(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ポリアミドベースの製品
(51)【国際特許分類】
C08L 77/00 20060101AFI20241108BHJP
C08K 5/18 20060101ALI20241108BHJP
C08K 5/5313 20060101ALI20241108BHJP
C08K 5/527 20060101ALI20241108BHJP
C08K 7/14 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C08L77/00
C08K5/18
C08K5/5313
C08K5/527
C08K7/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532722
(86)(22)【出願日】2022-11-07
(85)【翻訳文提出日】2024-06-14
(86)【国際出願番号】 EP2022081012
(87)【国際公開番号】W WO2023099128
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524204469
【氏名又は名称】エンバリオ・ドイチュラント・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エリーザベト・ガウ
(72)【発明者】
【氏名】ヤン・カウダル
(72)【発明者】
【氏名】マルク・ルードルフ
(72)【発明者】
【氏名】デトレフ・ヨアヒミ
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン・エントナー
(72)【発明者】
【氏名】ライフ・アルネ・ケルテ
(72)【発明者】
【氏名】マティーアス・ビーンミュラー
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002CL011
4J002CL031
4J002DL006
4J002EN067
4J002EW089
4J002EW138
4J002FA046
4J002FD016
4J002FD060
4J002FD090
4J002FD130
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】
本発明は、ガラス繊維強化ポリアミドをベースとする製品、並びに少なくとも1種の第二級芳香族アミン、少なくとも1種のホスフィン酸誘導体及びビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを含む混合物の使用、並びにこの混合物を含まないガラス繊維強化ポリアミドをベースとする製品と比べて、熱的エージング後の破断伸び及び衝撃靭性の保持が改善した、色保持が改善した又は色安定性が改善した、及び同時にUV安定性が改善した形態でのエージング挙動を改善するための添加剤としての、上記の混合物の使用に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)少なくとも1種のポリアミド
b)少なくとも1種の第二級芳香族アミン
c)一般式(I)
【化1】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、
R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族及び第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC
1~C
10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
d)ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及び
e)ガラス繊維
を含む、組成物及び/又は製品であって、
但し、100質量部の構成成分a)に対し、
0.1~3質量部の構成成分b)
0.01~3質量部の構成成分c)
0.01~3質量部の構成成分d)、及び
5~200質量部の構成成分e)が使用される
ことを条件とする、組成物及び/又は製品。
【請求項2】
ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド4.6及び/又は部分的芳香族コポリアミドが、構成成分a)として使用されることを特徴とする、請求項1に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項3】
構成成分a)、b)、c)、d)及びe)に加え、構成成分f)として少なくとも1種の難燃剤が3~100質量部、好ましくは5~80質量部、特に好ましくは10~50質量部で使用され、各々が100質量部の構成成分a)に対することを特徴とする、請求項1又は2に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項4】
一般式(II)
【化2】
(式中、
m及びnは、それぞれ互いに独立して、0又は1を表し、
A及びBは、それぞれ互いに独立して、C
1~C
4-アルキル又はフェニルにより置換されている第三級C原子を表し、
R
1及びR
2は、それぞれ互いに独立して、水素、1~3つのフェニル基によって場合により置換され得るオルト位及びパラ位におけるC
1~C
6-アルキル基、又はハロゲン、カルボキシル、又はこのカルボキシル基の金属塩を表し、
R
3及びR
4は、それぞれ互いに独立して、水素、若しくはオルト位及びパラ位におけるメチルラジカルを表す、又は1~3つのフェニル基によって場合により置換され得るオルト位若しくはパラ位の第三級C
3~C
9-アルキル基を表す)の第二級芳香族アミン
が、構成成分b)として使用されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項又は複数に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項5】
構成成分b)として使用される第二級芳香族アミンが、以下の群
4,4'-ビス(α,α'-tert-オクチル)ジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)4'トリフェニルメチルジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α'-p-トリメチルベンジル)ジフェニルアミン
2,4,4'-トリス(α,α'-p-トリメチルベンジル)ジフェニルアミン
2,2'-ジブロモ,4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-2-カルボキシジフェニルアミン-ニッケル-4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-ジフェニルアミン
2-sec-ブチル-4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-2-(α-メチルヘプチル)ジフェニルアミン
2-(α-メチルペンチル)4,4'-ジトリチルジフェニルアミン
4-α,α-ジメチルベンジル-4'-イソプロポキシジフェニルアミン
2-(α-メチルヘプチル)-4'-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
2-(α-メチルペンチル)-4'-トリチルジフェニルアミン
4,4'-ビス(tert-ブチル)ジフェニルアミン
【化3A】
【化3B】
【化3C】
から選択されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項又は複数に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項6】
4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが、構成成分b)として使用されることを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項又は複数に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項7】
ホスフィン酸の塩が構成成分c)として使用され、これらがまた、塩の水和物であってもよいことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項又は複数に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項8】
ホスフィン酸の、アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、並びに周期表の第12族又は第13族の金属塩が、構成成分c)として使用され、これらがまた、塩の水和物であってもよいことを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項又は複数に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項9】
次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物が、構成成分c)として使用されることを特徴とする、請求項1から6のいずれか一項又は複数に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項10】
a)ポリアミド6又はポリアミド66
b)4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
c)次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物
d)ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及び
e)ガラス繊維
を含み、
但し、100質量部の構成成分a)に対し、
0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の構成成分b)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の構成成分c)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部の構成成分d)及び
5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部の構成成分e)が使用されることを条件とすることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項又は複数に記載の組成物及び/又は製品。
【請求項11】
150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m
2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性の保持、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、
b)少なくとも1種の第二級芳香族アミン、及び
c)一般式(I)
【化4】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC
1~C
10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
を含む混合物の使用であって、但し、5~200質量部の構成成分e)として使用されるガラス繊維で強化された少なくとも1種のポリアミドであり、構成成分a)として使用される、少なくとも1種のポリアミド100質量部に対して、
0.1~3質量部の構成成分b)、0.01~3質量部の構成成分c)及び0.01~3質量部の構成成分d)が使用されることを条件とする、使用。
【請求項12】
ポリアミド6又はポリアミド66が、構成成分a)として使用され、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが構成成分b)として使用され、次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物が、構成成分c)として使用されることを特徴とする、請求項11に記載の使用。
【請求項13】
150℃で500時間にわたる、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m
2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠してUV照射した後のDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は140℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して決定される耐衝撃性を保持するため、及び/若しくはISO527に準拠して決定される破断伸びを保持するための方法において、
b)少なくとも1種の第二級芳香族アミン
c)一般式(I)
【化5】
(Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC
1~C
10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
d)ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
を含む混合物が、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品において使用され、但し、
構成成分a)として使用される100質量部の少なくとも1種のポリアミド、及び構成成分e)として使用される5~200質量部のガラス繊維に対して、
0.1~3質量部の構成成分b)、0.01~3質量部の構成成分c)及び0.01~3質量部の構成成分d)が使用されることを条件とすることを特徴とする、方法。
【請求項14】
ポリアミド6又はポリアミド66が、構成成分a)として使用され、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが構成成分b)として使用され、次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物が、構成成分c)として使用されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス繊維強化ポリアミドをベースとする製品、並びに少なくとも1種の第二級芳香族アミン、少なくとも1種のホスフィン酸誘導体(phosphinic acid derivative)及びビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを含む混合物の使用、並びにこの混合物を含まないガラス繊維強化ポリアミドベースの製品と比べ、熱的エージング後の破断伸び及び耐衝撃性の保持の改善、色保持の改善又は色安定性の改善、及び同時にUV安定性の改善した形態での、エージング挙動を改善する添加剤としての、上記の混合物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
