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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】水素液化機
(51)【国際特許分類】
   F25J 1/00 20060101AFI20241108BHJP
   F25J 3/06 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
F25J1/00 C
F25J3/06
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533033
(86)(22)【出願日】2022-07-29
(85)【翻訳文提出日】2024-06-03
(86)【国際出願番号】 IB2022057094
(87)【国際公開番号】W WO2023105305
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】17/542,682
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591035368
【氏名又は名称】エア プロダクツ アンド ケミカルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】AIR PRODUCTS AND CHEMICALS INCORPORATED
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100202418
【弁理士】
【氏名又は名称】河原 肇
(74)【代理人】
【識別番号】100210697
【弁理士】
【氏名又は名称】日浅 里美
(72)【発明者】
【氏名】ポール ヒギンボサム
(72)【発明者】
【氏名】ジョン エイチ.ペトリック
(72)【発明者】
【氏名】クリストファー エフ.ハリス
【テーマコード(参考)】
4D047
【Fターム(参考)】
4D047AA02
4D047AB07
4D047CA04
4D047CA16
4D047DA01
(57)【要約】
【課題】水素を液化するための方法を提供する。
【解決手段】水素は、1つ、2つ、又は3つの異なる圧力での水素からの冷凍、並びに窒素冷凍サイクルを利用するプロセスを通じて液化される。水素が冷却及び液化されるにつれて、1つ以上の触媒段階を使用して、オルト水素をパラ水素に変換する。過冷却された液体水素は、オルト水素からパラ水素への変換の最終段階を供給して、発熱オルト水素からパラ水素への変換の最中の水素の気化を低減するか、又は省く。
【選択図】図1B
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素を液化するための方法であって、
オルト水素及びパラ水素を含む水素供給物を間接熱交換によって冷却して、低温水素流を形成することと、
前記低温水素流の少なくとも一部を膨張させて、部分的に気化した中間圧水素流を生成することと、
前記部分的に気化した中間圧水素流を分離して、中間圧水素蒸気流及び中間圧水素液体流を生成することと、
前記中間圧水素液体流の少なくとも一部を膨張させて、部分的に気化した低圧水素流を生成することと、
前記部分的に気化した低圧水素流、又は前記部分的に気化した低圧水素流に由来する流れを間接熱交換によって温めて、温められた低圧水素流を生成することと、
前記中間圧水素蒸気流を間接熱交換によって温めて、温められた中間圧水素流を生成することと、
前記温められた低圧水素流、前記温められた中間圧水素流、及び温められた中圧水素流を圧縮し、組み合わせて、再循環流を生成することと、
前記再循環流を間接熱交換によって冷却して、冷却された再循環流を生成することと、
前記冷却された再循環流の少なくとも一部を膨張させて、第1の低温中圧水素流を生成することと、
前記第1の低温中圧水素流を間接熱交換によって温めて、前記温められた中圧水素流を生成することと、
を含み、前記水素供給物を間接熱交換によって冷却するための冷却負荷を前記中間圧水素蒸気流によって少なくとも部分的に提供する、方法。
【請求項2】
前記低温水素流中において前記オルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換することを更に含み、
前記低温水素流の圧力が臨界圧力超であり、前記低温水素流の温度が臨界温度未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記中間圧水素液体流の少なくとも一部を間接熱交換によって温めて、第2の温められた中間圧水素流を生成することと、
前記第2の温められた中間圧水素流を、圧縮し、前記温められた低圧水素流、前記温められた中間圧水素流、及び温められた中圧水素流と組み合わせて、前記再循環流を生成することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記中間圧水素蒸気流及び/又は前記温められた中間圧水素流の一部を分割して、パージガス流を生成することを更に含み、
前記水素供給物及び前記パージガス流が、ヘリウム及びネオンからなる群から選択される1種以上の軽ガスを含み、
前記パージガス流が、前記水素供給物に比べて軽ガスについて富化されている、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記水素供給物中において前記オルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換することと、
前記冷却された再循環流中において前記オルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記水素供給物を冷却しながら分離して、前記水素供給物に比べて水素について富化された低温水素流及び前記水素供給物に比べて水素について枯渇した廃棄物流を形成することを更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記低温水素流の少なくとも一部を膨張させて、第2の中圧水素流を生成することと、
前記第2の中圧水素流及び前記第1の低温中圧水素流を、間接熱交換によって温め、組み合わせて、前記温められた中圧水素流を生成することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記冷却された再循環流の少なくとも一部を膨張させて、低温再循環流を生成することと、
