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特表2024-542759ポリオキソメタレートよる窒素のアンモニアへの電気化学的還元
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  • 特表-ポリオキソメタレートよる窒素のアンモニアへの電気化学的還元 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ポリオキソメタレートよる窒素のアンモニアへの電気化学的還元
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/27 20210101AFI20241108BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20241108BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20241108BHJP
   C25B 11/047 20210101ALI20241108BHJP
   B01J 23/888 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C25B1/27
C25B15/02
C25B9/23
C25B11/047
B01J23/888 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532844
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-06-12
(86)【国際出願番号】 IL2022051276
(87)【国際公開番号】W WO2023100180
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】288627
(32)【優先日】2021-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IL
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500018608
【氏名又は名称】イエダ リサーチ アンド ディベロップメント カンパニー リミテッド
【住所又は居所原語表記】at the Weizmann Institute of Science,PO Box 95,7610002 Rehovot,Israel
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニューマン、ロニー
(72)【発明者】
【氏名】ザギ・アヴラ
【テーマコード(参考)】
4G169
4K011
4K021
【Fターム(参考)】
4G169AA02
4G169BA32A
4G169BB06A
4G169BB06B
4G169BC01A
4G169BC08A
4G169BC09A
4G169BC10A
4G169BC13A
4G169BC16A
4G169BC17A
4G169BC23A
4G169BC27A
4G169BC31A
4G169BC35A
4G169BC39A
4G169BC40A
4G169BC41A
4G169BC58A
4G169BC60A
4G169BC60B
4G169BC62A
4G169BC66A
4G169BC66B
4G169BC67A
4G169BC68A
4G169BD01A
4G169BD01B
4G169BD02A
4G169BD02B
4G169BD03A
4G169BD04A
4G169BD05A
4G169BD05B
4G169BD06A
4G169BD06B
4G169BD07A
4G169BD11A
4G169CB82
4K011AA17
4K011BA08
4K011DA11
4K021AB25
4K021BB03
4K021BB04
4K021BC09
4K021DB18
4K021DB53
(57)【要約】
本発明は、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体を用いて、二窒素(N)をアンモニアに電気触媒還元する方法に関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
二窒素(N)をアンモニア(NH)に還元する方法であって、
電気化学セル内で、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体の存在下で、二窒素(N)を電気化学的に還元するステップを含み、
前記ポリオキソメタレート触媒は、一般式:(Q)[XFeM(L)37]で表される化合物またはその溶媒和物であり、
式中、
Xは、P、Si、As、Ge、Ga、B、またはAlであり;
Mは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sc、Mg、Y、Ba、またはCaであり;
Lは、HO、カルボン酸塩、オキシアニオン、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヌル、またはそれらの任意の組み合わせであり;
Qは、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、ランタニドカチオン、窒素中心カチオン、リン中心カチオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオンであり;
nは、3~17の整数である、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
電解質をさらに含む、方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の方法であって、
溶媒をさらに含む、方法。
【請求項4】
請求項2に記載の方法であって、
Qは、アルカリ金属カチオンである、方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、
Qは、Rであり、
式中、
は、H、アルキル、アリール、またはアルキルアリールであり;
は、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、獣脂、C2y+1(y≧8)、または、C2z+1COOH(z≧7)であり;
及びRは、互いに独立して、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、または、(CHCHO)CHCH、(CHCHO)H、もしくは、CHCH(OCHCH(m≧3、Rは、H、OH、アルキル、ハロゲン化物、または擬ハロゲン化物)である、方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、
Qは、Rであり、
式中、
、R、R、及びRは、互いに独立して、H、アルキル、アリール、またはアルキルアリールである、方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、
は、エチルであり;
は、C2z+1COOH(z≧7)であり;
及びRは、(CHCHO)H(m=6~20)である、方法。
【請求項8】
請求項5に記載の方法であって、
は、メチルであり;
は、テトラデシル、ヘキサデシル、またはオクタデシルであり;
及びRは、(CHCHO)H(m=5~10)である、方法。
【請求項9】
請求項1~8のいずれかに記載の方法であって、
[XFeM(L)37]は、[SiFe(L)37]である、方法。
【請求項10】
請求項1~9のいずれかに記載の方法であって、
前記二窒素(N)の還元は、溶媒の存在下で行われ、
前記溶媒は、エーテル、ポリエーテル、ポリエチレングリコール、またはそれらの誘導体である、方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれかに記載の方法であって、
前記二窒素(N)の還元は、無溶媒下で行われる、方法。
【請求項12】
請求項1~11のいずれかに記載の方法であって、
前記電気化学セルは、カソード、アノード、及び電解質を含む、方法。
【請求項13】
請求項2または請求項12に記載の方法であって、
前記電解質は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、または第四級アンモニウム塩を含む、方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、
前記電解質は、
リチウム、ナトリウム、カリウム、または第四級アンモニウムカチオン;及び、
ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、過塩素酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、もしくはトリフラートアニオン、またはオキシアニオンの塩を含む、方法。
【請求項15】
請求項1~14のいずれかに記載の方法であって、
前記アルカリ金属カチオンは、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムカチオン;及び、
ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、過塩素酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、もしくはトリフラートアニオン、またはオキシアニオンを含む、アルカリ金属塩として提供される、方法。
