(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ビークルのサービスブレーキ用ブレーキ力分配のためのBBW技術によるブレーキシステム制御方法
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20241108BHJP
B60T 8/26 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B60T8/17 B
B60T8/26 H
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024532946
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2022061583
(87)【国際公開番号】W WO2023100096
(87)【国際公開日】2023-06-08
(31)【優先権主張番号】102021000030635
(32)【優先日】2021-12-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521259127
【氏名又は名称】ブレンボ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】BREMBO S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100106518
【氏名又は名称】松谷 道子
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【氏名又は名称】山田 卓二
(72)【発明者】
【氏名】パオリーニ,ダヴィデ
(72)【発明者】
【氏名】ロゾッティ,アンドレア マリア
(72)【発明者】
【氏名】フォラッティ,マッテオ
(72)【発明者】
【氏名】マッツォレーニ,サムエーレ
【テーマコード(参考)】
3D246
【Fターム(参考)】
3D246AA11
3D246BA02
3D246DA01
3D246GB01
3D246GB37
3D246GC14
3D246HA02A
3D246HA39C
3D246HA44A
3D246HA94A
3D246HA97C
3D246HB02C
3D246HC02
3D246JA12
3D246JB43
3D246LA12Z
3D246LA33Z
(57)【要約】
本発明は、サービスブレーキ用のブレーキトルク(F1、F2、F3、F4)の分配のためにビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)に関する。ブレーキシステムは、ビークルの1つ又は複数の車輪(FW、RW)に関連する第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)及び少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)と、第1及び少なくとも第2ブレーキキャリパを作動させるための少なくとも1つの電子制御ユニット(10)とを含む。方法は、電子制御ユニットによって、ビークルのブレーキシステムのレバー(2)又はペダルに加えられたブレーキ操作の際に、サービスブレーキ用のブレーキトルク(X)を加える要求を受信するステップ(201)であって、そのようなブレーキトルクの印加は、ブレーキ時間間隔(T)の間に要求されるステップと、電子制御ユニットによって、ブレーキ時間間隔において、ブレーキキャリパの第1電気作動信号(S1、S1’)、又は少なくとも第2ブレーキキャリパの少なくとも第2電気作動信号(S2、S2’)、若しくは第1及び第2電気作動信号の両方を、ビークルの運転状態を代表する情報(I)の検出に基づいて有効化するステップと、第1電気作動信号が有効になると、第1ブレーキキャリパによって、第1ブレーキトルク(F1、F3)をビークルの車輪に加える(203)、又は少なくとも第2電気作動信号が有効になると、少なくとも第2ブレーキキャリパによって、ビークルの車輪に第2ブレーキトルク(F2、F4)を加える、若しくは第1及び第2ブレーキキャリパによって、第1及び第2ブレーキトルクの両方を、ビークルの車輪に加えるステップを有し、ブレーキ時間間隔の各瞬間について、サービスブレーキに必要なブレーキトルクの振幅は、第1ブレーキトルクの第1振幅と第2ブレーキトルクの第2振幅の和に等しい。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サービスブレーキのためのブレーキトルク(F1、F2、F3、F4)の分配のためにビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)であって、
前記ブレーキシステム(100)は、
前記ビークル(1)の前輪(FW)及び後輪(RW)の両方に関連する第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)及び少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)、又は
前記ビークル(1)の前輪(FW)に関連する第1ブレーキキャリパ(P1F)と少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F)、及び前記ビークル(1)の後輪(RW)に関連する単一のブレーキキャリパ(P1R又はP2R)、若しくは
前記ビークル(1)の後輪(RW)に関連する第1ブレーキキャリパ(P1R)と少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2R)、及び前記ビークル(1)の前輪(FW)に関連する単一のブレーキキャリパ(P1F又はP2F)と、
前記第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)及び前記第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)を作動させるための少なくとも1つの電子制御ユニット(10)とを含み、
前記方法(200)は、
前記少なくとも1つの電子制御ユニット(10)により、前記ビークル(1)の前記ブレーキシステム(100)のレバー(2)又はペダルに加えられるブレーキ操作時に、前記サービスブレーキ用のブレーキトルク(X)を加える要求を受信するステップ(201)であって、前記ブレーキトルク(X)の印加は、ブレーキ時間間隔(T)の間に要求される、ステップ(201)と、
前記ビークル(1)の運転状態を代表する情報(I)を検出するステップと、
前記ブレーキ時間間隔(T)において、電子制御ユニット(10)によって、前記ブレーキトルク(X)を有効にする有効化ステップ(202)と、
前記第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)第1電気作動信号(S1、S1’)、又は
