(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】腸管バリア横断のための担体としてのポリペプチド
(51)【国際特許分類】
C07K 14/195 20060101AFI20241108BHJP
C12N 15/31 20060101ALI20241108BHJP
A61K 48/00 20060101ALI20241108BHJP
A61K 31/7088 20060101ALI20241108BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20241108BHJP
A61K 47/64 20170101ALI20241108BHJP
A61P 37/02 20060101ALI20241108BHJP
A61P 29/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 19/02 20060101ALI20241108BHJP
A61P 17/06 20060101ALI20241108BHJP
A61P 1/04 20060101ALI20241108BHJP
A61P 13/12 20060101ALI20241108BHJP
A61P 1/16 20060101ALI20241108BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20241108BHJP
A61P 11/00 20060101ALI20241108BHJP
A61P 11/06 20060101ALI20241108BHJP
A61P 19/10 20060101ALI20241108BHJP
A61P 31/14 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
C07K14/195 ZNA
C12N15/31
A61K48/00
A61K31/7088
A61K38/17
A61K47/64
A61P37/02
A61P29/00
A61P29/00 101
A61P19/02
A61P17/06
A61P1/04
A61P13/12
A61P1/16
A61P25/00
A61P27/02
A61P11/00
A61P11/06
A61P19/10
A61P31/14
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533219
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-17
(86)【国際出願番号】 EP2022084375
(87)【国際公開番号】W WO2023099783
(87)【国際公開日】2023-06-08
(32)【優先日】2021-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515292543
【氏名又は名称】アフィロジック
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100188433
【氏名又は名称】梅村 幸輔
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100214396
【氏名又は名称】塩田 真紀
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【氏名又は名称】川本 和弥
(74)【代理人】
【識別番号】100221741
【氏名又は名称】酒井 直子
(74)【代理人】
【識別番号】100114926
【氏名又は名称】枝松 義恵
(72)【発明者】
【氏名】ユエ シモン
(72)【発明者】
【氏名】シェブレル アンヌ
(72)【発明者】
【氏名】シニエ マチュー
(72)【発明者】
【氏名】キトゥン オリビエ
(72)【発明者】
【氏名】マスロー ソレーヌ
(72)【発明者】
【氏名】スカポーザ レオナルド
(72)【発明者】
【氏名】ツァイサー-ラブエベ マガリ
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C086
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC41
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4C086ZB33
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA20
4H045BA70
4H045CA11
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、ヒトレプチン受容体に特異的に結合し、かつ腸管バリアの横断、特にそれに会合された生物学的製剤の横断を誘発することができる、Sac7dファミリーのタンパク質のバリアントを含むポリペプチドに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアントを含むポリペプチドであって、
該バリアントが、Sac7dファミリーの該メンバーのその天然リガンドへの結合の境界面において4~20個の変異残基を含み、かつ該バリアントが、SEQ ID NO: 1に示されているSac7d残基の付番に対応する付番によるW24Y、T33W、およびA44H変異を含む、
前記ポリペプチド。
【請求項2】
SEQ ID NO: 1に示されているSac7d残基の付番に対応する付番によるY8M、K9G、S31G、およびR42G変異をさらに含む、請求項1記載のポリペプチド。
【請求項3】
SEQ ID NO: 1に示されているSac7d残基の付番に対応する付番によるD16E、N37Q、およびM57Lより選択される少なくとも1つの変異をさらに含む、請求項1または2記載のポリペプチド。
【請求項4】
Sac7dファミリーのメンバーのその天然リガンドへの結合の境界面における前記変異残基が、SEQ ID NO: 1に示されているSac7dのV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、D36、N37、G38、K39、T40、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51からなる群より選択される、請求項1~3のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項5】
Sac7dファミリーのメンバーが、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来のSac7d、スルホロブス・アシドカルダリウス由来のSac7e、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のSSo7d、スルホロブス・シバタエ(Sulfolobus shibatae)由来のSsh7b、スルホロブス・シバタエ由来のSsh7a、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)由来のDBP7、スルホロブス・アイランディカス(Sulfolobus islandicus)由来のSis7a、メタロスファエラ・セデュラ(Metallosphaera sedula)由来のMse7、メタロスファエラ・キュプリナ(Metallosphaera cuprina)由来のMcu7、アシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)由来のAho7a、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7b、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7c、およびスルフリスファエラ・トコダイイ(Sulfurisphaera tokodaii)由来のSto7からなる群より選択される、請求項1~4のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項6】
SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 46、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 56、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 60、SEQ ID NO: 61、SEQ ID NO: 62、SEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、SEQ ID NO: 68、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 28、またはSEQ ID NO: 29を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項7】
SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 48、SEQ ID NO: 49、SEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 54、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 63、SEQ ID NO: 64、SEQ ID NO: 69、SEQ ID NO: 70、またはこれらの配列のアミノ酸1~54を含む、請求項1~5のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項8】
前記ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアント内にある、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項9】
前記ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアントが、別のポリペプチドに、特に該Sac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントにコンジュゲートされている、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項10】
前記ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアントが、有機分子にコンジュゲートされている、請求項1~7のいずれか一項記載のポリペプチド。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項記載のポリペプチドをコードする、核酸分子。
【請求項12】
請求項1~10のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項11記載の核酸と、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1~10のいずれか一項記載のポリペプチドまたは請求項11記載の核酸。
【請求項14】
特定の疾患における治療活性を有する物質に結合されており、この特定の疾患の治療または予防に使用するためのものである、請求項13記載のポリペプチド。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
序論
分子レベルでの疾患メカニズムおよびその発症機序に関する理解が増加するにつれ、標的療法の開発が促進されている。その分野において、バイオ医薬品は、臨床診療に完全に組み込まれており、従来の小分子と比較してより高い特異性をもたらす可能性によって、治療開発に占める割合が増大することが予想されている。
【0002】
小分子の開発とバイオ医薬品の開発との間の差を縮めるために対処すべき2つの主な課題が依然として存在しており、それらは、i)バイオ医薬品の開発コストが数倍高いこと、およびii)バイオ医薬品の投与がほぼ非経口経路のみに制限されていることである。
【0003】
患者からのフィードバックでは、経口投与が最も好ましい投与経路として位置づけられており、これは経口治療のコンプライアンスが非経口薬よりも高いことと相関する。経口治療が好ましいにもかかわらず、胃環境においてバイオ医薬品が安定性に欠けること、および腸管バリアなどの生物学的バリアを通じた大型分子の受動拡散が不十分であることによって、経口バイオ医薬品の開発は制限されてきた。生物学的バリアを通じた大型生体分子の移動のために、受容体媒介性の能動的移動メカニズムが自然界によって設計された。これらの移動メカニズムを乗っ取ることが、TfR、LRP1、およびインスリン受容体などの脳内の生体分子の輸送を天然に媒介する受容体に結合するリガンドをトロイの木馬送達系として使用する、血液脳関門を通じた薬物の輸送に関して、調査されてきた。
【0004】
腸管バリアを横切る輸送のための類似の戦略が開発されれば、経口投与時のカーゴ分子の全身送達が可能になるであろう。これには、腸管腔内で安定を維持することができる技術が必要とされる。ナノフィチン(Nanofitin)は、天然の超耐熱性タンパク質sac7dに由来する小さな代替足場タンパク質であり、プロテアーゼ分解に対する耐性を含めた親タンパク質の驚異的な安定性を保持しながら、所与の標的に対して高い特異性および高い親和性となるように設計することができる。
【0005】