【請求項16】
請求項1~15のいずれかに記載の方法であって、
前記プロトン及び/または電子の供与体は、水である、方法。
【請求項17】
請求項1~16のいずれかに記載の方法であって、
前記アルカリ金属カチオンと前記ポリオキソメタレート触媒とのモル比は、ポリオキソメタレート触媒1モル当たり少なくとも3モルのアルカリ金属カチオンである、方法。
【請求項18】
請求項1~17のいずれかに記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、SHEに対して、0V未満の電位で行われる、方法。
【請求項19】
請求項1~17のいずれかに記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、SHEに対して、-1V未満の電位で行われる、方法。
【請求項20】
請求項1~17のいずれかに記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、SHEに対して、-1.5V~-2.5Vの電位で行われる、方法。
【請求項21】
請求項1~20のいずれかに記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、空気または窒素富化空気の存在下で行われる、方法。
【請求項22】
請求項1~20のいずれかに記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、精製窒素を用いて行われる、方法。
【請求項23】
請求項21または請求項22に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、0.1~50バールNで行われる、方法。
【請求項24】
請求項23に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、0.1~10バールNで行われる、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、0.1~5バールNで行われる、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルカリ金属カチオンと、プロトン及び/または電子の供与体との存在下で、ポリオキソメタレート触媒を用いて窒素をアンモニアに電気触媒還元する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
人類は、食糧生産用の肥料として、アンモニア及びその誘導体の製造に依存している。そのため、二窒素からアンモニアを生産するハーバー・ボッシュ(H-B)プロセスは、20世紀で最も重要な発明と言われている(Smith, C; Hill, A. K.; Torrente-Murciano, L. Current and Future Role of Haber-Bosch Ammonia in a Carbon-Free Energy Landscape. Energy Environ. Sci. 2020, 13, 331-344)。高度に最適化された不均一系触媒プロセスであるN+3H→2NHは、非常に高純度のN及びHを使用して、高温(約700K)及び高圧(約200bar)で実施することでのみ実現可能である(Schlogl, R. in Handbook of Heterogeneous Catalysis 2501-2575 (Wiley-VCH Verlag GmbH & Co. KGaA, 2008)。必要とされるHは天然ガスから水蒸気改質によって製造され、世界のエネルギー消費量の約1%、世界のCO排出量の1.4%がH-Bプロセスに関連していると推定されている(MacFarlane, D. R.; Cherepanov, P. V.; Choi, J.; Suryanto, B. H. R.; Hodgetts, R. Y.; Bakker, J. M.; Ferrero Vallana, F. M.; Simonov, A. N. A Roadmap to the Ammonia Economy. Joule 2020, 4, 1185-1205)。したがって、NHは天然ガスが豊富な場所で生産されるが、そこは、必ずしもエンドユーザーがいる場所ではない。再生可能電力の将来の利用可能性に基づいて、従来のH-Bプロセスに代わる2つの選択肢が提案されている。一方の選択肢であるハイブリッド式H-B法は、H-BプロセスによるNH合成に水電解により得られるHを使用し、これにより、天然ガスの使用が不要となる。その結果、全体的なカーボンフットプリントが削減され、H-Bプロセスの脱炭素化をもたらす。
【0003】
他方の選択肢である電極触媒NH合成法(e-NH法)は、必要とされるプロトンと電子を、水の酸化から得る電気化学的窒素還元反応(e-NRR)を介して進行する。ハイブリッド式H-B法とは対照的に、e-NRRは、大気条件下(周囲条件下)で熱力学的に有利であり、触媒反応は、より緩やかな条件下で実現可能である。実際、ニトロゲナーゼ酵素複合体は、非常に非効率的ではあるが、N分子当たり16当量のATP(アデノシン三リン酸)を使用して、NをNHに還元する(Hoffman, B. M.; Lukoyanov, D.; Yang, Z.-Y.; Dean, D. R.; Seefeldt, L. C. Mechanism of Nitrogen Fixation by Nitrogenase: The Next Stage. Chem. Rev. 2014, 114, 4041- 4062)。ハイブリッド式H-B法及びe-NH法の経済的分析によると、前者は大規模生産(大量生産)では経済的に実現可能であり、一方、e-NH法は、小規模生産(約0.03トンNH/日)ではハイブリッド式H-B法を上回ることができる(Fernandez, C. A.; Hatzell, M. C. Economic Considerations for Low-Temperature Electrochemical Ammonia Production: Achieving Haber-Bosch Parity. J. Electrochem. Soc. 2020, 167, 143504)。e-NH法の環境上の利点としては、海上輸送や陸上輸送の削減に伴うカーボンフットプリントの削減、貯蔵ニーズの低減、断続的な電力入力に対する追従能力の向上、低純度の窒素を使用できることなどが挙げられる。これらすべての要素が相まって、分散型アンモニア生産は、長期的に魅力的な選択肢となる(Soloveichik, G. Electrochemical synthesis of ammonia as a potential alternative to the Haber-Bosch process. Nat. Catal. 2019, 2, 377-380)。
【0004】
また、オンサイトでのオンデマンドのNH生産は、農業部門及び輸送部門の脱炭素化を改善し、とりわけ農村地域でのアンモニアの利用可能性を低下させる可能性のある政治的・経済的リスクに対する耐性を高める(Arora, P.;Hoadley, A. F. A.; Mahajani, S. M; Ganesh, A. Small-Scale Ammonia Production from Biomass: A Techno-Enviro-Economic Perspective. Ind. Eng. Chem. Res. 2016, 55, 6422-6434)。
【0005】
活性化及びNH生成と、NHへの電極触媒還元との両方に対する理解が進歩しているのにもかかわらず、(電気)触媒の開発は依然として非常に遅れている(Chalkley, M. J.; Drover, M. W.; Peters, J. C. Catalytic N2-to-NH3 (or -N2H4) Conversion by Well-Defined Molecular Coordination Complexes. Chem. Rev. 2020, 120, 5582-5636)。
【0006】
なお、溶媒及び電子/プロトンの供与体として水を用いたe-NRR反応の過去の報告が、誤りであることが明らかになったことに留意されたい(Anderson, S. Z.; Coloci, V.; Yang, S.; Schwalbe, J. A.; Nielander, A. C.; McEnaney, J. M.; Enemark-Rassmussen, K.; Baker, J. G.; Singh, A. R.; Rohr, B. A.; Statt, M. J.; Blair, S. J.; Mezzavilla, S.; Kibsgaard, J.; Vesborg, R. C. K.; Cargnello, M.; Bent, S. F.; Jaramillo, T. F.; Stephens, I. E. L.; Norskov, J. K.; Chorkendorff, I. A rigorous electrochemical ammonia synthesis protocol with quantitative isotope measurements. Nature, 570, 504-508 (2019))。
【0007】
ポリオキソメタレートは、合成が容易で、熱的及び酸化的に安定であり、固有の性質を容易に改変することができ、かつ、電子移動を伴う変換に優れた効率で使用できるため、触媒として魅力的である(Neumann, R. Activation of Molecular Oxygen, Polyoxometalates and Liquid Phase Catalytic Oxidation. Inorg. Chem. 2010, 49, 3594-3601)。
