IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ エンテロバイオーム インコーポレイテッドの特許一覧

特表2024-542749がん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】がん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 35/741 20150101AFI20241108BHJP
   C12N 1/20 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 45/00 20060101ALI20241108BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61K35/741
C12N1/20 E ZNA
C12N1/20 A
A61P29/00
A61P35/00
A61K45/00
A61K39/395 U
A61K39/395 D
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532796
(86)(22)【出願日】2022-12-16
(85)【翻訳文提出日】2024-05-31
(86)【国際出願番号】 KR2022020594
(87)【国際公開番号】W WO2023113541
(87)【国際公開日】2023-06-22
(31)【優先権主張番号】10-2021-0180844
(32)【優先日】2021-12-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2022-0088313
(32)【優先日】2022-07-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521022956
【氏名又は名称】エンテロバイオーム インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】ENTEROBIOME INC.
(74)【代理人】
【識別番号】110000671
【氏名又は名称】IBC一番町弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ソ,ジョ-グ
(72)【発明者】
【氏名】シン,ジョ-ヒュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ドキュン
(72)【発明者】
【氏名】イ,ヨンミ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C085
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA01X
4B065CA44
4C084AA19
4C084NA05
4C084ZB111
4C084ZB112
4C084ZB261
4C084ZB262
4C085AA13
4C085AA14
4C085BB11
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC31
4C087CA08
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB11
4C087ZB26
(57)【要約】
本発明は、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物、及びがん又は炎症予防又は改善用健康機能性食品に関する。本発明の薬学的組成物は、がん又は炎症性疾患の予防又は治療に優れた効果を示す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含む、がん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項2】
前記アッカーマンシア属菌株がアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)菌株であることを特徴とする、請求項1に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項3】
前記アッカーマンシア属菌株がアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株(KCTC13765BP)であることを特徴とする、請求項1に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項4】
前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞が20~300nmの平均直径を有することを特徴とする、請求項3に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項5】
前記がんが、大腸がん、肺がん、小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、血液がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部がん、皮膚又は眼球内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門周囲がん、結腸がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰部がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎骨盤がん、CNS腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫よりなる群から選ばれるいずれかであることを特徴とする、請求項1に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項6】
前記組成物が、化学抗がん剤及び免疫抗がん剤から選択されるがん治療薬をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項7】
前記免疫抗がん剤が、anti-PD1、anti-PDL1、anti-CTLA、anti-Tim3、及びanti-LAG3よりなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項6に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項8】
前記組成物がアッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)をさらに含むことを特徴とする、請求項1に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項9】
アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)と化学抗がん剤又は免疫抗がん剤は、一つの剤形で同時に投与されるか、又は別個の剤形で同時に又は順次投与されることを特徴とする、請求項6に記載のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物。
【請求項10】
アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含む、がん予防又は改善用健康機能性食品。
【請求項11】
アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含む、がん又は炎症性疾患予防又は治療用獣医学的組成物。
【請求項12】
アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株(KCTC13765BP)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、がん又は炎症性疾患を予防又は治療するための薬学的組成物に関し、より詳細には、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来の細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
がんは、異常細胞の過剰により発生する非制御で無秩序な細胞増殖の産物であり、悪性腫瘍(malignant tumor)は、原発部から離れて他の組織に浸潤して急速に成長する特性を持つため、生命を脅かす。
【0003】
がんを治療するために、様々な抗がん剤を用いた化学療法、放射線療法、及びがんに関連する特定の生体内の分子を標的とする抗体療法などの様々な治療的接近法が試みられている。ところが、化学療法又は放射線療法の場合は、正常細胞にも影響するので副作用が激しく、がん細胞が抗がん剤に対する耐性を取得するため、治療に失敗するか或いは再発する場合が頻繁である。
【0004】
最近の研究報告によると、細胞外小胞が細胞間シグナル伝達及び廃棄管理などの過程において重要な役割を果たすことが報告されており、最近臨床適用に対する関心が高まっている。特定の細胞外小胞と標的細胞の細胞膜との特性を利用すれば、他の正常細胞に対する副作用を予防し、がん細胞をはじめとする疾患細胞のみを特異的に治療することができる治療薬の開発が可能であると期待される。
【0005】
一方、免疫力強化などの体内有益な作用をするプロバイオティクス(probiotics)と、免疫チェックポイント阻害剤との併用療法効果に関する研究がファーマバイオティクス(pharmabiotics)の次元でその重要性が強調されているが、これまで多様な癌腫におけるこれに関する研究は未だに微々たる実情である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した技術的課題を解決するためのもので、その目的は、ファーマバイオティクス由来の細胞外小胞を含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物を提供することにある。
【0007】
本発明の別の目的は、がん予防又は改善用健康機能性食品を提供することにある。
【0008】
本発明のさらに別の目的は、がん又は炎症性疾患予防又は治療用獣医学的組成物又は飼料添加剤を提供することにある。
【0009】
本発明のさらに別の目的は、ファーマバイオティクス由来の細胞外小胞によって患者の免疫体系を活性化させることにより、患者のがんを治療する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための本発明の一態様は、
アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【0011】
前記アッカーマンシア属菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)菌株であり、好ましくは、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株(KCTC13765BP)であってもよい。
