合しており、連結基が共有結合により固体支持体と結合している、態様1または態様2の方法。
【0277】
[4]
(A)が式(A-1)または式(A-2)で表される、態様3の方法
【0278】
【化40】
【0279】
(式中、
- R、R、RおよびRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NR、-C(O)R、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択され、ここで、RおよびRは態様1に規定のとおりであり、
- Lは連結基であり、
- Zは固体支持体である)。
【0280】
[5]
、R、RおよびRがそれぞれ独立して、水素、フッ素、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-OC(O)Rおよび-NHC(O)Rから選択され、RおよびRが態様1に規定のとおりであり、好ましくは、R、R、RおよびRはそれぞれ水素またはメトキシである、態様4の方法。
【0281】
[6]
連結基が、C~C20アルキレン基、C~C20アルケニレン基、C~C20アルキニレン基および/またはヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドを含み、前記アルキレン基、アルケニレン基またはアルキニレン基が、ヘテロ原子;亜リン酸基;リン酸基;カルボニル基;C~C10アリール基;C~C10カルボシクリル基;5~10員のヘテロアリール基;および5~10員の飽和ヘテロ環基または部分不飽和ヘテロ環基から選択される1つまたは複数の基で中断および/または末端化されていてもよく、連結基がさらに置換されていてもよい、態様3~5のいずれか1つの方法。
【0282】
[7]
連結基が、ホスホロアミダイト基を介して固体支持体と結合している、態様2~6のいずれか1つの方法。
【0283】
[8]
固体支持体が、直径が約10~約1000μmである粒子を含有する、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0284】
[9]
固体支持体がガラス、セラミック、またはポリマー樹脂を含有する、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0285】
[10]
(N)が、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体の3’位または5’位で、式(I)の隣り合う酸素原子と繋がっている、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0286】
[11]
(N)が式(N-1)または式(N-2)で表される、先行する態様のいずれか1つの方法
【0287】
【化41】
【0288】
(式中、
- Xは酸素原子、窒素原子、硫黄原子または-C(R)-であり、
- RおよびRDRはそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、置換されていてもよいC~Cアルキル、-OR、-SR、-NR、-C(O)OR、-C(O)NRおよび-C(O)Rから選択され、ここで、RおよびRは態様1に規定のとおりであり、RDRが-ORである場合、R基、および、R基のうちの1つが一緒に繋がって架橋モチーフを形成していてもよく、
- Rは水素、ヒドロキシル保護基、ホスホリル基またはその塩もしくは酸、ジホスホリル基(-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、トリホスホリル基(-P(O )-P(O )-O-P(O ))またはその塩もしくは酸、または、ヌクレオシド、ヌクレオチドもしくはポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体とのリン系結合であり、
- Rは置換されていてもよい天然核酸塩基もしくは非天然核酸塩基またはその誘導体もしくは類縁体であり、
- 波線は、式(I)の化合物との結合点を示している)。
【0289】
[12]
- Xが、酸素原子であり、ならびに/または
- Rがそれぞれ独立して、水素、ハロゲン、C~Cアルキル、C~CハロアルキルおよびC~Cアルコキシルから選択され;好ましくは、Rはそれぞれ水素であり、ならびに/または
- RDRが水素もしくはハロゲンであり、好ましくは、RDRは水素であり、ならびに/または
- Rが水素もしくはヒドロキシル保護基である、態様11の方法。
【0290】
[13]
工程(i)が、
(a)式(Ia)の化合物
【0291】
【化42】
【0292】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は、態様1~9に規定のとおりであり、RはC~Cアルキルである)
を準備することと、
(b)式(Ia)の化合物を、ヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であって、好ましくは態様11または態様12に規定の式(N-1)または式(N-2)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と反応させることにより、式(I)の化合物を形成することと
を含む、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0293】
[14]
工程(i)が、式(I)または式(Ia)の化合物
【0294】
【化43】
【0295】
(式中、(N)、Q、R、R、Rおよび(A)は、先行する態様のいずれか1つに規定のとおりである)
を固体支持体と結合させることを含む、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0296】
[15]
工程(ii)で鎖長を延長することが、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体をヌクレオシドまたはその誘導体と接触させることにより、リン系結合を形成する工程を1回または複数回実施することを含む、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0297】
[16]
工程(ii)で鎖長を延長することが、
(a)(i)3’位にホスホロアミダイト基、および5’位にヒドロキシル保護基;または(ii)5’位にホスホロアミダイト基、および3’位にヒドロキシル保護基を有するヌクレオシドを準備する工程と、
(b)工程(a)のヌクレオシドホスホロアミダイトを活性化させる工程と、
(c)支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体を、活性化したヌクレオシドホスホロアミダイトと接触させることにより亜リン酸トリエステル結合を形成する工程と、