【0008】
ラクナリーポリオキソメタレートを遷移金属で置換すると、ポリアニオンの反応性が増大する。通常、ポリアニオンの表面には、弱塩基性の酸素原子が存在する。このような錯体への合理的アプローチとして、α-またはβ-[SiW349-などのラクナリーアニオンを調製し(G. Herve and A. Teze, Study of alpha-and. beta.-enneatungstosilicates and-germanates Inorg. Chem., 1977,16, 2115-2117)、それを用いて三遷移金属置換ポリオキソメタレートを合成した。例えば、[SiW(L)37n-アニオンである(M=Co(II)、Fe(III)、Cu(II)、Mn(II)、Ni(II)、Cr(III)、Al(III)、またはGa(III))(Liu, J.; Ortega, F.; Sethuraman, P.; Katsoulis, D. E.; Costello, C. E.; Pope, M. T. Trimetallo Derivatives of Lacunary 9-Tungstosilicate. J. Chem. Soc., Dalton Trans. 1992, 1901-1906)。
【0009】
低い負電位のカソード電位で、プロトン/電子の供与体として水を用いて、二窒素(N)からアンモニアを製造するための電気化学的方法が求められている。このような方法は、分散型製造スキームにおける小規模なアンモニア製造ユニットを可能にする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
いくつかの実施形態では、本発明は、二窒素(N)をアンモニア(NH)に還元する方法であって、電気化学セル内で、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体の存在下で、二窒素(N)を電気化学的に還元するステップを含む方法を提供する。
【0011】
いくつかの実施態様では、本開示による二窒素(N)の還元は、下記の一般式で表されるポリオキソメタレート触媒(化合物)またはその溶媒和物の存在下で行われる。
一般式:(Q)[XFeM(L)37
式中、
Xは、P、Si、As、Ge、Ga、B、またはAlであり;
Mは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sc、Mg、Y、Ba、またはCaであり;
Lは、HO、カルボン酸塩、オキシアニオン、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヌル、またはそれらの任意の組み合わせであり;
Qは、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、ランタニドカチオン、窒素中心カチオン、リン中心カチオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオンであり;
nは、3~17の整数である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
本発明と見なされる主題は、明細書の結論部分で特に指摘され、明確に主張されている。しかしながら、本発明は、構成及び動作方法の両方に関して、また、その目的、特徴、及び利点と共に、添付の図面を参照して、以下の詳細な説明を読むことによって最もよく理解されるであろう。
【0013】
図1図1は、ポリオキソメタレート触媒:(Q)[XFeM(HO)37](Mは、Feである)を示している。対カチオンは示していない。
図2A図2Aは、Heの存在下、かつ、Liを含まない場合の、(TBA)[SiFe(HO)37]のUV-Visスペクトルを示す。
図2B図2Bは、Nの存在下、かつ、Liを含まない場合の、(TBA)[SiFe(HO)37]のUV-Visスペクトルを示す。
図2C図2Cは、Heの存在下、かつ、Liを含む場合の、(TBA)[SiFe(HO)37]のUV-Visスペクトルを示す。
図2D図2Dは、Nの存在下、かつ、Liを含む場合の、(TBA)[SiFe(HO)37]のUV-Visスペクトルを示す。図2A~2Dにおいて、測定は、THF中の40μMの(TBA)[SiFe(HO)37]、0.01MのTBAPF、200μMのLiClO図2C、2D)を用いて行った。標準液は、THF中の0.01MのTBAPFであった。その場電解は、Ptガーゼの作用電極、Ptワイヤの対電極、及びAgワイヤ参照電極を使用して、1cmの石英キュベット中で、Agワイヤに対して-1.8Vの電位で行なった(較正により、SHEに対して-1.93の電位)で行った。黒色:電気分解前;中程度の濃さの灰色:(TBA)[SiFe(HO)37]当たり1電子;非常に濃い灰色:(TBA)[SiFe(HO)37]当たり2電子;薄い灰色:(TBA)[SiFe(HO)37]当たり3電子;灰色:(TBA)[SiFe(HO)37]当たり4電子。UV-Visスペクトルは、Liの存在下で、Nが、(TBA)[SiFe(HO)37]に明らかに結合し(図2B)、その一方で、さらなる還元種が形成されることを示している(図2D)。
【0014】
図示の簡略化及び明確化のために、図示されている要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていないことを理解されたい。例えば、いくつかの要素の寸法は、明確化のために、他の要素と比較して誇張されている場合がある。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下の詳細な説明では、本発明の完全な理解を提供するために、多数の具体的な詳細が記載される。しかしながら、本発明は、これらの具体的な詳細を用いることなく実施してもよいことは、当業者には理解されるであろう。他の例では、よく知られている方法、手順、及び構成要素は、本発明を不明瞭にしないように、詳細に記載されていない。
【0016】
本発明は、二窒素(N)をアンモニア(NH)に還元する方法に関する。二窒素(N)をアンモニア(NH)に還元する本開示の方法は、プロトン及び/または電子の供与体の存在下で、ポリオキソメタレート触媒及びアルカリ金属カチオンによって触媒される。
【0017】
いくつかの実施形態では、本発明は、二窒素(N)をアンモニア(NH)に還元する方法であって、電気化学セル内で、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体の存在下、及び任意選択で溶媒の存在下で、二窒素(N)を電気化学的に還元するステップを含む方法を提供する。
【0018】
いくつかの実施形態では、本発明は、二窒素(N)をアンモニア(NH)に還元する方法であって、電気化学セル内で、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体の存在下、及び任意選択で電解質の存在下で、二窒素(N)を電気化学的に還元するステップを含む方法を提供する。
【0019】
いくつかの実施形態では、本発明は、二窒素(N)をアンモニア(NH)に還元する方法であって、電気化学セル内で、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体の存在下で、及び任意選択で電解質と溶媒との存在下で、二窒素(N)を電気化学的に還元するステップを含む方法を提供する。
【0020】
二窒素(N)のアンモニア(NH)への還元は、下記のスキーム1に示すようにして実施することができる。下記のスキーム1において、アルカリ金属カチオンはナトリウムであり、プロトン及び/または電子の供与体は水である。
【0021】
【化1】
【0022】
いくつかの実施形態では、ポリオキソメタレート触媒は、少なくとも2つの鉄(Fe)イオンを含む。一実施形態では、ポリオキソメタレート触媒は、2つの鉄(Fe)イオンを含む。一実施形態では、ポリオキソメタレート触媒は、3つの鉄(Fe)イオンを含む。
【0023】
いくつかの実施態様では、本開示による二窒素(N)の還元は、下記の一般式で表されるポリオキソメタレート触媒(化合物)またはその溶媒和物の存在下で行われる。
一般式:(Q)[XFeM(L)37
式中、
Xは、P、Si、As、Ge、Ga、B、またはAlであり;
Mは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sc、Mg、Y、Ba、またはCaであり;
Lは、HO、カルボン酸塩、オキシアニオン、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヌル、またはそれらの任意の組み合わせであり;
Qは、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、ランタニドカチオン、窒素中心カチオン、リン中心カチオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオンであり;
nは、3~17の整数である。
【0024】
