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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】振動手術器具
(51)【国際特許分類】
   A61F 9/007 20060101AFI20241108BHJP
   A61F 9/013 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
A61F9/007 130A
A61F9/013 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2024533794
(86)(22)【出願日】2022-12-05
(85)【翻訳文提出日】2024-07-19
(86)【国際出願番号】 US2022051854
(87)【国際公開番号】W WO2023107393
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】17/543,571
(32)【優先日】2021-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】524211940
【氏名又は名称】ディスラー,ジョン,ゴードン
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】弁理士法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ディスラー,ジョン,ゴードン
(57)【要約】
SMILE処置中にフェムト秒レーザーによって確立される、角膜片の分離における使用に好適な振動組織分離器は、手術用具に振動運動を適用するための触覚アクチュエータを担持するハンドルに取り付けられた鈍いへらなどの手術用具を含み得る。減衰装置が、外科医の手を、さもなければハンドルを通して伝達される振動から隔離するために提供され得る。アクチュエータはハンドルの軸に沿った線形振動を印加し得、これは屈曲を有する手術用具の先端に持ち上げ及び割断運動を印加する。先端は、分離される組織に好適であり得る。例えば、SMILE角膜片分離のために、鈍い若しくはやや鋭いへら、鈍いワイヤ又はループが使用され得る。先端での振動の方向は、屈曲の平面以外の平面内で用具を回転させることによって、又はハンドルに対してLRAなどのアクチュエータを回転させることによって変更され得る。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組織層を分離するための手術ハンド器具であって、
フリーハンド使用のための手持ち型手術器具としてサイズ設定されたハンドルと、前記ハンドルに取り付けられたアクチュエータと、
前記アクチュエータに連結された手術用具であって、組織層を分離するために好適な略平坦な先端を呈する、手術用具と、を備え、
前記アクチュエータは、前記先端に振動を付与し、前記アクチュエータ及び前記手術用具は、前記振動が、前記略平坦な先端によって画定される平面に垂直な持ち上げ成分を含むように構成されており、前記振動の前記持ち上げ成分は、20Hz~20,000Hzの周波数を有する、組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項2】
前記振動の前記持ち上げ成分は、200Hz~500Hzの周波数を有する、請求項1に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項3】
前記振動の前記持ち上げ成分は、200Hz~300Hzの周波数を有する、請求項2に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項4】
前記手術用具の運動を減衰させるための減衰要素を更に備え、前記手術用具は、前記ハンドル内のチャネル内で摺動可能である、請求項1に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項5】
前記手術用具と前記ハンドルとの間の前記チャネル内にシールを更に備える、請求項4に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項6】
前記減衰要素は、ばね、ショックアブソーバ、又はエラストマーのブロックである、請求項5に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項7】
前記アクチュエータは、線形共振アクチュエータ(LRA)である、請求項5に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項8】
前記アクチュエータに接続された制御回路を更に備える、請求項7に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項9】
前記制御回路は、前記アクチュエータの動きにおける抵抗に比例して電力出力を増加させるように構成されたフィードバックコントローラを更に備える、請求項8に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項10】
前記制御回路は、閉ループ周波数制御部を有する触覚ドライバを更に備える、請求項9に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項11】
振動伝達機を更に備え、前記振動伝達機は、前記手術用具の前記略平坦な先端と近位部分との間に位置する、前記手術用具内の屈曲部である、請求項1に記載の組織層を分離するための手術ハンド器具。
【請求項12】
レーザー視力矯正処置における使用のための装置であって、レーザーが基質内組織分離平面を画定するために使用され、それによって、前記装置は、振動する略平坦な先端を有する手術用具を含み、前記先端は、200Hz~500Hzの範囲の周波数の、前記先端が前記基質内組織分離平面に印加されたときに前記基質内組織を分離するように作用する、前記実質的に平坦な先端によって画定される平面に垂直な振動成分を有する、レーザー視力矯正処置における使用のための装置。
【請求項13】
前記装置は、屈折角膜片摘出処置においてフェムト秒レーザーパルスの適用によって画定される角膜片の分離のために使用される、請求項12に記載のレーザー視力矯正処置における使用のための装置。
【請求項14】
前記角膜片摘出処置は、微小切開角膜片摘出処置である、請求項13に記載のレーザー視力矯正処置における使用のための装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、手術器具、より具体的には、振動組織分離器に関する。