(d)亜リン酸トリエステル結合を酸化させてホスホトリエステル結合を形成する工程と、
(e)得られた支持体と結合したポリヌクレオチドの末端ヌクレオシドからヒドロキシル保護基を除去する工程と
の上記工程(a)~(e)を1回または複数回実施することを含む、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0298】
[17]
工程(ii)の後かつ工程(iii)の前に、支持体と結合したポリヌクレオチドを脱保護する1つまたは複数の工程をさらに含む、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0299】
[18]
工程(iii)が、波長が約300~約500nmであるUV光を使用して式(I)の化合物を光照射することを含む、先行する態様のいずれか1つの方法。
【0300】
[19]
(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、またはそれらの誘導体もしくは類縁体
【0301】
【化44】
【0302】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は態様1~9のいずれか1つに規定のとおりであり、
(N)は、ヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体であり、好ましくは態様11または12に規定のとおりの式(N-1)または式(N-2)で表されるヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体である)。
【0303】
[20]
式(I)の化合物
【0304】
【化45】
【0305】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は態様1~9のいずれか1つに規定のとおりであり、
(N)は、態様11または12に規定のとおりの式(N-1)または式(N-2)で表される)。
【0306】
この態様では、疑義を避けるために、(A)は任意で固体支持体と結合していてもよく、すなわち、固体支持体は存在していても存在していなくてもよい。
【0307】
[21]
(A)で固体支持体と結合している、支持体と結合した式(Ia)の化合物
【0308】
【化46】
【0309】
(式中、Q、R、Rおよび(A)は先行する態様のいずれか1つに規定のとおりである)。
【0310】
[22]
態様19に規定の支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を製造する方法であって、
(a)態様21に規定の(A)で固体支持体と結合している式(Ia)の化合物を準備することと、
(b)式(Ia)の化合物をヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体と反応させて、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を製造することと
を含む、方法。
【0311】
[23]
(A)で固体支持体と結合した式(I)の化合物である、支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチド、ポリヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体を含む、固相ポリヌクレオチド合成のための固体支持体カラム
【0312】
【化47】
【0313】
(式中、(N)、Q、R、Rおよび(A)は、先行する態様のいずれか1つに規定のとおりである)。
【0314】
[24]
ポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体を合成するための、態様19に規定の支持体と結合したヌクレオシド、ヌクレオチドまたはそれらの誘導体もしくは類縁体、態様20に規定の式(I)の化合物、または態様21に規定の式(Ia)の化合物の使用。
【0315】
[25]
態様1から18のいずれか1つに規定の方法により得られるポリヌクレオチドまたはその誘導体もしくは類縁体。
【0316】
特定の実施形態、特定の構成、ならびに材料および/または分子について、本発明による方法について本明細書で論じてきたが、本発明の範囲および精神から逸脱することなく、形態および詳細において様々な変更または修正を行うことができることを理解されたい。以下の実施例は、特定の実施形態をより良く説明するために提供されるものであり、これらは本出願を限定するものとみなされるべきではない。本出願は、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【実施例
【0317】
実施例
合成例1
1-(5-メチル-2-ニトロフェニル)エタン-1-オンの合成
【0318】
【化48】
【0319】
5-メチル-2-ニトロ安息香酸(5g,27.6mmol)の無水トルエン溶液(30mL)にチオニルクロリド(6mL,82.8mmol)を加え、混合物をアルゴン下で80℃で3時間還流させた。混合物を濃縮して5-メチル-2-ニトロベンゾイルクロリドを黄色油(5.5g)として得て、さらなる精製を行うことなく進められた。
【0320】
無水塩化マグネシウム(2.36g,24.8mmol)およびマロン酸ジエチル(5mL,33mmol)の無水酢酸エチル(80mL)懸濁液に無水トリエチルアミン(16mL)を0℃でゆっくり加えた。45分間撹拌した後、5-メチル-2-ニトロベンゾイルクロリド(5.5g)の無水酢酸エチル溶液(10mL)を加えた。混合物を60℃に加熱し、30分間撹拌した。一旦完了した後、反応を酢酸エチルで抽出し、希塩酸(1M)、水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、真空中で濃縮した。氷酢酸(30mL)および濃硫酸(6mL)の溶液を加え、混合物を12時間還流させた。反応混合物を氷浴で冷却し、水酸化ナトリウムでアルカリ性にし、生成物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチルを0~50%含むヘキサン)による精製前にジクロロメタンで抽出して表題の化合物(3.79g,21.2mmol,77%)を得た。
【0321】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 8.03 (d, 1H, J = 8.4 Hz, CH Ar), 7.38 (m, 1H, CHAr), 7.18 (m, 1H, CH Ar), 2.54 (s, 1H, CH 3CO), 2.48 (s, 1H, CH 3).