前記低温再循環流を前記低温水素流と組み合わせることと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記再循環流が、90体積%超のパラ水素を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記部分的に気化した低圧水素流を分離して、低圧水素蒸気流及び低圧水素液体流を生成することと、
前記低圧水素液体流の少なくとも一部を分割して、低圧水素返送流を形成することと、
前記低圧水素返送流を、間接熱交換によって温め、前記低圧水素蒸気流と組み合わせて、前記温められた低圧水素流を生成することと、を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
窒素流の少なくとも一部を1つ以上の圧縮段階によって圧縮して、圧縮された窒素流を生成することと、
前記圧縮された窒素流を間接熱交換によって冷却して、冷却された圧縮された窒素流を生成することと、
前記冷却された圧縮された窒素流の少なくとも一部を膨張させて、部分的に凝縮された窒素流を生成することと、
前記部分的に凝縮された窒素流を分離して、窒素蒸気流及び窒素液体流を生成することと、
前記窒素蒸気流、及び前記窒素液体流の少なくとも一部を、間接熱交換によって温め、組み合わせて、窒素返送流を生成することと、
を更に含み、前記窒素流が、前記窒素返送流を含み、
前記水素供給物を間接熱交換によって冷却するための前記冷却負荷を、前記窒素蒸気流、及び前記窒素液体流の少なくとも一部によって少なくとも部分的に提供する、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記窒素液体流の少なくとも一部を分割して、液体窒素生成物を生成することと、
前記圧縮された窒素流の一部を、間接熱交換によって冷却し、分割して、低温窒素膨張機供給物を生成することと、
前記低温窒素膨張機供給物を膨張させて、第1の低温中圧窒素流を生成することと、
前記第1の低温中圧窒素流を間接熱交換によって温めて、第1の中圧窒素流を生成することと、
中圧窒素再循環流を前記1つ以上の圧縮段階の中間段階に供給することと、
を更に含み、前記中圧窒素再循環流が、前記第1の中圧窒素流を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記窒素流の一部を前記1つ以上の圧縮段階の中間段階から抽出して、温かい窒素膨張機供給物を生成することと、
前記温かい窒素膨張機供給物を膨張させて、第2の低温中圧窒素流を生成することと、
前記第2の低温中圧窒素流を間接熱交換によって温めて、第2の中圧窒素再循環流を生成することと、
を更に含み、前記中圧窒素再循環流が、前記第2の中圧窒素再循環流を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記冷却された圧縮された窒素流の少なくとも一部を膨張させて、第3の低温中圧窒素流を生成することと、
前記第3の低温中圧窒素流を間接熱交換によって温めて、第3の中圧窒素再循環流を生成することと、
を更に含み、前記中圧窒素再循環流が、前記第3の中圧窒素再循環流を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
水素供給物中においてオルト水素をパラ水素に変換する方法であって、前記プロセスが、
オルト水素及びパラ水素を含む前記水素供給物を間接熱交換によって冷却して、低温水素流を形成することであって、
前記低温水素流の圧力が臨界圧力超であり、前記低温水素流の温度が臨界温度未満である、形成すること、
前記低温水素流中において前記オルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換して、パラ水素が富化された低温水素流を生成することであって、
前記パラ水素が富化された低温水素流の圧力が前記臨界圧力超であり、前記パラ水素が富化された低温水素流の温度が前記臨界温度未満である、生成すること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
水素液化機は長い間存在しており、20世紀後半の宇宙計画を支える多大な開発が行われている。しかしながら、既存の最大の水素液化機は、約30トン/日の容量を有し、将来的に、水素経済を支えるためにより大きな液化機が必要になる可能性が高い。Essler et al.などのいくつかの研究論文(“Report on technology overview and barriers to energy-and cost-efficient large-scale hydrogen liquefiers”,Fuel Cells and Hydrogen Joint Undertaking,2012)が、電力消費及び資本コストを削減するためのより費用対効果のある水素液化機設計を探求するために出版された。
【0002】
典型的には、水素液化プロセスは、温冷凍(warm refrigeration)、供給物精製、低温冷凍、オルトパラ変換、圧力低減、及び貯蔵のステップを含み得る。従来技術のなかには、これらのステップの各々を構成するための多くの方法がある。温冷凍は、典型的には、液体窒素を使用するか、又は窒素若しくは混合冷媒のような作動流体を用いる冷凍サイクルを使用する。液化機プロセスの他の部分とは独立した低温冷凍サイクルのいくつかの変形形態がある。
【0003】
いくつかの構成では、供給水素は、水素サイクル(通常の水素又はパラ水素を使用する)であり得るか、又はヘリウム若しくはネオン若しくは混合物などのいくつかの他の成分を使用し得る、閉ループ低温冷凍システムから完全に分離されたままで保たれる。冷却された供給水素は、貯蔵前に過冷却され、そのため、フラッシュ蒸気が非常に少なく、貯蔵からのボイルオフは、典型的には、(例えば、エジェクタ内で)再圧縮され、低温冷凍サイクルによって再凝縮される。
【0004】
他の構成では、通常の水素供給物の一部は、冷凍サイクルに使用され、供給物に再循環されて、開ループで低温冷凍を提供する。
【0005】
更に別の構成では、パラ水素は、供給物とは独立的に再循環され、低温冷凍サイクルで使用される。冷凍サイクルの補充は、プロセスの低温端部のフラッシュガスから提供され、凝縮された再循環物の一部は、液体生成物の一部を提供する。
