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特表2024-542729水素化段階と高温分離とを含むプラスチック熱分解油の処理方法
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  • 特表-水素化段階と高温分離とを含むプラスチック熱分解油の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】水素化段階と高温分離とを含むプラスチック熱分解油の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C10G 65/04 20060101AFI20241108BHJP
   C10G 45/02 20060101ALI20241108BHJP
   C10G 47/00 20060101ALI20241108BHJP
   C10G 47/20 20060101ALI20241108BHJP
   C10G 47/12 20060101ALI20241108BHJP
   C10G 45/06 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C10G65/04
C10G45/02
C10G47/00
C10G47/20
C10G47/12
C10G45/06 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532712
(86)(22)【出願日】2022-11-23
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2022082956
(87)【国際公開番号】W WO2023099304
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】2112908
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591007826
【氏名又は名称】イエフペ エネルジ ヌヴェル
【氏名又は名称原語表記】IFP ENERGIES NOUVELLES
(71)【出願人】
【識別番号】518035983
【氏名又は名称】レプソル・エセ・ア
【氏名又は名称原語表記】REPSOL, S.A.
【住所又は居所原語表記】C/ MENDEZ ALVARO, 44, 28045 MADRID, SPAIN
(74)【代理人】
【識別番号】100106091
【弁理士】
【氏名又は名称】松村 直都
(74)【代理人】
【識別番号】100199369
【弁理士】
【氏名又は名称】玉井 尚之
(74)【代理人】
【識別番号】100228175
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 充紀
(72)【発明者】
【氏名】ヴェイス ウィルフリード
(72)【発明者】
【氏名】デコティニー ドミニク
(72)【発明者】
【氏名】ボナルド ジェローム
(72)【発明者】
【氏名】リバス サングエサ イニーゴ
(72)【発明者】
【氏名】サントス マルティネス マルティン
(72)【発明者】
【氏名】カラスコ エルナンデス シーラ
【テーマコード(参考)】
4H129
【Fターム(参考)】
4H129AA02
4H129CA22
4H129DA21
4H129KA07
4H129KA08
4H129KA10
4H129KA12
4H129KC02X
4H129KC03X
4H129KC03Y
4H129KC04X
4H129KC10X
4H129KC13X
4H129KC28X
4H129KD13X
4H129KD15Y
4H129KD18X
4H129KD19X
4H129KD22X
4H129KD24X
4H129KD24Y
4H129KD25X
4H129KD26X
4H129MA01
4H129MA07
4H129MA12
4H129MB15B
4H129MB16B
4H129MB18A
4H129NA02
4H129NA04
4H129NA14
4H129NA15
4H129NA39
(57)【要約】
本発明は、プラスチック熱分解油を処理するための方法であって、以下を含む方法に関する:a)前記供給原料を、工程c)から得られた液状排出物の少なくとも一部との混合物中で、水素および触媒の存在中、140~340℃の温度で水素化する工程、b)前記水素化済み流出物を水素および触媒の存在中で水素処理する工程、c)水素化処理済み流出物を分離する工程であって、前記分離を、高温で高圧下に行い、ガス状流出物および液状流出物を得て、液状流出物の一部を、工程a)の上流にリサイクルする工程、d)低温で高圧下に、工程c)から得られたガス状流出物および液状流出物の他の部分および水溶液を供給して、分離を行い、炭化水素ベースの流出物を得る工程。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の処理のための方法であって、以下を含んでいる方法:
a) 水素化反応セクションにおいて行う水素化段階;n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化触媒を含み、前記水素化反応セクションに、前記供給原料を、分離段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部と、水素を含んでいる第1のガス流れとの混合物として、少なくとも給送し、前記水素化反応セクションを使用する際の平均温度は、140~400℃であり、水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1である;水素化された流出物を得る、
b) 水素化処理反応セクションにおいて行う水素化処理段階;n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それそれ、少なくとも1種の水素化処理触媒を含み、前記水素化処理反応セクションに、段階a)から得られた前記水素化済み流出物と、水素を含んでいる第2のガス流れとを少なくとも給送し、前記水素化処理反応セクションを使用する際の平均温度は、250~430℃であり、水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1である;水素化処理済み流出物を得る、
c) 分離段階;段階b)から得られた水素化処理済み流出物を給送し、前記段階を行う際の温度は、200~450℃であり、その際の圧力は、段階b)の圧力と実質的に同一である;第1のガス状流出物と、液状流出物とを少なくとも得る;液状流出物の一部を、段階a)の上流にリサイクルする、
d) 分離段階;第1のガス状流出物と、段階c)から得られた液状流出物の別の部分と、水溶液とを給送し、前記段階を行う際の温度は、20℃と200℃未満との間であり、その際の圧力は、段階c)の圧力と実質的に同一であるかまたはそれ以下である;第2のガス状流出物と、水性流出物と、炭化水素流出物とを少なくとも得る、
e) 場合による、段階d)から得られた炭化水素流出物の全部または一部の分画の段階;少なくとも第3のガス状流出物と、沸点が175℃以下である化合物を含んでいる少なくとも第1の炭化水素留分と、沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分とを得る、
f) 場合による、水素化分解反応セクションにおいて行う水素化分解段階;n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化分解触媒を含み、前記水素化分解反応セクションに、段階d)から得られた前記炭化水素流出物の少なくとも一部および/または段階e)から得られた沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分の少なくとも一部および水素を含んでいる第3のガス流れを給送し、前記水素化分解反応セクションを使用する際の平均温度は、250~450℃であり、水素分圧は、1.5~20.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1である;第1の水素化分解済み流出物を得る。
【請求項2】
分画段階e)を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素化分解段階f)を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
段階a)において、水素被覆率は、供給原料の容積(m)当たり水素250~800Sm(Sm/m)である、請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
分離段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部を、水素化段階a)の上流にリサイクルする前に予熱する、請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
段階a)にリサイクルされる段階c)から得られた液状流出物対プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の重量比は、0.01~10である、請求項1~5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の前処理の段階a0)を含み、前処理段階を、水素化段階a)の上流で行い、ろ過段階および/または静電分離段階および/または水溶液による洗浄の段階および/または吸着段階を含む、請求項1~6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
分離段階d)から得られた炭化水素流出物、または段階e)から得られた2つの液状炭化水素留分の少なくとも一方を、全部または一部、水蒸気分解段階g)に送り、当該段階g)を、少なくとも1つの熱分解炉において、700~900℃の温度および0.05~0.3MPaの相対圧力で行う、請求項1~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
段階a)の反応セクションは、配列可変方式で操作する少なくとも2基の反応器を使用する、請求項1~8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
アミンおよび/または硫黄化合物を含有している流れを、段階a)の上流に注入する、請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
段階c)、d)および/またはe)から得られたガス状流出物、および/または段階c)からの液状流出物および/または段階d)から得られた炭化水素流出物および/または段階e)から得られた第1および/または第2の炭化水素留分を、重金属の吸着の段階に供する、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法。
【請求項12】
前記水素化触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、マグネシア、粘土およびそれらの混合物から選ばれる担体と、第VIII族からの少なくとも1種の元素および第VIB族からの少なくとも1種の元素、または第VIII族からの少なくとも1種の元素のいずれかを含んでいる水素化脱水素機能基とを含む、請求項1~11のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記水素化処理触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、マグネシア、粘土およびそれらの混合物からなる群から選ばれる担体と、第VIII族からの少なくとも1種の元素および/または第VIB族からの少なくとも1種の元素を含んでいる水素化脱水素機能基とを含む、請求項1~12のいずれか1つに記載の方法。
【請求項14】
第2の水素化分解段階f’)をさらに含み、当該段階f’)を、水素化分解反応セクションにおいて行い、n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化分解触媒を含み、前記水素化分解反応セクションに、第1の水素化分解段階f)から得られた第1の水素化分解済み流出物の少なくとも一部と、水素を含んでいるガス流れとを給送し、前記水素化分解反応セクションを使用する際の温度は、250~450℃であり、水素分圧は、1.5~20.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1であり、第2の水素化分解済み流出物を得る、請求項1~13のいずれか1つに記載の方法。
【請求項15】
前記水素化分解触媒は、ハロゲン化アルミナ、ホウ素およびアルミニウムの酸化物の組み合わせ、無定形シリカ-アルミナおよびゼオライトから選ばれる担体と、第VIB族からの少なくとも1種の金属、および/または第VIII族からの少なくとも1種の金属を含んでいる水素化脱水素機能基とを含み、該第VIB族からの少なくとも1種の金属は、クロム、モリブデンおよびタングステンから単独でまたは混合物として選ばれ、該第VIII族からの少なくとも1種の金属は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよび白金から選ばれる、請求項1~14のいずれか1つに記載の方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1つに記載の方法によって得られた生成物。
【請求項17】
生成物の全重量に対して、以下のものを含む、請求項16に記載の生成物:
- 金属元素:全含有率は、10.0重量ppm以下である、
- 鉄元素を含み、その含有率は、200重量ppb以下である、および/または
- ケイ素元素:含有率は、5.0重量ppm以下である、および/または
- 硫黄:含有率は、500重量ppm以下である、および/または
- 窒素:含有率は、100重量ppm以下である、および/または
- 塩素元素:含有率は、10重量ppm以下である、および/または
- 水銀:含有率は、5重量ppb以下である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック熱分解油を処理して、ガソリン、ジェットまたはガスオイルの燃料の貯蔵のためのユニットにおいてあるいは水蒸気分解ユニット用の供給原料としてアップグレードされ得る炭化水素流出物を得るための方法に関する。より詳細には、本発明は、プラスチック廃棄物の熱分解から生じた供給原料を処理して前記供給原料が比較的多量に含有する可能性がある不純物を少なくとも部分的に除去するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
収集・選別のチャネルから得られたプラスチックは、熱分解の段階を経ることができ、とりわけ、熱分解油を得るようにする。これらのプラスチック熱分解油は、一般的に、発電のために焼却され、および/または工業用若しくは都市用の暖房ボイラーの燃料として用いられる。
【0003】
プラスチック熱分解油をアップグレードするための別のルートは、これらの熱分解油を水蒸気分解ユニットのための供給原料として用いて、オレフィンを(再)生成させることにあり、当該オレフィンは、所定のポリマーの構成モノマーである。しかしながら、プラスチック廃棄物は、一般に、いくつかポリマーの混合物、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリ塩化ビニルまたはポリスチレンの混合物である。さらに、用途に応じて、プラスチックには、ポリマーに加えて、他の化合物、例えば、可塑剤、顔料、染料あるいはまたはポリマー化触媒残渣が含有されている場合がある。プラスチック廃棄物には、さらに、例えば家庭ゴミに由来するバイオマスが少量で含有されていることがある。一方での廃棄物の処理、特に貯蔵、機械的処理、選別、熱分解と、さらに他方での熱分解油の貯蔵と輸送は、腐食を引き起こし得る。その結果として、プラスチック廃棄物の熱分解から得られた油には、多くの不純物、特にジオレフィン、金属、特に鉄、ケイ素、さらにはハロゲン化化合物、特に、塩素ベースの化合物、ヘテロ元素、例えば、硫黄、酸素および窒素、並びに不溶物が、しばしば高くかつ水蒸気分解ユニットまたは水蒸気分解ユニットの下流に位置するユニット、特にポリマー化方法および選択的水素化方法と不適合な含有率で含まれている。これらの不純物は、操作性の問題、特に腐食、コーキング、若しくは触媒失活の問題、あるいはまた標的ポリマーの使用における不適合性の問題を引き起こす可能性がある。ジオレフィンの存在は、ガム状物の形成を特徴とする熱分解油の不安定性の問題をもたらし得る。熱分解油中に存在する場合があるガム状物および不溶性物質は、加工処理において目詰まりの問題を引き起こす可能性がある。
