(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】ガラス繊維を再生するシステム及び方法
(51)【国際特許分類】
B29B 17/00 20060101AFI20241108BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B29B17/00 ZAB
C08J11/12
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533088
(86)(22)【出願日】2022-12-06
(85)【翻訳文提出日】2024-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2022084673
(87)【国際公開番号】W WO2023104837
(87)【国際公開日】2023-06-15
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524207770
【氏名又は名称】コンポジット リサイクリング エスエー
【氏名又は名称原語表記】COMPOSITE RECYCLING SA
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ガロ, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】アンダーソン, ミッチェル
(72)【発明者】
【氏名】ペルベン, ギヨーム
【テーマコード(参考)】
4F401
【Fターム(参考)】
4F401AA27
4F401AB06
4F401AD08
4F401BA02
4F401BA13
4F401CA70
4F401CA87
4F401CA90
4F401CB01
4F401CB14
4F401CB32
4F401DA01
4F401DA08
4F401EA38
4F401FA01Y
4F401FA11Y
(57)【要約】
素材材料からガラス繊維を再生するシステムが提供される。システムは、素材材料を低酸素環境中で保持するためのチャンバと、素材材料を加熱するための分散熱源を有する熱分解装置とを含む。分散熱源は、素材材料を均一に加熱し、それによって素材材料がガラス繊維へと変えられる。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材材料からガラス繊維を再生するシステムであって、
前記素材材料を低酸素環境中で保持するためのチャンバと、
前記素材材料を加熱するための分散熱源を有する熱分解装置と、
を備え、
前記分散熱源が、前記素材材料を前記ガラス繊維に変えるように前記素材材料を均一に加熱する、
システム。
【請求項2】
前記チャンバが、加熱の間に前記素材材料を平坦化するための素材材料平坦化装置をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記低酸素環境の体積が、前記素材材料が平坦化されると減少される、請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
前記素材材料平坦化装置が、前記分散熱源を含み、前記分散熱源が、前記素材材料平坦化装置とともに動く、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記低酸素環境が、真空である、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記素材材料が加熱されると放出されるガスを収集するための回収器をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記ガスから油を回収するための凝縮器をさらに備える、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記ガスによって燃料供給されるパワーシステムをさらに備え、前記パワーシステムが、前記熱分解装置に動力供給する、請求項6に記載のシステム。
【請求項9】
前記熱分解装置によって放出される前記ガスを貯蔵するための貯蔵システムをさらに備える、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
前記分散熱源が、ガスバーナである、請求項1に記載のシステム。
【請求項11】
前記分散熱源が、電気発熱体である、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
放出される前記ガスから固体粒子を除去するためのフィルタをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項13】
複数の素材材料を熱分解するための複数のチャンバと、
前記チャンバのうちの1つ又は複数における前記低酸素環境を、前記複数のチャンバのうちの他のチャンバにおける前記低酸素環境に依存せずに制御する、真空制御機構と、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項14】
複数の素材材料を熱分解するための複数のチャンバと、
前記チャンバのうちの1つ又は複数における温度を、前記複数のチャンバのうちの他のチャンバにおける前記温度に依存せずに制御する、温度制御機構と、
をさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項15】
前記熱分解装置に対する前記素材材料の装填及び取り出しのうちの1つ又は複数を行うように構成されたラックシステムをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記熱分解装置が、ドアをさらに備え、前記ラックシステムが、装填及び取り出しのうちの1つ又は複数を行う間、前記ドアの内面によって少なくとも部分的に支持される、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記熱分解装置が、爆発ハッチをさらに備え、前記爆発ハッチが、爆発の際に弱連結になるように構成されている、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
250アンペア、400ボルト3相電力により作動されるパワーキャビネットをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項19】
前記熱分解装置の少なくとも1つのセンサからの少なくとも1つの情報に基づいて無線制御をもたらすように構成された制御システムキャビネットをさらに備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項20】
前記熱分解装置が、断熱材により断熱され、前記断熱材が層状になっている、請求項1に記載のシステム。
【請求項21】
前記熱分解装置が、重量計をさらに含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項22】
前記重量計が、処理される原材料、熱分解油の蓄積量、及び熱分解油の貯蔵量のうちの1つ又は複数を計量するように構成されている、請求項21に記載のシステム。