いくつかの実施形態では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるQは、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、ランタニドカチオン、窒素中心カチオン、リン中心カチオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるカチオンである。他の実施形態では、Qは、プロトンである。他の実施形態では、Qは、アルカリ金属カチオンである。他の実施形態では、Qは、アルカリ土類金属カチオンである。他の実施形態では、Qは、ランタニドカチオンである。他の実施形態では、Qは、窒素中心カチオンである。他の実施形態では、Qは、リン中心カチオンである。
【0025】
いくつかの実施形態では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるQは、アルカリ金属カチオンである。
【0026】
いくつかの実施形態では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるQは、Rであり、
式中、
は、H、アルキル、アリール、またはアルキルアリールであり;
は、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、獣脂、C2y+1(y≧8)、または、C2z+1COOH(z≧7)であり;
及びRは、互いに独立して、H、アルキル、アリール、アルキルアリール、または、(CHCHO)CHCH、(CHCHO)H、もしくは、CHCH(OCHCH(m≧3、Rは、H、OH、アルキル、ハロゲン化物、または擬ハロゲン化物)である。
【0027】
別の実施形態では、Rは、エチルであり;Rは、C2z+1COOH(z≧7)であり;R及びRは、(CHCHO)H(m=6~20)である。別の実施形態では、Rは、メチルであり;Rは、テトラデシル、ヘキサデシル、またはオクタデシルであり;R及びRは、(CHCHO)H(m=5~10)である。
【0028】
他の実施形態では、Qは、Rであり、式中、R、R、R、及びRは、互いに独立して、H、アルキル、アリール、またはアルキルアリールである。
【0029】
いくつかの実施態様では、Qは、Rであり、式中、Rは、C2y+1(y≧8)である。他の実施形態では、yは、8~50の整数である。他の実施形態では、yは、8~40の整数である。他の実施形態では、yは、8~30の整数である。他の実施形態では、yは、8~20の整数である。他の実施形態では、Qは、テトラブチルアンモニウム(TBA)である。他の実施形態では、Qは、Rであり、式中、Rは、エチルであり、Rは、獣脂であり、R及びRは、CHCH(OCHCHOHである。
【0030】
本明細書で使用するとき、単独で、または別の基の一部として使用される「アルキル」という用語は、一実施形態では、「C~C12のアルキル」を指し、直鎖または分岐の、飽和または不飽和基(例えば、アルケニル、アルキニル)を意味し、後者は、アルキル鎖の炭素原子の数が2以上の場合のみであり、混合構造を含むことができる。非限定的な例は、1~6個の炭素原子を有するアルキル基(C~Cアルキル)、または、1~4個の炭素原子を有するアルキル基(C~Cアルキル)である。飽和アルキル基の例としては、これに限定しないが、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、アミル、tert-アミル、及びヘキシルが挙げられる。アルケニル基の例としては、これに限定しないが、ビニル、アリル、ブテニルなどが挙げられる。アルキニル基の例としては、これに限定しないが、エチニル、プロピニルなどが挙げられる。同様に、「C~C12のアルキレン」という用語は、炭素数1~12の二価のラジカルを意味する。
【0031】
アルキル基は、非置換であってもよいし、または、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、オキソ、シクロアルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ナフチル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、カルボキシ、カルバモイル、カルボキサミド、シアノ、スルホニル、スルホニルアミノ、スルフィニル、スルフィニルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、及びアルキルスルホニル基からなる群から選択される1以上の置換基で置換されてもよい。任意の置換基は、非置換であってもよいし、または、上記の置換基のいずれかでさらに置換されてもよい。
【0032】
本明細書で使用するとき、単独で、または別の基の一部として使用される「アルキルアリール」という用語は、いくつかの実施態様では、本明細書中に定義されたアリールによって置換される、上記に定義されたアルキル基を指す。
【0033】
本明細書で使用するとき、単独で、または別の基の一部として使用される「アリール」という用語は、6~14個の環炭素原子を有する芳香族環系を指す。アリール環は、単環式、二環式、三環式などであり得る。アリール基の非限定的な例は、フェニルやナフチル(例えば、1-ナフチル、2-ナフチル)などである。アリール基は、非置換であってもよいし、または、利用可能な炭素原子を介して、ハロゲン、ヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルアリールオキシ、ヘテロアリールオキシ、オキソ、シクロアルキル、フェニル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、ナフチル、アミノ、アルキルアミノ、アリールアミノ、ヘテロアリールアミノ、ジアルキルアミノ、ジアリールアミノ、アルキルアリールアミノ、アルキルヘテロアリールアミノ、アリールヘテロアリールアミノ、アシル、アシルオキシ、ニトロ、カルボキシ、カルバモイル、カルボキサミド、シアノ、スルホニル、スルホニルアミノ、スルフィニル、スルフィニルアミノ、チオール、アルキルチオ、アリールチオ、及びアルキルスルホニル基からなる群から選択される1以上の置換基で置換されてもよい。任意の置換基は、非置換であってもよいし、または、上記の置換基のいずれかでさらに置換されてもよい。
【0034】
いくつかの実施形態では、Qは、Rであり、式中、Rは、C2z+1COOH(z≧7)である。他の実施形態では、zは、7~50の整数である。他の実施形態では、zは、7~40の整数である。他の実施形態では、zは、7~30の整数である。他の実施形態では、zは、7~20の整数である。
【0035】
いくつかの実施態様では、Qは、Rであり、式中、R及びRは、互いに同一または異なる。いくつかの実施形態では、それらは、互いに独立して(CHCHO)CHCH(m≧3)である。他の実施形態では、mは、3~50の整数である。他の実施形態では、mは、3~40の整数である。他の実施形態では、mは、3~30の整数である。他の実施形態では、mは、3~20の整数である。他の実施形態では、mは、3~10の整数である。
【0036】
いくつかの実施形態では、Qは、Rであり、式中、Rは、エチルであり;Rは、C2z+1COOH(z≧7)であり;R及びRは、(CHCHO)H(m=6~20)である。他の実施形態では、QはRであり、式中、Rは、メチルであり;Rは、テトラデシル、ヘキサデシル、またはオクタデシルであり;R及びRは、(CHCHO)H(m=5~10)である。
【0037】
いくつかの実施態様では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるXは、P、Si、As、Ge、Ga、B、またはAlである。他の実施形態では、Xは、Pである。他の実施形態では、Xは、Siである。他の実施形態では、Xは、Asである。他の実施形態では、Xは、Geである。他の実施形態では、Xは、Gaである。他の実施形態では、Xは、Bである。他の実施形態では、Xは、Alである。
【0038】
いくつかの実施態様では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるnは、3~17の整数である。別の実施形態では、nは、3~15の整数である。別の実施形態では、nは、3~12の整数である。別の実施形態では、nは、3~10の整数である。別の実施形態では、nは、3~8の整数である。別の実施形態では、nは、3~6の整数である。別の実施形態では、nは、7である。
【0039】
いくつかの実施態様では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるMは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sc、Mg、Y、Ba、またはCaである。他の実施形態では、Mは、Crである。他の実施形態では、Mは、Mnである。他の実施形態では、Mは、Feである。他の実施形態では、Mは、Coである。他の実施形態では、Mは、Niである。他の実施形態では、Mは、Cuである。他の実施形態では、Mは、Znである。他の実施形態では、Mは、Alである。他の実施形態では、Mは、Gaである。他の実施形態では、Mは、Scである。他の実施形態では、Mは、Mgである。他の実施形態では、Mは、Yである。他の実施形態では、Mは、Baである。他の実施形態では、Mは、Caである。別の実施形態では、ポリオキソメタレート触媒は、少なくとも2つの鉄(Fe)イオンを含む。他の実施形態では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるMは、Cr(0-III)、Mn(0-V)、Fe(0-IV)、Co(0-III)、Ni(0-III)、Cu(0-III)、Zn(II)、Al(III)、Ga(III)、Sc(III)、Mg(II)、Y(III)、Ba(II)、及びCa(II)から選択される。