【背景技術】
【0002】
屈折矯正眼科手術は、眼の屈折状態を改善し、眼鏡又はコンタクトレンズへの依存を低減又は排除するために使用される。これは、角膜の外科的再形成(角膜曲率形成術)、レンズ移植、又はレンズ置換の様々な方法を含み得る。屈折矯正眼科手術は、近視、遠視、老眼及び乱視などの一般的な視覚障害を治療するために使用される。
【0003】
1930年に、日本の眼科医であるTsutomu Satoは、角膜を半径方向に切断することによる屈折矯正手術を実行し、最大6度の視度の効果を矯正することを試みた。しかしながら、高い割合の角膜変性が生成された本処置は、すぐに医学界によって拒絶された。
【0004】
Jose Barraquerは、1963年に角膜再形成を意味する角膜曲率形成術と呼ばれる屈折矯正手術技法を開発し、近視及び遠視の矯正を可能にした。角膜曲率形成術は、角膜層を除去し、それを手動で必要な形状に彫刻することができるように凍結し、再形成された層を眼に再植込みすることを伴う。
【0005】
別の処置である、放射状角膜切除術(RK)は、角膜の形状を変更し、屈折異常を矯正するために、角膜に多数の切開を行うことを伴う。切開は、ダイヤモンドナイフで行われる。RKの導入後、医師は、角膜上の切開の様々な適用を使用して、近視、遠視、及び乱視を日常的に矯正した。
【0006】
1980年に、IBMの科学者であるRangaswamy Srinivasanは、著しい熱損傷なしに高精度に有機組織を切断するために、エキシマが使用され得ることを見出した。効果的な生物学的切断レーザーの発見は、それを制御するためのコンピュータの開発とともに、新しい屈折矯正手術技法の開発を可能にした。光屈折矯正角膜切除術(PRK)、又は(角膜層の分離を伴わない)インサイチュでの角膜曲率形成術は、角膜を再形成するための初期のレーザー視力矯正技法であった。PRKでは、上皮細胞と呼ばれる表面細胞が除去され、次いで、角膜の曲率が、その表面にレーザー治療を適用することによって修正される。次いで、角膜の修正された曲率は、光が眼の中で正確に焦点を合わせることを可能にする。LASIK手術と呼ばれる別の光屈折矯正手術技法は、角膜における弁状体を切断し、それを引き戻して角膜床を露出させ、次いで、エキシマレーザーを使用して露出した表面を所望の形状に切除し、次いで、弁状体を置換することを伴う。
【0007】
LASIK及びPRKは、ブロードビーム技法であった。いくつかの強化が、屈折矯正手術のある特定の側面を改善してきた。US5,520,679(その開示が参照により本明細書に明示的に組み込まれる)は、システムパラメータのためのビーム重なりの理論、並びに切除速度及び凝固パターンの理論を使用して、以前のレーザーシステムよりもより安全であり、より低コストで構築され、よりコンパクトであり、より正確かつより高い柔軟性を伴って実行することができると考えられる、走査レーザー(又はフライングスポットレーザー)を開示した。US5,520,679によれば、走査レーザーは、屈折矯正レーザー手術で使用するために、0.01~10mJのエネルギー、1~10,000パルス/秒の繰り返し率、0.01ナノ秒~数百マイクロ秒のパルス持続時間、及び0.05~2mmのスポットサイズで選択される。この走査レーザーシステム特許は、屈折矯正手術に使用されてきた様々なレーザーが記載され、当時存在していた眼科用レーザーは、「光屈折矯正角膜切除術のためのUVレーザーにおいて高出力要件、大きなサイズ及び重量、高い維持コスト及びガスコスト(エキシマレーザーの場合)、並びに接触型レーザー凝固のための高いファイバーコスト」を有した。
【0008】
屈折矯正手術のための別の強化は、LASIK処置における偏心を防止するための視線追跡デバイスの使用である。この考えは、LASIKなどのレーザー屈折矯正眼科手術中に行われた眼球の動きを補償することである。
【0009】
LASIK処置において、エキシマレーザー切除が、部分的厚さの薄層角膜弁の下で行われる。外科医は、角膜組織の弁状体を切断するために、微小角膜切開刀又はフェムト秒レーザーのいずれかを使用する。弁状体は、ヒンジ付きドアのように持ち上げられる。微小角膜切開刀は、角膜弁を作成するために設計された揺動刃を備えた精密手術器具である。
【0010】
フェムト秒レーザーは、機械式微小角膜切開刀ベースの処置に対して多くの利点を有する。不完全な弁状体、ボタンホール、又は上皮びらんのような微小角膜切開刀関連の弁状体合併症は、フェムト秒レーザー処置では排除される。刃からの微視的金属片の欠如は、薄層角膜炎のリスクも低減する。同一設定でLASIK(SMILE処置で使用されるものと同じフェムト秒レーザー)においてフェムト秒レーザー弁状体が作成されるとき、LASIK弁状体は、25ゲージのカニューレなどの非常に鈍い器具でさえも、容易に分離する。
【0011】
別の屈折矯正処置は、微小切開角膜片摘出(SMILE)であり、元々はフェムト秒角膜片摘出(FLEx)と呼ばれ、近視及び乱視を矯正するために使用される、Carl Zeiss Meditecによって開発されたレーザーベースの屈折矯正眼科手術の形式である。LASIKレーザー手術に類似するが、SMILEに示される基質内処置は、角膜表面を基準とする単一のフェムト秒レーザーを使用して、手動摘出のために角膜基質から薄い角膜片を裂断するという点で新規である。これは、無痛処置として記載されている。この治療について適格である候補者について、彼らは、術後の厚さが薄すぎないことを確認するために、彼らの角膜間質の厚さをチェックする。
【0012】
摘出される角膜片は、光破壊レーザー-組織相互作用を使用して、患者によって必要とされる矯正処方に正確に切断される。摘出の方法は、LASIKタイプの弁状体を介することができるが、より最近では、弁状体なし技法により角膜周辺に小さなトンネル切開を行う。
【0013】
フェムト秒レーザーは、角膜片を完全に分離するわけではなく、鈍いへら又は特別に設計された器具が、切開部を通して角膜片を分離及び除去するために、切開部を通して挿入される。鉗子によって除去する前に、角膜片が完全に切り離すことを確実にするように注意しなければならない。この処置は、弁状体ベースの治療と比較して侵襲性が最小限であり、フェムト秒レーザーの高速により、周囲の組織への付随的損傷が最小限に抑えられる。
【0014】
フェムト秒レーザーによる角膜片除去を行う外科医は、間質組織に外傷又は損傷を引き起こすことなく角膜片を除去するスキルを身につけなければならない。
【0015】
