(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】所定の放射プロファイルに従って所定の方向に光放射を放射するのに適した光アンテナを含む位相制御アンテナアレイを有する光エレクトロニクス送信機
(51)【国際特許分類】
G02F 1/313 20060101AFI20241108BHJP
G02B 5/18 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
G02F1/313
G02B5/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532732
(86)(22)【出願日】2022-11-29
(85)【翻訳文提出日】2024-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2022083579
(87)【国際公開番号】W WO2023099434
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510132347
【氏名又は名称】コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】ゲルバー シルヴァイン
(72)【発明者】
【氏名】ファウラー デイヴィッド
【テーマコード(参考)】
2H249
2K102
【Fターム(参考)】
2H249AA12
2H249AA55
2H249AA62
2K102AA21
2K102AA28
2K102BA07
2K102BB04
2K102BB08
2K102BD09
2K102CA28
2K102DA04
2K102DC08
2K102DD03
2K102EB08
2K102EB20
(57)【要約】
本発明は、導波路(5)と、主面に直交する垂直軸に沿って導波路(5)の上方に離れた位置に配置された回折格子(8)とによってそれぞれ形成された複数の光アンテナ(7)を含む光フェーズドアレイ送信機(1)に関する。導波路(5)は、所定の関数pに従って縦方向に変化する幅w
c=p(x)を有し、回折格子(8)は、所定の関数qに従って縦方向に変化する周期構造の配列ピッチq(x)を有する。関数pおよびqは、光アンテナ(7)によって放射される光放射の近接場放射プロファイルS(x)が所定の目標放射プロファイルS
c(x)に等しく、放射される光放射の局所放射角度θ(x)が所定の縦方向に一定の目標放射角度θ
cに等しくなるように事前に定義される。
【選択図】
図2B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光フェーズドアレイ送信機(1)の製造方法であって、
前記光フェーズドアレイ送信機は、
レーザ光源(2)に結合されるスプリッタ(3)と、
前記スプリッタ(3)に結合され、かつ、主面内の縦軸に沿って延び、光エレクトロニクス送信機(1)のアーム(4)を形成する複数の導波路(5)と、
前記アーム(4)内に配置された複数の移相器(6)および光アンテナ(7)、ここで各光アンテナ(7)は、対応する導波路(5)と、前記主面に直交する垂直軸に沿って前記導波路(5)の上方に離れた位置に配置される回折格子(8)とによって形成される、と
を備え、
各光アンテナ(7)によって放射される光放射の目標近接場放射プロファイルS
c(x)および目標放射角度θ
cと、前記光アンテナ(7)の構造構成Cs
refとを定義するステップ(10)、ここで、Cs
refは、前記レーザ光源(2)からの光モードの伝送の光学特性を定義する前記導波路(5)の物理パラメータPp
wgの値、および前記光モードの回折の光学特性を定義する前記回折格子(8)の物理パラメータPp
rの値を含む、と、
前記構造構成Cs
refを考慮して前記光アンテナ(7)から放射される光放射の放射角度θ(x)が、前記目標放射角度θ
cに等しくなるように、前記導波路(5)の幅w
cの関数として前記回折格子(8)の周期構造のピッチΛ
rの変化を表す関係Λ
r=f(w
c)を決定するステップ(20)と、
前記関係Λ
r=f(w
c)および前記構造構成Cs
refを考慮して、前記導波路(5)の前記幅w
cの関数として回折格子(8)の抽出率α
rの変化を表す関係α
r=g(w
c)を決定するステップ(30)と、
前記関係α
r=g(w
c)および前記構造構成Cs
refを考慮して前記光アンテナ(7)から放射される光放射の近接場放射プロファイルS(x)が、目標放射プロファイルS
c(x)に等しくなるように、前記導波路(5)の前記幅w
cの縦方向の変化w
c(x)を決定し、かつ、前記回折格子(8)の前記ピッチΛ
rの対応する縦方向の変化Λ
r(x)を、前記関係Λ
r=f(w
c)に基づいて導出するステップ(40)と、
前記光エレクトロニクス送信機(1)を製造するステップ(50)、ここで、前記光エレクトロニクス送信機の前記光アンテナ(7)は、前記導波路(5)の前記幅w
cの前記縦方向の変化w
c(x)および前記回折格子(8)の前記ピッチΛ
rの前記縦方向の変化Λ
r(x)によって補完される基準構造Cs
refを有する、と
を含む、製造方法。
【請求項2】
前記関係Λ
r=f(w
c)およびα
r=g(w
c)を決定するステップは、所定の最小値w
c,outから所定の最大値w
c,inまでの幅w
cの範囲で実行される
請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記縦方向の変化w
c(x)を求めるステップは、
所定の最大値w
c,outと所定の最小値w
c,inとの間の幅w
cにおける縦方向の変化w
c(x)を表す指数nのべき関数を定義するステップと、
前記指数nの複数の値n
(m)について、前記導波路(5)の前記幅w
cにおける縦方向の変化w
c=p
(m)(x)を決定し、前記回折格子(8)の前記ピッチΛ
rの対応する縦方向の変化Λ
r=q
(m)(x)を導出するステップと、
対応する抽出率α
rにおける縦方向の変化α
r(m)(x)を前記関係α
r=g(w
c)に基づいて決定し、対応する放射プロファイルS
(m)(x)を決定するステップと、
前記目標放射プロファイルS
c(x)からの放射プロファイルS
(mopt)(x)の偏差が最小になる最適値n
(mopt)を、前記指数nの値n
(m)の中から決定するステップと
を含む、請求項2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記導波路(5)の幅w
cおよび前記回折格子(8)の前記ピッチΛ
rが縦方向の変化を示す前記光アンテナ(7)の部分の全長をL
aとして、前記べき関数が、w
