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特表2024-542822向きに依存しない印刷モジュールおよび複数の印刷モジュールアレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2024-11-15
(54)【発明の名称】向きに依存しない印刷モジュールおよび複数の印刷モジュールアレイ
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241108BHJP
   B41J 2/175 20060101ALI20241108BHJP
【FI】
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/175 503
B41J2/01 303
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2024533825
(86)(22)【出願日】2022-11-02
(85)【翻訳文提出日】2024-06-05
(86)【国際出願番号】 EP2022080604
(87)【国際公開番号】W WO2023104397
(87)【国際公開日】2023-06-15
(31)【優先権主張番号】63/287,467
(32)【優先日】2021-12-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】522074028
【氏名又は名称】メムジェット テクノロジー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】弁理士法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】クリクトン,ピーター
(72)【発明者】
【氏名】グローン,エドモンド ジェームズ
(72)【発明者】
【氏名】ホーガン,ジュリー
(72)【発明者】
【氏名】パリサー,ローナン
【テーマコード(参考)】
2C056
【Fターム(参考)】
2C056EC07
2C056EC69
2C056EC79
2C056HA02
2C056HA07
2C056HA08
2C056HA37
(57)【要約】
インクジェット印刷モジュールは、プリントチップの第1および第2の列を含むプリントヘッドであって、液滴吐出方向に平行な印刷軸を中心に180度の回転対称性を有するプリントヘッドと、プリントヘッドを取り外し可能に受け入れるためのクレードルと、インクジェット印刷モジュールの第1および第2のデータ経路を介してプリントヘッドにデータ信号を分配するための制御回路とを含む。クレードルは、印刷モジュールに対して第1および第2のプリントヘッド方向でプリントヘッドを受け入れるように構成可能であり、第2のプリントヘッド方向は、第1のプリントヘッド方向に対して印刷軸を中心に180度回転されたものである。制御回路は、第1のデータ経路と第2のデータ経路との間でデータ信号の分配を反転させるように構成可能である。
【選択図】図18A
【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェット印刷モジュールであって、
プリントチップの第1および第2の列を含むプリントヘッドであって、液滴吐出方向に平行な印刷軸を中心に180度の回転対称性を有するプリントヘッドと、
前記プリントヘッドを取り外し可能に受け入れるためのクレードルと、
当該インクジェット印刷モジュールの第1および第2のデータ経路を介して前記プリントヘッドにデータ信号を分配するための制御回路とを備え、
前記クレードルが、印刷モジュールに対して第1および第2のプリントヘッド方向で前記プリントヘッドを受け入れるように構成可能であり、前記第2のプリントヘッド方向が、前記第1のプリントヘッド方向に対して前記印刷軸を中心に180度回転されたものであり、
前記制御回路が、前記第1のデータ経路と前記第2のデータ経路との間でデータ信号の分配を反転させるように構成可能であることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項2】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記プリントチップの第1および第2の列が、前記印刷軸を中心に180度の回転対称性を有することを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項3】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記クレードルが、固定プリントヘッドキー特徴部と相補的に係合するための構成可能なキースロットアセンブリを備え、前記キースロットアセンブリが、前記第1のプリントヘッド方向のみまたは前記第2のプリントヘッド方向のみのいずれかで前記プリントヘッドを受け入れるように前記クレードルを構成することを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項4】
請求項3に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記固定プリントヘッドキー特徴部が、前記プリントヘッドの回転対称性にかかわらず、前記印刷軸を中心として回転非対称であることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項5】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記プリントヘッドが、その両端に複数のプリントヘッドインクポートを備え、当該インクジェット印刷モジュールが、前記プリントヘッドインクポートに取り外し可能に接続するための相補的なインクカップリングを備えることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項6】