【請求項23】
素材材料からガラス繊維を再生する方法であって、
前記素材材料を低酸素環境中で保持するステップと、
前記低酸素環境中で前記素材材料を均一に加熱するステップと、
前記素材材料を前記ガラス繊維に変えるステップと、
を含む、方法。
【請求項24】
前記素材材料が加熱されると放出されるガスを収集するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
熱分解装置に前記ガスにより動力供給して前記素材材料に対して加熱するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記ガスを凝縮して、前記素材材料から放出される油を回収するステップをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
1つ又は複数のチャンバの温度及び酸素レベルのうちの1つ又は複数を独立的に制御するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
加熱の間、前記素材材料を平坦化するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
熱分解の間、前記素材材料を静止面に付着させるステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項30】
大気環境中で前記ガラス繊維を加熱するステップと、前記ガラス繊維から炭素コーティングを除去するステップとをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項31】
前記ガラス繊維に表面処理を施して、前記ガラス繊維の表面における摩擦係数を減少させるステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項32】
前記ガラス繊維をタンブリングして、前記ガラス繊維の配向をランダム化するステップをさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項33】
前記素材材料をラックシステムに装填するステップと、
前記ラックシステムの少なくとも一部を前記低酸素環境へと移動させることによって、前記ラックシステムとともに前記素材材料を前記低酸素環境にもたらすステップと、
前記ラックシステムの少なくとも一部を前記低酸素環境から取り出すことによって、前記ラックシステムとともに前記素材材料を前記低酸素環境から取り出すステップと、
をさらに含む、請求項23に記載の方法。
【請求項34】
前記ラックシステムが、少なくとも1つのラックを支持するように構成されたラックフレームをさらに備え、前記ラックが、前記ラックフレームから取り外し可能であり、前記ラックシステムに装填するステップが、前記ラックに素材材料を装填することと、前記ラックを前記ラックフレームに取り付けることとをさらに含む、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記ラックが、前記低酸素環境への投入、及び前記低酸素環境から外への排出のうちの1つ又は複数がなされる、請求項34に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001]本明細書に開示される実施形態は、素材材料からガラス繊維を再生することに関し、詳細には、熱分解装置によって放出されるガスにより熱分解装置に動力供給してガラス繊維を再生するシステム及び方法に関する。
【0002】
[概論]
[0002]ガラス繊維強化プラスチック(GFRP)は、建材、特にボート及び風車などの乗物及び構造物によく使用されている。これらの乗物及び構造物は、老朽化する、又は使われなくなる。例えば、1960年代後半から、24メートル未満のボートの95%が、有効寿命が30~40年のGFRPから作られている。これは、20年を上回るGFRPボートがそれらのライフサイクルの終わりを迎え、廃棄が必要であることを意味する。レクリエーションボート連合(recreation boating federations)は、カナダだけでリサイクルされる予定のボートの数は、約600万台という数になると推定している。
【0003】
[0003]廃棄費用が高く、そのことが所有者に、保管費用を招く繊維ガラスの乗物及び構造物を持ち続けさせることがある。或いは、所有者は、それらを見苦しい方法及び/又は不法な方法で捨てる場合がある。乗物及び構造物が責任をもって処分されるとしても、処分方法は、GFRPのガラス繊維から樹脂を分離する難題があるため、破砕及び埋め立て、又はセメントキルンでの焼成に限定されている。これらの処分方法は、ともに高価であり、重大な環境上の結果を有する。
【0004】
[0004]近年、熱分解を用いてGFRP素材材料の樹脂を分離することに成功しており、後には炭素の粉塵及び細断されたガラス繊維が残る。これらのシステムは、高い温度勾配を回避するために、熱分解装置の熱の均一な分配を必要とする。高い温度勾配は、回収される産物を壊す、プロセス効率を下げる、及び/又はシステムに深刻な故障を引き起こすことがある。しばしばタンブリング(tumbling)又はかき混ぜによる、素材材料の攪拌は、典型的には、熱分解装置中に点源(point source)からの熱を分配することに使用される。残念ながら、この攪拌は、典型的には、繊維が受ける力及び摩擦並びにガラス繊維の周期的な曲げにより、作り出されるガラス繊維の品質を低下させる。さらに、この熱分解法に関係する、特に熱分解チャンバにおいて必要な時間に関係する費用が高い。
【0005】
[0005]したがって、特に、ガラス繊維の品質をより良く維持する、及び/又は、熱分解中に放出されるガスを回収しそのガスにより熱分解装置に動力供給する、素材材料からガラス繊維を再生する改善されたシステム及び方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
[0006]素材材料からガラス繊維を再生するシステムが提供される。システムは、素材材料を低酸素環境中で保持するためのチャンバと、素材材料を加熱するための分散熱源を有する熱分解装置とを含む。分散熱源は、素材材料をガラス繊維に変える(reduce)ように素材材料を均一に加熱する。
【0007】
[0007]チャンバは、加熱の間に素材材料を平坦化するための素材材料平坦化装置をさらに含むことができる。低酸素環境の体積は、素材材料が平坦化されると減少され得る。素材材料平坦化装置は、分散熱源を含むことができ、分散熱源は、素材材料平坦化装置とともに動くことができる。
【0008】
[0008]低酸素環境は、真空によって引き起こされ得る。
【0009】
[0009]システムは、素材材料が加熱されると放出されるガスを収集するための回収器をさらに含むことができる。
【0010】
[0010]システムは、ガスから油を回収するための凝縮器をさらに含むことができる。
【0011】
[0011]システムは、ガスによって燃料供給されるパワーシステムをさらに含むことができ、パワーシステムが、熱分解装置に動力供給する。