【0004】
さらに、水蒸気分解段階の間に、石油化学産業に求められる軽質オレフィン、特に、エチレンおよびプロピレンの収率は、水蒸気分解に送られる供給原料の品質に強く依存する。BMCI(米国鉱山局相関指数(Bureau of Mines Correlation Index))は、炭化水素留分を特徴付けるためにしばしば用いられる。この指数は、原油から得られた炭化水素生成物のために開発されており、密度および平均沸点の測定値から計算される:それは、直鎖パラフィンについて0に等しく、ベンゼンについて100に等しい。それの値は、それ故に、分析される生成物が縮合芳香族構造を有するのに比例して増大し、ナフテンは、パラフィンと芳香族化合物との間の中間的なBMCIを有する。全体として、軽質オレフィンの収率が高くなるのは、パラフィン含有率が高くなる場合であり、それ故に、BMCIが減少する場合である。逆に、望ましくない重質化合物および/またはコークの収率が高くなるのは、BMCIが増加する場合である。
【0005】
特許文献1には、プラスチック廃棄物のリサイクルのための全体的方法が提案されており、この方法は、非常に一般的でありかつ比較的複雑であり、プラスチック廃棄物の熱分解のまさにその段階から水蒸気分解段階までの範囲にわたる。特許文献1の方法は、とりわけ、熱分解から直接的に得られた液相を、好ましくは、かなりストリジェントな、特に、温度に関してストリジェントな条件下に、例えば、260~300℃の温度で水素化処理する段階と、水素化処理流出物の分離の段階と、次の、分離された重質流出物の、好ましくは高温での、例えば、260~400℃の水素化脱アルキルの段階とを含む。
【0006】
未公開特許出願FR 21/00.026には、プラスチック熱分解油の処理のための方法であって、以下を含む、方法が記載されている:
a) 140~340℃での平均温度での少なくとも水素および少なくとも1種の水素化触媒の存在中での前記供給原料の水素化;段階a)の出口温度は、段階a)の入口温度よりも最低15℃高い;水素化された流出物を得る;
b) 少なくとも水素および少なくとも1種の水素化処理触媒の存在中での前記水素化済み流出物の水素化処理;水素化処理済み流出物を得る;段階b)の平均温度は、段階a)の平均温度より高い;
c) 水性流れ存在中、50~370℃の温度での水素化処理済み流出物の分離;少なくとも1つのガス状流出物、水性液状流出物および炭化水素液状流出物を得る。
【0007】
この出願FR 21/00.026において、ジオレフィンの水素化と水素化処理反応の一部、特にオレフィンの水素化の一部と水素化脱金属反応の一部、特にケイ素の保持は、1つの同じ段階(段階a)で、触媒の失活を制限するのに十分な温度で行われる。この同じ段階により、水素化反応、特にジオレフィンの一部の水素化のための反応からの熱を利用して、この段階における温度プロファイルを増加させるようにし、そのために、接触水素化セクションと接触水素化処理セクションとの間の加熱デバイスを不要にすることが可能となる。
【0008】
温度のコントロールは、段階a)において重要であり、相反する制約を満たさなければならない。一方で、入口温度および水素化反応セクション全体の温度は、水素化反応セクションの始めにおいてジオレフィンとオレフィンの水素化を可能にするために十分に低くなければならない。他方で、水素化反応セクションの入口温度は、触媒の失活を防ぐために十分に高くなければならない。水素化反応、特にオレフィンおよびジオレフィンの一部の水素化は、発熱性が高いため、水素化反応セクションにおいて温度の上昇プロファイルが観察される。このように、水素化反応セクションの終わりの温度がより高くなることにより、水素化脱金属および水素化脱塩素化の反応を行うことが可能になる。
【0009】
それ故に、この段階a)において行われる反応の全ての高発熱性の性質に起因して、反応媒体の温度のコントロールは、非常に重要であることが分かったのは、過度に高いレベルの温度は、以下を促進するためである:
- 動力学の熱加速の効果による反応の自己持続的な進行、さらには暴走、および
- 望ましくない副反応、例えばポリマー化、触媒のコーキングさらには分解反応。
【0010】
得られた生成物の一部の反応段階の少なくとも1つまたはその上流へのリサイクにより、一方で、不純物を希釈すること、他方で1つまたは複数の反応段階の温度をコントロールすることが有利に可能となることが知られていおり、伴われる反応は、高発熱性であり得る。出願FR 21/00.026には、このように、分離と水による洗浄の段階c)の後に得られた生成物の一部をリサイクルする可能性が記載されている(冷温条件下におけるリサイクル)。
【0011】
本発明は、リサイクルによる発熱性のコントロールのこの原則への改善を、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の処理のための方法スキームを提供することによって提供し、水素化段階a)の入口における高温液体のリサイクルの使用によって、温度の正確なコントロール、発熱性の改善された管理および異なる触媒ゾーンにおいて起こる異なる反応の管理を可能にする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】国際公開第2018/055555号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の概要)
より具体的には、本発明は、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の処理のための方法であって、以下を含んでいる方法に関する:
a) 水素化反応セクションにおいて行われる水素化段階;n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化触媒を含み、前記水素化反応セクションは、前記供給原料を、分離段階c)から得られる液状流出物の少なくとも一部と、水素を含んでいる第1のガス流れとの混合物として少なくとも給送され、前記水素化反応セクションが使用される際の平均温度は、140~400℃であり、水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1である;水素化された流出物を得る、
b) 水素化処理反応セクションにおいて行われる水素化処理段階;n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それそれ、少なくとも1種の水素化処理触媒を含み、前記水素化処理反応セクションは、段階a)から得られた前記水素化済み流出物と、水素を含んでいる第2のガス流れとを少なくとも給送され、前記水素化処理反応セクションが使用される際の平均温度は、250~430℃であり、水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)である;水素化処理済み流出物を得る、
c) 分離段階;段階b)から得られた水素化処理済み流出物を給送され、前記段階が行われる際の温度は、200~450℃であり、その際の圧力は、段階b)の圧力と実質的に同一である;第1のガス状流出物と、液状流出物とを少なくとも得る;液状流出物の一部は、段階a)の上流にリサイクルされる、
d) 分離段階;第1のガス状流出物と、段階c)から得られた液状流出物の別の部分と、水溶液とを給送され、前記段階が行われる際の温度は、20℃と200℃未満との間であり、その際の圧力は、段階c)の圧力と実質的に同一であるかまたはそれ以下である;第2のガス状流出物と、液状流出物と、炭化水素流出物とを少なくとも得る、
e) 場合による、段階d)から得られた炭化水素流出物の全部または一部の分画の段階;第3のガス状流出物と、沸点が175℃以下である化合物を含んでいる第1の炭化水素留分と、沸点が175℃超である化合物とを含んでいる第2の炭化水素留分とを少なくとも得る、
f) 場合による、水素化分解反応セクションにおいて行われる水素化分解段階;n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化分解触媒を含み、前記水素化分解反応セクションは、段階d)から得られた前記炭化水素流出物の少なくとも一部および/または段階e)から得られた沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分の少なくとも一部および水素を含んでいる第3のガス流れを給送され、前記水素化分解反応セクションが使用される際の平均温度は、250~450℃であり、水素分圧は、1.5~20.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1である;第1の水素化分解済み流出物を得る。
【0014】
本発明の目的の1つは、様々な反応、特に、温度に関して特定の操作条件を必要とする段階a)における水素化の開始とコントロールに必要な熱の供給を確保しつつ、水素化段階a)における反応の進行と発熱性をコントロールすることにある。
【0015】
本発明の別の目的は、段階c)から得られた液状流出物の一部の高温条件下および高圧下でのリサイクルによって、エネルギーの回収を最大にすることにある。これは、段階a)において必要な入口温度に達するエネルギーが、段階c)から生じる液状流出物の一部の熱によって少なくとも部分的に寄与されるためであり、これにより、コストの節約を達成するだけでなく、CO排出量を低減させることも可能となる。
【0016】
段階a)の上流で供給原料と液状流出物の一部を混合することにより、供給原料中の不純物を希釈することが可能になるが、供給原料を間接的に加熱することも可能になる。壁面との接触は、供給原料のホットスポットの原因となり、これは、ファウリングの原因となるガム状物および/またはコークの形成および供給原料を加熱するためのシステムおよびまた1つまたは複数の触媒床の圧力降下の増大を引き起こす。供給原料を間接的に加熱することにより、壁面との接触の際に200℃の温度を超える様な直接的な加熱を避けることが可能となる。
【0017】
本発明は、それ故に、水素化段階a)において使用される反応温度の正確なコントロールと、加えて好ましくは、間接的な方法でのシステムの加熱とを、水素化段階a)の上流での高温液体のリサイクルの使用によって同時に可能にする、水素化処理方法スキームに関する。
【0018】
本発明による方法の別の利点は、高温分離段階c)と、これに続く冷温分離/洗浄段階d)との組み合わせにより、塩化アンモニウム塩の形態で塩素を除去することにある。段階a)およびb)の間に塩素化化合物の水素化(水素化脱塩素)によってHClの形態で放出される塩化物イオン、および特に段階b)の間に窒素化合物の水素化(水素化脱窒)によってNHの形態で生じたアンモニアは、段階c)の高温分離によってガス流出物中に大部分残る。これは、この分離段階c)の高温が、塩化物イオンとアンモニウムイオンとの間の反応によって形成される塩化アンモニウム塩の沈殿を防ぐためである。ガス状流出物と液状流出物の一部の段階d)におけるより低温での分離により、これらの塩化アンモニウム塩の析出がもたらされる。この段階d)の水による洗浄により、これらの塩を水性流出物に溶解させることが可能になる。塩素から解放された炭化水素流出物がこうして得られる。
【0019】
本発明による方法の1つの利点は、プラスチック廃棄物の熱分解から得られた油を、その不純物の少なくとも一部から精製することにあり、これにより、それを水素化することが可能になり、その結果、燃料貯蔵ユニット等にそれを直接的に特に組み込むことによって、あるいはほかに、軽質オレフィンを収率よく特に得ることができるように水蒸気分解ユニットでの処理に適合可能にさせることによって、それをアップグレードすることが可能になり、これは、ポリマーの製造においてモノマーとして作用することがある。
【0020】
本発明の別の利点は、本発明の方法が行われる処理ユニットの目詰まりおよび/または腐食のリスクを防止することにあり、このリスクは、プラスチック熱分解油中のジオレフィン、金属およびハロゲン化合物のしばしば大量での存在によって悪化する。
【0021】
本発明の方法により、出発プラスチック熱分解油の不純物から少なくとも部分的に解放されたプラスチック熱分解油から生じる炭化水素流出物を得ることがこのように可能となり、それ故に、操作性の問題、例えば、特に水蒸気分解ユニットおよび/または水蒸気分解ユニットの下流に位置するユニット、特にポリマー化および水素化のユニットにおいて、これらの不純物が引き起こす場合がある腐食、コーキングまたは触媒失活の問題を制限する。プラスチック廃棄物の熱分解から得られた油からの不純物の少なくとも一部の除去により、標的ポリマーの適用の範囲を増大させ、用途の不適合性を低減させることも可能になることになる。
【0022】
代わりの形態によると、本方法は、分画段階e)を含む。
【0023】
代わりの形態によると、本方法は、水素化分解段階f)を含む。
【0024】
代わりの形態によると、段階a)において、水素被覆率は、供給原料の容積(m)当たり水素250~800Sm(Sm/m)である。
【0025】
代わりの形態によると、分離段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部は、水素化段階a)の上流にリサイクルされる前に予熱される。
【0026】
代わりの形態によると、段階a)においてリサイクルされる段階c)に由来する液状流出物対プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の重量比は、0.01~10である。
【0027】
代わりの形態によると、本方法は、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の前処理の段階a0)を含み、前記前処理段階は、水素化段階a)の上流で行われ、ろ過段階および/または静電分離段階および/または水溶液による洗浄の段階および/または吸着段階を含む。
【0028】
代わりの形態によると、分離段階d)から得られた炭化水素流出物、または段階e)から得られた2つの液状炭化水素留分の少なくとも一方は、全部または一部において、水蒸気分解段階g)に送られ、水蒸気分解段階g)は、少なくとも1つの熱分解炉において700~900℃の温度および0.05~0.3MPaの相対圧力で行われる。
【0029】
代わりの形態によると、段階a)の反応セクションは、配列可変方式で操作する少なくとも2基の反応器を使用する。
【0030】
1つの代わりの形態によると、アミンおよび/または硫黄化合物を含有している流れは、段階a)の上流に注入される。
【0031】
代わりの形態によると、段階c)、d)および/またはe)から得られたガス状流出物、および/または段階c)からの液状流出物および/または段階d)から得られた炭化水素流出物および/または段階e)から得られた第1および/または第2の炭化水素留分は、重金属の吸着の段階に供される。
【0032】
代わりの形態によると、前記水素化触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、マグネシア、粘土およびそれらの混合物から選ばれる担体と、一方で、第VIII族からの少なくとも1種の元素および第VIB族からの少なくとも1種の元素、または他方で第VIII族からの少なくとも1種の元素のいずれかを含んでいる水素化脱水素機能基とを含む。
【0033】
代わりの形態によると、前記水素化処理触媒は、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、マグネシア、粘土およびそれらの混合物からなる群から選ばれる担体と、第VIII族からの少なくとも1種の元素および/または第VIB族からの少なくとも1種の元素を含んでいる水素化脱水素機能基とを含む。
【0034】
代わりの形態によると、本方法は、第2の水素化分解段階f’)をさらに含み、第2の水素化分解段階f’)は、水素化分解反応セクションにおいて行われ、n個の触媒床を有する少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化分解触媒を含み、前記水素化分解反応セクションは、第1の水素化分解段階f)から得られた第1の水素化分解済み流出物の少なくとも一部と、水素を含んでいるガス流れとを給送され、前記水素化分解反応セクションが使用される際の温度は、250~450℃であり、水素分圧は、1.5~20.0MPa(abs)であり、時間空間速度は、0.1~10.0h-1であり、第2の水素化分解流出物を得る。
【0035】