Sinha,Ranesh,et al.,Ophthalmic Surgical Instruments,Jaypee Brothers Medical Publishers Ltd.,2017は、参照により本明細書に明示的に組み込まれ、眼科手術において使用される様々な器具を示す。
【発明の概要】
【0016】
1つの目的は、周囲の組織に損傷を与えることなく組織を分離するために使用され得る手術器具を提供することである。
【0017】
特に脆弱な線又は平面に沿って層を分離するための振動器具を提供することが更なる目的であり、そのような器具は、手動で誘発された力を単独で使用すると、周囲の組織又は材料に損傷を与えるリスクがある繊細な手術に有用であり得る。振動力の印加は、歯及び周囲の歯肉組織を分離するのに有用であり得る。そのような器具は、フェムト秒レーザー支援白内障手術処置において、一次及び二次フェムト秒レーザーで作成された角膜切開部を開くこと、並びにフェムト秒LASIKの弁状体を上昇させ、弁状体の下の癒着を剥離するための他の処置、Implantable Collamer Lens(ICL)の適切な配置、及びインタクト角膜分離器を補助するための白内障及び他の眼科手術処置において有用であり得る。
【0018】
超音波周波数をはるかに下回る振動周波数を有する器具を提供することが更なる目的である。振動周波数は、手動で印加可能な周波数を超えるように設定されているが、損傷のリスクを生じるほど高くはない。例えば、角膜組織の屈折異常又は屈折特性を修正するように設計されておらず、特に、手動分離よりも効果的で安全であるが、手動分離とは異なる結果として生じる構造を有することを意図していない、眼科手術における使用のためのデバイスを提供することが目的である。
【0019】
フェムト秒レーザーの適用によって、又は光破壊レーザーと組織との相互作用によって形成された角膜片を分離するのを助ける振動器具を提供することが更なる目的である。
【0020】
有利な特徴によれば、振動組織分離器は、手持ち型手術器具としてサイズ設定されたハンドルを含み得る。アクチュエータがハンドルに取り付けられ得、手術用具がハンドルに機械的に連結され得る。制御回路がアクチュエータに接続され得、電源が制御回路に接続され得る。手術用具及びアクチュエータは、ハンドルに固定され得る、又は手術用具は、ハンドル内のチャネル内に摺動可能に取り付けられ得る。
【0021】
シールが用具とハンドルとの間のチャネル内に存在し得る。減衰要素がハンドルとアクチュエータとの間に提供され得、アクチュエータは、ハンドル内のチャネル内に摺動可能に取り付けられ得る。アクチュエータは、LRAであり得る。減衰要素は、ばね、ショックアブソーバ、又はエラストマーのブロックであり得る。
【0022】
制御回路は、スイッチであり得る。制御回路は、アクチュエータの動きにおける抵抗に比例して電力出力を増加させるように構成されたフィードバックコントローラを含み得る。制御回路は、閉ループ周波数制御部を有する触覚ドライバであり得る。
【0023】
振動の動きの方向成分は、振動伝達機を使用して調整され得る。振動伝達機は、手術用具の近位部分と、手術用具の遠位部分が屈曲を呈する手術用具の遠位部分との間に位置する手術用具内のヒンジであり得る。ヒンジは、ベルクランクであり得る。振動伝達機の別の実装形態は、アクチュエータをピボットマウントに接続することによって行われ得、ここで、マウントを枢動することは、LRAの線形振動の方向を変更する。ピボットマウントは、ベルクランクであり得、又はハンドルの長さに沿って延在するピボット軸の周りで半径方向振動の角度を設定するためのピボットであり得る。
【0024】
手術用具は、外科医の好みに応じて、やや鋭いへら、鈍いへら、丸い鈍いワイヤ、ループ、又は他の形状の先端を有し得る。
【0025】
組織を分離するために使用され得る振動する鈍いへらなどの振動手術ツールを提供することが1つの目的である。角膜は、可撓性であり、比較的非弾性の、5つの層からなる透明な構造である。屈折矯正手術で処置される層は、多くの微細な水平薄層の向きを有する間質層である。歴史的に、薄層角膜移植は、これらの層を手動で分離するためにやや鋭いへらを使用することによって実行された。SMILE処置では、所望の層が、フェムト秒レーザーで部分的に事前切断され、同様の手持ち型器具が組織解剖を完了することを可能にする。
【0026】
SMILEは、他の屈折矯正処置よりも患者にとって望ましい多くの特性を、例えば、切断される組織が少なく、エキシマレーザーの可変性をもたらすことができる変数のうちのいくつかの影響を受けない単一のレーザーが使用されることを有するが、SMILEは、実行するのが技術的により困難である。
【0027】
SMILE処置では、フェムト秒レーザーは、多くのスポットを互いに接近させるが、らせんパターンでは接触させない。最初に、より深い層が、所望の屈折異常の球面度及び円柱度の変化に合致する曲率で切断される。次いで、内部側面の切断が、角膜片に対して30ミクロンのエッジを確立するフェムト秒レーザーによって行われ得る。次いで、角膜表面に平行であり、弁状体に非常に類似した上層が切断される。小さな開口部が、最初に上層、次いで下層の組織解剖を完了するために、鈍いへら又は他の器具が導入されることを可能にするように作成され、その後、組織は、鉗子で除去され得る。結果として生じる組織、又は角膜片は、非常に薄い。典型的には、結果として生じる角膜片は、縁部におよそ30ミクロンであり、中心部に30~120ミクロンの厚さまで変化し、直径がおよそ6.0~7.0mmである。
【0028】
SMILEにおいて使用されるレーザーは、いくつかの理由で組織を完全には切断しない。1つの理由は、たとえ接触が円形であっても、スポットは重なり合うことができないので、スポット間に切断されない領域が依然として存在することである。2つ目は、処置を完了するのに非常に長い時間がかかり、患者がとりわけ動くリスクがあるということである。3つ目は、眼に送達されるエネルギーの量がはるかに高くなり、熱及び他の影響に関連する潜在的リスクを有することである。実際には、スポットは、直径1ミクロンであり、通常、4.5ミクロン離間している。フェムト秒レーザーは、プラズマ及び周囲の衝撃波をもたらす、非常に短い持続時間の高パルスエネルギースポットを作成することによって機能する。周囲の組織を切断又は弱めるのはこの衝撃波である。この効果は、患者によって、又はある程度はレーザーによって異なる。したがって、レーザースポットによって作成された穿孔は、患者間で一貫性がなく、したがって、角膜片を分離することの難しさは、患者間で一貫性がない。
【0029】
