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特表2024-542818細胞病理学的染色のための装置および方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】細胞病理学的染色のための装置および方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20241108BHJP
   C12Q 1/02 20060101ALI20241108BHJP
   G01N 1/31 20060101ALI20241108BHJP
   G01N 1/28 20060101ALI20241108BHJP
   G01N 1/00 20060101ALI20241108BHJP
   C12Q 1/6841 20180101ALN20241108BHJP
【FI】
C12M1/34 B
C12M1/34 F
C12Q1/02
G01N1/31
G01N1/28 J
G01N1/00 101N
G01N1/00 101H
C12Q1/6841 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533791
(86)(22)【出願日】2022-11-30
(85)【翻訳文提出日】2024-07-22
(86)【国際出願番号】 US2022080638
(87)【国際公開番号】W WO2023107839
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/265,011
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522463325
【氏名又は名称】サイトベイ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CYTOBAY INC.
【住所又は居所原語表記】2601 34th St.,Santa Monica,California 90405 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100077012
【弁理士】
【氏名又は名称】岩谷 龍
(72)【発明者】
【氏名】チュ,ウェンジャン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ダンファ
【テーマコード(参考)】
2G052
4B029
4B063
【Fターム(参考)】
2G052AA33
2G052AA40
2G052AD15
2G052AD29
2G052AD55
2G052BA03
2G052BA21
2G052CA03
2G052CA04
2G052CA12
2G052CA38
2G052CA39
2G052DA09
2G052DA22
2G052EA02
2G052FA10
2G052GA31
2G052HA19
2G052JA06
2G052JA08
2G052JA11
2G052JA23
4B029AA07
4B029BB11
4B029CC03
4B029FA02
4B029GA08
4B029GB06
4B063QA19
4B063QQ03
4B063QQ08
4B063QQ42
4B063QQ79
4B063QR56
4B063QR66
4B063QS28
4B063QS33
4B063QS34
4B063QS39
4B063QX01
(57)【要約】
本明細書において、がん診断の評価を受ける患者などの患者から得た生体検体の多重染色と細胞学的スライドの作製用の自動化プラットフォーム、そのための装置およびその使用方法を開示する。生体検体中の異型細胞を多重染色することによって、病的な細胞の存在を高い信頼性で判定するための感度と特異度を向上させることができる。本明細書に開示された装置および方法は、患者の検体の細胞病理学的検査の効率的かつハイスループットなアプローチを提供するものである。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞病理学的多重染色を行うための装置であって、
a)細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/またはスライド封入剤、ならびに患者から得た生体検体由来の細胞を入れるように構成されており、かつ染色工程と洗浄工程を交互に行うことによって、染色された細胞を提供するように構成された染色容器と;
b)前記染色容器から、使用済みの細胞用水性培地、使用済みの染色試薬および/または使用済みの洗浄試薬を収容するように構成されており、かつ該使用済みの細胞用水性培地、該使用済みの染色試薬および/または該使用済みの洗浄試薬が除去できるように構成された抽出容器と
を含み、
前記染色容器と前記抽出容器が、半透膜を介して作動可能に分離されており、該半透膜が、前記細胞用水性培地、前記染色試薬、前記洗浄試薬および/または前記封入剤を透過するが、前記細胞は透過しない、
装置。
【請求項2】
前記半透膜が細孔を備え、該細孔が、前記半透膜に液体と低分子を通過させることができるが、前記細胞を通過させないように構成されており、前記半透膜が、細胞を前記染色容器内に保持するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
各細孔の直径が、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.22μm、0.3μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、3μm、5μmもしくは10μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の直径である、請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記染色試薬が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせを含む、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記細胞形態学的染色が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む、請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記半透膜が、前記染色容器中の各染色工程で使用した染色試薬と各洗浄工程で使用した洗浄試薬を、受動拡散によって前記抽出容器に移動させるように構成されているか、または前記抽出容器が前記染色容器に対して陰圧である場合に、前記染色試薬と前記洗浄試薬を前記抽出容器に移動させるように構成されており、前記陰圧が抽出ポンプにより負荷されてもよい、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記染色容器と前記抽出容器が、該染色容器と該抽出容器の間で前記細胞用水性培地、前記染色試薬および/または前記洗浄試薬が前記半透膜を通過して移動することを阻止または抑制するシャッターで分離または遮断されるように構成されている、請求項1~6のいずれか1項に記載の装置。
【請求項8】
前記細胞用水性培地、前記染色試薬、前記洗浄試薬および/または前記スライド封入剤を前記染色容器に提供するように構成された試薬供給源をさらに含み、該試薬供給源が、前記細胞用水性培地、前記染色試薬、前記洗浄試薬および/または前記スライド封入剤を、前記試薬供給源から前記染色容器に移動させるように構成された試薬ポンプに作動可能に連結されていてもよく、前記細胞用水性培地が前記細胞を含んでいてもよい、請求項1~7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記染色された細胞を、例えば封入などを目的として回収するように構成された検体回収流路をさらに含み、前記染色された細胞が、前記スライド封入剤に含まれていてもよく、前記検体回収流路が、陰圧を利用して、前記染色された細胞を回収するように構成されていてもよい、請求項1~8のいずれか1項に記載の装置。
【請求項10】
患者から得た生体検体由来の細胞を細胞病理学的多重染色する方法であって、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置を用いて、1つ以上の染色工程により前記細胞を染色する工程を含む、方法。
【請求項11】
前記染色工程が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより前記細胞を染色することを含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記細胞形態学的染色が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
病理スライドと病理カバースリップを含む病理スライドアセンブリであって、
前記病理スライドと前記病理カバースリップが、1つに重ね合わせて密封されるように構成されており、
前記病理スライドと前記病理カバースリップが、前記病理スライドアセンブリの入口ポートと出口ポートからアクセス可能な内部空隙を規定し、
前記内部空隙が、患者から得た生体検体由来の細胞の懸濁液を入口ポートから収容し、該細胞を含んでいない培地を出口ポートから排出するように構成されている、
病理スライドアセンブリ。
【請求項14】
前記病理スライドアセンブリの厚さが光学顕微鏡に適合した厚さである、請求項13に記載の病理スライドアセンブリ。
【請求項15】
前記内部空隙を規定する前記病理スライドの表面が、細胞接着性材料を含み、該細胞接着性材料が、前記細胞を固相化するように構成された接着性ゲル、タンパク質コーティング、糖類コーティングまたはナノ材料であってもよい、請求項13または14に記載の病理スライドアセンブリ。
【請求項16】
前記内部空隙が、均一な形状の単一のリザーバーを含む、請求項13~15のいずれか1項に記載の病理スライドアセンブリ。
【請求項17】
前記病理カバースリップが、1本以上のマイクロ流路を含むように構成されており、前記内部空隙が、前記1本以上のマイクロ流路によって規定された凹状空間を含み、前記1本以上のマイクロ流路が、その内部を前記細胞が通過できるように構成されている、請求項13~15のいずれか1項に記載の病理スライドアセンブリ。
【請求項18】
前記病理スライドの表面もしくは前記カバースリップの表面またはその両方、好ましくは前記内部空隙を規定する前記病理スライドの表面が、ナノ粗面化されており、該ナノ粗面化された表面によって、前記懸濁液中の前記細胞の捕捉が向上している、請求項13~17のいずれか1項に記載の病理スライドアセンブリ。
【請求項19】
前記入口ポートが、連結流路を介して、第2の病理スライドアセンブリの出口ポートに作動可能に接続されるように構成されており、かつ/または該出口ポートが、別の連結流路を介して、第3の病理スライドアセンブリの入口ポートに作動可能に接続されるように構成されている、請求項13~18のいずれか1項に記載の病理スライドアセンブリ。
【請求項20】
請求項13~19のいずれか1項に記載の病理スライドアセンブリを2枚以上含む複数枚の病理スライドアセンブリであって、
前記2枚以上の病理スライドアセンブリが、各病理スライドアセンブリの入口ポートと出口ポートを介して連続的に連結されることによって、前記2枚以上の病理スライドアセンブリの内部空隙が流体連通して、連続した空間を形成するように構成されており、
前記2枚以上の病理スライドアセンブリのうちの1枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートと、前記2枚以上の病理スライドアセンブリのうちの別の1枚の病理スライドアセンブリの露出した出口ポートが、別のポートには連結されずに、前記連続した空間へのアクセスを可能にしている、
複数枚の病理スライドアセンブリ。
【請求項21】
請求項13~19いずれか1項に記載の病理スライドアセンブリ、または請求項20に記載の複数枚の病理スライドアセンブリを用いて、対象から得た生体検体由来の細胞を封入する方法であって、
a)前記細胞の懸濁液を、前記病理スライドアセンブリの入口ポートから、該病理スライドアセンブリの内部空隙内に流入させる工程;または
b)前記細胞の懸濁液を、前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートから、該複数枚の病理スライドアセンブリの連続した空間内に流入させる工程と、
前記病理スライドまたは前記複数枚の病理スライドにより規定される内部空隙の表面に、前記細胞を沈殿および/または接着させる工程と
を含む、方法。
【請求項22】
洗浄試薬および/または封入剤を、前記病理スライドアセンブリの入口ポートから、該病理スライドアセンブリの内部空隙内に流入させて(または前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートから、該複数枚の病理スライドアセンブリの連続した空間内に流入させて)、前記細胞の懸濁液中の液体成分を交換する工程をさらに含み、
前記細胞が、前記内部空隙内に保持され、
前記懸濁液中の前記液体成分が、出口ポート(または前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した出口ポート)から排出される、
請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記病理スライドまたは前記複数枚の病理スライドの表面に沈殿および/または接着させた前記細胞を、光学顕微鏡法により画像化する工程をさらに含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
前記細胞が、固定処理および/または透過処理される、請求項21~23のいずれか1項に記載の方法。
【請求項25】
前記細胞が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより染色され、前記細胞の染色が、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置、または請求項10~12のいずれか1項に記載の方法を用いて行ってもよい、請求項21~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
組み合わせ染色装置であって、
a)請求項13~19のいずれか1項に記載の病理スライドアセンブリと、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置とを含み、該装置の検体回収流路が、前記病理スライドアセンブリの入口ポートに作動可能に接続されるように構成されているか;または
b)請求項20に記載の複数枚の病理スライドアセンブリと、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置とを含み、該装置の検体回収流路が、前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートに作動可能に接続されるように構成されている、
組み合わせ染色装置。
【請求項27】
前記患者から得た生体検体由来の細胞が異型細胞を含み、該異型細胞が、がん細胞であってもよい、請求項1~9のいずれか1項に記載の装置、請求項10~12のいずれか1項に記載の方法、請求項13~18のいずれか1項に記載の病理スライドアセンブリ、請求項19~23のいずれか1項に記載の方法、または請求項26に記載の組み合わせ染色装置。
【請求項28】
前記細胞が尿沈渣細胞を含む、請求項24に記載の装置、方法、病理スライドアセンブリ、方法または組み合わせ染色装置。
【請求項29】
前記尿沈渣細胞において、1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが染色され、該1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択されてもよい、請求項25に記載の装置、方法、病理スライドアセンブリ、方法または組み合わせ染色装置。
【請求項30】
組み合わせ染色装置であって、検体投入口、外観検査システム、動作状態指示灯、コントロールパネル、スライドガラス投入口、マウスおよびキーボードを含む、装置。
【請求項31】
試薬分注モジュール、多孔質膜を備えた染色チャンバー、シェーカー、視覚検査野、チャンバー壁を除去する装置、染色された細胞をスライドガラスに移動させる装置、廃棄物回収穴、および液体廃棄物回収機構をさらに含む、請求項30に記載の装置。
【請求項32】
前記液体廃棄物回収システムが吸引器をさらに含む、請求項31に記載の装置。
【請求項33】
液状検体から染色病理スライドを作製する処理が自動化されており、例えば、閉鎖系において自動化されている、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
前記検体の処理が約3時間で行われる、請求項31に記載の方法。
【請求項35】
取り外し可能なシリンダー壁を有する染色チャンバーまたは染色バイアルであって、
a)上部と、
b)多孔質膜と
c)下部と
を含み、
前記下部が、空気ポンプと使用済み液体試薬リザーバーに接続されており、前記上部が、取り外し可能に前記下部に連結できるように構成されており;
前記多孔質膜が、前記上部と前記下部の間に配置されており;
前記上部が、前記多孔質膜と前記下部の連結部を越えて延びる張り出しリップ部を含み、該リップ部が前記下部の棚部と接触する、
染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項36】
前記多孔質膜が円形または楕円形であり、円形の場合、最大で20mm×20mmの大きさであり、楕円形の場合、最大で20mm×40mmの大きさである、請求項35に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項37】
前記棚部の上方の、前記下部の外周周りにシール部をさらに含み、該シール部が、前記上部の表面と接触するように構成されている、請求項35に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項38】
前記シール部が、プラスチックまたはゴムを含む、請求項37に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項39】
前記上部の頂部の周囲に突出リム部をさらに含む、請求項35に記載の染色チャンバーまたはバイアル。
【請求項40】
前記突出リム部が、前記染色チャンバーのシリンダー壁を引き抜く固定具として機能し、該シリンダー壁が染色工程の終了後に廃棄される、請求項39に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項41】
前記染色チャンバーのシリンダー壁が取り除かれた後に、染色された細胞が露出され、次に、該染色された細胞が、細胞接着性材料を含むスライドガラスに押しつけられる、請求項40に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項42】
前記多孔質膜の下から陽圧の空気を送ることによって、前記細胞を移動させる工程が促進される、請求項41に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項43】
前記染色チャンバーが、使用済みの試薬を前記下部内へと下方に吸引して廃棄できるように構成されており、前記上部が、新たな試薬を添加できるように構成されている、請求項35~42のいずれか1項に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項44】
前記上部が取り除かれた後に、染色された細胞が露出されるように構成されている、請求項35~43のいずれか1項に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【請求項45】
請求項30~32のいずれか1項に記載の装置を用いて、対象から得た生体検体から膀胱がんを検出する方法であって、
i.少なくとも1つの細胞含有液状検体を前記装置に投入する工程、