【0012】
[0012]システムは、熱分解装置によって放出されるガスを貯蔵するための貯蔵システムをさらに含むことができる。
【0013】
[0013]分散熱源は、ガスバーナであってもよい。
【0014】
[0014]分散熱源は、電気発熱体であってもよい。
【0015】
[0015]システムは、放出されるガスから固体粒子を除去するためのフィルタをさらに含むことができる。
【0016】
[0016]システムは、複数の素材材料を熱分解するための複数のチャンバと、チャンバのうちの1つ又は複数における低酸素環境を、複数のチャンバのうちの他のチャンバにおける低酸素環境に依存せずに制御する、真空制御機構とをさらに含むことができる。
【0017】
[0017]システムは、複数の素材材料を熱分解するための複数のチャンバと、チャンバのうちの1つ又は複数における温度を、複数のチャンバのうちの他のチャンバにおける温度に依存せずに制御する、温度制御機構とをさらに含むことができる。
【0018】
[0018]素材材料からガラス繊維を再生する方法が提供される。方法は、素材材料を低酸素環境中で保持するステップと、低酸素環境中で素材材料を均一に加熱するステップと、素材材料をガラス繊維に変えるステップとを含む。
【0019】
[0019]方法は、素材材料が加熱されると放出されるガスを収集するステップをさらに含むことができる。
【0020】
[0020]方法は、熱分解装置にガスにより動力供給して素材材料に対して加熱するステップをさらに含むことができる。
【0021】
[0021]方法は、ガスを凝縮して、素材材料から放出される油を回収するステップをさらに含むことができる。
【0022】
[0022]方法は、1つ又は複数のチャンバの温度及び酸素レベルのうちの1つ又は複数を独立的に制御するステップをさらに含むことができる。
【0023】
[0023]方法は、加熱の間、素材材料を平坦化するステップをさらに含むことができる。
【0024】
[0024]方法は、熱分解の間、素材材料を静止面に付着させるステップをさらに含むことができる。
【0025】
[0025]方法は、大気環境中でガラス繊維を加熱するステップと、ガラス繊維から炭素コーティングを除去するステップとをさらに含むことができる。
【0026】
[0026]方法は、ガラス繊維に表面処理を施して、ガラス繊維の表面における摩擦係数を減少させるステップをさらに含むことができる。
【0027】
[0027]方法は、ガラス繊維をタンブリングして、ガラス繊維の配向をランダム化するステップをさらに含むことができる。
【0028】
[0028]本明細書に含まれる図面は、本明細書の物品、方法及び装置の様々な例を説明するためのものである。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】一実施形態による、熱分解システムのブロック図である。
【
図2】一実施形態による、
図1の熱分解システムの図である。
【
図3】一実施形態による、
図1の熱分解システムの図である。
【
図4】一実施形態による、
図1の熱分解システムの概略的な斜視図である。
【
図5】一実施形態による、開構成にある
図4の熱分解装置の概略的な側面図である。
【
図6】一実施形態による、閉構成にある
図5の熱分解装置の側面断面図である。
【
図7A】一実施形態による、平坦化装置の断面ブロック図である。
【
図7B】一実施形態による、平坦化装置の断面ブロック図である。
【
図8A】一実施形態による、素材材料の写真である。
【
図8B】一実施形態による、素材材料の写真である。
【
図9】一実施形態による、熱分解後のガラス繊維の写真である。
【
図10】一実施形態による、熱分解後のガラス繊維の写真である。
【
図11】一実施形態による、ガラス繊維を再生する方法のフローチャートである。
【0030】
[詳細な説明]
[0029]以下において、様々な装置又はプロセスが、請求の各実施形態の一例を提供するように述べられる。以下に記載される実施形態は、請求の実施形態を限定するものではなく、任意の請求の実施形態は、以下に記載のものとは異なるプロセス又は装置を包含することができる。請求の実施形態は、以下に記載される任意の1つの装置若しくはプロセスの特徴のすべてを有する装置若しくはプロセス、又は、以下に記載される装置の複数若しくはすべてに共通する特徴に限定されない。
【0031】
[0030]
図1を参照すると、図面には、一実施形態による、素材材料102からガラス繊維を回収する熱分解システム100が示されている。
【0032】
[0031]素材材料102は、熱分解装置106内で加熱されるとガス104と固体残物に分離する任意の材料とすることができる。素材材料102は、GFRPであってもよい。GFRPは、熱分解装置106内での加熱後、ガラス繊維を含む固体残物が残る。素材材料102は、サンドイッチ構造のGFRP又はガラス繊維/ポリマー複合材料のうちの1つ又は複数を含むことができる。これらのGFRPは、多くが環境及び費用効率の良い廃棄/リサイクル解決策を必要とする、ボート及び風車向けの典型的な建材である。
【0033】
[0032]熱分解システム100は、熱分解装置106を含む。熱分解装置106は、素材材料102を固体残物とガス104とに分離するように、素材材料102を加熱するように構成される。素材材料102は、熱分解装置106のサイズに基づいて制限され得る。
【0034】
[0033]熱分解システム100は、低酸素環境中で素材材料102を保持するチャンバ108を含む。熱分解システム100は、素材材料102を加熱するための分散熱源103を有する熱分解装置106を含む。分散熱源103は、素材材料102をガラス繊維に変えるように、素材材料102を均一に加熱する。
【0035】
[0034]分散熱源103は、素材材料103の長さ全体にわたって均一な熱をもたらす。チャンバ108は、チャンバ108のある領域又は素材材料102上における熱の集中がないように、素材材料102が分散熱源103全体に一様に分配される熱を受けたように、素材材料102を保持する。分散熱源103の形状は、素材材料102の形状、及び/又はチャンバの形状に対応する。例えば、素材材料102が細長く比較的平らな場合、チャンバ108は細長く平らであり、分散熱源103も細長く平らである。
【0036】
[0035]熱分解装置106は、複数のチャンバ108を含んでもよい。各チャンバ108は、他のチャンバに関して熱分解装置106のあるレベルにあってもよい。一実施形態において、各レベルのチャンバにもたらされる熱は、個別に制御される。この個別の制御は、個別に制御される加熱ゾーンをもたらす。これは、素材材料102の熱分解について、複数のレベルをもたらすことによって、ペイロードを最大にする。
【0037】
[0036]熱分解装置106は、伸縮継手を含むことができる。伸縮継手は、管システムからの熱伸び応力を軽減するように取り付けられる。
【0038】