代わりの形態によると、前記水素化分解触媒は、ハロゲン化アルミナ、ホウ素およびアルミニウムの酸化物の組み合わせ、無定形シリカ-アルミナおよびゼオライトから選ばれる担体と、クロム、モリブデンおよびタングステンから単独でまたは混合物として選ばれる第VIB族からの少なくとも1種の金属および/または鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよび白金から選ばれる第VIII族からの少なくとも1種の金属を含んでいる水素化脱水素機能基とを含む。
【0036】
本発明は、本発明の方法によって得られ得、好ましくは得られる生成物にも関する。
【0037】
この代わりの形態によると、生成物は、生成物の全重量に対して、以下のものを含む:
- 金属元素:全含有率10.0重量ppm以下、
- 鉄元素を含む:含有率200重量ppb以下、および/または
- ケイ素元素;含有率5.0重量ppm以下、および/または
- 硫黄;含有率500重量ppm以下、および/または
- 窒素;含有率100重量ppm以下、および/または
- 塩素元素;含有率10重量ppm以下、および/または
- 水銀;含有率5重量ppb以下。
【0038】
本発明によると、圧力は、絶対圧力であり、abs.とも記述され、別段の指示がない限り、絶対MPa(またはMPa(abs))で与えられる。
【0039】
本発明によると、表現「AとBとの間の、またはA~Bの(of between A and B)」および「AとBとの間、またはA~B(between A and B)」は、同等であり、間隔の両限界値(A、B)は、記載された値の範囲に含まれることを意味する。もしそのようになっていなかったならば、および両限界値が記載された範囲に含まれなかったならば、そのような説明が本発明によって導入されることになる。
【0040】
本発明の意義の範囲内で、所与の段階についての種々のパラメータの範囲、例えば、圧力範囲および温度範囲は、単独でまたは組み合わせで用いられ得る。例えば、本発明の意義の範囲内で、好適な圧力値の範囲は、より好適な温度値の範囲と組み合わされ得る。
【0041】
以下に、本発明の特定のかつ/または好適な実施形態が記載されてよい。それらは、別々にまたは一緒に組み合わされて実施され得、これが技術的に実現可能である場合に組み合わせの制限はない。
【0042】
以下では、化学元素の族は、CAS分類に従って与えられる(CRC Handbook of Chemistry and Physics、出版元CRC Press、編集長D. R. Lide、第81版、2000-2001)。例えば、CAS分類による第VIII族は、新IUPAC分類による8、9および10列の金属に対応する。
【0043】
金属の含有率は、蛍光X線によって測定される。
【発明を実施するための形態】
【0044】
(詳細な説明)
(供給原料)
本発明によると、「プラスチック熱分解油」は、プラスチック、好ましくはプラスチック廃棄物、特に収集および選別のチャネルを起源とするプラスチック廃棄物の熱分解から得られた油、有利には、周囲温度で液体の形態にある油である。それは、摩耗タイヤの熱分解からも得られ得る。
【0045】
それは、炭化水素化合物、特に、パラフィン類、モノおよび/またはジのオレフィン類、ナフテン類および芳香族類の混合物を特に含む。これらの炭化水素化合物の最低80重量%の沸点は、好ましくは、700℃未満、好ましくは550℃未満である。特に、熱分解油の起源により、このものは、パラフィン類を最高70重量%、オレフィン類を最高90重量%および芳香族類を最高90重量%含むことができ、パラフィン類、オレフィン類および芳香族類の合計は、炭化水素化合物100重量%であることが理解される。
【0046】
熱分解油の密度は、ASTM D4052法に従って15℃で測定されて、一般に0.75~0.99g/cm、好ましくは0.75~0.95g/cmである。
【0047】
プラスチック熱分解油は、不純物、例えば、金属、特に、鉄、ケイ素またはハロゲン化化合物、特に、塩素化化合物をさらに含むことができ、一般にそれらを含む。これらの不純物は、プラスチック熱分解油中に高含有率で存在することができ、例えば、ハロゲン化化合物によってもたらされるハロゲン元素(特に塩素)が最高350重量ppm、さらには最高700重量ppm、実際にさらには最高1000重量ppmであり、金属または半金属が、最高100重量ppm、実際にさらには最高200重量ppmである。アルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属、pブロック金属およびメタロイドは、金属性の汚染物質にたとえられ得、金属または金属または半金属の元素と呼ばれる。特に、プラスチック廃棄物の熱分解から得られる油中に含有される場合がある金属または金属または半金属の元素は、ケイ素、鉄またはこれらの両方の元素を含む。プラスチック熱分解油は、他の不純物、例えば、ヘテロ元素を含むこともでき、ヘテロ元素は、硫黄化合物、酸素化合物および/または窒素化合物よって特に貢献され、含有率は、一般に、ヘテロ元素10,000重量ppm未満、好ましくはヘテロ元素4000重量ppm未満である。プラスチック熱分解油は、他の不純物、例えば、重金属、例えば水銀、ヒ素、亜鉛および鉛、例えば最高100重量ppb、さらには最高200重量ppbの水銀を含むこともできる。
【0048】
本発明による方法の供給原料は、少なくとも1種のプラスチック熱分解油を含む。前記供給原料は、1種または複数種のプラスチック熱分解油のみからなることができる。好ましくは、前記供給原料は、供給原料の全重量に対して、最低50重量%、好適には70重量%~100重量%のプラスチック熱分解油を含み、すなわち、好ましくは50重量%~100重量%、好適には70重量%~100重量%のプラスチック熱分解油を含む。
【0049】
本発明による方法の供給原料は、1種または複数種のプラスチック熱分解油に加えて、従来の石油供給原料またはバイオマスの転化から得られる供給原料を含むことができ、この供給原料は、次に供給原料のプラスチック熱分解油と共処理される。
【0050】
従来の石油供給原料は、有利には、ナフサ、ガスオイルまたは減圧ガスオイルタイプの留分または留分の混合物であることができる。
【0051】
バイオマスの転化から得られた供給原料は、有利には、植物油、藻類からの油または藻類油、魚油、廃食用油、および植物または動物起源の脂肪、またはそのような供給原料の混合物から選ばれ得る。前記植物油は、有利には、全体的または部分的に、未精製であるかまたは精製され、ナタネ、ヒマワリ、大豆、パーム、オリーブ、ココナッツ、コプラ、ヒマシ油植物、綿植物、落花生油、亜麻仁油およびシーケール油から選ばれる植物、および、例えば、遺伝子組み換えまたは交配によってヒマワリまたはアブラナから生じた全ての油から生じ得るが、このリストは、限定的なものではない。前記動物脂肪は、有利には、食品産業からの残留物から構成されているか、またはまたはケータリング産業から生じたあぶら身および脂肪から選ばれる。揚げ油、種々の動物油、例えば、魚油、獣脂またはラードも用いられ得る。
【0052】
バイオマスの転化から得られた供給原料は、バイオマスの熱的または触媒的な転化のための方法を起源とする供給原料、例えば、種々の液化方法、例えば、水熱液化または熱分解により、バイオマス、特に、リグノセルロース性バイオマスから生じた油から選ばれることもできる。用語「バイオマス」は、最近まで生存していた生物に由来する材料を指し、これは、植物、動物およびそれらの副生物を含む。用語「リグノセルロース性バイオマス」は、植物またはそれらの副生物に由来するバイオマスを意味する。リグノセルロース性バイオマスは、炭水化物ポリマー(セルロース、ヘミセルロース)と、芳香族ポリマー(リグニン)とから構成されている。
【0053】
バイオマスの転化から得られた供給原料は、有利には、製紙産業から得られた供給原料から選ばれることもできる。
【0054】
プラスチック熱分解油は、熱的または触媒的な熱分解処理から得られることができ、あるいはまた、水素化熱分解(触媒および水素の存在中での熱分解)によって調製されることができる。
【0055】
(前処理:任意選択)
プラスチック熱分解油を含んでいる前記供給原料は、有利には、水素化段階a)の前に、場合による前処理段階a0)において前処理されて、前処理された供給原料を得ることができ、これは、段階a)に給送する。
【0056】
この任意選択の前処理段階a0)により、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料中に存在する場合がある汚染物質および固体粒子の量、特に、鉄および/またはケイ素および/または塩素の量を低減させることが可能となる。それ故に、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の前処理の任意選択の段階a0)が有利に行われるのは、特に、前記供給原料が10重量ppm超、特に20重量ppm超、より特定的には50重量ppm超の金属性元素および/または固体粒子を含む場合、特に、前記供給原料が、5重量ppm超のケイ素、より特定的には10重量ppm超、実際にさらには20重量ppm超のケイ素を含む場合である。同様に、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の前処理の任意選択の段階a0)が有利に行われるのは、特に、前記供給原料が10重量ppm超、特に20重量ppm超、より特定的には50重量ppm超の塩素を含む場合である。
【0057】
前記任意選択の前処理段階a0)は、汚染物質の量を低減させることが可能になる、当業者に知られている任意の方法によって行われ得る。それは、特に、ろ過段階および/または静電分離段階および/または水溶液による洗浄の段階および/または吸着段階を含むことができる。
【0058】
前記任意選択の前処理段階a0)が有利に行われる際の温度は、0~150℃、好ましくは5~100℃であり、その際の圧力は、0.15~10.0MPa(abs)、好ましくは0.2~1.0MPa(abs)である。
【0059】
代わりの形態によると、前記任意選択の前処理段階a0)は、吸着セクションにおいて行われ、この吸着セクションは、少なくとも1種の吸着剤の存在中で操作され、吸着剤は、好ましくはアルミナタイプのものであり、比表面積は、100m/g以上、好ましくは200m/g以上である。前記少なくとも1種の吸着剤の比表面積は、有利には、600m/g以下、特に400m/g以下である。吸着剤の比表面積は、BET法によって測定される表面積、すなわち、定期刊行物The Journal of the American Chemical Society, 6Q, 309 (1938)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller法から作成された規格ASTM D 3663-78に従う窒素吸着によって決定される比表面積である。
【0060】
有利には、前記吸着剤は、1重量%未満の金属元素を含み、好ましくは、金属元素を欠く。吸着剤の金属元素は、元素周期律表(新IUPAC分類)の6~10族からの元素を意味しているとして理解されるべきである。吸着セクション中の供給原料の滞留時間は、一般に1~180分である。
【0061】
任意選択の段階a0)の前記吸着セクションは、少なくとも1個の吸着カラムを含み、好ましくは、少なくとも2個の吸着カラム、優先的には2~4個の吸着カラムを含み、前記吸着剤を含有している。吸着セクションが2個の吸着カラムを含む場合、1つの操作方式は、「スイング」操作であり得、ここでは、カラムの一方がオンライン、すなわち、操作中である一方で、他方のカラムは、インリザーブにある。オンラインのカラム内の吸着剤が使い果たされた時に、このカラムが隔離される一方で、インリザーブのカラムは、オンライン、すなわち、操作中に置かれる。使用済み吸着剤は、次いで、現場内(in situ)再生されるか、かつ/またはフレッシュな吸着剤と交換され得て、それを含有しているカラムは、再度、他方のカラムが隔離されたところでオンラインに戻るように置かれ得る。
【0062】
別の操作方式は、少なくとも2つのカラムを直列で操作しているようにさせることである。先頭に置かれたカラムの吸着剤が使い古された時に、この第1のカラムが隔離され、使用済み吸着剤は、現場内再生されるかまたはフレッシュな吸着剤と置き換えられるかのいずれかがなされる。カラムは、続いて、最後の位置においてオンラインに置き戻されるなどがなされる。この操作は、配列可変方式として、またはPermutable Reactor Systemについての用語「PRS」、あるいはまた「リード-ラッグ(lead and lag)」により知られている。少なくとも2つの吸着カラムの組み合わせにより、処理対象プラスチック熱分解油中に存在する場合がある金属汚染物質、ジオレフィン、ジオレフィンから得られたガム状物および不溶物の複合作用に起因する吸着剤の考えられる潜在的な迅速な被毒および/または目詰まりを克服することが可能となる。これは、少なくとも2つの吸着カラムの存在が、吸着剤の交換および/または再生を、有利には、前処理ユニット、実際にさらには方法の運転停止なく容易にするためであり、これにより、目詰まりのリスクを低減させること、そのために、目詰まりに起因するユニットの運転停止を回避すること、コストをコントロールすることおよび吸着剤の消費を制限することがこのように可能となる。
【0063】
別の代わりの形態によると、前記任意選択の前処理段階a0)は、水溶液、例えば、水、または酸性または塩基性の溶液により洗浄するためのセクションにおいて行われる。この洗浄セクションは、供給原料を水溶液と接触させることおよび相を分離して、一方では、前処理済み供給原料を、他方では、不純物を含んでいる水溶液を得るようにすることを可能にする機器を含むことができる。これらの機器の中に、例えば、撹拌型反応器、デカンタ、ミキサ-デカンタおよび/または並流式または向流式の洗浄カラムがあってよい。
【0064】
前記任意選択の前処理段階a0)は、場合によっては、方法の段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部および/または段階e)から得られた沸点が175℃以下である化合物を含んでいる第1の炭化水素留分の一部および/または段階e)から得られた沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分の一部によって、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料との混合物としてまたはこれとは別個に給送されることもできる。段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部のリサイクルにより、特に、沈降を増大させることが可能となり、その結果、場合によるろ過の後に、供給原料の前処理を改善することが可能となる。
【0065】
前記任意選択の前処理段階a0)により、前処理済み供給原料を得ることがこのように可能となり、これは、次いで、水素化段階a)に給送する。
【0066】
(水素化段階a)(任意選択))
本発明によると、本方法は、水素化反応セクションにおいて行われる水素化の段階a)を含み、n個の触媒床を有している少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化触媒を含み、前記水素化反応セクションは、場合によっては前処理された前記供給原料を、段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部および水素を含んでいる第1のガス流れとの混合物として少なくとも給送され、前記水素化反応セクションが使用される際の平均温度は、140~400℃であり、水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1であり、水素化された流出物を得る。
【0067】
段階a)は、水素化反応セクションの始めにジオレフィンおよびオレフィンの水素化を行うことを可能にする一方で、温度の上昇プロファイルによって、水素化脱金属および水素化脱塩素を、特に、水素化反応セクションの終わりに行うことを可能にする温度および水素圧力の条件下に特に行われる。必要量の水素が注入されて、プラスチック熱分解油中に存在するジオレフィンおよびオレフィンの少なくとも一部の水素化、金属の少なくとも一部の水素化脱金属、とりわけケイ素の保持、およびまた塩素の少なくとも一部の転化(HClを与える)を可能にする。ジオレフィンおよびオレフィンの水素化により、「ガム状物」の形成、すなわち、ジオレフィンおよびオレフィンのポリマー化、ひいては、水素化処理段階b)の反応セクションを詰まらせ得るオリゴマーおよびポリマーの形成を回避するかまたは少なくとも制限することがこのように可能になる。段階a)の間に、水素化と並行して、水素化脱金属、特にケイ素の保持により、水素化処理段階b)の反応セクションの触媒の失活を制限することが可能となる。さらに、段階a)の条件により、塩素の少なくとも一部を転化することが可能となる。