ii.前記少なくとも1つの細胞含有液状検体を染色する工程、
iii.染色された細胞を病理スライドに移動させる工程、
iv.前記染色された細胞を固定する工程、および
v.前記染色された検体のスライドを画像化して、がんバイオマーカーの発現および/または細胞病理学的所見を示す分析物を検出する工程
を含む、方法。
【請求項46】
前記染色工程が、細胞形態学的染色とがんバイオマーカーの染色の組み合わせを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記染色工程、前記移動工程および前記固定工程が、前記装置により行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記液状検体中の細胞が尿沈渣細胞を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記染色工程が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む細胞形態学的染色を含む、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記染色工程が、がんバイオマーカーの染色を含み、該がんバイオマーカーが膀胱がんバイオマーカーを含み、該膀胱がん特異的バイオマーカーが、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択される、請求項45に記載の方法。
【請求項51】
前記染色された検体の評価が、光学顕微鏡または蛍光顕微鏡を用いて行われる、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
前記細胞が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより染色される、請求項45に記載の方法。
【請求項53】
対象から得た生体検体から膀胱がんを検出する方法であって、請求項30~32のいずれか1項に記載の装置が、請求項35~44のいずれか1項に記載の染色チャンバーまたは染色バイアルをさらに含む、方法。
【請求項54】
多孔質膜を備える染色チャンバーが、請求項35~44に記載の染色チャンバーである、請求項31に記載の装置。
【請求項55】
細胞病理学的多重染色を行うための装置であって、
細胞を保持するように構成された表面を持つ多孔質膜を含む1つ以上の染色チャンバー;
染色工程の終了を判断するように構成された外観検査システム;
前記1つ以上の染色チャンバーに試薬を分配するように構成された試薬分注モジュール;
前記1つ以上の染色チャンバーの下に配置されたシェーカー;および
染色された細胞を、前記1つ以上の染色チャンバーから1枚以上のスライドガラスに移動させるように構成された搬送アーム
を含む、装置。
【請求項56】
前記1つ以上の染色チャンバーが、前記試薬を収容するように構成された上部を含み、該上部が、前記多孔質膜と前記染色チャンバーの下部から分離できるように構成されている、請求項55に記載の装置。
【請求項57】
前記上部と係合して、前記多孔質膜と前記下部から前記上部を取り外せるように構成されたグリッパーを含む、請求項56に記載の装置。
【請求項58】
前記グリッパーが、前記上部のリップ部と係合するように構成されている、請求項57に記載の装置。
【請求項59】
前記グリッパーが、前記上部を廃棄物回収穴まで移動させるように構成されている、請求項57または58に記載の装置。
【請求項60】
前記多孔質膜の下方で圧力を発生させるように構成されたポンプを含む、請求項55~59のいずれか1項に記載の装置。
【請求項61】
前記シェーカーと前記1つ以上の染色チャンバーを、前記装置内の第1の位置から該装置内の第2の位置へ搬送するように構成されたレールを含み、前記搬送アームが、前記1つ以上の染色チャンバーが第2の位置に配置された場合に、前記染色された細胞を、前記多孔質膜から前記1枚以上のスライドガラスに移動させるように構成されている、請求項55~60のいずれか1項に記載の装置。
【請求項62】
前記外観検査システムが、ハードウェアプロセッサと電子通信するカメラを含み、該カメラが、前記染色チャンバーの少なくとも一部を画像化するように構成されており、前記ハードウェアプロセッサが、前記カメラによって生成された画像に少なくとも部分的に基づいて、前記染色工程の終了を判断するように構成されている、請求項55~61のいずれか1項に記載の装置。
【請求項63】
液体廃棄物回収装置を含み、該液体廃棄物回収装置が、前記1つ以上の染色チャンバーの下部と流体連通しており、該1つ以上の染色チャンバーの下部が、前記多孔質膜の表面と対向している、請求項55~62のいずれか1項に記載の装置。
【請求項64】
前記液体廃棄物回収装置が、前記1つ以上の染色チャンバーの下部内で陰圧を発生させるように構成されたポンプを含む、請求項63に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示の態様は、概して、がんを含む異型細胞の細胞病理学的染色用の自動化プラットホームに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞病理学は、疾患の原因や発症機序、また、主に細胞内の異常な状態に基づく疾患発症時の細胞の生理機能の変化などを検討し、疾患の診断、予防や治療の基礎情報を提示する学問である。臨床応用例としては、剥離細胞診、穿刺吸引細胞診、血液循環腫瘍細胞診やその他の細胞診(例えば、手術時細胞診、骨髄・末梢血細胞診、AIDSの細胞診など)が挙げられる。
【0003】
がん細胞などの異型細胞の陽性判定は、熟練の病理医の解釈によって異なる場合がある。信頼性の高い解釈と診断を確実に行うためには、異型細胞の疑いがある細胞を含む生体検体を適切に処理する必要があり、この処理には、通常、細胞を染色して、形態学的特徴および/または機能的特徴の検出を向上させる操作が含まれる。さらに、細胞病理学的検体の調製の信頼性を損なうことなく、さらに効率的な操作を実現できれば、病理医に利益をもたらすことができる。したがって、特異的な細胞病理学的迅速診断を行うための改良された設備または装置、およびその使用方法が求められている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本明細書において、細胞病理学的多重染色を行うための装置を開示する。本発明の装置の実施形態は、細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/またはスライド封入剤、ならびに患者から得た生体検体由来の細胞を入れるように構成された染色容器と、使用済みの水性培地、使用済みの染色試薬、および/または使用済みの洗浄試薬を収容するように構成された抽出容器とを少なくとも含む。染色容器と抽出容器は、半透膜を介して作動可能に分離されており、この半透膜は、細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬、および/または封入剤を透過するが、細胞は透過しないことから、染色容器中に細胞が保持される。本明細書に開示される装置の操作によって、細胞を大幅に失うことなく、染色工程と洗浄工程を複数回行うことができ、この染色工程と洗浄工程は様々な方法で行ってもよく、これらの方法では遠心分離と再懸濁を利用する。このような態様から、細胞検体を複数の方法で染色することができ、その結果、疾患の診断などの細胞診を目的とした生体検体中の異型細胞の陽性判定を向上させることができる。
【0005】
また、本明細書において、細胞病理学的多重染色を行うための本発明の装置を使用する方法を開示する。
【0006】
また、本明細書において、病理スライドアセンブリを開示する。本発明の病理スライドアセンブリの実施形態は、少なくとも病理スライドと病理カバースリップを含み、この病理スライドと病理カバースリップは、1つに重ね合わせて密封されて、病理スライドアセンブリの入口ポートと出口ポートからアクセス可能な内部空隙を規定するように構成されている。この病理スライドは、内部空隙内の生体検体由来の細胞の接着と保持を補助する細胞接着性材料でコーティングされていてもよい。病理カバースリップの表面は、病理スライドアセンブリ内の内部空隙を規定してもよく、この内部空隙は、単一の「ため池」型リザーバーであってもよく、あるいは1本以上のマイクロ流路を含むように構成されていてもよい。
【0007】
また、本明細書において、本明細書に開示される病理スライドが2枚以上連結された複数枚の病理スライドアセンブリを開示する。複数枚の病理スライドアセンブリを利用することによって、検体を流して細胞を封入するための表面積が大きくなることから、検体中の細胞の捕捉が向上する可能性がある。
【0008】
また、本明細書において、本明細書に開示される病理スライドアセンブリの作製方法および本明細書に開示される病理スライドアセンブリの使用方法を開示する。本明細書で提供される病理スライドアセンブリに封入された細胞を、本明細書に開示される細胞病理学的多重染色用の装置によって染色してもよく、その他の処理を行ってもよい。
【0009】
さらに、本明細書において、細胞染色工程の自動化用の装置を開示する。
【0010】
本明細書で提供される本開示の実施形態を、付番した以下の実施形態により説明する。
【0011】
1.細胞病理学的多重染色を行うための装置であって、
a)細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/またはスライド封入剤、ならびに患者から得た生体検体由来の細胞を入れるように構成されており、かつ染色工程と洗浄工程を交互に行うことによって、染色された細胞を提供するように構成された染色容器と;
b)前記染色容器から、使用済みの細胞用水性培地、使用済みの染色試薬および/または使用済みの洗浄試薬を収容するように構成されており、かつ該使用済みの細胞用水性培地、該使用済みの染色試薬および/または該使用済みの洗浄試薬が除去できるように構成された抽出容器と
を含み、
前記染色容器と前記抽出容器が、半透膜を介して作動可能に分離されており、該半透膜が、前記細胞用水性培地、前記染色試薬、前記洗浄試薬および/または前記封入剤を透過するが、前記細胞は透過しない、
装置。
【0012】
2.前記半透膜が細孔を備え、該細孔が、前記半透膜に液体と低分子を通過させることができるが、前記細胞を通過させないように構成されている、実施形態1に記載の装置。
【0013】
3.各細孔の直径が、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.22μm、0.3μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、3μm、5μmもしくは10μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の細孔直径である、実施形態2に記載の装置。
【0014】
4.前記染色試薬が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせを含む、実施形態1~3のいずれか1つに記載の装置。
【0015】
5.前記細胞形態学的染色が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む、実施形態4に記載の装置。
【0016】
6.前記半透膜が、前記染色容器中の各染色工程で使用した染色試薬と各洗浄工程で使用した洗浄試薬を、受動拡散によって前記抽出容器に移動させるように構成されているか、または前記抽出容器が前記染色容器に対して陰圧である場合に、前記染色試薬と前記洗浄試薬を前記抽出容器に移動させるように構成されており、前記陰圧が抽出ポンプにより負荷されてもよい、実施形態1~5のいずれか1つに記載の装置。
【0017】
7.前記染色容器と前記抽出容器が、該染色容器と該抽出容器の間で前記細胞用水性培地、前記染色試薬および/または前記洗浄試薬が前記半透膜を通過して移動することを阻止または抑制するシャッターで分離または遮断されるように構成されている、実施形態1~6のいずれか1つに記載の装置。
【0018】
8.前記細胞用水性培地、前記染色試薬、前記洗浄試薬および/または前記スライド封入剤を前記染色容器に提供するように構成された試薬供給源をさらに含み、該試薬供給源が、前記細胞用水性培地、前記染色試薬、前記洗浄試薬および/または前記スライド封入剤を、前記試薬供給源から前記染色容器に移動させるように構成された試薬ポンプに作動可能に連結されていてもよく、前記細胞用水性培地が前記細胞を含んでいてもよい、実施形態1~7のいずれか1つに記載の装置。
【0019】
9.前記染色された細胞を、例えば封入などを目的として回収するように構成された検体回収流路をさらに含み、前記染色された細胞が、前記スライド封入剤に含まれていてもよく、前記検体回収流路が、陰圧を利用して、前記染色された細胞を回収するように構成されていてもよい、実施形態1~8のいずれか1つに記載の装置。
【0020】
10.患者から得た生体検体由来の細胞を細胞病理学的多重染色する方法であって、実施形態1~9のいずれか1つに記載の装置を用いて、1つ以上の染色工程により前記細胞を染色する工程を含む、方法。
【0021】
11.前記染色工程が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより前記細胞を染色することを含む、実施形態10に記載の方法。
【0022】
12.前記細胞形態学的染色が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む、実施形態10または11に記載の方法。
【0023】
13.病理スライドと病理カバースリップを含む病理スライドアセンブリであって、
前記病理スライドと前記病理カバースリップが、1つに重ね合わせて密封されるように構成されており、
前記病理スライドと前記病理カバースリップが、前記病理スライドアセンブリの入口ポートと出口ポートからアクセス可能な内部空隙を規定し、
前記内部空隙が、患者から得た生体検体由来の細胞の懸濁液を入口ポートから収容し、該細胞を含んでいない培地を出口ポートから排出するように構成されている、
病理スライドアセンブリ。
【0024】
14.前記病理スライドアセンブリの厚さが光学顕微鏡に適合した厚さである、実施形態13に記載の病理スライドアセンブリ。
【0025】
15.前記内部空隙を規定する前記病理スライドの表面が、細胞接着性材料を含み、該細胞接着性材料が、前記細胞を固相化するように構成された接着性ゲル、タンパク質コーティング、糖類コーティングまたはナノ材料であってもよい、実施形態13または14に記載の病理スライドアセンブリ。
【0026】
16.前記内部空隙が、均一な形状の単一のリザーバーを含む、実施形態13~15のいずれか1つに記載の病理スライドアセンブリ。
【0027】
17.前記病理カバースリップが、1本以上のマイクロ流路を含むように構成されており、前記内部空隙が、前記1本以上のマイクロ流路によって規定された凹状空間を含み、前記1本以上のマイクロ流路が、その内部を前記細胞が通過できるように構成されている、実施形態13~15のいずれか1つに記載の病理スライドアセンブリ。
【0028】
18.前記病理スライドの表面もしくは前記カバースリップの表面またはその両方、好ましくは前記内部空隙を規定する前記病理スライドの表面が、ナノ粗面化されており、該ナノ粗面化された表面によって、前記懸濁液中の前記細胞の捕捉が向上している、実施形態13~17のいずれか1つに記載の病理スライドアセンブリ。
【0029】
19.前記入口ポートが、連結流路を介して、第2の病理スライドアセンブリの出口ポートに作動可能に接続されるように構成されており、かつ/または該出口ポートが、別の連結流路を介して、第3の病理スライドアセンブリの入口ポートに作動可能に接続されるように構成されている、実施形態13~18のいずれか1つに記載の病理スライドアセンブリ。
【0030】
20.実施形態13~19のいずれか1つに記載の病理スライドアセンブリを2枚以上含む複数枚の病理スライドアセンブリであって、
前記2枚以上の病理スライドアセンブリが、各病理スライドアセンブリの入口ポートと出口ポートを介して連続的に連結されることによって、前記2枚以上の病理スライドアセンブリの内部空隙が流体連通して、連続した空間を形成するように構成されており、
前記2枚以上の病理スライドアセンブリのうちの1枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートと、前記2枚以上の病理スライドアセンブリのうちの別の1枚の病理スライドアセンブリの露出した出口ポートが、別のポートには連結されずに、前記連続した空間へのアクセスを可能にしている、
複数枚の病理スライドアセンブリ。
【0031】
21.実施形態13~19いずれか1つに記載の病理スライドアセンブリ、または実施形態20に記載の複数枚の病理スライドアセンブリを用いて、対象から得た生体検体由来の細胞を封入する方法であって、
a)前記細胞の懸濁液を、前記病理スライドアセンブリの入口ポートから、該病理スライドアセンブリの内部空隙内に流入させる工程;または
b)前記細胞の懸濁液を、前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートから、該複数枚の病理スライドアセンブリの連続した空間内に流入させる工程と、
前記病理スライドまたは前記複数枚の病理スライドにより規定される内部空隙の表面に、前記細胞を沈殿および/または接着させる工程と
を含む、方法。
【0032】
22.洗浄試薬および/または封入剤を、前記病理スライドアセンブリの入口ポートから、該病理スライドアセンブリの内部空隙内に流入させて(または前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートから、該複数枚の病理スライドアセンブリの連続した空間内に流入させて)、前記細胞の懸濁液中の液体成分を交換する工程をさらに含み、
前記細胞が、前記内部空隙内に保持され、
前記懸濁液中の前記液体成分が、出口ポート(または前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した出口ポート)から排出される、
実施形態21に記載の方法。
【0033】
23.前記病理スライドまたは前記複数枚の病理スライドの表面に沈殿および/または接着させた前記細胞を、光学顕微鏡法により画像化する工程をさらに含む、実施形態21または22に記載の方法。
【0034】
24.前記細胞が、固定処理および/または透過処理される、実施形態21~23のいずれか1つに記載の方法。
【0035】
25.前記細胞が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより染色され、前記細胞の染色が、実施形態1~9のいずれか1つに記載の装置、または実施形態10~12のいずれか1つに記載の方法を用いて行ってもよい、実施形態21~24のいずれか1つに記載の方法。
【0036】
26.組み合わせ染色装置であって、
a)実施形態13~19のいずれか1つに記載の病理スライドアセンブリと、実施形態1~9のいずれか1つに記載の装置とを含み、該装置の検体回収流路が、前記病理スライドアセンブリの入口ポートに作動可能に接続されるように構成されているか;または
b)実施形態20に記載の複数枚の病理スライドアセンブリと、実施形態1~9のいずれか1つに記載の装置とを含み、該装置の検体回収流路が、前記複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートに作動可能に接続されるように構成されている、
組み合わせ染色装置。
【0037】
27.前記患者から得た生体検体由来の細胞が異型細胞を含み、該異型細胞が、がん細胞であってもよい、実施形態1~9のいずれか1つに記載の装置、実施形態10~12のいずれか1つに記載の方法、実施形態13~18のいずれか1つに記載の病理スライドアセンブリ、実施形態19~23のいずれか1つに記載の方法、または実施形態26に記載の組み合わせ染色装置。
【0038】
28.前記細胞が尿沈渣細胞を含む、実施形態24に記載の装置、方法、病理スライドアセンブリ、方法または組み合わせ染色装置。
【0039】