前記少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)の少なくとも第2電気作動信号(S2、S2’)、若しくは
前記第1電気作動信号(S1、S1’)と前記少なくとも第2電気作動信号(S2、S2’)の両方と、
前記ビークル(1)の運転状態を代表する情報(I)の検出(1)に基づいて、
前記第1電気作動信号(S1、S1’)が有効化されると、前記第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)によって、前記ビークル(1)の前記車輪(FW、RW)に第1ブレーキトルク(F1、F3)を加えるステップ(203)と、又は
少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)によって、前記ビークル(1)の前記車輪(FW、RW)に前記第2ブレーキトルク(F2、F4)を加えるステップ(204)と、
前記第1電気作動信号(S1、S1’)及び前記少なくとも第2電気作動信号(S2、S2’)が有効になると、前記第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)及び前記第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)によって、前記第1ブレーキトルク(F1、F3)及び前記第2ブレーキトルク(F2、F4)を前記ビークル(1)の前記車輪(FW、RW)に加えるステップ(203、204)とを含み、
前記ブレーキ時間間隔(T)の各瞬間において、前記サービスブレーキに必要なブレーキトルク(x)の振幅(AMx)は、前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の第1振幅(AM1)と第2ブレーキトルク(F2、F4)の第2振幅(AM2)との和に等しい、請求項1のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項2】
前記ビークル(1)の動作条件を代表する前記情報(I)が、
前記ビークル(1)の車輪(FW,RW)に関連するキャリパ又はパッドの作動温度を代表する第1情報(I1)と、
前記ビークル(1)の重量を表す第2情報(I2)と、
前記ビークル(1)と路面の摩擦係数を表す第3情報(I3)を含む、請求項1に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項3】
前記ビークル(1)の前記車輪(FW,RW)に加えられる前記第1ブレーキトルク(F1,F3)及び前記第2ブレーキトルク(F2,F4)のそれぞれが、
ブレーキ時間間隔(T)又は前記ブレーキ時間間隔Tの一部において定常振幅(AM1、AM2)を有するトルク、及び/又は
前記ブレーキ時間間隔(T)又は前記ブレーキ時間間隔Tの一部において連続的に変化する振幅(AM1、AM2)を有するトルクである、請求項1に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項4】
前記要求されるブレーキトルク(X)が、前記ブレーキ時間間隔(T)において平均値で定常振幅(AMX)を有する前記有効化ステップ(202)が、
前記ブレーキ時間間隔(T)の第1時間間隔(T1)の間に、前記少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F,P2R)の少なくとも第2電気作動信号(S2,S2’)を有効にして、前記ビークル(1)の前記車輪(FW,RW)に、前記第1時間間隔(T1)において前記第2一定振幅(AM2)を有する前記第2ブレーキトルク(F2,F4)を加えるステップと、
前記第1時間間隔(T1)に続く前記ブレーキ時間間隔(T)の第2時間間隔(T2)の間に、前記第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)の前記第1電気作動信号(S1、S1’)電気作動信号を有効にして、前記第2時間間隔(T2)において前記第1の連続的に変化する振幅(AM1)を有する前記第1ブレーキトルク(F1,F3)を前記ビークル(1)の前記車輪(FW,RW)に加えるステップを有し、
前記第2ブレーキトルク(F2,F4)は、前記第2時間間隔(T2)において平均値で前記第2定常振幅(AM2)を有し、
前記ブレーキ時間間隔(T)の前記第2時間間隔(T2)の各瞬間において、サービスブレーキに必要な前記ブレーキトルク(X)の振幅(AMx)は、前記第2ブレーキトルク(F2、F4)の前記第2振幅(AM2)と前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の前記第1振幅(AM1)との和に等しい、請求項1-3のいずれかに記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項5】
前記要求ブレーキトルク(X)は、前記ブレーキ時間間隔(T)の第1時間間隔(T1)及び第3時間間隔の(T3)の間の平均値よりも小さい値で且つ前記第1時間間隔(T1)及び前記第3時間間隔(T3)の間に介在する前記ブレーキ時間間隔(T)の第2時間間隔(T2)の間の平均値よりも大きい値をとる振幅(AMx)を有し、
前記有効化ステップ(202)は、
前記ブレーキ時間間隔(T)の前記第1時間間隔(T1)の間に、前記第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)の前記第1電気作動信号(S1、S1’)を有効にして、前記第1ブレーキトルク(F1、F3)を前記ビークル(1)の前記車輪(FW、RW)に加えるステップを有し、
前記第1ブレーキトルク(F1、F3)は、前記第1時間間隔(T1)の各瞬間において、前記第1の時間間隔(T1)に前記第1の連続的に変化する振幅(AM1)を有し、
前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の第1の連続的に変化する振幅(AM1)は、前記第1時間間隔(T1)の各瞬間において、サービスブレーキに必要な前記ブレーキトルク(X)の前記振幅(AMx)に等しい、請求項1-3のいずれか1項に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項6】
前記第1時間間隔(T1)に続く前記ブレーキ時間間隔(T)の前記第2時間間隔(T2)の間に、前記少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)の少なくとも前記第2電気作動信号(S2、S2’)を有効化して、前記第1時間間隔(T2)の間、前記第2の連続的に変化する振幅(AM2)を有する前記第2ブレーキトルク(F2,F4)を前記ビークル(1)の前記車輪(FW,RW)に加えるステップであって、前記第1ブレーキトルク(F1,F3)は、前記第2時間間隔(T2)の間、前記第1の一定振幅(AM1)を有する、ステップを有し、