弾性及び耐亀裂性が、ポリアミドが幅広く使用される理由である。ポリアミドは、その強度及び剛性、並びにアルコール、アセトン、ベンゼン及び燃料等の有機溶媒に対するその耐性のため、他の工業的分野、とりわけ自動車分野にも関心が持たれている。ポリアミド製の燃料ホースは、ポリアミド製の多数の構成成分のように、自動車の構造体にとって現在、不可欠であり、これは、アルミニウム又は鋼等の金属に置き換わり、こうして、一様な特性を伴って、著しい軽量化が可能となる。
【0003】
https://de.wikipedia.org/wiki/Polyamideによれば、ポリアミドは、比較的低いガラス温度を有する。ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド6.10、ポリアミド6.12、ポリアミド11又はポリアミド12のガラス温度は、すべて、37~60℃の範囲である。一層高い剛性及び硬度、並びに一層良好な化学的耐性及び加水分解耐性を実現するためには、強化材料、特にガラス繊維がポリアミドに使用される。更に、ガラス繊維を添加することによって、ポリアミドの欠点の1つである比較的高い水分吸収が著しく低減され得る。強度及び弾性率を増大することに加え、連続的な使用温度もまた、ガラス繊維の使用が理由で著しく向上し、これによって、特に自動車分野において、ポリアミドの使用可能性が著しく拡がる。使用制限は、ポリアミド11の場合、ほぼ-30℃から+100℃超まで、又はポリアミド12の場合、-70℃から+100℃超までと、ポリアミドの化学構造に応じて延び、短期間では、ほぼ140から180℃まで及びそれより高い温度が可能であり、ポリアミド46の場合、280℃までにもなる。
【0004】
内燃エンジンは、長年の間、主な駆動コンセプトとなってきたが、材料選択に関する新しい要件もまた、代替となる駆動コンセプトに関する研究過程をもたらしている。ここでは、エレクトロモビリティによって1つの必須の役割が果たされ、ハイブリッド車では部分的に、又は電気自動車では完全に、内燃エンジンが、電池又は燃料電池からその電気エネルギーを通常取得する1つ若しくは複数の電気モータによって置き換えられる。単独駆動として、内燃エンジンを有する従来の自動車は、12Vという自動車用電気システムを、通常、運用しているが、駆動ユニットとして電気モータを有するハイブリッド自動車及び電気自動車では、著しく高い電圧が必要である。これは、そのような電圧伝導性部品の直接領域及び周囲に対して真剣に考慮する必要がある更なる潜在的な危険性を表しており、技術的仕様又はやはり基準においてますます重要な役割を果たす。これらの高電圧危険領域を明確に特定することは、このように、ヒト、特にドライバー又は整備士との不注意な接触を回避するために必須の役割を果たしており、ひいては、ポリアミドをベースとする製品の明確な色の識別、特にオレンジ色の識別は、高電圧用途において特に重要な役割を果たす。ドイツ法定災害保険DGUVは、「Qualifizierung fur Arbeiten an Fahrzeugen mit Hochvoltsystemen [Qualification for work on vehicles having high-voltage systems]」に関する情報BGI/GUV-I 8686において、特に、DC電圧の範囲の場合、電圧>60V及び<1500V、並びにAC電圧の場合、>30V及び1000Vを含む、ハイブリッド及び燃料電池技術及び電気自動車での高電圧という用語を説明している。
【0005】
しかし、ポリアミドベースの製品には、外的影響、特に、光、UV光、熱又は悪天候状態の影響下では、外観の劣化を受ける。特に高温の影響の結果として、外観の劣化が起こる。このような外観の劣化の結果は、一般に、機械特性、好ましくは耐衝撃性及び破断伸びの喪失という形態で、及び特に変色として認識される。しかし、強化及び着色されたポリアミドベースの製品、特に高電圧領域でのオレンジ色のポリアミドベースの製品の場合、例えば、自動車では、使用期間にわたる、明確で一様な色の識別が保証されないので、特に望ましくない変色の形態での劣化過程は望ましいものではない。
【0006】
自動車分野におけるポリアミドベースの製品の用途、好ましくは、エレクトロモビリティ、特に、充電プラグ等の高電圧領域における用途はまた、弾性率の形態の剛性等の要件に加えて、優れた耐衝撃性も必要となる。したがって、高電圧領域で使用されるポリアミドベースの製品は、取り付け及び取り外しの間、並びに自動車での使用中に、大きな機械的力を受ける可能性があり、この場合は、破損し得ない。自動車の耐用年数にわたる、耐衝撃性の保持も保証される必要がある。
【0007】
Kunststoffhandbuch 3/4, Technische Thermoplaste, Polyamide [Plastic handbook 3/4, technical thermoplastics, polyamides], Karl Hansen Verlag, Munich, Vienna, 1998年、16頁及び148~150頁による、ポリアミドベースの組成物の耐衝撃性を改善する、先行技術の解決策は、ポリアミドベースのブレンドにABS又はエラストマー等のアモルファスプラスチックを使用することである。耐衝撃性を高めるためにポリアミド等の他のポリマーに使用されるポリマーは、技術的語句では、改質剤又は耐衝撃改質剤と呼ばれており、本発明によれば、耐衝撃改質剤と呼ばれる。ポリアミドに適した耐衝撃改質剤は、エチレン-プロピレンゴム(EPM、EPR)又はエチレン-プロピレン-ジエンゴム(EPDM)、スチレン含有エラストマー、例えば、SEBS、SBS、SEPS又はアクリレートゴムである。しかし、WO2005/033185A1に記載されているように、ニトリルゴム(NBR、H-NBR)、シリコーンゴム、EVA及びミクロゲルもまた、耐衝撃改質剤として好適である。しかし、2016年のS.Mollの論文「Untersuchung der Auswirkungen einer thermisch-oxidativen Beanspruchung auf das Emissionsverhalten von ABS und PP und der Korrelation mit dem Alterungsgrad [Study of the effects of a thermal-oxidative stress on the emission behavior of ABS and PP and the correlation with the degree of aging]」の文脈における検討により、ポリ-(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン)「ABS」は、熱酸化応力下で変色することが示された。更に、時として引張弾性率としても知られる弾性率の形態での剛性は、耐衝撃改質剤の添加が理由で減少することが当業者には公知である(Kunststoffhandbuch 3/4, Technische Thermoplaste, Polyamide, [Plastic handbook 3/4, technical thermoplastics, polyamides], Karl Hansen Verlag, Munich, Vienna, 1998, 16頁及び157頁)。したがって、先行技術に記載されている、通常、ポリアミドに典型的に使用される耐衝撃改質剤は、特に、色によって識別されるポリアミドベースの部品が変色する傾向がないと考えられる場合には、不適切であると思われる。
【0008】
耐衝撃性は、衝撃仕事量と試験片の断面積の比(単位:kJ/m2)として計算される。耐衝撃性は、DIN EN ISO179のシャルピーに準拠するか、又はDIN EN ISO180のアイゾットに準拠するかにかかわらず、様々なタイプの衝撃曲げ試験によって求めることができる。耐衝撃性は、本発明の範囲では、成形したばかりの状態の射出成形した試験片(80・10・4mm3)に対して、23℃で、ISO180-1Uに準拠して測定される。
【0009】
ガラス繊維の含有量が、ポリアミド組成物又はそれから生成される製品の耐衝撃性に影響を及ぼすことが当業者に知られている(Glasfaserverstarkte Kunststoffe [Glass-fiber-reinforced plastics], P.H. Selden, Springer-Verlag Berlin, Heidelberg, New York, 1967, 324~325頁)。したがって、耐衝撃性を改善する効果であって、耐衝撃改質剤又は耐衝撃性を改善する添加剤の耐衝撃する改善する効果は、同じガラス繊維含有量でのみ比較することができる。
【0010】
破断伸び(単位%)はプラスチックの変形性の指標を表し、DIN EN ISO527に準拠する、引張試験における、張力の強度値の10%以下まで低下する前に記録される最後の伸び値のことである。破断伸びは、本発明の範囲では、DIN EN ISO527に準拠して、射出成形した試験片(170・10・4mm3、張力ロッドタイプ1A)に対して、成形したばかりの状態で、23℃にて、測定される。
【0011】
要約すると、エレクトロモビリティでの、特に高電圧領域での用途におけるポリアミドベースの製品の要件は多岐にわたる。耐衝撃性の向上に加えて、色の識別と耐衝撃性及び破断伸び等の機械特性とのどちらも、車両の耐用年数にわたって確保される必要がある。耐衝撃改質剤を使用することによる、耐衝撃性を改善する従来技術は、熱酸化応力下でポリアミド組成物又はそれから生成される製品の変色をもたらすので、好適ではない。
【0012】
少なくとも1種の第二級芳香族アミン及び少なくとも1種のホスフィン酸誘導体を含む、EP3919562A1による組成物は、熱的エージング後の色安定性の改善した、及び耐衝撃性保持の改善したポリアミドベースの製品を生成するのに好適である。しかし、これらの製品は、不十分なUV安定性を有しており、150℃で500時間の熱的エージング後の破断伸びの保持は、自動車分野での用途には不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO2005/033185A1
【特許文献2】EP3919562A1
【特許文献3】DE102011084519A1
【特許文献4】DE-A4236122
【特許文献5】WO2013/083247A1
【特許文献6】EP0113229B1
【特許文献7】WO2009/003976A1
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】https://de.wikipedia.org/wiki/Polyamide
【非特許文献2】Qualifizierung fur Arbeiten an Fahrzeugen mit Hochvoltsystemen [Qualification for work on vehicles having high-voltage systems]
【非特許文献3】Kunststoffhandbuch 3/4, Technische Thermoplaste, Polyamide [Plastic handbook 3/4, technical thermoplastics, polyamides], Karl Hansen Verlag, Munich, Vienna, 1998, 16頁及び148~150頁
【非特許文献4】S.Moll、「Untersuchung der Auswirkungen einer thermisch-oxidativen Beanspruchung auf das Emissionsverhalten von ABS und PP und der Korrelation mit dem Alterungsgrad [Study of the effects of a thermal-oxidative stress on the emission behavior of ABS and PP and the correlation with the degree of aging]」
【非特許文献5】Kunststoffhandbuch 3/4, Technische Thermoplaste, Polyamide, [Plastic handbook 3/4, technical thermoplastics, polyamides], Karl Hansen Verlag, Munich, Vienna, 1998, 16頁及び157頁
【非特許文献6】P. H. Selden, Glasfaserverstarkte Kunststoffe [Glass-fiber-reinforced plastics], 324~325頁, 章「Glasfaserverstarkte Thermoplaste」 [「glass-fiber-reinforced thermoplastics」]、K. Schlichting,Springer Verlag Berlin, Heidelberg, New York, 1967, 324~325頁
【非特許文献7】http://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunststoff-Verbund
【非特許文献8】https://de.wikipedia.org/wiki/Laserbeugungs-Partikelgr%C3%B6%C3%9Fenanalyse
【非特許文献9】http://www.r-g.de/wiki/Glasfasern
【非特許文献10】http://de.wikipedia.org/wiki/Glasfaser
【非特許文献11】https://de.wikipedia.org/wiki/Colour_Index
【非特許文献12】https://de.wikipedia.org/wiki/Delta_E
【非特許文献13】http://de.wikipedia.org/wiki/Talkum
【非特許文献14】http://de.wikipedia.org/wiki/Extrusion_(Verfahrenstechnik)
【非特許文献15】Kunststoff-Handbuch 3/4, Polyamide [Plastic handbook 3/4, Polyamides], Carl Hanser Verlag, Munich 1998, 374~384頁
【非特許文献16】http://www.blasformen.com/
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、温風エージング後に色保持が改善された形態又は色安定性が改善された形態での良好なエージング挙動を有し、同時に、温風エージング後に耐衝撃性及びとりわけ破断伸びが十分に保持された形態でのUV安定性の改善及び更に良好なエージング挙動を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの組成物又はそれらから生成される製品を提供することであった。
【課題を解決するための手段】
【0016】
温風エージング後に色保持が改善された形態又は色安定性が改善された形態での良好なエージング挙動は、本発明によれば、150℃で500時間にわたる、温風エージング後にDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色差ΔEが小さいこと、好ましくは、色差ΔEが、0~20の範囲である、特に好ましくは、色差ΔEが、0~15の範囲であることを意味すると理解される。したがって、本発明の範囲では、ΔE値が先行技術と比べて小さいほど、色変化が少ないことを意味する。色が保管後に全く変化しない場合、これは、ΔE=0に相当する。
【0017】