開示された振動外科用組織分離器は、角膜片を分離するという問題を解決する。知られているように、刃の動きが、その効果的な鋭さ又は切断作用を増加させる。これは、やや鋭いへらへの振動補助によって達成されることができる1つの可能なモダリティである。可能な効果の2つの他のモード、すなわちi)押す/割断運動、及びii)持ち上げ運動がある。振動器具は、SMILE処置で作成された角膜片などの構造を分離することを支援するために、外科医によって設定された3つのモードの組み合わせを適用し得る。
【0030】
重要な持ち上げ成分を有する運動を付与する振動を印加し得る器具を提供することは、有利な特徴である。持ち上げ運動が角膜片分離の容易さを高める可能性があることは、報告されていない。従来のへらは、角膜の構造及び空間的模倣のために、効果的な持ち上げ運動を印加することができない。従来のフェムトレーシックでは、弁状体の周囲が切断されると、事前切断された組織平面内へのカニューレ又は鈍いへらの挿入、主に、わずかな押す運動を伴う持ち上げが、弁状体を容易に分離させる。SMILEでは、周囲の円周方向の切断はなく、手術領域への唯一の入口は、30~45度の小さな開口部を通してである。したがって、従来のへらを左右に押すこと及び動かすことの両方が可能だが、密閉された空間では、いかなる持ち上げ力を提供することも可能ではない。角膜は、高いヤング率を有し、わずかな量の持ち上げの後ではあまり伸びず、密閉された限られた空間では、持ち上げは、制限される。比較的高い周波数での持ち上げ方向の振動により、持ち上げによる分離が可能となる。
【0031】
このデバイスの設計では、付着がデバイスから先端に出る位置からへらの角度を変更することによって、押すこと(ワイヤがへらに対して真っ直ぐである場合の運動)と持ち上げること(ワイヤが端部に向かって90度屈曲している場合)の様々な組み合わせを変化させることができる。持ち上げ及び割断の相対量は、手術用具の角度に依存する。振動を伴う持ち上げは、わずか数分の1ミリメートルの非常に小さな振幅であるが、毎秒数百回の比較的高い周波数であり、これは、手動で達成することができない。したがって、押すこと及び持ち上げることは、自動化され、外科医は、同様に何らかの切断運動を達成するために、カニューレを左右に揺動させることができる。切断運動は、所望の事前切断位置を超えて分離を継続することに対して最も危険であり、したがって、自動化は、設計において最小限に抑えるはずである。
【0032】
およそ8000Hz以上で振動する偏心回転モータシャフトによって振動するERMモータが使用され得るが、この構成は、必要以上に高い周波数であるように見える。更に、これは、DC電源を有するDCモータで実装され、したがって、印加される電圧を変化させることによってのみ制御されることのために制御することが困難となり得、これは、振動の振幅及び周波数並びに方向の制御を制限する。
【0033】
有利には、AC電圧で動作し、それらに供給されるAC正弦波又は方形波と同じ周波数を有するLRAモータが、使用され得る。Hブリッジなどの信号発生器、又はDC電源からのACパルスを送達するために特化されたマイクロプロセッサ若しくは他の集積回路のいずれかを使用することで、周波数、パルスパターン、及び他の所望のパルス特性の制御が可能となる。プロトタイプで利用されるこれらのLRAデバイスの周波数は、意図された目的に足りると思われる200~300Hzの範囲である。LRAは、所望の動きの方向に位置合わせされることができる1つの軸(Z軸)に主に沿った振動を有し、LRAのスマート制御を可能にするマイクロプロセッサがあり、それらは有用である。例えば、参照により本明細書に明示的に組み込まれる、Dialog Semiconductor DA7282、データシート改訂3.0、2019年7月30日CFR 0011-120-00に示される、複数の入力トリガー及び統合波形メモリを備えたDialog Semiconductor DA7282 LRA/ERM超低電力触覚ドライバが、LRAを駆動し、経時的に振幅が増加及び低減する循環振動を付与するために使用され得、デバイスの正確な共振に同調させることができ、所与の周波数を維持するために電流及び/又は電圧を増加させる振動に対する抵抗に基づいて、変調することができる。振動に対する抵抗は、LRAを通る電流及びLRAに適用される電圧との間の位相を感知することによって判定され得る。加えて、振動の周波数並びに振幅は、主にデバイスに送達される正弦波周波数及び/又は送達される電圧を変更することによって制御され得る。
【0034】
また、2つのLRAデバイスを、それらの間の効果を増加又は調整するために、直列に使用することの可能性がある。同相で実行するとき、振動の量は、各々の個別の合計であり、位相がずれているときは、それらは、効果を相殺することができる。LRAはまた、非常に低い待ち時間の利点を有し、したがって、入力プログラミングからのいかなる遅延もなしに所望の効果を提供する。
【0035】
ドライバは、繊細な眼科手術を実施している間に外科医が手動でLRAの動作を調整することに直面し得る難しさを補償し得る。ドライバは、振動の強度を自動的に変化させ得る。デバイスは、処置の間、抵抗の変化量を補正するためにインピーダンスを自動的に調整することができ、したがって、それを「スマートデバイス」にし、そこでは、外科医は、先端を前進させ、振動の量は、受ける抵抗の量に応じて、ベースラインレベルから変化する。また、一連の短い触覚感覚で外科医に触覚フィードバックを与える機能もある。これらは、デバイスの作動又は状態を変更すること、及びそれが眼から取り外された後に、それがオフになったことを示すために使用されることができる。
【0036】
デバイスは、先端を含めずにおよそ100mmの長さであり得、先端は、手動の全金属手術器具上の従来の先端に類似するように設計され、両端にテーパーを有して、最大直径がおよそ8.5mmであり得る。これは、およそ、そのような標準的な手術器具について外科医が慣れ親しんでいるサイズである。動作セルフチェック及び準備ステータスの触覚フィードバックで作動させるために引っ張ることができるオン/オフスイッチ又はフィルムがあり得る。デバイスは、無菌及び使い捨てとして単一包装され得る。1つのデバイスが両眼に使用され、その後廃棄することができる。本体/ハンドルは、内部バッテリ、コントローラチップ、LRAモータ、ばね、及び前面に小さな密閉された穴を備えた振動からの絶縁体を備えたプラスチックで作られ得、そこから処置ワイヤが突出し、次いで機能的なへら先端に屈曲する。
【0037】