前記第2時間間隔(T2)の各瞬間において、サービスブレーキに必要な前記ブレーキトルク(X)の前記振幅(AMx)は、前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の前記第1振幅と前記第2ブレーキトルク(F2、F4)の前記第2振幅(AM2)の和に等しい、請求項5に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項7】
前記第2時間間隔(T2)に続く前記ブレーキ時間間隔(T)の第3時間間隔(T3)の間、前記少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F,P2R)の少なくとも第2電気作動信号(S2,S2’)を無効にして、前記第3時間間隔(T3)において前記第1の連続的に変化する振幅(AM1)を有する第1ブレーキトルク(F1、F3)のみを前記ビークル(1)の車輪(FW、RW)に加えるステップであって、前記第2ブレーキトルク(F2、F4)は前記第3時間間隔(T3)において前記ゼロの第2振幅(AM2)を有する、ステップを更に備え、
前記第3時間間隔(T3)の各瞬間において、前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の第1振幅(AM1)は、サービスブレーキに必要なブレーキトルク(X)の振幅(AMx)に等しい、請求項6に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項8】
前記サービスブレーキに必要なブレーキトルク(X)が、前記ブレーキ時間間隔(T)において徐々に増加する平均値の振幅(AMx)を有し、
前記有効化ステップ(202)は、
前記ブレーキ時間間隔(T)の間、前記少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)の少なくとも前記第2電気作動信号(S2、S2’)を有効にして、前記ビークル(1)の前記車輪(FW、RW)に前記第2ブレーキトルク(F2、F4)を加えるステップであって、前記第2ブレーキトルク(F2、F4)は、前記ブレーキ時間間隔(T)において前記第2の連続的に変化する振幅(AM2)を有する、ステップと、
前記ブレーキ時間間隔(T)の第1時間間隔(T1)の間に、前記第1ブレーキキャリパ(P1F,P1R)の前記第1電気作動信号(S1,S1’)を有効にして、前記第1ブレーキトルク(F1,F3)を前記ビークル(1)の前記車輪(FW,RW)に印加するステップであって、前記第1ブレーキトルク(F1,F3)は、前記第1時間間隔(T1)において前記第1の連続的に変化する振幅(AM1)を有する、ステップとを有し、
前記第1時間間隔(T1)の各瞬間において、サービスブレーキに必要な前記ブレーキトルク(X)の前記振幅(AMx)は、前記第2ブレーキトルク(F2、F4)の前記第2振幅(AM2)と前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の前記第1振幅(AM1)との和に等しい、請求項1-3のいずれか1項に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項9】
前記第1時間間隔(T1)に続く前記ブレーキ時間間隔(T)の第2時間間隔(T2)の間に、前記ビークル(1)の車輪(FW,RW)に、前記第2時間間隔(T2)において第1の一定振幅(AM1)を有する前記第1ブレーキトルク(F1,F3)を加えるステップであって、前記第2時間間隔(T2)の各瞬間において、サービスブレーキに必要な前記ブレーキトルク(X)の前記振幅(AMx)は、前記第2ブレーキトルク(F2、F4)の前記第2振幅(AM2)と前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の前記第1振幅(AM1)との和に等しい、請求項8に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項10】
前記第2時間間隔(T2)に続く前記ブレーキ時間間隔(T)の少なくとも第3時間間隔(T3、T4、T5、T6)の間に、前記少なくとも第3時間間隔(T3、T4、T5、T6)において、第1の定常振幅(AM1’)を有するさらなる第1ブレーキトルク(F1’、F3’)を前記ビークル(1)の前記車輪(FW、RW)に加えるステップを有し、
前記少なくとも第3時間間隔(T3、T4、T5、T6)において加えられる前記さらなる第1ブレーキトルク(F1’、F3’)の前記さらなる振幅(AM1’)は、前記第2時間間隔(T2)において加えられる前記第1ブレーキトルク(F1、F3)の前記振幅(AM1)よりも大きく、
前記少なくとも第3時間間隔(T3、T4、T5、T6)の各瞬間において、サービスブレーキに必要な前記ブレーキトルク(X)の前記振幅(AMx)は、前記第2ブレーキトルク(F2、F4)の前記第2振幅(AM2)と、前記さらなる第1ブレーキトルク(F1’、F3’)の前記さらなる第1振幅(AM1’)の和に等しい、請求項9に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)。
【請求項11】
請求項1-11のいずれか1項に記載のビークル(1)のブレーキシステム(100)を制御するための方法(200)であって、前記ビークルが、自動車、バイク、小型商用車、重工業車からなる群から選択される、方法(200)。
【請求項12】
ビークル(1)のブレーキシステム(100)であって、
前記ビークル(1)の前輪(FW)及び後輪(RW)の両方に関連する第1ブレーキキャリパ(P1F、P1R)及び少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F、P2R)、又は
前記ビークル(1)の前輪(FW)に関連する第1ブレーキキャリパ(P1F)と少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F)、及び前記ビークル(1)の後輪(RW)に関連する単一のブレーキキャリパ(P1R又はP2R)、若しくは
前記ビークル(1)の後輪(RW)に関連する第1ブレーキキャリパ(P1R)と少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2R)、及び前記ビークル(1)の前輪(FW)に関連する単一のブレーキキャリパ(P1F又はP2F)と、
サービスブレーキのために前記ビークル(1)の前記車輪(FW,RW)に加えられるブレーキトルク(F1,F2,F3,F4)を分配するために、前記第1ブレーキキャリパ(P1F,P1R)及び前記少なくとも第2ブレーキキャリパ(P2F,P2R)を作動させるための少なくとも1つの電子制御ユニット(10)と、を備え
前記ブレーキシステムの前記電子制御ユニット(10)が、請求項1-11に記載の方法のステップを実行するように構成されていることを特徴とするブレーキシステム(100)。