【0012】
本発明のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物は、化学抗がん剤又は免疫抗がん剤などのがん治療薬をさらに含有してもよい。前記免疫抗がん剤は、anti-PD1、anti-PDL1、anti-CTLA、anti-Tim3、及びanti-LAG3よりなる群から選ばれるものであってもよい。アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)と化学抗がん剤又は免疫抗がん剤は、一つの剤形で同時に投与されるか、又は別個の剤形で同時に又は順次投与されてもよい。
【0013】
本発明の別の態様は、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん予防又は改善用健康機能性食品に関する。
【0014】
本発明のさらに別の態様は、対象体に治療有効量のアッカーマンシア属菌株由来の細胞外小胞(EV)を投与することを特徴とする、がん治療方法に関する。
【0015】
本発明のさらに別の態様は、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用獣医学的組成物に関する。
【0016】
本発明のさらに別の態様は、新規なアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株(KCTC13765BP)に関する。
【発明の効果】
【0017】
本発明のアッカーマンシア属菌株由来の細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物は、腫瘍サイズを減少させたり、腫瘍成長を減少させたり、転移を予防したり、血管新生を予防したりして、効果的な抗がん剤として開発できる。
【0018】
本発明のアッカーマンシア属菌株を含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物は、単独で投与する場合には、優れた抗がん効果を示すだけでなく、化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と併用して投与する場合には、抗がん剤の副作用は減らし、効能はさらに活性化されることにより、これらを単独で投与する場合に比べてさらに優れた抗がん効果を有する。
【0019】
本発明の薬学的組成物は、炎症誘発サイトカイン遺伝子であるTNF-α、IL-6及びIL-8の発現を阻害する効果に優れるため、炎症性疾患の予防又は治療に有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株(KCTC13765BP)と標準菌株(type strain)であるアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株の顕微鏡観察結果である。
図2】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株のPCR分析結果である。
図3】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株のゲノムDNAのRAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)の分析結果である。
図4】16S rRNA配列を基盤としたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の系統図である。
図5】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株とアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835菌株の溶血活性保有有無を確認した結果を示す。
図6a図6a及び図6bは本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EV)の抗がん活性を確認するための実施例4及び実施例5の動物実験過程を説明するための模式図である。
図6b図6a及び図6bは本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EV)の抗がん活性を確認するための実施例4及び実施例5の動物実験過程を説明するための模式図である。
図7図7及び図8は腫瘍を同種移植したマウスにおいて、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株とanti-PD1との併用投与時の腫瘍形成抑制効果を示す図であり、同種移植抗がん動物モデルにおける時間経過に伴う腫瘍体積の変化を示すグラフである。
図8図7及び図8は腫瘍を同種移植したマウスにおいて、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株とanti-PD1との併用投与時の腫瘍形成抑制効果を示す図であり、同種移植抗がん動物モデルにおける時間経過に伴う腫瘍体積の変化を示すグラフである。
図9】実施例4における本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株とanti-PD1との併用投与時のがん発生抑制効果を測定するために、同種移植抗がん動物モデルにおいて20日間それぞれの実験群のマウスの腫瘍サイズを比較した写真である。
図10】実施例5における、試験物質投与による腫瘍内のCD4、Foxp3、CD8の免疫組織化学染色の結果を示す写真である。
図11】実施例5における腫瘍内のCD4、Foxp3及びCD8に対する免疫組織化学染色を示すグラフである。
図12】同種移植抗がん動物モデルにアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞とanti-PD1を共に投与した場合、及びanti-PD1のみを投与した場合の、25日間の腫瘍のサイズ及び重量の変化を示すグラフである。
図13図12の各実験群のマウスの腫瘍サイズを比較した写真である。
図14】実施例7における試験物質投与による腫瘍内のCD4、Foxp3、CD8の免疫組織化学染色の結果を示す写真である。
図15】実施例7における腫瘍内のCD4、Foxp3及びCD8に対する免疫組織化学染色を示すグラフである。
図16】実施例8で黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおける、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌又はEVによる単独抗がん効果比較実験の投与日程を示す図である。
図17】実施例8における試験物質濃度によるB16-F10腫瘍成長曲線である。
図18】実施例8における試験物質投与による腫瘍重量を示すグラフである。
図19】実施例8における試験物質投与による腫瘍の写真である。
図20】実施例9における試験物質投与による腫瘍内のCD4、Foxp3、CD8の免疫組織化学染色の結果を示す写真である。
図21】実施例9における腫瘍内のCD4、Foxp3及びCD8に対する免疫組織化学染色を示すグラフである。
図22a図22a及び図22bはHT29細胞における創傷治癒分析法を用いた本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞の抗がん活性評価結果を示す。
図22b図22a及び図22bはHT29細胞における創傷治癒分析法を用いた本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞の抗がん活性評価結果を示す。
図23】本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EB-AMDK39 EV)の抗炎症効果を測定するために、炎症前のサイトカインであるIL-8 mRNAの発現を比較した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0022】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語及び科学用語は、本発明の属する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。
【0023】
本明細書において、ある部分がある構成要素を「含む」、「備える」、又は「含有する」とするとき、これは、特に反対される記載がない限り、他の構成要素を除外するものではなく、他の構成要素をさらに含むことができることを意味する。
【0024】
本明細書で使用された用語「患者」又は「対象体」は、本発明の薬学的組成物ががんの予防又は治療目的のために投与される、ヒト又は非ヒトを含む任意の有機体を意味する。典型的な対象体は、ヒトであり、これ以外にも、マウス、ラット、ウサギ、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、シカ、及び非ヒト霊長類を含む。
【0025】
本明細書で使用された用語「治療する」、「治療」などは、症状を一時的又は永続的に軽減すること、症状の原因を除去すること、又は疾病もしくは病態の症状の発症を防止又は遅延させることを意味する。
【0026】
本明細書で使用された用語「予防」は、本発明による薬学的組成物の投与によってがん又は炎症を抑制又は遅延させる全ての行為を意味する。
【0027】
本明細書で使用された用語「改善」は、異常状態に関連するパラメータ、例えば症状の程度を減少させる全ての行為を意味する。
【0028】
本明細書で使用された用語「薬学的に許容される」は、過剰な毒性、刺激、アレルギー反応又はその他の問題点もしくは合併症を伴うことなく、利得/リスク比が合理的であって対象体(例えば、ヒト)の組織を接触して使用するのに適し、健全な医学的判断の範疇以内である組成物を意味する。
【0029】
本明細書で使用された用語「免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitor)」は、Tリンパ球などの特定類型の免疫系細胞及び一部のがん細胞によって生産された特定のタンパク質を遮断する類型の薬物を意味するが、これらのタンパク質は、免疫反応を抑制し、Tリンパ球ががん細胞を死滅させることを防止する。「免疫チェックポイント阻害剤」として現在までよく知られているものとしては、PD-1/PD-L1及びCTLA-4/B7-1/B7-2などが存在する。
【0030】
本明細書で使用された用語「併用療法」は、対象体が2種以上の治療法(例えば、2種以上の治療薬)に同時に晒されることである臨床的介入を指す。幾つかの実施形態において、2種以上の治療法は同時に投与できる。幾つかの実施形態において、2種以上の治療法は順次投与できる。幾つかの実施形態において、2種以上の治療法は重複投与療法で投与できる。幾つかの実施形態において、併用療法の2種以上の治療薬は、対象体に別個に、例えば別個の組成物として、別個の投与経路を介して(例えば、一つの作用剤は経口、別の作用剤は静脈内)、及び/又は異なる時点で投与される。幾つかの実施形態において、2種以上の治療薬は、組み合わせ組成物であって、同じ投与経路を介して、或いは同じ時点で投与できる。