Bell Crankヒンジなどのヒンジが、ある方向における動きを別の方向に伝達させるために器具において使用され得る。手術用具の角度は、ヒンジで調整され得る。運動方向を調整するための非ヒンジオプションは、所望の運動に対応するためにLRAモータの向きを変更すること、又は代替的に複数の方向に振動するERMモータを使用することである。
【0038】
振動組織分離器は、眼科手術に適しているが、同様のタイプの状況が、歯科、整形外科、神経外科、又は組織が制限された空間内から別の組織平面から分離されなければならない任意の分野などの他の分野で発生し、したがって、このものと同様のツールが、これらの他の医療分野において適用可能性を有することになる。
【0039】
振動器具で使用される手術用具は、鈍いへら、やや鋭いへら、及び分離器、フック、ワイヤ、ループ、並びにSinha,Ranesh,et al.,Ophthalmic Surgical Instruments,Jaypee Brothers Medical Publishers Ltd.,2017に示されるものを含む、振動がそのような用具に付与されるときに向上した性能を有する他の用具を含み得る。
【0040】
本発明の様々な目的、特徴、態様、及び利点は、添付の図面とともに、本発明の好ましい実施形態の以下の詳細な記載からより明らかになるであろう。図面では、同様の数字は同様の構成要素を表す。
【0041】
更に、本発明の上記の目的及び利点は、本発明によって達成されることができるものの例示であり、網羅的ではない。したがって、本発明のこれら及び他の目的及び利点は、本明細書に具体化されるように、及び当業者に明らかであろう任意の変形を考慮して修正されるように、本明細書の記載から明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1】手術器具の概略図を示す。
【0043】
図2】固定アクチュエータ及び固定手術用具を備えた振動手術器具を示す。
【0044】
図3】ハンドルへの振動力の伝達が低減された振動組織分離器の実施形態を示す。
【0045】
図4】ハンドルへの振動力の伝達を低減するための更なる減衰構造を含む組織分離器の実施形態を示す。
【0046】
図4A図4に例証される器具の代替実装形態を示す。
【0047】
図4B図4に例証される器具の更なる代替実装形態を示す。
【0048】
図5】アクチュエータ制御回路の概略を示す。
【0049】
図6】振動組織分離器における使用のための振動伝達機の側面図を示す。
【0050】
図7】振動組織分離器における使用のための振動伝達機の上面図を示す。
【0051】
図8】半径方向に振動するLRAを有する代替実装形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0052】
本発明を更に詳細に記載する前に、本発明は、記載される特定の実施形態に限定されず、そのため、もちろん、変形し得ることを理解されたい。また、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、特定の実施形態を記載することのみを目的としており、限定することを意図していないことも理解されたい。
【0053】
値の範囲が提供される場合、その範囲の上限と下限との間に介在する各値は、開示される主題内に包含されることが理解される。
【0054】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書に記載されるものと同様又は等価な任意の方法及び材料もまた、本発明の実施又は試験において使用されることができるが、限定された数の例示的な方法及び材料が本明細書に記載される。
【0055】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」、及び「その(the)」は、文脈が明示的に別様に示さない限り、複数の参照を含むことに留意されたい。
【0056】
本明細書で言及される全ての刊行物は、刊行物が関連して引用される方法及び/又は材料を開示及び記載するために、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書で論じられる刊行物は、本出願の出願日前のそれらの開示のためにのみ提供される。本明細書のいかなるものも、本発明が先行発明によってそのような刊行物に先行する権利を与えられないという承認として解釈されるべきではない。更に、提供される公開の日付は、実際の公開の日付とは異なる場合があり、独立して確認する必要があり得る。
【0057】
図1は、手術器具、具体的には組織分離器の概略図を示す。器具は、フェムト秒レーザーによって作成された平面に沿ってなど、組織を分離するために有用な鈍い先端又は刃に依拠し得る。例えば、SMILE処置においてレーザーによって作成された角膜切開、弁状体、又は角膜片である。器具はまた、脆弱な任意の線、平面、又は領域に沿って材料を分離するためにも有用であり得る。鈍い先端は、特に誤って適用された場合、周囲の組織を損傷する可能性のある鋭い器具の使用を避けるために、へらであり得る。鈍い器具の使用は、無傷のままであるべき組織を誤って切断する発生率を低減することができる。しかしながら、へらなどの鈍い器具の使用は、SMILE屈折矯正技法中に作成された角膜片などの組織を分離するために操作することが困難であり、使用することが困難であることが見出されている。フェムト秒レーザーシステムは、レーザーが角膜片を残りの角膜組織から完全に分離するように設定されていないときに、最良の結果を達成する。レーザーの処置パラメータは、典型的には、強化された視覚的結果を達成するために設定され、角膜片の分離を容易にするためではない。角膜片の分離を容易にするであろうレーザーを用いて非常に近い間隔のスポットを配置することは、視覚的回復を遅らせ得、最良の視覚的結果をもたらさないことが見出されている。多くの近い間隔のレーザースポットの影響を避けるために、外科医は、レーザーを用いて作成された平面の切開を完了し、角膜片を分離して摘出しなければならない。器具は、好ましくは、超音波周波数未満の周波数で振動するへらを含み得る。有効であることが判明した周波数範囲は、200~500Hzであるが、可聴範囲内の全ての周波数を、LRAデバイスで再生することができ、したがって、20~20,000Hzの周波数が許容可能であり得る。器具は、電源11、例えば、制御機構12を介してハンドル14内に取り付けられたアクチュエータ13に接続されたバッテリを含み得る電動振動へらであり得る。
【0058】