請求項5に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記インクカップリングにインクを供給する対応する複数のインクリザーバに接続するための複数のモジュールインクポートをさらに備え、各モジュールインクポートが、前記プリントヘッドインクポートに供給されるインクの順序が逆転可能であるように、前記複数のインクリザーバのうちのいずれか1つに接続可能であることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項7】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記データ信号の分配を反転させるために、前記制御回路に動作可能に接続されたスイッチをさらに備えることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項8】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記制御回路が、印刷データを受け取り、前記第1のデータ経路と前記第2のデータ経路との間でデータ信号を分配するように構成されたコントローラチップを備えることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項9】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記第1および第2のデータ経路が、それぞれの第1および第2のモジュール接点を含み、前記第1および第2のモジュール接点の各々が、前記第1または第2のプリントヘッド方向のいずれにおいても、第1または第2のプリントヘッド接点のいずれかに電気的に接続するように構成されていることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項10】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
前記プリントヘッドが、当該インクジェット印刷モジュールの一方の側に向かって非対称に配置されていることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項11】
請求項1に記載のインクジェット印刷モジュールにおいて、
プリントヘッドキャッパ、
プリントヘッドワイピングシステム、および、
前記プリントヘッドを媒体経路に対して昇降させるためのリフト機構、
のうちの1または複数をさらに備えることを特徴とするインクジェット印刷モジュール。
【請求項12】
請求項1に記載の複数のインクジェット印刷モジュールを備える印刷システムであって、
前記複数のインクジェット印刷モジュールが、
媒体経路に対して第1のモジュール方向で前記媒体経路上に配置された第1のインクジェット印刷モジュールであって、第1の印刷モジュールのプリントチップの第1の列がプリントチップの第2の列の上流にあるように、第1の印刷モジュールに対して第1のプリントヘッド方向でそれぞれのクレードル内に受け入れられたそれぞれのプリントヘッドを備える第1のインクジェット印刷モジュールと、
前記第1のモジュール方向に対して180度回転した第2のモジュール方向で前記媒体経路上に配置された第2のインクジェット印刷モジュールであって、第2の印刷モジュールのプリントチップの第1の列がプリントチップの第2の列の下流にあるように、第2の印刷モジュールに対して第2のプリントヘッド方向でそれぞれのクレードル内に受け入れられたそれぞれのプリントヘッドを備える第2の印刷モジュールとを備え、
第1の色平面に対応するデータ信号が、前記第1の印刷モジュールの第1のデータ経路を介してのみ分配され、
前記第1の色平面に対応するデータ信号が、前記第1の印刷モジュールの第2のデータ経路を介してのみ分配されることを特徴とする印刷システム。
【請求項13】
請求項12に記載の印刷システムにおいて、
前記第1および第2のインクジェット印刷モジュールが、第1および第2のプリントヘッドが重なり合うように、千鳥状に重なり合う配置で媒体送り経路を横切るように配置されていることを特徴とする印刷システム。
【請求項14】
請求項12に記載の印刷システムにおいて、
前記媒体経路に対するプリントチップの第1および第2の列におけるインク順序が前記第1および第2のインクジェット印刷モジュールの両方において同一となるように、各プリントヘッドにインクが供給されることを特徴とする印刷システム。
【請求項15】
請求項14に記載の印刷システムにおいて、
プリントチップの各列が、2色のインクを印刷するように構成可能であることを特徴とする印刷システム。
【請求項16】
請求項12に記載の印刷システムにおいて、
インクで汚れて前記第1または第2のインクジェット印刷モジュールから取り外されたプリントヘッドが、前記第1または第2のインクジェット印刷モジュールのいずれにおいても交換可能であることを特徴とする印刷システム。
【請求項17】
請求項12に記載の印刷システムにおいて、
前記第1のインクジェット印刷モジュールの制御回路に動作可能に接続された第1のスイッチが作動解除され、前記第2のインクジェット印刷モジュールの制御回路に動作可能に接続された第2のスイッチが作動され、それにより、前記第2のスイッチが、前記第1のインクジェット印刷モジュールに対して前記第2のインクジェット印刷モジュールの第1および第2のデータ経路を介して分配されるデータ信号を反転させるようになっていることを特徴とする印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のモジュールアレイに適合した印刷モジュールに関する。これは主に、モジュール間のプリントヘッドの交換を可能にしながら、複数のインクジェット印刷モジュールを使用して、高品質なシングルパス印刷を可能にするために開発されたものである。
【背景技術】
【0002】
Memjet(登録商標)技術を採用したインクジェットプリンタは、デスクトッププリンタ、デジタルインクジェットプレス、ワイドフォーマットプリンタなど、様々な印刷形態で市販されている。Memjet(登録商標)プリンタは、通常、1または複数の固定インクジェットプリントヘッドを含み、それらはユーザによる交換が可能である。例えば、デスクトップラベルプリンタは、単一のユーザ交換可能なフルカラープリントヘッドを含み、ワイドフォーマットプリンタは、ワイドフォーマット媒体経路を横切るように、千鳥状に重なり合う配置の複数のユーザ交換可能なプリントヘッドを備える。
【0003】
米国特許第10,076,917号(その内容は引用により本明細書に援用される)には、モノクロ印刷モジュールと対応するメンテナンスモジュールのN×Mの2次元アレイを含む商用ページワイド印刷システムが記載されている。N×Mのモジュールアレイにおけるプリントヘッドの寸法および数を選択する柔軟性をOEM顧客に提供することにより、従来はオフセット印刷システムにより提供されていた、より広範な商用デジタル印刷市場へのアクセスが可能になる。とはいえ、印刷モジュールとメンテナンスモジュールをインクジェット印刷機に統合するには、OEMによる開発作業が依然として必要である。
【0004】
米国特許第11,014,366号(その内容は引用により本明細書に援用される)には、優れた印刷品質を提供するために各色で二重の冗長性を有するフルカラープリントヘッドを有する印刷モジュールが記載されている。この印刷モジュールは、プリントヘッドのメンテナンスのための完全に統合されたキャッパおよびワイピングシステムを有し、多くの印刷用途(例えば、ダイレクトメール、フレキシブルパッキング、段ボールなど)の低コストのフルカラープリントエンジンとして容易に取り付けることができる。
【0005】