【0031】
本発明の一態様は、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物に関する。
【0032】
ファーマバイオティクス(pharmabiotics)は、健康又は疾病に対して検証された薬学的役割(pharmacological role)を有するヒト由来の細菌又はその産物として定義される(‘Probiotics and pharmabiotics’, Bioeng Bugs. 2010 Mar-Apr; 1(2): 79-84.)。本発明の薬学的組成物は、ファーマバイオティクス成分を主成分として、副作用なしに安全に使用できる。
【0033】
前記アッカーマンシア属菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)菌株であってもよい。具体的には、前記アッカーマンシア属菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株(KCTC13765BP)であってもよい。
【0034】
細胞外小胞(extracellular vesicles、EV)は、細胞から分泌されるサイズ20~300nmのナノ小胞であって、免疫学的に重要なタンパク質である主組織適合体(main histocompatibility complex、MHC)と熱衝撃タンパク質(heat shock protein)を含んで強力な抗腫瘍免疫反応を誘導し、抗炎症性のマイクロRNA(microRNA)とコラーゲン(collagen)の蓄積を調節するマイクロRNA(microRNA)を含む。
【0035】
本発明のアッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)は、がん細胞増殖抑制、がん細胞移動性低下及び新血管生成抑制効果を同時に示して優れた抗がん剤として活用でき、既存の化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と併用投与できる。
【0036】
本発明のアッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)は、前記化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と一つの製剤として同時に投与されるか、或いは別個の製剤として同時に又は順次投与され得る。
【0037】
本発明において細胞外小胞を分離する方法には、制限がなく、例えば培養液において、遠心分離、超高速遠心分離、フィルターによる濾過、ゲルろ過クロマトグラフィー、プレフロー電気泳動、毛細管電気泳動、ポリマーを用いた分離などの方法及びこれらの組み合わせを用いて分離することができ、好ましくは、遠心分離/超遠心分離によって分離することができる。この際、遠心分離/超遠心分離は、100~300,000g、好ましくは150~150,000gで順次遠心分離を行って細胞残屑、非細胞外小胞画分、死細胞などを除去することができる。
【0038】
分画遠心分離:細胞外小胞の最も好ましい方法は、分画遠心分離である。この方法は、いくつかのステップで構成され、好ましくは約4℃で行われ、少なくとも以下のステップ1)~ステップ3)を含む:
ステップ1)細胞及び細胞残屑を除去するための低速遠心分離、
ステップ2)100nm超過の大きい小胞を除去するための高速スピン、及び
ステップ3)細胞外小胞をペレット化する高速遠心分離。
【0039】
密度勾配遠心分離:この接近法は、超遠心分離とショ糖密度勾配とを組み合わせる。より具体的には、密度勾配遠心分離を用いて、非消泡性粒子、例えばタンパク質及びタンパク質/RNA凝集体から細胞外小胞を分離する。よって、この方法は、他の密度の粒子から小胞を分離する。
【0040】
サイズ排除クロマトグラフィー:サイズ排除クロマトグラフィーは、分子量ではなく、サイズに基づいて巨大分子を分離するために用いられる。この技術は、複数の細孔及びトンネルを含む多孔質ポリマービーズを充填したカラムを適用する。分子は、その直径に応じてビーズを通過する。小さい半径の分子がカラムの細孔を介して移動するには、より時間がかかる前記巨大分子は、カラムからさらに早く溶出する。サイズ排除クロマトグラフィーは、大分子と小分子の正確な分離を可能にする。
【0041】
濾過:限外濾過膜を細胞外小胞の単離に使用することもできる。微細小胞の大きさに依存して、この方法は、タンパク質及びその他の巨大分子からの細胞外小胞の単離を可能にする。
【0042】
ポリマーベースの沈殿:ポリマーベースの沈殿法は、一般に、生体液とポリマー含有沈殿液との混合、4℃でのインキュベーション及び低速での遠心分離を含む。ポリマーベースの沈殿に用いられる最も一般的なポリマーの一つは、ポリエチレングリコール(PEG)である。このポリマーによる沈殿は、単離細胞外小胞への温和な影響及び中性pHの使用を含めた多くの利点を有する。
【0043】
ふるい分けによる単離:この技術は、膜を介して生体液から細胞外小胞をふるい分けし、そして圧力又は電気泳動によって濾過を行うことにより、細胞外小胞を単離する。
【0044】
本発明の薬学的組成物は、がんの予防又は治療に優れた効果を有する。
【0045】
具体的に、本発明の薬学的組成物は、次の特性のうちの一つ以上を満足することができる:
(A)腫瘍内のCD8T細胞水準を増加させる;
(B)腫瘍内の調節T細胞水準を減少させる;
(C)腫瘍内のマクロファージ水準を増加させる;
具体的には、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)に由来する細胞外小胞(以下、「EB-AMDK39 EV」と略称する)は、がん細胞に吸収され、EMT作用を抑制し、免疫システムを活性化してがん細胞の浸透及び転移を抑制する。EB-AMDK39 EVは、T細胞を調節して先天的及び後天的免疫システムが活性化させるのに重要な役割を果たす。これに加えて、Foxp3の発現を特徴とする調節T細胞(Treg)は、抗がん免疫を抑制して腫瘍の保護免疫監視を妨害し、効果的な抗腫瘍免疫反応を反対することが知られているが、EB-AMDK39 EVは、Tヘルパー細胞を活性化して細胞毒性T細胞を活性化し、Treg細胞を抑制することにより抗がん効果を示すものと推定される。これにより、本発明の薬学的組成物は、がんの予防、治療及び転移抑制に優れた効果を有する。
【0046】
本発明で使用される場合、「がん(cancer)」という用語は、腫瘍、ネオプラシアス(neoplasias)、及び悪性組織又は細胞を含む意味である。前記がんは、大腸がん、肺がん、小細胞肺がん、胃がん、肝臓がん、血液がん、骨がん、膵臓がん、皮膚がん、頭部又は頸部がん、皮膚又は眼球内黒色腫、子宮がん、卵巣がん、直腸がん、肛門周囲がん、結腸がん、乳がん、卵管がん、子宮内膜がん、子宮頸がん、膣がん、外陰部がん、ホジキン病、食道がん、小腸がん、内分泌腺がん、甲状腺がん、副甲状腺がん、副腎がん、軟組織肉腫、尿道がん、陰茎がん、前立腺がん、慢性又は急性白血病、リンパ球性リンパ腫、膀胱がん、腎臓がん、尿管がん、腎細胞がん、腎骨盤がん、CNS腫瘍、原発性CNSリンパ腫、脊髄腫瘍、脳幹神経膠腫、脳下垂体腺腫などのがん、又は、これらのがんのうちの2つ以上の組み合わせを含む。
【0047】
本発明において、薬学的組成物に有効成分として含まれる本発明によるアッカーマンシア属菌株由来の細胞外小胞(EV)は、20~300nmの平均直径を有する。
【0048】
本発明による薬学的組成物中のアッカーマンシア属菌株由来の細胞外小胞の有効量は、患者の年齢、性別、及び体重によって異なり得る。一般には、体重1kg当たり0.001~150mg、好ましくは0.01~100mgを毎日又は1日おきに投与するか、或いは1日1回~3回に分けて投与することができる。
【0049】
本発明による薬学的組成物は、単独の抗がん療法に用いられることができる。また、本発明による薬学的組成物は、状況に応じて、必要であれば、放射線又は化学抗がん剤又は免疫抗がん剤と同時に、別個に又は順次使用できる。本発明の併用療法は、がんの治療において腫瘍サイズの減少又は腫瘍成長の予防に使用するためのものである。本発明の併用療法は、腫瘍サイズの減少、腫瘍成長の減少、転移の予防、又は血管新生の予防のうちの少なくとも1つに使用するためのものである。
【0050】
具体的には、本発明の薬学的組成物は、個別治療薬として投与されてもよく、放射線治療又は他の治療薬と併用して投与されてもよく、従来の放射線治療又は抗がん剤治療薬とは順次又は同時に投与されてもよい。また、単回又は複数回投与されてもよい。上記の要素を全て考慮して、副作用なしに最大効果が得られる最小限の量で投与することが重要である。
【0051】
幾つかの実施形態において、がん治療薬は、免疫抗がん剤である。免疫療法は、対象体の免疫系を用いてがんを治療する治療法、例えば、チェックポイント阻害剤、がんワクチン、サイトカイン、細胞療法、CAR-T細胞、及び樹状細胞療法を指す。免疫療法の非限定的な例は、免疫チェックポイント阻害剤であり、ニボルマブ(BMS、anti-PD1-1)、ペムブロリズマブ(Merck、anti-PD1-1)、イピリムマブ(BMS、抗-CTLA-4)、MEDI4736(AstraZeneca、anti-PD1-L1)及びMPDL32280A(Roche、anti-PD1-L1)を含む。他の免疫療法は、腫瘍ワクチン、例えば、Gardasil、Cerevarix、BCG、sipulencel-T、Gp100:209-217、AGS-003、DCVax-L、Algenpantucel-L、Tergenpantucel-L、TG4010、ProstAtak、Prostvac-V/RTRICOM、Rindopepimul、E75ペプチドアセテート、IMA901、POL-103A、Belagenpumatucel-L、GSK1572932A、MDX-1279、GV1001、及びTecmotideであり得る。免疫療法は、注射を介して(例えば、静脈内、腫瘍内、皮下又はリンパ節)投与できるが、経口、局所又はエアロゾルを介して投与されてもよい。免疫療法は、サイトカインなどのアジュバントを含むことができる。
【0052】
幾つかの実施形態において、免疫療法剤は、免疫チェックポイント阻害剤である。免疫チェックポイント阻害は、がん細胞が免疫反応を予防又は下向き調節するために生成することができるチェックポイントを阻害することを広範囲に指す。免疫チェックポイントタンパク質の例としては、CTLA4、PD-1、PD-L1、PD-L2、A2AR、B7-H3、B7-H4、BTLA、KIR、LAG3、TIM-3、又はVISTAが挙げられるが、これらに限定されない。免疫チェックポイント阻害剤は、免疫チェックポイントタンパク質に結合して免疫チェックポイントタンパク質を阻害する抗体又はその抗原結合グラフメントであり得る。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、ニボルマブ、ペムブロリズマブ、ピジリズマブ、AMP-224、AMP-514、STI-A1110、TSR-042、RG-7446、BMS-936559、MEDI-4736、MSB-0020718C、AUR-012、及びSTI-A1010が挙げられるが、これらに限定されない。