29.前記尿沈渣細胞において、1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが染色され、該1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーが、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択されてもよい、実施形態25に記載の装置、方法、病理スライドアセンブリ、方法または組み合わせ染色装置。
【0040】
30.組み合わせ染色装置であって、検体投入口、外観検査システム、動作状態指示灯、コントロールパネル、スライドガラス投入口、マウスおよびキーボードを含む、装置。
【0041】
31.試薬分注モジュール、多孔質膜を備えた染色チャンバー、シェーカー、視覚検査野、チャンバー壁を除去する装置、染色された細胞をスライドガラスに移動させる装置、廃棄物回収穴、および液体廃棄物回収機構をさらに含む、実施形態30に記載の装置。
【0042】
32.前記液体廃棄物回収システムが吸引器をさらに含む、実施形態30に記載の装置。
【0043】
33.液状検体から染色病理スライドを作製する処理が自動化されており、例えば、閉鎖系において自動化されている、実施形態30に記載の方法。
【0044】
34.前記検体の処理が約3時間で行われる、実施形態31に記載の方法。
【0045】
35.取り外し可能なシリンダー壁を有する染色チャンバーまたは染色バイアルであって、
a)上部と、
b)多孔質膜と
c)下部と
を含み、
前記下部が、空気ポンプと使用済み液体試薬リザーバーに接続されており、前記上部が、取り外し可能に前記下部に連結できるように構成されており;
前記多孔質膜が、前記上部と前記下部の間に配置されており;
前記上部が、前記多孔質膜と前記下部の連結部を越えて延びる張り出しリップ部を含み、該リップ部が前記下部の棚部と接触する、
染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0046】
36.前記多孔質膜が円形または楕円形であり、円形の場合、最大で20mm×20mmの大きさであり、楕円形の場合、最大で20mm×40mmの大きさである、実施形態35に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0047】
37.前記棚部の上方の、前記下部の外周周りにシール部をさらに含み、該シール部が、前記上部の表面と接触するように構成されている、実施形態35に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0048】
38.前記シール部が、プラスチックまたはゴムを含む、実施形態37に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0049】
39.前記上部の頂部の周囲に突出リム部をさらに含む、実施形態35に記載の染色チャンバーまたはバイアル。
【0050】
40.前記突出リム部が、前記染色チャンバーのシリンダー壁を引き抜く固定具として機能し、該シリンダー壁が染色工程の終了後に廃棄される、実施形態39に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0051】
41.前記染色チャンバーのシリンダー壁が取り除かれた後に、染色された細胞が露出され、次に、該染色された細胞が、細胞接着性材料を含むスライドガラスに押しつけられる、実施形態40に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0052】
42.前記多孔質膜の下から陽圧の空気を送ることによって、前記細胞を移動させる工程が促進される、実施形態41に記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0053】
43.前記染色チャンバーが、使用済みの試薬を前記下部内へと下方に吸引して廃棄できるように構成されており、前記上部が、新たな試薬を添加できるように構成されている、実施形態35~42のいずれか1つに記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0054】
44.前記上部が取り除かれた後に、染色された細胞が露出されるように構成されている、実施形態35~43のいずれか1つに記載の染色チャンバーまたは染色バイアル。
【0055】
45.実施形態30~32のいずれか1つに記載の装置を用いて、対象から得た生体検体から膀胱がんを検出する方法であって、
i.少なくとも1つの細胞含有液状検体を前記装置に投入する工程、
ii.前記少なくとも1つの細胞含有液状検体を染色する工程、
iii.染色された細胞を病理スライドに移動させる工程、
iv.前記染色された細胞を固定する工程、および
v.前記染色された検体のスライドを画像化して、がんバイオマーカーの発現および/または細胞病理学的所見を示す分析物を検出する工程
を含む、方法。
【0056】
46.前記染色工程が、細胞形態学的染色とがんバイオマーカーの染色の組み合わせを含む、実施形態45に記載の方法。
【0057】
47.前記染色工程、前記移動工程および前記固定工程が、前記装置により行われる、実施形態45に記載の方法。
【0058】
48.前記液状検体中の細胞が尿沈渣細胞を含む、実施形態45に記載の方法。
【0059】
49.前記染色工程が、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む細胞形態学的染色を含む、実施形態45に記載の方法。
【0060】
50.前記染色工程が、がんバイオマーカーの染色を含み、該がんバイオマーカーが膀胱がんバイオマーカーを含み、該膀胱がん特異的バイオマーカーが、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択される、実施形態45に記載の方法。
【0061】
51.前記染色された検体の評価が、光学顕微鏡または蛍光顕微鏡を用いて行われる、実施形態45に記載の方法。
【0062】
52.前記細胞が、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより染色される、実施形態45に記載の方法。
【0063】
53.対象から得た生体検体から膀胱がんを検出する方法であって、実施形態30~32のいずれか1つに記載の装置が、実施形態35~44のいずれか1つに記載の染色チャンバーまたは染色バイアルをさらに含む、方法。
【0064】
54.多孔質膜を備える染色チャンバーが、実施形態35~44に記載の染色チャンバーである、実施形態31に記載の装置。
【0065】
55.細胞病理学的多重染色を行うための装置であって、
細胞を保持するように構成された表面を持つ多孔質膜を含む1つ以上の染色チャンバー;
染色工程の終了を判断するように構成された外観検査システム;
前記1つ以上の染色チャンバーに試薬を分配するように構成された試薬分注モジュール;
前記1つ以上の染色チャンバーの下に配置されたシェーカー;および
染色された細胞を、前記1つ以上の染色チャンバーから1枚以上のスライドガラスに移動させるように構成された搬送アーム
を含む、装置。
【0066】
56.前記1つ以上の染色チャンバーが、前記試薬を収容するように構成された上部を含み、該上部が、前記多孔質膜と前記染色チャンバーの下部から分離できるように構成されている、実施形態55に記載の装置。
【0067】
57.前記上部と係合して、前記多孔質膜と前記下部から前記上部を取り外せるように構成されたグリッパーを含む、実施形態56に記載の装置。
【0068】
58.前記グリッパーが、前記上部のリップ部と係合するように構成されている、実施形態57に記載の装置。
【0069】
59.前記グリッパーが、前記上部を廃棄物回収穴まで移動させるように構成されている、実施形態57または58に記載の装置。
【0070】
60.前記多孔質膜の下方で圧力を発生させるように構成されたポンプを含む、実施形態55~59のいずれか1つに記載の装置。
【0071】
61.前記シェーカーと前記1つ以上の染色チャンバーを、前記装置内の第1の位置から該装置内の第2の位置へ搬送するように構成されたレールを含み、前記搬送アームが、前記1つ以上の染色チャンバーが第2の位置に配置された場合に、前記染色された細胞を、前記多孔質膜から前記1枚以上のスライドガラスに移動させるように構成されている、実施形態55~60のいずれか1つに記載の装置。
【0072】
62.前記外観検査システムが、ハードウェアプロセッサと電子通信するカメラを含み、該カメラが、前記染色チャンバーの少なくとも一部を画像化するように構成されており、前記ハードウェアプロセッサが、前記カメラによって生成された画像に少なくとも部分的に基づいて、前記染色工程の終了を判断するように構成されている、実施形態55~61のいずれか1つに記載の装置。
【0073】
63.液体廃棄物回収装置を含み、該液体廃棄物回収装置が、前記1つ以上の染色チャンバーの下部と流体連通しており、該1つ以上の染色チャンバーの下部が、前記多孔質膜の表面と対向している、実施形態55~62のいずれか1つに記載の装置。
【0074】
64.前記液体廃棄物回収装置が、前記1つ以上の染色チャンバーの下部内で陰圧を発生させるように構成されたポンプを含む、実施形態63に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0075】
前述した特徴以外のさらなる特徴や変形例は、以下の図面の説明および例示される実施形態から容易に理解できるであろう。以下の図面は実施形態を示したものであり、本発明の範囲を限定するものではない。
【0076】
図1A-C】「垂直方向」の構成の例示的な細胞病理学的染色装置の実施形態を示す。
【0077】
図1D-F】「水平方向」の構成の例示的な細胞病理学的染色装置の実施形態を示す。
【0078】
図2A図2Bに示す病理カバースリップまたは本明細書に開示されるその他の病理カバースリップの実施形態とともに使用することができる例示的な病理スライドの一実施形態を示す。
【0079】
図2B図2Aに示す病理スライドまたは本明細書に開示されるその他の病理スライドの実施形態とともに使用することができる例示的な病理カバースリップの実施形態を示す。
【0080】
図2C図2A~Bに示した病理スライドの一実施形態と病理カバースリップの一実施形態で構成されているか、または本明細書に開示されるその他の病理スライドの実施形態と病理カバースリップの実施形態で構成された例示的な病理スライドアセンブリの実施形態を示す。
【0081】
図2D図2Cに示した例示的な病理スライドアセンブリ、または本明細書に開示されるその他の病理スライドアセンブリの側面図と拡大断面図の実施形態を示す。
【0082】
図3A-B】本明細書に開示される例示的な病理スライドアセンブリのいずれか2枚以上を連結した実施形態を示す。図3Bに示すように、同じ種類または異なる種類の例示的な病理スライドアセンブリの組み合わせを互いに連結してもよい。
【0083】
図4A】検体回収流路を介して、本明細書に開示された例示的な病理スライドアセンブリに作動可能に連結された、「垂直方向」の構成の例示的な細胞病理学的染色装置の実施形態を示す。
【0084】
図4B】検体回収流路を介して、本明細書に開示された例示的な病理スライドアセンブリに作動可能に連結された、「水平方向」の構成の例示的な細胞病理学的染色装置の実施形態を示す。
【0085】
図5A-B】組み立てられた形態の別の例示的な染色チャンバーの実施形態を示す。
【0086】
図6A-B】分解された形態の例示的な別の染色チャンバーの実施形態の断面を示す。
【0087】
図7A-B】上部と下部の間の連結部の詳細を示した、分解された形態の例示的な別の染色チャンバーの実施形態の断面を示す。
【0088】
図8】上部と下部の間の連結部の詳細を示した、組み立てた形態の例示的な別の染色チャンバーの実施形態の断面を示す。
【0089】
図9】染色装置の外観を示す。
【0090】
図10】試薬分注モジュールと染色チャンバーとシェーカーを示す染色装置の内部図を示す。
【0091】
図11】視覚検査野を示す染色装置の内部図を示す。
【0092】
図12】チャンバー壁を除去する装置を示す染色装置の内部図を示す。
【0093】
図13】染色された細胞をスライドに移動させる装置を示す染色装置の内部図を示す。
【0094】
図14】廃棄物回収穴/廃棄物回収リザーバーを示す染色装置の内部図を示す。
【0095】
図15】液体廃棄物回収機構を示す染色装置の内部図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0096】
本明細書において、例えば、がんなどの(ただしこれに限定されない)、細胞の異型性を伴う疾患の細胞病理学的診断などを目的とした、生体検体の多重染色と細胞学的スライドの作製を行うための装置と、この装置の使用方法を開示する。本明細書で提供されるアプローチでは、懸濁液中の生体検体由来の細胞を染色することによって、一貫性のある均一な分析用の染色を確実に得ることができる。本明細書に提供される装置は、試薬と染色液を透過するが細胞を透過しない膜を含んでいてもよい。本明細書に開示される装置とその使用方法は、自動化を含んでいてもよく、これによって、ヒューマンエラーによる検体調製のばらつきを有利に抑制することができる。
【0097】
「細胞病理学」は、各種疾患の診断などを行うために、患者の生体検体由来の個々の細胞を検査して、細胞の形態学的特徴と異型の可能性を評価することに関する。このような評価は、がんの診断に有用である可能性があり、その理由として、がん細胞が、無秩序な分裂;異常なゲノムおよび肥大した核;細胞形態、細胞配列および内部pHの変化;細胞マーカーやその他のタンパク質の発現などの機能性表現型の顕著な変化といった異型の特徴を示すことが挙げられる。
【0098】
慣用的な細胞病理学的染色法として、パパニコロウ染色法(Pap stain)、ライトギムザ染色法、ディフ・クイック染色法などが挙げられる。中でもディフ・クイック染色法は、日常的な細胞病理学的診療に最も利用されている染色法で、世界保健機関(WHO)の推奨染色法であり、通常、キサンテン系色素(例えば、エオシンY)とチアジン系色素(例えば、メチレンブルーまたはアズールA)が用いられる。このような色素により、例えば、核や核小体の形状や大きさなどの核の特徴;クロマチンの密度;ムチン、脂肪滴、神経分泌顆粒などの細胞質の構成要素;および膜溝、突起、液胞などの細胞膜の特徴を明確に示すことができる。また、遊離ムチン、コロイド、基底物質などの細胞外物質も染色することができる。このような特徴は、細胞病理学的診断に有用である場合がある。
【0099】
細胞を固定してスライドに貼り付けた後に、染色を行ってもよい。しかし、この方法には、染色の「盲点」があり、スライドの表面に貼り付けた細胞の表面が適切に染色されなかったり、かつ/または洗浄工程を行うにもかかわらず染色色素が細胞の表面と別の細胞の表面の間に閉じ込められて、いわゆる「エッジ効果」が発生することがある。このような問題はいずれも細胞病理学的検出の正確度に影響を及ぼす可能性がある。
【0100】
さらに、このような慣用の方法では、信頼性の低い情報しか得られない可能性がある。標的細胞の単離が困難である場合や、生体検体中に含まれる標的細胞の数が少ない場合(膀胱がん診断用の尿沈渣細胞の場合など)に、検査に使用できる細胞の数が少ないと、異型細胞の診断の信頼性に影響が及ぶことがある。成功率を改善する(例えば、偽陰性と偽陽性を減らす)ためには、免疫細胞化学的染色や発色in situハイブリダイゼーションなどの方法を用いて、バイオマーカーの検出と慣用の細胞形態学的染色を組み合わせてもよい。異型細胞としても特徴付けられた細胞のバイオマーカーを同定できれば、細胞数が少ない患者検体であっても、病理医による陽性診断を有意に改善することができる。しかし、形態学的検査とバイオマーカーの染色を行うことを目的として生体検体を連続的に処理するに当たっては、各工程において、細胞の損失を抑制し、かつ検査開始時の細胞形態の破損を回避できるように注意を払う必要がある。
【0101】
膀胱がん検出用の尿沈渣細胞の多重染色
尿細胞診は、病理医により行われるスライドガラス上の尿沈渣細胞(および悪性細胞成分)を評価する方法で、病理医は、通常の光学顕微鏡法により個々の細胞の細胞病理学的特徴を調べる。尿細胞診は、膀胱がんの非侵襲的検査として、臨床現場で日常的に使用されている。膀胱がんは、低悪性度と高悪性度に分類することができる。低悪性度の腫瘍は、がん細胞の増殖が遅く、正常な尿路上皮細胞や他の膀胱細胞と細胞形態学的に類似しているという特徴がある。低悪性度の膀胱がんは、高悪性度の膀胱がんに比べて悪性度や浸潤性の高い腫瘍に進行することはあまりないものの、低悪性度の腫瘍の存在は、その人が進行性の膀胱がんを発症する傾向があることを示唆すると考えられるため、低悪性度の腫瘍を早期に発見して維持することが望ましいと考えられる。高悪性度の腫瘍は、急速に増殖して周囲の膀胱筋に浸潤する細胞を含んでいることがあり、この細胞は最終的には転移を起こす。高悪性度膀胱腫瘍を検出する方法として承認されている病理学的方法はあるものの、低悪性度腫瘍は正常な膀胱細胞と類似しているため、検出が困難である場合がある。したがって、尿細胞診は、悪性度が高くステージが高い膀胱疾患を高い感度と高い特異度で検出するのに非常に有効であるが、低悪性度腫瘍の検出感度はわずか4~31%程度と報告されており、低悪性度腫瘍を検出する手段としてはあまり有効でないことが分かっている。
【0102】
従来法では、20~25mLの尿検体を遠心分離して、尿沈渣細胞を回収する。この尿沈渣細胞を病理スライドガラスに薄層状に載置し、臨床的に認められている方法で染色することにより、病理医の診断に役立つ細胞の形態的特徴が示される。
【0103】
膀胱がんの悪性度は、がん細胞を染色して顕微鏡で観察したときに、がん細胞が健康な細胞とどの程度似ているかを示すものである。しかし、悪性度の低い膀胱がん細胞は、その外観が比較的正常に見えることから、正常な細胞であると誤って分類されたり、確定診断されずに異型細胞や疑わしい細胞として分類されたりすることがあるという問題がある。尿細胞診は、低悪性度膀胱腫瘍の検出には明らかに不十分であり、偽陰性率も極めて高いため、尿細胞診を補助する他の技術が検討されている。そのため、剥離した悪性腫瘍細胞における膀胱腫瘍特異的バイオマーカーの発現に注目が集まっている。このようなニーズの高まりに応えるため、以下の2つの主要な技術プラットフォームが開発されている。
1)尿検体中の膀胱腫瘍特異的バイオマーカータンパク質濃度の定量
2)蛍光法、すなわち免疫蛍光染色法(IF)や蛍光in situハイブリダイゼーション法(FISH)による尿沈渣細胞におけるバイオマーカー発現の検出
【0104】
米国食品医薬品局(FDA)は、尿検体を用いた膀胱腫瘍の検出法として6製品を承認している。これらの製品は、BTA stat、BTATRAK、NMP22 BC、NMP22 BladderChek、ImmunoCyt/uCyt、UroVysionである。しかし、これらの検査法は、感度や特異度が至適以下であるため、尿細胞診よりも優れているとは考えられておらず、泌尿器科医に広く採用されてはいない。前述の検査法のうち、最初の4つ(BTA stat、BTATRAK、NMP22 BC、NMP22 BladderChek)は、膀胱がん特異的バイオマーカーのタンパク質濃度を測定するものであり、ImmunoCyt/uCytとUroVysionは免疫蛍光法によりバイオマーカーを検出するものである。これらの検査法はいずれも病理診断に適格な詳細な細胞形態情報を提供するものではない。免疫蛍光染色法は、標的細胞の全体的な形状や大きさを示すことはできるが、病理医が形態学的診断を行うには不十分であり不適格である。したがって、これらの検査法から、病理診断に適格な詳細な形態学的情報や細胞病理学的情報を得ることはできない。
【0105】
さらに、FDAが承認した手法は、検査の精度に影響を与えうる感度と特異度において、観察者間で大きな差がある。観察者間での差として、感染症、結石、血尿、尿路系への直近の器具装着など、良性または別の原因による偽陽性判定が多さが挙げられる。また、暗室や高価な蛍光顕微鏡などの特殊な実験設備や、検査結果を解釈する熟練した読み手が必要なため、これらの測定法の普及は限定的なものとなっている。
【0106】