【0006】
冷凍サイクル内では、異なる数の膨張機が、直列若しくは並列で、又は両方の組み合わせで配置されてもよく、冷却は、膨張機間に直列で存在するか、又は存在していなくてもよい。水素との限られた膨張比にもかかわらず、ターボ膨張機が、それらの信頼性及び低メンテナンス性のために好ましいが、膨張エンジンも使用され得る。供給物(及び再循環物)のオルトパラ変換は、熱交換器内で、又は異なる温度で動作する一連の断熱変換反応器内で、連続的に行われ得る。
【0007】
液体水素生成におけるオルトパラ変換の必要性は、Gursu et al.(“An Optimization Study of Liquid Hydrogen Boil-Off Losses”,Int.J.Hydrogen Energy,17:3 227-236,1992)で説明されている。水素は、2つの異なる異性体のうちの1つとして生じる:同じ方向のプロトンの核スピンを有するオルト種及び反対方向の核スピンを有するパラ種。より高い温度では、平衡混合物は75%のオルト水素(通常の水素としても知られている)であるが、温度が0Kに近づくほど、平衡混合物は100%のパラ水素に近づく。オルト水素をパラ水素にする変換は、発熱性であり、そのため、75%のオルト水素を有する液体水素は、徐々にパラ水素に変換され、生成された熱は、液体水素のほぼ70%を沸騰させる。このリスクを低減するために、液体水素に、典型的には、最小割合のパラ水素の生成物仕様を与えて、ボイルオフを低減する。
【0008】
Ohira(“A Summary of Liquid Hydrogen and Cryogenic Technologies in Japan’s WE-NET Project”,AIP Conference Proceedings,710:27,2004)には、水素閉ループ低温冷凍システムを含む大規模な水素液化機に適切なプロセスが記載されている。Newton(US3380809)には、パラ水素を再循環させて低温冷凍を提供するプロセスが記載されている。
【0009】
既存の水素液化システムの上述の欠点のうちの少なくともいくつかを対処及び/又は改善する低温冷凍サイクルを有する大規模な水素液化機の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0010】
少なくともいくつかの実装形態では、本開示は、低温冷凍サイクルの改善に関し、好ましくは、大規模な水素液化機にとりわけ適用可能な使用のためのものである。
【0011】
小規模な液化機では、熱交換器の圧力降下がより高いにもかかわらず、水素再循環ループ内に比較的低い圧力を有して、体積流量をより高く保って、機械(圧縮機及び膨張機)効率を改善することが有利である。規模が増大するほど、水素再循環ループ内の圧力を増加させること及び体積流量を減少させることが、プロセス効率に有益である。大規模では、利用可能な圧縮機の容量を超える。現在実践されている低圧水素再循環ループの場合、圧縮機に入るより高い体積流量によって、本開示に示される実施形態よりも多くの圧縮機が生じる。
【0012】
水素の臨界点は、約13bar及び33Kであり、大規模な液化機の場合、膨張機の吐出圧力を、この13barの圧力に近づけ、それでいて臨界圧力未満のままであるように設定することが望ましい。しかしながら、圧力を増加させると、最も低温の膨張機を離れるガスの飽和温度が増加するため、膨張機冷却によって達成され得る最低温度が増加する。
【0013】
低温膨張機の吐出温度未満の冷却は、より低い圧力(典型的には大気圧に近い)での液体水素の一部の気化によるものである必要がある。主な再循環返送圧力(及びしたがって温度)が増加するほど、このプロセスは、低圧で沸騰させて再循環圧縮機の吸引へと圧縮する必要がある水素の量が増加するため、効率が低下する。また、低圧水素圧縮機のサイズ及びコストは、その流量が増加するほど増加する。
【0014】
更に、本開示の少なくともいくつかの実装形態では、低圧水素生成物と最終的な膨張機排気の中圧との間に中間圧返送を導入することによって、より高い圧力再循環返送を有する水素液化プロセスの効率を改善し、かつそのコストを削減する、手段が提供される。次いで、低圧圧縮機は、2つのセクションに分割され、吸引体積流量が低減される。中間圧返送流は、液体水素の圧力低減からのフラッシュガス、若しくは気化した液体水素、又は両方の組み合わせであってもよい。1つ又は2つと比較して、3つの圧力で水素を利用することによって、著しい電力節約を達成することができる。
【0015】
態様1:水素を液化するための方法であって、方法が、オルト水素及びパラ水素を含む水素供給物を間接熱交換によって冷却して、低温水素流を形成することと、低温水素流の少なくとも一部を膨張させて、部分的に気化した中間圧水素流を生成することと、部分的に気化した中間圧水素流を分離して、中間圧水素蒸気流及び中間圧水素液体流を生成することと、中間圧水素液体流の少なくとも一部を膨張させて、部分的に気化した低圧水素流を生成することと、部分的に気化した低圧水素流、又は部分的に気化した低圧水素流に由来する流れを間接熱交換によって温めて、温められた低圧水素流を生成することと、中間圧水素蒸気流を間接熱交換によって温めて、温められた中間圧水素流を生成することと、温められた低圧水素流、温められた中間圧水素流、及び温められた中圧水素流を圧縮し、組み合わせて、再循環流を生成することと、再循環流を間接熱交換によって冷却して、冷却された再循環流を生成することと、冷却された再循環流の少なくとも一部を膨張させて、第1の低温中圧水素流を生成することと、第1の低温中圧水素流を間接熱交換によって温めて、温められた中圧水素流を生成することと、を含み、水素供給物を間接熱交換によって冷却するための冷却負荷を中間圧水素蒸気流によって少なくとも部分的に提供する、方法。
態様2:低温水素流中においてオルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換することを更に含む、態様1に記載の方法。
態様3:低温水素流の圧力が臨界圧力超であり、低温水素流の温度が臨界温度未満である、態様2に記載の方法。
態様4:中間圧水素液体流の少なくとも一部を間接熱交換によって温めて、第2の温められた中間圧水素流を生成することと、第2の温められた中間圧水素流を、圧縮し、温められた低圧水素流、温められた中間圧水素流、及び温められた中圧水素流と組み合わせて、再循環流を生成することと、を更に含む、態様1~3のいずれかに記載の方法。