【0053】
免疫チェックポイント阻害剤(immune checkpoint inhibitors)は、細胞を直接死滅させる従来の化学抗がん療法とは異なり、がん患者の生活の質を低下させる脱毛、貧血、骨髄機能抑制など、抗がん化学療法による副作用が少ない次世代抗がん剤として脚光されている。しかし、免疫チェックポイント阻害剤は、一部のがん(例えば、胃がん、大腸がん、卵巣がん、膵臓がんなど)に対して反応率が非常に低く、腸炎、肝炎、肺炎、甲状腺機能低下症、及び脳下垂体炎などの重度の免疫関連異常反応を引き起こすことも知られている。免疫チェックポイント阻害剤を使用する場合の副作用は、主に軽微な副作用として現れるが、稀には、神経系又は心臓系に発生する場合に深刻で致命的であることが報告されている。本発明のアッカーマンシア属菌株由来の細胞外小胞を含む薬学的組成物は、免疫チェックポイント阻害剤の反応率限界点を克服し、副作用を最小限に抑え、抗がん効果を強化させることができる。
【0054】
本発明の薬学的組成物は、炎症及びアレルギーに関与するサイトカイン(IL-8)の分泌が阻害されるため、炎症予防又は治療用薬学的組成物又は化粧品組成物として有用に用いられることができる。
【0055】
本発明において、炎症性疾患は、浮腫、皮膚炎、アレルギー、結膜炎、歯周炎、アレルギー性及び非アレルギー性鼻炎、中耳炎、咽喉炎、扁桃炎、肺炎、胃潰瘍、慢性及び急性胃炎、クローン病、大腸炎、慢性及び急性腸炎、痔、痛風、強直性脊椎炎、リウマチ炎、乾癬性関節炎、変形性関節炎、関節リウマチ、肩関節周囲炎、腱炎、腱鞘炎、筋炎、急性及び慢性肝炎、膀胱炎、急性及び慢性腎炎、ショーグレン症候群、多発性硬化症、慢性及び急性鼻炎、慢性閉塞性肺疾患、肺線維症、ウイルス感染、細菌感染、真菌感染、関節炎、ホジキン病、膵炎、虹彩炎、強膜炎、ブドウ膜炎、及び湿疹よりなる群から選択されるいずれかであり得る。
【0056】
本発明の受託番号KCTC13765BPのアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株は、配列番号1の16S rRNA遺伝子を有する。アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株の16S rRNA配列と90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%又は97%同一である16S rRNA配列を有する細菌菌株などのアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株の密接に関連する菌株も、治療組み合わせの一部として使用できる。
【0057】
本発明で使用されるアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株は、健康な韓国人の糞便から単離されたものであり、平均直径20~300nmの楕円形細胞であって単球菌又は双球菌であり、嫌気性細菌であり、運動性がなく、グラム陰性であり、エンド胞子を形成しない、粘液-分解性細菌(mucin-degrading bacteria)である。アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、幾つかの粘液分解酵素を生成して粘液を炭素及び窒素供給源として使用することができ、グルコース、ガラクトース、N-アセチルグルコサミン、及びラクトースを含めて様々な炭素源を代謝することができ、プロピオン酸及び酢酸などの短鎖脂肪酸を主要代謝産物として生成する。
【0058】
本発明のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物は、アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株をさらに含むことができる。前記菌株は、菌株の菌体、菌体の破砕物、菌株の培養物、菌株の培養物から菌体を除去した培養液、菌株の菌体抽出物、菌株の培養物の抽出物、又は菌株の培養物から菌体を除去した培養液の抽出物から選択できる。
【0059】
本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株は、培養され、遠心分離などの分離過程によって回収され、乾燥、例えば凍結乾燥によって生菌剤として製造して用いられることができる。アッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の低温殺菌とは、50℃以上100℃未満の温度で10分間以上加熱することをいう。例えば、70℃で30分間低温殺菌(pasteurization)することができる。
【0060】
本発明の一実施形態において、前記アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞を含む薬学的組成物は、それぞれ通常の方法によって散剤、顆粒剤、錠剤、カプセル剤、懸濁液、エマルジョン、シロップ又はエアロゾルなどの経口型剤形、外用剤、坐剤又は滅菌注射溶液の形態で製剤化して使用できるが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【0061】
幾つかの実施形態において、本発明の薬学的組成物は、水性液体分散体、自己乳化分散液、固溶体、リポソーム分散液、エアロゾル、固形体形態、粉末、即時放出製剤、制御放出製剤、高速溶融製剤、錠剤、カプセル、丸剤、遅延放出製剤、徐放型製剤、拍動放出製剤、多粒子製剤、ならびに混合即時放出製剤及び制御放出製剤を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0062】
静脈内投与、腫瘍内投与又は鼻腔内投与のために薬理学的に適合性分散剤及び/又は湿潤剤を含有する水性懸濁液、等張生理食塩水、又は滅菌の注射可能な溶液が使用できる。賦形剤としては、水、アルコール、ポリオール、グリセロール、植物油等が使用できる。
【0063】
本発明の薬学的組成物は、経腸投与又は経口投与用製品として剤形化できる。また、本発明の薬学的組成物は、公知の方法を用いて、胃を通過し、小腸に到達して活性成分である細胞外小胞(EV)が速やかに腸内に放出されるように腸溶コーティングされて製品化され得る。
【0064】
本発明の薬学的組成物は、前記有効成分以外に、薬学的に許容される担体及び/又は賦形剤をさらに含んでもよく、これに加えて、バインダー、分解剤、コーティング剤、潤滑剤などの、薬学的に通常使用される様々な添加剤と共に製剤化できる。
【0065】
薬学的に許容される担体は、例えば、経口投与用担体又は非経口投与用担体をさらに含むことができる。経口投与用担体としては、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸などが挙げられる。加えて、経口投与用に使用される様々な薬物送達物質を含むことができる。また、非経口投与用担体は、水、好適な油、生理食塩水、水性グルコース及びグリコールなどを含むことができる。本発明の薬学的組成物は、安定化剤及び保存剤をさらに含んでもよい。好適な安定化剤としては、亜硫酸水素ナトリウム、亜硫酸ナトリウム又はアスコルビン酸などの抗酸化剤が挙げられる。好適な保存剤としては、塩化ベンザルコニウム、メチル-又はプロピル-パラベン、及びクロロブタノールが挙げられる。本発明の薬学的組成物に含まれ得る、薬学的に許容される担体及び製剤は、次の文献に記載されていることを参考とすることができる(Remington’s pharmaceutical Sciences, 19th ed., Mack Publishing Company, Easton, PA, 1995)。
【0066】
本発明で使用可能な賦形剤としては、スクロース、ラクトース、マンニトール、グルコースなどの砂糖及びトウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、米デンプン、部分アルファ化デンプンなどのデンプンが挙げられる。バインダーとしては、デキストリン、アルギン酸ナトリウム、カラギーナン、グアーガム、アカシア、寒天などの多糖類;トラガカント、ゼラチン、グルテン等の天然巨大分子物質;ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルエチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどのセルロース誘導体;及びポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸及び酢酸ビニル樹脂などの高分子を含む。
【0067】
本発明で使用可能な分解剤としては、カルボキシメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースカルシウム、低置換ヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体、及びカルボキシメチルデンプンナトリウム、ヒドロキシプロピルデンプン、トウモロコシデンプン、ジャガイモデンプン、米デンプン、及び部分アルファ化デンプンなどのデンブンを使用することができる。
【0068】
本発明で使用可能な潤滑剤の例としては、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、コロイダルシリカ、含水二酸化ケイ素、様々な種類のワックス及び水素化油などが挙げられる。
【0069】
コーティング剤としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート-メタクリル酸共重合体、ポリビニルアセタールジエチルアミノアセテート、エチルアクリレート-メタクリル酸共重合体、エチルアクリレート-メチルメタクリレート-クロロトリメチルアンモニウムエチルメタクリレート共重合体、エチルセルロースなどの水不溶性共重合体、メタクリル酸-エチルアクリレート共重合体、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートサクシネートなどの腸性重合体、及びメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコールなどの水溶性重合体を含むが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0070】
本発明のがん又は炎症性疾患予防又は治療用薬学的組成物中の有効成分としてのアッカーマンシア属菌由来の細胞外小胞の投与量は、様々な疾病の類型、患者の年齢、体重、性別、患者の医学的状態、状態の重症度、薬物に対する敏感度、投与時間、投与経路及び排出比率、治療期間、同時に使用される薬物を含む要素、及びその他の医学分野によく知られている要素によって決定できる。よって、用量療法は、広範囲に変わり得るが、これらの要素を全て考慮して、副作用なしに最大効果が得られる最小限の量で投与することが重要あり、これは、当業者によって標準方法を用いて容易に決定できる。