【請求項13】
請求項1-11に記載の方法(200)を実施するために、前記ビークル(1)の前記ブレーキシステム(100)の前記電子制御ユニット(10)によって実行可能なアプリケーションコードを含むコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の属する技術分野
【0002】
本発明は、ブレーキバイワイヤ(BBW)技術で作動するビークルのブレーキシステムの分野に関する。より詳細には、本発明は、ビークルのサービスブレーキのためにブレーキシステムによって発生されるブレーキ力の分配を制御するための方法に関し、このようなブレーキシステムは、BBW技術を有するシステムによって互いに独立して制御され得る、ビークルの車輪に関連付けられた少なくとも2つのブレーキキャリパを備える。
【背景技術】
【0003】
背景技術
【0004】
ブレーキバイワイヤ(BBW)技術で動作する自動車のブレーキシステムは、自動車の1つの車輪にそれぞれ関連付けられた複数のディスクブレーキから構成される。
【0005】
各ディスクブレーキは、サービスブレーキの場合にビークルを停止させるためにディスクをロックしてディスクをクランプするように作動可能な少なくとも1つのブレーキキャリパから構成される。ブレーキシステムには、電子制御ユニット(又はECU)と、そのような電子制御ユニットによって制御される電気油圧式又は電気機械式のアクチュエータが使用され、ブレーキキャリパに作用し、キャリパのクランプを有効/無効にする。
【0006】
従来のブレーキシステムは、2つ以上のキャリパが存在し、1つのビークルホイールに作用する構成からなる。このような選択は、スペースの問題を解決したり、より大きなブレーキトルクを得たり、あるいは、例えばオートバイのようなモータバイクに装備されるブレーキシステムにおいてCBS(コンバインドブレーキングシステム)及びABS(アンチブロッキアシステム)ブレーキ制御ストラテジーを実施する必要性によって決定され得る。
【0007】
実際、オートバイの分野では、2つの異なるキャリパが存在し、オートバイの前輪(又は後輪)に作用するブレーキシステム構成が知られている。例えば、第1キャリパは、レバー/ペダル指令によって従来の油圧式ブレーキシステムによって制御される。この場合、キャリパのクランプ圧はライダーによって直接制御され、サービスブレーキ中に変更することはできない。第2キャリパは、レバー/ペダル指令によって、すなわち油圧システムによって、ABSやCBS制御ユニットのような電子制御ユニットを通して制御される。
【0008】
モータバイクブレーキシステムのこのような構成の欠点は、キャリパクチュエータに加えられる圧力源、したがって発生するブレーキ力(又はブレーキトルク)が、2つの異なる別個の実体、特にライダーとABS又はCBS制御ユニットによって発生するため、2つのキャリパによって発生するブレーキトルクを特定の制御ロジックに従って調整できないことである。
【0009】
モータバイク用の従来のブレーキシステムの別の構成では、モータバイクの車輪に取り付けられた両方のキャリパに単一の油圧接続ラインが使用されることが予想される。特に、キャリパに加えられる油圧作動圧は単一の指令によって生成されるが、そのような油圧は2つのキャリパに等しく加えられる。
【0010】
この結果、両方のキャリパがディスクを同時にクランプすると、ホイールに対するブレーキ効果が二重になる。このような二重のブレーキ効果の欠点の一つは、特に軽モータバイクにこのような構成を適用した場合、ライダーに不快な感じを与えることである。
【0011】
したがって、自動車又はオートバイの同じホイールに作用する2つ以上のキャリパをより効果的に制御することを可能にし、従来のブレーキシステムの既知の構成の限界及び欠点を克服することを可能にする解決策を考案する必要性が強く感じられる。
【発明の概要】
【0012】
解決手段
【0013】
本発明の目的は、ビークル、例えば、自動車又はオートバイのブレーキシステムによって発生されるブレーキトルクの分配を制御するための方法を考案し、提供することであり、このようなブレーキシステムは、ビークルの1つ又は複数の車輪のための少なくとも2つのキャリパから構成され、これにより、車輪に発生される2つのブレーキトルクを独立して制御することができ、従来のブレーキシステムの既知の構成の限界及び欠点を克服することができる。
【0014】
このような目的は、請求項1に記載のビークルのブレーキシステムを制御する方法によって達成される。
【0015】
特に、本発明の方法を実施するブレーキバイワイヤ(BBW)技術で作動するビークルのブレーキシステムによって、個々の車輪の各キャリパによって発生されるブレーキトルクを独立して制御することが可能になり、ドライバ(又はオートバイ用途の場合にはライダー)の快適性を最大化し、例えばABSブレーキの場合のような高性能ブレーキ時の性能を最適化することにつながる。
【0016】
本発明はまた、請求項12に記載のビークルホイールに発生するブレーキトルクの分配を制御するように動作する少なくとも1つの電子制御ユニットを含むビークルブレーキシステムに関する。
【0017】
いくつかの有利な実施形態は従属請求項の主題である。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図
【0019】
本発明による制御方法のさらなる特徴及び利点は、添付の図面を参照して、非限定的な例として与えられる、その好ましい実施形態の以下に与えられる説明から明らかになる。
【0020】
【
図1】
図1は、本発明のサービスブレーキのためのブレーキトルクの分配を制御する方法を実施する、ビークル、特に例えばモータサイクルなどのブレーキシステムの一例を図式的に示す。
【0021】
【
図2】
図2は、本発明による
図1のブレーキシステムにおけるブレーキトルクの分配を制御する方法の実施形態をフローチャートで示す。
【0022】
【
図3】
図3A-3Bは 、第一の例として、時間を関数とするビークルブレーキシステムのレバー又はペダルに加えられるブレーキ操作時に、サービスブレーキに必要なブレーキトルク、第1及び第2ブレーキキャリパがビークルの車輪に応答して加える第1及び第2ブレーキトルクを示す。
【0023】
【
図4】
図4A-4Bは 、第2実施例において、時間を関数とするビークルブレーキシステムのレバー又はペダルに加えられたブレーキ操作時に、サービスブレーキに必要なブレーキトルク、第1及び第2ブレーキキャリパがビークルの車輪に応答して加える第1及び第2ブレーキトルクを示す。
【0024】
【
図5】
図5A-5Bは 、第3実施例において、時間を関数とするビークルブレーキシステムのレバー又はペダルに加えられるブレーキ操作時に、ABS構成のサービスブレーキに必要なブレーキトルク、ABSイベント中に第1及び第2ブレーキキャリパがビークルホイールに加える第1及び第2ブレーキトルクを示す。
【0025】