細胞形態学的評価とがんバイオマーカーの評価を組み合わせることにより、このような制限事項を克服することができ、患者検体における低悪性度の膀胱がんと高悪性度の膀胱がんをより高い信頼性で同定することができる。この方法では、スライドに細胞を貼り付けた後に染色するのではなく、懸濁液中で細胞を染色することによって、望ましくない染色アーチファクトを抑制している。この細胞形態学的評価とがんバイオマーカーの評価を組み合わせた方法は、中国特許出願CN202010468262.6やCN202010467313.3で述べられている(これらの文献はいずれも引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。これらの文献に記載の方法は、本明細書に開示される装置および方法と適合しており、手動で操作と実施が可能であるとともに、自動化して検体の調製の一貫性をさらに向上させることができる。
【0107】
膀胱がんの診断を目的として、本明細書に開示された装置および方法とともに使用することができる例示的な診断用細胞形態学的染色として、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書に開示された装置および方法において、免疫細胞化学的染色または発色in situハイブリダイゼーション染色に用いることができる例示的な膀胱がん特異的バイオマーカーとして、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、BTA、hTERT、またはMCM5が挙げられるが、これらに限定されない。
【0108】
定義
以下の詳細な説明において、本明細書の一部を構成する添付の図面を参照しながら本発明を説明する。別段の記載がない限り、図面中の類似の記号は、通常、類似の構成要素を示す。詳細な説明、図面および請求項に記載の実施形態は例示を目的としたものであり、本発明を何ら限定するものではない。また、本明細書で示される主題の趣旨または範囲から逸脱しない限り、その他の実施形態も可能であり、また、その他の変更も可能である。本明細書で概説し、図面に示した本開示の態様は、様々な構成で配置、置換、合体、分離および設計できることは容易に理解され、このような態様はいずれも本明細書に明示的に包含される。
【0109】
別段の定めがない限り、本明細書で使用される技術用語および科学用語は、本開示に照らして解釈した際に、本発明が属する技術分野の当業者が一般に理解しているものと同じ意味を有する。本発明の開示を目的として、以下の用語を下記の通り定義する。
【0110】
本発明の様々な実施形態を説明するため、本開示では概して肯定的な表現が用いられている。本開示は、物質または材料、方法の工程および条件、プロトコルまたは手順などの、本発明の主題のすべてまたはその一部が除外された実施形態も包含する。
【0111】
本明細書において、「a」および「an」という冠詞は、これらの冠詞の文法上の目的語となる1つまたは複数の(例えば、少なくとも1つの)ものを示すために使用される。例えば、「an element」は、1つの構成要素または複数の構成要素を意味する。
【0112】
「約」は、特定の数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さが、基準となる数量、レベル、値、数、頻度、パーセンテージ、寸法、大きさ、量、重量または長さに対して、10%程度の範囲で変動することを意味する。
【0113】
本明細書を通して、別段の記載がない限り、「含む」および「含んでいる」という用語は、本明細書に記載の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を包含することを意味するが、その他の工程もしくは構成要素または工程群もしくは構成要素群を除外するものではない。「からなる」は、この用語の前に挙げられたもののみを含むことを意味する。したがって、「からなる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示し、その他の構成要素は含まれていなくてもよいことを意味する。「から実質的になる」は、この用語の前に挙げられた構成要素を含み、これらの構成要素の開示に関連して記載された活性または作用に対して妨害も寄与もしないその他の構成要素も含むことを意味する。したがって、「から実質的になる」という用語は、この用語の前に挙げられた構成要素が必要または必須であることを示すが、その他の構成要素は任意であり、この用語の前に挙げられた構成要素の活性または作用に実質的な影響を与えるかどうかに応じて含まれていてもよく、含まれていなくてもよい。
【0114】
本明細書において、「個体」、「対象」または「患者」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、ヒト、もしくはイヌ、ネコ、マウス、ラット、ウシ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、非ヒト霊長類などのヒト以外の哺乳動物、ニワトリなどの鳥類、その他の脊椎動物、または無脊椎動物を意味する。「哺乳動物」という用語は、通常の生物学的な意味で使用される。したがって、「哺乳動物」には、具体的には、サル類(チンパンジー、類人猿、サル)およびヒトを含む霊長類、ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、ブタ、ウサギ、イヌ、ネコ、げっ歯類、ラット、マウス、モルモットなどが含まれるが、これらに限定されない。
【0115】
本明細書において、「有効量」または「有効用量」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、観察可能な効果をもたらす本明細書に記載の組成物または化合物の量を表す。本明細書に開示された主題の活性組成物に含まれる有効成分の実際の投与量は、特定の対象および/または用途において所望の応答を得るのに有効な量の当該活性組成物または化合物が投与されるように変更することができる。選択される投与量は、以下に限定されないが、当該組成物の活性、処方、投与経路、他の薬物または治療との組み合わせ、治療中の病態の重症度、治療対象の健康状態および既往歴などの様々な要因によって異なる。いくつかの実施形態において、最小用量が投与され、用量は、用量制限毒性が認められない最小有効量まで増量することができる。有効用量の決定や調整だけでなく、このような調整をいつ、どのように行うかという評価についても、本明細書において想定されている。
【0116】
本明細書において、「機能」および「機能的」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的機能、酵素的機能または治療的機能を意味する。
【0117】
本明細書において、「抑制する」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的活性を軽減または阻害することを意味する場合がある。軽減の程度は、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、これらの値程度、少なくともこれらの値、少なくともこれらの値程度、これらの値以下、これらの値程度以下、またはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の値で表される。本明細書において、「遅延させる」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的事象の進行を遅らせたり、当該事象の発生時期を予想された時期より後ろにずらすことを意味する。遅延の程度は、0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%もしくは100%、これらの値程度、少なくともこれらの値、少なくともこれらの値程度、これらの値以下、これらの値程度以下、またはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の値で表される。「抑制する」および「遅延させる」という用語は、必ずしも100%の抑制や遅延を意味するものではなく、部分的な抑制または遅延であってもよい。
【0118】
本明細書において、「単離された」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、(1)(自然環境および/または実験環境において)生成された際に元々付随していた成分の少なくとも一部が分離された状態である物質および/もしくは実体、ならびに/または(2)人手を介して生成、調製および/もしくは製造された状態である物質および/もしくは実体を意味する。単離された物質および/または実体は、それらに元々付随していた他の成分が、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、98%、99%、実質的に100%もしくは100%、これらの値程度、少なくともこれらの値、少なくともこれらの値程度、これらの値以下、これらの値程度以下、またはこれらの値を含む範囲および/もしくはこれらの値にまたがる範囲で分離されていてもよい。いくつかの実施形態において、単離された物質の純度は、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、実質的に100%もしくは100%であるか、これらの値程度であるか、少なくともこれらの値であるか、少なくともこれらの値程度であるか、これらの値以下であるか、これらの値程度以下であるか、またはこれらの値を含む範囲および/もしくはこれらの値にまたがる範囲である。本明細書において、「単離された」物質は、「純粋な」(例えば、他の成分を実質的に含まない)物質であってよい。本明細書において、「単離された細胞」という用語は、多細胞生物または組織に含まれていない細胞を意味する場合がある。
【0119】
本明細書において、「in vivo」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、組織抽出物や死滅した生物ではなく、生存している生物、通常、動物、ヒトを含む哺乳動物や植物などの生体内で何らかの手技を実施することを意味する。
【0120】
本明細書において、「ex vivo」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生体外で天然の状態にほとんど変更を加えることなく何らかの手技を実施することを意味する。
【0121】
本明細書において、「in vitro」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、生物学的状態とは異なる状態において、例えば、シャーレや試験管の中で何らかの手技を実施することを意味する。
【0122】
本明細書において、「核酸」または「核酸分子」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、デオキシリボ核酸(DNA)またはリボ核酸(RNA)などのポリヌクレオチド、オリゴヌクレオチド、細胞内に天然で存在している核酸や核酸分子、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により得られる断片、ならびにライゲーション、切断、エンドヌクレアーゼ作用およびエキソヌクレアーゼ作用のいずれかにより得られる断片を意味する。核酸分子は、天然のヌクレオチドモノマー(DNAやRNAなど)、天然のヌクレオチドの類似体(例えば、天然のヌクレオチドのエナンチオマー)、またはこれらの組み合わせから構成されていてもよい。修飾ヌクレオチドは、糖部分および/またはピリミジン塩基部分もしくはプリン塩基部分に修飾を有していてもよい。糖部分の修飾としては、例えば、ハロゲン、アルキル基、アミンまたはアジド基による1つ以上のヒドロキシル基の置換が挙げられ、糖部分はエーテル化またはエステル化されていてもよい。さらに、糖部分全体が、立体構造的に類似の構造や電子的に類似の構造と置換されていてもよく、このような構造として、例えば、アザ糖および炭素環式糖類似体が挙げられる。修飾塩基部分としては、アルキル化プリン、アルキル化ピリミジン、アシル化プリン、アシル化ピリミジン、およびその他の公知の複素環置換基が挙げられる。核酸モノマーは、ホスホジエステル結合またはこれに類似した結合により連結することができる。ホスホジエステル結合に類似した結合としては、ホスホロチオエート結合、ホスホロジチオエート結合、ホスホロセレノエート結合、ホスホロジセレノエート結合、ホスホロアニロチオエート(phosphoroanilothioate)結合、ホスホロアニリデート(phosphoranilidate)結合およびホスホロアミデート結合が挙げられる。「核酸分子」は、いわゆる「ペプチド核酸」も包含する。ペプチド核酸は、ポリアミド主鎖に付加された天然の核酸塩基または修飾核酸塩基を含む。核酸は、一本鎖であってもよく、二本鎖であってもよい。「オリゴヌクレオチド」は、核酸と同じ意味で用いられ、二本鎖または一本鎖のDNAまたはRNAを意味する。核酸は、様々な生物系で核酸を増幅および/または発現させることができる核酸ベクターまたは核酸コンストラクト(例えば、プラスミド、ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、バクテリオファージ、コスミド、フォスミド、ファージミド、細菌人工染色体(BAC)、酵母人工染色体(YAC)またはヒト人工染色体(HAC))に含まれていてもよい。通常、核酸ベクターまたは核酸コンストラクトは、以下に限定されないが、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、インデューサー、リボソーム結合部位、翻訳開始部位、開始コドン、終止コドン、ポリアデニル化シグナル、複製開始点、クローニング部位、マルチクローニング部位、制限酵素部位、エピトープ、レポーター遺伝子、選択マーカー、抗生物質選択マーカー、標的配列、ペプチド精製タグもしくはアクセサリー遺伝子またはこれらの任意の組み合わせなどの要素も含む。
【0123】
核酸または核酸分子は、複数の異なるペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質をコードする1つ以上の配列を含んでいてもよい。これらの1つ以上の配列は、1つの核酸または核酸分子内で隣接して連結していてもよく、別の核酸を間に挟んで連結していてもよい。この別の核酸としては、例えば、リンカー、反復配列もしくは制限酵素部位、または1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、これらの長さ程度の配列、少なくともこれらの長さの配列、少なくともこれらの長さ程度の配列、これらの長さ以下の配列、これらの長さ程度以下の配列、もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の長さの配列が挙げられる。本明細書において、核酸に関する「下流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、核酸が二本鎖である場合はコード配列を含む鎖(センス鎖)上で、ある配列の3'末端側(後方)に位置する配列を意味する。本明細書において、核酸に関する「上流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、核酸が二本鎖である場合はコード配列を含む鎖(センス鎖)上で、ある配列の5'末端側(前方)に位置する配列を意味する。本明細書において、核酸に関する「グループ化されている」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、近接して存在する2つ以上の配列、例えば、直接連結しているか、別の核酸を間に挟んで連結している2つ以上の配列を意味する。この別の核酸としては、例えば、リンカー、反復配列もしくは制限酵素部位、または1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、これらの長さ程度の配列、少なくともこれらの長さの配列、少なくともこれらの長さ程度の配列、これらの長さ以下の配列、これらの長さ程度以下の配列、もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の長さの配列が挙げられる。なお、間に挟まれている核酸配列は、通常、機能性または触媒性のポリペプチド、タンパク質またはタンパク質ドメインをコードしていない。
【0124】
本明細書に記載の核酸は、核酸塩基を含む。基本の塩基、言い換えれば、標準の塩基、天然の塩基または非修飾塩基は、アデニン、シトシン、グアニン、チミンおよびウラシルである。その他の核酸塩基としては、プリン類、ピリミジン類、修飾核酸塩基、5-メチルシトシン、シュードウリジン、ジヒドロウリジン、イノシン、7-メチルグアノシン、ヒポキサンチン、キサンチン、5,6-ジヒドロウラシル、5-ヒドロキシメチルシトシン、5-ブロモウラシル、イソグアニン、イソシトシン、アミノアリル塩基、色素標識塩基、蛍光標識塩基またはビオチン標識塩基などが挙げられるが、これらに限定されない。
【0125】
本明細書において、「ペプチド」、「ポリペプチド」および「タンパク質」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、複数のアミノ酸がペプチド結合により連結されて構成される巨大分子を意味する。ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質の機能として数多くのものが当技術分野で知られており、酵素、構造、輸送、防御、ホルモンまたはシグナル伝達といった機能があるが、これらに限定されない。ペプチド、ポリペプチドおよびタンパク質は、多くの場合、核酸を鋳型として、リボソーム複合体により生物学的に生成されるが、この方法に限られず、化学合成により作製することもできる。鋳型となる核酸を遺伝子操作することによって、ペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質に変異を加えることができ、この変異には、置換、欠失、切断、付加、重複、または2つ以上のペプチド、ポリペプチドもしくはタンパク質の融合が含まれる。2つ以上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質が融合されている場合、2つ以上のペプチド、ポリペプチドまたはタンパク質は、1つの分子内で隣接して連結していてもよく、別のアミノ酸を間に挟んで連結していてもよい。この別のアミノ酸としては、例えば、リンカー、反復配列、エピトープもしくはタグ、または1塩基長、2塩基長、3塩基長、4塩基長、5塩基長、6塩基長、7塩基長、8塩基長、9塩基長、10塩基長、11塩基長、12塩基長、13塩基長、14塩基長、15塩基長、16塩基長、17塩基長、18塩基長、19塩基長、20塩基長、25塩基長、30塩基長、35塩基長、40塩基長、45塩基長、50塩基長、55塩基長、60塩基長、65塩基長、70塩基長、75塩基長、80塩基長、85塩基長、90塩基長、95塩基長、100塩基長、150塩基長、200塩基長もしくは300塩基長の配列、これらの長さ程度の配列、少なくともこれらの長さの配列、少なくともこれらの長さ程度の配列、これらの長さ以下の配列、これらの長さ程度以下の配列、もしくはこれらの値のいずれか2つを上下限値とする範囲内の長さの配列が挙げられる。本明細書において、ポリペプチドに関する「下流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、ある配列のC末端側(後方)にある配列を意味する。本明細書において、ポリペプチドに関する「上流」という用語は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、ある配列のN末端側(前方)にある配列を意味する。
【0126】
本明細書において、「%w/w」または「%wt/wt」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、本発明の組成物の全重量に対する成分または薬剤の重量の割合に100を掛けたものである。本明細書において、「%v/v」または「%vol/vol」は、本明細書に照らして理解される平易で一般的な意味を有し、本発明の組成物の全液体容積に対する化合物、物質、成分または薬剤の液体容積の割合に100を掛けたものである。