態様5:中間圧水素蒸気流及び/又は温められた中間圧水素流の一部を分割して、パージガス流を生成することを更に含み、水素供給物及びパージガス流が、ヘリウム及びネオンからなる群から選択される1種以上の軽ガスを含み、パージガス流が、水素供給物に比べて軽ガスについて富化されている、態様1~4のいずれかに記載の方法。
態様6:冷却された再循環流中においてオルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換することを更に含む、態様1~5のいずれかに記載の方法。
態様7:水素供給物を冷却しながら分離して、水素供給物に比べて水素について富化された低温水素流及び水素供給物に比べて水素について枯渇した廃棄物流を形成することを更に含む、態様1~6のいずれかに記載の方法。
態様8:冷却水素流の少なくとも一部を膨張させて、第2の中圧水素流を生成することと、第2の中圧水素流及び第1の低温中圧水素流を、間接熱交換によって温め、組み合わせて、温められた中圧水素流を生成することと、を更に含む、態様1~7のいずれかに記載の方法。
態様9:冷却された再循環流の少なくとも一部を膨張させて、低温再循環流を生成することと、低温再循環流を低温水素流と組み合わせることと、を更に含む、態様1~8のいずれかに記載の方法。
態様10:再循環流が、90体積%超のパラ水素を含む、態様1~9のいずれかに記載の方法。
態様11:窒素流の少なくとも一部を1つ以上の圧縮段階によって圧縮して、圧縮された窒素流を生成することと、圧縮された窒素流を間接熱交換によって冷却して、冷却された圧縮された窒素流を生成することと、冷却された圧縮された窒素流の少なくとも一部を膨張させて、部分的に凝縮された窒素流を生成することと、部分的に凝縮された窒素流を分離して、窒素蒸気流及び窒素液体流を生成することと、窒素蒸気流、及び窒素液体流の少なくとも一部を、間接熱交換によって温め、組み合わせて、窒素返送流を生成することと、を更に含み、窒素流が、窒素返送流を含み、水素供給物を間接熱交換によって冷却するための冷却負荷を、窒素蒸気流、及び窒素液体流の少なくとも一部によって少なくとも部分的に提供する、態様1~10のいずれかに記載の方法。
態様12:窒素液体流の少なくとも一部を分割して、液体窒素生成物を生成することを更に含む、態様11に記載の方法。
態様13:圧縮された窒素流の一部を、間接熱交換によって冷却し、分割して、低温窒素膨張機供給物を生成することと、低温窒素膨張機供給物を膨張させて、第1の低温中圧窒素流を生成することと、第1の低温中圧窒素流を間接熱交換によって温めて、第1の中圧窒素流を生成することと、中圧窒素再循環流を1つ以上の圧縮段階の中間段階に供給することと、を更に含み、中圧窒素再循環流が、第1の中圧窒素流を含む、態様11又は12に記載の方法。
態様14:窒素流の一部を1つ以上の圧縮段階の中間段階から抽出して、温かい窒素膨張機供給物を生成することと、温かい窒素膨張機供給物を膨張させて、第2の低温中圧窒素流を生成することと、第2の低温中圧窒素流を間接熱交換によって温めて、第2の中圧窒素再循環流を生成することと、を更に含み、中圧窒素再循環流が、第2の中圧窒素再循環流を含む、態様13に記載の方法。
態様15:冷却された圧縮された窒素流の少なくとも一部を膨張させて、第3の低温中圧窒素流を生成することと、第3の低温中圧窒素流を間接熱交換によって温めて、第3の中圧窒素再循環流を生成することと、を更に含み、中圧窒素再循環流が、第3の中圧窒素再循環流を含む、態様14に記載の方法。
態様16:部分的に気化した低圧水素流を分離して、低圧水素蒸気流及び低圧水素液体流を生成することと、低圧水素液体流の少なくとも一部を分割して、低圧水素返送流を形成することと、低圧水素返送流を、間接熱交換によって温め、低圧水素蒸気流と組み合わせて、温められた低圧水素流を生成することと、を更に含む、態様1~15のいずれかに記載の方法。
態様17:水素供給物中においてオルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換することを更に含む、態様1~16のいずれかに記載の方法。
態様18:水素供給物中においてオルト水素をパラ水素に変換する方法であって、方法が、オルト水素及びパラ水素を含む水素供給物を間接熱交換によって冷却して、低温水素流を形成することであって、低温水素流の圧力が臨界圧超であり、低温水素流の温度が臨界温度未満である、形成すること、低温水素流中においてオルト水素の少なくとも一部をパラ水素に触媒的に変換して、パラ水素が富化された低温水素流を生成することであって、パラ水素が富化された低温水素流の圧力が臨界圧超であり、パラ水素が富化された低温水素流の温度が臨界温度未満である、生成すること、を含む、方法。
【図面の簡単な説明】
【0016】
以下で、本開示は、添付の図面と併せて説明され、同様の数字は、同様の要素を示す。
【0017】
図1A】本開示の例示的な実施形態による水素液化プロセスの温かい端部を描くフローシートである。
図1B】本開示の例示的な実施形態による水素液化プロセスの低温端部を描くフローシートである。
図1C】本開示の追加の例示的な実施形態による、低圧の部分的に気化した水素を再加熱前に分離しない、図1Bの実施形態の変更形態を描くフローシートである。
図1D】本開示の追加の例示的な実施形態による、低温水素流が減圧された後に中間圧流を分割する、図1Bの実施形態の変更形態を描くフローシートである。
図1E】本開示の追加の例示的な実施形態による、中間圧液体を、貯蔵前に、気化する低圧液体に対して過冷却する、図1Bの実施形態の変更形態を描くフローシートである。
図1F】本開示の追加の例示的な実施形態による、冷却された再循環された水素が、変換された供給水素との混合前に、別個のオルトパラ変換反応器を通過する、図1Eの実施形態の変更形態を描くフローシートである。
図2A】本開示の追加の例示的な実施形態による、中間圧ループが省かれた図1Aの実施形態の変更形態を描くフローシートである。
図2B】本開示の追加の例示的な実施形態による、中間圧ループが省かれた図1Bの実施形態の変更形態を描くフローシートである。
図2C】本開示の追加の例示的な実施形態による、中間圧ループ及び中圧ループが省かれた図1Bの実施形態の変更形態を描くフローシートである。