c(x)=w
c,in+(x/L
a)
n×(w
c,in-w
c,out)である
請求項3に記載の製造方法。
【請求項5】
レーザ光源(2)に結合されるスプリッタ(3)と、
前記スプリッタ(3)に結合され、主面内の縦軸に沿って延び、光エレクトロニクス送信機(1)のアーム(4)を形成する複数の導波路(5)と、
前記アーム(4)内に配置された複数の移相器(6)および光アンテナ(7)、ここで、各光アンテナ(7)は、対応する導波路(5)と、前記主面に直交する垂直軸に沿って、前記導波路(5)の上方に離れた位置に配置された回折格子(8)とによって形成される、と
を備え、
各光アンテナ(7)の長さの少なくとも一部にわたって、
前記導波路(5)が、所定の関数pに従って縦方向に変化する幅w
c=p(x)を有し、
前記回折格子(8)が、所定の関数qに従って縦方向に変化する周期構造の配列ピッチΛ
r=q(x)を有し、
前記関数pおよびqは、前記光アンテナ(7)によって放射される光放射の近接場放射プロファイルS(x)が所定の目標放射プロファイルS
c(x)に等しく、前記放射される光放射の局所放射角度θ(x)が、縦方向に一定の所定の目標放射角度θ
cに等しくなるように事前に定義される
ことを特徴とする光フェーズドアレイ送信機(1)。
【請求項6】
前記幅w
cの縦方向の変化に関する関数pは減少関数であり、ピッチΛ
rの縦方向の変化に関する関数qは増加関数である
請求項5に記載の光エレクトロニクス送信機(1)。
【請求項7】
前記周期構造の各々は、前記光アンテナ(7)のすべての導波路(5)に面して延びる
請求項5または6に記載の光エレクトロニクス送信機(1)。
【請求項8】
前記導波路(5)および前記回折格子(8)は、シリコンベースのフォトニックチップ内に製造される
請求項5から7のいずれか1項に記載の光エレクトロニクス送信機(1)。
【請求項9】
前記回折格子(8)の周期構造の前記垂直軸に沿った垂直方向の寸法は、前記光アンテナ(7)の縦軸に沿って一定である
請求項5から8のいずれか1項に記載の光エレクトロニクス送信機(1)。
【請求項10】
前記回折格子(8)の周期構造は、前記縦軸に沿った横寸法とピッチΛ
rとの比として定義される、前記光アンテナ(7)の前記縦軸に沿って一定の充填率を有する
請求項5から9のいずれか1項に記載の光エレクトロニクス送信機(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、好ましくはフォトニクス・オン・シリコン・フォトニックチップ上に製造される光フェーズドアレイ送信機の分野である。本発明は、特に、LIDAR(Light Detection and Ranging)の分野に適用可能である。
【背景技術】
【0002】
光フェーズドアレイ(OPA)送信機は、単色光放射を自由空間内で方向性を持って放射する光エレクトロニクスデバイスである。これらは、特に、光検出及び測距(LIDAR)の分野に適用可能であるが、自由空間光通信、ホログラフィックスクリーン、および医療イメージングの分野にも適用可能である。
【0003】
図1Aは、このような光エレクトロニクス送信機1の動作原理を概略的に示す。レーザ光源2は、光信号を送信し、この光信号は、パワースプリッタ3によって光エレクトロニクス送信機1のアーム4に分配される。各アーム4は、移相器6と、光アンテナとも呼ばれる基本送信機7とを含む。各光アンテナ7は、自由空間に光信号を送信し、次に、例えば回折により、光信号は干渉を介して結合して光放射を形成する。光放射は、特に、アーム4内を伝搬する光信号に移相器6によって印加される相対位相Δφによって決定される遠方場の放射パターンを有する。
【0004】
このような光エレクトロニクス送信機は、集積フォトニクスを使用して製造されることができ、すなわち、その様々な光コンポーネント(導波路、パワースプリッタ、光アンテナなど)は、同一のフォトニックチップ上に製造され、同一のフォトニックチップから製造される。この点に関して、
図1Bは、Hulmeらによる論文Fully integrated hybrid silicon two-dimensional beam scanner,Opt.Express 23(5),5861-5874(2015)に記載されているそのような光エレクトロニクス送信機1の一例を概略的かつ部分的に示している。この光エレクトロニクス送信機1は、レーザ光源2、ここではIII-Vレーザ光源を含み、同一のフォトニックチップ上に製造される。したがって、それは、半導体レーザ光源2、パワースプリッタ3、導波路5、移相器6、およびアーム4に配置された光アンテナ7を含む。この例では、レーザ光源2は、III-V材料を(SOI)フォトニックチップ上に転写し、その後、利得媒体を形成するようにその材料を構成することによって製造される。
【0005】
さらに、遠方場において比較的発散しない光放射を形成するためには、特に、各光アンテナが、例えば1~数百ミクロン以上の長い長さにわたって伝送する必要がある。したがって、1つの解決策は、例えば、回折格子を導波路内ではなく、導波路から離れた場所、例えば、導波路の上方に生成することによって、光アンテナの抽出率を低減することであり、これにより、光学モードのエバネセント部分のみが回折格子の周期構造に敏感になる。
【0006】
この点に関して、Hanらによる論文Highly directional waveguide grating antenna for optical phased array, Current Applied Physics,18(2018)824-828には、回折格子が、シリコン導波路から上方に離れた場所に配置され、かつ、導波路を覆うクラッドの上面に形成される光アンテナの一例が記載されている。導波路および回折格子の寸法パラメータの値は、光アンテナに沿って一定であり、特に、寄生反射に関連する光損失を制限し、光アンテナの指向性を最適化するように選択される。
【0007】
さらに、Wangらによる論文Silicon nitride assisted 1x64 optical phased array based on a SOI platform,Opt.Express 29(7),10513-10517(2021)には、回折格子が、シリコン導波路から上方に離れた場所に配置され、ここでは、シリコン窒化物からなり、かつ、シリコン酸化物からなる層に包まれた周期的なパッドによって形成される光アンテナの他の例が記載されている。この場合も、導波路および回折格子の寸法パラメータの値は、光アンテナに沿って一定である。
【0008】