[0037]熱分解の間、酸素制御システム118は、チャンバ108内に低酸素環境をもたらし、それを維持する。低酸素環境は、熱分解の間の素材材料102の燃焼を防ぎ、それによって素材材料102の成分は燃えずに蒸発する。酸素制御システム118は、真空又は中性雰囲気を含む1つ又は複数の環境状態を作り出すことによって、この低酸素環境をもたらし、維持することができる。低酸素環境が真空によって実現される場合、酸素制御システム118は、10mbar以下の圧力をもたらす。低酸素環境が中性雰囲気によって実現される場合、酸素制御システム118は、酸素を置き換えるように中性ガスを供給することによって、チャンバ106内の酸素を排気する。この中性ガスは、窒素を含むことができる。中性ガスは、パイプフィードスルー(pipe feedthrough)によって供給され得る。パイプフィードスルーは、DN20ISOmmパイプフィードスルーとすることができる。
【0039】
[0038]チャンバ108は、システムへの空気(酸素)の漏洩を防ぐための二重シールシステムにより密封され得る。空気の漏洩が少ないほど、より高質の熱分解が実現され、火災及び/又は爆発のリスクが最小になる。
【0040】
[0039]チャンバ108は、漏洩検出システムをさらに含むことができる。漏洩検出システムは、漏洩の場合、オペレータに警告することができる。漏洩検出システムはさらに、漏洩の場合における火災及び/又は爆発などの問題を回避するために、熱分解装置を制御することができる。制御は、熱分解装置106の熱源の停止を含むことができる。
【0041】
[0040]熱分解装置106は、爆発ハッチ(explosion hatch)をさらに含むことができる。爆発ハッチは、爆発の際に弱連結になるように設計される。爆発ハッチは、熱分解装置の頂部、底部又はその両方に配置され得る。爆発ハッチは、連結ボルトを含むことができる。連結ボルトは、爆発ハッチを熱分解装置106に連結する。爆発の際、連結ボルトは、変形及び/又は変位され得る。この変形/変位は、万一の爆発の際に圧力開放弁として働く。
【0042】
[0041]熱分解システム100は、熱分解装置106に動力をもたらすために、熱分解中に放出されるガス104を回収する。ガス104は、熱分解装置106から、ガス104を集める回収器110へと放出される。回収器110はさらに、ガスを処理してパワーシステム114のための燃料112にすることができる。
【0043】
[0042]パワーシステム114は、燃料112を、熱分解装置106の動力源116に変える。パワーシステム114は、動力源116を熱分解装置106の方に向ける。いくつかの構成では、パワーシステム114の構成要素は、熱分解装置106に収容され得る。
【0044】
[0043]熱分解装置は、熱分解プロセスの間、素材材料102の樹脂がガラス繊維から分離されるとき、ガス104を生じさせる。熱分解の間、樹脂の成分は、パワーシステム114によって熱分解装置106へと、分散熱源103によってもたらされる熱によって蒸発する。熱分解の動作温度は、300℃~700℃の範囲にある。一実施形態では、公称運転動作温度は550℃に維持される。熱分解装置106はさらに、4時間の処理時間の間、素材材料102を加熱することができる。処理時間は、素材材料102の温度が徐々に上げられる40分の立ち上げ時間を含むことができる。火力は、最低100kWとなるように計算され得る。この火力で、温度は、500kgのGFPRを40分で400℃から公称温度まで上げることができる。残りの3時間20分は、一般的に、処理時間と称される。蒸発の間に生成される樹脂の成分、及びガス104の組成中の樹脂成分の比率は、熱分解の間に分散熱源103によってチャンバ108内で維持される温度に応じて決まる。
【0045】
[0044]より高い温度は、より短時間でより望ましい分子を生成することができる。例えば、より高い温度は、より高比率でH2、CH4、及びC2H6分子などの非凝縮性ガス、プロパンなどのC3含有分子、ブタンなどのC4含有分子、及びより低比率でCO、CO2を生成する。より高い温度は、さらに、より高比率でベンゼン、トルエン、スチレン及びエチルベンゼンなど、液相に凝縮可能なガスを生成する。しかしながら、チャンバ108内で維持される温度がより高いほど、熱分解装置106の動力消費がより高くなる。したがって、熱分解装置106によって消費される動力は、パワーシステム114のための燃料112としても、他の成分についての市場価格としても、生成される成分の有用性及び望ましさとのバランスがとられる。
【0046】
[0045]次に、
図2を参照すると、
図1の熱分解システム100の、一実施形態による電気熱分解システム200の概略的な断面図が示されている。
【0047】
[0046]電気熱分解システム200の熱分解装置202は、素材材料206が配置される第1のチャンバ204を含む。第1のチャンバ204の高さは、効率を著しく犠牲にすることなく、又は熱分解装置202の故障を助長することになる熱勾配に第1のチャンバ204を曝す危険を冒すことなく、収容され得る素材材料206の高さを最大にするように構成され得る。
【0048】
[0047]一実施形態では、第1のチャンバ204は、水平方向に向いており、素材材料206は、第1のチャンバ204の底面207に位置する。他の実施形態では、第1のチャンバ204は、素材材料206が吊架具によって第1のチャンバ204内で吊り下げられるように、垂直方向に向いている。
【0049】
[0048]第1のチャンバ204は、第1のチャンバ204に均一な熱をもたらすために、(
図1の分散発熱体103の一例のような)電気発熱体を含む。発熱体208は、第1のチャンバ204を加熱するために電力209を変換する、電気抵抗素子を含むことができる。抵抗素子は、抵抗線であってもよい。抵抗線は、均等に密に詰められたパターンで発熱体208に埋め込まれてもよい。このパターンは、発熱体208全体にわたって均質に分散される熱をもたらす。この熱の分散は、第1のチャンバ204中の熱勾配を最小にし、それによって効率が向上し、熱勾配によって引き起こされる熱分解装置へのリスクを低減しつつ、素材材料206の熱分解が可能になる。
【0050】
[0049]電気発熱体208は、パワーシステム210によって線212を通してもたらされる電力により動力供給される。一実施形態では、発熱体208は、第1のチャンバ204の底面207に配置される。さらなる一実施形態では、発熱体208は、第1のチャンバ204の上面213に配置される。さらなる一実施形態では、発熱体208は、第1のチャンバ204の底面207と上面213の両方に配置される。
【0051】
[0050]第1のチャンバ204は、第1のチャンバ204に熱をもたらすための熱交換要素214をさらに含む。熱交換要素214には、パワーシステム排出管218を通して、パワーシステム210の排気煙(fume)216により熱が供給される。一実施形態では、熱交換要素214は、第1のチャンバ204の底面に配置される。さらなる一実施形態では、熱交換要素214は、第1のチャンバ204の上面213に配置される。さらなる一実施形態では、熱交換要素214は、第1のチャンバ204の底面207と上面213の両方に配置される。
【0052】
[0051]第1のチャンバ204は、ベント220を含み、ベント220を通してガス222が第1のチャンバ204から出て、回収器224へと放出される。ベント220は、第1のチャンバ204の低酸素環境を維持する一方向弁である。