UV安定性が改善された形態での良好なエージング挙動は、本発明によれば、雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後にDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色差ΔEが小さいこと、好ましくは、色差ΔEが0~30の範囲であること、特に好ましくは、色差ΔEが0~20の範囲であることを意味すると理解される。したがって、本発明の範囲では、ΔE値が先行技術と比べて小さいほど、色変化が少ないことを意味する。色が保管後に全く変化しない場合、これは、ΔE=0に相当する。
【0018】
温風エージング後に耐衝撃性を十分に保持した形態での良好なエージング挙動は、本発明によれば、150℃で500時間にわたり温風エージング後にISO180-1Uに準拠して測定される試料の耐衝撃性が、0時間時に比べ、50%を超えて低下しないことを意味すると理解される。
【0019】
温風エージング後に破断伸びを十分に保持した形態での良好なエージング挙動は、本発明によれば、150℃で500時間にわたり温風エージング後にDIN EN ISO527に準拠して測定される破断伸びが、0時間時に比べ、30%を超えて低下しないことを意味すると理解される。
【0020】
ガラス繊維強化ポリアミドの場合のこのような複雑な目的の達成は、少なくとも1種の第二級芳香族アミン、少なくとも1種のホスフィン酸誘導体及びビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトを含む混合物の使用である。
【0021】
本発明は、
a)少なくとも1種のポリアミド、好ましくは、ポリアミド6又はポリアミド66
b)少なくとも1種の第二級芳香族アミン
c)一般式(I)
【0022】
【0023】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、
R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族及び第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC1~C10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
d)ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、及び
e)ガラス繊維
を含む、組成物及び製品であって、
但し、100質量部の構成成分a)に対し、
0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の構成成分b)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の構成成分c)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部の構成成分d)及び
5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部の構成成分e)が使用されることを条件とする、組成物及び/又は製品に関する。
【0024】
式(I)中のR'に関するアンモニウムイオンNH4
+は、陽イオンであり、アルカリ金属イオンと同様に、陰イオンと塩を形成する。アンモニウムイオンは、塩基性アンモニア(NH3)に共役酸である。
【0025】
驚くべきことに、本発明による、構成成分b)、c)及びd)を含有するガラス繊維強化ポリアミド組成物又はそれらをベースとする製品はまた、構成成分b)及びc)を含有するが構成成分d)を含まないガラス繊維強化ポリアミド組成物又はそれらをベースとする製品と比べて、UV安定性が改善されると同時に温風エージング後に色保持の改善した又は色安定性の改善した形態での良好なエージング挙動に加え、温風エージング後の耐衝撃性及び破断伸びの保持の改善した形態での良好なエージング挙動を示す。したがって、エレクトロモビリティにおける用途のためのガラス繊維強化ポリアミドベースの製品に関する多様な上記の要件が、構成成分b)及びc)をビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトによる添加と組み合わせることによって達成される。
【0026】
P. H. Selden, Glasfaserverstarkte Kunststoffe [Glass-fiber-reinforced plastics], 324~325頁、章「Glasfaserverstarkte Thermoplaste」 [「glass-fiber-reinforced thermoplastics」]、K. Schlichting, Springer Verlag、ベルリン、1967年から、ガラス繊維含有量がポリアミド組成物の耐衝撃性に影響を及ぼすということが、当業者には公知である。したがって、強化材料、特にガラス繊維それ自体は、ポリアミドの耐衝撃性に影響を及ぼすので、本発明の範囲における比較を示す記載は常に、同じ含有量の強化材料、特にガラス繊維を有する組成物又は製品を指す。この記載はまた、本発明による方法及び使用にも該当する。
【0027】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性の保持、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、
b)少なくとも1種の第二級芳香族アミン
c)一般式(I)
【0028】
【0029】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC1~C10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
を含む混合物の使用であって、但し、5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部の構成成分e)として使用されるガラス繊維で強化された少なくとも1種のポリアミドであり、構成成分a)として使用される、好ましくはポリアミド6又はポリアミド66である、少なくとも1種のポリアミド100質量部に対して、
0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の構成成分b)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の構成成分c)、及び
0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部の構成成分d)が使用されることを条件とする、使用に更に関する。
【0030】
最後に、本発明は、150℃で500時間にわたる、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠してUV照射した後のDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は140℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して決定される耐衝撃性を保持するため、及び/若しくはISO527に準拠して決定される破断伸びを保持するための方法であって、
b)少なくとも1種の第二級芳香族アミン
c)一般式(I)
【0031】
【0032】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC1~C10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
d)ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト
を含む混合物が、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品において使用され、但し、
構成成分a)、好ましくは、ポリアミド6又はポリアミド66として使用される少なくとも1種のポリアミド100質量部、及び構成成分e)として使用される、5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部のガラス繊維に対して、
0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の構成成分b)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の構成成分c)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部の構成成分d)が使用されることを条件とする、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明による使用及び方法の場合、式(I)中のR'に関するアンモニウムイオンNH4
+は、陽イオンであり、アルカリ金属イオンと同様に、陰イオンと塩を形成する。アンモニウムイオンは、塩基性アンモニア(NH3)に共役酸である。
【0034】
明確にするため、本発明の範囲では、本発明による組成物、本発明による製品、本発明による使用及び本発明による方法に関して、ISO180-1U(アイゾット)による耐衝撃性に関する試験、及びISO527による破断伸びの試験が行われ、成形したばかりの状態にある、DIN EN ISO1874-2に準拠して規定される射出成形した試験片に対して、23℃で行われることに留意されたい。成形したばかりの状態(freshly molded state)、つまり「成形したまま乾燥(dry as molded)」は、DIN EN ISO1874-2に規定されている。
【0035】
明確にするため、本発明の範囲において、耐衝撃性を保持した形態における、本発明による組成物、本発明による製品、本発明による使用及び本発明による方法に関するエージング挙動の試験は、500時間にわたる、150℃の温度の循環空気を用いるバインダーFP115というモデルの材料試験キャビネット中、DIN EN ISO1874-2に準拠して規定した射出成形した試験片を保管することによって行われたことに更に留意されたい。したがって、耐衝撃性は、23℃で、ISO180-1Uに準拠して保管する前(成形したばかりの状態)及びその後の両方における、本発明の範囲で生成した試験片に対して、本発明の範囲で決定し、値の差異を確認した。したがって、破断伸びは、ISO527に準拠した熱的エージング前(成形したばかりの状態)及びその後の両方での、これらの試験片に対して本発明の範囲で決定し、値の差異を確認した。
【0036】
Lab色空間(同様に、CIELAB、CIEL*a*b*、Lab色)は、知覚可能なすべての色を説明するものである。Lab色空間は、輝度の値L*が、色面(a,b)と垂直な、三次元色空間を使用する。L*軸は、0~100の値を有する、色の輝度(発光)を記載する。例示では、これは、a*b*面に垂直なゼロ点に存在する。すべての無彩色(グレースケール)は、黒色端点(L*=0)と白色端点(L*=100)との間に含まれるので、L*軸は、中立のグレー軸とも称され得る。Ewald Heringの補色理論と同様に、a座標は緑色と赤色との間の色の種類と色の強度を指定し、b座標は青色と黄色との間の色の種類と色の強度を指定する。a及びbの正の値が大きいほど、並びにa及びbの負の値が小さいほど、色調は強くなる。a=0及びb=0の場合、明度軸上に無彩色の色調が存在する。典型的なソフトウェア実装では、L*は、0~100の値を想定し、a及びbは-128~127の間で変わり得る。ポリマーマトリックスの酸化的損傷によるポリマーベースの製品の変色は、高温での保管時間にわたる色差ΔEを測定することによって決定することができる。2つの色刺激間の色差ΔEは、DIN EN ISO11664-4に準拠した、式ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2に従って計算する。したがって、明確にするため、本発明の範囲において、色保持が改善された/色安定性が改善された形態における、本発明による組成物、本発明による製品、本発明による使用及び本発明による方法に関するエージング挙動の試験は、本明細書のこれ以降、温風エージングと称する、150℃の温度の循環空気を用いる、バインダーFP115というモデルの材料試験キャビネット中、60mm・40mm・4mmの射出成形スラブを保管することによって行われたことに留意されたい。変色の尺度として、本発明の範囲では、本発明によるポリマー組成物をベースとする射出成形製品の色差ΔEは、色値L*a*b*の測定により、温風エージング前又はその後に決定される。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
【0037】
したがって、本発明によれば、温風エージング後の色保持の改善した又は色安定性の改善した形態での良好なエージング挙動は、生じる色変化ΔEが小さいことで区別される。試験片の色値L*a*b*は、60mm・40mm・4mmのサイズのパネル上において、本発明の範囲で決定され、その値からDIN EN ISO11664-4に準拠して色差ΔEが計算される。小さいとはまた、使用又は方法に関して、色差ΔEが、好ましくは0~20の範囲であり、特に、0~15の範囲であることを意味する。小さなΔE値は、本発明の範囲では、色変化が小さいことを意味する。色が保管後に全く変化しない場合、ΔE=0が結果となる。
【0038】
明確にするため、本発明の範囲では、構成成分b)及びc)を含有するが、構成成分d)を含まないガラス繊維強化ポリアミドベースの製品と比較した、UV安定性が改善された形態における、本発明による組成物、本発明による製品、本発明による使用、及び本発明による方法に関するエージング挙動の試験は、本明細書のこれ以降、UV保管と略された形態で称される、雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠して、Q-Lab製のQUV高速耐候性試験装置において、60mm・40mm・4mmの射出成形スラブを保管することによって行われた。変色の尺度として、本発明の範囲では、本発明によるポリマー組成物をベースとする射出成形製品の色差ΔEは、色値L*a*b*の測定により、200時間のUV保管前及びその後に決定される。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
【0039】
したがって、本発明によれば、QUV高速耐候性試験装置におけるUV保管後のUV安定性が改善された形態での良好なエージング挙動は、構成成分d)を含まないポリアミドベースの製品と比べて、生じた色変化ΔEが小さい点で区別され、色差ΔEは、0~30の範囲であり、特に好ましくは0~20の範囲である。小さいとはまた、使用又は方法に関して、色差ΔEが、好ましくは0~30の範囲であり、特に、0~20の範囲であることを意味する。
【0040】
温風エージング後に耐衝撃性を十分に保持した形態での良好なエージング挙動はまた、使用又は方法に関して、150℃で500時間にわたる温風エージング後にISO180-1Uに準拠して測定される試料の耐衝撃性が、0時間時に比べ、50%を超えて低下しないことを意味する。
【0041】
温風エージング後の破断伸びを十分に保持した形態での良好なエージング挙動はまた、使用又は方法に関して、150℃で500時間にわたる温風エージング後にISO527に準拠して測定される試料の破断伸びが、0時間時に比べ、30%を超えて低下しないことを意味する。
【0042】