レプチンは、主に脂肪細胞および胃などの組織によって分泌されるペプチドホルモンであり、多数の生理学的作用を有する。レプチンは、主として中枢神経系に作用してエネルギー恒常性および神経内分泌機能を調節し、かつ組織治癒またはグルコース代謝など、消化管における多様な機能において役割を果たす。それゆえ、この多能性ホルモンは、その細胞表面受容体であるヒトレプチン受容体(ヒトLepRまたはhLepR、UniProtKB-P48357)との相互作用を必要とし、よって該受容体は、血液脳関門または腸管バリアなどの種々のバリアに存在する。そこでは、レプチン受容体は、血液脳関門および腸管バリアで説明されているように、その天然リガンドであるレプチンの受容体媒介性の能動的移動を担っている。
【0006】
EP 3 632 924 A1(特許文献1)には、多量体タンパク質のサブユニットに結合し、多量体の形成を阻害することができるSac7dファミリーのメンバーのバリアントの作製が開示されている。
【0007】
WO 2008/068637(特許文献2)には、種々の標的に対するSac7dタンパク質のバリアントを得る手法(ability)が開示されている。
【0008】
US 20190113512(特許文献3)には、セルロース結合ドメイン(CBD)または炭水化物結合モジュール(CBM)と、設計された電荷低減Sso7d(rcSso7d)抗原結合タンパク質とを含む、関心対象の標的を検出するための標的結合ドメインを含むタンパク質、それらの方法、組成物、およびキットが開示されている。
【0009】
D4 Loussouarn et al (Scientific Reports, vol. 10, no. 1, 1 2020)(非特許文献1)には、胃および腸管の消化の模擬条件下におけるSac7dバリアントの安定性と、これらのタンパク質の重要なpHおよび温度の安定性を維持または増加させながらタンパク質分解消化に対する耐性を獲得するようにそれらの特性を高めるための設計とが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】EP 3 632 924 A1
【特許文献2】WO 2008/068637
【特許文献3】US 20190113512
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】D4 Loussouarn et al (Scientific Reports, vol. 10, no. 1, 1 2020)
【発明の概要】
【0012】
第1の局面では、本発明は、ヒトレプチン受容体(ならびにマウスおよびブタレプチン受容体)に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアントを含むポリペプチドであって、該バリアントが、Sac7dファミリーのメンバーのその天然リガンドへの結合の境界面に4~20個の変異残基を含み、かつ該バリアントが、Sac7d(SEQ ID NO: 1)残基に対応する付番による5~15個の変異を含む、ポリペプチドに関する。特に、バリアントは、Sac7dファミリーのメンバーのその天然リガンドへの結合の境界面に5~14個または5~13個の変異残基を含む。他の態様では、バリアントは、6~15個、または6~14個、または6~13個の変異残基を含む。いくつかの態様では、バリアントは、ちょうど15個の変異残基を含有する(N末端またはC末端での欠失は考慮しない)。いくつかの態様では、バリアントは、ちょうど14個の変異残基を含有する(N末端またはC末端での欠失は考慮しない)。いくつかの態様では、バリアントは、ちょうど13個の変異残基を含有する(N末端またはC末端での欠失は考慮しない)。いくつかの態様では、バリアントは、ちょうど12個の変異残基を含有する(N末端またはC末端での欠失は考慮しない)。
【0013】
特に、ポリペプチドは、Sac7d(SEQ ID NO: 1)残基に対応する付番によるW24Y、T33W、およびA44H変異をさらに含む。
【0014】
実施例に示されているように、これらの変異は、クラスターAの全てのメンバーに存在する変異であり、クラスターAは、結合部位に存在する変異において相同性(同じアミノ酸、または同じタイプ(サイズ、疎水性、極性などに関して)のアミノ酸)を呈する同定された結合体(binder)を再編成したものである。変異を受けた他のアミノ酸の分析により、これらの他のアミノ酸にバリエーションがある可能性があることが示され(表3、8、および10に示されるとおり)、これにより、クラスターAの全てのメンバーに存在するW24Y、T33W、およびA44H変異の存在が重要視される。
【0015】
さらに、これらのバリアントは、ヒト、マウス、およびブタレプチン受容体に結合するので、薬理学的開発に非常に適していることが実施例により示されている。クラスターAに属するバリアントがレプチン受容体に結合し、かつレプチンと競合しないという事実は、これによりレプチンのその受容体への結合が消失または減少した場合に観察される可能性のある副作用が軽減され得ることから、薬理学的文脈における使用に関しても有利である。また、Sac7dファミリーのバリアントが腸管バリアを通過できることは公知ではあるものの(WO2016062874およびUS 20180085427、ならびに非特異的バリアントの小部分がバリアを横断することを確認する実施例に示されているとおり)、腸管バリアを横断する本明細書において開示される特異的バリアントの量は、非特異的バリアントの量または別のクラスターに属するレプチン受容体の結合体の量よりもはるかに多いことにも留意されたい。これは、他のSac7dバリアントの受動的通過に対し、クラスターAの結合体の能動的通過を強く示唆するものである。実際に、腸管細胞の表面にあるレプチン受容体への結合が、腸管の反対面へのバリアント(単独または別のポリペプチドに結合されたもの)の輸送を誘発することが示されている。
【0016】
特に、Sac7dファミリーのメンバーのその天然リガンドへの結合の境界面における変異残基は、Sac7d(SEQ ID NO: 1)のV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、D36、N37、G38、K39、T40、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51からなる群より選択される。
【0017】
いくつかの態様では、変異残基は、Sac7d(SEQ ID NO: 1)のK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、T40、R42、A44、およびS46上にある。
【0018】
いくつかの態様では、変異残基は、Sac7d(SEQ ID NO: 1)のK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、M29、S31、T33、R42、およびA44上にある。
【0019】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、Sac7d(SEQ ID NO: 1)残基に対応する付番によるD16E、N37Q、およびM57Lより選択される少なくとも1つの変異をさらに含む。
【0020】
特に、Sac7dファミリーのメンバーは、スルホロブス・アシドカルダリウス(Sulfolobus acidocaldarius)由来のSac7d、スルホロブス・アシドカルダリウス由来のSac7e、スルホロブス・ソルファタリカス(Sulfolobus solfataricus)由来のSSo7d、スルホロブス・シバタエ(Sulfolobus shibatae)由来のSsh7b、スルホロブス・シバタエ由来のSsh7a、スルホロブス・トコダイイ(Sulfolobus tokodaii)由来のDBP7、スルホロブス・アイランディカス(Sulfolobus islandicus)由来のSis7a、メタロスファエラ・セデュラ(Metallosphaera sedula)由来のMse7、メタロスファエラ・キュプリナ(Metallosphaera cuprina)由来のMcu7、アシディアヌス・ホスピタリス(Acidianus hospitalis)由来のAho7a、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7b、アシディアヌス・ホスピタリス由来のAho7c、およびスルフリスファエラ・トコダイイ(Sulfurisphaera tokodaii)由来のSto7からなる群より選択される。
【0021】
Sac7dファミリーのコンセンサス配列(SEQ ID NO: 16)に基づいて、バリアントは、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28、もしくはSEQ ID NO: 29、またはこれらの配列のアミノ酸5~56、5~57、5~58、5~59、5~60、もしくは5~61を含む。
【0022】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、Sac7dに基づいており、かつSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 36、SEQ ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 48、もしくはSEQ ID NO: 49、またはこれらの配列のアミノ酸1~54を含む。
【0023】
これらの配列は、(1)好ましい変異の規格、ならびに(2)結合部位外にあり、かつ安定性および/または工業生産に好都合である特定の変異の有無、によって異なる。
【0024】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、Aho7cに基づいており、かつSEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、SEQ ID NO: 52、SEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 54、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 56、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 60、SEQ ID NO: 61、SEQ ID NO: 62、SEQ ID NO: 63、もしくはSEQ ID NO: 64、またはこれらの配列のアミノ酸1~54を含む。
【0025】
Sac7dおよびAho7cのコンセンサス配列(SEQ ID NO: 65によって示されている)に基づくバリアントは、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 33、もしくはSEQ ID NO: 34、またはこれらの配列のアミノ酸1~54を含む。
【0026】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、Sso7dに基づいており、かつSEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、SEQ ID NO: 68、SEQ ID NO: 69、もしくはSEQ ID NO: 70、またはこれらの配列のアミノ酸1~53もしくは1~54を含む。
【0027】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、前述の配列のアミノ酸1~55、1~56、1~57、1~58、または1~59を含み得る。
【0028】
いくつかの態様では、ポリペプチドは、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアント内にある。
【0029】
いくつかの態様では、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアントは、有機分子にコンジュゲートされている。
【0030】
いくつかの態様では、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアントは、別のポリペプチド、特にSac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントを含む別のポリペプチドにコンジュゲートされている。いくつかの態様では、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのメンバーのバリアントは、Sac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントにコンジュゲートされている。
【0031】
本発明はまた、記載されるポリペプチドをコードする核酸分子、かかる核酸分子を含む発現ベクター(宿主細胞内での転写を可能にする要素を含む)、および該核酸分子または該発現ベクターを含む宿主細胞に関する。
【0032】
本発明はまた、開示されるポリペプチド、開示される核酸、開示される発現ベクター、または開示される宿主細胞と、薬学的に許容される担体とを含む薬学的組成物に関する。
【0033】
本発明はまた、開示されるポリペプチドを生成するための方法であって、
a.開示される発現ベクターによって細胞が形質転換された細胞培養物を培養する工程、
および
b.ポリペプチドを回収する工程
を含む、方法に関する。
【0034】
本発明はまた、医薬として使用するための開示されるポリペプチドまたは核酸に関する。
【0035】
本発明はまた、疾患の治療または予防に使用するための、開示される、活性分子(特に別のポリペプチド)に融合されたレプチン受容体結合バリアント、それをコードする核酸、発現ベクター、または細胞であって、バリアントが該疾患の治療または予防に対して活性のある物質に会合しているものに関する。この物質は、治療活性物質として指定され得る。
【0036】