しかし、光アンテナの導波路を循環する光モードは、一部が抽出されるにつれて、縦軸に沿って指数関数的に減少する光パワーP(x)を有する。したがって、回折格子の抽出率αr(x)が縦方向に一定でα0に等しい場合、光アンテナから放射される光の近接場放射プロファイルS(x)も、S(x)~α0×P(x)の関係に従って、縦軸に沿って指数関数的に減少し、光放射の遠方場の放射パターンが劣化する可能性がある。
【0009】
したがって、光アンテナの有効伝送距離の減少を回避するために、抽出率を縦方向に調整し、回折格子の寸法パラメータの値を縦軸に沿って変化させることが一つの解決策となる。しかし、この方法では、回折格子の周期構造寸法が特に小さい、例えば100nm以下の回折格子を製造することになり、フォトニクス・オン・シリコンなどの製造プロセスで通常使用される従来技術とほとんどまたは全く互換性がない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、従来技術の欠点を少なくとも部分的に改善することを目的とし、より詳細には、遠方場の光放射が比較的非発散であり、所定の、例えば一定またはガウス型の放射パターンを有する光フェーズドアレイ送信機を提供することを目的とする。この目的のために、各光アンテナは、所望の、例えば一定またはガウス型の近接場放射プロファイルSc(x)を有し、縦方向で一定である所定の放射角θcに向けて光放射を放射するように設計され、過度に小さい寸法の回折格子を製造する必要がない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的のために、本発明の目的は、光フェーズドアレイ送信機を製造するためのプロセスであり、光フェーズドアレイ送信機は、レーザ光源に結合されるスプリッタと、前記スプリッタに結合され、かつ、主面内の縦軸に沿って延び、光エレクトロニクス送信機のアームを形成する複数の導波路と、前記アーム内に配置された複数の移相器および光アンテナ、ここで各光アンテナは、対応する導波路と、主面に直交する垂直軸に沿って導波路の上方に離れた位置に配置される回折格子とによって形成される、とを備える。
【0012】
プロセスは、
各光アンテナによって放射される光放射の目標近接場放射プロファイルSc(x)および目標放射角度θcと、前記光アンテナの構造構成Csrefを定義するステップ、ここで、Csrefは、レーザ光源からの光モードの伝送の光学特性を定義する導波路の物理パラメータPpwgの値、および光モードの回折の光学特性を定義する回折格子の物理パラメータPprの値を含む、と、
前記構造構成Csrefを考慮して前記光アンテナから放射される光放射の放射角度θ(x)が、前記目標放射角度θcに等しくなるように、前記導波路の幅wcの関数として前記回折格子の周期構造のピッチΛrの変化を表す関係Λr=f(wc)を決定するステップと、
前記関係Λr=f(wc)および前記構造構成Csrefを考慮して、前記導波路の前記幅wcの関数として前記回折格子の抽出率αrの変化を表す関係αr=g(wc)を決定するステップと、
前記関係αr=g(wc)および前記構造構成Csrefを考慮して前記光アンテナから放射される前記光放射の近接場放射プロファイルS(x)が、前記目標放射プロファイルSc(x)に等しくなるように、前記導波路の前記幅wcの縦方向の変化wc(x)を決定し、かつ、前記回折格子の前記ピッチΛrの対応する縦方向の変化Λr(x)を、前記関係Λr=f(wc)に基づいて導出するステップと、
前記光エレクトロニクス送信機を製造するステップ、ここで、前記光エレクトロニクス送信機の前記光アンテナは、前記導波路の前記幅wcの前記縦方向の変化wc(x)および前記回折格子の前記ピッチΛrの前記縦方向の変化Λr(x)によって補完される基準構造構成Csrefを有する、と
を含む。
【0013】
この光エレクトロニクス送信機のいくつかの好ましいが限定的ではない態様は、以下のとおりである。
【0014】
前記関係Λr=f(wc)およびαr=g(wc)を決定するステップは、所定の最小値wc,outから所定の最大値wc,inまでの幅wcの範囲で実行されることができる。
【0015】
前記縦方向の変化wc(x)を求めるステップは、所定の最大値wc,outと所定の最小値wc,inとの間の幅wcにおける前記縦方向の変化wc(x)を表す指数nのべき関数を定義するステップと、前記指数nの複数の値n(m)について、前記導波路の前記幅wcにおける縦方向の変化wc=p(m)(x)を決定し、前記回折格子の前記ピッチΛrの対応する縦方向の変化Λr=q(m)(x)を導出するステップと、対応する抽出率αrにおける縦方向の変化αr(m)(x)を前記関係αr=g(wc)に基づいて決定し、対応する放射プロファイルS(m)(x)を決定するステップと、前記目標放射プロファイルSc(x)からの放射プロファイルS(mopt)(x)の偏差が最小になる最適値n(mopt)を、前記指数nの値n(m)の中から決定するステップとを含むことができる。
【0016】
前記導波路の幅wcおよび前記回折格子の前記ピッチΛrが縦方向の変化を示す前記光アンテナの部分の全長をLaとして、前記べき関数が、wc(x)=wc,in+(x/La)n×(wc,in-wc,out)であることができる。
【0017】
本発明はまた、レーザ光源に結合されるスプリッタと、前記スプリッタに結合され、主面内の縦軸に沿って延び、光エレクトロニクス送信機のアームを形成する複数の導波路と、前記アーム内に配置された複数の移相器および光アンテナ、ここで各光アンテナは、対応する導波路と、前記主面に直交する垂直軸に沿って、前記導波路の上方に離れた位置に配置された回折格子とによって形成される、とを備えた光エレクトロニクス送信機に関する。
【0018】
本発明によれば、各光アンテナの長さの少なくとも一部にわたって、前記導波路が、所定の関数pに従って縦方向に変化する幅wc=p(x)を有し、前記回折格子が、所定の関数qに従って縦方向に変化する周期構造の配列ピッチΛr=q(x)を有し、前記関数pおよびqは、前記光アンテナによって放射される光放射の近接場放射プロファイルS(x)が所定の目標放射プロファイルSc(x)に等しく、前記放射される光放射の局所放射角度θ(x)が縦方向に一定の所定の目標放射角度θcに等しくなるように事前に定義される。
【0019】
前記幅wcの縦方向の変化に関する関数pは減少関数であり、ピッチΛrの縦方向の変化に関する関数qは増加関数であることができる。
【0020】
前記周期構造の各々は、前記光アンテナのすべての導波路に面して延びることができる。
【0021】
前記導波路および前記回折格子は、シリコンベースのフォトニックチップ内に製造されることができる。
【0022】