器具は、組織分離用具として手術用具又はヘッド15が提供され得る。電源11は、アクチュエータ13に合致され得る。例えば、アクチュエータがDC電圧を必要とする場合、電源11は、DC電圧レベルを出力する。代替的に、好ましい実施形態では、アクチュエータがAC電圧を必要とする場合、電源11は、AC電圧を提供するように配設され得る。制御回路12が、外科医がアクチュエータ13に電力を印加し、アクチュエータ13から電力を接続解除することを可能にするように提供され得る。制御回路12は、スイッチであり得、又はアクチュエータ13に提供される電圧レベルを調整するために、より複雑であり得る。鈍いへらなどの手術用具を有するヘッド15は、アクチュエータ13によって生成される振動エネルギーの印加によって振動するように配設され得る。
【0059】
アクチュエータは、システムに入るエネルギー及び信号を変換することによって運動を生成するデバイスである。それが生成する運動は、回転又は線形のいずれかであり得る。線形アクチュエータは、その名前が示すように、線形運動を生成し、設定された線形平面上で前方又は後方に動くことができる。線形アクチュエータは、典型的には、いずれかの方向に設定された距離を移動する。一方、回転アクチュエータは、回転運動を生成する。振動器具に好適な触覚アクチュエータが、利用可能である。線形共振アクチュエータ(LRA)及び偏心回転質量(ERM)モータが、手術器具で使用され得る一般的な触覚アクチュエータである。触覚アクチュエータ及び触覚ドライバは、現在の用途ではないが、よく知られており、広く利用可能である。例えば、Texas Instruments,SLOU 389A-May 2014-Revised June 2014,User’s Guide、DRV2605L ERM and LRA Haptic Driver Evaluation Kit、2021年10月14日取得、及びDialog Semiconductor,DA7282,LRA/ERM,Ultra-Low Multiple Input Triggers and Integrated Waveforth Memory、CFR 00011-120-0、Datasheet Revision 3.0,30-Jul-2019を参照されたく、両方の開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。ドライバは、マイクロコントローラ、例えば、Microchip Technology Inc.から入手可能であり、Datasheet DS4002214E(その開示は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる)に記載される、PIC18F06/16Q41,14/20 Pin,Low-Power,High Performance Microcontroller with XLP Technologyによって制御され得る。この用途に好適な他の多くの市販のマイクロコントローラがある。
【0060】
図2は、固定アクチュエータ23及び固定手術用具25を備えた振動手術器具を示す。図2に示される器具は、スイッチ22及びアクチュエータ23又は他の作動機構などの制御部を通して接続された電源21を含む。制御部は、スイッチとして示されている。しかしながら、制御部は、上記のタイプのマイクロコントローラ及び触覚ドライバを含み得ることを認識されたい。スイッチは、ハンドル24の表面を通って延在するボタンを含み得る。外科医がスイッチ22を押下又は摺動させるとき、電力が、アクチュエータ23に供給され、器具ハンドル24に振動を生じさせる。振動は、ハンドル24に固定されたヘッド25に伝達される。図2に示される実施形態は、設計及び構造が単純であるという利点を有するが、ユーザーは、ハンドル24を通して伝達される振動の量が、顕微手術に必要な触覚を低減することを見出し得る。これは、ERMタイプの振動子においてより予想される。LRA振動子では、ハンドル24を通る伝達が少ない状態で、振動を先端25のみに隔離することが容易である。また、デバイスを手動で繰り返し作動させることも扱いにくいことであり得る。したがって、デバイスが低レベルで作動されるが、インピーダンスに起因して振動を増加させることができるスマート制御が好ましくあり得る。しかしながら、好みの問題として、振動の伝達は、ユーザーにアクチュエータの動作の直接的な表示を提供し得る。スイッチは、解放されたときにオンのままであり得る、又はオンのままであるために接触を必要があるスイッチであり得る。
【0061】
図3は、ハンドル34への振動力の伝達が低減された振動組織分離器の実施形態を示す。図3に示される器具は、スイッチ32及びアクチュエータ33などの制御部を通して接続された電源31を含む。スイッチ32は、ハンドル34の表面を通って延在するボタンを含み得る。外科医がスイッチ32を押下又は摺動させるとき、電力がアクチュエータ33に供給され、器具ハンドルに振動を生じさせる。振動は、ヘッド35に伝達される。図3に示されるように、アクチュエータは、運動がチャネル37を通って延在する手術用具35に付与されるように、ハンドルのチャネル37内に取り付けられ得る。図3の実施形態によれば、手術用具35は、ハンドル34に固く連結されていない。例えば、チャネル37を通って延在する手術用具35は、チャネルよりも小さくなり得る。シール36が、液体及び他の汚染物質が手術器具に浸透するのを防止するために、手術用具35とハンドル34との間に提供され得る。シールは、器具の滅菌を促進する。シール36は、その完全性又は可撓性を失うことなく、オートクレーブ滅菌プロセスに耐えるシリコーン又は他の適切な材料であり得る。加えて、シール36は、ヘッド35に減衰効果を提供し得る。
【0062】
図4は、ハンドル44への振動力の伝達を低減するための更なる減衰構造を含む組織分離器の実施形態を示す。図4に示される器具は、スイッチ42及びアクチュエータ43などの制御部を通して接続された電源41を含む。スイッチは、ハンドル44の表面を通って延在するボタンを含み得る。外科医がスイッチ42を押下又は摺動させるとき、電力がアクチュエータ43に供給され、器具ハンドルに振動を生じさせる。振動は、ヘッド45に伝達される。図4に示されるように、アクチュエータは、運動がチャネル47から延在する手術用具45に付与されるように、ハンドル44のチャネル47内に取り付けられ得る。図4の実施形態によれば、手術用具45は、ハンドル44に固く連結されていない。例えば、チャネル47を通って延在する手術用具45は、ハンドル44の端部におけるチャネル47の開口部よりも小さくなり得る。該44の開口部及びチャネル44の開口部を通って延在する手術用具45の一部は、それぞれ、手術用具45がチャネル47内で摺動することを可能にするようにサイズ設定され得る。