【0053】
[0052]熱分解装置202は、複数の素材材料を同時に処理するように同様に構成された追加のチャンバ226を含むことができる。追加のチャンバ226は、熱分解装置202内に配置され、第1のチャンバ204及び/又は追加のチャンバ226は、他のチャンバにもたらされる熱の恩恵を受ける。この配置は、第1のチャンバ204及び/又は追加のチャンバ226のそれぞれにおける温度勾配を減少させることができる。
【0054】
[0053]回収器224は、熱分解装置202から放出されるガス222中に存在する非凝縮性ガス232から油230を分離するための凝縮器228と、非凝縮性ガス232を収容するための貯蔵容器234とを含む。凝縮器228は、熱分解装置202から、凝縮器入口236を通ってガス222を受け入れる。ガス222は、冷却装置内を流れる水で冷却され得る凝縮器228を通過する。ガス222は、ガス222が凝縮器228を通過すると凝縮される。ガス222を凝縮することによって、ガス222は、液相へ凝縮される凝縮油230と、非凝縮性ガス232とに分離される。凝縮器は、清浄化しやすくするために、上部が開放してもよく、及び/又は、底部にドレインを含んでもよい。
【0055】
[0054]凝縮油230は、凝縮器228の基部にある油容器238に滴下する。ここで、集められた油230は、燃料として、又はプラスチックなど油中に存在する分子に基づいて化学化合物の前駆体などとして、外部用途での使用に利用可能である。油容器238は、油をそれらの所期の使用へと圧送するための分配ポンプを収容することができる。分配ポンプは、レベルインジケータ及び温度インジケータをさらに含むことができる。残りの非凝縮性ガス232は、凝縮器228から凝縮器出口240を通って放出され、そこで貯蔵容器234によって受容される。貯蔵容器234は、パワーシステムで必要となるまで、非凝縮性ガス232を貯蔵する。貯蔵容器234は、大気への換気装置を含むことができる。
【0056】
[0055]パワーシステム210は、非凝縮性ガス232を燃焼させることによって動くことで電力209を発生させる、ガス発電機(gas generator)242を含む。電力209は、熱分解装置202向けの熱を供給するための電気発熱体208を作動させる。電気発熱体208に供給される電力209は、制御システムによって制御され得る。制御システムは、第1のチャンバ204及び/又は追加のチャンバ226のそれぞれにもたらされる熱を一緒に及び/又は独立的に制御する。
【0057】
[0056]ガス発電機242の運転の副産物は、高温ガス排気216であり、それは、熱分解装置202のために熱をもたらすこともできる熱交換器214へと管で送られる。熱交換器214にもたらされる高温ガス排気216は、制御システムによって制御され得る。制御システムは、第1のチャンバ204及び/又は追加のチャンバ226のそれぞれにもたらされる熱を一緒に及び/又は独立的に制御する。
【0058】
[0057]次に、
図3を参照すると、一実施形態による、ガスバーナ熱分解システム300の概略的な断面図が示されている。
【0059】
[0058]熱分解装置302は、ガスバーナ306によってチャンバ304に均一な熱をもたらす(
図1の分散発熱体103の例)。ガスバーナ306は、ガスバーナ306に供給されるガス混合物308を分散させる出口307を含む。出口307は、バーナが点火されると、炎309が熱をチャンバ304にもたらし、熱がガスバーナ306全体にわたって均質に分散するように、等間隔に配置され密に集められ得る。
【0060】
[0059]ガスバーナ306は、パワーシステム310によって供給されるガス混合物308を燃料とする。パワーシステム310は、回収器318からの非凝縮性ガス314、及び酸素などの外部ガス320を受ける入口312を含む。入口312は、非凝縮性ガス314と外部ガス320との混合物を調節してガス混合物308を作り出す。入口はさらに、1つ又は複数のガスバーナ306に対するガス混合物308の流量を調節する。さらなる一実施形態では、分配弁が、ガスバーナ304に対する流量を独立的に、又はグループで調節してもよい。分配弁は、チャンバ304内の温度を調節する制御システムの一部であってもよい。
【0061】
[0060]回収器318は、熱分解装置302によって放出されるガス326を油324と非凝縮性ガス314とに分離する凝縮器322を含む。回収器318は、貯蔵タンク328をさらに含む。貯蔵タンク328は、凝縮器322から非凝縮性ガス314を受け入れ、パワーシステム310に放出されるまでそれを貯蔵する。
【0062】
[0061]次に、
図4を参照すると、一実施形態による熱分解システム400の概略的な斜視図が示されている。熱分解システム400は、
図1の熱分解システム100であってもよい。
【0063】
[0062]熱分解システム400は、(例えば、側部開放の20ftハイキューブ)出荷コンテナ内に取り付けられるように構成される。この実施形態では、素材材料402は、幅1.5m、長さ2.5m、高さ15cmのうちの1つ以上までとすることができる。素材材料402の高さは、主に、素材材料402の湾曲に起因する。熱分解装置406は、各バッチあたり500kgの素材材料402の装填能力を有する。
【0064】
[0063]熱分解システム400は、空気冷却システム408をさらに含むことができる。空気冷却システム408は、熱分解装置406の熱交換器に冷却をもたらす。空気冷却システム408は、熱分解システム400のドアに回転可能に連結され得る。
【0065】
[0064]熱分解システム400は、耐食性ステンレス鋼からなってもよい。熱分解システム400の材料は、MA253(EN 1.4835)などの適切な高温クラスである。
【0066】
[0065]熱分解システム400は、パワーキャビネット410をさらに含むことができる。熱分解システム400は、パワーキャビネット410を通してパワーシステムに接続されている。パワーキャビネット410は、250アンペア、400ボルトの3相電力で作動され得る。パワーキャビネット410は、125kWのような推定電力の炉に対処するようにヒューズ付き(fused)にされ得る。パワーキャビネット410は、ヒューマンマシンインターフェース(HMI)パネルを含むことができる。HMIパネルは、10”パネルとすることができる。HMIパネルは、パワーキャビネット410のドアに取り付けられ得る。パワーキャビネット410は、便宜上、照明及び電源コンセントなど、熱分解システム400の給電構成要素のために220VAC ACをもたらすように構成され得る。
【0067】