米国特許第11,014,366号に記載されているような一体型インクジェット印刷モジュールで利用可能な市場を拡大するためには、印刷可能領域の幅を広げるように、そのようなモジュールを媒体経路上で重なり合う配置で配置することが望ましい。重なり合うプリントヘッドをステッチするためには、プリントヘッドの正確な位置合わせが必要であり、位置ずれの影響を最小限に抑えるために、プリントヘッドをできるだけ近付けて配置することが望ましい。重なり合うプリントヘッドを可能な限り近付けて配置するという要件は、通常、米国特許第9,061,531号(その内容は引用により本明細書に援用される)に記載されているように、「前向き」印刷モジュールと「後向き」印刷モジュールの異なる機械的設計を必要とする。それにもかかわらず、印刷モジュールの最小限の適応で、後向きまたは前向きのいずれにも配置できる印刷モジュールを提供することが望ましいであろう。
【0006】
さらに、ページワイドアレイにおいて印刷モジュールの位置または向きに関係なく、ユーザが印刷モジュール間でプリントヘッドを交換できるようにすることが望ましい。
【発明の概要】
【0007】
第1の態様では、インクジェット印刷モジュールが提供され、このインクジェット印刷モジュールが、
プリントチップの第1および第2の列を含むプリントヘッドであって、液滴吐出方向に平行な印刷軸を中心に180度の回転対称性を有するプリントヘッドと、
プリントヘッドを取り外し可能に受け入れるためのクレードルと、
インクジェット印刷モジュールの第1および第2のデータ経路を介してプリントヘッドにデータ信号を分配するための制御回路とを備え、
クレードルが、印刷モジュールに対して第1および第2のプリントヘッド方向でプリントヘッドを受け入れるように構成可能であり、第2のプリントヘッド方向が、第1のプリントヘッド方向に対して印刷軸を中心に180度回転されたものであり、
制御回路が、第1のデータ経路と第2のデータ経路との間でデータ信号の分配を反転させるように構成可能となっている。
【0008】
第1の態様に係る印刷モジュールは、有利なことに、印刷モジュールを交互の(「前」および「後」)向きで媒体経路を横切るように配置することを可能にするとともに、必要に応じて印刷モジュール間でプリントヘッドを交換することも可能にする。「後」向きにある印刷モジュールが「前」向きにある印刷モジュールと同じプリントヘッドを使用するために必要な適応を最小限とする限りにおいて、印刷モジュールは、それらの向きに事実上依存しない。事実上、印刷モジュールをアレイ内で反転させるために必要なのは、(例えば、ユーザが作動させるスイッチを介して)制御回路を反転させて、印刷モジュールへのインク接続の順序を変更するだけである。したがって、同じ印刷モジュールはどちらの向きでも使用可能であり、以下により詳細に述べるように、インク色が混合する危険性なしに、プリントヘッドを前向きモジュールと後向きモジュールとの間で交換することができる。
【0009】
好ましくは、プリントチップの第1および第2の列が、印刷軸を中心に180度の回転対称性を有する。
【0010】
好ましくは、クレードルは、固定プリントヘッドキー特徴部と相補的に係合するための構成可能なキースロットアセンブリを備え、キースロットアセンブリは、第1のプリントヘッド方向のみまたは第2のプリントヘッド方向のみのいずれかでプリントヘッドを受け入れるようにクレードルを構成する。
【0011】
好ましくは、固定プリントヘッドキー特徴部は、プリントヘッドの回転対称性にかかわらず、印刷軸を中心として回転非対称である。
【0012】
好ましくは、プリントヘッドは、その両端に複数のプリントヘッドインクポートを備え、インクジェット印刷モジュールは、プリントヘッドインクポートに取り外し可能に接続するための相補的なインクカップリングを備える。
【0013】
好ましくは、インクジェット印刷モジュールは、インクカップリングにインクを供給する対応する複数のインクリザーバに接続するための複数のモジュールインクポートをさらに備え、各モジュールインクポートは、プリントヘッドインクポートに供給されるインクの順序が逆転可能であるように、複数のインクリザーバのうちのいずれか1つに接続可能である。
【0014】
好ましくは、インクジェット印刷モジュールは、データ信号の分配を反転させるために制御回路に動作可能に接続されたスイッチ(例えば、トグルスイッチ)をさらに備える。
【0015】
好ましくは、制御回路は、印刷データを受信し、データ信号を第1のデータ経路と第2のデータ経路との間で分配するように構成されたコントローラチップを備える。
【0016】
好ましくは、第1および第2のデータ経路は、それぞれの第1および第2のモジュール接点を含み、第1および第2のモジュール接点の各々は、第1または第2のプリントヘッド方向のいずれにおいても、第1または第2のプリントヘッド接点のいずれかに電気的に接続するように構成されている。
【0017】
好ましくは、プリントヘッドは、インクジェット印刷モジュールの一方の側に向かって非対称に配置されている。
【0018】
好ましくは、インクジェット印刷モジュールは、
プリントヘッドキャッパ、
プリントヘッドワイピングシステム、
媒体経路に対してプリントヘッドを昇降させるためのリフト機構、
のうちの1または複数をさらに備える。
【0019】
第2の態様では、上述したような複数のインクジェット印刷モジュールを備える印刷システムが提供され、複数のインクジェット印刷モジュールが、
媒体経路に対して第1のモジュール方向で媒体経路上に配置された第1のインクジェット印刷モジュールであって、第1の印刷モジュールのプリントチップの第1の列がプリントチップの第2の列の上流にあるように、第1の印刷モジュールに対して第1のプリントヘッド方向でそれぞれのクレードル内に受け入れられたそれぞれのプリントヘッドを備える第1のインクジェット印刷モジュールと、
第1のモジュール方向に対して180度回転した第2のモジュール方向で媒体経路上に配置された第2のインクジェット印刷モジュールであって、第2の印刷モジュールのプリントチップの第1の列がプリントチップの第2の列の下流にあるように、第2の印刷モジュールに対して第2のプリントヘッド方向でそれぞれのクレードル内に受け入れられたそれぞれのプリントヘッドを備える第2の印刷モジュールとを備え、
第1の色平面に対応するデータ信号が、第1の印刷モジュールの第1のデータ経路を介してのみ分配され、
第1の色平面に対応するデータ信号が、第1の印刷モジュールの第2のデータ経路を介してのみ分配される。
【0020】
一実施形態では、第1および第2の印刷モジュールが、第1および第2のプリントヘッドが重なり合うように、千鳥状に重なり合う配置で媒体送り経路を横切るように配置される。しかしながら、必要に応じて、代替的な配置で印刷モジュールを配置することが可能である。
【0021】
好ましくは、媒体経路に対するプリントチップの第1および第2の列におけるインク順序が第1および第2のインクジェット印刷モジュールの両方において同一となるように、各プリントヘッドにインクが供給される。
【0022】