【0127】
本明細書において、「尿中剥離細胞」という用語は、尿排泄の際に体外に排出されることがある、尿路に関連する少量の尿路上皮細胞やその他の細胞を意味し、これらの細胞には潜在的ながん細胞が含まれる。尿検体に含まれるこの体外に排出された細胞(例えば、がん細胞、赤血球、白血球または細菌)を分析することにより、個人の健康状態を非侵襲的に評価することが可能である。しかし、この尿中剥離細胞の濃度は非常に低いことがあるため、濃縮することが望ましかったり、かつ/または濃縮が必要となったりすることがある。この濃縮は、細胞成分を遠心分離で圧縮して細胞ペレット(「尿沈渣細胞」)とすることによって行うことができる。これを再懸濁してその後の工程に使用することができる。
【0128】
検体中の特定の細胞標的物質を検出し、染色することができる。この特定の細胞標的物質は生物学的成分であればよく、例えば、タンパク質または核酸が挙げられるが、これらに限定されない。タンパク質(または抗体が結合可能なその他のエピトープ)を検出するために抗体を使用する免疫組織化学法(免疫細胞化学法)と、DNAやRNAなどの核酸とハイブリダイズしてこれらを検出するために核酸プローブを使用するin situハイブリダイゼーション法(蛍光、発色など)という2つのアプローチがある。膀胱がん特異的バイオマーカーに特異的な免疫細胞化学法および発色in situハイブリダイゼーション法が、いくつかの実施形態において本明細書に開示されている。特に、慣用の光学顕微鏡法を使用して行える検出の容易さから、発色基質が酵素により着色沈殿物に変換される発色法を使用することができる。ただし、当業者によって別のバイオマーカー特異的染色法やその他のバイオマーカーが代わりに使用されることも想定される。
【0129】
通常、免疫細胞化学法はスライドガラスを用いて行ってもよい。スライド上の細胞検体または組織検体を、標的タンパク質に特異的な一次抗体とインキュベートすることができる。十分に洗浄して一次抗体を除去した後、発色酵素標識二次抗体をスライドに加えてインキュベートすることができる。その後、対応する発色基質をスライドに加えると、二次抗体に結合している発色酵素による触媒反応により発色沈殿が生じ、陽性シグナルを得ることができる。スライド上のシグナルは、光学顕微鏡法により評価することができる。
【0130】
通常、発色in situハイブリダイゼーションは、スライドガラスを用いて行ってもよい。スライド上の細胞検体または組織検体を、標的核酸とハイブリダイズする特異的な核酸プローブとインキュベートすることができる。十分に洗浄して核酸プローブを除去した後、発色酵素標識二次試薬を順次スライドに加えてインキュベートすることができる。その後、対応する発色基質をスライドに加えると、二次試薬に結合している発色酵素による触媒反応により発色沈殿が生じ、陽性シグナルを得ることができる。スライド上のシグナルは、光学顕微鏡法により評価することができる。
【0131】
免疫細胞化学法ではタンパク質抗体を使用してもよいが、発色in situハイブリダイゼーションでは、主な試薬として核酸プローブを使用してもよい。これらの2種の方法のシグナルの発生とその評価は類似した結果となる場合がある。
【0132】
本明細書において、「細胞形態学的染色」という用語は、細胞やその他の生物学的物質を、色素または色素の混合物を用いて、(特定の成分を標的とする免疫細胞化学法や発色in situハイブリダイゼーション染色法とは異なる)一般的な方法で着色する染色法を意味する。細胞形態学的染色は、慣用の光学顕微鏡法での細胞のコントラストを高め、細胞病理学的判断を行うための細胞形態に関する識別可能な細部の情報を得るためによく使用される。細胞形態学的染色の例としては、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色およびヘマトキシリン/エオシン染色が挙げられる。特定の望ましい特性のために、公知の細胞形態学的染色の派生法や変法が使用されることも想定されており、着色するための化学色素をそのまま使用するか、別のものに変更した派生法や変法が想定される。
【0133】
前述の少なくともいくつかの実施形態において、技術的に実現可能であれば、いずれかの実施形態で用いられている1つ以上の構成要素と、別の実施形態の構成要素とを入れ替えて用いることが可能である。請求項に記載の主題の範囲から逸脱しない限り、本明細書に記載の方法および構造に対して、これまでに述べた以外の様々な省略、追加および変形を行ってもよいことは、当業者であれば十分に理解できるであろう。このような変形および変更はいずれも、添付の特許請求の範囲により定義される主題の範囲に含まれる。
【0134】
本明細書における実質的にすべての複数および/または単数の用語の使用に関して、当業者であれば、文脈および/または用途に応じて、複数を単数として、かつ/または単数を複数として解釈することができる。明瞭性を期するため、このような様々な単数と複数の交換について本明細書に明記する場合がある。
【0135】
「e.g.」は「例えば」を意味し、したがって、非限定的であると理解される。
【0136】
当業者であれば十分に理解できるであろうが、通常、本明細書で用いられる用語、特に、添付の特許請求の範囲(例えば、添付の特許請求の範囲の本文)で用いられる用語は、全体を通じて「オープンな」用語として意図されている(例えば、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるものであり、「有する」という用語は、「少なくとも有する」と解釈されるものであり、「含む」という用語は、「含むが、これに限定されない」と解釈されるものである等)。さらに、請求項の記載事項において特定の数が意図される場合、そのような意図は請求項に明示的に記載されるものであり、記載がない場合はそのような意図が存在しないということも、当業者であれば理解できるであろう。具体的に説明をすれば、例えば、添付の特許請求の範囲では、請求項の記載事項に「少なくとも1つ」や「1つ以上」といった前置きが使用されている場合がある。しかし、このような前置きが使用されていても、不定冠詞「1つ(aまたはan)」を使用した記載事項を含む特定の請求項が、その記載事項のみを含む実施形態に限定されるものではなく、たとえ1つの請求項内に「1つ以上」または「少なくとも1つ」といった前置きと「1つ(aまたはan)」といった不定冠詞とが含まれている場合でも、同様である(例えば、「1つ(aおよび/またはan)」は、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味すると解釈される)。これは、定冠詞を使用した請求項の記載事項についても同様である。また、請求項の記載事項において特定の数が明示的に記載されている場合でも、記載された数は最小限の数を意味するものであるということは当業者であれば理解できるであろう(例えば、修飾語を伴わない「2つ」という記載は、「少なくとも2つ」または「2つ以上」を意味する)。さらに、「A、BおよびCのうちの少なくとも1つ」といった慣用表現が使用されている場合、通常、当業者がその慣用表現を理解する意味で解釈されることが意図されている(例えば「A、BおよびCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。また、「A、BまたはCのうちの少なくとも1つ」といった慣用表現が使用されている場合、通常、当業者がその慣用表現を理解する意味で解釈されることが意図されている(例えば「A、BまたはCのうちの少なくとも1つを有するシステム」は、Aのみを有するシステム、Bのみを有するシステム、Cのみを有するシステム、AとBを有するシステム、AとCを有するシステム、BとCを有するシステム、ならびに/またはA、BおよびCを有するシステムなどを包含するが、これらに限定されない)。さらに、2つ以上の選択肢を提示するための離接語および/または離接句は、明細書、特許請求の範囲、図面のいずれにおいても、選択肢として記載されている用語の一方、当該用語のいずれか、または当該用語の両方を含む可能性を想定するものであることは、当業者であれば理解できるであろう。例えば、「AまたはB」という表現は、「A」もしくは「B」、または「AおよびB」の可能性を含むものと理解される。
【0137】
さらに、本開示の特徴または態様がマーカッシュ形式で記載されている場合、本開示もまた、マーカッシュ形式の任意の個々の要素または複数の要素からなるサブグループで記載されていることは、当業者であれば理解できるであろう。
【0138】
詳細な説明を提供するなどといった何らかの目的で本明細書に記載されているすべての範囲は、考えられるあらゆる下位範囲およびその下位範囲の組み合わせを包含するものであることは、当業者であれば理解できるであろう。前記範囲はいずれも、該範囲が少なくとも2等分、3等分、4等分、5等分、10等分などに分割されることが十分に記載されているとともにその分割が可能であるものとして容易に理解できるであろう。例えば、本明細書に記載の範囲はいずれも、上、中、下といった3等分などに容易に分割することができるが、これに限定されない。また、「以下」、「少なくとも」、「よりも大きい」、「未満」といった文言はいずれも、記載された数値を含むとともに、本明細書に記載されているように、下位範囲に分割可能な範囲も表すことは、当業者であれば理解できるであろう。さらに、本明細書に記載の範囲は個々の要素を含むことは、当業者であれば理解できるであろう。したがって、例えば、1~3個の要素を有する群は、1個の要素を有する群、2個の要素を有する群または3個の要素を有する群を表す。同様に、1~5個の要素を有する群は、1個の要素を有する群、2個の要素を有する群、3個の要素を有する群、4個の要素を有する群、または5個の要素を有する群を表し、その他の場合も同様である。
【0139】
本明細書において様々な態様および実施形態を開示してきたが、当業者であればその他の態様および実施形態も可能であることは容易に理解できるであろう。本明細書において開示されている様々な態様および実施形態は、本発明を説明することを目的としたものであり、本発明を何ら限定するものではなく、本発明の範囲および要旨は以下の特許請求の範囲により示される。
【0140】
本明細書において引用された公開特許出願、非公開特許出願、特許および学術文献を含む(ただしこれらに限定されない)すべての参考文献は、本明細書において引用された特定の開示またはその全体が引用により本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。参照により援用された刊行物、特許または特許出願が本明細書の開示内容と矛盾する場合、このような矛盾するいかなる事項に対しても本明細書の記載が採用および/または優先される。
【0141】
細胞病理学的多重染色用装置
本明細書において、細胞病理学的多重染色を行うための装置を開示する。概して、この装置では、単一の染色チャンバーを使用して、生体検体由来の細胞を多重染色工程と洗浄工程で処理し、最終回収工程で細胞を回収して、さらなる操作(例えば、可視化のための顕微鏡用スライドへの封入)を行うことができる。このような態様によって、「ワンポット」法での多重染色法が可能になることから、細胞の回収のための遠心分離や、使用済みの染色試薬および洗浄試薬の除去といった別の操作を行う必要がなくなる。「ワンポット」法は、膀胱がんの診断用の尿沈渣細胞の場合のように、異型細胞の割合が少なく、かつ/または細胞の総数が少ない生体検体に有利である可能性がある。さらに、本開示による装置は、多重染色工程および洗浄工程を自動化してもよく、これによって、検体処理のばらつきを減らしたり、細胞病理学的検査の信頼性を向上させることができると考えられる。
【0142】
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、
a)細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/またはスライド封入剤、ならびに患者から得た生体検体由来の細胞を入れることができる染色容器と;
b)使用済みの細胞用水性培地、使用済みの染色試薬および/または使用済みの洗浄試薬を収容するように構成されており、かつ該使用済みの細胞用水性培地、該使用済みの染色試薬および/または該使用済みの洗浄試薬が除去できるように構成された抽出容器と
を含む。
いくつかの実施形態において、染色容器は、1つ以上の水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/またはスライド封入剤を含む。いくつかの実施形態において、前記細胞は、1系列の細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/またはスライド封入剤に再懸濁してもよい。いくつかの実施形態において、抽出容器は、1系列の使用済みの細胞用水性培地、使用済みの染色試薬および/または使用済みの洗浄試薬を収容可能であってもよく、これらを収容するように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、染色容器と抽出容器は、半透膜を介して作動可能に分離されていてもよく、該半透膜は、細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/または封入剤を透過することができるが、前記細胞は透過しないことから、染色容器中に細胞が保持されてもよい。いくつかの実施形態において、染色容器は、染色工程と洗浄工程を交互に行うことによって、染色された細胞を提供するように構成されている。いくつかの実施形態において、前記細胞は、染色容器中で交互に行われる一連の染色工程と洗浄工程を経ることによって、染色された細胞を提供する。いくつかの実施形態において、染色容器中の各染色工程の染色試薬と各洗浄工程の洗浄試薬は、使用済みになったら、抽出容器へと抽出することができる。いくつかの実施形態において、使用済みの染色試薬と使用済みの洗浄試薬は、抽出容器から除去することができる。
【0143】
いくつかの実施形態において、半透膜は細孔を備えており、この細孔は、液体と十分に小さい分子を通過させることができるが、細胞を通過させない。いくつかの実施形態において、各細孔の直径は、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.22μm、0.3μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、3μm、5μmもしくは10μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の直径であってもよい。
【0144】
いくつかの実施形態において、本発明の装置において実施される染色工程は、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより、細胞を染色することを含む。いくつかの実施形態において、細胞形態学的染色は、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法、組み合わせもしくは変法を含む。
【0145】
いくつかの実施形態において、染色容器中の各染色工程の染色試薬と各洗浄工程の洗浄試薬は、受動拡散によって、抽出容器内へと抽出することができるか、または抽出容器に陰圧をかけることによって、染色容器中の染色試薬と洗浄試薬を、半透膜を通過させて抽出容器内へと抽出することができる。いくつかの実施形態において、本発明の装置は抽出ポンプをさらに含む。いくつかの実施形態において、抽出ポンプは、染色容器に比べて相対的な陰圧を抽出容器にかける。いくつかの実施形態において、染色容器と抽出容器は、シャッターで物理的に分離または遮断することができ、このシャッターによって、染色容器と抽出容器の間で、細胞用水性培地、染色試薬および/または洗浄試薬が半透膜を通過して移動することを阻止、抑制および/または低減してもよい。
【0146】
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/もしくはスライド封入剤を染色容器に提供可能であってもよい試薬供給源、またはこれらの培地や試薬を染色容器に提供するように構成された試薬供給源をさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明の装置は試薬ポンプをさらに含む。いくつかの実施形態において、試薬供給源は、細胞用水性培地、染色試薬、洗浄試薬および/またはスライド封入剤を試薬供給源から提供させる機械力を提供するように構成された試薬ポンプに作動可能に連結されていてもよい。いくつかの実施形態において、細胞用水性培地は、本発明の装置の最初の操作を行うための細胞を含む。
【0147】
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、例えば、封入などを目的として、染色された細胞を回収可能であってもよい検体回収流路、または染色された細胞を回収するように構成された検体回収流路をさらに含む。いくつかの実施形態において、本発明の装置の最終操作の後、染色された細胞は、スライド封入剤中に含まれていてもよい。いくつかの実施形態において、(例えば、ピペットや注射器などを用いて)染色された細胞を手動で回収することができ、または検体回収流路により陰圧をかけることによって回収することができる。いくつかの実施形態において、検体回収流路は、陰圧を利用して、染色された細胞を回収することができる。
【0148】
いくつかの実施形態において、本発明の装置は、ThinPrep 2000システムなどの細胞検体・スライド作製システムを改良したものであってもよい。
【0149】
「垂直方向」の構成で細胞病理学的多重染色を行うための装置の非限定的な一実施形態を図1A~Cに示す。
【0150】
図1Aは、例示的な装置を示す。染色容器100が設けられており、この染色容器100には、患者から得た生体検体から単離および/または精製された細胞101が、適合する液体培地103中に懸濁液の状態で含まれていてもよい。
【0151】
いくつかの実施形態において、染色容器100は、細胞101と液体培地103を入れるのに適した内部容積と開口部を備えた容器であってもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、プラスチック、ガラス、石英、鋼鉄、チタン、セラミック、アルミナ、ジルコニアなどの生物不活性材料、または細胞培養に一般に使用されるその他の材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、チューブ、円筒形チューブ、角形チューブ、キュベット、ディッシュ、プレート、または細胞培養において使用可能なその他の容器であってもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、光学的に透明もしくは透き通っていてもよく、または容器中の内容物が目視できるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、染色容器100に装着することにより染色容器100を定位置に固定しておくことが可能なホルダーに適合するものであってもよい。
【0152】
いくつかの実施形態において、患者から得た生体検体から単離および/または精製された細胞101は、染色容器100に入れる前に固定処理および/または透過処理を行ってもよい。いくつかの実施形態において、細胞101は、この例示的な装置を作動させる前に、染色容器100中で固定処理および/または透過処理を行ってもよい。いくつかの実施形態において、細胞101は、この例示的な装置を操作することによって、染色容器100中で固定処理および/または透過処理を行ってもよい。
【0153】