【0068】
温度のコントロールは、この段階において重要であり、相反する制約を満たさなければならない。一方では、水素化反応セクションの始めにおいてジオレフィンおよびオレフィンの水素化を可能にするように、入口温度および水素化反応セクションを通じた温度は、十分に低くなければならない。他方では、水素化反応セクションの入口温度は、触媒の失活を防ぐために十分に高くなければならない。水素化反応、特にオレフィンおよびジオレフィンの一部の水素化は、発熱性が高いため、水素化反応セクションにおいて温度の上昇プロファイルが観察される。前記セクションの終わりにおけるこのより高い温度により、水素化脱金属および水素化脱塩素の反応を行うことが可能となる。それ故に、段階a)の反応セクションの出口温度は、段階a)の反応セクションの入口温度より、一般的に最低3℃、好ましくは最低5℃高い。
【0069】
段階a)における温度は、これが平均温度(WABT)であるか、反応セクションの入口温度であるか、あるいはまた反応セクションの入口と出口の間の段階a)における温度上昇であるかに拘わらず、段階c)から生じる液状流出物の一部のリサイクルの率および/またはリサイクルされた流出物の温度によって特にコントロールされることができる。
【0070】
段階a)の反応セクションの入口と出口の間の温度差は、ガス状(水素)または液状の冷却流れ、特に段階c)から得られた液状流出物の一部の注入に適合する。
【0071】
段階a)の反応セクションの入口と出口の間の温度差は、専ら反応セクションにおいて行われる化学反応の発熱性によるものであり、それ故に、加熱手段(オーブン、熱交換器等)の非使用に適合する。
【0072】
段階a)の反応セクションの入口温度は、135~397℃、好ましくは240~347℃である。
【0073】
段階a)の反応セクションの出口温度は、138~400℃、好ましくは243~350℃である。
【0074】
本発明によると、ジオレフィンの水素化と水素化脱金属反応の一部とを1回の同じ段階において、段階a)の触媒の失活を制限するのに十分な温度で行うことは有利であり、触媒の失活自体は、ジオレフィンの転化率における低下によって現れる。この同じ段階により、水素化反応、特にオレフィンおよびジオレフィンの一部の水素化のための反応からの熱を利用することも可能となり、この段階において上昇温度プロファイルを有するようにし、接触水素化セクションと接触水素化処理セクションとの間の加熱デバイスについての必要性を排除することができるようにする。
【0075】
前記反応セクションは、少なくとも1種の水素化触媒の存在中で水素化を行い、有利には、その際の平均温度(または下記に定義されるようなWABT)は、140~400℃、好ましくは240~350℃、特に好ましくは260~330℃であり、水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)、好ましくは1.5~8.0MPa(abs)であり、その際の毎時空間速度(hourly space velocity:HSV)は、0.1~10.0h-1、好ましくは0.2~5.0h-1、大いに好ましくは0.3~3.0h-1である。
【0076】
本発明によると、反応セクションの「平均温度」は、重量平均床温度(weight-average bed temperature:WABT))に対応し、これは、当業者に周知である。平均温度は、有利には、用いられた、触媒系、機器、これらの構成に応じて決定される。平均温度(またはWABT)は、以下の方法で計算される:
【0077】
【数1】
【0078】
式中、Tinlet:反応セクションの入口のところでの流出物の温度、Toutlet:反応セクションの出口のところでの流出物の温度。特に明記しない限り、反応セクションの「平均温度」は、サイクル開始時の条件で与えられる。
【0079】
毎時空間速度(HSV)は、ここでは、任意選択に前処理されたプラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の毎時容積流量対1種または複数種の触媒の容積の比として定義される。
【0080】
水素被覆率は、リサイクルされる割合を考慮に入れない、特に、段階c)から得られたリサイクルされる液状流出物を考慮に入れない「フレッシュな」供給原料、すなわち、任意選択に前処理された処理対象の供給原料の容積流量に対する、標準の温度および圧力の条件下に取得された水素の容積流量の、15℃での比として定義される(供給原料の容積(m)当たりのHの標準m(Smで示される))。
【0081】
段階a)の前記反応セクションに給送する水素(H)を含んでいるガス流れの量は、有利には、水素被覆率が、供給原料の容積(m)当たり水素100~1500Sm(Sm/m)、好ましくは供給原料の容積(m)当たり水素200~1000Sm(Sm/m)、好適には供給原料の容積(m)当たり水素250~800Sm(Sm/m)になるようにされる。
【0082】
有利には、前記段階a)の反応セクションは、1~5基の反応器、好ましくは2~5基の反応器を含み、特に好ましくは、それは、2基の反応器を含む。いくつかの反応器を含んでいる水素化反応セクションの利点は、供給原料の最適化された処理にあると同時に、1個または複数個の触媒床の目詰まりのリスクを低減させ、それ故に、目詰まりによるユニットの運転停止を回避することを可能にすることにある。
【0083】
好適な代わりの形態によると、これらの反応器は、PRS(Permutable Reactor System)あるいはほかに「リード-ラッグ」として知られている配列可変方式で操作する。PRS方式における少なくとも2基の反応器の組み合わせにより、反応器を隔離すること、使用済み触媒を排出すること、反応器にフレッシュな触媒を再充填することおよび前記反応器を稼働状態に戻すことが本方法を運転停止することなく可能になる。PRS技術は、特許FR 2 681 871に特に記載されている。
【0084】
特に好適な代わりの形態によると、段階a)の水素化反応セクションは、配列可変方式で操作する2基の反応器を含む。
【0085】
有利には、1基または複数基の反応器の目詰まりを防止するために反応器の内部構造物、例えば、フィルタプレートタイプの内部構造物が用いられ得る。フィルタプレートの例は、特許FR 3 051 375に記載されている。
【0086】
有利には、前記水素化触媒は、担体、好ましくは無機担体と、水素化脱水素機能基とを含む。
【0087】
代わりの形態によると、水素化脱水素機能基は、第VIII族からの少なくとも1種の元素と、第VIB族からの少なくとも1種の元素とを特に含み、第VIII族からの少なくとも1種の元素は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトから選ばれ、第VIB族からの少なくとも1種の元素は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選ばれる。この代わりの形態によると、第VIB族および第VIII族からの金属元素の全含有率は、酸化物として表されて、触媒の全重量に対して、好ましくは1重量%~40重量%、優先的には5重量%~30%重量%である。金属がコバルトまたはニッケルである場合、金属含有率は、それぞれにCoOおよびNiOとして表される。金属がモリブデンまたはタングステンである場合、金属含有率は、それぞれにMoOおよびWOとして表される。
【0088】
第VIII族からの1種または複数種の金属に対する第VIB族からの1種または複数種の金属の金属酸化物として表される重量比は、好ましくは1~20、好適には2~10である。
【0089】
この代わりの形態によると、前記段階a)の反応セクションが例えば含む水素化触媒は、(前記触媒の重量に対するニッケル酸化物NiOとして表される)0.5重量%~12重量%のニッケル、好ましくは0.9重量%~10重量%のニッケル、および(前記触媒の重量に対するモリブデン酸化物MoOとして表される)1重量%~30重量%のモリブデン、好ましくは3重量%~20重量%のモリブデンを、好ましくは無機担体上、好ましくはアルミナ担体上に含んでいる。
【0090】
別の代わりの形態によると、水素化脱水素機能基は、第VIII族からの少なくとも1種の元素、好ましくは、ニッケルを含み、好ましくは、それらからなる。この代わりの形態によると、ニッケル酸化物の含有率は、前記触媒の重量に対して、好ましくは1重量%~50重量%、好ましくは10重量%~30重量%である。このタイプの触媒は、好ましくは、それの還元された形態において、好ましくは無機担体上、好ましくはアルミナ担体上で用いられる。
【0091】
前記水素化触媒の担体は、好ましくは、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、マグネシア、粘土およびそれらの混合物から選ばれる。前記担体は、ドーパント化合物、特に、ホウ素酸化物、特に、三酸化ホウ素、ジルコニア、セリア、チタン酸化物、五酸化リンおよびこれらの混合物から選ばれる酸化物を含むことができる。好ましくは、前記水素化触媒は、アルミナ担体を含み、場合によっては、リンおよび任意選択にホウ素によりドープされている。五酸化リンPが存在する場合、それの濃度は、アルミナの重量に対して、10重量%未満であり、かつ、アルミナの全重量に対して、有利には最低0.001重量%である。三酸化ホウ素Bが存在する場合、それの濃度は、アルミナの重量に対して、10重量%未満であり、かつ、アルミナの全重量に対して、有利には最低0.001重量%である。用いられるアルミナは、例えば、γ(ガンマ)またはη(エータ)のアルミナであり得る。
【0092】
前記水素化触媒は、例えば、押出成形物の形態にある。
【0093】
大いに好ましくは、段階a)は、上記の1種または複数種の水素化触媒に加えて、前記触媒の重量に対するニッケル酸化物NiOとして表される1重量%未満のニッケルかつ最低0.1重量%のニッケル、好ましくは0.5重量%のニッケル、および前記触媒の重量に対するモリブデン酸化物MoOとして表されて5重量%未満のモリブデンかつ最低0.1重量%のモリブデン、好ましくは0.5重量%のモリブデンを、アルミナ担体上に含んでいる段階a)において用いられる少なくとも1種の水素化触媒を使用することができる。この触媒は、金属を高度に積んでおらず、好ましくは、上記の1種または複数種の水素化触媒の上流または下流に配置され得る。
【0094】
前記水素化段階a)により、水素化された流出物、すなわち、オレフィン、特にジオレフィンおよび金属、特にケイ素の含有率が低減された流出物を得ることが可能になる。段階a)の終結の際に得られた水素化された流出物の不純物、特にジオレフィンの含有率は、本方法の供給原料に含まれる同じ不純物、特にジオレフィンの含有率に対して低下させられる。水素化段階a)により、一般的に、初期供給原料中に含有されるジオレフィンの最低40%、好ましくは最低60%、およびまたオレフィンの最低40%、好ましくは最低60%を転化することが可能となる。二重結合の飽和によって放出される熱により、反応媒体の温度を上昇させ、水素化処理反応、特に、他の汚染物質、例えば、ケイ素および塩素の少なくとも部分的な除去を開始することが可能となる。好ましくは、初期供給原料の塩素およびケイ素の最低50%、より優先的には最低75%は、段階a)の間に除去される。水素化段階a)の終結の際に得られた水素化済み流出物は、好ましくは直接的に、水素化処理段階b)に送られる。
【0095】
(水素化処理段階b))
本発明によると、本処理方法は、水素化処理反応セクションにおいて行われる水素化処理段階b)を含み、n個の触媒床を有する少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化処理触媒を含み、前記水素化処理反応セクションは、段階a)から得られた前記水素化済み流出物と、水素を含んでいる第2のガス流れとを少なくとも給送され、前記水素化処理反応セクションが使用される際の平均温度は、250~430℃であり、水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1であり、水素化処理済み流出物を得る。
【0096】
有利には、段階b)は、当業者に周知の水素化処理反応、より詳細には水素化処理反応、例えば、芳香族化合物の水素化、水素化脱硫および水素化脱窒を使用する。さらに、残りのハロゲン化化合物およびオレフィンの水素化、およびまた水素化脱金属も継続される。
【0097】
前記水素化処理反応セクションは、水素化段階a)の反応セクションにおいて用いられる圧力と同等の圧力で、一般的に水素化段階a)の反応セクションの温度よりも高い平均温度で有利に使用される。それ故に、前記水素化処理反応セクションが有利に使用される際の平均水素化処理温度は、250~430℃、好ましくは280~380℃であり、その際の水素分圧は、1.0~10.0MPa(abs)であり、その際の毎時空間速度(HSV)は、0.1~10.0h-1、好ましくは0.1~5.0h-1、優先的には0.2~2.0h-1、好適には0.2~1h-1である。段階b)における水素被覆率は、有利には、段階a)に給送するフレッシュな供給原料の容積(m)当たり水素100~1500Sm、好ましくは段階a)に給送するフレッシュな供給原料の容積(m)当たり水素200~1000Sm、好適には段階a)に給送するフレッシュな供給原料の容積(m)当たり水素250~800Smである。平均温度(WABT)、HSVおよび水素被覆率の定義は、上述したものに対応する。
【0098】
前記水素化処理反応セクションは、少なくとも、段階a)から得られた前記水素化済み流出物と、水素を含んでいる第2のガス流れとを少なくとも、有利には、第1の操作反応器の第1の触媒床のレベルで給送される。場合によっては、前記段階b)の反応セクションは、さらに、段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部を給送されることもできる。
【0099】
有利には、前記段階b)は、n個の触媒床を有する少なくとも1基、好ましくは1~5基の固定床反応器を含んでいる水素化処理反応セクションにおいて行われ、nは、1以上の整数であり、好ましくは1~10、好適には2~5の整数であり、前記1基または複数基の触媒床は、それぞれ、少なくとも1種、かつ、好ましくは10種以下の水素化処理触媒を含む。反応器がいくつかの触媒床、すなわち、少なくとも2個、好ましくは2~10個、好適には2~5個の触媒床を含む場合、前記触媒床は、好ましくは前記反応器中に直列に配置される。
【0100】
段階b)がいくつかの反応器、好ましくは2基の反応器を含んでいる水素化処理反応セクションにおいて行われる場合、これらの反応器は、直列および/または並列および/または配列可変(またはPRS)の方式および/またはスイング方式で操作することができる。種々の任意選択の操作方式、PRS方式(またはリード・ラッグ(lead and lag))およびスイング方式は、当業者に周知であり、有利には、上記に定義される。
【0101】
本発明の別の実施形態において、前記水素化処理反応セクションは、単一の固定床反応器を含み、この反応器は、n個の触媒床を含有し、nは、1以上、好ましくは1~10、好適には2~5の整数である。
【0102】
特に好適な変形において、段階a)の水素化反応セクションは、配列可変方式で操作する2基の反応器を含み、段階b)の水素化処理反応セクションによって続けられ、これは、単一の固定床反応器を含む。
【0103】
有利には、前記段階b)において用いられる前記水素化処理触媒は、石油留分の処理のために特に用いられる既知の水素化脱金属、水素化処理またはケイ素捕捉の触媒、およびそれらの組み合わせから選ばれ得る。既知の水素化脱金属触媒は、例えば、特許EP 0 113 297、EP 0 113 284、US 5 221 656、US 5 827 421、US 7 119 045、US 5 622 616およびUS 5 089 463において記載されたものである。既知の水素化処理触媒は、例えば、特許EP 0 113 297、EP 0 113 284、US 6 589 908、US 4 818 743またはUS 6 332 976に記載されたものである。既知のケイ素捕捉触媒は、例えば、特許出願CN 102051202およびUS 2007/080099に記載されたものである。
【0104】