前記回折格子の周期構造は、前記縦軸に沿った前記周期構造の横寸法とピッチΛrの比として定義される、前記光アンテナの前記縦軸に沿って一定の充填率を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
本発明の他の態様、目的、利点および特徴は、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な説明を読むことによってより明確になり、この説明は、非限定的な例として、添付の図面を参照して与えられる。
【
図1A】
図1Aは、先行技術の一例による光フェーズドアレイ送信機の既に説明された概略図および部分図である。
【
図1B】
図1Bは、先行技術の一例による集積フォトニクスを使用して製造されたそのような光エレクトロニクス送信機の既に説明された概略図および部分平面図である。
【
図2A】
図2Aおよび2Bは、一実施形態による光エレクトロニクス送信機の光アンテナの縦の断面の概略図および部分平面図であり、光アンテナは、導波路の幅および回折格子のピッチの縦方向の変化を示すアポダイズされた部分を含む。
【
図2B】
図2Aおよび2Bは、一実施形態による光エレクトロニクス送信機の光アンテナの縦の断面の概略図および部分平面図であり、光アンテナは、導波路の幅および回折格子のピッチの縦方向の変化を示すアポダイズされた部分を含む。
【
図2C】
図2Cは、代替的な一実施形態による光エレクトロニクス送信機の光アンテナの概略的な部分平面図である。
【
図3】
図3は、
図2Bと同様の光エレクトロニクス送信機を製造するためのプロセスのステップを示すフローチャートである。
【
図4A】
図4Aは、光アンテナによって放射される光放射の近接場放射角度θ(x)が目標値θcに等しくなるような、導波路の幅w
cの関数としての回折格子のピッチΛ
rの変化を表す関係Λ
r=f(w
c)の一例を示す。
【
図4B】
図4Bは、光アンテナによって放射される光放射の近接場放射角度θ(x)が目標値θ
cに等しく、近接場放射プロファイルS(x)が目標放射プロファイルS
c(x)に等しくなるような、導波路の幅w
cの関数としての回折格子の抽出率α
rの変化を表す関係α
r=f(w
c)の一例を示す。
【
図4C】
図4Cは、アポダイズされない部分が続くアポダイズされた部分を含む光アンテナについての放射された光放射の放射プロファイルS(x)、および目標放射プロファイルS
c(x)の一例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図および説明の残りの部分において、同じ参照は、同一または類似の要素を表す。さらに、図をより明確にするために、様々な要素は縮尺で示されていない。さらに、様々な実施形態および変形例は、相互に排他的ではなく、互いに組み合わせることができる。別段の指示がない限り、用語「実質的に」、「約」、「程度」は、10%以内、好ましくは5%以内を意味する。さらに、用語「...と...の間」などは、別段の指示がない限り、境界が含まれることを意味する。
【0025】
本発明は、複数の光アンテナを含む光フェーズドアレイ送信機に関し、複数の光アンテナは、それぞれ、導波路と、導波路から上方に離れた位置に配置された回折格子とによって形成される。光アンテナは、好ましくは、フォトニクス・オン・シリコン光チップ上に製造される。光エレクトロニクス送信機は、所定の、例えば一定またはガウス型の遠方場の放射パターンを有し、所定の放射角度に向けて、少なくとも光アンテナに平行な垂直面において比較的小さな発散を示す光放射を放射するように設計される。
【0026】
遠方場の放射パターンとは、光エレクトロニクス送信機から放射される遠方場の光の放射強度の、放射角度に沿った主軸を中心とした角度分布である。遠方場(またはフラウンホーファーゾーン)は、光アンテナの主寸法(ここでは縦軸に沿った長さLtot)の二乗と光放射の波長λとの比よりも大きい距離Dに対応し、より正確には、D>2Ltot
2/λである。
【0027】
光エレクトロニクス送信機が、遠方場の放射パターンおよび放射角度が期待されるものに対応する光放射を放射するために、光アンテナは、所定の目標プロファイルおよび角度に等しい近接場放射プロファイルおよび放射角度を有する光放射を放射するように設計される。説明の残りの部分では、光エレクトロニクス送信機の遠方場放射パターンおよび光アンテナの近接場放射プロファイルS(x)(または放射パターン)を参照し、ここで、xは、光アンテナに関連する縦方向の横座標である。さらに、θ(x)は、光アンテナによって放射される光放射の垂直軸Zに対する局所放射角度を示すためにも使用される。
【0028】
ここで、一実施形態による光エレクトロニクス送信機1の基本的な光コンポーネントをより詳細に説明するために、上で簡単に説明した
図1Bを再度参照する。
【0029】
ここで、説明の残りの部分では、平面XYがフォトニックチップの平面に平行であり、軸Xが光アンテナ7の縦軸に沿うように配置され、軸Zが光エレクトロニクス送信機1によって光放射が放射される自由空間を向くように配置される、ダイレクト直交座標系XYZが定義される。用語「下」および「上」は、キャリア基板10(
図2A参照)からの+Z方向の距離に関連する。
【0030】
この実施形態では、光エレクトロニクス送信機1は、例えば、フォトニクス・オン・シリコン技術として知られる文脈において、フォトニックチップ上に集積される。フォトニック集積回路(PIC)とも呼ばれるフォトニックチップは、キャリア基板10を含み、キャリア基板から、互いに光学的に結合される能動フォトニック素子(変調器、ダイオード等)および受動フォトニック素子(導波管、マルチプレクサまたはデマルチプレクサなど)を生成することが可能である。フォトニクス・オン・シリコンの文脈では、キャリア基板10および光コンポーネントはシリコンから作られる。したがって、
図2に示すキャリア基板10は、SOI(シリコン・オン・インシュレータ)基板であってもよい。したがって、この例では、導波路5はシリコンでできている。
【0031】
しかし、意図された用途および光放射の波長に応じて、他の多くの技術プラットフォームを使用することができる。したがって、導波路5は、例えば、窒化シリコン(SiN)、窒化アルミニウム(AlN)、ドープされたシリカなどからできていてもよい。
【0032】