合成例2
1-(5-(ブロモメチル)-2-ニトロフェニル)エタン-1-オンの合成
【0322】
【化49】
【0323】
1-(5-メチル-2-ニトロフェニル)エタン-1-オン(3.79g,21.2mmol)の無水アセトニトリル溶液(25mL)にN-ブロモスクシンイミド(4.14g,23.3mmol)および1,1’-アゾビス(シクロヘキサンカルボニトリル)(0.52g,2.12mmol)を加え、混合物を12時間還流させた。室温に冷却した後、溶媒を除去し、残渣をトルエン(25mL)に溶解させ、濾過した。濾液を濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチルを0~50%含むヘキサン)により精製して表題の化合物(3.74g,14.5mmol,68%)を得た。
【0324】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 8.09 (d, 1H, J = 8.4 Hz, CH Ar), 7.62 (dd, 1H, J = 8.5, 2.0 Hz, CH Ar), 7.43 (d, 1H, J = 2.0 Hz, CH Ar), 4.50 (s, 2H, CH 2Br), 2.57 (s, 1H, CH 3CO).
合成例3
1-(5-(ブロモメチル)-2-ニトロフェニル)エタン-1-オールの合成
【0325】
【化50】
【0326】
1-(5-(ブロモメチル)-2-ニトロフェニル)エタン-1-オン(3.74g,14.5mmol)を無水メタノール(38mL)および無水ジオキサン(25mL)の混合物に溶解させ、その際に、水素化ホウ素ナトリウム(0.822g,21.7mmol)を0℃でゆっくり加えた後、それを12時間かけて室温に温めた。水(60mL)および1M塩酸(15mL)を加え、懸濁液を酢酸エチルで抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した後、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチルを0~50%含むヘキサン)により精製して、表題の化合物(3.38g,13.0mmol,90%)を得た。
【0327】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.91 (d, 1H, J = 8.4 Hz, CH Ar), 7.87 ppm (d, 1H, J = 2.0 Hz, CH Ar), 7.45 (m, 1H, CH Ar), 5.46 (q, 1H, J = 6.4 Hz, CH3CH), 4.51 (s, 1H, CH 2Br), 2.27 (br. s, 1H, OH), 1.58 (d, 3H, J = 6.4 Hz, CH 3CH).
合成例4
1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エタン-1-オールの合成
【0328】
【化51】
【0329】
1-(5-(ブロモメチル)-2-ニトロフェニル)エタン-1-オール(2.49g,9.57mmol)の無水ジメチルホルムアミド溶液(30mL)にアジ化ナトリウム(0.93g,14.4mmol)を加え、混合物を室温で3時間撹拌した。混合物を濃縮した後、水で酢酸エチルから抽出し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチルを0~50%含むヘキサン)による精製前に濃縮して、表題の化合物(1.95g,8.77mmol,92%)を得た。
【0330】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.95 (d, 1H, J = 8.4 Hz, CH Ar), 7.81 (d, 1H, J = 2.0 Hz, CH Ar), 7.39 (dd, 1H, J = 8.4, 2.0 Hz, CH Ar), 5.48 (q, 1H, J = 6.4 Hz, CH3CH), 4.49 (s, 2H, CH 2N3), 2.17 (br. s, 1H, OH), 1.59 (d, 3H, J = 6.4 Hz, CH 3CH).