[0066]熱分解システム400は、制御システムキャビネット412をさらに含むことができる。制御システムキャビネット412は、パワーシステムキャビネット410と同じキャビネットであってもよい。制御システムキャビネット412は、熱分解システム400の論理回路及びセンサのためのケーブルを含む。制御システムキャビネット412は、制御システムのためのHMIパネルを含むことができる。制御システムキャビネット412は、無線制御装置をさらに含む。無線制御装置は、制御表示、炉操業情報、チャンバ内の温度、終了する時間、アラームなど、熱分解システムのセンサによって収集される情報を送信する。無線制御装置は、その情報を(熱分解システム400内の)ローカルディスプレイ又は外部に送信することができる。無線制御装置は、フォークリフトトラック及び現場作業所のうちの1つ又は複数に送信することができる。無線制御装置は、約1kmのフリー屋外範囲(free outdoor range)を有することができる。情報は、無線制御装置によって、クラウドサーバに提供されてもよい。クラウドサーバは、その情報を記憶し、保護することができる。クラウドサーバは、情報にアクセスするためのウェブインターフェースを有することができる。ウェブインターフェースは、情報にアクセスするために、セキュリティ許可又はセキュリティ許可レベルの認証を必要とし得る。制御システムキャビネット412は、インターネット接続を含むことができる。インターネット接続は、業務通話に使用され得る。インターネット接続は、熱分解システム400のプログラム可能な論理コントローラにアップデートをもたらすように構成され得る。インターネット接続は、第4世代及び第5世代(及び上の世代)のセルラーサービスのうちの1つ又は複数とすることができる。制御システムキャビネットは、全地球測位システム(GPS)トラッカをさらに含むことができる。
【0068】
[0067]次に、
図5を参照すると、一実施形態による、開構成にある熱分解装置500の概略的な側面図が示されている。熱分解装置500は、
図1の熱分解装置106であってもよい。
【0069】
[0068]熱分解装置500は、ラックシステム(rack system)501を含む。ラックシステム501は、
図1のチャンバ108のようなチャンバに素材材料502a~502gをもたらす。素材材料502a~502gは、素材材料502として総称的に、及び素材材料502として集合的に言及される。ラックシステム501によって、素材材料502は、迅速かつ安全に、炉へと摺動、転動、装填及び/又は挿入され得る。ラックシステム501には、クレーン、フォークリフトトラック(FLT)及び手動装填のうちの1つ又は複数によって、素材材料502が装填され得る。
【0070】
[0069]ラックシステム501は、炉が閉じられたときに熱分解装置の高温の棚に対して軽く押し付けられるように、ばねにより付勢され得る。ラックシステム501は、ステンレス鋼からなってもよい。ステンレス鋼は、316-L品質のものであってもよい。ラックシステム501は、炉に対してラックシステム501を出し入れするために車輪を含むことができる。一実施形態では、真鍮又は銅のブシュが車輪に使用される。
【0071】
[0070]ラックシステム501は、ラックフレーム506を含む。ラックフレーム506は、ラックシステム501のための構造を提供する。ラックフレームは、車輪に連結される。
【0072】
[0071]ラックシステム501は、ラック508a~508gのうちの少なくとも1つを含む。ラック508a~508gは、ラック508として総称的に、及びラック508として集合的に言及される。ラック508は、棚と称されてもよい。ラック508は、ラックフレーム506が炉に挿入されるとラック508が熱分解装置のチャンバ内に配置されるように、ラックフレーム506に連結される。
【0073】
[0072]ラックフレーム506へのラック508の連結は、ラック512が取り外され取り替えられ得るように、取り外し可能とすることができる。取り替えラックは、ラック508(すなわち、取り出し後)、又は第2のラック508であってもよい。例えば、少なくとも2組のラック508があってもよい。2組のラック508によって、一方の組が冷却、排出及び/又は投入され得、その間他方は動作中である。一実施形態では、ラックシステム501は、熱分解装置500のチャンバごとにラック508を含む。動作中になるべき熱分解装置500のラックフレーム506にラック508全一式が取り付けられる必要はない。
【0074】
[0073]熱分解装置500は、排気ガスフィードスルー510を含む。排気ガスフィードスルー510は、煙突512の上端で終端することができる。排気ガスフィードスルー510は、
図1の熱分解装置106の背部又は側部に配置され得る。排気ガスフィードスルー510は、弁、圧力検出センサ及びガス流量計のうちの1つ又は複数を含むことができる。これらは、可能な限り長く、その炉を出るガスを遅くし、それによってガスの反応及びガススパイス(gas spices)の生成が最大になる。
【0075】
[0074]熱分解装置500は、ドア514をさらに含む。ドア514は、底縁516で熱分解装置500に回転可能に連結される。ドア514は、熱分解装置が開構成にあるとき、ドアが床面516に接触するように、底縁周りに回転することができる。ドア514が開構成にあるとき、ドアは、ラックシステム501に、上で転がる又は滑るように安定した表面をもたらすことができる。
【0076】
[0075]ドア514は、レール516を含むことができる。レール516は、ラックシステムの車輪を受け入れ、案内するように構成される。
【0077】
[0076]熱分解装置500は、少なくとも1つの電動シリンダ518をさらに含む。電動シリンダ518は、ドア514を開構成と閉構成との間で移行する。電動シリンダ518は、熱分解装置の側面520及びドア520の側面に連結される。
【0078】
[0077]次に、
図6を参照すると、一実施形態による、閉構成にある熱分解装置600の概略的な断面図が示されている。熱分解装置600は、
図1の熱分解装置106であってもよい。
【0079】
[0078]熱分解装置600は、断熱され得る。断熱材602は、熱分解装置600を囲繞することができる。断熱材602は、規格に従って熱分解装置600の安全な運転を可能にするような厚さのものである。
【0080】
[0079]断熱材602は、複数の層を含むことができる。断熱材602は、熱分解装置600の内面606に隣り合う内層604を含むことができる。内層604は、セラミック又はガラスなど、高温材料のものとすることができる。断熱材602は、中間層608をさらに含むことができる。中間層608は、内層604の外側に位置する。中間層608は、石、ウール又は同様の材料のものとすることができる。断熱材602は、外層610をさらに含むことができる。外層610は、内層604及び/又は中間層608の外側に位置する。外層610は、クラス規格~55℃に従った材料のものとすることができる。
【0081】
[0080]熱分解装置600の底部は、傾斜側部を含むことができる。傾斜側部は、弁の方に向けて傾斜しており、それによってすす、灰、埃又は他の粒子の清浄化が可能になる。底部の弁は、冗長な閉鎖システムを有することができる。
【0082】
[0081]熱分解装置106は、1つ又は複数の重量計612a、612bをさらに含むことができる。重量計612a、612bは、扱われる原材料の重量、並びにシステムから集められた熱分解油の蓄積量及び/又は貯蔵量のうちの1つ又は複数を測定することができる。重量計612a、612bは、熱分解装置600の下に配置されてもよい。重量計612a、612bは、熱分解装置600の脚部の下に配置されてもよい。さらなる一実施形態では、熱分解装置の脚部は、重量計612a、612bとして働くロードセルを含んでもよい。