光エレクトロニクス送信機1は、波長λのパルス状または連続的な単色光信号を送信するように設計されたレーザ光源2を含む。例示として、波長は1550nmに等しくてもよい。レーザ光源2は、特に、平面ZXの垂直軸Zに対して光アンテナ7によって放射される光放射によって形成される放射角θを変更するために、波長可変であることができる。レーザ光源2は、III/V化合物でできた利得媒体によって形成される、フォトニックチップの表面に結合されたハイブリッド源であることができる。したがって、ブラッグミラーのような光反射器を、利得媒体に結合された集積導波路中に製造することができる。変形例として、フォトニックチップは、レーザ光源2を含まなくてもよく、レーザ光源2は、離れており、したがって、フォトニックチップの表面に接合されない。そして、レーザ光源2は、特にグレーティングカプラによって、フォトニックチップの集積導波路に結合されてもよい。
【0033】
パワースプリッタ3は、レーザ光源2の出力に結合される。したがって、パワースプリッタ3は、1つの入力と複数の出力とを含み、各出力は光エレクトロニクス送信機1の導波路に結合される。導波路5の数は、光エレクトロニクス送信機1のアーム4の数に対応する。この例では、パワースプリッタ3は、縦続配置された複数のMMI(マルチモード干渉計)スプリッタによって形成されるが、他の種類の光学部品を使用してもよい。
【0034】
光エレクトロニクス送信機1は、複数の導波路5を含み、複数の導波路は、パワースプリッタ3の出力の1つに結合された第1の端部と反対側の第2の端部との間に延びる。したがって、各導波路5は、パワースプリッタ3から光信号を受信し、この光信号が光アンテナ7に伝搬することを許容するように設計される。
【0035】
また、光エレクトロニクス送信機1は、アーム4に配置された複数の移相器6を含む。より正確には、導波路5は、対象とする導波路5内を循環する光信号の位相を修正するように設計された少なくとも1つの移相器に結合され、したがって、隣接する導波路5内を循環する光モード間の位相差Δφつまり相対位相を生成するように設計される。移相器6は、パワースプリッタ3と光アンテナ7との間に配置される。各導波路5は、移相器を備えていてもよいし、例えば、2つの導波路5のうちの1つの導波路5のように、いくつかの導波路5のみが移相器を備えてもよい。また、基準導波路5は、移相器を備えていなくてもよい。
【0036】
移相器6は、電気屈折移相器であっても、熱光学移相器であってもよい。いずれの場合も、対象とする導波路5の屈折率ncを変更することによって、位相が変更される。屈折率は、電気屈折移相器の場合は自由キャリアの密度を変更することによって、熱光学移相器の場合は印加温度を変更することによって変更されてもよい。
【0037】
移相器6は、平面YZ(光アンテナ7の縦軸Xに直交する)における垂直軸Zに対する主放射軸の決定されたゼロでない角度Φを得るように、導波路5内を伝搬する光学モードに所定の相対位相値Δφを適用するように設計される。しかし、異なる遠方場パターンを得るため、または位相誤差を考慮して補償するために、相対位相Δφは、導波路5間で同一ではない可能性がある。これらの位相誤差は、光エレクトロニクス送信機1の特定の構成要素の経時劣化、製造プロセスにおける不均一性、製造プロセスのゼロでない公差、光エレクトロニクス送信機1の環境の影響(例えば、基本送信機を覆うパッケージ要素の潜在的影響)から生じる可能性がある。
【0038】
移相器6は、好ましくは、制御モジュール(図示せず)に接続される。移相器6は、制御モジュールによって送信される制御信号に応じて、さまざまな導波路5を循環する光信号における所定の相対位相Δφを生成することができる。このような制御モジュールの一例は、Hulmeらによる論文Fully integrated hybrid silicon two-dimensional beam scanner,Opt.Express 23(5),5861-5874(2015)またはWO2021/130149A1に記載されている。
【0039】
光エレクトロニクス送信機1は、移相器6の下流に、アーム4当たり1つの光アンテナ7の割合で配置された複数の光アンテナ7を含む。光アンテナ7によって送信された光信号間の相対位相Δφは、特に、光エレクトロニクス送信機1の平面YZにおける垂直軸Zに対し、遠方場における光ビームの主放射軸によって形成される角度Φの値を決定する。
【0040】
図2Aおよび
図2Bは、一実施形態による光アンテナ7の1つの縦の断面(
図2A)および平面(
図2B)における部分的な概略図であるである。各光アンテナ7は、導波路5と、垂直軸Zに沿って導波路5から上方に離れた位置に配置された回折格子8とによって形成される。
【0041】
本発明によれば、光アンテナ7の少なくとも一部の長さにわたって、導波路5は、所定の関数pに従って、その幅wcの縦方向の変化wc=p(x)を示し、回折格子8は、所定の関数qに従って、周期構造の配列ピッチΛrの縦方向の変化Λr=q(x)を示す。
【0042】
関数pおよびqは、光アンテナ7が、近接場放射プロファイルS(x)が所定の目標放射プロファイルSc(x)に等しく、垂直軸Zに対して(および方向+Zに沿って)、縦方向において一定である所定の目標値θcに等しい局所放射角度θ(x)に向けられた光放射を放射するように予め定義される。
【0043】
これらの縦方向の変化wr(x)およびΛr(x)を含む光アンテナ7の領域は、つまり光アンテナ7のアポダイズされた部分である。このアンテナは、上流および/または下流に、導波路5の幅wcおよび回折格子8のピッチΛrが一定のアポダイズされない部分を含んでもよい。また、光アンテナ7の全長をLtotとし、アポダイズされた部分の長さをLaとする。
【0044】
導波路5は、導波路5による光モードの伝達特性を表す、したがって、横断面YZにおける光モードの強度の空間分布を表す物理パラメータPpwgによって規定される。この物理パラメータPpwgは、導波路5の屈折率ncおよびクラッドの屈折率ngと、垂直軸Zに沿った厚さecおよびY軸に沿った幅wcなどの導波路5の寸法パラメータである。
【0045】
導波路5および回折格子8は、ここではフォトニクス・オン・シリコン技術を用いてフォトニックチップ内に製造される。このチップは、シリコンからなるキャリア基板10と、導波路のクラッド形成に寄与する下部埋め込み酸化膜(BOX)層11と、シリコン層内に形成された導波路5と、酸化シリコンからなるスペーサ層12と、酸化シリコンからなる充填層14に包まれた、例えば窒化シリコンからなる周期パッド13とからなる。
【0046】
好ましくは、導波路5(すなわち導波路5のコア)の屈折率ncおよびその厚さecは、光アンテナ7の全長Ltotにわたって一定である。一方、アポダイズされた部分における導波路5は、上流側の値wc,inと下流側の値wc,outとの間で幅wcの縦方向の変化wc(x)を示す。この幅wcは、所定の関数pに従って、wc=p(x)のように縦に変化する。例えば、ガウシアン目標プロファイルSc(x)の場合、関数pは単調減少関数である。
【0047】