前述の図において、類似又は同等の要素は、同じ参照数字で示されている。
【発明を実施するための形態】
【0026】
いくつかの好ましい実施形態の説明
【0027】
図1を参照すると、符号100は、本発明によるビークル1のサービスブレーキのためのブレーキ力又はブレーキトルクの分配を制御する方法を実施するビークル1のブレーキシステムを全体として示している。
【0028】
例えば、ブレーキシステム100は、ブレーキバイワイヤ(BBW)技術を用いたアーキテクチャである。
【0029】
本明細書において、「ビークル」とは、商用タイプであっても、2つ、3つ、4つ、又はそれ以上の車輪を有する任意の自動車又はオートバイを意味する。例えば、ビークルとは、自動車、オートバイ、軽商用車、重工業車、又は可動部の速度を低下させるためのブレーキシステムを必要とするその他のビークルを意味する。
【0030】
簡単のため、
図1を参照して、モータバイク1のブレーキシステム100の例を説明する。しかし、本発明の特性及び利点は、異なるタイプのビークルのブレーキシステムにも適用可能である。
【0031】
さらに、「ブレーキシステム」とは、ビークルのサービスブレーキの発生に寄与するすべての構成要素(機械部品及び/又は電気電子部品からブレーキ液まで)の全体を意味する。
【0032】
図1を参照すると、モータバイク1は、前輪FWと後輪RWとから構成され、
図1では点線の円で図示されている。
【0033】
ブレーキシステム100は、モータバイク1の前輪FWに動作可能に関連付けられた第1ブレーキディスクDF1及び第2ブレーキディスクDF2を備える。
【0034】
ブレーキシステム100はさらに、モータバイク1の後輪RWに動作可能に関連付けられた第3ブレーキディスクDF3及び第4ブレーキディスクDF4を備える。
【0035】
図1の例では、ブレーキシステム100は、さらに、モータバイク1の前輪FW及び後輪RWの両方にそれぞれ関連する第1ブレーキキャリパP1F、P1R及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2F、P2Rを備える。
【0036】
代替実施形態では、ブレーキシステム100は、モータバイク1の前輪FWに関連する第1ブレーキキャリパP1F及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Fと、モータバイク1の後輪RWに関連する単一のブレーキキャリパP1R(又はP2R)とを備える。
【0037】
さらなる代替実施形態では、ブレーキシステム100は、モータバイクの後輪RWに関連する第1ブレーキキャリパP1R及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Rと、モータバイク1の前輪FWに関連する単一のブレーキキャリパP1F(又はP2F)とを備える。
【0038】
より詳細には、
図1の例を参照すると、前輪FWに付随する第1ブレーキキャリパP1F及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Fは、前輪FWの第1ブレーキディスクDF1及び第2ブレーキディスクDF2をクランプするために電気的に作動するブレーキキャリパである。
【0039】
図1の例を参照すると、後輪RWに付随する第1ブレーキキャリパP1R及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Rは、後輪RWの第ブレーキディスク3DF3及び第4ブレーキディスクDF4をクランプするために圧力によって作動するブレーキキャリパである。別の実施形態では、後輪RWに付随する前述の第1ブレーキキャリパP1R及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Rは、電気的に作動するブレーキキャリパとすることができる。すなわち、それらは前輪FWに付随するブレーキキャリパP1F,P2Fと同様である。
【0040】
図1の例を参照すると、ブレーキシステム100は、電子ブレーキ制御ユニット10(ElecTRonIc ConTRol UnIT又はECU)で構成されている。このような電子ブレーキ制御ユニット10は、ブレーキシステム100の全てのブレーキキャリパP1F,P2F,P1R,P2Rを操作するように構成されている。別の実施形態では、ブレーキシステム100は、2つ以上の、互いに類似した電子ブレーキ制御ユニット10から構成することができる。例えば、2つの電子ブレーキ制御ユニット10からなるシステム100の場合、一方の制御ユニットは、前輪FWに関連するブレーキキャリパP1F,P2Fを操作するように構成され、他方の制御ユニットは、後輪RWに関連するブレーキキャリパP1R,P2Rを操作するように構成される。
【0041】
図1のシステム100の例を参照すると、前述の電子ブレーキ制御ユニット10は、例えば、マイクロコントローラ又はマイクロプロセッサからなり、ブレーキシステム100のブレーキキャリパP1F,P2F,P1R,P2Rを作動させてキャリパにブレーキ指令を衝撃するための電気信号を生成するように構成されている。
【0042】
特に、このような電子ブレーキ制御ユニット10は、モータバイク1の前輪FWに関連する第1ブレーキキャリパP1F及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Fを作動させるための第1電気作動信号S1及び第2電気作動信号S2を有効化又は生成するように構成される。特に、第1電気作動信号S1及び第2電気作動信号S2は、第1ブレーキキャリパP1F及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Fを作動させる電気モータを直接制御する。
【0043】
このような第1電気作動信号S1及び第2電気作動信号S2のイネーブルに基づいて、第1ブレーキキャリパP1F及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Fは、第1ブレーキトルクF1及び第2ブレーキトルクF2をモータバイク1の前輪FWに印加するように構成される。
【0044】
さらに、電子ブレーキ制御ユニット10は、ブレーキシステム100の第1アクチュエータモジュールA1及び第2アクチュエータモジュールA2、特に電気油圧タイプの、さらなる第1電気作動信号S1’及びさらなる第2電気作動信号S2’を可能にする、又は生成するように構成されている。このような第1アクチュエータモジュールA1及び第2アクチュエータモジュールA2の各々は、さらなる第1電気作動信号S1’及びさらなる第2電気作動信号S2’を代表するそれぞれの作動圧力を生成して、モータバイク1の後輪RWに関連する第1ブレーキキャリパP1R及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Rを作動させるように構成される。
【0045】