【0071】
本発明の別の態様は、アッカーマンシア属菌株由来の細胞外小胞(EV)を含む健康機能性食品に関する。前記細胞外小胞は、好ましくはアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞である。本発明の健康機能性食品は、がん又は炎症性疾患の予防又は改善に使用できる。
【0072】
本発明の健康機能性食品は、機能性食品(neutraceutical food)、栄養補助剤(nutritional supplement)、健康機能性食品(health food)、食品添加剤(food additives)、及び飼料などの全ての形態を含む。
【0073】
前記類型の健康機能性食品は、当技術分野で知られている通常の方法に従って様々な形態で製造することができる。一般食品としては、これらに限定されないが、飲料(アルコール性飲料を含む)、果実及びその加工食品、魚類、肉類及びその加工食品、パン類及び麺類、果汁、各種ドリンク、クッキー、飴、乳製品、食用植物油脂、マーガリン、植物性タンパク質、レトルト食品、冷凍食品、各種ソースなどにアッカーマンシア属EB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞を添加して製造することができる。
【0074】
上記の他に、本発明の健康機能性食品は、種々の栄養剤、ビタミン、電解質、風味剤、着色剤、ペクチン酸、ペクチン酸の塩、アルギン酸、アルギン酸の塩、有機酸、保護性コロイド増粘剤、pH調節剤、安定化剤、防腐剤、グリセリン、アルコール又は炭酸化剤などを含有することができる。
【0075】
本発明の別の態様は、対象体におけるがんを治療する方法に関する。本発明の方法では、対象体に治療有効量の本発明のアッカーマンシア属菌株由来の細胞外小胞を投与するステップを含む。
【0076】
本発明の別の態様は、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)を有効成分として含むがん又は炎症性疾患予防又は治療用獣医学的組成物に関する。ここで、動物は、特に限定されないが、例えば、犬、猫、モルモット、ハムスター、ラット、マウス、フェレット、ウサギ等のペットを指してもよい。前記獣医学的組成物は、獣医学用薬物又は飼料添加剤であってもよい。
【0077】
本発明は、新規なアッカーマンシア属EB-AMDK39(Akkermansia sp.EB-AMDK39)菌株を提供する。前記菌株は、2018年12月5日付で韓国生命工学研究院の生物資源センターに受託番号KCTC13765BPで寄託された。
【0078】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。但し、これらの実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は、これらの実施例によって限定されるものではない。
【0079】
実施例
実施例1:アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia Muciniphilla)EB-AMDK39菌株の単離及び同定
1.菌株の単離及び同定
健常な韓国人(女性、7歳、BMI19.9)の糞便からアッカーシアマンシア属菌株を単離するために、Derrienの方法によって嫌気性チャンバーを用いて厳格な無酸素条件(5%H、15%CO及び80%N)下で、ムチン培地(0.4g/Lのリン酸一カリウム、0.53g/Lのジクロロリン酸ナトリウム、0.3g/Lの塩化ナトリウム、0.3g/Lの塩化アルミニウム、0.1g/Lの塩化マグネシウム、0.11g/Lの塩化カルシウム、4.g/Lの重炭酸ナトリウム、1mLの酸性微量元素溶液、1mLのアルカリ性微量元素溶液、1mLのビタミン溶液、2.5g/Lのブタ胃粘液(Type III))、及び0.25g/Lの硫化ナトリウム九水和物)を用いて菌株を選別培養した後、単離した(Derrien et al., 2004, Akkermansia muciniphila gen. nov., sp. nov., a human intestinal mucin-degrading bacterium, International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology, 54: 1469-1476)。
【0080】
1.2.顕微鏡観察
単離された菌株がアッカーマンシア属菌株であるか否かを確認するために、単離された菌株を顕微鏡で観察した。図1において、Aはアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準菌株であり、Bはアッカーマンシア属EB-AMDK39菌株を1000倍の倍率で拡大した顕微鏡写真である。図1に示すように、標準菌株であるアッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準菌株(A)とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株(B)を1000倍の倍率で拡大して観察した結果、これらの菌株は、いずれも真っすぐな或いは曲がった棒状の細胞であって、互いに類似した形状を有することを確認した。
【0081】
1.3.PCR分析
アッカーマンシア属菌株であるか否かを確認するために、単離された菌株を下記表1のAM-特異性プライマー(配列番号2及び配列番号3)を用いてPCR分析を行い、その結果を図2に示した。図2において、レーンMはDNAサイズマーカーであり、レーン1は陽性対照群(ATCC BAA-835)であり、レーン2はアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株であり、レーン3は陰性対照群(蒸留水)の結果である。
【0082】
図2の如く、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準菌株と類似したバンドパターンを示す結果値が出たことを確認することができる。
【0083】
【表1】
【0084】
1.4.RAPD(Random Amplified Polymorphic DNA)分析
上記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株と、既に報告された同種のアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)ATCC BAA-835標準菌株との類似性を検証するために、分子タイピングの一種であるRAPDを実施した。このために、菌体から抽出したゲノムDNAを対象として、下記表2のユニバーサルプライマーを用いてDNAを増幅した後、1%アガロースゲルで1時間30分間電気泳動し、UV穿孔器上でDNA断片化パターンを比較し、その結果を図3に示した。
【0085】
【表2】
【0086】
図3から確認されるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準菌株と比較するとき、異なるRAPDバンドパターンを示した。アッカーマンシア・ムシニフィラのRAPDバンドパターンは、種(species)が異なる場合にRAPDバンドパターンが異なることが知られており、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準菌株と同じ種に属するが、異なる菌株であることを確認した。
【0087】
1.5.全長16S rRNA遺伝子塩基配列を用いた系統樹(phylogenetic tree)の分析
上記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株の全長(full-length)16S rRNA遺伝子塩基配列を分析するために、下記表3の27F及び1541Rプライマーを用いて16S rRNA遺伝子を増幅した後、3730×1 DNA分析器を用いて塩基配列を決定した。このように得た本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株及び既に公表されたアッカーマンシア属の他の菌株の16S rRNA遺伝子塩基配列に基づいて系統を分析した。系統分析は、MEGA-Xを用いて行った。1000個のブートストラップ(boot straps)を用いた隣接接合方法(neighbor-joining method)によって系統樹を構成して図4(A)に示した。平均ヌクレオチド同一性(ANI)値は、-m ANIb設定を有するpyani v0.2.7プログラムを適用して進化距離を評価した。アッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)ATCC BAA-835菌株(受託番号:GCF_000020225.1)、アッカーマンシア・ムシニフィラCBA5201株(受託番号:GCF_004104435.1)、アッカーマンシア・ムシニフィラJCM30893菌株(受託番号:GCF_009731575.1)、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株(受託番号:GCF_004015105.1)、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK27菌株(受託番号:GCF_010223015.1)、及びアッカーマンシア・グリカニフィラPytT菌株(受託番号:GCF_900097105.1)全体又はドラフトゲノム配列は、NCBIゲノムデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/genome/)からダウンロードして使用した。同種の他の菌株の16S rRNA遺伝子配列を用いて系統樹(phylogenetic tree)を作成して図4(B)に示した。
【0088】
【表3】
【0089】
図4(a)及び図4(b)に示すように、16s rRNA遺伝子塩基配列の分析を介して、進化学的類縁関係を示す系統樹を分析した結果、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、遺伝学的にアッカーマンシア・ムシニフィラに属する菌株であることを確認した。
【0090】
ヒトの糞便から単離した本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株を、アッカーマンシア・ムシニフィラ(ATCC BAA-835)を対照群とした生化学的方法(API)及び分子生物学的方法(16S rRNA配列分析、16S rRNA BLAST分析、RAPD)を介して同定し、後述する抗生剤耐性検査を介してプロバイオティクスの機能を有することができる安全な菌株であることを確認した。これらの結果に基づいて単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株をアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株と命名し、韓国生物資源センター(KCTC)に寄託して受託番号KCTC13765BPが付与された。