図3】実施例1からの流れパラメータを示す表である。
図4】実施例2からの流れパラメータを示す表である。
図5】実施例3からの流れパラメータを示す表である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
続く発明を実施するための形態は、好ましい例示的な実施形態のみを提供し、本発明の範囲、適用可能性、又は構成を限定することを意図してはいない。むしろ、好ましい例示的な実施形態の続く発明を実施するための形態は、本発明の好ましい例示的な実施形態を実装するための有効な説明を当業者に提供するであろう。添付の特許請求の範囲に記載されているように、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく、要素の機能及び配置において様々な変更が行われ得る。
【0019】
本明細書で使用される場合、「a」又は「an」という冠詞は、本明細書及び特許請求の範囲に記載されている本発明の実施形態における任意の特徴に適用される場合、1つ以上を意味する。「a」及び「an」の使用は、そのような制限が具体的に言及されない限り、単一の特徴に意味を限定することはない。単数形又は複数形の名詞又は名詞句に先行する「この(the)」という冠詞は、特定の指定された特徴又は特定の指定された複数の特徴を示し、これが使用される文脈に応じて単数形又は複数形の含意を有し得る。
【0020】
第1のエンティティと第2のエンティティとの間に置かれている「及び/又は」という用語は、(1)第1のエンティティのみ、(2)第2のエンティティのみ、又は(3)第1のエンティティ及び第2のエンティティの意味のうちのいずれかを含む。3つ以上のエンティティの一覧の最後の2つのエンティティ間に置かれている「及び/又は」という用語は、この一覧内のエンティティの任意の特定の組み合わせを含む、一覧内のエンティティのうちの少なくとも1つを意味する。例えば、「A、B、及び/又はC」は、「A、及び/又はB、及び/又はC」と同じ意味を有し、A、B、及びCの以下の組み合わせを含む:(1)Aのみ、(2)Bのみ、(3)Cのみ、(4)A及びB、ただしCはなし、(5)A及びC、ただしBはなし、(6)B及びC、ただしAはなし、(7)A及びB及びC。
【0021】
「複数」という用語は、「2つ以上」を意味する。
【0022】
「任意の」という形容詞は、1つ、いくつか、又は全ての量を無差別に意味する。
【0023】
「少なくとも一部」の語句は、「一部又は全て」を意味する。「流れの少なくとも一部」は、これが由来する流れと同じ、各々の種の濃度が同じである組成を有する。
【0024】
本明細書で使用される場合、「第1の」、「第2の」、「第3の」などは、複数のステップ及び/又は特徴を区別するために使用され、そのように明示的に言及されない限り、総数、又は時間及び/若しくは空間における相対的な位置を示すものではない。
【0025】
「枯渇した」又は「リーン」という用語は、これが形成された元々の流れより少ないモルパーセント濃度の示された成分を有することを意味する。「枯渇した」及び「リーン」は、流れが、示された成分を完全に欠いていることを意味してはいない。
【0026】
「リッチ」又は「富化された」という用語は、これが形成された元々の流れより多いモルパーセント濃度の示された成分を有することを意味する。
【0027】
「間接熱交換」という用語は、当該の流体が互いに物理的に接触することなく、2種以上の流体間で顕熱及び/又は潜熱を伝達するプロセスを指す。熱は、熱交換器の壁を通じること、又は中間熱伝達流体の使用によることを含む、任意の数の適切な手段を介して伝達され得る。「高温の流れ」という用語は、これが入ったよりも低い温度で熱交換器を出る任意の流れを指す。逆に、「低温の流れ」は、これが入ったよりも高い温度で熱交換器を出るものである。
【0028】
図1Aは、水素液化機プロセスの温かい端部を示す。15~100barの間又は20~30barの間の圧力及び周囲温度の気体水素供給物100を温かい熱交換器1内で約80Kに冷却して、冷却された水素流101を生成する。挙げられる全ての圧力は、絶対単位である。図1Aに示される実施形態では、温かい熱交換器1内の冷却負荷は、温かい窒素冷却システムによって提供されるが、導入される液体窒素、液体天然ガス、又は混合冷媒を含む任意の適切な冷却流体が使用され得る。
【0029】
低圧補充窒素160を、温かい熱交換器1からの窒素返送流179と混合して、0.7~2barの間又は0.7~1.5barの間の圧力で窒素流161を形成し、これを、低圧窒素圧縮機29内で、4~16barの間又は6~12barの間の圧力に圧縮し、それから、第1の後部冷却機30内で冷却して、中圧窒素流163を形成する。中圧窒素流163を、中圧窒素圧縮機31内で、20~45barの間又は25~35barの間の圧力に圧縮し、それから、第2の後部冷却機32内で冷却して、中間窒素流166を形成する。次いで、中間窒素流166の少なくとも一部を、1つ以上の窒素コンパンダー内で、45~100barの間又は50~70barの間の圧力に圧縮して、圧縮された窒素流171を形成する。図1Aに示される実施形態では、第1の窒素コンパンダー33及び第2の窒素コンパンダー35を使用し、続いて、第3の後部冷却機34及び第4の後部冷却機36をそれぞれ使用する。次いで、圧縮された窒素流171の少なくとも一部を温かい熱交換器1内で冷却して、冷却された圧縮された窒素流172を形成する。冷却された圧縮された窒素流172の少なくとも一部を、バルブ40を横切って約1.1barに減圧して、部分的に凝縮された窒素流174を形成し、次いで、これを分離機41内で分離して、窒素蒸気流178及び窒素液体流175を生成する。窒素液体流175の少なくとも一部を分割して、液体窒素生成物176を形成してもよい。窒素液体177及び窒素蒸気流178の残りの部分を温かい熱交換器1内で温めて、気体水素供給物100を冷却するための冷却負荷を提供する。窒素液体177を温かい熱交換器1内で気化させ、温かい熱交換器1の前、内部、又は後で窒素蒸気流178と組み合わせて、窒素返送流179を形成してもよい。
【0030】
圧縮された窒素流171の一部を温かい熱交換器1内で分割及び冷却して、低温窒素膨張機供給物183を生成してもよい。低温窒素膨張機供給物183を、低温窒素膨張機38内で中圧窒素流163の圧力に一致するように減圧して、第1の低温中圧窒素流184を形成する。