本発明はまた、所与の疾患を有するか、またはそれを発症するリスクのある対象を治療する方法であって、所与の疾患を治療または予防するための治療的に活性な物質に会合または結合されたLepR結合バリアントの有効量を含む組成物を該対象に投与する工程を含む、方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0037】
発明の詳細な説明
特に、本発明は、ヒトレプチン受容体(UNIPROTデータベースではP48357と称される)に特異的に結合する、Sac7dタンパク質のバリアントまたはSac7dファミリーのタンパク質のバリアントを含む、ポリペプチドに関する。特に、該バリアントは、ヒト、ブタ、およびマウスレプチン受容体に結合する。また該バリアントは、別のポリペプチド、特にSac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントに結合されたときに、腸管バリアの横断を可能にすることが好ましい。治療活性物質を経口または直腸投与すること、腸管バリアを横断させること、および治療活性物質を、特に腸管内で局所的に、または体循環を通じて通過した後に身体の他の器官内で作用させること、を可能にするために、かかる治療活性物質に融合、結合、または会合させることにおいて、かかるバリアントは有用である。
【0038】
好ましい態様では、かかるバリアントは、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 27、SEQ ID NO: 28、またはSEQ ID NO: 29を含む。これらの配列は、Sac7dファミリーにコンセンサスな配列に基づいており、WO 2012/150314の開示に従って得られたものであり、該公報には、Sac7dファミリーのあるタンパク質から別のタンパク質へと変異を移行させることが可能であり、これらのタンパク質が、類似の構造および結合部位、ならびに類似のアミノ酸配列を呈していることが示されている。SEQ ID NO: 22~25は17位にDを有するコンセンサス配列であり、一方SEQ ID NO: 26~29は17位にEを呈する。かかる17位は、
図1の配列アラインメントに見られるようにSEQ ID NO: 1の16位に対応する。これらの配列の最初の1つ、2つ、または3つのアミノ酸が省かれてもよく、最後の12個の一部または全ても同様に省かれてもよい。
【0039】
いくつかの態様では、バリアントは、Sac7dタンパク質に基づいており、かつSEQ ID NO: 35、SEQ ID NO: 36、SEQ、ID NO: 37、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 40、SEQ ID NO: 41、SEQ ID NO: 42、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 45、SEQ ID NO: 46、SEQ ID NO: 47、SEQ ID NO: 18、もしくはSEQ ID NO: 49、またはこれらの配列のアミノ酸1~54、1~55、1~56、1~57、1~58、1~59、1~60、1~61、1~62、もしくは1~63を含む。SEQ ID NO: 41~44は、SEQ ID NO: 1の16位、37位、および57位に天然アミノ酸D、N、およびMを有するバリアントを表し(これらの配列ではSEQ ID NO: 1の開始Mは省かれている)、一方SEQ ID NO: 45~49は、これらの位置に改変アミノ酸E、Q、およびLを有するバリアントを表す。SEQ ID NO: 35~39は、これらの位置についてコンセンサスである配列を表す。
【0040】
いくつかの態様では、バリアントは、Sso7dタンパク質(SEQ ID NO: 2)に基づいており、かつSEQ ID NO: 67、SEQ ID NO: 68、SEQ ID NO: 69、もしくはSEQ ID NO: 70、またはこれらの配列のアミノ酸1~53、1~54、1~55、1~56を含む。これらの配列では、SEQ ID NO: 2の最初の3つのアミノ酸は省かれている。
【0041】
いくつかの態様では、バリアントは、Aho7cタンパク質(SEQ ID NO: 14)に基づいており、かつSEQ ID NO: 50、SEQ ID NO: 51、SEQ、ID NO: 52、SEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 54、SEQ ID NO: 55、SEQ ID NO: 56、SEQ ID NO: 57、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 60、SEQ ID NO: 61、SEQ ID NO: 62、SEQ ID NO: 63、もしくはSEQ ID NO: 64、またはこれらの配列のアミノ酸1~54、1~55、1~56、もしくは1~57を含む。SEQ ID NO: 55~59は、SEQ ID NO: 14の17位および38位に天然アミノ酸DおよびNを有するバリアントを表し(これらの配列ではSEQ ID NO: 14の2つの開始アミノ酸MAは省かれている)、一方SEQ ID NO: 60~64は、これらの位置に改変アミノ酸EおよびQを有するバリアントを表す。SEQ ID NO: 50~54は、これらの位置についてコンセンサスである配列を表す。
【0042】
Sac7dおよびAho7cのコンセンサス配列に基づくバリアントは、SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32、SEQ ID NO: 33、およびSEQ ID NO: 34によって表される。
【0043】
上記に示された配列はそのN末端にメチオニンを含まないが、各配列のN末端にメチオニンを有していても本発明を実施可能であることに留意されたい。
【0044】
かかるバリアントを、生体分子に融合させて、かつ/または小さな化学的実体にコンジュゲートさせて、経口または直腸投与によって使用することで、該分子の腸管バリアの横断を可能にし、それにより有効性もしくはバイオアベイラビリティを増加させることができ、またはより少量の使用を可能にすることができる。コンジュゲートされ得る典型的な分子は、小さな化学分子(例えば、アウリスタチンもしくはドキソルビシンなどの、癌に対する細胞毒性剤)、ペプチド(GLP-1などのインスリン類似体)、スルホロブス・アシドカルダリウス由来のSac7d(およびAho7cもしくはSso7dなどの類似体)の誘導体などの小さなタンパク質足場、アフィボディ、アフィリン、アフィマー、アルファボディ、アンチカリン、アビマー、DARPin、フィノマーなどの抗体ミメティック、Kunitsドメインペプチド、モノボディ、プロテインAのZドメイン、ガンマB結晶、ユビキチン、シスタチン、リポカリン、膜受容体のAドメイン、アンキリンリピートモチーブ(ankyrin repeat motive)、FynのSH3ドメイン、プロテアーゼ阻害剤のKunitsドメイン、フィブロネクチンの10番目のタイプIIIドメイン、3もしくは4ヘリックスバンドルタンパク質、アルマジロリピートドメイン、ロイシンリッチリピートドメイン、PDZドメイン、SUMOもしくはSUMO様ドメイン、免疫グロブリン様ドメイン、ホスホチロシン結合ドメイン、プレクストリン相同ドメイン、src相同2ドメイン、または合成ペプチドリガンド、抗体フラグメント(Fab、VHH、ScFvを含む)、酵素、アンチセンスオリゴヌクレオチド、siRNA、shRNAなどの治療用核酸である。より大きなポリペプチドも、本明細書において開示されるバリアントに融合され得る。
【0045】
これらの配列は全て、Sac7dファミリーのタンパク質に基づく特定のバリアントを記載している。以下に説明されるように、
図1のアラインメントを使用して該ファミリーの他のタンパク質のバリアントを設計することが可能である。
【0046】
タンパク質Sac7dおよびAho7cにコンセンサスな配列は、SEQ ID NO: 65である。SEQ ID NO: 30、SEQ ID NO: 31、SEQ ID NO: 32、およびSEQ ID NO: 34は、このコンセンサス配列に基づくバリアントである。
【0047】
本明細書と配列表との間に矛盾がある場合、本明細書に言及されている配列が優先される。
【0048】
上記に示されるように、本明細書はSac7d(SEQ ID NO: 1)、Aho7c(SEQ ID NO: 14)、Sso7d(SEQ ID NO: 2)のバリアントを具体的に開示するが、本開示はSac7dファミリーの他のタンパク質、特にSac7dおよびAho7cに非常に類似しているSto7(SEQ ID NO: 15)に適用可能である。本開示は、WO2007139397に開示されているように、他のOBフォールドドメインにも適用可能である。当初は、ウイルスアダプタータンパク質v-Crk内の保存配列として記載されかつPFAMデータベースにおいてPF00018の下で記載されている、約60アミノ酸残基の小さなタンパク質ドメインであるSH3ドメインにも、本発明は適用可能である。SH3ドメインは、2つの密集した逆平行βシートとして配置された5本または6本のβ鎖からなる特徴的なベータバレルフォールドを有する。リンカー領域は、短いヘリックスを含有し得る。OBフォールドドメインとSH3ドメインが相同性を共有していること、ならびにこれらのドメインの配列および構造に関する知見を鑑みて、OBフォールドドメインまたはSH3ドメインのいずれにおいても、Sac7dについて以下に開示されるアミノ酸にどのアミノ酸が対応するかを決定することが可能であることに留意されたい。
【0049】
特定の態様では、ポリペプチドは、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのタンパク質のバリアント内にある。
【0050】
特定の態様では、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのタンパク質のバリアントは、別のタンパク質またはポリペプチドに連結または融合されている。特に、他のタンパク質またはポリペプチドは、別の標的に結合する、Sac7dファミリーのタンパク質の同じバリアントまたは別のバリアントであり得る。この態様では、疾患に関連する標的にSac7dファミリーの他のバリアントが結合する場合が好ましいため、該他のバリアントは疾患の治療または予防に有用なものである。いくつかの態様では、Sac7dファミリーの他のバリアントは、ヒト血清アルブミンに結合する。いくつかの態様では、レプチン受容体結合バリアントは、Sac7dファミリーの(少なくとも)2つの他のバリアントに結合されている。
【0051】
特定の態様では、バリアントはポリペプチド内に存在し、したがって、生物学的に関心対象となる他のタンパク質またはポリペプチドにアミン結合によって共有結合的に連結されている。
【0052】
一態様では、ポリペプチドは、何らかの治療活性を呈する有機分子にコンジュゲートされている。
【0053】
本発明はまた、本明細書において記載されるポリペプチドをコードするDNA配列を含む遺伝子コンストラクト、かかる遺伝子コンストラクトを含むベクター、および遺伝子コンストラクトをそのゲノム内に含む宿主細胞に関連する。
【0054】
本発明はまた、本明細書において開示されるポリペプチドを生成するための方法であって、
a.開示される遺伝子コンストラクトによって細胞が形質転換された細胞培養物を培養する工程、
および
b.ポリペプチドを回収する工程
からなる工程を含む、方法に関連する。
【0055】
本発明はまた、医薬として使用するための本明細書において開示されるポリペプチドに関する。
【0056】
本発明はまた、その必要がある対象を治療するための方法であって、本明細書において開示されるレプチン受容体に結合するバリアントの治療量を対象に投与する工程を含み、バリアントが、医薬として疾患に対する治療活性を有するペプチドまたはタンパク質に融合されている、方法に関する。
【0057】
本発明はまた、対象に対する、本明細書において開示されるレプチン受容体に結合するバリアントを含有する組成物であって、バリアントが、所与の疾患に対する治療活性を有するペプチドまたはタンパク質と、該疾患の治療において同時に、別個に、または逐次的に(徐々に分散させて)使用するための別の剤とに融合されている、組成物に関する。かかる他の剤は、所与の疾患を治療するための既知の剤の中から選択される。
【0058】
それは、疾患が以下に開示されるとおりである場合に特に適応される。
【0059】
本発明はまた、治療、診断、または精製での使用におけるこれらのバリアントに関する。本発明はまた、ポリペプチドまたはバリアントを含有する組成物、特に経口組成物に関する。実際に、また全身性疾患(胃腸管系に限局しないもの)の治療の場合でさえも、可能な限り経口投与が、医療スタッフメンバーの関与が必要となり得る他の投与様式(特に注射)よりも好ましい。この態様では、組成物はまた、かかる経口投与に使用され得る薬学的に許容される賦形剤(色素、甘味料、テクスチャ剤など)を含有することが好ましい。
【0060】
【0061】
【0062】
【0063】
本明細書において開示されるヒトレプチン受容体に結合するバリアントは、Sac7配列の7位、8位、9位、21位、22位、24位、26位、29位、31位、33位、40位、42位、44位、および/または46位に対応する位置に変異を含有する。しかしながら、40位のトレオニンがバリアントで維持されてもよく、および/または46位のセリン内もそうであることに留意されたい。しかしながら、本明細書において開示されるヒトレプチン受容体に結合するバリアントは、SEQ ID NO: 1と比較して少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個、より好ましくは少なくとも8個、より好ましくは少なくとも9個、より好ましくは少なくとも10個、より好ましくは少なくとも11個、より好ましくは少なくとも12個の変異アミノ酸(すなわち、SEQ ID NO: 1の対応するアミノ酸とは異なるアミノ酸、または該バリアントの派生元のSac7dファミリーのタンパク質の配列と比較した上記変異アミノ酸)を含有する。一般に、SEQ ID NO: 1(または派生元のSac7dファミリーのタンパク質の配列)と比較して、最大20個、より好ましくは最大18個、より好ましくは最大16個、15個、14個、または13個の変異アミノ酸が存在する。