幅wcのこの縦方向の変化wc(x)は、光モードの実効屈折率が導波路5の横の寸法に依存する限り、導波路5を循環する光モードの実効屈折率neffの縦方向の変化neff(x)をもたらす。一般に、導波路によって支持される光学モードに関する実効屈折率neffは、伝搬定数βとλ/2πの積として定義される。伝搬定数βは、光学モードの波長λと、導波路の特性(屈折率ncおよびng、および横の寸法ecおよびwc)に依存する。光学モードの実効屈折率neffは、ある意味で、光学モードによって「見られる」導波路の屈折率に対応する。それは通常、導波路の屈折率ncとクラッドの屈折率ngの間にある。
【0048】
したがって、導波路5の幅w
cの縦方向の変化w
c(x)は、実効屈折率n
effの縦方向の変化n
eff(x)を引き起こし、したがって、縦軸Xに沿った光学モードの空間分布を変更し、それによって、抽出率と放射角度の両方の観点で、光学モードのエバネセント部分に対する回折格子8の局所的な影響を決定することに寄与する。実際、この点に関して、回折格子8による光放射の放出角度θ(x)は、次の関係によって決定され得ることを想起すべきである。
【数1】
ここで、mは回折次数である。
【0049】
したがって、目標値θcと同じ放射角度θ(x)を縦軸Xに沿って一定に保つためには、回折格子8のピッチΛrの縦方向の変化Λr(x)を定義することも重要であると考えられる。
【0050】
したがって、光アンテナ7は、導波路5に直接生成されるのではなく、垂直軸Zに沿って上方に離れた位置に配置された回折格子8を備えている。したがって、回折格子は、導波路から、導波路5の上面と回折格子8の周期構造の下面との間の距離として定義されるゼロでない距離drだけ離れている。なお、この距離drは0であってもよい。いずれにしても、回折格子8は、例えば、その局所的な部分エッチングによって導波路5内に生成されるわけではない。
【0051】
回折格子8は、縦軸Xに沿う導波路5に沿って配置された周期構造によって形成される。様々なタイプの構造が可能である。回折格子8が上記のWang 2021のものと同じタイプであるこの例では、周期構造は、高屈折率の材料、ここでは窒化シリコン、のパッド13によって形成され、パッドは、低屈折率の材料(導波路5を取り囲むクラッドの材料と同一であり、ここでは酸化シリコンでできている)で満たされたスルーノッチによって互いに分離される。ノッチは、ここではスルーノッチであるが、そうでない場合もある。変形例として、回折格子8は、上記のHan 2018のものと同じタイプであってもよく、すなわち、導波路5のクラッド層の上面に形成されたノッチによって形成されるタイプであってもよい。
【0052】
回折格子8は、光学モードのエバネセント部分の回折(したがって、抽出)を表す物理パラメータPpr、すなわち導波路5に対する回折格子8の間隔dr、構造の屈折率、すなわち窒化シリコンパッド13についてのnrおよび充填層14の材料についてのnmr、パッド13の厚さer、縦軸Xに沿ったパッド13の幅wr、ピッチΛr、および幅wrとピッチΛrとの間の比として定義される充填係数ffr=wr/Λr、によって定義される。
【0053】
好ましくは、パッド13の屈折率nr、厚さer、および幅wrは、光アンテナ7の全長Ltotにわたって一定である。同様に、ノッチはスルーノッチのままである。ここで、充填率ffrは一定であるが、縦方向の変化を示すこともある。一方、アポダイズされた部分の回折格子8は、ピッチΛrの上流側の値Λr,inと下流側の値Λr,outの間で縦方向の変化Λr(x)を示す。従って、ピッチΛrは、Λr=q(x)となるように予め定められた関数qに従って縦方向に変化する。例えば、ガウシアン目標プロファイルSc(x)の場合、関数qは単調増加関数である。ピッチΛrの縦方向の変化Λr(i)は、1からMまで変化する指数iを用いて離散化された形で表すことができ、ここで、Mはアポダイズされた部分における回折格子8の周期数である。
【0054】
回折格子8は、光モード、ここではそのエバネセント部分のみに小さな影響を与えるように、導波路5から距離drに位置し、この距離drはゼロまたは非ゼロである。これは、放射強度または散乱強度とも呼ばれる抽出率αを有する。Zhaoらによる論文Design principles of apodized grating couplers, Journal of Lightware Technology,vol.38,no.16,pp.4435-4446,2020に示されているように、放射プロファイルS(x)を定義する抽出された局所光パワーは、S(x)~α(x)×P(x)の関係を通じて、光モードの局所光パワーP(x)(ここではそのエバネセント部分)と抽出強度α(x)に依存する。
【0055】
光アンテナ7は互いに同一である。これらはすべて、導波路5の物理パラメータPpwg(従って縦方向の変化wc(x))および回折格子8の物理パラメータPpr(従って縦方向の変化Λr(x))によって形成される同じ基準構造構成Csrefを有する。光アンテナ7は、軸Yに沿って横方向に、互いに平行に配置される。これらは、好ましくはλ/2から2λの間の距離だけ互いに離間される。参考のために、光アンテナ7の数は、平面YZ内の遠方場における光放射の発散を制限するために、約10から約1万の範囲であってもよい。
【0056】
このようにして、アーム4内を循環する光信号は、光アンテナ7による回折によって自由空間に進行的に伝送され、各光アンテナ7によって放射された光放射は、目標放射プロファイルSc(x)および縦軸Xに沿って一定である目標放射角度θcを示す。放射された光放射は、自由空間内を伝搬し、干渉によって再結合し、したがって主放射軸の周りの角度分布が決定され、かつ、光エレクトロニクス送信機1の遠方場放射パターンを規定する光エレクトロニクス送信機1によって放射された光放射を遠方場で形成する。
【0057】
したがって、光エレクトロニクス送信機1は、少なくとも平面XZにおいて比較的小さな発散を示すことができ、所定の、例えば一定またはガウシアンの放射パターンを示すことができる遠方場光放射を放射する。したがって、これは、各光アンテナ7が、導波路5から上方に離れた位置に配置された回折格子8を含むという事実によって達成され、それによって、導波路5内を循環する光モードのエバネセント部分のみに影響を与えながら抽出率αrを低減することができ、したがって、光アンテナ7の伝送長を増大させることができる。さらに、例えば、Mekisらによる論文A Grating-Coupler-Enabled CMOS Photonics Platform,IEEE Journal of Selected Topics in Quantum Electronics,vol.17,no.3,pp.597-608,May-June 2011に示されているように、著者らが周期構造の寸法のみを修正する従来技術のアポダイズされた回折格子とは異なり、抽出率αrの局所値は、導波路5の幅wcによって容易に調整されることができる。最後に、導波路5の幅wcおよび少なくとも回折格子8のピッチΛrを縦方向に変化させることによって、周期構造の寸法制約を抑制することができ、この寸法制約は、特に小さな寸法(パッド13および/またはノッチの幅wr)をもたらす可能性があり、例えば100nmより小さく、したがって、例えばフォトニクス・オン・シリコンの製造プロセスで通常使用される従来の技術とほとんど、または全く互換性がない。