合成例5
((1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)(メチル)スルファンの合成
【0331】
【化52】
【0332】
1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エタン-1-オール(1.65g,7.4mmol)のDMSO溶液(38mL)に無水酢酸(57mL)および氷酢酸(38mL)を加え、反応混合物を室温で20時間撹拌した。反応混合物を氷冷した飽和炭酸ナトリウム水溶液中に流し入れ、さらに30分間撹拌した後、酢酸エチルで抽出した。無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濃縮させる前に、合わせた有機層を飽和炭酸ナトリウム水溶液、水および食塩水で洗浄した。粗体物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチルを0~30%含むヘキサン)により精製して表題の化合物(1.7g,6mmol,81%)を得た。
【0333】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 7.96 (d, 1H, J = 8.4 Hz, CH Ar), 7.72 (d, 1H, J = 2.0 Hz, CH Ar), 7.39 (dd, 1H, J = 8.4, 2.0 Hz, CH Ar), 5.45 (q, 1H, J = 6.4 Hz, CH3CH), 4.64 (d, 1H, J = 11.5 Hz, CH 2SCH3), 4.49 (s, 2H, CH 2N3), 4.35 (d, 1H, J = 11.5 Hz, CH 2SCH3), 2.13 (s, 3H, CH2SCH 3), 1.56 (d, 3H, J = 6.5 Hz, CH 3CH).
合成例6
3’-O-((1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)チミジンの合成
【0334】
【化53】
【0335】
-40℃の((1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)(メチル)スルファン(1.7g,6mmol)および1-((2R,4S,5R)-5-(((tert-ブチルジメチルシリル)オキシ)メチル)-4-ヒドロキシテトラヒドロフラン-2-イル)-5-メチルピリミジン-2,4(1H,3H)-ジオン(2g,5.7mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(18mL)にN-ヨードスクシンイミド(1.35g,6mmol)および4Åモルキュラーシーブス(1.8g)に続いてトリフル酸(0.53mL,6mmol)を加え、混合物を30分間撹拌した。反応をトリエチルアミンでクエンチし、セライトを通して濾過させた後、真空中で濃縮した。残渣を酢酸エチル中に溶解させ、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液で洗浄した。合わせた有機層を飽和炭酸ナトリウム、水および食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空中で濃縮した。残渣を無水メタノール(54mL)に溶解させ、フッ化アンモニウム(2.1g,57mmol)を加え、混合物を、2時間還流した後、室温に12時間冷却した。反応混合物を真空中で濃縮し、フラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチルを0~100%含むヘキサン)により精製して表題の化合物(1.2g,2.52mmol,42%)を得た。
【0336】
1H NMR (400 MHz, CDCl3) δ ppm 8.66 (br. S., 1H, NH), 7.96 (d, 0.5H, J = 2.6 Hz, CHAr), 7.94 (d, 0.5H, J = 2.7 Hz, CHAr), 7.73-7.70 (m, 1H, CHAr), 7.42-7.32 (m, 2H, CHAr, CH 6), 6.06 (t, 0.5H, J = 6.9 Hz, CH 1’), 6.01 (t, 0.5H, J = 6.9 Hz, CH 1’), 5.41-5.34 (m, 1H, CHCH3), 4.77 (d, 0.5H, J = 7.3 Hz, OCH 2O), 4.74 (d, 0.5H, J = 7.2 Hz, OCH 2O), 4.6 (d, 0.5H, J = 7.2 Hz, OCH 2O), 4.57 (d, 0.5H, J = 7.3 Hz, OCH 2O), 4.52-4.45 (m, 2.5H, CH 2N3, CH 3’), 4.38 (m, 0.5H, CH 3’), 4.09 (q, 0.5H, J = 2.9 Hz, CH 4’), 3.99-3.91 (m, 1H, CH 4’, CH 5’), 3.86-3.78 (m, 1H, CH 5’), 3.56-3.5 (m, 0.5H, CH 5’), 2.69 (br. S., 0.5H, OH), 2.59 (br. S., 1H, OH), 2.44-2.38 (m, 1H, CH 2’), 2.34-2.25 (m, 0.5H, CH 2’), 2.18-2.12 (m, 0.5H, CH 2’), 1.93-1.90 (m, 3H, CH 3), 1.57 (d, 3H, J = 6.4 Hz, CHCH 3).