【0064】
Sac7dタンパク質ファミリー
Sac7dファミリーは、Sac7dタンパク質に関するものと定義されており、好極限性細菌から単離された7kDaのDNA結合タンパク質のファミリーに相当する。Sac7dファミリーは、本発明の文脈において好ましく使用される、OBフォールドドメインの代表種として、本明細書において開示される。SH3ドメインはOBフォールドドメインと相同性を共有しているため、Sac7dに関連する開示はSH3足場にも適用可能である。
【0065】
これらのタンパク質およびこのファミリーは、特にWO 2008/068637に記載されている。したがって、本発明の文脈内で、タンパク質は、配列SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 15のうちの1つを有する場合に、またはコンセンサス配列である配列SEQ ID NO: 16(SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 9およびSEQ ID NO: 12~SEQ ID NO: 15から得られる。このコンセンサス配列において、ダッシュ-はアミノ酸が存在せず、タンパク質が全て同じサイズを有しているわけではないことを示す)に対応する配列を有する場合に、Sac7dファミリーに属する。このSac7dファミリーは、特にスルホロブス・アシドカルダリウスに由来するSac7dまたはSac7eタンパク質、スルホロブス・ソルファタリカスに由来するSso7dタンパク質、スルホロブス・トコダイイに由来するSto7タンパク質とも呼ばれるDBP 7、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7bタンパク質、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7aタンパク質、メタロスファエラ・セデュラに由来するMse7、メタロスファエラ・キュプリナに由来するMcu7、アシディアヌス・ホスピタリスに由来するAho7aまたはAho7bまたはAho7c、スルホロブス・アイランディカスに由来するSis7aまたはSis7b、およびスルホロブス・ソルファタリカスに由来するp7ssタンパク質を含む。Sac7dファミリーのタンパク質の配列の広い類似性を鑑みると、Sac7dの所与のアミノ酸に対応する、Sac7dとは別のタンパク質のアミノ酸を同定することは、直接的に可能かつ容易である。特に、かかるタンパク質が重ね合わせ可能であることを(図中に)示し、(明細書中に)説明しているWO 2008/068637の開示を使用することもできる。この文書の内容は、特に、種々のOBフォールドタンパク質をアラインメントするおよび重ね合わせるための方法の記載に関して、参照により本明細書に組み入れられる。上記に示されるように、特定のアミノ酸を指定するためにSac7dタンパク質由来のアミノ酸の計数法(numeration)を使用することが有用であり、同等のアミノ酸は
図1から得られ得る。
【0066】
WO 2012/150314には、Sac7dファミリーのあるタンパク質からの変異が同じファミリーの別のタンパク質に持ち込まれ得ることが示されている。この移行性により、Sac7dファミリーのあるタンパク質の変異体から出発して、該ファミリーの別のタンパク質の変異体が作出されることになる。最初の変異体は、特にWO 2008/068637のプロセスを実行することによって得られたものであり得る。よって、特にWO 2012/150314の開示および
図1の開示を使用して、Sac7dファミリーの任意のタンパク質の変異体を、かかるファミリーの任意の他のタンパク質の変異体から出発して得ることが可能である。実例として、Sac7dの変異体の場合、
図1の配列アラインメントを使用して、Sac7d変異体の変異アミノ酸を別のタンパク質の足場内に導入することができる。実例として、本明細書において開示されるSac7dバリアントから得られるSso7dのバリアントは、SEQ ID NO: 66、SEQ ID NO: 67、SEQ ID NO: 68、SEQ ID NO: 69、およびSEQ ID NO: 70として記載されている。
【0067】
Sac7dファミリーのコンセンサス配列を使用して、バリアントは、SEQ ID NO: 17、SEQ ID NO: 18、SEQ ID NO: 19、SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 22、SEQ ID NO: 23、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 26、SEQ ID NO: 28、SEQ ID NO: 28、またはSEQ ID NO: 28によって示されている。
【0068】
バリアントを得るために野生型タンパク質配列内に導入される変異残基の数は、好ましくは4~25個であり、またはより具体的には4~22個もしくは4~20個である。したがって、野生型OBフォールドタンパク質(またはドメイン)と比較して、少なくとも4個、より好ましくは少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6個、より好ましくは少なくとも7個もしくは8個、さらにより好ましくは少なくとも10個、しかし一般には25個未満、より好ましくは22個未満、さらにより好ましくは20個未満、または15個もしくは14個未満の置換アミノ酸を好ましくは有するバリアントを得ることが可能である。本明細書において、全てのおよび任意の範囲(例えば、5~20個または7~25個など)が考慮されることに留意されたい。特に好ましい範囲は、4~20個、4~17個および6~17個、4~14個および6~14個である。
【0069】
野生型OBフォールドドメインと比べて、OBフォールドドメインの結合部位において7、8、9、10、11、12、13、または14個のアミノ酸が変異している場合が好ましい。したがって、これらの変異は好ましくは、Sac7d(SEQ ID NO: 1)のV2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D36、N37、G38、K39、T40、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51、より具体的には、K7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、T40、R42、A44、およびS46、またはK7、Y8、K9、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、R42、およびA44に対応するアミノ酸に導入される。示されているように、バリアントは、変異W24Y、T33W、およびA44Hを含有する。他の変異(D16E、N37Q、およびM57L)も実施され得る。全てのアミノ酸番号はSEQ ID NO: 1を参照している。
【0070】
特に、変異アミノ酸の数が7~14個(両端を含む)である場合が興味深い。特に、バリアントは、WO 2008/068637に示されているようにアミノ酸挿入も含み得る。
【0071】
示されているように、Sac7dファミリーのタンパク質は、スルホロブス・アシドカルダリウスに由来するSac7dまたはSac7e、スルホロブス・ソルファタリカスに由来するSso7d、スルホロブス・トコダイイに由来するSto7とも呼ばれるDBP 7、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7b、スルホロブス・シバタエに由来するSsh7a、メタロスファエラ・セデュラに由来するMse7、メタロスファエラ・キュプリナに由来するMcu7、アシディアヌス・ホスピタリスに由来するAho7aまたはAho7bまたはAho7c、スルホロブス・アイランディカスに由来するSis7aまたはSis7b、およびスルホロブス・ソルファタリカスに由来するp7ssである。Sac7d、Sso7d、Sac7e、Ssh7b、Ssh7a、DBP7、Sis7a(3アレル)、Mse7、Mcu7、Aho7a、Aho7b、Aho7c、およびSto7タンパク質の種々の配列は、それぞれSEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 15によって表される。
【0072】
このSac7dファミリーのタンパク質のバリアントは、ナノフィチンと呼ばれる場合がある。したがって、本発明は、SEQ ID NO: 1~SEQ ID NO: 15によって表されるタンパク質のバリアント、またはSEQ ID NO: 16(コンセンサス配列)を包含する(reads on)配列を有するタンパク質のバリアントに対して、特にSac7dのバリアントに対して、優先的に実践される。
【0073】
Sac7dタンパク質とOBフォールドタンパク質およびSH3ドメインとの関係
OBフォールドタンパク質は、当技術分野において公知である。それらは特に、上記で引用した文書に記載されており、またArcus (Curr Opin Struct Biol. 2002 Dec; 12(6):794-801)にも記載されている。OBフォールドは、5枚のベータ(β)シートを有する円柱の形態である。大半のOBフォールドタンパク質は、オリゴ糖、オリゴヌクレオチド、タンパク質、金属イオン、または触媒基質であり得るそれらの天然リガンドの同じ結合境界面を使用する。この結合境界面は、主にベータシートに位置する残基で構成される。ループに位置するある特定の残基も、OBフォールドタンパク質のその天然リガンドとの結合に関与し得る。したがって、WO 2007/139397およびWO 2008/068637の出願ならびにArcusの文書(2002, 前掲論文)には、自身の天然リガンドと結合するためのOBフォールドタンパク質ドメインが記載されている。
【0074】
特に、文書WO 2008/068637には、OBフォールドタンパク質の結合ドメインをどのように同定するかについて精緻に記載されている。WU-Blast2 (Lopez et al., 2003, Nucleic Acids Res 31, 3795-3798)、T-COFFEE(Notredame et al., 2000, J Mol Biol 302, 205-217)、またはDALI lite(Holm and Park, 2000, Bioinformatics 16, 566-567)を使用して、OBフォールドドメインを有するタンパク質のいくつかの配列および3D構造を重ね合わせることにより、結合ドメインの位置、および特に改変することができるアミノ酸を同定することが可能である。Sac7dの配列(SEQ ID NO: 1)を参照すると、これらは、残基V2、K3、K5、K7、Y8、K9、G10、E11、K13、E14、T17、K21、K22、W24、V26、G27、K28、M29、S31、T33、Y34、D35、D36、N37、G38、K39、T40、G41、R42、A44、S46、E47、K48、D49、A50、およびP51である。
【0075】
WO 2008/068637には、DALIウェブサイト(http://www.ebi.ac.uk/dali/interactive.html)(Holm and Sander, 1998, Nucleic Acids Res 26, 316-319)を使用して、OBフォールドタンパク質またはドメイン(本出願ではSac7dを含む10個のドメインを使用した)の3D構造の重ね合わせを実施することが可能であると記載されている。したがって、任意のOBフォールドタンパク質(または任意のOBフォールドドメイン)について、結合部位に関与しかつ前述のSac7dアミノ酸に対応するアミノ酸を同定することは容易である。よって、これらのタンパク質のうちの1つにおいて変異させることができるアミノ酸を提供することにより、任意の他のOBフォールドドメインについて対応するアミノ酸を同定することが可能になる。
【0076】
OBフォールドドメインがSH3ドメインに似ていること、およびSH3ドメインにおけるSac7dのアミノ酸の等価体を同定することも可能であることにも留意されたい。
【0077】
OBフォールドドメインまたはSH3ドメインの例