特に、前記水素化処理触媒は、担体、好ましくは無機担体と、水素化脱水素機能を有している少なくとも1種の金属元素とを含む。水素化脱水素機能を有している前記金属元素は、有利には、第VIII族からの少なくとも1種の元素、および/または第VIB族からの少なくとも1種の元素を含み、第VIII族からの元素は、好ましくは、ニッケルおよびコバルトからなる群から選ばれ、第VIB族からの元素は、好ましくは、モリブデンおよびタングステンからなる群から選ばれる。第VIB族および第VIII族からの金属元素の酸化物として表される全含有率は、触媒の全重量に対して、好ましくは0.1重量%~40重量%、優先的には5重量%~35重量%である。金属がコバルトまたはニッケルである場合、金属含有率は、それぞれにCоОおよびNiОとして表される。金属がモリブデンまたはタングステンである場合、金属含有率は、それぞれにMоОおよびWОとして表される。第VIB族からの1種または複数種の金属の第VIII族からの1種または複数種の金属に対する重量比は、金属酸化物として表されて、好ましくは1.0~20、好適には2.0~10である。例えば、本方法の段階b)の水素化処理反応セクションが含む水素化処理触媒は、水素化処理触媒の全重量に対するニッケル酸化物NiOとして表されて0.5重量%~10重量%のニッケル、好ましくは1重量%~8重量%のニッケル、および水素化処理触媒の全重量に対するモリブデン酸化物MoOまたはタングステン酸化物WOとして表されて、1.0重量%~30重量%のモリブデン、好ましくは3.0重量%~29重量%のモリブデンを、無機担体上、好ましくはアルミナ担体上に含んでいる。
【0105】
前記水素化処理触媒の担体は、有利には、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、マグネシア、粘土およびそれらの混合物から選ばれる。前記担体は、ドーパント化合物、特に、ホウ素酸化物、特に三酸化ホウ素、ジルコニア、セリア、チタン酸化物、五酸化リンおよびこれらの酸化物の混合物から選ばれる酸化物をさらに含むことができる。好ましくは、前記水素化処理触媒は、アルミナ担体、好適には、リンおよび場合によるホウ素をドープされたアルミナ担体を含む。五酸化リンPが存在する場合、その濃度は、アルミナの重量に対して、10重量%未満、かつ、アルミナの全重量に対して、有利には最低0.001重量%である。三酸化ホウ素Bが存在する場合、その濃度は、アルミナの重量に対して、10重量%未満、かつ、アルミナの全重量に対して、有利には最低0.001重量%である。用いられるアルミナは、例えば、γ(ガンマ)またはη(イータ)のアルミナであることができる。
【0106】
前記水素化処理触媒は、例えば、押出成形物の形態にある。
【0107】
有利には、本方法の段階b)において用いられる前記水素化処理触媒の比表面積は、250m/g以上、好ましくは300m/g以上である。前記水素化処理触媒の比表面積は、有利には、800m/g以下、好ましくは600m/g以下、特に400m/g以下である。水素化処理触媒の比表面積は、BET法によって測定される。すなわち、比表面積は、定期刊行物The Journal of the American Chemical Society, 6Q, 309 (1938)に記載されたBrunauer-Emmett-Teller method法から作成された規格ASTM D 3663-78に従う窒素吸着によって決定される。このような比表面積により、汚染物質、特に金属、例えばケイ素の除去をさらに改善することが可能となる。
【0108】
本発明の別の態様によると、上記のような水素化処理触媒は、酸素および/または窒素および/または硫黄を含有している1種または複数種の有機化合物をさらに含む。このような触媒は、しばしば、用語「添加型触媒(additivated catalyst)」によって表される。一般に、有機化合物は、カルボキシル、アルコール、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、オキシム、尿素およびアミドの基から選ばれる1つまたは複数の化学官能基を含んでいる化合物あるいはまたフラン環を含む化合物あるいはまた糖から選ばれる。
【0109】
有利には、水素化処理段階b)は、水素化段階a)の後の残留オレフィンの最低80%、好ましくは全部の水素化を可能にするが、供給原料中に存在する他の不純物、例えば、芳香族化合物、金属化合物、硫黄化合物、窒素化合物、ハロゲン化合物(特に塩素化合物)および酸素化合物の少なくとも部分的な転化も可能にする。好ましくは、段階b)の出口のところでの窒素含有率は、10重量ppm未満である。段階b)は、汚染物質の含有率、例えば、金属の含有率、特にケイ素含有率をさらに低下させることを可能にすることもできる。好ましくは、段階b)の出口のところでの金属含有率は、10重量ppm未満、好適には2重量ppm未満であり、ケイ素含有率は、5重量ppm未満である。
【0110】
処理されるべき初期供給原料中の硫黄化合物の含有率に応じて、硫化剤を含有している流れが水素化段階a)および/または水素化処理段階b)の上流に、および/または水素化分解段階が存在する場合には、それらの1つの上流、好ましくは水素化段階a)および/または水素化処理段階b)の上流に注入されて、触媒の活性種(硫化された形態)を形成するかまたは維持するのに十分な量の硫黄を確保することができる。この活性化または硫化の段階は、当業者に周知な方法によって、有利には水素および硫化水素の存在中でのスルホ還元雰囲気下に行われる。硫化剤は、好ましくは、HSガス、元素硫黄、CS、チオール、スルフィドおよび/またはポリスルフィド、硫黄化合物を含有している沸点が400℃未満である炭化水素留分または触媒を硫化する目的で炭化水素供給原料の活性化のために用いられる任意の他の硫黄含有化合物である。前記硫黄含有化合物は、有利には、アルキルジスルフィド、例えば、ジメチルジスルフィド(dimethyl disulfide:DMDS)、アルキルスルフィド、例えば、ジメチルスルフィド、チオール、例えば、n-ブチルチオール(または1-ブタンチオール)、およびtert-ノニルポリスルフィドタイプのポリスルフィド化合物から選ばれる。触媒は、脱硫されるべき供給原料中に含有される硫黄によって硫化されることもできる。好ましくは、触媒は、硫化剤および炭化水素供給原料の存在中で現場内(in situ)硫化される。大いに好ましくは、触媒は、ジメチルジスルフィドを添加した供給原料の存在中で現場内硫化される。
【0111】
(分離段階c))
本発明によると、本処理方法は、分離段階c)を含み、段階b)から得られた水素化処理済み流出物を給送され、前記段階が行われる際の温度は、200~450℃であり、その際の圧力は、段階b)の圧力と実質的に同一であり、第1のガス状流出物と、液状流出物と、水性流出物とを少なくとも得て、液状流出物の一部は、段階a)の上流にリサイクルされる。
【0112】
分離段階c)は、高圧または中圧高温の分離段階と言われる分離段階であり、当業者にはHHPS(Hot High Pressure Separator:高温高圧分離器)の名称の下でも知られている。それ故に、この段階c)は、好ましくは「高温高圧」分離器を使用し、その圧力は、段階b)の操作圧力に実質的に等しい。用語「段階b)の圧力に実質的に等しい圧力」は、段階b)の圧力に対して0~1MPa、好ましくは0.005~0.3MPa、特に好ましくは0.01~0.2MPaの圧力差を有する段階b)の圧力を意味すると理解される。好ましくは、段階c)の圧力は、圧力降下によって減少した段階b)の圧力である。
【0113】
分離が行われる温度は、200~450℃、好ましくは220~330℃、特に好ましくは240~300℃である。好適な代わりの形態によると、最も多くの熱を回収する観点から、分離は、可能な限り最も高いが段階b)の出口温度以下である温度で行われ、これにより段階b)からの流出物の再加熱(それ故に加熱の必要性)を回避または制限することが可能になる。別の代わりの形態によると、段階b)からの流出物は、分離前に再加熱または冷却されることができる。
【0114】
有利には、段階c)から得られたリサイクルされる流出物の量、すなわち、得られた生成物のリサイクルされる割合は、段階c)からのリサイクル流れ対プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料、すなわち、方法全体に給送する処理対象供給原料の重量比が、10以下、好ましくは7以下、かつ、優先的には0.001以上、好ましくは0.01以上、好適な態様では0.1以上となるように調節される。好ましくは、段階c)から得られたリサイクルされる液状流出物の量は、リサイクル流れ対プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の重量比が0.01~10、好ましくは0.1~7、特に好ましくは0.2~5になるように調節される。このリサイクル率により、段階a)における温度上昇をコントロールすることが可能となる。これは、リサイクル率が高い場合に、供給原料の希釈率が高く、段階a)の反応セクションの始めの温度上昇が、特にジオレフィンの水素化反応に起因して、希釈効果によって結果としてコントロール可能になるからである。
【0115】
分離段階は、有利には、当業者に知られている任意の方法、例えば、1基または複数基の分離器(ドラム)および/または1基または複数基のストリッピング塔の組み合わせによって行われ得、これらの分離器(ドラム)および/またはカラムは、場合によっては、ストリッピングガス、例えば水素に富むガス流れを給送されることができる。好ましくは、段階c)は、単一の分離器(ドラム)で行われる。
【0116】
高圧高温分離により、一方で、液状流出物の一部の高温リサイクルによってエネルギーの回収を最大にすることが可能となる。これは、段階a)において必要な入口温度に到達するためのエネルギーが、段階c)から得られた液状流出物の一部の熱によって少なくとも部分的に与えられるからであり、また、供給原料の200℃超の温度までの直接的加熱によって任意選択の予熱を低減させることを可能にし、実際には、これを無くすことさえ可能にし、ガム状物の形成を防止する。さらに、液状流出物の少なくとも一部を高圧でリサイクルするという事実により、段階a)における加圧のためのエネルギーを節約することが可能となる。
【0117】
高圧高温分離により、他方で、段階a)においてリサイクルされる液状流出物中に含有される軽質フラクション(沸点が175℃以下である化合物を含んでいる炭化水素留分またはナフサ)の量を最小限に抑えることが可能となる。この温度で、流出物の軽質フラクション(ナフサ)の実質的に全ては、ガス状流出物として分離/洗浄段階d)に流出するのに対して、液相として、供給原料の重質フラクション(沸点が175℃超である化合物を含んでいる炭化水素留分または中間蒸留物)が主に存在する。このように、pH2pが段階a)において有利であるのは、軽質フラクション(ナフサ)が高圧高温分離中に少なくとも部分的に除去されなかったならば、部分的に蒸発させてpH2pを低下させる可能性があるためである。ナフサを含んでいる軽質フラクションの除去は、この使用が減圧に関連するエネルギー損失の結果として好ましくないとしても、場合によっては、段階c)において用いられる少なくとも1基の分離器の上流でのわずかな減圧によって増加させられることができる。ナフサを含んでいる軽質フラクションの除去を増加させるための別の選択肢は、例えば段階c)において水素に富むガスを注入することによって、ストリッピングを行うことからなり得る。
【0118】
好適な代わりの形態によると、段階c)から得られた水素化処理済み液状流出物の少なくとも一部は、有利には、冷却されるか、または必要に応じて予熱されるか、または分離段階c)の出口と同じ温度に保持されるかのいずれかがなされた後に、水素化段階a)の上流にリサイクルされ得、供給原料および水素の温度および流量により、前記供給原料を段階c)から得られた前記液状流出物の少なくとも一部と水素に富むガスとの混合物として含んでいる流入流れの温度は、140~400℃、好ましくは220~350℃、特に好ましくは260~330℃となるようにする。
【0119】
分離段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部が、水素化段階a)の上流にリサイクルされる前に予熱されるケースにおいて、前記流出物は、場合によっては、水素化段階a)の上流にリサイクルされる前に、少なくとも1基の交換器および/または少なくとも1基のオーブンを通過して、前記リサイクルされた液状流出物の温度を調節するようにする。
【0120】
分離段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部が、水素化段階a)の上流にリサイクルされる前に冷却されるケースにおいて、前記流出物は、場合によっては、水素化段階a)の上流にリサイクルされる前に、少なくとも1基の交換器および/または少なくとも1基の冷却塔を通過して、前記リサイクルされた液状流出物の温度を調節するようにする。
【0121】
段階c)から得られた液状流出物は、必要に応じて冷却されるかまたは予熱されるかのいずれかがなされ得、または、分離段階c)の出口と同一の温度に維持され、このような液状流出物の少なくとも一部の水素化段階a)の上流でのリサイクルの使用により、必要に応じて段階a)に入る流れの温度を調節することがこうして可能になる。
【0122】
代わりの形態によると、供給原料は、段階c)から得られた流出物の少なくとも一部と混合される前に、直接的な加熱によって200℃まで、好ましくは180℃まで、特に好ましくは150℃までの範囲にわたる温度に予熱されることができる。この温度を超えると、直接的な加熱中の壁との接触は、ガム状物および/またはコークの形成を生ずる可能性があり、これらは、供給原料を加熱するためのシステムおよびまた1つまたは複数の触媒の床のファウリングおよび圧力損失の増加を引き起こす可能性がある。供給原料の150℃超、好ましくは180℃超、特に好ましくは200℃超の温度への加熱は、好ましくは、段階c)から生じた流出物の少なくとも一部による間接的な加熱によって行われる。
【0123】
このように、供給原料の150℃超、好ましくは180℃超、特に好ましくは200℃超の温度上昇は、加熱された壁との接触ではなく、より高温の液体との混合によってもたらされる。これにより、高温を局所的に制限することが可能になる。これは、熱交換器やオーブンでの加熱中に、所与の設定温度Tに達するように、熱伝達を経済的に行うために、高温側の温度は必然的にTより高くなければならないからである。壁を通じた熱流束が、まず前記壁の両側の温度差と交換表面積に依存することは、当業者に周知である。冷たい側と熱い側との温度差が小さければ、交換された熱の所与の量に対して、交換表面積がより大きくなる。この結果、冷たい流体と接触している壁の温度は、一般的に皮膚温度として知られている所望の温度よりも高くなる。高温流体との混合による加熱により、皮膚温度効果を防ぎ、それ故に、高温ゾーンを制限することがこのように可能となる。不活性な高温液体との混合によるこの種の加熱により、望ましくない反応、例えば、ジオレフィンのポリマー化(ガム状物の形成)および/またはコークの形成を制限し、段階a)における流れの入口温度を調節することがこのように可能となり、反応体の希釈の効果によってこれらの反応の発熱性をコントロールしながら、不飽和の水素化の反応を好ましくは可能な限り低い温度で開始させる。
【0124】
別の代わりの形態によると、供給原料は、段階c)から得られた流出物の少なくとも一部による間接的な加熱によって全体的に加熱される。このケースにおいて、供給原料は、段階c)から得られた流出物の少なくとも一部と混合される前に予熱されない。
【0125】
反応に必要なエネルギー、より具体的には、二重結合の飽和のための反応の活性化に必要な最低温度の調節は、このように、主に、段階a)の上流で、プラスチック熱分解油と水素に富むガスを含んでいる前記供給原料を、場合によっては温度調節を受け、好ましくは予熱されるかまたは冷却されるかのいずれかがなされ、特に好ましくは予熱された、分離段階c)から得られた液状流出物の一部のリサイクルと混合することによって達成される。
【0126】
別の加熱流れは、有利には、水素供給に由来する水素に富むガス状流出物および/または分離段階d)に由来するガス状流出物からなる。水素供給に由来するこの水素に富むガス状流出物および/または分離段階d)から得られたガス状流出物の少なくとも一部は、有利には、段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部との混合物として、または別個に、段階a)の上流に注入される。水素に富むガス流れは、それ故に、有利には、液状流出物の少なくとも一部との混合物として予熱されるか、または、好ましくは、任意選択に、少なくとも1基の交換器および/または少なくとも1基のオーブンまたは当業者に知られている任意の他の加熱手段を通過させることによって、混合前に別個に予熱されるかのいずれかがなされる。
【0127】
(分離段階d))
本発明によると、本処理方法は、分離段階d)を含み、この段階は、有利には、少なくとも1つの洗浄/分離セクションにおいて行われ、第1のガス状流出物と、段階c)から得られた液状流出物の別の部分と、水溶液とを給送され、前記段階が行われる際の温度は、20℃と200℃未満との間であり、圧力は、段階c)の圧力と実質的に同一であるかそれ以下であり、第2のガス状流出物と、水性流出物と、炭化水素流出物とを少なくとも得る。