【0040】
いくつかの実施形態では、一般式:(Q)[XFeM(L)37]におけるLは、HO、カルボン酸塩、オキシアニオン、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヌル、またはそれらの任意の組み合わせである。他の実施形態では、Lは、HOである。他の実施形態では、Lは、カルボン酸塩である。カルボン酸塩の非限定的な例としては、アセテートが挙げられる。他の実施形態では、Lは、オキシアニオンである。オキシアニオンの非限定的な例としては、硝酸塩、硫酸塩、または過塩素酸塩が挙げられる。他の実施形態では、Lは、硫酸塩である。他の実施形態では、Lは、過塩素酸塩である。他の実施形態では、Lは、ハロゲン化物である。他の実施形態では、Lは、擬ハロゲン化物である。他の実施形態では、Lは、ヌルである。
【0041】
いくつかの実施態様では、ポリオキソメタレートは、アニオン[SiFe(L)37を含む。他の実施形態では、このアニオンは、[SiFe(HO)377-である。
【0042】
本発明の二窒素の還元は、アルカリ金属塩として提供されるアルカリ金属カチオンの存在下で行われる。図2に示すように(及びそれに対応する「図面の簡単な説明」に詳述するように)、アルカリカチオンの存在は、SHEに対して少なくとも-1.93Vの還元条件下での二窒素(N)の反応を可能にする。
【0043】
他の実施形態では、アルカリ金属塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムイオンなどのカチオン、及び、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、過塩素酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフラート、または他のオキシアニオンイオンなどのアニオン、を含む。他の実施形態では、アルカリ金属塩は、過塩素酸ナトリウム、トリフラートナトリウム、またはトリフラートカリウムを含む。別の実施形態では、アルカリ金属カチオンとポリオキソメタレート触媒とのモル比は、ポリオキソメタレート触媒1モル当たり少なくとも3モルのアルカリ金属カチオンである。別の実施形態では、アルカリ金属カチオンとポリオキソメタレート触媒とのモル比は、ポリオキソメタレート触媒1モル当たり3~1000モルのアルカリ金属カチオンである。他の実施形態では、アルカリ金属カチオンとポリオキソメタレート触媒とのモル比は、ポリオキソメタレート触媒1モル当たり、3~500、3~400、3~300、3~200、3~100、3~80、3~60、3~50、3~40、3~30、または3~20モルの金属カチオンである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.01~1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.01~0.025Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.01~0.05Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.01~0.1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.01~0.5Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.025~1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.025~0.05Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.025~0.1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.025~0.5Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.05~1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.05~0.1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.05~0.5Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.1~1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.1~0.5Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.5~1Mである。他の実施形態では、アルカリ金属塩の濃度は、0.025、0.067、0.125、または0.1Mである。
【0044】
本発明の二窒素の還元は、プロトン及び/または電子の供与体の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、プロトン及び/または電子の供与体は、HO、またはアルコールである。他の実施形態では、供与体は、HOである。別の実施形態では、供与体は、蒸気として導入されたHOである。他の実施形態では、供与体は、アルコールである。アルコールの非限定的な例としては、エタノール、メタノール、イソプロパノール、t-ブタノール、またはそれらの任意の組み合わせが挙げられる。他の実施形態では、プロトン及び/または電子の供与体は、5体積%以下の濃度で、溶媒に溶解される。他の実施形態では、供与体は、2体積%以下の濃度で、溶媒に溶解される。他の実施形態では、供与体は、0.1~5体積%の濃度で、溶媒に溶解される。他の実施形態では、供与体は、0.1~2体積%の濃度で、溶媒に溶解される。他の実施形態では、供与体は、0.5~2体積%の濃度で、溶媒に溶解される。他の実施形態では、供与体は、2体積%以下の濃度で、THFまたはグリムに溶解される。他の実施形態では、供与体は、0.1~2体積%の濃度で、THFまたはグリムに溶解される。他の実施形態では、供与体は、1.5体積%以下の濃度で、ポリエチレングリコールに溶解される。他の実施形態では、供与体は、0.1~1.5体積%の濃度で、ポリエチレングリコールに溶解される。他の実施形態では、供与体は、気相である。他の実施形態では、供与体は、ポリエチレングリコール(PEG)の誘導体(例えば、PEGの任意のエーテル、またはPEGのカルボン酸塩)に溶解される。
【0045】
いくつかの実施形態では、本発明の二窒素(N)の還元は、溶媒の存在下で行われる。いくつかの実施形態では、本発明の二窒素(N)の還元は、無溶媒下(溶媒の非存在下)で行われる。他の実施形態では、溶媒は、ポリエーテル(例えば、任意の分子量のポリエチレングリコール)、THF、またはグリムである。他の実施形態では、溶媒は、エーテルである。他の実施形態では、溶媒は、ポリエーテルである。他の実施形態では、溶媒は、ポリエチレングリコールである。他の実施形態では、溶媒は、THFである。他の実施形態では、溶媒は、グリムである。他の実施形態では、溶媒は、エーテルである。一実施形態では、溶媒は、ポリエーテルである。
【0046】
いくつかの実施態様では、本発明の二窒素(N)の還元は、電気化学セル内で行われる電気触媒反応である。他の実施形態では、電気化学セルは、カソード、アノード、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体を含む。
【0047】
一実施形態では、本発明は、カソード、アノード、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、プロトン及び/または電子の供与体、並びに、電解質を含む電気化学セル内での、二窒素(N)のアンモニア(NH)への電気化学的還元に関する。
【0048】
一実施形態では、本発明は、カソード、アノード、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、プロトン及び/または電子の供与体、並びに、溶媒を含む電気化学セル内での、二窒素(N)のアンモニア(NH)への電気化学的還元に関する。
【0049】
一実施形態では、本発明は、カソード、アノード、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、プロトン及び/または電子の供与体、溶媒、並びに、任意選択で電解質を含む電気化学セル内での、二窒素(N)のアンモニア(NH)への電気化学的還元に関する。
【0050】
一実施形態では、本発明は、カソード、アノード、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、溶媒、水(プロトン及び/または電子の供与体として)、並びに、任意選択で電解質を含む電気化学セル内での、二窒素(N)のアンモニア(NH)への電気化学的還元に関する。
【0051】
一実施形態では、本発明は、カソード、アノード、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、水(プロトン及び/または電子の供与体として)、並びに、任意選択で電解質を含み、かつ、溶媒を含まない電気化学セル内での、二窒素(N)のアンモニア(NH)への電気化学的還元に関する。
【0052】