本発明によって使用され得るOBフォールドタンパク質の非限定的な例は、Sac7d、Sso7d、SEBのN末端ドメイン(Papageorgiou et al., 1998)、志賀様毒素IIeの鎖A(PDB 2bosa)、ヒト好中球アクチバチンペプチド-2(human Neutrophil Activatin Peptide-2)(NAP-2、PDB 1tvxA)、アゾトバクター・ビネランジィ(Azotobacter vinelandii)のモリブデン結合タンパク質(modg)(PDB 1h9j)、SPE-CのN末端ドメイン(Roussel et al., 1997)、大腸菌(E. coli)志賀様毒素のB5サブユニット(Kitov et al., 2000)、Cdc13(Mitton-Fry et al., 2002)、ヒトYボックスタンパク質YB-1のコールドショックDNA結合ドメイン(Kloks et al., 2002)、大腸菌無機ピロホスファターゼEPPase(Samygina et al., 2001)、または(Arcus, 2002)による論文の表3に列記されているタンパク質のいずれか、例えば1krs(リシル-tRNAシンテターゼLysS、大腸菌)、1c0aA(Asp-tRNAシンテターゼ、大腸菌)、1b8aA(Asp-tRNAシンテターゼ、P.コダカラエンシス(P. kodakaraensis))、1lylA(リシル-tRNAシンテターゼLysU、大腸菌)、1quqA(複製タンパク質A、32kDaサブユニット、ヒト)、1quqB(複製タンパク質A、14kDaサブユニット、ヒト)、1jmcA(複製タンパク質A、70kDaサブユニット(RPA70)フラグメント、ヒト)、1otc(テロメア末端結合タンパク質、O.ノバ(O. nova))、3ullA(ミトコンドリアssDNA結合タンパク質、ヒト)、1prtF(百日咳毒素S5サブユニット、百日咳菌(B. pertussis))、1bcpD(百日咳毒素S5サブユニット(ATP結合)、百日咳菌)、3chbD(コレラ毒素、コレラ菌(V. cholerae))、1tiiD(易熱性毒素、大腸菌)、2bosA(ベロ毒素-1/志賀毒素、B-五量体、大腸菌)、1br9(TIMP-2、ヒト)、1an8(超抗原SPE-C、化膿性連鎖球菌(S. pyogenes))、3seb(超抗原SPE、黄色ブドウ球菌(S. aureus))、1aw7A(毒素性ショック症候群毒素、黄色ブドウ球菌)、1jmc(主要なコールドショックタンパク質、大腸菌)、1bkb(開始翻訳因子5a、P.アエロフィラム(P. aerophylum))、1sro(PNPaseのS1 RNA結合ドメイン、大腸菌)、1d7qA(開始翻訳因子1、elF1a、ヒト)、1ah9(開始翻訳因子1、IF1、大腸菌)、1b9mA(Mo依存性転写調節因子ModE、大腸菌)、1ckmA(RNAグアニリルトランスフェラーゼ、クロレラウイルス、PBCV-1)、1a0i(ATP依存性DNAリガーゼ、バクテリオファージT7)、1snc(ブドウ球菌ヌクレアーゼ、黄色ブドウ球菌)、1hjp(DNAヘリカーゼRuvAサブユニット、N末端ドメイン、大腸菌)、1pfsA(遺伝子Vタンパク質、シュードモナス(Pseudomonas)バクテリオファージpf3)、1gvp(遺伝子Vタンパク質、糸状バクテリオファージ(f1、M13))、1gpc(遺伝子32タンパク質(gp32)コア、バクテリオファージT4)、1wgjA(無機ピロホスファターゼ、出芽酵母(S. cerevisiae))、および2prd(無機ピロホスファターゼ、T.サーモフィラス(T. thermophilus))である。
【0078】
SH3ドメインを有するタンパク質の非網羅的な例は、シグナル伝達アダプタータンパク質、CDC24、Cdc25、PI3キナーゼ、ホスホリパーゼ、Ras GTPase活性化タンパク質、Vav癌原遺伝子、GRB2、p54 S6キナーゼ2(S6K2)、SH3D21、C10orf76(可能性あり)、STAC3、ある種のミオシン、SHANK1、2、3、ARHGAP12、C8orf46、TANGO1、インテグラーゼ、局所接着キナーゼ(FAK、PTK2)、プロリンリッチチロシンキナーゼ(Pyk2、CADTK、PTK2ベータ)、またはTRIP10(cip4)である。
【0079】
Sac7dおよびAho7cに基づくレプチン受容体(LepR)結合バリアントの説明
Sac7dおよびAho7cは、大きな類似性を有するタンパク質である。Sto7(SEQ ID NO: 15)もこれらのタンパク質との類似性を呈することに注目することもできる。
【0080】
SEQ ID NO: 654は、Sac7d(SEQ ID NO: 1)のアミノ酸2~66と、Aho7c(SEQ ID NO: 14)のアミノ酸3~60とをアラインメントした後のコンセンサス配列に対応する。開始アミノ酸は、タンパク質の構造において必須ではないため省かれている。
【0081】
このコンセンサス配列において、Xは表1のとおりである。
【0082】
(表1)SEQ ID NO: 59~73においてXとして表されるいくつかのアミノ酸の説明。
【0083】
ヒトレプチン受容体に結合するバリアントのコンセンサス配列は以下によって表される。
【0084】
(表2)Sac7d-Aho7cのコンセンサス配列に基づくバリアントの配列。Xによって表されるアミノ酸は、表1、3、および4にさらに記載されている。
【0085】
(表3)SEQ ID NO: 30~64においてXとして示されるアミノ酸の説明。この表は、前述の配列に対して、それらが保有するXについて使用されることに留意されたい。いくつかの配列に対しては、表3のいくつかの位置でアミノ酸が特定されているため、本表の当該行は適用されない。列記されている配列には、この表の2列目のXが示されている。39位では、3つの可能性があることに注目することができる。すなわち、Xは任意のアミノ酸であるか、好ましくはXはT、Y、L、もしくはAであるか、またはより好ましくはXはTもしくはYである。
【0086】
これらの配列では、結合に関与しないいくつかのアミノ酸も、タンパク質の結合特性および生物学的特性を改変することなく、バリアント上で改変され得る。それらは表4に表されている。
【0087】
(表4)SEQ ID NO: 30~64においてXとして表されるアミノ酸。56位のXはSEQ ID NO: 30~49にのみ存在する。
【0088】
Sac7d(SEQ ID NO: 1)に基づくレプチン受容体結合バリアントの説明
ヒトレプチン受容体に結合する、Sac7dに基づく特定のバリアントは、SEQ ID NO: 35~SEQ ID NO: 49によって示されている。
【0089】
これらの配列では、Sac7dタンパク質の開始メチオニン(M)は省かれている。このアミノ酸が欠失された場合にタンパク質の活性は変化しないことが、本出願人によって実際に示されている。同様に、最後の7個のアミノ酸の全てまたは一部をバリアントから省いても、活性を保持することが可能である。
【0090】
よって、SEQ ID NO: 35~SEQ ID NO: 49のいずれかのうちのアミノ酸1~57によって示されているタンパク質も、本発明によるバリアントである。SEQ ID NO: 35~SEQ ID NO: 49のいずれかのうちのアミノ酸1~58、1~59、1~60、1~61、1~62、1~63によって示されているタンパク質を挙げることもでき、これらも本発明によるバリアントである。
【0091】
よって、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 35~SEQ ID NO: 49のいずれか、またはこれらの配列に基づく任意の切断型タンパク質、および上記に開示されているものを含む。
【0092】
かかるバリアントは以下によって表される。
【0093】
(表5)Sac7dに基づくバリアントの配列。Xによって表されるアミノ酸は、表3および4にさらに記載されている。
【0094】
上記に示されるように、Sac7dのD16(これは、Sac7dに存在するM1が省かれているため、SEQ ID NO: 35~SEQ ID NO: 49の15位に位置している)、Sac7dのN37(本明細書において36位に位置している)、またはSac7dのM57(本明細書において56位に位置している)を表4に開示されているとおりに改変することが可能である。
【0095】
Sac7d/Aho7cのコンセンサス配列に関しては、配列表に全てが示されてはいないものの、任意の組み合わせの置換が予見される(付番はSEQ ID NO: 35~SEQ ID NO: 49を参照している):
【0096】
上記に示されるように、配列は全て、Sac7dに天然に存在するアミノ酸とは異なる変異アミノ酸Y23、W32、およびH43(N末端メチオニンを含有するSEQ ID NO: 1の24位、33位、および44位にそれぞれ対応する)を含有する。
【0097】
本出願人は、これらのアミノ酸がヒトレプチン受容体に結合する種々のバリアントに存在すること、およびかかる改変が結合の低下(親和性の喪失または結合の喪失)を招くことを実際に見出した。他のアミノ酸は、表3に言及されている条件下で可変であってよい。
【0098】
バリアントが、M7(SEQ ID NO: 1の8位に対応する)、T39(SEQ ID NO: 1の40位に対応する)、および/またはS45(SEQ ID NO: 1の46位に対応する)を含有する場合が好ましい。
【0099】
非常に興味深いバリアントは、SEQ ID NO: 38、SEQ ID NO: 39、SEQ ID NO: 43、SEQ ID NO: 44、SEQ ID NO: 48、およびSEQ ID NO: 49によって示されている。
【0100】
Aho7c(SEQ ID NO: 14)に基づくタンパク質の説明
ヒトレプチン受容体に結合する、Aho7cのバリアントは、SEQ ID NO: 50~SEQ ID NO: 64によって示されている。上記に示されるように、Aho7cはSac7dに非常に類似している。また、Sac7dの変異がSac7dから別のタンパク質に持ち込まれ得ること(WO 2012/150314)が、本明細書において示され、かつ想起される。
【0101】
これらの配列では、Aho7cタンパク質(SEQ ID NO: 14)の開始メチオニンおよびアラニン(MA)は省かれている。これらのアミノ酸が欠失された場合にタンパク質の活性は変化しないことが、本出願人によって実際に示されている。同様に、最後の4個のアミノ酸の全てまたは一部をバリアントから省いても、活性を保持することが可能である。
【0102】
よって、SEQ ID NO: 50~SEQ ID NO: 64のいずれかのうちのアミノ酸1~55によって示されているタンパク質も、本発明によるバリアントである。SEQ ID NO: 50~SEQ ID NO: 64のいずれかのうちのアミノ酸1~56、1~57、1~58によって示されているタンパク質を挙げることもでき、これらも本発明によるバリアントである。
【0103】
よって、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 50~SEQ ID NO: 64のいずれか、またはこれらの配列に基づく任意の切断型タンパク質、および上記に開示されているものを含む。
【0104】
かかるバリアントは以下によって表される。
【0105】
(表6)Aho7cに基づくバリアントの配列。Xによって表されるアミノ酸は、表3および4にさらに記載されている。
【0106】
上記に示されるように、Aho7cのD17(これは、Aho7cに存在するM1A2が省かれているため、SEQ ID NO: 50~SEQ ID NO: 64の15位に位置している)、またはAho7cのN38(本明細書において36位に位置している)を表4に開示されているとおりに改変することが可能である。
【0107】
Sac7d/Aho7cのコンセンサス配列に関しては、配列表に全てが示されてはいないものの、任意の組み合わせの置換が予見される(付番はSEQ ID NO: 50~SEQ ID NO: 64を参照している):
【0108】
上記に示されるように、配列は全て、Sac7dに天然に存在するアミノ酸とは異なる変異アミノ酸Y23、W32、およびH43(N末端メチオニンおよびアラニンを含有するSEQ ID NO: 14の25位、34位、および45位にそれぞれ対応する)を含有する。
【0109】
本出願人は、これらのアミノ酸がヒトレプチン受容体に結合する種々のバリアントに存在すること、およびかかる改変が結合の低下(親和性の喪失または結合の喪失)を招くことを実際に見出した。他のアミノ酸は、表3に言及されている条件下で可変であってよい。
【0110】
バリアントが、M7(SEQ ID NO: 14の9位に対応する)、T39(SEQ ID NO: 14の41位に対応する)、および/またはS45(SEQ ID NO: 14の47位に対応する)を含有する場合が好ましい。
【0111】
非常に興味深いバリアントは、SEQ ID NO: 53、SEQ ID NO: 54、SEQ ID NO: 58、SEQ ID NO: 59、SEQ ID NO: 63、およびSEQ ID NO: 64によって示されている。
【0112】
Sso7d(SEQ ID NO: 2)に基づくタンパク質の説明
ヒトレプチン受容体に結合する、Sso7dに基づくバリアントは、SEQ ID NO: 66~SEQ ID NO: 70によって示されている。上記に示されるように、Sso7dはSac7dに非常に類似している。Sac7dの変異がSso7dに持ち込まれ得ることも示されている(WO 2012/150314)。
【0113】
これらの配列では、Sso7dタンパク質(SEQ ID NO: 2)の開始メチオニン、アラニン、およびトレオニン(MAT)は省かれている。これらのアミノ酸が欠失された場合にタンパク質の活性は変化しないことが、本出願人によって実際に示されている。同様に、最後の6個のアミノ酸の全てまたは一部をバリアントから省いても、活性を保持することが可能である。
【0114】
よって、SEQ ID NO: 66~SEQ ID NO: 70のいずれかのうちのアミノ酸1~53によって示されているタンパク質も、本発明によるバリアントである。SEQ ID NO: 66~SEQ ID NO: 70のうちのいずれかのアミノ酸1~54、1~55、1~56、1~57、または1~58によって示されているタンパク質を挙げることもでき、これらも本発明によるバリアントである。
【0115】
よって、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 66~SEQ ID NO: 70のいずれか、またはこれらの配列に基づく任意の切断型タンパク質、および上記に開示されているものを含む。
【0116】
かかるバリアントは以下によって表される。
【0117】
(表7)Sso7dに基づくバリアントの配列。Xによって表されるアミノ酸は、表8にさらに記載されている。
【0118】