換言すれば、そのようなさらなる第1電気作動信号S1’及びさらなる第2電気作動信号S2’のイネーブルに基づいて、第1ブレーキキャリパP1R及び少なくとも第2ブレーキキャリパP2Rは、バイク1の後輪RWにそれぞれの第1ブレーキトルクF3及びそれぞれの第2ブレーキトルクF4を加えるように構成される。
【0046】
本発明の目的のために、前述のブレーキキャリパP1F、P2F、P1R、P2Rは、「乾式」又は「湿式」タイプのキャリパとすることができる。
【0047】
ビークル1の1つ又は複数の車輪FW,RWに作動的に関連付けられた第1P1F,P1R及び少なくとも第2P2F,P2Rブレーキキャリパ上のサービスブレーキ用のブレーキトルクF1,F2,F3,F4の分配のために、ビークル1、特にモータサイクルなどのブレーキシステム100を制御するための方法200の作動ステップを、
図2を参照して以下に説明する。
【0048】
上述したブレーキシステム100の電子制御ユニット10は、このような制御方法200を実施するように構成されている。
【0049】
一般的な実施形態では、電子ブレーキ制御ユニット10は、本発明の方法200を実施するアプリケーションプログラムのコードを実行するように配置されている。
【0050】
特定の実施形態では、電子制御ユニット10のプロセッサは、それぞれのメモリブロックに、本発明の方法200を実施するアプリケーションプログラムのコードをロードし、実行するように構成される。
【0051】
図2の制御方法200は、開始 "STR "の記号ステップで始まり、終了 ”ED”の記号ステップで終わる。
【0052】
最も一般的な実施形態では、制御方法200は、電子制御ユニット10によって、ライダーによってモータバイク1のブレーキシステム100のレバー2又はペダルに加えられたブレーキ操作時に、サービスブレーキ用のブレーキトルクXを加える要求を受信するステップ201を含んでいる。特に、このようなブレーキトルクXの印加は、ブレーキ時間間隔Tの間に要求される。
【0053】
さらに、制御方法200は、ビークル1の運転状態を代表する情報Iを検出するステップを含んでいる。
【0054】
制御方法200は、ブレーキ時間間隔Tにおいて、モータバイク1の運転状態を代表する情報Iの検出に基づいて、電子制御ユニット10によって以下のものを有効にするステップ202を含む。
【0055】
第1ブレーキキャリパP1F、P1Rの第1電気作動信号S1、S1’、又は
【0056】
少なくとも第2ブレーキキャリパP2F、P2Rの少なくとも第2電気作動信号S2、S2’、又は
【0057】
第1電気作動信号S1、S1’及び少なくとも第2電気作動信号S2、S2’の両方。説明した実施形態では、前輪FWの2つのキャリパP1F,P2Fと、後輪RWの2つのキャリパP1R,P2Rとに、互いに独立した態様で、同じ制御ロジックを適用できる。
【0058】
一実施形態において、モータバイク1の運転状態を代表する前記情報Iは、以下から構成される。
【0059】
モータバイク1の前輪FW又は後輪RWに関連するキャリパ(又はパッド)の動作温度を代表する第1情報I1;
【0060】
モータバイク1の重量を代表する第2情報I2;
【0061】
モータバイク1と路面との間の摩擦係数、すなわち路面グリップの情報を代表する第3情報I3。
【0062】
例えば、車輪FWに関連するキャリパ(又はパッド)の動作温度RWの推定は、モータバイク1の車輪コーナに関連する力/圧力センサによって測定された初期外部温度と、コーナによって印加されるPWM(パルス幅変調)電圧及び/又は電流の信号とに基づいて、推定温度を提供するように構成された熱モデルを採用することによって達成可能である。実施形態では、力/圧力センサは、キャリパ及び/又はアクチュエータと関連付けることができる。モータバイク1の重量の推定は、内部アルゴリズムによって、及び/又はサスペンションに関連するセンサや他のセンサから得ることもできる。
さらに、路面摩擦係数MURoAdの推定は、数学的関係に基づいて計算することができる。
MuRoAd = FgrounDFz
ここで、第1力パラメータFgroundは、アクチュエータの力及び/又は圧力のフィードバック信号及び車輪の加速度を通じて計算され、第2力パラメータFzは、ビークル重量、ビークル構造データ、及び所与の瞬間にバイク1が実行する減速度を知ることによって計算される。
【0063】
モータバイク1の運転状態を代表する更なる情報は、2つのキャリパのパッド摩耗の推定であることは注目に値する。パッドの摩耗を推定するために適切なアルゴリズムが採用され、この情報を知っている本発明の方法は、摩耗を最適化するようにブレーキトルクを配分するように構成され、必要に応じて、摩耗の少ないパッドを有するキャリパにより多くの圧力を加えることによって、2つのパッドにわたって均一にする。
【0064】
さらに、パッド温度の推定に関連して、本発明の方法は、フェード現象を回避するために、パッド温度が低い方のキャリパをより頻繁に作動させることにより、ブレーキトルクを適切に配分する。一方、他方のキャリパのパッドは、それぞれの作動温度が作動中のキャリパのパッド温度より低いときに冷却され、再び作動可能となる。
【0065】
路面/ホイールの摩擦係数情報の使用に関連して、グリップが低い場合(すなわち、関係するブレーキトルクが低い場合)、本発明の方法は単一のキャリパを作動させるように構成され、ホイール上の制御分解能を高め、ホイールスリップの快適性/制御性を高めることにより、より正確なブレーキトルク調節を行う。
【0066】
その後、制御方法200は、前記第1電気的作動信号S1,S1’が有効になると、第1ブレーキキャリパP1F,P1Rによって、第1ブレーキトルクF1,F3を、モータバイク1の車輪FW,RWに印加するステップ203を含む。
【0067】
さらに、代替的に、制御方法200は、前記少なくとも第2電気的作動信号S2、S2’が有効にされると、少なくとも第2ブレーキキャリパP2F、P2Rによって、バイク1の車輪FW、RWに第2ブレーキトルクF2、F4を印加すること204を含む。
【0068】
前記電気的作動信号S1,S2,S1’,S2’の活性化/非活性化時間に基づいて、適用するステップ203,204は、電子制御ユニット10によって同時に実施され得るか、又は順番に実施され得ることは注目に値する。特に、制御方法200は、そのような第1電気的作動信号S1,S1’及び少なくとも第2電気的作動信号S2,S2’が一旦有効化されると、第1ブレーキキャリパP1F,P1R及び第2ブレーキキャリパP2F,P2Rによって、第1ブレーキトルクF1,F3及び第2ブレーキトルクF2,F4の両方をビークル1の車輪FW,RWに印加する代替ステップ203,204を含む。
【0069】
本発明の制御方法200は、ブレーキ時間間隔Tの各瞬間について、第1ブレーキトルクF1,F3の第1振幅AM1と第2ブレーキトルクF2,F4の第2振幅AM2との和が、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxに等しいことを含む。