一実施形態では、還元は、アルカリ金属カチオンの存在下で進行する。一実施形態では、還元は、アルカリ金属カチオン及び電解質の存在下で進行する。他の実施形態では、電解質は、リチウム、ナトリウム、カリウム、または第四級アンモニウム塩を含む。さらに別の実施形態では、電解質中の塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、または第四級アンモニウムイオンを含むカチオン、及び、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、過塩素酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、トリフラート、またはオキシアニオンを含むアニオン、を含む。別の実施形態では、電解質は、過塩素酸リチウムを含む。他の実施形態では、電解質は、テトラブチルアンモニウムヘキサフルオロホスフェート(TBAPF)を含む。別の実施形態では、電解質は、トリフラートカリウムを含む。別の実施形態では、電解質は、トリフラートナトリウムを含む。
【0053】
いくつかの実施態様では、本明細書で使用するとき、「ハロゲン化物」は、フッ化物、塩化物、臭化物、またはヨウ化物を指す。
【0054】
一実施形態では、本明細書で使用するとき、「擬ハロゲン化物」は、シアン化物、イソシアニド、シアン酸塩、イソシアン酸塩、チオシアン酸塩、イソチオシアン酸塩、及びアジドからなる非限定的な群を指す。
【0055】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用するとき、「オキシアニオン」は、硝酸塩、硫酸塩、及び過塩素酸塩からなる非限定的な群を指す。別の実施形態では、電解質は、過塩素酸ナトリウムを含む。
【0056】
他の実施形態では、電気化学セルは、カソード、アノード、ポリオキソメタレート触媒、及び任意選択で参照電極を含み、電気化学セルに電圧を印加すると、二窒素(N)が減少する。電極触媒反応は、アノード区画とカソード区画とを分離するポリマーまたはセラミックの膜を有する分割されたセル構造、または分割されていないセル構造で行うことができる。分割されたセル構造の例としては、ポリオキソメタレートを溶媒に溶解させた気相フローセル膜電解槽やガス拡散電解槽がある。
【0057】
他の実施形態では、二窒素(N)の電極触媒還元は、分割されていない電気化学セル構造及び有機溶媒中で行われる。他の実施形態では、二窒素の電極触媒還元は、アノード区画とカソード区画とを分離するポリマー膜を有する分割されたセル構造で行われる。他の実施態様では、二窒素の電極触媒還元は、有機溶媒中、すなわち、アノード区画とカソード区画とを分離する高分子膜電解質を有する分割されたセル構造の電解質中で行われる。他の実施形態では、二窒素の電極触媒還元は、有機溶媒中、すなわち、アノード区画とカソード区画とを分離するセラミック膜を有する分割されたセル構造の電解質中で行われる。他の実施形態では、二窒素の電極触媒還元は、ガス拡散フローセル膜電解槽で行われる。
【0058】
一実施形態では、本発明の電気化学セル内のカソードは、金属である。一実施形態では、カソードは、金属を含む。別の実施形態では、カソードは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Mo、W、またはそれらの任意の組み合わせを含む。他の実施形態では、カソードは、Tiを含む。他の実施形態では、カソードは、Vを含む。他の実施形態では、カソードは、Crを含む。他の実施形態では、カソードは、Mnを含む。他の実施形態では、カソードは、Feを含む。他の実施形態では、カソードは、Coを含む。他の実施形態では、カソードは、Niを含む。他の実施形態では、カソードは、Cuを含む。他の実施形態では、カソードは、Znを含む。他の実施形態では、カソードは、Alを含む。他の実施形態では、カソードは、Moを含む。他の実施形態では、カソードは、Wを含む。他の実施形態では、カソードは、ステンレス鋼を含む。別の実施形態では、カソードは、Cuワイヤである。別の実施形態では、カソードは、Cuホイル(Cu箔)である。別の実施形態では、カソードは、Niメッシュである。別の実施形態では、カソードは、ステンレス鋼メッシュである。いくつかの実施形態では、本発明の電気化学セル内のカソードは、炭素を含む。別の実施形態では、カソードは、マイクロポーラス炭素(細孔性炭素)を含む。別の実施形態では、カソードは、メソポーラス炭素である。
【0059】
いくつかの実施態様では、本発明の電気化学セル内のアノードは、水を酸化する。
【0060】
いくつかの実施態様では、アノードは、Ptを含む。一実施形態では、アノードは、Ptワイヤである。一実施形態では、アノードは、白金めっきチタンである。
【0061】
いくつかの実施態様では、本発明の二窒素(N)の電気化学的還元は、SHEに対して、0V未満の電位で行われる。他の実施形態では、「電位」は、IUPAC規則を指す。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、SHEに対して、-1V未満の電位で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、SHEに対して、-2V未満の電位で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、SHEに対して、-2.5~0Vの電位で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、SHEに対して、-1.5V~-2.5Vの電位で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、SHEに対して、-2、-2.15、または-2.4Vの電位で行われる。
【0062】
いくつかの実施態様では、本発明の二窒素(N)の電気化学的還元は、空気または窒素富化空気の存在下で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、精製窒素を用いて行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、0.1~50バールNの二窒素(N)圧力下で実施される。他の実施形態では、0.1~10バールNの二窒素圧力下で実施される。他の実施形態では、0.1~5バールの二窒素(N)圧力下で実施される。他の実施形態では、0.1~3バールNの二窒素圧力下で実施される。他の実施形態では、0.1~1バールNの二窒素(N)圧力下で実施される。別の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、大気圧下で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電気化学的還元は、1バールNの二窒素(N)圧力下で実施される。
【0063】
いくつかの実施態様では、本発明の二窒素(N)の電極触媒還元は、0~100°Cの温度で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電極触媒還元は、25~60°Cの温度で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電極触媒還元は、15~25°Cの温度で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電極触媒還元は、15~30°Cの温度で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電極触媒還元は、10~30°Cの温度で行われる。他の実施形態では、本発明の二窒素の電極触媒還元は、大気温度(周囲温度)で行われる。
【0064】
いくつかの実施態様では、いかなる機構または理論にも拘束されるものではないが、本発明の二窒素(N)の電極触媒還元は、以下のスキーム2に示すようにして実施することができる
【0065】
【化2】
【0066】
上記のスキーム2において、
Q´は、アルカリカチオンであり;
mは、2~5の整数であり;
Qは、プロトン、アルカリ金属カチオン、窒素中心カチオン、リン中心カチオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される一価のカチオンであり;
nは、3~17の整数であり;
n>mである。
【0067】
いくつかの実施形態では、本明細書で使用するとき、「プロトン及び/または電子の供与体」という用語は、「プロトン供与体及び電子供与体」または「プロトン供与体または電子供与体」のいずれかを指す。プロトン供与体または電子供与体とは、その化学種が、(a)プロトン、(b)電子、または、(c)プロトンと電子との両方、を供与できることをいう。
【0068】
いくつかの実施形態では、ポリオキソメタレートは、一般式:(Q)[XFeM(L)37]で表される化合物またはその溶媒和物である。「溶媒和物」とは、ポリオキソメタレートを、水(水和物)、メタノール、エタノールなどの溶媒と溶媒和した形態を指す。
【0069】
本明細書に記載された、また、添付の特許請求の範囲で請求された本発明の様々な実施形態及び態様は、以下の実施例において、実験的なサポートがなされている。
【0070】
実施例
【0071】