(表8)SEQ ID NO: 66~70においてXとして示されるアミノ酸の説明。この表は、前述の配列に対して、それらが保有するXについて使用されることに留意されたい。いくつかの配列に対しては、表8のいくつかの位置でアミノ酸が特定されているため、本表の当該行は適用されない。列記されている配列には、この表の2列目のXが示されている。38位では、3つの可能性があることに注目することができる。すなわち、Xは任意のアミノ酸であるか、好ましくはXはT、Y、L、もしくはAであるか、またはより好ましくはXはTもしくはYである。
【0119】
上記に示されるように、Sso7dのD18(これは、Sso7dに存在するM1A2T3が省かれているため、SEQ ID NO: 66~SEQ ID NO: 68の13位に位置している)を改変することが可能である。
【0120】
上記に示されるように、配列は全て、Sso7dに天然に存在するアミノ酸とは異なる変異アミノ酸Y21、W30、およびH42(N末端メチオニン、アラニン、およびトレオニンを含有するSEQ ID NO: 14の24位、33位、および45位にそれぞれ対応する)を含有する。
【0121】
本出願人は、これらのアミノ酸がヒトレプチン受容体に結合する種々のバリアントに存在すること、およびかかる改変が結合の低下(親和性の喪失または結合の喪失)を招くことを実際に見出した。他のアミノ酸は、表3に言及されている条件下で可変であってよい。
【0122】
バリアントが、M5(SEQ ID NO: 2の8位に対応する)、T38(SEQ ID NO: 2の41位に対応する)、および/またはS44(SEQ ID NO: 2の47位に対応する)を含有する場合が好ましい。
【0123】
非常に興味深いバリアントは、SEQ ID NO: 69およびSEQ ID NO: 70によって示されている。
【0124】
Sac7dファミリーのコンセンサス配列(SEQ ID NO: 16)に基づくバリアントの説明
Sac7dファミリーの特定のメンバーのバリアントは上記に開示されている。
図1に示すSac7dファミリータンパク質の配列の類似性と、あるタンパク質から別のタンパク質に変異が持ち込まれる可能性があるという事実とを鑑みると、変異はSac7dファミリーのコンセンサス配列に示され得る。
【0125】
SEQ ID NO: 17~SEQ ID NO: 29の配列では、Xとして、または8~10位、22位、23位、27位、30位、32位、42位、44位、および48位でXとして指定されたアミノ酸は、表9に示されているとおりである。X(またはX)として指定された他のアミノ酸は、表10または表11に示されている。
【0126】
(表9)SEQ ID NO: 17~SEQ ID NO: 29におけるアミノ酸の説明
【0127】
表1に開示されているアミノ酸は、
図1のコンセンサス配列にも示されているように、Sac7dファミリーのタンパク質に観察される可変性に対応する。
【0128】
表10に開示されているアミノ酸は、本明細書において開示されるバリアントにおいて、ヒトレプチン受容体への結合に関与するアミノ酸に対応する。かかるバリアントは全て、以下のアミノ酸:25位:Yの存在;34位:Wの存在;46位:Hの存在が、野生型タンパク質と異なることに留意されたい。
【0129】
これらのアミノ酸は、本発明者らによって、ヒトレプチン受容体への結合に重要であることが示されている(アミノ酸の変更は、アルブミンに結合する能力またはアルブミンに対する親和性を大幅に低下させる)。対照的に、表10の開示によって、最適化された結合体(SEQ ID NO: 20、SEQ ID NO: 21、SEQ ID NO: 24、SEQ ID NO: 25、SEQ ID NO: 28、またはSEQ ID NO: 29)からの他のアミノ酸を改変することが可能である。特に、これらの結合体の8位、22位、または23位のアミノ酸を別のアミノ酸に置き換えても、結合またはその特性が本質的に変わらなかったことが注目されている。本発明者の分析によれば、9位のアミノ酸もまた、いかなるアミノ酸に対しても許容性があるように思われる。10位、32位のアミノ酸は好ましくはごく小さく、10位のアミノ酸は好ましくは小さい。30位および42位のアミノ酸は好ましくは疎水性であり、48位のアミノ酸は好ましくは極性である。上記の全ての情報は、上記に開示されているSac7dファミリーの特定のメンバー、ならびに表3および8の対応するアミノ酸に容易に変換することができる。
【0130】
また、コンセンサス配列のD17(アスパラギン酸)(これは結合には関与しない)を、E(グルタミン酸)に置き換えることができることも示されている。これは、前述の配列(17位にXを保有するSEQ ID NO: 17~SEQ ID NO: 21;D17を保有するSEQ ID NO: 22~SEQ ID NO: 25;E17を保有するSEQ ID NO: 26~SEQ ID NO: 29)に表されている。
【0131】
(表10)SEQ ID NO: 17~SEQ ID NO: 29においてXとして示されるアミノ酸の説明。この表は、前述の配列に対して、それらが保有するXについて使用されることに留意されたい。いくつかの配列に対しては、表10のいくつかの位置でアミノ酸が特定されているため、本表の当該行は適用されない。42位では、3つの可能性があることに注目することができる。すなわち、Xは任意のアミノ酸であるか、好ましくはXはT、Y、L、もしくはAであるか、またはより好ましくはXはTもしくはYである。
【0132】
上記に示されるように、SEQ ID NO: 17~29の1位のメチオニンは省かれてもよい。同様に、SEQ ID NO: 17~29のアミノ酸61~68も省かれてもよい。
【0133】
一態様では、ポリペプチドは、SEQ ID NO: 17または表11の配列のうちの1つのうちのアミノ酸2~60を含む。
【0134】
(表11)Sac7dファミリーのタンパク質のコンセンサス配列に基づくバリアント配列の一覧。Xの性質は表9および10に提供されている。17位のXはEまたはDであり得る。
【0135】
同定されたバリアントの生成
同定されたバリアントの配列は、当技術分野において公知の任意の分子遺伝学的方法によって任意の適切なベクターにクローニングされ得る。
【0136】
上記のバリアントを含むポリペプチドをコードするヌクレオチド配列を含むこれらの組換えDNAコンストラクトは、ベクター、例えば、プラスミド、ファージミド、ファージ、またはウイルスベクターに関連して使用される。
【0137】
これらの組換え酸分子(recombinant acid molecule)は、Sambrook et al., 1989 (Sambrook J, Fritsch EF and Maniatis T (1989) Molecular cloning: a laboratory manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York)に記載されている技法によって生成され得る。あるいはDNA配列は、例えば合成装置を使用して、化学合成され得る。
【0138】
本発明の組換えコンストラクトは、RNAを発現させることができ、したがって上記遺伝子配列からのタンパク質の生成をもたらす、発現ベクターを含む。したがって、ベクターは、本明細書において開示される遺伝子配列のオープンリーディングフレーム(ORF)に機能的に連結される好適なプロモーターを含む、調節配列をさらに含み得る。ベクターは、抗生物質耐性遺伝子などの選択マーカー配列をさらに含み得る。細菌を発現宿主として使用する場合、コード配列の効率的な翻訳には、特定の開始シグナルおよび細菌分泌シグナルも必要とされ得る。
【0139】
分子の生成
細胞は、上記に開示されているバリアントを含むポリペプチドをコードする配列を含有するベクターでトランスフェクトまたは形質転換される。
【0140】
細胞は、タンパク質が発現され、良好に分泌されるような条件で培養される。細胞の培養条件は、組換え抗体生成に一般に使用される条件であり、当技術分野において公知である。当技術分野において公知であるかかる条件はまた、必要に応じて当業者により最適化され得る。Kunert and Reinhart(Appl Microbiol Biotechnol. 2016; 100: 3451-3461)には、かかる方法が概説されており、それに対する豊富な参考文献が提供されている。
【0141】
細菌、ファージ(Shukra et al, Eur J Microbiol Immunol (Bp). 2014; 4(2): 91-98)または真核生物の生成系を使用することができる。
【0142】
グリコシル化などの適切な翻訳後修飾を得るために真核細胞を使用することが好ましい。
【0143】
特に、CHO(チャイニーズハムスター卵巣)細胞、PER.C6細胞(ヒト細胞株、Pau et al, Vaccine. 2001 21;19(17-19):2716-21)、HEK 293b細胞(ヒト胎児腎臓細胞293)、NS0細胞(非分泌性マウス骨髄腫に由来する細胞株)、またはEB66細胞(アヒル細胞株 Valneva, Lyons, France)を使用することができる。
【0144】
また、本開示によって提供されるのは、本明細書において開示されるバリアントを含むポリペプチドをコードするDNAコンストラクトのうちの少なくとも1つを含有する宿主細胞である。宿主細胞は、発現ベクターを利用することができる任意の細胞であり得る。上記に示されるように、宿主細胞は、哺乳動物細胞などの高等真核生物宿主細胞、酵母細胞などの下等真核生物宿主細胞、または細菌細胞などの原核生物細胞であり得る。
【0145】
宿主細胞への組換えコンストラクトの導入は、当技術分野において公知の任意の方法(リン酸カルシウムトランスフェクション、リポフェクション、DEAE、デキストラン媒介性トランスフェクション、エレクトロポレーション、またはファージ感染など)によって実施される。ベクターは、宿主細胞のゲノム内に挿入され得るか、またはゲノム外ベクター(細菌人工染色体もしくは酵母人工染色体など)として維持され得る。細胞ゲノム内に導入される場合、かかる導入は、ランダムであり得るか、または当技術分野において公知の方法(相同組換えなど)を使用した標的化であり得る。
【0146】
細菌宿主および発現
細菌で使用するための有用な発現ベクターは、組換えDNA配列を、好適な翻訳開始および終結シグナルとともに、機能的プロモーターとの機能的なリーディングフェーズ(reading phase)に挿入することによって構築される。ベクターは、確実にベクターを維持するための、および望ましい場合には宿主内での増幅を提供するための、1つまたは複数の表現型選択マーカーおよび複製起点を含む。
【0147】
形質転換に好適な原核生物宿主には、大腸菌、枯草菌(Bacillus subtilis)、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、ならびにシュードモナス(Pseudomonas)属、ストレプトマイセス(Streptomyces)属、およびスタフィロコッカス(Staphylococcus)属内の種々の種が含まれる。
【0148】
真核生物宿主および発現
真核生物宿主細胞の例には、脊椎動物細胞、昆虫細胞、および酵母細胞が含まれる。特に、前述の細胞を使用することができる。
【0149】
形質転換またはトランスフェクトされた細胞は、当技術分野において公知の方法により培養され、ポリペプチドは細胞内または細胞外画分(分泌されるか否かによる)から回収される。
【0150】
分子の単離
生成された組換えタンパク質は、タンパク質の物理的または化学的特性を利用した公知の種々の分離方法のいずれかにより、細胞内または細胞外画分から分離および精製され得る。
【0151】
特に、沈殿、限外濾過、分子ふるいクロマトグラフィー(ゲル濾過)、吸着クロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、およびアフィニティークロマトグラフィーなどの各種液体クロマトグラフィー、透析、ならびにそれらの組み合わせなどの方法を使用することができる。
【0152】
一般に、組換えポリペプチドを精製するための公知でありかつ使用されている任意の方法が、本明細書において開示される分子の精製に適応される。
【0153】
組換え配列内にタグ(ポリヒスチジンタグなど)が導入されている場合は、このタグを使用して分子を精製することができる。しかしながら、ある特定の態様では、親和性を使用して分子を精製することが好ましい。
【0154】
特に、本明細書において生成される分子が特定の標的に結合するという事実を使用し、かつ任意のアフィニティー方法(アフィニティーカラム、FACS、ビーズ)を使用して、かかる分子を単離することができる。
【0155】
本明細書において開示される分子の1つの特別の利点は、それらが活性であるためにグリコシル化される必要はなく、したがって任意のタイプの細胞内で生成されてもよく、必ずしも真核生物細胞でなくてもよいということである。それらは細菌細胞内で特によく生成される。
【0156】
バリアントの改変
上記のバリアント、およびヒトレプチン受容体に結合する能力を有するバリアントは、当技術分野において公知の任意の方法によって改変され得る。
【0157】
バリアントを含むポリペプチドの調製
1つが本明細書において開示されるバリアント用であり、もう1つが関心対象のタンパク質またはペプチド用である2つのコード配列をインフレームで含有するDNA配列を調製することが可能である。したがって、結果として生じる発現タンパク質は、両方のタンパク質を含有するポリペプチドとなる。ベクターは、発現ポリペプチド内の2つのタンパク質の間に位置するリンカーをコードする配列を含有するような形で構築され得る。
【0158】