【0091】
実施例2:アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の菌学的特性及び安全性の分析
2.1.単離されたアッカーマンシア属(Akkermansia sp.)菌株の糖利用性の確認
上記で単離された本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の糖利用性を調べるために、API50CHキット(Biomerieux、France)を応用して培養した後、各糖を用いた生長有無をアッカーマンシア・ムシニフィラ標準菌株(ATCC BAA-835)と比較し、その結果を下記表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
前記表4から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ(Akkermansia muciniphilla)EB-AMDK39菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラ標準菌株(ATCC BAA-835)と比較するとき、リボース、D-ガラクトース、D-フルクトース、D-マンノース、D-ラクトース及びL-フコースの利用能力に差があることを確認した。
【0094】
2.2.単離された菌株の抗菌薬感受性の確認
上記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK19菌株の抗菌薬感受性を調べるために、CLSI(Clinical & Laboratory Standard Institute)ガイドラインのブロスマイクロ希釈(broth microdilution)方法によって嫌気性細菌用抗菌薬(ピペラシリン-タゾバクタム(PTZ)、セフチゾオキシム(CTZ)、クロラムフェニコール(CHL)、クリンダマイシン(CLI)、メロペネム(MEM)、モキシフロキサシン(MXF)、メトロニダゾール(MTZ)、シプロフロキサシン(CIP))に対する最小発育阻止濃度(minimum inhibitory concentration、MIC)を決定し(CLSI、2017)、その結果を下記表5に示す。
【0095】
【表5】
【0096】
表5から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、セフチゾオキシム、クリンダマイシン、フルオロキノロン系の抗生剤であるモキシフロキサシンとシプロフロキサシンに耐性を示しており、これを除いた抗菌薬には感受性を示した。標準菌株と比較するとき、抗菌薬耐性パターンに多少差異があった。フルオロキノロン系列の抗生剤に対する耐性は、同じアッカーマンシア・ムシニフィラに同一に存在する耐性であって、内在的な特徴(intrinsic resistance)と判断される。
【0097】
さらに、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の完全な全長ゲノムに対して生物情報学(bioinformatics)基盤のPlasmidFinder(https://cge.cbs.dtu.dk/services/PlasmidFinder/)、PHASTER(https://phaster.ca/)、Mobile Element Finder(cge.cbs.dtu.dk/services/MobileElementFinder)プログラムを適用して獲得性/内在性有無を確認した結果、アッカーマンシア属EB-AMDK39菌株にプラスミドは存在しておらず、獲得性/内在性抗生剤耐性関連遺伝子は全く検出されていない。よって、本発明によるアッカーマンシア属EB-AMDK39菌株は安全な菌株であることを確認することができる。
【0098】
2.3.単離された菌株の溶血活性(hemolytic activity)及び病毒性因子の分析
上記のように単離されたアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の安全性検証のために、溶血活性を保有しているか否かを評価した。このために、トリプティックソイアガー(17.0g/Lのカゼインの膵臓消化物、3.0g/Lの大豆の膵臓消化物、2.5g/Lのデキストロース、5.0g/Lの塩化ナトリウム、2.5g/Lのリン酸カリウム、15g/Lのアガー)に5%w/v defibrinated cryp bloodを添加して製造した血液寒天培地を用いて菌株を培養し、その結果は図5に示した。図5から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、病原性に関係するβ-溶血(コロニー周辺の完全に透明な部分)は現れなかった。
【0099】
病原性菌株データベースであるVFDB(reference database for bacterial virulence factors、http://www.mgc.ac.cn/VFs)に基づいて、病毒性因子をコードする遺伝子を本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の全長ゲノム上で調査した。分析は、タンパク質同一性が最小80%であり、カバレッジが最小80%であり、整列長さが最小50bpである分析条件で行った。分析の結果、アッカーマンシア属EB-AMDK39菌種で毒性因子は検出されなかった。これにより、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株が人体内で無害であることが分かる。
【0100】
2.4.アッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の短鎖脂肪酸(SCFAs)生成能力の確認
酪酸(butyrate)、酢酸(acetate)、プロピオン酸(propionate)などの短鎖脂肪酸(short chain fatty acids、SCFAs)は、腸内細菌によって生成される代謝産物であって、宿主のエネルギー代謝において重要な役割を果たし、Gタンパク質連結受容体(G protein-coupled receptor、GPR41とGPR43)に作用するシグナル伝達媒介体であって、エネルギー均衡に関与する。
【0101】
短鎖脂肪酸(SCFAs)は、胃腸内分泌細胞(enteroendocrine cell)においてGPR41を介して腸運動性減少及び腸移動速度を増加させる。これにより、PYY(peptide YY)分泌を誘導してエネルギー摂取を減少させ、肥満を予防する。また、短鎖脂肪酸によるGPR43は、GPL-1(Glucagon-like peptide 1)を誘発してインスリン感受性の増加を介して飽満感を増加させ、GPR43の活性は脂肪組織からインスリンシグナル伝達を抑制して脂肪蓄積を予防する。短鎖脂肪酸(SCFAs)はブドウ糖代謝を向上させ、腸-脳神経回路を介して食品摂取を減らすことができるIGN(intestinal gluconeogenesis)を活性化させることができる。さらに、ビタミンB12は、菌株の短鎖脂肪酸生成能に影響を及ぼす。具体的には、コハク酸からプロピオン酸への転換を触媒する助酵素として作用することができる。本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の場合、ビタミンB12を補因子としてコハク酸からプロピオン酸への転換を触媒するメチルマロニル-coAムターゼを有している。
【0102】
前記実施例において、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株に特異的に存在するビタミンB12の合成に直接的な役割を果たす遺伝子構成を確認することにより、培養の際にビタミンB12の有無によるアッカーマンシア・ムシニフィラ菌株の機能性代謝体の変化を確認するために、試験管で培養した後、培養液に含有された短鎖脂肪酸(SCFA)の含有量をガスクロマトグラフィー(GC、Gas Chromatography)で分析した。このために、培養液を12,000×gで5分間遠心分離して上澄み液を回収した。上澄み液は、0.2μmのシリンジフィルターを用いて濾過した後、分析に使用した。FFAP column(30m×0.320mm、0.25μm phase)が装着されたガスクロマトグラフィー(Agilent 7890N)を用いた。条件は表6のように設定した。分析結果を下記表7に示す。
【0103】
【表6】
【0104】
【表7】
【0105】
表7から分かるように、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835(標準菌株)とは異なる短鎖脂肪酸生成能を示した。詳細には、培養培地にビタミンB12を添加しなかった場合、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835の主要な短鎖脂肪酸は、酢酸(Acetate)とコハク酸(Succinate)であるのに対し、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、ビタミンB12の有無を問わずに、酢酸(Acetate)及びプロピオン酸(propionate)が主要短鎖脂肪酸であって、特に、プロピオン酸の生成量が標準菌株に比べて約40倍以上高いことが確認された。上記の結果から、本発明のアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株は、アッカーマンシア・ムシニフィラATCC BAA-835標準菌株とはビタミンB12の有無によって明白な短鎖脂肪酸生成能の差異を持っていることが分かる。
【0106】
実施例3:アッカーマンシア・ムシニフィラ菌株のの細胞外小胞の単離
アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の細胞外小胞(Extracellular Vesicles、EV)を得るために、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株の培養液を10,000×g、4℃の条件で20分間遠心分離した後、上済み液を回収し、上澄み液は、0.45μmのフィルターと0.22μmのフィルターを用いて濾過を行った。濾過された上澄み液を150,000×g、4℃の条件で2時間超高速遠心分離してペレットを得た後、滅菌生理食塩水(PBS)で溶かしてタンパク質定量を行った後、効能試験に使用した。
【0107】
実施例4:黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおけるaPD-1免疫抗がん剤と、 アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌との併用投与による抗がん効果