【0031】
流れ166の一部を温かい熱交換器1内で分割及び冷却して、温かい窒素膨張機供給物186を形成してもよい。温かい窒素膨張機供給物186を、温かい窒素膨張機37内で中圧窒素流163の圧力に一致するように減圧して、第2の低温中圧窒素流187を形成する。
【0032】
低温窒素膨張機38及び温かい窒素膨張機37を使用して、プロセスにおいて電力を生成するために及び/又は圧縮機を機械的に駆動するために使用され得る、タービンとしての作用をもたらすことができる。図1Aにおいて、低温窒素膨張機38は、窒素コンパンダー35を駆動し、温かい窒素膨張機37は、窒素コンパンダー33を駆動する。
【0033】
冷却された圧縮された窒素流172の一部を分割し、バルブ39を横切って中圧窒素流163の圧力に一致するように減圧して、第3の低温中圧窒素流181を形成してもよい。
【0034】
第1の低温中圧窒素流184、第2の低温中圧窒素流187、及び第3の低温中圧窒素流181を、温かい熱交換器1内で温めてもよく、温かい熱交換器1の前、内部、又は後で組み合わせて、中圧窒素再循環流182を形成してもよい。次いで、中圧窒素再循環流182を、中圧窒素圧縮機31の前に、中圧窒素流163と組み合わせてもよい。
【0035】
1つ以上の段階を各々含む窒素圧縮機は各々、別個の機械であるか、又は多段階式機械へと組み合わされてもよい。例えば、温かい窒素膨張機37及び低温窒素膨張機38のうちの1つのみが使用される場合、窒素コンパンダー33及び35を単一の機械へと組み合わせてもよい。
【0036】
必要に応じて、液体水素温度での凍結を防止するために、メタン、酸素、及び窒素などの残留レベルの不純物を冷却された水素流101から除去してもよい。不純物は、典型的には、図1Aに示されるように、一方の吸着器が不純物を除去し、他方の吸着器が再生されるように操作され得る吸着器2a及び2bとしての温度スイング吸着によって除去される。
【0037】
次いで、精製された冷却された水素流102を、オルト水素がパラ水素に発熱的に変換される断熱オルトパラ変換反応器3に供給してもよい。次いで、水素流103を、温かい熱交換器1内で約80Kに再冷却して戻し、その後、冷却された水素流104は、水素液化機の低温端部に入る。
【0038】
図1Bは、冷却された水素流104を最初に低温熱交換器4内で約25Kに冷却する、水素液化機の低温端部の実施形態を示す。プロセスの最中に、冷却された水素流104は、オルトパラ変換の1つ以上の段階を経てもよい。図1Bに描かれる例示的な実施形態によると、オルトパラ変換反応器5、オルトパラ変換反応器6、及びオルトパラ変換反応器7の3つの反応器におけるオルトパラ変換の3つの初期段階がある。各々の連続するオルトパラ変換反応器は、より低い温度で動作し、平衡をパラ水素に向かってシフトさせ、可能な変換の量を増加させる。各々のオルトパラ変換反応の生成物は、水素流を再加熱する発熱反応を理由に、供給物が引き出されたよりも、温かい端部により近い低温熱交換器4に返送される。低温水素流111は、約25kで低温熱交換器4を出て、低温オルトパラ変換反応器8に入る。低温水素流111は、臨界温度未満の温度及び臨界圧力超の圧力を有する過冷却された液体である。より高い圧力での動作によって、低温オルトパラ変換反応器8は、触媒を損傷させ得る蒸気形成のリスクなく、より高い温度で動作することが可能になる。従来技術では、最終的なオルトパラ変換反応器は、典型的には、水素の沸点付近で、パラ水素へのより高い変換を呈するより低い温度で動作させられる。しかしながら、このアプローチは、典型的には、生成物仕様が必要とするよりも高いパラ水素画分を有する液体水素生成物を生成する。本開示の少なくともいくつかの実施形態によると、開示されているシステム及びプロセスによって、温度、したがってパラ水素画分を生成物仕様により近くして制御することが可能になり、不必要な発熱反応が最小限に抑えられ、それによって、既存の水素液化機と比較して、全体的なプロセス電力需要が低下する。
【0039】
パラ水素が富化された低温水素流112は、低温オルトパラ変換反応器8を出て、2つ以上の部分に分割され得る。図1Bに描かれる例示的な実施形態によると、2つの部分は、第1の低温水素画分114及び第2の低温水素画分139である。第1の冷却水素画分114を2~8barの間に減圧して、部分的に気化した中間圧水素流115を形成し、次いで、これを、中間圧分離機11内で中間圧水素流133及び中間圧水素流116に分離する。中間圧分離機11は、相分離をもたらし得る任意の容器又は塔であり得る。中間圧水素蒸気流133を低温熱交換器4内で加熱する。中間圧水素液体流132の少なくとも一部を、別個の熱交換器経路において、又は中間圧水素蒸気流133と混合された後のいずれかで、低温熱交換器4内で再加熱して、部分的に再加熱された中間圧水素流134を生成してもよい。
【0040】
中間圧水素液体流116の少なくとも一部を、0.7~2barの間又は0.7~1.5barの間の圧力に低減して、部分的に気化した低圧水素流124を形成し、次いで、これを、低圧分離機16内で低圧水素蒸気流126及び低圧水素液体流119に分離してもよい。低圧分離機16は、相分離をもたらし得る任意の容器又は塔であり得る。低圧水素液体流119は、流量制御バルブ13を介して、液体水素生成物121を引き出すことができる貯蔵タンク14に入る。貯蔵タンク14からのボイルオフ蒸気122を低圧水素蒸気流126と組み合わせてもよい。低圧水素液体流119の一部を分割して、低温熱交換器4内で低圧水素蒸気流126とともに加熱される低圧液体水素返送流125を形成してもよい。低圧水素返送流125を使用して、低温水素流111を、必要に応じて、別個の熱交換器経路において、又は低圧水素蒸気流127と混合された後のいずれかで、低温熱交換器4内で過冷却して、部分的に再加熱された低圧水素流128を生成してもよい。
【0041】