【0128】
分離段階d)は、少なくとも1つのノックアウトドラムにおいて行われる。ノックアウトドラムは、高圧または中圧の低温のノックアウトドラムと言われ、CHPS(Cold High Pressure Separator:冷間高圧分離器)の名称の下でも当業者に知られている。それ故に、この段階d)は、好ましくは「冷間高圧」分離器を使用し、その圧力は、段階c)の操作圧力に実質的に等しい。用語「段階c)の圧力に実質的に等しい圧力」は、段階c)の圧力に対して、0~1MPa、好ましくは0.005~0.3MPa、特に好ましくは0.01~0.2MPaの圧力差を有する段階c)の圧力を意味すると理解される。好ましくは、段階d)の圧力は、圧力降下によって減少した段階c)の圧力である。分離段階d)の少なくとも一部を段階c)の操作圧力と実質的に同一の圧力で操作するという事実は、水素のリサイクルをさらに促進する。
【0129】
分離段階d)は、段階c)の圧力よりも低い圧力で行われることもできる。
【0130】
分離段階d)は、段階c)の操作圧力に実質的に等しい圧力での分離の(第1の)段階を含むこともでき、少なくとも1回の他の分離段階が続けられ、段階d)の各先行分離段階と同じかそれよりも低い温度およびそれよりも低い圧力で行われる。
【0131】
段階d)の分離が行われる際の温度は、20℃と200℃未満との間、好ましくは25~120℃、特に好ましくは30~70℃である。
【0132】
塩化アンモニウム塩の沈殿によるライン中の目詰まりのリスクで、この温度範囲で操作すること(それ故に、水素化転化された流出物を過度に冷却しないこと)が重要である。
【0133】
段階d)の洗浄/分離セクションは、少なくとも部分的に、洗浄および分離の共通のまたは別個の機器において行われ得、これらの機器は、周知である(種々の圧力および温度で操作され得るノックアウトドラム、ポンプ、熱交換器、洗浄カラム等)。分離段階d)は、例えば、抜き出された水性フラクションからサワー水をストリップするためのカラム(サワー水ストリッパとしても知られている)、リサイクルの前に水素に富むガスを精製するサワーガス洗浄のためのカラム、溶解ガスを除去する洗浄済み液状流出物の安定化のためのカラムを含むことができる。
【0134】
1回(または2回)の水素化分解段階が存在する場合(後述)、この段階d)には、さらに、任意選択の水素化分解段階から得られた水素化分解済み流出物の少なくとも一部をさらに給送されることができる。
【0135】
段階d)の終結の際に得られるガス状流出物は、有利には、水素を含み、好ましくは最低80容積%、より好ましくは最低85容積%の水素を含む。有利には、前記ガス状流出物は、少なくとも部分的に、水素化段階a)および/または水素化処理段階b)および/または水素化分解段階f)が存在する場合にはそれらにリサイクルされることができ、リサイクルシステムは、精製セクションを含むことが可能である。
【0136】
ガス状流出物は、少なくとも1つの水素に富むガスおよび/または軽質炭化水素、特にエタン、プロパンおよびブタンを回収する目的で、1回または複数回の追加の分離の対象とすることもでき、これらは有利には、水蒸気分解段階g)の1つまたは複数の炉に別々にまたは混合物として送られて、オレフィンの全体収率を高めることができる。
【0137】
段階d)の終結の際に得られる水性流出物は、有利にはアンモニウム塩および/または塩酸を含む。
【0138】
この分離段階d)により、塩化アンモニウム塩を取り除くことが特に可能となり、それ故に、塩化アンモニウム塩の沈殿に起因する目詰まり、特に、移送ラインおよび/または本発明の方法のセクションおよび/または水蒸気分解器への移送のためのラインにおける目詰まりのリスクを制限する。塩化アンモニウム塩は、塩化物イオンと、アンモニウムイオンとの間の反応によって形成され、塩化物イオンは、塩素化化合物の水素化によってHClの形態で、特に、段階a)およびb)の間に放出され、続けて、水中に溶解し、アンモニウムイオンは、窒素性化合物の水素化によってNHの形態で、特に、段階b)の間に生じ、および/またはアミンの注入によって導入され、続いて、水中に溶解する。それにより、水素イオンと塩化物イオンとの反応によって形成された塩酸を取り除くことも可能となる。
【0139】
処理対象の初期供給原料中の塩素化化合物の含有率に応じて、アミン、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンおよび/またはモノジエタノールアミンを含有している流れが、各触媒段階の上流、好ましくは、水素化段階a)および/または水素化処理段階b)の上流、好ましくは水素化段階a)の上流に注入されて、水素化転化段階の間に形成された塩化物イオンを結合させるのに十分な量のアンモニウムイオンを確保することができ、それ故に、塩酸の形成を制限すること、それ故に、分離セクションの下流の腐食を制限することを可能とする。
【0140】
有利には、分離段階d)は、洗浄/分離セクションの上流で、ガス状流出物および段階c)から得られた液状流出物の別の部分の混合物への水溶液の注入、好ましくは、水の注入を含み、塩化アンモニウム塩および/または塩酸を少なくとも部分的に溶解させるようにし、それ故に、塩素化不純物の除去を改善し、塩化アンモニウム塩の蓄積に起因する目詰まりのリスクを低減させる。
【0141】
本発明の任意選択の実施形態において、分離段階d)は、ガス状流出物と段階c)から得られた液状流出物の別の部分との混合物への水溶液の注入を含み、次いで、洗浄/分離セクションによって続けられ、これは、有利には、アンモニウム塩が添加された少なくとも1つの水性流出物、洗浄された液状炭化水素流出物および部分的に洗浄されたガス状流出物を得ることを可能にする分離の相を含む。アンモニウム塩を充填された水性流出物および洗浄済み液状炭化水素流出物は、その後、ノックアウトドラムにおいて分離されることができ、前記炭化水素流出物と前記水性流出物とを得る。前記部分的に洗浄されたガス状流出物は、並行して、洗浄カラムに導入され、そこで、水性流れ、好ましくは水素化処理済み流出物に注入された水溶液と同じ性質の水性流れに対して向流的に流通することができ、これにより、部分的に洗浄されたガス状流出物中に含有される塩酸を少なくとも部分的に、好ましくは完全に除去することが可能となり、それ故に、前記ガス状流出物、好ましくは本質的に水素を含む前記ガス状流出物と、酸性水性流れとを得ることが可能となる。ノックアウトドラムから得られた前記水性流出物は、場合によっては、前記酸性水性流れと混合されることができ、場合によっては、前記酸性水性流れとの混合物として、洗浄/分離セクションの上流の前記水溶液および/または洗浄カラム中の前記水性流れを分離段階d)に給送するための水リサイクル回路において用いられ得る。前記水リサイクル回路は、水の供給および/または塩基性溶液および/または溶存塩を排出することを可能にするブリード(bleed)を含むことができる。
【0142】
分離段階d)から生じた炭化水素流出物は、部分的にまたは完全に、直接的に水蒸気分解ユニットの入口または任意選択の分画段階e)のいずれかに送られる。好ましくは、液状炭化水素流出物は、部分的にまたは完全に、好ましくは完全に、分画段階e)に送られる。
【0143】
(分画段階e)(任意選択))
本発明による方法は、段階d)から得られた炭化水素流出物の全部または一部、好ましくは全部の分画の段階を含むことができ、第3のガス流れと、少なくとも2つの液体炭化水素流れとを少なくとも得、前記2つの液体炭化水素流れは、沸点が175℃以下(ナフサ留分)、特に、80~175℃である化合物を含んでいる少なくとも第1の炭化水素留分、および沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分(中間蒸留物留分)である。
【0144】
段階e)により、液状炭化水素流出物中に溶解したガス、例えば、アンモニア、硫化水素および1~4個の炭素原子を有している軽質炭化水素を取り除くことが特に可能となる。
【0145】
場合による分画段階e)が有利に行われる際の圧力は、1.0MPa(abs)以下、好ましくは0.1~1.0MPa(abs)である。
【0146】
1つの実施形態によると、段階e)は、少なくとも1つのストリッピング塔を有利に含んでいるセクションにおいて行われ得、ストリッピング塔は、環流ドラムを含んでいる環流回路を備えている。前記ストリッピング塔は、段階d)から得られた液状炭化水素流出物と、水蒸気の流れとを給送される。段階d)から生じた液状炭化水素流出物は、場合によっては、ストリッピング塔に入る前に加熱され得る。それ故に、最軽質化合物は、塔頂部中に同伴されて、環流ドラムを含んでいる環流回路に入り、そこで、ガス/液体分離が行われる。軽質炭化水素を含むガス相は、ガス流れとして環流ドラムから抜き出される。沸点が175℃以下である化合物を含んでいる炭化水素留分は、有利には、環流ドラムから抜き出される。沸点が175℃超である化合物を含んでいる炭化水素留分は、有利には、ストリッピング塔の底部のところで抜き出される。
【0147】
他の実施形態によると、分画段階e)は、ストリッピング塔とこれに続く蒸留塔または蒸留塔のみを使用することができる。
【0148】
沸点が175℃以下である化合物を含んでいる第1の炭化水素留分および沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分は、場合によっては混合されて、完全にまたは部分的に、水蒸気分解ユニットに送られることができ、その出口のところで、オレフィンが、(再)形成されて、ポリマーの形態で沈殿する場合がある。好ましくは、前記留分の一部のみが、水蒸気分解ユニットに送られる;残りの部分の少なくとも一部は、場合によっては、本方法の段階の少なくとも1つ中にリサイクルされ、かつ/または、従来の石油ベースの供給原料に由来する燃料貯蔵ユニット、例えば、ナフサの貯蔵のためのユニット、ディーゼルの貯蔵のためのユニットまたはケロセンの貯蔵のためのユニットに送られる。
【0149】
好適な実施形態によると、沸点が175℃以下である化合物を含んでいる第1の炭化水素留分は、完全にまたは部分的に、水蒸気分解ユニットに送られる一方で、沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分は、水素化分解段階に送られおよび/または燃料貯蔵ユニットに送られる。
【0150】
特定の実施形態において、任意選択の分画段階e)は、ガス流れのほかにも、沸点が175℃以下、好ましくは80~175℃である化合物を含んでいるナフサ留分、沸点が175℃超かつ385℃未満である化合物を含んでいる中間蒸留物留分および重質炭化水素留分として知られている、沸点が385℃以上である化合物を含んでいる炭化水素留分を得ることを可能にすることができる。ナフサ留分は、完全にまたは部分的に、水蒸気分解ユニットおよび/または従来の石油供給原料から得られたナフサの貯蔵のためのユニットに送られ得る:それは、リサイクルされることもできる;中間蒸留物留分は、完全にまたは部分的に、水蒸気分解ユニット、または従来の石油供給原料から得られたディーゼルの貯蔵のためのユニットのいずれかに送られか、またはリサイクルされることもできる;重質留分は、それの一部について、少なくとも部分的に、水蒸気分解ユニットに送られることができ、または、水素化分解段階が存在する場合には、それに送られることができる。
【0151】
別の特定の実施形態において、任意選択の分画段階e)は、ガス流れに加えて、沸点が175℃以下、好ましくは80~175℃である化合物を含んでいるナフサ留分、沸点が175℃超かつ280℃以下である化合物を含んでいるケロセン留分、沸点が280℃超かつ385℃未満である化合物を含んでいるディーゼル留分および重質炭化水素留分として称される沸点が385℃以上である化合物を含んでいる炭化水素留分を得ることを可能にすることができる。ナフサ留分、ケロセン留分および/またはディーゼル留分は、完全にまたは部分的に、水蒸気分解ユニット、またはそれぞれに従来の石油供給原料から得られたナフサ、ケロセンまたはディーゼルのプールのいずれかに送られることができ、またはリサイクルされることができる。重質留分は、その一部について、少なくとも部分的に、水蒸気分解ユニットに送られることができるか、または、水素化分解段階が存在する場合にはそれに送られることができる。
【0152】
別の特定の実施形態において、段階e)から生じた沸点が175℃以下である化合物を含んでいるナフサ留分は、分画されて、沸点が80~175℃である化合物を含んでいる重質ナフサ留分と、沸点が80℃未満である化合物を含んでいる軽質ナフサ留分とを与え、前記重質ナフサ留分の少なくとも一部は、芳香族化合物を生じさせるという目的のためにナフサの改質の少なくとも1回の段階を含んでいるアロマティックコンプレクスに送られる。この実施形態によると、軽質ナフサ留分の少なくとも一部は、下記の水蒸気分解段階g)に送られる。
【0153】
分画段階d)から得られた1つまたは複数のガスフラクションは、軽質炭化水素、特に、エタン、プロパンおよびブタンを少なくとも回収するという目的のためのさらなる1回または複数回の精製および1回または複数回の分離の対象を形成することができ、軽質炭化水素は、有利には、別個にまたは混合物として、水蒸気分解段階g)の1つまたは複数の炉に送られて、オレフィンの全体的な収率を増大させることができる。
【0154】
(水素化分解段階f)(任意選択))
代わりの形態によると、本発明の方法は、水素化分解段階f)を含むことができ、この段階は、分離段階d)の後に、段階d)から得られた前記炭化水素流出物の少なくとも一部により行われるか、または分画段階e)の後に沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分の少なくとも一部により行われる。
【0155】
有利には、段階f)は、当業者に周知の水素化分解反応を使用し、より詳細には、分画段階e)から得られた炭化水素流出物中に含有される重質化合物、例えば沸点が175℃超である化合物を、沸点が175℃以下である化合物に転化することを可能にする。他の反応、例えば、オレフィンまたは芳香族化合物の水素化、水素化脱金属、水素化脱硫、水素化脱窒等が実行され得る。
【0156】
沸点が175℃超である化合物は、高いBMCIを有し、より軽質の化合物に対して、ナフテン化合物、ナフテン芳香族化合物および芳香族化合物を多く含有し、そのため、より高いC/H比に至る。この高いC/H比は、水蒸気分解器におけるコーキングの原因であり、そのため、この留分に専用の水蒸気分解炉が必要となる。これらの重質化合物(中間蒸留物留分)の収率を最小にし、かつ、軽質化合物(ナフサ留分)の収率を最大にすることが望まれる場合、これらの化合物は、水素化分解によって軽質化合物、水蒸気分解ユニットに一般的に有利な留分に少なくとも部分的に転化され得る。
【0157】
それ故に、本発明の方法は、水素化分解段階f)を含むことができ、この段階は、水素化分解反応セクションにおいて行われ、n個の触媒床を有する少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化分解触媒を含み、前記水素化分解反応セクションは、段階d)から得られた前記炭化水素流出物の少なくとも一部および/または段階e)から得られた沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分の少なくとも一部および水素を含んでいる第3のガス流れを給送され、前記水素化分解反応セクションが使用される際の平均温度は、250~450℃であり、水素分圧は、1.5~20.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1であり、第1の水素化分解済み流出物を得る。
【0158】
それ故に、前記水素化分解反応セクションが有利に使用される際の平均温度は、250~480℃、好ましくは320~450℃であり、その際の水素分圧は、1.5~20.0MPa(abs)、好ましくは3~18.0MPa(abs)であり、その際の毎時空間速度(HSV)は、0.1~10.0h-1、好ましくは0.1~5.0h-1、優先的には0.2~4h-1である。段階c)における水素被覆率は、有利には、段階a)に給送するフレッシュな供給原料の容積(m)当たり水素80~2000Sm、好ましくは段階a)に給送するフレッシュな供給原料の容積(m)当たり水素200~1800Smである。平均温度(WABT)、HSVおよび水素被覆率の定義は、上述したものに対応する。
【0159】
有利には、前記水素化分解反応セクションが使用される際の圧力は、水素化段階a)または水素化処理段階b)の反応セクションにおいて用いられる圧力と同等である。