4.1.菌株試料
この実験で使用したアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39(KCTC13765BP)生菌は、1×10CFU/150μlのPBS(25%グリセロール、0.05%システイン/PBS)の濃度で製造した。
【0108】
4.2.動物実験
動物実験は、IACUC(Institutional Animal Care and Use Committee)のAnimal Use and Care Protocolに準拠して行った。がん誘導のために、8週齢の雌C57BL/6マウスを購入して1週間適応期間を有した後、5週間飼育した。飼育環境は、一定の温度(22℃)と相対湿度(40~60%)を維持し、12時間の周期で明暗を調節しながら飼育した。
【0109】
同種移植マウス(syngeneic mouse)抗がん動物モデルを製作するために、マウス由来黒色腫細胞(B16-F10)を用いた。
【0110】
同種移植モデルは、生体内(in vitro)で増殖させたマウスの細胞株を、実際のマウスに移植して成長させる技法であり、同一の宿主及び細胞株菌株は、腫瘍拒絶(tumor rejection)が発生しない。
【0111】
1週間の順化が終わったマウスに1週間、下記表8に示す抗生剤を用いて抗生剤前処理を行った。
【0112】
【表8】
【0113】
次に、2×10個のB16-F10細胞を、100μlのマトリゲル(Matrigel)と共に、マウスの大腿部に皮下注射(SC、subcutaneous injection)した。
【0114】
4.3.試料投与及び実験群の設定
下記表9に示すそれぞれの薬物を5週間毎日マウスに経口投与した。陽性対照群として、anti-PD1抗体を250μg/100μl/headずつ経口投与した。
【0115】
がん細胞が6日目に出現し始め、この時点から、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株を10CFUで毎日経口投与した。6日目から、250μgのaPD-1抗体を4日ごとに腹腔内注射した。この場合、aPD-1抗体は、BioX細胞会社のInVivoMab anti-mouse PD-1(RMP1-14)、catalog #BE0146)を使用した。InVivoPure pH7.0 Dilution Buffer、catalog #IP0070を用いて、250μg/100μlの濃度に希釈して使用した。
【0116】
腫瘍の成長中に、マウスの重量を週に2回測定し、毎日モニタリングしたとともに、がん細胞が出現した始めた6日目から、コンピュータ化されたキャリパーを用いて1日おきに腫瘍サイズをモニタリングした(図6a参照)。
【0117】
腫瘍体積(tumor volume)は、それぞれの腫瘍の2つの直径(長径と短径)を測定することにより、次の式に従って計算した。
【0118】
【数1】
【0119】
【表9】
【0120】
図7図9を参照すると、B16-F10細胞を同種移植した対照群と比較して、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌を経口投与したグループにおいて、腫瘍サイズが著しく小さくなることを確認した。正常対照群の腫瘍サイズは、452.4±69.7mmと比較して、aPD-1投与群の腫瘍サイズは、274.7±50.7mm、(p<0.05)(80%減少)、aPD-1とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株との併用投与群では91.5±15.19mm、(P<0.01)(39%減少)と著しく減少することを示した。特に、aPD-1投与群と比較して、aPD-1とEB-AMDK39との併用投与群で約67%の有意な腫瘍抑制効果を示した(p<0.05)。
【0121】
実施例5:黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおける、aPD-1免疫抗がん剤とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌との併用投与による腫瘍内免疫細胞の変化
腫瘍組織内の免疫細胞の活性を確認するために、CD4、Foxp3及びCD8に対して免疫組織化学染色法(immunohistochemistry、IHC)による分析を行った。顕微鏡で検鏡して発現様相を確認したとともに、黄褐色又は黄赤色で表されるDAB発色陽性領域(positivd area)の測定のためにイメージ分析ソフトウェアImage Jを利用して分析を行った。各顕微鏡観察写真における陽性領域(CD4、Foxp3及びCD8陽性細胞)を測定及び比較して図10及び図11にグラフで示した。
【0122】
図10及び図11に示すように、CD4陽性のT細胞とFoxp3陽性のTreg細胞の比率を確認して腫瘍内の免疫活性を確認した結果、aPD-1+EB-AMDK39併用投与群では、FoxP3陽性の調節T細胞(regulatory T cells、Treg)の増加が抑制され、CD4/Treg比率が他の処理群に比べて有意に高い水準と確認された。これは、aPD-1とEB-AMDK39との併用投与の際にTreg細胞活性を下げ、CD4 T細胞の活性を上げることを確認することができた。上記の結果は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株と抗-PD-L1抗体とを併用投与すると、これらの抗腫瘍免疫細胞活性化効果がさらに増大することを示す。
【0123】
実施例5:黒色腫を利用した同種移植マウス動物モデルにおける、aPD-1免疫抗がん剤とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌との併用投与による腫瘍内免疫細胞の変化
腫瘍組織内の免疫細胞の活性を確認するために、CD4、Foxp3及びCD8に対して免疫組織化学染色法(Immunohistochemistry、IHC)による分析を行った。顕微鏡で検鏡して発現様相を確認し、黄褐色又は黄赤色で示されるDAB発色陽性領域(positive area)の測定のために、イメージ分析ソフトウェアImage Jを利用して分析を行った。各顕微鏡観察写真における陽性領域(CD4、Foxp3及びCD8陽性細胞)を測定及び比較して図10及び図11にグラフで示した。
【0124】
図10及び図11を参照すると、CD4陽性のT細胞とFoxp3陽性のTreg細胞との比率を確認して腫瘍内の免疫活性を確認した結果、aPD-1+EB-AMDK39の併用投与群では、Foxp3陽性の調節T細胞(regulatory T cells、Treg)の増加が抑制されてCD4/Treg比率が他の処理群に比べて有意に高い水準と確認された。これは、aPD-1とEB-AMDK39との併用投与時にTreg細胞活性を下げ、CD4 T細胞の活性を上げることを確認することができる。上記の結果は、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株と抗-PD-L1抗体とを併用投与すると、これらの抗腫瘍免疫細胞活性化効果がさらに増大するということを示す。
【0125】
実施例6:黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおける、aPD-1免疫抗がん剤とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39由来の細胞外小胞(EV)との併用投与による抗がん効果
がん細胞が出現し始める6日目から、aPD-1抗体250μgとアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EV)100μgを4日間隔で腹腔注射した。このとき、aPD-1抗体は、BioX細胞会社のInVivoMab anti-mouse PD-1(RMP1-14)、catalog#BE0146を使用した。InVivoPure pH7.0 Dilution Buffer、catalog#IP0070を用いて、250μg/100μlの濃度に希釈して使用した。
【0126】
腫瘍が測定される時点から2日に一回ずつ腫瘍サイズをモニタリングし、この際、腫瘍のサイズは前記数式1のように計算し、その結果を下記図12にグラフで示した。細胞外小胞は、マウス腫瘍モデルにおいて単独で又はanti-PD1の存在又は不在下でこれらの効能に対して試験された。
【0127】
図12及び図13を参照すると、B16-F10細胞を同種移植した対照群と比較して、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EV)を経口投与したグループで腫瘍サイズが著しく小さくなることを確認した。正常対照群の腫瘍サイズは、664.4±178.8mmと比較して、aPD-1投与群では445.3±148.1mm、約33%の減少効果を示し、PD-1とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EV)との併用投与群では150.7±37.52mm(P<0.05)と有意に約77%の腫瘍成長抑制効果を示した。
【0128】
以上のように、本発明者らは、生体内(in vivo)でアッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)とanti-PD1免疫チェックポイント阻害剤のがん細胞生長及び転移抑制効果を確認した結果、腫瘍を移植したマウスにアッカーマンシア属菌株に由来する細胞外小胞(EV)とanti-PD1免疫チェックポイント阻害剤を注入したとき、腫瘍のサイズ及び重量が効果的に減少することを確認した(図12及び図13参照)。従って、本発明の薬学的組成物は、anti-PD1単独投与時と比較して相当優れた腫瘍成長抑制効能があるので、がんの予防又は治療用薬学的組成物として有用に使用できる。
【0129】
実施例7:黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおける、aPD-1免疫抗がん剤とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39由来の細胞外小胞(EV)との併用投与による腫瘍内免疫細胞の変化
黒色腫を用いた同種移植マウス動物モデルにおける、aPD-1免疫抗がん剤とアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39由来の細胞外小胞(EV)との併用投与による腫瘍組織内の免疫細胞の活性変化を確認するために、免疫組織化学染色を行った。
【0130】
腫瘍組織内の免疫細胞の活性を確認するために、CD4、Foxp3及びCD8に対して免疫組織化学染色法(Immunohistochemistry、IHC)による分析を行った。
【0131】