よって、本発明はまた、ヒトレプチン受容体に結合する、(好ましくはSac7dファミリーの)OBフォールドタンパク質のタンパク質バリアントであって、別のタンパク質またはポリペプチドに(好ましくは上記に開示されたアミン結合を通じて)融合または連結されたタンパク質バリアント、を含むポリペプチドを包含する。
【0159】
特定の態様では、他のタンパク質またはポリペプチドは、特に本明細書において開示されているような、Sac7dファミリーのタンパク質の別のバリアントを含む。他の態様では、他のタンパク質またはポリペプチドは、Sac7dファミリーのタンパク質の少なくとも2つの他のバリアントを含む。いくつかの態様では、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのタンパク質のバリアントは、N末端およびC末端でSac7dファミリーの別のバリアントに結合されている。バリアントは、抗体に関して以下に説明されるように、標的に結合し得る。
【0160】
特に興味深いのは以下である。
- アルブミンに結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントと、PD-L1に結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアント(特にWO2021180823に開示されているもの)と、に融合された、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントを含むポリペプチド。かかるポリペプチドは、癌の治療、特に非小細胞肺癌、転移性メルケル細胞癌、尿路上皮癌、固形腫瘍、血液癌、および特にリンパ腫(とりわけ古典的ホジキンリンパ腫)、皮膚扁平上皮癌、肺扁平上皮癌、腎細胞癌、または黒色腫の治療に特に有用である。
- アルブミンに結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントと、腫瘍壊死因子アルファ(TNF-アルファ)またはRANK-Lに結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアント(特にWO2020074402に開示されているもの)と、に融合された、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントを含むポリペプチド。かかるポリペプチドは、免疫性もしくは炎症疾患(関節リウマチ、強直性脊椎炎、乾癬および乾癬性関節炎、クローン病、潰瘍性大腸炎、セリアック病、糸球体腎炎、肝炎、炎症性腸疾患など)、中枢神経系(特に、多発性硬化症、視神経炎などの脱髄疾患、もしくは髄膜炎、髄膜脳炎、脳炎、神経サルコイドーシス、もしくはCNS血管炎などの非脱髄疾患)、呼吸器疾患(特発性肺線維症、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、肺ランゲルハンス細胞組織球症、肺気腫、および肺線維症など)、骨粗鬆症の治療、またはCOVID-19治療に特に有用である。
- アルブミンに結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントと、IL-17に結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアント(特にWO2019096797に開示されているもの)と、に融合された、ヒトレプチン受容体に結合するSac7dファミリーのOBフォールドタンパク質のバリアントを含むポリペプチドであり、TNF-アルファについて言及されたものと同じ疾患の治療用であるもの。
【0161】
別の態様では、他のタンパク質またはポリペプチドは抗体である。この態様では、OBフォールドドメインのバリアントは、免疫グロブリン単量体の重鎖または軽鎖のうちの少なくとも1つに、好ましくは軽鎖または重鎖のN末端またはC末端に、融合される。別の態様では、バリアントは、重鎖または軽鎖の両方に融合され得る。
【0162】
かかる化合物を得るために、以下からなる群より選択されるDNA配列を含む遺伝子コンストラクトを使用することができる。
a.OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(場合によってはリンカーをコードする配列と)その3'末端で融合されている、抗体の重鎖をコードする配列。
b.OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(場合によってはリンカーをコードする配列と)その5'末端で融合されている、抗体の重鎖をコードする配列。
c.OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(場合によってはリンカーをコードする配列と)その3'末端で融合されている、抗体の軽鎖をコードする配列。
d.OBフォールドタンパク質のバリアントをコードする配列と(場合によってはリンカーをコードする配列と)その5'末端で融合されている、抗体の軽鎖をコードする配列。
【0163】
この融合は、抗体鎖(重鎖および/または軽鎖)のN末端および/またはC末端で行うことができる。特に、Sac7dファミリー由来のタンパク質などの小さなOBフォールドドメイン(約70アミノ酸)を使用する場合、抗体領域、および改変OBフォールドドメインからなるさらなる結合領域を有する、抗体の構造(2つの重鎖と対合された2つの軽鎖、およびともに対合されたかかる二量体)を有する分子を得ることが可能であることに留意されたい。
【0164】
特定の態様では、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分は、IgG分子である。
【0165】
別の態様では、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分は、IgA分子である。
【0166】
別の態様では、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分は、IgM分子である。
【0167】
別の態様では、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分は、IgD分子である。
【0168】
別の態様では、本明細書において開示されるタンパク質の抗体部分は、IgE分子である。
【0169】
抗体は、ヒト抗体、げっ歯類抗体(マウス抗体もしくはラット抗体など)、ネコ抗体、イヌ抗体、ニワトリ抗体、ヤギ抗体、ラクダ科動物抗体(ラクダ抗体、ラマ抗体、アルパカ抗体、もしくはナノボディなど)、サメ抗体、または任意の他の種由来の抗体であり得る。抗体は、キメラ抗体またはヒト化抗体であり得る。Wikipediaにおいて想起されるように、ヒト化抗体は、ヒトにおいて天然に生成される抗体バリアントとの類似性を増加させるためにそのタンパク質配列が改変されている非ヒト種由来の抗体である。キメラ抗体は、異なる種由来の配列を含有する。
【0170】
本明細書において開示される分子の一部である抗体が、2つの同一の重鎖(約400~500アミノ酸、一般におよそ450アミノ酸)と2つの同一の軽鎖とを含む抗体である場合が好ましい。よって、抗体は同じFab可変領域を含む。それゆえ、この抗体は、抗体の両方の部分(軽鎖および重鎖の組み合わせ)が抗原の同じエピトープに結合する単一特異性抗体である。
【0171】
しかしながら、抗体は、異なる重鎖および/または軽鎖を呈し得る。特に、いくつかの態様では、抗体は二重特異性抗体である。したがって、「抗体」という用語は、同一の重鎖および軽鎖を有する上記に開示されているような「古典的抗体」と、それに加えて、2つ以上の特異性を有する設計された抗体、という両方を包含する。
【0172】
特定の態様では、抗体は、ある抗体由来の1つの重鎖および軽鎖ならびに別の抗体由来の別の重鎖および軽鎖を呈する。
【0173】
抗体は、以下からなる群の中で選択される標的に結合し得る:
細胞表面受容体:インスリン受容体、低密度リポタンパク質受容体関連タンパク質1、トランスフェリン受容体、上皮成長因子受容体、上皮成長因子受容体バリアントIII、血管内皮成長因子受容体1、血管内皮成長因子受容体2、Her2、Her3、Her4、PSMA、IGF-1R、GITR、RAGE、CD28、FcRn、血小板由来成長因子受容体。
細胞表面タンパク質:CD19、CD20、CD22、CD30、CD38、CD40、CD248、CD47、CD73、CD3、TIM-3、CEA、cMet、ICAM1、ICAM3、MadCam、a4b7、CD7、CD4、CD223、CD138。
血管新生因子および成長因子:VEGF、アンジオポエチン2、HGF、PDGF、EGF、GM-CSF、HB-EGF、TGF。
免疫チェックポイント阻害剤または活性化剤:PD-1、PD-L1、CTLA4、CD28、B7-1、B7-2、ICOS、ICOSL、B7-H3、B7-H4、LAG3、KIR、4-1BB、OX40、CD27、CD40L、TIM3、A2aR、補体成分5。
循環タンパク質:HSA、TNFa、IL23、IL12、IL33、IL4、IL13、IL5、IL6、IL4、IL1、IL22、IL36、IFNg、IL17、RANKL、Bace1、アルファシヌクレイン、タウ、アミロイド、凝固因子XI、凝固因子XII、IgE、LPAM。
【0174】
別の態様では、OBフォールドドメインのバリアント(特にSac7dファミリーのタンパク質のバリアント)は、有機分子にコンジュゲートされている。これは、当技術分野において公知の任意の方法によって行われ得る。特に、分子をタンパク質に化学的に連結させることができる。分子として、細胞毒性化合物(例えば、広域スペクトル)、血管新生阻害剤、細胞周期進行阻害剤、PBK/m-TOR/AKT経路阻害剤、MAPKシグナル伝達経路阻害剤、キナーゼ阻害剤、タンパク質シャペロン阻害剤、HDAC阻害剤、PARP阻害剤、Wnt/ヘッジホッグシグナル伝達経路阻害剤、RNAポリメラーゼ阻害剤、およびプロテアソーム阻害剤を含む、抗増殖剤(細胞毒性剤および細胞増殖抑制剤)を挙げることができる。抗炎症性分子を使用することもできる。
【0175】
特に、DNA結合薬またはアルキル化薬、例えばアントラサイクリン系薬剤(ドキソルビシン、エピルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン)およびその類似体、アルキル化剤、例えばカリケアマイシン、ダクチノマイシン(dactinomycines)、ミトロマイシン(mitromycines)、ピロロベンゾジアゼピンなどを挙げることができる。CDK阻害剤、Rhoキナーゼ阻害剤、チェックポイントキナーゼ阻害剤、オーロラキナーゼ阻害剤、PLK阻害剤、およびKSP阻害剤などの細胞周期進行阻害剤を挙げることもできる。サリドマイドならびにその誘導体であるレナリドミドおよびポマリドミドを挙げることもできる。炎症障害を治療するために、バリアントを含むポリペプチドにコンジュゲートされた分子として、シクロオキシゲナーゼ-2阻害剤、5-リポキシゲナーゼ阻害剤、ケルセチン、および/またはレスベラトロールを使用することもできる。
【0176】
興味深くかつ好ましい分子はまた、上記に開示されている。
【0177】
バリアントの使用
バリアントは、所与の疾患を治療するための治療活性を有する別のポリペプチドに融合された場合は、特に治療方法において使用され得る。
【0178】
生物学的製剤は、多数の疾患の治療のために開発されており、癌、自己免疫疾患、炎症性疾患、または感染性疾患の治療のために、本明細書において開示されるLepR結合バリアントに融合させることができる。実例として、Her2/neu乳癌の治療用のトラスツズマブを挙げることができる。種々の他の治療用抗体は、WO2019096797(16~18ページ、参照により本明細書に組み入れられる)に列記されており、本明細書において開示されるLepR結合バリアントとともに使用することもできる。
【0179】
したがって、本発明は、特定の疾患に対して活性のある治療剤に融合された、治療量の本明細書において開示されるOBフォールドのLepR結合バリアント(特にSac7dファミリーのタンパク質のバリアント)を、その必要がある対象に投与することを含む、特定の疾患の治療方法に関する。
【0180】
本明細書において使用される「治療量」または「有効量」という用語は、臨床結果などの有益なまたは望ましい結果を生じさせるのに十分な量であり、「有効量」は、それが適用される状況に依存する。有効量は、副作用または有害作用を最小限に抑えながら、治療上の改善をもたらす量である。治療上の改善は、疾患の退縮、対象の生活の質の改善、併用治療の有効性の改善であり得る。
【0181】
レプチン受容体に結合するバリアントと治療活性を有するペプチドまたはポリペプチドとを含むポリペプチドを、治療活性を有するペプチドまたはポリペプチドが標的とする疾患を有する患者に投与するという状況において、有効量は、例えば、投与なしで得られる応答と比較して、患者の治癒、患者の状態の改善、患者の治癒の加速を達成するのに十分な量である。有効量は、疾患の進行を停止させるまたは遅延させる量でもあり得る。それは、疾患の退縮、または特定の疾患に関連する生物学的マーカーの減退を可能にする量であり得る。それは、治療活性を有するペプチドまたはポリペプチドの作用部位における濃度/量が治療効果をもたらすのに十分となるように、治療活性を有するペプチドまたはポリペプチドに融合されたある量のバリアントの、腸管バリアを通じた通過を可能にすることによって、得られる。
【0182】
治療活性を有する剤(または治療剤)とは、疾患を有する対象に効率的な量で投与すると、対象の状態を改善するかまたは疾患に関係するバイオマーカーを低下させる剤である。
【0183】
当技術分野の任意の方法によってバリアントを投与することができる。
【0184】
しかしながら、WO 2016/062874に開示されているように、バリアントが経口経路によって投与される場合が好ましい。この態様では、バリアントおよびそれに結合された任意の他の要素は、薬学的に許容される賦形剤とともに経口投与用に製剤化される。かかる製剤は当技術分野において公知である。