好ましくは、プリントチップの各列が、2色のインクを印刷するように構成可能である。
【0023】
好ましくは、インクで汚れて第1または第2のインクジェット印刷モジュールから取り外されたプリントヘッドは、第1または第2のインクジェット印刷モジュールのいずれにおいても交換可能である。
【0024】
好ましくは、第1のインクジェット印刷モジュールの制御回路に動作可能に接続された第1のスイッチが作動解除され、第2のインクジェット印刷モジュールの制御回路に動作可能に接続された第2のスイッチが作動され、それにより、第2のスイッチが、第1のインクジェット印刷モジュールに対して第2のインクジェット印刷モジュールの第1および第2のデータ経路を介して分配されるデータ信号を反転させるようになっている。
【0025】
第3の態様では、インクジェット印刷モジュールが提供され、このインクジェット印刷モジュールが、
プリントチップの第1および第2の列を含むプリントヘッドであって、液滴吐出方向に平行な印刷軸を中心に180度の回転対称性を有するプリントヘッドと、
プリントヘッドから延びる固定プリントヘッドキー特徴部であって、プリントヘッドの回転対称性にかかわらず、印刷軸を中心として回転非対称である固定プリントヘッドキー特徴部と、
プリントヘッドを取り外し可能に受け入れるためのクレードルであって、固定プリントヘッドキー特徴部と相補的に係合するための構成可能なキーアセンブリを備え、このキースアセンブリが、第1および第2のクレードル構成のいずれか一方に選択的に構成可能である、クレードルとを備え、
クレードルが、第1のクレードル構成において、プリントヘッドを第1のプリントヘッド方向でのみ受け入れ、
クレードルが、第2のクレードル構成において、プリントヘッドを第2のプリントヘッド方向でのみ受け入れ、第2のプリントヘッド方向が、第1のプリントヘッド方向に対して印刷軸を中心に180度回転されたものである。
【0026】
好ましくは、キーアセンブリは、クレードルの一部分に規定された一対のスロットと、スロットのいずれか一方を選択的に覆い隠すためのシャッタとを有する。
【0027】
好ましくは、シャッタは、一対のスロットの間でスライド移動可能である。
【0028】
好ましくは、クレードルは、プリントヘッドを長手方向にスライド可能に受け入れるためのプリントヘッドキャリアを備え、このプリントヘッドキャリアが、キーアセンブリを含む。
【0029】
好ましくは、キーアセンブリは、プリントヘッドキャリアの第1の端部に配置され、プリントヘッドキャリアは、第1の端部でプリントヘッドを受け入れる。
【0030】
好ましくは、プリントヘッドキャリアは、その第1の端部とは反対側の第2の端部を中心に回動可能である。
【0031】
好ましくは、プリントヘッドは、その両端に複数のプリントヘッドインクポートを備え、インクジェット印刷モジュールは、プリントヘッドインクポートに取り外し可能に接続するための相補的インクカップリングを備える。
【0032】
好ましくは、インクジェット印刷モジュールは、インクカップリングにインクを供給する対応する複数のインクリザーバに接続するための複数のモジュールインクポートをさらに備え、各モジュールインクポートは、プリントヘッドインクポートに供給されるインクの順序が逆転可能であるように、複数のインクリザーバのうちのいずれか1つに接続可能である。
【0033】
第4の態様では、上述したような複数のインクジェット印刷モジュールを備える印刷システムが提供され、複数のインクジェット印刷モジュールが、
媒体経路に対して第1のモジュール方向で媒体経路上に配置された第1のインクジェット印刷モジュールであって、第1の印刷モジュールのプリントチップの第1の列がプリントチップの第2の列の上流にあるように、第1の印刷モジュールに対して第1のプリントヘッド方向でそれぞれのクレードル内に受け入れられたそれぞれのプリントヘッドを備える第1のインクジェット印刷モジュールと、
第1のモジュール方向に対して180度回転した第2のモジュール方向で媒体経路上に配置された第2のインクジェット印刷モジュールであって、第2の印刷モジュールのプリントチップの第1の列がプリントチップの第2の列の下流にあるように、第2の印刷モジュールに対して第2のプリントヘッド方向でそれぞれのクレードル内に受け入れられたそれぞれのプリントヘッドを備える第2の印刷モジュールとを備え、
第1のインクジェット印刷モジュールのキーアセンブリが、第1のプリントヘッド方向においてのみ、それぞれのプリントヘッドの固定プリントヘッドキー特徴部と相補的に係合するように構成され、
第2のインクジェット印刷モジュールのキーアセンブリが、第2のプリントヘッド方向においてのみ、それぞれのプリントヘッドの固定プリントヘッドキー特徴部と相補的に係合するように構成されている。
【0034】
好ましくは、第1および第2のインクジェット印刷モジュールは、第1および第2のプリントヘッドが重なり合うように、千鳥状に重なり合う配置で媒体送り経路を横切るように配置される。
【0035】
好ましくは、媒体経路に対するプリントチップの第1および第2の列におけるインク順序が第1および第2のインクジェット印刷モジュールの両方において同一となるように、各プリントヘッドにインクが供給される。
【0036】
好ましくは、プリントチップの各列は、2色のインクを印刷するように構成可能である。
【0037】
第5の態様では、媒体経路に対して第1または第2のモジュール方向のいずれか一方で使用するために、向きに依存しないインクジェット印刷モジュールを構成する方法が提供され、第2のモジュール方向が、第1のモジュール方向に対して180度回転されたものであり、当該方法が、
第1または第2のモジュール方向のいずれか一方に対応するようにキーアセンブリを構成するステップであって、キーアセンブリが、インクジェット印刷モジュールに対するそれぞれのプリントヘッドの向きを決定する、ステップと、
第1または第2のモジュール方向のいずれか一方に対応するようにスイッチを構成するステップであって、スイッチが、第1および第2のデータ経路を介してプリントヘッドにデータ信号を分配するコントローラ回路に動作可能に接続され、スイッチが、第1および第2のデータ経路間でデータ信号の分配を反転させる、ステップとを含む。
【0038】
好ましくは、キーアセンブリは、クレードルの一部分に規定された一対のスロットと、スロットのいずれか一方を選択的に覆い隠すためのシャッタとを有する。
【0039】
好ましくは、キーアセンブリを構成することが、スロットのいずれか一方を選択的に覆い隠すようにシャッタをスライドさせるステップを含む。
【0040】
好ましくは、本方法は、媒体送り経路を横切って第1および第2のインクジェット印刷モジュールを配置するステップを含み、第1のインクジェット印刷モジュールが、第1のモジュール方向に配置および構成され、第2のインクジェット印刷モジュールが、第2のモジュール方向に配置および構成される。
【0041】