明確にするため、本発明による組成物、本発明による製品、本発明による使用及び本発明による方法に関する本発明の範囲は、一般に言及される、又は任意に組み合わせた好ましい範囲の列挙された定義及びパラメータをすべて含むことを更に留意されたい。これは、特に、本出願の範囲において特許請求される方法及び使用において、個々の構成成分の使用される量の記述にも関する。本出願の範囲において言及される基準は、本発明の出願日に適用可能なバージョンを指す。特に示さない限り、百分率の記述は、質量パーセントである。
【0043】
好ましい実施形態
更に好ましい実施形態では、本発明は、構成成分a)、b)、c)、d)及びe)に加え、構成成分f)として少なくとも1種の難燃剤を3~100質量部、好ましくは5~80質量部、特に好ましくは10~50質量部で含み、各々は、100質量部の構成成分a)に対する、組成物及び/又は強化ポリアミドベースの製品に関する。
【0044】
明確にするため、本発明の範囲では、構成成分f)として使用される難燃剤、及びここで言及されている量の記述はすべて、それらから生成される組成物及びポリアミドベースの製品の両方、特に、高電圧用途でのポリアミドベースの製品に関するものであり、本発明による使用及び方法に適用されることに留意されたい。
【0045】
更なる実施形態では、本発明は、構成成分a)、b)、c)、d)、e)及びf)に加え、又はf)の代わりに、構成成分b)、c)、d)、e)及びf)とは異なる少なくとも1種の更なる添加剤g)も0.01~80質量部、好ましくは0.05~50質量部、特に好ましくは0.1~30質量部で含む、組成物及び/又は強化ポリアミドベースの製品に関し、各々は、100質量部の構成成分a)に対する。
【0046】
明確にするため、本発明の範囲では、構成成分g)として使用されるすべての添加剤、及びここで言及されている量の記述はすべて、ポリアミドベースの組成物及びそれらから生成されるポリアミドベースの製品の両方、特に、高電圧用途でのポリアミドベースの製品に関するものであり、本発明による使用及び方法に適用されることに留意されたい。
【0047】
構成成分a)
構成成分a)として、本発明により使用されるポリアミドは、様々な方法に従い生成することができ、様々なビルディングブロック(building block)から合成することができる。様々な方法が、ポリアミドの生成に知られており、所望の最終製品、様々なモノマービルディングブロック、所望の分子量を設定するための様々な鎖調節剤、又は後処理のための反応性基を有するモノマーにも応じて、意図するモノマーが使用され得る。
【0048】
ポリアミドを生成する技術的に関連する方法は、通常、溶融状態での重縮合により行われる。ラクタムの加水分解重合もまた、この文脈では、重縮合と理解される。
【0049】
アジピン酸、2,2,4-及び2,4,4-トリメチルアジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸(sebazic acid)、イソフタル酸、テレフタル酸等の脂肪族及び/又は芳香族ジカルボン酸、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,9-ノナンジアミン、2,2,4-及び2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジアミン、ジアミノジシクロヘキシルメタン異性体、ジアミノジシクロヘキシルプロパン、ビスアミノ-メチルシクロヘキサン、フェニレンジアミン、キシリレンジアミン等の脂肪族及び/又は芳香族ジアミン、アミノカプロン酸(aminocapronic acid)等のアミノカルボン酸、並びに対応するラクタムが、抽出物(educt)として考慮に入れられる。カプロラクタム、特にε-カプロラクタムが、特に好ましく使用される。言及したモノマーのいくつかから作製されたコポリアミドが含まれる。
【0050】
好ましいポリアミドは、ジアミン及びジカルボン酸、及び/又は少なくとも5環員を有するラクタム、又は対応するアミノ酸から始めて生成され得る、部分結晶性ポリアミドである。本発明により好ましく使用される部分結晶性ポリアミドは、第2の加熱及び溶融ピークの融合の間に、ISO11357に準拠したDSC法を使用して測定すると、25J/gより大きな溶融エンタルピーによって、DE102011084519A1に準拠して区別される。
【0051】
ポリアミド6、ポリアミド6.6、ポリアミド4.6及び/又は部分的芳香族コポリアミドが、特に好ましいポリアミドとして使用される。好ましい部分芳香族コポリアミドは、PA6T/6、PA6T/66、PA6T/6I又はPA6T/6I/66である。
【0052】
本出願の範囲において使用されるポリアミドの表示は、国際基準ISO1874-1に相当しており、1番目の数字は、開始ジアミンのC原子数を指定し、最後の数字は、ジカルボン酸のC炭素原子数を指定する。PA6の場合のような、1つの数字だけが指定されている場合、これは、α,ω-アミノカルボン酸又はこれから誘導されるラクタム、PA6の場合、すなわちε-カプロラクタムから開始された合成であることを意味する。
【0053】
本発明による構成成分a)として特に好ましく使用される、ポリアミド6[CAS番号25038-54-4]は、ISO307に準拠して決定すると、25℃の96質量%の硫酸中の0.5質量%溶液中、80~180ml/gの範囲、特に好ましくは85~170ml/gの範囲、及び非常に特に好ましくは90~160ml/gの範囲の粘度数を好ましくは有する。構成成分a)として本発明により好ましく使用されるポリアミド6は、例えば、Lanxess Deutschland GmbH(Cologne)社製のDurethan(登録商標)B29として入手可能である。
【0054】
構成成分a)として特に好ましく使用される、ポリアミド66[CAS番号32131-17-2]は、ISO307に準拠して決定すると、25℃の96質量%の硫酸中の0.5質量%溶液中、80~180ml/gの範囲の粘度数、非常に特に好ましくは85~170ml/gの範囲、特に好ましくは90~160ml/gの範囲の粘度数を好ましくは有する。構成成分a)として本発明により使用されるポリアミド66は、例えば、BASF SE(Ludwigshafen)社製のUltramid(登録商標)A27E01として入手可能である。
【0055】
構成成分a)として、本発明により使用されるポリアミドはまた、少なくとも1種の他のポリアミドとの混合物中で、又はコポリアミドの形態で使用され得る。
【0056】
当業者に公知の典型的な添加剤、好ましくは、離型剤、安定剤及び/又は固化防止剤は、構成成分a)として使用されるポリアミドに溶融物中に既に混合され得る。
【0057】
構成成分b)
本発明によれば、少なくとも1種の第二級芳香族アミンが、構成成分b)として使用される。一般式(II)
【0058】
【0059】
(式中、
m及びnは、それぞれ互いに独立して、0又は1を表し、
A及びBは、それぞれ互いに独立して、C1~C4-アルキル又はフェニルにより置換されている第三級C原子を表し、
R1及びR2は、それぞれ互いに独立して、水素、1~3つのフェニルラジカルによって場合により置換され得るオルト位及びパラ位におけるC1~C6-アルキル基、又はハロゲン、カルボキシル、又はこのカルボキシル基の金属塩を表し、
R3及びR4は、それぞれ互いに独立して、水素、若しくはオルト位及びパラ位におけるメチルラジカルを表す、又は1~3つのフェニルラジカルによって場合により置換され得るオルト位若しくはパラ位の第三級C3~C9-アルキル基を表す)の第二級芳香族アミンが好ましい。
【0060】
式(II)中の好ましいA又はB基は、対称的に置換された第三級炭素原子であり、ジメチル置換第三級炭素が、特に好ましい。置換基として、1~2つのフェニル基を有する第三級炭素もまた、好ましい。
【0061】
式(II)中の好ましいR1及びR2基は、t-ブチル置換された又はトリメチル置換された第四級炭素原子であり、ここで、メチル基は、1~3つのフェニル基により好ましくは置き換えられており、特に好ましくは、1つのフェニル置換又はテトラメチル置換されたn-ブチルによって置き換えられており、ここで、メチル基はフェニル基によって置き換えられ得る。好ましいハロゲンは、臭素及び塩素である。金属塩は、好ましくは、式(II)において、R1又はR2がカルボキシル金属塩を形成するものである。
【0062】
式(II)中の好ましいR3及びR4基は、水素、及びオルト位又はパラ位にトリメチル置換された第四級炭素原子であり、メチル基は、1~3つのフェニル基によって好ましくは置き換えられている。
【0063】
本発明による特に好ましい第二級芳香族アミンは、以下の群
4,4'-ビス(α,α'-tert-オクチル)ジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)4'トリフェニルメチルジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α'-p-トリメチルベンジル)ジフェニルアミン
2,4,4'-トリス(α,α'-p-トリメチルベンジル)ジフェニルアミン
2,2‘-ジブロモ,4,4‘-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-2-カルボキシジフェニルアミニ-ニッケル-4,4'-ビス(α、α-ジメチルベンジル)-ジフェニルアミン
2-sec-ブチル-4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)-2-(α-メチルヘプチル(methlheptyl))ジフェニルアミン
2-(α-メチルペンチル)4,4'-ジトリチルジフェニルアミン
4-α,α-ジメチルベンジル-4'-イソプロポキシジフェニルアミン
2-(α-メチルヘプチル)-4'-(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
2-(α-メチルペンチル)-4'-トリチルジフェニルアミン
4,4'-ビス(tert-ブチル)ジフェニルアミン
【0064】
【0065】
【0066】
【0067】
から選択される。
【0068】
本発明によれば、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン[CAS番号10081-67-1]が、構成成分b)として非常に特に好ましく使用され、これは、とりわけ、Rianox(登録商標)445という名称でRialon社から購入することができる。
【0069】
構成成分c)
一般式(I)
【0070】
【0071】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC1~C10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体は、構成成分c)として使用される。
【0072】
式(I)中のRが水素原子を表す場合、式(I)は、次亜リン酸である。式(I)中のRが、アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表す場合、式(I)は、ホスフィン酸であり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基は、最大で12個の炭素原子を好ましくは含む。
【0073】
式(I)中のRが、アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表す場合、ホスフィン酸の塩及びエステルが好ましく使用される。本発明によれば、ホスフィン酸の塩が好ましく使用され、これらはまた、塩の水和物であってもよい。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、並びにホスフィン酸の、周期表の第12族又は第13族の金属塩が非常に特に好ましく、これらはまた、塩の水和物であってもよい。
【0074】
式(I)中のRが、水素原子を表す場合、式(I)は次亜リン酸であり、その塩又はエステルが好ましく使用される。陽イオンとしてアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウムインとの塩、及び次亜リン酸の、周期表の第12族又は第13族の金属塩が、特に好ましく使用される。次亜リン酸のアルカリ金属塩が特に好ましく使用され、これらはまた、塩の水和物であってもよい。
【0075】
次亜リン酸ナトリウム[CAS番号7681-53-0]又は次亜リン酸ナトリウム一水和物[CAS番号10039-56-2]が、構成成分c)として、非常に特に好ましく使用される。次亜リン酸ナトリウム及び次亜リン酸ナトリウム一水和物は、とりわけ、Sigma Aldrich社から商業的に購入することができる。
【0076】
構成成分d)
本発明によれば、CAS番号26741-53-7を有する、式(III)の有機ホスファイトであるビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(抗酸化剤626)が、構成成分d)として使用される。
【0077】
【0078】
構成成分d)は、とりわけ、Ultranox(商標)626という商標名で、Brenntag社から市販されている。
【0079】
構成成分e)
ガラス繊維は、構成成分e)として使用される。ガラス繊維に関して、当業者は、「http://de.wikipedia.org/wiki/Faser-Kunststoff-Verbund」により、長さ0.1~1mmの範囲を有する短繊維とも称されるカット繊維、長さ1~50mmの範囲を有する長繊維、及び長さL>50mmを有するエンドレス繊維を区別する。長さの記述はすべて、本発明による組成物、成形用コンパウンド又は製品を形成するための加工前の状態を指す。短繊維が、射出成形技術において好ましく使用され、押出機を使用して直接、加工することができる。長繊維も、押出機で加工され得る。それらは、繊維吹き付けでかなりの範囲まで使用される。長繊維は、多くの場合、充填剤として、熱硬化系プラスチックに混合される。
【0080】
エンドレス繊維は、繊維強化プラスチックにおいて、ロービング又は布地として使用される。エンドレス繊維を有する製品は、最高の剛性及び強度値を達成する。更に、粉砕ガラス繊維が提供され、粉砕後のその長さは、通常、70~200μmの範囲にある。
【0081】
構成成分e)として、本発明により好ましく使用されるガラス繊維は、ISO13320に準拠したレーザー回折法によって決定される、1~50mmの範囲、特に好ましくは1~10mmの範囲、非常に特に好ましくは2~7mmの範囲の平均開始長さを有するカット長ガラス繊維である。開始長さという用語は、構成成分a)、b)、c)又はd)へのガラス繊維の任意の組み込み前の状態を指す。
【0082】
基準ISO13320に準拠するレーザー回折粒子サイズ決定/レーザー回折法に関しては、https://de.wikipedia.org/wiki/Laserbeugungs-Partikelgr%C3%B6%C3%9Fenanalyseを参照されたい。
【0083】
構成成分e)として使用される好ましいガラス繊維は、ISO13320に準拠したレーザー回折法によって決定される、7~18μmの範囲、特に好ましくは9~15μmの範囲の平均繊維径を有する。
【0084】
構成成分e)として使用されるガラス繊維は、好ましい実施形態では、好適なスラリー系、又は粘着促進剤若しくは粘着促進剤系を用いて完成される。シランをベースとするスラリー系又は粘着促進剤が、好ましく使用される。構成成分e)の処理のため、特にガラス繊維の処理のためのシランをベースにした特に好ましい粘着促進剤は、一般式(IV)