【0185】
別の態様では、バリアントは直腸経路によって投与される。この態様では、バリアントおよびそれに結合された任意の他の要素は、薬学的に許容される賦形剤とともに直腸投与用に製剤化される。かかる製剤は当技術分野において公知である。
【0186】
いくつかの態様では、ポリペプチドもしくはバリアント(またはポリペプチドもしくはバリアントをコードするヌクレオチド)は、ナノ粒子(例えば、脂質ナノ粒子)、デンドリマー、ポリマー、リポソーム、またはカチオン性送達系などの送達剤と会合され得る(例えば、物理的に会合され得る)。LepR結合バリアントに結合された他のポリペプチドまたは有機分子が、適切なコーティングを通じてまたは適切なベクターへの封入によって胃での分解から保護されている場合が、特に興味深い。この場合、LepR結合バリアントは、この保護要素に結合されている。実際、WO2016062874は、Sac7dファミリーのバリアントが胃での分解(酵素またはpHによる分解)に対して耐性であることを示している。したがって、該バリアントは保護する必要がない。しかしながら、いくつかの態様では、治療活性分子に結合されたLepR結合バリアントの両方が封入される/胃での分解から保護される。この場合、保護は、治療活性分子に結合されたLepR結合バリアントの腸管内での放出を可能にするものである。
【0187】
バリアント、またはバリアントを含有するポリペプチドは、診断方法にも使用され得る。特に、かかるバリアントまたはポリペプチドは、当技術分野において公知であり画像法において使用される、任意のマーカーに連結され得る。
【0188】
したがって、本発明はまた、試料中のヒトレプチン受容体の存在を検出するための、または該受容体を定量するための方法であって、
a.ヒトレプチン受容体に結合する開示されるバリアントに、かかる結合が可能であるような条件で該試料を曝露させる工程
b.バリアントを回収する、かつ/またはバリアントに結合されたヒトレプチン受容体を検出するもしくはその量を測定する工程
を含む、方法に関する。
【0189】
b)の回収は、当技術分野において一般的な種々の洗浄または方法によって実施され得る。検出または定量は、ELISA、クロマトグラフィー、蛍光、または当技術分野における他の方法などの任意の方法によって実施され得る。
【0190】
バリアントで治療される疾患
上記に示されるように、本明細書において開示されるバリアントは、本質的に、腸管バリアを通じて生物学的製剤を輸送するための手段として使用される。したがって、本明細書において開示されるバリアントを使用して治療される疾患は、バリアントに会合された分子の生物学的活性に関係している。
【図面の簡単な説明】
【0191】
【
図1】Sac7dファミリーのタンパク質のアラインメント。
【
図3】hLepRへの結合に関するヒトレプチン(hLep)とナノフィチンとの間の競合アッセイ。
【
図4】ELISAにおいて結合シグナルを評価することによるマウスレプチン受容体(mLepR)に対する交差反応性。
【
図5】hLepRおよびブタLepR(pLepR)を発現する細胞モデル上での結合の検証。
【
図7】スクリーニングにおいてクラスターに属さないことが同定されたナノフィチン(NF)(F02)および別の標的に結合するナノフィチン(無関係なNF)と比較した、クラスターAのナノフィチンのエクスビボアッセイにおける腸管バリア横断の改善。
【
図8】ナノフィチン単独(F08)または異なるタンパク質配列に融合したナノフィチン(GFP、F08-GFP)、または別のナノフィチンに融合したナノフィチン(F08-NF)の結合特性の保存。
【
図9】クラスターAのナノフィチン単独(F08)または別のナノフィチンに融合したナノフィチン(F08-NF)および別の標的に結合するナノフィチン(無関係なNF)のエクスビボアッセイにおける腸管バリア横断の改善。
【実施例】
【0192】
実施例1.組換えヒトレプチン受容体に結合するナノフィチンバリアントの同定
レプチン受容体に結合する95種のバリアント(Sac7d配列に基づくかかるバリアントはナノフィチンと呼ばれる)を、固定化したhLepRを標的として使用して粗細菌上清からELISAによってスクリーニングしたところ、高い割合の陽性結合体が示された(
図2)。後続のシーケンシングでは、強い配列多様性が示され、反復配列はほとんどなかった。ナノフィチンのクラスターへの分別を、それらの結合における変異の相同性に基づいて実施した。1つのクラスターのナノフィチン(クラスター「A」
【0193】
実施例2.クラスターAのナノフィチンは、その天然のレプチンリガンドと重複しないエピトープ上でLepRに結合する
レプチンは、レプチン受容体と相互作用する16KDaのホルモンであり、その主な機能は視床下部の位置での満腹感およびエネルギー貯蔵を調節することである。レプチンは、より具体的には、完全なレプチン受容体の第2のサイトカイン受容体相同ドメインであるCRH2で相互作用する。加えて、Ig様ドメイン相互作用を通じた2つ以上のLepRとの相互作用により、これらの種における結合を安定化させることができる。
【0194】
ナノフィチンが結合したエピトープまたはレプチンが結合したエピトープとの間の重複が、異なる配列クラスターの各々(クラスターAおよびその他)からの少なくとも1つの抗hLepRナノフィチンを使用した、ELISAによる競合アッセイを介して、同定された。hレプチンの存在下で測定したhLepRとの様々なナノフィチンのELISAシグナルを、hLepの不在下で測定したhLepRへのそれらの結合で除したものによる結合比率として結果を示す(
図3)。クラスターAのナノフィチンの結合応答は、hLepの存在による影響を受けなかった(比率約1)ことから、それらがhLep結合部位とは異なるエピトープ上でhLepRに結合することが示唆される。クラスターAに含まれないナノフィチンは、hLepの存在下で結合応答の低減を示した(比率<0.5)ことから、hLepがそれらのエピトープと重複していることが示唆される。
【0195】
実施例3:クラスターAのナノフィチンはマウスレプチン受容体と交差反応し、類似した結合パターンを共有する
クラスターAおよび他のクラスターにおいてhLepRに特異的であることが見出されたナノフィチンについて、マウスLepRとヒトLepRとの間の交差反応性をELISAによって評価した。mLepRで測定した結合応答をhLepRで測定した結合応答で除した比率によって、交差反応性を評定した(
図4)。クラスターAのナノフィチンは、両方の種由来の受容体に等しく結合するが(比率約1)、一方他のナノフィチンは、mLepRにおいてELISAシグナルが増加した(比率>1.5)ことから、クラスターAのナノフィチンが他のクラスターのナノフィチンとは異なるエピトープに結合することが示唆される。
【0196】
実施例4.細胞モデル上のヒトおよびブタレプチン受容体への結合
細胞を、ヒトレプチン受容体(hLepR)またはブタレプチン受容体(pLepR)のいずれかを発現するように改変し、細胞表面LepRのモデルとして使用した。レプチン受容体遺伝子のヒト(NM_002303.5)およびブタ(NM_001024587.1)ロングアイソフォームを、レポーターGFP遺伝子を含むGenscript(Piscataway, New Jersey, US)によってプラスミドpCNDA3.1+ C-eGFPに挿入した。プラスミドをHEK293細胞(Manassas, VA, USA)にトランスフェクトした。陽性トランスフェクト細胞をGFP蛍光の測定によって同定した。抗LepR抗体(FAB867R、Bio techne)を使用したフローサイトメトリーによって、受容体の発現を確認した。次いで、これらの細胞モデルを使用し、クローンF08をクラスターAの代表として使用して、細胞表面に発現したヒトレプチン受容体とブタレプチン受容体の両方に結合する、クラスターAの抗hLepRナノフィチンの能力を評価した。F08は、hLepRおよびpLepR発現細胞上で特異的に結合でき、空ベクターでトランスフェクトしたモック細胞株上ではできないことが見出された(
図5)。これにより、クラスターAのナノフィチンが細胞という状況において受容体に結合できること、およびそれらがpLepRと交差反応できることが実証される。
【0197】
実施例5.ブタ空腸におけるブタLepRの発現
ブタ腸管モデルにおける抗LepRナノフィチンの機能的評価は、受容体が組織内で効果的に発現していることを暗に示すものである。ブタ腸管におけるpLepRの発現をウエスタンブロットによって調べた(
図6)。ブタ空腸腸管から細胞を収集し、hLepR発現細胞(HepG2)およびh/pLepR陰性細胞(HEK293)と比較した。細胞溶解物の上清をSDS pageゲル上でランさせ、抗LepR抗体を使用したウエスタンブロットとそれに続く化学発光による可視化によってh/pLepRを同定した。
図6に示す結果は、HepG2細胞およびブタ空腸からの溶解物のバンドが、予想されるLepRの分子量(132.5kDa)にあることを示している。予想どおり、HEK293溶解物を使用した条件ではバンドは観察され得ず、抗LepR染色の特異性が実証された。まとめると、これらのデータによりブタ空腸におけるLepRの発現が確認された。
【0198】
実施例6.腸管バリアを通じた抗LepRナノフィチンの能動輸送は、クラスターAの抗LepRナノフィチンでは見出されているが、別の抗LepRナノフィチンおよび無関係なナノフィチンを含めた他のナノフィチンでは見出されていない
抗LepRナノフィチンの腸管バリアを通じた能動的移動を、ウッシングチャンバーに導入したブタ腸管組織を使用してエクスビボで評定した。新鮮なブタ腸管を調製し、露出表面積が1.26cm
2のウッシングチャンバースライダーに挿入して、KBR緩衝液中にて38℃で維持したドナー区画(粘膜)およびアクセプター区画(漿膜)を作出した。組織の生存率および完全性を電気抵抗(TEER)によって追跡した。蛍光標識ナノフィチンを粘膜区画に導入し、120分後、各区画からの試料を分析してナノフィチンの存在を定量した。アクセプター区画で見出された蛍光標識ナノフィチンのパーセンテージを、ドナー区画に適用した物質の量に対して相対的に算出し、腸管バリアを横切る輸送効率の尺度として使用した(
図7)。本実験では、GFPを標的とする無関係なナノフィチンを陰性対照として使用した。漿膜区画における通過率は、無関係なナノフィチンと抗LepRナノフィチンF02で類似している(≦0.05%)ことが見出されたことから、かかるレベルの通過が受動拡散に起因し得ることが示唆される。クラスターAの抗LepRナノフィチン(F08およびD07)は、無関係なナノフィチンおよび他の抗LepRナノフィチンよりも腸管バリアを通じた通過が多い(>0.05%)ことによる利益を得ることが見出された。これにより、それらの輸送に能動的メカニズムが採用されていることが示唆され、このことは、漿膜区画で測定されたそれらのパーセンテージが有意に高いことによって浮き彫りになる。これにより、LepRを単独で標的とすることは腸管バリアを通じた能動的送達を提供するのに十分ではないこと、およびクラスターAのナノフィチンがこの特性に対する選択有利性を提供する共通のエピトープを共有していることが実証される。
【0199】
実施例7:N末端とC末端の両方における融合に対する許容性
ナノフィチンの結合部位とそれらのN末端部およびC末端部は、反対面に位置している。結果として、ナノフィチンは、ペプチドまたはタンパク質への遺伝子融合またはコンジュゲーションを含み得る標的係合を変えずに、それらの端部でカーゴ分子とコンジュゲートすることができる。これを、抗LepRナノフィチンF08に関して実証した。F08ナノフィチンは、そのC末端に融合されたタンパク質カーゴに関係なくその機能性を保持する。これを、配列および長さが異なるタンパク質を使用して実証した。ここでは、完全長抗体(WO2019096797)または別のナノフィチンへの融合において類似の特性が観察されていることに留意されたい。さらに、ナノフィチンは、大腸菌およびCHOが例として挙げられる幅広い発現宿主(原核生物もしくは真核生物)において組換え的に、または完全な化学合成によって、のいずれかで発現させることができる。F08ナノフィチンを用いて調査した全ての事例において、ELISA実験(
図8)で実証されるように、完全に機能するF08ナノフィチンが回収される。
【0200】
実施例8.クラスターAのナノフィチンに融合したタンパク質カーゴのバリア横断の改善
ナノフィチンは、それらの結合特性を保たせながら他のタンパク質に融合させることができる。結果として、クラスターAのナノフィチンをカーゴタンパク質にコンジュゲートさせ、腸管バリアを通じたカーゴの能動輸送をもたらすためのビヒクルまたはトロイの木馬として使用することができる。これを、カーゴとしての第2のナノフィチンに融合させたF08(コンストラクトF08-NF)を用いて、実施例6に記載したエクスビボ実験設定を使用して実証した。アクセプター区画で見出された蛍光標識ナノフィチン融合体のパーセンテージを、ドナー区画に適用した物質の量に対して相対的に算出し、腸管バリアを横切る輸送効率の尺度として使用した(
図9)。漿膜区画におけるパーセンテージが0.05%を超えることにより浮き彫りになる能動輸送は、ナノフィチンF08単独と、カーゴタンパク質に融合させたその対応物の両方で観察された。さらに、漿膜区画における通過率はナノフィチンF08単独とコンジュゲートされたその対応物との両方で非常に類似していたことから、抗LepRナノフィチンF08は、カーゴタンパク質にコンジュゲートさせた場合、腸管バリアを通じた能動的移動特性を完全に保持することが実証される。この結果より、クラスターAの抗LepRナノフィチンを腸管バリアを通じたカーゴ分子の能動輸送に使用できることが実証される。
【配列表】
【国際調査報告】