【0058】
図2Cは、実施形態の一変形例による光エレクトロニクス送信機1の光アンテナ7の平面図である。この例では、回折格子8は同じパッド13を共有している。言い換えれば、回折格子8のパッド13は、光アンテナ7の導波路5に面して連続的に延びている。また、導波路5は、
図2Bに示すものとは異なる形状の縦方向の変化w
c(x)を示す。
【0059】
図3は、一実施形態による光エレクトロニクス送信機1の製造プロセスのフローチャートである。
【0060】
ステップ10では、各光アンテナ7から放射される光の目標近接場放射プロファイルSc(x)と目標放射角度θcを定義する。例えば、放射プロファイルSc(x)はガウシアンである。また、目標放射角度θcは、縦軸Xの任意の値xに対して一定である。ここでは、光モードが、例えば1550nmに等しい波長λを有するものとする。
【0061】
また、光アンテナ7については、同一の基準構成Csrefが定義されている。この構成Csrefは、導波路5による光モードの透過の光学特性を規定する導波路5の物理パラメータPpwg、すなわち、導波路5およびクラッドの屈折率ncおよびng、ならびに、導波路5の厚さecの値からなり、Ppwg={nc,ng,ec}となる。例えば、波長λ1.55μmにおいて、導波路5はシリコン製で屈折率nc=3.48、クラッドはSiO2製で屈折率ng=1.45であってもよい。また、ここでは、導波路5は、220nmに等しい一定の厚さecを有する。これらの物理パラメータPpwgのリストは、後述する導波路5の幅wcの縦方向の変化wc(x)により補完される。
【0062】
また、構造構成Csrefは、回折格子8による光学モードの回折の光学特性を規定する回折格子8の物理パラメータPprの値を含んでいる。物理パラメータPprは、高屈折率のパッド13の屈折率nr、ここでは窒化シリコンの場合は2.0、充填材料の屈折率nmr、ここではSiO2の場合は1.45、パッド13の厚さer、例えば400nm、導波路5との間隔dr、例えば200nmを含んでいる。充填係数ffrは、縦軸Xに沿って一定であり、ここでは0.5である。後でピッチΛの縦方向の変化Λr(x)がわかれば、充填係数ffによってパッド13の幅wrを決定することができる。これらの物理パラメータPprのリストは、後で決定される回折格子8のピッチΛrの縦方向の変化Λr(x)によって補完される。
【0063】
ステップ20では、構造構成Csrefを考慮して縦軸Xに沿ったすべてのxの値について局所放射角θが目標放射角θcに等しくなるように、回折格子8のピッチΛrの変化を導波路5の幅wcの関数として表す関係Λr=f(wc)を決定する。
【0064】
このため、光アンテナ7の複数の三次元有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションを実行する。各シミュレーションにおいて、光アンテナ7は、基準構造構成Csrefと、幅wcとピッチΛrの所与の一対の定数値を有する。したがって、光アンテナ7は、幅wcまたはピッチΛrの縦方向の変化を示さない(アポダイズされない)。各シミュレーションにおいて、シミュレートされた光アンテナ7の放射角θの値が決定される。
【0065】
これにより、幅wcの様々な値に対する、例えば、ピッチΛrの関数としてのシミュレートされた光アンテナ7の放射角θの関係が得られる。次に、シミュレートされた放射角θが目標値θcに等しい場合について、光アンテナ7が目標放射角θcで光放射を放射する関係Λr=f(wc)が得られる。
【0066】
この点に関し、
図4Aは、基準構造構成Cs
refが上記のように定義され、シミュレートされた光アンテナの放射角θが目標値θ
cここでは8°に等しいときの導波路5の幅w
cに対する回折格子8のピッチΛ
rの変化の一例を示している。シミュレーションは、幅w
cの最小値、ここでは350nmから、最大値、ここでは600nmまでの範囲を走査するように行われる。
【0067】
ステップ30では、基準構造構成Csrefと、先に求めた関係Λr=f(wc)(従って、出射角θ(x)は目標値θcに等しい)を考慮して、導波路5の幅wcに対する回折格子8の抽出率αrの変化を表す関係式αr=g(wc)が決定される。
【0068】
このため、光アンテナ7の複数の三次元有限差分時間領域(FDTD)シミュレーションが行われる。各シミュレーションにおいて、光アンテナ7は、基準構造構成Csrefと幅wcの定数値を有し、そこからΛr=f(wc)の関係に基づいて対応するピッチΛrの値が導出される。したがって、光アンテナ7は、幅wcやピッチΛrにおける縦方向の変化を示さず(アポダイズされていない)、対応する放射角が目標値θcに等しいことが分かる。各シミュレーションにおいて、シミュレートされた光アンテナ7の抽出率αr,simの値、すなわち回折した光モードの強度の値と導波路5に導入される光モードの強度の値との比が求められる。
【0069】
これにより、シミュレートされた光アンテナ7の抽出率αrの幅wcの関数としての関係αr=g(wc)が与えられ、ここで、ピッチΛrが関係Λr=f(wc)に従い、光アンテナ7が目標放射角θcで光放射を放射する。
【0070】
この点に関して、
図4Bは、導波路5の幅w
cの関数としての回折格子8の抽出率α
r(ここでは1-α
r)の変化の一例を示しており、ここで、基準構造構成Cs
refは上記で定義され、シミュレートされた光アンテナの放射角度θは、8°に等しい目標値θ
cに等しいものとする。シミュレーションは、350nmから600nmの長さw
cの範囲で行われる。
【0071】
ステップ40では、放射プロファイルS(x)が目標放射プロファイルSc(x)に等しくなるような抽出率αrの縦方向の変化αr(x)をもたらす、導波路5の幅wcの縦方向の変化wc(x)が決定される。
【0072】
この目的のために、理論的アプローチと呼ばれるものでは、放射プロファイルS(x)が目標放射プロファイルS