免疫組織化学的染色は、マウス(murine)抗-CD4抗体、抗-CD8抗体、抗-Foxp3抗体を用いてホルマリン固定/パラフィン包埋組織上で行われた。顕微鏡で検鏡して発現様相を確認したとともに、赤褐色又は赤黄色で示されるDAB発色陽性領域(CD4、Foxp3及びCD8陽性細胞)の測定のために、イメージ分析ソフトウェアImage Jを利用して分析を行った。各顕微鏡観察写真における陽性領域(positive area)を測定及び比較して図14にグラフで示した。
【0132】
図14は、試験物質投与後の腫瘍細胞のIHC(免疫組織化学)結果である。図14において、黄褐色又は黄赤色の点は、CD4、Foxp3及びCD8陽性細胞である。
【0133】
図14及び図15を参照すると、CD4陽性のT細胞とFoxp3陽性のTreg細胞との比率を確認して腫瘍内の免疫活性を確認した結果、aPD-1とEB-AMDK39 EVとの併用投与群では、Foxp3陽性の調節T細胞(Treg)の増加が抑制され、CD4/Tregの比率が他の処理群に比べて有意に高い水準と確認された。また、CD8陽性領域を調査して細胞毒性T細胞の発現を調査した。これは、CD4 T細胞によっても活性化され、CD8陽性領域はaPD-1とEB-AMDK39EVとを併用投与したグループで有意に増加することを確認した。腫瘍組織におけるCD8増加は、腫瘍細胞を直接破壊することを意味する。
【0134】
実施例8:アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌又はEVによる抗がん効果の確認
図16は、黒色腫を用いた同種移植マウス腫瘍モデルでアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌又はEB-AMDK39 EVの単独投与による抗がん効果を確認するための生体内実験過程を簡略に示す図である。一週間の順化が終わったC57BL/6マウス(メス、8週齢)に一週間、下記表10の抗生剤を口腔投与した。
【0135】
【表10】
【0136】
2×10個のB16-F10細胞を、100μLのマトリゲルと共に、マウスの大腿部上に皮下注射した。B16-F10細胞の移植後にがん細胞が出現し始める6日目からEB-AMDK39を108CFU/head/dayで毎日経口投与し、或いはEB-AMDK39 EV 100μg/head/隔日で週に3回腹腔内に投与した。腫瘍が測定される時点から、2日に1回ずつ腫瘍サイズをキャリパーを用いて測定し、腫瘍サイズ(体積)を算出し、図17にグラフで示した。
【0137】
図17を参照すると、B16-F10細胞を同種移植した対照群と比較して、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39を経口投与したグループと、EB-AMDK39 EVを腹腔投与したグループで腫瘍サイズが著しく小さくなることを確認した。D22日の腫瘍サイズの比較時に、正常対照群の腫瘍サイズは、1064±140.3mmと比較して、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39投与群は、629±148.1mmであって、約38%の減少効果を示した(P<0.05)。一方、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39のEV投与群では、568±77.71(P<0.05)であって、有意に約43%の腫瘍成長抑制効果を示した。
【0138】
動物モデル実験の終了後、22日にマウスを犠牲にした後、腫瘍を摘出して腫瘍の重量を測定して図18に示したとともに、腫瘍細胞を分離して撮影した写真を図19に示した。正常対照群の腫瘍重量は、2.423±0.2907gであり、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39とEB-AMDK39 EV投与群での腫瘍重量は、それぞれ1.564±0.1844g、1.573±0.1517gと測定され、いずれも有意に減少することを確認した(いずれもP<0.05)。図17に示すように、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株又はEB-AMDK39 EVの単独投与時に、腫瘍サイズが有意に減少した。
【0139】
実施例9:アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39生菌又はEVの単独投与による腫瘍内の免疫細胞の変化
黒色種を用いた同種移植マウス動物モデルにおける、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株又はアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EV)の単独投与による腫瘍組織内の免疫細胞の活性変化を確認するために免疫組織化学染色を行った。
【0140】
腫瘍組織内の免疫細胞の活性を確認するために、CD4、Foxp3及びCD8に対して免疫組織化学染色法(IHC)による分析を行った。
【0141】
免疫組織化学的染色は、マウス(murine)抗-CD4抗体、抗-CD8抗体、抗-Foxp3抗体を用いてホルマリン固定/パラフィン包埋組織上で行われた。顕微鏡で検鏡して発現様相を確認し、赤褐色又は赤黄色で示されるDAB発色陽性領域(CD4、Foxp3及びCD8陽性細胞)の測定のために、イメージ分析ソフトウェアImage Jを利用して分析を行った。各顕微鏡観察写真における陽性領域を測定及び比較して図21にグラフで示した。
【0142】
図20及び図21を参照すると、CD4陽性のT細胞とFoxp3陽性のTreg細胞との比率を確認して腫瘍内の免疫活性を確認した結果、アッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株又はEB-AMDK39 EVを単独投与した場合に、CD4陽性のT細胞とFoxp3陽性のTreg細胞との比率が対照群より若干増加し、CD8陽性のT細胞を調査して細胞毒性T細胞を確認した結果、EB-AMDK39-EVによって有意に増加することを確認した。このような結果は、本発明によるアッカーマンシア・ムシニフィラEB-AMDK39菌株由来の細胞外小胞(EV)が免疫抗がん剤による抗がんメカニズムの代表的なバイオマーカーであるCD8陽性T細胞の腫瘍内の浸潤増加によって抗がん免疫を活性化してがんの治療に寄与することを示唆する。
【0143】
実施例10:創傷治癒分析(Wound healing assay)を用いた転移性減少の確認
HT29ヒト大腸がん細胞をそれぞれ10%FBS、1%ゲンタマイシンを含むMcCoy培地で5%CO、37℃の条件で培養した。細胞培養用6ウェルプレートにHT29大腸がん細胞を分注し、Confluentに培養する。その後、ピペットチップを用いて6ウェルプレートに一定にスクラッチを与える。次いで、EB-AMDK39 EVを1μg/ml、10μg/mlで24時間処理して顕微鏡で観察した。Image Jプログラムを利用して細胞面積を計算した。
【0144】
EB-AMDK39 EVの抗がん活性を調べるために、創傷治癒活性実験を実施した。HT29ヒト由来の大腸がん細胞に創傷を形成した後、アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)を1μg/ml、10μg/ml、24時間処理してがん細胞の転移(metastasis)の程度を調べた。
【0145】
図22a及び図22bを参照すると、HT29細胞を用いた創傷治癒実験の結果、正常対照群を基準にしてアッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)をそれぞれ1μg/ml、10μg/ml投与する場合に、それぞれ43.73%、50.63%の転移性の減少が観察された。特に、10μg/mlを処理したグループでは、P<0.05であって、有意な減少が確認された。
【0146】
実施例11:HT29細胞における抗炎症効能の評価
サイトカインと他の免疫調節剤は、炎症性腸疾患における炎症反応の調節に関与するため、これらの遺伝子の発現が本発明の菌株の投与によって影響を受けるか否かを調べた。In vitro抗炎症効能評価実験のために、ヒト由来の大腸上皮細胞であるHT-29細胞(ATCC HTB-38TM、USA)を培養した。10%FBS(fetal bovine serum、Hyclone、USA)、10μg/mlのゲンタマイシンを添加したMcCoy’s 5A変形培地(Gibco、USA)を基本培養培地として用いて37℃、5%COインキュベーター(NUAIRE、USA)で培養した。アッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)がHT-29細胞においてLPSで誘導された炎症前サイトカインであるIL-8遺伝子の発現を抑制するかを確認するために、下記表11のプライマーを用いてリアルタイムPCRを行った。
【0147】
TRIZOL試薬(Sigma、USA)を用いて総RNAを抽出したとともに、cDNA合成のために1μgのRNAをM-mlV cDNA合成キット(Enzynomics、韓国)でcDNAを抽出した。リアルタイムPCRは、Quant Studio3リアルタイムPCRシステム(Applied Biosystems、USA)を用いて行った。
【0148】
炎症性サイトカインの遺伝子発現は、SYBR Green TOPrealTM qPCR 2X PreMIX(Enzynomics、韓国)を使用し、internal standardとしてはGAPDHを使用した。PCRの条件は、pre-incubation(for UDG)は50℃で4分、95℃で10分、そして40サイクルは95℃で15秒、60℃で1分にして行った。データは、QuantStudio Design & Analysis Software v1.4.3に内蔵されているプログラムを利用してdelta CT方法で分析した。
【0149】
【表11】
【0150】
図23から確認されるように、HT29細胞にLPS 100ng/ml、6時間単独処理したとき、代表的な炎症性サイトカインIL-8の発現が正常群に比べて約3.7倍増加した(P<0.001)。これに対し、LPSと本発明のアッカーマンシア属菌株(Akkermansia sp.)由来の細胞外小胞(EV)を1μg/mlの濃度で一緒に処理したグループでは、IL-8の発現程度がLPS単独処理群に比べて41%減少することが有意に観察された(P<0.001)。
【0151】
本明細書に開示されている具体的な実施形態は、本発明の好適な実施形態を説明するためのもので、本発明を限定するものと解釈されてはならない。本発明は、本発明の思想及び範囲から逸脱することなく様々に変形及び変化して実施でき、これらの事実は、当業者に自明であろう。本発明の保護範囲は添付の特許請求の範囲によって定められるべきであり、それらの様々な修正及び変形は本発明の保護の範囲内に含まれることが意図される。
【0152】
【化1】
図1
図2
図3
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22a
図22b
図23
【配列表】
2024542749000001.xml
【国際調査報告】