【0070】
本発明の制御方法200は、有利には、各ブレーキキャリパによって発生されるブレーキトルクを切り離し、低レベルの力が要求されるときに一方のキャリパのみがトルクを発生できるようにし、キャリパ制御の「分解能」を高め、その結果、特に軽ビークルや摩擦係数の低い路面においてライダーのフィーリングを高めるソフトなトルクを発生させることができる。
【0071】
ブレーキ動作に伴うライダーによる要求トルクXの振幅が増大し続けると、方法200は、異なるシナリオ及び発生し得る異なるタイプのブレーキに応じて異なり得る協調ロジックに基づいて定義された残りのキャリパにブレーキトルクを発生させることを含む。
【0072】
一実施形態では、モータバイク1の車輪FW,RWに加えられる上述の第1ブレーキトルクF1,F3及び第2ブレーキトルクF2,F4の各々は、ブレーキ時間間隔T又はそのようなブレーキ時間間隔Tの一部において定常振幅AM1,AM2を有するトルクからなる。
【0073】
別の実施形態では、そのような第1ブレーキトルクF1,F3及び第2ブレーキトルクF2,F4の各々は、ブレーキ時間間隔Tにおいて、又はブレーキ時間間隔Tの一部において、連続的に変化する振幅AM1,AM2を有するトルクからなる。
【0074】
図3A-3Bを参照すると、漸進的な縦方向ブレーキの場合に本発明の方法200によって実施されるブレーキ対デカップリングの第1実施例が説明されている。
【0075】
特に、
図3Aは、ライダーがビークルブレーキシステムのレバー2又はペダルに加えるブレーキ操作時に、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXを時間の関数として示している。この場合、必要なブレーキトルクXは、ブレーキ時間間隔Tにおいて、平均値で実質的に定常振幅AMx、例えば約350Nmを有する。
既知のように、アクチュエータトルクTATTとアクチュエータ力FATTを結ぶ線形数学的関係は、次のように表すことができる。
FATT=TATT/(2*RD*CoeFFAT)
ここで、FATT=アクチュエータ力、TATT=アクチュエータトルク、RD=ディスク半径、CoeFFAT=パッド摩擦係数である。
【0076】
このような場合、上述した制御方法200の有効にするステップ202は、第2ブレーキトルクF2,F4をモータバイク1の車輪FW,RWに印加するために、前記ブレーキ時間間隔Tの第1時間間隔T1の間に、前記少なくとも第2ブレーキキャリパP2F,P2Rの少なくとも第2電気作動信号S2,S2’を有効にするステップをさらに含み、このような第2ブレーキトルクF2,F4は、第1T1の時間間隔の間に、それぞれの第2一定振幅AM2、例えば約180Nmを有する。
【0077】
さらに、第1時間間隔T1に続く前記ブレーキ時間間隔Tの第2時間間隔T2の間、第1ブレーキキャリパP1F,P1Rの第1電気作動信号S1,S1’を有効にして、第2時間間隔T2においてそれぞれの第1の連続的に変化する振幅AM1を有する第1ブレーキトルクF1,F3もモータバイク1の車輪FW,RWに加えるステップが含まれる、この場合、第2ブレーキトルクF2,F4は、第2時間間隔T2の間に、平均値で第2一定振幅AM2(例えば約180Nm)を有する。
【0078】
特に、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxは、ブレーキ時間間隔Tの第2時間間隔T2の各瞬間において、第2ブレーキトルクF2,F4のそれぞれの第2振幅AM2と第1ブレーキトルクF1,F3のそれぞれの第1振幅AM1との和に等しい。
【0079】
本発明の制御方法200によって実施されるブレーキトルクデカップリングの第2実施例を、やはり漸進的な縦方向ブレーキの場合に、
図4A-4Bを参照して説明する。
【0080】
特に、
図4Aは、ライダーがビークルブレーキシステムのレバー2又はペダルに加えるブレーキ動作時に、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXを時間の関数として示している。先の実施例とは異なり、この第2実施例では、要求されるブレーキトルクXは、ブレーキ時間間隔Tにおいて大きく変動し、前記ブレーキ時間間隔Tの第1時間間隔T1と第3時間間隔T3の間は平均値より小さい値(例えば、100Nmより小さい値)をとり、前記ブレーキ時間間隔Tの第2時間間隔T2の間は前記平均値より大きい値(例えば、100Nmより大きい値)をとる振幅AMxを有する。
【0081】
このような場合、上述した制御方法200の有効にするステップ202は、ブレーキ時間間隔Tの第1時間間隔T1の間に第1ブレーキキャリパP1F,P1Rの第1電気作動信号S1,S1’を有効にして、第1ブレーキトルクF1,F3をモータバイク1の車輪FW,RWに印加するステップをさらに含み、このような第1ブレーキトルクF1,F3は、第1時間間隔T1においてそれぞれの第1の連続的に変化する振幅AM1を有する。
【0082】
このような場合、第1時間間隔T1の各瞬間において、第1ブレーキトルクF1,F3の第1振幅AM1は、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxに等しい。このような場合、少なくとも第2電気作動信号S2,S2’は無効のままである。
【0083】
さらに、第1時間間隔T1に続くブレーキ時間間隔Tの第2時間間隔T2の間に、少なくとも第2ブレーキキャリパP2F,P2Rの少なくとも第2電気作動信号S2,S2’を有効にして、第2時間間隔T2においてそれぞれの第2の連続的に変化する振幅AM2を有する第2ブレーキトルクF2,F4をモータバイク1の車輪FW,RWにも印加するステップが含まれ、第1ブレーキトルクF1,F3は、第2時間間隔T2においてそれぞれの第1定常振幅AM1を有し、例えば、 約180Nmに等しい。
【0084】
このような場合、第2時間間隔T2の各瞬間において、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxは、第1ブレーキトルクF1,F3のそれぞれの第1振幅AM1と第2ブレーキトルクF2,F4のそれぞれの第2振幅AM2との和に等しい。
【0085】
さらに、制御方法200は、第2時間間隔T2に続くブレーキ時間間隔Tの第3時間間隔T3の間に、少なくとも第2ブレーキキャリパP2F,P2Rの第2電気作動信号S2,S2’を無効にして、第3時間間隔T3においてそれぞれの第1の連続的に変化する振幅AM1を有する第1ブレーキトルクF1,F3のみをモータバイク1の車輪FW,RWに印加するステップを含み、第2ブレーキトルクF2,F4は、第3時間間隔T3においてゼロの第2振幅AM2を有する。
【0086】
このような場合、第3時間間隔T3の各瞬間において、第1ブレーキトルクF1,F3の第1振幅AM1は、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxに等しい。