【0083】
[0082]次に、
図7A及び
図7Bを参照すると、それぞれ第1の位置700及び第2の位置701にある、平坦化装置の断面ブロック図が示されている。平坦化装置なしに素材材料702を熱分解装置のチャンバ704に配置すると、素材材料702は、典型的には、チャンバ704の底部で平らにならない。熱分解が進み、素材材料702が柔らかくなると、素材材料702は、自重でつぶれる。このようにつぶれることによって、しばしば、素材材料702はそれ自体の上に折り重なり、それによって結果的に生じるガラス繊維706の品質、均一性及び構成が低下する。
【0084】
[0083]平坦化装置700、701は、熱分解の間、上側プレート708と下側プレート710との間で素材材料702を平坦化する。平坦化装置700は、均一で、直線的な高品質のガラス繊維706の生産を促進する。
【0085】
[0084]下側プレート710は、静止状態であってもよい。下側プレート710は、チャンバ704の底部であってもよい。
【0086】
[0085]平坦化装置700は、上側プレート708及び下側プレート710のそれぞれの第1の側及び第2の側を接合する第1のヒンジ712及び第2のヒンジ714を含む。第1のヒンジ712及び第2のヒンジ714は、上側プレート708及び下側プレート710の互いに反対の側にある。熱分解が進むと、第1のヒンジ712及び第2のヒンジ714は、上側プレート708及び下側プレート710を互いに近づける。第1のヒンジ712及び第2のヒンジ714の閉まりは、上側プレート708の重量によって引き起こされるという点で受動的であってもよい。或いは、容易に閉じるように、第1のヒンジ712がばね又はモータアクチュエータによって駆動されてもよい。平坦化装置700は、上側プレート708及び下側プレート710のそれぞれの第1の側、第2の側又は他の側のうちの1つ又は複数を接合する追加のヒンジを含んでもよい。
【0087】
[0086]上側プレート708及び/又は下側プレート710は、素材材料702全体にわたる熱の均一な分配を促進する、及び/又は誘導発熱体により加熱する、金属などの材料から作られてもよい。したがって、平坦化装置700はさらに、より効率的な加熱を促進することができる。
【0088】
[0087]上側プレート708及び/又は下側プレート710は、
図2の発熱体208のような発熱体716を含んでもよい。発熱体716は、素材材料702が平らになるので、
図2の静止の発熱体208よりも素材材料702からのより一貫した離隔を維持する。素材材料702からの一貫した離隔を維持することは、熱分解の間中、素材材料702の原形によって必要とされるスペースの加熱と同じ結果をもたらすことに必要な温度を低減する。さらに、上側プレート708及び/又は下側プレート710と素材材料702との間に可能な限り最小量の離隔を維持することが望ましい。この一貫した最小の離隔は、ひいては、
図2の熱分解装置202によって必要とされる動力を減少させることができ、以って効率が向上する。
【0089】
[0088]平坦化装置700は、他の平坦化装置と積み重ね可能に構成され得る。平坦化装置はさらに、平坦化装置700が空のときに占有する体積を最小にするように構成され得る。積み重ね可能であり、体積が最小にされる平坦化装置は、平坦化装置700が出荷の間に占める体積を最小にする。
【0090】
[0089]次に、
図8Aを参照すると、一実施形態による、サンドイッチ構造体800の素材材料の写真が示されている。この素材材料800は、中でも、多くが近年それらの使用可能ライフサイクルの終わりに達した、又は達しつつある、水上乗物の船体を建造する際に使用されている。これらの船体は、サンドイッチ構造体800の素材材料の豊富な供給源を提供する。サンドイッチ構造体800の素材材料は、
図1の熱分解装置106における加熱によって分離されるガラス繊維802及び樹脂804を含む。
【0091】
[0090]次に、
図8Bを参照すると、一実施形態による、標準のガラス繊維/ポリマー素材材料810の写真が示されている。このガラス繊維/ポリマー素材材料810は、中でも、風車ブレードを建造する際に使用される。これらの風車ブレードのそれぞれは、大量の材料からなり、それらの使用可能ライフサイクルの終わりに莫大な廃棄費用及び課題が生じる。それらのサイズは、典型的には、1つの現場で、ガラス繊維及び/ポリマー素材材料810の豊富な供給源を提供する。ガラス繊維/ポリマー素材材料810は、
図1の熱分解装置106における加熱によって分離されるガラス繊維812及び樹脂814を含む。
【0092】
[0091]次に、
図9を参照すると、熱分解が完了した後に残る、
図3a及び
図3bの素材材料の残物900の写真が示されている。サンドイッチ残物902は、
図8Aのサンドイッチ構造体500の素材材料からの残りである。ガラス繊維/ポリマー残物904は、
図8Bのガラス繊維/ポリマー素材材料510からの残りである。サンドイッチ残物902及びガラス繊維/ポリマー残物904は、カーボンブラックで被覆されたガラス繊維を含む。
【0093】
[0092]次に、
図10を参照すると、
図9の残物900を従来の炉で酸化した後に残る主にガラス繊維1000の写真が示されている。酸化によって
図9の残物900からカーボンブラック906が燃え尽き、本質的に、ガラス繊維900が残る。酸化の時間及び温度によっては、いくらかのカーボンブラック906がガラス繊維900上に残ることもある。
【0094】
[0093]次に、
図11を参照すると、一実施形態による、ガラス繊維を再生する方法1100の流れ図が示されている。方法1100は、素材材料からガラス繊維を分離し、さらに、GFRPでの使用のためにそれらを準備する。方法1100は、
図1~
図7Bを参照して述べた熱分解システム100を用いて実施され得る。方法800は、1運転当たり、500kgの素材材料を処理することができる。各運転は、処理に4時間かかり得る。操業が1日当たり2回の8時間シフトからなる場合、1日当たり、合計4回の運転で合計2000kgに達する素材材料を処理することができる。
【0095】
[0094]1102で、GRPなどの素材材料が、準備され、熱分解チャンバに装填される。熱分解チャンバは、典型的には、素材材料が形を作り出す容器又は構造物よりも小さい限定された寸法のものである。素材材料は、チャンバに適合する素材材料片に切断することによって、由来する容器又は構造物から獲得される。これは、容器又は構造物が存在する場所において、又は熱分解システムへと輸送された後に行われ得る。或いは、熱分解方法は、容器又は構造物を収容する場所において展開されてもよく、それによって、さらなる輸送の必要性がなくなる。切断後、素材材料片は、熱分解のためにチャンバに装填される。
【0096】
[0095]平坦化装置が使用される場合、素材材料は、平坦化装置に装填される。平坦化装置は、チャンバ内部にある間に装填される、又は外部で装填されてユニットとしてチャンバに装填されてもよい。