概要:Q[SiWFe(L)37](L=HO、Q=テトラブチルアンモニウム(TBA))の合成を文献法に従って行った(Liu, J.; Ortega, F.; Sethuraman, P.; Katsoulis, D. E.; Costello, C. E.; Pope, M. T. Trimetallo Derivatives of Lacunary 9-Tungstosilicate. J. Chem. Soc., Dalton Trans. 1992, 1901-1906)。NOとNHが検出されなくなるまでNを精製した。アンモニアは、NH に対する古典的なインドフェノール試験とNMRにより検出した(Nielander, A. C.; McEnany, J. M.; Schwalbe, J. A.; Baker, J. B.; Blair, S. J.; Wang, L.; Pelton, J. G.; Andersen, S. Z.; Enemark-Rasmussen, K.; Colic, V.; Tang, S. Bent. S. F.; Cargnello, M.; Kibsgaard, J.; Vesborg, P. C. K.; Chorkendorff, I.; Jaramillo, T. F. A Versatile Method for Ammonia Detection in a Range of Relevant Electrolytes via Direct Nuclear Magnetic Resonance Techniques. ACS Catal. 2019, 9, 5797-5802)。
【0072】
実施例1
プロトン供与体及び/または電子供与体としてのエタノールを含有するTHF中における、TBA[SiWFe(HO)37]の存在下でのNの還元
【0073】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのTBA[SiWFe(HO)37]、0.8mmolのTBAPF、0.2mmolのLiClO、及び1%の乾燥エタノールを含有する8mLの乾燥THFの溶液中に循環させた。Cuワイヤカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した5時間後、120μMのNH溶液が得られた。TBA[SiWFe(HO)37]またはLiClOの非存在下では、NHは生成されなかった。TBAは、テトラブチルアンモニウム(Bu)を指す。
【0074】
実施例2
プロトン供与体及び/または電子供与体としてのエタノールを含有するグリム中における、TBA[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0075】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのTBA[SiWFe(HO)37]、0.8mmolのTBAPF、0.2mmolのLiClOO、及び1%の乾燥エタノールを含有する8mLの乾燥グリムの溶液中に循環させた。Cuワイヤカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した5時間後、125μMのNH溶液が得られた。TBA[SiWFe(HO)37]またはLiClOの非存在下では、NHは生成されなかった。TBAは、テトラブチルアンモニウム(Bu)を指す。
【0076】
実施例3
プロトン供与体及び/または電子供与体としてのエタノールを含有するポリエチレングリコール中における、TBA[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0077】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのTBA[SiWFe(L)37]、0.8mmolのTBAPF、0.2mmolのNaClO、及び1%の乾燥エタノールを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400の溶液中に循環させた。Cuワイヤカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した5時間後、100μMのNH溶液が得られた。TBA[SiWFe(L)37]またはNaClOの非存在下では、NHは生成されなかった。TBAは、テトラブチルアンモニウム(Bu)を指す。
【0078】
実施例4
プロトン供与体及び/または電子供与体としてのポリエチレングリコール中における、TBA[SiWFe(HO)37]の存在下でのNの還元
【0079】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのTBA[SiWFe(L)37]、0.8mmolのTBAPF、0.2mmolのNaClOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400の溶液中に循環させた。Cuワイヤカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した5時間後、22μMのNH溶液が得られた。TBA[SiWFe(L)37]またはNaClOの非存在下では、NHは生成されなかった。TBAは、テトラブチルアンモニウム(Bu)を指す。
【0080】
実施例5
プロトン供与体及び/または電子供与体としての水を含有するポリエチレングリコール中における、TBA[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0081】
20mLの気密バイアルからなる非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのTBA[SiWFe(L)37]、0.8mmolのTBAPF、0.2mmolのNaClO、及び1%のHOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400溶液中に循環させた。Cuワイヤカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した5時間後、125μMのNH溶液が得られた。TBA[SiWFe(L)37]またはNaClOの非存在下では、NHは生成されなかった。TBAは、テトラブチルアンモニウム(Bu)を指す。
【0082】
実施例6
[SiWFe(HO)37]の合成
式中、Qは、Rであり;Rは、エチルであり;Rは、獣脂であり;R及びRは、(CHCHO)mHであり;m=6~20である。
【0083】
カリウム塩K[SiWFe(HO)37]を、乾燥IoLiLyteT2EG(エチルビス(ヒドロキシエチル)獣脂アルキルエチル硫酸塩)と反応させた。分液漏斗により、15mlのIoLiLyteT2EGを、30mlのDCM及び30mlのDDW中の1gのK[SiWFe(HO)37]と混合させた。混合溶液を数回激しく撹拌し、底部の粗相を分離し、回転式蒸発器を使用して乾燥させることにより得られた生成物は、油状の液体であった。
【0084】
実施例7
プロトン及び/または電子の供与体としてエタノールを用いた、実施例6の触媒を使用したNの還元
【0085】
20mL気密バイアルからなる非分割セル内で、精製したN(1バール)を、0.4mmolのLiClO4及び1体積%の乾燥エタノールを含有する実施例6の6mLのQ[SiWFe(HO)37]油性液体中に循環させた。Cuワイヤカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した5時間後、9μMのNH溶液が得られた。
【0086】
実施例8
プロトン供与体及び/または電子供与体としての水を含有するポリエチレングリコール中における、K[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0087】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのK[SiWFe(HO)37]、0.8mmolのカリウムトリフラート、0.2mmolのNaClO、及び1%のHOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400の溶液中に循環させた。Cuワイヤカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した3時間後、115μMのNH溶液が得られた。K[SiWFe(HO)37]またはNaClOの非存在下では、NHは生成されなかった。
【0088】
実施例9
プロトン供与体及び/または電子供与体としての水を含有するポリエチレングリコール中における、K[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0089】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのK[SiWFe(HO)37]、0.8mmolのカリウムトリフラート、0.2mmolのNaClO、及び1%のHOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400の溶液に通して循環させた。Cuホイルカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した3時間後、122μMのNH溶液が得られた。K[SiWFe(HO)37]またはNaClOの非存在下では、NHは生成されなかった。
【0090】
実施例10
プロトン供与体及び/または電子供与体としての水を含有するポリエチレングリコール中における、K[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0091】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのK[SiWFe(HO)37]、1.0mmolのトリフラートナトリウム、及び1%のHOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400の溶液中に循環させた。Cuホイルカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した3時間後、135μMのNH溶液が得られた。