合成例7
5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-3’-O-((1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)チミジンの合成
【0337】
【化54】
【0338】
3’-O-((1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)チミジン(1.2g,2.52mmol)を無水ピリジンで3回共蒸発させた後、アルゴン下で無水ピリジン(10mL)に溶解させた。4,4’-ジメトキシトリチルクロリド(1g,3mmol)を1時間かけて少量ずつ加え、反応を室温でさらに11時間撹拌した。反応をメタノール(5mL)でクエンチし、トリエチルアミン(1mL)を加えた。反応を10分間撹拌した後、溶媒を真空中で除去した。粗体生成物をフラッシュクロマトグラフィー(酢酸エチルを0~100%含む(トリエチルアミンを0.1%含むジクロロメタン))を経由して精製して、表題の化合物(1.85g,2.38mmol,94%)を得た。
【0339】
1H NMR (400 MHz, DMSO d6) δ ppm 11.35-11.34 (m, 1H, NH), 7.99-7.94 (m, 1H, CHAr), 7.70-7.67 (m, 1H, CHAr), 7.55-7.21 (m, 11H, CHAr, CH 6, 9 x CH DMTr), 6.92-6.86 (m, 4H, CH DMTr), 6.13 (t, 0.5H, J = 7.0 Hz, CH 1’), 6.10-6.04 (m, 0.5H, CH 1’), 5.23-5.10 (m, 1H, CHCH3), 4.72 (d, 1H, J = 7.1 Hz, OCH 2O), 4.63-4.53 (m, 2.5H, CH 2N3, OCH 2O), 4.5 (d, 0.5H, J = 7.5 Hz, OCH 2O) 4.44-4.36 (m, 1H, CH 3’), 4.01-3.97 (m, 0.5H, CH 4’), 3.92-3.88 (m, 0.5H, CH 4’), 3.73 (s, 6H, 2 x OCH 3), 3.27-3.19 (m, 1H, CH 5’), 3.18-3.08 (m, 1H, CH 5’), 2.36-2.30 (m, 1H, CH 2’), 2.22-2.01 (m, 1H, CH 2’), 1.49-1.43 (m, 4.5H, CH 3, CHCH 3), 1.34 (d, 1.5H J = 6.4 Hz, CHCH 3).
合成例8
5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-3’-O-((1-(5-((4-(4-ヒドロキシブチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)メチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)チミジンの合成
【0340】
【化55】
【0341】
5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-3’-O-((1-(5-(アジドメチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)チミジン(0.7g,0.9mmol)および5-ヘキシン-1-オール(0.15mL,1.35mmol)を、テトラヒドロフラン/tert-ブタノール/水(13.5mL/4.5mL/4.5mL)の3:1:1混合物に加えた。7.5%の硫酸銅(II)水溶液(2mL)および(+)-ナトリウムL-アスコルビン酸の1M水溶液(2.25mL)を加え、反応を室温で2時間撹拌した。混合物を酢酸エチルで希釈し、有機相を飽和重炭酸ナトリウムおよび食塩水(水で10%に希釈した)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、濾過し、濃縮した。粗体物をフラッシュクロマトグラフィー(メタノールを0~10%含む(トリエチルアミンを0.1%含むジクロロメタン))により精製して、表題の化合物(0.7g,0.8mmol,59%)を得た。
【0342】
1H NMR (400 MHz, DMSO d6) δ ppm 11.35-11.34 (m, 1H, NH), 7.96-7.89 (m, 2H, CHAr, CH トリアゾール), 7.61-7.59 (m, 1H, CH 6), 7.5-7.47 (CHAr), 7.42-7.20 (m, 10H, CHAr, CH DMTr), 6.92-6.86 (m, 4H, CH DMTr), 6.16-6.04 (m, 1H, CH 1’), 5.67 (s, 1H, CH 2N), 5.63 (s, 1H, CH 2N), 5.17 (q, 0.5H, J = 6.4 Hz, CHCH3), 5.1 (q, 0.5H, J = 6.3 Hz, CHCH3), 4.67 (d, 1H, J = 7.2 Hz, OCH 2O), 4.51 (d, 0.5H J = 7.2, OCH 2O), 4.45 (d, 0.5H, J = 7.3 Hz, OCH 2O), 4.43-4.33 (m, 2H, CH 3’, OH), 4.0-3.95 (m, 0.5H, CH 4’), 3.95-3.9 (m, 0.5H, CH 4’), 3.74-3.72 (m, 6H, 2 x OCH 3), 3.42-3.36 (m, 2H, CH 2OH), 3.28-3.20 (m, 1H, CH 5’), 3.19-3.09 (m, 1H, CH 5’), 2.59 (t, 2H, J = 7.6 Hz, CH 2CH2 CH2), 2.38-2.29 (m, 1H, CH 2’), 2.24-2.03 (m, 1H, CH 2’), 1.64-1.54 (m, 2H, CH2CH 2 CH2), 1.51-1.38 (m, 6.5H, CH2CH2 CH 2, CH 3, CH 3), 1.3 (d, 1.5H, J = 6.5 Hz).