シール46が、液体及び他の汚染物質が手術器具に侵入するのを防止するために、チャネル47の開口部で、手術用具45とハンドル44との間に提供され得る。シールは、器具の滅菌を促進する。シールは、その完全性又は可撓性を失うことなく、オートクレーブ滅菌プロセスに耐えるシリコーン又は他の適切な材料であり得る。図4による実施形態は、ハンドル44に固く付着されていないアクチュエータ43を有する。振動減衰要素48が、ばねとして概略的に示されており、手術器具に追加され得る。減衰要素48は、アクチュエータ43をハンドル44から更に隔離するために提供されている。他のエラストマー構造が、ハンドル44を連結要素49及び他の中間要素から手術用具45に隔離するために、提供され得る。減衰要素48の一端は、ハンドル44に対して固定され得る一方で、他端は、連結要素49に(及び手術用具45に対して)固定されている。この構成では、連結要素49は、ハンドル構造44から機械的に隔離されている。例えば、ばねが、ハンドル44のチャネル47内に設置されたシリンダ内に取り付けられ得る。ばねの一端は、チャネルの基部(ハンドルの一部)に固定され得、ばねの他端は、ピストンなどの連結要素49に固定され得る。連結要素49は、チャネル47を通って延在し、機械的スイッチ42に接続され、次いでアクチュエータ43に接続されるバッテリ41に接続され得る。バッテリ41、機械的スイッチ42、アクチュエータ43は、全てハンドルのチャネル内に包含され得るが、ハンドル構造自体に固く固定されなくてもよい。手術用具45は、アクチュエータ43に接続され得るが、ハンドル44に固定されなくてもよい。
【0063】
図4aは、図4に例証される器具の代替実装形態を示すが、スイッチ42a及びバッテリ41aが、減衰要素48aの一端とともにハンドル44a内に取り付けられている。連結要素49a及びアクチュエータ43aは、ハンドルに固く固定されておらず、チャネル47a内で動き得る。
【0064】
図4bは、図4に例証される器具の更なる代替実装形態を示すが、バッテリ41bが、減衰要素48bの一端とともにハンドル44b内に固く取り付けられている。連結要素49b及びアクチュエータ43bは、ハンドルに固く固定されておらず、チャネル47b内で摺動し得る、又は動き得る。スイッチ42bは、機械的及び電気的構造が、制限として意図されないように、概略的にのみ示され、スイッチ42bは、以下に記載されるような制御部及び作動回路を表し得る。
【0065】
図5は、アクチュエータ制御回路の概略図を示す。図5による制御回路は、手術用具が受ける抵抗がアクチュエータの動作の大きさを制御することを可能にする。図5による制御回路は、任意選択で1つの限界まで、手術用具によって生成される力が振動の大きさ及び/又は周波数を増加させるように設計されている。抵抗ベースの可変制御部は、低レベルの振動が概して組織分離のために利用される器具の動作を可能にするが、手術用具に適用される力に対する抵抗が増加する場合、振動移動域の大きさは、受ける抵抗を補償するために、増加されることができる。「抵抗」の増加は、振動周波数の低減の検出によって感知され得る。次いで、フィードバック回路は、所望の振動の周波数を維持するために、電流及び/又は電圧を増加させ得る。図5は、作動スイッチ52を通して接続された電源51を示す。ドライバ58は、制御電圧レベルをアクチュエータ53に印加するために提供され得る。電圧制御は、フィードバックチャネルを通して適用され得る。センサー60が、用具の振動を検出するために提供されている。例えば、抵抗を受けたとき、振動のレベルは、受けた抵抗を通して低減され得る。センサー60は、手術器具55の動作パラメータの変更を検出するために提供され得る。センサーは、ある特定の制限部を通して調節され得る。例えば、制限部は、手術用具に力が適用されないときのベース振動レベルに対して提供し得る。センサーは、手術用具に付与された運動のレベルを検出するように配設され得る。抵抗が増加するにつれて、運動は低減する。この低減運動は、センサー60によってドライバフィードバックループ59内の可変制御部に検出され得る。抵抗が増加するとき、運動は低減し、増幅が増加する。制限部61は、振動レベルを包含するように、可変制御部59の調整を制御するために提供され得る。加えて、振動レベルは、どのくらいの力であっても、設定された量に制限され得る。加えて、制限部は、器具が作動されるときに最小限の振動力を提供するように動作し得る。
【0066】
実際の実装形態では、図5の制御回路は、Microchip PIC18F06などのマイクロコントローラ、及びDialog Semiconductor DA7282などのHaptic Driverチップを使用して実装され得る。該用具が受ける抵抗は、感知され得、アクチュエータは、触覚ドライバチップによって、又は触覚ドライバによって利用可能にされる状態情報を監視するマイクロコントローラによって、内部フィードバック及び監視を使用して制御され得る。DA7282データシートに記載されているように、DA7282は、最大6つの異なるシーケンスをトリガーするために、オンボード波形メモリ内の周波数制御、及び3つの異なるGPI入力を特徴とする触覚ドライバである。本デバイスは、負荷を横断する駆動のレベルを制御し、アクチュエータの動きを感知する。駆動波形は、高周波PWM変調を使用して、電流調整ループによって生成される。差動出力駆動は、負荷を横断するHブリッジ差動駆動を備えたスイッチングレギュレータアーキテクチャを特徴とする。駆動レベルは、I2Cインターフェース、入力PWM信号、又は波形メモリによって選択されたデータソースからのシーケンスに基づく。DA7282は、キャリブレーションフリープレイバック、周波数トラッキング(LRAのみ)、アクティブアクセラレーション、ラピッドストップ、及びアクチュエータ診断を可能にするために、駆動中の閉ループアクチュエータ監視が可能である。連続的共振周波数追跡を、LRAを駆動しながら、閉ループ制御部を通じてアクチュエータの機械的共振を追跡するために可能にすることができる。
【0067】