【0160】
有利には、前記段階f)は、少なくとも1基、好ましくは1~5基のn個の触媒床を有している固定床反応器を含んでいる水素化分解反応セクションにおいて行われ、nは、1以上、好ましくは1~10、好適な態様では2~5の整数であり、前記1つまたは複数の触媒床は、それぞれ、少なくとも1種、かつ好ましくは10種以下の水素化分解触媒を含む。反応器がいくつかの触媒床、すなわち少なくとも2個、好ましくは2~10個、好ましい態様では2~5個の触媒床を含む場合、前記触媒床は、好ましくは前記反応器中に直列に配置される。
【0161】
水素化分解済み流出物は、少なくとも部分的に、水素化段階a)および/または水素化処理段階b)および/または分離段階d)中にリサイクルされることができる。好ましくは、それは、分離段階d)にリサイクルされる。
【0162】
水素化分解段階は、1段階(段階f))または2段階(段階f)およびf’))で行われることができる。2段階でそれが行われる場合、第1の水素化分解段階f)から得られた流出物の分離が行われ、沸点が175℃超である化合物を含んでいる炭化水素留分(中間蒸留物留分)を得ることを可能とし、この留分は、第1の水素化分解反応セクションf)とは異なる専用の第2の水素化分解反応セクションを含んでいる第2の水素化分解段階f’)に導入される。この構成は、ナフサ留分のみを製造することが望まれる場合に特に適している。
【0163】
第2の水素化分解段階f’)は、水素化分解反応セクションにおいて行われ、n個の触媒床を有する少なくとも1基の固定床反応器を使用し、nは、1以上の整数であり、それぞれ、少なくとも1種の水素化分解触媒を含み、前記水素化分解反応セクションは、第1の水素化分解段階f)から得られた第1の水素化分解済み流出物の少なくとも一部と、水素を含んでいるガス流れとを給送され、前記水素化分解反応セクションが使用される際の平均温度は、250~450℃であり、水素分圧は、1.5~20.0MPa(abs)であり、毎時空間速度は、0.1~10.0h-1であり、第2の水素化分解流出物を得る。第2の水素化分解段階において用いられる好適な操作条件および触媒は、第1の水素化分解段階について説明されたものである。2つの水素化分解段階において用いられる操作条件および触媒は、同一または異なることができる。
【0164】
前記第2の水素化分解段階は、好ましくは、n個の触媒床を有する少なくとも1基、好ましくは1~5個の固定床反応器を含んでいる水素化分解反応セクションにおいて行われ、nは、1以上、好ましくは1~10、好ましい態様では2~5の整数であり、前記1つまたは複数の床は、それぞれ、少なくとも1種、かつ、好ましくは10種以下の水素化分解触媒を含む。
【0165】
1回または複数回の水素化分解段階において用いられるこれらの操作条件により、一般的に、沸点が175℃以下、好ましくは160℃未満、好ましい態様では150℃未満である化合物の最低80重量%を有する生成物への通過毎の転化率15重量%超、よりなおさら好ましくは20重量%~95重量%を得ることが可能となる。方法が2回の水素化分解段階で行われる場合、第2の段階における通過毎の転化率は、ナフサ留分の化合物(175℃以下、特に80℃と175℃以下との間の沸点を有する)についての選択性を最大にするように、中程度に保たれる。通過毎の転化率は、第2の水素化分解段階のループにわたる高いリサイクル率の使用によって制限される。この率は、段階f’)の給送流量対段階a)の供給原料の流量の比として定義される;優先的には、この比は、0.2~4、好ましくは0.5~2.5である。
【0166】
第2の水素化分解段階f’)の水素化分解済み流出物は、少なくとも部分的に、水素化段階a)および/または水素化処理段階b)および/または分離段階d)にリサイクルされることができる。好ましくは、それは、分離段階d)にリサイクルされる。
【0167】
1回または複数回の水素化分解段階は、それ故に、沸点が175℃超である全ての炭化水素化合物(中間蒸留物留分)を、沸点が175℃以下である炭化水素化合物(ナフサ留分)に転化することを必ずしも可能にするわけではない。分画段階e)の後に、沸点が175℃超である化合物が多かれ少なかれ相当な割合で残存する場合がある。転化率を高めるために、この未転化留分の少なくとも一部は、第2の水素化分解段階f’)に導入され得る。別の部分は、ブリードオフされ得る。方法の操作条件に応じて、前記ブリードは、流入する供給原料に対して、沸点が175℃超である化合物を含んでいる留分の重量で0重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~5重量%のものであり得る。
【0168】
本発明によれば、1回または複数回の水素化分解段階は、少なくとも1種の水素化分解触媒の存在中で進行する。
【0169】
1回または複数回の水素化分解段階において用いられる1種または複数種の水素化分解触媒は、当業者に知られている従来の水素化分解触媒であり、酸機能を水素化脱水素機能および任意選択に少なくとも1つの結合マトリクスを組み合わせる二機能性タイプのものである。酸機能は、表面酸性度を示す高比表面積(一般的に150~800m/g)の担体によってもたらされ、例えば、ハロゲン化(特に塩素化またはフッ素化)アルミナ、アルミニウムおよびホウ素の酸化物の組み合わせ、無定形シリカ-アルミナおよびゼオライトがある。水素化脱水素機能は、周期律表の第VIB族からの少なくとも1種の金属および/または第VIII族からの少なくとも1種の金属によってもたらされる。
【0170】
好ましくは、1種または複数種の水素化分解触媒が含む水素化脱水素機能基は、第VIII族からの少なくとも1種の金属を含み、当該金属は、鉄、コバルト、ニッケル、ルテニウム、ロジウム、パラジウムおよび白金から、好ましくはコバルトおよびニッケルから選ばれる。好ましくは、1種または複数種の前記触媒は、第VIB族からの少なくとも1種の金属も含み、当該金属は、クロム、モリブデンおよびタングステンから単独でまたは混合物として選ばれ、好ましくは、モリブデンおよびタングステンから選ばれる。NiMо、NiMоWまたはNiWタイプの水素化脱水素機能基が好適である。
【0171】
好ましくは、1種または複数種の水素化分解触媒中の第VIII族からの金属の含有率は、有利には0.5重量%~15重量%、好ましくは1重量%~10重量%であり、百分率は、触媒の全重量に対する酸化物の重量による百分率として表される。金属がコバルトまたはニッケルである場合、金属含有率は、それぞれにCоОおよびNiОとして表される。
【0172】
好ましくは、1種または複数種の水素化分解触媒中の第VIB族からの金属の含有率は、有利には5重量%~35重量%、好ましくは10重量%~30重量%であり、百分率は、触媒の全重量に対する酸化物の重量による百分率として表される。金属がモリブデンまたはタングステンである場合、金属含有率は、それぞれにMоО、WОとして表される。
【0173】
1種または複数種の水素化分解触媒は、場合によっては、触媒上に堆積され、リン、ホウ素およびケイ素によって形成される群から選ばれる少なくとも1種のプロモータ元素、場合によっては、第VIIa族からの少なくとも1種の元素(塩素、フッ素が好適である)、場合によっては、第VIIB族からの少なくとも1種の元素(マンガンが好適である)、および場合によっては、第VB族からの少なくとも1種の元素(ニオブが好適である)を含むこともできる。
【0174】
好ましくは、1種または複数種の水素化分解触媒は、酸化物タイプの少なくとも1種の無定形のまたは結晶性の乏しい多孔性無機マトリクスを含み、アルミナ、シリカ、シリカ-アルミナ、アルミン酸塩、アルミナ-ホウ素酸化物、マグネシア、シリカ-マグネシア、ジルコニア、チタン酸化物または粘土から単独でまたは混合物として選ばれ、好ましくは、アルミナまたはシリカ-アルミナから単独でまたは混合物として選ばれる。
【0175】
好ましくは、シリカ-アルミナは、50重量%超のアルミナ、より好ましくは60重量%超のアルミナを含有する。
【0176】
好ましくは、1種または複数種の水素化分解触媒は、場合によっては、ゼオライトも含み、このゼオライトは、Yゼオライト、好ましくはUSYゼオライトから、単独でまたはからの他のゼオライトとの組み合わせで選ばれ、他のゼオライトは、ベータ、ZSM-12、IZM-2、ZSM-22、ZSM-23、SAPО-11、ZSM-48若しくはZBM-30ゼオライトから単独でまたは混合物として選ばれる。好ましくは、ゼオライトは、USYゼオライトのみである。
【0177】
前記触媒がゼオライトを含むケースにおいて、1種または複数種の水素化分解触媒中のゼオライトの含有率は、有利には0.1重量%~80重量%、好ましくは3重量%~70重量%であり、百分率は、触媒の全重量に対するゼオライトの百分率として表される。
【0178】
好適な触媒は、第VIB族からの少なくとも1種の金属、および場合による第VIII族からの少なくとも1種の非貴金属、少なくとも1種のプロモータ元素、好ましくはリン、少なくとも1種のYゼオライト、および少なくとも1種のアルミナバインダを含み、好ましくはそれらからなる。
【0179】
一層より好適な触媒は、ニッケル、モリブデン、リン、USYゼオライト、および場合によるベータゼオライト、およびアルミナを含み、好ましくはそれらからなる。
【0180】
別の好適な触媒は、ニッケル、タングステン、アルミナおよびシリカ-アルミナを含み、好ましくはそれらからなる。
【0181】
別の好適な触媒は、ニッケル、タングステン、USYゼオライト、アルミナおよびシリカ-アルミナを含み、好ましくはそれらからなる。
【0182】
前記水素化分解触媒は、例えば、押出成形物の形態にある。
【0183】
代わりの態様において、第2の水素化分解段階において使用される水素化分解触媒の水素化脱水素機能基は、第VIII族からの少なくとも1種の貴金属を含み、当該金属は、パラジウムおよび白金から単独でまたは混合物として選ばれる。第VIII族からの貴金属の含有率は、有利には0.01重量%~5重量%、好ましくは0.05重量%~3重量%であり、百分率は、触媒の全重量に対する酸化物(PtОまたはPdО)の重量による百分率として表される。
【0184】
本発明の別の態様によると、水素化分解触媒は、酸素および/または窒素および/または硫黄を含有している1種または複数種の有機化合物をさらに含む。そのような触媒は、しばしば、用語「添加型触媒(additivated catalyst)」で示される。一般的に、有機化合物は、カルボキシル、アルコール、チオール、チオエーテル、スルホン、スルホキシド、エーテル、アルデヒド、ケトン、エステル、カルボナート、アミン、ニトリル、イミド、オキシム、尿素およびアミドの基から選ばれる1つまたは複数の化学官能基を含んでいる化合物あるいはまたフラン環を含む化合物あるいはまた糖から選ばれる。
【0185】
水素化、水素化処理および水素化分解の段階の触媒の調製は、知られており、一般的に、第VIII族の金属および第VIB族の金属が存在する場合には当該金属、並びに場合によるリンおよび/またはホウ素の担体上の含浸の段階を含み、乾燥、次いで場合による焼成が続けられる。添加型触媒のケースにおいて、調製は、一般的に、有機化合物の導入の後に、焼成を伴わない単純な乾燥によって行われる。用語「焼成」は、ここでは、空気または酸素を含有しているガス下、200℃以上の温度での熱処理を意味すると理解される。本方法の段階におけるそれらの使用の前に、触媒は、一般的に、活性体を形成するために硫化に供される。段階a)の触媒は、それの還元された形態で用いられる触媒であることもでき、それ故に、それの調製中に還元段階を含む。
【0186】
水素化、水素化処理および水素化分解の反応セクションに給送する水素を含んでいるガス流れは、水素の供給からなることができ、かつ/または分離段階d)から特に得られたリサイクルされた水素からなることができる。好ましくは、水素を含んでいる追加のガス流れが、有利には、各反応器、特に直列で操作している反応器の入口で、および/または反応セクションの第2の触媒床から始まる各触媒床の入口で導入される。これらの追加のガス流れは、冷却流体とも呼ばれる。それらにより、行われる反応が一般的に高発熱性である反応器内の温度をコントロールすることが可能となる。
【0187】
プラスチック熱分解油の本発明の方法による処理によってこのように得られた前記炭化水素流出物または1つまたは複数の前記炭化水素流れは、水蒸気分解ユニットの入口における供給原料の仕様に適合する組成を示す。特に、炭化水素流出物または1つまたは複数の前記炭化水素流れの組成は、好ましくは以下の通りである:
- 金属元素の全含有率は、10.0重量ppm以下、好ましくは2.0重量ppm以下、優先的には1.0重量ppm以下、好ましい態様では0.5重量ppm以下であり、これにより:
ケイ素(Si)元素の含有率は、5.0重量ppm以下、好ましくは1重量ppm以下、好ましい態様では0.6重量ppm以下であり、および/または鉄(Fe)元素の含有率は、200重量ppb以下である、
- 硫黄含有率は、500重量ppm以下、好ましくは200重量ppm以下である、および/または
- 窒素含有率は、100重量ppm以下、好ましくは50重量ppm以下、好ましい態様では5重量ppm以下である、および/または
- アスファルテンの含有率は、5.0重量ppm以下である、および/または
- 塩素元素の全含有率は、10重量ppm以下、好ましくは1.0重量ppm未満である、および/または
- 水銀含有率は、5重量ppb以下、好ましくは3重量ppb以下である、および/または
- オレフィン系化合物(モノオレフィンおよびジオレフィン)の含有率は、5.0重量%以下、好ましくは2.0重量%以下、好ましい態様では0.1重量%以下である。
【0188】
含有率は、考慮下の流れの全重量に対する、重量による相対濃度、重量による百分率(%)、重量による百万分率(part(s) per million:ppm)または重量による十億分率(part(s) per billion:ppb)として与えられる。
【0189】
本発明による方法により、プラスチック熱分解油を処理して水蒸気分解ユニットに完全にまたは部分的に注入され得る流出物を得るようにすることがこのように可能になる。
【0190】
(重金属の吸着の段階(任意選択))
分離段階c)およびd)の少なくとも一方からまたは分画段階e)から得られた任意のガス状流出物および/または任意の液状流出物は、重金属の吸着の任意選択の段階に供されることができる。
【0191】
ガス状流出物は、特に、段階c)から得られた第1のガス状流出物および/または段階d)から得られた第2のガス状流出物および/または段階e)から得られた第3のガス状流出物であることができる。
【0192】
液状流出物は、特に、段階c)から得られた液状流出物および/または段階d)から得られた炭化水素流出物および/または段階e)から得られた第1および/または第2の炭化水素留分であることができる。
【0193】
任意選択の吸着段階により、前記ガス状および液状の流出物中に存在する可能性のある金属不純物の量、特に、重金属、例えば、ヒ素、亜鉛、鉛、特に水銀の量を除去するかまたは低減させることが可能になる。金属不純物、特に重金属は、供給原料中に存在する。いくつかの不純物、特に水銀に基づく不純物は、本発明による方法の段階の1つにおいて変換されることができる。それらの変換された形態は、捕捉されやすい。それらの除去または低減が特に必要となる可能性があるのは、前記ガス状および液状の流出物の少なくとも一部が、直接的にかまたは1回または複数回の任意選択の追加段階、例えば分画段階e)に供された後にかのいずれかに、金属不純物に対して厳格な仕様を有する段階、例えば、水蒸気分解段階に送られるように意図される場合である。
【0194】
それ故に、段階c)、d)および/またはe)から得られたガス状流出物および/または段階c)から得られた液状流出物および/または段階d)から得られた炭化水素流出物および/または段階e)から得られた第1および/または第2の炭化水素留分の吸着の任意選択の段階が有利に行われるのは、特に、これらの流出物または供給原料の少なくとも1つがそれぞれに20重量ppb超、特に15重量ppb超の重金属の金属元素(As、Zn、Pb、Hg等)を含む場合であり、特に、これらの流出物または供給原料の少なくとも1つがそれぞれ10重量ppb超の水銀、より特定的には15重量ppb超の水銀を含む場合である。
【0195】
前記任意選択の吸着段階が有利に行われる際の温度は、20~150℃、好ましくは40~100℃であり、その際の圧力は、0.15~10.0MPa(abs)、好ましくは0.2~1.0MPa(abs)である。
【0196】
前記任意選択の吸着段階は、そのような汚染物質の量を減少させることを可能にする当業者に知られている任意の吸着剤によって行われることができる。
【0197】