【0092】
実施例11
プロトン供与体及び/または電子供与体としての水を含有するポリエチレングリコール中における、K[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0093】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのK[SiWFe(HO)37]、0.8mmolのカリウムトリフラート、0.2mmolのNaClO、及び1%のHOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400の溶液中に循環させた。Niメッシュカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した3時間後、180μMのNH溶液が得られた。
【0094】
実施例12
プロトン供与体及び/または電子供与体としての水を含有するポリエチレングリコールジメチルエーテル中における、K[SiWFe(HO)37]存在下でのNの還元
【0095】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのK[SiWFe(HO)37]、0.8mmolのカリウムトリフラート、0.2mmolのNaClO、及び1%のHOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400ジメチルエーテルの溶液中に循環させた。Niメッシュカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した3時間後、165μMのNH溶液が得られた。
【0096】
実施例13
プロトン供与体及び/または電子供与体としての水を含有するポリエチレングリコール中における、K[SiWFe(HO)37]存在下でNの還元
【0097】
20mLの非分割セル内で、精製したN(1バール)を、3μmolのK[SiWFe(HO)37]、0.8mmolのカリウムトリフラート、0.2mmolのNaClO、及び1%のHOを含有する8mLの乾燥ポリエチレングリコール400の溶液中に循環させた。ステンレス鋼メッシュカソード及びPtワイヤアノードを用いて、SHEに対して-2.4Vの電位を印加した3時間後、195μMのNH溶液が得られた。
図1
図2A
図2B
図2C
図2D
【手続補正書】
【提出日】2024-06-19
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニア(NH )の製造方法であって、
電気化学セル内で、ポリオキソメタレート触媒、アルカリ金属カチオン、並びに、プロトン及び/または電子の供与体の存在下で、二窒素(N)を電気化学的に還元するステップを含む、方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、
前記ポリオキソメタレート触媒は、鉄を含む、方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、
前記ポリオキソメタレート触媒は、一般式:(Q) [XFe M(L) 37 ]で表される化合物またはその溶媒和物を含み、
式中、
Xは、第13族、第14族、または第15族の原子であり、
Mは、金属であり;
Lは、Mと結合した原子を含み;
Qは、カチオンであり;
nは、3~17の整数である、方法。
【請求項4】
請求項3に記載の方法であって、
Xは、P、Si、As、Ge、Ga、B、またはAlであり;
Mは、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Al、Ga、Sc、Mg、Y、Ba、またはCaであり;
Lは、H O、カルボキシレート、オキシアニオン、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、ヌル、またはそれらの任意の組み合わせであり;
Qは、カチオンであり;
nは、3~17の整数である、方法。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の方法であって、
Qは、プロトン、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、ランタニドカチオン、窒素中心カチオン、リン中心カチオン、及びそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、方法。
【請求項6】
請求項4に記載の方法であって、
Xは、Pである、方法。
【請求項7】
請求項4に記載の方法であって、
Xは、Siである、方法。
【請求項8】
請求項4に記載の方法であって、
Xは、Asである、方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法であって、
Xは、Geである、方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法であって、
Xは、Gaである、方法。
【請求項11】
請求項4に記載の方法であって、
Xは、Bである、方法。
【請求項12】
請求項4に記載の方法であって、
Xは、Alである、方法。
【請求項13】
請求項4に記載の方法であって、
Lは、ヌルである、方法。
【請求項14】
請求項4に記載の方法であって、
Lは、H Oである、方法。
【請求項15】
請求項5に記載の方法であって、
Qは、プロトンである、方法。
【請求項16】
請求項5に記載の方法であって、
Qは、ランタニドカチオンを含む、方法。
【請求項17】
請求項5に記載の方法であって、
Qは、窒素中心カチオンを含む、方法。
【請求項18】
請求項5に記載の方法であって、
Qは、リン中心カチオンを含む、方法。
【請求項19】
請求項に記載の方法であって、
[XFeM(L)37]は、[SiFe(L)37]である、方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気化学セルは、電解質をさらに含む、方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、
前記電気化学セルは、溶媒をさらに含む、方法。
【請求項22】
請求項に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の還元は、無溶媒下で行われる、方法。
【請求項23】
請求項に記載の方法であって、
前記電気化学セルは、カソード、アノード、及び電解質を含む、方法。
【請求項24】
請求項20または23に記載の方法であって、
前記電解質は、リチウム塩、ナトリウム塩、カリウム塩、または第四級アンモニウム塩を含む、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記電解質は、
リチウム、ナトリウム、カリウム、または第四級アンモニウムカチオン;及び、
ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、過塩素酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、もしくはトリフラートアニオン、またはオキシアニオンの塩を含む、方法。
【請求項26】
請求項に記載の方法であって、
前記アルカリ金属カチオンは、
リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、またはセシウムカチオン;及び、
ハロゲン化物、擬ハロゲン化物、過塩素酸塩、ビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド、テトラフルオロボレート、ヘキサフルオロホスフェート、もしくはトリフラートアニオン、またはオキシアニオンを含む、アルカリ金属塩として提供される、方法。
【請求項27】
請求項に記載の方法であって、
前記プロトン及び/または電子の供与体は、水である、方法。
【請求項28】
請求項に記載の方法であって、
前記アルカリ金属カチオンと前記ポリオキソメタレート触媒とのモル比は、ポリオキソメタレート触媒1モル当たり少なくとも3モルのアルカリ金属カチオンである、方法。
【請求項29】
請求項に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、SHEに対して、0V未満の電位で行われる、方法。
【請求項30】
請求項に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、空気または窒素富化空気の存在下で行われる、方法。
【請求項31】
請求項に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、精製窒素を用いて行われる、方法。
【請求項32】
請求項に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、0.1~50バールNで行われる、方法。
【請求項33】
請求項に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、0.1~10バールNで行われる、方法。
【請求項34】
請求項に記載の方法であって、
前記二窒素(N)の電気化学的還元は、0.1~5バールNで行われる、方法。
【国際調査報告】