図1Aに示すように、この例示的な装置には、2つの開放端を備えた抽出容器102がさらに設けられており、2つの開放端のうちの一方には、液体培地103(およびタンパク質、抗体、核酸、低分子染色色素などの低分子)を透過するが、細胞101を透過しないものであってもよい半透膜104を装着してもよい。いくつかの実施形態において、抽出容器102は、染色容器100の内部容積内に入れることができる。いくつかの実施形態において、抽出容器102は、プラスチック、ガラス、石英、鋼鉄、チタン、セラミック、アルミナ、ジルコニアなどの生物不活性材料、または細胞培養に一般に使用されるその他の材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、抽出容器102は、チューブ、円筒形チューブ、角形チューブ、または染色容器100の内部容積内に入れることが可能なその他の形状であってもよい。いくつかの実施形態において、抽出容器102は、光学的に透明もしくは透き通っていてもよく、または容器中の内容物が目視できるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、2つの開放端のもう一方(すなわち、半透膜104を装着しない方の開放端)は、陰圧107を負荷することが可能な抽出ポンプ115(例えば空気ポンプ)に作動可能に接続されていてもよく、これによって、染色容器100から大気ガスまたは液体培地103を、半透膜104を通して抽出してもよい。いくつかの実施形態において、抽出ポンプ115は陽圧をさらに負荷することができ、これによって、抽出容器102中の内容物を、半透膜104を通して染色容器100または別の場所(例えば廃棄容器)に放出してもよい。いくつかの実施形態では、抽出ポンプ115が設けられていなくてもよく、抽出容器102中の内容物を手動で操作してもよい。
【0154】
いくつかの実施形態において、抽出容器102は、染色容器100に対してその位置を移動可能に操作することができる。いくつかの実施形態において、1)抽出容器102と半透膜104を液体培地103中に浸漬することなく抽出容器102を移動させることができるか、あるいは2)半透膜104と、該半透膜104に最も近接した抽出容器102の少なくとも一部(すなわち、半透膜104を装着してもよい抽出容器102の一部)を液体培地103中に浸漬させながら抽出容器102を移動させることができる。いくつかの実施形態では、抽出容器102の全体と半透膜104を染色容器101の内部容積内に入れずに抽出容器102を移動させることができる。いくつかの実施形態では、抽出容器102は、手動で操作してもよく、モーターを用いて操作してもよい。
【0155】
いくつかの実施形態において、半透膜104は細孔を備えており、この細孔は、液体と十分に小さい分子を通過させることができるが、細胞を通過させない。いくつかの実施形態において、細孔の直径は、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.22μm、0.3μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、3μm、5μmもしくは10μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の直径である。半透膜104の細孔径は、処理を行う対象の細胞101に応じて調節することができる。いくつかの実施形態において、半透膜104は、酢酸セルロース(CA)、ガラス繊維、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、再生セルロース(RC)、または半透膜に一般に使用され、生物不活性であってもよいその他の材料を含んでいてもよい。
【0156】
図1Aに示すように、この例示的な装置は、試薬供給装置または試薬供給源105を備えていてもよい。試薬供給装置または試薬供給源105は、染色色素や洗浄試薬などの液体試薬112を染色容器100に供給するのに適合した導管を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、試薬供給装置は手動で操作することができ、例えば、ピペットなどである。いくつかの実施形態において、液体試薬112を提供することができ、かつ試薬供給装置105を通して液体試薬を染色容器100に送り込む機械力を提供することができる試薬ポンプ113に試薬供給装置105を作動可能に接続してもよい。いくつかの実施形態において、試薬供給装置105および/または試薬ポンプ113は設置してもしなくてもよく、すべての試薬112の供給を、ピペットなどを用いて手動で行ってもよい。試薬供給装置105を介した(あるいは手動で行われる)試薬112の添加は、通常、個々の染色工程または洗浄工程の開始を意味する。いくつかの実施形態において、試薬供給装置105は、染色容器100に対してその位置を移動可能に操作することができる。いくつかの実施形態において、試薬供給装置105を利用して、細胞101の最初の懸濁液を染色容器100に送液して、例示的な装置の操作を開始することができる(この場合、本例示の装置の操作の開始工程において、細胞101の最初の懸濁液は、符号112で示されてもよい)。
【0157】
本明細書に提供される方法に開示されているように、図1Aの模式図は、染色容器100に細胞101を投入する最初の工程を代表するものであってもよく、細胞の染色(例えば、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色)または洗浄を行ってもよい1つ以上の染色工程のそれぞれを代表するものであってもよい。この場合、液体培地103は、低分子染色色素、抗体、核酸、発色試薬などの各染色工程用の成分を含む液体試薬を示すか、各染色工程後に細胞を洗浄するための洗浄試薬を示す。いくつかの実施形態において、これらの液体試薬および/または洗浄試薬は、試薬供給装置105を介して送液してもよく、手動で供給してもよい。
【0158】
図1Bは、図1Aで具体的に示した例示的な装置の中間位置を示し、抽出工程を示している。この抽出工程は、最初の細胞投入工程に引き続いて行ってもよく、各染色工程の後および各洗浄工程の後に、細胞が懸濁されていてもよい(かつ固定液および/または透過試薬を含んでいてもよい)出発液体培地を除去するために実施される。この抽出工程の際に、半透膜104と抽出容器102の少なくとも一部を、細胞101を含む液体培地103中に浸漬させながら、抽出容器102を操作することができる。いくつかの実施形態において、液体培地103と十分に小さな分子(染色または洗浄に使用される成分など)は、細胞101を染色容器100内に残したまま、受動拡散によって半透膜104を通して染色容器100から抽出容器102へと流入させてもよい。いくつかの実施形態では、抽出容器102内の陰圧107によって、細胞101を染色容器100内に残したまま、液体培地103と十分に小さな分子(染色または洗浄に使用される成分など)を、半透膜104を通して染色容器100から抽出容器102へと流入させる。いくつかの実施形態において、陰圧107は、抽出ポンプ115により負荷してもよい。ただし、この抽出ポンプ115は設置してもしなくてもよく、抽出容器102中の内容物は手動で操作してもよい。抽出容器102内の抽出された液体106は、廃棄物として除去してもよい。いくつかの実施形態において、抽出された液体106を除去した後、半透膜104により保持された細胞101を、抽出容器102内のガスの陽圧により移動させて、均質な懸濁液へと戻すことができる。図1Bでは、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113は示していない。しかし、これは、図1Bに示した工程中に、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113を取り除いたり、移動させたりする必要があることを必ずしも示唆している訳ではなく、これらの構成要素は、いずれの工程での装置の操作中でも、存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0159】
染色容器100内で抽出容器102を配置してもよい深度は調節してもよいが、半透膜104を染色容器100の底面に可能な限り接近させて、可能な限り多くの液体培地103が抽出でき、これと同時に、過剰なせん断力を起こすことなく、液体培地103と細胞101が自由に流れるのに十分な空間が残るように、抽出容器102を配置させることが望ましい場合がある。この工程の後に残った液体培地103は、適切な洗浄工程で希釈して、次の工程に不要な成分を除去することができる。
【0160】
本明細書に提供される方法に開示されているように、図1Bの模式図は、1つ以上の染色工程および洗浄工程を代表するものであってもよく、液体培地103は、低分子染色色素、抗体、核酸、発色試薬などの各染色工程用の成分を含む液体試薬を示すか、各染色工程後に細胞を洗浄するための洗浄試薬を示す。
【0161】
図1Cは、図1A~Bで具体的に示した例示的な装置の最終操作工程を示す模式図を示す。この段階において、各染色工程と各洗浄工程が既に実施されており、染色された細胞110は、所望のとおりに十分な染色と洗浄が完了している。この染色された細胞は、染色工程と洗浄工程の全体を通して染色容器100中に含まれていてもよく、最終液体培地108中に再懸濁することができる。いくつかの実施形態において、最終液体培地108は、標準的な水性培地(例えば、リン酸緩衝生理食塩水またはその他の適合する緩衝培地)であってもよく、スライドの封入、可視化および/または染色安定性に最適化されていてもよい水性培地(例えば封入剤)であってもよい。最終的に染色された細胞110は、染色容器から回収して、スライド上で封入し、診断検査を行うことができる。いくつかの実施形態において、染色された細胞110が封入されたスライドは、本明細書に開示するスライドアセンブリのいずれであってもよい。染色された細胞110の回収は、ピペットなどを用いて手動で行ってもよく、検体回収流路109を用いて行ってもよい。いくつかの実施形態において、検体回収流路109は、陰圧によって、最終液体培地108と、これに含まれている染色された細胞110を回収することができる。いくつかの実施形態において、検体回収流路は、本明細書に開示されるスライドアセンブリのいずれかなどの、可視化用スライドの自動封入用の別の装置に作動可能に接続されていてもよい。図1Cでは、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113は示していない。しかし、これは、図1Cに示した工程中に、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113を取り除いたり、移動させたりする必要があることを必ずしも示唆している訳ではなく、これらの構成要素は、いずれの工程での装置の操作中でも、存在していてもよく、存在していなくてもよい。これは、抽出容器102と半透膜104にも適用される。図1Cでは、これらの構成要素は示されていないが、これは、これらの構成要素が装置の操作中に取り除く必要があることを必ずしも示唆するものではなく、抽出容器102と半透膜104は、存在していてもよく、存在していなくてもよく、図1Cの操作工程の補助などを目的として別の位置に配置してもよい。
【0162】
「水平方向」の構成で細胞病理学的多重染色を行うための装置の非限定的な別の一実施形態を図1D~Fに示す。
【0163】
例示的な装置の初期セットアップを図1Dに示す。染色容器100が設けられていてもよく、この染色容器100には、患者から得た生体検体から単離および/または精製された細胞101が、適合する液体培地103中に懸濁液の状態で含まれていてもよい。
【0164】
いくつかの実施形態において、染色容器100は、細胞101と液体培地103を入れるのに適した内部容積と開口部を備えた容器であれば、どのようなものであってもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、プラスチック、ガラス、石英、鋼鉄、チタン、セラミック、アルミナ、ジルコニアなどの生物不活性材料、または細胞培養に一般に使用されるその他の材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、チューブ、円筒形チューブ、角形チューブ、キュベット、ディッシュ、プレート、または細胞培養において使用可能なその他の容器であってもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、光学的に透明もしくは透き通っていてもよく、または容器の内容物が目視できるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、染色容器100は、染色容器100に装着することにより染色容器100を定位置に固定しておくことが可能なホルダーに適合するものであってもよい。
【0165】
いくつかの実施形態において、患者から得た生体検体から単離および/または精製された細胞101は、染色容器100に入れる前に固定処理および/または透過処理を行ってもよい。いくつかの実施形態において、細胞101は、この例示的な装置を作動させる前に、染色容器100中で固定処理および/または透過処理を行ってもよい。いくつかの実施形態において、細胞101は、この例示的な装置を操作することによって、染色容器100中で固定処理および/または透過処理を行ってもよい。
【0166】
図1Dに示すように、例示的な装置には、染色容器100に作動可能に接続されていてもよい抽出容器102が設けられていてもよいが、この抽出容器102は、半透膜104を介して染色容器100から分離されていてもよく、この半透膜104は、液体培地103(およびタンパク質、抗体、核酸、低分子染色色素などの低分子)を透過するが、細胞101を透過しないものであってもよく、さらに、抽出容器102は、半透膜104に隣接しているシャッター111を介して染色容器100から分離されていてもよく、このシャッター111は、半透膜104を通した染色容器100と抽出容器102の間の流れを阻止するために配置される。いくつかの実施形態において、抽出容器102および/またはシャッター111は、プラスチック、ガラス、石英、鋼鉄、チタン、セラミック、アルミナ、ジルコニアなどの生物不活性材料、または細胞培養に一般に使用されるその他の材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、半透膜104とシャッター111で染色容器100と抽出容器102の間を分離することができる限り、抽出容器102は、チューブ、円筒形チューブ、角形チューブ、または染色容器100に作動可能に接続されるように配置可能なその他の形状であってもよく、例えば、染色容器100を取り囲むように隣接する形状や、または染色容器100に取り囲まれた形状であってもよい。いくつかの実施形態において、抽出容器102および/またはシャッター111は、容器の内容物を観察できるように光学的に透明であってもよい。いくつかの実施形態において、抽出容器102は、半透膜104によって分離された染色容器100との接続部を除いて密封されていてもよい(半透膜104は、シャッター111と抽出開口部114で完全に密封することができる)。いくつかの実施形態において、抽出容器102の抽出開口部114は、注射器やピペットなどで、あるいは手動で、その内容物を除去できるように適切な大きさであってもよい。いくつかの実施形態において、抽出容器102の抽出開口部114は、抽出容器102の内容物を除去するために陰圧107を負荷することができる抽出ポンプ115に作動可能に接続されていてもよい。この場合、抽出開口部114は、抽出容器102から液体を抽出できるように、抽出容器102の底面またはその近傍に延びる流路を有していてもよい。いくつかの実施形態において、抽出ポンプ115は陽圧をさらに負荷することができ、これによって、シャッター111が開いていてもよい場合に、抽出容器102中の内容物を染色容器100に放出してもよい。いくつかの実施形態では、抽出ポンプ115が設けられていなくてもよく、抽出容器102中の内容物を手動で操作してもよい。
【0167】
いくつかの実施形態において、半透膜104は細孔を備えており、この細孔は、液体と十分に小さい分子を通過させることができるが、細胞を通過させない。いくつかの実施形態において、細孔の直径は、0.05μm、0.1μm、0.2μm、0.22μm、0.3μm、0.4μm、0.45μm、0.5μm、0.6μm、0.7μm、0.8μm、0.9μm、1μm、3μm、5μmもしくは10μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の直径である。半透膜104の細孔径は、処理を行う対象の細胞101に応じて調節することができる。いくつかの実施形態において、半透膜104は、酢酸セルロース(CA)、ガラス繊維、ナイロン、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリプロピレン(PP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、再生セルロース(RC)、または半透膜に一般に使用され、生物不活性であってもよいその他の材料を含んでいてもよい。
【0168】
図1Dに示すように、この例示的な装置は、試薬供給装置105を備えていてもよい。試薬供給装置105は、染色色素や洗浄試薬などの液体試薬112を染色容器100に供給するのに適合した導管を備えていてもよい。いくつかの実施形態において、試薬供給装置は手動で操作することができ、例えば、ピペットなどである。いくつかの実施形態において、液体試薬112を提供することができ、かつ試薬供給装置105を通して液体試薬を染色容器100に送り込む機械力を提供することができる試薬ポンプ113に試薬供給装置105を作動可能に接続してもよい。いくつかの実施形態において、試薬供給装置105および/または試薬ポンプ113は設置してもしなくてもよく、すべての試薬112の供給を、ピペットなどを用いて手動で行ってもよい。試薬供給装置105を介した(あるいは手動で行われる)試薬112の添加は、通常、個々の染色工程または洗浄工程の開始を意味する。いくつかの実施形態において、試薬供給装置105は、染色容器100に対してその位置を移動可能に操作することができる。いくつかの実施形態において、試薬供給装置105を利用して、細胞101の最初の懸濁液を染色容器100に送液して、例示的な装置の操作を開始することができる(この場合、本例示の装置の操作の開始工程において、細胞101の最初の懸濁液は、符号112で示されてもよい)。
【0169】
本明細書に提供される方法に開示されているように、図1Dの模式図は、染色容器100に細胞101を投入する最初の工程を代表するものであってもよく、細胞の染色(例えば、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色)または洗浄を行ってもよい1つ以上の染色工程のそれぞれを代表するものであってもよい。この場合、液体培地103は、低分子染色色素、抗体、核酸、発色試薬などの各染色工程用の成分を含む液体試薬を示すか、各染色工程後に細胞を洗浄するための洗浄試薬を示す。いくつかの実施形態において、これらの液体試薬および/または洗浄試薬は、試薬供給装置105を介して送液してもよく、手動で供給してもよい。
【0170】
図1Eは、図1Dで具体的に示した例示的な装置の中間位置を示し、抽出工程を示している。この抽出工程は、最初の細胞投入工程に引き続いて行ってもよく、各染色工程の後および各洗浄工程の後に、細胞が懸濁されていてもよい(かつ固定液および/または透過試薬を含んでいてもよい)出発液体培地を除去するために実施される。この抽出工程では、シャッター111(図1Dでは閉じた状態として示されている)を、開くか、持ち上げるか、それ以外の方法で取り除くことによって、半透膜104のみを隔てて染色容器100と抽出容器102が配置され、この半透膜104を介して、染色容器100と抽出容器102の間で液体培地の移動が可能になってもよい。いくつかの実施形態において、液体培地103と十分に小さな分子(染色または洗浄に使用される成分など)は、細胞101を染色容器100内に残したまま、受動拡散によって半透膜104を通して染色容器100から抽出容器102へと流入することができる。いくつかの実施形態では、抽出容器102内の陰圧107によって、細胞101を染色容器100内に残したまま、液体培地103と十分に小さな分子(染色または洗浄に使用される成分など)を、半透膜104を通して染色容器100から抽出容器102へと流入させることができる。いくつかの実施形態において、陰圧107は、抽出ポンプ115により負荷してもよい。ただし、抽出ポンプ115は設けられていなくてもよく、抽出容器102中の内容物を手動で操作してもよい。抽出された液体106は、抽出開口部114などを通して、廃棄物として除去してもよい。染色容器100に残った液体培地103は、適切な洗浄工程で希釈して、次の工程に不要な成分を除去することができる。いくつかの実施形態において、抽出された液体106を除去した後、半透膜104により保持された細胞101を、抽出容器102内のガスの陽圧により移動させて、均質な懸濁液へと戻すことができる。図1Eでは、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113は示していない。しかし、これは、図1Eに示した工程中に、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113を取り除いたり、移動させたりする必要があることを必ずしも示唆している訳ではなく、これらの構成要素は、いずれの工程での装置の操作中でも、存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0171】