合成例9
5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-3’-O-((1-(5-((4-(4-[(2-シアノエチル)(N,N-ジイソプロピルアミノ)ホスフィノ]オキシブチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)メチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)チミジンの合成
【0343】
【化56】
【0344】
5’-O-(4,4’-ジメトキシトリチル)-3’-O-((1-(5-((4-(4-ヒドロキシブチル)-1H-1,2,3-トリアゾール-1-イル)メチル)-2-ニトロフェニル)エトキシ)メチル)チミジン(0.7g,0.8mmol)の無水ジクロロメタン溶液(6mL)を、アルゴン下で5分間脱気した後、無水ジイソプロピルエチルアミン(0.42mL,2.4mmol)を加えた。2-シアノエトキシ-N,N-ジイソプロピルアミノクロロホスフィン(0.214mL,0.96mmol)を滴下して加え、反応を室温で1時間撹拌した。反応混合物を無水ジクロロメタン(2×20mL)で希釈し、脱気した飽和塩化カリウム(30mL)で洗浄し、無水硫酸ナトリウムを通過させ、濃縮し、高真空下で乾燥させた。粗体生成物をアルゴン下でフラッシュクロマトグラフィー(100%ピリジンを0.2%含む酢酸エチル)により精製して表題の化合物(0.61g,0.57mmol,71%、ジアステレオマーの混合物)を無色のオイルとして得、濃縮およびアリコート後に脱気した無水アセトニトリル中に溶解させ、0.45μmシリンジフィルターを通して濾過した。
【0345】
1H NMR (400 MHz, CD3CN) δ ppm 8.96 (br. S., 1H, NH), 7.87 (d, 0.5H, J = 8.4 Hz, CHAr), 7.84 (d, 0.5H, J = 8.3 Hz, CH Ar), 7.57 (d, 0.5H, J = 6.7 Hz, CHAr), 7.56 (d, 0.5H, J = 6.2 Hz, CH Ar), 7.53 (s, 0.5H, CH トリアゾール), 7.51 (s, 0.5H, CH トリアゾール), 7.46-7.40 (m, 3H, CH 6, 2 x CH DMTr), 7.35-7.22 (m, 8H, CH Ar, 7 x CH DMTr), 6.89-6.85 (m, 4H, 4 x CH DMTr), 6.14 (dd, 0.5H, J = 7.8 Hz, 6.1 Hz, CH 1’) 6.09 (dd, 0.5H, J = 7.6 Hz, 6.2 Hz, CH 1’), 5.55 (s, 1H, CH 2N), 5.51 (s, 1H, CH 2N), 5.24 (q, 0.5H, J = 6.5 Hz, CHCH3), 5.17 (q, 0.5H, J = 6.4 Hz, CHCH3), 4.65 (d, 0.5H, J = 7.2 Hz, OCH 2O), 4.64 (d, 0.5H, J = 7.3 Hz, OCH 2O), 4.5 (d, 0.5H, J = 7.4 Hz, OCH 2O), 4.46 (d, 0.5H, J = 7.3 Hz, OCH 2O), 4.42-4.36 (m, 1H, CH 3’), 4.00-3.98 (m, 0.5H, CH 4’), 3.91-3.89 (m, 0.5H, CH 4’) 3.79-3.52 (m, 6H, 2 x CH(CH3)2, CH 2CH2CN, CH 2OP), 3.76 (s, 6H, 2 x OCH 3), 3.29 (dd, 1H, J = 3.67 Hz, 1.96 Hz, CH 5’), 3.18 (d, 1H, J = 3.55 Hz, CH 5’), 