(X-(CH2)q)k-Si-(O-CrH2r+1)4-k (IV)
(式中、
Xは、NH2、カルボキシル、HO又は
【0085】
【0086】
を表し、
式(IV)中のqは、2~10、好ましくは3~4の整数を表し、
式(IV)中のrは、1~5、好ましくは1~2の整数を表し、
式(IV)中のkは、1~3、好ましくは1の整数を表す)のシラン化合物である。
【0087】
特に好ましい粘着促進剤は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン、及び置換基Xとしてグリシジル基又はカルボキシル基を含有する対応するシランの群からのシラン化合物であり、カルボキシル基が、特に非常にとりわけ好ましい。
【0088】
構成成分e)として使用されるガラス繊維の仕上げに関して、粘着促進剤、好ましくは式(IV)によるシラン化合物は、0.05~2質量%の範囲の量、特に好ましくは量0.25~1.5質量%の範囲の量、非常に特に好ましくは0.5~1質量%の範囲の量で好ましく使用され、各々は、100質量%の構成成分e)に対する。
【0089】
構成成分e)として使用されるガラス繊維は、組成物、又は組成物若しくは製品中の生成物を形成するための加工のために、もともと使用されるガラス繊維よりも短くあり得る。したがって、加工後又はポリアミドベースの製品中の、高分解能X線コンピュータ断層法によって求められるガラス繊維長の算術平均値は、多くの場合、依然として150μm~300μmの範囲でしかない。
【0090】
「http://www.r-g.de/wiki/Glasfasern」によれば、ガラス繊維は、溶融紡糸法で生成される(ノズル延伸法、バー延伸法及びノズルブロー法)。ノズル延伸法では、ホットガラスコンパウンドは、重力を利用して、白金製紡糸プレートの数百のノズル穴から流れ出る。基本糸は、3~4km/分の速度で無制限の長さで延伸され得る。
【0091】
当業者は、様々なタイプのガラス繊維を区別し、例えば、そのいくつかをここに列挙する:
・ 最適価格-性能比を有する、最も使用されている材料であるEガラス(R&G社製のEガラス)
・ 質量の低下した中空ガラス繊維である、Hガラス(R&G製の中空ガラス繊維布、160g/m2及び216g/m2)
・ 機械的要件の増大したR,Sガラス(R&G社製のS2ガラス)
・ 電気要件の増大したホウケイ酸ガラスである、Dガラス
・ 化学的耐性の増大したCガラス
・ 高温耐性を有する、石英ガラス
【0092】
更なる例は、「http://de.wikipedia.org/wiki/Glasfaser」に見出される。Eガラス繊維は、プラスチックを強化する、最も高い重要な点を果たす。Eは、とりわけ電気産業において、もともと使用されていたので、電気ガラスを表す。
【0093】
Eガラスの生成に関して、ガラス溶融物は、純粋な石英と、石灰岩、カオリン及びホウ酸という添加剤とから生成される。二酸化ケイ素に加えて、Eガラスは、様々な量の様々な金属酸化物を含有する。組成が、製品の特性を決定づける。本発明によれば、Eガラス、Hガラス、R,Sガラス、Dガラス、Cガラス及び石英ガラスの群からの、少なくとも1つのタイプのガラス繊維が好ましく使用され、特に好ましくは、Eガラスから作製されたガラス繊維が使用される。
【0094】
Eガラスから作製されたガラス繊維は、最も普及している強化材料である。強度特性は金属の特性(アルミニウム合金等)に相当し、Eガラス繊維を含む積層体の比重は、金属の比重よりも小さい。Eガラス繊維は、不燃性の、最大でほぼ400℃まで耐熱性であり、大部分の化学的影響及び天候影響に耐性がある。
【0095】
構成成分f)
好ましい実施形態では、少なくとも1種の難燃剤が、構成成分f)として使用される。好ましい難燃剤は、様々な無機難燃剤、窒素含有難燃剤、又はリン含有難燃剤である。
【0096】
構成成分f)として使用される無機難燃剤の中で、水酸化マグネシウムが特に好ましい。水酸化マグネシウム[CAS番号1309-42-8]は、その起源及び生成方法により、不純物が混入する恐れがある。典型的な混入物質は、例えば、ケイ素、鉄、カルシウム及び/又はアルミニウムを含有する化学種であり、これらは、例えば、水酸化マグネシウム結晶の酸化物の形態で、インターカレートされ得る。無機難燃剤として使用される水酸化マグネシウムは、スラリー形成され得ないか、又はそうでない場合、スラリーで供給され得る。スラリーは、プラスチック(マトリックス)とスラリーで供給される構成成分との間に、品質に影響を及ぼす様式で機械的な結合を促す。好ましくは、無機難燃剤として好ましく使用される水酸化マグネシウムは、ステアレート又はアミノシロキサンベースのスラリーで、特に好ましくはアミノシロキサンで供給される。無機難燃剤として好ましく使用される水酸化マグネシウムは、ISO13320に準拠したレーザー回折法により決定すると、0.5μm~6μmの範囲の平均粒子サイズd50を有し、0.7μm~3.8μmの範囲のd50が好ましく、1.0μm~2.6μmの範囲のd50が特に好ましい。
【0097】
本発明による好ましい無機難燃剤は、水酸化マグネシウムタイプ、特に、Martinswerk GmbH(Bergheim、ドイツ)社製のMagnifin(登録商標)H5IV、又はPenoles(Mexico City、メキシコ)社製のHidromag(登録商標)Q2015TCである。
【0098】
構成成分e)として使用される好ましい窒素含有難燃剤は、CAS番号1078142-02-5によるトリクロロトリアジン、ピペラジン及びモルホリンの反応生成物、特に、MCA Technologies GmbH(Biel-Benken、スイス)社製のMCA PPM Triazin HF、更に、メラミンシアヌレート、及びメラミンの縮合生成物、特に、メレム、メラム、メロン、又はこのタイプの高次縮合化合物である。好ましい無機窒素含有化合物は、アンモニウム塩である。
【0099】
更に、脂肪族及び芳香族スルホン酸の塩、並びに無機難燃剤添加剤、特に水酸化アルミニウム又は炭酸カルシウムマグネシウム水和物(DE-A4236122)もまた、使用され得る。
【0100】
更に、酸素、窒素又は硫黄を含有する金属化合物の群からの難燃剤の相乗剤が、構成成分f)としての使用が考慮される。亜鉛不含化合物、ここでは、特に、酸化モリブデン、酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化カルシウム、窒化チタン、窒化マグネシウム、リン酸カルシウム、ホウ酸カルシウム、ホウ酸マグネシウム又はそれらの混合物が好ましい。
【0101】
しかし、代替的な実施形態では、必要な場合、亜鉛含有化合物もまた、構成成分f)として使用することができる。これらは、酸化亜鉛、ホウ酸亜鉛、スズ酸亜鉛、ヒドロキシスズ酸亜鉛、亜鉛スルフィド及び窒化亜鉛又はそれらの混合物を好ましくは含む。
【0102】
構成成分f)として使用される好ましいリン含有難燃剤は、有機の金属ホスフィン酸塩、ホスホン酸のアルミニウム塩、赤リン、無機の金属次亜リン酸塩、金属ホスホン酸塩、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシドの誘導体(DOPO誘導体)、レゾルシノール-ビス-(ジフェニルホスフェート)(RDP)(オリゴマーを含む)、ビスフェノール-A-ビス-ジフェニルホスフェート(BDP)(オリゴマーを含む)、ピロリン酸メラミン、ポリリン酸メラミン、メラミン-ポリ(リン酸アルミニウム)、メラミン-ポリ(リン酸亜鉛)又はフェノキシホスファゼンオリゴマー及びそれらの混合物である。
【0103】
1種の好ましい有機の金属ホスフィン酸塩は、アルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)である。1種の好ましい無機の金属次亜リン酸塩は、次亜リン酸アルミニウムである。
【0104】
構成成分f)として使用される更なる難燃剤は、炭素形成剤、特に好ましくは、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、ポリカーボネート、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン又はポリエーテルケトン、及び液だれ防止剤、特に、テトラフルオロエチレンポリマーである。
【0105】
構成成分f)として使用される難燃剤は、純粋な形態で、及びマスターバッチ又は構成成分a)の圧縮物(compactate)により添加され得る。
【0106】
しかし、代替的な実施形態では、難燃剤がハロゲンフリーの喪失による不利益を考慮して必要であれば、ハロゲン化難燃剤を構成成分f)の難燃剤として使用することもできる。好ましいハロゲン化難燃剤は、市販の有機ハロゲン化合物、特に好ましくは、エチレン-1,2-ビステトラブロモ-フタルイミド、デカブロモジフェニルエタン、テトラブロモビスフェノール-A-エポキシオリゴマー、テトラブロモ-ビスフェノール-A-オリゴカーボネート、テトラクロロビスフェノール-A-オリゴカーボネート、ポリペンタ-ブロモベンジル-アクリレート、臭化ポリスチレン又は臭化ポリフェニレンエーテルであり、これらは、単独で、又は相乗剤と組み合わせて使用することができ、臭化ポリスチレンが、ハロゲン化難燃剤の中で特に好ましい。臭化ポリスチレンは、ここでは、10~30質量%、特に好ましくは15~25質量%で使用されるのが好ましく、各々は組成物全体に対するものであり、他の構成成分の少なくとも1種は、全質量%の合計が常に100であるほど十分に減量される。
【0107】
しかしながら、更に代替的な実施形態では、必要な場合、及び危険分類H351に関して先に記載した欠点を考慮する場合、三酸化アンチモン及び五酸化アンチモンもまた、難燃剤の相乗剤として使用することができる。
【0108】
多様な製品品質の臭化ポリスチレンが、市販されている。この例は、例えば、Lanxess、Cologne(ドイツ)社製のFiremaster(登録商標)PBS64及びAlbemarle、Baton(Rouge、米国)社製のSaytex(登録商標)HP-3010である。
【0109】
構成成分f)として使用される難燃剤のうち、アルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)][CAS番号225789-38-8]、及びアルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)とポリリン酸メラミンとの組合せ物、又はアルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)とホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩との組合せ物が非常に特に好ましく、アルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)とホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩との組合せ物が、特に好ましい。
【0110】
アルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)とポリリン酸メラミンとの、又はアルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)とホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩との組合せ物の場合、アルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)の割合は、好ましくは40~90質量部の範囲、特に好ましくは50~80質量部の範囲、非常に特に好ましくは60~70質量部の範囲であり、各々は、100質量部のアルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)とポリリン酸メラミンとの組合せ物、又はアルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)とホスホン酸の少なくとも1種のアルミニウム塩との組合せ物に対する。
【0111】
構成成分f)として特に好ましく使用されるアルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)は、Clariant International Ltd.(Muttenz、スイス)社製のExolit(登録商標)OP1230又はExolit(登録商標)OP1240として当業者に公知である。多様な製品品質のポリリン酸メラミンが市販されている。この例は、例えば、BASF(Ludwigshafen、ドイツ)社製のMelapur(登録商標)200/70、及びBudenheim(Budenheim、ドイツ)社製のBudit(登録商標)3141である。
【0112】
構成成分f)として使用されるホスホン酸の好ましいアルミニウム塩は、以下の群から選択される。
第一ホスホン酸アルミニウム[Al(H2PO3)3]
塩基性ホスホン酸アルミニウム[Al(OH)H2PO3)2・2H2O]
Al2(HPO3)3・xAl2O3・nH2O(xは、2.27~1の範囲であり、nは、0~4の範囲である)
一般式(IV)のAl2(HPO3)3・(H2O)q(qは、0~4の範囲である)、特に、ホスホン酸アルミニウム四水和物[Al2(HPO3)3・4H2O]又は第二ホスホン酸アルミニウム[Al2(HPO3)3]
一般式(V)のAl2Mz(HPO3)y(OH)v・(H2O)w(Mは、アルカリ金属イオンを表し、zは、0.01~1.5の範囲であり、yは、2.63~3.5の範囲であり、vは、0~2の範囲であり、wは、0~4の範囲である)、及び
一般式(VI)のAl2(HPO3)u(H2PO3)t・(H2O)s(uは、2~2.99の範囲であり、tは、2~0.01の範囲であり、sは、0~4の範囲である)
(式(V)中、z、y及びv、並びに式(VI)中、u及びtは、対応するホスホン酸のアルミニウム塩が、全体として無電荷であるような数のみを想定することができる)。
【0113】
式(V)中の好ましいアルカリ金属Mは、ナトリウム及びカリウムである。
【0114】
ホスホン酸の記載されるアルミニウム塩は、ここでは、個々に又は混合物で使用され得る。
【0115】
構成成分f)として特に好ましく使用されるホスホン酸のアルミニウム塩は、以下の群から選択される。
第一ホスホン酸アルミニウム[Al(H2PO3)3]
第二ホスホン酸アルミニウム[Al2(HPO3)3]
塩基性ホスホン酸アルミニウム[Al(OH)H2PO3)2・2H2O]
ホスホン酸アルミニウム四水和物[Al2(HPO3)3・4H2O]及び
Al2(HPO3)3・xAl2O3・nH2O(xは、2.27~1の範囲であり、nは、0~4の範囲である)
【0116】
第二ホスホン酸アルミニウムAl2(HPO3)3[CAS番号71449-76-8]及び第二ホスホン酸アルミニウム四水和物Al2(HPO3)3・4H2O[CAS番号156024-71-4]が、非常に特に好ましく、特に第二ホスホン酸アルミニウムAl2(HPO3)3が好ましい。
【0117】