好ましくは、プリントヘッドは、インクジェット印刷モジュールの一方の側に向かって非対称に配置され、第1および第2のインクジェット印刷モジュールのそれぞれのプリントヘッドが媒体経路に対して近接して配置される。
【0042】
好ましくは、本方法は、それぞれのインクリザーバを第1および第2のインクジェット印刷モジュールのモジュールインクポートに接続するステップをさらに含み、インク接続の順序が、第1のインクジェット印刷モジュールに対して第2のインクジェット印刷モジュールでは逆になる。
【0043】
本明細書において「180度の回転対称性を有するプリントヘッド」とは、プリントヘッドが、プリントチップ、インクポート、データム、プリントヘッド接点、インクマニホールド、プリントヘッドハウジング、データムなどの機能的機械的特徴に関して、全体として180度の回転対称性を有することを意味するものとする。しかしながら、プリントヘッドの180度の回転対称性には、クレードル内へのプリントヘッドの挿入方向を制御するために特に設けられた1または複数の非対称キー特徴部が含まれないことが理解されよう。当然のことながら、180度の回転対称性には、ラベル、表面パターンまたは装飾などの非機能的な特徴が必ずしも含まれるわけではない。さらに、疑義を避けるために、プリントヘッドの180度の回転対称性は、機械的なプリントヘッドの特徴のみに関するものであり、例えば、プリントヘッドに含まれるインクは含まれない。
【0044】
本明細書において「インク」という用語は、インクジェットプリントヘッドから印刷され得る任意の印刷流体を意味するものとする。インクは、着色剤を含んでも含まなくてもよい。したがって、「インク」という用語は、従来の染料ベースまたは顔料ベースのインク、赤外線インク、定着剤(例えば、プレコートおよびフィニッシャ)、3D印刷流体(例えば、バインダ流体)、機能性流体(例えば、ソーラーインク、センシングインクなど)、生物学的流体などを含み得る。
【0045】
本明細書において、「取り付けられる」という用語には、直接的な取付と、介在部品を介した間接的な取付の両方が含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態を単なる例として説明する。
図1図1は、インクジェット印刷モジュールの側面斜視図である。
図2図2は、インクジェット印刷モジュールの底面斜視図である。
図3図3は、インクジェット印刷モジュールの正面斜視図である。
図4図4は、インクジェット印刷モジュールのメンテナンスサブアセンブリを示している。
図5図5は、プリントヘッド支持モジュールの正面斜視図である。
図6図6は、プリントヘッド支持モジュールの背面斜視図である。
図7図7は、インクジェットプリントヘッドの上面斜視図である。
図8図8は、インクジェットプリントヘッドの底面斜視図である。
図9図9は、インクジェット印刷モジュールのクレードルの斜視図である。
図10図10は、インクジェット印刷モジュールの供給アセンブリの上面斜視図である。
図11図11は、PCBが取り外された、図10に示す供給アセンブリの分解斜視図である。
図12図12は、PCBが取り外された、図10に示す供給アセンブリの部分的な斜視図である。
図13図13は、インクジェット印刷モジュールの第1の端部におけるアクセス開口部を示している。
図14図14A図14Cは、回動プリントヘッドキャリアからのプリントヘッドの取り外しを示す概略側面図である。
図15図15は、プリントヘッドキャリアの斜視図である。
図16図16は、図7および図8に示すインクジェットプリントヘッドの端面図である。
図17図17A図17Cは、プリントヘッドキャリアのキースロットアセンブリの様々なキー配置を示している。
図18図18Aおよび図18Bは、第1および第2のプリントヘッド方向に受け入れられたプリントヘッドを有するインクジェットプリントヘッドモジュールのデータ経路をそれぞれ示している。
図19図19は、前向きおよび逆向きのインクジェット印刷モジュールを有する印刷システムの概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
インクジェット印刷モジュール
図1図3を参照すると、米国特許第11,014,366号(その内容は引用により本明細書に援用される)に記載されているようなインクジェット印刷モジュール10(または「プリントエンジン」)が示されている。このインクジェット印刷モジュール10は、プリントヘッド取付構造、インク供給システム、メンテナンスシステム、プリントヘッドリフト機構などを組み込んだ完全に一体化された「ドロップイン」モジュールとして設計され、OEMによる最小限の開発作業でインクジェット印刷モジュールをエンドユーザの印刷システムに取り付けることが可能となっている。
【0048】
図1に示すように、インクジェット印刷モジュール10は、印刷システムに固定的に取り付けるためのシャーシ15と、モジュールリフト機構19を介してシャーシ15に移動可能に接続されたプリントヘッド支持モジュール17とを備える。インクジェット印刷モジュール10は、通常、外部インクリザーバ(図示せず)への接続を提供するモジュールインクポート11を有する統合インク供給システムを組み込んでいる。統合インク供給システムは、例えば、米国特許第10,639,903号(その内容は引用により本明細書に援用される)に記載されているように、圧力調整タンク、ポンプ、ピンチバルブ、および各色チャネル用の循環流体ループを含むことができる。
【0049】
図1図3では、インクジェット印刷モジュール10は、プリントヘッド支持モジュール17がその上昇(メンテナンス)位置にある状態で示されている。モジュールリフト機構19は、シャーシ15のバックプレート22の両端に取り付けられた一対のラック21と、ラックと係合する対応する一対のピニオン23とを含むラックアンドピニオン機構の形態をとり、一対のピニオンが、相互接続ピニオンシャフト25の周りに固定的に取り付けられている。モジュールリフト機構19は、リフトモータ27によって駆動され、このリフトモータは、相互連結ピニオンシャフト25の回転を介してラックに沿って一対のピニオンを移動させるために、ピニオン23の一方に動作可能に接続されている。
【0050】
ピニオンシャフト25は、それぞれのピニオン23を収容する一対のリフトブラケット29の間に回転可能に取り付けられ、モジュールリフト機構19によってリフトブラケットを下降または上昇させることができるようになっている。リフトブラケット29は、プリントエンジン10の長さ方向に沿って長手方向に延びる細長い取付ビーム31を介して相互に接続されている。プリントヘッド支持モジュール17の上部には、取付ビーム31に固定的に取り付けるための適切な取付具30が設けられている(図5を参照)。したがって、プリントヘッド支持モジュール17は、それぞれメンテナンス位置と印刷位置との間でリフトモータ27の作動を介して上昇および下降することができる。
【0051】