代わりの形態によると、前記任意選択の吸着段階は、吸着セクションにおいて行われ、当該セクションは、多孔質担体と、少なくとも1つの活性相とを含んでいる少なくとも1種の吸着剤の存在中で操作され、当該活性剤は、元素形態、または金属硫化物若しくは金属酸化物の形態、あるいはほかに元素形態の金属の形態にある硫黄をベースとすることができる。
【0198】
多孔質担体は、アルミナ、シリカ-アルミナ、シリカ、ゼオライトまたは活性炭の系列から区別なく選ばれることができる。有利には、多孔質担体は、アルミナをベースとする。担体の比表面積は、一般的に150~600m/g、好ましくは200~400m/g、よりなおさら好ましくは150~350m/gである。吸着剤の比表面積は、上述のようにBET法によって測定された表面である。
【0199】
活性相は、元素形態、または金属硫化物若しくは金属酸化物の形態、あるいはまた元素形態の金属の形態の硫黄をベースとする。好ましくは、活性相は、金属硫化物の形態にあり、特に銅、モリブデン、タングステン、鉄、ニッケルまたはコバルトから選ばれる群からの金属の硫化物である。
【0200】
有利には、吸着剤の活性相は、吸着剤の全重量に対して、1重量%~70重量%、好ましくは2重量%~25重量%、大いに好ましくは3重量%~20重量%の硫黄を含む。
【0201】
有利には、吸着剤の全重量に対する金属の重量割合は、一般的に1%~60%、好ましくは2%~40%、好ましい態様では5%~30%、大いに好ましくは5%~20%である。
【0202】
吸着セクション中の滞留時間は、一般的に1~180分である。
【0203】
前記吸着セクションは、1つまたは複数の吸着カラムを含むことができる。吸着セクションが2つの吸着カラムを含む場合、1つの操作方式は、「スイング」操作であることができ、この方式において、カラムの一方は、オンライン、すなわち操作中にある一方で、他方のカラムは、インリザーブにある。別の操作方式は、少なくとも2つのカラムを配列可変方式で直列操作しているようにさせることである。
【0204】
好ましくは、前記吸着セクションは、1つまたは複数のガス状流出物のための吸着カラムと1つまたは複数の液状流出物のための吸着カラムとを含む。
【0205】
(水蒸気分解段階g)(任意選択))
分離段階d)から得られた炭化水素流出物または任意選択の段階e)から得られた2つの液体炭化水素流れの少なくとも一方は、完全にまたは部分的に、水蒸気分解段階g)に送られ得る。
【0206】
有利には、分離段階d)および/または分画段階e)から得られた、エタン、プロパンおよびブタンを含有している1つまたは複数のガスフラクションは、完全にまたは部分的に、水蒸気分解段階g)に送られることもできる。
【0207】
前記水蒸気分解段階g)は、有利には、少なくとも1基の熱分解炉において行われ、その際の温度は、700~900℃、好ましくは750~850℃であり、その際の圧力は、0.05~0.3MPa(相対)である。炭化水素化合物の滞留時間は、一般に1.0秒(sとして示される)以下、好ましくは0.1~0.5sである。有利には、水蒸気は、任意選択の水蒸気分解段階g)の上流に、分離(または分画)の後に導入される。導入される水は、有利には水蒸気の形態にあり、この水の量は、段階e)の入口のところにおいて有利には炭化水素化合物の重量(kg)当たり水0.3~3.0kgである。好ましくは、任意選択の段階g)は、並列のいくつかの熱分解炉において行われ、操作条件を段階g)に給送する、特に、段階e)から得られた種々の流れに適合させるようにし、また、チューブのデコーキング時間を管理するようにする。炉は、並列に配置された1本または複数本のチューブを含む。炉は、並列で操作する一群の炉を表すこともできる。例えば、炉は、沸点が175℃以下である化合物を含んでいる炭化水素留分の分解に専用であってよい。
【0208】
種々の水蒸気分解炉からの流出物は、一般に、流出物を構成するという目的のために分離前に再結合される。水蒸気分解段階g)は、水蒸気分解炉だけではなく、当業者に周知である水蒸気分解に関連する副段階も含むことが理解される。これらの副段階は、熱交換器、塔および触媒反応器および炉へのリサイクルを特に含むことができる。塔により、一般に、水素および2~5個の炭素原子を有している化合物を含んでいる少なくとも1つの軽質フラクション、および熱分解ガソリンを含んでいるフラクション、および任意選択に熱分解油を含んでいるフラクションを回収するという目的のために流出物を分画することが可能となる。塔により、分画軽質フラクションの種々の成分を分離して、エチレンに豊富な少なくとも1つの留分(C留分)およびプロピレンに豊富な少なくとも1つの留分(C留分)および場合によるブテンに豊富な留分(C留分)を回収することが可能となる。触媒反応器により、C、C、実際にさらにはCの留分および熱分解ガソリンの水素化を行うことが特に可能となる。飽和化合物、特に、2~4個の炭素原子を有している飽和化合物は、有利には、水蒸気分解炉にリサイクルされて、オレフィンの全体的収率を増大させる。
【0209】
この水蒸気分解段階g)により、2、3および/または4個の炭素原子を含んでいるオレフィン(すなわち、C、Cおよび/またはCのオレフィン)を含有している少なくとも1つの流出物を、満足のいく含有率、特に、考慮下の水蒸気分解流出物の重量に対する2、3および4個の炭素原子を含んでいる全オレフィンの重量で30重量%以上、特に40重量%以上、実際にさらには50重量%以上で得ることが可能となる。前記C、CおよびCのオレフィンは、続けて、有利には、ポリオレフィンモノマーとして用いられ得る。
【0210】
本発明の好適な実施態様によると、プラスチック熱分解油を含んでいる供給原料の処理のための方法は、以下の段階を含み、好ましくはそれらからなり、以下の段階を、好ましくは、与えられた順序で一緒に連結する:
- 水素化段階a)、水素化処理段階b)、分離段階c)および分離/洗浄段階d)、
- 水素化段階a)、水素化処理段階b)、分離段階c)および分離/洗浄段階d)および分画段階e)、
- 水素化段階a)、水素化処理段階b)、分離段階c)および分離/洗浄段階d)、分画段階e)および水素化分解段階f)における沸点が175℃超である化合物を含んでいる炭化水素留分の導入の段階、水素化分解済み流出物は、段階d)にリサイクルされる。
【0211】
全ての実施形態は、さらに、前処理段階a0)を含むことができ、好ましくは含んでなる。
【0212】
全ての実施形態は、さらに、水蒸気分解段階g)を含むことができ、好ましくは含んでなる。
【0213】
全ての実施形態は、段階a)において、分離段階c)から得られた液状流出物の少なくとも一部の特に段階a)におけるリサイクルを含む。
【0214】
(用いられた分析方法)
種々の流れ、特に、処理されるべき供給原料および流出物の特徴を決定するために用いられた分析の方法および/または規格は、当業者に知られている。それらは、特に、情報として下記にリストされている。同等であると評される他の方法も、用いられ得、特に、同等のIP、ENまたはISOの方法がある。
【0215】
【表1】
【0216】
(1)MAV法;論文C. Lopez-Garcia et al., Near Infrared Monitoring of Low Conjugated Diolefins Content in Hydrotreated FCC Gasoline Streams, Oil & Gas Science and Technology - Rev. IFP, Vol. 62 (2007), No. 1, pp. 57-68に記載されている。
【0217】
(図面のリスト)
図1~2に参照される要素の特定により、本発明のより良好な理解が可能となるが、本発明は、図1~2に図示される特定の実施形態に制限されない。提示される種々の実施形態は、単独でまたは互いとの組み合わせで用いられることができ、組み合わせに制限はない。
【0218】
図1は、本発明の方法の特定の実施形態の図を示し、以下を含んでいる:
- 段階a):プラスチックの熱分解から得られた炭化水素供給原料(1)の水素化;段階c)から得られたリサイクルされた液状流出物の少なくとも一部(9a)との混合物として、水素を豊富に含むガス(2)の存在中、場合によっては、流れ(3)によってもたらされたアミンの存在中、場合によっては、流れ(4)によってもたらされた硫黄化合物の存在中で少なくとも1種の水素化触媒を含んでいる少なくとも1基の固定床反応器において行われる:水素化された流出物(5)を得る;
- 段階b):段階a)から得られた水素化済み流出物(5)を、水素(6)の存在中で水素化処理する;少なくとも1種の水素化処理触媒を含んでいる少なくとも1基の固定床反応器において行われる;水素化処理された流出物(7)を得る;
- 水素化処理済み流出物(7)の分離の段階c);高温高圧(HHPS)で行われる;第1のガス状流出物(8)と、液状流出物(9)とを少なくとも得る;液状流出物(9)の一部(9a)は、段階a)の上流にリサイクルされる;
- 分画段階e);高圧低温(CHPS)で行われ、第1のガス状流出物(8)と、段階c)から得られた液状流出物の他の部分(9b)と、水溶液(10)とを給送され、水素を含んでいる第2のガス状流出物(11)と、溶解塩を含有している水性流出物(12)と、炭化水素流出物(13)とを少なくとも得ることを可能にする;
- 場合による、炭化水素流出物(13)の分画の段階e);少なくとも第3のガス状流出物(14)と、沸点が175℃以下である化合物を含んでいる第1の炭化水素留分(15)(ナフサ留分)と、沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分(16)(中間蒸留留分)とを少なくとも得ることを可能にする。
【0219】
段階e)の終結の際に、沸点が175℃以下である化合物を含んでいる第1の炭化水素留分(15)の一部は、水蒸気分解方法(表示せず)に送られることができる。第1の炭化水素留分(15)の別の部分は、水素化段階a)および/または水素化処理段階b)に給送することができる(表示せず)。
【0220】
図2は、本発明の方法の別の特定の実施形態の図を示し、図1の図をベースとしている。この図は、特に水素化分解段階f)を含み、当該段階において、段階e)から得られた沸点が175℃超である化合物を含んでいる第2の炭化水素留分(16)の少なくとも一部をこの水素化分解段階f)に給送し、これは、少なくとも1種の水素化分解触媒を含んでいる少なくとも1基の固定床反応器において行われ、水素(17)を給送される。水素化分解済み流出物(18)は、分離段階d)の上流にリサイクルされる。
【0221】
水素化段階a)の入口でアミン流れ(3)を注入する代わりに、それを水素化処理段階b)の入口、分離段階c)の入口、水素化分解段階f)が存在する場合にはそれの入口で注入すること、あるいはほかに、それを注入しないことは、供給原料の性質に応じて可能である。
【0222】
本発明をより理解しやすくするために、主要な段階のみが、主要な流れとともに、図1および2に表されて、本発明をより良好に理解されることを可能にしている。たとえ表されていなくても、操作に必要な全ての機器(ドラム、ポンプ、交換器、オーブン、カラム等)が存在することは明確に理解される。水素を豊富に含むガス流れ(供給またはリサイクル)は、上述されたように、各反応器または触媒床の入口でまたは2基の反応器または2つの触媒床の間で注入され得ることも理解される。水素の精製およびリサイクルのために当業者に周知の手段も使用され得る。
【0223】
(実施例)
(実施例1(本発明に合致する))
本方法において処理される供給原料(1)は、表2に指し示される特徴を示すプラスチック熱分解油である(すなわち、前記プラスチック熱分解油を100重量%含んでいる)。
【0224】
【表2】
【0225】
(1)MAV法;論文C. Lopez-Garcia et al., Near Infrared Monitoring of Low Conjugated Diolefins Content in Hydrotreated FCC Gasoline Streams, Oil & Gas Science and Technology - Rev. IFP, Vol. 62 (2007), No. 1, pp. 57-68に記載されている。
【0226】
供給原料(1)および水素が豊富なガス(2)を、オーブンによって事前に100℃に予熱する。300℃で行われる分離段階c)から得られた液状流出物の一部を、382℃に予熱し、高温液状リサイクル(9a)を構成する。供給原料(1)、水素が豊富なガスおよび高温液状リサイクルを混合し、水素化段階a)に供する。水素化段階a)を、固定床反応器において、アルミナ担持NiMоタイプの水素化触媒を用いて表3に指し示される条件下に行う。
【0227】
供給原料(1)の流量6.25T/hおよび高温リサイクルの流量18.75T/hについて、382℃にある高温液状リサイクルによって節約される熱量は、300℃から382℃までの余剰加熱を考慮して、かつ、40℃に冷却された液状リサイクルと比較して、約3.6MWである。この節約された熱は、本方法に必要な操作コストおよび資本コストを削減する。この理由のために、この方法から得られた生成物は、より低いカーボンフットプリントで得られ、すなわち、ガス排出量と温室効果、特に二酸化炭素の排出量が削減される。また、高温液状リサイクルの熱の寄与により、供給原料をオーバーヒートさせないことを可能にする。混合によって間接的に加熱されるからである;これにより、反応器の入口のところでのガム状物および/またはコークの形成を制限することが可能になり、これは、長期的に、圧力降下における増大をもたらすだろう。
【0228】
【表3】
【0229】
表3に指し示される条件は、サイクルの開始時の条件に相当し、触媒の失活を補うために、平均温度(WABT)を1ヶ月ごとに1℃ずつ上昇させる。
【0230】
水素化段階a)の終結の際に、観察された転化度(=(初期濃度-最終濃度)/初期濃度)を表4に指し示す。
【0231】
【表4】
【0232】
水素化段階a)から得られた水素化済み流出物(5)を、分離なしで水素化処理段階b)に直接的に供する。当該水素化処理段階b)を、固定床において、水素(6)およびアルミナ担持NiMоタイプの水素化処理触媒の存在中で、表5に提示される条件下に行う。
【0233】
【表5】
【0234】
表5に指し示される条件は、サイクルの開始時の条件に相当し、触媒の失活を補うために、平均温度(WABT)を1ヶ月ごとに1℃ずつ上昇させる。
【0235】
水素化処理段階b)から得られた水素化処理済み流出物(7)を、段階b)の圧力と実質的に同一の圧力で、分離段階c)に供し、温度を300℃にコントロールし、ガス状流出物と液状流出物とを得ることを可能にし、液状流出物の一部を382℃に加熱し、次いで、水素化段階a)にリサイクルし、このリサイクルされた液体部分は、高温リサイクル(9a)を構成する。
【0236】
c)から得られた第1のガス状流出物(8)と、c)から得られた液状流出物のうち段階a)にリサイクルされなかった部分(9b)とを混合し、次いで、分離段階d)に供する:水の流れ(10)を、c)から得られたガス状流出物と、c)から得られた液状流出物のうち段階a)にリサイクルされなかった部分(9b)との混合物に注入する;最終混合物は、段階c)の圧力と実質的に同じ圧力で操作するHPコールドドラム内で40℃の温度に達し、その出口で水素に豊富なガスフラクション、水性フラクションおよび洗浄された液状流出物が得られる。水素が豊富なフラクションは、反応セクションの上流にリサイクルされる。HPコールドドラムから得られた水性フラクションを、約0.4MPa(abs)で操作するストリッピングカラムに送り、ストリッピングされた水性フラクションとサワーガスフラクションとを得る。洗浄された液状流出物を、約0.8MPa(abs)で操作する安定化カラムにおいて処理し、軽質ガスと安定化された液状炭化水素流出物(13)とを得ることを可能にする。軽質ガスフラクションとサワーガスは、第2のガス状流出物(11)を構成する。分離の後に得られた種々のフラクションの収率を表6に示す(段階aの上流の供給原料の重量に対する、得られた種々の生成物の重量による量の比に相当する収率を百分率で表し、%w/wと表記する)。
【0237】
【表6】
【0238】
得られた液体フラクションの全部または一部は、その後、リサイクルされたプラスチックを形成するという目的のためにポリマー化され得るオレフィンを形成するという目的のために水蒸気分解段階においてアップグレードされることができる。
【0239】
本発明に従って行われる方法は、従来技術に従って観察される触媒の失活に対して、水素化段階a)の間および水素化処理段階b)の間の低下した触媒失活をもたらす。
【図面の簡単な説明】
【0240】
図1】本発明の方法の特定の実施形態の図を示す。
図2】本発明の方法の別の特定の実施形態の図を示し、図1の図をベースとしている。
図1
図2
【国際調査報告】