構成成分f)として本発明により使用されるホスホン酸のアルミニウム塩の生成は、例えば、WO2013/083247A1に記載されている。生成は、場合により、最大で4日間の期間、20~200℃で、溶媒中、鋳型を用いて、アルミニウム源、好ましくは、アルミニウムイソプロポキシド、硝酸アルミニウム、塩化アルミニウム又は水酸化アルミニウムを、リン源、好ましくはホスホン酸、ホスホン酸アンモニウム、アルカリホスホネートと反応させることによって、通常、行われる。この目的のため、アルミニウム源及びリン源を混合して、水熱条件下又は還流下で加熱し、ろ過して洗浄し、乾燥する。好ましい鋳型は、ここでは、ヘキサン-1,6-ジアミン、グアニジンカーボネート又はアンモニアである。好ましい溶媒は水である。
【0118】
非常に特に好ましくは、アルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)が、特に構成成分f)として使用される。したがって、構成成分a)、b)、c)、d)及びe)に加え、少なくとも3~100質量部、好ましくは5~80質量部、特に好ましくは10~50質量部のアルミニウム-トリス(ジエチルホスフィネート)も含有する組成物及び強化ポリアミドベースの製品が、本発明により、特に好ましい(各々は、100質量部の構成成分a)に対する)。
【0119】
構成成分g)
構成成分b)、c)、d)、e)及びf)とは異なる、少なくとも1種の更なる添加剤が、構成成分g)として使用される。構成成分g)として使用される好ましい添加剤は、抗酸化剤、熱安定剤、UV安定剤、ガンマ線安定剤、水吸収を低減するための構成成分又は加水分解安定剤、帯電防止剤、乳化剤、核生成剤、軟化剤、加工助剤、潤滑剤及び/又は離型剤、水吸収を低減するための構成成分、固化防止剤、鎖長延長作用を有する添加剤、着色剤、着色料、顔料又はレーザー吸収剤である。添加剤は単独で、又は混合物で、又はマスターバッチの形態で使用することができる。
【0120】
構成成分g)の好ましい熱安定剤は、立体障害フェノール、特に、少なくとも1つの2,6-ジ-tert-ブチルフェニル基及び/又は2-tert-ブチル-6-メチルフェニル基を含むもの、ホスファイト、ヒドロキノン、置換レゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノン、並びに異なって置換されているこれらの基の代表物、又はそれらの混合物である。
【0121】
一実施形態では、銅塩もまた、熱安定剤として使用することができる。ヨウ化銅(I)[CAS番号7681-65-4]及び/又は(トリフェニルホスフィノ)ヨウ化銅[CAS番号47107-74-4]が、銅塩として好ましく使用される。
【0122】
構成成分g)として使用されるUV安定剤は、好ましくは、置換レゾルシノール、サリチレート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノン、少なくとも1つの2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル単位を含有するHALS誘導体(「立体障害アミン光安定剤」)、又はベンゾフェノンである。構成成分g)として使用されるUV安定剤は、0.01~2質量部、特に好ましくは0.1~1質量部で好ましく使用され、各々は、100質量部の構成成分a)に対する。
【0123】
一実施形態では、構成成分g)として使用される着色剤として、無機顔料、特に好ましくはウルトラマリンブルー、バナジン酸ビスマス[CAS番号14059-33-7]、酸化鉄[CAS番号1309-37-1]、二酸化チタン[CAS番号13463-67-7(ルチル)又はCAS番号1317-70-0(鋭錐石)]、硫酸バリウム[CAS番号7727-43-7]、亜鉛スルフィド[CAS番号1314-98-3]又はセリウム含有スルフィドが、好ましく使用される。好ましいスルフィド含有セリウムは、C.I.ピグメントオレンジ75としても知られているセリウム(III)スルフィド(Ce2S3)[CAS番号12014-93-6]、又はC.I.ピグメントオレンジ78としても知られているセリウム(III)スルフィド/ランタン(III)スルフィド(Ce2S3/La2S3)[CAS番号12014-93-6;CAS番号12031-49-1]である。硫酸バリウムが特に好ましい。ピグメントホワイト6又はCI77891とも称される、二酸化チタンもまた特に好ましい。
【0124】
構成成分g)として本発明により使用される着色剤は、二酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛を含有する無機混合酸化物をベースとする顔料系でもあることが好ましい。二酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛を含有する無機混合酸化物をベースとする、構成成分g)として、本発明により好ましく使用される顔料系は、その生成と同様にEP0113229B1から公知である。EP0113229B1の内容は、その全体が本記載によって含まれる。EP0113229B1によれば、構成成分g)として、本発明により使用される顔料系におけるスズ、チタン、亜鉛及び酸素構成成分の量比は、一般式(VII)
(TiO2)cSnO(ZnO)d(SnO)e (VII)
(式中、cは、0.3~6.2の範囲であり、dは、0.04~6.2の範囲であり、eは、0~7の範囲である)によって好ましくは反映される。
【0125】
好ましくは、構成成分g)として使用される一般式(VII)の顔料系は、複合体又は顔料系全体の100万部の原子あたり300~6000原子部のアルカリ金属残留物を含有する。二酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛に由来する無機混合酸化物をベースとする構成成分g)として使用される顔料系は、本発明によれば、個別に、又は二酸化チタン、酸化スズ及び酸化亜鉛からの少なくとも1種の更なる無機混合酸化物との混合物で使用され得る。
【0126】
CAS番号923954-49-8の一般式(VII)の顔料系又はC.I.ピグメントオレンジ82[CAS番号2170864-77-2]又はC.I.ピグメントイエロー216[CAS番号817181-98-9]が、特に好ましく使用される。C.I.分類に関しては、https://de.wikipedia.org/wiki/Colour_Indexを参照されたい。ピグメントオレンジ82は、例えば、BASF SE(Ludwigshafen、ドイツ)社製のSicopal(登録商標)オレンジK2430という名称で取得することができる。ピグメントイエロー216は、例えば、Shepherd(Gent、ベルギー)社製のオレンジ10P340という名称で取得することができる。
【0127】
一実施形態では、有機着色剤、特に好ましくは、フタロシアニン、キナクリドン、ベンゾイミダゾール、特に、Ni-2-ヒドロキシ-ナフチル-ベンゾイミダゾール[CAS番号42844-93-9]及び/又はピリミジン-アゾ-ベンゾイミダゾール[CAS番号72102-84-2]及び/又はピグメントイエロー192[CAS番号56279-27-7]、更に、ペリレン、アントラキノン、特に、C.I.ソルベントイエロー163[CAS番号13676-91-0]及びフタロペリン系、特に、10,10'-オキシ-ビス-12H-フタロペリン-12-オン[CAS番号203576-97-0]及び12H-フタロペリン-12-オン[CAS番号6925-69-5]が、構成成分g)として使用される更なる着色剤として好ましく使用され、10,10'-オキシ-ビス-12H-フタロペリン-12-オンが、特に好ましい。
【0128】
代替的な実施形態では、必要な場合、カーボンブラック又はニグロシンもまた、構成成分g)の着色剤として使用することができる。
【0129】
特に好ましい実施形態では、本発明による着色剤が使用され、その結果、色が安定した耐衝撃性ポリアミドベースの製品は「オレンジ」色をしており、この場合、RAL色システムにおいて、色番号RAL2001、RAL2003、RAL2004、RAL2007、RAL2008、RAL2009、RAL2010及びRAL2011のものと「類似の」色調が好ましく、色番号RAL2003、RAL2008及びRAL2011に「類似」のそのような色調が、非常に特に好ましい。本発明によれば、「オレンジ」は、「2」から始まるRAL色表の色番号の色調に「類似」した色調として理解される。「類似の」色調とは、ここでは、本発明によれば、L*a*b*システムにおける、色調の色差が、RAL色表の色に対して、ΔE<20、好ましくはΔE<10、特に好ましくはΔE<5を有する、そのような色調のことである。EN ISO11664-4において定義されているΔEの説明に関して、例えば、https://de.wikipedia.org/wiki/Delta_Eを参照されたい。
【0130】
構成成分g)として使用される核化剤は、好ましくはフェニルホスフィン酸ナトリウム又はフェニルホスフィン酸カルシウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素又は滑石である。滑石[CAS番号14807-96-6]、特に微結晶性滑石は、核化剤として特に好ましく使用される。タルクとも称される滑石は、化学組成Mg3[Si4O10(OH)2]を有する層化シリケートであり、これは、三斜晶系におけるタルク-1Aとして、又は単斜晶結晶系におけるタルク-2Mとして、改変に応じて結晶化する(http://de.wikipedia.org/wiki/Talkum)。本発明により使用される滑石は、例えば、Imerys Talc Group(Toulouse、フランス)(Rio Tinto Group)社製のMistron(登録商標)R10として取得することができる。
【0131】
少なくとも1種のα-オレフィンと脂肪族アルコールの少なくとも1種のメタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルとのコポリマーが、構成成分g)として使用される、固化防止剤として好ましく使用される。コポリマーが、ここでは特に好ましくは、α-オレフィンは、エテン及び/又はプロペンから合成され、メタクリル酸エステル又はアクリル酸エステルは、アルコール構成成分として、6~20個の炭素原子を有する線状又は分岐アルキル基を含む。アクリル酸2-エチルヘキシルエステルが、非常に特に好ましい。低分子量によって、組成物の他に、固化防止剤として好適なコポリマーもまた区別される。したがって、とりわけ、コポリマーは、本発明によるポリマー組成物に好適であり、これは、190℃及び2.16kgの負荷で測定すると、少なくとも100g/10分、好ましくは少なくとも150g/10分、特に好ましくは少なくとも300g/10分のMFI値を有する。メルトフローインデックスMFIは、熱可塑性プラスチックの溶融物の流動を特徴付けるために使用され、基準ISO1133又はASTM D1238を受ける。MFI550を有する、エテンとアクリル酸2-エチルヘキシルエステルとのコポリマーは、Lotryl(登録商標)37EH550として知られている、固着防止剤として特に好ましく使用される。
【0132】
好ましくは、分岐作用又は鎖延長作用を有する二官能性又は多官能性添加剤は、構成成分g)として使用される鎖延長添加剤として使用され、1分子あたり、分岐作用又は鎖延長作用を有する少なくとも2つの官能基を含む。低分子量化合物又はオリゴマー化合物が、分岐添加剤又は鎖延長添加剤として好ましく、これは、1分子あたり鎖延長作用を有する少なくとも2つの官能基を有しており、第一級及び/又は第二級アミノ基及び/又はアミド基及び/又はカルボン酸基と反応することができる。鎖延長作用を有する官能基は、好ましくは、イソシアネート、アルコール、保護されたイソシアネート、エポキシド、マレイン酸無水物、オキサゾリン、オキサジン、オキサゾロンであり、エポキシドが好ましい。
【0133】
分岐作用又は鎖延長作用を有する、特に好ましい二官能性又は多官能性添加剤は、個々に又は混合物のジグリシジルエーテル(ビスフェノール及びエピクロロヒドリン)をベースとする、アミノエポキシド樹脂(アニリン及びエピクロロヒドリン)をベースとする、ジグリシジルエステル(シクロ脂肪族ジカルボン酸及びエピクロロヒドリン)をベースとするジエポキシド、及び2,2-ビス[p-ヒドロキシフェニル]プロパンジグリシジルエーテル、ビス[p-(N-メチル-N-2,3-エポキシプロピルアミノ)フェニル]メタン、並びに1分子あたり少なくとも2つのエポキシド基を含有する、グリセリンのエポキシ化された脂肪族エステルである。
【0134】
分岐作用又は鎖延長作用を有する、特に好ましい二官能性又は多官能性添加剤は、グリシジルエーテル、非常に特に好ましくはビスフェノールA-ジグリシジルエーテル[CAS番号98460-24-3]又はグリセリンのエポキシ化された脂肪酸エステル、並びにまた非常に特に好ましくはエポキシ化ダイズ油[CAS番号8013-07-8]及び/又はエポキシ化亜麻仁油である。
【0135】
構成成分g)として好ましく使用される軟化剤は、フタル酸ジオクチルエステル、フタル酸ジベンジルエステル、フタル酸ブチルベンジルエステル、炭化水素油又はN-(n-ブチル)ベンゼンスルホンアミドである。
【0136】
構成成分g)として使用される潤滑剤及び/又は離型剤は、好ましくは長鎖脂肪酸、特にステアリン酸又はベヘン酸、それらの塩、特に、ステアリン酸カルシウム又はステアリン酸亜鉛、及びそれらのエステル誘導体、特に、ペンタエリスリトールをベースとするもの、特にペンタエリスリトールの脂肪酸エステル又はアミド誘導体、特に、エチレン-ビス-ステアリルアミド、モンタンワックス、及び低分子量ポリエチレンワックス又はポリプロピレンワックスである。
【0137】
本発明の意味におけるモンタンワックスは、鎖長28~32の範囲の炭素原子を有する、直鎖飽和カルボン酸の混合物である。
【0138】
本発明によれば、8~40個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸と脂肪族飽和アルコールとのエステル、又は2~40個の炭素原子を有するアミンと8~40個の炭素原子を有する不飽和脂肪族カルボン酸とのアミド(又は各場合において、カルボン酸の代わりに、8~40個の炭素原子を有する飽和又は不飽和脂肪族カルボン酸の金属塩)の群からの潤滑剤及び/又は離型剤が、特に好ましく使用される。
【0139】
構成成分g)として非常に特に好ましく使用される潤滑剤及び/又は離型剤は、テトラステアリン酸ペンタエリスリトール[CAS番号115-83-3]、エチレン-ビス-ステアリルアミド、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛及びジモンタン酸エチレングリコールの群から選択される。ステアリン酸亜鉛[CAS番号557-05-1]、ステアリン酸カルシウム[CAS番号1592-23-0]又はエチレン-ビス-ステアリルアミド[CAS番号110-30-5]が、特に好ましく使用される。特に、エチレン-ビス-ステアリルアミド(Emery Oleochemicals社製のLoxiol(登録商標)EBS)が特に好ましく使用される。
【0140】
構成成分f)として好ましく使用されるレーザー吸収剤は、酸化スズ、オルトリン酸スズ、チタン酸バリウム、酸化アルミニウム、ヒドロキシリン酸銅、オルトリン酸銅、二リン酸カリウム銅、水酸化銅、三酸化ビスマス、酸化スズ及び/又は酸化アンチモンをドープした雲母、並びにアントラキノンの群から選択される。酸化スズが、特に好ましい。
【0141】
代替的な実施形態では、危険分類H351に関して先に記載した欠点を考慮する必要がある場合、代わりに、酸化アンチモンスズ、三酸化アンチモン又は五酸化アンチモンもまた、レーザー吸収剤として使用することができる。
【0142】