シャーシ15の下部は、バックプレート22に固定されたL字形フレーム32を備える。L字形フレーム32は、インクジェット印刷モジュール10のメンテナンスサブアセンブリ33を収容し、図4では分離して示されている。メンテナンスサブアセンブリ33は、プリントヘッド支持モジュール17に受け入れられた細長いインクジェットプリントヘッド50のメンテナンス動作を実行するためのキャッパ35およびワイパキャリッジ37を備える。L字形フレームの長い方のアーム39に収容されたキャッパ35は、プリントヘッド50をキャップするシザー機構40を介してシャーシ15のバックプレート22から横方向に伸長可能である。L字形フレームの短い方のアーム41に収容されたワイパキャリッジ37は、プリントヘッド50を拭くために、プリントヘッド支持モジュール17の長手方向軸に沿って横断可能である。図1図4に示す構成では、キャッパ35は、プリントヘッドがキャップされた状態で横方向に延びた位置にあり、ワイパキャリッジ37は、L字形フレーム32の短い方のアーム41内に収容された停止位置または「ホーム」位置にある。メンテナンスサブアセンブリ33は、米国特許第10,081,204号(その内容は引用により本明細書に援用される)に記載のメンテナンスモジュールと機能および機構の両方において類似している。このため、メンテナンスサブアセンブリ33の機能および機構のより詳細な説明については、当業者は米国特許第10,081,204号を参照されたい。
【0052】
図5および図6を参照すると、プリントヘッド支持モジュール17が分離された状態で示されている。プリントヘッド支持モジュール17は、全体として細長く、図7および図8に示すプリントヘッドカートリッジ50(または「プリントヘッド50」)を着脱可能に取り付けるという主な機能を果たす。この機能は、米国特許第10,293,609号に詳細に記載されており、その内容は引用により本明細書に援用されるものとする。簡単に説明すると、プリントヘッド50は、プリントチップの第1の列102Aと、プリントチップの第2の列102Bとを含み、各列は、一列に端と端とを互いに突き合わせた複数のプリントチップを含む。プリントチップは、2つの部分からなるハウジング104に収容されたインクマニホールド(図7および図8では見えない)の下面に取り付けられている。ハウジングの両端にあるインクポート74は、プリントヘッド50の入口または出口ポートとして機能し、インクを長手方向のインクチャネル(図示せず)に送り出し、プリントヘッドを通るインクの循環を可能にする。複数のプリントヘッド接点103は、プリントヘッド支持モジュール17の相補的なPCB接点101に電気的に接続するために、プリントヘッド50の両側面に沿って延びている。オーバーヘッドハンガ114は、プリントヘッド支持モジュール17のプリントヘッドキャリア112と相補的にスライド係合するように構成されている。プリントヘッド50の上部分から延びる非対称のキー突起132にもかかわらず、プリントヘッドは、液滴吐出軸と平行な中央に位置する印刷軸Pを中心に180度の回転対称性を有する。この対称性の結果として、プリントヘッド50は、原則として、第1の向きまたは第1の向きに対して印刷軸Pを中心に180度回転させた第2の向きのいずれでも使用可能である。
【0053】
図5に戻ると、プリントヘッド支持モジュール17は、第1および第2の対向するPCB52A、52Bと、一対のインクカップリング54と、PCB接点101およびインクカップリングをプリントヘッド50に着脱可能に接続するための様々な機構とを収容する。特に、プリントヘッド支持モジュール17は、クレードル56および可動供給アセンブリ60を含む。
【0054】
図9を参照すると、クレードル56は、プリントヘッド50を受け入れるための長手方向キャビティ59を規定する下部ネスト57と、ネストから上方に延びる前部および後部クレードル側板58と、ネストに固定された第1および第2の端部ハウジング78A、78Bとを備える。第1および第2の端部ハウジング78A、78Bの各々は、ネスト57のアンカーポイント80に接続された足部分と、インクジェット印刷モジュール10の取付ビーム31に取り付けるための取付具30を含む上部分とを有する。プリントヘッド供給モジュール17をその印刷位置およびメンテナンス位置に合わせる際にモジュールリフト機構19にある程度の公差を与えるために、弾性取付構造82が、端部ハウジング78A、78Bをアンカーポイント80に取り付けるために使用されている。
【0055】
供給アセンブリ60は、前後のクレードル側板58の間のクレードル56内にスライド可能に受け入れられ、供給アセンブリは、例えば米国特許第11,014,366号に記載されているように、レバーハンドル90を介して作動されるレバー機構62によって、(プリントヘッド50を含む)ネスト57に対して近接離間する方向に持ち上げることができ。
【0056】
図10図13を参照すると、供給アセンブリ60は、クレードル側板58と平行に延びる一対の前後のPCB取付プレート64を備える。図10に示すように、対向するPCB52はそれぞれ、対向するPCB間に空間を規定した状態で、それぞれのPCB取付プレート64に固定されている。各PCB52は、プリントヘッド50の両側のそれぞれのプリントヘッド接点103と電気的接続を形成するために、その下部分に配置されたそれぞれのPCB接点101(図10では見えない)を有する。
【0057】
2つのPCB取付プレート64の間に固定されたファンアセンブリは、様々な電子部品を冷却するためにPCB52間の空間に空気流を供給するファン70およびダクト構造71を備える。構造的剛性は、前後のPCB取付プレート64を相互連結する第1および第2の端部ブラケット68A、68Bによって提供される。
【0058】
第1および第2の端部ブラケット68A、68Bの各々は、そこから長手方向外側に延びる取付ブラケット69を有し、それにより、取付ブラケットから吊り下げられたそれぞれのインクカップリングブラケット72を介してインクカップリング54のセットを取り付けるようになっている。すなわち、インクカップリング54は、供給アセンブリ60に取り付けられ、PCB52と協働して移動する。供給アセンブリ60の両端には、プリントヘッド50の両端のインクポート74に対応する2セットのインクカップリング54がある。
【0059】
第1の印刷モジュール17の両端に位置する2セットのインクカップリング54、インクカップリングブラケット72および取付棚69は、クレードル56のそれぞれの第1および第2の端部ハウジング78A、78Bに収容されている。第1の印刷モジュール17の第1の端部における第1の端部ハウジング78Aは、インクカップリング54および関連する取付具が見えるように、図5および図6では透明である。
【0060】