本明細書に提供される方法に開示されているように、図1Eの模式図は、1つ以上の染色工程および洗浄工程を代表するものであってもよく、液体培地103は、低分子染色色素、抗体、核酸、発色試薬などの各染色工程用の成分を含む液体試薬を示すか、各染色工程後に細胞を洗浄するための洗浄試薬を示す。
【0172】
図1Fは、図1D~Eで具体的に示した例示的な装置の最終操作工程を示す模式図を示す。この段階において、各染色工程と各洗浄工程が既に実施されており、染色された細胞110は、所望のとおりに十分な染色と洗浄が完了している。この染色された細胞は、染色工程と洗浄工程の全体を通して染色容器100中に含まれていてもよく、最終液体培地108中に再懸濁することができる。いくつかの実施形態において、最終液体培地108は、標準的な水性培地(例えば、リン酸緩衝生理食塩水またはその他の適合する緩衝培地)であってもよく、スライドの封入、可視化および/または染色安定性に最適化されていてもよい水性培地(例えば封入剤)であってもよい。最終的に染色された細胞110は、染色容器から回収して、スライド上で封入し、診断検査を行うことができる。いくつかの実施形態において、染色された細胞110が封入されていてもよいスライドは、本明細書に開示するスライドアセンブリのいずれであってもよい。染色された細胞110の回収は、ピペットなどを用いて手動で行ってもよく、検体回収流路109を用いて行ってもよい。いくつかの実施形態において、検体回収流路109は、陰圧によって、最終液体培地108と、これに含まれている染色された細胞110を回収することができる。いくつかの実施形態において、検体回収流路は、本明細書に開示されるスライドアセンブリのいずれかを含む、可視化用スライドの自動封入用の別の装置に作動可能に接続されていてもよい。図1Fでは、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113は示していない。しかし、これは、図1Fに示した工程中に、試薬供給装置105と、試薬112と、試薬ポンプ113を取り除いたり、移動させたりする必要があることを必ずしも示唆している訳ではなく、これらの構成要素は、いずれの工程での装置の操作中でも、存在していてもよく、存在していなくてもよい。
【0173】
さらに、本明細書では、図1A~Fに具体的に示したような本明細書に開示された装置を使用して、患者から得た生体検体に由来する細胞を細胞病理学的多重染色する方法を開示する。いくつかの実施形態において、染色工程は、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより、細胞を染色することを含む。いくつかの実施形態において、細胞形態学的染色は、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む。いくつかの実施形態において、前記細胞は異型細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記細胞はがん細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記細胞は尿沈渣細胞を含む。いくつかの実施形態において、尿沈渣細胞は、1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを染色することができ、この1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーは、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択されてもよい。
【0174】
本明細書で提供される実施形態のいずれにおいても、患者は哺乳動物であってもよい。
いくつかの実施形態では、患者はヒトであってもよい。
【0175】
細胞病理スライドアセンブリ
さらに、本明細書において、病理スライドと病理カバースリップを含む病理スライドアセンブリを開示する。いくつかの実施形態において、病理スライドと前記病理カバースリップは、1つに重ね合わせて密封することによって、病理スライドアセンブリの入口ポートと出口ポートからアクセス可能な内部空隙を規定することができる。いくつかの実施形態において、患者から得た生体検体由来の細胞の懸濁液は、入口ポートから内部空隙に送達することができ、細胞を含んでいない培地を出口ポートから排出することができる。いくつかの実施形態において、病理スライドアセンブリの厚さは、慣用の光学顕微鏡に適合しうる厚さであってもよい。例えば、病理スライドアセンブリは、光学的に透明であってもよい。例えば、病理スライドアセンブリは、光学顕微鏡のステージに載せて観察できるような寸法であってもよい。いくつかの実施形態において、病理スライドアセンブリの厚さは、1000μm、1100μm、1200μm、1300μm、1400μmもしくは1500μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の厚さである。いくつかの実施形態において、病理スライドの厚さは、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1100μm、1200μm、1300μmもしくは1400μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の厚さである。いくつかの実施形態において、病理カバースリップの厚さは、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μmもしくは250μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の厚さである。いくつかの実施形態において、内部空隙を規定する病理スライドの表面は、細胞接着性材料を含む。いくつかの実施形態において、細胞接着性材料は、接着性ゲル、タンパク質コーティング、糖類コーティングまたはナノ材料であってもよい。いくつかの実施形態において、内部空隙に送達された細胞は、細胞接着性材料に沈殿し、接着することができる。いくつかの実施形態において、病理スライドおよび/または病理カバースリップは、光学的に透明な材料または透き通った材料を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、病理スライドおよび/または病理カバースリップは、プラスチック、ガラス、石英またはセラミックを含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、病理スライドアセンブリの処理と効果的な可視化を行うに際して、密封したカバースリップを除去する必要はなくてもよい。
【0176】
いくつかの実施形態において、入口ポートおよび/または出口ポートは、容易にアクセスでき、かつ容易に接続できるように、病理カバースリップから突出するように構成されていてもよい。例えば、入口ポートおよび/または出口ポートは、取付部品(例えば、ゴム製チューブやシリコーン製チューブなど)を入口ポートおよび/または出口ポートに取り付けることができるように、病理カバースリップから突出していてもよい。いくつかの実施形態において、入口ポートおよび/または出口ポートの突出高さは、0.4cm、0.5cm、0.6cm、0.7cmもしくは0.8cm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の突出高さ、または容易なアクセスと接続が可能な適合するその他の高さであってもよい。
【0177】
いくつかの実施形態において、内部空隙は、均一な形状の単一のリザーバー(「ため池」型リザーバー)を含む。このような実施形態では、病理スライドアセンブリの内部空隙内にマイクロ流路は設けられていなくてもよい。いくつかの実施形態において、病理スライドの処理と効果的な可視化を行うに際して、密封したカバースリップを除去する必要はなくてもよい。
【0178】
いくつかの実施形態において、病理カバースリップは、1本以上のマイクロ流路を含み、内部空隙は、この1本以上のマイクロ流路により規定される凹状空間を含む。いくつかの実施形態において、1本以上のマイクロ流路は、その内部を細胞が通過することができる(例えば、1本以上のマイクロ流路の寸法は、細胞の大きさよりも大きくてもよい)。いくつかの実施形態において、各マイクロ流路によって規定される凹状空間の幅(例えば、病理カバースリップの隣接する2本のマイクロ流路の間の凹状空間の距離)は、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1100μmもしくは1200μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の幅である。いくつかの実施形態において、各マイクロ流路によって規定される凹状空間の高さ(例えば、病理スライドの表面から各マイクロ流路の最も離れた表面までの距離)は、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μmもしくは120μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の高さである。いくつかの実施形態において、病理スライドアセンブリの処理と効果的な可視化を行うに際して、マイクロ流路を含む密封したカバースリップを除去する必要はなくてもよい。これによって、スライド上の染色された接着細胞の乱れを最小限に抑えたり、意図しない細胞検体の損失を減らしたりできるという利点が得られる。このような利点は、いくつかの実施形態では有利である可能性があり、特に、スライド1枚につき約5~10個しか確認できない可能性のある循環腫瘍細胞などのまれな標的細胞を分析しようとする場合に有利である可能性がある。
【0179】
いくつかの実施形態において、内部空隙を規定する病理スライドの表面はナノ粗面化されていてもよい。いくつかの実施形態において、ナノ粗面化された表面によって、懸濁液中の細胞(例えば、がん細胞)の捕捉が向上する。異型形態を示すがん細胞の捕捉用にナノ粗面化された表面を使用することは、Chen et al., Nanoroughened Surfaces for Efficient Capture of Circulating Tumor Cells without Using Capture Antibodies, ACS Nano. 7(1):566-75 (2013)、およびChen et al., Nanoroughened adhesion-based capture of circulating tumor cells with heterogeneous expression and metastatic characteristics, BMC Cancer. 16:614, 1-12 (2016)において述べられている(これらの文献は引用によりその全体が本明細書に明示的に援用される)。
【0180】
図2Aは、病理スライドアセンブリにおいて使用される病理スライドの非限定的な一実施形態を示す。病理スライド200は、特に細胞診を目的として、光顕微鏡検査用に構成された光学的に透明かつ/または透き通った材料を含んでいてもよく、この材料は、ガラス、プラスチック、石英、セラミックなどであってもよい。いくつかの実施形態において、病理スライド200は、慣用の光学顕微鏡に適合しうる厚さを有していてもよい。いくつかの実施形態において、病理スライド200の厚さは、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1100μm、1200μm、1300μmもしくは1400μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の厚さである。病理スライド200は、一般的な病理スライドでも設けられているような、検体情報を手書きまたは印字してもよい領域201を有していてもよい。いくつかの実施形態において、病理スライド200は、病理スライドアセンブリの病理スライド200に導入された細胞の接着を補助して細胞を封入するための細胞接着性材料202を有していてもよい。いくつかの実施形態において、細胞接着性材料は、接着性ゲル、タンパク質コーティング、糖類コーティングまたはナノ材料であってもよく、当技術分野で公知の細胞接着性材料も含まれる。
【0181】
図2Bは、病理スライドアセンブリにおいて使用される病理カバースリップの非限定的な2つの実施形態を示す。病理カバースリップ203は、特に細胞診を目的として、光顕微鏡検査用に構成された光学的に透明かつ/または透き通った材料を含んでいてもよく、この材料は、ガラス、プラスチック、石英、セラミックなどであってもよい。いくつかの実施形態において、病理カバースリップ203は、慣用の光学顕微鏡に適合しうる厚さを有している。いくつかの実施形態において、病理カバースリップ203の厚さは、100μm、110μm、120μm、130μm、140μm、150μm、160μm、170μm、180μm、190μm、200μm、210μm、220μm、230μm、240μmもしくは250μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の厚さである。いくつかの実施形態において、病理カバースリップは、病理スライドアセンブリの連続した内部容積(例えば、マイクロ流路やリザーバー)に外部からアクセスするための入口ポートと出口ポートを備えている。図2Bに示すように、入口ポートを出口ポートとして使用してもよく、出口ポートを入口ポートとして使用してもよい。いくつかの実施形態において、入口ポートから液体を導入すると、出口ポートが外部雰囲気と圧力を均等化して、病理スライドアセンブリの内部空隙を通る流れを発生させる。いくつかの実施形態において、入口ポートおよび/または出口ポート204は、容易にアクセスでき、かつ容易に接続できるように、病理カバースリップから突出していてもよい。例えば、入口ポートおよび/または出口ポート204は、取付部品(例えば、ゴム製チューブやシリコーン製チューブなど)を入口ポートおよび/または出口ポート204に取り付けることができるように、病理カバースリップから突出していてもよい。いくつかの実施形態において、入口ポートおよび/または出口ポート204の突出高さは、0.4cm、0.5cm、0.6cm、0.7cmもしくは0.8cm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の突出高さ、または容易なアクセスと接続が可能な適合するその他の高さであってもよい。
【0182】
いくつかの実施形態において、病理カバースリップは、この病理カバースリップの他の部分よりも厚みの少ない単一の凹んだ領域205を含み、この凹んだ領域により、均一な形状の単一の「ため池」型リザーバーが規定され、病理スライドアセンブリとして病理スライドで密封した場合に、封入された細胞がこのリザーバー内に収容される。
【0183】
いくつかの実施形態において、病理カバースリップは、1本以上のマイクロ流路206を含み、病理スライドと病理カバースリップを含む病理スライドアセンブリの内部空隙は、この1本以上のマイクロ流路により規定される凹状空間を含む。いくつかの実施形態において、1本以上のマイクロ流路206は、その内部を細胞が通過することができる(例えば、1本以上のマイクロ流路の寸法は、細胞の大きさよりも大きくてもよい)。いくつかの実施形態において、各マイクロ流路206によって規定される凹状空間の幅(例えば、病理カバースリップの隣接する2本のマイクロ流路の間の凹状空間の距離)は、300μm、400μm、500μm、600μm、700μm、800μm、900μm、1000μm、1100μmもしくは1200μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の幅である。いくつかの実施形態において、各マイクロ流路206によって規定される凹状空間の高さ(例えば、病理スライドの表面から各マイクロ流路の最も離れた表面までの距離)は、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、110μmもしくは120μm、またはこれらの値のいずれか2つを上下限とする範囲内の高さである。
【0184】
図2Cは、病理スライドアセンブリの非限定的な2つの実施形態を示す。1)単一の「ため池」型リザーバーを備えた病理カバースリップ、または2)マイクロ流路を備えた病理カバースリップを使用してもよい病理スライドアセンブリ207を示している。病理スライドアセンブリの全体を構築するには、病理スライドと病理カバースリップを1つに重ね合わせて密封してもよいが、この際に、防水性の永久接着剤を用いて、処理中および診断評価中に(例えば、細胞を含む)病理スライドアセンブリの内容物が漏れないようにすることが望ましい。病理スライドと病理カバースリップを1つに重ね合わせて密封する際、入口ポートおよび出口ポート204を介して、病理スライドアセンブリの内部空隙にアクセスすることができる。ただし、作製したスライドに所望の細胞を封入したら、長期保管を目的として、入口ポートおよび出口ポート204を密封してもよい。通常、病理スライドアセンブリは、可視化用の均一な光路を得るために、適合する封入剤を内部空隙に充填して密封する。慣用の封入剤には、通常、保管用に細胞形態を維持する試薬も含まれている。
【0185】
図2Dは、例示的な病理スライドアセンブリの非限定的な断面図と拡大断面図を示す。病理スライドアセンブリ207は、一般的なスライドアセンブリと同様に構成された、病理スライド200と病理カバースリップ203を含んでいてもよい。拡大図208(病理スライドアセンブリの一部ではなく、その全体を示したもの)は、病理スライド200と、病理カバースリップ203と、病理スライド200上に設けられていてもよい細胞接着性材料202を含む断面を示している。内部空隙209は、病理スライドアセンブリ207の病理スライド200の内表面と病理カバースリップ203の内表面によって規定されてもよい。いくつかの実施形態において、この内部空隙は、病理カバースリップ203の構造に応じて、単一の「ため池」型リザーバーを含んでいてもよく、1本以上のマイクロ流路206によって規定される複数の空間を含んでいてもよい。細胞210は、細胞接着性材料202に接着しているものとして示されている。最終的な病理スライドアセンブリの作製では、細胞は、当技術分野で公知の封入剤などの、細胞診を目的として可視性を向上させる封入剤中に含まれていてもよい。いくつかの実施形態において、封入剤は、α-ピネン、トルエンおよび/または2,6-ブチル化ヒドロキシトルエンを含んでいてもよいが、これらに限定されない。いくつかの実施形態において、封入剤は、25~60%w/wのα-ピネン、40~72%w/wのトルエン、および1~3%の2,6-ブチル化ヒドロキシトルエンを含む。いくつかの実施形態において、封入剤は、27.5%のα-ピネン、71.5%のトルエン、および/または1%の2,6-ブチル化ヒドロキシトルエンを含む。
【0186】