【0097】
[0096]1104で、素材材料を収容する熱分解装置のチャンバ内に低酸素環境が作られる。低酸素環境は、熱分解の間、素材材料の燃焼を防ぐ、又は低減し、それによって素材材料の成分が燃えずに蒸発する。低酸素環境は、真空又は中性雰囲気を含む1つ又は複数の環境状況を確立することによって作られ得る。低酸素環境が真空によって実現される場合、熱分解の間、10mbar以下の圧力が維持される。低酸素環境が中性雰囲気によって実現される場合、チャンバ内の酸素は、酸素を置き換えるためにチャンバ内に例えば窒素である中性ガスを導入することによって排出される。
【0098】
[0097]1106で、チャンバが加熱されて、素材材料がガスと残物(例えば、ガラス繊維)とに分離される。加熱の動作温度は、典型的には300℃~700℃の範囲にある。一実施形態では、550℃の公称運転動作温度が維持される。熱分解装置はさらに、4時間の処理時間の間、素材材料を加熱することができる。処理時間は、素材材料の温度が徐々に上げられる40分の立ち上げ時間を含むことができる。火力は、最低100kWとなるように計算され得る。この火力で、温度は、500kgのGFPRを40分で400℃から公称温度まで上げることができる。上記で言及したように、残りの3時間20分は処理時間を構成する。
【0099】
[0098]この加熱は、素材材料の一部を蒸発させ、それによってガスが生成される。蒸発の間に生成されるガスの組成は、熱分解の間に維持される温度に応じて決まる。より高い温度は、一般に、より短時間でより望ましい分子を生成する。例えば、より高い温度は、より高比率でH2、CH4、C2H6及びC2H6分子などの非凝縮性ガス、及びより低比率でCO、CO2、プロパンなどC3含有分子、及びベンゼンなどのC4含有分子を生成する。より高い温度は、さらに、より高比率でベンゼン、トルエン、スチレン及びエチルベンゼンなど、液相に凝縮可能なガスを生成する。しかしながら、熱分解の間に維持される温度がより高いほど、より多くの動力が消費される。したがって、消費される動力は、パワーシステムのための燃料としても、他の成分についての市場価格としても、生成される成分の有用性及び望ましさとのバランスがとられる。加熱は、ガスが選択された温度で生成されなくなるまで継続される。
【0100】
[0099]1108で、ガスは、熱分解装置のための燃料として集められ貯蔵される。方法はさらに、ガスを凝縮して、液相に凝縮される油と、独立して消費されるべき非凝縮性ガスとに分離することを含むことができる。
【0101】
[0100]1110で、ガスは、熱分解装置のための熱に変換される。変換は、電力を生成するための燃料として、又は燃料の一部としてガスを使用することによって行われ得る。次いで、電力は、電気発熱体及び/又は誘導発熱体を作動させることができる。或いは、変換は、ガスバーナ用に燃料として又は燃料の一部としてガスを使用することによって行われる。或いは、変換は、高温排気ガスを生成する他の目的のために燃料としてガスを使用することによって行われる。高温排気ガスは、熱交換器を加熱することに使用され得る。変換は、ガスから熱を生成する上記の方法及び/又は他の方法を組み合わせることによって行われてもよい。
【0102】
[0101]1112で、残物が熱分解装置から取り出される。残物の取り出し1112は、標準大気中の加熱1114が熱分解装置内で行われる場合、残物が標準大気中で加熱1114された後に行われ得る。
【0103】
[0102]1114で、残物(例えば、カーボンブラックで被覆されたガラス繊維)が清浄化される。残物は、大気環境中で、300℃~700℃の範囲の温度で加熱される。加熱によって、任意のコーティングが燃え尽きることによってカーボンブラックのガラス繊維が清浄化される。残物は、約500℃の温度で4時間清浄化され得る。加熱は、熱分解装置のチャンバ内又は外部の炉内で行われ得る。
【0104】
[0103]1116で、燃え尽きなかった粒子状物質を除去するために、ガラス繊維の表面が手動で清浄化され得る。手動の清浄化は、溶剤を含む超音波槽にガラス繊維を浸漬させる、O2プラズマ若しくは水素プラズマなどのプラズマによりガラス繊維上の有機残留物を酸化若しくは還元する、又は、沸騰水若しくは過酸化水素などによる加水分解、のうちの1つ又は複数を含むことができる。
【0105】
[0104]1118で、減摩剤がガラス繊維に施される。摩擦は、繊維を取り扱い中に摩耗させることがある。この摩耗は、繊維の品質を低下させる。減摩剤は、繊維を取り扱い中に互いに沿って滑らせることができる。滑ることで、ガラス繊維の劣化が軽減され、以ってガラス繊維の品質が維持される。減摩剤は、気相で、又は溶媒中の化学溶液として施され得る。化学溶液として減摩剤を施すことは、実施しやすいので、大量の繊維を処理するときに好ましい場合がある。減摩剤は、オクタデシルトリクロロシラン、テフロン(登録商標)終端クロロシラン(teflon-terminated cholorsilane)、又は、ガラス繊維の表面に共有結合的に付着され減摩性をもたらすことができる任意のシランのうちの1つ又は複数であってもよい。
【0106】
[0105]1120で、ガラス繊維は、ガラス繊維の配向をランダム化するようにタンブリングさせることができる。いくつかの適用例では、ランダムなガラス繊維配向は、GFRPの構成において望ましい品質を実現する。ガラス繊維をタンブリングすることによって、この配向が達成される。他の適用例では、現行の配向、又は現行の配向に由来する繊維により簡単に達成可能なものが望ましい場合もある。これらの適用例では、タンブリングが省略されてもよい。
【0107】
[0106]1122で、接着促進剤がガラス繊維の表面に施される。ガラス繊維は、ガラス繊維が前に構成したGFRP素材材料の形態、組成及び品質のうちの1つ又は複数の点で異なる最終のGFRPを形成するように再生される。接着促進剤は、最終のGFRPのガラス繊維に対する樹脂の接着を促進する。接着促進剤は、気相で、又は化学溶液として溶媒で施され得る。どの接着促進剤がガラス繊維に施されるかは、最終のGFRPの樹脂に応じて決まる。接着促進剤は、エポキシシラン又はアミノシラン、例えば、アンマ(amma)-アミノプロピルトリエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、ガンマ-アミノプロピルジメチルエトキシシランのうちの1つ又は複数であってもよく、アミノプロピルトリエトキシシランは、エポキシポリマー樹脂について適用され得る。γ-メタクリルオキシプロピルトリメトキシシランなどのメタクリルシランは、ポリエステル及びビニルエステル樹脂に使用され得る。一般に、適切な分子の終端化(termination)によるシランカップリング剤は、ポリマー樹脂との接着を促進するためにガラス繊維に施され得る。
【0108】
[0107]上述の説明は、1つ又は複数の装置、方法又はシステムの例を提供するが、当業者によって解釈されるように、他の装置、方法又はシステムも特許請求の範囲に入り得ることが明らかであろう。
【国際調査報告】