レーザー吸収剤は、粉末として直接、又はマスターバッチの形態で使用することができる。好ましいマスターバッチは、ポリアミド及び/又はポリオレフィン、好ましくは、ポリエチレンをベースとするものである。レーザー吸収剤は、ポリアミド6ベースのマスターバッチの形態で、非常に特に好ましく使用される。
【0143】
レーザー吸収剤は、個々に、又は複数のレーザー吸収剤の混合物として使用することができる。レーザー吸収剤は、特定の波長のレーザー光を吸収することができる。実際に、この波長は、157nm~10.6μmの範囲にある。これらの波長のレーザーの例は、WO2009/003976A1に記載されている。好ましくは、1064、532、355及び266nmの波長のどれかを使用するNd:YAGレーザーが実施され得、CO2レーザーが使用される。
【0144】
特に好ましい組成物/製品
本発明は、
a)ポリアミド6又はポリアミド66
b)4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
c)次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物
d)ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート、及び
e)ガラス繊維
を含み、
但し、100質量部の構成成分a)に対し、
0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の構成成分b)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の構成成分c)
0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部の構成成分d)及び
5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部の構成成分e)が使用されることを条件とする、組成物及び/又は製品に特に関する。
【0145】
好ましい使用
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に好ましくは関する。
【0146】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に特に好ましくは関し、但し、0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部のビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートが、100質量部のポリアミド、特に、ポリアミド6又はポリアミド66、及び5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部のガラス繊維に対して使用されることを条件とする。
【0147】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、少なくとも1種の芳香族アミンと組み合わせた、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に好ましくは関する。好ましくは、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンは、芳香族アミンとして使用される。
【0148】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ポリアミドベースの製品を生成するための、少なくとも1種の芳香族アミンと組み合わせたビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に非常に特に好ましくは関し、但し、0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部のビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートが、100質量部のポリアミド、特に、ポリアミド6又はポリアミド66、及び5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部のガラス繊維に対して使用されることを条件とする。好ましくは、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンは、芳香族アミンとして使用される。
【0149】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、少なくとも1種の芳香族アミン及び一般式(I)
【0150】
【0151】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC1~C10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
と組み合わせた、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に好ましくは関する。好ましくは、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミンが芳香族アミンとして使用され、次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物が、ホスフィン酸誘導体として使用される。
【0152】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ポリアミドベースの製品を生成するための、少なくとも1種の芳香族アミン及び一般式(I)
【0153】
【0154】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC1~C10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
と組み合わせた、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に非常に特に好ましくは関し、但し、100質量部のポリアミド、特に、ポリアミド6又はポリアミド66に対して、0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部のビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート
5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部のガラス繊維
0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の芳香族アミン、特に、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、及び
0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部のホスフィン酸誘導体、特に次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物が使用されることを条件とする。
【0155】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及び次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物と組み合わせた、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に非常に特に好ましくは関する。
【0156】
本発明は、150℃で、500時間にわたる温風保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後に、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される小さい色変化ΔE、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して測定される耐衝撃性、及び/若しくはISO527に準拠して測定される破断伸びの保持を有する、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品を生成するための、4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及び次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物と組み合わせた、ビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェートの使用に非常に特に好ましくは関し、但し、100質量部のポリアミド6又はポリアミド66に対して、0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部のビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート
5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部のガラス繊維
0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン及び
0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物が使用されることを条件とする。
【0157】
明確にするため、本発明による使用はまた、組成物及び/又はポリアミドベースの製品に関して列挙されている、並びに一般に明記されている、又は任意に組み合わせた好ましい範囲における、すべての定義及びパラメータを包含することに留意されたい。
【0158】
特に好ましい方法
本発明は、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品において、
b)0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の少なくとも1種の第二級芳香族アミン、及び
c)0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の一般式(I)
【0159】
【0160】
(式中、Rは、水素原子、又はアルキル、シクロアルキル若しくはアリール基を表し、R'は、アルカリ金属、アルカリ土類金属、元素の周期表の第12族又は第13族の金属、アンモニウムイオン、又はC1~C10アルキル基を表す)の少なくとも1種のホスフィン酸誘導体
d)0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部のビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート
を含有する混合物が、100質量部のポリアミド6又はポリアミド66、及び5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部のガラス繊維に対して使用される際に、
150℃で500時間にわたる、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠してUV照射した後のDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は140℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して決定される耐衝撃性を保持するため、及び/若しくはISO527に準拠して決定される破断伸びを保持するための方法に好ましくは関する。
【0161】
式(I)中のR'に関するアンモニウムイオンNH4
+はまた、陽イオンであり、これは、本発明による方法の場合、アルカリ金属イオンと同様に、陰イオンと塩を形成する。アンモニウムイオンは、塩基性アンモニア(NH3)に共役酸である。
【0162】
式(I)中のRが水素原子を表す場合、式(I)は次亜リン酸であり、Rが、アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表す場合、式(I)は、ホスフィン酸であり、アルキル、シクロアルキル又はアリール基は、最大で12個の炭素原子を好ましくは含む。
【0163】
式(I)中のRが、アルキル、シクロアルキル又はアリール基を表す場合、ホスフィン酸の塩及びエステルが好ましく使用される。ホスフィン酸の塩が好ましく使用され、これらはまた、塩の水和物であってもよい。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、並びにホスフィン酸の、周期表の第12族及び第13族の金属塩が非常に特に好ましく、これらはまた、塩の水和物であってもよい。
【0164】
式(I)中のRが水素原子である場合、式(I)は、次亜リン酸である。次亜リン酸の塩及びエステルが、好ましく使用される。アルカリ金属塩及びアルカリ土類金属塩、並びに次亜リン酸の、周期表の第12族及び第13族の金属塩が、特に好ましく使用される。次亜リン酸のアルカリ金属塩が特に好ましく使用され、これらはまた、塩の水和物であってもよい。
【0165】
温風エージング後に色保持が改善された又は色安定性が改善された形態での、本発明による方法の場合の良好なエージング挙動は、150℃で500時間にわたる温風保管後のDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される生じた色差ΔEが小さいこと、好ましくは、色差ΔEが、0~20の範囲であること、特に好ましくは、色差ΔEが、0~15の範囲であることを意味するとやはり理解されるべきである。UV安定性が改善された形態での良好なエージング挙動は、本発明による方法の場合、雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠したUV保管後にDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色差ΔEが小さいこと、好ましくは、色差ΔEが0~30の範囲であること、特に好ましくは、色差ΔEが0~20の範囲であることを意味すると理解される。
【0166】
温風エージング後に耐衝撃性を十分に保持した形態での良好なエージング挙動は、本発明による方法の場合では、150℃で500時間にわたる温風エージング後にISO180-1Uに準拠して測定される試料の耐衝撃性が、0時間時に比べ、50%を超えて低下しないことを意味すると理解される。
【0167】
温風エージング後に破断伸びを十分に保持した形態での良好なエージング挙動は、本発明による方法の場合では、150℃で500時間にわたる温風エージング後にDIN EN ISO527に準拠して測定される破断伸びが、0時間時に比べ、30%を超えて低下しないことを意味すると理解される。
【0168】
最後に、本発明は、ガラス繊維強化ポリアミドベースの製品において、
b)0.1~3質量部、好ましくは0.3~2質量部、特に好ましくは0.35~1.5質量部の4,4'-ビス(α,α'-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン
c)0.01~3質量部、好ましくは0.05~2質量部、特に好ましくは0.1~1.7質量部の次亜リン酸ナトリウム又は次亜リン酸ナトリウム一水和物、及び
d)0.01~3質量部、好ましくは0.05~1質量部のビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスフェート
を含有する混合物が、100質量部のポリアミド6又はポリアミド66、及び5~200質量部、好ましくは15~160質量部、特に好ましくは30~150質量部のガラス繊維に対して使用される際に、
150℃で500時間にわたる、DIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠してUV照射した後のDIN EN ISO11664-4に準拠して計算される色変化ΔEを低下させるため、並びに/又は150℃で500時間にわたる温風エージング後に、ISO180-1Uに準拠して決定される耐衝撃性を保持するため、及び/若しくはISO527に準拠して決定される破断伸びを保持するための方法に特に好ましくは関する。
【0169】
明確にするため、本発明による方法はまた、組成物及びポリアミドベースの製品に関して列挙されている、並びに一般に明記されている、又は任意に組み合わせた好ましい範囲における、すべての定義及びパラメータを包含する。
【0170】
本出願の主題はまた、特に射出成形によって、製品、好ましくは成形部品又は半完成製品を生成するための、押出成形プロセス、ブロー成形法又は射出成形における、本発明により使用される構成成分から生成される成形用コンパウンドの使用又は加工である。
【0171】
押出し、ブロー成形又は射出成形による製品を生成するための本発明による加工方法は、230~330℃、好ましくは250~300℃の範囲の溶融温度、及び場合により、更に最大でも2500barの圧力、好ましくは最大でも2000barの圧力、特に好ましくは最大でも1500barの圧力、非常に特に好ましくは最大でも750barの圧力で行われる。
【0172】
押出成形とも称される押出しでは、加圧下で固体から粘度の高い硬化性熱可塑性成形用コンパウンドが、好ましくはノズル、ダイ又はマウスピースと呼ばれる成形開口部から連続的に押し圧される。開口部の断面を有する製品は、ここでは、理論的に任意の長さをもたらす(http://de.wikipedia.org/wiki/Extrusion_(Verfahrenstechnik)。押出の方法形態である、異形押出法の基本的な方法工程は、
1.押出機において、可塑性溶融物を可塑化して、これを用意する工程、
2.押出しする形状の断面を有する較正スリーブから、熱可塑性溶融ストランドを押出しする工程
3.キャリブレーションテーブルで押出成形した異形品を冷却する工程
4.キャリブレーションテーブル後にドローオフを使用して異形品を更に移動する工程
5.裁断設備において、先のエンドレス異形品を所定の長さに裁断する工程、
6.所定の長さに裁断した異形品を収集テーブル上に収集する工程
である。
【0173】
ポリアミド6及びポリアミド66の異形押出しは、Kunststoff-Handbuch 3/4, Polyamide [Plastic handbook 3/4, Polyamides], Carl Hanser Verlag, Munich 1998, 374~384頁に記載されている。
【0174】
ブロー成形の方法は、例えば、http://www.blasformen.com/に記載されている。ブロー成形では、最初の方法工程では、加熱された押出機によって、粒状プラスチックを引き込み、圧縮し、脱気し、加熱し、可塑化し、均質にして、可塑化したプラスチックストランドを形成する。次の工程では、プラスチックコンパウンドを押出機のフランジ付きチューブヘッドに導く。プラスチック溶融物は、そこでチューブに形成され、ノズルから垂直方向に下向きに出す。チューブの直径は、チューブヘッドにフランジが取り付けられている、標準的なマンドレル及び様々なサイズのノズルを使用して製造される物品に適合させる。ブロー成形部品のチューブの厚さ及びそれから生じる質量は、マンドレルからノズルまでの様々な直径の違いを選択することによって予め決定される。
【0175】
射出成形は、原料、すなわち、本発明により使用される構成成分を含む、加工される熱可塑性成形用コンパウンドが、好ましくは顆粒の形態で、加熱された円筒キャビティ内で溶融(可塑化)され、加圧下、温度制御されたキャビティ内に射出用コンパウンドとして射出成形される点で区別される。このコンパウンドの冷却(固化)後、射出成形部品が型から取り出される。
【0176】
以下が区別される。
1.可塑化/溶融
2.射出期(充填プロセス)
3.圧力保持期(結晶化中の熱収縮による)
4.離型
【0177】
射出成形機は、閉鎖ユニット、射出ユニット、駆動装置及び制御装置からなる。閉鎖ユニットは、工具用の固定及び可動クランププレート、エンドプレート、及びカラム、及び可動ツールクランププレートの駆動装置(トグルジョイント又は油圧式閉鎖ユニット)を含む。
【0178】
射出ユニットは、電気加熱可能なシリンダー、軸の駆動装置(モータ、ギア)、並びに軸及び射出ユニットを移動させるための油圧装置を備える。射出ユニットの役割は、粉末又は顆粒を溶融する、計量する、射出する及び保持圧力をかける(収縮のため)ことである。軸内での溶融物の逆流(漏れ流)の問題は、逆流防止壁によって解決される。
【0179】
射出成形ツールでは、加工される成形用コンパウンドであって、本発明により使用される構成成分を含有するコンパウンドの流入溶融物が溶解され、冷却され、こうして、製造される部品が製造される。この目的には、少なくとも2つのツールハーフが常に必要とされる。射出成形では、次の機能性複合設備が区別される。
- ゲートシステム
- 鋳型成形インサート
- 排気
- 機械及び力の調節
- 離型システム及び移動転送
- 温度制御
【0180】
射出成形とは対照的に、押出成形では、本発明により使用される成形用コンパウンドから作製されたエンドレス成形されたストランドが押出機で使用され、押出機は熱可塑性成形部品に基づいた製品を生成するための機械である。一軸押出機と二軸押出機、及びそれぞれのサブグループ、従来の単軸押出機、アクティブコンベヤー単軸押出機、逆方向二軸押出機、及び同期二軸押出機が区別される。
【0181】
異形品を生成するための押出設備は、押出機、異形器具、キャリブレーション、冷却ライン、ドローオフキャタピラ及びローラー、切断装置、並びにティッピングトラフからなる。
【0182】
したがって、本発明はまた、少なくとも構成成分a)、b)、c)、d)及びe)、並びに場合によりf)及び場合によりg)を含有する、本発明による成形用コンパウンドの押出成形又は射出成形によって得ることができる、製品、好ましくは成形部品、成形本体又は半完成製品に関する。
【0183】
射出成形、押出成形又はブロー成形に使用される成形用コンパウンドの生成のための、本発明により使用される組成物の調製は、少なくとも1つの混合アセンブリ、好ましくはコンパウンダー、特に好ましくは同じ方向に回転する二軸押出機において、個々の構成成分a)、b)、c)、d)及びe)、並びに場合により更なる構成成分を混合することによって行われる。コンパウンディングとも呼ばれるこの混合プロセスによって、粉末、顆粒の形態、又はストランドの形態で更なる加工のために供される成形用コンパウンドが中間製品として得られる。熱可塑性成形用コンパウンドとも称される、これらの成形用コンパウンドは、構成成分a)、b)、c)、d)及びe)からもっぱらなることができるか、又は場合により、更なる構成成分、好ましくはf)及び/若しくはg)を含有することができるかのどちらかである。
【0184】
最後に、本発明はまた、電気部品又は電子部品用の、少なくとも構成成分a)、b)、c)、d)及びe)、並びに場合によりf)及び場合によりg)を含有する、成形用コンパウンドからの押出成形又は射出成形によって生成される、製品、好ましくは成形部品、成形本体又は半完成製品の使用に関する。本発明によるこれらの製品を、自動車、電気、電子、電気通信、ソーラー、情報技術及びコンピュータ産業において、家庭、スポーツにおいて、医療において、又は娯楽産業において、好ましく使用することができる。特に、本発明による製品は、長期の色安定性が必要とされる用途に使用することができる。電気工学及び車両における成形部品の使用は、このような用途、車両における、特に自動車における特に高電圧部品にとって好ましい。
【実施例】
【0185】
本発明により記載される特性の改善を具体化するため、最初に対応するポリアミドベースのポリマー組成物をコンパウンディングによって製造した。この目的のため、二軸押出機(Coperion Werner & Pfleiderer(Stuttgart、ドイツ)社製のZSK26コンパウンダー)において、270~300℃の範囲の温度で個々の構成成分を混合し、ストランドとして取り出し、ストランドを造粒することができるようになるまで冷却し、造粒した。乾燥後(一般に、真空乾燥用キャビネット中、80℃で2日間)、顆粒を270~290℃の範囲の温度で加工して、個々の試験のための標準試験片を形成した。
【0186】
ISO180-1U(アイゾット)による耐衝撃性、及びISO527による破断伸びを、23℃で、新しく射出した状態において、DIN EN ISO1874-2により規定されている射出成形した試験片に対して求めた。「成形したまま乾燥」でもある成形したばかりの状態は、DIN EN ISO1874-2に規定されている。
【0187】
Lab色空間(同様に、CIELAB、CIEL*a*b*、Lab色)は、知覚可能なすべての色を説明するものである。Lab色空間は、輝度の値Lが、色面(a,b)と垂直な、三次元色空間を使用する。L*軸は、0~100の値を有する、色の輝度(発光)を記載する。例示では、これは、a*b*面に垂直なゼロ点に存在する。すべての無彩色(グレースケール)は、黒色端点(L*=0)と白色端点(L*=100)との間に含まれるので、L*軸は、中立のグレー軸とも称され得る。Ewald Heringの補色理論と同様に、a座標は緑色と赤色との間の色の種類と色の強度とを指定し、b座標は青色と黄色との間の色の種類と色の強度とを指定する。a及びbの正の値が大きいほど、並びにa及びbの負の値が小さいほど、色調は強くなる。a=0及びb=0の場合、明度軸上に無彩色の色調が存在する。典型的なソフトウェア実装では、Lは、0~100の値と見なすことができ、a及びbは、-128~127の間で変わり得る。ポリマーマトリックスの酸化的損傷によるポリマーベースの製品の変色は、高温での保管時間にわたる色差ΔEを測定することによって、本発明の範囲で決定した。2つの色刺激間の色差ΔEは、DIN EN ISO11664-4に準拠した、式ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2に従って計算した。
【0188】
本発明の範囲では、色保持の改善した又は色安定性の改善した形態でのエージング挙動の試験を、本発明の範囲で温風エージングとも称される150℃の温度の循環空気を用いて、バインダーFP115というモデルの材料試験キャビネット中、60mm・40mm・4mmの射出成形したポリアミドベースのスラブを保管することによって行った。変色の尺度として、500時間にわたる温風エージング後に、本発明による組成物をベースとする射出成形製品の色差ΔEを、色値L*a*b*を測定することによって、温風エージング前及びその後に求めた。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
【0189】
したがって、本発明によれば、温風エージング後に色保持の改善した又は色安定性の改善した形態での良好なエージング挙動は、本発明による製品の場合の色変化ΔEが、比較例による製品の場合よりも小さいという点で区別される。試験片の色値L*a*b*は、60mm・40mm・4mmの寸法を有するスラブ上で、本発明の範囲で決定し、それからDIN EN ISO11664-4に準拠して、色差ΔEを計算した。色測定は、ここでは、Konica Minolta社製の分光光度計CM-2600dを使用し、CIE標準光タイプD65を使用し、光沢除外(SCE=正反射光除外)を用いる反射(観察者角度10°)で実施した。
【0190】
本発明の範囲では、UV安定性の改善した形態での本発明による組成物をベースとする製品に関するエージング挙動の試験は、本明細書のこれ以降、UV保管と表される、雨のない状態で、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間にわたる、DIN ISO4892-2Aに準拠して、Q-Lab社製のQUV高速耐候性試験装置において、60mm・40mm・4mmの寸法を有する射出成形スラブを保管することによって行った。変色の尺度として、本発明の範囲では、本発明による組成物をベースとする射出成形製品の色差ΔEは、色値L*a*b*を測定することにより、200時間のUV保管前及びその後に決定した。
ΔE=[(ΔL*)2+(Δa*)2+(Δb*)2]1/2
【0191】
したがって、本発明によれば、UV保管後のUV安定性が改善された形態での良好なエージング挙動は、本発明による製品の場合の色変化ΔEが、構成成分d)を含まない製品と比べて小さかったという点で区別される。試験片の色値L*a*b*を、本発明の範囲では、60mm・40mm・4mmの寸法を有するスラブ上で決定し、それから、DIN EN ISO11664-4に準拠して、色差ΔEを計算した。
【0192】
本発明の範囲では、耐衝撃性及び破断伸びを保持した形態でのエージング挙動の試験は、150℃の温度の循環空気を使用して、バインダーFP115というモデルの材料試験キャビネット中、DIN EN ISO1874-2に準拠して規定した射出成形した試験片を保管することによって行った。150℃で500時間にわたる保管前及び保管後の、これらの試験片に対して、耐衝撃性はISO180-1Uに準拠して求め、破断伸びは23℃で、ISO527に準拠して求めた。
【0193】
抽出物:
構成成分a)ポリアミド6(Durethan(登録商標)B29、Lanxess Deutschland GmbH社)
構成成分b)4,4'-ビス(α,α-ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、CAS番号10081-67-1(Rianox(登録商標)445、Rialon Cooperation社製)
構成成分c)無水次亜リン酸ナトリウム CAS番号7681-53-0(Sigma Aldrich社、超高純度)
構成成分d)Ultranox(登録商標)626A、CAS番号26741-53-7(Brenntag社)
構成成分e)ガラス繊維(CS7928、Lanxess Deutschland GmbH社)
【0194】
【0195】
Table 1(表1)の結果により、実施例1による本発明による組成物をベースとする製品は、構成成分d)を使用しなかった比較例1と比べ、80℃、340nm及び1.55W/m2で200時間の風化(weathering)後に、ΔEの範囲が<20という、一層低い色変化ΔEの形態で一層高いUV安定性を驚くべきことに有したことが示される。本発明の範囲では、より小さなΔE値は、色変化が小さいことを意味する。色が保管後に全く変化しない場合、ΔE=0が結果となる。
【0196】
更に、実施例1の場合、150℃で500時間にわたる温風エージング後に、構成成分d)を含まない比較例1と比べ、ΔE=0~15の間のΔEで、色保持の改善した又は色安定性の改善した形態でのエージング挙動の改善が驚くべきことに示された。同時に、150℃で500時間の温風エージング後の耐衝撃性及び破断伸びの保持が、構成成分d)を含まない比較例1に比べて改善された。実施例1で述べた改善点は、構成成分b)、c)、d)及びe)のいずれも使用されていなかった比較例2との比較にも当てはまる。
【国際調査報告】