部分的に再加熱された低圧水素流128及び部分的に再加熱された中間圧水素流134は、図1Aに描かれる水素液化機の温かい端部に入り、これらは、温かい熱交換器1内で加熱されて、温められた低圧水素流129及び温められた中間圧水素流135をそれぞれ形成する。温められた低圧水素流129を低圧圧縮機17内で圧縮して、流れ130を形成し、次いで、これを中間段階冷却機18内で冷却して、流れ131を形成してもよい。次いで、温められた中間圧水素流135を流れ131と組み合わせ、中間圧圧縮機19内で圧縮して、流れ137を形成し、次いで、これを中間段階冷却機20内で冷却して、流れ138を形成してもよい。流れ138を中圧圧縮機21内で圧縮して、流れ144を形成し、次いで、これを後部冷却機22内で冷却して、25~100barの間又は30~65barの間の圧力で再循環流145を形成してもよい。低圧圧縮機17、中間圧圧縮機19、及び中圧圧縮機21は、各々1つ以上の段階を有する別個の機械であるか、又は単一の多段階式機械へと組み合わされてもよい。次いで、再循環流145を温かい熱交換器1内で冷却して、冷却された再循環流146を形成し、次いで、これをガード吸着器床23内で精製して、流れ147を形成し、次いで、これは、水素液化機の低温端部に戻る。
【0042】
供給物が、吸着を介して除去することが困難であるヘリウム及びネオンなどの少量の軽ガスを含有する場合、少なくともいくつかの例示的な実装形態では、プロセスは、パージ流(図示せず)を必要とし得る。パージ流を、中間圧水素蒸気流133及び/又は温められた中間圧水素流135の一部を分割することによって提供してもよい。パージ流を、これが気体水素供給物100に比べて軽ガスについて富化されるように、中間圧分離機11のオーバーヘッドから供給してもよい。
【0043】
図1Bに描かれる実施形態では、流れ147の少なくとも一部を、分割して流れ148を形成してもよく、また1つ以上の膨張段階にわたって膨張させてもよい。図1Bは、温かい膨張機24、中間温度膨張機25、及び低温膨張機26内で3つの膨張段階を使用する、実施形態を示す。流れ148を、温かい膨張機24及び中間温度膨張機25の後で低温熱交換器4内で冷却してもよく、また低温膨張機26の後で低温熱交換器4内で加熱してもよい。膨張機の1つ以上の段階を使用して、プロセスにおいて電力を生成するために及び/又は圧縮機を機械的に駆動するために使用され得る、タービンとしての作用をもたらすために使用してもよい。1つ以上の段階膨張の後に、4~16barの間又は6~12barの間の圧力の第1の低温中圧水素流153を低温熱交換器4内で温めて、部分的に再加熱された中圧水素流141を形成し、これを、図1Aに描かれる実施形態に示されるように、水素液化機の温かい端部に返送し、これを温かい熱交換器1内で温めて、温められた中圧水素流142を形成する。次いで、温められた中圧水素流142を中圧圧縮機21内で圧縮する。
【0044】
図1Bに描かれる実施形態では、流れ147の少なくとも一部を分割し、低温熱交換器4内で冷却して、流れ154を形成する。次いで、流れ154を、バルブ27を横切って減圧して、低温水素流111と組み合わされ得る低温再循環流155を形成してもよい。少なくともいくつかの態様では、水素液化機の温かい端部において、例えば、低圧圧縮機17、中間圧圧縮機19、及び中圧圧縮機21内で、パラ水素がオルト水素に変換したという懸念がない場合、低温再循環流155をパラ水素が富化された低温水素流112と組み合わせてもよい。
【0045】
温かい熱交換器1及び低温熱交換器4を、単一の熱交換器に統合しても、又は前者の場合のより低い資本コスト若しくは後者の操作の容易さによって規定されるようなより小さな熱交換器へと更に細分化してもよい。
【0046】
水素冷凍回路は、85%超のパラ水素、又は90%超のパラ水素、又は95%超のパラ水素である水素作動流体を用いて機能する開ループとして機能する。ほぼ純粋なパラ水素を用いて水素冷凍回路を動作させることには、貯蔵タンク14及び/又は充填されているタンカーからのほぼ純粋なパラ水素であるボイルオフ蒸気122を、低圧圧縮機17内に返送し、再圧縮することができるという利点がある。本開示はまた、他の低温水素冷凍システム、例えば、通常の水素が再循環及び膨張される閉冷媒又は開ループシステムを有するものに適用され得る。
【0047】
第2の低温水素画分139を、バルブ10を横切って、4~16barの間又は6~12barの間の圧力に低減して、第2の低温中圧水素流140を形成する。第2の低温中圧水素流140を、第1の低温中圧水素流153から別個の経路において、又は低温熱交換器4及び/若しくは温かい熱交換器1の前、後若しくは内部で第1の低温中圧水素流153と組み合わされた後のいずれかで、最初に低温熱交換器4内で、次いで、温かい熱交換器1内で温める。第1の低温中圧水素流153から分離して保たれる場合、温められた第2の中圧水素流140も中圧圧縮機21内で圧縮してもよい。
【0048】
図1Cは、中圧水素液体流116の少なくとも一部を分割して、流れ117を形成する、図1Bの代替的な実施形態を示す。流れ117の少なくとも一部を0.7bar~2barの間又は0.7bar~1.5barの間の圧力に低減して、部分的に気化した低圧水素流124を形成し、次いで、これを低温熱交換器4内で温める。流れ117の少なくとも一部を分割して、低圧水素液体流119を形成し、次いで、これを減圧し、液体水素生成物121を引き出すことができる貯蔵タンク14に送る。流れ117も、減圧される前に、低温熱交換器4内で過冷却してもよい(図示せず)。この構成は、液体を貯蔵部に移送するために利用可能なより多くの圧力を有していてもよく、低圧分離機の設置を回避するが、貯蔵部からのボイルオフ蒸気122の量は、供給物からの増加したフラッシュ蒸気によって増加し得る。
【0049】
図1Dは、パラ水素が富化された低温水素流112を、2つ以上の画分に分割される前に、最初に約10barに減圧する、図1Bの代替的な実施形態を示す。図1Dに描かれる実施形態では、パラ水素が富化された低温水素流112を、減圧し、次いで、第1の低温中圧水素流191及び第2の低温中圧水素流140に分割する。この構成は、図1Bに描かれる実施形態に代替的な制御バルブ構成を提供する。
【0050】
図1Eは、中間圧液体水素流117を第1の中間圧液体画分223及び第2の中間圧液体画分218に分割する、図1Bの代替的な実施形態を示す。第1の中間圧液体画分223を、図1Bに描かれる実施形態にあるように、バルブ15を横切って、0.7bar~2barの間又は0.7bar~1.5barの間の圧力に低減する。第2の中間圧液体画分218を、沸騰している低圧液体水素に対して、低圧分離機16内の過冷却機212内で冷却して、バルブ13を横切って減圧されて貯蔵タンク14に供給される過冷却された液体水素生成物119aを形成する。過冷却された液体水素生成物119aは、図1Bに描かれる実施形態における液体水素貯蔵タンク14よりも高い圧力にあり、これは、プロセスの残りに関して、より高い高さ及び/又はより長い距離に位置している貯蔵タンクへの移送を促進し得る。