図6及び図7は、振動組織分離器などの手術器具における使用における振動伝達機61を示す。図6は、振動伝達機62の側面図を示す。図7は、振動伝達機62の側面図を示す。振動伝達機62は、手術用具25、35、45、45a、及び45bの動きの方向を調整するために、前述の実施形態のいずれかとともに使用され得、手術用具の近位区画の中間部分内に配置され得る。特定の用途に応じて、外科医は、器具に、持ち上げ運動、すなわち、手術用具の平らな面に対して垂直な運動、スライス運動、すなわち、手術用具の前縁部によって画定される線に対して平行な運動、若しくは押す運動、すなわち、手術縁部の前縁部によって画定される線に対して垂直な運動、又はそれらの任意の組み合わせを付与することを望み得る。運動の伝達は、振動伝達機を使用して確立され得る。一実装形態は、例えば、図2図3図4図4a、及び図4bに示されるように、ハンドル(図示せず)から延在する手術用具の近位端での用具アーム64に対する手術用具の角度付き遠位端63の回転を可能にするヒンジの形式であり、該用具アームは、振動機構に接続され得る。手術用具の遠位端63と近位端64との間のベルクランクなどのヒンジの回転は、遠位端での振動の方向を変更する効果を有する。用具アームの近位端64は、ばね荷重軸受け又は他の弾性突起などの解放可能な係止機構65を担持し得る。角度付き手術用具である遠位アーム63は、ピボットヒンジ66によって用具アームの近位端64に接続され得る。手術用具の遠位端63(角度付き)は、用具アーム63にピボットで取り付けられた角度付き手術用具62の端部の周りで分散されるへこみ67を有し得る。へこみ67は、解放可能な係止機構65と協働するようにサイズ設定され、及び位置決めされる。このようにして、外科医は、用具の振動方向を伝達させ、その振動の持ち上げ、割断、及びスライス成分の相対量を設定するために、角度付き手術用具の遠位端63の回転位置を設定し得る。
【0068】
代替的に、LRAデバイスの向きは、LRAの「Z」軸の向きを変更するように修正されることができ、手術用具の遠位端で振動の方向における変更が結果として生じる。これは、クランクのピボットを中心に揺動を提供するように、ベルクランクに取り付けられた、又は付着されたアクチュエータを回転させることによって達成され得る。クランクの向きを調整することにより、スライス、割断、及び持ち上げ運動の相対的成分を変えるように、振動の方向、したがって、用具の運動を変更する。
【0069】
図2図3図4図4a、図4、b、及び図6に示される実施形態についての電気接続部(図示せず)は、アクチュエータによって誘発される振動及び機械要素の相対的な動きに適応するように提供される。電気接続部は、相対的運動の場合であっても連続性を維持する摺動接点を含み得る。コントローラ(図2図3図4図4a、図4、b、及び図6には示されていない)は、スイッチ又は外科医が作動させる他の制御部、Dialog Semiconductor DA7282 Haptic Driverなどのドライバ、及び電源コントローラを含み得る。
【0070】
図8は、振動手術器具の更なる代替実装形態を示す。手術用具81は、用具アーム82の遠位端に配設されている。用具アーム82は、器具ハンドル83から延在する。器具ハンドル83は、中心軸84を有する。エンドキャップ85は、ハンドル83に回転可能に付着され、ハンドル83の軸84の周りでねじれるように提供されている。触覚ドライバ、マイクロコントローラ、スイッチ、及び電源が、ねじれエンドキャップ85内に示されていない凹部に配設され得る。アクチュエータアーム86が、ハンドル83の中空中心を通ってエンドキャップ85から延在し得る。アクチュエータアーム86の遠位端87は、LRA88を保持するように構成されている。LRA88は、作動されるとき、矢印89によって示される方向に振動する。アクチュエータアームの遠位先端90は、振動89の方向において用具アーム82を動かすために、用具アーム82と係合するように構成されているが、アクチュエータアーム86が用具アーム82を回転させることなく回転され得るように、用具アーム82に固定されない。用具アーム82は、ハンドルの遠位端にあるエラストマー弾性シール91によってハンドル83に接続され得る。加えて、用具アーム82は、シール91の振動応力を緩和するように動作し、シール91がそのエラストマー特性により減衰機構として作用することを可能にする枢動点として作用するカラー92を通って延在し得る。電力を供給する導体は、アクチュエータアーム86を通して、又はその上に配設され得る。エンドキャップ85は、振動89の半径方向を変更するように、軸84を中心に回転され得る。用具アーム82は、ハンドル83に回転可能に固定されている。エンドキャップ84とアクチュエータ89との回転位置合わせは、手術用具先端81の面に垂直になるように設定されるときに、押す動き及び持ち上げる動きの組み合わせを用具先端81に付与する。エンドキャップ85を90°回転させることによって、LRA88の振動の半径方向はまた、90°度変更されている。このようにして振動の方向を変更することにより、用具先端81の持ち上げ及び押す運動が排除され、代わりにスライス運動を付与する。
【0071】
図8に示される組織分離器の簡略化されたバージョンは、提供され得、これは、用具ヘッドの振動方向を変更することを可能にしない。簡略化された実施形態では、カラー92は、ピボットポイントによって置換され得、エンドキャップ85は、ハンドル本体88に固く接続され得、それによって、エンドキャップ85の回転、アクチュエータアーム86の回転、及びLRA 88の振動の方向を固定することを排除する。
【0072】
記載された技法、プロセス、及び装置は、任意のデバイスの動作を制御し、デバイスに対して検出された、又は適用可能な条件に基づいてリソースの使用を節約するために利用され得る。
【0073】
本発明は、好ましい実施形態に関して詳細に記載されており、変更及び修正がその広範な態様において本発明から逸脱することなく行われ得、したがって、特許請求の範囲で定義されるように、本発明は、本発明の真の趣旨に含まれる全てのそのような変更及び修正を包含することを意図することが当業者には前述から明らかとなるであろう。
【0074】
したがって、使用のための特定の装置及び方法が開示されている。しかしながら、当業者には、本明細書の本発明の概念から逸脱することなく、既に記載されているものに加えて、より多くの修正が可能であることが明らかであろう。したがって、本発明の主題は、本開示の精神を除いて限定されるべきではない。更に、本開示を解釈する際に、全ての用語は、文脈と一致する可能な限り広範な方法で解釈されるべきである。特に、「備える(comprises)」及び「備える(comprising)」という用語は、非排他的な方法で要素、成分、若しくはステップを指すものとして解釈されるべきであり、言及される要素、成分、若しくはステップが、明示的に言及されていない他の要素、成分、又はステップとともに存在し得るか、又は利用され得るか、又は組み合わせられ得ることを示す。
図1
図2
図3
図4
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】