【0087】
このように、第1ブレーキキャリパP1F、P1Rは、所定の閾値まで車輪FW、RWにトルクを発生させ、その後は第2ブレーキキャリパP2F、P2Rのみが制御される。
【0088】
ABSブレーキのような高性能ブレーキの場合、同じホイールFW,RW上のブレーキトルクを分離して管理することで、ホイールスリップをよりよく制御することができ、タイヤの限界にますます近づき、性能が向上し、停止距離が短縮される。
【0089】
図5A-5Bを参照して、高性能ブレーキの場合に本発明の制御方法200によって実施されるブレーキトルクデカップリングの第3例を説明する。
【0090】
特に、
図5Aは、ライダーがビークルのブレーキシステム100のレバー2又はペダルに加えるブレーキ操作に応じてABSアルゴリズムによって生成されるサービスブレーキ用のブレーキトルクXの要求を、時間の関数として示している。この場合、要求ブレーキトルクXは、ブレーキ時間間隔Tで徐々に増加する平均値の振幅AMxを有し、例えば約1000Nmから1800Nmまで増加する。
【0091】
このような場合、上述した制御方法200の有効にするステップ202は、ブレーキ時間間隔Tの間に、前記少なくとも第2ブレーキキャリパP2F,P2Rの少なくとも第2電気的作動信号S2,S2’を有効にして、第2ブレーキトルクF2,F4をモータバイク1の車輪FW,RWに印加するステップをさらに含み、このような第2ブレーキトルクF2,F4は、時間間隔Tにおいて連続的に変化するそれぞれの第2振幅AM2を有する。
【0092】
さらに、ブレーキ時間間隔Tの第1時間間隔T1の間に、第1ブレーキキャリパP1F,P1Rの第1電気作動信号S1,S1’を有効にして、第1ブレーキトルクF1,F3をモータバイク1の車輪FW,RWに加えるステップが含まれ、そのような第1ブレーキトルクF1,F3は、第1時間間隔T1において、それぞれの第1の連続的に変化する振幅AM1を有する。
【0093】
このような場合、第1時間間隔T1の各瞬間において、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxは、第2ブレーキトルクF2,F4のそれぞれの第2振幅AM2と第1ブレーキトルクF1,F3のそれぞれの第2振幅AM1との和に等しい。
【0094】
さらに、第1時間間隔T1に続くブレーキ時間間隔Tの第2時間間隔T2の間に、第2時間間隔T2において第1定常振幅AM1、例えば450Nmを有する第1ブレーキトルクF1,F3を、モータバイク1の車輪FW,RWに加えるステップが含まれる。
【0095】
このような場合、第2時間間隔T2の各瞬間において、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxは、第2ブレーキトルクF2,F4のそれぞれの第2振幅AM2と第1ブレーキトルクF1,F3のそれぞれの第1振幅AM1との和に等しい。
【0096】
その後、第2時間間隔T2に続くブレーキ時間間隔Tの少なくとも第3時間間隔T3,T4,T5,T6の間に、前記少なくとも第3時間間隔T3,T4,T5,T6において、それぞれのさらなる第1の一定振幅AM1’を有するさらなる第1ブレーキトルクF1’,F3’をモータバイク1の車輪FW,RWに加えるステップが含まれる。
図5Bを参照すると、例えば、約500Nm、600Nm、700Nm、800Nmの増分値を見ることができる。
【0097】
少なくとも第3時間間隔T3,T4,T5,T6で加えられるさらなる第1ブレーキトルクF1’,F3’の振幅AM1’は、第2時間間隔T2で加えられる第1ブレーキトルクF1,F3の振幅AM1よりも大きいことは注目に値する。
【0098】
このような場合、少なくとも第3時間間隔T3,T4,T5,T6の各瞬間において、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxは、第2ブレーキトルクF2,F4の第2振幅と、さらなる第1ブレーキトルクF1’,F3’のさらなる第1振幅AM1’との和に等しい。
【0099】
図5Bに示すように、ホイールディスクに加えられるブレーキトルクは、「固定」成分(第2ブレーキキャリパP2F,P2Rによって与えられる)と、「可変」成分、特にスリップ制御に依存する第1ブレーキキャリパP1F,P1Rによって与えられる変化する振幅を有する成分とに分解される。これにより、車輪に発生させることができるトルク分解能を高めることができ、システムをより効果的かつ応答的にすることができる。
【0100】
再び
図5Bを参照すると、ブレーキ時間間隔Tのそれぞれの時間間隔T7において、互いに等しい第1ブレーキトルクF1,F3と第2ブレーキトルクF2,F4の両方が、モータバイク1の車輪FW,RWに加えられることが予想される。このような場合、時間間隔T7の各瞬間において、サービスブレーキに必要なブレーキトルクXの振幅AMxは、実質的に第2ブレーキトルクF2,F4のそれぞれの第2振幅AM2の2倍に相当する。
【0101】
上述した利点に加えて、本発明の制御方法200はいくつかの他の有利な態様を有している。
【0102】
実際、2つ以上のキャリパによって発生される1つの車輪のブレーキトルクを管理するための制御方法200は、最大化を可能にする。
【0103】
性能:常に2つのキャリパを最良の効率/性能点で作動させることが可能である。
【0104】
フィーリング:ブレーキのモジュール性を高めるために、キャリパの1つだけでブレーキをかけることも可能である。
【0105】
故障管理の可能性: 1つ以上の個別に制御されるキャリパを持つことで、作動中のキャリパのブレーキトルクを増加させることで故障を補うことができる。
【0106】
一実施形態では、
図3A、4A、5Aのサービスブレーキに必要な前述のブレーキトルクは、自動緊急ブレーキや「ヒルホルダ」タイプのブレーキなど、異なる制御ロジックに基づいて要求されるサービスブレーキであり得ることは注目に値する。
【0107】
自動緊急ブレーキは、例えば、ビークルのブレーキシステムが、例えばレーダーやセンサを使用して、他のビークルとの衝突が発生する可能性があることを検出した場合に発生する。この場合、ビークル間に介在する空間と適用される減速度との比較に基づいて、システムは、自動ブレーキを実施することによって衝突の発生を予測するように構成される。
【0108】
一方、「ヒルホルダ」タイプのブレーキ要求は、ユーザがペダル/レバーを積極的に保持することなく、ブレーキでビークルを停止状態に維持する要求に相当する。特に、ユーザは、レバー2又はペダルを操作することにより、古典的なサービスブレーキでビークルを停止させる。ビークルが停止し、レバー2又はペダルに加えられたブレーキ動作が解除されると、ブレーキシステムのロジックは、道路の勾配を認識し、ビークルを静止状態に保つために車輪にどのトルクを実施するかを決定するように構成される。道路の勾配は、例えば、慣性ナビゲーションシステム又はIMUを介して推定することができる。
【国際調査報告】