【0051】
図1Fは、低温再循環流155を第2の低温オルトパラ変換反応器328内で反応させて、パラ水素が富化された低温再循環流356を形成する、図1Eの代替的な実施形態を示す。パラ水素が富化された低温再循環流を、バルブ329を横切って減圧し、部分的に気化した中間圧水素流115と組み合わせる。この構成には、気体水素供給物100及び再循環流145の圧力がより容易に独立的に変化し得るという利点がある。
【0052】
図1A~1Fに示される実施形態に存在する中間圧水素ループは、プロセスを簡素化するために省かれ得る。中間圧水素ループなしの水素液化機プロセスの温かい端部は、図2Aに描かれる追加の実施形態に示される。窒素冷凍ループ、水素冷却、及び精製ステップは、図1Aに描かれる実施形態と類似であり得る。部分的に再加熱された低圧水素流128を温かい熱交換器1内で加熱して、温められた低圧水素流129を生成し、次いで、これを低圧圧縮機17内で圧縮して、流れ130を形成し、次いで、これを中間段階冷却機18内で冷却して、流れ131を形成してもよい。次いで、流れ131を中間圧圧縮機19内で圧縮して、流れ137を形成し、次いで、これを中間段階冷却機20内で冷却して、流れ138を形成してもよい。部分的に再加熱された中圧水素流141を温かい熱交換器1内で加熱して、温められた中圧水素流142を生成し、次いで、これを流れ138と組み合わせて、流れ143を生成してもよい。流れ143を中圧圧縮機21内で圧縮して、流れ144を形成し、次いで、これを後部冷却機22内で冷却して、25~100barの間又は30~65barの間の圧力で再循環流145を形成してもよい。低圧圧縮機17、中間圧圧縮機19、及び中圧圧縮機21は、別個の機械であるか、又は単一の多段階式機械に組み合わされてもよい。図2Aに示される例示的な実施形態は、別個の機械として中間圧圧縮機17及び19を描く。次いで、再循環流145を温かい熱交換器1内で冷却して、冷却された再循環流146を形成し、次いで、これをガード吸着器床23内で精製して、流れ147を形成し、次いで、これは、水素液化機の低温端部に戻る。
【0053】
図2Bに描かれる実施形態は、低圧ループ及び中圧ループを有する水素液化機プロセスの低温端部を示す。このプロセスは、第1の低温水素画分114を、0.7bar~2barの間又は0.7bar~1.5barの間に減圧して、部分的に気化した低圧水素流124を形成するという点で、図1Bに描かれる実施形態とは異なる。部分的に気化した低圧水素流124を、図2Bに示される実施形態にあるように、低圧分離機16内で低圧水素蒸気流126及び低圧水素液体流119に分離しても、又は図1Cに示される実施形態にあるように、液体生成物部分及び低温熱交換器4に直接返送される部分に分割してもよい。
【0054】
図2Cに描かれる実施形態は、低圧ループのみを有する水素液化機プロセスの低温端部を示す。パラ水素が富化された低温水素流112を分割せず、むしろ、流れ全体を0.7~2barの間又は0.7~1.5barの間に減圧して、部分的に気化した低圧水素流124を形成する。部分的に気化した低圧水素流124を、図2Cに示される実施形態にあるように、低圧分離機16内で低圧水素蒸気流126及び低圧水素液体流119に分離するか、又は図1Cに示される実施形態にあるように、液体生成物部分及び低温熱交換器4に直接返送される部分に分割してもよい。
【0055】
本開示の他の実施形態(図示せず)は、図1Bに示される実施形態に示されるように、以下のうちのいずれかが、ワンスルー式の構成ではなく、関連する分離機を有するサーモサイフォン配置で沸騰され得る、水素液化機を含み得る:第2の低温中圧水素流140、中間圧水素液体流132、及び/又は低圧液体水素返送流125。
【0056】
実施例1
図1A及び1Bに描かれるプロセスの実施形態のコンピュータシミュレーションを、Aspen Technology,Incから入手可能な商用プロセスシミュレーションソフトウェアパッケージであるAspen Plus(商標)を使用して実行した。供給物流は、75%のオルト水素及び25%のパラ水素の周囲平衡濃度で、305K及び31barにおいて純粋な水素であった。組成、圧力、温度、及び流量などの主要な流れパラメータは、総電力消費とともに、図3の表に示す。
【0057】
低温水素流111を高圧で過冷却することによって、パラ水素が富化された低温水素流112は、オルト水素からパラ水素への発熱反応が完了した後に、液相中に留まることが可能である。段階におけるその後のフラッシングによって、より多くの蒸気をより高い圧力で再循環させること、電力需要を低下させること、及び低圧圧縮機17の物理的サイズを縮小することが可能になる。
【0058】
実施例2
中間圧ループの利点は、ループを欠く本開示の実施形態と比較することによって最も良好に示すことができる。図2A及び2Bのプロセスのコンピュータシミュレーションは、Aspen Plus(商標)を使用して実行した。供給物流は、75%のオルト水素及び25%のパラ水素の周囲平衡濃度で、305K及び31barにおいて純粋な水素であった。組成、圧力、温度、及び流量などの主要な流れパラメータは、総電力消費とともに、図4の表に示す。実施例1との比較は、中間圧ループの除去によって、電力消費における2.5%の増加が生じることを示す。
【0059】
実施例3
低圧ループのみを有する最も単純なサイクルもモデル化した。図2A及び2Cに描かれる実施形態のコンピュータシミュレーションは、Aspen Plus(商標)を使用して実行した。供給物流は、75%のオルト水素及び25%のパラ水素の周囲平衡濃度で、305K及び31barにおいて純粋な水素であった。組成、圧力、温度、及び流量などの主要な流れパラメータは、総電力消費とともに、図5の表に示す。実施例1との比較は、中間圧ループ及び中圧ループの除去によって、電力消費における4.7%の増加が生じることを示す。
【0060】
本開示の原理を好ましい実施形態に関連して先に説明したが、この説明は、例示的にのみ行われ、本発明の範囲を限定するものではないと明確に理解されたい。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2A
図2B
図2C
図3
図4
図5
【国際調査報告】