c(x)に等しい目標抽出率α
r,cの縦方向の変化α
r,c(x)を決定することが出発点である。上記のZhao 2020の記事に記載されているものと同じまたは類似の理論的関係、すなわち下式を使用することが可能である。
【数2】
【0073】
次に、目標抽出率αr,cの縦方向の変化αr,c(x)を知ると、対応する導波路5の幅wcの縦方向の変化wc,c=p(x)が、以前に決定された関係αr=g(wc)に基づいて決定され、縦方向の変化Λr=q(x)が、以前に決定された関係Λr=f(wc)に基づいて決定される。しかし、この「理論的」アプローチは、本発明の文脈で使用することができるが、幅wcの縦方向の変化wc,c(x)が、技術的制約および/またはアポダイズされた部分の上流および下流の導波路5の幅の値wc,in,wc,out(例えば、ここでは350nmおよび600nm)に完全に対応しないリスクがある。
【0074】
したがって、より「実用的」な他の有利なアプローチを使用することができる。最初のステップは、2つの所定の上流および下流の値w
c,inおよびw
c,outの間における導波路5の幅w
cの縦方向の変化w
c(x)を表す方程式を定義することである。この方程式は、調整される少数のパラメータ(少数の自由度)を含むが、対応する放射プロファイルが目標放射プロファイルS
c(x)に等しくなるように、導波路5の形状の広い範囲をカバーすることが望ましい。好ましくは、指数nのべき乗関数を選択し、これを連続形および離散形で表す。
【数3】
ここで、xは横座標であり、x
0=0、すなわち、光アンテナ7の幅がw
c,inであるアポダイズされた部分の開始点とL
a、すなわち、幅がw
c,outであるアポダイズされた部分の終了点との間で変化し、iは考慮される回折格子8の周期数、Mはアポダイズされた部分の全周期数であり、最後に、nは決定すべき自由パラメータである。
【0075】
次に、ここでのパラメータnを変化させて、パラメータの検討を行う。この例では、光アンテナ7のアポダイズされた部分がM=1000周期で形成され、その後に、幅wcおよびピッチΛrが一定(値wc,outに等しい幅)である1000周期の部分が続くものとする。N回の光アンテナ7のFDTDシミュレーションを行うが、ここで、パラメータnはn(m)の値をとり、ここで、mは、実行されたシミュレーションに関連する1からNまで変化する指標である。このように、指標mの各シミュレーションについて、パラメータnがn(m)の値をとる上記の式に基づいて、幅wc(m)の縦方向の変化wc(m)=p(m)(x)が得られる。また、先に求めた関係Λr=f(wc)に基づいて、縦方向の変化Λr(m)=q(m)(x)が導出される。
【0076】
次に、縦方向の変化wc(m)=p(m)(x)およびΛr(m)=q(m)(x)を考慮して、抽出率の縦方向の変化αr(m)(x)がαr=g(wc)に基づいて求められ、対応する放射プロファイルS(m)(x)が求められる。次に、放射プロファイルS(m)(x)と目標放射プロファイルSc(x)との間の類似パラメータ、すなわち、これら2つのプロファイル間の差異のパラメータが、例えば重なり積分に基づいて求められる。最後に、類似パラメータの最良の値を与える、すなわち、これら2つのプロファイル間の差が最小となるパラメータnの最適値n(mopt)が選択される。これにより、導波路5の幅wcにおける最適な縦方向の変化wc=p(mopt)(x)が、回折格子8のピッチΛrにおける対応する縦方向の変化Λr=q(mopt)(x)とともに得られ、ここで、対応する放射プロファイルS(x)は、(最良の類似性という意味で)目標放射プロファイルSc(x)に等しく、放射角度θ(x)は、xのすべての値に対して一定である目標値θcに等しい。したがって、この「実用的な」アプローチによれば、ピッチΛrの局所値に関連する幅wcの局所値が、技術的制約およびアポダイズされた部分の上流および下流における導波路5の幅の所望の値wc,in,wc,outに効果的に適合することが保証される。
【0077】
最後に、ステップ50において、光アンテナ7がすべて同じ構造構成Csrefを有する光エレクトロニクス送信機1が製造され、ここで構造構成は、導波路5の幅wcにおける縦方向の変化wc=p(x)および回折格子8のピッチにおける縦方向の変化Λr=q(x)によって補完される。
【0078】
図4Cは、このような光アンテナ7の放射プロファイルS(x)を、目標放射プロファイルS
c(x)とともに示す。この例では、光アンテナ7は、上記の基準構造構成で、M=1000周期(約750μmの長さL
a)のアポダイズされた部分と、それに続く1000周期の(長さ850μmの)アポダイズされない部分とを含む。アポダイズされた部分では、幅w
cは、600nmに等しい上流値w
c,inと、350nmの下流値w
c,outとの間で変化する。充填率ff
rは、縦軸Xに沿って0.5に等しく、パラメータnは0.3に等しい。また、目標放射角度は、ここでは8°に等しい。アポダイズされた上流部分では、x=0からx=L
a=約750nmの範囲で、放射プロファイルS(x)はガウス分布であり、目標ガウス分布S
c(x)と良い相似性を示す。アポダイズされていない下流部分では、放射プロファイルは指数関数的に減少し、ここでも目標プロファイルに対応する。ここでは、光アンテナ7におけるアポダイズされた部分とアポダイズされない部分との間の遷移を破線の垂直線で表している。
【0079】
この製造プロセスにより、光アンテナ7の長さの少なくとも一部にわたって導波路5の幅wcおよび回折格子8のピッチΛrが縦方向において変化することで、各光アンテナ(7)が所望の近接場放射プロファイルおよび放射角度を有する光放射を放射する光エレクトロニクス送信機1を製造することができる。したがって、遠方場放射パターンは所望のパターンに対応し、少なくとも平面XZにおいてはほとんど発散を示さない。さらに、通常のフォトニックプラットフォーム製造プロセスの制約に全くまたはほとんど適合しない寸法を有する回折格子を製造する必要はない。
【0080】
いくつかの特定の実施形態について説明した。当業者には様々な変形および変更が明らかであろう。
【0081】
したがって、製造プロセスは、充填率ffを調整する段階、または縦方向の変化ff(x)を決定する段階、アポダイズされた部分の長さ、または他の物理的パラメータを調整する段階を含むこともできる。上述したように、放射プロファイルには、例えばガウス分布または一定型などの様々なタイプがある。さらに、回折格子8は、本明細書のように、高屈折率を有するパッド13を含むことができ、または特に、クラッド層の表面に形成されたノッチによって形成されてもよい。
【国際調査報告】