米国特許第11,014,366号に記載されているように、プリントヘッド50へのインク接続は、レバー機構62を使用して供給アセンブリ60を公称z軸に沿って下降させることによって行われる。供給アセンブリ60がその下降位置にあるとき、PCB接点101の両側の列は、それぞれのプリントヘッド接点103に隣接して配置される。供給アセンブリ60とプリントヘッド50との間のインク接続および電気接続は、別々のステップで形成され、それにより、それらの接続を形成するために必要な力を最小限に抑えることができる。
【0061】
第1の印刷モジュール17の第1の端部における第1の端部ハウジング78Aは、公称y軸に沿ってプリントヘッド50を長手方向に挿入したり取り外したりするためのアクセス開口部110を規定する。クレードル56はプリントヘッドキャリア112を含み、このプリントヘッドキャリアは、印刷軸Pおよびプリントヘッドの長手方向軸に対して垂直なクレードル回動軸116を中心に回動可能である。プリントヘッドの挿入/取り外しの祭、プリントヘッドキャリア112は、アクセス開口部110に近接するその一端がプリントヘッドアクセス位置に持ち上げられるように回動される。
【0062】
図14A図14Cは、プリントヘッド50を取り外すためのプリントヘッドキャリア112の基本的な回動動作を示している。図14Aでは、プリントヘッドはプリントヘッドキャリアに完全に係合し、印刷構成でネスト57内に水平に置かれている。図14Bでは、プリントヘッド50は依然としてプリントヘッドキャリア112と完全に係合しているが、プリントヘッドキャリアはネスト57の第2の端部における回動軸116を中心に回動し、その結果、プリントヘッドキャリア112(およびプリントヘッド50)の第1の端部が第2の端部に対して持ち上げられている。図14Cでは、プリントヘッド50は、プリントヘッドをプリントヘッドキャリアから引き離すことによって、プリントヘッドキャリア112から長手方向にスライドして取り外されている。
【0063】
米国特許第11,014,366号に記載されているように、単一のインクジェット印刷モジュール10(「プリントエンジン」)については、プリントヘッド50のキー突起132とプリントヘッドキャリア112の相補的なキースロットとが協働して、プリントヘッドが1つの予め設定された向きでのみプリントヘッドキャリア112内にスライドして挿入されることを保証している。しかしながら、後述するように、「前」および「後」向きで複数のインクジェット印刷モジュール10を使用するモジュール式構成のために、プリントヘッドキャリア112は、構成可能なキースロットアセンブリ150を備え、第1および第2のプリントヘッド方向のいずれか一方においてプリントヘッドをプリントヘッドキャリア内にスライドして挿入することを可能にし、それによりプリントヘッドの固有の回転対称性を利用する。
【0064】
クレードルおよびプリントヘッドキー配置
図15図16および図17A図17Cを参照すると、固定プリントヘッドキー特徴部132と構成可能なキースロットアセンブリ150との間の相補的な係合によって、第1のプリントヘッド方向にのみまたは第2のプリントヘッド方向にのみプリントヘッド50を受け入れるように構成可能なクレードルおよびプリントヘッドキー配置が示されている。
【0065】
キースロットアセンブリ150は、プリントヘッドキャリア112の第1の端部に規定された第1および第2のキースロット152A、152Bと、キースロットの一方を選択的に覆い隠すためのスライド可能な可動シャッタ154とを備える。図17Aに示す第1のクレードル構成では、プリントヘッド50が図16に示す第1のプリントヘッド方向においてのみプリントヘッドキャリア112内に長手方向に挿入され得るように、シャッタ154が、第1のキースロット152Aを覆い隠す(第2のキースロット152Bは覆い隠さない)。図17Bに示す第2のクレードル構成では、シャッタ154が、スライド移動されて第2のキースロット152Bを覆い隠す一方で、第1のキースロット152Aが開いた状態となっている。この第2のクレードル構成では、プリントヘッドキャリア112は第1のプリントヘッド方向でプリントヘッド50を受け入れることができない。この第2のクレードル構成においてプリントヘッド50をプリントヘッドキャリア112内に挿入するには、キー突起132が開いた第1のキースロット152Aに差し込まれるように、プリントヘッドを印刷軸Pを中心に180度回転させて第2のプリントヘッド方向に向ける必要がある。
【0066】
最後に、図17Cに示すように、シャッタ154は、中立位置まで移動され、その結果、第1のキースロット152Aおよび第2のキースロット152Bがともに開いている。この構成では、プリントヘッド50を、第1または第2のプリントヘッド方向のどちらでも挿入することができる。このクレードル構成は、テスト目的には有用であるが、通常は現場では使用されない。
【0067】
本実施形態では、プリントヘッド50のキー突起132およびプリントヘッドキャリア112の相補的なキースロットアセンブリ150を参照して説明したが、当然のことながら、プリントヘッドとプリントヘッドキャリアとの間の相補的なキー係合は、いずれかの構成要素のキースロット/キー突起の任意の組合せで達成可能であることを理解されたい。
【0068】
切り替え可能なデータ経路
図18Aおよび図18Bを参照すると、第1の向き(図18A)および第2の向き(図18B)でプリントヘッド50に印刷データ信号を伝達するためのデータ経路が示されている。プリントヘッド50は、アクセス開口部110を有するインクジェット印刷モジュール10の第1の端部から見た断面で概略的に示されている。
【0069】
インクジェット印刷モジュール10のオンボードコントローラチップ160は、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色面の印刷データを受信する。印刷データは、通常、外部のラスタイメージプロセッサ(RIP)からコントローラチップ10に送信され、複数の重なり合うプリントヘッド50の場合、各インクジェット印刷モジュール10のそれぞれのコントローラチップ50が、イメージの専用セグメントのための印刷データを受信する。
【0070】
コントローラチップ160は、第1および第2のデータ経路162A、162Bを介して、受信した印刷データをプリントヘッド50に分配する。第1および第2のデータ経路162A、162Bは、それぞれの第1および第2のPCB52A、52Bを含み、それぞれのPCB接点101を介してプリントヘッド50の両側にあるプリントヘッド接点103にデータ信号を伝達する。
【0071】
図18Aに示すように、プリントヘッド50は、アクセス開口部110を有するインクジェット印刷モジュール10の第1の端部から見たキー突起132の位置によって決定されるように、その第1の向きで挿入される。ほんの一例として、プリントヘッド50のインクマニホールド166内のインクチャネル164は、名目上、(第1のPCB52Aから第2のPCB52Bに向かう方向に)M、K、C、Yの順序で配列されており、プリントチップの第1の列102Aがマゼンタおよびブラックインク(マゼンタが先行インク色)を印刷し、プリントチップの第2の列がシアンおよびイエローインク(イエローが後続インク色)を印刷するようになっている。