本明細書に開示された病理スライドアセンブリは、1枚目の病理スライドアセンブリの出口ポートを、2枚目の病理スライドアセンブリの入口ポートに接続することによって互いに連結できるように構成してもよい。複数枚の病理スライドアセンブリを通して細胞懸濁液検体を流すことによって、病理スライドアセンブリ(の細胞接着性材料202)によって可視化用に捕捉される細胞の割合を増加させることができる。複数枚の病理スライドアセンブリを使用することによって、細胞の接着に利用可能な面積を増加させることができ、このような態様は、細胞懸濁液検体に含まれる細胞の数が、1枚の病理スライドアセンブリに適切に接着させることが可能な細胞の数を上回る場合に有利である場合がある。いくつかの実施形態において、病理スライドアセンブリの入口ポートは、連結流路を介して、第2の病理スライドアセンブリの出口ポートに作動可能に接続することができ;かつ/または病理スライドアセンブリの出口ポートは、別の連結流路を介して、第3の病理スライドアセンブリの入口ポートに作動可能に接続することができる。いくつかの実施形態において、連結流路は、従来の材料(例えば、ゴムやシリコーンなど)を含んでいてもよく、その内部流路を通して、例えば、染色された細胞を含む検体または封入剤などの液体を流すことができる。いくつかの実施形態において、連結流路の両末端は、例えば、突出した入口ポートと出口ポートに装着することによって、入口ポートと出口ポートにそれぞれ取り付けることができる。実際には、液体は、1枚目の病理スライドアセンブリの内部空隙を通って流れ(1回目の細胞封入が行われ)、次に、出口ポートから出て、連結流路を通過し、第2の病理スライドアセンブリの入口ポートから流入して、第2の病理スライドアセンブリの内部空隙に到達する(2回目の細胞封入が行われる)。
【0187】
さらに、本明細書において、本明細書に開示された病理スライドアセンブリのいずれかを2枚以上含む、複数枚の病理スライドアセンブリを含む実施形態を開示する。いくつかの実施形態において、2枚以上の病理スライドアセンブリは、各病理スライドアセンブリの入口ポートと出口ポートを介して連続的に連結することができ、これによって、2枚以上の病理スライドアセンブリの内部空隙が流体連通して、連続した空間が形成される。いくつかの実施形態において、2枚以上の病理スライドアセンブリのうちの1枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートと、2枚以上の病理スライドアセンブリのうちの別の1枚の病理スライドアセンブリの露出した出口ポートは、別のポートには連結されずに、互いに接続された内部空隙により構成される連続した空間へのアクセスを可能にする。
【0188】
図3A~Bは、複数枚の病理スライドアセンブリの非限定的な実施形態を示す。病理スライドアセンブリ207は、本明細書に開示された病理スライドアセンブリのいずれかを示している。本明細書で述べるように、複数枚の病理スライドアセンブリは、それぞれ入口ポートと出口ポートを有しており、そのうちの1枚の病理スライドアセンブリの出口ポートを、連結流路211を介して第2の病理スライドアセンブリの入口ポートに接続することによって互いに接続または連結することができる。いくつかの実施形態において、連結流路211は、従来の材料(例えば、ゴムやシリコーンなど)で構成されていてもよく、その内部流路を通して、例えば、染色された細胞を含む検体または封入剤などの液体を流すことができる。いくつかの実施形態では、入口ポートと出口ポートは同じ材料で構成することができるため、これら2つの開口部のいずれか一方(入口ポートまたは出口ポート)を、第2の病理スライドアセンブリの開口部のいずれか一方に連結してもよい。したがって、病理スライドアセンブリの連結方法は、図3A~Bに示した特定の構成に限定されない。図3Bに示した非限定的な実施形態に示すように、複数枚の病理スライドアセンブリを構成する各病理スライドアセンブリは同じものでなくてもよく、所望に応じて、異なる種類の病理スライドアセンブリ構造(例えば、リザーバー型の内部空隙を有する構造またはマイクロ流路型の内部空隙を有する構造、異なる幅のマイクロ流路を有する構造、異なる種類の細胞接着性材料を有する構造など)で構成されていてもよい。さらに、図3A~Bの非限定的な実施形態では、3枚の病理スライドアセンブリが連結されたものが示されているが、互いに連結される病理スライドアセンブリの枚数は何枚でもよい(例えば、2枚、3枚、4枚、5枚、6枚、7枚、8枚、9枚、10枚などであってもよい)。
【0189】
図4A~Bに示すように、いくつかの非限定的な実施形態は、染色装置の組み合わせを含む。いくつかの実施形態において、染色装置の組み合わせは、本明細書に開示された装置のいずれか1つと、本明細書に開示された1枚以上の病理スライドアセンブリとを含む(本明細書で提供されるように、複数枚の病理スライドアセンブリは互いに連結されていてもよい)。いくつかの実施形態において、染色装置の組み合わせは、本明細書に開示された装置のいずれか1つと、本明細書に開示された病理スライドアセンブリのいずれか1枚とを含んでいてもよく、前記装置の検体回収流路は、病理スライドアセンブリの入口ポートに作動可能に接続することができる。いくつかの実施形態において、染色装置の組み合わせは、本明細書に開示された装置のいずれか1つと、本明細書に開示された複数枚の病理スライドアセンブリのいずれか1つとを含んでいてもよく、前記装置の検体回収流路は、複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートに作動可能に接続することができる。いくつかの実施形態において、検体回収流路は、入口ポートに適合するように構成されていてもよく、例えば、入口ポートの突出部に装着できるように構成されていてもよい。いくつかの実施形態において、検体回収流路は、別の中間部品(例えばチューブなど)を介して、入口ポートに作動可能に接続されていてもよい。図4Aの非限定的な実施形態に示すように、この装置は「垂直方向」の形態であってもよい。図4Bの非限定的な実施形態に示すように、この装置は「水平方向」の形態であってもよい。
【0190】
さらに、本明細書において、本明細書に開示された病理スライドアセンブリ、または複数枚の病理スライドアセンブリを用いて、対象から得た生体検体由来の細胞を封入する方法を開示する。この方法は、
a)前記細胞の懸濁液を、病理スライドアセンブリの入口ポートから、該病理スライドアセンブリの内部空隙内に流入させる工程;または
b)前記細胞の懸濁液を、複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートから、該複数枚の病理スライドアセンブリの連続した空間内に流入させる工程と、
病理スライドまたは複数枚の病理スライドにより規定される内部空隙の表面に、前記細胞を沈殿および/または接着させる工程と
を含む。
病理スライドが細胞接着性材料でコーティングされていてもよい実施形態において、細胞は、細胞接着性材料に接着することができる。いくつかの実施形態において、前記方法は、洗浄試薬および/または封入剤を、病理スライドアセンブリの入口ポートから内部空隙内に流入させて(または洗浄試薬および/もしくは封入剤を、複数枚の病理スライドアセンブリの露出した入口ポートから、該複数枚の病理スライドアセンブリの連続した空間内に流入させて)、細胞の懸濁液中の液体成分(または前の工程で使用した洗浄試薬などの、内部空隙内に存在しうるその他の液体)を交換する工程をさらに含む。いくつかの実施形態において、細胞は、内部空隙内に保持することができる。いくつかの実施形態において、前記懸濁液中の液体成分(または前の工程で使用した洗浄試薬などの、内部空隙内に残存しうるその他の液体)は、出口ポート(または複数枚の病理スライドアセンブリの露出した出口ポート)から排出することができる。いくつかの実施形態において、前記方法は、最終流入工程として、封入剤を流入させて、内部空隙(接着した細胞を含む内部空隙)に封入剤を充填し、可視化用の均一な光路を得る工程を含む。いくつかの実施形態において、最終流入工程の後に、(例えば、接着剤、エポキシ、グルーなどで)入口ポートと出口ポートを密封して、保管用に封入剤中で細胞を維持してもよい。いくつかの実施形態において、封入剤は、細胞形態を維持する試薬を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、前記方法は、生体検体中の異型細胞の検出を目的として、さらには疾患の病理学的診断を目的として、1枚の病理スライドまたは複数枚の病理スライドの表面に沈殿および/または接着していてもよい細胞を、光学顕微鏡法により目視検査する工程をさらに含んでいてもよい。通常、いくつかの実施形態で述べているように、細胞を画像化するためには、適合する封入剤を内部空隙に充填して、均一な光路を確保する。いくつかの実施形態において、細胞は、固定処理および/または透過処理を行うことができる。いくつかの実施形態において、細胞は、細胞形態学的染色、免疫細胞化学的染色、もしくは発色in situハイブリダイゼーション染色、またはこれらの任意の組み合わせにより染色することができる。いくつかの実施形態において、細胞の染色は、本明細書に開示された細胞病理学的多重染色用装置、および/または該装置を使用する方法を用いて行ってもよい。いくつかの実施形態において、細胞形態学的染色は、ディフ・クイック染色、パパニコロウ染色、ライトギムザ染色、ヘマトキシリン/エオシン染色、またはこれらの派生法もしくは変法を含む。いくつかの実施形態において、前記細胞は異型細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記細胞はがん細胞を含む。いくつかの実施形態において、前記細胞は尿沈渣細胞を含む。いくつかの実施形態において、尿沈渣細胞は、1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーを染色することができ、この1種以上の膀胱がん特異的バイオマーカーは、S100P、p63、M344、LDQ10、19A211、GATA-3、Ki-67、p16、Her-2、PD-L1、CTLA4、CK-17、CK-20、nmp-22、膀胱腫瘍抗原(BTA)、hTERTおよびミニ染色体維持タンパク質5(MCM5)からなる群から選択されてもよい。
【0191】
本明細書で提供される実施形態のいずれにおいても、患者は哺乳動物であってもよい。
いくつかの実施形態では、患者はヒトであってもよい。
【0192】
別のスライドチャンバーアセンブリ
図5A~8は、細胞病理学的多重染色を行う装置に使用される別の染色チャンバーの非限定的な別の実施形態を示す。図5A図5Bに示すように、この別の染色チャンバー300は、上部301と下部302を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、上部301は、下部から取り外すことができる。いくつかの実施形態において、下部302は、多孔質膜303をさらに含んでいてもよく、この多孔質膜の形状は、円形または楕円形であってもよく、円形の場合、最大で20mm×20mmの大きさであってもよく、楕円形の場合、最大で20mm×40mmの大きさであってもよい。いくつかの実施形態において、上部301と下部は、連結部304で相接していてもよい。図5Aに示すように、連結部304は、下部302に配置されたプラスチック成形部305により密封することができ、このプラスチック成形部が上部301と噛み合う。また、図5Bに示すように、連結部304は、下部302に配置されたシール部306により密封することができ、このシール部が上部301と噛み合う。いくつかの実施形態において、シール部306は、エラストマー材料(例えばゴム)を含んでいてもよい。いくつかの実施形態において、染色チャンバーの上部は、上部と下部の間の連結部の反対側に位置する頂部に、突出リム部307を含んでいてもよい。
【0193】
図6Aおよび図6Bは、連結部304で分解して、下部302から上部301を分離した別の染色チャンバー300の断面の非制限的な例を示す。いくつかの実施形態において、上部と下部を分離した際に、多孔質膜303は下部に取り付けられたままの状態であってもよい。図6Aに示すように、いくつかの実施形態では、上部と下部を分離した際に、連結部304にシールを含むプラスチック成形部305は、下部302に取り付けられたままの状態であってもよい。また、図6Bに示すように、いくつかの実施形態では、上部と下部を分離した際に、連結部304にシールを含むシール部306は、下部302に取り付けられたままの状態であってもよい。図7Aおよび図7Bは、連結部304とシール部305,306が見やすくなるように図示した、図6Aおよび図6Bの断面を示す。図8は、図5Bに示すように、上部301と下部302を組み立てた際の、連結部304とシール部306の断面の拡大図を示す。いくつかの実施形態において、染色チャンバーの上部の突出リム部307は、染色工程の終了後に染色チャンバーのシリンダー壁を引き抜く固定具として構成されており、引き抜かれたシリンダー壁は廃棄される(図5A~B、図6A~B)。いくつかの実施形態において、染色された細胞は、上部301が取り除かれた後に、多孔質膜303上で露出されてもよい。いくつかの実施形態において、上部301を取り除いた後、多孔質膜303上の染色された細胞を病理スライドに直接接触させて、染色された細胞を病理スライド上に移すことができる。いくつかの実施形態において、多孔質膜の下から陽圧の空気を送ることによって、細胞移動工程を促進してもよい。
【0194】
いくつかの実施形態において、図5A~8に示す染色チャンバー300は、図1D~Eに示した染色チャンバー103と半透膜104の代替として使用することができる。いくつかの実施形態において、液体試薬を下部302内へと下方に通過させ/吸引して廃棄することができる。いくつかの実施形態において、上部301の頂部から新たな溶液を添加することができる。いくつかの実施形態において、染色工程が終了した後、染色チャンバーの壁面301を取り外すことができる。
【0195】
組み合わせ染色装置
図9~15は、組み合わせ染色装置の非限定的な例を示す。いくつかの実施形態において、この組み合わせ染色装置は、検体投入口400、外観検査システム401、動作状態指示灯402、コントロールパネル403、スライドガラス投入口404、およびマウスとキーボード405を含んでいてもよい(図9)。検体投入口400は、検体を通過させて組み合わせ染色装置内に載置するためのドアを備えていてもよい。外観検査システム401は、画像処理が可能なハードウェアプロセッサおよび/またはディスプレイを備えていてもよい。動作状態指示灯402は、組み合わせ染色装置のステータスを示すことが可能であってもよい。いくつかの実施形態において、動作状態指示灯402は、組み合わせ染色装置の動作状態を反映するために色を変更することが可能な1つ以上の光源を備えていてもよい。例えば、動作状態指示灯402は、検体の受け入れが準備できた際に第1の色を提示してもよく、検体の処理中に第2の色を提示してもよく、検体の処理が完了した際に第3の色を提示してもよい。いくつかの実施形態において、動作状態指示灯402は、組み合わせ染色装置の動作状態を示すために、点滅、点灯および/または消灯してもよい。動作状態指示灯402は、組み合わせ染色装置の動作状態を示すために、チャイムおよび/またはアラームを鳴らしてもよいスピーカーを備えていてもよい。いくつかの実施形態において、コントロールパネル403は、使用者による検体処理の開始、一時停止、停止および/または終了を可能にしてもよい。いくつかの実施形態において、コントロールパネル403はタッチスクリーンであってもよい。いくつかの実施形態において、コントロールパネル403は、組み合わせ染色装置によって実行される検体処理方法の進行状況を示すグラフィックを表示してもよい。いくつかの実施形態において、スライドガラス投入口404は、使用者による組み合わせ染色装置への1枚以上のスライドガラスの装填を可能にしてもよい。いくつかの実施形態において、マウスとキーボード405により外観検査システム401を制御してもよい。いくつかの実施形態において、マウスとキーボード405によりコントロールパネル403を制御してもよい。
【0196】
図10を参照すると、いくつかの実施形態では、組み合わせ染色装置は、試薬分注モジュール406をさらに備えていてもよい。試薬分注モジュール406は、多孔質膜300を備える染色チャンバーに、1つ以上の試薬を分注することが可能であってもよい。試薬分注モジュール406は、試薬供給装置105および/または試薬ポンプ113を備えていてもよい。試薬分注モジュール406は、ハードウェアプロセッサにより制御してもよい。いくつかの実施形態において、多孔質膜300を備える染色チャンバーは、例えば、検体投入口400から組み合わせ染色装置内に装填することができる。いくつかの実施形態において、染色チャンバーは、シェーカー407の上に配置することができる。シェーカー407により染色チャンバー300を振盪して、染色チャンバー300内の試薬を動かすことができる。シェーカー407は、ハードウェアプロセッサにより制御してもよい。図11を参照すると、いくつかの実施形態では、組み合わせ染色装置に最大で12個の染色チャンバーを同時に装填することができる。いくつかの実施形態において、シェーカー407は、組み合わせ染色装置内でシェーカー407と染色チャンバー300を移送させることが可能な一続きの搬送レール上に配置される。組み合わせ染色装置内の搬送レール上でのシェーカー407と染色チャンバー300の移送は、ハードウェアプロセッサにより制御してもよい。いくつかの実施形態において、組み合わせ染色装置は視覚検査野408を含む。視覚検査野408は、外観検査システム401に画像を送信することができるカメラを備えていてもよい。視覚検査野408のカメラは、染色チャンバー300の画像化が可能であってもよく、染色の完了を判定するために、染色チャンバー300の画像を外観検査システム401に送信可能であってもよい。図12を参照すると、いくつかの実施形態では、組み合わせ染色装置は、チャンバー壁の一部を取り除くことが可能なグリッパー409をさらに備えている。いくつかの実施形態において、染色工程が完了した後に、グリッパー409は、染色チャンバーの上部301の突出リム部307と係合して、染色チャンバーのシリンダー壁を下部302から引き抜き、引き抜いた上部301を廃棄してもよい。図13を参照すると、いくつかの実施形態では、搬送アーム410は、細胞接着性材料を含むスライドガラスに、露出された染色細胞を押しつけることによって、染色細胞をスライドガラスに移動させることができる。いくつかの実施形態において、多孔質膜の下から陽圧の空気を発生させることができるポンプを用いて、多孔質膜上の細胞を上方向に押しつけることによって、細胞移動工程を促進することができる。図14を参照すると、いくつかの実施形態では、組み合わせ染色装置は、廃棄物回収穴または廃棄物回収リザーバー411をさらに備えている。いくつかの実施形態において、グリッパー409は、廃棄物回収穴または廃棄物回収リザーバー411に、染色チャンバーの上部を廃棄することができる。試薬(例えば、染色工程で使用される試薬)は、染色チャンバー300から取り除いてもよい。図15を参照すると、いくつかの実施形態では、組み合わせ染色装置は液体廃棄物回収装置412をさらに備えている。液体廃棄物回収装置412は、使用済みの試薬および/または液体廃棄物を染色チャンバー300から取り除くことができる。いくつかの実施形態において、液体廃棄物回収装置412は、染色チャンバーの上部301の圧力に比べて相対的な陰圧を発生させることが可能なポンプを備えている。いくつかの実施形態において、液体廃棄物回収装置412は、使用済みの試薬を染色チャンバー300から廃棄物回収穴または廃棄物回収リザーバー411に取り除くことができる。いくつかの実施形態において、液状検体から染色病理スライドを作製する処理は自動化されている。いくつかの実施形態において、液状検体から染色病理スライドを作製する処理は閉鎖系で完了する。いくつかの実施形態において、検体処理は約3時間で行われる。
図1A-C】
図1D-E】
図1F
図2A-B】
図2C-D】
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A-B】
図6A-B】
図7A-B】
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
【国際調査報告】