2.66 (t, 2H, J = 7.3 Hz, CH 2CH2 CH2), 2.69-2.59 (m, 2H, CH2CH 2CN), 2.4-2.24 (m, 1H, CH 2’), 2.1-2.0 (m, 1H, CH 2’), 1.72-1.56 (m, 4H, CH2CH2 CH 2, CH2CH 2 CH2), 1.51 (d, 1.5H, J = 1.1 Hz, CH 3), 1.47 (d, 1.5H, J = 1.2 Hz, CH 3), 1.45 (d, 1.5H, J = 6.4 Hz, CHCH 3), 1.35 (d, 1.5H, J = 6.5 Hz, CHCH 3) 1.13 (dd, 12 H, J = 10.3 Hz, 6.8 Hz, 2 x CH(CH 3)2). 31P {1H} NMR (162 MHz, CD3CN) δ ppm 148.3.
UV切断検討
サンプルからおよそ2cmに配置したハンドヘルドのAnalytik Jena UVP UVGL-25 4W UVランプを使用してUV切断を実施した。サンプルのmilli-Q水に対する365nmでの20分間の照射は、ほぼ定量的な切断をもたらした。
【0346】
標準のDNAホスホロアミダイト、固体支持体および試薬を、Link Technologies and Applied Biosystemsから購入した。ポリヌクレオチドの自動固体相合成をK&A H-8 SE DNA/RNA synthesiserで実施した。酸触媒化による脱トリチル化、カップリング、キャッピング、およびヨウ素酸化のサイクルと併せて、0.2マイクロモルまたは1.0マイクロモルスケールで合成を実施した。標準のDNAホスホロアミダイトを60単位カップリングした。内蔵型自動トリチルカチオン導電性モニタリング設備によりカップリング効率および全体の合成収率を測定し、全てのケースにおいて≧98.0%であった。その後、Applied Biosystems 394 synthesiserで、60分間室温で濃縮された水酸化アンモニウムを用いて固体支持体からポリヌクレオチドを切断した後、封管内で55℃で5時間加熱して核酸塩基および主鎖から保護基を除去した。XEVO G2-QTOF MS instrumentを使用してポリヌクレオチドの質量スペクトルをESモードで記録した。水中で260nmでAgilent Technologies Cary 60 UV-VisによりUV吸光度を実施した。
【0347】
実施例1
21merポリヌクレオチド配列(TTTTTTTTXTTTTTTTTTTTT、ここでXは光切断性リンカーである)を合成し、固体支持体から切断し、さらに精製することなく使用した。算出された質量は6658.48、見出された質量は6659.0であった。
【0348】
4mMのポリヌクレオチドの1mLのmilli-Q水溶液に365nmで20分間照射し、結果を質量分光法により分析した。主な生成物は、光切断機構により脱離した目的のTTTTTTTTT鎖であった。算出された質量は2675.77、見出された質量は2675.6であった。残りの材料は光切断性リンカーの残りを含有する一連のポリヌクレオチド鎖で構成されていた。無傷のままの21mer出発配列はなかった。
【0349】
同一の配列を使用した一方で、固体支持体からポリヌクレオチドを切断せずに実験を繰り返した。おおよそ0.05μmol相当の乾燥樹脂を1mLのmilli-Q水に入れ、365nmで20分間照射した。溶液を0.45μmシリンジフィルターに通した後、質量分光法で分析した。唯一見出された生成物は目的のTTTTTTTTT鎖であり、算出された質量は2675.77、見出された質量は2674.6であった。得られた溶液のUV-Vis吸光度は、切断がほぼ定量的であったことを示した。
【配列表】
2024542724000001.xml
【国際調査報告】