【0072】
コントローラチップ160に動作可能に接続された電気スイッチ168(例えば、トグルスイッチ)は、プリントヘッド50が図18Aに示す第1の向きにあるときは、名目上開いている。スイッチ168が開いた状態では、コントローラチップ160は、マゼンタおよびブラックのデータ信号(「第1のデータ信号」)を第1のデータ経路162Aに分配し、シアンおよびイエローのデータ信号(「第2のデータ信号」)を第2のデータ経路162Bに分配する。このため、プリントチップの第1および第2の列102A、102Bは、それぞれのインク色に対応する正しいデータ信号を受信する。
【0073】
図18Bを参照すると、プリントヘッド50は、キー突起132の位置によって示されるように、第1の向きに対して180度回転した第2の向きでインクジェット印刷モジュール110内に挿入される。この第2のプリントヘッド方向では、プリントヘッド50のインクチャネル164は、通常、Y、C、K、Mの逆の順序(第1のPCB52Aから第2のPCB52Bに向かう方向)で配列される。このため、プリントチップの第1の列102Aは依然としてマゼンタとブラックのインクを印刷し、プリントチップの第2の列102Bは依然としてシアンとイエローのインクを印刷する。実際には、プリントヘッド50の配列順序の変更は、モジュールインクポート11へのインクリザーバの接続順序を逆にするだけで、比較的容易に達成される。
【0074】
さらに図18Bを参照すると、プリントヘッド50が第2の向きにあり、インクチャネル164の配列順序が逆になっており、スイッチ168が閉じている。スイッチ168を閉じると、コントローラチップ160は、第1のデータ経路と第2のデータ経路との間で第1のデータ信号と第2のデータ信号の分配を反転させるように指示される。このため、コントローラチップ168は、マゼンタおよびブラックのデータ信号(「第1のデータ信号」)を第2のデータ経路162Bに分配し、シアンおよびイエローのデータ信号(「第2のデータ信号」)を第1のデータ経路162Aに分配する。したがって、プリントチップの第1および第2の列102A、102Bは依然として、それぞれのインク色の正しいデータ信号を受信する。
【0075】
先ず第1および第2のプリントヘッド方向についてこのようにインクジェット印刷モジュール10を構成することの利点は、前向きのモジュールおよび逆向きのモジュールを有するモジュール式アレイに関する以下の説明から容易に明らかになるであろう。
【0076】
モジュール式アレイ
図19は、媒体送り経路202を横切って千鳥状に重なり合う配置で配置されたインクジェット印刷モジュール10のモジュール式アレイを含む印刷システム200を概略的に示している。この例では、印刷システム200が、矢印Dで示される媒体送り方向に対して第1のインクジェットモジュール10Aの後に続く第2のインクジェットモジュール10Bを有する一対のインクジェット印刷モジュールを含む。しかしながら、当然のことながら、様々な媒体幅に印刷するために、任意の数のインクジェットモジュール10を媒体経路202を横切るように配置することができることを理解されたい。例えば、印刷システム200は、3幅のアレイにおいて、2つの先行インクジェット印刷モジュールと1つの後続インクジェット印刷モジュールとを有することができる。他のモジュール配列も、当業者にはすぐに明らかであろう。
【0077】
図19に示すように、後続の第2のインクジェット印刷モジュール10Bは、第1のインクジェット印刷モジュール10Aに対して180度回転している。プリントヘッド50は、それぞれのインクジェット印刷モジュール10の一方の側に向かって非対称に配置されているため、この配置により、先行および後続のインクジェット印刷モジュール10A、10Bのプリントヘッド50ができる限り近くに媒体送り方向Dに沿って配置される。このようにプリントヘッド50を近接して配置することは、有利には、位置合わせ誤差が最小限に抑えられ、その結果、特にモジュールの重なり合う領域において、印刷品質が改善される。
【0078】
第2のインクジェット印刷モジュール10Bが第1のインクジェット印刷モジュール10Aに対して180度回転される結果として、それぞれの第1および第2のインクジェット印刷モジュールのキャッパ35は、それぞれのプリントヘッド50をキャップするために、必然的に、媒体送り方向Dと平行な反対方向にそれぞれに向かって移動することが理解されよう。同様に、それぞれの第1および第2のインクジェット印刷モジュールのワイパキャリッジ37は、それぞれのプリントヘッド50を拭くために、必然的に、媒体送り方向Dに垂直な方向に互いに向かって移動する。
【0079】
上述したように、第1および第2のインクジェット印刷モジュール10A、10Bのモジュールインクポート11は、媒体送り方向Dに対してインク色の同じ順序(図19に示す印刷システム200では、名目上、M、K、C、Yの順序)を維持するように、それぞれのインクリザーバ(図示せず)に接続されている。このため、第2のインクジェット印刷モジュール10Bのモジュールインクポート11は、第1のインクジェット印刷モジュール10Aのモジュールインクポートとは逆の順序で接続される。
【0080】
第2のインクジェット印刷モジュール10Bにおけるインク配列の反転は、媒体送り方向Dに対するインク色の順序を維持する一方で、(図19に示すように、かつ図18Bに関連して上述したように)その第2のプリントヘッド方向で第2のインクジェットモジュール10B内にプリントヘッド50を挿入することは、印刷システム200内のすべてのプリントヘッドを交換可能に使用することを可能にする。このため、第1のインクジェット印刷モジュール10Aにおいてその第1のプリントヘッド方向にあるプリントヘッド50は、インク色を混合することなく、さらに、印刷システム200を再構成することなく、その第2のプリントヘッド方向で第2のインクジェット印刷モジュール10B内に挿入したり取り外したりすることを可能にする。
【0081】
さらに、工場で製造された各インクジェット印刷モジュール10は、シャッタ154を移動させ、スイッチ168を適切に構成するだけで、前向きまたは逆向きのいずれかで使用するように容易に変更可能である。基本的に、各インクジェット印刷モジュール10は、その使用する向きに依存することはなく、異なる機械的設計を有する専用の前向きおよび逆向きのモジュールを必要とする印刷システムと比べて大きな利点を提供する。
【0082】
当然のことながら、本発明は単なる例として説明されており、添付の特許請求の範囲に規定される本発明の範囲内で細部の変更が可能であることを理解されたい。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15
図16
図17A
図17B
図17C
図18
図19
【国際調査報告】